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特表2024-523548インジェクタ、およびインジェクタを有する機構
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  • 特表-インジェクタ、およびインジェクタを有する機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】インジェクタ、およびインジェクタを有する機構
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/10 20060101AFI20240621BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20240621BHJP
   F02M 43/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
F02M61/10 S
F02M61/16 S
F02M43/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579492
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022068608
(87)【国際公開番号】W WO2023280866
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021206997.5
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルガー,ハインリヒ
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB01
3G066BA31
3G066BA35
3G066CC08T
3G066CC14
3G066DC25
(57)【要約】
【課題】
本発明は、圧力のもとにある作業媒体を内燃機関(2)の燃焼室(1)へ放出するためのインジェクタ(10)に関する。
【解決手段】
該インジェクタは、燃焼室(1)への作業媒体の少なくとも1つの入口開口部(26)を閉止する閉止位置と、少なくとも1つの入口開口部(26)を解放する開放位置との間で、ノズルニードル(34)が、長手方向スライド可能に配置されたインジェクタハウジング(22)と、インジェクタハウジング(22)に配置された作業媒体のための圧力室(28)と、圧力のもとにある、作業媒体とは異なる制御媒体で充填可能な、インジェクタハウジング(22)に配置された制御室(46)とを有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力のもとにある作業媒体を内燃機関(2)の燃焼室(1)へ放出するためのインジェクタ(10)であって、前記燃焼室(1)への作業媒体の少なくとも1つの入口開口部(26)を閉止する閉止位置と、少なくとも1つの前記入口開口部(26)を解放する開放位置との間で長手方向スライド可能なようにノズルニードル(34)が中に配置されたインジェクタハウジング(22)と、前記インジェクタハウジング(22)に配置された作業媒体のための圧力室(28)と、圧力のもとにある、作業媒体とは異なる制御媒体で充填可能な、前記インジェクタハウジング(22)に配置された制御室(46)とを有し、制御媒体の圧力が前記ノズルニードル(34)を閉止位置の方向へ力付勢し、前記制御室(34)は制御弁(54)を介して低圧領域(52)へと圧力逃がし可能であり、前記圧力室(28)と前記制御室(46)は互いに液圧的に分離される、インジェクタにおいて、
前記ノズルニードル(34)は少なくとも1つの閉止ばね(64,68)とリンクされ、特に少なくとも1つの閉止ばね(64,68)と当接接触して配置され、少なくとも1つの前記閉止ばね(64,68)は前記ノズルニードル(34)を閉止位置の方向へばね力によって力付勢することを特徴とする、インジェクタ。
【請求項2】
前記ノズルニードル(34)はその長軸(32)の方向で見て作業媒体のための前記圧力室(28)と制御媒体のための前記制御室(46)との間で前記インジェクタハウジング(22)の案内区域(40)で径方向に案内され、前記制御室(46)の中の制御媒体の圧力が前記ノズルニードル(34)の前記長軸(32)に対して垂直に配置された制御面(65)に対して作用し、前記ノズルニードル(34)は閉止位置にあるときシールシート(38)を形成しながら前記圧力室(28)の壁区域(36)に当接し、前記シールシート(38)の領域における前記ノズルニードル(34)の面積(A)は前記案内区域(40)の領域における面積(A)の最大41%に相当し、前記制御面(65)の面積(ASt)は前記案内区域(40)の領域における面積(A)の23%から74%の間に相当することを特徴とする、請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項3】
