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  • 特表-トウモロコシ花粉貯蔵及び担体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】トウモロコシ花粉貯蔵及び担体
(51)【国際特許分類】
   A01H 6/46 20180101AFI20240621BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20240621BHJP
   A01H 1/02 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/32 20060101ALN20240621BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
A01H6/46
A01H5/00 Z
A01H5/00 A
A01H1/02 Z
C12N15/32
C12N15/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578078
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022033575
(87)【国際公開番号】W WO2022271502
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/214,384
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/289,299
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222106
【氏名又は名称】シンジェンタ クロップ プロテクション アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ディンウィディー ジェイ オースティン
(72)【発明者】
【氏名】ヒル-スキナー サラ
(72)【発明者】
【氏名】カーター ジャレッド
(57)【要約】
トウモロコシ花粉は、周知であるが脆く、適切に貯蔵されない限り、劣化を受けやすい。かなり丈夫であり、且つ花粉が飛散して数か月若しくは数年の間、上手く受精することができる、一部の樹木の花粉とは異なり、トウモロコシ花粉は、劣化し始める前に飛散した後わずか数時間のみ生育可能な状態を維持する。トウモロコシ花粉の貯蔵のための発明が本明細書に記載され、花粉は、採集され、冷凍環境ではなく冷蔵環境に貯蔵される。本明細書に記載のように貯蔵された花粉は、12日間、又は2週間、又はそれ以上の間、生育可能な状態を維持し得る。担体化合物を添加することによって、花粉の生育力が高められ得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウモロコシ花粉及び結晶質シリカを含む、組成物。
【請求項2】
前記結晶質シリカが、ある平均粒径を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記平均粒径が、約1ナノメートル~約100マイクロメートルである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記平均粒径が、約1マイクロメートル~約10マイクロメートルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記トウモロコシ花粉が、0日齢、1日齢、2日齢、3日齢、4日齢、5日齢、6日齢、7日齢、8日齢、9日齢、10日齢、11日齢、12日齢、13日齢、14日齢、15日齢、16日齢、17日齢、18日齢、19日齢、20日齢、又はそれ以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
a)一定量の新鮮なトウモロコシ花粉を採集する工程;
b)工程a)の採集されたトウモロコシ花粉に担体を適用して、一定量の処理トウモロコシ花粉を得る工程;
c)前記量の新鮮なトウモロコシ花粉又は前記量の処理トウモロコシ花粉を、密封可能なコンテナに入れ、任意に容器圧力を設定する工程;及び
d)冷蔵環境内で工程c)の生産物を貯蔵する工程
を含む、成育可能なトウモロコシ花粉を貯蔵する方法。
【請求項7】
前記貯蔵されたトウモロコシ花粉が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20日間、生育可能な状態を維持する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コンテナが、1mL~100Lの容積を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記コンテナが、10mL~20Lの容積を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記コンテナが、約12L、約1.8L、約1L、500mL、又は約125mLの容積を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
新鮮なトウモロコシ花粉又は処理トウモロコシ花粉の前記量が、少なくとも約54gである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
新鮮なトウモロコシ花粉又は処理トウモロコシ花粉の前記量が、少なくとも約25gである、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
新鮮なトウモロコシ花粉又は処理トウモロコシ花粉の前記量が、少なくとも約11gである、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
新鮮なトウモロコシ花粉又は処理トウモロコシ花粉の前記量が、少なくとも約720mgである、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
新鮮なトウモロコシ花粉又は処理トウモロコシ花粉の前記量が、少なくとも約360mgである、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
新鮮なトウモロコシ花粉又は処理トウモロコシ花粉の前記量が、少なくとも約180mgである、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
新鮮なトウモロコシ花粉又は処理トウモロコシ花粉の前記量が、少なくとも約90mgである、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
新鮮なトウモロコシ花粉又は処理トウモロコシ花粉の前記量が、少なくとも約45mgである、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
新鮮なトウモロコシ花粉又は処理トウモロコシ花粉の前記量が、少なくとも約1mgである、請求項6に記載の方法。
【請求項20】
前記容器圧力が約0.6atm~0.3atmである、請求項6に記載の方法。
【請求項21】
前記容器圧力が約0.4atm~0.35atmである、請求項6に記載の方法。
【請求項22】
前記担体が、結晶質シリカ、活性化ケイ酸マグネシウム、タルク、金属粉末、及びマイカ鉱物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項23】
前記金属粉末が、金属酸化物粉末又は金属炭化物粉末である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記金属粉末が、ある平均粒径を有する、請求項23に記載の金属粉末。
【請求項25】
前記平均粒径が10μm球形である、請求項24に記載の金属粉末。
【請求項26】
前記金属粉末がステンレス鋼粉末である、請求項23に記載の金属粉末。
【請求項27】
前記担体が、1:20、1:30、1:10、1:5、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、及び1:20~50:1のいずれかの比からなる群から選択される花粉:担体比で存在する、請求項6に記載の方法。
【請求項28】
前記花粉:担体比が2:1である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記密封可能なコンテナがプラットホームを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項30】
前記プラットホームが、凝結形成が原因の花粉の凝集を低減する材料を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項31】
前記プラットホームが、アルミニウムトレイ、銅トレイ、ニッケルトレイ、又はステンレス鋼トレイである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記密封可能なコンテナが、凝結形成が原因の花粉の凝集を低減する材料を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項33】
前記密封可能なコンテナが、ガラス、アクリル樹脂、アルミニウム、又はステンレス鋼から製造されている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記冷蔵環境が、1~10℃、4~8℃、及び5.5~6.5℃からなる群から選択される温度範囲を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項35】
