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▶ サノフィ・ウィントロップ・インダストリエの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ばねキャリア
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/02 20060101AFI20240621BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
F16F1/02 C
F16F1/02 B
B23P21/00 306C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579145
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022067089
(87)【国際公開番号】W WO2022268920
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21315107.9
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520384541
【氏名又は名称】サノフィ・ウィントロップ・インダストリエ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・シャベール
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・ダラス
【テーマコード(参考)】
3C030
3J059
【Fターム(参考)】
3C030CA15
3J059AD01
3J059AD04
3J059BA01
3J059BC02
3J059EA20
3J059GA50
(57)【要約】
製造プロセスにおけるコイルばねの受取り、保持、および排出のためのばねキャリアは、コイルばねを受け取るように構成された内側空洞を画成する細長い中空本体と、内側空洞内へのコイルばねの挿入および内側空洞内からのコイルばねの抜取りのために中空本体の第1の近位端に位置する開口部とを含む。中空本体は、第1の近位端とは反対に位置する第2の遠位端を含む。中空本体は、内側空洞内に配置されたコイルばねを磁気的に引き付けて保持するように構成された磁気部材を含む。そのようなばねキャリアを含む装置、およびそのようなばねキャリアを使用してコイルばねを操作する方法も開示される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造プロセスにおけるコイルばねの受取り、保持、および排出のためのばねキャリア(10)であって:
コイルばね(C)を受け取るように構成された内側空洞(13)を画成する細長い中空本体(11)と;
内側空洞内へのコイルばねの挿入および内側空洞内からのコイルばねの抜取りのために中空本体の第1の近位端(14)に位置する開口部(16)とを含み;
中空本体は、第1の近位端とは反対に位置する第2の遠位端(15)を含み;
中空本体は、内側空洞内に配置されたコイルばねを磁気的に引き付けて保持するように構成された磁気部材(18)を含む、前記ばねキャリア。
【請求項2】
磁気部材は、中空本体の第2の端部に近接して設けられる、請求項1に記載のばねキャリア。
【請求項3】
磁気部材(18)は、内側空洞(13)内に配置される、請求項1または2に記載のばねキャリア(10)。
【請求項4】
磁気部材(18)は、永久磁石を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のばねキャリア(10)。
【請求項5】
磁気部材(18)は、磁気誘導が可能な磁性材料を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のばねキャリア(10)。
【請求項6】
磁気部材(18)は、電磁石を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のばねキャリア(10)。
【請求項7】
中空本体(11)は、中空本体の第1の近位端(14)に、中空本体から径方向外方に延びるフランジ(28)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のばねキャリア(10)。
【請求項8】
中空本体(11)の第2の遠位端(15)にアパーチャ(38)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のばねキャリア(10)。
【請求項9】
1つまたはそれ以上の突起(39)が、中空本体(11)の第2の遠位端(15)に位置するアパーチャ(38)を少なくとも部分的に横切って内方に延びる、請求項8に記載のばねキャリア(10)。
【請求項10】
中空本体の側壁に少なくとも1つの窓(60)を含み、該窓は、ばねキャリア内に配置されたコイルばね(C)が窓を通してばねキャリアの外側から見えることを可能にする、請求項1~9のいずれか1項に記載のばねキャリア(10)。
【請求項11】
中空本体(11)の第1の近位端(14)に位置する開口部(16)は、該開口部が第1の近位端に向かって広がるように、先細り領域(16A)を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のばねキャリア(10)。
【請求項12】
装置であって:
請求項1~11のいずれか1項に記載のばねキャリア(10)と;
ばねキャリアに近接して配置されるように構成され、磁界を生成して磁気部材(18)を誘導磁石にするように構成された電磁石(21)とを含む、前記装置。
【請求項13】
装置であって:
請求項1~12のいずれか1項に記載のばねキャリア(10)と;
中空本体(11)に入る空気の流れを生成して中空本体からのコイルばね(C)の抜取りを容易にするように構成された空気流生成器(A)とを含む、前記装置。
【請求項14】
組立てシステム(50)であって、請求項12または請求項13に記載の装置と、コイルばね製造機械(51)とを含み、ここで、該コイルばね製造機械は、コイルばね(C)を作製するように構成され、該システムは、作製されたコイルばねをばねキャリア(10)内へ送り込むように配置された挿入ステーション(56)をさらに含む、前記組立てシステム。
【請求項15】
製造組立てプロセスにおけるコイルばねの受取り、保持、および排出のためのばねキャリア(10)を使用してコイルばね(C)を操作する方法であって、ばねキャリアは、内側空洞(13)を画成する細長い中空本体(11)と、中空本体の第1の近位端(14)に位置する開口部(16)とを含み、該中空本体は、第1の近位端とは反対に位置する第2の遠位端(15)を含み、ばねキャリアはさらに、中空本体の第2の端部に近接して設けられた磁気部材(18)を含み、該方法は、
中空本体(11)の第1の端部(14)に位置する開口部(16)を通ってコイルばねを内側空洞(13)内へ挿入することと、
