(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】α-シヌクレインをサイレンシングするための遺伝子構築物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240621BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240621BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240621BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240621BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240621BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240621BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240621BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N7/01
A61K48/00
A61K45/00
A61P25/02
A61P25/00
A61P25/16
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K31/7105
A61K31/711
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578738
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022066922
(87)【国際公開番号】W WO2022268835
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522343120
【氏名又は名称】ユニキュアー バイオファーマ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】UNIQURE BIOPHARMA B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アッカー ブロークマンズ, セイダ
(72)【発明者】
【氏名】バレス サンチェス, アストリッド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
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(57)【要約】
本発明は、核酸、組成物、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)及び/又は他のα-シヌクレオパチーの治療及び/又は予防における前記組成物の医学的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAをコードする核酸配列を含む核酸であって、前記RNAに含まれるRNA配列がα-シヌクレイン(α-syn)遺伝子(SNCA)の標的配列に実質的に相補的であり、前記RNA配列が少なくとも15個のヌクレオチドを有し、前記RNAがヘアピンを含み、前記RNAが配列番号1、配列番号2、又は配列番号1若しくは配列番号2のバリアントを含む、核酸。
【請求項2】
前記ヘアピンが少なくとも39個のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記RNA配列が少なくとも18個のヌクレオチドを有する、請求項1又は2に記載の核酸。
【請求項4】
前記RNA配列が最大32個のヌクレオチドを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項5】
前記標的配列が、前記α-syn遺伝子に含まれるエクソンの一部である、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項6】
前記エクソンが、エクソン2、エクソン4及びエクソン6からなる群から選択される、請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
前記エクソンの前記部分が、配列番号3~9及び配列番号3~9のバリアントからなる群から選択される配列からなる、請求項5又は6に記載の核酸。
【請求項8】
前記RNA配列が、配列番号10~16及び配列番号10~16のバリアントからなる群から選択される1つの配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項9】
DNA分子である、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項10】
DNA発現カセットに含まれるDNA分子であって、前記DNA発現カセットにおいて、プロモーター及びポリAテールをさらに含み、前記核酸が逆方向末端反復配列(ITR)に隣接している、請求項9に記載のDNA分子。
【請求項11】
前記プロモーターがユビキタスプロモーター;ニューロン特異的プロモーター;又はグリア特異的プロモーターである、請求項10に記載のDNA分子。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載のDNA分子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ビヒクル。
【請求項13】
AAV5又はAAV9カプシドタンパク質配列を含むカプシドを含む、請求項12に記載のAAVビヒクル。
【請求項14】
前記AAVビヒクルが遺伝子治療ビヒクルである、請求項12又は13に記載のAAVビヒクル。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか一項に記載のAAVビヒクルと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物。
【請求項16】
医薬として使用するための、請求項12~14のいずれか一項に記載のAAVビヒクル又は請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記医薬が、α-syn遺伝子によってコードされる転写物を減少させる及び/又はノックダウンする、請求項16に記載の医薬として使用するためのAAVビヒクル又は組成物。
【請求項18】
前記医薬が、レビー小体及び/又はPapp-Lantos小体の量を減少させる、請求項16又は17に記載の使用のためのAAVビヒクル又は組成物。
【請求項19】
前記医薬が、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(LBD)、多系統萎縮症(MSA)、神経障害症状、PDの運動症状、認知障害、睡眠障害、自律神経障害、及び/又は嗅覚障害の臨床症状を治療及び/又は予防するために使用される、請求項16~18のいずれか一項に記載の使用のためのAAVビヒクル又は組成物。
【請求項20】
前記医薬がPD及び/又はMSAを治療及び/又は予防するために使用される、請求項16~19のいずれか一項に記載の使用のためのAAVビヒクル又は前記AAVビヒクルを含む組成物。
【請求項21】
請求項12~14のいずれか一項に記載のAAVビヒクルを製造する方法。
【請求項22】
免疫抑制化合物をさらに含む、請求項12~14のいずれか一項に記載のAAVビヒクルを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に遺伝子治療の状況において、α-シヌクレイン(α-syn)遺伝子(SNCA)の転写物を減少及び/又はノックダウンし、パーキンソン病(PD)及び他のα-シヌクレオパチーを治療及び/又は予防するための核酸、前記核酸の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
線維性α-シヌクレイン封入体は、2つの主要な神経変性疾患クラス:レビー小体型疾患、例えば、PD、レビー小体型認知症(LBD)、例えば認知症を伴うPD(PDD)を含む、及び)レビー小体を伴う認知症(DLB))、並びに多系統萎縮症(MSA)を含む、Papp-Lantos小体を特徴とするものを定義する。これらはまとめてシヌクレイノパチーと呼ばれる。
【0003】
パーキンソン病(PD)は、運動症状及び非運動症状を引き起こし得る複雑な進行性神経変性障害である。PDの典型的な臨床的特徴は、運動緩慢、安静時振戦、硬直、及び/又は後の段階で生じる姿勢不安定性を含む。臨床診断の前及び/又は後に、非運動症状が起こり得る。これらには、疾患の初期段階におけるうつ病、睡眠障害、疼痛及び疲労、並びに疾患の後期段階における不安、認知症及び認知機能障害が含まれる。運動症状と非運動症状の両方が患者にとって消耗性であり、介護者に負担をかける。
【0004】
PDは複雑な疾患であり、その原因は不明のままであるが、多数の遺伝子がPDの原因及び/又は発症に関与することが明らかになっている。PD病理学の主な特徴は、運動関連機能の中心である線条体及び皮質へ関連するドーパミン作動性投射を有する中脳脳領域である黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの神経変性である。黒質線条体ドーパミン作動性神経支配の喪失及び他の脳領域における変性に加えて、PDは、不溶性α-synタンパク質を含有する細胞質タンパク質凝集体(レビー小体)の存在を特徴とする。
【0005】
脳内の天然のα-synタンパク質は、定義された三次構造を持たず、ほとんどが折り畳まれていない。細胞膜を構成するリン脂質などの負に荷電した脂質と相互作用すると、α-synはそのN末端を介してαらせん構造に折り畳まれる。しかしながら、PDでは、α-synは、凝集しやすいβシートに富むアミロイド様構造をとる。凝集体は、レビー小体の大部分を構成する。
【0006】
MSAは、好銀性グリア細胞質封入体(GCI)及び選択的神経変性を伴う特徴的な乏突起膠症を特徴とする未確定の病因の進行性成人発症神経変性障害である。GCI又はPapp-Lantos封入体/小体は、現在、MSAの確定的な神経病理学的診断の特徴として受け入れられており、この障害の病理発生において中心的な役割を果たすことが示唆されている。GCIは、高リン酸化α-syn、ユビキチン、LRRK2(ロイシンリッチリピートセリン/トレオニンタンパク質)及び他のタンパク質から構成される。
【0007】
一般的に言えば、α-synタンパク質は凝集体を形成する傾向があり、これらの凝集体はニューロンにおける正常な機能及び/又は毒性作用の喪失をもたらし得、その結果、異なる脳領域において神経変性及び/又は神経炎症を引き起こす。さらに、α-syn遺伝子の変異又は重複/三重化は、α-シヌクレオパチーに関連することが知られている。
【0008】
現在、疾患を治療及び/又は予防するための治療法は、遺伝子及び/又は遺伝子の転写物を完全にノックダウンすることに基づいている。しかしながら、α-synの重要な生理学的役割のために、α-synタンパク質の枯渇は、中枢神経系(CNS)におけるシナプス伝達の減衰などの現象による患者の安全性の懸念をもたらす可能性がある。
【0009】
したがって、望ましくない安全上のリスクを低減及び/又は予防しながら、PD及び/又は他のシヌクレイノパチーを治療及び/又は予防することができる治療法を有する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、RNA(「本発明のRNA」)をコードする核酸配列を含む核酸(「本発明の核酸」)であって、前記RNAに含まれるRNA配列がα-シヌクレイン(α-syn)遺伝子(SNCA)の標的配列に実質的に相補的であり、前記RNA配列が少なくとも15個のヌクレオチドを有し、前記RNAがヘアピンを含む、核酸に関する。
【0011】
本発明の第2の態様は、DNA分子(「本発明のDNA分子」)である本発明の核酸に関する。
【0012】
本発明の第3の態様は、DNA分子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ビヒクル(「本発明のAAV(ビヒクル)」)に関する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、本発明のAAVビヒクル及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む組成物;本発明のAAVビヒクルを製造する方法;及び本発明の場合、AAVビヒクルを含むキットであって、免疫抑制化合物をさらに含むキットに関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は遺伝子治療に関し、特に、α-syn遺伝子、好ましくはヒトα-syn遺伝子によってコードされるRNAを標的化するための遺伝子治療におけるRNA干渉(RNAi)の使用に関する。
【0015】
核酸
本発明によれば、RNA(「本発明のRNA」)をコードする核酸配列を含む核酸(「本発明の核酸」)が提供され、前記RNAに含まれるRNA配列は、α-syn遺伝子の標的配列に実質的に相補的であり、前記RNA配列は、少なくとも15個のヌクレオチドを有し、前記RNAは、ヘアピンを含む。
【0016】
本明細書で使用される「実質的に相補的」という用語は、2つの核酸配列が互いに相補的であることを指し、それによって2つの核酸配列は互いに結合する。「実質的に」という用語は、2つの配列間の相補性が、少なくとも部分的な阻害効果を有するのに十分な時間にわたって互いに結合するのに十分であることを意味する。もちろん、相補性が完全(完全な相補性)であることが好ましいが、いくつかのギャップ及び/又はミスマッチが許容され得る。ミスマッチの数は10%以下でなければならない。重要な特徴は、相補性がin situでの2本の鎖の結合を可能にするのに十分であることである。結合は、阻害効果を発揮するのに十分な強さでなければならない。
【0017】
上記のRNAをコードする前記核酸配列は、前記標的配列の相補的(「抗」)配列とは異なる最大で4ヌクレオチド;5ヌクレオチド;又は6ヌクレオチドを任意選択で有していてもよい。RNAをコードする前記核酸配列は、α-syn遺伝子によってコードされる前記標的配列の相補配列とは異なる1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、又は3ヌクレオチドを有していてもよい。好ましくは、上記のような前記核酸配列は、前記標的配列の相補配列と同一である。
【0018】
本明細書で使用される「α-syn遺伝子」という用語は、α-シヌクレイン遺伝子又はSNCA遺伝子を指す。前記α-syn遺伝子は、本明細書に記載されるように、好ましくは哺乳動物α-syn遺伝子、さらに好ましくはマウス又はラットα-syn遺伝子、より好ましくはNHPα-syn遺伝子、最も好ましくはヒトα-syn遺伝子である。α-syn遺伝子の全てのSNPをさらに本発明に含めることができる。
【0019】
本明細書で使用される「α-synタンパク質」という用語は、α-syn遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。
【0020】
典型的には、本発明による核酸は、疾患関連遺伝子の発現を減少させることを意図している。本発明によれば、上記のような前記核酸は、以下に記載されるように、例えば遺伝子送達ビヒクル、特にウイルス遺伝子送達ビヒクル、好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ビヒクルによって標的細胞に送達され得る。前記核酸は、続いてRNAに転写され得る。RNA介入(RNAi)の過程で、前記RNAはDrosha(すなわち、クラス2リボヌクレアーゼIII酵素)によって、標的細胞の核内でRNAの5’及び3’末端に隣接領域のない短いヘアピンRNA(shRNA)又は長いヘアピンRNA(lhRNA)に切断される。その後、切断されたRNAは、細胞の細胞質に輸送され、前記切断されたRNAは、エンドリボヌクレアーゼDicerによってさらに切断されない。前記切断されたRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)のArgonaute-2(AGO-2)によってさらに切断され、前記切断されたRNAのパッセンジャーRNA配列は、ポリ(A)特異的リボヌクレアーゼ(PARN)によってトリミング(すなわち、切断)される。前記切断されたRNAの他方の鎖は、ガイド鎖(すなわち、ガイド配列)と呼ばれる。上記のように、前記標的RNA配列に実質的に相補的な配列を含むガイド鎖は、AGO-2によってプロセシング及び/又は切断されない。
