(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】過酸化水素処理を介して白色度が調節されたリオセル素材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 2/00 20060101AFI20240621BHJP
D06L 4/13 20170101ALI20240621BHJP
A24D 3/10 20060101ALI20240621BHJP
A24D 3/06 20060101ALI20240621BHJP
A24D 3/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
D01F2/00 Z
D06L4/13
A24D3/10
A24D3/06
A24D3/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578029
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2022014136
(87)【国際公開番号】W WO2023054975
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0129847
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0118768
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジン,サン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン フン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,スン ドン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヨン ナム
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】マ,キョンベ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ボン ス
【テーマコード(参考)】
4B045
4L035
【Fターム(参考)】
4B045BA08
4B045BD50
4B045BD54
4L035AA04
4L035BB11
4L035BB15
4L035BB60
4L035BB66
4L035CC20
4L035FF01
4L035FF08
(57)【要約】
本発明は、過酸化水素をトウ内に一定量残留させ、乾燥及び包装による熟成効果によって白色度が向上され、セルロースアセテート(CA)タバコフィルタを代替し、廃棄吸殻による環境汚染問題を和らげることができ、タバコフィルタ用に適する、過酸化水素処理を通じて白色度が調節されたリオセル素材及びその製造方法に係わるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリオセル紡糸ドープを紡糸する段階と、
(S2)前記紡糸されたリオセル紡糸ドープを凝固させ、リオセル・マルチフィラメントを得る段階と、
(S3)前記得られたリオセル・マルチフィラメントを水洗いする段階と、
(S4)前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを、油剤及び過酸化水素で処理する段階と、
(S5)前述の油剤及び過酸化水素で処理されたリオセル・マルチフィラメントをクリンピングし、クリンプトウ(crimped tow)を得る段階と、
(S6)前記クリンプトウを乾燥させる段階と、を含み、
前記(S4)段階は、
濃度が均一に維持される、油剤と過酸化水素との混合溶液を含む槽で、前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを油剤及び過酸化水素で同時に処理する段階、または、
過酸化水素を含む槽と、油剤単独溶液を含む槽とでもって、前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを順次に処理する段階を含む、リオセル素材の製造方法。
【請求項2】
前記(S4)段階の過酸化水素は、リオセル・マルチフィラメントを処理する溶液に対する過酸化水素の含量について、2ないし6重量%の濃度が維持されるようにしながら使用される、請求項1に記載のリオセル素材の製造方法。
【請求項3】
前記(S4)段階の油剤は、リオセル・マルチフィラメントを処理する溶液に対する油剤の含量について、2ないし8重量%の濃度が維持されるようにしながら使用される、請求項1に記載のリオセル素材の製造方法。
【請求項4】
前記(S4)段階の油剤は、潤滑成分、抱合(cohesion)成分、平滑(smoothness)成分及び疎水性成分によりなる群のうちから選択された1種以上を含む、請求項1に記載のリオセル素材の製造方法。
【請求項5】
前記(S6)段階のクリンプトウを乾燥させる段階は、105ないし135℃で、15分ないし45分間、連続乾燥装置を利用して遂行する、請求項1に記載のリオセル素材の製造方法。
【請求項6】
前記(S2)段階の凝固は、4~15℃の温度及び50ないし250L/m
3の風量の冷却空気を紡糸ドープに供給して行う、請求項1に記載のリオセル素材の製造方法。
【請求項7】
前記(S1)段階のリオセル紡糸ドープは、セルロースパルプ8ないし13重量%及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液87ないし92重量%を含む、請求項1に記載のリオセル素材の製造方法。
【請求項8】
前記セルロースパルプは、α-セルロース含量が85~99重量%であり、重合度(DPw)が600~1,700である、請求項1に記載のリオセル素材の製造方法。
【請求項9】
1,000ppm以下の過酸化水素を含むリオセル・クリンプトウである、請求項1に記載のリオセル素材の製造方法。
【請求項10】
セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリオセル紡糸ドープから紡糸されたリオセル・マルチフィラメントが、油剤及び過酸化水素で漂白処理されているクリンプトウ(crimped tow)を含み、
前記クリンプトウは、1,000ppm以下の過酸化水素を含み、80以上の白色度、及び8以下の黄色度を同時に満足するリオセル・クリンプトウを含む、リオセル素材。
【請求項11】
前記クリンプトウは、110ppm以上1,000ppm以下の過酸化水素を含み、80ないし90の白色度、及び1ないし4の黄色度を同時に満足するリオセル・クリンプトウである、請求項10に記載のリオセル素材。
【請求項12】
