(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】AXLタンパク質を標的とする抗体及びその抗原結合断片、その調製方法と使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240621BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240621BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240621BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240621BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240621BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240621BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240621BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240621BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240621BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240621BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240621BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240621BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240621BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240621BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240621BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240621BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K19/00
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/86 Z
C12Q1/02
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K45/00
A61K35/17
A61P35/00
C07K14/705
C12N5/0783
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578686
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 CN2021100263
(87)【国際公開番号】W WO2022261846
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523476384
【氏名又は名称】上海▲シン▼湾生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SINOBAY BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 6, No.518 Haoye Road, Jinshan District, Shanghai 201506, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】徐建青
(72)【発明者】
【氏名】張曉燕
(72)【発明者】
【氏名】丁相卿
(72)【発明者】
【氏名】廖啓彬
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QR80
4B063QS40
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4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
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4C076EE59
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA02
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4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA14
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4C085AA27
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045BA10
4H045BA71
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、AXLタンパク質を標的とする抗体又はその抗原結合断片、調製方法及び使用を提供する。前記AXLタンパク質を標的とする抗体又はその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド、及び前記単離されたポリヌクレオチドを含むベクターをさらに提供する。本発明によって提供されるAXLを標的とする抗体は、AXLタンパク質に特異的に結合し、ADCC作用を媒介して腫瘍を殺傷し、又はCART細胞の標的識別ドメインとして、抗腫瘍作用を発揮し、腫瘍を予防又は治療するために用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)以下の3つの相補性決定領域を含む重鎖可変領域、
(i)SEQ ID NO: 9に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)SEQ ID NO: 10に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR2、及び
(iii)SEQ ID NO: 11に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR3、
及び/又は
(b)以下の3つの相補性決定領域を含む軽鎖可変領域、
(iv)SEQ ID NO: 12に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなる VL CDR1、
(v)SEQ ID NO: 13に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR2、及び
(vi)SEQ ID NO: 14に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR3、
を含み、
好ましくは、(i)~(vi)のいずれか一つに記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO: 9に示されるVH CDR1、SEQ ID NO: 10に示されるVH CDR2、SEQ ID NO: 11に示されるVH CDR3を含み、また、前記抗体又はその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO: 12に示されるVL CDR1、SEQ ID NO: 13に示されるVL CDR2、SEQ ID NO: 14に示されるVL CDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
AXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)以下の3つの相補性決定領域を含む重鎖可変領域、
(i)SEQ ID NO: 15に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)SEQ ID NO: 16に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR2、及び
(iii)SEQ ID NO: 17に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR3、
及び/又は
(b)以下の3つの相補性決定領域を含む軽鎖可変領域、
(iv)SEQ ID NO: 18に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR1、
(v)SEQ ID NO: 19に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR2、及び
(vi)SEQ ID NO: 20に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR3、
を含み、
好ましくは、(i)~(vi)のいずれか一つに記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO: 15に示されるVH CDR1、SEQ ID NO: 16に示されるVH CDR2、SEQ ID NO: 17に示されるVH CDR3を含み、また、前記抗体又はその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO: 18に示されるVL CDR1、SEQ ID NO: 19に示されるVL CDR2、SEQ ID NO: 20に示されるVL CDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
AXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)以下の3つの相補性決定領域を含む重鎖可変領域、
(i)SEQ ID NO: 21に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)SEQ ID NO: 22に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR2、及び
(iii)SEQ ID NO: 23に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR3、
及び/又は
(b)以下の3つの相補性決定領域を含む軽鎖可変領域、
(iv)SEQ ID NO: 24に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR1、
(v)SEQ ID NO: 25に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR2、及び
(vi)SEQ ID NO: 26に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR3、
を含み、
好ましくは、(i)~(vi)のいずれか一つに記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO: 21に示されるVH CDR1、SEQ ID NO: 22に示されるVH CDR2、SEQ ID NO: 23に示されるVH CDR3を含み、また、前記抗体又はその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO: 24に示されるVL CDR1、SEQ ID NO: 25に示されるVL CDR2、SEQ ID NO: 26に示されるVL CDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
AXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はその抗原結合断片であって、 (a)以下の3つの相補性決定領域を含む重鎖可変領域、
(i)SEQ ID NO: 27に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)SEQ ID NO: 28に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR2、及び
(iii)SEQ ID NO: 29に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVH CDR3、
及び/又は
(b)以下の3つの相補性決定領域を含む軽鎖可変領域、
(iv)SEQ ID NO: 30に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR1、
(v)SEQ ID NO: 31に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR2、及び
(vi)SEQ ID NO: 32に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列からなるVL CDR3、
を含み、
好ましくは、(i)~(vi)のいずれか一つに記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO: 27に示されるVH CDR1、SEQ ID NO: 28に示されるVH CDR2、SEQ ID NO: 29に示されるVH CDR3を含み、また、前記抗体又はその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO: 30に示されるVL CDR1、SEQ ID NO: 31に示されるVL CDR2、SEQ ID NO: 32に示されるVL CDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
AXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1、3、5及び7のいずれか一つに示される重鎖可変領域に含まれる3つのCDRを含み、また、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 2、4、6及び8のいずれか一つに示される軽鎖可変領域に含まれる3つのCDRを含み、
好ましくは、前記重鎖可変領域に含まれる3つのCDR、及び/又は前記軽鎖可変領域に含まれる3つのCDRは、Kabat、Chothia又はIMGTナンバリングシステムによって定義される、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
(i)SEQ ID NO: 1に示される配列、
(ii)SEQ ID NO: 1に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO: 1に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
及び/又は、
(b)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(iv)SEQ ID NO: 2に示される配列、
(v)SEQ ID NO: 2に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO: 2に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 1に示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:2に示される配列を有するVLを含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
(i)SEQ ID NO: 3に示される配列、
(ii)SEQ ID NO: 3に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO: 3に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
及び/又は、
(b)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(iv)SEQ ID NO: 4に示される配列、
(v)SEQ ID NO: 4に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO: 4に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 3に示される配列を有するVH及びSEQ ID NO: 4に示される配列を有するVLを含む、請求項2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
(i)SEQ ID NO: 5に示される配列、
(ii)SEQ ID NO: 5に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO: 5に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
及び/又は、
(b)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(iv)SEQ ID NO: 6に示される配列、
(v)SEQ ID NO: 6に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO: 6に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 5に示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:6に示される配列を有するVLを含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、
(i)SEQ ID NO: 7に示される配列、
(ii)SEQ ID NO: 7に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO: 7に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
及び/又は、
(b)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(iv)SEQ ID NO: 8に示される配列、
