(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】GPR84アンタゴニストとしての三環式化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20240621BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240621BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240621BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240621BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C07D471/04 116
C07D471/04 CSP
C07D519/00 301
A61K31/519
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P11/00
A61P25/00
A61P31/00
A61P37/06
A61P5/00
A61P3/00
A61P37/02
A61P1/04
A61P9/00
A61P19/02
A61P29/00 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578850
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2022100224
(87)【国際公開番号】W WO2022268088
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110685568.1
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521265704
【氏名又は名称】武漢人福創新薬物研発中心有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シュエチュン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、ウェンチュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チュン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、シン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、チン
(72)【発明者】
【氏名】ニー、ピン
(72)【発明者】
【氏名】リー、リーオー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チュン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA68
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB31
4C086ZC03
4C086ZC21
(57)【要約】
GPR84アンタゴニストとして使用される三環式化合物に関し、具体的には、式Iで表される構造を有する三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグに関し、ここで、環Cy、L
1、R
1は、本発明で定義される通りであり、前記三環式化合物は、有意なGPR84アンタゴニスト効果を示し、創薬可能性がよく、安全性が高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される構造を有する、三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグ。
【化1】
(ただし、
環Cyは、
【化2】
であり、
L
1は、存在しないか、又はL
1は、C
1~C
4アルキレン、1つの二重結合を有するC
2~C
4アルケニレン又は1つの三重結合を有するC
2~C
4アルキニレンであり、
R
1は、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、3~6員シクロアルキル又は4~6員ヘテロシクロアルキルであり、
前記R
1は、任意選択でR
11により置換され、
前記R
11は、下記の置換基:ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
3~C
6シクロアルキル、C
1~C
6ハロアルキル及びC
1~C
6ハロアルコキシから選択され、
置換基が複数の場合、前記R
11は、同じ又は異なる置換基である。)
【請求項2】
L
1は、存在しないか、又はL
1は、-CH
2-、-CH=CH-又は-C≡C-であり、
好ましくは、L
1は、存在しないか、又はL
1は、-C≡C-であることを特徴とする、請求項1に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグ。
【請求項3】
R
1は、3~6員シクロアルキルであり、好ましくは、R
1は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルであり、
より好ましくは、R
1は、
【化3】
であることを特徴とする、請求項1に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグ。
【請求項4】
R
11は、下記の置換基:ハロゲン、シアノ、C
1~C
6アルキル及びC
1~C
6アルコキシから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグ。
【請求項5】
前記三環式化合物は下記の式に示される通りであることを特徴とする、請求項1に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグ。
【化4】
【請求項6】
下記の構造を有する中間体B。
【化5】
(ただし、Cyは、請求項1で定義される通りであり、
Xは、-OTf、-OTs、-OMs、塩素、臭素又はヨウ素から選択される。)
【請求項7】
1)請求項6に記載の中間体Bと化合物H-L
1-R
1を反応させ、前記三環式化合物を得るステップを含み、
ここで、L
1、R
1は、請求項1で定義される通りであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグの製造方法。
【請求項8】
前記方法は更に、
2)前記中間体Bと化合物H-L
1-R
1を、触媒の存在下で反応させるステップ、及び/又は
3)前記中間体Bと化合物H-L
1-R
1を、不活性ガスの保護下で反応させるステップ、及び/又は
4)前記中間体Bと化合物H-L
1-R
1を、アルカリ性条件下で反応させるステップを含み、
好ましくは、前記触媒は、パラジウム触媒及び/又は銅触媒であり、
好ましくは、前記パラジウム触媒は、Pd(PPh
3)
2Cl
2、Pd(OAc)
2、Pd(TFA)
2、PdCl
2、Pd(PPh
3)
4及びPd2(dba)
3から選択され、より好ましくは、前記パラジウム触媒は、Pd(PPh
3)
2Cl
2又はPd(OAc)
2であり、
好ましくは、前記銅触媒は、一価銅触媒であり、より好ましくは、前記銅触媒は、CuIであり、
好ましくは、前記不活性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス又はアルゴンガスであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグ、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項10】
GPR84アンタゴニストとして働き、
及び/又は、GPR84関連疾患を予防及び/又は治療し、
及び/又は、GPR84アンタゴニストとして作用し、及び/又はGPR84関連疾患を予防及び/又は治療するための医薬、医薬組成物又は製剤を製造することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグの使用、又は請求項9に記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
前記GPR84関連疾患は、炎症性疾患、肺疾患、神経炎症性疾患、感染症、自己免疫疾患、内分泌疾患、代謝性疾患及び免疫機能障害に関連する疾患から選択され、
好ましくは、前記炎症性疾患は、炎症性腸疾患又は血管炎であり、
好ましくは、前記肺疾患は慢性閉塞性肺疾患及び/又は間質性肺疾患であり、前記間質性肺疾患は好ましくは先天性肺線維症又は特発性肺線維症であり、
