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特表2024-523532電力増幅器の電荷トラップ効果のために送信信号を補償するシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】電力増幅器の電荷トラップ効果のために送信信号を補償するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20240621BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20240621BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20240621BHJP
   H04L 27/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H03F1/32 158
H03F3/24
H04B1/04 R
H04L27/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579387
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022065580
(87)【国際公開番号】W WO2022268508
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/202,781
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519383544
【氏名又は名称】アナログ・ディヴァイシス・インターナショナル・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・プラット
(72)【発明者】
【氏名】ドン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】マルク・コープ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】プラヴィーン・チャンドラセカラン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・サマーフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ナヴィーン・ナラハリセッティ
【テーマコード(参考)】
5J500
5K060
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA41
5J500AC21
5J500AF07
5J500AF08
5J500AF17
5J500AH24
5J500AK15
5J500AK20
5J500AK42
5J500AM13
5J500AS14
5J500AT01
5J500NG03
5J500NH17
5K060BB07
5K060CC04
5K060HH06
5K060HH11
5K060KK06
5K060LL24
(57)【要約】
電力増幅器の電荷トラップ効果のために送信信号を補償するシステム及び方法が提供される。特定の実施形態では、非線形フィルタは、無線周波数送信信号に変換する前に、デジタル送信データから取得された第1の観測値セットと、無線周波数送信信号を増幅する電力増幅器の出力から取得された第2の観測値セットとを整列させる時間に基づいて訓練される。特定の実施態様では、第1の観測値セット及び第2の観測値セットは、デシメーションなしで取得される。むしろ、タイミング整列後にデシメーションが提供される。このようにしてDPDシステムを実施することによって、信号データはデシメーションによって失われず、観測値セット間のより正確なタイミング整列が達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)通信システムであって、
入力送信信号を受信し、RF送信信号を出力するように構成された送信機と、
前記RF送信信号を増幅するように構成された電力増幅器とを備え、
前記送信機は、前記入力送信信号を処理して前記RF送信信号に予歪付与するように構成されたデジタル予歪(DPD)システムを備えており、前記DPDシステムは、第1の信号パスに沿った第1の非線形フィルタ及び前記第1の信号パスと並列の第2の信号パスに沿った第2の非線形フィルタを含み、前記DPDシステムは、前記第1の信号パスからキャプチャされた第1の観測値セット及び前記RF送信信号からキャプチャされた第2の観測値セットに基づいて、前記第2の非線形フィルタを訓練するように構成されている、RF通信システム。
【請求項2】
前記第2の非線形フィルタが、前記電力増幅器の電荷トラップ効果を補償する、請求項1に記載のRF通信システム。
【請求項3】
前記第2の非線形フィルタが、ラゲールアクチュエータである、請求項1又は2に記載のRF通信システム。
【請求項4】
前記第1の非線形フィルタが、一般化メモリ多項式(GMP)アクチュエータである、請求項1~3のいずれか一項に記載のRF通信システム。
【請求項5】
前記第1の観測値セット及び前記第2の観測値セットが、いかなるデシメーションもすることなくキャプチャされる、請求項1~4のいずれか一項に記載のRF通信システム。
【請求項6】
前記DPDシステムは、前記第1の観測値セットをキャプチャするように構成された第1のキャプチャバッファと、前記第2の観測値セットをキャプチャするように構成された第2のキャプチャバッファと、前記第1のキャプチャバッファの出力と前記第2のキャプチャバッファの出力とを時間的に整列させるように構成された時間整列ブロックと、を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のRF通信システム。
【請求項7】
前記DPDシステムが、時間整列後の前記第1のキャプチャバッファの前記出力と前記第2のキャプチャバッファの前記出力との間の差に基づいて、前記第2の非線形フィルタの複数の特徴を更新するように構成されている、請求項6に記載のRF通信システム。
【請求項8】
前記DPDシステムが、前記第2の信号パスに沿ったカスケードインテグレータコーム(CIC)デシメータを更に含み、前記DPDシステムが、前記CICデシメータの出力の推定に基づいて前記第2の非線形フィルタの前記複数の特徴を更新するように更に構成されている、請求項6又は7に記載のRF通信システム。
【請求項9】
前記DPDシステムが、前記第2の信号パスからの第3の観測値セットをキャプチャするように構成された第3のキャプチャバッファを更に備える、請求項6~8のいずれか一項に記載のRF通信システム。
【請求項10】
前記DPDシステムが、前記第1の非線形フィルタとカスケード状態にあるクレストファクタ低減(CFR)回路を更に備え、前記第1の観測値セットが、前記CFR回路の出力からキャプチャされる、請求項1~9のいずれか一項に記載のRF通信システム。
【請求項11】
入力送信信号を処理するように構成されている第1の信号パスに沿った第1の非線形フィルタと、
前記入力信号を処理するように構成された第2の信号パスに沿った第2の非線形フィルタであって、前記第1の信号パス及び前記第2の信号パスが並列であり、デジタル的に予歪付与された入力送信信号を生成するように動作する、第2の非線形フィルタと、
前記デジタル的に予歪付与された入力送信信号を処理して、無線周波数(RF)送信信号を生成するように構成された第3の信号パスに沿ったデジタルアナログコンバータと、
前記第1の信号パスからキャプチャされた第1の観測値セットと、電力増幅器によって増幅された後に前記RF送信信号からキャプチャされた第2の観測値セットとに基づいて前記第2の非線形フィルタを訓練するように構成された訓練システムと、を備える、送信機。
【請求項12】
前記第1の非線形フィルタが、一般化メモリ多項式(GMP)アクチュエータであり、前記第2の非線形フィルタが、ラゲールアクチュエータである、請求項11に記載の送信機。
【請求項13】
前記第1の観測値セット及び前記第2の観測値セットが、いかなるデシメーションも行わずにキャプチャされる、請求項11又は12に記載の送信機。
【請求項14】
前記第1の観測値セットをキャプチャするように構成された第1のキャプチャバッファと、前記第2の観測値セットをキャプチャするように構成された第2のキャプチャバッファと、前記第1のキャプチャバッファの出力と前記第2のキャプチャバッファの出力とを時間的に整列させるように構成された時間整列ブロックと、を更に備える、請求項11~13のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項15】
前記DPDシステムが、時間整列後の前記第1のキャプチャバッファの前記出力と前記第2のキャプチャバッファの前記出力との間の差に基づいて、前記第2の非線形フィルタの複数の特徴を更新するように構成されている、請求項14に記載の送信機。
【請求項16】
前記DPDシステムが、前記第2の信号パスに沿ったカスケードインテグレータコーム(CIC)デシメータを更に含み、前記DPDシステムが、前記CICデシメータの出力の推定に基づいて前記第2の非線形フィルタの前記複数の特徴を更新するように更に構成されている、請求項14又は15に記載の送信機。
【請求項17】
前記DPDシステムは、前記第2の信号パスから第3の観測値セットをキャプチャするように構成された第3のキャプチャバッファを更に備える、請求項14~16のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項18】
前記DPDシステムが、前記第1の非線形フィルタとカスケード状態にあるクレストファクタ低減(CFR)回路を更に備え、前記第1の観測値セットが、前記CFR回路の出力からキャプチャされる、請求項11~17のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項19】
デジタル予歪の方法であって、
入力送信信号をデジタル的に予歪付与して、デジタル予歪システムの第1の非線形フィルタ及び第2の非線形フィルタを使用して無線周波数(RF)送信信号を生成することであって、前記第1の非線形フィルタが第1の信号パスに沿っており、前記第2の非線形フィルタが前記第1の信号パスと並列の第2の信号パスに沿っている、生成することと、
電力増幅器を使用して前記RF送信信号を増幅することと、
前記第1の信号パスからキャプチャされた第1の観測値セットと、電力増幅器によって増幅された後に前記RF送信信号からキャプチャされた第2の観測値セットとに基づいて前記第2の非線形フィルタを訓練することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記第1の観測値セット及び前記第2の観測値セットが、いかなるデシメーションも行わずにキャプチャされる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される技術は、一般に、無線トランシーバに関し、より詳しくは、電力増幅器における電荷トラップの効果が補償されるデジタル予歪(DPD)技法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線トランシーバは、多種多様な無線周波数(RF)通信システムで使用することができる。例えば、トランシーバは、基地局又はモバイルデバイスに含まれて、例えば、セルラ及び/又は無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)標準を含む、多種多様な通信標準に関連付けられた信号を送信及び受信することができる。トランシーバはまた、レーダシステム、計装、産業用電子機器、軍用電子機器、ラップトップコンピュータ、デジタルラジオ、及び/又は他の電子機器で使用することができる。
【0003】
