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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】魚類用飼料添加剤
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/13 20170101AFI20240621BHJP
   A61P 33/10 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240621BHJP
   A23K 40/10 20160101ALN20240621BHJP
【FI】
A01K61/13
A61P33/10
A61K31/4985
A61K47/36
A61K9/14
A23K40/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579053
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 AU2022050690
(87)【国際公開番号】W WO2023272362
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】2021902007
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504206827
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ウェスタン オーストラリア
(71)【出願人】
【識別番号】523478610
【氏名又は名称】ウエスタン オーストラリアン アグリカルチャー オーソリティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タン, イーディス カイ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】パートリッジ, ギャビン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リム, リー ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ウーリー, リンジー ドーン
【テーマコード(参考)】
2B104
2B150
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104BA14
2B150AA08
2B150AB10
2B150AE02
2B150AE22
2B150AE27
2B150AE34
2B150AE40
2B150AE46
2B150AE49
2B150DD37
2B150DD48
4C076AA09
4C076AA29
4C076BB01
4C076CC34
4C076DD01
4C076EE30
4C076EE36
4C076FF52
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA52
4C086NA09
4C086ZB39
(57)【要約】
本発明は、水生動物用飼料添加剤組成物および水生動物における疾患を処置または予防する方法を含む、魚類用飼料添加剤を介した魚類への治療用化合物の経口送達の分野に関する。第1の態様では、本発明は、治療有効量の治療薬を水生動物に送達することができる水生動物用飼料添加剤組成物であって、添加剤が複数の治療用ビーズを含み、各ビーズが、(a)少なくとも45% w/wの治療上有効な化合物と、(b)1%~10% w/wの矯味剤と、(c)2%~35% w/wの担体マトリックスとを含み、担体マトリックスは、(a)水生動物によって摂取可能であり、(b)水生動物用飼料添加剤が使用される水性環境において室温で少なくとも60分間実質的に安定であり、矯味剤が単独で、または担体マトリックスと組み合わせて、治療上有効な化合物の味をマスキングする、水生動物用飼料添加剤組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の治療薬を水生動物に送達することができる水生動物用飼料添加剤組成物であって、前記添加剤が複数の治療用ビーズを含み、各ビーズが、
(a)少なくとも45% w/wの治療上有効な化合物と、
(b)1%~10% w/wの矯味剤と、
(c)2%~35% w/wの担体マトリックスと
を含み、
前記担体マトリックスは、
(a)前記水生動物によって摂取可能であり、
(b)前記水生動物用飼料添加剤が使用される水性環境において室温で少なくとも60分間実質的に安定であり、
前記矯味剤が単独で、または前記担体マトリックスと組み合わせて、前記治療上有効な化合物の味をマスキングする、水生動物用飼料添加剤組成物。
【請求項2】
前記担体マトリックスが水生動物によって消化可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記担体マトリックスが海洋系ヒドロゲルを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記担体マトリックスが、アルギネートと酸可溶性ポリマーとの組合せ;アルギネート;または寒天から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が湿潤剤をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記湿潤剤が、Cremophor(登録商標)RH40および/またはTween(登録商標)である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記矯味剤が香味剤である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記矯味剤が、ニンニクまたはその誘導体である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記矯味剤がニンニクである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記治療上有効な化合物が駆虫性化合物である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記駆虫性化合物がプラジカンテルである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記治療上有効な化合物が、各ビーズの少なくとも約70% w/wの量で存在する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記担体マトリックスが、各ビーズの約10~25% w/wを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記矯味剤が、各ビーズの2~8% w/wを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記湿潤剤が、各ビーズの5~10% w/wを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
(a)前記治療上有効な化合物が、各ビーズの約70~90% w/wの量で存在するプラジカンテルを含み、
(b)前記矯味剤が、各ビーズの約5% w/wの量で存在するニンニク誘導体を含み、
(c)前記担体マトリックスが、酸可溶性ポリマーとアルギネートとの組合せを含み、前記酸可溶性ポリマーが、各ビーズの8~10% w/wの量で存在し、前記アルギネートが、各ビーズの8~11% w/wの量で存在する、
請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
(a)前記治療上有効な化合物が、各ビーズの約70~90% w/wの量で存在するプラジカンテルを含み、
(b)前記矯味剤が、各ビーズの約5% w/wの量で存在するニンニク誘導体を含み、
(c)前記担体マトリックスがアルギネートを含み、前記アルギネートが、各ビーズの5~11% w/wの量で存在し、
(d)前記湿潤剤がCremophor(登録商標)RH40であり、前記Cremophor(登録商標)RH40RH40は、各ビーズの5~10% w/wの量で存在する、
請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
(a)前記治療上有効な化合物が、各ビーズの約70~90% w/wの量で存在するプラジカンテルを含み、
(b)前記矯味剤が、各ビーズの約2~5% w/wの量で存在するニンニク誘導体を含み、
(c)前記担体マトリックスが、各ビーズの18~20% w/wの量で存在する寒天の組合せを含む、請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
(a)前記治療上有効な化合物が、各ビーズの約70~90% w/wの量で存在するプラジカンテルを含み、
(b)前記矯味剤が、各ビーズの約5% w/wの量で存在するニンニク誘導体を含み、
(c)前記担体マトリックスが、酸可溶性ポリマーとアルギネートとの組合せを含み、前記酸可溶性ポリマーが、各ビーズの8~10% w/wの量で存在し、前記アルギネートが、各ビーズの8~11% w/wの量で存在し、
(d)前記湿潤剤が、Cremophor(登録商標)RH40またはTween(登録商標)であり、前記Cremophor(登録商標)RH40RH40またはTween(登録商標)が、各ビーズの5~10% w/wの量で存在する、
請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記ビーズが、5000μm、<5000μm、1000μm、<1000μm;500μm;<500μm;355~500μm;212~355μm;150~355μm;150μm;<150μm;100μmおよび<100μmからなる群より選択される直径を有する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記ビーズがさらに矯味剤で覆われている、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
前記請求項のいずれかに記載の組成物を含む、魚類用飼料組成物。
【請求項23】
魚類の疾患を処置または予防する方法であって、魚類に請求項1~22のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項24】
前記疾患が寄生虫感染症である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記治療上有効な化合物がプラジカンテルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記魚類集団が、約50mg/kg~150mg/kgの用量の前記治療上有効な化合物を投与される、請求項23~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
請求項1~21のいずれかに記載の水生動物用飼料添加剤組成物を調製する方法であって、
(a)前記治療上有効な化合物と、前記矯味剤と、必要に応じて前記担体マトリックスおよび/または湿潤剤の一部との乾燥混合物を調製するステップと、
(b)担体マトリックスおよび/または湿潤剤を含有する溶液を前記乾燥混合物に添加して均一な懸濁液を形成するステップと、
(c)前記均一な懸濁液を液体媒体に滴下してビーズを形成するステップと、
(d)前記ビーズを水で洗浄するステップと、
(e)前記洗浄したビーズを乾燥させるステップと
を含む、方法。
【請求項28】
前記乾燥させたビーズを矯味剤とさらに混合する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項22に記載の魚類用飼料組成物を調製する方法であって、
(a)請求項27または28に記載の方法によって調製された前記水生動物用飼料添加剤を、粉砕された魚類用飼料と混合して混合物を形成するステップと、
(b)(a)の前記混合物からペレットを形成するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類用飼料添加剤を介した魚類への治療用化合物の経口送達の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、魚類の商業的養殖は、世界中の多くの国において主要な産業となっている。しかしながら、商業的に養殖された魚類は、様々な異なる疾患に罹患する可能性があり、その処置は、産業に重大な課題および費用負担を生じさせる可能性がある。例えば、商業的に養殖された魚類集団は、処置が困難であり得る寄生虫感染症に罹患していることが多い。そのような感染症の例としては、polyopisthocotyleanおよびmonopisthocotylean単生類吸虫類(monogenean flukes)が挙げられ、これは、商業的に養殖されている魚類集団、例えばヒラマサ(Seriola lalandi)において比較的一般的な状態である。
【0003】
現在、魚類集団における寄生虫を治療するために商業的に使用されている方法は、薬品を含有する溶液に魚類を浸す浴処置、または経口投与を含む。例えば、有効な駆虫薬であるプラジカンテル(2-(シクロヘキシルカルボニル)-1,2,3,6,7,11b-ヘキサヒドロ-4H-ピラジノ[2,1-a]イソキノリン-4-オン)を使用して、polyopisthocotyleanおよびmonopisthocotylean単生類吸虫類に罹患しているS.lalandiを処置する。しかしながら、プラジカンテルは苦味が強く、嗜好性が悪いため、経口で投与するのではなく、プラジカンテルに魚類を浸す。代替的に、魚類は過酸化水素に浸される。
