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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04G 3/00 20060101AFI20240621BHJP
   G04C 3/10 20060101ALI20240621BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G04G3/00 B
G04G3/00 K
G04C3/10 C
H03H9/17 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579112
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022064905
(87)【国際公開番号】W WO2022268462
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021116555.5
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523233020
【氏名又は名称】リアライゼーション デサル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボンケ,マイケル
【テーマコード(参考)】
2F002
5J108
【Fターム(参考)】
2F002AB06
2F002CB02
2F002CB04
2F002CB11
2F002ED01
2F002ED02
5J108AA03
5J108BB08
5J108CC04
(57)【要約】
【要約】本発明は、刻時発生機構(10)および刻時発生機構(100)が配置されている時計ケース(11)を含む時計(100)、特に腕時計に関するものである。刻時発生機構(10)は刻時発生器(1)を含む。刻時発生器(1)は、圧電振動子(2)および電極(8)を含み、圧電振動子(2)は、長さ(111)、幅(112)、および高さ(113)がそれぞれ少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.5mmである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計(100)、特に腕時計であって、
刻時発生機構(10)と、前記刻時発生機構(10)を配置した時計ケース(11)とを備え、
前記刻時発生機構(10)は、刻時発生器(1)を含み、
前記刻時発生器(1)は、圧電振動子(2)および電極(8)を含み、
前記圧電振動子(2)の長さ(111)、幅(112)、および高さ(113)がそれぞれ少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.5mmである、時計(100)。
【請求項2】
前記時計(100)は透明領域(114)を有し、
前記圧電振動子(2)は、前記時計(100)の前記透明領域(114)を通して、前記圧電振動子(2)が見えるように前記時計(100)内に形成および配置されており、
これにより前記圧電振動子は時計(100)のジェムストーンとして機能する、ことを特徴とする、請求項1に記載の時計(100)。
【請求項3】
前記圧電振動子(2)は、パビリオン面(61)を含むパビリオン(60)を有し、前記パビリオン(60)内において光の二重全反射が生じるようパビリオン角度(611)が選択されている、
または、
前記圧電振動子(2)は、その底面に複数の面(62)を有し、前記複数の面(62)は、複数の突起(63)を形成し、前記複数の突起(63)は、波状の断面を形成するように配置され、各々の前記突起(63)の面(62)は互いに前記突起(63)内で光の二重全反射が生じるように選択された角度(612)で配置されている、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項4】
前記圧電振動子(2)は、L軸(501)、3つのTA軸(502)、および3つのTS軸(503)を有する天然のトルマリン振動子であり、
好ましくは、前記トルマリン振動子は、三方晶または六方晶の構造を有するトルマリン原結晶から形成される、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項5】
前記トルマリン振動子は、前記L軸(501)、TA軸(502)、もしくはTS軸(503)に垂直であるテーブル面(52)を含み、前記トルマリン振動子は、前記L軸(501)の方向への光の透過を好ましくは許容する、
または、
前記トルマリン振動子は、TA軸(502)またはTS軸(503)に垂直である前記テーブル面(52)を含み、前記トルマリン振動子は前記L軸(501)の方向への光の透過を好ましくは阻止する、ことを特徴とする、請求項4に記載の時計(100)。
【請求項6】
前記電極(8)は、前記L軸(501)に垂直である前記トルマリン振動子の面(4)に配置されている、ことを特徴とする、請求項4または5に記載の時計(100)。
【請求項7】
前記トルマリン振動子は、TS軸(503)またはTA軸(502)に向かって傾斜するパビリオン面(61)を有し、前記パビリオン面(61)の各面は、L軸(501)に平行に走る2つのエッジ(610)を含み、特にパビリオン角度(611)は、40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である、
または、
前記トルマリン振動子は、その底面に複数の面(62)を有し、前記複数の面(62)は、複数の突起(63)を形成し、前記複数の突起(63)は、波状の断面を形成するように配置され、各々の前記突起(63)の面(62)は、前記トルマリン振動子のテーブル面(52)に平行な平面に対して、40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である角度(612)を有する、ことを特徴とする、請求項6に記載の時計(100)。
【請求項8】
前記電極(8)は、前記TA軸(502)に垂直であり、L軸(501)に平行である前記トルマリン振動子の面(4)に配置されている、ことを特徴とする、請求項4または5に記載の時計(100)。
【請求項9】
前記電極(8)は、TS軸(503)に垂直であり、前記L軸(502)に平行である前記トルマリン振動子の面(4)に配置されている、ことを特徴とする、請求項4または5に記載の時計(100)。
【請求項10】
前記トルマリン振動子は、TA軸(502)に向かって傾斜するパビリオン面(61)を有し、
特にパビリオン角度(611)は40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である、ことを特徴とする、請求項9に記載の時計(100)。
【請求項11】
前記電極(8)は、前記トルマリン振動子の面(4)に配置されており、前記面(4)の各面は、L軸(501)に対して40度から50度の間の角度(400)、好ましくは45度であるエッジ(401)と、TA軸(502)もしくはTS軸(503)に平行であるエッジ(402)、とを有する、
および/または、
前記トルマリン振動子は、テーブル面を有し、前記テーブル面は、前記L軸(501)に対して40度から50度の間の角度であり、好ましくは45度であるエッジと、TA軸(502)またはTS軸(503)に平行であるエッジ、とを含む、
および/または、
前記トルマリン振動子は、前記圧電振動子のテーブル面の法線ベクトルに向かって傾斜するパビリオン面を有し、特にパビリオン角度は40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である、または前記圧電振動子は、各々の底面に、前記圧電振動子のテーブル面の法線ベクトルに向かって傾斜する複数の面を有し、前記複数の面は、複数の突起を形成し、突起は突起が波状の断面を形成するように配置されており、各突起の面はトルマリン振動子のテーブル面に平行な平面に対して角度であり、この角度は40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である、ことを特徴とする、請求項4に記載の時計(100)。
【請求項12】
前記圧電振動子は、三方晶と六方晶との間の構造を有するトルマリン原結晶から形成される天然のトルマリン振動子である、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の時計(100)。
【請求項13】
前記圧電振動子(2)はルベライトである、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の時計(100)。
【請求項14】
前記圧電振動子(2)は、その振動方向に振動周波数を有し、
前記振動周波数の値は、8のみまたは8と0のみを有し、特に前記振動周波数は8888Hz、88888Hz、888888Hz、8888888Hz、8kHz、88kHz、888kHz、または8888kHzであり、
前記圧電振動子は、好ましくは前記振動周波数が888888Hzまたは888kHzであり、長さ(111)、幅(112)、および高さ(113)が、各々8.88mmであり、重さが8.88カラットであるトルマリン振動子である、ことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の時計(100)。
【請求項15】
前記圧電振動子(2)は、その振動方向に振動周波数を有し、
前記振動周波数は、好ましくは1Hzまたは8Hzである所望の周波数を、複数回繰り返し半分にすることにより得られ、
前記時計は、好ましくは周波数分周器を含み、
前記周波数分周器は、前記刻時発生器の前記振動周波数を、好ましくは1Hzまたは8Hzの所望の周波数にするように設定されている、ことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の時計(100)。
【請求項16】
時計(100)は、さらに、前記圧電振動子を振動させるように設定された振動回路(115)を含み、
前記振動回路(115)は、好ましくは、電気信号によりその容量を設定することで設定する、前記電気信号によりトリマコンデンサの容量、特に好ましくは、容量ダイオードの容量を設定することで前記圧電振動子(2)の振動周波数を設定するための、前記トリマコンデンサ、特に好ましくは、前記容量ダイオードを含み、
制御ユニットは、前記刻時発生器(1)の温度および/または前記刻時発生器(1)の周囲の前記時計(100)の温度に応じて前記電気信号を設定するように設定されている、ことを特徴とする、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の時計(100)。
【請求項17】
前記時計は、さらに輪列を含み、
前記刻時発生機構(10)は、さらにメカトロ機構部(106)を含み、
前記メカトロ機構部(106)は、前記圧電振動子(2)の振動周波数に基づく有用信号を使用して作動することで、前記メカトロ機構部(106)は、直接または間接的に前記輪列(104)にクロック同期方式で係合し、
好ましくは、前記メカトロ機構部(106)は、間接的に前記輪列(104)に係合し、前記時計(100)は、前記輪列(104)に係合し前記メカトロ機構部(106)で駆動可能である脱進機(105)を含み、
特に、前記メカトロ機構部(106)は、好ましくは、磁気アーマチュア(107)および磁気コイル(108)を有し、前記有用信号を使用して前記磁気アーマチュア(107)を作動させるように設定されている、アクチュエータとして形成される、
または、
好ましくは、メカトロ機構部(106)は、ステッピングモータとして形成される、ことを特徴とする、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の時計(100)。
【請求項18】
前記刻時発生機構(10)は、前記圧電振動子(2)の振動周波数に基づく有用信号を生成する有用信号生成装置を含み、
前記有用信号生成装置は、好ましくは、前記刻時発生器(1)のクロック信号または前記刻時発生器(1)の前記クロック信号に基づく信号から生成されたクロック信号、を数える積算計を有し、
前記有用信号生成装置は、前記刻時発生器(1)のカウントされたクロック信号または前記刻時発生器(1)の前記クロック信号に基づく前記信号の前記クロック信号のカウント値が、所定のカウント値に等しいときに前記有用信号を生成するように設定されており、
制御ユニットは、好ましくは前記刻時発生器(1)の温度および/または前記刻時発生器(1)の周囲の前記時計(100)の温度に応じて所定のカウント値を補正するように設定されている、ことを特徴とする、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の時計(100)。
【請求項19】
前記電極(8)は、前記圧電振動子(2)に取り付けられている、または、前記刻時発生器(1)が電極ホルダ(7)を有する電極配置(9)を含み、前記電極(8)は、前記電極ホルダ(7)に取り付けられている、ことを特徴とする、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の時計(100)。
【請求項20】
時計(100)、特に腕時計の製造方法であって、
圧電振動子(2)および電極(8)を含む刻時発生器(1)を含み、前記圧電振動子(2)の長さ(111)、幅(112)、および高さ(113)がそれぞれ少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.5mmである、刻時発生機構(10)を提供するステップ、および
時計ケース(11)内に刻時発生機構(10)を配置するステップ、
を含むことを特徴とする、時計(100)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計、特に腕時計に関し、刻時発生機構を備えたものである。また、本発明は、そのような時計の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子が刻時発生器として使用されるクオーツ時計は、既知の技術から知られている。
【0003】
水晶発振の場合、通常はそれぞれが二つのフォーク片を有する音叉形状からなる水晶振動子のことを指す。このような水晶フォーク発振器のフォーク片は、それぞれが数十分の一ミリメートルの厚さを有する。稀なケースでは、水晶フォーク発振器は使用されず、同じく数十分の一ミリメートルまたはそれ以下の厚さの水晶板が用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水晶フォーク発振器では、音叉形状に成形された水晶部品は、通常、ガラス製の真空ベルに埋め込まれ、高品質のケースでは金属製の真空ソケットに埋め込まれる。水晶振動子の周囲を真空状態に置く主な理由は、周囲に空気やガスがあると水晶の振動過程を妨げる、またはより遅くするからである。水晶振動子の周囲の空気やガス圧が高いほど、空気による減衰が高く、振動が遅くなる。真空でなければ、これはまた、例えば水晶時計を持って山に行き、空気圧の変化により、水晶発振器の周波数、または時計の進み方が変化したりした場合、精度的な欠陥を招くことになる。
【0005】
既知の水晶振動子にとって、その他の重要な点は、いわゆる経年劣化の問題である。水晶発振器は通常、純粋な酸化ケイ素である合成「左旋性」水晶から製造される。外来原子の水晶を浸食する移動は、発振動作の変化、ひいては基準周波数の変化をもたらし、結果的に時計の刻時精度の低下につながる。特に、しばしば電極を水晶発振器に接着する際の接着剤の蒸発物質は、長期にわたって水晶振動子を劣化させる要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に記述するのは、時計、特に腕時計であり、刻時発生機構を含み、好ましくはその刻時発生機構が配置されている時計ケースを含む。刻時発生機構は、圧電振動子と電極を含む刻時発生器を含み、その刻時発生器は、好ましくは真空中に配置されず、および/または、外気にさらされるよう配置される。
【0007】
