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特表2024-523549車両のためのブレーキ装置を作動させる方法、および車両のためのブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】車両のためのブレーキ装置を作動させる方法、および車両のためのブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20240621BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B60T8/17 B
B60T8/1755
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579493
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2022068613
(87)【国際公開番号】W WO2023280870
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021207066.3
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】長倉 安孝
(72)【発明者】
【氏名】ツィッブリッヒ ドミニク
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246BA08
3D246DA01
3D246EA05
3D246GA04
3D246GA22
3D246GB04
3D246GB39
3D246GC14
3D246HA38A
3D246HA43A
3D246HC07
3D246HC11
3D246LA02Z
3D246LA04Z
3D246LA10Z
3D246LA15Z
3D246LA56Z
3D246LA57A
(57)【要約】
本発明は、走行安定性システム(ESP)と接続可能である、車両(F)のためのブレーキ装置(10)を作動させる方法を提供し、該方法は、ブレーキプロセスをリリースする必要性が認識(S1a)されること、および/またはブレーキ装置(10)でブレーキ力を生成するための命令がブレーキ装置(10)のブレーキペダル(PE)を通じて利用者から受信(S1b)されることと、ブレーキペダルを通じて受信されたペダル力に依存してブレーキ装置(10)のブレーキユニットでブレーキ力が生成(S2)されることとを含み、ペダル抵抗力の増大(S3)または低減(S4)がブレーキ倍力装置(BE)によって行われ、それによりペダル抵抗力が最新のブレーキ動作形態に合わせて適合化される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行安定性システム(ESP)と接続可能である、車両(F)のためのブレーキ装置(10)を作動させる方法において、次の各ステップを含み、
ブレーキプロセスをリリースする必要性が認識(S1a)され、および/または前記ブレーキ装置(10)でブレーキ力を生成するための命令が前記ブレーキ装置(10)のブレーキペダル(PE)を通じて利用者から受信(S1b)され、
ブレーキペダルを通じて受信されたペダル力に依存して前記ブレーキ装置(10)のブレーキユニットでブレーキ力が生成(S2)され、ペダル抵抗力の増大(S3)または低減(S4)がブレーキ倍力装置(BE)によって行われ、それによりペダル抵抗力が最新のブレーキ動作形態に合わせて適合化される、方法。
【請求項2】
前記ブレーキ動作形態は少なくとも部分的に電気機械での回生を制御および実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
目下のブレーキ状況に相当するブレーキ印象がペダル抵抗力によって運転者にシミュレートされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ブレーキ力の生成のために、および/またはペダル抵抗力の増大または低減のために、前記走行安定性システム(ESP)と前記ブレーキ倍力装置(BE)の間のコントロール信号遅延が考慮されて補償される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレーキ倍力装置(BE)は、前記ブレーキ装置のマスタブレーキシリンダにおける圧力と、利用者により惹起される判定されたペダル圧力との間の差異の結果として生じるペダル力を補償する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ブレーキ倍力装置(BE)は回生ブレーキのときにブレーキ補助を低減させ、前記ブレーキ装置での純粋に液圧式のブレーキに合わせてペダル抵抗力を調整する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
回生式のブレーキ動作形態の開始時の動的圧力が判定され、動的圧力が所定の最大値を上回っている場合にペダル抵抗力の生成にあたって考慮される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブレーキ倍力装置(BE)で比較電流が測定され、これから前記マスタブレーキシリンダにおける近似された圧力が推定されることによって、前記マスタブレーキシリンダにおける近似された圧力が判定される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキ倍力装置を作動させる電気モータのロータ位置センサが読み出され、前記電気モータの相電流が判定され、そこから前記ブレーキ倍力装置のモータ電流が比較電流として判定され、そこからさらなる帰結として前記ブレーキ倍力装置の前記モータのトルクが判定され、次いで、そこから前記マスタブレーキシリンダにおける近似された圧力が判定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
