(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】有価文書、特に紙幣を分離する装置及び方法、並びに有価文書処理システム
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
B65H3/06 B
B65H3/06 350A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579250
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022064823
(87)【国際公開番号】W WO2022268457
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021003201.2
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518041917
【氏名又は名称】ギーゼッケ・ウント・デブリエント・カレンシー・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Giesecke+Devrient Currency Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Prinzregentenstrasse 161, 81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホブマイヤー、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ノイハウザー、リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダーバウアー、ベルンハルト
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA04
3F343FB07
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB02
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA12
3F343JA01
3F343KB04
3F343LA04
3F343LA16
3F343LC09
3F343LD10
3F343MB02
3F343MB13
3F343MC09
(57)【要約】
本発明は、有価文書(2)、特に紙幣を分離する装置であって、有価文書(2)の束(3)を受けるように設計された受取装置(4、5)と、束(3)のうち1つの有価文書(2)に一時的に都度作用して、束(3)からを取り出すように設計された回転可能な分離要素(7)と、分離要素(7)を回転させるように設計された駆動装置(8)と、駆動要素(8)により設定される分離要素(7)の回転の回転速度が、分離要素(7)の各回転中に、特に一時的に変更されるように、駆動装置(8)を制御するように設計された制御装置(9)と、を備える装置に関する。また本発明は、対応する方法と、このような装置を含む有価文書処理システムに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価文書(2)、特に紙幣を分離する装置であって、
前記有価文書(2)の束(3)を受けるように設計された受取装置(4,5)と、
前記束(3)のうち1つの有価文書(2)に一時的に都度作用して、前記束(3)から取り出すように設計された回転可能な分離要素(7)と、
前記分離要素(7)を回転させるように設計された駆動装置(8)と、を備え、
前記駆動装置(8)による前記分離要素(7)の回転運動の回転速度(ω)が、前記分離要素(7)の1回転中に、特に一時的に、変更されるように、前記駆動装置(8)を制御するように設計された制御装置(9)を備えることを特徴とした装置。
【請求項2】
前記制御装置(9)は、前記分離要素(7)の各1回転中に、前記回転速度(ω)が一時的に増加及び/又は減少するように、前記駆動装置(8)を制御するように設計される請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御装置(9)は、前記分離要素(7)が、
前記分離要素(7)が関連する有価文書(2)に作用して前記束(3)から取り出している時に、第1の回転速度(ω
1)で回転し、
各1回転中に、前記第1の回転速度(ω
1)よりも速い又は遅い第2の回転速度(ω
2)で一時的に回転するように、前記駆動装置(8)を制御するように設計される請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御装置(9)は、前記分離要素(7)の前記第1の回転速度(ω
