(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】試験対象の光学系による撮像のためのデバイス、光学系の試験システム、及び試験方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
G01M11/02 A
G01M11/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579524
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022067111
(87)【国際公開番号】W WO2023274822
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202021103431.9
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518193696
【氏名又は名称】トライオプティクス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Trioptics GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】アイコ ループレヒト
(72)【発明者】
【氏名】ステファン クレイ
【テーマコード(参考)】
2G086
【Fターム(参考)】
2G086HH01
(57)【要約】
本発明は、試験対象の光学系による撮像のためのデバイス(100)に関する。デバイス(100)は、電磁波に対する第1の透過率を有する第1のデバイスセクション(110)と、電磁波に対する第2の透過率を有する第2のデバイスセクション(120)とを備え、第2の透過率は第1の透過率よりも高い。デバイスセクション(110、120)の少なくとも1つは環状である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象の光学系(optical system、OS)による撮像のためのデバイス(100)であって、前記デバイス(100)は:
電磁波に対する第1の透過率を有する第1のデバイスセクション(110)と、
前記電磁波に対する、前記第1の透過率よりも高い第2の透過率を有する第2のデバイスセクション(120)と、を備え
前記デバイスセクション(110、120)のうちの少なくとも1つは環状であることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記第2のデバイスセクション(120)は環状であり、前記第2のデバイスセクション(120)は、前記第1のデバイスセクション(110)の第1のサブセクション(112)と第2のサブセクション(114)との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項3】
前記第1のデバイスセクション(110)は環状であり、前記第1のデバイスセクション(110)は、前記第2のデバイスセクション(120)の第1のサブセクション(222)と第2のサブセクション(224)との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項4】
前記デバイスセクション(110、120)のうちの環状に成形された1つが、スリット又は環状ギャップの形態をとることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項5】
光学系(OS)を試験するための試験システム(300)であって、前記試験システム(300)は:
請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(100)と、
前記光学系(OS)の前記試験についての評価結果(360)を決定するために、試験対象の前記光学系(OS)によって生成された前記デバイス(100)の画像(340)を評価するように設計された評価装置(330)と、を備えることを特徴とする、試験システム。
【請求項6】
前記評価装置(330)は、試験対象の前記光学系(OS)によって生成された、前記デバイス(100)の前記画像(340)を使用することによって、前記光学系(OS)の二次元測定された変調伝達関数を、前記評価結果(360)として決定するように設計されていることを特徴とする、請求項5に記載の試験システム(300)。
【請求項7】
前記評価装置(330)は、試験対象の前記光学系(OS)によって生成された前記デバイス(100)の前記画像(340)を使用することによって、前記光学系(OS)の有効焦点距離及び/又は方向依存倍率を、前記評価結果(360)として決定するように設計されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の試験システム(300)。
【請求項8】
