(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤及び少なくとも1種の塩化カリウム共輸送体2型の刺激剤を含む組み合せ、並びにその医学的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240621BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20240621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/138 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/4525 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/501 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P29/02
A61P43/00 121
A61K31/138
A61K31/4525
A61K31/381
A61K31/135
A61K31/501
A61K31/5415
A61K31/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579023
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2022066761
(87)【国際公開番号】W WO2022268738
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506424209
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】522040735
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ラヴァル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォサ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】アビー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ドュ コニンク,イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ブアリ-ベナゾーズ,ラビア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA081
4C084ZA122
4C084ZB212
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BB02
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4C086BC82
4C086BC89
4C086CB11
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA08
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA07
4C206FA21
4C206KA01
4C206KA06
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZA08
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤と少なくとも1つの塩化カリウム共輸送体2型発現増強化合物(KEEC)とを含む組み合せに関する。本発明は更に、少なくとも1種類のモノアミン再取り込み阻害剤及び少なくとも1種類のKEECを含む医薬組成物、並びに少なくとも1種類のモノアミン再取り込み阻害剤及び少なくとも1種類のKEECを含む、同時に、別々に又は連続して使用するための組み合せ製剤としてのパーツのキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤、及び少なくとも1つの塩化カリウム共輸送体2型発現増強化合物(KEEC)を含む、組み合せ。
【請求項2】
前記モノアミン再取り込み阻害剤が、セロトニン特異的再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、及び三環系抗うつ薬(TCA)からなる群から選択される、請求項1に記載の組み合せ。
【請求項3】
前記SSRIがフルオキセチン又はパロキセチンである、請求項2に記載の組み合せ。
【請求項4】
前記SNRIがデュロキセチンである、請求項2に記載の組み合せ。
【請求項5】
前記TCAがアミトリプチリンである、請求項2に記載の組み合せ。
【請求項6】
前記KEECが、CLPファミリーの分子、ピペラジンフェノチアジンファミリーの抗精神病分子、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3 βのATP競合阻害剤、及びfms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、若しくはトロポミオシン/チロシン受容体キナーゼB(TrkB)、若しくはホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害を介して、又はサーチュイン1(SIRT1)若しくは一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーVメンバー1(TRPV1)経路の活性化を介して作用する分子からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項7】
前記CLPファミリーの分子が、CLP290、CLP257、及びCLP657から選択される、請求項6に記載の組み合せ。
【請求項8】
