(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 55/02 20060101AFI20240621BHJP
C08L 77/12 20060101ALI20240621BHJP
C08L 77/02 20060101ALI20240621BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20240621BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08L55/02
C08L77/12
C08L77/02
C08L25/12
C08K5/098
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579496
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 KR2022009181
(87)【国際公開番号】W WO2023277501
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0086130
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホン,サンヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】バン,キュンハ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ボンジュン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC064
4J002BN151
4J002CL012
4J002CL083
4J002EG036
4J002FD103
4J002FD176
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂70重量%~95重量%;および(B)ポリアミド樹脂5重量%~30重量%を含む基礎樹脂100重量部に対して、(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体3重量部~15重量部;(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体1重量部~10重量部;および(E)カルシウムステアレート0.1重量部~1重量部を含む熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂70重量%~95重量%;および
(B)ポリアミド樹脂5重量%~30重量%
を含む基礎樹脂100重量部に対して、
(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体3重量部~15重量部;
(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体1重量部~10重量部;および
(E)カルシウムステアレート0.1重量部~1重量部を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、ブタジエン系ゴム質重合体からなるコア、および芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物が前記コアにグラフト重合されて形成されたシェルを含むコア-シェル構造のブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体分散相、および芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体連続相を含み、前記ブタジエン系ゴム質重合体の平均粒径が0.2μm~1.0μmである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂100重量%を基準に、前記ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体分散相10重量%~40重量%、および前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体連続相60重量%~90重量%を含む、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体が、芳香族ビニル化合物由来成分60重量%~80重量%、およびシアン化ビニル化合物由来成分20重量%~40重量%を含む、請求項2または3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体分散相、およびアクリロニトリル-スチレン共重合体連続相を含むアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂である、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド4T、ポリアミド410、ポリアミド510、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T、ポリアミド1212、ポリアミド12T、ポリアミドMXD6、またはこれらの組合せを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6を含む、請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタム、またはジアミン-ジカルボン酸の塩;ポリアルキレングリコール;および炭素数4~20のジカルボン酸の反応生成物である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、100重量%を基準に、マレイン酸無水物由来成分2重量%~15重量%を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、マレイン酸無水物-スチレン-アクリロニトリル共重合体である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(E)カルシウムステアレートは、前記基礎樹脂100重量部に対して0.2重量部~0.7重量部で含まれる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、滑剤、離型剤、抗菌剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤、着色剤、衝撃補強剤から選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物から製造された、成形品。
【請求項14】
前記成形品は、ASTM D256による1/4”厚試片のノッチアイゾット衝撃強度が20kgf・cm/cm~60kgf・cm/cmである、請求項13に記載の成形品。
【請求項15】
前記成形品は、表面抵抗測定装置(製造社:SIMCO-ION社,装置名:ST-4)を使用して、100mm×100mm×20mmの試片に対して測定した表面抵抗が10
