IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロケット フレールの特許一覧

<>
  • 特表-デンプンベースの印刷可能な材料 図1
  • 特表-デンプンベースの印刷可能な材料 図2
  • 特表-デンプンベースの印刷可能な材料 図3
  • 特表-デンプンベースの印刷可能な材料 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】デンプンベースの印刷可能な材料
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20240621BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/06
A61K9/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579099
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2022069013
(87)【国際公開番号】W WO2023281032
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21305966.0
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ルイ、ユアン-シアン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、キート-テン
(72)【発明者】
【氏名】ゴクヘール、ラジーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ホイスラー、オラフ
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA46
4C076AA71
4C076BB01
4C076EE38
4C076FF33
(57)【要約】
本発明は、加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含む3D印刷のための印刷可能な材料に関する。本発明はまた、それを使用する3D印刷のためのプロセスに関する。本発明はまた、3D印刷によってそれから得られる製品、特に固体剤形に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解及び官能化されたデンプン化合物の3D印刷のための使用。
【請求項2】
前記加水分解及び官能化されたデンプン化合物が、30%以上の冷水溶解度を有し、前記パーセンテージが、デンプンの総重量に対する可溶性デンプンの乾燥重量で表される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記加水分解及び官能化されたデンプン化合物が、多角度レーザー-光散乱(MALLS)及び屈折率(RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定される10,000kDa未満の重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記加水分解及び官能化されたデンプン化合物が、10乾燥重量%の前記デンプン化合物を含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で10,000mPa.s未満の粘度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記加水分解及び官能化されたデンプン化合物が、1~5個の炭素原子を有するアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物、両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物、又はこれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記1~5個の炭素原子を有するアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物が、加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物が、オクテニルコハク酸デンプンである、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記加水分解及び官能化されたデンプン化合物が、印刷可能な材料において使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記印刷可能な材料が、粉末、フィラメント、又はゲル塊である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
剤形の3D印刷のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
調節放出剤形又は即時放出剤形の3D印刷のための、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
押出を使用するプロセスによる3D印刷のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
ホットメルト押出(HME)又は冷間押出を使用するプロセスによる3D印刷のための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含む印刷可能な材料の3D印刷を含む、3D印刷による製品の製造のためのプロセス。
【請求項15】
加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含む、3D印刷用フィラメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷可能な材料、特に固体剤形の3D印刷に使用するための印刷可能な材料に関する。
【背景技術】
【0002】
3D印刷(3D printing、3DP)は、アディティブマニュファクチャリング(additive manufacture、AM)としても知られており、プラスチック、金属、セラミック、更には生細胞などの材料の連続的な層ごとの堆積を通じてデジタルモデルから3D物理物体を構築するためのプロセスである。
【0003】
ヘルスケアに関連しない多くの用途は別として、3DPは、現在、経口薬、埋め込み型薬物送達デバイス、組織バイオプリンティング、プロテーゼなどのデバイス、更には食品のために使用されているか、又は研究中である。
【0004】
伝統的な薬物製造と比較した場合、3DPは、妥当な価格の、オンデマンドの患者に合わせた薬物、及び/又は増加した製品複雑性を生成できることが認められている。現在の薬物製品の形状及び内部構造は、現在の技術によって制限される。アディティブマニュファクチャリングを使用する場合、これらの特徴は想像し得る限り複雑であることができ、これは、同じ剤形に埋め込まれた複数の薬物放出プロファイルに特に有用であることを証明し得る。目標のいくつかは、ドーナツ形、円筒形又は穿孔経口製剤を印刷することによって、又は浸食若しくは拡散制御賦形剤の半径方向勾配を使用することによって、ほぼ0次放出を達成することによって、副作用を最小限に抑えることである。個別化された医薬に対する要求が増加し、大きな傾向となっているので、固有の、個々の若しくは複数の薬物及び/又は複数回投与製剤を製造できることは、3DP医薬の他の重要な利点であり得る。
【0005】
この分野の研究は1990年代初期に開始されたが、FDAは、2015年以来、1つのみの3D印刷された薬物:Spritam(登録商標)、結合剤ジェット法3DPによって得られ、以下の賦形剤:コロイド状二酸化シリコン、グリセリン、マンニトール、微結晶セルロース、ポリソルベート20、ポピドン、スクラロース、ブチルヒドロキシアニソール、天然及び人工のスペアミントフレーバーを有する口腔内分散性剤形を承認している。
【0006】
医薬品及び生体適合性材料を取り扱うように適合された3DP法は、以下の通りである:押出印刷(特に、熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling、FDM)、圧力支援マイクロシリンジ(pressure assisted microsyringe、PAM)、及びより最近では直接粉末押出)、結合剤噴射(Binder jetting、BJ)、材料噴射(Material jetting、MJ)、ステレオリソグラフィ(SLA)、選択的レーザー焼結(Selective laser sintering、SLS)。3DP分類についての更なる情報については、Ion-Bogdan Dumitrescuら「The age of pharmaceutical 3D printing technological and therapeutical implications of additive manufacturing.Farmacia,2018,Vol.66,3(365-389)」の文献、特に表Iを挙げることができる。
【0007】
押出印刷、具体的にはFDMは、3D印刷分野において最も広く使用されている方法であり、予熱されたポリマーフィラメント又は半固体が、xyz位置決めを使用してプラットフォーム上の正確な位置にノズルを通して、押出されることを特徴とする。第1の層が冷めたら、次の層を適用する。印刷製品の形状に応じて、物体が完全に冷えて固化するまで構造的支持を提供するために異なる材料が必要とされる場合があるが、その後、それは除去することができる。PAM技術は、プリンタに非溶融粘性材料が供給されることを除いて同様である。これは3Dバイオプリンティングに特に有用である。3Dバイオプリンティングは、生細胞を使用する方法を指す。生物医学的に製造された足場の主な利点は、生細胞の増殖であるが、薬学的観点から、それらはまた、薬剤送達のための供給源であり得、例として、抗菌剤溶出インプラントを伴う。最後に、最近開発された技術である直接粉末押出を挙げることができる。この技術によれば、印刷可能な粉末は直接押出され、したがってフィラメントの調製の必要性を回避する。
【0008】
一般的な3D印刷プロセスチェーンは、以下のステップを含む:
-専用ソフトウェアを使用したCADモデルの作製又は調整、既存の物体又は医療画像の3Dスキャン。CADファイルは、3D構造の幾何形状及びサイズを記述する。
-プリンタレディSTL又はAMFファイルフォーマットの1つへの変換。これらのファイルは、表面湾曲度に応じて、モデルの表面を三角形セクションで記述する。三角形セクションの数を増加させることは、印刷されたピースの解像度を増加させる。
-印刷された物体の崩壊を防止する支持材料の量及び位置も決定することができる専門ソフトウェアを使用して、3Dモデルを指定された厚さの層にスライスすること。印刷された物体の充填密度も同様に指定されなければならず、-中空構造については0%であり、中実充填部分については100%である。-実際の3Dプリンタへのファイルの転送及びセットアップ。
-3D製品の層ごとの製造。
-場合によっては、支持材料の乾燥又は除去及び廃棄並びに後処理が必要とされる。
【0009】
3DPは、製薬分野において有望な技術であるが、利用可能で、環境に優しく、食用に適し、プリンタに優しい材料の種類は依然として限られており、これが3D印刷技術の大規模な採用に対するボトルネックとなっている。FDMによる剤形の製造のための薬物担体として最も一般的に使用されるポリマー(医薬品グレード)は、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、及びポリ乳酸(polylactic acid、PLA)であり、これらは全て合成化石燃料ベースの材料である。
【0010】
現在の持続可能な経済への関心に沿って、様々な製品の製造のために、化石燃料ベースの材料の代わりに、天然由来の再生可能なバイオポリマーの探索が多大な注目を集めている。
【0011】
セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、デンプン、アルギン酸塩、アガロース、及びキトサンなどの様々な天然由来バイオポリマーは、それらの非毒性、食用性、高い存在量、生物活性(例えば、食物繊維として働く)、及び伝統的な食品又は医薬品製造における利用の長い歴史のために、食用剤形の3D印刷において利用される可能性を示す。
【0012】
しかしながら、そのような生体材料は、印刷可能である必要があり、満足のいく特性(満足のいく機械的及び/又は生物学的及び/又は薬物動態学的特性など)を有する最終製品を得ることを可能にする必要がある。使用される3DP技術に従って、加工性に対する要件が異なるので、問題は更により複雑である。
【0013】
全体として、全ての必要とされる特性を有する製品、特に固体剤形の製品を得ることを可能にする、再生可能資源に由来する印刷可能な材料に対する要求は満たされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、再生可能資源から得られる成分を使用する印刷可能な材料及び3DPプロセスを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、操作者及び消費者の両方にとって安全な印刷可能な材料を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、取り扱いが容易な印刷可能な材料を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、満足のいく機械的特性を有する製品-特に固体剤形-を得ることを可能にする印刷可能な組成物及び3DPプロセスを提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、満足のいく放出挙動及び/又は満足のいく薬物動態挙動、例えば、即時放出特性若しくは調節放出特性を有し、かつ/又は活性成分の向上した水溶性を提供する、活性成分を含有する製品、特に固体剤形を得ることを可能にする印刷可能な材料及び3DPプロセスを提供することである。
【0019】
発明の提示
本発明者らは、特定のデンプン化合物が3DPプロセスにおいて非常に有用であることを見出した。これらのデンプン化合物は加水分解され、官能基の付加によって化学的に変性される。
【0020】
以下の実施例から明らかであるように、本発明による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は非常に用途が広い。それは、様々な3DP技術、特に、FDM又はPAMのような押出を使用する3DP技術において使用することができる。FDMのために得られたフィラメントは、特に官能化されていないデンプン化合物と比較した場合、又は標準PVA系フィラメントと比較した場合、良好な機械的特性を示す。
