(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】クロスフローフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/12 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
C12M1/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578999
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2022066745
(87)【国際公開番号】W WO2022268729
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521377638
【氏名又は名称】ザルトリウス・ステディム・ラブ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SARTORIUS STEDIM LAB LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デビッドソン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,アダム
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB17
(57)【要約】
加圧された供給液を濾過するためのクロスフローフィルタ装置が提供される。クロスフローフィルタ装置は、フィルタ膜と、加圧された供給液のための流れチャネルであって、チャネル内の流れの方向が保持液表面に対して接線方向であり、供給液に由来する濾液が膜を通過して流れチャネル内に保持液を残すように、膜の保持液表面上の経路内に延在する流れチャネルと、膜の反対側の濾液表面上に形成された濾液のための回収チャンバとを備える。クロスフローフィルタ装置は、流れチャネル、フィルタ膜および回収チャンバを間に取り囲む保持液側および濾液側を有する密封ハウジングをさらに備える。流れチャネルのための経路は、複数のヘアピン屈曲部を生成する膜の保持液表面の上で前後に屈曲し、クロスフローフィルタ装置は、膜の保持液表面の上の流れチャネルの経路を画定するためにハウジングの保持液側の内面に設けられた流れチャネルガイド壁をさらに備える。各ヘアピン屈曲部の内半径の線を画定するそれぞれのガイド壁は、そのガイド壁に沿って流れる保持液がヘアピン屈曲部を完成させるために少なくとも270°旋回しなければならないように成形される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された供給液を濾過するためのクロスフローフィルタ装置(17)であって、
前記クロスフローフィルタ装置は、フィルタ膜(4)と、前記加圧された供給液のための流れチャネル(10)であって、前記チャネル内の流れの方向が保持液表面に対して接線方向であり、前記供給液に由来する濾液が前記膜を通過して前記流れチャネル内に保持液を残すように、前記膜の前記保持液表面上の経路内に延在する、流れチャネル(10)と、前記膜の反対側の濾液表面上に形成された前記濾液のための回収チャンバとを備え、
前記クロスフローフィルタ装置は、前記流れチャネル(10)、前記フィルタ膜(4)および前記回収チャンバを間に取り囲む保持液側(1)および濾液側(2)を有する密封ハウジングをさらに備え、
前記流れチャネルのための前記経路は、複数のヘアピン屈曲部を生成する前記膜の前記保持液表面の上で前後に屈曲し、前記クロスフローフィルタ装置は、前記膜の前記保持液表面の上の前記流れチャネル(10)の前記経路を画定するために前記ハウジングの前記保持液側(1)の内面に設けられた流れチャネルガイド壁(3)をさらに備え、
各ヘアピン屈曲部の内半径の線(20)を画定するそれぞれのガイド壁は、そのガイド壁に沿って流れる保持液が前記ヘアピン屈曲部を完成させるために少なくとも270°旋回しなければならないように成形されることを特徴とする、クロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項2】
各ヘアピン屈曲部の前記内半径の前記線(20)を画定する前記それぞれのガイド壁は、そのガイド壁に沿って流れる保持液が前記ヘアピン屈曲部を完成させるために約360°旋回しなければならないように成形される、請求項1に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項3】
前記膜の平面内で、および連続するヘアピン屈曲部の間で、1つのヘアピン屈曲部の前記内半径の前記線(20)の出口点から次のヘアピン屈曲部の前記内半径の前記線の入口点の間の距離(Y)は、前記保持液の流れ方向に対して横方向に測定された前記流れチャネルの最小幅(W)の2倍以下である、請求項1または2に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項4】
各ヘアピン屈曲部の前記内半径の前記線(20)は、実質的に多角形であり、角および直線の交互の系列を有し、好ましくは、各ヘアピン屈曲部の前記内半径の前記線は、正方形または長方形の外周線に実質的に従う、先行する請求項のいずれか1項に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項5】
前記流れチャネル(10)は、前記最小幅(W)の最大幅(X)に対する比が0.5より大きいような、前記流れチャネルの長さにわたって前記フィルタ膜(4)の前記平面内の前記保持液の前記流れ方向に対して横方向に測定された幅を有する、請求項4に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項6】
前記流れチャネルガイド壁(3)は、弾性的に変形可能であってもよく、それによって、流体密封シールを形成するように変形し前記フィルタ膜(4)と密封係合する、先行する請求項のいずれか1項に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項7】
