(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】子癇前症及び他の血管新生障害の治療のために最適化された抗FLT1オリゴヌクレオチド化合物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240621BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240621BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240621BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240621BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240621BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240621BHJP
C07H 21/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
C12N15/113 ZNA
A61P15/00
A61P9/12
A61P1/16
A61P13/12
A61P7/00
A61K31/713
A61K48/00
A61K47/54
C07H21/02 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579170
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022034461
(87)【国際公開番号】W WO2022271786
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505220170
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ マサチューセッツ
【氏名又は名称原語表記】University of Massachusetts
(71)【出願人】
【識別番号】301033259
【氏名又は名称】ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センター,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン,ヴィグネーシュ ナラヤン
(72)【発明者】
【氏名】クルマンチ,アナント
(72)【発明者】
【氏名】コボロバ,アナスタシア
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,サラ
(72)【発明者】
【氏名】ビスカンス,アナベル
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057CC02
4C057DD03
4C057MM02
4C057MM05
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA421
4C084ZA511
4C084ZA751
4C084ZA811
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZA51
4C086ZA75
4C086ZA81
(57)【要約】
本開示は、血管新生障害の新規標的に関する。新規オリゴヌクレオチドも提供する。血管新生障害(例えば、子癇前症)の治療のための新規オリゴヌクレオチドの使用方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
ここで、(1)前記アンチセンス鎖が、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;
(2)前記アンチセンス鎖が、少なくとも20ヌクレオチド長であり;
(3)前記アンチセンス鎖が、少なくとも50%の2’-O-メチル修飾を含み;
(4)前記アンチセンス鎖の前記5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び20位のいずれか1つ以上の前記ヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;
(5)前記アンチセンス鎖の前記3’末端から1~2位から1~8位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;
(6)前記アンチセンス鎖の一部が、前記センス鎖の一部に相補的であり;
(7)前記センス鎖が、少なくとも15のヌクレオチド長であり;
(8)前記センス鎖が、少なくとも65%の2’-O-メチル修飾を含み;
(9)前記センス鎖の前記5’末端から、4位、6位、8位、10位、及び14位のいずれか1つ以上の前記ヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;
(10)前記センス鎖の前記5’末端から1~2位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている、前記dsRNA分子。
【請求項2】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)であって、
ここで、(1)前記アンチセンス鎖が、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;
(2)前記アンチセンス鎖が、2’-メトキシ-リボヌクレオチド及び2’-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;
(3)前記アンチセンス鎖の前記5’末端から2位及び14位の前記ヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;
(4)前記アンチセンス鎖の前記3’末端から1~2位から1~7位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;
(5)前記アンチセンス鎖の一部が、前記センス鎖の一部に相補的であり;
(6)前記センス鎖が、2’-メトキシ-リボヌクレオチド及び2’-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;
(7)前記センス鎖の前記5’末端から1~2位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合している、前記dsRNA。
【請求項3】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
ここで、(1)前記アンチセンス鎖が、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;
(2)前記アンチセンス鎖が、少なくとも20ヌクレオチド長であり;
(3)前記アンチセンス鎖が、少なくとも50%の2’-O-メチル修飾を含み;
(4)前記アンチセンス鎖の前記5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び18位のいずれか1つ以上の前記ヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;
(5)前記アンチセンス鎖の前記3’末端から1~2位から1~8位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;
(6)前記アンチセンス鎖の一部が、前記センス鎖の一部に相補的であり;
(7)前記センス鎖が、少なくとも15のヌクレオチド長であり;
(8)前記センス鎖が、少なくとも80%の2’-O-メチル修飾を含み;
(9)前記センス鎖の前記5’末端から、7位、9位、及び11位のいずれか1つ以上の前記ヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;
(10)前記センス鎖の前記5’末端から1~2位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている、前記dsRNA分子。
【請求項4】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
ここで、(1)前記アンチセンス鎖が、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;
(2)前記アンチセンス鎖が、少なくとも20ヌクレオチド長であり;
(3)前記アンチセンス鎖が、少なくとも70%の2’-O-メチル修飾を含み;
(4)前記アンチセンス鎖の前記5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、及び14位のいずれか1つ以上の前記ヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;
(5)前記アンチセンス鎖の前記3’末端から1~2位から1~8位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;
(6)前記アンチセンス鎖の一部が、前記センス鎖の一部に相補的であり;
(7)前記センス鎖が、少なくとも15のヌクレオチド長であり;
(8)前記センス鎖が、100%の2’-O-メチル修飾を含み;
(9)前記センス鎖の前記5’末端から1~2位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている、前記dsRNA分子。
【請求項5】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
ここで、(1)前記アンチセンス鎖が、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;
(2)前記アンチセンス鎖が、少なくとも20ヌクレオチド長であり;
(3)前記アンチセンス鎖が、少なくとも75%の2’-O-メチル修飾を含み;
(4)前記アンチセンス鎖の前記5’末端から2位、4位、5位、6位、及び14位のいずれか1つ以上の前記ヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;
(5)前記アンチセンス鎖の前記3’末端から1~2位から1~8位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;
(6)前記アンチセンス鎖の一部が、前記センス鎖の一部に相補的であり;
(7)前記センス鎖が、少なくとも15のヌクレオチド長であり;
(8)前記センス鎖が、100%の2’-O-メチル修飾を含み;
(9)前記センス鎖の前記5’末端から1~2位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている、前記dsRNA分子。
【請求項6】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
ここで、(1)前記アンチセンス鎖が、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;
(2)前記アンチセンス鎖が、少なくとも20ヌクレオチド長であり;
(3)前記アンチセンス鎖が、少なくとも85%の2’-O-メチル修飾を含み;
(4)前記アンチセンス鎖の前記5’末端から2位及び14位のいずれか1つ以上の前記ヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;
(5)前記アンチセンス鎖の前記3’末端から1~2位から1~8位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;
(6)前記アンチセンス鎖の一部が、前記センス鎖の一部に相補的であり;
(7)前記センス鎖が、少なくとも15のヌクレオチド長であり;
(8)前記センス鎖が、100%の2’-O-メチル修飾を含み;
(9)前記センス鎖の前記5’末端から1~2位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている、前記dsRNA分子。
【請求項7】
前記アンチセンス鎖が、20ヌクレオチド長である、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項8】
前記アンチセンス鎖が、21ヌクレオチド長である、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項9】
前記アンチセンス鎖が、22ヌクレオチド長である、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項10】
前記センス鎖が、15ヌクレオチド長である、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項11】
前記センス鎖が、16ヌクレオチド長である、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項12】
前記センス鎖が、18ヌクレオチド長である、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項13】
前記センス鎖が、20ヌクレオチド長である、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項14】
15塩基対~20塩基対の二本鎖領域を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項15】
15塩基対の二本鎖領域を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項16】
16塩基対の二本鎖領域を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項17】
18塩基対の二本鎖領域を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項18】
20塩基対の二本鎖領域を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項19】
前記dsRNAが、平滑末端を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項20】
前記dsRNAが、少なくとも1つの一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項21】
前記dsRNAが、約2ヌクレオチド~5ヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを含む、請求項20に記載のdsRNA。
【請求項22】
4~16のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項23】
8~13のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項24】
前記センス鎖が、前記アンチセンス鎖と前記センス鎖との間に1つ以上のヌクレオチドミスマッチを含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項25】
前記アンチセンス鎖が、5’ホスフェート、5’-アルキルホスホネート、5’アルキレンホスホネート、または5’アルケニルホスホネートを含む、請求項1~24のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項26】
前記アンチセンス鎖が、5’ビニルホスホネートを含む、請求項25に記載のdsRNA。
【請求項27】
機能部分が、前記センス鎖の前記3’末端に連結されている、請求項1~26のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項28】
前記機能部分が、疎水性部分を含む、請求項27に記載のdsRNA。
【請求項29】
前記疎水性部分が、脂肪酸、ステロイド、セコステロイド、脂質、ガングリオシド、ヌクレオシド類似体、エンドカンナビノイド、ビタミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項28に記載のdsRNA。
【請求項30】
前記ステロイドが、コレステロール及びリトコール酸(LCA)からなる群から選択される、請求項29に記載のdsRNA。
【請求項31】
前記脂肪酸が、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及びドコサン酸(DCA)からなる群から選択される、請求項29に記載のdsRNA。
【請求項32】
前記ビタミンが、コリン、ビタミンA、ビタミンE、及びそれらの誘導体、またはそれらの代謝物からなる群から選択される、請求項29に記載のdsRNA。
【請求項33】
前記機能部分が、リンカーにより前記センス鎖に連結されている、請求項27~32のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項34】
前記リンカーが、切断可能なリンカーである、請求項33に記載のdsRNA。
【請求項35】
前記切断可能なリンカーが、ホスホジエステル連結、ジスルフィド連結、酸に不安定な連結、または光切断可能な連結を含む、請求項34に記載のdsRNA。
【請求項36】
前記切断可能なリンカーが、ホスホジエステルヌクレオチド間連結を有するdTdTジヌクレオチドを含む、請求項34または35に記載のdsRNA。
【請求項37】
前記酸に不安定な連結が、β-チオプロピオネート連結またはカルボキシジメチルマレイン酸無水物(CDM)連結を含む、請求項35に記載のdsRNA。
【請求項38】
前記リンカーが、二価または三価のリンカーを含む、請求項33~37のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項39】
前記二価または三価のリンカーが、
【化1】
(式中、nは、1、2、3、4、または5である)からなる群から選択される、請求項38に記載のdsRNA。
【請求項40】
前記リンカーが、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、アミド、カルバメート、またはそれらの組み合わせを含む、請求項33~39のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項41】
前記リンカーが、三価リンカーである場合、前記リンカーは、ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体をさらに連結する、請求項38~40のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項42】
前記ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体が、以下からなる群から選択される、請求項41に記載のdsRNA:
【化2】
(式中、Xは、O、SまたはBH
3である)。
【請求項43】
センス鎖の前記3’末端から1位及び2位の前記ヌクレオチド、及びアンチセンス鎖の前記5’末端から1位及び2位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエート連結を介して隣接するリボヌクレオチドに結合される、請求項1~42のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項44】
前記相補性の領域が、配列番号1または配列番号2の少なくとも15、16、17または18の連続したヌクレオチドに相補的である、請求項1~43のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項45】
前記相補性の領域が、配列番号1または配列番号2と3つを超えるミスマッチは
含まない、請求項1~43のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項46】
前記相補性の領域が、配列番号1または配列番号2に対して完全に相補的である、請求項1~43のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項47】
前記アンチセンス鎖が、5’UAAAUUUGGAGAUCCGAGAGA3’の核酸配列を含み、前記センス鎖が、5’CGGAUCUCCAAAUUUA3’の核酸配列を含む、請求項1~46のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項48】
前記アンチセンス鎖が、5’UAUAAAUGGUAGCUAUGAUGA3’の核酸配列を含み、前記センス鎖が、5’AUAGCUACCAUUUAUA3’の核酸配列を含む、請求項1~46のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項49】
細胞または生物におけるsFLT1タンパク質の発現が、少なくとも約20%低下する、請求項1~46のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項50】
PE、分娩後PE、子癇またはHELLP症候群を治療または管理する方法であって、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の請求項1~48のいずれか1項に記載のdsRNAを投与することを含む、前記方法。
【請求項51】
前記医薬組成物が、静脈内または皮下投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
sFLT1タンパク質の発現を、前記対象において少なくとも約20%減少させる、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
PE、分娩後PE、子癇またはHELLP症候群のうちの1つ以上の症状の治療を必要とする対象において、それを行う方法であって、請求項1~48のいずれか1項に記載のdsRNAを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項54】
血管新生障害の1つ以上の症状の治療を必要とする対象において、それを行う方法であって、請求項1~48のいずれか1項に記載のdsRNAを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項55】
前記血管新生障害が、PE、分娩後PE、子癇及びHELLP症候群からなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
第1のdsRNAと、第2のdsRNAと、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物であって:
前記第1のdsRNAが、第1のセンス鎖及び第1のアンチセンス鎖を含み、前記第1のアンチセンス鎖が、配列番号1に実質的に相補的である相補性領域を含み、前記第1のdsRNAが、請求項1~46のいずれか1項に記載のdsRNAを含み;
前記第2のdsRNAが、第2のセンス鎖及び第2のアンチセンス鎖を含み、前記第2のアンチセンス鎖が、配列番号2に実質的に相補的である相補性領域を含み、前記第2のdsRNAが、請求項1~46のいずれか1項に記載のdsRNAを含む;
前記医薬組成物。
【請求項57】
第1のdsRNAと、第2のdsRNAと、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物であって:
前記第1のdsRNAが、第1のセンス鎖及び第1のアンチセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、前記第1のアンチセンス鎖が、配列番号1と実質的に相補的である相補性領域を含み;
前記第2のdsRNAが、第2のセンス鎖及び第2のアンチセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有し、前記第2のアンチセンス鎖が、配列番号2と実質的に相補的である相補性領域を含み;
前記第1のdsRNA及び前記第2のdsRNAのそれぞれについて、
(1)前記アンチセンス鎖が、少なくとも20ヌクレオチド長であり;
(3)前記アンチセンス鎖が、少なくとも50%の2’-O-メチル修飾を含み;
(4)前記アンチセンス鎖の前記5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び20位のいずれか1つ以上の前記ヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;
(5)前記アンチセンス鎖の前記3’末端から1~2位から1~8位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;
(6)前記アンチセンス鎖の一部が、前記センス鎖の一部に相補的であり;
(7)前記センス鎖が、少なくとも15のヌクレオチド長であり;
(8)前記センス鎖が、少なくとも65%の2’-O-メチル修飾を含み;
(9)前記センス鎖の前記5’末端から、4位、6位、8位、10位、及び14位のいずれか1つ以上の前記ヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;
(10)前記センス鎖の前記5’末端から1~2位の前記ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている、前記医薬組成物。
【請求項58】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
(1)前記アンチセンス鎖が、(mU)#(fA)#(mA)(fA)(fU)(fU)(mU)(fG)(mG)(fA)(mG)(fA)(mU)(fC)#(mC)#(fG)#(mA)#(mG)#(mA)#(fG)#(mA)を含み;
(2)前記センス鎖が、(mC)#(mG)#(mG)(fA)(mU)(fC)(mU)(fC)(mC)(fA)(mA)(mA)(mU)(fU)#(mU)#(mA)を含み、
ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応する、前記dsRNA分子。
【請求項59】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
(1)前記アンチセンス鎖が、(mU)#(fA)#(mU)(fA)(fA)(fA)(mU)(fG)(mG)(fU)(mA)(fG)(mC)(fU)#(mA)#(fU)#(mG)#(mA)#(mU)#(fG)#(mA)を含み;
(2)前記センス鎖が、(mA)#(mU)#(mA)(fG)(mC)(fU)(mA)(fC)(mC)(fA)(mU)(mU)(mU)(fA)#(mU)#(mA)を含み、
ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応する、前記dsRNA分子。
【請求項60】
前記アンチセンス鎖が、5’ビニルホスホネートを含む、請求項58または59に記載のdsRNA。
【請求項61】
前記センス鎖の前記3’末端に連結されたドコサン酸(DCA)コンジュゲートを含む、請求項58~60のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項62】
前記DCAが、リンカーにより前記センス鎖に連結されている、請求項61に記載のdsRNA。
【請求項63】
前記リンカーが、切断可能なリンカーである、請求項62に記載のdsRNA。
【請求項64】
前記切断可能なリンカーが、ホスホジエステル連結、ジスルフィド連結、酸に不安定な連結、または光切断可能な連結を含む、請求項63に記載のdsRNA。
【請求項65】
前記切断可能なリンカーが、ホスホジエステルヌクレオチド間連結を有するdTdTジヌクレオチドを含む、請求項63または64に記載のdsRNA。
【請求項66】
前記リンカーが、二価または三価のリンカーを含む、請求項62~65のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項67】
前記二価または三価のリンカーが、
【化3】
(式中、nは、1、2、3、4、または5である)からなる群から選択される、請求項66に記載のdsRNA。
【請求項68】
前記リンカーが、三価リンカーである場合、前記リンカーは、ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体をさらに連結する、請求項62~67のいずれか1項に記載のdsRNA。
【請求項69】
前記ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体が、以下からなる群から選択される、請求項68に記載のdsRNA:
【化4】
(式中、Xは、O、SまたはBH
3である)。
【請求項70】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
(1)前記アンチセンス鎖が、V(mU)#(fA)#(mA)(fA)(fU)(fU)(mU)(fG)(mG)(fA)(mG)(fA)(mU)(fC)#(mC)#(fG)#(mA)#(mG)#(mA)#(fG)#(mA)を含み;
(2)前記センス鎖が、(mC)#(mG)#(mG)(fA)(mU)(fC)(mU)(fC)(mC)(fA)(mA)(mA)(mU)(fU)#(mU)#(mA)(T)(T)-PCDCAを含み、
ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「T」は、チミジンDNAヌクレオチドに対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応し、「V」は、5’-ビニルホスホネートに対応し、「PCDCA」は、リン酸リンカーを介した3’-C7-ホスホコリン-ドコサン酸コンジュゲートに対応する、前記dsRNA分子。
【請求項71】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
(1)前記アンチセンス鎖が、V(mU)#(fA)#(mU)(fA)(fA)(fA)(mU)(fG)(mG)(fU)(mA)(fG)(mC)(fU)#(mA)#(fU)#(mG)#(mA)#(mU)#(fG)#(mA)を含み;
(2)前記センス鎖が、(mA)#(mU)#(mA)(fG)(mC)(fU)(mA)(fC)(mC)(fA)(mU)(mU)(mU)(fA)#(mU)#(mA)(T)(T)-PCDCAを含み、
ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「T」は、チミジンDNAヌクレオチドに対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応し、「V」は、5’-ビニルホスホネートに対応し、「PCDCA」は、リン酸リンカーを介した3’-C7-ホスホコリン-ドコサン酸コンジュゲートに対応する、前記dsRNA分子。
【請求項72】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
(1)前記アンチセンス鎖が、式Iまたはその塩を含み:
【化5】
(2)前記センス鎖が、式IIまたはその塩:
【化6】
を含む、前記dsRNA分子。
【請求項73】
アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、
(1)前記アンチセンス鎖が、式IIIまたはその塩を含み:
【化7】
(2)前記センス鎖が、式IVまたはその塩:
【化8】
を含む、前記dsRNA分子。
【請求項74】
前記塩が、ナトリウム塩またはカリウム塩を含む、請求項72または73に記載のdsRNA。
【請求項75】
PE、分娩後PE、子癇またはHELLP症候群を治療または管理する方法であって、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の請求項58~74のいずれか1項に記載のdsRNAを投与することを含む、前記方法。
【請求項76】
血管新生障害の1つ以上の症状の治療を必要とする対象において、それを行う方法であって、請求項58~74のいずれか1項に記載のdsRNAを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項77】
第1のdsRNAと、第2のdsRNAと、を含む医薬組成物であって:
前記第1のdsRNAが、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有し、
(1)前記アンチセンス鎖が、V(mU)#(fA)#(mA)(fA)(fU)(fU)(mU)(fG)(mG)(fA)(mG)(fA)(mU)(fC)#(mC)#(fG)#(mA)#(mG)#(mA)#(fG)#(mA)を含み;
(2)前記センス鎖が、(mC)#(mG)#(mG)(fA)(mU)(fC)(mU)(fC)(mC)(fA)(mA)(mA)(mU)(fU)#(mU)#(mA)(T)(T)-PCDCAを含み、
前記第2のdsRNAが、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有し、
(1)前記アンチセンス鎖が、V(mU)#(fA)#(mU)(fA)(fA)(fA)(mU)(fG)(mG)(fU)(mA)(fG)(mC)(fU)#(mA)#(fU)#(mG)#(mA)#(mU)#(fG)#(mA)を含み;
(2)前記センス鎖が、(mA)#(mU)#(mA)(fG)(mC)(fU)(mA)(fC)(mC)(fA)(mU)(mU)(mU)(fA)#(mU)#(mA)(T)(T)-PCDCAを含み、
ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「T」は、チミジンDNAヌクレオチドに対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応し、「V」は、5’-ビニルホスホネートに対応し、「PCDCA」は、リン酸リンカーを介した3’-C7-ホスホコリン-ドコサン酸コンジュゲートに対応する、前記医薬組成物。
【請求項78】
第1のdsRNAと、第2のdsRNAと、を含む医薬組成物であって:
前記第1のdsRNAが、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有し、
(1)前記アンチセンス鎖が、式Iまたはその塩を含み:
【化9】
(2)前記センス鎖が、式IIまたはその塩を含み:
【化10】
前記第2のdsRNAが、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有し、
(1)前記アンチセンス鎖が、式IIIまたはその塩を含み:
【化11】
(2)前記センス鎖が、式IVまたはその塩:
【化12】
を含む、前記医薬組成物。
【請求項79】
前記塩が、ナトリウム塩またはカリウム塩を含む、請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項80】
PE、分娩後PE、子癇またはHELLP症候群を治療または管理する方法であって、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の請求項77または78に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項81】
血管新生障害の1つ以上の症状の治療を必要とする対象において、それを行う方法であって、請求項77または78に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年6月23日に出願された米国仮特許出願第63/214,224号の利益を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、血管新生障害(例えば、子癇前症)を治療するための新規血管新生標的及び新規オリゴヌクレオチド化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
子癇前症(PE)は、世界中の妊娠中の5~8%に起こる重篤な進行性の致死的合併症であり、その結果、早産のほか、母体及び胎児両方の罹患率及び死亡率が増加する。高血圧及びタンパク尿を特徴とし、PEは、広範囲の腎損傷及び肝損傷、溶血、血小板減少及び死を引き起こし得る。
【0004】
PEの母体の症状は、主に、高レベルの胎盤分泌可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFLT1)によって引き起こされ、これは本疾患の診断及び予後の両方のマーカーである。研究により、sFLT1がPEの治療のための有望な治療標的であることが示されている。
【0005】
これまでの研究では、妊娠中のマウス及び非ヒト霊長類において、胎盤及び循環中のsFLT1のレベルを両方とも低下させるためにsFLT1の主要なアイソフォームを標的とするsiRNAが同定されている(Turanov et.al.Nat Biotechnol.2018 Nov 19:10.1038/nbt.4297)。しかし、妊婦における治療的使用のために最適化されたsiRNAの開発が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、sFLT1タンパク質をコードし、かつ全長FLT1(fl-FLT1)タンパク質をコードしていないmRNAアイソフォームを標的にする最適化されたオリゴヌクレオチドの発見に一部基づく。本発明の新規オリゴヌクレオチドは、PE、分娩後PE、子癇、及び/またはHELLP症候群を治療するために使用することができる。本発明の新規オリゴヌクレオチド配列(例えば、低分子干渉RNA(siRNA))は、fl-FLT1中に存在しない配列の1つ以上、例えば、1つ以上のsFLT1タンパク質をコードするmRNAの1つ以上のイントロン領域に結合することによって、fl-FLT1に影響を与えることなく、sFLT1レベルを選択的に減少させるように操作されている。本明細書に記載の新規の最適化されたオリゴヌクレオチド(例えばsiRNA)は、胎児に送達することなく母体に全身的(すなわち、静脈内または皮下)送達を用いて、胎盤栄養膜細胞(過剰なsFLT1産生の原因となる細胞型)に優先的に送達され得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の最適化されたオリゴヌクレオチドは、高レベルのサイレンシング効果を保持し、胎盤組織の蓄積の増加、オフターゲット組織の蓄積の減少、siRNA分解の減少、毒性の減少、及びより広い治療指数を有する。