【0004】
浴浸は多くの手間を有し、時間がかかり、天候に依存し、長期間の曝露は魚類に悪影響を及ぼし、成長速度の低下、場合によっては大規模な死亡を引き起こす可能性がある(Gaikowski,M.Pら、1999,Acute toxicity of hydrogen peroxide treatments to selected life stages of cold,cool,and warm water fish Aquaculture,178,191-207)。浴浸処置はまた、高価であり得る。例えば、日本では、B.seriolaeを処置するための浴浸のコストは、海籠に入れられたSeriola種の生産コストの最大22%を占めている(Ernst,I.ら、2002,Monogenean parasites in sea-cage aquaculture Austasia Aquaculture,16,46-48)。
【0005】
絶え間ない取り扱い、密集、給餌時間の喪失および浴浸処置中の溶存酸素の減少は、大規模な死亡ならびに食欲減退および成長の喪失の原因となり得る(Grant,A.N,2002,Medicines for sea lice.Pest Management Science,58,521-527)。
【0006】
他方、魚類への薬品の経口投与は、従来の浴浸処置に比べて利点を有する。例えば、飼料中薬品は、より広い安全マージンを有し、魚類の密集または取り扱いの増加を必要としない。農場のすべてのケージを迅速に処置することができるので(Williams,Rら、2007,Efficacy of orally administered praziquantel against Zeuxapta seriolae and Benedenia seriolae(Monogenea)in yellowtail kingfish Seriola lalandi,Diseases of Aquatic Organisms,77,199-205.)、処置効率も増加し、近くの未処置の魚類からの感染の可能性を減らす。薬用食餌を与えることで、魚類は自然な給餌体制を維持することもでき、ストレスも軽減される(Conte,F.S.,2004,Stress and the welfare of cultured fish.Applied Animal Behaviour Science,86,205-223.)。一旦浴浸プロセスが終了すると、化学物質が周囲環境に放出され、非標的生物に影響を及ぼす可能性があるため、経口処置の環境への影響は浴浸処置よりも小さい(Grant,A.N.,2002,Medicines for sea lice,Pest Management Science,58,521-527)。経口処置は、最終的には環境中に放出されるが、濃度ははるかに低く、速度ははるかに遅い(Ramstad,Aら、2002,Field trials in Norway with SLICE(0.2% emamectin benzoate)for the oral treatment of sea lice infestation in farmed Atlantic salmon Salmo salar,Diseases of Aquatic Organisms,50,29-33.)。
【0007】
しかしながら、魚類に薬品を経口投与することに対する1つの大きな障害は、魚類が薬品の味および匂いに敏感であることが多いことである。したがって、魚類用飼料に薬品を含めると、飼料の嗜好性が低下することが多く、その結果、摂取量が減少し、それによって、投与される薬品の用量が減少し、最終的には薬品が効かなくなる可能性があることを意味する(Williams,Rら、2007,Efficacy of orally administered praziquantel against Zeuxapta seriolae and Benedenia seriolae(Monogenea)in yellowtail kingfish Seriola lalandi,Diseases of Aquatic Organisms,77,199-205)。
【0008】
魚類集団における薬品の経口投与の問題に対処するために、いくつかの方法が試験されてきた。国際公開第2009/023013号は、薬品(プラジカンテルおよびシメチジン)を含有するコアに適用された多数のコーティングを有する多粒子飼料中添加剤を記載している。特に、それは、ヒドロゲル形成ポリマーを含む複数の粒状コア、バリア材料を含む第1のコーティング上に配置された第2のコーティング、およびEudraguard(登録商標)ポリマーである矯味ポリマーを含む第2のコーティング上に配置された第3のコーティングを記載している。しかしながら、これは、ビーズがいくつかの別個のコーティングを含むため、製造の観点から複雑な構造である。
【0009】
国際公開第1989/12442号は、活性剤で満たされた内部チャンバを取り囲む水に対して実質的に不透過性である動物または植物材料の外層を含む、魚類に薬剤を投与するための医薬剤形を記載している。AU2008100441は、治療量の微小封入駆虫薬(プラジカンテルを含む)、ならびに魚類の嗅覚および味覚受容体を誘発し、標的魚類種において摂食行動を誘発する様々な水生生物からのアミノ酸、ヌクレオチドおよび天然および合成抽出物などの誘引剤を含有する薬用魚類用飼料を記載している。これらの方法はいずれも商業的に使用されていないようである。
【0010】
Partridgeら、(2014)[Partridge,G.J.,Michael,R.J.and Thuillier,L,2014,Praziquantel form,dietary application method and dietary inclusion level affect palatability and efficacy against monogenean parasites in yellowtail kingfish.Diseases of Aquatic Organisms,109(2),155-163.]は、プラジカンテル粉末または微小封入プラジカンテルで表面被覆された魚類用飼料、ならびにプラジカンテル粉末または微小封入プラジカンテルが押出し前にペレットマッシュ内に組み込まれていた魚類用飼料の嗜好性を評価した。微小封入プラジカンテルを含有する魚類用飼料は、プラジカンテル粉末を含有する魚類用飼料よりも嗜好性が高かった。しかしながら、微小封入を用いても、プラジカンテルの高い食餌含有レベルを有する魚類用飼料の嗜好性は限られていた。微小封入プラジカンテルを含有する魚類用飼料も、プラジカンテル粉末を含有する魚類用飼料よりもバイオアベイラビリティが低かった。Partridgeら、(2019)[Partridge,G.J.,Rao,S.,Woolley,L.,Pilmer,L.,Lymbery,A.J.and Prestidge,C.A.,2018,Bioavailability and palatability of praziquantel incorporated into solid-lipid nanoparticles fed to yellowtail kingfish Seriola lalandi.Comparative Biochemistry and Physiology Part C:Toxicology&Pharmacology,218,14-20.]は、プラジカンテルを固体脂質ナノ粒子に組み込む効果を試験し、次いでこれを魚類用飼料ペレット上にコーティングしたが、プラジカンテルをこのように魚類用飼料に組み込むことによって、プラジカンテルのバイオアベイラビリティも嗜好性も改善されないことが分かった。
したがって、プラジカンテルなどの特に刺激的な味またはにおいを有するものを含む、魚用の治療上有効な化合物の嗜好性を改善し、そうすることで経口送達することができる代替組成物が必要とされている。さらに、魚類に対するプラジカンテルなどの薬品の嗜好性を改善するためのいかなる努力も、インビボでの薬物のバイオアベイラビリティを損なうものであってはならない。
背景技術の前述の議論は、本発明の理解を容易にすることのみを意図している。議論は、言及された資料のいずれかが、出願の優先日における共通の一般知識であるか、またはその一部であったことを認めたり、承認したりするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2009/023013号
【特許文献2】国際公開第1989/12442号
【特許文献3】豪国特許出願公開第2008100441号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Gaikowski,M.Pら、1999,Acute toxicity of hydrogen peroxide treatments to selected life stages of cold,cool,and warm water fish Aquaculture,178,191-207
【非特許文献2】Ernst,I.ら、2002,Monogenean parasites in sea-cage aquaculture Austasia Aquaculture,16,46-48
【非特許文献3】Grant,A.N.,2002,Medicines for sea lice.Pest Management Science,58,521-527
【非特許文献4】Williams,Rら、2007,Efficacy of orally administered praziquantel against Zeuxapta seriolae and Benedenia seriolae(Monogenea)in yellowtail kingfish Seriola lalandi,Diseases of Aquatic Organisms,77,199-205.
【非特許文献5】Conte,F.S.,2004,Stress and the welfare of cultured fish.Applied Animal Behaviour Science,86,205-223.
【非特許文献6】Ramstad,Aら、2002,Field trials in Norway with SLICE(0.2% emamectin benzoate)for the oral treatment of sea lice infestation in farmed Atlantic salmon Salmo salar,Diseases of Aquatic Organisms,50,29-33.
【非特許文献7】Partridgeら、(2014)[Partridge,G.J.,Michael,R.J.and Thuillier,L,2014,Praziquantel form,dietary application method and dietary inclusion level affect palatability and efficacy against monogenean parasites in yellowtail kingfish.Diseases of Aquatic Organisms,109(2),155-163.]
【非特許文献8】Partridgeら、(2019)[Partridge,G.J.,Rao,S.,Woolley,L.,Pilmer,L.,Lymbery,A.J.and Prestidge,C.A.,2018,Bioavailability and palatability of praziquantel incorporated into solid-lipid nanoparticles fed to yellowtail kingfish Seriola lalandi.Comparative Biochemistry and Physiology Part C:Toxicology&Pharmacology,218,14-20.]
【発明の概要】
【0013】
第1の態様では、本発明は、治療有効量の治療薬を水生動物に送達することができる水生動物用飼料添加剤組成物であって、添加剤が複数の治療用ビーズを含み、各ビーズが、
(a)少なくとも45% w/wの治療上有効な化合物と、
(b)1%~10% w/wの矯味剤と、
(c)2%~35% w/wの担体マトリックスと
を含み、
担体マトリックスは、
(a)水生動物によって摂取可能であり、
(b)水生動物用飼料添加剤が使用される水性環境において室温で少なくとも60分間実質的に安定であり、
矯味剤が単独で、または担体マトリックスと組み合わせて、治療上有効な化合物の味をマスキングする、水生動物用飼料添加剤組成物を提供する。
【0014】
好ましくは、担体マトリックスは水生動物によって消化可能である。
【0015】
本発明の一実施形態では、治療上有効な化合物の担体マトリックスからの浸出量が、水性環境中、室温で60分間にわたって20% w/w未満である場合、治療上有効な化合物は担体マトリックス中で実質的に安定であり、ここで、水性環境は、水生動物用飼料添加剤が使用される環境(水など、より好ましくは海水など)である。
【0016】