走行安定性システム(ESP)と接続可能である、車両(F)のためのブレーキ装置(10)において、
ブレーキ倍力装置(BE)と、
ブレーキプロセスをリリースする必要性を認識するために、および/または前記ブレーキ装置(10)でブレーキ力を生成する命令を前記ブレーキ装置(10)のブレーキペダル(PE)を通じて利用者から受信するために、セットアップされた制御装置(SE)と、
ブレーキユニットと、
ブレーキペダル(PE)とを含み、前記制御装置と前記ブレーキユニットは相互に作動可能であり、前記ブレーキペダルを通じて受信されたペダル力に依存して前記ブレーキユニットでブレーキ力を生成するためにセットアップされ、ペダル抵抗力を前記ブレーキ倍力装置(BE)によって生成可能または変更可能であり、それによってペダル抵抗力を最新のブレーキ動作形態に合わせて適合化する、車両のためのブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のためのブレーキ装置を作動させる方法、および車両のためのブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両は、ブレーキユニットに対する力を生成して転送することができるマスタブレーキシリンダを有するブレーキ設備を含んでいる。ブレーキブースタにより、運転者が自らブレーキペダルで生成する力の増幅を、ブレーキユニットのために追加的に生成することができる。ブレーキ設備は液圧を通じて作動させることができ、生成された液圧が、抵抗力としての復帰力をペダルに及ぼすこともできる。このようにして、ブレーキ設備での力印加に関わる感覚を運転者に伝えることができる。ブレーキブースタも抵抗力の一部分を生成することができるので、ブレーキブースタの適用によってこのような抵抗力を変更することができる。電動車両では、車両が回生モードで作動するときに、さらに別の影響が付け加わることがある。
【0003】
特許文献1には、第1のアクスルと第2のアクスルと2つの電気機械とを有する、全輪駆動可能な車両のドライブトレーンが記載されており、各々の機械がアクスル半体のうちの一方を駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/083243号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、請求項1に記載されている車両のためのブレーキ装置を作動させる方法、および、請求項10に記載されている車両のためのブレーキ装置を提供する。
【0006】
好ましい発展形態は従属請求項の対象である。
【0007】
本発明の根底にある思想は、車両のためのブレーキ装置を作動させる方法、および車両のためのブレーキ装置を提供することにあり、ブレーキ倍力装置の利用のもとでブレーキペダルへの抵抗力をブレーキプロセス中にいっそう状況に即して正確に転送することができ、ブレーキ設備での最新の圧力状況に合わせていっそう正確に抵抗力を適合化することができ、それにより、いっそう現実的なブレーキ感覚を運転者にペダル抵抗を通じて伝えることにある。
【0008】
本発明によると、走行安定性システムと接続可能である、車両のためのブレーキ装置を作動させる方法において、ブレーキプロセスをリリースする必要性が認識されること、および/またはブレーキ装置でブレーキ力を生成するための命令がブレーキ装置のブレーキペダルを通じて利用者から受信されることと、ブレーキペダルを通じて受信されたペダル力に依存してブレーキ装置のブレーキユニットでブレーキ力が生成されることとが行われ、ペダル抵抗力の増大または低減がブレーキ倍力装置によって行われ、それによりペダル抵抗力が最新のブレーキ動作形態に合わせて適合化される。
【0009】
ブレーキ装置は、電気機械を有する車両に組み付けられていてよいのが好ましい。走行安定性システムは、たとえばトラクションコントロールのためのエレクトロニックスタビリティシステム(ESP)であってよい。ブレーキユニットは、1つまたは複数のホイールおよび/またはアクスルにおける、どのような形式の周知のブレーキであってもよい。ペダル力は、運転者がペダルに及ぼす力に対応していてよい。この力を、ブレーキ装置の液圧システムで増幅してブレーキユニットへと転送することができる。このときブレーキユニットの後方で、ブレーキ状況の感覚を運転者に与えることができる力抵抗をブレーキ配管で生成することができる。このときブレーキペダルとブレーキユニットの間でのフィードバックを、ブレーキペダルとブレーキユニットの間での力のコミュニケーションに合わせていっそう良好に適合化できるという利点があり、さらに、ブレーキペダルでの現実的なブレーキ抵抗の再現と生成を、換言するとペダル抵抗力を、改善することができ、いっそう現実的に生成することができる。このことは特に、車両が回生ブレーキモードで作動する場合に利点となり得る。このことは、液圧ブレーキシステムからのフィードバックに基づくブレーキ印象を改変することができる。
【0010】
一般に、力のフィードバックに関しては次の関係を立てることができる:
ペダル抵抗力=液圧力+ばね力-追加力
【0011】
ここで液圧力は液圧によって生成される力に相当し、この圧力は、マスタブレーキシリンダのピストン面積と乗算される。ばね力は、たとえば初期位置への復帰ばねとしての役目を果たすことができる、マスタブレーキシリンダにある1つまたは複数のばねやブレーキ倍力装置にある1つまたは複数のばねなどの、ばねコンポーネントにおける力の合計を表す。追加力は、ブレーキ倍力装置によって生成される力に相当する。このとき液圧力の低減は、ペダル抵抗力の低減に帰結し得る。