1)が、取り出された又は取り出される全ての有価文書(2)に対して同一又は実質的に同一となるように、前記駆動装置(8)を制御するように設計される請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記分離要素(7)は、前記束(3)から取り出された前記有価文書(2)を、前記有価文書(2)を搬送速度で搬送するように設計された搬送装置(10)に都度供給するように設計され、
前記第1の回転速度(ω
1)は、前記分離要素(7)が関連する有価文書(2)に作用して前記束(3)から取り出している時の前記分離要素(7)の軌道速度が、前記搬送速度と等しい又は実質的に等しくなるように選択される請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御装置(9)は、前記分離要素(7)の回転速度(ω)が周期的に変更されるように、前記駆動装置(8)を制御するように設計される請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記分離要素(7)の回転速度(ω)の周期的変化は、
前記分離要素(7)の完全な1回転の時間、及び/又は、
前記束(3)から1つの有価文書(2)が取り出される2つの連続した分離プロセス間の時間に対応する周期を有する請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記制御装置(9)は、前記分離要素(7)の各1回転中の、及び/又は、前記束(3)から1つの有価文書(2)が取り出される2つの連続する分離プロセス間における前記分離要素(7)の回転速度(ω)の変化が、正弦波状、三角波状、台形波状、及び/又は矩形波状の時間プロファイルを有するように、前記駆動装置(8)を制御するように設計される請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
有価文書(2)、特に紙幣を処理、特に搬送、検査、計算、及び/又は選別するための1つ又は複数の装置(20)を含む有価文書処理システム(1)であって、
請求項1~8のいずれか1項に記載の有価文書(2)を分離する装置(6)を含む有価文書処理システム(1)。
【請求項10】
有価文書(2)、特に紙幣を分離する方法であって、
有価文書(3)の束(3)が提供され、
回転する分離要素(7)が、前記束(3)のうち1つの有価文書(2)に一時的に都度作用して、前記束(3)から取り出し、
前記回転する分離要素(7)の回転速度(ω)は、前記分離要素(7)の各1回転中に、特に一時的に、変更されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価文書、特に紙幣を分離する装置及び方法、並びに有価文書を処理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
有価文書、特に紙幣の自動処理では、通常、有価文書処理システムにおいて、提供された有価文書の束から個々の有価文書を取り出し、真正性や状態の検査、計算、選別などの更なる処理ステップに送るために、いわゆるシングラーが使用される。
【0003】
有価文書を束から取り出すには、例えば摩擦ホイールやローラ、摩擦ベルトの使用、空気の吸引や吹き込みなど、様々なアプローチが知られている。いわゆる摩擦ホイール式シングラーでは、回転する摩擦要素が、1回転の時間間隔中に、関連する有価文書、一般的には束の一番下又の一番上の有価文書に作用して、束から取り出す。
【0004】
本発明の目的の1つは、有価文書、特に紙幣を分離する装置及び方法、並びに有価文書、特に紙幣を可能な限り効率的に処理することができる有価文書処理システムを規定することである。
【0005】
この目的は、独立請求項による装置及び方法、並びにそのような装置を有する紙幣処理システムによって達成される。
【0006】
第1の態様によると、有価文書、特に紙幣を分離する装置は、有価文書の束を受けるように構成された受取装置と、束のうち1つの有価文書に一時的に、特に定期的に、及び/又は特定の回転位置で、その都度作用して、その過程で束から取り出すように設計された回転可能な分離要素と、分離要素を回転させるように構成された駆動装置と、駆動装置による分離要素の回転運動の回転速度が、分離要素の各1回転中に、特に一時的に変更されるように、駆動装置を制御するように設計された制御装置と、を備える。
【0007】
第2の態様によると、有価文書処理システムは、有価文書、特に紙幣を処理、特に搬送、検査、計算、及び/又は選別するための1つ又は複数の装置と、第1の態様による有価文書を分離する装置と、を備える。