【0021】
切断されたRNAのパッセンジャー鎖が切り取られることなく存在し続ける状況では、前記パッセンジャー鎖は、標的外(off-target:オフターゲット)配列及び/又は標的配列にさえも部分的に相補的であり得る。したがって、前記パッセンジャー鎖は、標的外配列に結合することができる、及び/又は切断されたRNAのガイド鎖と競合して前記標的配列に結合することさえできる。そのような「オフターゲット問題」は、遺伝子編集介入の精度に影響を及ぼす可能性があり、そのため低減及び/又は排除されなければならない。
【0022】
それにより、前記パッセンジャー配列を切断することにより、「オフターゲット問題」を防止及び/又は抑制することができる。したがって、標的mRNAに対する前記ガイド配列の結合特異性が改善され、「オフターゲット」事象が減少する。これは、本発明の好ましい実施形態である。
【0023】
互いに相補的な2本の鎖を含み、そのうちの1本の鎖(パッセンジャー鎖)がRNAiにおいて切断されたRNAが本発明に含まれる。例えば、二本鎖RNA(dsRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)及びマイクロRNA(miRNA)が本発明に含まれる。
【0024】
本明細書に記載の「RNAヘアピン」又は「ヘアピン」という用語は、互いに相補的な2本の鎖と、2本の鎖を接続するループとを含むRNAの二次構造を指す。一方の鎖はパッセンジャー鎖(すなわち、パッセンジャー配列)と呼ばれ、他方の鎖はガイド鎖(すなわち、ガイド配列)と呼ばれる。RNAヘアピンは、RNA折り畳みをガイドし、リボザイムにおける相互作用を決定し、メッセンジャーRNA(mRNA)を分解から保護し、RNA結合タンパク質の認識モチーフとして機能することができる。
【0025】
好ましくは一方の鎖はRNA干渉(RNAi)において分解され(すなわち、トリミングされる)、他方の鎖は分解されずに残り、前記「オフターゲット問題」が改善されるという条件で、2本の鎖を有する他のRNAも本発明に含まれる。lhRNA及び/又はshRNAを本発明に含めることができる。特定の実施形態では、前記ヘアピンはshRNA又はlhRNAであり得る。
【0026】
好ましくは、上記のような前記ヘアピンは、少なくとも39ヌクレオチド;少なくとも44ヌクレオチド;少なくとも49ヌクレオチド;少なくとも54ヌクレオチド;又は少なくとも59ヌクレオチドの配列を有する。本発明のいくつかの実施形態では、上記のヘアピンは、少なくとも39ヌクレオチドの配列を有する。したがって、好ましくは、RNAをコードする核酸配列は、少なくとも39ヌクレオチドの配列を有する。
【0027】
任意選択的に、上記の前記ヘアピンは、最大80ヌクレオチド、任意選択的に最大78ヌクレオチド、任意選択的に最大76ヌクレオチド、任意選択的に最大74ヌクレオチド、任意選択的に最大72ヌクレオチド、任意選択的に最大70ヌクレオチド、任意選択的に最大68ヌクレオチド、任意選択的に最大66ヌクレオチド、さらに任意選択的に最大64ヌクレオチドのRNA配列を有する。好ましくは、上記のような前記ヘアピンは、72ヌクレオチドのRNA配列を有する。
【0028】
miRNA足場
上記のような配列長を有する前記ヘアピンをコードする核酸配列は、AAVに容易に組み込むことができ、中枢神経系などの標的器官に送達することができる。さらに、前記配列長は、前記ヘアピンが正しく折り畳まれることを可能にし、その結果、前記パッセンジャー鎖は、上述のようにRNAiで切断され得る。したがって、上述のように、前記配列長を有する前記配列は、前記オフターゲット問題を低減及び/又は防止することができる。さらに、前記オフターゲット問題は、配列番号1、配列番号2、並びに配列番号1及び配列番号2のバリアントからなる群から選択される配列を有するRNAによってさらに低減及び/又は防止される。
【0029】
したがって、好ましい実施形態では、前記RNA(本発明のRNA)は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号1若しくは配列番号2のバリアントを含む。
【0030】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、RNAをコードする核酸配列を含む核酸を提供し、前記RNAに含まれるRNA配列はα-syn遺伝子の標的配列に実質的に相補的であり、前記RNA配列は少なくとも15ヌクレオチドを有し、前記RNAはヘアピンを含み、前記RNAは配列番号1、配列番号2、又は配列番号1若しくは配列番号2のバリアントを含む。
【0031】
配列番号1は、miR451足場又はヘアピンを指す。前記足場は、好ましくは5’から3’に、最初に(i)5’-CUUGGGAAUGGCAAGG-3’(配列番号46)、続いて(ii)第1のRNA配列を含むか又はこれからなる22ヌクレオチドの配列、続いて(iii)その全長にわたって前記22ヌクレオチドの第1の配列のヌクレオチド2~18と相補的な第2のRNA配列とみなすことができる17ヌクレオチドの配列、続いて(iv)配列5’-MWCUUGCUAUACCCAGA-3’(MはG又はCであり、WはA又はUである)(配列番号47)を含む。好ましくは、後者の配列の最初の5’-A/Cヌクレオチドは、第1又は第2のRNAの第1の鎖の第1のヌクレオチドと塩基対を形成しない。
【0032】
そのような足場は、元のpri-miR451足場に見られるような隣接配列を含み得る。或いは、隣接配列は、他のpri-mRNA構造の隣接配列によって置換され得る。本発明の例示的な足場のpri-mRNA配列を表3に示す。
【0033】
miR451足場は、RNA干渉(RNAi)を誘導することを可能にし;特に、RNAiは、この足場のガイド鎖によって誘導される。pri-miR451足場は、プロセシングがカノニカルmiRNAプロセシング経路とは異なるため、パッセンジャー鎖をもたらさない(Cheloufi,S.et.al.,2010 and Yang,J.S.et.al.,2010)。それにより、miR-451の使用は、パッセンジャー鎖による望ましくない潜在的なオフターゲティングを有する可能性を防止又は低減することができる。
【0034】
配列番号2は、上記のmiR451足場と組み合わされたmiR-144足場を指す。
【0035】
前記核酸は、上記のように、前記RNAに転写され得る。好ましくは、上記のRNAは、配列番号1を含むmiR-451のヘアピンを含む。前記miR451の使用により、前記パッセンジャー鎖が切断されて最終的なmiR451に存在しないため、上記のオフターゲット問題が防止及び/又は低減される。より好ましくは、前記RNAは配列番号2を含み、二重ヘアピン構造を有する。前記構造は、前記RNAの5’末端から3’末端へと、ヘアピンmiR144と、それに続く前記ヘアピンmiR451とを含む。前記RNAが配列番号2を含む場合、前記オフターゲット問題が防止及び/又は低減されることが見出された。さらに、前記ヘアピンmiR451の生合成が改善され、それにより、前記ガイドストランドの量が増加する。したがって、標的RNAの転写物の阻害及び/又はノックオフを増強することができる。
【0036】
配列番号1又は配列番号2のRNAバリアントは、それぞれ配列番号1又は配列番号2を含むRNAと実質的に同じ機能を有すると定義される。配列番号1又は配列番号2の前記バリアントを含むRNAは、上記のように前記オフターゲット問題を防止及び/又は低減する機能を有する。配列番号1及び配列番号2の前記バリアントはまた、RNA二次構造への折り畳みのために、それぞれ配列番号1及び配列番号2と実質的に同じ機能を有する。さらに、前記配列番号2の前記バリアントを含むRNAは、上記のように、前記オフターゲット問題を低減及び/又は防止するだけでなく、前記ヘアピンの生合成も改善することができる。
【0037】
本明細書に記載されるように、前記「オフターゲット問題」を低減/改善されたものとして説明する場合、前記オフターゲット問題が防止、低減、及び/又は停止されることを意味する。
【0038】
任意選択的に、上記の配列番号1の前記バリアントは、配列番号1と実質的に同じであり、上記の配列番号1と実質的に同じ機能を有する。任意選択的に、前記バリアントは、配列番号1とは異なる少なくとも1個のヌクレオチド、又は任意選択的に最大5個のヌクレオチドを含む。場合により、配列番号1の前記バリアントは、配列番号1とは異なる最大30ヌクレオチド;最大25ヌクレオチド;最大20ヌクレオチド;最大15ヌクレオチド;又は最大10ヌクレオチドを含む。
【0039】
任意選択的に、上記の配列番号2のバリアントは、配列番号2と実質的に同じであり、上記の配列番号2と実質的に同じ機能を有する。任意選択的に、前記バリアントは、配列番号2とは異なる少なくとも1個のヌクレオチド、又は任意選択的に最大5個のヌクレオチドを含み得る。場合により、配列番号2の前記バリアントは、配列番号2とは異なる最大30ヌクレオチド;最大25ヌクレオチド;最大20ヌクレオチド;最大15ヌクレオチド;又は最大10ヌクレオチドを含む。
【0040】
好ましくは、α-syn遺伝子によってコードされる前記標的RNA配列に実質的に相補的な前記RNA配列は、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも21ヌクレオチド、少なくとも22ヌクレオチド、少なくとも23ヌクレオチド、又は少なくとも24ヌクレオチドを有する。好ましくは、本明細書に記載の前記RNA配列は、少なくとも18ヌクレオチドを有する。
【0041】
場合により、前記RNA配列は、最大32ヌクレオチド、最大31ヌクレオチド、最大30ヌクレオチド、最大29ヌクレオチド、最大28ヌクレオチド、最大27ヌクレオチド、最大26ヌクレオチド、又は最大25ヌクレオチドを有する。本発明のいくつかの実施形態では、前記RNA配列は最大32ヌクレオチドを有する。したがって、前記RNAをコードする核酸配列は、最大32ヌクレオチドを有する。
【0042】
上記のような配列長を有する前記RNA配列は、上記のような前記ヘアピンのガイド鎖を構成する。上記のように、前記ガイド鎖の長さは、前記ヘアピンのガイド鎖を形成し、RNA二次構造(すなわち、ヘアピン)の形成を可能にするように設計される。また、前記ガイド鎖の長さは、前記標的RNAに十分な結合特異性を提供するために選択される。これらは、前記オフターゲット問題の低減に寄与する。
【0043】
α-syn遺伝子の標的配列(前記DNAに含まれる前記配列)に実質的に相補的なRNA配列は、以下に記載されるように、α-syn遺伝子の保存領域の1つに基づいて設計される。
【0044】
好ましくは、前記保存領域は、哺乳動物α-syn遺伝子、より好ましくは非ヒト霊長類(NHP)、及び/又はヒトα-syn遺伝子に存在する。
【0045】
好ましくは、前記標的RNAは、前記α-syn遺伝子に含まれるエクソンの一部によってコードされる。エクソンはRNAスプライシングによって除去されないため、エクソンは前記標的RNAを設計するときに考慮に入れるのに有用である。
【0046】
本明細書で定義される「(a)部分」という用語は、部分配列を指す。本明細書で定義される「エクソン」という用語は、RNAスプライシングによって除去されることなくmRNAの一部をコードする前記α-syn遺伝子に含まれる領域を指す。エクソンは、少なくとも1つの保存された配列を含むことができる。NHP及びヒトα-syn遺伝子に含まれるエクソンを、前記標的RNA及び前記ガイド鎖を設計するために整列させた。例えば、前記NHPα-syn遺伝子は、NHPα-syn遺伝子(遺伝子ID:706985,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/706985)からなる。例えば、前記ヒトα-syn遺伝子は、ヒトα-syn遺伝子(遺伝子ID:6622(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/6622))からなる。
【0047】
本明細書に記載の「少なくとも1つ」という用語は、本明細書に記載の保存された配列などの示された対象が1、2、3又はそれ以上の量であることを指す。
【0048】
本明細書に記載される「保存された配列」又は「保存された領域」という用語は、高いレベルの類似性を有する様々な種に見られ得る短い長さの配列を指す。保存された配列は、類似の機能を有するRNA又はタンパク質をコードするために様々な種由来の多数の核酸配列を整列させることによって同定することができ、そのため配列の一部又は大部分は同一である。
【0049】
α-syn遺伝子におけるエクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5及びエクソン6の各々は、前記ガイド鎖が結合し得る標的RNAを設計するための少なくとも1つの保存領域を含む。好ましくは、前記エクソンは、エクソン2、エクソン4及びエクソン6からなる群から選択される。複数の保存された配列が、NHPα-syn遺伝子及び/又はヒトα-syn遺伝子のエクソン2、4及び6に存在することが見出されている。したがって、前記エクソンは、前記RNAの設計に有用である。
【0050】
好ましくは、前記ガイド鎖は、エクソン2又はエクソン4の一部によって、より好ましくはエクソン4の一部によってコードされる前記標的RNAに結合する。換言すれば、標的RNA配列は、エクソン2、エクソン4又はエクソン6の一部であり;好ましくはエクソン2又は4の一部;より好ましくはエクソン4の一部である。
【0051】
エクソン2、エクソン4及び/又はエクソン6中の保存された配列に基づいて設計された前記標的RNAの転写産物は、以下に記載されるように、前記ガイド鎖によって低減及び/又はノックダウンされ得る。
【0052】
本明細書に記載の「転写物」という用語は、α-syn遺伝子によってコードされるmRNA、タンパク質及び/又はタンパク質凝集体を指す。本明細書に記載される「α-syn凝集体」、「α-synタンパク質の凝集体」、及び/又は他のバリアントという用語は、α-synタンパク質で構成される凝集体を指す。
【0053】
α-syn遺伝子に含まれ、少なくとも保存された配列を含む任意のエクソン、例えばエクソン3及び/又はエクソン5も本発明に含まれる。
【0054】
より好ましくは、上記のような前記エクソンの前記部分は、配列番号3~9(表1)及び配列番号3~9のバリアントからなる群から選択され、好ましくは配列番号4、7及び8からなる群から選択され、配列番号4、7及び8のバリアントからなる群から選択され、より好ましくは配列番号4及び8からなる群から選択され、配列番号4及び8のバリアントからなる群から選択される。換言すれば、前記エクソンの前記部分は、配列番号3~9及び配列番号3~9のバリアントからなる群から選択される配列からなる。
【0055】
【0056】
配列番号3~9の前記バリアントは、それぞれ配列番号3~9と実質的に同じ配列及び機能を有する。前記バリアントは、以下に記載されるようにガイド鎖によって結合され得、その後、前記標的RNA及びその転写物、例えばタンパク質が減少及び/又はノックダウンされる。配列番号3~9の前記バリアントは、それぞれ配列番号3~9とは異なる少なくとも1つのヌクレオチド及び最大5つのヌクレオチドを有する。
【0057】
本明細書に記載の「バリアント」という用語は、それぞれ前記標的配列と実質的に同一の機能を有する前記標的RNA配列のバリアントを指す。また、以下に記載される前記ガイドストランドの前記バリアントは、以下に記載される前記ガイドストランドと実質的に同じ機能を有する。すなわち、前記ガイド鎖の前記バリアントは、前記α-syn遺伝子によってコードされる転写物をさらに阻害及び/又は減少させるように、前記標的RNA又は前記標的RNAの前記バリアントに依然として結合することができる。場合により、前記標的RNA配列の前記バリアントは、それぞれ前記標的RNA配列とは異なる最大4ヌクレオチド、最大3ヌクレオチド、最大2ヌクレオチド又は少なくとも1ヌクレオチドを含む。
【0058】
好ましくは、前記標的RNAに実質的に相補的な前記RNA配列は、配列番号10~16(表2)及び配列番号10~16のバリアントからなる群から選択され、好ましくは配列番号11、14及び15並びに配列番号11、14及び15のバリアントからなる群、より好ましくは配列番号11及び15並びに配列番号11及び15のバリアントからなる群から選択される。したがって、前記RNA配列は、配列番号10~16及び配列番号10~16のバリアントからなる群から選択される一配列を含む。
【0059】
【0060】