本発明の別の実施形態では、添加剤は、一般に、水生動物が生きている水性環境、すなわち処置される水性環境で耐久性がある。例えば、担体マトリックスは、室温で1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10% w/w未満分解する場合、一般に耐久性がある。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態では、添加剤は、好ましくは、飼料添加剤によって処置された水生動物の消化管で少なくとも部分的に崩壊する。好ましくは、添加剤は、水生動物の消化管において少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%(w/w)分解する。
【0018】
添加剤または担体マトリックスが動物の消化管(胃管または腸管など)で溶けにくい場合、添加剤はまた、添加剤の崩壊を助ける湿潤剤または界面活性剤ポリマーまたは医薬崩壊剤を含み得る。湿潤剤または界面活性剤としては、例えば、限定されないが、アニオン性もしくはカチオン性界面活性剤または非イオン性湿潤剤を挙げることができる。本発明の特定の形態では、湿潤剤はCremophor(登録商標)RH40またはTween(登録商標)である。崩壊剤はまた、デンプンおよび修飾デンプン、セルロースなどであり得る。
【0019】
代替の実施形態では、添加剤または担体マトリックスは、動物の消化管で分解してもしなくてもよい湿潤剤または界面活性剤ポリマーまたは医薬崩壊剤を含み得、これは添加剤の製造を支援し、または水性環境での添加剤の湿潤を促進する。この目的に適した湿潤剤または界面活性剤としては、例えば、限定されないが、アニオン性もしくはカチオン性界面活性剤または非イオン性湿潤剤が挙げられる。崩壊剤はまた、デンプンおよび修飾デンプン、セルロースなどであり得る。本発明の特定の形態では、湿潤剤はCremophor(登録商標)RH40またはTween(登録商標)である。
【0020】
本発明の一実施形態では、治療薬は、添加剤中で少なくとも6ヶ月間、より好ましくは9、12、15、18、24ヶ月間実質的に安定である。
【0021】
好ましくは、担体マトリックスは、アルギネートと酸可溶性ポリマー(例えばキトサンおよび/またはEudraguard(登録商標))とのブレンドまたはアルギネート;または寒天から少なくとも部分的に調製される。
【0022】
好ましい実施形態では、矯味剤は、ニンニク粉末またはニンニク誘導体である。
【0023】
水性環境に適した一連の治療薬を本発明で送達できることが当業者によって理解されるが、好ましくは、治療薬は、プラジカンテル、メベンダゾールおよびフェンベンダゾールなどの駆虫薬である。プラジカンテルは、淡水魚と海産魚の両方および軟骨魚類における吸虫、条虫および単生類の侵襲を処置するために広く使用されており、したがってモデル治療薬を提供する。
【0024】
本発明の好ましい形態では、水生動物用飼料添加剤は、治療有効性を達成するための適切な量の治療剤を含む。その治療剤の量は、とりわけ、病原体の性質、水生動物の大きさおよび(とりわけ)水の温度に依存する。プラジカンテルを血液摂食鰓吸虫類(blood feeding gill fluke)に投与する場合、用量率は約50mg/kgである。プラジカンテルを粘液摂食鰓吸虫類(mucus feeding gill fluke)に投与する場合、用量率は約150mg/kgである。これらの用量を達成するために必要な食餌含有量レベルは、水温(魚類は冷水中であまり食べない)および魚類の大きさに応じて当業者が容易に確認できることである。したがって、魚類が大きければ大きいほど(%BWベースで)食べる量が少なくなるので、魚が成長するにつれて同じ用量(mg PZQ/kg体重)を達成するためには、薬物のより高い食餌含有率(g PZQ/kg食餌)が必要とされる。
【0025】
本発明の特に好ましい形態では、すべての魚類の大きさおよびすべての水温の平均を考慮して、有効な食餌含有量レベルは、10g PZQ/kg~20g PZQ/kg食物の食餌含有量レベルで達成することができる。多くの点で、食餌含有レベルが高いほど良好である。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療上有効な化合物がビーズの少なくとも約30%~70% w/wの量で存在することを用意する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明のビーズは直径約0.1~5ミリメートルである。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は、以下を含む:
(a)治療上有効な化合物が、各ビーズの約70~90% w/wの量で存在するプラジカンテルを含み、
(b)矯味剤が、各ビーズの約5% w/wの量で存在するニンニク誘導体を含み、
(c)担体マトリックスが、酸可溶性ポリマーとアルギネートとの組合せを含み、酸可溶性ポリマーが、各ビーズの8~10% w/wの量で存在し、アルギネートが、各ビーズの8~11% w/wの量で存在する。
【0029】
いくつかの実施形態では、組成物は、以下を含む:
(a)治療上有効な化合物が、各ビーズの約70~90% w/wの量で存在するプラジカンテルを含み、
(b)矯味剤が、各ビーズの約5% w/wの量で存在するニンニク誘導体を含み、
(c)担体マトリックスがアルギネートを含み、アルギネートが、各ビーズの5~11% w/wの量で存在し、
(d)湿潤剤がCremophor(登録商標)RH40であり、Cremophor(登録商標)RH40は、各ビーズの5~10% w/wの量で存在する。
【0030】
いくつかの実施形態では、組成物は、以下を含む:
(a)治療上有効な化合物が、各ビーズの約70~90% w/wの量で存在するプラジカンテルを含み、
(b)矯味剤が、各ビーズの約2~5% w/wの量で存在するニンニク誘導体を含み、
(c)担体マトリックスが、各ビーズの18~20% w/wの量で存在する寒天の組合せを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、組成物は、以下を含む:
(a)治療上有効な化合物が、各ビーズの約70~90% w/wの量で存在するプラジカンテルを含み、
(b)矯味剤が、各ビーズの約5% w/wの量で存在するニンニク誘導体を含み、
(c)担体マトリックスが、酸可溶性ポリマーとアルギネートとの組合せを含み、酸可溶性ポリマーが、各ビーズの8~10% w/wの量で存在し、アルギネートが、各ビーズの8~11% w/wの量で存在し、
(d)湿潤剤が、Cremophor(登録商標)RH40またはTween(登録商標)であり、RH40またはTween(登録商標)が、各ビーズの5~10% w/wの量で存在する。
【0032】
いくつかの実施形態では、ビーズはさらに矯味剤で覆われる。
【0033】
第2の態様では、本発明は、本発明の魚類用飼料添加剤を含む魚類用飼料組成物を提供する。
【0034】
第3の態様では、本発明は、本発明の組成物、魚類用飼料または魚類用飼料添加剤を魚類に投与することを含む、魚類の疾患を処置または予防する方法を提供する。好ましくは、疾患は、寄生虫感染症、例えば、polyopisthocotyleanおよびmonopisthocotylean単生類吸虫類などの条虫または吸虫によって引き起こされる感染症である。好ましくは、魚類用飼料または魚類添加剤は、50mg/kg~150mg/kgの量の治療上有効な化合物の用量を魚類に送達するのに十分な量で投与される。
【0035】
第4の態様では、本発明は、本発明の水生動物用飼料添加剤組成物を調製するための方法であって、
(a)治療上有効な化合物と矯味剤との乾燥混合物を調製するステップと、
(b)担体マトリックスを含有する溶液を乾燥混合物に添加して均一な懸濁液を形成するステップと、
(c)均一な懸濁液を液体媒体に滴下してビーズを形成するステップと、
(d)ビーズを水で洗浄するステップと、
(e)洗浄したビーズを乾燥させるステップと
を含む、方法を提供する。
【0036】
乾燥混合物は、水が添加されていないため乾燥している。乾燥混合物は、実質的にまたは完全に水を含まない。
【0037】
第5の態様では、本発明は、本発明の魚類用飼料添加剤組成物を調製する方法であって、(a)水生動物用飼料添加剤を、粉砕された魚類用飼料と混合して混合物を形成するステップと、(b)(a)の混合物からペレットを形成するステップとを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の更なる特徴は、そのいくつかの非限定的な実施形態の以下の説明においてより完全に説明される。この説明は、単に本発明を例示する目的で含まれる。それは、上記の本発明の広範な概要、開示または説明に対する制限として理解されるべきではない。以下、添付図面を参照して説明する。
【0039】
図1A図1Aは、5時間後の海水中の製剤A~Eを含むビーズの崩壊のレベルを示す。
【0040】
図1B図1Bは、5時間後の0.1M HCl中の製剤A~Eを含むビーズの崩壊レベルを示す。
【0041】
図2A図2Aは、海水中で180分間インキュベートした後の純粋な薬物粉末、製剤Bおよび製剤Cからのプラジカンテル(PZQ)の累積溶解パーセントを示す。
【0042】
図2B図2Bは、SW=海水、SGF=模擬胃液、SIF=模擬腸液の異なる媒体中で連続的にインキュベートした製剤Bおよび製剤CビーズのPZQ放出プロファイルを示す図である。表は、特定の溶解条件下での純粋な薬物粉末からの累積的なPZQ放出を示す。データは平均±SDを表す(n=3)。
【0043】
図3A図3Aは、PZQ粉末および対応するブランクビーズのDSCサーモグラムと比較した、製剤BのDSCサーモグラムを示す。
【0044】
図3B図3Bは、PZQ粉末および対応するブランクビーズのDSCサーモグラムと比較した、製剤CのDSCサーモグラムを示す。
【0045】
図4A図4Aは、175グラム(小)および2000グラム(大)のキングフィッシュによって消費された製剤AまたはEを含む魚類用飼料の提供された全供給量のパーセンテージを示す。
【0046】
図4B図4Bは、175グラム(小)および2000グラム(大)のキングフィッシュによって消費された製剤AまたはEを含む魚類用飼料の提供された全供給量を消費するのにかかる時間を示す。
【0047】
図5A図5Aは、260グラムのキングフィッシュによって消費された製剤B、CまたはDを含む魚類用飼料の提供された全供給量のパーセンテージを示す。
【0048】
図5B図5Bは、260グラムのキングフィッシュによって消費された製剤B、CまたはDを含む魚類用飼料の提供された全供給量を消費するのにかかる時間を示す。
【0049】
図6図6は、製剤Eを含む大型キングフィッシュに給餌する魚類用飼料のa)中腸およびb)後腸における消化されなかったビーズを示す解剖消化管を示す。
【0050】
図7図7は、製剤B、CまたはDを含む魚類用飼料を与えた魚類の給餌3時間後の魚類の解剖消化管を示す。
【0051】
図8A図8Aは、魚類によって消費された新鮮な魚類用飼料と比較した、製剤BおよびCを含有する4ヶ月齢の魚類用飼料の全供給量のパーセンテージを示す。
【0052】
図8B図8Bは、新鮮な魚類用飼料と比較して、純粋なプラジカンテル、製剤Bまたは製剤Cを含有する4ヶ月齢の魚類用飼料の全供給量を消費するのにかかる平均時間を示す。
【0053】
図9A図9Aは、1600グラムのキングフィッシュによって消費された純粋なプラジカンテル、製剤Bまたは製剤Cを含む魚類用飼料の提供された全供給量のパーセンテージを示す。
【0054】
図9B図9Bは、6日間の実験期間にわたって1600グラムのキングフィッシュによって消費された、プラジカンテル、製剤Bまたは製剤Cを含む魚類用飼料の提供された全供給量のパーセンテージを示す。
【0055】
図9C図9Cは、純粋なプラジカンテルまたは製剤Bまたは製剤Cを含む魚類用飼料を提供された魚類が受け取ったプラジカンテルの平均日用量を示す。
【0056】
図10図10は、純粋なプラジカンテル、製剤Bまたは製剤Cを含む魚類用飼料を提供された魚類におけるZeuxapta吸虫類の減少率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
発明の詳細な説明
本発明は、魚類に摂取可能であり、淡水または海水中で実質的に溶解または分解しない担体マトリックス中に治療上有効な化合物と一緒に矯味剤を封入することにより、ともすれば魚類に経口投与するのが困難な治療上有効な化合物の嗜好性を改善することができるという発見に基づいている。
【0058】
全般
当業者であれば、本明細書に記載された本発明が、具体的に記載されたもの以外の変形および修正を受けやすいことを理解する。本発明は、すべてのそのような変形および修正を含む。本発明はまた、本明細書で言及されるかまたは示されるステップ、特徴、製剤および化合物のすべてを個々にまたは集合的に、ならびにステップまたは特徴のありとあらゆる組合せまたは任意の2つ以上を含む。
【0059】
本明細書に引用された各文書、参考文献、特許出願または特許は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれており、これは、この文書の一部として読者によって読まれ検討されるべきであることを意味する。本明細書で引用された文書、参考文献、特許出願または特許が本明細書で繰り返されていないことは、単に簡潔さのためである。
【0060】
本明細書に、または本明細書に参照として組み込まれるいずれかの文書に記載されている任意の製品についての任意の製造者の指示、記述、製品仕様、および製品シートは、本明細書に参照として組み込まれ、本発明の実施に使用することができる。
【0061】
本発明の範囲は、本明細書に記載される特定の実施形態のいずれによっても限定されない。これらの実施形態は、例示のみを目的としている。機能的に等価な生成物、製剤および方法は、本明細書に記載されるような本発明の範囲内であることは明らかである。
【0062】