前記ノズルニードル(34)は、作業媒体の液圧の圧力のもとで少なくとも1つの前記入口開口部(26)を解放する開放位置へと作用する力を前記ノズルニードル(34)に対して生成するために構成される圧力面(39)を、作業媒体のための前記圧力室(28)に有することを特徴とする、請求項1または2に記載のインジェクタ。
【請求項4】
前記ノズルニードル(34)は、案内スリーブ(62)により径方向で取り囲まれる区域(45)を前記制御室(46)に有し、前記案内スリーブ(62)は、前記制御室(46)を区切るコンポーネントに向かって前記第1の閉止ばね(64)により力付勢されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のインジェクタ。
【請求項5】
前記コンポーネントは絞りプレート(55)として構成されることを特徴とする、請求項4に記載のインジェクタ。
【請求項6】
前記低圧領域(52)とは別個のばね室(60)に第2の閉止ばね(68)が配置され、前記第2の閉止ばね(68)は、前記第1の閉止ばね(64)よりも高い力で前記ノズルニードル(34)を閉止位置の方向へ付勢するために構成されることを特徴とする、請求項4または5に記載のインジェクタ。
【請求項7】
前記案内区域(40)の領域に、前記長軸(32)を中心として径方向に周回する、シーリング媒体で充填可能な溝(42)が形成されることを特徴とする、請求項2から6のいずれか1項に記載のインジェクタ。
【請求項8】
内燃機関(2)の前記燃焼室(1)へ作業媒体を放出するための機構(100)において、請求項1から7のいずれか1項に基づいて構成された第1のインジェクタ(10)と、前記第1のインジェクタ(10)とは異なる作業媒体を前記燃焼室(1)へ噴射するために構成された第2のインジェクタ(20)とを有し、前記第2のインジェクタ(20)によって前記内燃機関(2)が作動するときの燃焼室圧力は最大でおよそ350バールである、機構。
【請求項9】
前記第1のインジェクタ(10)は、アンモニアや、エタノール、メタノールのようなアルコールなどの作業媒体としての代替燃料を、および前記第2のインジェクタ(20)は作業媒体としてのディーゼル燃料を、前記燃焼室(1)に放出するために構成されることを特徴とする、請求項8に記載の機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力のもとにある作業媒体を内燃機関の燃焼室へ放出するためのインジェクタに関する。特に本発明は、たとえばアンモニアや、エタノール、メタノールのようなアルコールなどの代替燃料を噴射するためのインジェクタに関し、ノズルニードルのストローク運動は、作業媒体とは異なる制御媒体を通じて惹起される。
【背景技術】
【0002】
出願人の特許文献1より、請求項1の前提項の構成要件を有するインジェクタが公知である。この公知のインジェクタは、ノズルニードルがストローク運動可能なように中に配置された、それぞれ異なる媒体で充填可能な2つの圧力室を有することを特徴としている。両方の圧力室は、ノズルニードルの長手方向に対して横向きに延びるベローズによって互いに媒体密閉式に分離される。インジェクタの入口開口部と向かい合う側に配置された圧力室は、ノズルニードルの長手方向運動に影響を及ぼすための制御媒体で充填可能であり、それに対して入口開口部の側のほうを向く圧力室は、入口開口部を介してインジェクタから放出可能な作業媒体によって充填可能である。重要なのは、両方の圧力室が、圧力のもとにある媒体で充填されていない状態にあるとき、ノズルニードルに対して、ノズルニードルの閉止方向に作用して入口開口部を閉止する力が生成されないことにある。
【0003】
出願人の特許文献2より、当分野に属する別のインジェクタが公知である。このインジェクタの場合にも、制御媒体の(液圧の)圧力によって制御室が力付勢されていない状態にあるとき、入口開口部を閉止する位置の方向へのノズルニードルの力付勢は行われない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017217991号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102018211510号明細書
【発明の概要】
【0005】
請求項1の特徴を有する、圧力のもとにある作業媒体を内燃機関の燃焼室へ放出するための本発明によるインジェクタには、制御媒体の圧力によって制御室が液圧式に力付勢されていない状態にあるとき、ノズルニードルが閉止位置へと力付勢されることによって、作業媒体で充填された圧力室を燃焼室に対して封止するという利点がある。