前記流れチャネルガイド壁(3)は、前記流れチャネルガイド壁が前記ハウジングの前記保持液側の前記内面とも密封係合するような、弾性的に変形可能なガスケットによって形成される、請求項6に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項8】
前記ハウジングの前記保持液側(1)の前記内面を前記ハウジングの前記濾液側(2)の内面に接合し、それによって前記ハウジングを強化するために、前記流れチャネル(10)の前記経路の外側に延在する複数の相互接続部材をさらに備え、
前記ガスケットは、前記相互接続部材が通過して前記ハウジングの前記保持液側の前記内面に対して前記ガスケットを位置決めするためのそれぞれの位置決めアイ(22)を有し、前記位置決めアイは、前記膜の前記平面内のすべての側でそれぞれの前記相互接続部材を囲む、請求項7に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項9】
前記相互接続部材は、前記ヘアピン屈曲部の中心にそれぞれ配置され、その結果、前記位置決めアイ(22)は、前記ヘアピン屈曲部の前記内半径を画定する前記ガイド壁によって形成される、請求項8に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項10】
加圧された供給液を濾過するためのクロスフローフィルタ装置(17)であって、
前記クロスフローフィルタ装置は、フィルタ膜(4)と、前記加圧された供給液のための流れチャネル(10)であって、前記チャネル内の流れの方向が保持液表面に対して接線方向であり、前記供給液に由来する濾液が前記膜を通過して前記流れチャネル内に保持液を残すように、前記膜の前記保持液表面上の経路内に延在する、流れチャネル(10)と、前記膜の反対側の濾液表面上に形成された前記濾液のための回収チャンバとを備え、
前記クロスフローフィルタ装置は、前記流れチャネル(10)、前記フィルタ膜(4)および前記回収チャンバを間に取り囲む保持液側(1)および濾液側(2)を有する密封ハウジングをさらに備え、
前記流れチャネルのための前記経路は、前記膜の前記保持液表面の上で前後に屈曲し、前記クロスフローフィルタ装置は、弾性的に変形可能なガスケットによって形成された流れチャネルガイド壁(3)をさらに備え、前記ガイド壁は、流体密封シールを形成するように変形し前記フィルタ膜(4)および前記ハウジングの前記保持液側の内面と密封係合し、それによって、前記膜の前記保持液表面の上の前記流れチャネル(10)の前記経路を画定し、
前記クロスフローフィルタ装置は、前記ハウジングの前記保持液側(1)の前記内面を前記ハウジングの前記濾液側(2)の内面に接合し、それによって前記ハウジングを強化するために、前記流れチャネル(10)の前記経路の外側に延在する複数の相互接続部材をさらに備え、
前記ガスケットは、前記相互接続部材が通過して前記ハウジングの前記保持液側の前記内面に対して前記ガスケットを位置決めするためのそれぞれの位置決めアイ(22)を有し、前記位置決めアイは、前記膜の前記平面内のすべての側でそれぞれの前記相互接続部材を囲む、クロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項11】
前記相互接続部材は、前記ハウジングの前記保持液側(1)の前記内面から前記ハウジングの前記濾液側(2)の内面まで軸方向に延在する円筒形の杭の形態である、請求項8~10のいずれか1項に記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項12】
前記回収チャンバ内に配置された有孔支持体本体(5)をさらに備え、前記支持体本体は、前記濾液の比較的妨げられない通過を可能にしながら前記膜(4)に機械的支持を提供する、先行する請求項のいずれかに記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項13】
前記ハウジングは、前記流れチャネルガイド壁および前記フィルタ膜を間に挟む保持液側プレート(1)および濾液側プレート(2)を有する、先行する請求項のいずれかに記載のクロスフローフィルタ装置(17)。
【請求項14】
請求項8または10を引用する請求項13に記載のクロスフローフィルタ装置を形成する方法であって、前記方法は、
前記保持液側プレート(1)に、それに接合された前記相互接続部材を設けることと、
前記相互接続部材が前記位置決めアイ(22)を通過するように前記ガスケットを前記保持液側プレート(1)上に配置することと、
前記相互接続部材のための開口を有するフィルタ膜(4)を提供し、前記相互接続部材が前記開口を通過するように前記ガスケット上に前記膜を積層することと、
前記保持液側プレートと前記濾液側プレートとの間に前記流れチャネルガイド壁(3)および前記フィルタ膜(4)を挟むように、前記濾液側プレート(2)を前記相互接続部材の前記保持液側プレート(1)から遠位の端部に接合することとを含む、方法。
【請求項15】
請求項8または10を引用する請求項13に記載のクロスフローフィルタ装置を形成する方法であって、前記方法は、
前記保持液側プレート(1)に、その前記内面から延在する第1の突起を設け、前記濾液側プレート(2)に、その前記内面から延在する対応する第2の突起を設けることと、
前記第1の突起が前記位置決めアイ(22)を通過するように前記ガスケットを前記保持液側プレート(1)上に配置することと、
前記ガスケット上の前記フィルタ膜(4)と、前記保持液側プレート(1)から遠位の前記第1の突起の端部とを積層することと、
前記相互接続部材を形成するために前記第2の突起がそれらの対応する第1の突起に合致し前記フィルタ膜を間に捕捉するように、および前記保持液側プレート(1)と前記濾液側プレートとが前記流れチャネルガイド壁(3)と前記フィルタ膜とを挟むように、前記濾液側プレート(2)を前記フィルタ膜(4)に積層することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月22日に出願された欧州特許第21181005.6号の優先権を主張し、その内容および要素は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、加圧された供給液を濾過するためのクロスフローフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