前記冷蔵環境が約6℃の温度を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記花粉が、20日以下、19日以下、18日以下、17日以下、16日以下、15日以下、14日以下、13日以下、12日以下、11日以下、10日以下、9日以下、8日以下、7日以下、6日以下、5日以下、4日以下、3日以下、2日以下、又は1日以下の間、前記冷蔵環境内で貯蔵される、請求項6に記載の方法。
【請求項37】
前記花粉が、12日以下の間、貯蔵される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記密封可能なコンテナが開始酸素含有量を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項39】
前記開始酸素含有量が、O2 0.12mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)~O2 0.57mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記開始酸素含有量が、O2 約0.24mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)~O2 0.57mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記密封可能なコンテナがCO2封鎖剤を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項42】
前記封鎖剤が、活性炭、エタノールアミン、ゼオライト4A、水酸化リチウム(LiOH)、ソーダ石灰、ケイ酸カルシウム(Ca24Si)、及び活性化ケイ酸マグネシウム(例えば、FLORISIL(登録商標))からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記結晶質シリカが、ある平均粒径を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項44】
前記平均粒径が約1ナノメートル~約100マイクロメートルである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記平均粒径が約1マイクロメートル~約10マイクロメートルである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
貯蔵されたトウモロコシ花粉を柱頭に適用する方法であって:
a)貯蔵されたトウモロコシ花粉を請求項6に記載の方法によって入手すること;
b)前記貯蔵された花粉を柱頭に適用すること
を含み、前記貯蔵されたトウモロコシ花粉が、採集後に前記柱頭に適用される、方法。
【請求項47】
前記トウモロコシ花粉が、採集から少なくとも1日後に前記柱頭に適用される、請求項46に記載のトウモロコシ花粉。
【請求項48】
前記柱頭がトウモロコシ絹糸である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記トウモロコシ絹糸が、前記貯蔵されたトウモロコシ花粉に相当する雑種強勢グループと異なる雑種強勢グループである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記トウモロコシ絹糸が、熱帯又は亜熱帯雑種強勢グループからの絹糸であり、且つ前記貯蔵されたトウモロコシ花粉が、温帯雑種強勢グループからの花粉であり;又は前記トウモロコシ絹糸が温帯雑種強勢グループからの絹糸であり、且つ前記貯蔵されたトウモロコシ花粉が、熱帯又は亜熱帯雑種強勢グループからの花粉である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記雑種強勢グループが、Stiff Stalk、Non-Stiff Stalk、Iodent、及びLancasterからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記トウモロコシ絹糸が、前記貯蔵されたトウモロコシ花粉に相当する成熟グループと異なる成熟グループである、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記柱頭がコムギの柱頭である、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
植物のゲノムにおける促進された形質遺伝子移入の方法であって:
a)第1成熟グループである第1植物を提供する工程;
b)第2成熟グループの植物であり、且つ所望の形質若しくは表現型をさらに有する、第2植物からの貯蔵花粉で、(a)の前記第1植物を他家受粉する工程;及び
c)前記所望の形質若しくは表現型を含む、工程(b)からの子孫植物を選択する工程;及び
d)任意に、反復親植物上に花粉ドナーとして(c)の前記子孫植物を戻し交配し、前記所望の形質若しくは表現型を含む子孫植物を選択する工程;を含み、
前記貯蔵花粉が、請求項6に記載の方法によって得られる、方法。
【請求項55】
前記植物がトウモロコシ植物である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第1成熟グループが、前記第2成熟グループから1つを超えて離れた成熟グループである、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記第2植物からの貯蔵花粉が、採集から少なくとも1日後に前記第1植物に適用される、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記トウモロコシ花粉が遺伝子導入トウモロコシ花粉である、請求項6に記載の方法。
【請求項59】
前記遺伝子導入トウモロコシ花粉が、MIR162、Bt11、GA21、MIR604、MZIR098、5307、3272、DAS40278、TC1507、DAS-59122-7、NK603、MON810、MON863、MON89034、MON88017、DP-4114、及びMON87411からなる群から選択される遺伝子導入系統を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記トウモロコシ花粉が、遺伝子導入系統Bt11、GA21、及びMIR162を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記トウモロコシ花粉が、遺伝子導入系統Bt11及びMIR162を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記トウモロコシ花粉が遺伝子導入系統MIR162を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記容器圧力が、標準大気、又は標準大気と純酸素ガスとの混合物で加圧される、請求項6に記載の方法。
【請求項64】
前記標準大気が絶対圧力1atmである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記標準大気が絶対圧力2atmである、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記標準大気が絶対圧力3atmである、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記純酸素ガスが、貯蔵容器ヘッドスペース1リットル当たりO2 18mmolである、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記純酸素ガスが、貯蔵容器ヘッドスペース1リットル当たりO2 24mmolである、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記純酸素ガスが、貯蔵容器ヘッドスペース1リットル当たりO2 27mmolである、請求項63に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウモロコシの育種及び人工受粉の分野、特に採集、貯蔵、及びトウモロコシ生産農地及び温室における貯蔵トウモロコシ花粉の適用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉貯蔵は、植物の育種家に必要であり、目標であった。一般には、W.M.King,Report of chief on seed divisions,In REPORT OF THE COMMISSIONER OF AGRICULTURE(YEARBOOK),Washington D.C.,GPO,47-61(1885)(「私達にとって都合がよい時及び場所でそれを使用できるように」貯蔵された花粉に関する要望を明確に表現している)を参照のこと。一部の植物では、花粉はかなり耐寒性があり、長寿命である。例えば、イチョウの木の花粉は、特定の手入れを必要とすることなく、6か月以上の間、採集及び貯蔵することができる。対照的に、他の植物は、脆く、風雨にさらして放置しておくと、数時間以内に急速な老化を受けやすい花粉を有する。トウモロコシ(コーン)は、このような植物である。
【0003】
トウモロコシの商業的なハイブリッド生産分野において、雌の近交系植物の4列を雄の近交系植物の2列と交互にすることが現在の慣例である。雌は、自家受粉を防ぐためにふさが取り除かれ、隣接する雌に授粉するその能力のためだけに、雄を成長させる。雌の植物及び雄の植物が同様な成熟グループである場合に、つまり、雌が花粉に対して受け入れ可能な(receptive)、およそ同じ時点でオスが花粉を飛散する場合に、この配置は最も良く機能する。
【0004】