【0007】
いくつかの態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも50%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び20位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的である。
【0008】
別の態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも50%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び20位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、少なくとも65%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から、4位、6位、8位、10位、及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(10)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0009】
特定の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び20位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではない。
【0010】
いくつかの態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖が、2’-メトキシ-リボヌクレオチド及び2’-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;(3)アンチセンス鎖の5’末端から2位及び14位のヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(4)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(5)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的である。
【0011】
別の態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖が、2’-メトキシ-リボヌクレオチド及び2’-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;(3)アンチセンス鎖の5’末端から2位及び14位のヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(4)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(5)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(6)センス鎖は、2’-メトキシ-リボヌクレオチド及び2’-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;(7)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0012】
いくつかの態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも50%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び18位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的である。
【0013】
別の態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも50%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び18位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、少なくとも80%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から、7位、9位、及び11位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(10)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0014】
特定の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び18位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではない。
【0015】
特定の実施形態では、センス鎖の5’末端から7位、9位及び11位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではない。
【0016】
いくつかの態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも70%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的である。
【0017】
別の態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも70%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、100%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0018】
特定の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、及び14位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではない。
【0019】
いくつかの態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも75%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的である。
【0020】
別の態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも75%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、100%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0021】
いくつかの態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも85%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的である。
【0022】
別の態様では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも85%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、100%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0023】
特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、20ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、22ヌクレオチド長である。
【0024】
特定の実施形態では、センス鎖は、15ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、センス鎖は、16ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、センス鎖は、18ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、センス鎖は、20ヌクレオチド長である。
【0025】
特定の実施形態では、dsRNAは、15塩基対~20塩基対の二本鎖領域を含む。特定の実施形態では、dsRNAは、15塩基対の二本鎖領域を含む。特定の実施形態では、dsRNAは、16塩基対の二本鎖領域を含む。特定の実施形態では、dsRNAは、18塩基対の二本鎖領域を含む。特定の実施形態では、dsRNAは、20塩基対の二本鎖領域を含む。
【0026】
特定の実施形態では、dsRNAは、平滑末端を含む。
【0027】
特定の実施形態では、dsRNAは、少なくとも1つの一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを含む。
【0028】
特定の実施形態では、dsRNAは、約2ヌクレオチド~5ヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを含む。
【0029】
特定の実施形態では、dsRNAは、4~16のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、dsRNAは、8~13のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む。
【0030】
特定の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖とセンス鎖との間に1つ以上のヌクレオチドミスマッチを含む。
【0031】
特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’ホスフェート、5’-アルキルホスホネート、5’アルキレンホスホネート、または5’アルケニルホスホネートを含む。
【0032】
特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’ビニルホスホネートを含む。
【0033】
特定の実施形態では、機能部分は、センス鎖の3’末端に連結されている。
【0034】
特定の実施形態では、機能部分は、疎水性部分を含む。
【0035】
特定の実施形態では、疎水性部分は、脂肪酸、ステロイド、セコステロイド、脂質、ガングリオシド、ヌクレオシド類似体、エンドカンナビノイド、ビタミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0036】
特定の実施形態では、ステロイドは、コレステロール及びリトコール酸(LCA)からなる群から選択される。
【0037】
特定の実施形態では、脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及びドコサン酸(DCA)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、EPAである。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、DHAである。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、DCAである。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、PC-DCAである。
【0038】
特定の実施形態では、ビタミンは、コリン、ビタミンA、ビタミンE、及びそれらの誘導体、またはそれらの代謝物からなる群から選択される。
【0039】
特定の実施形態では、機能部分は、リンカーにより、センス鎖に連結されている。
【0040】
特定の実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーである。
【0041】
特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、ホスホジエステル連結、ジスルフィド連結、酸に不安定な連結、または光切断可能な連結を含む。
【0042】
特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、ホスホジエステルヌクレオチド間連結を有するdTdTジヌクレオチドを含む。
【0043】
特定の実施形態では、酸に不安定な連結は、β-チオプロピオネート連結またはカルボキシジメチルマレイン酸無水物(CDM)連結を含む。
【0044】
特定の実施形態では、リンカーは、二価または三価のリンカーを含む。
【0045】
特定の実施形態では、二価または三価のリンカーは、
【化1】
(式中、nは、1、2、3、4、または5である)からなる群から選択される。
【0046】
特定の実施形態では、リンカーは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、アミド、カルバメート、またはそれらの組み合わせを含む。
【0047】
特定の実施形態では、リンカーが三価リンカーである場合、リンカーは、ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体をさらに連結する。
【0048】
特定の実施形態では、リンカーは、ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体をさらに連結する。
【0049】
特定の実施形態では、ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体は、以下からなる群から選択される:
【化2】
(式中、Xは、O、SまたはBH
3である)。
【0050】
特定の実施形態では、センス鎖の3’末端から1位及び2位のヌクレオチド、及びアンチセンス鎖の5’末端から1位及び2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート連結を介して隣接するリボヌクレオチドに結合される。
【0051】
特定の実施形態では、相補性の領域は、配列番号1または配列番号2の少なくとも15、16、17または18の連続するヌクレオチドと相補的である。
【0052】
特定の実施形態では、相補性の領域は、配列番号1または配列番号2と3つを超えるミスマッチは含まない。
【0053】
特定の実施形態では、相補性の領域は、配列番号1または配列番号2に対して完全に相補的である。
【0054】
特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAAAUUUGGAGAUCCGAGAGA3’の核酸配列を含むかまたはそれからなり、センス鎖は5’CGGAUCUCCAAAUUUA3’の核酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0055】
特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAUAAAUGGUAGCUAUGAUGA3’の核酸配列を含むかまたはそれからなり、センス鎖は5’AUAGCUACCAUUUAUA3’の核酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示は、dsRNA分子の塩を提供する。いくつかの実施形態では、塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩を含む。いくつかの実施形態では、塩は、薬学的に許容される塩を含む。
【0057】
特定の実施形態では、細胞または生物におけるsFLT1タンパク質の発現は、少なくとも約20%低下する。
【0058】
一態様では、本開示は、PE、分娩後PE、子癇またはHELLP症候群を治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記のdsRNAを投与することを含む。
【0059】
いくつかの態様では、本開示は、PEを治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記のdsRNAを投与することを含む。
【0060】
いくつかの態様では、本開示は、分娩後PEを治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記のdsRNAを投与することを含む。
【0061】
いくつかの態様では、本開示は、子癇を治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記のdsRNAを投与することを含む。
【0062】
いくつかの態様では、本開示は、HELLP症候群を治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記のdsRNAを投与することを含む。
【0063】
特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈内または皮下投与される。
【0064】
特定の実施形態では、sFLT1タンパク質の発現は、対象において少なくとも約20%低下する。
【0065】
一態様では、本開示は、PE、分娩後PE、子癇またはHELLP症候群のうちの1つ以上の症状の治療を必要とする対象において、それを行う方法を提供し、本方法は、上記のdsRNAを対象に投与することを含む。
【0066】
一態様では、本開示は、血管新生障害の1つ以上の症状の治療を必要とする対象において、それを行う方法を提供し、本方法は、上記のdsRNAを対象に投与することを含む。
【0067】
特定の実施形態では、血管新生障害は、PE、分娩後PE、子癇及びHELLP症候群からなる群から選択される。
【0068】
一態様では、本開示は、第1のdsRNAと、第2のdsRNAと、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供し、ここで、第1のdsRNAは、第1のセンス鎖及び第1のアンチセンス鎖を含み、上記第1のアンチセンス鎖は、配列番号1に実質的に相補的な相補性領域を含み、上記第1のdsRNAは、上記のdsRNAを含み;かつ、上記第2のdsRNAは、第2のセンス鎖及び第2のアンチセンス鎖を含み、上記第2のアンチセンス鎖は、配列番号2に実質的に相補的な相補性領域を含み、上記第2のdsRNAは、上記のdsRNAを含む。
【0069】
一態様では、本開示は、第1のdsRNAと、第2のdsRNAと、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供し、ここで、上記第1のdsRNAは、第1のセンス鎖及び第1のアンチセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、上記第2のdsRNAは、第2のセンス鎖及び第2のアンチセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、第1のアンチセンス鎖は、配列番号1と実質的に相補的である相補性領域を含み;第2のアンチセンス鎖は、配列番号2と実質的に相補的である相補性領域を含み;第1のdsRNA及び第2のdsRNAのそれぞれについて:(1)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも50%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び20位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、少なくとも65%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から、4位、6位、8位、10位、及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(10)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0070】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、(mU)#(fA)#(mA)(fA)(fU)(fU)(mU)(fG)(mG)(fA)(mG)(fA)(mU)(fC)#(mC)#(fG)#(mA)#(mG)#(mA)#(fG)#(mA)を含み;(2)センス鎖は、(mC)#(mG)#(mG)(fA)(mU)(fC)(mU)(fC)(mC)(fA)(mA)(mA)(mU)(fU)#(mU)#(mA)を含み、ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応する。
【0071】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、ここで、アンチセンス鎖は、(mU)#(fA)#(mA)(fA)(fU)(fU)(mU)(fG)(mG)(fA)(mG)(fA)(mU)(fC)#(mC)#(fG)#(mA)#(mG)#(mA)#(fG)#(mA)を含み;ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応する。
【0072】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、ここで、センス鎖は、(mC)#(mG)#(mG)(fA)(mU)(fC)(mU)(fC)(mC)(fA)(mA)(mA)(mU)(fU)#(mU)#(mA)を含み、ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応する。
【0073】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、(1)アンチセンス鎖は、(mU)#(fA)#(mU)(fA)(fA)(fA)(mU)(fG)(mG)(fU)(mA)(fG)(mC)(fU)#(mA)#(fU)#(mG)#(mA)#(mU)#(fG)#(mA)を含み;(2)センス鎖は、(mA)#(mU)#(mA)(fG)(mC)(fU)(mA)(fC)(mC)(fA)(mU)(mU)(mU)(fA)#(mU)#(mA)を含み、ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応する。
【0074】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、ここで、アンチセンス鎖は、(mU)#(fA)#(mU)(fA)(fA)(fA)(mU)(fG)(mG)(fU)(mA)(fG)(mC)(fU)#(mA)#(fU)#(mG)#(mA)#(mU)#(fG)#(mA)を含み;ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応する。
【0075】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、ここで、センス鎖は、(mA)#(mU)#(mA)(fG)(mC)(fU)(mA)(fC)(mC)(fA)(mU)(mU)(mU)(fA)#(mU)#(mA)を含み、ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応する。
【0076】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、5’ビニルホスホネートを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、dsRNAは、センス鎖の3’末端に連結されたドコサン酸(DCA)コンジュゲートを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、DCAは、リンカーによってセンス鎖に連結されている。
【0079】
いくつかの実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーである。
【0080】
いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、ホスホジエステル連結、ジスルフィド連結、酸に不安定な連結、または光切断可能な連結を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、ホスホジエステルヌクレオチド間連結を有するdTdTジヌクレオチドを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、リンカーは、二価または三価のリンカーを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、二価または三価のリンカーは、
【化3】
(式中、nは、1、2、3、4または5である)からなる群から選択される。
【0084】
いくつかの実施形態では、リンカーが三価リンカーである場合、リンカーは、ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体をさらに連結する。
【0085】
いくつかの実施形態では、ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体は、以下からなる群から選択される:
【化4】
(式中、Xは、O、SまたはBH
3である)。
【0086】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、V(mU)#(fA)#(mA)(fA)(fU)(fU)(mU)(fG)(mG)(fA)(mG)(fA)(mU)(fC)#(mC)#(fG)#(mA)#(mG)#(mA)#(fG)#(mA)を含み;(2)センス鎖は、(mC)#(mG)#(mG)(fA)(mU)(fC)(mU)(fC)(mC)(fA)(mA)(mA)(mU)(fU)#(mU)#(mA)(T)(T)-PCDCAを含み、ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「T」は、チミジンDNAヌクレオチドに対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応し、「V」は、5’-ビニルホスホネートに対応し、「PCDCA」は、リン酸リンカーを介した3’-C7-ホスホコリン-ドコサン酸コンジュゲートに対応する。
【0087】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、(1)アンチセンス鎖は、V(mU)#(fA)#(mU)(fA)(fA)(fA)(mU)(fG)(mG)(fU)(mA)(fG)(mC)(fU)#(mA)#(fU)#(mG)#(mA)#(mU)#(fG)#(mA)を含み;(2)センス鎖は、(mA)#(mU)#(mA)(fG)(mC)(fU)(mA)(fC)(mC)(fA)(mU)(mU)(mU)(fA)#(mU)#(mA)(T)(T)-PCDCAを含み、ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「T」は、チミジンDNAヌクレオチドに対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応し、「V」は、5’-ビニルホスホネートに対応し、「PCDCA」は、リン酸リンカーを介した3’-C7-ホスホコリン-ドコサン酸コンジュゲートに対応する。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示は、dsRNA分子の塩を提供する。いくつかの実施形態では、塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩を含む。いくつかの実施形態では、塩は、薬学的に許容される塩を含む。
【0089】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、
(1)アンチセンス鎖が、式Iまたはその塩を含み:
【化5】
(2)センス鎖が、式IIまたはその塩を含む:
【化6】
【0090】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、
(1)アンチセンス鎖が、式IIIまたはその塩を含み:
【化7】
(2)センス鎖が、式IVまたはその塩を含む:
【化8】
【0091】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、アンチセンス鎖が、式Iまたはその塩を含む:
【化9】
【0092】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、センス鎖が、式IIまたはその塩を含む:
【化10】
【0093】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、アンチセンス鎖が、式IIIまたはその塩を含む:
【化11】
【0094】
いくつかの態様では、本開示は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、センス鎖が、式IVまたはその塩を含む:
【化12】
【0095】
いくつかの実施形態では、塩は、薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩を含む。
【0096】
いくつかの態様では、本開示は、PE、分娩後PE、子癇またはHELLP症候群を治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記のdsRNAを投与することを含む。
【0097】
いくつかの態様では、本開示は、第1のdsRNAと、第2のdsRNAと、を含む医薬組成物を提供し、ここで、第1のdsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、(1)アンチセンス鎖は、V(mU)#(fA)#(mA)(fA)(fU)(fU)(mU)(fG)(mG)(fA)(mG)(fA)(mU)(fC)#(mC)#(fG)#(mA)#(mG)#(mA)#(fG)#(mA)を含み;(2)センス鎖は、(mC)#(mG)#(mG)(fA)(mU)(fC)(mU)(fC)(mC)(fA)(mA)(mA)(mU)(fU)#(mU)#(mA)(T)(T)-PCDCAを含み、第2のdsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有し、(1)アンチセンス鎖は、V(mU)#(fA)#(mU)(fA)(fA)(fA)(mU)(fG)(mG)(fU)(mA)(fG)(mC)(fU)#(mA)#(fU)#(mG)#(mA)#(mU)#(fG)#(mA)を含み;(2)センス鎖は、(mA)#(mU)#(mA)(fG)(mC)(fU)(mA)(fC)(mC)(fA)(mU)(mU)(mU)(fA)#(mU)#(mA)(T)(T)-PCDCAを含み、ここで、「m」は、2’-O-メチル修飾に対応し、「f」は、2’-フルオロ修飾に対応し、「T」は、チミジンDNAヌクレオチドに対応し、「#」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結に対応し、「V」は、5’-ビニルホスホネートに対応し、「PCDCA」は、リン酸リンカーを介した3’-C7-ホスホコリン-ドコサン酸コンジュゲートに対応する。
【0098】
いくつかの態様では、本開示は、第1のdsRNAと、第2のdsRNAと、を含む医薬組成物を提供し、ここで、第1のdsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、
(1)アンチセンス鎖が、式Iまたはその塩を含み:
【化13】
(2)センス鎖が、式IIまたはその塩を含み:
【化14】
第2のdsRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、各鎖が5’末端及び3’末端を有し、
(1)アンチセンス鎖が、式IIIまたはその塩を含み:
【化15】
(2)センス鎖が、式IVまたはその塩を含む:
【化16】
【0099】
いくつかの実施形態では、塩は、薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩を含む。
【0100】
いくつかの態様では、本開示は、PE、分娩後PE、子癇またはHELLP症候群を治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記の医薬組成物を投与することを含む。いくつかの態様では、本開示は、PEを治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記の医薬組成物を投与することを含む。いくつかの態様では、本開示は、分娩後PEを治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記の医薬組成物を投与することを含む。いくつかの態様では、本開示は、子癇を治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記の医薬組成物を投与することを含む。いくつかの態様では、本開示は、HELLP症候群を治療または管理する方法を提供し、本方法は、このような治療または管理を必要とする対象に、治療有効量の上記の医薬組成物を投与することを含む。
【0101】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、添付の図面と関連して記される以下の例示的な実施形態の詳細な説明から、より完全に理解されるであろう。本特許または出願書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(複数可)を含む本特許または特許出願公開の複写は、請求及び必要な手数料の支払に応じて特許庁より提供される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1A】いくつかの2’OMeリッチsiRNA化学修飾パターンのサイレンシング効果を示す。2’OMeリッチsiRNA化学修飾パターンの概略図を示す。
【
図1B】いくつかの2’OMeリッチsiRNA化学修飾パターンのサイレンシング効果を示す。ヒトflt1を標的とするsiRNAの用量反応曲線及び要約表を示す。HeLa細胞を、示した濃度で、siRNAで72時間処理した。mRNAレベルは、Dual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイシステムを用いて測定し、未処理の対照(C)の百分率として計算した。
図1Bの表-最大KD(%)-最大治療用量のsiRNAによる標的mRNAノックダウンの最大率、IC50-最大阻害濃度の半値、AUC-用量反応曲線の下面積、p値-有意性。
【
図2A】組織の蛍光画像及び前述の組織中でのガイド鎖の蓄積を示す図である。肝臓、腎臓及び胎盤組織における様々な機能的部分とコンジュゲートされたCy3標識siRNAの組織蛍光画像を示す。
【
図2B】組織の蛍光画像及び組織中でのガイド鎖の蓄積を示す図である。PNAハイブリダイゼーションアッセイにより48時間後に定量化されたガイド鎖の蓄積を示す(n=3)。p値は、各化合物とコレステロールコンジュゲート化合物との間の統計的有意差を示す(一元配置分散分析法、**p<0.01、***p<0.001、有意差のないものはマークしていない)。NOC-コンジュゲートなし、Chol-コレステロール、DCA-ドコサン酸、PC-DCA-ホスホコリン-ドコサン酸、DHA-ドコサヘキサン酸、PC-DHA-ホスホコリン-ドコサヘキサン酸、DIO-二分岐オリゴヌクレオチド。
【
図3A】試験したsiRNAの骨髄組織蓄積を示す図である。Cy3標識sFLT1_2283 siRNAバリアントを注射したCD-1マウスの骨髄細胞のFACS分析を行った。
図3B~
図3Dの骨髄における特定の細胞集団のCy3強度を定量化するために使用されるゲーティングスキームを示す。
【
図3B】試験したsiRNAの骨髄組織蓄積を示す図である。Cy3標識sFLT1_2283 siRNAバリアントを注射したCD-1マウスの骨髄細胞のFACS分析を行った。siRNAバリアントを注入して24時間後の骨髄好中球のCy3蛍光強度の頻度分布ヒストグラム(左)及びCy3中央蛍光強度の棒グラフ(右)を示す。
【
図3C】試験したsiRNAの骨髄組織蓄積を示す図である。Cy3標識sFLT1_2283 siRNAバリアントを注射したCD-1マウスの骨髄細胞のFACS分析を行った。siRNAバリアントを注入して24時間後の骨髄顆粒球のCy3蛍光強度の頻度分布ヒストグラム(左)及びCy3中央蛍光強度の棒グラフ(右)を示す。
【
図3D】試験したsiRNAの骨髄組織蓄積を示す図である。Cy3標識sFLT1_2283 siRNAバリアントを注射したCD-1マウスの骨髄細胞のFACS分析を行った。siRNAバリアントを注入して24時間後の骨髄単球のCy3蛍光強度の頻度分布ヒストグラム(左)及びCy3中央蛍光強度の棒グラフ(右)を示す。(n=3、平均±SD)p値は、化合物の間の統計的有意差を表す(一元配置分散分析法;*p<0.05;有意差のないものはマークしていない)。
【
図4A】siRNAサイレンシング効力に対する様々な5’アンチセンス修飾の影響を示す図である。胚日(E)13及びE14に、2283及び2519のsiRNAバリアントの20mg/kg等モル混合物を妊娠中のCD-1マウスに注射した。注射されたsiRNA化合物の化学パターン及び試験された5’部分の化学構造の概略図を示す。
【
図4B】siRNAサイレンシング効力に対する様々な5’アンチセンス修飾の影響を示す図である。胚日(E)13及びE14に、2283及び2519のsiRNAバリアントの20mg/kg等モル混合物を妊娠中のCD-1マウスに注射した。Quantigene 2.0 RNA Assayを用いて測定されたE18の胎盤中のsFlt1-i13 mRNAレベルを示す。レベルをFlt1に対して正規化し、PBS対照のパーセンテージ(n=5、平均±SD)として示した。
【
図4C】siRNAサイレンシング効力に対する様々な5’アンチセンス修飾の影響を示す図である。胚日(E)13及びE14に、2283及び2519のsiRNAバリアントの20mg/kg等モル混合物を妊娠中のCD-1マウスに注射した。PNAハイブリダイゼーションアッセイを用いて測定したE18の胎盤中のsiRNA蓄積の量を示す(n=5)。p値は、化合物の間の統計的有意差を表す(一元配置分散分析法;**p<0.01;****p<0.0001;有意差のないものはマークしていない)。
【
