(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ウイルス感染の神経学的合併症の処置と予防のための新規化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/23 20060101AFI20240621BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 36/11 20060101ALI20240621BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 27/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240621BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240621BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240621BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K31/23 ZNA
A61P25/00
A61K36/11
A61P11/00
A61P9/00
A61P21/00
A61P27/00
A61P25/04
A61P25/02
A61P25/28
A61P25/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578116
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2022066548
(87)【国際公開番号】W WO2022263624
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523474760
【氏名又は名称】サンレーゲン ヘルスケア エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ドン,ユホン
【テーマコード(参考)】
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C088AA18
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA02
4C088NA14
4C088ZA02
4C088ZA16
4C088ZA20
4C088ZA32
4C088ZA36
4C088ZA59
4C088ZA94
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB06
4C206DB48
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA02
(57)【要約】
本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するための式(I):
【化1】
の化合物、並びに式(I)の化合物の代謝物、式(I)の化合物若しくはその代謝物を含む医薬組成物、及び/又はハナヤスリ(ophioglossum)を含む医薬組成物に関する。本化合物、代謝物、医薬組成物及びハナヤスリは、SARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に特に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するための式(I):
【化1】
の化合物であって、式中、
R
1、R
2及びR
3は、H又は-C(O)-C
14-アルキルから独立して選択され、ただし、R
1、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは-C(O)-C
14-アルキルである、
化合物。
【請求項2】
R
1、R
2又はR
3が-C(O)-C
14-アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1、R
2及びR
3のうちのいずれか2つが-C(O)-C
14-アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
1、R
2及びR
3が-C(O)-C
14-アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物がトリペンタデカノインである、請求項1又は4に記載の化合物。
【請求項6】
ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和において使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物の代謝物であって、前記代謝物は、HO-C(O)-C
14-アルキル又はその薬学的に許容される塩である、代謝物。
【請求項7】
ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するための請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、請求項6に記載の代謝物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するためのハナヤスリ(オフィオグロッサム(ophioglossum))。
【請求項9】
前記ウイルス感染疾患が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ポリオウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、日本脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス又はジカウイルスによって引き起こされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項6に記載の使用のための代謝物、請求項7に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項8に記載の使用のためのハナヤスリ。
【請求項10】
前記ウイルス感染疾患が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、又はMERSによって引き起こされる、請求項1~5若しくは9のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項6若しくは9に記載の使用のための代謝物、請求項7若しくは9に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項8若しくは9に記載の使用のためのハナヤスリ。
【請求項11】
前記ウイルス感染疾患がSARS-CoV-2によって引き起こされる、請求項10に記載の使用のための化合物、使用のための代謝物、使用のための医薬組成物又は使用のためのハナヤスリ。
【請求項12】
前記ウイルス感染疾患の神経学的合併症が中枢神経系の、特に脳幹の、損傷である、請求項1~5若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項6若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための代謝物、請求項7若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項8~11のいずれか一項に記載の使用のためのハナヤスリ。
【請求項13】
前記中枢神経系の、特に脳幹の、損傷の症状が呼吸困難及び/又は心拍障害である、請求項12に記載の使用のための化合物、使用のための代謝物、使用のための医薬組成物又は使用のためのハナヤスリ。
【請求項14】
ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)が末梢神経系の損傷を含む、請求項1~5若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項6若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための代謝物、請求項7若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項8~11のいずれか一項に記載の使用のためのハナヤスリ。
【請求項15】
前記末梢神経系の損傷の症状が、筋力低下、味覚及び/又は嗅覚の喪失、手足の痛み、及び/又は倦怠感である、請求項14に記載の使用のための化合物、使用のための代謝物、使用のための医薬組成物、又は使用のためのハナヤスリ。
【請求項16】
前記ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の症状が、頭痛及び/又は発作である、請求項1~5若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項6若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための代謝物、請求項7若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項8~11のいずれか一項に記載の使用のためのハナヤスリ。
【請求項17】
前記ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を予防することが、アルツハイマー病又はパーキンソン病などの神経変性疾患の発症を予防することである、請求項1~5若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項6若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための代謝物、請求項7若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項8~11のいずれか一項に記載の使用のためのハナヤスリ。
【請求項18】
前記ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を予防することが、心肺不全を予防することになる、請求項1~5若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項6若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための代謝物、請求項7若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項8~11のいずれか一項に記載の使用のためのハナヤスリ。
【請求項19】
前記ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)が、血管周囲脳炎、間質性脳炎、神経細胞喪失、及び/又は軸索変性を含む、請求項1~5若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項6若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための代謝物、請求項7若しくは9~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項8~11のいずれか一項に記載の使用のためのハナヤスリ。
