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特表2024-523424逆位キメラsiRNA分子およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】逆位キメラsiRNA分子およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240621BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240621BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240621BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240621BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20240621BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20240621BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/113 110Z
C12Q1/02
C12Q1/68 100Z
A61K31/713
A61P35/00
C07H21/04 Z CSP
A61K47/68
A61K47/56
A61K9/14
A61P43/00 121
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578074
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 US2022034235
(87)【国際公開番号】W WO2022271624
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/212,976
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501345323
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ピーコット チャド
(72)【発明者】
【氏名】チャレディー ヨギザ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C057
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR35
4B063QS38
4B063QS40
4B063QX10
4C057CC02
4C057MM01
4C057MM09
4C076AA19
4C076AA31
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、逆位キメラsiRNA分子、および1つまたは複数の標的遺伝子の発現の阻害におけるその使用に関する。本発明は、RNA干渉、化学修飾したオリゴヌクレオチド、および/またはキメラsiRNAの多価の組合せを使用した、c-Mycの発現の阻害、またはc-MycおよびKRASの二重阻害にさらに関する。
【選択図】図1A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆配向の第1および第2のsiRNAを含む逆位キメラsiRNA分子であって、
a)リンカーによって連結された前記第1のsiRNAの第1の鎖および前記第2のsiRNAの第1の鎖を含む、第1のRNA分子と、
b)前記第1のsiRNAの前記第1の鎖に実質的に相補的である、第2のRNA分子と、
c)前記第2のsiRNAの前記第1の鎖に実質的に相補的である、第3のRNA分子と
を含む、逆位キメラsiRNA分子。
【請求項2】
前記第1のRNA分子が、前記第1のsiRNAのセンス鎖および前記第2のsiRNAのアンチセンス鎖を含む、請求項1に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項3】
約30~約60個のヌクレオチドの長さ、たとえば約35~約55個のヌクレオチドの長さ、たとえば約40~約50個のヌクレオチドの長さである、請求項1または2に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項4】
それぞれのsiRNAが、独立して、約15~約30個のヌクレオチド、たとえば約17~約25個のヌクレオチド、たとえば約19~約23個のヌクレオチドの長さを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項5】
前記リンカーが代謝的に脆弱なリンカーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項6】
前記リンカーが、約2~約10個のヌクレオチドの長さ、たとえば約3~約8個のヌクレオチドの長さ、たとえば約4~約6個のヌクレオチドの長さである、請求項1から5のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項7】
前記リンカーが、リン酸ジエステルチミン、リン酸ジエステルアデニン、またはリン酸ジエステルTCAを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項8】
少なくとも1つの化学修飾を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項9】
完全に化学修飾されている、請求項8に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項10】
前記分子中のそれぞれのヌクレオチドが2’-O-メチル基または2’-フルオロ基で修飾されている、請求項9に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項11】
少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項12】
前記第1および第2のsiRNAが同じ標的遺伝子と結合する、請求項1から11のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項13】
前記第1および第2のsiRNAが異なる標的遺伝子と結合する、請求項1から11のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項14】
前記1および第2のsiRNAのうちの一方がc-Mycと結合する、請求項13に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項15】
前記1および第2のsiRNAのうちの一方がc-Mycと結合し、他方がKRASと結合する、請求項13に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項16】
それぞれリンカーによって隔てられた1つまたは複数の追加のsiRNAをさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項17】
それぞれの追加のsiRNAが、独立して、前記第1および第2のsiRNAと同じ標的遺伝子または異なる標的遺伝子と結合する、請求項16に記載の逆位キメラsiRNA分子。
【請求項18】
以下の配列の組のうちの1つを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子:
配列番号63~65
配列番号66~68
配列番号69~71
配列番号71~74
配列番号75~77
配列番号78~80
配列番号81~83
配列番号84~86
配列番号87~89
配列番号90~92
配列番号93~95
配列番号96~98
配列番号99~101
配列番号102~104
またはそれと少なくとも90%同一である配列。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子を含む組成物。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子のうちの2つ以上を任意の組合せで含み、前記2つ以上の逆位キメラsiRNA分子がそれぞれ異なる配列を含む、組成物。
【請求項21】
ナノ粒子をさらに含む、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
前記ナノ粒子がナノリポソームである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1から18のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子および/または請求項19から22のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項24】
前記逆位キメラsiRNA分子がリガンド、抗体、またはアプタマーとコンジュゲートしている、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
細胞中における標的遺伝子の発現を阻害する方法であって、前記細胞を、請求項1から18のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子、請求項19から22のいずれか一項に記載の組成物、および/または請求項23もしくは24に記載の医薬組成物と接触させ、それによって、前記細胞中における前記標的遺伝子の発現を阻害することを含む方法。
【請求項26】
前記対象に、請求項1から18のいずれか一項に記載の逆位キメラsiRNA分子、請求項19から22のいずれか一項に記載の組成物、および/または請求項23もしくは24に記載の医薬組成物を送達し、それによって、前記対象において前記障害を処置することを含む、それを必要としている対象において、標的遺伝子に関連する障害を処置する方法。
【請求項27】
前記対象に、請求項14または15に記載の逆位キメラsiRNA分子を送達し、それによって、前記対象において癌を処置することを含む、それを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子を過剰発現する癌を処置する方法。
【請求項28】
前記送達が全身性送達である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記siRNA分子が少なくとも1つの化学修飾を含み、前記siRNA分子が、以下の配列対:
配列番号1のセンス鎖および配列番号19のアンチセンス鎖、
配列番号2のセンス鎖および配列番号20のアンチセンス鎖、
配列番号4のセンス鎖および配列番号22のアンチセンス鎖、
配列番号6のセンス鎖および配列番号24のアンチセンス鎖、
配列番号9のセンス鎖および配列番号27のアンチセンス鎖、
またはそれと少なくとも90%同一である配列のうちの1つを含む、ヒトc-Myc mRNAを標的とするsiRNA分子。
【請求項30】
完全に化学修飾されている、請求項29に記載のsiRNA分子。
【請求項31】
前記siRNA分子中のそれぞれのヌクレオチドが2’-O-メチル基または2’-フルオロ基で修飾されている、請求項30に記載のsiRNA分子。
【請求項32】
前記siRNA分子が少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含む、請求項29から31のいずれか一項に記載のsiRNA分子。
【請求項33】
前記siRNA分子が、以下の配列対:
配列番号37のセンス鎖および配列番号38のアンチセンス鎖、
配列番号39のセンス鎖および配列番号40のアンチセンス鎖、
配列番号41のセンス鎖および配列番号42のアンチセンス鎖、
配列番号43のセンス鎖および配列番号44のアンチセンス鎖、または
配列番号45のセンス鎖および配列番号46のアンチセンス鎖
のうちの1つを含む、請求項32に記載のsiRNA分子。
【請求項34】
請求項29から33のいずれか一項に記載のsiRNAを含む組成物。
【請求項35】
請求項29から33のいずれか一項に記載のsiRNAのうちの2つ以上を任意の組合せで含み、前記2つ以上のsiRNAがそれぞれ異なる配列を含む、組成物。
【請求項36】
ナノ粒子をさらに含む、請求項34または35に記載の組成物。
【請求項37】
前記ナノ粒子がナノリポソームである、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
請求項29から33のいずれか一項に記載のsiRNAおよび/または請求項6から9のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項39】
前記siRNAがリガンド、抗体、またはアプタマーとコンジュゲートしている、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記細胞を、請求項29から33のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項34から37のいずれか一項に記載の組成物、および/または請求項38もしくは39に記載の医薬組成物と接触させ、それによって、前記細胞中における前記ヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害することを含む、細胞中においてヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害する方法。
【請求項41】
前記対象に、請求項29から33のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項34から37のいずれか一項に記載の組成物、および/または請求項38もしくは39に記載の医薬組成物を送達し、それによって、前記対象において癌を処置することを含む、それを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子を過剰発現する癌を処置する方法。
【請求項42】
前記送達が全身性送達である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
野生型KRASまたはG12C、G12D、G12V、もしくはG13Dから選択される突然変異をコードしている天然に存在するヒトKRASを標的とするKRAS siRNA分子と、ヒトc-Myc mRNAを標的とするc-Myc siRNA分子とを含むsiRNA分子であって、前記siRNA分子が少なくとも1つの化学修飾を含み、前記c-Myc siRNA分子が、以下の配列対:
配列番号1のセンス鎖および配列番号19のアンチセンス鎖、
配列番号2のセンス鎖および配列番号20のアンチセンス鎖、
配列番号4のセンス鎖および配列番号22のアンチセンス鎖、
配列番号6のセンス鎖および配列番号24のアンチセンス鎖、
配列番号9のセンス鎖および配列番号27のアンチセンス鎖、
またはそれと少なくとも90%同一である配列のうちの1つを含む、siRNA分子。
【請求項44】
完全に化学修飾されている、請求項43に記載のsiRNA分子。
【請求項45】
前記siRNA分子中のそれぞれのヌクレオチドが2’-O-メチル基または2’-フルオロ基で修飾されている、請求項44に記載のsiRNA分子。
【請求項46】
前記siRNA分子が少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含む、請求項43から45のいずれか一項に記載のsiRNA分子。
【請求項47】
前記c-Myc siRNA分子が、以下の配列対:
配列番号37のセンス鎖および配列番号38のアンチセンス鎖、
配列番号39のセンス鎖および配列番号40のアンチセンス鎖、
配列番号41のセンス鎖および配列番号42のアンチセンス鎖、
配列番号43のセンス鎖および配列番号44のアンチセンス鎖、または
配列番号45のセンス鎖および配列番号46のアンチセンス鎖
のうちの1つを含む、請求項46に記載のc-Myc siRNA分子。
【請求項48】
前記KRAS siRNA分子が、以下の配列対:
配列番号47のセンス鎖および配列番号48のアンチセンス鎖、または
配列番号49のセンス鎖および配列番号50のアンチセンス鎖
のうちの1つである、請求項46または47に記載のKRAS siRNA分子。
【請求項49】
請求項43から48のいずれか一項に記載のsiRNAを含む組成物。
【請求項50】
野生型KRASまたはG12C、G12D、G12V、もしくはG13Dから選択される突然変異をコードしている天然に存在するヒトKRASを標的とする少なくとも1つのKRAS siRNA分子と、請求項43から48のいずれか一項に記載のヒトc-Mycを標的とする2つ以上のc-Myc siRNA分子とを、任意の組合せで含み、前記2つ以上のc-Myc siRNAがそれぞれ異なる配列を含む、組成物。
【請求項51】
ナノ粒子をさらに含む、請求項49または50に記載の組成物。
【請求項52】
前記ナノ粒子がナノリポソームである、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
請求項43から48のいずれか一項に記載のsiRNAおよび/または請求項49から52のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項54】
前記siRNAがリガンド、抗体、またはアプタマーとコンジュゲートしている、請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項55】
細胞中においてヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害する方法であって、前記細胞を、請求項43から48のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項49から52のいずれか一項に記載の組成物、および/または請求項53もしくは54に記載の医薬組成物と接触させ、それによって、前記細胞中における前記ヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害することを含む方法。
【請求項56】
それを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子を過剰発現する癌を処置する方法であって、前記対象に、請求項43から48のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項49から52のいずれか一項に記載の組成物、および/または請求項53もしくは54に記載の医薬組成物を送達し、それによって、前記対象において癌を処置することを含む方法。
【請求項57】
前記送達が全身性送達である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
野生型KRASまたはG12C、G12D、G12V、もしくはG13Dから選択される突然変異をコードしている天然に存在するヒトKRASを標的とするKRAS siRNAと、
ヒトc-Myc mRNAを標的とするc-Myc siRNA分子と、
前記KRAS siRNAおよび前記c-Myc siRNAを接続するリン酸ジエステルリンカー領域と
を含む、siRNA多価キメラ分子。
【請求項59】
1つまたは複数の化学修飾を有する、請求項58に記載のsiRNA多価キメラ分子。
【請求項60】
前記KRAS siRNAおよび前記c-Myc siRNAが完全に化学修飾されている、請求項59に記載のsiRNA多価キメラ分子。
【請求項61】
前記KRAS siRNAおよび前記c-Myc siRNA中のそれぞれのヌクレオチドが2’-O-メチル基または2’-フルオロ基で修飾されている、請求項60に記載のsiRNA多価キメラ分子。
【請求項62】
前記siRNA分子が少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含む、請求項58から61のいずれか一項に記載のsiRNA多価キメラ分子。
【請求項63】
請求項58から62のいずれか一項に記載のsiRNAを含む組成物。
【請求項64】
ナノ粒子をさらに含む、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記ナノ粒子がナノリポソームである、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
請求項58から62のいずれか一項に記載のsiRNA、および/または請求項63から65のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項67】
前記siRNAがリガンド、抗体、またはアプタマーとコンジュゲートしている、請求項66に記載の医薬組成物。
【請求項68】
細胞中においてヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害する方法であって、前記細胞を、請求項58から62のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項63から65のいずれか一項に記載の組成物、および/または請求項66もしくは67に記載の医薬組成物と接触させて、それによって、前記細胞中における前記ヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害することを含む方法。
【請求項69】
それを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子を発現する癌を処置する方法であって、前記対象に、請求項58から62のいずれか一項に記載のsiRNA、請求項63から65のいずれか一項に記載の組成物、および/または請求項66もしくは67に記載の医薬組成物を送達して、それによって、前記対象において癌を処置することを含む方法。
【請求項70】
前記送達が全身性送達である、請求項69に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の記述
本出願は、その内容全体が本明細書中に参考として組み込まれている、2021年6月21日に出願の米国仮出願第63/212,976号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、逆位キメラsiRNA分子、および1つまたは複数の標的遺伝子の発現の阻害(inhbition)におけるその使用に関する。本発明は、RNA干渉、化学修飾したオリゴヌクレオチド、および/またはキメラsiRNAの多価の組合せを使用した、c-Mycの発現の阻害、またはc-MycおよびKRASの二重阻害にさらに関する。
【背景技術】
【0003】
c-Mycタンパク質は、攻撃的な癌種の発癌性駆動因子として十分に特徴づけられているが、その細胞内局在化、遍在性の組織発現、および酵素結合部位の欠如が原因で、概して「新薬開発不可能である」とみなされている。同様に、RAS遺伝子は、下流のエフェクタータンパク質に作用して細胞の生存、成長、および増殖を促進する、小さなGTPaseのファミリーをコードする(Khosravi-Farら、Cancer Metastasis Rev.、13:67(1994))。RASタンパク質の正しい機能は、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)を介した、その活性のあるGTPと結合した形態への活性化、およびRAS-GTP複合体の膜会合に依存しており、これらはどちらも、KRAS阻害の標的として提案されている。しかし、KRASを直接阻害することにおける、以前に提案された治療剤の低い有効性および標的特異性が原因で、KRAS経路を標的とするための現在の手段は、主に下流のエフェクタータンパク質の阻害に焦点を当てている(Coxら、Nat.Rev.Drug Discov.、13:828(2014))。それでもなお、遺伝子活性を直接下方制御する小分子の開発における難題にもかかわらず、KRASは、ヒト癌における駆動的突然変異としてのその有病率が理由で、治療上関連性のある標的であり続ける。最近の研究により、c-Mycおよび突然変異体KRASが密にカップリングされていることが明らかとなっており(Vasevaら、Cancer Cell、34(5)(2018))、これは、両標的を同時にサイレンシングする能力が、相加的および/または相乗的な抗癌効果を有し得ることを示唆している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、c-Myc配列およびc-MycとKRASとの組合せの特異的阻害のためのRNA干渉を使用した組成物および方法を提供することによって、当技術分野における欠陥に打ち勝つ。さらに、本発明は、2つの化学修飾したsiRNAが、代謝的に脆弱なリン酸ジエステルDNA橋によって連結されて、1つまたは複数の標的遺伝子を同時に、たとえばc-MycおよびKRASまたは任意の他の目的の遺伝子を特異的に阻害する、新規キメラsiRNA設計を使用した組成物および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、逆位キメラsiRNA分子の開発に基づく。これらの構築体は、1つまたは複数の標的遺伝子の遺伝子発現の注目すべき阻害を提供し、単一siRNAおよび直列キメラsiRNAよりも予想外に優れている。したがって、本発明の一態様は、
