(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】重炭酸カリウムを含んでなる組成物、並びに農作物を処置および/または保護するためのその使用
(51)【国際特許分類】
A01N 59/06 20060101AFI20240621BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240621BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20240621BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20240621BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20240621BHJP
A01N 63/32 20200101ALI20240621BHJP
【FI】
A01N59/06 Z
A01P3/00
A01N25/00 101
A01N25/10
A01N25/08
A01N63/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579577
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 FR2022051220
(87)【国際公開番号】W WO2022269195
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523484080
【氏名又は名称】ソシエテ、シビル、デクスプロイテーション、アグリコル、デュ、シャトー、モンローズ
【氏名又は名称原語表記】SCEA DU CHATEAU MONTROSE
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント、デカップ
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB18
4H011BB21
4H011BC03
4H011BC07
4H011BC19
4H011BC20
4H011DA01
(57)【要約】
本発明は、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含んでなる新規の組成物であって、賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、および/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤である組成物に関する。本発明はまた、農作物好ましくはつる植物類、ウリ科植物、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類を処置および/または保護するための、このような組成物の使用、およびこのような組成物を使用する方法に関する。本発明はさらに、このような組成物を、保護および/または処置されることになる農作物に適用することを含んでなる、農作物を保護および/または処置する方法であって、農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ科植物、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類である方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される前記賦形剤、および/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤と;
- アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;
を含んでなる組成物であって、前記アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤が、スルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;前記非イオン性界面活性剤が、エトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;前記カチオン性界面活性剤が、有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;
前記追加の賦形剤が、好ましくは水溶性であり;前記追加の賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、および/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤である、組成物。
【請求項2】
固体形態である、好ましくは粉末、顆粒、またはそれらのいずれかの組み合わせの形態であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
- 前記重炭酸カリウムの含有量が、前記組成物の全重量に対して5重量%から90重量%、前記組成物の全重量に対して好ましくは10重量%から90重量%、より好ましくは15重量%から85重量%、より好ましくは20重量%から80重量%、より好ましくは40重量%から70重量%、より好ましくは50重量から65重量%の範囲である;および/または
- 前記タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤の含有量が、前記組成物の全重量に対して0.1重量%から30重量%、前記組成物の全重量に対して好ましくは0.5重量%から20重量%、好ましくは1重量%から15重量%、より好ましくは2重量%から10重量%、より好ましくは3重量%から6重量%の範囲である、請求項1または2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記重炭酸カリウムが、アルコール発酵、好ましくはブドウ酒発酵から得られ、前記重炭酸カリウムが、好ましくは以下の:
a) アルコール発酵によって放出される二酸化炭素を捕捉するステップと;
b) 炭酸カリウム溶液における、ステップa)で捕捉された二酸化炭素のバブリングにより、重炭酸カリウム結晶を、好ましくは溶液の飽和条件下で得るステップと;
c) 任意に、ステップb)で得られた前記重炭酸カリウム結晶を抽出するステップと、
を含んでなる方法により得られる、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記タウラート・ファミリーに属する少なくとも一つのアニオン性界面活性剤が、N-メチルタウラート類;好ましくはナトリウムN-メチルタウラート類、アンモニウムN-メチルタウラート類、カルシウムN-メチルタウラート類、アルカリ金属N-メチルタウラート類、アルカリ土類金属N-メチルタウラート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから;より一層好ましくはナトリウムN-メチルタウラート類から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
粘土類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤をさらに含んでなる請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物であって;前記追加の賦形剤が、好ましくは水溶性である、組成物。
【請求項7】
前記粘土が、シリカート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;前記粘土が、好ましくはフィロシリカート類から選択される、より一層好ましくはカオリナイト類から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
スルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つのアニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤を含んでなる請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物であって;前記スルホナートが、好ましくはリグノスルホナート類から選択される;好ましくはリグノスルホン酸ナトリウム、アンモニウムリグノスルホナート類、カルシウムリグノスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される;より一層好ましくはリグノスルホン酸ナトリウムから選択される、組成物。