前記漂白処理時、リオセル・マルチフィラメントを処理する溶液に対する過酸化水素の含量が、2ないし6重量%の濃度が維持されるように過酸化水素が使用される、請求項10に記載のリオセル素材。
【請求項13】
前記油剤処理時、リオセル・マルチフィラメントを処理する溶液に対する油剤含量が、2ないし8重量%の濃度が維持されるように油剤が使用される、請求項10に記載のリオセル素材。
【請求項14】
前記リオセル紡糸ドープは、セルロースパルプ8~13重量%及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液87~92重量%を含む、請求項10に記載のリオセル素材。
【請求項15】
前記セルロースパルプは、α-セルロース含量が85~99重量%であり、重合度(DPw)が600~1,700である、請求項14に記載のリオセル素材。
【請求項16】
請求項10ないし15のうちのいずれか1項に記載のリオセル素材を含む、タバコフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願との相互引用>
本出願は、2021年09月30日付の韓国特許出願第10-2021-0129847号、及び2022年9月20日付の韓国特許出願第10-2022-0118768号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、過酸化水素処理を介して白色度が調節されたリオセル素材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的なタバコフィルタは、木材パルプからセルロースを抽出してアセチル化させたセルロースアセテート(CA:cellulose acetate)トウ(tow)を含んでいる。
【0004】
前記CA(cellulose acetate)は、白色度の具現のために、光触媒(TiO2)を添加しているが、TiO2のさまざまな問題点により、使用が不可能である。現在まで、TiO2を代替する光触媒物質が開発されていない状況において、今後のタバコフィルタ用CAには、光触媒が添加されていないと知られている。
【0005】
また、最近では、自然環境保護と原価低減とのために、セルロースアセテートトウを環境にやさしい(親環境)素材で代替する研究が進められている。例えば、セルロースアセテートと異なり、セルロース自体を繊維化させた、リオセル(lyocell)繊維を利用したトウの開発が進められている。
【0006】
しかしながら、現在までのリオセル繊維を利用したトウの場合、タバコ製造メーカーにおいて要求される白色度(white index 80以上、yellow index 8以下)を具現し難いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施例は、現在使用されている光触媒処理されたCA素材のトウと比較し、同等レベル以上の白色度を具現することができ、タバコフィルタ用として適する、過酸化水素処理を介して白色度が調節されたリオセル素材及びその製造方法を提供するためのものである。
【0008】
また、本発明の一実施例は、前記CA(セルロースアセテート)吸殻の廃棄物による環境汚染要因を低減させることができる、過酸化水素処理を通じて白色度が調節されたリオセル素材及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書においては、一具現例により、
(S1)セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO:N-methylmorpholine-N-oxide)水溶液を含むリオセル紡糸ドープを紡糸する段階と、
(S2)前記紡糸されたリオセル紡糸ドープを凝固させてリオセル・マルチフィラメントを得る段階と、
(S3)前記得られたリオセル・マルチフィラメントを水洗いする段階と、
(S4)前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを油剤及び過酸化水素で処理する段階と、
(S5)前述の油剤及び過酸化水素で処理されたリオセル・マルチフィラメントをクリンピング(crimping)し、クリンプトウ(crimped tow)を得る段階と、
(S6)前記クリンプトウを乾燥させる段階と、を含み、
【0010】
前記(S4)段階は、
濃度が均一に維持される、油剤と過酸化水素との混合溶液を含む槽(bath)にて、前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを油剤及び過酸化水素で同時に処理する段階、または、
過酸化水素を含む槽と、油剤単独溶液を含む槽とでもって、前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを順次に処理する段階を含む、リオセル素材の製造方法を提供する。
【0011】
また、本明細書においては、他の具現例により、セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリオセル紡糸ドープから紡糸されたリオセル・マルチフィラメントが、油剤及び過酸化水素で漂白処理されているクリンプトウ(crimped tow)を含み、
【0012】
前記クリンプトウは、1,000ppm以下の過酸化水素を含み、80以上の白色度、及び8以下の黄色度を同時に満足するリオセル・クリンプトウを含む、リオセル素材を提供する。
【0013】
また、本明細書においては、前記リオセル素材を含むタバコフィルタを提供する。
【0014】
以下、発明の具現例によるタバコフィルタ用リオセル素材及びその製造方法について詳細に説明する。
【0015】
それに先立ち、本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は、単に特定の実施例について言及するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0016】
本明細書で使用される単数の形態は、文言がそれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0017】
本明細書で使用される「含む」という意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素及び/または成分を具体化させ、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分及び/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0018】
本明細書において、「少なくとも一つ」または「1種以上」という用語は、1つ以上の関連項目から提示可能な、全ての組み合わせを含むと理解されなければならない。
