(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】CD137結合物質とPD-L1結合物質の組合せ投薬レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240621BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240621BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240621BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240621BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240621BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240621BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20240621BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/26
A61P35/02
A61P35/04
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578700
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022066764
(87)【国際公開番号】W WO2022268740
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(71)【出願人】
【識別番号】519011636
【氏名又は名称】ビオンテック エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン ウール
(72)【発明者】
【氏名】ムイク アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フォルスマン ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ユレ-クンケル マリア エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】バジャージ ガウラブ
(72)【発明者】
【氏名】タルハウサー クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】ペンツェバ ノラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC27
4C076DD09
4C076DD51
4C076DD67
4C076FF11
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB31
4C085DD58
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA10
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域とヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域とを含む結合物質を、対象に投与することを含む、前記対象の腫瘍の進行を低減もしくは抑制するための、または前記対象のがんを処置するための方法に関する。本発明により、腫瘍の進行の低減もしくは抑制における使用のための、またはがんの処置における使用のための結合物質をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列からなるヒトCD137などのヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域と、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列からなるヒトPD-L1などのヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域とを含む結合物質を、対象に投与することを含む、前記対象の腫瘍の進行を低減もしくは抑制するための、または前記対象のがんを処置するための方法であって、
1回または複数回の処置サイクルでの用量Aの投与および1回または複数回の処置サイクルでの用量Bの投与を含む投薬スケジュールで、前記結合物質が前記対象に投与され、
用量Aにおける結合物質の量が、
a)約0.3~2.5 mg/kg体重、もしくは総量で約25~200 mg;および/または
b)約2.1×10
-9~1.7×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で約1.7×10
-7~1.4×10
-6 mol
であり、
用量Bにおける結合物質の量が、
c)約3.8~7.5 mg/kg体重、もしくは総量で約300~600 mg;および/または
d)約2,6×10
-8~5.1×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.0~4.1×10
-6 mol
である、
前記方法。
【請求項2】
用量Aにおける前記結合物質の量が、
0.4~2.3 mg/kg体重、もしくは総量で30~180 mgおよび/または
2.56×10
-9~1.53×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で2,04×10
-7~1.23×10
-6 mol;
0.5~2.0 mg/kg体重、もしくは総量で40~160 mgおよび/または
3.41×10
-9~1.36×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.73×10
-7~1.09×10
-6 mol;
0.6~1.9 mg/kg体重、もしくは総量で50~150 mgおよび/または
4.26×10
-9~1.28×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.41×10
-7~1,02×10
-6 mol;
0.8~1.8 mg/kg体重、もしくは総量で60~140 mgおよび/または
5.11×10
-9~1.19×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で4.09×10
-7~9.54×10
-7 mol;
0.9~1.6 mg/kg体重、もしくは総量で70~130 mgおよび/または
5.96×10
-9~1.11×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で4.77×10
-7~8.86×10
-7 mol;
1~1.5 mg/kg体重、もしくは総量で80~120 mgおよび/または
6.81×10
-9~1.02×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で5.45×10
-7~8.18×10
-7 mol;
1.1~1.4 mg/kg体重、もしくは総量で90~110 mgおよび/または
7.67×10
-9~9.37×10
-9 mol/kg体重、もしくは総量で6.13×10
-7~7.49×10
-7 mol;または
1.2~1.3 mg/kg体重、もしくは総量で95~105 mgおよび/または
8.09×10
-9~8.94×10
-9 mol/kg体重、もしくは総量で6.47×10
-7~7.16×10
-7 mol
である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項3】
用量Aにおける前記結合物質の量が、
a)約1.25 mg/kg体重、もしくは総量で約100 mg;および/または
b)約8.5×10
-9 mol/kg体重、もしくは総量で約6.8×10
-7 mol
である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
用量Bにおける結合物質の量が、
4.4~7.4 mg/kg体重、もしくは総量で350~590 mgおよび/または
2.98×10
-8~5.03×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.39×10
-6~4.02×10
-6 mol;
5.0~7.25 mg/kg体重、もしくは総量で400~580 mgおよび/または
3.41×10
-8~4.94×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.73×10
-6~3.95×10
-6 mol;
5.3~7.1 mg/kg体重、もしくは総量で420~570 mgおよび/または
3.58×10
-8~4.86×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.86×10
-6~3.88×10
-6 mol;
5.4~7.0 mg/kg体重、もしくは総量で430~560 mgおよび/または
3.66×10
-8~4.77×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.93×10
-6~3.82×10
-6 mol;
5.5~6.9 mg/kg体重、もしくは総量で440~550 mgおよび/または
3.75×10
-8~4.69×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.00×10
-6~3.75×10
-6 mol;
5.6~6.8 mg/kg体重、もしくは総量で450~540 mgおよび/または
3.83×10
-8~4.60×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.07×10
-6~3.68×10
-6 mol;
5.8~6.6 mg/kg体重、もしくは総量で460~530 mgおよび/または
3.92×10
-8~4.51×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.13×10
-6~3.61×10
-6 mol;
5.9~6.5 mg/kg体重、もしくは総量で470~520 mgおよび/または
4.00×10
-8~4.43×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.20×10
-6~3.54×10
-6 mol;
6.0~6.4 mg/kg体重、もしくは総量で480~515 mgおよび/または
4.09×10
-8~4.39×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.27×10
-6~3.51×10
-6 mol;
6.1~6.4 mg/kg体重、もしくは総量で490~510 mgおよび/または
4.17×10
-8~4.34×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.34×10
-6~3.48×10
-6 mol;または
6.2~6.3 mg/kg体重、もしくは総量で495~505 mgおよび/または
4.22×10
-8~4.30×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.37×10
-6~3.44×10
-6 mol
である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
用量Bにおける結合物質の量が、
a)約6.25 mg/kg体重、もしくは総量で約500 mg;および/または
b)約4.3×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.4×10
-6 mol
である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記投薬スケジュールが、1回または複数回の処置サイクルでの用量Aの投与、続いて1回または複数回の処置サイクルでの用量Bの投与を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
用量Aが、各処置サイクルにおいて1回、例えば各処置サイクルの1日目に投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
用量Bが、各処置サイクルにおいて1回、例えば各処置サイクルの1日目に投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
用量Aが、1回または複数回の3週間/21日間処置サイクル、例えば、2回、3回、4回、または5回の3週間/21日間処置サイクルで投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
用量Aが、各3週間/21日間処置サイクルにおいて1回(Q3W)投与される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
用量Aが、前記1回または複数回の3週間/21日間処置サイクルの各々の1日目に投与される、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
用量Bが、1回または複数回の6週間/42日間処置サイクルで投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
用量Bが、前記1回または複数回の6週間/42日間処置サイクルの各々において1回(Q6W)投与される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
用量Bが、前記1回または複数回の6週間/42日間処置サイクルの各々の1日目に投与される、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記投薬スケジュールが、2回の処置サイクルでの用量Aの投与、続いて1回または複数回の処置サイクルでの用量Bの投与を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記投薬スケジュールが、用量Aの投与、続いて完全腫瘍退縮または疾患進行までの用量Bの投与を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
全血試料を収集すること、および前記結合物質によるPD-L1受容体占有率をアセスメントすることを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記結合物質が全身投与によって投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記結合物質が静脈内注射または輸注によって投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
各用量が、最低30分間にわたって、例えば、最低60分間、最低90分間、最低120分間、または最低240分間にわたって輸注される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
a)前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:1の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)の配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)の配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
b)前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:8の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)の配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:12の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)の配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
a)前記第1の抗原結合領域が、それぞれSEQ ID NO:2、3、および4に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)と、それぞれSEQ ID NO:6、GAS、SEQ ID NO:7に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
b)前記第2の抗原結合領域が、それぞれSEQ ID NO:9、10、11に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)と、それぞれSEQ ID NO:13、DDN、SEQ ID NO:14に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
各可変領域が、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)と4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)とを含む、請求項21~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記相補性決定領域と前記フレームワーク領域が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4、に配列されている、請求項23記載の方法。
【請求項25】
a)前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み、かつ
b)前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:8に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:12に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
a)前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み;かつ
b)前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記結合物質が抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記結合物質が多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
前記結合物質が、2つまでの結合領域を有する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記結合物質が完全長抗体または抗体断片の形式である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記結合物質が、
i)第1の重鎖可変領域(VH)と第1の重鎖定常領域(CH)とを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、ポリペプチド、および
ii)第2の重鎖可変領域(VH)と第2の重鎖定常領域(CH)とを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、ポリペプチド
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
前記結合物質が、
i)第1の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、ポリペプチド、および
ii)第2の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、ポリペプチド
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
前記結合物質が、第1の結合アームと第2の結合アームとを含む抗体であり、ここで、前記第1の結合アームが、
i)前記第1の重鎖可変領域(VH)と前記第1の重鎖定常領域(CH)とを含むポリペプチド、および
ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)と前記第1の軽鎖定常領域(CL)とを含むポリペプチド
を含み、
かつ、前記第2の結合アームが、
iii)前記第2の重鎖可変領域(VH)と前記第2の重鎖定常領域(CH)とを含むポリペプチド、および
iv)前記第2の軽鎖可変領域(VL)と前記第2の軽鎖定常領域(CL)とを含むポリペプチド
を含む、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)の各々が、重鎖定常部1(CH1)領域、ヒンジ領域、重鎖定常部2(CH2)領域、および重鎖定常部3(CH3)領域のうちの1つまたは複数、好ましくは少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む、請求項31~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)の各々がCH3領域を含み、かつ2つの前記CH3領域が不均衡変異を含む、請求項31~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記第1の重鎖定常領域(CH)において、ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2の重鎖定常領域(CH)において、ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ、前記第1の重鎖と前記第2の重鎖が同じ位置で置換されていない、請求項31~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
(i)ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第1の重鎖定常領域(CH)においてLであり、かつヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第2の重鎖定常領域(CH)においてRであるか、または(ii)ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第1の重鎖においてRであり、かつヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第2の重鎖においてLである、請求項31~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域とヒトIgG1のヒンジ、CH2、およびCH3の領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比べて低い程度で、前記結合物質がFc媒介性エフェクター機能を誘導する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
非改変型の第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むこと以外は同一である抗体と比べて低い程度で抗体がFc媒介性エフェクター機能を誘導するように、第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)が改変されている、請求項31~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
前記非改変型の第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)の各々が、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記Fc媒介性エフェクター機能が、Fcγ受容体との結合によって、C1qとの結合によって、またはFc媒介性Fcγ受容体架橋の誘導によって測定される、請求項39~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
前記Fc媒介性エフェクター機能がC1qとの結合によって測定される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
抗体とのC1qの結合が野生型抗体と比べて低減されるように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低減されるように、前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域が改変されており、ここで、C1qの結合が好ましくは、ELISAによって測定される、請求項31~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のうちの少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、D265、N297、およびP331の位置に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸がそれぞれL、L、D、N、およびPでない、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるL234およびL235の位置に対応する位置がそれぞれ、前記第1の重鎖および第2の重鎖においてFおよびEである、請求項44記載の方法。
【請求項46】
ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置に対応する位置がそれぞれ、前記第1の重鎖定常領域(HC)および第2の重鎖定常領域(HC)においてF、E、およびAである、請求項44または45記載の方法。
【請求項47】
ヒトIgG1重鎖における前記第1の重鎖定常領域と第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングによるL234およびL235の位置に対応する位置がそれぞれFおよびEであり、かつ、(i)ヒトIgG1重鎖における前記第1の重鎖定常領域のEUナンバリングによるF405に対応する位置がLであり、かつヒトIgG1重鎖における第2の重鎖のEUナンバリングによるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)ヒトIgG1重鎖における前記第1の重鎖定常領域のEUナンバリングによるK409に対応する位置がRであり、かつヒトIgG1重鎖における第2の重鎖のEUナンバリングによるF405に対応する位置がLである、請求項31~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
ヒトIgG1重鎖における前記第1の重鎖定常領域と第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置に対応する位置がそれぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)ヒトIgG1重鎖における前記第1の重鎖定常領域のEUナンバリングによるF405に対応する位置がLであり、かつヒトIgG1重鎖における前記第2の重鎖定常領域のEUナンバリングによるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)ヒトIgG1重鎖における第1の重鎖のEUナンバリングによるK409に対応する位置がRであり、かつヒトIgG1重鎖における第2の重鎖のEUナンバリングによるF405に対応する位置がLである、請求項31~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
前記第1の重鎖および/または第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:15もしくはSEQ ID NO:30に示される配列[IgG1-FC];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端もしくはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、もしくは10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)もしくはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大10個の置換、例えば、最大9個の置換、最大8個、最大7個、最大6個、最大5個、最大4個、最大3個、最大2個、もしくは最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる、請求項31~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
前記第1の重鎖または第2の重鎖、例えば前記第1の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:16もしくはSEQ ID NO:31に示される配列[IgG1-F405L];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端もしくはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、もしくは10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)もしくはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大9個の置換、例えば、最大8個、最大7個、最大6個、最大5個、最大4個、最大3個、最大2個、もしくは最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる、請求項31~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
前記第1の重鎖または第2の重鎖、例えば前記第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:17もしくはSEQ ID NO:32に示される配列[IgG1-F409R];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端もしくはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、もしくは10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)もしくはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大10個の置換、例えば、最大9個の置換、最大8個、最大7個、最大6個、最大5個、最大4個の置換、最大3個、最大2個、もしくは最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる、請求項31~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
前記第1の重鎖および/または第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:18もしくはSEQ ID NO:33に示される配列[IgG1-Fc_FEA];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端もしくはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、もしくは10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)もしくはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大7個の置換、例えば、最大6個の置換、最大5個、最大4個、最大3個、最大2個、もしくは最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる、請求項31~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
前記第1の重鎖および/または第2の重鎖、例えば前記第1の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:19もしくはSEQ ID NO:34に示される配列[IgG1-Fc_FEAL];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端もしくはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、もしくは10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)もしくはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大6個の置換、例えば、最大5個の置換、最大4個の置換、最大3個、最大2個、もしくは最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる、請求項31~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
前記第1の重鎖および/または第2の重鎖、例えば前記第2の重鎖の定常領域が、
a)SEQ ID NO:20もしくはSEQ ID NO:35に示される配列[IgG1-Fc_FEAR];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端もしくはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、もしくは10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)もしくはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大6個の置換、例えば、最大5個の置換、最大4個、最大3個、最大2個、もしくは最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる、請求項31~53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
前記結合物質がカッパ(κ)軽鎖定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
前記結合物質がラムダ(λ)軽鎖定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
前記第1の軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