好ましくは、圧電振動子は、それぞれが少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.5mm、さらに好ましくは少なくとも3mm、特に好ましくは少なくとも5mmの長さ、幅、高さを有する。したがって、圧電振動子は、安定して振動することを可能にする固体質量を有する。特に、圧電振動子の振動の安定性は、真空下になければならないということなく確保される。この意味で、圧電振動子を収容するための真空ソケットまたは真空ベルは不要である。さらに、振動子の提案された寸法は、振動子が全くまたはほとんど劣化しないという利点を有する。したがって、圧電振動子は、正確に機能する周波数発振器の技術要件を満たし、したがって時計の刻時発生機構の刻時発生器としての機能を有する。さらに、圧電振動子は、そのひと際目立つ形状と大きさ、そして真空ソケットまたは真空ベルを排除することで時計の装飾要素として用いることができる。これらの理由から、異なる圧電振動子を刻時発生機構の刻時発生器に使用することができる。したがって、時計は個別化することができ、これにより時計に高品質な雰囲気を与える。さらに、圧電振動子は、その材料特性および圧電または光学特性に関してそれぞれの使用に応じて選択することができる。特に、天然または合成の水晶発振器、水晶の派生種(天然のアメジスト水晶またはシトリン水晶等)、天然のトルマリン結晶、または天然のスイスの岩石水晶が、時計の刻時発生機構の刻時発生器に使用することができる。
【0008】
圧電振動子の長さ、幅、および高さは、3次元座標系の第1軸、第2軸、および第3軸の方向に延び、ここで、第1軸、第2軸、および第3軸は互いに直交している。座標系は、好ましくは圧電振動子の頂点に配置される。
【0009】
本発明の範囲内では、長さ、幅、および高さは、圧電振動子の実際に振動する部分を指す。つまり、圧電振動子の長さ、幅、および高さは、その振動に関連した圧電振動子の寸法に対応している。例えば、音叉の形状をした圧電振動子の場合、フォーク片は振動子の実際の振動部である。つまりこれは、そのような圧電振動子の長さ、幅、および高さは、各フォーク片の長さ、幅、および高さに対応することを意味する。
【0010】
特に、本発明の範囲内で理解される圧電振動子の長さ、幅、または高さは、振動子の単一のエッジのそれぞれの寸法であり、振動子がそのエッジ間に自由空間が形成されるように形成されている場合、同じ方向に延びる振動子の2つのエッジの寸法の合計ではない。特に、本発明の範囲内で言うところの、振動子の長さ、幅、または高さは、振動子のエッジそれぞれの実際の寸法と理解すべきで、振動子がその2つの対向する側面間に自由空間を有するように形成されている場合の振動子全体の「見かけの寸法」ではない。例えば、音叉の形状をした圧電振動子で、その2つのフォーク片間の自由空間の幅を測定考慮した場合、圧電振動子の幅は、2つのフォーク片の幅の合計でも、一方のフォーク片の頂点から他方のフォーク片の頂点までの振動子の見かけの幅でもない。
【0011】
電極に電圧を印加することで、圧電振動子は振動させられる。このため、電極は圧電振動子の表面に適切に配置される。一つの選択としては、電極を圧電振動子の表面に取り付ける場合、特に材料的な結合方法、好ましくは接着することは、適切な方法と言える。発明の範囲内で「取り付けられる」が特に意味することは、電極が圧電振動子の表面に接続されることである。
【0012】
代替的な適切な選択肢としては、刻時発生器は電極ホルダを含むことができ、電極はその電極ホルダに取り付けられる構成にすることである。電極ホルダとその電極ホルダに取り付けられた電極は電極構造を構成する。この場合、電極構造は圧電振動子からみると、別の部品として理解される。電極は電極ホルダの表面に形成される。特に、電極は電極ホルダの表面に接続された個別の電流伝導体であってもよい。あるいは、電極ホルダの表面に電流伝導層が形成されることもある。
【0013】
電極ホルダは、圧電振動子の最大振動振幅、すなわち、振動子が物理的に最大に変形するときに、電極が形成されている電極ホルダの表面が圧電振動子もしくは電圧が印加される振動子表面に接触しているか、または、振動子もしくは振動子表面から離間して配置されるように形成されることが適切である。後者の場合、電極に電圧が印加されたときに、振動子の圧電振動を開始し継続することができるように、電極ホルダとの距離が十分に小さくなるよう電極ホルダを適切に形成しておくことが必要である。特に、振動子の体積を考慮する形で、電極ホルダは、電気軸に垂直な少なくとも一つの軸、または電気軸に平行な方向で、圧電振動子の変形を可能にするように形成される。電気軸は、特に、その表面に電圧が印加されて振動子の圧電振動が開始される圧電振動子の表面によって定義される。電極の寸法は、電圧が印加されなければならない圧電振動子の表面と、圧電振動によって拡大する軸の方向の電極が、完全に重なるように、特に適切に設定される。電極が配置された表面を含む電極ホルダの領域は、適宜弾性的に形成される。電極を含む別の電極配置を提供することは、電極が振動子に取り付けられていないため、圧電的に開始された振動子の振動が電極によって減衰されないという利点がある。
【0014】
電極ホルダは、好ましくは圧電振動子を保持するためのホルダとしても機能することができる。このため、電極ホルダは、圧電振動子を受け入れるもしくは保持するための、受け入れ領域もしくは保持領域を有することが好ましい。
【0015】
これを考慮に入れると、発明の範囲内で、「圧電振動子の表面に配置される」という記載が、特に電極との関連で簡潔に意味する点は、電極を圧電振動子の表面に接続すること(電極が圧電振動子に一体化される場合も含む)、および、圧電振動子から電極が離間して形成されることの両者が含まれる点である。
【0016】
正方形の場合、圧電振動子は全体として振動するように設定されている。つまり、圧電振動子の全体の体積が振動体として機能する。しかし、振動方向が反対側の面と平行でなく、むしろ角度を有する方向であった場合、その特定の位置では水晶振動は生じない。
【0017】
好ましくは、圧電振動子は立方体として形成することができる。本発明の範囲内で言う「立方体」という用語は、小さな偏差も含む立方体形状の意味で理解することが適切である。この点において、基本的に立方体の形を持つが、丸みを帯びたまたは面取りされたエッジを含む体は、本発明の範囲内では立方体と呼称する。特に、本発明の範囲内では、丸みを帯びたまたは面取りされたエッジを持つ立方体の体は、丸みを帯びたまたは面取りされた領域の高さが体の全体の高さの最大20%、好ましくは最大10%に相当する場合であっても、立方体の呼称を用いる。
【0018】
本発明の範囲内では、圧電振動子の長さ、幅、または高さは、圧電振動子の振動方向が、長さ、幅、または高さの方向に振動させる設定に応じて、厚さとして適宜特徴付けることもできる。
【0019】
好ましくは、時計にはシースルー領域があるとよい。この場合、圧電振動子は、時計のシースルー領域を介して圧電振動子が見えるように、時計内に形成および配置されているため、圧電振動子は時計のジェムストーン(宝石)としても機能する。代替的な構成としては、圧電振動子自体を好ましくはジェムストーンとして形成し、時計のシースルー領域を通じてそれが見えるように時計内に配置してもよい。したがって、圧電振動子は時計の刻時発生器として、同時に時計内の装飾用の石として機能をもたせることができる。
【0020】
本発明の範囲内では、「ジェムストーン」という用語は、特に半貴石または貴石で、(天然結晶ではない)面取りされた石と理解するのが適切である。ジェムストーンはクラウンおよび/またはパビリオンを適切に含む。本発明の範囲内では、クラウンは特にジェムストーンの領域における、テーブル面および/またはクラウン面を含む領域と理解される。それに対応するパビリオンは、本発明の範囲内では、特にジェムストーンの領域におけるパビリオン面および/またはテーパー領域を含む領域であると理解される。クラウンは好ましくは分離エッジによってパビリオンから分離されている。
【0021】
時計のシースルー領域は、好ましくは時計の文字盤の領域および/または時計ケースの領域(例えば裏蓋)および/または時計の風防に配置される。また、特に時計ケース上に形成されたカバーガラスとして配置される。例えば、裏蓋部に視窗が含まれている場合、または文字盤が省略されている場合、または文字盤が部分的にシースルー状態に形成されている場合、時計の観察者は、時計の風防と文字盤のシースルー領域を通じて振動子を見ることができ、また時計の裏側の視窗を通じて見ることもできる。シースルー領域は、文字盤の開口部として形成され、その開口部の位置に圧電振動子が配置されるようにすることで、文字盤が振動子を覆わない配置となる。しかし、シースルー領域は、特に文字盤が完全に省略される場合、いわゆるスケルトンウォッチと通常呼ばれる時計のように、文字盤の全領域を利用することもできる。または、シースルー領域は、特に裏蓋の視窗として、透明領域またはむしろ視窗として形成することができる。少なくとも部分的に透視可能な時計ケースの場合、時計の観察者は、時計ケースのシースルー領域を通じて振動子を直接見ることができる。
【0022】
有利には、圧電振動子は、パビリオン面を有するパビリオンを有することである。この場合、パビリオン内で光の二重全反射が行われるようにパビリオン角度が選択される。これにより、上方から振動子に入射する光が、上方から振動子を出射することが担保される。その結果、振動子の輝きを増加させることができる。この発明の構成では、圧電振動子がジェムストーンとして形成されることも理解されるべきである。発明の範囲内では、パビリオン角度は、パビリオン面が振動子のテーブル面に平行な平面に対して有する角度と理解されるべきである。この場合、パビリオン面は、テーブル面に向けて、または振動子のテーブル面に平行な平面に対して傾斜している。これは、テーブル面に垂直で、かつ振動子の該平行平面に平行なパビリオン面は、振動子のパビリオン角度を決定するにあたっては寄与しないことを意味する。言い換えれば、90度の角度は、振動子のパビリオン角度として理解することはできない。特に、パビリオン角度は、振動子のパビリオン面が(またはその面が交差する)テーブル面または当該平行平面に対して有する角度である。テーブル面に平行な平面は、テーブル面平面とも特徴付けることができる。
【0023】
また、圧電振動子は、その底面に、複数の突起を形成する複数の面を有することができる。突起は、突起が波状の断面を形成するように配置される。各突起の面は、各突起内で光の二重全反射が行われるように選択される角度で互いに対して傾斜している。その結果、上方から振動子に入射し突起に到達する光は、突起内で全反射され、再び振動子の上方に向けて出射することができる。これは、時計内の圧電振動子が、刻時発生器だけでなく、時計のジェムストーンとしても機能することを意味する。同時に、当該振動子は、複数の突起があることで、パビリオンを有する振動子よりも、高さ方向により小さく形成することができる。これは、圧電振動子が配置される腕時計が、他の腕時計との差別化において、より小型化が要求される場合に有利である。そこで、高い臨界角を有する材料からなる振動子、例えばトルマリンも、腕時計に用いることができる。トルマリンは、光を収集する上で、振動子が大きな表面積またはより大きなテーブル面が求められる場合に特に有利である。それ以外の場合、臨界角が高い材料から形成され、パビリオンを有する振動子の場合、振動子のパビリオンひいては振動子全体は必然的に大きな高さを有する必要がある。腕時計に臨界角が高い材料からなる振動子を使用する場合、臨界角は常に考慮されるべきである。なぜなら、さもなければ振動子の高さが高くなり過ぎて腕時計として許容されるスペースをはみ出してしまうからである。しかし、圧電振動子の底面が上記のような波状のパターンで作られている場合、振動子の厚さを実際に必要な大きさまで増加させることなく臨界角を維持することができる。したがって、パビリオンを有する振動子と同じ量の反射光を得ることができ、尚且つ、振動子を「フラット」に保つことができる。
【0024】
発明の範囲内では、臨界角はまた内面全反射の臨界角とも呼ばれ、境界面に光線が入射する最小の入射角(境界面に対する垂直線から測定した)を示し、その上で光線が境界面で全反射される。
【0025】
発明の範囲内で、圧電振動子の底面は、特に、振動子が時計に取り付けられた状態で、時計ケースに対向し、時計の風防からは離間した振動子の領域と理解されるべきである。それに対して、振動子の上面は、振動子が時計に取り付けられた状態で、時計ケースからは離間した状態で時計の風防に対向する振動子の領域と理解されるべきである。時計の針の上に配置される風防、および時計の裏側、すなわち裏蓋の視窗は、どちらも風防と理解されるべきである。
天然トルマリン振動子としての圧電振動子(刻時発生器)の形成
【0026】
発明の好適な構成によれば、刻時発生器の圧電振動子は、L軸、3つのTA軸、および3つのTS軸を有する天然トルマリン振動子である。したがって、本発明の時計は、合成水晶振動子を有する従来のクオーツ時計の精度を有しつつ、尚且つ、高品質な時計と認識される。さらに、トルマリンは、圧電振動子ひいては時計の設計において自由度をもたせた設計を可能にする興味深い光学的および圧電特性を有する。
【0027】
L軸、TA軸、およびTS軸は、基本的にトルマリン振動子が切り出されるトルマリン原結晶(原石)を参照する軸であることに注意すべきである。言い換えれば、これらの軸をもってトルマリン原結晶を説明する。しかし、これらの軸はトルマリン振動子にも存在する。したがって、発明の範囲内では、「トルマリン原結晶のL軸/TA軸/TS軸」という形式の表現は、「トルマリン振動子のL軸/TA軸/TS軸」という形式の表現と同視される。圧電極軸として、トルマリンのTA軸およびTS軸は、水晶結晶のY軸およびX軸に対応付けられる。
【0028】
また、トルマリン原結晶の圧電特性に関して、3つのTA軸は特に互いに等価特性を有する点に注意すべきである。それに対応して、3つのTS軸も、トルマリン原結晶の圧電特性に関して特に互いに等価特性を有する。
三方晶構造のトルマリン原結晶による天然トルマリン振動子としての圧電振動子(刻時発生器)の形成
【0029】
好ましくは、トルマリン振動子は、三方晶構造(原結晶の断面形状を考慮して)を有するトルマリン原結晶から形成することができる。つまり、この発明の態様において圧電振動子として使用されるトルマリン振動子は、三角形に結晶化したトルマリン原結晶から形成される。トルマリン原結晶が三方晶構造を有するという表現は、トルマリン原結晶が三方晶(三角形)の断面を有することを意味する。特に、トルマリン原結晶は、曲線状、特に凸状に曲がった三角形の側面を有する。
【0030】
上述したL軸は、トルマリンの結晶学的な長軸に対応し、これはまた光学軸とも呼ばれる。また、この軸はZ軸、また時にはC軸とも呼ばれる。長軸は、トルマリンの成長方向または結晶化方向を表す軸である。発明の範囲内では、結晶学的な長軸に垂直で、トルマリン原結晶の3つの面のうちの2つによって張られる角度を通るその軸を、TA軸(TA:三角形 - 角度)と特徴付ける。さらに、発明の範囲内では、結晶学的な長軸に垂直で、トルマリン原結晶の3つの面のうちの1つの基本的な方向にほぼ平行に走るその軸を、TS軸(TS:トルマリン側面)と特徴付ける。トルマリン原結晶は、三方晶系によって記述することができる。三方晶系の側面は、トルマリン原結晶の面に割り当てられた、またはトルマリン原結晶の面に追従する。したがって、結晶学的な長軸は、三方晶系の平面に垂直である。各TA軸は、結晶学的な長軸に垂直で、三方晶系の3つの側面のうちの2つに跨る角を中心を走る。各TS軸は、結晶学的な長軸に垂直で、三方晶系の3つの側面のうちの1つに平行に走る。言い換えれば、各TA軸は、三方晶系の一つの頂点を通る角度二等辺線に沿って走る軸であり、各TS軸は、三方晶系の一つの三角形側に平行に沿って走る軸である。L軸、3つのTS軸、および3つのTA軸は、圧電極軸である。
【0031】
振動方向のトルマリン振動子の振動周波数は、「F=Kx1000000/D」の式に従って通常計算されることに留意すべきである。ここで「F」はHzでの振動周波数、「K」はmm/sのパラメータ、「D」はmmでの各振動方向のトルマリン振動子の厚さである。
【0032】
天然のトルマリン振動子として形成された圧電振動子は、好ましくはテーブル面を有するのがよい。
【0033】
トルマリン振動子がL軸方向の光の透過を遮断する場合、テーブル面はTA軸またはTS軸に対して垂直であることが好ましい。
【0034】
トルマリン振動子は、TA軸およびTS軸方向、すなわちL軸に対して90度の方向で偏光フィルタとして機能する。L軸に対して垂直にトルマリン振動子に落ちる光は、そのようなトルマリン振動子を通過する際に偏光される。観察者のテーブル面に対する視線方向(テーブル面に対して垂直)は、この場合、L軸に対して垂直となる。
【0035】
