(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】車両用ライニング部材の製造方法、及び当該方法により製造されたライニング部材
(51)【国際特許分類】
B29C 44/06 20060101AFI20240621BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240621BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20240621BHJP
B29C 63/22 20060101ALI20240621BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B29C44/06
B29C44/00 A
B29C44/36
B29C63/22
B60R13/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023578934
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2022063388
(87)【国際公開番号】W WO2022268414
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021116451.6
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517118423
【氏名又は名称】アスコリウム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ファリノン, ルディ
(72)【発明者】
【氏名】トロサート, ヘルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンランドシュート, クーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンルーチェン, イヴァン
【テーマコード(参考)】
3D023
4F211
4F214
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BE05
3D023BE31
4F211AA11
4F211AA13
4F211AA31
4F211AD16
4F211AG03
4F211AH17
4F211AR07
4F211AR11
4F211SA17
4F211SC06
4F211SD10
4F211SD11
4F211SG03
4F214AA42
4F214AB02
4F214AD05
4F214AD08
4F214AD16
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH26
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB11
4F214UB22
4F214UF27
(57)【要約】
特に車両の内部空間のための、ライニング部材(8)を製造する方法が記載されている。当該方法では、担持基材(5)が、発泡体コーティングを介在させて、可撓性装飾層に対して位置決めされているとともに、当該発泡体コーティングによって接着結合され、発泡体層(9)を形成するために使用される発泡体原料は、物理的な発泡剤としての気体によって発泡され、装飾層(3)の裏側には、及び/又は装飾層(3)に面する担持基材(5)の側には、膨張した発泡原料としてコーティングされる。膨張した発泡体コーティング(4)が依然として流動性である限り、担持基材(5)は、膨張した発泡体コーティング(4)を介在させて、装飾層(3)の裏側に対して規定された距離で位置決めされ、これにより装飾層(3)は、発泡体コーティング(4)により担持基材(5)と結合され、発泡体コーティング(4)の架橋プロセスが少なくともほぼ完了するまで保持され、担持基材(5)を位置決めする工程では、当該工程により、担持基材(5)から装飾層(3)の元の距離を埋める発泡体層(4)の一部が、担持基材(5)によって少なくとも領域的に排出され、可塑的に圧縮される。
【選択図】
図3b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両の内部空間のための、ライニング部材(8,8.1,8.2)を製造する方法であって、担持基材(5,5.1,5.2)が、発泡体コーティング(4,4.1,4.2)を介在させて、可撓性装飾層(3,3.1,3.2)に対して位置決めされているとともに、前記発泡体コーティングによって接着結合され、発泡体層(9,9.1,9.2)を形成するために使用される原料は、物理的な発泡剤としての気体によって発泡され、前記装飾層(3,3.1,3.2)の裏側には、及び/又は前記装飾層(3,3.1,3.2)に面する担持基材(5,5.1,5.2)の側には、反応性の膨張した発泡原料としてコーティングされ、
膨張した発泡体コーティング(4,4.1,4.2)が依然として流動性である限り、前記担持基材(5,5.1,5.2)は、前記膨張した発泡体コーティング(4,4.1,4.2)を介在させて、前記装飾層(3,3.1,3.2)の裏側に対して規定された距離で位置決めされ、これにより前記装飾層(3,3.1,3.2)は、前記発泡体コーティング(4,4.1,4.2)により前記担持基材(5,5.1,5.2)と結合され、前記発泡体コーティング(4,4.1,4.2)の架橋プロセスが少なくともほぼ完了するまで保持され、前記担持基材(5,5.1,5.2)を位置決めする工程では、当該工程により、前記担持基材(5,5.1,5.2)から前記装飾層(3,3.1,3.2)の元の距離を埋める前記発泡体層(4,4.1,4.2)の一部が、前記担持基材によって少なくとも領域的に排出され、可塑的に圧縮されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記担持基材(5,5.1,5.2)が、反応時間の長さにおいて、反応時間の70%、特に50%をまだ超えていないときに、前記装飾層(3,3.1,3.2)に対して位置決めされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膨張した発泡体コーティング(4,4.1,4.2)が、前記装飾層(3,3.1,3.2)と前記担持基材(5,5.1,5.2)との間の隙間を埋めるのに必要な体積よりも大きな体積でコーティングされることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記担持基材(5,5.1,5.2)が、前記発泡体コーティング(4,4.1,4.2)の架橋プロセスが少なくともほぼ完了するまで保持される前に、前記担持基材を、当該担持基材と前記装飾層(3,3.1,3.2)との距離の関連で、また当該担持基材と前記装飾層(3,3.1,3.2)の平らな延伸部との位置の関連で、その上にコーティングされた前記膨張した発泡体コーティング(4,4.1,4.2)に対して移動させることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記担持基材(5,5.1,5.2)が、スペーサによって、又は前記担持基材(5,5.1,5.2)が位置決めされている位置決めキャリバーによって、前記担持基材(5,5.1,5.2)から前記装飾層(3,3.1,3.2)の裏側までの距離との関連で、前記装飾層(3,3.1,3.2)の裏側に位置決めされることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
