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  • 特表-デンプンベースの印刷可能な材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】デンプンベースの印刷可能な材料
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20240621BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/22 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/26
A61K9/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579103
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2022069012
(87)【国際公開番号】W WO2023281031
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21305967.8
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21209140.9
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ルイ、ユアン-シアン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、キート-テン
(72)【発明者】
【氏名】ゴクヘール、ラジーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ホイスラー、オラフ
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA36
4C076AA38
4C076AA46
4C076AA54
4C076BB01
4C076DD38
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF31
(57)【要約】
本発明は、アルファ化架橋デンプンとヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)とを含む、ホットメルト押出ベースの3D印刷(HME-3DP)のための印刷可能な材料に関する。本発明はまた、当該印刷可能な材料を使用する3D印刷のためのプロセスに関する。本発明はまた、3D印刷によって当該印刷可能な材料から得られる製品、特に制御放出固体剤形に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト押出ベースの3D印刷(HME-3DP)のための、アルファ化架橋デンプンとヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)とを含む印刷可能な材料の、使用。
【請求項2】
前記印刷可能な材料のアルファ化架橋デンプン化合物:HPMCの重量比が、0.3:1超かつ3:1未満である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記印刷可能な材料が、活性成分を更に含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記印刷可能な材料が、可塑剤及び/又は糖アルコールを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、又はそれらの混合物から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記印刷可能な材料が、固着防止剤を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
剤形のHME-3DPのための、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記剤形が、固体剤形である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記剤形が、経口剤形である、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
前記剤形が、制御放出剤形である、請求項7~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
HME-3DPによる製品の製造のためのプロセスであって、アルファ化架橋デンプンとHPMCとを含む印刷可能な材料のホットメルト押出を含む、プロセス。
【請求項12】
アルファ化架橋デンプンとHPMCとを含む、HME-3DPのためのフィラメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷可能な材料、特に固体剤形の3D印刷に使用するための印刷可能な材料に関する。
【背景技術】
【0002】
3D印刷(3D printing、3DP)は、付加製造(additive manufacture、AM)としても知られており、プラスチック、金属、セラミック、又は更に生体細胞などの材料の連続的な層ごとの堆積によりデジタルモデルから3D物理的対象を構築するためのプロセスである。
【0003】
ヘルスケアに関連しない多くの用途だけでなく、3DPは、現在、経口薬、埋め込み型薬物送達デバイス、組織バイオプリンティング、プロテーゼなどのデバイス、及び更に食品のために使用されているか、又は研究中である。
【0004】
伝統的な薬物製造と比較した場合、3DPは、妥当な価格の、オンデマンドの、患者に合わせた薬物、及び/又は増加した製品複雑性を生産することができることが観察された。現在の薬物製品の形状及び内部構造は、現在の技術によって制限される。付加製造を使用する場合、これらの特徴は、想像できるほど複雑である可能性があり、これは、同じ剤形に埋め込まれた複数の薬物放出プロファイルに特に有用であることを証明することができる。目標のいくつかは、ドーナツ形、円筒形、又は穿孔経口製剤を印刷することによって、又は浸食若しくは拡散制御賦形剤の半径方向の勾配を使用することによって0次に近い放出を達成することによって、副作用を最小限に抑えることである。個別化された薬に対する要求が増加し、メガトレンドとなっているので、固有の、個々の、又は複数の薬物及び/若しくは複数回投与製剤を製造できることは、3DP医薬の他の重要な利点であり得る。