クロスフロー濾過は、加圧された供給液が、供給液に由来し得る濾液に対して透過性の膜上を接線方向に流されるプロセスである。供給液が膜の一方の側を流れるとき、濾液は膜の他方の側に通過し、濾液が枯渇した供給液である保持液を残す。したがって、膜を通過しない供給液中の媒体は、保持液中に濃縮される。クロスフロー濾過の可能な使用は以下の通りである。
【0004】
・治療用生物製剤、例えばモノクローナル抗体、ウイルスベクター、組換えタンパク質の濃縮および分離。
【0005】
・種々雑多なタンパク質、多糖類および他の生体分子の濃縮および分離。
・水試料などからの無機物および他の高分子の濃縮および分離
・試料の除タンパク。
【0006】
・緩衝液交換およびダイアフィルトレーション。
典型的には、供給液は、クロスフローフィルタ装置に周期的に流入し、膜上を流れ、再び流出し、媒体はそのような各サイクルで保持液中に濃縮される。膜を通過した濾液は、膜の反対側の出口を通って装置を出る。保持液出口における流量制限器は、装置内に圧力を生成するために使用される。
【0007】
例示的な装置は、Sartoriusから入手可能なVivaflow 50(商標)、Vivaflow 50R(商標)およびVivaflow 200(商標)である。
【0008】
Vivaflow 50R(商標)は、硬質で透明なプラスチック、保持液側および濾液側プレートを有するカセットとして形成される。これらのプレートは、貫流する液体の圧力によって生じる応力に耐えるのに十分な厚さであり、それらの周囲の周りに一緒にボルト止めされる。このように形成されたカセットハウジングは、供給液/保持液のための流れチャネルと、透過性膜と、濾液などの液体の比較的妨げられない通過を可能にしながら膜を支持する板状の多孔性支持体本体とを密封して収容する。カセットは、流れチャネルへの供給液のための保持液側プレート内の入口、流れチャネルからの保持液のための保持液側プレート内の出口、および膜および支持体本体を通過した濾液のための濾液側プレート内のさらなる出口をさらに特徴とする。流れチャネルは、膜の保持液表面上を往復し、これは、すべての供給液を膜の大きな表面積にさらすのに役立ち、また、供給液の渦を生成し、直線的な流れを破壊するための回旋状経路を導入し、したがってカセットの濾過効率を改善する。
【0009】
Vivaflow 50R(商標)では、保持液側プレートの内面に流れチャネルが凹部として形成されている。カセットを組み立てる際には、保持液側プレート、膜、支持体本体、濾液側プレートの順に重ねた後、保持液側プレートと濾液側プレートとをボルト止めする。その結果、凹部の外側にある保持液側プレートの内面の隆起部が膜を押圧し、流れチャネルの前後の深さはちょうど凹部の深さである。しかしながら、この配置は、供給液の流れ経路を流れチャネルに閉じ込める一方で、保持液側プレートの内面の隆起部と膜との間に形成される不完全なシールに起因して、供給液の一部がシャトル流れチャネルを短絡させることを可能にする。このような短絡は、Vivaflow 200(商標)の濾過効率を損なう。
【0010】
Vivaflow 200(商標)は、Vivaflow 50(商標)と同じように機能するが、供給入口が流体を分割し、1つではなく2つの膜の保持液表面を横切って配向する点が異なる。2つの膜は、多孔性支持体本体を含む濾液回収チャンバを挟むので、濾液は片側ではなく両側から入る。この利点は、より大きな膜表面積が達成され、濾過速度を増加させながら装置全体のサイズを最小化することである。
【0011】
Vivaflow 50(商標)は、同様の単回使用のクロスフローフィルタ装置であり、同じくSartoriusから入手可能である。それは、Vivaflow 50R(商標)およびVivaflow 200(商標)と同じ機能を実行するが、いくつかの構成上の違いがある。例えば、その保持液側プレートおよび濾液側プレートは、それらを一緒に押圧するために厚いプラスチックスリーブに押し込まれる。
【0012】
国際公開第2020/173762号は、ガイド壁が膜の保持液表面上の流れチャネルの経路を画定し、ガイド壁がフィルタ膜との流体密封シールを形成する改善されたクロスフローフィルタ装置を提案している。このようにして、ガイド壁は、流れチャネルの縁部の周りに効果的な封止を提供することができ、それによって供給液による流れチャネルの短絡を実質的に排除することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それにもかかわらず、例えば製造の容易さを改善するため、および/または保持液の乱流を増加させ、したがって装置の濾過効率を改善するために、クロスフローフィルタ装置のさらなる改善が求められている。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明の第1の態様によれば、加圧された供給液を濾過するためのクロスフローフィルタ装置が提供され、
クロスフローフィルタ装置は、フィルタ膜と、加圧された供給液のための流れチャネルであって、チャネル内の流れの方向が保持液表面に対して接線方向であり、供給液に由来する濾液が膜を通過して流れチャネル内に保持液を残すように、膜の保持液表面上の経路内に延在する、流れチャネルと、膜の反対側の濾液表面上に形成された濾液のための回収チャンバとを備え、
クロスフローフィルタ装置は、流れチャネル、フィルタ膜および回収チャンバを間に取り囲む保持液側および濾液側を有する密封ハウジングをさらに備え、
流れチャネルのための経路は、複数のヘアピン屈曲部を生成する膜の保持液表面の上で前後に屈曲し、クロスフローフィルタ装置は、膜の保持液表面の上の流れチャネルの経路を画定するためにハウジングの保持液側の内面に設けられた流れチャネルガイド壁をさらに備え、
各ヘアピン屈曲部の内半径の線を画定するそれぞれのガイド壁は、そのガイド壁に沿って流れる保持液がヘアピン屈曲部を完成させるために少なくとも270°旋回しなければならないように成形される。
【0015】
有利には、そのような屈曲部の周りに保持液を押し込むことによって、液の経路がより複雑になり、液の乱流が著しく増加し、それによって圧力および流速の乱流誘発によるカオス的変化によって装置の濾過効率が改善される。
【0016】