トルマリンのほとんどの種類(例えば、ブラジルのエルバイト)は、L軸方向の光の透過をほぼ完全にまたは完全に遮断する。これは、L軸方向の光の透過が多くの場合、0%から5%に減少することを意味する。本発明の範囲内では、このトルマリン振動子のL軸は「光学的に閉じた」または「遮蔽」軸として特徴付けることができる。したがって、このトルマリン振動子では、圧電振動子のテーブル面がL軸に対して垂直でない場合が有利である。これは、上記の種類のトルマリンでは、テーブル面が観察者のテーブル面への視線方向(テーブル面に対して垂直)がL軸に平行でないように形成されている場合が有利であることを意味する。
【0036】
しかし、トルマリン振動子がL軸方向の光の透過を許す場合、テーブル面は好ましくはL軸、TA軸、またはTS軸に対して垂直であることが許される。
【0037】
本発明の範囲内では、「素子が、各軸に対する法線からプラスまたはマイナス5度、特殊な場合には最大10度の偏差を有する配置」も「軸に対して垂直」と特徴付けることができる。
六方晶構造のトルマリン原結晶による天然のトルマリン振動子としての圧電振動子(刻時発生器)の形成
【0038】
本発明のさらなる好適な構成によれば、圧電振動子は、六方晶構造(原結晶の断面形状に基づく)を有するトルマリン原結晶から形成された天然のトルマリン振動子であってもよい。六方晶構造(断面形状に基づく)の発生は、三方晶構造よりもはるかに稀である。六方晶構造を有するトルマリン結晶は、すべての天然トルマリンのうち10%未満である。六方晶構造は、この発明の態様では、六角形に結晶化した天然のトルマリン振動子が圧電振動子に使用されることを意味する。トルマリン原結晶が六方晶構造を有するという表現は、トルマリン原結晶が六角形の断面を有することを意味する。
【0039】
さらに、場合によっては、トルマリン振動子がL軸方向の光の透過を許す。言い換えれば、この場合、L軸の光の透過は全く遮断されない。そのような原結晶は、特定の(特にアフリカの)トルマリンの種類や特定の発見地点やトルマリン鉱山で見つかる。結果的に、トルマリンの六方晶構造は、L軸に沿った光の流れが遮断されないトルマリン種の中から非常によく見つかる。本発明の範囲内では、そのようなトルマリン振動子におけるL軸は「光学的に開いた」軸として特徴付けることができる。これは、例えば、トルマリン原結晶からL軸に対して垂直に切り取られたトルマリンスライスを通して色ガラスを見るように見ることができ、通常のトルマリン振動子(例えばブラジルからのもので、通常は三方晶構造)の場合とは異なり、視界が遮られないことを意味する。例えば、光学的に開いていて同時に六角形のトルマリン振動子は、特にピンク色のアフリカのトルマリンで、特にナイジェリアからのものである。
【0040】
六方晶構造のトルマリン原結晶から形成され、「光学的に開放」されたL軸を有するトルマリン振動子は、驚くべきことに圧電振動特性が非常に高いことがわかった。特に、このようなトルマリン振動子の振動は、三方晶構造のトルマリン原結晶から形成されたトルマリン振動子の振動よりもしばしば強い。特に、その圧電振動特性は、三方晶構造のトルマリン原結晶から作られたトルマリン振動子のそれよりも最大30%高いことができる。六方晶構造は、特に大きな立方体の振動子を形成する場合、三方晶構造のトルマリン原結晶を用いて形成する場合と比較して、研削時に削られる原石の重量がより少なくて済む。さらに、光学軸が開放され、六角形を有するトルマリン原結晶の加工は、形成過程、特に切断過程で、閉じたまたは遮蔽されたL軸による光学的な危険に注意を払う必要がないため、簡略化することができる。
【0041】
六方晶構造のトルマリン原結晶を材とする天然トルマリン振動子のL軸は、三方晶構造のトルマリン原結晶を材とする天然トルマリン振動子の場合と同様に、トルマリンの結晶学的な長軸を示し、これはトルマリンの成長方向または結晶化方向を表す。六方晶構造のトルマリン原結晶は、六方晶系を用いて説明することができる。六方晶系を参照すると、各TA軸は六方晶系において平行して対向する2つの面を通過し、各TS軸は六方晶系の2つの対角頂点を通過する。
【0042】
好ましくは、トルマリン振動子は、L軸、TA軸、またはTS軸に垂直なテーブル面を有する。
【0043】
L軸の方向への光の透過を可能にする代わりに、三方晶構造のトルマリン原結晶から形成したトルマリン振動子を用いることで、L軸の方向への光の透過を遮断することもできる。この場合、トルマリン振動子は、TA軸またはTS軸に垂直なテーブル面を有する。
三方晶または六方晶構造のトルマリン原結晶を材としL軸振動方向を特徴とする天然トルマリン振動子としての圧電振動子(刻時発生器)の形成
【0044】
好ましくは、電極は、L軸に垂直なトルマリン振動子の表面に配置するのがよい。ここでは、トルマリン振動子の圧電励起振動の振動方向はL軸に沿っている。
【0045】
上述した、振動方向におけるトルマリン振動子の厚さと振動周波数との間の関係を考慮すると、L軸に垂直なトルマリン振動子の面に電極を配置することは、トルマリン振動子の振動方向がL軸に沿っている場合、同じトルマリン振動子に対するパラメータ「K」の値が、L軸におけるトルマリン振動子の厚さにほとんどまたは全く依存しないという利点がある。言い換えれば、これは、パラメータ「K」の値が、同じトルマリン振動子がL軸で狭く切断された場合に、比較的一定であることを意味する。したがって、トルマリン振動子として形成された圧電振動子の調製を考慮すると、トルマリン振動子のL軸に沿った厚さの加工目標に対する偏差が、パラメータ「K」にとって影響がない、またはわずかな影響に留まるため、圧電振動子の振動周波数を、比較的正確に電極の配置されている2つの平行振動面間の距離に正比例させることができ、これによりかかる調整を簡略化することができる。L軸に沿った振動方向を有するトルマリン振動子の場合、パラメータ「K」は、トルマリンの個体差はあるにせよ通常3.85から3.50の間である。
【0046】
また、L軸に沿った方向のパラメータ「K」は、TA軸に沿ったトルマリン振動子の厚さと、TS軸に沿ったトルマリン振動子の厚さとにも比較的独立したパラメータであることに注意すべきである。つまり、トルマリン振動子が、L軸の方向において、一定の厚さ、一定の振動周波数、および一定の「K」値を有していれば、トルマリン振動子の厚さがTA軸またはTS軸の方向で減少したとしても、振動周波数と「K」パラメータの値はL軸の方向では大幅には変化しない。TA軸および/またはTS軸の方向でのトルマリン振動子の厚さの減少に伴う振動周波数およびパラメータ「K」の値の変化は、厚さの減少程度に応じて、L軸の方向で最大1%から2%程度となる。
【0047】
刻時発生器が、天然トルマリン振動子として形成された圧電振動子と、L軸に垂直なトルマリン振動子の表面に配置された電極を含む場合、トルマリン振動子は、好ましくは、TS軸またはTA軸に向かって傾斜し、L軸に平行な2つのエッジをそれぞれ有するパビリオン面を有する。言い換えれば、入射光を反射する傾斜したパビリオン面は、L軸に向かって傾斜していないが、TA軸またはTS軸に向かって傾斜し、同時に2つのエッジがL軸に平行に走る。パビリオン面がTS軸の方向に傾斜している場合、視線の方向はTS軸と平行になるようにし、他方、パビリオン面がTA軸の方向に傾斜している場合は、視線の方向をTA軸と平行になるようにするとよい。これにより、トルマリン振動子に入射する光がパビリオン面に吸収されることを避けることができる。これは常に、L軸が光学的に開放されていない場合に発生する。
【0048】
好ましくは、パビリオン角度は40度から50度の間であり、最低42度あることがより好ましい。42度のパビリオン角度は、トルマリンの臨界角に対応する。これにより、トルマリン振動子内で光の全反射を実現することができる。
【0049】
パビリオン面がTA軸またはTS軸に向かって傾斜しているという表現は、パビリオン面がTA軸またはTS軸の方向に傾斜していることと同じ意味である。特に、これは、パビリオン面とTA軸およびTS軸によって定義される平面との交点を通る線が、TA軸またはTS軸上で交わることを意味する。特に、パビリオン面は、L軸に平行な共通のエッジを有する。
【0050】
代替的に、刻時発生器が天然トルマリン振動子として形成された圧電振動子と、L軸に垂直なトルマリン振動子の表面に配置された電極を含む場合、圧電振動子はその底面に複数の突起を形成する複数の面を有し、そのことは有利となる。突起は、突起が波状の断面を形成するように配置される。それぞれの突起の面は、振動子のテーブル面に平行な平面に対して一定の角度を持ち、その角度は40度から50度の間である。さらに、その角度は少なくとも42度とすることが好ましい。42度の角度であれば、それぞれの突起内で光の二重全反射が発生する。
【0051】
より好ましくは、各突起がトルマリン振動子のL軸に沿った方向に延びるとよい。言い換えれば、この場合、それらの突起はトルマリンのL軸に平行に配置される。
【0052】
また、トルマリン振動子のテーブル面はTA軸に垂直であることが好ましい。ここでは、突起はTS軸に垂直に配置される。
【0053】
あるいは、トルマリン振動子のテーブル面をTS軸に垂直にすることもできる。この場合、突起はTA軸に垂直に配置される。
【0054】
特に、三方晶構造のトルマリン原結晶からのトルマリン振動子で、尚且つ、L軸に平行な方向で光を遮断する類のものであった場合、先述したトルマリン振動子の構成は、トルマリン振動子を時計のジェムストーンとしても利用できるという利点がある。テーブル面がL軸に垂直であった場合、テーブル面は不透明になり、その下側に配置された突起は暗く見える。面がL軸に向かって傾斜していた場合、暗部となるL軸は振動子へと反射される。
三方晶または六方晶構造のトルマリン原結晶を材としTA軸振動方向を特徴とする天然トルマリン振動子としての圧電振動子(刻時発生器)の形成
【0055】
好ましくは、電極はトルマリン振動子の表面に配置し、これらの表面はTA軸に垂直で、L軸に平行に走るよう配置するのがよい。この場合、トルマリン振動子の圧電励起振動の振動方向はTA軸に沿っている。ここでは電極はさらにTS軸に平行であると好ましい。三方晶構造のトルマリン原結晶を材とするトルマリン振動子の場合、電極は三方晶系の二等分線に平行で、L軸に平行に形成される。
【0056】
TA軸に沿った方向は、非常に実用的で、加工しやすい方向である点が特徴である。TA軸方向の場合、三方晶系のトルマリン原結晶では、正しい面を得るためにトルマリンをどのように切るべきかを即座に認識可能な2つの明確な基準が常に存在する。まず、丸みを帯びた三角形の面の中心に面を簡単に配置することができる。一方、この三角形の面に対して反対側にエッジがあり、これは三方晶系の平面上の三方晶系の各点を表す。したがって、長い調査を経ずに、トルマリン原結晶上に面を迅速かつ正確に配置することができ、これは周波数の安定化にとって非常に重要である。
【0057】
さらに、トルマリン振動子はL軸よりもTA軸に沿って、より強い圧電振動特性を有する。
【0058】
振動子を計算する先述した式のTA軸方向のパラメータ「K」は、トルマリン振動子のTA軸方向の厚さに依存することに注意すべきである。特に、驚くべきことに、トルマリン振動子のTA軸方向の厚さが減少した場合、パラメータ「K」の値は増加しない、または非常にわずかにしか増加しない。
【0059】
このトルマリン振動子の振る舞いを数値的にも表現するために、典型的なブラジル産トルマリン振動子のTA軸方向のパラメータ「K」の例示値と、トルマリン振動子のTA軸方向の厚さに依存する振動周波数の対応する値を以下の表に例示する。表からわかるように、トルマリン振動子の厚さがTA軸方向に減少すると、このトルマリン振動子のパラメータ「K」の値は減少する。しかし、この場合、トルマリン振動子のTA軸方向の厚さの減少に伴うパラメータ「K」の値の減少はわずかである。これは、振動方向がTA軸に沿った、三方晶または六方晶構造のトルマリン原結晶からの他のトルマリン振動子にも適用できる。
【0060】
【表1】
【0061】
また、TA軸方向のパラメータ「K」の値は、L軸方向のそれよりも小さいことに注意すべきである。
三方晶または六方晶構造のトルマリン原結晶を材としTS軸振動方向を特徴とする天然トルマリン振動子としての圧電振動子(刻時発生器)の形成
【0062】
好ましくは、電極はトルマリン振動子の表面に配置することができ、これらの表面はTS軸に対して垂直で、L軸に平行となるよう配置するとよい。この場合、トルマリン振動子の圧電励起振動の振動方向はTS軸に沿っている。さらに、電極はTA軸に平行に配置されるとよい。
【0063】
TS軸に沿った振動方向は有利である。なぜなら、TS軸方向の圧電振動子は最大の圧電振動特性を有し、しかも切削廃棄量も最小で済むからである。さらに、TS軸方向のパラメータ「K」の値は、L軸方向またはTA軸方向のそれと比較して最小である。
【0064】
TS軸方向の振動子の高い圧電振動特性は、この軸方向で振動子がより強く振動することを意味する。これは長期的に基本的な重要性を持つ。これは、振動子がより容易に、そしてより強く振動するとき、それを振動させるために必要な電流が少なくて済むからである。振動子を振動させるように設定された発振回路は、この目的のために必要とされる負荷は少なくて済む。電力を節約するということは、環境発電的観点からみると、時計を電池なしで作動させたり、時計が電池で作動させる場合でも、電池寿命を大幅に長くするなど、消費電力を少なくする必要がある。
【0065】
切削廃棄物の観点から見ると、トルマリンの原結晶から得られるトルマリン振動子の振動方向がTS軸に沿っている場合、特にその原石の重量と研削後の重量の比率は約2:1となる。一方、トルマリン振動子の残る他の振動方向については、原石の重量と研削後の重量の比率は少なくとも5:1、あるいはさらに不利な場合もある。したがって、トルマリン振動子の振動方向がTS軸に沿っていることは大きな経済的利点をもたらす。
【0066】
パラメータ「K」の低い値は一番重要である。なぜなら、この値は高周波数、例えば888888 Hzの周波数などでは、最大2.0まで下がるからである。したがって、厚さが約2 mmまたはそれ以下の場合、研削されたトルマリン振動子は888888 Hzまたは1MHzの振動周波数を伴うものとなる。したがって、いわゆる「トルマリン針」を利用することができる。「トルマリン針」は、厚さが3.5 mm未満、通常は3.0 mm未満の非常に細いトルマリンの棒である。このようなトルマリンの棒は、通常のトルマリンの原結晶の価格と比較して市場で1グラムあたりわずか5%のコストで入手できる。「トルマリン針」の原材料の非常に有利な価格を、研削による低重量損失と組み合わせて計算すると、「トルマリン針」からであればトルマリン振動子は、通常のトルマリンの原結晶から研削されたトルマリン振動子と比較して、例えばL軸に沿って切断されたものであれば、そのコストは1%未満となる。
【0067】
先述したTS軸方向のトルマリン振動子の厚さに依存する振動周波数を決定付ける公式において、パラメータ「K」は、あくまでトルマリン振動子のTS軸方向の厚さに依存することに注意すべきである。
【0068】
このトルマリン振動子の振る舞いを数値的にも表現するために、典型的なブラジル産トルマリン振動子のTS軸方向のパラメータ「K」の例示値と、TS軸方向のトルマリン振動子の厚さに依存する振動周波数の対応する値が以下の表に示されている。
【0069】
【表2】
【0070】
TS軸のパラメータ「K」については、TA軸のパラメータ「K」の値よりも低く、トルマリンの板が薄くなると急速に下がる。
【0071】
TS軸に沿った振動方向のトルマリン振動子では、トルマリン振動子は好ましくはTA軸に向かって傾斜したパビリオン面を有すること好ましい。好ましくは、パビリオン角度は40度から50度の間であり、最低42度あることがより好ましい。
【0072】
トルマリン振動子の底面にパビリオン面を追加するにあたっては、三方晶のトルマリンの原結晶の形状は、三方晶の構造を持つトルマリンの原結晶からのトルマリン振動子を形成する場合、最適に利用することができる。
他の2つの軸方向の厚さに依存するTA軸方向とTS軸方向のパラメータ「K」の依存性
【0073】
別の驚くべき現象は、TA軸方向のパラメータ「K」の値とTS軸方向のパラメータ「K」の値が、それぞれの方向のトルマリン振動子の厚さだけでなく、それぞれの他の2つの軸方向のトルマリン振動子の厚さにも依存するということである。これは言い換えれば、TA軸方向のパラメータ「K」の値は、上述したようなTA軸方向のトルマリン振動子の厚さだけでなく、L軸方向とTS軸方向のトルマリン振動子の厚さにも依存するということである。同様に、TS軸方向のパラメータ「K」の値は、上述したようなTS軸方向のトルマリン振動子の厚さだけでなく、L軸方向とTA軸方向のトルマリン振動子の厚さにも依存するということである。
