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特表2024-523527構造化端部を有する脆性材料製のエレメント、中間体、および該エレメントの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】構造化端部を有する脆性材料製のエレメント、中間体、および該エレメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20240621BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20240621BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C03C15/00 Z
C03C23/00 D
C03C17/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579289
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022066222
(87)【国際公開番号】W WO2022268585
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021116398.6
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス オアトナー
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】マークス ハイス-シュケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ グレーサー
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン リョン テオー
(72)【発明者】
【氏名】シュー リャン リー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ドリシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ポイヒャート
(72)【発明者】
【氏名】グアンジュン ジャン
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB11
4G059AC06
4G059AC07
4G059BB04
4G059BB16
4G059EA04
4G059EA05
4G059GA01
4G059GA02
4G059GA05
4G059GA12
(57)【要約】
本発明は、レーザ支援エッチングによってガラスおよびガラスセラミック製の小型部材を安定した品質で製造すると同時に、製造中およびさらなる処理のための取扱いを簡便化するという課題に基づくものである。このために、脆性材料製の板状エレメント(10)であって、該板状エレメント(10)は、2つの対向する、特に平行な主面(100,101)と、板状エレメント(10)の外輪郭を画定する周端面(13)とを有し、端面(13)は、少なくとも1つの第1の領域(15)と少なくとも1つの第2の領域(17)とを有し、第1の領域(15)は、その表面構造が第2の領域(17)と異なり、第1の領域(15)は、エッチング面を有し、第2の領域(17)は、破断面であり、少なくとも1つの第1の領域(15)の面積は、少なくとも1つの第2の領域(17)の面積よりも大きく、第1および第2の領域は、端面(13)に沿った方向に並んで配置されている、板状エレメント(10)が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料製の、特にガラスまたはガラスセラミック製の板状エレメント(10)であって、前記板状エレメント(10)は、2つの対向する、特に平行な主面(100,101)と、前記板状エレメント(10)の外輪郭を画定する周端面(13)とを有し、前記端面(13)は、少なくとも1つの第1の領域(15)と少なくとも1つの第2の領域(17)とを有し、前記第1の領域(15)は、その表面構造が前記第2の領域(17)と異なり、前記第1の領域(15)は、エッチング面を有し、前記第2の領域(17)は、破断面であり、少なくとも1つの前記第1の領域(15)の面積は、少なくとも1つの前記第2の領域(17)の面積よりも大きく、前記第1および第2の領域は、前記端面(13)に沿った方向に並んで配置されている、板状エレメント(10)。
【請求項2】
以下の特徴:
- 前記端面(13)の前記第2の領域(17)が、前記端部(19,20)のうちの少なくとも一方と隣接しており、前記端部(19,20)で前記端面(13)が前記主面(100,101)に移行すること、
- 前記第1の領域(15)の前記エッチング面が、すり鉢状の凹部(22)を有し、前記すり鉢状の凹部(22)が互いに隣接することにより、隣接する凹部(22)が稜線(24)によって隔てられていること
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1記載の板状エレメント(10)。
【請求項3】
以下の特徴:
- 少なくとも1つの前記第2の領域(17)が、前記エレメント(10)の最大横寸法の少なくとも0.5%、好適には少なくとも1%の幅を有すること、
- 少なくとも1つの前記第2の領域(17)が、少なくとも20μm、好ましくは少なくとも50μm、非常に特に好ましくは少なくとも100μmの幅を有すること、
- 少なくとも1つの前記第1の領域(15)の面積割合の合計が前記端面(13)の総面積に占める割合が、少なくとも90%であること、
- 前記エレメント(10)の前記最大横寸法が、最大で100mmであること、
- 前記最大横寸法が、少なくとも1mmであること、
- 前記エレメント(10)の前記輪郭が、前記第2の領域(17)と隣接して凸状に形成されていること、
- 前記第2の領域(17)の数が、最大で50、好適には最大で10、特に好ましくは最大で3であること
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1または2記載の板状エレメント(10)。
【請求項4】
以下の特徴:
- 少なくとも1つの前記第2の領域(17)が、前記端面(13)上の、面中心点(103)からの最大距離の少なくとも2/3の距離にある位置に沿って延在していること、
- 負荷がかかる際に最大負荷の最大で80%、好適には最大で60%の機械的負荷がかかる前記端面(13)の部分に沿って少なくとも1つの前記第2の領域(17)が延在していること
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の板状エレメント(10)。
【請求項5】
以下の特徴:
- 前記第2の領域(17)が、平坦であること、
- 第2の領域(17)と、隣接する第1の領域(15)との間での高さのずれが、20μm未満であること、
- 第1の領域(15)の平均粗さRaと、隣接する第2の領域(17)の平均粗さRaとの比が、0.75~1.25の範囲であること、
- 第1の領域(15)と第2の領域(17)との間に移行部(18)が存在しており、前記移行部(18)が、前記第1の領域(15)のすり鉢状の凹部よりも平均して大きいすり鉢状の凹部(22)を有すること、
- 少なくとも1つの前記第1の領域と少なくとも1つの前記第2の領域とが、同じ視覚的外観を有すること、
- 前記端面(13)の前記第2の領域(17)が、前記エレメント(10)の角部で終わっていること、
- 第2の領域(17)の縁部から前記エレメント(10)の角部までの距離が、前記第2の領域(17)の幅よりも小さいこと、
- 前記端面(13)の曲げ負荷に対する前記エレメント(10)の強度が、前記第2の領域(17)よりも前記第1の領域(15)において少なくとも20MPa、好ましくは少なくとも50MPa、特に好ましくは少なくとも80MPaあるいは150MPa高いこと
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の板状エレメント(10)。
【請求項6】
前記エレメント(10)に、コーティング、特に光学活性コーティングが施されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の板状エレメント(10)。
【請求項7】
以下の特徴:
- 前記エレメント(10)の前記主面(100,191)のうちの少なくとも一方が、光学フィルタコーティング(54)で被覆されており、前記光学フィルタコーティングが、好適には、近赤外領域の放射線を吸収または反射するIRカットコーティングであり、前記エレメント(10)が、前記フィルタコーティング(54)よりも高い赤外線透過率を有すること、
- 前記光学活性コーティングが、屈折率の異なる複数の層を含むこと、
- 前記主面(100,101)のうちの少なくとも一方および少なくとも部分的に前記端面(13)にコーティング(70)が施されており、前記コーティング(70)が、前記第2の領域(17)において脱落していること
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項6記載の板状エレメント(10)。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載のエレメント(10)を製造するための脆性材料製の板状中間体(1)であって、前記板状中間体(1)は、保持部(6)と、少なくとも1つの連結部(2)によって前記保持部(6)に連結されたエレメント(10)とを有し、前記エレメント(10)および前記連結部(2)は、エッチング面を有する端面(13)を有し、前記エレメント(10)への移行部における前記連結部の幅は、エッチング面を有する前記端面(13)によって形成される輪郭の長さよりも小さく、そのため、前記連結部(2)での前記脆性材料の破断により前記エレメント(10)を分離することにより、脆性材料製の分離されたエレメント(10)を得ることができ、ここで、前記分離されたエレメント(10)の端面(13)は、少なくとも1つの第1の領域(15)と少なくとも1つの第2の領域(17)とを有し、前記第1の領域(15)は、その表面構造が前記第2の領域(17)と異なり、前記第1の領域(15)は、エッチング面を有し、前記第2の領域(17)は、破断面であり、少なくとも1つの前記第1の領域(15)の面積は、少なくとも1つの前記第2の領域(17)の面積よりも大きく、前記第1および第2の領域は、前記端面(13)に沿った方向に並んで配置されている、板状中間体(1)。
【請求項9】
以下の特徴:
- 前記保持部(6)の少なくとも1つの横寸法が、前記連結部(2)または前記脆性材料製のエレメント(10)よりも大きいこと、
- 前記連結部(2)が、前記脆性材料製のエレメント(10)の最大横寸法の少なくとも0.5%、好適には少なくとも1パーセントの幅を有すること、
- 前記連結部(2)が、少なくとも20μm、好適には少なくとも50μm、特に好ましくは少なくとも100μmの幅を有すること、
- 前記連結部(2)の幅が、前記保持部(6)の最大横寸法、または前記脆性材料製のエレメント(10)の最大横寸法の最大で50%、好適には最大で30%、特に好適には最大で20%、特に最大で10%であること
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項8記載の板状中間体(1)。
【請求項10】