本明細書に記載される発明は、1つまたはそれを超える値の範囲(例えば、大きさ、パーセンテージ、濃度など)を含み得る。値の範囲は、範囲を定義する値、および範囲の境界を定義する値のすぐ隣の値と同じまたは実質的に同じ結果をもたらす範囲に隣接する値を含む、範囲内のすべての値を含むと理解される。したがって、反対のことが示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。したがって、「約80%」は「約80%」を意味し、「80%」も意味する。少なくとも、各数値パラメータは、有効数字の数および通常の丸め手法に照らして解釈されるべきである。
【0063】
本明細書を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」という語または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記載された整数または整数群を含むが、任意の他の整数または整数群を除外しないことを意味すると理解される。また、本開示において、特に特許請求の範囲および/または段落において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含むこと(comprising)」などの用語は、米国特許法においてそれに起因する意味を有することができることに留意されたい。例えば、それらは、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含むこと(including)」などを意味することができる。「から本質的になる(consisting essentially of)」および「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法においてそれらに帰せられる意味を有し、例えば、それらは、明示的に列挙されていない要素を可能にするが、先行技術において見出されるか、または本発明の基本的もしくは新規な特徴に影響を及ぼす要素を除外する。
【0064】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。本出願では、特に明記しない限り、単数形の使用は複数形を含む。本出願において、「または」の使用は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。さらに、「含むこと(including)」という用語、ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形態の使用は限定的ではない。また、「要素」または「構成要素」などの用語は、特に明記しない限り、1つの単位を含む要素および構成要素、ならびに2つ以上のサブユニットを含む要素および構成要素の両方を包含する。また、「部分」という用語の使用は、部分の一部または部分全体を含むことができる。
【0065】
「魚類用飼料」という用語は、植物、動物、または魚類による消費を意図した他の有機材料などの任意の材料を意味する。魚類用飼料は、捕獲または養殖魚類に栄養素を提供するために使用され、通常、多量栄養素(macronutrient)、微量元素およびビタミンを含有する。栄養素の供給源は、魚粉および他の海洋源、植物性タンパク質、ならびに小麦などの結合剤であり得る。魚類用飼料は、一般に、顆粒、ペレットまたはフレークなどの固体形態で提供される。
【0066】
「水生動物」という用語は魚類を含む。
【0067】
「水生動物用飼料添加剤」という用語は、水生動物用飼料、好ましくは魚類用飼料に添加することができる組成物を意味する。水生動物用飼料添加剤は、薬品、または他の生物学的に有効な薬剤、香味剤、担体、および水生動物集団が摂取することが望ましい他の成分を含む矯味剤を含有することができる。水生動物用飼料の製造中に、水生動物用飼料添加剤を水生動物用飼料の顆粒またはペレット内に組み込むことができる。代替的に、それらは、給餌前に製造された水生動物用飼料の顆粒またはペレットと混合され得るか、そうでなければ水生動物用飼料の顆粒またはペレットの表面にコーティングされ得る。
【0068】
「ビーズ」という用語は、粒子、顆粒およびペレットを含む。ビーズは、球形または平らな形状を含む任意の形状または大きさであり得る。
【0069】
「治療有効量」または「治療有効用量」という用語は、水生動物において治療応答を生じるように決定された治療上有効な化合物の量または用量を指す。そのような治療有効量または用量は、当業者によって容易に確認される。
【0070】
「処置する(treat)」および「処置(treatment)」という用語は、治療的処置、予防的処置、および対象が障害または他の危険因子を発症するリスクを低下させる適用を含む。処置は、障害の完全な治癒を必要とせず、症状または根底にある危険因子を軽減する実施形態を包含する。
【0071】
「味が良い(palatable)」という用語は、食品または添加剤の味および/またはにおいが対象によって消費されるように、対象にとって十分に許容されることを意味する。食品または添加剤は、対象にとって味が良いとみなされるために、所与の期間に完全に消費される必要はない(すなわち、100%消費)。治療上有効な化合物を含有する飼料または添加剤は、治療効果を有するのに十分な量でそれを消費することが許容されることを対象が見出した場合、「味が良い」と考えられる。いくつかの実施形態では、治療上有効な化合物を含有する飼料または添加剤は、治療上有効な化合物の存在が水生動物集団によって消費される飼料の量に有意に影響しない場合、「味が良い」とみなされる。これは、水生動物集団によって消費された薬用水生動物用飼料または水生動物用飼料添加剤の量を、水生動物集団によって消費された非薬用水生動物用飼料または水生動物用飼料添加剤の量と比較することによって測定することができる。
【0072】
本明細書で使用される選択された用語の他の定義は、本発明の詳細な説明の中に見出され、全体を通して適用され得る。他に定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0073】
水生動物用飼料添加剤
第1の態様では、本発明は、治療有効量の治療薬を水生動物に送達することができる水生動物用飼料添加剤であって、添加剤が複数の治療用ビーズを含み、各ビーズが、
(a)少なくとも45% w/wの治療上有効な化合物と、
(b)1%~10% w/wの矯味剤と、
(c)2%~35% w/wの担体マトリックスと
を含み、
担体マトリックスは、
(a)水生動物によって摂取可能であり、
(b)水生動物用飼料添加剤が使用される水性環境において室温で少なくとも60分間実質的に安定であり、
矯味剤が単独で、または担体マトリックスと組み合わせて、治療上有効な化合物の味をマスキングする、水生動物用飼料添加剤を提供する。
【0074】
好ましくは、担体マトリックスは水生動物によって消化可能である。
【0075】
本発明は、粒状水生動物用飼料添加剤を提供する。本発明のビーズは、標的水生動物集団によって摂取され得、水生動物用飼料に組み込まれ得る任意の形状または大きさであり得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、ビーズは直径約0.1ミリメートル~5ミリメートルである。好ましくは、ビーズは、直径が0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9または5.0ミリメートルである。
【0077】
一実施形態では、ビーズは、5000μm、<5000μm、1000μm、<1000μm;500μm;<500μm;355~500μm;212~355μm;150~355μm;150μm;<150μm;100μmおよび<100μmからなる群より選択される直径を有する。
【0078】
各ビーズは、治療上有効な化合物、矯味剤および担体マトリックスを含む。ビーズ中のこれらの要素の各々の相対量は、治療上有効な化合物、矯味剤および担体マトリックスの性質に依存する。
【0079】
好ましくは、各ビーズ中に存在する治療上有効な化合物の量は少なくとも45% w/wであるが、当業者であれば、最終量が各ビーズによって送達される治療薬および添加剤中のビーズの数に依存することを理解する。好ましくは、各ビーズ中に存在する治療上有効な化合物の量は、少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90パーセント(w/w)である。
【0080】
好ましくは、矯味剤は、1%~10% w/w、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10パーセント(w/w)である。複数の矯味剤が存在する場合、各々が1%~10% w/w、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10パーセント(w/w)の量で存在し得る。
【0081】
好ましくは、担体マトリックスは、2%~35% w/w、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35パーセント(w/w)である。
【0082】
治療上有効な化合物、矯味剤および担体マトリックスの各々は、好ましくは、別々の層にコーティングされるのではなく、本発明のビーズ全体に分布する。まとめると、治療上有効な化合物、矯味剤および担体マトリックスの各々のパーセント(w/w)は、80~100パーセント(w/w)、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100パーセント(w/w)になる。
【0083】
本発明の一実施形態では、治療上有効な化合物の担体マトリックスからの浸出量が、水性環境中、室温で60分間にわたって20% w/w未満である場合、治療上有効な化合物は担体マトリックス中で実質的に安定であり、ここで、水性環境は、水生動物用飼料添加剤が使用される環境(水など、より好ましくは海水など)である。好ましくは、浸出量は、室温の水性環境において60分間にわたって20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1% w/w未満である。より好ましくは、浸出量は、室温の水性環境において60分間にわたって5% w/w未満である。
【0084】
添加剤調製物の化学的安定性は、その調製物中の有効成分の治療的浸出量に依存する。一般に、調製物の安定性分析は、室温よりも高い温度のオーブンにおいてなどの加速温度条件下で行われ得る。加速安定性分析に使用される速度論的方法は、安定性を予測できるように分解メカニズムを詳細に研究する必要はないが、健全な科学的原則に基づき、規制要件に準拠していることが望ましい。
【0085】
本発明の別の実施形態では、添加剤は、一般に、水生動物が生きている水性環境、すなわち処置される水性環境で耐久性がある。例えば、担体マトリックスは、室温で0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10% w/w未満分解する場合、一般に耐久性がある。
【0086】
本発明のさらに別の実施形態では、添加剤は、好ましくは、飼料添加剤によって処置された水生動物の消化管で少なくとも部分的に崩壊する。好ましくは、添加剤は、水生動物の消化管において少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%(w/w)分解する。
【0087】
添加剤または担体マトリックスが動物の消化管(胃管または腸管など)で溶けにくい場合、添加剤はまた、添加剤の崩壊を助ける湿潤剤または界面活性剤ポリマーまたは医薬崩壊剤を含み得る。湿潤剤または界面活性剤としては、例えば、限定されないが、アニオン性もしくはカチオン性界面活性剤または非イオン性湿潤剤を挙げることができる。本発明の特定の形態では、湿潤剤はCremophor(登録商標)RH40またはTween(登録商標)である。崩壊剤はまた、デンプンおよび修飾デンプン、セルロースなどであり得る。
【0088】
代替の実施形態では、添加剤または担体マトリックスは、動物の消化管で分解してもしなくてもよい湿潤剤または界面活性剤ポリマーまたは医薬崩壊剤を含み得、これは添加剤の製造を支援し、または水性環境での添加剤の湿潤を促進する。
【0089】
ビーズ製造中に治療薬が担体マトリックス(例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液)にあまり濡れていない場合、湿潤剤を添加して薬物粉末の湿潤を助け、マトリックス中に均一に分散させることができる。湿潤剤はまた、捕捉された空気を薬物と担体マトリックスとの間に移動させて、担体マトリックスと治療薬との間に強い結合を与えるのを補助する-捕捉された空気は砕けやすいビーズを生じさせ、これは魚類用飼料に組み込まれたときに容易に粉砕され、魚類は露出した治療薬を味わうことができる。
【0090】
この目的に適した湿潤剤または界面活性剤としては、例えば、限定されないが、アニオン性もしくはカチオン性界面活性剤または非イオン性湿潤剤が挙げられる。崩壊剤はまた、デンプンおよび修飾デンプン、セルロースなどであり得る。本発明の特定の形態では、湿潤剤はCremophor(登録商標)RH40またはTween(登録商標)である。
【0091】
本発明の一実施形態では、治療薬は、添加剤中で少なくとも6ヶ月間、より好ましくは9、12、15、18、24ヶ月間実質的に安定である。
【0092】
ビーズのパーセント(w/w)が上記成分の100% w/w未満である場合、ビーズは、他の成分または追加の材料、例えば追加の矯味剤を含み得るか、ビーズ上に(コーティングまたは被覆として含む)堆積され得るか、またはビーズに含まれ得る。
【0093】
