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特表2024-523514抗CD40抗体、その抗原結合断片及び医薬用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】抗CD40抗体、その抗原結合断片及び医薬用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240621BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P37/06
A61P37/02
A61P25/00
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61K31/706
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579198
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 CN2022101780
(87)【国際公開番号】W WO2023274201
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110722124.0
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520392096
【氏名又は名称】上海盛迪医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SHENGDI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.1288 Haike Road, Zhangjiang Town, Pudong New District, Shanghai 201210, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】林 源
(72)【発明者】
【氏名】粟 ▲ルゥ▼
(72)【発明者】
【氏名】林 侃
(72)【発明者】
【氏名】廖 成
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB42
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA04
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA01
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
抗CD40抗体、その抗原結合断片と医薬用途、及び抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、並びに疾患を治療・予防する方法、特に自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含む抗CD40抗体又はその抗原結合断片であって、
a-1)前記VHは配列番号67又は68の何れか1つで示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号63~66の何れか1つで示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
a-2)前記VHは配列番号1で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号2で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
a-3)前記VHは配列番号3で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号4で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
a-4)前記VHは配列番号5で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号6で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-1)前記VHは配列番号81又は82の何れか1つで示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号77~80の何れか1つで示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-2)前記VHは配列番号7で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号8で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-3)前記VHは配列番号9で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号10で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-4)前記VHは配列番号11で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号12で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-5)前記VHは配列番号13で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号14で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-6)前記VHは配列番号15で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号16で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-7)前記VHは配列番号17で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号18で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
c)前記VHは配列番号19で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号20で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、或いは
d)前記VHは配列番号21で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号22で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
ここで、前記CDRはKabat、IMGT、Chothia、AbM又はContact番号付けシステムに従って定義され、好ましくはKabat番号付けシステムによって定義される、
抗CD40抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
1)それぞれ配列番号23、24、25で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号74、75、76で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、
2)それぞれ配列番号88、89、90で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号91、37、92で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、
3)それぞれ配列番号51、52、53で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号54、55、56で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、或いは
4)それぞれ配列番号57、58、59で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号60、61、62で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、を含み、
好ましくは、1)中の抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、
1-1)それぞれ配列番号23、24、25で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号29、30、73で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、
1-2)それぞれ配列番号23、24、25で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号26、27、28で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、
1-3)それぞれ配列番号23、24、25で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号29、27、32で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、を含み、
好ましくは、2)中の抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、
2-1)それぞれ配列番号39、47、49で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号87、50、48で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、
2-2)それぞれ配列番号33、34、35で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号36、37、38で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、
2-3)それぞれ配列番号39、40、41で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号42、37、43で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、
2-4)それぞれ配列番号39、44、35で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号45、37、46で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、
2-5)それぞれ配列番号39、47、41で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、それぞれ配列番号36、37、48で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3と、を含み、
より好ましくは、1-1)中の抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、
それぞれ配列番号23、24、25で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、配列番号29で示される配列を含む軽鎖LCDR1と、配列番号30で示される配列を含む軽鎖LCDR2と、配列番号69~72の何れか1つで示される配列を含む軽鎖LCDR3と、を含み、
より好ましくは、2-1)中の抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、
それぞれ配列番号39、47、49で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、配列番号83~86の何れか1つで示される配列を含む軽鎖LCDR1と、配列番号50で示される配列を含む軽鎖LCDR2と、配列番号48で示される配列を含む軽鎖LCDR3と、を含む、
請求項1に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
組換え抗体、ウサギ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体又はその抗原結合断片である、請求項1又は2に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記ヒト化抗体又はその抗原結合断片の重鎖フレームワーク領域はIGHV2-26*01、IGHV4-30-4*02、IGHV4-4*08、IGHJ1*01に由来し、且つ/又は、軽鎖フレームワーク領域はIGkV1-13*02、IGkV1-9*01、IGkV1-6*01、IGKJ4*01に由来し、
好ましくは、重鎖フレームワーク領域のFR1~FR3はIGHV2-26*01、IGHV4-30-4*02、IGHV4-4*08に由来し、重鎖フレームワーク領域のFR4はIGHJ1*01に由来し、軽鎖フレームワーク領域のFR1~FR3はIGkV1-13*02、IGkV1-9*01、IGkV1-6*01に由来し、軽鎖フレームワーク領域のFR4はIGKJ4*01に由来する、
請求項3に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
A-1)VHのアミノ酸配列は配列番号67で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号63~66の何れか1つで示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
A-2)VHのアミノ酸配列は配列番号68で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号63~66の何れか1つで示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
A-3)VHのアミノ酸配列は配列番号1で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号2で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
A-4)VHのアミノ酸配列は配列番号3で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号4で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
A-5)VHのアミノ酸配列は配列番号5で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号6で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-1)VHのアミノ酸配列は配列番号81で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号77~80の何れか1つで示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-2)VHのアミノ酸配列は配列番号82で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号77~80の何れか1つで示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-3)VHのアミノ酸配列は配列番号7で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号8で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-4)VHのアミノ酸配列は配列番号9で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号10で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-5)VHのアミノ酸配列は配列番号11で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号12で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-6)VHのアミノ酸配列は配列番号13で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号14で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-7)VHのアミノ酸配列は配列番号15で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号16で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-8)VHのアミノ酸配列は配列番号17で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号18で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
C)VHのアミノ酸配列は配列番号19で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号20で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、或いは
D)VHのアミノ酸配列は配列番号21で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号22で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有する、
請求項1~4の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
