(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】試料の輝度情報を取得するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20240621BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G02B21/00
G01N21/64 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579219
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022066981
(87)【国際公開番号】W WO2022268868
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021206433.7
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フーゼ、ディーター
(72)【発明者】
【氏名】カリーニン、スタニスラフ
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA05
2G043EA01
2G043FA02
2G043HA01
2G043HA02
2G043KA09
2G043LA01
2H052AA08
2H052AA09
2H052AB05
2H052AC04
2H052AC15
2H052AC16
2H052AC27
2H052AC34
2H052AD18
2H052AF14
(57)【要約】
本発明は、特に蛍光相関分光法を使用して試料(48)の輝度情報を取得する方法に関する。第1の測定ブロックにおいて、試料(48)は、レンズ(47)を使用して励起放射線の集束ビームで照明され、励起放射線は、第1の開口数の角度範囲で試料(48)上/内に向けられる。ビームの断面の第1の範囲は、この目的のためにレンズ(47)の入射瞳(EP)において調整される。照明から生じる励起体積内の試料(48)において、検出放射線が生成され検出される。検出された検出放射線は、検出ビーム経路(410)に沿って方向付けられ、検出ビーム経路(410)の光軸(oA)の周りに等間隔で配置され、互いに独立して読み取り可能である複数の検出器要素(1~32)を備える空間分解検出器(414)上にマッピングされ、輝度情報が取得される。有利には、第1の開口数は、試料(48)の少なくともいくつかの光学特性の値を取得することによって試料(48)に基づいて選択され、現在の第1の開口数は、取得された値に基づいて決定され調整される。本発明はさらに、本発明による方法を実行するように設計された装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(48)から輝度情報を取得するための方法であって、第1の測定ブロックを有し、
前記第1の測定ブロックは、
対物レンズ(47)を使用して励起放射線の集束ビームによって前記試料(48)を照明するステップAと、ここで、前記対物レンズ(47)の入射瞳(EP)における前記ビームの断面の第1の広がり範囲が設定されることによって、前記励起放射線は、第1の開口数の角度範囲で前記試料(48)にまたは前記試料(48)内に向けられており、
前記照明により前記試料(48)の励起体積内で検出放射線を生成するステップBと、
前記検出放射線を捕捉するステップCと、
捕捉された前記検出放射線を検出ビーム経路(410)に沿って案内し、前記検出放射線を、中間像面に配置された空間分解検出器(414)上に結像するステップDと、ここで、前記空間分解検出器(414)は、前記検出ビーム経路(410)の光軸(oA)の周りに等距離で配置され且つ互いに独立して読み取り可能である複数の検出素子(1~32)を有しており、
前記光軸(oA)から同じ距離に配置された一群の検出素子(1~32)の少なくともそれぞれの要素から輝度情報を取得するステップEと、
を備え、
前記第1の開口数は、前記試料(48)の少なくともいくつかの光学特性の複数の値を取得し、取得された前記複数の値に基づいて現在の前記第1の開口数を決定および設定することによって、前記試料(48)に基づいて選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップA~Eは、第2の測定ブロックまたはさらなる複数の測定ブロックにおいて繰り返され、
ステップAにおいて、
前記対物レンズ(47)の前記入射瞳(EP)における前記ビームの前記第1の広がり範囲とは異なる第2の広がり範囲が設定されるか、又は捕捉された前記検出放射線のビームの直径が前記第1の測定ブロックに対して又は先行する測定ブロックに対して変更され、
前記捕捉された検出放射線の前記ビームの広がり範囲が、前記検出器(414)の検出領域のサイズに適合され、その結果、前記検出領域が全体的に照明されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光軸(oA)上に位置する第1の群から始まり、さらなる径方向外側に隣接する群がそれぞれ順番に考慮され、先行する複数の群と組み合わされて共通グループを形成することによって、各測定ブロックにおいてサイズが増大する複数の仮想ピンホールがそれぞれ作成され、その結果、前記励起放射線の前記集束ビームによって決定される共焦点励起体積内で、特定の測定体積の複数の輝度情報が、それぞれの共通グループに属する複数の検出素子(1~32)によってピンホールサイズごとに取得されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の測定体積が前記複数の測定ブロックにおいて捕捉され、前記複数の測定体積の複数の平均直径が、前記光軸(oA)に垂直な方向において少なくとも5nmだけ異なることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのさらなる測定ブロックのステップAにおいて、前記対物レンズ(47)の前記入射瞳(EP)における前記ビームの広がり範囲が、先行する測定ブロックにおける前記ビームの広がり範囲より小さくなるように選択されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップA~Eが、前記第2の測定ブロックまたはさらなる複数の測定ブロックにおいて繰り返され、後続の測定ブロックの補正される現在の開口数が、前記取得された複数の値に基づいて決定および設定されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
選択された複数の検出素子(1~32)から取得された複数の輝度情報が、空間および時間の少なくとも一方に関して互いに関連していることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
蛍光相関分光法を実行するために、選択された複数の検出素子(1~32)からの複数の輝度情報の空間的関係および時間的関係の少なくとも一方が決定されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
検出放射線は、少なくとも2つの波長で発生し、捕捉され、異なる波長についての測定値が、位置に関連した方法で互いに比較されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
試料(48)から輝度情報を取得する装置であって、
励起放射線のビームを案内する励起ビーム経路(42)であって、試料空間内に焦点を生成するための対物レンズ(47)を含む前記励起ビーム経路(42)と、
前記試料空間から発生し、前記対物レンズ(47)によって捕捉される検出放射線のビームを案内する検出ビーム経路(410)であって、
複数の検出素子(1~32)を有する空間分解検出器(414)であって、前記複数の検出素子から複数の輝度情報が互いに独立して取得および読み出し可能である、前記空間分解検出器(414)と、