ビーズが調製されると、それらは乾燥され得る。ビーズを乾燥させるために、任意の適切な方法を使用することができる。例えば、ビーズは、以下に記載されるように、フュームフードを使用して数日間にわたって風乾され得る。次いで、乾燥させたビーズを水生動物用飼料に組み込むことができる。
【0094】
治療上有効な化合物
水生動物、好ましくは魚類に経口投与することができる任意の治療上有効な化合物を本発明で使用することができる。いくつかの実施形態では、ビーズ中に2つ以上の治療上有効な化合物が存在する。例えば、治療上有効な化合物は、駆虫薬、プロバイオティクス、シンバイオティクスもしくは抗生物質またはそれらの組合せであり得る。好ましい実施形態では、治療上有効な化合物は駆虫薬である。
【0095】
魚類などの水生動物における寄生虫疾患の処置および予防に使用される駆虫薬としては、トリクロルホン、メベンダゾール、フェンベンダゾール、プラジカンテルおよび40%ホキシムが挙げられる。別の実施形態では、駆虫薬は、フロルフェニコール、オキシテトラサイクリン二水和物、スルファジメトキシン/オルメトプリム、B.thuringiensisおよびBacillus属のグラム陽性菌の胞子に基づく生物殺虫剤から選択される。別の実施形態では、抗生物質は、テトラサイクリン、オキソリン酸およびクロラムフェニコールから選択される。
【0096】
プロバイオティクスが本発明で使用される場合、プロバイオティクスの主な目的は、通常は魚類の腸または腸内に存在する有益な細菌と有害な細菌との間の関係を確立または維持することである。有効なプロバイオティクスは、以下に指定される特定の品質を有するべきである。
a.プロバイオティクスは、様々な病原性細菌に対する魚類の成長、発達および保護に有益な効果を有するべきである。
b.プロバイオティクス細菌は宿主に有害な影響を及ぼすべきではない。
c.プロバイオティクスは薬物耐性の能力を有するべきではなく、遺伝的形質を維持する能力を有するべきである。
d.効率的な飼料にプロバイオティクスを利用するために、それらは以下の特性を示すべきである。
i.酸および胆汁耐性
ii.胃液耐性
iii.消化器系表面への付着
iv.病原体に対する拮抗作用
v.免疫の刺激&腸運動性の増加&粘膜における生存
vi.酵素およびビタミンの産生;ならびに
e.それらは、良好な感覚特性、発酵作用、凍結乾燥に対する耐性、および包装および保存プロセス中の飼料中での生存率を有するべきである。
【0097】
例として、最も頻繁に使用されるプロバイオティクス微生物のみがBacillus属、Lactobacillus属およびBifidobacterium属に属する。プロバイオティクスとして水産養殖に使用することが報告されているLactobacillus、BifidobacteriumおよびStreptococcusの様々な種としては、L.acidophilus、L.casei、L.fermentum、L.gasseri、L.plantarum、L.salivarius、L.rhamnosus、L.johnsonii、L.paracasei、L.reuteri、L.helveticus、L.bugaricus、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Saccharromyces species、Saccharromyces boulardii、S.thermophilesおよびS.cremorisが挙げられる。
【0098】
水産養殖で使用される多くのプロバイオティクスは、既知の病原体に対する抗菌特性でよく知られている。Lactococcus lactis RQ516プロバイオティクスは、Tilapia(Oreochromis niloticus)に与えるとAeromonas hydrophilaに対する阻害作用を示す。また、L.lactisプロバイオティクスは、魚類の成長に影響を及ぼし得る2つの病原体、すなわちYersinia rukeriおよびAeromonas salmonicidaに対して抗菌活性を有する。Leuconostoc mesenteroidesは、Nile tilapia(O.niloticus)に見られる魚類病原体を阻害する潜在力を有する。Bacillus subtilisは、観賞魚類に見られる運動性のAeromonads、Coliforms全体およびPseudomonadsをかなり減少させる。Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus fermentum、Lactococcus lactis、およびSterptococcus salivariusなどの乳酸菌をサワラ(Scomberomorus commerson)腸から単離し、Listeria innocua の成長を阻害することができた。Anguilla種、Clarias orientalis、Labeo rohita、Oreochromis種およびPuntius carnaticusの腸から単離された多くのLactobacilli種は、AeromonasおよびVibrio種に対して有意な抗菌活性を示した。
【0099】
ウイルスの阻害は、細菌によって産生される細胞外酵素の分泌によっても起こり得る。例えば、Aeromonas種、Corynebacterium種、Pseudomonas種およびVibrio種は、IHNV(感染性造血壊死ウイルス)に対する抗ウイルス活性を示す。プロバイオティクス株Bacillus megateriumの給餌は、エビ、Litopenaeus vannameiにおけるWSSV(白点症候群ウイルス)に対する耐性を高めた。プロバイオティクス株BacillusおよびVibrio種は、WSSVに対して有効であり、Litopenaeus vannameiを効率的に保護する。プロバイオティクスとしてのLactobacillusを、単一の株として、またはSporolacとの混合物として適用すると、lymphocystisウイルス疾患に対するより良好な耐性が得られ、これはParalichthys olivaceus derで見出される。
【0100】
プロバイオティクスは抗真菌活性も示し得る。例えば、Anguilla australis(ウナギ)培養水由来のAeromonas株A199は、Saprolegnia種を阻害することができる。Pseudomonas種M162、Pseudomonas種M174およびJanthinobacterium種M169は、Oncorhynchus mykiss(ニジマス)で実証されているように、saprolegniasisに対する動物の免疫を増加させることができる。Lactobacillus plantarum FNCC 226はまた、Saprolegnia parasiticaに対するナマズ(Pangasius hypophthalamus)の阻害能を示した。
【0101】
本発明の主な利点は、水生動物用飼料添加剤が治療上有効な化合物の嗜好性を改善するための手段を提供することである。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、治療上有効な化合物は、水生動物に直接経口投与することが困難な、味が良くないまたは刺激性の強い化合物である。
【0102】
一実施形態では、治療上有効な化合物は、プロバイオティクス;シンバイオティクス;抗無脊椎動物化合物;駆虫化合物;抗ウイルス化合物;抗線虫化合物;抗生物質化合物;殺藻剤;殺虫剤化合物;抗真菌化合物;抗原虫化合物;および殺幼虫剤化合物からなる群より選択される。
【0103】
別の実施形態では、治療上有効な化合物は、テトラサイクリン;サルファ系抗生物質;ジアミノピリミジン;フルオロキノロン;キノロン;スルホンアミド;アベルメクチン;マクロライド;塩素化ビスフェノール;ベンゾイル尿素;モノクロロベンゼン;昆虫成長調節剤;硫黄化合物;サリチルアミド;リン化合物;ベンゾイミダゾール;ピレトリン;トリアジン;テトラミゾール;および抗コクシジウム剤(anticoccidal);不可逆的有機リン酸アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;有機リン酸系殺虫剤;クロラムフェニコール;およびテトラサイクリンからなる群より選択される。
【0104】
好ましい一実施形態では、治療上有効な化合物は、プラジカンテル;スルファジアジン;トリメトプリム;フルメキン;オキシテトラサイクリン;オキソリン酸(テラマイシンとしても知られる);安息香酸エマメクチン;トリクロルホン;メベンダゾール;フェンベンダゾール;40%ホキシム;フロルフェニコール;オキシテトラサイクリン脱水物;スルファジメトキシン/オルメトプリム;スルファジメトキシン;オルメトプリム;B.thuringiensisおよびBacillus属のグラム陽性菌の胞子に基づく生物殺虫剤;テトラサイクリン;およびクロラムフェニコールからなる群より選択される。
【0105】
別の好ましい実施形態では、治療上有効な化合物は、マクロライド駆虫薬;ビチオノール;ジフルベンズロン;トリフルムロン;ピリプロキシフェン;硫黄粉末;サリチルアニリド;有機リン;ベンゾイミダゾール;ピレスロイド;トリアジン;テトラミゾール駆虫薬;レバミソール駆虫薬;スルホンアミド;および抗コクシジウム薬からなる群より選択される。
【0106】
本発明の好ましい一実施形態では、治療上有効な化合物はプラジカンテルである。プラジカンテルは、魚類に直接経口投与した場合、単に魚類用飼料と混合した場合、または魚類用飼料にコーティングした場合に、魚類によって拒絶される特に苦味を有することが知られている駆虫薬である。プラジカンテルは、特定の商業的に養殖されている魚種、例えば、ヒラマサの間では吸虫類の処置に頻繁に使用されるが、その苦味のために一般に浴浸によって投与される。ヒラマサは、特に敏感な味覚を有することが知られている。
【0107】
本発明の水生動物用飼料添加剤ビーズ中の治療上有効な化合物の量は、治療上有効な化合物の性質、および水生動物集団において治療効果を達成するために必要な量に依存する。水生動物集団によって消費される水生動物用飼料添加剤(または水生動物用飼料添加剤を含む水生動物用飼料)の量は、ビーズに必要とされる治療上有効な化合物の量に影響を及ぼす。水生動物の大きさおよび水の温度も、水生動物集団によって消費される水生動物用飼料の量に影響を及ぼし得ることは当業者に公知である。例えば、大型の魚類は、小型の魚類と比較して、魚類用飼料を、体重に対してより少ないパーセンテージで食べる傾向がある。魚類集団はまた、より冷たい水条件ではより少量の飼料を消費する傾向がある。これは、より大きな魚類とより冷たい水の条件との両方で、治療上有効な化合物が魚類集団によって治療有効用量で消費されるためには、より多量の治療上有効な化合物が魚類用飼料中に存在しなければならないことを意味する。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態の特定の利点は、非常に高い薬物充填がビーズ中で達成され得ることである。いくつかの実施形態では、ビーズは少なくとも約70% w/wの治療上有効な化合物を含有する。これは、治療上有効な化合物を水生動物において治療効果を有するのに十分な量で送達するために高い薬物充填が必要であるので、いくつかの治療上有効な化合物を特定の条件でいくつかの水生動物集団に送達するのに有用であり得る。
【0109】
例えば、処置される疾患の性質に応じて、プラジカンテルの治療有効用量は50mg/kg~150mg/kgである。最も好ましい実施形態では、約70%~90% w/wのプラジカンテルの薬物充填がビーズ中に存在し、これにより、治療有効用量のプラジカンテルが水生動物集団に送達されるように、水生動物集団が十分な水生動物用飼料を摂取することが保証される。
【0110】
矯味剤
本発明は、本発明のビーズ内に組み込まれる矯味剤を提供する。
【0111】
本発明のビーズ内への矯味剤の封入は(水生動物用飼料に単純にコーティングされるか、そうでなければ組み込まれるのとは対照的に)、矯味剤が治療上有効な化合物の近位に留まり、治療上有効な化合物とは無関係に分散されないことを保証するという利点を提供する。したがって、治療上有効な化合物の味をより良くマスクすることができる。
【0112】
矯味剤は、同様にビーズ内に含まれる治療上有効な化合物の風味および/またはにおいを十分に隠す能力を有する任意の剤であり得る。矯味剤は、多くの方法でこの効果を発揮することができる。一部の矯味剤は、それ自体の味または風味を有しない。代わりに、これらの剤は、例えば、水生動物の味覚系に効果を及ぼすこと、治療上有効な化合物に結合し、唾液中でのその放出を防止すること、または唾液中での治療上有効な化合物の溶解を減少させることによって、治療上有効な化合物の味の知覚に影響を及ぼすことができる。他の矯味剤は香味剤である。香味剤自体は、治療上有効な化合物の不快な風味および/またはにおいをマスクする能力を有する水生動物にとってより好ましいにおいおよび/または風味を有する。好ましい実施形態では、矯味剤は香味剤である。
【0113】
スクロース、遊離アミノ酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシド、有機酸、魚類加水分解物および他の化合物を含む、水生動物、特に魚類のための多数の矯味剤が当該技術分野で公知である。適切な矯味剤は、水生動物集団の特定の種に依存し得る。
【0114】
特に好ましい実施形態では、矯味剤は、ニンニク(例えば、ニンニク粉末、希釈または純粋な、合成ニンニク成分(アリシン)またはニンニク油)の誘導体または抽出物であり、ニンニクに見られる臭気化合物を含む。別の好ましい実施形態では、矯味剤は、ベタイン、L-アラニン、L-グルタミン酸、L-アルギニン、グリシンおよびイノシンなどのアミノ酸である。別の好ましい実施形態では、矯味剤は、天然魚油(タラ肝油またはマグロ油)、アニス油、またはヒマシ油である。