IgG抗体のFc領域を更に含み、好ましくは、前記IgG抗体はIgG1、IgG2又はIgG4抗体であり、より好ましくは、前記Fc領域はN297A変異を含むIgG1のFc領域であり、又はL234A、L235A、M252Y、S254T、T256Eの何れか1つ又は複数の変異を有するIgG1のFc領域である、前記請求項の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗原結合断片はscFv、Fv、Fab又はFab’断片である、前記請求項の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
重鎖全長のアミノ酸配列は配列番号93若しくは97で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖全長のアミノ酸配列は配列番号94で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、或いは
重鎖全長のアミノ酸配列は配列番号95若しくは98で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖全長のアミノ酸配列は配列番号96で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有する、
前記請求項の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
i)10 nM以下のKでヒトCD40に結合することと、
ii)明らかなアゴニスト活性がないことと
の少なくとも一項を有する、
請求項1~8の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離したポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項12】
請求項10に記載のポリヌクレオチド又は請求項11に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項13】
請求項1~9の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含む、CD40結合分子。
【請求項14】
請求項1~9の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片と、少なくとも1種の薬用可能な賦形剤、希釈剤又はベクターとを含む、医薬組成物。
【請求項15】
タクロリムスを更に含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
自己免疫疾患を治療する方法であって、
必要とする対象に治療有効量の請求項1~9の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片、或いは請求項14に記載の医薬組成物を投与することを含み、
前記自己免疫疾患は、シェーグレン症候群、多発性硬化症又はエリテマトーデスが好ましく、全身性エリテマトーデスがより好ましい、
方法。
【請求項17】
自己免疫疾患を治療する薬剤の調製に用いられる、請求項1~9の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片の用途であって、
前記自己免疫疾患は、シェーグレン症候群、多発性硬化症又はエリテマトーデスが好ましく、全身性エリテマトーデスがより好ましい、
用途。
【請求項18】
移植片対宿主病を治療するか又は移植拒絶反応を緩和する方法であって、
必要とする対象に治療有効量の請求項1~9の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片、或いは請求項14~15中の何れか一項に記載の医薬組成物を投与することを含み、
前記移植は、固形臓器移植が好ましく、肝、腎、心臓、肺の移植がより好ましい、
方法。
【請求項19】
請求項1~9の何れか一項に記載の抗CD40抗体又はその抗原結合断片をタクロリムスと組み合わせて、移植片対宿主病を治療するか又は移植拒絶反応を緩和する薬剤の調製に用いる用途であって、
前記移植は、固形臓器移植が好ましく、肝、腎、心臓、肺の移植がより好ましい、
用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年6月28日に提出された出願番号が202110722124.0である中国特許出願の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、バイオ医薬分野、特にCD40/CD40Lシグナル伝達経路に関連する疾患を治療又は介入する分野に関する。具体的には、本開示はCD40抗体、その抗原結合断片及びその医薬組成物、並びに自己免疫疾患を治療するための方法及び関連する製薬用途に関する。
【背景技術】
【0003】
CD40は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーに属し、細胞膜表面に位置するI型膜貫通糖タンパク質であり、分子量が約48 kDaで、免疫系において重要な役割を果たしている。CD40は、B細胞、樹状細胞、単核細胞とマクロファージなどの種々の免疫細胞に発現され、血小板にも発現され、条件によっては、好酸球と実質細胞に発現され得る。CD40の天然リガンドはCD154又はCD40Lであり、活性化したCD4+T細胞、NK細胞、血小板とB細胞を含む様々な細胞種類において発現を誘導可能なII型膜貫通タンパク質である(Pucino V et al.,2020)。
【0004】
CD40LはCD40に結合した後、TRAFを動員し、NF-kB、JNKとMAPK経路を介して下流シグナル伝達を媒介し、免疫細胞の活性化と増殖、炎症性因子とケモカインの分泌などを含む様々な細胞種類依存的活性化結果を果たすことができる(Vonderheide RH et al.,2007)。例えば、前記経路を介するシグナル伝達は、適応免疫系の幾つかの重要なエフェクター機能に必要であり、原発性T細胞依存性抗体応答(TDAR)、B細胞増殖、胚中心(GC)形成、免疫グロブリン(Ig)のアイソタイプの変換、体細胞変異、及び記憶B細胞とプラズマ細胞の分化が含まれる(Foy TM et al.,1993;Foy TM et al.,1994)。B細胞に影響を及ぼす以外、CD40経路の活性化は、DCの成熟と機能及び単核細胞とマクロファージの生存とサイトカインの分泌に重要なシグナルを提供する(Caux,C et al.,1994)。
【0005】
CD40シグナル伝達経路の機能調節障害は、自己免疫疾患をもたらすことができる(Karnell JL et al.,2018)。CD40-CD40Lシグナル伝達経路は、炎症組織における実質細胞の機能に関与することが見出された:腎、唾液腺及び皮膚などの部位に由来し、ケモカインを分泌できる活性化した上皮細胞はCD40に応答することが可能である。更に、CD40又はCD40Lは、アテローム性動脈硬化患者及び前臨床アテローム性動脈硬化モデルの病変部位における発現レベルが何れも上昇される。CD40は、マトリックス分解酵素の発現を刺激・誘導し、アテローム性動脈硬化の病原性に関連する細胞種類、例えば、内皮細胞、平滑筋細胞とマクロファージなどにおける組織因子の発現を促進することができる(Michel NA et al.、2017)。CD40経路は、IL-1、IL-6とIL-8などの炎症性因子、及び細胞間接着分子-1(ICAM-1)、E-セレクチン(E-selectin)と血管細胞接着分子(VCAM)などの接着分子の生成をアップレギュレートする。CD40/CD40Lの相互作用は、更に移植拒絶の予防に使用され、アカゲザルの腎臓同種移植研究にキメラ抗CD40拮抗薬ch5D12を使用することにより、CD40の拮抗作用は、病状の改善に十分であるとともに、平均生存期間を100日間以上延長することが明らかになる。ch5D12を抗CD86抗体と組み合わせて、同種移植研究の開始時のみに投与し、その後シクロスポリンで延長治療を行う場合、4年を超える平均生存期間が実現され、これにより、この組み合わせは、免疫寛容を潜在的に誘導し得ることが示されている(Haanstra et al.,2005)。
【0006】
多くの前臨床研究により、T細胞依存性免疫応答の促進におけるCD40/CD40Lの相互作用の重要な役割の証拠が提供されている。従って、CD40シグナル伝達の遮断は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの疾患にいて病原性自己免疫応答を阻害するために適切且つ必要な治療戦略であると考えられている。現在、そのような疾患を治療するために何れの抗CD40抗体も承認されていない。従って、この分野では、CD40-CD40Lの相互作用に介入し、CD40シグナル伝達を遮断するために使用可能な治療剤が依然として切望されている。本開示は、そのような治療用ヒト化抗CD40抗体を提供し、それは、CD40に特異的に結合可能であり、CD40シグナル伝達経路関連疾患、特に自己免疫疾患への介入又は治療のための優れた抗原結合特異性、親和性、薬学動態と薬力学的特性を有する。また、治療用ヒト化抗CD40抗体とタクロリムスを組み合わせて移植片対宿主病の治療又は移植拒絶反応の緩和に用いることを提供する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、ポリヌクレオチドをコードする抗CD40抗体とその抗原結合断片、上記ポリヌクレオチドを含むベクター、宿主細胞、上記抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、それらの自己免疫疾患(移植片対宿主病、移植拒絶を含む)への治療又は介入のための方法及び関連する製薬用途を提供する。
【0008】
抗CD40抗体、その抗原結合断片
一態様によれば、幾つかの実施形態において、本開示は、
配列番号23で示される配列を含む重鎖HCDR1と、
配列番号24で示される配列を含む重鎖HCDR2と、
配列番号25で示される配列を含む重鎖HCDR3と、
QXSEDISSNLX(配列番号74)で示される配列を含み、そのうち、XがA又はSから選ばれ、XがA又はSから選ばれる、軽鎖LCDR1と、
ASNLAS(配列番号75)で示される配列を含み、そのうち、XがA又はPから選ばれる、軽鎖LCDR2と、
QGXYWXSXFGX10(配列番号76)で示される配列を含み、そのうち、XがA又はGから選ばれ、XがS又はTから選ばれ、XがS又はGから選ばれ、XがT又はSから選ばれ、XがN又はYから選ばれ、XがN、S、T又はQから選ばれ、X10がV又はGから選ばれる、軽鎖LCDR3と、
を含む、抗CD40抗体及びその抗原結合断片を提供する。
【0009】
幾つかの具体的な実施形態において、
それぞれ配列番号23、24、25で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号26、27、28で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3、
それぞれ配列番号23、24、25で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3、及び/又は、配列番号29で示される配列を含む軽鎖LCDR1、配列番号30で示される配列を含む軽鎖LCDR2、QGGYWTSTSNFGX10(配列番号73)で示される配列を含み、そのうち、XがN、S、T又はQから選ばれ、X10がV又はGから選ばれる軽鎖LCDR3、
それぞれ配列番号23、24、25で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号29、27、32で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3、
を含む、抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0010】
幾つかの具体的な実施形態において、
それぞれ配列番号23、24、25で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、配列番号29で示される配列を含む軽鎖LCDR1と、配列番号30で示される配列を含む軽鎖LCDR2と、配列番号69~72の何れか1つで示される配列を含む軽鎖LCDR3と、
を含む、抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0011】
幾つかの具体的な実施形態において、本開示は、上記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3の何れか1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む、抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0012】
別の態様によれば、幾つかの実施形態において、本開示は、
SYGVX11(配列番号88)で示される配列を含み、そのうち、X11がS又はTから選ばれる重鎖HCDR1と、
12IX13SX14GX1516YYAX17WAX18S(配列番号89)で示される配列を含み、そのうち、X12がA又はGから選ばれ、X13がG又はAから選ばれ、X14がT、S又はDから選ばれ、X15がT又はSから選ばれ、X16がT又はAから選ばれ、X17がS、Nから選ばれ、X18がK又はRから選ばれる重鎖HCDR2と、
GGITX19YAX20(配列番号90)で示される配列を含み、そのうち、X19がA又はVから選ばれ、X20がI又はMから選ばれる重鎖HCDR3と、
QASX2122IX232425LA(配列番号91)で示される配列を含み、そのうち、X21がQ又はEから選ばれ、X22がS又はDから選ばれ、X23がS又はTから選ばれ、X24がN、Q、S又はTから選ばれ、X25がV又はGから選ばれる軽鎖LCDR1と、
配列番号37で示される配列を含む軽鎖LCDR2と、
QSYX2627SX2829TX30(配列番号92)で示される配列を含み、そのうち、X26がF又はYから選ばれ、X27がS、D又はNから選ばれ、X28がS又はFから選ばれ、X29がS、T又はYから選ばれ、X30がV又はIから選ばれる軽鎖LCDR3と、
を含む、抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0013】
幾つかの具体的な実施形態において、
それぞれ配列番号33、34、35で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号36、37、38で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3、
それぞれ配列番号39、40、41で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号42、37、43で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3、
それぞれ配列番号39、44、35で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号45、37、46で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3、
それぞれ配列番号39、47、41で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号36、37、48で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3、
それぞれ配列番号39、47、49で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3、及び/又は、QASQSISX2425LA(配列番号87)で示される配列を含み、そのうち、X24がN、Q、S又はTから選ばれ、X25がV又はGから選ばれる軽鎖LCDR1、配列番号50で示される配列を含む軽鎖LCDR2、配列番号48で示される配列を含む軽鎖LCDR3、
を含む、抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0014】
幾つかの具体的な実施形態において、
それぞれ配列番号39、47、49で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3と、配列番号83~86の何れか1つで示される配列を含む軽鎖LCDR1と、それぞれ配列番号50、48で示される配列を含む軽鎖LCDR2及び軽鎖LCDR3と、
を含む、抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0015】
幾つかの具体的な実施形態において、本開示は、上記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3の何れか1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む、抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0016】
別の態様によれば、幾つかの実施形態において、本開示は、それぞれ配列番号51、52、53で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号54、55、56で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3、を含む抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0017】
幾つかの実施形態において、本開示は、それぞれ配列番号57、58、59で示される配列を含む重鎖HCDR1、HCDR2、HCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号60、61、62で示される配列を含む軽鎖LCDR1、LCDR2、LCDR3、を含む抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0018】
幾つかの具体的な実施形態において、本開示は、上記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3の何れか1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む、抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0019】
別の態様において、本開示は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含み、そのうち、