前記第2の軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
前記第1の軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
前記第2の軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
前記カッパ(κ)軽鎖が、
a)SEQ ID NO:21に示される配列;
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大10個の置換、例えば、最大9個の置換、最大8個、最大7個、最大6個、最大5個、最大4個の置換、最大3個、最大2個、または最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項55~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
前記ラムダ(λ)軽鎖が、
a)SEQ ID NO:22に示される配列;
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大10個の置換、例えば、最大9個の置換、最大8個、最大7個、最大6個、最大5個、最大4個の置換、最大3個、最大2個、または最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項56~61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
前記結合物質が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプのものである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
前記結合物質が完全長のIgG1抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
前記抗体がIgG1m(f)アロタイプのものである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
前記結合物質が、
(i)第1の重鎖可変領域(VH)と第1の軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の結合アームであって、前記第1のVHが第1のHCDR1配列、第1のHCDR2配列、および第1のHCDR3配列を含み、前記第1のHCDR1配列がSEQ ID NO:2に示されており、前記第1のHCDR2配列がSEQ ID NO:3に示されており、かつ前記第1のHCDR3配列が、SEQ ID NO:4を含みSEQ ID NO:4に示されており;かつ、前記第1のVLが第1のLCDR1配列、第1のLCDR2配列、および第1のLCDR3配列を含み、前記第1のLCDR1配列がSEQ ID NO:6に示されており、前記第1のLCDR2配列がGASであり、かつ前記第1のLCDR3配列がSEQ ID NO:7に示されている、前記第1の結合アーム;ならびに
(ii)第2の重鎖可変領域(VH)と第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の結合アームであって、前記第2のVHが第2のHCDR1配列、第2のHCDR2配列、および第2のHCDR3配列を含み、前記第2のHCDR1配列がSEQ ID NO:9に示されており、前記第2のHCDR2配列がSEQ ID NO:10に示されており、かつ前記第2のHCDR3配列がSEQ ID NO:11に示されており;かつ、前記第2のVLが第2のLCDR1配列、第2のLCDR2配列、および第2のLCDR3配列を含み、前記第2のLCDR1配列がSEQ ID NO:13に示されており、前記第2のLCDR2配列がDDNであり、かつ前記第2のLCDR3配列がSEQ ID NO:14に示されている、前記第2の結合アーム
を含み、
前記第1の結合アームが第1の重鎖定常領域(CH)を含みかつ前記第2の結合アームが第2のCHを含み、ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置がそれぞれ、前記第1のCHおよび前記第2のCHにおいてF、E、およびAであり、かつ
ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第1のCHにおいてLであり、かつヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第2のCHにおいてRである、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前記結合物質が、
(i)第1の重鎖可変領域(VH)と第1の軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の結合アームであって、前記第1のVHが第1のHCDR1配列、第1のHCDR2配列、および第1のHCDR3配列を含み、前記第1のHCDR1配列がSEQ ID NO:2に示されており、前記第1のHCDR2配列がSEQ ID NO:3に示されており、かつ前記第1のHCDR3配列がSEQ ID NO:4に示されており、かつ、前記第1のVLが第1のLCDR1配列、第1のLCDR2配列、および第1のLCDR3配列を含み、前記第1のLCDR1配列がSEQ ID NO:6に示されており、前記第1のLCDR2配列がGASであり、かつ前記第1のLCDR3配列がSEQ ID NO:7に示されている、前記第1の結合アーム;ならびに
(ii)第2の重鎖可変領域(VH)と第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の結合アームであって、前記第2のVHが第2のHCDR1配列、第2のHCDR2配列、および第2のHCDR3配列を含み、前記第2のHCDR1配列がSEQ ID NO:9に示されており、前記第2のHCDR2配列がSEQ ID NO:10に示されており、かつ前記第2のHCDR3配列がSEQ ID NO:11に示されており、かつ、前記第2のVLが第2のLCDR1配列、第2のLCDR2配列、および第2のLCDR3配列を含み、前記第2のLCDR1配列がSEQ ID NO:13に示されており、前記第2のLCDR2配列がDDNであり、かつ前記第2のLCDR3配列がSEQ ID NO:14に示されている、前記第2の結合アーム
を含み、
前記第1の結合アームが第1の重鎖定常領域(CH)を含みかつ前記第2の結合アームが第2のCHを含み、ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置がそれぞれ、前記第1のCHおよび前記第2のCHにおいてF、E、およびAであり、かつ
ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第1のCHにおいてRであり、かつヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第2のCHにおいてLである、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
前記結合物質が、
(i)第1の重鎖可変領域(VH)と第1の軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の結合アームであって、前記第1のVHが第1のHCDR1配列、第1のHCDR2配列、および第1のHCDR3配列を含み、前記第1のHCDR1配列が、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列を含み、前記第1のHCDR2配列が、SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記第1のHCDR3配列が、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含み、かつ、前記第1のVLが第1のLCDR1配列、第1のLCDR2配列、および第1のLCDR3配列を含み、前記第1のLCDR1配列が、SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含み、前記第1のLCDR2配列がアミノ酸配列GASを含み、かつ前記第1のLCDR3配列が、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含む、前記第1の結合アーム;ならびに
(ii)第2の重鎖可変領域(VH)と第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の結合アームであって、前記第2のVHが第2のHCDR1配列、第2のHCDR2配列、および第2のHCDR3配列を含み、前記第2のHCDR1配列が、SEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のHCDR2配列が、SEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記第2のHCDR3配列が、SEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列を含み、かつ、前記第2のVLが第2のLCDR1配列、第2のLCDR2配列、および第2のLCDR3配列を含み、前記第2のLCDR1配列が、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のLCDR2配列がアミノ酸配列DDNを含み、かつ前記第2のLCDR3配列が、SEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列を含む、前記第2の結合アーム
を含み、
前記第1の結合アームが第1の重鎖定常領域(CH)を含みかつ前記第2の結合アームが第2のCHを含み、ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置がそれぞれ、前記第1のCHおよび前記第2のCHにおいてF、E、およびAであり、かつ
ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第1のCHにおいてLであり、かつヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第2のCHにおいてRである、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
前記結合物質が、
(i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の結合アーム;および
(ii)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の結合アーム
を含み、
前記第1の結合領域が第1の重鎖定常領域(CH)を含みかつ前記第2の結合アームが第2のCHを含み、ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置がそれぞれ、前記第1のCHおよび前記第2のCHにおいてF、E、およびAであり、かつ
ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第1のCHにおいてRであり、かつヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第2のCHにおいてLである、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
前記結合物質が、
(i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の結合アーム;および
(ii)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の結合アーム
を含み、
前記第1の結合アームが第1の重鎖定常領域(CH)を含みかつ前記第2の抗原結合領域が第2のCHを含み、ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置がそれぞれ、前記第1のCHおよび前記第2のCHにおいてF、E、およびAであり、かつ
ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第1のCHにおいてLであり、かつヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第2のCHにおいてRである、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
前記結合物質が、
i)SEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる、第1の重鎖、およびSEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる、第1の軽鎖;ならびに
ii)SEQ ID NO:38に示されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる、第2の重鎖、およびSEQ ID NO:39に示されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる、第2の軽鎖
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
完全長抗体または抗体断片の形式である、前記請求項のいずれか一項記載の結合物質。
【請求項73】
前記結合物質がアカスンリマブ(acasunlimab)またはそのバイオシミラーである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
前記結合物質が、ヒスチジン、スクロース、およびポリソルベート-80を含む組成物または製剤の状態であり、かつpH 5~6を有する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項75】
前記結合物質が、約20 mMのヒスチジン、約250 mMのスクロース、約0.02%のポリソルベート-80を含みかつpH約5.5を有する組成物または製剤の状態である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
前記結合物質が、10~30 mgの結合物質/mL、例えば20 mgの結合物質/mLを含む組成物または製剤の状態である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項77】
前記結合物質が、請求項75および75のいずれか一項で定義される組成物の状態であり、かつ投与前に0.9%のNaCl(生理食塩水)中に希釈される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項78】
前記対象がヒト対象である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項79】
前記腫瘍またはがんが充実性腫瘍である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項80】
前記腫瘍がPD-L1陽性腫瘍である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項81】
前記腫瘍またはがんが、黒色腫、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎がん、尿路上皮がん、膀胱がん、食道がん、膵がん、肝がん、胸腺腫および胸腺癌、脳がん、神経膠腫、副腎皮質癌、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣がん、子宮内膜がん、前立腺がん、陰茎がん、子宮頸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、ならびに中皮腫からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項82】
前記腫瘍またはがんが、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん(膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがん)、子宮内膜がん(EC)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)(例えば、口腔、咽頭、または喉頭のがん)、および子宮頸がんからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
前記腫瘍またはがんが肺がんである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば扁平上皮または非扁平上皮NSCLCである、請求項83記載の方法。
【請求項85】
前記NSCLCが、上皮成長因子(EGFR)感受性変異および/または未分化リンパ腫(ALK)遺伝子転座/ROS1再構成を有さない、請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記対象が、例えば進行/転移性疾患に対する1つ、2つ、3つ、または4つの全身的前処置レジメンを受けたことがあり、かつ最後の全身的前処置の際または後に疾患進行、例えばX線撮影によって判定された疾患進行を経験したことがある、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
前記対象が、プラチナ製剤ベースの化学療法を受けたことがある、請求項86記載の方法。
【請求項88】
前記対象が、プラチナ製剤ベースの治療に適格でなく、かつ代替化学療法、例えばゲムシタビン含有レジメンでの処置を受けている、請求項1~86のいずれか一項記載の方法。
【請求項89】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えばPD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えばPD-1/PD-L1阻害物質での前処置を受けたことがある、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項90】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えばPD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えばPD-1/PD-L1阻害物質での処置の際または後に疾患進行を経験したことがある、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項91】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えばPD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えばPD-1/PD-L1阻害物質での最後の前処置の際または後に疾患進行を経験したことがある、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項92】
前記対象が、最後の全身的前処置の際または後に疾患進行、例えばX線撮影によって判定された疾患進行を経験したことがある、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
前記対象の最後の前処置が、
PD1阻害物質またはPD-L1阻害物質、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体での前処置であって、前記PD-1阻害物質またはPD-L1阻害物質が単独療法としてまたは併用療法の一部として投与される、前記前処置
であった、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項94】
PD1阻害物質またはPD-L1阻害物質、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体での最後の処置の際の進行からの期間が、8ヶ月もしくはそれ未満、例えば、7ヶ月もしくはそれ未満、6ヶ月もしくはそれ未満、5ヶ月もしくはそれ未満、4ヶ月もしくはそれ未満、3ヶ月もしくはそれ未満、2ヶ月もしくはそれ未満、1ヶ月もしくはそれ未満、3週間もしくはそれ未満または例えば2週間もしくはそれ未満である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項95】
最後の前処置の一部としてのPD1阻害物質またはPD-L1阻害物質、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の最後の投薬からの期間が、8ヶ月もしくはそれ未満、例えば、7ヶ月もしくはそれ未満、6ヶ月もしくはそれ未満、5ヶ月もしくはそれ未満、4ヶ月もしくはそれ未満、3ヶ月もしくはそれ未満、2ヶ月もしくはそれ未満、1ヶ月もしくはそれ未満、3週間もしくはそれ未満または例えば2週間もしくはそれ未満である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項96】
前記対象が、チェックポイント阻害物質、例えばPD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えばPD-1/PD-L1阻害物質での前処置を受けたことがない、請求項1~92のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
前記腫瘍またはがんのファーストライン処置のためのものである、請求項1~92のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
前記腫瘍またはがんのセカンドライン処置のためのものである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項99】
腫瘍の進行の低減もしくは抑制における使用のための、またはがんの処置における使用のための結合物質であって、
前記結合物質が、SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列からなるヒトCD137などのヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域と、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列からなるヒトPD-L1などのヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域とを含み、かつ1回または複数回の処置サイクルでの用量Aの投与および1回または複数回の処置サイクルでの用量Bの投与を含む投薬スケジュールで、前記結合物質が対象に投与され、
用量Aにおける結合物質の量が、
a)約0.3~2.5 mg/kg体重、もしくは総量で約25~200 mg;および/または
b)約2.1×10
-9~1.7×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で約1.7×10
-7~1.4×10
-6 mol
であり;かつ
用量Bにおける結合物質の量が、
c)約3.8~7.5 mg/kg体重、もしくは総量で約300~600 mg;および/または
d)約2,6×10
-8~5.1×10
-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.0~4.1×10
-6 mol
である、
前記結合物質。
【請求項100】
前記投薬スケジュールが、請求項1~20のいずれか一項で定義されたとおりである、請求項96記載の使用のための結合物質。
【請求項101】
請求項21~73のいずれか一項記載で定義されたとおりである、請求項96または97記載の使用のための結合物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域とヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域とを含む結合物質を、対象に投与することを含む、前記対象の腫瘍の進行を低減もしくは抑制するための、または前記対象のがんを処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
CD137(4-1BB、TNFRSF9)は腫瘍壊死因子(TNF)受容体(TNFR)ファミリーメンバーである。CD137は、CD8+およびCD4+ T細胞、制御性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー(NK)およびNKT細胞、B細胞ならびに好中球上にある共刺激分子である。T細胞上において、CD137は構成的に発現されないが、T細胞受容体(TCR)が活性化されると誘導される。天然リガンド4-1BBLまたはアゴニスト抗体による刺激により、TNFR関連因子(TRAF)-2およびTRAF-1がアダプターとして使用されるシグナル伝達をもたらす。CD137による初期シグナル伝達は、最終的に核内因子(NF)-κBおよびマイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼ経路の活性化をもたらすK-63ポリユビキチン化反応を伴う。シグナル伝達によりT細胞共刺激、増殖、サイトカイン産生、成熟およびCD8+ T細胞寿命の延長の増大がもたらされる。CD137に対するアゴニスト抗体は、種々の前臨床モデルにおいてT細胞による抗腫瘍制御を促進させることが示されている(Murillo et al.2008 Clin.Cancer Res.14(21):6895-6906(非特許文献1))。CD137を刺激する抗体はT細胞の生き残りおよび増殖を誘導し得、それにより抗腫瘍免疫応答が増強される。CD137を刺激する抗体は先行技術において開示されており、ヒトIgG4抗体であるウレルマブ(WO2005035584(特許文献1))およびヒトIgG2抗体であるウトミルマブ(Fisher et al.2012 Cancer Immunol.Immunother.61:1721-1733(非特許文献2))が挙げられる。
【0003】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、PDL1、CD274、B7H1)は33 kDaの1回膜貫通I型タンパク質である。選択的スプライシングに基づいたPD-L1の3つのアイソフォームが報告されている。PD-L1は免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、1つのIg様C2型ドメインと1つのIg様V型ドメインとを含む。単離された新鮮T細胞およびB細胞はごく少量のPD-L1を発現しており、わずかな(約16%の)CD14+単球はPD-L1を構成的に発現する。しかしながら、インターフェロン-γ(IFNγ)は腫瘍細胞上のPD-L1を上方調節することが知られている。
【0004】
PD-L1は、1)その受容体である活性化T細胞上のプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)(CD279)と結合することによって腫瘍反応性T細胞を寛容化すること;2)腫瘍細胞発現PD-L1を介するPD-1シグナル伝達により腫瘍細胞をCD8+ T細胞およびFasリガンド媒介性溶解に抵抗性にすること;3)T細胞発現CD80(B7.1)を介する逆シグナル伝達によってT細胞を寛容化すること;ならびに4)誘導される制御性T細胞の発生および維持を促進させることによって抗腫瘍免疫を妨げる。PD-L1は、ヒトのがんの多く、例えば黒色腫、卵巣、肺および結腸のがんにおいて発現されている(Latchman et al.,2004 Proc Natl Acad Sci USA 101,10691-6(非特許文献3))。
【0005】
WO2019/025545(特許文献2)には、PD-L1とCD137の両方に結合することができる多重特異性抗体が示されている。このような抗体は、PD-L1発現抗原提示細胞(APC)または腫瘍細胞とCD137発現T細胞に同時に結合するように設計される。チェックポイントブロックを4-1BB依存性T細胞活性化と組み合わせることにより、多重特異性抗体が活性化T細胞の増殖およびサイトカイン産生を向上させ、腫瘍流入領域リンパ節内の免疫細胞を活性化し、インビボ腫瘍退縮を誘導する。
【0006】
しかしながら、かかる多重特異性抗体の作用様式の進歩および証明されたインビボでの有効性にもかかわらず、依然として、そのインビボでの有効性をさらに改善するための手段が提供されることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2005035584
【特許文献2】WO2019/025545
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Murillo et al.2008 Clin.Cancer Res.14(21):6895-6906
【非特許文献2】Fisher et al.2012 Cancer Immunol.Immunother.61:1721-1733
【非特許文献3】Latchman et al.,2004 Proc Natl Acad Sci USA 101,10691-6
【発明の概要】
【0009】
PD-L1とCD137に結合する多重特異性抗体の、例えば第II相推奨用量(RP2D)ならびに安全性、忍容性、薬物動態(PK)、および抗腫瘍活性を調べるための、用量漸増および拡大を含む臨床試験(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT03917381)をデザインした。本発明者らはまた、腫瘍内におけるPD-L1および4-1BBの三量体形成(多重特異性結合物質とPD-L1および4-1BBとの架橋)ならびに受容体占有率(RO)を予測する薬物動態学的/薬力学的(PK/PD)モデルも開発した。
【0010】
このPK/PDモデルを使用し、本発明者らは、多重特異性抗体を例えば3週間ごとに投与した場合、100 mgの用量で腫瘍内における三量体形成がピークになることを示すことができた。多重特異性抗体を500 mgにてより低頻度ベースで;例えば6週間ごとに投薬すると、100 mg用量と比べて三量体エンゲージメントの程度が低くなるため、より高いPD-L1受容体占有率および断続的4-1BB活性化がもたらされると推定される。
【0011】
臨床試験では、多重特異性抗体は、進行した充実性腫瘍を有する集団においてマネージメント可能な安全性プロファイルおよび予備的臨床活性を示した。薬力学的臨床データにより、≦200 mgの用量レベルで大きさがより大きく一貫した末梢薬力学的エンドポイントの調節が示され、拡大の臨床データにより、100 mgの用量を3週間ごとに投与すると、最初の2サイクル以内に奏効がもたらされることが示された。100 mgの多重特異性抗体の高頻度投薬を低頻度でより高い維持用量、例えば500 mgと組み合わせる投薬スキームにより奏効期間の改善がもたらされることが期待される。また、高用量の多重特異性抗体は、肝臓において100 mg Q3Wと比べて少ない三量体エンゲージメントが推定され、したがって、より良好な安全性プロファイルを有することが期待される。
【0012】
したがって、第1の局面において、本発明により、SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列からなるヒトCD137などのヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域と、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列からなるヒトPD-L1などのヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域とを含む結合物質を、対象に投与することを含む、前記対象の腫瘍の進行を低減もしくは抑制するための、または前記対象のがんを処置するための方法であって、
1回または複数回の処置サイクルでの用量Aの投与および1回または複数回の処置サイクルでの用量Bの投与を含む投薬スケジュールで、前記結合物質が前記対象に投与され、
用量Aにおける結合物質の量が、
a)約0.3~2.5 mg/kg体重、もしくは総量で約25~200 mg;および/または
b)約2.1×10-9~1.7×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約1.7×10-7~1.48×10-6 mol
であり、
用量Bにおける結合物質の量が、
c)約3.8~7.5 mg/kg体重、もしくは総量で約300~600 mg;および/または
d)約2,6×10-8~5.1×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.0~4.1×10-6 mol
である、
方法を提供する。
【0013】
用量Aにおける前記結合物質の量は好ましくは、
a)約1.25 mg/kg体重、もしくは総量で約100 mg;および/または
b)約8.5×10-9 mol/kg体重、もしくは総量で約6.8×10-7 mol
である。
【0014】
用量Bにおける結合物質の量は好ましくは、
a)約6.25 mg/kg体重、もしくは総量で約500 mg;および/または
b)約4.3×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.4×10-6 mol
である。
【0015】
さらなる一局面において、本発明は、腫瘍の進行の低減もしくは抑制における使用のための、またはがんの処置における使用のための結合物質であって、前記結合物質が、SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列からなるヒトCD137などのヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域と、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列からなるヒトPD-L1などのヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域とを含み、かつ1回または複数回の処置サイクルでの用量Aの投与および1回または複数回の処置サイクルでの用量Bの投与を含む投薬スケジュールで、前記結合物質が対象に投与され、
用量Aにおける結合物質の量が、
a)約0.3~2.5 mg/kg体重、もしくは総量で約25~200 mg;および/または
b)約2.1×10-9~1.7×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約1.7×10-7~1.4×10-6 mol
であり;かつ
用量Bにおける結合物質の量が、
c)約3.8~7.5 mg/kg体重、もしくは総量で約300~600 mg;および/または