前記ピペラジンフェノチアジンファミリーの抗精神病分子がプロクロルペラジン(PCPZ)である、請求項6に記載の組み合せ。
【請求項9】
前記グリコーゲンシンターゼキナーゼ3 βのATP競合阻害剤がケンパウロンである、請求項6に記載の組み合せ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がフルオキセチンであり、前記少なくとも1つのKEECがCLP 290である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項11】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がフルオキセチンであり、前記少なくとも1つのKEECがCLP 257である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項12】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がフルオキセチンであり、前記少なくとも1つのKEECがCLP 657である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項13】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がフルオキセチンであり、前記少なくとも1つのKCC2がPCPZである、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項14】
前記少なくとも1種類のモノアミン再取り込み阻害剤がフルオキセチンであり、前記少なくとも1種類のKCC2がケンパウロンである、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項15】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がパロキセチンであり、前記少なくとも1つのKCC2がCLP 290である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項16】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がパロキセチンであり、前記少なくとも1つのKCC2がCLP 257である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項17】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がパロキセチンであり、前記少なくとも1つのKCC2がCLP 657である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項18】
前記少なくとも1種類のモノアミン再取り込み阻害剤がパロキセチンであり、前記少なくとも1種類のKCC2がPCPZである、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項19】
前記少なくとも1種類のモノアミン再取り込み阻害剤がパロキセチンであり、前記少なくとも1種類のKCC2がケンパウロンである、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項20】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がデュロキセチンであり、前記少なくとも1つのKCC2がCLP 290である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項21】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がデュロキセチンであり、前記少なくとも1つのKCC2がCLP 257である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項22】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がデュロキセチンであり、前記少なくとも1つのKCC2がCLP 657である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項23】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がデュロキセチンであり、前記少なくとも1つのKCC2がCLP PCPZである、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項24】
前記少なくとも1種類のモノアミン再取り込み阻害剤がデュロキセチンであり、前記少なくとも1種類のKCC2がケンパウロンである、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項25】
前記少なくとも1種類のモノアミン再取り込み阻害剤が、アミトリプチリンなどのTCAであり、前記少なくとも1種類のKCC2が、CLP 290である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項26】
前記少なくとも1種類のモノアミン再取り込み阻害剤が、アミトリプチリンなどのTCAであり、前記少なくとも1種類のKCC2が、CLP 257である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項27】
前記少なくとも1種類のモノアミン再取り込み阻害剤が、アミトリプチリンなどのTC
Aであり、前記少なくとも1種類のKCC2が、CLP 657である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項28】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤がアミトリプチリンなどのTCAであり、前記少なくとも1つのKCC2がPCPZである、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項29】