各ヘアピン屈曲部で保持液が通過しなければならない角度を増加させることにより、乱流をさらに増加させ、濾過効率を改善することができる。したがって、各ヘアピン屈曲部の内半径の線を画定するそれぞれのガイド壁は、好ましくは、そのガイド壁に沿って流れる保持液がヘアピン屈曲部を完成させるために約360°旋回しなければならないように成形される。
【0017】
追加的または代替的に、各ヘアピン屈曲部の上流側では、ヘアピン屈曲部に到達するときのガイド壁の線は、後続の旋回の反対の回転の向きに約90°の最初の旋回を行うことができ、それによって後続のヘアピンが完成する。この最初の旋回はまた、乱流を増加させ、濾過効率を改善することができる。
【0018】
膜の平面内で、および連続するヘアピン屈曲部の間で、1つのヘアピン屈曲部の内半径の線の出口点から次のヘアピン屈曲部の内半径の線の入口点の間の距離は、保持液の流れ方向に対して横方向に測定された流れチャネルの最小幅の2倍以下であり得る。そのような配置は、連続するヘアピン屈曲部が(流れチャネルの幅に対して)互いに近接して位置することを必要とし、それによって、1つのヘアピン屈曲部によって保持液中に生成された乱流は、次のものによって生成された乱流によって迅速に引き継がれ、流れチャネルの長さに沿って改善された濾過効率を維持するのに役立つ。
【0019】
各ヘアピン屈曲部の内半径の線は、実質的に多角形であってもよく、角および直線の交互の系列を有してもよい。好ましくは、各ヘアピン屈曲部の内半径の線は、正方形または長方形の外周線に実質的に従う。角と直線の交互の系列は、保持液中の層流を破壊するのに役立ち、これは乱流の生成を促進する別の要因である。
【0020】
各ヘアピン屈曲部の外半径の線は、例えば内半径の線と一致するように、実質的に多角形であってもよい。外半径の多角形線の角と直線の交互の系列は、保持液中の層流を分解し、乱流の生成を促進するのに役立ち得る。
【0021】
流れチャネルは、最小幅の最大幅に対する比が0.5より大きく、好ましくは0.6より大きく、より好ましくは0.7より大きいような、流れチャネルの長さにわたって膜の平面内の保持液の流れ方向に対して横方向に測定された幅を有し得る。このようにして、保持液の流れを妨げる流れチャネルの狭窄を回避することができる。
【0022】
流れチャネルのための経路は、少なくとも3つのヘアピン屈曲部を生成するために、膜の保持液表面の上を前後に屈曲し得る。
【0023】
流れチャネルガイド壁は、弾性的に変形可能であってもよく、それによって、流体密封シールを形成するように変形しフィルタ膜と密封係合する。このようにして、流れチャネルの縁部の周りの効果的な封止を保証することができ、それによって供給液による流れチャネルの短絡を実質的に排除することができる。好都合には、例えば、ガイド壁は、ガイド壁がハウジングの保持液側の内面とも密封係合するような、弾性的に変形可能なガスケットによって形成されてもよい。そのようなガスケットは、異なるタイプの膜を収容してシールすることができ、異なるタイプの膜を同じ基本装置で使用することを可能にする。
【0024】
クロスフローフィルタ装置は、ハウジングの保持液側の内面をハウジングの濾液側の内面に接合し、それによってハウジングを強化するために、流れチャネルの経路の外側に延在する複数の相互接続部材をさらに備え得る。その場合、上述のガスケットは、相互接続部材が通過してハウジングの保持液側の内面に対してガスケットを位置決めするそれぞれの位置決めアイを有してもよく、位置決めアイは、膜の平面内のすべての側でそれぞれの相互接続部材を囲む。有利には、そのような配置は、ガスケットが装置に容易に組み付けられて装置内に配置される別個の構成要素として提供されることを可能にし、相互接続部材は、膜およびハウジングの保持液側に対する組み立て中および組み立て後のガスケットの移動を防止するのに役立つ。
【0025】
好都合には、相互接続部材は、ヘアピン屈曲部の中心にそれぞれ配置されてもよく、その結果、位置決めアイは、ヘアピン屈曲部の内半径を画定するガイド壁によって形成される。
【0026】
ガスケットおよび相互接続部材は、少なくとも270°のヘアピン屈曲部を有する装置に使用することができるが、クロスフローフィルタ装置に対してより一般的な適用性を有する。したがって、本発明の第2の態様では、加圧された供給液を濾過するためのクロスフローフィルタ装置が提供され、
クロスフローフィルタ装置は、フィルタ膜と、加圧された供給液のための流れチャネルであって、チャネル内の流れの方向が保持液表面に対して接線方向であり、供給液に由来する濾液が膜を通過して流れチャネル内に保持液を残すように、膜の保持液表面上の経路内に延在する、流れチャネルと、膜の反対側の濾液表面上に形成された濾液のための回収チャンバとを備え、
クロスフローフィルタ装置は、流れチャネル、フィルタ膜および回収チャンバを間に取り囲む保持液側および濾液側を有する密封ハウジングをさらに備え、
流れチャネルのための経路は、膜の保持液表面の上で前後に屈曲し、クロスフローフィルタ装置は、弾性的に変形可能なガスケットによって形成された流れチャネルガイド壁をさらに備え、ガイド壁は、流体密封シールを形成するように変形しフィルタ膜およびハウジングの保持液側の内面と密封係合し、それによって、膜の保持液表面の上の流れチャネルの経路を画定し、
クロスフローフィルタ装置は、ハウジングの保持液側の内面をハウジングの濾液側の内面に接合し、それによってハウジングを強化するために、流れチャネルの経路の外側に延在する複数の相互接続部材をさらに備え、
ガスケットは、相互接続部材が通過してハウジングの保持液側の内面に対してガスケットを位置決めするためのそれぞれの位置決めアイを有し、位置決めアイは、膜の平面内のすべての側でそれぞれの相互接続部材を囲む。
【0027】
上述したように、有利には、そのような配置は、ガスケットが装置に容易に組み付けられて装置内に配置される別個の構成要素として提供されることを可能にし、相互接続部材は、膜およびハウジングの保持液側に対する組み立て中および組み立て後のガスケットの移動を防止するのに役立つ。
【0028】