光学系(OS)を試験するための方法(600)であって、前記方法(600)は、請求項5から7のいずれか一項に記載の試験システムを使用して実行することができ、前記方法(600)は、
試験対象の前記光学系(OS)によって、前記デバイス(100)の画像(340)を生成するステップ(602)と、
前記デバイス(100)の前記画像(340)を評価して、前記光学系(OS)の前記試験についての評価結果(360)を決定するステップ(604)と、を含む、方法。
【請求項9】
前記評価ステップ(604)において、前記デバイス(100)の前記画像(340)を使用することによって、前記光学系(OS)の二次元測定された変調伝達関数を、前記評価結果(360)として決定することを特徴とする、請求項8に記載の方法(600)。
【請求項10】
前記評価ステップ(604)において、前記二次元測定された変調伝達関数は、前記光学系(OS)の点広がり関数(555)から、特にフーリエ変換(350)によって決定され、前記点広がり関数(555)は、異なる断面(A)において得られた前記光学系(OS)の複数の線広がり関数(545)から、数学的に決定されることを特徴とする、請求項9に記載の方法(600)。
【請求項11】
前記評価ステップ(604)において、前記デバイス(100)の前記画像(340)を使用することによって、前記光学系(OS)の有効焦点距離及び/又は方向依存倍率を、前記評価結果(360)として決定することを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項12】
光学系(OS)を試験するための、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(100)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象の光学系による撮像のためのデバイス、試験システム、及び光学系を試験するための方法に関する。
【0002】
変調伝達関数に基づいて光学系の画像品質を測定するために、例えば、試験対象の光学系を介して被写体をセンサ上に結像させ、センサによって受け取られた強度分布に基づいて変調伝達関数の計算を行うことができる。しかしながら、変調伝達関数の二次元測定は、従来の試験構造を使用し、多くの場合回転対称でない焦点形状で実行されるため、通常、センサノイズの増加を伴う可能性がある。従来の試験構造の例としては、いわゆるスリットレチクル又はスリット形状試験構造、いわゆるクロスレチクル又は十字形試験構造、いわゆるピンホールレチクル又は点状試験構造、又はいわゆるHレチクル又はH字形状試験構造が挙げられる。
【0003】
この背景に対して、本明細書で提供されるアプローチは、主たる請求項に記載の、試験対象光学系による撮像のための改善されたデバイス、光学系を試験するための改善された試験システム、及び光学系を試験するための改善された方法、並びに光学系を試験するためのそのようなデバイスの使用を提供するものである。本発明の有利な実施形態及び発展形態は、以下の従属請求項から得られる。
【0004】
実施形態によれば、試験対象の光学系による撮像のためのデバイス、又は換言すれば、光学系の画像品質を測定するための試験構造は、特に、変調透過関数、コントラスト透過関数、又は変調伝達関数(modulation transfer function、MTF)を用いて提供され得る。デバイス又は試験構造は、幾何学的に環状の設計を有し得る。このデバイスは、画像平面内のMTFの二次元の方向依存測定を、画像キャプチャのためのセンサの高照度と同時に可能にし得る。
【0005】
したがって、二次元MTF測定は、幾何学的に環状の設計のために、本明細書で提案されるデバイス又は試験構造によって、特に有利に可能とし得る。例えば、十字レチクル又は十字形試験構造と同様の、光の透過性を達成することもできる。特に、従来の試験構造の利点を、新規の方法で組み合わせて、以前の欠点を克服し得る。環状試験構造の更なる利点は、特に、二次元MTF測定に加えて、有効焦点距離(effective focal length、EFL)の測定も可能とすることにあり得る。
【0006】
試験対象の光学系による撮像のためのデバイスであって、以下の特徴:
電磁波に対する第1の透過率を有する第1のデバイスセクションと、
電磁波に対する、第1の透過率よりも高い第2の透過率を有する第2デバイスセクションと、を備え、
デバイスセクションのうちの1つは環状である、デバイスが提供される。
【0007】
光学系は、少なくとも1つのレンズ又は別の光学素子を備えることができる。デバイスは、プレート又はディスクなどとして形成し得る。デバイスは、矩形の外周輪郭又は湾曲した外周輪郭を有し得る。デバイスは、環状試験構造、リングレチクル、又は環状構造を有するグリッドレチクルと呼ぶこともできる。電磁波は、可視光スペクトル又は他の電磁放射線であってもよい。
【0008】