【0008】
第3の態様によると、有価文書、特に紙幣を分離する方法において、有価文書の束が提供される。回転する分離要素が、束のうち1つの有価文書に一時的に、特に定期的に、及び/又は特定の回転位置で、その都度作用して、束から取り出す。回転する分離要素の回転速度は、分離要素の各回転中に、特に一時的に、特にそれぞれの有価文書のフォーマットに応じて、変更される。
【0009】
本発明の態様は、好ましくは、分離要素の回転速度を、分離プロセス中又は束から有価文書を取り出す間に分離要素が回転する回転速度から出発して、各1回転中、好ましくは2つの連続する分離プロセス間の特に短い時間中に、一時的に変更し、その後、好ましくは元の回転速度に戻すというアプローチに基づいている。これにより、分離要素の回転速度が分離プロセス中、2つの連続する分離プロセス間の回転中であっても維持される場合と比べて、2つの連続する分離プロセス間の分離要素の回転移動に必要な時間が、一時的な変化に応じて変更、特に短縮又は延長される。
【0010】
したがって、分離プロセス中又は束から関連する有価文書を取り出す際の分離要素の回転速度を変更することなく、個々の有価文書を束から取り出すのにかかる時間を短縮又は延長することができる。その結果、一方では、シングラーの下流に配置された搬送装置における有価文書の搬送速度に実質的に相当する速度(すなわち、回転速度に起因する軌道速度)で個々の有価文書を束から取り出すことができ、他方では、連続する分離プロセス間の時間を、各1回転中の回転速度の一時的な変更分だけ短縮又は延長することができ、これにより、その都度取り出される有価文書が搬送装置に搬送される時間速度又は頻度を増加又は減少することができる。
【0011】
その結果、連続して取り出される有価文書の間に生じる間隙を、例えば、必要に応じて縮小することができ、したがって、搬送速度を増加させることなく、下流の搬送装置又は処理装置における単位時間当たりの有価文書のスループットを上げることができる。その結果、例えば、5ユーロ紙幣のような小判の有価文書の処理時に取り出される有価文書の間に生じる間隙は、100ユーロ紙幣のような大判の有価文書の処理時に比べて相対的に大きくなるが、これを簡単に縮小することができ、したがって、搬送装置又は処理装置における有価文書の搬送速度を増加させることなく、スループットを上げることができる。反対に、2つの分離プロセス間の時間を延長する場合も同様である。さらに、これにより、有価文書のそれぞれのフォーマットに関わらず、連続する有価文書の間に生じる間隙を最小化することも可能であり、これにより、搬送速度を変更する必要なく、全ての単一化又は処理された有価文書のフォーマットに対して可能な限り最大のスループット(小判では高スループット、大判では低スループット)を達成することができる。
【0012】
全体として、有価文書、特に紙幣の、より効率的な処理が、簡単な方法で達成される。
【0013】
制御装置は、好ましくは、分離要素の各1回転中に、回転速度が一時的に増加及び/又は減少するように、駆動装置を制御するように設計される。回転速度は、好ましくは、短時間だけ増加又は減少される。これに代わって又はこれに加えて、制御装置は、分離要素が、分離要素がそれぞれの有価文書に作用して束から取り出している時に、第1の回転速度で回転し、各1回転中に、第1の回転速度よりも速い又は遅い第2の回転速度で一時的に回転するように、駆動装置を制御するように設計されることが好ましい。単独で又は組み合わせで実施されるこれらの実施形態では、完全な1回転に必要な時間、あるいは2つの連続する分離プロセスの間に必要な時間が、確実に短縮又は延長され、同時に、分離要素が、各有価文書に作用して取り出す際に、該有価文書を取り出す第1の回転速度で回転可能であること又は回転していることが保証される。
【0014】
制御装置は、好ましくは、分離要素の第1の回転速度が、取り出された又は取り出される全ての有価文書に対して、及び/又は、全ての有価文書のフォーマットに対して、同一又は実質的に同一となるように、駆動装置を制御するように構成される。特に、異なるフォーマットの有価文書を分離する場合であっても、これにより、第1の回転速度が同一のままであることが提供され得る。例えば、第1の束に含まれる小判の有価文書の取り出し中も、その後に処理される第2の束に含まれる大判の有価文書の取り出し中も、分離要素が同じ第1の回転速度で回転することが提供され得る。
【0015】