図4D】siRNAサイレンシング効力に対する様々な5’アンチセンス修飾の影響を示す図である。胚日(E)13及びE14に、2283及び2519のsiRNAバリアントの20mg/kg等モル混合物を妊娠中のCD-1マウスに注射した。Quantigene 2.0 RNA Assayを使用して測定された、E18の胎盤中のsFlt1-i13 mRNAレベルを示す。レベルをFlt1に対して正規化し、PBS対照のパーセンテージ(n=6、平均±SD)として示した。
【
図4E】siRNAサイレンシング効力に対する様々な5’アンチセンス修飾の影響を示す図である。胚日(E)13及びE14に、2283及び2519のsiRNAバリアントの20mg/kg等モル混合物を妊娠中のCD-1マウスに注射した。PNAハイブリダイゼーションアッセイを用いて測定したE18の胎盤中のsiRNA蓄積の量を示す(n=6)。p値は、化合物の間の統計的有意差を表す(一元配置分散分析法;**p<0.01;****p<0.0001;有意差のないものはマークしていない。対応のないt検定;#p<0.05;####p<0.0001)。
【
図4F】siRNAサイレンシング効力に対する様々な5’アンチセンス修飾の影響を示す図である。胚日(E)13及びE14に、2283及び2519のsiRNAバリアントの20mg/kg等モル混合物を妊娠中のCD-1マウスに注射した。対照マウス及び処置した妊娠マウスの平均子マウス数、平均子マウス体重及び平均胎盤重量を示す。
【
図5】最適化されたsiRNAが血清サイトカイン産生に及ぼす影響を示す。75mg/kgのsFLT1_2283 siRNAバリアント(n=3、平均±SD)を注射して24時間後のCD-1マウスの血清サイトカイン濃度を測定した。p値は、化合物の間の統計的有意差を表す(一元配置分散分析法;*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001;有意差のないものはマークしていない)。
【
図6】例示的なsiRNA標的sFLT1 2283または2519の概略図である。
【
図7】sFLT1-i13及びsFLT1-e15a(それぞれ)、または2つのsiRNAの組み合わせ(1:1 siRNA-2238:siRNA-2519)をサイレンシングするsiRNA-2238及びsiRNA-2519の用量反応曲線を示す。sFLT1-i13及びsFLT1-e15a mRNA発現レベル及びsFLT1タンパク質レベルを、試験したそれぞれのsiRNA濃度で測定した。
【
図8A】妊娠ラットにおける子宮胎盤灌流減少モデル(RUPP)で実施されたin vivo実験を示す。2つのsiRNAの組み合わせ(siRNA-2283(sFlt1-il3標的)及びsiRNA-2519(sFlt1-e15a標的)の1:1混合物)を受ける、RUPPラットモデルによる治療スキームを示す。
【
図8B】妊娠ラットにおける子宮胎盤灌流減少モデル(RUPP)で実施されたin vivo実験を示す。処置ラット及び対照ラットにおける母体の血圧及び胎盤重量を示す。
【
図8C】妊娠ラットにおける子宮胎盤灌流減少モデル(RUPP)で実施されたin vivo実験を示す。処置ラット及び対照ラットにおける胎児吸収及び胎児体重を示す。
【
図9】最適化されたsiRNA分子sFLT1 2283及びsFLT1 2519の化学構造を示す。
【
図10A-1】最適化されたsiRNA分子sFLT1 2283の化学構造を示す。アンチセンス鎖を示す。
【
図10A-2】最適化されたsiRNA分子sFLT1 2283の化学構造を示す。アンチセンス鎖を示す。
【
図10B-1】最適化されたsiRNA分子sFLT1 2283の化学構造を示す。センス鎖を示す。
【
図10B-2】最適化されたsiRNA分子sFLT1 2283の化学構造を示す。センス鎖を示す。
【
図11A-1】最適化されたsiRNA分子sFLT1 2519の化学構造を示す。アンチセンス鎖を示す。
【
図11A-2】最適化されたsiRNA分子sFLT1 2519の化学構造を示す。アンチセンス鎖を示す。
【
図11B-1】最適化されたsiRNA分子sFLT1 2519の化学構造を示す。センス鎖を示す。
【
図11B-2】最適化されたsiRNA分子sFLT1 2519の化学構造を示す。センス鎖を示す。
【発明を実施するための形態】
【0103】
新規血管新生標的(例えば、PE標的配列、例えば、sFlt1 mRNAのイントロン配列)が提供される。また、血管新生標的(例えば、sFLT1タンパク質)をコードするmRNAのイントロン領域を選択的に標的とする新規siRNAも提供される。血管新生障害、例えば、PE、分娩後PE、子癇及び/またはHELLPを治療する方法もまた提供される。
【0104】
一般に、本明細書に記載される、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子学ならびにタンパク質及び核酸化学及びハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は、当該技術分野においてよく知られ、一般的に使用されるものである。本明細書で提供される方法及び技術は、特に記載のない限り、一般に、当該技術分野においてよく知られている従来の方法に従って、また、本明細書全体を通して引用及び考察される一般的かつより具体的な様々な参考文献に記載されるように実施される。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように実行される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学及び薬学・医薬化学に関連して用いられる用語、ならびにそれらの実験室での手順及び技術は、当分野において周知であり、一般的に用いられるものである。化学合成、化学分析、医薬調製、製剤化、及び送達、及び患者の治療には標準的技術が用いられる。
【0105】
本明細書で特に定義のない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。何らかの潜在的な曖昧さがある場合、本明細書に提供する定義が、いかなる辞書または外部の定義よりも優先される。別段文脈によって要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。「または」の使用は、別段の指示がない限り、「及び/または」を意味する。「含む(including)」という用語、ならびに「含む(include)」及び「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。
【0106】
本発明がより容易に理解され得るように、まず特定の用語を定義しておく。
【0107】
「改変」とは、本明細書に記載されるような標準的な公知の方法によって検出される、遺伝子、mRNAまたはポリペプチドの発現レベルの変化(増加または減少)を意味する。本明細書で使用される場合、増加または減少は、発現レベルの10%の変化、発現レベルの25%の変化、40%の変化、または50%以上の変化を含む。特定の実施形態では、増加または減少は、約30%~約50%または約30%~約40%の発現レベルの変化である。「改変」は、本発明のmRNAまたはポリペプチドのいずれか(例えば、sFlt1(例えば、略してsFlt1-i13 short、sFlt1-i13 long及び/またはsFlt1-i15a)(sFlt1-e15aとしても知られている)の生物学的活性の変化(増加または減少)を示すこともできる。sFlt-1の生物学的活性の例としてPEまたは子癇の1つ以上の臨床症状が含まれる。本明細書で使用される場合、増加または減少は、生物学的活性の10%の変化、好ましくは25%の変化、より好ましくは40%の変化、最も好ましくは50%以上の生物学的活性の変化を含む。特定の好ましい実施形態では、増加または減少は、約30%~約50%または約30%~約40%の発現レベルの変化である。
【0108】
本発明の特定の実施形態は、1つ以上の血管新生障害の治療に関する。「血管新生障害の治療」とは、新血管新生、脈管形成及び/または血管新生の生理学的及び病理学的過程を伴う疾患の治療のための医薬組成物中での、本発明のオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)の使用を意味する。従って、これらの医薬組成物は、新血管新生、脈管形成または血管新生の阻害を必要とする疾患、症状及び障害、例えば、限定されないが、がん腫瘍の成長及び転移、新生物、眼血管新生(例えば、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、虚血性網膜症、未熟児網膜症、脈絡膜血管新生)、関節リウマチ、変形性関節症、慢性喘息、敗血症性ショック、炎症性疾患、滑膜炎、骨及び軟骨の破壊、パンヌスの成長、骨棘形成、骨髄炎、乾癬、肥満、血管腫、カポジ肉腫、アテローム性動脈硬化症(例えば、アテローム性動脈硬化性プラークの破裂)、子宮内膜症、いぼ、過剰な毛髪の成長、傷跡ケロイド、アレルギー性浮腫、機能不全子宮出血、卵胞嚢胞、卵巣過剰刺激、子宮内膜症、骨髄炎、炎症及び感染プロセス(肝炎、肺炎、糸球体腎炎)、喘息、鼻ポリープ、移植、肝臓の再生、白質軟化症、甲状腺炎、甲状腺肥大、リンパ増殖性疾患、血液悪性腫瘍、血管奇形、子癇前症、子癇及び/またはHELLP症候群の治療に有用である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、子癇前症である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、分娩後子癇前症である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、子癇である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、HELLP症候群である。
【0109】
「子癇前症」(「PE」)とは、タンパク尿もしくは浮腫、またはその両方を伴う高血圧、及び妊娠中または最近の妊娠の影響による糸球体機能不全、脳浮腫、肝浮腫、または凝固異常のうちの1つ以上を特徴とする多系統障害を意味する。PEは、一般に在胎20週以降に発生する。PEは、一般に以下の症状のうちの複数の組み合わせとして定義される:(1)在胎20週以降の収縮期血圧(BP)>140mmHg及び拡張期BP>90mmHg(一般には、4~168時間間隔で2回測定)、(2)タンパク尿の新たな発現(尿検査時の試験紙検査により1+、24時間蓄尿時におけるタンパク質300mg超、またはタンパク/クレアチニン比>v0.3を有する1つの無作為尿サンプル)、(3)産後12週間までに高血圧及びタンパク尿が解消する。
【0110】
重症PEは、一般に、(1)拡張期BP>110mmHg(一般には、4~168時間間隔で2回測定)、または(2)24時間蓄尿において3.5g以上のタンパク質または試験紙による少なくとも3+タンパク質を含む2つの無作為尿サンプルの測定値によって特徴付けられたタンパク尿として規定される。PEでは、高血圧及びタンパク尿は一般に、互いに7日以内に起こる。重症PEでは、重症の高血圧、重症のタンパク尿及びHELLP症候群(溶血、肝酵素の上昇、血小板減少)または子癇が同時に起こり得るか、または一度に1つの症状のみ生じ得る。
【0111】
重症PEにより、発作が生じ得ることがある。この症候群の重症形態は、「子癇」と呼ばれる。子癇はまた、肝臓(例えば、肝細胞損傷、門脈周囲壊死)及び中枢神経系(例えば、脳浮腫及び脳出血)などの複数の臓器または組織に対する機能不全または損傷を含み得る。発作の病因は、脳浮腫及び腎臓の小血管の局所痙攣の発生に対して副次的であると考えられている。
【0112】
「HELLP」症候群とは、溶血、肝酵素上昇、及び血小板数の減少を特徴とする、妊婦に生じる一連の症状を意味する。HELLP症候群は、PEの変形であると考えられているが、それ自体の実体であり得る。
【0113】
特定の態様では、PEは、分娩後PEを含む。分娩後PEは、分娩直後に高血圧と褥婦の尿中に過剰なタンパク質が認められた場合に起こる、稀な状態である。分娩後PEは、典型的には分娩後48時間以内に発生する。しかし、分娩後PEは、分娩後6週までに発生することがあり、これは、後期分娩後PEとして知られている。分娩後PE及び後期分娩後PEの徴候及び症状は、典型的には妊娠中に起こるPEの症状と類似しており、以下のうちの1つまたは任意の組み合わせが含まれ得る:高血圧(すなわち140/90mmHg以上);タンパク尿;重度の頭痛;一時的な視力喪失、かすみ目または光線過敏症などの視力の変化;顔面及び四肢の腫脹;上腹部の痛み(通常は右側の肋骨の下);悪心または嘔吐;排尿量の減少;急激な体重増加(典型的には週2ポンド(0.9キログラム)を超える)。
【0114】
「子宮内発育遅延(IUGR)」とは、胎児の在胎期間に対する予測胎児体重の10%未満である出生体重となる症候群を意味する。現在の世界保健機関の低出生体重基準は、体重2,500グラム(5lbs.8oz.)未満、または米国の人種、経産回数、及び乳児の性別ごとの在胎期間別出生体重表による在胎期間に対して10パーセンタイル未満である(Zhang and Bowes,Obstet.Gynecol.86:200-208,1995)。これらの低出生体重児は、「在胎不当過小(SGA)」とも呼ばれる。PEは、IUGRまたはSGAに関連することが知られている状態である。
【0115】
本発明の特定の実施形態は、1つ以上の腎障害の治療に関する。「腎障害の治療」とは、本発明のオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)の、腎臓に関連する疾患、状態または障害の治療のための医薬組成物中での使用を意味する。腎臓に関連する疾患、状態または障害としては、限定されないが、以下が挙げられる:慢性腎疾患(CKD)(ステージ1~5であり、ステージ1は、最も軽症で通常は症状がほとんどなく、ステージ5は、重度の疾患であり、未治療であれば、平均余命が不良である(ステージ5のCKDは、多くの場合、末期腎疾患、末期腎不全、または末期腎疾患、慢性腎臓不全(chronic kidney failure)もしくは慢性腎不全(chronic renal failure)と呼ばれる)、及び急性腎不全(ARF)(失血を伴う外傷、腎臓への血流の突然の減少、敗血症による腎臓の損傷、尿の流れの妨害、特定の薬物または毒素による損傷、妊娠の合併症(例えば、子癇、PE及び/またはHELLP症候群)などによって引き起こされる)。
【0116】
本発明の特定の実施形態は、1つ以上の肝障害の治療に関する。「肝障害の治療」とは、本発明のオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)の、肝臓に関連する疾患、状態または障害の治療のための医薬組成物中での使用を意味する。肝臓に関連する疾患、状態または障害としては、限定されないが、肝蛭症、肝炎(例えば、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、遺伝性肝炎など)、アルコール性肝疾患(例えば、アルコール性脂肪肝疾患)、アルコール性肝炎、及びアルコール性肝硬変)、非アルコール性脂肪肝疾患、脂肪肝、非アルコール性肝硬変、原発性肝癌(例えば、肝細胞癌、胆管癌、脈管肉腫、血管肉腫など)、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性、小葉中心壊死、バッド・キアリ症候群、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、α1-アンチトリプシン欠損症、糖原病II型、トランスサイレチン関連の遺伝性アミロイドーシス、ギルバート症候群、胆道閉鎖症、α-1アンチトリプシン欠乏症、アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症などが挙げられる。
【0117】
「治療量」とは、PEまたは子癇を有する患者に投与した場合に、本明細書に記載のPEまたは子癇の症状を定性的または定量的に減少させるのに十分な量を意味する。また、「治療量」は、PEまたは子癇を有する患者または対象に投与された場合に、本明細書に記載のアッセイのうちの1つ以上により測定された場合、1つ以上のsFLT1タンパク質(例えば、sFLT1-i13 short、sFLT1-i13 long及びsFLT1-i15aのうちの1つ以上)の発現レベルの低下を引き起こすのに十分な量を意味し得る。
【0118】
「対象」は、限定されないが、ヒトもしくは非ヒト哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、または、他の動物、例えば、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、ヒツジ、ネコ、マウスなどの哺乳動物を意味する。この定義には、妊娠中、分娩後及び非妊娠哺乳動物が含まれる。
【0119】
「可溶性FLT1(sFLT1)」(sVEGF-R1としても知られている)とは、sFLT1生物学的活性を有するFLT1受容体の可溶性形態(例えばsFLT1-i13 short、sFLT1-i13 long及び/またはsFLT1-i15a(sFLT1-e15aとしても知られている))を意味する。sFLT1ポリペプチドの生物学的活性は、任意の標準方法を使用して、例えば、PE、分娩後PE、子癇及び/またはHELLPのうちの1つ以上の臨床症状をアッセイすることによって、sFLT1 mRNA及び/またはタンパク質レベルをアッセイすることによって、VEGFなどに結合しているsFLT1タンパク質をアッセイすることによって、アッセイされ得る。sFLT1タンパク質は、FLT1受容体の膜貫通ドメイン及び細胞質チロシンキナーゼドメインが欠如している。sFLT1タンパク質は、VEGFに結合することができ、PlGFは、高い親和性で結合するが、増殖または血管新生を誘導することはできないため、FLT1受容体及びKDR受容体とは、機能的に異なる。sFLT1は、最初にヒトの臍帯内皮細胞から精製され、その後にin vivoで栄養膜細胞によって産生されることが示された。本明細書で使用される場合、sFLT1としては、任意のsFLT1ファミリーメンバーまたはアイソフォーム、例えば、sFLT1-i13(例えば、sFLT1-i13 short及び/またはsFLT1-i13 long(sFLT1_v1)、sFLT1-i15a(sFLT1_v2)、sFLT1-e15a、sFLT1_v3、sFLT1_v4などが挙げられる。
【0120】
sFLT1-i13 shortのアイソフォームの配列は、以下のとおりである:
GTGAGCACTGCAACAAAAAGGCTGTTTTCTCTCGGATCTCCAAATTTAAAAGCACAAGGAATGATTGTACCACACAAAGTAATGTAAAACATTAAAGGACTCATTAAAAAGTAA(配列番号5)。
【0121】
sFLT1-i13 longアイソフォームの配列は、以下のとおりである:GAAGAAAGAAATTACAATCAGAGGTGAGCACTGCAACAAAAAGGCTGTTTTCTCTCGGATCTCCAAATTTAAAAGCACAAGGAATGATTGTACCACACAAAGTAATGTAAAACATTAAAGGACTCATTAAAAAGTAACAGTTGTCTCATATCATCTTGATTTATTGTCACTGTTGCTAACTTTCAGGCTCGGAGGAGATGCTCCTCCCAAAATGAGTTCGGAGATGATAGCAGTAATAATGAGACCCCCGGGCTCCAGCTCTGGGCCCCCCATTCAGGCCGAGGGGGCTGCTCCGGGGGGCCGACTTGGTGCACGTTTGGATTTGGAGGATCCCTGCACTGCCTTCTCTGTGTTTGTTGCTCTTGCTGTTTTCTCCTGCCTGATAAACAACAACTTGGGATGATCCTTTCCATTTTGATGCCAACCTCTTTTTATTTTTAAGCGGCGCCCTATAGT(配列番号6)。
【0122】
sFLT1-i15a(sFLT1-e15aとしても知られている)アイソフォームの配列は以下のとおりであるAACTGTATACATCAACGTCACCATCGTCATCGTCATCATCACCATTGTCATCATCATCATCATCGTCATCATCATCATCATCATAGCTATCATCATTATCATCATCATCATCATCATCATCATAGCTACCATTTATTGAAAACTATTATGTGTCAACTTCAAAGAACTTATCCTTTAGTTGGAGAGCCAAGACAATCATAACAATAACAAATGGCCGGGCATGGTGGCTCACGCCTGTAATCCCAGCACTTTGGGAGGCCAAGGCAGGTGGATCATTTGAGGTCAGGAGTCCAAGACCAGCCTGACCAAGATGGTGAAATGCTGTCTCTATTAAAAATACAAAATTAGCCAGGCATGGTGGCTCATGCCTGTAATGCCAGCTACTCGGGAGGCTGAGACAGGAGAATCACTTGAACCCAGGAGGCAGAGGTTGCAGGGAGCCGAGATCGTGTACTGCACTCCAGCCTGGGCAACAAGAGCGAAACTCCGTCTCAAAAAACAAATAAATAAATAAATAAATAAACAGACAAAATTCACTTTTTATTCTATTAAACTTAACATACATGCTAA(配列番号7)。
【0123】
sFLT1タンパク質レベルは、遊離、結合(すなわち、成長因子に結合)、または総sFLT1(結合+遊離)の量を測定することによって測定され得る。VEGFまたはPlGFレベルは、遊離PlGFまたは遊離VEGF(すなわち、sFLT1に結合していない)の量を測定することにより決定される。1つの例示的な測定基準は、[sFLT1/(VEGF+PlGF)]であり、これはPE抗血管新生指数(PAAI)とも呼ばれる。
【0124】
「子癇前症抗血管新生指数(PAAI)」は、抗血管新生活性の指標として使用されるsFLT1/VEGF+PlGFの比率を意味する。PAAIが20を超える場合、PEまたはPEのリスクを示すと考えられる。
【0125】
「血管内皮成長因子(VEGF)」とは、米国特許第5,332,671号;同第5,240,848号;同第5,194,596号;及びCharnock-Jones et al.(Biol.Reproduction,48:1120-1128,1993)に定義されている成長因子と相同であり、VEGF生物学的活性を有する哺乳動物の成長因子を意味する。VEGFは、グリコシル化ホモダイマーとして存在し、少なくとも4つの異なる交互スプライシングされたアイソフォームを含む。天然VEGFの生物学的活性として、血管内皮細胞または臍帯静脈内皮細胞の選択的成長の促進、及び血管新生の誘導が挙げられる。本明細書で使用される場合、VEGFとしては、任意のVEGFファミリーメンバーまたはアイソフォーム(例えば、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、VEGF189、VEGF165、またはVEGF121)が挙げられる。特定の実施形態では、VEGFは、VEGF121またはVEGF165アイソフォームであり(Tischer et al.,J.Biol.Chem.266,11947-11954,1991;Neufed et al.Cancer Metastasis 15:153-158,1996)、これは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,447,768号;同5,219,739号;及び同5,194,596号に記載されている。また、Gille et al.(J.Biol.Chem.276:3222-3230,2001)に記載のKDR選択的VEGF及びFlt選択的VEGFなどのVEGFの変異形態も含む。VEGFは、ヒト形態を含み、かつVEGFの他の動物形態(例えば、マウス、ラット、イヌ、ニワトリなど)を含み得る。
【0126】
「胎盤成長因子(PlGF)」とは、GenBank受託番号P49763で定義されるタンパク質に相同であり、PlGF生物学的活性を有する哺乳動物の成長因子を意味する。PlGFは、VEGFファミリーに属するグリコシル化ホモダイマーであり、選択的スプライシング機構を介して、2つの異なるアイソフォーム中に見出される。PlGFは、胎盤中の栄養膜細胞層及び栄養膜合胞体層中に発現しており、PlGFの生物学的活性としては、内皮細胞、特に栄養膜細胞の増殖、移動、活性化の誘導が挙げられる。
【0127】
「栄養膜細胞」とは、子宮粘膜を侵食する胚盤胞を覆い、そこを介して胚が母体から栄養物を受け取る中外胚葉(mesectodermal)細胞層を意味する。栄養膜細胞は、胎盤の形成に寄与する。
【0128】
「ヌクレオシド」という用語は、リボースまたはデオキシリボース糖に共有結合により連結されたプリンまたはピリミジン塩基を有する分子を指す。例示的ヌクレオシドとしては、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、及びチミジンが挙げられる。さらなる例示的ヌクレオシドとしては、イノシン、1-メチルイノシン、プシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、リボチミジン、2N-メチルグアノシン及び2,2N,N-ジメチルグアノシン(「希少」ヌクレオシドとも呼ばれる)が挙げられる。「ヌクレオチド」という用語は、エステル連結内で糖部分に結合された1つ以上のリン酸基を有するヌクレオシドを指す。例示的ヌクレオチドとしては、ヌクレオシド一リン酸、二リン酸、及び三リン酸が挙げられる。「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、5’及び3’炭素原子間のホスホジエステル連結によって一緒に結合されたヌクレオチドのポリマーを指す。
【0129】
「RNA」または「RNA分子」または「リボ核酸分子」という用語は、リボヌクレオチド(例えば、2、3、4、5、10、15、20、25、30、またはそれ以上のリボヌクレオチド)のポリマーを指す。「DNA」または「DNA分子」または「デオキシリボ核酸分子」という用語は、デオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。DNA及びRNAは、自然に合成され得る(例えば、それぞれDNAの複製またはDNAの転写によって)。RNAは、転写後に修飾され得る。DNA及びRNAも化学的に合成され得る。DNA及びRNAは、一本鎖(すなわち、それぞれssRNA及びssDNA)または多重鎖(例えば、二本鎖、すなわち、それぞれdsRNA及びdsDNA)であり得る。「mRNA」または「メッセンジャーRNA」は、1つ以上のポリペプチド鎖のアミノ酸配列を特定する一本鎖RNAである。この情報は、リボソームがmRNAに結合するときに、タンパク質合成中に翻訳される。
【0130】
本明細書で使用される用語「低分子干渉RNA」(「siRNA」)(当技術分野では「短鎖干渉RNA」とも呼ばれる)は、約10~50のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含むRNA(またはRNA類似体)を指し、RNA干渉を指示または媒介できる。好ましくは、siRNAは、約15~30のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、より好ましくは約16~25のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)、さらにより好ましくは約18~23のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)、及びさらにより好ましくは約19~22のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)(例えば、19、20、21または22のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体)を含む。「短い」siRNAという用語は、約21ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)、例えば、19、20、21または22ヌクレオチドを含むsiRNAを指す。「長い」siRNAという用語は、約24~25ヌクレオチド、例えば、23、24、25または26ヌクレオチドを含むsiRNAを指す。短いsiRNAは、場合によっては、短いsiRNAがRNAiを媒介する能力を保持するという条件で、19未満のヌクレオチド、例えば、16、17または18ヌクレオチドを含み得る。同様に、長いsiRNAは、場合によっては、より長いsiRNAが、短いsiRNAへのさらなるプロセシング、例えば酵素プロセシングなく、RNAiを媒介する能力を保持するという条件で、26を超えるヌクレオチドを含み得る。
【0131】
「ヌクレオチド類似体」または「改変ヌクレオチド」または「修飾ヌクレオチド」という用語は、天然に存在しないリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドなど、非標準ヌクレオチドを指す。例示的ヌクレオチド類似体は、ヌクレオチドの特定の化学的性質を改変させるが、その意図された機能を実行するヌクレオチド類似体の能力を保持するように、任意の位置で修飾される。誘導体化され得るヌクレオチドの位置の例としては、5位、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン、5-プロピンウリジン、5-プロペニルウリジン、6位、例えば6-(2-アミノ)プロピルウリジン、アデノシン及び/またはグアノシンの8位、例えば、8-ブロモグアノシン、8-クロログアノシン、8-フルオログアノシンが挙げられる。また、ヌクレオチド類似体としては、デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン、O-及びN-修飾(例えば、アルキル化、例えばN6-メチルアデノシン、または当技術分野で知られているもの)ヌクレオチド、及び他の複素環修飾ヌクレオチド類似体、例えば、Herdewijn,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.,2000 Aug.10(4):297-310に記載のものが挙げられる。
【0132】
ヌクレオチド類似体はまた、ヌクレオチドの糖部分への修飾を含み得る。例えば、2’OH基は、H、OR、R、F、Cl、Br、I、SH、SR、NH2、NHR、NR2、COORまたはORから選択される基によって置換されてもよく、ここでRは、置換または非置換のC1-C6アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールなどである。他の考えられる修飾は、米国特許第5,858,988号及び同第6,291,438号に記載されているものが挙げられる。
【0133】
ヌクレオチドのリン酸基はまた、例えば、リン酸基の酸素の1つ以上を硫黄(例えば、ホスホロチオエート)で置換することによって、またはヌクレオチドがその意図された機能を実行できるように、他の置換を行うことによって、修飾され得る。例えば、Eckstein,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2000 Apr.10(2):117-21,Rusckowski et al.Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2000 Oct.10(5):333-45,Stein,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2001 Oct.11(5):317-25,Vorobjev et al.Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2001 Apr.11(2):77-85、及び米国特許第5,684,143号に記載されている。上で参照した特定の修飾(例えば、リン酸基修飾)は、例えば、in vivoまたはin vitroにおいて、好ましくは、類似体を含むポリヌクレオチドの加水分解速度を低下させる。
【0134】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド及び/またはヌクレオチド類似体の短いポリマーを指す。「RNA類似体」という用語は、対応する未改変または未修飾のRNAと比較して、少なくとも1つの改変または修飾されたヌクレオチドを有するが、対応する未改変または未修飾のRNAと同じまたは類似の性質または機能を保持するポリヌクレオチド(例えば、化学的に合成されたポリヌクレオチド)を指す。上述のとおり、オリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル連結を有するRNA分子と比較して、結果としてRNA類似体の加水分解速度を低下させる連結により連結され得る。例えば、類似体のヌクレオチドは、メチレンジオール、エチレンジオール、オキシメチルチオ、オキシエチルチオ、オキシカルボニルオキシ、ホスホロジアミデート、ホスホロアミデート、及び/またはホスホロチオエート連結を含み得る。好ましいRNA類似体には、糖及び/または骨格修飾リボヌクレオチド及び/またはデオキシリボヌクレオチドが含まれる。そのような改変または修飾は、RNAの末端(複数可)または内部(RNAの1つ以上のヌクレオチド)などへの非ヌクレオチド物質の付加をさらに含むことができる。RNA類似体は、RNA干渉を媒介する能力を有する天然のRNAと十分に類似していることのみを必要とする。
【0135】
本明細書で使用される「RNA干渉」(「RNAi」)という用語は、RNAの選択的な細胞内分解を指す。RNAiは、細胞内で自然に発生し、外来RNA(例えば、ウイルスRNAなど)を除去する。天然のRNAiは、遊離dsRNAから切断された断片を介して進行し、分解機構を他の同様のRNA配列に向ける。あるいは、例えば標的遺伝子の発現をサイレンシングするために、ヒトの手によって、RNAiを開始させ得る。
【0136】
「標的特異的RNA干渉(RNAi)を指示するために、標的mRNA配列に十分に相補的な配列」である鎖を有するRNAi剤、例えば、RNAサイレンシング剤は、その鎖が、RNAi機構またはプロセスによる標的mRNAの破壊を引き起こすのに十分な配列を有することを意味する。
【0137】
本明細書で使用される「単離RNA」(例えば、「単離siRNA」または「単離siRNA前駆体」)は、組換え技術によって産生された場合は、実質的に他の細胞材料または培養培地を含まないRNA分子を指し、化学合成された場合は、実質的に化学前駆体または他の化学物質を含まない。
【0138】
本明細書で使用される「RNAサイレンシング」という用語は、RNA分子によって媒介される配列特異的調節機構(例えば、RNA干渉(RNAi)、転写遺伝子サイレンシング(TGS)、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クエルリング、共抑制、及び翻訳抑制)の一群を指し、これらは、対応するタンパク質コード遺伝子の発現の阻害または「サイレンシング」をもたらす。RNAサイレンシングは、植物、動物、及び菌類など、多くの種類の生物で観察されている。
【0139】
「識別的RNAサイレンシング」という用語は、例えば、両方のポリヌクレオチド配列が同じ細胞中に存在する場合、RNA分子が「第1」または「標的」ポリヌクレオチド配列の発現を実質的に阻害する一方で、「第2」または「非標的」ポリヌクレオチド配列の発現を実質的に阻害しない能力を指す。特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、標的遺伝子に対応し、非標的ポリヌクレオチド配列は、非標的遺伝子に対応する。他の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、標的対立遺伝子に対応し、非標的ポリヌクレオチド配列は、非標的対立遺伝子に対応する。特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、標的遺伝子の調節領域(例えば、プロモーターまたはエンハンサーエレメント)をコードするDNA配列である。他の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、標的遺伝子によってコードされる標的mRNAである。
【0140】
「in vitro」という用語は、例えば精製された試薬または抽出物、例えば細胞抽出物を含む、その技術分野で認識されている意味を有する。「in vivo」という用語はまた、例えば、生きている細胞、例えば、不死化細胞、一次細胞、細胞株、及び/または生物内の細胞を含む、当業者によって認識されている意味を有する。
【0141】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」という用語は、人工的に細胞に挿入され、細胞から発生する生物のゲノムの一部となる任意の核酸分子を指す。そのような導入遺伝子は、トランスジェニック生物に対して部分的または完全に異種(すなわち、外来)である遺伝子を含み得るか、または生物の内因性遺伝子に相同である遺伝子を表し得る。「導入遺伝子」はまた、トランスジェニック生物、例えば、動物中に発現する、1つ以上の操作されたRNA前駆体をコードする、1つ以上の選択された核酸配列、例えば、DNAを含む核酸分子を意味し、これは、一部または完全にトランスジェニック動物と異種である、すなわち外来性であるか、またはトランスジェニック動物の内因性遺伝子と相同であるが、天然遺伝子とは異なる場所で、動物のゲノムに挿入されるように設計されている。導入遺伝子は、選択された核酸配列の発現に必要な1つ以上のプロモーター及び任意の他のDNA、例えば、イントロンを含み、すべてが、選択された配列に作動可能に連結され、エンハンサー配列を含んでもよい。
【0142】
疾患または障害に「関与する」遺伝子には、遺伝子、その正常または異常な発現または機能が、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の少なくとも1つの症状に影響を及ぼすまたはこれらを引き起こす遺伝子が含まれる。
【0143】
本明細書で使用される「機能獲得型変異」という用語は、遺伝子によってコードされるタンパク質(すなわち、変異タンパク質)が、通常はそのタンパク質(すなわち、野生型タンパク質)に関連しない機能を獲得し、疾患または障害を引き起こすか、またはそれらの一因となる、遺伝子における任意の変異を指す。機能獲得型変異は、コードされたタンパク質の機能の変化を引き起こす、遺伝子中のヌクレオチド(複数可)の欠失、付加、または置換であり得る。一実施形態では、機能獲得型変異は、変異タンパク質の機能を変化させる(例えば、1つ以上のsFLT1タンパク質の産生を引き起こす)か、または他のタンパク質との相互作用を引き起こす。別の実施形態では、機能獲得型変異は、例えば、改変変異タンパク質と正常野生型タンパク質との相互作用によって、正常な野生型タンパク質の減少または除去を引き起こす。