a)リンカーによって連結された第1のsiRNAの第1の鎖および第2のsiRNAの第1の鎖を含む、第1のRNAと、
b)第1のsiRNAの第1の鎖に実質的に相補的である、第2のRNAと、
c)第2のsiRNAの第1の鎖に実質的に相補的である、第3のRNAと
を含む、逆配向の第1および第2のsiRNAを含む逆位キメラsiRNA分子に関する。
【0006】
本発明の別の態様は、本発明の逆位キメラsiRNA分子のうちの1つまたは複数を含む、組成物、たとえば医薬組成物に関する。
【0007】
本発明のさらなる態様は、細胞を、本発明の逆位キメラsiRNA分子、組成物、および/または医薬組成物と接触させ、それによって、細胞中における標的遺伝子の発現を阻害することを含む、細胞中における標的遺伝子の発現を阻害する方法に関する。
【0008】
本発明の追加の態様は、対象に、本発明の逆位キメラsiRNA分子、組成物、および/または医薬組成物を送達し、それによって、対象において障害を処置することを含む、それを必要としている対象において、標的遺伝子に関連する障害を処置する方法に関する。
【0009】
本発明の別の態様は、対象に、本発明の逆位キメラsiRNA分子を送達し、それによって、対象において癌を処置することを含む、それを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子を過剰発現する癌を処置する方法に関する。
【0010】
本発明は、c-Myc配列の発現を阻害するRNA分子の同定にさらに基づく。したがって、本発明の一態様は、アンチセンス鎖およびセンス鎖を含む二本鎖RNA分子であって、アンチセンス鎖のヌクレオチド配列が、ヒトc-Myc遺伝子のヌクレオチド配列の一領域に相補的であり、領域が、約18~約25個の連続的なヌクレオチドから本質的になり、二本鎖RNA分子が、ヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害する、二本鎖RNA分子に関する。最近の研究により、c-Mycおよび突然変異体KRASが密にカップリングされていることが明らかとなっており(Vasevaら、Cancer Cell、34(5)(2018))、これは、両標的を同時にサイレンシングする能力が、相加的および/または相乗的な抗癌効果を有し得ることを示唆している。一実施形態では、複数のsiRNAを使用して、c-MycおよびKRAS遺伝子をどちらも同時に阻害する。
【0011】
本発明の別の態様は、本発明のRNA分子のうちの1つまたは複数を含む組成物、たとえば医薬組成物に関する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、細胞を、本発明のRNA分子と接触させ、それによって、細胞中におけるヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害することを含む、ヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害する方法に関する。
【0013】
本発明の追加の態様は、対象に、本発明のRNA分子を送達し、それによって、対象において癌を処置することを含む、それを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子の過剰発現を含む癌を処置する方法に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、細胞中においてヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害するため、およびそれを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子の過剰発現を含む癌を処置するための、本発明のRNA分子の使用に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの化学修飾を含み、以下の配列対:
配列番号37のセンス鎖および配列番号38のアンチセンス鎖、
配列番号39のセンス鎖および配列番号40のアンチセンス鎖、
配列番号41のセンス鎖および配列番号42のアンチセンス鎖、
配列番号43のセンス鎖および配列番号44のアンチセンス鎖、もしくは
配列番号45のセンス鎖および配列番号46のアンチセンス鎖、
またはそれと少なくとも90%同一である配列
のうちの1つを含む、天然に存在するヒトc-Myc mRNAを標的とするsiRNA分子に関する。
【0016】
本発明の別の態様は、本発明のsiRNA分子のうちの1つまたは複数を含む組成物、たとえば医薬組成物に関する。
【0017】
本発明のさらなる態様は、細胞を、本発明のsiRNA分子と接触させ、それによって、細胞中におけるヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害することを含む、細胞中においてヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害する方法に関する。
【0018】
本発明の追加の態様は、対象に、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNA分子を送達し、それによって、対象において癌を処置することを含む、それを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子の過剰発現を含む癌を処置する方法に関する。
【0019】
本発明の別の態様は、細胞中においてヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害するため、およびそれを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子の過剰発現を含む癌を処置するための、本発明のsiRNA分子の使用に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、二本鎖RNA分子であって、第1のRNA分子が、ヒトc-Myc遺伝子を標的とするアンチセンス鎖およびセンス鎖を含み、第2のRNA分子が、G12C、G12D、G12V、またはG13Dから選択される突然変異をコードすることができる天然に存在するKRAS配列を標的とするアンチセンス鎖およびセンス鎖を含み、第1のRNA分子のヌクレオチド配列が、ヒトc-Myc遺伝子のヌクレオチド配列の一領域に相補的なアンチセンス鎖を有し、領域が、約18~約25個の連続的なヌクレオチドから本質的になり、二本鎖RNA分子が、ヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害し、第2のRNA分子のヌクレオチド配列が、G12C、G12D、G12V、またはG13Dから選択される突然変異をコードすることができる、天然に存在するKRAS配列のヌクレオチド配列の一領域に相補的なアンチセンス鎖を有し、領域が、約18~約25個の連続的なヌクレオチドから本質的になり、二本鎖RNA分子が、G12C、G12D、G12V、G13Dから選択される突然変異、またはKRAS野生型配列をコードしている天然に存在するKRAS配列の発現を阻害する、二本鎖RNA分子に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、siRNA分子であって、第1のsiRNA分子が、天然に存在するヒトc-Myc mRNAを標的とし、少なくとも1つの化学修飾を含み、以下の配列対:
配列番号37のセンス鎖および配列番号38のアンチセンス鎖、
配列番号39のセンス鎖および配列番号40のアンチセンス鎖、
配列番号41のセンス鎖および配列番号42のアンチセンス鎖、
配列番号43のセンス鎖および配列番号44のアンチセンス鎖、もしくは
配列番号45のセンス鎖および配列番号46のアンチセンス鎖、
またはそれと少なくとも90%同一である配列
のうちの1つを含み、第2のsiRNA分子が、G12C、G12D、G12V、G13Dから選択される突然変異、または野生型配列をコードすることができる、天然に存在するKRAS配列を標的とし、少なくとも1つの化学修飾を含む、siRNA分子に関する。一部の実施形態(emboidment)では、siRNA分子は、以下の配列対:
配列番号47のセンス鎖および配列番号48のアンチセンス鎖、
配列番号49のセンス鎖および配列番号50のアンチセンス鎖、
またはそれと少なくとも90%同一である配列
のうちの1つを含む。
【0022】
本発明の別の態様は、本発明のsiRNA分子のうちの1つまたは複数を含む組成物、たとえば医薬組成物に関する。
【0023】
本発明のさらなる態様は、細胞を、本発明のsiRNA分子と接触させ、それによって、細胞中における、ヒトc-Myc遺伝子、および、G12C、G12D、G12V、G13Dから選択される突然変異、または野生型配列をコードすることができる、天然に存在するKRAS配列の発現を阻害することを含む、細胞中において、ヒトc-Myc遺伝子、および、G12C、G12D、G12V、G13Dから選択される突然変異、または野生型配列をコードすることができる、天然に存在するKRAS配列の発現を阻害する方法に関する。
【0024】
本発明の追加の態様は、対象に、本発明のsiRNA分子を送達し、それによって、対象において癌を処置することを含む、それを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子、および、G12C、G12D、G12V、G13Dから選択される突然変異、または野生型配列をコードすることができる、天然に存在するKRAS配列の過剰発現を含む癌を処置する方法に関する。
【0025】
本発明の別の態様は、細胞中において、ヒトc-Myc遺伝子、および、G12C、G12D、G12V、G13Dから選択される突然変異、または野生型配列をコードすることができる、天然に存在するKRAS配列の発現を阻害するため、ならびに、それを必要としている対象において、ヒトc-Myc、およびG12C、G12D、G12V、G13Dから選択される突然変異、または野生型配列をコードすることができる、天然に存在するKRAS配列の過剰発現を含む癌を処置するための、本発明のsiRNA分子の使用に関する。
【0026】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の本発明の説明中により詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A-1C】MIA-PaCa2細胞中において、合成siRNA(「siR」)が、c-Myc mRNA転写物およびタンパク質の発現を減少させることができることを示す図である。A)MIA-PaCa2細胞を、snord90を標的とする対照siRNAおよび8つのc-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで24および48時間処理した。B)MIA-PaCa2細胞を、snord90を標的とする陰性対照siRNA、以前に公開されている論文からの陽性対照siRNA、および8つのc-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで24時間処理し、その後、免疫ブロットした。ビンキュリンを内部対照として使用した。C)パネルBからのc-Mycバンド強度の定量。
図2A-2B】合成の化学修飾したsiRNAが、c-Myc mRNA転写物を実質的に低下させることができることを示す図である。A)MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAおよび5つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで24、48、および72時間処理した。B)A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAおよび5つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで24および72時間処理した。
図3A-3D】合成の化学修飾したsiRNAが、c-Mycタンパク質発現を減少させることができることを示す図である。A)MIA-PaCa2およびA427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAおよび化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで48(A427)および72(MIA-PaCa2)時間処理し、その後、免疫ブロットした。ビンキュリンを内部対照として使用した。B)パネルAからのc-Mycバンド強度の定量。C)A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに化学修飾した(Hi2FおよびHi2OMe)c-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで48時間処理した。D)MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに化学修飾した(Hi2FおよびHi2OMe)c-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで72時間処理した。
図4A-4B】合成の化学修飾したsiRNAがin vitro球状体形成を減少させることを示す図である。A)MIA-PaCa2およびA427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAおよび2つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで24時間処理し、その後、Matrigel中で5日間成長させた。共焦点顕微鏡を用いて、5×対物レンズを使用して代表的な位相差画像を撮影した。B)パネルA中の画像からの球状体平均面積の定量。****p=<0.0001、***p=0.0002。
図5A-5D】MIA-PaCa2細胞中において、化学修飾したsiRNAを用いたc-MycおよびKRASの二重標的化が、球状体の面積および数の減少をもたらすことを示す図である。A)MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに2つの化学修飾したc-Myc(Hi2F)およびKRAS(Hi2OMe)を標的とするsiRNAを用いて、5nMで24時間処理し、その後、Matrigel中で5日間成長させた。共焦点顕微鏡を用いて、5×対物レンズを使用して代表的な位相差画像を撮影した。B)Organosegを使用した、共焦点画像からの球状体の面積および数の定量。p=0.0027、**p=0.0147、***p=0.0022、****p=0.0113。C)MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに2つの化学修飾したc-Myc(Hi2F)およびKRAS(Hi2OMe)を標的とするsiRNAを用いて、5nMで24時間処理し、その後、96ウェルの丸底プレート中に播種し、Incucyteを用いて5日間イメージングした。D)Incucyteを用いたイメージング後、細胞をPromegaからのCellTiter Glo 3Dと混合し、蛍光をプレートリーダーで測定して、代謝活性を決定した。****p=<0.0001。
図6A-6F】A427細胞中において、化学修飾したsiRNAを用いたc-MycおよびKRASの二重標的化が、球状体の面積および数の減少をもたらすことを示す図である。A)A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに2つの化学修飾したc-Myc(Hi2F)およびKRAS(Hi2OMe)を標的とするsiRNAを用いて、10nMで24時間処理し、その後、Matrigel中で5日間成長させた。共焦点顕微鏡を用いて、5×対物レンズを使用して代表的な位相差画像を撮影した。B)Organosegを使用した、共焦点画像からの球状体の面積および数の定量。****p=<0.0001。C)A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに2つの化学修飾したc-Myc(Hi2F)およびKRAS(Hi2OMe)を標的とするsiRNAを用いて、10nMで24時間処理し、その後、96ウェルの丸底プレート中に播種し、Incucyteを用いて5日間イメージングした。D)Incucyteを用いたイメージング後、細胞をPromegaからのCellTiter Glo 3Dと混合し、蛍光をプレートリーダーで測定して、代謝活性を決定した。E、F)A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに2つの化学修飾したc-Myc(Hi2F)およびKRAS(Hi2OMe)を標的とするsiRNAを用いて、10nMで24時間処理し、その後、CellTox Greenを用いて96ウェルの丸底プレート中に播種し、Incucyteを用いて5日間イメージングした。グラフは84時間までのデータを示す。****p=<0.0001。
図7】KRASおよびcMycを標的とするsiRを2つの配向(「逆位キメラ」および「直列キメラ」)で合わせる、リン酸ジエステル連結された化学修飾したsiRNAを示す模式図である。
図8】MIA-PaCa2細胞中において、KRASおよびcMycを標的とするsiR(「逆位キメラ」)を合わせる、リン酸ジエステル連結された化学修飾したsiRが、生物活性があり、c-MycおよびKRAS mRNA転写物を減少させることができることを示す図である。MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、および1個化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA(単独でまたは組み合わせてのいずれか)、ならびに1つの「逆位キメラ」siRNAを用いて、5nM、10nM、および20nMで48および72時間処理した。
図9】A427細胞中において、逆位キメラが、c-MycおよびKRAS mRNA転写物を減少させることにおいて、直列キメラよりも強力であることを示す図である。A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNAを用いて、5nMおよび20nMで48および72時間処理した。
図10A-10C】MIA-PaCa2細胞中において、逆位キメラが、c-MycおよびKRAS mRNA転写物を減少させることにおいて、直列キメラよりも強力であることを示す図である。A)MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNAを用いて、5nMおよび20nMで48および72時間処理した。B)MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、2つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、2つの化学修飾した(Hi2OMe)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNAを用いて、20nMで72時間処理し、その後、免疫ブロットした。ビンキュリンを内部対照として使用した。C)Bからのc-MycおよびKRASのバンド強度の定量。
図11】逆位キメラが50%血清中で直列キメラよりも安定であることを示す図である。1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNAを、10uMで、50%のFBS中、37℃で、0、6、および24時間インキュベートした。反応を0.5MのEDTAで停止させた。siRバンド強度の定量を右側に示す。
図12】どちらのキメラもサイトゾル条件中で安定であることを示す図である。1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNAを、緩衝ラット肝臓サイトゾル中、37℃で0、6、および24時間インキュベートした。反応を0.5MのEDTAで停止させた。siRバンド強度の定量を右側に示す。
図13】どちらのキメラもエンドソーム条件中で解離し始めたことを示す図である。1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNAを、酸性化したラット肝臓トリトソーム(tritosome)中、37℃で0、6、および24時間インキュベートした。反応を0.5MのEDTAで停止させた。siRバンド強度の定量を右側に示す。
図14A-14C】ダイサーが逆位または直列キメラをどちらも切断しないことを示す図である。A)1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNAを、緩衝組換えダイサーと共に、37℃で0、6、および24時間インキュベートした。反応を0.5MのEDTAで停止させた。siRバンド強度の定量を右側に示す。HEK293T親(B)およびNoDice(C)細胞系を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNAを用いて、5nMおよび20nMで48時間処理した。
図15】逆位キメラが、直列キメラよりも増加した、KRAS-ルシフェラーゼタンパク質に対する効力をもたらすことを示す図である。内在性KRASをCRISPR/Cas9によって除去し、KRAS-ホタルルシフェラーゼおよび非標識のウミシイタケルシフェラーゼを安定に組み込むA431同質遺伝子細胞系を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNAを用いて、96時間、39~0.002nMの範囲の用量で処理した。ウミシイタケルシフェラーゼを用いてホタルルシフェラーゼのデータを正規化した。
図16A-16B】逆位キメラのV2が、V1と等価な、c-MycおよびKRAS mRNAに対する効力をもたらすことを示す図である。MIA-PaCa2(A)およびA427(B)細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」バージョン1 siRNA、または1つのM2/K2「逆位キメラ」バージョン2 siRNAを用いて、72時間、4nMおよび10nMで処理した。
図17A-17B】A427細胞中において、逆位キメラのV2が、単一siRよりも増加した、c-MycおよびKRASタンパク質の低下をもたらすことを示す図である。A)A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、または1つのM2/K2「逆位キメラ」バージョン2 siRNAを用いて、5nMおよび20nMで72時間処理し、その後、免疫ブロットした。ビンキュリンを内部対照として使用した。B)パネルAからのc-Myc、KRAS、pERK(1/2)/tERK(1/2)、およびpS6のバンド強度の定量。すべての条件は、ビンキュリンのバンド強度を用いて正規化した。
図18A-18B】MIA-PaCa2細胞中において、逆位キメラのV2が、単一siRよりも増加した、c-MycおよびKRASタンパク質の低下をもたらすことを示す図である。A)MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、または1つのM2/K2「逆位キメラ」バージョン2 siRNAを用いて、5nMおよび20nMで72時間処理し、その後、免疫ブロットした。ビンキュリンを内部対照として使用した。B)Aからのc-Myc、KRAS、およびpERK(1/2)/tERK(1/2)のバンド強度の定量。すべての条件は、ビンキュリンのバンド強度を用いて正規化した。
図19】逆位キメラのV2が、KRAS-ルシフェラーゼタンパク質に対して高い効力をもたらすことを示す図である。KRAS-ホタルルシフェラーゼおよび非標識のウミシイタケルシフェラーゼを安定に組み込ませたA431 KRASノックアウト細胞系を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、または1つのM2/K2「逆位キメラ」バージョン2 siRNAを用いて、96時間、21~0.001nMの範囲の用量で処理した。ウミシイタケルシフェラーゼを用いてホタルルシフェラーゼのデータを正規化した。
図20A-20B】複数の細胞系中において、逆位キメラV2が細胞生存度を相乗的に減少させることを示す図である。MIA-PaCa2(A)およびA427(B)細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、または1つのM2/K2「逆位キメラ」バージョン2 siRNAを用いて、120時間、40nM~0.019nMの範囲の用量で処理した。
