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特表2024-523421非ステロイド性抗アンドロゲン剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】非ステロイド性抗アンドロゲン剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/86 20060101AFI20240621BHJP
   C07C 237/30 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALN20240621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C07D233/86
C07C237/30
A61K31/4166
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578034
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2022067799
(87)【国際公開番号】W WO2023275091
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21382571.4
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501052524
【氏名又は名称】キミカ、シンテティカ、ソシエダッド、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】QUIMICA SINTETICA, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ、バッレーカ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、リーミン
【テーマコード(参考)】
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086BC38
4C086ZB26
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006AB84
(57)【要約】
4-[3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソ-1-[イミダゾリジニル]-2-フルオロ-N-メチル-ベンズアミドなどの非ステロイド性抗アンドロゲン薬およびその中間体の改良された製造方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物:
【化1】
(式中、
-RおよびRは、互いに独立して、H、C~C10-アルキルまたはC~C10-アリールであり得、場合により、1つまたは複数のハロゲン化物、シアノ、ヒドロキシまたはアミノ基で置換され;
-1つ以上のR’~R’およびR”~R”は、互いに独立して、R、シアノ、ハロゲン化物、-COOR、-CONR、-OCOR、-OCNRからなる群から選択され、RおよびRは上記定義したとおりである)
を製造する方法であって、
式(II)の化合物と式(III)の化合物とをカップリングさせて、式(I)の化合物を得る工程を含む、方法:
【化2】
(式中、R’’’は、ハロゲン化物および-NOから独立して選択される1つ以上の置換基を有するフェニルである)。
【請求項2】
および/またはRの少なくとも1つが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメチルおよびトリクロロメチルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R”~R”の少なくとも1つがハロゲン化物または-CONHR基であり、ハロゲン化物がフッ素基であり、Rが請求項1に定義されている通りである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R”~R”の少なくとも1つがトリフルオロメチル基またはシアノ基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の化合物がエンザルタミドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
化合物(II)が、以下の一般式(IIa)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法:
【化3】
(式中、R’’’が、ハロゲン化物および-NO2から独立して選択される1つまたは複数の置換基を有するフェニルである)。
【請求項7】
前記カップリング工程が、以下のもの:
化合物(II)であって、以下の式(IIb):
【化4】

を有するもの、
化合物(III)であって、以下の式(IIIa):
【化5】
を有するもの
のうちの少なくとも1つを用いて行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カップリング工程において、式(IIb)の化合物と式(IIIa)を化合物とをカップリングさせて、4-[3-[4-シアノ-3-トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソ-1-イミダゾリジニル]-2-フルオロ-N-メチル-ベンズアミドが得られ、場合により結晶化により精製される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