前記検出放射線のビームの広がり範囲の制御された変更のための手段(411)であって、前記検出放射線のビームの広がり範囲の制御された変更のための手段(411)によって、検出領域を全体的に照明するために、前記捕捉される検出放射線の前記ビームの広がり範囲を前記検出器(414)の検出領域のサイズに適合させることができる、前記検出放射線のビームの広がり範囲の制御された変更のための手段(411)と、
を備え、
前記対物レンズ(47)の入射瞳(EP)における前記ビームの断面の広がり範囲の制御された調整のための手段(44)が、前記励起ビーム経路(42)内、前記検出ビーム経路(410)内、または前記励起ビーム経路(42)および前記検出ビーム経路(410)の共通部分内に配置されることを特徴とする装置。
【請求項11】
前記捕捉された検出放射線を前記励起放射線から分離し、前記検出放射線の前記ビームを前記検出ビーム経路(410)内に向かわせるために、ビームスプリッタ(43)が設けられることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記検出放射線の前記ビームの広がり範囲の制御された変更のための前記手段(411)が、ズーム光学ユニット(411)であることを特徴とする請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記対物レンズ(47)の前記入射瞳(EP)における前記ビームの前記断面の広がり範囲の制御された調整のための前記手段(44)が、調整可能な絞り、前記励起ビーム経路に導入可能な少なくとも1つの絞り、望遠鏡、または音響光学素子であることを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
制御ユニット(413)が設けられ、前記対物レンズ(47)の前記入射瞳(EP)における前記励起放射線の前記ビームの前記断面を調整するための前記手段(44)および前記検出放射線の前記ビームの前記断面の広がり範囲を調整するための前記手段(411)を制御するために、前記制御ユニットは、前記手段に接続され、前記制御ユニットは、前記制御ユニット(413)が対応する複数の制御コマンドを生成し、これらを関連する調整手段(44、411)のアクチュエータ(412、416)に送信することによって、前記手段(44、411)のそれぞれの設定が前記励起放射線および前記検出放射線の前記断面の広がり範囲の所定の関係に基づいて実施されるように構成されていることを特徴とする請求項10~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
粘度、前記試料内に位置する少なくとも1つの種類の物体の拡散係数、および少なくとも1つの励起体積内の温度を決定するための、請求項10~14のいずれか一項に記載の装置の使用であって、必要に応じて前記粘度および前記試料の拡散係数の少なくとも一方の温度に対する予め確立された依存性に基づいて、局所温度が推定される、装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のプリアンブルによる方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光相関分光法(FCS : Fluorescence correlation spectroscopy)は、共焦点走査顕微鏡法、特に共焦点レーザー走査顕微鏡法の分野の方法であり、例えば、細胞内の分子の挙動のダイナミクスを調べるためにその効果が証明されている。
【0003】
以下でFCSとも略される方法は、継続的にさらに開発されており、これにより、FCSのさまざまな変型が利用可能である(例えば、非特許文献1および非特許文献2)。変型の1つは、「スポット変動(spot-variation)FCS」として知られるものである(例えば、非特許文献3)。このプロセスでは、励起放射線が集束され、試料に向けられる。伝搬方向(通常は光軸)を横切る方向(xまたはy方向)および伝搬方向(z方向)における励起放射線の集束ビームの焦点の集束および広がり範囲によって、共焦点検出と併せて、いわゆる共焦点体積(コンフォーカルボリューム:konfokales Volumen)が試料内で照明される。異なる複数のサイズの共焦点体積について輝度情報(測定値)が取得される。この目的のために、照明目的で使用される対物レンズの開口数(NA : numerical aperture)が変更され、例えば、可変虹彩絞り、レボルバ(Revolver)もしくはスライダ(Schieber)上に配置された異なる複数のピンホール、または望遠鏡が励起ビーム経路内に設けられ、適宜制御される。輝度情報は、光検出器(例えば、フォトダイオード)によって取得される。
【0004】
このアプローチの欠点は、測定されるべき各体積サイズに対して個々の長引く測定が実行される必要があり、個々の測定当たり10~100秒の典型的な持続時間がかかることである。
【0005】
Scipioniらによる刊行物(非特許文献4)は、スポット変動FCSの改良を開示している。取得目的のために、空間分解能を有する平面検出器が使用され、その複数の検出素子は、個々にかつ互いに独立して読み取られ、評価されることができる。特に、「Airyscan検出器」と呼ばれる検出器タイプがScipioniらで使用されており、それは検出ビーム経路の中間像面に配置され、そのそれぞれの検出素子は個々のピンホールとして作用する(非特許文献5)。この方法構成では、選択された複数の検出素子からの輝度情報が評価され、異なるサイズの仮想ピンホールが検出素子の選択によって模擬される。このようにして、実際に照明される共焦点励起体積が一定のままであっても、変化する複数の共焦点測定体積を仮想的に生成することが可能である。Scipioniらによる刊行物(2018年)による手順は、単一の測定によって最大4つの異なる測定体積から輝度情報を同時に取得することを可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lenneら著、2006年;EMBO J.25:3245-3256
【非特許文献2】Wengerら著、2007年;Biophys.J.92:913-919
【非特許文献3】Wawreznieck,Lら著、2005;Biophys.J.89:4029-4042
【非特許文献4】Scipioniら著、2018年;Nature Communications;DOI:10.1038/s41467-018-07513-2
【非特許文献5】Huff、2015年,NatureMethods;Application Notes,December 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に生物学的試料の場合には励起放射線による可能な限り低い曝露が望ましいため、本発明は、特に蛍光相関分光法についての取得速度のさらなる向上に関する選択肢を提案するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、輝度情報を取得するための方法によって達成される。さらに、この目的を達成するのに適した装置が提案される。この方法および装置は、独立請求項の主題である。本発明の有利な発展形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
特に蛍光分光法の手法によって試料から輝度情報を取得するための可能性のある方法では、それぞれが少なくとも1つの測定プロセスを含み、それぞれがいくつかの個別測定を含む少なくとも1つの測定ブロックが実施される。第1の測定ブロックは、ステップA~Eを含む。
【0010】
ステップAにおいて、対物レンズを使用した励起放射線の集束ビームによって試料が照明され、励起放射線は、第1の開口数の角度範囲で試料にまたは試料内に向けられる。この目的のために、対物レンズの入射瞳におけるビームの断面の第1の広がり範囲が設定される。