図21A-21D】複数の細胞系中において、逆位キメラV2が球状体生存度を減少させることを示す図である。A427(A)およびMIA-PaCa2(B)細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、または1つのM2/K2「逆位キメラ」バージョン2 siRNAを用いて、5nMで24時間処理し、その後、Matrigel中で5日間成長させた。共焦点顕微鏡を用いて、5×対物レンズを使用して代表的な位相差画像を撮影した。C)Organosegを使用した共焦点画像からの、A427中における球状体の面積および数の定量。***p=0.004、**p=0.0084、****p=<0.001。D)A427中における球状体の面積および数の定量。p=0.0435、**p=0.0182、***p=0.042、****p=0.0012。
図22】KRAS WTまたはKRAS G12Vレポーターを発現する同質遺伝子細胞系を使用した、特異的KRAS突然変異(G12V)siRNAの開発および妥当性確認を示す図である。A431細胞は、内在性KRAS WT対立遺伝子がCRISPRを用いて欠失されていた。その後、安定KRAS WTまたはKRAS G12V発現ベクターを発現させた。RT-qPCRを使用して、mRNAレベルでは、形質移入(20nM)の48時間後、EFTX-3G12V4(またはEFTX-G12V FM4)は、KRAS G12Vの強力なサイレンシングをもたらしたが、KRAS WTの標的化を完全に容赦したことが見出された。パン-KRAS siRNAと比較して、ルシフェラーゼ読取りを使用して、EFTX-G12V-FM4がKRAS G12Vを強力に標的とするが、KRAS WTの標的化を完全に容赦することが見出された。
図23】KRAS G12V突然変異を有するSKCO1(結腸)およびH727(肺)細胞系を使用した、特異的KRAS突然変異(G12V)siRNAの開発および妥当性確認を示す図である。SKCO1およびH727細胞系(G12V突然変異を有する)を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、または1つのEFTX-G12V siRNA(Hi2OMe)G12V突然変異体に特異的なKRASを標的とするsiRNAを用いて、約1週間、40nM~0.01nMの範囲の用量で処理した。
図24】H441中において、特異的KRAS突然変異(G12V)およびc-Mycを標的とする逆位キメラが、細胞生存度を相乗的に減少させることを示す図である。H441(G12V突然変異を有する)細胞系を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)G12V突然変異体に特異的なKRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2逆位キメラバージョン2 siRNA、または1つのM2/G12Vに特異的な逆位キメラを用いて、144時間、40nM~0.01nMの範囲の用量で処理した。
図25】SKCO1中において、特異的KRAS突然変異(G12V)およびc-Mycを標的とする逆位キメラが、細胞生存度を相乗的に減少させることを示す図である。SKCO1(G12V突然変異を有する)細胞系を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)G12V突然変異体に特異的なKRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2逆位キメラバージョン2 siRNA、または1つのM2/G12Vに特異的な逆位キメラを用いて、216時間、40nM~0.01nMの範囲の用量で処理した。
図26】RPMI-8226骨髄腫細胞系中において、IRF4およびc-Mycを標的とする逆位キメラが、細胞生存度を相乗的に減少させることを示す図である。RPMI-8226細胞を、RNAiMaxと複合体形成させた様々な用量のHiOMe siRNAを用いて、96ウェルプレート形式で5日間処理し、2OMeを陰性対照として用いた。形質移入後の5日目に、Cell Titer Glo 2.0を加え、ルミネセンスを決定した。
図27A-27B】同じ遺伝子(c-Myc)を標的とする逆位キメラが、個々のsiRを用いて遺伝子を標的化することよりも、mRNAの低下においてより有効であることを示す図である。A427(A)およびMIA-PaCa2(B)細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、2つの化学修飾した(Hi2OMe)c-Mycを標的とするsiRNA、1つのM2/M3逆位キメラsiRNA、または1つのM3/M2逆位キメラsiRNAを用いて、5nMで72時間処理した。
図28】同じ遺伝子(KRAS)を標的とする逆位キメラが、個々のsiRを用いて遺伝子を標的化することよりも、KRAS-ルシフェラーゼタンパク質の低下ついてより有効であることを示す図である。KRAS-ホタルルシフェラーゼおよび非標識のウミシイタケルシフェラーゼを安定に組み込ませたA431 KRASノックアウト細胞系を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、または1つのK3/K2逆位キメラsiRNAを用いて、96時間、39~0.002nMの範囲の用量で処理した。ウミシイタケルシフェラーゼを用いてホタルルシフェラーゼのデータを正規化した。
図29】直列および逆位キメラの両方における、リンカーおよび標的化部分の潜在的なコンジュゲーション部位(黒い矢印)を示す図である。
図30】合わせた逆位キメラおよび直列キメラ設計を使用した、3個までのユニークなsiRNAを合わせる、リン酸ジエステル連結された化学修飾したsiRを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明を以下により詳細に記述する。しかし、本発明は様々な形態で具体化してよく、本明細書中に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきでない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全となるように提供し、したがって、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるであろう。
【0029】
別段に定義しない限りは、本明細書中で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中において本発明の説明に使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみが目的であり、本発明を限定することを意図しない。本明細書中で引用するすべての出版物、特許出願、特許、特許公開、および他の参考文献は、参照を提示する文および/または段落に関連する教示について、その全体で参考として組み込まれている。
【0030】
ヌクレオチド配列は、そうでないと具体的に示さない限りは、本明細書中では、単一鎖のみによって、5’から3’の方向で、左から右に提示する。ヌクレオチドおよびアミノ酸は、本明細書中では、IUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨された様式で、または(アミノ酸では)、どちらも米国特許法施行規則第1.822条および確立された慣習法に従った一文字のコードもしくは三文字のコードのどちらによって、表す。
【0031】
そうでないと示さない限りは、当業者に知られている標準方法を、遺伝子をクローニングするため、核酸を増幅および検出するためなどに使用し得る。そのような技法は当業者に知られている。たとえば、Greenら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第4版(Cold Spring Harbor、NY、2012)、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley & Sons,Inc.、New York)を参照されたい。
【0032】
内容によりそうでないと示されない限りは、本明細書中に記載の本発明の様々な特長を任意の組合せで使用できることが、具体的に意図される。
【0033】
さらに、本発明はまた、本発明の一部の実施形態では、本明細書中に記載の任意の特長または特長の組合せを排除または省略できることも企図する。
【0034】
例示すると、明細書が、複合体が構成要素A、B、およびCを含むと記述する場合、A、B、もしくはCのうちの任意のもの、またはその組合せを、単独でまたは任意の組合せで省略および拒否できることが、具体的に意図される。
【0035】
定義
本発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、内容により明らかにそうでないと示されない限りは、複数形も含むことを意図する。
【0036】
また、本明細書中で使用する「および/または」とは、関連する列挙した項目のうちの1つまたは複数の任意かつすべての可能な組合せ、ならびに代替(「または」)で解釈した場合は組合せの欠如をいい、またそれを包含する。
【0037】
ポリペプチドの量、用量、時間、温度、酵素活性、または他の生物活性などの測定可能な値に言及する場合に、本明細書中で使用する用語「約」とは、指定した量の±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0038】
本明細書中で使用する移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」(および文法的な変形)とは、列挙した材料またはステップ、ならびに特許請求した発明の基本的および新規の特徴に大いに影響を与えないものを包含すると解釈される。したがって、本明細書中で使用する用語「から本質的になる」は、「含むこと(comprising)」と等価であると解釈されるべきでない。
【0039】
本発明のポリヌクレオチド配列に適用される用語「から本質的になる」(および文法的な変形)とは、列挙した配列(たとえば配列番号)、ならびにポリヌクレオチドの機能が大いに変更されないような、列挙した配列の5’および/または3’末端上における合計10個以下(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)の追加のヌクレオチドの両方からなる、ポリヌクレオチドを意味する。合計10個以下の追加のヌクレオチドは、亮末端の追加のヌクレオチドの合計数を合算したものを含む。本発明のポリヌクレオチドに適用する用語「大いに変更された」とは、列挙した配列からなるポリヌクレオチドの発現レベルと比較して、標的mRNAの発現を阻害する能力の、少なくとも約50%以上の増加または減少をいう。
【0040】
用語「増強する」または「増加させる」とは、指摘したパラメータの少なくとも約1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、12倍、またはさらには15倍の増加をいう。
【0041】
本明細書中で使用する用語「阻害する」もしくは「低下させる」またはその文法的変形とは、指摘したレベルまたは活性の、少なくとも約15%、25%、35%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%、またはそれより多くの減少または減弱をいう。特定の実施形態では、阻害または低下は、検出可能な活性がわずかまたは本質的にないことをもたらす(最大でも重要でない量、たとえば約10%未満またはさらには5%)。
【0042】
本明細書中で使用する「治療上有効な」量とは、対象にある程度の改善または利点をもたらす量である。別の言い方をすれば、「治療上有効な」量とは、対象における少なくとも1つの臨床症状のある程度の緩和、軽減、または減少(たとえば、癌の場合、腫瘍量の低下、さらなる腫瘍成長の防止、転移の防止、または生存時間の増加)を提供する量である。当業者は、治療効果は、ある程度の利点が対象に提供される限りは、完全または治癒的である必要はないことを理解されよう。
【0043】
用語「処理する」、「処置すること」、または「~の処置」とは、対象の状態の重篤度が低下または少なくとも部分的に改善または改変されており、少なくとも1つの臨床症状のある程度の緩和、軽減、または減少が達成されることを意図する。
【0044】
「防止する」または「防止すること」または「防止」とは、本発明の方法の非存在下で発生するであろう重篤度と比較した、対象における障害の発症の防止もしくは遅延および/または障害の重篤度の減少をいう。防止は、完全、たとえば対象における癌の完全な非存在であることができる。防止はまた、対象における癌の発生率または重篤度が、本発明なしで起こったであろうものよりも低いような、部分的であることもできる。
【0045】
本明細書中で使用する「核酸」、「ヌクレオチド配列」、および「ポリヌクレオチド」は、互換性があるように使用され、RNAおよびDNAをどちらも包含し、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(たとえば化学合成)DNAまたはRNA、ならびにRNAおよびDNAのキメラが挙げられる。用語、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド配列、または核酸とは、鎖の長さにかかわらず、ヌクレオチドの鎖をいう。核酸は二本鎖または一本鎖であることができる。一本鎖の場合、核酸はセンス鎖またはアンチセンス鎖であることができる。核酸は、オリゴヌクレオチド類似体または誘導体を使用して合成することができる(たとえばイノシンまたはホスホロチオエートヌクレオチド)。そのようなオリゴヌクレオチドを使用して、たとえば、変更された塩基対合能力または増加したヌクレアーゼ耐性を有する核酸を調製することができる。本発明は、本発明の核酸、ヌクレオチド配列、またはポリヌクレオチドの補体(完全補体または部分的補体のどちらであることもできる)である核酸をさらに提供する。dsRNAを合成によって生成する場合、より一般的でない塩基、たとえば、イノシン、5-メチルシトシン、6-メチルアデニン、ヒポキサンチン、および他のものも、アンチセンス、dsRNA、およびリボザイム対合に使用することができる。たとえば、ウリジンおよびシチジンのC-5プロピン類似体を含有するポリヌクレオチドは、高い親和性でRNAと結合すること、および遺伝子発現の強力なアンチセンス阻害剤であることが示されている。リン酸ジエステル主鎖への修飾、またはRNAのリボース糖基中の2’-ヒドロキシなどの、他の修飾も行うことができる。
【0046】
「単離したポリヌクレオチド」とは、それが由来する生物の天然に存在するゲノム中において、それが直接隣接しているヌクレオチド配列(5’末端に1つおよび3’末端に1つ)と、直接隣接していない、ヌクレオチド配列(たとえばDNAまたはRNA)である。したがって、一実施形態では、単離した核酸は、コード配列と直接隣接している5’非コード(たとえばプロモーター)配列の一部または全部を含む。したがって、この用語は、他の配列とは独立して、たとえば、ベクター内、自律複製するプラスミドもしくはウイルス内、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA内に取り込まれる、あるいは、別個の分子(たとえば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって生成されたcDNAまたはゲノムDNA断片)として存在する、組換えDNAを含む。これはまた、追加のポリペプチドまたはペプチド配列をコードしているハイブリッド核酸の一部である組換えDNAも含む。遺伝子を含む単離したポリヌクレオチドは、そのような遺伝子を含む染色体の断片ではなく、むしろ、遺伝子に関連するコード領域および調節領域を含むが、染色体上に天然に見つかる追加の遺伝子は含まない。
【0047】
用語「単離した」とは、細胞物質、ウイルス材料、および/もしくは培養培地(組換えDNA技法によって生成した場合)、または化学的前駆体もしくは他の化学薬品(化学合成した場合)を実質的に含まない、核酸、ヌクレオチド配列、またはポリペプチドをいうことができる。さらに、「単離した断片」は、断片として天然に存在せず、天然状態では見つからないであろう、核酸、ヌクレオチド配列、またはポリペプチドの断片である。「単離した」とは、調製物が技術的に純粋(均一)であることを意味しないが、これは、ポリペプチドまたは核酸を意図する目的のために使用することができる形態で提供するために、十分に純粋である。
【0048】
「単離した細胞」とは、天然状態においてそれが通常会合している他の構成要素から分離されている細胞をいう。たとえば、単離した細胞は、培養培地中の細胞および/または本発明の薬学的に許容される担体中の細胞であることができる。したがって、単離した細胞は、対象に送達するおよび/または対象内に導入することができる。一部の実施形態では、単離した細胞は、対象から取り出し、本明細書中に記載のようにex vivoで操作し、その後、対象に戻す、細胞であることができる。
【0049】
ポリヌクレオチドに適用する用語「断片」とは、参照核酸またはヌクレオチド配列と比較して短縮された長さであり、参照核酸またはヌクレオチド配列と同一またはほぼ同一(たとえば、90%、92%、95%、98%、99%同一)である隣接したヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、および/またはそれからなる、ヌクレオチド配列を意味すると理解されたい。そのような本発明による核酸断片は、適切な場合は、それが構成要素であるより大きなポリヌクレオチド中に含まれ得る。一部の実施形態では、そのような断片は、本発明による核酸またはヌクレオチド配列の少なくとも約8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200個、またはそれより多くの連続的なヌクレオチドの長さを有するオリゴヌクレオチドを含む、それから本質的になる、および/または、それからなることができる。
【0050】
ポリペプチドに適用する用語「断片」とは、参照ポリペプチドまたはアミノ酸配列と比較して短縮された長さであり、参照ポリペプチドまたはアミノ酸配列と同一またはほぼ同一(たとえば、90%、92%、95%、98%、99%同一)である隣接したアミノ酸のアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、および/またはそれからなる、アミノ酸配列を意味すると理解されたい。そのような本発明によるポリペプチド断片は、適切な場合は、それが構成要素であるより大きなポリペプチド中に含まれ得る。一部の実施形態では、そのような断片は、本発明によるポリペプチドまたはアミノ酸配列の少なくとも約4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200個、またはそれより多くの連続的なアミノ酸の長さを有するペプチドを含む、それから本質的になる、および/または、それからなることができる。
【0051】
「ベクター」とは、核酸の細胞内へのクローニングおよび/または移行のための、任意の核酸分子である。ベクターは、別のヌクレオチド配列を付着させて、付着させたヌクレオチド配列複製を可能にし得る、レプリコンであり得る。「レプリコン」は、in vivoでの核酸複製の自律的単位として機能する、すなわち、それ自身の制御下で複製することができる、任意の遺伝因子(たとえば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルスゲノム)であることができる。用語「ベクター」は、核酸を細胞内にin vitro、ex vivo、および/またはin vivoで挿入するための、ウイルスおよび非ウイルス(たとえばプラスミド)の核酸分子をどちらも含む。当技術分野で知られている多数のベクターを使用して、核酸を操作すること、応答要素およびプロモーターを遺伝子内に取り込ませること等を行い得る。たとえば、応答要素およびプロモーターに対応する核酸断片の、適切なベクター内への挿入は、適切な核酸断片を、相補的な粘着性末端を有する選択されたベクター内にライゲーションすることによって、達成することができる。あるいは、核酸分子の末端を酵素的に修飾し得る、または、ヌクレオチド配列(リンカー)を核酸末端にライゲーションさせることによって任意の部位を生成し得る。そのようなベクターは、ベクターを含有するおよび/またはベクターの核酸を細胞ゲノム内に取り込んだ細胞の選択を提供する選択マーカーをコードしている配列を含有するように、操作し得る。そのようなマーカーは、マーカーによってコードされているタンパク質を取り込み、それを発現する宿主細胞の同定および/または選択を可能にする。「組換え」ベクターとは、1つまたは複数の異種ヌクレオチド配列(すなわち導入遺伝子)、たとえば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くの異種ヌクレオチド配列を含むウイルスまたは非ウイルスベクターをいう。
【0052】
ウイルスベクターは、細胞および生きた動物対象における多種多様な遺伝子送達の応用において使用されている。使用することができるウイルスベクターとしては、それだけには限定されないが、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、および/またはアデノウイルスベクターが挙げられる。非ウイルスベクターとしては、それだけには限定されないが、プラスミド、リポソーム、帯電脂質(サイトフェクチン)、核酸-タンパク質複合体、およびバイオポリマーが挙げられる。目的の核酸に加えて、ベクターはまた、核酸移行結果(特定組織への送達、発現の持続期間など)の選択、測定、およびモニタリングに有用な1つもしくは複数の調節領域および/または選択マーカーも含み得る。
【0053】
ベクターは、当技術分野で知られている方法、たとえば、形質移入、電気穿孔、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、または核酸ベクター輸送体によって、所望の細胞内に導入し得る(たとえば、Wuら、J.Biol.Chem.、267:963(1992)、Wuら、J.Biol.Chem.、263:14621(1988)、およびHartmutら、1990年3月15日出願のカナダ特許出願第2,012,311号を参照)。
【0054】
一部の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、リポフェクションによって、細胞にin vivoで送達することができる。リポソーム媒介性形質移入で遭遇する困難および危険を制限するように設計された合成カチオン性脂質を使用して、本発明のヌクレオチド配列のin vivo形質移入のためのリポソームを調製することができる(Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:7413(1987)、Mackeyら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:8027(1988)、およびUlmerら、Science、259:1745(1993))。カチオン性脂質の使用は、負荷電核酸のカプセル封入を促進し、また、負荷電の細胞膜との融合も促進する場合がある(Felgnerら、Science、337:387(1989))。核酸の移行のために特に有用な脂質化合物および組成物は、国際公開公報WO95/18863号およびWO96/17823号、ならびに米国特許第5,459,127号中に記載されている。外因性ヌクレオチド配列を特定臓器内にin vivoで導入するためのリポフェクションの使用は、特定の実用的な利点を有する。リポソームの特定細胞への分子標的化は、利点の1つの領域を表す。形質移入を特定の細胞種に向けることが、細胞の不均一性を有する組織、たとえば膵臓、肝臓、腎臓、および脳において特に好ましいであろうことは、明確である。脂質は、標的化の目的のために他の分子と化学的にカップリングさせ得る(Mackeyら、1988、上記)。標的化ペプチド、たとえば、ホルモンもしくは神経伝達物質、および抗体などのタンパク質、または非ペプチド分子を、リポソームと化学的にカップリングさせることができる。
【0055】
様々な実施形態では、他の分子、たとえば、陽イオン性オリゴペプチド(たとえばWO95/21931号)、核酸結合タンパク質に由来するペプチド(たとえばWO96/25508号)、および/または陽イオン性ポリマー(たとえばWO95/21931号)を、核酸のin vivoでの送達を容易にするために使用することができる。
【0056】
また、ベクターをin vivoで裸核酸として導入することも可能である(米国特許第5,693,622号、第5,589,466号、および第5,580,859号を参照)。受容体媒介性核酸送達手法も使用することができる(Curielら、Hum.Gene Ther.、3:147(1992)、Wuら、J.Biol.Chem.、262:4429(1987))。
【0057】
本明細書中で使用する用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、互換性があるように使用され、別段に指摘しない限りはペプチドおよびタンパク質をどちらも包含する。
【0058】
「融合タンパク質」とは、自然では一緒に融合されて見つからない2つ(以上)の異なるポリペプチドをコードする2つの異種ヌクレオチド配列またはその断片が、正しい翻訳リーディングフレームで一緒に融合されている場合に生じる、ポリペプチドである。例示的な融合ポリペプチドとしては、本発明のポリペプチド(またはその断片)と、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース-結合タンパク質、もしくはレポータータンパク質(たとえば、緑色蛍光タンパク質、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなど)、赤血球凝集素、c-Myc、FLAGエピトープ等の全部または一部分との融合物が挙げられる。