例示的な一実施形態によれば、第2のデバイスセクションは環状であり得る。この場合、第2のデバイスセクションは、第1のデバイスセクションの第1のサブセクションと第2のサブセクションとの間に配置され得る。言い換えれば、第2のデバイスセクションは、第1のデバイスセクションの第1のサブセクションと第2のサブセクションとの間に埋め込まれ得る。例えば、第1のデバイスセクションの第1のサブセクションは、任意選択で、追加的に、環状であり、第2のデバイスセクションを取り囲むものであり得る。第1のデバイスセクションの第2のサブセクションは、円形であり得るが、第2のデバイスセクションによって取り囲まれ得る。
【0009】
別の一実施形態によれば、第1のデバイスセクションは環状であり得る。この場合、第1のデバイスセクションは、第2のデバイスセクションの第1のサブセクションと第2のサブセクションとの間に配置され得る。言い換えれば、第1のデバイスセクションは、第2のデバイスセクションの第1のサブセクションと第2のサブセクションとの間に埋め込まれ得る。例えば、第2のデバイスセクションの第1のサブセクションは、任意選択で、追加的に、環状であり、第1のデバイスセクションを取り囲むものであり得る。第2のデバイスセクションの第2のサブセクションは、円形であり得るが、第1のデバイスセクションによって取り囲まれ得る。
【0010】
特に、デバイスセクションのうちの環状の1つは、スリット又は環状ギャップとして形成し得る。例えば、第2のデバイスセクションは、スリット又は環状ギャップとして形成し得る。
【0011】
光学系を試験するための試験システムも提供され、その試験システムは:
本明細書に提供されるデバイスの一実施形態と、
光学系の試験についての評価結果を決定するために、試験対象の光学系によって生成されたデバイスの画像を評価するように設計された評価装置と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
試験システムと併せて、本明細書に提供されるデバイスの一実施形態は、光学系を試験するために有利に導入又は使用され得る。この場合、光学系は、試験システムの評価装置によって評価され得る、デバイスの画像を生成し得る。
【0013】
評価装置はまた、試験対象の光学系によって生成されたデバイスの画像を使用することによって、光学系の二次元測定された変調伝達関数を、評価結果として決定するように設計され得る。この場合、評価装置は、フーリエ変換を使用することによって評価結果を決定するように設計され得る。
【0014】
更に、評価装置は、試験対象の光学系によって生成されたデバイスの画像を使用することによって、光学系の有効焦点距離、及び追加的に又は代替的に方向依存倍率能力を、評価結果として決定するように設計し得る。このデバイスを使用して、評価装置は、異なる配向に対して焦点距離測定を実行し、それによって歪み又はアナモルフィック画像などの追加の光学変数を決定する(例えば、歪みの配向さえも決定され得る)ように設計され得る。
【0015】
光学系を試験するための方法も提供され、その方法は、本明細書で言及される試験システムの一実施形態を使用して実行されることができ、その方法は:
試験対象の光学系によってデバイスの画像を生成するステップと、
デバイスの画像を評価して、光学系の試験についての評価結果を決定するステップと、を含む。
【0016】
その試験方法は、本明細書で言及される試験システムの一実施形態を使用して、かつ/又はそれとともに実行し得る。評価ステップは、試験システムの評価装置によって実行し得る。評価結果は、光学系の撮像品質についての少なくとも1つのパラメータを有し得るか又は表し得る。
【0017】
例示的な一実施形態によれば、評価ステップにおいて、デバイスの画像を用いて、光学系の二次元測定された変調伝達関数を、評価結果として決定し得る。したがって、光学系の精密で、情報の多い有益な試験を実行し得る。
【0018】
ここで、評価ステップにおいて、二次元測定された変調伝達関数は、特にフーリエ変換によって、光学系の点広がり関数から決定し得る。ここで、点広がり関数は、異なる断面において得られた、光学系の複数の線広がり関数から、数学的に決定し得る。
【0019】
評価ステップにおいて、デバイスの画像を使用することによって、光学系の有効焦点距離と、追加的又は代替的に方向依存性倍率とを、評価結果として決定することもできる。更に、円形又は正方形の表面上のエネルギーを、評価結果として決定し得る。評価結果は、二次元測定された変調伝達関数又は点広がり関数に基づいて決定し得る。したがって、焦点距離測定を、異なる向きに対して実行することができ、歪み又はアナモルフィック画像などの追加の光学変数を決定することができ、例えば歪みの向きさえも決定し得る。
【0020】
光学系を試験するために、本明細書で言及されるデバイスの一実施形態を使用することもまた、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の例示的な一実施形態は、純粋に概略的に図面に示され、以下でより詳細に説明される。図面は以下のとおりである。
