IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイオニック アライアンス ホールディングス エルエルシーの特許一覧

特表2024-523433ヘキサ-アクア配位子組成物を含む合成細胞膜化学イオノフォア送達システム
<>
  • 特表-ヘキサ-アクア配位子組成物を含む合成細胞膜化学イオノフォア送達システム 図1
  • 特表-ヘキサ-アクア配位子組成物を含む合成細胞膜化学イオノフォア送達システム 図2
  • 特表-ヘキサ-アクア配位子組成物を含む合成細胞膜化学イオノフォア送達システム 図3
  • 特表-ヘキサ-アクア配位子組成物を含む合成細胞膜化学イオノフォア送達システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ヘキサ-アクア配位子組成物を含む合成細胞膜化学イオノフォア送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/14 20060101AFI20240621BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 33/32 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 33/244 20190101ALI20240621BHJP
   A61K 33/242 20190101ALI20240621BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20240621BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20240621BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240621BHJP
   A23L 33/165 20160101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K33/14
A61P3/00
A61P31/00
A61P37/00
A61P39/06
A61K33/30
A61K33/34
A61K9/08
A61K9/72
A61K47/12
A61K33/32
A61K33/38
A61K33/244
A61K33/242
A61K33/24
A61K8/19
A61K8/27
A61K8/362
A61Q19/00
A23L33/165
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578184
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 US2022030607
(87)【国際公開番号】W WO2022265829
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】17/349,880
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/390,743
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523475413
【氏名又は名称】アイオニック アライアンス ホールディングス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】IONIC ALLIANCE HOLDINGS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ルード,ケヴィン ウォルトン
(72)【発明者】
【氏名】クリシャク,マイケル ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,ジェイセン エリック
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD01
4B018ME14
4C076AA12
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB16
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB26
4C076BB29
4C076BB30
4C076BB31
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC21
4C076CC31
4C076CC40
4C076CC41
4C076CC43
4C076CC45
4C076CC46
4C076DD42
4C076FF68
4C076FF70
4C083AB191
4C083AB192
4C083AC291
4C083AC292
4C083BB45
4C083CC01
4C083EE11
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE50
4C086AA01
4C086AA02
4C086GA13
4C086GA14
4C086HA01
4C086HA03
4C086HA04
4C086HA07
4C086HA08
4C086HA09
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA52
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA06
4C086NA10
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB32
4C086ZC21
4C086ZC80
(57)【要約】
インビボで生体膜を介する遊離イオンの能動運搬および輸送のための合成イオノフォアは、遊離イオン性金属およびイオノフォアとしてイオン性塩の分極したヘキサ-アクアおよび/またはテトラ-アクア系と分子の配位錯体を含み、医薬、栄養、およびパーソナルヘルスケア化合物の輸送に有用である。その投与方法、その合成および製造方法、ならびにそのような合成および製造方法のイオノフォア生成物も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
w、x、y、z、c、d、e、f、g、h、およびjは、独立して0以上の整数であり;
[H]は、結合分子H・HOとして存在する、
[[Zn(HO)2+、[[Cu(HO)2+、[[Cu(HO)、[[Mg(HO)2+、[HSO 、[NH、[NH 、[H、[SO 2-、[NHHSO、および[HSO、およびそれらの混合物、および、
それらの薬学的または栄養的に許容される塩、溶媒和物、水和物、構造異性体、および立体異性体
からなる群から選択される1つまたは複数の化合物を含む組成物。
【請求項2】
w、x、y、zおよびjは、独立して0以上の整数であり;
[H]は、結合分子H・HOとして存在する、
[Zn(II)(HO)2+、[Cu(II)(HO)2+、[Cu(I)(HO)2+、[Mg(II)(HO)2+、[HPO、およびフタル酸水素カリウム、ならびにそれらの混合物、および、
それらの薬学的または栄養的に許容される塩、溶媒和物、水和物、構造異性体、および立体異性体
からなる群から選択される1つまたは複数の化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記[NHHSO]は、0.1%~4.0% w/wの濃度で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記[HSO]は、0.01%~3.0% w/wの濃度で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記[Zn(II)(HO)]は、2.0%~8.0% w/wの濃度で存在することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記[Cu(II)(HO)]は、1.0%~3.0% w/wの濃度で存在することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記[Mg(II)(HO)]は、1.0%~3.0% w/wの濃度で存在することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記[HPO]は、0.1%~15.0% w/wの濃度で存在することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
水溶液中の、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
ヘキサ-アクアまたはテトラ-アクアs-ブロック、d-ブロックまたはp-ブロック水和物からなる群から選択される1つまたは複数の化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
[SeO(HO)4+、[Mn(HO)2+、[Ag(HO)2+、[Au(HO)2+、[V(HO)2+、および[Ni(HO)2+からなる群から選択される1つまたは複数の化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記フタル酸水素カリウムは、0.01%~8.0%の濃度で存在することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
経口、経鼻、眼、耳、局所、熱的手段、超音波手段、赤外線手段、イオン導入手段または放射線手段による局所投与、経皮、尿道、膣、直腸、静脈内注射、皮下注射、噴霧、および吸入製剤からなる群から選択される形態での投与のための、薬学的に許容される製剤である、請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
最大30% w/wの活性組成物濃度で局所製剤が調製されることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
最大20% w/wの活性組成物濃度で経皮製剤が調製されることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
最大20% w/wの活性組成物濃度で経口製剤が調製されることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
最大10% w/wの活性組成物濃度で吸入製剤が調製されることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
最大5% w/wの活性組成物濃度で注射用製剤が調製されることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
前記製剤のpHは、1.0未満のpH、1.01~3.99の範囲のpH、および4.00~5.00の範囲のpHからなる範囲の群から選択される範囲内であることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物は、200ミリボルトを超える酸化還元電位を有することを特徴とする、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
[[M(La1b+、[[M(La2c+、[[M(La3d+、[ANi-、および[CAg+、ならびにこれらの混合物、および
それらの薬学的または栄養的に許容される塩、溶媒和物、水和物、構造異性体、および立体異性体
からなる群から選択される1つまたは複数の化合物を含む組成物であって、
、L、およびLは、OH、CO、NH、HO、HO、NO、NO、NO、SO、SO、HSO、NH、S、N、NH、PO、CH、CH、またはCOを含む任意の配位子または混合配位子であり;
x、y、z、eおよびfは、独立して、錯体イオン構造を形成するイオンの数であり、0以上の整数であり;
Mは、Cu、Zn、Mn、Mg、Se、Au、Ag、Vn、およびNi、ならびにこれらの混合物からなる群から選択され;
a1は、0以上6以下の整数であり、金属Mに配位する配位子の配位数であり;
a2は、0以上6以下の整数であり、金属Mに配位する配位子の配位数であり;
a3は、0以上6以下の整数であり、金属Mに対する配位子の配位数であり;
b、cおよびdは、独立して、0以上6以下の整数であり、金属中心Mに局在する電荷の量または配位配位子の周囲に非局在する電荷の量であり;
ANは、溶液中にあるアニオンであり、OH、CO、NH、NO、NO、NO、SO、SO、HSO、NH、NH、PO、N、Cl、I、およびBrからなる群から選択され;
CAは、H、Ca、Na、Fe、K、Mg、Mn、Zn、Cu、Li、および、s-ブロック元素、p-ブロック元素、またはd-ブロック元素、およびこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンからなる溶液中に存在するカチオンである
組成物。
【請求項22】
複数のHO配位子に結合したイオン性金属を含む水性イオン性鉱物錯体を、それを必要とする植物または哺乳動物に投与して、金属-配位子錯体を形成する工程を含む、病気の治療方法であって、前記HO配位子は、スーパーオキシドイオンの過剰産生によって影響を受ける細胞標的へのヒト患者を介した金属-配位子錯体の輸送を可能にし;
前記金属-配位子錯体は、[[Zn(HO)2+、[[Cu(HO)2+、[[Cu(HO)、[[Mg(HO)2+、[HSO 、[NH、[NH 、[H、[SO 2-、[NHHSO、および[HSO、ならびにこれらの混合物、および、それらの薬学的または栄養的に許容される塩、溶媒和物、水和物、構造異性体、および立体異性体からなる群から選択され;
w、x、y、z、c、d、e、f、g、hおよびjは、独立して、0以上の整数であり;
[H]は、結合分子H・HOとして存在する
方法。
【請求項23】
前記金属-配位子錯体は、[Zn(II)(HO)2+、[Cu(II)(HO)2+、[Cu(I)(HO)2+、[Mg(II)(HO)2+、[HPO、およびフタル酸水素カリウム、ならびにそれらの混合物、および、
それらの薬学的または栄養的に許容される塩、溶媒和物、水和物、構造異性体、および立体異性体
からなる群から選択される化合物をさらに含み、
w、x、y、zおよびjは、独立して0以上の整数であり;
[H]は、結合分子H・HOとして存在する、
ことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物は、医療診断、生物系における嫌気性細胞の検出、医療処置、パーソナルケア、美容目的、および栄養補給からなる群から選択される目的のために投与されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、インビボで生体膜を越えて遊離イオンを運搬および輸送するための合成イオノフォアに関し、より詳細には、イオノフォアとしての遊離イオン性金属およびイオン性塩の分極ヘキサアクア系およびテトラアクア系を有する分子の配位錯体の使用に関し、インビボで生体膜を越えて医薬品およびパーソナルヘルスケア化合物を輸送して、細胞代謝系を標的とし、それによって代謝、免疫、および他の生物系障害ならびに感染症治療において有用な所望の薬理学的作用をもたらすことにおいて有用である。本発明の組成物は、無機および有機医薬化学、酸化還元値、pH、分子生物学、薬物動態学、微生物学、細胞生物学、特に哺乳動物細胞の生物学、生理学、および生理化学の科学分野および主題に関する。
【背景技術】
【0002】
改善された安全性、有効性、耐容性、改善された副作用プロファイル、低減された作用持続時間、低減された製造コスト、より大きな化学的安定性、確実に反復可能なバッチ製造、バッチ出力のサイズの増加に伴うスケーラビリティの可能性、より良好な手ごろな価格、投与の容易さ、入手しやすさを有し、流通に適し、かつ、特に遠隔地域および高温または湿潤な気候において、延長された貯蔵寿命を有する、治療レジメンのための医薬治療薬が概して必要とされている。
【0003】
さらに、天然のプロセスをより忠実に模倣するメカニズムで生物学的機能を標的とするように設計された、非毒性活性薬物送達システムのための薬学的治療薬における世界的ニーズがある。同様に、栄養およびパーソナルケアの分野ならびに治療学において適用され得る活性分子送達システムに対するニーズが存在する。
【0004】
感染症および抗生物質治療薬の分野では、細胞内で作用する抗酸化剤および酸化促進剤の両方に関して、細胞の酸化還元反応を理解する研究、ならびに(1)陽イオンの作用である正結合の送達および(2)陰イオンの作用である酸化フリーラジカル効果を可能にする複雑なイオン構造に関する研究を基礎とした、病気の治療および予防の方法が必要とされている。レドックス研究は、さらに、臨床プロテオミクスおよびメタボロミクスにおけるレドックススイッチおよびレドックスリレーの生物学的役割を研究して、生物系に対する酸化ストレスおよびニトロソ化ストレスを低減する。本発明の化合物は、このような研究を可能にし、支援する。
【0005】
レドックスシグナル伝達-RSS、RNS、およびROS作用モード。レドックスバランスは、すべての生物学的プロセスの根底にある化学的メカニズムである。生物学的ホメオスタシスは、光合成、呼吸、および生物系が機能するために必要な他のほとんどの生物学的反応を駆動する酸化還元(レドックス)反応によって生成され、調節され、持続される。酸化ストレスは、異常なレドックスホメオスタシスの原因となり、老化および疾患の一因となると考えられている。しかしながら、しばしば、酸化ストレスに対処するために抗酸化剤の投与は効果がなく、根底にある調節プロセスに関する我々の現在の理解が不完全であることを示唆している。非特許文献1。
【0006】
正常な生物学的機能を回復するための多くの生物学的メカニズムの操作の鍵は、以下の反応種のうちの1つまたはすべての化学的相互作用からなるレドックス系の正常な機能である:活性酸素種(ROS)、活性窒素種(RNS)、および活性硫黄種(RSS)。非特許文献2。これらの種は、不均衡である場合に毒性化合物および均衡である場合に有益な化合物の両方であり得るものとして二重の役割を果たす。それらの2つの拮抗効果の間の繊細なバランスは、明らかに生命の重要な側面である。非特許文献3。本明細書に開示される本発明は、酸素、窒素、および硫黄の元素の存在が、反応種としてのそれらのそれぞれの形態で、代謝経路におけるレドックスシグナル伝達プロセスの標的化、および重要な代謝中間体の標的化に潜在的に関与することを確認する。これらの反応種は、複数の細胞シグナル伝達経路、レドックスシステム、およびホメオスタシスのための電子伝達を提供する。