【0059】
用語、ポリヌクレオチドコード配列の「発現する」または「発現」とは、配列が転写され、任意選択で翻訳されることを意味する。典型的には、本発明によれば、本発明のコード配列の発現は、本発明のポリペプチドの生成をもたらす。発現されたポリペプチド全体または断片も、精製なしでインタクトな細胞中で機能することができる。
【0060】
本明細書中で使用する用語「過剰発現」または「過剰発現すること」とは、野生型細胞と比較して増加したレベルの生成されるポリペプチド、および/または増加した発現時間(たとえば構成的発現)をいう。
【0061】
本明細書中で使用する用語「遺伝子」とは、mRNA、アンチセンスRNA、miRNAなどを生成するために使用されることができる核酸分子をいう。遺伝子は、機能的タンパク質を生成するために使用されることができても、できなくてもよい。遺伝子は、コードおよび非コード領域をどちらも含むことができる(たとえば、イントロン、調節要素、プロモーター、エンハンサー、終止配列、ならびに5’および3’非翻訳領域)。遺伝子は「単離」されていてよく、これは、その天然状態で核酸と通常は会合して見つかる構成要素を実質的にまたは本質的に含まない核酸を意味する。そのような構成要素としては、他の細胞物質、組換え産生からの培養培地、および/または核酸の化学合成において使用した様々な化学薬品が挙げられる。
【0062】
本明細書中で使用する「相補的」ポリヌクレオチドとは、標準のワトソン-クリック相補性規則に従って塩基対合が可能なものである。具体的には、プリンがピリミジンと塩基対合して、グアニンとシトシンの対(G:C)、およびDNAの場合はアデニンとチミン(A:T)、またはRNAの場合はアデニンとウラシルの対(A:U)のどちらかの組合せを形成する。たとえば、配列「A-G-T」は相補的配列「T-C-A」と結合する。2つのポリヌクレオチドは、それぞれが、他方に実質的に相補的である少なくとも1つの領域を有する限りは、互いに完全に相補的でない場合でも互いにハイブリダイズし得ることが理解されよう。
【0063】
本明細書中で使用する用語「相補的」または「相補性」とは、許容的な塩および温度条件下、塩基対合による、ポリヌクレオチドの自然な結合をいう。2つの一本鎖分子間の相補性は、ヌクレオチドの一部のみが結合する「部分的」であり得る、または、一本鎖分子間に完全な相補性が存在する場合は完全であり得る。核酸鎖間の相補性の度合は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に対して顕著な影響を有する。
【0064】
本明細書中で使用する用語「実質的に相補的」または「部分的に相補的」とは、2つの核酸配列が、そのヌクレオチドの少なくとも約60%、70%、80%、または90%が相補的であることを意味する。一部の実施形態では、2つの核酸配列は、そのヌクレオチドのうちの少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより多くで、相補的であることができる。用語「実質的に相補的」および「部分的に相補的」はまた、2つの核酸配列が高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできることも意味し、そのような条件は当技術分野で周知である。
【0065】
本明細書中で使用する「異種」とは、別の種に由来する核酸配列、または、同じ種もしくは生物からのものであるが、その元の形態もしくは細胞中で主に発現される形態のどちらかから修飾されている核酸配列のいずれかをいう。したがって、ヌクレオチド配列を導入する細胞のものとは異なる生物または種に由来するヌクレオチド配列は、その細胞および細胞の子孫に対して異種である。さらに、異種ヌクレオチド配列は、同じ天然の元の細胞種に由来し、それ内に挿入されているが、非天然状態、たとえば、異なるコピー数、および/または自然で見つかるものとは異なる調節配列の制御下で存在する、ヌクレオチド配列を含む。
【0066】
本明細書中で使用する用語「接触させること」、「導入すること」、および「投与すること」は、互換性があるように使用され、標的遺伝子の発現を阻害または変更または改変するために、本発明のdsRNAまたは本発明のdsRNAをコードしている核酸分子を細胞に送達するプロセスをいう。dsRNAは、それだけには限定されないが、細胞内への直接導入(すなわち細胞内)および/または腔、間質腔、もしくは生物の循環内への細胞外導入を含めた、いくつかの方法で投与し得る。
【0067】
細胞または生物のコンテキストにおける「導入すること」とは、核酸分子が細胞の内部に接近するような様式で、核酸分子を生物および/または細胞に提示することを意味する。複数の核酸分子を導入する場合、これらの核酸分子は、単一ポリヌクレオチドもしくは核酸構築体の一部として、または別個のポリヌクレオチドもしくは核酸構築体としてアセンブルすることができ、同じまたは異なる核酸構築体上に位置することができる。したがって、これらのポリヌクレオチドは、単一の形質転換事象または別個の形質転換事象で細胞内に導入することができる。したがって、本明細書中で使用する用語「形質転換」とは、異種核酸の細胞内への導入をいう。細胞の形質転換は安定または一過性であり得る。
【0068】
ポリヌクレオチドのコンテキストにおける「一過性形質転換」とは、ポリヌクレオチドが細胞内に導入され、細胞のゲノム内に組み込まれないことを意味する。
【0069】
細胞内に導入されたポリヌクレオチドのコンテキストにおける「安定に導入すること」または「安定に導入した」とは、導入したポリヌクレオチドが安定に細胞のゲノム内に安定に取り込まれ、したがって、細胞がポリヌクレオチドで安定に形質転換されていることを意図する。
【0070】
本明細書中で使用する「安定形質転換」または「安定に形質転換させた」とは、細胞内に導入され、細胞のゲノム内に組み込まれることを意味する。したがって、組み込まれた核酸分子は、その子孫、より詳細には複数の逐次的な世代の子孫によって受け継がれることができる。本明細書中で使用する「ゲノム」は核およびミトコンドリアのゲノムを含み、したがって、核酸の、たとえばミトコンドリアゲノム内での組込みを含む。本明細書中で使用する安定形質転換はまた、染色体外(extrachromasomally)に、たとえばミニ染色体として維持される導入遺伝子もいうことができる。
【0071】
一過性形質転換は、たとえば、生物内に導入された1つまたは複数の導入遺伝子によってコードされているペプチドまたはポリペプチドの存在を検出することができる、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはウエスタンブロットによって検出し得る。細胞の安定形質転換は、たとえば、生物内に導入された導入遺伝子のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする核酸配列を用いた、細胞のゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションアッセイによって検出することができる。細胞の安定形質転換は、たとえば、生物内に導入された導入遺伝子のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする核酸配列を用いた、細胞のRNAのノーザンブロットハイブリダイゼーションアッセイによって検出することができる。細胞の安定形質転換はまた、たとえば、標準の方法に従って検出することができる、導入遺伝子の標的配列(複数可)とハイブリダイズして導入遺伝子配列の増幅をもたらす特異的プライマー配列を用いた、当技術分野で周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の増幅反応によっても検出することができる。形質転換はまた、当技術分野で周知の直接シーケンシングおよび/またはハイブリダイゼーションプロトコルによっても検出することができる。
【0072】
本発明の実施形態は、本発明の核酸を発現するように設計された発現カセットに向けられている。本明細書中で使用する「発現カセット」とは、少なくとも目的のヌクレオチド配列と作動可能に連結させた制御配列を有する核酸分子を意味する。このようにして、たとえば、本発明のsiRNAのヌクレオチド配列と作動可能な相互作用にあるプロモーターを、生物または細胞における発現のための発現カセット中に提供する。
【0073】
本明細書中で使用する用語「プロモーター」とは、コード配列の効率的な発現のための必要なシグナルを取り込むヌクレオチド配列の一領域をいう。これは、RNAポリメラーゼが結合する配列を含んでよいが、そのような配列に限定されず、他の調節タンパク質が、タンパク質翻訳の制御に関与する領域と一緒に結合する領域を含むことができ、また、コード配列も含むことができる。
【0074】
さらに、本発明の「プロモーター」は、生物の細胞中において転写を開始させることができるプロモーターである。そのようなプロモーターとしては、ヌクレオチド配列の発現を構成的に駆動するもの、誘導された際に発現を駆動するもの、および組織または発生に特異的な様式で発現を駆動するものが挙げられ、これらの様々な種類のプロモーターは当技術分野で知られている。
【0075】
本発明の目的のために、調節領域(すなわち、プロモーター、転写調節領域、および翻訳停止領域)は、生物もしくは細胞に対してネイティブ/類似であることができる、ならびに/または、調節領域は、他の調節領域に対してネイティブ/類似であることができる。あるいは、調節領域は、生物もしくは細胞および/または互いに(すなわち調節領域)に対して異種であり得る。したがって、たとえば、プロモーターは、ポリヌクレオチドが由来する種とは異なる種からのポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合に、異種であることができる。あるいは、プロモーターは、プロモーターが、ポリヌクレオチドが由来する種と同じ/類似の種からのものであるが、一方または両方(すなわちプロモーターおよびポリヌクレオチド)がその元の形態および/もしくはゲノム座位から実質的に改変されている、またはプロモーターが作動可能に連結させたポリヌクレオチドのネイティブプロモーターではない場合にも、選択されたヌクレオチド配列に対して異種であることができる。
【0076】
使用するプロモーターの選択肢は、それだけには限定されないが、細胞または組織に特異的な発現、所望の発現レベル、効率、誘導性、および選択性を含めたいくつかの要因に依存する。たとえば、特異的な組織または臓器中での発現が所望される場合は、組織特異的プロモーターを使用することができる。対照的に、刺激に対する応答における発現が所望される場合は、誘導性プロモーターを使用することができる。生物の細胞全体にわたって連続的な発現が所望される場合は、構成的プロモーターを使用することができる。プロモーターおよび他の調節領域をその配列に対して適切に選択および配置することによって、ヌクレオチド配列の発現を変調することは、当業者にはルーチン的な事柄である。
【0077】
上述のプロモーターに加えて、発現カセットは他の調節配列も含むことができる。本明細書中で使用する「調節配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、内部、または下流(3’非コード配列)に位置し、関連するコード配列の転写、RNAプロセッシングもしくは安定性、または翻訳に影響を与える、ヌクレオチド配列を意味する。調節配列としては、それだけには限定されないが、エンハンサー、イントロン、翻訳リーダー配列、およびポリアデニル化シグナル配列が挙げられる。
【0078】
発現カセットはまた、生物において機能的な転写および/または翻訳停止領域(すなわち停止領域)も任意選択で含むことができる。様々な転写ターミネーターが、発現カセット中で使用するために利用可能であり、導入遺伝子より先の転写の停止および正しいmRNAポリアデニル化を司っている。停止領域は、転写開始領域に対してネイティブであり得る、作動可能に連結させた目的のヌクレオチド配列に対してネイティブであり得る、宿主に対してネイティブであり得る、または別の供給源に由来し得る(すなわち、プロモーター、目的のヌクレオチド配列、宿主、もしくはその任意の組合せに対して外来もしくは異種であり得る)。
【0079】
シグナル配列は、本発明の核酸と作動可能に連結させて、ヌクレオチド配列を細胞区画内に向けることができる。このようにして、発現カセットは、シグナル配列の核酸配列と作動可能に連結させたsiRNAをコードしているヌクレオチド配列を含む。シグナル配列は、siRNAのNまたはC末端で作動可能に連結させ得る。
【0080】
使用する調節配列(複数可)の種類にかかわらず、これらのsiRNAのヌクレオチド配列と作動可能に連結させることができる。本明細書中で使用する「作動可能に連結させた」とは、発現カセットなどの核酸構築体の要素が、その通常の機能を行うように構成されていることを意味する。したがって、目的のヌクレオチド配列と作動可能に連結させた調節または制御配列(たとえばプロモーター)は、目的のヌクレオチド配列の発現をもたらすことができる。制御配列は、目的のヌクレオチド配列の発現を指示するように機能する限りは、それと隣接している必要はない。したがって、たとえば、介在性の非翻訳であるが転写された配列がプロモーターとコード配列との間に存在することができ、プロモーター配列はそれでも、コード配列に「作動可能に連結させた」とみなすことができる。本発明のヌクレオチド配列(すなわちsiRNA)を調節配列と作動可能に連結させることができ、それによって、細胞および/または対象中における発現が可能となる。
【0081】
発現カセットはまた、形質転換させた生物または細胞を選択するために使用することができる選択マーカーのヌクレオチド配列も含むことができる。本明細書中で使用する「選択マーカー」とは、発現された際に、マーカーを発現する生物または細胞に明確な表現型を与え、したがって、そのような形質転換させた生物または細胞を、マーカーを有さないものから識別することを可能にする、核酸を意味する。そのような核酸は、マーカーが、選択剤(たとえば抗生物質など)を使用することによってなどの化学的手段によって選択することができる特質を与えるかどうか、または、マーカーが、単純に、スクリーニング(によってなどの観察もしくは試験を通じて同定することができる特質であるかどうかに応じて、選択可能またはスクリーニング可能なマーカーのどちらかをコードし得る。もちろん、適切な選択マーカーの多くの例が当技術分野で知られており、本明細書中に記載の発現カセットにおいて使用することができる。
【0082】
本発明の一部の実施形態では、発現カセットは、dsRNAの一方または両方の鎖の鋳型であるヌクレオチド配列と作動可能に連結させた発現制御配列を含むことができる。さらなる実施形態では、プロモーターは、鋳型ヌクレオチド配列のいずれの末端とも隣接することができ、プロモーターがそれぞれの個々のDNA鎖の発現を駆動し、それによって、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する2つの相補的(または実質的に相補的)なRNAが生成される。代替実施形態では、ヌクレオチド配列は、1つの転写単位上でdsRNAの両方の鎖へと転写され、ここで、センス鎖は転写単位の5’末端から転写され、アンチセンス鎖は3’末端から転写され、2本の鎖は約3~約500塩基対によって隔てられており、転写後、RNA転写物は、それ自身上に折り畳まれて短いヘアピンRNA(shRNA)分子を形成する。
【0083】
本明細書中で使用する「配列同一性」とは、2つの最適にアラインメントしたポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が、構成要素、たとえばヌクレオチドまたはアミノ酸のアラインメントウィンドウの全体にわたって不変である程度をいう。「同一性」は、既知の方法によって容易に計算することができ、それだけには限定されないが、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.編)Oxford University Press、New York(1988)、Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.編)Academic Press、New York(1993)、Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編)Humana Press、New Jersey(1994)、Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.編)Academic Press(1987)、およびSequence Analysis Primer(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)Stockton Press、New York(1991)中に記載のものが挙げられる。
【0084】
本明細書中で使用する用語「実質的に同一」または「~に対応する」とは、2つの核酸配列が少なくとも60%、70%、80%、または90%の配列同一性を有することを意味する。一部の実施形態では、2つの核酸配列は、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有することができる。
【0085】
試験配列および参照配列のアラインメントしたセグメントの「同一性割合」とは、2つのアラインメントした配列によって共有される同一構成要素の数を、参照配列セグメント中の構成要素の合計数、すなわち、参照配列全体または参照配列のより小さな定義された部分によって除算したものである。
【0086】
本明細書中で使用する用語「パーセント配列同一性」または「パーセント同一性」とは、2つの配列を、(比較ウィンドウにわたって合計で参照配列の20パーセント未満の適切なヌクレオチドの挿入、欠失、またはギャップを用いて)最適にアラインメントした場合の、試験(「対象」)ポリヌクレオチド分子(またはその相補鎖)と比較した、参照(「クエリ」)ポリヌクレオチド分子(またはその相補鎖)の直鎖状ポリヌクレオチド配列中の同一ヌクレオチドの百分率をいう。一部の実施形態では、「パーセント同一性」とは、アミノ酸配列中の同一アミノ酸の百分率をいうことができる。
【0087】
比較ウィンドウをアラインメントするための配列の最適アラインメントは当業者に周知であり、SmithおよびWatermanの局所的相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunschの相同性アラインメントアルゴリズム、PearsonおよびLipmanの類似度検索方法、ならびに任意選択でこれらのアルゴリズムコンピュータによる実行、たとえば、GCG(登録商標)Wisconsin Package(登録商標)(Accelrys Inc.、マサチューセッツ州Burlington)の一部として利用可能なGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTAなどのツールによって実施し得る。パーセント配列同一性は、同一性割合を100を乗算したものとして表される。1つまたは複数のポリヌクレオチド配列の比較は、完全長ポリヌクレオチド配列もしくはその一部分、またはより長いポリヌクレオチド配列に対するものであり得る。本発明の目的のために、「パーセント同一性」はまた、翻訳されたヌクレオチド配列ではBLASTXバージョン2.0、およびポリヌクレオチド配列ではBLASTNバージョン2.0を使用しても決定し得る。
【0088】
配列同一性のパーセントは、Sequence Analysis Software Package(商標)(バージョン10、Genetics Computer Group,Inc.、ウィスコンシン州Madison)の「Best Fit」または「Gap」プログラムを使用して決定することができる。「Gap」は、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch、J Mol.Biol.、48:443~453頁、1970)を利用して、一致の数を最大限にし、ギャップの数を最小限にする、2つの配列のアラインメントを見つける。「BestFit」は、2つの配列間の最良の類似度セグメントの最適アラインメントを行い、SmithおよびWatermanの局所的相同性アルゴリズム(SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.、2:482~489頁、1981、Smithら、Nucleic Acids Res.、11:2205~2220頁、1983)を使用して、一致の数を最大限にするためにギャップを挿入する。
【0089】
配列同一性を決定するために有用な方法は、Guide to Huge Computers(Martin J.Bishop編、Academic Press、San Diego(1994))およびCarillo,H.およびLipton,D.(Applied Math、48:1073(1988))中にも開示されている。より詳細には、配列同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラムとしては、それだけには限定されないが、国立医学図書館、国立衛生研究所、メリーランド州Bethesda、20894の国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)から公的に利用可能なBasic Local Alighnment Search Tool(BLAST)プログラム(BLAST Manual、Altschulら、NCBI、NLM、NIH(Altschulら、J.Mol.Biol.、215:403~410頁(1990))を参照)が挙げられ、BLASTプログラムのバージョン2.0以上は、ギャップ(欠失および挿入)をアラインメント内に導入することを可能にし、ペプチド配列には、BLASTXを使用して配列同一性を決定することができ、ポリヌクレオチド配列には、BLASTNを使用して配列同一性を決定することができる。
【0090】
本明細書中で使用する「RNAi」または「RNA干渉」とは、二本鎖RNA(dsRNA)によって媒介される、配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスをいう。本明細書中で使用する「dsRNA」とは、部分的または完全に二本鎖であるRNAをいう。二本鎖RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子干渉核酸(siNA)、マイクロRNA(miRNA)などとも呼ばれる。RNAiプロセスにおいて、標的遺伝子の一部分と相補的な第1の(アンチセンス)鎖と第1のアンチセンス鎖と完全または部分的に相補的な第2の(センス)鎖とを含むdsRNAを、生物内に導入する。生物内への導入後、標的遺伝子に特異的なdsRNAは比較的小さな断片(siRNA)へとプロセッシングされ、続いて、生物全体にわたって分配されることができ、一世代の期間にわたって、標的遺伝子の完全または部分的な欠失から生じる表現型に酷使するようになり得る表現型をもたらす。
【0091】
マイクロRNA(miRNA)は、一般に約18~約25個のヌクレオチドの長さの非タンパク質コードRNAである。これらのmiRNAは、標的転写物のトランスでの切断を指示し、様々な調節および発達経路に関与する遺伝子の発現を負に調節する(Bartel、Cell、116:281~297頁(2004)、Zhangら、Dev.Biol.、289:3~16頁(2006))。したがって、miRNAは、成長および発達の様々な側面、ならびにシグナル伝達およびタンパク質分解に関与していることが示されている。最初のmiRNAが植物中で発見されて以来(Reinhartら、Genes Dev.、16:1616~1626頁(2002)、Parkら、Curr.Biol.、12:1484~1495頁(2002))、数百種類が同定されている。多数のマイクロRNA遺伝子(MIR遺伝子)が同定されており、データベースで公的に利用可能となっている(miRBase、microrna.sanger.ac.uk/sequences)。miRNAはまた、その内容全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許公開第2005/0120415号および第2005/144669A1号中にも記載されている。
【0092】