【0006】
特に、本発明によるインジェクタは、ノズルニードルに対して閉止位置の方向に作用する比較的高い閉止力を生成することを可能にする。このことが特に利点であるのは、インジェクタが、燃焼室へ作業媒体を放出ないし噴射するための他のインジェクタとともに設けられている場合であり、このとき本発明によるインジェクタは、たとえばアンモニアや、エタノール、メタノールのようなアルコールなどを燃焼室に噴射し、他方のインジェクタは、特にディーゼル燃料を噴射するために構成される。このとき重要なのは、他方のインジェクタが(ディーゼル)燃料を燃焼室に噴射する動作状態にあり、それに対して本発明によるインジェクタが無圧のとき、ないしは停止しているとき、他方のインジェクタの動作によって生じる燃焼室圧力が、場合によりインジェクタの損傷につながり得る燃焼室ガスが本発明のインジェクタに侵入し得ることにつながらないことである。
【0007】
換言すると、このことが意味するのは、内燃機関が他方のインジェクタによって作動しているときに、本発明のインジェクタにおいて少なくとも1つの閉止ばねによりノズルニードルに対して生成可能な閉止力が少なくとも燃焼室圧力と同程度の大きさであり、それによりノズルニードルを閉止位置で保つように構成されていることである。
【0008】
したがって上で説明した背景のもとで、本発明によるインジェクタでは、ノズルニードルが少なくとも1つの閉止ばねとリンクされ、特に少なくとも1つの閉止ばねと当接接触して配置され、少なくとも1つの閉止ばねはノズルニードルを閉止位置の方向へばね力によって力付勢することが意図される。
【0009】
圧力のもとにある作業媒体を内燃機関の燃焼室へ放出するための本発明によるインジェクタの好ましい発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
液体燃料ないし(ディーゼル)燃料を燃焼室に噴射するために構成される(追加ないし第2の)インジェクタが使用されるときの典型的な燃焼室圧力への観点から、ノズルニードルはその長軸の方向で見て、作業媒体のための圧力室と制御媒体のための制御室との間で、インジェクタハウジングの案内区域で径方向に案内され、制御室の中の制御媒体の圧力が、ノズルニードルの長軸に対して垂直に配置された制御面に対して作用し、ノズルニードルは閉止位置にあるときシールシートを形成しながら圧力室の壁区域に当接し、シールシートの領域のノズルニードルの面積は案内区域の領域の面積の最大41%に相当し、制御面の面積は案内区域の領域の面積の23%から74%の間に相当することが意図される。
【0011】
制御室での圧力低下時に入口開口部を解放するためにノズルニードルの開放方向に作用する力を生成するために、ノズルニードルは、作業媒体の液圧の圧力のもとで開放方向に作用する力をノズルニードルに対して生成するために構成される圧力面を、作業媒体のための圧力室に有することが意図される。
【0012】
特別に好ましいインジェクタの別の設計的な実施形態は、ノズルニードルが、案内スリーブによって径方向で取り囲まれる区域を制御室に有し、案内スリーブは、制御室を区切るコンポーネントに向かって第1の閉止ばねにより力付勢されることを意図する。このような種類の実施形態は、特に、比較的高い閉止力をノズルニードルに対して生成するために設けられる第2の閉止ばねを、制御室の外部で別個のばね室に配置することを可能にし、制御室はこの別の室(ばね室)に対して案内スリーブによって封止される。
【0013】
すぐ上に挙げた提案の好ましい発展形態では、案内スリーブが(封止をするように)当接するコンポーネントが絞りプレートであることが意図される。
【0014】
すでに上に挙げたとおり、低圧領域とは別個のばね室に第2の閉止ばねが配置され、第2の閉止ばねは、第1の閉止ばねよりも高い力でノズルニードルを閉止位置の方向へ付勢するために構成されていることが特別な利点である。特に、このような種類の設計的な実施形態は、第2の閉止ばねがほぼ任意のサイズないし形状およびジオメトリーを有することができ、それにより制御室のサイズが不都合な影響をうけなくてすみ、ないしは拡張しなくてすむことを可能にする。
【0015】
制御室にある制御媒体と圧力室にある作業媒体との間の追加の封止を可能にするために、ノズルニードルのための案内区域の領域に、ノズルニードルの長軸を中心として径方向に周回する、シーリング媒体で充填可能な溝が形成されることが意図されていてよい。このシーリング媒体は、たとえば比較的高い粘性を有するシーリングオイルであってよく、それにより、シーリング媒体が作業媒体ないし制御媒体と混ざり合うことも起こり難くなる。
【0016】
