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特表2024-523511直接書込み式3Dプリントに適用される単一成分シリコーンゴム媒体、製造方法及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】直接書込み式3Dプリントに適用される単一成分シリコーンゴム媒体、製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20240621BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240621BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240621BHJP
【FI】
B29C64/314
B33Y70/00
B29C64/106
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579175
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 CN2022139958
(87)【国際公開番号】W WO2023138279
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202210069440.7
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522378292
【氏名又は名称】芯体素(杭州)科技発展有限公司
【氏名又は名称原語表記】ENOVATE3D (HANGZHOU) TECHNOLOGY DEVELOPMENT CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】周 南嘉
(72)【発明者】
【氏名】李 深
(72)【発明者】
【氏名】▲嚴▼ 俊秋
(72)【発明者】
【氏名】朱 暁艶
(72)【発明者】
【氏名】陳 小朋
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA33
4F213AA45
4F213AB16
4F213AR06
4F213AR12
4F213AR17
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
4F213WL96
(57)【要約】
本発明は、直接書込み式3Dプリントに適用される単一成分シリコーンゴム媒体、製造方法及び応用を提供し、前記単一成分シリコーンゴム媒体の粘度は200~1000Pa・sであり、前記単一成分シリコーンゴム媒体が室温で30日以上保存された後、粘度変化値は10%以下であり、当該単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法は、まず炭素間二重結合を含むポリシロキサン、粘着付与剤及び白金触媒を混合して第1の混合材を取得し、第1の混合材を昇温して第1の持続時間を保持し、重合禁止剤を添加して第2の持続時間を保持して第2の混合材を取得し、第2の混合材を降温し、前記第2の混合材と水素含有ポリシロキサンを混合して第3の混合材を取得し、前記第3の混合材と無機ナノフィラーを混合して第4の混合材を取得し、前記第4の混合材に対する真空脱泡と加圧濾過を順に行うことである。特に直接書込み式3Dプリントの分野におけるマイクロメートルのサイズオーダーの高精度プリントに適用されている。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体であって、
前記単一成分シリコーンゴム媒体の粘度は200~1000Pa・sであり、前記単一成分シリコーンゴム媒体が室温で30日以上保存された後、粘度変化値は10%以下である、ことを特徴とする直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体。
【請求項2】
炭素間二重結合を含むポリシロキサン、粘着付与剤及び白金触媒を混合して第1の混合材を取得するステップS1と、
第1の混合材を昇温して第1の持続時間を保持し、重合禁止剤を添加して第2の持続時間を保持して第2の混合材を取得するステップS2と、
第2の混合材を降温し、前記第2の混合材と水素含有ポリシロキサンを混合して第3の混合材を取得するステップS3と、
前記第3の混合材と無機ナノフィラーを混合して第4の混合材を取得するステップS4と、
前記第4の混合材に対する真空脱泡と加圧濾過を順に行い、単一成分シリコーンゴム媒体を取得するステップS5と、を含む方法で製造する、