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
<リオセル素材の製造方法>
発明の一具現例により、
(S1)セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリオセル紡糸ドープを紡糸する段階と、
(S2)前記紡糸されたリオセル紡糸ドープを凝固させてリオセル・マルチフィラメントを得る段階と、
(S3)前記得られたリオセル・マルチフィラメントを水洗いする段階と、
(S4)前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを油剤及び過酸化水素で処理する段階と、
(S5)前述の油剤及び過酸化水素で処理されたリオセル・マルチフィラメントをクリンピング(crimping)し、クリンプトウ(crimped tow)を得る段階と、
(S6)前記クリンプトウを乾燥させる段階と、を含み、
【0021】
前記(S4)段階は、
濃度が均一に維持される、油剤と過酸化水素との混合溶液を含む槽で、前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを油剤及び過酸化水素で同時に処理する段階、または、
過酸化水素を含む槽と、油剤単独溶液を含む槽とでもって、前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを順次に処理する段階を含む、リオセル素材の製造方法が提供されうる。
【0022】
本発明においては、過酸化水素処理を通じて白色度が調節されたリオセル繊維及びその製造方法を提供することを特徴とする。
【0023】
前記過酸化水素は、繊維生地の漂白工程に使用される薬剤であり、活性酸素(発生ラジカル酸素)を活用する酸化作用を利用し、生地内の色素及び有色不純物を除去する工程に使用される。
【0024】
そのような点に着眼し、本発明においては、リオセル・タバコフィルタトウの製造工程において、一定濃度範囲の過酸化水素を利用した漂白処理工程を追加させ、現在使用されている(現用)セルロースアセテート(CA)と同等のレベル、またはそれ以上の白色度を具現することができる方法を提供する。すなわち、本発明は、一般的に使用される過酸化水素を、リオセルタバコフィルタ用トウを製造する連続工程に、濃度を維持しながら適用し、短時間にトウの白色度を向上させることができる。
【0025】
具体的には、前記過酸化水素は、リオセル・マルチフィラメントを処理する溶液に対する過酸化水素の含量について、2ないし6重量%、あるいは3ないし6重量%の濃度が維持されるようにしながら使用することができる。
【0026】
この際、前記過酸化水素を使用するにしても、その濃度を、2ないし6重量%の範囲、あるいは3ないし6重量%の範囲に調節することが、最終トウ内の過酸化水素含量について、1,000ppm以下で残留させることができるとともに、白色度にもすぐれる効果を具現することができる。さらに具体的には、前記過酸化水素の含量は、3ないし6重量%、あるいは4ないし6重量%に維持させることで、白色度の向上を最適化させることができる。
【0027】
前記過酸化水素の濃度が低くなれば、リオセル・マルチフィラメントの漂白反応作用が未活性となり、要求される白色度及び黄色度を具現し難い。一方、過酸化水素の濃度が高くなれば、マルチフィラメント内の過酸化水素含量が増加し、最終のタバコフィルタトウ内における過酸化水素含量の管理範囲を外れ、タバコフィルタ素材としての活用が困難である。
【0028】
すなわち、本発明による過酸化水素の濃度範囲を維持しなければ、所望する白色度と物性とがすぐれて維持される効果を同時に具現することができない。
【0029】
また、本発明で達成しようとするリオセル・タバコフィルタ用トウの白色度具現のためには、製造工程中、フィラメントトウに油剤を塗布する工程にて、過酸化水素処理を同時に進めて処理するか、あるいは選択的に、過酸化水素と油剤単独溶液とで順次に処理することが特徴である。そのような場合、油剤と過酸化水素の濃度は、均一に維持するように、本明細書による範囲の濃度に構成(make-up)されて添加される方式が使用されうる。さらに具体的には、前述の油剤及び過酸化水素の処理は、水洗いされたリオセル・マルチフィラメントに対して同時に進める場合、さらに効果的に、業界で要求されるレベルの白色度及び黄色度を具現し、かつ調節することができる。
【0030】
それにより、本発明は、生分解性にすぐれるリオセルを適用したタバコフィルタトウを製造することができ、光触媒(TiO2)を添加せずとも、トウ製造工程において、過酸化水素を添加し、タバコ製造メーカーで要求される白色度を具現することができる。従って、本明細書には、現在使用されている(現用)CA(セルロースアセテート)のたばこ根元部(吸殻部)(フィルタ)を、従来よりも環境にやさしい(親環境)工法で製造することができる。
【0031】
以下、本発明の、過酸化水素処理を通じて白色度が調節されたリオセル素材の製造方法につき、それぞれの段階別に、さらに詳細に説明する。
【0032】
[(S1)段階]
本発明において(S1)段階は、セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリオセル紡糸ドープを紡糸する段階である。この際、前記リオセル紡糸ドープは、セルロースパルプ8~13重量%及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液87~92重量%を含むものでありうるのであり、前記セルロースパルプは、α-セルロース含量が85~97重量%であって、重合度(DPw)が600~1,700であるものでありうる。
【0033】
前記セルロースパルプの含量が8重量%未満であれば、繊維的特性を具現し難く、13重量%超過であるならば、水溶液状に溶解し難くなる。また、前記N-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液の含量が87重量%未満であるならば、溶解粘度が過度に高くなって望ましくなく、92重量%超過であるならば、紡糸粘度が過度に低くなり、紡糸段階にて均一な繊維を製造するのに困難さが伴う。
【0034】
前記N-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液において、N-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)と水との重量比が93:7ないし85:15でありうる。前記N-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)と水との重量比が93:7超過である場合には、溶解温度が高くなり、セルロース溶解時、セルロースの分解が生じてしまい、前記重量比が85:15未満である場合には、溶媒の溶解性能が低下し、セルロースの溶解が困難になりうる。