相互接続部材を有する第1の態様の装置、または第2の態様の装置では、相互接続部材は、ハウジングの保持液側の内面からハウジングの濾液側の内面まで軸方向に延在する円筒形の杭の形態であってもよい。そのような形態で相互接続部材を設けることは、保持液表面上を前後に屈曲する際に流れチャネルによって形成される屈曲部の中心にそれらを配置することに適合する。好都合には、相互接続部材は、ハウジングに溶融接合されてもよい。
【0029】
相互接続部材を有する第1の態様の装置、または第2の態様の装置では、各相互接続部材は、ハウジングの保持液側の内面からハウジングの濾液側の内面まで途切れることなく延在し、膜に形成されたそれぞれの開口部を通過する単一の構成要素であってもよい。しかしながら、別の選択肢は、各相互接続部材について、ハウジングの保持液側の内面およびハウジングの濾液側の内面からそれぞれ延在し、膜で交わる第1および第2の突起から形成されることである。そのような選択肢は、膜が熱シール可能である場合に実施するのに便利であってもよく、その結果、対になった突起および膜は、それらが膜で合致する場所で一緒に熱溶着され得る。この場合、膜内の相互接続部材のための開口を形成する必要はなく、すなわち、各相互接続部材は、所与の対の突起およびそれらの間に閉じ込められた膜の小さな領域によって形成することができる。
【0030】
ガスケットを有する第1の態様の装置、または第2の態様の装置では、ガスケットは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリシラキサン、またはラテックスなどのエラストマーから形成されてもよい。
【0031】
第1または第2の態様の装置では、ハウジングは、供給液のための流れチャネルへの入口と、保持液のための流れチャネルからの出口と、濾液のための回収チャンバからの出口とを含み得る。使用時には、例えば、外部ポンプが供給液を循環させ、装置を通して液体を保持することができるように、外部チューブが典型的には入口および出口で装置に取り付けられる。好都合には、流れチャネルへの入口および流れチャネルからの出口をハウジングの保持液側に形成してもよく、回収チャンバからの出口をハウジングの濾液側に形成してもよい。入口および出口のうちの1つまたは複数は、それぞれの外部チューブに接続するためのそれぞれの回転ルアーカフを含み得る。
【0032】
ハウジングは、回収チャンバ内に配置された有孔支持体本体をさらに備えてもよく、支持体本体は、濾液の、例えば濾液出口への比較的妨げられない通過を可能にしながら膜に機械的支持を提供する。支持体本体は、例えば、多孔性プラスチック製であってもよい。それは、プラスチック微粒子を焼結することによって製造されてもよい。しかしながら、他の材料および/または製造プロセスを使用することができる。そのような支持体本体の代替として、ハウジングと一体的に形成された突起は、膜を支持するためにハウジングの濾液側の内面から突出してもよく、突起は濾液のそれらの間の比較的妨げられない通過を可能にする。
【0033】
第1または第2の態様の装置では、ハウジングは透明材料で形成されてもよい。これにより、装置の動作をユーザが視覚的に監視することができる。好都合には、それはプラスチック材料から形成することができる。しかしながら、ガラス、セラミックまたは金属などの他の種類の材料がハウジングに使用されてもよい。
【0034】
第1または第2の態様の装置では、ハウジングの保持液側および濾液側は、それらの間に流れチャネルガイド壁およびフィルタ膜(および存在する場合は有孔支持体本体)を挟むそれぞれのプレートとして形成されてもよい。特に、ハウジングは、それぞれの封止周縁に沿って一緒に封止されて、ガイド壁およびフィルタ膜(および存在する場合は有孔支持体本体)が収容される空洞を間に形成する保持液側プレートおよび濾液側プレートを有してもよい。シール周縁の周りにOリングを設けて、それらの間のシールを完全にしてもよい。プレートは、様々な手段、例えば、超音波溶接、熱かしめ、接着、または機械的干渉によって一緒にシールされてもよい。プレートの接合は、機械的締結具(例えば、ねじ、ボルト、ステープル、クランプなど)、一体型スナップ嵌合接続部、および/またはウェッジフィット機構によって実施または補完され得る。別の選択肢は、密封ハウジングが、ケーシングを互いに接合する成形またはオーバーモールドされた包囲部をさらに含むことである。
【0035】
第1または第2の態様の装置は、例えば少なくとも10-3、好ましくは少なくとも10-6の無菌性保証レベルまで無菌であり得る。装置を滅菌するための典型的な方法は、エチレンオキシドガスおよび放射線を含む。滅菌保証レベルは、エチレンオキシドガスについてはISO11135:2014、放射線についてはISO11137:2006などの適切な規格に従って検証することができる。有利には、装置は、特に入口および出口の領域において、捕捉領域を減少させ、選択された滅菌プロセスの有効性を改善するように構成することができる。熱かしめ、超音波溶接などを使用して装置の部品を接合することはまた、この接合プロセスが無菌性を損なう可能性がある固定具、締結具、接着剤または他の構成要素の使用を必要としないので、無菌性を促進するために一般に有益である。
【0036】
第1または第2の態様の装置は、第2のフィルタ膜と、回収チャンバの反対側に対応する流れチャネルおよび流れチャネルガイド壁とを有する二重膜装置であってもよく、すなわち、回収チャンバが第1および第2のフィルタ膜の間に挟まれ、濾液の第1の部分が第1の膜を通過して回収チャンバに入り、濾液の残りの第2の部分が第2の膜を通過して回収チャンバに入る。したがって、密封ハウジングの保持液側は第1の保持液側となり、一方、ハウジングの濾液側は第2の保持液側として記述することができる。典型的には、有孔支持体本体は、そのような装置の回収チャンバ内に配置される。
【0037】
上述したように、相互接続部材およびガスケットを別個の構成要素として有する装置は、装置の組み立て中に利点を提供する。したがって、本発明の第3の態様では、ガスケット、相互接続部材、保持液側プレートおよび濾液側プレートを有する第1の態様による、または保持液側プレートおよび濾液側プレートを有する第2の態様によるクロスフローフィルタ装置を形成する方法が提供され、方法は、
保持液側プレートに、それに接合された相互接続部材を設けることと、
相互接続部材が位置決めアイを通過するようにガスケットを保持液側プレート上に配置することと、