【0012】
ペダル抵抗力の低減、およびこれに伴ってブレーキペダルにおけるブレーキ感覚の改変には、ブレーキ倍力装置の動作の相応の制御と適合化によって影響を及ぼすことができる。このようにして、ペダル(抵抗)力とその転送の低減を補償することができる。
【0013】
追加力には、たとえばブレーキ倍力装置の位置調節量の適合化によって、間接的に影響を及ぼすことができる(DRRオフセット、driver request recognition offset value)。
【0014】
いわゆる「DRRオフセット」を調整することで、すなわちブレーキ倍力装置でのストローク差を調整することで、対応する制御量を、好ましくは所望の力成分をこれによって生成可能であるように適合化することができる。ソフトウェアを通じて機械的な倍力の適合化が行われないケースについては、0mmのストローク差を常に調節できるのが好ましい。このようなオフセット(「DRRオフセット」)が加算されることで、ブレーキ倍力装置での増幅をソフトウェアによって適合化することができる。ブレーキ倍力装置は、純粋な機械式の増幅/力作用と比較したとき、これよりも強く増幅することができ(DRRオフセット>0mm)、またはいっそう弱く増幅することができる(DRRオフセット<0mm)。
【0015】
このときストローク差は、入力ロッドの行程とピストンの行程との間の差異を対象とすることができる。
【0016】
このような改変(抵抗力の適合化)は、ブレーキ装置での(最新の時点でのマスタブレーキシリンダでの)最新のシステム圧力に、たとえば仮想的なシステム圧力で記述することができるブレーキ装置のそのつどの作業点に、依存させることができる。
【0017】
この場合に組み付けられるブレーキコンポーネント/ブレーキシステムの行程・圧力の特性が成立していてよく、事前決定されていてよい。
【0018】
このとき行程は、ロッド(コンロッド)の測定された行程であり、圧力は、マスタブレーキシリンダで測定された圧力である。Volume blending(容積ブレンディング)の場合、このような行程・圧力の特性と、ブレーキ倍力装置による行程とから、仮想的な圧力が得られる。容積ブレンディングが行われないとき、仮想的な圧力はマスタシリンダで測定される圧力に等しい。
【0019】
仮想的なシステム圧力とは、システムで現在生じている条件の計算または見積に基づいて対応させることができる、見積られた量であってよい。このような見積は実際の量と相違している場合があり、または許容範囲内で当該量に相当する場合がある。仮想的なシステム圧力についての見積量は、典型的に生じるシステム圧力が既知である、決定されて判定されたペダル位置に割り当てられていてよいが、後者のシステム圧力も、たとえば回生部分動作などの改変された動作形態のもとでは、実際には典型値と相違する場合がある。
【0020】
このように、仮想的な量と実際の量との間では差異が生じる場合がある。ブレーキ装置のシステムでは容積改変(Volume hiding)が起こることがあり、それがシステムでの実際の圧力を改変させることがあり得る。その場合、仮想的なシステム圧力はブレーキ装置での見積られた圧力に相当し、容積改変の効果が必ずしも考慮されていなくてよく、たとえば液圧ブレーキモデルを利用することができる。
【0021】
容積改変とは、アキュムレータユニットへと押し出すことができる(またはそこで減らすことができる)容積であってよく、それにより液圧トルクを低減し、その代りに回生トルクを可能にし、もしくは増大させる。回生トルクが多くなるほど、いっそう多くの容積がアキュムレータユニットに押し出される。
【0022】
このときアキュムレータユニットとは、ブレーキシステムの液圧ユニットの作動液のための備蓄室であってよい。
【0023】
このような修正または改変は、さらに別の位置調節量または比較量(ジャンプイン)に依存し得る。
【0024】
このような位置調節量または比較量(ジャンプイン圧力)は、運転者が液圧系と接触するときの、またはペダルでの抵抗としての圧力レベルが液圧の圧力レベルに相当するときの、ブレーキ倍力装置における基準圧力に相当していてよい。この基準圧力よりも以前に(この値に達する以前に)、運転者が液圧系との直接的なリンクを有することはなく、運転者力/ペダル力は、ペダルを操作するために克服されなければならないばね力の予荷重にのみ相当する(カットインスプリング)。
【0025】
最新の圧力に代えて、システムで実現されるべき目標圧力を計算することができる。たとえばマスタブレーキシリンダでの目標圧力とは、動作形態に合わせて適合化された相応のペダル抵抗力においてブレーキ装置および/またはブレーキペダルで発生し得る所望の圧力であってよい。力・ストローク・特性を得るために、すなわちブレーキユニットでのそのつどの力およびこれに対応するフィードバックおよびペダル抵抗力を得るために、中間区域(中間動作)が終了する前に、たとえばジャンプイン値よりも下方で、アクチュエータの位置を適合化することが必要になる場合がある。アクチュエータ(ブーストボディまたはバルブボディ)とは、入力ロッドに加えて圧力生成を担当してよい、モータにより並進的に駆動されるブレーキ倍力装置の部分が表されていてよい作動化装置であってよい。
【0026】
(利用者による設定によって設定されて既知である)ジャンプイン値よりも下方での補償の限界が、当初に調整されるギャップ値のもとで定義されていてよい。これはペダル(抵抗)力の補償であり、このことは、(エンジン、電気機械、またはブレーキ倍力装置からなる)トルクの混合によって影響を受ける可能性がある(トルクブレンディング)。ギャップ値(GapLap)では、入力ロッド(プランジャプレート)とリアクションディスクとの間の初期間隔が表される。この間隔が初期にどれだけ広くなっているかに応じて、ジャンプイン点(運転者が液圧系との力リンクをするときの圧力)が早くなったり遅くなったりする。