【0035】
前述の紡糸ドープを使用し、それを平面状またはドーナツ状の紡糸口金の紡糸ノズルから吐出させる。この際、前記紡糸口金は、フィラメント状の紡糸ドープについて、エアギャップ区間を通じて、凝固槽内の凝固液に吐出させる役割を行う。前記紡糸ドープを紡糸口金から吐出させる段階は、100ないし120℃で行われうる。
【0036】
[(S2)段階]
本発明において(S2)段階は、前記(S1)段階で紡糸されたリオセル紡糸ドープを凝固させ、リオセル・マルチフィラメントを得る段階であり、前記(S2)段階の凝固は、冷却空気を紡糸ドープに供給して凝固させるエアクエンチング(Q/A:air quenching)による一次凝固段階と、一次凝固された紡糸ドープを凝固液に浸漬させて凝固させる二次凝固段階と、を含みうる。
【0037】
前記(S1)段階において、平面状またはドーナツ状の口金を通じて紡糸ドープを吐出させた後には、それを、前述の紡糸口金と、凝固槽との間の空間のエアギャップ区間を通過させることができる。そのようなエアギャップ区間には、平面形態の口金である場合、口金の一方側から反対側の方向に冷却空気が供給され、ドーナツ形態の口金である場合、内側に位置した空冷部から、口金の内側より外側へと冷却空気が供給され、反対側または外側には、吸引機能も追加されうる。そのような冷却空気でもって紡糸ドープに供給されるエアクエンチングによって一次凝固されうる。
【0038】
この際、(S2)段階で得られるリオセル・マルチフィラメントの物性に影響を及ぼす要素は、エアギャップ区間における冷却空気の温度及び風速であり、(S2)段階の凝固は、4~15℃の温度、及び50ないし250L/m3風量の冷却空気を紡糸ドープに供給して遂行するものでありうる。
【0039】
前記一次凝固時、冷却空気の温度が4℃未満であるならば、口金表面温度が低くなり、リオセル・マルチフィラメントの断面が不均一になり、紡糸工程性も良好ではなくなり、15℃超過であるならば、冷却空気による一次凝固が十分になされず、紡糸工程性が良好ではなくなる。
【0040】
また、一次凝固時、冷却空気の風量が50L/m3未満であるならば、冷却空気による一次凝固が十分になされないことから、紡糸工程性が良好ではなくなって糸切れが生じるのであって、250L/m3超過であるならば、口金から吐出される紡糸ドープが空気によって揺れるに伴い、紡糸工程性が良好ではなくなる。
【0041】
エアクエンチングによる一次凝固の後、前記紡糸ドープは、凝固液が入れられている凝固槽に供給され、二次凝固が進められうる。一方、適切な二次凝固の進行のために、前記凝固液の温度は、30℃以下でありうる。それは、二次凝固の温度が必要以上に高くないことで、凝固速度が適切に維持されるようにするためである。ここで、前記凝固液は、本発明が属する技術分野における通常の組成で製造して使用することができるので、特別に限定されるものではない。
【0042】
[(S3)段階]
本発明において(S3)段階は、前記(S2)段階で得られたリオセル・マルチフィラメントを水洗いする段階である。より具体的には、前記(S2)段階で得られたリオセル・マルチフィラメントを、牽引ローラに導き入れた後、水洗槽に導き入れて水洗いする段階である。
【0043】
前記フィラメントの水洗い段階においては、水洗い後、溶剤の回収及び再使用の容易性を考慮し、0ないし100℃の温度の水洗液を使用することができ、前記水洗液としては、水を利用することができ、必要によっては、その他の添加成分をさらに含めることもできる。
【0044】
[(S4)段階]
本発明において(S4)段階は、前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを油剤及び過酸化水素で処理する段階である。
【0045】
そのような前記(S4)段階は、i)油剤と過酸化水素との混合溶液、またはii)油剤及び過酸化水素の単独溶液を順次に利用し、前記(S3)段階で水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを処理する段階でありうる。前記過程を通じて処理されたリオセル繊維の白色度が調節されることにより、所望するレベルの白色度を具現することができる。
【0046】
すなわち、前記(S4)段階は、濃度が均一に維持される、油剤と過酸化水素との混合溶液を含む槽において、前記(S3)段階で水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを油剤及び過酸化水素で同時に処理する段階を特徴とする。
【0047】
また、任意選択的に、前記(S4)段階は、過酸化水素を含む槽と、油剤単独溶液を含む槽とでもって、前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを順次に処理する段階を含みうる。そのような方法において、前記過酸化水素及び油剤単独溶液をそれぞれ含む槽も、濃度が均一に維持されるようにする。
【0048】
前述の油剤及び過酸化水素での処理のためには、油剤及び過酸化水素によって構成(make-up)された槽にフィラメントトウを浸漬させて排出する方式が使用されるのであり、特に、過酸化水素は、油剤によって構成(make-up)される際、一定濃度で同時に添加する方式によって処理されうる。
【0049】
具体的には、前記方法は、前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントに油剤と過酸化水素とが均一に染み込むようにするが、油剤と過酸化水素との濃度をいずれも均一に一定に維持させることが重要である。
【0050】
従って、本明細書においては、槽内において、油剤と過酸化水素との濃度が持続的に均一に維持されるように、一定濃度に構成(make-up)されるべく2つの成分を添加する方式が使用されうる。
【0051】
それにより、発明の一具現例により、前述の油剤及び過酸化水素で処理する(S4)段階は、濃度が均一に維持される、油剤と過酸化水素との混合溶液で構成された槽に、前記(S3)段階で水洗いされたフィラメントを浸漬した後に排出する方式で油剤処理され、それと共に、過酸化水素処理される段階を含むものでありうる。そのような場合、油剤と過酸化水素との混合溶液で構成された槽が具備され、それは、前記水洗槽に連結設置されうる。また、濃度が均一に維持されるように、前記2つの成分を含む槽には、過酸化水素と油剤とが添加されうる装置が連結されうる。
【0052】