【請求項9】
エトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの非イオン性界面活性剤を含んでなる、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物であって;前記エトキシル化アルコールが、好ましくは二級エトキシル化アルコール類から選択される;より一層好ましくは、二級エトキシル化C
8-C
18アルコール類から選択される、組成物。
【請求項10】
有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つのカチオン性界面活性剤を含んでなる、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物であって;前記有機鉱物ポリマーが、好ましくはシロキサン類から選択される;好ましくはアルキルシロキサン類から選択される;より好ましくはポリジメチルシロキサン類から選択される、組成物。
【請求項11】
i. 前記アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤の含有量が、前記組成物の全重量を基準にして0.1重量%から40重量%、前記組成物の全重量を基準にして好ましくは0.5重量%から30重量%、より好ましくは1重量%から20重量%、より好ましくは2重量%から18重量%、最も好ましくは5重量%から15重量%の範囲である;または
ii. 前記非イオン性界面活性剤の含有量が、前記組成物の全重量を基準にして0.01重量%から40重量%、前記組成物の全重量を基準にして好ましくは0.05重量%から30重量%、好ましくは0.1重量%から20重量%、好ましくは0.5重量%から15重量%、好ましくは1重量%から10重量%の範囲である;または
iii. 前記カチオン性界面活性剤の含有量が、前記組成物の全重量に対して0.001重量%から30重量%、前記組成物の全重量に対して好ましくは0.01重量%から20重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%、好ましくは0.3重量%から5重量%、好ましくは0.5重量%から2.5重量%の範囲である;または
iv. 前記粘土の含有量が、前記組成物の全重量に対して0.5重量%から60重量%、前記組成物の全重量に対して好ましくは5重量%から50重量%、より好ましくは10重量%から40重量%、より好ましくは15重量%から35重量%、より好ましくは20重量%から30重量%の範囲である;または
v. 前記追加の賦形剤の含有量が、iからivから選択される少なくとも二つの特徴のいずれかの組み合わせである、
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
- 前記組成物の全重量に対して好ましくは5重量%から90重量%、前記組成物の全重量に対して好ましくは15重量%から85重量%、好ましくは20重量%から80重量%、好ましくは40重量%から70重量%、好ましくは50から65重量%の範囲の含有量の重炭酸カリウムと;
- 好ましくはN-メチルタウラート類(ナトリウムN-メチルタウラート類など)から選択され;前記組成物の全重量に対して好ましくは0.1重量%から30重量%、好ましくは前記組成物の全重量に対して0.5重量%から20重量%、より好ましくは3重量%から6重量%の範囲の量の、タウラート・ファミリーに属する少なくとも一つのアニオン性界面活性剤と;
- 好ましくはリグノスルホナート類(リグノスルホン酸ナトリウムなど)から選択され;前記組成物の全重量に対して好ましくは0.1重量%から40重量%の範囲の量、前記組成物の全重量に対して好ましくは1重量%から20重量%、より好ましくは5重量%から15重量%の量の、少なくとも一つのアニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤と;
- 好ましくはエトキシル化アルコール類(C8-C18エトキシル化二級アルコールなど)から選択され;前記組成物の全重量に対して好ましくは0.01重量%から40重量%、好ましくは前記組成物の全重量に対して0.1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から10重量%の範囲の量の、少なくとも一つの非イオン性界面活性剤と;
- 好ましくは有機鉱物ポリマー類から選択され、好ましくはシロキサン類(ポリジメチルシロキサンなど)から選択され;前記組成物の全重量に対して好ましくは0.001重量%から30重量%、前記組成物の全重量に対して好ましくは0.1重量%から10重量%、より好ましくは0.5重量%から2.5重量%の範囲の量の、少なくとも一つのカチオン性界面活性剤と;
- 好ましくはシリカート類(カオリナイト類など)から選択され;前記組成物の全重量に対して好ましくは0.5重量%から60重量%、前記組成物の全重量に対して好ましくは10重量%から40重量%、好ましくは20重量%から30重量%の範囲の含有量の、少なくとも一つの粘土と;
- 任意に溶媒、好ましくは水性溶媒、例えば水と、
を含んでなる、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
植物検疫的組成物、好ましくは抗真菌組成物であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
生物系の成分から本質的に構成されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物であって、前記成分が、好ましくは生物分解性および/または天然起源のものである組成物。
【請求項15】
農作物、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類を処置および/または保護するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
- 農作物を病原性真菌類および/または真菌症から保護する、
- 農作物を病原性真菌類および/または真菌症に対して処置する、
- 農作物上の真菌病原体および/または真菌症を抑制する、または
- それらのいずれかの組み合わせを行う;
ための、請求項1から14に記載のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、前記農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;さらに好ましくはつる植物類である、使用。
【請求項17】
請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を、保護および/または処置されることになる農作物に適用することを含んでなる、農作物を保護するおよび/または処置する方法であって;前記農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類である、方法。
【請求項18】
- 農作物を真菌病原体および/または病害から保護する方法、
- 農作物を真菌病原体および/または真菌症に対して処置する方法、
- 農作物上の真菌病原体および/または真菌症を抑制する方法、および
- それらのいずれかの組み合わせ、
から選択される、請求項1から14に記載のいずれか一項に記載の組成物を前記農作物に適用することを含んでなる方法であって;前記農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;さらに好ましくはつる植物類である、方法。
【請求項19】
前記真菌病原体が、つる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ(Plasmopara viticola))、つる植物のうどんこ病(ウンキヌラ・ネカトル(Uncinula necator)および/またはエリシフェ・ネカトル(Erysiphe necator))、およびつる植物の枯病(ボトリティス・キネレア(Botrytis cinerea))、好ましくはつる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)から選択される、請求項16に記載の使用、または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