前記少なくとも1つのモノアミン再取り込み阻害剤が、アミトリプチリンなどのTCAであり、前記少なくとも1つのKCC2が、ケンパウロンである、前記請求項のいずれか一項に記載の組み合せ。
【請求項30】
少なくとも1つのセロトニン再取り込み阻害剤と、請求項1~29のいずれか一項に記載の塩化カリウム共輸送体2型(KCC2)の少なくとも1つの刺激剤とを含む、医薬組成物。
【請求項31】
請求項1~29のいずれか一項に記載の少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤及び少なくとも1種類の塩化カリウム共輸送体2型(KCC2)の刺激剤を、同時、個別、又は連続使用のための組み合せ製剤として含む、パーツのキット。
【請求項32】
医療用途のための、請求項1~29のいずれか一項に記載の組み合せ、請求項16に記載の医薬組成物、又は請求項31に記載のパーツのキット。
【請求項33】
末梢神経障害によって、炎症によって、又は糖尿病によって誘発される疼痛感覚の治療において使用するための、請求項1~29のいずれか一項に記載の組み合せ、請求項30に記載の医薬組成物、又は請求項31に記載のパーツのキット。
【請求項34】
前記少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害薬及び前記少なくとも1種類のKCC2刺激剤が経口又は腹腔内投与される、請求項33に記載の使用のための組み合せ、医薬組成物、又はパーツのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性剤の組み合せ、及び、末梢神経障害、炎症又は糖尿病によって誘発される疼痛感覚の治療におけるその使用に関する。
【0002】
したがって、本発明は医療分野において有用性を有する。
【0003】
以下の説明では、角括弧([])内の参照は、本文書の終わりの参照文献のリストを指す。
【背景技術】
【0004】
疼痛は、実際の又は潜在的な組織損傷から生物を保護する警告システムである。この不快な感覚は、疼痛伝達を制御する内因性システムの存在のおかげで、過剰な疼痛の場合に効率的にフィルタリングされ得る。この内因性システムは、ヒトにおいて、条件刺激性疼痛調整(CPM)とも呼ばれる広範性侵害抑制調節(DNIC)によって活性化される。CPMの欠損は、手術後の不良な疼痛転帰の有効な予測因子であり、術後、神経障害性又は特発性の疼痛を有する患者における異常なCPMを慢性疼痛状態に関連付ける証拠が増えつつある。これに関連して、CPMパラダイムは疼痛状態を評価するために使用される。CPMの変化は、脊髄(DH)の後角に突出する脳幹のモノアミン作動性核(すなわち、セロトニン及びノルアドレナリン)を含む興奮性下行性疼痛経路と抑制性下行性疼痛経路との間の不均衡に起因するようである。これまでのところ、基礎となる神経回路はほとんど未知のままである。
【0005】
したがって、慢性神経障害性疼痛の治療は、依然として重要な研究領域である。実際、現在の治療は、非常に控えめな有効性を有する。これらの治療のうち、第一線は、三環系抗うつ薬(TCA)並びに非特異的セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)からなる。残念ながら、これらの分子単独では、興味深いが依然として非常に不十分な結果しか得られない。実際、国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain)(IASP)NeuPSIG(International Neuropathic Pain Expert Group)からの最新データは、少なくとも1人の患者において疼痛を半減させるために必要とされる治療の数が、三環式抗うつ薬については3.6であり、SNRI(NNT)については6.6であることを示している。これらの結果は、229のプラセボ対照研究のメタ分析後に得られた。
【0006】
一方、SNRIのこれらの使用は、著しい副作用をもたらし、有害な副作用(NNH)のために治療を停止するのに必要な数は、三環系で13.4であり、SNRIで11.8であった(2016年のLancet neurologyにおいてFinnnerupらによって発表されたデータ)。
【0007】
同時に、セロトニンを特異的に標的とする分子(SSRI)を用いた研究は、神経障害性患者における疼痛のレベルに対してほとんど又は全く効果を有さないが、より少ない副作用を有する。
【0008】
したがって、慢性神経障害性疼痛を治療するための代替的な効率的かつ耐容性良好なツールが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上記及び他の必要性を満たす。実際、本出願人は、驚くべきことに、慢性疼痛を治療するためのそのような代替的な解決策を見出した。
【0010】
本出願人は、驚くべきことに、KCC2型塩化物輸送体活性化因子と組み合わせた場合、脊髄におけるセロトニンレベルの増加が神経障害性疼痛状態において有益であることを示した。
【0011】
特に、本出願人は、神経障害性マウスにおいて、セロトニン再取り込み阻害剤(すなわち、「MRI」)単独又はKCC2型塩化物輸送体活性化因子(すなわち、「KEEC」)単独での治療と比較して、「モノアミン輸送体阻害剤」とも呼ばれるセロトニン再取り込み阻害剤、又はSSRI、SNRI、SMS、SNDRI及びTCAを含むモノアミン再取り込み阻害剤と、KCC2発現増強化合物(「KEECs」)とも呼ばれるKCC2型塩化物輸送体の増強剤との併用治療の優れた効果をインビボで示した。特に、腹腔内に注射された選択的セロトニン再取り込み阻害剤であるフルオキセチンと、KCC2型塩化物輸送体活性化因子であるCLP290との胃管栄養法(経口)による組み合わせは、本出願人によって実証されたように、神経障害性疼痛のモデルにおいて、注射後少なくとも24時間維持される機械的閾値応答の増大をもたらした。フルオキセチン/CLPの組み合せは、フルオキセチン及びCLP単独よりも有意に高い機械的応答閾値の有意な改善をもたらした。