また、発明の他の一具現例により、前述の油剤及び過酸化水素で処理する(S4)段階は、濃度が均一に維持される過酸化水素を単独で含む槽と、油剤単独溶液で構成された槽とでもって、前記(S3)段階で水洗いされたフィラメントを順次に浸漬した後で排出する方式により、油剤及び過酸化水素で処理される段階を含みうる。そのような場合、過酸化水素を含む槽と、油剤単独溶液で構成された槽とが連結されて具備され、それらは、前記水洗槽に連結して設けられうる。また、濃度が均一に維持されるように、前記各槽には、過酸化水素と油剤とが添加されうる装置が連結されうる。
【0053】
望ましくは、前記(S4)段階は、(S3)段階で水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを、濃度が維持される、油剤と過酸化水素との混合溶液を使用して同時に処理することで、より効果的に、優れた白色度と黄色度とを具現することができる。
【0054】
このとき、前記過酸化水素は、リオセル・マルチフィラメントを処理する溶液に対する過酸化水素の含量が、2ないし6重量%の濃度が維持されるようにしながら使用されうる。また、前記過酸化水素は、前記濃度で維持されるように、水溶液状態にし、持続的に槽に添加されうる。また、前記槽は、油剤と過酸化水素との濃度が維持されるようにする手段が具備されうる。例えば、油剤と過酸化水素との濃度測定装置が具備され、油剤と過酸化水素を含む混合溶液についての水位及び一定基準を維持するように、油剤と過酸化水素とが循環される排出手段が具備されうる。
【0055】
前記過酸化水素の濃度が2重量%以下であるならば、所望する白色度を具現することができず、マルチフィラメント内部に均一に浸透することができないことから、クリンプの後工程以後、漂白が完全に反応しないという問題があり、6重量%以上であるならば、トウ内の過酸化水素含量が多くなっても、使用量とに比して白色度が向上されず、マルチフィラメントのクリンプの後工程処理以後にも、過量が残留され、物性が脆化されるという問題がある。
【0056】
前記油剤は、リオセル・マルチフィラメントを処理する溶液に対する油剤含量が、2ないし8重量%の濃度、あるいは3ないし7重量%の濃度が維持されるようにしながら使用されうる。前記油剤含量が前記範囲を維持することは、クリンプ段階におけるリオセル・マルチフィラメントが、クリンプ段階にて装置に接触するときに生じる摩擦を減らし、繊維間のクリンプが良好に形成されるようにする役割を行わせうる。
【0057】
そのように、前記過酸化水素の濃度、及び油剤の濃度が維持されなければ、リオセル・マルチフィラメントの均一な漂白処理が困難であり、クリンピング(crimping)工程が円滑ではないか、あるいは、後工程にてリオセル素材の物性低下をもたらすので、白色度及び物性向上の効果を得ることができない。従って、前記(S4)段階を進める際、前述のように、過酸化水素と油剤との濃度を維持することが重要である。
【0058】
そのような前記(S4)段階の遂行により、従来以上に所望するレベルに、リオセルタバコフィルタ用トウの白色度を向上させることができ、クリンプを形成する後処理工程以後の物性低下を防止することができる。
【0059】
この際、前記油剤処理は、マルチフィラメントが、油剤中に完全に浸漬される状態で行われ、油剤処理装置の進入ロールと放出ロールとに取り付けられた絞りローラにより、油剤がフィラメントに染み込む量を一定に維持させる。
【0060】
また、過酸化水素処理も、油剤と共に、リオセル・マルチフィラメントが槽内に完全に浸漬される状態で行われうる。また、前記(S4)段階を遂行した後には、油剤及び過酸化水素の乾燥なしに、即座に(S5)段階(クリンピングする段階)を遂行することができる。
【0061】
また、前記フィラメント塗布に使用される油剤は、一般的な繊維に使用される油剤とは異なり、リオセル専用に開発されたものを使用することができ、それは、過酸化水素との相互間の反応が起こらず、均一に構成(make-up)される。
【0062】
望ましい一具現例によれば、前記油剤は、タバコフィルタトウの物性を均一に付与することができる潤滑機能、適正レベルの平滑性と抱合性とを付与し、フィルタ製造工程性を最適化させることができ、喫煙中、喫煙者の唾液により、フィルタの形態が変形され、フィルタの硬度が低くなる現象を最小化させるために、本油剤は、唾液のフィルタへの浸透を遅延させることができる疎水性を付与し、フィルタ硬度が低くなる速度を遅くすることができる。また、一定量の油剤がタバコフィルタに残留しても、喫煙者の人体に無害な成分によって構成されうる。
【0063】
ただし、前記油剤は、フィラメントが、乾燥ローラ時及びガイド時、クリンプ段階における接触時に生じる摩擦を減らし、繊維間のクリンプが良好に形成されるようにする役割を行うものであり、リオセルフィラメント製造の際、一般的に通用するものであるならば、その種類に特別に制限はない。
【0064】
望ましい一例を挙げれば、前記油剤は、潤滑成分、抱合(cohesion)成分、平滑(smoothness)成分、及び疎水性成分よりなる群のうちから選択された1種以上を含むものでもある。
【0065】
[(S5)段階]
(S5)段階は、前記(S4)段階において、油剤及び過酸化水素で処理されたリオセル・マルチフィラメントをクリンピングし、クリンプトウを得る段階である。
【0066】
具体的には、前記方法は、油剤及び過酸化水素で処理されたリオセル・マルチフィラメントに対し、スチームと圧力とをかけてクリンピングする段階であり、(S5)段階を経て、クリンプトウ(crimped tow)を得ることができる。
【0067】
本明細書全体にわたって記載された用語である「クリンピング(crimping)」とは、主に、繊維のバルク(bulk)感性を付与するために、フィラメントにしわを付与することを意味する。本発明における前記クリンピング工程は、プレスローラが具備されたスタッファボックス(stuffer box)を通じて遂行されうる。前記プレスローラは、ニップローラ(nip roller)でありうる。
【0068】
このとき、前記スタッファボックスの前端には、フィラメントトウのスチーム処理のためのスチームボックス(steam box)が構成されており、該スチームボックスに供給されるスチーム圧力が0.1~3kgf/cm2であり、プレスローラ(press roller)の圧力が1.5~4kgf/cm2であり、上部プレート圧力が0.1~3kgf/cm2である条件を満足するように制御されることが望ましい。該スチーム圧力が0.1kgf/cm2未満であるならば、フィラメントのモジュラスが工程に適するレベルに低くならず、クリンプが円滑に形成されないのであり、3kgf/cm2を超え、過度に多量のスチームが供給されれば、フィラメントのモジュラスは、最小化されるが、過度な含水率により、要求されるクリンプ数を均一に付与することができない。
【0069】