【0011】
ステップBは、この照明による試料の励起体積内の検出放射線の発生を含む。この励起体積は、共焦点体積または共焦点励起体積とも呼称される。検出放射線は、特に励起放射線の影響から発生する放射線である。したがって、例えばレーザー放射線の形態の励起放射線によって、試料の構造、細胞小器官、分子、および/または領域をマーキングするために使用される蛍光体による検出放射線が放出されることができる。
【0012】
検出放射線は、ステップCにおいて捕捉される。有利には、検出放射線は、使用される光学デバイスの設定の技術的複雑さを妥当な限度内に保つために、照明にも使用される同じ対物レンズを使用して捕捉される。
【0013】
ステップDは、捕捉された検出放射線を検出ビーム経路に沿って案内することと、検出ビーム経路の光軸の周りに等距離で複数の群で配置され、互いに独立して読み取り可能である複数の検出素子を有する空間分解検出器上に検出放射線を結像することと、を含む。本明細書において、複数の群での配置は、少なくとも2つの検出素子が光軸から同じ距離に配置されることを意味すると理解され、すなわち、群は、関連する群の複数の検出素子について同じである距離によって決定される。複数の検出素子は、互いに隣接する必要はない。さらに、群の個々の検出素子の光軸からの距離は、許容範囲内で変化してもよい。複数の検出素子のうちの1つは、検出ビーム経路の光軸上に位置し、それ自身の群を形成することができる。
【0014】
ステップEにおいて、複数の輝度情報が複数の検出素子から複数の測定値として取得され、光軸から同じ距離に配置された複数の検出素子の少なくとも1つの選択された群のそれぞれの要素から取得された複数の輝度情報が評価され、特に、計算によって互いにおよび/またはさらなる群からの輝度情報と組み合わされる。このプロセスでは、特に、さらなる複数の検出素子、例えばさらなる複数の群の追加の複数の輝度情報も同時に取得することが可能であり、これにより、特に異なるサイズおよび/または異なる形状を有する複数の仮想ピンホールを作成することが可能である。同じ時間において取得された一群からの複数の輝度情報が、関連する群に割り当てられることが重要である。さらに、複数の群の複数の検出素子から複数の輝度情報を取得し、これらを任意選択的に記憶または一時記憶することが可能であるが、分析手順内で選択された複数の検出素子からの複数の輝度情報のみを使用することも可能である。
【0015】
本方法は、特に、試料の少なくともいくつかの光学特性の複数の値を取得し、取得された複数の値に基づいて現在の第1の開口数を決定および設定することによって、第1の開口数が試料に基づいて選択される選択肢を含む。
【0016】
一例として、試料の光学特性は、試料の空間的寸法、特に試料の厚さ、および試料の光学密度を意味すると理解される。さらに、光学特性は、例えば、試料が位置する、および/または試料の構成部分(例えば、サイトゾル(cytosol))である媒体のタイプによって決定される。さらに、試料の光学特性として、例えば、細胞小器官または分子の予想または決定された数、タイプ、および充填密度、ならびに利用されるマーカー(例えば、フルオロフォア(Fluorophore))が考慮されることができる。
【0017】
例として、試料のいくつかの光学特性のそれぞれの値は、事前に測定または推定されることができる。代替又は追加として、考慮されるべき光学特性の全て又は一部は、適切なシミュレーションによって決定され、その後の使用のために提供されることができる。複数の光学特性を取得することは、提供されたルックアップテーブル(LUT : lookup table)から対応する複数の値を読み出すことを意味するとも理解される。
【0018】
本発明による方法で使用するために提供される光学特性の数および種類は、各試料種類(固定選択)または各試料(個別選択)について定義されることができる。しかしながら、例えば、事前に決定された光学特性の数及び品質を考慮すること、及び/又は方法の実施中にこれらを適応させること(動的選択)も可能である。
【0019】
本発明による方法の好ましい構成では、ステップA~Eは、第2の測定ブロックまたはさらなる複数の測定ブロックにおいて繰り返すことができ、ステップAは、対物レンズの入射瞳におけるビームの広がり範囲を、先行する測定ブロックのビームの広がり範囲とは異なる広がり範囲に調整すること、または第1の測定ブロックに対して、もしくは先行する測定ブロックについて捕捉される検出放射線のビームの直径を変更することを含む。さらに、捕捉される検出放射線のビームの広がり範囲は、検出器の検出領域のサイズに適合され、その結果、検出領域は全体的に照明される。この手段は、例えば、第1の広がり範囲に対して変更された第2の広がり範囲の場合にも利用可能な全ての検出素子を使用することができること、又は検出放射線のビームの望ましくないアンダーサンプリングがないことを保証する。
【0020】
本発明による方法を実施するために使用される照明および結像装置が、ビームの広がり範囲を設定するために離散的に調整可能な複数の絞りの直径(以下参照)のみを提供する場合、絞りの直径とAiryscanズーム設定との組み合わせを最良適応で手動または自動で選択することが可能である。
【0021】
本発明の本質は、i)選択的かつ個別に読み取り可能な複数の検出素子を有する空間分解検出器の使用と、ii)蛍光相関分光法(FCS : fluorescence correlation spectroscopy)を実行するための励起放射線のビームの広がり範囲の制御された可変調整とを組み合わせることにある。検出器の特定の構成に応じて、例えば、第1の測定ブロックにおいて、各々が複数の個別測定を有する4つの測定プロセスを同時に実行することが可能である。個々の測定は、1つの検出素子からの輝度情報を取得することができる。その完了後、例えば4つのさらなる測定プロセスが、短時間内に第2の測定ブロックにおいて同時に実行されることができる。このようにして、例えば、8つの測定プロセスを短時間で実行することが可能である。
【0022】
本発明による方法の様々な構成において、励起放射線のビームの広がり範囲は、励起ビーム経路のみにおいて、または励起放射線および検出放射線のビーム経路の共通部分のみにおいて調整されることができる。さらなる構成では、励起放射線のビームの広がり範囲の調整の効果を再現するために、検出放射線のビームの広がり範囲を検出ビーム経路内において制御された方法で変更することができる。
【0023】
有利には、空間分解検出器として、いわゆるAiryscan検出器を使用することができ、この場合、複数の検出素子の配置は、検出放射線のビームの円形断面に既に適合されている。本発明のさらなる実施形態では、他の複数の検出器を使用することが可能であり、これらの検出器は、検出ビーム経路内のいわゆるピンホール平面(中間像)内に配置され、それらの複数の検出素子は、個別に選択的に読み取られることができる。例として、そのような検出器は、SPAD(single photon avalanche diode)アレイであり得る。複数の検出素子は、本発明のさらなる実施形態では、複数の行および複数の列に配列されることができる。光軸からほぼ同じ距離にある複数の検出素子をそれぞれの群に割り当てるために、複数の列および/または複数の行の複数の検出素子を個別に選択して読み取ることが可能である。複数の検出素子からそれぞれ読み取られた複数の測定値は、検出素子および任意選択的に群に割り当てられて記憶され、利用可能に保持されるか、またはさらなる処理のために提供される。
【0024】
さらなる構成では、本方法は、さらなる複数の測定ブロック、すなわち第3、第4の測定ブロックなどを使用して実行されることができる。その場合、明細書において上述したおよび後述する説明が適宜適用される。
【0025】
ステップA~Eが第2の測定ブロックまたはさらなる複数の測定ブロックにおいて繰り返される場合、取得された複数の値に基づいて、補正された現在の開口数を決定および設定することが可能である。例えば、これにより、ユーザーは、特定のサンプルに最も適した構成を系統的に決定することができ、したがって、最良の点広がり関数(PSF : point spread function)を決定することができる。
