(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ベンチトップ型バイオリアクター用マクロスパージャー
(51)【国際特許分類】
C12M 1/04 20060101AFI20240621BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C12M1/04
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579533
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022033353
(87)【国際公開番号】W WO2023278137
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ハシェミ,ナシム
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA27
4B029BB01
4B029CC01
4B029DB11
4B029GA02
4B029GA08
4B029GB07
(57)【要約】
ベンチトップ型バイオリアクター(370)用マクロスパージャー(300)は、管(310)と、基部(330)とを含む。基部は、管およびベンチトップ型バイオリアクターの内部と気体連通した複数のスパージング部(320)を含む。各スパージング部は、側壁部によって接続された上面および底面によって形成された内部コンパートメントを有する円筒体を含み、上面と底面は略楕円形状である。ベンチトップ型バイオリアクターは、灌流バイオリアクターでありうる。マクロスパージャーおよびベンチトップ型バイオリアクターを含む関連システムを、連続細胞培養を行うために用いうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンチトップ型バイオリアクター用マクロスパージャーにおいて、
管と、
前記管および前記ベンチトップ型バイオリアクターの内部と気体連通した複数のスパージング部を含む基部と
を含み、
各前記スパージング部は、側壁部によって接続された上面および底面によって形成された内部コンパートメントを有する円筒体を含むものであり、
前記上面と前記底面は略楕円形状であるマクロスパージャー。
【請求項2】
前記上面および前記底面は、略平坦である、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項3】
前記上面は、複数の開口部を含み、前記コンパートメントは、前記ベンチトップ型バイオリアクターの前記内部と該複数の開口部を通して気体連通するものである、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項4】
前記複数の開口部の各開口部は、前記上面で均一に離間したものである、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項5】
各前記スパージング部の前記上面および前記底面は、前記ベンチトップ型バイオリアクターの底部と平行に構成されたものである、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項6】
前記管は、前記スパージング部および気体供給源と気体連通したものである、請求項1に記載のマクロスパージャー。、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項7】
前記管は、略垂直の第1の部分、および、略水平の第2の部分を含むものであり、
前記第2の部分は、前記基部に接続するものであり、
前記基部は、更に、接続管を含むものであり、
前記接続管は、2つのスパージング部を前記第2の部分に接続して、該第2の部分と交わるものである、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項8】
前記第2の部分は、スパージング部に接続するものである、請求項7に記載のマクロスパージャー。
【請求項9】
前記管は、更に、略垂直の第3の部分を含むものであり、
前記第1の部分は、前記第2の部分の第1の端部に接続されて、該第2の部分の他方の端部は、前記第3の部分に接続されたものである、請求項7に記載のマクロスパージャー。
【請求項10】
各前記スパージング部は、相互交換可能である、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項11】
前記スパージング部は、非浸出性かつ非抽出性材料で形成されたものである、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項12】
前記ベンチトップ型バイオリアクターは、500mL容量のベンチトップ型バイオリアクターであり、
各前記スパージング部の高さは、約3mmから約5mmの範囲であり、
各前記スパージング部の幅は、約10mmから約20mmの範囲であり、
各前記スパージング部の長さは、約20mmから約30mmの範囲である、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項13】
前記ベンチトップ型バイオリアクターは、灌流スピナーフラスコであり、
前記マクロスパージャーの前記基部は、前記バイオリアクターの前記底部上に静止したものであり、
前記マクロスパージャーの前記基部は、前記バイオリアクターに配置された混合部の下端部の下方の空間に静止したものである、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項14】
前記マクロスパージャーの前記管は、前記ベンチトップ型バイオリアクターの開口部またはポートを通って延伸するものであり、
前記開口部またはポートは、前記ベンチトップ型バイオリアクターの蓋部に配置されたものであり、
前記管は、前記バイオリアクターの内壁に沿うように構成されたものである、請求項1に記載のマクロスパージャー。
【請求項15】
前記混合部は、前記バイオリアクターの外側に位置する磁気攪拌プレートによって回転自在である、請求項13に記載のマクロスパージャー。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下、2021年6月30日出願の米国仮特許出願第63/216,761号の優先権の利益を主張し、その内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、バイオプロセス分野に関し、特に、ベンチトップ型バイオリアクターで用いられるマクロスパージャーに関する。