【0007】
活性酸素種-ROS。カチオン性水素(H(aq))は、ヒドロキシルラジカル(HO・)またはラジカル酸素(O )に対する電子供与体(還元)であり、過剰である場合、酸化ストレス、細胞老化(切断されたテロメア長)、およびDNAメチル化における要因としても知られている。
【0008】
活性窒素種-RNS。カチオン性金属アミン錯体(NHT(aq))は、窒素還元のための電子供与体である、および/または、アミノ酸合成において使用されるグルタミン酸生成を誘発するアンモニア(NH)配位子として作用する。酸化ストレスは、神経変性疾患において生じる確立された現象である。これは、アポトーシスおよびオートファジーの増加と相まって、アルツハイマー病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症において観察される神経変性および記憶喪失の一因となる。過剰な活性酸素種および窒素種は、これらの疾患において非常に豊富である。そのような不均衡を対象とした新規の抗酸化剤およびミトコンドリアベースの療法は、神経細胞損失を低減し、神経保護を促進することが期待され、これは患者転帰にプラス効果を有する。非特許文献4。
【0009】
活性硫黄種-RSS。アニオン性硫黄(HSO(aq))は、レドックススイッチおよびレドックスリレーを誘発する。硫黄は、細胞の抗酸化系の一部と考えられ、RSS不均衡は、ROS不均衡において見られるものと同様のストレッサー様特性を有するが、特定の条件下で、別個のクラスの酸化ストレッサーとして形成されるという証拠が高まっている。非特許文献5。
【0010】
代謝活性。より具体的には、作用部位に運ばれる金属カチオンの予防的または治療的使用を提供する、細胞への非毒性送達システムを実現する必要がある。本発明の組成物は、アクア配位子結合、好ましくはヘキサ-アクア配位子またはテトラ-アクア配位子部位、最も好ましくはヘキサ-アクア配位子部位の利用によってこの必要性を満たし、そのような金属カチオンが最初に利用可能なアニオンと直ちに結合されることから効果的に保護することができ、したがって、生細胞間および生細胞内での極性移動を可能にする。本発明の組成物を含むこのようなアクア配位子結合可能部位は、解糖、クエン酸回路、細胞呼吸、または電子伝達系におけるそれぞれの異なる好気性挙動対嫌気性挙動において、(1)好気性細胞(それらがアポトーシスに向かうプロセスを継続しているか、またはそれらが変異状態に向かって変化しているかどうかにかかわらず)と、(2)嫌気性細胞(それらが病原性または癌性状態にあるかどうかにかかわらず)との間の明確な相違を利用することができる。
【0011】
嫌気的プロセスは酸素を必要としないが、好気的プロセスは酸素を必要とする。クエン酸回路は好気プロセスであるため、酸素の使用が直接関与する。本発明の組成物は、正の水素電子供与によってこのプロセスを維持し、ヒドロニウムイオンHの形態でプロトンHを生じる。ヒドロニウムイオン平衡濃度を生成および維持することは、本発明の組成物の水溶液中で起こる化学反応を扱う際に必須の要素である。水酸化物に対するヒドロニウムイオンの濃度は、所与の溶液のpHの直接的な尺度である。ヒドロニウムイオンは、プロトン酸が水中に存在するときに形成される。本発明の組成物は、生物学的に利用可能な炭素燃料からの高エネルギー電子の除去に寄与する。これらの高エネルギー電子は、Oを還元して、アデノシン三リン酸(ATP)を合成するために使用されるプロトン(H)勾配を生成する。Oの還元およびアデノシン三リン酸(ATP)の合成は、酸化的リン酸化を構成する。
【0012】
解糖。解糖は、全ての生細胞において起こり、嫌気性細胞において進化した最初の種類の呼吸の1つであると考えられる(推定によれば、酸素の代謝利用の前、数十億年にわたって)。解糖は細胞の細胞質で起こり、解糖はクエン酸回路に先行する。解糖のプロセスは、2つのアデノシン三リン酸(ATP)分子の使用を必要とする。分子代謝通貨を構成するATPは、栄養摂取の一部として本発明の金属カチオンの輸送補助によって有利に増強される。グルコースが炭素数6の糖分子から2つの炭素数3の糖分子であるピルビン酸に分解されると、4つのATPおよび2つのNADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)分子が生成される。NADHは、クエン酸回路に運ばれ、好気性条件下でより多くのATPを生成する。酸素が存在しない場合、ピルビン酸はクエン酸回路に入ることができず、さらに酸化されて乳酸を生成する。発酵および酸化ストレス(O)は両方とも、嫌気的に機能する細胞によって生成され、嫌気的細胞環境の継続を促進する。本発明の組成物を含む製剤は、本発明のアクア配位子イオン種または混合ヒドロキシル/アクア配位子イオン種によって供与される利用可能な水素(H)カチオンを利用することによって、このストレスを低減する。
【0013】
クエン酸回路。クエン酸回路は、細胞呼吸の第1段階を構成し、炭素燃料から高エネルギー電子を除去する。これらの電子は、Oを還元して、ATPを合成するために使用されるプロトン勾配(H)を生成する。Oの還元およびATPの合成は、酸化的リン酸化を構成する。本発明の組成物は、HおよびO電子を電子伝達系に直接供与し、それによってクエン酸回路の機能を促進し、嫌気性細胞環境を適切に低減することができる。クエン酸回路はミトコンドリアのマトリックス中で起こる。これは、エネルギーを生成するために全ての好気性生物によって使用される一連の化学反応および電子伝達である。酸素が存在しない場合、呼吸サイクルは機能することができず、クエン酸回路を停止させ、潜在的に嫌気性細胞代謝を開始する。NAD+が産生されない場合、NAD+に対するNADHの相対比が増加し、解糖が引き起こされ、クエン酸回路の必要な成分であるピルビン酸の代わりに乳酸が生成される。クエン酸回路は酸素に大きく依存し、好気的プロセスであるとみなされる。
【0014】
電子伝達系。NADHがNADに還元されると、電子伝達系が分子から電子を受け取る。電子が電子伝達系内の各キャリアに伝達されると、自由エネルギーが放出され、ATPを形成するために使用される。酸素は、電子伝達系中の電子の最終受容体である。酸素がないと、電子伝達系は電子で過負荷になり、機能性を低減または排除する。本発明の組成物は、細胞膜を越えた酸化還元反応を介して天然電子供与体を利用することによって電子を移動させ、原子レベルで作用し、機能不全の電子伝達系を積極的に変化させることができる。
【0015】
ミトコンドリア機能。代謝プロセス、および代謝プロセスを可能にする複数の酵素は、哺乳類のミトコンドリア内で生じ、脂肪酸のβ-酸化、尿素回路、クエン酸回路、およびATP合成を含み、これらはそれぞれ、細胞における多くの代謝経路にとって重要である。そのような細胞内レドックスシグナル伝達に関与する新規な反応種および多様な食事療法および医療介入に対処するための新規なレドックス経路の同定が必要とされている。本発明の化合物は、そのような新しい反応種の同定を可能にする。細胞レベルでの特定の微量栄養素間の平衡相互作用および適切なバランスは、病気および疾患の軽減に必要である。是正ミトコンドリア代謝による生物学的ホメオスタシスの確立は、非常に費用効果の高い疾患予防方法である。本発明の化合物は、バランスのとれたレドックスプロセスの達成におけるそれらの作用を介して、疾患および健康問題の制御を補助することができる。細胞レドックスプロセスの持続的な物理的障害は、重症疾患の前後に起こり、最近の臨床データは、この問題の本質的な決定因子としてミトコンドリア機能不全を指摘している。レドックスモジュレータの主要な標的は、一般に、ROS、RNS、およびRSSなどの小分子「反応種」である。これらの反応種、しばしば無機種の生物学的影響および根底にある化学的性質は、レドックス制御の全体像を提供する。
【0016】
抗癌活性。本発明の組成物の作用モードの1つは、それらがアポトーシスによって癌細胞を標的とすることである。いくつかのヒト癌細胞型に関する臨床研究は、細胞の自然死メカニズムを抗癌治療として使用している。癌を予防または治療するために、罹患した生物系を治療して、アポトーシスの自然な機能を増強することは、本発明の組成物の活性である。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性は、初期の癌発生中に低下することが多く、癌治療介入のための合理的な候補標的となっている。動物実験により、本発明の組成物が、アポトーシス経路を活性化することによって抗癌活性を示すことが今や示されている。
【0017】
細胞死の自然なメカニズムを利用することは、非常に有効な治療方法である。アポトーシスを標的とする薬物は、最も成功した非外科的治療の一部である。アポトーシス回避が癌の特徴であるので、全ての癌細胞において有効性が証明されているものもが、それらは高い細胞毒性を有するという代償を伴う。非特許文献6を参照。本発明の組成物は、カチオン性金属送達、Zn/Cu SOD、レドックスシグナル伝達、およびフリーラジカルの還元の作用を介して、いくつかの形態でアポトーシスシグナルを生成する。これらの作用モードは、本発明の組成物によって産生される細胞外シグナルによって誘導される細胞死を通じて腫瘍環境を変化させることに寄与する。
【0018】
活性酸素種(ROS)は、細胞シグナル伝達の重要な決定因子としてますます認識されており、適切な細胞機能および生存を確保するために、ROSレベルの厳密なバランスが維持されなければならない。非特許文献7。癌細胞は、エネルギー必要量を満たすために代謝を解糖に切り替えるが、これはワールブルク効果として知られる。本発明の組成物の抗癌活性の1つは、ワールブルク効果を利用して癌細胞をさらに細胞呼吸プロセスに追い込み、それによってアポトーシス死を引き起こすことができることである。
【0019】
抗菌作用モード。以下に具体的に記載および開示されるように、複数の研究が、本発明の組成物の抗菌効力を支持する。嫌気性細胞は、本発明の組成物によって慎重に送達され得る天然金属カチオンの過負荷から細胞質金属中毒を経験するように臨床的に誘導され得、壊死および/またはアポトーシス(プログラムされた)細胞死を引き起こす。非特許文献8。この細胞死の方法は、生物系においていくつかの免疫応答を誘発する。非特許文献9。細胞呼吸中の好気性細胞による非毒性の必須金属(例えば、栄養素に見られるような)の取り込み、および嫌気性細胞に対するアポトーシス細胞死は、病原体誘発性疾患に対する有害な連鎖イベントを防止する環境を作り出す。非特許文献10。研究により、亜鉛および銅イオンが、酸化反応、ウイルス感染プロトンチャネルの不活性化、またはウイルス膜不安定化を誘導し得ることが示されており、これらのすべての活性は本発明の組成物に帰せられ得る。非特許文献11。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Miriam M. Cortese-Krott, A. K. (2017, Oct 1). The Reactive Species Interactome: Evolutionary Emergence, Biological Significance, and Opportunities for Redox Metabolomics and Personalized Medicine. Antioxidants & Redox Signaling, 27(10). https://doi.org/10.1089/ars.2017.7083
【非特許文献2】Olson, K. R. (2020, Feb 26). Reactive oxygen species or reactive sulfur species: why we should consider the latter. Journal of Experimental Biology 2020, p. 223. https://jeb.biologists.org/content/223/4/jeb196352
【非特許文献3】Lien Ai Pham-Huy, H. H.-H. (2008, June). Free Radicals, Antioxidants in Disease and Health. International Journal of Biomedical Sciences, 4(2), 89-96. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3614697/
【非特許文献4】Sergio Di Meo, T. T. (2016, July 12). Role of ROS and RNS Sources in Physiological and Pathological Conditions. Oxid Med Cell Longev, 1245049. https://dx.doi.org/10.1155%2F2016%2F1245049
【非特許文献5】Arno R.Bourgonje, M. F. (2020). Oxidative Stress and Redox-Modulating Therapeutics in Inflammatory Bowel Disease. Science Direct, 26(11), 1034-1046. https://doi.org/10.1016/j.molmed.2020.06.006
【非特許文献6】Singh, C. M. (2018, Feb. 2). Apoptosis: A Target for Anticancer Therapy. (C. College, Ed.) International Journal of Molecular Science (Department of Biology, Division of Natural & Social Sciences), 2, https://dx.doi.org/10.3390%2Fijms19020448
【非特許文献7】Brandon Griess, E. T.F. (2017, Aug 24). Extracellular Superoxide Dismutase and its Role in Cancer. Free Radic Biol Med, 1. https://dx.doi.org/10.1016%2Fj.freeradbiomed.2017.08.013
【非特許文献8】Lee, S. Y. (2018, Jan 31). Regulation of Tumor Progression by Programmed Necrosis. (R. Franco, Ed.) Hindawi (Oxidative Medicine and Cellular Longevity), 2. https://doi.org/10.1155/2018/3537471
【非特許文献9】Ine Jorgensen, M. R. (2017, Jan 31). Programmed cell death as a defense against infection. Nat Rev Immunol, 151-164. https://dx.doi.org/10.1038%2Fnri.2016.147
【非特許文献10】Pete Chandrangsu, C. R. (2017, March 27). Metal Homeostasis and Resistance in Bacteria. Nat Rev Microbiol, 338-350. https://doi.org/10.1038/nrmicro.2017.15
【非特許文献11】Vikram Gopal, B. E.-P.-s. (2021, Jan 6). Zinc-embedded fabrics inactivate SARS-CoV-2 and influenza A virus. (bioRxiv, Ed.) bioRxiv, 1-27. https://dx.doi.org/10.1101%2F2020.11.02.365833
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、前述の課題の少なくとも1つに対する解決策が必要とされている。より具体的には、インビボで生体膜を越える遊離イオンの運搬および輸送のための化学的手段に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本明細書に開示される本発明の濃縮イオノフォア金属イオン送達システムは、1つまたは複数の活性イオノフォア部分を含む組成物、薬学的に許容される賦形剤と配合されたそのような活性部分の医薬製剤、そのような部分、組成物、および製剤を作製する方法、ならびに、疾患の予防および治療においてそのような製剤を投与する方法を含む。複数の投与方法および投与レベルは、腫瘍環境、全ての年齢群における腫瘍領域、および同時治療を標的とする安全性プロファイルの領域を提供する。これらの組成物、製剤、調製方法、および投与方法は、前述の必要性に対処する。
【0023】
本発明の組成物の活性は、以下の非限定的な例示的リストを含む:スーパーオキシドジスムターゼの産生増加を促進する;フリーラジカルの形成を防止する;フリーラジカルのレベルを軽減する;生物系の抗酸化能を増加および改善する;酸化ストレスレベルを低減する;生物系を活性酸素種、活性窒素種、および活性硫黄種の過剰産生から保護する、およびそれらの既存のレベルを低減および解毒する;酸化促進剤のレベルを低下させる;酵素的および非酵素的抗酸化剤の欠乏に対処する;スーパーオキシド過剰産生に拮抗する;正常なミトコンドリア機能および正常なATP生合成を支持する;NADH対NAD+の比を減少させる;アポトーシスレベルを上昇させる;および抗病原性直接毒素を構成する。
【0024】
酸性pH。その様々な医薬製剤の全てにおける本発明の組成物の重要な特徴は、それらが0.2~4.0、最も好ましくは2.0の非常に低いpHレベルを記録し、これが、それらの送達効率および治療有効性を増大させるように作用するだけでなく、驚くべきことに、かつ予想外に、そのような低いpHレベルで生物系における有害反応を制限するかまたは全く示さないことである。
【0025】
本発明の任意の所与の好ましい実施形態の特徴は、遊離硫黄、アミン、硫酸イオン、金属ヘキサ-アクア構造、金属テトラ-アクア構造、金属ヒドロキシル/アクア混合配位子種、およびヒドロニウムイオンのうちの1つまたは複数を高レベルで含有することであり、これらは、マイクロまたはマクロ循環輸送によって生物系内の様々な標的位置に輸送することができ、それぞれ、細胞シグナル伝達、タンパク質作用、および代謝細胞周期の多重バランスに関与する活性酸素種、活性窒素種、および活性硫黄種のバランスをとるように働く。