【請求項20】
前記式(I)の化合物が、対象への投与時に、好ましくは神経細胞において、ニューログロビンの発現を上方制御する、請求項1~5若しくは9~19のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項6若しくは9~19のいずれか一項に記載の使用のための代謝物、請求項7若しくは9~19のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項8~19のいずれか一項に記載の使用のためのハナヤスリ。
【請求項21】
ニューログロビンの上方制御された発現が、神経細胞のアポトーシスを阻害する、請求項20に記載の使用のための化合物、使用のための代謝物、使用のための医薬組成物、又は使用のためのハナヤスリ。
【請求項22】
前記式(I)の化合物が、1mg/日~1000mg/日の投与量で投与されるべきである、請求項1~5若しくは9~21のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項6若しくは9~21のいずれか一項に記載の使用のための代謝物、請求項7若しくは9~21のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項8~21のいずれか一項に記載の使用のためのハナヤスリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するための式(I):
【化1】
の化合物、並びに式(I)の化合物の代謝物、式(I)の化合物若しくはその代謝物を含む医薬組成物、及び/又はハナヤスリ(オフィオグロッサム(ophioglossum))に関する。本化合物、代謝物、医薬組成物及びハナヤスリは、SARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
神経障害の発症はウイルス感染と関連しており、神経障害は神経症状を引き起こすか、又はこれらの病理学的徴候を誘発する免疫反応をもたらし得る。現在、この関係は主に、神経障害を呈する患者の感染及び血清有病率に関する疫学データに基づいている。発作、てんかん重積状態、脳炎、重症神経筋症、急性播種性脳脊髄炎、急性壊死性脳炎、ギランバレー症候群、横断性脊髄炎、及び急性弛緩性脊髄炎を含む神経症状は全て、重症ウイルス性呼吸器感染症に関連している。
【0003】
特に注目されているのは、SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされるウイルス感染疾患であり、毎日実質的な数の命を奪っている世界的な医療緊急事態を引き起こしている。SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の主な合併症は呼吸不全であるが、末梢神経系と中枢神経系の両方に影響を与える神経症状を有するかなりの数の患者が報告されている。COVID-19患者では、頭痛、嗅覚消失、味覚消失、混乱、発作、及び脳症を含む神経症状が頻繁に報告されており、致死性のCOVID-19症例の30%を超える脳生検でSARS-CoV-2RNAが検出されている。SARS-CoV-2感染症は、長期的には、生存者の脳を含む様々な組織の老化表現型を加速させると想定されている。CNSにおけるSARS-CoV-2感染の慢性的及び長期的な影響は、パンデミックが終息した後も注意深く監視する必要があると想定されている。SARS-CoV-2の他にいくつかの他のウイルスが、アルツハイマー病、パーキンソン病及び多発性硬化症のような主な脳障害に関連することは注目すべきである。
【0004】
今日まで、ウイルス感染疾患、特にウイルス感染疾患がSARS-CoV-2によって引き起こされる神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和のための治療は知られていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の客観的な技術的課題は、ウイルス感染疾患、特に、SARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置に使用するための新規化合物を提供することであった。
【0006】
客観的な技術的課題は、本明細書に提示され、特許請求の範囲によって特徴付けられる実施形態によって解決される。
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、コロナウイルス感染のマウスモデルにおいて、式(I)の化合物による処置が、ビヒクルによる処置と比較して臨床スコアの改善、並びに動物の体重減少の低減をもたらすことを見出した(詳細に関しては、実施例1及び
図1を参照されたい)。式(I)の化合物は、マウスモデルにおいて、N-ニトロソ-N-メチル-尿素によって誘導される神経細胞の喪失を救出する驚くべき能力をさらに示している(実施例2、
図2)。本発明者らは、さらに、式(I)の化合物による処置を、神経細胞におけるニューログロビンの発現増加の誘導と関連づけたが、これは予想外の結果であると考えられる(実施例4、
図4)。注目すべきことに、この予期せぬ観察によって、本発明に包含されるような、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を処置、予防及び/又はその症状を緩和するために、対象の神経細胞におけるニューログロビンの発現を調節するための式(I)の化合物の使用が可能になった。
【0008】
本発明を以下の実施形態に要約する
【0009】
第1の実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するための式(I)
【化2】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、H又は-C(O)-C
14-アルキルから独立して選択され、ただし、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つは-C(O)-C
14-アルキルである)
の化合物に関する。
【0010】
特定の実施形態において、本発明は、R1、R2又はR3が-C(O)-C14-アルキルである式(I)の使用のための化合物に関する。
【0011】
さらなる特定の実施形態において、本発明は、R1、R2及びR3の任意の2つが-C(O)-C14-アルキルである式(I)の使用のための化合物に関する。
【0012】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、R1、R2及びR3が-C(O)-C14-アルキルである式(I)の使用のための化合物に関する。
【0013】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、トリペンタデカノインである、式(I)の使用のための化合物に関する。
【0014】
さらなる実施形態において、本発明は、式(I)の化合物の代謝物であって、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和において使用するための、HO-C(O)-C14-アルキル又はその薬学的に許容される塩である代謝物に関する。
【0015】
再びさらなる実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するための式(I)の化合物又は式(I)の化合物の代謝物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0016】
再びさらなる実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するためのハナヤスリに関する。
【0017】
特定の実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ポリオウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、日本脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス又はジカウイルスによって引き起こされる、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0018】
さらなる特定の実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、又はMERSによって引き起こされる、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0019】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患がSARS-CoV-2によって引き起こされる、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0020】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症が中枢神経系、特に脳幹の損傷である、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0021】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、中枢神経系、特に脳幹の損傷の症状が呼吸困難及び/又は心拍障害である、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0022】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)が末梢神経系の損傷を含む、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0023】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、末梢神経系の損傷の症状が、筋力低下、味覚及び/又は嗅覚の喪失、手足の痛み、及び/又は倦怠感である、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0024】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の症状が頭痛及び/又は発作である、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0025】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を予防することが、アルツハイマー病又はパーキンソン病などの神経変性疾患の発症を予防することである、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0026】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を予防することが心肺不全を予防することになる、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0027】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)が、血管周囲脳炎、間質性脳炎、神経細胞喪失、及び/又は軸索変性を含む、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0028】