対応するカルボン酸を式R’’’OH(式中、R’’’は、ハロゲン化物および-NO2から独立して選択される1つまたは複数の置換基を有するフェニルである)のフェノール誘導体でエステル化することにより式(II)の化合物を製造する工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
一般式(IIa)の化合物:
【化6】
(式中、R’’’は、ハロゲン化物および-NOから独立して選択される1つまたは複数の置換基を有するフェニルである)。
【請求項11】
R’’’が、4-ニトロフェニル、ペンタフルオロフェニル、4-クロロフェニル、2,4-ジクロロフェニルまたは2,4-ジフルオロフェニルであり、好ましくはR’’’が4-ニトロフェニル、ペンタフルオロフェニルまたは4-クロロフェニルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
以下の式(IIb):
【化7】
を有する、請求項10または11に記載の化合物。
【請求項13】
式(IV):
【化8】
のカルボン酸を式R’’’OH(式中、R’’’は、ハロゲン化物および-NOから独立して選択される1つまたは複数の置換基を有するフェニルである)のフェノール誘導体でエステル化する工程を含む、請求項10に記載の式(IIa)の化合物を製造する方法。
【請求項14】
R’’’が4-ニトロフェニル、4-クロロフェニルおよびペンタフルオロフェニルから選択される、請求項13に記載の式(IIa)の化合物の製造方法。
【請求項15】
エンザルタミドの製造のための、請求項10に定義される式(IIa)の化合物の使用。
【請求項16】
エンザルタミドの製造のための、請求項12に定義される式(Ib)の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-[3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソ-1-[イミダゾリジニル]-2-フルオロ-N-メチル-ベンズアミドなどの非ステロイド性抗アンドロゲン薬およびその中間体の製造に関する。
【発明の背景】
【0002】
4-[3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソ-1-イミダゾリジニル]-2-フルオロ-N-メチル-ベンズアミド(エンザルタミド、Xtandi(商標)という商品名で市販)は、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)および非転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療に使用することに適応される非ステロイド性抗アンドロゲン(NSAA)薬である。それは経口投与によって摂取される。
【化1】
【0003】
エンザルタミドは2006年に初めて報告され、2012年に前立腺がんの治療に導入された。これは、市場に参入した最初の第2世代NSAAであった。
この薬は世界中で広く入手可能である。
【0004】
エンザルタミドは、2012年8月31日に米国食品医薬品局(FDA)によって承認され、その後、2013年6月21日に欧州医薬品庁(EMA)によって承認され、2014年3月24日に日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)によって承認された。
【0005】
エンザルタミドの最初の合成経路は、国際公開第2006/124118号に開示されている。最後のカップリングステップの選択性が乏しいため、この合成アプローチは工業生産の目的には適さないと考えられていた。
【化2】
【0006】
エンザルタミドを製造するために、長年にわたって数多くの合成戦略が提案されてきたが、そのほとんどは収束的なアプローチを必要とする。特に関連性があるのは、国際公開第2011/106570号に記載されているものであり、チオヒダントイン環は、以下においてフラグメントAおよびフラグメントBと呼ばれる2つの重要なフラグメントのカップリングを通じて製造され得る。
【0007】
【化3】
【0008】
この手順は、プロセス全体のコストおよび最終生成物の純度に影響を与える許容可能な工業的収率で生成物を得るために、フラグメントAに関して大過剰のフラグメントBを使用するという重大な欠点を抱えていることが実験的に判明した。
【0009】
WO2015/121768は、フラグメントBとフラグメントA’との間のカップリング反応を含む方法を開示しており、前記フラグメントXは、メチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、フェニル、またはベンジルからなる群から選択される。WO2015/121768の実施例3では、Xがエチル基である、イソチオシアネートとフラグメントA’のカップリングのみが報告されている。上記例における反応は、フラグメントA’に対して2当量のフラグメントBを使用して行われ、総収率は60.7%である。
【0010】
【化4】
【0011】
WO2015/154730は、以下に示すように、カップリングがフラグメントA酸とフラグメントBとの間で行われるプロセスを開示している。
【0012】
【化5】
【0013】
上記反応は、以下に報告する構造を有しかつエンザルタミドの酸化によって生じる「オキソ-エンザルタミド」として示される不純物の形成を最小限に抑えるために、大過剰のフェノール(フラグメントA酸に関して最大6当量)の存在下で行われる。