【0005】
この分野の研究は1990年代初期に開始されたが、FDAは、2015年以来、以下の単一の3D印刷された薬物のみを承認している:Spritam(登録商標)、結合剤噴射法3DPによって得られ、以下の賦形剤:コロイド状二酸化シリコン、グリセリン、マンニトール、微結晶性セルロース、ポリソルベート20、ポピドン、スクラロース、ブチルヒドロキシアニソール、天然及び人工のスペアミントフレーバーを有する口腔内分散性剤形。
【0006】
医薬品及び生体適合性材料を扱うように適合された3DP法は、以下のとおりである。押出印刷(特に、熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling、FDM)、圧力支援マイクロシリンジ(pressure assisted microsyringe、PAM)、及びより最近では、直接粉末押出)、結合剤噴射(Binder jetting、BJ)、材料噴射(Material jetting、MJ)、ステレオリソグラフィ(Stereolithography、SLA)、選択的レーザ焼結(Selective laser sintering、SLS)。3DP分類についての更なる情報については、参照文献であるIon-Bogdan Dumitrescu et al.「The age of pharmaceutical 3D printing technological and therapeutical implications of additive manufacturing.Farmacia,2018,Vol.66,3(365-389)」(特に表I)の出版を挙げることができる。
【0007】
押出印刷、具体的にはFDMは、3D印刷分野において最も広く使用されている方法であり、予熱されたポリマーフィラメント又は半固体が、xyz位置決めを使用してプラットフォーム上の正確な位置にノズルを通して押し出されることを特徴とする。第1の層が冷めると、次の層が適用される。印刷製品の形状に応じて、物体が完全に冷え、固化するまで構造的支持を提供するために異なる材料が必要とされる場合があるが、その後、それは除去することができる。PAM技術は、プリンタに非溶融粘性材料が供給されることを除いて同様である。これは、3Dバイオプリンティングに特に有用である。3Dバイオプリンティングは、生細胞を使用する方法を指す。生物医学的に製造された足場の主な利点は、生きている細胞の増殖であるが、薬学的観点から、それらはまた、薬剤送達のための供給源であり得、例として、抗菌剤溶出インプラントがある。最後に、最近開発された技術である直接粉末押出を挙げることができる。この技術によれば、印刷可能な粉末は、直接押し出され、したがってフィラメントの調製の必要性を回避する。
【0008】
一般的な3D印刷プロセスチェーンは、以下の工程を含む。
- 専用ソフトウェアを使用したCADモデルの作成又は調整、既存の物体又は医療画像の3Dスキャン。CADファイルは、3D構造の幾何形状及びサイズを記述する。
- プリンタで印刷できるSTL又はAMFファイルフォーマットのうちの1つへの変換。これらのファイルは、表面湾曲度に応じて、モデルの表面を三角形分割部分で記述する。三角形分割部分の数を増加させることは、印刷されたピースの解像度を増加させるであろう。
- 印刷された物体の崩壊を防止する支持材料の量及び位置も決定することができる専門ソフトウェアを使用して、3Dモデルを指定された厚さの層にスライスする。印刷された物体の充填密度も同様に指定されなければならず、中空構造については0%であり、固体充填部分については100%である。
- 実際の3Dプリンタにファイルを転送し、セットアップする。
- 3D製品の層ごとの製造。
- 時には、支持材料の乾燥又は除去及び廃棄並びに後処理が必要とされる。
【0009】
3DPは、薬学的分野における有望な技術を代表するが、利用可能な、環境に優しく、食用に適し、印刷に適した材料の種類は、依然として限られており、これが3D印刷技術の大規模な採用に対するボトルネックとなっている。FDMによる剤形の製造のための薬物担体として最も一般的に使用される薬学的グレードのポリマーは、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、及びポリ乳酸(polylactic acid、PLA)であり、これらは全て合成化石油ベースの材料である。
【0010】
現在の持続可能な経済への焦点と一致して、様々な製品の製造のために、これらの化石油ベースの材料の代わりに、天然由来の再生可能なバイオポリマーの探索が多大な注目を集めている。
【0011】
セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、デンプン、アルギン酸塩、アガロース、及びキトサンなどの様々な天然由来バイオポリマーは、それらの非毒性、食用性、高い存在量、生物活性(例えば、食物繊維として働く)、及び伝統的な食品又は医薬品製造における利用の長い歴史のために、食用剤形の3D印刷において利用される可能性を示す。
【0012】
しかしながら、そのような生体材料は、印刷可能である必要があり、満足のいく特性(満足のいく機械的及び/又は生物学的及び/又は薬物動態学的特性など)を有する最終製品を得ることを可能にする必要がある。用いられる3DP技術によって、加工性に対する要件が異なるので、問題は更に複雑である。
【0013】
既に探索されている再生可能な資源から得られる材料の中で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methyl cellulose、HPMC)を挙げることができ、これは、特に、様々な研究においてFDM 3DPで使用されている。
【0014】
しかしながら、印刷可能な材料を得るためには常に化石燃料ベースのポリマーの添加が必要であり、HPMCはそれ自体印刷可能ではなかった。