脆性材料製の複数のエレメント(10)が、列状に、特に脆性材料製のエレメント(10)を2列以上有する行列状に配置されている、請求項8または9記載の板状中間体(1)。
【請求項11】
フレーム(8)として設計された保持部(6)の開口部(9)内に、脆性材料製の少なくとも2つのエレメント(10)が存在し、前記脆性材料製の2つのエレメント(10)が、一方のエレメント(10)から他方のエレメント(10)まで延在する少なくとも1つの連結部(20)によって互いに連結されている、請求項8から10までのいずれか1項記載の板状中間体(1)。
【請求項12】
1つのエレメント(10)が、少なくとも2つの連結部(2)によって前記保持部(6)に連結されており、以下の特徴:
- 前記連結部(2)間の相互間隔が、少なくとも20μmであること、
- 前記連結部(2)間の相互間隔が、前記中間体(1)の厚さの少なくとも半分、好適には少なくとも同程度、特に好ましくは少なくとも2倍であること、
- 前記エレメント(10)が、2つの平行な連結部(2)によって前記保持部(6)に連結されていること
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項8から11までのいずれか1項記載の板状中間体(1)。
【請求項13】
連結部(2)とエレメント(10)との間に設けられた分離線に沿って延在する弱化構造(4)を特徴とする、請求項8から12までのいずれか1項記載の板状中間体(1)。
【請求項14】
前記弱化構造(4)が、以下の特徴:
- 刻み目、
- 一連の貫通孔またはフィラメント状損傷、
- 厚さが低減された領域
のうちの少なくとも1つを有する、請求項13記載の板状中間体(1)。
【請求項15】
フレーム(8)の形態の複数の保持部(6)を特徴とし、前記フレーム(8)内には、それぞれ少なくとも1つのエレメント(10)が配置されており、前記エレメント(10)は、少なくとも1つの連結部(2)によって前記フレーム(8)に連結されており、前記フレーム(8)は、1つ以上のミシン目(26)によって分離可能な状態で互いに連結されている、請求項8から14までのいずれか1項記載の板状中間体(1)。
【請求項16】
脆性材料製の板状エレメント(10)の製造方法であって、脆性材料製の板材(3)を提供して前記板材(3)にレーザを照射し、ここで、前記板材(3)の前記脆性材料は、前記レーザに対して少なくとも部分的に透明であり、前記レーザのレーザビーム(41)によって、前記板材(3)の内部に材料改質部(5)を生じさせ、前記レーザビームを前記板材(3)の上方で経路(50)に沿って誘導することにより、前記材料改質部が前記経路(50)上で並んで存在し、その後、前記板材(3)をエッチングプロセスに供し、前記エッチングプロセスによって前記材料改質部(5)を拡大させることでチャネルを形成し、最終的に前記チャネルが連結することで、前記板材(3)を前記経路(50)に沿って分離し、前記経路(50)が、連結部(2)によって保持部(8)に連結されたエレメント(10)の前記輪郭を画定することにより、請求項8から14までのいずれか1項記載の板状中間体(1)が得られ、次に、前記連結部(2)を分離して前記エレメント(10)を前記保持部(6)から切り離す、方法。
【請求項17】
連結部(2)とエレメント(10)との間に設けられた分離線に沿って延在する弱化構造(4)を導入する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
- 非構造化板材(3)として、硬脆材料から連続的な延伸プロセスで連続ガラスリボン(30)を製造し、その際、
- 前記延伸プロセス中に、移動する前記連続ガラスリボン(30)に、所定の経路(50)に沿って超短パルスレーザ(40)により材料改質部を導入する、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
前記中間体(1)を支持体に固定し、以下:
- 前記保持部(6)からの前記エレメント(10)の分離を、前記エレメント(10)が前記支持体に固定されている状態で行い、その際、前記エレメント(10)は、前記分離後も前記支持体に連結されたままであるものとする工程、
- 前記支持体が、変形可能であり、その際、前記連結部(2)からの前記エレメント(10)の分離を、前記支持体の変形による前記連結部(2)での機械的応力の発生によって行う工程、
- 前記支持体を延伸させて、前記連結部(2)に引張応力をかける工程、
- 前記支持体または前記支持体に固定された前記中間体(1)を曲げて、前記連結部(2)に曲げ応力をかける工程
のうちの1つ以上を特徴とする、請求項16から18までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総じて、脆性材料製のエレメントの製造に関する。特に、本発明は、板状被加工物から輪郭を形成することによる該エレメントの製造に関する。
【0002】
米国特許出願公開第2018/215647号明細書には、超短パルスレーザを用いて板状ガラスエレメントに連続チャネルを導入する方法であって、該パルスは、焦点拡大光学系によって形成され、その後のエッチングプロセスでは、相互に隣接するチャネルを、それらの間の材料ブリッジのエッチング除去によって一緒に除去し、それによって、所定のジオメトリおよび特定の端部特徴(「すり鉢状物」)を有する構造化部材が切り離され、製造される方法が記載されている。この方法により、板材から、複雑な輪郭をも有するガラスまたはガラスセラミックエレメントを得ることができる。
【0003】
米国特許第10941069号明細書には、ガラスまたはガラスセラミックの層を有する板状被加工物の加工方法が記載されており、この被加工物は、レーザ選択エッチングによって不完全に分離された複数のサブセグメントに分割され、その際、これらのサブセグメントは、最初は網状の連結によって被加工物の残りの部分に連結されたままであり、この残りの連結は、なおも上面および下面にアンダーカットを有する、すなわち(厚さの部分的な領域でのみ)構造化された状態で実現されている。
【0004】
米国特許第10626040号明細書には、2つの損傷フィールドで構造化された板状ガラス製品が開示されており、第2の損傷フィールドは、少なくとも1つの中断部を有し、エッチングプロセス後に個片化される。損傷フィールドは、部分的に重なり合うことができ、かつレーザプロセスにより材料に導入されており、このレーザプロセスには、超短パルスも含まれ得る。
【0005】
米国特許出願公開第2018/215647号明細書に記載された方法は、2つの工程からなる処理プロセスでの、ガラスまたはガラスセラミック製の、総じて脆性材料製の透明基材の構造化を可能にするものであり、これは、まず基材に超短パルスレーザにより所望の構造に沿って横方向に一連の改質部を導入し、これらの改質部を、第2の工程で、改質部が空間的に連結されてエッチング浴中で内側部分と外側部分とが互いに分離されるまで、好適にはアルカリエッチングプロセスによって拡大させることにより行われる。しかし、最初の基材から横方向のサイズが小さい複数の製品を製造する場合、切り離された超小型製品がエッチング媒体中で浮遊してエッチング槽の底部領域に堆積するため、制御された様式でさらなるプロセス工程に供給することができなくなるという、取扱い上の問題が生じる。その結果、ガラス部材の重なりが生じ、それによりエッチングプロセスが制御不能となり、さらなる取扱い中に損傷が生じ、総じて、生産においてかなりの品質のばらつきが生じる。したがって、本発明は、レーザ支援エッチングによってガラスおよびガラスセラミック製の小型部材を安定した品質で製造すると同時に、製造中およびさらなる処理のための取扱いを簡便化するという課題に基づくものである。本発明における基本的な構想は、レーザによる輪郭画定工程およびそれに続くエッチングの後に製造された小型製品が、少なくとも1つのウェブ状の連結によって、隣接する保持部または他の隣接する製品に連結されたままであるということである。保持部は、1つ以上の構造化された小型製品を固定することができ、1つ以上のストリップや周囲フレームなど、様々なジオメトリで実現することができる。
【0006】
したがって、本発明は、脆性材料製の板状エレメントであって、該板状エレメントは、2つの対向する、特に平行な主面と、板状エレメントの外輪郭を画定する周端面とを有し、端面は、少なくとも1つの第1の領域と少なくとも1つの第2の領域とを有し、第1の領域は、その表面構造が第2の領域と異なる、板状エレメントを提供する。ここで、第1の領域は、特にエッチング面を有する。第2の領域は、破断面である。少なくとも1つの第1の領域の面積は、少なくとも1つの第2の領域の面積よりも大きい。第1および第2の領域が複数存在する場合、この条件は、合計面積に適用される。したがって、この場合、第1の領域の総面積は、第2の領域の総面積よりも大きい。特に、第1および第2の領域は、端面に沿って、あるいは端面によって画定される輪郭に沿って並んで配置されている。特に好ましい脆性材料は、ガラスセラミック、特にガラスである。
【0007】
脆性材料製のエレメントは、より大きな中間体からの分離により製造される。中間体での連結により、エレメントの取扱いが大幅に簡便化される。
【0008】
したがって、本発明は、エレメントを製造するための脆性材料製の板状中間体であって、該板状中間体は、保持部と、少なくとも1つの連結部によって保持部に連結されたエレメントとを有し、エレメントおよび連結部は、エッチング面を有する端面を有する、中間体をも提供する。エレメントへの移行部における連結部の幅は、エッチング面を有する端面によって形成される輪郭の長さよりも小さく、そのため、連結部での脆性材料の破断によりエレメントを分離することにより、脆性材料製の分離されたエレメントを得ることができ、ここで、分離されたエレメントの端面は、少なくとも1つの第1の領域と少なくとも1つの第2の領域とを有し、第1の領域は、その表面構造が第2の領域と異なり、第1の領域は、エッチング面を有し、第2の領域は、破断面であり、少なくとも1つの第1の領域の面積は、少なくとも1つの第2の領域の面積よりも大きく、第1および第2の領域は、端面に沿った、あるいは端面によって画定される外輪郭に沿った方向に並んで配置されている。以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。脆性材料製の中間体は、脆性材料製の板材を提供してこの板材にレーザを照射し、ここで、板材の脆性材料は、レーザに対して少なくとも部分的に透明であり、レーザのレーザビームによって、板材の内部に材料改質部を生じさせる、方法により製造することができる。レーザビームを板材の上方で経路に沿って誘導することにより、材料改質部が経路上で並んで存在する。その後、板材をエッチングプロセスに供し、エッチングプロセスによって材料改質部を拡大させることでチャネルを形成し、最終的にこれらのチャネルが連結することで、板材を経路に沿って分離する。この経路が、連結部によって保持部に連結されたエレメントの輪郭を画定することにより、本開示による板状中間体が得られる。脆性材料製の板状エレメントを製造すべく、次に、連結部を分離してエレメントを保持部から切り離すことができる。
【0009】
以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】脆性材料製の板状エレメントの透視図である。
図2】第1の領域の表面構造の断面を示す図である。
図3】それぞれ保持部に連結された脆性材料製のエレメントを備えた中間体の各種変形例を示す図である。
図4】それぞれ脆性材料製の複数のエレメントが共通の保持部に連結された実施形態を示す図である。