プロセス工程が、開放型(1,1.1,1.2)内で行われ、第1の工程では、前記装飾層(3,3.1,3.2)が型に挿入されるか、又は型内で作製され、その後、開放型(1,1.1,1.2)内でさらなる工程がこれに続くことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
膨張した発泡体原料のコーティングが、前記担持基材に面する前記装飾層の側に、又は前記装飾層に面する前記担持基材の側に配置された発泡体層に、完全に又は部分的にコーティングされることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
発泡し、膨張した発泡体コーティング(4,4.1,4.2)が、噴霧により塗布されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記発泡体層(9,9.1,9.2)を形成するために、反応性の発泡し、膨張したポリウレタン発泡体原料が、特にポリウレタン軟質発泡体又は半硬質ポリウレタン発泡体を形成するために、発泡体コーティング(4,4.1,4.2)としてコーティングされることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
発泡体原料を発泡させるための気体状発泡剤として、窒素が使用されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記発泡剤が、混合プロセスの前、及び/若しくは混合プロセスの間に反応材料に導入されるか、又は反応材料の製造に使用されるポリオール成分及び/若しくはイソシアネート成分に導入されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記発泡剤により発泡された、コーティングすべき発泡体原料が水を含まず、少なくとも大部分が水を含まないことを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記担持基材(5.1,5.2)が、少なくとも1つの漏出口を有し、前記ライニング部材(8,8.1,8.2)が、漏出口(12,12.1)を作製するために所定の破断箇所で製造されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
膨張した発泡体コーティングのための前記担持基材が透過性であり、前記膨張した発泡体コーティングを介在させて前記担持基材を前記装飾層に対して位置決めすることにより、発泡体材料が前記担持基材に組み込まれることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記担持基材として繊維マットが使用されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法により製造されるライニング部材、特に自動車用内部ライニング部材であって、前記装飾層(3,3.1,3.2)と前記担持基材(5.1,5.2)との間に様々な大きさの隙間がある場合でも、前記ライニング部材(8,8.1,8.2)の平面的な延伸部にわたり、前記発泡体層(9,9.1,9.2)の硬度が均質であることを特徴とする、ライニング部材。
【請求項17】
膨張したポリウレタン発泡体により形成されている前記発泡体層(9,9.1,9.2)が、特にポリウレタン軟質発泡体又は半硬質ポリウレタン発泡体であることを特徴とする、請求項16に記載のライニング部材。
【請求項18】
前記ライニング部材(8.1,8.2)が、少なくとも1つの漏出口(12,12.1)を有することを特徴とする、請求項16又は17に記載のライニング部材。
【請求項19】
前記発泡体層と前記装飾層及び/又は前記担持基材との間に、特に前記発泡体層とは異なる硬度を有する、さらなる発泡体層が配置されていることを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載のライニング部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両の内部空間のための、ライニング部材を製造する方法に関するものであり、当該方法では、担持基材が、発泡体コーティングを介在させて、可撓性装飾層に対して位置決めされているとともに、当該発泡体コーティングによって接着結合される。さらに、当該方法によって製造される内部ライニング部材が記載され、ここでは、発泡体層を形成するために使用される原料が、物理的な発泡剤としての気体によって発泡され、装飾層の裏側には、及び/又は装飾層に面する担持基材の側には、反応性の膨張した発泡原料としてコーティングされる。
【0002】
このようなライニング部材は、内部ライニング部材として、例えば車両において、インストルメントパネルカバー、ドアライニング、グローブボックスなどの形態で存在する。このようなライニング部材は例えば、屋外のボートなどでも使用される。このようなライニング部材は剛性担持基材を備え、これは車両のシャーシ側に取り付けられる。当該担持基材は、付属品又はアタッチメント、例えば電気/電子ユニットを担持するために役立つ。このような担持基材は通常、PP又はABSから製造されるプラスチック射出成型部材である。このような内部ライニング部材の見える側は、装飾層により形成される。装飾層は可撓性であり、特にこれがプラスチック層である場合(例えばポリウレタンから製造される)には、弾性特性を有し得る。ライニング部材にいわゆる「ソフトタッチ性」をもたらすため、装飾層と担持層との間には、弾性軟質発泡体層が存在する。一般的に、このような発泡体層の厚さは、わずか数ミリメーター、通常は3~8mmである。発泡体層によりもたらされる感触、よってそれ自体の硬度は、主に発泡体原料、発泡体自体の膨張度、及び発泡体層の密度を選択することにより、調整される。
