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▶ スーヂョウ スマートヌークライド バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2024-523560CD8α結合ポリペプチドおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】CD8α結合ポリペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240621BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240621BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240621BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20240621BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20240621BHJP
   C07K 17/04 20060101ALI20240621BHJP
   C07K 17/14 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240621BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240621BHJP
   G01T 1/161 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12P21/08
C07K1/14
C12Q1/06
C12N1/02
C07K17/04
C07K17/14
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K51/04 320
A61K51/10 200
A61K51/08 200
A61K45/00
A61P35/00
G01N33/543 597
G01N33/53 D
G01N33/543 541A
G01T1/161 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579555
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 CN2022101541
(87)【国際公開番号】W WO2022268225
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110697359.9
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523483511
【氏名又は名称】スーヂョウ スマートヌークライド バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュー タオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヤンリン
(72)【発明者】
【氏名】スン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チー ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー ハイジン
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ リーイェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン イェン
(72)【発明者】
【氏名】チン ソンビン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C084
4C085
4C188
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QR82
4B063QS33
4B063QS39
4B063QX02
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA14
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB43
4C085EE01
4C085HH01
4C085KA03
4C085KB82
4C085KB92
4C085LL18
4C188EE02
4C188FF04
4C188FF07
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA56
4H045BA60
4H045BA63
4H045BA71
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本出願は、少なくとも1つの可変ドメインを含むCD8α結合ポリペプチドであって、該可変ドメインのアミノ酸配列がSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列と比較して、1または複数個のアミノ酸が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列を有するCD8α結合ポリペプチドに関するものである。本出願は、上記のCD8α結合ポリペプチドを含む組成物、および例えば腫瘍を含む様々な疾患の診断および/または治療におけるその使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの可変ドメインを含む、CD8α結合ポリペプチドであって、
該可変ドメインのアミノ酸配列がSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列と比較して、1または複数個のアミノ酸が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列を有する、
CD8α結合ポリペプチド。
【請求項2】
前記CD8α結合ポリペプチドは、以下の特性のうちの1または複数の特性を有する、請求項1に記載のCD8α結合ポリペプチド、
(i)PROTEIN Aアフィニティークロマトグラフィーカラムの充填剤に結合することが可能であること、
(ii)SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、同じまたはそれ以上の親和性でCD8αに結合することが可能であること、
(iii)SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、上昇した発現レベルを有すること、および
(iv)SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、等電点が上昇することを有する。
【請求項3】
抗体またはその抗原結合断片を含む
請求項1~2のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項4】
前記抗体は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および/または完全ヒト抗体を含む
請求項3に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項5】
前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFv、VHHおよび/またはdAbを含む
請求項3~4のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項6】
前記VHHは、ラクダ科、キメラ、ヒト、部分ヒト化、または完全ヒト化である
請求項5に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項7】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 14で表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む
請求項1~6のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項8】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 15またはSEQ ID NO: 16で表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む
請求項1~7のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項9】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 19で表されるアミノ酸配列を有するCDR1を含む
請求項1~8のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項10】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 17またはSEQ ID NO: 18で表されるアミノ酸配列を有するCDR1を含む
請求項1~9のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項11】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 23で表されるアミノ酸配列を有するCDR2を含む
請求項1~10のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項12】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21またはSEQ ID NO: 22で表されるアミノ酸配列を有するCDR2を含む
請求項1~11のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項13】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 27で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む
請求項1~12のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項14】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25またはSEQ ID NO: 26で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む
請求項1~13のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項15】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 19で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 23で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 27で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む
請求項1~14のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項16】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 17で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 20で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 24で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む
請求項1~15のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項17】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 17で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 20で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 28で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む
請求項1~15のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項18】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 18で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 23で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 26で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む
請求項1~15のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項19】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、
(a)E30;(b)S60;(c)E62;(d)S72;(e)Q78;(f)I83;(g)T85;(h)D109、および(i)M112からなる群から選択される1または複数の位置でアミノ酸置換を持つ
請求項1~18のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項20】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、
(a)E30S、E30G、E30TまたはE30Y;(b)S60Y;(c)E62D;(d)S72R、S72HまたはS72K;(e)Q78HまたはQ78T;(f)I83M;(g)T85S;(h)D109A、D109V、D109L、D109I、D109G、D109SまたはD109T、および(i)M112L、M112A、M112V、M112I、M112G、M112SまたはM112Lからなる群から選択される1または複数のアミノ酸置換を持つ
請求項1~19のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項21】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、
(i)S60Y/E62D/Q78H/I83M/T85Sのアミノ酸置換、
(ii)S72R、T85S、D109A、S72R/D109AまたはS72R/T85S/D109Aのアミノ酸置換、および
(iii)E30S/M112Lのアミノ酸置換からなる1群または複数の群から選択されるアミノ酸置換を含む
請求項1~20のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項22】
前記可変ドメインは、ヒト化されている
請求項1~21のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項23】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、
(a)L2;(b)A14;(c)G56;(d)N57;(e)A75;(f)K87;(g)P88、および(h)K117からなる群から選択される1または複数の位置でアミノ酸置換を持つ
請求項1~22のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項24】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、
(a)L2V;(b)A14P;(c)G56R;(d)N57R;(e)A75S;(f)K87R;(g)P88A、および(h)K117Qからなる群から選択される1または複数のアミノ酸置換を持つ
請求項1~23のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項25】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、L2YおよびA14Pのアミノ酸置換を持つ
請求項1~24のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項26】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、A75S、K87R、P88Aおよび/またはK117Qのアミノ酸置換をさらに含む
請求項1~25のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項27】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、G56Rおよび/またはN57Rのアミノ酸置換をさらに含む
請求項1~26のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項28】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 14で表されるアミノ酸配列を有する
請求項1~27のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項29】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 15またはSEQ ID NO: 16で表されるアミノ酸配列を有する
請求項1~28のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項30】
前記可変ドメインは、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 12またはSEQ ID NO: 13で表されるアミノ酸配列を有する
請求項1~29のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項31】
前記CD8α結合ポリペプチドは、C末端にシステイン改変をさらに含む
請求項1~30のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項32】
前記システイン改変は、C、VDC、(GG)nCまたは(GS)mCの形態を含み、ここで、nまたはmはそれぞれ独立して1、2、3および4から選択される
請求項31に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項33】
前記CD8α結合ポリペプチドは、1つの可変ドメインを含む
請求項1~32のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項34】
前記CD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 31またはSEQ ID NO: 32で表されるアミノ酸配列を有する
請求項1~33のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチドをコードする
単離された核酸分子。
【請求項36】
請求項35に記載の核酸分子を含む
ベクター。
【請求項37】