図5】それぞれ脆性材料製の複数のエレメントが共通の保持部に連結された実施形態を示す図である。
図6】それぞれ脆性材料製の複数のエレメントが共通の保持部に連結された実施形態を示す図である。
図7】脆性材料製のエレメント10を製造するためのプロセス工程を示す図である。
図8】各フィールドに細分化された中間体の実施形態を示す図である。
図9】脆性材料製の中間体の製造装置を示す図である。
図10】脆性材料製のエレメントの上面図である。
図11図10のエレメントについて、端面の位置から面中心点までの距離を、エレメントの輪郭に沿った道のりの関数として示すグラフである。
図12】歯車の形態の脆性材料製のエレメントを備えた中間体の一例を示す図である。
図13】端面の高さプロファイルを示す図である。
図14】ガラス製エレメントの光学顕微鏡写真である。
図15】ガラス製エレメントの光学顕微鏡写真である。
図16】脆性材料製のエレメントの端面の電子顕微鏡写真である。
図17】脆性材料製のエレメントの端面の電子顕微鏡写真である。
図18】カメラモジュールを示す図である。
図19】ガラスエレメントの破断強度のワイブル図を示す図である。
図20】脆性材料製の矩形のエレメントを備えた中間体を示す図である。
図21】脆性材料製のエレメントを備えた実施形態例を示す図である。
図22】エレメントを備えた電気光学アセンブリの一例を示す図である。
図23】エレメントを分離するための支持体上の中間体を備えたアセンブリを示す図である。
図24】保持部からエレメントを分離するためのさらなるアセンブリを示す図である。
【0011】
図面の詳細な説明
図1は、脆性材料製の板状エレメント10の透視図を示す。脆性材料として、総じて特にガラスおよびガラスセラミックが挙げられる。これらの材料は、特に、例えば270nm~2700nmの範囲において平均80%超という総じて高い透過率を特徴とし、これにより、以下に詳細に説明するレーザ支援エッチングプロセスによる好ましい製造が容易になる。脆性材料製の板状エレメント10は、2つの対向する、特に平行な主面100,101を有する。エレメント10の外輪郭は、周端面13によって形成されている。端面13は、並んで配置された各種セクションあるいは領域に細分化されている。ここで、少なくとも1つの第1の領域15および少なくとも1つの第2の領域17が存在する。これら2種類の領域は、その表面が異なる。特に、第1の領域15は、エッチング面を有する。一方で、第2の領域17は、破断面である。ここで、第1の領域15の面積は、第2の領域17の面積よりも大きい。ここで、これらの領域は、主面100,101に対して平行に延在する重ね合わされたストリップとして上下に配置されているのではなく、輪郭をなぞる方向に、すなわち端面13に沿って並んでいる。したがって、端面13の第2の領域17は、端部19,20のうちの少なくとも一方と隣接しており、この端部19,20で端面13が主面100,101に移行する。
【0012】
図示の例では、第2の領域17が2つ存在する。第2の領域17は互いに間隔があいているため、これら2つの第2の領域17の間には、エッチング面を有する第1の領域15が存在する。さらなる第1の領域は、エレメント10の周囲の端面13に沿って延在し、互いに背を向けた2つの移行部でそれぞれ第2の領域17と隣接している。第2の領域17を1つのみ設けることも可能である。端面が他の方法で処理されていない場合、第1の領域15も1つのみ存在する。しかし、図示の例のように、間隔をあけた2つ以上の第2の領域17を有する実施形態が好ましい。これは、エレメント10が容易に分離できる状態で保持部への安定した連結を可能にするために有利である。同じ理由から、一実施形態では、少なくとも1つの第2の領域17または複数の第2の領域17が一緒になって、エレメント10の最大横寸法の少なくとも0.5%、好適には少なくとも1%の幅を有することが提供される。したがって、エレメント10の輪郭が矩形である図1の例では、最大横寸法は、対向する2つの角の間の対角線の長さによって与えられる。1つの第2の領域17の幅、あるいは複数の第2の領域の幅の合計は、少なくとも20μm、好ましくは少なくとも50μm、より好ましくは少なくとも100μmであることが望ましい。
【0013】
第1の領域のエッチング面が、端面13の最も大きな部分を占めることが総じて有利であり、なぜならば、そのような端面13は、高い安定性、すなわち高い(機械的)(端部)強度を有するためである。したがって、他方では総じて、図示された特定の例に限定されるものではないが、好ましい実施形態において、1つ以上の第1の領域15のすべての面積割合の合計が端面13の総面積に占める割合が、少なくとも90%、好適には少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%、特に少なくとも99%であることが提供される。
【0014】
ガラス部材の強度は、実質的にはその表面の特性、特に表面から基材に入るマイクロクラックによって決まるため、本発明により製造される小型部材の強度は、エッチングプロセス(切り離しプロセス)に曝される表面の大部分における強度が総じて高いことを特徴とする。
【0015】
一実施形態によれば、端面13の曲げ負荷に対するエレメント10の強度は、第2の領域17よりも第1の領域において高く、特に著しく高くすることができる。著しく高い強度とは、平均して少なくとも50MPa高い強度と理解される。例えば、一発展形態によれば、超短パルスレーザによるフィラメント形成によって予め損傷を施した後で破断させた端部を有するガラスエレメントについて、80~200MPaの特性強度が測定される。エッチング処理と組み合わせることで、第1の領域と同様の表面を形成した場合に150MPa超~500MPaの特性強度が測定された。ここで、特性強度σは、実験的に求めたデータに最尤法を用いて2パラメータのワイブル分布を当てはめることにより求められる。
【0016】
したがって、本開示にしたがって製造されたエレメント10を、例えば3点曲げもしくは4点曲げまたは段付きロールにより個々の主面/端部の強度に関して試験した場合、第2の領域(すなわち、除去された/破断された保持ウェブ)を有する端部と第2の領域を有しない端部との間の特性強度には有意な差が存在し得る。ウェブ連結部あるいは保持部の除去により露出された第2の領域の表面は、機械的強度が低いため、所定の破断箇所として使用または提供することができる。
【0017】
分離によって露出された表面の領域、すなわち1つ以上の第2の領域17の破断面の強度が低下していても、小型部材はその高い強度を保持する。すでに述べたように、1つ以上の第2の領域17を所定の破断箇所として使用し、構成的に考慮することも可能である。
【0018】
端面13を少なくとも1つの第1の領域15と少なくとも1つの第2の領域17とに細分化することのさらなる利点は、アライメントが可能であることである。したがって、第2の領域は、部材のアライメントのためのオリエンテーションマークとして機能することができる。例えば、ロボットは、この第2の領域を認識し、これをもとにして、エレメント10を意図された向きで把持したり、組み込んだりすることができる。第2の領域17のアライメントがエレメントの対称軸線に対して非対称の場合、ロボットは、主面がどのような向きになっているか、例えば、どちらの主面が上になっているかを判断することもできる。このことは、主面の一方にコーティングが施されている場合に特に重要である。
【0019】
好ましい実施形態では、破断面として導入された、強度が変更されたそのような第2の領域17の数を、最小限に抑えるべきである。総じて、連結部の数、ひいては第2の領域の数が、最大で50、好適には最大で10、より好ましくは最大で5、非常に特に好ましくは最大で3であると有利である。特に好ましい構成では、小型部材が1つまたは2つの連結部によって保持部に連結されるように、構造化が実施される。図3を参照して以下に説明するように、複数の連結部によって、小型部材を異なる方向から、好ましい実施形態では安定性の理由から同じ方向から、またはさらには平行して固定することができる。好ましい実施形態では、小型部材あるいはエレメント10は、平行な連結部、好適には2つの平行な連結部によって保持部に連結される。
【0020】
2種類の領域15,17は、表面のテクスチャ以外の特徴においても異なることができる。例えば、両領域の端面は、主面100,101に対して異なる角度を有することができる。例えば、1つ以上の第1の領域15において、エッチングプロセスにより、両端部19,29にテーパ角を有することができる。さらに、破断工程により、第2の領域17は、一方の端部が突出しかつ/または他方の端部が凹むような傾斜を有することができる。第1および第2の領域15,17は、異なる表面構造に加えて、異なる端部ジオメトリまたは端部形状を有することもできる。
【0021】
総じて、第1の領域の端面のテーパ角を、レーザビームの入射方向によって生じさせることもできる。この場合、材料中に斜めに延在するフィラメント状損傷が導入されるため、エッチング時に、これに応じてフィラメントの方向に沿って斜めに存在する表面を有する端面が生成される。
【0022】
第1および第2の領域15,17の異なる表面構造は、特に粗さ、反射率、視覚的外観の特徴のうちの1つによって区別することができる。一実施形態によれば、両領域15,17は、確かに区別可能ではあるもの、同一のまたは少なくとも肉眼では区別できない視覚的外観を有する。
【0023】
エレメント10は、好適には、例えば、時計産業用の設計および機能エレメント、オプトエレクトロニクス発光体用のパッケージング(封止)部材、またはオプトエレクトロニクスセンサ用の封止部材のような精密機械またはマイクロメカニカル用途の小型製品として実現されている。これに関して、好ましくは、エレメントの最大横寸法は、最大で100mm、好適には最大で80mm、特に好ましくは最大で50mmである。最大横寸法が30mmである、より小型の部材も製造可能である。さらに、0.3mm以上、特に1mm以上、好適には3mm以上、特に好適には5mm以上の最大横寸法が好ましい。
【0024】
図2は、好ましい一実施形態による第1の領域の表面構造の断面を示す。第1の領域15のエッチング面がすり鉢状の凹部22を有することが総じて好ましい。特に、すり鉢状の凹部22が多少なりとも互いに直に隣接することにより、隣接する凹部22が稜線24によって隔てられていることも可能である。すり鉢状または丸みを帯びた凹部の深さは、好適には5μm未満である。一実施形態によれば、凹部22の横寸法は、平均して5μm~200μmの範囲、好適には5μm~100μmの範囲、特に5μm~50μmの範囲、特に好ましくは5μm~20μmの範囲である。ここで、一発展形態によれば、稜線24は、第1の領域15の上方から見たときに、すり鉢状の凹部22の多角形の境界を形成する。
【0025】
すり鉢状の凹部の平均横寸法は、エッチングプロセスの持続時間に影響を受け得る。すり鉢状の凹部は、典型的には、低い除去速度で、好適には例えばKOHまたはNaOH溶液などのアルカリ性エッチング媒体を使用して形成される。しかし、酸性のエッチング媒体を用いたエッチングも可能である。好ましい一実施形態によれば、材料は、毎時15μm未満、好ましくは10μm未満、特に好ましくは8μm未満の除去速度で除去される。フィラメント状損傷に沿って形成されたチャネルが一体化した後に除去される材料の量に応じて、板状エレメントの端部のチャネルは、横方向に開放された隣接するチャネルとして、または逆にリブとして、依然として認識することができる。これらのリブは、エッチング時にチャネルが合流する場所に残る。チャネルの一体化後、エッチングをさらに長く続けると、これらの構造は平らになり、すり鉢状の凹部に加えて、半開放型のチャネルまたはリブの形態の上部構造を持たない表面が形成される。好適には、稜線により形成された多角形の平均辺数は、8未満、好適には7未満である。稜線24は、すり鉢状の凹部のカーブに比べて比較的急である。これに伴って、ほぼ中心で稜線上に存在するはずであるような凸状に湾曲した部分の面積割合はごくわずかとなる。エッチング面の凸状に湾曲した部分の面積割合は、好適には5%未満、特に2%未満である。