ことを特徴とする請求項1に記載の直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体。
【請求項3】
直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法であって、
炭素間二重結合を含むポリシロキサン、粘着付与剤及び白金触媒を混合して第1の混合材を取得するステップS1と、
第1の混合材を昇温して第1の持続時間を保持し、重合禁止剤を添加して第2の持続時間を保持して第2の混合材を取得するステップS2と、
第2の混合材を降温し、前記第2の混合材と水素含有ポリシロキサンを混合して第3の混合材を取得するステップS3と、
前記第3の混合材と無機ナノフィラーを混合して第4の混合材を取得するステップS4と、
前記第4の混合材に対する真空脱泡と加圧濾過を順に行い、単一成分シリコーンゴム媒体を取得するステップS5と、を含む、
ことを特徴とする直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法。
【請求項4】
前記炭素間二重結合を含むポリシロキサンは、ビニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルビニルポリシロキサンのうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項3に記載の直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法。
【請求項5】
前記水素含有ポリシロキサンは、水素含有メチルポリシロキサン、水素含有メチルフェニルポリシロキサン、水素含有メチルシリコン樹脂、水素含有フフェニルシリコン樹脂のうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項3に記載の直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法。
【請求項6】
前記白金触媒は、塩化白金酸、又は、塩化白金酸とアクカン、シクロアルカン、アルコール、エステル、ケトン、エーテルと、からなる錯体のうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項3に記載の直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法。
【請求項7】
前記粘着付与剤は、HO-Si(CHO[Si(CHO]Si(CH-OH、n=3~8、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ジメチルシロキサン環状混合物(DMC)のうちの1つ又は複数である、ことを特徴とする請求項3に記載の直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法。
【請求項8】
前記重合禁止剤は、炭素数が15個未満であるアルキノールである、ことを特徴とする請求項3に記載の直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法。
【請求項9】
ステップS2において、前記第1の混合材を50~80℃に昇温し、ステップS3において、第2の混合材を50℃以下に降温する、ことを特徴とする請求項3に記載の直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体を、プリントするラインの幅が1~200μmであり、アスペクト比が0.5より大きいラインで、直接書込み式3Dプリントに応用する、ことを特徴とする単一成分シリコーンゴム媒体の応用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料製造分野に関し、特に直接書込み式3Dプリントに適用される単一成分シリコーンゴム媒体、製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリントは、一種の新型の精密な加工と製造技術として、このような技術では、製造過程において、何もないところから材料を順序に付加していくという製造プロセスを用いていることを特徴とし、従来のプロセスでは、一般的に、既存している余分な材料を徐々に削除していくという製造プロセスを用いている。従来の製造プロセスに比べて、付加製造である3Dプリント技術は、より高い適応性と産業における利用可能性を有する。ここで、現在では、比較的一般的な3Dプリント技術は、熱溶解積層(FDM)、立体光硬化(DLP、CLIP又はPolyJet)、選択レーザ焼結(SLA、SLS)と3次元プリント成形(3DP)などがあるが、これらの3Dプリント技術は、いずれもシリコーンゴム類の媒体材料を使用して精密構造のプリントを行うことができない。