a-1)上記VHは配列番号1で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号2で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
a-2)上記VHは配列番号3で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号4で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
a-3)上記VHは配列番号5で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号6で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
a-4)上記VHは配列番号67又は68の何れか1つで示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号63~66の何れか1つで示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-1)上記VHは配列番号7で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号8で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-2)上記VHは配列番号9で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号10で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-3)上記VHは配列番号11で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号12で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-4)上記VHは配列番号13で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号14で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-5)上記VHは配列番号15で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号16で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-6)上記VHは配列番号17で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号18で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
b-7)上記VHは配列番号81又は82の何れか1つで示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号77~80の何れか1つで示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
c)上記VHは配列番号19で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記VLは配列番号20で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、或いは
d)上記VHは配列番号21で示されるVH中のHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、上記VLは配列番号22で示されるVL中のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
そのうち、上記CDRは、Kabat、IMGT、Chothia、AbM又はContact番号付けシステムによって定義される、抗CD40抗体又はその抗原結合断片を提供する。幾つかの具体的な実施形態において、CDRは、Kabat番号付けシステムによって定義される。
【0020】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片は組換え抗体である。
【0021】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、ウサギ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体又はその抗原結合断片である。
【0022】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化抗体である時に、重鎖フレームワーク領域がIGHV2-26*01、IGHV4-30-4*02、IGHV4-4*08、IGHJ1*01に由来し、且つ/又は、軽鎖フレームワーク領域がIGkV1-13*02、IGkV1-9*01、IGkV1-6*01、IGKJ4*01に由来する。例えば、重鎖フレームワーク領域のFR1~FR3はIGHV2-26*01、IGHV4-30-4*02、IGHV4-4*08、重鎖フレームワーク領域のFR4がIGHJ1*01に由来し、軽鎖フレームワーク領域のFR1~FR3はIGkV1-13*02、IGkV1-9*01、IGkV1-6*01、軽鎖フレームワーク領域のFR4がIGKJ4*01に由来する。
【0023】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片はVHとVLを含み、そのうち、
A-1)VHのアミノ酸配列は配列番号1で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号2で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
A-2)VHのアミノ酸配列は配列番号3で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号4で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
A-3)VHのアミノ酸配列は配列番号5で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号6で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
A-4)VHのアミノ酸配列は配列番号67で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号63~66の何れか1つで示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
A-5)VHのアミノ酸配列は配列番号68で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号63~66の何れか1つで示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-1)VHのアミノ酸配列は配列番号7で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号8で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-2)VHのアミノ酸配列は配列番号9で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号10で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-3)VHのアミノ酸配列は配列番号11で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号12で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-4)VHのアミノ酸配列は配列番号13で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号14で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-5)VHのアミノ酸配列は配列番号15で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号16で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-6)VHのアミノ酸配列は配列番号17で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号18で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-7)VHのアミノ酸配列は配列番号81で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号77~80の何れか1つで示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
B-8)VHのアミノ酸配列は配列番号82で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号77~80の何れか1つで示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、
C)VHのアミノ酸配列は配列番号19で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号20で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、或いは
D)VHのアミノ酸配列は配列番号21で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、VLのアミノ酸配列は配列番号22で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有する。
【0024】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、IgG抗体又はその抗原結合断片であり、例えば、IgG1、IgG2、IgG2、IgG4抗体又はその抗原結合断片であり、例えばN297A変異を有するIgG1抗体又はその抗原結合断片であり、例えばL234A、L235A、M252Y、S254TとT256Eのうちの1つ若しくはそれらの任意の組み合わせを有するIgG1抗体又はその抗原結合断片である。
【0025】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体の抗原結合断片は、Fab、Fv、sFv、Fab’、F(ab’)、線形抗体、単鎖抗体、scFv、sdAb、sdFv、ナノ抗体、ペプチド抗体peptibody、ドメイン抗体及び多重特異性抗体(二重特異性抗体、diabody、triabodyとtetrabody、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFv)であり、例えば、scFv、Fv、Fab又はFab’断片である。
【0026】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体の抗原結合断片の重鎖全長のアミノ酸配列は配列番号93若しくは97で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖全長のアミノ酸配列は配列番号94で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、或いは
重鎖全長のアミノ酸配列は配列番号95若しくは98で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖全長のアミノ酸配列は配列番号96で示されるか又はそれと少なくとも90%の同一性を有する。
【0027】
上述したような「少なくとも90%の同一性」は、例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域は、0~10個(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個)のアミノ酸変化を有し、軽鎖可変領域は0~10個(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個)のアミノ酸変化を有する。幾つかの具体的な実施形態において、上記アミノ酸変化は、保存的取替、置換若しくは修飾、及び/又は機能に影響を及ぼしない欠失、追加である。
【0029】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又は抗原結合断片と同じエピトープに結合するか又は競合して結合する抗CD40抗体又は抗原結合断片を提供する。
【0030】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片のCD40(例えば、ヒトCD40)との結合を遮断する抗CD40抗体又は抗原結合断片を提供する。
【0031】
幾つかの実施形態において、CD40(例えば、ヒトCD40)との結合が上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片によって遮断される抗CD40抗体又は抗原結合断片を提供する。
【0032】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又は抗原結合断片は、
(i)10 nM以下のKでヒトCD40に結合することと、
(ii)明らかなアゴニスト活性がないことと
の少なくとも一項を有する。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又は抗原結合断片は、CD40リガンドとCD40の結合を少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%低減させる。
【0034】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又は抗原結合断片は、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M以下のKでヒトCD40に結合する。
【0035】
幾つかの実施形態において、上記の何れかの抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含むCD40結合分子を提供する。
【0036】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含む複合体を提供する。例えば、上記複合体は、抗体薬物複合体である。
【0037】
ポリヌクレオチド及びベクター
本開示は、本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離したポリヌクレオチドを提供する。上記単離したポリヌクレオチドは、RNA、DNA又はcDNAであってもよい。本開示の幾つかの実施形態によれば、本開示のポリヌクレオチドは単離したポリヌクレオチドである。
【0038】
本開示は、上記の本開示の何れかの抗CD40抗体又はその抗原結合断片をコードするDNA分子を更に提供する。
【0039】
本開示のポリヌクレオチドは、ベクターの形態であってもよく、ベクター中に存在してもよく、及び/又はベクターの一部であってもよく、当該ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、YAC又はウイルスベクターである。ベクターは、特に発現ベクター、即ち、VEGF結合分子又はその複合体のインビトロ及び/若しくはインビボで(即ち、適切な宿主細胞、宿主生物、及び/若しくは発現系で)の発現を提供可能なベクターであってもよい。当該発現ベクターは通常、少なくとも1つの本開示のポリヌクレオチドを含み、それは、1つ又は複数の適切な発現調節要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)に操作可能に連結される。特定の宿主における発現に対して上記要素及びその配列を選択することは、当業者の常識である。本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片の発現に有用又は必要な調節要素及び他の要素は、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、組み込み因子、選択マーカー、リーダー配列、レポーター遺伝子である。
【0040】
本開示のポリヌクレオチドは、本開示のポリペプチドのアミノ酸配列についての情報に基づき、既知の方法(例えば、自動DNA合成及び/又は組換えDNA技術)により調製若しくは取得されてもよく、及び/又は適切な天然源から単離されてもよい。
【0041】
宿主細胞
本開示は、本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片若しくは複合体、或いは本開示のポリヌクレオチド又はベクターを含む組換え宿主細胞を提供する。幾つかの実施形態において、宿主細胞は細菌細胞、真菌細胞又は哺乳動物細胞である。
【0042】
細菌細胞は、例えば、グラム陰性菌株(例えば、大腸菌(Escherichia coli)菌株、プロテウス属(Proteus)菌株及びシュードモナス属(Pseudomonas)菌株)とグラム陽性菌株(例えば、バチルス属(Bacillus)菌株、ストレプトミセス属(Streptomyces)菌株、ブドウ球菌属(Staphylococcus)菌株及びラクトコッカス属(Lactococcus)菌株)の細胞を含む。
【0043】
真菌細胞は、例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)、アカパンカビ属(Neurospora)及びアスペルギルス属(Aspergillus)の種の細胞を含み、又はサッカロミセス属(Saccharomyces)(例えば、サッカロミセスセレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae))、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)(例えば、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、ピキア属(Pichia)(例えば、ピキアパストリス(Pichia pastoris)及びピキアメタノリカ(Pichia methanolica))及びハンゼヌラ属(Hansenula)の種の細胞を含む。