請求項35に記載の核酸分子または請求項36に記載のベクターを含む
細胞。
【請求項38】
請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチドを調製する方法であって、前記CD8α結合ポリペプチドの発現が許容される条件下で請求項37に記載の細胞を培養することを含む
方法。
【請求項39】
前記細胞により発現されたCD8α結合ポリペプチドを回収することをさらに含む
請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記CD8α結合ポリペプチドを精製および/または改変することをさらに含む
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチドを含む
免疫複合体。
【請求項42】
前記CD8α結合ポリペプチドに結合する少なくとも1種の検出可能な標識をさらに含む
請求項41に記載の免疫複合体。
【請求項43】
前記検出可能な標識は、放射性核種、蛍光剤、化学発光剤、生物発光剤、常磁性イオンおよび酵素からなる群から選択される
請求項42に記載の免疫複合体。
【請求項44】
前記検出可能な標識は、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、67Cu、67Ga、68Ga、68Ge、86Y、90Y、89Zr、94mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154-158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、72As、75Br、76Br、82mRb、83Srまたはその他のγ-、β-あるいは陽電子放出体を含む
請求項43に記載の免疫複合体。
【請求項45】
前記CD8α結合ポリペプチドは、キレート剤を介して前記検出可能な標識に複合している
請求項41~44のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項46】
前記キレート剤は、DTPA、EDTA、NOTA、DOTA、TRAP、TETA、NETA、CB-TE2A、Cyclen、Cyclam、Bispidine、TACN、ATSM、SarAr、AmBaSar、MAG3、MAG2、HYNIC、DADT、EC、NS3、H2dedpa、HBED、DFO、PEPAまたはHEHAおよびそれらの誘導体からなる群から選択される
請求項45に記載の免疫複合体。
【請求項47】
前記検出可能な標識は、68Gaを含む
請求項42~46のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項48】
前記キレート剤は、NOTAまたはその誘導体を含む
請求項45~47のいずれか1項に記載の免疫複合体。
【請求項49】
前記キレート剤は、NODAGAまたはMaleimide-NODAGAを含む
請求項48に記載の免疫複合体。
【請求項50】
請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド、請求項35に記載の核酸分子、請求項36に記載のベクター、請求項37に記載の細胞および/または請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体、ならびに任意で薬学的に許容される担体を含む
組成物。
【請求項51】
前記組成物が検出薬であり、請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチドまたは請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体を含む
請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記検出薬は、造影剤である
請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記造影剤は、ECT造影剤である
請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記ECT造影剤は、SPECT造影剤またはPET造影剤を含む
請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
腫瘍を監視、予防、緩和および/または治療するための医薬品の調製における、請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド、請求項35に記載の核酸分子、請求項36に記載のベクター、請求項37に記載の細胞、請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体および/または請求項50~54のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項56】
CD8陽性細胞を検出するための検出薬の調製における請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチドまたは請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体の使用。
【請求項57】
生物学的試料中のCD8の存在および/または量を検出する方法であって、前記生物学的試料を請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド、請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体、および請求項50~54のいずれか1項に記載の組成物に接触させることを含む
方法。
【請求項58】
前記接触は、インビトロまたはエクスビボで行われる
請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記生物学的試料は組織である
請求項57~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記組織は、血液組織、リンパ組織および腫瘍組織からなる群から選択される
請求項59に記載の方法。
【請求項61】
生物学的試料中のCD8陽性細胞の存在および/または量を検出することを含む
請求項57~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
生物学的試料中のCD8陽性細胞の存在および/または量は、イメージングにより特定される
請求項61に記載の方法。
【請求項63】
生物学的試料中のCD8陽性細胞の存在および/または量は、フローサイトメトリーにより特定される
請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記CD8陽性細胞はCD8陽性T細胞である
請求項61~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
CD8関連疾患または病気を検出および/または診断する方法であって、それを必要とする被験者に、請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド、請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体または請求項50~54のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む
方法。
【請求項66】
前記被験者をイメージングすることをさらに含む
請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記イメージングはECTイメージングを含む
請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ECTイメージングはSPECTイメージングまたはPETイメージングを含む
請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記CD8関連疾患または病気は腫瘍を含む
請求項65~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
腫瘍を治療する方法であって、
1)必要とする被験者に、請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド、請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体または請求項50~54のいずれか1項に記載の組成物を投与すること、および
2)前記被験者の腫瘍がCD8陽性細胞を含むか否かを特定すること
を含み、
ここで、前記腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在が検出された場合、前記被験者に、抗腫瘍療法を投与する
方法。
【請求項71】
被験者における抗腫瘍療法の有効性を監視するするための方法であって、
1)腫瘍を患い、抗腫瘍療法で治療される被験者に、請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド、請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体または請求項50~54のいずれか1項に記載の組成物を投与すること、および
2)前記被験者の腫瘍におけるCD8陽性細胞の量を特定すること
を含む
方法。
【請求項72】
前記被験者の腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在および/または量は、イメージングにより特定される
請求項70~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記抗腫瘍療法は、免疫チェックポイント阻害剤療法である
請求項70~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記抗腫瘍療法は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、LAG3阻害剤、別のT細胞共阻害剤またはリガンドのアンタゴニスト、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、Ang2阻害剤、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)阻害剤、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、CD20阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、腫瘍特異的抗原に対するワクチン、抗原提示を増強させるアジュバント、二重特異性抗体、細胞毒素、化学療法剤、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤、IL-4R阻害剤、IL-10阻害剤、サイトカインおよび抗体薬物複合体(ADC)の投与からなる群から選択される
請求項70~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記腫瘍は、固形腫瘍を含む
請求項70~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記固形腫瘍は、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、膀胱癌、肛門癌、子宮癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮内膜癌、骨癌、精巣癌、皮膚癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、唾液腺癌および骨髄腫からなる群から選択される
請求項75に記載の方法。
【請求項77】
CD8陽性細胞を単離するための方法であって、
CD8陽性細胞を含む細胞集団を、請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチドまたは請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体に接触させ、請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチドまたは請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体に結合したCD8陽性細胞を回収することを含む
方法。
【請求項78】
前記CD8陽性細胞はCD8陽性T細胞である
請求項77に記載の方法。
【請求項79】
CD8陽性細胞を含む前記細胞集団は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)である
請求項78に記載の方法。
【請求項80】
請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチドまたは請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体は、固体の表面に固定化されている
請求項77~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記固体は、ゲルまたは磁気ビーズを含む
請求項80に記載の方法。
【請求項82】
請求項1~34のいずれか1項に記載のCD8α結合ポリペプチド、請求項41~49のいずれか1項に記載の免疫複合体または請求項49~54のいずれか1項に記載の組成物を含む
キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バイオ医薬品の分野に関し、具体的に、CD8α結合ポリペプチドおよびその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射型コンピュータ断層撮影法(Emission Computed Tomography、ECT)は、腫瘍の診断に使用されている。ECTには、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(Single-Photon Emission Computed Tomography、SPECT)および陽電子放射断層撮影法(Positron Emission Tomography、PET)が含まれ、腫瘍の高分解能イメージングを実現し、画像による定量的分析を可能にする。
【0003】
ヒトでは、CD8は主に細胞傷害性Tリンパ球に発現しているが、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞などにも発現している。CD8分子は、CD8αで構成されるホモ二量体か、CD8αおよびCD8βで構成されるヘテロ二量体のどちらかであってもよく、ここでαβヘテロ二量体がより一般的である。
【0004】
CD8陽性腫瘍浸潤リンパ球(TILs)を生体内で監視する能力は、免疫療法の反応を評価し、より効果的な免疫細胞を標的とした単剤や併用療法の開発を支援する上で重要な意味を持つ。腫瘍浸潤性T細胞の「免疫PET」イメージングは、所定の免疫療法レジメンを選択し、有効かどうかを判断するのに役立つ特異的で感度の高い方法を提供することができる。
【0005】
当該技術分野では、CD8発現細胞の検出に用いられる検出薬、特にECTの検出に適するCD8α抗体に基づく検出薬が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
[発明の開示]
一方、本出願は、少なくとも1つの可変ドメインを含むCD8α結合ポリペプチドであって、該可変ドメインのアミノ酸配列が、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列と比較して1または複数個のアミノ酸が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列を有する、CD8α結合ポリペプチドを提供した。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、以下の特性のうちの1または複数の特性を有する。
【0008】
(i)PROTEIN Aアフィニティークロマトグラフィーカラムの充填剤に結合することが可能であること、
(ii)SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、同じまたはそれ以上の親和性でCD8αに結合することが可能であること、
(iii)SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、上昇した発現レベルを有すること、および
(iv)SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、等電点が上昇することを有する。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および/または完全ヒト抗体を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記の抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFv、VHHおよび/またはdAbを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記のVHHは、ラクダ科、キメラ、ヒト、部分ヒト化、または完全ヒト化である。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 14で表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 15またはSEQ ID NO: 16で表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 19で表されるアミノ酸配列を有するCDR1を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 17またはSEQ ID NO: 18で表されるアミノ酸配列を有するCDR1を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 23で表されるアミノ酸配列を有するCDR2を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21またはSEQ ID NO: 22で表されるアミノ酸配列を有するCDR2を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 27で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25またはSEQ ID NO: 26で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 19で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 23で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 27で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 17で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 20で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 24で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 17で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 20で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 28で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 18で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 23で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 26で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、可変ドメインがSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、