好ましくは、前記自己免疫疾患は、関節リウマチであることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
対象に有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ又は請求項9に記載の医薬組成物を提供することを含む、必要とする対象におけるGPR84に関連する疾患を予防及び/又は治療する方法。
【請求項13】
前記GPR84に関連する疾患は、炎症性疾患、肺疾患、神経炎症性疾患、感染症、自己免疫疾患、内分泌疾患、代謝性疾患及び免疫機能障害に関連する疾患から選択され、
好ましくは、前記炎症性疾患は、炎症性腸疾患又は血管炎であり、
好ましくは、前記肺疾患は慢性閉塞性肺疾患及び/又は間質性肺疾患であり、前記間質性肺疾患は好ましくは先天性肺線維症又は特発性肺線維症であり、
好ましくは、前記自己免疫疾患は、関節リウマチであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2021年6月21である中国特許出願2021106855681の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
本発明は医薬分野に属し、具体的には、本発明はGPR84アンタゴニストとしての三環式化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質共役型受容体84(GPR84)は、百日咳毒素に感受性のあるGi/o経路に結合するGタンパク質共役型受容体であり、リガンドに結合して活性化されると、Giタンパク質を介してアデニル酸シクラーゼ活性を阻害して、細胞内のcAMPレベルを低下させる。GPR84は脂肪酸受容体に属し、主に骨髄で発現し、続いて末梢白血球と肺で発現し、中鎖飽和脂肪酸によって活性化されることができ、その中で、カプリン酸(C10)、ウンデカン酸(C11)、ラウリン酸(C12)は最も優れたアゴニスト活性を有する。内因性リガンドである中鎖脂肪酸の他、研究者らは、ジインドリルメタン(DIM)、6-n-オクチルアミノウラシル(6-OAU)、エンベリン(embelin)など、より優れた活性を持つ外因性アゴニストも発見した。
【0003】
通常の生理学的条件下では、免疫細胞内の低鎖、中鎖脂肪酸とジインドリルメタンは、GPR84を活性化することによってIL-12 P40サブユニットの分泌をアップレギュレートし、炎症の発生を促進する。研究により、外因性アゴニスト6-OAUがGPR84を活性化することにより走化性反応を引き起こし、AKT、ERK及び核因子κB(NFκB)シグナル伝達経路をアップレギュレートし、炎症性メディエーターTNFα、IL-6、IL-12B、CCL2、CCL5とCXCL1の発現レベルを上昇させ、サイトカイン(IL-8、IL-12)及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)の放出が促進され、それによって炎症部位のマクロファージの炎症反応が増幅され、炎症が悪化させ、様々な炎症性疾患を引き起こすことが証明された。
【0004】
研究により、線維化条件下では、線維芽細胞、有足細胞、近位尿細管上皮細胞とマクロファージでより高いレベルのGPR84 mRNAの発現が観察されることが示された。特発性肺線維症モデルでは、GPR84アンタゴニスト(経口、30mg/kg、1日2回)を2週間投与すると、7日目からアッシュクロフトスコアが劇的に減少した。内毒素血症のマウスモデルでは、急性炎症中にGPR84 mRNAのアップレギュレーションが観察された。更に、糖尿病及びアテローム性動脈硬化などの慢性炎症のモデルでもGPR84発現のアップレギュレーションが観察された。炎症性腸疾患(IBD)患者の大腸組織と血液試料において、GPR84の発現増加が報告されている。GPR84 mRNAの転写は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)患者の肝生検組織でも増加していた。更に、GPR84アップレギュレーションの観察は末梢疾患に限定されず、神経炎症状況でも実証されている。以前の研究では、GPR84は健康な成体マウスの脳では低レベルで発現しているが、エンドトキシンショックモデルなどで炎症刺激により中枢神経系(CNS)ミクログリアの有意なアップレギュレーションが誘導することが報告された。腫瘍壊死因子αとインターロイキン-1は、これらの分子を欠くマウスでは大脳皮質におけるGPR84の発現が低下するため、GPR84のアップレギュレーションに重要な役割を果たしていると考えられている。比較的に高レベルのGPR84 mRNA発現は、実験的自己免疫性脳脊髄炎、多発性硬化症モデル、Cuprizone誘発性脱髄及び軸索断裂及びアルツハイマー病のマウスモデル(APP-PS1)など、他の中枢神経系に影響を与える疾患の動物モデルでも報告されている。
【0005】
特発性肺線維症(IPF)は、原因不明の慢性、進行性線維性間質性肺疾患であり、肺の間質に限局した進行性の瘢痕化又は線維化を特徴とし、肺機能の喪失につながり最終的には死に至る。IPFは急速に進行及び死亡するリスクが高いため、しばしば稀な疾患と考えられている。IPF患者の臨床的予後は悪く、診断時の生存期間中央値は約3年である。規制当局は、IPFの治療薬としてピルフェニドンとInetedanib(ニンテダニブ)を承認した。ピルフェニドンとInetedanibはIPF患者の肺機能低下速度を遅らせたが、いずれの薬物も肺機能を改善せず、大多数の患者は治療にもかかわらず進行し続けた。更に、これらの治療法の副作用には、下痢、Inetedanib服用後の肝機能検査異常、ピルフェニドンによる吐き気と発疹などがある。従って、依然として大きな医療ニーズが満たされておらず、IPFは依然として罹患率と死亡率の主な原因であり、効果的な治療法が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、GPR84関連疾患を予防及び/又は治療し、又はGPR84アンタゴニストとして、GPR84関連疾患を予防及び/又は治療するための医薬、医薬組成物又は製剤の製造に使用される、三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1方面は、三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグを提供し、前記三環式化合物は、式Iで表される構造を有する。
【0008】
【0009】
ただし、
Cyは、
【0010】
【0011】
であり、
L1は、存在しないか、又はL1は、C1~C4アルキレン、1つの二重結合を有するC2~C4アルケニレン又は1つの三重結合を有するC2~C4アルキニレンであり、
R1は、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、3~6員シクロアルキル又は4~6員ヘテロシクロアルキルであり、
前記R1は、任意選択でR11により置換され、
前記R11は、下記の置換基:ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C3~C6シクロアルキル、C1~C6ハロアルキル及びC1~C6ハロアルコキシから選択され、
置換基が複数の場合、前記R11は、同じ又は異なる置換基である。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、L1は、存在しないか、又はL1は、-CH2-、-CH=CH-又は-C≡C-である。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、L1は、存在しないか、又はL1は、-C≡C-である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、R1は、3~6員シクロアルキルである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、R1は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルである。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、R1は、
【0017】
【0018】
である。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、R11は、下記の置換基:ハロゲン、シアノ、C1~C6アルキル及びC1~C6アルコキシから選択される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、前記三環式化合物は下記の式に示される通りである。
【0021】
【0022】
本発明の第2方面は、下記の構造を有する中間体Bを提供する。
【0023】
【0024】
ただし、Cyは、本発明の第1方面で定義された通りであり、