【0021】
本発明による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、即時放出剤形、及び調節又は制御放出剤形で使用することができる。また、水不溶性活性成分の水溶性を高めるために使用することもできる。この高まりは、標準的な圧縮方法によって得られる剤形で観察される高まりよりも高い。特に、本発明者らは、3DPによって、直接圧縮によって得られた錠剤と比較して、水不溶性活性成分の水への溶解度が10倍高められた錠剤を得ることが可能であることを示した。
【0022】
本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、再生可能資源に由来し、同様に再生可能資源に由来する成分とともに配合することができる。
【0023】
これは、3DPによる環境に優しい剤形の開発のためだけでなく、他の方法で、すなわち錠剤圧縮のような標準的なプロセスを使用することによって得ることができない薬物動態学的特性を有する剤形の開発のためにも、大きく新しい展望を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって、本発明は、第1に、加水分解及び官能化されたデンプン化合物の3D印刷のための使用に関する。
【0025】
好ましくは、当該加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、30%以上の冷水溶解度を有し、当該パーセンテージは、デンプンの総重量に対する可溶性デンプンの乾燥重量で表される。
【0026】
好ましくは、当該加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、多角度レーザー-光散乱(multiangle laser-light scattering、MALLS)及び屈折率(refractive index、RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定される10,000kDa未満の重量平均分子量(molecular weight、Mw)を有する。
【0027】
好ましくは、当該加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、10乾燥重量%の当該デンプン化合物を含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で10,000mPa.s未満の粘度を有する。
【0028】
好ましくは、当該加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、1~5個の炭素原子を有するアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物、両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物、又はこれらの混合物から選択される。1~5個の炭素原子を有するアルキル基で官能化された好ましい加水分解されたデンプン化合物は、加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンである。好ましい両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、オクテニルコハク酸デンプンである。
【0029】
好ましくは、当該加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、印刷可能な材料において使用される。好ましくは、当該印刷可能な材料は、粉末、フィラメント、又はゲル塊である。
【0030】
好ましくは、当該使用は、剤形、好ましくは調節放出剤形又は即時放出剤形の3D印刷のためのものである。
【0031】
好ましくは、当該使用は、押出を使用するプロセスによる、好ましくはホットメルト押出(hot melt extrusion、HME)又は冷間押出を使用するプロセスによる3D印刷のためのものである。
【0032】
本発明はまた、加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含む印刷可能な材料の3D印刷を含む、3D印刷による製品の製造のためのプロセスに関する。
【0033】
本発明はまた、加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含む、3D印刷用フィラメントに関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施例で使用したデンプン化合物の特性を示す表である。
図2】水溶性活性成分ジプロフィリンを含有する、本開示によるFDM技術によって調製された3D印刷された剤形の放出プロファイルを示す。
図3】水不溶性活性成分イトラコナゾールを含有する本開示によるFDM技術によって調製された3D印刷された剤形の放出プロファイル、及び標準的な直接圧縮によって調製された印刷剤形の放出プロファイルを示す。
図4】水溶性活性成分ジプロフィリンを含有する、50%及び80%の印刷密度で印刷された、本開示によるPAM技術によって調製された3D印刷された剤形の放出プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、第1に、デンプン化合物の3D印刷(3DP)のための使用であって、当該デンプン化合物は、
-加水分解され、かつ
-官能化されている、使用に関する。
【0036】
デンプン化合物:
「デンプン化合物」という表現は、標準的には、デンプンから得られた原料を指す。「デンプン」という表現は、標準的には、当業者に公知の任意の技術によって、トウモロコシ、タピオカ、大麦などの任意の好適な植物素材から単離したデンプンを指すことについて、念頭に置かれたい。単離したデンプンは、典型的には、3重量%以下の不純物を含有する。当該パーセンテージは、単離したデンプンの総乾燥重量に対する不純物の乾燥重量で表されている。これらの不純物は、典型的には、タンパク質、コロイド状物質、及び繊維状残渣を含む。好適な植物素材としては、例えば、マメ科植物、穀物、及び塊茎が挙げられる。本開示によるデンプン化合物は、例えば、マメ科(例えば、エンドウマメ)、穀類(例えば、トウモロコシ、イネ、コムギ、エンバク)、及び塊茎(例えば、ジャガイモ、タピオカ)を含む任意の好適な植物素材に由来し得る。
【0037】
本開示による加水分解されたデンプン化合物は、任意の好適な技術によって、例えば、酸処理、熱処理、酵素処理、又はこれらの組み合わせによって加水分解され得る。それらは、シクロデキストリンを除くが、マルトデキストリン又はピロデキストリンを含むデキストリンであり得る。「マルトデキストリン」は、古典的には、2~20のデキストロース当量を有する加水分解されたデンプン化合物を指す。それらは、一般に酸又は酵素加水分解によって得られる。「ピロデキストリン」は、古典的には、少量の水の存在下で、高温(一般に少なくとも100℃)の作用と、酸又はアルカリの作用又は非作用(「ブリティッシュガム」)との組み合わせから得られる。そのような処理は、古典的に再分枝及びいわゆる「非定型結合」の形成をもたらし、したがって、ピロデキストリンは、他の加水分解されたデンプン化合物、特にマルトデキストリンとは構造的に異なる。好ましくは、本発明による加水分解されたデンプン化合物は、酸及び/又は酵素加水分解によって、例えばβ-又はα-アミラーゼ加水分解によって、好ましくはα-アミラーゼ加水分解によって得られる。
【0038】
加水分解されたデンプンは、グルコース、グルコースシロップ及びシクロデキストリンから十分に区別されなければならず、その加水分解のレベルは、当業者によって一般に理解されるように、依然として「デンプン」と呼ばれるには高すぎる。言い換えれば、グルコース、グルコースシロップ及びシクロデキストリンは、本発明の意味の範囲内の加水分解されたデンプンではない。
【0039】
本開示による官能化されたデンプン化合物は、加水分解される。これは、それが由来する天然デンプンと比較して、それが減少した分子量を有することを意味する。したがって、代替的又は補完的に、本開示による加水分解及び官能化された化合物は、多角度レーザー-光散乱(MALLS)及び屈折率(RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定される、好ましくは、10,000kDa未満であるその重量平均分子量(Mw)によって定義することができる。好ましくは、Mwは、以下の方法によって決定される:デンプン化合物の試料を、ジメチルスルホキシド及び硝酸ナトリウム0.1Mの混合物中で希釈する。100及び1000オングストロームの多孔度を有する2つのカラムを使用する。溶出は、0.5mL/分の流速で水性媒体中で行われる。系を40℃の温度に維持する。このMwは、例えば、実施例に開示される詳細なプロトコルに従って決定することができる。好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、10,000kDa未満、好ましくは9,000kDa以下、更に好ましくは8,000kDa以下、更に好ましくは7,000kDa以下、更に好ましくは6,000kDa以下、更に好ましくは5,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa未満、更に好ましくは3,500kDa以下の重量平均分子量(Mw)を有する。好ましくは10kDa以上、更に好ましくは30kDa以上、更に好ましくは50kDa以上、更に好ましくは70kDa以上、更に好ましくは90kDa以上、更に好ましくは100kDa以上、更に好ましくは120kDa以上、更に好ましくは140kDa以上、更に好ましくは160kDa以上、更に好ましくは180kDa以上、更に好ましくは200kDa以上である。例えば、約3,500kDaに等しく、又は約1,000Daに等しく、又は約600kDaに等しく、又は約200kDaに等しい。
【0040】
好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、10乾燥重量%の当該デンプン化合物を含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で、好ましくは10,000mPa.s未満の水中粘度を有する。好ましくは、粘度は、5cmの1°コーンプレート形状を有するレオメーターで決定される。この粘度は、例えば、実施例に開示される詳細なプロトコルに従って決定することができる。好ましくは、当該粘度は、8,000mPa.s以下、更に好ましくは6,000mPa.s以下、更に好ましくは4,000mPa.s以下、更に好ましくは2,000mPa.s以下、更に好ましくは1,000mPa.s以下、更に好ましくは500mPa.s以下、更に好ましくは300mPa.s以下、更に好ましくは200mPa.s以下、更に好ましくは100mPa.s以下、更に好ましくは50mPa.s以下である。好ましくは1mPa.s以上、更に好ましくは2mPa.s以上であり、例えば約2mPa.sに等しく、又は約7mPa.sに等しく、又は約18mPa.sに等しく、又は約42mPa.sに等しい。
【0041】
本開示による加水分解されたデンプン化合物はまた、官能化される。言い換えれば、本開示によるデンプン化合物は、そのヒドロキシル官能基のうちの少なくとも1つに付加された官能基を有する。言い換えれば、本発明の意味における「官能化」という表現は、架橋を除外する。好ましくは、本開示による官能化されたデンプン化合物は、エーテル化及び/又はエステル化されている。好ましくは、当該デンプン化合物は、1~20個の炭素原子、更に好ましくは1~15個の炭素原子、更に好ましくは2~12個の炭素原子、更に好ましくは3~12個の炭素原子を有する基で官能化され、更に好ましくはエーテル化及び/又はエステル化される。
【0042】
本開示による官能化されたデンプン化合物は、エーテル化若しくはエステル化されるか、又はエーテル化及びエステル化の両方であってもよい。しかしながら、好ましくはエステル化又はエーテル化されている。それは、同じ又は異なる性質の基で置換(すなわち官能化)され得る。しかしながら、好ましくは同じ性質の基で置換されており、例えば、ヒドロキシプロピル基、又はアセチル基、又はオクテニルスクシニル基のみで置換されている。
【0043】
好ましくは、本開示による官能化されたデンプン化合物は、ヒドロキシプロピルデンプン、アセチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、オクテニルコハク酸デンプン、又はそれらの混合物から選択される。好ましくはヒドロキシプロピルデンプン、オクテニルコハク酸デンプン、又はそれらの混合物から選択される。ヒドロキシプロピルデンプン、アセチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン及びオクテニルコハク酸デンプンは、当業者に周知である。ヒドロキシプロピルデンプンは、例えばプロピレンオキシドでのエーテル化によって得ることができる。アセチルデンプンは、例えば無水酢酸によるエステル化によって得ることができる。オクテニルコハク酸デンプンは、例えば、オクテニルコハク酸無水物によるエステル化によって得ることができる。ヒドロキシエチルデンプンは、例えば、アルカリ条件下でデンプンをエチレンオキシドと反応させることによって得ることができる。
【0044】
本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、例えばオクテニルコハク酸デンプンの場合のように両親媒性であり得る。
【0045】
好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、30%以上の冷水溶解度を有し、当該パーセンテージは、デンプンの総重量に対する可溶性デンプンの乾燥重量で表される。好ましくは、この冷水溶解度は40%以上、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。例えば、約95%に等しく、又は約97%に等しく、又は約98%に等しい。この溶解度は、例えば、20℃で5グラムのデンプン化合物を200mLの蒸留水に入れることによって決定することができる。溶解した乾燥重量は、遠心分離及び上清の乾燥後に決定することができる。この溶解度は、例えば、実施例に開示される詳細なプロトコルに従って決定することができる。好ましい加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、室温(すなわち約20℃)で水に溶解したデンプン化合物の乾燥重量で少なくとも80%の冷水溶解度を有するものである。それらは、「冷水溶性」加水分解及び官能化されたデンプン化合物と呼ばれる。
【0046】