【0003】
このようなライニング部材を製造するための従来の背面発泡(バックフォーミング)では、複数の部材から構成される開放された型に装飾層を挿入するか、又は型の片方の部材にプラスチック材料を射出することにより、作製される。続いて、装飾層の裏側に、反応性発泡原料が塗布される。それから型を閉じ、この際には、型のもう片方が、担持基材を担持する。閉鎖された型には、担持基材と装飾層との間に、事前に規定した隙間(Spalt)が残る。反応性発泡性原料は、化学的な発泡剤を含有する。これは、水である。発泡成分同士(ポリウレタンの場合、これはポリオール成分及びイソシアネート成分である)が起こす反応の結果、原料は重合し、同時にイソシアネートと水との反応に起因して、気体が放出されることにより、発泡する。架橋プロセスの終了までには、装飾層と担持基材との間に、発泡体層が形成されている。同時に、架橋プロセスが利用され、これにより発泡体が装飾層に、また担持基材に、接着結合される。接着プライマーは、装飾層及び担持基材への発泡体層の接着結合を補助することができる。このような発泡体層を形成するためには、例えば自動車内部ライニングのためには通常、密度が150~200kg/m3のポリウレタン軟質発泡体が使用される。
【0004】
この製造方法では、化学的な発泡とこれに伴う重合の間、これにより型の内部で非常に高い圧力及び温度が生じることを考慮すべきである。これにより、当該目的のために使用される型又は型部材に対して、高い要求が課されるだけではない。この際にはまた、型内で場合によっては異なる温度分布があったとしても、装飾層が、これによる影響、特に温度による影響に耐えられる品質を有していなければならないことに留意すべきである。異なる温度分布により、装飾層の見える側が、温度に依存して異なる外観を有することになってはならない。当該方法において装飾層として、開口部を有する材料を使用すると、このような型内では2~5barもの圧力が生じるため、発泡体が装飾層の見える側に押し付けられて、発泡体が破断してしまうことがある。よって、装飾層を設けるためにこのような材料を使用する際には、反応性の、まだ膨張していない原料を塗布する前に、コストをかけて封止措置を講じることが必要となる。
【0005】
独国特許出願(DE 10 2011 005 343 A1)からは、このようなライニング部材を開放型で製造する方法が知られている。この方法では、低エネルギーの発泡システム、つまり、あまり大きな圧力を生じさせないシステムが使用される。ここでは、装飾層の裏側に塗布される反応性発泡原料の凝集状態が、その塗布後には流動性ではないように選択される。これは発泡原料が、装飾層に開口部が存在していても、その中には侵入しないことに起因する。担持基材の結合を、さらなる接着プライマー又は他の接着剤無しで行うのが望ましい場合、発泡プロセスが終了したとき、又は少なくともほぼ終了したときに、これを発泡体原料の表面に押し付けることができる。ただし、担持基材の組み込み時点では、発泡体材料のいわゆる「タックフリータイム(tack-free period)」に達していてはならない。所望の接着結合を可能にするためには、発泡体は最終的に、表面がなお充分に接着性でなければならない。
【0006】
独国実用新案出願(DE 20 2008 017 784 U1)からは、吸収性材料を備えた内部ライニング部材が知られている。この従来技術に記載された、このような内部ライニング部材の製造方法によれば、部分的に物理的に膨張された発泡材料が塗布される。それ自体知られているように、当該材料は、化学的な発泡剤を含む。吸収性装飾材料に発泡体の塗布を、当該材料に発泡体を浸透させずに行うため、発泡体材料の塗布後しばらく、既に進行中の架橋プロセスにより粘度が充分に高くなるまで、よって担持基材の取り付けに際して発泡材量が装飾層を透過できなくなるまで、待つことが企図されている。この限りにおいて、この従来技術に記載された方法は、先のDE 10 2011 005 343 A1に記載された方法と異ならない。
【0007】
これらの既知の方法により、開口部を備える装飾層の背面発泡が可能ではあるものの、担持基材を、まだ完全には架橋していない発泡表面に押し付けるタイムウィンドウを非常に精密に適合させ、また遵守する必要がある。最終的に、コーティングされた発泡原料は、担持基材と接触させる前に、ほぼ完全に発泡しているべきである。一方で、タックフリータイム(つまり、発泡体に接着性がなくなる時点)には、まだ達していてはならない。このタイムウィンドウは通常、わずか数秒である。担持基材が、ほぼ完全に重合した発泡体へと押し付けられると、発泡体は圧縮される。これによって、装飾層の裏側と担持基材との間の距離、よって内部ライニング部材の平面的な延伸部全体にわたる発泡体層の厚さが均一ではない場合には、内部ライニング部材の平面的な延伸部にわたる硬度が様々になり、このため平面的な延伸部全体にわたって、感触が異なってしまう。この場合、装飾層と担持層との間の距離が小さくなる内部ライニング部材の領域において、発泡体層の硬度が大きくなる。このことは、課される他の要求が原因で、装飾層に対して均一な距離をもたらすことができない担持基材について、特に当てはまる。これは、発泡体原料について異なる厚さをコーティングすることによっては、そもそも可能であったとしても、かなり不充分にしか補償できない。
【0008】
よって、ここで論じた従来技術に基づき、本発明は、装飾層と担持基材との間に軟質弾性発泡体層を備える内部ライニング部材の製造方法であって、先に示した欠点が回避されるとともに、このような内部ライニング部材を設けるための設計的な自由度がより制限されない製造方法を提供するという課題に基づく。さらに、製造方法が簡略化され、特に時間が短縮可能であれば、これが望ましい。
【0009】
当該課題は、冒頭に言及した汎用的な方法によって解決され、当該方法では、膨張した発泡体コーティングが依然として流動性である限り、膨張した発泡体コーティングを介在させて、装飾層の裏側に対して規定の距離で担持基材を位置決めし、これによって、装飾層を発泡体コーティングにより担持基材と結合するとともに、発泡体コーティングの架橋プロセスが少なくともほぼ完了するまで保持し、担持基材の位置決め工程では、当該工程により、担持基材から装飾層の元の距離を埋める発泡体層の一部が、担持基材によって少なくとも領域的に排出され、塑性的に圧縮される。
【0010】