11.0Ω/sq以下である、請求項13または14に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂に代表されるスチレン系樹脂は、その優れた成形性、機械的特性、外観、二次加工性等によって多様な用途に広範囲に使用されている。
【0003】
スチレン系樹脂を用いて製造される成形品は、塗装/無塗装が要求される様々な製品に広範囲に適用することができ、例えば、自動車および/または電子機器の各種内/外装材等に適用され得る。
【0004】
このうち、各種内/外装材に審美的効果を付与するための方案として、スチレン系樹脂を用いて製造された成形品に塗装作業を行う場合がある。塗装の方法は、特に制限されないが、一般的に広く用いられている塗装方式として静電塗装を挙げることができる。このような静電塗装は、成形品の表面に電気伝導性を付与した後で塗装を行う方法であり、大抵は、表面抵抗の高いプラスチック系列の成形品に静電塗装を適用するためには、成形品の表面に導電性プライマー(primer)等の前処理を行う必要がある。
【0005】
導電性プライマーの塗布は、工程数および製造時間を増加させるため、近年、スチレン系樹脂に各種導電性物質(例えば、炭素ナノチューブ等)および/または導電性発現添加剤をさらに含ませることにより、スチレン系樹脂成形品自体が一定のレベル以上の電気伝導性を内在するようにさせる方法が提案されている。
【0006】
しかし、スチレン系樹脂に導電性物質および/または導電性発現添加剤を添加する場合、スチレン系樹脂の物性バランスが損傷することにより、予期しなかった各種物性の低下が発生するおそれがある。
【0007】
これにより、導電性プライマーを塗布せずに静電塗装を可能にすると共に、物性に優れた熱可塑性樹脂組成物の開発が必要な実情にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電気伝導性に優れ導電性プライマーを塗布せずに静電塗装を可能にすると共に、静電塗装後に高温/多湿の過酷な環境に長時間露出されても、水泡現象が表れず塗装付着性に優れた熱可塑性樹脂組成物、およびそれにより製造された成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一具現例によると、(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂70重量%~95重量%;および(B)ポリアミド樹脂5重量%~30重量%を含む基礎樹脂100重量部に対して、(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体3重量部~15重量部;(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体1重量部~10重量部;および(E)カルシウムステアレート0.1重量部~1重量部を含む熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0010】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、ブタジエン系ゴム質重合体からなるコア、および芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物が前記コアにグラフト重合されて形成されたシェルを含むコア-シェル構造のブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体分散相、および芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体連続相を含むことができ、前記ブタジエン系ゴム質重合体の平均粒径が0.2μm~1.0μmになり得る。
【0011】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂100重量%を基準に、前記ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体分散相10重量%~40重量%、および前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体連続相60重量%~90重量%を含むことができる。
【0012】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂において、前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体が芳香族ビニル化合物由来成分60重量%~80重量%、およびシアン化ビニル化合物由来成分20重量%~40重量%を含むことができる。
【0013】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体分散相、およびアクリロニトリル-スチレン共重合体連続相を含むアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂になり得る。
【0014】
前記(B)ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド4T、ポリアミド410、ポリアミド510、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T、ポリアミド1212、ポリアミド12T、ポリアミドMXD6、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0015】
前記(B)ポリアミド樹脂は、ポリアミド6を含むことができる。
【0016】
前記(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタム、またはジアミン-ジカルボン酸の塩;ポリアルキレングリコール;および炭素数4~20のジカルボン酸の反応生成物になり得る。
【0017】
前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、100重量%を基準に、マレイン酸無水物由来成分2重量%~15重量%を含むことができる。
【0018】
前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、マレイン酸無水物-スチレン-アクリロニトリル共重合体になり得る。
【0019】
前記(E)カルシウムステアレートは、前記基礎樹脂100重量部に対して0.2重量部~0.7重量部で含まれ得る。
【0020】
前記熱可塑性樹脂組成物は、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、滑剤、離型剤、抗菌剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤、着色剤、衝撃補強剤から選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含むことができる。
【0021】
一方、別の具現例によると、前述の熱可塑性樹脂組成物から製造された成形品が提供される。
【0022】