分離要素は、好ましくは、束から取り出された有価文書の各々を、有価文書を搬送速度で搬送するように設計された搬送装置に供給するように設計される。この場合、第1の回転速度は、好ましくは、分離要素がそれぞれの有価文書に作用して束から取り出している際の分離要素の軌道速度が、搬送速度と等しいか又は実質的に等しくなるように選択される。これにより、束から取り出される際の有価文書の速度が、その後の搬送中の搬送速度に常に一致し、分離装置によるそれぞれの有価文書の取り出しと搬送装置での搬送との間の確実な移行が保証される。
【0016】
制御装置は、好ましくは、分離要素の回転速度が周期的に変更されるように、駆動装置を制御するように設計される。分離要素の回転速度の周期変化は、好ましくは、分離要素の完全な1回転の時間に対応する周期時間、及び/又は、それぞれ束から1つの有価文書が取り出される2つの連続する分離プロセスの間に対応する周期時間を有する。これにより、分離要素の1回転中の回転速度を、特に簡単かつ信頼性の高い方法で一時的に変更することができる。
【0017】
さらに、制御装置は、分離要素の各1回転中の回転速度の変化、及び/又は、それぞれ束から1つの有価文書が取り出される2つの連続する分離プロセス間における分離要素の回転速度の変化が、正弦波状、三角波状、台形波状、及び/又は矩形波状の時間プロファイルを有するように、駆動装置を制御するように設計されることが好ましい。これにより、特に簡単かつ信頼性の高い方法で、分離要素の回転時の回転速度の一時的な変化、特に増加又は減少を提供することが可能となる。
【0018】
分離要素の回転速度は、1回転の間に数回変更することができる。したがって、回転速度は、例えば1回転の間に数回増加させることができ、また、1回転の間に数回減少させることもできる。
【0019】
特に、分離要素の回転速度は、それぞれの有価文書、特にそれぞれの紙幣のフォーマット、好ましくは搬送方向の寸法に応じて、制御装置によって調整又は変更される。
【0020】
それぞれの有価文書のフォーマット又は有価文書の搬送方向における寸法は、例えば、光バリア、特に反射光バリア、又はカメラによって検出することができる。
【0021】
光バリアは、例えば、装置の入力プレートに配置することができる。カメラは、例えば、有価文書を上方から、すなわちその主表面によって、実質的に歪みなく検出できるように、装置上に配置することができる。
【0022】
さらに、分離要素の回転速度は、好ましくは、制御装置によって、また追加的又は代替的に、例えば手動で作動させることができるトリガスイッチ、例えばターボボタンに基づいて、変更することができる。トリガスイッチにより、装置のオペレータは、例えば、従来よりも小さいフォーマットの紙幣が処理される場合など、所望に応じてスループットを上げることができる。
【0023】
制御装置は、人工知能によってサポートすることもできる。機械学習によって生成された分類器によって、有価文書のフォーマットに関する検出と分類を行うことができる。小さなフォーマットの紙幣が検出された場合、分離速度を上げることができる。分離された紙幣間の距離が短すぎることが検出された場合、分離速度を下げることができる。
【0024】
好ましくは、装置は、回転可能な分離要素に加えて、回転可能な搬送要素を有する。搬送要素によって、有価文書をより確実に搬送経路に搬送することができる。
【0025】
また、搬送要素は、好ましくは摩擦要素を有する。搬送要素の摩擦要素は、好ましくは、搬送要素の回転軸を中心に部分的にのみ回転するように設計される。
【0026】
特に、搬送要素は、有価文書の搬送方向に対して分離要素の下流に形成される。すなわち、装置の作動時、関連する有価文書は、まず分離要素に接触し、次に搬送要素に接触する。
【0027】
特に、搬送要素は、分離要素によって分離された後の関連する有価文書、特に関連する紙幣を搬送経路の方向に搬送するように設計される。これにより、搬送要素は、特に、有価文書の搬送を開始する時間、又は有価文書が搬送経路に入る時間を決定する。
【0028】
また、搬送要素は、カウンタプレッシャローラを有するように設計することができる。カウンタプレッシャローラは、好ましくは駆動部なしで設計される。
【0029】
搬送要素の回転速度は、有価文書が詰まらないように、分離要素の回転速度と等しいか、それ以上であることが好ましい。
【0030】
分離要素の回転速度と搬送要素の回転速度は、好ましくは同期して変更される。これは特に、分離要素と搬送要素とが同期して制動され、及び/又は、同期して加速されることを意味する。
【0031】
搬送要素は、好ましくは駆動するように設計される。
【0032】
分離要素と搬送要素は、好ましくはベルトによって連結される。これにより、回転速度を確実に同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