しかしながら、現在の慣例のリスクは、受粉が成功しない可能性があり、したがって、雄及び雌が異なる成熟グループである場合に、作物が失われる可能性である。花粉を貯蔵しない場合、雄の植物が有するリスクが大きくなると、花粉の飛散が早すぎたり、又は遅すぎたり、受粉が失敗したために農地全体が失われ得る。花粉を貯蔵した場合には、開花時期の曝露に関わらず、正確に正しい時点で花粉を送達することができる。異なる成熟グループの異種交配は、より容易に達成され得て、したがって、遺伝子プールが拡大され、例えば、より高い耐乾燥性及び/又は耐病性であるトウモロコシ系統を作成することによって、トウモロコシ植物育種が改善される。
【発明の概要】
【0005】
栽培者は、1日で、又は1つの場所でトウモロコシ花粉を確実に採集及び貯蔵し、且つ別の日又は別の場所で雌の農地にその花粉を送達する能力を必要とする。この必要性を満たすために、トウモロコシ花粉の貯蔵方法が提供される。一実施形態において、一定量の新鮮なトウモロコシ花粉が採集され;任意に、採集された花粉を担体で処理し;コンテナ内に花粉を密封し、任意にコンテナに容器圧力を設定し;冷蔵環境で花粉を貯蔵する。このように採集及び貯蔵された花粉は、20日まで、及び少なくとも12日まで成育可能な状態である。一態様において、担体はタルク粉末、又はシリカ粉末である。別の態様において、担体は金属粉末又はマイカである。担体は、花粉:担体比1:2;1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1で、及び1:2~50:1のいずれかの比で適用され得る。好ましくは、花粉:担体比は2:1である。別の態様において、密封可能な容器、例えば、瓶詰用の広口瓶に入れたら、容器を密封し、容器圧力が1atm~0.01atm、又は0.6atm~0.3atm、又は0.4atm~0.35atmになるまで、容器圧力をコンテナにかける。別の態様において、二酸化炭素封鎖剤を密封可能なコンテナに添加する。別の態様において、採集された花粉の量は約1mg~約54gであり得る。別の態様において、採集された花粉の量は約1mL~約150mL以上であり得る。別の態様において、採集された花粉の量は所望の量である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】受粉後の4本の種子セットを示す。最初の穂(一番左)は新しい花粉で受粉した。他のすべての穂に受粉するために使用される花粉が同様な方法で貯蔵された:花粉をタルクと2:1の比で混合し、次いで花粉/タルク混合物0.5mLを125mLガラス容器内のアルミニウム皿上で貯蔵した。容器を密封し、次いで6℃で貯蔵する前に、容器圧力が0.4atmに達するまで真空をかけた。3日間貯蔵された花粉で、右から2番目の穂に受粉した。左から3番目の穂には、5日間貯蔵された花粉で受粉した。4番目の穂(一番右)は、7日間貯蔵された花粉で受粉した。
【発明を実施するための形態】
【0007】
定義
本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、以下に別段の指定がない限り、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有することが意図される。本明細書で用いられる技術の参照は、当業者には明らかであろう技術及び/又は等しい技術の代替に対する変形を含む、当技術分野で一般に理解される技術を意味することが意図される。以下の用語は当業者によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義は、本明細書に開示の対象の説明を容易にするために示される。
【0008】
本明細書において使用される、単数形の「a」、「an」及び「the」は、内容に特に明確に示されていない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「抗体(an antibody)」の言及は任意に、2つ以上のかかる分子等の組み合わせを包含する。
【0009】
本明細書において使用される、「約」という用語は、本発明の分野において容易に当業者に知られる各値の通常の誤差範囲を意味し、例えば±20%、±10%、又は±5%は、記載の値の意図する意味内にある。
【0010】
本明細書において使用される、「二酸化炭素封鎖」という用語は、二酸化炭素(「CO2」)が、二酸化炭素封鎖剤、例えば、ソーダ石灰、活性炭、エタノールアミン、ゼオライト4A、水酸化リチウム(LiOH)、又は活性化ケイ酸マグネシウム(例えば、FLORISIL(登録商標))によって捕捉されることを意味する。このように、チャンバ内の過剰なCO2上昇が防止される。任意に、封鎖剤は、チャンバのヘッドスペース1リットル当たりのCO2が10mmolを超えることを防ぐ。
【0011】
本明細書において使用される、「担体」という用語は、採集された花粉に付随する作用剤(agent)として作用する、好ましくは粉末状の化合物を意味する。適切な担体化合物は、限定されないが、タルク粉末、シリカ粉末であり得る。
【0012】
本明細書において使用される、「凝集(Clumping)」、「凝集(Aggregating)」及び類似の用語は、担体及び/又は適切な貯蔵条件の非存在下での、過剰な水分又は他の原因の如何に関わらず、花粉が互いに結合する傾向を意味する。凝集した花粉は流動性ではなく、空気によって絹糸上に吹き飛ばすことはできない。凝集した花粉は、受粉させるのに十分に、絹糸に付着する見込みはない。
【0013】
本明細書において使用される、「含んでいる」又は「含む」という用語は制限がない。一連の工程を含む方法と関連して使用される場合、追加の工程が実施されるとしても、一連の工程が実施される限り、その方法は依然として実行される。
【0014】
本明細書において使用される、「結晶質シリカ」とは、石英又は他の天然石構造に由来するシリカの粉末状態を意味する。「結晶質シリカ」、「SiO2」、及び「多結晶質シリカ」は、全体を通して区別なく使用される。結晶質シリカは、タルク又は非晶質シリカと異なる構造特性を有し、その特性としては、限定されないが、より高い鉱物モース硬度、より高いかさ密度、より低い比表面積が挙げられる。一実施形態において、結晶質シリカは、1ナノメートル(1nm)~100マイクロメートル(100μm)の平均粒径を含む。別の実施形態において、結晶質シリカは、1マイクロメートル(1μm)~10マイクロメートル(10μm)の平均粒径を含む。別段の指定がない限り、本明細書において提供される粒径は平均粒径である。
【0015】
本明細書において使用される、「活性化ケイ酸マグネシウム」という用語は、粉末状の合成ケイ酸マグネシウムを意味する。「活性化ケイ酸マグネシウム」、「合成非晶質活性化ケイ酸マグネシウム」及び「MgO3Si」という用語は全体を通して区別なく使用される。「FLORISIL(登録商標)」は、活性化ケイ酸マグネシウムの市販の原料である。www.ussilica.com/products/florisilを参照のこと。活性化ケイ酸マグネシウムは、非晶質構造及び高い比表面積を特徴とする。一実施形態において、活性化ケイ酸マグネシウムは、75マイクロメートル(75μm)~149マイクロメートル(149μm)の平均粒径を含む。別の実施形態において、活性化ケイ酸マグネシウムは、75マイクロメートル未満(<75μm)の平均粒径を含む。
【0016】
本明細書において使用される、遺伝子導入「系統(event)」という用語は、異種DNA、例えば、対象の遺伝子を含む発現カセットでの単一植物細胞の形質転換及び再生によって生産される組換え植物を意味する。「系統」という用語は、異種DNAを含む最初の形質転換体及び/又は形質転換体の子孫を意味する。「系統」という用語は、形質転換体と、別のトウモロコシ系統との有性異系交配によって産生される子孫も意味する。反復親との繰り返し戻し交配の後でさえ、挿入DNA及び形質転換された親に由来するフランキングDNAは、交配種の子孫に同じ染色体位置で存在する。通常、植物体組織の形質転換は、複数の系統を産生し、そのそれぞれが、植物細胞のゲノムにおける異なる位置でのDNA構築物の挿入を表す。導入遺伝子の発現又は他の望ましい特性に基づいて、特定の系統が選択される。したがって、本明細書で使用される「系統3272」、「3272」又は「3272系統」は、オリジナルの3272形質転換体及び/又は3272形質転換体の子孫及び/又は形はどうであれオリジナルの3272形質転換体に由来する植物を意味する。3272については、国際公開第06/098952号を参照のこと。
【0017】
遺伝子導入系統の他の例としては、限定されないが、MIR162(国際公開第07142840号参照)、Bt11(米国特許第6114608(構築物)号明細書及び国際公開第8705629号(遺伝子)参照)、GA21(国際公開第9704103号(遺伝子)、国際公開第9844140(カセット)参照)、MIR604(国際公開第05103301号参照)、MZIR098(国際公開第18231890号参照)、5307(国際公開第10077816号参照)、DAS40278(米国特許第8598413号明細書参照)、TC1507(国際公開第04099447号参照)、DAS-59122-7(国際公開第06/039376号参照)、NK603(米国特許第6825400号明細書参照)、MON810(米国特許第6713259号明細書参照)、MON863(米国特許第7705216号明細書参照)、MON89034(国際公開第07140256号参照)、MON88017(国際公開第05059103号参照)、DP-4114(国際公開第11084621号参照)、及びMON87411(国際公開第13169923号参照)が挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される「流動性」とは、空気、風、又は音の適用によって容易に移動する、或いは連続状態で注がれ、且つ着実及び容易に進行する、粉末状の物質の能力を意味する。
【0019】