前記成形品は、ASTM D256による1/4”厚試片のノッチアイゾット衝撃強度が20kgf・cm/cm~60kgf・cm/cmになり得る。
【0023】
前記成形品は、表面抵抗測定装置(製造社:SIMCO-ION社,装置名:ST-4)を使用して、100mm×100mm×20mmの試片に対して測定した表面抵抗が1011.0Ω/sq以下になり得る。
【発明の効果】
【0024】
一具現例にかかる熱可塑性樹脂組成物とそれにより製造された成形品は、優れた電気伝導性および諸般の物性バランスを表し、特に、静電塗装後に高温/多湿の過酷な環境に長時間露出されても水泡現象が表れず塗装付着性に優れるため、塗装、無塗装で使用される様々な製品に広範囲に適用することができ、特に、静電塗装が必要な塗装用成形品に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施例1の成形品の水泡現象の評価写真である。
【
図2】
図2は、比較例1の成形品の水泡現象の評価写真である。
【
図3】
図3は、実施例1の成形品の塗装付着性の評価写真である。
【
図4】
図4は、比較例1の成形品の塗装付着性の評価写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。但し、これは例示として提示するものであり、これによって本発明が制限されるのではなく、本発明は添付の請求の範囲によって定義されるだけである。
【0027】
本発明において、特に言及しない限り、ゴム質重合体の平均粒径とは、体積平均直径であり、動的光散乱(Dynamic light scattering)分析機器を用いて測定したZ-平均粒径を意味する。
【0028】
一具現例によると、(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂70重量%~95重量%;および(B)ポリアミド樹脂5重量%~30重量%を含む基礎樹脂100重量部に対して、(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体3重量部~15重量部;(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体1重量部~10重量部;および(E)カルシウムステアレート0.1重量部~1重量部を含む熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0029】
以下、前記熱可塑性樹脂組成物に含まれる各成分について、具体的に説明する。
【0030】
(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂
一具現例において、(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、熱可塑性樹脂組成物に優れた耐衝撃性および流動性を付与する。
【0031】
一具現例において、前記ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、ブタジエン系ゴム質重合体成分からなる中心部(コア,core)と、その中心部に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物をグラフト重合反応させてシェル(shell)を形成した、コア-シェル(core-shell)構造のブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体分散相、および芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体連続相を含むことができる。
【0032】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂100重量%を基準に、前記ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体の分散相10重量%~40重量%、例えば10重量%~30重量%、例えば20重量%~30重量%、および前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体連続相60重量%~90重量%、例えば70重量%~90重量%。例えば70重量%~80重量%を含むことができる。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性および流動性が優れたものとなり得る。
【0033】
一具現例にかかる前記ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体は、ブタジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を添加し、乳化重合、塊状重合等の通常の重合方法によってグラフト重合することにより製造することができる。
【0034】
前記ブタジエン系ゴム質重合体は、ブタジエンゴム質重合体、ブタジエン-スチレンゴム質重合体、ブタジエン-アクリロニトリルゴム質重合体、ブタジエン-アクリレートゴム質重合体およびこれらの混合物からなる群から選択できる。
【0035】
前記芳香族ビニル化合物は、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンおよびこれらの混合物からなる群から選択できる。
【0036】
前記シアン化ビニル化合物は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリルおよびこれらの混合物からなる群から選択できる。
【0037】
前記ブタジエン系ゴム質重合体は、平均粒径が0.2μm~1.0μm、例えば0.2μm~0.8μm、例えば0.25μm~0.40μmになり得る。前記範囲を満たすと、優れた耐衝撃性および外観特性を表すことができる。
【0038】
前記ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体100重量%に対して、前記ブタジエン系ゴム質重合体は、40重量%~70重量%、例えば40重量%~60重量%、例えば50重量%~60重量%で含まれ得る。一方、前記ブタジエン系ゴム質重合体成分からなる中心部にグラフト重合される前記芳香族ビニル化合物と前記シアン化ビニル化合物の重量比は、6:4~8:2になり得る。
【0039】
一具現例において、前記ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体になり得る。
【0040】
前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物を、懸濁重合、塊状重合等の通常の重合方法によって共重合することにより製造することができる。
【0041】
前記芳香族ビニル化合物は、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンおよびこれらの混合物からなる群から選択できる。
【0042】
前記シアン化ビニル化合物は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリルおよびこれらの混合物からなる群から選択できる。