当該方法では、発泡体材料が、既に発泡し、膨張した状態でコーティングされ、装飾層の裏側に、又は装飾層に面する担持基材の側に、又は装飾層及び担持基材に、コーティングされる。発泡原料は、既に発泡した状態で塗布されるので、このような2つの発泡層は、装飾層の裏側に、また装飾層に面する担持基材の側にコーティングすることができ、それでもなお、結果として均質な発泡体層をもたらすことができる。発泡剤としては、物理的な発泡剤、例えば二酸化炭素又は窒素のような気体が用いられる。その他の適切な気体も、発泡剤として使用可能なことが理解される。原料を化学的な発泡剤で発泡させる従来の方法とは対照的に、これは、コーティングされた原料内部での化学反応によって起こるものではない。例えば第1の発泡体コーティングを装飾層の裏側に、例えば前述のように、連続気孔を有する発泡体コーティングとしてコーティングし、第2の発泡体コーティングを、装飾層に面する担持基材の側に、独立気孔を有する発泡体コーティングとしてコーティングする場合、又はその他の方法により担持基材と接続されている場合には、既に膨張した発泡体コーティングと、他の発泡体コーティング及び/又は発泡体層との組み合わせも可能である。このような組み合わせは、本発明による膨張させた発泡体コーティングをコーティングする前に、装飾層を、第1工程で発泡体層により背面で被覆する場合にも行うことができる。このようなライニング部材を製造する際の二酸化炭素排出量を低く保つため、気体状発泡剤としては二酸化炭素を使用せずに、例えば窒素を使用するのが好ましい。
【0011】
発泡体コーティングは既に膨張された状態でコーティングされるので、膨張した発泡体コーティングの塗布直後に、担持基材を装飾層に対して位置決めすることができる。装飾層の裏側にある発泡体コーティングとは、担持基材が、その上にもたらされる膨張した発泡体コーティングと接触することを意味する。発泡体コーティングが、装飾層に、及び/又は担持基材にもたらされるかどうかにかかわらず、従来の方法とは異なり、担持基材を位置決め可能にするために、化学的な発泡に必要な時間を待つ必要はない。担持基材を位置決めするための既知の方法ではさらに、発泡プロセスにより形成されるセルが破裂して、連続気孔を有する発泡体コーティングが形成される時間を待つ必要がある。よって従来の方法では、担持基材の位置決めが早すぎるかどうかは、連続気孔発泡体が形成される時間によっても決まる。
【0012】
特許請求の対象である本方法では、発泡体コーティングを介在させて、担持基材を装飾層に対して位置決めする時点で、まだ重合が始まったばかりであるため、少なくとも依然として、ある程度流動性があり、問題なく排出することができる。これは、装飾層に対して基板を位置決めし、調整することによって行うことができる。続いて、架橋プロセスが少なくともほぼ完了するまで待ってから、ライニング部材を型から取り出す。膨張した発泡体コーティングを排出することにより、多くの利点がもたらされる。これによって例えば、装飾層と担持基材と間の型の隙間内部で、典型的には噴霧により塗布される膨張された発泡体コーティングの均一性をもたらすことができ、また、この隙間を埋めるためは必要ではない膨張した発泡体コーティングを、型の隙間から排出することができる。この関連で、製造されるライニング部材との関連で興味深いのは、これによって、装飾層と担持基材との間の発泡体コーティング材料の厚さとは無関係に、隙間幅が様々であっても、均一な硬度でライニング部材が裏打ちされているということである。これにより、望ましくない発泡体の圧縮は、少なくとも顕著な程度には、発生しない。5~30%、好ましくは10~20%、特に10~15%の発泡体圧縮は、発泡体層の形成の際に考慮されているため、望ましくないわけではない。
【0013】
本方法で重要になるのは、担持基材を装飾層に対して位置決めすべき時間の長さ、つまり例えば、装飾層の裏側の発泡体コーティング被覆において、担持基材を発泡体コーティングと接着結合するために、担持基材を発泡体コーティングと接触させる時間が、明らかに長くなるということである。これによって、化学的な発泡剤を用いる場合のような待ち時間が不要になることにより、製造プロセスが短縮されるだけではなく、長期的な再現性との関連で影響も受けにくい方法が提供される。反応性発泡体原料において触媒を使用することにより、さらに反応時間、すなわち重合プロセスが完了するまでに必要な時間を、かなり短縮することができ、この点でもこのようなライニング部材の製造が、さらに短縮可能になる。化学的な発泡剤を使用する場合、架橋プロセスは、膨張プロセスが完了してから初めて、開始することになる。本発明による方法では、例えば装飾層の裏側に、膨張した発泡体コーティングが備えられている場合、担持基材は通常、反応時間のタイムウィンドウの70%にまだ達していない時間の間に、接触させる。同じことが、担持基材の被覆の場合、又は装飾層及び担持基材の上への発泡体コーティングの場合にも、当てはまる。特に好ましい実施形態では、反応時間の50%がまだ経過していないときに、担持基材を位置決めする。反応時間との関連では、発泡体コーティングを介在させて、担持基材を装飾層に対して早く位置決めするほど、発泡体コーティングが、装飾層とも担持基材とも接触することになり、その分だけ、接着結合が良好になる。このように、膨張した発泡体コーティングを介在させて、担持基材を装飾層に対して、従来技術よりも早く位置決めすることにより、重合プロセスはまだそれほど進行しておらず、発泡体の移動により発泡体構造が損傷することはない。このことが、本発明の対象では、うまく利用される。
【0014】
担持基材を位置決めするためのタイムウィンドウが相対的に長いことにより、膨張した発泡体を(通常は噴霧により)コーティングする際に幾分の時間が必要となるより大きなライニング部材の製造が可能になり、この際には、発泡体の品質又は発泡体コーティングの接着結合について、担持基材を装飾層に対して位置決めすることに関連する欠点を受け入れる必要がない。
【0015】
膨張した発泡体コーティングの一部を、担持基材を通じて排出可能なことにより、実際に必要な厚さよりも厚い発泡体コーティングを形成する方法を行うことが可能になり、これにより、必要とされるより体積が大きい発泡体コーティングを行うことができる。これは、好ましい実施例で提示される。装飾層と担持基材との距離は、スペーサ要素によって、例えばスペーサピンによって、例えば、担持基材の一部として、又は型に組み込まれて、もたらされ得る。位置決めキャリバーの使用も、完全に可能である。膨張した発泡体コーティングの一定量を排出すること、ひいては、担持基材によって、担持基材と装飾層との間の相対的な移動により発泡体コーティングをモデリング又は分布させることにより、発泡体品質は一定でありながら、装飾層と担持基材との間の空間において、圧縮に関して均一な発泡体につながる。
【0016】