【0074】
このトルマリン振動子の振る舞いを説明するための算数的な例を以下に述べる。
【0075】
振動子がTS軸方向に3.05 mmの厚さを持ち、TS軸方向のパラメータ「K」の値が2.55であり、その場合TS軸方向の振動周波数が835 KHzであると仮定する。L軸方向の振動子の厚さは、例えば5 mmであるとする。L軸方向の厚さを5mmから4mmに減らしたまま、TA軸方向とTS軸方向の振動子の厚さはそのままにしておくと、TS軸方向の振動子の振動周波数は約835KHzから855KHzに変わる(または個々のトルマリンによっては同様に異なる値に変わる)。これは、TS軸方向の厚さが同じ3.05 mmであるときでも、トルマリン振動子は855KHzの高い振動周波数となり、パラメータ「K」の値は2.61であることを意味する。
【0076】
L軸方向の厚さを減らすことにより、TA軸方向とTS軸方向の振動周波数とパラメータ「K」の値を最大10%まで変更することができる。
【0077】
TA軸とTS軸のパラメータ「K」の依存性、そしてそれぞれの方向の振動周波数が他の2つの軸の厚さに依存することに着目することは、非常に有益である。なぜなら、これにより、トルマリンの原結晶からこれらの軸の一つに沿った所定の振動周波数を持つトルマリン振動子を形成することが、他の2つの軸のトルマリン原結晶の厚さを変更することによっても実現することができるからである。
【0078】
これは、特にTA軸に沿った振動方向を持つトルマリン振動子を提供する場合に特に有利である。
【0079】
このような振動子でTS面を正確に切断するためには、まずTA方向の面を切断するのが最善である。その後、TS面をTA面に垂直に配置することができる。しかし、トルマリン振動子の振動周波数を微調整するにあたり、特に電極をトルマリン振動子上に配置する場合、最終的な残りの切断が、一時的にせよ既に電極配置がなされた間に行われ、切断中に振動周波数を測定できると非常に便利である。
【0080】
しかし、TA面は電極が既にTA面に配置されている間には切断することができない。そのような場合、電極は再度切断することになる。
【0081】
この問題を解決するために、まずTA面を、例えば4%または5%の精度まで、予め切断しておき、電極をTA面に配置、特に取り付けることができる。そうすることで、周波数調整を、残りの面、特にTS面を切断することにより行うことができる。
【0082】
これは、例えば、TA軸方向の目標振動周波数が888888Hzである場合、まずトルマリンの原結晶を、TA軸方向の振動周波数が約880000Hzとなるように切断する。その後、電極は特にTA面に配置され、さらなる切断中に振動子を測定する。次に、TA面に垂直でL軸に平行に走るTS面を切断する。TS面が切断されている間、TA方向での圧電励起振動は常に測定される。そうして、振動周波数が888888 Hzに達したとき、切断作業を停止する。上述した電極の取り付け方法は、電極の取り付け自体が再び周波数を変更する理由から、振動子に電極を取り付ける際は、その重要性がますます高くなる。因みに通常、電極を取り付けると周波数が減少する。トルマリンを切断する際に完全に正確な周波数を得るためには、いかなる場合でも、最終的な研磨・研削前に電極が必ず配置され、特に取り付けられていなければならない。
【0083】
さもなければ、結晶を取り除くことを余儀なくされる。特に結晶は、所望の振動周波数であるかの確認のための中間チェックごとに切断ホルダからパテを取り除かなければならない。これは、トルマリンの原結晶を切断するためには、通常、パテでトルマリンの原結晶を研削ピンに接着しているためである。そのため、結晶は取り外され、洗浄され、オシロスコープで測定され、再度パテを塗り、研削プライヤーに固定する必要がある。さらに、切断処理を続ける前に、古い面を研削ディスク上で再調整する必要もある。これにより、中間チェックごとに約1時間の時間損失が発生する。1Hzまで正確な振動周波数を出すにあたってトルマリンの原結晶を研削するためには、少なくとも20回の中間チェックが必要である。これは、トルマリンの幾何学的な形状を通じて周波数を計算することはできないからである。各トルマリンの原結晶は、K値に一定の変動がある。したがって、振動周波数の基準として研削板の厚さの値を採用することはできない。
三方晶または六方晶の構造を持つトルマリンの原結晶から、L軸に対して40度から50度の角度を持つ振動方向の天然トルマリン振動子としての圧電振動子の形成
【0084】
すべての振動子は、その材料に関係なく、その温度が変化するとすぐさま振動周波数が変化するという問題を抱えている。音速は共振媒体の温度に従い変化する理由から、これは避けられない現象である。音速は通常、冷たいトルマリン振動子の方が暖かいトルマリン振動子よりも速い。したがって、温度が上昇すると、トルマリン振動子の周波数は減少する。
【0085】
したがって、圧電振動子から導出される時計の精度は、温度変化に伴う振動周波数の変動がどれだけ大きいかに依存する。
【0086】
温度による振動周波数の変化を補正することは、補正機構を用いて可能である。しかし、圧電振動子の材料によっては、補正処理が複雑であり、大量の電流消費が伴うことがある。
【0087】
補正機構を必要とせずにトルマリン振動子の振動周波数を温度変化に関わらず安定化するために、電極がトルマリン振動子の特定の表面に配置される構成が提案されている。これらの特定の表面は、それぞれ一方のエッジが、L軸に対して40度から50度、好ましくは45度の角度を形成し、もう片方のエッジは、そのTA軸またはTS軸に平行な他方のエッジを形成する。言い換えれば、電極は、この目的のために設けられた表面の一方のエッジがL軸に対して40度から50度、好ましくは45度の角度を有し、他方のエッジがTS軸またはTA軸に平行に走るよう、配置されている。
【0088】
つまり、トルマリン振動子の圧電励起振動の振動方向は、トルマリン振動子の三つの関連軸、すなわち、L軸、TA軸、TS軸から逸脱し、L軸とTA軸の間、およびL軸とTS軸の間に存在する極性を利用している。
【0089】
好ましくは、トルマリン振動子はテーブル面を有することができる。好ましくは、テーブル面は、L軸に対して40度から50度、好ましくは45度の角度を持つ一方のエッジと、TA軸またはTS軸に平行なもう片方のエッジを形成しているとよい。
【0090】
好ましくは、トルマリン振動子は、圧電振動子のテーブル面の法線に向かって傾斜したパビリオン面を有することができる。特に、パビリオン角度は40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である。代わりに、圧電振動子は、その底面に、圧電振動子のテーブル面の法線に向かって傾斜した複数の面を有し、複数の突起を形成することができる。ここで、突起は、突起が波状の断面を形成するように配置されている。各突起の面は、トルマリン振動子のテーブル面に平行な平面に対して角度を有する。その角度は40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である。
【0091】
本発明の範囲内で、驚くべきことに、この方向はトルマリン振動子の三つの極性軸のいずれの方向とも異なり、TS軸の40%から50%の圧電振動特性を有し、通常はL軸の2倍強であることを見出した。
【0092】
特に、このような振動方向を持つトルマリン振動子を持つ時計の精度は、一般的には3倍高く、特定の場合にはL軸、TA軸、TS軸に沿った振動方向を持つトルマリン振動子を持つ時計の精度の最大10倍である。
トルマリン振動子のL軸、TA軸、TS軸の方向の寸法に依存する、L軸に対して40度から50度、特に45度の角度を持つ方向におけるパラメータ「K」の依存性
【0093】
以下の表では、L軸に対して45度の角度を持つ方向のトルマリン振動子のパラメータ「K」とそれに対応する振動周波数の例示的な値が、L軸の方向、TA軸、TS軸のトルマリン振動子の寸法との関係から示されている。
【0094】
【表3】
【0095】
表からわかるように、L軸に対して45度の角度を持つ方向のトルマリン振動子のパラメータ「K」の値は、TS軸の方向のトルマリン振動子の寸法を減少させることで最も変化する。3.5 mmから2.8 mmへの減少は、L軸に対して45度の角度を持つ方向のトルマリン振動子の振動周波数を10%増加させる。
【0096】
一方、TA軸の方向で寸法を減少させた場合、L軸に対して45度の角度を持つ方向のトルマリン振動子の振動周波数はほとんど変化しない。TA軸の方向のトルマリン振動子を3.3 mmから2.9 mmに短縮した場合、L軸に対して45度の角度を持つ方向のトルマリン振動子の振動周波数はわずかに0.5%の増加に留まる。
【0097】
L軸の方向のトルマリン振動子を6.4 mmから5.85 mmに短縮した場合、L軸に対して45度の角度を持つ方向のトルマリン振動子の振動周波数は2%増加する。
三方晶または六方晶構造に代わる構造のトルマリン原結晶からの天然トルマリン振動子としての圧電振動子の形成
【0098】
本発明のさらなる好適な構成によれば、圧電振動子は、三方晶構造と六方晶構造の間の構造を有するトルマリン原結晶から形成される天然トルマリン振動子であってもよい。これは、トルマリン原結晶が三角形と六角形の間または他の断面を有することを意味する。
圧電振動子(刻時発生器)をルベライトとして形成
【0099】
本発明のさらに好適な構成によれば、トルマリンとしてルベライト(ルベライト結晶)が使用される。ルベライトはトルマリンの特殊な種類に属する。特に、ルベライトはトルマリン群の鉱物「エルバイト」の一種である。
【0100】
ルベライトの第一の利点は、美しい明るく強い赤色を持ち、時にはルビー色のように見えることである。したがって、ルベライトは時計のジェムストーンとしての役割もする刻時発生器の使用に適している。第二の利点は、ルベライトが「閉じた」光学軸を持たないことである。これは、ルベライトを切断する際に潜在的な光学的特性に注意を払う必要がないことを意味する。これにより、ルベライト振動子を提供するためのルベライト原結晶の加工工程が簡素化される。
振動周波数に関する圧電振動子(刻時発生器)の構成
【0101】
振動方向や圧電振動子が形成される材料に関係なく、圧電振動子は、圧電的に励起される振動の振動方向に、好ましくは数値8だけまたは数値8と0だけからなる振動周波数を持つことがよい。言い換えれば、これはHz領域またはKHz領域における振動周波数は、数値8だけを持つのが好ましいことを意味する。つまり、振動周波数は、8888Hz、88888Hz、888888Hz、8888888Hz、8kHz、88KHz、888KHz、または8888KHzとなるのが好ましい。
【0102】
これには、振動周波数を簡単に8Hzの周波数に落とすことができ、これにより、機械式時計の表示装置の秒針の針飛びまたは少なくとも視認可能な針飛びを避けるための理想的な周波数を得ることができる。
【0103】
さらに、そのような振動周波数は、トルマリン振動子として形成された圧電振動子を持つ時計の標準周波数として使用することができる。したがって、標準的な電子部品として全ての利用形態に対して供することができる。これ以外の場合だと、時計が内蔵するトルマリン振動子の利用形態が異なる度に、それぞれに応じた異なる振動周波数が使用されるため、その時計の電子部品はその新しい利用形態のために完全に再設計されるか、または少なくともプログラム可能なチップを使用する必要が出てくる。そのプログラム可能なチップは、トルマリン振動子のそれぞれの利用形態に応じた固有の振動周波数がプログラムされている。先述の説明から理解されるように、ここで提案される振動周波数、即ち、数値8だけまたは数値8と0だけを持つ値を有する振動周波数が、トルマリン振動子の複数の利用形態にとって理想的な振動周波数であることの証左となる。例えば、そのような振動周波数は、トルマリン振動子が刻時発生器だけでなく時計のジェムストーンとしても機能する場合(特に腕時計の場合)、または、高振動周波数の振動子を持つ時計で特に正確に作動することが望まれる場合、そのようなトルマリン振動子に対して使用することができる。
【0104】
Hz領域またはKHz領域で数値8のみを持つ振動周波数を担保するにあたり、原結晶は適切な方法でもって望ましい振動周波数を持つように切断される。この目的に最適なのは、振動周波数が888888Hzまたは888KHzにカットされたトルマリン原結晶である。その理由は以下の通りである:
【0105】
まず、周波数分割器を用いて888888Hzを初回とする振動周波数を半分にすることを3回繰り返すことができる。次に2つ目のステップでは、3回の繰り返し分割から得られる周波数(中間周波数)である111111Hzを、パルスカウンタでカウントダウンすることで1Hzの周波数を得る。このように、周波数分割とカウントダウンの組み合わせにより、1Hzの周波数を得るための消費電力が節約される。なぜなら、周波数分割によりパルスカウンタのカウント活動が1/8に減少するからである。振動周波数が888KHz、つまり888000Hzの場合、周波数は6回連続して半分にすることで13875Hzまで上げることができ、その後パルスカウンタを用いて1Hzまたは1Hzと10Hzの間の周波数までカウントダウンすることができる。
【0106】
一般的に、特に複数回の半分にする第一の手順を用いて、まず振動周波数を中間周波数にまで半分にし、続いて、その中間周波数を所望の周波数にカウントダウンする手順は、高振動周波数(例えば8.88MHzや10MHz)の圧電振動子にとって、振動周波数を単純にカウントダウンしていく方法と比較して、消費電流の点で特に有利である。
【0107】
本発明の範囲内では、所望の周波数は有用周波数と特徴づけることもできる。
【0108】
もし時計の機械式表示装置の秒針の針飛びを避けたい、または少なくとも視認可能な針飛びを避けたい場合、パルスカウンタを用いて振動周波数888888Hzを8Hzにまで下げることでこれを回避できる。8Hzの周波数は、目には針飛びに映らない動きをする秒針にとって理想的な有用信号周波数である。さらに、3回半分割にすることで8Hzの周波数を1Hzまで下げることができる。輪列のタイプによっては、これにより時計の輪列の伝動が容易になる。
【0109】
振動周波数が888888Hzまたは888KHzの場合、TS軸にカットされたトルマリン振動子は、厚さ約2mmの板となる。厚さはトルマリンの種類と板の大きさにより異なる。この点、この厚さは加工しやすい。この厚さは、特に光学的に使用されないトルマリン振動子にとって理想的である。ここでもトルマリンは十分に堅牢で、長期の経年変化を避けることができる。
【0110】
振動周波数が888888Hzおよび888KHzの場合、L軸方向にカットすると、トルマリン振動子の寸法は腕時計にとって理想的となる。L軸方向の厚さは約4.3mmとなり、これは視認可能なトルマリン振動子にとって理想的なサイズである。
【0111】
本発明の好適な実施形態によれば、圧電振動子はトルマリン振動子であり、振動周波数は888888Hzまたは888kHzであり、圧電振動子の長さ、幅、高さはそれぞれ8.88mmであり、そして圧電振動子の重さは8.88カラットである。つまり、トルマリンの原結晶が振動周波数888888Hzまたは888Hzに切断されると、トルマリン振動子はすべての点で一つの数値、すなわち数値8、または数値8と数値0のみを持つ。即ち、このトルマリン振動子は長さ8.88mm、幅8.88mm、高さ8.88mmで、重さ8.88カラットであり、その振動周波数は888888Hzまたは888KHzである。この組み合わせは他の振動周波数では達成できない。例えば、長さ6.66 mm、幅6.66 mm、高さ6.66 mmで、同時に重さが6.66カラットであるトルマリン振動子を見つけることはできないだろう。また、長さ、幅、高さがそれぞれ9.99mmで、重さが9.99カラットであるトルマリン振動子も存在しないだろう。したがって、非常に特別な石(例えば高価な卓上時計用)をカットしたい場合、振動周波数が888888Hzまたは888KHzを持つトルマリン振動子のみが、そのサイズと重さが数値8のみになり得るものとなる。
【0112】