(a)E30;(b)S60;(c)E62;(d)S72;(e)Q78;(f)I83;(g)T85;(h)D109、および(i)M112からなる群から選択される1または複数の位置でアミノ酸置換を持つ。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、可変ドメインがSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、
(a)E30S、E30G、E30TまたはE30Y;(b)S60Y;(c)E62D;(d)S72R、S72HまたはS72K;(e)Q78HまたはQ78T;(f)I83M;(g)T85S;(h)D109A、D109V、D109L、D109I、D109G、D109SまたはD109T、および(i)M112L、M112A、M112V、M112I、M112G、M112SまたはM112Lからなる群から選択される1または複数のアミノ酸置換を持つ。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、可変ドメインがSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、
(i)S60Y/E62D/Q78H/I83M/T85Sのアミノ酸置換、
(ii)S72R、T85S、D109A、S72R/D109AまたはS72R/T85S/D109Aのアミノ酸置換、および
(iii)E30S/M112Lのアミノ酸置換からなる1群または複数の群から選択されるアミノ酸置換を持つ。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、ヒト化されている。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、可変ドメインがSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、
(a)L2;(b)A14;(c)G56;(d)N57;(e)A75;(f)K87;(g)P88、および(h)K117からなる群から選択される1または複数の位置でアミノ酸置換を持つ。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、可変ドメインがSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、
(a)L2V;(b)A14P;(c)G56R;(d)N57R;(e)A75S;(f)K87R;(g)P88A、および(h)K117Qからなる群から選択される1または複数のアミノ酸置換を持つ。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、可変ドメインがSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、L2YおよびA14Pのアミノ酸置換を持つ。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは可変ドメインがSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、A75S、K87R、P88Aおよび/またはK117Qのアミノ酸置換をさらに含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、可変ドメインがSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、G56Rおよび/またはN57Rのアミノ酸置換をさらに含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 14で表されるアミノ酸配列を有する。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 15またはSEQ ID NO: 16で表されるアミノ酸配列を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 12またはSEQ ID NO: 13で表されるアミノ酸配列を有する。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、C末端にシステイン改変をさらに含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記のシステイン改変は、C、VDC、(GG)nCまたは(GS)mCの形態を含み、ここで、nまたはmはそれぞれ独立して1、2、3および4から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、1つの可変ドメインを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 31またはSEQ ID NO: 32で表されるアミノ酸配列を有する。
【0041】
他方、本出願は、上記のCD8α結合ポリペプチドをコードする、単離された核酸分子を提供した。
【0042】
他方、本出願は、上記の核酸分子を含むベクターを提供した。
【0043】
他方、本出願は、上記の核酸分子または上記のベクターを含む細胞を提供した。
【0044】
他方、本出願は、請求項に記載のCD8α結合ポリペプチドを調製する方法であって、上記のCD8α結合ポリペプチドの発現が許容される条件下で上記の細胞を培養することを含む方法を提供した。
【0045】
いくつかの実施形態において、上記の方法は、上記の細胞により発現されたCD8α結合ポリペプチドを回収することをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記の方法は、上記のCD8α結合ポリペプチドを精製および/または改変することをさらに含む。
【0047】
他方、本出願は、上記のCD8α結合ポリペプチドを含む免疫複合体を提供した。
【0048】
いくつかの実施形態において、上記の免疫複合体は、上記のCD8α結合ポリペプチドに結合する少なくとも1種の検出可能な標識をさらに含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、上記の検出可能な標識は、放射性核種、蛍光剤、化学発光剤、生物発光剤、常磁性イオンおよび酵素からなる群から選択される。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記の検出可能な標識は、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、67Cu、67Ga、68Ga、68Ge、86Y、90Y、89Zr、94mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154-158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、72As、75Br、76Br、82mRb、83Srまたはその他のγ-、β-あるいは陽電子放出体を含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、キレート剤を介して上記の検出可能な標識に複合している。
【0052】
いくつかの実施形態において、上記のキレート剤は、DTPA、EDTA、NOTA、DOTA、TRAP、TETA、NETA、CB-TE2A、Cyclen、Cyclam、Bispidine、TACN、ATSM、SarAr、AmBaSar、MAG3、MAG2、HYNIC、DADT、EC、NS3、H2dedpa、HBED、DFO、PEPAまたはHEHAおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0053】
いくつかの実施形態において、上記の検出可能な標識は、68Gaを含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記のキレート剤は、NODAGAまたはMaleimide-NODAGAなどのNOTAまたはその誘導体を含む。
【0055】
他方、本出願は、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の細胞および/または上記の免疫複合体、ならびに任意で薬学的に許容される担体を含む、組成物を提供した。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記の組成物は、検出薬であり、上記のCD8α結合ポリペプチドまたは上記の免疫複合体を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、上記の検出薬は、造影剤である。
【0058】
いくつかの実施形態において、上記の造影剤は、ECT造影剤である。
【0059】
いくつかの実施形態において、上記のECT造影剤は、SPECT造影剤またはPET造影剤を含む。
【0060】
他方、本出願は、腫瘍を監視、予防、緩和および/または治療するための医薬品の調製における、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の細胞、上記の免疫複合体および/または上記の組成物の使用を提供した。
【0061】
他方、本出願は、CD8陽性細胞を検出するための検出薬の調製における本出願に係るCD8α結合ポリペプチドまたは本出願に係る免疫複合体の使用を提供した。
【0062】
他方、本出願は、生物学的試料中のCD8の存在および/または量を検出する方法であって、上記の生物学的試料を上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の免疫複合体または上記の組成物に接触させることを含む方法を提供した。
【0063】
いくつかの実施形態において、上記の接触は、インビトロまたはエクスビボで行われる。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記の生物学的試料は組織である。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記の組織は、血液組織、リンパ組織および腫瘍組織からなる群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記の方法は、生物学的試料中のCD8陽性細胞の存在および/または量を検出することを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、生物学的試料中のCD8陽性細胞の存在および/または量は、イメージングにより特定される。
【0068】
いくつかの実施形態において、生物学的試料中のCD8陽性細胞の存在および/または量は、フローサイトメトリーにより特定される。
【0069】
いくつかの実施形態において、上記のCD8陽性細胞はCD8陽性T細胞である。
【0070】
他方、本出願は、CD8関連疾患または病気を検出および/または診断する方法であって、それを必要とする被験者に、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の免疫複合体または上記の組成物を投与することを含む方法を提供した。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記の方法は、上記の被験者をイメージングすることをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記のイメージングは、ECTイメージングを含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記のECTイメージングは、SPECTイメージングまたはPETイメージングを含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記のCD8関連疾患または病気は、腫瘍を含む。
【0074】
他方、本出願は、腫瘍を治療する方法であって、
1)必要とする被験者に、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の免疫複合体または上記の組成物を投与すること、および
2)上記の被験者の腫瘍がCD8陽性細胞を含むか否かを特定すること
を含み、
ここで、上記の腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在が検出された場合、上記の被験者に、抗腫瘍療法を投与する方法を提供した。
【0075】
他方、本出願は、被験者における抗腫瘍療法の有効性を監視するための方法であって、
1)腫瘍を患い、抗腫瘍療法で治療される被験者に、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の免疫複合体または上記の組成物を投与すること、および
2)上記の被験者の腫瘍におけるCD8陽性細胞の量を特定することを含む方法を提供した。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記の被験者の腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在および/または量は、イメージングにより特定される。
【0077】
いくつかの実施形態において、上記の抗腫瘍療法は、免疫チェックポイント阻害剤療法である。
【0078】
いくつかの実施形態において、上記の抗腫瘍療法は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、LAG3阻害剤、別のT細胞共阻害剤またはリガンドのアンタゴニスト、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、Ang2阻害剤、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)阻害剤、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、CD20阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、腫瘍特異的抗原に対するワクチン、抗原提示を増強させるアジュバント、二重特異性抗体、細胞毒素、化学療法剤、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤、IL-4R阻害剤、IL-10阻害剤、サイトカインおよび抗体薬物複合体(ADC)の投与から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記の腫瘍は、固形腫瘍を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記の固形腫瘍は、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、膀胱癌、肛門癌、子宮癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮内膜癌、骨癌、精巣癌、皮膚癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、唾液腺癌および骨髄腫からなる群から選択される。
【0081】
他方、本出願は、CD8陽性細胞を単離するための方法であって、CD8陽性細胞を含む細胞集団を、上記のCD8α結合ポリペプチドまたは上記の免疫複合体に接触させ、上記のCD8α結合ポリペプチドまたは上記の免疫複合体に結合したCD8陽性細胞を回収することを含む方法を提供した。
【0082】
いくつかの実施形態において、上記のCD8陽性細胞はCD8陽性T細胞である。
【0083】
いくつかの実施形態において、上記のCD8陽性細胞を含む細胞集団は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)である。
【0084】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドまたは上記の免疫複合体は、固体の表面に固定化されている。
【0085】
いくつかの実施形態において、上記の固体は、ゲルまたは磁気ビーズを含む。
【0086】
他方、本出願は、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の免疫複合体または上記の組成物を含むキットを提供した。
【0087】
当該技術分野における当業者は、以下の詳細な説明から、本願の他の態様および利点を容易に理解することができる。以下の詳細な説明では、本出願の例示的な実施形態のみが示され、説明される。当該技術分野における当業者が認識するように、本出願の内容は、当業者が本出願に関わる発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態に変更を加えることを可能にする。これに対応して、本出願の明細書における図面および説明は、限定的なものではなく、単に例示的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
本出願に係る発明の具体的な特徴は、添付の特許請求の範囲に示されている。本出願に係る発明の特徴および利点は、以下に詳細に説明する例示的な実施形態および添付の図面を参照することによって、よりよく理解することができる。添付図面の簡単な説明は、次のとおりである。
【0089】
図1Aは、本出願に記載のPROTEIN Aアフィニティ充填剤に対する抗体C37の結合を示す。
【0090】
図1Bは、本出願に記載のPROTEIN Aアフィニティ充填剤に対する抗体C37-YDHMSの結合を示す。
【0091】
図2は、本出願に記載の抗体GSC-C37Hのコンジュゲーション前後および還元後におけるSEC-HPLC純度分析のグラフを示す。
【0092】
図3は、本出願に記載の抗体GSC-C37HのNODAGAにコンジュゲーション前後における質量スペクトル分析データを示す。
【0093】
図4は、本出願に記載の抗体GSC-C37HのNODAGAにコンジュゲーション前後におけるELISAアッセイデータを示す。
【0094】
図5Aは、本出願に記載の68Ga-NODAGA-GSC-C37H単一ドメイン抗体のRadio-TLC結果を示す。
【0095】
図5Bは、本出願に記載の68Ga-NODAGA-GSC-C37H単一ドメイン抗体のRadio-HPLC結果を示す。
【0096】
図6は、本出願に記載のHSC-NPG動物モデルにおける68Ga-NODAGA-GSC-C37HのPET/CTイメージングを示す。
【0097】
図7は、本出願に記載のPBMC動物モデルにおける68Ga-NODAGA-GSC-C37Hのmicro-PETイメージングを示す。
【0098】
図8Aは、本出願に記載のPBMCヒト化動物のmicro-PETイメージング後におけるROIの生体内分布の結果(投与後1時間)を示す。
【0099】
図8Bは、本出願に記載のPBMCヒト化動物のmicro-PETイメージング後2時間におけるROIの生体内分布の結果(投与後2時間)を示す。