磁気部材(18)が内側空洞内でコイルばねを磁気的に引き付けて保持することとを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばねを保持するためのデバイス、そのようなデバイスを含む装置、ならびにそのようなデバイスおよび装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのデバイスは、1つまたはそれ以上のばねを必要とし、そのようなデバイスを組み立てる方法および装置は、そのようなばねの正確な、繰り返される取出し、移動、および配置を必要とする。アセンブリ内に1つまたはそれ以上のばねを含むデバイスには、薬剤注射デバイスが含まれる。そのようなデバイスは、薬剤送達プロセスの前、間、または後の薬物投与機構の動作または1つもしくはそれ以上の安全機能の配置を含む、デバイスの様々な機能を容易にするためのばねを含むことができる。
【0003】
ばねは、大量にまとめて収納または運搬されると容易に絡まることがあり、製造されているデバイス内へ組み立てる必要があるときにばねを分離するのは困難でありかつ時間がかかり、したがって製造プロセスの点からも非効率的でコストがかかる可能性がある。大量製造プロセスでは、生産時間の損失、生産性および生産高の損失、ならびに製造および製品コストへの影響を招くため、たとえば機械の詰まりまたは障害によって、組立てラインでエラーが生じたり、または生産ラインの中断が必要になったりすることは望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、1つまたはそれ以上のばねを収容する製品の製造プロセスでは、そのようなプロセスで使用するためにそのようなばねの繰り返される確実な取出し、輸送、および配置を容易にし、かつ/またはばねの完全性の保護および確保に役立つことのできるデバイスを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、製造組立てプロセスにおけるコイルばねの受取り、保持、および排出のためのばねキャリアが提供され、ばねキャリアは、コイルばねを受け取るように構成された内側空洞を画成する細長い中空本体と、内側空洞内へのコイルばねの挿入および内側空洞内からのコイルばねの抜取りのために中空本体の第1の近位端に位置する開口部とを含み、中空本体は、第1の近位端とは反対に位置する第2の遠位端を含み、中空本体は、内側空洞内に配置されたコイルばねを磁気的に引き付けて保持するように構成された磁気部材を含む。
【0006】
磁気部材は、中空本体の第2の端部に近接して配置することができる。磁気部材は、中空本体の第1の端部に近接して配置することができ、または中空本体の第1および第2の端部間に配置することができる。
【0007】
磁気部材は、内側空洞内に配置することができる。磁気部材は、中空本体の内側空洞の外側に配置することができる。磁気部材は、中空本体内に埋め込むことができる。
【0008】
磁気部材は、永久磁石を含むことができる。
【0009】
磁気部材は、磁気誘導が可能な磁性材料を含むことができる。
【0010】
磁気部材は、電磁石を含むことができる。ばねキャリアは、電磁石への電力の供給のために磁気部材に電気的に接続された少なくとも1つの電気接点をさらに含むことができる。
【0011】
中空本体は、中空本体の第1の近位端に、中空本体から径方向外方に延びるフランジを含むことができる。
【0012】
フランジは、中空本体の周辺部に遮られずに延びることができる。フランジは、中空本体の最も近位の場所に配置することができる。
【0013】
中空本体は、断面が円形の円筒管とすることができる。
【0014】
中空本体は、その長さに沿って断面寸法に関して実質的に均一とすることができる。
【0015】
中空本体は、実質的に剛性を有することができ、その断面形状から容易に変形可能でない。
【0016】
ばねキャリアは、中空本体の第2の遠位端にアパーチャを含むことができる。
【0017】
中空本体の第2の遠位端に位置するアパーチャは、内側空洞の断面寸法と同じ断面寸法のものとすることができる。
【0018】
中空本体の第2の遠位端に位置するアパーチャは、内側空洞の断面寸法より小さい断面寸法のものとすることができる。
【0019】
中空本体の第2の遠位端は、少なくとも部分的に閉鎖することができる。
【0020】
1つまたはそれ以上の突起が、中空本体の第2の遠位端に位置するアパーチャを少なくとも部分的に横切って内方に延びることができる。
【0021】
ばねキャリアは、中空本体の側壁内に少なくとも1つの窓を含むことができ、少なくとも1つの窓は、ばねキャリア内に配置されたコイルばねが窓を通してばねキャリアの外側から見えることを可能にする。この窓または各窓は、中空本体の側壁内に形成することができ、中空本体の側壁内で、中空本体の第1の近位端と第2の遠位端との間の場所に形成することができる。
【0022】
中空本体の第1の近位端に位置する開口部は、開口部が第1の近位端に向かって広がるように、先細り領域を含むことができる。先細り領域は、ばねキャリア10の軸X-Xに対して10から40度の角度で延びることができ、この角度は、15から35度とすることができ、約24度とすることができる。
【0023】
中空本体の第2の遠位端は、中空本体から内方に延びる1つまたはそれ以上の突出部を含むことができる。この突出部または各突出部は、中空本体の第2の遠位端に位置する開口部を少なくとも部分的に横切って延びることができる。中空本体の第2の遠位端は、第2の遠位端に位置する開口部の周りに少なくとも部分的に延びる内方に突出するリップを含むことができる。中空本体の第2の遠位端は、端壁によって部分的または完全に閉鎖することができる。
【0024】
ばねキャリアは、ばねキャリアを使用することができる装置上の対応する配向機能と協働するように構成された1つまたはそれ以上の配向機能を含むことができる。配向機能は、使用中にばねキャリアを正確に位置合わせすることを可能にすることができる。そのような配向機能は、フランジ内に1つまたはそれ以上の凹部またはスロットを含むことができる。そのような配向機能は、直径方向に対向するスロットをフランジ内に含むことができる。
【0025】
ばねキャリアは、中空本体の側壁の内面から内方に突出する1つまたはそれ以上の心出しラグを含むことができる。心出しラグは、中空本体の中心軸の方へ突出することができる。心出しラグは、中空本体の側壁の内周に等しく隔置することができる。この心出しラグまたは各心出しラグは、中空本体の第2の遠位端に向かう方向に内方突出距離を増大させる傾斜として形成することができる。
【0026】
本開示では、上述したようなばねキャリアと、ばねキャリア近接して配置されるように構成され、磁界を生成して磁気部材を誘導磁石にするように構成された電磁石とを含む装置も提供される。
【0027】
本開示では、上述したようなばねキャリアと、中空本体に入る空気の流れを生成して中空本体からのコイルばねの抜取りを容易にするように構成された空気流生成器とを含む装置も提供される。
【0028】
本開示では、上述したようなばねキャリアと、コイルばねがばねキャリアから抜き取られている間にばねキャリアを受け取ってばねキャリアを配置するように構成されたばね抜取りステーションとを含む製造装置も提供される。
【0029】
ばねキャリアは、中空本体の第2の遠位端に、空気流生成器から中空本体に入って中空本体を通る空気の流れを可能にするための空気流通路を含むことができる。
【0030】
空気流生成器および/または空気流通路は、中空本体の中心軸に対して平行ではなく鋭角で中空本体に入る空気の流れを誘導するように構成することができる。
【0031】