【0026】
高レベルのHの送達。本発明の組成物は、1.0または1.0未満のpHを有する高レベルのH+を送達し、Zn2+Cu2+スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)配位子中でHを搬送するものとして特徴付けられ得る。本発明の好ましい組成物とROS、RNS、RSSとのプロセスおよび関係、およびNO、HSおよびOならびにそれらの派生種との相互作用に基づいて、本発明の技術には多くの未知の有益な可能性が存在する。本発明の好ましい実施形態のコア非金属成分であるNH、HSO およびHは、化学力学、電子移動、または生物学的プロセスによって、上記反応種のそれぞれのレベルに影響を及ぼし、調節する。Gopi K. Kolluru, X. S. (2020, Mar 5). Reactive Sulfur Species - A New Redox Player in Cardiovascular Pathophysiology. (T. a. Arteriosclerosis, Ed.) Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology. https://doi.org/10.1161/ATVBAHA.120.314084。
【0027】
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)産生。天然形態のSODおよびそれらの従来技術の送達方法は、製造が困難であり、再生が困難であり、高価である。対照的に、本発明によって製造される人工SODは、大量に製造することができ、クリーム、注射剤、経皮パッチ、吸入器、および医療従事者によって現在使用されている他の投与方法などのいくつかの応用技術において利用することができる。SOD形態の本発明の組成物は、上記のZn2+/Cu2+SODに加えて、イオン性金属としてマンガンをMn2+SODとして、鉄をFe2+SODとして、さらに開発することができる。亜鉛はレドックス不活性金属である、すなわち、銅/亜鉛-スーパーオキシドジスムターゼの触媒作用、膜構造の安定化、タンパク質スルフヒドリル基の保護、およびメタロチオネイン(それ自体が金属結合能を有し、抗酸化機能を示す)の発現のアップレギュレーションを介して抗酸化剤として機能する。Lee, S. R. (2018, Mar 20). Critical Role of Zinc as Either an Antioxidant or a Prooxidant in Cellular Systems. (G. Gobe, Ed.) Hindawi. https://www.hindawi.com/journals/omcl/2018/9156285/。本発明の組成物の好ましい実施形態は、生物系における人工SODの産生を含むかまたは支持する。好適な金属を含有し、送達する好ましい組成物は、酸素ラジカル酵素不均化の標準的な役割を有する天然SOD酵素の産生を支持する。複数の研究が、フリーラジカルを防止および軽減するための生物系におけるSODバランスの必要性を支持している。これらのラジカルは、免疫系の機能性に影響を及ぼし、しばしば突然変異および疾患の前兆である。スーパーオキシドジスムターゼは、体幹および付属器の皮膚を含むヒトの身体に広がっている。Giovanna G. Altobelli, S. V. (2020, May 12). Copper/Zinc Superoxide Dismutase in Human Skin: Current Knowledge. (F. i. Medicine, Ed.) Frontiers in Medicine, 1. https://doi.org/10.3389/fmed.2020.00183。
【0028】
SODファミリーのメンバーは、本発明のいくつかの好ましい実施形態において見出される。SODは、プリオン様タンパク質のミスフォールディングおよび病理増殖のメカニズムがROS生成における役割を果たすことが知られており、その後SODに対する広範な損傷が引き起こされる疾患であるALS疾患への関与が発見されて以来、様々なモデルにおいて研究されてきた。本発明の組成物の投与における戦略は、有効な抗酸化剤として機能し、本発明の担体化合物を介して送達される合成SODでラジカル化SOD1を中和することである。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治験的治療の初期段階の試験は、人々が本発明の好ましい実施形態である実験的薬物に耐え得ることを示唆しており、探索的結果において、実験的薬物は、21番染色体上のスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子SOD1と呼ばれる遺伝子における突然変異によって引き起こされる疾患の遺伝的形態を有する人々において進行を遅くする可能性と関連付けられた。American Academy of Neurology. (2019, May 1). Experimental drug shows promise for genetic form of ALS. (S. News, Ed.) Science News, p. 1. Retrieved 2021 from https://www.sciencedaily.com/releases/2019/05/190501161224.htm。
【0029】
銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(Cu/Zn SOD)は、医薬品化学者間で大きな関心を惹起した重要な酵素である。亜鉛はレドックス不活性金属であり、銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼの触媒作用、膜構造の安定化、タンパク質スルフヒドリル基の保護、およびメタロチオネインの発現のアップレギュレーションを介して抗酸化剤として機能する。Paolo Mondola, S. D. (2016). The Cu, Zn Superoxide Dismutase: Not Only a Dismutase Enzyme. Frontiers in Physiology, 1. https://doi.org/10.3389/fphys.2016.00594を参照。マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)酵素は、ミトコンドリアおよび生物学的機能の保護および強化を助ける。MnSODが、活性酸素種(ROS)の過剰産生の有害な効果およびミトコンドリア代謝酵素に対するROSの効果から細胞を保護するメカニズムは、まだ知られていない。マンガン金属イオンを含有する本発明の好ましい組成物は、MnSOD酵素の産生を有益に模倣および/または増加させる。MnSODは、スーパーオキシドアニオンを過酸化水素と酸素に変換し、ミトコンドリアにおける酸化ストレスに対する防御の第一線を提供する。心臓ミトコンドリアは、肝臓ミトコンドリアよりも高いMnSOD活性を示すことが知られている。両方の組織からのミトコンドリアにおいて、MnSOD活性は、低酸素濃度でのインキュベーション後に減少した(低酸素ミトコンドリア)。いずれかの器官からの正常酸素および低酸素ミトコンドリアに対する遊離Ca2+([Ca2+)および遊離Mg2+([Mg2+)の効果を試験した。いずれかの組織からの正常酸素ミトコンドリアにおいて、[Ca2+および[Mg2+の両方が酵素を活性化したが、[Mg2+は活性化因子としてあまり効率的でなく、効果は肝ミトコンドリアよりも心臓ミトコンドリアにおいて低かった。同時に添加した場合、高い[Ca2+および[Mg2+は相加効果を示し、これは、心臓ミトコンドリアにおいてより顕著であり、ミトコンドリアが正常または低酸素下でインキュベートされたかどうかにかかわらず観察された。データは、[Ca2+が好気性代謝の活性化と協調してMnSODを調節する役割を果たすことを示唆する。Perez- Vazquez, V., Ramirez, J., Aguilera- Aguirre, L. et al. Effect of Ca2+ and Mg2+ on the Mn-superoxide dismutase from rat liver and heart mitochondria. Amino Acids 22,405-416(2002). Retrieved in 2021 from https://doi.org/10.1007/s007260200024。
【0030】
抗酸化剤としてのH+。本発明の好ましい実施形態の化合物に存在するカチオン性ヒドロニウム成分は、配位子錯体からOラジカルに水素を供与することができ、強力な抗酸化剤として作用して、酸化ストレスおよびそのようなストレスによって引き起こされる関連疾患を軽減させる。酸化ストレスは、酸化促進剤としての反応性酸素/窒素種(ROS/RNS)の過剰産生および/またはROS/RNSの解毒に関与する酵素的および非酵素的抗酸化剤の欠乏として定義することができる。
【0031】
SODおよび嫌気性菌。SODはまた、被験者における神経変性に関連するタンパク質結合β-N-メチルアミノ-L-アラニン(BMAA)に関連する任意の生存疾患を含む、存在する特定の嫌気性疾患を排除することができる。細胞外空間におけるスーパーオキシドジスムターゼは、細胞シグナル伝達において独特の特徴および機能を有し、抗癌特性を示す。本発明の好ましい組成物は、スーパーオキシド過剰産生を治療するために投与および利用することができる人工的なインサイチュSODを生成する。そのような人工SODの金属形態は、SOD酵素の産生において必要とされる金属イオンの欠乏を再平衡化することによって、天然酵素形態のSODの濃度を増加させ、それによって、生物学的機能の正のレベルを増加させることができる。したがって、本発明の組成物は、SOD酵素の産生における欠乏の治療、SODのレベルの再平衡化、およびラジカルSODの中和に使用することができ、これらはすべて生物系における正常性を再確立するためである。
【0032】
疾患の予防。本発明の別の目的は、生物系における代謝障害を防止し、バランスのとれたミトコンドリア調和に向けて原子レベルで細胞を処理し、環境ストレス、毒性、およびそれらが引き起こす最終的な突然変異から生じるフリーラジカルを減少させることにより、疾患の予防を補助することである。要素間の相乗作用は、主に代謝レベルで生じる。本発明は、刺激物質または鎮静薬理学的物質の適用による生物系のリバランスによって疾患の予防を助ける特定の製剤に開発することができる。これらの概念のより良い理解および適用により、ヘルスケアに対するより包括的なアプローチを実現することができ、したがって、文献に記載されている栄養版ルーレットの必要性を回避することができる。個々の治療レジメンに対する既知の刺激剤および鎮静剤の特別に個別化された投与は、その後、望ましくない副作用がより少なく、改善された応答をもたらし得る。Watts, David L. (1990, Jan 01). Nutrient Interrelationships Minerals - Vitamins - Endocrines, Journal of Orthomolecular Medicine Vol. 5, No. 1, 1990. Retrieved 2021 from http://orthomolecular.org/library/jom/1990/pdf/1990-v05n01-p011.pdf。
【0033】
消化管吸収。本発明の合成イオノフォアは、全ての投与方法において、低吸収性欠乏を安全に標的化することができ、可溶性ミネラル送達手段を提供することができる化合物である。生物系は、まず食物をその栄養成分に分解しなければならず、これは、典型的には消化器系において行われる。多くのタイプの食品は、栄養吸収を効果的に低下させ、拮抗的な栄養不均衡を生じさせ、腸の生物学における重要なプロセスを破壊する。本発明の製剤は、水中で高度に生物学的に利用可能な可溶性栄養素を担持および提供することによってこの問題を解決し、対象において必要とされる場合、細胞環境に直接的に生物学的に利用可能である。この送達システムは、これによって、消化器系のプロセスの変数、例えば、腸疾患、病理および病気、腸のエネルギー要求、患者の年齢、および消化管の吸光度の問題を回避する。胃腸(GI)管のいかなる障害も、感染性、炎症性、および機能不全のGIプロセスを発症するリスクを増加させ、最終的に薬物送達、栄養吸収性、および/またはある栄養素の取り込みを減少させ、別の栄養素の取り込みを減少させず、したがって生物系における不均衡を引き起こし得る。本発明の投与方法は、経口補給の代替物および栄養送達への標的化アプローチを提供する。適切な生理学的機能は、最適な栄養を必要とし、これは、特に典型的な薬理学的投与量で投与される場合に、潜在的な有害な相互作用を防止するためにバランスを保つ必要がある。多くの栄養素は、消化機能および同化を補完するように調和して機能する。栄養素の一部は、これらのプロセスを妨害し、取り込みを競合し得るが、他の栄養素もまた、最終的にいくつかの生化学的サイクルに影響を及ぼし得る代謝を補助するために並行して必要とされ得る。Schoendorfer, Niikee (2012, Jan 01). Micronutrient interrelationships: Synergism and antagonism, JOUR, 159. Retrieved 2021 from https://www.researchgate.net/publication/286184266_Micronutrient_interrelationships_Synergism_and_antagonism。
【0034】
一部の特定の微量栄養素がエネルギー代謝およびATP産生において重要な役割を果たすので、ミトコンドリア機能には十分な栄養素レベルが不可欠である。E. Wesselinka, W. K. (2018, Aug 31). Feeding mitochondria: Potential role of nutritional components to improve critical illness convalescence. (Elsevier, Ed.) Elsevier, 38(3), 982-995. Retrieved 2021 from https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0261561418324269。栄養疾患または栄養関連疾患は、ヒトに病気を引き起こす状態であり、それらは本発明の組成物で治療することができる。そのような疾患は、食事不全または過剰、肥満、摂食障害、および心血管疾患、高血圧、癌、および糖尿病などの慢性疾患を含み得る。Weininger, J. (2021, November 11). Nutritional disease. (Britannica, Editor, Britannica, Producer, & Britannica) Retrieved 2021 from Encyclopedia Britannica: https://www.britannica.com/science/nutritional-disease。
【0035】
栄養補給。本発明の組成物は、生物系においてホメオスタシス状態を確立するための投与方法および投薬における個別化されたアプローチを可能にする。酸化ストレスは、反応種のレベルが生物の抗酸化能を超えると生じる。低い栄養吸収性条件では、腸の健康および食物源の役割が拡大し、比較的少量の欠乏が栄養バランスに有害な影響を及ぼし得る。例えば、マグネシウムMg欠乏症は、血液検査が平均範囲内にあることを示す後でさえ、気付かれない可能性がある。血清Mgは細胞内Mgを反映せず、後者は全身Mgの99%超を構成する。Mg欠乏症はほとんどの場合診断されない。Mg欠乏症は、多くの異なる疾患の形成と相関し、多くの食生活でよく起こる。例えば、脂肪組織は、過剰な場合、活性酸素種の過剰な産生を促進し、したがって、脂質過酸化に寄与する内分泌器官と考えられ、このミネラルが抗酸化剤としての役割を果たし、いくつかの酵素の補因子として関与し、細胞膜安定性を維持し、酸化ストレスの影響を緩和するため、マグネシウム欠乏は、肥満個体における酸化ストレスの発生に寄与することが現在知られている。研究によれば、肥満の対象が、これらの個体において、マグネシウムの血清濃度が低く、酸化ストレスマーカーの濃度が高いことが示される。Morais, J.B.S., Severo, J.S., Santos, L.R.d. et al. Role of Magnesium in Oxidative Stress in Individuals with Obesity. Biol Trace Elem Res 176, 20-26(2017). Retrieved 2021 from: https://doi.org/10.1007/sl2011-016-0793-l。さらに、マグネシウムの十分な摂取が、体内での適切なホメオスタシスに寄与することが明らかである。したがって、この慢性疾患に関連する障害の予防および治療のために、このミネラルの補充による介入が必要である。本発明の組成物は、特定の栄養欠乏、毒性、およびマルチコンプレックスに対処して、生物系における栄養ホメオスタシスを予防および生成するように開発することができる。例として、Mg2+では、Mn-SOD活性の最大増加が1.5mM[Mg2+]の存在下で得られた。Perez-Vazquez, V., Ramirez, J., Aguilera-Aguirre, L. et al. Effect of Ca2+ and Mg2+ on the Mn-superoxide dismutase from rat liver and heart mitochondria. Amino Acids 22, 405-416 (2002). https://doi.org/10.1007/s007260200024。本発明の組成物は、高度に生物学的に利用可能な栄養補助担体を含み、あらゆる形態および比率の必須ミネラル、ビタミンを組み込み、消化管、局所、経鼻、静脈内、または噴霧経路を通して、および/または経口摂取によって、あらゆる他の栄養上の利点を提供する。本発明の組成物は、皮膚、リンパ液、間質液または細胞外液、血液、または細胞中の必須遷移金属のレベルを増加させる。栄養バランス調整は、ZnおよびCuを例として行ったように、必須ミネラル、ビタミンの相乗効果または拮抗効果、および本発明の範囲内の比率による欠乏または毒性の管理によって達成することができる。さらに、酸化ストレスの低減のために使用することができ、ケトン体の酸化を介してケトン分解において放出されるエネルギーを取り戻すことを目的としたケトン生成反応セットとしてケト生成において使用することができ、さらに、それらは、臨床または栄養メタボロミクスにおいて生体触媒として使用することができる。