【0100】
図8Cは、本出願に記載のPBMCヒト化動物の投与後2時間における解剖によるエクスビボでの生体内分布の結果(投与後2時間)を示す。
【0101】
図9Aは、本出願に記載のPBMCヒト化動物における血中放射能ID%/gの経時的変化の傾向図を示す。
【0102】
図9Bは、本出願に記載のPBMCヒト化動物における異なる用量の放射性物質の血中取り込みの%ID/g TAC曲線を示す。
【0103】
図10Aは、本出願に記載の68Ga-NODAGA-GSC-C37H単一ドメイン抗体のインビトロ血清安定性に関するRadio-TLC検出結果を示す。
【0104】
図10Bは、本出願に記載の68Ga-NODAGA-GSC-C37H単一ドメイン抗体のインビトロ血清安定性に関するRadio-HPLC検出結果を示す。
【0105】
図11Aは、本出願に記載のマウス投与後の異なる時点での尿サンプルに関するRadio-HPLC結果を示す。
【0106】
図11Bは、本出願に記載のマウス投与後の異なる時点での血液サンプルに関するRadio-HPLC結果を示す。
【0107】
図12は、本出願に記載の68Ga-NODA-GA-GSC-C37Hの合成経路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0108】
以下、本願発明の実施形態は、具体的な実施例により説明されるが、本願発明の他の利点や効果は、当該技術分野における当業者であれば、本明細書の開示内容から、容易に理解することができるであろう。
【0109】
用語の定義
「CD8」(分化クラスター8)という用語は、主に細胞傷害性Tリンパ球に発現するが、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞のサブセットにも発現する細胞表面糖タンパク質を指す。糖タンパク質は、αとβ(異なる遺伝子でコードされている)の2種類のアイソフォームより構成されており、ααホモ二量体またはαβヘテロ二量体として発現され、ここで後者が優勢である。CD8共受容体は、活性化のために、T細胞受容体MHC-1相互作用を安定化させ、CD3関連免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)のリンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(Lck)のリン酸化を介して、細胞内シグナル伝達を誘導する。
【0110】
本出願において、「CD8α結合ポリペプチド」という用語は、CD8αに特異的に結合することが可能な任意のポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、結合ポリペプチドは抗体である。他の実施形態において、結合ポリペプチドは、例えば抗体模倣体、サイトカインまたは成長因子である。例えば、本出願のCD8αに特異的に結合する単一ドメイン抗体である。「CD8α結合ポリペプチド」は、CD8αに結合する一価のポリペプチド(すなわち、CD8αの1つのエピトープに結合するポリペプチド)、および二価または多価の結合ポリペプチド(すなわち、1つ以上のエピトープに結合する結合ポリペプチド)を指すこともある。本出願の「CD8α結合ポリペプチド」は、CD8αに結合する少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、本出願の「CD8α結合ポリペプチド」は、CD8αに結合する2、3、4 またはそれ以上の可変ドメインを含み得る。本出願のCD8α結合ポリペプチドは、CD8αに結合する可変ドメインに加えて、半減期延長ドメイン(例えば、血清アルブミンに結合する可変ドメイン)、および/または融合パートナー(例えば、血清アルブミン)および/または複合体化したポリマー(例えば、PEG)および/またはFc領域のようなリンカーおよび/またはエフェクター機能を有する部分を含み得る。いくつかの実施形態において、本出願の「CD8α結合ポリペプチド」は、異なる抗原に結合する可変ドメインを含む二重特異性抗体も包含する。
【0111】
本出願において、「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、CD8α(ヒトCD8α、マウスCD8α、カニクイザルCD8αまたはアカゲザルCD8α)への結合などの所望の生物学的活性(Milleretal(2003)Jour.ofImmunology170:4854-4861)を示す限り、具体的に、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二量体、多量体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を包含する。抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または他の種に由来するものであり得る。
【0112】
完全長抗体は、典型的に、2本の「完全長抗体重鎖」と2本の「完全長抗体軽鎖」より構成される抗体を指す。「完全長抗体重鎖」は通常、N末端からC末端の方向に、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常重鎖ドメイン1(CH1)、抗体ヒンジ領域(HR)、抗体重鎖定常ドメイン2(CH2)、および抗体重鎖定常ドメイン3(CH3)より構成されるポリペプチドであり、VH-CH1-HR-CH2-CH3と略称され、IgEサブクラスの抗体の場合、任意に、抗体重鎖定常ドメイン4(CH4)をさらに含む。いくつかの実施形態において、「完全長抗体重鎖」は、N末端からC末端の方向に、VH、CH1、HR、CH2およびCH3より構成されるポリペプチドである。「完全長抗体軽鎖」は通常、N末端からC末端の方向に、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、および抗体軽鎖定常ドメイン(CL)より構成されるポリペプチドであり、VL-CLと略称される。上記の抗体軽鎖定常ドメイン(CL)は、κ(kappa)またはλ(lambda)であり得る。2本の完全長抗体鎖は、CLドメインとCH1ドメインの間、および完全長抗体重鎖のヒンジ領域の間のポリペプチド間ジスルフィド結合を介して相互に連結されている。典型的な完全長抗体の例は、IgG(例えば、IgG1およびIgG2)、IgM、IgA、IgD、およびIgE)のような天然抗体である。
【0113】
本出願において、「抗原結合断片」という用語は通常、抗体と抗原との間の特異的結合を担うアミノ酸を含む抗体分子の一部を指す。抗体により特異的に認識および結合される抗原の一部は、本明細書に記載されるように、「エピトープ」と称される。抗原結合ドメインは、典型的には、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含み得るが、その両方を含む必要はない。Fd断片は、例えば、2つのVH領域を有し、多くの場合、無傷の抗原結合ドメインのうちいくつかの抗原結合機能を保持する。抗体の抗原結合断片の例としては、次のものがあげられる;(1VL、VH、定常軽鎖(CL)およびCH1ドメインを有する一価の断片であるFab断片;(2)ヒンジ領域でジスルフィドブリッジにより連結されている2つのFab断片を有する二価の断片であるF(ab’)2断片;(3)2つのVHおよびCH1ドメインを有するFd断片;(4)抗体の単一アームのVLドメインとVHドメイから構成されるFv断片;(5)VHドメインを有するdAb断片(Ward, E.S. et al.「Binding Activities of a Repertoire of Single Immunoglobulin Variable Domains Secreted From Escherichia coli,」 Nature 341:544-546(1989)、これらはその全体が、本出願に取り込まれる);(6)単離された相補的決定領域(CDR);(7)例えばscFV-ライブラリーから誘導される単鎖Fv(scFv)。Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは、単離された遺伝子によってコードされ、組換え方法を用いて、VLおよびVH領域が対になり一価分子を形成する単一タンパク質鎖としてそれらを作成し得る合成リンカーによりそれらを結合することができる(単鎖Fv(scFv)と呼ばれる)(例えばHustonら,「Protein Engineering of Antibody Binding Sites: Recovery of Specific Activity in an Anti-Digoxin Single-Chain Fv Analogue Produced in Escherichia coli,」 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883(1988)を参照されたい);および(8)ラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカなど)の重鎖抗体からの可変抗原結合ドメインに関するVHH(Nguyen V.K.ら,2000,The EMBO Journal,19,921-930;Muyldermans S.,2001、J Biotechnol.,74、277-302およびVanlandschoot P.ら,2011,Antiviral Research 92,389-407の概説を参照されたい)。VHHは、ナノボディ(Nanobody)(Nb)および/または単一ドメイン抗体と呼ばれることもある。これらの抗体断片は当業者に公知の従来技術を使用して得られ、上記の断片の機能を無傷抗体と同じ方法で評価する。
【0114】
本出願において、「可変ドメイン」という用語は通常、抗原エピトープに特異的に結合することが可能な抗体の可変ドメインを指す。例えば、抗体可変ドメインVHおよびVL(VHドメインおよびVLドメイン)である。可変ドメインの別の例は、「VHHドメイン」(または単に「VHH」と呼ばれる)である。「VHHドメイン」は、重鎖単一ドメイン抗体、VHH、VHHドメイン、VHH抗体断片およびVHH抗体とも呼ばれ、「重鎖抗体」(すなわち、「軽鎖を欠いた抗体」)と呼ばれる抗原結合免疫グロブリンの可変ドメインである(Hamers-Casterman C, Atarhouch T, Muyldermans S, Robinson G, Hamers C, Songa EB, Bendahman N, Hamers R.: 「Naturally occurring antibodies devoid of light chains」;Nature 363,446-448(1993))。「VHHドメイン」という用語は、上記の可変ドメインを、従来の4鎖抗体に存在する重鎖可変ドメイン(本出願では「VHドメイン」)、および従来の4鎖抗体に存在する軽鎖可変ドメイン(本出願では「VLドメイン」)と区別するために使用される。VHHドメインは、他の抗原結合ドメインを必要とせずにエピトープに特異的に結合する(これは、エピトープがVLドメインとVHドメインの両方で認識される従来の4鎖抗体におけるVHまたはVLドメインとは対照的である)。
【0115】
本出願において、「可変ドメイン」は通常、同じ一般的な構造を有し、各ドメインは配列が高度に保存された4つのフレームワーク(FR)領域で構成され、ここで、FR領域は、「フレームワーク領域1」または「FR1」、「フレームワーク領域2」または「FR2」、「フレームワーク領域3」または「FR3」、および「フレームワーク領域4」または「FR4」の4つの「フレームワーク領域」を含み、「相補的決定領域1」または「CDR1」、「相補的決定領域2」または「CDR2」、および「相補的決定領域3」または「CDR3」の3つの「相補的決定領域」または「CDR」によって連結されている。可変ドメインの一般的な構造または配列は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4として表されることがある。抗体可変ドメインは、抗原結合部位を有するため、抗体に抗原に対する特異性を与える。
【0116】
本出願において、「CDR」という用語は通常、抗体の可変配列内の相補的性決定領域を指す。重鎖および軽鎖の各可変領域には、3つのCDRがあり、各可変領域についてCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれる。これらのCDRの正確な境界は、異なる系で異なる定義がなされている。Kabatに記載の系(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes ofHealth、Bethesda、Md.(1987)および(1991))は、抗体の任意の可変領域に適用可能な明確な残基番号付けシステムだけでなく、これら3つのCDRを定義する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと呼ばれる。Chothiaおよびその同僚(Chothia&#x26;Lesk、J.MoI.Biol.196:901-917(1987)およびChothiaら、Nature 342:877-883(1989))は、Kabat CDR内のいくつかのサブポーションが、アミノ酸配列レベルでの有意な違いがあるもの、ほぼ同じペプチド骨格コンフォメーションをとることを発見した。これらのサブポーションは、L1、L2およびL3、またはH1、H2およびH3と決定され、ここで「L」と「Hは、軽鎖領域と重鎖領域を意味する。これらの領域は、Chothia CDRと呼ばれる場合があり、Kabat CDRと重複する境界を有している。Kabat CDRと重複するCDRを定義するための他の境界は、Padlan(FASEB J.9:133-139(1995))およびMacCallum(JMoI Biol 262(5):732-45(1996))に記載されている。他のCDR境界は、上記のシステムのいずれかに厳密に従わないかもしれないが、以下の予測や実験的発見に従って短縮または延長されることは可能であるが、依然としてKabat CDRと重複することになる。本願明細書において、特に明示しない限り、「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」および「LCDR3」という用語は、本出願で使用されるように、上記のいずれかの方法(Kabat、ChothiaまたはIMGT)によって定義されるCDRを含む。
【0117】
本出願において、「配列同一性」という用語は通常、配列比較プログラムで比較した場合に、2つまたは複数の比較配列が同一の核酸またはアミノ酸配列を指す。ここで「配列同一性のパーセント」という用語は通常、配列比較プログラムで比較した場合に、2つまたは複数の比較配列間の核酸またはアミノ酸配列の同一性のレベルを指す。アミノ酸またはヌクレオチド間の配列同一性の程度を評価するための方法は、当該技術分野における当業者に公知のものである。例えば、アミノ酸の配列同一性は、通常、配列解析ソフトウェアを使用して測定される。例えば、NCBI データベースのBLAST プログラムを使用して、同一性を決定する。配列同一性の決定については、例えば:Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G.,eds., Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, 20 von Heinje, G., Academic Press, 1987 およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991を参照されたい。
【0118】
本出願において、アミノ酸残基は、例えば、当該技術分野において一般的に公知でありかつ合意されている標準的な3文字または1文字のアミノ酸コードに従って示される。2つのアミノ酸配列を比較する場合、「アミノ酸の差異」という用語は、通常、別の配列と比較した、基準配列のある位置における示された数のアミノ酸残基の挿入、欠失または置換を指す。いくつかの実施形態において、上記の置換は保存的アミノ酸置換であり、上記の保存的アミノ酸は、アミノ酸残基が類似の化学構造でありかつ該ポリペプチドの機能、活性または他の生物学的特性に対して殆ど又は実質的に全く影響を及ぼさない、別のアミノ酸残基で置換されていることを意味する。上記の保存的アミノ酸置換は当該技術分野において周知であり、例えば保存的アミノ酸置換は好ましくは、以下の(i)~(v)群内の1つのアミノ酸が同じ群内の別のアミノ酸残基によって置換されている置換である:(i)小型の脂肪族であるか、非極性であるか、又は僅かに極性である残基:Ala、Ser、Thr、Pro、およびGly;(ii)極性で負に荷電した残基およびそれらの(非荷電)アミド:Asp、Asn、GluおよびGln;(iii)極性で正に荷電した残基:His、ArgおよびLys;(iv)大型の脂肪族で非極性残基:Met、Leu、Ile、ValおよびCys;ならびに(v)芳香族残基:Phe、TyrおよびTrp。特に好ましい保存的アミノ酸置換は以下の通りである:例えば、AlaからGly またはSerへ;ArgからLysへ;AsnからGlnまたはHisへ;AspからGluへ;CysからSerへ;Glnから Asnへ;GluからAspへ;GlyからAlaまたはProへ;HisからAsnまたはGlnへ;IleからLeuまたはValへ;LeuからIleまたはValへ;LysからArg、GlnまたはGluへ;MetからLeu、TyrまたはIleへ;PheからMet、LeuまたはTyrへ;SerからThrへ;ThrからSerへ;TrpからTyrへ;TyrからTrpまたはPheへ;ValからIleまたはLeuへ。いくつかの実施形態において、上記の置換は、AlaからAsp、Asn、GluまたはGinへ置換されるような非保存的アミノ酸置換である。
【0119】
本出願において、「親和性」という用語は通常、分子(例えば、ポリペプチドや抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、標的や抗原)との間の非共有結合的相互作用の強さの合計を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(Kd)で表すことができる。親和性は、表面プラズモン共鳴のような当該技術分野に公知の従来方法で測定することができ、本出願に開示されているそれらの方法も含まれる。分子Xのその結合パートナーYに対する親和性が高いほど、Kd値および/またはEC50値が低くなる。
【0120】
本出願において、「単離された」という用語は通常、その天然の状態で通常結合している他の分子(例えば抗体、核酸など)から少なくとも部分的に単離された分子を指す。「単離されたポリペプチド」には、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、細胞破片、増殖培地などの他の生体分子が本質的に含まれていない。「単離された核酸」は通常、その自然の発見と異なる形態や状況で存在する。
【0121】
本出願において、「免疫複合体」という用語は通常、抗体またはその抗体断片を化学療法剤、毒素、免疫療法剤、放射性元素、イメージングプローブ、分光プローブなどの他の活性剤に結合することによって形成される複合体を指す。上記の結合は、共有結合、または静電気力などによる非共有結合的相互作用であり得る。免疫複合体は、当該技術分野に公知の様々なリンカーによって形成されてよい。該複合体は、上記の抗体またはその抗原結合断片と標的細胞上の抗原との特異的結合によって、上記の他の試薬を標的細胞(例えば、腫瘍細胞)に送達することができる。なお、該免疫複合体は、該免疫複合体をコードするポリヌクレオチドから発現可能である融合タンパク質の形態で与えられてもよい。