空気流生成器は、中空本体の第2の端部に接続可能または挿入可能な空気ダクトを含むことができる。
【0032】
本開示では、上述したような装置と、コイルばね製造機械とを含む組立てシステムも提供され、コイルばね製造機械は、コイルばねを作製するように構成され、システムは、作製されたコイルばねをばねキャリア内へ送り込むように配置された挿入ステーションをさらに含む。
【0033】
組立てシステムは、上述した抜取りステーションを含む製造装置をさらに含むことができる。
【0034】
挿入ステーションは、磁気部材内に磁気を誘導するように配置された電磁石を含むことができる。
【0035】
磁気部材は、電磁石を含むことができ、挿入ステーションは、磁気部材に接続可能な電源を含むことができる。
【0036】
本開示では、製造組立てプロセスにおけるコイルばねの受取り、保持、および排出のためのばねキャリアを使用してコイルばねを操作する方法も提供され、ばねキャリアは、内側空洞を画成する細長い中空本体と、中空本体の第1の近位端に位置する開口部であって、中空本体が第1の近位端とは反対に位置する第2の遠位端を含む、開口部と、中空本体の第2の端部に近接して設けられた磁気部材とを含み、この方法は、中空本体の第1の端部に位置する開口部を通ってコイルばねを内側空洞内へ挿入することと、磁気部材が内側空洞内でコイルばねを磁気的に引き付けて保持することとを含む。
【0037】
本開示では、上述したようなばねキャリアを使用してコイルばねを操作する方法も提供され、この方法は、中空本体の第1の端部に位置する開口部を通ってコイルばねを内側空洞内へ挿入することと、磁気部材が内側空洞内でコイルばねを磁気的に引き付けて保持することとを含む。
【0038】
本開示では、製造組立てプロセスにおけるコイルばねの受取り、保持、および排出のためのばねキャリアを使用してコイルばねを操作する方法も提供され、ばねキャリアは、内側空洞を画成する細長い中空本体と、中空本体の第1の近位端に位置する開口部であって、中空本体が第1の近位端とは反対に位置する第2の遠位端を含む、開口部と、中空本体の第2の端部に近接して設けられた磁気部材とを含み、この方法は、磁気部材が内側空洞内でコイルばねを磁気的に引き付けて保持することと、中空本体に入って中空本体を通って中空本体の第1の近位端に向かう空気の流れを生成することによって、コイルばねを中空本体から抜き取ることとを含む。
【0039】
本開示では、上述したようなばねキャリアを使用してコイルばねを操作する方法も提供され、この方法は、磁気部材が内側空洞内でコイルばねを磁気的に引き付けて保持することと、中空本体に入って中空本体を通って中空本体の第1の近位端に向かう空気の流れを生成することによって、コイルばねを中空本体から抜き取ることとを含む。
【0040】
この方法は、磁気部材へのコイルばねの磁気引力を生み出すように電磁石を動作させることを含むことができる。
【0041】
磁気部材は、電磁石の磁界内に配置されることによって、誘導磁石になることができる。
【0042】
磁気部材は、電磁石を含むことができる。
【0043】
ばねキャリアは、中空本体の側壁内に少なくとも1つの窓を含むことができ、この方法は、これらの窓のうちのこの1つまたは少なくとも1つによって、中空本体の内側空洞内のコイルばねの有無を検出することを含むことができる。窓による中空本体の内側空洞内のコイルばねの有無の検出は、窓と位置合わせされたカメラまたは光センサを使用することを含むことができる。
【0044】
実施形態について、例示のみを目的として、添付の図面を参照して次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の一実施形態のばねキャリアの斜視図である。
図2図1のばねキャリアの別の斜視図である。
図3図1および図2のばねキャリアの第2の端部に位置する領域の拡大切欠斜視図である。
図4図4A図4Bは、ばねキャリア内へのコイルばねの挿入中の図1図3のばねキャリアの使用工程のシーケンスを示す図である。
図5図5A図5Bは、ばねキャリアからのコイルばねの抜取り中の図1図4Bのばねキャリアの使用工程のシーケンスを示す図である。
図6】一実施形態の装置の受取り部分と組み合わせた図1図5Bのばねキャリアの斜視図である。
図7A】別の実施形態のばねキャリアの端部の拡大斜視図である。
図7B図7Aのばねキャリアの端部の断面図である。
図8A】別の実施形態のばねキャリアの端部の拡大斜視図である。
図8B図8Aのばねキャリアの端部の断面図である。
図9】別の実施形態のばねキャリアの断面側面図である。
図10】別の実施形態のばねキャリアの断面側面図である。
図11】別の実施形態のばねキャリアの端部の拡大斜視図である。
図12】別の実施形態のばねキャリアの端部の拡大斜視図である。
図13】本発明の別の実施形態のばねキャリアの斜視図である。
図14】本発明の別の実施形態のばねキャリアの斜視図である。
図15】本発明の別の実施形態のばねキャリアの斜視図である。
図16】本発明の別の実施形態のばねキャリアの斜視図である。
図17図16のばねキャリアの一部分の断面図である。
図18】本発明の一実施形態の組立てシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1図3は、中空本体11を含む本発明の一実施形態のばねキャリア10を示し、ばねキャリア10は、管として形成された側壁12を有し、内側空洞13を画成する中空本体11を含む。中空本体11は、対向する第1の近位端14および第2の遠位端15を含む。中空本体11は、断面が円形であり、中心軸X-Xを含む。内側空洞13内へのアクセスを可能にするために、第1の近位端14に第1の開口部16が設けられる。第2の遠位端15に、中空本体11の第2の端部15を部分的に閉鎖する端壁17が設けられる。端壁17は、第2の端部15から内側空洞13と連通するアパーチャ38を含む。
【0047】
ばねキャリア10は、中空本体11の第2の端部15に近接して磁気要素または部材18を含む。示されている例示的な実施形態では、磁気部材18は、内側空洞13内の端壁17の内面に配置され、端壁17内のアパーチャ38を取り囲むようにリング状になっている。例示的な実施形態では、磁気部材18は永久磁石を含む。
【0048】
中空本体11の外面にフランジ28が設けられ、中心軸X-Xに直交する方向に径方向外方へ延びる。示されている例示的な実施形態では、フランジ28は、中空本体11の第1の端部14の最も遠位の領域に配置される。
【0049】
使用の際、製造および組立てプロセス中に、ばねキャリア10は、コイルばねCの受取り、保持、運搬、および排出のために使用される。そのような製造プロセスは、たとえば薬剤送達デバイスを製造する方法を含むことができ、そのような方法では、薬物投与機構を作動させるため、または薬物が投与された後に針安全機構を作動させるための付勢部材として、コイルばねCが必要とされることがある。ばねキャリア10の使用について、図4A図4Bおよび図5A図5Bを参照して次に説明する。
【0050】
ばねキャリア10は、本発明の装置の一部として使用されることが意図される。そのような装置は、ばねキャリア装置を含むことができ、医療デバイスのための組立てシステムまたは装置の一部を含むことができ、薬剤注射デバイスのための組立ておよび/または製造装置/システムの一部を含むことができる。しかし、本発明は、医療デバイスの分野に限定されることを意図したものではなく、1つまたはそれ以上のばねの取扱いおよび運搬が必要とされるあらゆる技術分野に適用可能である。