【0015】
全体として、全ての必要とされる特性を有する製品、特に固体剤形の製品を得ることを可能にするであろう、再生可能な原料に由来する印刷可能な材料に対する要求は満たされていない。
【0016】
(目的)
したがって、本発明の目的は、再生可能な資源から得られる成分を使用する印刷可能な材料及び3DPプロセスを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、操作者及び消費者の両方にとって安全である印刷可能な材料を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、取り扱いが容易である印刷可能な材料を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、満足のいく機械特性を有する、特に固体剤形の製品を得ることを可能にする印刷可能な組成物及び3DPプロセスを提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、満足のいく放出挙動及び/又は満足のいく薬物動態挙動を有する活性成分、特に固体剤形を含有する製品を得ることを可能にする印刷可能な材料及び3DPプロセスを提供することである。
【0021】
(発明の提示)
本発明者らは、HPMCをアルファ化架橋デンプン化合物と組み合わせることによって、HME-3DPによる良好な印刷適性を有する印刷可能な材料を得ることができることを見出した。特に、良好な機械的特性を有するフィラメントを得ることができ、これはFDM 3DPにおける使用に特に有用である。
【0022】
以下の本明細書中の実施例から明らかであるように、それは、調節放出剤形、特に制御放出剤形を製剤化するために有利に使用することができる。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、まず、ホットメルト押出ベースの3D印刷(Hot Melt Extrusion-based 3D printing、HME-3DP)のための、アルファ化架橋デンプンとヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)とを含む印刷可能な材料の使用に関する。
【0024】
好ましくは、印刷可能な材料のアルファ化架橋デンプン化合物:HPMCの重量比は、0.3:1超かつ3:1未満である。
【0025】
好ましくは、当該印刷可能な材料は、活性成分を更に含む。
【0026】
好ましくは、当該印刷可能な材料は、可塑剤及び/又は糖アルコールを更に含む。好ましくは、当該糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、又はそれらの混合物から選択される。
【0027】
好ましくは、当該印刷可能な材料は、粘着防止剤を更に含む。
【0028】
好ましくは、当該使用は、剤形のHME-3DPのためのものである。好ましくは、当該剤形は、固体剤形である。好ましくは、当該剤形は、経口剤形である。好ましくは、当該剤形は、制御放出剤形である。
【0029】
本発明はまた、HME-3DPによる製品の製造のためのプロセスであって、アルファ化架橋デンプンとHPMCとを含む印刷可能な材料のホットメルト押出を含む、プロセスに関する。
【0030】
本発明はまた、アルファ化架橋デンプンとHPMCとを含む、HME-3DPのためのフィラメントに関する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】水溶性有効成分ジプロフィリンを含有する、本開示による、3D印刷された剤形の放出プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、第一に、ホットメルト押出ベースの3D印刷(HME-3DP)のための、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)とデンプン化合物とを含む印刷可能な材料の使用であって、当該デンプン化合物が、アルファ化及び架橋されている、使用に関する。
【0033】
「印刷可能な材料」という表現は、3DPプロセスにおいてそれ自体で、又は他の成分を添加して使用することができる材料を指す。言い換えれば、それは、3Dプリンタに供給するためのすぐに使用できる材料、又は3Dプリンタ用の供給物の調製に使用することができる材料であってもよい。本発明による印刷可能な材料は、好ましくは固体状態である。それは、好ましくは、粉末、顆粒、又はフィラメントである。印刷可能な粉末は、3DPにおける(直接粉末押出におけるように)粉末として使用され得るか、又は別の形態(顆粒、フィラメントなど)の印刷可能な材料の調製において使用され得る。好ましくは、本発明による印刷可能な材料は、粉末又はフィラメントであり、更に好ましくはフィラメントである。
【0034】
「デンプン化合物」という表現は、古典的には、デンプンから得られた物質を指す。「デンプン」という表現は、標準的には、当業者に公知の任意の技術によって、トウモロコシ、タピオカ、大麦などの任意の好適な植物素材から単離したデンプンを指すことについて、念頭に置かれたい。単離したデンプンは、典型的には、3重量%以下の不純物を含有する。当該パーセンテージは、単離したデンプンの総乾燥重量に対する不純物の乾燥重量で表されている。これらの不純物は、典型的には、タンパク質、コロイド状物質、及び繊維状残渣を含む。好適な植物素材としては、例えば、マメ科植物、穀物、及び塊茎が挙げられる。本開示によるデンプン化合物は、例えば、豆果(例えば、エンドウマメ)、穀類(例えば、トウモロコシ、コメ、コムギ、エンバク)、及び塊茎(例えば、ジャガイモ、タピオカ)を含む任意の好適な植物源に由来し得る。
【0035】
本開示によるアルファ化架橋デンプン化合物は、好ましくは、塊茎、好ましくはジャガイモに由来する。
【0036】