【0012】
本出願人はまた、条件付け場所嗜好性(CPP)試験において、セロトニン再取り込み阻害剤、特にSSRIと、KCC2型塩化物輸送体活性化因子(KEECとも呼ばれる)との組み合わせの効力を比較した。本出願人は、この組み合せが処理区画内で動物が過ごす時間を増加させるが、この時間はセロトニン再取り込み阻害剤(特にSSRI)/溶媒の組み合せによって変更されないことを示した。この結果は、セロトニン再取り込み阻害剤/KCC2型塩化物輸送体活性化因子の組み合わせが、動物の全身状態の改善をもたらし、機械的応答閾値に関して得られた結果を強化することを示す。
【0013】
最後に、本出願人は、様々なKEECs(CLP657、ピペラジンフェノチアジン、プロクロルペラジン(PCPZ)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3 β(ケンパウロン)のATP競合阻害剤)に対するSSRIの組み合わせ、及びCLP290とMRIとを含む組み合せ(特に、パロキセチンとしてのSSRI、デュロキセチンとしてのSNRI、又はアミトリプチリンとしてのTCA)で、驚くべき結果を得た。
【0014】
したがって、第1の態様において、本発明は、少なくとも1つのセロトニン再取り込み阻害剤(「モノアミン再取り込み阻害剤」とも呼ばれる)及び少なくとも1つの塩化カリウム共輸送体2型(KCC2)の増強剤を含む組み合せを提供する。
【0015】
「セロトニン再取り込み阻害剤」及びその同義語「モノアミン再取り込み阻害剤」は、本明細書において、神経伝達物質セロトニンのニューロン再取り込みを阻害することによって作用し、したがって、脳及び脊髄におけるセロトニンレベル及びセロトニン作動性神経伝達を増加させることができる、任意の化合物、薬物、活性剤又はそれらの薬学的に許容される塩を指す。セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)の例は、文献「NICE Clinical Guidelines, No.31. National Collaborating Centre for Mental Health (UK). Leicester (UK): British Psychological Society (UK); 2006」 ([8])、Grunder et al. ([9])、Moses-Kolko et al. ([10])、Hughes ZA, Starr KR, Langmead CJ, et al. Neurochemical evaluation of the novel 5-HT1A receptor partial agonist/serotonin reuptake inhibitor, vilazodone. Eur J Pharmacol 2005; 510(1-2): 49-5 ([11])、Bartoszyk et al. ([12])、Gerald P. Koocher et al. ([13])に示されている。セロトニン再取り込み阻害剤は、有利には、セロトニン特異的再取り込み阻害剤(SSRI)、セ
ロトニンモジュレーター及び刺激物質(SMS)、セロトニン、ノルエピネフリン及びドーパミン再取り込み阻害剤(SNDRI)、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)及び三環系抗うつ薬(TCA)からなる群において選択され得る。好ましくは、セロトニン再取り込み阻害剤は、SSRI又はSMSであり得る。この場合、SSRI又はSMSは、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラムシュウ酸塩、インダルピン、ジメリジン、ビラゾドン、ダポキセチン、ボルチオキセチン、及びフルボキサミンマレイン酸塩から選択され得る。好ましくは、フルオキセチンであり得る。セロトニン再取り込み阻害剤がSNRIである場合、デスベンラファキシン、デュロキセチン、レボミルナシプラン、ミルナシプラン及びベンラファキシンから選択され得る。セロトニン再取り込み阻害剤がTCAである場合、アミトリプチリン、アモキサピン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン及びトリミプラミンから選択され得る。セロトニン再取り込み阻害剤がSNDRIである場合、シブトラミン、マジンドール及びネファゾドンから選択され得る。
【0016】
「塩化カリウム共輸送体2型の刺激剤」若しくは「KCC2」、又はその同義語「塩化カリウム共輸送体2型の増強剤」、「KCC2発現増強化合物」若しくは「KEEC」は、KCC2発現、活性又は機能を増加させ、塩化物イオンの細胞内濃度を減少させることができる任意の化合物、薬物、活性剤又はその薬学的に許容される塩類を指す。塩化カリウム共輸送体タイプ2の刺激剤は、脊髄ニューロンの膜におけるKCC2型塩化物輸送体の数を増加させるCLPファミリーの分子、ピペラジンフェノチアジンの抗精神病分子、及びグリコーゲンシンターゼキナーゼ3 βのATP競合阻害剤、他の分子(fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、又はトロポミオシン/チロシン受容体キナーゼB(TrkB)、又はホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害を介して、又はサーチュイン1(SIRT1)若しくは一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーVメンバー1(TRPV1)経路の活性化を介して、又はKCC2の増加をもたらす任意の他の機構を介して作用することによって特に、そのような活性を有する)からなる群から有利に選択され得る。