【0014】
【化6】
【0015】
この方法の重大な欠点は、腐食性、刺激性が高く、人体に有毒なフェノールを大量に使用することに関係しており、そのためこの方法には安全性の問題が伴い、大規模生産には適していない。
【0016】
したがって、本発明の一つの目的は、エンザルタミドおよび関連構造を製造するための、費用効果が高く、安全性が向上し、大規模で実行可能であり、副反応由来の不純物の形成を最小限に抑えるまたは回避する合成アプローチを提供することにある。
【発明の概要】
【0017】
これらの目的は、以下に明らかになる他の目的とともに、発明によって達成され、一つの態様によれば、本発明は、式(I)の構造を有する化合物:
【化7】
(式中、
-RおよびRは、互いに独立して、H、C~C10-アルキルまたはC~C10-アリールであり得、場合により、1つまたは複数のハロゲン化物、シアノ、ヒドロキシまたはアミノ基で置換され;
-1つ以上のR’~R’およびR”~R”は、互いに独立して、R、シアノ、ハロゲン化物、-COOR、-CONR、-OCOR、-OCNRからなる群から選択され、RおよびRは上記定義したとおりである)
を製造する方法であって、
式(II)の化合物と式(III)の化合物とをカップリングさせて、式(I)の化合物を得る工程を含む方法:
【化8】
(式中、R’’’は、ハロゲン化物および-NOから独立して選択される1つ以上の置換基を有するフェニルである)
に関する。
【0018】
上記で定義されたR’~R’およびR”~R”の意味は、式(I)、(II)および(III)、またはそれらの誘導体に明確に適用できる。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、一般式(IIa):
【化9】
(式中、R’’’は、ハロゲン化物および-NOから独立して選択される1つ以上の置換基を有するフェニルである)の化合物に関する。
【0020】
好ましくは、R’’’は4-ニトロフェニルであり本明細書では化合物(IIb)と称され、4-クロロフェニルであり本明細書では化合物(IIe)と称される:
【化10】
【0021】
別の態様によれば、本発明は、式(IV)の酸を式R’’’OH((式中、R’’’は、上記で定義したとおりであり、好ましくはR’’’は4-ニトロフェニルである)のフェノール誘導体でエステル化する工程を含む、上記一般式(IIa)の化合物の製造方法に関する。
【化11】
【0022】
一態様によれば、本発明は、エンザルタミドの製造のための、一般式(IIa)の化合物または式(IIb)の化合物または式(IIc)の化合物の使用に関する。
【発明の具体的説明】
【0023】
本出願で使用されるすべての用語は、別段の指定がない限り、技術分野で知られている通常の意味で理解されるべきである。
【0024】
「約」という用語には、測定を実行する際に通常発生する可能性のある実験誤差の範囲、例えば、±5%または±2%または±1%が含まれる。
【0025】
「質量」という用語は、物理的または化学的変換が実行される基質、試薬、溶媒、および生成物の組み合わせを定義する。
【0026】
特に明記しない限り、本発明の文脈において、組成物中の特定の成分のパーセンテージおよび量は、組成物の総重量に対する上記成分の重量を指すものとする。
【0027】
特に明記しない限り、本発明の文脈では、他の1つ以上の成分/要素を「含む」組成物は、示された成分/要素が存在しなければならないこと、また、特に列挙したものに加えて、組成物中に他の成分が存在してもよいが、必ずしも存在する必要はないことを意味する。換言すれば、組成物が1つ以上の成分を「含む」という表示は、組成物が列挙された成分からなる、または本質的にそれらからなるということを排除するものではない。同様に、方法が1つまたは複数の工程を「含む」という表示は、方法が、明示的に記載された1つまたは複数の工程に加えて、合成工程または精製工程などの工程を含むことを排除するものではない。
【0028】
本明細書で使用される場合、化合物または組成物Aが他の物質を「完全に含まない」(または「からなる」)という表示、または用語「nd」は、使用される機器または方法の検出範囲内において、特に示されている物質以外、Aで検出しうる物質はないことを意味する。
【0029】
特に明記しない限り、本発明の文脈において、特定のパラメータ、例えば混合物中の成分の重量について示される値の範囲には、範囲の上限および下限が含まれる。例えば、混合物中の成分の重量または体積の含有量が「X~V」で示されている場合、Aの含有量はX、Y、または中間値のいずれかになる。
【0030】
一態様によれば、本発明は、式(I)の構造を有する化合物:
【化12】
(式中、
-RおよびRは、互いに独立して、H、C~C10-アルキルまたはアリールであり得、場合により、1つまたは複数のハロゲン化物、シアノ、ヒドロキシまたはアミノ基で置換され;
-1つ以上のR’~R’およびR”~R”は、互いに独立して、R、シアノ、ハロゲン化物、-COOR、-CONR、-OCOR、-OCNRからなる群から選択され、RおよびRは上記定義したとおりである)
を製造する方法であって、
式(II)の化合物と式(III)の化合物とをカップリングさせて、式(I)の化合物を得る工程を含む:
【化13】
(式中、R’’’は、ハロゲン化物および-NOから独立して選択される1つ以上の置換基を有するフェニルである)。
に関する。
【0031】
好ましくは、本発明による方法において、R”~R”の少なくとも1つはハロゲン化物または-CONHRであり、ハロゲン化物はフッ素基であり、Rは上記で定義した通りである。