本開示によるアルファ化デンプン化合物は、架橋されている。それは好ましくは、メタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、アジペート、エピクロロヒドリンから、又はそれらの混合物から選択される化合物との架橋によって得ることができるか、又は得られる。それは好ましくは、メタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、又はそれらの混合物から、との架橋によって得ることができるか、又は得られる。それは、更に好ましくは、トリメタリン酸ナトリウムとの架橋によって得ることができるか、又は得られる。
【0037】
本開示による架橋デンプンのデンプン化合物はまた、アルファ化されている。アルファ化は、古典的には、デンプン化合物粒子が、偏光における光学顕微鏡下でもはや複屈折(結晶相の欠如)を示さないことを意味する。アルファ化は、一般に、複屈折デンプン又は複屈折デンプン化合物から、更なる乾燥(蒸解後及び/又は同時に)を伴う、水の存在下での熱処理(一般に50~90℃、特にデンプンの植物起源に応じる)(しばしば「蒸解」とも呼ばれる)を介して得ることができる。他の化学物質を加工助剤として使用してもよい。アルファ化は、例えば、ドラム乾燥によって行うことができる。その場合、デンプンは、ドラム乾燥工程の前又は最中に蒸解することができる。それはまた、蒸解され、噴霧乾燥され得る。それはまた、押出によって得ることができる。好ましくは、本開示による架橋デンプンのデンプン化合物は、蒸解及びドラム乾燥によってアルファ化される。
【0038】
好ましくは、本開示によるデンプン化合物は、10%以上の冷水溶解度を有し、当該パーセンテージは、デンプンの総重量に対する可溶性デンプンの乾燥重量で表される。好ましくは、この冷水溶解度は、20%以上、更に好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上である。この溶解度は、例えば、5グラムのデンプン化合物を200mLの蒸留水に入れることによって決定することができる。溶解した乾燥重量は、遠心分離及び上清の乾燥後に決定することができる。この溶解度は、例えば、実施例に開示される詳細なプロトコルに従って決定することができる。この冷水溶解度は一般に、100%未満、更には90%以下、更には80%以下、更には70%以下、更には60%以下、更には50%以下である。それは、例えば、約42%と等しい。
【0039】
本開示によるアルファ化架橋デンプン化合物は、好ましくは、10乾燥重量%の当該デンプン化合物を含む水溶液で測定して、20℃、100s-1のせん断速度で10mPa.sより高い水中粘度を有する。好ましくは、粘度は、5cmの1°コーンプレート形状を有するレオメーターで決定される。この粘度は、例えば、実施例に開示される詳細なプロトコルに従って決定することができる。好ましくは、当該粘度は、50mPa.s以上、更に好ましくは100mPa.s以上、更に好ましくは1,000mPa.s以上、更に好ましくは3,000mPa.s以上、更に好ましくは5,000mPa.s以上、更に好ましくは6,000mPa.s以上、更に好ましくは7,000mPa.s以上である。好ましくは、当該粘度は、15,000以下、更に好ましくは10,000mPa.s以下、更に好ましくは9,000mPa.s以下、更に好ましくは8,000mPa.s以下であり、それは、例えば、約7,000mPa.sと等しい。
【0040】
好ましい実施形態では、本開示によるアルファ化架橋デンプン化合物は、0~80重量%のアミロース含有量を有するデンプンに由来し、当該パーセンテージは、デンプンの総乾燥重量に対するアミロースの乾燥重量で表される。このアミロース含有量を、複合体を形成するためにアミロースによって吸収されたヨウ素の電位差分析によって、当業者が決定することができる。それは、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上である。それは、好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下である。それは、例えば、約20%と等しい。
【0041】
本開示によるアルファ化架橋デンプン化合物は、特に印刷可能な材料及びそれから得られた印刷された製品の安全性及び性能の観点から、所望の特性を妨げない限り、以前に曝された好ましいもの以外の化学的及び/又は物理的変性を経てもよい。しかしながら、この変性は、本発明において必須ではないとみられるので、本発明のアルファ化架橋デンプン化合物は、好ましくは更に変性させない。
【0042】
好ましくは、本開示によるアルファ化架橋デンプンは、2021年3月1日に施行されたFOOD CHEMICALS CODEXに準拠している。好ましくは、本開示によるアルファ化架橋デンプンは、2021年3月1日に施行された食品添加物に関するモノグラフJECFAに準拠している。好ましくは、本開示によるアルファ化架橋デンプンは、2021年3月1日に施行された連邦規則21 CFR§172.892の米国コードに準拠している。好ましくは、本開示によるアルファ化架橋デンプンは、2021年3月1日に施行された食品添加物に関する2012年3月9日のCommission Regulation(EU)nr.231/2012(2012年3月22日付けのOJ EC L-83/1)に準拠している。
【0043】
好ましくは、本開示によるアルファ化架橋デンプンは、CAS番号55963-33-2の製品である。
【0044】
特に有用なアルファ化架橋デンプンは、市販されている。例えば、本出願人によって市販されているPREGEFLO(登録商標)PI10を挙げることができる。
【0045】
好ましい実施形態では、本開示による印刷可能な材料のアルファ化架橋デンプン化合物の量は、1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは15%超、更に好ましくは20%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量で表される。それは、好ましくは90%以下、より好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、より好ましくは40%未満、より好ましくは35%未満、より好ましくは30%未満である。それは、例えば、約25%と等しい。
【0046】