(v)SEQ ID NO: 8に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO: 8に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 7に示される配列を有するVH及びSEQ ID NO: 8に示される配列を有するVLを含む、請求項4に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域又はその変体と、
前記変体はその由来配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有しており、
(b)ヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域又はその変体と、
前記変体はその由来配列と比較して最多20個のアミノ酸の保存的置換を有しており、
をさらに含み、
好ましくは、前記重鎖定常領域は、IgG重鎖定常領域であり、より好ましくはIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域であり、さらに好ましくは、ヒトIgG1又はヒトIgG4重鎖定常領域であり、
好ましくは、前記軽鎖定常領域は、κ軽鎖定常領域である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、(Fab’)
2、Fv、ジスフィルド結合により連結されるFv、scFv、ダイアボディ及びシングルドメイン抗体から選ばれ、及び/又は、前記抗体は、マウス由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異抗体又は多重特異性抗体であり、より好ましくは、前記抗体は、完全ヒト抗体である、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体T細胞であって、
好ましくは、前記抗体又は抗原結合断片中の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、直列組み合わせ又は並列組み合わせである、キメラ抗原受容体T細胞。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又はその重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードする単離された核酸分子。
【請求項14】
請求項13に記載の単離された核酸分子を含むベクターであって、
好ましくは、前記ベクターは、クローニングベクター又は発現ベクターであり、
より好ましくは、前記ベクターは、ウイルスであり、
さらに好ましくは、前記ウイルスベクターのウイルス骨格は、修飾又はエンジニアリングワクシニアウイルスTian Tan株、ワクシニアウイルスニューヨーク株、ワクシニアウイルスコペンハーゲン株、ワクシニアウイルスカナリア株、ワクシニアウイルスアンカラ株、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、水痘-帯状ヘルペスウイルスベクター、呼吸器合胞体ウイルス、セムリキ森林ウイルス、EBウイルス、巨大細胞ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、天然痘ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、羊口瘡ウイルス、レオウイルス、ロタウイルス、エンテロウイルス、セネカウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、口蹄疫ウイルス、トガウイルス、アルファウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、シンドビスウイルス、風疹ウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、C型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレーバレー熱ウイルス、黄熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、ジカウイルス、デングウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、砂粒ウイルス、ラッサ熱ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、ピチンデウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、ハンタウイルス、リフトバレー熱ウイルス、パラミクソウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、耳下腺炎ウイルス、サルウイルス5、麻疹ウイルス、水泡口炎ウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、オルトミクソウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、D型肝炎ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型及びヒト免疫不全ウイルス2型、ラウス肉腫ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス1型、サルバブルウイルス、B型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス又はポリオーマウイルスに由来し、
より好ましくは、前記ベクターは、クローニングベクターAbVec-hIgKappa又はクローニングベクターAbVec-hIgG1である、ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の単離された核酸分子又は請求項14に記載のベクターを含む宿主細胞であって、
好ましくは、前記宿主細胞は、原核のもの又は真核のものであり、より好ましくは、前記宿主細胞は、大腸菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞又は、抗体又は抗原結合断片、多重特異性抗体を調製するのに適した他の細胞から選ばれ、さらに好ましくは、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、よりさらに好ましくは、前記宿主細胞は、ヒト、マウス、ヒツジ、ウマ、イヌ又はネコの細胞であり、最も好ましくは、前記宿主細胞は、293細胞又はCHO細胞である、宿主細胞。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片発現を許容する条件下で、請求項15に記載の宿主細胞を培養するステップと、培養された宿主細胞培養物から前記抗体又はその抗原結合断片を回収するステップと、を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の調製方法。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む二重特異又は多重特異性分子であって、
好ましくは、前記二重特異又は多重特異性分子は、AXLタンパク質に特異的に結合し、さらに1つ又は複数の他のターゲットに追加に特異的に結合し、
好ましくは、前記二重特異又は多重特異性分子は、第2ターゲットに対する第2結合特異性を有する分子、好ましくは二次抗体を少なくとも1つさらに含み、
好ましくは、前記二重特異又は多重特異性分子は、AXLタンパク質エピトープに特異的に結合する他の抗体又は抗原結合断片をさらに含む、二重特異又は多重特異性分子。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、及び前記抗体又はその抗原結合断片に連結された治療剤を含む免疫コンジュゲートであって、
好ましくは、前記治療剤は、細胞毒性剤から選ばれ、
好ましくは、前記治療剤は、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、及びこれらの任意の組み合わせから選ばれ、
好ましくは、前記免疫コンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲートである、免疫コンジュゲート。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項17に記載の二重特異又は多重特異性分子又は請求項18に記載の免疫コンジュゲート、及び薬学的に許容されるベクター及び/又は賦形剤を含有する医薬組成物であって、
好ましくは、医薬組成物は、追加の薬学活性剤をさらに含み、
好ましくは、前記追加の薬学活性剤は、抗腫瘍活性を有する医薬であり、より好ましくは、前記薬学活性剤は、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、放射線増感剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤又は腫瘍溶解ウイルスであり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片、二重特異又は多重特異性分子又は免疫コンジュゲートは、前記追加の薬学活性剤と、単離された成分として、又は同じ組成物の成分として提供される、医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含有するキットであって、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、検出可能な標識、放射性核種、蛍光染料、発光物質又はビオチンを有し、より好ましくは、前記検出可能な標識は、酵素であり、さらに好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼであり、より好ましくは、前記発光物質は、化学発光物質であり、
好ましくは、前記キットは、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を特異的に認識する二次抗体をさらに含み、
好ましくは、前記二次抗体は、検出可能な標識、放射性核種、蛍光染料、発光物質又はビオチンをさらに含み、より好ましくは、前記検出可能な標識は、酵素であり、さらに好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼであり、より好ましくは、前記発光物質は、化学発光物質である、キット。
【請求項21】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体であって、
好ましくは、前記抗原結合ドメインは、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記抗原結合ドメインは、scFvであり、
好ましくは、前記抗原結合受容体は、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体の抗原結合断片を含み、
好ましくは、前記抗原結合受容体は、免疫エフェクター細胞によって発現され、
より好ましくは、前記免疫エフェクター細胞は、T細胞である、キメラ抗原受容体。
【請求項22】
請求項21に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離された核酸分子。
【請求項23】
請求項22に記載の単離された核酸分子を含み、好ましくは、キメラ抗原受容体T細胞を調製するために用いられる、ベクター。
【請求項24】
請求項22に記載の単離された核酸分子又は請求項23に記載のベクターを含む宿主細胞であって、
好ましくは、前記宿主細胞は、免疫エフェクター細胞であり、より好ましくは、前記免疫エフェクター細胞は、T細胞又はNK細胞であり、
好ましくは、前記宿主細胞は、キメラ抗原受容体T細胞である、宿主細胞。
【請求項25】
腫瘍細胞増殖を阻害し、及び/又は前記腫瘍細胞を殺傷する方法であって、前記腫瘍細胞を有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は請求項17に記載の二重特異又は多重特異性分子、又は請求項18に記載の免疫コンジュゲート、又は請求項19に記載の医薬組成物、又は請求項21に記載のキメラ抗原受容体、又は請求項24に記載の宿主細胞と接触させることを含む、方法。
【請求項26】
被験者において腫瘍を予防及び/又は治療するための方法であって、前記方法は、それを必要とする被験者に有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は請求項17に記載の二重特異又は多重特異性分子、又は請求項18に記載の免疫コンジュゲート、又は請求項19に記載の医薬組成物、又は請求項21に記載のキメラ抗原受容体、又は請求項24に記載の宿主細胞を投与することを含み、
好ましくは、前記被験者は、ヒトであり、
好ましくは、前記腫瘍は、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、黒色腫、前立腺がん、腎細胞がん、肉腫、神経膠腫、好ましくは高レベル神経膠腫、母細胞腫、好ましくは神経芽細胞腫、骨肉腫、形質細胞腫、組織球肉腫、膵臓がん、乳がん、肺がん、好ましくは小細胞肺がん及び非小細胞肺がん、胃がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、大腸がん、造血系がん、睾丸がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、扁平上皮がん、腺がん、AIDS関連リンパ腫、膀胱がん、脳がん、神経系がん、頭頸部がん、頭頚部扁平上皮がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫又は血液がん疾患から選ばれ、
好ましくは、前記被験者は、哺乳動物であり、より好ましくは、ヒトであり、
好ましくは、前記方法は、抗腫瘍活性を有する追加の医薬を投与することをさらに含み、より好ましくは前記抗腫瘍活性を有する追加の医薬は、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、放射線増感剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤又は腫瘍溶解ウイルスであり、
好ましくは、前記方法は、追加の抗腫瘍療法を投与することをさらに含み、より好ましくは、前記追加の抗腫瘍療法は、手術、化学治療、放射治療、標的化治療、免疫治療、ホルモン治療、遺伝子治療又は姑息的治療である、方法。
【請求項27】
医薬調製における、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は請求項17に記載の二重特異又は多重特異性分子、又は請求項18に記載の免疫コンジュゲート、又は請求項19に記載の医薬組成物、又は請求項21に記載のキメラ抗原受容体、又は請求項24に記載の宿主細胞の用途であって、前記医薬は、被験者の腫瘍を予防及び/治療するために用いられ、
好ましくは、前記被験者は、ヒトであり、
好ましくは、医薬は、追加の薬学活性剤をさらに含み、
好ましくは、前記追加の薬学活性剤は、抗腫瘍活性を有する医薬であり、より好ましくは、前記薬学活性剤は、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、放射線増感剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤又は腫瘍溶解ウイルスであり、
好ましくは、前記腫瘍は、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、黒色腫、前立腺がん、腎細胞がん、肉腫、神経膠腫、好ましくは高レベル神経膠腫、母細胞腫、好ましくは神経芽細胞腫、骨肉腫、形質細胞腫、組織球肉腫、膵臓がん、乳がん、肺がん、好ましくは小細胞肺がん及び非小細胞肺がん、胃がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、大腸がん、造血系がん、睾丸がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、扁平上皮がん、腺がん、AIDS関連リンパ腫、膀胱がん、脳がん、神経系がん、頭頸部がん、頭頚部扁平上皮がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫又は血液がん疾患から選ばれ、
好ましくは、前記被験者は、哺乳動物であり、より好ましくはヒトである、用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物免疫技術分野に属し、具体的にはAXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体及びその抗原結合断片に関し、本発明はさらに前記抗体及びその抗原結合断片の調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
AXLは、104-140kDaの膜貫通タンパク質であり、哺乳動物受容体チロシンキナーゼ(RTK)のTAMサブファミリーに属し、且つ形質転換能力(Paccez et al.,2014)を持つ。AXL細胞外ドメインは、2つの膜遠位N末端免疫グロブリン(Ig)様ドメイン(Ig1とIg2ドメイン)と、2つの膜近位フィブロネクチンIII型(FNIII)繰り返し配列(FN1とFN2ドメイン)との組み合わせからなる(Paccez et al.,2014)。AXLタンパク質は、遺伝子AXL(UFO、ARK、Tyro7又はJTK11)によってコード発現され、受容体が、チロシンキナーゼのTyro-3ファミリーのメンバーである。AXLタンパク質は、リガンドGas6(抗凝固因子タンパク質Sと相同であり、70-kDa)を結合した後、PI-3K/Akt、Ras/Erk及びβ-カテニン/TCFなどの経路によってシグナルを伝達し、腫瘍細胞の生存、増殖、移行と接着を調節することに関与する。AXLは、慢性骨髄性白血病(CML)において初めて同定された形質転換遺伝子であり、その後の研究によって明らかなように、正常組織に比べて、AXLは、肺がん、乳がん、前立腺がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、卵巣がん及び腎臓がんなどの多くの腫瘍組織において活性発現状態を呈し、特に、高侵襲、高転移の基底様及び/又は三陰性乳がん、転移性肺がん、膵臓がんなどの腫瘍組織において異常な活性化表現を呈し、腫瘍細胞上皮間葉転換、血管新生、アポトーシス及び免疫調節などを調節することに関与し、腫瘍転移、侵襲を促進することで予後不良を引き起こす。一方、非腫瘍の疾患においては、顕著な上昇、例えば、慢性ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、胆汁うっ滞性肝疾患又は非アルコール性脂肪性肝疾患などの慢性肝疾患(CLD)患者の血清に可溶性AXL(sAxl)の上昇は見られない。しかし、肝細胞がん(HCC)、又は肝臓がん高度関連の後期線維化(F3期)又は肝硬変(F4期)の患者の血清においてsAxl濃度は特異的に増加する。したがって、AXLもバイオマーカーとして腫瘍の臨床診断に用いることができる。