【0026】
特に低いエッチング速度によって生じる表面の構造は、総じて高い端部強度を特徴とし、これは、機械的応力のかかる小型部材に特に有利である。
【0027】
このような表面の特性およびその製造は、米国特許出願公開第2018/215647号明細書に記載されており、該文献は、レーザ支援エッチング法およびそれにより製造された表面構造に関して、その全体が本願の主題ともされる。
【0028】
図3は、脆性材料製の構造化された板状中間体1の各種実施形態を(a)~(e)の部分図で示している。中間体はそれぞれ、分離可能な材料部分としてエレメント10を備え、このエレメント10は、好適にはウェブ状の材料ブリッジの形態の連結部2によって保持部6に連結されている。ここで、図示されているすべての実施形態において、保持部6はフレームとして設計されている。ここで、エレメント10は、フレーム8内、あるいはフレーム8によって画定された開口部9内に配置されており、1つ以上の連結部2によってフレーム8あるいはより全般的には保持部6に連結されている。部分図(a)の例では、エレメント10は、ウェブの形の単一の連結部2によってフレーム8に連結されている。製造工程により、フレーム状の保持エレメント6の開口部9の内部端面80は、総じて、板状エレメント10の端面13の第1の領域19と同じ表面構造、すなわち特に類似したエッチング面を有する。このことは有利であり、なぜならば、こうすることでフレーム8にも高い安定性が与えるためである。
【0029】
分離されたエレメント(10)の機械的安定性を高めるために、一実施形態によれば、エレメント10の輪郭は、第2の領域17と隣接して凸状に形成されていてもよいし、あるいは外向きに湾曲していてもよく、これは、図3の部分図(a)の例でも実現されている。このジオメトリは、直線状に延びるまたはアーチ状の輪郭と比較して、機械的応力下に第2の領域17に発生する引張力を低減する。
【0030】
部分図(b)の例では、エレメント10を保持するために、エレメントの対向側に係合する2つの連結部2が存在する。部分図(c)および(d)の例においても、それぞれ2つの材料ブリッジあるいは連結部2が設けられている。ここで、(c)の例では、連結部2が2つの異なる側でエレメント10を保持している。言い換えれば、材料ブリッジ2の長手方向は、ここでは横方向であり、特に互いに垂直である。(d)の例では、連結部あるいは材料ブリッジ2が並んで配置されている。したがって、これらの連結部2の長手方向は、実質的に平行である。
【0031】
保持部6が、製造されたエレメントあるいは小型もしくは超小型製品に必要な機械的安定性を与えることができるように、図示された特定の例に限定されるものではないが、好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの横寸法が、連結部2および/またはエレメント10よりも大きくなっている。
【0032】
機械的安定性の理由から、さらに別の実施形態による連結部2は、総じて、特定の例に限定されるものではないが、つながっている超小型製品、あるいはガラスまたはガラスセラミックエレメント10の最大横寸法の少なくとも0.5パーセント(0.5%)、好適には少なくとも1パーセントの幅を有するが、さらに代替的または付加的な一実施形態によれば、少なくとも100μmの幅を有する。エレメント10の良好な分離性を可能にするためには、連結部の幅が、保持部6の最大横寸法、または連結部2に連結されたガラスもしくはガラスセラミックエレメント10の最大横寸法の最大で50%、好適には最大で30%、特に好ましくは最大で20%、特に好適には最大で10%であることが総じてさらに好ましい。
【0033】
一方では保持部6からエレメント10を良好に分離することができつつも、エレメント10を安定的に保持するために、さらに一実施形態によれば、エレメント10を保持する少なくとも2つの連結部2において、それらの相互間隔が、中間体1あるいはエレメント10の厚さの少なくとも半分、好適には少なくとも同程度、特に好ましくは少なくとも2倍である場合に総じて好ましい。相互間隔とは、ここでは、連結部2の端部間の距離を意味する。したがって、本実施形態によれば、図1に示す例における2つの第2の領域17の間の第1の領域15の幅も、エレメント10の厚さの少なくとも2倍である。さらに代替的または付加的な一実施形態によれば、連結部間の相互間隔は、少なくとも20μmである。
【0034】
さらに、3つ以上の連結部2を設けることもできる。これに関して、図3の部分図(e)は、エレメント10が3つの連結部2により保持部6に連結されている実施形態例を示している。ここでも、連結部2が実質的に平行に延在すると好ましい。しかし、上記で説明したように、図示の例に限定されるものではないが、連結部がわずかな数しか設けられていない場合が総じて有利である。示された例の場合でもそうであるように、連結部の数が最大で50、特に最大で10、好ましくは最大で5、特に好ましくは1~3であると有利である。単一の連結部2で十分な場合も多い。
【0035】
種類および寸法が異なる複数のエレメント10が保持部6に連結されている場合、前述の寸法は、好適には、各エレメントおよび付属の連結部2について与えられる。
【0036】
最も単純な場合、小型部材あるいはエレメント10の分離は、純粋に機械的に行われ、すなわち、エレメント10から連結エレメント2への移行位置で機械的応力を加えることによって行われる。しかし、このように行われた分離プロセスによって小型部材または連結エレメント2に引裂きクラックが生じることで、エレメント10の輪郭に小さな材料突起またはシェル状の凹み/切り口が残るおそれがある。このような欠陥を回避するために、応力の推移を制御し、ひいてはクラックの進展を制御する目的で、狙いどおりに予備損傷を導入することによって連結エレメントと小型部材との間の移行領域を構造化することができる。このために、先行技術から知られている方法、例えば、機械的スクライビングや、さらにはアブレーション、ステルスダイシング、レーザ熱切断、またはさらにはフィラメント形成などのレーザベースの方法を所望の分離線に沿って用いることができる。よって、一実施形態によれば、図3にも示すように、連結部2とエレメント10との間に設けられた分離線に沿って延在する弱化構造4が設けられている。
【0037】
特に、連結部2と小型部材あるいはエレメント10との間の弱化構造4は、フィラメント形成プロセスによって構造化することができ、このプロセスでは、集束超短パルスレーザを用いて、典型的にはサブミクロン範囲の直径を有する一連の貫通孔、または貫通孔として設計されていてもよいフィラメント状損傷が、所望の輪郭または分離線に沿って所定の距離で導入される。このために、一実施形態によれば、保持部6、連結エレメント2およびエレメント10を有するすでに構造化された中間体1を超短パルスレーザシステムに導入し、それにより加工することができる。このようなフィラメント形成によって前処理された破断端部は、より低い力で連結部2からの分離が可能であるため、例えば弱化構造なしで提供された破断端部に比べて有利である。また、分離に必要な力もほとんど変わらず、端部が視覚的に目立つこともほとんどない。対照的に、フィラメント形成されていない端部は、表面に視認可能なチッピングが生じやすい。また、明らかにより大きな力を加えなければならず、これにより、実際のエレメント10が損傷されるリスクも高くなる。
【0038】
好ましい実施形態では、これらの付加的な変更形態は、連結エレメントの延在方向に対して垂直に、かつ既存の輪郭に加えて導入される。
【0039】
さらに、代替的または付加的に、弱化構造4が、厚さが低減された領域を含むことも可能である。例えば、このような厚さの減少は、レーザアブレーションによって達成することができる。
【0040】
さらに別の方法は、例えばスクライビングホイールやスクライビングダイヤモンドのようなスクライビングツールを用いた刻み目の導入である。
【0041】
好適には、弱化構造4は、中間体1の輪郭が形成された後、すなわちエッチングプロセスの後に、別のプロセス工程で製造することが提供される。弱化構造は、例えば、2つの表面のうち少なくとも一方に連続的または断続的なトレンチとして(したがって、局所的な減厚として)、穿孔として(例えば、超短パルスレーザによるフィラメント形成によって)、またはいわゆるステルスダイシングの場合のような内部改質によって形成することができる。総じて、弱化構造は、光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて検出することができる。
【0042】
図4図6は、それぞれ複数のエレメント10が共通の保持部6に連結された脆性材料製の構造化板材の形態の中間体1の実施形態を示す。図4による実施形態では、保持部6は、ストリップ状に設計されている。したがって、保持部6は、エレメント10を、ここではリング状またはフレーム状に取り囲んでいない。その結果、保持部6が接近を妨げることなく、エレメント10の少なくとも1つの端部が露出する。このことは、例えば、ガラスまたはガラスセラミックエレメント10をペンチで把持し、保持部6から分離する場合に有利となり得る。例えば、自動生産におけるロボットの一部としてペンチ状の工具が設けられていてよい。
【0043】
図5の例では、複数のガラスまたはガラスセラミックエレメント10が、フレーム8として設計された保持部6の共通の開口部9内に行列状に配置されている。一実施形態によれば、ガラスまたはガラスセラミックエレメント10は、フレーム8の形態の保持部6上に列状に、特にエレメント10を2列以上有する行列状に配置されている。図示の例のように、フレームの開口部9内に2列ある配置が特に好ましい。これによって、連結部2によってエレメント10を開口部の反対側に別々に取り付けることができる。図示のように、それぞれ各エレメント10に対して複数、特に2つの連結部2が設けられていてよい。図3の部分図(d)の例と同様に、ここでは2つの平行な連結部2が設けられている。ここで示した、2つの、特に平行なウェブ状の連結部2を有する実施形態は例示的なものであり、各小型部材に対して2つ未満の、またはさらには3つ以上の連結エレメントを使用することもできる。図6の例では、フレーム8として設計された保持部6の開口部9内に少なくとも2つのエレメント10が配置されており、2つのエレメント10が、一方のエレメント10から他方のエレメント10まで延在する少なくとも1つの連結部20によって互いに連結されている、全般的な実施形態が実現されている。
【0044】
図7は、本開示による、図1に例として図示するような脆性材料製のエレメント10を製造するためのプロセス工程を示す。総じて、図示された特定の例に限定されるものではないが、中間体1の製造方法および脆性材料製の板状エレメント10の製造方法は、以下の工程に基づく:図7の部分図(a)に示されるように、脆性材料製の板材3を提供する。
【0045】