冷水溶性デンプン化合物は、通常、不溶性デンプン又は不溶性デンプン化合物から、当該不溶性デンプン又は不溶性デンプン化合物を煮沸及び/又は加水分解することによって得ることができる。当該煮沸は、典型的には、不溶性顆粒を破裂させて可溶化するために、デンプン又はデンプン化合物懸濁液を加熱することによって行うことができる。本開示による官能化されたデンプン化合物は加水分解されているので、当然ながら加水分解のレベルに応じて、追加の処理を必要とせずに冷水溶性である場合がある。
【0047】
好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、アルファ化されている。事前ゼラチン化は、古典的には、デンプン化合物粒子が偏光における光学顕微鏡下でもはや複屈折(結晶相の欠如)を示さないことを意味する。事前ゼラチン化は、一般に、複屈折デンプン又は複屈折デンプン化合物から、水の存在下での熱処理(前の段落のように、「煮沸」と呼ばれることも多い)特にデンプンの植物起源に応じて、一般に50~90℃)を介して得られ、更に(煮沸後及び/又は同時に)乾燥させることによって得られ得る。他の化学物質を、加工助剤として使用してもよい。事前ゼラチン化は、例えば、ドラム乾燥によって行うことができる。その場合、デンプンは、ドラム乾燥ステップの前又は最中に煮沸することができる。それを煮沸し、次に噴霧乾燥することもできる。それは押出によっても得ることができる。好ましくは煮沸及び噴霧乾燥によって行われる。
【0048】
好ましい実施形態では、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、0~80重量%のアミロース含有量を有するデンプンに由来し、当該パーセンテージは、デンプンの総乾燥重量に対するアミロースの乾燥重量で表される。このアミロース含有量を、複合体を形成するようアミロースによって吸収されたヨウ素の電位差分析によって、当業者が決定することができる。好ましくは0~60%、更に好ましくは0~50%、更に好ましくは0~45%、更に好ましくは0~40%である。
【0049】
本開示によって加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、特に印刷可能な材料及びそれらから得られた印刷製品の安全性及び特性の観点から、所望の特性を妨げない限り、以前にさらされた好ましいものよりも他の化学的及び/又は物理的変性を受けてもよい。しかしながら、本発明においては必須ではないように思われるので、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、それ以上変性されないことが好ましい。
【0050】
好ましい実施形態では、本開示による加水分解されたデンプン化合物は、1~5個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、好ましくは2又は3個の炭素原子、好ましくは3個の炭素原子を有するアルキル基で官能化され、更に好ましくはエーテル化及び/又はエステル化される。好ましくはアルキル基は脂肪族アルキル基であり、更に好ましくは飽和脂肪族基である。
【0051】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で置換された加水分解されたデンプン化合物はエーテル化される。
【0052】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、加水分解されたアセチルデンプン又は加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンである。加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンの場合、デンプン化合物は、好ましくは0.5~10%のヒドロキシプロピル基の含有量を有し、当該パーセンテージは、加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンの総乾燥重量に対するヒドロキシプロピル基の乾燥重量で表される。ヒドロキシプロピル基の含有量は、当業者によって、例えばプロトン核磁気共鳴(Proton nuclear magnetic resonance、プロトンNMR)によって、好ましくは2021年3月1日に施行されているような欧州薬局方に従う方法(「STARCH,HYDROXYPROPYL PREGELATINISED」)に従って決定することができる。好ましくは0.5~9%、更に好ましくは0.5~8%、更に好ましくは0.5~7%であり、例えば約7%に等しい。
【0053】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、マメ科植物及び/又は穀類デンプンから、更に好ましくはエンドウマメ又はトウモロコシデンプンから、更に好ましくはエンドウマメデンプンから、更に好ましくは滑らかなエンドウマメデンプンから誘導される。好ましくは、エンドウマメデンプンは、20~50%、更に好ましくは30~45%、更に好ましくは30~40%、例えば約35%に等しいアミロース含有量を有する。好ましくは、トウモロコシデンプンは、5%超、好ましくは10~40%、更に好ましくは15~35%、更に好ましくは20~30%、例えば約25%に等しいアミロース含有量を有する。
【0054】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、多角度レーザー-光散乱(MALLS)及び屈折率(RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定される9,000kDa未満のMwを有する。好ましくは8,000kDa以下、更に好ましくは7,000kDa以下、更に好ましくは6,000kDa以下、更に好ましくは5,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa以下、更に好ましくは3,500kDa以下である。好ましくは100kDa以上、更に好ましくは200kDa以上、更に好ましくは400kDa以上、更に好ましくは600kDa以上、更に好ましくは800kDa以上、更に好ましくは900kDa以上、更に好ましくは1000kDa以上である。例えば、約3,500kDaに等しいか、又は約1,000Daに等しい。
【0055】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、10乾燥重量%の当該デンプン化合物を含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で8,000mPa.s未満の粘度を有する。好ましくは8,000mPa.s以下、更に好ましくは6,000mPa.s以下、更に好ましくは4,000mPa.s以下、更に好ましくは2,000mPa.s以下、更に好ましくは1,000mPa.s以下、更に好ましくは500mPa.s以下、更に好ましくは300mPa.s以下、更に好ましくは200mPa.s以下、更に好ましくは100mPa.s以下、更に好ましくは50mPa.s以下である。好ましくは1mPa.s以上、更に好ましくは2mPa.s以上、更に好ましくは5mPa.s以上、更に好ましくは7mPa.s以上、更に好ましくは10mPa.s以上、更に好ましくは15mPa.s以上である。例えば18mPa.sに等しいか、又は約42mPa.sに等しい。
【0056】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、酸処理によって加水分解される。
【0057】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、冷水溶性である。
【0058】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、アルファ化される。それは好ましくは煮沸される。更に好ましくは、それは煮沸され、次いで噴霧乾燥される。
【0059】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、10~60%のアミロース含有量を有するデンプンに由来し、当該パーセンテージは、デンプンの総乾燥重量に対するアミロースの乾燥重量で表される。このアミロース含有量は、更に好ましくは20~50%、更に好ましくは30~45%、更に好ましくは30~40%、例えば約35%に等しい。
【0060】
本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、特に印刷可能な材料及びそれから得られる印刷製品の安全性及び特性に関して、所望の特性を妨げない限り、以前にさらされた好ましいもの以外の他の化学的及び/又は物理的変性を受けてもよい。しかしながら、本発明においては必要ではないと思われるので、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、それ以上変性されないことが好ましい。
【0061】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、CAS番号9049-76-7の製品である。
【0062】
好ましくは、本開示によるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、2021年3月1日に施行された欧州薬局方(「STARCH,HYDROXYPROPYL PREGELATINISED」)に準拠している。
【0063】
特に有用なC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、市販されている。例えば、本出願人によって市販されている加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンLYCOAT(登録商標)RS 720(CAS番号113894-92-1)、又はLYCOAT(登録商標)RS 780(CAS番号113894-92-1)を、挙げることができる。
【0064】
別の好ましい実施形態では、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、両親媒性である。それは、好ましくは8~20個の炭素原子、更に好ましくは9~15個の炭素原子、更に好ましくは11~13個の炭素原子、更に好ましくは12個の炭素原子を有する基で官能化され、更に好ましくはエーテル化及び/又はエステル化される。付加される官能基は、好ましくはアニオン性である。それは、好ましくはナトリウム塩である。
【0065】
好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解されたデンプン化合物は、エステル化されている。
【0066】
好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、オクテニルコハク酸デンプンである。加水分解されたオクテニルコハク酸デンプンの場合、デンプン化合物は、好ましくは、0.5~5%のオクテニルコハク酸基の含有量を有し、当該パーセンテージは、加水分解されたオクテニルコハク酸デンプンの総乾燥重量に対するオクテニルスクシニル基の乾燥重量で表される。オクテニルスクシニル基の含有量は、当業者によって、例えば、2021年3月1日に施行されたFAO JECFA Food Starch,Modified,INS No.1450に準拠する方法によって決定することができる。それは好ましくは3%以下、好ましくは0.5~3%、例えば約2%に等しい。
【0067】
好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、トウモロコシデンプン、好ましくはワキシートウモロコシデンプンに由来する。
【0068】
好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、多角度レーザー-光散乱(MALLS)及び屈折率(RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定される9,000kDa未満のMwを有する。好ましくは8,000kDa以下、更に好ましくは7,000kDa以下、更に好ましくは6,000kDa以下、更に好ましくは5,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa以下、更に好ましくは3,000kDa以下、更に好ましくは2,000kDa以下、更に好ましくは1,000kDa以下、更に好ましくは800kDa以下、更に好ましくは600kDa以下、更に好ましくは600kDa未満、更に好ましくは500kDa以下、更に好ましくは400kDa以下、更に好ましくは300kDa以下である。好ましくは10kDa以上、更に好ましくは30kDa以上、更に好ましくは50kDa以上、更に好ましくは70kDa以上、更に好ましくは90kDa以上、更に好ましくは100kDa以上、更に好ましくは120kDa以上、更に好ましくは140kDa以上、更に好ましくは160kDa以上、更に好ましくは180kDa以上である。例えば、約600kDaに等しいか又は約200kDaに等しい。
【0069】
好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、10乾燥重量%の当該デンプン化合物を含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で、8,000mPa.s未満の粘度を有する。好ましくは8,000mPa.s以下、更に好ましくは6,000mPa.s以下、更に好ましくは4,000mPa.s以下、更に好ましくは2,000mPa.s以下、更に好ましくは1000mPa.s以下、更に好ましくは500mPa.s以下、更に好ましくは300mPa.s以下、更に好ましくは200mPa.s以下、更に好ましくは100mPa.s以下、更に好ましくは50mPa.s以下、更に好ましくは40mPa.s以下、更に好ましくは30mPa.s以下、更に好ましくは20mPa.s以下、更に好ましくは10mPa.s以下、更に好ましくは5mPa.s以下である。好ましくは1mPa.s以上、更に好ましくは2mPa.s以上である。例えば、2mPa.sに等しいか、約7mPa.sに等しい。
【0070】
好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、酵素処理によって、好ましくはβ-アミラーゼ及び/又はα-アミラーゼで、更に好ましくはα-アミラーゼで加水分解される。
【0071】
好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、冷水溶性である。好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、アルファ化されている。それは好ましくは煮沸される。更に好ましくは、それは煮沸され、次いで噴霧乾燥される。好ましくは、加水分解は、煮沸済みデンプンに対して行われる。次いで、このようにして得られたスラリーは、好ましくは、噴霧乾燥される前に濾過される。