【0032】
好ましくは、本発明による方法において、R’~R’の少なくとも1つはトリフルオロメチルまたはシアノ基である。
【0033】
上記方法は、4-[3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソ-1-イミダゾリジニル]-2-フルオロ-N-メチル-ベンズアミド(エンザルタミド)およびそのいくつかの類似体の製造に使用するのに適している。
【0034】
当技術分野で知られているアプローチ、特に国際公開第2011/106570号および国際公開第2015/121768号のアプローチを分析すると、フラグメントAまたはA’とBとのカップリングには、後者(すなわち、イソチオシアネート部分を有するもの)の少なくとも2当量を使用して、工業規模でプロセスを開発するために必要な良好かつ許容可能な収率で最終生成物を得ることができる。理論に束縛されるわけではないが、これはおそらく、反応の過程で生成されるメタノールがフラグメントB自体と反応する傾向によるものと考えられる。これにより、反応生成物から除去しなければならない不純物である対応するチオカルバミン酸メチルが形成され、最終的には反応混合物からフラグメントBが除去される。さらに、溶液中に多量のフラグメントBが存在すると、上記フラグメントの副反応に関連する不純物の増加につながることが判明した。以下に報告するチオ尿素、尿素および三量体グアニジンと呼ばれる不純物は、フラグメントBの副反応によって生成される。特に、チオ尿素はフラグメントBと、イソチオシアネート部分の加水分解から得られる対応するアニリンとのカップリングから生成され、尿素はチオ尿素不純物の酸化によって生成され、三量体グアニジンは、フラグメントBの自己縮合から得られる副生成物である。
【0035】
【化14】
【0036】
さらに、フラグメントBはプロセス全体のコストに最も大きな影響を与える試薬であり、チオホスゲン(製造および操作に特別な設備を必要とする非常に毒性の高い化合物)またはその誘導体の製造に使用する場合にも、全体のコストがかかる。そして、国際公開第2011/106570号および国際公開第2015/121768号の手順の実現可能性は、理想からはほど遠いことが判明している。
【0037】
国際公開第2015/154730号のアプローチに従って、フラグメントBとフラグメントA酸とのカップリングを含む戦略が最初に研究された。
このアプローチは、フラグメントA酸に関連する少なくとも2つの不純物のかなりの程度の形成につながり、結晶化によって除去するのが非常に困難であるという点で、小規模およびマルチグラムスケールの両方で選択性がほとんどないことが判明した。
【0038】
上記不純物は、以下の図に示す構造を有する「開環不純物」(エンザルタミドに関して15~20%のHPLC面積)、および「オキソ-エンザイウタミド」(エンザルタミドに関して2~3%のHPLC面積)を有する)と呼ばれた。
【0039】
【化15】
【0040】
したがって、それらの含有量を許容限界以下に低減するための多段階精製プロセスが開発され、その結果、フラグメントA-酸に関して60%未満の全体収率(エンザルタミドの製造および精製を参照)が得られた。
【0041】
オキソ-エンザルタミドは結晶化によってほとんど除去できないことが判明した。さらに、任意の反応パラメータを変更してその形成を阻止しようとする試みは失敗した。その除去は、メタノール/水混合物からの結晶化によって首尾よく達成することができた(Cryst.Growth.Des 2018、18(7)、3774-3780)。ただし、この不純物の量である約2%は1回の結晶化手順で効果的に除去できるが、開始量が多い場合には同じ結晶化条件はそれほど効果的ではないため、その結果、複数回の結晶化が必要になり、収量が低下しプロセス全体の効率が低下する場合があることが判明した。
【0042】
さらに、フラグメントA-酸を使用すると、最も高価な試薬フラグメントBの消費量が、WO2011/106570およびWO2015/121768で必要な量と比較して大幅に減少し、大量のフェノール(フラグメントA-酸に関して6当量まで)を添加することによって不純物オキソ-エンザルタミドの存在量は低下することが判明した。
【0043】
次に、カップリング反応においてフラグメントAを化合物(II)として定義される芳香族エステルで置き換える可能性を検討し、イソチオシアネート部分を有するフラグメントBの当量を減らすことが可能かどうか、およびWO 2015/154730で教示されているように多量ではなく化学量論的な量で環化反応後に生成する遊離フェノールの存在がオキソエンザルタミド不純物の生成を防止できるかどうかを理解した。こうして、電子吸引性基または電子供与性基で任意に置換された、OH基を有する一連のフェノールおよび芳香族化合物を用いていくつかの芳香族エステルを製造し、フラグメントBとのカップリング反応で試験した。
【0044】
有利には、本発明による方法において、R’’’は、ハロゲン化物および-NOから独立して選択される1つ以上の置換基を有するフェニルである。
【0045】
好ましくは、本発明による方法において、化合物(II)は、以下の一般式(IIa):
【化16】
(式中、R’’’は、ハロゲン化物および-NOから独立して選択される1つ以上の置換基を有するフェニルである)
を有する。
【0046】
フラグメントAの4-ニトロフェノールおよび4-クロロフェノールエステルは、上記エステルが良好な収率で結晶性の容易に精製可能な形態で得られ、所望の環化生成物(化合物I)を高い純度および変換率で得ることに繋がるという事実を考慮すると、特に好ましい。