【0003】
直接書込み式プリント(direct ink writing、DIW)は、新興3Dプリント技術として、当該技術は、プリントノズルからせん断減粘性質を有する半固体状態のインク材料を押出することで、インクを一層ずつ積層して事前に設定された3次元構造を構築し、現在では、既に、電子デバイス、構造材料、組織工学及び柔軟ロボットなどの分野において広範に応用され、このような技術は、シリコーンゴム類の媒体材料に良好に適合し、製品に対して対応する精密加工を行うことができる。
【0004】
従来技術において、シリコーンゴム類のプリント媒体を研究している技術もあり、例えば、CN105643939BとCN107674429Aは3Dプリントシリコーンゴム及びそのプリント方法をそれぞれ開示しているが、用いたものは単一成分のシリコーンゴム材料であり、保存周期が短く、プリントする時に粘度が増加し、ゲル又は粒子が粗大化することでプリントヘッドがブロックされてしまうことを引き起こしやすいというリスクが存在する。CN106313505AとCN107638231Aは、二成分混合シリコーンゴム3Dプリンタ及びそのプリント方法を開示しているが、二成分混合シリコーンゴムに関する詳細な技術を開示せず、用いたリング形の加熱シートは、プリントする時に温度が100~400℃に高く達し、このような高温では、プリントヘッドが、その内部にあるシリコーンゴムの高温ゲルによりブロックされることを引き起こしやすい。
【0005】
要約すると、現在の市場では、直接書込み式3Dプリントに良好に適合するシリコーンゴム類材料がなく、更に3Dプリント技術の市場の普及と応用を制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術において、3Dプリントシリコーンゴムは、保存周期が短く、プリントする時に粘度が増加し、ゲル(高温)又は粒子が粗大化することでプリントヘッドがブロックされることを引き起こしやすい問題が存在する。
【0007】
本発明の目的は、直接書込み式3Dプリントに適用される単一成分シリコーンゴム媒体、製造方法及び応用を提供することであり、当該単一成分シリコーンゴム媒体は、高粘度と高安定性を兼備し、マイクロメートルのサイズオーダーのラインの高精度プリントに適用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するために、実施例1では、本解決手段は、直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体を提供し、前記単一成分シリコーンゴム媒体の粘度は200~1000Pa・sであり、前記単一成分シリコーンゴム媒体が室温で30日以上保存された後、粘度変化値は10%以下である。
【0009】
いくつかの実施例では、当該単一成分シリコーンゴム成分は、25℃時の稠度はいずれも120~280×0.1mmである。
【0010】
当該直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体は、炭素間二重結合を含むポリシロキサン、粘着付与剤及び白金触媒を混合して第1の混合材を取得するステップS1と、第1の混合材を昇温して第1の持続時間を保持し、重合禁止剤を添加して第2の持続時間を保持して第2の混合材を取得するステップS2と、第2の混合材を降温し、前記第2の混合材と水素含有ポリシロキサンを混合して第3の混合材を取得するステップS3と、前記第3の混合材と無機ナノフィラーを混合して第4の混合材を取得するステップS4と、前記第4の混合材に対する真空脱泡と加圧濾過を順に行い、単一成分シリコーンゴム媒体を取得するステップS5と、を含む製造方法で製造する。
【0011】
実施例2では、本解決手段は、直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法を提供し、
炭素間二重結合を含むポリシロキサン、粘着付与剤及び白金触媒を混合して第1の混合材を取得するステップS1と、
第1の混合材を昇温して第1の持続時間を保持し、重合禁止剤を添加して第2の持続時間を保持して第2の混合材を取得するステップS2と、
第2の混合材を降温し、前記第2の混合材と水素含有ポリシロキサンを混合して第3の混合材を取得するステップS3と
前記第3の混合材と無機ナノフィラーを混合して第4の混合材を取得するステップS4と、