【0072】
好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、50%以下のアミロース含有量を有するデンプンに由来し、当該パーセンテージは、デンプンの総乾燥重量に対するアミロースの乾燥重量で表される。更に好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下、例えば約0%に等しい。更に好ましくは、本開示による加水分解されたオクテニルコハク酸デンプンは、ワキシーデンプン、更に好ましくはトウモロコシワキシーデンプンに由来する。このようなデンプンは、典型的には0~5%のアミロース含有量を有する。
【0073】
本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、特に印刷可能な材料及びそれらから得られた印刷製品の安全性及び特性の観点から、所望の特性を妨げない限り、以前にさらされた好ましいものよりも他の化学的及び/又は物理的変性を受けてもよい。しかしながら、本発明においては必須ではないように思われるので、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、それ以上変性されないことが好ましい。
【0074】
好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、CAS番号66829-29-6の製品である。
【0075】
好ましくは、本開示による両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、2021年3月1日に施行されたUSPモノグラフ、及び/又は2021年3月1日に施行されたFAO JECFA Food Starch,Modified,INS No.1450に準拠している。
【0076】
特に有用な両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は市販されている。例えば、本出願人によって市販されているオクテニルコハク酸デンプンCLEARGUM(登録商標)CO03(CAS番号66829-29-6)又はCLEARGUM(登録商標)CO01(CAS番号66829-29-6)を、挙げることができる。
【0077】
当然ながら、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、単独で又は組み合わせて使用され得る。特に、前述の2つの好ましいデンプン化合物は、単独で又は組み合わせて使用され得る。
【0078】
印刷可能な材料:
本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、印刷可能な材料において使用することができる。
【0079】
したがって、本発明は、3D印刷のための、加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含む印刷可能な材料の使用も包含する。
【0080】
「印刷可能な材料」という表現は、古典的には、3DPプロセスにおいて、任意選択で溶媒を添加して、それ自体で使用することができる材料を指す。換言すれば、これは3Dプリンタに供給するためのすぐに使用できる材料である。本開示による印刷可能な材料は、任意の好適な形態であり得る。それは、液体、半固体(例えばゲル塊)又は固体(例えば粉末、フィラメント)状態であり得る。好ましくは、本開示による印刷可能な材料は、ゲル塊、粉末、又はフィラメントであり、更に好ましくはフィラメントである。印刷可能な粉末は、3DP(直接粉末押出におけるように)において直接使用され得るか、又は印刷可能なフィラメントの調製(FDMにおけるように)において直接使用され得るか、又は溶媒、好ましくは水の単純な添加によるゲル塊の調製のために使用され得る。
【0081】
好ましくは、本開示による印刷可能な材料の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、前述の通りである。
【0082】
加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、本開示による印刷可能な材料に単独で又は組み合わせて含まれてもよい。
【0083】
好ましくは、本開示による印刷可能な材料の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、好ましくは前述のような、C-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物、好ましくは前述のような、両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物、又はそれらの混合物から選択される。ここで、C-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、好ましくは加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンであることに留意されたい。ここで、両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、好ましくはオクテニルコハク酸デンプンであることに留意されたい。
【0084】
好ましい実施形態では、本開示による印刷可能な材料の加水分解及び官能化されたデンプン化合物の量は、1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは20%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは35%超、更に好ましくは40%以上であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは99%以下、更に好ましくは90%未満、更に好ましくは80%未満、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは55%未満、更に好ましくは50%以下である。例えば、約42%に等しく、又は約49%に等しく、又は約50%に等しい。
【0085】
一般に、本開示による印刷可能な材料は、他の成分を更に含む。そのような他の成分の例は、活性成分、糖、可塑剤及び糖アルコール、着色剤、香味剤、潤滑剤、他のデンプン及びデンプン化合物である。本開示による可塑剤及び糖アルコールは、好ましくは、グリセロール、ソルビトール、ソルビトール無水物、マルチトール、マンニトール、キシリトール、400~10000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールステアレート、プロピレングリコール、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、ポリソルベート、アセチル化モノグリセリド、乳酸エステル、脂肪酸及びエトキシル化されたそれらの塩若しくは誘導体、例えば特にステアリン酸、フタレート、エチルセバケート、ブチルセバケート、ミグリオール、グリセロールトリアセテート、流動パラフィン、レシチン、カルナウバワックス、水素化ヒマシ油、尿素から、又はそれらの混合物から選択される。好ましくは、糖アルコールから、好ましくはマンニトール、ソルビトールから、又はそれらの混合物から選択される。他の成分の他の例は、ポリ乳酸(PLA);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose、HPMC)、酢酸セルロースヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropylcellulose、HPC)、エチルセルロース(ethyl cellulose、EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(hydroxypropyl methylcellulose acetate succinate、HPMCAS)、ポリビニルピロリドンシグマ(PVP)、クロスポビドン、微結晶セルロース(microcrystalline cellulose、MCC)、Carbopol(登録商標)794、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、Eudragit(登録商標)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、クエン酸トリエチル、リン酸三カルシウム、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、Soluplus(登録商標)、Kollidon(登録商標)、Kollicoat(登録商標)、Polyox(商標)のような、3D印刷、特にFDMで古典的に使用される賦形剤である。しかし、PLA、PVP、クロスポビドン、Carbopol(登録商標)794、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、Eudragit(登録商標)、PCL、クエン酸トリエチル、リン酸三カルシウム、PVA、Soluplus(登録商標)、Kollidon(登録商標)、Kollicoat(登録商標)、又はPolyox(商標)などの化石燃料ベースの賦形剤の使用は、好ましくは除外される。
【0086】
一般に、本開示による印刷可能な材料の他の成分(すなわち、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物以外の成分)の量は、1%以上、更に好ましくは10%超、更に好ましくは20%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは40%超、更に好ましくは45%超、更に好ましくは50%以上であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは99%以下、更に好ましくは95%未満、更に好ましくは90%未満、更に好ましくは80%未満、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは65%未満、更に好ましくは60%以下である。例えば、約50%に等しく、又は約51%に等しく、又は約58%に等しい。
【0087】
好ましくは、本開示による印刷可能な材料は、活性成分を更に含む。本開示による活性成分には、非医薬品及び医薬品が含まれる。「活性」という表現は、古典的には、薬学的、獣医学的、食品、栄養補助食品、化粧品又は農薬の対象となる任意の物質を指す。好ましくは、本開示による活性成分は、医薬品、栄養補助食品、化粧品又は獣医学的活性成分である。活性成分、特に医薬活性成分である場合、いわゆる小分子から選択することができるが、例えば、タンパク質、核酸-DNA若しくはRNAに由来するものなど-、細胞若しくはウイルスに基づく、又はそれらに由来する活性物質の場合のように、いわゆる「生物学的」活性成分からも選択することができる。好ましくは、本開示の活性成分は、イトラコナゾール、ジプロフィリン、生細胞、又はそれらの混合物から選択される。
【0088】
本開示による活性成分は、水に非常に可溶性であるか、水に自由に可溶性であるか、水に可溶性であるか、水に難溶性であるか、水にわずかに可溶性であるか、水に非常にわずかに可溶性であるか、又は水に実質的に不溶性であり得る。この水への溶解度は、例えば、The International Pharmacopeia(2019)の第9版、セクション「General Notice,Solubility」において十分に定義されている。本開示において、「水不溶性」という表現は、古典的には、水に難溶性から実質的に水に不溶性である活性成分を指す。本開示において、「水溶性」という表現は、古典的には、水に可溶性から非常に水溶性である活性成分を指す。
【0089】
本開示による活性成分が水不溶性である場合、それは好ましくは水にわずかに可溶性から水に実質的に不溶性であり、更に好ましくは水に非常にわずかに可溶性又は水に実質的に不溶性であり、更に好ましくは水に実質的に不溶性である。本開示による活性成分が水溶性である場合、それは好ましくは水に自由に可溶性であるか、又は水に非常に可溶性である。
【0090】
一般に、本開示による印刷可能な材料中の活性成分の量は、1%以上、更には2%以上、更には5%以上、更には10%以上であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。それは、一般に99%以下、更には90%以下、更には70%以下、更には50%以下、更には40%以下、更には30%以下、更には20%以下である。例えば、約10%に等しいか、又は約20%に等しい。
【0091】
好ましくは、本開示による印刷可能な材料は、
-1~99%の本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物と、
-1~99%の他の成分と、
-0~98%の溶媒と、から構成され、
当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、それらの合計は100%に等しい。
【0092】
好ましくは、印刷可能な材料中の再生可能資源から得られる成分の量は、50%以上であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。再生可能資源から得られるそのような成分は、特に、化石燃料からは得られない。更に好ましくは、この量は60%以上、更に好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは100%である。再生可能資源から得ることができる成分の例は、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含むデンプン化合物、HPMC、HPC、EC、HPMCAS、又はMCCなどのセルロース誘導体、糖及び糖アルコールである。再生可能資源から得ることができない成分の例は、PLA、PVP、クロスポビドン、Carbopol(登録商標)794、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、Eudragit(登録商標)、PCL、クエン酸トリエチル、リン酸三カルシウム、PVA、Soluplus(登録商標)、Kollidon(登録商標)、Kollicoat(登録商標)、又はPolyox(商標)である。
【0093】