【0026】
説明を簡潔にするために、以下では実質的に少なくとも2つの測定ブロックについて言及する。
本発明による方法の構成の測定ブロックにおいて、共焦点励起体積の一部は、それぞれ選択された複数の検出素子およびこのようにして得られた複数の仮想ピンホールによって、(修正された照明スポットに対応する)それぞれの測定体積の形態でそれぞれ捕捉される。それぞれの部分の平均直径、例えば関連する複数の測定体積のビームウエスト(Strahltaille)の平均直径は、光軸に対して垂直に少なくとも5nm異なる。これにより、各測定プロセスにおいて、今までまだ取得されていない追加の測定値が得られることが保証される。
【0027】
2つの測定ブロックの比較において、同じことが、捕捉されるべき励起体積の複数の部分の選択に当てはまる。したがって、入射瞳におけるビームの第2の広がり範囲は、有利には、第1および第2の測定ブロックにおいて捕捉される励起体積の複数の部分の平均直径が少なくとも5nmだけ異なるように選択される。
【0028】
本発明による方法の可能性のある構成は、第2の測定ブロックのステップAにおいて、対物レンズの入射瞳におけるビームの第2の広がり範囲を、ビームの第1の広がり範囲よりも小さくなるように選択することを含む。結果として、励起放射線のビームの直径、つまり対物レンズの入射瞳におけるビームの広がり範囲が縮小される。これはまた、開口数(NA : numerical aperture)の制限につながり、その角度範囲で、対物レンズによって集束された励起放射線が試料に向けられる。NAの制限は、同時に励起のPSF(point spread function)を大きくする。
【0029】
本発明による方法の有利な構成では、励起放射線のビームの広がり範囲を、少なくとも1つの先行する測定ブロックにおける広がり範囲に対して小さくする。同時に、検出放射線の開口数は、励起放射線のビームの複数の広がり範囲とは独立して維持される。このような方法の設計は、励起放射線のビームのそれぞれの広がり範囲の調整が励起ビーム経路のみにおいて実施される装置(以下参照)によって支援される。
【0030】
本発明による方法のさらなる構成では、第1の開口数は、第2の開口数または少なくとも1つの後続の測定ブロックの第2の開口数よりも小さくなるように選択されることもできる。
【0031】
本発明による方法によって取得された輝度情報は、特に蛍光相関分光法を実施するために使用されることができる。この目的のために、異なる群の選択された複数の検出素子から取得された複数の輝度情報は、空間および/または時間に関して互いに関連しており、このことは、以下、「計算による組合せ」という句の下に組み込まれている。
【0032】
本発明による方法のさらなる構成では、検出放射線は、少なくとも2つの波長で発生し、捕捉される。異なる波長についての測定値は、位置に関連した方法(例えば、相互相関)で互いに比較される。
【0033】
ステップA~Eが第2の測定ブロックまたはさらなる複数の測定ブロックにおいて繰り返される場合、取得された複数の値に基づいて、後続の測定ブロックの補正される現在の開口数を決定および設定することが可能である。このようにして、試料、利用されるマーカー、および/または照明および結像装置(輝度情報を取得する装置)の特性および相互作用に個別に対応することが可能である。
【0034】
方法に加えて、本発明は、試料から輝度情報を取得する装置にも関する。この装置は、励起放射線のビームを案内する励起ビーム経路を備え、励起ビーム経路内には、試料空間内に焦点を生成するための対物レンズが設けられている。さらに、試料空間から発生し、対物レンズによって捕捉される検出放射線のビームを案内する検出ビーム経路は、装置の構成部分である。検出ビーム経路は、複数の検出素子を備える空間分解検出器を有し、これらの検出素子から複数の輝度情報を互いに独立して取得し読み取ることができる。さらに、検出ビーム経路は、検出放射線のビームの広がり範囲の制御された変更のための手段を含む。その効果の結果として、捕捉された検出放射線のビームの広がり範囲を、検出器の検出領域のサイズに適合させることができる。このようにして、検出領域を全体的に照明することができる。
【0035】
捕捉された検出放射線は、ビームスプリッタ(主カラースプリッタ)の効果の結果として検出ビーム経路に入る。この場合、主カラースプリッタは、補足された検出放射線を、入射または反射された励起放射線から分離する。
【0036】
本発明による装置は、対物レンズの入射瞳におけるビームの断面の広がり範囲の制御された調整のための手段によって特徴付けられる。この手段は、特に有利には、励起ビーム経路内に配置されることができる。代替的な実施形態では、この手段を共通のビーム経路または検出ビーム経路に配置することも可能であるが、それに関連する欠点は小さい。検出ビーム経路におけるこの手段の同様に可能な配置は、間接的に、結果として、対物レンズの入射瞳におけるビームの断面の広がり範囲の調整と同等である効果をもたらす。
【0037】
対物レンズの入射瞳におけるビームの断面の広がり範囲の制御された調整のための手段は、例えば、虹彩絞りなどの調整可能な絞り、励起ビーム経路に導入可能である少なくとも1つの絞り、望遠鏡、または音響光学素子であり得る。例えば、励起ビーム経路内に導入可能である絞りは、レボルバ、フィルタホイール、またはスライダ上に配置されることができ、あるいは旋回可能または折り畳み可能に構成されることができる。
【0038】
絞りの少なくとも1つの開口の形状は、穴形状とすることができる。さらなる実施形態において、その開口は、スロットまたは楕円形であり得る。スロット形状または楕円形のアパーチャによってもたらされる励起放射線のビームの細長い断面は、x-y平面における細長いまたはほぼ線形の焦点を可能にする。
【0039】
さらなる実施形態では、ビームの断面の広がり範囲の制御された調整のための手段は、光変調器(空間光変調器(SLM:spatial light modulator))または任意の他の位相変調光学素子であり得る。これらの光学素子が制御可能である場合、任意選択的に経時的に変化し得る自由形態(Freiformen)の複数の励起体積を生成することも可能である。
【0040】
この場合、時間によって変化する切り替え(スイッチング)は、異なる時間レジームで実施されることができ、その結果、異なる用途を可能にする。例えば、複数の励起体積の高速切り替えは、レーザー多重化の方法が使用される、つまり、迅速に時間的に相互に整合される(例えば、特定の複数の時間窓「ゲート(gates)」での複数のレーザーの切り替えの)場合、可能にする。例えば、この手順は、TCSPC(time-correlated single photon counting)に使用されることができる。複数の(励起)レーザーは、例えば分子の拡散時間程度の時間窓内でオンおよびオフに切り替えれることができる。したがって、複数の励起体積は、個々にまたは一緒に、互いに独立して、任意の所望の時間シーケンスで切り替えられることができる。
【0041】
捕捉された検出放射線のビームの広がり範囲を検出器の検出領域のサイズに適合させるための手段は、有利には、いくつかの共焦点顕微鏡にすでに含まれているようなズーム光学ユニットであり得る。
【0042】
装置は、対物レンズの入射瞳における励起放射線のビームの断面を調整するための手段および/または検出放射線のビームの断面の広がり範囲を調整するための手段を制御するために、これら手段に接続された制御ユニットをさらに備えることができる。制御ユニットは、制御ユニットが対応する複数の制御コマンドを生成し、これらを関連する調整手段の複数のアクチュエータに送信することによって、励起放射線の断面の広がり範囲と検出放射線の断面の広がり範囲との間の所定の関係に基づいて手段のそれぞれの設定が実施されるように構成されている。本発明による方法は、有利には、このように構成された制御ユニットによって効率的かつ再現可能に実行されることができる。