上記のように、前記標的RNA配列に実質的に相補的な前記RNA配列(すなわち、ガイド鎖)は、前記RNA配列が前記標的RNA配列に結合するように設計される。それにより、α-syn遺伝子のmRNAなどの転写物及び/又はタンパク質を減少及び/又はノックダウンすることができる。
【0061】
配列番号10~16の前記バリアントは、配列番号10~16の実質的に同じ配列を有し、それぞれ配列番号10~16と同じ機能及び前記標的DNAへの実質的に同じ結合を有する。場合により、配列番号10~16の前記バリアントは、それぞれ配列番号10~16とは異なる少なくとも1つのヌクレオチド及び最大5つのヌクレオチドを有する。場合により、配列番号10~16の前記バリアントは、それぞれ配列番号10~16とは異なる最大4ヌクレオチド、最大3ヌクレオチド、最大2ヌクレオチド又は少なくとも1ヌクレオチドを含む。
【0062】
配列番号10~16を含む本発明のpri-miRNA足場の例示的な配列を表3に示す。
【0063】
【0064】
DNA分子及び発現カセット
本発明の第2の態様は、DNA分子(「本発明のDNA分子」)である本発明の核酸に関する。本発明によれば、好ましくはDNA分子が提供される。DNA分子は、その鎖の1つに上記の前記核酸配列に対応する配列を含む。
【0065】
前記DNA分子は、上記のように前記核酸配列を保持するのに有用であり得、上記のように標的器官で形質導入されるためにAAVに含まれ得る。
【0066】
好ましくは、前記DNA分子はDNA発現カセットを含み、前記DNA発現カセットは;上記の前記核酸配列;プロモーター及びポリAテールを含み;前記核酸配列の3’及び5’末端は、逆方向末端反復配列(ITR)に隣接している。換言すれば、前記DNA分子はDNA発現カセットに含まれ、前記DNA発現カセットでは、プロモーター及びポリAテールをさらに含み、前記核酸は逆方向末端反復配列(ITR)に隣接している。
【0067】
本明細書に記載の「DNA発現カセット」という用語は、RNA分子をコードする遺伝子又は核酸配列、プロモーター、及びポリAテールをコードする核酸配列を含むDNA核酸配列を指す。前記DNA発現カセットは、ITRに隣接し、ウイルスビヒクルに含まれ、その後、脳及び/又はCNSの他の器官などの標的器官に送達される。
【0068】
本明細書に記載の「プロモーター」という用語は、典型的には、連結された核酸配列の転写を駆動又は開始するための転写開始部位の5’末端に位置するDNA配列を指す。本発明のいくつかの実施形態では、プロモーターは構成的プロモーター又は遍在性プロモーター;ニューロン特異的プロモーター;及び/又はグリア特異的プロモーターである。
【0069】
前記構成的プロモーターは、pol IIプロモーター、天然又は操作されたニワトリベータ-アクチンプロモーター(CBA)、CAGプロモーター、PGKプロモーター、CMVプロモーター(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016102664号パンフレットの
図2に示されているようなもの)からなる群から選択され得る。
【0070】
本明細書に記載される「グリア特異的プロモーター」という用語は、星状膠細胞、乏突起膠細胞又はミクログリア細胞などのグリア細胞における外来核酸及び/又は遺伝子の発現を増加させる際に適切に使用され得るプロモーターを指す。星状膠細胞における発現のために、GFAPを使用し得る。乏突起膠細胞における発現のために、MBP、PLP、CNP又はMAGを使用し得る。ミクログリアにおける発現のために、CD68又はHexbを使用し得る。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、グリア特異的プロモーターは、MBP、PLP、CNP及びMAGからなる群から選択される乏突起膠細胞プロモーターであり、
好ましくは、前記プロモーターはニューロン特異的プロモーターである。本明細書に記載される「ニューロン特異的プロモーター」という用語は、脳細胞などのニューロン細胞における外来核酸及び/又は遺伝子の発現を増加させるのに適切に使用され得るプロモーターを指す。
【0071】
好ましくは、前記ニューロン特異的プロモーターは、シナプシン、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、ヒトシナプシン1、CaMKIIキナーゼ、チューブリンα(Hioki et al.Gene Ther.2007 Jun;14(11):872-82)及び血小板由来成長因子β鎖(PDGF)からなる群から選択される。より好ましくは、前記プロモーターは、ドーパミン作動性ニューロン特異的プロモーターを含む。好ましくは、前記ドーパミン作動性ニューロン特異的プロモーターは、TH(チロシンヒドロキシラーゼ)又はForkhead Box A2(FOXA2)から選択される。
【0072】
前記DNA発現カセットにおいてニューロン特異的プロモーターを使用することにより、CNSにおける前記核酸の発現が誘導及び/又は増強され、これは、α-syn遺伝子の前記転写物が主にCNS、例えば脳及び脊髄で、さらにより主に脳で、さらにより主にニューロンで発現されるために、α-syn遺伝子の前記転写物を減少及び/又はノックダウンするのに好ましい。
【0073】
本発明に含めることができる他の適切なプロモーターは、誘導性及び/又は抑制性プロモーター、すなわち宿主細胞が特定の刺激に曝露された場合にのみ転写を開始するプロモーターである。
【0074】
場合により、前記DNA発現カセットは、上記のプロモーターを含む少なくとも2つのプロモーターを含む。
【0075】
本明細書に記載の「ポリAテール」という用語は、RNA分子の安定性を高めるためにmRNA分子に付加されるアデニンヌクレオチドの長鎖を指す。好ましくは、ポリAテールは、シミアンウイルス40ポリアデニル化(SV40ポリA;配列番号44)、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化(BGHポリA;配列番号45)、ヒト成長ホルモンポリアデニル化(hGHポリA;配列番号79)又は合成ポリアデニル化である。より好ましくは、前記ポリAテールは、BGHポリA(配列番号45)又はhGHポリA;配列番号79である。
【0076】
好ましくは、上記のように、前記DNA発現カセットに含まれる前記ポリAテールは、上記のように、前記RNA分子の3’末端に作動可能に連結する。
【0077】
本明細書に記載される「逆方向末端反復配列(ITR)」という用語は、DNA複製の起点及びウイルスのパッケージングシグナルとしてシスで機能する、前記DNA発現カセットの5’及び3’末端の配列を指す。前記ITRは、好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ITR配列からなる群から選択される。より好ましくは、前記ITR配列は、両方ともAAV1、両方ともAAV2、両方ともAAV5、両方ともAAV6、両方ともAAV7、両方ともAAV8、又は両方ともAAV9 ITR配列である。また、より好ましくは、前記DNA発現カセットの5’末端の前記ITR配列は、前記DNA発現カセットの3’の前記ITR配列とは異なり、前記ITR配列は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、及びAAV9 ITR配列から選択される。
【0078】
前記ITRは、上記のように前記核酸配列の左端及び右端(すなわち、それぞれ5’及び3’末端)に配置される。好ましくは、前記ITRは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ITR配列からなる群から選択される。より好ましくは、前記ITR配列は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8又はAAV9 ITR配列を含む。場合により、前記2つのITR配列は、両方ともAAV1、両方ともAAV2、両方ともAAV5、両方ともAAV6、両方ともAAV7、両方ともAAV8、又は両方ともAAV9 ITR配列を含む。また場合により、前記核酸配列の5’末端の前記ITR配列は、前記核酸配列の3’末端の前記ITR配列とは異なり、前記ITR配列は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9 ITR配列から選択されるものである。
【0079】
AAV
本発明によれば、上記のような前記DNAを含むAAVビヒクル(「本発明のAAVビヒクル」)が提供される。
【0080】
前記核酸又は前記DNAなどの外来遺伝物質を送達するために使用されるウイルスビヒクルは、本発明の一部である。そのようなウイルスビヒクルとしては、アルファウイルス、フラビウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、麻疹ウイルス、ラブドウイルス、レトロウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスベクター、好ましくはAAV遺伝子送達ビヒクルが挙げられる。
【0081】
本明細書に記載の「AAVビヒクル」という用語は、外来核酸、目的の遺伝子、目的の核酸、前記外来核酸を含むベクター、前記目的の遺伝子を含むベクター、上述の前記DNA発現カセット、及び/又は上述の前記DNA発現カセットを含むベクターなどの遺伝物質を標的細胞、器官及び/又は組織に運ぶためのビヒクルとして作用する野生型又は組換えAAVを指す。
【0082】
AAVビヒクルは、上記のように、哺乳動物への核酸又はDNA発現カセットの送達に有用なウイルスビヒクルであることが分かった。AAVビヒクルは、分裂中及び非分裂中のヒト細胞に効率的に感染する能力を有する。さらに、前記AAVビヒクルは、いかなる疾患にも関連していない。したがって、前記AAVビヒクルは、以下に記載されるように、本発明において、並びにα-syn遺伝子が関与する疾患を治療及び/又は予防するために有用である。
【0083】
本発明によれば、前記AAVビヒクルは、RNAをコードする核酸配列を含む核酸を含み、前記RNAに含まれるRNA配列は、α-syn遺伝子によってコードされる標的RNA配列に実質的に相補的であり、前記RNA配列は少なくとも15ヌクレオチドを有し、前記RNAは、配列番号1、若しくは配列番号2、又は配列番号1若しくは2のバリアントを含むヘアピンを含む。前記標的RNA配列に実質的に相補的な前記RNA配列は、配列番号10~16及び配列番号10~16のバリアント、好ましくは配列番号11、14及び15並びに配列番号11、14及び15のバリアント、より好ましくは配列番号11及び15、並びに配列番号11及び15のバリアントからなる群から選択される。
【0084】
また、本発明によれば、前記AAVビヒクルは、RNAをコードする核酸配列を含むさらなる核酸を含んでいてもよく、前記RNAに含まれるRNA配列は、α-syn遺伝子によってコードされる標的RNA配列に実質的に相補的であり、前記RNA配列は少なくとも15ヌクレオチドを有し、前記RNAは、配列番号1、若しくは配列番号2、又は配列番号1若しくは2のバリアントを含むヘアピンを含む。前記標的RNA配列に実質的に相補的な前記RNA配列は、配列番号10~16及び配列番号10~16のバリアント、好ましくは配列番号11、14及び15並びに配列番号11、14及び15のバリアント、より好ましくは配列番号11及び15、並びに配列番号11及び15のバリアントからなる群から選択される。
【0085】
上記のように、前記DNA発現カセットを送達するための前記AAVビヒクルは、α-syn遺伝子によってコードされる産物の(過剰)発現レベルを改変及び/又は低減することができる。好ましくは、前記AAVビヒクルは、α-syn凝集体を減少及び/又はノックダウンするのに使用される。前記α-syn凝集体は、典型的には、前記α-syn遺伝子によってコードされるタンパク質を含む。
【0086】
本明細書に記載の「減少する」という用語は、示された被験体のレベル及び/又は量が減少又は低下することを指す。本明細書に記載の「ノックダウン」という用語は、示された対象が実質的に枯渇又は除去されているレベル及び/又は量を指す。
【0087】
任意で、前記AAVビヒクルは、変異SNCA遺伝子によってコードされる転写物を減少及び/又はノックダウンするのに使用される。パーキンソン病の病歴を有する家族の研究により、この疾患の早発型(A30P、E46K、A53T、G51D)又は遅発型(H50Q)型をもたらす一連の家族性突然変異の同定がもたらされた。
【0088】
好ましくは、前記AAVビヒクルは、配列番号36(SNCA140)、配列番号76(SNCA126)、配列番号77(SNCA112)又は配列番号78(SNCA98)によってコードされるα-synアイソフォームを含むがこれらに限定されない少なくとも1つのアイソフォームを減少及び/又はノックダウンするのに使用される。より好ましくは、前記AAVビヒクルは、エクソン2、4及び/又は6を含むα-syn核酸配列によってコードされる少なくとも1つのアイソフォームを減少及び/又はノックダウンするのに使用される。
【0089】
より好ましくは、上記のように、異なる標的RNAの転写物を減少及び/又はノックダウンすることを目的とする前記RNAの少なくとも2つを、α-syn遺伝子の転写物に対する阻害効果をさらに増強するために1つのAAVビヒクル中で組み合わせることができる。したがって、以下に記載されるような前記疾患の治療及び/又は予防がさらに改善される。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態では、配列番号4を有する前記標的RNAを減少及び/又はノックダウンすることを目的とする前記RNAと、配列番号8を有する前記標的RNAを減少及び/又はノックダウンすることを目的とする前記RNAとの組合せを、1つのAAVビヒクル中で組み合わせて、以下に記載されるようにα-syn遺伝子の転写物に対する阻害効果をさらに増強することができる。
【0091】
好ましくは、前記AAVビヒクルは、AAV5、AAV8、又はAAV9ビヒクルである。より好ましくは、前記AAVビヒクルはAAV5又はAAV9ビヒクル又はそのハイブリッドである。本発明のAAVビヒクルはまた、AAV2/AAV5又はAAV2/AAV9ハイブリッドカプシドであり得る。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態では、AAVビヒクルはAAV5ビヒクルである。AAV5は、抗AAV5中和抗体(Nab)の有病率が他の血清型に対するNabの有病率よりも低いため、本発明に有用である。さらに、AAV5に対する既存の抗体(Ab)又は低既存抗体は、通常、前記AAV遺伝子治療ビヒクルによる形質導入、及び/又は標的器官における前記核酸の発現に影響を及ぼさない。さらに、AAV5に対する細胞傷害性T細胞応答は臨床試験で報告されていない。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態では、AAVビヒクルはAAV9ビヒクルである。AAV9は、ニューロン細胞及びグリア細胞、例えば乏突起膠細胞に外来核酸を送達するのに有用である。
【0094】
場合により、AAVビヒクルには、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAV11、及びそれらのバリアント(例えば、アミノ酸の挿入、付加及び置換を伴うカプシドバリアント、又はハイブリッドカプシド)に由来するカプシドが含まれる。
【0095】
好ましくは、本発明のAAVビヒクルは、AAV5及び/又はAAV9及び/又はハイブリッドカプシドタンパク質配列を含むカプシドを含む。
【0096】
AAVカプシドは、典型的には、VP1タンパク質と、VP1の本質的にアミノ末端切断であるVP2及びVP3と呼ばれる2つのより短いタンパク質とを含む。3つのカプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3は、典型的には、それぞれ1:1:10に近似する比でカプシド中に存在するが、この比、特にVP3の比意に変動し得、限定とみなされるべきではない。
【0097】
最適化されたVP1:2:3化学量論を有する他のハイブリッドカプシドが本発明にさらに含まれる。前記最適化されたVP 1:2:3化学量論は、標的器官への感染性及び正しいビリオンアセンブリにおいて前記AAVビヒクルを改善することができる。
【0098】
1:1:10に近似する比又は最適化されたVP 1:2:3化学量論でカプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3を有するAAVビヒクルは、ヒト対象において外来核酸配列を送達し、及び/又はPDに関与する器官などの標的器官を形質導入するのに有用である。