【背景技術】
【0003】
バイオプロセス手順は、哺乳類、昆虫または微生物細胞でありうる培養細胞からの関心治療製品の製造に関連する上流側および下流側処理を含む。バイオ製薬産業におけるバイオプロセス手順は、製品コストの削減、製造速度の向上、および、製造柔軟性の改良のために変化している。バイオ製薬産業の変化の一例は、シードトレイン強化のために灌流系ベンチトップ型バイオリアクターの使用など、次世代アプローチの使用である。いくつかの強化された細胞培養処理は、バイオ製薬品をベンチトップスケールバイオリアクターで、大容量の製造速度で製造する。しかしながら、そのような技術は、特に、製造に剪断を受け易い哺乳類細胞の使用を必要としうる場合に設計が困難である。
【0004】
更に、ベンチトップ型バイオリアクターの中の細胞密度が増加し続けると、より高い物質移動速度、および、より効率的な混合の必要性が高まる。したがって、ベンチトップ型攪拌バイオリアクターは、シードトレイン強化などの利用例について、より均一な流れ、および、より高い物質移動速度を提供しうる。そのようなシステムにおいて、気体‐液体物質移動は、表面上(頭隙)方法、または、表面下(スパージング)法を通して実現されうる。いくつかの利用例において、頭隙を通したエアレーションが、気体-液体物質移動の要求を満たすのに十分である。しかしながら、数値流体力学(CFD)の結果および公表結果は、頭隙からの酸素移動は、有意義な細胞密度には不十分であることを示している。
【0005】
ベンチトップ型攪拌バイオリアクターにおいて、酸素移動は、様々な変数、特に、スパージャーの構成および表面上気体速度の影響を受けうる。剪断を受け易い哺乳類細胞は、穏やかなエアレーションを必要とする。穏やかなエアレーションが必要なことから、強化処理のためのスパージャーは、幾何学形状、孔直径、孔の個数、および、気体流入速度(GEV)を要因として考慮して設計しなくてはならない。スパージャーの種類の選択基準も、望ましい性能および顧客の要求に応じて異なりうる。市販のベンチトップ型バイオリアクターには、パイプスパージャー、ドリル孔スパージャー、および、マイクロスパージャーを含む異なるエアレーション構成が備えられている。
【0006】
シードトレイン強化に使用するために、市販のベンチトップ型バイオリアクターは、典型的には、酸素の送出に効率的な(例えば、約0.5mm以下の直径を有する)マイクロサイズの気泡を生成するマイクロスパージャーに依存するものである。しかしながら、マイクロスパージャーは、多数の欠点がある。例えば、500mLのスピナーフラスコについてのCFDの結果は、ドリル孔スパージャーで促進されたバイオリアクターと比べて、マイクロスパージャーによって促進されたバイオリアクターは、より低い物質移動速度を表すことが示された。CFDの結果は、マイクロスパージャーによって生成された、より多い数の気泡が存在することによるものであり、それは、ベンチトップ型バイオリアクターの小さい作動体積で気泡の凝集を促進して、物質移動速度に負の影響を与える。他の問題は、マイクロスパージャーから放出された気体流入速度の制御が困難であることを含み、それは、バイオリアクターにおける細胞死滅の大きな理由でありうる。更に、マイクロスパージャーは、液体表面の上での過剰泡沫形成の影響も受けて、それにより、ベンチトップ型バイオリアクターにおける生産性を低下させる。
【0007】
更に、ベンチトップ型バイオリアクターで用いられる市販のマクロスパージャーは、典型的には、気体流をバイオリアクターの中に向ける1つまたは多数の開口部を有する、ある長さのパイプまたは管からなる。開口部の直径は、ミリメートルオーダーであり、その結果、マイクロスパージャーを用いた場合より大きい気泡が形成される。しかしながら、気泡サイズが大きくなると、気体-液体界面の表面積が減少し、それは、物質移動速度の低下につながり、高い細胞密度の培養において望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ベンチトップ型バイオリアクターについて、最小の泡沫気泡および剪断で、高い物質移動速度を提供するエアレーション装置の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
態様において、本開示の実施形態は、ベンチトップ型バイオリアクターで用いられるマクロスパージャーに関する。本明細書に記載の実施形態によるマクロスパージャーは、典型的にベンチトップ型バイオリアクターで用いられる市販のスパージャーと比べて、より少ない剪断破損および泡沫気泡形成で、より高い物質移動速度を可能にする。本開示の実施形態によるマクロスパージャーは、独立に制御自在なエアレーション用の複数のスパージング部を含む。各スパージング部について、例えば、気体流量、孔の個数、および、孔のサイズを独立に制御自在である。
【0010】
1つの態様において、本開示の実施形態は、管と基部とを含むベンチトップ型バイオリアクター用マクロスパージャーに関する。基部は、管およびベンチトップ型バイオリアクターの内部と気体連通した複数のスパージング部を含む。各スパージング部は、上面および底面によって形成された内部コンパートメントを有する円筒体を含み、上面と底面は、側壁部によって接続され、上面と底面は略楕円形状である。
【0011】
いくつかの実施形態において、上面および底面は、略平坦である。いくつかの実施形態において、上面は、複数の開口部を含み、コンパートメントは、ベンチトップ型バイオリアクターの内部と複数の開口部を通して気体連通するものである。いくつかの実施形態において、複数の開口部の各開口部は、上面で均一に離間、または、均一に配置されたものである。
【0012】
いくつかの実施形態において、各スパージング部の上面および底面は、ベンチトップ型バイオリアクターの底部と平行に構成されたものである。
【0013】
いくつかの実施形態において、管は、スパージング部および気体供給源と気体連通したものである。
【0014】
いくつかの実施形態において、管は、可撓性または曲げ性の中空管である。
【0015】
いくつかの実施形態において、管は、ガラスまたはポリマー材料で形成されたものである。
【0016】
いくつかの実施形態において、管は、略垂直の第1の部分、および、略水平の第2の部分を含むものである。いくつかの実施形態において、第2の部分は、基部に接続するものである。
【0017】
いくつかの実施形態において、基部は、更に、接続管を含むものである。いくつかの実施形態において、接続管は、2つのスパージング部を第2の部分に接続して、第2の部分と交わるものである。
【0018】
いくつかの実施形態において、第2の部分は、スパージング部に接続するものである。