【0036】
健康補助助剤。本発明の別の目的は、病気の診断前に代謝の不均衡および欠乏、毒性、病原体、および突然変異を治療する、すなわち予防手段として作用する能力を支持することである。例として、亜鉛は、エネルギー代謝を広く調節することができ、細胞生理学のエネルギー代謝障害を回復するのに必須である。研究によれば、肥満の対象が、マグネシウムの血清濃度が低く、酸化ストレスマーカーの濃度が高いことが示される。
さらに、マグネシウムの十分な摂取が体内での適切なホメオスタシスに寄与することが明らかである。Morais, J.B.S., Severo, J.S., Santos, L.R.d. et al. Role of Magnesium in Oxidative Stress in Individuals with Obesity. Biol Trace Elem Res 176, 20-26 (2017). https://doi.org/10.1007/s12011-016-0793-1。亜鉛は、細胞エネルギー供給を増強して、細胞運動性を改善し、OTAによって誘導される毒性環境においてエネルギー代謝障害を回復させる。(S. Reports, Ed.) Scientific Reports, 7, 14669. https://doi.org/10.1038/s41598-017-14868-x。本発明の組成物の高い安全性プロファイルは、全ての年齢の全ての生物系における長期の予防的投薬を可能にする。本発明の組成物は、あらゆるタイプの投与方法および経路によって送達されるように栄養目的のために設計することができる。これらの方法は、腸の健康不良および栄養吸収性の問題を回避するために、局所的に投与され得るか、または全身的に送達され得る。局所適用における組成物は、環境ストレスから生じるフリーラジカルから身体の最大器官である皮膚を保護する。
【0037】
癌の治療。本発明の組成物の次の主要な目標および特徴は、癌の治療に対処することに関する。癌には、光線角化症(Aks)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎腫瘍、肛門癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、血液癌、骨癌、腸癌、脳腫瘍、乳癌、原発性不明癌(CUP)、骨への癌転移、脳への癌転移、肝臓への癌転移、肺への癌転移、カルチノイド、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸直腸癌、耳癌、子宮内膜癌、眼腫瘍、濾胞性樹状細胞肉腫、胆嚢癌、胃癌、胃食道接合部癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患(GTD)、有毛細胞白血病、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、大腸および直腸神経内分泌腫瘍、喉頭癌、白血病、Linitis plastica型胃癌、肝臓癌、肺癌、肺神経内分泌腫瘍(NET)、リンパ腫、悪性神経鞘腫、縦隔原発胚細胞性腫瘍、黒色腫皮膚癌、男性癌、メルケル細胞皮膚癌、中皮腫、臼歯妊娠、口腔および口腔咽頭癌、骨髄腫、鼻および副鼻腔の癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫、小児非ホジキンリンパ腫、食道癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、持続性栄養芽細胞性疾患および絨毛癌、褐色細胞腫、前立腺癌、腹膜偽粘液腫、希少癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、二次癌、印環細胞癌、皮膚癌、小腸癌、小腸神経内分泌腫瘍(NET)、軟部組織肉腫、胃癌、胃神経内分泌腫瘍(NET)、扁平上皮癌、精巣癌、胸腺腫瘍、甲状腺癌、舌癌、扁桃癌、副腎腫瘍、原発不明癌、子宮癌、膣癌、外陰癌、ウィルムス腫瘍、子宮体癌、および女性癌(婦人科癌)が含まれる。
【0038】
抗癌作用。本発明の組成物は、複数の癌経路を攻撃する。試験した本発明の各組成物のいくつかの前臨床試験が異なる癌細胞型の範囲にわたって高いアポトーシス性抗癌死滅率を示す理由が、抗癌経路における共通性によって説明され得る。シスプラチンおよび関連する白金ベースの薬物の物理化学的特性のような承認された金属抗癌医薬によって、潜在的に類似の経路が示され、それらは、様々なヒト癌の治療のためのそれらの長期使用(単独でまたは他の薬物と組み合わせて)から収集された証拠によって支持される。Tchounwou, S. D. (2014, Oct 5). Cisplatin in cancer therapy: molecular mechanisms of action. (S. D. Tchounwou, Ed.) Retrieved 2021 from US National Library of Medicine: https://dx.doi.org/10.1016%2Fj.eiphar.2014.07.025。本発明の組成物の金属成分は、相当数の研究発表を通して、および臨床報告において、癌細胞に対して複数の治療的に有益な作用を有することが報告されている。(Krishant M. Deo, 2016). Krishant M. Deo, B. J.-W. (2016, Oct 31). Transition Metal Intercalators as Anticancer. (S. H. Hadjiliadis, Ed.) International Journal of Molecular Sciences, 1-17. Retrieved 2021 from https://doi.org/10.3390/ijmsl7111818。メカニズムには、酸化ストレスを生じさせるラジカルの還元、代謝経路の変化、および細胞シグナル伝達メカニズムの開放が含まれ、これらは、亜鉛、銅、マンガン、マグネシウム、カルシウム、セレン、カリウム、水素(本発明においてHとして)、およびSODのうちのいずれか1つによって示されるメカニズムであり、これらはすべて、本発明の組成物に組み込まれ得る。細胞周期の段階、ならびにアポトーシスに対する抵抗性、細胞侵襲性、および血管新生などの多段階新生物進行を変化させるかまたは形成する細胞生理学の他の局面に対して、イオンチャネルおよびトランスポーターによって及ぼされる調節的役割についての広範な証拠が存在する。Andrea Becchetti, L. M. (2013). The role of ion channels and transporters in cell proliferation and cancer. Frontiers in Physiology, 1. https://doi.org/10.3389/fphys.2013.00312。本発明の組成物は、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、経口(PO)、皮下(SC)、病変内(IL)、髄腔内(IT)、および局所的など、様々な方法で癌の治療のために投与される。本発明の組成物中に担持される特定の金属イオンの使用は、現在の癌薬物治療において見られる毒性レベルを低下させる。研究により、種々のヒト癌におけるSOD酵素活性の有意な減少が実証されている。その結果、酸化ストレスのレベルの増加は、腫瘍形成の進行および癌の発生率を増強するが、本発明の組成物は、酸化ストレスのレベルの増加に拮抗する。
【0039】
イオントフォレシス輸送。本発明の組成物は、単独で、または化学療法と補助的に組み合わせて使用することができ、または化学増感剤として使用されて、癌、癌腫瘍、および癌循環幹細胞を治療することができる。投与後に誘導されるイオンホメオスタシスは、シグナル伝達事象のカスケードを開始し、最終的に癌細胞死をもたらし得る。研究により、イオントランスポーターおよびイオンチャネルの活性化または不活性化のいずれかによる細胞イオンホメオスタシスの調節が示唆されており、これは、そうでなければ無効な薬物に対して癌細胞を感作する際の本発明の組成物の作用機序である。Kaushik, V. Y. (2018). Ionophores: Potential Use as Anticancer Drugs and Chemosensitizers. US National Library of Medicine, 2. https://dx.doi.org/10.3390%2Fcancers10100360。現在の研究は、変化したイオン輸送動態が癌細胞に存在することを示唆する証拠を提示している。癌細胞は、細胞回路を再配線して、イオンホメオスタシスおよびイオンチャネルを操作することによって、種々の困難な条件で定着、採用、増殖、転移し、イオンポンプは、この再編成において重要な役割を果たす。
【0040】
病原性感染症の治療。本発明の別の主要な目標および特徴は、病原性疾患を治療する能力であり、病原菌、ウイルス、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌にかかわらず細菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、真菌、原虫、寄生虫、ワーム、ライム病、およびバイオフィルムなどとして知られる病原体を治療し得る組成物が含まれる。現在、様々な金属イオンが細菌に対して毒性であることが広く知られている。全体として、抗菌剤についてますます考慮されている金属は、典型的には、dブロックの遷移金属(V,Ti,Cr,Co,Ni,Cu,Zn,Tb,W,Ag,Cd,Au,Hg)の範囲内であり、周期表の13~16族の少数の他の金属および半金属(Al,Ga,Ge,As,Se,Sn,Sb,Pt,Te,Pb,Bi)がある。金属がバイオフィルムとして増殖する微生物に対して強力な効力を有するという10年以上前になされた発見が非常に重要である。Turner, R. J. (2017, Jul 26). Metal-based antimicrobial strategies. Microb Biotechnol, 1062-1065. https://doi.org/10.1111/1751-7915.12785。バイオフィルムの極めて重要な表現型は、抗菌耐性を付与する能力であり、上記の金属は、そのようなバイオフィルムを構築または維持する能力を積極的に低下させる。さらに、このような金属は、抗生物質に対して不透過性の正常細胞の休眠状態の変異体である細胞に対してある程度の有効性を示している。これらの化合物の生物学的特性は、配位子中に存在するドナー原子の種類、金属イオンの種類、および配位ジオメトリーを含むいくつかの要因に基づいて説明することができる。Pahont, E. (2017, April 19). Synthesis, Characterization, Antimicrobial and Antiproliferative Activity Evaluation of Cu(II), Co(II), Zn(II), Ni(II) and Pt(II) Complexes with Ioniazid-Derived Compound. International Journal of Molecular Sciences, 4. From https://dx.doi.org/10.3390%2Fmolecules22040650。病原体は、宿主内での病原体の代謝機能に必要な限られた量の金属と競合すると同時に、金属毒性からそれら自体を保護する生物系を有することが知られている。病原体は、一連の金属調節系、獲得系、および排出系を発達してきた。本発明の組成物は、そのような病原体防御系において破壊を引き起こす特定の金属比率を有する。
【0041】
低次生物は、その代謝経路に関して、高次生物ほど複雑ではない。細菌、真菌、およびウイルスなどの生物によって引き起こされる低次疾患がたどるサイクルは、あまり複雑でないプロセスに従い、これは、はるかに少ないステップを有する嫌気性サイクルにおける利用可能な資源に基づいて、疾患がほぼ指数関数的な速度で増殖することを可能にする。本発明は、その差異を利用する。
【0042】
自己免疫疾患の治療。本発明の次の主要な特徴および目的は、自己免疫疾患の治療のための組成物を提供することである。自己免疫疾患には、アカラシア、アジソン病、成人スティル病、アガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性自律神経異常症、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳炎(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性じんま疹、急性運動軸索ニューロパチー(AMAN)、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病(CD)、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー(CIDP)、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス症候群(CSS)、好酸球性肉芽腫症(EGPA)、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素病、 先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デービック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群 子宮内膜症、好酸球性食道炎(EoE)、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、湿疹、線維筋痛症、線維化性肺胞炎、 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、バセドウ病、ギランバレー症候群、 橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ-ションレイン紫斑病(HSP)、妊娠性疱疹または妊娠性天疱瘡(PG)、汗腺膿瘍(HS)、反転型ざ瘡、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化症、免疫性血小板減少性筋紫斑病(ITP)、閉塞性筋肉腫(IBM)、間質性膀胱炎(IC)、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎(JM)、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球形成性血管炎、扁平苔癬、苔癬性硬化症、苔癬性結膜炎、線状IgA疾患(LAD)、ループス、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎(MPA)、混合型閉塞性組織疾患(MCTD)、ムーレン潰瘍、ミュシャ・ハーバーマン病、 多巣性運動ニューロパチー(MMN)、MMNCB、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、新生児ループス、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼瘢痕性類天疱瘡、 視神経炎回文性リウマチ(PR)PANDAS、腫瘍随伴性小脳変性症(PCD)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリーロンバーグ症候群、扁平部炎(末梢ぶどう膜炎)、 パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢神経障害、脳脊髄周囲炎、悪性貧血(PA)、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I型、II型、III型多発性筋痛症候群、多発性筋痛症候群 リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、純赤色細胞増殖症(PRCA)、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経ジストロフィー、再発性多発性軟骨炎、レストレスレッグス症候群(RLS)、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子・精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群(SPS)、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感神経性眼症(SO)、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、甲状腺眼症(TED)、トロサ・ハント症候群(THS)、 横紋筋炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎(UC)、未分化結合組織病(UCTD)、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、Vogt-小柳-原田病が含まれる。
【0043】
自己免疫疾患は、宿主自身の細胞および組織を攻撃する体内の免疫細胞の現象を表す。現在、世界の人口の5~8パーセントは、80~100の自己免疫疾患を罹患している。本発明の組成物は、いくつかの既知のおよびいくつかの潜在的な作用機序を組み合わせて、ラジカルSOD1酵素の状態を変化させることによって、病原性関与によって、および根底にある問題を処置することによって過度に単純化された免疫系を減少させることによって、自己免疫疾患の治療に対処する。高いORACおよびORP値を有する本発明の組成物の抗酸化特性は、免疫応答の低減に対するさらなる合理的なアプローチを提供し、それによって、自己免疫疾患を潜在的に軽減または低減する。