【0003】
近年の研究によれば、AXLタンパク質の高発現も腫瘍の薬剤耐性の形成と密接な関係があることが見出された。化学療法及び受容体チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)治療に対し薬剤抵抗性を有する癌細胞、例えばEGFR阻害剤難治性肺がん、PI3K阻害剤薬剤耐性頭頸部がん、抗HER2抗体薬剤耐性乳がん、スニチニブ薬剤耐性腎臓がんとALK阻害剤薬剤耐性神経芽細胞腫などで、AXL発現は顕著に向上する。AXL発現を阻害することは、細胞毒性医薬及び標的阻害剤に対する薬剤耐性腫瘍細胞の感受性を逆転できる。したがって、AXLキナーゼ阻害剤は、がん治療の新規ポリシーとなる。また、AXLの唯一のリガンドであるGas6も複数の悪性腫瘍において高発現を呈し、AXL-Gas6の相互作用を特異的に遮断することにより、腫瘍細胞の移行、侵襲及び薬剤耐性を効果的に阻害することができる。臨床研究から分かったように、AVB-500は、AXL/Gas6シグナル伝達経路を阻害することにより、白金薬剤耐性卵巣がんの進展を効果的に阻害するできる。現在、当該研究は、すでに米国で第I相臨床試験を完成し、第II相登録臨床研究に入る直前である。
【0004】
他の標的に比べて、AXLを標的とする抗体は、迅速に大量にインターナリゼーションされることができ、抗原性に関連する腫瘍標的細胞の表面に結合する数が多く、非標的細胞に結合する数が少なく、標的細胞内に入る数が多く、非標的細胞内に入る数が少ないことに寄与する。したがって、AXLに特異的に結合する抗体-薬物コンジュゲート(antibody-drug conjugate、ADC)の開発が当分野にて注目されている。腫瘍微小環境における解糖の強化、酸素欠損及び組織灌流不足などにより、大量の酸性代謝産物が蓄積され、腫瘍微小環境を酸性にし、通常、pH値は5.8~7.0の範囲内であり、多くの場合は6.4~6.8の間にある。このような酸性の腫瘍微小環境は、腫瘍の増殖、侵襲移行及び免疫脱出を促進し、腫瘍治療に挑戦をもたらす。したがって、腫瘍の治療効果を向上させるために、より多くの特異性が強く、酸性腫瘍微小環境の条件下で、親和力が高く、免疫原性が低く、安定性に優れたAXLを標的とする抗体を研究開発することが強く求められている。
【0005】
データに示すように、AXLモノクローナル抗体と小分子細胞毒性医薬とを組み合わせて調製した抗体-薬物コンジュゲート(antibody-drug conjugate、ADC)が腫瘍に作用する標的性を増強し、毒副作用を減少できる。ADCは、完全又は一部のヒト化抗体又は抗体断片医薬に比べて、腫瘍組織内で高活性の細胞毒性医薬を放出することによって、腫瘍の成長及び転移を効果的に阻害する。臨床研究から明らかなように、従来のAXL抗体に由来するADCは、腫瘍抗原を標的とする部位が単一であるため、薬剤耐性が生じやすく、しかもその血液半減期が低いため、毒性が増加する。したがって、AXL抗体薬をさらに研究開発及び最適化する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の不足に鑑みて、本発明の主な目的は、酸性条件下での親和力がより高く、特異性がより強く、免疫原性がより低く、安定性により優れたAXLタンパク質を標的とする抗体を提供することである。本発明は、前記抗体の調製方法及び用途をさらに提供し、本発明のAXLタンパク質を標的とする抗体は、腫瘍の検出及び/又は治療に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、AXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はその抗原結合断片を提供し、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下の3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域(VH)、
(i)SEQ ID NO: 9に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)SEQ ID NO: 10に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR2、及び
(iii)SEQ ID NO: 11に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR3、
及び/又は
(b)以下の3つの相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iv)SEQ ID NO: 12に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)SEQ ID NO: 13に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR2、及び
(vi)SEQ ID NO: 14に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR3、
を含み、
好ましくは、(i)~(vi)のいずれか一つに記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO: 9に示されるVH CDR1、SEQ ID NO: 10に示されるVH CDR2、SEQ ID NO: 11に示されるVH CDR3を含み、また、前記抗体又はその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO: 12に示されるVL CDR1、SEQ ID NO: 13に示されるVL CDR2、SEQ ID NO: 14に示されるVL CDR3を含む。
【0008】
一態様では、本発明は、AXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はその抗原結合断片を提供し、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下の3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域(VH)、
(i)SEQ ID NO: 15に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)SEQ ID NO: 16に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR2、及び
(iii)SEQ ID NO: 17に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR3、
及び/又は
(b)以下の3つの相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iv)SEQ ID NO: 18に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)SEQ ID NO: 19に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR2、及び
(vi)SEQ ID NO: 20に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR3、
を含み、
好ましくは、(i)~(vi)のいずれか一つに記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO: 15に示されるVH CDR1、SEQ ID NO: 16に示されるVH CDR2、SEQ ID NO: 17に示されるVH CDR3を含み、また、前記抗体又はその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO: 18に示されるVL CDR1、SEQ ID NO: 19に示されるVL CDR2、SEQ ID NO: 20に示されるVL CDR3を含む。
【0009】
一態様では、本発明は、AXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はその抗原結合断片を提供し、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下の3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域(VH)、
(i)SEQ ID NO: 21に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)SEQ ID NO: 22に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR2、及び
(iii)SEQ ID NO: 23に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR3、
及び/又は
(b)以下の3つの相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iv)SEQ ID NO: 24に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)SEQ ID NO: 25に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR2、及び
(vi)SEQ ID NO: 26に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR3、
を含み、
好ましくは、(i)~(vi)のいずれか一つに記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO: 21に示されるVH CDR1、SEQ ID NO: 22に示されるVH CDR2、SEQ ID NO: 23に示されるVH CDR3を含み、また、前記抗体又はその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO: 24に示されるVL CDR1、SEQ ID NO: 25に示されるVL CDR2、SEQ ID NO: 26に示されるVL CDR3を含む。
【0010】
一態様では、本発明は、AXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はその抗原結合断片を提供し、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下の3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域(VH)、
(i)SEQ ID NO: 27に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)SEQ ID NO: 28に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR2、及び
(iii)SEQ ID NO: 29に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVH CDR3、
及び/又は
(b)以下の3つの相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iv)SEQ ID NO: 30に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)SEQ ID NO: 31に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR2、及び
(vi)SEQ ID NO: 32に示される配列、又はそれと比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列からなるVL CDR3、
を含み、
好ましくは、(i)~(vi)のいずれか一つに記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO: 27に示されるVH CDR1、SEQ ID NO: 28に示されるVH CDR2、SEQ ID NO: 29に示されるVH CDR3を含み、また、前記抗体又はその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO: 30に示されるVL CDR1、SEQ ID NO: 31に示されるVL CDR2、SEQ ID NO: 32に示されるVL CDR3を含む。
【0011】
一態様では、本発明は、AXLタンパク質に特異的に結合することができる抗体又はその抗原結合断片を提供し、前記抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1、3、5及び7のいずれか一つに示される重鎖可変領域に含まれる3つのCDRを含み、また、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 2、4、6及び8のいずれか一つに示される軽鎖可変領域に含まれる3つのCDRを含み、
好ましくは、前記重鎖可変領域に含まれる3つのCDR、及び/又は前記軽鎖可変領域に含まれる3つのCDRは、Kabat、Chothia又はIMGTナンバリングシステムによって定義される。
【0012】
本発明による抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
(i)SEQ ID NO: 1に示される配列、
(ii)SEQ ID NO: 1に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO: 1に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
及び/又は、
(b)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iv)SEQ ID NO: 2に示される配列、
(v)SEQ ID NO: 2に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO: 2に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 1に示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:2に示される配列を有するVLを含む。
【0013】
本発明による抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
(i)SEQ ID NO: 3に示される配列、
(ii)SEQ ID NO: 3に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO: 3に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
及び/又は、
(b)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iv)SEQ ID NO: 4に示される配列、
(v)SEQ ID NO: 4に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO: 4に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 3に示される配列を有するVH及びSEQ ID NO: 4に示される配列を有するVLを含む。
【0014】
本発明による抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
(i)SEQ ID NO: 5に示される配列、
(ii)SEQ ID NO: 5に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO: 5に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
及び/又は、
(b)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iv)SEQ ID NO: 6に示される配列、
(v)SEQ ID NO: 6に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO: 6に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 5に示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:6に示される配列を有するVLを含む。
【0015】
本発明による抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
(i)SEQ ID NO: 7に示される配列、
(ii)SEQ ID NO: 7に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO: 7に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
及び/又は、
(b)以下から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iv)SEQ ID NO: 8に示される配列、
(v)SEQ ID NO: 8に示される配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO: 8に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載の置換は、保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 7に示される配列を有するVH及びSEQ ID NO: 8に示される配列を有するVLを含む。
【0016】
本発明による抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)又はその変体と、
前記変体はその由来配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、最多20個、最多15個、最多10個、又は最多5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加、例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有しており、
(b)ヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)又はその変体と、