【0027】
所望のジャンプイン値が利用者によって事前決定されていてよい。リアクションディスクの変形の不足を容積ブレンディングによって補償することが目的であってよい。利用者がブレーキ要求をするときにはペダルを押し、マスタブレーキシリンダからホイール(そのブレーキ構造)へと容積を押し出す。純粋に回生式のブレーキをかけた場合、この容積割合が運転者によりアキュムレータユニットに押し出されて/補償されて、液圧ブレーキトルクを妨げる必要がある。回生トルクが低下すると、液圧ブレーキトルクを増やすために、アキュムレータユニットの容積をホイールへ押し戻すことができる。これは容積ブレンディング(Volume blending)である。通常、リアクションディスクはマスタブレーキシリンダの圧力によって変形することができ、ジャンプ圧力(ジャンプイン)のところでリアクションディスクが変形によって入力ロッドに接触することができる。容積ブレンディングにより、マスタブレーキシリンダでの圧力が回生ブレーキによっては上昇せず、そのため、リアクションディスクの変形が減少または阻止される。したがって、ブレーキ倍力装置が力ブレンディングを生成して、このような変形を生成することができる。
【0028】
定義された終了またはジャンプインにおける終了が実現されるまで運転者がブレーキ装置を操作したとき、最新の圧力または目標圧力をベースとして補償の割合を計算することができる。ジャンプインの終了は、出力ロッドがリアクションディスク(reaction disk)に接触したケースを表しており、それにより利用者/運転者は、マスタブレーキシリンダの圧力からの反力(成分)を感じることができる。従来式の車両では、ジャンプインの終了は、マスタブレーキシリンダの圧力がジャンプイン圧力に達したときの状況に相当する。ブレーキモーメント(トルク)の混合がなければ、ジャンプインの終了は、仮想的な圧力がジャンプイン圧力に達するところである。
【0029】
ここでは、リアクションディスク(reaction disc)の変形は線形であり得ると想定することができる。圧力値の信号は、所望のジャンプインの最大値によって制限されていてよい。
【0030】
P_JIは、所望のジャンプイン圧力(Jumping-Pressure)であってよく、PFA_offset(P_JI)は、所望のジャンプイン圧力のもとでのDRRオフセット(変位)であり、a_preJumpInは、容積ブレンディング(volume blending)によって一定のJIを保証することができる、またはその蓋然性を高めることができる、PFC(ペダル(抵抗)力補償)係数である。
【0031】
運転者はブレーキをかけるときにブレーキペダルを押して、マスタブレーキシリンダからホイールへと容積を押し出すことができる。
純粋に回生式のブレーキの場合、運転者により押し出された容積をアキュムレータユニットに押し出して、液圧トルクを妨げることができる。
【0032】
回生トルクが低下すると、液圧トルクを増やすために、アキュムレータユニットの容積をホイールへ再び押し戻すことができる。これを容積ブレンディングと呼ぶことができる。
【0033】
出力ロッドとリアクションディスクの間に初期ギャップ(initial gap lap)が存在していてよく、そのときには、マスタブレーキシリンダはペダル力に影響を及ぼさないことになる。マスタブレーキシリンダでの圧力が上昇するとリアクションディスクが変形することができ、特定の圧力を超えると、リアクションディスクが出力ロッドに接触し、このことはジャンプイン圧力(Jump-in)P_JIに相当することができる。
【0034】
このとき次式に基づいて計算を行うことができる。
-initial gap lap=P_JIa_preJumpIn+PFA_offset(P_JI)、及び
a_preJumpIn=(-initial gap lap-PFA_Offset(P_JI))/(P_JI)
【0035】
いかなる圧力(PFC_Offset_virtual)もないときの補償の割合は、ジャンプイン前の割合と、ジャンプイン後の割合との合計として計算することができる。
【0036】
ブレーキ倍力装置との組み合わせにおけるESPシステムでの回生ブレーキング中には、ブレーキシステム全体とホイールとで圧力が低下し、それは、ブレーキ倍力装置により押し出されるブレーキ容積が、備蓄室の中で特定の時間にわたって保持されることによる。運転者が液圧系と力リンクされているとき、すなわちジャンプイン点よりも上方にあるとき、ブレーキシステムでのこのような圧力低下が運転者により下方傾斜するペダルを通じて直接感知され得る。それを防ぐために、ブレーキ倍力装置は圧力低下に対して同等に増幅を低減し、そのようにして、低下した反力(圧力なし、または僅少な圧力)を補償することができる。
PFC_Offset_virtual=pMcVirtual.min(P_JI)a_preJumpIn+(pMcVirtual-P_JI).max(0.0)a_postJumpIn)
【0037】
項max(0.0)は、計算された値が決して0.0よりも低くないことを意味し、たとえばY=(pMcVirtual-P_JI).max(0.0)、Y>=0である。
【0038】
pMcVirtualの最小値に関して:
pMcVirtualがP_JIよりも小さい場合、pMcVirtual.min(P_JI)=pMcVirtualである。
【0039】