【0044】
亜鉛カチオンの形態の亜鉛は、本発明の好ましい実施形態の多くに含まれる成分であり、自己免疫疾患に対する標的化アプローチを構成すると認識されている。そのホメオスタシス挙動は、自然免疫応答および適応免疫応答の両方、細胞周期進行、ならびに細胞成熟および分化について、免疫系の様々な態様を調節するために、炎症性疾患に対して不可欠である。したがって、亜鉛欠乏は、T細胞およびB細胞の不正確な成熟および機能、Th1細胞とTh2細胞の間の、ならびに制御性T細胞と炎症性T細胞の間の不均衡な比率、ならびにNK細胞の機能低下に関連する。Alessandro Sanna, D. F. (2018, Jan 11). Zinc Status and Autoimmunity: A Systematic Review and Meta-Analysis. (Nutrients, Ed.) Nutrients, 10(1), 68. https://dx.doi.org/10.3390%2Fnu10010068。
【0045】
銅は、本発明の組成物における好ましい成分である。炎症性リウマチ性疾患に罹患している患者は、顕著なスーパーオキシドジスムターゼ活性を発揮し、ヒドロキシルラジカルおよび一重項酸素を効果的に除去する低分子量銅タンパク質銅チオネインがほぼ完全に枯渇していることが見出された。Ralf Miesel, M. Z. (1993, June). Copper-dependent antioxidase defenses in inflammatory and autoimmune rheumatic diseases. Inflammation, 283-294. https://doi.org/10.1007/BF00918991。
【0046】
ヒドロニウムイオンとして存在する水素は、本発明の組成物の好ましい成分である。本発明の目的は、多くの自己免疫疾患、特に乾癬および関節リウマチにおいて起こるタイプの組織損傷の重要な駆動因子であると考えられる、活性酸素種(ROS)、特に・OHヒドロキシルラジカルのレベルを低減することである。Decker, C. (2019, Nov 12). Harnessing Hydrogen’s Antioxidant Power to Treat Autoimmune Disease. From Holistic Primary Care: https://holisticprimarycare.net/topics/chronic-disease/harnessing-hydrogen-s-antioxidant-power-to-treat-autoimmune-disease/。
【0047】
RSS、RNS、ROSのホメオスタシス。本発明のさらに別の特徴および目的は、反応性酸化種、すなわち、活性酸素種、ROS、活性窒素種、RNS、および活性硫黄種、RSSの存在下で、酸化還元バランスおよび生物学的ホメオスタシスを達成および維持することである。フリーラジカルの過負荷を適時に破壊できない場合、体内でのそれらの蓄積は酸化ストレスと呼ばれる現象を生じる。酸化ストレスは、数多くの疾患に関与することが臨床的に証明されている。本発明の組成物は、活性酸素種、活性窒素種、および活性硫黄種などであるがこれらに限定されないフリーラジカルを低減し、バランスをとることができ、これらはそれぞれ酸化的損傷および細胞機能不全を引き起こす。
【0048】
ミトコンドリアサポート。本発明の組成物は、生物系に有益であるミトコンドリア内のストレス応答を活性化する分子シグナルを輸送する。輸送経路は、組織の酸化的損傷および機能不全の低減において重要な役割を果たす。本発明の組成物は、透過性遷移孔の開口の刺激を含むいくつかのメカニズムによって過剰な組織機能不全から保護する。
【0049】
本明細書に開示および特許請求される本発明のさらなる目的、特徴、および利点は、特定の使用および分野内の以下の非限定的なリストを含み、これらの使用は、本発明の組成物の生物学的特性によって可能になる。
【0050】
医薬的経口および局所治療。局所治療における本発明の化合物の使用により、以下が可能となる:感染を治療する、病原体の負荷低減を達成する、および抗生物質の補助剤または代替物として;すべてのウイルス、真菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、グラム陰性またはグラム陽性細菌感染症、および寄生虫感染症の治療のための高い死滅率を作り出す;ウイルス、真菌、MRSA、グラム陰性菌およびグラム陽性菌ならびに寄生虫の治療における平均処置時間を短縮し、長期の症状を低減する;および、アルツハイマー病、ライム病、MRSA、または任意の他の病原性関連疾患を含むがこれらに限定されない感染性および全身性疾患。
【0051】
生物学的バイオフィルムの通過および還元。本発明の合成されたイオノフォアは、バイオフィルム(細胞外ポリマー物質)を通過して還元し、細胞RNA複製の抗病原性毒性を模倣または生成し、それによって、システムへのウイルス、真菌、および細菌負荷を減少させるように、またはこれらの病原体内の抗生物質耐性を減少させるように作用することができる。
【0052】
炎症抑制における抗酸化剤としての使用。それらの抗酸化特性に起因して、本発明の組成物は、疼痛管理療法および抗炎症療法において有用である。本発明の組成物は、多くの抗炎症剤とは異なり、非毒性であり、ステロイド性および非ステロイド性の両方である。
【0053】
皮膚外傷。本発明の組成物は、日光への過剰な曝露、極端な熱、炎、高温物体との接触、放射性熱傷、または化学的熱傷によって引き起こされる損傷を含む、外的要因に曝露された皮膚または他の領域に対する損傷に使用することができ、熱傷の緩和を提供する際に使用することができる。
【0054】
創傷治癒。創傷治癒の速度の増加、ならびに外傷前および外傷後、または手術前または手術後の介入は、本発明の組成物を用いて達成することができる。
【0055】
血管障害。心疾患、動脈硬化症、血栓症、および心血管障害を含む血管障害は、本発明の組成物を使用して対処することができる。
【0056】
追加の適応。本発明の組成物はまた有用であり得る:血管平滑筋障害および非血管平滑筋障害の両方を弛緩させる広範囲の薬剤を包含する平滑筋弛緩剤として;癌固形腫瘍および非固形癌、循環幹細胞の癌、転移期の癌、および前癌性非定型細胞の減少を含む、すべての癌細胞型の治療の一部として、陽性エスカー作用をさらに提供しながらすべての皮膚癌細胞型の治療の一部として;外科手術前および外科手術後の癌性および前癌性細胞除去処置の補助剤として;モース手術における補助剤として、および、乾癬および湿疹を含むがこれらに限定されない自己免疫疾患における化学療法クリームの補助剤または代替物として;神経疾患、神経由来の片頭痛、心血管脳卒中回復、多発性硬化症、末梢神経系および中枢神経系の神経への外傷性神経損傷、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、てんかん、およびてんかん性発作、ならびに平滑筋弛緩および横紋筋弛緩;毒性物質の予防的または医薬的除去のための、生体系、特に鳥類系、哺乳類系、またはヒト系のスーパーオキシド解毒の過剰産生によって苦しめられる領域における酸化ストレスおよびフリーラジカルのレベルの低減におけるそれらの役割による関節炎および関節炎の状態;副鼻腔鬱滞、副鼻腔洗浄、または副鼻腔感染症のためのスプレーまたはドロップとしての経鼻投与;アルツハイマーおよび非アルツハイマー型認知症の軽減、ならびに認知機能の改善;統合失調症、うつ病、および外傷後ストレス障害(PTSD)を含む精神障害、ならびに患者における他の重篤な精神障害および複雑な診断ストレス問題における使用のため;または、本発明の組成物を単独でまたは他の担体製剤と組み合わせて送達する製剤として。
【0057】
組成物はさらに、以下のように使用され得る:薬学的に許容される経口、耳、眼、口腔、副鼻腔、膣、尿道、直腸または局所医薬;PETまたはCTスキャンにおける画像増強剤、および予備造影剤として;感染領域上に治療用ミストまたはスプレーとして適用される抗菌剤;放射線曝露によって、または放射線療法治療またはラジオイメージングの過剰投与から、突然変異したフリーラジカルおよび細胞の減少を引き起こす薬剤;インプラントまたは人工器官装置手術からの感染を低減する薬剤;静脈内療法、注射、カテーテル、移植されたアクセスポート、または他の侵襲性医療デバイスからの感染低減剤;歯科感染および歯根の治療を含む歯科用途および使用;歯の空洞(虫歯)予防および治療;および、すべてペースト、ゲル、ガム、スプレー、咀嚼錠、口腔錠、または注射用製剤である、歯または歯肉の感染予防および治療、歯肉炎の予防および治療、または、改善された歯科衛生転帰。
【0058】
本発明の組成物はまた、以下のために有用である:特定の薬物適応および全身送達プロファイルを達成するように配合された固定用量の組み合わせまたは単剤療法製剤;腫瘍学的薬物およびそれらの送達システム、麻薬およびそれらの送達システムと固定用量で組み合わせて;タンパク質増強療法またはタンパク質合成遮断療法と組み合わせて;内分泌疾患の治療におけるホルモン増強または遮断療法と組み合わて;細胞受容体遮断療法または細胞シグナル伝達修飾療法と組み合わせて;微生物、植物細胞、または動物細胞を含む生物系においてバイオテクノロジーによって産生され得る、比較的大きい複雑な分子である生物学的またはバイオシミラー生成物と組み合わせて;アポトーシスを通じた抗癌細胞死、壊死を通じた抗病原性細胞死、および嫌気性細胞増殖を退行または安定化させるための罹患環境内の変化を提供する生物学的作用と組み合わせて;細胞中の酸化促進剤および抗酸化剤のレベルを改変することによって転帰に影響を及ぼす治療上の利益および治療を得るためのレドックス生物学およびレドックス医薬ストラテジーとの協調的使用;パーソナルケアおよび化粧用スキンケア製品;医療用および非医療用スキンケア製品のための化粧品製剤;皮膚の老化防止、修復、審美的美容、保湿、および皮膚修復において、日焼け促進において、日焼け防止において、日焼けの治療において、および日光への曝露の結果として生じるフリーラジカル生成の低減において;製剤中の非毒性の保存剤および抗菌性賦形剤。
【0059】
皮膚、膜、組織、および器官への物質の浸透および吸収は、そのような送達目的のために配合される医薬製剤の物理化学的特性によって影響を受け、本発明の組成物は、そのような皮膚浸透および吸収を増強および支持する。
【0060】
本発明の組成物は、低いpHにより、高い酸化還元値(正電荷)により、および、共に配位し、次いで酸化反応種、窒素反応種、および硫黄反応種と反応する天然金属カチオンおよび水の固有の力により特徴づけられ、新規な細胞送達方法をもたらす。
【0061】
この背景情報は、本発明に関連し得ると本出願人によって考えられる情報を提示および開示するために提供される。先行する情報のいずれかが本発明に対する先行技術を構成すると認めることは必ずしも意図されておらず、また解釈されるべきではない。
【0062】
発明の概要
本発明の化合物は、水溶液中で、以下の一般式の、金属イオン構造の最も好ましくはヘキサ-アクアオクタヘドラル配位子配置、あるいは好ましくはテトラ-アクアテトラヘドラル配位子配置、または平面配位子配置、または金属イオン構造のトリ-アクアトリヘドラル配位子配置の1つまたは複数を含む:
【化1】
【0063】
ここで、Mは、p-ブロック元素、d-ブロック元素、またはs-ブロック元素である。平衡状態では、本発明の代替的な好ましい実施形態、すなわち、金属テトラ-アクア四面体または平面配位子ジヒドロキシ種が存在してもよく、これはアミン濃度依存性および/または溶液酸性度依存性である。アニオンおよびカチオン平衡に基づいて、これらの低次イオン構造は、高次錯体イオン構造を構成することができる。
【0064】
要約すると、本発明は、以下のいずれか1つからなる群から選択される1つまたは複数の化合物を含む組成物である:[[Zn(HO)2+、ヘキサ-アクアオクタヘドラル配位子配置の例である[[Cu(HO)2+、テトラ-アクアテトラヘドラル配位子配置または平面配位子配置の例である[[Cu(HO)、[[Mg(HO)2+、[HSO 、[NH、[NH 、[H、[SO 2-、[NHHSO、および[HSO、およびそれらの組合せ:式中、w、x、y、z、c、d、e、f、g、h、およびjは、独立して0以上の整数である;[H]は、結合分子H・HOとして存在する;それらの薬学的または栄養的に許容される塩、溶媒和物、水和物、構造異性体、および立体異性体を含み、最も好ましくは水溶液中にある。組成物は、さらに、以下のいずれか1つからなる群から選択される1つまたは複数の化合物を含んでもよい:[Zn(II)(HO)2+、[Cu(II)(HO)2+、[Cu(I)(HO)2+、[Mg(II)(HO)2+、[HPO、およびフタル酸水素カリウム、ならびにそれらの混合物;式中、w、x、y、zおよびjは、独立して0以上の整数である;[H]は、結合分子H・HOとして存在する;および同様に、その薬学的または栄養的に許容される塩、溶媒和物、水和物、構造異性体、および立体異性体。これらの組成物において、[NHHSO]は0.1%~4.0%w/wの濃度で存在してもよく、[HSO]は0.01%~3.0%w/wの濃度で存在してもよく、[Zn(II)(HO)]は2.0%~8.0%w/wの濃度で存在してもよく、[Cu(II)(HO)]は1.0%~3.0%w/wの濃度で存在してもよく、[Mg(II)(HO)]は1.0%~3.0%w/wの濃度で存在してもよく、[HPO]は0.1%~15.0%w/wの濃度で存在してもよい。組成物は、ヘキサ-アクア、テトラ-アクアまたはトリ-アクアs-ブロック、d-ブロックまたはp-ブロック水和物からなる群から選択される1つまたは複数の化合物をさらに含んでもよく、より好ましくは、以下のいずれか1つからなる群から選択される化合物をさらに含んでもよい:三面体配位子配置金属イオン構造の例である[Se(HO)2+、[Mn(HO)2+、[Ag(HO)2+、[Au(HO)2+、[V(HO)2+、および[Ni(HO)2+、ならびにこれらの混合物。さらに、化合物フタル酸水素カリウムは、0.01%~8.0%の濃度で存在し得る。組成物は、経口、経鼻、眼、耳、局所、熱的手段、超音波手段、赤外線手段、イオン導入手段または放射線手段による局所投与、経皮、尿道、膣、直腸、静脈内注射、皮下注射、噴霧、および吸入製剤からなる群から選択される形態での投与のために、薬学的に許容される製剤で、それを必要とする患者に有利に送達される。局所製剤は、最大30%w/wの活性組成物濃度で調製することができる。経皮製剤は、最大20%w/wの活性組成物濃度で調製することができる。経口製剤は、最大20%w/wの活性組成物濃度で調製することができる。吸入製剤は、最大10%w/wの活性組成物濃度で調製することができる。注射用製剤は、最大5%w/wの活性組成物濃度で調製することができる。製剤は、1.0未満のpH、1.01~3.99の範囲のpH、および4.00~5.00の範囲のpHからなる範囲の群から選択される範囲内の最終生成物pHを有するように調製されてもよく、製剤は、200ミリボルトを超える酸化還元電位を示してもよい。
【0065】
本発明の好ましい代替実施形態は、以下のいずれか1つからなる群から選択される1つまたは複数の化合物を含む組成物であり得る:[[M(La1b+、[[M(La2c+、[[M(La3d+、[ANi-、および[CAg+、ならびにこれらの混合物:式中、L、L、およびLは、OH、CO、NH、HO、HO、NO、NO、NO、SO、SO、HSO、NH、S、N、NH、PO、CH、CH、またはCOのうちのいずれか1つを含む任意の配位子または混合配位子である;およびこれらの混合物;Mは、p-ブロック元素、d-ブロック元素、およびs-ブロック元素からなる群から選択され、より好ましくは、Cu、Zn、Mn、Mg、Se、Au、Ag、Vn、およびNiのいずれか、およびこれらの混合物である;x、y、z、eおよびfは、独立して、錯体イオン構造を形成するイオンの数であり、0以上の整数である;a1は、0以上6以下の整数であり、金属Mに配位する配位子の配位数である;a2は、0以上6以下の整数であり、金属Mに配位する配位子の配位数である;a3は、0以上6以下の整数であり、金属Mに対する配位子の配位数である;b、cおよびdは、独立して、0以上6以下の整数であってもよく、金属中心Mに局在する電荷の量または配位配位子の周囲に非局在する電荷の量である;ANは、溶液中にあるアニオンであり、OH、CO、NH、NO、NO、NO、SO、SO、HSO、NH、NH、PO、N、Cl、I、およびBrのいずれか1つならびにそれらの混合物のイオン形態からなる群から選択される;CAは、H、Ca、Na、Fe、K、Mg、Mn、Zn、Cu、Liのいずれか1つまたはこれらの混合物のイオン形態からなる群から選択されるカチオン、および、s-ブロック元素、p-ブロック元素、またはd-ブロック元素、およびこれらの混合物からなる、溶液中に存在するカチオンである;および、その薬学的または栄養的に許容される塩、溶媒和物、水和物、構造異性体、および立体異性体。
【0066】
本発明はさらに、疾患を治療するために本明細書に開示される組成物を投与する方法であって、それを必要とする哺乳動物に、複数のHO配位子に結合したイオン性金属を含む水性イオン性鉱物錯体を投与して金属-配位子錯体を形成する工程を含む方法を含む:HO配位子は、スーパーオキシドイオンの過剰産生によって影響を受ける細胞標的へのヒト患者を介した金属-配位子錯体の輸送を可能にする;前記金属-配位子錯体は、[[Zn(HO)2+、[[Cu(HO)2+、[[Cu(HO)、[[Mg(HO)2+、[HSO 、[NH、[NH 、[H、[SO 2-、[NHHSO、および[HSOおよびこれらの混合物のいずれか1つからなる群から選択される;式中、w、x、y、z、c、d、e、f、g、hおよびjは、独立して、0以上の整数である;[H]は、結合分子H・HOとして存在する;および、その薬学的または栄養的に許容される塩、溶媒和物、水和物、および構造的または立体異性体であり、さらに、[Zn(II)(HO)2+、[Cu(II)(HO)2+、[Cu(I)(HO)2+、[Mg(II)(HO)2+、[HPO、およびフタル酸水素カリウム、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される化合物を含み得る;式中、w、x、y、zおよびjは、独立して、0以上の整数である;[H]は、結合分子H・HOとして存在する;および、その薬学的または栄養的に許容される塩、溶媒和物、水和物、構造異性体、および立体異性体である;特に、医療診断、生物系における嫌気性細胞の検出、医療処置、パーソナルケア、美容目的、および栄養補給からなる群から選択される目的のために投与され得る。