miRNAをコードしている遺伝子は、不完全なステム-ループ構造を形成することができる70~300bpの長さの一次miRNA(「pri-miRNA」と呼ばれる)を生じる。単一のpri-miRNAは1個から数個のmiRNA前駆体を含有し得る。動物では、pri-miRNAは、RNaseIII酵素Droshaおよびその補因子DGCR8/Pashaによって、核内で約65ntのより短いヘアピンRNA(pre-miRNA)へとプロセッシングされる。その後、pre-miRNAは細胞質へと輸出され、ここで別のRNaseIII酵素ダイサーによってさらにプロセッシングされて、約22ntの大きさのmiRNA/miRNA二重鎖を放出する。マイクロRNAの生物発生および機能に関する多数の総説が利用可能であり、たとえば、Bartel、Cell、116:281~297頁(2004)、Murchisonら、Curr.Opin.Cell Biol.、16:223~229頁(2004)、Dugasら、Curr.Opin.Plant Biol.、7:512~520頁(2004)、およびKim Nature Rev.Mol.Cell Biol.、6:376~385頁(2005)を参照されたい。
【0093】
RNA分子
本発明は、多価逆位キメラ二本鎖RNAまたは化学修飾したsiRNA分子であるRNA分子に関する。逆位キメラは、遺伝子発現の阻害において驚くべきほど有効であり、直列様式で配置した個々のsiRNAまたはキメラsiRNAと比較して、両方の標的遺伝子に対して予想外にはるかにより強力である。逆位キメラ分子はsiRNA送達プロセスを有利に単純化し、両方の遺伝子転写物の等価なモル標的化を確実にする。キメラ分子設計はまた、エンドソーム内で切断可能であることが実証されているリンカーが短いヌクレオチド橋であるため、2つのsiRNAの合成を単純化させる。
【0094】
本明細書中で使用する逆位キメラとは、2つのsiRNAを、互いにタンデムであるが、センスおよびアンチセンス配向に関して逆位に含む分子である(すなわち、第1の鎖は、5’から3’配向のセンス(パッセンジャー)鎖であり、リンカー(たとえばリン酸ジエステルDNA橋)が続き、第2の鎖は、やはり5’から3’配向のアンチセンス(ガイド)鎖である)。直列キメラもタンデムであるが、siRNAのアンチセンス鎖を同じ5’から3’配向で有する。キメラは3つのRNA分子から構成される。第1のRNA分子は、それぞれのsiRNAの第1の鎖を、任意選択でリンカーによって接続されて含む。逆位キメラでは、第1のRNA分子は、一方のsiRNAのセンス鎖および第2のsiRNAのアンチセンス鎖を含む。直列キメラでは、第1のRNA分子は、一方のsiRNAのアンチセンス鎖および第2のsiRNAのアンチセンス鎖を含む。第2のRNA分子は第1のsiRNAの第1の鎖と実質的に相補的であり、第3のRNA分子は第2のsiRNAの第1の鎖と実質的に相補的である。たとえば図7を参照されたい。
【0095】
逆位キメラ分子はまた、約30~60個のヌクレオチド、たとえば、約35~55個のヌクレオチド、たとえば、約40~50個のヌクレオチドの全体的な長さを有し得る。逆位キメラ分子内のsiRNAのそれぞれは、約15~30個のヌクレオチド、たとえば、約17~25個のヌクレオチド、たとえば、約19~23個のヌクレオチドの長さを有し得る。
【0096】
2つのsiRNAは、リンカー、たとえば代謝的に脆弱なリンカー(すなわち、逆位キメラ分子を細胞に送達または対象に投与した際に切断されるリンカー)、たとえばポリヌクレオチドリンカーによって接続され得る。リンカーは、約2~10個のヌクレオチドの長さ、たとえば約3~8個のヌクレオチド、たとえば4~6個のヌクレオチドであり得る。リンカー中のヌクレオチドは、DNAまたはRNA、たとえば、リン酸ジエステルチミン、リン酸ジエステルアデニン、リン酸ジエステルチミン/シトシン/アデニン(TCA)リンカーなどであり得る。
【0097】
本発明の一態様は、本発明の逆位キメラsiRNA分子に関し、分子は少なくとも1つの化学修飾を含む。一部の実施形態では、分子は完全に化学修飾されている。用語「完全に化学修飾した」とは、分子中のすべてのヌクレオチドが化学修飾を含有することを意味する。一部の実施形態では、分子中のそれぞれのヌクレオチドは、2’-O-メチル基または2’-フルオロ基で修飾されている。
【0098】
ある特定の実施形態では、逆位キメラsiRNA分子中のヌクレオチド連結のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40個が化学修飾されている。一部の実施形態では、逆位キメラsiRNA分子は少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含む。一部の実施形態では、siRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40個のホスホロチオエート連結を含む。一部の実施形態では、ホスホロチオエート連結は、分子のそれぞれの鎖の最後の2個のヌクレオチドの間に配置される。一部の実施形態では、分子はすべてホスホロチオエート連結を含む。
【0099】
逆位キメラ分子中のそれぞれのsiRNAは、標的遺伝子のmRNAと結合し、その遺伝子の発現を阻害することができる。一部の実施形態では、逆位キメラ分子中のそれぞれのsiRNAは、同じ標的遺伝子、たとえば遺伝子の異なる部分と結合する。他の実施形態では、逆位キメラ分子中のそれぞれのsiRNAは、たとえば2つの遺伝子の発現を同時に効率的に阻害するために、異なる標的遺伝子と結合する。
【0100】
標的遺伝子は、発現の阻害が所望される任意の目的の遺伝子であり得る。一部の実施形態では、標的遺伝子は、研究目的のために研究されているものである。他の実施形態では、標的遺伝子は、病状において過剰発現されるまたは他の様式で症状に関連するものであり、発現の阻害は治療または予防目的のためである。一部の実施形態では、標的遺伝子は、病原体、たとえば、細菌、ウイルス、真菌、または寄生生物、たとえばSARS-CoV-2などのコロナウイルスによって発現されるものである。一部の実施形態では、標的遺伝子は、癌において過剰発現されるまたはそれに関連するものである。特定の実施形態では、少なくとも1つのsiRNAはc-Mycを標的とする。一実施形態では、1つのsiRNAがc-Mycを標的とし、1つのsiRNAがKRASを標的とする。
【0101】
逆位キメラ分子中のそれぞれのsiRNAは、既知のsiRNAまたは後に開発されるものであり得る。一部の実施形態では、siRNAのうちの少なくとも1つは、本明細書中に開示するsiRNAである。
【0102】
一部の実施形態では、逆位キメラ分子は、それに付着した追加の直列siRNA、たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよい多くと二重鎖形成していてよい。たとえば、合計3つの可能なユニークなsiRNA配列をもたらす、直列キメラと二重鎖形成した逆位キメラ設計を実証する、図30を参照されたい。それぞれのsiRNAは、上述のようにリンカーによって隔てられていてよい。逆位キメラ分子中のそれぞれのsiRNAは、独立して、同じ標的遺伝子または異なる標的遺伝子と結合してそれを阻害し得る。それぞれの追加のsiRNAは、逆位キメラ分子中のsiRNAに対して直列または逆位の配向であってよい。追加のsiRNAのそれぞれの対は、逆位キメラ形式、たとえば逆位キメラ分子の鎖中であってよい。
【0103】
一部の実施形態では、逆位キメラ分子は、別の分子、たとえば、リンカー(たとえば担体と結合するため)またはリガンド(たとえば分子を特異的な細胞もしくは結合部位に標的化するため)と、共有的または非共有的に結合していてよい。コンジュゲーションのための適切な部位を図29に示す。
【0104】
一部の実施形態では、キメラ分子は、
配列番号63~65
配列番号66~68
配列番号69~71
配列番号71~74
配列番号75~77
配列番号78~80
配列番号81~83
配列番号84~86
配列番号87~89
配列番号90~92
配列番号93~95
配列番号96~98
配列番号99~101
配列番号102~104
のうちの1つと少なくとも90%同一である、たとえば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列の組を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0105】
本発明の第2の態様は、c-Mycを転写レベルで標的化することによる代替治療手法を表す。本発明は、c-MycメッセンジャーRNAと相補的に結合し、癌遺伝子の転写を阻害して、癌細胞において遺伝子ノックダウンおよび続くアポトーシスを誘導することができる、短鎖干渉RNA(siRNA)からなる。従来、siRNAは、その組織特異的の欠如、身体内での迅速な分解、および免疫活性化が原因で、臨床的制限に直面していた。しかし、本明細書における合成siRNAは、これらをin vivo分解から保護し、ナノ担体または他の送達系の必要性を追放する、薬物様特性を与える新規化学修飾を含有する。
【0106】
したがって、本発明の一態様は、アンチセンス鎖およびセンス鎖を含む二本鎖RNA分子に関し、アンチセンス鎖のヌクレオチド配列はc-Myc遺伝子のヌクレオチド配列の一領域と相補的であり、領域は約18~約25個の連続的なヌクレオチドから本質的になり、二本鎖RNA分子はc-Myc遺伝子の発現を阻害する。RNA分子は、RNA分子を有さない細胞(たとえば対照細胞または非形質転換細胞)と比較して減少した、細胞中におけるc-Mycの発現をもたらす。一部の実施形態では、c-Mycの発現は、少なくとも約50%、たとえば、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれより多く阻害される。
【0107】
二本鎖RNA分子は、約18~約25個(たとえば、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25個、またはそれ中の任意の範囲)のヌクレオチドを含む、それから本質的になる、またはそれからなることができる。RNA分子の操作を容易にするが、RNA干渉(RNAi)における二本鎖RNA分子の基本的な特徴または機能に大いに影響を与えないために、追加のヌクレオチドを3’末端、5’末端、または3’および5’末端の両方に付加することができる。さらに、RNAiにおける二本鎖RNA分子の基本的な特徴または機能に大いに影響を与えない1または2個のヌクレオチドを、本明細書中に開示した配列のうちの任意のものの一方または両方の末端から欠失させることができる。用語本明細書中で使用する「大いに影響を与える」とは、mRNAによってコードされているタンパク質の発現を阻害する能力の、約50%以下、たとえば、約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%以下、またはそれより少ない変化をいう。当業者に知られているように、そのような追加のヌクレオチドは、アンチセンス鎖の相補性を標的配列に沿って延長するヌクレオチドであることができる、および/または、そのようなヌクレオチドは、RNA分子もしくはRNA分子をコードしている核酸分子の操作を容易にするヌクレオチドであることができる。たとえば、siRNA二重鎖を安定化させるために使用し、siRNAの特異性に影響を与えない、3’末端のTTオーバーハングが存在し得る。
【0108】
本発明のdsRNAは、一方または両方の末端に一本鎖オーバーハングを任意選択で含み得る。二本鎖構造は、単一の自己相補的RNA鎖(すなわちヘアピンループを形成する)または2本の相補的なRNA鎖によって形成され得る。RNA二重鎖形成は、細胞の内部または外部のいずれでも開始され得る。本発明のdsRNAがヘアピンループを形成する場合、これは、細胞中のヘアピン配列を安定化させるための相補的RNA鎖間のヌクレオチドのストレッチである、イントロンおよび/またはヌクレオチドスペーサーを任意選択で含み得る。RNAは、細胞1個あたり少なくとも1つのコピーの送達を可能にする量で導入し得る。より高い用量の二本鎖材料がより有効な阻害をもたらし得る。
【0109】
特定の実施形態では、本発明は、阻害する標的遺伝子の一領域と完全に相補的なヌクレオチド配列を含有する二本鎖RNAを提供する。しかし、本発明を実施するために、二本鎖RNA分子のアンチセンス鎖と標的配列との間の100%の相補性は必要ないことが理解されよう。したがって、遺伝子の突然変異、株の多型性、または進化の多様性が原因で予想され得る配列の変動を寛容することができる。標的配列と比較して挿入、欠失、および単一点突然変異を有するRNA配列も、阻害に有効であり得る。
【0110】
一部の実施形態では、センス鎖のヌクレオチド配列は、配列番号1~9のうちのいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である、たとえば、配列番号1~9のうちのいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高く同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、センス鎖のヌクレオチド配列は、配列番号1~9のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
配列番号1 GAGGAUAUCUGGAAGAAAU
配列番号2 GAGAACAGUUGAAACACAA
配列番号3 AACACAAACUUGAACAGCU
配列番号4 AAGAAGAUGAGGAAGAAAU
配列番号5 CACAGCCCACUGGUCCUCAAGA
配列番号6 AAGAGGCGAACACACAACGUC
配列番号7 CAGAUCAGCAACAACCG
配列番号8 GAGACCUUCAUCAAAAACAUCAUCA
配列番号9 GAGCUAAAACGGAGCUUUU
【0111】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖のヌクレオチド配列は、配列番号19~27のうちのいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である、たとえば、配列番号19~27のうちのいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高く同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖のヌクレオチド配列は、配列番号19~27のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
配列番号19 AUUUCUUCCAGAUAUCCUC
配列番号20 UUGUGUUUCAACUGUUCUC
配列番号21 AGCUGUUCAAGUUUGUGUU
配列番号22 AUUUCUUCCUCAUCUUCUU
配列番号23 UCUUGAGGACCAGUGGGCUGUG
配列番号24 GACGUUGUGUGUUCGCCUCUU
配列番号25 CGGUUGUUGCUGAUCUG
配列番号26 UGAUGAUGUUUUUGAUGAAGGUCUC
配列番号27 AAAAGCUCCGUUUUAGCUC
【0112】
一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖のうちの一方または両方は、3’末端にTTオーバーハングを含む。したがって、一部の実施形態では、センス鎖は、配列番号10~18のうちのいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である、たとえば、配列番号10~18のうちのいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高く同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、センス鎖のヌクレオチド配列は、配列番号10~18のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
配列番号10 GAGGAUAUCUGGAAGAAAUdTdT
配列番号11 GAGAACAGUUGAAACACAAdTdT
配列番号12 AACACAAACUUGAACAGCUdTdT
配列番号13 AAGAAGAUGAGGAAGAAAUdTdT
配列番号14 CACAGCCCACUGGUCCUCAAGAdTdT
配列番号15 AAGAGGCGAACACACAACGUCdTdT
配列番号16 CAGAUCAGCAACAACCGdTdT
配列番号17 GAGACCUUCAUCAAAAACAUCAUCAdTdT
配列番号18 GAGCUAAAACGGAGCUUUUdTdT
【0113】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖のヌクレオチド配列は、配列番号28~36のうちのいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である、たとえば、配列番号28~36のうちのいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高く同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖のヌクレオチド配列は、配列番号28~36のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
配列番号28 AUUUCUUCCAGAUAUCCUCdTdT
配列番号29 UUGUGUUUCAACUGUUCUCdTdT
配列番号30 AGCUGUUCAAGUUUGUGUUdTdT
配列番号31 AUUUCUUCCUCAUCUUCUUdTdT
配列番号32 UCUUGAGGACCAGUGGGCUGUGdTdT
配列番号33 GACGUUGUGUGUUCGCCUCUUdTdT
配列番号34 CGGUUGUUGCUGAUCUGdTdT
配列番号35 UGAUGAUGUUUUUGAUGAAGGUCUCdTdT
配列番号36 AAAAGCUCCGUUUUAGCUCdTdT
【0114】
本発明の一部の実施形態では、二本鎖RNA分子のセンス鎖は、アンチセンス鎖と完全に相補的であることができる、または、センス鎖は、アンチセンス鎖と実質的に相補的または部分的に相補的であることができる。実質的または部分的に相補的とは、センス鎖およびアンチセンス鎖が、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のヌクレオチド対合でミスマッチであることができることを意味する。そのようなミスマッチは、センス鎖配列内、たとえば3’末端付近に導入して、当業者に知られているように、ダイサーによる二本鎖RNA分子のプロセッシングを増強すること、本発明のキメラ核酸分子または人工マイクロRNA前駆体分子内に挿入されたsiRNA分子中のミスマッチのパターンを複製することなどを行うことができる。そのような修飾は、二重鎖の一端で塩基対合を弱めて鎖の不斉性を生じ、したがって、センス鎖ではなくアンチセンス鎖がプロセッシングされ、意図する遺伝子がサイレンシングされる可能性を増強させる(GengおよびDing、「Double-mismatched siRNAs enhance selective gene silencing of a mutant ALS-causing Allele1」、Acta Pharmacol.Sin.、29:211~216頁(2008)、Schwarzら、「Asymmetry in the assembly of the RNAi enzyme complex」、Cell、115:199~208頁(2003))。
【0115】
本発明の二本鎖RNA分子は、当技術分野で知られている任意の種類のRNA干渉分子の形態であり得る。一部の実施形態では、二本鎖RNA分子は低分子干渉RNA(siRNA)分子である。他の実施形態では、二本鎖RNA分子は短いヘアピンRNA(shRNA)分子である。他の実施形態では、二本鎖RNA分子はマイクロRNA前駆体分子の一部である。
【0116】
化学修飾したsiRNA
本発明の一態様は、本発明のc-Myc mRNAを標的とするsiRNA分子に関し、siRNAは少なくとも1つの化学修飾を含む。一部の実施形態では、siRNA分子は完全に化学修飾されている。用語「完全に化学修飾した」とは、siRNA中のすべてのヌクレオチドが化学修飾を含有することを意味する。一部の実施形態では、前記siRNA分子中のそれぞれのヌクレオチドは、2’-O-メチル基または2’-フルオロ基で修飾されている。
【0117】
ある特定の実施形態では、siRNA中のヌクレオチド連結のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19個が化学修飾されている。一部の実施形態では、siRNAは少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含む。一部の実施形態では、siRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19個のホスホロチオエート連結を含む。一部の実施形態では、siRNAはすべてホスホロチオエート連結を含む。
【0118】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの化学修飾を含むsiRNA分子は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、siRNA分子は、以下の配列対のうちの1つを含む:
配列番号1のセンス鎖および配列番号19のアンチセンス鎖、
配列番号2のセンス鎖および配列番号20のアンチセンス鎖、
配列番号3のセンス鎖および配列番号21のアンチセンス鎖、
配列番号4のセンス鎖および配列番号22のアンチセンス鎖、
配列番号5のセンス鎖および配列番号23のアンチセンス鎖、
配列番号6のセンス鎖および配列番号24のアンチセンス鎖、
配列番号7のセンス鎖および配列番号25のアンチセンス鎖、
配列番号8のセンス鎖および配列番号26のアンチセンス鎖、または
配列番号9のセンス鎖および配列番号27のアンチセンス鎖。
【0119】
一部の実施形態では、siRNAは、配列番号1~9および19~27のうちの1つと少なくとも90%同一である、たとえば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0120】

【0121】
ある特定の実施形態では、siRNA分子は完全に化学修飾されており、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、siRNA分子は、以下の配列対のうちの1つを含む:
配列番号37のセンス鎖および配列番号38のアンチセンス鎖、
配列番号39のセンス鎖および配列番号40のアンチセンス鎖、
配列番号41のセンス鎖および配列番号42のアンチセンス鎖、
配列番号43のセンス鎖および配列番号44のアンチセンス鎖、または
配列番号45のセンス鎖および配列番号46のアンチセンス鎖。
【0122】
一部の実施形態では、siRNAは、配列番号37~46のうちの1つと少なくとも90%同一である、たとえば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0123】
一部の実施形態では、siRNA分子は、ヒトKRAS mRNAを標的とする第2のsiRNA分子(たとえば、その全体で本明細書中に参考として組み込まれている米国特許公開第2020/0248185号中に開示されているsiRNA分子)とタンデムで(たとえば、共有的または非共有的に連結させることによって一緒に投与することで)合わせることができる。一部の実施形態では、ヒトKRAS mRNAを標的とするsiRNA分子は完全に化学修飾されており、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、siRNA分子は、以下の配列対のうちの1つを含む:
配列番号47のセンス鎖および配列番号48のアンチセンス鎖、
配列番号49のセンス鎖および配列番号50のアンチセンス鎖。
【0124】
ある特定の実施形態では、KRASを標的とするsiRNA中のヌクレオチド連結のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19個が化学修飾されている。一部の実施形態では、KRASを標的とするsiRNAは少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含む。一部の実施形態では、KRASを標的とするsiRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19個のホスホロチオエート連結を含む。一部の実施形態では、KRASを標的とするsiRNAはすべてホスホロチオエート連結を含む。
【0125】
一部の実施形態では、KRASを標的とするsiRNAは、配列番号47~50のうちの1つと少なくとも90%同一である、たとえば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0126】