CLPファミリーの分子は、例えば、CLP 290、CLP257及びCLP657から選択し得る。ピペラジンフェノチアジンファミリーの抗精神病分子は、プロクロルペラジンであり得る。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3 βのATP競合阻害剤は、例えば、ケンパウロン、BIO(6-ブロモインジルビン-3’-オキシム)、TWS-119(3-[6-(3-アミノフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イルオキシ]-フェノール)、インジルビンモノオキシム(3-[1,3-ジヒドロ-3-(ヒドロキシイミノ)-2H-インドール-2-イリデン]-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン)、インジルビン((3Z)-3-(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-イリデン)-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン)、AR-A014418(N-(4-メトキシベンジル)-N’-(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)尿素)、SB-415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)から選択し得る。FLT3阻害剤は、例えば、KW-2449((E)-(4-(2-(1H-インダゾール-3-イル)ビニル)フェニル)(ピペラジン-1-イル)メタノン)、クレノラニブ(1-(2-{5-[(3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ]-1H-ベンズイミダゾール-1-イル}キノリン-8-イル)ピペリジン-4-アミン)、XL-184(カボザンチニブ;N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-N’-(4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド)、ドビチニブ(1-アミノ-5-フルオロ-3-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)キノリン-2(1H)-オン)、FLT阻害剤-1(カルバイオケム343020;2-(3,4-ジメトキシベンズアミド)-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-3-カルボキサミド)、BMS 777607(N-(4-(2-アミノ-3-クロロピリジン-4-イルオキシ)-3-フルオロフェニル)-4-エトキシ
-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド)及びスニチニブ(N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-5-[(Z)-(5-フルオロ-1,2-ジヒドロ-2-オキソ-3H-インドール-3-イリデン)-メチル]-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミド)から選択し得る。
【0017】
TrkB阻害剤は、7,8-ジヒドロキシ-フラボン(7,8-ジヒドロキシフラボン)であり得る。ホスホジエステラーゼ1(PDE1)阻害剤は、8-メトキシ-メチル-IBMX(8-(メトキシメチル)-1-メチル-3-(2-メチルプロピル)-7H-プリン-2,6-ジオン)であり得る。SIRT1シグナル伝達経路活性化因子は、例えば、レスベラトロール(3,5,4’-トリヒドロキシ-トランス-スチルベン)、ケンフェロール(3,5,7-トリヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン)から選択される。TRPV1シグナル伝達経路活性化因子は、ピペリン((2E,4E)-5-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-1-(ピペリジン-1-イル)ペンタ-2,4-ジエン-1-オン)であり得る。KCC2の増加をもたらす他の機構は、SU-4312(3-(4-ジメチルアミノベンジリデニル)-2-インドリノン、3-[[(4-ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン)などのキナーゼ阻害剤、サフィナミドなどのモノアミン酸化酵素阻害剤-B、パキシリン((2R,4bS,6aS,12bS,12cR,14aS)-5,6,6a,7,12,12b,12c,13,14,14a-デカヒドロ-4bヒドロキシ-2-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-12b,12c-ジメチル-2H-ピラノ[2”,3”:5’,6’]ベンズ[1’,2’:6,7)インデノ[1,2-b]インドール-3(4bH)-オン)などのカリウムチャネル遮断薬、パリペリドン(9-ヒドロキシリスペリドン)などの非定型抗精神病薬、カバラクトンメチスチシン((2R)-2-[(E)-2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エテニル]-4-メトキシ-2,3-ジヒドロピラン-6-オン)などのカバ抽出物、フォレチニブなどのFlt-1、Flt-4、Met及びRonを含むチロシンキナーゼのATP競合阻害剤から選択され得る。
【0018】
有利には、組み合せにおいて、少なくとも1つのセロトニン再取り込み阻害剤(又はモノアミン再取り込み阻害剤)は、フルオキセチン、パロキセチン、ズロキセチン、アミトリプチリンであり、少なくとも1つのKCC2の刺激剤(又はKCC2発現増強化合物)は、CLP 290、CLP657、PCPZ又はケンパウロンである。