【0019】
いくつかの実施形態において、管は、更に、略垂直の第3の部分を含むものである。いくつかの実施形態において、第1の部分は、第2の部分の第1の端部に接続されて、第2の部分の他方の端部は、第3の部分に接続されたものである。
【0020】
いくつかの実施形態において、各スパージング部は、相互交換可能である。
【0021】
いくつかの実施形態において、スパージング部は、非浸出性かつ非抽出性材料で形成されたものである。
【0022】
いくつかの実施形態において、ベンチトップ型バイオリアクターは、500mL容量のベンチトップ型バイオリアクターである。いくつかの実施形態において、各スパージング部の高さは、約3mmから約5mmの範囲である。いくつかの実施形態において、高さは、約4mmである。いくつかの実施形態において、各スパージング部の幅は、約10mmから約20mmの範囲である。いくつかの実施形態において、幅は、約15mmである。いくつかの実施形態において、各スパージング部の長さは、約20mmから約30mmの範囲である。いくつかの実施形態において、長さは、約24mmである。
【0023】
いくつかの実施形態において、ベンチトップ型バイオリアクターは、灌流バイオリアクターである。いくつかの実施形態において、ベンチトップ型バイオリアクターは、灌流スピナーフラスコである。
【0024】
いくつかの実施形態において、マクロスパージャーの管は、ベンチトップ型バイオリアクターの開口部またはポートを通って延伸するものである。いくつかの実施形態において、開口部またはポートは、ベンチトップ型バイオリアクターの蓋部に配置されたものである。いくつかの実施形態において、蓋部は、ベンチトップ型バイオリアクターに、取外し自在に取り付けられたものである。
【0025】
いくつかの実施形態において、管は、バイオリアクターの内壁に沿うように構成されたものである。いくつかの実施形態において、マクロスパージャーの基部は、バイオリアクターの底部上に静止したものである。
【0026】
いくつかの実施形態において、マクロスパージャーの基部は、バイオリアクターに配置された混合部の下端部の下方の空間に静止したものである。いくつかの実施形態において、混合部は、下端部に取り付けられたインペラを含むものである。いくつかの実施形態において、混合部は、バイオリアクターの外側に位置する磁気攪拌プレートによって回転自在である。
【0027】
次に、本開示の更なる態様を示し、それは、部分的には、以下の詳細な記載、図面、および、請求項に示し、部分的には、詳細な記載から導かれるか、または、本開示を実施することで分かるものである。ここまでの概略的記載、および、次の詳細な記載の両方が例示であり、説明のために過ぎず、本開示を限定するものではないと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の実施形態によるマクロスパージャーの斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態によるマクロスパージャーの上面図である。
【
図3】本開示の実施形態によるベンチトップ型バイオリアクターのマクロスパージャーの斜視図である。
【
図4】本開示の実施形態によるベンチトップ型バイオリアクターのマクロスパージャーの斜視図である。
【
図5】本開示の実施形態によるベンチトップ型バイオリアクターのマクロスパージャーの上面図である。
【
図6】本開示の実施形態によるマクロスパージャーの上面図である。
【
図7】本開示の実施形態によるマクロスパージャーの斜視図である。
【
図8】本開示の実施形態によるマクロスパージャーの斜視図である。
【
図9】本開示の実施形態によるマクロスパージャーの斜視図である。
【
図10】本開示の実施形態によるマクロスパージャーの斜視図である。
【
図11】本開示の実施形態によるマクロスパージャーの斜視図である。
【
図12】本開示の実施形態によるベンチトップ型バイオリアクターのマクロスパージャーの側面図である。
【
図13】本開示の実施形態によるベンチトップ型バイオリアクターシステムのマクロスパージャーを示す図である。
【
図14】500mLのスピナーフラスコの中での気体流量の物質移動速度に対する影響を示すグラフ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1つの態様において、本明細書に記載の主題は、マクロスパージャー、または、ベンチトップ型バイオリアクターで用いられるマクロスパージャーに関する。本明細書に記載の実施形態によるマクロスパージャーは、従来からベンチトップ型バイオリアクターで用いられている市販のスパージャーと比べて、少ない剪断破損および泡沫気泡形成で、より高い物質移動速度を可能にする。本明細書に記載のマクロスパージャーの実施形態は、高いレベルの溶存酸素(約45 1/h(約45h-1)より高い)を、100×106細胞/mLより高い細胞密度などの高い細胞密度の時に提供するように構成される。マクロスパージャーは、エアレーション用の複数のスパージング部を含み、気体流量、孔の個数、および、孔のサイズは、各スパージング部について独立に制御自在である。
【0030】
いくつかの実施形態において、マクロスパージャーは、少ない泡沫気泡形成で、ベンチトップ型バイオリアクターの中で高い物質移動速度を提供するように構成される。例えば、高い物質移動速度は、45 1/h(45h-1)より高い物質移動速度である。いくつかの実施形態において、物質移動速度は、約50 1/h(約50h-1)でありうる。いくつかの実施形態において、異なるスパージング部は、異なる望ましい物質移動速度を実現するように構成され、そのような違いは、異なる個数の複数の開口部、および/または、異なるサイズの複数の開口部をスパージング部の上面に備えることによって実現される。
【0031】
本明細書の実施形態に記載のマクロスパージャーは、細胞培養培地への穏やかで効率的な気体移動を可能にする。ベンチトップ型バイオリアクターで用いられる従来のスパージャーと比べて、本明細書に記載のマクロスパージャーは、バイオリアクターの中で、改良された二酸化炭素(CO2)除去率を提供して、物質移動速度の上昇、および、気体-液体接触面積の増加を可能にする。本明細書に記載のマクロスパージャーは、バイオリアクター全体に亘って、より均一な気泡分布、気体流入速度およびスパージャーの表面での剪断の制御、並びに、スケールアップを容易にする設計を可能にする。
【0032】