前記第4の混合材に対する真空脱泡と加圧濾過を順に行い、単一成分シリコーンゴム媒体を取得するステップS5と、を含む。
【0012】
ステップS1において、炭素間二重結合を含むポリシロキサンと粘着付与剤を混合して白金触媒の作用で、適切な温度に設置されて架橋反応が発生し、まず一定のネットワーク状の架橋本体を形成し、更に、ステップS1で得られた第1の混合材はネットワーク状の架橋本体であり、そのような利点は、得られた第1の混合材自体は既に一定のネットワークフレームを有し、プリントする時に更に良好な保形性を有することを保証することができ、よって、プリントされたラインがレベリングして崩壊することがないように保証することができ、よって、アスペクト比が>0.5である図形を取得することができる。
【0013】
当該架橋反応において、混合した炭素間二重結合を含むポリシロキサンは主な成分であり、使用量の割合において、ポリシロキサン、粘着付与剤及び白金触媒の使用量は、ポリシロキサンの使用量が触媒の使用量の200~2000部であり、ポリシロキサンの使用量が粘着付与剤の使用量の2~10倍であるという条件を満たす。いくつかの実施例では、ポリシロキサン:粘着付与剤:触媒の割合は、100:10~50:0.05~0.5である。好ましくは、ポリシロキサン:粘着付与剤:触媒の割合は、100:30:0.1であり、ポリシロキサン:粘着付与剤:触媒の割合は、100:20:0.3である。
【0014】
前記炭素間二重結合を含むポリシロキサンは、ビニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルビニルポリシロキサンのうちの少なくとも1つである。前記炭素間二重結合を含むポリシロキサンは、ビニルポリシロキサンを用いる場合、ここで、ビニルポリシロキサンにおけるビニル基は、ポリシロキサン分子鎖のα、ω位置又は中間位置にあり、ビニルポリシロキサンの粘度は50~500Pa・sであり、ビニル基の含有量は0.05~l0mol%であり、前記ビニルポリシロキサンにおける各分子ではシリコン原子に接続されるビニル基という官能基を2個以上を含み、分子量は(40~100)×10である。
【0015】
用いた白金触媒は、塩化白金酸、又は、塩化白金酸とアクカン、シクロアルカン、アルコール、エステル、ケトン、エーテルと、からなる錯体のうちの少なくとも1つであり、白金の含有量が0.1~5%であるSpeier白金触媒又はKarstedt白金触媒が好ましく、前記触媒が媒体材料に添加される質量分率は0.1~0.5%である。
【0016】
粘着付与剤は、HO-Si(CHO[Si(CHO]Si(CH-OH、n=3~8、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ジメチルシロキサン環状混合物(DMC)のうちの1つ又は複数である。
【0017】
ステップS2において、第1の混合材を50~80℃に昇温し、第1の混合材を50~80℃のいずれかの温度に安定させて第1の持続時間で処理する目的は、粘着付与剤と炭素間二重結合を含むポリシロキサンとの一定の架橋反応を発生させることで、材料の架橋度を向上させることによって、最終的に材料の全体粘度と保形性を向上させることであり、第1の持続時間は30~180分間であり、40/50/60/70/80/90/100/110minであってもよく、第1の混合材を60/70℃に安定させててもよい。
【0018】
ステップS2において、重合禁止剤を添加して白金触媒の活性を効果的に抑制し、第1の混合材の更なる架橋の発生を停止させることができ、室温で安定な材料を取得し、最終的に得られた単一成分シリコーンゴム媒体の安定性を更に向上させる。重合禁止剤の存在のため、室温で、当該シリコーンゴム媒体は重合せず、高い温度では、重合禁止剤が揮発した後、白金触媒の触媒活性が復元した後、更に、重合することができ、熱硬化を最終的に実現する。すなわち、第1の混合材に比べて、第2の混合材に重合禁止剤を添加することでシリコーンゴム媒体は良い保形性有する上で更に室温で高い安定性を保持することができることを保証する。
【0019】
重合禁止剤は、炭素数が15未満であるアルキノールであり、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、3-ブチン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールのうちの1つ又は複数であることが好ましく、前記抑制剤が媒体材料に添加される質量分率は0.1~2%である。
【0020】