【0122】
本出願において、「キレート剤」という用語は通常、金属イオンと錯体を形成することができる有機分子を指す。キレート剤は、タンパク質やペプチドの標識に使用されることが多い。金属イオン複合体の最終産物は放射線免疫検出、放射線免疫療法、磁気共鳴画像法、光線力学的療法または他の同様の手法に使用されている。キレート剤または錯化剤の非限定的な例は、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸無水物)およびその誘導体、NODA-GA(NODAGA)、Maleimide-NODAGAなどのNOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N’’-三酢酸)およびその誘導体、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸)(放射性金属イオンと結合)およびその誘導体、TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸)およびその誘導体、DTTA(N-(p-ベンジルイソチオシアネート)-ジエチレントリアミン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸)である。これらのキレート剤や他のキレート剤は、市販品から容易に入手可能である。
【0123】
本出願において、「薬学的に許容される担体」という用語は通常、活性成分の生物学的活性の有効性を阻害しない1種以上の非毒性物質を指す。このような製剤は、従来、塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、および場合により他の治療剤を含み得る。このような薬学的に許容される製剤は、ヒトへの投与に適した適合性固体や液体充填剤、希釈剤またはカプセル化剤も含み得る。本明細書に記載の調製物に使用され得る他の想到される担体、賦形剤、および/または添加剤は、例えば、調味料、バイオサイド、甘味料、酸化防止剤、帯電防止剤、脂質、タンパク質賦形剤(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、カゼイン)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)などを含む。本明細書に記載の調製物に使用するのに適したこれらおよび他の公知の医薬品担体、賦形剤および/または添加剤は、当該技術分野に公知であり、例えば、「レミントン薬科学(Remington:The Science &#x26; Practice of Pharmacy)」、第21版、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス出版社(Lippincott Williams &#x26; Wilkins)(2005)および「医師用卓上参考書(Physician’sDesk Reference)」、第60版、医療経済学出版社(Medical Economics)、モントベール(Montvale)、ニュージャージー(2005)に見られ得る。薬学的に許容される担体は、従来の通りに、所望または要求される投与態様、溶解度および/または安定性に応じて選択され得る。
【0124】
本出願において、「投与(administer)」という用語および同様の用語は、一般的に、体への投与に限定されず、適切な方法として、インビトロ、インビトロに続いてインビボまたはインビボの方法が含まれる。例えば、当該技術分野における当業者に公知の細胞、臓器または組織を組成物に接触させる任意の投与方法を使用できる。例えば、上記の化合物は、任意の導入または送達経路を介して治療を必要とする被験者の体内に導入され得る。いくつかの実施形態において、本出願の組成物は、経口、局所、鼻腔内、筋肉内、皮下、皮内、くも膜下腔内、腹腔内または経皮的に投与することができる。
【0125】
本出願において、「エクスビボ」と「インビトロ」という用語は互換的に使用され、一般的に、制御された環境において被験者の体内から取り出された細胞、組織および/または臓器で行われる動きを指す。
【0126】
本出願において、「診断」という用語は通常、疾患や病気の検出、または疾患や病気の状態もしくは程度の測定を指す。「診断」という用語は、疾患または病気の原因の検出、医薬品による治療効果の測定、または医薬品治療に対する反応様式の予測も含まれる場合がある。
【0127】
本出願において、「治療」という用語は通常、(i)疾患、病気および/または病状に罹患しやすいが診断されていない患者における疾患、病気および/または病状の発生を予防すること;(ii)該疾患、病気または病状を抑制し、すなわちその進行を阻止すること;および(iii)該疾患、病気または病状を緩和し、すなわち該疾患、病気および/または病状ならびに/あるいは該疾患、病気および/または病状に関連する症状を退行させることを指す。
【0128】
本出願において、「腫瘍」と「がん」という用語は互換的に使用され、一般的に、新生性または悪性の細胞の増殖を指す。本出願の腫瘍は、良性であっても悪性であってもよい。本出願の腫瘍は、固形腫瘍であっても非固形腫瘍であってもよい。
【0129】
本出願において、「被験者」という用語は通常、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、マウス、ラット、サルなどが含まれるがこれらに限定されないヒトまたは非ヒト動物を指す。
【0130】
本出願において、「約」という用語は通常、指定された値の上下0.5%-10%の範囲、例えば指定された値の上下約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、または約10%の範囲に変動するものを指す。
【0131】
本出願において、「含む」という用語および「含有」、「有する」などを含むその変形形態は通常、他のコンポーネント、要素、値、ステップなどを含めることを指す。
【0132】
[発明の詳細な説明]
CD8α結合ポリペプチド
一方、本出願は、少なくとも1つの可変ドメインを含むCD8α結合ポリペプチドであって、上記の可変ドメインのアミノ酸配列がSEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列と比較して、1または複数個のアミノ酸が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列を有するCD8α結合ポリペプチドを提供した。
【0133】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、1つまたは2つまたは3つの可変ドメインを含み得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 1に対して、1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10つ、または11つ、または12つ、または13つ、または14つ、または15つ、または16つ、または17つ、または18つ、または19つ、または20つのアミノ酸が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列を有し得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインのアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列と比較して、1または複数個のアミノ酸の置換を含み、そして、保存的および/または非保存的置換を含み得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、アミノ酸変異は、標的化部分のCDR(例えば、CDR1領域、CDR2領域またはCDR3領域)にあり得る。別の実施形態において、アミノ酸変化は、標的化部分のフレームワーク領域(FR)(例えば、FR1領域、FR2領域、FR3領域またはFR4領域)にあり得る。
【0137】
アミノ酸配列の改変は、部位特異的変異導入またはPCRに基づく変異誘発などの当該技術分野に公知の任意の技術を用いて達成することができる。このような技術は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y.,1989、およびAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley&Sons, New York, N.Y.,1989の文献に詳細に記載されている。
【0138】
いくつかの実施形態において、上記の置換、欠失または付加は、本出願のCD8α結合ポリペプチドがCD8αに特異的に結合する能力を実質的に低下させない。
【0139】
本出願のCD8α結合ポリペプチドは、平衡解離定数(KD)を、ヒトCD8αの完全長および/または成熟型および/またはアイソフォームおよび/またはスプライス変異体および/または断片および/または他の天然に存在するまたは合成される任意のアナログ、変異体または突然変異体(単量体、二量体、ヘテロ二量体、多量体および/または関連形態を含む)に対する結合親和性を記述するために使用することが可能である。上記のCD8α結合ポリペプチドは、ヒトCD8αの完全長および/または成熟型および/またはアイソフォームおよび/またはスプライス変異体および/または断片および/または他の天然に存在するまたは合成される任意のアナログ、変異体または変異体(単量体、二量体、ヘテロ二量体、多量体および/または関連形態を含む)に結合する標的化部分を含み得、ここでKDが約1uM、約900nM、約800nM、約700nM、約600nM、約500nM、約400nM、約300nM、約200nM、約100nM、約90nM、約80nM、約70nM、約60nM、約50nM、約40nM、約30nM、約20nM、約10nM、または約5nM、または約1nM未満である。
【0140】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、以下の特性のうちの1または複数の特性を有し得る:
(i)PROTEIN Aアフィニティークロマトグラフィーカラムの充填剤に結合することが可能であること、
(ii)SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、同じまたはそれ以上の親和性でCD8αに結合することが可能であること、
(iii)SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、上昇した発現レベルを有すること、および
(iv)SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、等電点が上昇すること。
【0141】
いくつかの実施形態において、本出願のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、発現が約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上であり得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体(C37と称する)の等電点(PI)値は4.56であり、上記のCD8α結合ポリペプチドのPI値は、4.56以上である。例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドのPI値は、約5、約5.5、約6.0、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、または約7であり得る。
【0143】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0144】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体および/または完全ヒト抗体を含み得る。
【0145】
いくつかの実施形態において、上記の抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFv、VHHおよび/またはdAbを含み得る。例えば、上記の抗体またはその抗原結合断片は、VHHであり得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、上記のVHHは、特定の生物学的供給源または特定の調製方法に限定されない。例えば、上記のVHHは、一般的に(1)天然に存在する重鎖抗体のVHHドメインを単離こと、(2)天然に存在するVHHドメインをコードするヌクレオチド配列を発現すること、(3)天然に存在するVHHドメインを「ヒト化」するか、またはこのようなヒト化VHHドメインをコードする核酸を発現すること、(4)任意の動物種、特にヒトのような哺乳類由来の天然に存在するVHドメインを「ラクダ化」するか、またはこのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸を発現すること、(5)例えば、当該技術分野に記述の「ドメイン抗体」または「Dab」を「ラクダ化」するか、またはこのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸を発現すること、(6)当該技術分野に公知のタンパク質、ポリペプチドまたは他のアミノ酸配列を、合成または半合成の技術により調製すること、(7)VHHをコードする核酸を、当該技術分野に公知の核酸合成技術により調製し、続いてそのようにして得られた核酸を発現すること、および/または(8)1またはそれ以上の上記のことを任意に組み合わせることによって得られることができる。
【0147】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、「ラクダ化」されており、すなわち、従来の4鎖抗体の天然に存在するVHドメインのアミノ酸配列中の1または複数個のアミノ酸残基を、ラクダ重鎖抗体のVHHドメイン中の対応する位置に存在する1または複数個のアミノ酸残基のVHHで置換することによって「ラクダ化」されている。いくつかの実施形態において、このような「ラクダ化」置換は、VH-VLの界面に形成および/または存在するアミノ酸の位置および/またはいわゆるラクダ科のホールマーク残基に挿入される(例えばWO9404678を参照し、当該文献がすべて参照により本出願に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、ラクダ化VHHを産生または設計するための出発物質または出発点として使用されるVH配列は、VH3配列のようなヒトVH配列などの哺乳動物由来のVH配列である。上記のラクダ化VHHは、当該技術分野に公知の任意の適切な方法(すなわち、例えば以上の(1)~(8)の点に従って)によって得ることができ、したがって、天然に存在するVHドメインを出発物質として含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドに厳密に限定されるものではない。
【0148】
いくつかの実施形態において、上記のVHHは、ラクダ科、キメラ、ヒト、部分ヒト化、または完全ヒト化であり得る。
【0149】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、「ヒト化」されており、すなわち、天然に存在するVHH配列のアミノ酸配列中(具体的には、フレームワーク配列中)の1または複数個のアミノ酸残基を、ヒト由来の従来の4鎖抗体のVHドメイン中の対応する位置に存在する1または複数個のアミノ酸残基のVHHで置換することによって「ヒト化」されている。これは、当該技術分野に公知のヒト化技術で行われることができる。いくつかの実施形態において、ヒト化可能な置換またはヒト化置換の組み合わせは、例えば、VHHの配列と天然に存在するヒトVHドメインの配列間の比較を行うするなどの当該技術分野に公知の方法によって特定されることができる。いくつかの実施形態において、上記のヒト化置換は、得られるヒト化VHHが有利な機能特性を依然として保持するように選択される。一般的に、ヒト化の結果として、本出願のVHHは対応する天然に存在するVHHドメインと比べてより「ヒトらしい」なりつつも、免疫原性低下などの有利な特性を保持している。本出願のヒト化VHHは、当該技術分野に公知の任意の適切な方法によって得ることができ、したがって、天然に存在するVHHドメインを出発物質として含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドに厳密に限定されるものではない。
【0150】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 14で表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み得る。上記のCDRは、Kabat CDR、AbM CDR、Chothia CDR またはContact CDRであり得る。いくつかの実施形態において、上記のCDR は、Chothia CDRである。
【0151】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 15またはSEQ ID NO: 16で表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み得る。
【0152】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 19で表されるアミノ酸配列を有するCDR1を含み得る。
【0153】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 17またはSEQ ID NO: 18で表されるアミノ酸配列を有するCDR1を含み得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 23で表されるアミノ酸配列を有するCDR2を含み得る。
【0155】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21またはSEQ ID NO: 22で表されるアミノ酸配列を有するCDR2を含み得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 27で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25またはSEQ ID NO: 26で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0158】
例えば、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 19で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 23で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 27で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み得る。
【0159】
例えば、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 17で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 20で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 24で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み得る。
【0160】