前記変体はその由来配列と比較して最多20個のアミノ酸の保存的置換(例えば最多15個、最多10個、又は最多5個のアミノ酸の保存的置換、例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の保存的置換)を有しており、
をさらに含み、
好ましくは、前記重鎖定常領域は、IgG重鎖定常領域、例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域であり、より好ましくは、ヒトIgG1又はヒトIgG4重鎖定常領域であり、
好ましくは、前記軽鎖定常領域は、κ軽鎖定常領域である。
【0017】
本発明による抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、ジスフィルド結合によって連結されるFv、scFv、ダイアボディ(diabody)及びシングルドメイン抗体(sdAb)から選ばれ、及び/又は、前記抗体は、マウス由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異抗体又は多重特異性抗体であり、より好ましくは、前記抗体は、完全ヒト抗体である。
【0018】
別の態様では、本発明は、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体T細胞を提供し、
好ましくは、前記抗体又は抗原結合断片中の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、直列組み合わせ又は並列組み合わせである。
【0019】
別の態様では、本発明は、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、又はその重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードする、単離された核酸分子を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、本発明に記載の単離された核酸分子を含むベクターを提供し、好ましくは、前記ベクターは、クローニングベクター又は発現ベクターであり、より好ましくは、前記ベクターは、ウイルスであり、
さらに好ましくは、前記ウイルスベクターのウイルス骨格は、修飾又は改変されたワクシニアウイルスTian Tan株、ワクシニアウイルスニューヨーク株、ワクシニアウイルスコペンハーゲン株、ワクシニアウイルスカナリア株、ワクシニアウイルスアンカラ株、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、水痘-帯状ヘルペスウイルスベクター、呼吸器合胞体ウイルス、セムリキ森林ウイルス、EBウイルス、巨大細胞ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、天然痘ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、羊口瘡ウイルス、レオウイルス、ロタウイルス、エンテロウイルス、セネカウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、口蹄疫ウイルス、トガウイルス、アルファウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、シンドビスウイルス、風疹ウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、C型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレーバレー熱ウイルス、黄熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、ジカウイルス、デングウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、砂粒ウイルス、ラッサ熱ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、ピチンデウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、ハンタウイルス、リフトバレー熱ウイルス、パラミクソウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、耳下腺炎ウイルス、サルウイルス5、麻疹ウイルス、水泡口炎ウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、オルトミクソウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、D型肝炎ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型及びヒト免疫不全ウイルス2型、ラウス肉腫ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス1型、サルバブルウイルス、B型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス又はポリオーマウイルスに由来する。
【0021】
より好ましくは、前記ベクターは、クローニングベクターAbVec-hIgKappa(GenBank: FJ475056.1)又はクローニングベクターAbVec-hIgG1(GenBank: FJ475055.1)である。
【0022】
別の態様では、本発明は、本発明に記載の単離された核酸分子又はベクターを含む宿主細胞を提供し、
好ましくは、前記宿主細胞は、原核のもの又は真核のものであり、より好ましくは、前記宿主細胞は、大腸菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞又は抗体又は抗原結合断片、多重特異性抗体を調製するのに適した他の細胞から選ばれ、さらに好ましくは、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、よりさらに好ましくは、前記宿主細胞は、ヒト、マウス、ヒツジ、ウマ、イヌ又はネコの細胞であり、最も好ましくは、前記宿主細胞は、293細胞又はCHO細胞である。
【0023】
更なる一態様では、本発明は、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片発現を許容する条件下で、前記宿主細胞を培養するステップと、培養された宿主細胞培養物から前記抗体又はその抗原結合断片を回収するステップと、を含む、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片の調製方法を提供する。
【0024】
更なる一態様では、本発明は、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む二重特異又は多重特異性分子を提供し、
好ましくは、前記二重特異又は多重特異性分子は、AXLタンパク質に特異的に結合し、さらに1つ又は複数の他のターゲットに追加に特異的に結合し、
好ましくは、前記二重特異又は多重特異性分子は、第2ターゲットに対する第2結合特異性を有する分子(例えば二次抗体)を少なくとも1つさらに含み、
好ましくは、前記二重特異又は多重特異性分子は、AXLタンパク質エピトープに特異的に結合する他の抗体又は抗原結合断片をさらに含む。
【0025】
更なる一態様では、本発明は、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、及び前記抗体又はその抗原結合断片に連結された治療剤を含む免疫コンジュゲートを提供し、
好ましくは、前記治療剤は、細胞毒性剤から選ばれ、
好ましくは、前記治療剤は、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、及びこれらの任意の組み合わせから選ばれ、
好ましくは、前記免疫コンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0026】
更なる一態様では、本発明は、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、二重特異又は多重特異性分子又は免疫コンジュゲート、及び薬学的に許容されるベクター及び/又は賦形剤を含有する医薬組成物を提供し、
好ましくは、医薬組成物は、追加の薬学活性剤をさらに含み、
好ましくは、前記追加の薬学活性剤は、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、放射線増感剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤又は腫瘍溶解ウイルスなどの抗腫瘍活性を有する医薬であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片、二重特異又は多重特異性分子又は免疫コンジュゲートは、前記追加の薬学活性剤と、単離された成分として、又は同じ組成物の成分として提供される。
【0027】
更なる一態様では、本発明は、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片を含有するキットを提供し、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、検出可能な標識、例えば酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)、放射性核種、蛍光染料、発光物質(例えば化学発光物質)又はビオチンを有し、
好ましくは、前記キットは、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片を特異的に認識する二次抗体をさらに含み、
好ましくは、前記二次抗体は、検出可能な標識、例えば酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)、放射性核種、蛍光染料、発光物質(例えば化学発光物質)又はビオチンをさらに含む。
【0028】
更なる一態様では、本発明は、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片の抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体を提供し、
好ましくは、前記抗原結合ドメインは、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記抗原結合ドメインは、scFvであり、
好ましくは、前記抗原結合受容体は、本発明に記載の抗体の抗原結合断片を含み、
好ましくは、前記抗原結合受容体は、免疫エフェクター細胞(例えばT細胞)によって発現される。
【0029】
更なる一態様では、本発明は、前記キメラ抗原受容体をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0030】
更なる一態様では、本発明は、前記キメラ抗原受容体をコードする単離された核酸分子を含み、好ましくはキメラ抗原受容体T細胞を調製するために用いられるベクターを提供する。
【0031】
更なる一態様では、本発明は、前記キメラ抗原受容体をコードする単離された核酸分子又はベクターを含む宿主細胞を提供し、
好ましくは、前記宿主細胞は、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)であり、
好ましくは、前記宿主細胞は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)である。
【0032】
本発明、腫瘍細胞成長を阻害し、及び/又は前記腫瘍細胞を殺傷する方法であって、前記腫瘍細胞を有効量の本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は二重特異又は多重特異性分子、又は免疫コンジュゲート、又は医薬組成物、又はキメラ抗原受容体、又は宿主細胞と接触させることを含む、方法をさらに提供する。
【0033】
本発明は、被験者(例えばヒト)において腫瘍を予防及び/又は治療するための方法をさらに提供し、前記方法は、それを必要とする被験者に有効量の本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は二重特異又は多重特異性分子、又は免疫コンジュゲート、又は医薬組成物、又はキメラ抗原受容体、又は宿主細胞を投与することを含み、
好ましくは、前記腫瘍は、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、黒色腫、前立腺がん、腎細胞がん、肉腫、高レベル神経膠腫などの神経膠腫、神経芽細胞腫などの母細胞腫、骨肉腫、形質細胞腫、組織球肉腫、膵臓がん、乳がん、小細胞肺がん及び非小細胞肺がんなどの肺がん、胃がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、大腸がん、造血系がん、睾丸がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、扁平上皮がん、腺がん、AIDS関連リンパ腫、膀胱がん、脳がん、神経系がん、頭頸部がん、頭頚部扁平上皮がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫又は血液がん疾患から選ばれ、
好ましくは、前記被験者は、哺乳動物、例えばヒトであり、
好ましくは、前記方法は、抗腫瘍活性を有する追加の医薬、例えばアルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、放射線増感剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤又は腫瘍溶解ウイルスを投与することをさらに含み、
好ましくは、前記方法は、追加の抗腫瘍療法、例えば手術、化学治療、放射治療、標的化治療、免疫治療、ホルモン治療、遺伝子治療又は姑息的治療を投与することをさらに含む。
【0034】
本発明は、医薬調製における、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は二重特異又は多重特異性分子、又は免疫コンジュゲート、又は医薬組成物、又はキメラ抗原受容体、又は宿主細胞の用途をさらに提供し、前記医薬は、被験者(例えばヒト)の腫瘍を予防及び/治療するために用いられ、
好ましくは、医薬は、追加の薬学活性剤をさらに含み、
好ましくは、前記追加の薬学活性剤は、抗腫瘍活性を有する医薬、例えばアルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、放射線増感剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤又は腫瘍溶解ウイルスであり、
好ましくは、前記腫瘍は、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、黒色腫、前立腺がん、腎細胞がん、肉腫、高レベル神経膠腫などの神経膠腫、神経芽細胞腫などの母細胞腫、骨肉腫、形質細胞腫、組織球肉腫、膵臓がん、乳がん、小細胞肺がん及び非小細胞肺がんなどの肺がん、胃がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、大腸がん、造血系がん、睾丸がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、扁平上皮がん、腺がん、AIDS関連リンパ腫、膀胱がん、脳がん、神経系がん、頭頸部がん、頭頚部扁平上皮がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫又は血液がん疾患から選ばれ、
好ましくは、前記被験者は、哺乳動物、例えばヒトである。
【0035】
具体的には、本発明によって提供されるAXLタンパク質を標的とする抗体又はその抗原結合の調製方法は、
1)天然ファージ抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって、AXLタンパク質を標的とする抗体又はその抗原結合を発現できるハイブリドーマ株を得るステップと、
2)ステップ1)で得られたハイブリドーマ株において、AXLタンパク質を標的とする抗体又はその抗原結合を発現する遺伝子をクローニングするステップと、
3)ステップ2)でクローニングして得られた遺伝子及び前記遺伝子に操作的に関連する発現調節配列を含む発現ベクターを提供するステップと、
4)ステップ3)に記載の発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換するステップと、
5)ステップ4)で得られた宿主細胞を培養するステップと、
6)単離精製してモノクローナル抗体を得るステップと、を含む。
【0036】
別の態様では、本発明は、上記調製方法に用いられるハイブリドーマ株を提供する。
【0037】
本発明は、天然ファージ抗体ライブラリーを用いてスクリーニングすることで、AXLを標的とする抗体71株を得て、いずれもヒトAXLに結合する全ヒト抗体を認識することができ、そのうち4株の標的AXL抗体(Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14)は、ヒトAXLの細胞外ドメイン(extra-cellular domain、ECD)タンパク質を特異的に認識し、AXL-Gas6相互作用を遮断する潜在能力を有する。上記AXL抗体は、酸性条件下での親和力がより強く、より正確かつ有効な腫瘍殺傷作用を発揮するとともに、正常組織毒性に対する殺傷を減少させ、抗体医薬の臨床使用の安全性を増加させることができることが期待される。本発明に記載のAXLに対する抗体は、ADCC作用を媒介することができ、単独で抗体を薬剤として投与することができ、CART細胞を調製し、抗腫瘍作用を発揮することもできる。
【0038】
本発明は、AXLタンパク質を特異的に標的とする抗体を分泌するヒト-マウスハイブリドーマを調製し、分子生物学的技術を用いて当該抗体の重鎖及び軽鎖配列(全数ヒトの遺伝子)をクローニングし、抗AXLタンパク質ヒトモノクローナル抗体を構築し、CHO細胞により抗体を発現し、産生する。これらの抗体は、医薬として従来の抗体と比較して、より強い結合能と特異性を有する。実験結果から示されるように、本発明の特異性抗体は、良好な生物学的効果を有し、ヒトAXLタンパク質を認識でき、かつ親和力が2.92×10-9Mと1.40×10-9Mであり、本発明の抗体は、比較的強い酸性環境の走化性を有し、AXL高発現疾患を標的とするためのCART又はモノクローナル抗体などの治療薬を調製することができ、非常に有望である。
【0039】
当業者であれば、本明細書に記載された発明は、具体的に説明されたものに加えて、変更及び修正が容易であることを理解するであろう。本発明は、これらの変形及び修正の全てを含む。本発明は、明細書における単独又は共通の言及又は指摘された全てのステップ及び特徴、及びステップ又は特徴の任意と全ての組み合わせも含む。