ステップS3において、水素含有ポリシロキサンを添加する役割は、材料の硬化重合度と最終的に硬化した後の硬度を向上させることができることであり、ステップS3において、水素含有ポリシロキサンを添加して白金触媒の水素含有ポリシロキサンに対する触媒性能がより高くなることを保証することができる。
【0021】
本解決手段の実施例では、前記水素含有ポリシロキサンの使用量は前記炭素間二重結合を含むポリシロキサンの使用量の1~10倍である。すなわち、前記炭素間二重結合を含むポリシロキサン:水素含有ポリシロキサンの割合は100:10~100である。いくつかの好ましい実施例では、前記炭素間二重結合を含むポリシロキサン:水素含有ポリシロキサンの割合は1:2である。
【0022】
前記水素含有ポリシロキサンは、水素含有メチルポリシロキサン、水素含有メチルフェニルポリシロキサン、水素含有メチルシリコン樹脂、フェニルハイドロシリコン樹脂のうちの少なくとも1つであり、ここで、水素含有ポリシロキサンの粘度は50~500Pa・sであり、水素の含有量は0.1~1mol%であり、前記水素含有ポリシロキサンにおける各分子においてシリコン原子に接続される水素原子を2個以上含み、分子量は(40~100)×10である。
【0023】
ステップS3において、前記第2の混合材の温度を20~40℃に降温し、25/30/35℃であってもよい。
【0024】
ステップS4において、第3の混合材に無機ナノフィラーを添加する目的は、材料の剪断応力を向上させることによって、プリント過程における材料押出の安定性を向上させることである。
【0025】
ここで、無機ナノフィラーは、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック、グラフェン、酸化亜鉛のうちの1つ又は複数であり、寸法は1~500nmである。
【0026】
本解決手段により提供される混合手段には、ボールミル、研磨又は機械撹拌のうちの1つ又は複数を用い、混合材料は均一に混合すればよい。
【0027】
実施例3では、本解決手段は、上記製造方法で製造した単一成分シリコーンゴム媒体を、プリントするラインの幅が1~200μmであり、アスペクト比が0.5より大きいラインで、直接書込み式3Dプリントに適用することを提供する。
【発明の効果】
【0028】
従来技術に比べて、本技術的解決手段の特徴と好適な効果は以下のとおりである。
【0029】
当該単一成分シリコーンゴム媒体自体の粘度は200~1000Pa・sの間に達することができ、プリントした後の製品の保形性が高く、製品は硬化過程にラインが崩壊する現象が発生しにくいことを保証することができ、更にマイクロメートルのサイズオーダーの高精度なプリントを満たし、プリントするラインの幅が1~200μmであり、アスペクト比が0.5より大きいラインのプリントに適用する。且つ、従来の媒体材料では、マイクロメートル寸法の充填粒子を充填することで材料の粘度を向上させる場合と異なり、本解決手段の単一成分シリコーンゴム媒体自体の粘度が高く、更にノズルがブロックされるリスクを減少させる。
【0030】
当該単一成分シリコーンゴム媒体は、長期間保存安定性が高い、室温で30日以上保存された後、粘度変化値は10%以下であり、25℃の場合、稠度はいずれも120~280×0.1mmであり、30日以内の変化値は≦10%であり、3Dプリントの長期間プリントを満たすことができ、よって、当該単一成分シリコーンゴム媒体は高粘度と高安定性を兼備することができる。
【0031】
本解決手段は、単一成分シリコーンゴム媒体を製造する過程に白金触媒を添加し、白金触媒は適切な温度で媒体材料に対する架橋化処理を行い、その後、重合禁止剤を導入して単体の更なる重合硬化を抑制することによって、材料の粘度及び保存する時の安定性を保証し、同時に高温による全部の硬化を実現することができ、硬化した後のショア硬度は30A以上である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例1に対応するプリント結果の概略図である。
図2】実施例1に対応するプリントラインの幅の3次元構成図である。
図3】実施例2に対応するプリント結果の概略図である。
図4】実施例2に対応するプリントラインの幅の3次元構成図である。
図5】実施例3に対応するプリント結果の概略図である。
図6】実施例3に対応するプリントラインの幅の3次元構成図である。
図7】比較例1に対応するプリント結果の概略図である。
図8】比較例1に対応するプリントラインの幅の3次元構成図である。
図9】比較例2に対応するプリント結果の概略図である。
図10】比較例2に対応するプリントラインの幅の3次元構成図である。