【0043】
前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、芳香族ビニル化合物由来成分60重量%~80重量%、例えば60重量%~75重量%、例えば65重量%~75重量%、およびシアン化ビニル化合物由来成分20重量%~40重量%、例えば25重量%~40重量%、例えば25重量%~35重量%を含むことができる。
【0044】
前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、重量平均分子量が、80,000g/mol~300,000g/mol、例えば80,000g/mol~250,000g/mol、例えば80,000g/mol~200,000g/mol、例えば80,000g/mol~150,000g/mol、例えば100,000g/mol~150,000g/molになり得る。
【0045】
一具現例において、前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体になり得る。
【0046】
一具現例において、前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体分散相、およびアクリロニトリル-スチレン共重合体連続相を含むアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂になり得る。
【0047】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、基礎樹脂100重量%に対して、70重量%~95重量%、例えば75重量%~95重量%、例えば80重量%~95重量%、例えば80重量%~90重量%、例えば80重量%~85重量%で含まれ得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物が優れた耐衝撃性、流動性および諸般の物性バランスを有し得る。
【0048】
(B)ポリアミド樹脂
一具現例において、(B)ポリアミド樹脂は、後述する(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体を過量投入しなくても、熱可塑性樹脂組成物が優れた電気伝導性を表すことができるようにする。
【0049】
一具現例において、前記(B)ポリアミド樹脂としては、当該技術分野で知られている多様なポリアミド樹脂、例えば、芳香族ポリアミド樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂またはこれらの混合物を使用することができ、特に制限されるのではない。
【0050】
前記芳香族ポリアミド樹脂は、主鎖に芳香族基を含むポリアミド樹脂として、全芳香族ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂またはこれらの混合物になり得る。
【0051】
前記全芳香族ポリアミド樹脂は、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸の重合体を意味し、半芳香族ポリアミド樹脂は、アミド結合間に最低限一つの芳香族単位と非芳香族単位を含むことを意味する。例えば、前記半芳香族ポリアミド樹脂は、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の重合体であったり、或いは脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸の重合体になり得る。
【0052】
一方、前記脂肪族ポリアミド樹脂は、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の重合体を意味する。
【0053】
前記芳香族ジアミンの例としては、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン等を挙げることができるが、これに限定されるのではない。また、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0054】
前記芳香族ジカルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、(1,3-フェニレンジオキシ)二酢酸等を挙げることができるが、これに限定されるのではない。また、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0055】
前記脂肪族ジアミンの例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ピペラジン等を挙げることができるが、これに限定されるのではない。また、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0056】
前記脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができるが、これに限定されるのではない。また、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0057】
一具現例において、前記(B)ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド4T、ポリアミド410、ポリアミド510、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T、ポリアミド1212、ポリアミド12T、ポリアミドMXD6、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0058】
一具現例において、前記(B)ポリアミド樹脂はポリアミド6を含むことができる。
【0059】
一具現例において、前記(B)ポリアミド樹脂は、基礎樹脂100重量%に対して、5重量%~30重量%、例えば5重量%~25重量%、例えば5重量%~20重量%、例えば10重量%~20重量%、例えば15重量%~20重量%で含まれ得る。
【0060】
前記ポリアミド樹脂の含量が前述の範囲を満たす場合、熱可塑性樹脂組成物およびこれにより製造された成形品は、ポリアミド樹脂に起因する優れた剛性、靭性、耐摩耗性、耐薬品性、および耐油性等を表すことができる。
【0061】
(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体
一具現例において、(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品が電気伝導性を表すようにすることができる。
【0062】
また、前記(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品が優れた物性バランスを保ちつつ、前述の電気伝導性を表すようにすることができる。
【0063】