【
図1】試験対象の光学系による撮像のためのデバイスの、例示的な一実施形態の概略図である。
【
図2】試験対象の光学系による撮像のためのデバイスの、例示的な一実施形態の概略図である。
【
図3】光学系を試験するための試験システムの、例示的な一実施形態の概略図である。
【
図5】光学系を試験するための試験システムの、例示的な一実施形態の概略図である。
【
図6】光学系を試験するための方法の、例示的な一実施形態のフローチャートである。
【0022】
本発明の有利な例示的な実施形態の以下の説明では、様々な図に示され、同じ様に機能する要素には、同一又は類似の参照符号が使用され、これらの要素の繰り返しの説明は省略される。
【0023】
図1は、試験対象の光学系による撮像のためのデバイス100の、例示的な一実施形態の概略図である。デバイス100は、環状試験構造として、リングレチクルとして、又は環状構造を有するグリッドレチクルとして設計される。デバイス100又は試験構造は、電磁波に対する第1の透過率を有する第1のデバイスセクション110と、電磁波に対する第2の透過率を有する第2のデバイスセクション120とを備える。第2の透過率は、第1の透過率よりも高い。これにより、第2デバイスセクション120は、第1デバイスセクション110よりも高い透過率を有する。デバイスセクション110、120のうちの少なくとも一方は環状である。特に、デバイスセクション110、120の環状に形成された方の1つは、スリット又は環状ギャップの形態をとる。
【0024】
図1に示す例示的な実施形態によれば、第2のデバイスセクション120が、環状である。第2のデバイスセクション120は、第1のデバイスセクション110の第1のサブセクション112と第2のサブセクション114との間に配置されるか又は埋め込まれる。すなわち、第1デバイスセクション110は、第2デバイスセクション120によって、第1のサブセクション112と第2のサブセクション114とに分割される。
【0025】
図2は、試験対象の光学系による撮像のためのデバイス100の、例示的な一実施形態の概略図である。
図2のデバイスは、
図1のデバイスに対応するものであるが、ただし、
図2に示す例示的な実施形態によれば、第1のデバイスセクション110が環状であるということを除く。第1のデバイスセクション110は、第2のデバイスセクション120の第1のサブセクション222と第2のサブセクション224との間に配置される。
【0026】
図3は、光学系OSを試験するための試験システム300の、例示的な一実施形態の概略図である。光学系OSは、あくまでも例としてではあるが、レンズとして図示されている。試験システム300は、試験対象の光学系OSによる撮像のためのデバイス100と、評価装置330とを備える。デバイス100は、上述した図のうちの1つにおけるデバイスに対応するか又は類似している。評価装置330は、光学系OSの試験についての評価結果360を決定するために、試験対象の光学系によって生成されたデバイス100の画像340を評価するように設計される。この目的のために、評価装置330は、画像340をキャプチャするための光学センサ又は光学センサへのインターフェースと、少なくとも1つの決定ユニットとを備えることができる。
【0027】
例示的な一実施形態によれば、評価装置330は、試験対象の光学系OSによって生成されるデバイス100の画像340を使用することによって、光学系の二次元測定された変調伝達関数を、評価結果360として決定するように設計される。評価結果360は、画像340から、例えばフーリエ変換350によって決定される。任意選択で追加的に、評価装置330は、試験対象の光学系OSによって生成されたデバイス100の画像340を使用することによって、光学系OSの有効焦点距離及び/又は方向依存倍率を、評価結果360として決定するように設計される。
【0028】
図4は、光学系における平面の概略図である。光学系は、上述の図のうちの1つを参照して言及された光学系に、対応するか又は類似している。図示されているのは、光軸401と、2つの軸x及びyによって画定され、軸点405及び視野点407を有する像平面403と、光学系又はレンズの射出瞳409と、矢状面411及びそれに沿って延びるサジタルビーム413と、接線面415又は子午面と、主ビーム417と、軸ビーム419とである。
【0029】
図5は、光学系OSを試験するための試験システム300の、例示的な一実施形態の概略図である。試験システム300は、
図3の試験システムに対応するか又は類似している。試験システム300は、試験対象の光学系OSによって撮像されるデバイス100と、評価装置330とを備える。評価装置330は、光学系OSの試験についての評価結果360を決定するために、試験対象の光学系によって生成されるデバイス100の画像340を評価するように設計される。
【0030】
図において、デバイス100は、あくまでも単なる例として、