好ましくは、活性成分が存在する場合、本開示による印刷可能な材料の賦形剤は、再生可能資源から得られる、特に、化石燃料から得られない成分の少なくとも50%から構成され、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の賦形剤の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。更に好ましくは、本開示による印刷可能な材料の賦形剤は、再生可能資源から得られる成分の少なくとも60重量%、更に好ましくは少なくとも70重量%、更に好ましくは少なくとも80重量%、更に好ましくは少なくとも90重量%、更に好ましくは100重量%から構成される。
【0094】
印刷製品:
本開示による印刷可能な材料は、様々な製品の3DPに使用することができる。
【0095】
印刷製品又は本発明に従って印刷される製品は、典型的には、固体又は半固体製品であり、好ましくは経口投与を意図したものであり、例えば、錠剤、ゲル、フィルム、カプレット、ソフトゲル、ハードカプセルである。それはまた、薬物装填医療デバイスであり得る。好ましい実施形態では、印刷製品又は本発明に従って印刷される製品は、固体製品、典型的には錠剤である。好ましい実施形態では、本発明による印刷製品は、ゲル及び/又はフィルムではない。印刷製品又は本発明に従って印刷される製品は、例えば、薬学的、獣医学的、栄養補助食品、食品、化粧品、又は農薬の対象であり得る。それはヒト又は動物用であり得る。好ましくは、医薬品、獣医薬、栄養補助食品又は化粧品である。好ましい実施形態では、印刷製品又は本開示に従って印刷される製品は、剤形(すなわち、活性成分を含む製品)、好ましくは固体剤形、好ましくは経口固体剤形、特に医薬経口固体剤形である。
【0096】
好ましい一実施形態では、本開示による印刷製品は、即時放出剤形である。好ましくは、投与形態の即時放出特性は、米国食品医薬品局(Dissolution Testing and Acceptance Criteria for Immediate-Release Solid Oral Dosage Form Drug Products Containing High Solubility Drug Substances;Guidance for Industry;August 2018,Biopharmaceutics)によって提供されるガイダンスに従って決定される。この放出は、特に、USP装置2(パドル法)を使用して、30分間の900mLの人工胃液媒体中で決定することができる。活性成分の少なくとも80乾燥重量%が30分以内に放出されるべきである。
【0097】
別の好ましい実施形態では、本開示による印刷製品は、調節放出剤形又は制御放出剤形である。好ましくは、剤形の調節又は制御放出特性は、持続時間がより長い、例えば30分の代わりに少なくとも8時間であることを除いて、即時放出特性についてすぐ上に記載したのと同じ方法に従って決定される。それはまた、米国食品医薬品局(General Methods;32(2)Second Interim Revision Announcement:DISSOLUTION,<711>DISSOLUTION;11/21/2016)のガイダンスに従って、溶解方法A(pH移行法、2時間の胃液をシミュレートし、残りの10時間の間はシミュレートした腸液に変更)を使用して、進めることも可能である。調節放出剤形の場合、即時放出剤形とは対照的に、80乾燥重量%以下の活性成分が30分で放出されるべきである。制御放出剤形については、80乾燥重量%以下の活性成分が8時間で溶解すべきである。もちろん、活性成分は、依然として放出されなければならない。したがって、好ましくは、活性成分の少なくとも20乾燥重量%、好ましくは少なくとも30%、更に好ましくは少なくとも40%、更に好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも60%が、8時間で溶解すべきである。
【0098】
本発明はまた、加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含む、3D印刷によって得られた、又は得ることができる製品も包含し、当該デンプン化合物は、好ましくは本明細書で前述した通りである。好ましくは、本開示の印刷製品は、使用される成分の最終的に添加される溶媒又は水分が無視されることを除いて、印刷可能な材料について前述した組成物を有する。好ましくは、印刷製品は上記の通りである。
【0099】
3D印刷プロセス:
本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物又は印刷可能な材料は、3DPのために使用することができる。
【0100】
3D印刷は、当業者に知られている任意の好適な方法によって行うことができる。好ましくは、3D印刷は、以下から選択される方法によって行われる。-押出成形、好ましくは熱溶解積層法(FDM)、直接粉末押出又は圧力支援マイクロシリンジ(PAM)、
-結合剤噴射、
-材料噴射、
-光重合、好ましくはステレオリソグラフィ(SLA)又は直接/デジタル光処理(digital light processing、DLP)、
-粉末床溶融結合、好ましくは選択的レーザー焼結(SLS)。
【0101】
好ましくは、3D印刷は、押出を使用するプロセスによって行われる。好ましい一実施形態では、3D印刷は、ホットメルト押出(HME)、好ましくはFDM又は直接粉末押出から選択される、更に好ましくはFDMを使用するプロセスによって行われる。別の好ましい実施形態では、3D印刷は、冷間押出を使用するプロセスによって、好ましくはPAMによって行われる。
【0102】
本発明はまた、本開示による印刷可能な材料の3D印刷を含む、3D印刷による製品の製造のためのプロセスを包含する。好ましくは、印刷製品又は印刷される製品は、前述の通りである。好ましくは、3D印刷プロセスは、上述の通りである。
【0103】
即時放出における、及び/又は水溶性成分を製剤化するための、及び/又は押出ベースの3DP(特にFDM)における使用:
前述したように、本開示による加水分解された官能化されたデンプン化合物又は印刷可能な材料は、様々な目的のために、及び様々な3DPプロセスにおいて有利に使用することができる。以下の実施例から明らかなように、本発明の組成物は、押出法によって、好ましくはHMEによって、好ましくはFDM又は直接粉末押出によって、更に好ましくはFDMによって、即時放出剤形の調製のために、及び/又は水溶性活性成分を製剤化するために、及び/又は3DPにおいて使用することができる。
【0104】
したがって、好ましい実施形態では、本開示による加水分解された官能化されたデンプン化合物又は印刷可能な材料は、押出法による、好ましくはHMEによる、特にFDM又は直接粉末押出による、好ましくはFDMによる、即時放出剤形の3D印刷のため、及び/又は水溶性活性成分を含む剤形の3D印刷のため、及び/又は剤形の3D印刷のためのものである。
【0105】
好ましくは、この加水分解された官能化されたデンプン化合物又は印刷可能な材料は、固体製品、好ましくは錠剤の3D印刷のためのものである。好ましくは、この印刷可能な材料は粉末又はフィラメントであり、更に好ましくはフィラメントである。この製品は、好ましくは経口投与用を対象とする。好ましくは、固体経口剤形である。
【0106】
好ましくは、この実施形態の剤形は、少なくとも活性成分を含む。好ましくは、この活性成分は水溶性であり、更に好ましくは水に自由に可溶性であるか、又は水に非常に可溶性である。好ましくは、ジプロフィリンであり、これは水に自由に可溶性である。
【0107】
好ましくは、この実施形態で使用される加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、好ましくは前述のように、1~5個の炭素原子を有するアルキル基で官能化される。特に、加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンが好ましい。好ましくは、当該1~5個の炭素原子を有するアルキル基で官能化された加水分解されたデンプンは、多角度レーザー-光散乱(MALLS)及び屈折率(RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定される9,000kDa未満のMwを有する。好ましくは8,000kDa以下、更に好ましくは7,000kDa以下、更に好ましくは6,000kDa以下、更に好ましくは5,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa未満である。好ましくは100kDa以上、更に好ましくは200kDa以上、更に好ましくは400kDa以上、更に好ましくは600kDa以上、更に好ましくは800kDa以上、更に好ましくは900kDa以上、更に好ましくは1,000kDa以上、更に好ましくは1,000kDa超、更に好ましくは1,500kDa以上、更に好ましくは2,000kDa以上、更に好ましくは2,500kDa以上、更に好ましくは3,000kDa以上である。例えば、約3,500kDaに等しい。好ましくは、1~5個の炭素原子を有するアルキル基で官能化された当該加水分解されたデンプン化合物は、10乾燥重量%の当該デンプン化合物を含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で8,000mPa.s未満の粘度を有する。好ましくは8,000mPa.s以下、更に好ましくは6,000mPa.s以下、更に好ましくは4,000mPa.s以下、更に好ましくは2,000mPa.s以下、更に好ましくは1,000mPa.s以下、更に好ましくは500mPa.s以下、更に好ましくは300mPa.s以下、更に好ましくは200mPa.s以下、更に好ましくは100mPa.s以下、更に好ましくは50mPa.s以下である。好ましくは1mPa.s以上であり、更に好ましくは2mPa.s以上であり、更に好ましくは5mPa.s以上であり、更に好ましくは7mPa.s以上であり、更に好ましくは10mPa.s以上であり、更に好ましくは15mPa.s以上であり、更に好ましくは20mPa.s以上であり、更に好ましくは30mPa.s以上であり、更に好ましくは40mPa.s以上である。例えば、約42mPa.sに等しい。
【0108】
好ましくは、加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、この実施形態において印刷可能な材料に使用される。
【0109】
好ましくは、この印刷可能な材料の加水分解及び官能化されたデンプン化合物の量は、1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは20%超、更に好ましくは24%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは35%超、更に好ましくは36%超、更に好ましくは40%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは99%以下、更に好ましくは90%未満、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは56%未満、更に好ましくは55%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは45%未満、更に好ましくは44%未満である。例えば、約42%に等しい。
【0110】
一般に、この印刷可能な材料の活性成分の量は、1%以上、更には2%以上、更には5%以上、更には10%以上であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。それは、一般に99%以下、更には90%以下、更には70%以下、更には50%以下、更には40%以下、更には30%以下であり、例えば約20%に等しい。
【0111】
好ましくは、この印刷可能な材料は、糖アルコール又は可塑剤を更に含む。好ましくは、可塑剤又は糖アルコールは、ソルビトール、マンニトール、又はそれらの混合物から選択される。好ましくはマンニトールとソルビトールとの混合物である。好ましくは、この印刷可能な材料中の糖アルコール又は可塑剤の量は、1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは15%超、更に好ましくは20%超、更に好ましくは22%超、更に好ましくは24%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは34%超、更に好ましくは35%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは60%以下、更に好ましくは55%未満、更に好ましくは54%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは45%未満、更に好ましくは42%未満、更に好ましくは40%未満である。例えば、約36%に等しい。
【0112】
マンニトールとソルビトールとの混合物が使用される場合、ソルビトール:マンニトールの重量比は、好ましくは1:1超、更に好ましくは2:1以上、更に好ましくは3:1以上である。好ましくは6:1以下、更に好ましくは5:1以下である。例えば約4:1である。
【0113】
好ましくは、この印刷可能な材料は、好ましくは溶融可能な熱潤滑剤から、例えば脂肪酸の金属塩、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル炭化水素から選択される固着防止剤を更に含む、又はそれらの混合物を形成する。例えば、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ヘキサデカン、オクタデカン、フマル酸ステアリルナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸から選択されるか、又はそれらの混合物を形成する。好ましくはステアリン酸を含む。更に好ましくはステアリン酸単独である。好ましくは、固着防止剤の量は、0.5~5%、好ましくは1~4%、好ましくは1~3%であり、例えば約2%に等しく、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。
【0114】
前述したように、本開示による印刷可能な材料は、3DPにおけるように、最終的には溶媒を添加して使用することができる。好ましくは、この実施形態の印刷可能な材料は、粉末又はフィラメントである。したがって、この印刷可能な材料は、水などの溶媒が添加されていないことが好ましい。
【0115】
好ましくは、この印刷可能な材料は、
-好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル基で官能化された、1~97.5%の加水分解及び官能化されたデンプン化合物、特に加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンと、
-1~97.5%の活性成分と、