一具現例において、前記(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体として、例えば、炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタム、またはジアミン-ジカルボン酸の塩;ポリアルキレングリコール;および炭素数4~20のジカルボン酸の反応生成物を使用することができる。
【0064】
一具現例において、前記の炭素数6以上のアミノカルボン酸としては、ω-アミノカプロン酸、ω-アミノエナント酸、ω-アミノカプリル酸、ω-アミノペラルゴン酸、ω-アミノカプリン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等を挙げることができ、前記ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウロラクタム等を挙げることができ、前記ジアミン-ジカルボン酸の塩としては、ヘキサメチレンジアミン-アジピン酸の塩、ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の塩等のようなジアミン-ジカルボン酸塩等を例示することができる。例えば、前記の炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタム、およびジアミン-ジカルボン酸の塩としては、それぞれ12-アミノドデカン酸、ε-カプロラクタム、およびヘキサメチレンジアミン-アジピン酸の塩を挙げることができる。
【0065】
一具現例において、前記ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロックまたはランダム共重合体、エチレングリコールとテトラヒドロフランの共重合体等を例示することができる。例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体等を使用することができる。
【0066】
一具現例において、前記の炭素数4~20のジカルボン酸としては、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸、ドデカン二酸等を例示することができる。
【0067】
前記の炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタム、またはジアミン-ジカルボン酸の塩と前記ポリアルキレングリコールの結合は、エステル結合になり得、前記の炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタム、またはジアミン-ジカルボン酸の塩と前記の炭素数4~20のジカルボン酸の結合はアミド結合になり得、前記ポリアルキレングリコールと前記の炭素数4~20のジカルボン酸の結合はエステル結合になり得る。
【0068】
前記(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、公知の合成方法によって製造することができ、例えば、日本特許公報昭56-045419および日本特許公開昭55-133424に開示されている合成方法によって製造することができる。
【0069】
前記(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体100重量%を基準に、ポリエーテルエステルブロックを10重量%~95重量%含むことができる。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の電気伝導性および耐熱性等に優れ得る。
【0070】
前記(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、前記基礎樹脂100重量部に対して、3重量%~15重量部、例えば5重量%~10重量部、例えば5重量%~8重量部で含まれ得る。前記(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体の含量が前述の範囲を満たす場合、熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品が優れた物性バランスを保つと同時に、優れた電気伝導性を表すことができる。
【0071】
(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体
一具現例において、(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造される成形品の物性バランスを適正レベルに保つようにさせることができる。具体的に、前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、前述の(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体の添加によって低下し得る諸般物性(例えば、耐衝撃性等)を優秀に保つことができる。
【0072】
一具現例において、前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、マレイン酸無水物、芳香族ビニル化合物、およびシアン化ビニル化合物を、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の通常の重合方法によって製造することができる。
【0073】
前記芳香族ビニル化合物は、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンおよびこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0074】
前記シアン化ビニル化合物は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリルおよびこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0075】
前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体の共重合形態は特に制限されるのではなく、マレイン酸無水物由来成分、芳香族ビニル化合物由来成分、シアン化ビニル化合物由来成分が、交代共重合、ランダム共重合、またはブロック共重合を成している場合もあり、マレイン酸無水物由来成分が、芳香族ビニル化合物由来成分とシアン化ビニル化合物由来成分が共重合されている主鎖にグラフト共重合されている場合もある。
【0076】
一具現例において、前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、マレイン酸無水物-スチレン-アクリロニトリル共重合体になり得る。
【0077】
前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、100重量%を基準に、マレイン酸無水物由来成分2重量%~15重量%、芳香族ビニル化合物由来成分50重量%~90重量%、およびシアン化ビニル化合物由来成分5重量%~40重量%を含むことができる。一具現例において、前記マレイン酸無水物由来成分は、前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体100重量%に対して、2重量%~15重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば5重量%~10重量%で含まれ得る。前記範囲を満たす場合、熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品が優れた耐衝撃性および/または耐熱性を表すことができる。