【0099】
本明細書及び上記に記載されるように、AAVビヒクルは、ウイルスITR及びウイルスカプシドが異なるAAV血清型に由来することを意味する「ハイブリッド」として定義され得る。ウイルスITRは、好ましくはAAV2に由来し、カプシドは、好ましくはAAV5又はAAV9であり得る異なるものに由来する。カプシド及びITRの異なる血清型の組合せを含むハイブリッドなどの他のハイブリッドも、おそらくさらに他のITRと共に、異なる血清型からのカプシド要素も本発明で使用することができる。
【0100】
好ましくは、本発明のAAVビヒクルは遺伝子治療ビヒクルである。
【0101】
本明細書に記載の「遺伝子療法」という用語は、α-syn遺伝子が関与する疾患を治療及び/又は予防するための既存の療法よりも安定した及び/又は長期の効果を有する療法を指す。安定した治療効果を達成するための好ましい方法は、前記AAV遺伝子治療ビヒクルの単回投与によるものである。前記治療の安定性は、当技術分野の科学者に知られている一般的な技術によって測定することができる。長期効果は、治療効果が持続する時間の長さによって測定することができ、及び/又はそのような治療効果を維持するために必要な注射の用量及び/又は頻度の量によって測定することができる。
【0102】
本明細書に記載される「治療する」又は「治療」という用語は、以下に記載されるような前記疾患及び/又は好ましくは前記疾患によって引き起こされる少なくとも1つの症状、例えば神経学的進行性疾患を停止、緩和、遅延、減速及び/又は改善することができる任意の手段を指す。そのような手段には、神経学的進行性疾患の進行の遅延及び/又は遅延、少なくとも1つの症状の発症の停止、前記疾患によって引き起こされる病気の軽減、及び/又は患者の健康状態の改善が含まれ得るが、これらに限定されない。本明細書に記載の「予防する」又は「予防」という用語は、前記疾患の新たな症状の発症を含むがこれに限定されない、前記疾患の発症を止めるための任意の手段を指す。「疾患」及び「障害」という用語は、本発明において互換的に使用することができる。
【0103】
前記AAV遺伝子治療ビヒクルは、前記転写物の前記発現レベル及び/又は活性レベルに一貫した効果を提供することができる。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、前記AAV遺伝子治療ビヒクルは、以下に記載される疾患及び/又は症状の治療及び/又は予防に対して一貫した及び/又は長期の治療効果を提供するのに使用することができる。それにより、前記疾患及び/又は症状に罹患している患者の生活の質もまた、前記AAVビヒクルを投与することによって改善することができる。
【0104】
前記AAV遺伝子治療ビヒクルの前記長期効果は、疾患及び/又は前記疾患を治療するための既存の治療と比較して、長期間にわたる疾患パラメータの改善された転帰を測定することによって評価することができる。
【0105】
組成物
本発明によれば、上記のような前記AAVビヒクル及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が提供される。好ましくは、前記組成物は前記AAV遺伝子治療ビヒクルを含む。
【0106】
前記組成物は、固体形態又は液体形態であり得る。本発明のいくつかの実施形態では、前記組成物は製剤である。
【0107】
上記及び本明細書に記載の「添加剤」又は「賦形剤」という用語は、前記組成物に少なくとも1つの機能を与えるために、前記組成物にさらに添加される物質を指す。前記機能には、前記組成物の特性を補うこと、容易な貯蔵及び/又は貯蔵寿命の延長のために前記組成物を安定化すること、免疫応答などの副作用を阻害すること、標的器官への前記AAVビヒクルの形質導入有効性を改善すること、及び/又は脳血液関門(BBB)のバイパスを改善することが含まれるが、これらに限定されない。前記組成物の特性を変更及び/又は影響することなく、充填剤として作用する添加剤又は賦形剤を本発明にさらに含めることができる。
【0108】
AAV遺伝子送達ビヒクルを投与するための薬学的に許容される賦形剤は当業者に周知であり、注射用水と同じくらい単純であり得る。それらはまた、界面活性剤、浸透圧剤、酸化防止剤などを含み得る。
【0109】
場合により、前記組成物は、免疫抑制化合物をさらに含む。ウイルスビヒクルの注射によって誘導される免疫応答を低減及び/又は予防することができる免疫抑制化合物が本発明に含まれ得る。免疫抑制化合物はまた、AAV組成物とは別に投与され得る。そのような組合せは、キットとして本発明に含まれる。
【0110】
場合により、脳内の前記RNAの生体内分布を改善するための化合物、例えば前記ヘアピンは、前記組成物にさらに含まれる。
【0111】
場合により、前記組成物は、水性液体、有機溶媒、緩衝剤及び賦形剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。場合により、水性液体は水である。また場合により、前記緩衝剤は、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、トリス、ヒスチジン、及び4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)からなる群から選択される。さらに場合により、有機溶媒は、エタノール、メタノール、及びジクロロメタンからなる群から選択される。さらに場合により、賦形剤は、塩、糖、コレステロール又は脂肪酸である。さらに場合により、前記塩は、上記のように、塩化ナトリウム及び塩化カリウムからなる群から選択される。さらに場合により、前記糖は、上記のように、スクロース、マンニトール、トレハロース、及び/又はデキストランである。
【0112】
本明細書に記載の「標的器官」という用語は、前記α-syn遺伝子の転写物が蓄積する器官を指す。例えば、前記標的器官は、ヒト対象の脳である。凝集体などの前記α-syn転写物が前記器官に存在するという条件で、CNSに含まれる他の器官(すなわち、脳及び脊髄)を本発明にさらに含めることができる。
【0113】
用途
本発明は、上記のような前記AAV(ビヒクル)及び/又は前記AAV遺伝子治療ビヒクルの医薬としての使用を提供する。したがって、本発明はまた、医薬としての前記組成物の使用を提供する。
【0114】
「AAV」及び「AAVビヒクル」という用語は、本明細書では互換的に使用される。上記のような前記AAVビヒクル(及び/又は前記AAVビヒクルを含む前記組成物)は、α-syn遺伝子の前記転写産物を減少及び/又はノックダウンすることができる。それにより、前記AAVビヒクルは、前記α-syn遺伝子の前記転写物によって引き起こされる疾患、典型的には前記α-syn遺伝子によってコードされる前記転写物の過剰発現によって引き起こされる及び/又は前記α-syn遺伝子によってコードされる凝集タンパク質によって引き起こされる疾患を治療及び/又は予防するのに有用である。
【0115】
前記転写物はmRNA及び/又はタンパク質であり、好ましくはmRNAである。それにより、前記AAVビヒクル及び前記組成物は、前記α-syn遺伝子が関与する疾患の治療及び/又は予防に有用(すなわち、治療効果を有する)である。したがって、本発明によれば、上記のような前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物は、前記α-syn遺伝子が関与する疾患の治療及び/又は予防における医薬として使用するためのものである。
【0116】
前記α-syn遺伝子が関与する、又は前記α-syn遺伝子によってコードされる転写物(例えば、前記転写物の過剰発現によって)によって引き起こされる疾患及び/又は症状は、好ましくは、前記α-synタンパク質の過剰発現及び/又はα-synタンパク質の凝集体によって引き起こされる疾患である。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態では、上記の前記AAVビヒクル及び/又は前記AAV遺伝子治療ビヒクル及び/又は組成物は、α-syn遺伝子によってコードされる転写産物を減少及び/又はノックダウンすることによって疾患を治療及び/又は予防するのに使用される。したがって、本発明はまた、上記のような前記AAVビヒクル及び/又は前記AAV遺伝子治療ビヒクル及び/又は組成物の医薬品としての使用であって、前記医薬品がα-syn遺伝子によってコードされる転写物を減少及び/又はノックダウンする使用を提供する。
【0118】
前記疾患には、前記α-syn遺伝子の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)が関与する疾患がさらに含まれ得る。例えば、前記疾患は、前記α-syn遺伝子の少なくとも1つのSNPをコードするタンパク質及び/又は凝集体によって引き起こされる。
【0119】
好ましくは、α-synタンパク質(配列番号35)発現レベルは、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物を投与しない場合のα-synタンパク質発現レベルと比較して、少なくとも30%及び/又は最大70%低下する。より好ましくは、前記SNCA遺伝子によってコードされるタンパク質は、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物を投与しない内因性α-synタンパク質発現レベルと比較して最大50%低下する。完全なノックダウンは、α-syn遺伝子の中心的役割のために好ましくない場合がある。
【0120】
好ましくは、上記のような前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物は、前記AAVビヒクル及び/又は組成物をヒト対象に投与しない場合と比較して、上記のような前記転写物を約少なくとも30%及び/又は最大70%、より好ましくは最大50%減少し得る。
【0121】
好ましくは、前記転写物の前記発現レベルは、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物を投与しない発現レベルと比較して、少なくとも30%及び最大70%、より好ましくは最大50%低下する。より好ましくは、α-synタンパク質は、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物を投与しないα-synタンパク質レベルと比較して、少なくとも30%及び最大70%、さらにより好ましくは最大50%低下する。
【0122】
好ましくは、前記転写物の前記発現レベルは、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物をヒト対象に投与しない場合の発現レベルと比較して、少なくとも30%及び多くとも70%、より好ましくは最大50%低下する。より好ましくは、α-synタンパク質は、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物をヒト対象に投与しないα-synタンパク質レベルと比較して、少なくとも30%及び最大70%、さらにより好ましくは最大50%低下する。
【0123】
前記AAVビヒクルを使用することによって、前記α-syn遺伝子の前記転写物のレベルは低下するが、完全には実質的に枯渇しない。したがって、前記転写物の過剰発現及び/又はα-synタンパク質の凝集体によって引き起こされる疾患が少なくとも部分的に治療及び/又は予防され、前記転写物の完全なノックダウンによって引き起こされる疾患及び/又は症状も少なくとも部分的に治療及び/又は予防される。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態では、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物は、α-synタンパク質凝集体を還元及び/又はノックダウンするのに使用される。前記α-synタンパク質凝集体は、典型的には、前記α-syn遺伝子によってコードされるタンパク質を含む。
【0125】
好ましくは、前記α-syn凝集体は、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物を投与しない患者/ヒト対象のα-syn凝集体の量と比較して、少なくとも30%及び/又は最大70%、より好ましくは最大50%減少する。
【0126】
前記α-syn遺伝子によってコードされる転写物を減少及び/又はノックダウンすることが有益であるにもかかわらず、完全な枯渇(すなわち、完全なノックダウン)は、患者を危険にさらす可能性があるCNSにおけるシナプス伝達の減弱及び/又は神経変性をもたらし得る。
【0127】
それにより、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物は、α-syn遺伝子が関与する疾患の治療及び/又は予防、疾患及び/又は症状の軽減及び/又は予防において有用であるが、実質的に完全なノックダウンは引き起こされず、前記α-syn遺伝子によってコードされる前記転写物の完全な枯渇によって引き起こされるリスクを軽減及び/又は回避する。
【0128】
上記のような前記AAVビヒクル及び/又は組成物は、オリゴマーα-syn、原線維α-syn、凝集α-syn、リン酸化α-syn、レビー小体及び/又はPapp-Lantos小体の形成及び/又は存在によって引き起こされる前記疾患の治療及び/又は予防に使用することができる。
【0129】
好ましくは、上述の前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物は、レビー小体及び/又はPapp-Lantos小体の量を減少及び/又はノックダウンするのに使用される。
【0130】
α-synタンパク質/凝集体は、レビー小体及びPapp-Lantos小体の大部分を形成する(Papp-Lantos封入体としても知られる)。それにより、α-synタンパク質を減少及び/又はノックダウンすることによって、レビー小体及び/又はPapp-Lantos小体の量(の進行)を減少及び/又は枯渇させることができる。それにより、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物を使用することによって、以下に記載されるように、疾患及び/又は症状の治療及び/又は予防を達成するために、レビー小体及び/又はPapp-Lantos小体の蓄積を減少させることができる。
【0131】
したがって、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物は、総α-syn、オリゴマーα-syn、凝集α-syn及びリン酸化α-synの量、したがってレビー小体及びパップラントー小体のレベルを減少させ、それによって疾患の進行を停止させ、及び/又は疾患症状を改善するための医薬品として使用することができる。
【0132】
そのような疾患及び/又は症状には、PD、LBD、MSAの臨床症状、神経精神症状、PDの運動症状、認知障害、睡眠障害、自律神経障害及び/又は嗅覚障害が含まれるが、これらに限定されない。PDの運動症状又は運動症状は、四肢の硬直、振戦、並びに/又はバランス及び/若しくは協調障害、又は症状の少なくとも2つを含む。
【0133】
PDの臨床症状には、これに限定されるものではないが、安静時振戦、運動緩徐、硬直及び姿勢反射の喪失、二次性運動症状(軽躁病、構音障害、嚥下障害、唾液分泌異常、小黒鉛症、シャッフル歩行、絶食、立ちすくみ、ジストニア、及び/又は眉間反射)及び/又は非運動症状(例えば、自律神経機能不全、認知/神経行動異常、睡眠障害、無嗅覚症、感覚異常及び/又は疼痛など)が含まれる。
【0134】
LBDの臨床症状には、これに限定されないが、四肢の硬直、振戦、並びに/又はバランス及び/若しくは協調障害、知的障害、幻覚、身体機能(自律神経系)の調節不良、注意及び気分の突然の変化、認知問題、睡眠障害、注意の変動、並びにうつ病及びアパシーなどのPDに典型的な運動障害が含まれる。
【0135】
MSAの臨床症状には、これに限定されないが、性機能障害、排尿障害、レム睡眠行動障害、起立性低血圧、歩調、パーキンソニズム、小脳の特徴、マルチドメイン自律神経不全、錐体路徴候及び/又は前頭実行機能障害などのPDに典型的な運動障害が含まれる。
【0136】
したがって、医薬として使用するためのAAVビヒクル又は組成物は、PD、LBD、MSA、神経障害症状、PDの運動症状、認知障害、睡眠障害、自律神経障害、及び/又は嗅覚障害の臨床症状を治療及び/又は予防するために使用される。好ましくは、前記AAVビヒクル及び/又は組成物は、PD、MSA及び/又はLBDの治療及び/又は予防に使用される。好ましくは、前記疾患はPD及び/又はMSAである。