さらなる特定の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物が対象に投与されると、好ましくは神経細胞において、ニューログロビンの発現を上方制御する、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0029】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、ニューログロビンの上方制御された発現が、神経細胞のアポトーシスを阻害する、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0030】
再びさらなる特定の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物が、1mg/日~1000mg/日の投与量で投与されるべきである、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1:A、B:マウスコロナウイルス感染モデルのビヒクルによる処置と式(I)の化合物(本明細書では、トリペンタデカノイン)による処置の臨床スコアの比較;C、D:マウスコロナウイルス感染モデルのビヒクルによる処置と式(I)の化合物(本明細書では、トリペンタデカノイン)による処置の体重減少の比較。
【
図2】
図2:式(I)の化合物の代表的な化合物であるトリペンタデカノインは、N-ニトロソ-N-メチル-尿素光受容器変性(N-nitroso-N-methylurea photoreceptor degeneration)のマウスモデルにおいて神経保護効果を示す。
【
図3】
図3:A.無処置の又はハーブB-ハマハナヤスリ(オフィオグロッサム サーメイル(Ophioglossum thermale))(10μg/ml)若しくはSBC003-トリペンタデカノイン(30μM)で処置した若い細胞、又は古い細胞の代表的な画像。上部パネルは、出芽痕(bud scars)を明らかにするために蛍光増白剤28で染色した細胞を示す。下部パネルは、Hsp104-GFPシグナルを示す。矢印は老化によるタンパク質の沈着を指す。B.Hsp104-GFPフォーカスを有する細胞のパーセンテージ。平均±SD。p値は、ビヒクルのみと比較するANOVAからの補正p値である。C.細胞質Hsp104-GFPの平均蛍光強度。平均±SD。p値は、ビヒクルのみと比較するANOVAから得られた補正p値である。D.Hsp104-GFPフォーカスの蛍光強度は、全ての条件で同等である。平均±SD。
【
図4】
図4:A:ビヒクルと比較した、式(I)の化合物(本明細書では、トリペンタデカノイン)での処置時にその発現が上方制御された酵母遺伝子;B:無処置の又はトリペンタデカノインで処置した古い細胞の画像。FB28で染色した出芽痕(上部パネル)。HSP104-GFP蛍光シグナル(下部パネル)。矢印は老化によって誘導されたタンパク質沈着を指す。B.Hsp104-GFPフォーカスを有する細胞のパーセンテージ。平均±SD。p値は、野生型対照(黒い星)又はトリペンタデカノインで処置した野生型(薄い灰色の星印)と比較するANOVAからの補正p値である。
**<0.01;
****<0.0001;ns=有意差なし。
【
図5】
図5:式(I)の化合物(本明細書では、トリペンタデカノイン)による処置がマウス一次皮質ニューロンにおけるニューログロビンの発現に及ぼす影響。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明の使用のための化合物を以下に説明する。以下の定義の全ての可能な組み合わせも想定されることを理解されたい。
【0033】
一実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するための式(I)
【化3】
の化合物に関する。R
1、R
2及びR
3は、H又は-C(O)-C
14-アルキルから独立して選択され、ただし、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つは-C(O)-C
14-アルキルである。
【0034】
一実施形態において、R1、R2又はR3は-C(O)-C14-アルキルである。言い換えると、R1、R2及びR3のうちの1つは-C(O)-C14-アルキルであり、R1、R2及びR3の残りの2つはHである。
【0035】
さらなる実施形態において、R1、R2及びR3の任意の2つは、-C(O)-C14-アルキルである。それは、さらにR1、R2及びR3のうちの1つがHであることを意味する。
【0036】
好ましくは、R1、R2及びR3は-C(O)-C14-アルキルである。さらに好ましくは、式(I)の化合物はトリペンタデカノインである。トリペンタデカノインは、本明細書で理解されるように、R1、R2及びR3が-C(O)-テトラデカン-1-イルである式(I)の化合物である。
【0037】
R1、R2及びR3の少なくとも1つがHである式(I)の化合物はまた、本明細書においてR1、R2及びR3が-C(O)-C14-アルキルである式(I)の化合物の代謝物としても理解され得る。当業者が理解するように、対象、好ましくはヒト対象への投与時に、式(I)の化合物のグリセリド部分内のエステル結合は、例えば、酵素によって触媒される反応で加水分解して、式(I)によって包含される別のグリセリド、又はグリセロール、及び式HO-C(O)-C14-アルキルによるカルボン酸(又はその塩、特に、その薬学的に許容される塩)を生成する。前記カルボン酸はまた、式(I)の化合物の代謝物とも称され得る。
【0038】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するための、式(I)の化合物の代謝物に関する。好ましくは、式(I)の化合物の代謝物は、HO-C(O)-C14-アルキル又はその薬学的に許容される塩である。式(I)の化合物がトリペンタデカノインである特定の実施形態において、前記代謝物HO-C(O)-C14-アルキル又はその薬学的に許容される塩は、n-ペンタデカン酸又はその薬学的に許容される塩である。
【0039】
本発明の化合物及び/又は本発明の化合物の代謝物は、任意選択で1以上の薬学的に許容される賦形剤(複数可)及び/又は担体(複数可)を含むことができる医薬組成物の形態で患者に投与することができる。そのため、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するための、本発明の化合物又は本発明の化合物の代謝物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0040】
投与経路に応じて、本発明の化合物又は本発明の代謝物は、様々な医薬製剤で提供することができる。前記医薬製剤の一部は、例えば、消化管における本発明の化合物又は本発明の代謝物の分解を防止するために、製剤に保護コーティングを施すことが必要であり得る。本発明の化合物(又は本発明の代謝物)は、シロップ剤、輸液、注射液、スプレー剤、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、トローチ剤、リポソーム剤、坐剤、パップ剤、絆創膏、徐放性カプセル剤、散剤、又は徐放性製剤として製剤化することができる。
【0041】
本発明の化合物又は本発明の化合物の代謝物は、好ましくは、経口投与される。したがって、本発明の化合物又は代謝物の投与に特に好ましい医薬形態は、経口投与に適する形態である。経口投与用の製剤は、通常、投与単位で供給され、結合剤、充填剤、希釈剤、打錠剤、滑沢剤、界面活性剤、崩壊剤、着色剤、香料及び湿潤剤などの従来の賦形剤を含有し得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法に従ってコーティングされ得る。適切な充填剤は、セルロース、マンニトール、ラクトース及び類似の薬剤を含むか、又は好ましくはそれらである。適切な崩壊剤は、デンプン、ポリビニルピロリドン及びデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体を含むか、又は好ましくはそれらである。適切な滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウムを含むか、又は好ましくはそれである。適切な湿潤剤は、ラウリル硫酸ナトリウムを含むか、又は好ましくはそれである。これらの固形経口組成物は、従来の混合法、充填法又は打錠法で調製することができる。混合操作を繰り返して、大量の充填剤を含有する組成物中に活性剤を分散させることができる。これらの操作は、当業者に公知である。
【0042】
本開示によれば、経口投与用の液体組成物として本発明の化合物又は本発明の化合物の代謝物を含む医薬組成物は、例えば、水溶液、乳剤、シロップ剤若しくはエリキシル剤の形態で、又は使用時に水若しくは適切な液体担体で再構成される乾燥製品の形態で提供することができる。液体組成物は、従来の添加剤、例えば、懸濁剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は食用硬化油脂;乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、又はアカシア;非水性担体(食用油を含み得る)、例えば、アーモンド油、分留ココナッツ油、油性エステル、例えば、グリセリンエステル、プロピレングリコール又はエチルアルコール;保存剤、例えば、メチル又はプロピルp-ヒドロキシ安息香酸又はソルビン酸;浸透促進剤、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO);pH緩衝系、例えば、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸-リン酸緩衝液及び他の薬学的に許容される緩衝系;可溶化剤、例えば、ベータ-シクロデキストリン、及び所望であれば、従来の香料又は着色剤を含有することができる。
【0043】
経口製剤は、任意に、経口製剤の味覚を最適化するための味覚マスキング成分をさらに含んでもよい。このような味覚マスキング成分の例は、当業者に周知である柑橘類、カンゾウ、ミント、ブドウ、カシス又はユーカリベースの香料であり得る。
【0044】
本発明の化合物又は本発明の化合物の代謝物のさらに好ましい投与形態は、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。いずれの場合も、最終的な溶液又は分散形態は無菌で流動性でなければならない。輸液又は注射液の滅菌は、抗菌剤又は抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸又はチメロサール(thimersal)のような保存剤の添加を含むがこれに限定されない、当技術分野で認められた任意の数の技術によって達成することができる。さらに、糖又は塩、特に塩化ナトリウムなどの等張剤を輸液又は注射液に組み込んでもよい。
【0045】
通常、このような溶液又は分散液は、例えば、水-緩衝水溶液、例えば、生体適合性緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液)、エタノール、ポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、それらの適切な混合物、界面活性剤又は植物油を含有する溶媒又は分散媒を含む。本発明の化合物は、特に非経口投与のために、リポソームに製剤化することもできる。リポソームは、遊離薬物と比較して、循環中の半減期の延長、及び封入された薬物の持続的なさらにより多くの放出という利点を提供する。