本開示によるHPMCは、例えばK4M、K15M、K100Mから選択される任意の好適なグレードであってもよい。それは、好ましくはK4Mである。好ましくは、製品AFFINISOL(商標)HPMC HMEは除外される。
【0047】
好ましい実施形態では、本開示による印刷可能な材料のHPMCの量は、1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは15%超、更に好ましくは20%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量で表される。それは、好ましくは90%以下、更に好ましくは70%未満、更に好ましくは60%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは40%未満、更に好ましくは35%未満、更に好ましくは30%未満である。それは、例えば、約25%と等しい。
【0048】
好ましくは、本開示によるHPMCは、CAS番号9004-65-3の製品である。
【0049】
特に有用なHPMCは、市販されている。例えば、SHANDONGによって市販されているHPMC K4Mを挙げることができる。
【0050】
好ましくは、本開示による印刷可能な材料のアルファ化架橋デンプン化合物及びHPMCの量の合計は、1%以上、更に好ましくは5%超、更に好ましくは10%以上、更に好ましくは20%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは40%超、更に好ましくは45%以上、更に好ましくは45%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量で表される。それは、好ましくは99%以下、より好ましくは90%未満、より好ましくは70%未満、より好ましくは75%未満、より好ましくは60%未満、より好ましくは55%以下、より好ましくは55%未満である。それは、例えば、約50%と等しい。
【0051】
好ましくは、本開示による印刷可能な材料のアルファ化架橋デンプン化合物:HPMCは、0.3:1超かつ3:1未満である。それは、好ましくは0.4:1以上、更に好ましくは0.5:1以上、更に好ましくは0.6:1以上、更に好ましくは0.7:1以上、更に好ましくは0.8:1以上、更に好ましくは0.9:1超である。それは、好ましくは2.5:1以下、更に好ましくは2:1以下、更に好ましくは1.8:1以下、更に好ましくは1.6:1以下、更に好ましくは1.4:1以下、更に好ましくは1.2:1以下である。それは、例えば、約1:1と等しい。
【0052】
一般に、本開示による印刷可能な材料は、本開示によるアルファ化架橋デンプン化合物及びHPMC以外の他の成分を更に含む。そのような他の成分の例は、活性成分、糖類、糖アルコール、着色剤、香味料、潤滑剤、他のデンプン、及びデンプン化合物である。他の例は、ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロースヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropylcellulose、HPC)、エチルセルロース(ethyl cellulose、EC)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methylcellulose acetate succinate、HPMCAS)、ポリビニルピロリドンシグマ(PVP)、クロスポビドン、微結晶セルロース(microcrystalline cellulose、MCC)、Carbopol(登録商標)794、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、Eudragit(登録商標)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、クエン酸トリエチル、リン酸三カルシウム、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、Soluplus(登録商標)、Kollidon(登録商標)、Kollicoat(登録商標)、Polyox(商標)のような、3D印刷、特にFDMで古典的に使用される賦形剤である。しかし、PLA、PVP、クロスポビドン、Carbopol(登録商標)794、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、Eudragit(登録商標)、PCL、クエン酸トリエチル、リン酸三カルシウム、PVA、Soluplus(登録商標)、Kollidon(登録商標)、Kollicoat(登録商標)、又はPolyox(商標)などの化石燃料ベースの賦形剤の使用は、好ましくは除外される。
【0053】
好ましくは、本開示による印刷可能な材料は、活性成分を更に含む。本開示による活性成分には、非医薬品及び医薬品が含まれる。「活性」という表現は、古典的には、薬学的、獣医学的、食品、栄養補助食品、化粧品、又は農薬の対象となる任意の物質を指す。好ましくは、本開示による活性成分は、薬学的、栄養補助食品、化粧品、又は獣医学的活性成分である。薬学的成分は、特にそれが薬学的活性成分である場合、いわゆる小分子から選択されてもよいが、また、例えば、タンパク質、核酸(DNA又はRNAに由来するものなど)、細胞、又はウイルスに基づく、又はそれらに由来する活性物質の場合のように、いわゆる「生物学的」活性成分から選択されてもよい。好ましくは、本開示の有効成分は、ジプロフィリンである。
【0054】
本開示による活性成分は、水に非常に可溶性であるか、易溶性であるか、水に可溶性であるか、水に難溶性であるか、水に溶けにくいか、水に非常に溶けにくいか、又は水に実質的に不溶性であり得る。この水への溶解度は、例えば、The International Pharmacopeiaの第9版(2019)、セクション「General Notice,Solubility」において十分に定義されている。本開示において、「水不溶性」という表現は、古典的には、水に難溶性から実質的に水に不溶性である活性成分を指す。本開示において、「水溶性」という表現は、古典的には、水に可溶性から水に非常に可溶性である活性成分を指す。