本明細書で使用される「雑種強勢グループ」とは、近交系の育種分類を意味する。「雑種強勢グループ」及び「雑種強勢プール」は区別なく使用され、トウモロコシ個体群の育種プール間の関係を意味する。広くは、雑種強勢プールの主な名称は:Stiff Stalk(Iowa Stiff Stalk Syntheticとも呼ばれる「SS」、又は「BSSS」)、Non Stiff Stalk(「NSS」)、及びIodent(「IDT」)である。J.v.Hweerwaarden,et al.,Historical genomics of North American maize,PROC.NAT’L ACAD.SCI.U.S.A.109(31):12420-25(2012)を参照のこと。しかしながら、これらは排他的ではなく、他の名称、例えば、Lancaster Sure Crop(「LSC」)が知られている。例えば、C.Livini,et al.,genetic diversity of maize inbred lines with and among heterotic groups revealed by RFLPs,THEOR.APPL.GENET.84:17-25(1992)を参照のこと。さらに、Hallauer et al.(1998)COM BREEDING,p.463-564;G.F.Sprague and J.W.Dudley(ed.)CORN AND CORN IMPROVEMENT;Smith,et al.(1990)Theor.Appl.Gen.80:833-840;Mikel and Dudley(2006)Crop Set46:1193-1205を参照のこと。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2020/205334号及び国際公開第2021/041077号も参照のこと。
【0020】
「生殖質」という用語は、個体(例えば、種又は植物系)の個体群又は他の群の遺伝子型の全体性(totality)を意味する。「適応生殖質」というフレーズは、証明された遺伝子優位性の植物材料を意味し;例えば、所定の環境又は地理的領域に関して、「非適応生殖質」、「粗(raw)生殖質」及び「外来生殖質」というフレーズは、未知の、又は未証明の遺伝子価値の植物材料を意味し;例えば、所定の環境又は地理的領域に関して;「非適応生殖質」というフレーズ自体は、一部の実施形態において、確立された育種個体群の一部ではなく、且つ確立された育種個体群のメンバーに対して既知の関係を持たない、植物材料を意味する。
【0021】
本明細書において使用される、「マイカ」という用語は、化学式X246820(OH,F)4(式中、Xはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、Yは遷移金属、ポスト遷移金属、又はアルカリ土類金属であり、Zはケイ素、アルミニウムであり、又は他の遷移金属を含み得る)を一般に有する鉱物の群を意味する。
【0022】
本明細書で使用される、「開始酸素含有量」とは、その最初の時点で、及び最初に密封されてから、採集された花粉を含むチャンバの雰囲気中に存在する酸素の量(絶対測定値、パーセンテージとして、又は別の方法で測定されていようと)を意味する。一実施形態において、開始酸素含有量は、O20.12mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)~O20.57mmol/花粉g/日(貯蔵された日数)である。別の実施形態において、開始酸素含有量は、O20.24mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)~O20.57mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)である。「開始酸素含有量」、「開始O2mmol」、「開始O2mmol/g花粉」、及び「開始O2mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)」は本明細書において区別なく使用される。
【0023】
「植物」は、いずれかの発育段階での植物、特に種子植物である。特に、本開示の文脈において、植物とは、トウモロコシ植物を意味する。本明細書において使用される、「植物系統」という用語は、単一植物材料、又は遺伝的に同一のセットの材料を意味する。
【0024】
本明細書において使用される「プラットホーム」とは、花粉と担体の混合物と直接接触し、且つコンテナ自体との直接的な接触を防ぐ、コンテナ内の面を意味する。例えば、プラットホームは濾紙又はアルミニウム製のトレイであり得る。
【0025】
本明細書において使用される「花粉:担体の比」とは、担体との混合物中に存在する花粉の比率を意味する。例えば、及び限定されないが、花粉:担体の比2:1を有する花粉と担体の混合物は、花粉を2部(重量又は体積によって測定される)及び担体化合物、例えばタルクを1部(重量又は体積によって測定される)含む。
【0026】
本明細書において使用される「冷蔵環境」とは、その温度が周囲温度(又は室温)未満であるが、水が凍結する温度を下回らない、いずれかの条件を意味する。言い換えると、周囲温度が25℃である場合には、冷蔵環境は、0℃を超え、且つ25℃未満の温度を含む。同様に、冷蔵環境は、2~10℃の温度を含む。
【0027】
本明細書において使用される「密封可能なコンテナ」とは、気密封止を形成することができるコンテナを意味する。好ましくは、密封可能なコンテナは、真空を保持することもできる。
【0028】
本明細書において使用される「種子セット」とは、受粉の成功から得た穂軸に生成された穀粒の数を意味する。種子セットは、定性的に(例えば、低い、良好、又は高い)又は定量的に表され得る。定量的測定において、測定値は、トウモロコシ1本当たりの種子のパーセンテージ又は数として示され得る。一般に、という用語は、普通の穀粒(つまり、非不稔の、内胚乳生存穀粒)のパーセンテージ又は数を意味する。正常なトウモロコシ系統(つまり、ハプロイド誘導系統ではない)に関しては、80%を超える種子セット(又は1本当たり300粒を超える)が、良好な種子セットとみなされる。良好な種子セットの達成は、コントロールされる受粉の目標である。
【0029】
本明細書で使用される「貯蔵」とは、適切な期間、花粉を貯蔵する行為を意味する。適切な貯蔵期間は、24時間と少なくてもよいし、又は12日と多くてもよい。
【0030】
本明細書で使用される「処理」とは、花粉に対する化合物又は環境的束縛の意図的な適用を意味する。特に、花粉処理は、花粉の流動性及び生育力を保存するために、花粉に担体化合物を添加することを含み得る。
【0031】
本明細書で使用される「容器圧力」とは、容器内の人為的にかけられた気圧を意味する。容器圧力値は、本明細書において標準大気圧「atm」の単位、例えば0.5atmで測定されるが、容器圧力を測定するために、他の単位が所望の通りに使用され得る(例えば、トル又はパスカル又は「Pa」;1Pa=9.8692×10-6atm)。容器圧力は1atmを満たし得る、又は超え得ることが明確に企図される。容器圧力が0~1atmである条件下にて、「容器圧力」及び「真空」は、同じ意味を有し、且つ区別なく使用される。「容器圧力」は好ましい用語であるが、真空条件と、人為的にかけられた気圧が周囲大気(例えば、1atm)を超える条件と、の両方が企図される。一部の実施例において、容器圧力は、絶対圧力1atm又は2atm又は3atmである。一部の実施例において、容器は、貯蔵容器ヘッドスペース1リットル当たり、O218mmol、24mmol、又は27mmolにて純酸素ガスで加圧され得る。
【0032】
本明細書で使用される「活力(Vigor)」とは、絹糸に付着し、花粉管を成長させ、且つ卵細胞の受精を成功させる、花粉の能力を意味する。「成育可能な」、「生育力」及び同様な用語は、「活力」と区別なく使用される。
【0033】
詳細な説明
大量の近交系親系統種子が、消費者に販売される雑種種子の生産に必要とされるため、トウモロコシ種子生産の生産可能性(つまり、生産される種子の値を超えない経済的コストにて自家受粉又は交配種受粉によって、近交系又は雑種の種子の必要量を製造することができるかどうかの尺度)は、トウモロコシ近交系親系統の発育の成功に重要な因子である。近交系親系統が、顧客にとって望ましい特性(例えば、GM及びゲノム編集形質、高収率、耐病性を導く)を有する雑種を生産することができるとしても、生産可能性の低いトウモロコシ近交系親系統は、親の種子生産におけるコストが過剰であるため中断され得る。花粉貯蔵技術を用いて、雑種種子生産に使用される近交系トウモロコシ親系統の生産可能性を高めることができる。
【0034】
花粉貯蔵技術によって取り組まれ得る生産可能性に対する課題としては、限定されないが、花粉生産が少ない、総花粉飛散が少ない、花粉飛散の期間が短い、絹糸の受粉できる期間が短い、植物繁殖特性に影響を及ぼし得るGM又はゲノム編集形質が挙げられる。自家受粉での更なる課題は、花粉が飛散し始めた時と、絹糸が現れ、受粉に利用可能になった時との間の日数によって定義される、長い自己分割(self-split)である。一部の反復において、自己分割は、花粉飛散の開始前に、絹糸が受粉のために現れる、ネガティブな値であり得る。確認される自己分割は、近交系親系統遺伝的性質の結果であり得るか、又は絹糸の伸びる速度を低減し、且つ花粉飛散の開始と受粉に対する絹糸の有効性との間の日数を増加する、生育中の環境におけるストレスの結果であり得る。
【0035】