例えば、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 17で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 20で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 28で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み得る。
【0161】
例えば、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 18で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO: 23で表されるアミノ酸配列を有するCDR2およびSEQ ID NO: 26で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み得る。
【0162】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、
(a)E30;(b)S60;(c)E62;(d)S72;(e)Q78;(f)I83;(g)T85;(h)D109、および(i)M112からなる群から選択される1または複数の位置でアミノ酸置換を含み得る。
【0163】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、(b)S60;(c)E62;(e)Q78;(f)I83、および(g)T85の位置でアミノ酸置換を含み得る。
【0164】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、(d)S72;(f)I83;および/または(h)D109の位置でアミノ酸置換を含み得る。
【0165】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、(a)E30;および/または(i)M112の位置でアミノ酸置換を含み得る。
【0166】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、(a)E30;(b)S60;(c)E62;(d)S72;(e)Q78;(f)I83;(g)T85;(h)D109、および(i)M112の位置でアミノ酸置換を含み得る。
【0167】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、
(a)E30S、E30G、E30TまたはE30Y;(b)S60Y;(c)E62D;(d)S72R、S72HまたはS72K;(e)Q78HまたはQ78T;(f)I83M;(g)T85S;(h)D109A、D109V、D109L、D109I、D109G、D109SまたはD109T、および(i)M112L、M112A、M112V、M112I、M112G、M112SまたはM112Lからなる群から選択される1または複数のアミノ酸置換を含み得る。
【0168】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、
(a)E30S;(b)S60Y;(c)E62D;(d)S72R;(e)Q78H;(f)I83M;(g)T85S;(h)D109A、および(i)M112Lからなる群から選択される1または複数のアミノ酸置換を含み得る。
【0169】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、
(i)S60Y/E62D/Q78H/I83M/T85Sのアミノ酸置換;
(ii)S72R、T85S、D109A、S72R/D109AまたはS72R/T85S/D109Aのアミノ酸置換、および
(iii)E30S/M112Lのアミノ酸置換からなる1群または複数の群から選択されるアミノ酸置換を含み得る。
【0170】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、S60Y、E62D、Q78H、I83MおよびT85Sのアミノ酸置換を含み得る。
【0171】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、S72R、T85S、D109Aのアミノ酸置換を含み得る。
【0172】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、E30S、M112Lのアミノ酸置換を含み得る。
【0173】
また、例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、E30S、S60Y、E62D、S72R、Q78H、I83M、T85S、D109A、M112Lのアミノ酸置換を含み得る。
【0174】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、ヒト化されえる。
【0175】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、
(a)L2;(b)A14;(c)G56;(d)N57;(e)A75;(f)K87;(g)P88、および(h)K117からなる群から選択される1または複数の位置でアミノ酸置換を含み得る。
【0176】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、(a)L2;(b)A14;(e)A75;(f)K87および(g)P88の位置でアミノ酸置換を含み得る。
【0177】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、(a)L2;(b)A14;(e)A75;(f)K87;(g)P88、および(h)K117の位置でアミノ酸置換を含み得る。
【0178】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、(a)L2;(b)A14;(c)G56;(e)A75;(f)K87;(g)P88、および(h)K117の位置でアミノ酸置換を含み得る。
【0179】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、(a)L2;(b)A14;(d)N57;(e)A75;(f)K87;(g)P88、および(h)K117の位置でアミノ酸置換を含み得る。
【0180】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、
(a)L2V;(b)A14P;(c)G56R;(d)N57R;(e)A75S;(f)K87R;(g)P88A、および(h)K117Qからなる群から選択される1または複数のアミノ酸置換を含み得る。
【0181】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、L2YおよびA14Pのアミノ酸置換を含み得る。
【0182】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、A75S、K87R、P88Aおよび/またはK117Qのアミノ酸置換をさらに含み得る。
【0183】
例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、G56Rおよび/またはN57Rのアミノ酸置換をさらに含み得る。
【0184】
また、例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、L2Y、A14P、A75S、K87RおよびP88Aのアミノ酸置換を含み得る。
【0185】
また、例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有する参照抗体と比較して、可変ドメインが、L2Y、A14P、E30S、S60Y、E62D、S72R、A75S、Q78H、I83M、T85S、K87R、P88A、D109AおよびM112Lのアミノ酸置換を含み得る。
【0186】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 14で表されるアミノ酸配列を有する。
【0187】
例えば、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 15またはSEQ ID NO: 16で表されるアミノ酸配列を有する。
【0188】
いくつかの実施形態において、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 12またはSEQ ID NO: 13に対して少なくとも約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0189】
また、例えば、上記の可変ドメインは、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 12またはSEQ ID NO: 13で表されるアミノ酸配列を有する。
【0190】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、1つの可変ドメインを含み得る。例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 12またはSEQ ID NO: 13に対して少なくとも約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0191】
また、例えば、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 12またはSEQ ID NO: 13で表されるアミノ酸配列を有する。
【0192】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドのC末端は、システイン改変をさらに含み得る。
【0193】
いくつかの実施形態において、上記のシステイン改変は、C、VDC、(GG)nCまたは(GS)mCの形態を含み得、ここでnまたはmはそれぞれ独立して1、2、3および4から選択される。
【0194】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、1つの可変ドメインを含み得る。
【0195】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 31またはSEQ ID NO: 32で表されるアミノ酸配列を有する。
【0196】
核酸、ベクターおよび細胞
他方、本出願は、上記のCD8α結合ポリペプチドをコードすることが可能な単離された核酸分子を提供した。
【0197】
いくつかの実施形態において、上記の核酸は、抗体を含むVLのアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードすることが可能である。いくつかの実施形態において、上記の核酸は、抗体を含むVHHのアミノ酸配列をコードすることが可能である。いくつかの実施形態において、抗CD8α重鎖可変領域をコードする単離された核酸であって、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 12またはSEQ ID NO: 13をコードする核酸配列に対して少なくとも約90%、91% 、92% 、93% 、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%配列同一性を有する配列を有する単離された核酸を提供した。
【0198】
他方、本出願は、上記の核酸分子を含むベクターを提供した。
【0199】
他方、本出願は、上記の核酸分子または上記のベクターを含む細胞を提供した。
【0200】
本出願のCD8α結合ポリペプチドをコードする核酸は、宿主細胞にトランスフェクション、形質転換または形質導入の技術により導入することができる発現ベクターに組み込む(連結する)ことができる。例えば、本出願のCD8α結合ポリペプチドをコードする核酸は、逆転写ウイルス形質導入によって宿主細胞に導入されることができる。1つの実施形態において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ様細胞(例えばY0,NS0、Sp20細胞)のような真核細胞である。1つの実施形態において、宿主細胞は、大腸菌細胞のような原核細胞である。
【0201】
他方、本出願は、CD8α結合ポリペプチドを生成する方法であって、CD8α結合ポリペプチドの発現に適した条件下で、例えば、本明細書で提供される抗体をコードする核酸を含む細胞を培養すること、および細胞(または細胞培養液)から上記のCD8α結合ポリペプチドを任意に回収することを含む方法を提供した。
【0202】
いくつかの実施形態において、上記の方法は、上記のCD8α結合ポリペプチドを精製および/または改変することをさらに含み得る。
【0203】
具体的な発現や精製条件は、用いられる発現系によって変化する。例えば、遺伝子を大腸菌で発現させる場合、まず、操作された遺伝子を、TrpやTacなどの適切な細菌プロモーターと原核生物のシグナル配列の下流に配置することで発現ベクターにクローニングする。別の例では、操作された遺伝子をCHO細胞などの真核細胞で発現する場合、まず、それを例えば適切な真核プロモーター、分泌シグナル、エンハンサー、および様々なイントロンを含む発現ベクターに挿入する。遺伝子構築物は、トランスフェクション、形質転換、または形質導入技術を用いて宿主細胞に導入することができる。
【0204】
本出願のCD8α結合ポリペプチドは、インビボ、例えば患者において発現させることもできる。例えば、いくつかの実施形態において、本出願のCD8α結合ポリペプチドは、本出願のCD8α結合ポリペプチドをコードする核酸の形態で投与することができる。上記の核酸は、DNAまたはRNAであり得る。いくつかの実施形態において、本出願のCD8α結合ポリペプチドは、改変されたmRNA、すなわち1または複数の改変されたヌクレオチドを含むmRNAによってコードされる。いくつかの実施形態において、本出願は、上記の改変されたmRNAを含む遺伝子治療ベクターに関する。いくつかの実施形態において、本出願は、上記の遺伝子治療ベクターを含む遺伝子治療方法に関する。いくつかの実施形態において、上記の核酸は、アデノウイルス、レオウイルス、麻疹、単純ヘルペス、ニューカッスル病ウイルスまたはワクシニアウイルスなどの腫瘍溶解性ウイルスの形態で表される。
【0205】
免疫複合体
他方、本出願は、上記のCD8α結合ポリペプチドを含む免疫複合体を提供した。
【0206】
いくつかの実施形態において、上記の免疫複合体は、上記のCD8α結合ポリペプチドに結合する少なくとも1種の検出可能な標識をさらに含む。
【0207】
いくつかの実施形態において、上記の検出可能な標識は、放射性核種、蛍光剤、化学発光剤、生物発光剤、常磁性イオンおよび酵素からなる群から選択され得る。
【0208】
複合体化に使用可能な蛍光剤は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、および蛍光アミンが含まれるがこれらに限定されなく、複合体化に使用可能な化学発光剤は、ルミノール、イソルミノール、芳香族のアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルが含まれるがこれらに限定されなく、複合体化に使用可能な生物発光剤は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンが含まれるがこれらに限定されない。複合体化に使用可能な常磁性イオンは、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)、または、バリウム、ジアトリゾ酸、エチオダイズド油、クエン酸ガリウム、イオカルム酸、イオセタム酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパノ酸、イオプロセム酸、イオセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオタズル、イオテトル酸、イオタラム酸、イオトロクス酸、イオキサグル酸、イオキソトリゾ酸、イポダート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾ酸、プロピリオドンおよびタリウム酸化物などの放射線不透過性材料が含まれるがこれらに限定されない。複合体化に使用可能な酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0209】
いくつかの実施形態において、上記の検出可能な標識は、放射性核種であり得る。複合体化に使用可能な放射性核種は、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、67Cu、67Ga、68Ga、68Ge、86Y、90Y、89Zr、94mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154-158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、72As、75Br、76Br、82mRb、83Srまたはその他のγ-、β-あるいは陽電子放出体が含まれるがこれらに限定されない、20~4000KeVの間のエネルギーを有する放射性核種であり得る。
【0210】
いくつかの実施形態において、上記の検出可能な標識は、68Gaまたは125Iであり得る。
【0211】
検出可能な標識をポリペプチドに複合体化する方法は、当該技術分野における当業者に周知である。例えば、いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドは、キレート剤を介して上記の検出可能な標識に複合することが可能である。
【0212】
いくつかの実施形態において、本出願のCD8α結合ポリペプチドを68Gaのような放射性核種で標識するためには、本出願のCD8α結合ポリペプチドを、イオンを結合するための複数の統合基が組み込まれた長いテールを持つ試薬と反応させる必要がある。そのようなテールは、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラカルボン酸)、NOTA、TETA、NETA、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビスチオセミカルバゾン、ポリオキシムおよびそのような目的に有用であることが知られている類似の基のような、キレート基を組み込むことができる側基を有する誘導体化または誘導体化可能な鎖を有するポリリシン、多糖または他のポリマーである。
【0213】
いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、キレート剤を介して本出願のCD8α結合ポリペプチドに複合体化している。使用するキレート剤は、DTPA、EDTA、NOTA、DOTA、TRAP、TETA、NETA、CB-TE2A、Cyclen、Cyclam、Bispidine、TACN、ATSM、SarAr、AmBaSar、MAG3、MAG2、HYNIC、DADT、EC、NS3、H2dedpa、HBED、DFO、PEPAまたはHEHAおよびそれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。
【0214】
いくつかの実施形態において、上記の検出可能な標識は、68Gaであり得る。
【0215】
いくつかの実施形態において、上記のキレート剤は、NOTAまたはその誘導体であり得る。例えば、上記の検出可能な標識は68Ga、上記のキレート剤はNOTAであり得る。例えば、上記の検出可能な標識は68Ga、上記のキレート剤はNODAGAであり得る。
【0216】