また、前記プレスローラを介して押す圧力は、1.5kgf/cm2未満である場合、投入されるフィラメントの厚みを均一に付与することができず、所望するクリンプ数が均一に形成されず、4kgf/cm2超過であるならば、押力が非常に強く、トウ(tow)内に存在する水分または維持分の含量が急激に少なくなり、フィラメントがスタッファボックスを円滑に通過することができなくなることもありうる。この際、併せて、前記プレスローラの間隔は、0.01~3.0mmに維持されることが望ましい。該プレスローラの間隔が0.01mm未満であるならば、ローラによるフィラメントの圧力が高くなり、クリンプ形成が不可能であるか、あるいは形成後に、フィラメント表面摩擦により、損傷が生じてしまい、3.0mm超過であるならば、プレスローラ間におけるフィラメントスリップ現象が生じ、均一なクリンプ形成が困難になりうる。
【0070】
また、プレスローラ通過後、均一なクリンプ付与のために、上下に動く役割を行う前記上部プレートの圧力が0.1kgf/cm2未満であるならば、スタッファボックス内部の圧力により、上部プレートが固定されず、トウがスタッファボックス内に長期間滞留されるに伴い、工程の連続性が維持されうるか、あるいは適正な滞留時間を付与するということができず、所望するトウのクリンプ数を調節することができないのであり、3.0kgf/cm2超過であるならば、スタッファボックス内にトウが円滑に排出されず、クリンプ形態が不規則になってしまう。
【0071】
そのような条件においてクリンピングされたトウは、20個/インチ(inch)以上、20ないし40個/inch、あるいは30ないし40個/inchのクリンプを確保して維持することができる。それにより、本発明のリオセル・クリンピングトウは、短時間内に生分解されて除去されるので、環境にやさしい(親環境的である)だけではなく、タバコフィルタに製造されたとき、要求される物性である吸引抵抗、フィルタ強度、フィルタ除去能などを満足させ、その効果を最大化させることができる。
【0072】
[(S6)段階]
(S6)段階は、前記(S5)段階で得られたクリンプトウを一定温度で乾燥させる段階である。
【0073】
具体的には、前記油剤処理槽に均一にフィラメントトウに浸漬された油剤と過酸化水素は、クリンプ工程において、均一なクリンプ数を付与することができるレベルにピックアップ(pick up)される。
【0074】
その後、連続乾燥装置を介し、クリンプトウ(crimped tow)を乾燥させれば、均一な量の過酸化水素を含む最終のリオセル・クリンプトウを製造することができる。
【0075】
前記クリンプトウを乾燥させる段階は、105ないし135℃で、15分ないし45分間、あるいは110ないし130℃で、20分ないし40分間、連続乾燥装置を利用して遂行することができる。より望ましくは、前記クリンプトウを乾燥させる段階は、110ないし130℃で、20分ないし40分間遂行することが、漂白反応をさらに円滑に進めさせ、白色度にすぐれた製品を提供するのに寄与することができる。
【0076】
前記乾燥温度が105℃以下であるならば、漂白反応が良好に起こらず、トウが完璧に乾燥されず、要求される水分率に調節することができないという問題があり、135℃以上であるならば、黄変現象により、白色度が低くなるという問題がある。また、乾燥時間が15分以下であるならば、漂白反応が良好におこらず、非規則的に、乾燥されていない部分が生じうるのであって、45分以上であるならば、過度な乾燥時間によりトウ表面の損傷を引き起こし、黄変現象により白色度が低くなるという問題がある。
【0077】
すなわち、トウに含有された過酸化水素の円滑な漂白反応のために、油剤及び過酸化水素で処理されたマルチフィラメントにつき、前記範囲において、連続乾燥装置の条件を設定することが望ましいのでありうる。
【0078】
また、前記乾燥以後に最終的に製造されたトウは、過酸化水素を1,000ppm以下で含み、包装されたトウは、熟成(aging)効果により、追加の漂白作用が生じうる。従って、本発明によれば、トウ包装による熟成により、白色度に、よりすぐれるタバコフィルタを提供することができる。
【0079】
<リオセル素材>
本発明の他の具現例により、セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリオセル紡糸ドープから紡糸されたリオセル・マルチフィラメントが、油剤及び過酸化水素で漂白処理されているクリンプトウ(crimped tow)を含み、前記クリンプトウは、1,000ppm以下の過酸化水素を含み、80以上の白色度、及び8以下の黄色度を同時に満足するリオセル・クリンプトウを含むリオセル素材が提供されうる。
【0080】
前述の方法により、本発明は、一定濃度範囲の過酸化水素を、トウ製造の油剤処理工程に共に使用することにより、過酸化水素をトウ内に一定量残留させて、白色度を改善させることができるのであり、特に、乾燥及び包装による熟成効果により、白色度をさらに向上させることができる。
【0081】
ところで、前記クリンプトウ内過酸化水素含量が1,000ppm以下を満足しても、その含量が過度に少なければ、タバコフィルタで要求されるレベルの白色度を示すことができない。従って、前記クリンプトウ内の過酸化水素含量は、1,000ppm以下を満足しても、一定含量以上、具体的には、その下限は、110ppm以上に含まれた方がよい。
【0082】
それにより、前記クリンプトウは、110ppm以上1,000ppm以下の過酸化水素を含み、80ないし90の白色度、及び1ないし4.5の黄色度を同時に満足するリオセルトウでありうる。さらに具体的には、400ppm以上980ppm以下の過酸化水素を含み、80ないし90の白色度、及び1ないし4の黄色度を同時に満足する、白色度にすぐれるリオセル・クリンプトウでありうる。
【0083】
また、本発明によるリオセル素材は、タバコ製造メーカーで要求する白色度(white index 80以上、yellow index 8以下)を具現することができる。
【0084】
さらに、本発明は、CA(セルロースアセテート)タバコフィルタを代替し、廃棄吸殻による環境汚染問題を和らげることができる。
【0085】
このとき、リオセルトウの漂白処理に使用される前記過酸化水素の濃度は、2ないし6重量%でありうる。
【0086】
前記リオセル紡糸ドープは、セルロースパルプ8~13重量%及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液87~92重量%を含むものでありうる。
【0087】
前記セルロースパルプは、α-セルロース含量が85~99重量%であり、重合度(DPw)が600~1,700でありうる。
【0088】
なお、本発明の他の具現例により、前記白色度が調節されたリオセル素材を含むタバコフィルタが提供されうる。
【0089】