【0019】
「組み合せ」は、本明細書において、少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤及び少なくとも1種類のKCC2の刺激剤が、インビトロ及びインビボのいずれかにおいて、末梢神経障害、炎症又は糖尿病によって誘導される疼痛感覚の低減において相乗効果を示す製剤を指す。本明細書で使用される「相乗作用」又は「相乗的」という用語は、2つの単一種類の活性剤、すなわち、少なくとも1つのセロトニン再取り込み阻害剤(「モノアミン再取り込み阻害剤」とも呼ばれる)、少なくとも1つのKCC2の刺激剤(KCC2発現増強化合物とも呼ばれる)の相加効果よりも有効である治療的組み合せを指す。少なくとも1つのセロトニン再取り込み阻害剤と少なくとも1つのKCC2刺激剤との間の相乗的相互作用の決定は、本明細書に記載のアッセイから得られた結果に基づき得る。これらのアッセイの結果は、機械的疼痛閾値アッセイのための単純化されたアップ及びダウン方法、並びに条件付け場所嗜好性アッセイのための追跡システムを使用して分析され得る。本発明によって提供される組み合せは、いくつかのアッセイシステムで評価されており、データは、薬剤間の相乗作用、相加作用、及び拮抗作用を定量化するための標準プログラムを利用して分析することができる。
【0020】
本発明によれば、相乗効果は、活性剤が(1)共製剤化され、組み合わされた単位投与製剤で同時に投与若しくは送達される場合、又は(2)別個の製剤として送達される場合
、に達成され得る。別々の製剤で送達される場合、相乗効果は、化合物が、例えば、別々のシリンジでの異なる注射によって、同時に又は連続して投与又は送達される場合に達成され得る。この場合、組み合せは、2回以上の投与で、例えば、いずれかの順序での連続投与で投与されてもよく、好ましくは、両方(又は全て)の活性剤がそれらの生物学的活性を同時に発揮する期間がある。共投与によるか、又は同時、個別若しくは連続レジメンによるかに関係なく、治療有効量の各活性成分が投与される。有利には、本発明の組み合せの相乗効果は、それが同時、別個又は連続投与であるかどうかにかかわらず、組み合せのまさに最初の投与から疼痛感覚及び/又は症状を改善することを可能にする。有利には、組み合せの効果は非常に速いか又は即時でさえある。更に、有利には、治療効果は少なくとも4時間、最大で少なくとも24時間持続し得る。言い換えれば、有利なことに、いくつかの実施形態では、組み合わせの単回用量は、疼痛を消去し、有害な副作用を制限するために投与用量を減少させるのに十分であり得る。
【0021】
本発明の組み合せは、治療有効量の少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤(「モノアミン再取り込み阻害剤」とも呼ばれる)、及び治療有効量の少なくとも1種類のKCC2刺激剤(KCC2発現増強化合物とも呼ばれる)を含み得る。語句「治療有効量」は、(i)特定の疾患、状態、若しくは障害を治療する、(ii)特定の疾患、状態、若しくは障害の1つ以上の症状を減弱、改善、若しくは排除する、又は(iii)本明細書に記載される特定の疾患、状態、若しくは障害の1つ以上の症状の発症を予防若しくは遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。末梢神経障害、炎症又は糖尿病によって誘発される疼痛感覚の治療の場合、上述の活性剤の治療有効量は、注射の1時間30分後に約52%(38%から101%)、注射の24時間後になお約36%(23%から65%)、機械的アロディニアを低減し得る。一例として、用量あたりに投与されるセロトニン再取り込み阻害剤(「モノアミン再取り込み阻害剤」とも呼ばれる)の薬学的有効量は、投与経路に応じて約0.1~10mg/kgの範囲、すなわち1日あたり約20mg(1錠)であり、使用される化合物の典型的な初期範囲は20~60mg/日である(すなわち、70kgの成人については約0.3mg/kg/日の用量)。また一例として、用量当たりに投与されるKCC2の刺激剤(KCC2発現増強化合物とも呼ばれる)の薬学的有効量は、投与経路に応じて約10~100mg/kgの範囲、すなわち1日当たり患者の体重1kg当たり約10~100mgであり、使用される化合物の典型的な初期範囲は10~100mg/kg/日である。
【0022】
本発明によれば、「少なくとも1つ」は、1つ、又は2つ、又は3つ、又は4つ、又はそれ以上の言及された活性剤を指す。
【0023】
本発明の別の目的は、少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤(「モノアミン再取り込み阻害剤」とも呼ばれる)及び少なくとも1種類の塩化カリウム共輸送体2型(KCC2)の刺激剤(KCC2発現増強化合物とも呼ばれる)を含む医薬組成物に関する。少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤及び少なくとも1種類のKCC2刺激剤、並びにそれらの治療有効量は、上で定義したとおりである。
【0024】
セロトニン再取り込み阻害剤(モノアミン再取り込み阻害剤とも呼ばれる)及びKCC2の刺激剤(KCC2発現増強化合物とも呼ばれる)は、ヒトを含む哺乳動物における治療的処置における使用のための標準的な薬学的実施に従って、薬学的組成物中に処方され得る。したがって、本発明の医薬組成物は、上記の活性剤と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤との組み合わせを含む。「薬学的に許容される」という語句は、物質又は組成物が、製剤の他の成分、及びそれによって治療される哺乳動物と化学的及び/又は毒物学的に適合可能でなければならないことを示す。適切な担体、希釈剤及び賦形剤は、当業者に周知であり、炭水化物、ワックス、水溶性及び/又は膨潤性ポリマー、親水性若しくは疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などの材料を含む。溶媒は、一
