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特表2024-5234323D印刷を用いて炭素または黒鉛の成形部品を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】3D印刷を用いて炭素または黒鉛の成形部品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/379 20170101AFI20240621BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20240621BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240621BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240621BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240621BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20240621BHJP
   C04B 35/524 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B29C64/379
B29C64/35
B33Y40/20
B33Y10/00
B33Y70/00
B29C64/129
C04B35/524
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578146
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022068535
(87)【国際公開番号】W WO2023280821
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021117691.3
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242292
【氏名又は名称】ニッポン・コルンマイヤー・カーボン・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】コルンマイヤー・トルステン
(72)【発明者】
【氏名】クライン・ダーフィト
(72)【発明者】
【氏名】ゲラーツ・ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA01
4F213AA44
4F213AB16
4F213AB17
4F213AR06
4F213WA25
4F213WA54
4F213WA83
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL55
4F213WW05
(57)【要約】
本発明は、3D印刷を用いて、炭素または黒鉛の成形部品を簡単に製造するための方法に関する。これは、UV放射線を透過できかつ重合可能なポリマーまたはセルロース、並びにUV放射線によって架橋可能な樹脂から構成される流動性ポリマー混合物を調製し、この際、前記ポリマー混合物には、それを3Dプリンターに充填できかつそれにより処理可能となるような粘稠度を有するようになるまで、糖及び/またはパルプが混合され、そして前記混合物を、室温でまたは約60℃までの高められた温度で均質化し、前記混合物を3Dプリンターに充填し、そしてUV放射線で架橋可能な樹脂を層毎に架橋するためにUV放射線を同時に作用させつつ、3Dプリンターを用いて成形部品を層毎に印刷し、成形部品を洗浄し、UV放射線で予硬化された成形部品を炉中に入れ、そして揮発性成分の全てが予作製された成形部品からガス抜きされるまで、UV放射線で予硬化された成形部品を空気中、所定の安定化温度で安定化し、次いで、炭化または黒鉛化するために成形部品を炉中で保護ガス下に高温処理することによって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D印刷を用いて、炭素または黒鉛の成形部品を製造する方法であって、
UV放射線を透過できかつ重合可能なポリマーまたはセルロースと、UV放射線により架橋可能な樹脂とから構成される流動性ポリマー混合物を調製し、ここで、前記ポリマー混合物には、この混合物が3Dプリンターに充填でき、それによって処理できるようになる粘稠度を有するまで、糖及び/またはパルプが混合され、及び
前記混合物を、室温でまたは約60℃までの高められた温度で均質化し、
3Dプリンターに前記混合物を充填し、及び
UV放射線で架橋可能な前記樹脂を層毎に架橋するためにUV放射線を同時に作用させながら、3Dプリンターを用いて成形部品を層毎に印刷し、
前記成形部品を洗浄して、特に液体残渣及び異物粒子を取り除き、
UV放射線で予硬化された前記成形部品を炉に入れ、そして揮発性成分の全てが予作製された成形部品からガス抜きされるまで、UV放射線で予硬化された前記成形部品を空気中で所定の安定化温度で安定化し、及び
次いで、炭化または黒鉛化するために前記成形部品を保護ガス下に炉中で高温処理する、
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
UV放射線を透過できかつ重合可能なポリマーまたはセルロースの前記流動性ポリマー混合物に溶剤が混合されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