RF通信システムはまた、トランシーバからのRF送信信号を無線送信に好適な電力レベルに増幅するための電力増幅器を含む。シリコン(Si)ベースのデバイスを利用する電力増幅器、ガリウムヒ素(GaAs)ベースのデバイス、リン化インジウム(InP)ベースのデバイス、炭化ケイ素(SiC)ベースのデバイス、及び窒化ガリウム(GaN)ベースのデバイスを含む様々なタイプの電力増幅器が存在する。様々なタイプの電力増幅器は、コスト、性能、及び/又は動作周波数の点で異なる利点を提供することができる。例えば、Siベースの電力増幅器は、一般に、より低い製造コストを提供するが、いくつかのSiベースの電力増幅器は、特定の性能メトリックの観点から、化合物半導体の対応するものと比較して劣る。
【0004】
電界効果トランジスタ(FET)及び/又はバイポーラトランジスタなどの電力増幅器で使用されるデバイスは、様々な一時的な非理想的なデバイス特性を示すことができる。例えば、FETは、動作中に電荷を捕捉することができ、これは、有効閾値電圧及び/又はドレイン電流などのデバイス特性を一時的に変更し得る。電力増幅器のトランジスタに関連付けられた電荷トラップから生じるものを含む、一時的な非理想的挙動デバイス特性を補償するためのハードウェア及び/又はソフトウェアソリューションが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、無線周波数(RF)通信システムが提供される。RF通信システムは、入力送信信号を受信し、RF送信信号を出力するように構成された送信機と、RF送信信号を増幅するように構成された電力増幅器とを含む。送信機は、入力送信信号を処理してRF送信信号に予歪付与するように構成されたデジタル予歪(DPD)システムを含む。DPDシステムは、第1の信号パスに沿った第1の非線形フィルタ、及び第1の信号パスと並列した第2の信号パスに沿った第2の非線形フィルタを含む。DPDシステムは、第1の信号パスからキャプチャされた第1の観測値セットと、RF送信信号からキャプチャされた第2の観測値セットとに基づいて第2の非線形フィルタを訓練するように構成されている。
【0006】
別の態様では、RF通信システム用の送信機が提供される。送信機は、入力送信信号を処理するように構成された第1の信号パスに沿った第1の非線形フィルタ、及び入力信号を処理するように構成された第2の信号パスに沿った第2の非線形フィルタを含む。第1の信号パス及び第2の信号パスは並列であり、デジタル的に予歪付与された入力送信信号を生成するように動作する。送信機は、デジタル的に予歪付与された入力送信信号を処理してRF送信信号を生成するように構成された第3の信号パスに沿ったデジタルアナログコンバータと、第1の信号パスからキャプチャされた第1の観測値セットと、電力増幅器によって増幅された後にRF送信信号からキャプチャされた第2の観測値セットとに基づいて第2の非線形フィルタを訓練するように構成された訓練システムとを更に含む。
【0007】
別の態様において、RF通信システムにおけるデジタル予歪の方法が提供される。この方法は、入力送信信号をデジタル的に予歪付与して、デジタル予歪システムの第1の非線形フィルタ及び第2の非線形フィルタを使用して送信信号を生成することであって、第1の非線形フィルタが第1の信号パスに沿っており、第2の非線形フィルタが第1の信号パスと並列の第2の信号パスに沿っている、生成することを含む。この方法は、電力増幅器を使用してRF送信信号を増幅することと、第1の信号パスからキャプチャされた第1の観測値セットと、電力増幅器によって増幅された後にRF送信信号からキャプチャされた第2の観測値セットとに基づいて第2の非線形フィルタを訓練することとを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】無線周波数(RF)通信システムの一実施形態の概略図である。
図1B】デジタル予歪(DPD)を使用する電力増幅器線形化の一例を示すグラフのセットである。
図1C】電力増幅器の出力電力対入力電力の一例のグラフである。
図1D】RF通信システムの別の実施形態の概略図である。
図1E】RF通信システムの別の実施形態の概略図である。
図1F】低周波数(LF)ゲイン対時間、入力振幅変調対時間、及び電荷トラップDPDなしの誤差ベクトル振幅(EVM)対時間のグラフの一例を示す。
図1G図1Fのグラフの拡大部分を示す。
図1H】一実施形態による、電荷トラップゲイン対時間、電荷トラップ補正対時間、入力振幅変調(デシベル単位)対時間、及び入力振幅変調(ボルト単位)対電荷トラップDPDの時間のグラフの一例を示す。
図2A】いくつかの実施形態による、狭帯域歪みを補正するための第1の非線形フィルタネットワークと、広帯域歪みを補正するための第2の非線形フィルタネットワークとを含むRF通信システムを示す。
図2B】いくつかの実施形態による、第1の非線形フィルタネットワークの例示的なアーキテクチャを示す。
図3】いくつかの実施形態による、デシメーション及びアップサンプリング機能を含む第1の非線形フィルタネットワークの例示的なアーキテクチャを示す。
図4】いくつかの実施形態による、クレストファクタ低減機能及び遅延整合機能を含む第1の非線形フィルタネットワークの例示的なアーキテクチャを示す。
図5】いくつかの実施形態による、直接学習アルゴリズムを介して第1及び第2の非線形フィルタネットワークの両方を訓練するためのRF通信システムの例示的なアーキテクチャを示す。
図6A】いくつかの実施形態による、一般化メモリ多項式(GMP)アクチュエータを訓練するための例示的なアーキテクチャを示す。
図6B】いくつかの実施形態による、GMPアクチュエータを訓練するための別の例示的なアーキテクチャを示す。
図7】いくつかの実施形態による、ラゲールアクチュエータを訓練するための例示的なアーキテクチャを示す。
図8】いくつかの実施形態による、ラゲールアクチュエータ訓練のための初期条件を識別するための例示的なアーキテクチャを示す。
図9】いくつかの実施形態による、GMP及びラゲールアクチュエータの両方を同時に訓練するためのRF通信システムの例示的なアーキテクチャを示す。
図10】いくつかの実施形態による、狭帯域歪みを補正するためのFIRフィルタを含む第1の非線形フィルタネットワークと、広帯域歪みを補正するためのFIRフィルタを含む第2の非線形フィルタネットワークとを含むRF通信システムを示す。
図11】ラゲールアクチュエータを訓練するためのデータキャプチャの別の実施形態を示す。
図12】ラゲールアクチュエータを訓練するためのデータキャプチャの別の実施形態を示す。
図13】ラゲールアクチュエータを訓練するためのデータキャプチャの別の実施形態を示す。
図14】信号遷移を扱うようにラゲールアクチュエータを訓練するのを助けるために、送信フレームを個別のキャプチャに分割する一例を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施形態の詳細な説明は、本発明の特定の実施形態の種々の説明を提示する。しかしながら、本発明は、数多くの異なる方法で具現化することができる。この説明では、図面に対して参照が行われ、そこでは、同様の参照番号が同一又は機能的に類似の要素を示し得る。図面において示される要素は、必ずしも縮尺通りに描かれていないと理解されたい。また、特定の実施形態は、図面に示されているよりも多くの要素及び/又は図面に示されている要素のサブセットを含むことができることを理解されたい。更に、いくつかの実施形態は、2つ以上の図面から特徴の任意の好適な組み合わせを組み込むことができる。
【0010】
上記のように、電力増幅器用のデバイスは、多様な異なる半導体材料システムに基づくことができる。例えば、いくつかのパワー半導体デバイスは、シリコン技術、例えば、Siベースの横方向拡散金属酸化物半導体(LDMOS)デバイスに基づいており、これは、他のタイプのパワー半導体デバイスよりもコスト優位性を提供し得る。比較的高い周波数(例えば、4GHzを超える)、比較的高い電力(例えば、100Wを超える)及び/又は比較的高い電力効率を有するものなどのいくつかの用途には、化合物半導体ベースのパワー半導体デバイス(例えば、GaNベースの電力増幅器)が、高性能の代替物として採用され得る。GaNベースの電力増幅器は、他の利点の中でも、効率及び周波数範囲の改善(例えば、より高いユニティゲインカットオフ周波数又はf)を含む他の技術(Siベースの技術など)よりも特定の利点を有することができる。
【0011】
GaNなどの化合物半導体に基づく高性能電力増幅器の必要性は着実に高まっているが、その実施態様は軍事/航空宇宙などの比較的少量のアプリケーションに限定されている。実施態様が限定されているのは、現在Siベースの技術よりも大幅に高い製造コストのためである。
【0012】
コストの考慮に加えて、化合物半導体に基づくパワー半導体デバイスについても、特定の技術的改善の必要性が認識されている。そのような改善の1つは、電荷トラップを低減すること、及び/又は電力増幅器で観察された電荷トラップの影響を軽減することに関連する。トランスコンダクタンス周波数分散、直流ドレイン特性の電流崩壊、ゲートラグ過渡、ドレインラグ過渡、及び/又は制限されたマイクロ波出力電力を含むがこれらに限定されない、電荷トラップの様々な有害な影響が観察されている。
【0013】
デジタル予歪(DPD)システムは、通信信号のベースバンド表現を操作することによって動作する。例えば、デジタル補償は、ルックアップテーブル(LUT)及び/又は乗算器を使用してベースバンド信号の同相(I)及び直交位相(Q)成分に適用されて、ベースバンドで予歪付与信号を作成することができる。予歪付与信号が無線周波数(RF)にアップコンバートされるとき、追加された予め歪んだ成分は、下流の電力増幅器が、元のベースバンド信号の意図された線形アップコンバージョンにより近いRF波形を出力することを可能にする。
【0014】
本開示は、電力増幅器の電荷トラップ効果を考慮するための非線形フィルタ(例えば、ラゲールフィルタ)を含むDPDシステムに関する。特定の実施形態では、非線形フィルタは、無線周波数送信信号に変換する前に、デジタル送信データから取得された第1の観測値セットと、無線周波数送信信号を増幅する電力増幅器の出力から取得された第2の観測値セットとを整列させる時間に基づいて訓練される。特定の実施態様では、第1の観測値セット及び第2の観測値セットは、デシメーションなしで取得される。むしろ、タイミング整列後にデシメーションが提供される。このようにしてDPDシステムを実施することによって、信号データはデシメーションによって失われず、観測値セット間のより正確なタイミング整列が達成される。
【0015】
DPD回路を使用する例示的なRF通信システム
図1Aは、RF通信システム10の一実施形態の概略図である。RF通信システム10は、トランシーバ1、フロントエンドシステム2、及びアンテナ3を含む。トランシーバ1は、DPD回路4及び入力電力方向性結合器6を含み、フロントエンドシステム2は、電力増幅器5及び出力電力方向性結合器7を含む。
【0016】
図を明確にするために、トランシーバ1及びフロントエンドシステム2の特定の構成要素のみが示される。しかしながら、トランシーバ1及びフロントエンドシステム2は、追加の構成要素を含むことができる。更に、入力電力検出がトランシーバ1ではなくフロントエンドシステム2で実行される構成を含むがこれに限定されない、入力電力検出及び/又は出力電力検出の他の構成が可能である。
【0017】
図1Aに示すように、トランシーバ1は、RF送信信号TXをフロントエンドシステム2に提供する。更に、RF送信信号TXは、電力増幅器5によって増幅されて、アンテナ3のための増幅送信信号を発生させる。
【0018】
この例では、入力電力方向性結合器6は、電力増幅器の入力電力の局所観察を提供する。更に、出力電力方向性結合器7は、電力増幅器の出力電力を示す観測信号OBSを生成するために使用される。したがって、トランシーバ1は、電力増幅器の入力電力及び電力増幅器の出力電力を示す観測データで動作する。入力電力及び出力電力の観察回路の一例が示されるが、観察は、他の方式で実行され得る。
【0019】
例示される実施形態において、トランシーバ1は、DPD回路4によって提供される予歪付与されたRF送信信号TXを生成する。DPD回路4は、本開示の1つ以上の特徴に従って、非線形フィルタで実施することができる。
【0020】