生産可能性の課題に取り組むために、花粉貯蔵技術を用いて、花粉飛散の最適な窓(optimal window)の間に花粉を採集し、花粉の生育力を維持しながらその花粉を貯蔵し、次いで絹糸が現れ、受粉性がある最適な窓の間に花粉が適用され得る。一部の反復(iteration)において、花粉採集は、1日に複数の時点で実施され得る。他の反復において、花粉は、花粉飛散の間を通して複数の日に採集され得る。貯蔵された花粉の適用には、複数の日にわたって採集された、合わせた花粉が使用され、複数回の適用は、同一日に、又は複数の日にわたって行われ得る。花粉の適用では、複数の農地場所から採集された、合わせた花粉が、1つの場所への1回の適用に使用され得る。一部の反復において、花粉は、1つの地理(geography)で採集され得て、異なる地理において絹糸に適用され得る。地理は、同じ生産場所での異なる農地、国内の異なる州若しくは自治体における農地、又は異なる国における農地であり得る。一部の反復において、花粉は、温帯地方で生育した温帯トウモロコシ近交系親系統から採集され、亜熱帯又は熱帯地方で生育された亜熱帯又は熱帯地方のトウモロコシ近交系親系統に適用される。他の反復において、花粉は、亜熱帯又は熱帯地方で生育した亜熱帯又は熱帯地方トウモロコシ近交系親系統から採集され、温帯地方で生育された温帯のトウモロコシ近交系親系統に適用される。生産可能性に対するこれらの課題に取り組むことによって、花粉貯蔵技術は、顧客に販売される、所望の特性を有する新たな雑種を生産する、望ましいトウモロコシ近交系親系統の種子の増加を可能にし得る。花粉貯蔵技術は、現在は実現可能ではない、温帯、亜熱帯、及び熱帯のトウモロコシ近交系親系統の組み合わせに関して、経済的な雑種種子の生産も可能にし得る。
【0036】
したがって、一実施形態は、トウモロコシ花粉及び結晶質シリカを含む組成物を提供する。組成物の一態様において、結晶質シリカは平均粒径を含む。別の態様において、平均粒径は約1ナノメートル~約100マイクロメートルである。別の態様において、平均粒径は約1マイクロメートル~約10マイクロメートルである。さらに別の態様において、トウモロコシ花粉は0日齢、1日齢、2日齢、3日齢、4日齢、5日齢、6日齢、7日齢、8日齢、9日齢、10日齢、11日齢、12日齢、13日齢、14日齢、15日齢、16日齢、17日齢、18日齢、19日齢、20日齢、又はそれ以上である。
【0037】
別の実施形態は、a)一定量の新鮮なトウモロコシ花粉を採集する工程;b)工程a)の採集されたトウモロコシ花粉に担体を任意に適用して、一定量の処理されたトウモロコシ花粉を得る工程;c)密封可能なコンテナに、その一定量の新鮮なトウモロコシ花粉又は一定量の処理トウモロコシ花粉を入れ、任意に容器圧力を設定する工程;及びd)冷蔵環境内で工程c)の生産物を貯蔵する工程;を含む、成育可能なトウモロコシ花粉を貯蔵する方法を提供する。その方法の一態様において、貯蔵されたトウモロコシ花粉は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20日間、成育可能な状態を維持する。一態様において、コンテナは、1mL~100Lの容積を含み、又はコンテナは、10mL~20Lの容積を含み、又はコンテナは、約12L、約1.8L、約1L、500mL、又は約125mLの容積を含む。その方法の別の態様において、新鮮なトウモロコシ花粉又は処理されたトウモロコシ花粉の量は少なくとも約54g、又は少なくとも約25g、又は少なくとも約11g、又は少なくとも約720mg、又は少なくとも約360mg、又は少なくとも約180mg、又は少なくとも約90mg、又は少なくとも約45mg、又は少なくとも約1mgである。その方法の別の態様において、容器圧力は約0.6atm~0.3atmであり、又は容器圧力は約0.4atm~0.35atmである。その方法の別の態様において、担体は、結晶質シリカ、活性化ケイ酸マグネシウム、タルク、金属粉末、及びマイカ鉱物からなる群から選択される。一態様において、金属粉末は、金属酸化物粉末又は金属炭化物粉末である。別の態様において、金属粉末は、ある平均粒径の粉末である。一態様において、平均粒径は10μmの球形である。別の態様において、金属粉末はステンレス鋼粉末である。
【0038】
別の態様において、担体は、1:20、1:30、1:10、1:5、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、及び1:20~50:1のいずれかの比からなる群から選択される花粉:担体の比で存在する。一態様において、花粉:担体比は2:1である。その方法の別の実施形態において、密封可能なコンテナはプラットホームを含む。一態様において、プラットホームは、凝結形成が原因の花粉の凝集を低減する材料を含む。別の態様において、プラットホームは、アルミニウムトレイ、銅トレイ、ニッケルトレイ、又はステンレス鋼トレイを含む。別の実施形態において、密封可能なコンテナは、凝結形成が原因の花粉の凝集を低減する材料を含む。別の態様において、密封可能なコンテナは、ガラス、アルミニウム、アクリル樹脂、又はステンレス鋼から製造される。その方法の別の実施形態において、冷蔵環境は、1℃~10℃、4℃~8℃、及び5.5℃~6.5℃からなる群から選択される温度範囲を含む。一態様において、冷蔵環境は、約6℃の温度を含む。その方法の別の実施形態において、花粉は、20日以下、19日以下、18日以下、17日以下、16日以下、15日以下、14日以下、13日以下、12日以下、11日以下、10日以下、9日以下、8日以下、7日以下、6日以下、5日以下、4日以下、3日以下、2日以下、又は1日又はそれ以下の間、冷蔵環境で貯蔵される。一態様において、花粉は12日以下の間、貯蔵される。その方法の別の実施形態において、密封可能なコンテナは、開始酸素含有量を含む。一態様において、開始酸素含有量は、O20.12mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)~O20.57mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)である。別の態様において、開始酸素含有量は、O2約0.24mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)~O20.57mmol/g花粉/日(貯蔵された日数)である。その方法の別の実施形態において、密封可能なコンテナは、CO2封鎖手段を含む。一態様において、封鎖剤は、活性炭、エタノールアミン、ゼオライト4A、水酸化リチウム(LiOH)、ソーダ石灰、ケイ酸カルシウム(Ca24Si)、及び活性化ケイ酸マグネシウム(例えば、FLORISIL(登録商標))からなる群から選択される。
【0039】
別の実施形態は、貯蔵されたトウモロコシ花粉を柱頭に適用する方法であって;a)上記の方法によって、貯蔵されたトウモロコシ花粉を得る工程;b)貯蔵された花粉を絹糸に適用する工程であって、貯蔵されたトウモロコシ花粉が採集後に絹糸に適用される工程;を含む、方法を提供する。別の実施形態において、貯蔵されたトウモロコシ花粉は、採集して少なくとも1日後に柱頭に適用される。一態様において、柱頭はトウモロコシ絹糸である。別の態様において、トウモロコシ絹糸は、貯蔵されたトウモロコシ花粉に相当する雑種強勢グループと異なる雑種強勢グループである。さらに別の態様において、トウモロコシ絹糸は、熱帯又は亜熱帯雑種強勢グループ由来であり、且つ貯蔵されたトウモロコシ花粉は、温帯雑種強勢グループ由来であり;又はトウモロコシ絹糸は、温帯雑種強勢グループ由来であり、且つ貯蔵されたトウモロコシ花粉は、熱帯又は亜熱帯雑種強勢グループ由来である。別の態様において、雑種強勢グループは、Stiff Stalk、Non-Stiff Stalk、Iodent、及びLancasterからなる群から選択される。別の態様において、トウモロコシ絹糸は、貯蔵されたトウモロコシ花粉に相当する成熟グループと異なる成熟グループである。さらに別の態様において、柱頭コムギ柱頭である。
【0040】
別の実施形態において、貯蔵されるトウモロコシ花粉は、遺伝子導入トウモロコシ花粉である。別の態様において、遺伝子導入トウモロコシ花粉は、MIR162、Bt11、GA21、MIR604、MZIR098、5307、3272、DAS40278、TC1507、DAS-59122-7、NK603、MON810、MON863、MON89034、MON88017、DP-4114、及びMON87411からなる群から選択される遺伝子導入系統を含む。一態様において、遺伝子導入トウモロコシ花粉は、遺伝子導入系統Bt11、GA21、及びMIR162を含む。別の態様において、遺伝子導入トウモロコシ花粉は、遺伝子導入系統Bt11及びMIR162を含む。さらに別の態様において、遺伝子導入トウモロコシ花粉は遺伝子導入系統MIR162を含む。
【0041】
別の態様において、貯蔵方法中に使用される容器圧力は、標準大気酸素で加圧され、且つ純酸素ガスで加圧される。一態様において、標準大気酸素は、絶対圧力1atmである。一態様において、標準大気酸素は、絶対圧力2atmである。別の態様において、標準大気酸素は絶対圧力3atmである。別の態様において、純酸素ガスは、貯蔵容器ヘッドスペース1リットル当たりO224mmolである。別の態様において、純酸素ガスは、貯蔵容器ヘッドスペース1リットル当たりO227mmolである。
【実施例
【0042】
1.採集
トウモロコシ植物を農地及び温室条件で栽培した。雄穂が現れ、花粉を飛散し始めたら、雄穂に袋をかぶせて、花粉を採集した。袋は通常、午後遅くの間にかぶせ、翌日の朝、取り除いた。葯又は他の雄穂材料からふるい分けし、任意に担体と混合した後に、次いで採集された花粉を適切な密封コンテナに入れた。代替方法としては、トウモロコシ植物から、先だって花粉が飛散した雄穂を収穫することによって、花粉が採集される。雄穂を水のビーカーに入れ、花粉を通常通りに落とすことができ、又は雄穂を乾燥させ、浸してふやかし、濾過して、花粉を機械的に採集することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8、252,988号明細書(2007年6月27日出願)を参照のこと。
【0043】
2.微生物の増殖