【0055】
好ましくは、本発明による有効成分は水溶性であり、更に好ましくは易溶性、又は水に非常に可溶性である。それは、好ましくはジプロフィリンであり、これは易溶性である。
【0056】
一般に、印刷可能な組成物の活性成分の量は、1%以上、更には2%以上、更には5%以上、更には10%以上、更には15%以上であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量で表される。それは一般に、99%以下、更には90%以下、更には70%以下、更には50%以下、更には40%以下、更には30%以下、更には20%以下、更には25%以下である。それは、例えば、約20%と等しい。
【0057】
好ましくは、本開示による印刷可能な材料は、糖アルコール又は可塑剤を更に含む。本発明による可塑剤及び糖アルコールは、好ましくは、グリセロール、ソルビトール、ソルビトール無水物、マルチトール、マンニトール、キシリトール、400~10000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールステアレート、プロピレングリコール、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、ポリソルベート、アセチル化モノグリセリド、乳酸エステル、脂肪酸及びエトキシル化されたそれらの塩若しくは誘導体、例えば特にステアリン酸、フタレート、エチルセバケート、ブチルセバケート、ミグリオール、グリセロールトリアセテート、流動パラフィン、レシチン、カルナウバワックス、水素化ヒマシ油、尿素から、又はそれらの混合物から選択される。それは、好ましくは糖アルコールから、好ましくはマンニトール、ソルビトールから、又はそれらの混合物から選択される。
【0058】
好ましくは、当該印刷可能な材料中の可塑剤又は糖アルコールの量は、1%以上、好ましくは5%超、更に好ましくは8%超、更に好ましくは10%超、更に好ましくは15%超、更に好ましくは18%超、更に好ましくは20%以上、更に好ましくは23%以上、更に好ましくは23%超であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量で表される。それは、好ましくは80%以下、より好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満、より好ましくは48%未満、より好ましくは38%未満、より好ましくは35%未満、より好ましくは33%以下、より好ましくは33%未満である。
【0059】
マンニトール及びソルビトールの混合物が使用される場合、ソルビトール:マンニトールの重量比は、好ましくは1:1超、更に好ましくは2:1以上である。それは、好ましくは6:1以上、更に好ましくは5:1以下、更に好ましくは4:1以下である。それは、例えば約3:1である。
【0060】
好ましくは、この印刷可能な材料は、好ましくは溶融可能な熱潤滑剤から、例えば脂肪酸の金属塩、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル炭化水素から、又はそれらの混合物から選択される、固着防止剤を更に含む。それは、例えば、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ヘキサデカン、オクタデカン、フマル酸ステアリルナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸から、又はそれらの混合物から選択される。それは、好ましくは、ステアリン酸を含む。それは、更に好ましくはステアリン酸単独である。好ましくは、固着防止剤の量は、0.5~5%、好ましくは1~4%、好ましくは1~3%であり、例えば、約2%と等しく、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量で表される。
【0061】
好ましくは、本発明による印刷可能な材料は、
- 1~96.5%のアルファ化架橋デンプン化合物と、
- 1~96.5%のHPMCと、
- 1~96.5%の活性成分と、
- 1~80%の可塑剤又は糖アルコール、好ましくはマンニトール及びソルビトールの混合物と、
- 0.5~5%の固着防止剤と、
- 0~95.5%の他の成分と、で構成され、
当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量によって表され、それらの合計は100%に等しい。
【0062】
好ましくは、この印刷可能な材料の他の成分の量は、90%未満、更に好ましくは50%未満、更に好ましくは30%未満、更に好ましくは10%未満、更に好ましくは5%未満、更に好ましくは1%未満であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量で表される。更に好ましくは、この印刷可能な材料は、そのような他の成分を含まない。
【0063】
好ましくは、印刷可能な材料中の再生可能な原料から得られる成分の量は、50%以上であり、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の総重量に対する重量で表される。再生可能な原料から得られるそのような成分は、特に、化石燃料から得られない。更に好ましくは、この量は、60%以上、更に好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは100%に等しい。再生可能な原料から得ることができる成分の例は、デンプン化合物(本開示によるアルファ化架橋デンプン化合物を含む)、セルロース誘導体(本開示によるHPMCを含む)、糖、及び糖アルコールである。再生可能な原料から得ることができない成分の例は、PLA、PVP、クロスポビドン、Carbopol(登録商標)794、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、Eudragit(登録商標)、PCL、クエン酸トリエチル、リン酸三カルシウム、PVA、Soluplus(登録商標)、Kollidon(登録商標)、Kollicoat(登録商標)、又はPolyox(商標)である。