図1Bは、DPDを使用する電力増幅器線形化の一例を示すグラフのセットである。グラフは、図1AのDPD回路4についての出力信号対入力信号の第1のグラフ15を含む。グラフは、図1Aの電力増幅器5についての出力信号対入力信号の第2のグラフ16を更に含む。グラフは、図1AのDPD回路4及び電力増幅器5の組み合わせについての出力信号対信号の第3のグラフ17を更に含む。
【0021】
図1Bに示すように、DPDは、電力増幅器の非線形性を補償するプリエンファシスを提供するように動作する。例えば、DPDは、電力増幅器の逆モデルに適合する曲線を提供するために、ベースバンドで複素エンベロープ上で実行することができる。例えば、多項式の合計を、電力増幅器の非線形性を補償する所望のエンベロープ形状に適合させることができる。
【0022】
図1Cは、電力増幅器の出力電力対入力電力の一例のグラフ18である。グラフ18は、DPDの有無にかかわらず、図1Aの電力増幅器5の例示的な性能を表す。図1Cに示すように、電力増幅器5は、DPDを使用するときにゲイン圧縮なしでより高い入力電力で動作することができる。
【0023】
図1Dは、RF通信システム60の別の実施形態の概略図である。RF通信システム60は、トランシーバ51、フロントエンドシステム12、及びアンテナ13を含む。
【0024】
図1Dに示すように、トランシーバ51は、RF送信信号TXをフロントエンドシステム12に提供し、フロントエンドシステム12から観測信号OBSを受信する。図1Dには図示されていないが、受信信号、制御信号、追加の送信信号、及び/又は追加の観測信号などの追加の信号を、トランシーバ51とフロントエンドシステム12との間で伝達することができる。
【0025】
例示される実施形態において、トランシーバ51は、デジタル送信回路52、I-パスデジタルアナログコンバータ(DAC)23a、Q-パスDAC23b、I-パスミキサ24a、Q-パスミキサ24b、可変ゲイン増幅器(VGA)25、方向性結合器26、LO27、及び観察受信機29を含む。DPD回路53を含むデジタル送信回路52。
【0026】
DPDを有するトランシーバの一例が示されているが、本明細書の教示は、多様な方法で実施されるトランシーバに適用可能である。したがって、他の実装態様が可能である。
【0027】
例示される実施形態において、デジタル送信回路52は、デジタルI信号及びデジタルQ信号に対応する一対の直交信号を生成する。デジタルI信号及びデジタルQ信号は、DPDによって生成される。DPD回路53は、本明細書の実施形態のいずれかに従って実施される非線形フィルタを含むことができる。
【0028】
例示される実施形態において、IパスDAC23aは、デジタル送信回路22からのデジタルI信号を差動アナログI信号に変換する。Iパスミキサ24aは、LO27からIクロック信号(この例では差動)を受信し、Iパスミキサ24aはこれを使用して差動アナログI信号をアップコンバートする。QパスDAC23bは、デジタル送信回路22からのデジタルQ信号を差動アナログQ信号に変換する。直交誤差がない場合、アナログI信号及びアナログQ信号は、90度の位相分離を有し、送信される信号の複素表現として機能することができる。Qパスミキサ24bは、LO27からQクロック信号(この例では差動)を受信し、Qパスミキサ24bはこれを使用して差動アナログQ信号をアップコンバートする。Iパスミキサ24aの出力及びQパスミキサ24bの出力は、(例えば、電流結合を使用して)組み合わされて、差動アップコンバート信号を生成し、これは、VGA25によって増幅されて、RF送信信号TXを生成する。
【0029】
図1Dに示すように、観測受信機29は、方向性結合器26からの局所観測信号及びフロントエンドシステム12からの観測信号OBSを処理して、デジタル送信回路52に提供される観測データを生成する。観測データは、DPD回路53を訓練するために使用することができる。また、観測データは、送信電力制御などの多様な他の機能のために使用することができる。
【0030】
例示される実施形態では、Iパスミキサ24a及びQパスミキサ24bは、アナログI及びQ信号を混合するアナログミキサであり、これは、(図1Dに示されるように)差動又はシングルエンドであり得る。
【0031】
図1Eは、RF通信システム70の別の実施形態の概略図である。RF通信システム70は、トランシーバ61、フロントエンドシステム12、及びアンテナ13を含む。
【0032】
例示される実施形態では、トランシーバ61は、デジタル送信回路52(DPD回路53を含む)、デジタルミキサ42、RFデジタルアナログコンバータ(DAC)45、VGA25、方向性結合器26、LO27、及び観察受信機29を含む。
【0033】
図1DのRF通信システム60と比較して、図1EのRF通信システム70は、アナログからデジタルへの変換の前にミキシングを実行するように実施される。したがって、アナログミキサを使用する図1DのRF通信システム60とは対照的に、図1EのRF通信システム70は、デジタルミキサ42を使用する。
【0034】
例示される実施形態において、デジタルミキサ42は、デジタルI信号及びデジタルQ信号をデジタル送信回路52から受信する。デジタルI信号及びデジタルQ信号は、DPDによって生成される。DPD回路53は、本明細書の実施形態のいずれかに従って実施される非線形フィルタを含むことができる。
【0035】
デジタルミキサ52はまた、Iクロック信号及びQクロック信号をLO27から受信する。更に、デジタルミキサ52は、アップコンバートされた送信信号のデジタル表現を出力し、これは、RF DAC43によって処理されて、アナログアップコンバートされた送信信号(この例では差動)を生成する。アナログアップコンバート送信信号は、VGA25によって増幅され、RF送信信号TXを生成する。
【0036】
特定の実施態様では、デジタルミキサ42は、((I*LO_I)-(Q*LO_Q))を計算するように動作し、ここでIはデジタルI信号であり、QはデジタルQ信号であり、LO_IはIクロック信号であり、LO_QはQクロック信号である。
【0037】
本明細書のトランシーバは、30MHz~7GHzのRF信号だけでなく、X帯域(約7GHz~12GHz)、K帯域(約12GHz~18GHz)、K帯域(約18GHz~27GHz)、K帯域(約27GHz~40GHz)、V帯域(約40GHz~75GHz)、及び/又はW帯域(約75GHz~110GHz)などのより高い周波数の信号を含む、多様な周波数の信号を処理することができる。したがって、本明細書の教示は、マイクロ波システムを含む多種多様なRF通信システムに適用可能である。
【0038】
電荷トラップ及びデジタル前歪み
RFパワーデバイスなどのパワーデバイスは、例えば、無線技術などの多くの用途で使用される。様々な用途のために、パワーデバイスは、シリコン技術、例えば、Siベースの横方向拡散金属酸化物半導体(LDMOS)デバイスに基づいている。いくつかの用途では、III-V材料などの化合物半導体は、高周波動作のための利点を有する。例えば、窒化ガリウム(GaN)ベースのパワーデバイスが提案されている。GaNベースのパワーデバイスなどの化合物半導体パワーデバイスは、いくつかの用途において、例えば、ドレイン変調が適用されるプロセスアーキテクチャにおいて、Siベースの技術よりも利点を有すると予測されている。期待される利点は、とりわけ、効率及び周波数範囲(例えば、より高い単一ゲインカットオフ周波数又はf)の改善を含む。
【0039】
GaNは、発光ダイオード(LED)デバイスを含む様々な用途で広く使用されている。様々な他の商用用途のためのGaN RFパワーデバイスへの関心は着実に高まっているが、RFパワーデバイスを含むGaNベースのパワーデバイスの実施態様は、主に軍事/航空宇宙などの少量の用途に限定されている。実施態様が限定されているのは、現在Siベースの技術よりも大幅に高い製造コストのためである。現在、GaNオン絶縁体技術及びGaNオンSi技術を含む2つの主なタイプのGaN RFパワーデバイスが存在する。前者は性能が高いが、ウェーハ製造コストも高い。
【0040】
コストの考慮に加えて、GaNベースのパワーデバイスでは、特定の技術的改善が求められている。そのような改善の1つは、GaNベースのパワーデバイスで観察された比較的狭帯域の歪み効果に対処することに関連する。任意の特定の理論に限定されるものではないが、電荷トラップ効果は、GaNベースのパワーデバイスのゲイン線形性の変動を含む、デバイス特性の著しい変動をもたらすと考えられる。電荷トラップは、入力信号の長期的な履歴の関数であると考えられ、その効果はミリ秒~秒のオーダーで持続することができる。この効果を表現するために使用されてきた用語は、高出力RFパルスをGaNトランジスタに印加すると、ドレイン電流が予想よりも低いレベルに崩壊する電流崩壊である。
【0041】
電荷トラップの効果には、トランスコンダクタンス周波数分散、直流ドレイン特性の電流崩壊、ゲートラグ過渡、ドレインラグ過渡、及び/又は制限されたマイクロ波出力電力が含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
したがって、電力が変調されると、電荷がトラップされ、次いで低周波数で放出され、歪みを引き起こすゲインの低周波数変調をもたらす可能性がある。したがって、GaNベースのパワーデバイス並びに他のタイプのパワーデバイスにおける電荷トラップ効果を緩和又は補償する必要がある。
【0043】
図1F図1G、及び図1Hは、いくつかの実施形態による、ゲインの低周波数変調を示すグラフ102、104、106、110、112、114、116、118、120、及び122を含む。グラフ102は、経時的な誤差ベクトル大きさ(EVM)を示す。グラフ104は、経時的な入力振幅変調(AM)信号をdBで示す。入力振幅変調信号は、低周波ゲイン変調を生成するGaN増幅器に印加される。グラフ106は、ゲインが0Hz~10kHz BWにわたって測定される経時的な低周波数(LF)ゲインをdBで示す。図1Gのグラフ110、112、及び114は、それぞれ、図1Fのグラフ102、104、及び106のクローズアップスニペット108である。
【0044】
グラフ104に示すように、パルスは、入力振幅変調信号内で生じる。グラフ112は、6.5~7ミリ秒などの低信号と、7.1~7.2ミリ秒などの高信号とを示す。しかしながら、信号は、高信号状態及び低信号状態の両方においてパルス出力されている。グラフ106は、グラフ112の入力振幅変調信号の対応する低周波数ゲインを示す。例示されるように、低周波数ゲインは、変調効果を示す。
【0045】
グラフ116、118、120、及び122は、電荷トラップ効果及び低速の緩和効果をより詳細に示す。グラフ116は、経時的な入力振幅変調信号をdBで示し、グラフ120は、経時的な入力振幅変調信号を電圧で示す。グラフ114は、経時的な電荷トラップゲインをdBで示し、グラフ122は、経時的な電荷トラップ補正ゲインを示す。
【0046】
~tの遷移など、低電力から高電力に移行するとき、増加した入力は、電荷が電力増幅器内のある層から別の層に移動することをもたらす。電力が低い状態から高い状態になると、一部の電荷がトラップされる。このトラップ効果は、比較的高速である。これが電荷トラップ効果である。t~tの遷移など、入力が高電力から低電力に遷移すると、電荷が放出されるが、電荷はより遅い時定数で放出される。これらの時定数は、数百マイクロ秒のオーダーであり得る。電荷トラップ及び放電の全ては、低周波ゲイン変調を生成し、これは、電力増幅器における歪み効果である。
【0047】
電力増幅器は、そのゲインが現在及び過去の入力振幅の機能として拡張及び圧縮することができる非線形デバイスである。横方向拡散金属酸化物半導体(LDMOS)デバイスでは、このゲイン変調は、約10nsから約100nsまで延びる過去の振幅値を包含することができ、一方、GaNデバイスでは、非線形メモリは、マイクロ秒(us)、ミリ秒(ms)、又は更には秒まで延びることができる。いくつかの実施形態では、サンプリング周波数は、10~500MHzの間であり得る。いくつかの実施形態では、これらのシステムにDPDを提供するアクチュエータは、1ナノ秒~100ナノ秒、8ナノ秒~800ナノ秒、16ナノ秒~1600ナノ秒、32ナノ秒~3200ナノ秒、64ナノ秒~6400ナノ秒などの時間ウィンドウにわたって訓練され得る。