細菌又は真菌が、新鮮な花粉の劣化に寄与するのに十分な量で、採集された花粉中に存在するのかどうかを理解するために、微生物分析が実施された。微生物のプレッシャーの作用は最初に、23℃で貯蔵された花粉において目視で確認された。すべての花粉試料を、貯蔵前に花粉:タルク比2:1で混合した。23℃で密封貯蔵して4日後に、貯蔵された花粉が、微生物コロニーの包帯(swathes)で覆われた。これらの微生物の構成及び環境条件に応じて如何に変化するかをより良く理解するために、温室及び農地からの新鮮な花粉に、3Mペトリフィルム(Petrifilm)を使用した。特に、カビ、好気性細菌、乳酸細菌、及び従属栄養細菌の存在をアッセイした。意外ではないが、おそらく、農地栽培植物から採集された花粉は、数桁多い微生物圧力に対して宿主(host)としての役割を果たした(表1)。さらに、温室花粉に存在しない従属栄養細菌は、農地花粉における好気性細菌と類似の数で見出された。どちらの場合にも、乳酸細菌の存在の程度が不確かであったが、カビの存在は有意であった(表1)。
【0044】
表1. 新鮮な温室及び農地の花粉50uLにおける種々の微生物のコロニー形成単位(CFU)。
【表1】
【0045】
これらの微生物の存在は、花粉の抗菌処理又は貯蔵環境の変化によってコントロールすることができた。したがって、貯蔵された花粉に対する微生物の増殖の有効なコントロールの手段として、温度をアッセイした。花粉:タルクの2:1混合物として花粉0.36gを、125mL密封ガラス容器内で圧力1atmにて23℃、6℃、及び2℃で7日間貯蔵し、密封貯蔵容器内のO2消費及びCO2産生をそれぞれの日に記録した。貯蔵4日目で、23℃の試料は、培地で花粉管をもはや発芽せず、酵素染色、MTTで染色もされなかった(表2及び3)。先に記載のように、目視できる微生物コロニーはこれらの試料上でも増殖した。逆に、6℃及び2℃試料は、微生物増殖の目視できる徴候を全く示さず、花粉管の発芽に成功し、貯蔵して6日を超えて、MTTで染色された(表2及び3)。貯蔵の7日目にて、2℃試料はもはや発芽しなかったが、MTTでポジティブに染色し、花粉の乾燥において酵素活性が完全に失われる前に、花粉管が発芽する能力がどのようであるかが示された。
【0046】
表2. 異なる温度で貯蔵された花粉試料における花粉管発芽の観察。
【表2】
ND = データなし
【0047】
表3. 異なる温度で貯蔵された花粉試料における酵素染色の観察。
【表3】

ND = データなし
【0048】
貯蔵の最初の6日の経過にわたって、6℃及び2℃で貯蔵された試料における酸素消費量及びCO2産生は、23℃で貯蔵された試料で確認された酸素消費量及びCO2産生の17%未満であった(表4)。この差は、低い温度での花粉と微生物の両方の代謝率の強制的低減のためである。これは、貯蔵の4日後に23℃試料で見られる、6℃及び2℃試料における目に見える微生物増殖がないことにより強調される。代謝率の更なる低減は、2℃で貯蔵された試料と比較して、6℃で貯蔵された試料間で確認され、全体的な活力は6日まで、ほぼ同じであった(表4、2、及び3)。これらの結果を合わせると、下げられた温度は、微生物の呼吸を妨げ、貯蔵された花粉上の望ましくない微生物増殖に対して有効な処置として作用することが分かる。
【0049】
表4. 様々な温度での貯蔵6日目のO2及びCO2最終量、並びにO2使用及びCO2生成の割合。
【表4】
【0050】
3.貯蔵温度
上記に示すように、貯蔵温度は明らかに、貯蔵中の花粉及び微生物の代謝率の決定において重要な役割を果たす。花粉の活力に対する温度の影響を試験するために、受粉も実施した。試験されたすべての温度に関して、時間が経つにつれて種子セットの減少が起こった。しかしながら、時間の経過による種子セットの減少は、6℃に対して2℃及び23℃で拡大した(表5)。花粉活力に対する温度の影響をさらに評価するために、約4.3~8.7℃の範囲の貯蔵温度(表6)を用いて、追加の実験が7日間行われた。すべての処理に関して、0.4atmにて125mLガラス容器内に貯蔵する前に、花粉:タルク比2:1で花粉0.18gをタルクと混合した。表5からのデータを合わせて、種子セットの低減は、4℃未満及び6℃を超える温度で起こり、最も劇的な減少が2℃及び23℃で確認された。受粉について試験された温度は、貯蔵の成功に対して完全に禁止されるわけではなかったが、代わりに、貯蔵寿命に影響を及ぼした(表5及び6)。結論として、これらの研究によって、より長い貯蔵期間は、約2~8℃のより低い温度で達成され得るが、少なくとも2℃~23℃の温度が花粉の貯蔵に許容されることが示される。
【0051】
表5. 異なる貯蔵温度での時間の経過による種子セットの腐敗。
【表5】
【0052】
表6. 様々な貯蔵温度で7日間貯蔵された花粉からの種子セット。
【表6】
【0053】
4.酸素及び二酸化炭素
実施例2に示すように、花粉は、貯蔵中に依然として代謝的に活性であり-好気性呼吸中にO2を利用し、CO2を産生する。花粉は貯蔵中に呼吸し続けるため、CO2が増加すると同時に、O2は必然的に枯渇する。容器雰囲気内のこれらの変化が花粉に及ぼし得る影響を確かめるために、いくつかの実験が実施された。最初に、開始酸素0.44mmol(20.9%)及び開始CO20.00084mmol(0.04%)で、125mL標準容器(例えば、4オンスのBallmason広口瓶)内で0.4atmにて6℃で、2:1花粉:タルク混合物として、数重量の花粉を貯蔵した。貯蔵から7日後に、終点の酸素及びCO2読み取り値を測定した(表7)。0.54g以上の試料は、酸素が0.1mmol未満に枯渇し、培地で花粉管の発芽を示さなかった。0.54gを超える試料は、すべての利用可能な酸素がほとんど枯渇し、MTTを用いた染色に失敗し、生育力の完全な欠如が示された。この同じ実験において、CO2は、酸素枯渇に対して負の線形パターンで蓄積することが確認された。したがって、7日の貯蔵期間の終わりまで、利用可能な酸素の大部分を使い果たした試料は、0.4mmolを超えるCO2を蓄積した。
【0054】
表7. 7日間貯蔵された花粉の様々な重量からの酸素利用及びCO2産生。
【表7】
【0055】
花粉の活力に対するCO2蓄積の影響を試験するために、第2実験を行った。この実験では、タルク0.18gと混合された花粉0.36gを含有する125mL容器を、貯蔵前に増加量のCO2でスパイクし(総容器圧力を1atmに維持しながら)、次いで6℃で貯蔵した。次いで、6日間にわたって1日1回、各処理に対して花粉管発芽を1~5のスケールでアッセイした(表8及び9)。予想通り、ベースラインの開始CO2(約0.002mmol,室温にて自然大気125mL中に存在する量)によって、6日の貯蔵期間全体にわたって良好な発芽が得られた。花粉寿命は、開始CO2の増加にネガティブに対応し、大気開始CO2よりも多いCO2を有するすべての容器が、ベースラインよりも早期に花粉管発芽の低下又は損失を示した(表9)。これらの結果から、花粉粒子上に蓄積されたCO2の毒性、並びに貯蔵中のそのコントロール及び/又は封鎖の重要性が実証される。
【0056】
表8. 発芽評点スケール。
【表8】
【0057】
表9. 増加量の開始CO2で貯蔵された花粉に関する、時間の経過による花粉管の発芽。
【表9】
【0058】
貯蔵容器内の代謝率をさらに調べるために、本発明者らは、245の個々の試料からの、平均O2利用及びCO2産生を算出した。2:1花粉:タルク比で、すべての試料を6℃で5~7日間貯蔵した。貯蔵の最後に、その発芽評点が2以上である場合のみに、試料が含まれた。0.13~1atmの範囲の圧力下にて、且つ花粉量0.09~25gの範囲で、試料を貯蔵した。好気性呼吸を受ける花粉に関して、O2及びCO2は化学量論1:1で交換される。結果として、好気性呼吸中に使用された酸素の量及び産生されたCO2の量はおよそ等しかった。245の試料に基づいて、本発明者らは、平均O2利用及びCO2産生/g花粉/日が約0.17mmolであることを見出した(表10)。最大代謝率は、0.30mmol/g花粉/日でほぼ2倍であり、最低代謝率は、0.01mmol/g花粉/日と低かった。
【0059】
表10. 貯蔵中の花粉の平均、最大及び最低代謝率。
【表10】
【0060】
貯蔵中のCO2蓄積が花粉に対して有害であることを示した後に、本発明者らに次の工程は、貯蔵中に安全にCO2を受動的に封鎖する方法を同定することであった。能動的にCO2に結合し、且つ大気からそれを除去する、多くの化学化合物が存在する。新たな実験において、本発明者らは、貯蔵容器セットアップ中でCO2を封鎖する、ソーダ石灰の能力を試験した。ソーダ石灰は、水蒸気を利用し、CaCO3及び熱を生成する反応においてCO2に結合する。したがって、CO2が花粉によって産生され、続いてソーダ石灰によって封鎖されるために、貯蔵環境内の水蒸気が消費されると予想される。水蒸気のこの損失をオフセットするために、本発明者らは、貯蔵容器に液状の水を添加することも試験した。各125mL容器中で、開始酸素は約1mmolであり、開始CO2は約0.002mmolであり、容器圧力は1atmであった。ソーダ石灰0.05gを含む/含まない、且つ水10mLを含む/含まない、容器を試験した。花粉の量も、0.18~0.72gと様々であったが、6℃で貯蔵する5日前に、すべての花粉が花粉:タルク比2:1でタルクと混合された。花粉含水率(PMC)は、新たな重量と乾燥重量との差として測定された。この実験の初期花粉含水率は53%であった。
【0061】