d)約2,6×10-8~5.1×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.0~4.1×10-6 mol
である、
前記結合物質に関する。
【0016】
本発明のこれらおよび他の局面および態様、例えば(including)をさらに詳細に以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1:PD-L1発現K562細胞およびCD137発現K562細胞とのGEN1046の同時結合は、ベル型用量応答曲線を伴うダブレット形成を誘導する。CD137が遺伝子導入された等しい数のCellTrace(商標)Far Red標識K562細胞(K562_h4-1BB)を、PD-L1が遺伝子導入されたCellTrace(商標)Violet標識K562細胞(K562_hPD-L1)とともに、0.001~100μg/mLのi)GEN1046またはii)対照抗体PD-L1-547-FEALxb12-FEARとb12-FEALxCD137-009-HC7LC2-FEARの組合せの存在下で15分間、同時インキュベートした。試料をフローサイトメトリーによって解析し、CellTrace(商標)Far Red/CellTrace(商標)Violet二重陽性ダブレット(A)のパーセントをGEN1046濃度の関数としてプロットした(B)。示したデータはn=3回の技術的反復の平均±標準偏差である(おそらく、記号は、SDを示すためにより小さくする必要がある)。
【
図2】CD137xPD-L1二重特異性抗体の予想される作用様式の略図。(A)PD-L1は抗原提示細胞(APC)上ならびに腫瘍細胞上に発現される。負の調節分子PD-1を発現しているT細胞にPD-L1が結合することによってT細胞活性化シグナルが有効に無効化され、最終的にT細胞阻害がもたらされる。(B)CD137xPD-L1二重特異性抗体が添加されると、阻害性のPD-1:PD-L1相互作用がPD-L1特異的アームによってブロックされると同時に、前記二重特異性抗体は細胞-細胞相互作用を介して、T細胞上に発現されているCD137にアゴニスト的シグナル伝達をもたらし、強力なT細胞共刺激をもたらす。
【
図3】PD-L1発現腫瘍細胞株の存在下で行なわれたルシフェラーゼベースのCD137活性化レポーターアッセイにおける抗体濃度の関数としての相対発光量(RLU)。内因的にPD-L1を発現しているヒト卵巣がん細胞株ES-2(A)および乳がん細胞株MDA-MB-231(B)をNFkB-Luc2P/4-1BB Jurkatレポーター細胞とともに0.00128~100μg/mLのi)GEN1046またはii)b12-FEAL対照抗体の存在下で6時間、共培養した。ルシフェラーゼ発現の誘導を、ルシフェラーゼ基質とのインキュベーションおよび相対発光量の測定によって調べた。示したデータはn=3回の技術的反復の平均±標準偏差である。
【
図4】ポリクローナルT細胞増殖アッセイにおけるGEN1046と対照抗体PD-L1-547-FEALxb12-FEALまたはIgG1-b12-FEALとの比較。CFSE標識PBMCを最適下限濃度の抗CD3抗体(0.03μg/mL)とともにインキュベートし、0.0032~10μg/mLのi)GEN1046 ii)PD-L1-547-FEALxb12-FEARまたはiii)b12-FEAL対照抗体の存在下で4日間培養した。全T細胞(A)ならびに全T細胞中のCCR7+CD45RO+セントラルメモリーT細胞サブセットおよびCCR7-CD45RO+エフェクターメモリーT細胞サブセット(B)のT細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。1例の代表的なドナーのデータを、FlowJo v10.4ソフトウェアを用いて計算された2回の反復の平均増大指数として示す。エラーバー(SD)は実験(2回の反復、1例のドナー細胞を使用)のばらつきを示す。
【
図5】活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイにおけるGEN1046によるPD-1/PD-L1媒介性T細胞阻害の解除およびCD8
+ T細胞増殖の追加の共刺激。CD8
+ T細胞を、PD-1をコードしているRNAを有する(0.4~10μg)か、または有していない(PD-1なし)かのいずれかである、CLDN6特異的TCRのアルファ鎖をコードしているRNAおよびベータ鎖をコードしているRNA(10μgずつ)を用いてエレクトロポレーションし、CFSEで標識し、0.3μg(A)または1μg(B)のCLDN6コードRNAを用いてエレクトロポレーションした未熟DCとともに共培養した。エレクトロポレーションされたCD8
+ T細胞とiDCをGEN1046(0.00015~1μg/mL)またはb12-FEAL(1μg/mL)の存在下で4日間、共培養した。T細胞増殖を、CD8
+ T細胞におけるCFSE希釈を、フローサイトメトリーを用いて解析することによってアセスメントし、T細胞増大指数(例えば、全T細胞集団が増殖によってどれだけ増大したか)をFlowJo(バージョン10.3)によって自動計算した。示したデータは、2つの実験に含めた4例のドナーのうちの1例のドナーの三連のウェルの平均増大指数±SDである。
【
図6】T細胞のPD-1エレクトロポレーションあり、またはなしでの抗原特異的T細胞アッセイにおける炎症誘発性サイトカイン(IFNγ、TNFα、IL-13およびIL-8)の分泌に対するGEN1046の効果。CD8
+ T細胞を、PD-1をコードしているRNAを有する(2μg)か、または有していない(PD-1なし)かのいずれかである、CLDN6特異的TCRのアルファ鎖をコードしているRNAおよびベータ鎖をコードしているRNA(10μgずつ)を用いてエレクトロポレーションし、CFSEで標識し、1μgのCLDN6コードRNAを用いてエレクトロポレーションした未熟DCとともに共培養した。エレクトロポレーションされたCD8
+ T細胞とiDCをGEN1046(0.00015~1μg/mL)またはb12-FEAL(1μg/mL)の存在下で共培養した。上清みのサイトカインレベルを、抗体の添加後48時間目にマルチプレックスサンドイッチイムノアッセイにより、MSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キットを用いて測定した。示したデータは、実験に含めた2例のドナーのうちの一方の代表的なドナーの六連のウェルの平均濃度±SDである。
【
図7】CD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARによるヒト非小細胞肺がん切除組織由来の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のエクスビボ増大。切除された組織由来の腫瘍小片を10 U/mLのIL-2および表示した濃度のCD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARとともに培養した。10日間の培養後、細胞を採取し、フローサイトメトリーによって解析した。(A)ビーズ1,000個あたりのTIL計数、(B)ビーズ1,000個あたりのCD3+CD8+ T細胞計数、(C)ビーズ1,000個あたりのCD3+CD4+ T細胞計数、(D)ビーズ1,000個あたりのCD3-CD56+ NK細胞計数。示したデータは、ウェル1つあたり出発材料として2つの腫瘍小片を有する5つの個別のウェルの平均細胞計数±SDである。
*p<0.05 通常の一元配置ANOVAをダネットの多重比較検定とともに使用。
【
図8A】
図8:インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)およびインターフェロン-γ誘導性タンパク質10 IP-10(A~B)、増殖エフェクターメモリーCD8 T細胞および全CD8 T細胞(C~D)の循環レベルの変化を含む薬力学的アセスメントを、GEN1046の非盲検多施設での安全性の治験(NCT03917381;データカットオフ:2021年1月19日)の用量漸増フェーズに登録された進行した充実性腫瘍を有する患者由来の血液試料を用いて実施した。 A~B. IFN-γおよびIP-10の循環レベルは血清試料において、ベースライン時においてならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046の投与後の複数の時点において(1日目[投与後2時間目と4~6時間目]、2、3、8、および15日目に)測定した。血清試料中のIFN-γレベルおよびIP-10レベルをメソスケールディスカバリー社(Meso Scale Discovery)(MSD)マルチプレックス免疫アッセイによって測定した。示したデータは、サイクル1で測定されたベースラインからの最大の変化倍率である。統計解析は、ウィルコクソン・マン・ホイットニー検定を用いて行なった。 C~D. 末梢血の免疫表現型解析を、ベースライン時においてならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046の投与後の複数の時点において(2、3、8、および15日目に)収集した全血において実施した。増殖している(Ki67
+)全CD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞(CD8
+CD45RA
-CCR7
- T細胞)の存在比率(frequency)を全血試料においてフローサイトメトリーによってアセスメントした。示したデータは、サイクル1で測定されたベースラインからの最大の変化倍率である。統計解析は、ウィルコクソン・マン・ホイットニー検定を用いて行なった。
【
図10】用量漸増;腫瘍サイズのベースラインからの最大パーセント変化、全患者。データカットオフ:2020年9月29日。5人の患者はベースライン後スキャンを実施しなかった。
aRECIST v1.1による最短奏効期間(5週間)は得られなかった。
bPRは後続のスキャンで確認されなかった。NE、評価不能;NSCLC、非小細胞肺がん;PD、病勢進行;PD-(L)1、プログラム細胞死(リガンド)1;PR、部分奏効;SD、病勢安定;SoD、径和;uPR、未確定の部分奏効。
【
図11】用量漸増;腫瘍サイズのベースラインからの最大変化、NSCLCを有する患者。データカットオフ:2020年9月29日。
aPRは後続のスキャンによって確認されなかった。 bPD-L1発現はアーカイブ腫瘍試験片においてアセスメントした。 BOR、最良総合効果;CR、完全奏効;ICI、免疫チェックポイント阻害物質;NA、入手不能;PD、病勢進行;PD-(L)1、プログラム細胞死(リガンド)1;PR、部分奏効;RECIST、固形がんの治療効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors);SD、病勢安定;SoD、径和;TPS、PD-L1発現率(tumor proportion score);uPR、未確定の部分奏効。
【
図12】モデルによって予測された、3週間ごとに1回(Q3W)投与される100 mg用量および6週間ごとに1回(Q6W)投与される500 mg用量での最大の三量体形成およびPD-L1の受容体占有率。
【
図13】拡大コホート1、データカットオフ:2021年1月29日: A)腫瘍サイズのベースラインからの最大変化:NE、評価不能;PD、病勢進行;SD、病勢安定;uPR、未確定の部分奏効、◇=前PD-(L)1;PD-(L)1、プログラム細胞死(リガンド)1;RECIST、固形がんの治療効果判定基準。 B)ベースラインからの標的病変の径和(SoD)の変化。黒線は病勢進行を呈する対象を表す。灰色の線は、病勢安定(SD)または示された場合は部分奏効(PR)の最良総合効果を呈する対象を表す。黒い三角、丸および四角はそれぞれ、病勢進行、病勢安定および部分奏効の時点効果を示す。白丸は「評価不能」を表す;すなわち、患者は進行しているが処置され、RECISTに基づく進行後もスキャンによって追跡されている;NLは「新病変」を示す。
【
図14】拡大コホート2、データカットオフ:2021年1月29日: A)腫瘍サイズのベースラインからの最大変化:PD、病勢進行;SD、病勢安定;RECIST、固形がんの治療効果判定基準;SD、病勢安定;uPR、未確定の部分奏効,;RECIST、固形がんの治療効果判定基準。 B)ベースラインからの標的病変の径和(SoD)の変化。黒線は病勢進行を呈する対象を表す。灰色の線は、病勢安定の最良総合効果を呈する対象を表す。黒い三角および丸はそれぞれ、病勢進行および病勢安定の時点効果を示す。
【
図15】拡大コホート3、データカットオフ:2021年1月29日: A)腫瘍サイズのベースラインからの最大変化:NE、評価不能;PD、病勢進行;SD、病勢安定;◇=前PD-(L)1;PD-(L)1、プログラム細胞死(リガンド)1;RECIST、固形がんの治療効果判定基準。 B)ベースラインからの標的病変の径和(SoD)の変化。黒線は病勢進行を呈する対象を表す。灰色の線は、病勢安定の最良総合効果を呈する対象を表す。黒い三角および丸はそれぞれ、病勢進行および病勢安定の時点効果を示す。
【
図16】拡大コホート4、データカットオフ:2021年1月29日: A)腫瘍サイズのベースラインからの最大変化:PD、病勢進行;SD、病勢安定;PR、部分奏効;RECIST、固形がんの治療効果判定基準。 B)ベースラインからの標的病変の径和(SoD)の変化。黒線は病勢進行を呈する対象を表す。灰色の線は、病勢安定または示された場合は部分奏効(PR)の最良総合効果を呈する対象を表す。黒い三角、丸および四角はそれぞれ、病勢進行、病勢安定および部分奏効の時点効果を示す。白丸は「評価不能」を表す;すなわち、患者は進行しているが処置され、RECISTに基づく進行後もスキャンによって追跡されている。
【
図17】拡大コホート5、データカットオフ:2021年1月29日: A)腫瘍サイズのベースラインからの最大変化:NE、評価不能;PD、病勢進行;SD、病勢安定;uPR、未確定の部分奏効、◇=前PD-(L)1;PD-(L)1、プログラム細胞死(リガンド)1;RECIST、固形がんの治療効果判定基準。 B)ベースラインからの標的病変の径和(SoD)の変化。黒線は病勢進行を呈する対象を表す。灰色の線は、病勢安定(SD)または示された場合は部分奏効(PR)の最良総合効果を呈する対象を表す。黒い三角、丸および四角はそれぞれ、病勢進行、病勢安定および部分奏効の時点効果を示す。
【
図18】拡大コホート6、データカットオフ:2021年1月29日: A)腫瘍サイズのベースラインからの最大変化;NE、評価不能;PD、病勢進行;SD、病勢安定;uPR、未確定の部分奏効、◇=前PD-(L)1;PD-(L)1、プログラム細胞死(リガンド)1;RECIST、固形がんの治療効果判定基準。 B)ベースラインからの標的病変の径和(SoD)の変化。黒線は病勢進行を呈する対象を表す。灰色の線は、病勢安定(SD)または示された場合は部分奏効(PR)の最良総合効果を呈する対象を表す。黒い三角、丸および四角はそれぞれ、病勢進行、病勢安定および部分奏効の時点効果を示す。白丸は「評価不能」を表す;すなわち、患者は進行しているが処置され、RECISTに基づく進行後もスキャンによって追跡されている。
【
図19】拡大コホート7、データカットオフ:2021年1月29日: A)腫瘍サイズのベースラインからの最大変化:PD、病勢進行、PR、部分奏効;SD、病勢安定;RECIST、固形がんの治療効果判定基準。 B)ベースラインからの標的病変の径和(SoD)の変化。黒線は病勢進行を呈する対象を表す。灰色の線は、病勢安定または示された場合は部分奏効(PR)の最良総合効果を呈する対象を表す;黒い三角、丸および四角はそれぞれ、病勢進行、病勢安定および部分奏効の時点効果を示す。白丸は「評価不能」を表す;すなわち、患者は進行しているが処置され、RECISTに基づく進行後もスキャンによって追跡されている。
【
図20】チェックポイント阻害物質での前治療を受けたことがある対象(灰色の線)およびチェックポイント阻害物質無処置患者(黒線)における無増悪生存期間を示すウォーターフォールプロット。
【
図21】臨床的奏効(PR)を有するCPI経験拡大コホート(GEN1046単独療法)の対象における、病勢安定(SD)または病勢進行(PD)を有する対象と比較した最後の前抗PD-(L)1からの期間の比較。奏効群は、ウィルコクソン検定を用いて比較した。PDに対するPR: p=0.0017; SDに対するPR: p=0.034。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
定義
用語「免疫グロブリン」は、1対の低分子量の軽(L)鎖と1対の重(H)鎖の2つのポリペプチド鎖ペアからなり、4つすべてがジスルフィド結合によって相互連結されている構造的に関連した糖タンパク質の一分類を示す。免疫グロブリンの構造は充分に特性評価されている。例えば、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照のこと。簡単には、各重鎖は典型的には、重鎖可変領域(本明細書においてVHまたはVHと略記する)と重鎖定常領域(本明細書においてCHまたはCHと略記する)で構成される。重鎖定常領域は典型的には3つのドメインCH1、CH2、およびCH3で構成される。ヒンジ領域は重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域であり、高度に柔軟性である。ヒンジ領域内のジスルフィド結合はIgG分子内の2つの重鎖間の相互作用の一部である。各軽鎖は典型的には、軽鎖可変領域(本明細書においてVLまたはVLと略記する)と軽鎖定常領域(本明細書においてCLまたはCLと略記する)で構成される。軽鎖定常領域は典型的には1つのドメインCLで構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存的な領域により間隔をあけて配置された相補性決定領域(CDR)とも称される超可変性の領域(あるいは構造的に画定されたループの配列および/または形態が超可変的であり得る超可変領域)にさらに細分され得る。各VHおよびVLは典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4、に配列される3つのCDRおよび4つのFRで構成される(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196,901-917(1987)もまた参照のこと)。特に記載のない限り、または文脈と矛盾しない限り、本明細書におけるCDR配列は、IMGT規則に従ってDomainGapAlign(Lefranc MP.,Nucleic Acids Research 1999;27:209-212およびEhrenmann F.,Kaas Q.and Lefranc M.-P.Nucleic Acids Res.,38,D301-307(2010)を用いて同定される;インターネットのhttpアドレスwww.imgt.org/)もまた参照のこと。特に記載のない限り、または文脈と矛盾しない限り、本発明における定常領域内のアミノ酸位置に対する言及はEU-ナンバリング(Edelman et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.1969 May;63(1):78-85;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.1991 NIH Publication No.91-3242)によるものである。
【0019】
用語「位置…に対応するアミノ酸」は、本明細書において使用する場合、ヒトIgG1重鎖におけるアミノ酸位置番号を示す。他の免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸位置はヒトIgG1とのアラインメントによって知得され得る。したがって、ある配列内の別の配列内のアミノ酸またはセグメント「に対応する」アミノ酸またはセグメントは、他方のアミノ酸またはセグメントと標準的な配列アラインメントプログラム、例えばALIGN、ClustalWまたは同様のものを典型的にはデフォルト設定を用いてアラインメントされ、ヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するものである。どのようにして配列または配列内のセグメントをアラインメントし、それにより配列内の本発明によるアミノ酸位置に対応する位置を決定することは当技術分野において周知とみなす。
【0020】
本発明との関連における用語「結合物質」は、所望の抗原に結合することができる任意の作用物質を示す。本発明の特定の態様において、結合物質は抗体、抗体断片またはその構築物である。結合物質はまた、合成の改変された部分または天然に存在しない部分、特に非ペプチド部分を含んでいてもよい。かかる部分は、例えば所望の抗原結合機能部または抗原結合領域、例えば抗体または抗体断片に連結され得る。一態様において、結合物質は、抗原結合性のCDRまたは可変領域を含む合成構築物である。
【0021】
本発明との関連における用語「抗体」(Ab)は、典型的な生理学的条件下で抗原に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片またはそのいずれかの誘導体を示し、有意な期間、例えば少なくとも約30分間、少なくとも約45分間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日間もしくはそれより長い期間など、または任意の他の該当する機能的に規定される期間(例えば、抗原に対する抗体の結合に伴う生理学的応答が誘導される、促進される、向上する、および/または調節されるのに充分な時間および/または抗体がエフェクター活性をリクルートするのに充分な時間)の半減期を有する。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。用語「抗原結合領域」は、本明細書において使用する場合、抗原と相互作用し、VH領域とVL領域の両方を含む領域を示す。抗体という用語は、本明細書において使用する場合、単一特異性抗体だけでなく、複数、例えば2つ以上、例えば3つ以上の異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も含む。抗体(Ab)の定常領域は、宿主の組織または因子、例えば免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系の成分、例えば補体活性化の古典的経路の第一成分であるC1qに対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。上記のように、本明細書における抗体という用語は、特に記載のない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原結合断片である、すなわち抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体の断片を含む。完全長抗体の断片によって抗体の抗原結合機能が発揮され得ることは示されている。用語「抗体」に包含される抗原結合断片の例としては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab'もしくはFab断片またはWO2007059782(Genmab)に記載のような一価抗体;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab')2断片;(iii)本質的にVHドメインとCH1ドメインからなるFd断片;(iv)本質的に1つの抗体アームのVLドメインとVHドメインからなるFv断片、(v)本質的にVHドメインからなり、ドメイン抗体(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov;21(11):484-90)とも称されるdAb断片(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989));(vi)ラクダ科分子またはナノボディ分子(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;5(1):111-24)ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインVLとVHは別々の遺伝子にコードされるが、これらは、組換え方法を用いて、VL領域とVH領域がペアになって一価の分子(一本鎖抗体または単鎖Fv(scFv)として知られている、例えばBird et al.,Science 242,423-426(1988)およびHuston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)参照)を形成している単一のタンパク質鎖として作製されるのを可能にする合成リンカーによって連接され得る。かかる一本鎖抗体は、特に記載のない限り、または本文に明示していない限り、抗体という用語に包含される。かかる断片は一般的に抗体の意味に含まれるが、これらは集合的に、および各々独立して、異なる生物学的特性および有用性を示す本発明の独自の特徴である。本発明との関連におけるこれらおよび他の有用な抗体断片ならびにかかる断片の二重特異性形式を本明細書においてさらに論考する。また、抗体という用語は、特に指定のない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体ならびに任意の既知の手法、例えば酵素的切断、ペプチド合成および組換え手法によって得られる、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片(抗原結合断片)もまた含むことも理解されたい。作製される抗体は任意のアイソタイプを有し得る。本明細書において使用する場合、用語「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子にコードされた免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM)を示す。特定のアイソタイプ、例えばIgG1が本明細書において言及されている場合、この用語は、ある具体的なアイソタイプ配列、例えば特定のIgG1配列に限定されるのではなく、その抗体の配列が他のアイソタイプよりも前記アイソタイプ、例えばIgG1に近いことを示すために使用される。したがって、例えば本発明のIgG1抗体は、定常領域に多様性を含む天然に存在するIgG1抗体の配列バリアントであり得る。
【0022】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用する場合、単一分子組成の抗体分子の調製物を示す。モノクローナル抗体組成物は特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を示す。ヒトモノクローナル抗体は、遺伝子導入された、または導入染色体を有する非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られ、ヒト重鎖導入遺伝子と軽鎖導入遺伝子とを含むゲノムを有し、不死化細胞と融合されたB細胞を含むハイブリドーマによって生成され得る。
【0023】
本発明との関連における用語「二重特異性抗体」または「bs」は、異なる抗体配列によって画定される2つの異なる抗原結合領域を有する抗体を示す。いくつかの態様において、前記異なる抗原結合領域は同じ抗原上の異なるエピトープに結合する。しかしながら、好ましい態様では、前記異なる抗原結合領域は異なる標的抗原に結合する。二重特異性抗体は任意の形式のもの、例えば本明細書において後述する二重特異性抗体形式のいずれかであり得る。
【0024】
本明細書において使用する場合、文脈と矛盾しない限り、用語「Fabアーム」または「アーム」は1つの重鎖-軽鎖ペアを含み、本明細書において「半分子」と互換的に使用される。
【0025】
二重特異性抗体が第1の抗体「に由来する」半分子抗体と第2の抗体「に由来する」半分子抗体を含むと記載されている場合、用語「~に由来する」は、前記二重特異性抗体が、任意の既知の方法により、前記第1および第2の抗体の各々からの前記半分子を再会合(recombining)させて前記二重特異性抗体をもたらすことによって作製されたことを示す。本文中において、「再会合させること」は、任意の特定の再会合方法に限定されることは意図されず、したがって、本明細書において後述する二重特異性抗体を作製するためのあらゆる方法、例えば、半分子交換によって再会合させること、ならびに核酸レベルで、および/または同じ細胞内での2つの半分子の共発現によって再会合させることなどを含む。
【0026】
用語「一価抗体」は、本発明との関連において、抗体分子は1分子の抗原に結合することができ、したがって抗原または細胞の架橋を行なうことができないことを意味する。
【0027】
用語「完全長」は、抗体との関連において使用する場合、抗体が断片ではなく、具体的なアイソタイプのそのアイソタイプに自然な状態で通常、みられるすべてのドメイン、例えばIgG1抗体ではVH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VLおよびCLドメインを含んでいることを示す。
【0028】
本明細書において使用する場合、文脈と矛盾しない限り、用語「Fc領域」は、免疫グロブリンの重鎖の2つのFc配列からなる抗体領域を示し、前記Fc配列は少なくともヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。
【0029】
本明細書において使用する場合、用語「第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体型相互作用」は、第1のCH3/第2のCH3ヘテロ二量体型タンパク質内の第1のCH3領域と第2のCH3領域との間の相互作用を示す。
【0030】
本明細書において使用する場合、用語「第1のCH3領域と第2のCH3領域のホモ二量体型相互作用」は、第1のCH3/第1のCH3ホモ二量体型タンパク質内の第1のCH3領域と別の第1のCH3領域との間の相互作用および第2のCH3/第2のCH3ホモ二量体型タンパク質内の第2のCH3領域と別の第2のCH3領域との間の相互作用を示す。
【0031】
本明細書において使用する場合、所定の抗原またはエピトープに対する抗体の結合との関連における用語「結合する」または「~に結合することができる」とは典型的には、Bio-Layer Interferometry(BLI)を用いて測定した場合、または例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術をBIAcore 3000計器にて使用し、リガンドとして抗原および分析物として抗体を用いて測定した場合、約10-7 Mもしくはそれ未満、例えば約10-8 Mもしくはそれ未満、例えば約10-9 Mもしくはそれ未満、約10-10 Mもしくはそれ未満、または約10-11 Mもしくはさらにそれ未満のKDに相当する親和性での結合である。前記抗体は前記所定の抗原に、前記所定の抗原または近縁の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合のKDより少なくとも10倍小さい、例えば少なくとも100倍小さい、例えば少なくとも1,000倍小さい、例えば少なくとも10,000倍小さい、例えば少なくとも100,000倍小さいKDに相当する親和性で結合する。親和性の高さの量は抗体のKDに依存し、そのため、抗体のKDが非常に小さい(すなわち、抗体が高度に特異的である)場合、抗原に対する親和性のこの度合いは非特異的抗原に対するこの度合い親和性より少なくとも10,000倍小さいものであり得る。
【0032】
用語「kd」(秒-1)は、本明細書において使用する場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を示す。前記値はkoff値とも称される。
【0033】
用語「KD」(M)は、本明細書において使用する場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を示す。
【0034】
本発明に従って使用される抗体は単離された抗体であり得る。「単離された抗体」は、本明細書において使用する場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に無含有である抗体を示すことを意図する。好ましい一態様において、PD-L1とCD137に特異的に結合する単離された二重特異性抗体は、PD-L1またはCD137に特異的に結合する単一特異性抗体を実質的に無含有である。別の好ましい態様において、前記抗体または前記抗体を含む薬学的組成物は、PD-L1に結合することができない天然に生成する抗体を実質的に無含有である。さらなる好ましい一態様において、本発明の抗体は、天然に存在する抗PD-L1抗体の構造と比べてアミノ酸配列に構造変化を有し、前記構造変化は、前記抗体が前記天然に存在する抗PD-L1抗体によって示される機能性と比べて変更された機能性を示すことを引き起こすものであり、前記機能性は:(i)PD-L1結合親和性、(ii)PD-1とのPD-L1の結合を阻害する能力、(iii)Fc媒介性エフェクター機能を誘導する能力および(iv)Fc媒介性エフェクター機能を誘導しない能力からなる群より選択される。
【0035】
用語「PD-L1」は、本明細書において使用する場合、プログラム細胞死-リガンド1タンパク質を示す。PD-L1はヒトおよび他の種にみられ、したがって、用語「PD-L1」は、文脈と矛盾しない限りヒトPD-L1に限定されない。ヒト、マカク属(カニクイザル)、アフリカゾウ、イノシシおよびマウスのPD-L1の配列は、それぞれGenbankアクセッション番号NP_054862.1、XP_005581836、XP_003413533、XP_005665023およびNP_068693から知得され得る。ヒトPD-L1の配列はSEQ ID NO:25にも示しており、ここで、アミノ酸1~18はシグナルペプチドであると推定される。ヒトPD-L1の成熟配列をSEQ ID NO:26に示す。
【0036】
用語「PD-1」は、本明細書において使用する場合、ヒトプログラム細胞死-1タンパク質を示し、CD279としても知られている。
【0037】
用語「CD137」は、本明細書において使用する場合、ヒト分化抗原群(Cluster of Differentiation)137タンパク質を示す。CD137(4-1BB)は、TNFRSF9とも称され、リガンドTNFSF9/4-1BBLの受容体である。CD137は、T細胞活性化に関与すると考えられている。一態様において、CD137はヒトCD137であり、UniProtアクセッション番号Q07011を有する。ヒトCD137の配列はSEQ ID NO:23にも示しており、ここでアミノ酸1~23はシグナルペプチドであると推定される。ヒトCD137の成熟配列をSEQ ID NO:24に示す。
【0038】