【0048】
低周波電荷トラップに適用されるような手法の問題は、これらの典型的なシステムがDPDの補正を決定するとき、システムが最小二乗ソルバなどのソルバを使用できることである。これらの最小二乗ソルバは、有限入力パルス(FIR)フィルタにおいて線形代数を使用する。FIRフィルタには、一般化メモリ多項式までのTruncated Volterraシリーズを使用できる。
【0049】
低周波数での電荷トラップ効果の場合、時定数は100又は1,000倍長くなり得る。例として、電力増幅器上で電荷トラップ効果が時間的に10ミリ秒延長する場合、これらの典型的なシステムは、少なくとも10ミリ秒を超えるデータを格納しなければならない。高周波DPD歪みに使用されるベクトル及び行列は、行列内に300~400の列を必要とし得る。しかしながら、低周波電荷トラップ効果について、FIRフィルタ計算は、現在、数千又は数万のエントリを有するであろう。典型的なFIRフィルタは、重み付けされた入力の移動平均を使用し、FIRフィルタ内のタップのオーダーを増加させるために、そのような処理を非常に複雑にする。
【0050】
そのような計算は、シミュレーションにおける数値的不安定性、アンテナ素子への待ち時間の遅延、及び増加した回路フットプリント及び電力消費をもたらし得る。更に、線形代数は、DPDを訓練し、適応させるために使用することができ、大きな次元の方程式システムは、コストがかかり、数値的に不安定であるであろう。また、数100,000のサンプルをメモリに戻すFIRを使用してDPDアクチュエータを構築すると、DPDアクチュエータは単にコストが高くなり、多くの電力が必要になる。
【0051】
典型的なシステムを使用して電荷トラップ効果を補正できるようにするには、FIRフィルタは何千ものサンプルにわたって時間的制約を満たす必要がある。これは、FIRフィルタの各反復を格納する膨大な量のハードウェアを伴い、多くの電力消費を伴う。これらの典型的なシステムは、処理能力及び回路のフットプリントが限られているトランシーバ及びアンテナ処理チップには実用的ではない。更に、コンピュータは、シミュレータでそのような概念を証明するための処理能力さえ持っていない場合がある。数値計算の観点から、FIRフィルタで必要とされる計算は、あまりにも複雑かつ大規模になるであろう。
【0052】
更に、このような手法の別の欠点は、DPDの非線形性質をモデル化するためのFIRフィルタの入力での非線形項である。これらの典型的なシステムは、ここで、何千ものタップを有し得るが、システムは、信号の絶対値を第1のタップ、信号の絶対値の2乗を第2のタップ、信号の絶対値の3乗を第3のタップなどに送信し、再び、回路フットプリント及び電力消費の増加など、本明細書に記載される欠陥をもたらし得る。
【0053】
狭帯域及び広帯域周波数歪みを補正するための非線形フィルタネットワーク
本明細書には、電力増幅器における電荷トラップ効果の問題を解決又は軽減するシステム及び方法が記載されている。いくつかの実施形態は、下流電力増幅器の電荷トラップ効果を補正するように構成された無線周波数トランシーバを含む。いくつかの実施形態では、トランシーバは、電力増幅器の電荷トラップ効果及び広帯域歪みの両方を補正するためにDPDを適用する。このようなシステムは、本明細書では、電荷トラップ効果の補償を伴うRF通信システムとも呼ばれることがある。
【0054】
図2Aは、いくつかの実施形態による、狭帯域歪みを補正するための第1の非線形フィルタネットワークと、広帯域歪みを補正するための第2の非線形フィルタネットワークとを含むRF通信システム200を示す。デバイス200は、アクチュエータ202、電力増幅器204(この例では、GaN FETなどのFETを含む)、最小二乗モジュール206、フィードバックアクチュエータ208、及び加算器222を含むことができる。特定の実施態様では、電力増幅器204は、電力増幅器ダイ(例えば、GaNダイ)上に実施され、一方、アクチュエータ202、最小二乗モジュール206、フィードバックアクチュエータ208、及び加算器222は、トランシーバダイ(例えば、Siダイ)上に実施される。
【0055】
図2Aに示されるように、アクチュエータ202は、10kHz~0.1Hzの周波数などの電力増幅器204の狭帯域歪みを補償するように構成された第1の非線形フィルタネットワーク210を含むことができる。第1の非線形フィルタネットワーク210は、無限インパルス応答(IIR)フィルタなどの複数の非線形フィルタを含むことができる。本実施形態において、IIRフィルタは、集合的にラゲールフィルタとして機能することができる。第1の非線形フィルタネットワーク210は、IIRフィルタのカスケード又はチェーンを備えることができる。いくつかの実施形態では、第1のフィルタは、ローパスフィルタであり、IIRフィルタのチェーン内の以下のフィルタは、オールパスフィルタである。いくつかの実施形態では、第1の非線形フィルタネットワーク210のフィルタは、互いに直交している。IIRフィルタの使用により、システムは長時定数を使用して、狭帯域電荷トラップ効果を考慮することができる。ラゲールフィルタは、狭帯域電荷トラップ効果を補正するために使用されることは知られていない。
【0056】
いくつかの実施形態では、第2の非線形フィルタネットワーク212は、電力増幅器204の広帯域歪みを補償するように構成され得る。第2の非線形フィルタネットワーク212は、有限インパルス応答(FIR)フィルタなどの複数の非線形フィルタを含むことができる。FIRフィルタは、集合的に一般的なメモリ多項式(GMP)フィルタとして機能することができる。いくつかの実施形態では、第2の非線形フィルタネットワーク212は、広帯域歪みを補償するデジタル予歪(DPD)システム及び/又はDPDフィルタネットワークを含むことができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、入力信号xは、第1の非線形フィルタネットワーク210に供給され、狭帯域歪みを補償するための信号を生成する。同じ入力信号xを第2の非線形フィルタネットワーク212に供給して、広帯域歪みを補償することができる。第1の非線形フィルタネットワーク210及び第2の非線形フィルタネットワーク212の出力の組み合わせは、加算器214によって加算される。加算器214の出力uは、デジタルドメインからRFへの変換などの好適な処理の後、電力増幅器204に供給される。いくつかの実施形態では、入力信号xは、ベースバンドプロセッサによって提供されるデジタルデータ(同相(I)及び直交相(Q)データなど)のストリームに対応する。
【0058】
電力増幅器204に直接提供されるように示されているが、加算器214の出力は、電力増幅器204の入力に提供されるRF送信信号を生成するために、1つ以上のデジタルアナログコンバータ(DAC)、1つ以上のミキサ、1つ以上の可変ゲイン増幅器(VGA)、及び/又は他の回路によって処理されるデジタルの予歪付与された送信データに対応することができる。図を明確にするために、デジタルドメインからRFへの変換は示されていない。
【0059】
いくつかの実施形態では、出力y及び電力増幅器204への入力uは、フィードバックアクチュエータ208などの逆モデルに適合するためにも使用される。電力増幅器204の出力yは、別の第1の非線形フィルタネットワーク218及び別の第2の非線形フィルタネットワーク216に供給され得る。いくつかの実施形態では、電力増幅器204の入力電力及び/又は出力電力は、方向性結合器によってキャプチャされ、次いで、観測受信機によって処理され、観測された電力のデジタル表現を生成する。
【0060】
図2Aを引き続き参照すると、別の第1の非線形フィルタネットワーク218及び別の第2の非線形フィルタネットワーク216の出力は、加算器220によって加算される。次いで、電力増幅器204の入力uは、加算器222を介して加算器220の出力
【数1】
によって減算される(図中-の極性によって示される)。加算器222の出力は、最小二乗モジュール206を通して処理される。最小二乗モジュール206の出力は、他の第2の非線形フィルタネットワーク216によって使用される。
【0061】
いくつかの実施形態では、フィードバックアクチュエータ208は、ラゲールフィルタ及びGMPフィルタを含むことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、第1の非線形フィルタネットワーク218は、第2の非線形フィルタネットワーク216と並列に配置される。他の実施形態では、第1の非線形フィルタネットワーク218は、第2の非線形フィルタネットワーク216と直列に配置される。例えば、第1の非線形フィルタネットワーク218は、第2の非線形フィルタネットワーク216の後に配置することができ、第2の非線形フィルタネットワーク216は、高周波歪みに対応し、第1の非線形フィルタネットワーク218は、低周波電荷トラップ歪みに対応する。
【0063】
電力増幅器204は、キャリア周波数を有するRF信号を増幅する。更に、第1の非線形フィルタネットワーク210(例えば、ラゲールフィルタ)によって補正された狭帯域歪みは、キャリア周波数の周りの制限された帯域幅を取り巻き、電荷トラップダイナミクスに関連付けられた長い時間スケールにわたって発生する歪みに対応することができる。例えば、キャリア周波数の周りの帯域幅BWは、時間定数
【数2】
に反比例することができ、したがって、電荷トラップ効果は、長時定数及び狭帯域幅に関連付けられる。このような狭帯域歪みは、本明細書では電力増幅器の低周波ノイズとも呼ばれる。
【0064】
第2の非線形フィルタネットワーク212(例えば、GMPフィルタ)によって補正された広帯域歪みは、狭帯域歪みよりもはるかに短い時間スケールにわたって発生する電力増幅器内の非線形性(非電荷トラップ非線形性)を含むことができる。したがって、そのような非線形性に関連付けられた時定数は小さく、対応する帯域幅は広い。このような広帯域歪みは、本明細書では電力増幅器の高周波ノイズとも呼ばれる。
【0065】
第1の非線形フィルタネットワークの例示的なアーキテクチャ
図2Bは、いくつかの実施形態による、第1の非線形フィルタネットワーク210の例示的なアーキテクチャ250を示す。例示的なアーキテクチャ250は、上述した図2AのRF通信システム200の文脈において描写される。
【0066】
いくつかの実施形態では、第1の非線形フィルタネットワーク210は、絶対値ブロック252、補正要素254A、254B、...254N、複数の段(1~N)256A、256B、...256N、加算器258、及び乗算器260を含むことができる。各段256A、256B、...256Nは、複数(1~M個)の非線形フィルタを含むことができる。フィルタの1~M個の各々(又は少なくともいくつか)は、第1の非線形ローパスフィルタ(LPF)262A、262B、...262N、及び場合によっては1つ以上の非線形オールパスフィルタ264A、264B、...264N、266A、266B、...266Nを含むことができ、これらは、いくつかの実施態様において直列に配置することができる。オールパスフィルタは、以下で論じるように、位相調整又は修正を提供することができる。
【0067】
各段256A、256B、...256Nについて、LPF、及び場合によっては1つ以上のオールパスフィルタが、直列に配置することができる。LPFフィルタは、信号を受信し、LPFを通して信号を処理し、信号を一連のオールパスフィルタに出力し、オールパスフィルタを通して信号を処理することができる。いくつかの実施形態では、第1の非線形フィルタネットワークのフィルタは、互いに直交している。例えば、LPFは、特定のカットオフ周波数よりも低い周波数を有する信号がLPFを通過することを可能にすることができ、後続のオールパスフィルタは、位相修正のみで信号が通過することを可能にすることができ、大きさに対する影響は最小限である。図2B及び図3の非線形関数F(vkl)は、例えば、vklのメモリ多項式展開を含むことができる。
【数3】
【0068】