【0115】
水生動物用飼料に必要とされる矯味剤の量は、矯味剤の性質に依存し、好ましくは1~10% w/wの範囲である。好ましい実施形態では、矯味剤は、約2~8% w/wのビーズを含む。特に好ましい実施形態では、香味剤または矯味剤は、約4~5% w/wのビーズを含む。
担体マトリックス
【0116】
担体マトリックスは、治療上有効な化合物と矯味剤とを一緒に封入する手段を提供する。
【0117】
本発明の組成物に使用される担体マトリックスは、ビーズが水生動物用飼料への組み込みおよび標的水生動物集団による消費に適した大きさ、形状および稠度を有するように、矯味剤と治療上有効な化合物とを組み込んだビーズを形成することができる。担体マトリックスはまた、水生動物用飼料に圧縮されたときにビーズの完全性を維持するのを助ける。
【0118】
好ましくは、ビーズは水生動物によって消化可能であり、治療上有効な化合物が摂取されると、そのまま逆吐または排泄されるのではなく、動物の消化管に放出される。本発明で使用される担体マトリックスは、好ましくは、治療上有効な化合物が動物によって吸収され得るように、水生動物消化管で少なくとも部分的に分解することができる。これにより、腸内での標的薬物放出が可能になる。
【0119】
水生動物集団は、治療上有効な化合物を、他の担体マトリックスよりも、ある担体マトリックスで提供された場合に、味がより良いと認めることができる。いくつかの実施形態では、担体マトリックスは、治療上有効な化合物の嗜好性を改善するために、矯味剤と一緒に作用する。
【0120】
理論に束縛されるものではないが、治療上有効な化合物は、適切な担体マトリックスに組み込まれると、水生動物の集団による消費のために送達されるとき、周囲環境への浸出の減少を示す。治療上有効な化合物の浸出の減少は、水生動物による治療上有効な化合物の悪臭/味の検出を減少させ、その嗜好性を改善する。これは、水生動物用飼料添加剤自体中の治療活性化合物の量を減少させる更なる効果を有する。
【0121】
したがって、水生動物用飼料添加剤(または水生動物用飼料添加剤を含む水生動物用飼料)が水生動物集団による消費のために水中に導入される場合、ビーズが治療上有効な化合物を周囲の水に浸出させないことが望ましい。したがって、担体マトリックスは、好ましくは、淡水または海水中で実質的に溶解または崩壊しない。特に好ましい実施形態では、担体マトリックスは、ビーズがこの期間中に海水中で崩壊しないという点で、少なくとも60分間海水中で実質的に安定である。
【0122】
本発明の一実施形態では、治療薬の浸出率は、海水中で60分間にわたって10%未満である。より好ましくは、浸出率は、海水中で60分間にわたって5%未満である。
【0123】
特に好ましい実施形態では、適切な担体マトリックスは、海水中で実質的に溶解または崩壊しない海洋環境に由来するヒドロゲル系化合物から少なくとも部分的に調製される。適切な海洋系ヒドロゲルとしては、寒天、アガロース、カラギーナン、フコイダン、キトサン、アルギネートまたは寒天が挙げられる。さらに好ましい実施形態では、適切な担体マトリックスは、アルギネートと酸可溶性ポリマー(例えばキトサンおよび/またはEudraguard(登録商標))との組合せ、アルギネート単独、または寒天を含む。一実施形態では、適切な担体マトリックスは海洋系コラーゲンである。
【0124】
好ましい実施形態では、担体マトリックスは、アルギネートと酸可溶性ポリマー(例えばキトサンおよび/またはEudraguard(登録商標))との組合せである。好ましくは、担体マトリックスは、約5~15% w/wの酸可溶性ポリマーおよび5~15% w/wのアルギネートで構成される。特に好ましい実施形態では、担体マトリックスは、約8~10w/w%の酸可溶性ポリマーおよび約8~11% w/wのアルギネートで構成される。ビーズは、塩化カルシウムまたは塩化亜鉛の溶液中でアルギネート/酸可溶性ポリマー担体マトリックス、治療上有効な化合物および矯味剤を含有する懸濁液を架橋することによって調製される。
【0125】
別の好ましい実施形態では、担体マトリックスはアルギネートのみで構成される。好ましくは、担体マトリックスは5~15% w/wのアルギネートを含む。特に好ましい実施形態では、担体マトリックスは約5~11%のアルギネートで構成される。
【0126】
別の好ましい実施形態では、担体マトリックスは寒天から調製される。市販の食品グレードの寒天、アガロースおよび他の医薬品または微生物学的グレードの寒天を含む任意のタイプの寒天を担体マトリックスとして使用することができる。好ましくは、担体マトリックスは約15~25%の寒天で構成される。特に好ましい実施形態では、担体マトリックスは食品グレードの寒天を含み、約18~20% w/wの寒天を含む。これらのビーズは、寒天担体マトリックス、治療上有効な化合物および矯味剤を含有する懸濁液を、油、乳化剤(例えば、Tween(登録商標)80)、またはバッファー中で凝固させることによって調製される。好ましい実施形態では、寒天担体マトリックスを凝固させるために使用される油、乳化剤またはバッファーは、それが水生動物にとって心地よい風味を有するという点で、香味剤としての味覚マスキング特性を有する。特に好ましい実施形態では、寒天担体マトリックスを含有する懸濁液を凝固させるために油が使用される。好ましくは、使用される油は、ニンニク油(すなわち、ニンニク誘導体を含有する油)、および/またはタラ肝油であり得る。
【0127】
湿潤剤/界面活性剤/崩壊剤
いくつかの好ましい実施形態では、ビーズは、1つまたはそれを超える湿潤剤、界面活性剤または崩壊剤をさらに含む。
【0128】
添加剤または担体マトリックスが動物の消化管(胃管または腸管など)に難溶性である場合、添加剤は、添加剤の崩壊を助ける湿潤剤または界面活性剤ポリマーまたは医薬崩壊剤を含み得る。
【0129】
代替の実施形態では、添加剤または担体マトリックスは、動物の消化管で分解してもしなくてもよい湿潤剤または界面活性剤ポリマーまたは医薬崩壊剤を含み得、これは添加剤の製造を支援し、または水性環境での添加剤の湿潤を促進する。
【0130】
ビーズ製造中に治療薬が担体マトリックス(例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液)にあまり濡れていない場合、湿潤剤を添加して薬物粉末の湿潤を助け、マトリックス中に均一に分散させることができる。湿潤剤はまた、捕捉された空気を薬物と担体マトリックスとの間に移動させて、担体マトリックスと治療薬との間に強い結合を与えるのを補助する-捕捉された空気は砕けやすいビーズを生じさせ、これは魚類用飼料に組み込まれたときに容易に粉砕され、魚類は露出した治療薬を味わうことができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、湿潤剤は、ビーズが形成される懸濁液に捕捉される空気の量を減少させる効果を有する。懸濁液中に捕捉される空気の量は、ビーズの脆性に影響を及ぼす能力を有する。好ましくは、懸濁液中に捕捉される空気の減少は、ビーズの圧縮性を増加させ、したがってビーズが魚類用飼料に組み込まれたときに治療剤の破砕および結果としての浸出のリスクを減少させる。例えば、治療薬がプラジカンテルである場合、薬物粉末をアルギネート溶液中に均一に分散させることができるように、湿潤剤を添加して薬物粉末の湿潤を助けることができる。さらに、湿潤剤は、薬物とアルギン酸ナトリウム溶液との間で閉じ込められた空気を置換して強いビーズを与えるのにも役立ち(湿潤が不十分である結果)、最終ビーズ中に閉じ込められた空気は脆弱なビーズを生じ、次いで、魚類用飼料に組み込まれたときに容易に粉砕され、その結果、魚は露出したプラジカンテルを食べることができる。
【0132】
湿潤剤または界面活性剤としては、例えば、限定されないが、アニオン性もしくはカチオン性界面活性剤または非イオン性湿潤剤が挙げられる。好ましくは、湿潤剤または界面活性剤としては、例えば、限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムおよびジオクチルスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が挙げられる。カチオン性界面活性剤が必要に応じて使用され得、限定されないが、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウム(benzethomium chloride)を挙げることができる。製剤に含めることができる潜在的な非イオン性湿潤剤のリストとしては、Cremophor(登録商標)RH40、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80(Tween(登録商標))、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用される場合、これらの湿潤剤は、単独でまたは異なる比の混合物として本発明の剤形中に存在することができる。
【0133】
好ましくは、湿潤剤は、Cremophor(登録商標)RH40またはポリソルベート(Tween(登録商標))である。例えば、湿潤剤は、21、21、40、60、61、65、80、81および/または85 Tween(登録商標)である。一実施形態では、ビーズは、約5~15%のCremophor(登録商標)RH40で構成される。
【0134】
崩壊剤は、例えば、デンプンおよび修飾デンプン、セルロースなどであり得る。
【0135】
特に好ましい実施形態では、適切な担体マトリックスは、アルギネートと酸可溶性ポリマー(例えばキトサンおよび/またはEudraguard(登録商標))および湿潤剤(例えばCremophor(登録商標)RH40またはTween(登録商標))との組合せを含む。
【0136】
好ましい実施形態では、担体マトリックスは、約5~15% w/wの酸可溶性ポリマーおよび5~15% w/wのアルギネートおよび湿潤剤で構成される。好ましくは、湿潤剤は、Cremophor(登録商標)RH40および/またはTween(登録商標)から選択される。最も好ましくは、湿潤剤は、約5~10% w/wで存在する。最も好ましくは、湿潤剤はCremophor(登録商標)RH40であり、約5~10% w/wで存在する。
【0137】
別の好ましい実施形態では、担体マトリックスは、アルギネートおよび湿潤剤で構成される。好ましくは、担体マトリックスは、5~15% w/wのアルギネートおよび湿潤剤で構成される。特に好ましい実施形態では、担体マトリックスは、約5~11% w/wのアルギネートおよび湿潤剤で構成される。好ましくは、ビーズは、Cremophor(登録商標)RH40および/またはTween(登録商標)から選択される湿潤剤をさらに含む。最も好ましくは、湿潤剤はCremophor(登録商標)RH40であり、約5~10% w/wで存在する。
【0138】
水生動物用飼料添加剤を含む水生動物用飼料
一実施形態では、本発明は、治療有効量の本発明の水生動物用飼料添加剤を含む水生動物用飼料を提供する。
【0139】
本発明の水生動物用飼料添加剤ビーズは、水生動物用飼料に組み込むことができ、次いで、これを標的水生動物集団に送達することができる。好ましくは、水生動物は魚類である。標的水生動物集団に安全に提供することができる任意の水生動物用飼料を使用して、本発明の水生動物用飼料を調製することができる。
【0140】
好ましい実施形態では、本発明のビーズは、製造プロセス中に粉砕された水生動物用飼料と混合され、圧縮され、次いで標的水生動物集団に適した大きさのペレットまたは顆粒に切断される。この実施形態では、本発明のビーズは、水生動物用飼料全体に分散しており、単に水生動物用飼料の表面にコーティングされているだけではない。
【0141】
当業者は、治療有効量を構成するために所与の状況で水生動物用飼料に添加しなければならない水生動物用飼料添加剤の量を容易に決定することができる。これは、治療上有効な化合物の性質、水生動物集団、およびビーズ中の薬物充填率を含む様々な因子に依存する。
【0142】
処置方法
更なる態様では、本発明は、本発明の水生動物用飼料添加剤または水生動物用飼料を水生動物集団に投与することを含む、水生動物における疾患を処置する方法を提供する。好ましくは、水生動物は魚類である。
【0143】
本発明の組成物は、水生動物集団が罹患している疾患を処置するために使用することができる。代替的に、本発明の組成物は、水生動物集団が疾患を発症するのを予防するために予防的に使用することができる。
【0144】
多くの異なる治療上有効な化合物を本発明のビーズに使用することができる。特に好ましい実施形態では、治療上有効な化合物は、プラジカンテルなどの駆虫薬である。特に好ましい実施形態では、プラジカンテルを含む本発明の水生動物用飼料添加剤または水生動物用飼料は、魚類集団が50mg/kg~150mg/kgのプラジカンテルの用量を受けるように魚類集団に投与される。
【0145】
様々な異なる疾患の範囲は、単生類吸虫類および住血吸虫類を含む条虫または吸虫によって引き起こされるものなどの寄生虫疾患を含む本発明の組成物を使用して処置または予防することができる。水生動物において疾患を引き起こす単生類寄生虫のファミリーとしては、Capsalidae、Dactylogyrus vastator、Centrocestus formosanusおよびDigenea Heterophydaeが挙げられる。
【0146】
好ましい実施形態では、疾患は、単生類吸虫類によって引き起こされる寄生虫感染症である。さらに好ましい実施形態では、疾患は、Zeuxapta吸虫類によって引き起こされる寄生虫感染症である。