【0051】
図4A図4Bは、コイルばねCをばねキャリア10内へ挿入する方法工程を示す。図4Aに示す第1の工程で、ばねキャリア10は、第1の端部内の第1の開口部16が最も上になるように配置され、空の内側空洞13内へコイルばねCが導入される。このコイルばねCは、内側空洞13内へ配置することができ、または内側空洞13内へ落下させることができ、したがってその自重下で内側空洞13内へ落ちる。コイルばねCは、矢印Bによって示す方向に内側空洞13内へ挿入され、中空本体11の端壁17に位置する磁気部材18で静止する。
【0052】
コイルばねCは、磁気的に引き付けることができる金属、たとえば鋼などの強磁性材料から作られる。したがって、コイルばねCは、磁気部材18に引き付けられて磁気的に保持される。磁気部材18は、コイルばねCの重量より大きい引力をコイルばねCに提供することが可能である。コイルばねCは、それによってばねキャリア10内に固定して保持され、コイルばねCを利用予定の場所および製造/組立て装置へ、ばねキャリア10内で運搬することができる。
【0053】
ばねキャリア10からのコイルばねCの抜取りプロセスについて、図5A図5Bを参照して次に説明する。抜取りプロセスが開始する前に、コイルばねCを必要とする組立てまたは製造プロセスにおける前工程で、ばねキャリア10は、図4A図4Bの挿入方法工程に示す向きから反転され、したがってばねキャリア10は、第1の端部14が最も下になり、第2の端部15が最も上になるように向けられる。ばねキャリア10はまた、それぞれの組立て/製造プロセスのためにコイルばねCを配置するべき場所の真上に位置する。たとえば、ばねキャリア10は、抜取りプロセスに対して垂直に位置合わせすることができる。これは、ばねキャリア10からコイルばねCを一貫してまっすぐに、すなわち中空本体11の中心軸X-Xと位置合わせされた方向に、抜き取る助けとなり得る。
【0054】
図5Aに示す第1の工程で、ばねキャリア10は、反転した位置にあり、第1の端部14が最も下にあり、コイルばねCは、磁気部材18への磁気引力によって内側空洞13内で保持される。
【0055】
第2の工程で、コイルばねCはばねキャリア10から抜き取られる。これは、本発明の範囲内で様々な手段によって実現することができる。コイルばねCを抜き取るためには、磁気部材18とコイルばねCとの間の引力に打ち勝つように、図5Bに矢印Dによって示す抜取り方向に十分な力をコイルばねCにかける必要がある。そのような抜取り力は、コイルばねCに係合してコイルばねCをばねキャリア10から引き出す引張り手段(図示せず)によって提供することができ、または装置は、ばねキャリア10に衝撃力を提供してコイルばねCをばねキャリア10から引き出すように構成された衝撃手段(図示せず)を含むことができる。
【0056】
図5Bに示されている例示的な実施形態では、ばねキャリア10からのコイルばねCの抜取りを容易にする手段は、内側空洞13を通る空気の流れを生成してコイルばねCを磁気部材18から磁気係合解除し、ばねキャリア10から吹き飛ばすのに十分な空気流力をコイルばねCにかける空気流源または空気ジェットAを含む。空気流源Aは、空気ダクトまたは空気通路35を含むことができ、空気通路35は、中空本体11の第2の端部15を通って配置することができ、または中空本体11の第2の端部15に接続することができる。そのような空気通路35は、ばねキャリア10の端壁17のアパーチャ38内へ挿入可能とすることができ、またはアパーチャ38を通って配置することができる。空気通路35は、加圧空気源Aに接続することができ、または加圧空気源Aに接続可能とすることができる。使用の際、空気源Aを接続しまたはオンにして、空気通路35を通って中空本体11の内側空洞13に入る空気の流れ(図5Bに矢印Aによって示す)を送ることができる。次いで空気流AはコイルばねCに衝突して、コイルばねCを磁気部材18から磁気係合解除し、ばねキャリア10から押し出すことができる。
【0057】
複数の空気通路35を設けることができ、および/または複数の空気通路出口36を設けることができる。空気通路35および/または空気流出口36は、使用の際、中空本体11の中心軸X-Xに対して実質的に平行に位置合わせすることができる。加えて、または別法として、1つまたはそれ以上の空気流出口36および/または空気流通路35は、使用の際、中空本体11の中心軸X-Xに対して斜めに向けることができる。後者の場合、傾斜している空気流出口36/通路35は、空気流がコイルばねCのコイルに衝突することを促して、コイルばねCをばねキャリア10から排出することを促すことができる。中空本体11の中心軸X-Xに対して斜めに空気の流れを生成するように傾斜している空気流通路35または出口36を有する実施形態では、そのような角度は、中心軸X-Xに対して直角または平行ではなく鋭角とすることができ、たとえば0~45度とすることができ、5~30度とすることができる。中心軸方向空気流通路35/出口36が設けられる実施形態では、コイルばねを通る空気流に乱流が生じても、磁気部材18からのコイルばねCの係合解除およびばねキャリア10からのコイルばねCの排出を実現するのに十分なコイルばねCのコイルに対する空気流の衝突を引き起こすことができる。
【0058】
空気通路35は、以下でより詳細に説明するように、ばねキャリア10とは別個の装置の構成要素とすることができ、またはばねキャリア10に接続もしくは一体形成された構成要素を含むことができる。
【0059】
図7A図8Bを参照すると、ばねキャリア10の代替変形形態が示されている。同様の構成は同じ参照番号を保持しており、その詳細な説明は繰り返さない。図7Aおよび図7Bの実施形態では、中空本体11の第2の端部15は、端壁17によって部分的に閉鎖されておらず、開口部またはアパーチャ38を含む。アパーチャ38の周辺部には、径方向内方に延びる複数の突起39が位置する。使用の際、突起39は、磁気部材18を支持する働きをすることができる。たとえば、磁気部材18は、突起39に接合、機械的締結、または他の方法によって固定することができる。別法として、または加えて、突起39は、コイルばねCがばねキャリア10内へ挿入されたときに静止するためのばね止め具として作用することができる(図4Aおよび図4Bを参照して上述)。これは、磁気部材18を中空本体11の外側に配置することができる本発明の実施形態でも当てはまる(以下でより詳細に説明する)。ばねキャリア10からのコイルばねCの抜取りを支援するために空気流源Aが使用される本発明の変形形態では、空気流ダクトまたは空気通路35が通って延びることができるアクセスアパーチャとしてアパーチャ38を使用することができる。
【0060】