2つの配列間の同一性パーセントは、前記配列が共通して有する同一の位置の数の関数であり(すなわち、相同性%=同一の位置の数/位置の総数×100)、前記2つの配列の最適なアラインメントのために導入されることが必要とされるギャップ数と各ギャップの長さが考慮される。2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers and W.Miller,Comput.Appl.Biosci 4,11-17(1988)のアルゴリズムを使用し、PAM120加重残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いて求められ得る。また、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48,444-453(1970)アルゴリズムを用いて求められ得る。
【0039】
本発明との関連において、保存的置換は、以下の表に反映されるアミノ酸分類内での置換によって定義され得る。
【0040】
【0041】
本発明との関連において、以下の表記法は、特に記載のない限り、変異を示すために使用している:i)所与の位置におけるアミノ酸の置換は例えばK409Rと記載し、これは、タンパク質の409位のリシンのアルギニンでの置換を意味し;ii)具体的なバリアントには、任意のアミノ酸残基を示すコードXaaおよびXを含む具体的な三文字コードまたは一文字コードを使用している。したがって、409位におけるリシンのアルギニンでの置換は:K409Rと表示され、409位におけるリシンの任意のアミノ酸残基での置換はK409Xと表示される。409位のリシンの欠失の場合はK409*と示される。
【0042】
本発明との関連において、「PD-1とのPD-L1の結合の阻害」は、PD-L1に結合することができる抗体の存在下におけるPD-1とのPD-L1の結合の検出可能に有意な任意の低減を示す。典型的には、阻害は、抗PD-L1抗体の存在によって引き起こされる、PD-L1とPD-1との間の結合の少なくとも約10%の低減、例えば少なくとも約15%、例えば少なくとも約20%、例えば少なくとも40%の低減を意味する。PD-1とのPD-L1の結合の阻害は任意の適当な手法によって測定され得る。一態様において、阻害はWO2019/025545の実施例6に記載のとおりに測定される。
【0043】
用語「特異性」は、本明細書において使用する場合、文脈と矛盾しない限り、以下の意味を有することを意図する。2つの抗体は、同じ抗原および同じエピトープに結合するならば「同じ特異性」を有する。
【0044】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、表面上の一群の分子、例えばアミノ酸側鎖または糖側鎖からなり、通常、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。構造依存性エピトープと構造非依存性エピトープは、変性溶媒の存在下で前者との結合は喪失するが、後者との結合は喪失しないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的抗原結合性ペプチドに有効にブロックされるか、または覆われるアミノ酸残基(換言すると、このアミノ酸残基は特異的抗原結合性ペプチドのフットプリント内に存在する)を含み得る。
【0045】
用語「キメラ抗体」は、本明細書において使用する場合、可変領域が非ヒト種に由来(例えば、齧歯類に由来)し、定常領域が異なる種、例えばヒトに由来する抗体を示す。治療への応用のためのキメラモノクローナル抗体が、抗体免疫原性を低減させるために開発されている。用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、キメラ抗体との関連において使用する場合、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の両方の、CDRおよびフレームワーク領域を含む領域を示す。キメラ抗体は、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning: A laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,Ch.15に記載のような標準的なDNA手法を使用することによって作製され得る。キメラ抗体は遺伝子操作された組換え抗体または酵素的に操作された組換え抗体であり得る。キメラ抗体を作製することは当業者の知識の範囲内であり、したがって、本発明によるキメラ抗体の作製は、本明細書に記載のもの以外の方法によって行なってもよい。
【0046】
用語「ヒト化抗体」は、本明細書において使用する場合、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインと高レベルの配列相同性を含むように改変された非ヒト可変ドメインを含む遺伝子操作された非ヒト抗体を示す。これは、一体となって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同なヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)にグラフトすることによって行なわれ得る(WO92/22653およびEP0629240参照)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に再構成するため、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)由来のフレームワーク残基をヒトフレームワーク領域に置き換えること(逆向変異)が必要とされる場合があり得る。構造のホモロジーモデリングは、フレームワーク領域内の抗体の結合特性に重要なアミノ酸残基を同定する一助となり得る。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、任意で非ヒトアミノ酸配列に対して1つまたは複数のアミノ酸逆向変異を含む、主としてヒトのフレームワーク領域および完全ヒト定常領域を含むものであってもよい。任意で、好ましい特性、例えば親和性および生化学的特性を有するヒト化抗体を得るために追加のアミノ酸改変を適用してもよく、これは必ずしも逆向変異でなくてもよい。
【0047】
用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用する場合、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を有する抗体を示す。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含むものであってもよい。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用する場合、別の哺乳動物種、例えばマウスまたはラットの生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。ヒトモノクローナル抗体は、さまざまな手法、例えば慣用的なモノクローナル抗体方法論、例えばKohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション手法によって作製され得る。体細胞ハイブリダイゼーション手順が原則的には好ましいが、モノクローナル抗体を作製するための他の手法、例えばウイルスによる、もしくはBリンパ球の発癌遺伝子的形質転換またはヒト抗体遺伝子のライブラリーを使用するファージディスプレイ手法も使用され得る。ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するのに適当な動物の系はマウスの系である。マウスでのハイブリドーマの作製は非常によく確立された手順である。免疫処置プロトコルおよび融合のための免疫処置済脾細胞の単離のための手法は当技術分野において公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた公知である。したがって、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、マウスまたはラットの系ではなくヒト免疫系の一部を担持しているトランスジェニックの、または導入染色体を有するマウスまたはラットを用いて産生させることができる。したがって、一態様において、ヒト抗体は、動物の免疫グロブリン配列ではなくヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を担持しているトランスジェニック動物、例えばトランスジェニックマウスまたはラットから得られる。かかる態様において、前記抗体は、起源は前記動物に導入されたヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列であるが、最終の抗体配列は、前記動物の内因性抗体機構による体細胞超変異および親和性成熟によりさらに改変される前記ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列の結果物となり、例えばMendez et al.1997 Nat Genet.15(2):146-56を参照されたい。用語「還元条件」または「還元環境」は、基質、ここでは抗体のヒンジ領域内のシステイン残基が酸化状態より還元状態になりやすい条件または環境を示す。
【0048】
対象の「処置」または「治療」は、疾患に付随する症状、合併症、状態、または生化学的兆候の開始、進行、発症、重症度、または再発を逆転させる、緩和する、軽快させる、抑止する、遅滞させる、または予防するという目的を伴って対象に対して行なわれる任意の型の介入もしくはプロセスまたは対象への活性物質の投与を示す。
【0049】
用語「ファーストライン処置」は、疾患または病気に対して推奨される初回処置または最初の処置を示す。これは、ファーストライン治療、一次処置、初回処置または導入治療と称されることもあり得る。
【0050】
用語「セカンドライン処置」は、対象の初回処置(ファーストライン処置)が不奏効であった後、対象が再発を有するかもしくは疾患が進行した後、または対象が、許容できない有害効果もしくは副作用を経験した後の、疾患または病状に対する処置を示す。
【0051】
「対象」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」としては、限定するわけではないが、脊椎動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌならびに齧歯類、例えばマウス、ラットおよびモルモットが挙げられる。用語「対象」および「患者」および「個体」は本明細書において互換的に使用している。
【0052】
本発明の結合物質での処置に対する奏効は、Response Evaluation Criteria In Solid Tumors;バージョン1.1(RECIST Criteria v1.1)に従って判定され得る。RECIST Criteriaを以下の表2に示す。
【0053】
(表2)奏効の定義(RECIST Criteria v1.1)
【0054】
「最良総合効果」は処置の開始から疾患進行/再発までに記録された最良の効果である(処置を開始して以降に記録された最小の測定値がPDの基準として使用される)。CRまたはPRを有する対象は客観的奏効状態であるとみなされる。CR、PRまたはSDを有する対象は病勢コントロール状態であるとみなされる。NEを有する対象は非奏効群としてカウントされる。最良総合効果は処置の開始から疾患進行/再発までに記録された最良の効果である(処置を開始して以降に記録された最小の測定値がPDの基準として使用される)。
【0055】
「奏効期間(DOR)」は、確認された最良総合効果がCRまたはPRである対象に対してのみ適用され、客観的腫瘍縮小効果(CRまたはPR)の最初の記録から最初のPDまたは根本にあるがんによる死亡の日付けまでの期間と定義される。
【0056】
「無増悪生存期間(PFS)」は、サイクル1の1日目から最初の記録された進行または何らかの原因による死亡までの日数と定義される。
【0057】
「全生存期間(OS)」は、サイクル1の1日目から何らかの原因による死亡までの日数と定義される。対象が死亡しているか不明である場合、OSは、対象が生存していることがわかっていた直近の日付け(カットオフの日付けまたはそれより前)で打ち切られる。
【0058】
用語「薬学的に許容される」とは、物質または組成物が、製剤を構成するその他の成分および/またはこれで処置される哺乳動物と化学的および/または毒物学的に適合性でなければならないことを示す。
【0059】
上記のように、第1の局面において、本発明は、SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列からなるヒトCD137などのヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域と、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列からなるヒトPD-L1などのヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域とを含む結合物質を、対象に投与することを含む、前記対象の腫瘍の進行を低減もしくは抑制するための、または前記対象のがんを処置するための方法であって、
1回または複数回の処置サイクルでの用量Aの投与および1回または複数回の処置サイクルでの用量Bの投与を含む投薬スケジュールで、前記結合物質が前記対象に投与され、
用量Aにおける結合物質の量が、
a)約0.3~2.5 mg/kg体重、もしくは総量で約25~200 mg;および/または
b)約2.1×10-9~1.7×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約1.7×10-7~1.4×10-6 mol
であり;かつ
用量Bにおける結合物質の量が、
c)約3.8~7.5 mg/kg体重、もしくは総量で約300~600 mg;および/または
d)約2,6×10-8~5.1×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.0~4.1×10-6 mol
である、
前記方法に関する。
【0060】
より具体的には、用量Aにおける結合物質の量は、
a)0.3~2.5 mg/kg体重、もしくは総量で25~200 mg;および/または
b)2.1×10-9~1.7×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で1.7×10-7~1.4×10-6 mol
であり得;
用量Bにおける結合物質の量は、
c)3.8~7.5 mg/kg体重、もしくは総量で300~600 mg;および/または
d)2,6×10-8~5.1×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.0~4.1×10-6 mol
であり得る。
【0061】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、約0.4~2.3 mg/kg体重、もしくは総量で約30~約180 mg、および/または約2.56×10-9~約1.53×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2,04×10-7~約1.23×10-6 molであり得る。
【0062】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、約0.5~約2.0 mg/kg体重、もしくは総量で約40~約160 mg、および/または約3.41×10-9~約1.36×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.73×10-7~約1.09×10-6 molであり得る。
【0063】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、約0.6~約1.9 mg/kg体重、もしくは総量で約50~約150 mg、および/または約4.26×10-9~約1.28×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.41×10-7~約1,02×10-6 molであり得る。
【0064】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、約0.8~約1.8 mg/kg体重、もしくは総量で約60~約140 mg、および/または約5.11×10-9~約1.19×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約4.09×10-7~約9.54×10-7 molであり得る。
【0065】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、約0.9~約1.6 mg/kg体重、もしくは総量で約70~約130 mg、および/または約5.96×10-9~約1.11×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約4.77×10-7~約8.86×10-7 molであり得る。
【0066】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、約1~約1.5 mg/kg体重、もしくは総量で約80~約120 mg、および/または約6.81×10-9~約1.02×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約5.45×10-7~約8.18×10-7 molであり得る。
【0067】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、約1.1~約1.4 mg/kg体重、もしくは総量で約90~約110 mg、および/または約7.67×10-9~約9.37×10-9 mol/kg体重、もしくは総量で約6.13×10-7~約7.49×10-7 molであり得る。
【0068】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、約1.2~約1.3 mg/kg体重、もしくは総量で約95~約105 mg、および/または約8.09×10-9~約8.94×10-9 mol/kg体重、もしくは総量で約6.47×10-7~約7.16×10-7 molであり得る。
【0069】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、0.4~2.3 mg/kg体重、もしくは総量で30~180 mg、および/または2.56×10-9~1.53×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で2,04×10-7~1.23×10-6 molであり得る。
【0070】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、0.5~2.0 mg/kg体重、もしくは総量で40~160 mg、および/または3.41×10-9~1.36×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.73×10-7~1.09×10-6 molであり得る。
【0071】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、0.6~1.9 mg/kg体重、もしくは総量で50~150 mg、および/または4.26×10-9~1.28×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.41×10-7~1,02×10-6 molであり得る。
【0072】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、0.8~1.8 mg/kg体重、もしくは総量で60~140 mg、および/または5.11×10-9~1.19×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で4.09×10-7~9.54×10-7 molであり得る。
【0073】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、0.9~1.6 mg/kg体重、もしくは総量で70~130 mg、および/または5.96×10-9~1.11×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で4.77×10-7~8.86×10-7 molであり得る。
【0074】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、1~1.5 mg/kg体重、もしくは総量で80~120 mg、および/または6.81×10-9~1.02×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で5.45×10-7~8.18×10-7 molであり得る。
【0075】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、1.1~1.4 mg/kg体重、もしくは総量で90~110 mg、および/または7.67×10-9~9.37×10-9 mol/kg体重、もしくは総量で6.13×10-7~7.49×10-7 molであり得る。
【0076】
用量Aにおける前記結合物質の量は特に、1.2~1.3 mg/kg体重、もしくは総量で95~105 mg、および/または8.09×10-9~8.94×10-9 mol/kg体重、もしくは総量で6.47×10-7~7.16×10-7 molであり得る。
【0077】
現時点では、用量Aにおける結合物質の量は、
a)約1.25 mg/kg体重、もしくは総量で約100 mg;および/または
b)約8.5×10-9 mol/kg体重、もしくは総量で約6.8×10-7 mol
であることが好ましい。
【0078】
用量Aにおける結合物質の量は、
a)1.25 mg/kg体重、もしくは総量で100 mg;および/または
b)8.5×10-9 mol/kg体重、もしくは総量で6.8×10-7 mol
であることがさらに好ましい。
【0079】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約4.4~約7.4 mg/kg体重、もしくは総量で350~約590 mg、および/または約2.98×10-8~約5.03×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.39×10-6~約4.02×10-6 molであり得る。
【0080】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約5.0~約7.25 mg/kg体重、もしくは総量で約400~約580 mg、および/または約3.41×10-8~約4.94×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.73×10-6~約3.95×10-6 molであり得る。
【0081】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約5.3~約7.1 mg/kg体重、もしくは総量で約420 約570 mg、および/または約3.58×10-8~約4.86×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.86×10-6~約3.88×10-6 molであり得る。
【0082】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約5.4~約7.0 mg/kg体重、もしくは総量で約430~約560 mg、および/または約3.66×10-8~約4.77×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.93×10-6~約3.82×10-6 molであり得る。
【0083】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約5.5~約6.9 mg/kg体重、もしくは総量で約440~約550 mg、および/または約3.75×10-8~約4.69×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.00×10-6~約3.75×10-6 molであり得る。
【0084】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約5.6~約6.8 mg/kg体重、もしくは総量で約450~約540 mg、および/または約3.83×10-8~約4.60×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.07×10-6~約3.68×10-6 molであり得る。
【0085】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約5.8~約6.6 mg/kg体重、もしくは総量で約460~約530 mg、および/または約3.92×10-8~約4.51×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.13×10-6~約3.61×10-6 molであり得る。
【0086】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約5.9~約6.5 mg/kg体重、もしくは総量で約470~約520 mg、および/または約4.00×10-8~約4.43×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.20×10-6~約3.54×10-6 molであり得る。
【0087】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約6.0~約6.4 mg/kg体重、もしくは総量で約480~約515 mg、および/または約4.09×10-8~約4.39×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.27×10-6~約3.51×10-6 molであり得る。
【0088】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約6.1~約6.4 mg/kg体重、もしくは総量で約490~約510 mg、および/または約4.17×10-8~約4.34×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.34×10-6~約3.48×10-6 molであり得る。
【0089】
用量Bにおける結合物質の量は特に、約6.2~約6.3 mg/kg体重、もしくは総量で約495~約505 mg、および/または約4.22×10-8~約4.30×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.37×10-6~約3.44×10-6 molであり得る。
【0090】
用量Bにおける結合物質の量は特に、4.4~7.4 mg/kg体重、もしくは総量で350~590 mg、および/または2.98×10-8~5.03×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.39×10-6~4.02×10-6 molであり得る。
【0091】
用量Bにおける結合物質の量は特に、5.0~7.25 mg/kg体重、もしくは総量で400~580 mg、および/または3.41×10-8~4.94×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.73×10-6~3.95×10-6 molであり得る。
【0092】
用量Bにおける結合物質の量は特に、5.3~7.1 mg/kg体重、もしくは総量で420~570 mg、および/または3.58×10-8~4.86×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.86×10-6~3.88×10-6 molであり得る。
【0093】
用量Bにおける結合物質の量は特に、5.4~7.0 mg/kg体重、もしくは総量で430~560 mg、および/または3.66×10-8~4.77×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で2.93×10-6~3.82×10-6 molであり得る。
【0094】
用量Bにおける結合物質の量は特に、5.5~6.9 mg/kg体重、もしくは総量で440~550 mg、および/または3.75×10-8~4.69×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.00×10-6~3.75×10-6 molであり得る。
【0095】
用量Bにおける結合物質の量は特に、5.6~6.8 mg/kg体重、もしくは総量で450~540 mg、および/または3.83×10-8~4.60×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.07×10-6~3.68×10-6 molであり得る。
【0096】
用量Bにおける結合物質の量は特に、5.8~6.6 mg/kg体重、もしくは総量で460~530 mg、および/または3.92×10-8~4.51×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.13×10-6~3.61×10-6 molであり得る。
【0097】
用量Bにおける結合物質の量は特に、5.9~6.5 mg/kg体重、もしくは総量で470~520 mg、および/または4.00×10-8~4.43×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.20×10-6~3.54×10-6 molであり得る。
【0098】
用量Bにおける結合物質の量は特に、6.0~6.4 mg/kg体重、もしくは総量で480~515 mg、および/または4.09×10-8~4.39×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.27×10-6~3.51×10-6 molであり得る。
【0099】
用量Bにおける結合物質の量は特に、6.1~6.4 mg/kg体重、もしくは総量で490~510 mg、および/または4.17×10-8~4.34×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.34×10-6~3.48×10-6 molであり得る。
【0100】
用量Bにおける結合物質の量は特に、6.2~6.3 mg/kg体重、もしくは総量で495~505 mg、および/または4.22×10-8~4.30×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.37×10-6~3.44×10-6 molであり得る。
【0101】
現時点では、用量Bにおける結合物質の量は、
a)約6.25 mg/kg体重、もしくは総量で約500 mg;および/または
b)約4.3×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約3.4×10-6 mol
であることが好ましい。
【0102】
用量Bにおける結合物質の量は、
a)6.25 mg/kg体重、もしくは総量で500 mg;および/または
b)4.3×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で3.4×10-6 mol
であることがさらに好ましい。
【0103】
投薬スケジュールは、1回または複数回の処置サイクルでの用量Aの投与、続いて1回または複数回の処置サイクルでの用量Bの投与を含むことがさらに好ましい。
【0104】
用量Aは、各処置サイクルにおいて1回、例えば各処置サイクルの1日目に投与され得る。
【0105】
また、用量Bも、各処置サイクルにおいて1回、例えば各処置サイクルの1日目に投与され得る。
【0106】
用量Aは、各処置サイクルが3週間/21日間の持続期間を有する1回または複数回の処置サイクルで、例えば、各処置サイクルが3週間/21日間の持続期間を有する2回、3回、4回、または5回の処置サイクルで投与され得る。好ましくは、用量Aは、各処置サイクルが3週間/21日間の持続期間を有する2回の処置サイクルで投与される。
【0107】
用量Aは好ましくは、前記3週間/21日間処置サイクルの各々において1回(Q3W)投与される。
【0108】
用量Aは特に、前記1回または複数回の3週間/21日間処置サイクルの各々の1日目に投与され得る。
【0109】
用量Bは、各処置サイクルが6週間/42日間の持続期間を有する1回または複数回の処置サイクルで投与され得る。特に、用量Bは、各処置サイクルが6週間/42日間の持続期間を有する2~5回の処置サイクルで、例えば各処置サイクルが6週間/42日間の持続期間を有する2~10回の処置サイクルで、例えば各処置サイクルが6週間/42日間の持続期間を有する2~20回の処置サイクルで、または例えば各処置サイクルが6週間/42日間の持続期間を有する2~50回の処置サイクルで投与され得る。
【0110】
用量Bは好ましくは、前記1回または複数回の6週間/42日間処置サイクルの各々において1回(Q6W)投与される。
【0111】
本明細書に開示の方法において、用量Bは特に、前記1回または複数回の6週間/42日間処置サイクルの各々の1日目に投与され得る。
【0112】
本発明のさらなる態様において、投薬スケジュールは、2回の処置サイクルでの用量Aの投与、続いて1回または複数回の処置サイクルでの用量Bの投与を含む。
【0113】
本発明との関連において、用量Bは「維持療法」とみなされ得、したがって、完全腫瘍退縮まで、または疾患進行まで継続され得る。したがって、本発明による方法において、前記投薬スケジュールは、用量Aの投与、続いて完全腫瘍退縮または疾患進行までの用量Bの投与を含む。
【0114】
結合物質の投薬に関してさらに、本明細書に開示の方法は、全血試料を収集すること、および前記結合物質によるPD-L1受容体占有率をアセスメントすることを含み得る。
【0115】
結合物質は好ましくは全身投与、特に静脈内注射または輸注による投与によって投与される。
【0116】
各用量は最低30分間にわたって、例えば、最低60分間、最低90分間、最低120分間、または最低240分間にわたって輸注され得る。
【0117】
本開示の方法において使用される結合物質は、
a)第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:1の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)の配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)の配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み得;かつ