逆位キメラsiRNA分子、二本鎖RNA分子、または化学修飾したsiRNA分子は、化学合成および酵素ライゲーション反応を使用して、当技術分野で知られている手順によって構築し得る。たとえば、逆位キメラsiRNA分子、二本鎖RNA、または化学修飾したsiRNA分子は、天然に存在するヌクレオチド、あるいは、分子の生物学的安定性を増加させる、または逆位キメラsiRNA分子、二本鎖RNA、もしくは化学修飾したsiRNA分子と標的ヌクレオチド配列との間に形成された二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計された、様々な修飾ヌクレオチドを使用して化学合成してよく、たとえば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。逆位キメラsiRNA分子、二本鎖RNA、または化学修飾したsiRNA分子を生成するために使用することができる、修飾ヌクレオチドの例としては、それだけには限定されないが、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン(queosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン(queosine)、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ウィブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンが挙げられる。あるいは、二本鎖RNAは、二本鎖RNAをコードしている核酸がそれ内にクローニングされた発現ベクターを使用して生成することができる。
【0127】
逆位キメラsiRNA分子、二本鎖RNA、または化学修飾したsiRNA分子は、ヌクレオチド間架橋リン酸残基のうちの少なくとも1つまたはすべてが修飾リン酸基、たとえば、ホスホン酸メチル、メチルホスホノチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート、およびホスホロアミデートである、ヌクレオチド配列をさらに含むことができる。たとえば、ヌクレオチド間架橋リン酸残基のすべてまたは1つおきを、記載のように修飾することができる。別の非限定的な例では、逆位キメラsiRNA分子、二本鎖RNA、または化学修飾したsiRNA分子は、ヌクレオチドのうちの少なくとも1つまたはすべてが2’低級アルキル部分(たとえば、C~C、直鎖状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル、たとえば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニル、およびイソプロピル)を含有する、ヌクレオチド配列である。別の例では、ヌクレオチドのうちの1つまたは複数は、2’-フルオロヌクレオチド、2-O-メチルヌクレオチド、またはロックド核酸ヌクレオチドであり得る。たとえば、ヌクレオチドのすべてまたは1つおきを、記載のように修飾することができる。修飾ヌクレオチド塩基を含有するものを含めた、そのポリヌクレオチド分子作製方法の教示についてその全体で本明細書中に参考として組み込まれている、Furdonら、Nucleic Acids Res.、17:9193(1989)、Agrawalら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:1401(1990)、Bakerら、Nucleic Acids Res.、18:3537(1990)、Sproatら、Nucleic Acids Res.、17:3373(1989)、WalderおよびWalder、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5011(1988)も参照されたい)。
【0128】
本発明は、本発明のRNA分子を含む核酸構築体にさらに関する。本発明は、本発明のRNA分子をコードしている核酸構築体およびRNA分子をコードしている核酸分子を含む核酸構築体にさらに関する。これらの実施形態のそれぞれにおいて、核酸構築体は、ベクターまたはプラスミド、たとえば発現ベクターであり得る。
【0129】
本発明の別の態様は、本発明の逆位キメラsiRNA、分子、RNA分子、化学修飾したsiRNA分子、または核酸構築体と、別の構成要素、たとえば適切な担体とを含む組成物に関する。一部の実施形態では、組成物幅は、本発明の逆位キメラsiRNA、分子、RNA分子、化学修飾したsiRNA分子、または核酸構築体のうちの2つ以上を含み、2つ以上の逆位キメラsiRNA分子、RNA分子、または化学修飾したsiRNA分子は、それぞれ異なるアンチセンス鎖を含む。ある特定の実施形態では、2つ以上のRNA分子は、同じ核酸構築体上、異なる核酸構築体上、またはその任意の組合せで存在する。一部の実施形態では、組成物は、本発明の逆位キメラsiRNA分子、RNA分子、化学修飾したsiRNA分子、または核酸構築体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。
【0130】
本発明の組成物は、逆位キメラsiRNA分子、RNA分子、化学修飾したsiRNA分子、および核酸構築体のうちの任意のものを、任意の組合せかつ互いと比較して任意の比で含む、それから本質的になる、またはそれからなることができることを理解されよう。さらに、「2つ以上」とは、2、3、4、5、6、7、8、9、10個などの、本発明の逆位キメラsiRNA分子、RNA分子、化学修飾したsiRNA分子、および核酸構築体の合計数までを意味する。
【0131】
本発明の一部の態様では、組成物または医薬組成物は、たとえば、逆位キメラsiRNA分子、RNA分子、化学修飾したsiRNA分子、または核酸構築体の安定性を増強させるための、本発明の逆位キメラsiRNA分子、RNA分子、化学修飾したsiRNA分子、または核酸構築体の対象への送達を増強させる、追加の構成要素をさらに含む。一部の実施形態では、追加の構成要素は、粒子、たとえば微粒子またはナノ粒子であり得る。一部の実施形態では、粒子は、脂質粒子、たとえばリポソーム、たとえばマイクロリポソームまたはナノリポソームである。リポソーム、マイクロリポソーム、またはナノリポソームは、リポソームの調製に適切であることが当技術分野で知られている任意の構成要素を含有し得る。一部の実施形態では、リポソームは、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)を含む。リポソームは、当技術分野で知られている方法によって、たとえば、その全体で本明細書中に参考として組み込まれているPecotら、Mol.Cancer Ther.、13:2876(2014)に記載のように調製し得る。一部の実施形態では、RNA分子は、たとえばArbutus Biopharma (ペンシルベニア州Doylestown)によって提供されるものなどの粒子を使用して、安定核酸脂質粒子(SNALP)へと形成する。ある特定の実施形態では、脂質粒子は、コレステロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、PEG-cDMAまたはPEG-cDSA、および1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N,N-ジメチル)アミノプロパン(DLinDMA)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる(Judgeら、J.Clin.Invest.、119:661(2009)を参照)。一部の実施形態では、脂質粒子は、本発明の逆位キメラsiRNA分子、RNA分子、または化学修飾したsiRNA分子のうちの2つ以上を含む。一部の実施形態では、追加の構成要素は、逆位キメラsiRNA分子、RNA分子、化学修飾したsiRNA分子、または核酸構築体が共有的または非共有的にコンジュゲートされている標的化された送達部分、たとえば、リガンド、アプタマー、またはモノクローナル抗体である。
【0132】
本発明は、本発明のRNA分子および/または核酸構築体を含む細胞を包含する。したがって、一部の実施形態では、本発明は、本発明のRNA分子および/または核酸構築体および/または組成物を含む形質転換細胞を提供し、形質転換細胞は、対照細胞と比較してc-Mycの発現が低下している。
【0133】
方法
本発明の核酸分子、核酸構築体、および/または組成物を用いた、様々な方法が本明細書中に提供される。したがって、一態様では、本発明は、細胞中における標的遺伝子の発現を阻害する方法であって、細胞を、本発明のRNA分子、逆位キメラsiRNA分子、化学修飾したsiRNA分子、核酸構築体、組成物、および/または医薬組成物と接触させ、それによって、細胞中における標的遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。
【0134】
本発明の別の態様は、それを必要としている対象において、標的遺伝子に関連する障害を処置する方法であって、対象に、本発明のRNA分子、逆位キメラsiRNA分子、化学修飾したsiRNA分子、核酸構築体、組成物、および/または医薬組成物を送達し、それによって、対象において障害を処置することを含む方法に関する。標的遺伝子に関連する障害は、標的遺伝子の発現または過剰発現が、障害を引き起こす、または障害の1つもしくは複数の症状を引き起こす、または障害を引き起こしている生物によって発現されている、障害である。
【0135】
本発明は、ヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害する方法であって、細胞を、本発明のRNA分子、逆位キメラsiRNA分子、化学修飾したsiRNA分子、核酸構築体、組成物、および/または医薬組成物と接触させ、それによって、細胞中におけるヒトc-Myc遺伝子の発現を阻害することを含む方法を、さらに提供する。
【0136】
また、それを必要としている対象において、ヒトc-Myc遺伝子の過剰発現を含む癌を処置する方法であって、対象に、本発明のRNA分子、逆位キメラsiRNA分子、化学修飾したsiRNA分子、核酸構築体、組成物、および/または医薬組成物を送達し、それによって、対象において癌を処置することを含む方法も、本明細書中に提供する。ヒトc-Myc遺伝子の過剰発現を含む癌は、1つまたは複数の細胞がc-Myc遺伝子を過剰発現する癌、たとえば腫瘍である。
【0137】
これらの態様のそれぞれの一実施形態では、対象は、障害、たとえば癌を診断された者であり得る。別の実施形態では、対象は、障害、たとえば癌を発生するリスクにある(たとえば、遺伝性要因、喫煙、ウイルス感染、化学薬品への曝露などが原因でかかりやすい)者であり得る。さらなる実施形態では、対象は、病原体に感染した者であり得る。さらなる実施形態では、対象は、標的遺伝子、たとえばc-Myc遺伝子を過剰発現するとして同定され、障害、たとえば癌を診断されたまたはされていない者であり得る。
【0138】
本発明の二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子は、当技術分野で知られている任意の方法によって、たとえば形質移入または微量注入によって、たとえば脂質粒子を含む組成物の一部として、細胞内に直接送達することができる。他の実施形態では、二本鎖RNAは、RNAをコードしているポリヌクレオチドの形態で対象に送達して、対象の細胞内で二本鎖RNAの発現を生じさせることができる。当業者は、本発明のRNAをコードしている単離したポリヌクレオチドが、典型的には、適切な発現制御配列、たとえば転写/翻訳制御シグナルおよびポリアデニル化シグナルと会合しているであろうことを理解するであろう。
【0139】
所望するレベルおよび組織特異的発現に応じて、様々なプロモーター/エンハンサー要素を使用できることが、さらに理解されよう。プロモーターは、所望する発現パターンに応じて、構成的または誘導性であることができる。プロモーターはネイティブまたは外来であることができ、天然または合成配列であることができる。外来とは、転写開始領域が、転写開始領域を導入する野生型宿主中で見つからないことを意図する。プロモーターは、目的の標的細胞(複数可)中で機能するように選択される。
【0140】
例示すると、RNAコード配列は、サイトメガロウイルス(CMV)主要前初期プロモーター、アルブミンプロモーター、伸長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、またはラウス肉腫ウイルスプロモーターと作動可能に会合させることができる。
【0141】
誘導性プロモーター/エンハンサー要素としては、ホルモン誘導性および金属誘導性要素、ならびに外因的供給される化合物によって調節される他のプロモーターが挙げられ、それだけには限定されないが、亜鉛誘導性メタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088号を参照)、エクジソン昆虫プロモーター(Noら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346(1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547(1992))、テトラサイクリン誘導系(Gossenら、Science、268:1766(1995)、Harveyら、Curr.Opin.Chem.Biol.、2:512(1998)も参照)、RU486誘導系(Wangら、Nat.Biotech.、15:239(1997)、Wangら、Gene Ther.、4:432(1997))、およびラパマイシン誘導系(Magariら、J.Clin.Invest.、100:2865(1997))が挙げられる。
【0142】
他の組織特異的プロモーターまたは調節プロモーターとしては、それだけには限定されないが、典型的にはニューロンにおいて組織特異性を与えるプロモーターが挙げられる。これらとしては、それだけには限定されないが、シナプシン1、チューブリンα1、血小板由来成長因子B鎖、チロシンヒドロキシラーゼ、ニューロン特異的エノラーゼ、および神経細線維のプロモーターが挙げられる。骨格筋細胞プロモーターとしては、それだけには限定されないが、β-アクチン、Pitx3、クレアチンキナーゼ、およびミオシン軽鎖のプロモーターが挙げられる。心筋細胞プロモーターとしては、それだけには限定されないが、心臓アクチン、心臓トロポニンT、トロポニンC、ミオシン軽鎖-2、およびα-ミオシン重鎖のプロモーターが挙げられる。島(ベータ)細胞プロモーターとしては、それだけには限定されないが、グルコキナーゼ、ガストリン、インスリン、および膵島アミロイドポリペプチドが挙げられる。
【0143】
さらに、特異的開始シグナルが、挿入されたRNAコード配列の効率的な翻訳に一般に必要である。ATG開始コドンおよび隣接配列を含むことできるこれらの翻訳制御配列は、天然および合成の両方の様々な起源のものであることができる。
【0144】
二本鎖RNAをコードしている単離した核酸は、発現ベクター内に取り込ませることができる。様々な宿主細胞と適合性のある発現ベクターは当技術分野で周知であり、核酸の転写および翻訳に適切な要素を含有する。典型的には、発現ベクターは「発現カセット」を含有し、これは、5’から3’の方向で、プロモーター、プロモーターと作動可能に会合させた、二本鎖RNAをコードしているコード配列、ならびに任意選択でRNAポリメラーゼ用の停止シグナルおよびポリアデニラーゼ用のポリアデニル化シグナルを含む終止配列を含む。
【0145】
当技術分野で知られている動物および哺乳動物プロモーターの非限定的な例としては、それだけには限定されないが、SV40初期(SV40e)プロモーター領域、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の3’末端反復配列(LTR)中に含有されるプロモーター、アデノウイルス(Ad)のE1Aまたは主要後期プロモーター(MLP)遺伝子のプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、バキュロウイルスIE1プロモーター、伸長因子1アルファ(EF1)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、ユビキチン(Ubc)プロモーター、アルブミンプロモーター、マウスメタロチオネイン-Lプロモーターおよび転写制御領域の調節配列、遍在性プロモーター(HPRT、ビメンチン、α-アクチン、チューブリンなど)、中間径フィラメント(デスミン、神経細線維、ケラチン、GFAPなど)のプロモーター、治療遺伝子(MDR、CFTR、または第VIII型因子のものなど)のプロモーター、ならびに病因および/または疾患関連プロモーターが挙げられる。さらに、本発明のこれらの発現配列のうちの任意のものを、エンハンサーおよび/または調節配列などの付加によって修飾することができる。
【0146】
本発明の実施形態において使用し得るエンハンサーとしては、それだけには限定されないが、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー、伸長因子I(EF1)エンハンサー、酵母エンハンサー、ウイルス遺伝子エンハンサーなどが挙げられる。
【0147】
停止制御領域、すなわちターミネーターまたはポリアデニル化配列は、好ましい宿主に対してネイティブな様々な遺伝子に由来し得る。本発明の一部の実施形態では、停止制御領域は、合成配列、合成ポリアデニル化シグナル、SV40後期ポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、ウイルスターミネーター配列などを含み得る、またはそれに由来し得る。
【0148】
当業者には、任意の適切なベクターを使用して、ポリヌクレオチドを細胞または対象に送達できることが明白であろう。ベクターは、in vivoで細胞に送達することができる。他の実施形態では、ベクターは、ex vivoで細胞に送達することができ、その後、ベクターを含有する細胞を対象に送達する。送達ベクターの選択は、標的宿主の年齢および種、in vitro対in vivo送達、所望する発現のレベルおよび持続、意図する目的(たとえば治療またはスクリーニング用)、標的細胞または臓器、送達経路、単離したポリヌクレオチドの大きさ、安全性の懸念などを含む、当技術分野で知られているいくつかの要因に基づいて行うことができる。
【0149】
適切なベクターとしては、それだけには限定されないが、プラスミドベクター、ウイルスベクター(たとえば、レトロウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよび他のパルボウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、または単純ヘルペスウイルス)、脂質ベクター、ポリリシンベクター、合成ポリアミノポリマーベクターなどが挙げられる。
【0150】
当技術分野で知られている任意のウイルスベクターを本発明において使用することができる。組換えウイルスベクターを生成するためおよびウイルスベクターを核酸送達に使用するためのプロトコルは、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley & Sons,Inc.、New York)および他の標準的な実験室の手引き(たとえばVectors for Gene Therapy、Current Protocols in Human Genetics、John Wiley and Sons,Inc.、1997)中に見つけることができる。
【0151】
非ウイルス移行方法も用いることができる。核酸移行のための多くの非ウイルス方法は、高分子の取り込みおよび細胞内輸送について、哺乳動物細胞によって使用される通常の機構に依存する。特定の実施形態では、非ウイルス核酸送達系は、標的細胞による核酸分子の取り込みについて、エンドサイトーシス経路に依存する。この種類の例示的な核酸送達系としては、リポソームに由来する系、ポリリシンコンジュゲート、および人工ウイルスエンベロープが挙げられる。
【0152】
特定の実施形態では、プラスミドベクターを本発明の実施において使用する。たとえば、組織内への注射によって、プラスミドを筋肉細胞内に導入することができる。発現は数カ月間に及ぶことができるが、陽性細胞の数は典型的には低い(Wolffら、Science、247:247(1989))。カチオン性脂質は、一部の培養細胞内への核酸の導入を助けることが実証されている(FelgnerおよびRingold、Nature、337:387(1989))。カチオン性脂質プラスミドDNA複合体をマウスの循環内に注射することは、肺におけるDNAの発現をもたらすことが示されている(Brighamら、Am.J.Med.Sci.、298:278(1989))。プラスミドDNAの1つの利点は、非複製細胞内に導入できることである。
【0153】
代表的な実施形態では、核酸分子(たとえばプラスミド)を、その表面上に正電荷を保有する脂質粒子中に捕捉させ、任意選択で、標的組織の細胞表面抗原に対する抗体を用いてタグ付けすることができる(Mizunoら、No Shinkei Geka、20:547(1992)、PCT公開WO91/06309号、日本特許出願第1047381号、および欧州特許公開EP-A-43075号)。
【0154】
両親媒性陽イオン性分子からなるリポソームは、in vitroおよびin vivoでの核酸送達のための非ウイルスベクターとして有用である(Crystal、Science、270:404(1995)、Blaeseら、Cancer Gene Ther.、2:291(1995)、Behrら、Bioconjugate Chem.、5:382(1994)、Remyら、Bioconjugate Chem.、5:647(1994)、およびGaoら、Gene Therapy、2:710(1995)中に総説)。正荷電リポソームは、静電相互作用を介して負荷電核酸と複合体形成して、脂質:核酸複合体を形成すると考えられている。脂質:核酸複合体は、核酸移行ベクターとしていくつかの利点を有する。ウイルスベクターとは異なり、脂質:核酸複合体を使用して、本質的に無制限の大きさの発現カセットを移行させることができる。複合体はタンパク質を欠くため、これらが誘起する可能性がある免疫原性および炎症反応はより少ない。さらに、これらは複製または組換えられて感染性因子を形成することができず、また、低い組込み頻度を有する。いくつかの出版物が、両親媒性カチオン性脂質がin vivoおよびin vitroでの核酸送達を媒介できることを実証している(Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:7413(1987)、Loefflerら、Meth.Enzymol.、217:599(1993)、Felgnerら、J.Biol.Chem.、269:2550(1994))。
【0155】
いくつかのグループが、動物およびヒトの両方におけるin vivo形質移入について、両親媒性カチオン性脂質:核酸複合体の使用を報告している(Gaoら、Gene Therapy、2:710(1995)、Zhuら、Science、261:209(1993)、およびThierryら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92:9742(1995)中に総説)。米国特許第6,410,049号は、長い貯蔵寿命を有するカチオン性脂質:核酸複合体を調製する方法を記載している。
【0156】
また、核移行シグナルを使用して、二本鎖RNAまたは発現ベクターの、核の近く内への標的化、および/または核内へのその侵入を増強させることができる。そのような核移行シグナルは、SV40ラージT抗原NLSまたはヌクレオプラスミンNLSなどのタンパク質またはペプチドであることができる。これらの核移行シグナルは、NLS受容体(カリオフェリンアルファ)などの様々な核輸送因子と相互作用し、その後、これがカリオフェリンベータと相互作用する。
【0157】
発現ベクターは、原核または真核細胞中における二本鎖RNAの発現用に設計することができる。たとえば、二本鎖RNAは、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞、昆虫細胞(たとえばバキュロウイルス発現系)、酵母細胞、植物細胞、または哺乳動物細胞中で発現させることができる。一部の適切な宿主細胞は、Goeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、185、Academic Press、カリフォルニア州San Diego、(1990)中にさらに記述されている。細菌ベクターの例としては、それだけには限定されないが、pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen)、pBS、pD10、phagescript、psiX174、pbluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、およびpRIT5(Pharmacia)が挙げられる。出芽酵母(S.cerevisiae)中での発現のためのベクターの例としては、pYepSecl(Baldariら、EMBO J.、6:229(1987))、pMFa (KurjanおよびHerskowitz、Cell、30:933(1982))、pJRY88(Schultzら、Gene、54:113(1987))、およびpYES2(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州San Diego)が挙げられる。培養昆虫細胞(たとえばSf9細胞)中でタンパク質を生成させるために核酸の発現に利用可能な、バキュロウイルスベクターの非限定的な例としては、pAcシリーズ(Smithら、Mol.Cell.Biol.、3:2156(1983))およびpVLシリーズ(LucklowおよびSummers Virology、170:31(1989))が挙げられる。