脆性材料として、特に、ガラスまたはガラスセラミック、特に、無アルカリ(AF)ガラス、ホウケイ酸ガラス、製品名AF32、AF35、AS87、D263、D263T、B270、MEMPAX、Willow、G-Leaf、EN-A1、BDA-Eのガラスが該当する。
【0046】
以下に、レーザ照射、フィラメント状損傷の形成、およびその後のエッチングによるフィラメント状損傷に沿った拡径チャネルの一体化を含む製造方法に特に適したガラスを列挙する。
【0047】
第1の実施形態によれば、ガラスの組成は、重量パーセント単位で以下の成分を含む:
【表1】
【0048】
さらなる一実施形態によれば、エレメント10のガラスの組成は、以下の成分を含む:
【表2】
【0049】
さらに一実施形態では、ガラスの組成は、以下の成分を含む:
【表3】
【0050】
エレメント10のガラスの別の適切な組成は、以下で与えられる:
【表4】
【0051】
さらに別の実施形態によれば、エレメント10のガラスの組成は、以下の成分を含む:
【表5】
【0052】
上記のすべてのガラス組成について言えることであるが、必要に応じて、Nd、Fe、CoO、NiO、V、MnO、CuO、Crなどの着色酸化物を添加できる。清澄剤として、0~2重量%のAs、Sb、SnO、SO、Cl、Fおよび/またはCeOを添加することができ、組成物全体の総量は、それぞれ100重量%である。
【0053】
総じて、板材3の厚さは、好適には20μm~6000μmの範囲、好適には5000μmまでの範囲、特に好ましくは20μm~3000μmの範囲である。第1の工程では、保持および連結エレメントならびに小型製品あるいはエレメント10の輪郭を画定する。そのために、脆性材料製の板材3にレーザを照射し、その際、板材3の脆性材料は、レーザに対して少なくとも部分的に透明であり、レーザのレーザビームによって、板材3の内部に材料改質部5を生じさせる。レーザビームを、板材3の上方で経路50に沿って誘導することにより、材料改質部が経路50上で並ぶ。図7の部分図(b)には、経路50上で並んだ材料改質部を有する板材3が示されている。改質部とは、ここでは、特に屈折率変化(局所限定的または連続的)、トレンチ、ウェッジ、キャビティの形態の局所的な材料減厚、基材の内部損傷、例えばマイクロクラック、局所的な溶融、貫通孔(円筒状またはより一般的な形状)、またはフィラメントあるいはフィラメント状損傷のような材料変化を意味すると理解することができる。
【0054】
保持部6、連結エレメント2、および小型製品あるいはエレメント10に必要な基材部分から、必要でない余分な部分を分離するために、次の工程でエッチングプロセスによって既存の改質部を増強、すなわち拡大させて、改質領域が接触あるいは重なり合うようにすることで、企図した目標輪郭に沿って連続的で中断のない材料の弱化、またはさらには分離を行う。よって、次いで板材3をエッチングプロセスに供し、エッチングプロセスによって材料改質部5を拡大させることでチャネルを形成し、最終的にこれらのチャネルが連結することで、板材3を経路50に沿って分離する。経路50は、連結部2によって保持部8に連結されたエレメント10の輪郭を画定する。その結果、経路に沿った分離の後に、本開示による板状中間体1が得られる。
【0055】
エッチングは、例えばHF、HCl、HSO、HNOまたは他の酸の水溶液などの酸性エッチング媒体でエッチングされてもよい。例えば苛性カリ、KOHまたは苛性ソーダ、NaOHなどのアルカリ性エッチング媒体でエッチングすることが好ましい。一発展形態によれば、pH値が12より大きいアルカリ性エッチング媒体および錯化剤でエッチングを行うことが提供される。ここで、錯化剤は、該錯化剤によって脆性材料の成分のうち少なくとも1つが錯化されるように選択される。一発展形態によれば、アルカリ土類金属イオン、好ましくはカルシウムイオン(Ca2+)と錯体を形成する錯化剤を使用することが提供される。さらに別の一発展形態によれば、錯化剤は、ホスフェート、好ましくはATMP(ニトリロトリス(メチレンホスホン酸))、ホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸の塩、好ましくはアルカリ金属グルコン酸塩、EDTAおよび/または遷移金属塩、特にCrClの群から選択される。上記の措置は、放出された成分の錯化によって、エッチング工程の局所的な阻害を有利に打ち消すことができる。それどころか、製造される構造体内でも、エッチング速度に関する自己安定化効果またはさらには自己強化効果が生じ得る。
【0056】
さらに、ケイ酸塩、好ましくはアルカリ金属ケイ酸塩、特に好ましくは水ガラスを溶解状態で含むエッチング液を使用することもできる。溶解したケイ酸塩を含むエッチング液を使用すると、エッチング速度を著しく高めることができる。この効果は、特にエッチング液中のケイ酸塩濃度が高い場合に観察される。特にケイ酸塩濃度が高い場合、ケイ酸塩は、さらにアルカリキャリアとしても作用するため、水酸化物イオンの移動度あるいはイオン移動度を高める。これは、エッチング液中の水酸化物濃度が非常に高い実施形態において特に有利である。例えば、水酸化物イオンのイオン移動度は、非常に高濃度のアルカリでは濃度が高くなるにつれて低下し、これはエッチング速度にも影響を及ぼす。しかし、この影響は、アルカリキャリアとしてケイ酸塩を添加することにより、少なくとも部分的に相殺することができる。
【0057】
エッチングプロセスにより、エレメント10および連結部2の輪郭に類似した経路50に沿って板材3を分離すると、連結部2を有するエレメント10に対して相補的なエレメント14が板材3から切り離される。したがって、不要な基材部分は、エッチングプロセス中に(例えば、エッチング前に補助的なカットが導入された場合には)一部が、または全体が、構造化基材から脱落する。本工程の最後には、1つ以上の保持部と、1つ以上の小型製品と、それらの保持エレメントまたはそれら相互との単一または複数の連結部とからなる部材が存在する。この部材は、特にエッチングプロセスから生じる表面構造を特徴とする。
【0058】
このエレメント14を切り離すことによって、中間体1が得られる。これは、図7の部分図(c)に図示されている。図示とは異なり、例えばレーザビームで輪郭を経路としてなぞり、その後、エッチングプロセスで経路に沿って狭いスリットをエッチング除去するだけで、相補的エレメント14を切り離さずともエレメント10の輪郭を形成することができる。また、エレメント10を形成するために、単一の相補的エレメント14の代わりに、複数のより小型の部材を切り離すことも可能である。プロセスシーケンスの最後には、分離工程があり、この工程では、小型部材あるいはエレメント10を、所定の分離線に沿ってその連結エレメントから分離する。したがって、エレメント10の製造方法であって、中間体1を製造した後に連結部2を分離することで、エレメント10を保持部6から切り離す、方法も提供される。この工程は、図7の部分図(d)に示されている。
【0059】
図7の(d)に示す工程が、中間体の製造とは時間的に別個に、すなわち明らかに後の時点で、かつ/または異なる場所で、例えば、このために設けられた装置にエレメント10を組み込むために、例えば、貯蔵または輸送プロセスの後に実施されると、特に有利である。このようにして製造された中間体1の利点は、後の小型製品あるいはエレメント10の位置が安定化され、したがって、中間体を全体として直接または付加的なハンドリング助剤を用いて加工することにより、容易にさらに加工できることである。さらなるプロセス工程は、これがすべてであると主張するものではないが、表面もしくは表面の一部のコーティング、印刷、再構造化、またはそれらの組み合わせとすることができる。さらに一実施形態によれば、中間体1に化学強化を施すことができる。エレメント10と保持部6との連結によって、このさらなる加工時にも取扱いが容易となる。化学強化には、例えばNaO含有量が十分に高いガラスまたはガラスセラミックのようなアルカリ含有脆性材料を使用することが総じて有利である。好適には、この目的でのNaO含有量は、少なくとも5重量%である。化学強化された状態であっても連結部2における保持部6からのエレメント10の分離を容易にするために、一発展形態によれば、ここで、連結部2の幅が交換深さ(DoL)の2倍よりも小さいと有利である。この場合、連結部2はその断面全体にわたって化学強化されるため、応力が破断に沿って変化することによる制御不能な破断のリスクが低減される。別の一発展形態によれば、連結部2の幅を交換深さ(DoL)の4倍より小さく、あるいは好適には交換深さの3倍より小さくすることも可能である。これは、一方では依然として非破断分離を可能にし、他方では交換深さを制限するために、厚いガラスにおいて特に有用である。さらに一実施形態によれば、例えば長さ10μmのチャネルが連結部2に設けられていてよい。これらのチャネルに交換浴が浸透することで、これらのチャネルの周囲にも化学強化が生じ得る。このようにして、連結部からエレメント10への移行領域にも同様に、破断箇所における高い応力差が回避される程度に体積内で化学強化を施すことができる。図1に示した弱化構造4と同様に、少なくとも1つのチャネルが、主面と端面との双方に導入されていてよい。
【0060】
分離プロセス工程の最後に、連結エレメントを有する保持部と、小型部材あるいはエレメント10とを分離する。ここで、主面100,101を、構造化または他の形態のさらなる加工に供してもよい。
【0061】
図1を参照してすでに説明したように、分離プロセスによって露出された表面は、エッチングプロセスによって露出された第1の領域とは異なる、第2の表面構造を有し、これは例えば、先行する機械的分離の場合には平滑な表面であり、フィラメント形成プロセスによるレーザ穿孔の場合には、典型的には、開放型の、垂直に延在するフィラメント形成チャネルが貫通する光学的に粗い表面である。それぞれの元の連結部2について、エレメント10の端面13は、連結部2とエレメント10との接触領域において連結部2の断面に対応する面積を有する第2の領域17を有する。その結果、端面13の総面積に占める第2の領域17の表面の割合の合計は、第1の領域15の割合の合計よりも著しく小さくなる。好ましくは、第2の領域17の割合は、20%未満、好適には10%未満、特に好ましくは5%未満である。2%未満、特に1%未満の面積割合が非常に特に好ましい。
【0062】
図8は、各フィールドに細分化された中間体1の実施形態例を示している。本実施形態では、第1のプロセス工程で、まず保持部6のジオメトリにしたがって板材3を構造化あるいは予備損傷させ、第2のプロセス工程で、フレーム8、連結エレメント2およびエレメント10内のサブフィールドを構造化することによって、フレーム8内に存在する小型部材あるいはエレメント10をカスケード状に製造することもできる。ここで、例えばピッチなどのプロセスパラメータを適切に選択することにより、エッチングプロセスによってエレメント10のみが露出し、フレーム8間のミシン目26が露出しないことを保証することができる。この中間体1の実施形態は、中間体1がフレーム8の形態の複数の保持部6を有し、フレーム8内には、それぞれ少なくとも1つのエレメント10が配置されており、エレメント10は、少なくとも1つの連結部2によってフレーム8に連結されており、フレーム8は、1つ以上のミシン目26によって分離可能な状態で互いに連結されているという事実に基づいている。
【0063】