pMcVirtual(マスタブレーキシリンダにおける圧力として)がP_JIよりも大きい場合、pMcVirtual.min(P_JI)=P_JIである。
【0040】
このことは、係数a_preJumpInが、JIを下回るpMcVirtualの割合についてのみ適用されることを意味する。圧力からPFC_Offsetへの換算についての係数は、JIの上と下との間で等しくない。
差異(pMcVirtual-P_JI)の最大値に関して:
pMcVirtualがP_JIよりも小さいとき、(pMcVirtual-P_JI).max(0.0)=0.0である。このケースでは、係数a_postJumpInはPFC_Offset_Virtualの計算に影響を及ぼさない。
【0041】
最新の圧力(a_actual_calc)についての補償係数は作業点に依存していてよく、次式となる。
a_actual_calc=PFC_Offset_virtual/pMcVirtual
【0042】
ここで挙げておくと、pMcVirtualは、回生なしでの最新の作業点における理論上の(マスタブレーキ)シリンダ圧力であり、P_JIはジャンプイン圧力(運転者が液圧系といつ力リンクするかの基準圧力)であり、a_pre_JumpInは、リアクションディスクの減少した膨出/変形を補償するために、ブレーキ倍力装置でアクチュエータが1バールの圧力差ごとにどれだけのmmを進まなければならないかをブレーキ倍力装置のハードウェアに依存して決定する、単位[mm/bar]の係数である。
このようにpMcVirtual-P_JIは、作業点とジャンプイン圧力の間の理論上の差異である。
【0043】
a_postJumpInは、反圧の損失を補償するために、ブレーキ倍力装置でアクチュエータが1バールの圧力差ごとにどれだけのmmを進まなければならないかをブレーキ倍力装置のハードウェアに依存して決定する、単位[mm/bar]の係数である。
PFC_Offset_virtualは、全面的に回生式のブレーキングが生じた場合に(このときブレーキ力シリンダでの反力0バール)、ブレーキ倍力装置により制御されなければならないはずの理論上のDRRオフセット(位置調節量)である。さらにa_actual_calcは、最新の作業点(pMcvirtualとしてのブレーキ力シリンダでの理論上の圧力)での両方の係数a_pre_JumpInおよびa_post_JumpInとの組合せとしての、結果として生じる単位[mm/bar]の係数であってよい。
【0044】
最新の圧力の割合は、力補償によって未補償のままであってもよく、PFC_Offset_actual=P_actuala_actual_calcである。
【0045】
P_actualは、ESPの圧力センサによって測定されていてよい、マスタシリンダにおける圧力である。CAN遅延があるため、P_actualの値がたとえば40msだけ遅延し得る。
【0046】
ペダル(抵抗)力についての補償の変化は、仮想的な補償差と最新の補償差との間の差異であってよい。
PFC_TargetPositionOffset=PFC_Offset_virtual-PFC_Offset_actual
【0047】
ここでPFC_TargetPositionOffsetは、PFC_Offset_virtual(完全な回生の場合の、すなわち0バールの反圧の場合の、理論上の位置調節量)と、PFC_Offset_actual(まだ残留圧力(P_actual)がシステムに残っているので補償されなくてよい位置調節量)との間の差異から得ることができる量であってよい。
【0048】
追加力は、PFC_TargetPositionOffsetに比例していてよい。
【0049】
マスタブレーキシリンダでの圧力がpMcVitualStrokeBasedよりも低い場合(これは、当初の/本来のストローク圧力(衝撃圧力またはロッド圧力)から、ブレーキ倍力装置によって与えられる圧力特性と入力ロッドの衝撃とを差し引いて計算することができる仮想的な圧力であってよい)、PFC_TargetPositionOffsetは負になることができ、ブレーキ倍力装置の追加力を低減することができ、このことは運転者にとってのペダル(抵抗)力の増大として帰結し得る。
【0050】
本方法の好ましい実施形態では、ブレーキ動作形態は電気機械での回生を少なくとも部分的に制御し、これを実行する。
【0051】
本方法の好ましい実施形態では、ペダル抵抗力によって、目下のブレーキ状況に相当するブレーキ印象が運転者にシミュレートされる。
【0052】
本方法の好ましい実施形態では、ブレーキ力を生成するために、および/またはペダル抵抗力を増大もしくは低減するために、走行安定性システムとブレーキ倍力装置との間のコントロール信号遅延が考慮されて補償される。
【0053】
本方法の好ましい実施形態では、ブレーキ倍力装置は、ブレーキ装置のマスタブレーキシリンダにおける圧力と、利用者により惹起される、判定されたペダル圧力との間の差異の結果として生じるペダル力を補償する。
【0054】
このときペダル力は、ペダル抵抗力にも相当し得る。
【0055】
本方法の好ましい実施形態では、ブレーキ倍力装置は回生ブレーキのときにブレーキ補助を低減させ、ブレーキ装置での純粋に液圧式のブレーキに合わせてペダル抵抗力を調整する。
【0056】
本方法の好ましい実施形態では、回生式のブレーキ動作形態の開始時の動的圧力が判定され、動的圧力が所定の最大値を上回っている場合に、ペダル抵抗力の生成にあたって考慮される。
【0057】
動的圧力は、入力シリンダと出力シリンダでの絞り効果の結果として生じる。すなわち動的圧力はマスタシリンダでの動圧であってよい。入力弁と出力弁での絞り効果により、容積全体がマスタシリンダから備蓄室へと押し出されるわけではないことがあり得る。そのためにマスタシリンダで圧力が生成される。