【0047】
好ましくは、本発明は、対応するニトロフェノールが広く市販されており、工業規模でプロセスを実行するために取り扱うのにほとんど毒性がないという事実を考慮すると、化合物(II)が以下の式(IIb):
【化17】
を有する、上記方法に関する。
【0048】
より好ましくは、本発明は、化合物(III)が以下の式(IIIa):
【化18】
を有する、上記方法に関する。
【0049】
有利には、本発明は、カップリング工程において、式(IIb)の化合物が式(IIIa)の化合物とカップリングされ、4-[3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソ-1-イミダゾリジニル]-2-フルオロ-N-メチル-ベンズアミドが得られ、場合により結晶化により精製される上記方法に関する。
【0050】
本発明による合成の利点は、国際公開第2011/106570号の教示に従って実施された一連の実験により明らかに示された。上記教示は、同様の出発物質が両方のプロセスに関与していても当該プロセスはエンザルタミドをより高い収率で得ることにつながるため、国際公開第2015/121768号に記載された教示の代わりに選択された。
【0051】
具体的には、2セットの実験、1つは本発明の合成に関するもの、もう1つは国際公開第2011/106570号のアプローチに従うもの、すなわちメチルエステルフラグメントAを使用するカップリングを、国際公開第2011/106570号の実施例5に開示される一般的なカップリング手順に従って実施した。そして、フラグメントAを最終生成物に完全に変換するのに必要な化合物(IIIa)の最小量を見出すことを目的として、フラグメントAに対するフラグメントB(本明細書では化合物(IIIa)と称する)の量を変化させた。反応混合物中での滴定によって計算され、両方の合成アプローチで得られた純度プロファイルと収率を評価した。
【0052】
WO2011/106570の手順(フラグメントAをメチルエステルとして使用するカップリング)に関して、フラグメントAの完全な変換は、2.5当量の化合物(IIIa)を使用した場合にのみ達成され、収率は約95%である。
【0053】
-2当量の化合物(IIIa)(すなわち、WO2011/106570の実施例5に報告されている量)を使用すると、実験部分の比較例6に報告されているように、滴定収率は約91%である。
-化合物(IIIa)の量が少ないと、反応はフラグメントAの完全な変換まで進行しない
-チオカルバミン酸メチル不純物は、反応の開始時から形成される。その形成は、化合物(IIIa)の大量の消費を説明し得る。
【0054】
フラグメントAを最終生成物に完全に変換することを可能にする大過剰の化合物(IIIa)の添加は、化合物(IIIa)の分解に関連する大量の不純物の形成の原因となる。
本発明によるアプローチは、国際公開第2011/106570号の実施例5の一般手順に従い実施され、非限定的な例として以下に示す4-ニトロフェノールエステル化合物(IIb)を使用した。
【化19】
【0055】
次のことが観察された。
-化合物(IIb)の完全な変換は、化合物(IIb)に対して1~約1.4当量、好ましくは1.2~1.3当量の化合物(IIIa)を使用する場合に達成され、対応する収率は90~約95%となる。
実験部分の比較例7では、1.2および1.4当量の化合物(IIIa)を使用して得られた不純物プロファイルおよび滴定収率を報告する。
-化合物(IIIa)の量がわずかに多いと、反応はより早く終点に達するが、化合物(IIIa)に関連する不純物の増加が示される。
【0056】
したがって、本発明による合成経路は、WO2011/106570に開示された方法に匹敵する収率で、約半分の量の化合物(IIIa)を使用してエンザルタミドを生成することを可能にし、その結果比較例6および7に記載される高速液体クロマトグラフィー(HPLC)データの比較によって実証されるように、副生成物の量を低減し、プロセスの費用対効果を改善することができる。
【0057】
さらに、両方の実験で得られた最終エンザルタミドサンプル中のオキソ-エンザルタミドの量を分析することにより、化合物IIbを反応物として使用すると、上記不純物のレベルが低下することは明らかである。
【0058】
好ましくは、本発明の方法は、場合により1つ以上の縮合剤の存在下で、対応するカルボン酸を式R’’’OH(式中、R’’’は、ハロゲン化物および-NOから独立して選択される1つ以上の置換基を有するフェニルである)のフェノール誘導体でエステル化することにより式(II)の化合物を製造する工程をさらに含む。
【0059】
フェノールエステルを製造する既知の方法において、カップリング剤の使用を伴う方法は、最適な選択性を確保し、反応混合物の純度を向上することが判っている。一般的なカップリング剤(カルボニルジイミダゾールなど)の中で、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDAC)を用いると、最良の結果が得られた。後処理に関連するいくつかの問題(DCCは不溶性で除去しにくい尿素を形成する)のため、対応する尿素が水に対して高い溶解度を示す(したがって、水の後処理による容易な除去が可能になる)ので、使用するカップリング剤としてEDACが好ましい。
【0060】