【0147】
本発明の組成物は、水生動物の疾患を処置または予防するために使用することができる。好ましくは、水生動物は、どのような種類の魚であってもよく、例えば、ヒラマサ、クロマグロが挙げられる。
【0148】
好ましい実施形態では、魚類は、特に味および/またはにおいに敏感であることが知られている種のものである。さらに好ましい実施形態では、魚類はSeriola lalandiの種のものである。
【0149】
当業者は、水生動物集団に送達するための水生動物用飼料または水生動物用飼料添加剤の量、および水生動物集団において治療効果を達成するために必要な投薬スケジュールを知っている。
【0150】
水生動物用飼料添加剤を調製する方法
さらなる態様では、本発明の水生動物用飼料添加剤は、以下のステップを含む方法を用いて調製される:
(a)治療上有効な化合物と、矯味剤と、必要に応じて担体マトリックスおよび/または湿潤剤の一部との乾燥混合物を調製するステップと、
(b)担体マトリックスおよび必要に応じて湿潤剤を含有する溶液を乾燥混合物に添加して均一な懸濁液を形成するステップと、
(c)均一な懸濁液を液体媒体に滴下してビーズを形成するステップと、
(d)ビーズを水で洗浄するステップと、
(e)洗浄したビーズを乾燥させるステップ。
【0151】
特に好ましい実施形態では、ステップ(a)の乾燥混合物は、有効量のプラジカンテルなどの治療上有効な化合物をニンニク粉末などの矯味剤と混合することによって調製される。このステップはまた、必要に応じて、担体マトリックス(例えばキトサン)および/または湿潤剤の一部を混合することを含み得る。
【0152】
ステップ(b)では、担体マトリックスを含有する溶液を乾燥混合物に添加して均一な懸濁液を形成する。好ましい実施形態では、担体マトリックスは酸可溶性ポリマー(例えばキトサンまたはEudraguard(登録商標))であり、溶液は酸可溶性ポリマー粉末を酢酸と混合することによって作製される。特に好ましい実施形態では、キトサン粉末を0.2M酢酸に溶解して1%キトサン溶液を調製する。別の好ましい実施形態では、担体マトリックスは、好ましくは1%(w/v)溶液中のアルギネートである。別の好ましい実施形態では、担体マトリックスは寒天であり、2%(w/v)溶液で添加される。別の実施形態では、担体マトリックスはアルギネートである。別の実施形態では、担体マトリックスは、アルギネートに分散したキトサンであり、キトサンはステップ(a)の乾燥混合物の一部として含まれ、次いで、アルギネート溶液を乾燥混合物に添加し、撹拌し、超音波処理浴で超音波処理して均一な懸濁液を形成する(撹拌時間は30分~一晩の範囲であり得る)。更なる実施形態では、湿潤剤も提供される。好ましくは、湿潤剤は、Cremophor(登録商標)RH40および/またはTween(登録商標)である。好ましくは、Cremophor(登録商標)RH40を、ステップ(a)で治療上有効な化合物および矯味剤(および必要に応じて担体マトリックスの一部)と一緒に混合し、アルギネートの溶液、好ましくは1%(w/v)を乾燥混合物に添加する。
【0153】
ステップ(c)では、均一な懸濁液を液体媒体に滴下してビーズを形成する。適切な液体媒体は、使用される担体マトリックスに基づいて選択され、当業者に知られている。ビーズは、適切に形成するためにしばらくの間液体媒体中に置く必要があり得る。好ましい実施形態では、担体マトリックスはアルギネートを含み、液体媒体は塩化カルシウム溶液である。好ましくは、塩化カルシウム溶液は1%(w/v)の濃度である。別の好ましい実施形態では、担体マトリックスは寒天を含み、液体媒体は冷油または油、乳化剤もしくはバッファーの混合物である。好ましい実施形態では、油は、ニンニク油、タラ肝油およびダイズ油の1つまたはそれを超えるものから選択される。特に好ましい実施形態では、油はニンニク油を含有し、これは追加の矯味効果を有することができる。
【0154】
ステップ(d)において、ビーズを液体媒体から取り出し、水、好ましくは脱イオン水で洗浄する。
【0155】
ステップ(e)では、ビーズを乾燥させる。ビーズは、当該技術分野で公知の方法のいずれかによって乾燥させることができる。例えば、ビーズは、風乾、噴霧乾燥、対流乾燥、真空乾燥、マイクロ波乾燥、凍結乾燥およびそれらの組合せによって乾燥され得る。好ましくは、ビーズは、例えば、ヒュームフード内で風乾される。最も好ましくは、ビーズを少なくとも7日間乾燥させる。
【0156】
好ましい実施形態では、乾燥させたビーズは、この剤でビーズをコーティングするために、矯味剤とさらに混合される。特に好ましい実施形態では、この矯味剤はニンニク粉末である。
【0157】
水生動物用飼料添加剤が上記の方法に従って調製されると、それを水生動物用飼料に組み込むことができる。好ましくは、上記プロセスにより調製された水生動物用飼料添加剤を市販の魚類用飼料と混合し、次いで混合物をペレット化することにより、魚類用飼料を調製する。混合物は、そのプロセスに適した任意の機械またはデバイスを使用してペレット化することができる。プロセスで使用される市販の魚類用飼料、ならびにペレットの大きさおよび形状は、標的水生動物集団の要件に基づいて選択することができる。
【0158】
一実施形態では、水生動物用飼料添加剤組成物は、押出機を使用して調製される。更なる実施形態では、押出機は、以下の熱および圧力パラメータに供される:約30秒間、>90℃のプレコンディショナ、続いて高圧ゾーンで>20barのシリンダ圧力で90℃~120℃の押出機温度、続いて44分間、90℃~110℃で乾燥。押出機内のスクリューとバレルとの間のクリアランスは1mm未満である。この実施形態では、水生動物用飼料添加剤組成物は、これらのパラメータによって実質的に破壊または分解されない。この実施形態では、ビーズの大きさは直径500μm(0.5mm)、好ましくは1mm未満に維持される。
【0159】
別の実施形態では、押出機は、以下の熱および圧力パラメータに供される:70℃および20~30barの圧力、25~30秒の押出機保持時間(押出機による混合)。この実施形態では、水生動物用飼料添加剤組成物は、これらのパラメータによって実質的に破壊または分解されない。
【実施例
【0160】
本発明の更なる特徴は、以下の非限定的な実施例においてより完全に説明される。この説明は、単に本発明を例示する目的で含まれる。これは、上記のような本発明の広範な説明に対する制限として理解されるべきではない。
【0161】
実施例1-ビーズの調製。
プラジカンテル(PZQ)を含む魚類用飼料添加剤組成物の嗜好性および消化性を試験するために、以下の組成物を含む5つの異なるビーズ製剤を調製した:
【表1-1】
【表1-2】
【0162】
キトサン粉末を0.2M酢酸に溶解して1%キトサン溶液を調製することによって、製剤AおよびE(キトサンビーズ)を調製した。次いで、プラジカンテルおよびニンニク誘導体をキトサン溶液と混合した。次いで、得られた懸濁液を2%w/vの三リン酸ナトリウム溶液の浴に滴下してビーズを形成させた。製剤Aを3時間複合体化させたのに対して、製剤Eは一晩複合体化させた。次いで、ビーズをヒュームフード内で少なくとも7日間風乾させた。乾燥したら、全ビーズ重量の1%に等しいニンニク粉末を乾燥ビーズと混合した。
【0163】
製剤Bは、プラジカンテル、キトサンおよびニンニク誘導体の乾燥混合物を調製することによって調製した。次いで、1%(w/v)アルギネート溶液を乾燥混合物に添加し、撹拌して均一な懸濁液を形成した。次いで、懸濁液を1%(w/v)塩化カルシウム溶液に滴下してビーズを形成させた。ビーズを塩化カルシウム溶液中にさらに10~15分間静置させ、脱イオン水で洗浄した。次いで、ビーズをヒュームフード内で少なくとも7日間風乾させた。乾燥したら、全ビーズ重量の1%に等しいニンニク粉末を乾燥ビーズと混合した。
【0164】
製剤Bは、プラジカンテル、キトサン、ニンニク誘導体およびCremophor(登録商標)RH40の乾燥混合物を調製することによって調製した。次いで、1%(w/v)アルギネート溶液を乾燥混合物に添加し、撹拌して均一な懸濁液を形成した。次いで、懸濁液を1%(w/v)塩化カルシウム溶液に滴下してビーズを形成させた。次いで、ビーズを塩化カルシウム溶液中にさらに10~15分間静置し、脱イオン水で洗浄した。次いで、ビーズをヒュームフード内で少なくとも7日間風乾させた。乾燥したら、全ビーズ重量の1%に等しいニンニク粉末を乾燥ビーズと混合した。
【0165】
製剤Cは、プラジカンテルとニンニク誘導体との乾燥混合物を調製することによって調製した。次いで、2%(w/v)寒天溶液(熱くて流動性の場合)を乾燥混合物に添加し、撹拌して均一な懸濁液を形成した。次いで、懸濁液を冷ニンニク油(これは、ニンニク油:ダイズ油:タラ肝油を5:3:1の比で構成されていた)に滴下してビーズを形成した。次いで、ビーズを脱イオン水で洗浄し、次いで、ヒュームフード内で少なくとも7日間風乾した。乾燥したら、全ビーズ重量の1%に等しいニンニク粉末を乾燥ビーズと混合した。
【0166】
製剤Dは、プラジカンテル、Cremophor(登録商標)RH40およびニンニク誘導体の乾燥混合物を調製することによって調製した。次いで、1%(w/v)アルギネート溶液を乾燥混合物に添加し、撹拌して均一な懸濁液を形成した。次いで、懸濁液を1%(w/v)塩化カルシウム溶液に滴下してビーズを形成させた。ビーズを塩化カルシウム溶液中にさらに10~15分間静置させ、脱イオン水で洗浄した。次いで、ビーズをヒュームフード内で少なくとも7日間風乾させた。乾燥したら、全ビーズ重量の1%に等しいニンニク粉末を乾燥ビーズと混合した。
【0167】
実施例2-崩壊試験。
製剤A、B、C、DおよびEのビーズを、0.1M HCl中でのそれらの崩壊能力について試験した。
【0168】
ビーズを、10mLの0.1M HClまたは海水を含有するバイアルに入れ、5時間にわたって観察し、マグネチックスターラーを使用して100rpmで撹拌した。
【0169】
崩壊実験の結果を図1に示す。結果は、すべての製剤A、B、C、DおよびEのビーズが海水中で崩壊しなかったが(図1A)、HCl溶液中で少なくとも膨張および軟化したことを示した(図1B)。
【0170】
実施例3-製剤Bおよび製剤Cのインビトロ溶解プロファイル。
製剤Bおよび製剤Cの乾燥ビーズ約10mgを別々に秤量し、USP溶解バスケット(708-DSモデル、Agilent Technologies、オーストラリア国ビクトリア州モルグレイブ)に移し、次いで各々をUSP溶解パドルシャフトに取り付けた。このセットアップにより、ビーズを低容量の溶解媒体に浸漬することができることを保証した。媒体サンプリング中にビーズを除去せず、溶解中に媒体を撹拌することができ、ビーズをある媒体から次の媒体に迅速かつ一括して移すことができた。溶解プロファイルは、100rpmの撹拌速度および周囲温度(22~25℃)で三連で実施した。ビーズを500mLの海水中で5分間インキュベートし、続いて100mLの模擬魚類胃液(SGF、0.1%(w/v)のポリソルベート80および0.8mg/mLのペプシンを含む、HClでpH 2.0±0.05に調整した海水)中で60分間インキュベートし、最後に100mLの模擬魚類腸液(0.1%(w/v)ポリソルベート80および0.4mg/mLトリプシンを含む、PBS 137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM NaHPOおよび1.8mM KHPO、pH 7.8±0.05からなるSIF)中で120分間インキュベートした。それぞれの溶解媒体を0分および5分(海水)、35分および65分(SGF)、ならびに125分および185分(SIF)でサンプリングした(1mL)。取り出したサンプルを濾過し(0.45_m)、HPLCアッセイを使用してプラジカンテル含有量について分析した。純粋なPZQ粉末(7~13mg/バスケット)を使用して対照実験を行った。しかしながら、バスケットを粉末を失うことなくある溶解媒体から次の溶解媒体に移すことができなかったので、PZQ粉末の実験を以下のように3つの溶解媒体で別々に行った:500mLの海水中で5分、100mLのSGF中で60分、および100mLのSIF中で120分。さらに、製剤Bおよび製剤Cビーズの溶解プロファイルを、同じ装置セットアップを使用して海水中で3時間にわたって決定した。
【0171】
PZQの海水中への溶解は5分後に検出できなかった。しかしながら、56.7±4.1%の薬物粉末が500mLの海水に3時間後に溶解し(図2a)、これは100mLのSGF中で1時間後に得られた53.7±0.9%の溶解に匹敵した(図2b)。SIF中で2時間インキュベートすると、薬物粉末の78.2±4.8%が溶解した(図2b)。模擬GIT条件下ではPZQ粉末の不完全な溶解があったが、薬物:媒体比(100mL中7~13mg)は水へのPZQの溶解度(約36mg/100mL)よりも低かった。
【0172】
製剤Bおよび製剤Cのビーズは、500mLの海水中での3時間のインキュベーション後でも崩壊せず、それぞれのビーズからの薬物充填の6.51±0.59%および1.36±0.71%のみが3時間で海水に浸出した(図2a)。海水から魚類GITへのビーズ通過のシミュレーションは、両方の製剤から海水中で5分後に検出不能な薬物放出を示した。製剤Bビーズは、SGF中でさらに60分間のインキュベーション後も無傷のままであり、薬物充填の2.3±0.4%しか放出しなかった。しかしながら、185分で薬物充填の84.7±2.9%の放出を伴うSIFにおいてビーズ崩壊が認められた(図2b)。対照的に、製剤Cのビーズは、海水中だけでなくSGFおよびSIF中でも無傷のままであり、溶解期間全体にわたって測定された薬物放出のレベルは低かった。製剤Cビーズからの累積的な薬物放出パーセントは、185分でわずか3.87±0.24%であった。