【0058】
本方法の好ましい実施形態では、ブレーキ倍力装置で比較電流が測定され、これからマスタブレーキシリンダにおける近似された圧力が推定されることによって、マスタブレーキシリンダにおける近似された圧力が判定される。
【0059】
本方法の好ましい実施形態では、ブレーキ倍力装置を作動させる電気モータのロータ位置センサが読み出され、電気モータの相電流が判定され、そこからブレーキ倍力装置のモータ電流が比較電流として判定され、そこからさらなる帰結としてブレーキ倍力装置のモータのトルクが判定され、次いで、そこからマスタブレーキシリンダにおける近似された圧力が判定される。
【0060】
マスタブレーキシリンダのよどみ点圧力が、ESPの入力ピストンと出力ピストンでの絞り効果によって生成され得る。急速なペダル操作がなされると、運転者によって容積全体がアキュムレータユニットの中に移送されない。したがって、マスタブレーキシリンダでよどみ点圧力が生成され得る。
【0061】
運転者による高い容積流量の結果として生じる可能性がある、低い温度およびそれによるブレーキ液の高い粘性にも起因する、急速なペダル操作が行われたときは、このようなよどみ点圧力が高くなり得る。このときマスタシリンダにおける圧力は、仮想的な圧力よりも一時的にはるかに高くなり得る。
【0062】
したがって、たとえば運転者に感じられるペダル力は、またはブレーキ装置におけるペダル力は、通常よりも、すなわち従来式のブレーキシステムにおけるよりも、はるかに高くなり得る。
【0063】
よどみ点圧力によって生成され得るペダル力を低減するために、マスタブレーキシリンダにおける圧力に依拠することができる、ブレーキ倍力装置との力オーバーラップを利用することができる。
PFC_Offset_actual=P_MCa_actual_calc
【0064】
ここでP_MCはマスタブレーキシリンダにおける圧力、PFC_Offset_actualは「実際・位置調節量」である。これは、システムにまだ圧力があるときには補償される必要はない。
【0065】
走行安定性システムとブレーキ倍力装置との間のたとえば20~40msのコントロール信号遅延によって、マスタブレーキシリンダにおける圧力に関する信号がすでに20~40msだけ古くなっている可能性があり、走行安定性システムがこの信号をブレーキ倍力装置に送信することがあり得る。急速なペダル操作がなされると、マスタブレーキシリンダにおける圧力の勾配がたとえば500バール/秒まで上昇する可能性がある。このときコントロール信号遅延は、すでに10から20バールの誤差であり/を生起し得る。
【0066】
ペダル抵抗力についてすでに周知の補償の取り組みと、本件の補償との組み合わせを行うことができる。
【0067】
そのために、PFC+-関数を追加的に利用できるように、用途を拡張することができる。
【0068】
PFCおよびPFC+に追加して、回生段階の開始時に動的圧力をそのピーク値で同様に補償することができる。圧力信号のコントロール信号遅延の影響を低減または排除するために、マスタブレーキシリンダにおける圧力を見積ることができ、すなわち近似することができ、このことはブレーキ倍力装置のモータ電流に依拠することができ、それにより、コントロール信号遅延に由来する誤差を低減または防止することができる。その場合ペダル(抵抗)力は、従来式のブレーキ設備に由来するペダル(抵抗)力と同等であり、これに類似していてよく、すなわちよどみ点圧力なしであり、またはいわゆるtorque blending(トルクブレンディング)なしであり、このことは純粋な液圧ブレーキにおけるようなペダル挙動に相当し得る。上記のモータは、ブレーキ倍力装置の(位置調節)モータであってよい。
【0069】
ブレーキ倍力装置の力が低減されたとき、PFCによってペダル力を引き上げることができる。PFC+ではそれが逆であってよい。pMCとp_virtualの間の圧力差に依存してペダル力を順応させることができ、この順応は増加または減少であってよい。
【0070】
本発明によると、走行安定性システムと接続可能である、車両のためのブレーキ装置は、ブレーキ倍力装置と、ブレーキプロセスをリリースする必要性を認識するために、および/またはブレーキ装置でブレーキ力を生成する命令をブレーキ装置のブレーキペダルを通じて利用者から受信するために、セットアップされた制御装置と、ブレーキユニットと、ブレーキペダルとを含み、制御装置とブレーキユニットは相互に作動可能であり、ブレーキペダルを通じて受信されたペダル力に依存してブレーキユニットでブレーキ力を生成するためにセットアップされ、ペダル抵抗力をブレーキ倍力装置によって生成可能または変更可能であり、それによってペダル抵抗力を最新のブレーキ動作形態に合わせて適合化する。
【0071】
さらに本方法は、ブレーキ装置との関連で挙げた構成要件や利点によっても特徴づけられ、その逆も成り立つ。
【0072】
本発明の実施形態のその他の構成要件や利点は、添付の図面を参照する以下の説明から明らかとなる。
【0073】
次に、図面の模式的な図に示されている実施例を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】本発明の実施例に基づく、車両のためのブレーキ装置を作動させる方法の方法ステップのブロック図である。
図2】対照例に基づく、走行安定性システムとブレーキ倍力装置とを有するブレーキ装置でのブレーキプロセスである。
図3】本発明の実施例に基づく方法でのマスタブレーキシリンダでの圧力推移と、これへの近似である。
図4】本発明の実施例に基づく、走行安定性システムとブレーキ倍力装置とを有するブレーキ装置でのブレーキプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図中、同じ符号は同じ部材ないし機能が同じ部材を表す。