【0044】
哺乳動物細胞は、例えば、HEK293細胞、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞などを含む。
【0045】
しかしながら、本開示は、両生類細胞、昆虫細胞、植物細胞及びこの分野における異種タンパク質を発現するための任意の他の細胞を使用してもよい。
【0046】
一実施形態において、本開示に使用される宿主細胞は、完成した植物又は動物個体に発達することができない。
【0047】
調製方法
本開示は、本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片を調製する方法を提供し、それは、
- 本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片の発現を可能にする条件下で、本開示の宿主細胞を培養することと、
- 培養物から、宿主細胞によって発現された抗CD40抗体又はその抗原結合断片を回収することと、を含み、且つ
- 任意選択的に、本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片を更に精製及び/又は修飾することを含む。
【0048】
本開示は、薬物を本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片に複合又は修飾することを含む、複合体の調製方法を提供する。
【0049】
本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、上記のような細胞において細胞内方式で(例えば、細胞質において、ペリプラズムにおいて、又は封入体において)産生され、次に宿主細胞から単離され、そして任意選択的に更に精製されてもよく、或いは、細胞外方式で(例えば、宿主細胞を培養する培地において)産生され、次に培地から単離され、そして任意選択的に更に精製されてもよい。例えば、調整された緩衝液を含むA又はG Sepharose FFカラムで精製し、非特異的に結合した成分を洗い流し、更にPH勾配法により、結合した抗体を溶出し、SDS-PAGEにより検出して収集する。選択的に、通常の方法によりろ過して濃縮する。可溶性の混合物及び多量体は、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに-70℃などで冷凍し、又は凍結乾燥する。
【0050】
組換えてポリペプチドを産生するための方法及び試薬、例えば、特定の好適な発現ベクター、形質転換又はトランスフェクション方法、選択マーカー、タンパク質発現を誘導する方法、培養条件などは、この分野において既知のものである。同様に、本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片若しくは複合体を製造する方法に適用されるタンパク質の単離・精製技術は、当業者に周知のものである。
【0051】
組成物
本開示は、上記の抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を提供する。例えば、治療若しくは緩和有効量の上記のような抗CD40抗体又はその抗原結合断片と、少なくとも1種の薬用可能な賦形剤、希釈剤又はベクターとを含む医薬組成物を提供する。
【0052】
幾つかの具体的な実施形態において、上記医薬組成物の単位用量には、0.01~99 wt%の抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含んでもよく、或いは、医薬組成物の単位用量における抗CD40抗体又はその抗原結合断片の含有量は0.1~2000 mgであり、幾つかの具体的な実施形態では1~1000 mgである。
【0053】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片と、1種若しくは複数種の別の免疫抑制剤との組み合わせ又は組成物を提供する。上記組成物は、例えば、医薬組成物である。選択的に、上記医薬組成物は、薬学可能な賦形剤、希釈剤又はベクターを更に含んでもよい。
【0054】
本開示の一実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片、タクロリムス、及び薬学可能な賦形剤、希釈剤又はベクターを含む医薬組成物を提供する。
【0055】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含む製品を提供する。選択的に、製品は、容器及びラベルを含む。容器は、例えば、バイアル、注射器及び試験管である。容器は、病状の治療に有効な組成物を収容する。容器における又は容器につながるラベルは、上記組成物が選択された病状の治療に使用されることを示す。組成物には、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片が含まれている。上記製品は、疾患の治療に有効なタクロリムスを収容する第2の容器を更に含んでもよい。
【0056】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片及びタクロリムスを含む製品を提供する。
【0057】
治療方法及び製薬用途
本開示は、疾患若しくは病状の治療・介入・予防・診断に用いられる上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片の方法を提供する。
【0058】
具体的に、幾つかの実施形態において、本開示は、自己免疫疾患、移植片対宿主病を治療若しくは緩和するか又は移植拒絶反応を緩和するための薬剤の調製における、本開示によって記載される抗CD40抗体又はその抗原結合断片の用途を提供する。
【0059】
更に、幾つかの実施形態において、本開示は、自己免疫疾患、移植片対宿主病を治療若しくは緩和するか又は移植拒絶反応を緩和するための薬剤の調製における、本開示によって記載される抗CD40抗体又はその抗原結合断片と1種若しくは複数種の他の免疫抑制剤との組み合わせの用途を提供する。
【0060】
本開示の実施形態において、本開示によって記載される抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、1種又は複数種の他の免疫抑制剤と個別に、連続的に、又は同時に投与することができる。
【0061】
本開示の実施形態において、本開示によって記載される抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、1種又は複数種の他の免疫抑制剤の前に、後に又は同時に投与することができる。
【0062】
具体的に、本開示は、自己免疫疾患、移植片対宿主病を治療若しくは緩和するか又は移植拒絶反応を緩和するための薬剤の調製における、本開示によって記載される抗CD40抗体又はその抗原結合断片とタクロリムスとの組み合わせの用途を提供する。幾つかの実施形態において、移植片対宿主病、臓器移植拒絶を改善又は治療する方法及び関連する製薬用途を提供し、対象に改善又は治療有効量の上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片或いはその医薬組成物を投与することを含む。
【0063】
幾つかの実施形態において、自己免疫性疾患、炎性疾患を改善又は治療する方法及び関連する製薬用途を提供し、対象に改善又は治療有効量の上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片或いはその医薬組成物を投与することを含む。
【0064】
幾つかの実施形態において、CD40関連障害疾患を治療する方法及び関連する製薬用途を提供し、幾つかの実施形態において、CD40関連障害細胞の成長又は分化を阻害する方法及び関連する製薬用途を提供し、幾つかの実施形態において、ヒトCD40抗原を発現する細胞の成長及び/又は分化を阻害する方法及び関連する製薬用途を提供し、幾つかの実施形態において、対象におけるB細胞による抗体の産生を阻害する方法及び関連する製薬用途を提供し、幾つかの実施形態において、免疫障害疾患を治療する方法及び関連する製薬用途を提供する。上記方法は、何れも、対象又は細胞に治療若しくは阻害有効量の上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片或いはその医薬組成物を投与することを含む。
【0065】
幾つかの実施形態において、末梢B細胞の枯渇を誘導する方法及び関連する製薬用途を提供し、対象に誘導有効量の上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片或いはその医薬組成物を投与することを含む。
【0066】
幾つかの実施形態において、疾患又は病状を治療・緩和する方法及び関連する製薬用途を提供し、必要とする対象に有効量の上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片を投与することを含み、上記疾患又は病状はCD40に関連してもしなくてもよく、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、自己免疫性脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎)、内分泌性眼疾患、ブドウ膜網膜炎、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、グレーブス病、糸球体腎炎、自己免疫性肝疾患、炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性結腸炎)、過敏症、アナフィラキシー反応、シェーグレン症候群、1型糖尿病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、線維筋痛症、多発性筋炎、皮膚筋炎、炎症性筋炎、多発性内分泌不全、シュミット症候群(Schmidt’s syndrome)、自己免疫性ブドウ膜炎、アジソン病、副腎炎、甲状腺炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、悪性貧血、胃萎縮、慢性肝炎、ループス肝炎、アテローム性動脈硬化症、亜急性皮膚エリテマトーデス、副甲状腺機能低下症、ドレスラー症候群(Dressler’s syndrome)、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、疱疹状皮膚炎、円形脱毛症(alopecia arcata)、類天疱瘡、強皮症、全身性進行性硬化症、CREST症候群(石灰沈着、レイノー現象(Raynaud’s phenomenon)、食道蠕動障害、手指硬化症と毛細血管拡張症)、男性と女性の自己免疫性不妊症、強直性脊椎炎(ankylosingspondolytis)、潰瘍性結腸炎、混合性結合組織病、結節性多発動脈炎、全身性壊死性血管炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群(Good pasture’s syndrome)、シャーガス病(Chagas’disease)、サルコイドーシス、リウマチ熱、喘息、反復流産、抗リン脂質症候群、農夫肺、多形性紅斑、心術後症候群、クッシング症候群(Cushing’s syndrome)、自己免疫性慢性活動性肝炎、鳥飼育者肺、中毒性表皮壊死症、アルポート症候群(Alport’s syndrome)、肺胞炎、アレルギー性肺胞炎、線維化性肺胞炎、間質性肺疾患、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、輸血反応、高安動脈炎(Takayasu’s arteritis)、リウマチ性多発筋痛、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨細胞動脈炎、回虫症、アスペルギルス症、サムプター症候群(Sampter’s syndrome)、湿疹、リンパ腫様肉芽腫症、ベーチェット病(Behcet’s disease)、カプラン症候群(Caplan’s syndrome)、川崎病(Kawasaki’sdisease)、デング熱、脳脊髄炎、心内膜炎、心内膜心筋線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、乾癬、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シャルマン症候群(Shulman’s syndrome)、フェルティ症候群(Felty’s syndrome)、糸状虫症、毛様体炎、慢性毛様体炎、異色性毛様体炎、フックス毛様体炎(Fuch’s cyclitis)、IgA腎症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(Henoch-Schonlein purpura)、移植片対宿主病、移植拒絶反応、心筋症、イートン・ランバート症候群(Eaton-Lambert syndrome)、再発性多発性軟骨炎、クリオグロブリン血症、ワルデンストレームマクログロブリン血症、エバンス症候群(Evan’s syndrome)、急性呼吸促迫症候群、肺炎症、骨粗鬆症、遅延型過敏反応及び自己免疫性腺機能不全を含む。例えば、シェーグレン症候群、多発性硬化症及び全身性エリテマトーデスである。
【0067】
幾つかの実施形態において、Bリンパ球(例えば、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、関節リウマチ及び1型糖尿病)、Th1リンパ球(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、橋本病、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核症又は移植片対宿主病)、又はTh2リンパ球(例えば、アトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス、アトピー性喘息、鼻結膜炎、アレルギー性鼻炎、オーメン症候群(Omenn’s syndrome)、全身性硬化症又は慢性移植片対宿主病)に関連する疾患を治療する方法及び関連する製薬用途を提供し、必要とする対象に有効量の上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。
【0068】
幾つかの実施形態において、腫瘍又は癌を治療する方法及び関連する製薬用途を提供し、必要とする対象に有効量の上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片を投与することを含み、上記腫瘍又は癌は、CD40の発現に関連してもしなくてもよい。
【0069】
幾つかの実施形態において、移植片対宿主病又は移植拒絶反応を治療又は緩和する方法を提供し、必要とする対象に上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片及びタクロリムスを投与することを含む。
【0070】
幾つかの実施形態において、移植片対宿主病又は移植拒絶反応を治療又は緩和する薬剤の調製における上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片の用途を提供し、それはタクロリムスとの併用を含む。幾つかの実施形態において、タクロリムスの、移植片対宿主病又は移植拒絶反応を治療又は緩和する薬剤の調製に用いられる用途を提供し、それは上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片との併用を含む。
【0071】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片とタクロリムスを組み合わせて移植片対宿主病又は移植拒絶反応の治療又は緩和に用いる方法、及び組み合わせて移植片対宿主病又は移植拒絶反応を治療又は緩和する薬剤の調製に用いる用途を提供する。
【0072】
幾つかの実施形態において、上記移植は、固形臓器移植、例えば、腎臓移植、肝臓移植、心臓移植、肺移植、膵臓移植、小腸移植又は複合組織移植である。
【0073】
幾つかの実施形態において、上記移植は、同種細胞、異種細胞、同種組織、異種組織、同種臓器及び異種臓器からなる群より選ばれる1つを移植することを意味する。
【0074】
幾つかの実施形態において、上記抗CD40抗体又はその抗原結合断片は、移植レシピエントの組織移植片に基づく拒絶反応を阻害又は逆転し、或いは移植レシピエントに移植した組織の機能を延長又は維持し、或いは移植レシピエント中の損傷移植組織の機能を回復させる。
【0075】
検出
本開示は、CD40を検出する組成物を提供し、上記組成物は本開示による抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含む。本開示は、インビボ又はインビトロでCD40を検出する方法、システム又は装置を更に提供し、それは、本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片で試料を処理することを含む。
【0076】
幾つかの実施形態において、インビトロ検出方法、システム又は装置は、例えば、
(1)試料を抗CD4抗体又はその抗原結合断片に接触させること、
(2)CD40結合抗体若しくはその抗原結合断片と試料との間で形成された複合物を検出すること、及び/又は
(3)参照試料(例えば、対照試料)を抗体に接触させること、及び
(4)参照試料との比較により、複合体の形成程度を確定すること、
を含み得る。例えば、対照試料又は対象におけるものと比べ、試料又は対象における複合物形成の変化(例えば、統計学的に有意な変化)は、試料にCD40があることを示す。
【0077】
別の幾つかの実施形態において、インビボ検出方法、システム又は装置は、
(1)対象に抗CD40の抗体又はその抗原結合断片を投与することと、
(2)抗CD40の抗体又はその抗原結合断片と対象との間での複合物の形成を検出することと、
を含んでもよい。
【0078】