図1からのデバイスとして示されているだけでなく、その被写体コントラストの形態でも示されている。デバイス100の画像340は、デバイス100の画像としてだけでなく、画像コントラストの形態で図中に示されているが、この画像コントラストは、2つの個々の線広がり関数によって示されている。光学系OSは、あくまでも例として、デバイス100と画像340との間の、つまり被写体コントラストと画像コントラストとの間のレンズとして図示されている。
図5の図中には、デバイス100を通る径方向断面の例示的な一断面平面Aも示されている。これは、そのような断面平面Aに対する径方向断面に対応する、被写体コントラスト及び画像コントラストを結果としてもたらす。
【0031】
ここに示される例示的な一実施形態によれば、評価装置330は、試験対象の光学系OSによって生成されるデバイス100の画像340を使用することによって、光学系の二次元測定された変調伝達関数を、評価結果360として決定するように設計される。ここで、変調伝達関数は、どのコントラスト(又はどの変調)が、ミリメートル当たりの線対(lp/mm)で表される空間周波数Rの関数として、光学系(OS)によって透過され得るかを示す。評価装置330は、二次元測定された変調伝達関数、すなわち、ここでは評価結果360を、光学系OSの点広がり関数555から、特にフーリエ変換350によって決定するように設計される。ここで、評価装置330は、異なる断面Aにおいて取得された光学系OSの複数の線広がり関数545から、点広がり関数555を数学的に決定するように設計される。この目的のために、評価装置330は、第1の重ね合わせ532において、径方向断面の個々の線広がり関数を重ね合わせるか、重ね合わされた線広がり関数545に対して平均化し、第2の重ね合わせ534又は平均化によって点広がり関数555を生成するために、少なくとも1つの更なる断面Aについて複数の径方向断面でこれを繰り返すように設計される。
【0032】
図6は、光学系を試験するための方法600の、例示的な一実施形態のフローチャートを示す。試験のための方法600は、上記の図のうちの1つにおける試験システム又は同様の試験システムとともに、かつ/又はそれを使用して実行されることができる。試験するための方法600は、生成ステップ602と評価ステップ604とを含む。生成ステップ602において、デバイスの画像が、試験対象の光学系によって生成される。評価ステップ604において、光学系の試験のための評価結果を決定するために、デバイスの画像が評価される。
【0033】
例示的な実施形態並びに例示的な実施形態の基本原理及び利点は、以下で再び要約され、別の表現で説明され、かつ/又は簡潔に提供される。
【0034】
特に、方向依存MTF測定のための環状試験構造として設計されたデバイス100が、試験対象の光学系OSによる撮像のために提供される。特に、デバイス100は、光学系OSの変調伝達関数(MTF)並びに/又は有効焦点距離及び/若しくは方向依存倍率能力を測定する目的で、試験対象の光学系OSによる撮像のための試験構造として設計される。試験構造又はデバイス100は、高い光透過率を有する領域である第2のデバイスセクション120と、低い光透過率を有する領域である第1のデバイスセクション110とを備え、領域のうちの1つは幾何学的環状構造を有する。更に、光学系OSを試験するための試験システム300が提供される。試験システム300、特に評価装置330を使用して、試験構造又はデバイス100を使用することによって光学系OSの有効焦点距離及び/又は方向依存倍率又は方向依存MTFを確認する方法では、試験対象の光学系OSによって生成された、試験構造又はデバイス100の画像340が評価される。
【0035】
MTFの助けを借りた光学系OSの撮像品質の測定又は決定の基本を、以下に説明する。基本的な測定方法は、
図3によっても概略的に表され得る。この場合、被写体、ここでは試験構造又はデバイス100は、試験対象の光学系OSを介してセンサ上に結像し、MTFが、センサによって受け取られた強度分布又は画像340から計算される。広い範囲の空間周波数にわたってMTFを決定することができるように、デバイス100の環状ギャップなどの狭いギャップを、被写体として使用することが推奨される。直線の像は、例えば、自明な理由で線広がり関数(line spread function、LSF)と呼ばれる強度分布を提供する。フーリエ変換により、最終的にLSFから試験被写体のMTFが得られる。光学系OSの焦点形状は、回転対称ではないことが多いため、複数の向きで撮像性能を測定することが有利である。例示的な実施形態によれば、これは、容易にかつ任意の数の向きで可能である。しかしながら、従来の手順は、