図11】比較例5に対応するプリント結果の概略図である。
図12】比較例5に対応するプリントラインの幅の3次元構成図である。
図13】本解決手段の直接書込み式3Dプリントプロセスに適用される単一成分シリコーンゴム媒体の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施例における図面に合わせ、本発明の実施例における技術的解決手段を明確、全体的に説明し、当然ながら、記述の実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明に係る実施例によれば、当業者により取得された全ての別の実施例は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【0034】
理解すべきことは、技術用語「一」は「少なくとも一つ」又は「一つ又は複数の」であることを理解すべきであり、すなわち、一実施例では、1つの素子の数は1つであってもよく、別の実施例では、当該素子の数は複数であってもよく、技術用語「一」は数を限制するものではないことである。
【0035】
以下、実施例を用いて本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容によって容易に本発明の別の利点及び効果を理解することができる。本発明の特許請求の範囲は下記特定の実施形態に限定されるものではないことを理解すべきであり、更に理解すべきことは、本発明の実施例に使用される技術用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではないことである。下記実施例では具体的な条件を示していない試験方法は、一般的に通常方法に応じ、又は各メーカーにより提案される条件に応じる。
【0036】
実施例1:単一成分シリコーンゴム媒体の製造(粘度が200Pa・sである)
(1)100gの粘度が50Pa・sであり、ビニル基の含有量が0.05mol%であり、分子量が40×10であるビニルポリシロキサン、0.2gのKarstedt白金触媒、20gのヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)を、撹拌釜に添加して均一に混合し、
(2)70℃に昇温し、30min反応させ、0.2gの1-エチニル-1-シクロヘキサノールを添加し、均一に混合し、30min反応させ、
(3)30℃に降温し、60gの粘度が50Pa・sであり、水素の含有量が0.1mo1%であり、分子量が40×10である水素含有ポリシロキサンを添加し、均一に混合し、30min高速撹拌し、
(4)20gの20~30nmの疎水型ヒュームドシリカを添加し、均一に混合し、3本ロール機に移送し、寸法が<5μmになるように研磨し、
(5)撹拌釜に移送し、真空度が<0.1MPaである条件下で常温で2時間撹拌し、最後に加圧濾過を経て、粘度が200Pa・sである単一成分シリコーンゴム媒体を取得する。
【0037】
性能測定
【0038】
当該単一成分シリコーンゴム媒体の粘度は粘度計を介して測定され、粘度は200Pa・sである。稠度計(25℃、0.1mm)を用いて30日の稠度を測定し、その値は、それぞれ、276(初期値)であり、278(30日後の値)であり、材料は良好な保存安定性を示す。
【0039】
応用測定:図1図2に示すように、本実施例は、内径が10μmであるセラミックス針を用い、プリント速度が70mm/sである時に、良好なアスペクト比があるラインの幅をプリントすることができ、具体的な数値は、高は7μmで、幅は11μmであり、ショアA硬度計を用いて硬化した材料の硬度を測定し、その値は30である。
【0040】
実施例2:単一成分シリコーンゴム媒体の製造(粘度が500Pa・sである)
(1)100gの粘度が100Pa・sであり、ビニル基の含有量が5mol%であり、分子量が100×10であるメチルビニルポリシロキサン、0.5gのKarstedt白金触媒、30gのHO-Si(CHO[Si(CHO]Si(CH-OHを、撹拌釜に添加して均一に混合し、
(2)70℃に昇温し、100min反応させ、1gのプロパルギルアルコールを添加し、均一に混合し、50min反応させ、
(3)30℃に降温し、40gの粘度が100Pa・sであり、水素の含有量が0.5mo1%であり、分子量が70×10である水素含有ポリシロキサンを添加し、均一に混合し、60min高速撹拌し、
(4)30gの100nm二酸化チタンを添加し、均一に混合し、3本ロール機に移送し、寸法が<10μmになるように研磨し、