他方、本出願は、本出願の68Ga標識免疫複合体などの放射性核種を調製する方法であって、1)本出願のCD8α結合ポリペプチドをキレート剤に複合体化することによって、上記のCD8α結合ポリペプチドとキレート剤との複合体を生成するステップと、および2)ステップ1)の産物を68Gaなどの放射性核種に接触させることによって、68Gaなどの放射性核種が、キレート剤のキレート化により本出願のCD8α結合ポリペプチドを標識するステップとを含む方法を提供した。いくつかの実施形態において、上記のキレート剤は、NOTAであり、かつ、ステップ1)で上記のCD8α結合ポリペプチドをp-SCN-Bn-NOTAまたはp-NH2-Bn-NOTAと反応させることにより上記のCD8結合ポリペプチドとNOTAとの複合体を生成する。別のいくつかの実施形態において、上記のキレート剤は、NODAGAであり、かつ、ステップ1)で上記のCD8α結合ポリペプチドをMaleimide-NODAGAと反応させることにより上記のCD8結合ポリペプチドとNODAGAとの複合体を生成する。
【0217】
他方、本出願は、本出願の125I標識複合体化分子を調製する方法であって、1)本出願のCD8α結合ポリペプチドを、クロラミンTの存在下で125Iと反応させること、および2)反応をメタ重亜硫酸ナトリウムで停止させることを含む方法を提供した。
【0218】
組成物
他方、本出願は、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の細胞および/または上記の免疫複合体、ならびに任意で薬学的に許容される担体を含む組成物を提供した。
【0219】
本出願に記載のCD8α結合ポリペプチドは、薬学的に許容される塩を形成するために、無機酸もしくは有機酸と反応するのに十分な塩基性を有する官能基、または無機塩基または有機塩基と反応できるカルボキシル基を有し得る。例えば、当該技術分野で周知のように、薬学的に許容される酸付加塩は、薬学的に許容される酸から形成される。このような塩は、例えば、Journal of Pharmaceutical Science ,66 ,2-19(1977)、およびThe Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties, Selection, and Use. P. H. StahlおよびC.G. Wermuth(eds.), Verlag, Zurich(Switzerland)2002の文献に記載の薬学的に許容される塩を含み、上記の文献が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、本出願に記載の組成物は薬学的に許容される塩の形態である。
【0220】
本出願に記載の組成物はいずれも、薬学的に許容される担体を含む組成物のコンポーネントとして被験者に投与することができる。このような組成物は、適切な投与のための形態を提供するために、適切な量の薬学的に許容される賦形剤を任意に含み得る。
【0221】
医薬品賦形剤は、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などの、石油、動物、植物または合成由来のものを含む、水や油などの液体であってもよく。上記の医薬品賦形剤は、例えば生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、糊化デンプン、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などであり得る。なお、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤を使用することができる。1つの実施形態において、上記の薬学的に許容される賦形剤は被験者に投与されるとき、無菌である。本出願に記載の製剤のいずれかを静脈内投与する場合、水は有用な賦形剤である。生理食塩水、グルコース水溶液およびグリセロール水溶液も、特に注射液用の液体賦形剤として採用することができる。適切な医薬品賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリル、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、エチレングリコール、水、エタノールなども含まれる。適切な医薬品賦形剤の他の例として、Remington’s Pharmaceutical Sciences 1447-1676(Alfonso R .Gennaro編,第19版,1995)に記載されており、上記の文献が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0222】
本出願は、記載されている組成物(および/または他の治療剤)の様々な調製物の形態を含む。本明細書に記載される本発明の組成物(および/または他の治療剤)はいずれも、溶液、懸濁液、乳液、滴下剤、錠剤、丸薬、エリキシル剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、ゼラチンカプセル剤、粉末剤、徐放性調合剤、坐剤、乳液、エアロゾル剤、スプレー剤、懸濁液、凍結乾燥剤、凍結懸濁液、乾燥粉末剤、または任意の他の適切な形態であってもよい。1つの実施形態において、上記の組成物はカプセル剤の形態である。別の実施形態において、上記の組成物はトローチの形態である。別の実施形態において、上記の組成物はソフトゲルカプセルの形態で製剤化される。別の実施形態において、上記の組成物はゼラチンカプセルの形態で製剤化される。別の実施形態において、上記の組成物は液体として製剤化される。
【0223】
本出願に記載の組成物はいずれも、従来の手順に従って本出願に記載の投与様式に適した組成物に製剤化される。
【0224】
投与経路には、例えば、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、舌下、鼻腔内、脳内、くも膜下腔内、経皮、直腸、吸入または局所を含む。投与は、局所もしくは全身の投与であり得る。いくつかの実施形態において、上記の投与は、経口によるものである。別の実施形態において、上記の投与は、非経口注射によるものである。投与様式は医師の判断に任され、医学的な病状の部位に部分的に依存する。
【0225】
いくつかの実施形態において、上記の組成物は、本出願の免疫複合体を含み、検出薬であり得る。いくつかの実施形態において、上記の検出薬は、造影剤であり得る。例えば、上記の造影剤は、ECT造影剤であり得る。また、例えば、上記のECT造影剤は、SPECT造影剤またはPET造影剤を含み得る。
【0226】
検出/診断使用
他方、本出願は、腫瘍を監視、予防、緩和および/または治療するための医薬品の調製における、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の核酸分子、上記のベクター、上記の細胞、上記の免疫複合体および/または上記の組成物の使用を提供した。
【0227】
他方、本出願は、CD8陽性細胞を検出するための検出薬の調製における、本出願のCD8α結合ポリペプチドまたは本出願の免疫複合体の使用を提供した。いくつかの実施形態において、上記の検出薬は、被験体内の組織におけるCD8陽性細胞の存在および/または量を検出するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記の組織は、腫瘍組織である。いくつかの実施形態において、上記のCD8陽性細胞は、CD8陽性T細胞であり得る。いくつかの実施形態において、上記の検出薬は、造影剤であり得る。いくつかの実施形態において、上記の造影剤は、SPECT造影剤やPET造影剤などのECT造影剤であり得る。
【0228】
他方、本出願は、生物学的試料中のCD8の存在および/または量を検出する方法であって、上記の生物学的試料を上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の免疫複合体、上記の組成物または上記の検出薬に接触させることを含む方法を提供した。
【0229】
いくつかの実施形態において、上記の接触はインビトロまたはエクスビボで行われ得る。
【0230】
いくつかの実施形態において、上記の生物学的試料は組織であり得る。
【0231】
いくつかの実施形態において、上記の組織は、血液組織、リンパ組織および腫瘍組織からなる群から選択され得る。
【0232】
いくつかの実施形態において、上記の方法は、生物学的試料中のCD8陽性細胞の存在および/または量を検出することを含み得る。
【0233】
いくつかの実施形態において、生物学的試料中のCD8陽性細胞の存在および/または量は、イメージングにより特定され得る。
【0234】
いくつかの実施形態において、生物学的試料中のCD8陽性細胞の存在および/または量は、フローサイトメトリーにより特定され得る。
【0235】
いくつかの実施形態において、上記のCD8陽性細胞は、CD8陽性T細胞であり得る。
【0236】
他方、本出願は、CD8関連疾患または病気を検出および/または診断する方法であって、それを必要とする被験者に、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の免疫複合体、上記の組成物または上記の検出薬を投与することを含み得る方法を提供した。
【0237】
いくつかの実施形態において、上記の方法は、上記の被験者をイメージングすることをさらに含み得る。
【0238】
いくつかの実施形態において、上記のイメージングは、ECTイメージングを含み得る。
【0239】
いくつかの実施形態において、上記のECTイメージングは、SPECTイメージングまたはPETイメージングを含み得る。
【0240】
いくつかの実施形態において、上記のCD8関連疾患または病気は、腫瘍を含み得る。
【0241】
他方、本出願は、腫瘍を治療する方法であって、
1)必要とする被験者に、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の免疫複合体、上記の組成物または上記の検出薬を投与すること、および
2)上記の被験者の腫瘍がCD8陽性細胞を含むか否かを特定すること
を含み
ここで、上記の腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在が検出された場合、上記の被験者に、抗腫瘍療法を投与する方法を提供した。
【0242】
他方、本出願は、被験者における抗腫瘍療法の有効性を監視するするための方法であって、
1)腫瘍を患い、抗腫瘍療法で治療される被験者に、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の免疫複合体、上記の組成物または上記の検出薬を投与すること、および
2)上記の被験者の腫瘍におけるCD8陽性細胞の量を特定することを含む方法を提供した。
【0243】
いくつかの実施形態において、上記の被験者の腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在および/または量は、イメージングにより特定される。
【0244】
いくつかの実施形態において、上記の抗腫瘍療法は、免疫チェックポイント阻害剤療法である。
【0245】
いくつかの実施形態において、上記の抗腫瘍療法は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、LAG3阻害剤、別のT細胞共阻害剤またはリガンドのアンタゴニスト、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、Ang2阻害剤、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)阻害剤、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、CD20阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、腫瘍特異的抗原に対するワクチン、抗原提示を増強させるアジュバント、二重特異性抗体、細胞毒素、化学療法剤、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤、IL-4R阻害剤、IL-10阻害剤、サイトカインおよび抗体薬物複合体(ADC)の投与からなる群から選択され得る。
【0246】
いくつかの実施形態において、上記の腫瘍は、固形腫瘍を含み得る。
【0247】
いくつかの実施形態において、上記の固形腫瘍は、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、膀胱癌、肛門癌、子宮癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮内膜癌、骨癌、精巣癌、皮膚癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、唾液腺癌および骨髄腫からなる群から選択され得る。
【0248】
他方、本出願は、CD8陽性細胞を単離するための方法であって、CD8陽性細胞を含む細胞集団を、上記のCD8α結合ポリペプチドまたは上記の免疫複合体に接触させ、上記のCD8α結合ポリペプチドまたは上記の免疫複合体に結合したCD8陽性細胞を回収することを含み得る方法を提供した。
【0249】
いくつかの実施形態において、上記のCD8陽性細胞は、CD8陽性T細胞であり得る。
【0250】
いくつかの実施形態において、上記のCD8陽性細胞を含む細胞集団は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)であり得る。
【0251】
いくつかの実施形態において、上記のCD8α結合ポリペプチドまたは上記の免疫複合体は、固体の表面に固定化され得る。
【0252】
いくつかの実施形態において、上記の固体は、ゲルまたは磁気ビーズを含み得る。
【0253】
他方、本出願は、上記のCD8α結合ポリペプチド、上記の免疫複合体または上記の組成物を含み得るキットを提供した。
【0254】
上記のキットには、取扱説明書が含まれ得る。取扱説明書は、典型的には、上記のキットの構成要素を使用して、癌の治療などの所望の治療結果を達成するために採用されるべき技術を記載する有形的表現を含む。上記のキットは、任意に、希釈剤、緩衝剤、薬学的に許容される担体、シリンジ、カテーテル、アプリケーター、ピペットまたは測定具、包材または他の有用な付属品などの、当該技術分野における当業者に容易に理解される他の有用なコンポーネントも含む。
【0255】
キットに組み込まれた材料およびコンポーネントは、操作性および有用性を維持する任意の便利で適切な方法で保管するために当業者に提供されることができる。例として、これらのコンポーネントは室温、冷蔵温度、冷凍温度で提供され得る。これらのコンポーネントは、典型的に、適切な包材に含まれている。いくつかの実施形態において、包材は、好ましくは無菌で汚染のない環境を提供するために、周知の方法によって構築される。包材は、上記のキットおよび/またはそのコンポーネントの内容物および/または目的を示す外部ラベルを有していてもよい。
【0256】
以下の実施形態は、いかなる理論によっても限定されることを意図することなく、本出願の抗体、調製方法および使用などを解釈することのみを意図しており、本出願の発明的範囲を限定することを意図するものではない。本出願において、CD8単一ドメイン抗体またはCD8α単一ドメイン抗体は、CN202010703962.9に開示されている通りであり、上記の文献は参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【実施例
【0257】
実施例1
1.1 C37抗体のアフィニティ充填剤との結合部分に対する配列最適化
初期段階のスクリーニングおよび同定を経て、候補抗体からC37-cHisを最終抗体配列(ヒスチジンタグを含む)として選択し、同時にタグフリーの組換えプラスミドC37を構築した。上記の組換えにより構築された単一ドメイン抗体C37融合タンパク質プラスミドを、抗体の発現を行うようにトランスフェクションHEK293細胞にトランスフェクトした。そして、PROTEIN Aアフィニティークロマトグラフィーで精製して同定後に、C37抗体がPROTEIN A(ProteinA)アフィニティークロマトグラフィー充填剤に結合しないことが分かり、以降の精製によるタンパク質の取得がより困難になってしまうため、アフィニティークロマトグラフィーを介して精製するように、C37抗体配列を最適化して改変する必要がある。
【0258】
C37抗体配列のFR(Framework region)フレームワーク領域を分析し、PROTEIN Aアフィニティ充填剤への結合に関連する重要なアミノ酸を選択して変異させ、複数のラウンドの変異を経て、最終変異体C37-YDHMSがPROTEIN Aアフィニティークロマトグラフィー充填剤に結合することができた。
【0259】
【0260】
組換えプラスミドC37および変異した組換えプラスミドC37-YDHMSを、それぞれHEK293細胞を介して抗体の発現を行い、PROTEIN Aアフィニティークロマトグラフィー充填剤で精製し、変異後にアフィニティ充填剤への結合状況を検証し、変異前後におけるSDS-PAGEによる抗体の精製後の分析結果が図1に示された。図1Aは、C37精製SDS-page図を示し、図に示すように、C37は、充填剤PROTEIN Aに結合せず、標的タンパク質は一部がフロースルー溶液を直接通過し、一部が平衡緩衝液buffer Aで溶出された。図1Bに示すC37-YDHMSは、図に示すように、フロースルー溶液および平衡緩衝液AおよびBに標的タンパク質が見られず、溶出緩衝液CおよびDに純粋な標的タンパク質が含まれていたことから、改変されたC37-YDHMSが充填剤PROTEIN Aに正常に結合することが可能であることが示唆された。
【0261】
1.2 C37抗体の結合活性、発現レベル、PI値に対する配列最適化
抗体のような分子は一般に、該分子が下流の精製プロセスプラットフォームでのイオン交換クロマトグラフィーに適用するように、等電点(PI)が7より高いことが必要である。また、宿主DNAの等電点は主に4~4.5に分布しており、抗体PI値とがそれに近いと、除去効果を達成しにくくなっている。C37抗体のPI値は4.56とDNAの等電点に近く、悪い除去効果が予想され、そして、下流の精製におけるイオン交換充填剤の選択をより容易にするため、PI値を向上させるようにC37抗体配列変異により改変する必要があった。
【0262】
C37抗体配列のFR(Framework region)フレームワーク領域およびCDR(Complementarity-determing region)領域を分析し、親和性、発現レベルおよびPI値に関連するアミノ酸を選択して変異を試みた。最初に1つのアミノ酸を選んで変異させ、次に複数のアミノ酸を変異させ、合計15組の変異を発現レベルおよび結合活性に関連する部分で行った。
【0263】
【0264】
【0265】
各変異体に対して、発現レベルと結合活性をそれぞれ検出した。検出の便宜上、これは、ヒスチジンタグ有する組換えプラスミドを用いて一過性トランスフェクションを行い、一過性トランスフェクション後、組換えタンパク質を、対応するNi+樹脂ゲルを用いてアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、得られた標的タンパク質を発現レベルおよび結合活性の検出に用いることができる。
【0266】
親和活性の検出:CD8α-Fc融合タンパク質をプレートに0.5μg/ウェル4℃で一晩被覆し、PBSTで洗浄後3%のBSAを加えてブロッキングし、そして、各変異体C37単一ドメイン抗体タンパク質の勾配希釈系列を加えて、室温下で1時間反応させた。洗浄後、anti-his西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗体を加えて、室温下で1時間反応させた。洗浄後、発色液を加えて、波長450nmで吸光度を読み取った。ソフトウェアSotfMaxPro v5.4をデータ処理およびグラフ解析に適用して、4パラメータフィッティングにより、変異抗体のCD8αに対する結合曲線を得て、C37抗体をコントロールとして、異なる変異体の相対活性を比較することによって、CD8αに対する抗体の親和性を反映した。