般に、哺乳動物に投与するのに安全である(GRAS)と当業者によって認識されている溶媒に基づいて選択される。一般に、安全な溶媒は、水及び水に可溶性又は混和性である他の非毒性溶媒などの非毒性水性溶媒である。適切な水性溶媒としては、水、生理食塩水、シクロデキストリン、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 400、PEG 300)など、及びそれらの混合物が挙げられる。製剤はまた、1つ以上の緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤及び香味剤を含み得る。
【0025】
本発明の薬学的組成物は、従来の溶解及び混合手順を使用して調製され得る。例えば、バルク原薬は、上記の賦形剤の1つ以上の存在下で適切な溶媒に溶解され得る。
【0026】
本発明の薬学的組成物は、治療される状態に適切な任意の経路によって投与され得て、この経路としては、経口経路及び非経口経路が挙げられ、後者としては、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、鞘内、硬膜外、及び注入技術が挙げられる。好ましい経路は、例えば、レシピエントの状態によって変化し得ることが理解される。組成物が経口投与される場合、組成物は、錠剤、丸剤、硬カプセル剤又は軟カプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤、カシェ剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性懸濁剤又は油性懸濁剤、分散性散剤又は顆粒剤、乳剤、シロップ剤又はエリキシル剤として製剤化され得て、それぞれが所定量の各活性剤を、薬学的に許容される担体、流動促進剤又は賦形剤と共に含有する。組成物が非経口的に投与される場合、それは、以下に詳述されるように、薬学的に受容可能な非経口ビヒクル又は希釈剤と共に、単位投薬量注射可能形態で処方され得る。例えば、非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を対象レシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性滅菌注射溶液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。
【0027】
本発明の別の目的は、同時に、別々に又は連続して使用するための組み合せ製剤として、上記で定義した少なくとも1種類のセロトニン再取り込み阻害剤(モノアミン再取り込み阻害剤とも呼ばれる)及び少なくとも1種類の塩化カリウム共輸送体2型の刺激剤(KCC2、KCC2発現増強化合物とも呼ばれる)を含むパーツのキットに関する。上記で与えられた全ての定義は、本発明のパーツのキットに準用される可能性が高い。
【0028】
本発明による「キット」は、上記の疾患及び障害の治療に有用な活性剤を含有する製品として提供され得る。キットは、活性剤当たり1つの容器、又は全ての活性剤を含有する1つの容器を含み得る。キットは、容器上に、又は容器に付随して、ラベル又は添付文書を更に含み得る。「添付文書」という用語は、治療用製品の市販パッケージに慣習的に含まれる説明書を指すために使用され、そのような治療用製品の使用に関する投与、適応症、用法、用量、管理、禁忌及び/又は警告についての指示に関する情報を含む。特に、キットが、1つのセロトニン再取り込み阻害剤(モノアミン再取り込み阻害剤とも呼ばれる)を含む第1の製剤及び1つのKCC2刺激剤(KCC2発現増強化合物とも呼ばれる)を含む第2の製剤を含む場合、キットは、それを必要とする患者への2つの製剤の同時、連続又は別々の投与のための指示書を更に含み得る。
【0029】
本発明の別の目的は、医療用途のための、上で定義した組み合せ、上で定義した医薬組成物、又は上で定義したパーツのキットに関する。
【0030】
より具体的には、医学的使用は、末梢神経障害によって、炎症によって、又は糖尿病によって誘発される疼痛感覚の治療であり得る。
【0031】
本発明は、限定として解釈されるべきではない添付の図面に関して以下の実施例によっ
て更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】KCC2増強剤、CLP290及びセロトニン特異的再取り込み阻害剤、フルオキセチンの会合による機械的アロディニアの逆転を表す。A)Von Freyフィラメントを用いて機械的離脱の閾値を評価する。グラム(g)単位での値は、足離脱を誘発するのに必要な力である。機械的閾値(g単位)は、マウスのナイーブ群、SNI群(「生理食塩水」)、フルオキセチン10mg/kgを腹腔内注射したSNI(脊髄神経損傷)群、CLP290 100mg/kgを胃管栄養法で注射したSNI群、並びにフルオキセチン及びCLP290の両方を注射したSNI群において評価した。SNI処置は、機械的アロディニアを示す機械的閾値の減少を誘導する。CLP290及びフルオキセチンによる治療は、機械的閾値がナイーブ動物と有意に異ならないので、このアロディニアを軽減した。
【
図1B】KCC2増強剤、CLP290及びセロトニン特異的再取り込み阻害剤、フルオキセチンの会合による機械的アロディニアの逆転を表す。B)フルオキセチン、CLP290及び両分子の会合による治療後の機械的アロディニアの減少(%単位)。CLP290とフルオキセチンとの会合は、機械的アロディニアの振幅を51.8%減少させた。
【
図1C】KCC2増強剤、CLP290及びセロトニン特異的再取り込み阻害剤、フルオキセチンの会合による機械的アロディニアの逆転を表す。C)フルオキセチン及びCLP290の組み合せは、1回の単回注射の1時間30分後に機械的アロディニアの減少を誘導し、これは少なくとも24時間続く。
【