いくつかの実施形態では、段256A、256B、...256N(例えば、1~M個のフィルタ、各段は、LPF、及び場合によっては1つ以上のオールパスフィルタを含むことができる)は、互いに並列に配置される。いくつかの実施形態では、フィルタの1~M個の各々は、本明細書で更に詳細に説明される補正要素を含む。段256A、256B、...256Nの各々は、電荷トラップ歪みが、様々な時間スケールにわたって複数の応答で発生する可能性があるため、異なる時定数を考慮することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、複素ベースバンド信号は、同相及び直交位相(I/Q)信号を含むことができるデジタルアップコンバータ(x)から受信される。デバイスは、絶対値ブロック252を介して複素ベースバンド信号の絶対信号を決定することによって、信号のエンベロープを生成する。例えば、座標回転デジタル計算(CORDIC)回路は、デジタルエンベロープを生成するためにデジタルI及びデジタルQデータを処理するために使用され得る。絶対値ブロック252は、信号のエンベロープを出力する。
【0070】
いくつかの実施形態では、デバイスは、絶対値ブロック252の出力を複数の補正要素254A、254B、...254Nに伝播する。複数の補正要素254A、254B、...254Nは、信号に非線形性を導入する。例えば、複数の補正要素(例えば、1~N個の補正要素)254A、254B、...254Nは、絶対値ブロック252の出力の指数をとることができる。第1の補正要素254Aは、絶対値ブロック252の出力の1指数をとることができる。第2の補正要素254Bは、絶対値ブロック252の出力の2指数をとることができる。Nの補正要素254Nは、絶対値ブロック252の出力のN指数をとることができる。
【0071】
例えば、図2Bは、絶対値ブロック252(例えば、||)の出力が3つの補正要素254A、254B、...254Nに送信されることを示す。第1の補正要素254Aは、1指数(())を取り、これは、絶対値ブロック252の出力と本質的に同じである。この出力は、第1の複数の非線形ラゲールフィルタ256Aに送信される。第2の補正要素254Bは、2指数(())を取り、出力を第2の複数の非線形ラゲールフィルタ256Bに送信する。第3の補正要素254Nは、n番目の指数関数(())をとり、出力を第3の複数の非線形ラゲールフィルタ256Nに送信することができる。したがって、補正要素254A、254B、...254Nは、エンベロープの非線形累乗を取る。
【0072】
いくつかの実施形態では、1~N個の補正要素254A、254B、254Nの出力は、1~N個のラゲールフィルタなど、対応する1~N個の複数の非線形フィルタ256A、256B、256Nに伝播される。第1のフィルタ262A、262B、262Nは、ローパスフィルタを含み得、残りのフィルタ264A、264B、264N、266A、266B、266Nは、オールパスフィルタを含み得る。以下は、ローパスフィルタ(LPF)及びオールパスフィルタ(BPF)の数値表現である。
段0:LPF、
【数4】
段1~L:BPF、
【数5】
、式中
【数6】
【0073】
は、フィルタ係数であり、Fサンプリングレート(例えば、100MHzの範囲内)であり、τは、電荷トラップ効果の時定数(例えば、マイクロ秒、ミリ秒)である。時定数は、電力増幅器の電荷トラップ効果を見ることによって決定することができる。次いで、aフィルタ係数を決定することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、1~N個の複数の非線形フィルタ256A、256B、...256Nの出力は、加算器258を介して合計されて、低周波数ゲイン項glagを生成する。低周波数ゲイン項glagは、狭帯域周波数補正ゲインを表す。
【0075】
いくつかの実施形態では、低周波ゲイン項glagは、乗算器260を介して入力された複素ベースバンド信号によって乗算され、電荷トラップ効果ulagを補正するための補正信号を生成する。
【0076】
いくつかの実施形態では、第1の非線形ネットワーク及び/又は第2の非線形ネットワークは、ソフトウェアで少なくとも部分的に実施される(例えば、全てのデジタルソリューションとしてデジタル信号プロセッサによって実施される)。いくつかの実施形態では、第1の非線形ネットワーク及び/又は第2の非線形ネットワークは、ファームウェアに少なくとも部分的に実施される。
【0077】
デシメーション及びアップサンプリングを有する第1の非線形フィルタネットワークの例示的なアーキテクチャ
図3は、いくつかの実施形態による、デシメーション及びアップサンプリング機能を含む第1の非線形フィルタネットワーク314のアーキテクチャ250を示す。デシメーションは、デバイス回路内の数百メガヘルツのデータの処理を可能にする。デシメーションない場合、そのようなデータの処理は、非常に高価なコンポーネントを必要とし、大量の処理電力を必要とする場合がある。第1の非線形フィルタネットワーク314は、デジタルアップコンバータ302、第2の非線形フィルタネットワーク304、加算器306、電力増幅器310、及び遅延整合312も含むRF通信システムの文脈で描写される。
【0078】
いくつかの実施形態では、デジタルアップコンバータ302は、第1の非線形フィルタネットワーク314に信号を供給することができる。第1の非線形フィルタネットワーク314は、絶対値ブロック316と、カスケードインテグレータコーム(CIC)フィルタ318などのデシメータとを含むことができる。デジタルアップコンバータ302からの信号は、絶対値ブロック316によって処理することができる。CICフィルタ318は、絶対値ブロック316の出力をデシメートし、1~N個のラゲールフィルタなどの1~N個の非線形フィルタ322に出力を送信することができる。デシメーションは、アクチュエータ内に効率的かつ実用的なアーキテクチャを作成するために、アーキテクチャが、100オーダーなどのデータレートを低減することを可能にする。
【0079】
いくつかの実施形態では、1~N個の非線形フィルタ322の出力は、加算器258(見下ろした図で加算器322によってグラフィカルに表されている)によって合計されて、低周波数ゲイン項glagを生成することができる。低周波数ゲイン項は、CICフィルタなどのアップサンプラ324を介してアップサンプリングすることができ、信号を元のサンプル周波数に補間する。遅延整合320は、デジタルアップコンバータ302の出力からの信号をアップコンバータ324の出力と整合させることができ、遅延整合320の出力(これは、第1の非線形フィルタネットワークの出力と整合された複素ベースバンド入力時間である)は、乗算器326を介してアップコンバータ302の出力に乗算することができる。遅延整合320は、データがCICフィルタなどの様々なブロックを介して処理されるときの遅延を補償するように機能する。
【0080】
いくつかの実施形態では、デジタルアップコンバータ302はまた、第2の非線形フィルタネットワーク304に信号を供給することができる。第2の非線形フィルタネットワーク314の出力は、遅延整合312を介して第1の非線形フィルタネットワーク304の出力と遅延整合され得、遅延整合312は、第2の非線形フィルタネットワーク304(例えば、GMP)を通した遅延を補償するのに役立つ。遅延整合312の出力は、加算器306を介して第2の非線形フィルタネットワーク304の出力に追加することができ、加算器306の出力(RFへの変換後)は、電力増幅器310に入力することができる。
【0081】
クレストファクタ低減機能を含む第1の非線形フィルタネットワークの例示的なアーキテクチャ
図4は、いくつかの実施形態による、クレストファクタ低減機能、第1の遅延ブロック、及び第2の遅延ブロックを含む第1の非線形フィルタネットワーク400の例示的なアーキテクチャを示す。4G/5G送信機は、通常、クレストファクタ低減(CFR)機能を使用する。4G/5G送信機は、モバイルデバイスなどのユーザデバイス、又は基地局に含まれることができる。
【0082】
CFR機能は、電力増幅器内の飽和を回避又は軽減するために、入力信号のエンベロープからピークを除去することを含むことができる。しかしながら、CFR機能は、信号がCFR機能を通して伝播するのに多くの時間を要するため、長い待ち時間をもたらす。更に、デシメータ及びアップサンプラ(例えば、CIC)もまた遅延を有し、これは集合的にかなりの遅延をもたらす可能性がある。しかしながら、信号がCFR機能及びデシメータ/アップサンプラによって遅延される場合、送信機の総待ち時間が長過ぎる場合がある。この問題を回避又は軽減するために、いくつかの実施形態は、デジタルアップコンバータの出力を第1の非線形フィルタネットワークに関連付けられたコンポーネントに直接送信し、第2の非線形フィルタネットワークをCFR機能の出力で処理することを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、デジタルアップコンバータ(DUC)402の出力は、絶対値ブロック414によって処理され得る。絶対値ブロック414は、信号のエンベロープをダウンコンバータ(例えば、CICフィルタ416)に出力する。CICフィルタ416の出力は、非線形ラゲールフィルタを通して処理され、加算器420によって合計される。加算器420の出力は、DUC402によって提供される信号の周波数と整合するようにアップコンバータ(例えば、CICフィルタ422)を通して処理される。代替の実施形態では、デジタルアップコンバータ(DUC)402の出力は、CFR機能404によって処理され得、CFR機能404の出力は、絶対値ブロック414に入力され得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、DUC402の出力は、CFR機能404を通して処理される。CFR機能404の出力は、アップサンプラ、CIC422の出力と整合するようにCFR機能404の出力を遅延させる第1の遅延整合ブロック426に送信され得る。次いで、乗算器は、CFR機能404の出力に、CICフィルタ422の出力を掛けることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、CFR機能303の出力はまた、GMPフィルタなどの第2の非線形フィルタネットワーク406に送信され得る。いくつかの実施形態では、第2の遅延ブロック430は、GMPフィルタなどの第2の非線形フィルタネットワーク406の出力と整合するように、乗算器428の出力を遅延させる。次いで、第2の遅延ブロック430の出力は、加算器408によって第2の非線形フィルタネットワーク406の出力に加算され得る。次いで、加算器408の出力は、電力増幅器412に送信され得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の遅延ブロック426、430などの遅延ブロックは、1つ以上のシフトレジスタを含む。シフトレジスタは、いくつかの実施形態では、直列に接続することができる。
【0087】
直接学習アルゴリズムを介して第1及び第2の非線形フィルタネットワークを訓練するための例示的なアーキテクチャ
図5は、いくつかの実施形態による、直接学習アルゴリズムを介して第1及び第2の非線形フィルタネットワークの両方を訓練するためのRF通信システム500の例示的なアーキテクチャを示す。RF通信システム500は、誤差信号を生成するために、電力増幅器510の観測された出力yを実際の入力信号xと比較する。したがって、直接学習アルゴリズムは、GMPアクチュエータ504を訓練し、その後、電力増幅器510の入力x及び出力yを使用してラゲールアクチュエータ506を訓練することができる。代替の実施形態では、電力増幅器510、u(加算器508を介したGMPアクチュエータ504及び非線形ラゲールアクチュエータ506の結合信号である)の入力と、電力増幅器510、yの出力に適用される同じDPD(GMP及びラゲール)機能との間の差を使用するなどして、間接学習アルゴリズムを使用して、GMP及びラゲールアクチュエータを訓練することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、加算器514は、システムへの入力xと電力増幅器の出力yとの差分を出力する。この差分は、差分値から誤差信号を判定する直接学習アルゴリズム512に送信される。次いで、システムは、GMPアクチュエータ504及びラゲールアクチュエータ506を別々に訓練することができる。システムは、入力信号xを処理し、CFRブロック502の出力及び電力増幅器yの出力などのデータを収集して、GMPアクチュエータ504を訓練することができる。次いで、システムは、状態機械を切り替えて、ラゲールアクチュエータ506を訓練するための方程式システムを設定することができる。