前記タバコフィルタは、前記白色度が向上されたリオセルトウを除き、その構成が制限されるものではない。
【0090】
例えば、前記タバコフィルタは、複数個のリオセル(lyocell)繊維を含む円柱・円筒状の前記リオセルトウ(tow)、可塑剤、硬化剤などが含まれるものでありうる。
【0091】
前記複数個のリオセル繊維は、硬化剤によって互いに連結され、繊維表面が硬化剤と接触する形態で相互に接合された構造を示すことができる。
【0092】
前記硬化剤は、フィルタの硬度改善のために、周知の物質が使用され、例えば、該硬化剤は、セルロース誘導体、ビニル系誘導体、ビニル系エマルジョン樹脂、アルギン酸ナトリウムを含む天然高分子樹脂、澱粉・澱粉誘導体といった高分子樹脂を含むものでありうる。
【発明の効果】
【0093】
本発明によれば、リオセルタバコフィルタ用トウ製造工程において、白色度を向上させるための薬剤(過酸化水素)を添加し、過酸化水素含量をトウ内に1,000ppm以下に残留させ、優れた白色度を有するトウを提供することができる。また、本発明においては、一定条件下で漂白反応を進めた乾燥工程と、乾燥が完了した物質の包装工程とによる熟成(aging)効果を通じて、白色度をさらに向上させることができる。
【0094】
従って、本発明は、既存タバコフィルタトウ製造工程に漂白工程を追加させ、タバコ製造メーカーで要求する白色度(white index 80以上、yellow index 8以下)を具現することができる。
【0095】
付け加えて、本発明は、環境にやさしい(親環境的な)方法により、リオセルトウを提供することができるので、従来のCA(セルロースアセテート)タバコフィルタを代替し、廃棄吸殻による環境汚染要因を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下、実施例を介し、本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明の理解の一助とするためのものであるに過ぎず、それらにより、本発明の権利範囲が制限されるものではない。
【0097】
<実施例1>
重合度(DPw)820、α-セルロース含量93.9%であるセルロースパルプを、没食子酸プロピル(propyl gallate)の含量が0.01重量%であるN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)/H2O混合溶剤(重量比90/10)に混合し、濃度12重量%のタバコフィルタ用トウ製造用紡糸ドープを製造した。まず、該紡糸ドープは、紡糸ノズルにおいて、紡糸温度110℃に維持し、フィラメントの単繊度が2.4デニールになるように、吐出量と紡糸速度とを調節して紡糸した。
【0098】
前記紡糸ノズルから吐出されたフィラメント状の紡糸ドープを、エアギャップ区間を経て、凝固槽内の凝固液に供給した。この際、前記エアギャップ区間において、冷却空気は、8℃の温度、及び100L/m3の風量で紡糸ドープを一次凝固させた。前記凝固液は、温度25℃で、濃度は、水75重量%及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)25重量%であるものを使用した。この際、前記凝固液濃度は、センサと屈折計とを使用して連続してモニタリングした。
【0099】
牽引ローラを介して凝固されたフィラメントは、水洗い装置において、スプレーされた水洗液によって水洗いされ、フィラメント内に残存しているN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)を除去した。
【0100】
その後、水洗いされたフィラメントは、油剤2重量%及び過酸化水素濃度5重量%の混合溶液によって構成(make-up)された油剤及び過酸化水素を含む槽の内部に浸漬させた。すなわち、前記フィラメントに、油剤と過酸化水素とが均一に染み込むように、油剤含量2重量%、過酸化水素含量5重量%が維持されるようにしながら、油剤と過酸化水素は、槽の濃度が持続的に均一に維持されるように、一定濃度に構成(make-up)して添加される方式が使用された。
【0101】
前記槽に浸漬されたフィラメントは、浸漬過程の後に排出する方式で油剤が処理され、同時に過酸化水素処理された。
【0102】
具体的には、前記処理槽に浸漬されたフィラメントトウは、槽の排出部に設けられたクリンプ装置の前端のスタッファボックスに具備されたニップローラ(nip roller)を使用し、2kgf/cm2圧力で処理し、槽から、油剤及び過酸化水素で処理されたマルチフィラメントを排出した後、クリンプ装置(crimp M/C)に投入してクリンピングし、リオセル・クリンプトウ(crimped tow)を製造した。製造されたトウは、120℃にセッティング(setting)された連続乾燥装置を通過させ、乾燥されたトウ製品を得た(乾燥処理時間:25分)。
【0103】
<実施例2>
過酸化水素濃度を3重量%に変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0104】
<実施例3>
過酸化水素濃度を2重量%に変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0105】
<実施例4>
過酸化水素濃度を6重量%に変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0106】
<実施例5>
前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを、油剤及び過酸化水素で処理するとき、過酸化水素5重量%で構成(make-up)された槽と、油剤2重量%で構成(make-up)された槽とに、前記水洗いされたリオセル・マルチフィラメントを順次に浸漬する方法を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0107】
また、前記フィラメントに、油剤と過酸化水素とが均一に染み込むように、油剤と過酸化水素は、それぞれの槽内において、濃度が持続的に均一に維持されるように、一定濃度で構成(make-up)されて添加される方式が使用された。そのような方法でもって、油剤含量が2重量%及び過酸化水素含量5重量%が維持されるようにした。
【0108】
<比較例1>
過酸化水素を添加せずに、2重量%の油剤だけ使用したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0109】
<比較例2>
過酸化水素濃度を1重量%に変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0110】
<比較例3>