【0067】
本発明の範囲内で開示および請求されるものはまた、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、構造異性体、および立体異性体である。
【0068】
本発明の組成物は、ヒトおよび獣医学的患者において、アロパシー医学、オステオパシー医学、ホメオパシー医学、および自然療法の分野において使用されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】赤色:275K、青色:298K、および緑色:320K温度のWatergate H-NMRスペクトルで生成されたH-NMRスペクトル
図2】5および10%D0の存在下で約100mMのNH で生成されたNMRスペクトル
図3】約100mMのNH を含有する溶液の2D HISQCスペクトルにおける15N-Hで生成されたNMRスペクトル
図4】pH-電位差滴定の全体的な酸含量を示す滴定曲線のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明は、様々な実施形態で以下により詳細に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0071】
本発明は、ヘキサアクア送達システムにおける水性配位子の製剤である組成物内の好ましい化合物を利用する。好ましい活性化合物は、遊離イオンを細胞膜の殻に、または細胞膜を通して能動的に輸送し、内部/外部細胞環境と相互作用する合成イオノフォアである。水溶液中の金属イオン構造は、主にヘキサ-アクアオクタヘドラル配位子配置にある。あるいは、金属イオン構造は、テトラアクアテトラヘドラルまたは平面形状である。これらの低次イオン構造は、高レベルの遊離硫黄、アミン、硫酸イオン、金属ヘキサ-アクア構造、金属ヒドロキシル/アクア混合配位子種、およびH+を含有するアニオン性およびカチオン性平衡に基づく高次錯体イオン構造を構成し得る。これらのイオン構造は、アミンおよび硫酸イオンを、特定の比率の遊離プロトン(H+)と協調して利用して、近傍の複数の金属-アクア種の効果的な架橋を可能にし、細胞膜を通した濃縮イオノフォア金属イオン送達システムを生成する。
【0072】
これらのイオン性金属構造と溶液中の安定化された遊離アニオンおよびカチオンとの間の平衡は、効果的な細胞壁浸透および多くの細胞内生物学的プロセスへの金属イオンの送達を提供して、上記の代謝および病理学的状態に対処するために、配位金属イオンの安定性および立体的近接性にとって極めて重要である。水溶液中のイオン性化合物およびH+の濃度を改変することによって、本発明のシステムは、金属イオンを多数の細胞型に浸透および送達するように、細胞壁に付着するように、または単一金属イオンもしくは複合金属イオン架橋構造送達のための経路を提供するように微調整することができる。本発明の組成物化合物は、細胞に入り、その中に1つまたは複数の構造を送達して、ヒトまたは動物における生物学的プロセスおよびメカニズムに影響を及ぼす。
【0073】
錯体イオンは、金属イオンを中心に、いくつかの他の分子またはイオンを有し、無機配位錯体または両方の電子が同じ原子に由来する配位(配位共有)結合を生成する。共有結合は、電子対を共有する2つの原子によって形成される。原子は、両方の核が電子対を引き付けるので、共に保持される。本発明は、配位子結合と独特の関係を作り出し、生物系内で移動する他の分子との担体または共結合機構になる。金属に結合したアニオンまたは分子は、配位子である。配位数は、配位子が結合している金属イオン上の位置の数である。配位子が両方の電子を供給する金属イオンと配位子との間の結合は、配位共有結合である。単純な配位子としては、水、アンモニア、リン、および塩化物イオンが挙げられる。
【0074】
全ての金属イオンは、少なくとも1つの配位球を有し、これは、各金属原子について可能な配位結合の数を決定する。配位結合は、非共有電子対を有する負に荷電したイオンを引き付ける。カチオンは、非共有対を使用して、これらの電子殻が不完全である外側電子軌道のギャップを充填する。3準位の軌道はすべて空になり、6つの空の軌道すべてを利用して、6つの水分子からの孤立電子対を受け入れる。この部分は、3s、3つの3p、および3d-殻軌道の2つを再編成(ハイブリダイズ)して、すべてが同様のエネルギーを有する6つの軌道を利用する。6つは、結合の最大数を含む、ほとんどの金属イオンの周囲の水分子の最大数であり、最もエネルギー的に安定である。カチオンと非共有電子対との間に形成される結合は、ヘキサ-アクア配位子結合となる。
【0075】
本発明の最も好ましい実施形態は、酸素上の利用可能な孤立電子対のうちの1つを使用する配位結合を介して中心金属カチオンに結合したヘキサ-アクア配位子として、6つの水分子の各々を使用する。次いで、これらの金属ヘキサアクア種は、Hと協調してアミンおよび硫酸イオンと高次イオン構造を形成し、これは、複数の金属アクア種を近くで効果的に架橋し、イオントフォレーシス金属送達システムを生成する。これらのイオン性金属構造と溶液中の安定化遊離アニオンおよびカチオンとの間の平衡は、配位金属イオンの安定性および立体的近接性に重要であり、効果的な細胞壁浸透および細胞内生物学的プロセスのホストへの金属イオンの送達を提供する。溶液中のイオン性化合物および遊離水素の濃度を改変することによって、本発明のイオノフォア送達システムは、金属イオンを細胞に浸透および送達し、細胞壁に付着し、単一金属イオンまたは複合金属イオン架橋構造のための経路を提供するようにカスタム合成および製剤化することができる。好ましい実施形態の組成物は、図5に示され、6つの水分子が存在し、Zn2+、Cu2+、またはMg2+の任意の金属カチオンとヘキサ-アクア配位子を形成し得、カチオン性配位子およびイオン性塩の医薬製剤スープ様環境において、NH 、H、およびHSO イオンの存在下で、ヘキサ-アクア銅、ヘキサ-アクア亜鉛、およびヘキサ-アクアマグネシウム種を形成し得る、送達システム製剤が示される。
【0076】
イオノフォア送達。イオノフォアは、多数の天然に存在するイオンのキャリアのいずれかである。本発明は、天然型のイオノフォアを模倣するか、または類似のイオノフォアシグナル伝達機能を作り出して、生物系の代謝プロセスにおいて酵素、タンパク質作用、および電子伝達を産生することができる合成イオノフォアである。治療用組成物を含む本発明の化合物は、細胞膜を介してそれらに利用可能な複数のイオノフォア経路を有する。したがって、すべての組織、血液、器官、および細胞のバリアタイプを通じた進入が可能になる。イオンチャネルは、細胞生命の全てのドメインに見出される膜タンパク質である。それらは、すべての細胞内膜ならびに原形質膜に存在する。これらのイオンチャネルを介した輸送機構は、本発明の化合物が多機能型の透過性を有することを可能にする。
【0077】
血液脳関門および血液脳脊髄関門を横切る流体およびイオンの移動は、流体バリアを作り出す密着結合のために、非常に制限的である。Hladky, S. B. (2016). Fluid and ion transfer across the blood-brain and blood-cerebrospinal fluid barriers; a comparative account of mechanisms and roles. (S. Nature, Ed.) Springer Nature, 1. Retrieved from https://doi.org/10.1186/s12987-016-0040-3。本発明の化合物は、好ましくは水のイオノフォアであるので、それらの配位子構造および低いpHは、これらの緊密な中枢神経系輸送接合部を横切るより高い透過性を可能にする。これにより、現在のほとんどの薬物送達方法よりも高いイオン送達速度が提供される。Filip Vlahovic, M. P. (2015, June 7). Assessment of TD-DFT and LF-DFT for study of d - D transitions in first row transition metal hexaaqua complexes. Researchgate, 142, 214111. Retrieved 2021 from https://www.researchgate.net/figure/The-structure-of-investigated-hexaaqua-transition-metal-ion-complexes-MH-2-O-6-n_fig4_277895193。
【0078】
受動輸送。ヘキサアクア水性担体として、本発明の好ましい化合物は、単純な濃度勾配を有する。水は、細胞空間の領域上または膜の両側に異なる濃度で見出される;したがって、水は、生物系において高度に中性かつ吸収性であり、本発明において利用される化合物が非常に受動的な程度の輸送に関与することを可能にする。大量の水分子は、膜タンパク質およびアクアポリンの移動による単純な拡散プロセスである浸透によって細胞膜を連続的に横切って移動する。Lumen. (2020). Membrane Transport. (Pressbooks, Editor, & Pressbooks) From The Cellular Level of Organization: : https://courses.lumenlearning.com/nemcc-ap/chapter/3204/。細胞の水分子の体積の最大100倍が、例えば、赤血球膜を横切って毎秒拡散する;等量が浸透によって出入りするため、細胞は水を失ったり獲得したりせず、その効果は、ヘキサ-アクア配位子を極めて効率的な送達システムにすることである。本発明において見出されるヘキサ-アクア配位子は、水がより低い溶質濃度を有する膜からより高い溶質濃度を有する膜に流れる受動輸送システムにおいて、浸透圧、等張性、および静水圧を利用する。本発明のヘキサ-アクア配位子は、低分子量の遊離イオンを担持し、受動的侵入を可能にし、潜在的に、イオノフォア担体およびそれらのそれぞれの結合分子からなる生物学的スープ中に隠れているより大きい分子を送達することができる。
【0079】
能動輸送。本発明の合成イオノフォア化合物は、高度に正の電子電荷を有し、生物学的能動輸送において見出される非定型条件である、原形質膜を横切る電気的勾配または電荷の差を提供する。生細胞は、典型的には、それらの細胞膜を横切る電位差(電圧)である膜電位を有する。電位差は、その空間に電荷の正味の分離があるときはいつでも存在する。細胞の場合、正電荷および負電荷は、細胞膜のバリアによって分離され、細胞の内側は、外側に対して余分な負電荷を有する。
【0080】
ナトリウムおよびカリウム経路。本発明の組成物は、ナトリウムおよびカリウム経路の作用を利用する。細胞の内部は、その周囲の細胞外液よりも高いカリウム濃度および低いナトリウム濃度を有する。ナトリウムイオンが細胞の外側にある場合、それらの濃度勾配および膜を横断する電圧(膜の内側のより負の電荷)に基づいて、ナトリウムイオンが細胞の中へ移動する傾向がある。イオンの移動に影響を及ぼす濃度勾配と電圧の組み合わせは、本発明の化合物の特性である電気化学的勾配である。
【0081】
一次および二次活性輸送。本発明のイオノフォア化合物は、エネルギー源としてATPを使用することが知られている一次輸送の場合、異なる輸送に影響を及ぼすように設計することができる。このエネルギー生産にはマグネシウムイオンの存在が必要である。二次能動輸送(共輸送)の場合、本発明のイオノフォアは、誘引物質として電気化学的勾配カチオン電荷を使用し、分子をそれらの勾配に逆らって移動させ、したがって、ATPなどの化学エネルギー源を直接必要としない。イオンの化学量論比を変化させることによって、本発明の化合物は、所望の転移方法を目的とするように設計することができる。
【0082】
以下の詳細な説明は、例示を目的として多くの詳細を含むが、当業者であれば、以下の詳細に対する多くの変形および変更が本発明の範囲内にあることを理解するであろう。したがって、本発明の以下の実施形態は、特許請求される発明に対する一般性を損なったり低下させたりすることなく、かつ限定を課すことなく記載される。
【0083】
本明細書で使用される場合、「例示的」または「説明的」という用語は、「例、例示、または説明としての役割を果たす」ことを意味する。本明細書において「例示的」または「説明的」として記載されるいかなる実装形態も、必ずしも他の実装形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。以下で説明される実装形態のすべては、本開示の実施形態をどのように製造または使用するかを当業者が可能にするために提供される例示的な実装形態であり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0084】
さらに、この詳細な説明において、「概して」、「実質的に」、「大部分」などの定量的修飾用語および他の用語は、一般に、言及される目的、特性または品質が言及の対象の大部分を構成することを意味するために使用されることに、当業者は留意すべきである。任意のこれらの用語の意味は、それが使用される文脈に依存し、その意味は、明示的に修正され得る。
【0085】
ミネラルは、金属元素を含む天然に存在する化学化合物であり、生命に必要な機能を果たすために生物によって必須栄養素として必要とされることが多い。金属は、古来から生物系において必須の役割を果たしている。触媒または構造補因子として、金属イオンは、全酵素の3分の1もの機能に重要であるとの推定もあり、それらは生物系において広範な役割を有する。
【0086】
イオノフォアは、イオンを可逆的に結合する化学種である。多くのイオノフォアは、細胞膜を横切ってイオンを輸送する脂溶性の存在である。イオノフォアは、疎水性膜、例えば液体ポリマー膜(担体ベースのイオン選択性電極)または生細胞または合成小胞、例えばリポソームに見出される脂質二重層を横断するイオン輸送を触媒する。構造的には、イオノフォアは、親水性中心と、膜と相互作用する疎水性部分とを含む。いくつかのイオノフォアは、微生物によって合成されて、それらの細胞にイオンを取り込む。本発明の組成物は、合成イオノフォアである化合物を含む。カチオンおよびアニオンに対して選択的なイオノフォアは、分析において多くの用途を見出している。これらの化合物はまた、それらが結合するイオンと組み合わされると、様々な生物学的効果および相乗効果を有することが示されている。
【0087】
金属イオン結合性化合物の生物学的活性は、金属濃度の増加に応じて変化することができ、後者の特徴に基づいて、化合物は、「金属イオノフォア」、「金属キレート剤」または「金属シャトル」に分類することができる。金属濃度を増加させることによって生物学的効果が増強される場合、それは「金属イオノフォア」として分類される。生物学的効果が金属濃度を増加させることによって減少または逆転される場合、それは「金属キレート剤」として分類される。生物学的効果が金属濃度の増加によって影響されず、化合物-金属錯体が細胞に入る場合、それは「金属シャトル」として分類される。
【0088】
p-ブロック元素という用語は、リン(P)、ホウ素(B)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、酸素(O)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)、臭素(Br)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ヒ素(As)、アルゴン(Ar)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、塩素(Cl)、スズ(Sn)、ヨウ素(I)、ネオン(Ne)、セレン(Se)、ゲルマニウム(Ge)、キセノン(Xe)、アンチモン(Sb)、テルル(T)、クリプトン(Kr)、ポロニウム(Po)、ニホニウム(Nh)、ラドン(Rn)、モスコビウム(Me)、オガネソン(Og)、フレロビウム(FI)、リバーモリウム(Lv)、テネシン(Ts)からなる群からの元素を意味する。
【0089】
d-ブロック元素という用語は、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、水銀(Hg)、金(Au)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、イットリウム(Y)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、オスミウム(Os)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、テクネチウム(Tc)、タンタル(Ta)、ボーリウム(Bh)、コペルニシウム(Cn)、 ルテチウム(Lu)、ラザホルディウム(Rf)、レントゲニウム(Rg)、ローレンシウム(Lr)、マイトネリウム(Mt)、ハッシウム(Hs)、ダルムスタチウム(Ds)、ダブニウム(Db)、シーボルギウム(Sg)。からなる群からの元素を意味する。
【0090】
s-ブロック元素という用語は、カリウム(K)、水素(H)、ベリリウム(Be)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、フランシウム(Fr)、ラジウム(Ra)、およびヘリウム(He)からなる群からの元素を意味する。
【0091】
これらの実施例で使用される略語、命名法、および技術用語および非技術用語の定義は、以下の通りである。
【0092】