b)第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:8の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)の配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:12の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)の配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み得る
結合物質であり得る。
【0118】
特に、結合物質は、
a)第1の抗原結合領域が、それぞれSEQ ID NO:2、3、および4に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)と、それぞれSEQ ID NO:6、GAS、SEQ ID NO:7に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み;かつ
b)第2の抗原結合領域が、それぞれSEQ ID NO:9、10、11に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)と、それぞれSEQ ID NO:13、DDN、SEQ ID NO:14に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
結合物質であり得る。
【0119】
各可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)と4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)とを含み得る。
【0120】
相補性決定領域とフレームワーク領域は好ましくはアミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4、に配列される。
【0121】
本開示に従って使用される結合物質は第1および第2の抗原結合領域を含み得、
a)前記第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み;かつ
b)前記第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:8に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:12に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む。
【0122】
特に、本開示に従って使用される結合物質は、
a)第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含み;かつ
b)第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)領域とを含む、
第1および第2の抗原結合領域を含み得る。
【0123】
結合物質は特に抗体であり得る。いろいろな類型の本発明による結合物質の例としては、限定するわけではないが、(i)ヘテロ二量化させるための相補的なCH3ドメインを有するIgG様分子;(ii)分子の双方が各々、少なくとも2つの異なる抗体のFab断片または前記Fab断片の一部を含む組換えIgG様デュアルターゲティング分子;(iii)完全長IgG抗体を付加的なFab断片またはFab断片の一部と融合させたIgG融合分子;(iv)単鎖Fv分子または安定化させたダイアボディを重鎖定常ドメイン、Fc領域またはその一部と融合させたFc融合分子;(v)異なるFab断片を融合させて一体にし、重鎖定常ドメイン、Fc領域またはその一部と融合させたFab融合分子;および(vi)異なる単鎖Fv分子または異なるダイアボディまたは異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)を互いに融合させた、または重鎖定常ドメイン、Fc領域もしくはその一部と融合させた別のタンパク質もしくは担体分子と融合させたScFvベースおよびダイアボディベースの抗体ならびに重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が挙げられる。
【0124】
相補的なCH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例としては、限定するわけではないが、Triomab/Quadroma分子(Trion Pharma/Fresenius Biotech;Roche,WO2011069104)、いわゆるノブ・イントゥ・ホール分子(Genentech,WO9850431)、CrossMAb(Roche,WO2011117329)ならびに静電気的にマッチした分子(Amgen,EP1870459およびWO2009089004;Chugai,US201000155133;Oncomed,WO2010129304)、LUZ-Y分子(Genentech,Wranik et al.J.Biol.Chem.2012,287(52):43331-9,doi:10.1074/jbc.M112.397869.Epub 2012 Nov 1)、DIG-ボディおよびPIG-ボディ分子(Pharmabcine,WO2010134666、WO2014081202)、鎖交換遺伝子操作ドメインボディ(SEEDボディ)分子(EMD Serono,WO2007110205)、Biclonics分子(Merus,WO2013157953)、FcΔAdp分子(Regeneron,WO201015792)、二重特異性のIgG1およびIgG2分子(Pfizer/Rinat,WO11143545)、Azymetric骨格分子(Zymeworks/Merck,WO2012058768)、mAb-Fv分子(Xencor,WO2011028952)、二価の二重特異性抗体(WO2009080254)およびDuoBody(登録商標)分子(Genmab,WO2011131746)が挙げられる。
【0125】
組換えIgG様デュアルターゲティング分子の例としては、限定するわけではないが、デュアルターゲティング(DT)-Ig分子(WO2009058383)、ツー・イン・ワン抗体(Two-in-one Antibody)(Genentech;Bostrom,et al 2009.Science 323,1610-1614.)、架橋型Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star,WO2008003116)、Zybody分子(Zyngenia;LaFleur et al.MAbs.2013 Mar-Apr;5(2):208-18)、共通軽鎖を用いるアプローチ(Crucell/Merus、US7,262,028)、κλBodies(NovImmune,WO2012023053)およびCovX-ボディ(CovX/Pfizer;Doppalapudi,V.R.,et al 2007.Bioorg.Med.Chem.Lett.17,501-506.)が挙げられる。
【0126】
IgG融合分子の例としては、限定するわけではないが、二重可変領域(Dual Variable Domain)(DVD)-Ig分子(Abbott,US7,612,181)、デュアルドメインダブルヘッド(Dual domain double head)抗体(Unilever;Sanofi Aventis,WO20100226923)、IgG様二重特異性分子(ImClone/Eli Lilly,Lewis et al.Nat Biotechnol.2014 Feb;32(2):191-8)、Ts2Ab(MedImmune/AZ;Dimasi et al.J Mol Biol.2009 Oct 30;393(3):672-92)およびBsAb分子(Zymogenetics,WO2010111625)、HERCULES分子(Biogen Idec,US007951918)、scFv融合分子(Novartis)、scFv融合分子(Changzhou Adam Biotech Inc,CN 102250246)ならびにTvAb分子(Roche,WO2012025525、WO2012025530)が挙げられる。
【0127】
Fc融合分子の例としては、限定するわけではないが、ScFv/Fc融合体(Pearce et al.,Biochem Mol Biol Int.1997 Sep;42(6):1179-88)、SCORPION分子(Emergent BioSolutions/Trubion,Blankenship JW,et al.AACR 100th Annual meeting 2009(Abstract # 5465);Zymogenetics/BMS,WO2010111625)、二重親和性再ターゲティング技術(Dual Affinity Retargeting Technology)(Fc-DART)分子(MacroGenics,WO2008157379、WO2010080538)およびDual(ScFv)2-Fab分子(National Research Center for Antibody Medicine-China)が挙げられる。
【0128】
Fab融合二重特異性抗体の例としては、限定するわけではないが、F(ab)2分子(Medarex/AMGEN;Deo et al J Immunol.1998 Feb 15;160(4):1677-86.)、デュアルアクションまたはBis-Fab分子(Genentech,Bostrom,et al 2009.Science 323,1610-1614.)、ドック-ロック(Dock-and-Lock)(DNL)分子(ImmunoMedics,WO2003074569、WO2005004809)、二価の二重特異性分子(Biotecnol,Schoonjans,J Immunol.2000 Dec 15;165(12):7050-7.)およびFab-Fv分子(UCB-Celltech,WO2009040562 A1)が挙げられる。
【0129】
ScFvベース、ダイアボディベースの抗体およびドメイン抗体の例としては、限定するわけではないが、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)分子(Micromet,WO2005061547)、タンデムダイアボディ分子(TandAb)(Affimed)Le Gall et al.,Protein Eng Des Sel.2004 Apr;17(4):357-66.)、二重親和性再ターゲティング技術(DART)分子(MacroGenics,WO2008157379、WO2010080538)、一本鎖ダイアボディ分子(Lawrence,FEBS Lett.1998 Apr 3;425(3):479-84)、TCR様抗体(AIT,ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack,WO2010059315)およびCOMBODY分子(Epigen Biotech,Zhu et al.Immunol Cell Biol.2010 Aug;88(6):667-75.)、デュアルターゲティングナノボディ(Ablynx,Hmila et al.,FASEB J.2010)ならびにデュアルターゲティング重鎖ドメイン(heavy chain only domain)抗体が挙げられる。
【0130】
現時点で好ましい態様において、結合物質は多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。特に、本発明に従って使用される結合物質は2つまでの結合領域を有し得る。
【0131】
二重特異性抗体の多くの異なる形式および使用が当技術分野において公知であり、Kontermann;Drug Discov Today,2015 Jul;20(7):838-47および;Mabs,2012 Mar-Apr;4(2):182-97に概説された。
【0132】
本発明に従って使用される二重特異性抗体はなんら特定の二重特異性形式またはその作製方法に限定されない。本発明において使用され得る二重特異性抗体分子の例には(i)異なる抗原結合領域を含む2つのアームを有するシングル抗体;(ii)例えば付加的なペプチドリンカーによってタンデムに連結された2つのscFvにより2つの異なるエピトープに対する特異性を有する一本鎖抗体;(iii)各軽鎖および重鎖が短いペプチド結合によりタンデム状態の2つの可変ドメインを含む二重可変領域抗体(DVD-Ig)(Wu et al.,Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin(DVD-Ig(商標))Molecule,In:Antibody Engineering,Springer Berlin Heidelberg(2010));(iv)化学結合された二重特異性(Fab')2断片;(v)各標的抗原に対して2つの結合部位を有する四価の二重特異性抗体となっている2つの一本鎖ダイアボディの融合であるTandab;(vi)多価分子となっているscFvとダイアボディの結合体であるフレキシボディ(flexibody);(vii)プロテインキナーゼAの「二量体化/ドッキング(dimerization and docking)ドメイン」をベースにしたいわゆる「ドック-ロック」分子、これは、Fabに適用した場合、異なるFab断片に連結された2つの同一のFab断片からなる三価の二重特異性結合タンパク質となり得る;(viii)例えばヒトFabアームの両末端と融合させた2つのscFvを含む、いわゆるScorpion分子;ならびに(ix)ダイアボディが含まれる。
【0133】
一態様において、本発明において使用される結合物質はダイアボディならびにクロスボディ(cross-body)である。一態様において、本発明の結合物質は、制御されたFabアーム交換によって得られる二重特異性抗体である(例えば、WO2011131746(Genmab)に記載)。
【0134】
本発明に従って使用される結合物質は好ましくはヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。抗体が二重特異性抗体である態様において、両方の半分子がヒト由来、ヒト化型またはキメラであってもよく、半分子は配列起源に関して性質が異なっていてもよい。
【0135】
例えば、一態様において、結合物質、例えば二重特異性抗体は、各々が抗原結合領域を含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子がキメラであり、かつ/または
(ii)存在する場合、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む半分子が、キメラである。
【0136】
例えば、別の態様では、二重特異性抗体は、各々が抗原結合領域を含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子がヒト化型であり、かつ/または
(ii)存在する場合、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む半分子が、ヒト化型である。
【0137】
例えば、二重特異性抗体は、各々が抗原結合領域を含み得る2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子がヒト由来であり、かつ/または
(ii)ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む半分子がヒト由来である。
【0138】
したがって、例えば、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域はヒト化型であり得、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域はヒト化型であり得る。
【0139】
あるいは、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域はヒト由来であり得、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域はヒト由来であり得る。
【0140】
結合物質は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域とヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む二重特異性抗体であって、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子がヒト由来、ヒト化型、またはキメラであり、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む半分子がヒト化型である、前記二重特異性抗体であり得る。
【0141】
好ましくは、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒト由来であり、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒト化型である。
【0142】
本明細書に開示の方法において、結合物質は完全長抗体または抗体断片の形式であり得る。
【0143】
本開示による方法において、結合物質は、
i)前記第1の重鎖可変領域(VH)と第1の重鎖定常領域(CH)とを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなるポリペプチド、および
ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)と第2の重鎖定常領域(CH)とを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなるポリペプチド
を含み得る。
【0144】
本開示による方法において、結合物質は、
i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチド、および
ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチド
をさらに含み得る。
【0145】
結合物質は、第1の結合アームと第2の結合アームとを含む抗体であって、前記第1の結合アームが、
i)前記第1の重鎖可変領域(VH)と前記第1の重鎖定常領域(CH)とを含むポリペプチド、および
ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)と前記第1の軽鎖定常領域(CL)とを含むポリペプチド
を含み、
かつ第2の結合アームが、
iii)前記第2の重鎖可変領域(VH)と前記第2の重鎖定常領域(CH)とを含むポリペプチド、および
iv)前記第2の軽鎖可変領域(VL)と前記第2の軽鎖定常領域(CL)とを含むポリペプチド
を含む、
前記抗体であり得る。
【0146】
第1および第2の各々の重鎖定常領域(CH)は、重鎖定常部1(CH1)領域、ヒンジ領域、重鎖定常部2(CH2)領域、および重鎖定常部3(CH3)領域のうちの1つまたは複数、好ましくは少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み得る。
【0147】
第1および第2の各々の重鎖定常領域(CH)はCH3領域を含み得、前記CH3領域の各々または両方のCH3領域は不均衡変異を含む。
【0148】
本発明に従って使用される二重特異性抗体は、第1のCH3領域を含む第1のFc配列と第2のCH3領域を含む第2のFc配列とを含み得、ここで、第1のCH3領域の配列と第2のCH3領域の配列は異なっており、前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体型相互作用は前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の各々のホモ二量体型相互作用よりも強いようになっている。このような相互作用に関するさらなる詳細およびどのようにしてこの相互作用がなされ得るかはWO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に示されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0149】
安定な二重特異性PD-L1xCD137抗体は、CH3領域内に含まれる保存的不均衡変異がごくわずかな1つのホモ二量体型出発材料PD-L1抗体および1つのホモ二量体型出発材料CD137抗体を基にして特定の方法を用いて高収率で得られ得る。不均衡変異は、前記第1のCH3領域の配列と第2のCH3領域の配列がアミノ酸置換を同一でない位置に含むことを意味する。
【0150】
本開示による方法において、結合物質は、第1および第2の定常領域(CH)を含む結合物質であって、前記第1のCHにおいて、ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2のCHにおいて、ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ、前記第1の重鎖と前記第2の重鎖は同じ位置で置換されていない、前記結合物質であり得る。
【0151】
本開示による方法において、結合物質は、(i)ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第1の重鎖定常領域(CH)においてLであり、かつヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第2の重鎖定常領域(CH)においてRであるか、または(ii)ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第1の重鎖においてRであり、かつヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第2の重鎖においてLである結合物質であり得る。
【0152】
本発明による方法において、結合物質は好ましくは、同じ第1および第2の抗原結合領域とヒトIgG1のヒンジ、CH2、およびCH3の領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比べて低い程度でFc媒介性エフェクター機能を誘導する。
【0153】
第1および第2の重鎖定常領域(CH)は、非改変型の第1および第2の重鎖定常領域(CH)を含むこと以外は同一である抗体と比べて低い程度で抗体がFc媒介性エフェクター機能を誘導するように、改変され得る。
【0154】
前記非改変型の第1および第2の各々の重鎖定常領域(CH)はSEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0155】
前記Fc媒介性エフェクター機能は、Fcγ受容体との結合によって、C1qとの結合によって、またはFc媒介性Fcγ受容体架橋の誘導によって測定され得る。
【0156】
Fc媒介性エフェクター機能は、C1qとの結合を測定することによって測定され得る。
【0157】
第1および第2の重鎖定常領域は、前記抗体とのC1qの結合が野生型抗体と比べて低減されるように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低減されるように、改変されていてもよく、ここで、C1qの結合は好ましくは、ELISAによって測定される。
【0158】
本発明による方法において、前記第1および第2の重鎖定常領域(CH)のうちの少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、D265、N297、およびP331の位置に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸がそれぞれL、L、D、N、およびPでないことが好ましい。
【0159】
好ましくは、ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるL234およびL235の位置に対応する位置のアミノ酸残基がそれぞれ、前記第1および第2の重鎖においてFおよびEである。
【0160】
ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置に対応する位置のアミノ酸残基がそれぞれ、前記第1および第2の重鎖定常領域(HC)においてF、E、およびAであることがさらに好ましい。
【0161】
本開示による方法では、ヒトIgG1重鎖における第1の重鎖定常領域と第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングによるL234およびL235の位置に対応する位置がそれぞれFおよびEであり、かつ、(i)ヒトIgG1重鎖における第1の重鎖定常領域のEUナンバリングによるF405に対応する位置がLであり、かつヒトIgG1重鎖における第2の重鎖のEUナンバリングによるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)ヒトIgG1重鎖における第1の重鎖定常領域のEUナンバリングによるK409に対応する位置がRであり、かつヒトIgG1重鎖における第2の重鎖のEUナンバリングによるF405に対応する位置がLである、結合物質が使用され得る。
【0162】
前記方法で使用される結合物質において、ヒトIgG1重鎖における第1の重鎖定常領域と第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置に対応する位置のアミノ酸残基がそれぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)ヒトIgG1重鎖における第1の重鎖定常領域のEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、かつヒトIgG1重鎖における第2の重鎖定常領域のEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸残基がRであるか、または(ii)ヒトIgG1重鎖における第1の重鎖のEUナンバリングによるK409に対応する位置がRであり、かつヒトIgG1重鎖における第2の重鎖のEUナンバリングによるF405に対応する位置がLである、結合物質が本明細書において提供される。
【0163】
3つのアミノ酸置換L234F、L235E、およびD265Aの組合せに加えてK409RまたはF405Lの変異を有する結合物質を本明細書において、それぞれ接尾辞「FEAR」または「FEAL」をつけて示す。
【0164】
結合物質において、前記第1および/または第2の重鎖の定常領域は、
a)SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:30に示される配列[IgG1-FC];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大10個の置換、例えば、最大9個の置換、最大8個、最大7個、最大6個、最大5個、最大4個、最大3個、最大2個、または最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。
【0165】
本発明に従って使用される結合物質において、前記第1または第2の重鎖、例えば第1の重鎖の定常領域は、
a)SEQ ID NO:16またはSEQ ID NO:31に示される配列[IgG1-F405L];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大9個の置換、例えば、最大8個、最大7個、最大6個、最大5個、最大4個、最大3個、最大2個、または最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。
【0166】
前記第1または第2の重鎖の定常領域、例えば第2の重鎖の定常領域は、
a)SEQ ID NO:17またはSEQ ID NO:32に示される配列[IgG1-F409R];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大10個の置換、例えば、最大9個の置換、最大8個、最大7個、最大6個、最大5個、最大4個の置換、最大3個、最大2個、または最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。
【0167】
さらに、前記第1および/または第2の重鎖の定常領域は、
a)SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:33に示される配列[IgG1-Fc_FEA];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大7個の置換、例えば、最大6個の置換、最大5個、最大4個、最大3個、最大2個、または最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得るか、もしくは本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。
【0168】
前記第1および/または第2の重鎖の、例えば第1の重鎖の定常領域は、
a)SEQ ID NO:19またはSEQ ID NO:34に示される配列[IgG1-Fc_FEAL];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大6個の置換、例えば、最大5個の置換、最大4個の置換、最大3個、最大2個、または最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得るか、もしくは本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。
【0169】
前記第1および/または第2の重鎖の定常領域、例えば第2の重鎖の定常領域は、
a)SEQ ID NO:20またはSEQ ID NO:35に示される配列[IgG1-Fc_FEAR];
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大6個の置換、例えば、最大5個の置換、最大4個、最大3個、最大2個、または最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得るか、または本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。
【0170】
SEQ ID NO:15~20に記載の定常領域配列には末端リシン(K)が記載されているが、このC末端リシンは、SEQ ID NO:30~36、38に示される配列から省かれている。このリシンの起源は、これらのFc領域が由来するヒトにみられる天然に存在する配列である。細胞培養による組換え抗体の生産中、この末端リシンは内在性カルボキシペプチダーゼによるタンパク質分解によって切断除去され、同じ配列を有するがC末端リシンがない定常領域がもたらされ得る。抗体の製造目的のため、この末端リシンをコードしているDNAを配列から省き、このリシンがない抗体が作製されるようにしてもよい。末端リシンをコードしているか、またはコードしていないどちらかの核酸配列で生成される抗体は配列および機能が実質的に同一であり、これは、末端リシンのプロセッシングの度合いは典型的には、例えばCHO系の産生系において産生させる抗体を用いた場合で高いためである(Dick,L.W.et al.Biotechnol.Bioeng.2008;100:1132-1143)。したがって、例えば本明細書に記載の、末端リシンをコードしていないか、または末端リシンを有していない本発明による抗体を作製してもよいことを理解されたい。したがって、製造目的のため、末端リシンを有していない抗体が作製され得る。
【0171】
ヒト軽鎖定常領域カッパ(κ)またはラムダ(λ)のいずれかが使用され得る。したがって、特定の態様において、本明細書に開示の結合物質はカッパ(κ)軽鎖定常領域を含み得る。
【0172】
代替的または付加的に、本明細書に開示の結合物質はラムダ(λ)軽鎖定常領域を含み得る。
【0173】
本発明に従って使用される結合物質において、第1の軽鎖定常領域はカッパ(κ)軽鎖定常領域であり得る。
【0174】
本発明に従って使用される結合物質において、第2の軽鎖定常領域はラムダ(λ)軽鎖定常領域であり得る。
【0175】
あるいは、本発明に従って使用される結合物質は、ラムダ(λ)軽鎖定常領域である第1の軽鎖定常領域を含み得る。
【0176】
本発明に従って使用される結合物質において、前記第2の軽鎖定常領域はカッパ(κ)軽鎖定常領域であり得る。
【0177】
特定の態様において、カッパ(κ)軽鎖は、
a)SEQ ID NO:21に示される配列;
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大10個の置換、例えば、最大9個の置換、最大8個、最大7個、最大6個、最大5個、最大4個の置換、最大3個、最大2個、または最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0178】
ラムダ(λ)軽鎖は、
a)SEQ ID NO:22に示される配列;
b)a)の配列の部分配列、例えば、a)で定義される配列のN末端またはC末端から始めて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列;および
c)a)またはb)で定義されるアミノ酸配列と比べて最大10個の置換、例えば、最大9個の置換、最大8個、最大7個、最大6個、最大5個、最大4個の置換、最大3個、最大2個、または最大1個の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0179】
本開示の方法に従って使用される結合物質はIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプのものであり得る。
【0180】
アイソタイプの選択は典型的には、所望のFc媒介性エフェクター機能、例えばADCCの誘導またはFc媒介性エフェクター機能がない抗体(「不活性」抗体)に対する要件によってガイドされる。例示的なアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。本発明の抗体のエフェクター機能は、種々の治療用途のために、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体へのアイソタイプスイッチングによって変えられ得る。
【0181】
現時点で好ましい態様において、結合物質は完全長のIgG1抗体である。
【0182】
本開示による方法において使用される結合物質はIgG1m(f)アロタイプのものである抗体であり得る。あるいは、抗体はIgG1m(za)アロタイプのものであり得る。
【0183】
本開示に従って使用される結合物質は、
(i)第1の重鎖可変領域(VH)と第1の軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の結合アームであって、前記第1のVHが、第1のHCDR1配列、第1のHCDR2配列、および第1のHCDR3配列を含み、前記第1のHCDR1配列がSEQ ID NO:2に示されており、前記第1のHCDR2配列がSEQ ID NO:3に示されており、かつ前記第1のHCDR3配列が、SEQ ID NO:4を含みSEQ ID NO:4に示されており;かつ、前記第1のVLが、第1のLCDR1配列、第1のLCDR2配列、および第1のLCDR3配列を含み、前記第1のLCDR1配列がSEQ ID NO:6に示されており、前記第1のLCDR2配列がGASであり、かつ前記第1のLCDR3配列がSEQ ID NO:7に示されている、前記第1の結合アーム;ならびに