本方法では、担持基材を装飾層に対して位置決めする時点での、膨張した発泡体コーティングの流動性に基づき、当該流動性を利用して、発泡体を担持基材のアンダーカットへと導入することができ、これには、担持基材への重合された発泡体層の結合が、接着のみならず、形状接続によってももたらされるという利点がある。これは特に、発泡体コーティングが担持基材ではなく、装飾層の裏側にコーティングされる場合に当てはまる。担持基材を膨張した発泡体コーティングに押し付けるだけで、当該担持基材が、担持基材において発泡体コーティングに面する側に存在するアンダーカット構造に押し込まれる。装飾層に面する側における担持基材のアンダーカット構造へのこのような発泡体コーティングの侵入を補助するために、担持基材を装飾層の平面でも、発泡体コーティング上に浮かせる形で、移動させることができる。重合開始後の発泡体コーティングの流動性に関してその説明の範囲で使用される用語は、必ずしも、発泡体が重力のみによって流動することを意味するわけではなく、特にモデリング可能であり、よって、その粘度を大きく変えることなく、移動可能である。ある程度の圧縮が、可能である。
【0017】
過剰な発泡体コーティングは、側方で、装飾層と担持基材との間の空間から押し出すことができ、例えば、発泡体コーティングの架橋プロセス終了後に、切断することができる。このような方法設計では、膨張した発泡体コーティングの過剰な押し出しを避けるために、膨張した発泡体コーティングを塗布する際、装飾層の周りの周辺領域、又はそこに設けられる発泡体の侵入開口部の周囲において、比較的薄い厚さで、又は周辺又は侵入開口部に向かって厚さを減少させて、塗布することができる。別の実施形態によれば、型及び/又は担持基材が、周辺部に開口部又は流路を備えることが企図されており、当該開口部又は流路を通じて、担持基材の位置決めにより排出された発泡体が、装飾層と担持基板との間の隙間から逃げることができる。また、発泡体コーティングが装飾層と担持基材との間の空間から、担持基材の押し付け作用の結果として排出されない、又は完全には排出されない場合には、担持基材の押し付けにより、発泡体コーティングが圧縮されることもあり得る。これは、記載した方法で可能である。連続気孔の膨張した発泡体が、発泡体コーティング形成のために塗布されているからであり、また発泡体のセルに含まれる気体が、あるセルから隣のセルに押し出され、これにより、発泡体コーティングから押し出し可能だからである。この措置により、発泡体コーティングが可塑的に圧縮される。装飾層と担持基材との間の空間から発泡体が出るのが望ましくない場合には、中間空間の周囲を封止することができる。
【0018】
本方法の特別な利点はさらに、所望の流動性に基づき、発泡体コーティングを噴霧によりコーティング可能なことである。これは、噴霧塗布がより小さな液滴で行われる好ましい実施例において企図されており、これによって、膨張した発泡体コーティングのコーティング厚さを、特に良好に制御することができる。
【0019】
既に発泡した発泡体コーティングが塗布される結果として、作製される複合材に追加の温度が導入されることはない。通常、化学的な発泡剤を使用する従来の方法では、化学的な発泡剤として水が使用される。これに関する反応は、発熱性である。特許請求した方法では、発泡のために発熱反応が必要ではないため、収縮現象を考慮したり、受け入れたりする必要もない。さらに、添加剤としての連続気孔形成剤は、特許請求した方法では必要とされない。
【0020】
当該ライニング部材の製造は、圧力をかけずに行われる。適用される圧力は通常、1bar未満であり、それどころか好ましくは0.5bar未満である。
【0021】
加えて、重合は低温で、いずれにせよ装飾層に悪影響をもたらさない温度で、行うことができる。
【0022】
このようにして製造される発泡体層の層厚は、15mm~20mm、特に10mmm、殊に5mmであり得る。装飾層と担持基材との間の空間における厚さの違いは、発泡体コーティングの可塑性モデリングが原因で起こり得る。
【0023】
発泡体コーティングの密度は、自由に選択可能であり、例えば70~700kg/m3、特に200~500kg/m3であり得る。通常、担持基材を装飾層に対して位置決めは、発泡体コーティングのある程度の圧縮を伴う。これにより発泡体コーティングの密度は例えば5%~30%、増加し得る。
【0024】
発泡体コーティングの好ましい密度は、約250kg/m3であり、これは担持基材の位置決め(発泡体コーティングの圧縮を伴う)により、密度が例えば300kg/m3に高まる。
【0025】
本方法では、装飾層と担持基材との間の空間が型を形成し、この型の中で発泡体コーティングが重合され、これにより所望の形状が得られる。
【0026】
重合完了後に発泡体コーティングから形成される発泡体層は、所望の要求に応じて、軟質発泡層又は半硬質発泡層として、形成され得る。
【0027】
通常、担持基材は、膨張した発泡体コーティングのコーティング後すぐに、当該コーティングの上に位置決めされる。重合は既に、反応性成分(ポリウレタンの場合、ポリオール及びイソシアネート)の混合時に始まっているため、重合、よって反応時間は、この時点で始まっている。しかしながら、既に先に示したように、担持基材による発泡体の排出に、これによって悪影響がもたらされることはない。
【0028】
前述の方法は基本的に閉鎖された型内で圧力をかけずに発熱性の加熱なしで行うことができる場合であっても、簡便さが原因で通常は、開放された型内で行われる。
【0029】
好ましい実施形態では、水不含の発泡体原料が、気体状の発泡剤とともに噴霧塗布される。
【0030】
前述の実施形態において、水不含の膨張した発泡体コーティングの塗布が企図されている場合であっても、発泡体コーティングについて一定の効果を達成するために、一定の割合の化学的発泡剤が含まれ得る可能性もある。
【0031】
製造されたライニング部材の発泡体コーティングは通常、ポリウレタン発泡体である。気体の組み込みは、ポリオール成分とイソシアネート成分との混合前、又はその間に行うことができる。2つの成分を混合する前に、これらの成分のうち一方に、気体を加えることも可能である。噴霧塗布では、気体、通常は窒素が、混合チャンバにおける反応混合物に供給される。本来の体積増加は塗布ノズルの出口で起こり、これにより、膨張した発泡体が、装飾層の裏側にコーティングされる。WO 2007/127623 A1には、噴霧法が記載されている。従来技術における噴霧塗布に関する実施形態は、別の関連で行われていたとしても、これによって説明の対象に明示的に援用される。ライニング部材の発泡層を形成するために他の重合性発泡体が使用可能なことも、理解される。
【0032】
装飾層とは、最終的には、あらゆる可撓性のシート状層であってよく、例えば熱可塑性シート、ポリウレタン製のもの、PVC、TPO、織布、皮革、人工皮革などである。このプロセスでは圧力も高温も生じないので、圧力や温度に敏感な材料も、問題なく使用できる。このような装飾層は、開口部も有することができる。装飾層の見える側に付着する発泡体の破断は、発泡体コーティングの際に圧力がかからないため、懸念する必要がない。