【0144】
本明細書で使用される「標的遺伝子」という用語は、その発現が実質的に阻害されるか、または「サイレンシング」される遺伝子である。このサイレンシングは、例えば、標的遺伝子のmRNAの切断または標的遺伝子の翻訳抑制によるRNAのサイレンシングによって達成することができる。「非標的遺伝子」という用語は、その発現が実質的にサイレンシングを受けない遺伝子である。一実施形態では、標的遺伝子及び非標的遺伝子のポリヌクレオチド配列(例えば、標的(sFLT1)遺伝子及び非標的(flFLT1)遺伝子によってコードされるmRNA)は、例えばイントロン領域において、1つ以上のヌクレオチドが異なり得る。別の実施形態では、標的及び非標的遺伝子は、1つ以上の多型(例えば、一塩基多型またはSNP)によって異なり得る。別の実施形態では、標的及び非標的遺伝子は、100%未満の配列同一性を共有できる。別の実施形態では、非標的遺伝子は、標的遺伝子の相同体(例えばオルソログまたはパラログ)であってもよい。
【0145】
「標的対立遺伝子」は、その発現が選択的に阻害または「サイレンシング」される対立遺伝子(例えば、SNP対立遺伝子)である。このサイレンシングは、RNAサイレンシングによって、例えば、siRNAによって標的遺伝子または標的対立遺伝子のmRNAを切断することによって達成することができる。「非標的対立遺伝子」という用語は、発現が実質的にサイレンシングを受けない対立遺伝子である。特定の実施形態では、標的対立遺伝子及び非標的対立遺伝子は、同じ標的遺伝子に対応することができる。他の実施形態では、標的対立遺伝子は、標的遺伝子に対応するか、または関連しており、非標的対立遺伝子は、非標的遺伝子に対応するか、または関連している。一実施形態では、標的対立遺伝子及び非標的対立遺伝子のポリヌクレオチド配列は、1つ以上のヌクレオチドが異なり得る。別の実施形態では、標的対立遺伝子及び非標的対立遺伝子は、1つ以上の対立遺伝子多型(例えば、1つ以上のSNP)が異なり得る。別の実施形態では、標的対立遺伝子及び非標的対立遺伝子は、100%未満の配列同一性を共有できる。
【0146】
本明細書で使用される「多型」という用語は、異なる源または対象(しかし、同じ生物)からの同じ遺伝子配列を比較する場合に同定または検出される遺伝子配列中の変形(例えば、1つ以上の欠失、挿入、または置換)を指す。例えば、異なる対象からの同じ遺伝子配列を比較する場合、多型を同定することができる。このような多型の同定は、当技術分野では日常的であり、その方法論は、例えば、乳がんの点変異を検出するために使用されるものと類似している。同定は、例えば、対象のリンパ球から抽出されたDNAから行うことができ、その後多型領域に対する特異的プライマーを使用して、多型領域を増幅することができる。あるいは、同じ遺伝子の2つの対立遺伝子を比較する場合に、多型を同定できる。特定の実施形態では、多型は、一塩基多型(SNP)である。
【0147】
生物内の同じ遺伝子の2つの対立遺伝子間の配列の変形は、本明細書では「対立遺伝子多型」と呼ばれる。特定の実施形態では、対立遺伝子多型は、SNP対立遺伝子に対応する。例えば、対立遺伝子多型は、SNPの2つの対立遺伝子間の単一ヌクレオチド変形を含み得る。多型は、コード領域内のヌクレオチドにあり得るが、遺伝暗号の縮重により、アミノ酸配列の変化はコードされない。あるいは、多型配列は、特定の位置において異なるアミノ酸をコードできるが、アミノ酸の変化は、タンパク質の機能に影響しない。多型領域は、遺伝子の非コード領域にも見られる。例示的な実施形態では、多型は、遺伝子のコード領域または遺伝子の非翻訳領域(例えば、5’UTRまたは3’UTR)に見出される。
【0148】
本明細書で使用される「対立遺伝子頻度」という用語は、個体集団中の単一遺伝子座における対立遺伝子(例えば、SNP対立遺伝子)の相対頻度の尺度(例えば、割合またはパーセンテージ)である。例えば、個体の集団が、体細胞のそれぞれ内に特定の染色体遺伝子座(及びその遺伝子座を占める遺伝子)のn遺伝子座を保有する場合、対立遺伝子の対立遺伝子頻度は、集団中に対立遺伝子が占める遺伝子座の割合またはパーセンテージである。特定の実施形態では、対立遺伝子(例えば、SNP対立遺伝子)の対立遺伝子頻度は、サンプル集団中において、少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%またはそれ以上)である。
【0149】
本明細書で使用される場合、「サンプル集団」という用語は、統計的に有意な数の個体を含む個体の集団を指す。例えば、サンプル集団は、50人、75人、100人、200人、500人、1000人、またはそれ以上の個体を含み得る。特定の実施形態では、サンプル集団は、少なくとも共通の疾患表現型(例えば、機能獲得型障害)または変異(例えば、機能獲得型変異)を共有する個体を含み得る。
【0150】
本明細書で使用する場合、「ヘテロ接合性」という用語は、特定の遺伝子座(例えば、SNP)においてヘテロ接合性である(例えば、2つ以上の異なる対立遺伝子を含む)、任意のある集団内の個体の割合を指す。ヘテロ接合性は、当業者に周知の方法を用いて、サンプル集団について計算し得る。
【0151】
「細胞または生物における遺伝子の機能を検査する」という語句は、そこから生じる発現、活性、機能または表現型を検査または研究することを指す。
【0152】
本明細書で使用される「RNAサイレンシング剤」という用語は、標的遺伝子の発現を阻害または「サイレンシング」することができるRNAを指す。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、転写後のサイレンシング機構により、mRNA分子の完全なプロセシング(例えば、完全な翻訳及び/または発現)を防ぐことができる。RNAサイレンシング剤としては、小さい(<50b.p.)、非コードRNA分子、例えば、対合した鎖を含むRNA二本鎖、ならびにそのような小さい非コードRNAを生成することができる前駆体RNAが挙げられる。例示的なRNAサイレンシング剤としては、siRNA、miRNA、siRNA様二本鎖、及び二重機能オリゴヌクレオチド、ならびにそれらの前駆体が挙げられる。一実施形態では、RNAサイレンシング剤は、RNA干渉を誘導することができる。別の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、翻訳抑制を媒介することができる。
【0153】
本明細書で使用される場合、「希少ヌクレオチド」という用語は、低頻度で生じる天然のヌクレオチド、例えば、低頻度で生じる天然のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、例えば、グアノシン、アデノシン、シトシン、またはウリジンではない天然のリボヌクレオチドを指す。希少ヌクレオチドの例としては、これらに限定されないが、イノシン、1-メチルイノシン、シュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、リボチミジン、2N-メチルグアノシン及び2,2N,N-ジメチルグアノシンが挙げられる。
【0154】
「操作された」という用語は、操作されたRNA前駆体または操作された核酸分子のように、前駆体または分子の核酸配列のすべてまたは一部が、作成されるかまたはヒトによって選択されるという点で、前駆体または分子が自然界に見出されないことを示す。一旦作成されるかまたは選択されると、配列は、細胞内の機構によって複製、翻訳、転写、または他の方法でプロセシングされる。したがって、操作された核酸分子を含む導入遺伝子から細胞内で産生されたRNA前駆体は、操作されたRNA前駆体である。
【0155】
本明細書で使用される用語「マイクロRNA」(「miRNA」)は、当技術分野において「一時的低分子RNA(small temporal RNA)」(「stRNA」)としても称され、(例えば、ウイルス、哺乳動物、または植物のゲノムによって)遺伝的にコードされ、RNAサイレンシングを指示または媒介することができる小さい(例えば、10~50ヌクレオチド)RNAを指す。「miRNA障害」は、miRNAの異常な発現または活性を特徴とする疾患または障害を指すものとする。
【0156】
本明細書で使用される場合、用語「二重官能性オリゴヌクレオチド」は、式T-L-μを有するRNAサイレンシング剤を指し、式中、Tは、mRNA標的化部分であり、Lは、連結部分であり、μは、miRNA動員部分である。本明細書で使用される場合、用語「mRNA標的化部分」、「標的化部分」、「mRNA標的化部分」または「標的化部分」は、十分なサイズ及びサイレンシングのために選択または標的化されたmRNAの部分または領域(すなわち、その部分は、標的mRNAを捕捉するのに十分な配列を有する)に対して十分な相補性を有する二重機能性オリゴヌクレオチドのドメイン、部分または領域を指す。本明細書で使用される「連結部分(linking moiety)」または「連結部分(linking portion)」という用語は、mRNAを共有結合により接合させるまたは連結するRNAサイレンシング剤のドメイン、部分または領域を指す。
【0157】
本明細書で使用される、RNAサイレンシング剤、例えばsiRNAまたはRNAサイレンシング剤の「アンチセンス鎖」という用語は、サイレンシングのために標的化された遺伝子のmRNAの約10~50ヌクレオチド、例えば約15~30、16~25、18~23または19~22ヌクレオチドのセクションに実質的に相補的な鎖を指す。アンチセンス鎖または第1の鎖は、標的特異的サイレンシングを指示するために、所望の標的mRNA配列に対して十分に相補的である、例えば、RNAiの機構またはプロセス(RNAi干渉)によって所望の標的mRNAの破壊を引き起こすのに十分に相補的である、または所望の標的mRNAの翻訳抑制を引き起こすのに十分に相補的である配列を有する。
【0158】
RNAサイレンシング剤、例えばsiRNAまたはRNAサイレンシング剤の「センス鎖」または「第2の鎖」という用語は、アンチセンス鎖または第1の鎖に相補的な鎖を指す。アンチセンス鎖及びセンス鎖はまた、第1の鎖または第2の鎖と称することができ、第1の鎖または第2の鎖は、標的配列に対して相補性を有し、それぞれの第2の鎖または第1の鎖は、第1の鎖または第2の鎖に対して相補性を有する。miRNA二本鎖中間体またはsiRNA様二本鎖には、サイレンシングの標的とされる遺伝子のmRNAの約10~50のヌクレオチドのセクションに十分な相補性を有するmiRNA鎖、及びmiRNA鎖と二本鎖を形成するのに十分な相補性を有するmiRNA*鎖が含まれる。
【0159】
本明細書で使用される用語「ガイド鎖」は、RISC複合体に入り、標的mRNAの切断を指示する、RNAサイレンシング剤の鎖、例えば、siRNA二本鎖またはsiRNA配列のアンチセンス鎖を指す。
【0160】
本明細書で使用される「非対称性」という用語は、RNAサイレンシング剤の二重鎖領域(例えば、shRNAのステム)の非対称性におけるように、RNAサイレンシング剤の末端間の結合強度または塩基対強度が不均等(例えば、第1の鎖またはステム部分上の末端ヌクレオチドと、対向する第2の鎖またはステム部分上の末端ヌクレオチドとの間)であることを指す。これにより、二本鎖の一方の鎖の5’末端が、相補鎖の5’末端よりも一過性の不対合状態、例えば一本鎖の状態にある頻度が高くなる。この構造上の違いにより、二重鎖の一方の鎖が、RISC複合体に優先的に組み込まれることが決定する。5’末端が相補鎖とあまり強固に対合していない鎖は、優先的にRISCに組み込まれ、RNAiを媒介するであろう。
【0161】
本明細書で使用される「結合強度」または「塩基対強度」という用語は、主に、H結合、ファンデルワールス相互作用などによるオリゴヌクレオチド二本鎖(例えば、siRNA二本鎖)の対抗する鎖上のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の対間、及びこれらのヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の相互作用の強度を指す。
【0162】
本明細書で使用される「5’末端」は、アンチセンス鎖の5’末端のように、5’末端ヌクレオチド、例えば、アンチセンス鎖の5’末端の1~約5ヌクレオチドの間を指す。本明細書で使用される「3’末端」は、センス鎖の3’末端のように、相補的なアンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチドに相補的な領域、例えば、1~約5ヌクレオチドの領域を指す。
【0163】
本明細書で使用される「不安定化ヌクレオチド」という用語は、塩基対が従来の塩基対(すなわち、ワトソン-クリック塩基対)よりも結合強度が低くなるように、第2のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体と塩基対を形成することができる第1のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を指す。特定の実施形態では、不安定化ヌクレオチドは、第2のヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成することができる。他の実施形態では、不安定化ヌクレオチドは、第2のヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成することができる。さらに他の実施形態では、不安定化ヌクレオチドは、第2のヌクレオチドと曖昧な塩基対を形成することができる。
【0164】
本明細書で使用される「塩基対」という用語は、オリゴヌクレオチド二重鎖(例えば、RNAサイレンシング剤の鎖及び標的mRNA配列によって形成される二重鎖)の対向する鎖上のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)の対間の、主に、ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間のH結合、ファンデルワールス相互作用などによる相互作用を指す。本明細書で使用される「結合強度」または「塩基対強度」という用語は、塩基対の強度を指す。
【0165】
本明細書で使用される用語「ミスマッチ塩基対」は、例えば、正常な相補的なG:C、A:T、A:U塩基対ではない、非相補的または非ワトソンクリック塩基対からなる塩基対を指す。本明細書で使用される用語「曖昧な塩基対」(非識別塩基対としても知られる)は、ユニバーサルヌクレオチドによって形成される塩基対を指す。
【0166】
本明細書で使用される「ユニバーサルヌクレオチド(universal nucleotide)」(「中性ヌクレオチド」としても知られる)という用語は、塩基対を形成するときの相補的なポリヌクレオチド上で塩基間を有意に識別しない塩基(「ユニバーサル塩基」または「中性塩基」)を有するヌクレオチド(例えば、ある特定の不安定化ヌクレオチド)を含む。ユニバーサルヌクレオチドは、主に疎水性分子であり、スタッキング相互作用により逆平行二本鎖核酸(例えば、二本鎖DNAまたはRNA)に効率よくパックすることができる。ユニバーサルヌクレオチドの塩基部分は、典型的には、窒素含有芳香族複素環部分を含む。
【0167】
本明細書で使用される「十分な相補性」または「十分な程度の相補性」という用語は、RNAサイレンシング剤が、それぞれ、所望の標的RNAに結合する、及び標的mRNAのRNAサイレンシングを誘発するのに十分な配列を(例えば、アンチセンス鎖、mRNA標的化部分またはmiRNA動員部分中に)有することを意味する。
【0168】
本明細書で使用される「翻訳抑制」という用語は、mRNA翻訳の選択的阻害を指す。自然な翻訳抑制は、shRNA前駆体から切断されたmiRNAを介して進行する。RNAi及び翻訳抑制の両方が、RISCによって媒介される。RNAi及び翻訳抑制の両方が自然に発生するか、例えば、標的遺伝子の発現をサイレンシングするためにヒトの手によって開始され得る。
【0169】
本発明の様々な方法論は、値、レベル、特徴、特性、性質などを、本明細書では交換可能に「適切な対照」と呼ばれる「好適な対照」と比較することを含むステップを含む。「好適な対照」または「適切な対照」は、比較目的に有用な、当業者によく知られている任意の対照または標準である。一実施形態では、「好適な対照」または「適切な対照」は、本明細書に記載のとおり、RNAi方法論を実施する前に決定された値、レベル、特徴、特性、性質などである。例えば、転写速度、mRNAレベル、翻訳速度、タンパク質レベル、生物学的活性、細胞の特徴または性質、遺伝子型、表現型などは、本発明のRNAサイレンシング剤を細胞または生物に導入する前に決定することができる。別の実施形態では、「好適な対照」または「適切な対照」は、細胞または生物、例えば対照または例えば、正常な形質を呈する正常な細胞もしくは生物において、決定された値、レベル、特徴、特性、性質などである。さらに別の実施形態では、「好適な対照」または「適切な対照」は、事前定義された値、レベル、特徴、特性、性質などである。
【0170】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法及び材料が、本発明の実践または試験で使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0171】
いくつかの実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤は、1つ以上のsFLT1タンパク質をコードするmRNA分子中のイントロン領域を標的とするように設計されている。
【0172】
本発明は、1つ以上のsFLT1 mRNA及びそれらの対応するタンパク質を標的とする。二本鎖RNA(siRNA)の1本の鎖は、sFLT1 mRNA内の標的配列を補完する。siRNAを対象または細胞に導入後、siRNAは、部分的に解かれ、sFLT1 mRNA内のイントロン標的領域に部位特異的に結合し、mRNAヌクレアーゼを活性化する。このヌクレアーゼは、sFLT1 mRNAを切断し、それによってsFLT1タンパク質の翻訳が停止される。細胞は、部分的に消化されたmRNAを自身で除去して、翻訳を妨げるか、または細胞が部分的に翻訳されたタンパク質を消化する。特定の実施形態では、sFLT1タンパク質の発現は、対象または細胞において、約30%~50%、または約30%~40%減少する。
【0173】
本発明の実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤は、ヒトflt1遺伝子を標的とすることができ、これは、2283位(5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1))または2519位(5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2))に見出すことができる。
【0174】
本発明の様々な態様は、以下のサブセクションでさらに詳細に説明される。
【0175】
I.siRNAの設計
いくつかの実施形態では、siRNAは、以下のように設計される。最初に、標的遺伝子(例えばflt1遺伝子)の一部、例えば標的配列のうちの1つ以上、例えば、sFLT1-i13-2283、sFLT1-i15a-2519、sFLT1-i13-2318、sFLT1-i15a-2585のうちの1つまたは任意の組み合わせが、標的遺伝子のイントロン領域から選択される。これらの部位におけるmRNAの切断は、対応する可溶性タンパク質の翻訳が不要になるものである。センス鎖は、標的配列に基づいて設計された。好ましくは、部分(及び対応するセンス鎖)は、約30~35個のヌクレオチド、例えば、30、31、32、33、34または35個のヌクレオチドを含む。より好ましくは、部分(及び対応するセンス鎖)は、21、22または23個のヌクレオチドを含む。しかし、当業者であれば、19ヌクレオチド未満の長さまたは25ヌクレオチドを超える長さを有するsiRNAも、RNAiを媒介するように機能し得ることを理解するであろう。したがって、そのような長さのsiRNAもまた、RNAiを媒介する能力を保持する限り、本発明の範囲内である。より長いRNAi剤が、特定の哺乳動物細胞でインターフェロンまたはPKR応答を誘発することが実証されているが、これは望ましくない場合がある。好ましくは、本発明のRNAi剤は、PKR応答を誘発しない(すなわち、十分に短い長さのものである)。しかし、より長いRNAi剤は、例えば、PRK応答を生じさせることができない細胞型、または代替手段によってPKR応答が下方制御または抑制されている状況では有用であり得る。
【0176】
センス鎖配列は、標的配列が本質的に鎖の中央にあるように設計される。標的配列を中心からずれた位置に移動させることにより、場合によっては、siRNAによる切断の効率が低下し得る。こうした組成物、すなわち効率の低い組成物は、野生型mRNAのオフサイレンシングが検出された場合に使用するのに望ましいかもしれない。
【0177】
アンチセンス鎖は、通常、センス鎖と同じ長さであり、相補的なヌクレオチドを含む。一実施形態では、鎖は、完全に相補的である。すなわち、鎖は、アラインまたはアニーリングさせたときに、平滑末端となる。別の実施形態では、鎖は、1、2、または3ヌクレオチドオーバーハングが、生成されるようにアラインまたはアニーリングを含む。すなわちセンス鎖の3’末端が、アンチセンス鎖の5’末端よりも1、2、または3ヌクレオチド伸長している、及び/またはアンチセンス鎖の3’末端が、センス鎖の5’末端よりも1、2、または3ヌクレオチド伸長している。オーバーハングは、標的遺伝子配列(またはその相補体)に対応するヌクレオチドを含む(またはからなる)ことができる。あるいは、オーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド、例えばdT、またはヌクレオチド類似体、または他の好適な非ヌクレオチド物質を含む(またはそれらからなる)ことができる。
【0178】
RISCへのアンチセンス鎖の侵入を容易にする(したがって、標的の切断及びサイレンシングの効率を上昇させるまたは改善する)ために、センス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の3’末端との間の塩基対強度を改変(低下または減少)させ得る。これらは、以下に詳細に記載され、米国特許第7,459,547号、第7,772,203号及び第7,732,593号、表題「Methods and Compositions for Controlling Efficacy of RNA Silencing」、(2003年6月2日出願)及び米国特許第8,309,704号、7,750,144号、第8,304,530号、第8,329,892号及び第8,309,705号表題「Methods and Compositions for Enhancing the Efficacy and Specificity of RNAi」(2003年6月2日出願)、これらの内容全体がこの参照によりその組み込まれる。本発明のこれらの態様の一実施形態では、第1の鎖またはアンチセンス鎖の5’末端と第2の鎖またはセンス鎖の3’末端との間のG:C塩基対が、第1の鎖またはアンチセンス鎖の3’末端と第2の鎖またはセンス鎖の5’末端との間よりも少ないため、塩基対強度は低い。別の実施形態では、塩基対強度は、第1の鎖またはアンチセンス鎖の5’末端と第2の鎖またはセンス鎖の3’末端との間の少なくとも1つのミスマッチ塩基対により小さい。特定の例示的な実施形態では、ミスマッチ塩基対は、以下からなる群から選択される:G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C及びU:U。別の実施形態では、塩基対強度は、第1またはアンチセンス鎖の5’末端と第2またはセンス鎖の3’末端との間の少なくとも1つのゆらぎ塩基対、例えば、G:Uにより低い。別の実施形態では、塩基対強度は、希少ヌクレオチド、例えばイノシン(I)を含む少なくとも1つの塩基対により低い。特定の例示的な実施形態では、塩基対は、I:A、I:U及びI:Cからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、塩基対強度は、修飾ヌクレオチドを含む少なくとも1つの塩基対により低い。特定の例示的な実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2-アミノ-G、2-アミノ-A、2,6-ジアミノ-G、及び2,6-ジアミノ-Aからなる群から選択される。
【0179】
sFLT1標的配列を標的とするのに好適であるsiRNAの設計は、以下に詳細に記載する。siRNAは、flt1遺伝子中に見られる任意の他の標的配列について、上記の例示的な教示に従って設計することができる。さらに、この技術は、例えば疾患を引き起こさない標的配列など、任意の他の標的配列を標的とすることに適用可能である。
【0180】
siRNAがmRNA(例えば、sFLT1 mRNA)を破壊することによる有効性を検証するために、キイロショウジョウバエをベースにしたin vitro mRNA発現系において、siRNAをcDNA(例えば、FLT1 cDNA)と共にインキュベートすることができる。32Pで放射性標識された、新しく合成されたmRNA(例えば、FLT1 mRNA)は、アガロースゲル上でオートラジオグラフィーにより検出される。切断されたmRNAの存在は、mRNAヌクレアーゼ活性を示す。好適な対照には、siRNAの省略が含まれる。あるいは、選択されたsiRNAと同じヌクレオチド組成を有するが、適切な標的遺伝子に対して有意な配列相補性を有さない対照siRNAが選択される。こうした陰性対照は、選択したsiRNAのヌクレオチド配列をランダムにスクランブルすることによって設計できる。相同性検索を実行して、陰性対照が、適切なゲノム内の任意の他の遺伝子との相同性を欠いていることが確認できる。さらに、陰性対照siRNAは、1つ以上の塩基ミスマッチを配列に導入することによって設計できる。
【0181】
最適なmRNA特異性及び最大mRNA切断をもたらすsiRNA-mRNA相補部位が選択される。
【0182】
II.RNAi剤
本発明は、例えば上記のように設計されたsiRNA分子を含む。本発明のsiRNA分子は、化学的に合成することができ、またはDNA鋳型からin vitroで、または例えばshRNAからin vivoで転写することができ、または組換えヒトDICER酵素を使用して、in vitroで転写されたdsRNA鋳型を切断して、20、21、または23bpの二本鎖RNA媒介RNAiのプールにする。siRNA分子は、当技術分野で知られている任意の方法を使用して、設計することができる。
【0183】
一態様では、RNAi剤が干渉リボ核酸、例えば上記のsiRNAまたはshRNAである代わりに、RNAi剤は、干渉リボ核酸、例えば上記のshRNAをコードすることができる。換言すれば、RNAi剤は、干渉リボ核酸の転写鋳型となり得る。したがって、本発明示のRNAi剤はまた、小さいヘアピンRNA(shRNA)、及びshRNAを発現するように操作された発現構築物を含み得る。shRNAの転写は、ポリメラーゼIII(pol III)プロモーターで開始され、4-5-チミン転写終結部位の2位で終結すると考えられている。発現時に、shRNAは、折り畳まれて、3’UUオーバーハングを有するステムループ構造になると考えられ、その後、これらのshRNAの末端がプロセシングされ、shRNAが、約21~23ヌクレオチドのsiRNA様分子に変換される(Brummelkamp et al.,2002;Lee et al.,2002,上記;Miyagishi et al.,2002;Paddison et al.,2002,上記;Paul et al.,2002,上記;Sui et al.,2002上記;Yu et al.,2002,上記。shRNAの設計及び使用に関するさらなる情報は、インターネットの次のアドレスで確認できる:katandin.cshl.org:9331/RNAi/docs/BseRI-BamHI_Strategy.pdf and katandin.cshl.org:9331/RNAi/docs/Web_version_of_ PCR_strategy1.pdf)。
【0184】
本発明の発現構築物としては、適切な発現系での使用に好適である任意の構築物が挙げられ、当技術分野において知られているとおり、これらに限定されないが、レトロウイルスベクター、線形発現カセット、プラスミド、及びウイルスまたはウイルス由来のベクターが挙げられる。そのような発現構築物は、1つ以上の誘導性プロモーター、RNA Pol IIIプロモーター系、例えば、U6 snRNAプロモーターもしくはH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーター、または当技術分野で知られている他のプロモーターを挙げることができる。構築物は、siRNAの一方または両方の鎖を含むことができる。両方の鎖を発現する発現構築物はまた、両方の鎖を連結するループ構造を含むことができ、または各鎖は、同じ構築物内の別々のプロモーターから別々に転写することができる。各鎖は、別々の発現構築物から転写できる(Tuschl,T.,2002,上記)。
【0185】
合成siRNAは、カチオン性リポソームトランスフェクション及びエレクトロポレーションなど、当技術分野で知られている方法によって細胞に送達することができる。標的遺伝子(すなわち、flt1遺伝子)の長期的な抑制を得るため、及び特定の状況下での送達を容易にするために、1つ以上のsiRNAを組換えDNA構築物から細胞内で発現させることができる。組換えDNA構築物から細胞内でsiRNA二本鎖を発現させて、細胞内でより長期の標的遺伝子抑制を可能にするためのそのような方法は、機能的な二本鎖siRNAを発現することができる哺乳動物Pol IIIプロモーター系(例えば、H1またはU6/snRNAプロモーター系(Tuschl,T.,2002,上記)など、当該分野で既知である(Bagella et al.,1998;Lee et al.,2002,上記;Miyagishi et al.,2002,上記;Paul et al.,2002,上記;Yu et al.,2002),上記;Sui et al.,2002,上記)。RNA PolIIIによる転写終結は、DNA鋳型内の一連の4つの連続するT残基で生じ、これにより、siRNA転写産物を特定の配列で終結させる機構がもたらされる。siRNAは、5’-3’及び3’-5’方向で標的遺伝子の配列に相補的であり、siRNAの2本の鎖は、同じ構築物または別々の構築物内で発現し得る。H1またはU6 snRNAプロモーターによって駆動され、細胞内で発現するヘアピンsiRNAは、標的遺伝子の発現を阻害し得る(Bagella et al.,1998;Lee et al.,2002,上記;Miyagishi et al.,2002,上記;Paul et al.,2002,上記;Yu et al.,2002),上記;Sui et al.,2002,上記)。T7プロモーターの制御下にあるsiRNA 配列を含む構築物は、T7 RNAポリメラーゼを発現するベクターと共に細胞に同時トランスフェクトされたときに、機能的なsiRNAも作成される(Jacque et al.,2002,上記)。単一の構築物は、同じ遺伝子または複数の遺伝子を標的とするsFlt1をコードする遺伝子の複数の領域など、siRNAをコードする複数の配列を含んでもよく、また、例えば、別のPolIII プロモーター部位によって駆動され得る。
【0186】
動物細胞は、マイクロRNA(miRNA)と呼ばれる約22ヌクレオチドの一連の非コードRNAを発現する。これは、動物の発育中に転写後または翻訳レベルで遺伝子発現を調節できる。miRNAの共通の特徴の1つは、おそらくRNase III型酵素であるDicer、またはその相同体によって、約70ヌクレオチドの前駆体RNAステムループからすべてが切り出されることである。miRNA前駆体のステム配列を標的mRNAに相補的な配列で置換することにより、操作された前駆体を発現するベクター構築物を使用して、siRNAを産生し、哺乳動物細胞内の特定のmRNA標的に対してRNAiを開始できる(Zeng et al.,上記,2002)。ポリメラーゼIIIプロモーターを含むDNAベクターによって発現したときに、マイクロRNA設計ヘアピンは、遺伝子発現のサイレンシングを行うことができる(McManus et al.,2002,上記)。多型を標的とするマイクロRNAは、siRNA媒介遺伝子サイレンシングがない場合、変異タンパク質の翻訳をブロックするのにも有用であり得る。このような用途は、例えば、設計されたsiRNAが、野生型タンパク質のオフターゲット サイレンシングを引き起こした状況において、有用であり得る。
【0187】
ウイルス媒介性送達機構は、siRNAの発現を介して、例えば、RNA Pol II プロモーター転写制御下で、siRNAを保有する組換えアデノウイルスを生成することによって、標的とした遺伝子の特異的サイレンシングを誘導するためにも使用できる(Xia et al.,2002,上記)。これらの組換えアデノウイルスによるHeLa細胞の感染により、内因性標的遺伝子の発現が減少し得る。siRNAの標的遺伝子を発現するトランスジェニックマウスへ組換えアデノウイルスベクターを注入することにより、標的遺伝子発現のin vivo減少がもたらされる。同上。動物モデルでは、全胚エレクトロポレーションにより、合成siRNAを移植後のマウス胚に効率的に送達できる(Calegari et al.,2002)。成体マウスでは、siRNAの効率的な送達は、「高圧」送達技術、大量のsiRNA含有溶液を動物の尾静脈から急速に(5秒以内に)注入することにより達成できる(Liu et al.,1999,上記;McCaffrey et al.,2002,上記;Lewis et al.,2002。ナノ粒子及びリポソームを使用して、siRNAを動物に送達することもできる。特定の例示的な実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)及びそれらの関連ベクターを使用して、1つ以上のsiRNAを細胞、例えば神経細胞(例えば脳細胞)に送達することができる(米国特許出願第2014/0296486号、同第2010/0186103号、同第2008/0269149号、同第2006/0078542号、及び同第2005/0220766号)。
【0188】
本発明の核酸組成物は、非修飾siRNA及び当技術分野において公知である修飾siRNA、例えば、架橋siRNA誘導体または例えばそれらの3’末端または5’末端に連結した非ヌクレオチド部分を有する誘導体など、を両方とも含む。このようにsiRNA誘導体を修飾することにより、対応するsiRNAと比較して、細胞への取り込みを改善する、または得られたsiRNA誘導体の細胞標的活性を向上させることができ、siRNA誘導体を細胞内で追跡する、または対応するsiRNAと比較して、siRNA誘導体の安定性を改善するのに有用である。
【0189】
本明細書に記載のとおり、細胞または生物全体に導入された操作されたRNA前駆体により、所望のsiRNA分子の産生がもたらされる。次いで、そのようなsiRNA分子は、RNAi経路の内因性タンパク質成分と会合して、特定のmRNA配列に結合し、切断及び破壊のための標的とする。このようにして、操作されたRNA前駆体から生成されたsiRNAによって標的とされるmRNAは、細胞または生物から枯渇し、これにより、細胞または生物中のそのmRNAによってコードされるタンパク質の濃度の低下となる。RNA前駆体は、典型的には、dsRNAの1つの鎖を個別にコードするか、またはRNAヘアピンループ構造の全ヌクレオチド配列をコードするかのいずれかである核酸分子である。
【0190】
本発明の核酸組成物は、コンジュゲートしていなくてもよく、またはナノ粒子などの別の部分にコンジュゲートしてもよく、これにより、組成物の性質、例えば、吸収、効果、バイオアベイラビリティ及び/または半減期などの薬物動態パラメータを向上させる。コンジュゲーションは、例えば、本技術で知られている方法、以下の方法を用いて、達成することができる。Lambert et al.,Drug Deliv.Rev.:47(1),99-112(2001)(ポリアルキルシアノアクリレート(PACA)ナノ粒子に付加された核酸について記載)、Fattal et al.,J.Control Release 53(1-3):137-43(1998)(ナノ粒子に結合した核酸について記載)、Schwab et al.,Ann.Oncol.5 Suppl.4:55-8(1994)(インターカレーション剤、疎水性基、ポリカチオンまたはPACAナノ粒子と連結した核酸について記載)、及びGodard et al.,Eur.J.Biochem.232(2):404-10(1995)(ナノ粒子に連結した核酸について記載)。
【0191】
本発明の核酸分子は、当技術分野で知られている任意の方法を使用して標識することもできる。例えば、核酸組成物は、フルオロフォア、例えば、Cy3、フルオレセイン、またはローダミンで標識することができる。標識は、キット、例えば、SILENCER(商標)siRNA標識キット(Ambion)を使用して行うことができる。さらに、siRNAは、例えば、3H、32Pまたは他の適切な同位体を使用して、放射標識させ得る。
【0192】
さらに、RNAiは、少なくとも1つの一本鎖RNA中間体を介して進行すると考えられているため、当業者であれば、ss-siRNA(例えば、ds-siRNAのアンチセンス鎖)も、本明細書に記載のとおり、(例えば、化学合成のために)設計され、生成され(例えば、酵素的に生成され)るか、または(例えば、ベクターまたはプラスミドから)発現され、特許請求される方法論に従って利用され得ることを理解するであろう。さらに、無脊椎動物では、RNAiは、RNAiのエフェクターとして作用する長いdsRNA(例えば、約100~1000ヌクレオチド長のdsRNA、好ましくは、約200~500、例えば、約250、300、350、400または450ヌクレオチド長など)によって効果的に誘発され得る(Brondani et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2001 Dec.4;98(25):14428-33.Epub 2001 Nov.27.)