【0137】
前記α-syn遺伝子の過剰発現、前記α-synタンパク質の凝集、及び/又はレビー小体の形成及び/又は存在は、PDに罹患している患者の指標である。記載されるような前記AAVビヒクル及び/又は組成物を使用することによって、前記α-syn遺伝子の転写物を減少及び/又はノックダウンすることができる。それにより、前記AAVビヒクル及び/又は組成物は、PDを治療及び/又は予防するのに有用である。
【0138】
好ましくは、前記AAVビヒクル及び/又は組成物は、前症候期又は症候期のPD患者を治療及び/又は予防するのに使用される。
【0139】
本明細書に記載の「前症候期」という用語は、臨床疾患の発症前のPDなどのニューロン進行性疾患の期を指す。
【0140】
本明細書に記載の「症候期」という用語は、前記疾患の臨床診断後のPDなどのニューロン進行性疾患の期を指す。
【0141】
PD患者は、通常、上記のような前記症状の少なくとも1つが現れると、PDを有することに気付く。しかし、症状発現前の段階でニューロンの大部分が失われるため、疾患の進行を治療及び/又は予防するには遅すぎる可能性がある。したがって、運動症状などのPDの少なくとも1つの症状が示す前に疾患進行を治療及び/又は予防する際に、前記組成物の使用などの治療法を有することが有用である。
【0142】
上記のように、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物はα-synタンパク質レベルを低下させることができ、それによって前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物は、少なくとも1つのPD症状を治療及び/又は予防するのに有用である。前記症状は、疾患の初期段階でのうつ病、睡眠障害、疼痛及び疲労、並びに疾患の後期段階での不安、認知症及び認知機能障害からなる群から選択することができる。
【0143】
同様に、レビー小体型の沈着物は、レビー小体型認知症又はLBDと呼ばれる認知症の形態を引き起こし得る。実際、LBDはパーキンソン病の運動症状の一部又は全部を引き起こす。したがって、前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物はまた、少なくとも1つのPD症状を治療及び/又は予防するのに有用であることが判明し得る。
【0144】
さらに、前記α-syn遺伝子及び/又は前記α-syn遺伝子によってコードされる凝集タンパク質の過剰発現は、運動及びバランスに影響を及ぼす及び/又はそれを妨げる及び/又は自律神経系の機能を破壊する進行性脳障害であるMSAのリスクを増加させ得る。疾患は、最初はシャイドラーガー症候群として知られていた。現在、MSAは「散発性」であると考えられており、これは疾患を引き起こす確立された遺伝的又は環境的要因がないことを意味する。
【0145】
パーキンソン病の患者にも多くの臨床症状が存在するが、MSAの患者は典型的には若年で症状の発症を示し、平均発症は50歳代前半である。多くの患者は最初にパーキンソン病と診断されるが、経時的に、症状の程度、重症度、及び種類が変化し、MSAの診断の可能性が高くなる。
【0146】
重要な違いは、MSAの症状及び経過をパーキンソン病と区別する。特に、MSAは、上記のように、小脳、脳のバランス及び協調中心、並びに自律神経系を含む脳のいくつかの領域に影響を及ぼす。さらに、パーキンソン病は、黒質線条体領域として知られる脳の運動制御部分のドーパミン産生ニューロンに影響を及ぼすが、MSAはニューロンとグリア細胞の両方に影響を及ぼす。
【0147】
MSAでは、過剰リン酸化α-synは、Papp-Lantos封入体(又はGCI)に見られる。それにより、本発明のAAVビヒクル及び/又は組成物はまた、Papp-Lantos介在物の量を減少及び/又は阻害することにおいて、並びにMSAを治療及び/又は予防することにおいて有用であり得る。
【0148】
CNS疾患などの他の疾患は、AAVビヒクル及び/又はAAVビヒクルを含む組成物を使用する同様のアプローチによって治療及び/又は予防することができ、前記疾患は遺伝子の過剰発現によって引き起こされるが、前記遺伝子の転写物の完全なノックアウトはあまり望ましくない。
【0149】
さらに、α-syn遺伝子の転写物の蓄積によって引き起こされる進行性神経障害の異なる段階(すなわち、段階)では、患者は異なる症状及び/又は異なる病気レベルを発症する可能性がある。前記AAVビヒクル及び/又は前記組成物は、治療レジメンを絶えず修正することなく、前記異なる症状及び/又は異なる疾病レベルを治療及び/又は予防するための溶液を提供する。
【0150】
方法
本発明によれば、上記のような前記AAVビヒクルを作製する方法が提供される。
【0151】
場合により、前記AAVビヒクルは、哺乳動物細胞を使用することによって作製することができる。場合により、前記AAVビヒクルは、昆虫細胞、好ましくはバキュロウイルスを使用することによって作製することができる。上記のようなDNA発現カセットを含むAAV遺伝子治療ビヒクルの適切な製造方法は、国際公開第2007/046703号パンフレット、国際公開第2007/148971号パンフレット、国際公開第2009/014445号パンフレット、国際公開第2009/104964号パンフレット、国際公開第2011/122950号パンフレット、国際公開第2013/036118号パンフレットに記載されており、それらはその全体が本明細書に組み込まれ、特にそれらの製造方法について参照される。場合により、前記組成物は、前記免疫抑制化合物をさらに含む。
【0152】
本発明によれば、上記のような前記組成物を作製する方法が提供される。
【0153】
キット
上記の疾患又は障害を治療及び/又は予防する目的で、上記のAAVビヒクル及び上記の少なくとも1つの添加剤をキットに組み合わせることができる。前記キットは、前記AAVビヒクル及び少なくとも1つの前記添加剤を保持及び/又は収容するための手段を任意に含むことができる。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態では、上記で説明したように、キットは、本発明のAAVビヒクル及び上記の免疫抑制化合物を含む。医療従事者及び患者は、ラベル及び/又は説明書に従い、前記AAVビヒクルをヒト対象に適用することが容易であり得る。
【0155】
本発明のAAVビヒクル及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を含むキットも提供されることが理解される。したがって、場合により、前記キットは、水性液体、有機溶媒、緩衝剤及び賦形剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。場合により、水性液体は水である。また場合により、前記緩衝剤は、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、トリス、ヒスチジン、及び4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)からなる群から選択される。さらに場合により、有機溶媒は、エタノール、メタノール、及びジクロロメタンからなる群から選択される。さらに、賦形剤は、塩、糖、コレステロール又は脂肪酸である。さらに場合により、前記塩は、上記のように、塩化ナトリウム、塩化カリウムからなる群から選択される。さらに場合により、前記糖は、上記のように、スクロース、マンニトール、トレハロース、及び/又はデキストランである。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【
図1】SNCA mRNAの他のスプライシングバリアント(SNCA140、SNCA126、SNCA112、SNCA98)、及びmiSNCA候補配列によって標的化される領域内の領域(候補2、5、7、12、13、15、16)。
【
図2】(A)miR451骨格のみを有する元の発現カセット、及び(B)miR144が骨格に含まれる改善された発現カセットについてのベクターマップ。
【
図3】miSNCA候補の二重ルシフェラーゼアッセイ滴定
【
図4】二重ルシフェラーゼアッセイ:元の及び改善されたmiSNCA5及びmiSNCA15のtTitration。
【
図5】mRNAレベル及びタンパク質レベルの両方でのHEK293T細胞における用量依存性内因性α-syn低下。SNCA mRNAとa-synタンパク質レベルとの間に有意な相関が観察された。
【
図6A】内因性miRNAに対するmiSNCA5の発現レベル。
【
図6B】内因性miRNAに対するmiSNCA15の発現レベル。
【
図7】miSNCA5及びmiSNCA15のmiRNAプロセシング。
【
図8】プラスミドのpVD1502プラスミドap。
【
図9A】野生型(wt)ラットにおける投与研究の経路。AAV5-GFP vDNAレベル。
【
図9B】野生型(wt)ラットにおける投与研究の経路。ハウスキーピング遺伝子としてのGAPDHに対するAAV5-GFP mRNA発現。
【
図10-1】a-syn KIラットにおける作用研究の機構。(A)vDNAレベル;(B)miSNCA5レベル。
【
図10-2】a-syn KIラットにおける作用研究の機構。(C)miSNCA15レベル;(D)線条体におけるSNCA mRNA低下。
【
図11】miSNCA候補による線虫PDモデルにおける運動表現型のレスキュー。
【
図12】in vivo試験#2及びこの試験からの群4のプールされた試料からのラット脳組織から抽出されたmiRNAのプロセシング。
【
図13】in vivo試験3(パーキンソン病のAAV1/2-ha53T-aSynラットモデル)における線条体におけるvDNAレベルを示す図である。vDNAレベルは、同じ用量のAAV5非関連miR処理又はAAV5-miSNCA処理を受けた全ての群において同等であった
【
図14】in vivo試験3(パーキンソン病のAAV1/2-ha53T-aSynラットモデル)における線条体におけるmiSNCAレベル。(A)AAV5-miSNCA5を注射した群ではmiSNCA5レベルが高く;(B)miSNCA15レベルは、AAV5-miSNCA15を注射した群において高かった。
【
図15】in vivo試験3(パーキンソン病のAAV1/2-hA53T-aSynラットモデル)における線条体におけるヒトSNCA mRNAレベル;ヒトSNCA mRNAレベルは、AAV5非関連miRと同時又は連続的に注射されたAAV1/2-hA53T-aSyn群において最も高かった。AAV5-miSNCA5又はAAV5-miSNCA15を同時注射又は連続注射したAAV1/2-hA53T-aSyn群では、ヒトSNCA mRNAレベルは有意に低かった。
【
図16】in vivo試験3(パーキンソン病のAAV1/2-Ha53T-aSynラットモデル)における線条体におけるヒトα-synタンパク質レベル。ヒトα-synタンパク質レベルは、AAV5非関連miRと同時又は連続的に注射されたAAV1/2-Ha53T-aSyn群において最も高かった。ヒトα-synタンパク質レベルはAAV5-miSNCA5又はAAV5-miSNCA15を同時注射又は連続注射したAAV1/2-HA53T-aSyn群において有意に低かった。
【
図17】in vivo試験3(パーキンソン病のAAV1/2-hA53T-aSynラットモデル)における線条体のドーパミントランスポーターレベル(([125I]-RTI-121オートラジオグラフィーによって評価);AAV5非関連miRを連続的に注射したAAV1/2-hA53T-aSyn群では、ドーパミントランスポーターレベルが有意に低下した(PD患者で観察されるものと同様)。AAV5-miSNCA5又はAAV5-miSNCA15の連続注射は、ドーパミントランスポーターの喪失をレスキューした。
【
図18】in vivo試験3(パーキンソン病のAAV1/2-hA53T-aSynラットモデル)における線条体におけるドーパミン及びドーパミン代謝産物レベル(LC/MSによって評価);(A)ドーパミンレベルは、AAV5非関連miRを連続的に注射したAAV1/2-hA53T-aSyn群の同側線条体において有意に減少した(PD患者で観察されるものと同様)。AAV5-miSNCA5又はAAV5-miSNCA15の連続注射は、ドーパミン喪失をレスキューした。(B)ドーパミン代謝産物とドーパミンとの間の比は、AAV5非関連miRを順次注射したAAV1/2-hA53T-aSyn群の同側線条体で有意に増加し、ドーパミン代謝回転の欠損を示した(PD患者で観察されるものと同様)。AAV5-miSNCA5又はAAV5-miSNCA15の連続注射は、ドーパミンターンオーバーの喪失をレスキューした。
【
図19】in vivo試験3(パーキンソン病のAAV1/2-hA53T-aSynラットモデル)における運動行動試験(シリンダー試験、足の非対称性の評価)。(A)ベースライン(注射前)では、いずれの処理群においても足の使用非対称はなかった;(B)AAV5非関連miRを連続的に注射したAAV1/2-hA53T-aSyn群では、処理後56日目に対側足の過小使用が観察された(PD患者で観察されたものと同様)。AAV5-miSNCA5又はAAV5-miSNCA15の連続注入は、この運動欠損をレスキューした。
【
図20-1】免疫組織化学によって評価した、in vivo試験3(パーキンソン病のAAV1/2-hA53T-aSynラットモデル)の黒質における(A)TH及び(B)ヒトa-syn;連続注射群のみを評価した。(A)黒質TH陽性細胞は、AAV5非関連miRを連続的に注射したAAV1/2-hA53T-aSyn動物において、AAV5非関連miRを連続的に注射したAAV1/2-空ベクター動物に対して有意に減少した(PD患者で観察されるものと同様)。AAV5-miSNCA5又はAAV5-miSNCA15の連続注入はTHニューロン喪失をレスキューした。(B)黒質a-syn陽性細胞がAAV5-miSNCA5又はAAV5-miSNCA15によって減少し、標的関与が確認された。
【
図20-2】免疫組織化学によって評価した、in vivo試験3(パーキンソン病のAAV1/2-hA53T-aSynラットモデル)の黒質における(C)a-syn陽性THニューロン;連続注射群のみを評価した。(C)黒質中のTH陽性細胞は、AAV5-miSNCA5又はAAV5-miSNCA15処理群において、a-synの発現が有意に低かった。
【
図21-1】RT-qPCR及びウエスタンブロットによってそれぞれ評価された、miSNCA候補による線虫(C.elegans)PDモデルにおけるSNCA mRNA及びα-synタンパク質発現の減少。(A)SNCA mRNAレベル、L1段階での処理及び1日目に測定;(B)SNCA mRNAレベル、L4段階での処理及び1、4、8及び11日目に測定;(C)SNCA mRNAレベル、1日目の処理及び1、4、8及び11日目に測定。SNCA mRNAレベル及びα-synタンパク質レベルの両方が、EV処理群と比較して、miSNCA候補によって低下した。
【
図21-2】RT-qPCR及びウエスタンブロットによってそれぞれ評価された、miSNCA候補による線虫(C.elegans)PDモデルにおけるSNCA mRNA及びα-synタンパク質発現の減少。(D)α-synタンパク質レベル、L 1段階での処理及び1日目に測定;(B)α-synタンパク質レベル、L 4段階での処理及び1、4、8及び11日目に測定;(C)α-synタンパク質レベル、1日目の処理、並びに1、4、8及び11日目に測定。SNCA mRNAレベル及びα-synタンパク質レベルの両方が、EV処理群と比較して、miSNCA候補によって低下した。
【
図22】(A)L1、(B)L4又は(C)1日目段階での処理後の、miSNCA候補による線虫(C.elegans)PDモデルにおける運動表現型レスキュー。
【
図23-1】L1段階で全長SNCA RNAi、miSNCA5及びmiSNCA15 miRNAで処理し、処理後のそれらの成体期の1日目及び4日目に収集した線虫(C.elegans)試料の低分子RNA配列決定結果。(A)miSNCA5及び(B)miSNCA15は正しくプロセシングされており、関連する試料において見出すことができる。(C)全長SNCA処理線虫(C.elegans)試料内のmiSNCA5及びmiSNCA15配列、並びに他の全ての設計miSNCA(miSNCA2、miSNCA7、miSNCA12、miSNCA13、miSNCA16)。
【0157】
本発明の実施例
材料及び方法