【0033】
担持基材は、従来の方法でもそうであるように、例えばPP又はABSのプラスチック部材でありうる。これらは開口部を備えることができるが、塗布及び重合に際して圧力をかけないため、問題にならない。実際、担持基材の開口部に、発泡体コーティングを押し込むことができる。しかしながらこれらは、既知の方法で閉鎖された型を使用する場合のように、圧力により発泡体を排出する経路を示すものではない。このため、半硬質の膨張した発泡体をコーティングすることにより、全体的に有孔であるか又は透過性であることにより一定の透過性を有する担持基材の使用が可能になる。よって担持基材は例えば、繊維マット、例えばガラス繊維マット、又は天然繊維製のマットであり得る。担持基材を装飾層に対して位置決めする過程で、発泡体コーティングをこのような担持基材に組み込むことができ、これにより発泡体コーティングが発泡体に組み込まれる。それから、重合プロセスが完了した後、担持基材は形状結合によっても、発泡体層と接続されている。
【0034】
先に記載された方法では、発泡体層が、2つ又はそれより多い各発泡体層(例えば密度が相互に異なるもの)から構成されていることが完全に可能である。これらの発泡体層はいずれも、膨張した発泡体コーティングとして、コーティングされる。これは、前述の実施形態と矛盾することはなく、これらの発泡体層は各発泡体部分層から形成され、それ自体がまた発泡体層に装飾層の一部として、又は担持基材の一部として、コーティングされる。
【0035】
以下、実施例に基づき、添付図面を参照しながら、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】自動車用内部ライニング部材を製造するための開放型(内部に装飾層がある)の概略図を示す。
【
図2】膨張させてコーティングした発泡体コーティングで背面発泡させた、内部に装飾層がある
図1の型を示す。
【
図3】aは、発泡体コーティングの上側に位置決めすべき担持基材を示し、bは、発泡体コーティングの上に位置決めされた担持基材を示す。
【
図4】型から取り出した内部ライニング部材を示す。
【
図5】
図4の内部ライニング部材の製造における、各プロセス工程の時間的な経過を示す。
【
図6】従来技術による開放型で同様に製造された内部ライニング部材の時間的な経過を示す(
図5に対応)。
【
図7】開放型と位置決めすべき担持基材との配置を示す部分断面図であり、aは、ライニング部材内部の漏出口を形成するための開放部を示し、bは、発泡体コーティングを介在させて、装飾層に対して位置決めされた担持基板を示し、cは、型から取り出したライニング部材(その中に、形成された漏出口がある)を示す。
【
図8】
図7a~7cの描写に対応する部分図であり、内部ライニング部材の漏出口について他の実施形態を示す。
【0037】
開放型1は、キャビティ2を含む。キャビティ2には、装飾層3が配置されている。図示した実施例では、装飾層3がそもそも型内で形成されており、この実施例では、相応するポリウレタン材料が吹き付けられている。キャビティ2に面する型1の側は、革のようなシボで構造化されており、これにより装飾層5は、
図1における下側に、革状のシボを有する。車両用の内部ライニング部材を形成するために、図示された実施例では、装飾層3の裏側に後続のプロセス工程で、すなわち噴霧により、反応性の膨張した発泡体原料がコーティングされる。噴霧ノズルから出る液滴の大きさは、比較的小さく、例えば0.1~1mmである。図示された実施例では、発泡体コーティング4が、膨張したポリウレタン軟質発泡体である。発泡体コーティングは、
図2において参照符号4で識別されている。図示された実施例の発泡体コーティングは、窒素により発泡された連続気孔軟質発泡体であり、発泡された状態で装飾層3上に塗布されている。発泡体コーティング4を付与した直後、つまり、重合プロセスと関連した反応時間がちょうど始まったばかりの時点で、担持基材5を、発泡体コーティング4の上側と接触させ、当該発泡体コーティングへと少し押し込む(
図3a、3b参照)。図示された実施例では、担持基材5が、剛性のABSプラスチック部材である。担持基材5を発泡体コーティング4へと押し込むことにより、装飾層3と担持基材5との間の隙間(中空部)に発泡体を付与するのに役立ち、また当該発泡体を、装飾層3に面する担持基材5のアンダーカット構造へと組み込むのに役立つ。このようなアンダーカット構造は、担持基材5において、例えばダブルテール状のアンダーカット構造の形で、参照符号6により識別されている。これらのアンダーカット構造の形成は、担持基材5を重合された発泡体層に接着だけではなく、形状結合でも接続するという目的にも役立っている。図示された実施例では、担持基材5が構造化されているとともに、突起7を備え、当該突起7は、突起7に隣接する部分よりも発泡体コーティング4内に深く、押し込まれている。この際、発泡体コーティング4と担持基材5とが一体化する時点での、発泡体コーティング4の流動性及び/移動性が利用される。
【0038】
担持基材5は、装飾層3に対する所定の距離が確立されるまで、発泡体コーティング4に押し込まれる。図示された実施例では、担持基材5が停止延長部を備え、当該停止延長部は、装飾層3に対して所定の距離に到達したとき、型1の上側に置かれる。発泡体コーティング4は、装飾層3と担持基材5との間の隙間を
図3bに示した箇所で埋めるために、本来必要な空間体積よりも大きな体積でコーティングされている。余剰な発泡体は、側方で型のキャビティ2から排出される(
図3b参照)。これは、発泡体コーティング4の一定の圧縮を伴うが、発泡体コーティング4が連続気孔の発泡体コーティングであるため、問題なく可能である。次に、完成した内部ライニング部材8を型1から取り出し、これは必要に応じて洗浄可能であり、続いてさらに加工又は設置することができる。ここでは、重合された発泡体層が、参照符号9で識別されている。
【0039】
膨張した発泡体コーティングの化学的挙動に関するプロセス工程の時系列が、
図5から読み取れる。