図8の例では、さらに別の実施形態が実現されている。エレメント10の輪郭を画定して形成するレーザ支援エッチングプロセスにより、貫通孔の形態のアライメントマーク28を生成することもできる。図8に示すように、複数のフィールドあるいはミシン目によって連結されたフレーム8において、フレームの形態のすべての保持エレメント6に、そのようなアライメントマーク28を付与することができる。これにより、フレーム8の分離後に、例えばさらなる加工プロセスのために、それらの簡便かつ正確なアライメントが可能となる。
【0064】
本方法の一実施形態によれば、超短パルスレーザによる構造化を、基材ガラスの製造プロセスにおいてインラインで実施することが提供される。特に、連続ガラスリボンを製造する連続延伸プロセスにインラインでレーザ構造化を組み込むことが想定される。さらに好ましくは、400μm未満、好ましくは最大で200μm、特に最大で100μm、またはさらには最大で50μmまたは最大で30μmの厚さを有する薄板ガラスおよび超薄板ガラスの製造にレーザ構造化を組み合わせることが提供される。薄板ガラスの製造は、ダウンドロー法またはオーバーフローフュージョン法により行うことができる。構造化されたガラスリボンを、インラインで直接エッチングすることができる。代替的または追加的に、レーザによる構造化の後、ガラスリボンをロールに巻き取るか、ガラスリボンの送り方向に対して横方向にさらなるプロセスによって分離し、その結果、送り方向に所望の長さに切断することができる。これらの変形例では、構造化、エッチング工程および必要に応じて分離を、時間的および空間的に互いに分けることができる。これに関して、図9は、ガラスリボンの製造装置29を示し、本装置29は、本開示による中間体1の製造装置へとさらに発展する。図示の例では、装置29は、最初は構造化されていない板材3を連続ガラスリボン30の形態でロール44に巻き取るように設計されている。まず、ガラス融液32をノズル34から引き出してガラスリボン30を得るが、その際、ノズル34の下方に配置された延伸ローラ36が、ノズル34から出てくるガラスに引張力をかける。図示の変形例は、ガラスが下向きに開口したノズルから出るダウンドロー法を示している。オーバーフローフュージョン法では、ガラスは、上部に開口した細長いトラフの縁部を越えて流れ、次にトラフの側壁を流れ落ちる。トラフの下方で部分流が合流することで、ガラスリボンが得られる。
【0065】
図示のように、ガラスリボン30は、好適には水平方向に偏向され、搬送装置38、例えばベルトコンベアによって移動される。図7の部分図(b)に示すような、経路50に沿ってフィラメント状の材料改質部を導入することによる構造化は、分割されていないガラスリボン30に対して、超短パルスレーザ40によりインラインで行われる。超短パルスレーザ40のレーザビーム41は、ビーム光学系42によってガラスリボン30上に集光され、ガラスリボン30の上方で所望の経路50に沿って誘導される。図示の変形例では、次いでガラスリボン30がロールコア46に巻き取られることで、ロール44が形成される。代替的または追加的に、図7の部分図(c)に示すように、エレメント10の輪郭を出すために、ガラスリボン30をエッチング浴に通すことができる。このように、本実施形態による方法および装置29は、以下の事実に基づいている:
- 非構造化板材3として、硬脆材料から連続的な延伸プロセスで連続ガラスリボン30を製造し、その際、
- 延伸プロセス中に、移動する連続ガラスリボン30に、所定の経路50に沿って超短パルスレーザ40により材料改質部を導入する。
【0066】
端面13の1つ以上の第2の領域17は、第1の領域15よりも強度が低い場合があるため、発生する機械的応力が総じてより低い場所に第2の領域を設けることが有利である。理想的な事例では、第2の領域17は、所定の、例えば負荷が対称的となる事例では応力が最小となる場所に存在することができる。これに関して、端面13における1つ以上の第2の領域の配置に関する好ましい実施形態について以下に説明する。好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの第2の領域17は、端面13上の、面中心点からの最大距離の少なくとも2/3の距離にある位置に沿って延在している。同じ目的で、代替的または付加的に、負荷がかかる際に最大負荷の最大で80%、好適には最大で60%、特に好ましくは最大で40%の機械的負荷がかかる端面13の部分に沿って少なくとも1つの第2の領域17が延在することが提供可能である。
【0067】
図10は、説明のために、主面100を上方から見たL字形エレメント10の例を示している。面中心点103は、エレメント10の主面100内にあるとは限らない。これは、図示されたエレメント10の場合も同様である。エレメント10の外輪郭、あるいは端面13または端部19に沿った座標(p,p)の各点について、座標(m,m)の面中心点103までの距離dは、d=((p-m+(p-m1/2にしたがって求めることができる。
【0068】
これに関して、図11は、図10のエレメントについて、端面または輪郭の位置から面中心点までの距離dを、エレメント10の輪郭に沿った道のりsの関数として示すグラフを示す。輪郭から面中心点103までの距離が最小となる点104が始点として選択されている。矢印は、輪郭の移動方向を示す。図10では、輪郭の角部が、a、b、c、d、e、fの文字で表されている。これらの点は、図11の図でも同様に表されており、ピークとして容易に認識できる。面中心点103までの最大距離は、角部eの位置にある。図11には破線が引かれているが、これは点eでの距離の2/3の値を示している。図11のスケールでは、角部eの距離は約51(任意単位)である。したがって、この値の2/3の限度値は、約34である。したがって、図示の例では、連結部2への連結の好ましい位置は、脚部105,106の端部である。好ましい固定領域107は、明確にするために破線で示されている。図11の図からもわかるように、確かに角部dも面中心点103から比較的離れてはいるが、最大距離の少なくとも2/3の距離という条件はまだ満たしていない。実際に、角部dの領域の破断面は、脚部105,106に機械的負荷が作用した場合に引張応力を受ける可能性があるため、この領域も連結部2による固定にはさほど適していない。
【0069】
図12は、第2の領域の配置、あるいは中間体1の場合には連結部2によるエレメント10の保持部6への連結位置が上記で説明した設計仕様を満足するさらなる例を示している。ここで、図12は、フレームの形態の保持エレメント6を備えた中間体1を示す。フレームの開口部には、歯車の形態のエレメント10が2つの連結部2によってフレーム8に連結されている。ここで、連結部2は、歯部108の外端部でエレメント10に連結されている。輪郭のこれらの部分では、歯部108間の凹部よりも面中心点103までの距離の方が大きい。歯部108のこれらの外側の領域は、さらに、歯車の中心の面中心点103までの距離が最大である。
【0070】
総じて、直線状のプロファイル、特に主面100,101に対して実質的に垂直に延在するプロファイルを有する端面しか生成できないわけではない。そうではなく、湾曲したプロファイルあるいは断面を有する端面を生成することも可能である。内向きに湾曲した、すなわち凹状のプロファイルに加えて、特に外向きに湾曲したプロファイルを生成することも可能である。これに関して、図13は、第1の領域15内のエレメント10の端面13の高さプロファイルを示す。高さプロファイルの、約-321μmおよび+372μmのx位置の極小値への急峻な低下は、主面100,101の位置を表している。このプロファイルからわかるように、端面は、10μm~15μmの範囲の量で外向きに湾曲している。このようなプロファイリングは、総じて、フィラメント状損傷を完全にまたは部分的に斜めに導入することによって達成することができる。代替的または追加的に、少なくとも片側が材料内で終わるフィラメント状損傷を生成することによって、エッチング除去速度に影響を与えることができる。
【0071】
これに関して、特定の実施形態例に限定されないが、第1の領域のエッチング面を有する端面13が、エレメント10の厚さの少なくとも1%だけ外向きまたは内向きに湾曲しているプロファイルを有することが提供される。
【0072】
図14および図15は、ガラス製エレメントの光学顕微鏡写真である。エレメント10の端面13は、図13の例に示すように外向きに湾曲している。図14に示すように、エレメント10はリング状の部分を有し、このリング状の部分に、画像の右上に見える棒状の部分がつながっている。両領域15,17は、図14の写真では視覚的にほとんど区別できない。図15は、領域15および17を有する端面13のさらなる拡大写真を示す。特に、線として認識できる領域15と領域17との間の移行部18が、ここで視認できる。いずれにせよ、ここでも、第2の領域17の破断端部は、第1の領域のエッチング面と視覚的にほとんど区別できない。これは特に、これら両領域の粗さを互いに適合させることができるという事実によるものである。したがって、エッチングパラメータによって第1の領域の粗さに影響を与えることができる。第2の領域17において、特に弱化構造4の種類および構成、例えば弱化線に沿ったフィラメント状損傷の間隔によって粗さに影響を与えることができる。したがって、図示の例に限定されるものではないが、一実施形態では、第1の領域15の平均粗さRaと、隣接する第2の領域17の平均粗さRaとの比が0.75~1.25の範囲であることが提供される。両領域15,17は、好ましい一実施形態による図示の例のように、研磨面に類似した外観を有する。したがって、特に、両領域は、図示の例に限定されるものではないが、総じて同じ視覚的外観を有することができる。
【0073】
第2の領域17は、好適には破断端部であるため、典型的には平坦に形成されている。しかし、ここでも、特定の措置により、凸状または凹状の湾曲のような別の形態を達成することができる。このために、例えば、弱化構造として複数のフィラメント状損傷を異なる角度で導入することができる。
【0074】
両領域15,17を視覚的に互いに適合させるためには、さらに、第2の領域17と、隣接する第1の領域15との間での高さのずれが20μm未満であることが有利である。この特徴は、図14および図15に示す例でも満たされている。第2の領域17は、突出しておらず、また認識できるほど凹んでもいない。この特徴は、連結部2で弱化構造4が隣接する第1の領域15の外輪郭の近傍で終わるか、あるいはこの外輪郭へ進むことによって実現することができる。
【0075】
図16および図17は、脆性材料製のエレメント10の端面13の2つの電子顕微鏡写真を示し、ここでは特に、図14および図15の例と同様に、ガラス製のエレメントである。
【0076】
図16の例は、200倍の倍率で撮影したものである。ここでは第2の領域17がはっきりと認識でき、その左右に第1の領域15が続いている。第1の領域のすり鉢状の凹部22もはっきりと認識できる。図示の例でも実現されている一実施形態によれば、第1の領域15と第2の領域17との間にそれぞれ移行部18が存在しており、その際、移行部18は、第1の領域のすり鉢状の凹部よりも平均して大きいすり鉢状の凹部を有する。移行部18に沿って延在するより大きな凹部22は、顕微鏡写真ではっきりと認識することができる。凹部の生成は、輪郭がエッチング浴中で形成される際の、連結部2とエレメント10との移行部におけるエッチング速度の変化に起因する。連結部2からエレメント10を分離する際の制御不能な破断やスキャロッピングを避けるためには、このような大きなすり鉢状物が有利である。
【0077】