すべての花粉の量に関して、ソーダ石灰を含有する容器は、ソーダ石灰を含まない容器内の同じ重量の花粉に対して低い、残存CO2mmolで反映される、CO2のポジティブな封鎖を示した(表11)。使用された装置の検出限界のために、残存するCO20.01mmolを有する試料は、すべてのCO2が封鎖されているとみなされるため、CO2が完全に存在しないことを検出することは不可能であった。0.36gを超える花粉量については、ソーダ石灰0.05gは、5日間にわたってすべてのCO2を完全に封鎖するには不十分であった。したがって、ソーダ石灰の量は、コンテナ内の花粉の量に倍率変更しなければならなかった(約0.02gソーダ石灰/g花粉/日)。追加の水を含有しない容器においては、PMCは著しく低減し-水蒸気がソーダ石灰によって利用されるために、花粉から大気中に水分が引き抜かれて、湿度が再安定化される結果となる可能性がある(表11)。興味深いことに、水を含有する容器は、初期のPMCに対して最終PMCのわずかな増加を示した。これは、時間の経過にしたがって花粉によって水蒸気が穏やかに取り込まれることを示し得る。この実験の結果を合わせて、花粉貯蔵のためのCO2封鎖剤としてのソーダ石灰の有効性、及びソーダ石灰反応の乾燥作用をオフセットするための二次的な水蒸気供給源の重要性が示される。
【0062】
表11. 様々な量の花粉と共に、貯蔵して5日後のソーダ石灰及び水を含む/含まない容器内のCO2封鎖。
【表11】
【0063】
貯蔵容器内で放出されたCO2の封鎖でのソーダ石灰の有効性を確認した後、本発明者らは、他の封鎖化合物の有効性をアッセイするために、貯蔵2日目で追加の実験を実施した。本発明者らは、100~200メッシュ及び200メッシュ未満にて活性炭、エタノールアミン、ゼオライト4A、水酸化リチウム(LiOH)及び活性化ケイ酸マグネシウム、FLORISIL(登録商標)をアッセイした。粒径を測定する場合に、「メッシュ」は、リニアインチの穴の数によって定義され、例えば、200メッシュのスクリーンは、リニアインチに200の穴を有し、100メッシュスクリーンは、リニアインチに200の穴を有する。したがって、200メッシュの粉末は、100メッシュの粉末よりも微細な粒子を有する。例えば、ASTME11-20,Standard Specification for Woven Wire Test Sieve Cloth and Test Sieves,ASTM International,West Conshohocken,PA,2020,www.astm.orgを参照のこと。ソーダ石灰及び非封鎖剤処理を対照として使用した。各CO2封鎖剤の有効性をアッセイするために、封鎖剤0.02~9.6gを、水1mLを含有する125mLガラス広口瓶に添加した(表12)。放出されたCO2の一般的な量/g花粉/日を模倣するために、広口瓶を密封し、容器圧力を0.9atmに下げ、次いで、内部圧力が1atmに達するまで広口瓶を圧縮CO2で充填した。この結果、コンテナ当たりのCO2は約0.4mmol、酸素は約0.95mmolとなった。次いで、コンテナを6℃で2日間置いた。この期間の後、コンテナを室温(約21℃)に戻し、最終CO2及び酸素含有量が測定された(表12)。概して、すべての封鎖剤が、提供されたCO2のいくらかの封鎖に成功したが、必要とされる量及び封鎖の効率は化合物によって異なった。
【0064】
表12. コンテナ当たりのCO2約0.4mmol及び酸素約0.95mmolで開始する容器内の様々な化学的CO2封鎖剤の封鎖能力。
【表12】
【0065】
さらに、本発明者らは、封鎖化合物の1つ、FLORISIL(登録商標)を花粉と直接混合する有効性を試験した。この実験において、花粉0.18gを、<200メッシュにてFLORISIL(登録商標)0.09gと混合した。次いで、花粉-FLORISIL(登録商標)混合物を125mL容器に入れ、容器圧力を0.4atmに下げ、次いで容器を6℃で5日間置いた。貯蔵後、花粉-FLORISIL(登録商標)混合物を受粉で使用し、各受粉に混合物0.5mLを使用した。これらの受粉からの平均種子セットは、107粒であり、標準偏差は76粒であった。したがって、花粉をCO2封鎖剤と直接混合し、さらに貯蔵後に種子セットを実現することが可能である。
【0066】
経過観察実験を行い、開始酸素含有量を高めることと、好気性呼吸中に産生されるCO2を封鎖することとを合わせた作用を試験した。この試験において、ソーダ石灰0.208g及び様々な開始量の酸素を含む、6℃及び1atmの125mL容器内で、タルク0.45gと混合された花粉0.9gを5日間貯蔵した(表13)。花粉0.9gが貯蔵の終了前に、利用可能なO20.44mmolを使い尽くした、上記の表7からの実験とは対照的に、この実験における過剰な酸素の存在によって、花粉は発芽する能力を維持することが可能となり、試験された5日間に対して種子を設定することが可能となった。代謝率もPMCも、異なる酸素処理によって影響を受けなかった。しかしながら、発芽率は、開始酸素濃度が増加するに従って、減少すると思われた。これらの結果から、初期酸素含有量を調節する利点、及び本発明者らの閉ループシステムにおいて呼吸されたCO2の受動的な封鎖が実証される。
【0067】
表13. 貯蔵された花粉の活力特性に対する、異なる開始酸素濃度の影響。
【表13】
【0068】
更なる試験は、加圧容器貯蔵システムでの、異なる近交系、雑種、及び貯蔵期間条件を有する様々な実験を含んだ。これらの実験にわたって、本発明者らは、3atmまでの絶対圧力(atm)、並びに貯蔵容器ヘッドスペース1リットル当たりの開始O2mmolを評価した。以下の表14から分かるように、本発明者らは、絶対圧力3atmまで加圧された、標準大気又は標準大気と純酸素ガスとの混合物を含む密封容器を用いた条件で、貯蔵花粉から種子を回復することができた。さらに、本発明者らは、容器貯蔵ヘッドスペース1リットル当たりO227mmolまでの開始酸素濃度を有する容器において花粉を貯蔵した場合に種子を回復することができた。
【0069】
表14. 標準大気又は標準大気と純酸素ガスとの混合物で加圧された容器内で貯蔵された花粉を用いた、平均貯蔵花粉性能。この表は、試験された様々な条件間の比較を示す。
【表14】

N = 穂の数
【0070】
5.担体化合物
結晶質石英シリカは、非晶質シリカ及びケイ酸塩よりも、花粉の貯蔵に優れた担体である。花粉貯蔵技術の既存の例では、花粉の凝集を防ぐために、担体としてタルク(ケイ酸マグネシウム水和物)又は非晶質シリカ(沈降、発熱性、又はシリカゲル)が使用される。合成非晶質活性化ケイ酸マグネシウム(例えば、FLORISIL(登録商標))もまた、花粉の凝集を防ぐために使用され得る。これらの既存の担体は、花粉粒子の細胞膜間の相互作用を抑制することによる花粉凝集の予防に有効であると同時に、その構造は、貯蔵花粉を用いた受粉中の花粉粒子と絹糸との相互作用も抑制し得る。さらに、結晶質シリカには見られない非晶質シリカ及びケイ酸塩の固有の特性は、貯蔵における花粉の生育力にとって有害である。
【0071】
タルクは、葉片状ケイ酸塩シートとして存在する化学式、Mg3Si410(OH)2の軟質粘土鉱物である。これらの軟質の葉片状シートは、花粉と混合するとばらばらになり、花粉表面を完全に覆う。このコーティングは、花粉粒子間の凝集相互作用と、花粉管発芽の開始に必要な花粉-絹糸相互作用の両方を抑制する。花粉をタルクと混合する行為は、花粉によって産生され得る潜在的な種子セットを低減し得る。花粉貯蔵用途におけるタルクの一般的な代替物としては、シリカの非晶質形態(沈降、発熱性、又はシリカゲル)が挙げられる。合成非晶質活性化ケイ酸マグネシウム(例えば、FLORISIL(登録商標))は、使用される貯蔵方法に応じて、花粉貯蔵における有効な担体でもある。シリカのすべての形態が化学式SiO2を共有し、活性化ケイ酸マグネシウムは、化学式MgO3Siによって示される。沈降シリカ、シリカゲル、及び合成非晶質ケイ酸マグネシウムは、花粉粒子間の凝集相互作用を抑制することによって、タルクと類似の利点を提供する。しかしながら、これらは、貯蔵における花粉の生育力に有害である。これらの化合物は高い比表面積を有し、貯蔵中に花粉を脱水することが分かっている。熱分解法シリカは、低密度、ポリマー様、シリカ凝塊で構成され、花粉粒子間の凝集相互作用の抑制に最も効率的である。熱分解法シリカは、貯蔵において乾燥剤としても働き、花粉の生育力にとっては有害である。花粉が熱分解法シリカで混合される場合、花粉粒子が絹糸に結合し、花粉管が発芽することが抑えられ、したがって、熱分解法シリカは、花粉が成育可能でない場合と同程度に、新鮮な若しくは貯蔵された花粉種子セットの可能性を排除する。これらの乾燥性、低い鉱物硬度、及び高い比表面積特性のために、タルク、非晶質シリカ、及び非晶質ケイ酸塩は、花粉貯蔵技術において有効な担体ではない。
【0072】
シリカは、結晶質鉱物、石英として天然に一般に見出される。結晶質シリカは、複数の多形結晶質形態で存在し得る。これらの多形の混合物は、多結晶質シリカと呼ばれ得る。結晶質シリカは、タルク又は合成非晶質シリカと異なる構造特性、限定されないが、より高い鉱物モース硬度、より高いかさ密度、及びより低い比表面積などの特性を有する。結晶質シリカは、貯蔵中に花粉粒子間の凝集相互作用を抑制するが、適用してすぐに、又は取り扱い中に担体粒子がばらばらになるために、過度に花粉粒子を覆わない。さらに、結晶質シリカは乾燥剤として作用しない。
【0073】
結晶質シリカと混合された花粉試料は、貯蔵後に、タルクよりも、均一な、高い種子セットを示す(表17、18、及び19)。好ましい平均結晶質シリカ粒径は、10μmであると考えられるが(表19)、様々な適用では、ナノ粒子(例えば、1nm)~100μmの範囲の粒径が使用され得る。活性化ケイ酸マグネシウムと混合された花粉試料は、タルクと混合された花粉と類似の性能を示す(表16及び20)。
【0074】
表15. 花粉貯蔵担体の粒径、比表面積、及びかさ密度。
【表15】
【0075】
表15は、他のケイ酸塩から結晶質シリカを差別化する花粉貯蔵担体の重要な特性を説明する。粒径及び比表面積の値は、製造元の仕様書から明示される。かさ密度は、花粉貯蔵実験中に使用される担体調製物で直接測定された。
【0076】
表16. 3種類の担体に対する新鮮な花粉種子セット。
【表16】
【0077】