図5では、X軸に時間を取り、y軸に発泡体の体積を取っている。上記の方法では、膨張した発泡体をコーティングするので、発泡体の体積は、経時的に一定のままである。発泡体の体積は、担持基材5を位置決めする際の前述の排出プロセスにより、必ずしも変化するわけではない。とはいえ、担持基材5の押し込みにより、発泡体コーティング4に対して一定の圧縮作用が生じることが企図されていてよく、これは通常、8~15%である。時点(1)では、膨張した発泡体が、噴霧によりコーティングされている。反応性発泡体の反応時間は、発泡体のコーティングにより経過が開始する。装飾層3の裏側は、その表面全体にわたって同時に吹き付け可能ではないので、反応時間(装飾層3の裏側面にわたって異なる時間に分布している)は、担持基材5が膨張性発泡体コーティングと接触し、位置決めされる時点(2)より前に、開始している。担持基材5が意図したとおりに位置決めされるタイムウィンドウは、時点(3)で終了する。この図では時点(4)で、タックフリータイムに達する。これ以降、発泡体コーティング4の表面は、もはや接着性を有しない。このため、意図した時間のタイムウィンドウは、時点(4)より充分に早く終わる。図示された実施例では、反応性発泡体コーティング4が、触媒の添加により、約25秒後にタックフリータイムに達するように、調整されている。このため本方法では、担持基材を位置決めするための時間が、約15~20秒残る。膨張した発泡体コーティングを別のやり方で調整する場合、つまり、タックフリータイムまでのタイムウィンドウがやや長く設定されている場合、担持基材を位置決めするためのタイムウィンドウは、それに応じてより長くなる。このようにして、タイムウィンドウを調整することができる。このタイムウィンドウの大きさには、装飾層3の裏側平面(この上に発泡体コーティング4が塗布される)が影響を与え得る。より大きな平面には、発泡体塗布のためにより多くの時間が必要となる。
【0040】
図6には、内部ライニング部材を製造するための一連の方法について、開放型内で反応性の、まだ膨張していない原料を装飾層の裏側にコーティングする場合が示されている。担持基材を位置決めするためには、まず発泡プロセス完了を待つ、つまり発泡プロセスが完全に、又はほぼ完全に完了するまで、待たなければならない。よって時点(2)は、反応時間との関連で必要に応じて、本発明による方法の
図5に示した時系列よりもずっと遅い。担持基材を位置決めするタイムウィンドウ((2)と(3)の間の時間の長さ)は、大幅に進んだ重合プロセスではタックフリータイムと時間的に近接しているため、非常に短くなる。発泡体表面と接触させる際に、担持基材の位置決めが早すぎると、より硬い発泡体が形成される。担持基材の位置決めが遅すぎると、接着結合について所望の品質がもはや得られない。最後に、そのすぐ後の時点(4)で、タックフリータイムに達する。この方法ではもちろん、触媒を使用することにより、反応時間を短縮することができる。しかしながらこれによってまた、担持基材を位置決めするためのタイムウィンドウも短くなる。よってこの方法では、担持基材を位置決めするためのタイムウィンドウが充分に長くなるように、発泡体を形成する原料の反応時間を調整する。
【0041】
図7aは、装飾層3.1が敷設されているか、及び/又は型1.1の成形面に形成されている型1.1の断面図を示す。型1.1は、これにより製造される内部ライニング部材が、漏出部を備える形で(例えば、空調装置の吹き出し口カバーに使用するため)製造可能なように設計されている。この目的のために、型1.1は、作製する発泡体層に弱点をもたらす突起10を備える。突起10は、作製される漏出口の周囲全体に延伸し、担持基材5.1に方向に向かって、先細になっている。担持基材5.1は、作製される漏出口の領域に、開放部11を有する。
【0042】
装飾層3.1の裏側に膨張した発泡体を吹き付けて発泡体コーティングをもたらした後、担持基材5.1を、装飾層3.1に対して位置決めする。突起10の領域では、担持基材5.1と装飾層3.1との距離が、最小化されている。これは、発泡体コーティング4.1の厚さが、突起10と担持基材5.1との間の間隙距離で非常にわずかであることを意味する。担持基材5.1を装飾層3.1に結合させるために、装飾層3.1と担持基材5.1との間に、発泡体コーティングが存在する。担持基材5.1を発泡体コーティング4.1上に位置決めすることにより(
図7b参照)、発泡体コーティングが開放部11にも、押し込まれる。重合プロセスの完了後、突起10により所定の破断箇所がもたらされ、この箇所で、重合した発泡体コーティング(発泡体層9.1)が、これと結合している装飾層3.1とともに、作製すべき漏出口の真ん中(破線で示した)で、例えば引きちぎることによって、分離される。これは通常、内部ライニング部材を型1.1から取り出した後に、行われる。このようにして作製した内部ライニング部材8.1の漏出口12(
図7c参照)には、この後、内部ライニング部材8.1を貫通するさらなる部材を設けることができる。
【0043】
図8aは、
図7a~cの実施例に対応する構成要素の実施形態を示し、
図8aの実施例では、担持基材5.2が、先端が型1.2に向いた突起13を備える。
図8a、8bに示した実施例では、型1.2が同様に突起10.1を備えるが、しかしながら先端が担持基材5.1に向かって先細になっている型1.1の突起10とは異なり、平坦部14を有する。内部ライニング部材8.2は、
図7a~7cの実施例で先に説明したのと同じように型1.2で製造される。発泡体コーティング4.2が重合した後、これにより発泡体層9.2がもたらされ、重合した発泡体が、これに付着した装飾層3.2とともに、作製される漏出口12.1の領域から出てくることにより分離され、漏出口12.1がリリースされる。
【0044】
本発明を、実施例に基づき説明した。現行の請求項の範囲から逸脱しない限りにおいて、当業者には本発明を実施するさらなる様々な可能性(それらの実施形態については、詳細に説明する必要はないだろう)がある。
【符号の説明】
【0045】
1,1.1,1.2 型
2 キャビティ
3,3.1,3.2 装飾層
4,4.1,4.2 発泡体コーティング
5,5.1,5.2 担持基材
6 アンダーカット構造
7 突起
8,8.1,8.2 内部ライニング部材
9,9.1,9.2 発泡体層
10,10.1 突起
11,11.1 開放部
12,12.1 漏出口
13 突起
14 平坦部
【手続補正書】
【提出日】2022-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両の内部空間のための、ライニング部材(8,8.1,8.2)を製造する方法であって、担持基材(5,5.1,5.2)が、発泡体コーティング(4,4.1,4.2)を介在させて、可撓性装飾層(3,3.1,3.2)に対して位置決めされているとともに、前記発泡体コーティングによって接着結合され、発泡体層(9,9.1,9.2)を形成するために使用される原料は、物理的な発泡剤としての気体によって発泡され、前記装飾層(3,3.1,3.2)の裏側には、及び/又は前記装飾層(3,3.1,3.2)に面する担持基材(5,5.1,5.2)の側には、反応性の膨張した発泡原料としてコーティングされ、