【0064】
好ましくは、活性成分が存在する場合、本開示による印刷可能な材料の賦形剤は、少なくとも50%の再生可能な原料から得られる、特に化石燃料から得られない成分で構成され、当該パーセンテージは、当該印刷可能な材料の賦形剤の総重量に対する重量で表される。更に好ましくは、本開示による印刷可能な材料の賦形剤は、少なくとも60重量%、更に好ましくは少なくとも70重量%、更に好ましくは少なくとも80重量%、更に好ましくは少なくとも90重量%、更に好ましくは100重量%の再生可能な原料から得られる成分で構成される。
【0065】
本開示による印刷された製品又は印刷される製品は、典型的には、固体又は半固体製品であり、好ましくは経口投与を意図したものであり、例えば、錠剤、ゲル、フィルム、カプレット、ソフトゲル、ハードカプセルである。それはまた、薬物装填医療デバイスであり得る。好ましい実施形態では、本開示による印刷された製品又は印刷される製品は、固形製品、典型的には錠剤である。好ましい実施形態では、本発明による印刷された製品は、ゲル及び/又はフィルムではない。本発明による印刷された製品は、例えば、薬学的、獣医学的、栄養補助食品、食品、化粧品、又は農薬の対象となり得る。それは、ヒト又は動物用であり得る。それは、好ましくは、薬学的、獣医学的、栄養補助食品、又は化粧品製品である。好ましい実施形態では、本開示による印刷された製品又は印刷される製品は、剤形(すなわち、活性成分を含む製品)、好ましくは固体剤形、好ましくは経口固体剤形、特に薬学的経口固体剤形である。
【0066】
好ましくは、本開示による印刷された製品は、調節放出剤形、好ましくは制御放出剤形である。好ましくは、剤形の調節又は制御放出特性は、US FDA(General Methods;32(2)Second Interim Revision Announcement:DISSOLUTION,<711>DISSOLUTION;11/21/2016)によって提供されるガイダンスに従って、溶解方法A(pH移行法、2時間の人工胃液、次いで残りの10時間の人工腸液への変更)を使用して決定される。調節放出剤形の場合、即時放出剤形とは対照的に、乾燥重量で80%以下の活性成分が30分で放出されるべきである。制御放出剤形の場合、乾燥重量で80%以下の活性成分が8時間で溶解すべきである。もちろん、活性成分は、依然として放出されなければならない。したがって、好ましくは、乾燥重量で少なくとも20%の活性成分が8時間で溶解すべきである。更に好ましくは、本開示による制御放出剤形は、乾燥重量で少なくとも30%、更に好ましくは少なくとも40%、更に好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも60%、更に好ましくは少なくとも80%の活性成分が放出される。
【0067】
HME-3DPは、当業者に周知の任意の好適な方法によって行われ得る。好ましくは、3D印刷は、熱溶解積層法(FDM)又は直接粉末押出から選択される方法、好ましくはFDMによって実行される。
【0068】
本発明はまた、アルファ化架橋デンプン化合物とHPMCとを含む、HME-3DPによって得られた、又は得ることができる製品を包含し、当該デンプン化合物及びHPMCは、好ましくは本明細書において前述したとおりである。好ましくは、当該印刷された製品は、本明細書において前述したとおりである。好ましくは、本開示の印刷された製品は、無視される、最終的に添加される溶媒、又は使用される成分の水分を除いて、印刷可能な材料について前述した組成を有する。
【0069】
本発明はまた、HME-3DPによる製品の製造のためのプロセスであって、先に定義したような印刷可能な材料のホットメルト押出を含む、プロセスを包含する。好ましくは、印刷された製品又は印刷される製品は、先に定義したとおりである。好ましくは、HME-3DPは、熱溶解積層法(FDM)又は直接粉末押出成形から選択される方法、好ましくはFDMによって行われる。
【0070】
本開示において、「~の間(between)」という表現は、古典的に、記載された上限及び下限を含む。
【0071】
本開示において、成分の量は、一般的に、重量パーセントで表される。特に明記しない限り、これらの重量は、一般的に粉末形態である、それらの元の形態の成分の量である。これらの粉末状成分は、一般に、少量の水(水分%又は「乾燥減量」とも呼ばれる)を含む。その点に関して、本開示によるデンプン化合物は、一般に15重量%以下、一般に5~10%の水を含有し、マンニトール及びソルビトールのような糖アルコールは、一般に1%以下の水を含有する。これは、例えばそれが10重量%のデンプン化合物に言及する場合、これは一般に、乾燥重量(すなわち無水重量)で9.0~9.5%に相当することを意味する。
【0072】
反対に、本開示において、量が乾燥重量で表される場合、無水重量が考慮される。
【0073】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に示す実施例を読むことで明確に把握される。以下の実施例は、本発明を例示するものであり、限定するものではない。
【実施例
【0074】
A.材料
A.1.使用したデンプン化合物及びその特徴付け
粘度測定。測定は、5cmの1°コーンプレート形状(CP50)を有するレオメーター(Physica MCR301、Anton Paar)で行った。温度は、Peltierによって調節した。測定は、以下のように、10%乾燥デンプン化合物を含む水溶液で、20℃で行った:20℃で1分平衡;20℃で、3分で適用される0.006~1,000s-1のせん断速度。
【0075】
溶解度測定。250mlのビーカーに、200mlの蒸留水を添加した。5グラム重量のデンプン化合物を添加し、混合物を15分間、磁気撹拌によって均質化した。得られた溶液/懸濁液を4,000rpmで10分間遠心分離した。25mLの上清を取り出し、晶析装置に導入し、水が蒸発するまで60℃のオーブンに入れた。次いで、それを103+C±2℃のオーブンに1時間入れた。残留物をデシケーターに入れて、室温で冷却し、次いで、乾燥重量で溶解度を計算するために秤量した。
【0076】