過酸化水素濃度を7重量%に変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0111】
<比較例4>
過酸化水素濃度を10重量%に変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0112】
<比較例5>
連続乾燥装置で、乾燥処理条件を100℃で50分間処理することに変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0113】
<比較例6>
連続乾燥装置で、乾燥処理条件を100℃で10分間処理することに変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0114】
<比較例7>
連続乾燥装置で、乾燥処理条件を140℃で10分間処理することに変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0115】
<比較例8>
連続乾燥装置で、乾燥処理条件を140℃で50分間処理することに変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でもって、タバコフィルタ用リオセルトウを製造した。
【0116】
[実験例]
実施例及び比較例のリオセルトウにつき、以下の方法でもって、トウ内過酸化水素含有量及びトウ白色度を測定し、その結果を表1に示した。
【0117】
<物性測定方法>
(1)トウ内の過酸化水素含有量の測定
酸化還元滴定法原理を適用し、過マンガン酸カリウムを標準溶液(0.1N)として使用し、体積分析を実施した。
【0118】
前記実施例及び前記比較例を通じて製造されたトウを、標準恒温恒湿条件で24時間放置する。その後、トウを、重量比10重量%で超純水に浸漬し、30分間超音波処理を進めた。該超音波処理の後、超純水を10ml取り、蒸溜水10ml、濃硫酸2mlを入れる。製造された滴定試料は、カール・フィッシャー実験実用滴定器を用い、標準溶液を使用して滴定を実施し、終末点を確認し、以下の数式1により、トウ内過酸化水素含有量を計算した。
【0119】
[数式1]
トウ内H2O2(%)=0.0017×V×F×D/S×100
【0120】
数式1で、0.0017は、0.1N過マンガン酸カリウム溶液1mlと等価である過酸化水素の質量(g)であり、Vは、0.1N過マンガン酸カリウム溶液の滴定量(ml)であり、Fは、0.1N過マンガン酸カリウム溶液の規定度係数(ファクター;factor)であり、Dは、トウから抽出された過酸化水素含有液の希釈比(=1)であり、Sは、試料重量(g)である。
【0121】
このとき、前記Dと係わり、濃度が高い場合に希釈するが、本明細書においては、抽出液そのまま使用するので、1である。
【0122】
(2)トウ白色度の測定
CCM装備(X-Rite ColorEye 7000A Spectrophotometer)を活用し、白色度を測定した。
【0123】
測定試料は、前記実施例及び前記比較例を通じて製造されたトウを3本(筋)準備し、引っ張り強伸度測定の状況と同一に、真ん中部分を破断させた。白色度測定のために、実験を3回繰り返して実施し、破断された部分を重ねるようにして束ねる。その後、束ねられたサンプルをCCM装備に装着させ、白色度(whiteness index)と黄色度(yellowness index)とを測定し、結果を導き出した。
【0124】
【0125】
物性測定結果、前記表1に記載されているように、実施例1ないし5の白色度結果は、比較例よりも、タバコフィルタで要求されるレベルの白色度を具現することができ、また多様に白色度を調節することができるということを確認することができた(白色度(W.I:80以上、Y.I:8以下)。具体的には、実施例1ないし5は、300ppm以上980ppm以下の過酸化水素を含み、80ないし90の白色度、及び1ないし5の黄色度を同時に満足する、白色度にすぐれるリオセル・クリンプトウを提供することができた。
【0126】
特に、過酸化水素濃度が5ないし6重量%を維持する実施例1及び4の場合、リオセル・クリンプトウが、W.I値が81.4~82.1であり、Y.Iが3.3ないし3.4を満足させ、白色度にすぐれるタバコフィルタを提供することができた。
【0127】
また、過酸化水素の先処理の後、油剤を処理した実施例5の場合、リオセル・クリンプトウのW.I値が80.0であり、Y.I値が4.4であり、所望する白色度の結果を満足させた。ここで、実施例5は、過酸化水素と油剤とを同時に処理した実施例のトウに比べては、小幅に低い結果値として測定されたのであるが、それは、過酸化水素の先処理後、油剤処理過程において、トウに含有された過酸化水素が、油剤によって瞬間的に脱落されたと類推されうる。しかしながら、実施例5は、トウ内の過酸化水素含量が1,000ppm以下でありながら、実施例1ないし4と同様に、比較例に比べ、業界で要求する白色度及び黄色度の範囲を同時に満足することができた。従って、本明細書による実施例のトウは、既存のものよりも、環境にやさしい(親和的な)タバコフィルタ用素材として有用に使用されうる。
【0128】
一方、比較例1の場合、過酸化水素が処理されていないトウであり、白色度結果が、肉眼で確実に区分することができるレベルに低いということを確認することができた。
【0129】
また、比較例2ないし4は、過酸化水素の処理が、トウの白色度具現に影響を及ぼす因子であるとしても、過酸化水素の処理含量が、本発明の範囲を外れ、残留濃度により、白色度が上向いたり下向いたりする結果を示す変曲現象が生じることを確認することができた。特に、比較例2の場合、トウ内の過酸化水素の含有量が1,000ppm以下であったが、その含量が非常に少なく、白色度がタバコフィルタで要求するレベルを満足することができなかった。また、比較例3及び4は、過酸化水素処理量の増大により、トウ内の含有量が1,000ppm以上であったが、白色度が低下され、業界で要求するレベルを充足させることができず、過酸化水素の使用量に比べ、非経済的である効果を示した。
【0130】
また、比較例5ないし8の場合、過酸化水素を使用してトウを処理しても、乾燥処理時、その条件が本発明の範囲を外れ、過酸化水素の漂白反応が正しく起こらず、所望する白色度を具現することができなかった。
【0131】
従って、本発明のように、タバコフィルタトウの製造時、一定濃度範囲の過酸化水素で処理する場合、タバコ製造メーカーで要求するすぐれた白色度を具現することができる。同時に、本発明においては、過酸化水素を処理しても、漂白反応時、温度条件を調節することにより、W.I値及びY.I値を最適化させることができる。
【0132】
また、本発明によれば、既存の光触媒処理されたCAタバコフィルタを代替することができ、従来よりも、廃棄タバコ吸穀による環境汚染を減らすことができる。
【国際調査報告】