膨張した発泡体コーティング(4,4.1,4.2)が依然として流動性である限り、前記担持基材(5,5.1,5.2)は、前記膨張した発泡体コーティング(4,4.1,4.2)を介在させて、前記装飾層(3,3.1,3.2)の裏側に対して規定された距離で位置決めされ、前記担持基材(5,5.1,5.2)を位置決めする工程では、当該工程により、前記担持基材(5,5.1,5.2)から前記装飾層(3,3.1,3.2)の元の距離を埋める前記発泡体層(4,4.1,4.2)の一部が、前記担持基材によって少なくとも領域的に排出され、可塑的に圧縮され、これにより前記装飾層(3,3.1,3.2)は、前記発泡体コーティング(4,4.1,4.2)により前記担持基材(5,5.1,5.2)と結合され、前記発泡体コーティング(4,4.1,4.2)の架橋プロセスが少なくともほぼ完了するまで保持されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記担持基材(5,5.1,5.2)が、反応時間の長さにおいて、反応時間の70%、特に50%をまだ超えていないときに、前記装飾層(3,3.1,3.2)に対して位置決めされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膨張した発泡体コーティング(4,4.1,4.2)が、前記装飾層(3,3.1,3.2)と前記担持基材(5,5.1,5.2)との間の隙間を埋めるのに必要な体積よりも大きな体積でコーティングされることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記担持基材(5,5.1,5.2)が、前記発泡体コーティング(4,4.1,4.2)の架橋プロセスが少なくともほぼ完了するまで保持される前に、前記担持基材を、当該担持基材と前記装飾層(3,3.1,3.2)との距離の関連で、また当該担持基材と前記装飾層(3,3.1,3.2)の平らな延伸部との位置の関連で、その上にコーティングされた前記膨張した発泡体コーティング(4,4.1,4.2)に対して移動させることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記担持基材(5,5.1,5.2)が、スペーサによって、又は前記担持基材(5,5.1,5.2)が位置決めされている位置決めキャリバーによって、前記担持基材(5,5.1,5.2)から前記装飾層(3,3.1,3.2)の裏側までの距離との関連で、前記装飾層(3,3.1,3.2)の裏側に位置決めされることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
プロセス工程が、開放型(1,1.1,1.2)内で行われ、第1の工程では、前記装飾層(3,3.1,3.2)が型に挿入されるか、又は型内で作製され、その後、開放型(1,1.1,1.2)内でさらなる工程がこれに続くことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
膨張した発泡体原料のコーティングが、前記担持基材に面する前記装飾層の側に、又は前記装飾層に面する前記担持基材の側に配置された発泡体層に、完全に又は部分的にコーティングされることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
発泡し、膨張した発泡体コーティング(4,4.1,4.2)が、噴霧により塗布されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記発泡体層(9,9.1,9.2)を形成するために、反応性の発泡し、膨張したポリウレタン発泡体原料が、特にポリウレタン軟質発泡体又は半硬質ポリウレタン発泡体を形成するために、発泡体コーティング(4,4.1,4.2)としてコーティングされることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
発泡体原料を発泡させるための気体状発泡剤として、窒素が使用されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記発泡剤が、混合プロセスの前、及び/若しくは混合プロセスの間に反応材料に導入されるか、又は反応材料の製造に使用されるポリオール成分及び/若しくはイソシアネート成分に導入されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記発泡剤により発泡された、コーティングすべき発泡体原料が水を含まず、少なくとも大部分が水を含まないことを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記担持基材(5.1,5.2)が、少なくとも1つの漏出口を有し、前記ライニング部材(8,8.1,8.2)が、漏出口(12,12.1)を作製するために所定の破断箇所で製造されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
膨張した発泡体コーティングのための前記担持基材が透過性であり、前記膨張した発泡体コーティングを介在させて前記担持基材を前記装飾層に対して位置決めすることにより、発泡体材料が前記担持基材に組み込まれることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記担持基材として繊維マットが使用されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法により製造されるライニング部材、特に自動車用内部ライニング部材であって、前記装飾層(3,3.1,3.2)と前記担持基材(5.1,5.2)との間に様々な大きさの隙間がある場合でも、前記ライニング部材(8,8.1,8.2)の平面的な延伸部にわたり、前記発泡体層(9,9.1,9.2)の硬度が均質であることを特徴とする、ライニング部材。
【請求項17】
膨張したポリウレタン発泡体により形成されている前記発泡体層(9,9.1,9.2)が、特にポリウレタン軟質発泡体又は半硬質ポリウレタン発泡体であることを特徴とする、請求項16に記載のライニング部材。
【請求項18】
前記ライニング部材(8.1,8.2)が、少なくとも1つの漏出口(12,12.1)を有することを特徴とする、請求項16又は17に記載のライニング部材。
【請求項19】
前記発泡体層と前記装飾層及び/又は前記担持基材との間に、特に前記発泡体層とは異なる硬度を有する、さらなる発泡体層が配置されていることを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載のライニング部材。
【国際調査報告】