図8Aおよび図8Bの実施形態では、端壁17は、端壁17を通って延びる空気流ダクト35を含む。空気流ダクト35は、接合、機械的締結、溶接、または他の知られている手段などによって端壁17に固定された別個の構成要素とすることができる。別法として、空気流ダクト35は、端壁17および中空本体11と一体形成することができる。空気流ダクト35は、内側空洞13内に複数の出口36を含む。出口36は、中空本体の中心軸X-Xに対して直角または平行ではなく鋭角に向けられる。これは、上述した利点を提供する助けとなり得る。出口の向きの角度は、上述したもののうちのいずれかとすることができる。しかし代替実施形態では、1つのみの出口36もしくは3つ以上の出口36が位置することもでき、および/またはこの出口もしくは各出口を中空本体11の中心軸X-Xに対して実質的に平行に向けることもできる。空気流ダクト35は、入口40を含む。使用の際、入口40を通って空気流ダクト35内へ加圧空気流Aを送り込むことができる。入口は、空気流ダクト35を空気流源Aに連結するための接続部を有するように構成することができる。
【0061】
挿入プロセスおよび抜取りプロセスのどちらにおいても、ばねキャリア10は、コイルばねCを挿入/抜取り予定の場所と正確に位置合わせすることができ、所望される場合、コイルばねCを排出予定のばねキャリア10、たとえば装置から抜き取ったとき、引っかかることなく、コイルばねCを効果的に運搬することが可能である。このようにして、製造エラーおよび/またはエラーを修正するための生産停止を削減または回避することができる。図6は、上述したばねキャリア10と、ばねキャリア10から抜き取られたコイルばねCを受け取るように構成された受取り部分19とを含む本発明の装置の一実施形態を示す。受取り部分19は受取り孔20を含み、受取り孔20内へコイルばねCを排出することができ、受取り孔は中心軸Y-Yを有する。受取り部分19は、正確なばねキャリア10の位置合わせを支援するように構成される。受取り部分19は、ばねキャリア10のフランジ28に対応してそれを受け取るような形状の凹部37を含む。この位置決め機能は、中空本体11の中心軸X-Xが受取り孔20の中心軸Y-Yと同軸であること、およびそれによってコイルばねCをばねキャリアから正確に抜き取ることができることを確実にする助けとなり得る。
【0062】
上述した例示的な実施形態では、磁気部材18は永久磁石として説明されている。しかし本発明は、ばねキャリア10のそのような構成に限定されることを意図したものではない。別の代替実施形態が図9に示されており、同様の構成は同じ参照番号を保持し、その詳細な説明は繰り返さない。ばねキャリア10は端壁17を含むが、端壁17にアパーチャ38は設けられていない。内側空洞13内の端壁17の内面に磁気部材18が設けられる。磁気部材18は、任意の好適な形状をとることができるが、示されている例示的な実施形態では、円板状の構成要素を含む。この実施形態の違いは、磁気部材18が永久磁石を含まず、代わりに磁化可能材料である。ばねキャリア10は、ばねキャリア10の第2の端部15に近接して電磁石21が配置された状態で使用することができる。コイルばねCが内側空洞13内へ挿入されたとき、端壁17に近接して電磁石21を配置することができ、電磁石21に電力を供給して、磁気部材18内に磁気効果を誘導することができる。これにより、コイルばねCが磁気部材18に引き付けられ、それによってばねキャリア10の内側空洞13内で固定して保持される。この実施形態の使用の際、図5A図5Bに示すものと同等の工程で、コイルばねCがばねキャリア10から抜き取られるとき、電磁石21の電力が遮断され、それによって磁気部材18内で磁気効果の誘導が停止され、したがってコイルばねCはばねキャリア10内で保持されなくなり、上述した任意の方法でばねキャリア10から抜き取ることができるようになる。この実施形態の変形形態は、ばねキャリア10からのコイルばねCの抜取りを支援するために空気流源Aを使用することができるように、前述のアパーチャ38を含むことができることが理解されよう。
【0063】
さらなる代替実施形態が、以下に説明され、図10に示されている。同様の構成は同じ参照番号を保持しており、その詳細な説明は繰り返さない。ばねキャリア10は端壁17を含むが、端壁17にアパーチャ38は設けられていない。磁気部材18が設けられ、図10に示す例示的な実施形態では、内側空洞13内の端壁17の内面に配置されている。しかし別法として、磁気部材18を内側空洞13の外側に配置することもでき、または中空本体11の壁に埋め込むこともできる。磁気部材18は、任意の好適な形状をとることができる。この実施形態の違いは、磁気部材18が電磁石を含み、この電磁石に電力を供給して磁界を生み出し、コイルばねCを磁気部材18に引き付け、それによってばねキャリア10の内側空洞13内に固定して保持することができることである。磁気部材18は、電磁石に電力を供給するための電源に接続するための電気端子22を含む。端子22は、ばねキャリア10の外側に配置することができ、ばねキャリア10を利用予定の装置、特にばねキャリア10(およびばねキャリア10内に保持されたコイルばねC)を、コイルばねCがばねキャリア10から抜き取られる抜取りステーションへ運搬する装置に設けられた電源に接続可能とすることができる。
【0064】
図10の実施形態の使用の際、図5A図5Bに示すものと同等の工程で、コイルばねCがばねキャリア10から抜き取られるとき、電磁石の電力が遮断され、それによって磁気効果が停止され、したがってコイルばねCはばねキャリア10内で保持されなくなり、上述した任意の方法でばねキャリア10から抜き取ることができるようになる。この実施形態の変形形態は、ばねキャリア10からのコイルばねCの抜取りを支援するために空気流源Aを使用することができるように、前述のアパーチャ38を含むことができることが理解されよう。
【0065】
本発明の範囲内に包含されることが意図されるばねキャリアのさらなる実施形態が、図11および図12に示されている。同様の構成は同じ参照番号を保持しており、その詳細な説明は繰り返さない。ばねキャリア10は各々、端壁17を含み、端壁17にアパーチャ38が設けられる。図11および図12の実施形態に関する違いは、磁気部材18が前述の実施形態のように内側空洞13内ではなく、内側空洞13の外側に設けられることである。図11の実施形態では、磁気部材18は、永久磁石を含むリング状の構成要素を含み、リング状磁気部材18の中心アパーチャ23が、端壁17内のアパーチャ38と位置合わせされる。図12のばねキャリア10の実施形態はまた、永久磁石の磁気部材18を含み、磁気部材18は内側空洞13の外側に設けられる。しかし、図12の実施形態では、磁気部材18は、端壁17ではなく、中空本体11の第2の端部15に近接して中空本体11の側壁12の周りに円周方向に配置される。使用の際、図11および図12の実施形態のばねキャリア10の動作は、前述のように磁気部材18として永久磁石を含むばねキャリア10のものと同じである。特に、コイルばねCの抜取りプロセスでは、コイルばねCに係合してコイルばねCをばねキャリア10から引き出す引張り手段(図示せず)、もしくはばねキャリア10に衝撃力を提供してコイルばねCをばねキャリア10から引き出すように構成された衝撃手段(図示せず)、または内側空洞13を通る空気の流れを生成してコイルばねCを磁気部材18から磁気係合解除し、ばねキャリア10から吹き飛ばすのに十分な空気流力をコイルばねCにかける空気流源もしくは空気ジェットAによって抜取り力を提供することを含む、上述した任意の手段によって、コイルばねCを抜き取ることができる。
【0066】
図11および図12の実施形態では、任意の好適な手段によって、たとえば中空本体11に接合すること、機械的に締結すること、中空本体と共成形すること、または中空本体11内に埋め込むことによって、外部磁気部材を中空本体11に固定することができる。