【0089】
図6Aは、いくつかの実施形態による、GMPアクチュエータを訓練するための例示的なアーキテクチャ600を示す。図6Bは、いくつかの実施形態による、GMPアクチュエータを訓練するための別の例示的なアーキテクチャ600’を示す。図7は、いくつかの実施形態による、ラゲールアクチュエータを訓練するための例示的なアーキテクチャ700を示す。
【0090】
図6A図7に示されるように、RF通信システムは、GMPアクチュエータ及びラゲールアクチュエータの両方を訓練することができる。RF通信システムは、(図6A及び図6Bのアーキテクチャを使用することなどによって)GMPアクチュエータの部分的な更新を実行し、その後、(図7のアーキテクチャを使用することなどによって)ラゲールアクチュエータの部分的な更新を実行し、その後、GMPアクチュエータ及びラゲールアクチュエータの部分的な更新を繰り返すことができる。更に、ラゲールアクチュエータを訓練する場合、RF通信システムは、訓練ベクトルをダウンサンプリングすることができ、これにより、浅い訓練バッファを使用して訓練ベクトルをキャプチャし、拡張された範囲にわたってデータをキャプチャすることができる。例えば、4kの浅い訓練バッファは、500MHzのサンプリング周波数でサンプリングされ得、これは、次いで、8usの実効バッファ深度を提供する。
【0091】
デジタルアップコンバータ402からの信号は、CFR機能404によって処理することができ、CFR機能404の出力は、第2の非線形フィルタネットワーク406によって処理することができ、加算器408の出力は、電力増幅器412に入力することができる。
【0092】
図6A及び図6Bでは、CFR機能404の出力及び電力増幅器412の出力は、GMPアクチュエータ406を訓練するために取られる。CFR機能404の出力は、CFR機能404の出力と電力増幅器412の出力との間の遅延を整合させるために、遅延整合ブロック614を通して処理される。遅延整合ブロック614の出力及び電力増幅器412の出力の両方が、それぞれ、対応するキャプチャバッファ612、604を満たす。
【0093】
時間整列ブロック606は、キャプチャバッファ612、604の出力を整列させる。そのような時間整列は、電力増幅器412の出力(RF周波数で)でキャプチャされたサンプルと、CFR404の出力(ベースバンド周波数で)でキャプチャされたサンプルとの間のレート差を補償するのに役立つことができる。いくつかの実施形態では、遅延整合ブロック614は、特定の精度ウィンドウ内で出力を整列させることができる。遅延整合ブロック614は、事前に構成された遅延とすることができる。時間整列ブロック606は、プロセス、電源、温度、及び/又は経年変化に基づいて変化するアナログ回路を通る遅延などの遅延の時間的変動を追跡することによって、信号を更に遅延させることができる。時間整列ブロック606は、動的であり得、時間変動の追跡に基づいて調整する。
【0094】
図6Aの実施形態と比較して、図6Bの実施形態は、キャプチャバッファ602によってキャプチャされる前にRFサンプルに調整可能な量の遅延を提供するための整数及び非整数遅延ブロック620を更に含む。遅延ブロック602は、整数遅延アライメント機能及び非整数遅延アライメント機能の両方を有し、観測サンプルを送信(基準)セットと整列させるためのフィードバックパスにおいて有用である。
【0095】
図6A図7を参照すると、システムは、線形及び非線形項を含むことができる、GMP特徴610の行列Xgmpを構築する。GMP特徴610は、GMP特徴を処理するために相関エンジン618に送信される。相関エンジン618は、特徴Xgmpと誤差ベクトルεgmpとの間の相互相関ベクトルrεと、自己相関行列Rgmpとを決定して、最小二乗ソルバなどのソルバを含むことができる部分更新ブロック616に適用することができる。部分更新ブロック616は、アクチュエータを更新することができ、訓練は、再び繰り返すことができ、及び/又はラゲールアクチュエータの訓練を進めることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、システムは、プロセスを複数回繰り返すことができる。システムは、CFR機能404からの出力データの別のバッファをキャプチャし、電力増幅器412からのデータを出力し、GMP特徴を生成し、誤差を判定し、以前の補正の合計に加えることができる別の相互相関ベクトルを生成することができる。
【0097】
図7では、CFR機能404の出力及び電力増幅器412の出力は、ラゲールアクチュエータを訓練するために使用される。CICダウンサンプラ416の出力(より低いサンプリングレートに引き下げられた入力信号のエンベロープを含むことができる)は、ラゲールアクチュエータ訓練で使用することができる。この出力は、遅延整合ブロック724によって遅延され得、時間整列ブロック726は、遅延整合ブロック724の出力を時間整列して、時間整列ブロック708の時間整列セットと整合させることができる。
【0098】
時間整列された信号は、キャプチャバッファ728に送信され、次いで、信号は、ラゲール特徴ブロック730に送信され、ラゲール特徴を生成する。キャプチャバッファは、約5、10、50、100、500サンプルのオーダーの長さであり得る。信号はCICダウンサンプラ416の出力でダウンサンプリングされているため、キャプチャバッファでキャプチャされた信号は、充電及び/又は放電プロファイルを通してサンプルを取得するのに十分な時間でデータをキャプチャする。本明細書で説明されるように、図1Hのような充電及び放電の時定数効果は、典型的なデジタル予歪よりも長い期間にわたる狭帯域歪みを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、ラゲール特徴730は、相互相関ベクトルrε及び自動相関行列Rlagを決定するためにGMP特徴を処理するために相関エンジン734、並びに最小二乗ソルバなどの部分更新モジュール732に送信される。ラゲール特徴730、相関エンジン734、及び/又は部分更新モジュール732は、ソフトウェア、ファームウェア、及び/又は組み合わせで実施することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、非線形ラゲールフィルタ418の初期条件(例えば、v)は、ラゲールアクチュエータを訓練するために使用される。初期条件は、誤ったアウトカム及び解をもたらす他の変数及び方程式に影響を及ぼす可能性のある方程式のシステムにおける過渡効果を防止することである。いくつかの実施形態では、初期状態又は条件は、予め決定され得る。このような手法は、カスケードラゲールフィルタの1つ又は2つの段を有するシステムで機能し得る。しかし、システムが3、4、5、又はそれ以上のカスケードラゲールフィルタを持つ場合、方程式のシステムは複雑になり、想定された初期条件で電荷トラップ補正はますます不正確になる。
【0101】
上述の欠陥を軽減又は回避するために、いくつかの実施形態は、ラゲールフィルタアクチュエータから実際の初期条件の読み出しを取ることを開示する。非線形ラゲールフィルタ418からの初期条件は、遅延整合ブロック718によって遅延され、時間整列ブロック720は、遅延整合ブロック718の出力を時間整列することができる。キャプチャバッファ722は、初期条件のサンプルをキャプチャすることができ、初期条件をラゲール特徴ブロック730に送信して、ラゲール項の行列の生成に基づいてラゲール特徴を生成することができる。非線形ラゲールフィルタ418の初期条件及び初期状態は、図8を参照して更に説明される。
【0102】
いくつかの実施形態では、CFR機能404の出力と電力増幅器412の出力との間の差は、ラゲールアクチュエータを訓練するために使用される。図6A及び図6Bの実施形態と同様に、CFR機能404の出力は、遅延整合され714、キャプチャバッファ716に記憶される。電力増幅器412の出力もまた、キャプチャバッファ706に記憶される。キャプチャバッファ706、716の出力は、時間整列され708、加算器710を介して差が相関エンジン734に送信され、相互相関ベクトルrε及び自己相関行列Rlagを決定する。
【0103】
いくつかの実施形態では、CFR機能404の出力は、ダウンサンプラ712を介してNによりダウンサンプリングされる。ダウンサンプラ712は、CFR機能404の出力をダウンサンプリングして、エンベロープのデシメートされたレート(例えば、ブロック416の出力)と整合させることができる。例えば、ダウンサンプラは、100個のサンプルごとに1つの入力を取り得る。いくつかの実施形態では、電力増幅器412の出力は、ダウンサンプラ704を介してMによりダウンサンプリングされる。ダウンサンプラ704は、電力増幅器412の出力をダウンサンプリングして、エンベロープのデシメートされたレート(例えば、ブロック416の出力)と整合させることができる。したがって、2つのキャプチャバッファ716及び706への入力は、整合したプサンプリングレートであり得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、(信号を再構築するためではなく)相関エンジン734内のモデルに適合するためにダウンサンプリングされた信号が使用されるため、ダウンサンプラは、デシメーションフィルタの代わりに使用される。有利には、キャプチャバッファは、はるかに長い期間にわたってデータを見ることができる。例えば、キャプチャバッファは10,000個のサンプルしかキャプチャできないが、ダウンサンプリングが100の係数である場合、キャプチャバッファは10,000個のサンプルを100回にわたって拡張することができる。したがって、キャプチャバッファだけで1マイクロ秒のデータしか見ることができない場合、ダウンサンプリングを伴うキャプチャバッファは10ミリ秒超のデータを保存できるようになる。このようなダウンサンプリングは、システムが狭帯域のより遅い過渡効果をキャプチャすることを可能にする。
【0105】
いくつかの実施形態では、GMPアクチュエータの訓練(例えば、図6A及び図6B)及びラゲールアクチュエータの訓練(例えば、図7)は、直列に発生し、及び/又は同時に発生しない。したがって、キャプチャバッファは、再利用され得る。例えば、システムは、電力増幅器及び他のハードウェアの電源を入れ、データをキャプチャしてGMPアクチュエータを訓練し、データをキャプチャしてラゲールアクチュエータを訓練し、両方の訓練を繰り返すことができる。有利なことに、特定のコンポーネントの再利用のおかげで、システムはより小さくなり、より少ないコンポーネントを使用することができる。
【0106】
ラゲールアクチュエータ訓練の初期条件の識別
図8は、いくつかの実施形態による、ラゲールアクチュエータ訓練のための初期条件を識別するための例示的なアーキテクチャ800を示す。ラゲールアクチュエータ822は、信号を受信し、絶対値ブロック824を介して信号のエンベロープを生成し、補正要素826を介して(例えば、信号の2乗又は3乗など、信号に累乗を適用することによって)非線形補正を適用し、信号をラゲールフィルタ828、830、832に通過させる。
【0107】