【0078】
一方、前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体の重量平均分子量は、30,000g/mol~200,000g/molになり得る。前記範囲を満たす場合、耐衝撃性および流動性に優れ得る。
【0079】
一具現例において、前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、基礎樹脂100重量部に対して、1重量部~10重量部、例えば1重量部~9重量部、例えば1重量部~8重量部、例えば1重量部~7重量部、例えば1重量部~6重量部、例えば1重量部~5重量部含むことができる。前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体の含量が前述の範囲を満たす場合、熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品が優れた物性バランスを保つと同時に、優れた電気伝導性を表すことができる。
【0080】
(E)カルシウムステアレート
一具現例において、(E)カルシウムステアレートは、熱可塑性樹脂組成物の塗装付着性を向上させる。特に、熱可塑性樹脂組成物から製造された成形品塗装後、それを高温/多湿の過酷な環境に長時間露出させると、塗装成形品の表面に水泡が発生する場合があり、水泡発生時、塗装付着性は著しく低下し得る。
【0081】
しかし、一具現例の熱可塑性樹脂組成物は、前記(E)カルシウムステアレートを基礎樹脂100重量部に対して、0.1重量部~1重量部で含むため、塗装後の塗装成形品を高温/多湿の過酷な環境に長時間露出させても水泡が発生しなく、塗装付着性の変化も殆ど発生しない。
【0082】
前記(E)カルシウムステアレートは、基礎樹脂100重量部に対して、0.1重量部~1重量部含み得、例えば0.2重量部~0.7重量部、例えば0.2重量部~0.5重量部で含み得る。前記の重量部範囲において、熱可塑性樹脂組成物の諸般の物性バランスが保たれつつ、塗装付着性に優れ得る。
【0083】
(F)添加剤
一具現例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、前記成分(A)~(E)以外にも、電気伝導性および塗装付着性と諸般の物性バランスを全て優秀に保つ条件下で各物性間のバランスを取るために、或いは前記熱可塑性樹脂組成物の最終用途によって必要な1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0084】
具体的には、前記添加剤としては、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、滑剤、離型剤、抗菌剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤、着色剤、衝撃補強剤等を使用することができ、これらは単独で或いは2種以上の組合せで使用することができる。
【0085】
これら添加剤は、熱可塑性樹脂組成物の物性を阻害しない範囲内で適切に含むことができ、具体的には、基礎樹脂100重量部に対して、20重量部以下で含まれ得るが、これに制限されるのではない。
【0086】
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物を製造する公知の方法によって製造することができる。
【0087】
例えば、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、本発明の構成成分とその他の添加剤を同時に混合した後、押出器内で溶融/混練してペレット(pellet)形態に製造することができる。
【0088】
本発明の一具現例にかかる成形品は、上述の熱可塑性樹脂組成物から公知の成形方法によって製造することができる。例えば、前記成形品は、押出成形、射出成形等の方法で製造することができ、これらに制限されるのではない。
【0089】
一具現例において、前記成形品は、ASTM D256にかかる1/4”厚試片のノッチアイゾット衝撃強度が20kgf・cm/cm~60kgf・cm/cm、例えば30kgf・cm/cm~50kgf・cm/cm、例えば40kgf・cm/cm~50kgf・cm/cmになり得る。
【0090】
一具現例において、前記成形品は、表面抵抗測定装置(製造社:SIMCO-ION社,装置名:ST-4)を使用して100mm×100mm×20mmの試片に対して測定した表面抵抗が1011.0Ω/sq以下、例えば1010.9Ω/sq以下、例えば1010.8Ω/sq以下、例えば1010.7Ω/sq以下、例えば1010.6Ω/sq以下になり得る。
【0091】
このように、前記熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品は、優れた電気伝導性および諸般の物性バランスを表し、特に、静電塗装後に高温/多湿の過酷な環境に長時間露出されても、水泡現象が生じず塗装付着性に優れるため、塗装、無塗装に使用する様々な製品に広範囲に適用することができ、特に、静電塗装が必要な塗装用成形品に有用である。
【0092】
以下、本発明を実施例および比較例によってより詳しく説明するが、下記の実施例および比較例は、説明の目的のためのものであり、本発明を制限するものではない。
【0093】
実施例1および2、並びに比較例1~8
実施例1および2、並びに比較例1~8の熱可塑性樹脂組成物は、下記表1に記載の成分含量比に従って製造した。
【0094】
表1において、(A)および(B)は基礎樹脂に含まれるものであり、基礎樹脂の総重量を基準に重量%で表し、(C)、(D)および(E)は、基礎樹脂に添加されるものであり、基礎樹脂100重量部に対する重量部で表した。
【0095】
表1に記載の成分を乾式混合し、二軸押出器(L/D=44,Φ=45mm)の供給部に定量的に連続投入して約250℃で溶融/混練した。次いで、二軸押出器によってペレット化された熱可塑性樹脂組成物を、約80℃で約4時間乾燥した後、シリンダー温度約240℃、金型温度約60℃の120トン射出成形器を使用して物性評価用試片をそれぞれ製造した。
【0096】
【0097】
前記表1に記載の各構成に対する説明は次の通りである。
【0098】
(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂
ブタジエンゴム質重合体からなるコア(平均粒径:約0.25μm)約58重量%に、アクリロニトリルとスチレン(アクリロニトリル:スチレン重量比=約2.5:約7.5)が前記コアにグラフト重合されて形成されたシェルを含むアクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体分散相約30重量%、およびアクリロニトリル由来成分が約28重量%で、重量平均分子量が約120,000g/molのスチレン-アクリロニトリル共重合体連続相約70重量%を含むアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ロッテケミカル社)