【0076】
図1は、本発明の実施例に基づく、車両のためのブレーキ装置を作動させる方法の方法ステップのブロック図を示している。
【0077】
車両のためのブレーキ装置を作動させる方法では、ブレーキプロセスをリリースする必要性が認識S1aされること、および/またはブレーキ装置でブレーキ力を生成するための命令がブレーキ装置のブレーキペダルを通じて利用者から受信S1bされることとが行われ、ブレーキペダルを通じて受信されたペダル力に依存してブレーキ装置のブレーキユニットでブレーキ力の生成S2が行われ、ペダル抵抗力の増大S3または低減S4がブレーキ倍力装置によって行われ、それによってペダル抵抗力が最新のブレーキ動作形態に合わせて適合化される。
【0078】
図2は、対照例に基づく、走行安定性システムとブレーキ倍力装置とを有するブレーキ装置でのブレーキプロセスを示している。
【0079】
上の図には、曲線PF-origおよびPF-fluctが示されている。PF-origは、純粋な液圧ブレーキでのペダル(抵抗)力である。PF-fluctは、運転者が感じる最新のペダル(抵抗)力である。
【0080】
中央の図には、ESPのマスタブレーキシリンダで測定された圧力としてのpMC-espが示されており、これはマスタブレーキシリンダにおける現実の最新の圧力に等しくなっていてよい。
【0081】
pMC-Versはマスタブレーキシリンダで測定された圧力であり、これをブレーキ倍力装置がESPから受け取ることができる。このときCANが時間シフトとして観察されることがある。
【0082】
補償PFCは、pMCの遅延した信号に依拠することができる。ブレーキ倍力装置(pMCx信号遅延の勾配)は、圧力変動によってペダル(抵抗)力をあまりに強く、またはあまりに弱く、補償することがある。
【0083】
pMCが正の勾配のとき、ブレーキ倍力装置はペダル(抵抗)力をあまりに弱く低減させ、またはペダル(抵抗)力を増加させることさえある。負の勾配のとき、ブレーキ倍力装置はペダル(抵抗)力をあまりに弱く増加させ、または低下させることさえある。
【0084】
これは、たとえばブレーキの開始時における硬いペダル(感覚)や、時間的にそのすぐ後のペダル感覚の急激な低下を惹起し得る。
【0085】
下の図のPFC-actは、遅延したCAN差によるPFC-オフセットである。
【0086】
PFC-korrは、たとえば純粋な液圧式の従来のブレーキにおけるのと同じペダル力を感じるようにするために、修正されたPFCオフセットであり得る。PFC-actとPFC-korrの間の差異は、ペダル力における変動を惹起することがある。
【0087】
それに対して本発明では、ブレーキ倍力装置で磁場指向の電流コントロールを行うことができる。このとき2つの(シャント抵抗)が存在していてよい。これらの抵抗により、2つの相電流を直接的に測定することができ、測定された各相電流から、1つの相電流を計算することができる。
【0088】
ロータ位置センサでの測定から、および3つの相電流から、ブレーキ倍力装置のモータ電流を非常に正確に計算することができる。
【0089】
したがってモータトルクを計算することができる。ブレーキ倍力装置では、生成されるモータトルクは、慣性項と一定の摩擦と液圧出力との合計に等しくなっていてよい。
【0090】
(dw)/(dt)=Thydraulisch+Tkonstant
ここでIはモータの慣性モーメント、(dw)/(dt)は角加速度、Thydraulischはモータトルク、およびTkonstantは摩擦に基づくトルクである。
【0091】
図3は、本発明の実施例に基づく方法でのマスタブレーキシリンダでの圧力推移と、これへの近似を示している。
【0092】
図3では、マスタブレーキシリンダで見積られた圧力pMC_Eが(時間に対して)示されている。見積られた圧力pMC_Eは、次の式によって計算することができる:
【数1】
ここではpMC_Eとしてのpとして、上記の式によって計算することができる、マスタブレーキシリンダにおける見積られた/計算された圧力を表すことができる。Fgearoutはモータの出力であり、Finは入力ロッド力であり、Fspringsは1つまたは複数のばね力(マスタブレーキシリンダのばね、ブレーキ倍力装置の復帰ばね(Return Spring))である。さらに、Aはマスタブレーキシリンダの面積であり、η_TMCはマスタブレーキシリンダの効率を表す。
【0093】
iB_pMC1_floatは、ESPのセンサで測定することができる、マスタブレーキシリンダの圧力についてのブレーキ倍力装置での信号である。信号遅延により、pCmpF_MC(マスタブレーキシリンダで測定された圧力についてのESP信号)と、iB_pMC1_floatとの間に距離が生じることがある。pCmpF_MC1は、走行安定性システムに対する信号遅延がないときに存在し得る、マスタブレーキシリンダで測定された圧力であり得る。
【0094】
見積られたpMC_Eは部分領域で、グラフpCmpF_MC1に相当することができる。したがって、コントロール信号の信号遅延の影響を低減または回避することができる。
【0095】
pMC_Eにより、PFC_Offset_actual=pMC_Ea_actual_calcを判定することができる。
【0096】
図4は、本発明の実施例に基づく、走行安定性システムとブレーキ倍力装置とを有するブレーキ装置でのブレーキプロセスを示している。
【0097】
ペダル(抵抗)力の補償は、見積られたpMCをベースにすることができ、換言すると、仮想的な圧力とpMC-estimatedとの間の差異をベースにすることができる。そのようにしてペダル感覚を改善することができる。