さらに本発明は、上記で説明した第1のインジェクタと、第1のインジェクタとは異なる作業媒体を燃焼室に噴射するために構成された第2のインジェクタとを有する、内燃機関の燃焼室へ作業媒体を放出するための機構も含み、第2のインジェクタによって内燃機関が作動するときの燃焼室圧力は最大でおよそ350バールである。
【0017】
この機構は、第1のインジェクタについてアンモニアや、エタノール、メタノールのようなアルコールなどの作業媒体としての代替燃料を、および第2のインジェクタについてディーゼル燃料を、内燃機関の燃焼室に放出するために構成されることが意図されるのがきわめて特別に好ましい。
【0018】
本発明のその他の利点、構成要件、および具体的事項は本発明の好ましい実施形態についての以下の説明から、ならびに図面の参照から、明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】内燃機関の燃焼室の領域における2つのインジェクタの配置を示す模式図である。
図2】内燃機関の燃焼室へ特に液体の作業媒体を放出するためのインジェクタを示す、簡略化して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
同じ部材ないし同じ機能の部材には、各図面において同じ符号が付されている。
【0021】
図1には、内燃機関2の燃焼室1の領域に2つのインジェクタ10,20が設けられて、内燃機関2の燃焼室1へそれぞれ異なる作業媒体を放出ないし噴射し、もしくは吹き込む機構100が示されている。特に第1のインジェクタ10は、貯蔵リザーバ12に貯蔵された第1の作業媒体を、特にアンモニアや、エタノール、メタノールのようなアルコールなどの代替燃料を、燃焼室1へ噴射するために構成され、それに対して他方のインジェクタ20は、第2の貯蔵リザーバ14に貯蔵された第2の作業媒体を、特にディーゼル燃料を、燃焼室1へ噴射するために構成される。
【0022】
これに加えて重要なのは、特に他方のインジェクタ20が第1のインジェクタ10の作業媒体の点火のための点火源としての役目を果たす場合に、両方のインジェクタ10,20を一緒に作動させることができることである。ただし第1のインジェクタ10は、たとえば第1の作業媒体を利用可能でない場合に、必要に応じて停止させることもできる。このようなケースでは、内燃機関2は他方の第2のインジェクタ20のみによって作動する。
【0023】
図2により詳細に示すインジェクタ10は、複数の異なる直径を有する区域を有する切欠き24が形成されたインジェクタハウジング22を有している。インジェクタハウジング22は、燃焼室1のほうを向く側に、内燃機関2の燃焼室1へ(気体の)作業媒体を吹き込むために構成された、複数の入口開口部26を有している。そのために切欠き24は、入口開口部26のほうを向く側に、圧力のもとにある作業媒体と供給穴30を介して接続可能である圧力室28を形成している。
【0024】
切欠き24の内部には長軸32の方向に、ノズルニードル34がストローク運動可能なように配置されている。図2に示す閉止位置にあるとき、テーパ状に構成されたノズルニードル端部35が切欠き24の壁区域36の領域でシールシート38を形成しながら切欠き24に当接して、入口開口部26を少なくとも間接的に閉止する。ノズルニードル34も圧力室28の内部に直径の異なる区域を有していて、作業媒体によって圧力室28が液圧で圧力付勢されたとき、本実施例ではテーパ状に構成された圧力面39が、入口開口部26を解放する開放力をノズルニードル34に対して生成するようになっている。
【0025】
ノズルニードル34は、長手方向で見たときに中間領域で、切欠き24の案内区域40の中を径方向に案内される。ノズルニードル34ないし案内区域40は、案内区域40の領域で一定の直径Dを有している。さらに、案内区域40のほぼ中央領域では、切欠き24の壁部の領域に、長軸32を中心として径方向に周回する環状溝42が形成されており、この環状溝は供給通路44を介して、シーリングオイル等の形態のシーリング媒体で充填可能である。インジェクタ20がディーゼルインジェクタとして構成されるケースでは、シーリング媒体ないしシーリングオイルをインジェクタ20の燃料循環路から取り出すことができ、すなわち、シーリング媒体はディーゼルであってよい。
【0026】
ノズルニードル34は、入口開口部26と反対を向くほうの側で、直径に関して縮小された区域45をもって、同じく切欠き24に形成された制御室46に突入している。制御室46は、流入穴48を介して、圧力のもとにある制御媒体のための貯蔵リザーバ49と接続されており、制御媒体は作業媒体とは異なる媒体である。さらに制御室46は流出穴50を介して低圧領域52へと圧力逃がし可能である。そのために、開いた位置にあるとき制御室46からの制御媒体の流出を可能にする弁54が利用される。弁54は、それ自体として従来技術より周知なので詳しくは説明しないが、たとえば磁気アクチュエータによって操作することができる。