【0173】
実施例4-示差走査熱量測定(DSC)による分析。
製剤B、製剤C、ブランク寒天、アルギネートおよびアルギネート-キトサンビーズ、ならびにPZQのみを示差走査熱量計(Discovery DSC25 System,TA Instruments、米国デラウェア州ニューカッスル)で分析した。ビーズサンプルを製造後14日以内に分析した。サンプル(約3mg)を、基準として空のアルミニウムパンを用いて、10℃/分の加熱速度で0~250℃にわたって標準的なアルミニウムパン(DSC Consumables Incorporated、米国ミネソタ州オースチン)で分析した。DSCサーモグラムを、TRIOSソフトウェア(TA Instruments、米国デラウェア州ニューカッスル)を使用して分析した。
【0174】
製剤BおよびCについてDSC分析を行い、サーモグラムを図3のPZQおよび対応するブランクビーズのDSCサーモグラムと比較した。PZQ(3.4mg)は、138.9℃で開始し、141.99℃のピーク温度を有する鋭い融解吸熱を示した。融解エンタルピーは99.870J/gであった。製剤B(3.8mg)のPZQ融解ピークは138.35℃で開始し、ピーク温度は141.50℃であった。その72.607J/gのエンタルピーは、純粋なPZQのエンタルピーの72.70%であり、製剤Bの薬物充填に相当した。製剤C(3.4mg)のPZQピークは138.03℃で開始し、ピーク温度は141.93℃であった。その71.645J/gのエンタルピーは純粋なPZQのエンタルピーの71.74%であり、これも製剤Cの薬物充填に密接に対応していた。したがって、それぞれのDSCサーモグラムから、PZQはその結晶特性を保持し、製剤BおよびC中のマトリックス材料と相互作用しなかったと結論付けることができる。
【0175】
実施例5-魚類の嗜好性試験。
製剤A~Eの乾燥したビーズの各々を、粉砕された市販のヒラマサ魚類用飼料と混合し、ペレット化した。飼料は、飼料1キログラム当たり10グラム相当の純粋なプラジカンテルを含有していた。製剤を含有する魚類用飼料ペレットの重量および水温に基づいて、健康なヒラマサに固定供給量を与えた。魚類には、5日間にわたる朝一回の給餌で最大3分間給餌した。
【0176】
製剤AおよびEを含有する魚類用飼料を、2000グラムの平均重量を有する大型の健康な魚類および175グラムの平均重量を有する健康な小型の魚類に送達した。製剤B、CおよびDを含有する魚類用飼料を、平均重量263グラムの健康な小型の魚類に送達した。
【0177】
健康なヒラマサ魚類に、それらの大きさおよび水温に基づいて計算して、1日の期間にわたって単回の朝の給餌で1日当たりタンク当たり固定供給量を与えた。
【0178】
魚類集団が魚類用飼料の全供給量を消費するための平均時間を測定した。消費された魚類用飼料の平均パーセンテージも記録した。データを、5日間の各々を反復で分析した。これを、魚類用飼料添加剤を含まない魚類用飼料を与えた対照群と比較した。
【0179】
図5は、製剤AおよびE(キトサンビーズ)を含有する魚類用飼料についての結果を示す。製剤Eの魚類用飼料を与えたキングフィッシュは、5日間の試験中に飼料の完全な供給量を決して食べなかった。図5Aに示されるように、二元配置ANOVAにより、魚類の大きさ(P=0.77)または食事(P=0.07)が摂取に影響しないことが明らかになった。製剤Eを給餌された魚類は、提供された飼料を平均75%食べたのに対し、製剤Aを給餌された魚類は平均68%しか食べなかった。非投薬対照処置(unmedicated control treatment)の魚は、供給量の90%を消費した(小型および大型の魚類にわたってプールされた)。これらの結果は、大きな魚類ほどプラジカンテルの味および/またはにおいに影響を受けやすいという仮説に反していた。小型対照魚は、非投薬飼料の全供給量を食べたが、製剤Aおよび製剤Eの処置供給量はそれぞれ60%および70%しか食べなかった。図5Bに示すように、完全な供給量を消費するのにかかる時間は、処置によって有意に影響されたが(P<0.0001)、魚類の大きさには影響されなかった(P=0.27)。魚が薬用供給量全体を食べる場合、それにかかる時間は約3分であった。非投薬対照処置を与えられた魚は、約1.5分でその供給量を消費した。
【0180】
図3は、製剤B、CおよびDを含有する魚類用飼料の結果を提示している。製剤中のプラジカンテルの味/におい(taste/small)に対してより大きな魚類ほど影響されやすいという証拠はなかったため、製剤B、CおよびDの嗜好性を評価するために小型の魚類(260グラム)のみを使用した。魚類はすべての処置食の99%以上を摂食し(図5A)、処置間に差はなかった(P=0.28)。魚類は各摂食時にそれらの完全な供給量を食べたが、供給量を消費するのにかかる時間は処置間で有意に異なっていた(P=0.02)。製剤B(1.15±0.14分)および製剤C(1.16±0.14分)を含有する食餌を給餌した魚類が、それらの供給量を摂取するのに必要な時間量は、対照(0.64±0.07分)と比較して差はなかったが、製剤Dを含有する食餌を給餌した魚類は、供給量を消費するのに対照よりも有意に長くかかった(1.42±0.04分)(図5B)。これは、製剤B、CおよびDの各々について許容され得る嗜好性を示す。製剤B、CおよびDを含有する飼料のパーセンテージがより多く消費されたこと、ならびにこれらの飼料も製剤AおよびEを含有する飼料と比較してより迅速に消費されたことの両方に基づいて、製剤B、CおよびDは魚類集団にとってより心地が良かった。
【0181】
実施例6-消化性試験。
製剤AおよびEに関して、5日目の最終飼料の後、魚類を解剖して、摂食後約3時間でビーズの消化性を判定した。
【0182】
製剤A処置を与えた小型または大型の魚類のいずれにおいても、消化管にビーズが見られた証拠はなかった。しかしながら、図6に見られるように、大型の魚類では、製剤E処置の管の全長にわたって未消化および部分的に消化されたビーズが見られた。
【0183】
製剤B、CおよびDに関しては、5日目の摂食前に、処置あたり1匹の魚を解剖して、前日の摂食後に消化管内にビーズが残っているかどうかを判定した。胃の中における単一の製剤Dビーズとは別に、すべての処置からの魚類の消化管内に消化物またはビーズの証拠はなかった。
【0184】
5日目に、すべての魚類にそれぞれの処置食を与え、1回の処置当たり2匹の魚を摂食後3時間および6時間で解剖した。結果を図7に提示する。
【0185】
給餌後3時間までに、飼料は魚類の腸の全長にわたって移動した。すべての処置について、胃の中に完全なビーズがあったが、管のいずれの部分にもビーズの証拠はなかった。摂食の6時間後に同様の所見が得られた。
【0186】
これらの結果は、ビーズが無傷で腸を通過しなかったので、製剤A、B、CおよびDが魚類によって消化されたことを示している。
実施例7-薬物充填決定。
【0187】
製剤A~Eのビーズの薬物充填は、ビーズを0.4M NaCl溶液に溶解し、次いでメタノールを添加して50%メタノール溶液を作製することによって決定した。次いで、その溶液に対してHPLC分析を行い、薬物充填率を決定した。結果を下記の表に提示する:
【表2】
【0188】
実施例8-薬物充填安定性。
製剤B、CおよびDのビーズの薬物充填容量(またはより具体的には残留インタクト薬物含有量)を、実施例7に記載される方法に従ってビーズを最初に調製した18ヶ月後に決定した。結果を下記の表3に提示する:
【表3】
【0189】
実施例9-貯蔵ビーズと比較した新鮮なビーズの嗜好性。
製剤BおよびCを含む魚類用飼料を試験して、新たに調製したビーズの嗜好性を約4ヶ月齢のビーズと比較した。健康なヒラマサ魚類に、5日間にわたって、単回の朝の給餌で1日当たりタンク当たり製剤BおよびCを含有する固定供給量の魚類用飼料を与えた。供給量当たりの消費された飼料のパーセンテージ、ならびに最後の2日間の供給量を消費する平均時間を測定した。結果を図8に提示する。データは、4ヶ月齢のビーズと新鮮なビーズの嗜好性に有意差がなかったことを示している。
【0190】
実施例10-第2の嗜好性試験。
純粋なプラジカンテル(ビーズ内に組み込まれていなかった、またはニンニク抽出物)を組み込んだ魚類用飼料を用いて、製剤BおよびCを比較するために第2の嗜好性試験を行った。製剤BまたはCのビーズを、粉砕された3mmの市販のヒラマサ飼料と混合し、Dolly製パスタメーカーを使用してペレットに再構成した。ペレットはまた、同じプロセスを使用して純粋なプラジカンテル粉末で作製した。すべてのペレットは、10グラム/kg相当の純粋なプラジカンテルを含有していた。対照食も、プラジカンテルを含有しない同じプロセスを使用して作った。Zeuxapta吸虫類に感染させた平均重量1600グラムのヒラマサ魚類に、6日間にわたって単回の朝の給餌で1日当たりタンク当たり155グラムの固定供給量を与えた。
【0191】
魚類が3分以内に飼料供給量全体を消費した場合、時間を記録した。乾燥した未摂食飼料の重量も記録した。未摂食または逆吐したタンク内のペレットも収集し、秤量し、乾燥重量に変換した。両方の重量を合わせて、供給量当たりの飼料消費率を測定し、消費された飼料の量に基づいて計算した魚が受けた実際のプラジカンテル用量(mg/kg)を測定した。結果を図9に提示する。
【0192】
データは、純粋なプラジカンテル魚類用飼料(17±4%)を給餌した魚類では、簡素な魚類用飼料(添加剤なし)と比較して食物摂取量が有意に低かったことを示す。しかしながら、簡素な魚類用飼料と製剤BまたはCを組み込んだ魚類用飼料を給餌した魚類の食物摂取量との間に有意差はなかった(図9A)。非薬用対象食を給餌された魚は、79±6%の供給量を消費し、製剤BおよびC処置を与えられた魚は、約62%消費した。いずれの食餌も100%消費されなかったが、これはこれらの魚が海籠から移された後、まだタンクの状況に順応していなかった可能性がある。図9Bは、1日当たりの飼料摂取量を示す。このグラフは、2日目にはすべてのタンクの栄養補給が不十分であり、その後、純粋なプラジカンテルが低いままであったことを除いて、その後数日にわたってすべての処置において飼料摂取量が増加したことを実証している。製剤BおよびCを含有する魚類用飼料の摂取量が対照飼料と同様に経時的に増加したという事実は、純粋なPZQ飼料での摂取量が典型的には経時的に減少する傾向があるので、飼料が非常に心地よいことの更なる証拠である。
【0193】
図9Cは、異なる処置を受けた魚が摂取したプラジカンテルの平均日用量をmg/kgで示す。純粋なプラジカンテル魚類用飼料組成物を給餌された魚が摂取した実際のプラジカンテル用量は21mg/kgであった。一方、製剤BまたはCを含有する魚類用飼料を給餌された魚類集団は、約75mg/kgのプラジカンテルを摂取した(P<0.001)。したがって、結果は、製剤BおよびCが、大幅に増加した量のプラジカンテルの魚類への経口送達を明らかに可能にすることを実証している。一般に、魚類は、Zeuxaptaを排除するために3日間連続して約50mg/kgを投与しなければならないと考えられている。この用量は、製剤BおよびCを含有する魚類用飼料では容易に達成されたが、純粋なプラジカンテル処置では達成されなかった。
【0194】
実施例11-吸虫類に罹患している魚類集団の処置。
嗜好性試験後、実施例10からの魚類集団をプラジカンテルを使用して浴浸させて吸虫類感染を評価した。各処置群の吸虫類数を測定した。
【0195】
結果を図10に示す。非投薬対照食を給餌された魚類は、試験終了時に魚類当たり平均55±13のZeuxapta吸虫類を有していた。対照と比較して、3つの投薬処置における吸虫類数の減少率に対する食餌の有意な効果があった(P<0.001)。製剤Bおよび製剤Cの処置を与えた魚は、それぞれ93±2%および94±3%の減少を有し、両方とも純粋なプラジカンテル対照よりも有意に高く、73±4%の減少が観察された。これらのデータは、製剤BおよびCが共に味がよく、消化可能であり、かつZeuxapta感染に対して有効であることを実証している。
【0196】
実施例12-異なる大きさのビーズを調製する方法。
以下の段落に記載の方法を使用して、0.4~2.5mmの範囲の異なる大きさ(直径)のビーズを調製した。ビーズの大きさは、適切なキトサン粒径、押出針および撹拌速度を選択することによって調節した。キトサンの大きさ範囲は、(1)355~500μm;(2)212~355μm;(3)150~355μm;および(4)<150μmであった。
【0197】
最初に、プラジカンテル、キトサンおよびニンニク誘導体(Cremophor(登録商標)RH40有りおよび無し)の混合物を調製した。次いで、1%(w/v)アルギネート溶液を混合物に添加し、撹拌し、超音波処理して均一な懸濁液を形成した。懸濁液の撹拌は30分~一晩の範囲であった。次いで、懸濁液を1%(w/v)塩化カルシウム溶液に滴下してビーズを形成させた。異なる大きさの注射針を使用して懸濁液を滴下し、例えば18Gまたは21Gの針を使用して、より小さいキトサン粒子を有するより小さいビーズを形成した。ビーズを塩化カルシウム溶液中にさらに10~15分間静置させ、脱イオン水で洗浄した。次いで、ビーズをヒュームフード内で少なくとも7日間風乾させた。乾燥したら、全ビーズ重量の1%に等しいニンニク粉末を乾燥ビーズと混合した。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6a)】
図6b)】
図7a)】
図7b)】
図7c)】
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
【国際調査報告】