この設計は、マクロスパージャーの幾何学形状により、スケールアップが容易である。例えば、スケールアップの際に、異なるスケールに亘っても物質移動速度を一定に保つのが重要であり、異なるスケールでは、スパージング部の孔の個数を変化させることによって、本明細書に記載の実施形態のマクロスパージャー構成を用いて実現される。更に、本明細書に記載の実施形態のマクロスパージャー構成を用いることで、異なるスケールに亘って、気体流入速度を一定に保つことが可能になる。
【0033】
スパージャーは、複数の略楕円形状のスパージング部を含み、それは、各スパージング部の上面に異なるサイズの直径の孔または開口部、および、異なる個数の孔または開口部を備えうる。いくつかの実施形態において、スパージング部は、相互交換可能で、取外し自在である。スパージング部の数は、望ましい物質移動速度に応じたものである。各略楕円形状のスパージング部を、独立に制御自在な気体源に接続しうる。したがって、望ましい物質移動速度および気体流入速度を、気体流を各略楕円形状のスパージング部に合わせて調節することによって実現しうる。
【0034】
本明細書に記載の実施形態の態様は、シードトレイン強化処理のために酸素を供給するエアレーションされたベンチトップ型バイオリアクター用のマクロスパージャーに関する。本明細書に記載のマクロスパージャーの実施形態を用いて、ベンチトップ型バイオリアクターで従来から用いられているマイクロスパージャーの場合の主な課題である泡沫気泡形成を減らして、高い物質移動速度を実現しうる。
【0035】
本明細書に記載の実施形態による態様において、複数の略楕円形状のスパージング部を含むマクロスパージャーが備えられる。各スパージング部は、スパージング部の上面に複数の開口部または孔を備えうる。異なるスパージング部は、異なる個数の孔または開口部を、各スパージング部の上面に有しうる。更に、1つのスパージング部の各孔または開口部は、他のスパージング部の各孔または開口部と異なるサイズまたは直径を有しうる。各スパージング部の表面の開口部のサイズおよび個数が異なることで、結果的に高い物質移動速度になる。
【0036】
マクロスパージャーは、任意の適した材料で形成されうる。いくつかの実施形態において、マクロスパージャーの構成要素は、異なる材料で形成される。いくつかの実施形態において、マクロスパージャーの管は、第1の材料で形成され、スパージング部は、第2の材料で形成される。
【0037】
管は、細胞培養利用に適した任意の材料で形成されうる。いくつかの実施形態において、管は、ポリマーまたはガラス材料から形成される。ポリマー材料の管の限定するものではない例は、シリコーン管、および、ポリエチレンまたは高密度ポリエチレン管を含む。いくつかの実施形態において、ガラス材料は、ホウケイ酸ガラス、または、Gorilla(登録商標)ガラス(Corning Incorporated、Corning、NY)などの独占的ガラス配合を含みうる。
【0038】
複数のスパージング部は、任意の適した材料で構成されうる。いくつかの実施形態において、スパージング部は、非浸出性かつ非抽出性材料で形成される。いくつかの実施形態において、材料は、液体不透過性かつ気体不透過性材料である。浸出性でも抽出性でもない材料の限定するものではない例は、ステンレス鋼(SS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、または、浸出性および抽出性ではない他のポリマー材料を含む。
【0039】
図1は、マクロスパージャー100の実施形態の斜視図であり、
図2は、マクロスパージャー100の上面図である。マクロスパージャーは、管110および基部130を含む。管110は、空洞の気体不透過性管を含み、それは、曲げ性または可撓性でありうる。管110は、略垂直の第1の部分113を含む。管110は、更に、第1の部分113から略垂直に延伸する第2の部分115を含む。第2の部分115は、マクロスパージャーの基部130の方で略水平方向に延伸する。第2の部分115は、基部130に、接続管140の中心で接続される。
【0040】
スパージャーのフットプリントまたはマクロスパージャーの基部の幅は、W
MSによって指定されて、用いられるバイオリアクターの直径より小さい任意の適した幅でありうる。接続管140は、管110および複数のスパージング部120と気体連通した空洞管である。
図1および
図2に示すように、複数のスパージング部は、第1のスパージング部および第2のスパージング部を含む。各スパージング部は、略楕円形状の底面127に側壁部123によって接続された略楕円形状の上面125を含み、スパージング部にコンパートメントを形成する。スパージング部の長さは、L
SEとして指定され、スパージング部の幅は、W
SEとして指定される。略楕円形状の上面を形成するには、長さを幅より長くするべきである。各スパージング部の高さH
SEは、バイオリアクターの底部の空間で、バイオリアクターにおいて望ましいエアレーションを可能にする任意の適した高さでありうる。そのような空間は、バイオリアクターの底部およびバイオリアクターの底部に向かって延伸しうる混合部によって限定されうる。限定するものではない例として、マクロスパージャー基部について利用可能なバイオリアクター空間が約6mmの場合、H
SEは、約3mmから約5mmの範囲でありうる。各スパージング部120のコンパートメントまたは内部は、バイオリアクターの内部と、各スパージング部120の上面125の複数の開口部または孔を通って気体連通するように構成される。
【0041】
図3において、マクロスパージャー300は、バイオリアクター370に配置される。管310は、バイオリアクター370の開口部またはポート380を通って延伸する。管310の第1の部分313は、バイオリアクター370の側壁部373に沿って、略垂直に延伸して、管310は、管310の第2の部分315(および、複数のスパージング部320および接続管340を含む基部330)がバイオリアクター370の底部377に沿って略水平に延伸するように曲がる。
【0042】
図4において、マクロスパージャー400は、バイオリアクター470に配置される。管410は、バイオリアクター470の開口部またはポート480で、蓋部またはキャップ485を通って延伸する。管410は、管410の第1の部分413がバイオリアクター470の側壁部473に沿って略垂直に延伸するように曲がり、管410は、再び、管410の第2の部分415(および、複数のスパージング部420および接続管440を含む基部430)がバイオリアクター470の底部477に沿って略水平に延伸するように曲がる。
【0043】
図5は、バイオリアクター570に配置されたマクロスパージャー500の上面図である。バイオリアクター570は、半径Rおよび内側容積部575を有する円筒状の槽を形成する側壁部573を含む。