【0193】
III.抗sFlt1 RNAサイレンシング剤
本発明は、抗sFLT1 RNAサイレンシング剤(例えば、siRNA及びshRNA)、上記RNAサイレンシング剤を作製する方法、及び1つ以上のsFLT1タンパク質のRNAサイレンシングのために、改善されたRNAサイレンシング剤(またはその一部)を使用するための方法(例えば、研究及び/または治療方法)を特徴とする。RNAサイレンシング剤は、アンチセンス鎖(またはその一部)を含み、アンチセンス鎖は、RNA媒介サイレンシング機構(例えば、RNAi)を媒介するためにヘテロ接合型一塩基多型に十分な相補性を有する。
【0194】
a)抗sFlt1 siRNA分子の設計
本発明のsiRNA分子は、センス鎖及び相補的なアンチセンス鎖からなる二重鎖であり、このアンチセンス鎖は、RNAiを媒介するために、sFLT1 mRNAに十分に相補性を有する。好ましくは、siRNA分子は、約10~50以上のヌクレオチド長を有する、すなわち、各鎖は、10~50のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含む。より好ましくは、siRNA分子は、各鎖に約16~30、例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30のヌクレオチド長を有する。ここで、鎖のうちの1つは、標的領域に十分に相補的である。好ましくは、鎖は、アラインしない(すなわち、対向する鎖中に、相補的な塩基が生じない)鎖の末端に、少なくとも1、2、または3の塩基が存在するように配列される。これにより、鎖がアニールされるときに、二本鎖の一端または両端で、1、2、または3残基のオーバーハングが発生するようになる。好ましくは、siRNA分子は、約10~50以上のヌクレオチド長を有する、すなわち、各鎖は、10~50のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含む。より好ましくは、siRNA分子は、各鎖に約16~30、例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のヌクレオチド長を有し、鎖の一方は標的配列に実質的に相補的であり、他方の鎖は第1の鎖と同一または実質的に同一である。
【0195】
概して、siRNAは、当技術分野において公知である任意の方法を使用して、例えば、以下のプロトコルを使用して設計することができる:
1.siRNAは、標的配列、例えば、標的配列に特異的であるものとする。一実施形態では、標的配列は、可溶性Flt1 mRNA中に見出されるが、全長Flt mRNA中には見出されない。別の実施形態では、標的配列は、可溶性Flt1 mRNA及び全長Flt mRNAの両方の中に見出される。別の実施形態では、標的配列は、全長Flt mRNA中に見出される。第1の鎖は、標的配列に相補的であるものとし、他の鎖は、第1の鎖に実質的に相補的である。一実施形態では、標的配列は、1つ以上の可溶性Flt mRNA配列のイントロン領域中でコードされる。例示的な標的配列は、標的遺伝子の1つ以上のイントロン領域に対応する。これらの部位においてmRNAが切断されることにより、対応する可溶性タンパク質の翻訳は除去されるが、全長タンパク質の翻訳は除去されないはずである。flt遺伝子の他の領域からの標的配列も標的化に好適である。センス鎖は、標的配列に基づいて設計される。さらに、より低いG/C含有率(35~55%)を有するsiRNAは、55%より高いG/C含量を有するsiRNAより活性であり得る。したがって、一実施形態では、本発明は、35~55%のG/C含有率を有する核酸分子を含む。
【0196】
2.siRNAのセンス鎖は、選択した標的部位の配列に基づいて設計される。好ましくは、センス鎖は、約19~25ヌクレオチド、例えば、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチドを含む。より好ましくは、センス鎖は、21、22または23のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、16ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、17ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、18ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、19ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、20ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、21ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、22ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、23ヌクレオチドを含む。しかし、当業者であれば、19ヌクレオチド未満の長さまたは25ヌクレオチドを超える長さを有するsiRNAも、RNAiを媒介するように機能し得ることを理解するであろう。したがって、そのような長さのsiRNAもまた、RNAiを媒介する能力を保持する限り、本発明の範囲内である。より長いRNAサイレンシング剤が、特定の哺乳動物細胞でインターフェロンまたはプロテインキナーゼR(PKR)応答を誘発することが実証されているが、これは望ましくない場合がある。好ましくは、本発明のRNAサイレンシング剤は、PKR応答を誘発しない(すなわち、十分に短い長さのものである)。しかし、より長いRNAサイレンシング剤は、例えば、PRK応答を生じさせることができない細胞型、または代替手段によって、PKR応答が下方制御または抑制されている状況では有用であり得る。
【0197】
本発明のsiRNA分子は、siRNAがRNAiを媒介できるように、標的配列との十分な相補性を有する。一般に、標的遺伝子の標的配列部分と十分に同一であるヌクレオチド配列を含むsiRNAが、標的遺伝子のRISC媒介切断をもたらすことが好ましい。したがって、好ましい実施形態では、siRNAのセンス鎖は、標的の一部に十分に同一である配列を有するように設計される。例えば、センス鎖は、標的部位に対して100%の同一性を有し得る。しかし、100%同一である必要はない。センス鎖と標的RNA配列との間で、80%を超える同一性、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはさらには100%の同一性が好ましい。本開示は、RNAiの効率及び特異性を高めるために、特定の配列の変形を許容できるという利点を有する。一実施形態では、センス鎖は、可溶性flt1と全長flt1対立遺伝子との間で少なくとも1つの塩基対が異なる標的領域などの標的領域と4、3、2、1、または0個のミスマッチヌクレオチドを有する。例えば、標的領域は、機能獲得型変異を含み、他の鎖は、第1の鎖と同一であるかまたは実質的に同一である。さらに、1または2ヌクレオチドの小さい挿入または欠失を有するsiRNA配列も、RNAiの媒介に有効であり得る。あるいは、ヌクレオチド類似体の置換または挿入を有するsiRNA配列は、阻害に有効であり得る。
【0198】
配列同一性は、当技術分野で知られている配列比較及びアラインメントアルゴリズムによって決定され得る。2つの核酸配列(または2つのアミノ酸配列)の同一性パーセントを決定するために、最適な比較のために配列をアラインさせる(例えば、最適なアラインのために第1の配列または第2の配列にギャップを導入することができる)。次いで、対応するヌクレオチド(またはアミノ酸)位置のヌクレオチド(またはアミノ酸残基)を比較する。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置と同じ残基で占有されている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、その配列が共有する同一位置の数に対応し(すなわち、%相同性=同一位置の数/位置の総数x100)、任意により、導入されたギャップの数及び/または導入されたギャップの長さのスコアにペナルティを付与する。
【0199】
配列の比較及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。一実施形態では、アラインメントは、十分な同一性を有するアラインされた配列の特定の部分において生成され、低い程度の同一性を有する部分では生成されない(すなわち、局所的アラインメント)。配列の比較に利用される局所アラインメントアルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68、改訂Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、BLASTプログラム(version 2.0)、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10に組み込まれる。
【0200】
別の実施形態では、アラインメントは、適切なギャップを導入することによって最適化され、パーセント同一性は、アラインされた配列の長さ(すなわち、ギャップのあるアラインメント)にわたって決定される。比較目的のためのギャップアライメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載のとおり使用できる。別の実施形態では、適切なギャップを導入することによってアラインメントを最適化し、アラインされた配列の全長においてパーセント同一性を決定する(すなわち、グローバルアラインメント)。配列のグローバル比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Myers及びMillerのアルゴリズム、CABIOS(1989)である。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基テーブル、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用することができる。
【0201】
3.siRNAのアンチセンス鎖またはガイド鎖は、日常的に、センス鎖と同じ長さであり、相補的ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、センス鎖より長い。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、センス鎖より短い。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、約19~25ヌクレオチド、例えば、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、21、22または23ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、16ヌクレオチド長を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、17ヌクレオチド長を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、18ヌクレオチド長を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、19ヌクレオチド長を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、20ヌクレオチド長を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、21ヌクレオチド長を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、22ヌクレオチド長を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖またはガイド鎖は、23ヌクレオチド長を含む。
【0202】
一実施形態では、ガイド鎖及びセンス鎖は、完全に相補的である。すなわち、鎖は、アラインまたはアニーリングされたときに、平滑末端化される。別の実施形態では、siRNAの鎖は、1~4、例えば、2ヌクレオチドの3’オーバーハングを有するように、対合させ得る。いくつかの実施形態では、3’オーバーハングは、1ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、3’オーバーハングは、2ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、3’オーバーハングは、3ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、3’オーバーハングは、4ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、3’オーバーハングは、5ヌクレオチドである。オーバーハングは、標的遺伝子配列(またはその相補体)に対応するヌクレオチドを含む(またはからなる)ことができる。あるいは、オーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド、例えばdT、またはヌクレオチド類似体、または他の好適な非ヌクレオチド物質を含む(またはそれらからなる)ことができる。したがって、別の実施形態では、核酸分子は、TTなどの2ヌクレオチドの3’オーバーハングを有し得る。オーバーハングヌクレオチドは、RNAまたはDNAのいずれかであり得る。上記のとおり、変異体:野生型のミスマッチがプリン:プリンのミスマッチである標的領域を選択することが望ましい。
【0203】
4.当技術分野で知られている任意の方法を使用して、潜在的な標的を適切なゲノムデータベース(ヒト、マウス、ラットなど)と比較して、他のコード配列と有意な相同性を有する任意の標的配列を考慮する必要がなくなる。このような配列相同性検索の方法の1つは、BLASTとして知られており、National Center for Biotechnology InformationのWebサイトで入手できる。
【0204】
5.評価基準を満たす1つ以上の配列を選択する。
siRNAの設計及び使用に関する一般的な情報は、The Max-Plank-Institut fur Biophysikalishe ChemieのWebサイトで入手可能な「The siRNA User Guide」に見ることができる。
【0205】
あるいは、siRNAは、標的配列とハイブリダイズできる(例えば、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mMEDTAと、50℃または70℃、12~16時間ハイブリダイズし、その後洗浄する)ヌクレオチド配列(またはオリゴヌクレオチド配列)として機能的に定義され得る。追加の好ましいハイブリダイゼーション条件には、1xSSCで70℃または1xSSCで50℃、50%ホルムアミドでのハイブリダイゼーション、その後0.3xSSC、70℃での洗浄、または4xSSCで70℃または4xSSCで50℃、50%ホルムアミドでのハイブリダイゼーション、その後1xSSCで67℃での洗浄が含まれる。長さが50塩基対未満であることが予測されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)より5~10℃低いものとする。ここで、Tmは、次式に従って決定される。長さが18塩基対未満のハイブリッドの場合、Tm(℃)=2(A+T塩基数#)+4(G+C塩基数#)。長さが18~49塩基対のハイブリッドの場合、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)-(600/N)(式中、Nは、ハイブリッド中の塩基数であり、[Na+]は、ハイブリダイゼーションバッファ中のナトリウムイオンの濃度である(1xSSCの[Na+]=0.165M))。ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションのストリンジェンシー条件の追加の例は、Sambrook,J.,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,chapters 9 and 11、及びCurrent Protocols in Molecular Biology,1995,F.M.Ausubel et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.,sections 2.10及び6.3-6.4に記載され、これらは、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0206】
陰性対照siRNAは、選択されたsiRNAと同じヌクレオチド組成物を有するものとするが、適切なゲノムとの有意な配列相補性はない。そのような陰性対照は、選択されたsiRNAのヌクレオチド配列をランダムにスクランブルすることによって設計され得る。相同性検索を実施して、陰性対照が、適切なゲノム内の任意の他の遺伝子との相同性を欠いていることを確認できる。さらに、陰性対照siRNAは、1つ以上の塩基ミスマッチを配列に導入することによって設計できる。
【0207】
6.これによりsiRNAが標的mRNA(例えば、可溶性FLT1に対応するsFLT1 mRNA)を破壊する有効性を検証するために、ショウジョウバエをベースにしたin vitro mRNA発現系において、siRNAを標的cDNA(例えば、flt1 cDNA)と共にインキュベートさせ得る。32Pで放射性標識された、新しく合成された標的mRNA(例えば、sFlt1 mRNA)は、アガロースゲル上でオートラジオグラフィーにより検出される。切断された標的mRNAの存在は、mRNAヌクレアーゼ活性を示す。好適な対照には、siRNAの省略及び非標的cDNAの使用が含まれる。あるいは、選択されたsiRNAと同じヌクレオチド組成を有するが、適切な標的遺伝子に対して有意な配列相補性を有さない対照siRNAが選択される。そのような陰性対照は、選択されたsiRNAのヌクレオチド配列をランダムにスクランブルすることによって設計できる。相同性検索を実施して、陰性対照が、適切なゲノム内の任意の他の遺伝子との相同性を欠いていることを確認できる。さらに、陰性対照siRNAは、1つ以上の塩基ミスマッチを配列に導入することによって設計できる。
【0208】
抗sflt1 siRNAは、上記の標的配列のいずれかを標的とするように設計され得る。siRNAは、標的配列のサイレンシングを媒介するために標的配列と十分に相補的であるアンチセンス鎖を含む。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、siRNAである。
【0209】
最適なmRNA特異性及び最大mRNA切断をもたらすsiRNA-mRNA相補部位が選択される。
【0210】
b)siRNA様分子
本発明のsiRNA様分子は、RNAiまたは翻訳抑制による遺伝子サイレンシングを指示するために、sflt1 mRNAの標的配列に「十分に相補的」である配列を有する(すなわち、配列を有する鎖を有する)。siRNA様分子は、siRNA分子と同じ方法で設計されるが、センス鎖と標的RNA間の配列同一性の程度は、miRNAとその標的間で観察されるものに近似する。一般に、miRNA配列と対応する標的遺伝子配列との間の配列同一性の程度が低下したときに、RNAiではなく翻訳抑制によって転写後の遺伝子サイレンシングが媒介される傾向が上昇する。したがって、標的遺伝子の翻訳抑制による転写後遺伝子サイレンシングが所望される別の実施形態では、miRNA配列は、標的遺伝子配列と部分的な相補性を有する。特定の実施形態では、miRNA配列は、標的mRNA内(例えば、標的mRNAの3’UTR内)に分散した1つ以上の短い配列(相補部位)との部分的な相補性を有する(Hutvagner and Zamore,Science,2002;Zeng et al.,Mol.Cell,2002;Zeng et al.,RNA,2003;Doench et al.,Genes&Dev.,2003)。翻訳抑制の機構は協調的であるため、特定の実施形態では、複数の相補性部位(例えば、2、3、4、5、または6)を標的とし得る。
【0211】
RNAiまたは翻訳抑制を媒介するsiRNA様二本鎖の能力は、標的遺伝子配列と相補部位におけるサイレンシング剤のヌクレオチド配列との間の非同一ヌクレオチドの分布によって予測され得る。翻訳抑制による遺伝子サイレンシングが所望される一実施形態では、miRNAガイド鎖及び標的mRNAによって形成される二重鎖が、中央の「バルジ」を含むように、少なくとも1つの同一でないヌクレオチドが相補性部位の中央部分に存在する(Doench J G et al.,Genes&Dev.,2003)。別の実施形態では、2、3、4、5、または6の連続したまたは連続していない非同一ヌクレオチドが導入される。非同一ヌクレオチドは、ゆらぎ塩基対(例えば、G:U)またはミスマッチ塩基対(G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C、U:U)を形成するように選択され得る。さらに好ましい実施形態では、「バルジ」は、miRNA分子の5’末端から12位及び13位のヌクレオチドを中心とする。
【0212】
c)ショートヘアピンRNA(shRNA)分子
特定の特徴的な実施形態では、本発明は、高選択性を有するsFlt1標的配列のRNAサイレンシングを媒介することができるshRNAを提供する。siRNAとは対照的に、shRNAは、マイクロRNA(miRNA)の天然の前駆体を模倣し、遺伝子サイレンシング経路の最上部に入る。このため、shRNAは、天然遺伝子サイレンシング経路全体を介して供給されることにより、遺伝子サイレンシングをより効率的に媒介すると考えられている。
【0213】
miRNAは、約22ヌクレオチドの非コードRNAであり、植物及び動物の発育中に、転写後または翻訳レベルで遺伝子発現を調節できる。miRNAの共通の特徴の1つは、おそらくRNase III型酵素であるDicer、またはその相同体によって、pre-miRNAと称される約70ヌクレオチドの前駆体RNAステムループからすべてが切り出されることである。天然に存在するmiRNA前駆体(pre-miRNA)は、一般に相補的な2つの部分を含む二本鎖ステムを形成する一本鎖と、ステムの2つの部分を接続するループとを有する。典型的なpre-miRNAでは、ステムは、1つ以上のバルジ、例えば、ステムの一部内に単一のヌクレオチド「ループ」を作成する余分なヌクレオチド、及び/またはステムの2つの部分の相互のハイブリダイゼーション内にギャップを作る1つ以上の不対ヌクレオチドを含む。本発明のショートヘアピンRNAまたは操作されたRNA前駆体は、これらの天然に存在するpre-miRNAに基づく人工構築物であるが、所望のRNAサイレンシング剤(例えば、本発明のsiRNA)を送達するように操作されている。pre-miRNAのステム配列を標的mRNAに相補的な配列に置換することにより、shRNAが形成される。shRNAは、細胞の遺伝子サイレンシング経路全体によってプロセシングし、それによってRNAiを効率的に媒介する。
【0214】
shRNA分子の必要なエレメントは、アニーリングまたはハイブリダイズして二重鎖または二本鎖ステム部分を形成するのに十分な相補性を有する、第1の部分及び第2の部分を含む。2つの部分は、完全にまたは完璧に相補的である必要はない。第1及び第2の「ステム」部分は、shRNAの他の部分にアニーリングまたはハイブリダイズするには十分でない配列相補性を有する配列を有する部分によって結合される。この後者の部分は、shRNA分子内の「ループ」部分と呼ばれる。shRNA分子は、プロセシングされて、siRNAが生成される。shRNAは、1つ以上のバルジ、すなわち、ステムの一部中に小さいヌクレオチド「ループ」、例えば1、2、または3ヌクレオチドループを作成する余分のヌクレオチドも含むことができる。ステム部分は、同じ長さであることができ、または一部は、例えば、1~5ヌクレオチドのオーバーハングを含むことができる。オーバーハングヌクレオチドは、例えば、ウラシル(U)、例えばすべてのUを含み得る。このようなUは、転写の終結をシグナル伝達するshRNAコードDNA内のチミジン(T)によって特にコードされる。
【0215】
本発明のshRNA(または操作された前駆体RNA)では、二重鎖ステムの一部は、sFlt1標的配列に相補的(またはアンチセンス)な核酸配列である。好ましくは、shRNAのステム部分の一方の鎖は、標的RNA(例えば、mRNA)配列に対して十分に相補的(例えば、アンチセンス)であり、RNA干渉(RNAi)を介して標的RNAの分解または切断を媒介する。したがって、操作されたRNA前駆体は、2つの部分を有する二重ステムと、2つのステム部分を結合するループとを含む。アンチセンス部分は、ステムの5’または3’末端にあり得る。shRNAのステム部分は、好ましくは、約15~約50ヌクレオチド長である。好ましくは、2つのステム部分は、約18または19から約21、22、23、24、25、30、35、37、38、39、または40、またはそれ以上のヌクレオチド長である。好ましい実施形態では、ステム部分の長さは、21ヌクレオチド以上であるものとする。哺乳動物細胞で使用する場合、ステム部分の長さは、インターフェロン経路のような非特異的応答の誘発を避けるために、約30ヌクレオチド未満であるものとする。非哺乳類細胞では、ステムは、30ヌクレオチドを超えてもよい。実際、ステムには、標的mRNAに相補的なはるかに大きいセクション(最大でmRNA全体、及びmRNA全体を含む)が含まれる場合がある。実際、ステム部分には、標的mRNAに相補的なはるかに大きいセクション(最大でmRNA全体、及びmRNA全体を含む)が含まれる場合がある。
【0216】
二重ステムの2つの部分は、ハイブリダイズして二重ステムを形成するのに十分に相補的である必要がある。したがって、2つの部分は、完全にまたは完璧に相補的であり得るが、そうである必要はない。さらに、2つのステム部分は、同じ長さであり得るか、または1つの部分が、1、2、3、または4ヌクレオチドのオーバーハングを含み得る。オーバーハングヌクレオチドは、例えば、ウラシル(U)、例えばすべてのUを含み得る。shRNAまたは操作されたRNA前駆体内のループは、ループ配列を修飾して、対合ヌクレオチドの数を増減させる、またはループ配列のすべてもしくは一部をテトラループまたは他のループ配列に置き換えることにより、天然のpre-miRNA配列とは異なり得る。したがって、shRNAまたは操作されたRNA前駆体中のループは、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上、例えば、15または20またはそれ以上のヌクレオチド長であり得る。
【0217】
shRNAまたは操作されたRNA前駆体内のループは、ループ配列を修飾して、対合ヌクレオチドの数を増減させる、またはループ配列のすべてもしくは一部をテトラループまたは他のループ配列に置き換えることにより、天然のpre-miRNA配列とは異なり得る。したがって、shRNA内のループ部分は、約2~約20ヌクレオチド長、すなわち、約2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上、例えば、15または20ヌクレオチド、またはそれ以上のヌクレオチド長であり得る。1つの好ましいループは、「テトラループ」配列からなるか、または「テトラループ」配列を含む。例示的テトラループ配列としては、これらに限定されないが、配列GNRA(式中、Nが任意のヌクレオチドであり、Rがプリンヌクレオチドである)、GGGG、及びUUUUである。
【0218】
特定の実施形態では、本発明のshRNAは、上述の所望のsiRNA分子の配列を含む。他の実施形態では、shRNAのアンチセンス部分の配列は、本質的に上記のとおり、または一般に、標的RNA(例えば、sflt1 mRNA)内から、例えば、翻訳開始点の上流または下流の100~200または300ヌクレオチドの領域から、18、19、20、21ヌクレオチド、またはそれより長い配列を選択することによって設計することができる。一般に、配列は、イントロン領域、5’UTR(非翻訳領域)、コード配列、または3’UTRなど、標的RNA(例えば、mRNA)の任意の部分から選択することができるが、ただし、本部分が、機能獲得突然変異の部位から離れていることを条件とする。この配列は、任意により、隣接する2つのAAヌクレオチドを含む標的遺伝子の領域の直後に続くことができる。ヌクレオチド配列の最後の2つのヌクレオチドは、UUになるように選択することができる。この約21のヌクレオチド配列を使用して、shRNAの二本鎖ステムの一部を作製する。この配列は、野生型pre-miRNA配列のステム部分を、例えば酵素的に置換することができるか、または合成される完全な配列に含まれる。例えば、ステムループ操作RNA前駆体全体をコードする、または前駆体の二本鎖ステムに挿入される部分のみをコードするDNAオリゴヌクレオチドを合成すること、及び制限酵素を使用して、例えば、野生型pre-miRNAから、操作RNA前駆体構築物を構築することができる。
【0219】
操作されたRNA前駆体は、二重鎖ステム中にin vivoで産生されることが望まれるsiRNAまたはsiRNA様二重鎖の21~22程度のヌクレオチド配列を含む。したがって、操作されたRNA前駆体のステム部分は、発現が減少されるかまたは阻害される遺伝子のエクソン部分の配列に対応する少なくとも18または19のヌクレオチド対を含む。ステムのこの領域に隣接する2つの3’ヌクレオチドは、操作されたRNA前駆体からのsiRNAの産生を最大化するように、ならびにin vivo及びin vitroにおいて、RNAiによる翻訳抑制または破壊のために対応するmRNAを標的とする際に、結果として得られるsiRNAの有効性を最大化するように選択される。
【0220】
特定の実施形態では、本発明のshRNAは、miRNA配列、任意により末端修飾miRNA配列を含み、RISCへの侵入を増強する。miRNA配列は、任意の天然に存在するmiRNAの配列と類似であるかまたは同一であり得る(例えば、The miRNA Registry;Griffiths-Jones S,Nuc.Acids Res.,2004)。現在までに1,000を超える天然のmiRNAが同定されており、それらを合わせるとゲノム内のすべての予測遺伝子のうち約1%を含むと考えられる。多くの天然のmiRNAは、pre-mRNAのイントロン内に一緒にクラスター化されており、相同性ベースの検索(Pasquinelli et al.,2000;Lagos-Quintana et al.,2001;Lau et al.,2001;Lee and Ambros,2001)、または候補miRNA遺伝子がpri-mRNAのステムループ構造を形成する能力を予測するコンピューターアルゴリズム(例えば、MiRScan、MiRSeeker)(Grad et al.,Mol.Cell.,2003;Lim et al.,Genes Dev.,2003;Lim et al.,Science,2003;Lai E C et al.,Genome Bio.,2003)を使用して、in silicoで同定可能である。オンラインレジストリは、公開されているすべてのmiRNA配列の検索可能なデータベースを提供する(The miRNA Registry、Sanger Institute website;Griffiths-Jones S,Nuc.Acids Res.,2004)。例示的な天然miRNAとしては、lin-4、let-7、miR-10、mirR-15、miR-16、miR-168、miR-175、miR-196及びそれらの相同体、ならびにヒト由来及び特定のモデル生物、例えば、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)、ゼブラフィッシュ(zebrafish)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thalania)、ハツカネズミ(Mus musculus)、及びドブネズミ(Rattus norvegicus)(PCT国際公開番号WO03/029459に記載)の他の天然miRNAが挙げられる。
【0221】
天然に存在するmiRNAは、in vivoで内因性遺伝子によって発現され、Dicerまたは他のRNAsesによってヘアピンまたはステムループ前駆体(pre-miRNA またはpri-miRNA)からプロセシングされる(Lagos-Quintana et al.,Science,2001;Lau et al.,Science,2001;Lee and Ambros,Science,2001;Lagos-Quintana et al.,Curr.Biol.,2002;Mourelatos et al.,Genes Dev.,2002;Reinhart et al.,Science,2002;Ambros et al.,Curr.Biol.,2003;Brennecke et al.,2003;Lagos-Quintana et al.,RNA,2003;Lim et al.,Genes Dev.,2003;Lim et al.,Science,2003)。miRNAは、二本鎖二重鎖としてin vivoで一過性に存在することができるが、遺伝子サイレンシングを指示するために、1本の鎖のみ、RISC複合体に取り込まれる。特定のmiRNA、例えば植物miRNAは、それらの標的mRNAに対して完全なまたはほぼ完全な相補性を有するため、標的mRNAを直接切断する。他のmiRNAは、標的mRNAに対して完全ではない相補性を有するため、標的mRNAの翻訳を直接抑制する。miRNAとその標的mRNAとの相補性の程度によって、その作用機序が決定すると考えられている。例えば、miRNAとその標的mRNAとの間の完全またはほぼ完全な相補性は、切断機構を予測するものであり(Yekta et al.,Science,2004)、一方で、完全でない相補性は、翻訳抑制機構を予測するものである。特定の実施形態では、miRNA配列は、その異常な発現またはその活性がmiRNA障害と相関している、天然に存在するmiRNA配列のものである。
【0222】
d)二重機能性オリゴヌクレオチド繋留因子
他の実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤は、miRNAの細胞間動員に有用な二重機能性オリゴヌクレオチド繋留因子を含む。動物細胞は、転写後または翻訳レベルで遺伝子発現を調節できる約22ヌクレオチドの非コードRNAである一連のmiRNAを発現する。二重機能性オリゴヌクレオチド繋留因子は、RISCに結合したmiRNAを結合し、それを標的mRNAに動員することにより、例えば動脈硬化プロセスに関与する遺伝子の発現を抑制することができる。オリゴヌクレオチド繋留因子の使用は、特定の遺伝子の発現を抑制する既存の技術よりもいくつかの利点を提供する。第1に、本明細書に記載の方法では、内因性分子(多くの場合、豊富に存在する)、miRNAがRNAサイレンシングを媒介することが可能になる。したがって、本明細書に記載の方法により、RNAサイレンシングを媒介するために外来分子(例えば、siRNA)を導入する必要がなくなる。第2に、RNAサイレンシング剤及び特に連結部分(例えば、オリゴヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルオリゴヌクレオチド)を安定させ、ヌクレアーゼ活性に対して耐性にすることができる。結果として、本発明の繋留因子は、直接送達する用に設計することができ、細胞内で所望の剤を作製するように設計された前駆体分子またはプラスミドの間接送達(例えば、ウイルス)が必要なくなる。第3に、繋留因子及びそれぞれの部分は、特定のmRNA部位及び特定のmiRNAに適合するように設計できる。設計は、細胞及び遺伝子産物に特異的であり得る。第4に、本明細書に開示される方法では、mRNAが無傷のままであり、これにより、当業者は、細胞自身の機構を使用して、短いパルスでタンパク質合成を遮断することが可能になる。その結果、これらのRNAサイレンシングの方法は、高度に調節可能である。
【0223】
本発明の二重機能性オリゴヌクレオチド繋留因子(「繋留因子」)は、miRNA(例えば、内因性細胞miRNA)を標的mRNAに動員して、目的の遺伝子の調節を誘導するように設計される。好ましい実施形態では、繋留因子は、式T-L-μを有し、式中、Tは、mRNA標的化部分、Lは連結部分、μは、miRNA動員部分である。任意の1つ以上の部分が、二本鎖であり得る。しかしながら、好ましくは、各部分は、一本鎖である。
【0224】
繋留因子内の部分は、式T-L-μに示すとおり、配置されるか、または連結され得る(5’から3’方向)(すなわち、連結部分の5’末端に連結された標的化部分の3’末端及びmiRNA動員部分の5’末端に連結された連結部分の3’末端)。あるいは、これらの部分は、次のとおり、繋留因子内に配置または連結することができる:μ-T-L(すなわち、miRNAの動員部分の3’末端は、連結部分の5’末端に連結し、連結部分の3’末端は、標的化部分の5’末端に連結する)。
【0225】
上記のmRNA標的化部分は、特定の標的mRNAを捕捉することができる。本発明によれば、標的mRNAの発現は望ましくないため、mRNAの翻訳抑制が望まれる。mRNA標的化部分は、標的mRNAに効果的に結合するのに十分なサイズであるものとする。標的化部分の長さは、標的mRNAの長さ、及び標的mRNAと標的化部分との間の相補性の程度に部分的に依存して、大きく変動する。様々な実施形態では、標的化部分は、約200未満、100、50、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、標的化部分は、約15~約25ヌクレオチド長である。
【0226】
上述のとおり、miRNA動員部分は、miRNAと会合することができる。本発明によれば、miRNAは、標的mRNAを抑制することができる任意のmiRNA (例えば、1つ以上のsflt1 mRNA)であり得る。哺乳動物は、250を超える内因性miRNAを有することが報告されている(Lagos-Quintana et al.(2002)Current Biol.12:735-739;Lagos-Quintana et al.(2001)Science 294:858-862;and Lim et al.(2003)Science 299:1540)。様々な実施形態では、miRNAは、当技術分野で認識されている任意のmiRNAであり得る。
【0227】
連結部分は、標的化部分の活性が維持されるように標的化部分を連結することができる任意の剤である。連結部分は、好ましくは、標的化剤がそれぞれの標的と十分に相互作用できるように、十分な数のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド部分である。連結部分は、細胞のmRNAまたはmiRNA配列との配列相同性をほとんどまたは全く有しない。例示的な連結部分としては、1つ以上の2’-O-メチルヌクレオチド、例えば、2’-β-メチルアデノシン、2’-O-メチルチミジン、2’-O-メチルグアノシンまたは2’-O-メチルウリジンが挙げられる。
【0228】
e)遺伝子サイレンシングオリゴヌクレオチド
特定の例示的な実施形態では、遺伝子発現(すなわち、sflt1遺伝子発現)は、sflt1遺伝子発現を効果的に阻害または減少させるために、2つ以上の接近可能な3’末端の存在が可能になるそれらの5’末端を介して連結された2つ以上の一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドベースの化合物を使用して、調節することができる。このような連結されたオリゴヌクレオチドは、遺伝子サイレンシングオリゴヌクレオチド(GSO)としても知られている。(例えば、Idera Pharmaceuticals,Inc.に譲渡された米国特許第8,431,544号を参照されたい。これは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0229】
GSOの5’末端での連結は、他のオリゴヌクレオチド連結とは独立しており、5’、3’、または2’ヒドロキシル基を介して直接的に、または非ヌクレオチドリンカーまたはヌクレオシドを介して、ヌクレオシドの2’または3’ヒドロキシル位置のいずれかを使用して、間接的であり得る。連結はまた、5’末端ヌクレオチドの機能化された糖または核酸塩基を利用し得る。
【0230】
GSOは、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、または非ヌクレオシドリンカーを介して、それらの5’-5’末端でコンジュゲートされた2つの同一または異なる配列を含むことができる。そのような化合物は、遺伝子産物のアンチセンスの下方制御のために目的のmRNA標的の特定の部分に相補的である15~27ヌクレオチドを含み得る。同一の配列を含むGSOは、ワトソン-クリック水素結合相互作用を介して特定のmRNAに結合し、タンパク質の発現を阻害することができる。異なる配列を含むGSOは、1つ以上のmRNA標的の2つ以上の異なる領域に結合し、タンパク質発現を阻害することができる。このような化合物は、標的mRNAに相補的なヘテロヌクレオチド配列で構成され、ワトソン-クリック水素結合により安定した二重鎖構造を形成する。特定の条件下で、2つの遊離3’末端(5’-5’付着アンチセンス)を含むGSOは、単一の遊離3’末端または遊離3’末端を含まないものよりも強力な遺伝子発現阻害剤となり得る。