【0040】
本発明のその他の特徴及び態様は、以下の詳細な記述と添付図面を考慮して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
以下、図面と結び付けて本発明の実施形態を詳細に説明し、ここで、
【
図1】ELISAスクリーニングによるクローン上澄みと抗原hAXL-ECDの結合を表すグラフを示す。
図1A~
図1Gは、それぞれ本出願の71個のクローンがhAXL-ECDに特異的に結合することができることを示し、そのうち5番、7番、11番及び14番のクローンの親和力が最も高く、5番、7番、11番及び14番のクローンを選択して実験を行い、Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14と命名した。
【
図2】本発明で使用される抗体に構築された表現ベクターマップAbVec-hIgKappa及びAbVec-hIgG1 WTを示す。
【
図3】本発明の抗AXL抗体Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14の親和力をフローデータで示すグラフであり、そのうち
図3Aは、異なるpHにおいて、陽性対照CCT301-38抗体の濃度による親和力の変化を示す模式図であり、
図3B~3Eは、異なるpHにおいて、抗AXL抗体Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14の濃度による親和力の変化を示す模式図であり、本発明の抗体は、陽性対照に対してより高い親和力を有し、且つ酸性条件下で、中性条件よりも高い結合能力を有することが明らかである。
【
図4】本発明の抗AXL抗体Hu001-11と陽性対照CCT301-38抗体を用いてそれぞれ調製したCART細胞、及び異なる条件下でのインビトロ活性試験を示し、
図4から一義的に明らかなように、本発明の抗AXL抗体Hu001-11は、インビトロの酸性条件下で活性化がより強い。
【
図5】陽性対照CCT301-38抗体で調製したCART細胞に比べ、本発明の抗AXL抗体Hu001-11を用いて調製したCART細胞がインビトロで高い殺傷活性を媒介することができることを示す。
【
図6】陽性対照CCT301-38抗体に比べて、本発明の抗AXL抗体Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14を用いてインビトロでより広抗腫瘍活性を媒介することができることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本出願の以下の説明は、本出願の複数の実施形態を説明するためのものに過ぎない。したがって、ここで論じられる具体的な修正方式は、出願の範囲を限定するものと理解すべきではない。当業者であれば、本出願の範囲から逸脱することなく、複数の同等の形態、変形及び修正を容易に導き出すことができ、このような同等の実施形態は本発明の範囲に含まれることが理解されるべきである。本出願において引用された全ての文献は、開示出版物、特許、及び特許出願を含めて、その全文を引用により本発明に組み込む。
【0043】
定義
本発明における「抗体」は、ある特定の抗原に結合可能な任意な免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体又は二重特異(2価)抗体を含む。1つの天然の無傷抗体は、2本の重鎖と2本の軽鎖を含む。各重鎖は、1つの可変領域と第1、第2、第3の定常領域からなり、各軽鎖は、1つの可変領域と1つの定常領域からなる。哺乳動物の重鎖は、α、δ、ε、γ及びμに分類することができ、哺乳動物の軽鎖は、λ又はκに分類することができる。抗体は、「Y」型を呈し、Y字型構造のネックは、2本の重鎖の第2と第3の定常領域からなり、それらはジスフィルド結合によって結合される。「Y」型構造の各アームは、そのうちの1本の重鎖の可変領域と第1の定常領域を含み、1本の軽鎖の可変領域及び定常領域と結合する。軽鎖と重鎖の可変領域は、抗原の結合を決定する。各鎖の可変領域は、いずれも3つの相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域を含む。軽鎖(L)のCDRは、VLCDR1、VLCDR2、VLCDR3を含み、重鎖(H)のCDRは、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3を含む。本発明で開示される抗体と抗原結合断片のCDR境界は、Kabat、Chothia又はAl-Lazikani命名法によって命名又は認識されることができる。(AI-Lazikani,B.,Chothia,C.,Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.,273(4):927(1997);Chothia,C.ら,J.Mol.Biol.,186(3):651-63(1985);Chothia,C. and Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.,196:901(1987);Chothia,C.ら,Nature,342(6252):877-83(1989);Kabat,E.A.ら,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。ここで、3つのCDRは、CDRよりも高度に保存され、ステント支持超可変ループを形成するフレームワーク領域(FR)と呼ばれる側部連続部によって分離されている。重鎖及び軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、様々なエフェクター機能を有する。抗体は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいていくつかの種類に分けることができる。α、δ、ε、γ及びμ重鎖を含有するか否かによって、抗体は、それぞれ、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという5つの主な分類又は異性体に分けることができる。いくつかの主要な抗体の分類は、IgG1(γ1重鎖)、IgG2(γ2重鎖)、IgG3(γ3重鎖)、IgG4(γ4重鎖)、IgA1(α1重鎖)又はIgA2(α2重鎖)などのサブクラスに分類されることができる。
【0044】
本出願における「抗原結合断片」は、1つ又は複数のCDRを含む抗体部分、又は抗原に結合するが完全な抗体構造を有さない任意の他の抗体断片によって形成された抗体断片を意味する。抗原結合断片の例としては、二重機能性抗体(diabody)、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスフィルド結合が安定しているFv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスフィルド結合が安定している二重機能性抗体(ds diabody)、一本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体(2価の二重機能性抗体)、2価一本鎖抗体(BsFv)、多重特異性抗体、ラクダ化シングルドメイン抗体(camelized single domain antibody)、ナノ抗体、ドメイン抗体及び2価ドメイン抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。抗原結合断片は、母体抗体と同じ抗原に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、特定のヒト抗体からの1つ又は複数のCDRを含み、1つ又は複数の異なるヒト抗体からのフレームワーク領域に転送することができる。
【0045】
抗体の「Fab」断片は、1本の軽鎖(可変領域及び定常領域を含む)と1本の重鎖の可変領域及び定常領域の一部がジスフィルド結合によって結合した抗体分子の部分を意味する。
【0046】
「Fab’」断片は、ヒンジ領域の一部を含むFab断片を意味する。
【0047】
「F(ab’)2」は、Fabの二量体を意味する。
【0048】
抗体のFc領域は、様々な異なるエフェクター機能、例えばADCC及びCDCを担当するが、抗原の結合に関与しない。
【0049】
抗体の「Fv」領域は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片を指し、1本の軽鎖の可変領域と1本の重鎖の可変領域からなる。
【0050】
「一本鎖Fv抗体」又は「scFv」は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とが直接又は1つのペプチド鎖を介して連結されたエンジニアリング抗体(Huston JSら,Proc Natl Acad Sci USA,85:5879(1988))を意味する。
【0051】
「一本鎖抗体Fv-Fc」又は「scFv-Fc」は、ある抗体Fc領域に連結されたscFvからなるエンジニアリング抗体を意味する。
【0052】
「ラクダ化シングルドメイン抗体(Camelized single domain antibody)」、「重鎖抗体」又は「HCAb(Heavy-chain-only antibodies、HCAb)」は、いずれも、2つのVHドメインを含むが、軽鎖を含まない抗体を指す(Riechmann L.及びMuyldermans S.,J Immunol Methods.231(1-2):25-38(1999);Muyldermans S.,J Biotechnol.74(4):277-302(2001);WO94/04678;WO94/25591;U.S.Patent No.6,005,079)。重鎖抗体は、最初にラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ及びアルパカ)より誘導されて得る。軽鎖の欠失にもかかわらず、ラクダ化抗体(camelized antibodies)は、抗原結合の全機能を確証された(Hamers Casterman C.ら,Nature 363(6428):446-8(1993);Nguyen VK.ら,「Heavy-chain antibodies in Camelidae:a case of evolutionary innovation,Immunogenetics.54(1):39-47(2002);Nguyen VK.ら,Immunology.109(1):93-101(2003))。重鎖抗体の可変領域(VHドメイン)は、既知の最小の獲得免疫による抗原結合単位Koch-Nolte F.ら,FASEB J.21(13):3490-8.Epub(2007))である。
【0053】
「ナノ抗体」は、重鎖抗体由来の1つのVHドメインと2つの定常領域CH2及びCH3からなる抗体断片を意味する。
【0054】
「二重機能性抗体(diabody)」は、同一のポリペプチド鎖に連結されたVHドメイン及びVLドメインを含む2つの抗原結合部位を含有する小さな抗体断片を含む(Holliger P.ら,Proc Natl Acad Sci USA.90(14):6444-8(1993);EP404097;WO93/11161参照)。2つのドメイン間のアダプターは非常に短く、同じ鎖上の2つのドメインを互いにペアにすることができないため、2つのドメインを別の鎖の相補ドメインとペアにさせられ、2つの抗体結合部位を形成する。これらの2つの抗体結合部位は、同一又は異なる抗原(又は抗原エピトープ)を標的として結合することができる。
【0055】
「ドメイン抗体」は、1本の重鎖可変領域又は1本の軽鎖可変領域のみを含む抗体断片を意味する。場合によっては、2つ又は複数のVHドメインは、1つのポリペプチドアダプターにより共有結合されて2価ドメイン抗体を形成する。2価ドメイン抗体の2つのVHドメインは、同一又は異なる抗原を標的として作用することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、「(dsFv)2」は、2つのVH遺伝子の間が1本のポリペプチドアダプターによって連結され、ジスフィルド結合によって2つのVL基と結合する3本のペプチド鎖を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、「二重特異ds二重機能性抗体」は、VL1-VH2(1つのポリペプチドアダプターによって連結される)及びVH1-VL2(1つのポリペプチドアダプターによって連結される)を含有し、両者は、VH1とVLlとの間でジスフィルド結合によって結合される。
【0058】
「二重特異性dsFv」又は「dsFv-dsFv」は、VH1-VH2基では、両方の重鎖がポリペプチドアダプター(例えば、長い弾性アダプター)によって連結され、そしてジスフィルド結合によってそれぞれVL1及びVL2基と結合され、ジスフィルド結合によってペアする各重鎖軽鎖が異なる抗原特異性を有する3つのポリペプチド鎖を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、「scFv二量体」は、量化された2つのVH-VL(ポリペプチドアダプターによって連結される)基を含む2価の二重機能性抗体又は2価の一本鎖抗体(BsFv)であり、ここで、2つの基のVHは、他方の基のVLと協働して、同じ抗原(又は抗原エピトープ)又は異なる抗原(又は抗原エピトープ)を標的として結合することができる2つの結合部位を形成する。別のいくつかの実施形態では、「scFv二量体」は、互いに連結されたVL1-VH2(ポリペプチドアダプターによって連結される)及びVH1-VL2(ポリペプチドアダプターによって連結される)を含む二重特異性二重機能性抗体であり、ここで、VH1とVL1とが協働して、VH2とVL2とが協働し、且つ各協働ペアが異なる抗原特異性を有する。
【0060】
抗体又は抗原結合断片に用いられる場合、本出願で使用される用語「完全ヒト」は、前記抗体又は抗原結合断片が、あるアミノ酸配列があるか、又は前記アミノ酸配列からなり、前記アミノ酸配列が、ヒト又はヒト免疫細胞から生産されるか、又は例えばヒト抗体ライブラリーを利用するトランスジェニック非ヒト動物などの非ヒト由来の抗体のアミノ酸配列、又はヒト抗体をコードする他の配列に対応することを意味する。いくつかの実施形態では、完全ヒト抗体は、非ヒト抗体由来のアミノ酸残基(特に抗原結合残基)を含まない。
【0061】
抗体又は抗原結合断片に用いられる場合、本出願で使用される用語「ヒト化」は、非ヒト動物由来のCDR、ヒト由来のFR領域、及びヒト由来の定常領域(適用する場合)を含む抗体又は抗原結合断片を意味する。ヒト化抗体又は抗原結合断片は、低下した免疫原性を有するため、特定の実施形態においてヒトの治療剤として利用可能である。いくつかの実施形態では、前記非ヒト動物は、哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、又はハムスターである。いくつかの実施形態では、前記ヒト化抗体又は抗原結合断片は、CDR配列が非ヒト由来であることを除き、基本的に全てヒト由来の配列からなる。いくつかの実施形態では、前記ヒト由来のFR領域は、それが由来するヒト抗体と同じアミノ酸配列を含んでもよく、又はいくつかのアミノ酸の変化、例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個以下のアミノ酸の変化を含んでもよい。いくつかの実施形態では、当該アミノ酸変更は、重鎖FR領域にのみ存在してもよく、軽鎖FR領域にのみ存在してもよく、又は2つの鎖中に同時に存在してもよい。いくつかの好ましい実施形態では、前記ヒト化抗体は、ヒトFRl-3、ヒトJH及びJKを含む。
【0062】
本出願で使用される用語「キメラ」は、1つの種に由来する重鎖及び/又は軽鎖の一部を有し、前記重鎖及び/又は軽鎖の残部が異なる種に由来する抗体又は抗原結合断片を意味する。例示的な例において、キメラ抗体は、ヒト由来の定常領域と、非ヒト動物、例えばマウス由来の可変領域とを含んでもよい。
【0063】
本出願における「特異的に結合する」又は「特異的な結合」は、両分子間の非ランダム結合反応、例えば抗体と抗原との間の反応を意味する。特定の実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合断片は、ヒト及び/又はサルAXLタンパク質に特異的に結合し、かつその結合親和力(KD)が≦10-6Mである。本出願におけるKDは、解離速度と結合速度との比(koff/kon)を意味し、表面プラズモン共鳴の方法によって測定することができ、例えば、Biacoreのような器具を使用する。
【0064】
特に明記しない限り、本発明に記載の抗体の重軽鎖定常領域は、それぞれヒトIgG1及びκ鎖である。
【0065】
本出願において、アミノ酸配列に用いられる場合、「保存的置換」は、1つのアミノ酸残基を類似する物理化学的性質を持つ側鎖を有する別の1つのアミノ酸残基に置き換えることを意味する。例えば、疎水性側鎖アミノ酸残基間(例えば、Met、Ala、VaL、Leu及びIle)、中性親水性側鎖残基間(例えば、Cys、Ser、Thr、Asn及びGln)、酸性側鎖残基間(例えばAsp、Glu)、塩基性側鎖アミノ酸間(例えばHis、Lys及びArg)又は芳香族側鎖残基間(例えば、Trp、Tyr及びPhe)に保存的置換を行うことができる。当分野では、保存的置換は、通常、タンパク質配座構造の著しい変化を引き起こさないから、タンパク質の生物活性を保留することができることが既知である。
【0066】
アミノ酸配列(又は核酸配列)に用いられる場合、「パーセント配列同一性」は、配列アラインメントを行い、且つ必要に応じて同一のアミノ酸(又は核酸)の数が最大になるように間隔を導入した後、候補配列において、参照配列と同じアミノ酸(又は核酸)残基が前記候補配列のアミノ酸(又は核酸)残基に占める百分率を意味する。前記アミノ酸残基の保存的置換は、同じ残基と考えられてもよいし、考えられなくてもよい。当分野で開示されたツールによって配列アラインメントすることで、アミノ酸(又は核酸)配列のパーセント配列同一性を決定することができる。当業者であれば、例えば適切なアルゴリズムを選択することによって、前記ツールのデフォルトパラメータを使用してもよいし、アラインメントの必要に応じてパラメータを適切に調整してもよい。
【0067】
本出願で使用される「T細胞」は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、Tヘルパー1型T細胞、Tヘルパー2型T細胞、Tヘルパー17型T細胞及び抑制性T細胞を含む。
【0068】