図5の目的に関しては、バイオリアクターは、約37mmの半径Rを有する500mLのスピナーフラスコである。本実施形態において、スパージング部の長さL
SEは、20mmから30mmの範囲であり、いくつかの実施形態において、約24mmでありうる。本実施形態において、スパージング部の幅W
SEは、10mmから20mmの範囲であり、いくつかの実施形態において、約15mmでありうる。本実施形態において、マクロスパージャーの基部またはマクロスパージャーフットプリントの幅W
MSは、約50mmでありうる。
【0044】
図6は、マクロスパージャー600の基部630の実施形態の拡大図を示し、複数の開口部または孔621が見えている。接続管640は、第1のスパージング部620の側部から第2のスパージング部620の側部まで配置される。接続管640は、マクロスパージャー管610の第2の部分615と交わる。第1および第2のスパージング部620は、同じ方向または向きに、接続管640の両側で配列される。各スパージング部620は、略楕円形状の上面625を含む。上面625は、複数の開口部621を含む。
図6に示した実施形態において、複数の開口部は、上面625上で均一に離間した16個の開口部または孔を含む。開口部は、円形で、任意の適した直径を有しうる。例えば、各開口部の直径は、約100マイクロメートルでありうる。より低い物質移動速度が望ましいなどのいくつかの実施形態において、孔または開口部の直径は、100マイクロメートルより大きいものでありうる。更に、孔または開口部の数は、利用例での必要性に応じて異なりうる。例えば、いくつかの実施形態において、複数の孔または開口部における孔の数は、16より大きい。いくつかの実施形態において、複数の孔または開口部における孔の数は、16より小さい。
【0045】
いくつかの実施形態において、複数のスパージング部の各スパージング部は、同じ向き、または、方向に配列または配置され、例えば、1つの略楕円形状のスパージング部の長辺が他の略楕円形状のスパージング部の長辺と平行に配列されうる。いくつかの実施形態において、複数のスパージング部の1つ以上のスパージング部は、複数のスパージング部の他のスパージング部から垂直の向き、または、方向に配列または配置されうる。例えば、1つの略楕円形状のスパージング部の長辺が、他の略楕円形状のスパージング部の長辺と垂直に配列されうる。
【0046】
いくつかの実施形態において、略楕円形状のスパージング部は、接続部または第2の部分にスパージング部の側部で接続されることによって、接続管またはマクロスパージャー管の第2の部分と気体連通されうる。いくつかの実施形態において、スパージング部の側部は、略楕円形状のスパージング部の長辺を含みうる。いくつかの実施形態において、スパージング部の側部は、略楕円形状のスパージング部の短辺を含みうる。
【0047】
いくつかの実施形態において、マクロスパージャーの基部上の略楕円形状のスパージング部は、相互交換可能で、取外し自在である。エアレーション部(略楕円形状のスパージング部)の個数または量は、望ましい物質移動速度に応じたものである。マクロスパージャーの実施形態について、複数のスパージング部の異なる構成を、
図7~11に示している。
【0048】
図7は、マクロスパージャー700の実施形態を示している。接続管740は、第1のスパージング部720の側部から第2のスパージング部720の側部まで配置される。マクロスパージャー管710の第2の部分715は、第1の部分713から略垂直に延伸する。第2の部分715は、接続管740に、接続管に垂直に接続管の中心で接続される。第1および第2のスパージング部720は、同じ方向または向きに、接続管740の両側で配列される。各スパージング部720は、略楕円形状の上面725、および、略楕円形状の底面727を含み、上面と底面は、側壁部723よって接続されて、スパージング部の中にコンパートメントを形成する。上面725は、複数の開口部(不図示)を含み、スパージング部の中のコンパートメントは、バイオリアクターの内部と複数の開口部を通って気体連通する。
【0049】
図8は、マクロスパージャーの実施形態を示す。
図8に示した実施形態において、複数のスパージング部は、3つのスパージング部820を含む。接続管840は、第1のスパージング部820の側部に配置されて、第2のスパージング部820の側部まで延伸する。接続管840は、マクロスパージャー管810の第2の部分815と交わる。マクロスパージャー管810の第2の部分815は、マクロスパージャー管810の第1の部分813から、第3のスパージング部820の側部まで水平に延伸する。図示した実施形態において、第1、第2、および、第3のスパージング部は、同じ方向または向きを有する。
【0050】
図9は、マクロスパージャーの実施形態を示している。
図9に示した実施形態において、複数のスパージング部は、3つのスパージング部920を含む。接続管940は、第1のスパージング部920の側部に配置されて、第2のスパージング部920の側部まで延伸する。接続管940は、マクロスパージャー管910の第2の部分915と交わる。マクロスパージャー管910の第2の部分915は、マクロスパージャー管910の第1の部分913から、第3のスパージング部920の側部まで水平に延伸する。図示した実施形態において、第1と第2のスパージング部は、同じ方向、または、向きが共通で、一方、第3のスパージング部は、方向または向きが、第1および第2のスパージング部の方向または向きと垂直となるように配置される。
【0051】
図10は、バイオリアクターからのCO
2除去率の改良を実現するためのマクロスパージャーの実施形態を示している。CO
2が蓄積した場合に、マクロスパージャーは、3つの略楕円形状のスパージング部を含む。接続管1040は、第1のスパージング部1020の側部に配置されて、第2のスパージング部1020の側部まで延伸する。接続管1040は、マクロスパージャー管1010の第2の部分1015と交わる。マクロスパージャー管1010の第2の部分1015は、マクロスパージャー管1010の第1の部分1013から、第3のスパージング部1020の側部まで水平に延伸する。図示した実施形態において、第1と第2のスパージング部は、方向または向きが共通で、一方、第3のスパージング部は、方向または向きが、第1および第2のスパージング部の方向または向きと垂直となるように配置される。バイオリアクターからのCO2除去率を改良するために、第3のスパージング部は、バイオリアクターの中心から更に離れるように、したがって、インペラから更に離れるように配置されうる。
【0052】