【0098】
このとき、実際のpMC(ESPで測定される)とブレーキ倍力装置で見積られたpMCとの間の圧力変化は無視することができる。
【0099】
図4図2に類似する図面を示しているが、CANシフトの補償が少なくとも大部分で実現されている。
【0100】
pMC_estimatedで計算されるPFCオフセットが、ESPにおける最新の測定されたpMCで、またはこれをベースとして、計算することができるオフセットに非常に近くなり得る。したがってPF-realがPF-origにほぼ等しく、または正確に等しく、なり得る。
【0101】
このことは補償によって、換言すると、図2に示すように信号伝送時のCAN時間シフトを考慮することによって、帰結され、図2との対比で同図に準じて示されている量について、信号遅延(CAN)の補償を考慮したうえで、これらの量PF_orig、PF_real、pMC_vers、pMC_esp、PFC_act、PFC-korr)を完全に、または容認される許容差内で、互いに調節することができる。
【0102】
好ましい実施例を参照して本発明を上記で全面的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、多様な形で改変可能である。
【符号の説明】
【0103】
10 ブレーキ装置
F 車両
ESP 走行安定性システム
PE ブレーキペダル
BE ブレーキ倍力装置
SE 制御装置
S1a 認識
S1b 受信
S2 生成
S3 増大
S4 低減
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行安定性システム(ESP)と接続可能である、車両(F)のためのブレーキ装置(10)を作動させる方法において、次の各ステップを含み、
ブレーキプロセスをリリースする必要性が認識(S1a)され、および/または前記ブレーキ装置(10)でブレーキ力を生成するための命令が前記ブレーキ装置(10)のブレーキペダル(PE)を通じて利用者から受信(S1b)され、
ブレーキペダルを通じて受信されたペダル力に依存して前記ブレーキ装置(10)のブレーキユニットでブレーキ力が生成(S2)され、ペダル抵抗力の増大(S3)または低減(S4)がブレーキ倍力装置(BE)によって行われ、それによりペダル抵抗力が最新のブレーキ動作形態に合わせて適合化される、方法。
【請求項2】
前記ブレーキ動作形態は少なくとも部分的に電気機械での回生を制御および実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
目下のブレーキ状況に相当するブレーキ印象がペダル抵抗力によって運転者にシミュレートされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ブレーキ力の生成のために、および/またはペダル抵抗力の増大または低減のために、前記走行安定性システム(ESP)と前記ブレーキ倍力装置(BE)の間のコントロール信号遅延が考慮されて補償される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレーキ倍力装置(BE)は、前記ブレーキ装置のマスタブレーキシリンダにおける圧力と、利用者により惹起される判定されたペダル圧力との間の差異の結果として生じるペダル力を補償する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ブレーキ倍力装置(BE)は回生ブレーキのときにブレーキ補助を低減させ、前記ブレーキ装置での純粋に液圧式のブレーキに合わせてペダル抵抗力を調整する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
回生式のブレーキ動作形態の開始時の動的圧力が判定され、動的圧力が所定の最大値を上回っている場合にペダル抵抗力の生成にあたって考慮される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブレーキ倍力装置(BE)で比較電流が測定され、これから前記マスタブレーキシリンダにおける近似された圧力が推定されることによって、前記マスタブレーキシリンダにおける近似された圧力が判定される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキ倍力装置を作動させる電気モータのロータ位置センサが読み出され、前記電気モータの相電流が判定され、そこから前記ブレーキ倍力装置のモータ電流が比較電流として判定され、そこからさらなる帰結として前記ブレーキ倍力装置の前記モータのトルクが判定され、次いで、そこから前記マスタブレーキシリンダにおける近似された圧力が判定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
走行安定性システム(ESP)と接続可能である、車両(F)のためのブレーキ装置(10)において、
ブレーキ倍力装置(BE)と、
ブレーキプロセスをリリースする必要性を認識するために、および/または前記ブレーキ装置(10)でブレーキ力を生成する命令を前記ブレーキ装置(10)のブレーキペダル(PE)を通じて利用者から受信するために、セットアップされた制御装置(SE)と、
ブレーキユニットと、
ブレーキペダル(PE)とを含み、前記制御装置と前記ブレーキユニットは相互に作動可能であり、前記ブレーキペダルを通じて受信されたペダル力に依存して前記ブレーキユニットでブレーキ力を生成するためにセットアップされ、ペダル抵抗力を前記ブレーキ倍力装置(BE)によって生成可能または変更可能であり、それによってペダル抵抗力を最新のブレーキ動作形態に合わせて適合化する、車両のためのブレーキ装置。
【国際調査報告】