図17は、500倍に拡大した端面を示す。この倍率では、超短パルスレーザによって第1の領域17の破断面に導入されたフィラメント状損傷39も、細い濃色の直線として認識することができ、なぜならば、この破断面が、フィラメント状損傷に沿って延在しているためである。よって、それによる損傷は、破断面において部分的に半開放型のチャネルとして存在する。図17の画像では、フィラメント状損傷39は、上方から下方へ、すなわちエレメント10の一方の主面から対向する主面へ向かう方向に延在する。図示の例では、フィラメント状損傷39の間隔は、約6μmである。上記で説明したように、好適には、まずフィラメント形成およびエッチングによって、連結部2とエレメント10とを有する板状中間体の輪郭の形成が行われる。その後にようやくフィラメント状損傷39が導入され、このフィラメント状損傷39は、弱化構造4を形成し、したがって第2の領域の破断面において視認可能である。しかし、例えばすべてのフィラメント状損傷を導入し、その後、この損傷39のエッチングを避けるために連結部2の損傷39をマスキングするなどの他の変形例も考えられる。
【0078】
一実施形態では、例えば図4図6に例として示すような中間体1は、構造化プロセス(レーザによるフィラメント形成およびその後のエッチングプロセス)の後に被覆される。したがって、その場合、中間体から分離されたエレメント10にも、コーティング、特に光学活性コーティングが施されていてよい。
【0079】
部材および保持部全体へのスパッタリングおよびPVD、ディップコーティングまたは印刷など、様々なコーティングプロセスが原理的に可能である。光学活性層(反射防止層、フィルタ層、例えばIRカットフィルタ)、機能層(防指紋、抗微生物または抗菌コーティング(例えば銀イオンベースのもの)、傷防止コーティング、またはさらには施与されたペイントやラッカーの形態の純粋な装飾コーティングなど、施与された様々な種類の層も考えられる。傷防止コーティングとして、一般的には、高屈折率で層厚が1μm以上の層、例えば窒化アルミニウム/窒化ケイ素や酸化ジルコニウムをベースとする層が適している。
【0080】
IRカットフィルタやバンドパスフィルタについては、高屈折率コーティング(通常はTiO、Ta、Nb、HfO、ZrO)と低屈折率コーティング(好適にはSiO)とから交互に構成された適切な厚さの多層の層系を組み合わせることで、所望の光学特性を得ることができる。このような多層の層系は、例えば反射防止コーティングなどの他のコーティングにも使用することができる。したがって、特定の例に限定されるものではないが、一実施形態では、光学活性コーティングが、屈折率の異なる複数の層、特に高屈折率層と相対的にこれよりも低屈折率の層とが交互に積層された層を含むことが提供される。
【0081】
ここで説明した方法により、特に横寸法が1mm~最大で10mmの範囲であり、基材の厚さが少なくとも50μmで70μm~400μmである特に小型部材の製造および取扱いが可能となる。このような小型エレメントの用途として可能であるのは、例えば携帯電話のカメラセンサや、ノートパソコンやタブレットPCなどの他の携帯電子機器に搭載されているようなカメラモジュールのカメラセンサのIRカットフィルタとしての使用である。この目的で、総じて、必要な光学特性を有する光学活性層が施与される。この層の成膜は、連結部2および保持部6によるエレメント10の所定の位置調整によって容易になり、またはさらには総じて初めて可能となる。
【0082】
さらに、エレメントの強度も、特にこの前述の適用分野にとって重要なパラメータである。ここで、高強度フィルタエレメントの製造は、構造化プロセスに続くコーティングプロセスと、その前または後に行われる強化プロセスとを適切に組み合わせることによって成功する。
【0083】
エレメントのコーティングと、被覆され、分離されたエレメント10の向きも領域15,17をもとにロボットで識別する方法と、強化とについては、すでに上述した。
【0084】
したがって、本発明の一実施形態によれば、総じて、板状の光学フィルタエレメントであって、脆性材料製のエレメント10が光学フィルタコーティングで被覆されている、板状の光学フィルタエレメントが提供される。ここで、主面100,101のうちの少なくとも一方に光学フィルタコーティングが施されていてよく、必要に応じて両面にコーティングが設けられていてもよい。ここで、各コーティングが異なっていてもよい。光学フィルタコーティングは、IRカットコーティング、すなわち、特に近赤外領域の放射線を吸収または反射するコーティングであってよい。ここで、このような光学フィルタエレメントに典型的であるのは、基材あるいはエレメント10が赤外線に対して透明であるか、あるいはより一般的にはフィルタコーティングよりも高い赤外線透過率を有することである。近赤外領域とは、IRカットコーティングの機能の趣意において0.7μm~2.5μmの波長領域であると理解される。さらに一実施形態によれば、総じて、本開示による板状エレメント10で覆われたセンサを備えたカメラモジュールであって、板状エレメント10が、光学フィルタを形成している、カメラモジュールが提供される。これに関して、特に、上述したように、光学フィルタコーティングがエレメント10に設けられていてよい。代替的または追加的に、板状エレメント10のガラスは、フィルタガラスであってもよい。
【0085】
図18は、本実施形態に関して、例えば携帯電話や他の携帯電子機器に使用できるようなカメラモジュール52を示す。カメラモジュール52は、画像撮影用のカメラセンサ56と、レンズ58と、場合によってはセンサ56およびレンズ58を収容および固定するためのハウジング59とを備えている。センサ56の感光層に光学フィルタエレメント60が施与されており、例えば接合層61と接着されている。光学フィルタエレメント60は、被覆されたエレメント10によって形成されている。ここで、光学フィルタコーティング54は、近赤外領域の放射線の大部分が反射または吸収され、実質的に可視光のみがセンサに入射するように設計されている。
【0086】
さらなる一実施形態では、コーティングプロセスの前に、基材の強化、好ましくは化学強化が行われる。この目的で、保持部6およびフレーム8、ならびに連結部2、あるいは前述の部材をすべて有する脆性の板状中間体1を、交換浴中での強化プロセスに供する。
【0087】
部材の強度は、保持部と連結した状態のみならず、切り離しの後でも非常に重要である。ここで、強度は、各端部の破断強度によってほぼ決まる。これに関して、図19のワイブル図は、フィラメント形成の直後に、すなわち超短パルスレーザを用いてフィラメント状損傷を導入した直後に測定された、厚さ100μmの超薄板ガラスの端部強度の典型的な値を示している(測定値「A」、円形の記号)。さらに、それに続くKOHエッチングプロセスの後の板ガラスの測定値(測定値「B」、三角形の記号)、およびエッチングプロセスに続く化学強化プロセスの後の板ガラスの測定値(測定値「C」、菱形の記号)が示されている。板ガラスは、D263T型ガラスから製造したものである。
【0088】
図19に引かれた線は、式H=100%×(1-exp(-t/T))の故障率Hの関数を測定値に適合させたものである。したがって、これらの直線は、形状パラメータbと尺度パラメータTによる破壊確率の累積密度関数を表している。フィラメント形成後の測定値「A」では、T=53.55、b=25.25であり、エッチング後の測定値「B」では、T=826.35、b=1.69であり、エッチングおよび強化後の測定値「C」では、T=508.8、b=8.27である。
【0089】
超薄板ガラス基材のフィラメント形成された端部(測定値「A」)の最小破断応力は約50MPaであるが、エッチングされた端部(測定値「B」)では少なくとも約200MPaの最小破断応力が達成され、強化された端部(測定値「C」)の場合には、さらに少なくとも約300MPaを超える最小破断応力が達成されている。強化プロセスにより、エッチングされた端部の破断応力の分布幅は著しく狭くなり、つまりより明確になっている。エッチングおよび強化された端部の平均破断応力は、約500MPaである。
【0090】
強化プロセスによる強度の増加は材料に依存し、図19の例が示すように、非強化板ガラスと比較して、総じて著しく高い強度値を達成することができる。
【0091】
これらの値は、特に小型部材あるいはエレメント10を保持フレーム8あるいは材料ブリッジ、すなわち連結部2から分離するプロセスにとって重要である。狭い材料ブリッジに弱化構造4が導入されている場合、その強度は、フィラメント形成された端部の参照値(測定値「A」)にほぼ対応するため、その強度は、エッチングされた端部の強度の(b10の特性値の)約4分の1である。この部材を強化プロセスにも供した場合、この間隔はさらに広がって6分の1になる。よって、個片化の際にまず弱化構造4の領域の材料ブリッジを破断させ、部材10を特にフレーム8の形態の保持部6から確実に分離することができる。この効果により、化学強化の後でも、エレメント10をフレーム8から容易に分離することができる。したがって、有利な一構成では、板状中間体1であって、弱化構造4が、連結部2とエレメント10との間に設けられた分離線に沿って延在しており、弱化構造4が、一連のフィラメント状損傷を有し、中間体1が、化学的強化されている、板状中間体1が提供される。ここで、エレメント10と少なくとも弱化構造4の領域の連結部2との双方が化学強化されている。
【0092】
本開示にしたがって被覆および/または強化された中間体1が保持部6あるいは材料ブリッジで分離されると、すでに上述した端面13の第2の領域17が生成され、これは、すでに説明したように、粗さ値に関してのみならずその被覆状態およびその強度の点でも、端面の第1の領域13と異なり得る。第2の領域17の端面の強度が低下する可能性があることから、特に強化および被覆された中間体1の場合、後の使用時にエレメント10の強度の低下が許容される領域において、材料ブリッジ/連結部2がエレメント10の端面に接触することが合理的であるものと思われる。したがって、矩形のエレメント10の場合、連結部あるいは保持部6がエレメント10の角部の領域かまたは角部に直接配置されていることが好適であり、なぜならば、負荷がかかった際にそこで発生する応力が最も低いためである。それにしたがって連結部2が配置されている中間体1を、図20に示す。図3図8の実施形態例とは異なり、ここでは、連結部2が、ここでは矩形エレメント10の角部に直接配置されている。この場合には、エレメント10を保持部6から分離すると、総じて、図示の例に限定されるものではないが、少なくとも1つの角部を有する形状のエレメント10が得られ、その際、端面の第2の領域17が存在し、その1つの縁部がエレメント10の角部と一致するか、あるいは第2の領域17がこの角部で終わる。また、領域17の縁部と角部との間にわずかな距離があっても同様の効果が生じ得る。ここで、より一般的な一実施形態によれば、第2の領域の縁部から角部までの距離は、第2の領域17の幅よりも小さく、好適には第2の領域17の幅の半分よりも小さい。
【0093】
そのようなエレメントの10を有する一実施形態例を、図21に示す。本例では、第2の領域17は、各角部110で直接終わらず、そこから少し離れたところにある。しかし、その距離は、第2の領域17の幅よりも小さく、さらには第2の領域17の幅の半分よりも小さい。図示の例のように距離を小さくすることは、切り離しの際に角部110で材料が破断し、生じる第2の領域の破断面が平坦でなくなるのを防ぐのに有利であり得る。上述したように、エレメント10の分離前に、中間体1を被覆することができる。被覆された中間体1の材料ブリッジでの分離プロセスによって露出された第2の領域17は、その結果、コーティングを有しない。本実施形態は、図21にも同様に図示されている。コーティング70は、ここではハッチングとして図示されている。示されているように、コーティング70は、少なくとも部分的に端面13上にも存在し得る。よって、総じて、図示された特定の例に限定されるものではないが、さらに一実施形態によれば、脆性材料製のエレメント10であって、主面100,101のうちの少なくとも一方および少なくとも部分的に端面13にコーティング70が施されており、コーティング70が、第2の領域17において脱落しているかあるいは欠如している、脆性材料製のエレメント10が提供される。