図11は、1つより多くの気体接続を有するためのマクロスパージャーの実施形態を示している。例えば、各略楕円形状のスパージング部は、独立して制御自在な気体源に接続されうる。したがって、望ましい物質移動速度および気体流入速度を、各略楕円形状のスパージング部への気体の流れを調節することによって実現しうる。
【0053】
図12は、バイオリアクター1270に配置されたマクロスパージャー1200の実施形態を示している。図示したバイオリアクター1270は、灌流スピナーフラスコであり、磁気攪拌プレート1290上に配置される。バイオリアクター1270は、底部1277および内側容積部1275を有する槽を含む。バイオリアクターは、1つ以上の開口部またはポート1280をバイオリアクターの最上部の方に含む。マクロスパージャー1200は、1つのそのような開口部またはポート1280を通って延伸する。マクロスパージャー管1210は、開口部またはポート1280を通って延伸し、第1の部分1213は曲がって、バイオリアクターの側壁部に沿って略垂直に進行し、ここで、H
Pは、バイオリアクターの底部からポートまでの高さであり、第2の部分1215は、再び曲がって、バイオリアクターの底部に沿って、マクロスパージャーの基部1230まで略水平に進行する。マクロスパージャーの基部1230は、バイオリアクターの底部1277の中心に配置されうる。バイオリアクター1270は、シャフト1287、および、シャフト1287の端部または底部に位置するインペラ1289を有する混合部1285を含みうる。マクロスパージャーの基部1230は、混合部1285の底部の下方で、バイオリアクターの底部1277の上方で、高さH
Mの空間に配置されうる。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、500mLのスピナーフラスコで、H
Pは、約91mmで、H
Mは、約6mmである。
【0054】
図13を参照すると、本開示の実施形態によるベンチトップ型バイオリアクター1370にマクロスパージャー1300を含むシステム1301の基本的な構成要素を概略的に示している。バイオリアクター1370は、側壁部および底部によって形成された内側容積部1375、開口部またはポート1380、更に、任意で、開口部またはポート用の蓋部を含みうる。
【0055】
未使用培地ボトル1390は、その内容物、つまり、ペリスタルティックポンプ1345のポンプヘッドによって内側容積部1375の中に送られる未使用の培地を有し、使用済み培地および細胞分泌物は、ペリスタルティックポンプ1345の他のポンプヘッドによって、バイオリアクター1370の内側容積部1375から使用済み培地ボトル1395の中に送られうる。スパージングポンプとも称されるエアポンプ1305、および、空気流量計1306を、マクロスパージャー1300と組み合わせて用いて、細胞がバイオリアクター1370の内側容積部1375の中で曝されるエアレーションの量を制御しうる。磁気攪拌プレート1390は、その中の回転磁気容器を用いて、混合部のインペラおよびシャフトを、バイオリアクター1370の内側容積部1375の中で回転させうる。ここまでの記載に鑑みて、混合部1385による攪拌を通して細胞が成長培地で培養されうる内側容積部1375(内部コンパートメント)を有するベンチトップ型バイオリアクター1370を開示するものである。未使用の培地1390を、バイオリアクター1370の内側容積部1375(内部コンパートメント)に供給管1393を通って連続して供給し、その間に、栄養欠乏培地1395がバイオリアクター1370の内側容積部1375から真空ポート(例えば、使用済み培地管1397)を通って流出しうる。
【0056】
実施形態において、蓋部は、バイオリアクターの開口部、開口またはポートに取外し自在に取り付けられるか、バイオリアクターに永続的に取り付けられうる。蓋部は、開口部を覆うために、バイオリアクターに取付け(例えば、ネジ留め、押込み)自在である。実施形態において、次に、蓋部はバイオリアクターと一体であり、バイオリアクターが組み立てられて閉じられると、一体化装置になることを可能にする。実施形態において、蓋部は取外し自在で、バイオリアクターがユーザによって分解されて、ユーザが内容物にアクセスすることを可能にしうる。
【0057】
いくつかの実施形態において、未使用培地ポート、および、使用済み培地ポートは、両方共、蓋部を通って延伸しうる。いくつかの実施形態において、未使用培地ポート、および、使用済み培地ポートは、バイオリアクターの開口部または開口を通って延伸しうる。未使用培地ポートは、バイオリアクターの内側容積部に位置する端部を有する未使用培地管を受け付けるように構成される。未使用培地管を用いて、未使用の培地をバイオリアクターの内側容積部に供給する。使用済み培地ポートは、バイオリアクターの内側容積部に位置する端部を有する使用済み培地管を受け付けるように構成される。使用済み培地管を用いて、使用済み培地、および、細胞分泌物(例えば、組換え蛋白質、抗体、ウイルス粒子、DNA、RNA、糖、脂質、バイオディーゼル、無機粒子、ブタノール、代謝副産物)をバイオリアクターから除去する。
【0058】
実施形態において、任意の適した混合部を用いうる。混合部は、シャフトを含み、シャフトの底部または端部にインペラを備えうる。インペラおよびシャフトは、両方共、バイオリアクターの内側容積部の中に配置されうる。例えば、インペラは、シャフトの下端部に取り付けられ、シャフトの他方の端部は、取外し自在の蓋部に回転自在に取り付けられ、そこから、下方に延伸しうる。混合部は、磁性でありうる。インペラは、バイオリアクターの下に位置する磁気攪拌プレートによって回転されうる。
【0059】
いくつかの実施形態において、ベンチトップ型バイオリアクターシステムは、更に、バイオリアクターの外側に位置する磁気攪拌プレートを含みうる。磁気攪拌プレートは、インペラ、および、シャフトを回転するように構成される。
【0060】
本開示の実施形態によるマクロスパージャーとも称しうる気体スパージャーは、ベンチトップ型バイオリアクターに収容された細胞への酸素の利用可能性を最適化しうる。マクロスパージャーを用いて、バイオリアクターの内側容積部の培地に酸素を加えうる。
【0061】
いくつかの実施形態において、ベンチトップ型バイオリアクターシステムは、更に、複数のセンサ(例えば、温度、DO2、CO2、pH、細胞密度)を含む。任意で、センサポートを、バイオリアクターの内側容積部に位置する端部を有するセンサに接続しうる。例えば、センサは、溶存酸素(DO2)センサ、二酸化炭素(CO2)センサ、pHセンサ、細胞密度センサ、グルコースセンサ、流量若しくは剪断応力および温度センサ、または、任意の他のセンサでありうる。