EDACの存在下での式(IV)の化合物と式R’’’OHのフェノール誘導体とのカップリングは、触媒の非存在下でも進行するが、触媒量の強有機塩基、例えば、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)は反応速度の大幅な増加をもたらし、同時に対応するN-アシル尿素(この種の反応の既知の副生成物)の生成を制限し、収率を高める。
【化20】
【0061】
別の態様によれば、本発明は、一般式(IIa):
(式中、R’’’は、ハロゲン化物および-NOから独立して選択される1つ1つ以上の置換基を有するフェニルである。)
の化合物に関する。
【0062】
【化21】
【0063】
より好ましくは、R’’’は、4-ニトロフェニル、4-クロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,4-ジクロロフェニルまたは2,4-ジフルオロフェニルである。より一層好ましくは、R’’’は4-ニトロフェニルまたは4-クロロフェニルである。有利には、一般式(IIa)の化合物において、R’’’基は4-ニトロフェニルである。
【0064】
さらに別の態様によれば、本発明は、式(IV)の酸を、式R’’’OH(式中、R’は上記で定義した通りであり、好ましくは4-ニトロフェニルである)のフェノール誘導体でエステル化する工程を含む、上記の一般式(IIa)の化合物の製造方法に関する。
【0065】
【化22】
【0066】
さらなる態様において、本発明は、エンザルタミドの製造のための、一般式(IIa)の化合物または式(IIb)の化合物または式(IIc)の化合物の使用に関する。
【実施例
【0067】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明するために提供されるものであり、その範囲を限定することを意図するものではない。
【0068】
例1:4-ニトロフェニル2-((3-フルオロ-4-(メチルカルバモイル)フェニル)アミノ)-2-プロパン酸メチル、式(IIb)の化合物の製造
【0069】
メカニカルスターラー、温度計、還流冷却器を備え、窒素雰囲気下に保たれた2リットルのジャケット付きガラス反応器に、EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、90g)、DMAP(N,N-ジメチルアミノピリジン、3.4g)およびアセトン(300ml)を充填する。懸濁液を撹拌しながら約-10℃まで冷却する。
【0070】
メカニカルスターラー、温度計、還流冷却器を備え、窒素雰囲気下に保たれた別の500mlのジャケット付きガラス反応器に、2-((3-フルオロ-4-(メチルカルバモイル)フェニル)アミノ)-2-メチルプロパン酸(100g)、4-ニトロフェノール(60g)およびアセトン(200ml)を充填する。懸濁液を撹拌しながら約0℃まで冷却し、EDAC、DMAPおよびアセトンの懸濁液を含む反応器に約15分間かけてゆっくりと少しずつ移す。
【0071】
反応が完了するまで、反応混合物を-10/-5℃で撹拌し続ける。
反応が終了したら(HPLC)、0~5℃で撹拌下にて維持した混合物に、内部温度を15℃未満に維持しながら、水(900ml)を30分以上かけて滴下する。約50%の水を加えた後、白色固体が沈殿し始める。
【0072】
得られた懸濁液を0~5℃で少なくとも2時間撹拌し、濾過し、反応器およびケーキを水で洗浄する。
【0073】
湿潤粗生成物(IIb)(約210g)は、そのまま次の精製工程に使用される。
【0074】
乾燥による損失に基づくと、対応する乾燥生成物は約135g(理論収量の91%)に相当する。
【0075】
メカニカルスターラー、温度計、還流冷却器を備え、窒素雰囲気下に保たれた2リットルのジャケット付きガラス反応器に、210gの湿った粗製(IIb)(前工程から得られる全量)、アセトン(600ml)および水を充填する。(100ml)。
【0076】
ほとんどすべての固体が溶解し、わずかに濁りが存在するまで、懸濁液を撹拌しながら50~55℃に加熱する。溶液をセライトと木炭のパッドを通して濾過し、前の濾過液と混合する。
【0077】
(IIb)の清浄溶液を同じ反応器に入れ、内部温度を50~55℃に保ちながら、水(800ml)を30分以上かけて滴下する。
【0078】
添加の約50%後、白色固体の沈殿が起こる。
懸濁液を約2時間かけて0~5℃に冷却し、この条件で少なくとも2時間撹拌下におき、濾過する。反応器およびケーキを水で洗浄する。
【0079】
湿った生成物(約150g)を、残留水(KF分析による)が0.2%未満になるまで、40~45℃にて真空下で乾燥させる。125gの(IIb、収率85%)が得られる。
【0080】
例2:4-[3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソ-1-イミダゾリジニル]-2-フルオロ-N-メチル-ベンズアミド(エンザルタミド)の製造
機械式撹拌機、温度計、冷却器を備え、窒素雰囲気下に保たれた2リットルのジャケット付きガラス反応器に、式(IIIa)の化合物(4-イソチオシアナト-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、106g、WO2011/106570に開示されている方法で入手可能)、式(IIb)の化合物(125g)、酢酸イソプロピル(250ml)およびDMSO(125ml)を充填する。
【0081】
懸濁液を撹拌しながら73~75℃に加熱し、分析のためにサンプリングする前に、少なくとも24時間この条件で維持する。溶液が得られる。
【0082】