本出願で使用される「エフェクター機能」は、抗体のFc領域が、そのエフェクター、例えばC1複合体とFc受容体と結合する生物活性を意味する。例示的なエフェクター機能としては、抗体とC1複合体上のC1qとの相互作用によって誘導される補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体のFc領域とエフェクター細胞上のFc受容体との結合によって誘導される抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び貪食を含む。
【0069】
本出願における「がん」又は「がん症状」は、腫瘍又は悪性細胞の成長、増殖又は転移によって媒介され、固形腫瘍と非固形腫瘍、例えば白血病を引き起こす任意の医学的状態を意味する。本発明における「腫瘍」は、腫瘍及び/又は悪性細胞の実体物質を意味する。
【0070】
ある状態に対する「治療」又は「療法」は、ある状態を予防又は軽減すること、ある状態が発症は進行する速度を低下させること、ある状態に進行するリスクを減少させること、ある状態に関連する症状の進行を予防又は遅延させること、ある状態に関連する症状を減少又は終息させること、ある状況の完全又は部分的な逆転を産生させること、ある状態を治癒させること、又は以上の組み合わせを含む。がんにとって、「治療」又は「療法」は、腫瘍又は悪性細胞の成長、増殖又は転移、又は上記のいくつかの組み合わせを阻害又は遅延させることを意味してもよい。腫瘍にとって、「治療」又は「療法」は、腫瘍の全部又は一部を除去すること、腫瘍の成長及び転移を阻害又は遅延させること、腫瘍の進行を予防又は遅延させること、又は上記のいくつかの組み合わせを含む。
【0071】
「単離された」物質は、人工的に自然状態から変化している。自然界においてある「単離された」物質又は成分が出現した場合、それはすでに変更されているか、又はその元の状態から離脱されているか、又はその両方が発生している。例えば、ある生体動物の体内に天然に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチドは、単離されていないが、これらのポリヌクレオチド又はポリペプチドが、天然の状態でそれと共存する物質と十分に単離し、十分に純粋な状態で存在していれば、「単離された」と考えることができる。特定の実施形態では、抗体及び抗原結合断片の純度は、少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%であり、電気泳動方法(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動)、又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー又は逆相HPLC)によって決定される。
【0072】
本発明における「ベクター」は、あるタンパク質をコードするポリヌクレオチドをその中に操作的に挿入して、このタンパク質を発現させることができる輸送媒体を意味する。ベクターは、自身の携帯する遺伝物質要素が宿主細胞内にて発現されるように、宿主細胞を形質転換、形質導入又はトランスフェククトするために使用することができる。例えば、ベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来人工染色体(PAC)、ファージ例えばλファージ又はM13ファージ、及び動物ウイルスなどが挙げられる。ベクターとして使用される動物ウイルスの種類は、レトロウイルス(レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えばSV40)を含む)がある。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント及びレポーター遺伝子のような複数の発現制御エレメントを含有してもよい。また、ベクターは、複製開始部位をさらに含有してもよい。ベクターはまた、これらに限定されないが、ウイルス粒子、リポソーム、またはタンパク質外殻のような細胞へのアクセスを助ける成分を含んでもいい。
【0073】
本発明における「宿主細胞」は、外来ポリヌクレオチド及び/又はベクターが導入された細胞である。
【0074】
本発明におけるAXLタンパク質を標的とする抗体について、いくつかの実施形態では、本出願は、AXLタンパク質を標的とする例示的な抗体Hu001-5抗体、Hu001-7抗体、Hu001-11抗体、Hu001-14抗体を提供する。
【0075】
前記CDR配列を1つ又は複数のアミノ酸の置換を含むように修飾することにより、向上した生物学的活性、例えば向上したAXLタンパク質との結合親和性を得ることができることは当業者であれば理解するできる。例えば、ファージディスプレイ技術を利用して抗体変異体ライブラリー(例えばFab又はFcFv変体)を産生して発現させ、その後AXLタンパク質との親和性のある抗体をスクリーニングすることができる。別の例では、AXLタンパク質への前記抗体との結合をコンピュータソフトウェアでシミュレートし、抗体に結合界面を形成するアミノ酸残基を同定することができる。これらの残基の置換を回避して結合親和性の低下を防止したり、これらの残基を標的として置換してより強い結合を形成したりしてもよい。いくつかの実施形態では、CDR配列の少なくとも1つ(又は全部)の置換は、保存的置換である。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記抗体又は抗原結合断片は、1つ又は複数のCDR配列を含み、これらの配列は、SEQ ID NO: 9-32の配列と少なくとも80%(例えば少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するとともに、その親抗体と類似又はそれより高いAXLタンパク質との結合親和性を保持している。前記親抗体は、基本的に同じ配列を有するが、その相応するCDR配列は、SEQ ID NO: 9-32に記載の配列と100%の配列同一性を有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、本出願に記載の抗体又は抗原結合断片は、表面プラズモン共鳴法により測定することで、≦10-7Mの結合親和性(KD)でAXLタンパク質に特異的に結合することができる。結合親和性値は、抗原と抗原結合分子との結合がバランスに達したときの解離速度と結合速度との比(koff/kon)により算出されるKD値で表すことができる。前記抗原結合親和性(例えばKD)は、例えばBiacoreなどの器具を用いたプラズモン共鳴結合法を含む当分野で従来既知の適切な方法によって適切に決定することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本出願に記載の抗体又は抗原結合断片は、1ng/mL~10μg/mLのEC50(即ち、半数結合濃度)でAXLタンパク質に結合する。抗体又は抗原結合断片とAXLタンパク質との結合は、ELISAなどのサンドイッチ法、Westernブロッティング、FACS又はその他の結合試験などの従来既知の方法により測定することができる。例示的な例において、被測定抗体(即ち、一次抗体)を、固定化されたAXLタンパク質又はAXLタンパク質を発現する細胞に結合させた後、未結合抗体を洗い流し、標識された二次抗体を導入することで、それは一次抗体と結合することができるため、結合した二次抗体を検出することができる。固定化されたAXLタンパク質を用いる場合には、マイクロプレートにて前記検出を行うことができ、又はAXLタンパク質を発現する細胞を用いる場合には、FACS分析を用いて前記検出を行うことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、本出願に記載の抗体又は抗原結合断片は、10ng/mL~10μg/mL(FACS分析を用いて測定した)のEC50(即ち50%の有効濃度)でAXLタンパク質に結合する。
【0080】
いくつかの実施形態では、本出願に記載の抗体の利点は、腫瘍細胞、精製された腫瘍抗原、及び免疫刺激因子によってトランスフェクトされた細胞、腫瘍ワクチンなどの免疫原性を有する物質と併用できることである。また、前記AXLタンパク質を標的とする抗体及びその抗原結合断片は、標準化学療法及び放射線療法、標的に基づく小分子療法、その他の新興免疫チェックポイント調節剤療法を含む併用治療に含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記抗体及びその抗原結合断片は、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異又は多価抗体のベース分子として使用することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本出願に記載の抗体及びその抗原結合断片は、ラクダ化シングルドメイン抗体(camelized single chain domain antibody)、二重機能性抗体(diabody)、scFv、scFv二量体、BsFv、dsFv、(dsFv)2、dsFv-dsFv’、Fv断片、Fab、Fab’、F(ab’)2、ds二重機能性抗体(ds diabody)、ナノ抗体、ドメイン抗体又は2価ドメイン抗体である。
【0082】
いくつかの実施形態では、本出願に記載の抗体は、免疫グロブリン定常領域を含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、重鎖及び/又は軽鎖定常領域を含む。前記重鎖定常領域は、CH1、CH1-CH2又はCH1-CH3領域を含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、所望の特性を得るために、1つ又は複数の修飾をさらに含んでもよい。例えば、前記定常領域を修飾して、FcRn受容体が1つ又は複数のシステイン残基に結合するか又はそれを導入するように、1つ又は複数のエフェクター機能を低減又は除去することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記抗体及びその抗原結合断片は、コンジュゲートをさらに含む。本発明における抗体又はその抗原結合断片は、様々なコンジュゲートに連結することができると考えられる(例えば、「Conjugate Vaccines」、Contributions to Microbiology and Immunology、J.M.Cruse and R.E.Lewis、Jr.(eds.)、Carger Press、New York(1989)参照)。これらのコンジュゲートは、共有結合、親和結合、インターカレーション、配位結合(coordinate binding)、錯化、結合、混合又は添加などの他の方式で前記抗体又は抗原抱合体と連結することができる。いくつかの実施形態では、本発明で開示される抗体及び抗原結合断片に、工学的方法によって、エピトープ結合部分以外の特定部位を含有させることができ、これらの部位は、1つ又は複数のコンジュゲートを結合するために用いることができる。例えば、このような部位は、システイン残基及びヒスチジン残基などの1つ又は複数の反応性アミノ酸残基を含んでもよく、抱合体との共有結合を補助するために用いられる。いくつかの実施形態では、抗体は、コンジュゲートに間接的に連結されてもよく、又は別のコンジュゲートを介して連結されてもよい。例えば、前記抗体又はその抗原結合断片は、ビオチンに結合して、2番目のコンジュゲートに間接的に結合され、アビジンに連結することができる。前記コンジュゲートは、検出可能な標識、医薬動態修飾部分、精製部分又は細胞傷害活性部分であってもよい。検出可能な標識の例としては、蛍光標識(例えばフルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリスリン又はテキサスレッド)、酵素基質標識物質(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、炭水化物オキシダーゼ又はβ-Dガラクトシダーゼ)、安定同位体又は放射性同位体、発色団部分、ジゴキシン、ビオチン/アビジン、DNA分子又は金を含み、検出を行う。いくつかの実施形態では、前記コンジュゲートは、抗体の半減期の延長に寄与するPEGなどの医薬動態修飾部分であってもよい。その他の好適なポリマーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体などが挙げられる。いくつかの実施形態では、前記コンジュゲートは、精製部分、例えば磁気ビーズであってもよい。「細胞傷害活性部分」は、細胞に対して有害であるか、又は細胞を壊死又は死滅させる可能性のある任意の試薬であってもよい。細胞傷害活性部分としては、例えば、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチル、エリスリン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、l-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン及びその類似体、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-メルカプトグアニン、シタラビン、5フルオロウラシルダカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン塩酸塩、チオテパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)とロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCとシス-ジクロロジアミンプラチナ(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン系抗生物質(例えばダウノルビシン(旧ダウノマイシン)とアドリアマイシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンとアントラマイシン(AMC))及び抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチンとビンブラスチン)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
ポリヌクレオチド及び組換え方法
当分野で公知の遺伝子工学技術を用いて、本出願に記載の抗体及びその抗原結合断片のアミノ酸配列を対応するDNAコード配列に変換することができる。遺伝暗号の縮退性により、変換して得られたDNA配列は、完全に一致することができるが、コードされたタンパク質配列は不変のままである。
【0085】
当分野で公知の組換え技術を用いて、前記抗体及びその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞に導入してクローン化(DNA増幅)又は遺伝子発現に用いることができる。別の実施形態では、前記抗体及びその抗原結合断片は、当分野で公知の相同組換えの方法によって調製することができる。様々なベクターは、選択可能である。ベクター成分は、通常、シグナル配列、複製開始点、1つ又は複数の標識遺伝子、エンハンサー配列、プロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1a)及び転写終結配列の2種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
いくつかの実施形態では、前記ベクター系は、哺乳動物、細菌、酵母系などを含み、また、プラスミド、例えばpALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pELpGEMEX、pGEX、pCLpCMV、pEGFP、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS420、pLexA、pACT2などのその他のラボから入手可能な、又は市販のベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適なベクターは、プラスミド又はウイルスベクター(例えば複製欠損型レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)を含んでもよい。
【0087】
前記抗体及びその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞に導入してクローン又は遺伝子発現に用いることができる。本発明において、前記ベクターにおけるDNAをクローン又は発現するのに適用する宿主細胞は、原核細胞、酵母又は上記高次真核細胞である。本発明の使用に適用される原核細胞は、真菌を含み、例えば腸内細菌科(例えば大腸菌)、腸内細菌属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、マウスチフス菌などのサルモネラ属、マルセッセンスなどのセラチア属、及び赤痢菌属、バチルス・サブティリス並びバキルスリケニホルミスなどの桿菌属、緑膿菌などのシュードモナス、及びストレプトミケスなどのグラム陰性菌又はグラム陽性菌などが挙げられる。
【0088】
原核細胞以外に、糸状真菌又は酵母などの真核微生物も、宿主細胞として抗体をコードするベクターをクローニング又は発現することができる。サッカロミセス・セルビシエ、又はパン酵母は、最もよく使用される低等真核宿主微生物である。しかしながら、多くの他の属、種及び株は、いずれも比較的よく使用されており、且つ本発明において適用され、例えば、シゾサッカロマイセス・ポンベ、クルイベロマイセス属乳酵母、クルイベロマイセス・フラジリス(ATCC12424)、クルイベロマイセス・ブルガリクス(ATCC16045)、クルイベロマイセス・ウィッカーラミ(ATCC24178)、クルイベロマイセス・ワルティ(ATCC56500)、クルイベロマイセス・ドロソフィラルム(ATCC36906)、クルイベロマイセス・サーモトレランスとクルイベロマイセス・マルシアヌス:ヤロウイア・リポリティカ(EP402226)などのクルイベロマイセス属宿主、ピキア・パストリス(EP183070)、カンジダ:トリコデルマ・レセイ(EP244234)、アカパンカビ、シュワンニオミセス・オキシデンタリスなどのシュワンニオミセス・オキシデンタリス、及びニューロスポラ、ペニシリウム、クルブラリア、及びなどのアスペルギルス(アスペルギルス・ニデュランス及びアスペルギルス・ニジェールなど)などの糸状真菌がある。
【0089】
本発明によって提供される糖化抗体又はその抗原結合断片を発現するのに適した宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎細胞としては、植物、昆虫細胞が挙げられる。複数種のバキュロウイルス株(baculoviral strains)及びその変体並びに対応する許可性昆虫宿主細胞(permissive insect host cells)は、例えば、ツマジロクサヨトウ(毛虫)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ショウジョウバエ)及びカイコなどの宿主に多く見られるの。トランスフェクション用の様々なウイルス株は、例えば、アウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルスと、カイコ核多角体病ウイルスのBm-5変異体などの公的に入手可能であるものであり、、これらのウイルスはいずれも本発明で使用することができ、特にツマジロクサヨトウ細胞をトランスフェクションするために用いることができる。綿花、トウモロコシ、ジヤガイモ、大豆、ペチュニア、トマト及びタバコの植物細胞培養も宿主として用いることができる。