業界標準では、新鮮な花粉で作業する場合に、担体としてタルクが使用されてきた。例えば、米国特許第2,570,511号明細書(1946年5月22日出願)を参照のこと。結晶質シリカ及び活性化ケイ酸マグネシウムの両方が、新鮮な花粉で作業する場合に、タルクと同様な性能を示す。すべての担体が、花粉2重量部:担体1重量部の比で花粉と混合された。受粉は、受け入れ可能な(receptive)絹糸上に1時間以内に行われた。
【0078】
表17. 2種類の担体に対する貯蔵花粉種子セット。
【表17】
【0079】
この実験から、結晶質シリカを用いて花粉を貯蔵した結果、タルクを用いて貯蔵された花粉よりも、多い種子セットが得られることが実証される。どちらの担体も、花粉2重量部:担体1重量部の比で花粉と混合された。受粉は、受け入れ可能な絹糸上に貯蔵の4日後に行われた。
【0080】
表18. 2種類の担体に対する貯蔵花粉種子セット。
【表18】
【0081】
この実験で測定された標準偏差から、結晶質ケイ酸塩担体の使用によって、トウモロコシ穂の間での種子セットのばらつきを低減することにより受粉性能が改善されることがさらに実証される。どちらも担体も花粉2重量部:担体1重量部の比で花粉と混合された。受粉は、受け入れ可能な絹糸上に貯蔵の7日後に行われた。
【0082】
表19. 結晶質SiO2の様々な平均サイズの比較。
【表19】
【0083】
この実験から、結晶質シリカの1μm又は10μm平均粒径調製物は、トウモロコシ花粉の貯蔵に優れた選択肢であることが実証される。それより大きな45um平均粒径調製物では、貯蔵において花粉の生育力を保つのに成功し、他の花粉タイプの優れた選択肢であり得る。すべての担体が、花粉2重量部:担体1重量部の比で花粉と混合された。受粉は、受け入れ可能な絹糸上に貯蔵の7日後に行われた。
【0084】
金属粉末は、タルク粉末及び非晶質ケイ酸塩と同じ欠点を示さない、花粉貯蔵に有効な担体である。金属粉末は、貯蔵中の隣接する花粉粒子膜間の凝集相互作用を防ぐが、花粉膜表面を過度に覆わず、トウモロコシ絹糸又は他の植物の柱頭への付着を阻害しない。このように阻害がないことより、有効な花粉管の発芽が可能となり、且つタルク粉末及び非晶質シリカよりも、これらの担体を優れたものにすることが可能である。元素金属粉末、金属酸化物粉末、及び金属炭化物粉末は、すべて有効な花粉貯蔵担体である。これらの粉末は、固体状態還元、電気分解、化学反応、高温燃焼、ガス微粒化、水微粒化、プレス及び焼結、遠心微粒化、粉砕、並びに粒径及び粒子表面特性を最適化する他の研磨技術など機能を最適化する多様な技術によって製造され得る。トウモロコシ花粉貯蔵における金属粉末に最適な粒子タイプは、10μm研磨球形粒子であると考えられるが、他の粒径及び表面特性が、他の花粉タイプに関して、より良い場合がある。一部の適用において、花粉膜との粒子表面相互作用を改変するために、金属粉末はポリマーでコーティングされ得る。他の用途において、金属粒子は、花粉粒子膜との相互作用を改変するため、貯蔵における花粉と微生物の呼吸を改変するため、又は貯蔵中の微生物増殖を抑制するために有効成分でコーティングされ得る。これらの有効成分としては、核酸、タンパク質、農薬、又はバイオスティミュラントが挙げられる。金属担体としては、花粉性能を高め得る植物における既知の生物学的役割を有する風雨、及び花粉性能に影響しない既知の生物学的役割を持たない担体が挙げられる。混合物中の花粉の濃度を高めるために、貯蔵後に花粉担体から磁気的に担体を除去することができる用途において、強磁性担体が好ましい場合がある。
【0085】
マイカは、一般化学式及び完全な底面劈開によって定義される鉱物のグループである。完全な底面劈開によって、隣接する花粉粒子膜間の相互作用の防止に有効である、平板形状の粒子が生じる。花粉貯蔵においてマイカ鉱物が有効な担体となる物理的性質に加えて、マイカ鉱物の高反射率は、花粉適用中に目に見える指標として働き得る。これらの反射特性は、プロトコルオペレーター又はカメラ機械によって可視化し、適用時の花粉の分布をたどることができ、又はどこで受粉が起こったかを確認することができる。
【0086】
表20は、花粉貯蔵における担体としての結晶質シリカ、金属粉末担体、及びマイカの性能を詳述する。この試験におけるすべての担体が、結晶質シリカと類似の性能を示す。
【0087】
表20: 10種類の担体で貯蔵された花粉からの種子セット。
【表20】
【0088】
すべての担体が、花粉2重量部:担体1重量部の比で花粉と混合された。10μm 316Lステンレス鋼粉末が、高温燃焼によって生成され、個々の粒子が非晶質を有する。均一な球形粒子が形成を形成するために、粉砕と共に超高圧水及びガス微粒化によって、3D印刷に対して最適化される。
【0089】
表21. 2つの独立した実験における2種類の担体に対する貯蔵花粉種子セット。
【表21】
【0090】
これらの実験から、5日間貯蔵された花粉においてタルク又は活性化ケイ酸マグネシウム担体を使用することから得られる矛盾する結果が実証される。実験2の平均及び標準偏差は、丸めた後に同じ整数である。両方の実験に関して、担体は、花粉2重量部:担体1重量部の比で花粉と混合された。貯蔵して5日後に、受け入れ可能な絹糸の同じ個体群上に受粉が行われた。
【0091】
6.遺伝子導入系統を含有する植物の花粉貯蔵
雄の評点は、近交系親系統の発育中に収集されたすべてのデータタイプを説明する、花粉源としての性能の全体的評価である。最高から最低の雄の性能の評点は、望ましい(Desirable)、許容可能(Acceptable)、下限に近い(Marginal)、及び進歩なし(Do Not Advance)である。望ましい、許容可能、限界、及び進歩なしの全体的な雄の評点を受けた遺伝子導入系を含有する5つの近交系親系統の花粉を別々に収集し、花粉2重量部:担体1重量部の比で結晶質シリカ担体と混合した。結晶質シリカと混合された花粉の一部を使用して、新鮮な自家受粉を行った(貯蔵0日)。6℃環境でソーダ石灰が添加された密封容器内で、残りの花粉+結晶質シリカ混合物を貯蔵した。5日後、貯蔵された花粉を、花粉を提供する同じ近交系上の絹糸に適用した(つまり、自家受粉)。すべての穂は、同じ量(体積による)の新鮮な花粉と担体、又は貯蔵花粉と担体を受け入れた。
【0092】
表22. 5つの異なる近交親系統に対する貯蔵花粉からの種子セット。近交系1~4は、遺伝子導入系統Bt11、GA21、及びMIR162を含む。近交系5は、遺伝子導入系統Bt11及びMIR162を含む。
【表22】
【0093】
材料及び方法
1.MTT染色
細胞生存率に関する比色アッセイとして3-(4、5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の使用は一般的である。MTTを用いた細胞のポジティブな染色(目に見える紫色の着色)から、NAD(P)H依存性細胞オキシドレダクターゼの活性が示され、したがって、それは生細胞の代謝活性の指標である。本発明者らの研究において、0.9%MTT、5%ショ糖溶液200uLを、花粉約20uLに添加し、室温にて5分間覆って静置し、次いで染色し、強度を記録する。酵素活性は、花粉の乾燥において停止させる最後のプロセスの1つであり、組織が本当に死んでいるか否かの(その場合には、染色の完全な欠如が確認される)、信頼できる指標である。ポジティブな染色は、花粉の活力及び受精のその能力を完全にアッセイするために、花粉管発芽及び受粉などの他のアッセイと組み合わせられるべきである。
【0094】
2.花粉管発芽
胚の受精前に、トウモロコシ花粉は、子房に精細胞を送達するために、絹糸を介して花粉管を発芽しなければならない。花粉管を発芽するこの能力は、固形培地でアッセイすることができる。培地の表面に花粉が振りまかれ、室温にて60分間ベンチ上に静置し、次いで観察するか、又は描写する。花粉管を有する花粉粒子の数をカウント又はスコアリングする。発芽した花粉粒子の定量的スコアリングは可能であるが、非常に時間がかかる。選択肢として、所定の花粉試料の花粉管発芽/発芽能の程度を示すために、分類的スケールでのランキングを割り当てることができる。本発明者らの研究において、1~5のスケールが使用され、1=発芽なし、2=花粉粒子の1~20%が発芽、3=花粉粒子の21~40%が発芽、4=花粉粒子の41~60%が発芽、5=花粉粒子の>60%が発芽。本発明者らは、インキュベーションの60分後に単一粒子の直径よりも長い、又は等しい花粉管を有する花粉粒子を、発芽の成功としてカウントした。
【0095】
3.貯蔵花粉での授粉及び種子セットの測定
貯蔵花粉のおよその生育力を理解するために使用することができるいくつかのツールがある。これらのツールとしては、MTT染色、花粉管発芽、及びインピーダンスフローサイトメトリーデバイス、例えばAmpha Z32(Amphasys製;amphasys.com/ampha-z32-pollen-analyzer/)が挙げられる。これらのツールのそれぞれは、その用途を有し、且つ組み合わせて使用された場合に、胚珠を受精させる花粉の能力が適切に推定され得る。しかしながら、種子セットの測定は依然として、この形質の最も強い指標である。
【0096】
本明細書に記載の実験で測定される種子セットは、コントロールされた温室又は農地受粉から生産された。受粉に使用される各穂は、風媒の花粉からの混入を防ぐために、絹糸が成長する前に袋詰めされた。貯蔵で使用される花粉は通常、同じ系統の複数の雄穂から採集され、次いで花粉の単一バッチ内にまとめられる。各バッチは、個々の試料容器内に分配される前に完全に混合された。貯蔵後、花粉は、貯蔵コンテナからの穂に直接適用され得るか、又は再びまとめられ、サブサンプルが受粉に使用され得る。受粉は手作業で行われ-穂の袋は、手受粉を行うのに十分に長く取り除かれ、次いで外部の花粉源からの混入を防ぐために、より大きな穂の袋で穂が袋がけされる。次いで、穀粒のカウントのために穂が収穫される場合に、穀粒を12~14日間発育させる。穀粒は、手作業で、又は画像分析ソフトウェアでカウントされる。十分に発育しなかった穀粒は、穀粒のカウントに含まれない。
図1
【国際調査報告】