【0043】
それぞれのビームの広がり範囲は、制御ユニットによって生成され、ビームの断面の広がり範囲を調整するための手段に送信され、ビームの断面の広がり範囲を調整するための手段によって実行される適切な複数の制御コマンドに従って、ビームの断面の広がり範囲を調整するための手段を制御することによって調整される。複数の制御コマンドの特定の設定は、試料の少なくともいくつかの光学特性の複数の値を取得し、取得された複数の値に基づいて現在の開口数を決定することによって変更されることができる。
【0044】
本発明による方法は、蛍光相関分光法(FCS : fluorescence correlation spectroscopy)を実施するために有利に適用されることができる。このプロセスでは、異なる群の選択された複数の検出素子からの測定値間および/または共通グループの検出素子間の相関を計算することが可能である。このような手順の一例は、Scipioniらによる刊行物(2018;上記参照)から公知である。
【0045】
本発明のさらなる応用は、共焦点体積(つまり、PSF)を、解決されるべき現在の(生物学的)測定タスクに適合させることを含む。結果として、ユーザーは、例えば、分子のクラスター形成(Clusterbildung)が存在するかどうかを識別することができる。共焦点体積のサイズを変化させることができなかった場合、PSFの不利なサイズのときには、ドメイン形成(Domainbildung)を認識することができなかった。例えば、ドメインは、システムのPSFに対して小さすぎるか又は大きすぎる可能性がある。
【0046】
ドメインのおおよそのサイズは、さらなる用途において決定され得る。ユーザーは、対応するドメインのサイズまたは分子の不均一分布または分子のクラスター形成(例えば、生体膜研究における適用分野に応じて「脂質ラフト(lipid rafts)」とも呼ばれる)を判定するために、異なるPSFサイズ(すなわち、異なるサイズのサンプル領域)について測定を行う。観測される効果は、観測される構造のサイズの約半分であるPSFサイズの場合に最も大きい(Wawreznieck,L.ら、2005;Biophys.J.89:4029-4042)。
【0047】
2つ以上の色素を検出することも可能である。この目的のために、例えば、2つの検出チャネル(2チャネルAiryscan)によってデータ取得を実行することが可能である。その場合の目的は、同じ位置での様々なマーカー(色素)のFCS測定を互いに相関させることである(相互相関)。このようにして、対象となるマーキングされた生体分子間の相関を検出することができ、2つの分子がマイクロドメイン(Microdomain)または「メッシュ(mesh)」内に存在するかどうか、すなわち、それらが互いに独立して移動しないかどうかを調べることが可能である。
【0048】
本発明の利点は、輝度情報の取得速度を向上させるとともに、撮像される試料に対する励起放射線による露出を抑えることにある。
さらに、本発明は、複数の適用オプションを公開している。特定の可能な用途では、温度および粘度を分子レベル(それぞれ「ナノ温度」および「ナノ粘度」)で測定することができる。したがって、拡散係数は、本発明を使用して実行される拡散測定に基づいて決定されることができる。例として、測定された複数の粒子(例えば、色素分子、蛍光/発光粒子であり、本明細書では総称して「物体」という用語と呼称される)比較基準として用いることができる。用いられる複数の粒子について、拡散係数は、例えば、温度の関数として、つまり、粒子半径の関数として予め決定される。温度に対する粘度の既知の依存性に基づいて、FCS測定から焦点における局所温度を直ちに導出することが可能である。
【0049】
本発明は、例示的な実施形態および図面に基づいて以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、本発明による装置の第1の例示的な実施形態の概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明による装置の第2の例示的な実施形態の概略図を示す。
【
図3】
図3は、本発明による装置の第3の例示的な実施形態の概略図を示す。
【
図4】
図4は、複数の検出素子の例示的な番号付けを有するAiryscan検出器の概略図を示す。
【
図5】
図5は、複数の検出素子の例示的な番号付けを有する空間分解2D検出器の概略図を示す。
【
図6】
図6は、Airyscan検出器の第1群の検出素子の概略図を示す。
【
図7】
図7は、2D検出器の第1群の検出素子の概略図を示す。
【
図8】
図8は、Airyscan検出器の2つの群の検出素子の概略図を示す。
【
図9】
図9は、2D検出器の2つの群の検出素子の概略図を示す。
【
図10】
図10は、Airyscan検出器の3つの群の検出素子の概略図を示す。
【
図11】
図11は、2D検出器の3つの群の検出素子の概略図を示す。
【
図12】
図12は、Airyscan検出器の4つの群の検出素子の概略図を示す。
【
図13】
図13は、2D検出器の4つの群の検出素子の概略図を示す。
【
図14】
図14は、Airyscan検出器の異なる2つの群の検出素子からの複数の輝度情報を計算することによる組み合わせを実行する概略図を示す。
【
図15】
図15は、2D検出器の異なる2つの群の検出素子からの複数の輝度情報を計算することによる組み合わせを実行する概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図面は簡略化され、説明に必要な技術要素に限定して図示されている。ビーム経路も同様に簡略化して示されている。
試料から輝度情報を取得するための装置の第1の例示的な実施形態(
図1)は、光源41、例えばレーザー光源を備え、光源41から励起放射線のビームが放射され、励起ビーム経路42に沿って案内される。励起放射線の整形及び/又はコリメーションのための任意の複数の光学素子は示されていない。励起ビーム経路42には、ビームの広がり範囲の制御された変更のための手段44が配置され、例示的な実施形態では、その手段44は、制御された方法で調整可能な絞りの形態である。さらなる実施形態では、レボルバまたはスライダを設けることができ、それによって異なる複数の絞りを励起ビーム経路42内に導入することができる。あるいは、手段44は、制御された方法で調整可能である望遠鏡または音響光学素子であってもよい。
【0052】
手段44は、駆動部416によって励起ビーム経路42の(破線で示す)外に移動され、異なる複数の開口数をもたらすことができ、そのそれぞれの角度範囲で、励起放射線は、結像(イメージング)される試料48に向けられることができる。手段44は、さらなる実施形態では、励起放射線についての透過率に関して、特に穴径(ピンホール、虹彩絞り)またはスリット(調整可能なスリット開口、音響光学素子)の長さおよび幅に関して調整可能であってもよい。
【0053】
手段44を通過した後、励起放射線は主カラースプリッタ43に入射し、主カラースプリッタ43は励起放射線に対して透過性を有し、励起放射線を通過させる。主カラースプリッタ43の下流では、励起放射線は、共通ビーム経路4210と呼称される装置のビーム経路の一部を通過し、それに沿って励起放射線および検出放射線(下記を参照)が共に案内されるか、または共に案内されることができる。
【0054】
その後に配置されたスキャナ46によって、ミラー45によってその前に偏向された励起放射線のビームは、制御された方法で偏向され、対物レンズ47の入射瞳EPに向けられることができる。ミラー45は、コンパクトな設計を可能にし、励起ビーム経路42の偏向が必要とされないかまたは想定されない場合、装置のさらなる形態では存在しなくてもよい。
【0055】