【0158】
哺乳動物発現ベクターの例としては、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)pSVK3、PBPV、pMSG、PSVL(Pharmacia)、pCDM8(Seed、Nature、329:840(1987))、およびpMT2PC(Kaufmanら、EMBO J.、6:187(1987))が挙げられる。哺乳動物細胞中で使用する場合、発現ベクターの制御機能はしばしばウイルス調節要素によって提供される。たとえば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40に由来する。
【0159】
ウイルスベクターは、細胞および生きた動物対象における多種多様な遺伝子送達の応用において使用されている。使用することができるウイルスベクターとしては、それだけには限定されないが、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、アデノウイルス、ジェミニウイルス、およびカリモウイルスのベクターが挙げられる。非ウイルスベクターの非限定的な例としては、プラスミド、リポソーム、帯電脂質(サイトフェクチン)、核酸-タンパク質複合体、およびバイオポリマーが挙げられる。目的の核酸に加えて、ベクターはまた、核酸移行結果(特定組織への送達、発現の持続期間など)の選択、測定、およびモニタリングに有用な1つもしくは複数の調節領域および/または選択マーカーも含み得る。
【0160】
上述の調節制御配列に加えて、組換え発現ベクターは追加のヌクレオチド配列を含有することができる。たとえば、組換え発現ベクターは、ベクターを取り込んだ宿主細胞を同定するための選択マーカー遺伝子をコードすることができる。
【0161】
ベクターDNAは、慣用の形質転換または形質移入技法を介して原核または真核細胞内に導入することができる。本明細書中で使用する用語「形質転換」および「形質移入」とは、外来核酸(たとえばDNAおよびRNA)を宿主細胞内に導入するための、当分野で認識されている様々な技法をいい、それだけには限定されないが、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介性形質移入、リポフェクション、電気穿孔、微量注入、DNAをロードしたリポソーム、リポフェクタミン-DNA複合体、細胞超音波処理、高速微粒子を使用した遺伝子照射、およびウイルス媒介性形質移入が挙げられる。宿主細胞を形質転換させるまたは形質移入するための適切な方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor、NY、1989)および他の実験室の手引き中に見つけることができる。
【0162】
安定組込みが所望される場合、しばしば、小画分の細胞(具体的には哺乳動物細胞)のみが、外来DNAをそのゲノム内に組み込む。組み込み体を同定および選択するために、選択マーカー(たとえば抗生物質に対する耐性)をコードする核酸を、目的の核酸と共に宿主細胞内に導入することができる。好ましい選択マーカーとしては、G418、ハイグロマイシン、およびメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を与えるものが挙げられる。選択マーカーをコードしている核酸は、目的の核酸を含むものと同じベクター上で宿主細胞内に導入することができるか、または別個のベクター上で導入することができる。導入核酸で安定に形質移入した細胞は、薬物選択によって同定することができる(たとえば、選択マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生存する一方で、他の細胞は死滅する)。
【0163】
一実施形態では、本発明の二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子を対象に直接投与する。一般に、本発明の化合物を薬学的に許容される担体(たとえば生理食塩水)中に懸濁させ、経口、外用、もしくは静脈内注入によって投与する、または皮下、筋肉内、頭蓋内、くも膜下腔内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻腔内、胃内、気管内、または肺内で注射する。これらは、好ましくは、疾患または障害の部位、たとえば肺、腸管、または膵臓に直接送達する。必要な投与量は、投与経路の選択肢、配合物の性質、患者の病気の性質、対象の大きさ、体重、表面積、年齢、および性別、投与する他の薬物、ならびに担当医の判断に依存する。適切な投与量は0.01~100.0μg/kgの範囲内である。様々な投与経路の異なる効率に鑑みて、必要投与量の幅広い変動を予想するべきである。たとえば、経口投与は、i.v.注射による投与よりも高い投与量(たとえば、2、3、4、6、8、10、20、50、100、150、またはそれより高い倍数)を要することが予想される。これらの投与量レベルの変動は、当技術分野において十分に理解されているように、最適化のための標準の経験的ルーチンを使用して調節することができる。投与は単回または複数回であることができる。適切な送達ビヒクル(たとえばポリマー微粒子または埋め込み型装置)における阻害剤のカプセル封入は、特に経口送達のために、送達の効率を増加させ得る。
【0164】
特定の実施形態によれば、二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子は、in vivoで特異的細胞または組織に標的化することができる。リポソームおよびウイルスベクター系を含めた標的化送達ビヒクルは当技術分野で知られている。たとえば、リポソームは、リポソームに取り込まれた抗体、可溶性受容体、またはリガンドなどの標的化剤を使用することによって特定の標的細胞または組織に向けて、標的化分子が結合することができる特定の細胞または組織を標的とすることができる。標的化リポソームは、たとえば、そのそれぞれがその全体で本明細書中に参考として組み込まれている)、Hoら、Biochemistry、25:5500(1986)、Hoら、J.Biol.Chem.、262:13979(1987)、Hoら、J.Biol.Chem.、262:13973(1987)、およびHuangらの米国特許第4,957,735号中に記載されている。エンベロープウイルスベクターは、ウイルスが特異的細胞種に感染するようにエンベロープタンパク質を修飾または置換することによって、核酸分子を標的細胞に送達するように改変することができる。アデノウイルスベクターでは、付着線維をコードしている遺伝子を、細胞特異的受容体と結合するタンパク質ドメインをコードするように改変することができる。ヘルペスウイルスベクターは、中枢および末梢神経系の細胞を天然で標的とする。あるいは、投与経路を使用して、特定的細胞または組織を標的とすることができる。たとえば、アデノウイルスベクターの冠内投与は、遺伝子の心筋細胞への送達に有効であることが示されている(Mauriceら、J.Clin.Invest.、104:21(1999))。コレステロール含有陽イオン性リポソームの静脈内送達は、肺の組織を優先的に標的とすること(Liuら、Nature Biotechnol.、15:167(1997))、ならびにin vivoでの遺伝子の移行および発現を有効に媒介することが示されている。核酸分子の標的化in vivo送達の成功の他の例は、当技術分野で知られている。最後に、組換え核酸分子は、標的細胞中で選択的に誘導され、非標的細胞中で実質的に不活性に保たれる、転写制御配列および好ましくはプロモーターを選択することによって、標的細胞中で選択的に(すなわち、優先的に、実質的に排他的に)発現させることができる。
【0165】
本発明の二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子は、任意選択で他の治療剤と併せて送達することができる。追加の治療剤は、本発明の二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子と同時発生的に送達することができる。本明細書中で使用する言葉「同時発生的に」とは、合わせた効果を生じるために十分に近い時間を意味する(すなわち、同時発生的は、同時であることができる、または、互いの前後の短期間内に起こる2つ以上の事象であることができる)。一実施形態では、本発明の二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子は、1)ビンカアルカロイド(たとえば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、2)エピポドフィロトキシン(たとえばエトポシドおよびテニポシド)、3)抗生物質(たとえば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシン(マイトマイシンC))、4)酵素(たとえばL-アスパラギナーゼ)、5)生物学的応答調節物質(たとえばインターフェロン-アルファ)、6)白金配位複合体(たとえばシスプラチンおよびカルボプラチン)、7)アントラセネジオン(たとえばミトキサントロン)、8)置換尿素(たとえばヒドロキシ尿素)、9)メチルヒドラジン誘導体(たとえばプロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH))、10)副腎皮質抑制剤(たとえば、ミトタン(o,p’-DDD)およびアミノグルテチミド)、11)副腎皮質ステロイド(たとえばプレドニゾン)、12)プロゲスチン(たとえば、カプロン酸ヒドロプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、および酢酸メゲストロール)、13)エストロゲン(たとえばジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、14)抗エストロゲン剤(たとえばタモキシフェン)、15)アンドロゲン(たとえばプロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)、16)抗アンドロゲン剤(たとえばフルタミド)、ならびに17)ゴナドトロピン放出ホルモン類似体(たとえばロイプロリド)などの、癌を処置するために有用な薬剤と併せて投与する。別の実施形態では、本発明の化合物は、抗血管形成剤、たとえば、VEGFに対する抗体(たとえば、ベバシズマブ(AVASTIN)、ラニビズマブ(LUCENTIS))および血管形成の他の促進因子(たとえば、bFGF、アンジオポエチン-1)に対する抗体、アルファ-v/ベータ-3血管インテグリンに対する抗体(たとえばVITAXIN)、アンジオスタチン、エンドスタチン、ダルテパリン、ABT-510、CNGRCペプチドTNFアルファコンジュゲート、シクロホスファミド、コンブレタスタチンA4ホスフェート、ジメチルキサンテノン酢酸、ドセタキセル、レナミドマイド、エンザスタウリン、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子配合物(Abraxane)、ダイズイソフラボン(ゲニステイン)、タモキシフェンクエン酸塩、サリドマイド、ADH-1(EXHERIN)、AG-013736、AMG-706、AZD2171、ソラフェニブトシル酸塩、BMS-582664、CHIR-265、パゾパニブ、PI-88、バタラニブ、エベロリムス、スラミン、スニチニブリンゴ酸塩、XL184、ZD6474、ATN-161、シレニグチド(cilenigtide)、ならびにセレコキシブ、またはその任意の組合せと併せて投与する。
【0166】
本明細書中で使用する用語「癌」とは、任意の良性または悪性の細胞異常成長をいう。例としては、それだけには限定されないが、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、皮膚癌、膵癌、結腸癌、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣癌、脳癌、原発性脳癌腫、頭部頸部癌、神経膠腫、膠芽細胞腫、肝臓癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、頭部または頸部癌腫、乳癌、子宮癌、肺癌、小細胞肺癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、膀胱癌、膵癌、胃癌腫、結腸癌、前立腺癌、泌尿生殖器系癌腫、甲状腺癌、食道癌、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌腫、悪性膵臓膵島細胞腫、悪性カルチノイド癌腫、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、頸部過形成、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、有毛細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本能性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟組織肉腫、骨原性肉腫、原発性マクログロブリン血症、ならびに網膜芽細胞腫が挙げられる。一部の実施形態では、癌は腫瘍形成癌の群から選択される。
【0167】
医薬組成物
さらなる態様として、本発明は、上述の治療効果のうちの任意のもの(たとえば癌の処置)を達成するための、医薬配合物およびそれを投与する方法を提供する。医薬配合物は、上述の試薬のうちの任意のものを薬学的に許容される担体中に含み得る。
【0168】
「薬学的に許容される」とは、生物学的にまたは他の様式で望ましくないものではない材料、すなわち、材料を、毒性などのいかなる望ましくない生物学的効果も引き起こさずに対象に投与できることを意味する。
【0169】
本発明の配合物は、医薬、製薬、担体、アジュバント、分散剤、希釈剤などを任意選択で含むことができる。
【0170】
本発明の二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、化学修飾したsiRNA分子、または核酸構築体は、既知の技法に従って、製薬的担体中での投与のために配合することができる。たとえばRemington、The Science And Practice of Pharmacy(第9版、1995)を参照されたい。本発明による医薬配合物の製造において、二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子(生理的に許容されるその塩を含む)を、典型的には、とりわけ許容される担体と混合する。担体は、固体もしくは液体、または両方であることができ、好ましくは、二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子を用いて、0.01または0.5%~95%または99重量%の二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子を含有することができる単位用量配合物、たとえば錠剤として配合することができる。1つまたは複数の二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子は、本発明の配合物中に取り込ませることができ、これは、周知の製薬技法のうちの任意のものによって調製することができる。
【0171】
本発明のさらなる態様は、対象をin vivoで処置する方法であって、本発明の二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子を薬学的に許容される担体中に含む医薬組成物を、対象に投与することを含み、医薬組成物を治療上有効な量で投与する、方法である。本発明の二本鎖RNA、逆位キメラsiRNA分子、または化学修飾したsiRNA分子の、それを必要としているヒト対象または動物への投与は、化合物を投与するための当技術分野で知られている任意の手段によることができる。
【0172】
本発明の配合物の非限定的な例としては、経口、直腸、頬側(たとえば舌下)、経膣、非経口(たとえば、皮下、骨格筋、心筋、横隔膜筋、および平滑筋を含めた筋肉内、皮内、静脈内、腹腔内)、外用(すなわち、気道表面を含めた皮膚および粘膜の表面の両方)、鼻腔内、経皮、関節内、頭蓋内、くも膜下腔内、吸入投与、門脈内送達による肝臓への投与、ならびに直接臓器注射(たとえば、肝臓内、肢ない、中枢神経系への送達のために脳もしくは脊髄内、膵臓内、または腫瘍もしくは腫瘍周辺組織内)に適したものが挙げられる。任意の所定の事例における最も適切な経路は、処置する状態の性質および重篤度ならびに使用する特定の化合物の性質に依存する。一部の実施形態では、全身投与に関連するすべての副作用を回避するために、配合物を局所的に送達することが望ましい場合がある。たとえば、局所投与は、所望の処置部位での直接注射によって、所望の処置部位付近の部位(たとえば処置部位に供給する血管内)での静脈内での導入によって、達成することができる。一部の実施形態では、配合物は、虚血性組織に局所的に送達することができる。ある特定の実施形態では、配合物は、徐放性配合物、たとえば徐放性デポーの形態であることができる。
【0173】
注射には、担体は、典型的には、無菌的な発熱物質を含まない水、発熱物質を含まないリン酸緩衝生理食塩水、静菌水、またはCremophor EL(登録商標)(BASF、ニュージャージー州Parsippany)などの液体である。他の投与方法には、担体は、固体または液体のどちらかであることができる。
【0174】
経口投与には、化合物は、カプセル、錠剤、および粉末などの固形剤形、またはエリキシル、シロップ、および懸濁液などの液体剤形で投与することができる。化合物は、不活性成分、およびグルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、タルカム、炭酸マグネシウムなどの粉末にした担体と共に、ゼラチンカプセル中にカプセル封入することができる。望ましい色、味、安定性、緩衝能力、分散、または他の既知の望ましい特長を提供するために添加することができる追加の不活性成分の例は、弁柄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、食用白インクなどである。同様の希釈剤を使用して、圧縮錠剤を作製することができる。錠剤およびカプセルはどちらも、持続放出生成物として製造して、一定期間にわたる医薬品の連続的な放出を提供することができる。圧縮錠剤は、すべての不快な味をマスキングし、大気から保護するために、糖でコーティングもしくはフィルムでコーティングすることができる、または胃腸管中での選択的崩壊のために腸溶コーティングすることができる。経口投与のための液体剤形は、患者の受け入れを増すために着色料および香味料を含有することができる。
【0175】
頬側(舌下)投与に適した配合物としては、化合物を香味基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に含むロゼンジ、ならびに、化合物を不活性基剤、たとえばゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア中に含むパステル錠が挙げられる。
【0176】
非経口投与に適した本発明の配合物は、化合物の無菌的な水性および非水性の注射溶液を含み、調製物は、好ましくは意図するレシピエントの血液と等張である。これらの調製物は、配合物を意図するレシピエントの血液と等張にする、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および溶質を含有することができる。水性および非水性の無菌的な懸濁液としては懸濁剤および増粘剤を挙げることができる。配合物は、単位用量または複数用量容器、たとえば密封したアンプルおよびバイアル中で提示することができ、使用の直前に無菌的な液体担体、たとえば生理食塩水または注射用水の添加のみを必要とする、凍結乾燥条件下保管することができる。
【0177】
即時の注射溶液および懸濁液は、既に記載した種類の無菌的な粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。たとえば、本発明の一態様では、本発明の化合物を単位剤形で、密封容器中で含む、注射用の安定な無菌的な組成物を提供する。化合物または塩は、適切な薬学的に許容される担体で再構成されて、対象内へのその注射に適した液体組成物を形成することができる、凍結乾燥物の形態で提供される。単位剤形は、典型的には約10mg~約10グラムの化合物または塩を含む。化合物または塩が実質的に非水溶性である場合、十分な量の薬学的に許容される乳化剤を、化合物または塩を水性担体中で乳化させるために十分な量で用いることができる。そのような有用な乳化剤の1つはホスファチジルコリンである。
【0178】
直腸投与に適した配合物は、好ましくは単位用量の坐薬として提示する。これらは、化合物を1つまたは複数の慣用の固形担体、たとえばカカオ脂と混合し、その後、生じる混合物を成形することによって、調製することができる。
【0179】
皮膚への外用塗布に適した配合物は、好ましくは、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、またはオイルの形状をとる。使用することができる担体としては、石油、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮増強剤、およびその2つ以上の組合せが挙げられる。
【0180】
経皮投与に適した配合物は、長期間の間レシピエントの表皮と密接して保たれるように適応させた、別個のパッチとして提示することができる。経皮投与に適した配合物はまた、イオン泳動によって送達することもでき(たとえばTyle、Pharm.Res.、3:318(1986)を参照)、典型的には、化合物の任意選択の緩衝水溶液の形態をとる。適切な配合物は、0.1~0.2Mの化合物を含有するクエン酸もしくはビス/トリス緩衝液(pH6)またはエタノール/水を含む。
【0181】
あるいは、化合物は、経鼻投与用に配合することができる、または、任意の適切な手段によって他の様式で対象の肺に投与する、たとえば、対象が吸入する、化合物を含む呼吸用粒子のエアロゾル懸濁液によって投与する。呼吸用粒子は液体または固体であることができる。用語「エアロゾル」とは、細気管支または鼻道内に吸入されることができる、任意のガス媒介性懸濁相を含む。具体的には、エアロゾルは、定量吸入器もしくは噴霧器、またはミスト霧吹き中で生成することができる、液滴のガス媒介性懸濁液を含む。エアロゾルはまた、吸入器装置からのガス注入によって送達することができる、空気または他の担体ガス中に懸濁させた乾燥粉末組成物も含み、たとえば、GandertonおよびJones、Drug Delivery to the Respiratory Tract、Ellis Horwood(1987)、Gonda(1990)Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、6:273~313頁、およびRaeburnら、J.Pharmacol.Toxicol.Meth.、27:143(1992)を参照されたい。化合物を含む液体粒子のエアロゾルは、当業者に知られているように、圧力駆動のエアロゾル噴霧器または超音波噴霧器などの任意の適切な手段によって生成することができる。たとえば米国特許第4,501,729号を参照されたい。同様に、化合物を含む固形粒子のエアロゾルは、任意の固形粒子状医薬品のエアロゾル生成器を用いて、製薬分野において知られている技術によって生成することができる。
【0182】
あるいは、全身性ではなく局所的な様式で、たとえばデポーまたは持続放出配合物中で、化合物を投与することができる。
【0183】
さらに、本発明は、本明細書中に開示する化合物およびその塩のリポソーム配合物を提供する。リポソーム懸濁液を形成するための技術は当技術分野で周知である。化合物またはその塩が水溶性の塩である場合、慣用のリポソーム技術を使用して、それを脂質小胞内に取り込ませることができる。そのような例では、化合物または塩の水溶性が原因で、化合物または塩は、リポソームの親水性中心または核内に実質的に同伴される。用いる脂質層は、任意の慣用組成物のものであることができ、コレステロールを含有することができるか、またはコレステロールを含まないことができるかのどちらかである。目的の化合物または塩が非水溶性である場合、ここでも慣用のリポソーム形成技術を用いて、塩を、リポソームの構造を形成する疎水性脂質二重層内に実質的に同伴させることができる。どちらの場合でも、生成されるリポソームは、標準の超音波処理およびホモジナイゼーション技法の使用などを通じて、大きさを小さくすることができる。
【0184】
本明細書中に開示する化合物またはその塩を含有するリポソーム配合物は、凍結乾燥させて、水などの薬学的に許容される担体を用いて再構成してリポソーム懸濁液を再生することができる、凍結乾燥物を生成することができる。
【0185】
非水溶性化合物の場合、たとえば水性ベースの乳濁液中などの、非水溶性化合物を含有する医薬組成物を調製することができる。そのような例では、組成物は、所望の量の化合物を乳化させるために十分な量の薬学的に許容される乳化剤を含有する。特に有用な乳化剤としてはホスファチジルコリンおよびレシチンが挙げられる。