【0062】
バイオリアクターは、連続運転されうる。組み立てられたマクロスパージャー、ベンチトップ型バイオリアクター、および、他のシステム構成要素は、ガンマ線放射、電子線滅菌、紫外線(UV)滅菌、エタノール滅菌、または、気体滅菌されうる。いくつかの実施形態において、マクロスパージャー、および、ベンチトップ型バイオリアクターシステムは、培養中に、インキュベータの中に配置されうる。
【0063】
バイオリアクターは、プラスチック、ガラス、セラミック、または、ステンレス鋼でありうる。実施形態において、バイオリアクターは、堅い容器であるか、または、可撓性バッグでありうる。
【0064】
バイオリアクターは、任意のサイズでありうる。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、約0.1リットルから約1000リットル、または、それ以上のサイズを有する。いくつかの実施形態において、ベンチトップ型バイオリアクターは、米国特許出願公開第2019/0048305号明細書に記載のものなどの灌流バイオリアクターでありうるもので、その内容は本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、500mLのスピナーフラスコの灌流バイオリアクターである。
【0065】
図14は、500mLのスピナーフラスコの中での気体流量の物質移動速度に対する影響を示すグラフ画像である。哺乳類細胞の培養について、スパージャーを通る気体流量は、スパージャーの種類に応じたものである。本明細書に記載の実施形態によるマクロスパージャーなどのマクロスパージャーについて、合計気体流量は、0.1から0.3vvm(単位体積培地あたりの気体体積流量)の間である。したがって、500mLのスピナーフラスコの中での気体流量の物質移動速度に対する効果を評価するために、2つの異なる気体流量を検討した。
図14に示すように、左側のグラフ画像は、0.2vvmの気体流量を検討し、一方、右側のグラフ画像は、0.3vvmの気体流量を検討している。左右のグラフ画像は、両方共、気体スパージング部について、同じ直径の孔(100マイクロメートル)および同じ個数の孔(15個の孔)を検討している。
図14が示すように、同じ孔直径、および、同じ個数の孔の場合に、各気体流量が0.2vvmから0.3vvmまで増加すると、物質移動係数(k
La)は、32.1(1/h(h
-1))から159.9(1/h(h
-1))まで強化された。更に、最大推奨気体流量である0.3vvmにおいて取得された159.9(1/h(h
-1))の物質移動速度は、シードトレイン強化に必要とされる約50(1/h(h
-1))の物質移動速度より非常に高かった。したがって、本明細書に記載の実施形態によるマクロスパージャーを用いることで、高い細胞密度培養で必要な酸素量を、より低い気体流量で満たすことができ、その結果、バイオリアクターでの細胞破損および泡沫気泡生成を最小化しうる。
【0066】
様々な開示した実施形態は、特定の実施形態に関して記載した特定の特徴、要素、または、工程を含みうることが分かるだろう。特定の特徴、要素、または、工程を、1つの特定の実施形態に関して記載しても、代わりの実施形態と、様々な例示していない組合せ、または置換えで交換または組み合わせうることも分かるだろう。
【0067】
本明細書で用いるように、原文の英語の定冠詞または不定冠詞は、そうではないと明示しない限りは、「少なくとも1つの」を意味し、「1つのみ」に限定されるべきではないことも理解すべきである。したがって、例えば、原文の英語で不定冠詞を付した「開口部」は、そうではないことが文脈から明らかではない限り、そのような「開口部」を2つ以上有する例を含む。
【0068】
本明細書において、範囲を、「約」1つの特定の値から、および/または、「約」他の特定の値までと表しうる。そのような範囲を表した場合、例は、その1つの特定の値から、および/または、他方の特定の値までを含む。同様に、「約」を付して、値を概数で表した場合、その特定の値が他の態様を形成すると理解されるものである。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関連でと、他方の端点とは独立にとの両方で重要であることも理解されよう。
【0069】
本明細書に記載の全ての数値は、そうではないと明記しない限りは、「約」を含むものとして、そのように記載したかに関わらず解釈されるべきである。しかしながら、記載した各数値は、「約」その値と記載したかに関わらず、綿密に企図されたものでもあることも、更に理解されよう。したがって、「10mm未満の寸法」、および、「約10mm未満の寸法」は、両方共、「10mm未満の寸法」の実施形態に追加で、「約10mmの寸法」の実施形態を含む。
【0070】
別段に明示しない限りは、本明細書に示したいずれの方法も、その工程が特定の順序で行われることを要すると解釈されることを全く意図しない。したがって、方法の請求項が、工程を行う順序を実際に記載しないか、そうではなく、請求項または明細書で、工程は特定の順序に限定されると具体的に記載しない限りは、任意の特定の順序が推測されることを全く意図しない。
【0071】
特定の実施形態の様々な特徴、要素または工程を、「含む」という移行句を用いて開示しうるが、「からなる」、または、「から実質的になる」という移行句を用いて記載しうる実施形態を含む代わりの実施形態も含意すると理解すべきである。したがって、例えば、A+B+Cを含む方法に含意された代わりの実施形態は、方法がA+B+Cからなる実施形態と、方法がA+B+Cから実質的になる実施形態とを含む。
【0072】
本開示の多数の実施形態を、添付の図面に示し、上記詳細な記載に記載したが、本開示は、開示した実施形態に限定されるものではなく、ここまでに示し、次の請求項によって画定された本開示を逸脱することなく、多数の再配列、変更、および、置換えが可能であると理解すべきである。
【0073】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0074】
実施形態1
ベンチトップ型バイオリアクター用マクロスパージャーにおいて、
管と、
前記管および前記ベンチトップ型バイオリアクターの内部と気体連通した複数のスパージング部を含む基部と
を含み、
各前記スパージング部は、側壁部によって接続された上面および底面によって形成された内部コンパートメントを有する円筒体を含むものであり、
前記上面と前記底面は略楕円形状であるマクロスパージャー。
【0075】
実施形態2