手段44の効果によってその横方向の広がり範囲が設定され、スキャナ46によって制御された方法で偏向された励起放射線は、対物レンズ47によって、結像される試料48が試料ステージ49上に存在し得る試料空間に集束される。放射され、このように集束された励起放射線によって、共焦点励起体積が得られる。
【0056】
共焦点励起体積内の励起放射線によって試料48内で発生する検出放射線は、対物レンズ47によって捕捉され、主カラースプリッタ43までの励起ビーム経路42と一致する(破線で示す)検出ビーム経路410に沿って案内される。
【0057】
本発明による装置のさらなる実施形態では、検出放射線は、さらなる対物レンズ(図示せず)によって捕捉されることができる。そのような場合、励起ビーム経路42および検出ビーム経路410は、互いから完全に分離され得るか、またはそれらは、共通ビーム経路4210を形成するために、例えば、さらなるカラースプリッタ(図示せず)によって再び統合される。
【0058】
図示の例示的な実施形態では、検出放射線は、スキャナ46を通過したことによって静止ビームに変換され(「デスキャン(descannt)」)、主カラースプリッタ43に到達する。主カラースプリッタ43は、励起放射線の波長とは異なる検出放射線の波長に対して反射性を有する。主カラースプリッタ43で反射された検出放射線は、検出ビーム経路410に設けられたズーム光学ユニット(Zoomoptik)411に到達する。ズーム光学ユニット411は、ズーム駆動部412によって調整可能である。さらなる実施形態では、主カラースプリッタ43の透過率および反射率を逆に実装することもでき、その結果、励起放射線が反射され、検出放射線が通過することが可能になる。したがって、ビーム経路42および410は、適宜設計されなければならない。
【0059】
手段44、スキャナ46、ズーム駆動部412、駆動部415および416、ならびに任意選択的に光源41は、データおよび制御コマンドを交換するために制御ユニット413に適切に接続される。例として、制御ユニット413は、コンピュータまたは適切な制御回路である。
【0060】
ズーム光学ユニット411は、捕捉された検出放射線のビームの広がり範囲を、中間像(「ピンホール面」)において検出ビーム経路410に同様に配置された空間分解検出器414の検出領域のサイズに適合させるために使用されることができる、検出放射線のビームの広がり範囲の制御された変更のための手段である。その目的は、検出領域の全体を可能な限り照明することである。したがって、検出放射線は、ズーム光学ユニット411によって検出器414に向けられ、ズーム駆動部412によってそのビームの広がり範囲に関して適応される。
【0061】
任意選択的に、制御ユニット413及び検出器414は、例えば、検出器414から取得された輝度情報に基づいて、制御ユニット413が複数の制御コマンドを生成すること及び/又はこれらを検証することを可能にするように、相互接続され得る。例として、これらの制御コマンドによって、光源41、手段44、スキャナ46、ズーム駆動部412、および/または試料ステージ49の任意選択の駆動部415を制御する。
【0062】
本発明による装置の第2の例示的な実施形態では、手段44は、共通ビーム経路4210(
図2)に配置される。この場合、励起放射線および検出放射線の両方は、手段44が、図示されるように、共通ビーム経路4210に導入されているときに手段44を通過する。
【0063】
第3の例示的な実施形態によれば、手段44は、検出ビーム経路410(
図3)内に配置されることもできる。このプロセスでは、手段44の現在の設定は、対物レンズ47の入射瞳EPにおける励起放射線のビームの広がり範囲の変化に影響を与える。
【0064】
本発明による方法のステップおよび構成を、
図4~
図15を参照して以下に説明する。
図4は、空間分解検出器414として使用され得るAiryscan検出器の検出領域の上面図を概略的に示す。検出素子1~32からの複数の輝度情報は、個々に読み出すことができ、必要に応じて互いに組み合わせること(「ビニング」)もできる。検出放射線のビームの広がり範囲は、1.25AU(Airy-Units)で検出領域に入射するように選択されることができる。例えば、各検出素子1~32は、0.2AUの区間を検出することができる。参照符号「1」で示される中央検出素子は、検出ビーム経路410の光軸(oA)上に位置している。
【0065】
図5は、例えば、SPADアレイ、CMOSチップ又はsCMOSチップにおいて実現され得るような、検出素子1~31の行列配置での空間分解検出器414(以下、2D検出器ともいう)の更なる実施形態を示す。
【0066】
以下の
図6~
図15において、それぞれの場合において、Airyscan検出器タイプの検出器414の検出素子1~31または1~32、および検出素子1~31のほぼ矩形の検出器414、すなわち行ごとおよび列ごとの配置を有する検出器414に基づく技術的事項を提供する。以下の関連する特定の検出素子の番号については、
図4および
図5をそれぞれ参照されたい。以下の
図6~15において、中央検出素子1は、より明確にするために市松(チェッカー盤)模様で塗りつぶされ示されている。
【0067】
本発明による方法を実施するために、検出素子1~32から取得された複数の輝度情報は、計算によって互いに選択的に組み合わせることができる。以下の
図6~
図13に示されるように、検出素子1~32から同時に取得された複数の輝度情報を選択的に加算することによって、異なる複数のサイズの仮想ピンホールを生成することができる。有利には、全ての検出素子1~32又は1~31からの複数の輝度情報が取得され、仮想ピンホールは、取得された複数の輝度情報のターゲットとした選択によって生成される。取得された複数の輝度情報は、もちろん、異なる複数のピンホールの分析のために使用されることができ、これは、これらが有利に記憶される理由である。例えば、検出素子1からの輝度情報は、全てのピンホールの評価に使用される。
【0068】
可能な限り小さい直径を有するピンホールを模擬するために、検出素子1からの輝度情報のみが使用される。したがって、これらの複数の輝度情報は、各事例において、Airyscan検出器(
図6)または2D検出器(
図7)の第1群の検出素子を形成する。検出素子1からの輝度情報は、共焦点励起体積内の第1の測定体積を表す。
【0069】
一群をそれぞれ構成する検出素子1および(
図8では黒塗りの)2~7または検出素子1および(
図9では、黒塗りの)2~9からの複数の輝度情報を演算により合成すれば、より大きな直径を有する仮想ピンホールが得られる。検出素子1~7または1~9は、共通グループまたは複合グループと呼称されることもできる。前述した検出素子の共通グループは、共焦点励起体積の第2の測定体積から複数の輝度情報を取得する。
【0070】
さらに大きな直径を有する仮想ピンホールを表すように機能する複数の検出素子が、
図10および
図11に示されている。例えば、パターン埋め(パターンフィリング)を用いて又は黒色で視覚化されるのは、3つの群の検出素子であり、それらによってさらなる共通グループが形成される。
図10(Airyscan検出器)では、これらは、第1群の検出素子1、第2群の検出素子2~7、および第3群の検出素子8~19である。
図11(2D検出器)では、これらは、第1群の検出素子1、第2群の検出素子2~9、ならびに第3群の検出素子10~12、13~15、20~23、および28~30である。このようにして形成された複数の仮想ピンホールは、それぞれ、第3の測定体積からの複数の輝度情報の取得を可能にする。
【0071】
検出素子1~32(Airyscan検出器、
図12)または検出素子1~31(2D検出器、
図13)を4つの群の検出素子として各事例において選択することにより、可能な最大直径を有する仮想ピンホールの表現が得られ、これにより、第4の測定体積からの複数の輝度情報の取得が可能になる。
【0072】
例えば、4つの群の検出素子が、パターン埋めまたは黒色で視覚化されている。