-1~60%の可塑剤又は糖アルコール、好ましくはマンニトール及びソルビトールの組み合わせと、
-0.5~5%の固着防止剤と、
-0~96.5%の他の成分と、から構成され、
当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、それらの合計は100%に等しい。
【0116】
好ましくは、この印刷可能な材料の他の成分の量は、90%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは30%未満、更に好ましくは10%未満、更に好ましくは5%未満、更に好ましくは1%未満であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。更に好ましくは、本開示による印刷可能な材料は、そのような他の成分を含まない。
【0117】
本発明はまた、この実施形態に記載されるような、加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含む印刷可能な材料を包含する。本発明はまた、好ましくは水溶性活性成分を含み、この印刷可能な材料から得られるか若しくは得ることができ、かつ/又は無視される最終的な溶媒を除いて、この印刷可能な材料の組成物を有する剤形、好ましくは即時放出剤形を包含する。本発明はまた、この印刷可能な材料の3D印刷を含む、3D印刷による製品の製造のためのプロセスを包含する。好ましくは、3DPは、押出法によって、好ましくはFDM又は直接粉末押出によって、更に好ましくはFDMによって行われる。
【0118】
調節放出における、及び/又は溶解度増大のための、及び/又は押出ベースの3DP(特にFMD)における使用:
以下の実施例から明らかであるように、本開示による加水分解された官能化されたデンプン化合物又は印刷可能な材料はまた、押出法によって、好ましくはHMEによって、好ましくはFDM又は直接粉末押出によって、更に好ましくはFDMによって、調節放出剤形、好ましくは制御放出剤形の調製のために、及び/又は水不溶性活性成分を製剤化するために、及び/又は3DPにおいて使用することができる。
【0119】
したがって、別の好ましい実施形態では、本開示による加水分解された官能化されたデンプン化合物又は印刷可能な材料は、押出法による、好ましくはHMEによる、特にFDM又は直接粉末押出による、好ましくはFDMによる、調節放出剤形の3D印刷のため、好ましくは制御放出剤形の3D印刷のため、及び/又は水不溶性活性成分を含有する剤形の3D印刷のため、及び/又は剤形の3D印刷のためである。
【0120】
好ましくは、この加水分解された官能化されたデンプン化合物又は印刷可能な材料は、固体製品、好ましくは錠剤の3D印刷のためのものである。好ましくは、この印刷可能な材料は粉末又はフィラメントであり、更に好ましくはフィラメントである。この製品は、好ましくは経口投与用を対象とする。好ましくは、固体経口剤形である。
【0121】
好ましくは、この剤形は、好ましくは水不溶性、更に好ましくは水にわずかに可溶性から水に実質的に不溶性まで、更に好ましくは水に非常にわずかに可溶性又は水に実質的に不溶性、更に好ましくは水に実質的に不溶性である少なくとも1つの活性成分を含む。好ましくはイトラコナゾールであり、これは実質的に水に不溶性である。
【0122】
好ましくは、この実施形態で使用される加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、好ましくは前述のような、C-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物、好ましくは前述のような、両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物、又はそれらの混合物から選択される。これらの混合物であることが更に好ましい。ここで、C-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、好ましくは加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンであることに留意されたい。ここで、両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、好ましくは加水分解されたオクテニルコハク酸デンプンであることに留意されたい。
【0123】
好ましくは、この実施形態において使用されるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、多角度レーザー-光散乱(MALLS)及び屈折率(RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定される9,000kDa未満のMwを有する。好ましくは8,000kDa以下、更に好ましくは7,000kDa以下、更に好ましくは6,000kDa以下、更に好ましくは5,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa以下、更に好ましくは3,500kDa以下、更に好ましくは3,500kDa未満、更に好ましくは3,000kDa以下、更に好ましくは2,500kDa以下、更に好ましくは2,000kDa以下、更に好ましくは1,500kDa以下である。好ましくは100kDa以上、更に好ましくは200kDa以上、更に好ましくは400kDa以上、更に好ましくは600kDa以上、更に好ましくは800kDa以上、更に好ましくは900kDa以上である。例えば、約1,000Daに等しい。好ましくは、C-Cアルキル基で官能化された当該加水分解されたデンプン化合物は、10乾燥重量%の当該デンプン化合物を含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で8,000mPa.s未満の粘度を有する。好ましくは8,000mPa.s以下、更に好ましくは6,000mPa.s以下、更に好ましくは4,000mPa.s以下、更に好ましくは2,000mPa.s以下、更に好ましくは1000mPa.s以下、更に好ましくは500mPa.s以下、更に好ましくは300mPa.s以下、更に好ましくは200mPa.s以下、更に好ましくは100mPa.s以下、更に好ましくは50mPa.s以下、更に好ましくは40mPa.s以下、更に好ましくは30mPa.s以下、更に好ましくは20mPa.s以下である。好ましくは1mPa.s以上、更に好ましくは2mPa.s以上、更に好ましくは5mPa.s以上、更に好ましくは7mPa.s以上、更に好ましくは10mPa.s以上、更に好ましくは15mPa.s以上であり、例えば18mPa.sに等しい。
【0124】
好ましくは、この実施形態で使用される両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、多角度レーザー-光散乱(MALLS)及び屈折率(RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定される9,000kDa未満のMwを有する。好ましくは8,000kDa以下、更に好ましくは7,000kDa以下、更に好ましくは6,000kDa以下、更に好ましくは5,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa以下、更に好ましくは3,000kDa以下、更に好ましくは2,000kDa以下、更に好ましくは1,000kDa以下、更に好ましくは800kDa以下、更に好ましくは600kDa以下、更に好ましくは600kDa未満、更に好ましくは500kDa以下、更に好ましくは400kDa以下、更に好ましくは300kDa以下である。好ましくは10kDa以上、更に好ましくは30kDa以上、更に好ましくは50kDa以上、更に好ましくは70kDa以上、更に好ましくは90kDa以上、更に好ましくは100kDa以上、更に好ましくは120kDa以上、更に好ましくは140kDa以上、更に好ましくは160kDa以上、更に好ましくは180kDa以上である。例えば、約200kDaに等しい。好ましくは、当該両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、10乾燥重量%の当該デンプン化合物を含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で8,000mPa.s未満の粘度を有する。好ましくは8,000mPa.s以下、更に好ましくは6,000mPa.s以下、更に好ましくは4,000mPa.s以下、更に好ましくは2,000mPa.s以下、更に好ましくは1000mPa.s以下、更に好ましくは500mPa.s以下、更に好ましくは300mPa.s以下、更に好ましくは200mPa.s以下、更に好ましくは100mPa.s以下、更に好ましくは50mPa.s以下、更に好ましくは40mPa.s以下、更に好ましくは30mPa.s以下、更に好ましくは20mPa.s以下、更に好ましくは10mPa.s以下、更に好ましくは5mPa.s以下である。好ましくは1mPa.s以上、更に好ましくは2mPa.s以上である。例えば、2mPa.sに等しい。
【0125】
好ましくは、加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、この実施形態において印刷可能な材料に使用される。
【0126】
好ましくは、この印刷可能な材料の加水分解及び官能化されたデンプン化合物の量は、1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは20%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは35%以上、更に好ましくは35%超、更に好ましくは40%超、更に好ましくは45%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは99%以下、更に好ましくは90%未満、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは55%未満である。例えば、約50%に等しい。
【0127】
-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物が印刷可能な材料に使用される場合、当該デンプン化合物の量は、好ましくは1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは12%超、更に好ましくは15%超、更に好ましくは17%超、更に好ましくは20%以上、更に好ましくは20%超、更に好ましくは25%以上、更に好ましくは25%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは99%以下、更に好ましくは90%未満、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは40%未満、更に好ましくは38%未満、更に好ましくは35%未満、更に好ましくは33%未満、更に好ましくは30%以下、更に好ましくは30%未満である。例えば、約26%に等しい。
【0128】
両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物が印刷可能な材料に使用される場合、当該デンプン化合物の量は、好ましくは1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは12%超、更に好ましくは15%以上、更に好ましくは15%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは99%以下、更に好ましくは90%未満、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは40%未満、更に好ましくは38%未満、更に好ましくは35%未満、更に好ましくは33%未満、更に好ましくは30%以下、更に好ましくは30%未満である。例えば、約24%に等しい。
【0129】
一般に、この印刷可能な材料中の活性成分の量は、1%以上、更には2%以上、更には5%以上であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。それは、一般に99%以下、更には90%以下、更には70%以下、更には50%以下、更には40%以下、更には30%以下、更には20%以下、更には15%以下である。例えば、約10%である。
【0130】
好ましくは、この印刷可能な材料は、糖アルコール又は可塑剤を更に含む。好ましくは、糖アルコール又は可塑剤はソルビトール、マンニトール、又はそれらの混合物から選択される。好ましくは、この印刷可能な材料中の糖アルコール又は可塑剤の量は、1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは20%超、更に好ましくは25%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは35%以上、更に好ましくは35%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは90%以下、更に好ましくは80%未満、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは45%以下、更に好ましくは45%未満である。例えば、約40%に等しい。
【0131】
前述したように、本開示による印刷可能な材料は、3DPにおけるように、最終的には溶媒を添加して使用することができる。好ましくは、この実施形態の印刷可能な材料は、粉末又はフィラメントである。したがって、この印刷可能な材料は、水などの溶媒が添加されていないことが好ましい。
【0132】
好ましくは、この印刷可能な材料は、
-1~98%の本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物、特に加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンと加水分解されたオクテニルコハク酸デンプンとの組み合わせと、
-1~98%の活性成分と、
-1~90%の可塑剤又は糖アルコール、好ましくはソルビトールと、
-0~97%の他の成分と、から構成され、
当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、それらの合計は100%に等しい。
【0133】
好ましくは、この印刷可能な材料の他の成分の量は、90%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは30%未満、更に好ましくは10%未満、更に好ましくは5%未満、更に好ましくは1%未満であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。更に好ましくは、本開示による印刷可能な材料は、そのような他の成分を含まない。