【0231】
いくつかの実施形態では、非ヌクレオチドリンカーは、グリセロールまたは式HO--(CH2)o--CH(OH)--(CH2)p--OHのグリセロール相同体であり、式中、o及びpは、独立して1~約6、1~約4、または1~約3の整数である。いくつかの他の実施形態では、非ヌクレオチドリンカーは、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパンの誘導体である。いくつかのそのような誘導体は、式HO--(CH2)m--C(O)NH--CH2--CH(OH)--CH2--NHC(O)--(CH2)m--OHを有し、式中、mは、0~約10、0~約6、2~約6、または2~約4の整数である。
【0232】
いくつかの非ヌクレオチドリンカーでは、3つ以上のGSO成分の付着が可能になる。例えば、非ヌクレオチドリンカーグリセロールは、GSO成分が共有結合により付着され得る3つのヒドロキシル基を有する。したがって、本発明のいくつかのオリゴヌクレオチドベースの化合物は、ヌクレオチドまたは非ヌクレオチドリンカーに連結された2つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。本発明によるそのようなオリゴヌクレオチドは、「分岐している」と呼ばれる。
【0233】
特定の実施形態では、GSOは、少なくとも14ヌクレオチド長である。特定の例示的な実施形態では、GSOは、15~40ヌクレオチド長または20~30ヌクレオチド長である。したがって、GSOの成分オリゴヌクレオチドは、独立して、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチド長であり得る。
【0234】
これらのオリゴヌクレオチドは、ホスホルアミデートまたはH-ホスホネート化学などの当技術分野で認められた方法によって調製することができ、これらは、手動または自動合成装置によって実施できる。これらのオリゴヌクレオチドは、mRNAにハイブリダイズする能力を損なうことなく、複数の方法で修飾することもできる。そのような修飾は、1つのヌクレオチドの5’末端と別のヌクレオチドの3’末端の間でのアルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホルアミデート、カルバメート、カーボネート、ホスフェートヒドロキシル、アセトアミデート、またはカルボキシメチルエステル、またはこれら及び他のヌクレオチド間連結の組み合わせであるオリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチド間連結を含み得、ここで、5’ヌクレオチドのホスホジエステル連結が、任意の数の化学基で置換されている。
【0235】
IV.修飾された抗sFlt1 RNAサイレンシング剤
本発明の特定の態様では、本発明のRNAサイレンシング剤(またはその任意の部分)は、上記のとおり、剤の活性がさらに改善されるように修飾され得る。例えば、本明細書に記載のRNAサイレンシング剤は、以下に記載の修飾のいずれかで修飾され得る。修飾は、部分的に、標的識別をさらに向上させるため、剤の安定性を向上させるため(例えば、分解を防止するため)、細胞取り込みを促進するため、標的効率を向上させるため、結合(例えば、標的への)の有効性を改善するため、剤に対する患者の耐性を改善するため、及び/または毒性を軽減するために、作用し得る。
【0236】
特定の実施形態では、以下の特性のうちの1つまたは任意の組み合わせを有するsiRNA化合物が提供される:(1)完全に化学的に安定化されている(すなわち、未修飾の2’-OH残基がない);(2)非対称性;(3)11~16塩基対の二本鎖;(4)化学修飾されたヌクレオチドの交互パターン(例えば、2’-フルオロ及び2’-メトキシ修飾)、または2’-メトキシリッチパターン(アンチセンス鎖中50%を超える2’-メトキシ及びセンス鎖中65%を超える2’-メトキシ);(5)5~8塩基の一本鎖、完全にホスホロチオエート化された尾部。ホスホロチオエート修飾の数は、異なる実施形態では、合計6~17個で変化する。
【0237】
上記及び本明細書に記載の構造特性を有する本発明の特定の化合物は、「hsiRNA-ASP」(高度安定化パターンを特徴とする疎水的に修飾された低分子干渉RNA)と称され得る。さらに、このhsiRNA-ASPパターンは、脳、脊髄から、肝臓、胎盤、腎臓、脾臓、及び他のいくつかの組織への送達を介して劇的に改善された分布を示し、治療的介入に利用できるようになった。
【0238】
肝細胞ではなく、内皮細胞及びクッパー(kupper)細胞に対して特異的な肝臓でのhsiRNA-ASPの送達により、この化学修飾パターンを、GalNacコンジュゲートに競合的な技術ではなく、相補的にする。
【0239】
本開示の化合物は、以下の態様及び実施形態で説明することができる。
【0240】
第1の態様では、本明細書では、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも50%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び20位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、少なくとも65%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から、4位、6位、8位、10位、及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(10)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0241】
本開示の第1の態様の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び20位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく、センス鎖の5’末端から4位、6位、8位、10位及び14位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではない。
【0242】
本開示の第1の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチド長であり、センス鎖は、16ヌクレオチド長である。
【0243】
本開示の第1の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAAAUUUGGAGAUCCGAGAGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’CGGAUCUCCAAAUUUA3’の核酸配列を含む。
【0244】
本開示の第1の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAUAAAUGGUAGCUAUGAUGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’AUAGCUACCAUUUAUA3’の核酸配列を含む。
【0245】
本開示の第1の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’ビニルホスホネートを含む。
【0246】
第2の態様では、本明細書では、二本鎖RNA(dsRNA)を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖が、2’-メトキシ-リボヌクレオチド及び2’-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;(3)アンチセンス鎖の5’末端から2位及び14位のヌクレオチドが、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(4)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(5)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(6)センス鎖は、2’-メトキシ-リボヌクレオチド及び2’-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;(7)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0247】
本開示の第2の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチド長であり、センス鎖は、16ヌクレオチド長である。
【0248】
本開示の第2の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAAAUUUGGAGAUCCGAGAGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’CGGAUCUCCAAAUUUA3’の核酸配列を含む。
【0249】
本開示の第2の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAUAAAUGGUAGCUAUGAUGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’AUAGCUACCAUUUAUA3’の核酸配列を含む。
【0250】
本開示の第2の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’ビニルホスホネートを含む。
【0251】
第3の態様では、本明細書では、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも50%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、及び18位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、少なくとも80%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から、7位、9位、及び11位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(10)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0252】
本開示の第3の態様の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、10位、12位、14位、16位及び18位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく、センス鎖の5’末端から7位、9位、及び11位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではない。
【0253】
本開示の第3の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチド長であり、センス鎖は、16ヌクレオチド長である。
【0254】
本開示の第3の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAAAUUUGGAGAUCCGAGAGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’CGGAUCUCCAAAUUUA3’の核酸配列を含む。
【0255】
本開示の第3の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAUAAAUGGUAGCUAUGAUGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’AUAGCUACCAUUUAUA3’の核酸配列を含む。
【0256】
本開示の第3の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’ビニルホスホネートを含む。
【0257】
第4の態様では、本明細書では、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも70%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、100%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0258】
本開示の第4の態様の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、8位、及び14位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではない。
【0259】
本開示の第4の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチド長であり、センス鎖は、16ヌクレオチド長である。
【0260】
本開示の第4の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAAAUUUGGAGAUCCGAGAGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’CGGAUCUCCAAAUUUA3’の核酸配列を含む。
【0261】
本開示の第4の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAUAAAUGGUAGCUAUGAUGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’AUAGCUACCAUUUAUA3’の核酸配列を含む。
【0262】
本開示の第4の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’ビニルホスホネートを含む。
【0263】
第5の態様では、本明細書では、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも75%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、100%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0264】
本開示の第5の態様の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端から2位、4位、5位、6位、及び14位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではない。
【0265】
本開示の第5の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチド長であり、センス鎖は、16ヌクレオチド長である。
【0266】
本開示の第5の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAAAUUUGGAGAUCCGAGAGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’CGGAUCUCCAAAUUUA3’の核酸配列を含む。
【0267】
本開示の第5の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAUAAAUGGUAGCUAUGAUGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’AUAGCUACCAUUUAUA3’の核酸配列を含む。
【0268】
本開示の第5の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’ビニルホスホネートを含む。
【0269】
第6の態様では、本明細書では、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、本dsRNAは、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含み、各鎖は、5’末端及び3’末端を有し、ここで、(1)アンチセンス鎖は、5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)または5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)の核酸配列に実質的に相補的な配列を含み;(2)アンチセンス鎖は、少なくとも20ヌクレオチド長であり;(3)アンチセンス鎖は、少なくとも85%の2’-O-メチル修飾を含み;(4)アンチセンス鎖の5’末端から2位、及び14位のいずれか1つ以上のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではなく;(5)アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されており;(6)アンチセンス鎖の一部が、センス鎖の一部に相補的であり;(7)センス鎖は、少なくとも15のヌクレオチド長であり;(8)センス鎖は、100%の2’-O-メチル修飾を含み;(9)センス鎖の5’末端から1~2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して互いに結合されている。
【0270】
本開示の第6の態様の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端から2位及び14位のヌクレオチドは、2’-メトキシ-リボヌクレオチドではない。
【0271】
本開示の第6の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチド長であり、センス鎖は、16ヌクレオチド長である。
【0272】
本開示の第6の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAAAUUUGGAGAUCCGAGAGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’CGGAUCUCCAAAUUUA3’の核酸配列を含む。
【0273】
本開示の第6の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’UAUAAAUGGUAGCUAUGAUGA3’の核酸配列を含み、センス鎖は、5’AUAGCUACCAUUUAUA3’の核酸配列を含む。
【0274】
本開示の第6の態様の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’ビニルホスホネートを含む。
【0275】
本開示の第1~第6の態様のいずれかの実施形態では、センス鎖の3’末端は、C7アミノリンカー及びdTdT切断可能なリンカーを介して、PC-DCA(ホスホコリン-ドコサン酸)に連結している。
【0276】
1)標的識別を向上させるための修飾
特定の実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤は、単一ヌクレオチド標的識別を向上させるために、不安定化ヌクレオチドで置換され得る(米国出願第11/698,689号、2007年1月25日に出願、米国仮出願第60/762,225号、2006年1月25日に出願を参照されたい。これらは、両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。そのような修飾は、標的mRNA(例えば、機能獲得型変異mRNA)に対するRNAサイレンシング剤の特異性に目に見える影響を与えることなく、非標的mRNA(例えば、野生型mRNA)に対するRNAサイレンシング剤の特異性を無効にするのに十分であり得る。
【0277】
好ましい実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤は、そのアンチセンス鎖に少なくとも1つのユニバーサルヌクレオチドを導入することによって修飾される。ユニバーサルヌクレオチドは、4つの従来のヌクレオチド塩基(例えば、A、G、C、U)のいずれかと無差別に塩基対形成できる塩基部分を含む。ユニバーサルヌクレオチドは、RNA二重鎖の安定性、またはRNAサイレンシング剤のガイド鎖と標的mRNAによって形成される二重鎖の安定性に比較的小さい効果のみを有するために好ましい。例示的なユニバーサルヌクレオチドとしては、デオキシイノシン(例えば、2’-デオキシイノシン)、7-デアザ-2’-デオキシイノシン、2’-アザ-2’-デオキシイノシン、PNA-イノシン、モルホリノ-イノシン、LNA-イノシン、ホスホルアミデート-イノシン、2’-O-メトキシエチル-イノシン、及び2’-OMe-イノシンからなる群から選択されるイノシン塩基部分またはイノシン類似塩基部分を有するものが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、ユニバーサルヌクレオチドは、イノシン残基またはその天然類似体である。
【0278】
特定の実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤は、特異性決定ヌクレオチド(すなわち、疾患関連多型を認識するヌクレオチド)から5ヌクレオチド以内に少なくとも1つの不安定化ヌクレオチドを導入することによって修飾される。例えば、不安定化ヌクレオチドは、特異性決定ヌクレオチドから5、4、3、2、または1ヌクレオチド以内の位置に導入され得る。例示的な実施形態では、不安定化ヌクレオチドは、特異性決定ヌクレオチドから3ヌクレオチド離れた位置に(すなわち、不安定化ヌクレオチドと特異性決定ヌクレオチドとの間に2つの安定化ヌクレオチドが存在するように)導入される。2つの鎖または鎖部分を有するRNAサイレンシング剤(例えば、siRNA及びshRNA)では、特異性決定ヌクレオチドを含まない鎖または鎖部分内に不安定化ヌクレオチドを導入することができる。好ましい実施形態では、不安定化ヌクレオチドは、特異性決定ヌクレオチドを含む同じ鎖または鎖部分に導入される。
【0279】
2)有効性及び特異性を高めるための修飾
特定の実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤は、非対称設計規則に従って、RNAiを媒介する際の有効性及び特異性を容易に高めるように改変され得る(米国特許第8,309,704号、第7,750,144号、第8,304,530号、第8,329,892号及び第8,309,705号を参照されたい)。このような改変により、siRNAのアンチセンス鎖(例えば、本発明の方法を用いて設計されたsiRNA、またはshRNAから産生されたsiRNA)のRISCへの侵入をセンス鎖に有利に進めることが容易になる。これにより、アンチセンス鎖は、標的mRNAの切断または翻訳抑制を優先的に誘導し、したがって、標的の切断及びサイレンシングの効率を増大または改善するようになる。好ましくは、RNAサイレンシング剤の非対称性は、RNAサイレンシング剤のアンチセンス鎖3’末端(AS3’)とセンス鎖5’末端(S’5)との間の結合強度または塩基対強度に対して、RNAサイレンシング剤のアンチセンス鎖5’末端(AS5’)とセンス鎖3’末端(S3’)との間の塩基対強度を低下させることによって向上される。
【0280】
一実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤の非対称性は、第1またはアンチセンス鎖の5’末端とセンス鎖部分の3’末端との間のG:C塩基対が、第1またはアンチセンス鎖の3’末端とセンス鎖部分の5’末端との間のG:C塩基対よりも少なくなるように、向上され得る。別の実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤の非対称性は、第1またはアンチセンス鎖の5’末端とセンス鎖部分の3’末端との間に少なくとも1つのミスマッチ塩基対が存在するように向上され得る。好ましくは、ミスマッチ塩基対は、以下からなる群から選択される:G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C及びU:U。別の実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤の非対称性は、少なくとも1つのゆらぎ塩基対、例えば、G:Uが、第1またはアンチセンス鎖の5’末端とセンス鎖部分の3’末端との間に存在するように向上され得る。別の実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤の非対称性は、希少ヌクレオチド、例えばイノシン(I)を含む少なくとも1つの塩基対が存在するように向上され得る。好ましくは、塩基対は、I:A、I:U、及びI:Cからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤の非対称性は、修飾ヌクレオチドを含む少なくとも1つの塩基対が存在するように、向上され得る。好ましい実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2-アミノ-G、2-アミノ-A、2,6-ジアミノ-G、及び2,6-ジアミノ-Aからなる群から選択される。
【0281】
3)安定性の向上を有するRNAサイレンシング剤
本発明のRNAサイレンシング剤は、血清中または細胞培養用の成長培地中での安定性を改善するために修飾させ得る。安定性を向上させるために、3’-残基を分解に対して安定化させてよく、特に、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドからなるように選択され得る。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、2’-デオキシチミジンによるウリジンの置換は許容され、RNA干渉の効率に影響を与えない。
【0282】
好ましい態様では、本発明は、第1及び第2の鎖を含むRNAサイレンシング剤を特徴とし、第2の鎖及び/または第1の鎖は、対応する非修飾RNAサイレンシング剤と比較して、in vivo安定性が向上するように、内部ヌクレオチドを修飾ヌクレオチドで置換することによって、修飾される。本明細書で定義されるように、「内部」ヌクレオチドは、核酸分子、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5’末端または3’末端以外の任意の位置に存在するものである。内部ヌクレオチドは、一本鎖分子内にあっても、二本鎖もしくは二本鎖分子の鎖内にあってもよい。一実施形態では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、少なくとも1つの内部ヌクレオチドの置換によって修飾される。別の実施形態では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上の内部ヌクレオチドの置換によって修飾される。別の実施形態では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の内部ヌクレオチドの置換によって修飾される。さらに別の実施形態では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドのすべての置換によって修飾される。
【0283】
いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも50%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも55%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも60%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも65%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも70%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも75%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも80%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも85%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも90%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも95%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも96%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも97%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも98%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも99%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、センス鎖は、内部ヌクレオチドの100%の置換によって修飾される。
【0284】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも50%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも55%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも60%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも65%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも70%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも75%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも80%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも85%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも90%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも95%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも96%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも97%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも98%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの少なくとも99%の置換によって修飾される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、内部ヌクレオチドの100%の置換によって修飾される。
【0285】
本発明の好ましい実施形態では、RNAサイレンシング剤は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド類似体を含み得る。1つ以上のヌクレオチド類似体は、標的特異的サイレンシング活性、例えばRNAi媒介活性または翻訳抑制活性が、実質的に生じない位置、例えばsiRNA分子の5’末端及び/または3’末端にある領域に配置され得る。特に、修飾ヌクレオチド類似体を組み込むことによって、末端を安定化させ得る。
【0286】
例示的なヌクレオチド類似体としては、糖-及び/または骨格修飾リボヌクレオチド(すなわち、リン酸糖骨格への修飾を含む)。例えば、天然RNAのホスホジエステル連結は、窒素または硫黄ヘテロ原子の少なくとも1つを含むように修飾され得る。例示的な骨格修飾リボヌクレオチドでは、隣接するリボヌクレオチドに結合するリン酸エステル基は、例えばホスホチオエート基の修飾基によって置換される。例示的な糖修飾リボヌクレオチドでは、2’OH-基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2またはONから選択される基で置き換えられ、式中、Rは、C1-C6アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロはF、Cl、BrまたはIである。
【0287】
特定の実施形態では、修飾は、2’-フルオロ、2’-アミノ、及び/または2’-チオ修飾である。特に好ましい修飾としては、2’-フルオロ-シチジン、2’-フルオロ-ウリジン、2’-フルオロ-アデノシン、2’-フルオロ-グアノシン、2’-アミノ-シチジン、2’-アミノ-ウリジン、2’-アミノ-アデノシン、2’-アミノ-グアノシン、2,6-ジアミノプリン、4-チオ-ウリジン、及び/または5-アミノ-アリル-ウリジンが挙げられる。特定の実施形態では、2’-フルオロリボヌクレオチドは、すべてのウリジン及びシチジンである。追加の例示的な修飾としては、5-ブロモ-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、5-メチル-シチジン、リボ-チミジン、2-アミノプリン、2’-アミノ-ブチリル-ピレン-ウリジン、5-フルオロ-シチジン、及び5-フルオロウリジンが挙げられる。2’-デオキシ-ヌクレオチド及び2’-Omeヌクレオチドも、本発明の修飾RNAサイレンシング剤内で使用することができる。追加の修飾残基としては、デオキシ脱塩基、イノシン、N3-メチル-ウリジン、N6,N6-ジメチル-アデノシン、シュードウリジン、プリンリボヌクレオシド、及びリバビリンが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、連結部分が2’-O-メチルオリゴヌクレオチドであるように、2’部分がメチル基である。
【0288】
例示的な実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤は、ロックド核酸(LNA)を含む。LNAは、ヌクレアーゼ活性に抵抗する(高度に安定である)糖修飾ヌクレオチドを含み、mRNAについて単一ヌクレオチド識別を有する(Elmen et al.,Nucleic Acids Res.,(2005),33(1):439-447;Braasch et al.(2003)Biochemistry 42:7967-7975,Petersen et al.(2003)Trends Biotechnol 21:74-81)。これらの分子は、2’-デオキシ-2’’-フルオロウリジンなど、修飾が可能な2’-O、4’-C-エチレン架橋核酸を有する。さらに、LNAは、糖部分を3’-エンドコンフォメーションに拘束することによってオリゴヌクレオチドの特異性を増大し、それによって塩基対合形成のためにヌクレオチドを事前に組織化し、オリゴヌクレオチドの融解温度を1塩基当たり10℃ほど上昇させる。
【0289】
別の例示的な実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤は、ペプチド核酸(PNA)を含む。PNAは、ヌクレオチドの糖-リン酸部分が、ポリアミド骨格を形成できる中性の2-アミノエチルグリシン部分で置換され、ヌクレアーゼ消化に対して高い抵抗性があり、分子に対して、改善された結合特異性を付与する修飾ヌクレオチドを含む(Nielsen,et al.,Science,(2001),254:1497-1500)。
【0290】
天然に存在する核酸塩基の代わりに、少なくとも1つの天然に存在しない核酸塩基を含有する核酸塩基修飾リボヌクレオチド、すなわちリボヌクレオチドも好ましい。アデノシンデアミナーゼの活性を遮断するために、塩基を修飾することができる。修飾核酸塩基の例としては、これらに限定されないが、5位で修飾されたウリジン及び/またはシチジン、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン、8位で修飾されたアデノシン及び/またはグアノシン、例えば8-ブロモグアノシン、デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン、O-及びN-アルキル化ヌクレオチド、例えばN6-メチルアデノシンが挙げられ、好適である。上記の修飾を組み合わせてもよいことに留意されたい。
【0291】
他の実施形態では、架橋を使用して、RNAサイレンシング剤の薬物動態を変化させ、例えば、身体内での半減期を延長することができる。従って、本発明は、核酸の2つの相補鎖を有するRNAサイレンシング剤を含み、2つの鎖は、架橋されている。本発明はまた、別の部分(例えば、ペプチドなどの非核酸部分)または有機化合物(例えば、染料)などに対して(例えば、その3’末端において)コンジュゲートされているかまたはコンジュゲートされていないRNAサイレンシング剤を含む。このようにsiRNA誘導体を修飾することにより、対応するsiRNAと比較して、細胞への取り込みを改善する、または得られたsiRNA誘導体の細胞標的活性を向上させることができ、siRNA誘導体を細胞内で追跡する、または対応するsiRNAと比較して、siRNA誘導体の安定性を改善するのに有用である。
【0292】
他の例示的な修飾としては、以下が挙げられる:(a)2’の修飾、例えば、センスまたはアンチセンス鎖における、特にセンス鎖における、U上の2’OMe部分、及び/または、センス鎖またはアンチセンス鎖中、特にセンス鎖における、U上の2’F部分、及び/または3’オーバーハング中、例えば3’末端での2’OMe部分(3’末端は、分子の3’原子または最も3’の部分、例えば、文脈によって示されるように、最も3’のPまたは2’位を意味する)及び/または2’F部分の提供;(b)リン酸骨格における、例えばOのSによる置換による、例えば、特にアンチセンス鎖における、UまたはAまたは両方へのホスホロチオエート修飾の提供;例えば、PのSによる置換による、骨格の修飾;(c)UのC5アミノリンカーによる置換;(d)AのGによる置換(配列変化は、好ましくは、アンチセンス鎖ではなくセンス鎖に配置され得る);及び(d)2’位、6’位、7’位、または8’位での修飾。例示的な実施形態は、これらの修飾の1つ以上がセンス上に存在するが、アンチセンス鎖には存在しない実施形態、またはアンチセンス鎖が、そのような修飾をほとんど有さない実施形態である。さらに他の例示的な修飾としては、3’オーバーハング中、例えば3’末端におけるメチル化Pの使用、2’修飾の組み合わせ、例えば2’OMe部分の提供と骨格の修飾、例えばPのSによる置換、例えばホスホロチオエート修飾の提供、または3’オーバーハング中、例えば3’末端でのメチル化Pの使用、3’アルキルによる修飾、3’オーバーハング中、例えば3’末端での脱塩基ピロリドンによる修飾、ナプロキセン、イブプロフェン、または3’末端での分解を阻害する他の部分による修飾が挙げられる。
【0293】
高度に修飾されたRNAサイレンシング剤
特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、少なくとも80%の化学修飾ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、完全に化学修飾されており、すなわち、ヌクレオチドの100%が化学修飾されている。
【0294】
特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、2’-O-メチルリッチである、すなわち、50%を超える2’-O-メチル含有量を含む。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の2’-O-メチルヌクレオチド含有量を含む。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、少なくとも約70%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、約70%~約90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。
【0295】