1つ以上のラゲールフィルタは、フィルタの各々の出力がTX-ORX遅延820を介して遅延され、フィードバックループ内でラゲール訓練モデル801に供給される、自己回帰項を含むことができる。供給される項は、ラゲール訓練モデル801で使用される初期段階である。次いで、ラゲール訓練モデルは、信号を受信し、再度、絶対値ブロック802を介して信号のエンベロープを生成し、補正要素804を介して(例えば、信号の2乗又は3乗など、信号に累乗を適用することによって)非線形補正を適用し、信号をラゲールフィルタ806、808、810に通過させる。しかしながら、ラゲール訓練モデル801のラゲールフィルタ806、808、810は、初期条件を受け取るが、この初期条件は方程式812、816及び加算器814、818を介して重み付けされている。vklDPDは、アクチュエータ内部状態である。
【数7】
は訓練モデルの内部状態である。vkl(n-D)=vklz-はラゲールフィルタの以前の内部状態である。z-は時間遅延である。ラゲールアクチュエータの段0は、
【数8】
に初期化され、残りの段は
【数9】
に初期化される。この項
【数10】
は、図7に関連して本明細書で説明されるように、ラゲール特徴を生成するために使用される。
【0108】
GMP及びラゲールアクチュエータの両方を同時に訓練
図9は、いくつかの実施形態による、GMP及びラゲールアクチュエータの両方を同時に訓練するためのRF通信システム900の例示的なアーキテクチャを示す。いくつかの実施形態では、RF通信システムは、このアーキテクチャを使用してダウンサンプリングすることなく、ラゲールアクチュエータを訓練することができる。RF通信システムは、長時間にわたってラゲールアクチュエータからデータをキャプチャすることができる。キャプチャバッファは、前の図のバッファよりも長い期間にわたってより多くのデータをキャプチャする。例えば、RF通信システムは、数百メガヘルツのデータをキャプチャすることができ、これは、バッファを満たし、数十マイクロ秒のデータのウィンドウにわたって訓練することができる。次いで、RF通信システムは、ミリ秒のデータのウィンドウにわたって効果的に走査することで、ラゲールアクチュエータを繰り返し再訓練することができる。いくつかの実施形態では、サンプリング周波数は、10~500MHzの間であり得る。いくつかの実施形態では、ラゲールアクチュエータは、100ナノ秒~1ミリ秒、1ミリ秒~10ミリ秒などの時間ウィンドウにわたって訓練され得る。
【0109】
非線形ラゲールフィルタ418の出力、CFR機能404、及び電力増幅器412の出力が取得され、遅延整合ブロック910、902、及び時間整列ブロック912、906によって整列される。キャプチャバッファ904、908は、データをキャプチャする。CFR機能404の出力と電力増幅器412の出力との差分は、加算器909を介して決定される。加算器909からの差分信号は、GMP特徴生成器916、ラゲール特徴生成器914、及びCIC遅延整合ブロック918に送信される。ラゲール特徴生成器914はまた、時間整列ブロック912から初期条件を受信する。GMP特徴生成器916及びラゲール特徴生成器914は、対応する多項式を生成し、その多項式を相関エンジン924に送信する。相関エンジン618は、GMPアクチュエータについての相互相関ベクトルrε及び自己相関行列Rgmp、並びにラゲールアクチュエータについての相互相関ベクトルrε及び自己相関行列Rlagを決定することができる。ラゲール内部状態920は、図8に関連して上述した初期化関数であり、アクチュエータの内部状態が識別され、ラゲール適応の初期状態に変換される。
【0110】
2つの非線形フィルタネットワークを使用して、低歪み及び広帯域歪みを補正
図10は、いくつかの実施形態による、狭帯域歪みを補正するためのFIRフィルタを含む第1の非線形フィルタネットワークと、広帯域歪みを補正するためのFIRフィルタを含む第2の非線形フィルタネットワークとを含むRF通信システム1000を示す。第1の非線形フィルタネットワーク1012は、第1の非線形アクチュエータを含み得、第2の非線形フィルタは、第2の非線形アクチュエータ1014を含み得る。第1の非線形フィルタネットワーク1012は、第2の非線形フィルタネットワーク1014と並列であり得る。第1の非線形フィルタネットワーク1012は、GMPアクチュエータ、ラゲールアクチュエータなどを含むことができる。第2の非線形フィルタネットワーク1014は、GMPアクチュエータ、ラゲールアクチュエータなどを含むことができる。第1の非線形フィルタネットワーク1012及び第2の非線形フィルタネットワーク1014の出力は、加算器1016によって加算することができ、結合された信号は、電力増幅器1002に送信することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、システム1000は、第2の非線形フィルタネットワーク1020と並列である第1の非線形フィルタネットワーク1018も含むフィードバックアクチュエータ1008を更に備え得る。フィードバックアクチュエータ1008は、逆モデルに適合するために使用される電力増幅器1002の入出力を受信することができる。電力増幅器1002の出力は、別の第1の非線形フィルタネットワーク1018及び別の第2の第1の非線形フィルタネットワーク1020に供給され得る。別の第1の非線形フィルタネットワーク1018及び別の第2の非線形フィルタネットワーク1020の出力は、加算器1022によって加算される。次いで、電力増幅器1002の入力は、加算器1010を介して加算器1022の出力によって減算される。加算器1010の出力は、最小二乗モジュール1006を通して処理される。最小二乗モジュール1006の出力は、他の第2の非線形フィルタネットワーク1018によって使用される。システム1000は、最小二乗モジュール1006以外の他のソルバを使用することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、第1の非線形フィルタネットワーク1012は、より長い時間的制約にわたってサンプルをキャプチャすることによって狭帯域歪みを補正するための特定のサンプルレートを有することができる。第2の非線形フィルタネットワーク1014は、より高い周波数ノイズを補正するためにより高いサンプリングレートを有する必要があり得る。
【0113】
ラゲールアクチュエータを訓練するためのデータキャプチャの例示的な実施形態
図11は、ラゲールアクチュエータを訓練するためのデータキャプチャの別の実施形態を示す。システム1100は、デジタルアップコンバータ(DUC)402(入力信号xを出力する)、クレストファクタ低減(CFR)ブロック404、一般化メモリ多項式(GMP)アクチュエータ406、第1の加算器408、絶対値ブロック414、ダウンサンプリングカスケードインテグレータコーム(CIC)フィルタ416、非線形ラゲールフィルタ418(並列)、第2の加算器420、補間CICフィルタ422、第3の加算器428、第1の遅延整合ブロック426、第2の遅延整合ブロック432、デジタルアナログコンバータ411、電力増幅器412、アナログデジタルコンバータ413、デシメータ704(Mによる)、第1のキャプチャバッファ706、時間整列ブロック708、差分ブロック710、デシメータ712(Nによる)、遅延整合ブロック714、第2のキャプチャバッファ716、遅延整合ブロック724、時間整列ブロック726、第3のキャプチャバッファ728、遅延整合ブロック718、時間整列ブロック720、第4のキャプチャバッファ722、ラゲール特徴ブロック730、部分更新モジュール732、及び相関エンジン734を含む。
【0114】
例示される実施形態において、デジタルアップコンバータ402からのデジタル送信データ(入力信号xによって表される)は、CFR機能404によって処理される。クレストファクタ低減後、デジタル送信データは、GMPアクチュエータ406によって処理され、その出力は、下流電力増幅器412の電荷トラップ効果を補償するためにラゲール処理によって調整される。
【0115】
図に示されるように、電力増幅器412の出力電力観測のデジタル表現は、(アナログデジタルコンバータ413を使用して)キャプチャされ、(ブロック704を使用して)Mによってダウンサンプリングされ、第1のキャプチャバッファ706を使用してキャプチャされる。更に、CFRブロック404の出力は、(ブロック712を使用して)Nによってダウンサンプリングされ、遅延は、(ブロック714を使用して)電力増幅器の観測と整合され、次いで、キャプチャバッファ716によってキャプチャされる。
【0116】
時間整列ブロック708は、第1のキャプチャバッファ706の出力と第2のキャプチャバッファ716の出力とを整列させる。そのような時間整列は、電力増幅器412の出力で(送信チェーンに沿った様々なブロックの遅延の後のRF周波数で)キャプチャされたサンプルと、CFR404の出力で(ベースバンド周波数で、かつ送信チェーンに沿ったより早い時点で)キャプチャされたサンプルとの間のタイミング差を補償するのに役立つことができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、遅延整合ブロック714は、特定の精度ウィンドウ内で出力を整列させることができる。例えば、遅延整合ブロック714は、事前に構成された遅延とすることができる。時間整列ブロック706は、プロセス、電源、温度、及び/又は経年変化に基づいて変化するアナログ回路を通る遅延などの遅延の時間的変動を追跡することによって、信号を更に遅延させることができる。時間整列ブロック706は、動的であり得、時間変動の追跡に基づいて調整する。
【0118】
例示される実施形態において、CFRブロック404の出力及び電力増幅器412の出力は、ラゲールアクチュエータを訓練するために使用される。CICデシメータ416の出力(より低いサンプリングレートに引き下げられた入力信号のエンベロープを含むことができる)はまた、ラゲールアクチュエータ訓練で使用することができる。この出力は、遅延整合ブロック724によって遅延され得、時間整列ブロック726は、遅延整合ブロック724の出力を時間整列して、時間整列ブロック708の時間整列セットと整合させることができる。時間整列された信号は、第3のキャプチャバッファ728に送信され、次いで、信号は、ラゲール特徴ブロック730に送信され、ラゲール特徴を生成する。キャプチャバッファは、約5、10、50、100、500サンプルのオーダーの長さであり得る。信号はCICデシメータ416の出力でダウンサンプリングされているため、キャプチャバッファでキャプチャされた信号は、充電及び/又は放電プロファイルを通してサンプルを取得するのに十分な時間でデータをキャプチャする。充電及び放電の時定数効果は、典型的なデジタル予歪よりも長い期間にわたる狭帯域歪みを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、ラゲール特徴730は、相互相関ベクトルrε及び自動相関行列Rlagを決定するためにGMP特徴を処理するために相関エンジン734、並びに最小二乗ソルバなどの部分更新モジュール732に送信される。ラゲール特徴730、相関エンジン734、及び/又は部分更新モジュール732は、ソフトウェア、ファームウェア、及び/又は組み合わせで実施することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、非線形ラゲールフィルタ418の初期条件(例えば、v)は、ラゲールアクチュエータを訓練するために使用される。初期条件は、誤ったアウトカム及び解をもたらす他の変数及び方程式に影響を及ぼす可能性のある方程式のシステムにおける過渡効果を防止することである。いくつかの実施形態では、初期状態又は条件は、予め決定され得る。このような手法は、カスケードラゲールフィルタの1つ又は2つの段を有するシステムで機能し得る。しかし、システムが3、4、5、又はそれ以上のカスケードラゲールフィルタを持つ場合、方程式のシステムは複雑になり、想定された初期条件で電荷トラップ補正はますます不正確になる。
【0121】