安定化可能なポリマーとして、ポリアクリロニトリル(PAN)が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアクリロニトリルが溶剤中に溶解されていることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
溶剤として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が使用され、この際、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)が使用されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
UV放射線で予硬化された成形部品の安定化が、予硬化された成形部品を、炉中で所定の安定化温度まで均一に加熱し、次いで、一定の温度下に短時間アニールすることによって行われることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
予作製された成形部品の安定化が、数時間の期間にわたって、200℃から最大450℃までの温度、好ましくは250℃の温度で行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
成形部品が、安定化後、炉中で、保護ガス下にまたは真空中で、約1,000℃の温度で炭化されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
予作製された成形部品が、炉中で、保護ガス下にまたは真空中で、2,000℃以上の温度で黒鉛化されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
予作製された成形部品の完全な黒鉛化が、>2,500℃の温度で保護ガス下にまたは真空中で行われることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
予作製された成形部品の炭化または黒鉛化が、700mbarの圧力において、保護ガスとしてのアルゴン下に、1℃/分の加熱速度で行われることを特徴とする、請求項7~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
金属酸化物またはケイ素酸化物がポリマー混合物に混合され、そうして、3Dプリンターを用いた成形部品の予作製及び後続のそれの安定化の後に、炭化金属または炭化ケイ素を形成するために、>1,000℃での高温処理を行うことができることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D印刷を用いて、炭素または黒鉛の成形部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高温下での使用にも適している黒鉛でできたこのような成形部品は、炉用の内張材、建築部材または任意の中空体、例えばパッキン、摺動体または類似物などの任意の三次元部材であり得る。
【0003】
これらの成形部品は、カーボンブラックまたは黒鉛を単に成形し、その後に焼結することでは製造することができないため、一般的には、炭素を含みかつ成形可能な適切な組成物を製造する必要がある。この目的のためには、カーボンブラック、コークスまたは黒鉛をグラニュールの形で、適切なバインダー、例えば熱可塑性バインダーと混合することが通常である。バインダーとしては、コールタールまたは石油ピッチをベースとするピッチ、または合成樹脂も考慮される。
【0004】
次いで、これらの混合物は、適当な型内での静水圧プレスによってグリーン成形部品にプレス成形することで、いわゆるグリーンブランク品(gruen Rohling)に成形される。次いで、このブランク品を型から取り出す必要があるが、これは全くもって重要な工程である、というのもブランク品がここで容易にダメージを受ける虞があるためである。
【0005】
このブランク品は、次いで炉中で約3,000℃で炭化され、ここでバインダーが揮発性成分に分解される。バインダーの残物として炭素及びバインダーコークスが多孔性構造物の形で残留する。
【0006】
その代わりに、グリーン成形部品を、抵抗要素として炉などの中で各電極間に配置し、そして電流によって、完全に炭化するまで加熱することもできる。
【0007】
このような方法は実現するのが比較的煩雑であり、この際、特に、ブランク品のその時点の強度が低いことから、型からブランク品を取り出す工程が重要であることは明らかである。これらは、多くの場合に、このように製造される回転対称の部材である。穿孔またはその他の開口部も含む複雑に構成された三次元部材は、そのような方法を用いては製造できない。
【0008】
最終的には、完成した炭化部材は、機械的に後加工、例えば平滑化することもできる。
【0009】
EP3359318B1(特許文献1)からは、三次元物体を3D印刷する方法が知られており、これは次のステップを含む:
懸濁液全体の50から95重量%までの少なくとも一種のセラミック材料及び/または固形炭素含有材料(前記炭素含有材料は、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ及び炭素の他の異形仮像からなることができる)、並びに懸濁液全体の少なくとも5重量%の一種以上の脂肪酸を含む懸濁液の提供;