【0090】
しかしながら、最も興味深いのは、脊椎細胞であり、脊椎細胞の培養(組織培養)は通常の操作となっている。使用可能な哺乳動物宿主細胞としては、SV40によって形質転換されたサル腎細胞CV1系(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胎芽腎細胞株(293又は懸濁培養した293細胞サブクローン、Graham et al.,].Gen Virol.36:59(1977))、赤ん坊ハムスター腎細胞(B血、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO,Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))、マウスセルトリ細胞(TM4,Ma ther,Biol.Reprod.23:243-251(1980))、サル腎細胞(CV1ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76,ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA,ATCC CCL 2)、イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL75)、ヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL51)、TRI細胞(Matherら,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982))、MRC 5細胞、FS4細胞及びヒト肝臓がん細胞系HepG2)が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、前記宿主細胞は、293F細胞である。
【0091】
前記抗体及びその抗原結合断片を産生する発現又はクローニングベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、修飾された後、プロモーターの誘導、形質転換細胞の選択又は標的配列をコードする遺伝子を増幅するのに適した通常の栄養培地で培養する。
【0092】
本発明では、前記抗体及びその抗原結合断片を産生するための宿主細胞は、当分野で公知の様々な培地で培養することができる。前記培地は、当分野で公知の適切な濃度の任意の他の必要な添加剤をさらに含有してもよい。前記培地の条件、例えば温度、pH値などの類似条件は、発現に用いる宿主細胞を選択することに従来使用された条件であり、当業者によく知られている。
【0093】
組換え技術を用いる場合、前記抗体は、細胞内、壁膜空間にて生成されるか、又は培地に直接分泌されることができる。前記抗体が細胞内にて生成されたる場合、例えば、遠心分離又は超音波の方法により、宿主細胞又は分解断片の粒子の残骸をまず除去することができる。Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992)には、大腸菌壁膜空間に分泌された抗体を単離する方法が記載されている。簡単に説明すると、酢酸ウラン(pH3.5)、EDTA及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)が存在する条件下でセルペースト(cell paste)を約30分間以上溶ける。遠心分離により細胞破片を除去する。前記抗体が培地に分泌された場合、一般的に、まず市販のタンパク濃度フィルター、例えば、lAmicon又はMillipore Pellicon ultrafiltration unitを用いて、当該発現系の上澄み液を濃縮する。いずれかの上記ステップにおいても、タンパク質分解を抑制するためのPMSFなどのプロテアーゼ阻害剤、偶発的な汚染物質の成長を防止するための抗生物質を添加することができる。
【0094】
前記細胞から得られた抗体は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、DEAE-セルロースイオン交換クロマトグラフィーカラム、硫酸アンモニウム沈殿、塩析及びアフィニティークロマトグラフィーなどの精製方法を用いて精製することができ、そのうち、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技術である。前記抗体の種類及び前記抗体における任意の免疫グロブリンが存在するFcドメインは、タンパク質Aが親和リガンドとして適切であるか否かを決定する。タンパク質Aは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark et al.,J.lmmunol.Meth.62:13(1983))。タンパク質Gは、全てのマウス由来の異性体及びヒトγ3に適用する(Guss et al.,EMBO J.5:1567 1575(1986))。アガロースは、最もよく使用される親和リガンド付着基質であるが、他の基質を選んでもよい。アガロースに比べて、機械的な力が安定する基質、例えば多孔質ガラス又はポリ(スチレン)ベンゼンは、より速い流速及びより短い処理時間を実現できる。当該抗体がCH3ドメインを含有する場合、Bakerbond ABX.TM樹脂を用いて精製することができる(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)。他のタンパク質精製の技術、例えばイオン交換カラムにおける分留、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカゲルクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換樹脂に基づくヘパリンアガロースゲルクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトグラフィーフォーカス、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿も、所望により得られた抗体から決定することができる。
【0095】
任意の予備精製ステップ後、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーの方法により、興味のある抗体及び不純物を含有する混合物を処理し、pH約2.5~4.5の溶出緩衝液で、好ましくは低塩濃度で行うことができる(例えば、約0~0.25M塩濃度)。
【0096】
キット
本出願は、前記抗体又はその抗原結合断片を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、前記キットは、生体サンプルにおけるAXLタンパク質の存在状況又はレベルを検出するために用いられる。前記生体サンプルは、細胞又は組織を含んでもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、前記キットは、検出可能な標識にコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、未標識の抗体を含み、未標識の抗体に結合可能な標識の二次抗体をさらに含む。前記キットは、取扱説明及びキットにおいて各コンポーネントを分離させたパッケージをさらに含むことができる。
【0098】
いくつの実施形態では、前記抗体は、サンドイッチ測定、例えばELISA又はイムノクロマトグラフィー測定のために基質又は器具に接続される。適用される基質又は器具は、例えば、マイクロプレート及び試験紙であってもよい。
【0099】
医薬組成物及び治療方法
本出願は、前記抗体を含む医薬組成物及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体をさらに提供する。
【0100】
本出願で開示される医薬組成物に使用される医薬的に許容される担体は、例えば、医薬的に許容される液体、ゲル剤又は固体担体、水相媒体、非水相媒体、抗微生物物質、等張物質、緩衝液、酸化防止剤、麻酔剤、懸濁剤/分散剤、整合剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤又は非毒性補助物質、他の当分野で公知の成分又は上記の複数の組み合わせを含んでもよい。
【0101】
適用できる成分は、例えば、酸化防止剤、充填剤、粘着剤、崩壊剤、緩衝液、防腐剤、潤滑剤、矯味剤、増粘剤、着色剤、乳化剤又は糖及びシクロデキストリンなどの安定剤を含んでもよい。適用できる酸化防止剤は、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、メルカプトグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトソルビトール、ブチルメチルアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及び/又は没食子酸プロピルを含んでもよい。本発明で開示される抗体を含む組成物において、1つ又は複数のメチオニンなどの酸化防止剤を含むと、前記抗体の酸化を低下させることができる。酸化作用の減少により、結合親和力の低下を防止又は減少させることによって、抗体の安定性を向上させ、保存可能期限を延長することができる。
【0102】
更に言えば、医薬的に許容される担体は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液注射液、等張ブドウ糖注射液、無菌水注射液、又はグルコースと乳酸リンガー注射液などの水相媒体と、植物由来の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、ごま油、又はピーナッツ油などの非水相媒体、細菌抑制又は真菌抑制濃度での抗菌物質、塩化ナトリウム又はグルコースなどの等張剤、リン酸塩又はクエン酸塩緩衝液などの緩衝液、硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤、塩酸プロカインなどの局所麻酔剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルピロリドンなどの懸濁剤と分散剤、ポリソルベート80(ポリソルベート-80)などの乳化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)又はEGTA(エチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸)、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸などの統合試薬を含むことができる。担体としての抗菌剤は、フェノール類又はクレゾール、水銀製剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、クロルフェノキシアンモニウム及びクロルフェネチルアンモニウムを含む複数回用量容器中の医薬組成物に添加することができる。適用できる賦形剤は、例えば、水、塩、グルコース、グリセロール又はエタノールを含むことができる。適用できる非毒性補助物質は、例えば、乳化剤、pH値緩衝剤、安定剤、可溶化剤、又は酢酸ナトリウム、ソルビタンラウレート、トリエタノールアミンオレート、又はシクロデキストリンのような物質を含むことができる。
【0103】
前記医薬組成物は、液体溶液、懸濁液、乳剤、丸剤、カプセル剤、錠剤、持続放出製剤又は粉末であってもよい。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準担体を含むことができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、注射可能な組成物に製剤化される。注射可能な医薬組成物は、任意の従来の形態、例えば、液体溶媒、懸濁剤、乳化剤、又は液体溶媒、懸濁剤又は乳化剤を生成するのに適した固体形態で調製することができる。注射製剤は、すぐに使用できる無菌及び/又はパイロジェンフリー溶液、凍結乾燥粉末などの使用前に溶媒と結合した無菌乾燥の可溶物、皮下錠、注射すれば使用できる無菌懸濁剤、使用前に媒体と結合した無菌乾燥不溶製品、及び無菌及び/又はパイロジェンフリーの乳剤を含むことができる。溶媒は、水相又は非水相であってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、単位投与量の注射製剤は、アンプル、チューブ、又は針を有するシリンジ内に収容される。当分野では、全ての注射投与製剤は、無菌でパイロジェンフリーであることが知られている。
【0106】
いくつかの実施形態では、本出願で開示される抗体又はその抗原結合断片を、ある適切な溶媒に溶解させることによって、滅菌凍結乾燥粉末を調製することができる。前記溶媒は、粉末又は粉末から調製された組換え溶液の安定性を向上させ、又は粉末又は組換え溶液の他の薬理成分を改善することができる。適用できる賦形剤は、水、グルコース、ソルビトール、フルクトース、トウモロコシシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、黒糖又はその他の適用できる物質が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒は、緩衝液、例えばクエン酸緩衝液、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウム緩衝液又は他の当業者がよく知られている緩衝液を含んでもよく、一実施形態では、緩衝液のpHは、中性である。当分野で公知の標準条件で、前記溶液に対して次のろ過除菌を行い、その後、凍結乾燥して所望の製剤を調製する。一実施形態では、得られた溶媒をバイアルに分注して凍結乾燥させる。各バイアルは、単回投与量又は複数回投与量の前記AXLタンパク質を標的とする抗体又はその抗原結合断片又はその組成物を収容することができる。各バイアルにおける収容量は、毎回の投与量に必要な量、又は複数回の投与量に必要な量(例えば10%過剰)よりも僅かに高くすることができ、それによってサンプリングの正確性及び投与の精度を保証する。凍結乾燥粉末は、適切な条件で、例えば約4℃から室温の範囲内で貯蔵することができる。
【0107】
凍結乾燥粉末を注射用水で再溶解して注射投与用製剤を得る。一実施形態では、凍結乾燥粉末を無菌パイロジェンフリー水又は他の適用できる液体担体に添加して再溶解させることができる。精確な量は、選択された療法によって決定され、経験値に基づいて決定してもよい。
【0108】
治療有効量の本出願に記載の抗体を、それを必要とする被験者に投与することを含む、治療方法をさらに提供する。
【0109】
本出願にて提供される抗体の治療有効投与量は、当分野で公知の様々な要因、例えば、体重、年齢、既往歴、現治療、対象者の健康状態及び交差感染の可能性、アレルギー、超過敏及び副作用、並びに投与経路と腫瘍進行の程度に依存する。当業者(例えば医師又は獣医)は、これら又は他の条件又は要求に応じて投与量を比例的に低減又は上昇させることができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明によって提供される抗体は、治療有効投与量約0.0lmg/kg~約100mg/kgの間で投与することができる。いくつかの実施形態では、前記抗体は、約50mg/kg以下の投与量で投与され、いくつかの実施形態では、投与量は、10mg/kg以下、5mg/kg以下、1mg/kg以下、0.5mg/kg以下、又は0.1mg/kg以下である。ある特定の投与量は、複数の間隔で投与することができ、例えば、毎日1回、毎日2回又はそれ以上、毎月2回又はそれ以上、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、毎月1回又は2ヶ月又はそれ以上に1回である。いくつかの実施形態では、投与量は、治療プロセスに従って変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、初期投与量は、後続投与量よりも高くてもよい。いくつかの実施形態では、投与量は、治療プロセスにおいて投与対象者の反応に応じて調整される。
【0111】
投与レジメンは、最適な反応(例えば治療反応)に達するように調整されることができる。例えば、単一投与量投与又は一定期間に複数回の分割された投与量投与を行うことができる。
【0112】
本発明で開示される抗体は、当分野で公知の投与手段、例えば注射投与(例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈内点滴、筋肉内注射又は皮内注射を含む静脈注射)又は非注射投与(例えば、経口投与、鼻腔投与、舌下投与、直腸投与又は外用投与)によって投与することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、例えば、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、黒色腫、前立腺がん、腎細胞がん、肉腫、高レベル神経膠腫などの神経膠腫、神経芽細胞腫などの母細胞腫、骨肉腫、形質細胞腫、組織球肉腫、膵臓がん、乳がん、小細胞肺がん及び非小細胞肺がんなどの肺がん、胃がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、大腸がん、造血系がん、睾丸がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、扁平上皮がん、腺がん、AIDS関連リンパ腫、膀胱がん、脳がん、神経系がん、頭頸部がん、頭頚部扁平上皮がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫又は血液がん疾患から選ばれる腫瘍及びがんを含むその分子機構に関連する症状を治療するために用いることができる。
【0114】
使用方法
本出願は、前記抗体を使用する方法をさらに提供する。
【0115】
いくつかの実施形態では、本出願は、本出願に記載の抗体の治療有効量を投与することを含む、個体において前記抗体メカニズムに関連する状況又は症状を治療する方法を提供する。
【0116】