【0186】
特定の実施形態では、化合物を、上記定義したような治療上有効な量で、対象に投与する。薬学的活性のある化合物の投与量は、当技術分野で知られている方法によって決定することができ、たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co.、ペンシルベニア州Easton)を参照されたい。任意の具体的な化合物の治療上有効な投与量は化合物間および患者間でいくらか変動し、患者の状態および送達の経路に依存する。一般命題として、約0.001~約50mg/kgの投与量が治療上の有効性を有し、塩を用いる場合も含めて、すべての重量は化合物の重量に基づいて計算する。より高いレベルでの毒性の懸念は、静脈内投与量を約10mg/kgまでなどのより低いレベルに制限する場合があり、塩を用いる場合も含めて、すべての重量は化合物の重量に基づいて計算する。約10mg/kg~約50mg/kgの投与量を経口投与のために用いることができる。典型的には、約0.5mg/kg~5mg/kgの投与量を筋肉内注射のために用いることができる。具体的な投与量は、静脈内または経口投与のそれぞれについて、約1μmol/kgから50μmol/kgまで、より具体的には、約22μmol/kgまでおよび33μmol/kgまでの化合物である。
【0187】
本発明の特定の実施形態では、複数回の投与(たとえば、2、3、4回、またはそれより多くの投与)を、様々な時間間隔(たとえば、毎時、毎日、毎週、毎月など)にわたって用いて、治療効果を達成することができる。
【0188】
本発明は、獣医学的および医学的な応用において用途が見つかる。適切な対象としてはトリおよび哺乳動物がどちらも挙げられ、哺乳動物が好ましい。本明細書中で使用する用語「トリ」としては、それだけには限定されないが、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、およびキジが挙げられる。本明細書中で使用する用語「哺乳動物」としては、それだけには限定されないが、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ科動物、ネコ科動物、イヌ科動物、ウサギ目動物などが挙げられる。ヒト対象としては、新生児、乳児、青少年、および成人が挙げられる。他の実施形態では、対象は癌の動物モデルである。ある特定の実施形態では、対象は癌のリスクを有するまたは癌のリスクにある。
【0189】
以下の実施例は、特許請求の範囲の範囲を本発明に限定することを意図せず、むしろ、特定の実施形態の例示的なものであることを意図する。当業者が思いつく、例示した方法への任意の変動は、本発明の範囲内にあることを意図する。当業者には理解されるように、特許請求した発明のそれぞれの態様についていくつかの実施形態および要素が存在し、様々な要素のすべての組合せがこれによって予測されるため、本明細書中に例示する具体的な組合せは、特許請求した本発明の範囲の限定として解釈されるべきでない。特定の要素を、組合せ中で利用可能な要素群から除去するまたはそれに加えた場合、要素群は、そのような変化を組み入れたと解釈されるべきである。
【実施例1】
【0190】
合成siRNAはc-MYC mRNA転写物およびタンパク質の発現の減少を示す
MIA-PaCa2細胞を、snord90を標的とする対照siRNAおよび8つのc-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで24および48時間処理した(図1A)。snord90を標的とする対照siRNAおよび8つのc-Mycを標的とするsiRNAを表1に示す。その後、c-Mycバンド強度の相対的定量を行った(図1C)。MIA-PaCa2細胞を、snord90を標的とする陰性対照siRNA(NC)、以前に公開された論文からの陽性対照siRNA(PC)、および8つのc-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで24時間処理し、その後、免疫ブロットした。ビンキュリンを内部対照として使用した(図1B)。陽性対照は、c-Myc発現を抑制することが以前に示されている(Vasevaら、KRAS Suppression-Induced Degradation of MYC Is Antagonized by a MEK5-ERK5 Compensatory Mechanism.Cancer cell、34(5)、807~822頁.e7、2018)。c-Myc mRNAおよびタンパク質の発現の阻害によって証明されたように、いくつかの非常に強力なc-Myc siRNAが同定された。
【0191】
【実施例2】
【0192】
合成の化学修飾したsiRNAがc-Myc遺伝子転写物を実質的に低下させる
MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAおよび5つの化学修飾したc-Mycを標的とするsiRNA(配列番号37と38、配列番号39と40、配列番号41と42、配列番号43と44、または配列番号45と46)を用いて、20nMで24、48、および72時間処理した(図2A)。A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAおよび5つの化学修飾したc-Mycを標的とするsiRNAを用いて、20nMで24および72時間処理した(図2B)。これらのsiRNAは、ヌクレアーゼ分解および免疫刺激を最小限にするために完全修飾した(FM)。これらの種類の修飾は、しばしばsiRNAのサイレンシング活性を減弱させるが、本発明者らは、未修飾のsiRNAと比較してそのサイレンシング活性のすべてまたはほぼすべてを保持する、いくつかの完全修飾したsiRNA配列を開発した。表2は、調製した完全修飾したsiRNA配列を列挙する。Hi2Fパターンは、2’-フルオロ(2’F)および2’-O-メチル(2’OMe)リボース修飾の約50/50の混合物からなる。Hi2Omeパターンは、in vivo安定性を改善させ、ヌクレアーゼ分解を回避するために、大多数の2’OMeリボース修飾および最小限の2’F修飾からなる。これらのRT-qPCRデータは、完全修飾したc-Mycを標的とするsiRNAが、いくつかの癌細胞系においてその強力なサイレンシング活性を維持することを実証している。
【0193】


【実施例3】
【0194】
合成の化学修飾したsiRNAがc-MYCタンパク質発現を減少させる
MIA-PaCa2およびA427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに化学修飾したc-Mycを標的とするsiRNA(配列番号37と38、配列番号39と40、配列番号41と42、配列番号43と44、または配列番号45と46)を用いて、20nMで48時間処理し、免疫ブロットし、ビンキュリンを内部対照として使用した(図3A)。その後、図3Bにc-Mycバンド強度の相対的定量をプロットした。2つの異なる化学修飾パターンを有するsiRNA(Hi2FおよびHi2Ome(配列番号39と40、配列番号41と42、配列番号51と52、配列番号53と54))を、A427およびMIA-PaCA2細胞中において試験し、実質的に等価に有効であることが示された(図3Cおよび3D)。これらのタンパク質発現データは、完全修飾したc-Mycを標的とするsiRNAが、いくつかの癌細胞系においてその強力なサイレンシング活性を維持することを実証している。
【実施例4】
【0195】
合成の化学修飾したsiRNAがin vitro球状体形成を減少させる
MIA-PaCa2およびA427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAおよび2つの化学修飾したc-Mycを標的とするsiRNA(配列番号39と40または配列番号41と42のどちらか)を用いて、20nMで24時間処理し、その後、Matrigel中で5日間成長させた。共焦点顕微鏡を用いて、5×対物レンズを使用して代表的な位相差画像を撮影した(図4A)。図4Aの画像からの球状体平均面積の相対的定量を図4Bに示す。相対的定量の統計学は以下であった:****p=<0.0001、***p=0.0002。これらのデータは、完全修飾したc-Mycを標的とするsiRNAが、いくつかの癌細胞系において強力な腫瘍成長阻害効果を有することを実証している。
【実施例5】
【0196】
化学修飾したsiRNAを用いたc-MYCおよびKRASの二重標的化が、Matrigel中のMIA-PaCa2細胞中において球状体の面積および数の減少をもたらす
MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに2つの化学修飾したc-Myc(配列番号39と40または配列番号41と42のどちらか)およびKRAS(配列番号47と48または配列番号49と50のどちらか)を標的とするsiRNAを用いて、5nMで24時間処理し、その後、Matrigel中で5日間成長させた。共焦点顕微鏡を用いて、5×対物レンズを使用して代表的な位相差画像を撮影した(図5A)。共焦点画像からの球状体の面積および数の相対的定量を、Organosegソフトウェアを使用して実施し、図5Bに示す。相対的定量の統計学は以下であった:**p=0.0022~0.0027、p=0.0113~0.0147。
【0197】
MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに2つの化学修飾したc-Myc(配列番号39と40または配列番号41と42のどちらか)およびKRAS(配列番号47と48または配列番号49と50のどちらか)を標的とするsiRNAを用いて、5nMで24時間処理し、その後、96ウェルの丸底プレート中に播種し、Incucyte生細胞分析システムを用いて5日間イメージングした(図5C)。次に、イメージング後処理を、CellTiter Glo 3D(Promega)と混合したIncucyte Cellsを用いて実施し、蛍光をプレートリーダーで測定して、代謝活性を決定した(図5D)。これらのデータは、完全修飾したsiRNAによって突然変異体KRASまたはc-Mycを個々に標的化することが抗腫瘍成長効果を有する一方で、KRASおよびc-Myc siRNA分子の組合せはさらにより有効であることを実証している。これらのデータは、球状体の形成および球状体内での増殖を阻害することに基づいて、癌における突然変異体KRASおよびc-Mycの二重標的化を支持する。
【実施例6】
【0198】
化学修飾したsiRNAを用いたc-MYCおよびKRASの二重標的化が、Matrigel中のA427細胞中において球状体の面積および数の減少をもたらす
A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに2つの化学修飾したc-Myc(配列番号39と40または配列番号41と42のどちらか)およびKRAS(配列番号47と48または配列番号49と50のどちらか)を標的とするsiRNAを用いて、10nMで24時間処理し、その後、Matrigel中で5日間成長させた。共焦点顕微鏡を用いて、5×対物レンズを使用して代表的な位相差画像を撮影した(図6A)。共焦点画像からの球状体の面積および数の相対的定量を、Organosegソフトウェアを使用して実施した(図6B)。相対的定量の統計学は以下であった:****p=<0.0001。
【0199】
A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに2つの化学修飾したc-Myc(配列番号39と40または配列番号41と42のどちらか)およびKRAS(配列番号47と48または配列番号49と50のどちらか)を標的とするsiRNAを用いて、10nMで24時間処理し、その後、96ウェルの丸底プレート中に播種し、Incucyte生細胞分析システムを用いて5日間イメージングした(図6C)。次に、イメージング後処理を、CellTiter Glo 3D(Promega)と混合したIncucyte Cellsを用いて実施し、蛍光をプレートリーダーで測定して、代謝活性を決定した(図6D)。
【0200】
化学修飾したsiRNAを用いたc-MYCおよびKRASの二重標的化は、A427細胞中においてアポトーシスをもたらした。A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNAならびに2つの化学修飾したc-Myc(配列番号39と40または配列番号41と42のどちらか)およびKRAS(配列番号47と48または配列番号49と50のどちらか)を標的とするsiRNAを用いて、10nMで24時間処理し、その後、CellTox Greenを用いて96ウェルの丸底プレート中に播種し、Incucyte生細胞分析システムを用いて5日間イメージングした。グラフは84時間までのデータを示す(図6Eおよび6F)。統計学は以下であった:****p=<0.0001、***p=0.0003。これらのデータは、完全修飾したsiRNAによって突然変異体KRASまたはc-Mycを個々に標的化することが抗腫瘍成長効果を有する一方で、KRASおよびc-Myc siRNA分子の組合せはさらにより有効であることを実証している。これらのデータは、球状体内でのアポトーシスの誘導に基づいて、癌における突然変異体KRASおよびc-Mycの二重標的化を支持する。
【実施例7】
【0201】
KRASおよびcMycを標的とするsiRNAを合わせた、リン酸ジエステル連結された化学修飾したsiRNA(「キメラ」)は生物学的に活性が高く、MIA-PaCa2細胞中においてc-MycおよびKRAS mRNA転写物を減少させる
MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA(配列番号61と62)、1つの化学修飾したc-Mycを標的とするsiRNA(配列番号39と40)、および1つの化学修飾したKRASを標的とするsiRNA(配列番号47と48)を用いて、単独でまたは組み合わせてのいずれかで処理し、1つの「キメラ」siRNA(配列番号63~65)を用いて、5nM、10nM、および20nMで48または72時間処理した(図8)。KRASおよびcMycを標的とするsiRを合わせる、リン酸ジエステル連結された化学修飾したsiR(「キメラ」)を示す模式図を図7に示し、これは、一方のsiRNAのセンス鎖を、リン酸ジエステルヌクレオチド橋、その後に別のsiRNAのアンチセンス鎖を含むように隣接して合成する概念的設計を明らかにする。その後、それぞれの対応するsiRNAに対する相補鎖を二重鎖形成させて、多価キメラsiRNAを形成する。キメラは、複数の個々のsiRNAまたは複数の標的を標的とするsiRNAのいずれの送達プロセスも簡易化することができ、また、両方の遺伝子転写物の等モル濃度標的化も確実にする。このデータは、多価キメラsiRNAが細胞内でそれぞれ機能的であり、複数の異なる遺伝子を一度に強力に標的とすることができることを実証している。
【0202】


【実施例8】
【0203】
A427細胞中において、c-MycおよびKRAS mRNAの転写物およびタンパク質のレベルを減少させることにおいて、逆位キメラが直列キメラよりも強力である
A427細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA(配列番号61と62)、1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA(配列番号39と40)、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA(配列番号47と48)、1つのM2/K2「逆位キメラ」(配列番号63~65)、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNA(配列番号66~68)を用いて、5nMおよび20nMで48および72時間処理した(図9)。
【0204】
MIA-PaCa2細胞を、2’Ome修飾を有する対照siRNA(配列番号61と62)、1つもしくは2つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA(配列番号39と40、配列番号41と42、配列番号51と52、配列番号53と54)、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA(配列番号47と48)、1つのM2/K2「逆位キメラ」(配列番号63~65)、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNA(配列番号66~68)を用いて、5nMおよび20nMで48および72時間処理した(図10A~10C)。一緒にすると、これらのデータは、ユニークなKRAS突然変異を有する2つの異なる癌種(A427=肺腺癌、MIA-PaCa2=膵腺癌)において、逆位キメラが予想外に直列キメラ設計よりも強力であり、逆位設計の効力が個々のsiRNA(たとえばKRAS=KSeq2またはMyc=MSeq2)のそれを上回ることを実証している。これらのデータは、逆位設計の効力が転写物(RT-qPCR)およびタンパク質(ウエスタンブロット)のレベルで当てはまることを実証している。
【実施例9】
【0205】
逆位および直列キメラの安定性
血清中における逆位および直列キメラの安定性を試験した(図11)。逆位キメラがより安定であることが示された。対照的に、逆位および直列キメラは、サイトゾル条件下でどちらも安定であった(図12)。エンドソーム条件下で試験した場合、逆位および直列キメラはどちらも時間と共に解離し始めた(図13)。逆位および直列キメラはどちらも、ダイサーによる切断に対して耐性であることが実証された(図14A~14C)。これらのデータは、逆位および直列キメラの代謝はエンドソーム区画内で優勢的に起こり、血清条件下では非常にわずかな分解が起こることを実証している。さらに、キメラはサイトゾル中で非常に安定しており、ダイサーによる切断の基質ではない。この情報に基づいて、これらのキメラ分子は循環中に安定となるが、受容体媒介性エンドサイトーシスの際に、これらはDNA橋で切断されることが予想される。データは、キメラのおよそ半分が、侵入のおよそ24時間後までにエンドソーム区画中で切断されることを示している。
【実施例10】
【0206】
逆位キメラの効力の増加
内在性KRASをCRISPR/Cas9によって除去し、KRAS-ホタルルシフェラーゼおよび非標識のウミシイタケルシフェラーゼを安定に組み込むA431同質遺伝子細胞系を、2’Ome修飾を有する対照siRNA、1つの化学修飾した(Hi2F)c-Mycを標的とするsiRNA、1つの化学修飾した(Hi2OMe)KRASを標的とするsiRNA、1つのM2/K2「逆位キメラ」、または1つのM2/K2「直列キメラ」siRNAを用いて、96時間、39~0.002nMの範囲の用量で処理した。ウミシイタケルシフェラーゼを用いてホタルルシフェラーゼのデータを正規化した(図15)。データは、逆位キメラが予想外に直列キメラおよび個々のKRAS siRNA(KSeq2 Hi2OMe)よりもはるかに強力であったことを示す。
【0207】
c-Myc/KRAS逆位キメラの2つの異なるバージョン(V1(配列番号63~65)およびV2(配列番号69~71))は、MIA-PaCA2およびA427細胞に対して同等に強力であった(図16A~16B)。これらのHi2OMe(V2)で設計したキメラは、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加が原因で、in vivoでより安定であることが予想される。これらのデータは、逆位キメラのV2バージョンが、A427細胞(図17A~17B)およびMIA-PaCa2細胞(図18A~18B)中において、c-MycおよびKRASタンパク質を低下させることにおいて単一siRNAよりも有効であることを実証している。これらのデータは、下流MAPキナーゼシグナル伝達およびMYCタンパク質発現が逆位キメラ設計によって実質的に弱毒化されており、個々のsiRNA構成要素によって見られる個々の寄与よりもはるかに優れていることを実証している。さらに、V2逆位キメラは、単一siRNAと比較して、KRAS-ルシフェラーゼタンパク質に対して予想外に高い効力を示し(図19)、効力の実質的な左寄りのシフトをもたらした。さらに、V2逆位キメラは、MIA-PaCA2およびA427細胞のどちらにおいても細胞生存度を相乗的に減少させ(図20A~20B)、個々のsiRNAと比較して効力の約10倍の改善を実証した。V2逆位キメラは、MIA-PaCA2およびA427細胞のどちらにおいても球状体生存度(viaiblity)を減少させることができた(図21A~21D)。これらのデータは、より最適化された(V2)設計が、2つのユニークな標的を一度に同時標的化することにおいて非常に有効であり、驚くべきことに、キメラ設計の個々のsiRNA構成要素よりも有効であり、また、直列キメラ設計の効力を一貫してしのぐことを実証している。効力および2つの異なる遺伝子を同時に標的する能力の改善は、阻害活性の著しい改善、時には個々のsiRNAと比較して効力の10倍を超える改善をもたらす。
【実施例11】
【0208】
KRAS WTまたはKRAS G12Vレポーターを発現する同質遺伝子細胞系を使用した、特異的KRAS突然変異(G12V)siRNAの開発および妥当性確認
KRAS siRNAの特異性を試験するために、siRNAを、野生型KRASまたはG12V KRASを発現するA431同質遺伝子細胞に対して試験した(図22)。RT-qPCRに基づいて、V1-G12V Hi2FまたはV4-G12V Hi2OMe siRNAは、KRAS G12Vの強力なサイレンシングをもたらしたが、KRAS WTの標的化を部分的に(V1-G12V)または完全に(V4-G12V)のどちらかで容赦した。パン-KRAS siRNAと比較して、ルシフェラーゼ読取りを使用して、タンパク質レベルで、V4-G12V Hi2OMeがKRAS G12Vを強力に標的とするが、KRAS WTの標的化を完全に容赦することが見出された。同様に、生存度アッセイを使用して、強力な抗増殖効果がKRAS G12V突然変異を有するSKCO1(結腸)およびH727(肺)細胞系で診られた(図23)。これらのデータは、V1-G12VおよびV4-G12Vがどちらも、KRAS WTを容赦することができる一方で、KRAS G12Vを強力に標的化することを実証している。その結果、データは、これらの組成物がどちらも、KRAS G12V突然変異体癌細胞系に対して強力な抗増殖効果を有することを実証している。
【実施例12】
【0209】
逆位キメラの効力
H441細胞(図24)およびSKCO1細胞(図25)中において、特異的KRAS突然変異(G12V)およびc-Myc(配列番号75~77))を標的とする逆位キメラ(M2/V4-G12V)は、単一siRNAと比較して細胞生存度を相乗的に減少させた。これらのデータは、突然変異に特異的なsiRNA(KRAS G12V突然変異に対するV4-G12V)も逆位キメラ設計において予想外に強力であり、それぞれの標的に対して構成要素よりも強力であることを実証している。
【0210】
RPMI-8226骨髄腫細胞系中において、IRF4およびc-Myc(配列番号90~92))を標的とする逆位キメラは、いずれかの個々のsiRNAよりも>5倍の効力の改善に基づいて、単一siRNAと比較して細胞生存度を相乗的に減少させた。これらのデータは、逆位キメラの優れた有効性が標的遺伝子または疾患の種類に依存せず(図26)、これらの設計を任意の2つの目的の標的かつ様々な病態生理学的状態にわたって適用できることを示している。
【0211】
注記すべきことに、同じ遺伝子(c-Myc)を標的とする2つのsiRNA(配列番号84~86、配列番号87~89))を含む逆位キメラは、mRNAを低下させることにおいて、同じc-Myc標的に対する個々のsiRNAを用いて遺伝子を標的化するよりも有効であった(図27A~27B)。
【0212】
同様に、同じ遺伝子(KRAS)を標的とする逆位キメラは、KRAS-ルシフェラーゼタンパク質を低下させることにおいて、個々のsiRNAを用いて遺伝子を標的化するよりも有効であった(図28)。一緒にすると、これらのデータは、mRNA転写物およびタンパク質のレベルで、ユニークな位置でサイレンシングするsiRNAを使用することによって、逆位キメラを使用して、同じ標的遺伝子をより強力にサイレンシングすることもできるを実証している。
【0213】
すべての出版物、特許、および特許出願は、それぞれの個々の出版物、特許、または特許出願が、参考として組み込まれているとして具体的かつ個々に示されている場合と同じ程度に、本明細書中に参考として組み込まれている。
【0214】
前述の発明を、理解を明確にする目的で例示および実施例によってある程度詳細に記載したが、特定の変更および改変を、前述の実施形態および添付の特許請求の範囲のリストの範囲内で実施し得ることは明らかであろう。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図21A-21B】
図21C
図21D
図22
図23
図24
図25
図26
図27A-27B】
図28
図29
図30
【配列表】
2024523424000001.app
【国際調査報告】