相互接続部材のための開口を有するフィルタ膜を提供し、相互接続部材が開口を通過するようにガスケット上に膜を積層することと、
保持液側プレートと濾液側プレートとの間に流れチャネルガイド壁およびフィルタ膜を挟むように、濾液側プレートを相互接続部材の保持液側プレートから遠位の端部に接合することとを含む。
【0038】
第3の態様の方法は、相互接続部材のためのさらなる開口を有する有孔支持体本体を提供することと、相互接続部材がさらなる開口を通過するように、濾液側プレートを相互接続部材の端部に接合する前に、積層された膜上に有孔支持体本体を積層することとをさらに含み、濾液側プレートを相互接続部材の端部に接合した後、濾液の比較的妨げられない通過を可能にしながら膜に機械的支持を提供するために、有孔支持体本体も保持液側プレートと濾液側プレートとの間に挟まれ、有孔支持体本体は回収チャンバ内に配置される。
【0039】
代替的に、本発明の第4の態様では、ガスケット、相互接続部材、保持液側プレートおよび濾液側プレートを有する第1の態様による、または保持液側プレートおよび濾液側プレートを有する第2の態様によるクロスフローフィルタ装置を形成する方法が提供され、方法は、
保持液側プレートに、その内面から延在する第1の突起を設け、濾液側プレートに、その内面から延在する対応する第2の突起を設けることと、
第1の突起が位置決めアイを通過するようにガスケットを保持液側プレート上に配置することと、
ガスケット上の膜と、保持液側プレートから遠位の第1の突起の端部とを積層することと、
相互接続部材を形成するために第2の突起がそれらの対応する第1の突起に合致しフィルタ膜を間に捕捉するように、および保持液側プレートと濾液側プレートとが流れチャネルガイド壁とフィルタ膜とを挟むように、濾液側プレートをフィルタ膜に積層することとを含む。
【0040】
第4の態様の方法は、第2の突起のための開口を有する有孔支持体本体を提供することをさらに含み得る。したがって、第2の突起がそれらの対応する第1の突起と合致し、膜をそれらの間に捕捉して相互接続部材を形成するように、濾液側プレートが膜上に積層されると、有孔支持体本体は、第2の突起が開口を通過する状態で濾液側プレートと膜との間に位置づけられ得る。このようにして、有孔支持体本体はまた、保持液側プレートと濾液側プレートとの間に挟まれることができ、有孔支持体本体は、濾液の比較的妨げられない通過を可能にしながら膜に機械的支持を提供するために回収チャンバ内に配置される。
【0041】
本発明は、記載された態様および好ましい特徴の組合せを含むが、そのような組合せが明らかに許容されないかまたは明示的に回避される場合を除く。
【0042】
次に、本発明の原理を示す実施形態および実験を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図2】クロスフローフィルタ装置の変形例の側面図である。
【
図4】
図1および
図3の装置のさらなる変形例の流れチャネルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明の詳細な説明
次に、本発明の態様および実施形態を、添付の図面を参照して説明する。さらなる態様および実施形態は、当業者には明らかであろう。本明細書で言及されるすべての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
図1は、クロスフローフィルタ装置17の斜視図を示し、ハウジングは、間に空洞を画定する保持液側プレート1および濾液側プレート2を備える。供給液を空洞に流入させるための入口7が保持液側プレート1に形成され、保持液8を空洞から流出させるための出口8が保持液側プレート1に形成され、濾液を空洞から流出させるための出口(
図1では見えない)が濾液側プレート2に形成される。
【0046】
供給液入口7および保持液出口8は、それぞれの回転ルアーカフ6との雄ルアー接続部を有し、濾液出口は雌ルアー接続部を有する。ルアー接続部は、外部チューブコネクタを装置17に取り付けることを可能にする。
【0047】
ハウジングプレート1、2は、それぞれ正方形のプレートとして形成される。好都合には、プレート1、2は、剛性の透明プラスチック材料で形成されてもよい。プレート1、2の間には、保持液側から濾液側へと順に、流れチャネルガイド壁3、フィルタ膜4、および有孔支持体本体が挟まれる。プレートの透明な性質により、ガイド壁3およびフィルタ膜4が
図1で見えるようになり、有孔支持体本体は
図1ではフィルタ膜の背後に隠される。プレート1、2は、以下でより詳細に説明するように、それぞれの外周の周りで一緒に接合されて封止モジュールを形成する。
【0048】
ガイド壁3は、入口7から出口8まで膜4の保持液表面上で前後に屈曲する流れチャネル10の経路を画定し、一方の側で保持液側プレート1の内面と係合し、他方の側でフィルタ膜4と係合するガスケットによって形成される。ガスケットは、浸出に対する耐性が高いTPU、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリシラキサン、またはラテックスなどの医学的に安全なエラストマーで作られる。これにより、装置17を通って流れる濾液および供給液/保持液の汚染のリスクが低減または回避される。ガイド壁3は、弾性的に柔軟であり、フィルタ膜4の保持液表面および保持液側プレート1の内面の任意の凹凸に適合してこれを収容し、流れチャネル10の縁部の周りに良好なシールを形成する。したがって、入口7から出口8までの流れ経路10上の液体による流れチャネル10の短絡を実質的に防止することができる。さらに、それらは、異なるタイプの膜4(例えば、ポリエーテルスルホン膜、再生セルロース膜、または酢酸セルロース膜)に適合することができ、膜4の任意の表面処理、例えば膜に取り付けられた特殊な受容体に対する損傷を防ぐのを助けることができる。したがって、同じ基本的なフィルタ装置は、膜の種類を変更するだけで、多くの異なる用途に使用することができる。特に、装置17は、例えば抗体などのバイオ医薬品の製造のために、実験室ベンチ濾過をスケールアップまたはスケールダウンするために使用することができる。
【0049】