(B)ポリアミド樹脂
融点約223℃、相対粘度約2.3のポリアミド6樹脂(ケイピーケムテック社,EN-300)
(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体
ポリアミド6-ポリエチレンオキシドブロック共重合体(PA6-b-PE0)(Sanyo社,PELECTRON AS)
(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体
マレイン酸無水物-スチレン-アクリロニトリル共重合体(Sunny FC社,SAM-010)
(E)カルシウムステアレート
ソンウォン産業社,Songstab Ca-ST
(E1)マグネシウムステアレート
ソンウォン産業社,Songstab SM-310
(E2)モンタンワックス
Clariant社,Licowax O
(E3)脂肪酸エステル
NOF社,Unister H-476
(E4)酸化ポリエチレンワックス
Clariant社,Licowax PED 191 。
【0099】
実験例
実験結果を下記表2に示した。
【0100】
(1)電気伝導性(単位:Ω/sq):表面抵抗測定装置(製造社:SIMCO-ION社,装置名:ST-4)を使用して、100mm×100mm×20mmの試片に対して表面抵抗を測定した。表面抵抗が低いほど、電気伝導性に優れるものと判断した。
【0101】
(2)耐衝撃性(単位:kgf・cm/cm):ASTM D256によって、1/4”厚の試片に対するノッチ(notched)アイゾット(Izod)衝撃強度を測定した。
【0102】
(3)水泡現象評価
100mm×100mm×20mmの試片にKCC社の2液型静電塗装用塗料を用いて塗装した後、塗装された試片を40℃の水が入った水槽に10日間完全に浸かるように入れて置いた。その後、試片を取り出して水気を取り除き、肉眼で試片表面に水泡現象があるかを観察した。
【0103】
実施例1および比較例1の成形品の水泡現象評価に用いた写真を、
図1および
図2にそれぞれ表した。
【0104】
(4)塗装付着性評価
100mm×100mm×20mmの試片にKCC社の2液型静電塗装用塗料を用いて塗装した後、塗装された試片を40℃の水が入った水槽に10日間完全に浸かるように入れて置いた。その後、試片を取り出して水気を取り除き、ASTM D3359によって塗装付着性を評価した。(塗装付着性は0Bから5Bの六つの等級で評価し、5B等級が最も優れた等級である)
実施例1および比較例1の成形品の塗装付着性評価に用いた写真を、
図3および
図4にそれぞれ表した。
【0105】
【0106】
前記表1および2、並びに
図1~4から、実施例1および2のようにブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体、マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体、およびカルシウムステアレートを最適な含量で使用することにより、比較例に比べて優れた電気伝導性、耐衝撃性、および塗装付着性を表す熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品を提供できるということを確認した。
【0107】
特に、実施例1の成形品は、
図1および
図3に表したように、水泡現象が全く発生しなく、塗装付着性が5Bであって優れていたが、(E)カルシウムステアレートを全く含まない比較例1の成形品は、
図2および
図4に示したように、水泡が多数発生し、塗装付着性もまた0Bであって優れていなかった。
【0108】
また、比較例5~8は、本発明の(E)カルシウムステアレートではない別の物質を含むため、水泡現象が発生し、これによって非常に低い塗装付着性を有するものとなった。これにより、本発明の(E)カルシウムステアレートは、長期間の高温/高湿環境でも塗装成形品の表面に水泡を発生させず、塗装付着性を優秀に保つことが確認できた。
【0109】
以上で、本発明を前述のように好ましい実施例を通じて説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、次に記載する特許請求の範囲の概念と範囲から外れない限り、多様な修正および変形が可能であるということを、本発明の属する技術分野に従事する者であれば容易に理解するものと考える。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂70重量%~95重量%;および
(B)ポリアミド樹脂5重量%~30重量%
を含む基礎樹脂100重量部に対して、
(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体3重量部~15重量部;
(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体1重量部~10重量部;および
(E)カルシウムステアレート0.1重量部~1重量部を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、ブタジエン系ゴム質重合体からなるコア、および芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物が前記コアにグラフト重合されて形成されたシェルを含むコア-シェル構造のブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体分散相、および芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体連続相を含み、前記ブタジエン系ゴム質重合体の平均粒径が0.2μm~1.0μmである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂100重量%を基準に、前記ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニルグラフト共重合体分散相10重量%~40重量%、および前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体連続相60重量%~90重量%を含む、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体が、芳香族ビニル化合物由来成分60重量%~80重量%、およびシアン化ビニル化合物由来成分20重量%~40重量%を含む、請求項2または3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト共重合体分散相、およびアクリロニトリル-スチレン共重合体連続相を含むアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂である、請求項2