特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含むdsRNAである。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも約50%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約50%を超える2’-O-メチルヌクレオチド修飾(例えば、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾)を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、50%を超える2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、60%を超える2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約50%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約55%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約60%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約65%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約70%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約75%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約80%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約85%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約95%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約99%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約100%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも約70%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、約70%~約90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約70%~約90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約50%~約100%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約50%~約90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約50%~約80%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約50%~約75%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約50%~約70%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約50%~約65%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約50%~約60%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、約50%~約55%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。
【0296】
いくつかの実施形態では、センス鎖は、少なくとも約60%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、60%を超える2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。特定の実施形態では、センス鎖は、少なくとも約70%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約60%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約65%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約70%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約75%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約80%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約85%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約99%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約100%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。特定の実施形態では、センス鎖は、約70%~約90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。特定の実施形態では、センス鎖は、100%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約70%~約90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約60%~約100%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約60%~約95%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約60%~約90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約60%~約85%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約60%~約80%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約60%~約75%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約60%~約70%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約65%~約90%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約65%~約85%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約65%~約80%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約65%~約75%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。いくつかの実施形態では、センス鎖は、約65%~約70%の2’-O-メチルヌクレオチド修飾を含む。
【0297】
2’-O-メチルリッチRNAサイレンシング剤及び特定の化学修飾パターンは、米国特許第11,279,930B2号及びUS2021/0115442A1にさらに記載され、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0298】
ヌクレオチド間連結修飾
特定の実施形態では、少なくとも1つのヌクレオチド間連結、サブユニット間連結、またはヌクレオチド骨格が、RNAサイレンシング剤中で修飾される。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤中のヌクレオチド間連結のすべてが修飾される。特定の実施形態では、修飾ヌクレオチド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、4~16のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、8~13のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含むdsRNAであり、それぞれ5’末端及び3’末端を含む。特定の実施形態では、センス鎖の5’末端から1位及び2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して隣接するリボヌクレオチドに結合される。特定の実施形態では、センス鎖の3’末端から1位及び2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して隣接するリボヌクレオチドに結合される。特定の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端から1位及び2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して隣接するリボヌクレオチドに結合される。特定の実施形態では、アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して隣接するリボヌクレオチドに結合される。特定の実施形態では、アンチセンス鎖の3’末端から1~2位、1~3位、1~4位、1~5位、1~6位、1~7位、または1~8位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して隣接するリボヌクレオチドに結合される。特定の実施形態では、アンチセンス鎖の3’末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を介して隣接するリボヌクレオチドに結合される。
【0299】
4)細胞の取り込みを増強する修飾
他の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、例えば標的細胞(例えば神経細胞)による細胞取り込みを増強するために、化学的部分で修飾されてもよい。したがって、本発明は、別の部分(例えば、ペプチドなどの非核酸部分)または有機化合物(例えば、染料)などに対して(例えば、その3’末端において)コンジュゲートされているかまたはコンジュゲートされていないRNAサイレンシング剤を含む。コンジュゲーションは、例えば、本技術で知られている方法、以下の方法を用いて、達成することができる。Lambert et al.,Drug Deliv.Rev.:47(1),99-112(2001)(ポリアルキルシアノアクリレート(PACA)ナノ粒子に付加された核酸について記載)、Fattal et al.,J.Control Release 53(1-3):137-43(1998)(ナノ粒子に結合した核酸について記載)、Schwab et al.,Ann.Oncol.5 Suppl.4:55-8(1994)(インターカレーション剤、疎水性基、ポリカチオンまたはPACAナノ粒子と連結した核酸について記載)、及びGodard et al.,Eur.J.Biochem.232(2):404-10(1995)(ナノ粒子に連結した核酸について記載)。
【0300】
特定の実施形態では、本発明のRNAサイレンシング剤は、親油性部分にコンジュゲートされる。一実施形態では、親油性部分は、カチオン基を含むリガンドである。別の実施形態では、親油性部分は、siRNAの一方または両方の鎖に付着している。例示的な実施形態では、親油性部分は、siRNAのセンス鎖の一端に付着している。別の例示的な実施形態では、親油性部分は、センス鎖の3’末端に付着している。特定の実施形態では、親油性部分は、コレステロール、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンA、葉酸、またはカチオン色素(例えば、Cy3)からなる群から選択される。例示的な実施形態では、親油性部分は、コレステロールである。他の親油性部分としては、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジンが挙げられる。
【0301】
5)繋留リガンド
他の実体は、本発明のRNAサイレンシング剤に繋留することができる。例えば、リガンドは、例えばエンドサイトーシス依存性機序または非依存性機序による、安定性、標的核酸とのハイブリダイゼーション熱力学、特定の組織または細胞型へのターゲティング、または細胞透過性を改善するために、RNAサイレンシング剤に繋留される。リガンド及び関連する修飾は、配列の特異性を高め、その結果、オフサイトターゲティングを減少させることもできる。繋留因子リガンドは、インターカレーターとして機能できる1つ以上の修飾塩基または糖を含むことができる。これらは、好ましくは、RNAサイレンシング剤/標的二重鎖のバルジ内などの内部領域内に位置させる。インターカレーターは、芳香族、例えば、多環式芳香族または複素環式芳香族化合物であり得る。多環式インターカレーターは、スタッキング能力を有し得、2つ、3つ、または4つの縮合環を有する系を含むことができる。本明細書に記載のユニバーサル塩基は、リガンドに含めることができる。一実施形態では、リガンドは、標的核酸の切断による標的遺伝子の阻害に寄与する切断基を含むことができる。切断基は、例えば、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシン-A5、ブレオマイシン-A2、またはブレオマイシン-B2)、ピレン、フェナントロリン(例えば、O-フェナントロリン)、ポリアミン、トリペプチド(例えば、lys-tyr-lysトリペプチド)、または金属イオンキレート基であり得る。金属イオンキレート基としては、例えば、Lu(III)またはEU(III)大環状錯体、Zn(II)2,9-ジメチルフェナントロリン誘導体、Cu(II)テルピリジン、またはアクリジンを挙げることができ、これらは、Lu(III)などの遊離金属イオンによるバルジ部位での標的RNAの選択的切断を促進することができる。いくつかの実施形態では、ペプチドリガンドは、例えばバルジ領域で、標的RNAの切断を促進するためにRNAサイレンシング剤に繋留することができる。例えば、1,8-ジメチル-1,3,6,8,10,13-ヘキサアザシクロテトラデカン(サイクラム)は、標的RNA切断を促進するために(例えば、アミノ酸誘導体によって)ペプチドにコンジュゲートすることができる。繋留リガンドは、アミノグリコシドリガンドであり得、これは、RNAサイレンシング剤に改善されたハイブリダイゼーション特性または改善された配列特異性を持たせることができる。例示的なアミノグリコシドとしては、グリコシル化ポリリジン、ガラクトシル化ポリリジン、ネオマイシンB、トブラマイシン、カナマイシンA、及びアミノグリコシドのアクリジンコンジュゲート、例えば、Neo-N-アクリジン、Neo-S-アクリジン、Neo-C-アクリジン、Tobra-N-アクリジン、及びKanaA-N-アクリジンが挙げられる。アクリジン類似体の使用により、配列の特異性を高めることができる。例えば、ネオマイシンBは、DNAと比較して、RNAに対して高い親和性を有するが、配列特異性は低くなる。アクリジン類似体であるネオ-5-アクリジンは、HIV Rev-応答エレメント(RRE)に対する親和性が高くなる。いくつかの実施形態では、アミノグリコシドリガンドのグアニジン類似体(グアニジノグリコシド)は、RNAサイレンシング剤に繋留されている。グアニジノグリコシド内では、アミノ酸上のアミン基がグアニジン基に交換されている。グアニジン類似体が付着することにより、RNAサイレンシング剤の細胞透過性が増大し得る。繋留リガンドは、オリゴヌクレオチド剤の細胞取り込みを増大することができるポリアルギニンペプチド、ペプトイドまたはペプチド模倣体であり得る。
【0302】
例示的なリガンドは、好ましくは、直接、または介在繋留因子を介して間接的に、リガンドコンジュゲート担体に共有結合によりカップリングされる。例示的実施形態では、リガンドは、介在繋留因子を介して担体に付着している。例示的実施形態では、リガンドにより、それが組み込まれるRNAサイレンシング剤の分布、標的化または寿命が変化する。例示的実施形態では、リガンドは、そのようなリガンドが存在しない種と比較して、選択された標的、例えば、分子、細胞または細胞型、コンパートメント、例えば、細胞または器官コンパートメント、身体の組織、器官または領域に対して、例えば、より高い親和性を提供する。
【0303】
例示的なリガンドは、輸送、ハイブリダイゼーション、及び特異性特性を改善することができ、結果として得られる天然のまたは修飾されたRNAサイレンシング剤、または本明細書に記載のモノマーの任意の組み合わせを含むポリマー分子及び/または天然または修飾リボヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性も改善し得る。リガンドは、一般に、例えば、取り込みを増大するための治療修飾因子、例えば、分布を監視するための診断用化合物またはレポーター基、架橋剤、ヌクレアーゼ耐性付与部分、及び天然または異常な核酸塩基を含むことができる。一般的な例としては、親油性物質、脂質、ステロイド(例えば、ウバオール、ヘシゲニン(hecigenin)、ジオスゲニン)、テルペン(例えば、トリテルペン、例えば、サルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール誘導体化リトコール酸)、ビタミン(例えば、葉酸、ビタミンA、ビオチン、ピリドキサール)、炭水化物、タンパク質、タンパク質結合剤、インテグリン標的分子、ポリカチオン、ペプチド、ポリアミン、及びペプチド模倣物が挙げられる。リガンドとしては、天然に存在する物質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、またはグロブリン)、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸)、アミノ酸、または脂質を挙げることができる。リガンドはまた、組換え分子または合成分子、例えば、合成ポリマー、例えば、合成ポリアミノ酸であってもよい。ポリアミノ酸の例としては、ポリリジン(PLL)であるポリアミノ酸、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコール化)コポリマー、ジビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、シュードペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの四級塩、またはアルファらせんペプチドが挙げられる。
【0304】
リガンドはまた、胎盤細胞、腎細胞、及び/または肝細胞などの特定の細胞型に結合する標的基、例えば細胞または組織標的剤、例えばレクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質、例えば抗体を挙げることができる。標的基はまた、甲状腺刺激ホルモン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントプロテインA、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、またはRGDペプチドまたはRGDペプチド模倣体であり得る。リガンドの他の例としては、色素、インターカレーション剤(例えば、アクリジン及び置換アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン、フェナントロリン、ピレン)、lys-tyr-lys トリペプチド、アミノグリコシド、グアニジウムアミノグリコジ(aminoglycodies)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性分子、例えば、コレステロール(及びそのチオ類似体)、コール酸、コラン酸、リトコール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、グリセロール(例えば、エステル(例えば、モノ、ビス、またはトリス脂肪酸エステル、例えば、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19またはC20脂肪酸)及びそのエーテル、例えば、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、またはC20アルキル、例えば、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、1,3-ビス-O(オクタアデシル)グリセロール)、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ステアリン酸(例えば、ジステアリン酸グリセリル)、オレイン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)及びペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ナプロキセン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、テトラアザマクロ環のEu3+錯体)、ジニトロフェニル、HRPまたはAPが挙げられる。
【0305】
リガンドは、糖タンパク質などのタンパク質、またはコリガンドに対して特異的親和性を有する分子などのペプチド、またはがん細胞、内皮細胞、または骨細胞などの特定の細胞型に結合する抗体などの抗体であり得る。リガンドとしては、ホルモン及びホルモン受容体を挙げることもできる。それらはまた、非ペプチド種、例えば、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、または多価フコースを含むことができる。リガンドは、例えば、リポ多糖、p38 MAPキナーゼのアクチベーター、またはNF-kBのアクチベーターであり得る。
【0306】
リガンドは、例えば、細胞の細胞骨格を破壊することにより、例えば、細胞の微小管、マイクロフィラメント、及び/または中間フィラメントを破壊することにより、細胞へのRNAサイレンシング剤の取り込みを増加させることができる物質、例えば薬物であり得る。薬物は、例えば、タクソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、japlakinolide、ラトランキュリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビン(myoservin)であり得る。リガンドは、例えば、炎症反応を活性化することにより、細胞へのRNAサイレンシング剤の取り込みを増加させることができる。そのような効果を有する例示的なリガンドとしては、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターロイキン-1ベータ、またはガンマインターフェロンが挙げられる。1つの態様では、リガンドは、脂質または脂質系分子である。かかる脂質または脂質系分子は、好ましくは、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する。HSA結合リガンドでは、標的組織へのコンジュゲートの分布が可能になる。例えば、標的組織は、胎盤、腎臓、または肝臓であり得る。HSAに結合することができる他の分子もまたリガンドとして使用することができる。例えば、ナプロキセンまたはアスピリンを使用することができる。脂質または脂質系リガンドは、(a)コンジュゲートの耐分解性を向上させること、(b)標的細胞または細胞膜への標的化または輸送を増加させること、及び/または(c)血清タンパク質、例えば、HSAへの結合を調節するために使用することができる。脂質系リガンドは、コンジュゲートの標的組織への結合を調節、例えば、制御するために使用することができる。例えば、より強固にHSAに結合する脂質または脂質系リガンドは、胎盤、肝臓、及び/または腎臓を標的とする可能性が低く、それ故、体内から排出される可能性が低い。HSAにあまり強固に結合しない脂質または脂質系リガンドは、コンジュゲートを胎盤、肝臓及び/または腎臓に標的化するために使用することができる。脂質系リガンドの代わりに、またはそれに加えて、胎盤、肝臓及び/または腎臓の細胞を標的とする他の部分もまた使用することができる。
【0307】
別の態様では、リガンドは、標的細胞、例えば、増殖性細胞によって取り込まれる部分、例えば、ビタミンである。これらは、望ましくない細胞増殖、例えば、悪性または非悪性型の、例えば、がん細胞を特徴とする障害の治療に特に有用である。代表的なビタミンとしては、ビタミンA、E、及びKが挙げられる。他のビタミンの例としては、ビタミンB、例えば葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール、または他のビタミンもしくはがん細胞によって取り込まれる栄養素が挙げられる。同様に含まれるのは、HSA及び低密度リポタンパク質(LDL)である。
【0308】
別の態様では、リガンドは、好ましくは、らせん細胞透過剤などの細胞透過剤である。好ましくは、剤は、両親媒性である。例示的な薬剤は、tatまたはantennopediaなどのペプチドである。本剤がペプチドの場合、それはペプチジル模倣、逆転異性体、非ペプチドまたはシュードペプチド結合、及びD-アミノ酸の使用を含め、修飾されていてもよい。らせん剤は、好ましくは、アルファらせん剤であり、好ましくは、親油性相及び疎油性相を有する。
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣体(本明細書ではオリゴペプチド模倣体とも呼ばれる)とは、天然のペプチドと同様の一定の三次元構造に折り畳むことが可能な分子である。オリゴヌクレオチド剤へのペプチド及びペプチド模倣体の付着は、細胞の認識及び吸収を向上させることなどによって、RNAサイレンシング剤の薬物動態分布に影響を与えることができる。ペプチドまたはペプチド模倣体部分は、約5~50アミノ酸長、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長であり得る。ペプチドまたはペプチド模倣体は、例えば、細胞透過性ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば、主にTyr、Trp、またはPheからなる)であり得る。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、拘束ペプチド、または架橋ペプチドであり得る。ペプチド部分は、L-ペプチドまたはD-ペプチドであり得る。別の代替では、ペプチド部分は、疎水性膜トランスロケーション配列(MTS)を含むことができる。ペプチドまたはペプチド模倣体は、ファージ提示ライブラリ、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリから同定されたペプチドなどのランダムなDNA配列によってコードされ得る(Lam et al.,Nature 354:82-84,1991)。例示的な実施形態では、組み込まれたモノマーユニットを介してRNAサイレンシング剤に繋留されたペプチドまたはペプチド模倣体は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)-ペプチドまたはRGDミミックなどの細胞標的ペプチドである。あるペプチド部分は、長さが約5アミノ酸から約40アミノ酸に及び得る。ペプチド部分は、例えば、安定性を向上させるまたは配座性を指示するなどの構造修飾を有することができる。
【0309】
特定の実施形態では、機能部分は、本開示のRNAサイレンシング剤の5’末端及び/または3’末端に連結されている。特定の実施形態では、機能部分は、本開示のRNAサイレンシング剤のアンチセンス鎖の5’末端及び/または3’末端に連結されている。特定の実施形態では、機能部分は、本開示のRNAサイレンシング剤のセンス鎖の5’末端及び/または3’末端に連結されている。特定の実施形態では、機能部分は、本開示のRNAサイレンシング剤のセンス鎖の3’末端に連結されている。
【0310】
特定の実施形態では、機能部分は、リンカーによってRNAサイレンシング剤に連結されている。特定の実施形態では、機能部分は、リンカーにより、アンチセンス鎖及び/またはセンス鎖に連結されている。特定の実施形態では、機能部分は、リンカーにより、センス鎖の3’末端に連結されている。特定の実施形態では、リンカーは、二価または三価のリンカーを含む。特定の実施形態では、リンカーは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、アミド、カルバメート、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、二価または三価のリンカーは、以下から選択される:
【化17】
(式中、nは、1、2、3、4または5である)。
【0311】
特定の実施形態では、リンカーは、ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体をさらに含む。特定の実施形態では、ホスホジエステルまたはホスホジエステル誘導体は、以下からなる群から選択される:
【化18】
(式中、Xは、O、SまたはBH
3である)。
【0312】
本開示の様々な機能部分及びそれらをRNAサイレンシング剤にコンジュゲートするための手段は、WO2017/030973A1及びWO2018/031933A2にさらに詳細に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0313】
特定の実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーである。
【0314】
特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、ホスホジエステル連結、ジスルフィド連結、酸に不安定な連結、または光切断可能な連結を含む。
【0315】
特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、ホスホジエステルヌクレオチド間連結を有するdTdTジヌクレオチドを含む。
【0316】
特定の実施形態では、酸に不安定な連結は、β-チオプロピオネート連結またはカルボキシジメチルマレイン酸無水物(CDM)連結を含む。
【0317】
特定の実施形態では、C7アミノリンカーを有する機能部分PC-DCAは、
【化19】
によって表される(式中、「siRNA」は、センス鎖の3’末端に対応する)。
【0318】
V.核酸、ベクター及び宿主細胞の導入方法
本発明のRNAサイレンシング剤は、細胞(例えば、神経細胞)に(すなわち、細胞内に)直接導入することができる。または細胞外から空洞、間隙、生物の循環に導入される、経口的に導入される、または核酸を含む溶液に細胞もしくは生物を浸すことによって導入され得る。血管または血管外循環、血液またはリンパ系、及び脳脊髄液は、核酸が導入され得る部位である。
【0319】
本発明のRNAサイレンシング剤は、核酸を含む溶液の注入、核酸によって覆われた粒子による衝撃、核酸の溶液への細胞または生物の浸漬、または核酸の存在下での細胞膜のエレクトロポレーションなど、当技術分野において知られている核酸送達法を使用して、導入され得る。核酸を細胞に導入するための当技術分野で公知の他の方法、例えば脂質媒介担体輸送、化学媒介輸送、及びリン酸カルシウムなどのカチオン性リポソームトランスフェクションなどを使用してもよい。核酸は、以下の活性のうちの1つ以上を行う他の成分と共に導入され得る:細胞による核酸の取り込みを増強する、さもなければ標的遺伝子の阻害を増加させる。
【0320】
核酸を導入する物理的方法としては、RNAを含む溶液の注入、RNAで覆われた粒子による衝撃、RNAの溶液への細胞または生物の浸漬、またはRNAの存在下での細胞膜のエレクトロポレーションが挙げられる。ウイルス粒子にパッケージ化されたウイルス構築物は、細胞への発現構築物の効率的な導入、及び発現構築物によってコードされるRNAの転写の両方を達成する。核酸を細胞に導入するための当技術分野で公知の他の方法、例えば脂質媒介担体輸送、化学媒介輸送、例えば、リン酸カルシウムなどを使用してもよい。したがって、RNAは、以下の活性のうちの1つ以上を行う成分と共に導入され得る:細胞によるRNA取り込みの増強、一本鎖のアニーリングの阻害、一本鎖の安定化、またはさもなければ標的遺伝子の阻害の増加。
【0321】
RNAは、細胞に(すなわち、細胞内に)直接導入することができる。または細胞外から空洞、間隙、生物の循環に導入される、経口的に導入される、またはRNAを含む溶液に細胞もしくは生物を浸すことによって導入され得る。血管または血管外循環、血液またはリンパ系、及び脳脊髄液は、RNAが導入され得る部位である。
【0322】
標的遺伝子を有する細胞は、生殖系列または体細胞、全能性または多能性、分裂または非分裂、柔組織または上皮、不死化または形質転換などに由来し得る。細胞は、幹細胞または分化細胞であり得る。分化する細胞型としては、脂肪細胞、線維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、ニューロン、グリア細胞、血液細胞、巨核球、リンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、白血球、顆粒球、ケラチノサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞、及び内分泌腺または外分泌腺の細胞が挙げられる。
【0323】
特定の標的遺伝子及び送達される二本鎖RNA材料の用量に応じて、このプロセスは、標的遺伝子の部分的または完全な機能喪失をもたらし得る。少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%、またはそれ以上の標的細胞における遺伝子発現の減少または喪失が典型的である。遺伝子発現の阻害とは、標的遺伝子からのタンパク質及び/またはmRNA産物のレベルの欠如(または観察可能な減少)を指す。特異性とは、細胞の他の遺伝子に明らかな影響を与えることなく、標的遺伝子を阻害する能力を指す。阻害の結果は、細胞または生物の外部特性を調べることによって(以下の実施例に示されているとおり)、または生化学的手法、例えば、RNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ、及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって確認することができる。
【0324】
細胞株または生物全体におけるRNA媒介阻害の場合、タンパク質産物が容易にアッセイされるレポーターまたは薬剤耐性遺伝子を使用することによって、遺伝子発現は、簡便にアッセイされる。このようなレポーター遺伝子としては、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータガラクトシダーゼ(LacZ)、ベータグルコロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)、及びそれらの誘導体が挙げられる。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン(gentarnycin)、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキサート、ホスフィノスリシン、ピューロマイシン、及びテトラサイクリンに対する耐性を付与する複数の選択マーカーが利用可能である。アッセイに応じて、遺伝子発現量の定量化により、本発明により治療されていない細胞と比較して、10%、33%、50%、90%、95%または99%を超える阻害度を判定することができる。注入された材料の用量が少なく、RNAi剤の投与後の時間が長い場合には、細胞のより少ない割合(例えば、標的細胞の少なくとも10%、20%、50%、75%、90%、または95%)で阻害され得る。細胞内の遺伝子発現の定量化は、標的mRNAの蓄積または標的タンパク質の翻訳のレベルで、同様の量の阻害を示し得る。一例として、細胞内の遺伝子産物の量を評価することにより、阻害の効率を判定してもよい。mRNAは、阻害性二本鎖RNAに使用される領域外にヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブにより検出され得るか、または翻訳されたポリペプチドが、その領域のポリペプチド配列に対して産生された抗体で検出され得る。
【0325】
RNAは、細胞当たり少なくとも1コピーの送達が可能になる量で導入され得る。高用量の材料(例えば、少なくとも5、10、100、500または1000コピー/細胞)は、より効果的な阻害をもたらし得、低用量は、特定の用途にも有用であり得る。
【0326】
例示的な態様では、本発明のRNAi剤(例えば、flt1イントロン標的配列を標的とするsiRNA)の効力について、細胞内、特に胎盤細胞(例えば、ラビリンス(labyrinth)細胞、栄養膜細胞(例えば、栄養膜合胞体層及び/または栄養膜細胞層)、間葉系細胞、間葉系マクロファージ(ホーフバウアー細胞)、線維芽細胞、胎児血管細胞(例えば、平滑筋細胞、血管周囲細胞(周皮細胞)、及び内皮細胞))、肝細胞及び/または腎細胞において、変異体mRNA(例えば、sflt1 mRNA及び/またはsFlt1タンパク質の産生)を特異的に分解する能力の試験を行う。また、細胞ベースの検証アッセイに好適であるのは、他の容易にトランスフェクト可能な細胞、例えば、栄養膜細胞、HeLa細胞またはCOS細胞である。細胞は、ヒトの野生型または変異体cDNA(例えば、ヒトの野生型または分泌型flt1 cDNA)でトランスフェクトされる。標準的なsiRNA、修飾siRNA、またはUループ型mRNAからsiRNAを生成できるベクターを同時トランスフェクトする。標的mRNAの選択的減少(例えば、sflt1 mRNA)及び/または標的タンパク質(例えば、sFlt1タンパク質)を測定する。標的mRNAまたはタンパク質の減少は、RNAi剤の非存在下またはsFlt1 mRNAを標的としないRNAi剤の存在下での標的mRNAまたはタンパク質のレベルと比較することができる。外因的に導入されたmRNAまたはタンパク質(または内因性のmRNAまたはタンパク質)は、比較目的でアッセイできる。標準的なトランスフェクション技術に対してある程度耐性があることが知られている神経細胞を利用する場合、受動的取り込みによって、RNAi剤(例えば、siRNA)を導入することが望ましい場合がある。
【0327】
VI.治療方法
本発明は、分泌されたFlt1タンパク質によって全体的または部分的に引き起こされる疾患または障害のリスクがある(または障害を受けやすい)対象を治療する予防的方法及び治療的方法の両方を提供する。一実施形態では、疾患または障害は、肝疾患または障害である。別の実施形態では、疾患または障害は、腎疾患または障害である。一実施形態では、疾患または障害は、胎盤疾患または障害である。一実施形態では、疾患または障害は、妊娠関連の疾患または障害である。好ましい実施形態では、疾患または障害は、可溶性Flt1タンパク質の発現に関連し、かつ可溶性Flt1タンパク質の発現の増幅が、PE、分娩後PE、子癇及び/またはHELLPの臨床症状をもたらす障害である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、PEである。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、分娩後PEである。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、子癇である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、HELLPである。
【0328】
本明細書で使用される「治療」または「治療すること」は、患者への治療剤(例えば、RNA剤またはベクターもしくはそれをコードする導入遺伝子)の適用もしくは投与、または患者から単離された組織もしくは細胞株への治療剤の適用もしくは投与として定義され、患者は、その疾患もしくは障害、その疾患もしくは障害の症状または疾患もしくは障害の素因を有し、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状、または疾患の素因を治療する、治癒させる、軽減させる、緩和させる、変更させる、修復させる、回復させる、改善させるまたは影響を与えるために行う。
【0329】
一態様では、本発明は、対象に治療剤(例えば、RNAi剤またはベクターまたはそれをコードする導入遺伝子)を投与することによって、対象において上記の疾患または障害を予防する方法を提供する。疾患のリスクがある対象は、例えば、本明細書に記載の診断アッセイまたは予後アッセイのいずれかまたは組み合わせによって同定することができる。予防剤の投与は、疾患または障害に特徴的な症状が現れる前に行うことができ、これにより、その疾患または障害を予防するか、あるいはその進行を遅らせるようになる。
【0330】
本発明の別の態様は、対象を治療的に処置する方法、すなわち、疾患または障害の症状の発症を変化させる方法に関する。例示的な実施形態では、本発明の調節方法は、機能獲得変異体を発現する細胞を、遺伝子内の1つ以上の標的配列(例えば、配列番号1もしくは2、またはそれらの任意の組み合わせ)に特異的な治療剤(例えば、RNAi剤またはベクターもしくはそれをコードする導入遺伝子)と接触させることを含み、これにより、遺伝子に対する配列特異的な干渉が達成されるようになる。これらの方法は、in vitro(例えば、細胞を剤と共に培養することにより)で、あるいはin vivo(例えば、剤を対象に投与することにより)で行うことができる。