SNCA miRNAガイド鎖の設計。
miSNCA(miRNAガイド鎖)を、最も一般的なSNCA mRNAバリアントの一般的なRNA配列;SNCA140、SNCA126、SNCA112及びSNCA98を標的とするように設計した。miRNAを、SNCAの主要なmRNAバリアントの全てと共通の領域において設計した(
図1)(McLean et al.2012 Mol and Cell Neuroscience 49(2)230-239)。SNCA mRNA配列の標的領域は、エクソン2、エクソン4及びエクソン6の一部である。これらのエクソンの外側の最も一般的なSNP(A30P)は、ガイドRNAに含まれることが回避された。保存された配列のそれぞれを使用して、22ヌクレオチド(nt)を有するいくつかの異なるガイド鎖を生成した。SNCAを標的とする17個のガイドを設計し、miR451足場に組み込んだ:miSNCA2(配列番号24)、miSNCA5(配列番号25)、miSNCA7(配列番号26)、miSNCA12(配列番号27)、miSNCA13(配列番号28)、miSNCA15(配列番号29)、miSNCA16(配列番号30)、miSNCA1(配列番号80)、miSNCA3(配列番号81)、miSNCA4(配列番号82)、miSNCA6(配列番号83)、miSNCA9(配列番号84)、miSNCA10(配列番号85)、miSNCA11(配列番号86)、miSNCA14(配列番号87)、miSNCA18(配列番号88)、miSNCA19(配列番号89)。これらの構築物は、miR144ヘルパーではなく、miR451を骨格としてのみ含有していた。これらを、二重ルシフェラーゼアッセイを使用して二重ルシフェラーゼレポータープラスミドにおける連結SNCAレポーター遺伝子(配列番号34)の発現を低下させるそれらの有効性についてin vitroで試験した。これらの17個のmiRNAのうち、ITR含有ベクター(配列番号24~30)においてコードされた7個のmiRNA(miSNCA2、miSNCA5、miSNCA7、miSNCA12、miSNCA13、miSNCA15及びmiSNCA16のpri-miRNA;配列番号17~23)が、用量依存的様式でSNCA mRNAレベルを低下させる可能性を示した(
図3)。
【0158】
miSNCAガイドを以下の基準に基づいて選択した:miRNAガイド配列は、>4 G、>4 C、>5 A及び>5T ntのストレッチを含むべきではなく;30%~70%のGC含有量;siSPOTR分析(https://sispotr.icts.uiowa.edu./sispotr/tools/lookup/evaluate.html)を使用することによって、エクソン1a標的化ガイドについてはmiRNAシード配列の4000未満の予測オフターゲット遺伝子及びイントロン1標的化ガイドについてはmiRNAシード配列の5000未満の予測オフターゲット遺伝子;及び-44kcal/モル~-55kcal/モルのpre-miRNA配列折り畳みエネルギー)を有するべきである。陰性対照を作製するために、スクランブルガイドをin vitro試験用に設計し、miSCR(配列番号90)と命名した。
【0159】
選択されたmiSNCAガイドは、以下の基準:サルSNCA遺伝子配列による保存(アカゲザル、NCBIアクセッション番号NC_041768.1)を満たし;miRNAガイド配列は、>4 G又は>4 C ntのストレッチを含まず;20%~70%のGC含有量;40%~70%のGCシード含有量;-45kcal/モル~-55kcal/モルのプレmiRNA配列折り畳みエネルギーをゆうし;内因性miRNAシードとの一致はない。
【0160】
ガイド配列をヒトpri-miRNA miR-451足場配列に組み込み、mFoldプログラム(http://unafold.rna.albany.edu/?q=mfold)を標準的な設定で使用し、候補物が二次構造に折り畳まれたかどうかを決定した。
【0161】
元のSNCA足場(足場1)は、足場としてただ1つのmiR451からなる。改善されたSNCA足場(足場2)は、miR-144ヘアピン及び1つのmir-451下流足場からなる。足場2は、元の構築物の改良されたバージョンであり、miSNCAのプロセシングのためのヘルパーであるmiR144を含有する。miR144ヘアピンの配置は(ほとんどがmiR451ヘアピン配列と比較して)常にmiR451ヘアピン配列の5’末端にある。SNCA mRNAを標的化するために7つのSNCA構築物(足場1)(配列番号37~43)を作製し、SNCA mRNAの異なる部分を標的化するために2つの改善されたSNCA構築物(足場2)を生成した(配列番号91及び92)。
【0162】
二重レポータールシフェラーゼアッセイ
二重ルシフェラーゼアッセイ及び内因性α-syn低下のために、HEK293T細胞を使用した。二重ルシフェラーゼアッセイのために、HEK293T細胞(1×105細胞/ウェル)を24ウェル組織培養処理プレートに三重に播種した。細胞を、Lipofectamine 3000(Thermo Fisher Scientific)を使用して、連結されたSNCAレポーター配列(配列番号34)(10ng)を有するレポータープラスミド(配列番号33)及び様々な量(0.1~1~10~100ng)のmiSNCA候補を有するプラスミドで同時トランスフェクトした。次いで、細胞をトランスフェクションの2日後に収集し、PromegaのDual Luciferaseアッセイキットを使用して、ウミシイタケルシフェラーゼ及びホタルルシフェラーゼ活性について細胞試料を分析した。アッセイは、GloMax Luminescenceリーダーで行った。α-syn低下は、RL/FL活性比の低下として測定した。実験を平均3回繰り返した。
【0163】
トランスフェクション及び内因性α-syn低下
miSNCA候補による内因性α-syn低下を評価するために、HEK293T細胞を使用した。これらのアッセイのために、HEK293T細胞(5×105細胞/ウェル)を6ウェル組織培養処理プレートに三重に播種した。Lipofectamine 3000(Thermo fisher Scientific)を用いて、様々な量(50~200~1000ng)のmiSNCA候補を有するプラスミドで細胞をトランスフェクションした。次いで、トランスフェクションの2日後に細胞を回収した。細胞試料を、SNCAのmRNAレベル及びα-synタンパク質レベルについて分析した。実験を平均3回繰り返した。
【0164】
バキュロウイルスシード作製用DNA構築物
異なるmiSNCA構築物を有する発現カセットを、プラスミドを含むITRにサブクローニングしてpVD1496(配列番号37)、pVD1497(配列番号38)、pVD1498(配列番号39)、pVD1499(配列番号40)、pVD1500(配列番号41)、pVD1501(配列番号42)及びpVD1502(配列番号43;
図8)を作製した。
【0165】
これらのpVDプラスミドは全て、CAGプロモーター、及びプロモーター活性に必要なイントロンを担持し、続いてmiR451骨格(配列番号24-30)及びbGHポリA配列中のmiSNCA構築物を担持する(
図2のA)。
【0166】
miSNCA5及びmiSNCA15の改善された構築物バージョンもまた、miSNCA5ガイド配列又はmiSNCA15ガイド配列をmiR144ヘルパーmiRNAの下流側であるmiR451に組み込むことによって作製され(miR144及びmiR451を含む足場;
図2のB)、したがって、miR144-miSNCA5(配列番号31)及びmiR144-miSNCA15(配列番号32)を作製した。これらの発現カセットを、AAV5パッケージングのためのITR領域を含有するpVD1587(配列番号91)及びpVD1588(配列番号92)にサブクローン化した。
【0167】
AAV5ベクター
発現カセットを有する組換えAAV5は、SF+昆虫細胞(Protein Sciences Corporation、Meriden,Connecticut,USA)を、Rep、Cap及びTransgeneをコードする2つのバキュロウイルスに感染させることによって産生させた。AVBセファロース(GE Healthcare)を使用する高速タンパク質液体クロマトグラフィーシステム(AKTA Explorer、GE 30 Healthcare)での標準タンパク質精製手順に従って、精製AAVの力価をQPCRを使用して決定した。
【0168】
in vitroモデル及び形質導入アッセイ
ヒトα-syn mRNA及びタンパク質レベルに対するAAV5-miSNCAの効果を測定するために、患者由来のiPSC由来ドーパミン作動性ニューロン(DAニューロン)を使用した。IPSC細胞株(表4)は、NINDS RUCDRリポジトリから入手した。
【0169】
【0170】
Thermo Fisher ScientificのPSC Dopaminergic neuron Differentiationキットを使用して、iPSC細胞をDAニューロンに分化させた。
【0171】
上記の in vitro細胞モデルを、ウイルスの様々な感染多重度(MOI)でバキュロウイルス産生AAV5-miSNCA候補を使用して形質導入した。細胞を5×105細胞/ウェルでPDL-ラミニン又はPLO-ラミニンコーティング6ウェルプレートに播種した。3~4日の継代後、細胞を104、105、106及び107/細胞のMOIで形質導入した。次いで、形質導入の7~15日後に細胞を回収した。細胞試料をRNA及びDNA単離に使用して、ベクターDNAレベル、miSNCA発現、SNCA mRNA及びa-synタンパク質発現を決定した。
【0172】
次世代シーケンシング(NGS)を使用したRNA単離及び低分子RNAシーケンシング
a.HEK産生AAV5-miSNCA候補由来
RNAを、Allprep DNA/RNA Microキット(Qiagen)を使用して、AAV5-miSNCA(HEK産生)形質導入DAニューロン(MOIは106/細胞)から単離した。Bioanalyzerを使用してRNAの完全性を決定し、Nanodropを使用してRNAを定量した。次いで、試料を低分子RNA配列決定のためにGenomeScan BV(Leiden、オランダ)に送った。Illumina NovaSeq 6000 PE 150配列決定と組み合わせた最終ライブラリーのBluePippinサイズ選択を含むNebNext低分子RNAライブラリー調製法を使用して、GenomeScanによって低分子RNA配列決定を行った。データを、CLC Genomics Suit(Qiagen)を使用して分析した。miSNCA候補の発現値を、アノテーションされたmiRNA配列カウント全体に対するmiSNCA候補のRNAカウントとして表した。miSNCA候補のプロセシングを、miSNCA生pri-miRNA配列を配列決定されたRNA分子に対してアラインメントすることによって分析した。様々なサイズのmiSNCA分子及びそれらのカウントを得た。
【0173】
b.バキュロウイルス産生AAV5-miSNCA候補由来
RNAを、Zymogen RNA単離キットを使用してAAV5-miSNCA候補(バキュロウイルス産生)形質導入細胞(DAニューロン、前脳ニューロン及び/又はLUHMES由来DAニューロン)から単離する。Bioanalyzerを使用してRNAの品質を決定し、Nanodropを使用してRNAを定量した。次いで、試料は、次世代シーケンシング法を使用した低分子RNAシーケンシングのためにGenomeScan BV(Leiden、Netherlands)に送られる。CLC Genomics Suit(Qiagen)を使用してデータを分析して、miSNCA候補の発現値に関する情報を抽出し、また、バキュロウイルス産生AAV5-miSNCA候補から発現されたmiSNCA候補のプロセシングを見出す。
【0174】
in vivo試験#2、群#4(以下に記載)のラット脳線条体試料からRNAを単離した。これらの動物に、線条体にAAV5-miSNCA5及びAAV5-miSNCA15の両方を注射し、そのプロセシングされた配列を試料の配列決定分析において見出した。AllPrep DNA/RNA単離キットを使用してRNAを単離した。Bioanalyzerを用いてRNAの品質を試験し、Nanodropを用いて定量した。次いで、試料は、次世代シーケンシング法を使用した低分子RNAシーケンシングのためにGenomeScan BV(Leiden、Netherlands)に送られた。CLC Genomics Suit(Qiagen)を使用してデータを分析して、バキュロウイルス産生AAV5-miSNCA候補から発現されたmiSNCA候補のプロセシングを評価した。
【0175】
低分子RNAシーケンシング(NGS)データ解析
データ分析は、CLC Genomics Workbench 10 suitを使用して行った。トリミングされた低分子RNA配列リードをカウントし、miRbaseデータベースを使用してアノテーションした。miSNCA分子は、pri-miRNA配列をこれらの低分子RNAライブラリーに対してアラインメントすることによってアノテーションされる。miSNCA候補の発現値を、アノテーションされた小RNAカウント全体に対するmiSNCA候補カウントのカウント数として表した。最も発現したmiSNCA分子を、様々なサイズのmiSNCAの相対的なカウントを調べること、pre-miSNCAを低分子RNAライブラリーにアラインメントすること、及びそこから得られたRNAカウントを使用することによって分析した。
【0176】
細胞及び動物組織からのベクターDNAの単離及び定量
DNA抽出を、AllPrep DNA/RNA Mini Kit(Qiagen)を製造者の説明書に従って使用して行った。ベクターゲノムコピーを、ベクターのポリA領域に対するプライマーを用いたTaqMan qPCRアッセイ(Thermo Fisher scientific)を使用することによって定量した。定量(GC/ug DNA)は、線状化pVDプラスミドを使用し、様々な量のこの線状化プラスミドで標準曲線を作成して行った。このように作成した標準曲線を用いて、AAV5-miSNCAを形質導入した細胞から単離したDNAからベクターDNAコピー数を算出した。
【0177】
トランスフェクションしたHEK細胞からのRNA及びタンパク質の単離並びにmSNCA及びα-synタンパク質レベルの定量
RNA単離のために、Direct-zol(商標)RNA Miniprep(カタログ番号R2050)を使用した。急速凍結細胞ペレットにTRIzolを適用して溶解させた。cDNA合成は、RT-qPCR用のMaxima First Strand cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて行った。
【0178】
タンパク質の単離には、PhosSTOPホスファターゼ阻害剤(Roche)及びEDTA不含プロテアーゼ阻害剤(Roche)を含むRIPA緩衝剤(Sigma)を使用した。タンパク質の抽出のために、緩衝剤を細胞ペレットに添加し、細胞を4C、400rpmで30分間撹拌した。次いで、細胞抽出物を最高速度で遠心分離した。清澄化された上清をα-syn及び総タンパク質測定、すなわちHTRF及びBCAアッセイに使用した。
【0179】
mSNCAレベルの検出のために、SYBR GreenベースのRT-qPCRアッセイを、SNCAに対して設計されたプライマーセットを使用して使用した(表5)。結果は、ハウスキーピング遺伝子:UBE、CYC 1及びACTBの平均発現に対して正規化された未処理試料に対する処理試料のΔΔサイクル閾値(ΔΔCt)を使用して倍率変化として表示した(表5)。
【0180】
【0181】
α-synタンパク質レベルの検出のために、Totalα-syn HTRFキット(Cisbio)を使用した。次いで、HTRF測定値を、HTRFアッセイに添加した総タンパク質によって正規化した。総タンパク質測定を、ビシンコニン酸アッセイ(BCAタンパク質アッセイキット;Pierce(商標))を使用して行った。HTRFの結果を、HTRF比/総タンパク質μgとして示した。
【0182】
動物組織からのmiSNCA候補、GFP mRNA及びSNCA mRNAのRNA単離及び定量
組織を、Tissue Lyserシステム(Qiagen)及びAllPrep DNA/RNA Miniキット(Qiagen)を製造者の説明書に従って使用してホモジナイズした。DNA及びRNAの量及び完全性をNanodrop及びBioanalyzerによって決定した。
【0183】