【0046】
本発明の化合物の1つ又はいくつかを含有する滅菌注射用溶液の生成は、上記に列挙された様々な成分とともに、適切な溶媒中に、それぞれの化合物を必要量で組込み、その後必要に応じて滅菌することによって達成される。滅菌粉末を得るには、上記の溶液を必要に応じて真空乾燥又は凍結乾燥する。本発明の好ましい希釈剤は、水、生理学的に許容される緩衝液、生理学的に許容される緩衝塩溶液又は塩溶液である。好ましい担体は、カカオバター及びビテベソール(vitebesole)である。
【0047】
本発明の化合物の様々な医薬形態と共に使用することができるさらなる賦形剤は、以下の非限定的なリスト:
a)結合剤、例えば、乳糖、マンニトール、結晶性ソルビトール、二塩基性リン酸塩、リン酸カルシウム、糖類、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど;
b)滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、硬化植物油、ロイシン、グリセリド及びフマル酸ステアリルナトリウム、
c)崩壊剤、例えば、デンプン類、クロスカルメロース、メチルセルロースナトリウム、寒天、ベントナイト、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど
から選択することができる。
【0048】
他の適切な賦形剤は、参照により本明細書に組み込まれる、米国薬剤師協会によって発行された医薬賦形剤のハンドブック(the Handbook of Pharmaceutical Excipients)に見出すことができる。
【0049】
本発明のさらなる実施形態は、処置投与量が1mg/日~1000mg/日である、本発明の使用のための化合物又は本発明の使用のための本発明の化合物の代謝物に関する。さらなる実施形態において、処置投与量は、1mg/日~1000mg/日である。下限は、例えば、1mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、25mg/日又は50mg/日である。上限は、例えば、1000mg/日、900 20mg/日、800mg/日、750mg/日、700mg/日、600mg/日、500mg/日、250mg/日、200mg/日である。各上限を、各下限と組み合わせることができることを理解されたい。好ましい実施形態において、投与量は、10mg/日~200mg/日である。
【0050】
さらなる実施形態において、本発明は、式(I)の化合物又は式(I)の化合物の代謝物が、1mg/日~1000mg/日の量で投与されるべきである、本発明の使用のための医薬組成物に関する。下限は、例えば、1mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、25mg/日又は50mg/日である。上限は、例えば、1000mg/日、900mg/日、800mg/日、750mg/日、700mg/日、600mg/日、500mg/日、250mg/日、200mg/日である。各上限を、各下限と組み合わせることができることを理解されたい。好ましい実施形態において、投与量は、10mg/日~200mg/日である。
【0051】
本明細書で理解されるように、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための式(I)の化合物の代謝物、又は本発明の使用のための医薬組成物は、経口剤形(散剤、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、水性製剤、シロップ剤、エリキシル剤、丸剤、散剤、サシェ、顆粒剤)、又は局所調製物(クリーム、軟膏、ローション、ゲル、バーム、パッチ、ペースト、スプレー溶液、エアロゾルなど)、又は注射用調製物(溶液、懸濁液、乳剤)などの任意の形態に調製することができる。
【0052】
式(I)の化合物、特にトリペンタデカノインは、ハーブ又はヒト/動物の乳から得ることができることに留意されたい。本発明の化合物は、ハナヤスリ属(genus Ophioglossum)の植物から得ることができる。そのため、さらなる実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するためのハナヤスリに関する。
【0053】
本発明において、ハナヤスリはハナヤスリの全種を含むことを理解されたい。特に、それは、ハナヤスリ種、Ophioglossum L.、Ophioglossum thermale Kom.、Ophioglossum thermale Komarov、Ophioglossum austro-asiaticum Nishida、Ophioglossum austroasiaticum Nish.、Ophioglossum petiolatum L.、Ophioglossum pendulum L.、Ophioderma pendula(L.)Presl.、Ophioglossum reticulatum L.、Ophioglossum vulgatum L.、Ophioglossum pedunculosum Desv.、Ophioglossum parvifolium Grev.et HK.、Ophioglossum petiolatum Hook.、Ophioglossum petiolatum Hooker、Ophioglossum 25 tenerum、Ophioglossum pycnostichum、Ophioglossum pycnostichum(Fern.) A.&D. Love、Ophioglossum pycnostichum(Fernald) A.Love & D.Love;O.vulgatum var.pycnostichum Fernald、Ophioglossum crotalophoroides Walt.、Ophioglossum crotalophoroides Walter var.crotalophoroides、Ophioglossum crotalophoroides Walter var.nanum Osten ex J.S.Licht.、Ophioglossum azoricum、Ophioglossum azoricum C.Presl、Ophioglossum vulgatum Linnaeus var.pseudopodum(S.F.Blake)Farwell、Ophioglossum dendroneuron E.P.St.John;O.ellipticum Hooker&Greville;O.mononeuron E.P.St.John、Ophioglossum dendroneuron E.P.St.John、Ophioglossum Linnaeus、Ophioglossum palmatum L.、5 Ophioglossum mononeuron E.P.St.John、Ophioglossum austroasiaticum、Ophioglossum bergianum、Ophioglossum bucharicum、Ophioglossum californicum、Ophioglossum caroticaule、Ophioglossum convexum、Ophioglossum californicum Prantl、Ophioglossum concinnum、Ophioglossum concinnum Brack.、Ophioglossum costatum、Ophioglossum costatum R.Br.、Ophioglossum coriaceum、Ophioglossum decipiens、Ophioglossum dietrichiae、Ophioglossum dudadae、Ophioglossum engelmannii、Ophioglossum engelmannii Prantl、Ophioglossum ellipticum Hook.&Grev.、Ophioglossum fernandezianum、Ophioglossum gomezianum、Ophioglossum gracile、Ophioglossum gramineum Willd.、Ophioglossum gramineum、Ophioglossum harrisii、Ophioglossum intermedium、Ophioglossum kawamurae、Ophioglossum lancifolium、Ophioglossum latifolium、Ophioglossum litorale、Ophioglossum loureirianum、Ophioglossum lusitanicum L.、Ophioglossum lusitanicum L.ssp.Californicum(Prantl)R.T.Clausen、Ophioglossum Lusitanicum L.var.californicum(Prantl)Broun、Ophioglossum moultoni、Ophioglossum namegatae、Ophioglossum nudicaule、Ophioglossum nudicaule L.f.、Ophioglossum nudicaule L.f.var.minus R.T.Clausen、Ophioglossum nudicaule L.f.var.tenerum(Mett.ex Prantl)R.T.Clausen、Ophioglossum oblongum、Ophioglossum obovatum、Ophioglossum opacum、Ophioglossum ovatum、Ophioglossum parvifolium、Ophioglossum parvum、Ophioglossum pendulum、Ophioglossum pendulum L.ssp.falcatum(C.Presl)R.T.Clausen、Ophioglossum pendulum L.ssp.Pendulum、Ophioglossum petiolatum、Ophioglossum polyphyllum、Ophioglossum polyphyllum A.Braun、Ophioglossum polyphyllum A.Braun ex Schub.、Ophioglossum pumilio、Ophioglossum pusillum、Ophioglossum pusillum Raf.、Ophioglossum raciborskii、Ophioglossum ramosii、Ophioglossum reticulatum、Ophioglossum rubellum、Ophioglossum savatieri、Ophioglossum scariosum、Ophioglossum schmidii、Ophioglossum simplex、Ophioglossum thermal、Ophioglossum thomasii、Ophioglossum timorense、Ophioglossum tenerum Mett.ex Prantl、Ophioglossum usterianum、Ophioglossum vulgatum、Ophioglossum vulgatum.auct.non L.、Ophioglossum vulgatum L.var.alaskanum(E.G.Britton)C.Chr.、Ophioglossum vulgatum L.var.pseudopodum(S.F.Blake)Farw.、Ophioglossum vulgatum L.var.pycnostichum Fernald、Ophioglossaceae Martinov、Cheiroglossa palmata(L.)C.Presl、Ophioglossum eliminatum Khand.&Goswami、Ophioglossum namegatae Nish.&Kurita、Ophioglossum nipponicum Miyabe &Kudo、及び/又はOphioglossum oleosum Khandから選択される群からなる。