【0094】
したがって、さらなる一実施形態において、このようにして生じた第2の領域は、必要に応じて後の使用時に面を後処理した後に、電磁放射線、特に可視(コヒーレントまたはインコヒーレント)電磁放射線の入出力結合に使用することができる。このようなエレメントは、例えば、導光部材として、またはバイオテクノロジーにおいてマイクロ流体エレメントとしても使用される。よって、さらに一実施形態によれば、特定のコーティングの存在に限定されるものではないが、総じて、少なくとも1つの放射線源および/またはセンサを備えた電気光学アセンブリであって、放射線源および/またはセンサは、放射線が放射線源から出発して脆性材料製のエレメント10の端面13の少なくとも1つの第2の領域17を通って入力結合され、またはセンサによる検出のために出力結合されるように配置されている、電気光学アセンブリが提供される。
【0095】
全体として、すでに説明した、周囲の第1の領域15と比較した中間体の端部13の第2の領域17の粗さ値の変化に加えて、これらの第2の領域におけるコーティングの欠如および強度の低下も、本発明による方法の使用を示唆するものである。さらなる実施形態では、エレメント10と、弱化構造4を有する材料ブリッジあるいは連結部2との間の移行領域は、エレメント10の目標輪郭に沿って設けられ、次いでスパッタリングプロセスまたは別のPVDプロセスにより、例えばCr/CrOで被覆される。この場合、中間体の厚さが薄いため、中間体10の主面100,101だけでなく、上述のように、少なくとも部分的に、その周端面13も、そしてエッチングプロセス後に弱化構造4の直径が十分に大きい場合には弱化構造4の個々のエレメントの内面も被覆されることが観察される。連結部2からエレメント10を分離した後、端面は、上述の特性、すなわち、材料ブリッジの数に応じて第1および第2の部分15,17に分割された端面13を有し、この端面13は、少なくとも材料ウェブの領域の外側に、すなわち、第1の領域15に上述のコーティングを有するとともに、場合によっては第2の領域17にもコーティング70の残りを有する。特に、反射/散乱に関する異なる光学特性を、端面13の第1および第2の領域の識別に使用することもできる。このようにして製造されたエレメント10を用いて、特に以下に説明するような電気光学アセンブリを実現することができる。
【0096】
図22は、エレメント10を備えた電気光学アセンブリ71の一例を示している。電気光学アセンブリ71は、放射線源72および放射線センサ74を備えている。エレメント10は、コーティング70を有しており、このコーティング70は、端面13にも存在するが、上述のように第2の領域17では空白の状態である。例えば、コーティング70は、放射線を反射するように設計されていてよい。放射線源72の放射線は、その後、第2の領域17を通ってエレメント10に入力結合され、さらなる第2の領域17を通って再び出ることが可能であり、その結果、放射線センサ74により検出される。可能な放射経路が、例示的な光線76を用いて示されている。ここで、例えばエレメント10の一方の主面も被覆されていない場合、放射線は媒体と相互作用する可能性がある。
【0097】
脆性材料製のエレメント10の製造方法の発展形態について、以下に説明する。本方法の基本的な構想は、保持部6への連結によりエレメント10の取扱いを簡便化することにある。エレメント10は、遅くとも連結部2で分離された時点で個片化された状態となり、この時点から再び取扱いが難しくなる可能性がある。これをさらに改善するために、本方法の一実施形態によれば、総じて、中間体1を支持体に固定することが提供される。第1の発展形態によれば、保持部6からのエレメント10の分離は、エレメント10が支持体に固定されている状態で行われ、その際、エレメント10は特に、分離後も支持体に連結されたままである。これにより、この時点で保持部2を切断する必要なしに、後の適切な時点でエレメント10を支持体から切り離すことが可能となる。代替的または付加的な一発展形態によれば、支持体は変形可能であり、その際、連結部2からのエレメント10の分離は、支持体の変形による連結部2での機械的応力の発生によって行われる。この変形には、支持体の延伸および/または支持体の屈曲が含まれ得る。屈曲の場合には、支持体への固定により中間体1も一緒に曲げられるため、連結部2に曲げ応力がかけられる。支持体が延伸される場合には、中間体1の表面に沿った方向に引張応力が連結部2に生じる。
【0098】
上記の発展形態について、以下に例を用いてより詳細に説明する。総じて、支持体はフィルムとして設計されていてよい。その場合、中間体1を、可能であれば気泡または他の介在物の形成を避けながら帯状のフィルムの形態の支持体に施与することができる。このフィルムは、フィルム内でのテープ張力ができるだけ一定になるように、さらなる保持フレーム(例えばスチール製)に固定されていてよい。こうしてエレメント10は、その後の切断プロセスでも固定されており、安定した状態にある。今や、エレメント10を、多様な工程バリエーションにより保持部6から分離することができる。
【0099】
A)フィルムの延伸:
フィルム保持フレームのジオメトリは、コンポーネントのジオメトリと、分離プロセス中に必要な延伸方向とによって決まる。円形コンポーネントの場合には、等方性、すなわち角度に依存しない、あらゆる方向へのフィルムの均等な延伸が好ましいのに対して、矩形コンポーネントの場合には、フィルムの延伸によって、材料が弱化する領域または総じて連結部2に機械的引張応力を伝達し、その結果、エレメント10を保持部2から分離するためには、フィルムの方向性のある一軸延伸が適している。
【0100】
図23は、対応するアセンブリを示している。中間体1は、延伸可能なフィルム78の形態の支持体77に固定されている。フィルム78には、張力付与装置82によって張力が付与される。張力付与装置82は、例えば、適切な保持フレームを備えることができる。その場合、張力付与装置82により、「F」と示された矢印で表されるようにフィルム78に力を加えることができる。その結果、フィルム78が引き伸ばされ、その力が引張応力として中間体に伝達される。したがって、引張応力は、中間体の表面に沿っており、連結部2での分離を生じさせる。特に、図示の例のように、保持部6がエレメント10を囲むフレーム8の形態である場合、フレーム8も1つ以上の弱化構造4を有すると、分離を容易にすることができる。このようにして、フィルムの延伸または伸張時にフレーム8が先に分離し、エレメント10と保持部6との間の連結部にも伸びが伝達されるようにすることができる。
【0101】
B)曲げ:
もう1つの選択肢は、支持体および/または支持体に固定された中間体1を、弱化構造に沿って、またはより一般的には連結部2で機械的に曲げることである。例えば、3点曲げプロセスを用いることができ、このプロセスでは、支持体および中間体から構成されるアセンブリの片側から、2本の支持バー/ブレードによって弱化構造4または連結部2の左右の領域に支持を与え、反対側からは、ブレードによって連結部自体に機械的負荷を与え、連結部2、好適には弱化構造4での破断を導く。保持部へのエレメント10の配置および固定に応じて、このプロセスを異なる方向に連続して行うこともできる。対応するアセンブリが、図24の例に示されている。例えばこの場合にもフィルム78または他の変形可能な下地の形態である支持体77が、間隔のあいた2つの支持部材84に載置されて、支持体77に固定された中間体の連結部2が支持部材84の間に位置するようになっている。ブレード86が支持部材の反対側から中間体とともに支持体77を押圧することで、支持体77は中間体とともに曲げられ、連結部2の領域に曲げ応力が生じる。ここで、図24は、保持部6とエレメント10がすでに分離した状態を示している。
【0102】
機械的曲げのさらなる実施形態は、例えば負圧で吸引されるトラフにより、または好適には盛り上がった、例えば丸みを帯びた構造体の上方に部材支持フィルムを誘導することにより、エレメント10と保持部6との連結部に機械的応力を伝達して分離工程を誘発することであり得る。
【0103】
適切なフィルム78は、単層または多層フィルムとして設計されていてよい。原則として、適切なフィルム78には、少なくとも1枚の支持フィルムおよび感圧粘着フィルム、場合によってはなおもさらなる剥離フィルムが含まれる。粘着テープとして、いわゆるブルーテープや、非常に精巧に構造化されたエレメント10の場合には紫外線硬化性テープを使用することもできる。粘着テープの粘着力は、加工プロセス中に部材あるいはエレメント10が保持されるが、それでもなお個片化された部材を損傷することなくフィルムから剥がすことができるように、十分高くなければならない。特にUV硬化性フィルムは、未硬化の状態では高い粘着力を有し、硬化プロセスによって粘着力が低下して部材の剥離が可能となるため、ここでは特に好適である。もう1つの選択肢は、中間体1を支持体77に静電的に固定することである。
【0104】
当業者には、各実施形態が図示および記載された特定の実施形態例に限定されるものではなく、様々な様式で変更および組み合わせが可能であることが自明である。例えば、特に、異なる位置の連結部2でエレメント10を分離するために、上述した分離方法を互いに組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 板状の中間体
2,20 連結部、材料ブリッジ
3 非構造化板材
4 弱化構造
5 材料改質部
6 保持部
8 フレーム
9 8の開口部
10 脆性材料製のエレメント
11 10の輪郭
12 10の開口部
13 10の端面
14 エレメント10に対して相補的なエレメント
15 13の第1の領域
17 13の第2の領域
18 15と17との間の移行部
19,20 10の端部
22 すり鉢状の凹部
24 稜線
26 ミシン目
28 アライメントマーク
29 ガラスリボンの製造装置
30 ガラスリボン
32 ガラス融液
34 ノズル
36 延伸ローラ
38 搬送装置
39 フィラメント状損傷
40 超短パルスレーザ
41 レーザビーム
42 ビーム光学系
44 ロール
46 ロールコア
50 経路
52 カメラモジュール
54 光学フィルタコーティング
56 センサ
58 レンズ
59 ハウジング
61 接合層
70 コーティング
71 電気光学アセンブリ
72 放射線源
74 放射線センサ
76 光線
77 支持体
78 フィルム
80 8,9の内部端面
82 張力付与装置
84 支持部材
86 ブレード
100,101 10の主面
103 10の面中心点
104 103までの距離が最小となる点
105,106 脚部
107 固定領域
108 歯部
110 10の角部
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図3(d)】
図3(e)】
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】