本明細書で使用される場合、実体または部分の文脈における「A」または「an」という語句は、その実体または部分の1つまたは複数を指し、例えば、「a」化合物は、1つまたは複数の化合物または少なくとも1つの化合物を指す。したがって、用語「a」(または「an」)、「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」ならびに「および/または」は、互換的に使用することができる。「約」という用語は、「およそ」というその平易で通常の意味を有する。金属イオン比率および投与量に関して、修飾語「約」は、標準的な実験誤差を反映する。本明細書で使用される場合、「任意選択の」または「任意選択で」という用語は、後で説明する事象または状況が生じ得るが、その必要はないこと、およびその説明が、その事象または状況が生じる場合と生じない場合とを含むことを意味する。本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、治療または補充を必要とする任意の種、非哺乳動物および哺乳動物の両方、ならびにヒトを意味する。好ましくは、対象はヒトである。用語「調製物」および「化合物」または「複数の化合物」および「製剤」または「複数の製剤」は、活性化合物の固体、液体または気体製剤のいずれかを含むことが意図され、当業者は、活性医薬成分(「API」)が、所望の用量および薬物動態学的設計パラメータに応じて異なる調製物中に存在し得ることを理解するであろう。本明細書で使用される場合、用語「組成物」および「賦形剤」および「医薬賦形剤」は、医薬組成物を調製するために使用される化合物を指し、概して安全で、非毒性で、生物学的にもその他の点でも望ましくなくなく、獣医学的使用ならびにヒトの医薬的使用に許容される賦形剤を含む。用語「投与量」は、活性化合物の固体製剤および液体製剤のいずれかまたは両方を含むことを意図し、当業者は、活性成分が、投与方法、APTの割合、処方用量、使用期間、使用時間、適応症のタイプ、所望の転帰、および薬物動態学的設計パラメータの異なる調製物において存在し得ることを理解するであろう。本明細書で使用される用語「混合」または「効率的な混合」は、同じ配合プロセスに限定されない;これは、製造プロセスにおける全ての混合方法を含む。本明細書で使用される場合、用語「生物系」は、対象における互いに関係するDNA、RNA、タンパク質、および細胞などの重要な要素の相互作用を指す。用語「イオントフォレーシス」は、本明細書で使用される場合、皮膚への起電薬物投与(EMDA)のための電圧勾配の使用による経皮薬物送達のプロセスである。分子は、電気泳動および電気浸透によって角質層を横断して輸送され、電場はまた、診断または治療用途のために組織膜を通る透過性を増加させることができる。本明細書中で使用される場合、「治療」または「治療する」または「療法」または「治療的」または「医薬品」または「予防」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。有益なまたは所望の臨床結果には、部分的に検出可能であろうとなかろうと、または全体的に検出可能であろうと、予防、症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の安定化状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解が含まれるが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けない場合の予想生存期間と比較した生存の延長を意味し得る。「治療」は、疾患を排除もしくは予防するために、または疾患を排除もしくは予防するために開発させるために、または生物系における医学的障害の病態を変化させるために行われる介入である。用語「Ion Biotechnology(登録商標)Hexa-aqua Delivery System」は、本発明を、「IBAL」と略称されるIon Biotechnology(登録商標)Aqueous Ligandsの組み合わせとして説明するものである。
【0093】
「APT」=活性医薬成分。
「酸混合物」=以下に開示されるように、金属塩またはその組み合わせを受容するための、本発明の組成物の製造に使用するための酸の予備混合物。
API=活性医薬成分
BP=英国薬局方
CAS=ケミカル・アブストラクツ・サービス登録番号
EP=欧州薬局方
FEUM=メキシコ合衆国薬局方
イオノフォア=イオンと可逆的に結合し、細胞内の脂質膜を横切って可逆的に結合したイオンを輸送する物質。
NF=国民医薬品集
ORAC=酸素ラジカル吸収能力
ORP=酸化還元電位
USP=米国薬局方。
【0094】
外因性栄養要素は、細胞ホメオスタシスおよび代謝生理学の前提条件であるエネルギー代謝応答を調節する。具体的には、金属の形態での微量栄養素の送達は、酸化ストレスおよび細胞保護プロセスにおいて重要である。通常投与されるミネラルおよび薬物は、高度に生物学的に利用可能な形態ではなく、治療的または栄養的必要性の中間領域を標的とすることもできる。それらは、通常、能動輸送によるか受動輸送によるかにかかわらず、疎水性脂質二重層膜を効果的または効率的に通過することができず、そのために多くの場合、天然の治療反応を活性化することができない。栄養素では、膜輸送における重要な因子は、それらの分子極性特性によって決定される栄養素の溶解度である(Dewey Holten,1999)。
【0095】
低分子薬物は、広く散布され、薬理学的に非特異的(promiscuous)であるほど、多くの細胞型が標的化され、複数の副作用の出現を悪化させるが、多くは、その薬理学的作用を発揮するために、または細胞外経路に正しくまたは適切に影響を及ぼすために、細胞まで十分にまたは全く移動することができない場合がある。本発明、またはIon Biotechnology(登録商標)Aqua Ligand(IBAL)は、細胞膜を横切る能動輸送を介して極性分子の有効な担体を提供する。ヘキサ-アクア配位子の存在によって作り出される水の浸透圧は、間質液全体にわたって極性およびサイズ(低分子量)によって促進される遊離イオンの分散を作り出し、細胞膜の脂質二重層を通じた細胞の細胞質への直接的な取り込みを増加させるので、天然の能動輸送も起こる。
【0096】
アンモニア溶液中における本発明の好ましい実施形態のヘキサ-アクア錯体の反応は、アンモニアが2つの著しく異なる機能で作用することができるので複雑である。第1に、アンモニアは、ブレンステッド・ローリー塩基、配位子、またはルイス塩基として作用することができる(Clark, J., Reactions of the Hexa-aqua Metal Ions With an Ammonia Solution, (2017, April 1), (Chemguide, Editor) Retrieved 2021 from Chemguide: https://www.chemguide.co.uk/inorganic/complexions/aquanh3.html#top)。第2に、アンモニアはまた、中心金属イオンの周囲の水分子と結合することができる可能な配位子である。この配位子は、少量の希アンモニア溶液を金属に添加したときに現れ、ヘキサ-アクア配位子溶液または混合アクアアミン配位子系を生成する。平衡状態では、アミンは、溶液中の水分子に水素イオンを供与することによって酸として作用している。ルシャトリエの原理(長期間にわたって平衡状態にある任意の系が濃度、温度、体積または圧力の変化にさらされると、系は新しい平衡に変化し、この変化は、適用された変化を部分的に打ち消す)によれば、配位子溶液のpHが増加している場合、平衡位置は、ヒドロニウムイオンに代わって、より多くの新たなアンモニア錯体イオンの生成に移動する。本発明の固有の特性は、2つの反応プロセスによって、溶液の平衡を維持する配位錯体イオン構造である。アンモニア分子は、pHが低い(1.0未満)ときに起こる逆交換反応の代わりに、金属上の水イオンの置換を引き起こす可能性が高い。その低pH反応が行き過ぎると、1つまたは複数のヒドロキシル基または混合ヒドロキシル(OH)、水、および/またはアミン基からなる「中性錯体」が生成され、これは水に不溶性であり、したがって沈殿物が形成される。アンモニアが配位子交換反応において作用すると、アンモニアは、金属イオンの周囲の水と置き換わり、可溶性錯体を生成する。したがって、2つの平衡間に相互作用がある。溶解した沈殿物を得るために、本発明は、イオン安定性を維持するのに正しい配位子交換平衡を必要とするが、本発明はまた、酸-塩基平衡が同様に逆に容易に操作されることも必要とする。本発明は、反応プロセスにおいてこの必要とされるバランスを得る際の困難を解決する。本発明は、その最も好ましい実施形態を含み、Ion Biotechnology(登録商標)Aqueous Ligand(IBAL)が製造され、本発明について本明細書に記載のpHレベル、レドックス電位値(ORP)、および金属カチオン比を得ることを含み、これらの完成した錯体において研究されてきた。複数のインビトロ、インビボ、および前臨床動物およびヒト試験が行われており、本発明の安全性、成分、有効性、および生物系における作用様式を支持する。
【0097】
アンモニア分子の数は金属イオン価数の2倍であり、低pHでは価数電荷が変化しない。配位子結合からの非共有電子対は、非共有電子の両方を遊離水和金属イオンに供給する配位子系である。遷移金属の使用は、適切な配位子結合を得るために重要である。遷移金属イオンはブレンステッド酸として作用し得るが、Cu2+のような他のものは、1つまたは複数のアクア配位子への電荷の非局在化により酸性になるためn、それ自体では作用しない。水和反応は、気相から水へのイオンまたは中性化学種の移動として定義される;金属イオンについては、Mn(g)→Mn(aq)である(Person, 2010)。これらの配位子反応は、これらの溶液中のHイオン濃度の正味の増加をもたらし、それによって、溶液を酸性にし、安定な配位子交換平衡にする。配位子結合を得るために、遷移金属としての3dブロック(スカンジウムから亜鉛)の元素の少なくとも1つまたは複数が、IBAL配位イオン結合錯体において好ましくかつ有利に使用される。Brown, D. P. (2015). Introduction to 3d-block Transition Metal chemistry concepts definition data table characteristics variable ions oxidation states colored compounds complexes catalysts high melting points high density. Retrieved 2021 from Doc Brown's Chemistry: http://www.docbrown.info/page07/transition1.htmを参照のこと。
【0098】
製造プロセスにおける単独または比率の組み合わせでの金属の添加は、任意の安定な酸化状態で、カルシウム、クロム、コバルト、銅、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、カリウム、セレン、銀、バナジウム、および亜鉛ならびにこれらの任意の組み合わせのいずれか1つを含むが、これらに限定されない。さらなる化合物は、有機または無機であり、例えば、化学物質、分子、タンパク質、尿素、ならびに本明細書および使用方法に関する特許請求の範囲に記載される他の既知の医薬品、担体、およびパーソナルケア製剤との組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本発明の化合物は、容易に入手可能な出発物質、試薬および従来の合成手順を使用して、以下の実施例またはその改変に従って容易に調製することができる。これらの反応において、それ自体が当業者に既知である変形を使用することも可能であるが、これらはより詳細には言及されない。
【0100】
本発明の最も好ましい化合物は、これらの実施例に具体的に示されるもののいずれかまたは全てである。しかしながら、これらの化合物は、本発明とみなされる唯一の属を形成すると解釈されるべきではなく、化合物またはそれらの部分の任意の組み合わせは、それ自体が属を形成し得る。以下の実施例は、本発明の化合物の調製ならびに定量的および定性的分析の詳細をさらに説明する。当業者は、以下の調製手順の条件およびプロセスの既知のバリエーションが、これらの化合物を調製するために使用され得ることを容易に理解する。特に断らない限り、全ての温度は摂氏温度である。
【0101】
実施例1
ヘキサアクア亜鉛、ヘキサアクア銅、ヘキサアクアマグネシウム組成物 0.5Kgバッチ:
【表1】
【0102】
工程1では、硫酸をガラスまたはガラスライニングリアクタに入れ、室温で撹拌した。硫酸アンモニウムを撹拌しながら添加し、完全に溶解した。次いで、脱イオン水を、絶えず撹拌しながらゆっくり滴下し、溶液の温度を摂氏50度超に上昇させる発熱反応を最小限にし、摂氏45度以下の温度を維持した。混合物を均質になるまで混合し、室温(~25℃)まで冷却した。
【0103】
工程2では、硫酸亜鉛七水和物を工程1で調製した溶液に合わせ、完全に溶解し、溶液が均質になるまで混合した。次いで、硫酸銅(II)五水和物を添加し、完全に溶解し、溶液が均質になるまで混合した。最後に、硫酸マグネシウム七水和物を添加し、完全に溶解し、溶液が均質になるまで混合した。室温で均一な稠度が得られるまで12時間混合を続けた。
【0104】
出発物質の検討および代替案:水溶液中でNHまたはNH を生成するための出発物質は、有利には、当業者に既知の任意の製造方法により、アンモニア水(0.5~28%)、硫酸アンモニウムまたは硫酸水素アンモニウムおよびスルファミン酸である。水溶液中でHSO を生成するための出発物質は、当業者に既知の任意の方法によって調製される、硫酸(1.0~98%濃度)またはスルファミン酸である。水溶液中で金属ヘキサアクアイオンを生成するための出発物質のいずれかまたは全てを生成するための出発物質は、任意の金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属水酸化物、金属水酸化物/アミン種、金属アミン、金属塩化物、金属ヨウ化物、金属臭化物、金属炭酸塩、または金属カルボニルであり、限定されないが、記載される配位子の任意の組み合わせを含む。
【0105】
ヘキサアクア亜鉛、ヘキサアクア銅、ヘキサアクアマグネシウム組成物
実施例1の手順を使用して、投与および用途に応じて、以下の成分を以下の成分イオンのw/w%範囲で組み合わせる:
【表2】
【0106】
実施例2
ヘキサアクア亜鉛、ヘキサアクア銅、ヘキサアクアマグネシウムおよびセレン酸組成物:
0.5Kgバッチ中のZCMS-5/2/1/1
【表3】
【0107】
工程1では、硫酸をガラスまたはガラスライニングリアクタに入れ、室温で撹拌した。硫酸アンモニウムを、完全に溶解するまで撹拌しながら添加した。次いで、脱イオン水を、絶えず撹拌しながらゆっくり滴下し、溶液の温度を摂氏50度超に上昇させる発熱反応を最小限にし、摂氏45度以下の温度を維持した。混合物を均質になるまで混合し、室温(~25℃)まで冷却した。
【0108】
工程2では、硫酸亜鉛七水和物を工程1で調製した溶液に合わせ、完全に溶解し、溶液が均質になるまで混合した。次いで、硫酸銅(II)五水和物を添加し、完全に溶解し、溶液が均質になるまで混合した。最後に、硫酸マグネシウム七水和物を添加し、完全に溶解し、溶液が均質になるまで混合した。室温で均一な稠度が得られるまで12時間混合を続けた。
【0109】
出発物質の検討および代替案:水溶液中でNHまたはNH を生成するための出発物質は、有利には、当業者に既知の任意の製造方法により、アンモニア水(0.5~28%)、硫酸アンモニウムまたは硫酸水素アンモニウムおよびスルファミン酸である。水溶液中でHSO を生成するための出発物質は、当業者に既知の任意の方法により、硫酸(1.0~98%濃度)またはスルファミン酸である。水溶液中で金属ヘキサアクアイオンを生成するための出発物質のいずれかまたは全てを生成するための出発物質は、任意の金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属水酸化物、金属水酸化物/アミン種、金属アミン、金属塩化物、金属ヨウ化物、金属臭化物、金属炭酸塩、または金属カルボニルであり、限定されないが、記載される配位子の任意の組み合わせを含む。
【0110】
ヘキサアクア亜鉛、ヘキサアクア銅、ヘキサアクアマグネシウムおよびセレン酸組成物:
実施例1の手順を使用して、以下の成分を、所望の投与経路および用途に応じて、以下の成分イオンのw/w%範囲で組み合わせる:
【表4】
【0111】
実施例3
ヘキサアクア亜鉛、ヘキサアクア銅、ヘキサアクアマグネシウムおよびセレン酸組成物:
0.5Kgバッチ中のZCMS-AHS-5/2/1/1
実施例1の手順に従って、硫酸アンモニウムを硫酸水素アンモニウムで置換して、実施例1の反応における未反応硫酸を補う。実施例1の工程2では、まず二酸化セレンを、他の金属塩と同様の方法で添加する。この製剤は、実施例1の方法を使用するより効率的なワンバッチ合成であり、以下に示す好ましい組成物を生成する:
【表5】
【0112】
実施例1の手順および上記の修正を用いて、以下の成分を、好ましい投与経路および用途に応じて、以下の成分イオンのw/w%範囲で組み合わせる:
【表6】
【0113】
実施例4
ヘキサアクア亜鉛、ヘキサアクア銅、ヘキサアクアマグネシウム、ヘキサアクアマンガンおよびセレン酸組成物:
0.5Kgバッチ中のZCMMS-AHS-5/2/1/1/1
実施例1の手順を使用して、硫酸アンモニウムの代わりに硫酸水素アンモニウムで置換して、それによって、硫酸アンモニウムが使用される場合の実施例1の未反応硫酸反応生成物を補う。実施例1の工程2では、代わりに、二酸化セレンを他の金属塩と同じ方法で添加して最初に添加し、硫酸マンガンを、セレン酸生成物が形成された後に2番目に添加する。この製剤は、実施例1のより効率的なワンバッチ合成であり、以下に示す好ましい組成物を生成する:
【表7】
【0114】
実施例1の手順および上記の修正を用いて、以下の成分を、所望の投与経路および用途に応じて、以下の成分イオンのw/w%範囲で組み合わせる:
【表8】
【0115】
実施例5
ヘキサアクア亜鉛、ヘキサアクア銅、ヘキサアクアマグネシウム組成物:
実施例1の手順を用いて、以下の成分を、以下の成分イオンのw/w%範囲で組み合わせる:
【表9】
【0116】
本発明の組成物に使用される化合物の薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成される、従来の非毒性の塩または前記形成された化合物の四級アンモニウム塩が含まれ、例えば、そのような従来の非毒性の塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導されるもの;ならびに有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などから調製される塩、が含まれる。概して、塩は、適切な溶媒または様々な溶媒の組み合わせ中で、遊離塩基または遊離酸を、化学量論的量または過剰の所望の塩形成無機または有機酸または塩基と反応させることによって調製される。薬学的に許容される塩はまた、従来の手順によって、例えば、酸を適切な量の塩基、例えばアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムもしくはマグネシウム、または有機塩基、例えばアミン、例えばジベンジルエチレンジアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ベンジルアミンなど、または第四級アンモニウム水酸化物、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどで処理することによって、容易に調製される。