図4に示されるように、矢状面411及び接線面415に対応する2つの方向を配向することにある。このための最も単純な形は、試験対象として、十字を使用することであろう。しかしながら、デバイス100とは対照的に、スリット又は十字が試験被写体として使用されるときには、MTFは、対応するギャップに垂直な一次元的のみで測定され得る。したがって、他の向きにおける撮像性能を決定することはできない。任意の方向を含むことができる二次元MTF測定のためには、点状試験構造(ピンホールレチクル)が従来使用されている。そのような点状試験構造の画像における強度分布は、点応答、点像関数、点分布関数、又は点広がり関数(point spread function、PSF)と呼ばれる。点状試験構造の場合、デバイス100とは対照的に、センサに衝突する光の量は少ない場合があり得るが、それによって、センサのノイズが、誤差源の可能性があるものとして増幅され得る。点状の試験構造の拡大は、例えば、測定において使用され得る空間周波数の減少につながる。
【0036】
例示的な実施形態によるデバイス100又は環状試験構造を使用する利点は、二次元MTF測定に加えて、有効焦点距離(effective focal length、EFL)の測定も可能になることである。従来、この目的のためには、修正された十字形レチクルが使用される。一例は、Hレチクルの使用である。焦点距離は、拡大を介して、画像内の線間隔から推定し得る。しかしながら、異なる配向についての焦点距離測定もまた、試験構造又はデバイス100を用いて実行することができ、したがって、例えば歪み又はアナモルフィック画像などの、追加的光学変数を決定し得る。これの利点は、例えば歪みの向きも決定できることである。
【0037】
試験のための方法600は、試験構造100の画像340又はデバイスを使用することによって、光学系OSの撮像品質のためのパラメータを決定するための方法と考えることもできる。そのような評価方法の一種として、試験構造又はデバイス100の画像340からの点広がり関数555又は点像関数(PSF)の計算が挙げられる。換言すれば、例示的な実施形態によれば、リングレチクルの使用又はデバイス100のある動作モードが、点広がり関数555又は点像関数(point image function、PSF)を決定するために想定され、それの助けを借りて、光学系OSの撮像パラメータを決定し得る。
【0038】
図5は、リングレチクル又はデバイス100の画像340の助けを借りて点広がり関数555(PSF)がどのように決定されるかを概略的に示しており、この点広がり関数から、例えば二次元MTFが評価結果360として決定される。
図5に見られるように、単一のレンズとして簡略化された形態で示される、試験対象の光学系100は、リング構造のぼけた画像を、画像340として生成する。リング構造の任意の断面Aでは、被写体コントラストだけでなく、画像によって生成された画像コントラストも見ることができる。画像コントラストは、レンズによって引き起こされるぼけを有し、それは、強度分布における丸められたエッジによって表される。リング構造の像、すなわちデバイス100の像に起因して、断面平面A、例えば矢状面における強度分布は、2つの別個の線像関数(line image function、LSF)を有し、これらの線像関数(LSF)は、簡略化のために、左側LSF又は右側LSFと呼ぶものとする。結果として生じるLSF545は、ここで、例えば平均値を取ることによって、2つの個々の線像関数から数学的に計算される。リング構造を通る複数の断面平面Aに対してこの処理を繰り返すことによって、複数の重ね合わされたLSF545が決定され、これらは次に組み合わされてPSF555を形成し、これは画像平面内の点の二次元強度分布を記述する。厳密に言えば、それは測定されたものではなく、計算されたPSF555であるので、これは「擬似」PSFと呼ぶこともできる。この擬似PSF又は点広がり関数555から、測定対象又は試験対象の光学系OSの二次元MTFが、既知の方法で、この場合は、例えばフーリエ変換350を使用して、決定される。PSF555を使用して、光学系OSの更なる撮像パラメータを決定することもでき、それらの例としては、円内に含まれるエネルギー又は矩形に含まれるエネルギーとも呼ばれる、円形表面上の又は正方形表面上のエネルギーなどが挙げられる。
【0039】
リング構造又はデバイス100の使用は、特に、ピンホールの使用に対する利点を提供するが、それは、センサ平面内の多数のピクセルが照明され、それによって、破壊的なモアレ効果が補償され得ることである。また、リングレチクルやデバイス100を用いた場合には、従来のピンホールを用いた場合よりも多くの光量を得ることができる。リング構造又はデバイス100の更なる利点は、測定対象の光学系又は試験対象の光学系OSの倍率を容易に決定できることである。
【0040】
例示的な一実施形態が、第1の特徴と第2の特徴との間を「及び/又は」で結んでいる表現を含む場合、これは、例示的なその実施形態が、一実施形態によれば第1の特徴と第2の特徴との両方を有し、更なる一実施形態によれば第1の特徴のみ又は第2の特徴のみのいずれかを有するように理解されるべきである。
【国際調査報告】