好ましくは、圧電振動子は、圧電的に励起された振動の振動方向に振動周波数を持ち、その振動周波数を複数回半分にしていくことで所望の周波数、特に1Hzまたは8Hzにまで調整することができる。言い換えれば、振動周波数は好ましくは2の倍数である。時計はこの目的のために、刻時発生器の振動周波数を所望の周波数、特に1Hzまたは8Hzにまで持っていくように設定された周波数分割器を有することが有利である。これは、簡単に所望の周波数に調整できることを意味する。所望の周波数が1Hzの場合、時計の機械式表示装置の秒針は秒単位で動かすことができる。所望の周波数が8Hzの場合、時計の秒針は毎秒針飛びをするのではなく、既述のように文字盤を滑らかに滑る。これにより、時計の主観的な視覚的印象が改善される。なぜなら、秒針の針飛びがなくなる、あるいは少なくとも時計の観察者には見えなくなるからである。
【0113】
例えば、圧電振動子の振動周波数が32768Hzで、所望の周波数が1Hzとなる場合、周波数分割器により振動周波数を15回繰り返し半分にする必要がある。所望の周波数が8Hzの場合、周波数分割器により振動周波数を12回繰り返し半分にする必要がある。
【0114】
好ましくは、時計はさらに、圧電振動子を振動させるように設定された発振回路を含む。この場合、励振周波数は、圧電振動子の天然周波数よりも低いことが好ましい。これにより、天然周波数がわずかにシフトする(例えば、温度変化による)場合に、振動が落ち込むのを防ぐことができる。発振回路は、刻時発生機構の一部であることが好ましい。
【0115】
発明の好適な構成によれば、発振回路は、好ましくはトリマコンデンサ(特に容量ダイオードを含むタイプ)で構成し、そのトリマコンデンサの容量(特に容量ダイオードの容量)を電気信号により調整することで圧電振動子の振動周波数を調整するのが好ましい。
【0116】
この場合、制御部は、刻時発生器の温度および/または刻時発生器の近傍の時計の温度に応じて電気信号を調整するように設定されていることが好ましい。この目的のために、電気信号となる温度依存値(温度に対応する電気信号の参照値)および/または温度に応じた電気信号の関数値を、レジスタおよび/またはメモリユニットに保存することが好ましい。
【0117】
特に、この温度補償のための発振回路の構成は、長さ、幅、高さがそれぞれ少なくとも1mmを持つものは除外し、好ましくは少なくとも1.5mmの圧電振動子と共に使用することもできることに注意すべきである。
【0118】
圧電振動子の発振回路を駆動するために必要な電流は、好適には、環境発電的な装置によって充電可能な充電式バッテリーから供給することができるとよい。環境発電的装置とは、好ましくは一つまたは複数の太陽電池を含むとよい。
【0119】
時計が腕時計として形成されている場合、環境発電的装置は、好ましくは少なくとも一つの熱電対(好ましくはペルチェ素子)および/または少なくとも一つの太陽電池セルを含むとよい。環境発電的装置は、好適には時計ケース内側に配置されるとよい。例えば、文字盤は太陽電池パネルとして形成することができる、または、半透明の文字盤の下に太陽電池を配置することもできる。熱電対は、例えば、時計ケースの裏蓋に組み込むことができ、そこで皮膚の温度と時計の周囲(したがって時計の残りの部分)の温度の差から電気を発電する。太陽電池と熱電対は、時計ベルトにも組み込むこともできる。例えば、熱電対として機能するテキスタイルを使用することが可能である。このようなテキスタイル製の時計バンドは、例えば、充電式バッテリーの電力を供給することもできる。
機械式時計の時計構成(機械式時計機構)
【0120】
時計の好適な構成によれば、時計は輪列を含む。この場合、刻時発生機構はさらにメカトロ機構部(電気機械装置)を含む。メカトロ機構部は、圧電振動子の振動周波数に基づく有用信号を使用して作動し、直接的または間接的に輪列とクロック同期方式で係合する。特に、メカトロ機構部は、輪列を交互に停止させたり再び解除したりするために直接的または間接的に輪列と抑制的に係合する。したがって、この時計は振動する転輪による輪列の速度で時を刻むのではなく、周波数制御装置(メカトロ機構部)を介してタイミング制御される。ここで、輪列の駆動エネルギーは機械式駆動機構によって供給される。言い換えれば、不正確な機械式転輪は、上記の刻時発生機構によって置き換えられる。
【0121】
したがって、手巻きまたは自動巻きの機械式時計とクオーツ時計の利点が、刻時発生器の電子周波数によって自動巻きまたは手巻きの機械的作動を制御することにより、一つの時計でもって両立される。この場合、刻時発生器は圧電振動子に基づくことができる。尚、周波数決定部は、単純な振動子ではなく、光ファイバーや任意の基準に基づく発振器など、他のメカニズムを採用した振動システムについても考えることができる。ここで提案する時計には転輪が設けられていないため、転輪の刻時ひいては時計の計時精度に影響を与えるすべての機械的影響がここで排除される。時計を刻時するために使用される基準周波数は、刻時発生器の振動周波数に対応し、時計の着用者の動きによって影響を受けない。これにより、輪列を駆動する点で、転輪を持つ従来の機械式時計よりもはるかに精度の高い機械式時計が可能となる。
【0122】
メカトロ機構部は有用信号を使用して作動し、有用信号は刻時発生器の振動周波数に基づいて生成することができるため、メカトロ機構部は周波数制御可能、またはむしろ周波数制御されていると理解されるべきである。
【0123】
一つの選択肢によれば、メカトロ機構部は間接的に輪列と係合する。本発明の範囲において、「間接的に」の意味は、特に、メカトロ機構部と輪列との間に少なくとも一つのさらなる部品が配置されていることを意味する。つまり、この時計は、メカトロ機構部を上記有用信号を使用して作動させる構成となっているため、メカトロ機構部は、抑制的に輪列と間接係合することになる。
【0124】
好ましくは、この時計はその目的のための脱進機を備えている。脱進機は輪列と係合している。この場合、メカトロ機構部は脱進機を駆動することとなる。これは、この時計の構成では、メカトロ機構部が有用信号を使用して作動し、その結果、メカトロ機構部が脱進機を介して輪列と係合することを意味する。言い換えれば、この場合、脱進機は上述した少なくとも1つのさらなる部品に相当し、メカトロ機構部と輪列の間に配置されている。
【0125】
好ましくは、脱進機はガンギ車と抑制片を含む。抑制片はガンギ車を抑制するために使用される。ここでは、メカトロ機構部は抑制片を駆動するように配置されており、ガンギ車は輪列と係合している。
【0126】
特に、脱進機はアンカー脱進機として形成され、抑制片はアンカーとして形成されている。ここでは、ガンギ車はアンカー車とも特徴付けられる。
【0127】
本発明の別の好適な構成によれば、メカトロ機構部は直接または即座に輪列と係合することができる。「直接」または「即座に」とは、本発明の範囲内で特に、メカトロ機構部と輪列の間に他の部品が配置されていないことを意味する。これは、この時計は、メカトロ機構部が上述の有用信号を使用して作動する構成となっているため、メカトロ機構部が輪列と直接、クロック同期方式で係合することを意味する。
【0128】
メカトロ機構部が直接または間接的に輪列と係合するかどうかに関係なく、メカトロ機構部は本発明の好適な実施形態によりアクチュエータとして形成することができる。本発明の範囲内では、電気信号を機械的な動きに変換する駆動装置または部品はアクチュエータとして特徴付けられる。
【0129】
特に好ましくは、アクチュエータは磁気アーマチュアと磁気コイルを有することができる。ここでは、磁気コイルは有用信号を使用して磁気アーマチュアを動かすように設定されている。
【0130】
代わりに、メカトロ機構部は好ましくはステッピングモータとして形成することもできる。メカトロ機構部のこの構成は、メカトロ機構部が輪列と直接、クロック同期方式で係合するとき、特に有利である。
【0131】
上述の有用信号を生成するために、刻時発生機構は好適には電子的な有用信号生成装置を含むことができ、当該機構は(唯一の)パルスカウンタ(積算計)を含む。積算計は刻時発生器の所定の振動周波数にプログラムされることが望ましい。積算計は、刻時発生器のクロック信号または刻時発生器のクロック信号に基づく信号をカウントするために設計されていることが好ましい。有用信号生成装置は、刻時発生器のカウントされたクロック信号または刻時発生器のクロック信号に基づくカウントされた信号のカウント値が所定のカウント値に等しいとき、有用信号を生成するように設定されている。
【0132】
好ましくは、時計は刻時発生器の温度および/または刻時発生器の周囲の時計の温度に応じて所定のカウント値を修正するように設定された制御ユニットを含む。この目的のために、温度依存の所定のカウント値(温度に割り当てられた所定のカウント値)および/または温度に応じた所定のカウント値の関数がレジスタ/メモリユニットに格納されることが好ましい。
【0133】
圧電振動子を提供するために、まず原結晶が適宜切削され、その振動周波数が測定される。次に、積算計は正確にこの振動周波数にプログラムされ、つまり、積算計の所定のカウント値は測定された振動周波数に基づいて設定される。しかし、原結晶を所定の振動周波数に切断することも可能である。この場合、積算計も所定の振動周波数に基づいてプログラムされる。
【0134】
さらに、上記の有用信号を生成するために、電子的な有用信号生成装置は、好適に(唯一)周波数分周器を含むことができる。周波数分周器は、刻時発生器の所定の振動周波数を分割または半分にするように設定されている。特に、所定の振動周波数は2の倍数、特に2のべき乗、例えば524288Hzまたは1048576Hzに対応する。この場合、所定の振動周波数は、周波数分周器を使用して、好適に1Hzまたは他の周波数、例えば8Hzに分周することができる。分周された振動周波数は、メカトロ機構部が作動するための有用信号に対応する。例えば8Hzの有用信号では、秒針の針飛びが1秒に8回発生するが、時計を見る者にとってそれは「針飛び」として認識されないことに注意すべきである。
【0135】
パルスカウンタまたは周波数分周器の用語と共に使用される「唯一」という用語は、特に本発明の範囲内で、2種類の電子部品、すなわちパルスカウンタまたは周波数分周器のいずれか一つだけが、刻時発生器の所定の振動周波数に基づいて有用信号を生成するために有用信号生成装置に設けられていることを意味する。
【0136】
しかし、有用信号を生成するための周波数分周器とパルスカウンタの組み合わせも可能である。言い換えれば、電子的な有用信号生成装置は、有用信号を生成するために周波数分周器とパルスカウンタの両方を含むことができる。この場合、周波数分周器は、信号伝送の観点から好適にパルスカウンタの前に配置される。好適な方法として、刻時発生器の所定の振動周波数は、周波数分周器によって最初のステップで半分、特に繰り返し半分にすることで中間周波数を達成することができる。第二のステップでは、中間周波数を所望の周波数または有用な周波数にすることができる。最初のステップで所定の振動周波数を半分、特に繰り返し半分にして中間周波数に到達した後、第二のステップで中間周波数を所望の周波数にカウントダウンする手順は、例えば8.88MHzまたは10MHzの高振動周波数を持つ刻時発生器を含む時計に特に有効である。これにより、振動周波数を単純にカウントダウンするのと比べて電流を節約することができる。
【0137】
さらに、刻時発生機構は、好ましくは出力部を含むことができる。パルスカウンタのみを含む電子的な有用信号生成装置の場合、出力部は、カウントされたクロック信号のカウント値が所定のカウント値に等しいときに有用信号を出力するように設定されているのが望ましい。周波数分周器のみを含む電子的な有用信号生成装置の場合、出力部は、周波数分周器の出力信号に基づいて有用信号を出力するように設定されているのが望ましい。パルスカウンタと周波数分周器を含む電子的な有用信号生成装置の場合、出力部は、刻時発生器のカウントされたクロック信号のカウント値が所定のカウント値に等しいときに有用信号を出力するように設定されているのが有利である。ここで、所定のカウント値は、周波数分周器によって達成された中間周波数に基づいて設定されるのが好ましい。
【0138】
時計は、好ましくは自動巻き腕時計であることが望ましい。自動巻き時計とは、ゼンマイがエネルギーを蓄え、そのエネルギーを時計の針の回転運動に変換する機械式腕時計を指す。特に、ゼンマイは、着用者の腕が動くときに、ギア伝動を使用してローターによって小さなステップで自動的に巻き上げられる。この時計は、自動巻き時計のほか自動巻き上げ時計とも呼ばれる。他方、時計は手巻きの機械式腕時計であってもよい。
【0139】
この場合、メカトロ機構部は、駆動ゼンマイのテンションが尽きたときに、メカトロ機構部が輪列を駆動するように作動するように設定されているのが好ましい。この設定の結果、運動エネルギーがメカトロ機構部から輪列に流れ、メカトロ機構部が輪列を駆動する。この予備駆動は、有用信号に従ってクロック同期方式で行われる。これにより、時計には長いパワーリザーブが与えられる。
【0140】
時計が自動巻き上げ腕時計として形成されている場合、ゼンマイを輪列およびガンギ車から切り離す装置が好適に設けられている。その結果、メカトロ機構部が輪列を駆動するときには、ゼンマイがメカトロ機構部によって巻き上げられるのを防ぐことができる。
【0141】
脱進機を含む時計では、メカトロ機構部は、ゼンマイのテンションが尽きたときに、メカトロ機構部が、脱進機が輪列を駆動するよう脱進機を作動開始させるよう設定されているのが好ましい。これをアンカー脱進機として形成された脱進機を持つ時計で実現するためには、脱進機のアンカー(抑制片)の二股の爪の設計と両爪の設定角度、およびガンギ車の歯の形状と当該設定角度とを、共に適切にバランスさせる必要がある。
【0142】
メカトロ機構部がステッパーモータとして形成されている場合、ステッパーモータは、ゼンマイのテンションが尽きたときに、ステッパーモータが輪列を駆動開始するよう設定されているのが好ましい。
【0143】
転輪の代わりに、または転輪と脱進機の代わりに、上記刻時発生機構を自動巻き時計に使用すると、転輪と脱進機を持つ通常の自動巻き時計よりもはるかに精度の高い自動巻き時計が得られる。さらに、必要される電流は電流源から供給される。電流源としては、例えば、充電池、ソーラーセル、サーモジェネレータ、またはそれらの組み合わせが考えられる。しかし、これらの電流原に求められる電流需要は、自動巻き時計の自動巻き上げ機構により部分的に逓減させることができる。
【0144】
本発明はさらに、時計、特に腕時計の製造方法に関する。この方法は、圧電振動子と電極を含む刻時発生器からなる刻時発生機構を提供し、好ましくは刻時発生機構を時計ケースに挿入する方法を含む。
【0145】
好ましくは、圧電振動子は、それぞれ少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.5mm、さらに好ましくは少なくとも3mm、特に好ましくは少なくとも5mmの長さ、幅、高さを有する。
【0146】
上記で時計について言及した特徴は、時計の製造方法にも関係してくる点に注意すべきである。これは、これらの特徴が時計の製造方法とも組み合わせることができることを意味する。
【0147】
好適な方法として、圧電振動子は所定の振動周波数を有する。
【0148】
さらに、この方法は次のステップを含むことができる:刻時発生器のクロック信号をカウントするように設定されたパルスカウンタを提供するステップ;出力部を提供するステップ;所定の振動周波数から導出可能な所定のカウント値をパルスカウンタまたは出力部のメモリに格納するステップ;出力部を、パルスカウンタによってカウントされた刻時発生器のクロック信号のカウント値が所定のカウント値に等しいときに有用信号を出力させる設定を行うステップ;そして、刻時発生器、パルスカウンタ、および出力部を時計に取り付けるステップ。
【0149】
好ましくは、刻時発生機構を提供するステップは、任意の圧電振動子を提供し、圧電振動子の振動を発生させ、その振動周波数を決定するために周波数カウンタを使用して振動する圧電振動子を測定するステップを含む。この場合、測定された振動周波数は所定の振動周波数に対応する。したがって、任意の圧電振動子を使用することができる、または、原結晶を適宜加工することで圧電振動子を作ることができ、その測定された振動周波数が所定の振動周波数として使用され、その所定の振動周波数から所定のカウント値が導出される。
【0150】
好適な実施形態によれば、刻時発生機構を提供するステップは、所定の振動周波数としての振動周波数を選択し、特に切削またはエッチングのような他の成形方法、またはレーザー使用による物質除去による微細加工などにより、原結晶から圧電振動子を形成することで、その振動子が所定の振動周波数を有するようにするステップを含む。言い換えれば、圧電振動子は、その最終形状で意図的に選択された振動周波数を有するように、適切に形成される。つまり、ランダムな振動周波数を有する圧電振動子を形成するわけではない。