Xは、-OTf、-OTs、-OMs、塩素、臭素又はヨウ素から選択される。
【0025】
本発明の第3方面は、本発明の第1方面に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグの製造方法を提供し、前記方法は、1)本発明の第2方面に記載の中間体Bと化合物H-L1-R1を反応させて、前記三環式化合物を得るステップを含み、
ただし、L1、R1は、本発明の第1方面で定義された通りである。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、前記方法は更に、
2)前記中間体Bと化合物H-L1-R1を、触媒の存在下で反応させるステップ、及び/又は
3)前記中間体Bと化合物H-L1-R1を、不活性ガスの保護下で反応させるステップ、及び/又は
4)前記中間体Bと化合物H-L1-R1を、アルカリ性条件下で反応させるステップを含む。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、前記触媒は、パラジウム触媒及び/又は銅触媒である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、前記パラジウム触媒は、Pd(PPh3)2Cl2、Pd(OAc)2、Pd(TFA)2、PdCl2、Pd(PPh3)4及びPd2(dba)3から選択され、より好ましくは、前記パラジウム触媒は、Pd(PPh3)2Cl2又はPd(OAc)2である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、前記銅触媒は、一価銅触媒である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、前記銅触媒は、CuIである。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、前記不活性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス又はアルゴンガスである。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、上記の製造方法では、化合物の各基の違いに応じて、本発明の前記実施形態に応じて異なる反応条件及び中間体を選択することができ、置換基に活性基(例えば、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシルなど)が存在する場合、必要に応じて活性基を保護基で保護した後反応に参加させ、反応終了後、前記保護基を保護することができる。その中で、1つ又は複数の反応部位が1つ又は複数の保護基(保護基とも呼ばれる)によってブロックされている化合物は、本発明に記載の式I化合物の「保護された誘導体」である。例えば、適切なカルボキシル部分の保護基としては、ベンジル、tert-ブチル、同位体などを含む。適切なアミノ及びアミド保護基としては、アセチル、トリフルオロアセチル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが含まれる。適切なヒドロキシル保護基としては、ベンジルなどが含まれる。他の適切な保護基は当業者によく知られている。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、上記の製造方法では、各ステップの反応は好ましくは不活性溶媒中で行われ、具体的な状況に応じて適切な不活性溶媒を選択することができ、前記不活性溶媒は、トルエン、ベンゼン、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジオキサン、又はその組成物を含むが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の第4方面は、(治療有効量の)本発明の第1方面に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグ、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、(治療有効量の)本発明の第1方面に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグ、及び少なくとも1つの他の薬理学的活性アンタゴニスト及び/又は阻害剤を含み、
好ましくは、前記他の薬理学的活性アンタゴニストはGPR84アンタゴニストであり、
好ましくは、前記他の薬理学的活性阻害剤はGPR84阻害剤である。
【0036】
本発明の第5方面は、本発明の第1方面に記載の三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩又はプロドラッグの使用、又は第4方面に記載の医薬組成物の使用を提供し、前記使用は、
GPR84アンタゴニストとして作用し、
及び/又は、GPR84に関連する/GPR84によって媒介される疾患を予防及び/又は治療し、
及び/又は、GPR84アンタゴニストとして作用し、及び/又はGPR84に関連する/GPR84によって媒介される疾患を予防及び/又は治療するための医薬、医薬組成物又は製剤を製造することを含む。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、前記GPR84関連疾患は、炎症性疾患、肺疾患、神経炎症性疾患、感染症、自己免疫疾患、内分泌疾患、及び/又は代謝性疾患、及び/又は免疫機能障害に関連する/免疫機能障害によって媒介される疾患を含む。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、前記肺疾患は、慢性閉塞性肺疾患及び/又は間質性肺疾患である。前記炎症性疾患は、好ましくは炎症性腸疾患又は血管炎である。前記間質性肺疾患は好ましくは先天性肺線維症である。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、前記間質性肺疾患は、好ましくは先天性肺線維症又は特発性肺線維症である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、前記自己免疫疾患は、関節リウマチである。
【0041】
本発明は、必要とする対象におけるGPR84に関連する疾患を予防及び/又は治療する方法を提供し、当該方法は、対象に有効量の前記三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ又は前記医薬組成物を提供することを含む。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、前記必要とする対象におけるGPR84に関連する疾患を予防及び/又は治療する方法で、前記GPR84に関連する疾患は前記に記載された通りである。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、前記的化合物で、すべての原子の同位体存在量はその天然存在量と同じである。
【0044】
本発明の追加の方面及び利点は、部分的に以下の説明で与えられ、部分的には以下の説明から明らかになるか、又は本発明の実施によって理解されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
用語と定義
特に断りのない限り、本願の明細書及び特許請求の範囲に記載された基及び用語の定義は、実例としての定義、例示的な定義、好ましい定義、表に記載された定義、実施例における特定の化合物の定義などを含み、互いに任意に組み合わせて結合することができる。このような組み合わせと結合した基の定義及び化合物の構造は、本願の明細書に記載された範囲内に属するべきである。
【0046】
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、特許請求の範囲のカテゴリーが属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。特に断りのない限り、本明細書で引用されるすべての特許、特許出願、公開資料は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。本明細書の用語に複数の定義がある場合は、本出願の定義が優先される。
【0047】
上記の簡単な説明及び以下の詳細な説明は例示的かつ説明的なものにすぎず、本発明のカテゴリーを何ら限定するものではないことを理解されたい。本願では、特に断りのない限り、単数形の使用には複数形も含まれる。明細書に明確な別段の説明がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される単数形には指示対象の複数形が含まれることに留意されたい。また、特に断りのない限り、使用される「又は」「或いは」は「及び/又は」を意味することにも留意されたい。更に、使用される「含む」という用語、例えば「包含する」、「含まれる」および「含有する」などの他の形式は限定されない。