(ii)第2の重鎖可変領域(VH)と第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の結合アームであって、前記第2のVHが、第2のHCDR1配列、第2のHCDR2配列、および第2のHCDR3配列を含み、前記第2のHCDR1配列がSEQ ID NO:9に示されており、前記第2のHCDR2配列がSEQ ID NO:10に示されており、かつ前記第2のHCDR3配列がSEQ ID NO:11に示されており;かつ、前記第2のVLが第2のLCDR1配列、第2のLCDR2配列、および第2のLCDR3配列を含み、前記第2のLCDR1配列がSEQ ID NO:13に示されており、前記第2のLCDR2配列がDDNであり、かつ前記第2のLCDR3配列がSEQ ID NO:14に示されている、前記第2の結合アーム
を含み得;
前記第1の結合アームが第1の重鎖定常領域(CH)を含みかつ前記第2の結合アームが第2のCHを含み、ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置がそれぞれ、前記第1のCHおよび前記第2のCHにおいてF、E、およびAであり;かつ
ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第1のCHにおいてLであり、かつヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第2のCHにおいてRである。
【0184】
本開示に従って使用される結合物質は、
(i)第1の重鎖可変領域(VH)と第1の軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の結合アームであって、前記第1のVHが第1のHCDR1配列、第1のHCDR2配列、および第1のHCDR3配列を含み、前記第1のHCDR1配列がSEQ ID NO:2に示されており、前記第1のHCDR2配列がSEQ ID NO:3に示されており、かつ前記第1のHCDR3配列がSEQ ID NO:4に示されており、かつ、前記第1のVLが第1のLCDR1配列、第1のLCDR2配列、および第1のLCDR3配列を含み、前記第1のLCDR1配列がSEQ ID NO:6に示されており、前記第1のLCDR2配列がGASであり、かつ前記第1のLCDR3配列がSEQ ID NO:7に示されている、前記第1の結合アーム;ならびに
(ii)第2の重鎖可変領域(VH)と第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の結合アームであって、前記第2のVHが第2のHCDR1配列、第2のHCDR2配列、および第2のHCDR3配列を含み、前記第2のHCDR1配列がSEQ ID NO:9に示されており、前記第2のHCDR2配列がSEQ ID NO:10に示されており、かつ前記第2のHCDR3配列がSEQ ID NO:11に示されており、かつ、前記第2のVLが第2のLCDR1配列、第2のLCDR2配列、および第2のLCDR3配列を含み、前記第2のLCDR1配列がSEQ ID NO:13に示されており、前記第2のLCDR2配列がDDNであり、かつ前記第2のLCDR3配列がSEQ ID NO:14に示されている、前記第2の結合アーム
を含み得;
前記第1の結合アームが第1の重鎖定常領域(CH)を含みかつ前記第2の結合アームが第2のCHを含み、ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置がそれぞれ、前記第1のCHおよび前記第2のCHにおいてF、E、およびAであり;かつ
ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第1のCHにおいてRであり、かつヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第2のCHにおいてLである。
【0185】
本開示に従って使用される結合物質は、
(i)第1の重鎖可変領域(VH)と第1の軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の結合アームであって、前記第1のVHが第1のHCDR1配列、第1のHCDR2配列、および第1のHCDR3配列を含み、前記第1のHCDR1配列が、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列を含み、前記第1のHCDR2配列が、SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記第1のHCDR3配列が、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含み、かつ、前記第1のVLが第1のLCDR1配列、第1のLCDR2配列、および第1のLCDR3配列を含み、前記第1のLCDR1配列が、SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含み、前記第1のLCDR2配列がアミノ酸配列GASを含み、かつ前記第1のLCDR3配列が、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含む、前記第1の結合アーム;ならびに
(ii)第2の重鎖可変領域(VH)と第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の結合アームであって、前記第2のVHが第2のHCDR1配列、第2のHCDR2配列、および第2のHCDR3配列を含み、前記第2のHCDR1配列が、SEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のHCDR2配列が、SEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記第2のHCDR3配列が、SEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列を含み、かつ、前記第2のVLが第2のLCDR1配列、第2のLCDR2配列、および第2のLCDR3配列を含み、前記第2のLCDR1配列が、SEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のLCDR2配列がアミノ酸配列DDNを含み、かつ前記第2のLCDR3配列が、SEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列を含む、前記第2の結合アーム
を含み得;
前記第1の結合アームが第1の重鎖定常領域(CH)を含みかつ前記第2の結合アームが第2のCHを含み、ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置がそれぞれ、前記第1のCHおよび前記第2のCHにおいてF、E、およびAであり;かつ
ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第1のCHにおいてLであり、かつヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第2のCHにおいてRである。
【0186】
本開示に従って使用される結合物質は、
(i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の結合アーム;および
(ii)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の結合アーム
を含み得;
前記第1の結合領域が第1の重鎖定常領域(CH)を含みかつ前記第2の結合アームが第2のCHを含み、ヒトIgG1重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置がそれぞれ、前記第1のCHおよび前記第2のCHにおいてF、E、およびAであり;かつ
ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第1のCHにおいてRであり、かつヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第2のCHにおいてLである。
【0187】
本開示に従って使用される結合物質は、
(i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の結合アーム;および
(ii)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)とSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む第2の結合アーム
を含み得;
前記第1の結合アームが第1の重鎖定常領域(CH)を含み、前記第2の抗原結合領域が第2のCHを含み、ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるL234、L235、およびD265の位置がそれぞれ、前記第1のCHおよび前記第2のCHにおいてF、E、およびAであり;かつ
ヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるF405に対応する位置のアミノ酸が前記第1のCHにおいてLであり、かつヒトIgGl重鎖におけるEUナンバリングによるK409に対応する位置のアミノ酸が前記第2のCHにおいてRである。
【0188】
本開示に従って使用される結合物質は、
i)SEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる、第1の重鎖、およびSEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる、第1の軽鎖;ならびに
ii)SEQ ID NO:38に示されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる、第2の重鎖、およびSEQ ID NO:39に示されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる、第2の軽鎖
を含み得る。
【0189】
本開示に従って使用される結合物質は完全長抗体または抗体断片の形式であり得る。
【0190】
本開示に従って使用される結合物質はアカスンリマブ(acasunlimab)またはそのバイオシミラーであり得る。
【0191】
本発明に従って使用される結合物質は、pH 5~6を有する、薬学的に許容される組成物または製剤、例えば、ヒスチジン、スクロース、およびポリソルベート-80を含む組成物または製剤の状態であり得る。
【0192】
特に、本発明に従って使用される結合物質は、約20 mMのヒスチジン、約250 mMのスクロース、約0.02%のポリソルベート-80を含みかつpH約5.5を有する組成物または製剤の状態であり得る。
【0193】
結合物質が、10~30 mgの結合物質/mL、例えば20 mgの結合物質/mLを含む組成物または製剤の状態である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【0194】
本開示による方法において使用される場合、結合物質は、対象への投与の前に希釈され得る。希釈は生理食塩水;例えば、0.9%のNaClにおいてであり得る。結合物質は、上記で定義したような組成物の状態であり得、かつ投与前に0.9%のNaCl(生理食塩水)中に希釈され得る。
【0195】
本明細書に開示される処置を受ける対象は特に、ヒト対象であり得る。
【0196】
本開示に従って処置される腫瘍またはがんは充実性腫瘍であり得る。
【0197】
特定の態様において、腫瘍PD-L1陽性腫瘍;すなわち、PD-L1を発現する腫瘍である。
【0198】
腫瘍またはがんは、黒色腫、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎がん、尿路上皮がん、膀胱がん、食道がん、膵がん、肝がん、胸腺腫および胸腺癌、脳がん、神経膠腫、副腎皮質癌、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣がん、子宮内膜がん、前立腺がん、陰茎がん、子宮頸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、ならびに中皮腫からなる群より選択され得る。
【0199】
腫瘍またはがんは、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん(膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがん)、子宮内膜がん(EC)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)(例えば、口腔、咽頭、または喉頭のがん)、および子宮頸がんからなる群より選択され得る。
【0200】
現時点で好ましい態様において、腫瘍またはがんが肺がんである。
【0201】
肺がんは特に、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば扁平上皮または非扁平上皮NSCLCであり得る。
【0202】
特定の態様において、NSCLCが、上皮成長因子(EGFR)感受性変異および/または未分化リンパ腫(ALK)遺伝子転座/ROS1再構成を有さない。
【0203】
肺がんは最も一般的な悪性腫瘍で、世界的にがんによる最も一般的な死亡原因である。非小細胞肺がん(NSCLC)は全肺がん症例の85~90%を占める(Jemal et al.,2011)。NSCLCの5年生存率はおよそ18%である(SEER,2018)。NSCLCの主な組織学的サブタイプとしては、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、大細胞癌、カルチノイド腫瘍およびあまり一般的でない他のサブタイプが挙げられ、腺癌が最も一般的である。
【0204】
ターゲット療法の際に進行したかまたはもはやターゲット療法の候補でない進行したまたは転移性のNSCLCを有する患者に対する標準治療としては、典型的にはプラチナ製剤ベースの化学療法が挙げられる。プラチナ製剤併用療法では、およそ25~35%の全奏効率(ORR)、4~6ヶ月間の進行までの期間(TTP)および8~10ヶ月間の生存期間中央値が得られている。
【0205】
腫瘍の遺伝子変異/変更が同定されており、治療法の選択に影響力を有する。腫瘍内の遺伝子、例えば未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、上皮成長因子受容体(EGFR)、ROS1(c-ROS oncogene 1)、BRAF、KRASおよびプログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)の特定の変異または変更の同定は、有効である可能性があるターゲット療法の選択の一助となる一方、臨床的有益性が得られそうにない治療法の使用が回避される(NCCN,2018c)。活性化している感受性EGFR変異は、EGFRチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブおよびオシメルチニブ)に対する奏効が予測される。同様に、TKI(例えば、アレクチニブ、セリチニブおよびクリゾチニブ)はALKおよびROS1の変異に有効な治療薬であり、また、それぞれの変異に対するファーストライン治療薬として承認されている。PD 1とPD-L1の相互作用をブロックするチェックポイント阻害物質である抗体(例えば、ペムブロリズマブおよびニボルマブ)もまた、単独または化学療法との併用で、腫瘍がPD-L1を発現している進行した、または転移性のNSCLCを有する患者の処置のための有効な処置薬であることが示されている。
【0206】
複数の処置選択肢があるにもかかわらず、ステージIVのNSCLCを有する患者は結局、予後不良を有し、肺がんは依然として、男性および女性の両方でがんによる死亡原因の第1位である。患者は自身のがんに負けるか、または健康悪化を経験してさらなる処置が不可能となるため、治療ラインごとに処置率は低下する。
【0207】
肺がんはNSCLCであり得るが、これは上皮成長因子(EGFR)感受性変異および/または未分化リンパ腫(ALK)遺伝子転座/ROS1再構成を有していない。EGFR感受性変異とは、EGFRチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)、例えば承認されたチロシンキナーゼ阻害物質エルロチニブ、オシメルチニブ、ゲフィンチニブ(gefintinib)、オルムチニブ、ナザルチニブおよびアビチニブに対する感受性を付与する変異を示す。
【0208】
上皮成長因子受容体(EGFR)のアミノ酸配列は本明細書においてSEQ ID NO:27として示す。
【0209】
本明細書に開示される処置を受ける対象は、前記腫瘍を縮小するか、もしくはその進行を抑制するための前処置または前記がんの前処置を受けたことがある対象であり得る。前記対象は、例えば進行/転移性疾患に対する1つ、2つ、3つ、または4つの全身的前処置レジメンを受けたことがあってもよく、かつ最後の全身的前処置の際または後に疾患進行、例えばX線撮影によって判定された疾患進行を経験したことがある。
【0210】
特定の態様において、本発明による処置は、前処置;例えば上記で定義されたとおりの前処置を受けたことがある対象に提供され、ここで、最後の前処置は、PD1阻害物質またはPD-L1阻害物質、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体での前処置であって、前記PD-1阻害物質またはPD-L1阻害物質が、単独療法としてまたは併用療法の一部として投与される、前記前処置であった。本文脈における前処置は、PD-L1および4-1BBを標的とする多重特異性作用物質での処置は含まないことは理解されよう。
【0211】
好ましくは、本発明による治療は、PD1阻害物質またはPD-L1阻害物質、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体での最後の処置の際の前記対象の進行からの期間が8ヶ月もしくはそれ未満、例えば、7ヶ月もしくはそれ未満、6ヶ月もしくはそれ未満、5ヶ月もしくはそれ未満、4ヶ月もしくはそれ未満、3ヶ月もしくはそれ未満、2ヶ月もしくはそれ未満、1ヶ月もしくはそれ未満、3週間もしくはそれ未満または例えば2週間もしくはそれ未満である場合の、対象に提供される。
【0212】
類推から、最後の前処置の一部としてのPD1阻害物質またはPD-L1阻害物質、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の最後の投薬からの期間が8ヶ月もしくはそれ未満、例えば、7ヶ月もしくはそれ未満、6ヶ月もしくはそれ未満、5ヶ月もしくはそれ未満、4ヶ月もしくはそれ未満、3ヶ月もしくはそれ未満、2ヶ月もしくはそれ未満、1ヶ月もしくはそれ未満、3週間もしくはそれ未満または例えば2週間もしくはそれ未満である場合の対象に、本発明による治療を提供することが好ましい場合がある。
【0213】
対象は、プラチナ製剤ベースの化学療法の形態の前処置を受けたことがある。
【0214】
本明細書に開示される処置を受ける対象は、プラチナ製剤ベースの治療に適格でなく、かつ代替化学療法の形態の前処置、例えばゲムシタビン含有レジメンでの処置を受けたことがある、対象であり得る。
【0215】
本明細書に開示される処置を受ける対象は、チェックポイント阻害物質、例えばPD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えばPD-1/PD-L1阻害物質での前処置を受けたことがある対象であり得る。
【0216】
対象は、チェックポイント阻害物質、例えばPD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えばPD-1/PD-L1阻害物質での処置の際または後に疾患進行を経験したことがあってもよい。
【0217】
本開示に従って処置される対象は、チェックポイント阻害物質、例えばPD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えばPD-1/PD-L1阻害物質での最後の前処置の際または後に疾患進行を経験したことがあってもよい。
【0218】
本明細書に開示のとおりに処置される対象は、最後の全身的前処置の際または後に疾患進行、例えばX線撮影によって判定された疾患進行を経験したことがあってもよい。
【0219】
他の態様において、対象は、チェックポイント阻害物質、例えばPD-1/PD-Lを標的とする作用物質、例えばPD-1/PD-L1阻害物質での前処置を受けたことがない。
【0220】
本明細書に開示の方法は前記腫瘍またはがんのファーストライン処置のためのものであり得る。
【0221】
あるいは、前記方法は前記腫瘍またはがんのセカンドライン処置のためのものであり得る。
【0222】
さらなる一局面において、本発明により、腫瘍の進行の低減もしくは抑制における使用のための、またはがんの処置における使用のための結合物質であって、前記結合物質が、SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列からなるヒトCD137などのヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域と、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列からなるヒトPD-L1などのヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域とを含み、かつ1回または複数回の処置サイクルでの用量Aの投与および1回または複数回の処置サイクルでの用量Bの投与を含む投薬スケジュールで、前記結合物質が対象に投与され、
用量Aにおける結合物質の量が、
c)約0.3~2.5 mg/kg体重、もしくは総量で約25~200 mg;および/または
d)約2.1×10-9~1.7×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約1.7×10-7~1.4×10-6 mol
であり;かつ
用量Bにおける結合物質の量が、
e)約3.8~7.5 mg/kg体重、もしくは総量で約300~600 mg;および/または
f)約2,6×10-8~5.1×10-8 mol/kg体重、もしくは総量で約2.0~4.1×10-6 mol
である、
前記結合物質を提供する。
【0223】
本開示の方法に関する上記の特徴はまた、腫瘍の進行の低減もしくは抑制における使用のための、またはがんの処置における使用のための結合物質との関連においても当てはまることは理解されよう。特に、投薬スケジュールは上記にさらに定義したとおりであり得る。
【0224】
また、上記に開示した結合物質の特徴は、腫瘍の進行の低減もしくは抑制における使用のための、またはがんの処置における使用のための結合物質との関連において当てはまり得;例えば、CDRおよび可変領域のアミノ酸配列ならびに定常領域のアミノ酸配列は上記で定義したとおりであり得る。
【0225】
配列
(表3)太字かつ下線は、それぞれ234位および235位;265位;405位ならびに409に対応するF;E;A;LならびにRであり、前記位置はEU-ナンバリングに従っている。可変領域において、IMGT定義に従ってアノテーションを付けた前記CDR領域に下線を付している。
【0226】
以下の実施例によって本発明をさらに例証するが、実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0227】
実施例1:CD137抗体の作製
抗体CD137-005およびCD137-009をWO2016/110584の実施例1に記載のとおりに作製した。簡単には、ウサギを、ヒトCD137-Fc融合タンパク質を含むタンパク質混合物を用いて免疫処置した。シングルB細胞を血液から分取し、CD137特異的抗体の産生をELISAおよびフローサイトメトリーによってスクリーニングした。スクリーニング陽性B細胞から、RNAを抽出し、シーケンシングを行なった。重鎖および軽鎖の可変領域を遺伝子合成し、アミノ酸位置番号はEUナンバリングによる以下のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265AおよびF405L(FEAL)またはF405L(FEAL)を含むヒトIgG1重鎖(SEQ ID NO:20に対応)を含むヒトIgG1κ発現ベクターまたはヒトIgG1λ発現ベクター内にクローニングした。キメラCD137抗体(CD137-009)の可変領域配列を本明細書の配列表のSEQ ID NO:28およびSEQ ID NO:29に示す。
【0228】
実施例2:ウサギ(キメラの)CD137抗体のヒト化
ウサギ抗CD137-009のヒト化抗体配列はAntitope(Cambridge,UK)で作製された。ヒト化抗体配列は、生殖細胞系列でのヒト化(CDRグラフト)技術を用いて作製された。ヒト化V領域遺伝子は、ウサギ抗体のVHおよびVκのアミノ酸配列に最も近い相同性を有するヒト生殖細胞系列の配列をベースにして設計された。一連の7つのVHおよび3つのVκ(VL)の生殖細胞系列ヒト化V領域遺伝子が設計された。非ヒト親抗体V領域の構造モデルはSwiss PDBを用いて作製され、抗体の結合特性に重要であり得るV領域フレームワーク内アミノ酸を同定するために解析された。このようなアミノ酸を、1つまたは複数のバリアントCDRグラフト抗体への組込みのために記録した。ヒト化設計物のためのベースとして使用された生殖細胞系列の配列を表4に示す。
【0229】
(表4)最も近くマッチングしているヒト生殖細胞系列のVセグメントおよびJセグメントの配列
【0230】
次いで、潜在的T細胞エピトープの存在率が最も少ないバリアント配列が、Antitope社のプロプライエタリインシリコ技術iTope(商標)およびTCED(商標)(T細胞エピトープデータベース)を用いて選択された(Perry,L.C.A,Jones,T.D.and Baker,M.P.New Approaches to Prediction of Immune Responses to Therapeutic Proteins during Preclinical Development(2008)。Drugs in R&D 9(6):385-396;20 Bryson,C.J.,Jones,T.D.and Baker,M.P.Prediction of Immunogenicity of Therapeutic Proteins(2010)。Biodrugs 24(1):1-8)。最後に、設計されたバリアントのヌクレオチド配列はコドン最適化されている。
【0231】
ヒト化CD137抗体(CD137-009-HC7LC2)の可変領域配列を本明細書の配列表のSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5に示す。
【0232】
実施例3:PD-L1抗体の作製
免疫処置およびハイブリドーマの作製はAldevron GmbH(Freiburg,Germany)で行なわれた。ヒトPD-L1のアミノ酸19~238をコードしているcDNAがAldevron社のプロプライエタリ発現プラスミド内にクローニングされた。抗体PD-L1-547は、動物OmniRat(完全ヒトイディオタイプを有する抗体の多様化レパートリーを発現しているトランスジェニックラット;Ligand Pharmaceuticals Inc.,San Diego,USA)の免疫処置により、パーティクルボンバードメントのための携帯型デバイス(「遺伝子銃」)を用いたヒトPD-L1 cDNAコート金粒子の皮内適用を用いて作製された。一連の免疫処置後に血清試料を収集し、ヒトPD-L1を発現するように前述の発現プラスミドで一過的にトランスフェクトされたHEK細胞においてフローサイトメトリーで試験した。抗体産生細胞を単離し、標準的な手順に従ってマウス骨髄腫細胞(Ag8)と融合させた。PD-L1特異的抗体産生ハイブリドーマ由来のRNAを抽出し、シーケンシングを行なった。重鎖および軽鎖の可変領域(SEQ ID NO:8および12)を遺伝子合成し、アミノ酸位置番号はEUナンバリングによる以下のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265AおよびK409R(FEAR)を含むヒトIgG1重鎖(SEQ ID NO:19に対応)を含むヒトIgG1λ発現ベクター内にクローニングした。
【0233】
実施例4:2-MEA誘導性Fabアーム交換による二重特異性抗体の作製
二重特異性IgG1抗体をFabアーム交換により、制御された還元条件下で作製した。この方法のベースは、WO2011/131746に記載のような特定のアッセイ条件下でヘテロ二量体の形成を促進させる相補的なCH3ドメインの使用である。F405LおよびK409R(EUナンバリング)変異を該当する抗体に導入し、相補的なCH3ドメインを有する抗体ペアを作出した。
【0234】
二重特異性抗体を作製するため、各抗体が0.5 mg/mLの終濃度の相補的な2つの親抗体を75 mM 2-メルカプトエチルアミン-HCl(2-MEA)とともに総容量100μLのPBS中で31℃にて5時間インキュベートした。還元反応を、スピンカラム(Microcon遠心フィルター,30k,Millipore)を製造業者のプロトコルに従って用いて還元剤2-MEAを除去することにより停止させた。
【0235】
二重特異性抗体を、実施例1および4の以下の抗体を結合することによって作製した:
- PD-L1-547-FEAR抗体と結合されたCD137-009-FEAL抗体、
- CD137-009-FEAR抗体と結合されたPD-L1-547-FEAL抗体、
- GEN1046(CD137-009-HC7LC2-FEAR抗体と結合されたPD-L1-547-FEAL抗体)、
- PD-L1-547-FEAR抗体、CD137-009-FEARまたはCD137-009-HC7LC2-FEAR抗体と結合されたb12-FEAL抗体、第1のアームとして、gp120特異的抗体である抗体b12が使用されている(Barbas,CF.J Mol Biol.1993 Apr 5;230(3):812-23)、
- b12-FEAR抗体を有するPD-L1-547-FEALまたはCD137-009-FEAL。
【0236】
以下の配列を、それぞれ重鎖および軽鎖に使用した。
PD-L1-547-FEAL:
VH-PD-L1-547(SEQ ID NO:8)、IgG1-FEAL-Fc(SEQ ID NO:20)
VL- PD-L1-547(SEQ ID NO:12)、λ-C(SEQ ID NO:22)
PD-L1-547-FEAR:
VH-PD-L1-547(SEQ ID NO:8)、IgG1-FEAR-Fc(SEQ ID NO:19)
VL-PD-L1-547(SEQ ID NO:12)、λ-C(SEQ ID NO:22)
CD137-009-FEAL:
VH_CD137-009(SEQ ID NO 28)、IgG1-FEAL-Fc(SEQ ID NO:20)
VL_CD137-009(SEQ ID NO 29)、κ-C(SEQ ID NO:21)
CD137-009-HC7LC2-FEAR:
VH_CD137-009-H7(SEQ ID NO:1)、IgG1-FEAR-Fc(SEQ ID NO:19)
VL_CD137-009-L2(SEQ ID NO:5)、κ-C(SEQ ID NO:21)
CD137-009-FEAR:
VH_CD137-009(SEQ ID NO 28)、IgG1-FEAR-Fc(SEQ ID NO:19)
VL_CD137-009(SEQ ID NO 29)、κ-C(SEQ ID NO:21)
【0237】
実施例5:PD-L1発現細胞およびCD137発現細胞とのGEN1046の同時結合
ヒトPD-L1発現細胞およびヒトCD137発現細胞とのGEN1046の同時結合の用量応答を測定するため、遺伝子導入K562細胞を異なるように蛍光色素で標識し、ダブレットの形成をフローサイトメトリーによって解析した。
【0238】
ヒトPD-L1が遺伝子導入されたK562細胞(K562_hPD-L1;6×106細胞)を、CellTrace(商標)Violet Cell Proliferation Kit(カタログ番号C34557,Thermo Fisher Scientific GmbH,Dreieich,Germany)を用いて2 mLの2.5μM染色液中で10分間、37℃にて蛍光標識した。並行して、ヒトCD137が遺伝子導入されたK562細胞(K562_h4-1BB;6×106細胞)を、CellTrace(商標)Far Red Cell Proliferation Kit(カタログ番号C34564,Thermo Fisher Scientific GmbH,Dreieich,Germany)を用いて2 mLの0.5μM染色液中で10分間、37℃にて蛍光標識した。染色を、4 mLのウシ胎児血清(FBS;カタログ番号S0115、Biochrom GmbH,Berlin,Germany)を添加することによって停止した。10%のFBSを補給したRPMI1640(カタログ番号11875093,Thermo Fisher Scientific GmbH,Dreieich,Germany)中で1回洗浄した後、染色されたK562_hPD-L1とK562_h4-1BB細胞を1:1の比で合わせ、RPMI1640,10%のFBS中で1.25×106細胞/mLに調製した。合わせたK562_hPD-L1とK562_h4-1BB細胞をポリスチレン製5 mL容丸底チューブ(カタログ番号10579511、Fisher Scientific,Schwerte,Germany)内に移した(1×106細胞/チューブ)。細胞を、希釈系列の抗体(10倍希釈段階で0.001から100μg/mLまでの範囲)とともにRPMI1640,10%のFBS中、37℃で15分間インキュベートした。試料を即座にFACS Canto(商標)IIフローサイトメーター(Becton Dickinson GmbH,Heidelberg,Germany)で、形成されたダブレットを維持するため事前に混合せずに解析した。K562_hPD-L1/K562_h4-1BBダブレットを、FlowJo 10.4ソフトウェアによりCellTrace(商標)Violet/CellTrace(商標)Far Red二重陽性集団として同定した。二重陽性細胞のパーセントを抗体濃度の関数としてGraphPad Prismバージョン8.01(GraphPad Software,Inc)を用いてプロットした。
【0239】