【0151】
したがって、時計は、その刻時発生器のための圧電振動子が、時計の所有者、特に腕時計の場合の着用者の希望に応じて個別化された振動周波数を有する刻時発生機構を備えることができる。例えば、腕時計の着用者の誕生日を、第一の刻時発生器の圧電振動子の振動周波数として選択することができる。
【0152】
L軸、TA軸、TS軸、またはL軸に対して40度から50度、特に45度の傾斜を有する方向に沿った振動方向で圧電励起振動の所定の振動周波数を有するトルマリン振動子を提供する方法がさらに提案される。この方法は、トルマリン原結晶をトルマリン振動子の振動方向に切断し、電極をトルマリン原結晶に振動方向に垂直に配置・追加し、トルマリン原結晶を振動方向に測定し、電極が配置・追加されている間に、L軸、TA軸、TS軸の群からの軸の方向、または、特に測定中は振動方向に対応しないL軸に対して40度から50度、特に45度の傾斜を有する方向にトルマリン原結晶を切断し、所定の振動周波数が達成されるまで切断するステップを含む。
【0153】
本発明の範囲内では、振動方向とは、特に圧電振動子を通る電流方向、または、換言すると、電流によって圧電振動子の振動が励起される方向である。例えば、電極がトルマリン振動子のL軸に垂直な面に配置されている場合、電流の方向はL軸に平行である。この場合、振動方向はしたがってL軸に沿っている。
【0154】
前述の説明に含まれる見出しは、特にテキストの読みやすさを向上させるために提供され、それぞれの後続の説明部分に対して制限的ではないことに注意すべきである。
【0155】
発明のさらなる詳細、特徴、および利点は、以下の説明および実施形態の図面から導き出され、同一およびそれに応じて機能的に同一の部品はそれぞれ同じ参照符号で指定される。
【図面の簡単な説明】
【0156】
図1】本発明の第1の実施形態による時計の模式的な簡略化された平面図である。
図2】三晶構造を持つトルマリン原結晶の模式的な斜視図である。
図3】発明の第1の実施形態によるトルマリン振動子の模式的な斜視図である。
図4図3のトルマリン振動子が形成されるトルマリン原結晶の模式的な斜視図である。
図5図4のトルマリン原結晶から切り出した図3のトルマリン振動子が形成される前の結晶の模式的な斜視図である。
図6図3のトルマリン振動子を右から見た模式的な側面図である。
図7】本発明の第1の実施形態による時計の模式的な簡略化された平面図である。
図8】発明の第2の実施形態によるトルマリン振動子の模式的な簡略化された斜視図である。
図9図8のトルマリン振動子の模式的な簡略化された正面図である。
図10図8のトルマリン振動子の模式的な簡略化された平面図である。
図11】発明の第3の実施形態によるトルマリン振動子の模式的な斜視図である。
図12図11のトルマリン振動子が形成されるトルマリン原結晶の模式的な斜視図である。
図13図12のトルマリン原結晶の模式的な簡略化された正面図である。
図14】発明の第4の実施形態によるトルマリン振動子の模式的な斜視図である。
図15図14のトルマリン振動子が形成されるトルマリン原結晶の模式的な斜視図である。
図16】発明の第5の実施形態によるトルマリン振動子の模式的な斜視図である。
図17図16のトルマリン振動子が形成されるトルマリン原結晶の模式的な斜視図である。
図18】発明の第6の実施形態によるトルマリン振動子の模式的な斜視図である。
図19図18のトルマリン振動子が形成されるトルマリン原結晶の模式的な斜視図である。
図20】本発明の第7の実施形態による時計の模式的な簡略化された平面図である。
図21】本発明の第7の実施形態による時計の部品の模式的な簡略化された図である。
図22】本発明の第8の実施形態による時計の模式的な簡略化された平面図である。
図23】本発明の第8の実施形態による時計の部品の模式的な簡略化された図である。
図24】圧電振動子と電極配置を有する刻時発生機構の模式的な簡略化された図である。
図25】本発明による時計の刻時発生機構の模式的な簡略化された図である。
図26】本発明による時計の別の刻時発生機構の模式的な簡略化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0157】
以下では、図1から7に基づいて、本発明による時計100および本発明の第1の実施形態による刻時発生機構10について詳細に説明する。
【0158】
図1から見ると、時計100は腕時計として形成されており、時計ベルト用の2つの取り付け部14を持つ。しかし、時計100が壁掛け時計、柱時計、または他の種類の時計であることも可能である。
【0159】
時計100は時計ケース11と、その上に配置された風防15を含む。時計100はさらに文字盤12と、時間、分、秒を示すための3つの針13を有する。針13は機械式時計表示装置102の部品である。
【0160】
刻時発生機構10は、圧電振動子2を含む刻時発生器1を含み、圧電振動子2の振動周波数に基づく有用信号を確実に生成する。有用信号は、針13を動かすための駆動装置101に入力される。有用信号は、本発明の範囲内で使用時計信号としても特徴付けることができる。有用信号がどのように生成できるかは、後ほど詳しく説明する。
【0161】
圧電振動子2を振動させるために、刻時発生機構10はさらに発振回路115を含む。
【0162】
駆動装置101は、直接機械式時計表示装置102に接続できる駆動要素を含む。あるいは、駆動装置101は、駆動要素に加えて、駆動要素を機械式時計表示装置102に接続し、駆動要素の動きを機械式時計表示装置102の動きに変換する輪列として形成された変換装置を含むこともできる。特に、駆動要素は、電気ステッパーモータ、特にラベットステッパーモータ、または他の種類の電気機械駆動として形成することができる。
【0163】
図1からさらにわかるように、刻時発生機構10、駆動装置101、および機械式時計表示装置102は、文字盤12の下の時計ケース11内に配置されている。
【0164】
この実施形態では、刻時発生器1は、図4のトルマリン原結晶20から作られたトルマリン振動子2(図3)として形成された圧電振動子2を含む。
【0165】
まず、図2を参照して、トルマリン原結晶20の一般的な構造とその圧電特性について説明する。
【0166】
特に、図2からさらに、トルマリン原結晶20が三角晶構造を持っていることがわかる。つまり、トルマリン原結晶20は三角晶、すなわち三角形の形で結晶化している。トルマリン原結晶20は、L軸501、TA軸502(TA:Triangle-Angle)、TS軸503(TS:Tourmaline-side)を有している。L軸501は第一の結晶軸に対応し、TA軸502は第二の結晶軸に対応し、TS軸503は第三の結晶軸503に対応している。
【0167】
特に、L軸501はトルマリン原結晶20の結晶軸の長軸に対応している。TA軸502はL軸501に垂直で、トルマリン原結晶20の第一の面21と第二の面22との間に形成された角を通過する。トルマリン原結晶20のTS軸503は、L軸501に垂直で、基本的にはトルマリン原結晶20のわずかに湾曲した第三の面23の基本的な方向にほぼ平行に走っている。
【0168】
トルマリン原結晶20は、三方晶系24によって説明することができる、またはむしろ、トルマリン原結晶20のL軸501に垂直な断面は、その面がトルマリン原結晶20の面21、22、23に関連付けられる、またはそれに従う三方晶系24によって近似することができる。したがって、L軸501は三方晶系24の平面に垂直で、TA軸502はL軸501に垂直で、三方晶系24の三つの辺のうちの二つの間に形成された角を通過する。TS軸503はL軸501に垂直で、三方晶系24の三つの辺の一つに平行に走っている。
【0169】
L軸501、TA軸502、TS軸503は極軸であるため、トルマリン原結晶20はこれらの軸に沿って圧電振動特性を有している。この効果を示すために、図2には、トルマリン原結晶20から切り出された第一のトルマリン板25、第二のトルマリン板27、第三のトルマリン板29が示されている。特に、第一のトルマリン板25はL軸501に垂直に、第二のトルマリン板27はTA軸502に垂直に、第三のトルマリン板503はTS軸503に垂直に切り出されている。したがって、第一のトルマリン板25の主面の法線ベクトル26は第一のL軸501に平行で、第二のトルマリン板27の主面の法線ベクトル28はTA軸502に平行で、第三のトルマリン板25の主面の法線ベクトル30はTS軸503に平行である。
【0170】
それぞれの主面とその反対の主面に電圧が印加されると、トルマリン板25、27、29の第一のトルマリン板25はL軸501の方向に、第二のトルマリン板27はTA軸502の方向に、第三のトルマリン板29はTS軸503の方向に振動する。また、トルマリン板は、トルマリン原結晶20からL軸501に対して45度の角度で切り出すこともできる。
【0171】
トルマリン原結晶20の圧電振動特性は、L軸の方向が最も低く、TS軸の方向が最も高い。トルマリン原結晶20のTA軸の方向の圧電振動特性は、トルマリン振動子20のL軸の方向の圧電振動特性とTS軸の方向の圧電振動特性との間あたりのものに相当する。
【0172】
図3から、この実施形態の時計100の刻時発生器1として機能するトルマリン振動子の斜視図を見ると、電極8がトルマリン振動子のL軸501に垂直な面4に配置されていることがわかる。つまり、トルマリン振動子の圧電励起振動の振動方向はL軸501に沿っている。
【0173】
好適な方法により、トルマリン振動子は、長さ111、幅112、高さ113をそれぞれ少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.5mmを有している。これらの寸法により、電極8に電圧が印加されると、トルマリン振動子は、それを真空中に配置することなく、安定して振動させることができる。さらに、トルマリン振動子のこれらの寸法は、トルマリン振動子の劣化をなくすか、またはそれが最小限に留められることを確実なものにする。したがって、トルマリン振動子の振動周波数は時間とともに変わらず、または最小限に影響を受けるので、時計100の精度も基本的には変わらないものとなる。
【0174】
図3からさらに、トルマリン振動子は面取りされた石として形成されていることがわかる。特に、トルマリン振動子はクラウン50とパビリオン60を有している。クラウン50にはクラウン面51とテーブル面52が形成されており、パビリオン60にはパビリオン面61が形成されている。この場合、テーブル面52はTA軸502に垂直である。パビリオン面61はTA軸502に対して傾斜しており、それぞれが二つのエッジ610を有し、これらはL軸501に平行に走っている。
【0175】
トルマリン振動子を製造するために、まず図4に示すトルマリンの原結晶20から立方体部分が切り出される。図5で図示する切り出された立方体200は、図3に図示したようなルマリン振動子のクラウン50とパビリオン60が形成されるように好適に切り出される。
【0176】
トルマリン振動子がその光学的特性を発揮し、時計100のジェムストーン1として機能するために、時計100は図7に図示するようなシースルー領域114を有し、そのシースルー領域を通じてトルマリン振動子が見えるような構成となっている。この実施形態では、シースルー領域114は風防15と文字盤12の開口部120を含む。特に、トルマリン振動子は開口部120の下に配置され、風防15と文字盤12の開口部120を通じて見えるように配置されている。特に、トルマリン振動子はクラウン50と共にテーブル面52が風防15に対向するように配置されている。時計100のさらなる例としては、文字盤12の開口部120の位置に視窓を設けてもよい。
【0177】
また、時計100の文字盤を省略することも可能である。この場合、シースルー領域114は風防15が担うことになる。ここでは、クラウン50と対応するテーブル面52が風防15に面することが好ましい。時計100の別の構成によれば、シースルー領域114は時計ケース11の領域に設けることもできる。特に、時計裏蓋を透視可能に形成して、それをシースルー領域としてもよい。
【0178】
いずれにせよ、時計を見る者は、テーブル面51を直接見ることができる。特に、テーブル面52に対する見る者の視線方向(テーブル面52に垂直)は、トルマリン振動子のL軸501に垂直で、TA軸502に平行である。
【0179】
トルマリン振動子の輝きを増加させるためには、図6に図示するトルマリン振動子の場合、そのパビリオン角度611は42度である。したがって、パビリオン角度611は、トルマリン振動子のパビリオン60内で光の二重全反射が生じるように選択される。
【0180】
この態様を説明するために、トルマリン振動子内の光のガイダンスを図6で示すような矢印700で表す。クラウン50またはテーブル面52を通じて上からトルマリン振動子に入射する光は、パビリオン面61の内側で全反射され、再びクラウン50またはテーブル面52を通じて上に向かってトルマリン振動子を出る。
【0181】
図8、9、10は、本発明の第2の実施形態に従った時計100の刻時発生器1を示す。図8は刻時発生器1の斜視図、図9は刻時発生器1の側面図、図10は刻時発生器1の上面図を示す。
【0182】
第1の実施形態に従った刻時発生器1と同様に、第2の実施形態に従った刻時発生器1も、その上に配置された電極8を有するトルマリン振動子として形成された圧電振動子2を含む。電極8は、L軸501に垂直なトルマリン振動子の表面4に配置される。トルマリン振動子のテーブル面52は、TA軸502に垂直である。
【0183】
しかし、第2の実施形態に従ったトルマリン振動子は、第2の実施形態に従ったトルマリン振動子がその底面に複数の面62を有し、これらが複数の突起63を形成する点で、第1の実施形態に従ったトルマリン振動子と異なる。特に、互いに傾斜した2つの面62が突起63を形成する。
【0184】
図8から図10にかけて図示されるように、突起63は、TS軸503の方向に延びる波状の断面を形成するように配置されている。この場合、突起63はL軸501に平行に配置されている。特に、各突起63はL軸501の方向に延びている。
【0185】
さらに、図9によれば、突起63の各面62は、テーブル面52に平行な平面に対して角度612で形成され、これにより面62での光の全反射が可能となる。特に、角度612は42度以上である。言い換えれば、各面62は、TA軸502に向かって42度以上の角度612で傾斜しており、これによりトルマリン振動子内では光の二重全反射が発生する。
【0186】
図9では、この態様を説明するために、トルマリン振動子内の光のガイダンスを矢印701に図示している。クラウン50、あるいはテーブル面52を通じて上からトルマリン振動子に入った光は、突起63の面62の内側で全反射し、再びクラウン50、あるいはテーブル面52を通じてトルマリン振動子から上に抜ける。
【0187】
図11図12、および図13は、本発明の第3の実施形態に従う時計100の刻時発生器1を説明した図である。
【0188】
第1の実施形態に従う刻時発生器1と同様に、第3の実施形態に従う刻時発生器1は、その上に配置された電極8を有するトルマリン振動子として形成された圧電振動子2を含む。
【0189】
しかし、第3の実施形態に従うトルマリン振動子では、電極8は、第1の実施形態として図示したトルマリン振動子のL軸501に垂直な面4に配置されるのではなく、L軸501に平行で、TS軸503に垂直に走る面4に配置されている。したがって、第3の実施形態に従う圧電振動子の圧電励起振動の振動方向は、TS軸503に沿って走る。
【0190】
ここで、トルマリン振動子のテーブル面52は、TA軸502に垂直である。パビリオン面61は、パビリオン角度611と等しい角度でTA軸502に向かって傾斜している。この場合、パビリオン面61のエッジ610は、L軸501に平行に延びる。
【0191】
第3の実施形態に従うトルマリン振動子を形成するために、図13に示されるようなトルマリン原結晶20に切削する。トルマリン原結晶20は、トルマリン針の形を有していることが好ましい。トルマリン原結晶20の三方晶構造は、トルマリン原結晶20にパビリオン面61を追加するにあたり、好適に利用することができる。
【0192】
図14および図15は、本発明の第4の実施形態に従う時計100の刻時発生器1を示す。
【0193】
第1の実施形態に従う刻時発生器1と同様に、第4の実施形態に従う刻時発生器1も、その上に配置された電極8を有するトルマリン振動子として形成された圧電振動子2を含む。
【0194】