上述の欠陥を軽減又は回避するために、いくつかの実施形態は、ラゲールフィルタアクチュエータから実際の初期条件の読み出しを取ることを開示する。非線形ラゲールフィルタ418からの初期条件は、遅延整合ブロック718によって遅延され、時間整列ブロック720は、遅延整合ブロック718の出力を時間整列することができる。第4のキャプチャバッファ722は、初期条件のサンプルをキャプチャすることができ、初期条件をラゲール特徴ブロック730に送信して、ラゲール項の行列の生成に基づいてラゲール特徴を生成することができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、CFR機能404の出力と電力増幅器412の出力との間の差は、ラゲールアクチュエータを訓練するために使用される。CFR機能404の出力は、デシメートされ、遅延整合714によって遅延され、キャプチャバッファ716に記憶され、一方、電力増幅器412の出力は、デシメートされ、キャプチャバッファ706に記憶される。キャプチャバッファ706、716の出力は、時間整列され708、差分ブロック710を介して差が相関エンジン734に送信され、相互相関ベクトルrε及び自己相関行列Rlagを決定する。
【0123】
デシメータ712は、CFR機能404の出力をダウンサンプリングして、エンベロープのデシメートされたレート(例えば、ブロック416の出力)と整合させることができる。例えば、ダウンサンプラは、100個のサンプルごとに1つの入力を取り得る。更に、デシメータ704は、電力増幅器412の出力をMによってダウンサンプリングして、エンベロープのデシメートされたレート(例えば、ブロック416の出力)と整合させることができる。したがって、2つのキャプチャバッファ706及び716への入力は、整合したプサンプリングレートであり得る。
【0124】
キャプチャバッファは、はるかに長い期間にわたってデータを見ることができる。例えば、キャプチャバッファは10,000個のサンプルしかキャプチャできないが、ダウンサンプリングが100の係数である場合、キャプチャバッファは10,000個のサンプルを100回にわたって拡張することができる。したがって、キャプチャバッファだけで1マイクロ秒のデータしか見ることができない場合、ダウンサンプリングを伴うキャプチャバッファは10ミリ秒超のデータを保存できるようになる。このようなダウンサンプリングは、システムが狭帯域のより遅い過渡効果をキャプチャすることを可能にする。
【0125】
図11では、データキャプチャ及びラゲール適応の流れを破線で示している。
【0126】
図12は、ラゲールアクチュエータを訓練するためのデータキャプチャの別の実施形態を示す。システム1200は、DUC402、CFRブロック404、一般化メモリ多項式(GMP)アクチュエータ406、第1の加算器408、絶対値ブロック414、CICフィルタ416、非線形ラゲールフィルタ418(並列)、第2の加算器420、補間CICフィルタ422、第3の加算器428、第1の遅延整合ブロック426、第2の遅延整合ブロック432、デジタルアナログコンバータ411、電力増幅器412、アナログデジタルコンバータ413、第1のキャプチャバッファ706、時間整列ブロック708、第1の整列後デシメータ707、第2の整列後デシメータ709、差分ブロック710、第2のキャプチャバッファ716、遅延整合ブロック718、時間整列ブロック720、第3のキャプチャバッファ722、ラゲール特徴ブロック730、部分更新モジュール732、及び相関エンジン734を含む。
【0127】
図11のシステム1100と比較して、図12のシステム1200は、データキャプチャバッファ706及び716によるデータキャプチャの前のダウンサンプラ704(Mによる)及びダウンサンプラ712(Nによる)を省略している。
【0128】
したがって、ラゲールアクチュエータは、無線周波数送信信号(デジタルアナログコンバータ411の出力)に変換する前に、デジタル送信データから取得された第1の観測値セットと、無線周波数送信信号を増幅する電力増幅器412の出力から取得された第2の観測値セットとを整列させる時間に基づいて訓練される。更に、第1の観測値セット及び第2の観測値セットは、デシメーションなしで取得される。むしろ、タイミング整列後にデシメーションが提供される。このようにしてDPDシステムを実施することによって、信号データはデシメーションによって失われず、観測値セット間のより正確なタイミング整列が達成される。
【0129】
ハードウェア及びソフトウェアの一例の分割が示され、ハードウェアで実施された特徴が実線で、ソフトウェアで実施された(マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイなどのプロセッサ上で実行されている)特徴が破線で示されている。しかしながら、他の分割も可能である。
【0130】
図13は、ラゲールアクチュエータを訓練するためのデータキャプチャの別の実施形態を示す。
【0131】
図13のシステム1300は、CICデシメータ416の出力の推定を提供し、それにより、第3のキャプチャバッファ722を排除する。したがって、CIC遅延整合ブロック1302、絶対値ブロック1304、及びCICデシメータ1306は、信号エンベロープのCICデシメーションの近似として機能する。
【0132】
図14は、信号遷移を扱うようにラゲールアクチュエータを訓練するのを助けるために、送信フレームを個別のキャプチャに分割する一例を示すグラフを示す。
【0133】
フルフレーム(例えば、140シンボル)を個別のキャプチャ(例えば、3フレームごと又は他の好適な数のフレームごとに1回)に分割することによって、信号の遷移が検出され、データキャプチャの前にデシメーションが提供されない場合でも、ラゲール訓練で考慮される。対照的に、デシメータを使用する場合、単一のキャプチャは、複数のシンボルをカバーすることができ、したがって、そのような信号遷移を考慮することができる。
【0134】
電力増幅器ランプアップを補償する例示的な実施形態
電力増幅器は、電力増幅器が整定された後の定常状態動作と比較して、電力が供給された直後(例えば、有効になった直後)に異なる性能特性を示す場合がある。このような電力増幅器の効果は、電力増幅器の自己発熱などの様々な要因から生じる可能性がある。例えば、冷却時の電力増幅器の初期動作は、定常状態動作温度に達した後の電力増幅器の動作と比較して変化する場合がある。
【0135】
特定の用途では、電力増幅器は長期間にわたってオンにされ、その後長期間にわたってオフにされる。例えば、時分割二重化(TDD)を使用する基地局又はモバイルデバイスの場合、電力増幅器を送信タイムスロットにわたってオンにし、受信タイムスロットにわたってオフにすることができる。
【0136】
本明細書のDPDシステムは、定常状態に対する電源投入後の電力増幅器の性能の過渡的な変化を補償するために実施することができる。例えば、本明細書の実施形態のうちのいずれかは、DPDについての係数の複数のセット(電荷トラップDPDのために使用される係数を含む)を記憶するために使用され得る。更に、DPDシステムは、電力増幅器の電源投入直後に(例えば、電力増幅器の電源投入後の期間Tにわたって)係数の1つのセットと、定常状態(例えば、期間Tの後)に係数の第2のセットとを使用するように構成することができる。
【0137】
DPDのために2つ(又はそれ以上)の係数セットを使用することによって、電力増幅器は、初期動作若しくは起動動作、及び定常状態動作の両方を含んでより効果的に線形化され得る。
【0138】
本明細書の実施形態のいずれも、電力増幅器がオン/有効にされている時間に応じて、選択的に使用される(及び訓練される)DPD係数の複数のセットで実施することができる。
【0139】
結論
上記において、実施形態のうちの任意の1つの任意の特徴は、実施形態の任意の他の1つの任意の他の特徴と組み合わせるか、又は置き換えることができることが認識されるであろう。
【0140】
本開示の態様は、様々な電子デバイスで実施されることができる。電子デバイスの例としては、限定されないが、消費者向け電子製品、消費者向け電子製品の一部、電子テスト機器、基地局などのセルラ通信インフラストラクチャが挙げられる。電子デバイスの例としては、限定されないが、スマートフォンなどの携帯電話、スマートウォッチ又はイヤーピースなどのウェアラブルコンピューティングデバイス、電話、テレビ、コンピュータモニタ、コンピュータ、モデム、ハンドヘルドコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、電子レンジ、冷蔵庫、自動車用電子システムなどの車両用電子システム、ステレオシステム、DVDプレーヤー、CDプレーヤー、MP3プレーヤーなどのデジタル音楽プレーヤー、ラジオ、カムコーダー、デジタルカメラなどのカメラ、ポータブルメモリチップ、洗濯機、乾燥機、洗濯/乾燥機、周辺デバイス、時計などが挙げられる。更に、電子デバイスは、未完成の製品を含み得る。
【0141】
文脈上明らかに他の解釈が必要とされない限り、説明及び特許請求の範囲の全体を通して、「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」、及び同類の単語は、排他的な意味又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味、すなわち「~を含むが、それに限定されない」という意味に解釈されるべきである。「結合された(coupled)」という単語は、本明細書で概して使用される場合、直接接続することができる、又は1つ以上の中間要素を経由して接続することができる、2つ以上の要素に言及している。同様に、「接続された(connected)」という単語は、本明細書で概して使用される場合、直接接続することができる、又は1つ以上の中間要素を経由して接続することができる、2つ以上の要素に言及している。更に、「ここで」、「上記で」、「下記で」という単語、及び類似の趣旨の単語は、本明細書で使用されるとき、本明細書の任意の特定部分ではなく、本明細書全体を指すものとする。文脈が許す場合、単数又は複数を使用する上記の発明を実施するための形態における単語はまた、それぞれ、単数又は複数も含み得る。2つ以上の項目のリストに関する「又は(or)」という単語は、以下の単語の解釈の全てを包含する:リスト中の項目のうちのいずれか、リスト中の項目の全て、及びリスト中の項目の任意の組み合わせ。
【0142】
更に、とりわけ、「できる(can)」、「かもしれない(could)」、「してもよい(might)」、「得る(may)」、「例えば(e.g.,)」、「など(such as)」、及び同類のものなどの、本明細書で使用される条件付きの表現は、別途具体的に提示されない限り、又は使用されるときに文脈内で別様に理解されない限り、概して、特定の実施形態が特定の特徴、要素、及び/若しくは状態を含み、一方で、他の実施形態がそれらを含まないことを伝えることを意図する。したがって、そのような条件付き表現は、概して、特徴、要素、及び/若しくは状態が、いかなる形であれ、1つ以上の実施形態に必要とされること、又はこれらの特徴、要素、及び/若しくは状態が、任意の特定の実施形態に含まれるのか、そこで行われるのかを示唆することを意図しない。
【0143】
特定の実施形態が説明されたが、これらの実施形態は、単なる例として提示されており、本開示の範囲を限定するようには意図されない。実際に、本明細書で説明される新規の方法及びシステムは、多様な他の形態で具現化することができ、更に、本開示の趣旨から逸脱することなく、本明細書で説明される方法及びシステムの形態において、様々な省略、置換、及び変更を行うことができる。例えば、ブロックは、所与の配置で提示されているが、代替の実施形態は、異なる構成要素及び/又は回路トポロジを有する同程度の機能を行うことができ、いくつかのブロックを削除、移動、追加、細分化、組み合わせる、及び/又は修正することができる。これらのブロックの各々は、多様な異なる方式で実施することができる。上で説明した様々な実施形態の要素及び行為の任意の好適な組み合わせは、組み合わせて更なる実施形態を提供することができる。上で説明した様々な特徴及びプロセスは、互いに独立して実施することができ、又は様々な方法で組み合わせることができる。本開示の特徴の全ての可能な組み合わせ及び副次的な組み合わせは、本開示の範囲に含まれることを意図する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】