有孔支持体本体は、膜4と濾液側プレート2の内面との間のハウジング空洞のその部分によって生成された濾液のための回収チャンバを満たす。支持体本体は、実質的にその全領域にわたって膜4を物理的に支持し、膜4を通る濾液の流れを駆動する圧力差を膜4にわたって確立することを可能にする。本体内の孔は、濾液が膜4から回収チャンバを介して出口への経路中に比較的妨げられることなく本体を通過することができるように形成される。好都合には、本体5は、プラスチック微粒子を焼結することによって形成された多孔性プラスチック本体とすることができる。
【0050】
使用時には、供給液入口7および保持液出口8に取り付けられた外部配管は、外部ポンプに接合される。さらなる外部管が濾液出口に取り付けられ、回収容器まで延在する。ポンプは、入口7を介して、ガイド壁3によって画定された流れチャネル10に沿って、供給液を連続的に装置内に循環させ、出口8から保持液としてポンプに戻す。流れチャネル10内の液体の流れの方向は、膜4の保持液表面に対して接線方向であり、膜4にわたる圧力差は、膜4を通る供給液から得られた濾液の流れを駆動する。保持液出口9における流量制限器(図示せず)は、装置17内に圧力を生成するために使用される。
【0051】
流れチャネル10の前後の屈曲は、供給液のすべてを膜4の保持液表面の大きな表面積にわたって通過させる。それはまた、供給液に渦および乱流を生じさせ、供給液の直線的な流れを破壊する。より具体的には、流れチャネル10の経路は、膜4の幅にわたって連続するヘアピン屈曲部によって接続される一連の連続した逆平行のスイッチバック行程からなる。
【0052】
したがって、装置を動作させた結果、ポンプが供給液を循環させると、供給液に由来する濾液が有孔支持体本体を通過して濾液出口に取り付けられた回収容器に回収され、膜4を通過しない供給液中の媒体が保持液中に濃縮される。
【0053】
ハウジングを形成するために、ハウジングプレート1、2は、例えば、超音波溶接、熱かしめ、接着、または機械的干渉などの様々な手段によって、それらのそれぞれの外周の周りに一緒にシールされてもよい。プレートの接合は、機械的締結具(例えば、ねじ、ボルト、ステープル、クランプなど)、一体型スナップ嵌合接続部、および/またはウェッジフィット機構によって実施または補完され得る。別の選択肢は、密封ハウジングが、ケーシングを互いに接合する成形またはオーバーモールドされた包囲部をさらに含むことである。シール周縁の周りにOリングを設けて、それらの間のシールを完全にしてもよい。
【0054】
それらの変形可能性により、ガイド壁3は、フィルタ膜4と保持液側プレート1の内面との間のスタンドオフの変化を可能にする。このスタンドオフを制御するために、(i)動作中に受ける圧力に対してハウジングを強化し、(ii)(以下でより詳細に説明する)装置の組み立てを容易にする一方で、円筒形の杭16の形態の相互接続部材を設けて、ハウジングプレート1、2の内面を物理的に連結することができる。杭16は、流れチャネル10の経路の外側で、膜4および支持体本体5の専用の開口を貫通する。例えば、杭16は、一方のプレート(この例では、保持液側プレート1)の内面に溶融接合などの適切な接合プロセスによって接合することができ、装置17の組み立て時に、典型的には同じ接合プロセスによって他方のプレート(この例では、濾液側プレート2)の内面に接合することができる。ハウジングを剛性化して強化することにより、杭16は、ハウジングプレートがそうでない場合よりも薄い材料から製造されることを可能にする。
【0055】
装置17は、エチレンオキシドガスおよび放射性核種、X線または電子ビーム放射を含む典型的な滅菌方法を用いて無菌として製造することができる。
【0056】
図2は、クロスフローフィルタ装置17の変形例の側面図を示す。これは、
図1に示されている装置よりも大きな装置であり、側面プレート1、2は正方形ではなく長方形であり、流れチャネル10は、入口7から出口8まで屈曲する際により多くのヘアピン屈曲部を有する。
図1では見えなかった濾液出口9が、
図2の図に見える。
【0057】
図1および
図2の両方の装置において、流れチャネル10の各ヘアピン屈曲部の内半径の線を画定するそれぞれのガイド壁3は、そのガイド壁に沿って流れる保持液がヘアピン屈曲部を完成させるために約360°旋回しなければならないように成形される。
図3は、
図1の装置の流れチャネル10を概略的に示し、その3つのヘアピン屈曲部の各々について360°の旋回が示されている。この旋回量は、例えば、流れを180°だけ旋回させるヘアピン屈曲部と比較して、圧力および流速のより無秩序な変化を強制することによって液体の乱流を増加させ、それによって装置の濾過効率を改善する。それはまた、屈曲部の長さを増加させることによって液体の乱流を増加させる。より具体的には、所与の屈曲部の周りの流れは、屈曲部の内側で比較的遅い速度(
図3の黒いブロック矢印で示される)を有し、屈曲部の外側で比較的速い速度(
図3の灰色のブロック矢印で示される)を有する。これらの流れは、直線と比較して、屈曲部でチャネルの幅にわたってより高い速度勾配を生成する。これらの勾配は乱流を促進するので、直線の全長に対して屈曲部の全長を増加させることはまた、装置の濾過効率を改善する。
【0058】
各ヘアピン屈曲部の内半径20の線は、正方形または長方形の外周線に実質的に従う。この多角形線の角と直線の交互の系列は、保持液中の層流を分解するのに役立ち、液体中の乱流をさらに増加させる。
【0059】
同様に、各ヘアピン屈曲部の外半径21の線は、内半径20の線と一致するように正方形または長方形の外周線に実質的に従う。外半径の多角形線の角と直線の交互の系列もまた、保持液中の層流を分解し、乱流の生成を促進するのに役立つ。さらに、外半径の多角形線は、流れチャネル10が膜4の上に効率的に延在することを可能にし、ガイド壁3の外側の膜の未使用の「デッド」領域をほとんど残さない。このようにして、流れチャネルによる「空間充填」を最大化することができ、これにより濾過効率が改善される。
【0060】
流れチャネルは、最小幅Wの最大幅Xに対する比が0.5より大きく、好ましくは0.6より大きく、より好ましくは0.7より大きいような、流れチャネルの長さにわたる(膜の平面内の保持液の流れ方向に対して横方向に測定された)幅を有する。このようにして、保持液の流れを妨げる流れチャネルの著しい狭窄を回避することができる。