【0067】
図11および図12に示すばねキャリア10の実施形態の変形形態では、磁気部材18は永久磁石ではなく、磁化可能材料、すなわち磁気効果を誘導することができる材料を含むことができる。そのような材料は、前述のとおりとすることができる。磁気効果は、前述のように電磁石に近接して配置することによって誘導することができる。誘導される磁気効果は、コイルばねCが磁気部材に直接接触することなく、ばねキャリア10内でコイルばねCを引き付けて保持するのに十分な強さのものとしなければならない。磁気効果は、端壁17または側壁12のうち中空本体の第2の端部15に近接する領域で、中空本体11の材料を通してコイルばねCに作用する必要がある。
【0068】
ばねキャリア10、ならびにばねキャリア10を含む装置、およびこの装置の受取り部分19は、1つまたはそれ以上のコイルばねCを含むデバイスを製造するためのより大きい組立てシステムまたは装置の一部とすることができる。そのようなシステムは、複数の組立て機械またはステーションを含むことができる。そのような組立て機械/ステーションは、インラインプロセスとして、および2つまたはそれ以上の別個のプロセスとして構成することができる。例示的な組立てシステム50が、図13に概略的に示されている。組立てシステム50は、全体として51と呼ばれるコイルばね作製システムを含む。コイルばね作製システム51は、コイルばねCを作成するコイル巻きステーション52と、コイルばねを加熱してばねの材料を焼き戻す加熱ステーション53とを含むことができる。次いで、加熱されたコイルばねを冷却ステーション54へ送り、コイルばねを冷却する。その後、コンベア55によって冷却されたコイルばねCを挿入ステーション56へ伝達する。挿入ステーション56において、ばねキャリア10は、上述したように、コイルばねCをばねキャリア10内へ挿入するように動作する。挿入ステーション56は、上述したそれぞれの実施形態のばねキャリア10内の電磁石の磁気部材18の端子22に接続するための電磁石21または電力を含むことができる。コイルばねを保持したばねキャリア10は、抜取りステーション57へ運搬される。抜取りステーション57で、ばねキャリア10は、コイルばねCが利用される後続のデバイス組立て工程で使用するために、コイルばねCをばねキャリア10から抜き取るように、上述した方法のいずれかで操作される。抜取りステーション57は、ばねキャリア10に衝撃を与えてコイルばねCを解放するためのインパクタ、またはコイルばねCを把持してばねキャリア10から取り出すための機械式エキストラクタを含むことができる。
【0069】
図13は、本発明の別の実施形態のばねキャリア10を示し、同様の構成は同じ参照番号を保持しており、その詳細な説明は繰り返さない。図13の実施形態に関する違いは、窓または切抜き領域60が設けられ、中空本体11の側壁12を通って延びることである。これにより、ばねキャリア10の外側から中空本体11の内部を見ることが可能になる。特にこれにより、ばねキャリア10内に受け入れられたときにコイルばねCを見ることが可能になる。これは、製造プロセスにおけるばねキャリア10の使用に有益となることができる。たとえば、品質制御または性能監視プロセスにおいて、作製されている各デバイスに対して、ばねキャリア10内のコイルばねCの存在を確認することができる。たとえば、光センサまたはカメラが、ばねキャリア10内のコイルばねCの存在を確認することができ、窓60を使用して、そのような確認を行うように動作することができる。たとえば、製造プロセス内の他の場所での挿入障害によって、ばねキャリア10内にコイルばねCが存在しないことが検出された場合、作製されているデバイスは、必要とされるコイルばねCがなければ正確に機能する可能性が低く、したがって生産ラインから自動的に拒否することができる。1つの窓60を設けることができ、または複数の窓を設けることができ、ばねキャリア10の側壁12の任意の好適な場所に配置することができる。そのような複数の窓60はまた、各ばねキャリア10を製造するためにより少ない材料が必要とされることを意味し、それにより製造コストを削減することができ、かつ/またはばねキャリアの重量を削減することもでき、これはばねキャリアを使用予定のデバイス製造プロセスにおいて有益である。1つまたはそれ以上の窓60の構成は、本明細書に開示する本発明のあらゆる実施形態に適用可能とすることができ、そのような実施形態とともに提供することができる。
【0070】
図14は、別の実施形態のばねキャリア10を示し、前述の実施形態に類似しており、同様の構成は同じ参照番号を保持しており、その詳細な説明は繰り返さない。図14の実施形態に関する違いは、フランジ28が配向機能61を含むことである。示されている例示的な実施形態では、配向機能61は、第1の端部14の方向を向いているフランジ28の表面内へ形成された1対の径方向スロットを含む。そのような配向機能61は、ばねキャリア10をその中心軸X-Xの周りに回転方向に正しく配置することを容易にすることができ、これは使用の際のばねキャリア10の機能にとって、たとえばコイルばねCの挿入もしくは抜取りにとって有益である。さらに、そのような配向機能は61、製造プロセス中に窓60とともに使用することができる。たとえば、ばねキャリア10内のコイルばねCの存在を検出するために使用される光センサまたはカメラを、製造装置/システムまたは組立てライン上の特定の位置に配置することができ、したがって窓60を光センサまたはカメラと位置合わせするために、ばねキャリア10の正しい配向を必要とすることができる。配向機能61は、配向機能61のスロット内に受け入れることができる突出部などの対応する機能(図示せず)と協働して、使用の際にばねキャリア10の正しい配置を確実にすることができる。そのような配向機能61は、本明細書に開示する本発明のあらゆる実施形態に適用可能とすることができ、そのような実施形態とともに提供することができる。
【0071】
図15は、別の実施形態のばねキャリア10を示し、前述の実施形態に類似しており、同様の構成は同じ参照番号を保持しており、その詳細な説明は繰り返さない。図15は、前述の実施形態の図5Aのものに類似した図であるが、図15の実施形態に関する違いは、ばねキャリアの第1の端部14に位置する第1の開口部16が先細り領域16Aを含み、したがって第1の開口部16が第1の近位端に向かう方向に広がることである。これは、上述した挿入工程中に、コイルばねCを第1の開口部16内へ案内する助けとなり得る。そのような構成は、本明細書に開示する本発明のあらゆる実施形態に適用可能とすることができ、そのような実施形態とともに提供することができる。図15から見ることができるように、第1の開口部16の先細り領域16Aは、ばねキャリア10の軸X-Xに対して角度θ1に延びる。角度θ1は、本発明の範囲内で変動することができるが、10から40度とすることができ、15から35度とすることができ、約24度とすることができる。
【0072】