前記上面および前記底面は、略平坦である、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0076】
実施形態3
前記上面は、複数の開口部を含み、前記コンパートメントは、前記ベンチトップ型バイオリアクターの前記内部と該複数の開口部を通して気体連通するものである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0077】
実施形態4
前記複数の開口部の各開口部は、前記上面で均一に離間したものである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0078】
実施形態5
各前記スパージング部の前記上面および前記底面は、前記ベンチトップ型バイオリアクターの底部と平行に構成されたものである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0079】
実施形態6
前記管は、前記スパージング部および気体供給源と気体連通したものである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0080】
実施形態7
前記管は、可撓性または曲げ性の中空管である、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0081】
実施形態8
前記管は、ガラスまたはポリマー材料で形成されたものである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0082】
実施形態9
前記管は、略垂直の第1の部分、および、略水平の第2の部分を含むものである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0083】
実施形態10
前記第2の部分は、前記基部に接続するものである、実施形態9に記載のマクロスパージャー。
【0084】
実施形態11
前記基部は、更に、接続管を含むものである、実施形態10に記載のマクロスパージャー。
【0085】
実施形態12
前記接続管は、2つのスパージング部を前記第2の部分に接続して、該第2の部分と交わるものである、実施形態11に記載のマクロスパージャー。
【0086】
実施形態13
前記第2の部分は、スパージング部に接続するものである、実施形態10に記載のマクロスパージャー。
【0087】
実施形態14
前記管は、更に、略垂直の第3の部分を含むものである、実施形態9に記載のマクロスパージャー。
【0088】
実施形態15
前記第1の部分は、前記第2の部分の第1の端部に接続されて、該第2の部分の他方の端部は、前記第3の部分に接続されたものである、実施形態14に記載のマクロスパージャー。
【0089】
実施形態16
各前記スパージング部は、相互交換可能である、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0090】
実施形態17
前記スパージング部は、非浸出性かつ非抽出性材料で形成されたものである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0091】
実施形態18
前記ベンチトップ型バイオリアクターは、500mL容量のベンチトップ型バイオリアクターである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0092】
実施形態19
各前記スパージング部の高さは、約3mmから約5mmの範囲である、実施形態18に記載のマクロスパージャー。
【0093】
実施形態20
前記高さは、約4mmである、実施形態18に記載のマクロスパージャー。
【0094】
実施形態21
各前記スパージング部の幅は、約10mmから約20mmの範囲である、実施形態18に記載のマクロスパージャー。
【0095】
実施形態22
前記幅は、約15mmである、実施形態18に記載のマクロスパージャー。
【0096】
実施形態23
各前記スパージング部の長さは、約20mmから約30mmの範囲である、実施形態18に記載のマクロスパージャー。
【0097】
実施形態24
前記長さは、約24mmである、実施形態18に記載のマクロスパージャー。
【0098】
実施形態25
前記ベンチトップ型バイオリアクターは、灌流バイオリアクターである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0099】
実施形態26
前記ベンチトップ型バイオリアクターは、灌流スピナーフラスコである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0100】
実施形態27
前記マクロスパージャーの前記管は、前記ベンチトップ型バイオリアクターの開口部またはポートを通って延伸するものである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0101】
実施形態28
前記開口部またはポートは、前記ベンチトップ型バイオリアクターの蓋部に配置されたものである、実施形態27に記載のマクロスパージャー。
【0102】
実施形態29
前記蓋部は、前記ベンチトップ型バイオリアクターに、取外し自在に取り付けられたものである、実施形態28に記載のマクロスパージャー。
【0103】
実施形態30
前記管は、前記バイオリアクターの内壁に沿うように構成されたものである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0104】
実施形態31
前記マクロスパージャーの前記基部は、前記バイオリアクターの前記底部上に静止したものである、実施形態1に記載のマクロスパージャー。
【0105】
実施形態32
前記マクロスパージャーの前記基部は、前記バイオリアクターに配置された混合部の下端部の下方の空間に静止したものである、実施形態31に記載のマクロスパージャー。
【0106】
実施形態33
前記混合部は、前記下端部に取り付けられたインペラを含むものである、実施形態32に記載のマクロスパージャー。
【0107】
実施形態34
前記混合部は、前記バイオリアクターの外側に位置する磁気攪拌プレートによって回転自在である、実施形態33に記載のマクロスパージャー。
【符号の説明】
【0108】
100、300、400、500、700、1200、1300 マクロスパージャー
110、310、410、610、710、810、910、1010、1210 管
120、620、720、820、920、1020、 スパージング部
140、340、440、640、740、840、940、1040 接続管
1285、1385 混合部
【国際調査報告】