【0054】
好ましいハナヤスリは、Ophioglossum thermale、Ophioglossum petiolatum、Ophioglossum reticulatum、Ophioglossum parvifolium、Ophioglossum vulgatum、Ophioglossum austroasiaticum、Ophioglossum azoricum、Ophioglossum californicum、Ophioglossum costatum、Ophioglossum crotalophoroides、Ophioglossum engelmanii、Ophioglossum lusitanicum、Ophioglossum nudicaule、Ophioglossum polyphyllum、Ophioglossum pusillum、及び/又はOphioglossum pycnosticumである。特に好ましいハナヤスリは、Ophioglossum thermale、Ophioglossum petiolatum、Ophioglossum reticulatum、Ophioglossum vulgatum、及び/又はOphioglossum austro-asiaticum Nishidaである。
【0055】
最も好ましいハナヤスリは、ハマハナヤスリ(オフィオグロッサム サーメイル(Ophioglossum thermale))である。
【0056】
本発明の一実施形態は、式(I)の化合物、好ましくはトリペンタデカノインの1mg/日~1000mg/日の投与に対応する量(本明細書では投薬レジメンとして理解される)の本発明の使用のためのハナヤスリに関する。
【0057】
さらなる実施形態は、式(I)の化合物、好ましくは、トリペンタデカノインの1mg/日~1000mg/日の投与に対応する量での本発明の使用のためのハナヤスリに関する。下限は、例えば、1mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、25mg/日又は50mg/日の式(I)の化合物、好ましくは、ハナヤスリに含まれるトリペンタデカノインである。上限は、例えば、1000mg/日、900mg/日、800mg/日、750mg/日、700mg/日、600mg/日、500mg/日、250mg/日、200mg/日の式(I)の化合物、好ましくは、ハナヤスリに含まれるトリペンタデカノインである。各上限を、各下限と組み合わせることができることを理解されたい。好ましい実施形態において、投与量は、10mg/日~200mg/日である。
【0058】
あるいは、本発明は、ハナヤスリが、10mg~10000mg/日の乾燥ハナヤスリ粉末の量で対象/患者に投与される、本発明の使用のためのハナヤスリに関する。下限は、例えば、10mg/日、20mg/日、30mg/日、40mg/日、50mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、300mg/日、500mg/日、700mg/日である。上限は、例えば、10000mg/日、8000mg/日、6000mg/日、5000mg/日、2500mg/日、1000mg/日である。各上限を、各下限と組み合わせることができることを理解されたい。
【0059】
さらなる実施形態において、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和に使用するための医薬組成物であって、1mg/日~1000mg/日の式(I)の化合物、好ましくはトリペンタデカノインの投与に対応する量のハナヤスリを含有する医薬組成物に関する。
【0060】
あるいは、本発明は、ハナヤスリが10mg~10000mg/日の乾燥ハナヤスリ粉末の量で投与されるべきである、使用のための医薬組成物に関する。下限は、例えば、10mg/日、20mg/日、30mg/日、40mg/日、50mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、300mg/日、500mg/日、700mg/日である。上限は、例えば、10000mg/日、8000mg/日、6000mg/日、5000mg/日、2500mg/日、1000mg/日である。各上限を、各下限と組み合わせることができることを理解されたい。
【0061】
好ましくは本明細書に示される量の本発明の使用のためのハナヤスリ、並びに本明細書に記載のハナヤスリを含む本発明の医薬組成物は、経口剤形(散剤、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、水性製剤、シロップ剤、エリキシル剤、丸剤、散剤、サシェ、顆粒剤)、又は局所調製物(クリーム、軟膏、ローション、ゲル、バーム、パッチ、ペースト、スプレー溶液、エアロゾルなど)、又は注射用調製物(溶液、懸濁液、乳剤)などの任意の形態に調製することができる。
【0062】
本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための化合物の代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリは、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和において特に有用である。
【0063】
本発明の範囲内では、神経学的合併症、特に、症候性である神経学的合併症をもたらし得るあらゆるウイルス感染疾患が包含される。ウイルス感染疾患は、DNAウイルス(二本鎖又は一本鎖)、RNAウイルス(一本鎖若しくは二本鎖、プラス鎖若しくはマイナス鎖にかかわらず)、逆転写ウイルス、又はエンベロープ型若しくは非エンベロープ型にかかわらず任意の新興ウイルスが原因である可能性がある。
【0064】
本発明のある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患は、呼吸器ウイルス感染に関連する。好ましくは、本明細書に記載の呼吸器ウイルスは、ライノウイルス、RSV、パラインフルエンザ、メタニューモウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、ボカウイルス、ポリオーマウイルス、単純ヘルペスウイルス、及びサイトメガロウイルスの群から選択されるウイルスである。
【0065】
本発明のある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患は、DNAウイルス感染症に関する。好ましくは、本明細書に記載のDNAウイルスは、アデノウイルス、ライノウイルス、RSV、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、ボカウイルス、ポリオーマウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、ボカウイルス、ポリオーマウイルス、及びサイトメガロウイルスからなる群から選択される。
【0066】
本発明のある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患は、RNAウイルス感染症に関する。RNAウイルスは、エンベロープウイルス又はコーティングされたウイルス、又は非エンベロープウイルス又は裸のRNAウイルスであり得る。RNAウイルスは、一本鎖RNA(ssRNA)ウイルス又は二本鎖RNA(dsRNA)ウイルスであり得る。一本鎖RNAウイルスは、ポジティブセンスssRNAウイルス又はネガティブセンスssRNAウイルスであり得る。好ましくは、本明細書に記載のRNAウイルスは、ライノウイルス、RSV、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、ボカウイルス、ポリオーマウイルス、単純ヘルペスウイルス、及びサイトメガロウイルスからなる群から選択される。
【0067】
本発明のある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患は、コロナウイルス感染症に関する。好ましくは、本明細書に記載のコロナウイルスは、α-CoV、β-CoV、γ-CoV及びδ-CoVの群から選択される属からのコロナウイルスである。さらに好ましくは、本明細書に記載のコロナウイルスは、α-CoV属又はβ-CoV属のウイルスである。ある特定の実施形態において、本明細書に記載のコロナウイルスは、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63、ニューヘブンコロナウイルス)、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV又は「新規コロナウイルス2012」)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV又は「SARSクラシック」)、及び重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2又は「新型コロナウイルス2019」)からなる群から選択される。
【0068】
好ましくは、ウイルス感染症は、RNAウイルス感染症であり、最も好ましくは、MERS-CoV、SARS-CoV及びSARS-CoV-2を含む非限定的な群から選択されるコロナウイルスによるコロナウイルス感染症である。最も好ましくは、ウイルス感染症はSARS-CoV-2感染症である。
【0069】
本発明の範囲内の一実施形態において、ウイルス感染疾患は、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ポリオウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、日本脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス又はジカウイルスによって引き起こされる。好ましくは、ウイルス感染症は、RNAウイルス感染症であり、最も好ましくは、MERS-CoV、SARS-CoV及びSARS-CoV-2を含む非限定的な群から選択されるコロナウイルスによるコロナウイルス感染症である。最も好ましくは、ウイルス感染症はSARS-CoV-2感染症である。そのため、本発明の好ましい実施形態において、ウイルス感染疾患は、コロナウイルス、好ましくはSARS-CoV-2、SARS-CoV-1、又はMERSによって引き起こされる。より好ましくは、ウイルス感染疾患はSARS-CoV-2によって引き起こされる。SARS-CoV-2はCoVID-19と呼ばれるウイルス感染疾患を引き起こすことが知られている。