【0048】
標準化学用語の定義については、参考文献(Carey and Sundberg“ ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4THED.”Vols. A(2000)and B(2001)、 Plenum Press、 New Yorkなど)を参照することができる。特に断りのない限り、質量分析法、NMR、IR及びUV/VIS分光法、ならびに薬理学的方法などの当分野の技術範囲内の従来の方法を使用する。特定の定義が示されない限り、分析化学、合成有機化学、医薬及び医療化学の関連する記載において本明細書で使用される用語は、当技術分野で知られている。化学合成、化学分析、医薬品の製造、製剤と送達、及び患者への治療は標準的な技術を使用することができる。例えば、キットの製造業者の説明書を使用して、又は当技術分野で知られている方法又は本明細書の記載によって反応と精製を実施することができる。上述の技術及び方法は、一般に、本明細書で引用及び議論されるさまざまな要約的及びより具体的な文献に記載されているように、当技術分野で周知の従来の方法に従って実行することができる。本明細書において、基及びその置換基は、安定な構造部分及び化合物を提供するために当業者によって選択されてもよい。
【0049】
置換基が左から右に書かれた通常の化学式によって記載される場合、当該置換基は、構造式を右から左に書かれた場合に得られる化学的等価な置換基も含む。例えば、CH2OはOCH2と同等である。本明細書で使用されるように、
【0050】
【0051】
は、基の結合部位を示す。本明細書で使用されるように、「R1」「R1」及び「R1」は同じ意味を有し、互いに置き換えることができる。R2などの他の記号についても、同様の定義は同じ意味を持つ。
【0052】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、記事を整理する目的でのみ使用され、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。特許、特許出願、文章、書籍、マニュアル、及び論文を含むがこれらに限定されない、本出願で引用されるすべての文献又は文献の一部は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
上記に加えて、本出願の明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、特に別途に説明しない限り、下記用語は下記に示される意味を有する。
【0054】
本出願の明細書及び特許請求の範囲に記載される数値範囲について、当該数値範囲が「整数」として理解される場合、その範囲の2つの端点及び範囲内の各整数を記載するものとして理解されるべきである。例えば、「0~5の整数」は、0、1、2、3、4及び5の各々の整数を記載すると理解されるべきである。
【0055】
本願では、単独で、又は他の置換基の一部として、用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。
【0056】
本明細書で使用されるように、単独で、又は他の置換基の一部として、用語「アルキル」は、炭素原子及び水素原子のみからなり、不飽和結合を含まず、例えば1~6個の炭素原子を有し、単結合によって分子の残りの部分に接続されている直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖基を意味する。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。アルキルは、非置換であってもよく、1つ又は複数の適切な置換基で置換されていてもよい。アルキルはまた、炭素及び/又は水素の同位体(即ち、重水素又はトリチウム)が豊富な、天然に豊富に存在するアルキルの同位体異性体であってもよい。本明細書で使用されるように、用語「アルケニル」は、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を含む非分岐鎖又は分岐鎖の一価炭化水素鎖を意味する。本明細書で使用されるように、用語「アルキニル」は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を含む非分岐鎖又は分岐鎖の一価炭化水素鎖を意味する。
【0057】
単独で、又は他の置換基の一部として、用語「C1~C6アルキル」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素基を意味すると理解されるべきである。前記アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1,1-ジメチルプロピル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-エチルブチル、1-エチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル又は1,2-ジメチルブチルなど、或いはそれらの異性体である。用語「C1~C5アルキル」は、1、2、3又は5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素基を意味すると理解されるべきである。特に、前記基は、1、2又は3個の炭素原子(「C1~C3アルキル」)を有し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルである。
【0058】
単独で、又は他の置換基の一部として、用語「C1~C6アルコキシ」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素基及び酸素原子からなることを意味すると理解されるべきであり、又はC1~C6アルキル-O-C1~C6アルキルの定義は本明細書に記載される通りであり、酸素原子はC1~C6アルキルの直鎖又は分岐鎖のいずれか1つの炭素原子に連結されてもよい。メトキシ(CH3-O-)、エトキシ(C2H5-O-)、プロポキシ(C3H7-O-)、ブトキシ(C4H9-O-)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
単独で、又は他の置換基の一部として、用語「ハロ」は、用語「ハロゲン置換」に互換的に使用される。「ハロアルキル」又は「ハロゲン置換アルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、1つ又は複数のハロゲンにより置換された分岐鎖及び直鎖の飽和脂肪族炭化水素基(例えば、-CvFw、ここでv=1~3であり、w=1~(2v+1)である)を意味する。ハロアルキルの例としては、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、及びヘプタクロロプロピルが含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
単独で、又は他の置換基の一部として、用語「アルケニレン」は、特定の数の炭素原子を有し、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を含み、炭素-炭素三重結合を含まない直鎖又は分岐鎖のオレフィンから2つの水素を除いた後に形成される置換基を指す。ここで、炭素-炭素二重結合はアルケニレンの任意の位置に位置してもよく、除去される2つの水素は同じ炭素原子上に存在してもよく、異なる炭素原子上に存在してもよい(例えば、除去される2つの水素はそれぞれ両端の炭素原子上にある)。従って、C2~C4アルケニレンはC2、C3又はC4アルケニレンを含み、C2アルケニレン(即ちビニレン)は-CH=CH-を含むが、これに限定されず、C3アルケニレンは-CH2-CH=CH-、
【0061】
【0062】
及び-C(CH3)=CH-を含むが、これに限定されず、C4アルケニレンは-CH2-CH=CH-CH2-、
【0063】
【0064】
、-CH2=CH-CH2-CH2-及び-CH2-CH-CH2=CH2-を含むが、これに限定されない。
【0065】
単独で、又は他の置換基の一部として、用語「アルキニレン」は、特定の数の炭素原子を有し、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を含む直鎖又は分岐鎖のアルケンから2つの水素を除いた後に形成される置換基を指す。ここで、炭素-炭素三重結合はアルキニレンの任意の位置に位置してもよく、除去される2つの水素は同じ炭素原子上に存在してもよく、異なる炭素原子上に存在してもよい(例えば、除去される2つの水素はそれぞれ両端の炭素原子上にある)。従って、C2~C4アルキニレンはC2、C3又はC4アルキニレンを含み、C2アルキニレン(即ちエチレン)は