miSNCA発現のために、以下のプロトコルを使用し:AllPrep DNA/RNA Microキット(Qiagen)を使用して全RNAを単離した。23 ntのmiSNCA5及び22 ntのmiSNCA15を検出するために設計されたTaqman stem-loop-miRNAアッセイ(Thermo Fisher)を使用してRT-qPCRを使用した。発現レベルをmiRNA分子/ug総RNAとして表した。
【0184】
これらのTaqmanアッセイ(Thermo Fisher)のアッセイIDは:miSNCA5_23ntについては、CTNKRV7;miSNCA15_22ntについては、CTTZ9KYである。mRNA発現のために、AllPrep DNA/RNA Micro kit(Qiagen)を用いて全RNAを単離した。
【0185】
2つの異なるRT-qPCRアッセイを使用して、SNCA及びGFP mRNA発現を測定した:
1.SYBR GreenベースのRT-qPCRアッセイを使用して、SNCA又はGFP mRNA発現を測定した。ハウスキーピング遺伝子として使用された遺伝子は;ACTB、B2M、GAPDH、HPRTである。プライマー配列を表6に示す。
2.SNCA mRNAのためのTaqmanアッセイハウスキーピング遺伝子のための即時使用型TaqmanアッセイのためのSNCA mRNA発現及びTaqman IDのために設計されたプライマー及びプローブ配列を表7に示す。
【0186】
【0187】
【0188】
動物組織からのLC-MS/MS
線条体組織試料をドライアイス上でVanderbilt Neurochemistry Core Facility(Nashville,TN,USA)に送り、カテコールアミンレベルを決定し、データを分析のために盲検化したAtukaに送り返した。
【0189】
組織抽出脳切片を、組織ディスメンブレータを使用して、10-2M酢酸ナトリウム、10-4M EDTA及び7.5%メタノール(pH3.8)を含有する100~750μlの0.1M TCA中でホモジナイズした。タンパク質濃度の測定のために10μlのホモジネートを除去した。次いで、試料を微量遠心機で10,000gにて4℃で20分間回転させた。生体アミン分析のために上清を新しい微量遠心管に移した。
【0190】
生体アミン分析ドーパミン、HVA、及びDOPACレベルは、塩化ベンゾイル(BZC)で分析物を誘導体化した後、高感度で特異的な液体クロマトグラフィー/質量分析(LC-MS/MS)方法によって決定した。上清5μlを、アセトニトリル中500 mM NaCO3(水溶液)及び2% BZCのそれぞれ10μlで処理した。4分後、13C6-誘導体化ドーパミン-d4、HVA及びDOPACをそれぞれ200pg含有する内部標準溶液(3%硫酸を含有する20%アセトニトリル中)10μlを添加することによって反応を停止した。液体クロマトグラフィーは、Waters Acquity UPLCを使用して2.0×50mm、1.7μm粒子Acquity BEH C18カラム(Waters Corporation,Milford,MA,USA)上で行った。移動相Aは0.15%ギ酸水溶液であり、移動相Bはアセトニトリルであった。試料を、SCIEX 6500+QTrap質量分析計(AB Sciex、Framingham,MA,USA)に送達する前に、600μl/分の流速で11分間かけて98~5%の移動相Aの勾配によって分離した。以下のMRM遷移を定量目的のためにモニターした:466から105、BZC-ドーパミン;488から111,13C6-BZC-ドーパミン-d4;304から150、BZC-HVA;310から111、13C6-BZC-HVA;394から105、BZC-DOPAC;406から111、13C6-BZC-DOPAC。自動化されたピーク積分を、SCIEX Multiquantソフトウェアバージョン3.0.2を使用して行った。適切な統合を確実にするために、全てのピークを目視検査した。ピーク面積比(P分析物/PI.S.)対内部標準の濃度に基づいて構築された検量線を使用して、線形回帰によって試料中のドーパミン、HVA、及びDOPACのレベルを計算した。レベルを組織抽出物中のタンパク質濃度に対して正規化した。
【0191】
タンパク質アッセイ組織ホモジネート中のタンパク質濃度を、提供されたキットの説明書に記載されているPierce(商標)BCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher Scientific、MA USA)を使用して決定した。POLARstar Omegaプレートリーダー(BMG LABTECH,Offenburg,Germany)を使用して吸光度を測定した。
【0192】
導入遺伝子由来ヒトα-synのELISA
全ての動物の新鮮凍結切片からの解剖線条体組織を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(Roche:11836153001)を含有する溶解緩衝液中でホモジナイズした。試料を4℃で30分間撹拌した後、遠心分離(4℃で135000 rpmで10分間)して上清を生成した。0.001mg/mlの濃度で1:500希釈を使用して、上清の一部を使用して総タンパク質レベルを決定した(BCAアッセイ、Pierce、Rockford、IL)。上清の別の部分を、製造者の説明書(BioLegend:844101)に従ってELISA手順に供した。aSynの量に対する発光カウントを定量するCLARIOstarシステムを使用して試料を分析した。αSynのレベルをpg/mg総タンパク質(Pierce(商標)BCA Protein Assay Kit、Thermo Fisher Scientific、MA USA)として表した。
【0193】
ドーパミントランスポーター(DAT)結合
線条体DATのレベルを、20μmの新鮮凍結組織から調製したクライオスタット切断切片における[125 I]-RTI-121結合オートラジオグラフィーによって評価した。簡潔には、解凍したスライドを、50 mM Tris、120 mM NaCl及び5 mM KClを含有する結合緩衝剤(2×15分、室温)に入れた。次いで、切片を、50pM[125I]-RTI-121(Perkin-Elmer、比活性2200 Ci/μmol)を含有する同じ緩衝剤中に25℃で120分間入れて、総結合を決定した。非特異的結合は、100μMのGBR 12909(Tocris Bioscience)の存在下で観察されるものと定義した。次いで、全てのスライドを氷冷結合緩衝剤で洗浄し(4×15分)、氷冷蒸留水ですすぎ、風乾した。次いで、[125 I]マイクロスケール標準(Amersham)と共に、スライドをオートラジオグラフィーフィルム(Kodak)に貼り付け、室温で約7日間放置した後、現像した。次いで、MCIDソフトウェア(Image Research Inc,Ontario,Canada)を使用してオートラジオグラムを分析した。各動物由来の3つの線条体のデンシトメトリー分析を行い、β放出[14C]マイクロスケール標準からc.p.m.対光学密度の基準曲線を計算し、これを使用してシグナルの強度をnCi/gとして定量した。バックグラウンド強度を各読み取り値から差し引いた。次いで、データを各処理群の平均±標準誤差信号強度として表した。非特異的結合を同じ方法で計算し、合計から差し引いて特異的結合を得た。非特異的結合は、典型的には、総結合の1%未満を占めることが見出された。
【0194】
免疫蛍光及び立体構造
免疫蛍光:凍結スライド式ミクロトーム(Leica Microsystems Inc.,Richmond Hill,ON)で、脳を冠状面で40μmの厚さで凍結切片化し、6系列の切片を凍結保護剤(30%グリセロール、30%エトキシエタノール、40% PBS)中に保存した。単一の一連の中脳切片を使用して、二重標識免疫蛍光法を実施して、ヘマグルチニン(HA)タグ付きヒトaSyn及びチロシンヒドロキシラーゼ(TH)を明らかにした。簡潔には、遊離浮遊切片において、TH(ヒツジ抗TH、1:1000、Pel Freez、P 60101;二次抗体、Alexa fluor ロバ抗ヒツジ、Fisher Scientific、A 21099、1:500)及びHA(ウサギ抗HA、1:1000;Abcam、AB 9110;Alexa Fluorロバ抗ウサギ、1:500、Fisher Scientific、A 21206、1:500)のレベル及び分布を二重標識免疫蛍光によって評価した。
【0195】
立体構造:黒質緻密部(SNc)内のヒトα-syn共局在化あり及びなしのTH+veニューロン数の推定を、立体学的原理に従ってStereo Investigatorソフトウェア(MBF Bioscience、ウィリストン、VT)を使用して行った。前方SNから後方SNまでそれぞれ240μmで分離された7つ又は8つの切片を、それぞれの場合を数えるために使用した。組織切片の可視化のためにモノクロデジタルカメラに連結されたZeiss顕微鏡(AxioImager M2及びApotome,Carl Zeiss,Canada)を使用して立体解析を行った。ヒトα-syn封入体を含む及び含まないTH+veニューロンの総数を、光学分画法を使用してコード化スライドから推定した。分析された各組織切片について、切片厚を経験的に評価し、各切片の上部及び底部に約2μm厚のガードゾーンを使用した。SNcを低倍率(5倍)下で輪郭を描き、TH+veニューロンを40倍の倍率下でカウントした。Stereo Investigatorソフトウェア(MicroBrightfield、VT、USA)を使用して、立体パラメータを経験的に決定した(すなわち、グリッドサイズ、カウントフレームサイズ、及びディスセクタ高さ)。許容誤差係数(CE)は、Gunderson CE(m=1)として知られるWestらの手順に従って計算した。0.10未満のGunderson値が認められた。
【0196】
計数立体学の結果によって、神経保護を評価するためにSNc内のTH+veニューロンの絶対数が得られた。ヒトα-シンキュレインに対する反応性を含む残りのTH+veニューロンの数もまた、TH+veニューロンを発現するヒトα-synの数の指標を提供するために産生された。次いで、TH+ve/シヌクレイン+ve:TH+ve/シヌクレイン-veの比を計算した。
【0197】
in vivo試験
試験1.野生型(WT)ラットにおける投与経路試験
本試験では、AAV5-GFPを黒質(SN)、線条体又は大槽のいずれかに投与した14日後に、導入遺伝子発現(GFP)の分布を評価した。1群当たりN=5匹の合計2つの処理群(合計N=10、雌Sprague-Dawleyラット、Envigo、USA)を使用した。1日目に、動物は、SNへのAAV5-GFPの両側4 ul定位的注射、AAV5-GFPの線条体への3×3ul(両側)定位的注射又は大槽へのAAV5-GFPの25ul注射を受けた。群を表8に示す。
【0198】
【0199】
SN内注射の場合、定位座標は-5.2mmAPであり、ブレグマに対して-/+2mmMLであり、針は頭蓋骨の下-7.5mmに下げられ、歯棒は-3.3に設定された。線条体定位注射座標は部位1:+1.3mm AP、-/+2.8ML、-4.5DV;部位2:+0.2mm AP、-/+3.0ML、-5.0 DV;部位3:部位2:-0.6mm AP、-/+4.0ML、-5.5 DVであり;歯棒は-3.3に設定された。ウイルスベクターを0.5ul/分の速度で投与し、各注射後に5分間の待機時間を許容した。ICM投与は、Chen et al.2013 Acta Neurobiol Exp(Wars)73(2):304-11から適合させた方法に従って行った。
【0200】
14日目に、ラットに過剰量のイソフルランを投与し、氷冷0.9%生理食塩水による経心灌流を介して屠殺した。次に脳を取り出し、右半球を4%パラホルムアルデヒド中で(一晩)後固定し、スクロース溶液中で凍結保護した。次いで、右半球前脳及び中脳を、組織学的手順のために凍結スライド式ミクロトームで切断した。左半球を目的の領域に新鮮に解剖し、分子分析のために個々に凍結した。
【0201】
試験2.a-syn KIラットにおける作用機序試験
本試験では、2つのAAV-miSNCA候補の作用機序をヒトαシヌクレインKIラットで評価した。1群当たりN=3匹の動物(合計N=9、Envigo、いUSA)を含む合計3つの処理群を使用した。1日目に、全ての動物に、線条体へのAAV5の3×3ul片側注射を行った。反対側は対照とし、AAV5注射と同じ方法で製剤緩衝液を注射した。群を表9に示す。
【0202】
【0203】
線条体定位注射座標は部位1:+1.3mm AP、-/+2.8ML、-4.5DV;部位2:+0.2mm AP、-/+3.0ML、-5.0 DV;部位3:部位2:-0.6mm AP、-/+4.0ML、-5.5DVであり;歯棒は-3.3に設定された。ウイルスベクターを0.5ul/分の速度で投与し、各注射後に5分間の待機時間を許容した。
【0204】
43日目に、全てのラットに過剰量のイソフルランを投与し、氷冷0.9%生理食塩水で経心灌流した。その後、脳を可能な限り迅速に除去し、左右の半球を分割した。各群の全ての動物において、以下の領域:前頭前皮質、線条体、海馬、視床下部、視床、後皮質、小脳、腹側中脳及び脳幹を、左半球と右半球とに分けて新たに解剖し、ドライアイス上で凍結し、分子分析のために-80℃で保存した。
【0205】
試験3.AAV-Synラットモデルにおける試験
本試験は、SNCA mRNAを標的化する2つの人工miRNA(aSynをコードする)が、パーキンソン病のAAV1/2-hA 53T-aSynラットモデルにおいてドーパミン作動性機能を保護する能力を評価するために設計された。このモデルは、AAV1/2ヒトA53Tα-syn(AAV1/2-hA53T-aSyn)及びAAV5-miRNA(miSNCA又は無関係な(対照)miRNAのいずれか)をWTラットの片側に注射することを含む。これらの2つのウイルスの注射に関して、共注射群と逐次注射群の2つの群が存在した。共注射群では、2つのウイルスを1日目に注射し(表10の群1~4)、連続群では、AAV1/2-Ha53T-aSynを1日目に注射し、AAV5-miSNCAを14日目に注射した(表10の群5~8)。表10に示される日に、単一のウイルス又は組合せを定位的技術に従って右黒質に片側投与した。前肢非対称性を評価するために、手術前(ベースライン、-3日目)並びに14日目、21日目、42日目及び56日目(AAV投与の2、3、6及び8週間後)に、シリンダー試験で行動評価を行った。群を表10に示す。
【0206】
【0207】
【0208】
57日目に、動物を死後評価のために屠殺した。血液、試料を収集し、必要に応じて処理し、保存した。
【0209】
本研究の主要評価項目には以下が含まれた:
・前肢の非対称性の評価(シリンダー試験による)
・線条体ドーパミン及び代謝産物レベルの定量(LC-MS/MSによる)
・ドーパミントランスポーターの定量化(オートラジオグラフィーによる)
・線条体導入遺伝子由来aSynレベルの定量(ELISAによる)
【0210】
含まれる任意のエンドポイント:
・ヒトaSynとの共発現を伴う又は伴わない(二重標識免疫蛍光による)黒質におけるチロシンヒドロキシラーゼ陽性(TH+ve)細胞の定量化
・Iba-1免疫反応性による(免疫蛍光による)黒質におけるミクログリアの活性化状態の定性的評価
【0211】
屠殺及び試料採取を以下のように行った:動物をイソフルランで深く麻酔し、次いで、0.2%ヘパリンを含有する氷冷0.9%生理食塩水による経心的灌流による放血によって殺した。脳を腹側上方で氷冷ステンレス鋼ラット脳マトリックスに入れ、最初に視床下部のレベルで、冠状面で切断した。線条体全体を含む脳の吻側部分を-42℃に冷却したイソペンタン中で直ちに凍結し、後にDATオートラジオグラフィーのために切片化し、LC-MS/MSによるドーパミン及びドーパミンの代謝産物(HVA及びDOPAC)のレベル並びにELISAによるヒトaSynのレベルの定量のために解剖した。組織を-80℃のロックフリーザーに保存した。分子アッセイのために、追加の関心領域(追加の線条体解離を含む)を表11に従って収集した。
【0212】
【0213】
中脳を含む脳の尾部の残りの部分を、固定のために4%パラホルムアルデヒド(PFA)に48時間浸漬し、引き続いて段階的スクロース溶液(15から30%スクロース)中で凍結保護した。この様式で調製された組織を、チロシンヒドロキシラーゼの免疫組織化学及び偏りのない立体構造学を介してSNcにおけるドーパミンニューロン数の定量化のために使用した。
【0214】
試験4.線虫(C.elegans)PDモデルにおける運動表現型の表現型レスキュー