(例えば、HPLC分析により)反応が完了したら、反応溶液を約45~50℃に冷却し、メタノール(25ml)を加え、混合物をこの条件で1時間維持する。内部温度を40~45℃に保ちながら、酢酸イソプロピル(520ml)および水(250ml)を添加する。
【0083】
混合物を40~45℃で少なくとも15分間撹拌し続け、撹拌を止め、層分離させる。水層を廃棄し、有機層を40~45℃で水(250ml)にて洗浄する。
【0084】
洗浄した有機溶液を、濃厚な懸濁液が得られるまで真空下で濃縮する。
メタノール(250ml)を残留物に添加し、混合物を濃厚な残留物が得られるまで同じ条件で蒸留する。
【0085】
メタノール(850ml)を残留物に添加し、混合物を溶液が得られるまで撹拌しながら加熱還流し、内部温度を55℃以上に維持しながら水(170ml)をゆっくり添加する。
【0086】
混合物を40~45℃に冷却し、十分な結晶化が起こるまで(約30分間)この条件で撹拌し続け、その後0~5℃で撹拌し、濾過する。
【0087】
このようにして得られた固体を、イソプロパノールおよび水からさらに結晶化し、乾燥エンザルタミド115gを結晶形R1の白色結晶として得ることができる(式(IIb)の化合物からのモル収率75%)。HPLC分析による純度99.8。
【0088】
例3:2-((3-フルオロ-4-(メチルカルバモイル)フェニル)アミノ)-2-メチルプロパン酸4-クロロフェニル(4-chlorophenyl 2-((3-fluoro-4-(methylcarbamoyl)phenyl)amino)-2-methyl propanoate)、式(IIc)の化合物の製造
【0089】
メカニカルスターラー、温度計、還流冷却器を備え、窒素雰囲気下に保たれた5リットルのジャケット付きガラス反応器に、EDAC(211g)、DMAP(12.5g)およびアセトン(1200ml)を充填する。
懸濁液を撹拌しながら約-5℃まで冷却する。
【0090】
メカニカルスターラー、温度計、還流冷却器を備え、窒素雰囲気下に保たれた別の1Lのジャケット付きガラス反応器に、2-((3-フルオロ-4-(メチルカルバモイル)フェニル)アミノ)-2-メチルプロパン酸(200g)、4-クロロフェノール(111.2g)およびアセトン(750ml)を充填する。懸濁液を撹拌しながら約0℃まで冷却し、EDAC、DMAPおよびアセトンの懸濁液を含む反応器に約15分間かけてゆっくりと少しずつ投入する。
【0091】
反応が完了するまで、反応混合物を-10/-5℃で撹拌し続ける。
【0092】
反応が終了したら(HPLC)、0~5℃で撹拌しながら維持した混合物に、内部温度を15℃未満に維持しながら、水(2000ml)を30分以上かけて滴下する。約50%の水を加えた後、白色固体が沈殿し始める。
【0093】
得られた懸濁液を0~5℃で少なくとも2時間撹拌し、濾過し、反応器およびケーキを水で洗浄する。
【0094】
湿った粗生成物(約400g)は、そのまま次の精製工程に使用される。
【0095】
メカニカルスターラー、温度計、還流冷却器を備え、窒素雰囲気下に保たれた5リットルのジャケット付きガラス反応器に、400gの湿潤粗製物(前工程のもの)、アセトン(600ml)および水(100ml)を充填する。
【0096】
ほとんどすべての固体が溶解し、わずかに濁りが存在するまで、懸濁液を撹拌しながら50~55℃に加熱する。溶液をセライトと木炭のパッドを通して濾過し、前の濾過液と混合する。
【0097】
こうして得られた清浄溶液を同じ反応器に入れ、内部温度を50~55℃に保ちながら、水(1200ml)を30分以上かけて滴下する。
【0098】
添加の約50%後、白色固体の沈殿が起こる。懸濁液を約2時間かけて0~5℃に冷却し、この条件で少なくとも2時間撹拌し続け、濾過する。反応器およびケーキを水で洗浄する。
【0099】
湿った生成物(約280g)を真空下、40~45℃で乾燥させる。237gのタイル(tile)生成物が得られる(収率83%)。
【0100】
例4:4-[3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソ-1-イミダゾリジニル]-2-フルオロ-N-メチル-ベンズアミド(エンザルタミド)の製造
機械式撹拌機、温度計、冷却器を備え、窒素雰囲気下に保たれた5リットルのジャケット付きガラス反応器に、式(IIIa)の化合物(4-イソチオシアナト-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、163g、WO2011/106570に開示されて方法で入手可能)、2-((3-フルオロ-4-(メチルカルバモイル)フェニル)アミノ)-2-メチルプロパン酸4-クロロフェニル(200g)、酢酸イソプロピル(400ml)およびDMSO(200ml)を充填する。
【0101】
懸濁液を撹拌しながら60~70℃に加熱し、分析のためにサンプリングする前に少なくとも20時間この条件に維持する。溶液が得られる。
【0102】
(例えば、HPLC分析により)反応が完了したら、反応溶液を約45~50℃に冷却し、メタノール(30ml)を加え、混合物をこの条件で1時間維持する。内部温度を40~45℃に保ちながら、酢酸イソプロピル(1000ml)および5%炭酸ナトリウム水溶液(600ml)を添加する。
【0103】
混合物を20~25℃で少なくとも15分間撹拌し、撹拌を止め、層分離させる。水層を廃棄し、洗浄した有機溶液を、濃厚な懸濁液が得られるまで真空下で濃縮する。メタノール(400ml)を残留物に添加し、混合物を濃厚な残留物が得られるまで同じ条件で蒸留する。
【0104】