図12(Airyscan検出器)では、これらは、第1群の検出素子1、第2群の検出素子2~7、第3群の検出素子8~19、および第4群の検出素子20~32である。
図13(2D検出器)では、これらは、第1群の検出素子1、第2群の検出素子2~9、第3群の検出素子10~12、13~15、20~23および28~30、ならびに第4群の検出素子16~19、23~27および31である。
【0073】
図1による本発明による装置を使用して本発明による方法を実行する際に、第1の測定ブロックを実行することができ、その一部として、試料48の共焦点励起体積の4つの測定体積が同時に測定される。この場合、ズーム光学ユニット411は、例えば、検出放射線が検出器414の検出領域に1.25AUで入射するように設定される。上述した4つの仮想ピンホールの各々は、測定体積の直径を表し、測定体積の直径(スポット直径)は、顕微鏡の現在の光学条件と、励起放射線が対物レンズ47の入射瞳EPに入る現在選択されている開口数とに依存する(以下を参照)。
【0074】
ステップAにおいて、試料48は、対物レンズ47を使用して励起放射線の集束ビームで照明される。このプロセスでは、励起放射線は、対物レンズ47の入射瞳EPにおいてビームの断面の第1の広がり範囲を設定することによって、第1の開口数の角度範囲で試料48におよび/または試料48内に向けられる。この目的のために、例えば、手段44は、励起ビーム経路42の外に移動され得るか、またはその自由開口(フリーアパーチャ)の第1の設定で励起ビーム経路42に配置され得る。
【0075】
ステップBにおいて、検出放射線は、照明による試料48の共焦点励起体積内で生成される。
ステップCにおいて、検出放射線は、対物レンズ47によって第1の開口数の角度範囲で捕捉される。
【0076】
捕捉された検出放射線を、ステップDにおいて検出ビーム経路410に沿って案内し、空間分解検出器414上に結像する。
検出素子1~31および1~32の全体の特に光軸からほぼ同じ距離に配置された検出素子の群のそれぞれの要素からの複数の輝度情報が取得され、それぞれの検出素子または群に割り当てられる。
【0077】
第2の測定ブロックにおいて、ステップA~Eが繰り返され、ステップAにおいて、対物レンズ47の入射瞳EPにおけるビームの第2の広がり範囲(第2のNA)が設定され、この第2の広がり範囲は、第1の広がり範囲(第1のNA)とは異なり、特により小さい。これにより、第2の開口数の角度範囲で励起放射線を試料48に及び/又は試料48内に向ける。この目的のために、例えば、手段44は、励起ビーム経路42内に移動され得るか、または励起ビーム経路42内にその自由開口の第2の設定で配置され得る。
【0078】
励起放射線のビームの横方向の広がり範囲を制限することによって、第1の開口数よりも小さい第2の開口数となり、励起PSF(point spread function:点広がり関数)のサイズを増大させる。
【0079】
選択された第2の開口数に従って、複数の制御コマンドが制御ユニット413によって生成され、ズーム光学ユニット411を適応させるためにズーム駆動部412に送信されて、検出器414の検出領域の有意な照明が再び達成される。
【0080】
例えば、第1及び第2の開口数並びにもたらされるズーム光学ユニット411の倍率の実際の値は、有利には、更なる有意な測定プロセスを可能にするために、光学パラメータ全体として、他の測定ブロックの測定体積から十分に離れ且つ互いに十分に離れているような複数の測定体積をもたらすように選択される。このようにして、ここで説明される「スポット変動FCS」技術の評価のための4つの追加の測定体積を、ただ1つのさらなる測定プロセスで得ることが可能である。
【0081】
特定の可能な実験では、「40×/1.2」の対物レンズ47を使用することが可能である。第1の測定ブロックでは、例えば170nm、190nm、225nm、および245nmのスポット直径を有する例えば4つの測定体積が第1の開口数で捕捉される。この場合、手段44は、励起ビーム経路42の外に移動される。第2の測定ブロックにおいて、対物レンズの瞳EPの直径の1/1.4を有する絞りの形態の手段44が励起ビーム経路42内に旋回され(第2の開口数)、ズーム光学ユニット411の倍率が同時に1.4倍に適応される場合、1つのさらなる測定のみを使用して、195nm、240nm、275nm、および285nmのスポット直径を有する4つのさらなる測定体積を捕捉することが可能である。実際に照明される共焦点励起体積は、第1の測定ブロックおよび第2の測定ブロックにおいて一定のままである。
【0082】
この手順は、本発明による方法のさらなる構成において変更されることができる。例えば、第2の開口数は、対物レンズの瞳EPの直径の1/2.8を有する絞りを使用して選択されることができ、ズーム光学ユニット411について1AUを設定することができる。このようにして、300~500nmの範囲のスポット直径を有する4つのさらなる測定体積が、第2の測定ブロックにおいて捕捉され得る。
【0083】
したがって、第1および第2の測定ブロックを用いた方法の反復において、本発明による方法は、有利には、従来技術による同等の方法で可能であるよりも2倍の数の測定値を取得することを可能にする。それにもかかわらず、この取得は、全ての8つの測定プロセス(上記参照)が既知のスポットスキャン(Spotscan)FCS法を用いて個々に実行される場合よりも約4倍速い。
【0084】
Airyscan検出器の異なる2つの群の検出素子からの複数の輝度情報を計算することによって可能な組み合わせが、
図14に概略的に示されている。例えば、詳細な手順は、Scipioniら(2018;Nature Communications;DOI:10.1038/s41467-018-07513-2)に詳細に記載されている。
【0085】
この場合、第1の群および第4の群からの輝度情報間の複数の相互相関を計算することが可能である(上記も参照)。この場合、第1の群は、光軸上に配置された検出素子1からの輝度情報から形成される。第4の群は、検出素子20~32を含む。検出素子1からの輝度情報と、検出素子20~32からの輝度情報との間の計算された複数の相互相関は、矢印で表されている。
【0086】
このことについて、
図15は、検出素子1からの輝度情報と、2D検出器の検出素子11,14,19,21,23,27,29および31からの輝度情報との間の複数の相互相関の計算を示す。
【符号の説明】
【0087】
1~32…検出素子
41…光源
42…励起ビーム経路
4210…共通ビーム経路
43…主カラースプリッタ
44…(励起放射線のビームの広がり範囲の制御された変更のための)手段
45…ミラー
46…スキャナ
47…対物レンズ
48…試料
49…試料ステージ
410…検出ビーム経路
411…ズーム光学ユニット
412…ズーム駆動部、アクチュエータ
413…制御ユニット
414…検出器
415…(試料ステージ49の)駆動部
416…アクチュエータ、駆動部
EP…(対物レンズ7の)入射瞳
oA…(検出ビーム経路410の)光軸
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(48)から輝度情報を取得するための方法であって、
該方法は、第1の測定ブロックを有し、
前記第1の測定ブロックは、
対物レンズ(47)を使用して励起放射線の集束ビームによって前記試料(48)を照明するステップAと、ここで、前記対物レンズ(47)の入射瞳(EP)における前記ビームの断面の第1の広がり範囲が設定されることによって、前記励起放射線は、第1の開口数の角度範囲で前記試料(48)にまたは前記試料(48)内に向けられており、
前記照明により前記試料(48)の励起体積内で検出放射線を生成するステップBと、
前記検出放射線を捕捉するステップCと、
捕捉された前記検出放射線を検出ビーム経路(410)に沿って案内し、前記検出放射線を、中間像面に配置された空間分解検出器(414)上に結像するステップDと、ここで、前記空間分解検出器(414)は、前記検出ビーム経路(410)の光軸(oA)の周りに等距離で配置され且つ互いに独立して読み取り可能である複数の検出素子(1~32)を有しており、