検出は、複合物を形成する位置又は時間を確定することを含んでもよい。検出可能な物質でCD40抗体を標識し、上記標識を検出することにより、CD40抗体に結合する物質(例えば、CD40)への検出が実現される。好適な検出可能な物質は、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質及び放射性物質を含む。CD40に結合するか又は結合しない抗体を測定したり、それを可視化したりすることにより、CD40結合抗体又はその抗原結合断片とCD40との間での複合物の形成を検出することができる。通常の検出アッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は組織免疫組織化学を使用することができる。検出のために、本開示の抗CD40抗体又はその断片は、フルオロフォア発色団で標識されてもよい。
【0079】
幾つかの実施形態において、試薬キットを更に提供し、上記試薬キットは抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含み、診断マニュアルを更に含んでもよい。試薬キットは、少なくとも1つの付加的な試薬、例えば、マーカーや付加的な診断剤を更に含んでもよい。インビボでの使用に対して、抗体は、医薬組成物として調製することができる。
【0080】
用語の定義
本開示が更に容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本明細書で別途明確に定義しない限り、本明細書に使用される他の技術・科学用語の全ては、当業者に通常理解されている意味を持っている。
【0081】
文脈で特に明記のない限り、明細書及び特許請求の範囲の全体において、「含有する」、「有する」、「含む」などの言葉は、排他的又は網羅的な意味ではなく、包括的な意味、即ち、「含むが、これらに限定されない」という意味を持っていると理解すべきである。
【0082】
本開示に使用されるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J.biol.chem,243,p3558(1968)に記載された通りである。
【0083】
「CD40」及び「CD40抗原」は、正常と腫瘍性B細胞の表面に発現された約48 kDの糖タンパク質を指し、それは、細胞の増殖と分化に関与するシグナルの受容体として作用する(Ledbetter et al.,1987,J.Immunol. 138:788-785)。バーキットリンパ腫細胞株Rajiにより調製されたライブラリーから、CD40をコードするcDNA分子を単離した(Stamenkovic et al.,1989,EMBO J. 8:1403)。配列情報は、本開示の表2を参照してよい。CD40を内因的に発現する細胞は、表面でのCD40の発現を特徴とする任意の細胞であり、正常と腫瘍性B細胞、指状突起細胞、基底上皮細胞、がん細胞、マクロファージ、内皮細胞、濾胞性樹状細胞、へんとう腺細胞及び骨髄由来形質細胞を含むが、これらに限定されない。
【0084】
「抗体」は、所望の抗原結合活性を示せば、最も広い意味で使用され、種々の抗体構造をカバーしており、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、全長抗体と抗体断片(又は抗原結合断片、又は抗原結合部分)を含むが、これらに限定されない。抗体は、2本の同じ重鎖と2本の同じ軽鎖が鎖間ジスルフィド結合で連結してなるテトラペプチド鎖構造である免疫グロブリンを指してもよい。免疫グロブリンは、重鎖定常領域のアミノ酸組成と配列順序が異なるので、その抗原性も異なる。これにより、免疫グロブリンは、5種類、又は、免疫グロブリンのアイソタイプと呼ばれるIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEに分けることができ、その対応する重鎖は、それぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同一種類のIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成及び重鎖ジスルフィド結合の数と位置の違いによって、更に異なるサブクラスに分けることができ、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができる。軽鎖は、定常領域によって、κ鎖又はλ鎖に分けられる。5種類のIgのそれぞれは、何れもκ鎖又はλ鎖を有してもよい。抗体重鎖及び軽鎖は、N末端に近い約110個のアミノ酸の配列が大きく変化され、可変領域(V領域)となり、C末端に近い残りのアミノ酸配列が比較的に安定的で、定常領域(C領域)となる。可変領域は、3つの超可変領域(CDR)と、配列が比較的に保存的な4つのフレームワーク領域(FR)とを含む。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも称される。それぞれの軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)は、3つのCDR領域と、4つのFR領域とからなり、アミノ末端からカルボキシ末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。軽鎖の3つのCDR領域はLCDR1、LCDR2及びLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域はHCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。
【0085】
CDRについての確定又は定義は、抗体の構造を解明し、及び/又は抗体-リガンド複合物の構造を解明することにより、CDRの確実な描写及び抗体の結合部位を含む残基の同定を達成することができる。これは、当業者に知られている種々の技術の何れか1つ、例えば、X線結晶学によって実現することができる。種々の分析方法は、CDRの同定に使用することができ、Kabat番号付けシステム、Chothia番号付けシステム、AbM番号付けシステム、IMGT番号付けシステム、接触定義、立体配座定義を含むが、これらに限定されない。
【0086】
Kabat番号付けシステムは、抗体における残基に番号を付けるための基準であり、一般的にCDR領域の同定に使用される(例えば、Johnson&Wu,2000,Nucleic Acids Res.,28:214-8を参照)。Chothia番号付けシステムは、Kabat番号付けシステムと類似するが、Chothia番号付けシステムは、ある構造ループ領域の位置を考慮に入れた。(例えば、Chothia et al.,1986,J.Mol.Biol.,196:901-17、及びChothia et al.,1989,Nature,342:877-83を参照)。AbM番号付けシステムは、抗体構造をモデリングしたOxford Molecular Group製のコンピュータプログラム統合スイートを使用する(例えば、Martin et al.,1989,ProcNatl Acad Sci(USA),86:9268-9272、“AbMTM,A Computer Program for ModelingVariable Regions of Antibodies,”Oxford,UK、Oxford Molecular,Ltdを参照)。AbM番号付けシステムは、知識データベース及びab initio法の組み合わせを用いて、基本配列から抗体の三次構造をモデル化する(Samudrala et al.,1999,PROTEINS,Structure,Function and Genetics Suppl.,3:194-198における「Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined HierarchicalApproach」に記載されたものを参照)。接触定義は、利用できる複雑な結晶構造の分析に基づくものである(例えばMacCallum et al.,1996,J.Mol.Biol.,5:732-45を参照)。立体配座の定義において、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的寄与をする残基として同定することができる(例えば、Makabe et al.,2008,Journal ofBiological Chemistry,283:1156-1166を参照)。なお、他のCDRの境界の定義は、上記方法の1つに厳密に従うとは限らないが、特定の残基又は残基群が抗原結合に顕著に影響しないという予測又は実験結果によって、それらは短縮又は延長可能であるとはいえ、依然としてKabat CDRの少なくとも一部と重複する。本明細書に使用されるように、CDRは、この分野における既知の任意の方法(方法の組み合わせを含む)によって定義されるCDRを指すことができる。各番号付けシステムの対応関係は、当業者によく知られているものであり、例示的に、下記の表1に示す通りである。
【0087】
【表1】
【0088】
本開示に係る抗体又は抗原結合断片のVL領域とVH領域のCDRアミノ酸残基は、数量と位置において既知のKabat番号付けシステムに合致する。
「モノクローナル抗体」又は「単クローン抗体」とは、基本的に同質の抗体集団から得られた抗体であり、即ち、少量で天然に存在し得る変異を除き、集団に含まれる各抗体は同じである。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一抗原部位に対するものである。更に、通常、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」という修飾語は、例えば、基本的に同質の抗体集団から得られた抗体の特徴を示し、何れかの特定の方法により抗体を産生する必要があると解釈されない。
【0089】
「ウサギ抗体」という用語は、本開示において、この分野での知識と技術により調製されたヒトCD40又はそのエピトープに対するモノクローナル抗体である。調製時にCD40抗原を試験ウサギに注射した後、所望の配列又は機能特性を持つ抗体を発現した抗体を単離する。本開示の一具体的な実施形態において、上記ウサギ抗ヒトCD40抗体又はその抗原結合断片は、ウサギκ、λ鎖若しくはその変異体の軽鎖定常領域を更に含み、或いは、ウサギIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4又はその変異体の重鎖定常領域を更に含んでもよい。
【0090】
「完全ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列の可変と定常領域を有する抗体を含む。本開示に係る完全ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列でコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダム若しくは部位特異的な変異誘発、又はインビボの体細胞変異により導入された変異)を含むことができる。しかし、「完全ヒト抗体」という用語は、別種の哺乳動物種(例えば、ウサギ)の生殖細胞系から誘導されたCDR配列をヒト骨格配列に移植した抗体(即ち、「ヒト化抗体」)を含まない。
【0091】
「ヒト化抗体(humanized antibody)」という用語は、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)とも呼ばれ、非ヒトCDR配列をヒトの抗体可変領域フレームワークに移植して産生された抗体を指す。キメラ抗体が大量の非ヒトタンパク質成分を持つことにより誘導された強い免疫応答反応を克服することができる。免疫原性の低下に伴う活性の低下を回避するために、上記完全ヒト抗体可変領域に対して最も少ない逆変異を行うことにより、活性を維持することができる。
【0092】
「キメラ抗体(chimeric antibody)」という用語は、第1の種の抗体の可変領域を第2の種の抗体の定常領域と融合してなる抗体であり、第1の種の抗体により誘発される免疫応答反応を低減することができる。一例として、キメラ抗体を作成するには、まず、ウサギ特異的単クローン抗体を分泌するウサギを作成し、上記抗体を単離し、そして必要に応じて完全ヒト抗体の定常領域遺伝子をクローニングし、ウサギ可変領域遺伝子とヒト定常領域遺伝子とをキメラ遺伝子になるように連結した後、ヒトベクターに挿入し、最後に真核細胞系又は原核細胞系においてキメラ抗体分子を発現しなければならない。完全ヒト抗体の定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4又はその変異体の重鎖定常領域から選ばれてもよく、好ましくはヒトIgG1若しくはIgG4重鎖定常領域を含み、又はアミノ酸変異した後にADCC(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、抗体依存性の細胞仲介性の細胞傷害作用)毒性のないIgG1を使用する。
【0093】
「抗原結合断片」という用語は、単鎖抗体(即ち、全長重鎖と軽鎖)、Fab、修飾されたFab、Fab’、修飾されたFab’、F(ab’)2、Fv、Fab-Fv、Fab-dsFv、単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、2価又は3価又は4価抗体、Bis-scFv、diabody、tribody、triabody、tetrabody及び上記の何れか1つのエピトープ結合断片を含む(例えば、Holliger and Hudson、2005、Nature Biotech.23(9):1126-1136、Adair and Lawson、2005、Drug Design Reviews-Online 2(3)、209-217を参照)。これらの抗体断片を産生・調製する方法は、この分野において公知のものである(例えば、Verma et al.,1998,Journal of Immunological Methods,216,165-181を参照)。Fab-Fv形態は、WO2009/040562に初めて開示され、そのジスルフィド結合の安定化形態であるFab-dsFvが、WO2010/035012に初めて開示された。本開示に係る抗原結合断片は、WO2005/003169、WO2005/003170とWO2005/003171に記載されたFab及びFab’断片を更に含む。多価抗体は、多重特異性、例えば、二重特異性のものを含んでもよく、又は単一特異性のものであってもよく(例えば、WO92/22583とWO05/113605を参照)、後者の一例としては、WO92/22583に記載されたTri-Fab(又はTFM)である。
【0094】
「CD40に結合する」という用語は、CD40又はそのエピトープと相互作用できることを意味し、上記CD40又はそのエピトープは、ヒト由来のものであってもよい。本開示の「抗原結合部位」という用語は、抗原において連続しておらず、本開示の抗体又は抗原結合断片により認識される3次元空間部位を指す。
【0095】
「抗原」という用語は、免疫適格性脊椎動物を免疫化して、抗原を認識する抗体を産生し、又は発現ライブラリー(例えば、特にファージ、サッカロミセス又はリボソームディスプレイライブラリー)をスクリーニングするための分子を指す。本開示において、抗原はより広義に定義されており、抗体により特異的に認識される標的分子を含み、且つ抗体を産生するための免疫化プロセス又は抗体を選択するためのライブラリーの選別に使用される分子の一部又は模倣体を含む。本開示のヒトCD40結合抗体に対して、ヒトCD40の単量体と多量体(例えば、二量体、三量体など)、及びヒトCD40の欠失変異体と他の変異体は、何れも抗原と称される。
【0096】
「エピトープ」という用語は、抗原における免疫グロブリン又は抗体に結合する部位を指す。エピトープは、隣接するアミノ酸から、又はタンパク質の三次折畳により並列して隣接しないアミノ酸から形成されてもよい。隣接するアミノ酸により形成されたエピトープは、通常、変性溶媒に暴露された後に保持されるが、三次折畳により形成されたエピトープは通常、変性溶媒で処理された後に無くなる。エピトープは、通常、独特の空間配座で、少なくとも3~15個のアミノ酸を含む。何のエピトープが所定の抗体により結合されるかを決定する方法は、この分野でよく知られているもので、ウエスタンブロット法と免疫沈降検出分析などを含む。エピトープの空間配座を決定する方法は、この分野における技術と本開示に記載される技術、例えば、X線結晶分析法と2次元核磁気共鳴などを含む。
【0097】
「特異的結合」、「選択的結合」という用語は、抗体の所定の抗原におけるエピトープとの結合を指す。通常、ヒトCD40又はそのエピトープを分析物として使用するとともに、抗体をリガンドとして使用し、機器において表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって測定する場合、抗体は、約10-7 M未満若しくはそれよりも小さい平衡解離定数(K)で所定の抗原又はそのエピトープに結合し、且つ所定の抗原又はそのエピトープに対する結合親和性が、所定の抗原(又はそのエピトープ)又は密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSAなど)に対する結合親和性の少なくとも2倍である。「抗原を識別する抗体」という用語は、本開示において「特異的に結合する抗体」という用語と互いに交換して使用されてもよい。
【0098】
「結合親和性」又は「親和性」は、本開示において、2つの分子(例えば、抗体又はその一部と抗原)間の非共有相互作用の強度の目安として使用される。2つの分子間の結合親和性は、解離定数(K)を決定することにより定量化することができる。KDは、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)法(Biacore)で複合物の形成と解離の動態を測定することにより決定することができる。一価複合物の結合と解離に対応する速度定数は、それぞれ結合速度定数ka(又はkon)と解離速度定数kd(又はkoff)と呼ばれる。Kは、K=kd/kaという方程式によってka及びkdに関連する。解離定数の値は、周知の方法により直接決定することができ、且つ、例えばCaceci et al.(1984,Byte 9:340-362)に記載されたような方法により、複雑な混合物に対しても算出することができる。Kは、例えばWong&Lohman(1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5428-5432)に開示されたような二重ろ過ニトロセルロースフィルター結合アッセイにより決定することができる。標的抗原に対する抗体の結合能力を評価する他の標準的なアッセイは、この分野で既知のものであり、例えば、ELISA、ウエスタンブロット、RIA及びフローサイトメトリー分析、及び本開示の他所で挙げられた他のアッセイを含む。抗体の結合動態と結合親和性は、この分野で知られている標準的なアッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)により、例えばBiacoreTMシステム又はKinExAにより評価されてもよい。各抗体/抗原複合物のK値を比較することにより、異なる分子との相互作用に関連する結合親和性を比較し、例えば、異なる抗体による所定の抗原への結合親和性を比較することができる。同様に、相互作用の特異性は、目的相互作用(例えば、抗体と抗原の間の特異的相互作用)のK値と非目的相互作用(例えば、CD40に結合しない既知の対照抗体)のK値を決定して比較することで評価することができる。