図1Aは、GEN1046を添加するとCellTrace(商標)Violet/CellTrace(商標)Far Red二重陽性ダブレットの形成が誘導されたことを示す。中濃度の0.1μg/mLのGEN1046とともにインキュベートしたK562_hPD-L1/K562_h4-1BB共培養物で最も著明なダブレット形成が示されたが、0.001μg/mLの低GEN1046濃度では中程度のダブレット形成が観察されたにすぎず、100μg/mLの高GEN1046濃度では最小限から皆無のダブレット形成が検出可能であった。この観察結果は、0.001μg/mLから100μg/mLまでの試験抗体濃度範囲をカバーしている
図1Bに示されたベル型用量応答曲線と一致している。GEN1046とは対照的に、一価のPD-L1対照抗体およびCD137対照抗体であるPD-L1-547-FEALxb12-FEARとb12-FEALxCD137-009-HC7LC2-FEARの組合せでは、試験したすべての抗体濃度でダブレット形成がもたらされなかった。
【0240】
実施例6:CD137レポーターアッセイにおけるGEN1046の効果
PD-L1xCD137二重特異性抗体の予想される作用様式の略図を
図2に示す。
【0241】
GEN1046がPD-L1結合依存性CD137アゴニスト活性を媒介する用量応答を測定するため、ルシフェラーゼベースのCD137活性化レポーターアッセイを、接着性の増殖ヒト腫瘍細胞株をPD-L1供給源として用いて行なった。
【0242】
内因的にPD-L1を発現しているヒトES-2(卵巣明細胞癌;ATCC(登録商標)CRL-1978(商標))およびMDA-MB-231(乳腺癌;ATCC(登録商標)HTB-26(商標))細胞を白色平底96ウェルプレート(カタログ番号136101,Thermo Fisher Scientific GmbH,Dreieich,Germany)内のDMEM(カタログ番号10566016,Thermo Fisher Scientific GmbH,Dreieich,Germany)中に3×104細胞/ウェルの密度で播種し、37℃で一晩インキュベートした。Cryo-conserved Thaw-and-use GloResponse(商標)NFkB-Luc2P/4-1BB Jurkatレポーター細胞(カタログ番号CS196003、Promega GmbH,Walldorf,Germany)を翌日解凍し、シングルバイアルの内容物を、1%のFBSを補給した9.5 mLの前もって加温したRPMI-1640が入った15 mL容チューブに移した。接着性のES-2細胞およびMDA-MB-231細胞の培養培地を廃棄し、共培養を、50μLのNFkB-Luc2P/4-1BB Jurkat細胞懸濁液をES-2細胞またはMDA-MB-231細胞の単層の上面に播種することによって開始した。細胞を、希釈系列の抗体(アッセイ内濃度範囲は5倍希釈段階で0.00128から100μg/mLまで)とともにRPMI 1640,10%のFBS中で37℃にて6時間インキュベートした。次に、アッセイプレートをインキュベータから取り出し、室温(RT)まで10分間、平衡化した。Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬(カタログ番号G7941、Promega GmbH,Walldorf,Germany)を再構成し、RTまで前もって加温した。ウェル1つあたり75μLのルシフェラーゼ試薬を添加し、RTで10分間、暗所でインキュベートした。誘導された発光を、Infinite F200 Proプレートリーダー(Tecan Deutschland GmbH,Crailsheim,Germany)を用いて測定した。
【0243】
GEN1046をES-2:Jurkat(
図3A)およびMDA-MB-231:Jurkatレポーター細胞共培養物(
図3B)に添加したら、CD137アゴニスト活性化の読み出し情報としてのルシフェラーゼ発現は、ベル型用量応答曲線の後、濃度依存性様式で有効に誘導された。0.1μg/mL前後のGEN1046の中間用量レベルで最も著明な発光シグナルがもたらされたが、低用量レベルならびに高用量レベルはルシフェラーゼ発現の誘導においてあまり有効でなかった。重要なことに、非常に低い(0.00128μg/mL GEN1046)、および非常に高いGEN1046濃度(100μg/mL GEN1046)ではルシフェラーゼ発現は検出可能でなかった。解析したどちらの共培養物でも、b12-FEAL対照抗体とのインキュベーションではルシフェラーゼ発現はもたらされなかった。
【0244】
実施例7:PD-L1およびCD137への二重特異性抗体の結合の効果を測定するためのポリクローナルT細胞増殖アッセイ
ポリクローナル活性化T細胞におけるT細胞増殖の誘導を測定するため、PBMCを、最適下限濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1)とともにインキュベートしてT細胞を活性化し、二重特異性抗体GEN1046または対照抗体と合わせた。PBMC集団内において、PD-L1を発現している細胞は二重特異性抗体のPD-L1特異的アームに結合され得るが、前記集団内の活性化T細胞はCD137特異的アームに結合され得る。このアッセイでは、二重特異性抗体によるPD-L1発現細胞との架橋によって、およびPD-L1:PD-1相互作用のブロックによって誘導されるCD137特異的アームによるT細胞のトランス活性化がT細胞増殖として測定される。
【0245】
PBMCを健常ドナーのバフィーコート(Sanquin,Amsterdam,The Netherlands)からフィコール勾配(Lonza、リンパ球分離培地、カタログ番号17-829E)を用いて得た。PBMCを、PBS中0.5μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)(Life technologies、カタログ番号C34554)を用いて製造業者の使用説明書に従って標識した。96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one、カタログ番号650180)のウェル1つあたり75,000個のCFSE標識PBMCを播種し、最適下限T細胞増殖を誘導すると事前に判定された最適下限濃度の抗CD3抗体(Stemcell、クローンUCHT1、カタログ番号60011;0.03μg/mLの終濃度)および二重特異性抗体または対照抗体(0.0032~10μg/mL)とともに、5%ヒトAB血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補給した200μLのIMDM GlutaMAX中で37℃、5%CO2にて4日間インキュベートした。
【0246】
異なるT細胞サブセットの増殖をフローサイトメトリーによって解析した。細胞をPBS中で洗浄し、死細胞を除外するためにFixable Viability Stain 510(50μL/ウェル;BD Biosciences、カタログ番号564406)で4℃にて20分間染色した。FACSバッファー中での別の洗浄後、細胞を、種々の細胞サブセットを区別するためにPE-CF594コンジュゲートCD56特異的抗体(BD BioSciences、カタログ番号564849)、パシフィックブルーコンジュゲートCD4特異的抗体(BioLegend、カタログ番号300521)、AF700コンジュゲートCD8特異的抗体(BioLegend、カタログ番号301028)、BV711コンジュゲートCD197特異的抗体(CCR7;BioLegend、カタログ番号353228)、PE-Cy7コンジュゲートCD45RO特異的抗体(BioLegend、カタログ番号304230)、APCコンジュゲートCD274特異的抗体(PD-L1;BioLegendカタログ番号329708)およびBV605コンジュゲートCD137特異的抗体(BioLegend、カタログ番号309822)で、FACSバッファー中で4℃にて30分間染色した。細胞をFACSバッファー中で3回洗浄し、続いてFACS Fortessa(BD Biosciences)で80μLのFACSバッファー中にて測定した。CFSE希釈を全T細胞ならびに異なるT細胞サブセット(例えば、CCR7+CD45RO+セントラルメモリーT細胞およびCCR7-CD45RO+エフェクターメモリーT細胞)において測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づいたT細胞増殖の詳細な解析をFlowJo 10.4ソフトウェアによって行ない、エクスポートされた増大指数値を用いてGraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software,Inc)で用量応答曲線をプロットした。増大指数は培養物全体の増大倍率を決定する; 増大指数2.0は細胞計数の倍加を表し、一方、増大指数1.0は全体の細胞計数の変化なしを表す。
【0247】
図4Aは、二重特異性抗体GEN1046が、CD3予備刺激単独、アイソタイプ対照抗体b12-FEALおよび1つの無関連のアームと二価の親抗体PD-L1-547-FEARに対応する一方を有する一価のPD-L1-対照抗体PD-L1-547-FEALxb12-FEARと比べて増加したT細胞の増大を誘導したことを示す。GEN1046誘導性T細胞増殖は0.4μg/mLで最も至適であったが、より低濃度およびより高濃度では、GEN1046誘導性T細胞増大はあまり明白でなかった。CCR7
+CD45RO
+セントラルメモリーT細胞およびCCR7
-CD45RO
+エフェクターメモリーT細胞を別々に解析した場合(
図4B)、同様のパターンが出現し、この場合、GEN1046によってT細胞増殖が向上し、T細胞増殖は0.4μg/mLで最適であった。
【0248】
実施例8:PD-L1およびCD137への二重特異性抗体の結合による効果を測定するための抗原特異的CD8+ T細胞増殖アッセイ
PD-L1およびCD137を標的とする二重特異性抗体によるT細胞増殖の誘導を抗原特異的アッセイにおいて測定するため、樹状細胞(DC)を、クローディン-6インビトロ転写RNA(IVT-RNA)を用いてトランスフェクトし、クローディン-6抗原を発現させた。T細胞は、PD-1 IVT-RNAを用いてトランスフェクトし、クローディン-6特異的HLA-A2拘束性T細胞受容体(TCR)を有する。このTCRは、DC上のHLA-A2に提示されるクローディン-6由来のエピトープを認識し得る。PD-L1xCD137二重特異性抗体GEN1046は、単球由来樹状細胞または腫瘍細胞上に内因的に発現されるPD-L1とT細胞上のCD137を架橋して阻害性のPD-1/PD-L1相互作用の阻害と同時にCD137のクラスター形成をもたらすことができ、T細胞増殖がもたらされる。T細胞上に発現されるCD137受容体のクラスター形成によってCD137受容体の活性化がもたらされ、それにより共刺激シグナルがこのT細胞に送出される。
【0249】
HLA-A2+末梢血単核細胞(PBMC)を健常ドナー(Transfusionszentrale,University Hospital,Mainz,Germany)から得た。単球をPBMCから、磁気活性化細胞選別(MACS)技術により抗CD14 MicroBeads(Miltenyi;カタログ番号130-050-201)を製造業者の使用説明書に従って用いて単離した。末梢血リンパ球(PBL、CD14陰性画分)を後のT細胞単離用に凍結させた。未熟DC(iDC)への分化のため、1×106個の単球/mlを5日間、5%ヒトAB血清(Sigma-Aldrich Chemie GmbH,カタログ番号H4522-100ML)、ピルビン酸ナトリウム(Life technologies GmbH,カタログ番号11360-039)、非必須アミノ酸(Life technologies GmbH,カタログ番号11140-035)、100 IU/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(Life technologies GmbH,カタログ番号15140-122)、1000 IU/mLの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;Miltenyi、カタログ番号130-093-868)および1,000 IU/mLのインターロイキン-4(IL-4;Miltenyi、カタログ番号130-093-924)を含むRPMI GlutaMAX(Life technologies GmbH,カタログ番号61870-044)中で培養した。この5日間の間に1回、培地の半分を新鮮培地と交換した。iDCを、非接着細胞を収集することによって採集し、接着細胞を、2mMのEDTAを含むPBSでの37°で10分間のインキュベーションによって剥離させた。洗浄後、iDCを、後の抗原特異的T細胞アッセイ用に、10%v/vのDMSO(AppliChem GmbH,カタログ番号A3672,0050)+50%v/vのヒトAB血清を含むRPMI GlutaMAX中で凍結させた。
【0250】
抗原特異的CD8+ T細胞増殖アッセイ開始の1日前、同じドナー由来の凍結させたPBLおよびiDCを解凍した。CD8+ T細胞をPBLから、MACS技術により、抗CD8 MicroBeads(Miltenyi、カタログ番号130-045-201)を製造業者の使用説明書に従って用いて単離した。約10~15×106個のCD8+ T細胞を、クローディン-6特異的マウスTCR(HLA-A2拘束性;WO2015150327A1に記載)のアルファ鎖をコードしている10μgのインビトロ翻訳(IVT)-RNA+ベータ鎖をコードしている10μgのIVT-RNA+PD-1をコードしている0.4~10μgのIVT-RNAを250μLのX-Vivo15(Biozym Scientific GmbH,カタログ番号881026)中で用いて、4-mm容エレクトロポレーションキュベット(VWR International GmbH,カタログ番号732-0023)内でBTX ECM(登録商標)830 Electroporation Systemデバイス(BTX;500 V、1×3 msパルス)を用いてエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、即座に細胞を、5%ヒトAB血清を補給した新鮮IMDM培地(Life Technologies GmbH,カタログ番号12440-061)中に移し、37℃、5%CO2で少なくとも1時間静置した。T細胞を、PBS中1.6μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Invitrogen、カタログ番号C34564)を製造業者の使用説明書に従って用いて標識し、5%ヒトAB血清を補給したIMDM培地中でO/Nインキュベートした。
【0251】
5×106個までの解凍iDCを、完全長クローディン-6をコードしている0.3~1μgのIVT-RNAを用いて250μL X-Vivo15培地中で、上記のエレクトロポレーションシステム(300 V、1×12 msパルス)を用いてエレクトロポレーションし、5%ヒトAB血清を補給したIMDM培地中でO/Nインキュベートした。
【0252】
翌日、細胞を採集した。DC上におけるクローディン-6とPD-L1およびT細胞上におけるTCRとPD-1の細胞表面発現をフローサイトメトリーによって確認した。DCをAlexa647コンジュゲートCLDN6特異的抗体(市販されていない;自社で作製)および抗ヒトCD274抗体(PD-L1、eBioscienes、カタログ番号12-5983)で染色し、T細胞を抗マウスTCRβ鎖抗体(Becton Dickinson GmbH,カタログ番号553174)および抗ヒトCD279抗体(PD-1、eBioscienes、カタログ番号17-2799)で染色した。エレクトロポレーションされた5,000個のDCを、エレクトロポレーションされた50,000個のCFSE標識T細胞とともに、二重特異性抗体または対照抗体の存在下、96ウェル丸底プレート内の5%ヒトAB血清を補給したIMDM GlutaMAX中でインキュベートした。T細胞増殖を5日後にフローサイトメトリーによって測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づいたT細胞増殖の詳細な解析をFlowJo 10.4ソフトウェアによって行ない、エクスポートされた増大指数値を用いてGraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software,Inc)で用量応答曲線をプロットした。増大指数は培養物全体の増大倍率を決定する; 増大指数2.0は細胞計数の倍加を表し、一方、増大指数1.0は全体の細胞計数の変化なしを表す。
【0253】
図5は、GEN1046がアイソタイプ対照抗体b12-FEALと比べてT細胞増殖を用量依存的に向上させたことを示し、≧0.004μg/mLの濃度での増大指数の増加によって反映されている。GEN1046誘導性T細胞増殖は0.03~0.11μg/mLで最も至適であり、試験した最大濃度ではわずかに低下し、ベル型用量応答曲線を示す。
【0254】
実施例9:PD-L1およびCD137への二重特異性抗体の結合によって誘導されるサイトカイン放出を測定するための抗原特異的CD8+ T細胞増殖アッセイ
PD-L1とCD137を標的とする二重特異性抗体GEN1046によるサイトカイン放出の誘導を抗原特異的アッセイにおいて測定し、本質的に実施例8に記載のとおりに行なった。
【0255】
T細胞を、10μgのTCRα鎖コードRNAおよび10μgのβ鎖コードRNAを2μgのPD-1コードIVT RNAとともに、またはなしで用いてエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションされるT細胞はCFSE標識(上記のような)せず、エレクトロポレーション後、即座に5%ヒトAB血清を補給した新鮮IMDM培地(Life Technologies GmbH,カタログ番号12440-061)中に移した。iDCを、5μgのクローディン-6(CLDN6)コードRNAを用いて上記のとおりにエレクトロポレーションした。O/Nインキュベーション後、DCをAlexa647コンジュゲートCLDN6特異的抗体で、T細胞を抗マウスTCRβ鎖抗体および抗ヒトCD279抗体で上記のとおりに染色した。
【0256】
エレクトロポレーションされた5,000個のDCを、エレクトロポレーションされた50,000個のT細胞とともに、異なる濃度の二重特異性抗体GEN1046または対照抗体b12-FEALの存在下、96ウェル丸底プレート内の5%ヒトAB血清を補給したIMDM GlutaMAX中でインキュベートした。48時間のインキュベーション期間後、プレートを500×gで5分間遠心し、上清みを各ウェルから新たな96ウェル丸底プレートに注意深く移し、MSD(登録商標)プラットフォームでのサイトカイン解析まで-80℃で保存した。抗原特異的増殖アッセイで収集した上清みを10種の異なるサイトカインのサイトカインレベルについて、MSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キット(Meso Scale Diagnostics,LLC.,カタログ番号K15049D-2)によってMESO QuickPlex SQ 120計器(Meso Scale Diagnostics,LLC.,カタログ番号R31QQ-3)で製造業者の使用説明書に従って解析した。
【0257】
GEN1046の添加により、主にIFN-γ、TNF-α、IL-13およびIL-8の分泌の用量依存的増加がもたらされ(
図6)、これは0.04~0.33μg/mLの濃度で最も至適であった。低用量レベルならびに1μg/mLの高用量レベルは、これらのサイトカインの誘導においてあまり有効でなく、ベル型用量応答曲線を示す。T細胞を、PD-1 RNAを用いてエレクトロポレーションしなかったT細胞:DC共培養物を、T細胞を、2μgのPD-1 RNAを用いてエレクトロポレーションしたものと比較した場合、PD-1 RNAエレクトロポレーションなしの共培養物の方でわずかに高いサイトカインレベルが検出可能であった。これは、GEN1046用量応答曲線ならびにb12-FEAL対照抗体値の両方で観察された。
【0258】
実施例10:腫瘍浸潤リンパ球に対するCD137xPD-L1二重特異性抗体の効果を評価するためのエクスビボTIL増大アッセイ
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に対するCD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARの効果を評価するため、ヒト腫瘍組織のエクスビボ培養を以下のとおりに行なった。新鮮ヒト腫瘍組織切除試験片を、洗浄培地が入った6ウェルプレート(Fisher Scientificカタログ番号10110151)の1つのウェルから次のウェルに単離した腫瘍塊をスパチュラまたはセロロジカルピペットを用いて移すことによって3回洗浄した。洗浄培地は、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo Fisher、カタログ番号15140-122)および1%ファンギゾン(Thermo Fisher、カタログ番号15290-026)を補給したX-VIVO 15(Biozym、カタログ番号881024)で構成した。次に、腫瘍を、外科用ナイフ(Braun/Roth、カタログ番号5518091 BA223)を用いて切り離し、直径約1~2 mmの小片に切断した。2つの小片を各々、1 mLのTIL培地(X-VIVO 15、10%ヒト血清アルブミン(HSA、CSL Behring、カタログ番号PZN-6446518)1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%ファンギゾンおよび補給された10 U/mLのIL-2(Proleukin(登録商標)S、Novartis Pharma、カタログ番号02238131))が入った24ウェルプレート(VWR international、カタログ番号701605)の1つのウェルに入れた。CD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARを、表示した終濃度で添加した。培養プレートを37℃および5%CO2でインキュベートした。72時間後、表示した濃度の二重特異性抗体を含む1 mLの新鮮TIL培地を各ウェルに添加した。ウェルを顕微鏡によりTILクラスターの存在について1日おきにモニタリングした。それぞれのウェルにおいて25個より多くのTILミクロクラスターが検出されたとき、ウェルを個々に移動させた。TIL培養物を分割するため、24ウェルプレートのウェル内の細胞を2 mLの培地中に再懸濁させ、6ウェルプレートのウェル内に移した。各ウェルにさらに、別の2 mLのTIL培地を補給した。
【0259】
10~14日間の全培養期間後、TILを採集し、フローサイトメトリーによって解析した。細胞を、すべて染色バッファー(5%FCSおよび5 mM EDTAを含むD-PBS)中で1:50に希釈した以下の試薬、抗ヒトCD4-FITC(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-080-501)、抗ヒトCD3-PE-Cy7(BD Pharmingen、カタログ番号563423)、7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD、Beckman Coulter、カタログ番号A07704)、抗ヒトCD56-APC(eBioscience、カタログ番号17-0567-42)および抗ヒトCD8-PE(TONBO、カタログ50-0088)で染色した。得られた細胞の異なる処置群間での定量的比較を可能にするため、細胞ペレットを、最後の洗浄工程後に、BD(商標)CompBeads(BD biosciences、カタログ番号51-90-9001291)を補給したFACS-バッファー中に再懸濁させた。フローサイトメトリーによる解析をBD FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)で行ない、得られたデータを、FlowJo 7.6.5ソフトウェアを用いて解析した。6ウェルプレートの対応するウェルと相関するビーズ1,000個あたりの相対的なバイアブルTIL計数、CD3+CD8+ T細胞計数、CD3+CD4+ T細胞計数およびCD3-CD56+ NK細胞計数を、得られたビーズ計数に対する得られた7AAD陰性細胞画分の正規化によって計算した。
【0260】
図7は、ヒト非小細胞肺癌組織試験片からのTIL増大の解析を示す。ここでは、以下の濃度:0.01、0.1および1μg/mLのCD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARを添加し;抗体の添加なしの同じ患者由来の組織試験片を陰性対照として使用した。10日間の培養後、TILを採集し、フローサイトメトリーによって解析した。各抗体濃度について24ウェルプレートの異なるウェルに由来する5つの試料(5つの最初のウェルの)を測定した。二重特異性抗体とともに培養したすべての試料において、バイアブルTILの計数は、抗体なしの対照試料と比較すると増大した。全般的に、0.1μg/mLのCD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARを培養物に添加した場合、バイアブルTILの有意な(10倍までの)増大が観察された(
図7A)。別々に解析した場合、CD3
+CD8
+ T細胞の増大に対する強い効果が観察され、これは0.1μg/mLのCD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARで有意であった(
図7B;対照と比べて7.4倍の増大)。CD3
+CD4
+ T細胞はわずかしか増大せず、その増大は抗体なしの培養物と比べて有意でなかった(
図7C)。最も著明なTIL増大はCD3
-CD56
+ NK細胞でみられ(
図7D;対照と比べて64倍に至るまでの増大)、これは0.1μg/mLのCD137-009-FEALxPD-L1-547-FEARで有意であった。
【0261】
実施例11:進行した充実性腫瘍を有する患者の末梢血におけるGEN1046の薬力学的評価
進行した腫瘍を有する患者における種々の用量レベルでのGEN1046の生物学的活性を調べるため、血液および血清試料をベースライン時および処置中の複数の時点で収集した。GEN1046の作用機序に基づくと、生物学的活性を伴う用量レベルはインターフェロン-γ(IFN-γ)およびインターフェロン-γ誘導性タンパク質10(IP-10)の循環レベルを調節し、末梢CD8 T細胞の増殖を誘導することが予想された。
【0262】
IFN-γおよびIP-10の血清レベルを測定するため、血清試料を患者から、ベースライン時においてならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046の投与後の複数の時点において(1日目[投与後2時間目と4~6時間目]、2、3、8、および15日目に)収集した。IFN-□およびIP-10の血清レベルをメソスケールディスカバリー社(MSD)マルチプレックス免疫アッセイ(カタログ番号K15209G)により製造業者の使用説明書に従って測定した。
【0263】
免疫細胞サブセットの末梢性調節を測定するため、末梢血の免疫表現型解析を、ベースライン時ならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046投与後、複数の時点で(2、3、8および15日目に)EDTAチューブ内に収集した全血において実施した。100μLの全血を、細胞表面抗原に特異的に結合する蛍光色素コンジュゲートモノクローナル抗体:CD45RA-FITC(クローンLEU-18、BD Biosciencesカタログ番号335039)、CCR7-BV510(クローン3D12、BD Biosciences、カタログ番号563449)、CD8-PerCP-Cy5.5(クローンRPA-T8、BD Biosciences、カタログ番号560662)に添加した。氷上でのインキュベーション後、染色された試料をFACS Lysing Solution(BD Biosciences、カタログ番号349202)で処理して赤血球を溶解させた。過剰の抗体および細胞デブリを、Stain Buffer(BD Biosciences、カタログ番号554656)で洗浄することによって除去した。溶解/洗浄後、細胞を、Permeabilizing Solution 2バッファー(BD Biosciences、カタログ番号340973)を用いたインキュベーションによって固定および透過処理した。次に、細胞を洗浄し、Stain Buffer中に再懸濁させ、増殖細胞を検出するためのKi67に対する抗体(BV421 B56、BD Biosciences、カタログ番号562899)とともに氷上でインキュベートした。インキュベーション後、過剰の抗体を、Stain Bufferで洗浄することによって除去した。細胞をStain Buffer中に再懸濁させ、染色の1時間以内にBD FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)に確保した。
【0264】
がん患者へのGEN1046の投与によりIFN-γおよびIP-10および増殖エフェクターメモリーCD8 T細胞の循環レベルの調節がもたらされた(表5および
図8)。表5に示した予備的データセットにおいて、IFN-γレベルは最初の処置サイクルで試験した全用量レベルにおいて2倍超増大した。最大の増大は50 mgおよび80 mgの用量レベルで検出され、80 mgコホートの患者の大部分(75%)は>2の増大倍率を有した(表5)。GEN1046はまた、Ki67
+ CD8
+ CD45RA
-CCR7
- T細胞の存在比率の増大によって測定されるエフェクターメモリーCD8+ T細胞の増殖も誘起した。IFN-γの循環レベルの調節で観察された変化に匹敵して、増殖CD8
+エフェクターメモリーT細胞の最大でより一貫性のある調節が80 mgコホートの患者で観察された。特に、400 mgコホートでは、IFN-γおよび増殖エフェクターメモリーCD8 T細胞の両方の循環レベルの変化の大きさが25~200 mgのコホートと比べて小さかった。このような結果により、GEN1046は、免疫エフェクター細胞および抗腫瘍免疫応答が生じるのに極めて重要な可溶性因子の調節を特徴とする免疫応答を誘起し、応答の大きさは80 mgの用量レベルでより大きいことが示された。
【0265】
図8に示したデータセットにおいて、IFN-γおよびIP-10の増加は最初の処置サイクルにおいて≦200 mgの用量レベルで観察された(
図8A~B)IFN-γおよびIP-10の増加は≧400 mgの用量レベルでも観察されたが、最初の処置サイクル中のベースラインからの最大の変化倍率は低用量レベルと比べて有意に低かった。GEN1046はまた、Ki67
+ CD8
+ T細胞およびKi67
+ CD8
+ CD45RA
-CCR7
- T細胞の存在比率の増大によって測定される全CD8
+ T細胞およびエフェクターメモリーCD8+ T細胞の増殖も誘起した(
図8C~D)。IFN-γおよびIP-10の循環レベルの調節で観察された変化に匹敵して、増殖CD8
+エフェクターメモリーT細胞の最大でより一貫性のある調節が≦200 mgの用量レベルで処置された患者で観察された、≧400 mgコホートでは、増殖エフェクターメモリーCD8 T細胞および全CD8 T細胞変化の大きさが25~200 mgのコホートと比べて有意に小さかった。このような結果により、GEN1046は、免疫エフェクター細胞および抗腫瘍免疫応答が生じるのに極めて重要な可溶性因子の調節を特徴とする免疫応答を誘起し、応答の大きさは≦200 mgの用量レベルでより大きいことが示された。
【0266】
(表5)がん患者における末梢薬力学的エンドポイントのGEN1046による調節:サイクル1中の用量レベルごとのベースラインからのピーク変化倍率
a
2020年1月27日の時点の予備的データ。
n:用量コホート1つあたりの患者の数; Min:測定された最小値; Q1:25位パーセンタイル; Q3:75位パーセンタイル; Max:測定された最大値。
aインターフェロン-γおよびエフェクターメモリーT細胞の循環レベルの変化を含む薬力学的アセスメントを、GEN1046の非盲検多施設での安全性の治験(NCT03917381)の用量漸増フェーズに登録された進行した充実性腫瘍を有する患者由来の血液試料を用いて実施した。
bインターフェロン-γの循環レベルは血清試料において、ベースライン時においてならびにサイクル1およびサイクル2におけるGEN1046の投与後の複数の時点において(1日目[投与後2時間目と4~6時間目]、2、3、8、および15日目に)測定した。血清試料中のインターフェロン-γレベルはメソスケールディスカバリー社(MSD)マルチプレックス免疫アッセイによって測定した。
c末梢血の免疫表現型解析を、ベースライン時においてならびにサイクル1およびサイクル2においてGEN1046の投与後の複数の時点において(2、3、8、および15日目に)収集した全血において実施した。増殖(Ki67
+)エフェクターメモリーCD8 T細胞(CD8
+CD45RA
-CCR7
- T細胞)の存在比率を全血試料においてフローサイトメトリーによってアセスメントした。
【0267】
実施例12:臨床試験
治験デザイン:
GCT1046-01に関する臨床試験(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT03917381)を、進行中の用量漸増パートと計画的拡大パートを含む2パート治験としてデザインした。
【0268】
本治験は、GEN1046(DuoBody(登録商標)-PD-L1x4-1BB)の非盲検多施設フェーズI/IIaの安全性の治験としてデザインした。本治験は2パート;ファースト・イン・ヒューマン(FIH)用量漸増(フェーズI)および拡大(フェーズIIa)からなる。
図9は臨床試験デザインの略図を示す。
【0269】
GEN1046は以下のアミノ酸配列を有する。
CD137結合アーム;それぞれ以下である重鎖および軽鎖の配列:
CD137-009-HC7LC2-FEAR
VH_CD137-009-H7(SEQ ID NO:1)、IgG1-FEAR-Fc(SEQ ID NO:34)
VL_CD137-009-L2(SEQ ID NO:5)、κ-C(SEQ ID NO:21)
PD-L1結合アーム;それぞれ以下である重鎖および軽鎖の配列:
PD-L1-547-FEAL
VH-PD-L1-547(SEQ ID NO:8)、IgG1-FEAL-Fc(SEQ ID NO:35)
VL- PD-L1-547(SEQ ID NO:12)、λ-C(SEQ ID NO:22)
【0270】
用量漸増
用量漸増は、充実性の悪性腫瘍を有する対象においてGEN1046を評価し、最大耐用量(MTD)もしくは最大投与量(MAD)および/または第II相推奨用量(RP2D)を決定するためにデザインした。拡大では、選択された用量の安全性、忍容性、PKおよび抗腫瘍活性を、選出された充実性腫瘍においてさらに評価した。
【0271】
用量漸増では、対象は≧18歳の男性または女性であることが必要とされ、RECIST 1.1に従う測定可能な疾患を有することが必要とされた。
【0272】