【0070】
本明細書に記載のウイルスの変異体によって引き起こされるウイルス感染疾患も、本発明に包含される。特に、SARS-CoV-2の変異体は、系統B.1.1.207、系統B.1.1.7、クラスター5、501.V2変異体、系統P.1、系統B.1.429/CAL.20C、系統B.1.427、系統B.1.526、系統B.1.525、系統B.1.1.317、系統B.1.1.318、系統B.1.351、系統B.1.617及び系統P.3からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、本明細書に記載のSARS-CoV-2変異体は、19A、20A、20C、20G、20H、20B、20D、20F、20I、及び20Eからなる群から選択されるNextstrainクレードによって記載されたSARS-CoV-2変異体である。ある特定の実施形態において、本明細書に記載のSARS-CoV-2ウイルスは、D614G、E484K、N501Y、S477G/N、P681H、E484Q、L452R及びP614Rからなる群から選択されるスパイクタンパク質の少なくとも1つの変異を含むSARS-CoV-2変異体である。本発明のある特定の実施形態において、本明細書に記載のSARS-CoV-2変異体は、本明細書に記載の変異体に由来するSARS-CoV-2変異体である。ある特定の実施形態において、本明細書に記載のSARS-CoV-2ウイルスは、本明細書に記載の少なくとも1つのSARS-CoV-2変異体のウイルスゲノム配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%の配列同一性を有するSARS-CoV-2変異体である。
【0071】
ウイルス感染疾患の考えられるあらゆる神経学的合併症を、本発明の使用のための化合物、本発明の使用のための化合物の代謝物、本発明の使用のための医薬組成物、又は本発明の使用のためのハナヤスリを使用することによって処置することができる。
【0072】
一実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症は、中枢神経系の損傷である。特に、ウイルス感染疾患の神経学的合併症は脳幹の損傷である。脳幹の損傷は、いくつかの異なる方法で出現し得る。特に、脳幹の損傷は、SARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス感染疾患の合併症として生じることが示されている。
【0073】
ある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患を処置、予防及び/又はその症状を緩和することは、脳幹損傷を処置、予防及び/又はその症状を緩和することになる。
【0074】
ウイルスによって一般に攻撃される脳幹の部分は、脳幹の延髄の一部であり、動脈血圧及び/又は呼吸の調節に主な役割を果たす延髄腹外側野である。言い換えると、本発明の範囲内では、中枢神経系への損傷は、延髄腹外側野への損傷を含み得る。ある特定の例では、ウイルスは中枢神経系に侵入し、本明細書で論じるように、呼吸及び心拍を制御する脳幹の神経中枢を攻撃し、無症候性の突然死を引き起こし得る。したがって、ある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症の予防は、無症候性突然死の予防となる。
【0075】
ウイルスは、心肺不全も引き起こし得る。中枢神経系、特に脳幹の損傷のさらなる症状は、呼吸困難及び/又は心拍障害である。そのため、ある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患を処置、予防及び/又はその症状を緩和することは、呼吸困難及び/又は心拍障害を処置、予防及び/又はその症状を緩和することになる。
【0076】
ある特定の実施形態において、中枢神経系の損傷は、孤束核への損傷を含み得る。孤束核は、延髄に埋め込まれた灰白質の垂直柱を形成する一連の純粋な感覚核(神経細胞体のクラスター)である。孤束核のインプットは、鼓索、舌咽神経及び迷走神経を介する顔面神経、舌咽神経を介する頸動脈小体内の一般的な内臓求心路(GVA)の化学受容器及び機械受容器、迷走神経を介する大動脈小体、及び洞房結節、並びに心臓、肺、気道、消化器系、咽頭に位置する終端を有するGVAの化学的及び機械的に敏感なニューロン、並びに舌咽神経と迷走神経を介する肝臓からの味覚情報を含む。さらなるインプットは、顔面神経を介する鼻腔、軟口蓋及び副鼻腔からのインプットを含む。当業者に公知であるように、孤束核を神経支配するニューロンは、咽頭反射、頸動脈洞反射、大動脈反射、咳反射、圧受容器反射及び化学受容器反射、並びに呼吸反射及び運動性と分泌を調節する消化器系の反射を媒介する。アウトプットは、視床下部の室傍核及び扁桃体の中心核、並びに脳幹の他の核を含む。これらのプロセスはいずれも、ウイルスによる感染及びウイルス感染疾患の発症により妨害され得る。特に症状は、無嗅覚症(嗅覚障害とも呼ばれる)、嚥下障害(嚥下困難を含むと理解されている)、及び/又はさらなる胃腸障害を含み得る。
【0077】
本発明のある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症を処置、予防及び/又はその症状を緩和することは、孤束核への損傷を処置、予防及び/又はその症状を緩和することになる。ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)をさらに処置、予防、及び/又はその症状を緩和することは、無嗅覚症(嗅覚障害とも呼ばれる)、嚥下障害(嚥下困難を含むと理解されている)、及び/又はさらなる胃腸障害を処置、予防及び/又は緩和することになる。
【0078】
ある特定の実施形態において、中枢神経系の損傷は、脳幹の延髄内に位置する背側迷走神経核への損傷を含み得る。背側迷走神経核は、消化管、肺並びに胸部及び腹部の神経支配において機能を果たす。背側迷走神経核への損傷は、とりわけ心肺不全をもたらし得る。そのため、本発明のある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を予防することは、心肺不全を予防することになる。
【0079】
ある特定の実施形態において、中枢神経系の損傷は、嗅球への損傷を含み得る。本明細書で理解されるように、嗅球への損傷は、嗅覚の喪失及び/又は味覚の喪失をもたらし得る。そのため、本発明のある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を処置、予防及び/又はその症状を緩和することは、嗅覚の喪失及び/又は味覚の喪失を処置、予防及び/又はその症状を緩和することになる。
【0080】
本発明のある特定の実施形態において、中枢神経系の損傷は、神経変性疾患をもたらし得る。神経変性疾患は、ニューロンの死を含む、ニューロンの構造又は機能の進行性の喪失を表す包括的な疾患用語である。ニューロンの損傷又は死は、神経系の患部によって制御される機能の徐々の悪化をもたらす。選択された神経変性障害のグループは、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認知症、レビー小体型認知症(DB)、前頭側頭型認知症(FTD)、及び脳萎縮を含む。アポトーシス、又はプログラム細胞死は、生理学的状態と病理学的状態の両方に重要な役割を果たす。神経変性疾患を含む様々な急性及び慢性神経疾患において、アポトーシス細胞死の割合が上昇するという証拠が増えている。アポトーシスは、ニューロンの収縮、クロマチンの凝縮、及びDNA断片化を特徴とするが、壊死性細胞死は、細胞質及びミトコンドリアの腫脹とそれに続く細胞膜の溶解に関連する。DNA断片化の証拠は、AD、HD及びALSを含むいくつかの変性神経障害で見出されている。
【0081】
ある特定の実施形態において、中枢神経系の損傷は、黒質への損傷を含み得る。黒質への損傷は、パーキンソン病の発症と因果関係があることが当業者に知られている。
【0082】
パーキンソン病は中枢神経系の変性障害である。これは、中脳の領域である黒質におけるドーパミン生成細胞の死に起因する。細胞死の原因は不明である。パーキンソン病は、2番目に多い神経変性障害であり、運動緩慢、固縮、安静時振戦及び姿勢不安定として現れる。PDは、世界で約700万人、米国では約100万人が罹患している。PDの年間新規症例数は、年間100,000人あたり8~18人である。レボドパは30年にわたって最も広く使用されている処置であるが、有効性は非常に限られている。神経保護に関する研究は、PD研究の最前線にある。
【0083】
そのため、本発明は、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を処置、予防及び/又はその症状を緩和することが、アルツハイマー病又はパーキンソン病などの神経変性疾患を処置、予防及び/又はその症状を緩和することである実施形態にさらに関する。
【0084】
ある特定の実施形態において、中枢神経系の損傷は、運動皮質への損傷を含み得る。運動皮質への損傷は、頭痛、発作、筋力低下、倦怠感及び/又は疲労をもたらし得る。そのため、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)は、頭痛、発作、筋力低下、倦怠感及び/又は疲労を含み得る。さらに、ウイルス感染疾患を処置、予防及び/又はその症状を緩和することは、頭痛、発作、筋力低下、倦怠感及び/又は疲労を処置、予防及び/又は緩和することを含み得る。
【0085】
さらに、ある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)は、血管周囲脳炎、間質性脳炎、神経細胞喪失、及び/又は軸索変性を含み得る。そのため、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を処置、予防及び/又はその症状を緩和することは、血管周囲脳炎、間質性脳炎、神経細胞喪失、及び/又は軸索変性を処置、予防及び/又はその症状を緩和することになり得る。
【0086】
さらに、ある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)は、意識喪失、混乱及び/又は精神状態の変化を含み得る。そのため、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を処置、予防及び/又はその症状を緩和することは、意識喪失、混乱、及び/又は精神状態の変化を処置、予防及び/又はその症状を緩和することになり得る。
【0087】
ある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)は、末梢神経系の損傷を含む。そのため、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)は、末梢神経系の損傷の予防である。ある特定の実施形態において、前記合併症(複数可)は、ギランバレー症候群を含む。当業者に知られているように、ギランバレー症候群は、感染疾患、特にウイルス感染疾患に対する対象の免疫系の反応によって引き起こされたと考えられる。ギランバレー症候群は、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、デング熱ウイルス、ジカウイルス、及び肝炎ウイルスの感染に関連している。ギランバレー症候群も、SARS-CoV-2感染症に関連することが報告されている。したがって、ある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)は、ウイルス感染疾患に対する自己免疫応答によるものである。ある特定の実施形態において、前記合併症(複数可)は、ギランバレー症候群を含む。