前記光軸(oA)から同じ距離に配置された一群の検出素子(1~32)の少なくともそれぞれの要素から輝度情報を取得するステップEと、
を備え、
前記第1の開口数は、前記試料(48)の少なくともいくつかの光学特性の複数の値を取得し、取得された前記複数の値に基づいて現在の前記第1の開口数を決定および設定することによって、前記試料(48)に基づいて選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップA~Eは、第2の測定ブロックまたはさらなる複数の測定ブロックにおいて繰り返され、
ステップAにおいて、
前記対物レンズ(47)の前記入射瞳(EP)における前記ビームの前記第1の広がり範囲とは異なる第2の広がり範囲が設定されるか、又は捕捉された前記検出放射線のビームの直径が前記第1の測定ブロックに対して又は先行する測定ブロックに対して変更され、
前記捕捉された検出放射線の前記ビームの広がり範囲が、前記検出器(414)の検出領域のサイズに適合され、その結果、前記検出領域が全体的に照明されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光軸(oA)上に位置する第1の群から始まり、さらなる径方向外側に隣接する群がそれぞれ順番に考慮され、先行する複数の群と組み合わされて共通グループを形成することによって、各測定ブロックにおいてサイズが増大する複数の仮想ピンホールがそれぞれ作成され、その結果、前記励起放射線の前記集束ビームによって決定される共焦点励起体積内で、特定の測定体積の複数の輝度情報が、それぞれの共通グループに属する複数の検出素子(1~32)によってピンホールサイズごとに取得されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の測定体積
が複数の測定ブロックにおいて捕捉され、前記複数の測定体積の複数の平均直径が、前記光軸(oA)に垂直な方向において少なくとも5nmだけ異なることを特徴とする請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのさらなる測定ブロックのステップAにおいて、前記対物レンズ(47)の前記入射瞳(EP)における前記ビームの広がり範囲が、先行する測定ブロックにおける前記ビームの広がり範囲より小さくなるように選択されることを特徴とする請求項
2に記載の方法。
【請求項6】
ステップA~Eが、前記第2の測定ブロックまたはさらなる複数の測定ブロックにおいて繰り返され、後続の測定ブロックの補正される現在の開口数が、前記取得された複数の値に基づいて決定および設定されることを特徴とする請求項
2に記載の方法。
【請求項7】
選択された複数の検出素子(1~32)から取得された複数の輝度情報が、空間および時間の少なくとも一方に関して互いに関連していることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
蛍光相関分光法を実行するために、選択された複数の検出素子(1~32)からの複数の輝度情報の空間的関係および時間的関係の少なくとも一方が決定されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
検出放射線は、少なくとも2つの波長で発生し、捕捉され、異なる波長についての測定値が、位置に関連した方法で互いに比較されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
試料(48)から輝度情報を取得する装置であって、
励起放射線のビームを案内する励起ビーム経路(42)であって、試料空間内に焦点を生成するための対物レンズ(47)を含む前記励起ビーム経路(42)と、
前記試料空間から発生し、前記対物レンズ(47)によって捕捉される検出放射線のビームを案内する検出ビーム経路(410)であって、
複数の検出素子(1~32)を有する空間分解検出器(414)であって、前記複数の検出素子から複数の輝度情報が互いに独立して取得および読み出し可能である、前記空間分解検出器(414)と、
前記検出放射線のビームの広がり範囲の制御された変更のための手段(411)であって、前記検出放射線のビームの広がり範囲の制御された変更のための手段(411)によって、検出領域を全体的に照明するために、前記捕捉される検出放射線の前記ビームの広がり範囲を前記検出器(414)の検出領域のサイズに適合させることができる、前記検出放射線のビームの広がり範囲の制御された変更のための手段(411)と、
を備え、
前記対物レンズ(47)の入射瞳(EP)における前記ビームの断面の広がり範囲の制御された調整のための手段(44)が、前記励起ビーム経路(42)内、前記検出ビーム経路(410)内、または前記励起ビーム経路(42)および前記検出ビーム経路(410)の共通部分内に配置されることを特徴とする装置。
【請求項11】
前記捕捉された検出放射線を前記励起放射線から分離し、前記検出放射線の前記ビームを前記検出ビーム経路(410)内に向かわせるために、ビームスプリッタ(43)が設けられることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記検出放射線の前記ビームの広がり範囲の制御された変更のための前記手段(411)が、ズーム光学ユニット(411)であることを特徴とする請求項
10に記載の装置。
【請求項13】
前記対物レンズ(47)の前記入射瞳(EP)における前記ビームの前記断面の広がり範囲の制御された調整のための前記手段(44)が、調整可能な絞り、前記励起ビーム経路に導入可能な少なくとも1つの絞り、望遠鏡、または音響光学素子であることを特徴とする請求項
10に記載の装置。
【請求項14】
制御ユニット(413)が設けられ、前記対物レンズ(47)の前記入射瞳(EP)における前記励起放射線の前記ビームの前記断面を調整するための前記手段(44)および前記検出放射線の前記ビームの前記断面の広がり範囲を調整するための前記手段(411)を制御するために、前記制御ユニットは、前記手段に接続され、前記制御ユニットは、前記制御ユニット(413)が対応する複数の制御コマンドを生成し、これらを関連する調整手段(44、411)のアクチュエータ(412、416)に送信することによって、前記手段(44、411)のそれぞれの設定が前記励起放射線および前記検出放射線の前記断面の広がり範囲の所定の関係に基づいて実施されるように構成されていることを特徴とする請求項
10に記載の装置。
【請求項15】
粘度、前記試料内に位置する少なくとも1つの種類の物体の拡散係数、および少なくとも1つの励起体積内の温度を決定するための、請求項10~14のいずれか一項に記載の装置の使用であって、必要に応じて前記粘度および前記試料の拡散係数の少なくとも一方の温度に対する予め確立された依存性に基づいて、局所温度が推定される、装置の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
この場合、時間によって変化する切り替え(スイッチング)は、異なる時間レジームで実施されることができ、その結果、異なる用途を可能にする。例えば、複数の励起体積の高速切り替えは、レーザー多重化の方法が使用される、つまり、迅速に時間的に相互に整合される(例えば、特定の複数の時間窓「ゲート(gates)」での複数のレーザーの切り替えの)ことを可能にする。例えば、この手順は、TCSPC(time-correlated single photon counting)に使用されることができる。複数の(励起)レーザーは、例えば分子の拡散時間程度の時間窓内でオンおよびオフに切り替えれることができる。したがって、複数の励起体積は、個々にまたは一緒に、互いに独立して、任意の所望の時間シーケンスで切り替えられることができる。
【国際調査報告】