本発明で開示される抗体は、単独投与又は1つ又は複数の他の治療手段又は物質と併用投与することができる。例えば、本発明で開示される抗体は、化学療法、放射線療法、がん治療手術(例えば、腫瘍切除術)、抗ウイルス薬、1つ又は複数の抗嘔吐薬又は他の化学療法による合併症に対する療法、又は任意の他のがん又はウイルスに用いられる治療物質と併用することができる。いくつかのこのような実施形態では、本発明で開示される抗体は、1つ又は複数の治療物質と併用される場合、前記1つ又は複数の治療物質と同時に投与してもよく、いくつかのこのような実施形態では、前記抗体は、同一の医薬組成物の一部として同時に投与してもいい。しかし、他の治療物質と「併用する」抗体は、同時投与又は当該治療物質と同じ組成物において投与する必要がない。本発明における「併用」の意味は、前記抗体と第2種の物質とが異なる投与方式によって投与される場合であっても、他の治療物質の前又は後に投与された抗体も当該治療物質と「併用される」と考えられることをさらに含む。可能な場合には、本発明で開示される抗体と併用される他の治療物質は、当該他の治療物質の製品説明書における方法、又は外科医師用のデスクリファレンス2003(Physicians’Desk Reference,57th Ed;Medical Economics Company;ISBN:1563634457;第57版(2002年11月))、又は他の当分野での公知の方法を参照して、投与してもいい。
【0117】
いくつかの実施形態では、前記治療物質は、がんに対する免疫反応を誘導又は増強することができる。例えば、腫瘍ワクチンは、一部の腫瘍又はがんに対する免疫応答を誘導するために用いることができる。サイトカイン療法は、腫瘍抗原の免疫系への提示を向上させるために用いることができる。サイトカイン療法の例としては、インターフェロンα、β及びγなどのインターフェロン、マクロファージCSF、顆粒球マクロファージCSF及び顆粒球CSFなどのコロニー刺激因子、1L-L、1L-1a、1L-2、1L-3、1L-4、1L-5、1L-6、1L-7、1L-8、1L-9、1L-10、1L-ll及び1L-12などのインターロイキン、TNF-α及びTNF-βなどの腫瘍壊死因子が挙げられるが、これらに限定されない。また、PD-1抗体、TGF-β阻害剤、IL-10阻害剤及びFasリガンド阻害剤などの免疫阻害対象を不活化する試薬を用いることができる。もう一組の試薬は、腫瘍又はがん細胞に対する免疫応答を活性化するもの、例えば、T細胞活性化を向上させるもの(例えば、T細胞共通刺激シグナル伝達経路、例えばCTLA-4、ICOS、OX40、4-1BBなどの経路)、樹状細胞機能及び抗原提示を向上させるものを含む。
【0118】
以下の実施例は、本発明をより良く説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものと理解すべきではない。以下に示す特定の組成物、材料及び方法の全ては、その全体又は一部が本発明の範囲内にある。これら特定の組成物、材料及び方法は、本発明を制限するためのものではなく、単に本発明の範囲内にある特定の実施形態を説明するためのものである。当業者であれば、進歩性を付加することなく、本発明の範囲から逸脱することなく、同等の組成物、材料及び方法を開発することができる。本発明の方法に対してなされた複数の変更は、依然として本発明の範囲内に含まれ得ることを理解されたい。発明者は、このような変動を本発明の範囲に含むことを意図している。
【0119】
実施例1:天然のヒト抗体ファージディスプレイライブラリーの構築及びスクリーニング
AXL抗原調製:ヒト組換えAXLタンパク質は、novoproteinから購入し、製品番号:C02Bであった。
AXL全ヒト抗体スクリーニングは、三優生物医薬(上海)有限公司に依頼して完了させた。合計四回スクリーニングを行い、四回目で得たクローンを選択してELISAの陽性クローンのELISAスクリーニングを行った。最終的に、2304個のクローンから全部でhAXL-ECDタンパク質に結合できる71個の陽性クローンをスクリーニングした。シーケンス解析、ELISA結合後、最終的に4つのクローンの配列を選択して全長抗体を構築して、さらなる実験を行った。具体的な実施方法は、以下のとおりである。
1.1 陽性クローンシーケンシング及び解析
初歩的なスクリーニング完了後、71個のhAXL-ECDタンパク質に結合できる陽性クローンに番号を付け、2μLの菌液を2mLの2YT培地に吸い取り、37℃、220rpmで一晩培養し、プラスミドを抽出して二代シーケンシングを行った。シーケンシング結果は、SeqManによって元のAB1ファイルを統合し、比較し、非抗体遺伝子配列を除去し、抗体遺伝子整合版のfastaファイルを生成した。その後、DNA配列をMEGA6によりアミノ酸配列に翻訳し、アミノ酸配列によりターミネーター、非通常配列などを含むアミノ酸配列を見つけ、アミノ酸配列のfastaファイルを導出し、陽性抗体クローンの抗体軽鎖と重鎖配列を得、解析比較を経て、配列が新規な抗体配列であった。
1.2 ELISAスクリーニングによるクローン上澄みと抗原hAXL-ECDとの結合親和力
まず、3回目でスクリーニングしたクローンを、300μLの2-YT培地を含有する96ウェルの深ウェルプレートに選別し、37℃で一晩培養し、上澄みには、発現されたFabを含有し、上澄みを取り、勾配希釈した後、2μg/mL hAXL-ECDがコーティングされたELISAプレートに加え、その後、HRP標識されたヤギ抗ヒトFabを二次抗体(ヤギ抗ヒト-HRP,ThermoFisher,31482,1:6000希釈)として検出し、シグナル値が高いほど、親和力が強いことを示す。結果は、
図1A-Gに示すとおりであり、
図1A~
図1Gは、それぞれ本出願の71個のクローンがhAXL-ECDに特異的に結合することができることを示し、ここで、5番、7番、11番及び14番のクローンの親和力が最も高く、5番、7番、11番及び14番のクローンを選択して実験を行い、Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14と命名した。ELISA測定法において、4つの抗体(Hu001-5抗体、Hu001-7抗体、Hu001-11抗体、Hu001-14抗体)のFabは、いずれも良好な親和活性を示した。
シークエンシングにより、その分泌抗体に対応する重鎖可変領域cDNA配列及び軽鎖可変領域cDNA配列が得られた。対応する抗体CDR配列を下記表1に示した。
【表1】
【0120】
実施例2 全長抗体の構築、発現及び精製
本実施例では、実施例1で得られたhAXL-ECD結合に対するブロッキング活性の良い2つのFab抗体をヒトIgG1サブタイプとして構築し、そのうち、軽鎖は、いずれもκ型であり、抗体型は、全ヒト抗体である。
2.1プラスミド構築
スクリーニングによって得られた抗体を含有する菌株から、PCR増幅により抗体の軽、重鎖可変領域断片を取得し、相同組換え方法により、それぞれ軽鎖、重鎖定常領域断片を含有する真核発現ベクタープラスミドAbVec-hIgKappa又はAbVec-hIgG1 WT(
図2)に構築し、完全抗体の軽、重鎖の全長遺伝子に組み合わせ、SEQ ID NO1-8に示される抗体重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をコードした。
構築した抗体の軽重鎖全長遺伝子を含むベクターを、それぞれ大腸菌TOP10(一意にDL1010S)に形質転換して、37℃で一晩培養し、エンドトキシンフリープラスミド抽出キット(OMEGA、D6950-01)を用いて、抗体軽重鎖プラスミドを抽出して真核発現に供した。
2.2抗体の発現精製
Expi293トランジェント発現システム(Thermo Fisher社、製品番号A1435101)を通じて、候補抗体Hu001-5、Hu001-11、Hu001-7、Hu001-14及び対照抗体CCT301-38(US10066238参照)を発現させ、具体的な方法は下記の通りである。Expi293細胞を250mL培養フラスコにて培養し、トランスフェクションした当日、細胞密度が7×10
6個の生細胞/mL程度であり、細胞生存率>98%であることを確認し、37℃で予熱したのExpi293発現培地を用いて細胞を6×10
6個細胞/mL(最終体積75mL)の最終濃度に調整した。4℃で予冷した1mLのExpi293
(TM)発現培地を取って、標的のプラスミド(50μg)を希釈するとともに、1mLのExpi293
(TM)発現培地を用いてトランスフェクション試薬75μL FectoPro(Polyplus社、製品番号PT-116-001)を希釈し、さらに両者を1mL等体積で混合して軽く均一に混合してExpi293
(TM)発現培地/プラスミドDNA混合液に調製し、室温で15minインキュベートし、用意した細胞懸濁液にゆっくり加え、細胞培養シェイカーに置き、37℃、5%CO
2条件で培養した。トランスフェクション後24hに、(最終濃度が0.6μL/mLとなるように)培養系内にFectoPRO boosterを添加し、引き続き37℃、シェイカーと5%CO
2条件下で培養した。トランスフェクションした後の5日目に、同じ体積のExpi293
(TM)発現培地を培養系内にゆっくり添加し、10日間トランスフェクションした後、細胞培養上澄みを収集し、4000gで10分間遠心した後、Protein Gアガロースカラム(GE社、製品番号28903134)を用いて親和精製を行い、100mM酢酸ナトリウム(pH3.0)で目的とするタンパク質を溶出し、1M Tris-HClで中和した後、30kDの限外濾過濃縮管(Millipore社、製品番号UFC901096)を通じて得られたタンパク質をPBS緩衝液に移入した。
4つの候補抗体Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11、Hu001-14及び対照抗体CCT301-38は相対分子量が150kDであり、純度がいずれも90%以上であった。精製抗体のタンパク濃度を超微量分光光度計(Thermo Fisher社、製品番号NanoDrop One C)で測定し、測定したA280数値を抗体理論吸光係数で割った数値を抗体濃度値とし、分注して-80℃に保管した。
【0121】
実施例3 hAXL-ECDに特異的に結合する候補抗体の親和力試験
hAXL-ECDに特異的に結合する候補抗体の親和力は、フローサイトメトリーにより検出された。Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14の計4つのクローンを、それぞれ酸性(PH=6.0)及び中性(PH=7.4)の2種類の条件で検出した。
細胞培養フラスコにてCHO-AXL細胞(上海▲シン▼湾生物科技有限公司によって構築されたもの)培地をDMEM/F-12培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)として培養し、37℃、5%CO
2インキュベーターにて48時間培養した後、上澄みを捨て、0.25%トリプシンで細胞を消化収集した後、細胞を800gの条件で3分間遠心した。上清を捨て、2%FBS洗浄緩衝液細胞を再懸濁した(10
6/mL)。緩衝液のpHを調整して細胞をpH6.0及びpH7.4群に分け、各群にそれぞれ一次抗体(Hu001-5抗体、Hu001-7抗体、Hu001-11抗体、Hu001-14抗体及び陽性対照抗体CCT301-38)を加え、室温で15分間インキュベートした。上澄みを捨て、さらに蛍光標識二次抗体IgG-Fc-PE(BioLegend社、製品番号409304)を加え、引き続き室温で15分間遮光インキュベートした後、機械的に検出した。シグナル値が高いほど、親和力が強いことを示した。
結果は、
図3に示すとおりであり、それは、本発明の抗AXL抗体Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14の親和力をフローデータで示すグラフであり、ここで、
図3Aは、異なるpHにおいて、陽性対照CCT301-38抗体の濃度による親和力の変化を示す模式図であり、
図3B~3Eは、異なるpHにおいて、抗AXL抗体Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14の濃度による親和力の変化を示す模式図であり、本発明の抗体は、陽性対照に対してより高い親和力を有し、且つ酸性条件下では中性条件よりも高い結合能力を有することが明らかである。図から分かるように、Hu001-5抗体実験群とHu001-11抗体実験群の平均蛍光強度は、酸性条件下と中性条件下でともに陽性対照群の約4倍である。酸性条件下でのHu001-5抗体実験群とHu001-11抗体実験群の平均蛍光強度は、いずれも中性条件下での強度値より高く、後者の約1.5倍である。これにより、Hu001-5及びHu001-11は、陽性対照に比べてAXLに対してより高い親和力を有し、且つ酸性条件において中性条件よりも高い結合能力を有することが分かった。
【0122】
実施例4 酸敏感抗体Hu001-11で調製したCART細胞のインビトロ活性試験
Hu001-11と陽性対照のCAR細胞キメラ抗原受容体の構造は、
図4Aに示すとおりである。
Hu001-11-CART細胞と陽性対照CCT301-38-CART細胞は、いずれも上海▲シン▼湾生物有限公司によって調製された。フローサイトメトリーにより、そのCAR発現陽性率と平均蛍光強度を測定した。
図4Bに示すように、対照抗体CCT301-38は陽性率が37.4%、平均蛍光強度(MFI)が7350であった。Hu001-11-CARは細胞陽性率が46.9%、平均蛍光強度(MFI)が19571であり、Hu001-11-CART細胞のインビトロ形質導入効率は対照CART細胞よりはるかに高い。
96ウェルプレートにCHO-AXL細胞を標的細胞として加え(10
4細胞/ウェル)、調製したHu001-11-CART細胞をエフェクター細胞とし、標的細胞の数は、エフェクター細胞対標的細胞の比が2:1であるようにした。対照エフェクター細胞は、形質導入されていないT細胞(陰性対照)及びCCT301-38-CART細胞(陽性対照)を含む。細胞培養は、pH6.8群とpH7.4群に分けられた。37℃、5%CO
2インキュベーターで24時間共培養した後、ELISA法によりIL-2、IFN-γの含有量を検出し、CART細胞のインビトロ活性化の程度を決定した。
Elisaを用いて培養細胞上澄みにおけるIL-2(Abclonal社、製品番号RK00002)及びIFN-γ(Abclonal社、製品番号RK00015)のタンパク質濃度を検出した。その結果は、
図4C及びDに示すとおりであり、CHO-AXLのインビトロで共培養した状態で、Hu001-11-CART細胞のIL-2及びIFN-γ分泌レベルは、陽性対照CCT301-38-CART細胞よりも高く、且つ酸性条件での分泌レベルがより高い。Hu001-11-CART細胞は、インビトロ酸性条件下でより強く活性化され、良好な酸性環境走化性を有することが示唆された。
【0123】
実施例5 Hu001-11抗体で媒介されたインビトロ神経膠腫細胞殺傷実験
本実験において、標的細胞は、ヒト神経膠腫細胞U251細胞であった。エフェクター細胞は、CD16-CART細胞(CD16-T細胞、上海▲シン▼湾科技有限公司製)であった。37℃、5%CO
2インキュベーターにてDMEM培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)でU251細胞系を培養し、10
5/mLの細胞濃度で細胞を8ウェル培養チャンバーに置いた。12時間後、それぞれHu001-11抗体及びCD16-T細胞を加え、エフェクター細胞対標的細胞比はいずれも2:1であった。また、それぞれ形質導入されていないT細胞を加えて陰性対照とし、CCT301-38抗体及びCD16-T細胞を陽性対照とした。xCELLigence RTCA S16機器を用いて生細胞数と正の相関を有する細胞指数(cell index)をリアルタイムに検出した。この数値が高いほど、殺傷活性が低いことを示した。逆に、殺傷活性が高いことを示した。
結果は、
図5に示すとおりであり、Hu001-11及びCD16-Tの組合せ群は、12時間に、U251細胞に対する顕著な殺傷が現れ、20時間にわたって、標的細胞をほぼ完全に殺傷した。陽性抗体対照群は、24時間で完全な殺傷効果を示した。Hu001-11は神経膠腫U251細胞に対するより良好な殺傷活性を媒介したことが示唆された。
【0124】
実施例6 本発明の抗体で媒介されたインビトロ広スペクトル抗腫瘍活性実験
本発明の抗AXL抗体Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14によって媒介されたCD16-T細胞のインビトロでの他の固形腫瘍細胞(ヒト卵巣腺腫細胞SK-OV3及びヒト肺がん細胞NCI-H292腫瘍、いずれもルシフェラーゼをコードするレポーター遺伝子を有する)に対する殺傷実験も検証した。
使用された試薬及び器具は、特記しない限り、いずれもPromega社から購入した。具体的には、腫瘍細胞を96ウェルプレート(10
4/ウェル)に播種し、37℃、5%CO
2で24時間培養した後、培地を除去して本発明の抗AXL抗体Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14を加え、細胞を10群に分けた。即ち、陽性対照抗体CCT301-38群、Hu001-5抗体群、Hu001-7抗体群、Hu001-11抗体群、Hu001-14抗体群、Hu001-5抗体とCD16-T細胞との組合せ群、Hu001-7抗体とCD16-T細胞との組合せ群、Hu001-11抗体とCD16-T細胞との組合せ群、Hu001-14抗体とCD16-T細胞との組合せ群、CCT301-38とCD16-T細胞との組合せ群であった。CD16-T細胞と標的細胞との比率は2:1であった。引き続き37℃で24時間培養した後に、上澄みを除去し、各ウェルに50μLの1x 細胞溶解液(製品番号E1531)を加えて室温で30分間振とうしながらインキュベーションした後、各ウェルに30μLルシフェラーゼ分析基質(製品番号E151A)を添加して30秒間発色させ、蛍光値(GloMax(登録商標) Navigator Microplate Luminometer)を機械的に検出した。
結果は、
図6に示されるとおりであり、これら2種類の腫瘍細胞系に対して、本発明の抗AXL抗体Hu001-5、Hu001-7、Hu001-11及びHu001-14を用いて、インビトロで殺傷を媒介する効率は、いずれも陽性対照抗体CCT301-38の1.5倍以上であり、明らかな殺傷向上作用があり、本発明の抗AXL抗体は、インビトロでより広いスペクトルの抗腫瘍活性を媒介することができることが示された。
図7は、抗体可変領域の配列方式を示す。
【0125】
以上、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明及び記述したが、本発明は上記特定の実施形態に限定されるものではないと理解すべきである。本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、本発明に対して様々な改良、修飾及び変更を行うことができ、これらの改良、修飾及び変更はいずれも本発明の範囲内に含まれる。
【配列表】
【国際調査報告】