しかし、第4の実施形態に従うトルマリン振動子は、第1の実施形態に従うトルマリン振動子とは異なり、第4の実施形態に従うトルマリン振動子は、TA軸502に垂直で、L軸501に平行に走るトルマリン振動子の面4に配置された電極8を含む。ここで、トルマリン振動子の圧電励起振動の振動方向は、TA軸502に沿っている。
【0195】
第4実施形態に係るトルマリン振動子と第1実施形態に係るトルマリン振動子との間の別の違いは、第4実施形態に係るトルマリン振動子は、入射光を反射可能とする面取りされたパビリオンを有していないということである。したがって、トルマリン振動子は、時計100のジェムストーンとしては機能しない。
【0196】
この場合、刻時発生器1は文字盤12によって完全に覆われていてもよい。
【0197】
図16および図17は、本発明の第5実施形態に係る時計100の刻時発生器1を示す。
【0198】
第1実施形態に係る刻時発生器1と同様に、第5実施形態に係る刻時発生器1は、その上に電極8が配置されたトルマリン振動子として形成された圧電振動子を含む。
【0199】
第5実施形態に係るトルマリン振動子では、電極8は、トルマリン振動子の面4に配置され、これらの面はL軸501に対して角度400を有している。特に、角度400は40度から50度の間で、好ましくは45度である。
【0200】
この場合、面4はそれぞれ、前述の角度400でL軸501に対して配置された2つのエッジ401と、TA軸502に平行な2つのさらなるエッジ402を含む。
【0201】
これは、トルマリン振動子の圧電励起振動の振動方向が、トルマリン振動子の3つの関連軸、すなわち、L軸501、TA軸502、およびTS軸503から外れた、L軸501とTA軸502の間に位置する極性を利用することを意味する。
【0202】
特に、前述の実施形態のトルマリン振動子は、ルベライトから作製することができる。
【0203】
図18および図19は、本発明の第6実施形態に係る時計100の刻時発生器1を示す。
【0204】
第1実施形態に係る刻時発生器1と同様に、第6実施形態に係る刻時発生器1は、その上に電極8が配置されたトルマリン振動子として形成された圧電振動子を含む。
【0205】
しかしながら、第6実施形態によるトルマリン振動子では、電極8がTS軸503に垂直でTA軸502に平行に走る面4に配置されており、テーブル面52がL軸501に垂直である。
【0206】
図19からも分かるように、第6実施形態によるトルマリン振動子が形成されるトルマリン原結晶20は、最初の第1実施形態によるトルマリン振動子が形成されるトルマリン原結晶20の3方晶構造とは対照的に、6方晶構造を有している。
【0207】
図2および図4のトルマリン原結晶20と同様に、六方晶構造のトルマリン原結晶20はL軸501、3つのTA軸502、および3つのTS軸503を有している。TA軸502とTS軸は互いに等価関係であるため、図19ではトルマリン原結晶20の1つのTA軸502と1つのTS軸503のみが示されている。三方晶構造のトルマリン原結晶と六方晶構造のトルマリン原結晶20との比較のために、図19には三方晶構造24も描かれており、これを参考に三方晶構造のトルマリン原結晶20を説明することができる。六方晶構造のトルマリン原結晶20は、この場合トルマリン原結晶20の六角形断面と一致する六方晶系を使用して説明することができる。
【0208】
図19のトルマリン原結晶20、そして図18のトルマリン振動子も、例えばナイジェリア産のピンクトルマリンのようないくつかの種類のトルマリンと同様に、L軸501の方向に光を透過させる特性を有している。これにより、トルマリン振動子のテーブル面52を通過する光がそれに吸収されることはないという利点がある。さらに、図18のトルマリン振動子は、TS軸503の方向に、圧電励振振動の振動方向を有し、その方向はL軸501またはTA軸502の方向と比較してより強い圧電振動特性を有する。
【0209】
前述の実施形態に従った刻時発生機構10を提供するために、まず任意のトルマリン振動子を提供することができる。ここで「任意」とは、形成されるトルマリン振動子の振動周波数を気にすることなく、まずはトルマリン原結晶を切削できることを意味する。この場合、トルマリン振動子が作られた後、トルマリン振動子の振動を発生させ、周波数積算計を使用してトルマリン振動子を測定し、その振動周波数を決定することができる。
【0210】
または、予めトルマリン振動子の振動周波数を選択しておくことも可能である。この場合、その振動周波数とは、トルマリン振動子を含む刻時発生機構10の刻時発振器1が有することとなる振動周波数である。その後、トルマリン原結晶は、トルマリン振動子が選択された振動周波数を有するように形成される。言い換えれば、トルマリン振動子は、最終形態をもって、任意のものではなく、意図的に選択された振動周波数を有するように形成されればよい。
【0211】
この場合、刻時発生機構10は、好適にはパルスカウンタと出力部を含む有用信号生成装置を有する。パルスカウンタは、トルマリン振動子として形成された刻時発生器1のクロック信号をカウントするように設定されている。出力部は、カウントされた刻時発生器1のクロック信号のカウント値が所定のカウント値と等しいときに有用信号を出力するように設定されている。言い換えれば、有用信号生成装置は、カウントされた刻時発生器1のクロック信号のカウント値が所定のカウント値と等しいときに有用信号を生成するように設定されており、出力部はその有用信号を出力するように設定されている。所定のカウント値は、決められたトルマリン振動子の振動周波数から導出することができ、特に、その値はパルスカウンタまたは出力部のメモリに格納することができる。
【0212】
先述した実施形態に従ったトルマリン振動子を含む刻時発生器1は、その振動方向に、選択された振動周波数を好適な方法で有し、その周波数値は8のみまたは8と0のみの数値から構成されるとよい。特に、振動周波数は8888Hz、88888Hz、888888Hz、8888888Hz、8kHz、88KHz、888KHz、または8888KHzであることができる。好ましくは、振動周波数は888888Hzまたは888kHzであり、トルマリン振動子の長さ111、幅112、および高さ113がそれぞれ8.88mmであり、トルマリン振動子の重量が8.88カラットである。
【0213】
繰り返しになるが、刻時発生機構10はパルスカウンタと出力部を含むことができ、上記作動方法に従って有用信号を生成することができる。例えば、トルマリン振動子が888888Hzの振動周波数を有する場合、所定のカウント値が111111に等しいときに、パルスカウンタを使用してこれを8Hzに逓減できる。
【0214】
また、トルマリン振動子がその振動方向に選択された振動周波数を有し、それを特に1Hzまたは8Hzの所望の周波数に半減操作を複数回行うことによって調整することも可能である。このために、刻時発生機構10は、パルスカウンタの代わりに、トルマリン振動子の振動周波数を所望の周波数、特に1Hzまたは8Hzに逓減するように設定された周波数分割器を用いることができる。所望の周波数の有用信号は、周波数分割器自体または別の出力部によって出力することができる。
【0215】
また、刻時発生機構10は、パルスカウンタと周波数分周器の両方を含むことができることに注意すべきである。例えば、トルマリン振動子が高い振動周波数であった場合、例えば888888Hzの場合、振動周波数は最初のステップで周波数分周器を用いて3回にわたり半分にすることができる。第二のステップでは、周波数分周器の出力に存在する中間周波数111111Hzをパルスカウンタにより1Hzにもっていくことができる。このために、パルスカウンタの所定のカウント値を111111に設定する必要がある。
【0216】
図20および図21は、本発明の第7の実施形態による時計100に関連している。
【0217】
特に、時計100は自動巻き上げ機械式時計として形成され、圧電振動子2、脱進機105、輪列104、および3つの針13を含む機械式時計表示装置102を含む刻時発生器1から構成された刻時発生機構10を含む。または、時計100を手巻きの機械式時計として形成することもできる。
【0218】
第7の実施形態による時計100の刻時発生機構10は、好適に先述した実施形態の刻時発生機構10のコンポーネントを含むことができる。特に、ここでの刻時発生器1は、先述してきた実施形態の刻時発生器1のように好適に形成することができる。
【0219】
しかし、第7の実施形態による時計100の刻時発生機構10は、さらにメカトロ機構部106を含む。図21から特に導き出すことができるのは、メカトロ機構部106は特に、磁気アーマチュア(磁気コア)107および磁気コイル108を含むアクチュエータとして形成されていることである。ここで、磁気コイル108は磁気アーマチュア107と相互作用する。特に、磁気コイル108は、通電されたときに磁気アーマチュア107を動かすように設定されている。
【0220】
メカトロ機構部106は、刻時発生器1の振動周波数に基づく有用信号に応じて作動させられる。その結果、メカトロ機構部106、特に磁気アーマチュア107は、輪列104にクロック同期方式で係合する。
【0221】
図20からも見ることができるように、脱進機105は、刻時発生機構10(特にメカトロ機構部106)と輪列104の間に配置されている。したがって、メカトロ機構部106、特に磁気アーマチュア107は、脱進機105を介して間接的に輪列104に係合する。脱進機105はメカトロ機構部106により駆動可能である。
【0222】
特に、メカトロ機構部106は、輪列104を止めて再び解放するために、輪列104に間接的に抑制的に係合する。
【0223】
さらに、図21からも説明できるように、脱進機105は脱進車109および抑制片110を含み、特にアンカー脱進機としての構成を有する。この場合、ガンギ車109は輪列104と係合しており、磁気アーマチュア107はその動作によって阻止片110と係合することができる。特に、阻止片110は磁気アーマチュア107によって駆動可能である。
【0224】
特に、磁気コイル108は有用信号の周期でもって磁場を形成/除去するので、これにより磁気アーマチュア107は有用信号の周期でもって前後に作動する。磁気アーマチュア107は、その後阻止片110と噛み合い、この動作は、機械式時計の従来の転輪に置き換わる動作となる。
【0225】
したがって、時計100はより正確にタイミングを合わせることができる。
【0226】
図22および図23は、本発明の第8実施形態による時計100に関連する。
【0227】
第8実施形態による時計100は、第7実施形態による時計100とは異なり、第8実施形態による時計100には脱進機が設けられていない点で異なる。
【0228】
この時計100の構成では、メカトロ機構部106は、クロック同期方式で輪列104と直接係合するように構成および設定されている。したがって、第8実施形態による時計100の刻時発生機構10は、従来の転輪および従来の脱進機の組み合わせた役割を果たす。
【0229】
特に、メカトロ機構部は、輪列104を交互に停止させて再度解放するように、抑制的な方法で輪列104と直接係合する。
【0230】
第8実施形態による時計100では、メカトロ機構部106はまた、磁気アーマチュア107および磁気コイル108を含むアクチュエータとして形成されている。
【0231】
したがって、磁気アーマチュア107はクロック同期方式で輪列104と直接係合する。
【0232】
しかし、メカトロ機構部106がステッパーモータとして形成され、クロック同期方式で輪列104と直接係合することも可能である。
【0233】
この場合、電気ステッパーモータは輪列105と直接係合するように設定されている。このような構成においては、時計のゼンマイと電気ステッパーモータは、ゼンマイが、電気ステッパーモータへの電力供給がない状態で電気ステッパーモータをさらに回転させる力を具備しない構成となっていることが望ましい。電気ステッパーモータは、この点で従来の転輪および従来の脱進機を置き換える。さらに、電気ステッパーモータは、時計100のゼンマイ(駆動バネ)が開放し切ったときに、機械式時計表示装置102を駆動するための駆動要素、特に針13を動かすための駆動要素として有利に機能する。
【0234】
この実施形態で説明した時計100の特徴を除いて、その作動方法は基本的に第7実施形態による時計100のそれに対応する。ただし、ここでは、メカトロ機構部106は脱進機を制御するのではなく、代わりに輪列104を直接制御し、これにより輪列104はクロック同期される。
【0235】
先述した実施形態では、電極8はそれぞれの圧電振動子2の表面4に取り付けられた電極8として対応するよう図面に示されている。すなわち、電極8は圧電振動子2の表面4に接続されている。特に、電極8は圧電振動子2の表面4に実質的に取り付けられている、または、好ましくは接着されている。
【0236】
しかし、電極8が圧電振動子2に接続されていないが、別の部材として形成されている可能性もある。
【0237】
図24は、圧電振動子2とは独立に形成された電極8が設けられる電極配置9の簡略化された模式図を示している。
【0238】
圧電振動子2とは別の部品として形成された電極配置9は、電極8が取り付けられた電極ホルダ7を含む。
【0239】
電極8は電極ホルダ7の表面に形成されている。特に、電極8は電極ホルダ7の表面70に接続された互いに独立した電流伝導部材となり得る。あるいは、電極8は電極ホルダ7の表面70に電流伝導層として形成してもよい。
【0240】
電極8には電圧を印加することで、圧電振動子を振動させる。
【0241】
電極ホルダ7は、圧電振動子2の最大振動振幅、すなわち振動子2の最大機械的変形時に、電極8が形成されている電極ホルダ7の表面70が、電気的な電圧が印加されなければならない圧電振動子2もしくはその表面4に接触する配置となるように形成されている、または振動子2もしくはその表面4から離間した配置となるように形成されていることが望ましい。
【0242】
後者の場合、電極8は圧電振動子2に接触しない。ここで、電極ホルダ7との離間距離は、電極8に電圧が印加されたときに、圧電振動子2の圧電振動を開始し維持することができる程度に短い距離に設定することが望ましい。電極ホルダ7の各表面70と対応する圧電振動子2の表面4との間の離間距離は、好ましくは0.1mmから0.3mmの間であることが望ましい。この場合、電気的な電荷は、圧電振動子2に直接接触することなく、電荷場(電場)によってのみ圧電振動子2に移動する。したがって、圧電振動子2はその分膨張し収縮することができる。
【0243】
電極配置9は、圧電振動子2を保持するためのホルダとしても好ましく使用される。この目的のために、電極ホルダ9は、圧電振動子2を受け入れて保持するための受け入れ領域(保持領域)90を好適に有している。
【0244】
電極配置9を使用すると、電極8によって通常引き起こされる減衰を考慮に入れて、圧電振動子を減衰なしに振動させることができる。
【0245】
図25に、本発明による時計100内の刻時発生機構10が示されている。
【0246】
刻時発生機構10は、比較器121を備えたパルスカウンタ119を含む有用信号生成装置116を含む。パルスカウンタ119は、刻時発生器1のクロック信号をカウントするために形成されている。
【0247】
有用信号生成装置116は、圧電振動子2の振動周波数に基づいて有用信号を生成するように設定されている。特に、有用信号生成装置116は、刻時発生器のカウントされたクロック信号のカウント値が所定のカウント値と等しい場合に、有用信号を生成するように設定されている。
【0248】
オプションとして、有用信号生成装置116は周波数分割器117を含むこともできる。この場合、パルスカウンタ119は、刻時発生器のクロック信号に基づく信号、この場合は周波数分割器117の出力信号をカウントするために形成されている。有用信号生成装置116は、周波数分割器のカウントされた出力信号のカウント値が所定のカウント値と等しい場合に、有用信号を生成するように設定されている。
【0249】
刻時発生機構10はさらに、有用信号生成装置116によって生成された有用信号を出力するように設定された出力部118を含む。
【0250】
好ましくは、刻時発生機構10は、刻時発生器1の温度および/または刻時発生器1の周囲の時計100の温度に応じて所定のカウント値を補正するように設定された制御部122を含む。
【0251】