【0061】
保持液中の乱流を促進するのに役立つさらなる特徴は、流れチャネル10の幅に対して互いに近接して連続するヘアピン屈曲部の位置である。特に、1つのヘアピン屈曲部の内半径の線の出口点と次のヘアピン屈曲部の内半径の線の入口点との間の距離Yは、保持液の流れ方向に対して横方向に測定された流れチャネルの最小幅Wの2倍以下であり得る。このようにして、1つのヘアピン屈曲部によって保持液中に生成された乱流は、次のものによって生成された乱流によって迅速に引き継がれ、流れチャネルの長さに沿って改善された濾過効率を維持するのに役立つ。
【0062】
上述したように、装置17は、ハウジングプレート1、2の内面を接合する円筒形の杭16の形態の相互接続部材を有する。好都合には、これらの杭は、ヘアピン屈曲部の中心に配置することができる。したがって、各ヘアピン屈曲部の内半径の線20を画定するガスケットの部分はまた、(膜の平面内の)すべての側でそれぞれの相互接続部材を囲む位置決めアイ22を形成する。この配置は、ガスケットが装置に容易に組み付けられて装置内に配置される別個の構成要素として提供されることを可能にし、杭は、膜およびハウジングの保持液側に対する組み立て中および組み立て後のガスケットの移動を防止するのに役立つ。より詳細には、装置を組み立てるために、まず、杭16が保持液側プレート1に接合される。次に、杭が位置決めアイ22を通過するように、ガスケットが保持液側プレート上に配置される。次いで、フィルタ膜4および有孔支持体本体は、ガスケット上に連続して積層され、杭は、膜および支持体本体に形成されたそれぞれの開口を通過する。最後に、濾液側プレート2を杭の遠位端に接合して、装置の層状構造を完成させる。
【0063】
しかしながら、代替的に、各杭16は、保持液側プレート1の内面および濾液側プレート2の内面からそれぞれ延在し、それらの間にフィルタ膜4の小部分を捕捉する第1および第2の突起から形成することができる。組み立てのために、ガスケットは、第1の突起が位置決めアイ22を通過するように、保持液側プレート上に位置づけられる。次いで、フィルタ膜4をガスケットおよび第1の突起の遠位端に積層する。最後に、第2の突起が支持体本体に形成されたそれぞれの開口を通過し、第2の突起が膜4を挟んで第1の突起と会合するように、有孔支持体本体と濾液側プレート2とを膜上に積層する。
【0064】
ヘアピン屈曲部の各々に360°の旋回を提供することは、保持液中の乱流を増加させ、それによって装置の濾過効率を改善するのに特に有益であるが、ヘアピン屈曲部でより低い角度の旋回で同様の利点を達成することが可能である。例えば、
図4は、
図1および
図3の装置のさらなる変形例の流れチャネル10を概略的に示し、ここでは、3つのヘアピン屈曲部で360°の旋回が270°の旋回に置き換えられている。これらのより低い角度の旋回は、依然として乱流を増加させ、濾過効率を改善することができる。
【0065】
図1および
図3の360°旋回および
図4の270°旋回の共通の特徴は、ガイド壁の線20が、各ヘアピン屈曲部の上流側から到達するとき、後続のヘアピンを完成させるのに必要な次の旋回とは反対の回転の向きに約90°(
図4に示す)の初期旋回を行うことである。この最初の旋回は、ガイド壁に沿った保持液の流れに対するバリアを生成し、乱流を生成し、後続の旋回が後続のヘアピンを通ってより高い角度を通ることを可能にする方向の変化を強制する。
【0066】
上述の装置は、保持液側および濾液側を有する。しかしながら、他の変形装置は、第1および第2のフィルタ膜が有孔支持体本体の両側を挟む二重膜装置であり得る。このようにして、濾液は、本質的に同じ装置全体のサイズを維持しながら、すなわち装置のサイズに比例して利用可能な膜表面積を2倍にしながら、濾過速度を高めるために、ただ1つではなく両側から回収チャンバに入る。好都合には、そのような二重装置は、両方の膜の流れチャネルに液体を供給する単一の入口と、対応する単一の出口とを有する。
【0067】
前述の説明、または以下の特許請求の範囲、または添付の図面に開示された特徴は、それらの特定の形態で、または開示された機能を実行するための手段、または開示された結果を取得するための方法もしくはプロセスに関して表現され、必要に応じて、別個に、またはそのような特徴の任意の組合せで、本発明をその多様な形態で実現するために利用し得る。
【0068】
本発明を上記の例示的な実施形態と併せて説明してきたが、本開示が与えられると、多くの同等の修正および変形が当業者には明らかであろう。したがって、上記の本発明の例示的な実施形態は例示的であり、限定的ではないと考えられる。記載された実施形態に対する様々な変更は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行い得る。
【0069】
誤解を避けるために、本明細書で提供される任意の理論的説明は、読者の理解を改善する目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望まない。
【0070】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成上の目的のためだけであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0071】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈上別段の要求がない限り、「備える(comprise)」および「含む(include)」という単語、ならびに「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、および「含む(including)」などの変種は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を含むが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を除外しないことを意味すると理解される。
【0072】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関する「約」という用語は任意選択的であり、例えば±10%を意味する。
【国際調査報告】