【0027】
制御室46ないし切欠き24は、入口開口部26と向かい合う側で絞りプレート55によって閉止されており、この絞りプレートには、流入通路44のための流入絞り56と、流出穴50のための流出絞り57とが形成されている。さらに絞りプレート55は長軸32に対して同心的に、制御室46と向かい合う側でばね室60に連通する貫通孔58を有している。
【0028】
制御室46の内部では、案内区域として作用するノズルニードル34の区域45が案内スリーブ62によって径方向に包囲されていて、この案内スリーブは、ばね室60の方向に貫通孔58を封止する役目を果たす。そのために、絞りプレート55のほうを向く側に、テーパ状に構成されて長軸32を中心として径方向に周回するシールエッジ63を有する案内スリーブ62は、第1の閉止ばね64のばね力によって絞りプレート55の方向に力付勢される。第1の閉止ばね64は、長軸32を中心として周回する環状の制御面65の領域で、ノズルニードル34に支持されている。
【0029】
ノズルニードル34は、ばね室60の領域で直径に関して皿状に拡大されて構成される、直径に関して再度縮小された区域66をもって、貫通孔58を貫通している。ばね室60には第2の閉止ばね68が配置されていて、この第2の閉止ばねは、インジェクタ10の図示しないハウジングに固定されたコンポーネントに対して支持されるとともに、第1の閉止ばね64のばね力よりも高いばね力をもってノズルニードル34をシールシート38の方向へ付勢するという特徴がある。
【0030】
インジェクタ10によって内燃機関2の燃焼室1へ作業媒体を放出するために、高圧力のもとにある作業媒体(ガス)によって圧力室28が充填される。図2に示す閉止位置から、入口開口部26を介して作業媒体が燃焼室1へ流出することができる開放位置へとノズルニードル34を持ち上げるためには、制御室46の圧力が低下することが必要である。このことは弁54の作動制御によって行われ、それにより制御媒体が低圧室52に流れ出ることができる。ノズルニードル34の開放のために必要な開放力は、圧力室28の中でノズルニードル34の圧力面39に対して作用する作業媒体によって惹起される。
【0031】
ノズルニードル34を閉止するために、弁54の閉止によって制御室46の中の液圧の圧力が上昇し、このことが液圧の(追加の)閉止力をノズルニードル34の閉止位置の方向に惹起し、両方の閉止ばね64および68のばね力は、制御室46への制御媒体による液圧の閉止力と合わせて、圧力室28にある作業媒体によってノズルニードル34に対して圧力面39で開放方向に作用する力よりも高くなっていなければならない。
【0032】
さらに重要なのは、インジェクタ10が作動していないとき、特に、内燃機関2が第2のインジェクタ20により液体の(ガソリン)燃料ないし作業媒体によって作動しているとき、典型的には最大でおよそ350バールになり得る、燃焼室1で生じる燃焼室圧力に対して、ノズルニードル34が閉止位置で保たれることであり、このことは両方の閉止ばね64,68のばね力によって可能となる。上記の最大の燃焼室圧力の観点からして、シールシート38の領域におけるノズルニードル34の面積Aは、ノズルニードル34の案内直径ないし案内区域40の領域における面積Aの最大41%に相当し、制御面65の高さにおける区域66の面積AStは、ノズルニードル34の案内直径ないし案内区域40の領域における面積Aの23%から74%の間に相当することが必要であることが判明している。
【0033】
以上に説明したインジェクタ10は、発明思想から逸脱することなく、多様な形態で改変ないし改良することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 燃焼室
2 内燃機関
10 第1のインジェクタ
20 第2のインジェクタ
22 インジェクタハウジング
28 圧力室
26 入口開口部
32 長軸
34 ノズルニードル
46 壁区域
38 シールシート
40 案内区域
42 溝
45 区域
46 制御室
52 低圧領域
54 制御弁
55 絞りプレート
60 低圧室
62 案内スリーブ
64,68 閉止ばね
65 制御面
68 第2の閉止ばね
100 機構
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力のもとにある作業媒体を内燃機関(2)の燃焼室(1)へ放出するためのインジェクタ(10)であって、前記燃焼室(1)への作業媒体の少なくとも1つの入口開口部(26)を閉止する閉止位置と、少なくとも1つの前記入口開口部(26)を解放する開放位置との間で長手方向スライド可能なようにノズルニードル(34)が中に配置されたインジェクタハウジング(22)と、前記インジェクタハウジング(22)に配置された作業媒体のための圧力室(28)と、圧力のもとにある、作業媒体とは異なる制御媒体で充填可能な、前記インジェクタハウジング(22)に配置された制御室(46)とを有し、制御媒体の圧力が前記ノズルニードル(34)を閉止位置の方向へ力付勢し、前記制御室(46)は制御弁(54)を介して低圧領域(52)へと圧力逃がし可能であり、前記圧力室(28)と前記制御室(46)は互いに液圧的に分離される、インジェクタにおいて、