【0088】
ある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)は、神経系の炎症性疾患を含む。本明細書で理解されるように、本明細書に記載の神経系の炎症性疾患は、副交感神経系の炎症性疾患、中枢神経系の炎症性疾患又は末梢神経系の炎症性疾患であり得る。ある特定の実施形態において、神経系の炎症性疾患は、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病及びハンチントン病の群から選択される。
【0089】
当業者に公知であるように、ウイルスは、宿主の細胞機構を乗っ取って、特に、異なる段階でプロテオスタシス経路を操作して、そのサイクルの進行を利用する多様な戦略を適用することによって効率的に複製する。タンパク質の恒常性は、プロテオスタシスとも呼ばれ、タンパク質の翻訳、フォールディング、及びクリアランスの間の動的平衡を維持するように作用する協調ネットワークの結果である。それは、分子シャペロン、主に熱ショックタンパク質(HSPとも呼ばれる場合がある)を含み、正しいタンパク質のフォールディング、天然の立体構造の維持、及びタンパク質分解機構との協調を可能にする。理論に縛られることなく、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)は、少なくとも部分的には、プロテオスタシスとウイルス感染疾患の間の相互作用に関連し得ると想定され得る。細胞は、ウイルス感染を含む細胞内病原体を殺滅する手段として、自身の成分を分解及びリサイクルする潜在力を使用することに留意されたい。例えば、オートファジーは、ウイルス及び/又はウイルスタンパク質を分解のためにリソソームに送達することによる、ウイルスに対する自然免疫防御機構を表す。これに対し、ウイルスは、ウイルスタンパク質の正しい濃度及び機能を維持するために、タンパク質分解経路に干渉する機構を発達させてきた。
【0090】
さらに、理論に縛られることなく、式(I)の化合物、好ましくは、トリペンタデカノインは、ニューログロビンタンパク質の発現に影響を及ぼすことを通じて、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)を処置、予防及び/又はその症状を緩和するために有用であることに留意されたい。
【0091】
ニューログロビンの発現は、神経保護的、神経救出性、及び抗アポトーシス性であることが実証されている。当業者に公知であるように、ニューログロビンはいくつかの神経変性疾患/モデルで下方制御されており、その下方制御は予後不良と相関している。これに対し、ニューログロビンの過剰発現は、神経変性障害の疾患モデルで治療効果を示した。ニューログロビンは、中枢神経系及び末梢神経系、脳脊髄液、網膜及び内分泌組織で発現する細胞内ヘムタンパク質である。タンパク質のヘム基はFe(III)イオンを配位する。脳虚血の間、ニューログロビンは、ヘム-Fe原子が三価鉄(Fe(III))から二価鉄(Fe(II))形態にシフトする事実により、正常状態よりも高い親和性でO2に結合できるようになる。ニューログロビンは、ニューロン内の活性酸素と窒素種を除去することが示されている。より重要なことに、ニューログロビンは内因性アポトーシス経路を阻害し、ミトコンドリア透過性遷移孔(MPTP)構成要素(VDAC)に結合し、シトクロムcの放出を防ぐことが示されている。そのため、ニューログロビンは、神経細胞の生存を調節するために不可欠なタンパク質である。ニューログロビンは、主に(約90%)細胞質に局在したが、増えつつある証拠は、ミトコンドリアにも会合することを明らかにした。ニューログロビンは、特に、高度に保存されたタンパク質であり、マウスとヒトのニューログロビンのアミノ酸位置の違いはわずか6%である。
【0092】
インビボ実験は、ニューログロビンのレベルが上昇すると、低酸素性/虚血性及び/又は酸化ストレス関連の傷害から心臓と脳の両方が大幅に保護されることを示しているが、ニューログロビンレベルの低下は、組織損傷の悪化をもたらし得る。そのため、ある特定の実施形態において、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)は、低酸素症、低酸素性/虚血性及び/又は酸化性ストレス関連の傷害を含む。ヒトニューログロビンの過剰発現は、ミトコンドリアの機能不全及びアルツハイマー病などの神経変性障害からニューロンを保護し、癌細胞では遮蔽の役割を果たすという仮説が立てられている。
【0093】
ニューログロビンは、本明細書では、好ましくは配列番号1の配列と少なくとも90%の配列同一性のタンパク質として理解され、より好ましくは、ニューログロビンは、配列番号1の配列と少なくとも90%の配列同一性のタンパク質であり、さらにより好ましくは、ニューログロビンは、配列番号1の配列のタンパク質である。配列番号1は、ヒト(ホモ・サピエンス)ニューログロビンの配列である。参照目的のため、マウス(Mus musculus)ニューログロビンの配列は、配列番号2の通りである。
【0094】
本発明者らは驚くべきことに、酵母細胞を式(I)の化合物、本明細書ではトリペンタデカノインで処置したところ、ニューログロビンの酵母ホモログであるYHB1の発現が有意に増加することを見出した(詳細は実施例3を参照されたい)。本発明者らは、さらに驚くべきことに、式(I)の化合物、本明細書ではトリペンタデカノインで細胞を処置すると、HSP-104の凝集(GFP-HSP104遺伝子座を介して観察される)が大きく低下することを見出した。しかし、この効果は、ニューログロビンの相同体であるYHB1がノックアウトされた細胞では観察できない(詳細は実施例3を参照されたい)。理論に縛られることなく、式(I)の化合物、特にトリペンタデカノインでの処置は、細胞内のp体の形成を遅らせることが実証されており、式(I)の化合物、特にトリペンタデカノインが、出芽酵母ではYHB1 mRNA崩壊のp体調節を標的とし、ヒトではニューログロビン mRNA崩壊のp体調節を標的とし得ると仮定されている。
【0095】
さらに意外なことに、本発明者らは、マウスニューロンを式(I)の化合物、本明細書ではトリペンタデカノインで処置すると、ニューログロビンの発現の増加が観察されることを示した。実施例4に示されているように、ニューログロビンの発現レベルの約6倍の増加が観察されている。
【0096】
したがって、本発明は、対象に投与すると、式(I)の化合物が、好ましくは神経細胞においてニューログロビンの発現を上方制御する実施形態に関する。好ましくは、本発明は、ニューログロビンの発現が上方制御されると、神経細胞のアポトーシスを阻害する実施形態に関する。
【0097】
当業者に公知であるように、ウイルス感染疾患(特に、SARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス感染疾患)の神経学的合併症(複数可)に罹患している対象(患者)は、神経細胞におけるニューログロビンの発現の増加から恩恵を受けることができた。しかし、今日まで、当業者にとって、ニューログロビンの発現が前記対象(患者)の神経細胞内でどのように増加できたかは明らかではない。式(I)による化合物の投与と神経細胞におけるニューログロビンの発現との関係の予期せぬ発見により、本明細書に記載の式(I)の化合物、その代謝物、本明細書に記載のハナヤスリの本明細書に記載の医薬組成物による処置に関して、ウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)に罹患している対象(複数可)(患者(複数可))を適格とすることが可能になったことに留意されたい。
【0098】
さらなる実施形態において、本発明は、本明細書で定義されるウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和のための機能性食品として使用するための、本明細書で定義される式(I)の化合物、又は本明細書で定義されるハナヤスリに関する。
【0099】
機能性食品とは、新しい成分を添加するか、又は既存の成分を濃縮することにより、追加の機能(多くの場合、健康増進又は疾患予防に関連するもの)を付与した食品を指す。この用語は、アントシアニン又はカロテノイド含有量がそれぞれ濃縮された紫色又は金色のジャガイモなど、既存の食用植物に意図的に育種された形質にも適用され得る。機能性食品は、「基本的な栄養機能を超えて生理学的利益を有し、及び/又は慢性疾患のリスクを低下するようにデザインされ、従来の食品と外観が類似しており、通常の食事の一部として消費され得る」(米国農務省農業研究局、AgResearch Magazine.November 2014;米国農務省農業研究局、Agricultural Research Service. July 2010)。
【0100】
さらなる実施形態において、本発明は、本明細書で定義されるウイルス感染疾患の神経学的合併症(複数可)の処置、予防及び/又はその症状の緩和のための栄養補助食品として使用するための、本明細書で定義される式(I)の化合物、又は本明細書で定義されるハナヤスリに関する。
【0101】
さらなる実施形態において、本発明は、対象、好ましくは神経細胞におけるニューログロビンの発現を上方制御するために、本明細書で定義される式(I)の化合物を含むか、又は本明細書で定義されるハナヤスリを含む機能性食品又は栄養補助食品の非治療的使用に関する。本明細書で理解されるように、ニューログロビンの発現が上方制御されると、神経細胞のアポトーシスが阻害される。
【0102】
本発明のさらなる実施形態において、ヒト及び/又は動物のための機能性食品は、1μg(マイクログラム)/日~50mg/日の投与量、好ましくは1μg(マイクログラム)/日~20mg/日の投与量での式(I)の化合物、好ましくはトリペンタデカノインを含む。下限は、例えば、1μg(マイクログラム)/日、2μg(マイクログラム)/日、3μg(マイクログラム)/日、4μg(マイクログラム)/日、5μg(マイクログラム)/日、7μg(マイクログラム)/日、10μg(マイクログラム)/日、20μg(マイクログラム)/日、25μg(マイクログラム)/日、50μg(マイクログラム)/日、100μg(マイクログラム)/日、200μg(マイクログラム)/日、300μg(マイクログラム)/日、400μg(マイクログラム)/日又は500μg(マイクログラム)/日である。上限は、例えば、50mg/日、40mg/日、30mg/日、20mg/日、10mg/日、5mg/日、3mg/日、2mg/日、1mg/日、900μg(マイクログラム)/日である。各上限を、各下限と組み合わせることができることを理解されたい。一実施形態において、投与量は、1μg(マイクログラム)/日~20mg/日である。別の実施形態において、投与量は、1μg(マイクログラム)/日~900μg(マイクログラム)/日である。
【0103】