【0066】
【0067】
を含むが、これに限定されず、C3アルキニレンは
【0068】
【0069】
を含むが、これに限定されず、C4アルキニレンは
【0070】
【0071】
を含むが、これに限定されない。
【0072】
単独で、又は他の置換基の一部として、用語「シクロアルキル」は、特定の数の炭素原子(例えば、C3~C6)を有する、炭素原子のみからなる飽和単環式環式基を指す。シクロアルキルはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含むが、これらに限定されない。
【0073】
単独で、又は他の置換基の一部として、用語「ヘテロシクロアルキル」は、特定の数の環原子(例えば、4~6員)、特定の数のヘテロ原子(例えば、1個、2個又は3個)、特定の種類のヘテロ原子(N、O及びSの1つ又は複数)を有する環式基を指し、それは単環、架橋環又はスピロ環であり、且つすべての環は飽和している。ヘテロシクロアルキルは、アゼチジニル、テトラヒドロピロリル、テトラヒドロフラニル、モルホリニル、ピペリジニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0074】
単独で、又は他の置換基の一部として、用語「ハロアルコキシ」は1つ又は複数のハロゲンに置換されたアルコキシを指し、ここで、アルコキシは前記に定義された通りである。
【0075】
用語「不活性溶媒」は、トルエン、ベンゼン、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジオキサン、又はその組成物を含むが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書に提供される化合物を製造するために使用できる中間体を含む、本明細書に提供される化合物は、反応性官能基(例えば、カルボキシル、ヒドロキシル、及びアミノ部分であるが、これらに限定されない)を含み、その保護された誘導体を更に含む。「保護された誘導体」は、1つ又は複数の反応部位が1つ又は複数の保護基(保護基とも呼ばれる)によってブロックされているそれらの化合物である。適切なカルボキシル部分の保護基としては、ベンジル、tert-ブチルなど、及び同位体などが含まれる。適切なアミノ及びアミド保護基としては、アセチル、トリフルオロアセチル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが含まれる。適切なヒドロキシル保護基としては、ベンジルなどが含まれる。他の適切な保護基は当業者によく知られている。
【0077】
本願において、「任意選択の」又は「任意選択で」は、その後に記載される事象又は状況が発生する場合も発生しない場合もあることを意味し、その記載にはその事象又は状況の発生と非発生の両方が含まれる。例えば、「任意選択で置換されたアリール」は、アリールが置換又は非置換であることを意味し、その記載には置換及び非置換のアリールの両方が含まれる。
【0078】
本願において、用語「塩」又は「薬学的に許容される塩」には、薬学的に許容される酸付加塩及び薬学的に許容される塩基付加塩が含まれる。用語「薬学的許容される塩」は、それらの化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対するもので、これらは信頼できる医学判断の範囲内にあり、ヒト及び動物の組織との接触に適し、毒性、刺激性、アレルギー反応又はほかの問題又は合併症があまりなく、合理的な利益/リスク比に合うことを意味する。
【0079】
「薬学的に許容される酸付加塩」は、他の副作用なしに遊離塩基の生物学的有効性を保持できる無機酸又は有機酸で形成される塩を意味する。「薬学的に許容される塩基付加塩」は、他の副作用なしに遊離酸の生物学的有効性を保持できる無機塩基又は有機塩基で形成される塩を意味する。本発明では、薬学的に許容される塩に加えて、他の塩も考慮する。これらは、化合物の精製又は他の薬学的に許容される塩の製造における中間体として作用するか、あるいは本発明の化合物の同定、特性評価又は精製に使用することができる。
【0080】
用語「立体異性体」は、シス-トランス異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー及び配座構造異性体を含む、分子内の原子の空間的な配置の違いから生じる異性体を意味する。
【0081】
出発物質及び方法の選択に応じて、本発明の化合物は、不斉炭素原子の数に応じて、可能な異性体の1つとして、又はその混合物として、例えば純粋な光学異性体として、又は異性体の混合物として、例えばラセミ体及びジアステレオマーの混合物として存在し得る。光学活性を有する化合物を記載する場合、接頭辞DとL、又はRとSは、分子内のキラル中心(又は複数のキラル中心)に対する分子の絶対配置を示すために使用される。接頭辞DとL、又は(+)と(-)は、化合物による平面偏光の回転を指定するために使用される記号であり、ここで、(-)又はLは化合物が左旋性であることを示す。(+)又はDの接頭辞が付いている化合物は右旋性である。
【0082】
本発明の式におけるキラル炭素との結合が直線として記載されている場合、キラル炭素の(R)及び(S)の2つの配置、ならびにそれによって得られるエナンチオマー的に純粋な化合物及び混合物の両方がこの一般式の範囲内に含まれると理解されるべきである。本明細書におけるラセミ体又はエナンチオマー的に純粋な化合物のグラフ表示は、Maehr,J.Chem.Ed.1985,62:114-120からのものである。立体中心の絶対配置は、くさび形結合と破線結合によって示される。
【0083】
用語「互変異性体」は、分子内の原子が2つの位置の間で急速に移動することによって生じる官能基異性体を意味する。本発明の化合物は互変異性の現象を示すことができる。互変異性化合物は、2つ又は複数の相互変換可能な種として存在することができる。プロトトロピック互変異性体は、共有結合した水素原子が2つの原子間を移動することによって生じる。互変異性体は一般に平衡状態で存在し、単一の互変異性体を分離しようとすると、通常、その物理化学的特性が化合物の混合物と一致する混合物が得られる。平衡の位置は、分子内の化学的性質に依存する。例えば、アセトアルデヒドなどの多くの脂肪族アルデヒド及びケトンではケトン型が優勢であり、フェノールではエノール型が優勢である。本発明は、化合物のすべての互変異性形態を包含する。
【0084】
本願において、「医薬組成物」は、本発明の化合物と、生物学的に活性な化合物を哺乳動物(例えば、ヒト)に送達するために当技術分野で一般に受け入れられる媒体との製剤を意味する。当該媒体には、薬学的に許容される担体が含まれる。医薬組成物の目的は、生物への投与を促進し、有効成分の吸収を促進し、それによって生物活性を発揮することである。
【0085】
本願において、「薬学的に許容される担体」には、人間又は家畜の使用に許容されるものとして関連する政府規制機関によって承認される任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、香料、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶剤又は乳化剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
本出願において、用語「溶媒和物」は、本発明の化合物又はその塩が、分子間非共有結合力によって結合した化学量論的又は非化学量論的溶媒を含むことを意味し、溶媒が水である場合、それは水和物である。
【0087】
本出願において、用語「プロドラッグ」は、生理的条件下又は溶媒によって生物学的活性化合物に変換できる本発明の化合物を指す。本発明のプロドラッグは、化合物中の官能基を修飾することによって製造され、この修飾は通常の操作又は生体内で除去して親化合物を得ることができる。プロドラッグには、本発明の化合物中のヒドロキシル又はアミノが任意の基に結合して形成される化合物が含まれ、本発明の化合物のプロドラッグが哺乳動物個体に投与されると、プロドラッグは分割されてそれぞれ遊離ヒドロキシル、遊離アミノを形成する。
【0088】
本発明の化合物は、化合物を構成する1つまた複数の原子には、非天然の原子同位元素が含まれてもよい。例えば、重水素(2H)、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)又はC-14(14C)のような放射性同位元素で化合物を標識することができる。本発明の化合物の同位体組成の変換は、放射性であるかいやかに関わらず、本発明の範囲に含まれる。
【0089】