前記ノズルニードル(34)は少なくとも1つの閉止ばね(64,68)とリンクされ、特に少なくとも1つの閉止ばね(64,68)と当接接触して配置され、少なくとも1つの前記閉止ばね(64,68)は前記ノズルニードル(34)を閉止位置の方向へばね力によって力付勢することを特徴とする、インジェクタ。
【請求項2】
前記ノズルニードル(34)はその長軸(32)の方向で見て作業媒体のための前記圧力室(28)と制御媒体のための前記制御室(46)との間で前記インジェクタハウジング(22)の案内区域(40)で径方向に案内され、前記制御室(46)の中の制御媒体の圧力が前記ノズルニードル(34)の前記長軸(32)に対して垂直に配置された制御面(65)に対して作用し、前記ノズルニードル(34)は閉止位置にあるときシールシート(38)を形成しながら前記圧力室(28)の壁区域(36)に当接し、前記シールシート(38)の領域における前記ノズルニードル(34)の面積(AS)は前記案内区域(40)の領域における面積(AF)の最大41%に相当し、前記制御面(65)の面積(ASt)は前記案内区域(40)の領域における面積(AF)の23%から74%の間に相当することを特徴とする、請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項3】
前記ノズルニードル(34)は、作業媒体の液圧の圧力のもとで少なくとも1つの前記入口開口部(26)を解放する開放位置へと作用する力を前記ノズルニードル(34)に対して生成するために構成される圧力面(39)を、作業媒体のための前記圧力室(28)に有することを特徴とする、請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項4】
前記ノズルニードル(34)は、作業媒体の液圧の圧力のもとで少なくとも1つの前記入口開口部(26)を解放する開放位置へと作用する力を前記ノズルニードル(34)に対して生成するために構成される圧力面(39)を、作業媒体のための前記圧力室(28)に有することを特徴とする、請求項2に記載のインジェクタ。
【請求項5】
前記ノズルニードル(34)は、案内スリーブ(62)により径方向で取り囲まれる区域(45)を前記制御室(46)に有し、前記案内スリーブ(62)は、前記制御室(46)を区切るコンポーネントに向かって前記第1の閉止ばね(64)により力付勢されることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のインジェクタ。
【請求項6】
前記コンポーネントは絞りプレート(55)として構成されることを特徴とする、請求項に記載のインジェクタ。
【請求項7】
前記低圧領域(52)とは別個のばね室(60)に第2の閉止ばね(68)が配置され、前記第2の閉止ばね(68)は、前記第1の閉止ばね(64)よりも高い力で前記ノズルニードル(34)を閉止位置の方向へ付勢するために構成されることを特徴とする、請求項5に記載のインジェクタ。
【請求項8】
前記低圧領域(52)とは別個のばね室(60)に第2の閉止ばね(68)が配置され、前記第2の閉止ばね(68)は、前記第1の閉止ばね(64)よりも高い力で前記ノズルニードル(34)を閉止位置の方向へ付勢するために構成されることを特徴とする、請求項6に記載のインジェクタ。
【請求項9】
前記案内区域(40)の領域に、前記長軸(32)を中心として径方向に周回する、シーリング媒体で充填可能な溝(42)が形成されることを特徴とする、請求項2または4に記載のインジェクタ。
【請求項10】
内燃機関(2)の前記燃焼室(1)へ作業媒体を放出するための機構(100)において、請求項1からのいずれか1項に基づいて構成された第1のインジェクタ(10)と、前記第1のインジェクタ(10)とは異なる作業媒体を前記燃焼室(1)へ噴射するために構成された第2のインジェクタ(20)とを有し、前記第2のインジェクタ(20)によって前記内燃機関(2)が作動するときの燃焼室圧力は最大でおよそ350バールである、機構。
【請求項11】
前記第1のインジェクタ(10)は、アンモニアや、エタノール、メタノールのようなアルコールなどの作業媒体としての代替燃料を、および前記第2のインジェクタ(20)は作業媒体としてのディーゼル燃料を、前記燃焼室(1)に放出するために構成されることを特徴とする、請求項10に記載の機構。
【国際調査報告】