【0099】
「保存(的)置換」という用語は、元のアミノ酸残基と類似の特性を有する別のアミノ酸残基に置換されることを指す。例えば、リジン、アルギニンとヒスチジンは、塩基性側鎖を持つことにおいて類似の特性を有し、また、アスパラギン酸とグルタミン酸は、酸性側鎖を持つことにおいて類似の特性を有する。更に、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システインとトリプトファンは、電荷をもたない極性側鎖を持つことにおいて類似の特性を有し、また、アラニン、バリン、ロイシン、トレオニン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニンとメチオニンは、非極性側鎖を持つことにおいて類似の特性を有する。更に、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンとヒスチジンは、芳香族側鎖を持つことにおいて類似の特性を有する。従って、上記のような類似の特性を示す群におけるアミノ酸残基が置換される場合にも、それは特性の特定の変化を示さないことが当業者に明らかである。
【0100】
「阻害」又は「遮断」は交換して使用されてもよく、部分的と完全な阻害/遮断の両方をカバーする。CD40に対する阻害/遮断は、阻害や遮断のない場合にCD40の結合が発生される時に活性が現れる正常なレベル又は種類を低減又は変更することが好ましい。阻害と遮断は、抗CD40抗体と接触した場合、抗CD40抗体と接触していないCD40に比べて、何れの測定可能なCD40結合親和性も低下することを含むことも意図する。
【0101】
「成長の阻害」(例えば、細胞について)は、細胞成長の任意の測定可能な低下も含むことを意図する。
【0102】
「アゴニスト活性」、「アゴニスト活性」又は「アゴニスト性」は、アゴニストとしての機能を指す。アゴニストと細胞受容体の結合により、当該受容体の天然リガンドによるものと類似若しくは同様の反応又は活性が引き起こされる。例えば、CD40アゴニストは、細胞の増殖及び/又は分化、例えば、ICAM-1、E-セレクチン、VCAMなどの分子による細胞間の接着のアップレギュレート、IL-1、IL-6、IL-8、IL-12、TNFなどの炎症促進性サイトカインの分泌、CD40受容体を介するTRAF(例えば、TRAF2及び/又はTRAF3)、MAPキナーゼ、例えばNIK(NF-κB誘導キナーゼ)、1-κBキナーゼ(IKKα/β)、転写因子NF-κB、RasとMEK/ERK経路、PI3K/Akt経路、P38 MAPK経路などの経路によるシグナルの伝達、XIAP、Mcl-1、BCLxなどの分子による抗-アポトーシスシグナルの伝達、B及び/又はT細胞記憶の産生、B細胞抗体の産生、B細胞のアイソタイプの変換、クラスII MHCとCD80/86の細胞表面発現のアップレギュレートなどの応答の何れか又は全てを誘導することができる。「拮抗活性」、「拮抗薬活性」又は「拮抗性」は、拮抗薬となり得る物質の機能を指す。例えば、CD40の拮抗薬は、CD40受容体とアゴニスト性リガンド、具体的にCD40Lとの結合によって誘導される任意の応答を防止又は低減することができる。拮抗薬は、アゴニスト結合によって誘導される1種又は複数種の応答を5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、好ましくは40%、45%、50%、55%、60%、より好ましくは70%、80%、85%、且つ最も好ましくは90%、95%、99%又は100%低下させることができる。抗CD40抗体のCD40リガンドへの結合特異性及び拮抗活性を検出する方法は、当業者に知られているものであり、標準的な競合結合アッセイ、B細胞による免疫グロブリンの分泌をモニターするアッセイ、B細胞増殖アッセイ、Banchereau様B細胞増殖アッセイ、抗体産生のT細胞補助アッセイ、B細胞増殖の共刺激アッセイ、及びB細胞活性化マーカーをアップレギュレートするアッセイを含むが、これらに限定されない。
【0103】
抗体及び抗原結合断片を産生・精製する方法は、従来技術でよく知られており、且つ、例えば冷泉港の抗体実験技術マニュアル(5~8章及び15章)で見出すことができる。例えば、ヒトCD40又はその断片をマウスに免疫することができ、得られた抗体は復元、精製されることができるとともに、通常の方法によりアミノ酸シークエンシングを行うことができる。抗原結合断片は、同じく通常の方法により調製することができる。本開示に記載される抗体又は抗原結合断片は、遺伝子工学的方法により、非ヒト由来のCDR領域に1つ又は複数のヒト由来のFR領域が加えられる。ヒトFR生殖細胞系列配列は、ImMunoGeneTics(IMGT)のウェブサイトから入手可能である。
【0104】
当業者に知られている通常の技術により、同じエピトープに対する結合で抗体を競合的にスクリーニングすることができる。例えば、競合及び交差競合研究を行うことにより、互いに競合したり、交差競合したりして抗原に結合する抗体を得ることができる。それらの交差競合によって同じエピトープと結合する抗体を得るハイスループット方法は、国際特許公開WO03/48731に記載されている。従って、当業者に知られている通常の技術により、本開示にかかる抗体分子と競合してCD40における同じエピトープに結合する抗体及びその抗原結合断片を得ることができる。
【0105】
「障害」という用語は、本開示のヒト化抗CD40抗体を用いた治療から利益が得られる任意の病状である。それは、慢性及び急性の障害又は疾患を含む。本開示の治療すべき障害の非限定的な例としては、がん、血液悪性腫瘍、良性と悪性腫瘍、白血病及びリンパ性悪性腫瘍、並びに炎症性障害、血管新生障害、自己免疫障害と免疫学的障害が含まれる。
【0106】
「CD40関連障害」又は「CD40関連疾患」という用語は、CD40を発現する細胞の修飾又は除去を示す病状を指す。これらの細胞は、異常増殖を示すCD40発現細胞、又は癌性若しくは悪性増殖に関連するCD40発現細胞を含む。CD40抗原の発現異常を示す癌のより具体的な例としては、Bリンパ芽球性腫瘍、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、T細胞リンパ腫、カポジ肉腫、骨肉腫、表皮と内皮腫瘍、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、頭頸部癌、皮膚癌(黒色腫)、膀胱癌及び腎臓癌が含まれる。このような障害は、白血病、リンパ腫(B細胞リンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を含む)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、例えば骨肉腫、ユーイング肉腫のような肉腫、悪性黒色腫、腺癌(卵巣腺癌を含む)、カポジ肉腫/カポジ腫瘍及び扁平上皮癌を含む固形腫瘍を含むが、これらに限定されない。「CD40関連障害」は、免疫系の疾患及び障害、例えば、自己免疫障害及び炎症性障害を更に含む。このような病状は、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性結腸炎及びクローン病)、肺炎症、喘息、及び特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を含むが、これらに限定されない。
【0107】
「…の成長を妨げる」又は「成長阻害」という用語は、細胞、特にCD40抗原を発現する腫瘍性細胞種類の成長又は増殖を阻害することを指す。従って、成長阻害は、例えば、S期の腫瘍性細胞の百分率を顕著に低減する。
【0108】
「与える」、「投与」及び「処理」は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、臓器や生物流体に適用される場合に、外因性薬剤、治療剤、診断薬又は組成物の、動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器や生物流体との接触を意味する。「与える」、「投与」及び「処理」は例えば、治療、薬物動態、診断、研究と実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬の細胞との接触、及び試薬の流体との接触を含み、ここで、上記流体は細胞と接触する。「与える」、「投与」及び「処理」は、また、試薬、診断、結合組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで例えば細胞を処理することを意味する。「処理」はヒト、獣医学又は研究対象に適用される場合に、治療的処理、予防又は予防的措置、研究と診断的応用を意味する。
【0109】
「治療」は、対象に内用又は外用の治療剤、例えば、本開示の何れか1つの抗体又はその抗原結合断片或いはそれを含む組成物を投与することを意味し、上記対象は、1つ若しくは複数の疾患又はその症状を患っており、患っている恐れがあり、又は患う傾向があるが、上記治療剤は、これらの症状に対して治療作用を有することが知られている。通常、このような症状の退行を誘導することによるにせよ、臨床的に測定可能な任意の程度まで進行しないようにこのような症状を阻害することによるにせよ、治療される対象又は集団に、1種又は複数種の疾患症状を効果的に緩和する量で治療剤を与える。何れかの具体的な疾患症状を効果的に緩和する治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、対象の疾患状態、年齢と体重、及び薬剤の対象に必要な治療効果を発生させる能力などの複数の要因によって、変化することができる。当該症状の重症度や進行状況の評価に医者や他のプロのヘルスケアプロバイダによく用いられる任意の臨床的検出方法により、疾患症状が低減されたか否かを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、ある対象における目標疾患症状の緩和に無効であり得るが、例えばStudent t検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定とWilcoxon検定のようなこの分野で知られている任意の統計学的検定方法により、統計学的に有意な数の対象において目標疾患症状を軽減するはずであることが確認された。
【0110】
「有効量」は、医学障害の症状又は病状を改善又は予防するために十分な量を含む。有効量は、更に、診断の許容又は促進に十分な量を指す。特定の対象又は獣医学的対象に使用される有効量は、例えば、治療すべき病状、対象の全体的健康状態、投与の方法や経路と用量、及び副作用の重症度といった要因によって変化することができる。有効量は、顕著な副作用又は毒性作用を回避する最大用量又は投与計画であってもよい。
【0111】
「相同性」又は「同一性」とは、2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド間の配列の類似性を指す。2つの比較される配列における位置が何れも同じヌクレオチド又はアミノ酸モノマーサブユニットに占められる場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置が同じヌクレオチドに占められると、上記分子は当該位置で相同である。2つの配列間の相同性百分率は、2つの配列の共有するマッチング又は相同位置数を比較される位置数で割って100%をかける関数である。例えば、配列が最適にアラインメントされる場合、2つの配列における10個の位置のうち6個がマッチングするか又は相同である場合、2つの配列は60%相同である。一般的には、2つの配列をアラインメントして最大の相同性百分率が得られる場合に比較する。
【0112】
「細胞」、「細胞系」及び「細胞培養物」は、互いに交換して使用されてもよく、このような名称は何れもその子孫を含む。また、意図するかしないかの変異のために、あらゆる子孫は、DNA含有量において精確に同じであり得ないと理解すべきである。最初の形質転換細胞からスクリーニングされたものと同様の機能又は生物学的活性を有する変異子孫が含まれる。
【0113】
「任意選択的」又は「任意選択的に」とは、その後に説明される事象又は状況が生じてもよいが、生じなくてもよいことを意味し、この説明は、当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含む。例えば、「任意選択的に1~3個の抗体重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列の抗体重鎖可変領域が存在してもよいが、必ずしも存在しなくてもよいことを意味する。
【0114】
本開示の「CD40結合分子」は、最大限に解釈すると、本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含み、CD40への結合を実現可能なタンパク質であれば、何れも当該用語の範囲にある。例えば、CD40結合タンパク質は、例えば複合で、1つ又は複数のエフェクター分子を含んでもよい。上記「エフェクター分子」は、単独で治療活性を有する(例えば、抗腫瘍活性又は免疫活性化若しくは阻害活性を有する)か又は検出機能を有することができ、例えば、生理活性タンパク質(例えば、酵素)、他の抗体若しくは抗体断片、合成若しくは天然に存在するポリマー、ポリヌクレオチドとその断片、例えば、DNA、RNAとその断片、放射性核種(特に、放射性ヨウ化物)、放射性同位体、キレート金属、ナノ粒子及びレポーター基(例えば、蛍光化合物)、又はNMR若しくはESR分光分析によって検出可能な化合物などの任意の形態であってもよい。エフェクター分子と本開示の抗CD40抗体又はその抗原結合断片との複合方式は、通常の方法により達成することができる。
【0115】
「抗体薬物複合体」は、薬物(例えば、抗腫瘍剤、毒素)を抗体に連結してなる複合体を指し、上記複合体は、通常の方法によって、例えば、切断可能又は切断不可能なリンカーによって連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1A-B】CD40拮抗型抗体のレポーター遺伝子システムにおける活性結果であり、図1A図1Bはそれぞれ9E6-L4H2と2F12-L4H2に関連する結果であり、図1A図1Bは両方ともヒトIgG1アイソタイプを陰性対照、CFZ533を陽性対照として使用している。
図2A-B】CD40拮抗型抗体のB細胞活性化実験系における阻害活性結果であり、図2Aは9E6-L4H2と2F12-L4H2のCD19+CD69+の細胞百分率阻害結果であり、図2Bは9E6-L4H2と2F12-L4H2のCD19+CD69+の細胞MFI阻害結果であり、図2A図2Bは両方ともヒトIgG1アイソタイプを陰性対照として、CFZ533を陽性対照として使用している。
図3A-D】CD40拮抗型抗体のDC細胞活性化実験系における阻害活性結果であり、図3Aは9E6-L4H2と2F12-L4H2のCD11C+CD80+の細胞MFI阻害結果であり、図3Bは9E6-L4H2と2F12-L4H2のCD11C+CD86+の細胞MFI阻害結果であり、図3Cは9E6-L4H2と2F12-L4H2のIL-12/23 p40を阻害する結果であり、図3Dは9E6-L4H2と2F12-L4H2のTNFαを阻害する結果であり、図3A~3Dは何れもヒトIgG1アイソタイプを陰性対照として、CFZ533を陽性対照として使用している。
図4】CD40拮抗型抗体9E6-L4H2、2F12-L4H2のB細胞活性化実験系における内因性アゴニスト活性結果であり、ヒトIgG1アイソタイプ、CFZ533、アゴニスト抗CD40抗体9E5-SELFNSを対照として使用している。
図5A-B】CD40拮抗型抗体のマウスT細胞依存性の体液性免疫反応モデルにおける活性結果であり、図5Aはフローチャートであり、図5Bは7、14、21、28日目の検出結果図である。
図6A-B】CD40拮抗型抗体のマウス皮膚移植拒絶モデルにおける活性結果であり、図6Aはフローチャートであり、図6Bは皮膚移植片の生存率(%)及び皮膚移植片の採点結果である。
図7】マウス皮膚移植拒絶モデルにおけるCD40拮抗型抗体とタクロリムス(FK506)との併用の活性結果であり、図7のAは9E6-L4H2(10 mpk)及びそれとタクロリムス(FK506)との併用の皮膚移植片生存率(%)の結果であり、図7のBは2F12-L4H2(10 mpk)及びそれとタクロリムス(FK506)との併用の皮膚移植片生存率(%)の結果であり、図7のCは9E6-L4H2(10 mpk)及びそれとタクロリムス(FK506)との併用の皮膚移植片採点結果であり、図7のDは2F12-L4H2(10 mpk)及びそれとタクロリムス(FK506)との併用の皮膚移植片採点結果である。
図8】CD40拮抗型抗体9E6-L4H2、2F12-L4H2のヒトCD40トランスジェニックマウスにおけるPK検出結果であり、CFZ533を対照として使用している。
図9A-B】Fc変異したCD40拮抗型抗体のB細胞活性化実験系における阻害活性結果であり、図9Aは9E6-L4H2と9E6-L4H2-AAYTEのCD19+CD69+の細胞MFI阻害結果であり、図9Bは2F12-L4H2と2F12-L4H2-AAYTEのCD19+CD69+の細胞MFI阻害結果である。
図10A-D】Fc変異したCD40拮抗薬のDC細胞活性化実験系における阻害活性結果であり、図10Aは9E6-L4H2と9E6-L4H2-AAYTEのIL-12/23 p40を阻害する結果であり、図10Bは9E6-L4H2と9E6-L4H2-AAYTEのTNFαを阻害する結果であり、図10Cは2F12-L4H2と2F12-L4H2-AAYTEのIL-12/23 p40を阻害する結果であり、図10Dは2F12-L4H2と2F12-L4H2-AAYTEのTNFαを阻害する結果である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