用語「賦形剤」は、薬用可能な不活性成分を意味する。用語「賦形剤」の種類の例としては、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、安定剤、充填剤、及び希釈剤などが含まれるが、これらに限定されない。賦形剤は、医薬製剤の取り扱い特性を向上させることができる、即ち、流動性及び/又は粘着性を高めることにより、製剤を直接圧縮により適したものにすることができる。
【0090】
本明細書で使用される「治療」という用語及び他の同様の同義語は、
【0091】
(i)哺乳動物における疾患又は病症の発生を予防すること、特にそのような哺乳動物が当該疾患又は病症に罹患しやすいが、その疾患又は病症を有すると診断されていない場合、
(ii)疾患又は病症を阻害する、即ち、その発症を阻止すること、
(iii)疾患又は病症を緩和する、即ち、当該疾患又は病症の状態を消退させること、又は
(iv)当該疾患又は病症によって引き起こされる症状を軽減すること、の意味を含む。
【0092】
各ステップの反応において、反応温度は、溶媒、出発物質、試薬等に応じて適宜選択することができ、反応時間も、反応温度、溶媒、出発物質、試薬等に応じて適宜選択することができる。各ステップの反応終了後は、ろ過、抽出、再結晶、洗浄、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の常法に従って反応系から目的化合物を分離、精製することができる。次の反応に影響を与えることなく、目的化合物を分離、精製せずにそのまま次の反応に移すこともできる。本発明の各ステップの反応は好ましくは、不活性溶媒中で行われ、前記不活性溶媒は、トルエン、ベンゼン、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジオキサン、又はその組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
有益な効果
本発明者らは、広範かつ鋭意研究を重ねた結果、予想外にGPR84アンタゴニストとしての三環式化合物、その互変異性体、立体異性体、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩を開発し、前記三環式化合物は強いGPR84アンタゴニスト効果を有し、本発明の化合物は、マウスにおいて高い経口曝露量を有し、優れた薬物動態学的特性を示し、ヒト血漿中の遊離分画が高く、安定性が良く、代謝が遅く、創薬可能性が高く、薬物相互作用のリスクが小さく、安全性が良好である。
【0094】
本発明の前記化合物は、GPR84アンタゴニストとして、GPR84関連疾患を予防及び/又は治療ことができ、GPR84アンタゴニストとして使用される医薬、医薬組成物又は製剤の製造、ならびにGPR84関連疾患を予防及び/又は治療するための医薬、医薬組成物又は製剤の製造に使用される。
【実施例】
【0095】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明をさらに説明する。以下の説明は、本発明の最も好ましい実施形態にすぎず、本発明の保護範囲を限定するものとしてみなされるべきではないことを理解されたい。本発明を十分に理解することに基づいて、以下の実施例において特定の条件を示されていない実験方法は、通常、従来の条件に従うか、又は製造業者が提案する条件に従って、当業者は本発明の技術的解決策に必要でない修正を加えることができ、そのような修正は、本発明の保護範囲に含まれるとみなされるべきである。
【0096】
下記の実施例において、DCMはジクロロメタンを表し、MeOHはメタノールを表し、TEAはトリエチルアミンを表し、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを表し、EAは酢酸エチルを表す。
【0097】
実施例1:化合物I-1の製造
合成経路は下記に示される通りである:
【0098】
【0099】
ステップ1:2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-(アリルオキシ)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オンの合成
【0100】
【0101】
窒素ガスの保護下で、0℃で、(2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メタノール(0.23g、2.1mmol)を無水DCM(100mL)の溶液に溶解させ、水素化ナトリウム(0.081g、2.1mmol、ミネラルオイルに60%の含有量)を加えて15分間撹拌した。9-(アリルオキシ)-2-クロロ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(0.5g、1.6mmol)を加え、反応混合物を撹拌し、室温で一晩昇温させた。飽和NH4Cl水溶液(50mL)を加えて1回洗浄し、有機層を水(50mL)で1回洗浄し、MgSO4で乾燥させて減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムで精製して生成物2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-(アリルオキシ)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(0.45g、収率:79%)を得た。LC-MS、M/Z(ESI):367.2[M+H]+。
【0102】
ステップ2:2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オンの合成
【0103】
【0104】
化合物2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-(アリルオキシ)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(0.45g、1.23mmol)を100mLの一口フラスコに入れ、DCM/MeOH(10mL/10mL)を加え、室温でK2CO3(0.34g、2.46mmol)及びPd(PPh3)4(0.071g、0.061mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。スポット検出を実行し、反応終了後、反応溶媒を濃縮乾燥させ、得られた粗生成物をEA(20mL)で希釈し、有機相を水(20mL×3)で3回抽出し、水相を合わせ、pH=4に調節し、水相を更にDCMで(20mL×3)3回抽出し、有機相を合わせ、有機相を飽和食塩水(20mL×1)で1回洗浄し、次に、乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(0.35g、収率:87%)を得た。LC-MS、M/Z(ESI):327.3[M+H]+。
【0105】
ステップ3:2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-4-オキソ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-9-イルトリフルオロメタンスルホナートの合成
【0106】
【0107】
化合物2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(0.35g、1.07mmol)をDCM(10mL)に溶解させ、1,1,1-トリフルオロ-N-フェニル-N-((トリフルオロメチル)スルホニル)メタンスルホンアミド(0.46g、1.28mmol)及びTEA(0.27mL,1.93mmol)を加え、次に、室温で5時間撹拌し、溶媒を濃縮して乾燥させて、粗生成物を得、シリカゲルカラム(DCM:MeOH(V/V)=50:1~20:1)で分離・精製して2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-4-オキソ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-9-イルトリフルオロメタンスルホナート(0.31g、収率:63.4%)を得た。LC-MS、M/Z(ESI):459.1[M+H]+。
【0108】
ステップ4:2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-(シクロプロピルエチニル)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミジニル[6,1-α]イソキノリン-4-オンの合成
【0109】
【0110】