本試験では、線虫(C.elegans)PDモデル(OW 40;van Ham et al 2008 PLoS Genet 4(3):e 1000027)における変化した運動行動の表現型レスキューに対するmiSNCA候補の発現の影響を評価した。このモデルでは、ヒトα-synは、線虫(C.elegans)の体壁筋において過剰発現される。このα-syn過剰発現は、対照蠕虫と比較した場合、蠕虫の動きを遅くする。SNCA mRNAレベルを減少させ、それによってRNAiによるα-synタンパク質レベルを減少させる効果を、全長SNCA遺伝子又は本発明者らのmiSNCA構築物を使用して研究した。これらの構築物の1つを含む二本鎖RNAを、摂食によって生物に導入した。OW 40線虫(C.elegans)に、その寿命の異なる段階:幼生段階1(L1)、幼生段階4(L4)及びその成体期の1日目に、陰性対照としての空のT 444Tプラスミド、又は全長SNCA遺伝子又は本発明者らのmiSNCA候補の1つ(miSNCA5、miSNCA13又はmiSNCA15)のいずれかを過剰発現する大腸菌を給餌した。25℃及び15℃で処理実験を繰り返した。それらの成体期の1日目、4日目及び8日目における処理の後、それらの動き(μm/秒としての速度)を測定するように設定されたハイスループットトラッキングセットアップを使用して蠕虫をビデオ追跡した(Perni et al 2018 Journal of Neuroscience Methods 306 57-67)。
【0215】
さらなる読み取りは、ウエスタンブロット分析を使用したSNCA mRNA及びα-synタンパク質レベルのRT-qPCRであった。SNCA mRNAのRT-qPCRに使用したプライマー配列を表12に示す。
【0216】
【0217】
α-synタンパク質レベルの検出のために、ウエスタンブロット分析を使用した。この目的のために、タンパク質を、RIPA緩衝剤及びTissue lyzer(Qiagen)を使用して抽出した。異なる処理条件からの同様のタンパク質量をSDS PAGEにロードし、α-synレベルを検出するために抗ヒトα-syn抗体(表12)を使用してウエスタンブロットを行った。チューブリンを正常化のために使用し、抗チューブリン抗体を使用して検出した(表13)。
【0218】
【0219】
結果:
in vitro実験
人工miSNCA構築物のin vitroサイレンシング有効性
in vitroでのmiSNCA構築物のmiSNCAノックダウン効力を評価するために、HEK293T細胞を、SNCA遺伝子をコードするウミシイタケルシフェラーゼレポーターにより同時トランスフェクションした。ホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子を同じレポーターベクターから発現させ、トランスフェクション効率を補正するための内部対照として用いた。最初のスクリーニングでは、HEK細胞を、1ng~10ng~50ng又は250ngのそれぞれのmiSNCA構築物及びSNCA遺伝子を担持するDual Lucレポーターにより同時トランスフェクトした。SNCA遺伝子を標的とするように設計された17のmiSNCA構築物のうち、miSNCA2、miSNCA5、miSNCA7、miSNCA12、miSNCA13、miSNCA15及びmiSNCA16は、RL/FL比の用量依存的減少を誘導した。効力をさらに決定するために、上述の構築物を滴定実験にさらに使用した。構築物を異なる濃度:0.1、1、10又は100ngで10ngのSNCAルシフェラーゼレポータープラスミドと共にHEK293T細胞に同時トランスフェクションした。これらの結果によれば、miSNCAプラスミド100ngでのトランスフェクションは、滴定実験において使用された全てのmiSNCA候補物について少なくとも50%の減少を示した(
図3)。miSNCA5、miSNCA13及びmiSNCA15を、mSNCAレベルの低下におけるそれらの比較的大きい効力のために、異なるモデルにおけるさらなる試験のために選択した。
【0220】
miSNCA候補、すなわちmiR451の天然のコンパニオンの効力を改善するために、改変されたmiR144をmiSNCA5及びmiSNCA15の足場に付加した(
図2のB)(配列番号32~33)。これらの構築物を、改変されたmiR144が、miSNCA候補を有するmiR451の5’末端の足場に付加されるように設計した。元のmiSNCA候補及び改善されたmiSNCA候補の有効性を評価するために、二重ルシフェラーゼアッセイを行った。構築物(miSNCA5(配列番号25)、miSNCA15(配列番号29)、miSNCA5+miR144(配列番号31)、miSNCA15+miR144(配列番号32)及び対照miRNAを、24ウェルあたり異なる量:0.1、1、10又は100ngで10ngのSNCAルシフェラーゼレポータープラスミドと共にHEK293T細胞に同時トランスフェクションした。これらの結果によれば、miSNCA5及びmiSNCA15の効力が少なくとも2~3倍改善された(
図4)。
【0221】
トランスフェクト細胞における内因性SNCA発現の低下
miSNCA5、miSNCA13及びmiSNCA15構築物を、細胞におけるSNCA mRNA発現のノックダウンを試験するために選択した。HEK293T細胞における内因性SNCA遺伝子発現のノックダウンを、トランスフェクション細胞に対するRT-QPCRによって確認した。50ng~200ng~1000ngのmiRNAプラスミドのトランスフェクションは、試験した全てのmiSNCA候補によって40%未満のSNCA mRNA発現の減少をもたらした。結果は、HTRFによって測定されたα-synレベルの用量依存的減少というタンパク質レベルでも一致していた(
図5)。
【0222】
形質導入細胞におけるmiRNAの発現レベル(低分子RNA配列決定データ)
成熟型miRNAの発現レベルを、miRBase及び目的のpre-miRNA配列を使用することによってアノテーションされる全リードの数に基づいて定量した。10
6/細胞のMOIでHEK産生AAV5-miSNCAを形質導入されたDAニューロンにおける上位30及び35の最も発現されたmiRNAの発現レベルが得られ(
図6A及び6B)、miSNCA5(
図6A)及びmiSNCA15(
図6B)の発現レベルは、十分に内因性miRNAレベルの範囲内であった。
【0223】
細胞におけるトランスフェクション時のmiSNCA構築物のプロセシング(NGSデータ)
miRNAのプロセシングを、pre-miRNA配列に対するリードのアラインメントによっても調べた。miSNCA5について最も豊富な形態の長さが24ntであり、続いて、23nt及び25ntであり(
図7のA);miSNCA15については、22ntであり、続いて、24nt及び23ntであった(
図7のB)。
【0224】
ヒト細胞におけるAAV5-miSNCA形質導入
AAV5-miSNCA5及びAAV5-miSNCA15がパッケージングされた発現カセットを形質導入及び送達する能力を調べるために、DAニューロン又は前脳ニューロン及び/又はLUHMES由来DAニューロンを様々な感染多重度(MOI);104、105、106及び107で形質導入する。ベクターDNAレベルを測定し、これらの細胞において用量依存的なvDNAレベルの増加があるはずである。RNAを形質導入細胞から単離し、RT-qPCR Syber Greenアッセイを用いてSNCAのmRNAレベルを測定する。これらの形質導入細胞におけるSNCAレベルの用量依存的mRNA減少が予想される。
【0225】
バキュロウイルス産生構築物からのmiSNCA構築物のプロセシング(NGSデータ)
in vivo試験#2、群#4からラット脳組織から抽出したmiRNAのプロセシングも調査して、バキュロウイルス産生AAV5-miSNCAのプロセシングを評価した。これらの試料に対して低分子RNA配列決定を行い、データをpre-miRNA配列に対するリードとアラインメントした。miSNCA5について最も豊富に存在する形態の長さは、23ntであり、続いて、24nt及び25ntであり;miSNCA15については、22ntであり、続いて、24nt及び23ntであった(
図12)。
【0226】
in vivo試験
試験1.WTラットにおけるAAV5-GFPの異なる投与経路は、パーキンソン病に罹患した標的領域において良好なカバレッジを示した。
標的脳領域にmiSNCA候補を送達するためのAAV5ベクターの適切性に対処するために、パーキンソン病において有意なα-syn病理を示す脳領域(脳幹、中脳、皮質)のカバレッジをAAV5投与後に評価した。異なる投与経路:黒質(SN)、線条体又は大槽を試験した。GFPをレポーター遺伝子として使用した。SN中、試験された2つの用量で、又は線条体中、試験された単回用量で注射されたAAV5-GFPは、脳内のAAV-GFP vDNAレベル(
図9A)及び対応するGFP mRNA発現(
図9B)によって評価されるように、標的領域における適切な生体内分布を示した。大槽に(脳脊髄液に直接)注入されたAAV5-GFPは、程度は低いが、検査された全ての脳領域を同等にカバーする。したがって、AAV5は、パーキンソン病治療のための目的の脳領域にmiSNCA候補を送達するのに適切なベクターであると結論付けられた。
【0227】
試験2.AAV5-miSNCA候補は、a-syn KIラットにおけるヒトSNCA mRNA発現を低下させた
ヒトSNCA mRNA発現の低下における2つの設計候補(miSNCA5及びmiSNCA15)の能力を評価するために、AAV5-miSCR(非標的スクランブル対照)、AAV5-miSNCA5又はAAV5-miSNCA15を成体a-syn KIラットの左線条体に注射した。1つの群には、等価用量のAAV5-miSNCA5とAAV5-miSNCA15との併用を注射した。miSNCA13は、SNCA KIラットモデルのヒト化部分の外側の領域を標的とし、WTラットSNCA遺伝子に対して3つのミスマッチを有するため、in vivo試験から除外した。右線条体に製剤緩衝剤を注入し、これをさらなる対照として用いた。使用した単回用量では、AAV5注射した脳半球でvDNAが検出されたが、対照半球では、vDNAレベルは定量下限(LLOQ)未満であった(
図10-1のA)。形質導入は、ベクター特異的様式(
図10-1のB及び
図10-2のC)でmiSNCA候補5及び15又は両方の組合せの発現をもたらし:miSNCA5はAAV5-miSNCA5注入半球においてのみ検出され、miSNCA15はAAV5-miSNCA15注入半球においてのみ検出され、miSNCA5及びmiSCNA 15はAAV5-miSNCA5+AAV5 miSNCA15注入群において検出された。使用した単回用量では、AAV5-miSNCA5及びAAV5-miSNCA5+AAV5-miSNCA15は、対照線条体(
図10-2のD)と比較して、2つの異なるRT-QPCR SNCAアッセイ(プライマーセットSNCA1及びプライマーセットSNCA 2)によって評価すると、注射した線条体におけるSNCA mRNA発現の減少に有効であった。本試験は、パーキンソン病の治療のためのヒトSNCA mRNA発現及びα-syn毒性を減少させるためのAAV5-miSNCA候補の作用機序を支持する。
【0228】
試験3.AAV-Synラットモデルにおける試験
AAV-Synラットモデルにおいて、異なるAAV5-miSNCA候補を試験した。
【0229】
SNCAレベルを低下させ、それによってα-synウイルス過剰発現の運動表現型ヒトA53T変異体を改善するという概念のin vivo証明を示すために、ラットPDモデルを使用した(AAV1/2-Ha53T-aSyn)。右黒質(SN)に、AAV1/2-hSNCA及びAAV5-miSNCAウイルスの両方の片側注射を行った。同時注射群と連続的注射群の両方において、使用した単回用量では、線条体においてAAV5注射した脳半球でvDNAが検出され(
図13)、対照半球(左線条体)では、vDNAレベルは定量下限(LLOQ)未満であった(図示せず)。形質導入は、ベクター特異的様式でmiSNCA5及びmiSNCA15の発現をもたらし(
図14のA及びB):miSNCA5は、AAV5-miSNCA5注入半球においてのみ検出され、miSNCA15は、AAV5-miSNCA15注入半球においてのみ検出され、陰性対照群からの他の試料においてはどちらも検出されなかった。A 53 T-aSyn動物では、使用した単回用量で、無関係のmiRNA(黒の実線)を注射した対照線条体(
図15)と比較して、Taqman RT-qPCRアッセイ(SNCA 2プライマーとプローブの組合せ)によって評価したところ、AAV5-miSNCA5及びAAV5-miSNCA15が注射部位線条体におけるSNCA mRNA発現の減少に有効であった。miSNCA発現はまた、ELISAによって測定される低下したα-synタンパク質レベルによって反映されるタンパク質レベルでの低下を示した(
図16)。[125 I]-RTI-121オートラジオグラフィーによって測定されたドーパミントランスポーターの欠損は、PD患者の場合と同様に、対照miRNA(無関係なmiR、表10の群6)を連続的に注射したA 53 T-aSyn動物において明らかであり、miSNCA処理群(表10の群7及び8)において補正した(
図17)。このモデルにおける代謝産物の変化に関連して、Ha53T-aSyn誘導性線条体ドーパミン欠損のmiSNCA候補による補正が観察された。
図18のAは試験群のドーパミンレベルを示し、
図18のBはLC/MSによって測定された(DOPAC+HVA)/DAレベルを示す。
【0230】
左足使用の非対称性パーセントによって測定される運動行動は、ベースラインレベルと比較して、56日目にmiSNCA5処理又はmiSNCA15処理を受けた連続注射群において有意に改善された(
図19のA及び
図19のB)。
【0231】
分子的、生化学的及び運動行動の結果は、組織学的観察によって裏付けられた。黒質におけるドーパミン作動性(TH陽性)及びα-syn陽性ニューロンの免疫染色及び定量化は、両方のAAV5-miSNCA候補(連続注入群)がドーパミン作動性(TH)ニューロン細胞喪失をレスキューし(
図20-1のA)、ヒトα-syn細胞数を減少させた(
図20-1のB)ことを示した。これは、α-synを発現した陽性ドーパミン作動性(TH)細胞の割合の減少によって反映された(
図20-2のC)。黒質におけるIba1免疫反応性によって評価される、このモデルにおける炎症の減少もまた予想される。
【0232】
全体として、AAV5-miSNCAは、AAV-Synラットモデルにおいて疾患表現型を回復させ、運動表現型を改善し、分子変化及び神経化学変化をレスキューし、miSNCA処理がα-syn毒性を低下させるための有効な治療法であることが証明された。
【0233】
試験4.miSNCA候補配列を用いた線虫(C.elegans)PDモデルにおける表現型救済
異なるプラスミド発現大腸菌によって供給された線虫間の移動速度を比較するために、条件ごとに100匹の線虫(C.elegans)をビデオ追跡した。結果によれば、全長SNCA発現又はmiSNCA発現大腸菌によって給餌された蠕虫は、空のプラスミドで形質転換された大腸菌によって給餌された蠕虫と比較して、運動速度の改善を示した(
図11)。完全長SNCA又はmiSNCAで処理した蠕虫は、その動きを追跡した全ての日において、未処理の蠕虫と比較して速度が上昇した。これらの結果は、SNCA遺伝子の発現を減少させ、それによってα-synレベルを低下させることが、この線虫(C.elegans)PDモデルにおける運動表現型を改善することを示す。さらに、結果は、異なる寿命段階での蠕虫の処理が可能であることを証明している。
【0234】
miSCNAによる処理は、それらを幼生段階又は成体段階で処理した場合、線虫(C.elegans)PDモデルにおいてSNCA mRNAレベル(
図21-1のA~21-1のC)及びα-シヌクレインタンパク質レベル(
図21-2のD~21-2のF)を低下させた。これと一致して、miSNCA処理は、陰性対照蠕虫(EV処理蠕虫)と比較して、miSNCA処理蠕虫における遊泳速度の改善として、
図22に示されるように、このモデルにおける運動表現型挙動をレスキューした。
【0235】
miSNCA5、miSNCA15及び全長SNCAで処理された線虫から収集された線虫(C.elegans)試料で行われた低分子RNAシーケンシングによって、試料中の正しく処理されたmiSNCA候補の存在が証明される(
図23-1及び23-2)。miSNCA5配列及びmiSNCA15配列、同様にまた、他のmiSNCA配列(例えば、miSNCA 7、miSNCA12及びmiSNCA13)が、SNCA全長処理試料から検出された。
【配列表】
【国際調査報告】