本発明の範囲から逸脱することのない本発明の様々な変更及び変形形態は、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して説明されているが、請求される発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、関連分野の当業者に明らかな、本発明を実施するために記載される様式の様々な変更が、本発明によって包含されると意図される。
【0104】
本発明は、以下の実施例によって例示されるが、限定するものとして解釈されることを意図したものではない。
【実施例】
【0105】
実施例1
トリペンタデカノインをコロナウイルス感染症のマウスモデルで試験した。この研究の目的は、MHV感染マウスにおけるトリペンタデカノインの治療効果を調査することであった。マウス肝炎ウイルス(MHV)は、マウスの肝臓及び肺の急性感染、並びに消化管及び中枢神経系(CNS)の持続感染を引き起こす。このウイルスは当初、後肢麻痺を引き起こしたが、マウスを繰り返し継代すると、主に脳炎を引き起こすより毒性の強い変異体が選択された。このウイルスはJHMウイルス(JHMV)と名付けられ、その後、他のMHV株と関連するコロナウイルスであることが示された(Bergmann,C.,Lane,T.&Stohlman,中枢神経系のS.コロナウイルス感染:宿主-ウイルススタンドオフ(S.Coronavirus infection of the central nervous system:host-virus stand-off) Nat Rev Microbiol 2006;4:121-132)。JMHVは現在、ウイルス誘発性神経疾患、特に脱髄の研究に広く使用されている。それは、コロナウイルス誘発性神経学的合併症の適切なモデルであると考えられている。MHVによるCNS感染は、急性ウイルス性脳脊髄炎及びヒト脱髄疾患である多発性硬化症の動物モデルを提供する。MHV誘発性脱髄疾患は、マウスに代表され、ウイルスの複製を制御するが、ウイルスを完全に除去することはできない。急性感染はCNSの炎症を誘発し、脱髄プロセスを開始する。ウイルスの複製を十分に迅速に制御できない動物は、5~10日以内に脳脊髄炎により死亡する。急性感染の生存者は、通常、2週間以内に感染性ウイルスを排除する。しかし、これらの動物は、CNS内に存続するウイルス抗原(Ag)及びRNAによって証明されるように、依然として無菌免疫を獲得できない。MHVの存続は、慢性的なCNS炎症及び進行中の原発性脱髄に関連する。
【0106】
5週齢の20匹のC57BL/6J雄性マウスを、ビヒクル対照群又はトリペンタデカノイン50mg/kgの2群に無作為化した。トリペンタデカノイン又はビヒクル対照処置を、ウイルス感染の3日後に開始し、21日目まで合計19日間行った。MHVに感染したマウスの臨床スコアを、0-無症候性;1-ぐったりとした尻尾;2-正向反射が困難なふらふらした歩行;3-後肢の虚弱と極度の正向反射消失;4-後肢麻痺;5-瀕死の状態として評価した。
【0107】
実験結果を
図1に示す。試料サイズが小さいこのMHV感染マウスの予備的研究では、トリペンタデカノインは、ウイルス誘発性神経病理学の臨床的重症度の低下において有望な神経救出効果を示した(9、10又は14日目にP<0.05)(
図1)。第1相の線形回帰分析では、2つのグループ間で統計的有意性が示された(
図1)。
【0108】
実施例2
式(I)の化合物の代表的な化合物であるトリペンタデカノインは、N-ニトロソ-N-メチル-尿素(NMU)光受容器変性(N-nitroso-N-methylurea (NMU) photoreceptor degeneration)のマウスモデルにおいて神経保護効果を示す。
【0109】
8~12週齢の18匹のC57BL/6J雌性マウスを3つのグループ:1)NMU+ビヒクル;2)NMU+トリペンタデカノイン20mg/kg;3)NMU+トリペンタデカノイン50mg/kgに無作為化した。50mg/kgの用量のNMUを全てのマウスにi.p.注射した。トリペンタデカノイン(又はビヒクル)を、NMUの3日前から開始して強制経口投与で毎日投与し、NMU負荷の7日後まで継続した。網膜を、NMUに曝露する5日前とNMUの7日後にスペクトラルドメイン光干渉断層撮影(OCT)によって画像化した。全ての眼球を摘出し、組織学的ヘマトキシリンとエオシン(H&E)染色のために処置した。光受容器(photoreceptors)の厚さを、OCT画像とH&Eスライドの異なる位置からそれぞれ測定した。H&Eスライド上の光受容器の厚さを、自動ライカソフトウェア(Leica,Heerbrugg)を使用して、単盲検の観察者が操作して定量化した。結果を、外核層(ONL)の曲線下面積(AUC-1.75から+1.75μm)及び光受容器核の列数として表した。
【0110】
結果:組織学的解析により、ONL下でのAUCは、ビヒクル対照群と比較してトリペンタデカノイン処置群で有意に増加し、すなわち、50mg/kgで83.08±19.05(p<0.001)、20mg/kgで73.58±14.45(p<0.01)、及びビヒクル対照で43.46±29.86であった(
図2)。光受容器核(photoreceptor nuclei)の列数は、中心部から周辺部までの全ての領域にわたってビヒクル対照と比較してトリペンタデカノイン処置群で有意に増加し、例えば、ビヒクル対照での3.8±2.5と比較して中周辺部領域では50mg/kgで7.0±1.7(p<0.001)、20mg/kgで6.4±1.2(p<0.01)であった。インビボOCT画像では、対照に対して光受容器層(photoreceptor layers)の厚さが増加していることが示され、50mg/kgのトリペンタデカノイングループの神経網膜の厚さは、ビヒクル対照と比較して周辺部(p<0.05)、中周辺部(p<0.05)、及び中心網膜(p<0.01)で有意に増加した。
【0111】
結論:トリペンタデカノインは、NMU誘発性神経(本明細書では網膜)変性に対して強力で用量依存的な神経保護効果を示す。
【0112】
実施例3
酵母集団は自由に増殖できるが、酵母の母細胞の寿命は有限であり、実験室の状況では一定量の娘細胞、通常、25個しか生成できない。死細胞率は、生成される娘細胞の数とともに増加するため、この現象は複製老化と呼ばれる。古い酵母細胞では、老化によるタンパク質沈着物が特定のシャペロンとコシャペロンのセットを動員する。
【0113】
緑色蛍光タンパク質タグとの融合物として内因性に発現されるHsp104(Hsp104-GFP)は、古い細胞でフォーカスを形成する。数百個の細胞における存在(特定の齢で凝集体を有する細胞のパーセンテージ)、数(細胞あたりのフォーカスの数)及びサイズ(蛍光輝度)を評価することができ、これは老化による凝集体の生物学を評価するための良好なモデルとなる。
【0114】
トリペンタデカノインが酵母で活性であるかどうかを試験するために、異なる濃度の精製化合物(1μM、10μMと30μM)及びそれが由来する植物ハマハナヤスリ(Ophioglossum thermale)の抽出物(10μg/ml)で細胞を処置した。これらの細胞を該化合物の存在下で老化させ、10~11世代後に、細胞を画像化して齢を数え、Hsp104-GFPの老化関連タンパク質沈着物を含有するかどうかを評価した(
図3A)。ハーブ抽出物と無処置細胞(ビヒクルのみ、0.3%エタノール)と同じ齢のトリペンタデカノイン処置細胞はいずれも、Hsp104-GFPフォーカスを有する可能性が低いことが判明した。これらの結果を統計的に検証するために、各条件で75個より多くの細胞を分析した(
図3B)。この結果は、1つの濃度のトリペンタデカノイン(30μM)に着目し、3つの独立した実験で500個より多く上の細胞を分析することでさらに確認された(
図3CD)。したがって、トリペンタデカノインは、酵母細胞で同定され、全てではないにしてもほとんどの真核生物に保存されている主要な老化因子の1つに対する強力なエフェクターであることが示された。
【0115】
式(I)の化合物の潜在的な標的を、RNAseqを用いて同定した。酵母細胞(出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae))をトリペンタデカノイン(30μM)で5時間処置し、化合物又はビヒクルのみで5時間処置した細胞中の全ての遺伝子のmRNA量を定量的にモニターした。Genewiz社によって試料は三連で処置された。2つのグループ間で有意に異なる発現を示した157のmRNAを同定した。これらのヒットの中には、ニトロソ化ストレス応答において役割を果たすフラボヘモグロビンであるYhb1がある(
図4A)。RNAseq調査の結果に従って、PHO84、YHB1又はVTC4をノックアウトし、Hsp104-GFPを有する古い細胞の割合を、前と同様に測定した。pho84Δ細胞は野生型細胞と類似していたが、非常に多くのvtc4Δ及びyhb1Δ変異細胞が老化誘導沈着物を含有した(
図4A)。野生型及びpho84Δをトリペンタデカノイン(30μM)に曝露すると、Hsp104-GFPを有する細胞の割合が減少したが、vtc4Δ及びyhb1Δ変異細胞では当てはまらなかった。興味深いことに、多くのvtc4Δ又はyhb1Δ変異体の古い細胞では、1つだけでなく複数のHsp104-GFPフォーカスが存在することが判明した(
図4B)。これらの研究から、トリペンタデカノインが酵母ニューログロビン遺伝子に依存して、酵母の自然老化モデルでその機能を発揮することが示された。
【0116】
【0117】
実施例4-マウスニューロンにおけるニューログロビンの発現
健康なニューロンの調製:C57BL/6Jマウス胎児の16~17日胚から初代マウス皮質ニューロンを調製し、95~97%のニューロン及び3~5%のアストロサイトを得た。DIV5/6で、マウスの一次皮質ニューロンをビヒクル(エタノール)又はトリペンタデカノインの濃度を増加させて(100又は1000nM)で3時間(T3)又は24時間(T24)処置した。qPCR法を使用して、ニューログロビンのmRNAを増幅した。
【0118】
RNAの量及び質を、キャピラリー電気泳動を用いて評価した。相補的DNA(cDNA)を、オリゴ(dT)とRoche社の「Transcriptor逆転写酵素」の存在下で総RNAの逆転写によって合成した。次いで、PCR工程の前にcDNA量を調整した。供給元の指示に従って、qPCR反応を、Roche社のLicht Cyclerシステムを使用して行った。この実験で、Rps28(リボソームタンパク質S28)を参照マーカー(ハウスキーピング遺伝子とも呼ばれる)として使用した。
【0119】
反応ミックス(最終10μL)を以下のように調製した:
-2.5μLのcDNA
-プライマー及びTaqManプローブ
-taqDNAポリメラーゼ及びMgCl2を含有する試薬の混合物
【0120】
この実験では、以下のプライマーを使用した:
フォワードプライマー:CCCTATCTATGTGTGTCTG(配列番号3)
リバースプライマー:TGAGGACCAAGGTATAGA(配列番号4)
プローブ:ATCTGCCTGTTGTAGTCTTAGCCTC(配列番号5)
【0121】
ニューログロビンをコードする遺伝子の発現は弱かった。3時間では、1000nMのトリペンタデカノイン処置により、ビヒクル対照のレベルと比較して、ニューログロビンの発現の有意な増加が誘導された(p<0.001)。3連の実験は再現性があり、PCR反応の収率は各実験条件の3つのウェルで類似している。加えて、式(I)による化合物の濃度が高いほど、より強い効果が示された。
【0122】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】