以下において、本発明の更なる利点、特徴及び可能な用途について、図面を参照して説明する。
【0034】
【
図1】有価文書を分離する装置を備える有価文書処理システムの一例を示す図である。
【
図2】a)一定の回転速度で、及び、b)一時的に増加した回転速度で回転する分離要素の一例と、分離された有価文書間の間隙へのその影響を示す図である。
【
図3】1回転中の分離要素の回転速度の時間プロファイルの一例を示す図である。
【
図4】a)従来の方法で、及び、b)本開示に従って、異なるフォーマットの有価文書を分離した一例を示す図である。
【0035】
図1は、束3の形態で提供される有価文書2、特に紙幣を分離する装置6を備える有価文書処理システム1の一例を示す概略図である。束3を受けるため、シングラーコンパートメント又は投入コンパートメントとも呼ばれる受取装置が設けられる。本例では、受取装置は、束3の支持体として機能する支持要素4と、束3の一方側で有価文書2の縁部の停止部として機能する停止要素5と、を有する。
【0036】
さらに、分離要素7が設けられる。分離要素は、例えば回転ローラとして設計され、その円周面の領域に摩擦要素7’を有する。摩擦要素は、残りの円周面より大きな摩擦を有し、及び/又は、残りの円周面に対して拡大されている。例えば、摩擦要素7’は、金属製のローラに導入される又は取り付けられるゴム製又はプラスチック製の要素であってもよい。本実施形態の分離要素7では、装置6は、いわゆる摩擦ホイール式シングラーとも呼ばれる。
【0037】
さらに、例えば電気モータなどの駆動装置8が設けられ、これにより、図の曲線矢印で示されるように、分離要素7を回転させることができる。実施形態によっては、駆動装置8は、トランスミッション又はベルト駆動によって、分離要素7に直接連結することができる。
【0038】
例えば1つ又は複数の更なるローラ、ベルト、除去要素、及び/又は保持要素などの存在し得る更なる要素は、明瞭化のため、本例では省略されている。
【0039】
本例では、支持要素4を介して、分離要素7が摩擦要素7’により束3の一番下の文書2に1つ又は複数の点で接触できるように、支持要素4が設計され、分離要素7が配置される。これにより、回転する分離要素7の摩擦要素7’は、束の一番下の文書2に周期的に作用して、文書を束3から取り出し、明瞭化のため概略的に示されている搬送装置10に供給することができる。
【0040】
分離された有価文書2’は、搬送装置10により検査装置20に搬送され、有価文書2’の額面及び/又は状態及び/又は真正性などの特性が検査及び/又は計測される。この目的のため、有価文書の物理的特性を検出し、制御装置9で評価される対応するセンサ信号に変換する1つ以上のテストセンサ(不図示)が設けられる。また、制御装置9は、処理された有価文書2がそれぞれ決定された特性に応じて第1又は第2の容器13又は14に搬送されるように、経路切替器11、12を制御するように設計される。ここで、例えば、状態の良い(「適合」)有価文書2は第1の容器13に、状態の悪い(「不適合」)有価文書2は第2の容器14に、それぞれ収容される。用途に応じて、有価文書2は、例えば、その額面に基づいて、異なる容器13、14に収容することもできる。更なる経路切替器や更なる容器(不図示)、特定の特性を有する有価文書2を破棄するためのシュレッダなどの更なる処理要素を設けることもでき、これは矢印15で示される。
【0041】
制御装置9は、分離要素7の回転速度が、分離要素7の各1回転中に一時的に変更、特に増加又は減少されるように、駆動装置8を制御するように更に設計される。その結果、特に、分離された有価文書2’が搬送装置10で搬送される搬送速度を変更せずに、簡単かつ確実な方法で、束3から連続して取り出される有価文書2の間にそれぞれ生じる間隙Lを縮小又は拡大することができる。これについて、以下で詳細に説明する。
【0042】
図2は、a)一定の回転速度で、及び、b)一時的に増加した回転速度で回転する分離要素7の一例と、分離された有価文書2’間の間隙Lへのその影響を示す。分離要素7の回転速度(角速度)を一時的に、特に短時間、各1回転中に増加することにより、摩擦要素7’は、回転速度が変化しない場合よりも短いタイムスパン又は回転時間で、束の一番下の有価文書2(不図示)に接触する。したがって、有価文書2はより速い速度(単位時間当たりの有価文書数)で束から取り出され、連続して取り出される有価文書2’間の間隙Lも相応に小さくなる。
【0043】