以下、実施例に合わせて本開示を更に説明するが、これらの実施例は、本開示の範囲を制限するものではない。
【0118】
本開示の実施例又は試験例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に通常の条件、又は原料や商品のメーカーにより推奨された条件に従う。Sambrookら、分子クローニング、実験室マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー研究所、及び現代分子生物学方法、Ausubelら著、Greene出版協会、Wiley Interscience、NYが参照される。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0119】
実施例1. CD40免疫抗原、抗原をスクリーニングする配列及び調製
hisタグ付きのヒトCD40(h-CD40-his)組換えタンパク質(製品番号CD0-H5228)、マウスFcタグ付きのヒトCD40(h-CD40-mFc)組換えタンパク質(製品番号CD0-H525a)、hisタグとビオチンタグ付きのヒトCD40(hCD40-his-avi)組換えタンパク質(製品番号CD0-H82E8)及びhisタグ付きのカニクイザルCD40(cyno-CD40-his)組換えタンパク質(製品番号CD0-C52H6)は、何れもAcrobiosystems社から購入された精製市販タンパク質試薬であり、それぞれの配列の由来は表2に示されている。上記タンパク質試薬は、次の各実施例の実験に使用することができる。
【0120】
【表2】
【0121】
実施例2. 抗CD40ウサギモノクローナル抗体のスクリーニング及びヒト-ウサギキメラ抗体の調製
抗ヒトCD40モノクローナル抗体は、2匹のニュージーランドホワイトラビットを免疫することにより産生された。免疫抗原は、Hisタグ付きのヒトCD40組換えタンパク質である(h-CD40-hisで、リン酸塩緩衝液により1 μg/μLに調製した)。フロイントアジュバントによる乳化:最初は完全フロイントアジュバント(CFA)を使用し、残りの追加免疫化は、不完全フロイントアジュバント(IFA)を使用した。各回の免疫は、抗原400 μgの多点皮下注射を採用した。免疫注射時間は0、7、20、41日目である。27と48日目に採血して血液検出を行い、ELISA及びFACS方法によりウサギ血清における抗体価を検出した。血清中の抗体価が高くて安定する傾向があるウサギを選択した:63日目に追加免疫を行い、400 μg/匹でリン酸緩衝液から調製された抗原溶液を静脈内注射し、67日目に当該ウサギの脾臓を収集し、ビオチンラグ付きのCD40抗原を加え、標識されたモノクローナルB細胞をフローサイトメーターにより選別して96ウェルプレートに入れた。14日間培養後に、上清を収集し、ELISA及びFACSの方法により、ヒトCD40、カニクイザルCD40及びRaji細胞(ヒトCD40を発現した腫瘍細胞株)に結合可能なクローンをスクリーニングし、合計28株のB細胞モノクローンを得た。これらのモノクローナル細胞からRNAを抽出し、逆転写し、PCR増幅した後、シークエンシングのためにシークエンシング会社へ送付し、最終的にウサギ抗体28株の配列を取得し、親和性・活性同定実験(方法は実施例2~3を参照)でスクリーニングして11株の単クローン抗体を得て、重鎖及び軽鎖可変領域の配列は表3に、CDRの配列は表4に示されている。
【0122】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0123】
【表4-1】

【表4-2】
【表4-3】
【0124】
得られた可変領域配列をそれぞれヒトの抗体IgG1定常領域(N297A変異付き、Eu番号付けシステム)配列とヒトkappa鎖定常領域配列に連結してヒト-ウサギのキメラ抗体配列を取得し、分子クローニング技術により、キメラ抗体の配列を発現ベクターに挿入し、HEK293細胞発現系を利用すれば、ヒト-ウサギキメラ抗体を得ることができる。
【0125】
実施例3. ヒト-ウサギキメラ抗CD40抗体Raji細胞結合実験
Raji細胞は、ヒトCD40を過剰発現する腫瘍細胞株である。2E5個のRaji細胞を96ウェルプレートに接種した。100 μLの測定待ちの抗体を加え、最高終濃度が100 nMで、5倍希釈し、合計8個の濃度にして、4℃で1時間インキュベートした。洗浄液で1回洗浄し、1:500の希釈度で、AF647に複合した抗ヒトIgG抗体(Jackson Immunoresearch Laborotories、製品番号205-609-088)を加え、4℃で30分間インキュベートした。洗浄液で1回洗浄し、フローサイトメーターで蛍光強度を読み取った。CD40に対する抗CD40抗体の結合EC50値を算出した。抗CD40拮抗型抗体CFZ533(即ち、Iscalimab、Nova)を陽性対照として使用し、重鎖と軽鎖可変領域の配列は、それぞれUS8277810Bの配列5と配列2に由来した。
【0126】
表5の結果から、2F12、3F6、4F6、5A9、5B8、9E6、10A4は、何れもCFZ533より強い結合EC50を有するが、8E1(配列が示されていない)を例とする他の抗体はCFZ533よりもEC50が弱いことが示されている。
【0127】
【表5】
【0128】
実施例4 ヒト-ウサギキメラ抗CD40抗体のレポーター遺伝子細胞活性実験
HEK-Blue CD40L細胞は、Invivogen(Cat#hkb-cd40)から購入され、当該細胞は、ヒトCD40遺伝子及びNF-kB仲介性のSEAPゲノムを安定トランスフェクションしたもので、SEAP基質であるQUANTI-Blueにより上清において分泌されたSEAPを検出することでCD40シグナル伝達経路の活性化レベルを表現することができる。この実験は、CD40Lによる細胞HEK-Blue CD40Lの活性化を検出することにより、IC50の大きさに基づいて抗CD40抗体のインビトロ拮抗薬活性を評価した。細胞HEK-Blue CD40Lを10%のFBS、100 μg/mLのZeocinと30 μg/mLのBlasticidinを含むDMEM培地に培養し、1:5又は1:10の継代比率で1週間に2~3回継代した。継代時に、培地を吸引除去し、0.25%のトリプシン5 mLで細胞層をすすいだ後、トリプシンを吸引除去し、細胞をインキュベーターに入れて3~5分間消化し、新鮮な培地を加えて細胞を再懸濁した。96ウェル細胞培養プレートに100 μLの細胞懸濁液を加え、密度が5×10^5細胞/mLで、培地が10%のFBS、100 μg/mLのZeocinと30 μg/mLのBlasticidinを含むDMEMであり、96ウェルプレートの外周に100 μLの滅菌水のみを加えた。培養プレートをインキュベーターにおいて24時間培養した(37℃、5%のCO)。細胞が壁に付着した後、各ウェルに100 μLの勾配希釈した測定待ちの抗体を加え、37℃で30分間インキュベートした。25 ng/mLのCD40L(R&D、製品番号2706-CL)と2 μg/mLのanti-His抗体(R&D、製品番号MAB050)を加え、培養プレートをインキュベーターで20~24時間インキュベートした(37℃、5%CO2)。各ウェルから20 μLの細胞上清を取って新しい96ウェルフラットプレートに入れ、180 μLのQUANTI-Blue基質溶液を加え、培養プレートをインキュベーターにて暗所で1~3時間インキュベートした。マイクロプレートリーダー(Thermo MultiSkanFc)により630 nmでの吸光度を測定し、IC50値を算出して抗CD40抗体のインビトロ細胞活性を評価した。表6を参照すると、その結果から、2F12、3F6、4D4、4F6、5A9、5B8、8C12、8G10、9E6、9F10、10A4は、何れもCFZ533に相当するか又はそれよりやや強いレポーター遺伝子細胞阻害活性IC50を有するが、2F1(配列が示されていない)を例とする他の抗体は、CFZ533よりもIC50が弱いことが示されている。
【0129】
【表6】
【0130】
実施例5. 抗CD40抗体のヒト化
ウサギ抗体2F12、3F6、9E6及び10A4の重・軽鎖可変領域の配列を抗体GermLineデータベースと比較して、相同性の高いヒト生殖細胞系列テンプレートを得た。最終抗体をヒト化するヒト生殖細胞系列テンプレートの情報は表7を参照する。
【0131】
【表7】
【0132】
ウサギ抗体のCDR領域を、選択されたヒト生殖細胞系列テンプレートに移植して、ヒト生殖細胞系列可変領域を置き換え、対応するヒトIgG定常領域(好ましくは、重鎖はN297A変異付きのIgG1で、軽鎖はκである)と組換えを行った。その後、ウサギ抗体の3次元構造に基づき、埋め込まれた残基、CDR領域と直接相互作用する残基、及びVLとVHの立体配座に重要な影響を与える残基を復帰変異させるとともに、潜在的な翻訳後修飾リスク部位を変異させて、最終的なヒト化分子を得た。例示的に、2F12及び9E6に対応するヒト化軽・重鎖可変領域の配列が示されており(表8、表9参照)、ここで、Lは軽鎖、Hは重鎖を表し、L及びHに続く数字は、異なる復帰変異を含む異なるバージョンのヒト化配列を表す。
【0133】
【表8】
【0134】
9E6は、ヒト化の過程において、以下のLCDR3を得た:
>9E6-L1のLCDR3
QGGYWTSTSNFGNV (配列番号69)
>9E6-L2のLCDR3
QGGYWTSTSNFGSG (配列番号70)
>9E6-L3のLCDR3
QGGYWTSTSNFGTG (配列番号71)
>9E6-L4のLCDR3
QGGYWTSTSNFGQG (配列番号72)
>9E6-LのLCDR3一般式
QGGYWTSTSNFGX10(配列番号73)で、そのうち、XはN、S、T又はQから選らばれ、X10はV又はGから選らばれる。
【0135】
5A9、9E6、9F10は、次のような一般式の構造を有する:
HCDR1、HCDR2、HCDR3は、それぞれSYDMS(配列番号23)、AIGGAGGTYYASWAKS(配列番号24)、GWTRLDL(配列番号25)で示され、
LCDR1は、QXSEDISSNLX(配列番号74)で示され、そのうち、XはA又はSから選ばれ、XはA又はSから選ばれ、
LCDR2は、XASNLAS(配列番号75)で示され、そのうち、XはA又はPから選ばれ、
LCDR3は、QGXYWXSXFGX10(配列番号76)で示され、そのうち、XはA又はGから選ばれ、XはS又はTから選ばれ、XはS又はGから選ばれ、XはT又はSから選ばれ、XはN又はYから選ばれ、XはN、S、T又はQから選ばれ、X10はV又はGから選ばれる。
【0136】
【表9】
【0137】
2F12は、ヒト化の過程において、以下のLCDR1を得た:
>2F12-L1のLCDR1
QASQSISNVLA (配列番号83)
>2F12-L2のLCDR1
QASQSISQGLA (配列番号84)
>2F12-L3のLCDR1
QASQSISSGLA (配列番号85)
>2F12-L4のLCDR1
QASQSISTGLA (配列番号86)
>2F12-L的LCDR1一般式
QASQSISX2425LA(配列番号87)で、そのうち、X24はN、Q、S又はTから選ばれ、X25はV又はGから選ばれる。
【0138】
4F6、5B8、8G10、8C12、4D4、2F12は、次のような一般式の構造を有する:
HCDR1はSYGVX11(配列番号88)で示され、そのうち、X11はS又はTから選ばれ、
HCDR2はX12IX13SX14GX1516YYAX17WAX18S(配列番号89)で示され、そのうち、X12はA又はGから選ばれ、X13はG又はAから選ばれ、X14はT、S又はDから選ばれ、X15はT、Sから選ばれ、X16はT、Aから選ばれ、X17はS、Nから選ばれ、X18はK又はRから選ばれ、
HCDR3はGGITX19YAX20(配列番号90)で示され、そのうち、X19はA又はVから選ばれ、X20はI又はMから選ばれ、
LCDR1はQASX2122IX232425LA(配列番号91)で示され、そのうち、X21はQ又はEから選ばれ、X22はS又はDから選ばれ、X23はS又はTから選ばれ、X24はN、Q、S又はTから選ばれ、X25はV又はGから選ばれる。
【0139】
LCDR2はGASNLAS(配列番号37)で示され、
LCDR3はQSYX2627SX2829TX30(配列番号92)で示され、そのうち、X26はF又はYから選ばれ、X27はS、D又はNから選ばれ、X28はS又はFから選ばれ、X29はS、T又はYから選ばれ、X30はV又はIから選ばれる。
【0140】
各ウサギ抗体のヒト化の各バージョンの軽重鎖同士を2つずつ組み合わせ、発現・精製した。命名規則は、重鎖と軽鎖可変領域番号の組み合わせであり、例えば、「2F12-L1H1」とは、VHとして配列番号63、VLとして配列番号67が選ばれた抗体である。軽・重鎖定常領域は、それぞれヒトIgG1定常領域(N297A変異付き、Eu番号付けシステム)配列とヒトkappa鎖定常領域の配列が採用された。
【0141】
例示的なヒト化分子2F12-L4H2(2F12-L4軽鎖と2F12-H2重鎖を使用した)及び9E6-L4H2(9E6-L4軽鎖と9E6-H2重鎖を使用した)の配列は次の通りであり、その軽・重鎖定常領域はそれぞれヒトIgG1定常領域(N297A変異付き、Eu番号付けシステム)配列とヒトkappa鎖定常領域の配列が採用された。
【0142】
>9E6-L4H2 HC:
QVQVQESGPGLVKPSDTLSLTCTVSGFSLSSYDMSWIRQPPGKGLEWIGAIGGAGGTYYASWAKSRVTISVDTSLNQVSLKLSSVTAADTAVYYCARGWTRLDLWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号93
>9E6-L4H2 LC:
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCQASEDISSNLAWYQQKPGKPPKLLIFPASNLASGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQGGYWTSTSNFGQGFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号94
>2F12-L4H2 HC:
EVTVKESGPVLVKPTETLTLTCTVSGFSLSSYGVSWIRQPPGKALEWLGGIGSDGSAYYASWAKSRLTISRDTNLKQVVLTMTNMDPVDTATYYCARGGITVYAMWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号95
>2F12-L4H2 LC:
AFQLTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQSISTGLAWYQQKPGKPPKLLIVGASNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQSYFSSSSTVFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号96
【0143】
上記抗体の重鎖定常領域を改変し、抗体には、L234A、L235A、M252Y、S254TとT256E(Eu番号付けシステム)という5つの部位変異を有するヒトIgG1定常領域が採用され、軽鎖定常領域及び軽・重鎖可変領域が変更されなかった。新たに産生された抗体は、2F12-L4H2-AAYTE及び9E6-L4H2-AAYTEであり、その完全な重鎖配列は以下の通りである:
>9E6-L4H2-AAYTE HC:
QVQVQESGPGLVKPSDTLSLTCTVSGFSLSSYDMSWIRQPPGKGLEWIGAIGGAGGTYYASWAKSRVTISVDTSLNQVSLKLSSVTAADTAVYYCARGWTRLDLWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号97
>2F12-L4H2-AAYTE HC:
EVTVKESGPVLVKPTETLTLTCTVSGFSLSSYGVSWIRQPPGKALEWLGGIGSDGSAYYASWAKSRLTISRDTNLKQVVLTMTNMDPVDTATYYCARGGITVYAMWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号98
上記の下線領域は、重鎖又は軽鎖定常領域である。
【0144】
例示的なIgG Fcは以下の通りである:
> IgG1-Fc(N297A)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号99
> IgG1-Fc(AAYTE)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号100
【0145】
実施例6. ヒト化抗CD40抗体のRaji細胞結合実験
Raji細胞の表面でのヒトCD40の高発現は、細胞表面のヒトCD40に対するCD40拮抗型抗体の結合特性の検出に使用することができる。
【0146】
Rajiを1.5E5/ウェルでプレートに播き、様々な濃度のCD40拮抗型抗体を加え、4℃で1時間インキュベートした。FACS緩衝液(PBS+2%FBS)で2回洗浄した後、二次抗体(Alexa Flour488に複合した抗ヒトIgG(H+L)抗体)を加え、4℃で0.5時間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後、フローサイトメーター(BD FACS Celesta)により細胞表面の蛍光強度を検出した。
【0147】
その結果、表10に示すように、そのうち2F12-L4H2、9E6-L4H2とCFZ533とは、Raji表面のヒトCD40に対して類似の結合能力を有する。
【0148】
【表10】
【0149】
実施例7. ヒトCD40及びカニクイザルCD40に対する抗CD40抗体の親和性アッセイ
測定待ちの抗体を抗ヒトFcのチップへアフィニティー捕捉した後、一連の濃度勾配でのHisタグ付きのヒト又はカニクイザルCD40抗原をチップ表面に流し、Biacore機器により反応シグナルをリアルタイムで検出して結合・解離曲線を得た。実験に使用された緩衝液は、D.I.Waterで1×(pH7.4)に希釈されたHBS-EP+10×緩衝溶液(Cat. #BR-1006-69、GE)である。実験から得られたデータを(1:1)Bindingモデルでフィッティングし、表11に示すように、親和性の値を得た。