この目的のために、温度依存の所定のカウント値(温度に割り当てられた所定のカウント値)の参照テーブルおよび/または刻時発生器1の温度および/または刻時発生器1の周囲の時計100の温度に応じた所定のカウント値の関数を、メモリユニット123に格納しておくことが望ましい。制御部122およびメモリユニット123は、好ましくはマイクロコントローラ130の一部で構成することも可能である。
【0252】
時計100内には、刻時発生器1の現在の温度および/または刻時発生器1の周囲の時計100の温度を検出するための温度センサ131が好ましくは設けられている。温度センサ131はマイクロコントローラ130に統合させることもできる。
【0253】
制御部122は、好ましくは定期的に温度センサ131を読み出し、格納された関数を使用して関連する所定のカウント値を計算するか、格納されたテーブルからそれらの値を取得する。これを比較器121のメモリに書き込むことが好ましい。その結果、有用信号生成装置116は、パルスカウンタ119によってカウントされた刻時発生器1のクロック信号のカウント値、または上記のように周波数分割器117が提供されている場合の周波数分割器117の出力信号のカウント値が、前述の関連する所定のカウント値(補正されたカウント値)すなわち現在の温度に関連する所定のカウント値と等しい場合に、有用信号を生成する。
【0254】
これにより、圧電振動子2の温度依存の振動周波数偏差を補償することができる。
【0255】
時計100内部の温度は一般的にゆっくりとしか変化しないため、この補償処理は頻繁に行う必要はなく、数分間隔で行えば足りる。したがって、この計算にかかる必要な消費エネルギーは最小限のもので済む。
【0256】
図26に、本発明による時計100内の刻時発生機構10が図示されている。
【0257】
この刻時発生機構10は、図25の刻時発生機構10と異なり、現在の刻時発生機構10はパルスカウンタを有していない。
【0258】
さらに、図26には、刻時発生器1の圧電振動子2の圧電振動を励起するための発振回路115が示されている。
【0259】
発振回路115は、容量性ダイオード132を含む。それは逆方向(すなわち、実質的に電流は流れない)で好適に作動する。容量性ダイオード132の容量、特に接合容量を調整することにより、水晶振動子2の振動周波数を調整することができる。接合容量は、印加された逆電圧に対して定義された方法で依存する。したがって、そのようなダイオードは可変容量のキャパシタ(トリマコンデンサ)を表す。
【0260】
メモリユニット123には、刻時発生器1の温度または刻時発生器1の周囲の温度の関数として、容量性ダイオード132に印加する必要がある逆電圧がどれであるかを示す関数または参照テーブルが格納されている。これに基づき、その接合容量に応じた温度補償のための正しい値を取得できる。特に、参照テーブルには温度に依存する逆電圧の値(温度に割り当てられた逆電圧の予定値)を含めることができる。特に、その関数は温度に依存する逆電圧の値の関数である。
【0261】
制御ユニット122は温度センサを読み出し、それに関連する電圧値を特定し、それを特にマイクロコントローラ130のアナログ出力を介して容量性ダイオードに印加する。
【0262】
これにより、圧電振動子2の温度依存の振動周波数偏差を補償することができる。
【0263】
図25および図26の刻時発生機構10の刻時発生器1は、先に述べた刻時発生器1のいずれかのように形成できることに注意すべきである。それに応じて、図25および図26の刻時発生機構10は、先に述べた時計100に提供できる。これは特に、図25および図26に参照して説明した温度補償が、先に述べた時計100に実装できることを意味する。
【0264】
しかし、図25および図26の刻時発生機構10は、長さ、幅、高さがそれぞれ少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.5mmのいずれも持たない圧電振動子と関連して温度補償のためにも実装できることにも注意すべきである。
【0265】
上記の発明の記述に加えて、その補足的開示の目的のために、図1から図26までの発明の図中の参照符号を以下に明示的に記載する。
【符号の説明】
【0266】
1 刻時発生器
2 圧電振動子
4 表面
7 電極ホルダ
8 電極
9 電極配置
10 刻時発生機構
11 時計ケース
12 文字盤
13 針
14 ポート
15 風防
20 トルマリン原結晶
21 第一面
22 第二面
23 第三面
24 三方晶系
25 第一トルマリン板
26 法線ベクトル
27 第二トルマリン板
28 法線ベクトル
29 第三トルマリン板
30 法線ベクトル
50 クラウン
51 クラウン面
52 テーブル面
60 パビリオン
61 パビリオン面
62 面
63 突起
90 取り付けエリア
100 時計
101 駆動装置
102 機械式時計表示装置
104 輪列
105 脱進機
106 メカトロ機構部
107 磁気アーマチュア
108 磁気コイル
109 ガンギ車
110 抑制片
111 長さ
112 幅
113 高さ
114 透明領域
115 発振回路
116 有用信号生成装置
117 周波数分割器
118 出力部
119 パルスカウンタ
120 開口部
121 比較器
122 制御ユニット
123 メモリユニット
130 マイクロコントローラ
131 温度センサ
132 容量ダイオード
200 切り欠き
400 角度
401 エッジ
402 エッジ
501 L軸
502 TA軸
503 TS軸
610 エッジ
611 パビリオン角度
612 角度
700 矢印
701 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計(100)、特に腕時計であって、
刻時発生機構(10)と、前記刻時発生機構(10)を配置した時計ケース(11)とを備え、
前記刻時発生機構(10)は、刻時発生器(1)を含み、
前記刻時発生器(1)は、圧電振動子(2)および電極(8)を含み、
前記圧電振動子(2)の長さ(111)、幅(112)、および高さ(113)がそれぞれ少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.5mmである、時計(100)。
【請求項2】
前記時計(100)は透明領域(114)を有し、
前記圧電振動子(2)は、前記時計(100)の前記透明領域(114)を通して、前記圧電振動子(2)が見えるように前記時計(100)内に形成および配置されており、
これにより前記圧電振動子は時計(100)のジェムストーンとして機能する、ことを特徴とする、請求項1に記載の時計(100)。
【請求項3】
前記圧電振動子(2)は、パビリオン面(61)を含むパビリオン(60)を有し、前記パビリオン(60)内において光の二重全反射が生じるようパビリオン角度(611)が選択されている、
または、
前記圧電振動子(2)は、その底面に複数の面(62)を有し、前記複数の面(62)は、複数の突起(63)を形成し、前記複数の突起(63)は、波状の断面を形成するように配置され、各々の前記突起(63)の面(62)は互いに前記突起(63)内で光の二重全反射が生じるように選択された角度(612)で配置されている、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項4】
前記圧電振動子(2)は、L軸(501)、3つのTA軸(502)、および3つのTS軸(503)を有する天然のトルマリン振動子であり、
好ましくは、前記トルマリン振動子は、三方晶または六方晶の構造を有するトルマリン原結晶から形成される、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項5】
前記トルマリン振動子は、前記L軸(501)、TA軸(502)、もしくはTS軸(503)に垂直であるテーブル面(52)を含み、前記トルマリン振動子は、前記L軸(501)の方向への光の透過を好ましくは許容する、
または、
前記トルマリン振動子は、TA軸(502)またはTS軸(503)に垂直である前記テーブル面(52)を含み、前記トルマリン振動子は前記L軸(501)の方向への光の透過を好ましくは阻止する、ことを特徴とする、請求項4に記載の時計(100)。
【請求項6】
前記電極(8)は、前記L軸(501)に垂直である前記トルマリン振動子の面(4)に配置されている、ことを特徴とする、請求項に記載の時計(100)。
【請求項7】
前記トルマリン振動子は、TS軸(503)またはTA軸(502)に向かって傾斜するパビリオン面(61)を有し、前記パビリオン面(61)の各面は、L軸(501)に平行に走る2つのエッジ(610)を含み、特にパビリオン角度(611)は、40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である、
または、
前記トルマリン振動子は、その底面に複数の面(62)を有し、前記複数の面(62)は、複数の突起(63)を形成し、前記複数の突起(63)は、波状の断面を形成するように配置され、各々の前記突起(63)の面(62)は、前記トルマリン振動子のテーブル面(52)に平行な平面に対して、40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である角度(612)を有する、ことを特徴とする、請求項6に記載の時計(100)。
【請求項8】
前記電極(8)は、前記TA軸(502)に垂直であり、L軸(501)に平行である前記トルマリン振動子の面(4)に配置されている、ことを特徴とする、請求項に記載の時計(100)。
【請求項9】
前記電極(8)は、TS軸(503)に垂直であり、前記L軸(502)に平行である前記トルマリン振動子の面(4)に配置されている、ことを特徴とする、請求項に記載の時計(100)。
【請求項10】
前記トルマリン振動子は、TA軸(502)に向かって傾斜するパビリオン面(61)を有し、
特にパビリオン角度(611)は40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である、ことを特徴とする、請求項9に記載の時計(100)。
【請求項11】
前記電極(8)は、前記トルマリン振動子の面(4)に配置されており、前記面(4)の各面は、L軸(501)に対して40度から50度の間の角度(400)、好ましくは45度であるエッジ(401)と、TA軸(502)もしくはTS軸(503)に平行であるエッジ(402)、とを有する、
および/または、
前記トルマリン振動子は、テーブル面を有し、前記テーブル面は、前記L軸(501)に対して40度から50度の間の角度であり、好ましくは45度であるエッジと、TA軸(502)またはTS軸(503)に平行であるエッジ、とを含む、
および/または、
前記トルマリン振動子は、前記圧電振動子のテーブル面の法線ベクトルに向かって傾斜するパビリオン面を有し、特にパビリオン角度は40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である、または前記圧電振動子は、各々の底面に、前記圧電振動子のテーブル面の法線ベクトルに向かって傾斜する複数の面を有し、前記複数の面は、複数の突起を形成し、突起は突起が波状の断面を形成するように配置されており、各突起の面はトルマリン振動子のテーブル面に平行な平面に対して角度であり、この角度は40度から50度の間であり、好ましくは少なくとも42度である、ことを特徴とする、請求項4に記載の時計(100)。
【請求項12】
前記圧電振動子は、三方晶と六方晶との間の構造を有するトルマリン原結晶から形成される天然のトルマリン振動子である、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項13】
前記圧電振動子(2)はルベライトである、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項14】
前記圧電振動子(2)は、その振動方向に振動周波数を有し、
前記振動周波数の値は、8のみまたは8と0のみを有し、特に前記振動周波数は8888Hz、88888Hz、888888Hz、8888888Hz、8kHz、88kHz、888kHz、または8888kHzであり、
前記圧電振動子は、好ましくは前記振動周波数が888888Hzまたは888kHzであり、長さ(111)、幅(112)、および高さ(113)が、各々8.88mmであり、重さが8.88カラットであるトルマリン振動子である、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項15】
前記圧電振動子(2)は、その振動方向に振動周波数を有し、
前記振動周波数は、好ましくは1Hzまたは8Hzである所望の周波数を、複数回繰り返し半分にすることにより得られ、
前記時計は、好ましくは周波数分周器を含み、
前記周波数分周器は、前記刻時発生器の前記振動周波数を、好ましくは1Hzまたは8Hzの所望の周波数にするように設定されている、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項16】
時計(100)は、さらに、前記圧電振動子を振動させるように設定された振動回路(115)を含み、
前記振動回路(115)は、好ましくは、電気信号によりその容量を設定することで設定する、前記電気信号によりトリマコンデンサの容量、特に好ましくは、容量ダイオードの容量を設定することで前記圧電振動子(2)の振動周波数を設定するための、前記トリマコンデンサ、特に好ましくは、前記容量ダイオードを含み、
制御ユニットは、前記刻時発生器(1)の温度および/または前記刻時発生器(1)の周囲の前記時計(100)の温度に応じて前記電気信号を設定するように設定されている、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項17】
前記時計は、さらに輪列を含み、
前記刻時発生機構(10)は、さらにメカトロ機構部(106)を含み、
前記メカトロ機構部(106)は、前記圧電振動子(2)の振動周波数に基づく有用信号を使用して作動することで、前記メカトロ機構部(106)は、直接または間接的に前記輪列(104)にクロック同期方式で係合し、
好ましくは、前記メカトロ機構部(106)は、間接的に前記輪列(104)に係合し、前記時計(100)は、前記輪列(104)に係合し前記メカトロ機構部(106)で駆動可能である脱進機(105)を含み、
特に、前記メカトロ機構部(106)は、好ましくは、磁気アーマチュア(107)および磁気コイル(108)を有し、前記有用信号を使用して前記磁気アーマチュア(107)を作動させるように設定されている、アクチュエータとして形成される、
または、
好ましくは、メカトロ機構部(106)は、ステッピングモータとして形成される、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項18】
前記刻時発生機構(10)は、前記圧電振動子(2)の振動周波数に基づく有用信号を生成する有用信号生成装置を含み、
前記有用信号生成装置は、好ましくは、前記刻時発生器(1)のクロック信号または前記刻時発生器(1)の前記クロック信号に基づく信号から生成されたクロック信号、を数える積算計を有し、
前記有用信号生成装置は、前記刻時発生器(1)のカウントされたクロック信号または前記刻時発生器(1)の前記クロック信号に基づく前記信号の前記クロック信号のカウント値が、所定のカウント値に等しいときに前記有用信号を生成するように設定されており、
制御ユニットは、好ましくは前記刻時発生器(1)の温度および/または前記刻時発生器(1)の周囲の前記時計(100)の温度に応じて所定のカウント値を補正するように設定されている、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項19】
前記電極(8)は、前記圧電振動子(2)に取り付けられている、または、前記刻時発生器(1)が電極ホルダ(7)を有する電極配置(9)を含み、前記電極(8)は、前記電極ホルダ(7)に取り付けられている、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の時計(100)。
【請求項20】
時計(100)、特に腕時計の製造方法であって、
圧電振動子(2)および電極(8)を含む刻時発生器(1)を含み、前記圧電振動子(2)の長さ(111)、幅(112)、および高さ(113)がそれぞれ少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.5mmである、刻時発生機構(10)を提供するステップ、および
時計ケース(11)内に刻時発生機構(10)を配置するステップ、
を含むことを特徴とする、時計(100)の製造方法。
【国際調査報告】