好ましくは、回転速度は、i)摩擦要素7’がそれぞれの有価文書2に接触して束から取り出す、連続する分離プロセス外又はプロセス間においてのみ増加され、及び/又は、ii)摩擦要素7’がそれぞれの有価文書2に接触し及び/又は束から取り出す、分離段階では増加されない。これにより、それぞれ取り出される有価文書2は、常に同じ速度で束から取り出され、搬送装置10に供給されることが保証される。取り出し時の速度は、分離要素7又は摩擦要素7’の軌道速度に実質的に対応し、この速度は、分離プロセス中の分離要素7又は摩擦要素7’の角速度と、分離要素7又は摩擦要素7’の半径との積から導かれる。
【0044】
図3は、時点t
n及びt
n+1における、1回転中又は2つの連続する分離プロセス間の分離要素7の回転速度ω(単位時間当たりの回転数単位の角速度)の時間プロファイルの例を示す。分離要素7の回転は、有価文書nが分離される時点t
nにおける第1の回転速度ω
1から開始して、第2の回転速度ω
2まで一時的に増加し、その後、第1の回転速度ω
1まで下がり、次の有価文書n+1が束から取り出される時点t
n+1では、分離要素7は再び第1の回転速度ω
1で回転する。本例に示す回転速度ωの時間プロファイルは、基本的に台形であるが、正弦波、三角波、のこぎり波、又は矩形波プロファイルなどの他の時間プロファイルも可能であり、また好ましい。
【0045】
好ましくは、第1の回転速度ω1は、分離プロセス中又は束からそれぞれの有価文書を取り出す際の分離要素7及び/又は摩擦要素7’の軌道速度が、分離された有価文書2’が搬送装置10によって搬送される搬送速度に実質的に相当するように選択される。これにより、有価文書の詰まり、有価文書の更なる摩耗、及び/又は有価文書の搬送装置10への搬送時の騒音発生を防止することができる。搬送装置10における典型的な搬送速度は、例えば、1.8m/s、2.0m/s、又は2.63m/sであるが、それ以下又はそれ以上とすることもできる。
【0046】
図4は、a)従来の方法で、及び、b)本開示に従って、分離され、搬送装置10において搬送方向Tに搬送される、異なるフォーマットの有価文書の例を示している。それぞれの図の上部は、大判の有価文書を示し、図面の下部は、小判の有価文書を示している。
【0047】
従来の方法で分離された有価文書の場合、分離された各有価文書の前縁間の距離Dは、有価文書のフォーマット(
図4aの上部及び下部参照)に関わらず常に同じであり、搬送装置10における搬送速度によって、あるいは束からの取り出し時の摩擦要素7’の軌道速度によって予め決定される。例えば、毎秒17.5枚の有価文書の搬送速度では、距離Dは15cmである。この場合、連続して取り出される有価文書の間に生じる間隙は、大判の場合よりも小判の場合の方が相応に大きくなる。この場合、有価文書の処理時に達成可能なスループット(単位時間当たりの有価文書数)は、大判の有価文書でも小判の有価文書でも常に同じである。
【0048】
これに対して、本開示に従って分離された有価文書の場合、連続して分離された有価文書の間の隙間Lは、特に、
図4bの下部に示されるように、有価文書の分離及び/又は処理時に、各1回転中、分離要素7又は摩擦要素7’の回転速度を一時的に増加させることによって、簡単かつ確実な方法で、狙って縮小させることができる。これにより、連続して取り出される各有価文書の前縁間の距離は、
図4aに示される場合と比較して減少し、取り出された有価文書が搬送方向Tに搬送される搬送速度が同じであっても、特に小判の有価文書の場合、有価文書の処理時に、より高いスループット(単位時間当たりの有価文書数)を達成することができる。
【0049】
異なるフォーマットの有価文書の束を処理する用途(いわゆるマルチデノミネーション処理)では、分離要素7の回転速度の一時的な増加は、この通貨の最大フォーマットの連続して分離される2つの有価文書の間に生じる間隙が、所定の幅、特に所定の最小幅(例えば、10、20、又は30mm)を有するような大きさであることが好ましい。これにより、束に含まれる少なくとも最大フォーマットの有価文書が、可能な限り高いスループットで分離され、処理されることが保証される。この場合、最大フォーマットの有価文書の寸法により、束に含まれる有価文書の処理時に達成可能なスループットが決定される。
【0050】
同じフォーマットの有価文書の束を処理する用途(いわゆるモノデノミネーション処理)では、分離要素7の回転速度の一時的な増加は、連続して分離されるこのフォーマットの2つの有価文書の間に生じる間隙が、所定の幅、特に所定の最小幅(例えば、10、20、又は30mm)を有するような大きさであることが好ましい。これにより、束に含まれる有価文書が、可能な限り高いスループットで分離され、処理されることが保証される。
【0051】
上記の記載は、分離された有価文書間の間隙を拡大する用途にも適宜適用される。この場合、分離要素7の回転速度は、各1回転の間、一時的に減少される。
【国際調査報告】