図16および図17は、本発明の別の実施形態のばねキャリア10を示し、図1図3のばねキャリアに類似しており、同様の構成は同じ参照番号を保持しており、その詳細な説明は繰り返さない。図16および図17のばねキャリアの違いは、中空本体11の側壁12の内面が、中空本体11の中心軸X-Xに向かって内方に突出する複数の心出しラグ68を含むことである。図16は、前述の実施形態の図3のものに類似した図であり、したがってこれらの心出しラグ68が示されることを可能にするために切り取られた側壁12の一部分を示す。示されている実施形態では、4つの心出しラグ68が設けられている。しかし、5つ以上または3つ以下の心出しラグ68を設けることもでき、心出しラグ68は、場合により、側壁12の内周に等しく隔置することができる。
【0073】
心出しラグ68は、湾曲面を有する傾斜として形成され、心出しラグ68がばねキャリア10の第2の遠位端15に向かって延びるにつれて、内方に突出する距離を増大させる。使用の際、心出しラグ68は、コイルばねCがばねキャリア10内の中心で正確に保持されるように、ばねキャリア10内に保持されたコイルばねCに接触して中心に位置合わせする働きをする。心出しラグ68は、コイルばねCとばねキャリア10との間の遊びを低減させるように、コイルばねCの外径と内側空洞13の内径との間の公差を補償することができる。これは、ばねキャリア10内へのコイルばねCの挿入中にコイルばねCが正確に配置されることを確実にする助けとなり、磁気部材18によってコイルばねCを固定して係合することができることを確実にする助けとなり得る。これは、ばねキャリア10の輸送中、またはコイルばねが正確に抜き取られて製造されているデバイス内へ配置されることが必要とされる製造プロセス中に、偶発的なまたは早すぎるばねの抜取りを回避する助けとなり得る。これは、製造エラーおよび/または停止を防止する助けとなり得る。心出しラグ68の構成は、場合により、本明細書に記載する本発明のあらゆる実施形態に適用可能とすることができ、そのような実施形態とともに提供することができる。
【0074】
本明細書に開示する実施形態のいずれかで、ばねキャリア10は、軸X-Xの方向に50mmから90mmの全長を含むことができ、この全長は、60mmから80mmとすることができ、約70.5mmまたは約73.5mmとすることができる。
【0075】
本明細書に開示する実施形態のいずれかにおいて、フランジ28は、軸X-Xの方向に1mmから5mmの高さd3を含むことができ、高さd3は、2mmから4mmとすることができ、約3mmとすることができる。
【0076】
本明細書に開示する実施形態のいずれかにおいて、1つまたはそれ以上の窓60を含むとき、窓60のうちのこの1つまたは少なくとも1つは、軸X-Xの方向に5mmから25mmの長さを含むことができ、この長さは、10mmから20mmとすることができ、約15mmとすることができる。
【0077】
本明細書に記載する実施形態において、磁気部材18は、中空本体11の第2の遠位端15に近接して配置されるものとして説明されている。しかし本発明は、そのような構成に限定されることを意図したものではなく、本開示の範囲内で意図される他の実施形態では、磁気部材18は、中空本体11の第1の近位端14に近接して配置することができ、または中空本体11の第1および第2の端部14、15間に配置することができる。
【0078】
中空本体11は、断面が円形の円筒管として構成されたものとして図示および記載されている。これにより、従来の円形のコイルばねCを密接して収容することが可能になる。またこれにより、使用の際にばねキャリア10の正しい配置のために中心軸X-Xの周りの特有の回転方向の向きが必要とされないため、コイルばねCの挿入およびコイルばねCの抜取りのためのばねキャリア10の位置合わせの簡単さを容易にすることができる。しかし本発明は、ばねキャリアのそのような構成に限定されることを意図したものではなく、楕円形、三角形、もしくは正方形、または他の多角形など、他の寸法および断面形状も可能である。
【0079】
中空本体11は、第1の端部14から第2の反対の端部15までその長さに沿って実質的に一定の断面を有するものとして図示および記載されている。これにより、ばねキャリア10を利用予定の組立てまたは製造プロセスにおける製造および操作の簡単さおよびコストを容易にすることができる。しかし本発明は、そのような構成に限定されることを意図したものではなく、代替実施形態では、ばねキャリア10は、その長さに沿って断面寸法を変動させることができる。たとえば、断面は、ばねキャリアの長さに沿って異なる直径の円形とすることができ、および/または断面は、ばねキャリアの長さの一部に沿って円形以外の形状とすることができる。たとえば、コイルばねCの挿入および抜取りが行われる第1の端部14の領域内で、第2の端部15の領域内より内径を大きくすることができる。これはさらに、コイルばねCをばねキャリア10内へ正確に案内する助けとなり得る。これは、提供される場合、先細り領域16Aからの支援に加えて行うことができる。またこれにより、ばねキャリア10の第2の端部15の領域内にコイルばねCをより厳密に制限することを可能にすることができる。しかし、本発明の範囲内で逆も同様であり、第1の端部14における内径を第2の端部15における内径より小さくすることができ、したがって内側空洞13は、ばねキャリア10の第1の端部14の領域内でわずかにより狭くなる。
【0080】
内径が中空本体11の長さに沿って実質的に均一である例示的な実施形態では、内径を7mmから14mmとすることができ、8mmから13mmとすることができ、9mmから12mmとすることができ、10mmから11mmとすることができ、約10.5mmまたは約11.5mmとすることができる。
【0081】
内径が中空本体の長さに沿って均一でない例示的な実施形態では、中空本体の一方の端部における内径を9mmから14mmとすることができ、10mmから13mmとすることができ、11mmから12mmとすることができ、約11.5mmとすることができる。中空本体の他方の端部における内径は、8mmから13mmとすることができ、9mmから12mmとすることができ、10mmから11mmとすることができ、約10.5mmとすることができる。
【0082】
本明細書に記載する本発明のすべての実施形態において、使用の際のばねキャリア10の輸送、移動、ならびに向きの変更、および反転中に、コイルばねCをばねキャリア10内で保持するために、磁気部材18は、コイルばねCの重量より大きい磁気引力をコイルばねCにかけることが可能でなければならないことが理解されよう。加えて、コイルばねCにかけられる磁気部材18の磁気引力は、製造プロセス中ならびに製造装置およびシステム内におけるばねキャリア10の移動および取扱い中に、コイルばねCをばねキャリア10内で固定して保持したままにすることを可能にするための力のマージン分だけ、コイルばねCの重量を超過することができる。力のマージンは、ばねキャリア10内でのコイルばねCの固定保持を実現しながら、製造プロセス中の強打もしくは他の機械的攪拌、上述したような空気流の力、または他の機械的な抜取りによって、コイルばねCの確実な抜取りを有効にするように選択することができる。そのような力のマージンは、5~50%、たとえば10~30%とすることができる。最小の力のマージンは、5%とすることができる。
【0083】
ばねキャリア10が形成される様々な材料を選択することができ、そのような材料は、プラスチックおよび金属を含み、ポリプロピレン、ポリエステル、コポリエステル、ポリアミド、アクリロブタジエンスチレン(ABS)、またはポリカーボネートを含む様々なポリマーを含むことができる。ばねキャリアは、ポリカーボネートからさらに形成することができ、再生ポリカーボネートを含むことができる。