以下のデンプン化合物を使用した。6.0重量%の水分、42%の水への溶解度、及び7,090mPa.sの粘度(10%、20℃、100s-1)を有する、トリメタリン酸ナトリウムで架橋されたアルファ化架橋デンプン(PREGEFLO(登録商標)PI10、ROQUETTE)。
【0077】
A.2.使用される他の成分
以下の他の成分を使用した。HPMC K4M(SHANDONG)、約5重量%の水分を有する;ソルビトール(NEOSORB(登録商標)100C、ROQUETTE)、マンニトール(PEARLITOL(登録商標)100 SD、ROQUETTE)、ジプロフィリン(Shanghai Star)、ステアリン酸(ステアリン酸50、SIGMA-ALDRICH)、アルファ化されていない架橋ジャガイモデンプン(CLEARAM(登録商標)PI10)、HPC(SIGMA)。
【0078】
B.FDMによる水溶性活性成分を含む制御放出錠剤の調製
本実施例では、本発明者らは、HME-3DPについて、HPMCと組み合わせたアルファ化架橋デンプンの使用の影響を試験した。
【0079】
本発明者らは、表1に示すように、様々な配合物からフィラメントを調製した。
【0080】
【表1】
【0081】
この表において、パーセンテージは、印刷可能な材料(フィラメントを調製するために使用される粉末混合物)の総重量に対する重量で表される。
【0082】
成分を500μmの篩にかけ、40rpmでブレンドした。次いで、フィラメントを調製するために、ブレンドを、4つのゾーン(供給ゾーンから、混合、混練、及び出口)からなる二軸スクリュー押出機に通し、各ゾーンの温度は、120℃、160℃、160℃、及び120℃であった。
【0083】
プリントヘッドBBコア(主に水溶性材料用)を備えたUltimaker S5プリンタを使用して180℃で印刷を行い、速度は、4mm/秒であり、印刷高さは、0.065mmであった。印刷される錠剤は、直径10mm及び高さ5mmの円筒形錠剤であった。
【0084】
配合物F1から得られたフィラメントのみが、連続印刷を達成することができた。本開示によるデンプン化合物を含まない配合物F3は、押出可能でなく、その結果、フィラメントが形成されなかった。HPMCを含まない配合物F2は、フィラメントを得ることができたが、それらは、印刷するには脆すぎた。
【0085】
配合物F4については、フィラメントを得ることを可能にする最適プロファイルに到達するために、押出温度プロファイルを適合させた。しかしながら、構成成分が完全に融解する前であっても、褐変が生じた。第一に、フィラメントを調製する場合、ブレンドを、より高い温度で、4つのゾーン(供給ゾーンから、混合、混練、及び出口)からなる二軸スクリュー押出機に通し、各ゾーンの温度は、140℃、180℃、180℃、及び140℃であった。押し出されたフィラメントは、それらの表面上にまだ粉末残留物を有していたので、印刷に好適ではなかった。第二に、ブレンドを、以下の各ゾーンの温度で二軸スクリュー押出機に通した:140℃、180℃、180℃、及び160℃。押し出されたフィラメントは、柔らかすぎ、まだ未溶融の粉末を含有していたので、印刷には好適ではなかった。第三に、ブレンドを、以下の各ゾーンの温度で二軸スクリュー押出機に通した:160℃、180℃、180℃、及び140℃。押し出されたフィラメントは、脆すぎるので、まだ印刷に好適ではなかった。
【0086】
配合物F5については、フィラメントを得ることを可能にする最適プロファイルに到達するために、押出温度プロファイル及びスクリュー速度値を適合させた。第一に、フィラメントを調製する場合、ブレンドを、より高い温度で、4つのゾーン(供給ゾーンから、混合、混練、及び出口)からなる二軸スクリュー押出機に10rpmで通し、各ゾーンの温度は、120℃、170℃、170℃、及び125℃であった。しかしながら、フィラメントは、押出後にそれらの表面上に粉末残留物を有していた。第二に、フィラメントを調製する場合、ブレンドを、より高い温度で、4つのゾーン(供給ゾーン、混合、混練、及び出口から)からなる二軸スクリュー押出機に5rpmで通し、各ゾーンの温度は、140℃、175℃、175℃,及び140℃であった。しかしながら、それらは、押出後にそれらの表面上に粉末残留物をまだ有していた。
【0087】
配合物F6については、フィラメントを得ることを可能にする最適プロファイルに到達するために、押出温度プロファイルを適合させた。第一に、フィラメントを調製する場合、ブレンドを、より高い温度で、4つのゾーン(供給ゾーンから、混合、混練、及び出口)からなる二軸スクリュー押出機に通し、各ゾーンの温度は、120℃、160℃、140℃、及び110℃であった。押し出されたフィラメントは、柔らかすぎるので、まだ印刷に好適ではなかった。第二に、ブレンドを、以下の各ゾーンの温度で二軸スクリュー押出機に通した:120℃、140℃、140℃、及び110℃。押し出されたフィラメントは、柔らかすぎるので、やはり印刷に好適ではなかった。
【0088】
製剤F1から得られた錠剤(少なくとも6個の錠剤)を、US FDA(General Methods;32(2)Second Interim Revision Announcement:DISSOLUTION,<711>DISSOLUTION;11/21/2016)によって提供されるガイダンスに従って、溶解方法A(pH移行法、2時間の人工胃液、次いで残りの10時間の人工腸液への変更)を使用して、それらの制御放出特性について試験した。
【0089】
得られた放出プロフィールを図1に示す。乾燥重量で79%の活性成分が8時間で放出された。
【0090】
これらの結果はまず、本開示による組み合わせ(すなわち、アルファ化架橋デンプン化合物とHMPCとの組み合わせ)が印刷可能であることを示す。それは、良好な機械的特性を有するフィラメントを得ることを可能にする。それはまた、本開示による組み合わせが、制御放出剤形を製剤化するために有利に使用され得ることを示す。
【0091】
配合物1から得られた錠剤(少なくとも6錠)もまた、それらの安定性について試験した。3ヶ月の安定性試験は、2つの貯蔵条件(すなわち、25℃/60%相対湿度及び40℃/75%相対湿度)において、活性成分の放出プロファイルに関して著しい変化が観察されなかったことを示した。
図1
【国際調査報告】