Pd(PPh3)2Cl2(0.011g、0.016mmol)、CuI(0.012g、0.065mmol)及び2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-4-オキソ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-9-イルトリフルオロメタンスルホナート(0.15g、0.33mmol)を窒素ガスの保護下で密封チューブに入れた。シクロプロピルアセチレン(0.11g、1.64mmol)及びトリエチルアミン(0.17g、1.64mmol)を無水DMF(3mL)に溶解させ、密封チューブに加え、60℃で一晩撹拌した。スポット検出を実行して、原料が完全に反応した後、DMFを除去し、濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラム(ジクロロメタン:メタノール(V/V)=50:1~10:1)で分離・精製して2-((2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-(シクロプロピルエチニル)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミジニル[6,1-α]イソキノリン-4-オン(I-1)(63.6mg、収率:51.9%)を得た。
LC-MS, M/Z (ESI): 375.2 [M+H]+ 。
【0111】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.58 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.34 (dd, J = 8.2, 1.5 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 1.0 Hz,1H), 6.37 (s, 1H), 4.69 (s, 2H), 4.24 - 4.11 (m, 2H), 3.84 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 2.95 (dd, J = 7.2, 4.8 Hz,3H), 1.84 (dt, J = 4.8, 4.3 Hz, 2H), 1.59 (dd, J = 4.7, 1.8 Hz, 2H), 1.47 (tt, J = 8.2, 5.1 Hz, 1H), 0.96 -0.88 (m, 2H), 0.87 - 0.80 (m, 2H)。
【0112】
実施例2:標的化合物I-2の製造
【0113】
【0114】
化合物I-2の合成経路はI-1の合成方法を参照し、(2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メタノールを(ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-2-イル)メタノールに置き換え、同様の4段階の反応で9-(シクロプロピルエチニル)-2-((ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-2-イル)メトキシ)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(I-2)を得た。LC-MS, M/Z (ESI): 405.2 [M+H]+。
【0115】
実施例3:標的化合物I-3の製造
合成経路は下記に示される通りである:
【0116】
【0117】
ステップ1:9-(アリルオキシ)2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オンの合成
【0118】
【0119】
窒素ガスの保護下で、0℃で、(4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メタノール(0.23g、2.1mmol)を無水DCM(100mL)溶液に溶解させ、水素化ナトリウム(0.081g、2.1mmol、ミネラルオイルに60%の含有量)を加えて15分間撹拌した。9-(アリルオキシ)-2-クロロ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(0.5g、1.6mmol)を加え、反応混合物を撹拌し、室温で一晩昇温させた。飽和NH4Cl水溶液(50mL)を加えて1回洗浄し、有機層を水(50mL)で1回洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラムで精製して生成物9-(アリルオキシ)2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(0.47g、収率:80%)を得た。
LC-MS, M/Z (ESI): 381.2 [M+H]+。
【0120】
ステップ2:2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オンの合成
【0121】
【0122】
化合物9-(アリルオキシ)-2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(0.45g、1.23mmol)を100mLの一口フラスコに入れ、DCM/MeOH(10mL/10mL)を加え、室温でK2CO3(0.34g、2.46mmol)及びPd(PPh3)4(0.071g、0.061mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。スポット検出を実行し、反応終了後、反応溶媒を濃縮して乾燥させて粗生成物を得、得られた粗生成物をEA(20mL)で希釈し、有機相を水(20mL×3)で3回抽出し、水相を合わせ、次に、pH=4に調節し、水相を更にDCM(20mL×3)で3回抽出し、有機相を合わせ、有機相を飽和食塩水(20mL×1)で1回洗浄し、次に乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(0.35g、収率:87%)を得た。
LC-MS, M/Z (ESI): 341.3[M+H]+ 。
【0123】
ステップ3:2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-4-オキソ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-9-イルトリフルオロメタンスルホネートの合成
【0124】
【0125】
化合物2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-4-オン(0.35g、1.07mmol)をDCM(10mL)に溶解させ、1,1,1-トリフルオロ-N-フェニル-N-((トリフルオロメチル)スルホニル)メタンスルホンアミド(0.46g、1.28mmol)及びTEA(0.27mL、1.93mmol)を加え、次に、室温で5時間撹拌し、溶媒を濃縮して乾燥させて粗生成物を得、シリカゲルカラム(DCM:MeOH(V/V)=50:1~20:1)で分離・精製して2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-4-オキソ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-9-イルトリフルオロメタンスルホネート(0.31g、収率:63.4%)を得た。
LC-MS, M/Z (ESI): 473.1 [M+H]+ 。
【0126】
ステップ4:2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-(シクロプロピルエチニル)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミジニル[6,1-α]イソキノリン-4-オンの合成
【0127】
【0128】
Pd(PPh3)2Cl2(0.011g、0.016mmol)、CuI(0.012g、0.065mmol)及び2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-4-オキソ-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミド[6,1-α]イソキノリン-9-イルトリフルオロメタンスルホネート(0.15g、0.33mmol)を密封チューブに置き、窒素ガスで保護した。シクロプロピルアセチレン(0.11g、1.64mmol)及びトリエチルアミン(0.17g、1.64mmol)を無水DMF(3mL)に溶解させ、密封チューブに加え、60℃で一晩撹拌した。スポット検出を実行して、原料が完全に反応した後、DMFを除去し、濃縮して粗生成物を得、シリカゲルカラム(ジクロロメタン:メタノール(V/V)=50:1~10:1)で分離・精製して2-((4-メチル-2-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン-1-イル)メトキシ)-9-(シクロプロピルエチニル)-6,7-ジヒドロ-4H-ピリミジニル[6,1-α]イソキノリン-4-オン(I-3)(63.6mg、収率:51.9%)を得た。