または3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド4T、ポリアミド410、ポリアミド510、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T、ポリアミド1212、ポリアミド12T、ポリアミドMXD6、またはこれらの組合せを含む、請求項1
または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6を含む、請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタム、またはジアミン-ジカルボン酸の塩;ポリアルキレングリコール;および炭素数4~20のジカルボン酸の反応生成物である、請求項1
または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、100重量%を基準に、マレイン酸無水物由来成分2重量%~15重量%を含む、請求項1
または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、マレイン酸無水物-スチレン-アクリロニトリル共重合体である、請求項1
または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(E)カルシウムステアレートは、前記基礎樹脂100重量部に対して0.2重量部~0.7重量部で含まれる、請求項1
または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、滑剤、離型剤、抗菌剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤、着色剤、衝撃補強剤から選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含む、請求項1
または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1
または2に記載の熱可塑性樹脂組成物から製造された、成形品。
【請求項14】
前記成形品は、ASTM D256による1/4”厚試片のノッチアイゾット衝撃強度が20kgf・cm/cm~60kgf・cm/cmである、請求項13に記載の成形品。
【請求項15】
前記成形品は、表面抵抗測定装置(製造社:SIMCO-ION社,装置名:ST-4)を使用して、100mm×100mm×
2mmの試片に対して測定した表面抵抗が10
11.0Ω/sq以下である、請求項1
3に記載の成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
前記成形品は、表面抵抗測定装置(製造社:SIMCO-ION社,装置名:ST-4)を使用して、100mm×100mm×2mmの試片に対して測定した表面抵抗が1011.0Ω/sq以下になり得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
一具現例において、前記芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体は、アクリロニトリル-スチレン共重合体になり得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
一具現例において、前記成形品は、表面抵抗測定装置(製造社:SIMCO-ION社,装置名:ST-4)を使用して100mm×100mm×2mmの試片に対して測定した表面抵抗が1011.0Ω/sq以下、例えば1010.9Ω/sq以下、例えば1010.8Ω/sq以下、例えば1010.7Ω/sq以下、例えば1010.6Ω/sq以下になり得る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
(A)ブタジエン系ゴム変性芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体樹脂
ブタジエンゴム質重合体からなるコア(平均粒径:約0.25μm)約58重量%に、
アクリロニトリルとスチレン(アクリロニトリル:スチレン重量比=約2.5:約7.5
)が前記コアにグラフト重合されて形成されたシェルを含むアクリロニトリル-ブタジエ
ン-スチレングラフト共重合体分散相約30重量%、およびアクリロニトリル由来成分が
約28重量%で、重量平均分子量が約120,000g/molのスチレン-アクリロニ
トリル共重合体連続相約70重量%を含むアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重
合体樹脂(ロッテケミカル社)
(B)ポリアミド樹脂
融点約223℃、相対粘度約2.3のポリアミド6樹脂(ケイピーケムテック社,EN
-300)
(C)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体
ポリアミド6-ポリエチレンオキシドブロック共重合体(PA6-b-PE0)(Sa
nyo社,PELECTRON AS)
(D)マレイン酸無水物-芳香族ビニル-シアン化ビニル共重合体
マレイン酸無水物-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ファイン-ブレンドポリマー社,SAM-010)
(E)カルシウムステアレート
ソンウォン産業社,Songstab Ca-ST
(E1)マグネシウムステアレート
ソンウォン産業社,Songstab SM-310
(E2)モンタンワックス
Clariant社,Licowax O
(E3)脂肪酸エステル
NOF社,Unister H-476
(E4)酸化ポリエチレンワックス
Clariant社,Licowax PED 191 。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
(1)電気伝導性(単位:Ω/sq):表面抵抗測定装置(製造社:SIMCO-ION社,装置名:ST-4)を使用して、100mm×100mm×2mmの試片に対して表面抵抗を測定した。表面抵抗が低いほど、電気伝導性に優れるものと判断した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
(3)水泡現象評価
100mm×100mm×2mmの試片にKCC社の2液型静電塗装用塗料を用いて塗装した後、塗装された試片を40℃の水が入った水槽に10日間完全に浸かるように入れて置いた。その後、試片を取り出して水気を取り除き、肉眼で試片表面に水泡現象があるかを観察した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
(4)塗装付着性評価
100mm×100mm×
2mmの試片にKCC社の2液型静電塗装用塗料を用いて塗装した後、塗装された試片を40℃の水が入った水槽に10日間完全に浸かるように入れて置いた。その後、試片を取り出して水気を取り除き、ASTM D3359によって塗装付着性を評価した(塗装付着性は0Bから5Bの六つの等級で評価し、5B等級が最も優れた等級である)
実施例1および比較例1の成形品の塗装付着性評価に用いた写真を、
図3および
図4に
それぞれ表した。
【国際調査報告】