(5)撹拌釜に移送し、真空度が<0.1MPaである条件下で常温で2時間撹拌し、最後に加圧濾過を経て、粘度が500Pa・sである単一成分シリコーンゴム媒体を取得する。
【0041】
性能測定
【0042】
当該単一成分シリコーンゴム媒体の粘度は粘度計を介して測定され、粘度は500Pa・sである。稠度計(25℃、0.1mm)を用いて30日の稠度を測定し、その値は、それぞれ、178(初期値)であり、180(30日後の値)であり、材料は良好な保存安定性を示す。
【0043】
応用測定:図3図4に示すように、本実施例は、内径が50μmであるセラミックス針を用い、プリント速度が70mm/sである時に、良好なアスペクト比があるラインの幅をプリントすることができ、具体的な数値は、高は40μmで、幅は55μmであり、ショアA硬度計を用いて硬化した材料の硬度を測定し、その値は56である。
【0044】
実施例3:単一成分シリコーンゴム媒体の製造(粘度が1000Pa・sである)
(1)100gの粘度が500Pa・sであり、ビニル基の含有量が10mol%であり、分子量が70×10であるメチルフェニルビニルポリシロキサン、1gのKarstedt白金触媒、40gのジメチルシロキサン環状混合物(DMC)を、撹拌釜に添加して均一に混合し、
(2)80℃に昇温し、180min反応させ、4gの3-ブチン-1-オールを添加し、均一に混合し、180min反応させ、
(3)30℃に降温し、20gの粘度が500Pa・sであり、水素の含有量が1mo1%であり、分子量が100×10である水素含有ポリシロキサンを添加し、均一に混合し、60min高速撹拌し、
(4)40gの10~20nmカーボンブラックを添加し、均一に混合し、遊星ボールミルに移送し、寸法が<20μmになるように研磨し、
(5)撹拌釜に移送し、真空度が<0.1MPaである条件下で常温で2時間撹拌し、最後に加圧濾過を経て、粘度が1000Pa・sである単一成分シリコーンゴム媒体を取得する。
【0045】
性能測定
【0046】
当該単一成分シリコーンゴム媒体の粘度は粘度計を介して測定され、粘度は1000Pa・sである。稠度計(25℃、0.1mm)を用いて30日の稠度を測定し、その値は、それぞれ、120(初期値)であり、119(30日後の値)であり、材料は良好な保存安定性を示す。
【0047】
応用測定:図5図6に示すように、本実施例は、内径が100μmであるセラミックス針を用い、プリント速度が70mm/sである時に、良好なアスペクト比があるラインの幅をプリントすることができ、具体的な数値は、高は90μmで、幅は105μmであり、ショアA硬度計を用いて硬化した材料の硬度を測定し、その値は56である。
【0048】
比較例1:使用量は実施例1と同じであり、方法過程における異なる点は、
(1)100gの粘度が50Pa・sであり、ビニル基の含有量が0.05mol%であり、分子量が40×10であるビニルポリシロキサン、0.2gのKarstedt白金触媒、20gのヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、0.2gの1-エチニル-1-シクロヘキサノール、60gの粘度が50Pa・sであり、水素の含有量が0.1mol%であり、分子量が40×10である水素含有ポリシロキサン、20gの20~30nmの疎水型ヒュームドシリカを混合した後、3本ロール機に移送し、寸法が<5μmになるように研磨することと、
(2)撹拌釜に移送し、真空度が<0.1MPaである条件下で常温で2時間撹拌し、最後に加圧濾過を経て、粘度が200Pa・sである単一成分シリコーンゴム媒体を取得すること、である。
(3)加熱せず、全ての原料を均一に混合した後、3本ロール機に移送して研磨する。
【0049】
最終の材料の性能
【0050】
材料の粘度は、150Pa・sであり、稠度計(25℃、0.1mm)を用いて30日の稠度を測定し、その値は、それぞれ、308(初期値)であり、158(30日後の値)であり、材料を長時間にわたって放置し、硬度が徐々に大きくなり、保存安定性が低い。図7図8に示すように、本比較例は、内径が10μmであるセラミックス針を用い、プリント速度が70mm/sである時にプリントするラインの保形性が低く、具体的な数値は、高は4μmで、幅は12μmであり、ショアA硬度計を用いて硬化した材料の硬度を測定し、その値は16である。
【0051】
当該比較例1と実施例1の比較によれば、本解決手段は、まず触媒を用いて炭素間二重結合を含むポリシロキサンと粘着付与剤との架橋を誘導し、重合禁止剤を更に添加して得られた単一成分シリコーンゴム媒体の粘度がより高く、室温安定性がより高く、3Dプリントに応用されるラインの幅の比が更に良くなる。