LC-MS, M/Z (ESI): 389.2 [M+H]+ 。
【0129】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.58 (d, 1H), 7.34 (dd, 1H), 7.28 (d, 1H), 6.37 (s, 1H), 4.69 (s, 2H), 4.24 - 4.11 (m, 2H), 3.63 (s, 2H), 2.95 (t,2H), 1.70-1.61 (m, 4H), 1.47 (dd, 1H), 1.34 (s, 3H), 0.96 -0.88 (m, 2H), 0.87 - 0.80 (m, 2H)。
【0130】
本発明の試験例において、対照化合物の製造は特許WO2013/092791Alの化合物122の製造方法を参照し、その構造は次の通りである。
【0131】
【0132】
試験例1:GPR84アンタゴニスト効果測定実験
GPR84に対する化合物のアンタゴニスト効果の測定は、ヒトGPR84受容体を高度に発現する、安定にトランスフェクトしたCHO細胞株で実行した。安定にトランスフェクトした細胞株を80%のコンフルエンスまで培養し、トリプシン消化処理して細胞を収集し、カウントした後5μL/ウェルで384-ウェルプレートに接種した。1×Stimulation Bufferで10×化合物作業溶液を調製し、10×の化合物1μLを取って対応する実験ウェルに加え、遠心分離した後37℃に置いて20分間培養し、次に2.5μMのForskolin&200nMの6-OAU溶液4μLを加え、遠心分離した後37℃に置いて30分間培養した。反応終了後、cAMP試験キット(Perkin Elmer、Cat#TRF0263)の説明書の方法に従って、細胞のcAMP含有量を定量した。試験化合物のアンタゴニスト効果(IC50値)を計算した。
【0133】
【0134】
結果は、本発明の化合物は強いGPR84アンタゴニスト効果を有することを示している。
【0135】
試験例2:マウスの薬物動態実験
マウスの薬物動態実験は、20~25gのオスのICRマウスを使用し、一晩絶食させた。3匹のマウスを採取し、3mg/kgを胃内投与し、投与前と投与後15、30分、及び1、2、4、8、24時間に血液を採取した。血液試料を6800gで、2~8℃で6分間遠心分離し、血漿を回収して-80℃で保存した。各時点で20μLの血漿を採取し、100ng/mLの内部標準を含むメタノール200μLを加え、ボルテックスして均一に混合した後、18000g、2~8℃で7分間遠心分離した。200μLを96ウェルプレートに移し、LC-MS/MS定量分析を実行した。主な薬物動態パラメータは、WinNonlin7.0ソフトウェアのノンコンパートメントモデルによって分析された。
【0136】
【0137】
結果は、本発明の化合物はマウスにおいて、高い経口曝露量、良好な創薬可能性を有することを示している。
【0138】
試験例3:イヌの薬物動態実験
イヌの薬物動態実験、8~10kgのオズビーグル3匹を使用し、一晩絶食させ、3mg/kgを経口投与した。投与前と投与後15、30分及び1、2、4、8、24時間に血液を採取し、血液試料を6800gで、2~8℃で6分間遠心分離し、血漿を回収して-80℃で保存した。各時点の血漿を採取し、3~5倍量の内部標準を含むアセトニトリル溶液を加えて混合し、1分間ボルテックスして混合し、13000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清を取って3倍量の水を加えて混合し、適量の混合溶液を採取してLC-MS/MS分析を実行した。主な薬物動態パラメータは、WinNonlin7.0ソフトウェアのノンコンパートメントモデルによって分析された。
【0139】
実験結果は、本発明の化合物はイヌの体内において、良好な薬物動態特性を示すことを示している。
【0140】
試験例4:ラットの薬物動態実験
下記の実験方法に従って、ラットにおける対照化合物と本発明の化合物の薬物動態特性を測定した。
【0141】
オスSDラット3匹を使用し、2.5mg/kgの投与量で胃内投与し、溶媒は、5%のDMSO+10%のSolutol+85%のSalineであり、一晩絶食させ、投与前と投与後15、30分及び1、2、4、6、8、24時間の時点で血液を採取した。血液試料を6800gで、2~8℃で6分間遠心分離し、血漿を収集して、-80℃で保存した。各時点で20μLの血漿を採取し、100ng/mLの内部標準を含むメタノール200μLを加え、ボルテックスして均一に混合した後、18000g、2~8℃で7分間遠心分離した。200μLを96ウェルプレートに移し、LC-MS/MS定量分析を実行した。主な薬物動態パラメータは、WinNonlin7.0ソフトウェアのノンコンパートメントモデルによって分析された。
【0142】
実験結果は、本発明の化合物はラットの体内において、良好な薬物動態特性を示すことを示している。
【0143】
試験例5:化合物の血漿タンパク質結合率
化合物の血漿タンパク質結合率は、平衡透析(HTDialysis、HTD 96b)によって検出された。化合物をDMSOを用いて0.5nMのストック溶液として製造し、次に0.05Mのリン酸ナトリウム緩衝液で作業溶液として25倍に希釈した。ブランク96ウェルプレートを取り、各ウェルに380μLの血漿を予め入れ、次に20μL/ウェルの作業溶液を血漿に加えてよく混合し、化合物の最終濃度は1μMであり、各ウェルには0.2%のDMSOが含まれた。
【0144】
各透析チャンバー(HTD 96b)の受容側にそれぞれ0.05Mのリン酸ナトリウム緩衝液100μLを加え、次に供給側に化合物を含む血漿100μLを加えた。プラスチックカバーをかぶせた後、37℃に置き、振とうしながら5時間培養した。
【0145】
培養終了後、透析チャンバーの供給側と受容側からそれぞれ25μLの試料を採取し、ブランク96ウェルプレートに置き、供給側の試料にそれぞれ同じ体積の血漿を加え、受容側の試料にそれぞれ同じ体積の0.05Mのリン酸ナトリウム緩衝液を加えて均一に混合した。内部標準を含むアセトニトリル溶液200μLを各ウェルに加えた後、96ウェルプレートを600rpmで10分間ボルテックスし、振とうし、5594gで15分間遠心分離(Thermo Multifuge×3R)した後、上清50μLを取って新しい96ウェルプレートに移し、試料を超純水50μLと混合してLC-MS/MS分析を実行した。
【0146】
血漿タンパク質結合率及び遊離画分を次の式で計算した:%結合率=100×([供給側濃度]5h-[受容側濃度]5h)/[供給側濃度]5h。%遊離画分=100-%結合率
【0147】
実験結果は、本発明の化合物はヒトの血漿中の遊離画分が高く、良好な創薬可能性を有することを示している。
【0148】
試験例6:ヒト肝ミクロソーム安定性
下記の実験方法に従って、対照化合物と本発明の化合物のヒト肝ミクロソーム安定性を測定した。化合物の肝ミクロソーム安定性試験は、化合物をヒト肝ミクロソームと体外で共培養することによって検出した。まず、試験化合物をDMSO溶媒で10mMのストック溶液として製造し、次に化合物をアセトニトリルで0.5mMに希釈した。PBSを用いてヒト肝ミクロソーム(Corning)をミクロソーム/緩衝液に希釈し、この溶液を用いて0.5mMの化合物を希釈して作業溶液とし、作業溶液中の化合物の濃度は1.5μMであり、ヒト肝ミクロソームの濃度は0.75mg/mLであった。ディープウェルプレートを取り、各ウェルに30μLの作業溶液を加え、次に15μLの予熱した6mMのNADPH溶液を加えて反応を開始させ、37℃で培養した。培養後の0、5、15、30、45分に、135μLのアセトニトリルを対応するウェルに加えて反応を停止させた。最後の45分の時点でアセトニトリルで反応を停止させた後、ディープウェルプレートを10分間ボルテックスし、振とうし(600rpm)、その後15分間遠心分離した。遠心分離後、上清を取り、精製水を1:1で加え、LC-MS/MS検出を実行して、各時点における化合物のピーク面積と内部標準のピーク面積との比を得、5、15、30、45分における化合物のピーク面積比と0分におけるピーク面積比とを比較して、各時点における化合物の残存率を計算し、Graphpad5ソフトウェアを用いてT1/2を計算した。
【0149】
実験結果は、本発明の化合物はヒト肝ミクロソームにおいて、安定性が良く、代謝が遅く、創薬可能性が高いことを示している。
【0150】
以上、本発明の実施形態を示し、説明したが、上記実施形態は例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるものではなく、上記実施形態の変更、修正、置換及び変形は、本発明の範囲内で当業者によってなされ得ることを理解されたい。
【国際調査報告】