【0134】
本発明はまた、この実施形態に記載されるような、加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含む印刷可能な材料を包含する。それはまた、剤形、好ましくは調節放出剤形、更に好ましくは制御放出剤形、及び/又はこの印刷可能な材料から得られるか若しくは得ることができる水不溶性活性成分を含む固体形態、及び/又は無視される最終的な溶媒を除いて、この印刷可能な材料の組成物を有する固体形態を包含する。本発明はまた、この印刷可能な材料の3D印刷を含む、3D印刷による製品の製造のためのプロセスを包含する。好ましくは、3DPは、押出法によって、好ましくはFDM又は直接粉末押出によって、更に好ましくはFDMによって行われる。
【0135】
活性成分の調節放出における、及び/又は水溶性活性成分を製剤化するための、及び/又は押出ベースの3DP(特にPAM)における使用:
以下の実施例から明らかであるように、本開示による加水分解された官能化されたデンプン化合物又は印刷可能な材料は、押出法によって、好ましくは冷間押出によって、好ましくはPAMによって、調節放出剤形の調製のために、及び/又は水溶性活性成分を製剤化するために、及び/又は3DPにおいて使用することができる。
【0136】
したがって、好ましい実施形態では、本開示による加水分解された官能化されたデンプン化合物又は印刷可能な材料は、押出法による、好ましくは冷間押出による、特にPAMによる、調節放出剤形の3D印刷のため、及び/又は水溶性活性成分を含む剤形の3D印刷のため、及び/又は剤形の3D印刷のため、及び/又は3Dバイオプリンティングのためのものである。
【0137】
好ましくは、この加水分解された官能化されたデンプン化合物又は印刷可能な材料は、固体製品、好ましくは錠剤の3D印刷のためのものである。好ましくは、この印刷可能な材料は、ゲル塊である。この製品は、好ましくは経口投与用を対象とする。好ましくは、固体経口剤形である。
【0138】
好ましくは、この剤形は、少なくとも活性成分を含む。
【0139】
好ましい一実施形態では、活性成分は水溶性であり、更に好ましくは水に自由に可溶性であるか、又は水に非常に可溶性である。好ましくは、ジプロフィリンであり、これは水に自由に可溶性である。別の好ましい実施形態では、活性成分は細胞である。
【0140】
好ましくは、この実施形態で使用される加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、好ましくは前述のような、C-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物、好ましくは前述のような、両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物、又はそれらの混合物から選択される。これらの混合物であることが更に好ましい。ここで、C-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、好ましくは加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンであることに留意されたい。ここで、両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、好ましくはオクテニルコハク酸デンプンであることに留意されたい。
【0141】
好ましくは、この実施形態において使用されるC-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物は、多角度レーザー-光散乱(MALLS)及び屈折率(RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定される9,000kDa未満のMwを有する。好ましくは8,000kDa以下、更に好ましくは7,000kDa以下、更に好ましくは6,000kDa以下、更に好ましくは5,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa以下、更に好ましくは3,500kDa以下、更に好ましくは3,500kDa未満、更に好ましくは3,000kDa以下、更に好ましくは2,500kDa以下、更に好ましくは2,000kDa以下、更に好ましくは1,500kDa以下である。好ましくは100kDa以上、更に好ましくは200kDa以上、更に好ましくは400kDa以上、更に好ましくは600kDa以上、更に好ましくは800kDa以上、更に好ましくは900kDa以上である。例えば、約1,000Daに等しい。好ましくは、C-Cアルキル基で官能化された当該加水分解されたデンプン化合物は、10乾燥重量%の当該デンプン化合物を含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で8,000mPa.s未満の粘度を有する。好ましくは8,000mPa.s以下、更に好ましくは6,000mPa.s以下、更に好ましくは4,000mPa.s以下、更に好ましくは2,000mPa.s以下、更に好ましくは1000mPa.s以下、更に好ましくは500mPa.s以下、更に好ましくは300mPa.s以下、更に好ましくは200mPa.s以下、更に好ましくは100mPa.s以下、更に好ましくは50mPa.s以下、更に好ましくは40mPa.s以下、更に好ましくは30mPa.s以下、更に好ましくは20mPa.s以下である。好ましくは1mPa.s以上、更に好ましくは2mPa.s以上、更に好ましくは5mPa.s以上、更に好ましくは7mPa.s以上、更に好ましくは10mPa.s以上、更に好ましくは15mPa.s以上であり、例えば18mPa.sに等しい。
【0142】
好ましくは、この実施形態で使用される両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、多角度レーザー-光散乱(MALLS)及び屈折率(RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定される9,000kDa未満のMwを有する。好ましくは8,000kDa以下、更に好ましくは7,000kDa以下、更に好ましくは6,000kDa以下、更に好ましくは5,000kDa以下、更に好ましくは4,000kDa以下、更に好ましくは3,000kDa以下、更に好ましくは2,000kDa以下、更に好ましくは1,000kDa以下、更に好ましくは800kDa以下、更に好ましくは600kDa以下、更に好ましくは600kDa未満、更に好ましくは500kDa以下、更に好ましくは400kDa以下、更に好ましくは300kDa以下である。好ましくは10kDa以上、更に好ましくは30kDa以上、更に好ましくは50kDa以上、更に好ましくは70kDa以上、更に好ましくは90kDa以上、更に好ましくは100kDa以上、更に好ましくは120kDa以上、更に好ましくは140kDa以上、更に好ましくは160kDa以上、更に好ましくは180kDa以上である。例えば、約200kDaに等しい。好ましくは、当該両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、10乾燥重量%の当該デンプン化合物を含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で8,000mPa.s未満の粘度を有する。好ましくは8,000mPa.s以下、更に好ましくは6,000mPa.s以下、更に好ましくは4,000mPa.s以下、更に好ましくは2,000mPa.s以下、更に好ましくは1000mPa.s以下、更に好ましくは500mPa.s以下、更に好ましくは300mPa.s以下、更に好ましくは200mPa.s以下、更に好ましくは100mPa.s以下、更に好ましくは50mPa.s以下、更に好ましくは40mPa.s以下、更に好ましくは30mPa.s以下、更に好ましくは20mPa.s以下、更に好ましくは10mPa.s以下、更に好ましくは5mPa.s以下である。好ましくは1mPa.s以上、更に好ましくは2mPa.s以上である。例えば、2mPa.sに等しい。
【0143】
好ましくは、加水分解及び官能化されたデンプン化合物は、この実施形態において印刷可能な材料に使用される。
【0144】
好ましくは、この印刷可能な材料の加水分解及び官能化されたデンプン化合物の量は、1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは20%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは40%超、更に好ましくは45%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは99%以下、更に好ましくは90%未満、更に好ましくは80%未満、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは55%未満、更に好ましくは50%未満である。例えば、約49%に等しい。
【0145】
-Cアルキル基で官能化された加水分解されたデンプン化合物が印刷可能な材料に使用される場合、当該デンプン化合物の量は、好ましくは1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは70%以下、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは40%未満、更に好ましくは30%未満、更に好ましくは20%未満、更に好ましくは15%未満である。例えば、約12%に等しい。
【0146】
両親媒性の加水分解及び官能化されたデンプン化合物が印刷可能な材料に使用される場合、当該デンプン化合物の量は、好ましくは1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは20%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは35%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは70%以下、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは45%未満、更に好ましくは40%未満である。例えば、約37%に等しい。
【0147】
一般に、この印刷可能な材料の活性成分の量は、1%以上、更には2%以上、更には5%以上であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。それは、一般に99%以下、更には90%以下、更には70%以下、更には50%以下、更には40%以下、更には30%以下、更には20%以下、更には15%以下である。例えば、約10%である。
【0148】
好ましくは、当該印刷可能な材料は、冷水溶性及び/若しくはアルファ化架橋デンプン、冷水溶性及び/若しくはアルファ化ワキシーデンプン、又はそれらの混合物から選択される追加のデンプン化合物を更に含む。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本発明者らは、そのようなデンプンが、剤形の制御放出特性を、そのような放出特性が望ましい場合に改善していると考えている。
【0149】
好ましくは、冷水溶性であり、かつアルファ化されている。
【0150】
好ましくは、追加のデンプン化合物が、冷水溶性及び/又はアルファ化架橋デンプンである場合、それはジャガイモデンプンに由来する。それは好ましくは煮沸され、ドラム乾燥される。
【0151】
好ましくは、追加のデンプン化合物が冷水溶性及び/又はアルファ化架橋デンプンである場合、それはトリメタリン酸ナトリウムで架橋される。
【0152】
好ましくは、本開示による冷水溶性及び/又はアルファ化架橋デンプンは、CAS番号55963-33-2の生成物である。
【0153】
特に有用な冷水溶性及び/又はアルファ化架橋デンプンは、市販されている。例えば、本出願人によって市販されているPREGEFLO(登録商標)PI10について言及することができる。
【0154】
好ましくは、追加のデンプン化合物が冷水溶性及び/又はアルファ化ワキシーデンプンである場合、それはトウモロコシワキシーデンプンに由来する。
【0155】
好ましくは、この印刷可能な材料の当該追加のデンプン化合物の量は、1%以上、更に好ましくは2%超、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは15%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは99%以下、更に好ましくは90%未満、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは40%未満、更に好ましくは30%未満、更に好ましくは25%未満である。例えば、約20%に等しい。
【0156】
好ましくは、この印刷可能な材料は、微結晶セルロース(microcrystalline cellulose、MMC)を更に含む。
【0157】
好ましくは、当該MCCは、400μm以下、更に好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下、更に好ましくは60μm以下、例えば約50μmに等しい平均粒径を有する。
【0158】
好ましくは、この印刷可能な材料中の当該微結晶セルロースの量は、1%以上、更に好ましくは2%超、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは15%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。好ましくは99%以下、更に好ましくは90%未満、更に好ましくは80%未満、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは40%未満、更に好ましくは30%未満、更に好ましくは25%未満である。例えば、約20%に等しい。
【0159】
前述したように、本開示による印刷可能な材料は、3DPにおけるように、最終的には溶媒を添加して使用することができる。好ましくは、この実施形態の印刷可能な材料は、ゲル塊である。その場合、溶媒、好ましくは極性溶媒、好ましくは水を更に含有することが好ましい。
【0160】
この印刷可能な材料の溶媒の量は、好ましくは10%以上、更に好ましくは20%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは40%以上であり、当該パーセンテージは、当該ゲル塊の総重量に対する重量によって表される。好ましくは80%以下、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは50%未満である。例えば、約45%に等しい。