原料として前記懸濁液を使用した目的の物体の3D印刷、ここで、3D印刷プロセスは、ロボキャスティング法、ダイレクト・インキ・ライティング法、インキジェット印刷法、バインダージェット法、選択的加熱焼結法、選択的レーザー焼結法、選択的レーザー溶融法、ステレオリソグラフィ法、フィラメント印刷法、ペレット印刷法、粉末印刷法、自由造形法(Freiformherstellung)、ラピッド・プロトタイピング、またはロボットアームからの堆積技術などを含み得る;
3D印刷された材料の焼結、溶融及び/または浸潤からなる群から選択された方法による、印刷された材料の固定化。
【0010】
ここで、印刷されたブランク品の比較的低い安定性も重要であり、これは、固定化前のそれの後段での扱い易さに関連する。
【0011】
一般的な技術水準に関する更に別の刊行物として、WO95/32824A1(特許文献3)は、流し込成形技術に使用するための方法を記載している。この方法を用いて、熱硬化性材料でできた流し込型が、電磁放射線の作用下での成形材料の層の層毎の選択的固定化によって製造される。前記成形材料は、電磁放射線に対して不活性な材料と、電磁放射線によって硬化可能な第二の材料とからなり、それにより、成形材料が固定化される。
【0012】
前記第一の材料は、種々の砂、カーボンサンド、フューズドシリカから、または金属もしくはセラミック粉末からなり、そして前記第二の材料は種々の樹脂からなる。
【0013】
更に、US2016/0114529A1(特許文献4)は、三次元物体の製造のための装置を記載しており、これは、UV放射線で架橋可能な樹脂を用いて層を積層し、その後、熱処理することによって行われる。
【0014】
最後に、US2019/0047173A1(特許文献5)には、セラミック含有材料の付加製造のための方法及び材料が記載されている。この目的のためには、前記のセラミック含有材料を、所定の比率で硬化可能な樹脂と混合し、そして3Dプリンターを用いて層毎に施用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、今や、格別簡単に実現でき、また機械的な後加工なしで複雑な成形部品の製造も可能にする、炭素または黒鉛でできた成形部品を3D印刷を用いて製造する方法を提供するという課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題は、
UV放射線を透過できかつ重合可能なポリマーまたはセルロースと、UV放射線により架橋可能な樹脂とから構成される流動性ポリマー混合物を調製し、ここで、前記ポリマー混合物には、この混合物が3Dプリンターに充填でき、それによって処理できるようになる粘稠度を有するまで、糖及び/またはパルプが混合され、
前記混合物を、室温でまたは約60℃までの高められた温度で均質化し、
3Dプリンターに前記混合物を充填し、
UV放射線で架橋可能な前記樹脂を層毎に架橋するためにUV放射線を同時に作用させながら、3Dプリンターを用いて成形部品を層毎に印刷し、
前記成形部品を洗浄して、特に液体残渣及び異物粒子を取り除き、
前記成形部品を炉に入れ、そして揮発性成分の全てが予作製された成形部品からガス抜きされるまで、UV放射線で予硬化された前記成形部品を空気中で所定の安定化温度で安定化し、及び
次いで、炭化または黒鉛化するために前記成形部品を保護ガス下に炉中で高温処理することにより、
炭素または黒鉛でできた成形部品を製造する方法によって達成される。
【0017】
UV放射線を透過できかつ重合可能なポリマーまたはセルロースから構成される前記流動性ポリマー混合物は、溶剤も混合されていることができる。
【0018】
安定化可能なポリマーとしては、溶剤中に溶解可能なポリアクリロニトリル(PAN)が使用される。
【0019】
溶剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が考慮され、この際、健康リスクが低いことから、(DMSO)が好ましい。
【0020】
本発明の続行では、予硬化された成形部品の安定化は、炉中でそれを安定化温度まで均一に加熱し、次いで一定の温度下に短時間アニールすることによって、行われる。
【0021】
好ましくは、予作製された成形部品の安定化は、成形部品の大きさに依存して数時間の期間にわたって、200℃から最大450℃までの温度及び好ましくは250℃の温度で行われる。
【0022】
本発明の一形態では、成形部品の炭化は、炉中で保護ガス下または真空中で約1,000℃の温度で行われる。
【0023】
本発明の更に別の一形態では、黒鉛化は、炉中で保護ガス下または真空中で、2,000℃以上の温度で行われ、この際、完全な黒鉛化は、>2,500℃の温度で行われる。
【0024】
好ましくは、成形部品の黒鉛化は、保護ガスとしてのアルゴン下に700mbarの圧力で、または真空中で、1℃/分の加熱速度で行われる。
【0025】
前記ポリマー混合物には、金属酸化物またはケイ素酸化物を混合することもでき、それにより、3Dプリンターを用いた成形部品の予作製及びその後のそれの安定化の後に、炭化金属または炭化ケイ素を形成するために>1,000℃での高温処理を行うことができ、但し、この際、前記混合物が、例えばピッチを混合した場合のように、UV放射線に対して不透明にならないように注意する必要がある。金属またはケイ素酸化物は、通常はUV透明であり、その結果、UV放射線は良好に透過される。
【0026】
代替的に、純粋なケイ素または純粋な金属をポリマー混合物に混合することも原則的に可能ではあるが、この場合は、UV放射線の進入深さは非常に浅いために、薄い層しか印刷することができない。
【実施例
【0027】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳しく説明する。
【0028】
3Dプリンターを用いて黒鉛の成形部品を製造するためには、安定化可能なポリマーと、UV放射線で架橋可能な樹脂とから構成されたポリマー混合物を先ず調製することが必要であり、この際、前記ポリマー混合物には、これが3Dプリンターでの処理を可能にする粘稠度を有するようになるまで、糖及び/またはパルプが混合される。
【0029】
UV放射線を透過できかつ重合可能なポリマーまたはセルロースでできた前記流動性ポリマー混合物には、DMSOなどの溶剤も混合されていることができる。
【0030】
安定化可能なポリマーとしては、溶剤中に溶解可能なポリアクリロニトリル(PAN)が使用される。
【0031】
ポリアクリロニトリル(PAN)の代わりに、他の重合可能で、それ故、安定化可能なポリマーまたはパルプを使用することも原則的にできる。前提条件は、使用されるポリマーまたはセルロースがUV放射線を透過することである。
【0032】
原則的には、ポリアクリロニトリル(PAN)を溶剤中に溶解するか、または完全にパルプに置き換えることも可能である。
【0033】
溶剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が考慮され、この際、健康リスクが低いことから、DMSOが好ましい。
【0034】
UV放射線で架橋可能な樹脂は、DLPフォトポリマーレジン(樹脂)もしくはSLAレジン(樹脂)、またはUV放射線に対し透明な他の適当な樹脂であることができる。
【0035】
追加的に、酸化ケイ素などの金属酸化物もポリマー混合物に混合することができ、この場合は、例えばピッチを混合する場合のように、混合物がUV放射線に対し不透明とならないように注意する必要がある。
【0036】
次いで、感紫外線樹脂を層毎に架橋するために同時にUV放射線を作用させつつ、前記ポリマー混合物を3Dプリンターを用いて層毎に印刷することによって、成形部品を製造する。
【0037】
感紫外線樹脂の層毎の架橋のためには、UVフィルターを取り外せばデータプロジェクターの放射線で十分である。
【0038】
このようにして製造された予硬化された成形部品は、次いで直接、炉中で、200℃から最大450℃までの温度、好ましくは250℃の温度で、空気中で安定化する。この際、揮発性成分が前記の予硬化された成形部品からガス抜きされる。
【0039】
一般的には、UV放射線の作用下に架橋/硬化される感紫外線樹脂の使用によって初めて、後続の製造ステップのための取り扱いを可能にする十分な安定性に印刷工程の間に達するように、成形部品を印刷することが可能となる。
【0040】
UV硬化した成形部品の安定化は、混合物の揮発性成分の全てがガス抜きされるまで、成形部品を炉中で安定化温度まで均一に加熱し、次いで一定の温度下に短時間アニールすることによって行われる。
【0041】
好ましくは、安定化は、成形部品の大きさに依存して数時間の期間にわたって行われる。
【0042】
後続の黒鉛化のためには、炉を、完全な黒鉛化に必要な温度まで更に加熱する。予作製された成形部品の安定化の後は、これを、炉中で保護ガス下または真空中で、約1,000℃の温度で炭化する。
【0043】
代替的に、予作製された成形部品を、炉中、保護ガス下または真空中で、2,000℃以上の温度で黒鉛化することができ、この場合、完全な黒鉛化は、>2,500℃の温度で達成することができる。
【0044】
好ましくは、成形部品の黒鉛化は、保護ガスとしてのアルゴン下に700mbarの圧力で、または真空中で、1℃/分の加熱速度で行われ、この際、原則的には、他の希ガス、例えばネオン、クリプトン、キセノンを使用することもできる。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
好ましくは、成形部品の黒鉛化は、保護ガスとしてのアルゴン下に700mbarの圧力で、または真空中で、1℃/分の加熱速度で行われ、この際、原則的には、他の希ガス、例えばネオン、クリプトン、キセノンを使用することもできる。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 3D印刷を用いて、炭素または黒鉛の成形部品を製造する方法であって、
UV放射線を透過できかつ重合可能なポリマーまたはセルロースと、UV放射線により架橋可能な樹脂とから構成される流動性ポリマー混合物を調製し、ここで、前記ポリマー混合物には、この混合物が3Dプリンターに充填でき、それによって処理できるようになる粘稠度を有するまで、糖及び/またはパルプが混合され、及び
前記混合物を、室温でまたは約60℃までの高められた温度で均質化し、
3Dプリンターに前記混合物を充填し、及び
UV放射線で架橋可能な前記樹脂を層毎に架橋するためにUV放射線を同時に作用させながら、3Dプリンターを用いて成形部品を層毎に印刷し、
前記成形部品を洗浄して、特に液体残渣及び異物粒子を取り除き、
UV放射線で予硬化された前記成形部品を炉に入れ、そして揮発性成分の全てが予作製された成形部品からガス抜きされるまで、UV放射線で予硬化された前記成形部品を空気中で所定の安定化温度で安定化し、及び
次いで、炭化または黒鉛化するために前記成形部品を保護ガス下に炉中で高温処理する、
ことを特徴とする、前記方法。
2. UV放射線を透過できかつ重合可能なポリマーまたはセルロースの前記流動性ポリマー混合物に溶剤が混合されることを特徴とする、前記1.に記載の方法。
3. 安定化可能なポリマーとして、ポリアクリロニトリル(PAN)が使用されることを特徴とする、前記1.に記載の方法。