【0150】
9E6-L4H2、2F12-L4H2はCFZ533に比べてヒトCD40に対して類似の結合定数を有するが、9E6-L4H2のカニクイザルCD40への結合親和性が比較的強く、2F12-L4H2のカニクイザルCD40への結合親和性がやや弱い。
【0151】
【表11】
【0152】
実施例8. 抗CD40抗体のレポーター遺伝子細胞活性実験
HEK-Blue CD40L細胞は、Invivogen(Cat#hkb-cd40)から購入され、当該細胞は、ヒトCD40遺伝子及びNF-kB仲介性のSEAPゲノムを安定トランスフェクションしたもので、SEAP基質であるQUANTI-Blueにより上清において分泌されたSEAPの含有量を検出することでCD40シグナル伝達経路の活性化レベルを表現することができる。この実験は、CD40L誘導性のHEK-Blue CD40L細胞の活性化に対するCD40拮抗型抗体の阻害作用を検出することにより、IC50の大きさに基づいてCD40拮抗型抗体のインビトロ細胞活性を評価した。
【0153】
HEK-Blue CD40L細胞を10%のFBS、100 μg/mLのNormocin、100 μg/mLのZeocinと30 pg/mLのBlasticidinを含むDMEM培地において培養し、1週間に2~3回継代した。HEK-Blue CD40L細胞を5E4/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに播き(培地はDMEM、10%のFBS、100 μg/mLのNormocinである)、一晩培養した。細胞が壁に付着した後、各ウェルに100 μLの勾配希釈した測定待ちの抗体を加え、37℃で1時間インキュベートした。CD40L-his(R&D、2706-CL-025)及び抗His抗体(R&D、MAB050-500)を加え、一晩培養した。細胞を遠心分離し、20 μLの細胞上清を新しい96ウェルホワイトプレートに移し、180 μLのQUANTI-Blue基質溶液を加え、暗所で15分間インキュベートし、Envisionマイクロプレートリーダーにより620 nmでの吸光度を測定し、IC50値を算出してCD40拮抗型抗体のインビトロ細胞活性を評価した。
【0154】
その結果、表12及び図1A~1Bに示すように、9E6-L4H2とCFZ533とはレポーター遺伝子システムに対して類似の阻害活性を有するが、2F12-L4H2はCFZ533よりも阻害活性が優れている。
【0155】
【表12】
【0156】
実施例9. 抗CD40抗体のB細胞活性化実験系における阻害活性
CD40はB細胞に高く発現され、CD40LはCD40に結合すると、B細胞の活性化を誘導し、一連の活性化マーカーの発現をアップレギュレートすることができる。CD40拮抗型抗体は、CD40LとCD40の結合を遮断することにより、B細胞の免疫活性化過程を解除する。
【0157】
ヒトPBMCを2E5/ウェル、50 μL/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに播いた(培地はRPMI-1640、10%のFBS、1%のペニシリン-ストレプトマイシンである)。各ウェルに勾配希釈した測定待ちの抗体50 μLを加え、37℃、5%のCOの条件で0.5時間共インキュベートした。各ウェルにCD40L-his及び抗His抗体を加え、一晩刺激した。翌日、遠心分離して上清を除去し、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、100 μLの1:1000で希釈したFixable viability dye EF780(Invitrogen、65086514)を加えて室温で15分間染色した。細胞を2回洗浄した後、100 μLの1:200で希釈したヒトFcブロッキング剤(Fc blocker、BD、564220)を加えて室温で10分間ブロッキングした。細胞を遠心分離した後、1:200で希釈したフロー抗体(PerCP/Cyanine5.5 anti-human CD19(Biolegend、302230)、APC anti-human CD69(Biolegend、310910))を加え、4℃で0.5時間インキュベートした。遠心分離して上清を除去し、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した後、200 μLのPBSで細胞を再懸濁し、フローサイトメーター(BD FACS Celesta)により細胞表面の蛍光強度を検出した。
【0158】
その結果、表13及び図2A~2Bに示すように、9E6-L4H2はCFZ533に比べて類似のB細胞活性化阻害活性を有する。2F12-L4H2は、B細胞阻害活性がCFZ533よりも強い。
【0159】
【表13】
【0160】
抗体を加えた後、CD19+CD69+シグナルはバックグラウンド値を下回ったが、これはおそらくB細胞のバックグラウンド活性化がある程度阻害されたためであろう(CD40L誘導性のシグナルの阻害以外)。
【0161】
実施例10. 抗CD40抗体のDC細胞活性化実験系における阻害活性
CD40は樹状細胞(Dendritic Cell、DC)に高く発現され、CD40LはCD40に結合すると、DC活性化を誘導し、DC細胞表面での複数の活性化マーカーの発現をアップレギュレートするとともに、複数種の炎症性因子が分泌されるようにDCを促進し、免疫反応を更に拡大することができる。CD40拮抗型抗体は、CD40LとCD40の結合を遮断することにより、DC細胞の免疫活性化過程を解除する。
【0162】
EsaySepTMヒトCD14選別試薬キット(Stemcell、19359)により新鮮な初代ヒト末梢血PBMCから単核細胞を選別して富化し、RPMI-1640培地(10%のFBS、1%のペニシリン-ストレプトマイシン)、50 ng/mLのIL-4(PeproTech、200-04)及び50 ng/mLのGM-CSF(PeproTech、300-03)により6日間分化した。7日目に、分化済みのDC細胞を、1E5/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに播いた。各ウェルに勾配希釈した測定待ちの抗体を加え、37℃、5%のCOの条件で0.5時間共インキュベートした。各ウェルに最終濃度であるCD40L-hisと抗His抗体を更に加えた。48時間培養した後、DC細胞の活性化レベルをフローサイトメトリーで検出した:遠心分離して上清を除去し、細胞をFACS緩衝液(PBS+2%のFBS)で2回洗浄し、100 μLの1:1000で希釈したFixable viability dye EF780(Invitrogen、65086514)を加えて室温で15分間染色した。細胞を2回洗浄した後、100 μLの1:200で希釈したヒトFcブロッキング剤(BD、564220)を加えて室温で10分間ブロッキングした。細胞を遠心分離した後、1:200で希釈したフロー抗体(Alexa Fluor(登録商標) 700 anti-human CD11c(Biolegend、337220)、Brilliant Violet 421商標 anti-human CD80(Biolegend、305221)、APC anti-human CD86(Biolegend、305412))を加え、4℃で0.5時間インキュベートした。遠心分離して上清を除去し、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した後、200 μLのPBSで細胞を再懸濁し、フローサイトメーター(BD FACS Celesta)により細胞表面の蛍光強度を検出した。
【0163】
更に、それぞれ24時間(TNFα、Cisbio、62HTNFAPEG)と48時間(IL-12/23 p40、Novus、VAL121)培養した後、上清におけるサイトカインの分泌レベルを検出した。
【0164】
実験の結果は表14及び図3A~3Dに示すように、9E6-L4H2及び2F12-L4H2が対照抗体CFZ533と類似のDC細胞阻害活性を有する。
【0165】
【表14】
【0166】
実施例11. ヒト化抗CD40抗体のB細胞活性化実験系におけるアゴニスト活性
CD40はTNFスーパーファミリー受容体に属し、リガンドCD40Lに結合するか又は抗体により架橋されると、下流シグナル伝達経路の特異的と非特異的活性化を媒介することができるので、CD40Lを加えない条件でCD40拮抗型抗体のB細胞へのバックグラウンドアゴニスト活性を検出することができる。
【0167】
ヒトPBMCを2E5/ウェル、100 μL/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに播いた(培地はRPMI-1640、10%のFBS、1%のペニシリン-ストレプトマイシンである)。各ウェルに100 μLの勾配希釈した測定待ちの抗体を加え、37℃、5%のCOで一晩培養した。翌日、遠心分離して上清を除去し、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、100 μLの1:1000で希釈したFixable viability dye EF780を加えて室温で15分間染色した。細胞を2回洗浄した後、100 μLの1:200で希釈したヒトFcブロッキング剤を加えて室温で10分間ブロッキングした。細胞を遠心分離した後、1:200で希釈したフロー抗体(PerCP/Cyanine5.5 anti-human CD19(Biolegend、302230)、APC anti-human CD69(Biolegend、310910))を加え、4℃で0.5時間インキュベートした。遠心分離して上清を除去し、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した後、200 μLのPBSで細胞を再懸濁し、フローサイトメーター(BD FACS Celesta)により細胞表面の蛍光強度を検出した。
【0168】
その結果、図4に示すように、CD40アゴニスト抗体9E5-SELFNS(WO2020108611A1)はB細胞を用量依存的に活性化しているが、9E6-L4H2及び2F12-L4H2は2.5 nMでも明らかなB細胞アゴニスト活性を示していない。
【0169】
実施例12. マウスT細胞依存性の体液性免疫応答(TDAR)モデル
雌のヒトCD40トランスジェニックマウスは、6~7週齢で、Biocytogen JiangSu Co., Ltd.から購入された。飼育環境:SPF、生産ライセンス:SCXK(蘇)-2016-0004、ヒトCD40トランスジェニックマウスの合格証明書番号:320726200100167773。動物が到着した後、7日間適応的に飼育し、ランダムに群分けした。実験の0日目に、各群のマウスから1匹を取って採血した後、腹腔内注射で投与した。1日目にマウスに50 μgのKLH(KLH:完全フロイントアジュバントCFA=1:1乳化免疫複合物)/匹で腹腔内注射して免疫した。実験の15日目に、50 μgのKLH(KLH:不完全フロイントアジュバントIFA=1:1乳化免疫複合物)/匹で腹腔内注射して二次免疫した。各群の薬剤を週2回腹腔内注射し、それぞれ7、14、21と28日目に眼窩静脈叢から~150 μL採血した。全血を室温で1~4時間静置し、7000 rpmの速度で4℃で10分間遠心分離して血清を分離し、-80℃で保存して使用に備えた。具体的な実験プロセスは図5に示されている。
【0170】
具体的な投与計画は表15に示すように、マウス血清を週ごとに分離して抗KLHの特異的IgGレベルをELISAにより検出した。
【0171】
【表15】
【0172】
その結果、図5B及び表16に示すように、1 mg/kgのCD40拮抗型抗体は、2回免疫後の抗KLHの特異的IgGの産生を顕著に阻害している。低用量である0.3 mg/kgの9E6-L4H2及び2F12-L4H2は、同用量CFZ533に比べて、2回免疫後の抗KLHのIgGの産生に対してより優れた阻害作用を有する。
【0173】
【表16】
【0174】
実施例13. マウス皮膚移植拒絶モデル
6週齢で雄のbalb/cマウスは、上海市計画生育科学研究所実験動物経営部から購入された。飼育環境:SPF、合格証番号:20180006023393。
【0175】
雌のヒトCD40トランスジェニックマウスは、6~7週齢で、Biocytogen JiangSu Co., Ltd.から購入された。飼育環境:SPF、合格証明書番号:320726200100179778。
【0176】
動物が到着した後、7日間適応的に飼育し、ランダムに群分けした。実験の2日前に、マウスにタクロリムスFK506又はCD40拮抗型抗体を腹腔内注射した。実験の0日目に、4%の抱水クロラールでドナーBalb/Cマウス及びC57BL6/Jマウスを麻酔し、ドナーのマウスの尾を取り除き、全周の長さが1 cmの尾部皮膚を分離した。レシピエントマウスの背部を除毛し、皮膚層に沿って切開し、背部の脂肪及び結合組織を保持しながら等面積の皮膚を除去し、ドナー皮膚をレシピエントマウスの切開部に置き、接着剤で辺縁皮膚を縫合し、ケージに入れて回復させた。具体的な実験プロセスは図6Aに示されている。
【0177】
表17の投与計画によってマウスに投与し、マウスを7日間回復させた後、毎日マウスの皮膚の生存状態を観察し、拒絶採点に従って拒絶スコアを記録した。採点システムは以下の通りである:3:皮膚は赤みが認められず、滑らかであること、2:皮膚の一部は赤みが出て、光沢が失われ、乾燥していること、1:皮膚の殆どは赤くなり、縞模様がなく、縮んでいること、0:移植拒絶により皮膚の80%が壊死したこと。
【0178】
【表17-1】
【表17-2】
【0179】
その結果、図6B及び表18~20に示すように、CD40拮抗型抗体は、モデル群に比べて何れもマウス皮膚移植片の採点を顕著に改善し、皮膚移植片の生存期間を延長することができる。皮膚移植片を採点する過程では、それまでに相違が見られなかったため、8日目から採点した。9E6-L4H2及び2F12-L4H2は、対照抗体CFZ533よりも優れた抗移植拒絶活性を示している。
【0180】
【表18】
【0181】
【表19】
【0182】
【表20】
【0183】
また、図7と表21~表23に示すように、9E6-L4H2及び2F12-L4H2はタクロリムスと併用した後、抗マウス皮膚移植拒絶に対する効果が更に向上している。
【0184】
【表21】
【0185】
【表22】
【0186】
【表23】
【0187】
実施例14. ヒト化抗CD40抗体のヒトCD40トランスジェニックマウスにおけるPK検出
雌のヒトCD40トランスジェニックマウスは、6~7週齢で、Biocytogen JiangSu Co., Ltd.から購入された。飼育環境:SPF、生産ライセンス:SCXK(蘇)-2016-0004、ヒトCD40トランスジェニックマウスの合格証明書番号:320726200100154632。動物が到着した後、7日間適応的に飼育し、ランダムに群分けした。実験の0日目に、各群のマウスに10 mg/kgで抗CD40抗体を腹腔内注射し、投与後の15分間、4時間、8時間、1日間、2日間、4日間、7日間、10日間と14日間に、それぞれ100~150 μL採血し、10 μLのEDTA-K2(0.1 M)により抗凝固し、氷上で保存した。ELISAにより異なる時点でのマウス血漿中の抗体濃度を検出した。具体的な検出方法は以下の通りである:ヤギ抗ヒトIgG Fc抗体(Rockland、Cat#609-101-017)をPBSで2.5 μg/mLに希釈し、50 μL/ウェルで96ウェルプレートに加え、4℃で一晩インキュベートした。洗浄液で3回洗浄した後、各ウェルに50 μLのブロッキング溶液を加え、37℃で1時間インキュベートした。マウス血漿と検出待ちの抗体の検量線を加え、37℃で2時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、50 μL/ウェルで抗hlgG Fab-HRP(Sigma、Cat#A0293、1:10000)を加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄した。各ウェルに100 μLのTMBを加え、暗所で5分間反応させた。各ウェルに100 μLの0.16 Mの硫酸を加えた。Envisionマイクロプレートリーダーにより450 nmのOD値を読み取り、CD40拮抗型抗体の濃度を算出した。
【0188】
その結果、表24及び図8に示すように、9E6-L4H2、2F12-L4H2と対照分子CFZ533とは、ヒトCD40トランスジェニックマウスにおいて類似のPK特性を有する。
【0189】
【表24】
【0190】
実施例15. ヒト化抗CD40抗体のヒトFcRnへの親和性測定
測定待ちの抗体を抗ヒトFabのチップへアフィニティー捕捉した後、一連の濃度勾配でのヒトFcRn抗原(AcroBiosystemから購入)をチップ表面に流し、Biacore機器により、反応が定常状態になった時のシグナルをリアルタイムで検出した。実験に使用された緩衝液は、D.I.Waterで1×(pH7.4)に希釈されたHBS-EP+10×緩衝溶液(Cat. #BR-1006-69、GE)である。実験から得られたデータを定常状態結合(Steady State Binding)モデルでフィッティングし、表25に示すように、親和性の値を得た。親抗体に比べて、AAYTE変異を持つ抗CD40抗体は、ヒトFcRnとの結合親和性がより高い。
【0191】
【表25】
【0192】
実施例16. FcにAAYTE変異が持たれた抗CD40抗体のB細胞活性化実験系における阻害活性
実施例10中の方法を参照して、FcにAAYTE変異が持たれた抗CD40抗体2F12-L4H2-AAYTE、9E6-L4H2-AAYTEのB細胞活性化実験系における阻害活性を検出した。その結果、図9A図9Bに示すように、Fc変異した抗CD40抗体は、親抗CD40抗体と類似のB細胞阻害活性を有する。
【0193】
実施例17. FcにAAYTE変異がもたれた抗CD40抗体のDC細胞活性化実験系における阻害活性
実施例11中の方法を参照して、FcにAAYTE変異がもたれた抗CD40抗体2F12-L4H2-AAYTE、9E6-L4H2-AAYTEのDC細胞活性化実験系における阻害活性を検出した。その結果、図10A図10Dに示すように、Fc変異した抗CD40抗体は、親抗CD40抗体と類似のDC細胞阻害活性を有する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
【配列表】
2024523514000001.app
【国際調査報告】