【0084】
ばねキャリア10の中空本体11は、単一の成形構成要素、すなわち単一の一体構成要素として図示および記載されている。これにより、製造の簡単さおよびコストの削減という利点を提供することができる。磁気部材18は、ばねキャリア10内で接合もしくは機械的に締結することができ、または中空本体11と共成形することができ、または中空本体11内に埋め込むことができる。
【0085】
中空本体11の側壁12および端壁17は、たとえば、使用中に十分な構造的強度を提供するが、材料の過度の使用を最小にし、取扱いの簡単さおよび製造コストのために軽量性を維持するような寸法である。壁の厚さは、0.3mmから1.5mmとすることができ、たとえば厚さ0.5mm~1mmとすることができる。
【0086】
本開示のばねキャリアおよび関連する装置/システムの実施形態は、コイルばねCを固定して保持し、コイルばねCの抜取りを確実かつ正確に可能にするように構成される。コイルばねを固定して保持するとともに、正確に抜き取ることができるように、ばねキャリアは、コイルばねCの外径と内側空洞13の内壁との間に特定の隙間が設けられるように構成することができる。この隙間は、必要とされるときにコイルばねを正確に排出することができるように、内側空洞13に対するコイルばねCの実質的に妨害されない挿入および抜取りを可能にしながら、内側空洞内のコイルばねCの横方向の遊びまたは動きを最小にするように設定され得る。一実施形態では、そのような隙間は、0.05mm~0.3mm、たとえば0.1mm~0.2mmとすることができる。そのような隙間は、図4Aに寸法d1として示されている。一実施形態では、内側空洞13内に受け入れられるコイルばねCは、9.95mmの最大外径を有する。それに応じて、内径d2(図4Aに示す)は、約10.0mm~12.95mm、たとえば約10.05mm~11.05mmとすることができる。
【0087】
本明細書に記載するばねキャリア10の実施形態は、フランジ28を含む。これは、上述した位置合わせなどによって、ばねキャリアの使用、またはばねキャリア10の他の取扱いおよび操作の助けとなり得ることが有利である。しかし本開示は、ばねキャリア10がフランジ28を有することに限定されることを意図したものではなく、他の実施形態では、フランジ28を省略することもできる。
【0088】
本明細書に記載するばねキャリア10のいくつかの実施形態は、電磁石とともに動作し、電磁石21はばねキャリアの磁気部材18内で磁気効果を誘導し、または磁気部材18自体が電磁石を含む。本開示は、そのような電磁石の実施形態により可変の磁力を生成することが可能になることを実現することができ、そのような可変の磁力は、電磁石に提供される電力を変動させることによって制御することができることが想定される。磁力のそのような変動は、ばねキャリア10が異なるサイズ、質量、または材料のコイルばねとともに動作することを可能にすることができる。本開示の装置またはシステムは、使用の際に生成される磁力を制御するために電磁石21または電磁気部材18に接続されたまたは接続可能なコントローラを含むことができる。
【0089】
本明細書に記載するばねキャリア10の実施形態は、中空本体11の内側空洞内でコイルばねCを引き付けて保持するための磁気部材18を含む。本開示の範囲内で、磁気要素または磁気部材18という用語は、磁気的に引き付けることができる材料から作られたコイルばねCの磁気引力のための磁界を生成する、または生成することが可能な、構成要素を包含することが意図される。そのような磁気部材18は、電磁石などの単一の構成要素、または機構もしくはデバイスを含むことができる。そのような磁気部材には、任意の知られている材料の永久磁石を含むことができ、永久磁石の材料の成分は、電磁誘導などによって磁化可能になるように、または磁界を生成するように、磁性材料とすることができ、さらにそのような磁気部材は、電磁石を含む構成要素とすることができる。そのような材料は、材料の構造内に分散または他の形で提供された鉄金属または鉄金属を組み込む材料を含むことができる。そのような材料は、鋼、鉄、コバルト、または任意の他の知られている磁性材料もしくは磁化可能材料を含むことができる。
【0090】
上述した本開示の様々な異なる実施形態から明らかなように、ばねキャリア10は、中空本体11の第2の端部15に開口部もしくはアパーチャ38を含むことができ、または第2の端部は、端壁17、磁気部材18、もしくは端壁17に設けられた磁気部材18を有する端壁17などによって、完全に閉鎖することができる。中空本体11の第2の端部15が開口部を含まない実施形態は、内側空洞13内に設けられた磁気部材18と同様に、中空本体11の外側に設けられたまたは中空本体11内に埋め込まれた磁気部材18を含むことができる。
【0091】
ばねキャリア10は、特に図4Aおよび図4Bにおいて、ばねキャリア10が第1の端部14を最も上にした状態に向けられている間に、コイルばねCがばねキャリア10内へ挿入され、したがってコイルばねCが内側空洞13内へ重力により落下して、コイルばねが中空本体11の第2の端部15で端壁17または/および磁気部材18に当接するように構成されたものとして図示および記載されている。しかし、本開示のばねキャリア10の使用は、この使用に限定されるものではない。磁気部材18がコイルばねCを磁気的に引き付けることが可能であり、したがって磁気部材18がコイルばねCの重量を支持することができるため、コイルばねCは、ばねキャリア10を任意の向きにした状態で内側空洞13内へ挿入することができる。
【0092】
本開示の様々な実施形態は、内側空洞13内でコイルばねCを引き付けて保持するために磁気部材18を使用することが理解されよう。したがって、ばねキャリア10は、ばねキャリア10の使用の際に偏向または変形を必要とするいかなる部材も有していない。これは、使用の際の材料の疲労および損傷のリスクが低減または回避され、ばねキャリアの有用寿命を延ばす助けとなり得ることを意味する。これは、交換が必要になるまでに製造プロセスにおいてばねキャリアをより多くの動作に使用することができ、製造コストの削減、それによって作製される製品のコストの削減の助けとなり得るため、コスト上の利益になることが明らかである。
【0093】
本明細書に開示するいくつかの実施形態は、中空本体11の第1の近位端14の周辺部に延びるフランジ28を含む。そのような構成は、場合により、本明細書に記載するすべての実施形態に適用可能とすることができる。しかし本発明は、そのような構成に限定されることを意図したものではなく、本発明の範囲内で想定される実施形態は、フランジ28を含まなくてもよく、または第1の近位端の遠隔端以外で、たとえば第2の遠位端15で、もしくは第1の近位端と第2の遠位端との中間で、中空本体の長さに沿って配置されたフランジを含むこともできる。
【0094】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載するデバイス、装置、方法、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
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【国際調査報告】