メタノール(1400ml)を残渣に加え、混合物を溶液が得られるまで撹拌しながら加熱還流し、結晶性エンザルタミド(結晶形R2)の種を38~40℃で加え、十分な結晶化が起こるまで(約30分)この条件で撹拌し続け、その後0~5℃で撹拌し、濾過した。
【0105】
このようにして得られた固体を、イソプロパノールおよび水からさらに結晶化し、乾燥エンザルタミド201gを結晶形R1の白色結晶として得ることができる(2-((3-フルオロ-4-(メチルカルバモイル)フェニル)アミノ)-2-メチルプロパン酸4-クロロフェニルからのモル収率79%)。HPLC分析による純度99.9%
【0106】
例5
以下の一般式(IIa)の中間体を、例1および3で報告した手順に従って、対応する酸(化合物IV)から出発して製造し、エンザルタミドの製造に使用した。エンザルタミドの製造の全収率(Overall yield;2-((3-フルオロ-4-(メチルカルバモイル)フェニル)アミノ)-2-メチルプロパン酸から出発)を以下の表に示す。
【0107】
【化23】
【0108】
【表1-1】
【0109】
例6:(比較例)WO2011/10657の実施例5に報告されている手順に従った4-[3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソ-1-イミダゾリジニル]-2-フルオロ-N-メチル-ベンズアミド(エンザルタミド)の製造
国際公開第2011/106570号に開示されて方法で得られるフラグメントAメチルエステル2g(7.45ミリモル)を用い、機械撹拌機、温度計、冷却器を備え、窒素雰囲気下に保たれたジャケット付きガラス反応器内で、反応を行った。
【0110】
投入された化合物(IIIa)(フラグメントB)の量は、フラグメントAに対して2.0当量であった。試薬および溶媒(酢酸イソプロピル(IPAc)およびジメチルスルホキシド(DMSO)をそれぞれフラグメントAに対して2体積および1体積の量で投入した後、混合物を撹拌しながら83~84℃で30時間加熱した。反応速度は、10、24、および30時間で混合物をサンプリングし、各サンプルをHPLC法で分析して、表1に報告されているように、エンザルタミドの外部標準で反応混合物を滴定して計算される溶液中の収率を決定することにより追跡した。
【0111】
また、すべてのサンプルを分析してHPLCを用いて不純物プロファイルを決定し、特にイソチオシアネートの分解生成物の総量、つまりチオカルバミン酸メチル、チオ尿素、尿素および三量体グアニジンに関連するピークの面積パーセントの合計とすべての実験中の傾向を算出した。
【0112】
不純物の測定は、各サンプルのHPLC分析の面積パーセントとして表1に報告されている。
滴定収率は、WO2011/10657で報告されている収率と同等である。
【0113】
【表1-2】
【0114】
例7:(比較例)化合物(IIa)から出発してWO2011/10657の実施例5に報告されている手順に従う4-[3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソ-1-イミダゾリジニル]-2-フルオロ-N-メチル-ベンズアミド(エンザルタミド)の製造
反応は、機械式撹拌機、温度計、冷却器を備え、窒素雰囲気下に保ったジャケット付きガラス反応器内で行い、各試験で2gの化合物IIbを使用して実施した。
【0115】
各試験で使用した化合物(IIIa)(フラグメントB)の量は、フラグメントAに対して1.2当量および1.4当量であった。
試薬および溶媒(酢酸イソプロピル(IPAc)およびジメチルスルホキシド(DMSO)をそれぞれフラグメントA”に対して1容積および2容積で投入した後)、混合物を撹拌しながら83~84℃で30時間加熱した。反応速度は、10時間、24時間、および30時間の時点で混合物をサンプリングし、各サンプルをHPLC法で分析することによって追跡した。
以下の表2では、採取した各サンプルについて計算した溶液中の収率、およびHPLCクロマトグラムから測定した不純物を面積パーセントとしてまとめている。
【0116】
【表2】
【0117】
比較例6で得られたものと同等の滴定収率が、(2.0当量の代わりに)少量の化合物(IIIa):1.2当量を使用して達成された。
【0118】
さらに、表1に報告された値と比較すると、少量のオキソ-エンザルタミドおよび化合物(IIIa)の分解に関連する不純物が観察された。
【0119】
工程内管理および中間体の純度を測定するためのHPLC分析方法
【0120】
装置:G1314B VWD検出器を備えたAgilent 1200LCクロマトグラフ
ソフトウェア:Chemstation Rev.C.01.07
カラム:ACE Excel 5 supeRC18250*4.6mm、5pmまたは同等品
ガードカラム:ACE 5 C18
カラム温度:35℃
移動相 A:0.5mlのトリフルオロ酢酸(TFA)を水で1000mlに移す(0.05%TFA)。
移動相B:アセトニトリル
溶出モード:グラジエント
【表3】
【0121】
サンプル トレイ温度:25°C
サンプル濃度_0.4mg/mL
注入量:5μL
UV検出:220nm
分析時間:15分
合計実行時間:50分
これらの条件下では、溶液調製のダロルタミドの保持時間(RT)は通常30.5分である。
【0122】
RRtの値は、ENZA-00を基準として次の式を適用して計算される。
【数1】
【0123】
ここで、Rtは特定の成分の保持時間、RtRefは基準(reference)の保持時間である。
【0124】
【表4-1】
【国際調査報告】