図2】条件付き場所選好(CPP)を表す。神経障害性マウスは、2つのチャンバーアリーナを自由に探索することができる。CLP290とフルオキセチン(黒丸)の会合物を注射し、注射の1時間30分後に、神経障害動物を手がかりとなるチャンバー内でブロックする。翌日、マウスを再び自由に2つのチャンバーアリーナを探索させる。対照実験として、フルオキセチン及びCLP290ビヒクルを用いて神経障害性マウスにおいて同じ手順を実施する。フルオキセチン及びCLP290の両方の会合は、条件付けられたチャンバーにおいて神経障害性マウスによって費やされる時間(秒単位)を増加させるが、フルオキセチン単独では増加させない(白丸)。本発明者らの分子式に関連する区画に対するこの優先性は、本発明の会合に関連する「健康」の増加に関連する。
【
図3A】A)KCC2増強剤及びフルオキセチンの会合による機械的アロディニアの逆転を表す。CLP657、PCPZ及びケンパウロン単独、又はフルオキセチン及びCLP657、フルオキセチン及びPCPZ、又はフルオキセチン及びケンパウロンのいずれかの組み合わせによる治療後の機械的アロディニアの減少(%単位)。
【
図3B】B)CLP290とSSRI(パロキセチン)、SNRI(デュロキセチン)又はTCA(アミトリプチリン)との会合による機械的アロディニアの逆転。パロキセチン、デュロキセチン若しくはアミトリプチリン単独、又はパロキセチン及びCLP290のいずれか、デュロキセチン及びCLP290のいずれか、若しくはアミトリプチリン及びCLP290のいずれかとの組み合せによる治療後の機械的アロディニアの減少(%単位)。
【実施例】
【0033】
実施例1:KCC2増強剤、CLP290及びセロトニン特異的再取り込み阻害剤、フルオキセチンの会合による機械的アロディニアの逆転
図1A及びBにおいて、マウスを5つの実験群に分ける。1)機械的閾値評価(g単位)のみを受けるナイーブ群。2)SNI(脊髄神経損傷)群は、右坐骨神経の3つの主枝のうち2つの片側結紮及び切片を受ける。外科的処置の14日後、機械的閾値(g単位)を、SNIの群、フルオキセチン10mg/kgを腹腔内注射したSNIの群、CLP290 100mg/kgを胃管栄養法によって注射したSNIの群、並びにフルオキセチ
ン及びCLP290の両方を注射したSNIの群において評価する。
【0034】
機械的評価を、薬物注射と共に1時間30分行う。
【0035】
Von Freyフィラメントを用いて機械的離脱の閾値を評価する。グラム(g)単位での値は、足離脱を誘発するのに必要な力である(
図1A参照)。SNI処置は、機械的アロディニアを示す機械的閾値の減少を誘導する。CLP290及びフルオキセチンによる治療は、機械的閾値がナイーブ動物と有意に異ならないので、このアロディニアを軽減した。
【0036】
図1B)は、フルオキセチン、CLP290及び両分子の会合による治療後の減少した機械的アロディニアのパーセンテージを示す。CLP290とフルオキセチンとの会合は、機械的アロディニアの振幅を51.8%減少させた。
【0037】
3)フルオキセチン及びCLP290の注射後、機械的閾値を48時間にわたり評価する。
【0038】
実施例2:条件付き場所嗜好性(CPP)試験
脊髄神経損傷を実施例1と同様に実施する。
【0039】
14日後、マウスは、10分間、狭い回廊によって分離された2チャンバーアリーナを自由に探索する。装置の上に配置されたカメラは、マウスの動きの追跡を可能にする。この調査は、
図2における前処理条件とみなされる。フルオキセチン単独又はフルオキセチンとCLP290との組み合わせのいずれかを注射した1時間30分後に、マウスを1つのチャンバーに10分間制限する。2日後、マウスを再び置き、自由にアリーナ全体を探索する。治療がマウスの「健康」を改善した場合、マウスは、治療に関連するチャンバー内でより多くの時間を過ごす。これは、フルオキセチン単独ではなく、CLP290とフルオキセチンの組み合わせで起こったものである(
図2)。対照実験として、フルオキセチン及びCLP290ビヒクルを用いて神経障害性マウスにおいて同じ手順を実施する。
【0040】
したがって、フルオキセチン及びCLP290の両方の会合は、条件付けられたチャンバーにおいて神経障害性マウスによって費やされる時間を増加させるが、フルオキセチン単独では増加させない。本発明の分子式に関連する区画に対するこの優先性は、この分子式に関連する「健康」の増加に関連する。
【0041】
実施例3:KCC2増強剤及びフルオキセチンの会合による機械的アロディニアの逆転
図3A及びBでは、マウスを、右坐骨神経の3つの主枝のうち2つの片側結紮及び切片を受ける12の実験群に分ける。1)外科的処置の14日後に、3つの群において、アロディニアのパーセンテージを、CLP657、PCPZ又はケンパウロン単独を受けたSNIマウスにおいて評価する。3つの他の群において、アロディニアのパーセンテージを、フルオキセチン(腹腔内、10mg/kg)及びCLP657(経口、100mg/kg)、フルオキセチン(腹腔内、10mg/kg)及びPCPZ(腹腔内、2mg/kg)又はフルオキセチン(腹腔内、10mg/kg)及びケンパウロン(腹腔内、10mg/kg)単独を受けたSNIマウスにおいて評価する。2)3つの他の群において、マウスは、パロキセチン(SSRI、腹腔内、10mg/kg)、デュロキセチン(SNRI、腹腔内、10mg/kg)又はアミトリプチリン(TCA、腹腔内、10mg/kg)単独を受ける。3つの他の群において、マウスは、パロキセチン(腹腔内、10mg/kg)及びCLP290(経口、100mg/kg)又はデュロキセチン(腹腔内、10mg/kg)及びCLP290(経口、100mg/kg)又はアミトリプチリン(腹腔内、10mg/kg)及びCLP290(経口、100mg/kg)の組み合わせを受ける
。全ての条件において、薬物注射の1時間30分後に機械的評価を行う。
【0042】
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