【0161】
好ましくは、この印刷可能な材料は、
(a)以下から構成される溶媒以外の1~100%の成分と、
-1~97%の本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物、特に加水分解されたヒドロキシプロピルデンプンと加水分解されたオクテニルコハク酸デンプンとの組み合わせ、
-1~97%の活性成分、
-1~97%の追加のデンプン化合物、
-1~97%の微結晶セルロース、
-0~96%の他の成分、
(b)0~99%の溶媒、好ましくは水と、から構成され、
当該パーセンテージ(a)及び(b)は、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、それらの合計は100%に等しい。
【0162】
好ましくは、この印刷可能な材料の他の成分の量は、90%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは30%未満、更に好ましくは10%未満、更に好ましくは5%未満、更に好ましくは1%未満であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、最終的な溶媒は除外される。更に好ましくは、本開示による印刷可能な材料は、そのような他の成分を含まない。
【0163】
本発明はまた、この実施形態に記載されるような、加水分解及び官能化されたデンプン化合物を含む印刷可能な材料を包含する。本発明はまた、好ましくは水溶性活性成分を含み、この印刷可能な材料から得られるか若しくは得ることができ、かつ/又は無視される最終的な溶媒を除いてこの印刷可能な材料の組成物を有する剤形、好ましくは調節放出剤形を包含する。それはまた、無視される最終的な溶媒を除いて、この印刷可能な材料から得られるか若しくは得ることができ、かつ/又はこの印刷可能な材料の組成物を有する剤形を包含し、当該剤形は細胞を更に含む。本発明はまた、この印刷可能な材料の3D印刷を含む、3D印刷又は3Dバイオプリンティングによる製品の製造のためのプロセスを包含する。好ましくは、3DPは、押出法によって、好ましくは冷間押出によって、好ましくはPAMによって行われる。
【0164】
本開示において、「~の間(between)」という表現は、記載された上限及び下限を古典的に含む。
【0165】
本開示において、成分の量は、一般的に、重量パーセンテージで表される。特に明記しない限り、これらの重量は、一般的に粉末形態である元の形態の成分の量である。これらの粉末状成分は、一般に、少量の水(%水分又は「乾燥損失」とも呼ばれる)を含む。その点に関して、本開示によるデンプン化合物は、一般に、15重量%以下、一般に3~12%の水を含有し、マンニトール及びソルビトールのような糖アルコールは、一般に、1%以下の水を含有する。これは、例えば10重量%のデンプン化合物に言及する場合、これは一般に乾燥重量(すなわち無水重量)で8.8~9.7%に相当することを意味する。
【0166】
反対に、本開示において、乾燥重量に言及される場合、このウェルは無水重量を指す。
【0167】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に示す実施例を読むことで明確に把握される。以下の実施例は、本発明を例示するものであり、限定するものではない。
【実施例
【0168】
A.材料
A.1.使用したデンプン化合物及びその特徴付け。
Mw測定。Mwは、以下の方法によって、多角度レーザー-光散乱(MALLS)及び屈折率(RI)検出器に取り付けられたサイズ-排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定した。デンプン化合物の試料をジメチルスルホキシド及び硝酸ナトリウム0.1 Mの混合物中で希釈した。100及び1000オングストロームの多孔度を有する2つのカラム(SUPREMA)を使用した。溶出は、0.5mL/分の流速で水性媒体中で行った。系を40℃の温度に維持した。
【0169】
粘度測定。測定は、5cmの1°コーンプレート形状(CP50)を有するレオメーター(Physica MCR301、Anton Paar)で行った。温度は、Peltierによって調節した。測定は、以下のように、10%乾燥デンプン化合物を含む水溶液について20℃で行った。20℃で1分平衡、20℃で3分で適用される0.006~1,000 s-1(log)のせん断速度。
【0170】
溶解度測定。250mlビーカーに、200mlの蒸留水を添加した。5グラム重量のデンプン化合物を添加し、混合物を15分間の磁気撹拌によって均質化した。得られた溶液/懸濁液を4,000rpmで10分間遠心分離した。25mLの上清を取り出し、晶析装置に導入し、水が蒸発するまで60℃のオーブンに入れた。次いで、それを103+C±2℃のオーブンに1時間入れた。残留物をデシケーターに入れて室温で冷却し、次いで、乾燥重量で溶解度を計算するために秤量した。
【0171】
使用した種々のデンプン質化合物の特徴を図1に示す。
【0172】
A.2.使用される他の成分
以下の他の成分を使用した:ソルビトール(NEOSORB(登録商標)100C、ROQUETTE)、マンニトール(PEARLITOL(登録商標)100SD、ROQUETTE);ステアリン酸(Stearic acid 50、SIGMA-ALDRICH)、ジプロフィリン(Shanghai Star)、イトラコナゾール(Shanghai Star)、架橋冷水溶性ジャガイモデンプン(PREGEFLO(登録商標)PI10、ROQUETTE)、約50μmの平均粒径を有する微結晶セルロース(MCC101、ROQUETTE)。
【0173】
B.FDMによる水溶性活性成分を含む即時放出錠剤の調製
本実施例において、本発明者らは、加水分解及び官能化されたデンプン化合物の使用を、特に押出法によるそれらの印刷適性について、特に即時放出剤形を印刷するそれらの能力について試験した。
【0174】
本発明者らは、表2に示すように、様々な製剤からフィラメントを調製した。
【0175】
【表1】
【0176】
この表において、パーセンテージは、製剤(フィラメントを調製するために使用される粉末混合物)の総重量に対する重量によって表される。
【0177】
成分を500μmの篩にかけ、40rpmでブレンドした。次いで、フィラメントを調製するために、ブレンドを、4つのゾーン(供給ゾーン、混合、混練及び出口から)からなる二軸スクリュー押出機に通した。各ゾーンの温度は120℃、160℃、160℃及び120℃であった。
【0178】
プリントヘッドBBコア(主に水溶性材料用)を備えたUltimaker S5プリンタを使用して180℃で印刷を行い、速度は4mm/sであり、印刷高さは0.065mmであった。印刷される錠剤は、直径10mm及び高さ5mmの円筒形錠剤であった。
【0179】
製剤F1から得られたフィラメントのみが、連続印刷を達成することができた。印刷には1錠剤あたり約1時間かかった。製剤F2、製剤F3、製剤F5及び製剤F6から得られたフィラメントは、脆すぎて印刷できなかった。製剤F4及び製剤F7及び製剤F8に関しては、フィラメントを得ることは不可能であった。製剤F4は押出可能ではなく、製剤F7で得られた押出物は液体であり、製剤F8で得られた押出物はフィラメントではなかった。
【0180】
製剤F1から得られた錠剤(少なくとも6個の錠剤)を、米国食品医薬品局(Dissolution Testing and Acceptance Criteria for Immediate-Release Solid Oral Dosage Form Drug Products Containing High Solubility Drug Substances;Guidance for Industry;August 2018,Biopharmaceutics)によって提供されるガイダンスに従って、USP装置2(Paddle method)を使用して、900mLの人工胃液媒体中で30分間、その即時放出特性について試験した。薬物濃度は、UV分光測定装置を使用して評価した。
【0181】
得られた放出プロファイルを図2に示す。これらの結果は、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物、特に加水分解エーテル化及び/又はエステル化デンプン化合物が、特にHMEを使用して、特にFDMによって、3DPにおいて使用され得ることを示す。これらの結果はまた、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物が、3DPによる即時放出剤形を調製するために使用され得ることを示す。
【0182】
C.実施例2-FDMによる、制御放出特性を有する水不溶性活性成分を含む溶解度増強錠剤の調製
本実施例において、本発明者らは、加水分解及び官能化されたデンプン化合物の使用を、それらの印刷適性について、特に水不溶性活性成分を含む剤形を印刷するそれらの能力について試験した。
【0183】
本発明者らは、表3に示される製剤からフィラメントを調製した。
【0184】
【表2】
【0185】
この表において、パーセンテージは、製剤(フィラメントを調製するために使用される粉末混合物)の総重量に対する重量によって表される。
【0186】
成分を500μmの篩にかけ、40rpmでブレンドした。フィラメントを調製するために、次いで、ブレンドを、4つのゾーン(供給ゾーン、混合、混練及び出口から)からなる二軸押出機に通した。各ゾーンの温度は120℃、160℃、160℃及び100℃であった。
【0187】
プリントヘッドBBコア(主に水溶性材料用)を備えたUltimaker S5プリンタを使用して180℃で印刷を行い、速度は4mm/sであり、印刷高さは0.065mmであった。印刷される錠剤は、直径10mm及び高さ5mmの円筒形錠剤であった。
【0188】
製剤F8から得られたフィラメントは、連続印刷を達成することができた。更に、本発明者らは、異なるバッチからのフィラメントを使用して印刷を行い、同様の放出パターン及び薬物含有量を示し、フィラメントの良好な含有量均一性を反映したことに留意されたい。
【0189】
製剤F8から得られた錠剤(少なくとも6個の錠剤)を、持続時間が8時間であったことを除いて、先の実施例Bに記載されたのと同じ様式でそれらの放出特性について試験した。HPLCを使用して、移動相として60:40の比のアセトニトリル及び水を用いて薬物濃度を評価した。
【0190】
比較のために、3DPによって得られたものと同じ形状を有する、直接圧縮による錠剤も製剤F8から調製した。本発明者らは、10mmフラットフェースベベルエッジ(flat face bevel edge、FFBE)錠剤パンチを使用し、粉末ブレンド(500mg)を約1000msの圧縮時間で4mmに圧縮した。機械(STYL’One錠剤機)から取り出したら、円筒形錠剤を測定し、高さ、直径及び重量をそれぞれ約5mm、10mm及び500mgで記録した。
【0191】
3D印刷された剤形及び標準的な直接圧縮によって得られた剤形で得られた放出プロファイルを図3に示す。これらの結果は、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物、特に加水分解エーテル化及び/又はエステル化デンプン化合物が、3DPによる水不溶性活性成分を含有する剤形を調製するためにも使用できることを示す。放出は、錠剤を作製するために標準的な圧縮プロセスが使用される場合と比較して、大幅に改善される。8時間後、3D印刷された錠剤については60乾燥重量%の活性成分が放出されたが、標準的な圧縮によって得られた錠剤では5%の放出が得られた。これらの結果は、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物、特に加水分解エーテル化及び/又はエステル化デンプン化合物が溶解度を高めた剤形の調製するため、及び/又は制御放出剤形を調製するために、有利に使用することができることを示す。
【0192】
実施例3-PAMによる水溶性活性成分を含む放出調節錠剤の調製
本実施例において、本発明者らは、加水分解及び官能化されたデンプン化合物の使用を、それらの印刷適性について、特に、水溶性活性成分を含む調節放出剤形を印刷するそれらの能力について試験した。これらの製剤からフィラメントを調製し、次いでPAMによって錠剤を調製した。このようにして得られた錠剤を、それらの放出プロファイルについて試験した。
【0193】
本発明者らは、表4に示すような配合を有する印刷可能な材料としてのゲル塊を調製した。
【0194】
【表3】
【0195】
この表において、パーセンテージは、製剤(ゲル塊を調製するための粉末混合物及びゲル塊)の総重量に対する重量によって表される。
【0196】
ゲル塊を以下のように調製した:粉末混合物を少なくとも10分間手動でブレンドした後、撹拌条件下で90℃の水に添加した。混合物を撹拌条件下で少なくとも4時間冷却した後、3mL印刷カートリッジに移した。使用したノズルは、0.41mm(21ゲージ)であった。印刷パターンは、直径10mm、高さ5mmの円筒であった。印刷パラメータは、以下の通りであった。圧力90~110kPa、速度1mm/s、層高さ0.41mm、第1層補償75%、プリンタBIoX。印刷密度を変化させた(すなわち、50%及び80%)。
【0197】
次いで、形成された錠剤を真空乾燥して、完全な乾燥を確実にした。
【0198】
製剤F9から得られた錠剤(少なくとも6個の錠剤)は、米国食品医薬品局(General Methods;32(2)Second Interim Revision Announcement:DISSOLUTION,<711>DISSOLUTION;11/21/2016)のガイダンスに従って、溶解方法A(pH移行法、2時間の胃液をシミュレートし、残りの10時間の間はシミュレートした腸液に変更)を使用して、放出調節特性について試験された。
【0199】
結果を図4に示す。30分後、50%密度で印刷された錠剤について、41乾燥重量%の活性成分が放出される。30分後、80%密度で印刷された錠剤について、29乾燥重量%の活性成分が放出される。
【0200】
これらの結果は、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物、特に加水分解エーテル化及び/又はエステル化デンプン化合物が、特に冷間押出を使用して、特にPAMによって、3DPにおいて使用され得ることを示す。これは、3Dバイオプリンティングに有用であり得る。これらの結果は、本開示による加水分解及び官能化されたデンプン化合物、特に加水分解エーテル化及び/又はエステル化デンプン化合物が、3DPによる調節放出剤形を調製するためにも使用できることを示す。印刷密度を変えることによって、錠剤の放出プロファイルを変えることが有利に可能である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】