【0267】
発現レベルの計算:一段階アフィニティークロマトグラフィーにより精製後に得られた標的タンパク質の総量に基づいて発現レベルを算出した。
【0268】
【0269】
CD8α抗原に対する各変異体の親和性および発現レベルに関する総合的な分析を行い、ここで選択された変異体であるC37-S72R、C37-T85S、C37-D109Aを組み合わせると、C37-RSAがここでの最終変異体になった。
【0270】
アフィニティークロマトグラフィー精製に関連する変異点および親和性、発現レベルに関連する変異点を組み合わせて、これを基に抗体配列における負に荷電したアミノ酸の分析を続け、配列全体から総合的に分析し、負に荷電したアミノ酸を変異させることにより、抗体全体のPI値を向上させた。
【0271】
【0272】
【0273】
C37単一ドメイン抗体配列を一連に変異改変後、最終的にC37-F1がこの段階での最終変異体であると特定された。改変される前のオリジナルのC37単一ドメイン抗体に比べると、そのPI値が4.56から6.75に向上した。
【0274】
1.3 C37-F1単一ドメイン抗体のヒト化
ラクダ抗体は、分子量が小さく、体内での透過性に優れ、通過して標的部位に到達しやすいなど、従来の抗体にはない利点を有するため、ナノボディは疾患の診断や検出のツールとして広く利用されている。しかし、多価の抗体は、臨床で長期間使用された場合、様々な程度の免疫反応を生じ、治療効果に影響を与えるる可能性があるため、C37-F1抗体のヒト化が必要である。ヒト化は、タンパク質表面アミノ酸のヒト化方法およびVHHヒト化ユニバーサルフレームワーク移植法を用いて行われた。
【0275】
ヒト化ステップは、配列相同性に基づいてCecile Vinckeらにより設計されナノボディNbBcIII0抗体(PDB番号:3DWT)に基づくユニバーサルヒト化VHHフレームワークh-NbBcIII0FGLA(PDB番号:3EAK)を取得し、ヒト源抗体を基準としタンパク質表面アミノ酸をヒト化し、必要なヒト化部位をC37-F1ナノボディ配列の具体的な状況に応じて選択した。
【0276】
C37-F1抗体をヒト化し、合計5つの抗体株C37-F1のヒト化変異体が得られた。表2には、これらのヒト化変異体のアミノ酸変化と変異された抗体の命名が示され、ここでアミノ酸残基の番号付けをKabat番号付けと比較し、最終的にヒト化変異体C37Hをヒト化された変異抗体として選択した。
【0277】
【0278】
【0279】
変異後、各変異体について親和性と発現レベルを分析し、具体的な検出結果を表3に示している。
【0280】
【0281】
1.4 C37H抗体の末端cystine改変
C37H抗体配列には、合計4つのリジンがあり、NOTA/DOTAなどの低分子のコンジュゲートを行う場合、バッチ間の不確実性が増加する可能性があるため、C37H抗体配列を、部位特異的コンジュゲーションを行うように末端cystineで改変した。それぞれその末端に単一のシステインCと、VDC、GGCおよびGSCの3つの形態のアミノ酸配列を付加する合計4つの形態の改変を行った。構築が完了した場合、一過性にトランスフェクションし、発現レベルを計算し、最適な末端cystine改変形態を選択するように、それぞれコンジュゲーション方法に対して最適化および検証を行った。
【0282】
【0283】
実施例2 NODAGA-GSC-C37H単一ドメイン抗体前駆体のコンジュゲーション
二官能性キレート剤Maleimide-NODAGAを、C37H-GSC単一ドメイン抗体の末端システインにコンジュゲートさせ、コンジュゲート生成物を、10 kDa限外濾過チューブで精製し、緩衝液を純水に置換し、紫外可視分光光度計で280nmでの吸光度を測定して、コンジュゲーション効率をSEC-HPLCで分析した。CD8αタンパク質に対するインビトロでの親和性をELISAにより分析した。具体的な方法は以下の通りである。
【0284】
TCEP(Tris(2-carboxyethyl)phosphine hydro-chloride、Sigma)をPBSに溶解し、TCEP溶液をC37H-GSCと混合して、タンパク質末端のヘミグリシンによって形成されたジスルフィド結合を切断した。限外濾過チューブによる限外濾過後、過剰なTCEPと遊離システインを除去した。Maleimide-NODAGA溶液をC37H-GSCと混合し、37℃で反応させた。反応後、過剰なMaleimide-NODAGAを限外濾過チューブで除去し、NODAGA-GSC-C37H単一ドメイン抗体を生成物として得た。
【0285】
特徴付けはSEC-HPLC(図2)およびLC-MS(図3)によって行われ、その結果から、抗体は低分子にコンジュゲート後、分子量がわずかに増加し、SEC-HPLCの結果でピーク位置がわずかに前進したことが明らかになった。質量スペクトルの結果から、GSC-C37Hの分子量は14031であり、1分子のcystine(分子量:119)を還元後、1分子のNODAGA(分子量:497)をコンジュゲートさせ、最終的に、NODAGA-GSC-C37H分子量は14409となり、理論通りであった。
【0286】
上記のコンジュゲートされたNODAGA-GSC-C37Hの活性はELISAにより測定され、具体的な方法は、CD8α-Fc融合タンパク質をプレートに5μg/ウェル4℃で一晩被覆した。3%のBSAで37℃ブロッキング後、勾配希釈されたサンプル(コンジュゲートされていないC37H-GSC単一ドメイン抗体を標準とする)を加えて、37℃で1時間作用させた。次にアンチ-his-HRP(Abcam社より購入)を加えて、室温下で1時間反応させた。そして、発色液を加えて、450 nm波長で吸光度を読み取った。ELISAの活性は表4と図4のようにまとめられ、その結果から、GSC-C37Hは還元後にNODAGAにコンジュゲートした後、抗原への結合能に影響を及ぼさなかったことを示している。
【0287】
【0288】
実施例3 68 Ga-NODAGA-GSC-C37H放射性標識
0.1M滅菌HClでEckert & Ziegler IGG100ゲルマニウム68/ガリウム68(Ge 68/Ga 68)発生器をリンスし、68Ga溶離液を調製し、等容量の0.2M醋酸ナトリウム溶液を添加し、そして、1/4容積の上記のNODAGA-GSC-C37H抗体を含むpH5.3の0.1M醋酸ナトリウム緩衝液を加え、反応系のpHを4.5~4.7とし、室温で10分間反応させた。未反応のイオンガリウムは、PD-10 カラムで除去され、0.22umろ過膜でろ過された。生成物(68Ga-NODAGA-GSC-C37H単一ドメイン抗体注射液)は、pH、Radio-TLC、Radio-HPLC、放射能、放射化学的純度などの分析によって品質管理ている。なお、0.05 M滅菌HClでITGゲルマニウム68/ガリウム68(Ge-68/Ga-68)発生器をリンスし68Ga溶離液を調製することも可能であり、その他の反応および品質管理条件は同じであった。
【0289】
少量のサンプルを採取してRadio-TLCおよびRadio-HPLCで測定し、スペクトルのピークを積分して放射化学的純度(RCP)を算出し、分析結果が図5A~5Bに示すように、陽電子核種68Gaが単一ドメイン抗体を成功に標識したことを示している。図5Aは放射性標識サンプルのRadio-TLCの結果、図5Bは放射性標識サンプルのRadio-HPLCの結果である。
【0290】
Radio-HPLCの結果はRadio-TLCの結果と一致しており、Radio-TLCの結果から、遊離68Gaは移動係数が約 0.9 で速く移動するのに対し、68Ga-NODAGA-GSC-C37Hの移動係数は約0.2であったことが明らかになり、Radio-HPLCの結果から、遊離68Gaは約1分間でピークに達し、68Ga-NODAGA-GSC-C37Hは約18分間でピークに達し、タンパク質のピークに達する時間基本的に一致しており、2つの方法では標識効率が95%以上であったことが明らかになっている。
【0291】
実施例4 HSC-NPGヒト化動物PET/CTイメージング実験
4.1. 検討に用いられるHSC-NPG動物モデル
インビボ検討は、6~8週齢のHSC-NPGマウスを使用して実施された。異種移植の場合、100μlの細胞MC38-CD8/PBSをマウスの右前脚に皮下移植し、同時に100μlの細胞MC38/PBSをマウスの左前脚に皮下移植した。細胞の接種密度は約5~6×106個細胞/マウスであった。移植はイソフルラン麻酔下で実施された。これらの条件下では、注射した動物の90%以上で、1~2週間後に使用可能な腫瘍(100-300mm3)(MC38-CD8またはMC38)が得られた。
【0292】
4.2. Micro-PET/CTイメージング
MC38-CD8+/-腫瘍モデルを4.1の方法に従って接種した。Micro-PET/CT(IRIS PET/CT, inviscan, Strasbourg, France)でスキャンし、病巣%ID/gを測定した。小動物PET/CTのスキャンを120分間連続して行い、図6に示すように、複数の時点における腫瘍、筋肉、心臓(血液)、肝臓、脾臓、肺および腎臓の放射性吸収を分析した。
【0293】
図6は、HSC-NPGヒト化動物におけるPET/CTイメージング結果であって、左側がCD8陰性発現MC38移植腫瘍、右側がCD8陽性発現MC38-CD8移植腫瘍である。
【0294】
図6に示すように、上記のPETトレーサー68Ga-NODAGA-GSC-C37Hを注射後、MC38-CD8移植腫瘍はすべて明確に見えるが、CD8陰性発現MC38移植腫瘍の取り込みは注射後に見られなかった。したがって、MC38-CD8腫瘍は、対側陰性コントロール腫瘍と比べ、優れた識別可能性を有している。放射性シグナルは腎臓で最も高いため、68Ga-NODAGA-GSC-C37Hは主に腎臓で代謝されたことが証明されている。
【0295】
HSC-NPGヒト化動物モデルは、非ヒト化動物と比較して、心臓(血液)、肝臓、脾臓、肺などの組織や臓器でヒトCD8を発現するため、68Ga-NODAGA-GSC-C37Hは、対応する肝臓、脾臓、肺などの組織にも若干の取り込みを示した。68Ga-NODAGA-GSC-C37HのCD8のトレーサーとしての潜在性がさらに実証された。
【0296】
実施例5 PBMCヒト化動物用量プローブテスト
5.1. 検討に用いられるPBMC動物モデル。
【0297】
インビボ検討は、6~8週齢のPBMCマウスを使用して実施された。異種移植の場合、100μlの細胞MC38-CD8/PBSをマウスの右前脚に皮下移植し,同時に100μlの細胞MC38/PBSをマウスの左前脚に皮下移植した。細胞の接種密度は約5~6×106個細胞/マウスであった。移植はイソフルラン麻酔で実施された。これらの条件下では、注射した動物の90%以上で、1~2週間後に使用可能な腫瘍(100-300mm3)(MC38-CD8またはMC38)が得られた。
【0298】
5.2. 投与方法と用量の選択
68Ga-NODAGA-GSC-C37Hの投与方法は、PBMCヒト化動物の用量プローブテストでは、0.3μg、1μg、5μg、30μg、150μg、500μgの合計6つの用量群を含む総タンパク質含有量を設定し、評価手段としてmicro-PETのスキャン(組織分布のROI描き)、エクスビボでの組織分布、エクスビボでの採血PKなどの実験を、68Ga-NODAGA-GSC-C37Hの最適な臨床投与用量を推測するように行い、PBMCヒト化動物モデルの用量-有効性の変化関係を特定するという冷タンパク質と熱タンパク質の同時注射投与(Co-injection)を採用した。
【0299】
5.3. micro-PETイメージング
MC38-CD8+/-腫瘍モデルを5.1の方法に従って接種した。マウスを、イソフルランで麻酔後PETベッド上に置き、0.3μg、1μg、5μg、30μg、150μg、500μgの6つの用量群(~100μCi)に従って、それぞれ医薬品をマウスに尾静脈注射で投与した。PETのスキャンを120分間連続して行い、複数の時点における腫瘍、心臓(血液)、肝臓、脾臓、肺、筋肉および腎臓などの放射性吸収を分析した。MIMソフトウェアを用いて描かれたROI、生体内分布と活動度時間曲線を計算した。
【0300】
図7は、PBMC動物の用量漸増試験のmicroPETイメージング図(投与後1時間)であって、左側がCD8陰性発現MC38移植腫瘍、右側がCD8陽性発現MC38-CD8移植腫瘍である。
【0301】
図7の結果から、0.3~500μg放射性標識単一ドメイン抗体(~100μCi/0.3~500μg)をマウスに尾静脈注射で投与後、MC38-CD8移植腫瘍はすべて明確に見えるが、CD8陰性発現MC38移植腫瘍の取り込みは注射後に見られなかったことが明らかになった。したがって、MC38-CD8腫瘍は、対側陰性コントロール腫瘍と比べ、優れた識別可能性を有している。放射性シグナルは腎臓で最も高いため、68Ga-NODAGA-GSC-C37Hは主に腎臓で代謝されたことが証明されている。PBMCヒト化動物モデルは、非ヒト化動物と比較して、心臓(血液)、肝臓、脾臓、肺などの組織や臓器でヒトCD8を発現するため、68Ga-NODAGA-GSC-C37Hは、対応する肝臓、脾臓、肺などの組織にも若干の取り込みを示した。
【0302】
一方、総タンパク質用量が増加するにつれて、CD8+腫瘍の取り込みは徐々に低下し、有意な相関を示し、肝臓、脾臓、肺などのCD8+ヒト化組織や臓器における取り込みも低下したことから、68Ga-NODAGA-GSC-C37HがCD8+に特異的に結合したことが実証された。
【0303】
5.4. インビボでの分布
MC38-CD8+/-腫瘍モデルを5.1の方法に従って接種した。マウスを、イソフルランで麻酔後、0.3μg、1μg、5μg、30μg、150μg、500μgの6つの用量群(~100μCi)に従って、それぞれ医薬品をマウスに尾静脈注射で投与した。データは2時間ごとに収集し、各時点で3匹のマウスを安楽死させた。血液、腎臓、肝臓、脾臓、肺、心臓、腸、胃、筋肉、皮膚、脳、骨、CD8+/-腫瘍などの標的組織を解剖し、γカウンターで計数してデータを収集した。注射量は総注射量とした。各臓器について、該総注射量に基づいて%注射量(%ID)を決定し、また、臓器の重量を測定して、グラム当たりの%注射量(%ID/g)を決定した。micro-PETイメージング後、MIMソフトウェアで描かれたROIの生体内分布結果をエクスビボでγカウンターにより検出された生体内分布結果と比較検討した。
【0304】
図8Aは、投与後1時間におけるmicro-PETイメージング後に、MIMソフトウェアで描かれたROIの生体内分布の結果を示している。図8Bは、投与後2時間におけるmicro-PETイメージング後に、MIMソフトウェアで描かれたROIの生体内分布の結果を示している。図8Cは、投与後2時間における解剖されたエクスビボでの生体内分布結果(n=3)を示している。
【0305】
図8A~8Cに示すように、投与後1時間および投与後2時間のPETのスキャンデータは、投与後2時間のエクスビボ組織分布結果と同様であった。2つの検出方法では、各組織取り込み値は、その用量変化に伴う傾向と同様であり、特にCD8+腫瘍組織の取り込みおよび肝、脾、肺における取り込みは、その用量変化に伴う傾向と基本的同一であった。
【0306】
0.3~500μg放射性標識単一ドメイン抗体(~100μCi/0.3~500μg)をマウスに尾静脈注射で投与後、MC38-CD8移植腫瘍の取り込みが高かったが、CD8陰性発現MC38移植腫瘍の取り込みは注射後に見られなかった。
【0307】
一方、総タンパク質用量が増加するにつれて、CD8+腫瘍の取り込みは徐々に低下し、有意な相関を示し、肝臓、脾臓、肺などのCD8+ヒト化組織や臓器における取り込みも低下したことから、68Ga-NODAGA-GSC-C37HがCD8+に特異的に結合したことが実証された。0.3μgの用量では、CD8+陽性腫瘍は、1μgの用量の場合よりも高くなく、150μgの用量は500μgの場合よりも、CD8+陽性腫瘍の取り込みを完全にブロックした。2つの検出方法の生体内分布の検討によると、該動物モデルの最適投与用量が1μg、最小遮断用量が150μgであったことが相互検証された。
【0308】
5.5. 生体外採血ための薬物動態学(PK)
5.1の方法に従って、MC38-CD8+/-腫瘍モデルを接種した。マウスを、イソフルランで麻酔後、0.3μg、1μg、5μg、30μg、150μg、500μgの6つの用量群(~100μCi)に従って、それぞれ医薬品をマウスに尾静脈注射で投与した。投与2、5、10、15、30、60、90、120分間後に内眼角に0.5~0.8mL採血して秤量し、γカウンターにより血液サンプルのγカウントを行い、ID%/gを算出した。
【0309】
図9Aは、血中放射能ID%/gの経時的変化の傾向図であって、0.3~500μg放射性標識単一ドメイン抗体(~100μCi/0.3~500μg)をマウスに尾静脈注射で投与後、血中半減期が短く、クリアランスが速かった。68Ga-NODAGA-GSC-C37Hは他のナノボディのような放射性医薬品と同様に、代謝クリアランス速度が速かったことが示唆された。一般的な傾向として、総タンパク質用量が増加するにつれて、放射性の血中半減期は延長し、クリアランス速度は遅くなった。また、低用量では、初期の取り込みは多く、半減期は短く、クリアランスは速かったが、高用量ではその逆となっている。
【0310】
図9Bは、異なる用量の放射性物質の血中取り込みの%ID/g TAC曲線であって、0.3μg低用量群の半減期は20~30分間と初期段階の非ヒト化動物に近かった。用量>1ugになると、半減期の差は有意ではなかった。
【0311】
実施例6 68 Ga-NODAGA-GSC-C37H安定性実験
6.1 68 Ga-NODAGA-GSC-C37Hのインビトロ血清安定性の分析
300μLヒト血清を取り、500μL 68Ga-NODAGA-GSC-C37H 74 MBq(1 mCi/100μL PBS)を加えて混合後、37℃に置き、0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間でRadio-TLCとRadio-HPLCの検出を行った。
【0312】
図10A~10Bに示すように、37℃の血清中で、遊離68Gaの有意な増加は見られず、有意な分解ピークも現れなかったことから、放射性標識抗体は構造的に安定であり、インビトロの血清が安定していることが示された。
【0313】
6.2 68 Ga-NODAGA-GSC-C37Hのインビボ安定性の分析
正常マウスを取り、68Ga-NODAGA-GSC-C37H 74 MBq(1 mCi/100μL PBS)を尾静脈から注射した。注射15分間および1.5時間、4時間後に、尿サンプルを採取し、全サンプルを一定量の50%アセトニトリル溶液で溶解後、8000 rpmで15分間遠心分離し、上清に0.22μmのろ過膜を通させてから、ろ液をRadio-TLCおよびRadio-HPLCで分析した。
【0314】
図11A~11Bに示すように、マウスに投与して4時間後、尿中の遊離68Gaの含有量の有意な増加は見られず、投与30分間後の血液サンプルでは、遊離68Gaの含有量は見られず、他の分解ピークの増加も現れなかったことから、結果として、放射性標識抗体は無傷の状態で血液中および尿中に存在し、構造が安定していることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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【国際調査報告】