【0117】
式Iの化合物は、動物に、好ましくは哺乳動物に、最も特にヒト対象に、単独で、または好ましくは薬学的に許容される担体もしくは希釈剤と組み合わせて、必要に応じてミョウバンなどの既知のアジュバントと組み合わせて、標準的な薬務に従って医薬組成物中で投与することができる。化合物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、または局所投与を含む、経口または非経口投与することができる。本発明による組成物を経口使用する場合、例えば、錠剤もしくはカプセル剤の形態で、または水溶液もしくは懸濁液として投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、通常使用される担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられ、滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムが通常添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用のために水性懸濁液が必要とされる場合、活性成分は、乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。所望であれば、特定の甘味剤および/または香味剤を添加してもよい。筋肉内、腹腔内、皮下および静脈内使用の場合、活性成分の滅菌溶液が通常調製され、溶液のpHは適切に調整および緩衝されるべきである。静脈内使用の場合、溶質の総濃度は、製剤を等張にするために制御されるべきである。本発明の組成物がヒト対象において使用される場合、1日用量は、通常、処方する医師によって決定され、用量は、概して、個々の患者の年齢、体重、および応答、ならびに患者の症状の重症度に従って変動する。しかし、ほとんどの場合、有効な1日用量は、約0.005mg/kg~約50mg/kg体重、好ましくは約0.05mg/kg~約50mg/kg体重、最も好ましくは約0.5mg/kg~約20mg/kg体重の範囲であり、単回または分割用量で投与される。
【0118】
通常の熟練した製剤科学者は、本明細書の教示の範囲内で製剤を改変して、IBALを含有する組成物を不安定にすることなく、またはその治療活性を損なうことなく、特定の投与経路のための多数の製剤を提供することができる。
【0119】
実施例6
局所ゲル医薬品に配合されたヘキサアクア亜鉛、ヘキサアクア銅、ヘキサアクアマグネシウム組成物
実施例1の組成物生成物を、イオンZCM1を活性成分として、以下を含む25%w/wの濃度で局所投与用の皮膚用ゲル製剤に調製した:
【表10】
【0120】
【表11】
【0121】
SEPINIO(商標)D.E.R.M.は、SEPPICによって製造される、CAS番号111286-86-3の多官能性粉末ポリマーであり、全ての剤形を増粘し、安定化/乳化し、共安定化し、テクスチャー化するために使用される。このポリマーは中和を必要とせず、全てのpHで機能し、室温での製造が可能である。これは、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマーから構成され、共安定剤、乳化-安定剤、テクスチャー化剤、増粘剤、局所賦形剤、および粘性剤として機能し得る。
【0122】
イオンゲルZCM-25の1kgバッチの配合の実施例
0.5625kgの脱イオン水にSepineo Dermをゆっくりと添加し、次いで、塊が観察されなかった場合に実証されるように、Sepineo Dermが完全に水和するまで、テフロン(登録商標)コーティングされた船舶用プロペラを用いて500rpmで撹拌した。ヒアルロン酸ナトリウムPCを添加し、均質な混合物が得られるまで500rpmで撹拌した。グリセリンを添加し、均質な混合物が得られるまで500rpmで混合した。ガラスビーカー中で、水酸化ナトリウムを10%の精製水中で溶解させた(1kgのイオンゲルZCM-25に対して0.1kgの精製水)。水酸化ナトリウム溶液を混合物に加えて、均質化するまで500rpmで攪拌し、各連続添加の間に一時停止して攪拌した。混合物が均質になり塊または着色が観察されなくなるまで、イオンZCM-1を750rpmで撹拌した。生成物のpHを測定し、観察されたpHが2.0になるまで水酸化ナトリウム溶液を加えた。イオンゲルZCM-25-製造方法(Laboratorios Manuell, 2020)。生成物分析:
【表12】
【0123】
実施例7
ヘキサアクア銅、ヘキサアクア亜鉛組成物(ZC-1)
【表13】
【0124】
実施例8
亜鉛、マグネシウム、および銅配位錯体のヘキサアクア送達システム
【表14】
【0125】
実施例9
ヘキサアクア銅、ヘキサアクア亜鉛、ヘキサアクアマグネシウム組成物
【表15】
【0126】
実施例8の組成物ZC-1のNMR分析。NMR研究により、支配的なNH アンモニウムイオンの存在が検証された。NMR研究は以下のように行った。元のストック溶液を、HO/DO 95/5% w/w溶媒を用いて100倍に希釈し、HNMRスペクトルを、ウォーターゲート水抑制技術を用いて、最初に275Kの温度で収集して、予想される化学交換効果を遅くした。最初のスペクトルは、6.82ppmの化学シフトで52Hzの分割の等しい強度を有するよく分解されたトリプレットを示し、4.7ppmで水基準が想定された。同時に、主線から左に、主トリプレットからよく分離された低強度サテライトが観察され、これは、1.3~1.4Hzの小さい分割を有するトリプレット様構造を示した。2段階で温度を298Kおよび320Kに上昇させることにより、交換仮説が証明された。図1を参照すると、NH+プロトンと溶媒水との間のゆっくりとした交換は、温度によって増加し、これによって、まず線が広がり、次いで、2つの「種」の単一の広がった線への合体が引き起こされた。トリプレットの説明は、ゆっくりと交換される系において、4つの等価なプロトンが14N核へのスピン-スピン結合を示すことである。14Nの核スピンはI=1であるので、プロトン線はトリプレットに分割された。信号の裾の小さなサテライトは、溶液中の約5%のDOの存在を考慮に入れて説明された。次いで、水との交換により14NHD+基が形成され、3つの余分なシグナルがポップアップし、同位体が主シグナルからシフトした。それらの小さなトリプレットは、スピン1の1つの重水素への3つの等価なプロトンの結合によるものであった。重水素同位体シフト効果を二重にチェックするために、1M NH+アンモニウムイオンを含有する溶液を調製した。50μLのこの溶液を、NMRのために425μLのHOおよび25μLのDOで拡張した。次いで、さらに25μLのDOを添加した。得られた2つのスペクトルが図2に示されており、14NHサテライトの量が倍増していることが分かる。10%のDOの存在下では、さらなる重水素化により、14NH の新たな重水素サテライト信号も見ることができる。ここで、多重度は、2つの重水素に起因して5である:m=2nI+1=2*2*1+1=5。この溶液の濃度は、2D HISQC実験(273Kで16時間取得)における低い天然存在量の15Nシグナルの観察を可能にした。このスペクトルを図3に示す。15N化学シフトは32.4ppmであり、これは15NH の予測された期待値に一致する(荷電リジンNH 基の場合、これはタンパク質においても約32ppmである)。
【0127】
ストック溶液の酸含量。直接電位差測定を使用する:100倍の連続希釈を行い、pHを測定するとpH=2.3であり、希釈された試料も強い酸性であることが示された。全体的な酸含量を測定するために、pH-電位差滴定を実施した。600μLのストック酸溶液を6mLに希釈し、試料を0.2115mol/dm3 NaOH溶液で滴定した。図4に示す得られた滴定曲線は、3つの変曲点を示した。0.3127mlにおいて、最初の変曲点、H+NaOH=Na+HOは、試料中の強酸(HSO-)の塩基消費に起因し、ストック酸溶液中に1.12mol/dm濃度を生じた。第2の(特性の低い)pH変化は、約0.509mlに変曲点があり、中性に近いpH範囲におけるCu(II)およびZn(II)に特徴的である、ほとんど溶解しない金属水酸化物の形成に関連した。試料はpH=6~8の範囲では均質ではない。この現象は、Cu2+およびZn2+についてよく知られており、反応は、以下の反応によって例示することができる:2CuSO+2NaOH=Cu (OH) (SO +NaSO、ここで、下線は固体沈殿物の形成を示す。第3のpHジャンプは、NH イオンの脱プロトン化に関連する:NH +NaOH=NH+Na+HO。遊離アンモニア(NH)は、Cu2+およびZn2+カチオンの両方に良 好な配位子である。錯体形成の反応は以下の通りである:
Cu2++4NHD⇔[Cu(NH2+。テトラアミン錯体の形成により、沈殿物が溶解し、透明な青みがかった(淡青色)溶液が得られる。類似のテトラアミン亜鉛錯体[Zn(NH2+は無色である。第1の変曲点と第3の変曲点との差(1.06-0.31=0.76ml)により、ストック溶液中のCuNH =2.69mol/dmが得られる。
【0128】
実施例10
ヘキサアクア銅、ヘキサアクア亜鉛、ヘキサアクアマグネシウム、セレン酸およびヘキサアクアマンガン組成物
【表16】
金属比は5 Zn:2 Cu:1 Mg:0.5 Se:0.5 Mである。
【0129】
実施例11
ヘキサアクア銅(II)、ヘキサアクア亜鉛(II)、ヘキサアクアマグネシウム(II)組成物
【表17】
【0130】
実施例12
ヘキサアクア銅(II)、ヘキサアクア亜鉛(II)組成物
【表18】
【0131】
実施例13
酸化還元電位アッセイ
SM2580B法を用いて、ZCM-1の酸化還元電位アッセイを453.2mVで測定した。
【0132】
実施例14
酸素ラジカル吸収能(ORAC)活性アッセイ ION ZCM-1は、以下のORAC値をもたらした:
・総ORAC=1138μM TE/100gのH-ORAC値
・[ION-ZCM1]の総ORAC値は、12.5%の希釈で測定した場合に1025μM TE/mlである
・[ION-ZCM1]の総ORAC値は、6.25%の希釈で測定した場合に740μM TE/mlである
・比較対象:
・ビタミンEの総ORAC値は、1:1で580~585μmol TE/gである
・ビタミンCの総ORAC値は、1:1で128~133μmol TE/gである
・ペッパーリーフ抽出物の総ORAC値は、1:50または約2%溶液で64.47μmol TE/gである。
【0133】
物質および方法は、参照により本明細書にその開示全体が組み込まれる、INDEVION Biotechnology Research and Development. (2018). ORAC Study of Antioxidant Capabilities. University of Debrecen, Dept. Microbial Biotechnology and Cell Biology, Faculty of Natural Sciences and Technology. Debrecen, Hungary: Dr. Zsolt Keresztessy, PhD, MBA. Retrieved 2021 from https://drive.google.com/file/d/1HDhtRcW9D-F-dKDuA-YxnQWukne3UnC0/view?usp=sharingに開示される。
【0134】
実施例15
マウス黒色腫における抗腫瘍有効性試験
本発明の組成物は、多数の癌経路を攻撃する。3つの特異的なインビトロおよびインビボ前臨床試験により、ZC-1の抗癌活性が示されている。
【0135】
第1の研究は、以下を結論付けた:(Anti-Tumor Efficacy Study by Intravenous Injection - B16 Mouse Melanoma - 30 Mice. Completed in 2016 by the University of Debrecen, Hungary)対照腫瘍マウスと比較した安全性異常は、14日間の観察期間の終わりに剖検した場合、いずれの動物についても認められなかった。
【0136】
組織病理学:IV注射によって様々な濃度の本発明により処置されたマウスから単離された腫瘍は、対照腫瘍マウスから単離された腫瘍ほど顕著ではないが、大量の壊死を示した;対照腫瘍マウスと比較して、本発明の処置マウスにおいて、血管の発生頻度ははるかに低く、発達も低かった;そして、注射による本発明の組成物は、対照(未処置)腫瘍マウスの脾臓のものよりも著しく(2~3倍)大きい程度で脾臓肥大をもたらし、強い抗腫瘍免疫応答を誘導することと一致した。
【0137】
第2の研究は、以下を結論付けた:(Topical Cream Anti-Tumor Efficacy Study - Syngeneic Mouse Melanoma - 30 Mice. Completed in 2017 by the University of Debrecen, Hungary);局所クリーム(17%)中に製剤化された本発明の組成物は、皮下同系マウスモデル(C57BL/6JマウスにおけるB16-F0)において試験したところ、転移性マウス黒色腫に対して有意に有効であった;イミキモド局所クリーム(5%)よりも有効であった;3つの動物モデル群において処置期間にわたって記録された腫瘍体積は、本発明の組成物局所クリーム(17%)によって腫瘍増殖が抑制されてより遅く、その効果が、腫瘍増殖に対する陽性対照物質であるALDARA(登録商標)(5%イミキモド)の抑制効果と比較してより顕著であったという観察を支持することを示した;また、本発明の組成物局所クリーム(17%)処置は生存時間を延長したことを示した。
【0138】
第3の研究は、以下を結論付けた:溶液中に製剤化された本発明の組成物が、トリプルネガティブ乳癌(MDA-MB-231)において、腎癌細胞株Caki-1(IC50 36.12±1.00μM)、およびメラノーマ癌細胞株A375(IC50 95.20±1.01μM)に対する応答性細胞傷害剤であり、対照細胞IMR-90(IC50 142.6±6.65μM)に対する本発明の組成物の細胞毒性と比較した場合、高度に選択的である;また、溶液形態の本発明の組成物は、用量IC50 36.12±1.00μMで腎癌細胞株Caki-1の92%においてアポトーシス死を誘導した。
【0139】
実施例16
ZC-1の抗菌活性
【表19】
【0140】
【表20】
【0141】
実施例17
MRSZC-1の抗菌活性
【表21】
【0142】
【表22】
【0143】
実施例18
ION ZCM-1の抗菌活性
【表23】
【0144】
【表24】
【0145】
実施例19
ION GEL ZCM-25の生成物の抗菌活性
【表25-1】
【表25-2】
【0146】
【表26】
【0147】
実施例20
ZC-1の生成物のバイオフィルム還元活性
【表27】
【0148】
【表28】
【0149】
実施例21
ZC-1の抗MRSA活性
ハンガリーのデブレツェン大学において、培養液微量希釈ベースの感度法を使用する非バイオフィルム抗菌アッセイが完了した。結果は、試験した10-メチシリン耐性黄色ブドウ球菌分離株に対するZC-1の最小阻害濃度(MIC)値が0.212~0.85%(v/v)の範囲であることを示した。バンコマイシンのMIC値の対照は、4~16mg/Lの範囲であった。この試験は、実施例6の平均MIC値0.531%(v/v)を、バンコマイシンについての平均MIC値10mg/Lと比較する。パーセンテージ解計算により、ZC-1と比較して試験した場合にMRSAにおいて同じ50%濁度減少をもたらすのにバンコマイシンの2倍の量が必要であることが立証された。
【0150】
実施例22
安全性試験
【表29】
【0151】
上記の説明は、多くの特異性を含むが、これらは、任意の実施形態の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、その提示された実施形態の例示として解釈されるべきである。様々な実施形態の教示の範囲内で、多くの他の代替実施形態および変形が可能である。本発明を例示的な実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素を均等物で置き換えることができることが当業者には理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態または唯一の形態として開示される特定の実施形態に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入る全ての実施形態を含むことが意図される。また、図面および明細書では、本発明の例示的な実施形態を開示されており、特定の用語が使用されている場合があるが、それらは、特に明記しない限り、包括的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的で使用されておらず、したがって、本発明の範囲はそのように限定されない。さらに、第1、第2などの用語の使用は、重要性のいかなる順序または階層も表さず、むしろ第1、第2などの用語は、ある要素を別の要素と区別するために使用される。さらに、用語「a」、「an」などの使用は、量の限定を表さず、むしろ言及された項目のうちの少なくとも1つの存在を表わす。
【0152】
本発明は、その特定の好ましい実施形態を参照して説明、例示、および図示されているが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更、修正、および置換が行われ得ることを理解するであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図され、そのような特許請求の範囲は、合理的である限り広く解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】