4. 前記ポリアクリロニトリルが溶剤中に溶解されていることを特徴とする、前記3.に記載の方法。
5. 溶剤として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が使用され、この際、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)が使用されることを特徴とする、前記4.に記載の方法。
6. UV放射線で予硬化された成形部品の安定化が、予硬化された成形部品を、炉中で所定の安定化温度まで均一に加熱し、次いで、一定の温度下に短時間アニールすることによって行われることを特徴とする、前記1.~5.のいずれか一つに記載の方法。
7. 予作製された成形部品の安定化が、数時間の期間にわたって、200℃から最大450℃までの温度、好ましくは250℃の温度で行われることを特徴とする、前記6.に記載の方法。
8. 成形部品が、安定化後、炉中で、保護ガス下にまたは真空中で、約1,000℃の温度で炭化されることを特徴とする、前記1.~7.のいずれか一つに記載の方法。
9. 予作製された成形部品が、炉中で、保護ガス下にまたは真空中で、2,000℃以上の温度で黒鉛化されることを特徴とする、前記1.~7.のいずれか一つに記載の方法。
10. 予作製された成形部品の完全な黒鉛化が、>2,500℃の温度で保護ガス下にまたは真空中で行われることを特徴とする、前記1.~7.のいずれか一つに記載の方法。
11. 予作製された成形部品の炭化または黒鉛化が、700mbarの圧力において、保護ガスとしてのアルゴン下に、1℃/分の加熱速度で行われることを特徴とする、前記7.~9.のいずれか一つに記載の方法。
12. 金属酸化物またはケイ素酸化物がポリマー混合物に混合され、そうして、3Dプリンターを用いた成形部品の予作製及び後続のそれの安定化の後に、炭化金属または炭化ケイ素を形成するために、>1,000℃での高温処理を行うことができることを特徴とする、前記1.~10.のいずれか一つに記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D印刷を用いて、炭素または黒鉛の成形部品を製造する方法であって、
ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)からの溶剤中に溶解されたUV放射線を透過できかつ重合可能なポリアクリロニトリル、またはセルロースと、DLPフォトポリマーレジン(樹脂)もしくはSLAレジン(樹脂)などのUV放射線により架橋可能な樹脂とから構成される流動性ポリマー混合物を調製し、ここで、前記ポリマー混合物には、この混合物が3Dプリンターに充填でき、それによって処理できるようになるまで、糖及び/またはパルプが混合され、及び
前記混合物を、約60℃までの高められた温度で均質化し、
3Dプリンターに前記混合物を充填し、及び
UV放射線で架橋可能な前記樹脂を層毎に架橋するためにUV放射線を同時に作用させながら、3Dプリンターを用いて成形部品を層毎に印刷し、
前記成形部品を洗浄して、特に液体残渣及び異物粒子を取り除き、
UV放射線で予硬化された前記成形部品を炉に入れ、そして揮発性成分の全てが予作製された成形部品からガス抜きされるまで、UV放射線で予硬化された前記成形部品を空気中で、200℃から450℃までの所定の安定化温度で安定化し、及び
次いで、炭化または黒鉛化するために前記成形部品を保護ガス下に炉中で高温処理する、
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
UV放射線で予硬化された成形部品の安定化が、予硬化された成形部品を、炉中で所定の安定化温度まで均一に加熱し、次いで、一定の温度下に短時間アニールすることによって行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
予作製された成形部品の安定化が、数時間の期間にわたって、250℃の温度で行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
成形部品が、安定化後、炉中で、保護ガス下にまたは真空中で、約1,000℃の温度で炭化されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
予作製された成形部品が、炉中で、保護ガス下にまたは真空中で、2,000℃以上の温度で黒鉛化されるか、または予作製された成形部品の完全な黒鉛化が、>2,500℃の温度で保護ガス下にまたは真空中で行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
予作製された成形部品の炭化または黒鉛化が、700mbarの圧力において、保護ガスとしてのアルゴン下に、1℃/分の加熱速度で行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
予作製された成形部品の炭化または黒鉛化が、700mbarの圧力において、保護ガスとしてのアルゴン下に、1℃/分の加熱速度で行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
金属酸化物またはケイ素酸化物がポリマー混合物に混合され、そうして、3Dプリンターを用いた成形部品の予作製及び後続のそれの安定化の後に、炭化金属または炭化ケイ素を形成するために、>1,000℃での高温処理を行うことができることを特徴とする、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
【国際調査報告】