対象は、転移性もしくは切除不能である組織学的もしくは細胞学的に確認された非CNS充実性腫瘍を有し、臨床的有益性が得られる可能性のある利用可能な標準治療がないか、またはかかる利用可能な治療の候補でなく、治験責任医師の見解においてGEN1046での実験的治療が有益である可能性がある対象であることが必要とされた。
【0273】
用量漸増において、対象は3週間ごとに1回のGEN1046の輸注(1Q3W)をプロトコル規定の処置中止基準が満たされるまで;例えば、X線撮影で疾患進行または臨床的進行まで受けた。GEN1046は、i.v.輸注を用いて各3週間処置サイクル(21日間)の1日目に最低60分間にわたって投与された。治験のデザインの概念を
図9に示す。
【0274】
1Q3W用量漸増は、GEN1046が、固定された7つのメインの用量レベル:25、80、200、400、800、1200および1600 mgならびに固定された6つの任意の中間用量レベル50、140、300、600、1000および1400 mgで潜在的に(治験中に収集されたデータに依存する)評価されるようにデザインした。
【0275】
第II相推奨用量(RP2D)は、利用可能な安全性および投薬の情報の審査を基にし、最大耐用量(MTD)より少ない場合があり得た。
【0276】
拡大
拡大の目的は、選択された用量/スケジュールの安全性、忍容性、MoA、PKおよび抗腫瘍活性に関するさらなるデータを提供することである。
【0277】
拡大は、再発または難治性の進行したおよび/または転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮内膜癌、尿路上皮癌(UC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、または子宮頸がんを有し、もはや標準治療の候補ではなく(対象がそれぞれの処置を利用でき、適格であった場合)、治験責任医師の見解において、GEN1046での実験的治療が有益であり得る対象が登録されるようにデザインした。拡大コホートの全体像を表6に示す。
【0278】
【0279】
拡大コホートには以下の組み入れ基準を有する患者が登録される。
【0280】
拡大コホート1(NSCLC):PD-1/L1前処置あり
・最後の前処置の際または後にX線撮影で疾患進行を伴う転移性疾患に対して4つまでの全身的前処置レジメン(維持療法は1つの処置ラインの一部であるとみなす)を受けたことがあるNSCLC対象。
・任意の組織診断のNSCLC対象が登録され得る。非扁平上皮NSCLCの組織学的または細胞学的診断を有する対象は、上皮成長因子受容体(EGFR)感受性変異および/または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)転座/ROS1(c-ROS oncogene 1)再構成を有していてはならない。EGFR感受性変異は、承認されたチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)での処置に適した変異である。EGFRおよびALKの状態の記録は施設アセスメントごとに入手可能であるべきである。EGFRおよびALKの状態の記録が入手不可能である場合、登録前に、治験依頼者の医学的モニタリングの承認が必要である。
・対象は、プラチナ製剤ベースの治療(またはプラチナ製剤不適格のため代替化学療法、例えばゲムシタビン含有レジメン)を受けたことがあるべきである。
・対象は、単独または併用でPD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがなければならず、処置の際にX線撮影で疾患進行を有していなければならない。16週間までの処置持続期間を伴うチェックポイント阻害物質(CPI)含有レジメンで病勢安定(SD)または病勢進行(PD)の最良総合効果(BOR)を有する対象については治験依頼者の承認が必要である。
・登録前に、直近のPD-L1検査の施設内結果が提供されなければならない。施設のPD-L1検査結果が入手不可能である場合、登録には治験依頼者の承認が必要である。
【0281】
拡大コホート2(NSCLC) - PD-1/L1無処置
・任意の組織診断のNSCLC対象が登録され得る。最後の前処置の際または後にX線撮影で疾患進行を伴う転移性疾患に対して4つまでの全身的前処置レジメン(維持療法は1つの処置ラインの一部であるとみなす)を受けたことがあるNSCLC対象。
・非扁平上皮NSCLCの組織学的または細胞学的診断を有する対象は、EGFR感受性変異および/またはALK転座/ROS1再構成を有していてはならない。EGFR感受性変異は、承認されたTKIでの処置に適した変異である。EGFRおよびALKの状態の記録は施設アセスメントごとに入手可能であるべきである。EGFRおよびALKの状態の記録が入手不可能である場合、登録前に、治験依頼者の医学的モニタリングの承認が必要である。
・対象は、プラチナ製剤ベースの治療(またはプラチナ製剤不適格のため代替化学療法、例えばゲムシタビン含有レジメン)を受けたことがあるべきである。
対象は、PD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがあってはならない。
【0282】
拡大コホート3(UC):
・組織診断において優勢的に移行細胞の特徴を有し、最後の前処置の際または後にX線撮影で疾患進行を伴う局所進行/転移性疾患に対して4つまでの全身的前処置レジメン(維持療法は1つの処置ラインの一部であるとみなす)を受けたことがある(膀胱、尿管、尿道、または腎盂の)UC対象。
・対象は、単独または併用でPD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがなければならず、処置の際にX線撮影で疾患進行を有していなければならない。16週間までの処置持続期間を伴うCPI含有レジメンでSDまたはPDの最良総合効果(BOR)を有する対象については治験依頼者の承認が必要である。
・登録前に、直近のPD-L1検査の施設内結果が提供されるべきである(入手可能であれば)。
コホート3a:プラチナ製剤ベースの治療を受けることが適格である対象について:
・対象は、プラチナ製剤ベースの化学療法を受けたことがなければならない。
コホート3b:プラチナ製剤ベースの治療を受けることが不適格な対象について:
・対象は、いずれのプラチナ製剤ベースの化学療法またはシスプラチンを含むいずれの化学療法にも適格であってはならない。
【0283】
拡大コホート4(子宮内膜がん):
・最後の前処置の際または後にX線撮影で疾患進行を伴う進行/転移性疾患に対して4つまでの全身的前処置レジメン(維持療法は1つの処置ラインの一部であるとみなす)を受けたことがある子宮内膜がん対象。
・対象は:類内膜、漿液、扁平上皮、明細胞癌または癌肉腫を含む子宮内膜上皮の組織診断を有していなければならない。
注:肉腫および間葉性子宮内膜がんは除外される。
・対象は、PD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがあってはならない(確立された施設内ラベル/アクセスが尊重される必要がある)。
・登録前に、施設アセスメントによる直近のミスマッチ修復欠損(dMMR)またはマイクロサテライト不安定性(MSI)の状態の施設内結果が提供されるべきである(入手可能であれば)。
【0284】
拡大コホート5(TNBC):
・ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性(HER2は蛍光 in situ ハイブリダイゼーション)アッセイによる陰性である(非増幅でのCEP17に対するHER2の比<2.0 プローブ1つあたりの平均HER2遺伝子コピー数<4シグナル/細胞)または代替的に、施設アセスメントによる免疫組織化学検査(IHC)結果によるHER2タンパク質発現が1+陰性またはIHC 0-陰性ならびにエストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体が陰性状態である(IHC解析によるホルモン受容体発現細胞が<1%と定義)と定義されるTNBC。最後の前処置の際または後にX線撮影で疾患進行を伴う局所進行/転移性疾患に対して4つまでの全身的前処置レジメン(維持療法は1つの処置ラインの一部であるとみなす)、例えば限定するわけではないが、アントラサイクリン含有、タキサン含有、代謝拮抗薬含有、または微小管阻害物質含有レジメンを受けたことがある対象。治験エントリー前に、トリプルネガティブ疾患の施設内病理学的確定が必要である。
・異なる表現型乳がんの既往歴を有する対象は、対象の最後の前全身療法後に得られた生検材料でTNBCの確定を有していなければならない。
・登録前に、施設アセスメントによる直近のdMMRまたはMSIの状態の施設内結果が提供されるべきである(入手可能であれば)。
コホート5a - PD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがある対象:
・対象は、単独または併用でPD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがなければならず、処置の際にX線撮影で疾患進行を有していなければならない。16週間までの処置持続期間を伴うCPI含有レジメンでSDまたはPDのBORを有する対象については治験依頼者の承認が必要である。
・登録前に、直近のPD-L1検査の施設内結果が提供されるべきである(入手可能であれば)。
コホート5b - PD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがない対象:
・対象は、PD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがあってはならない(確立された施設内ラベル/アクセスが尊重される必要がある)。
【0285】
拡大コホート6(SCCHN):
・最後の前処置の際または後にX線撮影でPDを伴う再発性/転移性疾患に対して4つまでの全身的前処置レジメン(維持療法は1つの処置ラインの一部であるとみなす)を受けたことがある再発性または転移性のSCCHN(口腔、咽頭、喉頭)対象。
・対象は、プラチナ製剤ベースの化学療法(対象のプラチナ製剤不適格状態が記録されている場合は代替の併用化学療法が許容される)での前治療の際または後に疾患進行を有していなければならない。
コホート6a - PD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがある対象:
・対象は、単独または併用でPD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがなければならず、処置の際にX線撮影で疾患進行を有していなければならない。16週間までの処置持続期間を伴うCPI含有レジメンでSDまたはPDのBORを有する対象については治験依頼者の承認が必要である。
・登録前に、直近のPD-L1検査の施設内結果が提供されるべきである(入手可能であれば)。
コホート6b - PD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがない対象:
・対象は、PD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがあってはならない(確立された施設内ラベル/アクセスが尊重される必要がある)。
【0286】
拡大コホート7(子宮頸がん):
・最後の前処置の際または後にX線撮影で疾患進行を伴う再発性/転移性疾患に対して4つまでの全身的前処置レジメン、例えば、ベバシズマブとの併用での化学療法(適用可能なラベリングに従う)(補助療法的もしくは術前補助療法的場面、または放射線療法との併用で施行される化学療法は前治療ラインとしてカウントされるべきでない)を、対象が施設内基準によりベバシズマブに不適格となるまで受けたことがある子宮頸がん対象。
・対象は、扁平上皮細胞、腺癌または腺扁平上皮の組織診断の子宮頸がんを有していなければならない。
・対象は、PD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがあってはならない(確立された施設内ラベル/アクセスが尊重される必要がある)。
【0287】
結果
用量漸増
用量漸増において以下の予備的結果が得られた。表7は、登録時および合計30人の患者に投薬した用量レベルごとの最良総合効果(RECIST v1.1)を示す(データ抽出日:2020年2月3日)。
【0288】
表8および9はそれぞれ、登録時および合計61人の患者に投薬した用量レベルごとの客観的奏効率および確定した客観的奏効率(RECIST v1.1)を示す(データカットオフ:2020年10月12日)。
【0289】
全患者の腫瘍サイズのベースラインからの最大変化パーセントを
図10に示す。用量漸増フェーズにおいて、40/61人(65.6%)の患者に病勢コントロールが起こった。トリプルネガティブ乳がん、卵巣がんまたは非小細胞肺がん(NSCLC)を有する4人の患者において部分奏効(PR)が得られ;36人の患者は病勢安定が維持された。
【0290】
NSCLC(腫瘍サイズのベースラインからの最良変化)を有する患者において観察された臨床活性を
図11に示す(データカットオフ:2020年10月12日)。全員が前チェックポイント免疫療法を受けたことがあるNSCLCを有する6人の患者のうち、2人で未確定のPRが得られ、2人は病勢安定が維持され、2人は病勢進行を経験した。
【0291】
(表7)用量レベルごとの最良総合効果(RECIST v1.1)
【0292】
【0293】
【0294】
拡大:
拡大コホート1:2021年1月29日の時点で、進行/転移性のPD-1/L1前処置ありのNSCLCを有する患者を含む39人の患者が拡大コホート1において投与を受けていた。39人の患者のうち、31人がデータカットオフの時点で有効性について評価可能であった、すなわち、少なくとも1回のベースライン後スキャンを有したか、または処置が中止されていたかのいずれかであった。31人の有効性が評価可能な患者のうち6人で、確定したPRまたは未確定のPRのいずれかの最良総合効果が得られ、7人の患者でSDの最良総合効果が得られた(
図13)。
【0295】
拡大コホート2:2021年1月29日の時点で、進行/転移性PD-1/L1無処置NSCLCを有する患者を含む11人の患者が拡大コホート2において投与を受けていた。11人の患者のうち、10人がデータカットオフの時点で有効性について評価可能であった、すなわち、少なくとも1回のベースライン後スキャンを有したか、または処置が中止されていたかのいずれかであった。10人の有効性が評価可能な患者のうちでいずれもPRの最良総合効果は得られなかったが、5人の患者でSDの最良総合効果が得られた(
図14)。
【0296】
拡大コホート3:2021年1月29日の時点で、進行/転移性のPD-1/L1前処置ありの尿路上皮癌を有する患者を含む13人の患者が拡大コホート3において投与を受けていた。13人の患者のうち、9人がデータカットオフの時点で有効性について評価可能であった、すなわち、少なくとも1回のベースライン後スキャンを有したか、または処置が中止されていたかのいずれかであった。10人の有効性が評価可能な患者のうちでいずれもPRの最良総合効果は得られなかったが、4人の患者でSDの最良総合効果が得られた(
図15)。
【0297】
拡大コホート4:2021年1月29日の時点で、進行/転移性のPD-1/L1無処置子宮内膜癌を含む21人の患者が拡大コホート4において投与を受けていた。21人の患者のうち、17人がデータカットオフの時点で有効性について評価可能であった、すなわち、少なくとも1回のベースライン後スキャンを有したか、または処置が中止されていたかのいずれかであった。17人の有効性が評価可能な患者のうち1人でPRの最良総合効果が得られ、一方、7人の患者でSDの最良総合効果が得られた(
図16)。
【0298】
拡大コホート5:2021年1月29日の時点で、進行/転移性のTNBCを有する患者を含む20人の患者が拡大コホート5において投与を受けていた。20人の患者のうち、15人がデータカットオフの時点で有効性について評価可能であった、すなわち、少なくとも1回のベースライン後スキャンを有したか、または処置が中止されていたかのいずれかであった。15人の有効性が評価可能な患者のうち1人でPRの最良総合効果が得られ、一方、5人の患者でSDの最良総合効果が得られた(
図17)。
【0299】
拡大コホート6:2021年1月29日の時点で、進行/転移性のSCCHNを有する患者を含む22人の患者が拡大コホート6において投与を受けていた。22人の患者のうち、18人がデータカットオフの時点で有効性について評価可能であった、すなわち、少なくとも1回のベースライン後スキャンを有したか、または処置が中止されていたかのいずれかであった。18人の有効性が評価可能な患者のうち2人でPRの最良総合効果が得られ、一方、6人の患者でSDの最良総合効果が得られた(
図18)。
【0300】
拡大コホート7:2021年1月29日の時点で、進行/転移性のPD-1/L1無処置子宮頸がんを有する患者を含む16人の患者が拡大コホート7において投与を受けていた。16人の患者のうち、11人がデータカットオフの時点で有効性について評価可能であった、すなわち、少なくとも1回のベースライン後スキャンを有したか、または処置が中止されていたかのいずれかであった。11人の有効性が評価可能な患者のうち1人でPRの最良総合効果が得られ、一方、7人の患者でSDの最良総合効果が得られた(
図19)。
【0301】
拡大コホート全体において、無増悪生存期間(PFS)は、チェックポイント阻害物質での前処置を受けたことがある対象の方が長かった(
図20)。
【0302】
CPI前処置ありの拡大コホートを合わせた患者では、チェックポイント阻害物質前処置ありのNSCLC対象におけるGEN1046療法に対する臨床的奏効が最後の前抗PD-1療法からの期間と関連している(
図21)。
〇GEN1046療法の恩恵を有するNSCLC対象は、最後の抗PD-1物質での処置がより最近である傾向が示された。
抗PD-1物質含有治療からの期間が短いことは、残存している抗PD-1活性がGEN1046に対して奏効を助長していることを示唆し得る。これを支持することに、クリニックにおいて抗PD-1物質で処置された患者は、治療用抗体による長期間のPD-1受容体占有率を示し、これは200日間より長く持続する場合もあり得る(Brahmer et al.,JCO 2010;28(19):3167-3175)。治療用a-PD-1物質がまだPD-1受容体に結合していることがさらに、GEN1046との結合に利用可能である大量数の遊離PD-L1分子をもたらし得る。
残存しているa-PD-1活性の存在はまた、PD-1 経路のより完全なブロック(PD-1とPD-L1およびPD-L2の両方との相互作用のブロック)可能にし得、これは、CPI後の場面におけるGEN1046の生物学的活性に重要であり得る。
抗PD-1処置がより最近であることは腫瘍微小環境に対して、例えば、GEN1046が抗PD-1含有治療の際に進行後即座または進行直後に投与されるとそれによって向上し得る抗腫瘍免疫応答が惹起されることにより直接的な影響を有し得る。
【0303】
「低い」PD-1+ CD8 T細胞存在比率を有すると示された奏効群は、前a-PD-1処置による受容体占有率(RO)が反映されている可能性がある。
【0304】
逆に、一般的に高いPD-1+ CD8 T細胞存在比率を有すると示された非奏効群は、より疲弊した表現型が示されている可能性がある。
【0305】
結論:
GEN1046は、既存の4-1BBアゴニストとは異なり、許容される安全性プロファイルを有し、早期の臨床活性を促す次世代のファースト・イン・クラスPD-L1x4-1BB二重特異性抗体である。
【0306】
このフェーズI/IIa試験の用量漸増フェーズにおいて、GEN1046は、進行した充実性腫瘍を有する多くの治療歴がある集団で、マネージメント可能な安全性プロファイルおよび予備的臨床活性を示した。
【0307】
ほとんどの有害事象は軽度から中等度であった;処置関連のグレード3のトランスアミナーゼ上昇はコルチコステロイドにより解消された。処置関連のビリルビン増加またはグレード4のトランスアミナーゼ上昇は観察されなかった。6人の患者が用量制限毒性(DLT)を有し;最大耐用量(MTD)は得られなかった。
【0308】
前免疫療法に抵抗性の患者および典型的には免疫チェックポイント阻害物質(ICI)に対してあまり感受性でない腫瘍を有する患者を含む患者において、いろいろな用量レベルで臨床的有益性が観察された。
【0309】
トリプルネガティブ乳がん(1)、卵巣がん(1)およびICI前処置ありのNSCLC(2)における部分奏効を含む病勢コントロールが65.6%の患者において得られた。
【0310】
薬力学的エンドポイントの調節が、生物学的活性を示す広範な用量レベルにおいて観察された。
【0311】
実施例13:薬物動態学的/薬力学的モデル
中枢および末梢PKコンパートメント内へのGEN1046の分布ならびに腫瘍およびリンパコンパートメント内への分配を想定する一体型(integrated)半機械的PK/PD(薬物動態学的/薬力学的)モデルを開発した。このモデルでは、PD-L1および4-1BBの発現ならびにこれらの細胞内へのT細胞トラフィッキングのパラメータ化のために文献のPKおよび薬力学的データならびに生理学的パラメータを利用する。モデルコンパートメントは、充分に混合型の(well-mixed)2次元および3次元の空間と、すべてのコンパートメント間の自由薬物移動(free drug transfer)からなる。また、このモデルには、腫瘍における三量体(PD-L1および4-1BBと架橋)の形成を予測するためのPD-L1および4-1BBとのGEN1046の動的結合ならびにPD-L1および4-1BBの受容体占有率(RO)が組み込まれる。
【0312】
半機械的PK/薬力学的モデルにより、腫瘍内における三量体形成が100 mg Q3WのGEN1046レジメンでピークになることが示され、これによって継続的な4-1BB活性化がもたらされることが期待され、最初の2サイクルでの活性化用量として選択される。また、利用可能な薬力学的臨床データに基づくと、大きさがより大きく一貫した末梢薬力学的エンドポイント(IFNγおよび増殖Ki67+ エフェクターメモリーCD8+ T細胞)の調節が≦200 mgの用量レベルでみられた。GCT1046-01治験において、拡大コホートの臨床データにより、用量100 mg Q3Wで最初の2サイクル以内に奏効がもたらされることが示された。
【0313】
PK/薬力学的モデリングによる予測および利用可能な臨床データに鑑み、用量GEN1046 100 mg 1Q3Wを、最初の2サイクルで投与する、妥当なレベルで最大の三量体形成およびPD-L1の平均RO(%)をもたらし得る活性化用量として選択した。
【0314】
GEN1046 500 mg 1Q6Wの維持レジメンが最初の2サイクルの後に使用され、100 mg Q3Wと比べてより三量体エンゲージメントの程度が低くなることにより、この投薬サイクルではより高いPD-L1受容体占有率および断続的4-1BB活性化がもたらされると推定される(
図12)。この用量により奏効期間の改善がもたらされることが期待される。さらに、500 mg Q6WでのGEN1046は肝臓において100 mg Q3Wと比べて少ない三量体エンゲージメントが推定され、したがって、より良好な安全性プロファイルを有し得る。
【0315】
実施例14:追加の拡大コホート;活性化/維持投薬
実施例13に示した一体型半機械的生理学ベース薬物動態/薬力学的モデルを使用し、腫瘍における三量体(PD-L1および4-1BBと架橋)の形成ならびにPD-L1の受容体占有率(RO)を予測した。次いで、このモデルを用いて、種々の投薬レジメンでの推定されるインビボ三量体形成およびPD-L1 ROを探索した。このモデルにより、腫瘍内における三量体形成がGEN1046 100 mgの用量を3週間ごとに1回(1Q3W)でピークになることが示され、これを2サイクルでの活性化用量として選択した。この後は、100 mg Q3Wと比べて三量体エンゲージメントにより投薬サイクルにおいてより高いPD-L1受容体占有率(RO)および断続的4-1BB活性化がもたらされると推定されたGEN1046 500 mg 1Q6Wの維持用量を続ける。
【0316】
2つのさらなる拡大コホートをデザインし、2サイクルで「活性化用量」として100 mg 1Q3W、続いて500 mg GEN1046 1Q6Wの「維持用量」でのGEN1046の投与を評価した。
【0317】
第1の拡大コホートには、以下の組み入れ基準、を有するチェックポイント阻害物質(CPI)前処置ありの転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者が登録される。
・最後の前処置の際または後にX線撮影で疾患進行を伴う転移性疾患に対して4つまでの全身的前処置レジメン(維持療法は1つの処置ラインの一部であるとみなす)を受けたことがあるNSCLC対象。
・任意の組織診断のNSCLC対象が登録され得る。非扁平上皮NSCLCの組織学的または細胞学的診断を有する対象は、上皮成長因子受容体(EGFR)感受性変異および/または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)転座/ROS1(c-ROS oncogene 1)再構成を有していてはならない。EGFR感受性変異は、承認されたチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)での処置に適した変異である。EGFRおよびALKの状態の記録は施設アセスメントごとに入手可能であるべきである。EGFRおよびALKの状態の記録が入手不可能である場合、登録前に、治験依頼者の医学的モニタリングの承認が必要である。
・対象は、プラチナ製剤ベースの治療(またはプラチナ製剤不適格のため代替化学療法、例えばゲムシタビン含有レジメン)を受けたことがあるべきである。
・対象は、単独または併用でPD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがなければならず、処置の際にX線撮影で疾患進行を有していなければならない。16週間までの処置持続期間を伴うチェックポイント阻害物質(CPI)含有レジメンで病勢安定(SD)または病勢進行(PD)の最良総合効果(BOR)を有する対象については治験依頼者の承認が必要である。
・登録前に、直近のPD-L1検査の施設内結果が提供されなければならない。施設のPD-L1検査結果が入手不可能である場合、登録には治験依頼者の承認が必要である。
【0318】
第2の拡大コホートには、以下の組み入れ基準、を有する処置未経験の転移性NSCLC患者が登録される。
・転移性疾患に対する全身的前処置レジメンを受けたことがない転移性NSCLCを有する対象。対象は、PD-1/L1阻害物質での前処置を受けたことがあってはならない。対象は、最後の前処置の際または後にX線撮影で疾患進行を有していなければならない。これは、新たに診断された疾患を有する対象には必要とされない。
・任意の組織診断のNSCLCを有する対象が登録され得る。非扁平上皮NSCLCの組織学的または細胞学的診断を有する対象は、EGFR感受性変異および/またはALK転座/ROS1再構成を有していてはならない。EGFR感受性変異は、承認されたTKIでの処置に適した変異である。EGFRおよびALKの状態の記録は施設アセスメントごとに入手可能であるべきである。EGFRおよびALKの状態の記録が入手不可能である場合、登録前に、治験依頼者の医学的モニタリングの承認が必要である。
・対象は、コアニードル生検もしくは摘出生検によって得られた新鮮腫瘍試料から、または転移性疾患が診断された時点で切除された腫瘍組織から、のC1D1前に入手可能な中央臨床検査部によるPD-L1発現結果を有していなければならない。以下の試料:超音波気管支鏡(EBUS)ガイド下試料、細針吸引物、セルブロック、細胞ペレット、血餅、骨髄および細胞学的試験片は本試験に許容されない。
・腫瘍は、中央臨床検査部での検査によって測定されるIHCによるアセスメント時に≧1%の腫瘍細胞がPD-L1発現(TPS≧1%)を示す。
【0319】
実施例15:免疫チェックポイント阻害物質を用いた標準治療での処置後の再発/難治性転移性非小細胞肺がんを有する対象におけるGEN1046の多施設無作為非盲検治験フェーズ2
これは、CPI含有治療での処置後の再発/難治性転移性NSCLCを有する成人対象においてGEN1046の安全性および有効性を評価する無作為非盲検の治験である。この治験は、患者がGEN1046単独療法で処置される試験群Aを含み、主要目的は単独療法としてのGEN1046の抗腫瘍活性(ORR)を評価することである。ORRは、NSCLCの概念実証治験において抗腫瘍活性をアセスメントするための充分に確立された有効性パラメータである。
【0320】
A群は、以下に基づいて、活性化用量のGEN1046(100 mg Q3Wを2サイクル)の後、より高い維持用量のGEN1046(後続のサイクルで500 mgをQ6W投与)のレジメンで試験される。
・半機械的PK/薬力学的モデルにより、腫瘍内における三量体形成が100 mg Q3WのGEN1046レジメンでピークになることが示され、これによって継続的な4-1BB活性化がもたらされることが期待され、最初の2サイクルでの活性化用量として選択される。GCT1046-01治験において、拡大コホートの臨床データにより、用量100 mg Q3Wで最初の2サイクル以内に奏効がもたらされることが示された。
・GEN1046 500 mg Q6Wの維持レジメンが最初の2サイクルの後に使用され、100 mg Q3Wと比べて三量体エンゲージメントの程度が低くなることにより、投薬サイクルにおいてより高いPD-L1 ROおよび断続的4-1BB活性化がもたらされると推定される。この用量により奏効期間(DOR)の改善がもたらされることが期待される。また、GEN1046 500 mg Q6Wは、500 mg Q6W後の最大濃度(Cmax)が用量漸増フェーズにおいて試験した最大用量であるGEN1046 1200 mg Q3Wと比べて低いと考えられるため、許容される便益/リスクプロファイルを有することが期待される。FIH治験の漸増フェーズにおいて評価した25~1200 mg Q3Wの用量は安全で一般的に耐容性が良好であり、MTDは得られなかった。
【0321】
A群において、GEN1046 100 mg Q3Wは30分間のIV輸注として最初の2つの処置サイクルで1日目に投与され;その後、GEN1046 500 mg Q6Wが30分間のIV輸注として後続の6週間処置サイクルの1日目に投与される。GEN1046の用量低減は許容されない。
【0322】
重要な組み入れ基準:
・対象は少なくとも18歳でなければならない。
・対象は、以下に記載する転移性疾患に対して抗PD-1/PD-L1 mAbを含有する少なくとも1つの前全身的治療ラインを有する、ステージ4のNSCLCの組織学的または細胞学的に確認された診断を有していなければならない。対象は、RECIST v1.1に規定される疾患進行(PD)を示したことがなければならない。直近の抗がん療法に抗PD-1/PD-L1 mAbが含まれた対象では、PDの最近の証拠が、初回に記録されたPDの日付けから4週間以降の2回目のアセスメントによって確認されなければならない。
注:対象は、NSCLCにおいて承認された少なくとも2回の用量の承認された抗PD-1/PD-L1 mAbを受けたことがなければならない。
〇対象は、単独療法またはSOC併用療法のいずれかとして投与された1つの抗PD-1/PD-L1 mAbでの処置の最中または後に進行したことがある(ファーストライン治療として抗PD-1/PD-L1 mAb単独療法のみを受けたことがある対象は、治験責任医師が施設内処置ガイドラインに従ってプラチナ製剤含有化学療法での処置は適切でないと判断した場合、本試験に適格である)か、あるいは;
〇対象は、抗PD-1/PD-L1 mAb後のプラチナダブレット化学療法の最中または後に進行したことがあるか、あるいは;
〇対象は、プラチナダブレット化学療法後の抗PD-1/PD-L1 mAbの最中または後に進行したことがある。
・対象は、Dako PD-L1 IHC 22C3 pharmDxアッセイ(TPS≧1%)を用いた治験依頼者デザインの中央臨床検査部によるアセスメント時、またはDako PD-L1 IHC 22C3 pharmDxアッセイ(TPS≧1%)もしくはVENTANA PD-L1(SP263)アッセイ(TC≧1%)による製造業者の使用説明書に従う現地施設アセスメントにより≧1%の腫瘍細胞がPD-L1発現を示す、C1D1前に入手可能な腫瘍PD-L1発現の結果を有していなければならない。
注:施設内PD-L1の結果は新鮮腫瘍組織で行なわれている必要がある(登録前の3ヶ月以内かつ最後の前処置の不奏効/停止後に得られている)か、または実現可能でない場合、アーカイブ組織(登録前の12ヶ月以内に得られている)。
・対象は、治験責任医師によるアセスメント時、RECIST v1.1による測定可能な疾患を有していなければならない。
・対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)パフォーマンス状態(PS)≦1を有していなければならない。
・対象は、少なくとも3ヶ月間の平均余命を有していなければならない。
・対象は、プロトコルに記載のような充分な器官機能および骨髄機能を有していなければならない。
【0323】
重要な除外基準:
・公知のEGFR感受性変異、KRAS、RET、ROS1、BRAF変異、NTRK遺伝子導入(infusion)、RET再構成、ALK遺伝子再構成、高レベルのMET増幅またはMETex 14スキッピングの記録。変異状態の記録が入手可能でない場合、非扁平上皮組織診断または非扁平上皮と扁平上皮の混合型の組織診断を有する対象については、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織がバイオマーカーパネル解析(これは、限定するわけではないが、EGFR、ALK、ROS1、BRAF、KRAS変異、RET再構成またはNTRK遺伝子導入などを含み得る)のために試験されるべきである。対象は、バイオマーカー状態が現地のソースドキュメント記録において入手可能になるまで無作為化されてはならない。
注:上記のようなかかるターゲティング可能な変異、遺伝子再構成または遺伝子増幅を有する腫瘍を有する対象は、かかる対象が、この適応症に対する承認されたターゲット療法(特に、転移性NSCLC疾患に対する抗PD-1/PD-L1 mAbを含有する少なくとも1つの前全身的治療ライン)も受けたことがあり、他のすべての適格基準を満足に満たすと仮定される場合、治験に登録され得る。
・対象は、以下の前治療:
〇NSCLCに対するドセタキセルでの前処置、
〇4-1BB(CD137)標的剤、任意の型の抗腫瘍ワクチンまたは自家細胞免疫療法での前処置、
〇GEN1046投与前の28日以内の抗がん剤での処置、
のいずれかを受けたことがある。
・免疫CPI含有処置の最初の6週間以内の疾患進行のため処置が中止された対象。
【配列表】
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-04-03
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】全図
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【国際調査報告】