【0052】
比較例2
【0053】
操作ステップは実施例1と同じであり、ステップ(1)の粘着付与剤であるヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)を除去する。
【0054】
最終の材料の性能
【0055】
材料の粘度は、80Pa・sであり、稠度計(25℃、0.1mm)を用いて30日の稠度を測定し、その値は、それぞれ、356(初期値)であり、268(30日後の値)であり、材料を長時間にわたって放置し、硬度が徐々に大きくなり、保存安定性が低い。図9から図10に示すように、本比較例は、内径が10μmであるセラミックス針を用い、プリント速度が70mm/sである時にプリントするラインの保形性が低く、具体的な数値は、高は2μmで、幅は16μmであり、ショアA硬度計を用いて硬化した材料の硬度を測定し、その値は8である。
【0056】
当該比較例2と実施例1の比較によれば、本解決手段に用いた粘着付与剤は、炭素間二重結合を含むポリシロキサンによる架橋を寄与し、ネットワーク状の架橋本体を形成することができ、更に単一成分シリコーンゴム媒体の粘度を向上させると共にその安定性を向上させ、また粘着付与剤の添加はプリントラインの幅に対しても非常に大きな影響を与える。
【0057】
比較例3
【0058】
操作ステップは実施例1と同じであり、ステップ(2)の重合禁止剤である1-エチニル-1-シクロヘキサノールを除去し、最終の材料の性能
【0059】
材料の粘度は、270Pa・sであり、稠度計(25℃、0.1mm)を用いて30日の稠度を測定し、その値は、それぞれ、246(初期値)であり、30min後硬度は140に達し、材料の保存安定性が低い。ショアA硬度計を用いて硬化した材料の硬度を測定し、その値は46である。
【0060】
比較例4
【0061】
操作ステップは実施例1と同じであり、ステップ(1)の白金触媒Karstedtを除去する。
【0062】
材料の粘度は、80Pa・sであり、稠度計(25℃、0.1mm)を用いて測定し、その値は、それぞれ、428(初期値)であり、430(30日後の値)、材料を長時間放置しても安定している。白金触媒がないため、材料を硬化させることができない。
【0063】
比較例5
(1)100gの粘度が50Pa・sであり、ビニル基の含有量が0.05mol%であり、分子量が40×10であるビニルポリシロキサンと0.2gのKarstedt白金触媒を、均一に混合し、
(2)3本ロール機に移送し、寸法が<5μmになるように研磨し、撹拌釜に移送し、真空度が<0.1MPaである条件下で常温で2時間撹拌し、最後に加圧濾過を経て、単一成分シリコーンゴムの成分Aを取得する。
(3)60gの粘度が50Pa・sであり、水素の含有量が0.1mo1%であり、分子量が40×10である水素含有ポリシロキサン、0.2gの1-エチニル-1-シクロヘキサノールと20gの20~30nmの疎水型ヒュームドシリカを、均一に混合し、
(4)3本ロール機に移送し、寸法が<5μmになるように研磨し、撹拌釜に移送し、真空度が<0.1MPaである条件下で常温で2時間撹拌し、最後に加圧濾過を経て、単一成分シリコーンゴムの成分Bを取得する。
【0064】
単一成分シリコーンゴムの成分Aと成分Bは1:1の割合で混合し、稠度計(25℃、0.1mm)を用いて稠度を測定し、その値は、それぞれ、296(初期値)であり、168(12h後の値)、材料の保存安定性が低い。図11から図12に示すように、本比較例は、内径が10μmであるセラミックス針を用い、プリント速度が70mm/sである時にプリントするラインの保形性が低く、具体的な数値は、高は5μmで、幅は14μmであり、ショアA硬度計を用いて硬化した材料の硬度を測定し、その値は24である。
【0065】
下記の表のとおり、以上の実施例と比較例の単一成分シリコーンゴム媒体の性能測定をまとめる。
【表1】
a:30分間保存した後、測定する。
b:12時間保存した後、測定する。
【0066】
この表によれば、本解決手段により提供される実施例1から実施例3までの二成分シリコーンゴム媒体材料の性能表現は良好であり、本解決手段により提供される製造方法は特に好適な効果がある。
【0067】
本発明は、上記好ましい実施形態に限定されるものではなく、本発明の啓示により、誰でも他の様々な形態の製品を取得することができるが、その形状又は構造上にいかなる変化をしても、本願又は近似する技術的解決手段と同じであれば、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】