【0331】
治療の予防的方法及び治療的方法の両方に関して、そのような治療は、ファーマコゲノミクスの分野から得られた知識に基づいて、特別に調整または修正され得る。本明細書で使用される「ファーマコゲノミクス」は、遺伝子配列決定、統計遺伝学、及び遺伝子発現分析などのゲノミクス技術を、臨床開発中及び市販中の薬物に適用することを指す。より具体的には、この用語は、患者の遺伝子が薬物に対する応答(例えば、患者の「薬物反応表現型」または「薬物反応遺伝子型」)を決定する方法についての研究を指す。したがって、本発明の別の態様は、個体の薬物応答遺伝子型に従って、本発明の標的遺伝子分子または標的遺伝子調節因子のいずれかを用いて、個体の予防的または治療的処置を調整する方法を提供する。ファーマコゲノミクスにより、臨床医または医師は、処置から最も恩恵を受ける患者に予防的または治療的処置を標的にすること、及び有毒な薬物関連の副作用を経験する患者の処置を回避することが可能になる。
【0332】
治療剤は、適切な動物モデルで試験され得る。例えば、本明細書に記載のRNAi剤(またはそれをコードする発現ベクターまたは導入遺伝子)を動物モデルで使用して、RNAi剤による処置の有効性、毒性、または副作用を決定することができる。あるいは、治療剤を動物モデルで使用して、そのような剤の作用機序を決定することができる。例えば、剤を動物モデルで使用して、そのような剤による処置の有効性、毒性、または副作用を決定することができる。あるいは、剤を動物モデルで使用して、そのような剤の作用機序を決定することができる。
【0333】
本発明のRNAサイレンシング剤を含む医薬組成物は、例えばPE及び/または子癇などの妊娠関連障害、肝疾患及び/または腎疾患関連障害を有すると診断されたまたは発症そのリスクがあるあらゆる患者に投与することができる。一実施形態では、患者は、PE及び/または子癇を有すると診断され、その他の点では患者は、一般に良好な健康状態である。例えば、患者は、末期症状ではなく、診断後少なくとも2年、3年、5年、またはそれ以上生存する可能性が高い。患者は、診断直後に治療することができるか、または患者が、PEの2つ以上の症状、もしくは子癇の1つ以上の症状など、さらに衰弱させる症状を経験するまで、遅延させることができる。別の実施形態では、患者は、疾患の進行段階に達していない。
【0334】
臓器に直接(例えば、胎盤、肝臓及び/または腎臓に直接)RNAサイレンシング剤を送達することは、肝臓関連、腎臓関連もしくは妊娠関連の疾患または障害、例えば、PE、分娩後PE、子癇及び/またはHELLPを治療または予防するのに有効な投与量であり得る。
【0335】
RNAサイレンシング剤組成物の濃度は、障害の治療または予防に有効であるか、またはヒトにおいて生理学的状態を調節するのに十分な量である。投与されるRNAサイレンシング剤の濃度または量は、剤について決定されたパラメータ及び投与方法、例えば、鼻、頬、または肺を通した投与方法に依存する。
【0336】
VI.医薬組成物及び投与方法
本発明は、以下に記載の予防的及び/または治療的治療のための上記剤の使用に関する。したがって、本発明の調節因子(例えば、RNAi剤)は、投与に好適である医薬組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的には、核酸分子、タンパク質、抗体、または調節化合物及び薬学的に許容される担体を含む。本明細書において「薬学的に許容される担体」という用語は、薬剤投与に適合する任意の及びすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張性及び吸収遅延剤などを含むことを意図する。薬学的活性物質のためのそのような培地及び剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の培地または剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるそれらの使用が企図される。補足的活性化合物を組成物に組み込むこともできる。
【0337】
本明細書で提供されるRNAi剤(例えば、dsRNA)を含む医薬組成物は、任意の薬学的に許容される塩、エステル、またはそのようなエステルの塩を包含する。したがって、例えば、本開示は、RNAi剤の薬学的に許容される塩、プロドラッグ、そのようなプロドラッグの薬学的に許容される塩、及び他の生物学的同等物も対象とする。好適な薬学的に許容される塩には、ナトリウム塩及びカリウム塩が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本開示は、RNAi剤(例えば、dsRNA)の塩を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、dsRNA剤の塩を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、siRNA剤の塩を提供する。いくつかの実施形態では、塩は、ナトリウム塩である。いくつかの実施形態では、塩は、カリウム塩である。いくつかの実施形態では、塩は、薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、RNAi剤の塩は、薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、dsRNA剤の塩は、薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、siRNA剤の塩は、薬学的に許容される塩である。
【0338】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば静脈内(IV)、皮内、皮下(SCまたはSQ)、腹腔内、筋肉内、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、及び経粘膜投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液としては、次の成分を挙げることができる:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、及び張性を調整するための剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整できる。非経口調製物は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数回投与バイアル内に封入することができる。
【0339】
注射使用に好適な医薬組成物としては、滅菌注射液または分散体を用時調製するための滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散体及び滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は、滅菌でなければならず、容易に注射することができる程度に流動性であるべきである。組成物は、製造及び保存の条件下において安定でなければならず、細菌または真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムなど)を組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0340】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙された成分のうちの1つまたはその組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上で列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、その調製の好ましい方法は、予め滅菌濾過した溶液から有効成分と任意の所望の追加成分とを合わせた粉末が得られる、真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0341】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入するか、錠剤内に圧縮することができる。経口治療投与の目的で、活性化合物を、賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物はまた、口腔洗浄薬として使用するために流動性担体を使用して調製することができ、流動性担体中の化合物は、経口的に適用され、口の中に入れてすすぎ、吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合性のある結合剤、及び/またはアジュバント材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分のいずれか、または類似の性質の化合物を含有することができる:微結晶性セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムやSterotesなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;または、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバーなどの香味剤。
【0342】
吸入による投与の場合、化合物は、好適な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガス、またはネブライザーを含有する加圧容器またはディスペンサーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0343】
全身投与はまた、経粘膜的または経皮的手段によるものであり得る。経粘膜または経皮投与のために、浸透すべき障壁に適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当技術分野で一般に知られており、例えば、経粘膜投与用に、界面活性剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、経鼻スプレーまたは坐薬を使用して行うことができる。経皮投与の場合、活性化合物は、当技術分野で一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化される。
【0344】
化合物はまた、坐剤(例えば、ココアバター及び他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む)または直腸送達用の保持浣腸の形態で調製することができる。
【0345】
RNAサイレンシング剤は、当技術で知られている方法を用いて、トランスフェクションまたは感染によって投与することもでき、以下に記載の方法などが挙げられる。McCaffrey et al.(2002),Nature,418(6893),38-9(ハイドロダイナミックトランスフェクション);Xia et al.(2002),Nature Biotechnol.,20(10),1006-10(ウイルス媒介性送達);またはPutnam(1996),Am.J.Health Syst.Pharm.53(2),151-160,erratum at Am.J.Health Syst.Pharm.53(3),325(1996)。
【0346】
RNAサイレンシング剤は、DNAワクチンなど、核酸剤の投与に好適である任意の方法によって投与することもできる。これらの方法としては、遺伝子銃、バイオインジェクター、皮膚パッチ、及び米国特許第6,194,389号に開示の微粒子DNAワクチン技術などのニードルフリー法、米国特許第6,168,587号に開示の粉状ワクチンを用いた哺乳動物の経皮的ニードルフリーワクチン接種が挙げられる。また、とりわけ、Hamajima et al.(1998),Clin.Immunol.Immunopathol.,88(2),205-10などに記載の鼻腔内送達が可能である。リポソーム(例えば、米国特許第6,472,375号に記載)及びマイクロカプセル化も使用できる。生分解性の標的化可能な微粒子送達システムも使用できる(例えば、米国特許第6,471,996号に記載のものなど)。
【0347】
一実施形態では、活性化合物は、植込み体及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、身体からの急速な排出から化合物を保護する担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤を調製するための方法は、当業者には明らかであろう。これらの材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手可能である。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞を標的とするリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に知られている方法、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されている方法に従って調製され得る。
【0348】
投与の容易性及び投薬量の均一性のために、経口または非経口組成物を投薬単位形態で製剤化することはとりわけ有利である。本明細書で使用される投薬単位形態は、対象を治療するための単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と共に所望の治療効果をもたらすように算出された、所定量の活性化合物を含有する。本発明の投薬単位形態の仕様は、活性化合物の固有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の治療のためにこのような活性化合物を調合する当技術分野の本質的な制限によって決まり、またそれに直接依存している。
【0349】
そのような化合物の毒性及び治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)及びED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって、決定することができる。毒性効果と治療効果の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きい治療指数を示す化合物が好ましい。有毒な副作用を示す化合物を使用し得るが、非感染細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を減少させるために、そのような化合物を患部組織の部位に向ける送達システムを設計するように留意する必要がある。
【0350】
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトで使用するための用量範囲を調剤する際に使用できる。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性をほとんどまたは全く有しないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される投与形態及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。本発明の方法で使用される任意の化合物について、治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、細胞培養で決定されるEC50(すなわち、最大応答の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルで製剤化され得る。このような情報は、ヒトでの有用な用量をより正確に決定するために使用できる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィによって測定することができる。
【0351】
医薬組成物は、任意の投与説明書と共に、容器、パック、またはディスペンサー内に含めることができる。
【0352】
送達経路は、患者の障害に依存し得る。特定の例示的な実施形態では、PE、分娩後PE、子癇、及び/またはHELLPと診断される対象は、本発明の抗sFlt1 RNAサイレンシング剤をIV投与またはSC投与により投与することができる。本発明のRNAサイレンシング剤に加えて、患者には、第2の治療法、例えば緩和治療法及び/または疾患特異的治療法を施すことができる。第2の治療法は、例えば、対症療法(例えば、症状を緩和するため)、保護療法(例えば、疾患の進行を遅延または停止させるため)、または回復療法(例えば、疾患プロセスを逆転させるため)であり得る。PE、分娩後PE、子癇及び/またはHELLPの治療に関して、例えば対症療法は、アテノロール、ヒドララジン、ラベタロール、硫酸マグネシウム、メチルドパ、ニカルジピン、ニフェジピン、ニトロプルシドナトリウムなどの薬物をさらに含むことができる。
【0353】
一般に、本発明のRNAサイレンシング剤は、任意の好適な方法によって投与され得る。本明細書で使用される場合、局所送達とは、眼、粘膜、体腔の表面など身体の任意の表面または任意の内面へのRNAサイレンシング剤の直接適用を指すことができる。局所投与用の製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、スプレー、及び液体が挙げられ得る。従来の薬学的担体、水性、粉末、または油性基剤、増粘剤などは、必須であるか、または望ましい場合がある。局所投与は、RNAサイレンシング剤を対象の表皮または真皮、またはその特定の層、またはその下にある組織に選択的に送達する手段としても使用され得る。
【0354】
非経口投与用の製剤は、緩衝液、希釈剤及び他の好適な添加剤を含み得る滅菌水溶液を含んでもよい。脳室内注射は、例えばリザーバーに取り付けられた脳室内カテーテルによって促進され得る。静脈内使用の場合、調製物を等張性にするためには溶質の総濃度を制御するものとする。
【0355】
本明細書で使用される「立体化学異性体形態」、「立体形態」、「立体アイソフォーム」、「立体異性体」などの語句は、同じ結合順序で結合されるが交換可能ではない異なる三次元構造を有する同じ原子で構成される、異なる化合物を指す。本開示のいくつかの実施形態では、RNAi剤(例えばdsRNA)を含む医薬組成物は、RNAi剤の個々の立体化学異性体形態の純粋な調製物であってもよく、またはそれらを含んでもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、RNAi剤の2つ以上の立体化学的異性体形態の混合物であってもよく、またはそれらを含んでもよい。
【0356】
VII.キット
特定の他の態様では、本発明は、RNAサイレンシング剤、例えば二本鎖RNAサイレンシング剤、またはsRNA剤(例えば前駆体、例えばプロセシングを受けてsRNA剤になり得るより大きいRNAサイレンシング剤、またはRNAサイレンシング剤、例えば二本鎖RNAサイレンシング剤、またはsRNA剤、またはその前駆体をコードするDNA)の医薬製剤を含む好適な容器を含むキットを提供する。特定の実施形態では、医薬製剤の個々の成分は、1つの容器に提供され得る。あるいは、医薬製剤の成分を、2つ以上の容器、例えば、RNAサイレンシング剤調製用の1つの容器と、少なくとも別の担体化合物用の容器に別々に提供することが望ましい場合がある。キットは、1つのボックス内に1つ以上の容器など、複数の異なる構成にパッケージングしてもよい。例えば、キットに提供された指示に従って、異なる構成要素を組み合わせることができる。これらの成分は、本明細書に記載される方法に従って、例えば、医薬組成物を調製し、投与するために組み合わせることができる。キットは、送達デバイスを含むこともできる。
【0357】
本明細書に記載される方法の他の好適な改変及び適合は、本明細書で開示される実施形態の範囲から逸脱することなく、好適な等価物を使用して行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。ここまで特定の実施形態を詳細に説明してきたが、実施形態は、以下の実施例を参照することにより、より明確に理解されるであろう。実施例は、例示のみを目的に含まれるものであり、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0358】
実施例1.子癇前症(PE)の背景及び重要性
疫学及び実験的研究からの圧倒的なエビデンスは現在、PEが、母体の血流中のFlt1遺伝子(VEGFR1)からの「可溶性デコイ」タンパク質(可溶性FLT1(sFLT1))のレベルが上昇することによって引き起こされることを示している(Young,B.C.,Levine,R.J.&Karumanchi,S.A.Pathogenesis of preeclampsia.Annual review of pathology 5,173-192(2010);Maynard,S.E.et al.Excess placental soluble fms-like tyrosine kinase 1(sFlt1)may contribute to endothelial dysfunction,hypertension,and proteinuria in preeclampsia.The Journal of clinical investigation 111,649-658(2003);Levine,R.J.et al.Circulating angiogenic factors and the risk of preeclampsia.The New England journal of medicine 350,672-683(2004);Heydarian,M.et al.Novel splice variants of sFlt1 are upregulated in preeclampsia.Placenta 30,250-255(2009))。FLT1は、主に胎盤で発現する受容体チロシンキナーゼ(RTK)である。RTK調節のための一般的なメカニズムは、シグナル伝達経路全体の支配的な負の調節因子として作用する短縮分泌形態の受容体の産生である。このような可溶性デコイによるリガンド隔離は、完全長受容体による細胞内シグナル伝達を阻害し、それによってリガンド濃度に対する系の脱感作が行われる(Vorlova,S.et al.Induction of antagonistic soluble decoy receptor tyrosine kinases by intronic polyA activation.Molecular cell 43,927-939(2011))。FLT1の場合には、可溶性デコイは、fl-FLT1膜貫通(TM)及びキナーゼドメインをコードするエクソンの上流にある2つのイントロン(i13及びi15)内のポリアデニル化によって生成される短縮mRNAから発現する。
【0359】
哺乳動物では、FLT1は、主に胎盤中で発現し、ヒト胎盤Flt1 mRNAレベルは、他の成体組織中で観察されるよりも10~100倍高い(Cerdeira,A.S.&Karumanchi,S.A.Angiogenic factors in preeclampsia and related disorders.Cold Spring Harbor perspectives in medicine 2(2012))。全長アイソフォームが非妊娠成人のヒト(上記)におけるすべての組織で優勢であるのに対して、胎盤発現は、3つの短縮型アイソフォーム、すなわちsFlt1-i13 short、sFlt1-i13 long、及びsFlt1-i15aが優位であり、これらはすべて、sFLT1タンパク質をコードする。胎盤中での高Flt1及び他の非妊娠成体組織での低い発現であるこの同じパターンは、げっ歯類で観察される。しかしながら、げっ歯類は、イントロン14のポリアデニル化部位を欠いているため、1つの可溶性デコイ形態:sFlt1-i13のみを発現する。PEでは、完全長(fl-Flt1)及び短縮型Flt1のmRNAの両方が正常妊娠時よりも胎盤において高いレベルに蓄積し、短縮型アイソフォームがさらに顕著になる。mRNAレベルでのこうした変化は、PEの間の母体血流におけるsFLT1タンパク質の有意な上昇を説明している可能性がある。
【0360】
PEの治療のためのsiRNAの適用性
以前の研究では、PEの治療のためのsiRNAベースの治療薬の適用性が示されていた(米国特許第9,862,952号明細書、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0361】
実施例2.sFLT1を標的とするsiRNAの最適化
胎盤組織の蓄積を促進し、siRNAの分解を最小限に抑え、毒性を低減する一方で、サイレンシングを増強するために、前述のsiRNAの最適化を行った。最適化は、安定性を向上させるための2’-OMeリッチ足場、及び胎盤送達を向上させるためのPC-DCAコンジュゲートセンス鎖を導入することにより実施した。最適化されたsiRNAは、以前に開発された化学物質と比較して、蓄積の増加、有効性及び安全性の向上を示した。
【0362】
2’OMe内容物の最適化
図1Aに示すとおり、siRNAのアンチセンス鎖及びセンス鎖において、様々な量の2’OMe修飾を用いた。
図1Bに示すとおり、siRNAの用量反応結果(n=3、平均±SD)を、2283位(5’CTCTCGGATCTCCAAATTTA3’(配列番号1)において、ヒトflt1遺伝子の配列を標的として生成した。2519位(5’CATCATAGCTACCATTTATT3’(配列番号2)を標的とするsiRNAも試験し、同様の結果であった。HeLa細胞を、示した濃度で、siRNAで72時間処理した。mRNAレベルは、Dual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイシステムを用いて測定し、未処理の対照(C)の百分率として計算した。
図1Bの表-最大KD(%)-最大治療用量のsiRNAによる標的mRNAノックダウンの最大率、IC50-最大阻害濃度の半値、AUC-用量反応曲線の下面積、p値-有意性。この結果は、siRNA中の2’OMe修飾の量を増加させることにより、siRNAのサイレンシング効力が実質的に低下しないことを実証している。2’OMe修飾は、2’F修飾よりも毒性が低い。したがって、2’OMeリッチsiRNAが、治療的使用により好適であり得る。
【0363】
センス鎖コンジュゲート最適化
siRNAコンジュゲートは、siRNAを適切な組織及び細胞に誘導する際に重要な役割を果たす。
図2Aに示すとおり、Cy3標識されたsiRNAを、様々な機能部分とコンジュゲートし、肝臓、腎臓、及び胎盤組織の送達を、組織蛍光イメージングによって観測した。本試験では、妊娠中のCD1マウスに、20mg/kgのCy3標識siRNAバリアントを注射した。組織蛍光イメージングを、Leica DMi8倒立傾斜顕微鏡10xタイル状アレイ画像を用いて実施した。スケールバー=2mm。すべての画像は、同一のレーザ強度で取得した。
図2Bに示すとおり、ガイド鎖の蓄積を、PNAハイブリダイゼーションアッセイにより48時間後に定量化した(n=3)。p値は、各化合物とコレステロールコンジュゲート化合物との間の統計的有意差を示す(一元配置分散分析法、**p<0.01、***p<0.001、有意差のないものはマークしていない)。NOC-コンジュゲートなし、Chol-コレステロール、DCA-ドコサン酸、PC-DCA-ホスホコリン-ドコサン酸、DHA-ドコサヘキサン酸、PC-DHA-ホスホコリン-ドコサヘキサン酸、DIO-二分岐オリゴヌクレオチド。この結果は、PC-DCA siRNAコンジュゲートにより、胎盤蓄積が増強することを実証していることを実証している。
【0364】
PC-DCA siRNAコンジュゲートは、骨髄内での蓄積の減少を示すことをさらに特徴とした。Cy3標識sFLT1_2283 siRNAバリアントを注射したCD-1マウスの骨髄細胞のFACS分析を行った。
図3Aには、
図3B~
図3Dの骨髄における特定の細胞集団のCy3強度を定量化するために使用されるゲーティングスキームを示す。
図3Bには、siRNAバリアントを注入して24時間後の骨髄好中球のCy3蛍光強度の頻度分布ヒストグラム(左)及びCy3中央蛍光強度の棒グラフ(右)を示す。
図3Cには、siRNAバリアントを注入して24時間後の骨髄顆粒球のCy3蛍光強度の頻度分布ヒストグラム(左)及びCy3中央蛍光強度の棒グラフ(右)を示す。
図3Dには、siRNAバリアントを注入して24時間後の骨髄単球のCy3蛍光強度の頻度分布ヒストグラム(左)及びCy3中央蛍光強度の棒グラフ(右)を示す。(n=3、平均±SD)p値は、化合物の間の統計的有意差を表す(一元配置分散分析法;*p<0.05;有意差のないものはマークしていない)。その結果、PC-DCAコンジュゲートsiRNAは、骨髄単球、顆粒球及び好中球における蓄積が低いことが示され、PC-DCAコンジュゲートは、オフターゲットの蓄積が最小である胎盤送達に有用であることを実証している。
【0365】
アンチセンス鎖5’末端最適化
アンチセンス鎖は、5’エキソヌクレアーゼの作用に感受性であり得る。したがって、分解を減少させるような修飾により、5’末端を保護することが有利である。これらのsiRNAを、3つの異なるアンチセンス5’末端修飾、5’ビニルホスホネート(VP)、5’ホスホロチオエート(PS)、及び5’-ヒドロキシル(OH)の効果を試験することにより、さらに最適化した。siRNA化学修飾パターンの概略図。
【0366】
胚日(E)13及びE14に、2283及び2519のsiRNAバリアントの20mg/kg等モル混合物を妊娠中のCD-1マウスに注射した。
図4Aは、注射されたsiRNA化合物の化学パターン及び試験された5’部分の化学構造の概略図を示す。
図4Bに示すとおり、E18の胎盤中のsflt1-i13 mRNAレベルは、Quantigene 2.0 RNA Assayを用いて測定した。レベルをFlt1に対して正規化し、PBS対照のパーセンテージ(n=5、平均±SD)として示した。
【0367】
5’部分、2’修飾パターン及びコンジュゲートの最適化により、in vivoでの組織蓄積及び効力の増大がもたらされた。
図4Cに、PNAハイブリダイゼーションアッセイを用いて測定したE18の胎盤中のsiRNA蓄積の量を示す(n=5)。p値は、化合物の間の統計的有意差を表す(一元配置分散分析法;**p<0.01;****p<0.0001;有意差のないものはマークしていない)。
図4Dに示すとおり、E18の胎盤中のsflt1-i13 mRNAレベルは、Quantigene 2.0 RNA Assayを用いて測定した。レベルをFlt1に対して正規化し、PBS対照のパーセンテージ(n=6、平均±SD)として示した。
図4Eに、PNAハイブリダイゼーションアッセイを用いて測定したE18の胎盤中のsiRNA蓄積の量を示す(n=6)。p値は、化合物の間の統計的有意差を表す(一元配置分散分析法;**p<0.01;****p<0.0001;有意差のないものはマークしていない。対応のないt検定;#p<0.05;####p<0.0001)。
図4Fに示すとおり、マウスの平均子マウス数、子マウス平均体重、及び平均胎盤重量は、対照マウスと処置した妊娠中マウスとの間でほぼ同じであり、2283及び2519 siRNAの混合物がこれらの測定基準に対して悪影響を及ぼさなかったことを示す。
【0368】
血清サイトカイン産生の減少
最適化されたsiRNAを、血清サイトカインの産生に及ぼす効果について試験した。最適化されたsiRNAを生成して、部分的に、毒性を低下させ、治療指数を拡大させた。血清サイトカインの産生が減少することにより、毒性を低下させ、治療指数を拡大することを示すであろう。
【0369】
図5に示すとおり、75mg/kgのsFLT1_2283 siRNAバリアント(n=3、平均±SD)を注射して24時間後のCD-1マウスの血清サイトカイン濃度を測定した。p値は、化合物の間の統計的有意差を表す(一元配置分散分析法;*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001;有意差のないものはマークしていない)。多数のインターロイキン、コロニー刺激因子、及びケモカインレベルを測定し、第2世代の最適化されたsiRNAでは、第1世代のsiRNAと比較して低いことが判明した。治療指数が広いとは、siRNAを毒性の問題のリスクがなく、高濃度で投与できることを意味する。このことは、投与頻度の減少及び/またはsFLT-1のより良好なサイレンシングをもたらし得る。
【0370】
実施例2の全体的な結果は、sFlt-1 2283及び2519の標的部位を標的とする最適化されたsiRNAが、第1世代siRNAと比較した場合、同様のサイレンシング効力を有するとともに、優れた胎盤組織蓄積、オフターゲット組織蓄積の減少、分解の減少、毒性の低下、及びより広い治療指数を有することを示している。
【0371】
リード化合物を評価するための既存のアッセイシステム。
これまでに開発されたアッセイ及びモデルは、以下のとおりである。
【0372】
In situ組織分布の蛍光顕微鏡検査評価
センス(パッセンジャー)鎖の5’末端に非分解性リンカーを介して付着させたCy3またはCy5.5(自家蛍光が少ない)色素を含むhsiRNAバリアントを合成した。この化合物は、24時間以内に検出可能なCy3切断なく生物学的に安定であった。相補的なガイド鎖にハイブリダイズした蛍光センス鎖(したがって二本鎖hsiRNAを形成する)を動物に投与し、オリゴヌクレオチドの分布パターンは、DAPIまたは/及び細胞型選択抗体でも染色した4μm組織切片で調べた。平行セクションは、詳細な組織学マッピングが可能になる標準組織学マーカーによって染色することができた。hsiRNAは、既に著しく疎水修飾されているため、色素を添加しても、全体的な疎水性にほとんど影響を与えることはなく、したがって、オリゴヌクレオチド分布への影響は最小である。このアッセイでは、組織及び細胞型分布の迅速な評価が可能になり、直接的なガイド鎖検出のためのPNAベースの定量アッセイによって補完した。
【0373】
組織溶解物中の定量的なガイド鎖検出のためのPNAハイブリダイゼーション
組織中の完全なガイド鎖の直接的な定量が可能になるように、新規アッセイを開発し、実施し、これにより、ガイド鎖を完全相補的なCy3標識PNA(ペプチド核酸)オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせ、HPLCによって、対応する二本鎖を、過剰な一本鎖PNAから分離した。PNAは、非荷電であり、ガイド鎖に対して、非常に強固な結合を有するため、hsiRNAセンス鎖及びあらゆる内因性標的配列の両方との競合に勝つ。Cy3-PNA:ガイドハイブリッドの蛍光検出では、組織溶解物中のガイド鎖の存在量を直接的に測定する。HPLC自動インジェクターと組み合わせることで、このアッセイでは、数百サンプル中でのガイド鎖の定量を一晩で行うことが可能になった。このアッセイも感度が高く、検出限界は、10fmol/グラム未満であり、全長の、部分的に分解された、5’-リン酸化及び5’-脱リン酸化されたガイド鎖を含むハイブリッドはすべて、HPLC追跡において別のピークまたは肩として定量化することができる。このアッセイは、標識された化合物及び非標識化合物を両方とも検出できるため、臨床サンプル分析のために、その後のCROに直接移行することができる。
【0374】
細胞及び組織中でのFlt1 mRNAバリアントを直接検出するためのQuantiGene(登録商標)(Affymetrix)アッセイ
QuantiGene(登録商標)は、高感度96ウェルベースのアッセイであり、このアッセイでは、組織及び/または細胞溶解物から直接、シグナル増幅によってmRNAが直接検出される。この直接検出アッセイを192ウェルの自動TissueLyserに連結することにより、動物1匹当たり数十個のサンプルの処理が可能になるハイスループット型が開発された。このように、標的遺伝子及びハウスキーピング遺伝子の発現に関する定量的データが、多くの動物において一度に生成された。パイロット試験では、n=8は、80%の信頼度でsFlt1 mRNAアイソフォーム発現の40%の調節を検出するのに十分であった。bDNAアッセイは、Coles et al.Nucleic Acid Ther.(2015)Nov 23.PMID:26595721に記載されている。
【0375】
馴化培地及び血液におけるsFLT1タンパク質の検出のためのELISA(#MVR100,R&D Systems)
この96ウェルベースのアッセイでは、1サンプル当たり10μLの生物学的流体のみ必要であった。このアッセイは、in vitro及びin vivoの両方での研究のために、長年にわたって最適化されている。これは臨床的に適合性があり、動物を屠殺することなく、循環sFLT1タンパク質レベルの評価が可能になり、特に非ヒト霊長類試験に有用であろう。
【0376】
正常マウス妊娠モデル
sFlt1-i13バリアントは、マウス妊娠中に発現し、i13レベルは、14日目~19日目から指数関数的に増加する。sFLT1-i13-2283化合物とi13マウスバリアントとの完全な相同性により、この単純なげっ歯類モデルにおいて、有効性及び安全性を両方とも試験することが可能になる。
【0377】
子癇前症モデル
以下でさらに説明するように、胎盤虚血の子宮灌流圧低下(RUPP)モデル及び子癇前症の低酸素モデルを使用する。
【0378】
ヒヒ野生型妊娠モデル
sFlt1-i15aバリアントは、妊娠中のげっ歯類では発現しないため、効力の読出しとしての非侵襲的アッセイであるELISAを用いて、野生型妊娠中のヒヒにおける組み合わせの全体的な有効性及び安全性が評価されることになる。
【0379】
実施例3.in vitro及び子癇前症のRUPPラットモデルにおけるsFlt-1を標的とする最適化されたsiRNA
sFlt-1を標的とする最適化されたsiRNAを、ヒト細胞株を用いてin vitro、及び子癇前症のRUPPラットモデルで試験した。この実施例では、以下のsiRNAを使用した:
【表1】
【0380】
【0381】
最適化されたsiRNAをヒトWM-115細胞株で試験し、標的をサイレンシングするsiRNA-2283及びsiRNA-2519の能力を分析した。siRNA-2283(標的sFLT1-i13)及びsiRNA-2519(標的sFLT1-e15a)を単独または1:1比で組み合わせて試験した。
図7に示すとおり、各siRNA単独では、標的のsFLT1 mRNAアイソフォームをサイレンシングして、総sFLT1タンパク質レベルを低下させることができるのに対して、組み合わせでは、個々のアイソフォームのさらなるサイレンシング及び総タンパク質の減少が示された。
【0382】
同じsiRNAを、RUPP(妊娠ラットにおける子宮胎盤灌流減少モデル)子癇前症ラットモデルにおいて、組み合わせて試験した。RUPP処置は、胎盤虚血を誘導し、子癇前症の十分に特徴付けられたモデルである。RUPPラットは、母体平均動脈血圧(MAP)の上昇及びsFLT1値の上昇を伴う糸球体濾過量(GFR)の低下などの子癇前症の特徴的な症状を示す。
【0383】
RUPPモデルにおいて、sFlt1を標的とする最適化されたsiRNAを評価するために、在胎13日目及び14日目に、10mg/kg体重の組み合わせsiRNA療法(sFLT1 siRNA:(siRNA-2283(sFLT1-i13標的)とsiRNA-2519(sFLT1-e15a標的)との1:1混合物)またはPBS対照をラットに皮下注射した(
図8Aを参照)。
【0384】
RUPPモデルを生成するために、在胎14日目にSprague Dawley妊娠ラットの子宮内の腹部大動脈及び卵巣動脈の周囲に銀クリップを外科的に配置した。Sham手術(腹部切開及びクリップを配置せずに縫合)を対照として使用した。
【0385】
在胎19日目に血液及び組織を採取し、妊娠バイオメトリクスを分析した。在胎19日目に意識のあるラットにおいて血圧を測定し、次いで動物をイソフルランで血液に麻酔してsFLT-1を測定し、組織学的分析のために組織を採取した。
【0386】
以下のアッセイを実施した:
・母体の血圧測定:在胎18日目。19日目に意識下において動脈血圧及び心拍数を測定するために頸カテーテルを移植した。
・胎児体重及び胎盤重量:在胎19日目に、屠殺の時点で、胎児重量及び胎盤重量を測定した。ラット1匹当たりの胎児及び胎盤の総重量及び平均重量を計算した。
・胎児の吸収:母体により吸収された胎児の数を視覚的に決定する。
【0387】
図8Bに示すとおり、組み合わせ療法のRUPP群では母体血圧が低下し、血圧を対照レベルにした(Sham)。さらに、組み合わせ療法により処置したRUPP群において、胎盤重量を保持した(
図8B)。胎児吸収率及び胎児体重(
図8Cに示す)により測定した場合、胎児の悪影響はなく、胎児発育の改善に向けた傾向があった。
【0388】
均等物
本開示は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。したがって、前述の実施形態は、本開示を限定するものではなく、あらゆる点において例示的であると見なされるべきである。したがって、本開示の範囲は、前述の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内に入るすべての変更は、本明細書に含まれることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】