農作物、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類を処置および/または保護するための、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含んでなる組成物の使用であって;
前記賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、および/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤である、使用。
【請求項21】
- 農作物を真菌病原体および/または真菌症から保護する、
- 農作物を真菌病原体および/または真菌症に対して処置する、
- 農作物上の真菌病原体および/または真菌症を抑制する、および
- それらのいずれかの組み合わせを行う
ための、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含んでなる組成物の使用であって;
前記農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類であり;
前記賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、および/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤である、使用。
【請求項22】
組成物を、保護および/または処置されることになる農作物に適用することを含んでなる、農作物を保護するおよび/または処置する方法であって;
前記組成物が、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含んでなり;前記賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、および/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤であり;
前記農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;さらに好ましくはつる植物類である、方法。
【請求項23】
- 農作物を真菌病原体および/また真菌症から保護する方法、
- 農作物を真菌病原体および/または真菌症に対して処置する方法、
- 農作物上の真菌病原体および/または真菌症を抑制する方法、および
- それらのいずれかの組み合わせ、
から選択される、組成物を前記農作物に適用することを含んでなる方法であって;
前記組成物が、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含んでなり;前記賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、および/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤であり;
前記農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;さらに好ましくはつる植物類である、方法。
【請求項24】
前記真菌病原体が、つる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)、つる植物のうどんこ病(ウンキヌラ・ネカトルおよび/またはエリシフェ・ネカトル)、つる植物の枯病(ボトリティス・キネレア)、ナス科のべと病(フィトフソラ・パラジティカ(Phytophthora parasitica)および/またはフィトフソラ・インフェスタンス(Phytophtora infestans))およびウリのべと病(シュードペロノスポラ・キュベンシス(Pseudoperonospora cubensis))、好ましくはブドウのべと病(プラズモパラ・ビティコラ)から選択される、請求項21の使用または請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物検疫分野に関連する。これは、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含んでなる組成物に関するものであり、賦形剤は、好ましくは植物検疫的に許容される、および/または好ましくは本質的に生物系である。組成物は、好ましくは固体形態である。本発明はまた、農作物、好ましくはつる植物、ウリ類、およびナス科を処置および/または保護するための、前記組成物の使用と前記組成物の使用を含んでなる方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
植物病原性真菌は、植物病害の主な原因である。特に、これらは、農作物病害のおよそ70%の原因であり、その病害のうちの25%は、カビ型の植物病原体によって引き起こされる。プレハーベストおよびポストハーベスト農業における真菌症による年間の経済的損失は、全世界で2003年には年間2,000億ユーロを上回ると見積もられている。従って、植物病原性真菌を抑制することは、経済的に非常に重要である。
【0003】
その結果、幅広い種類の抗真菌製造物が開発され、市場で利用可能となっている。
【0004】
しかし、これらの製造物の大部分は環境に無害なわけではなく、土壌に永久的に混入する汚染物質を含有している。したがって、有機栽培における使用に開発された製造物もある。例えば、有機栽培におけるつる植物類のうどんこ病とべと病の抑制には、それぞれ硫黄系と銅系の製造物が認可されている。しかし、これらの物質は土壌から除去するのが難しく、有害(特に高濃度)である可能性がある。その結果、毎年毎年、処置に次ぐ処置で、土壌は徐々に混入を生じ汚染される。さらに、これらの物質を得るために使用される方法(銅抽出法など)は概して、有毒な製造物の使用や、環境に有害でほとんど回収できない副生成物の生成を必要とする。さらに、こうした環境へのあらゆる有害な影響のために、これらの物質は有機栽培での使用が認可されることになる場合にも問題を引き起こし得る。例えば、銅とその使用状況は欧州レベルで定期的に見直されており、銅は、2018年まで最高6kg/ha/年、2019年から4kg/ha/年として使用される可能性がある。したがって、生産者にとっては、上記のものなどの植物病原体に対抗するための代替解決策を持つことが、戦略的、経済的、そして環境的に重要であり、この解決策は、環境にさらに害の少ない製造方法を用いることによって得られるとともに、有機製造物へのますます高まる需要にさらにうまく適応すると同時になお効果的である。
【0005】
よって、生物学的方法によって得ることができる原料および/または物質(すなわち、生物系の原材料および/または物質)を使用することによって環境への抗真菌製造物の影響を低減させる、現実の必要性が存在する。実際、このような製造方法は、化学的なものほどには汚染せず(詳細には、石油化学的および炭素化学的な方法よりも汚染せず)、このようにして製造された物質は、ほとんどまたはまったく環境毒性または有害性でなく、さらに生物分解しやすい。これに関連して、重炭酸カリウムは100%生物系であり、生物分解性で環境に無害な化合物である。いくつかの研究で、この化合物が抗真菌効果を有することが示されている。
【0006】
例えば、国際公開第96/00705号には、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、Neodol(登録商標)(シェル社)Shell)、オランダ)、カオリン、および酸化マグネシウムを含んでなる製剤が、つる植物類の枯病、うどんこ病、およびべと病の処置に有効である可能性のあることが記載されている。
【0007】
国際公開第95/12975号には、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、オレイン酸カリウム、オクタン酸カリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、およびポリアクリル酸カリウムを含んでなる製剤が、つる植物の枯病の処置に有効であることが記載されている。
【0008】
国際公開第94/18831号には、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オクタン酸カリウム、グアーガム、およびBHTを含んでなる製剤が、つる植物類上のべと病の処置に有効であることが記載されている。
【0009】
しかし、これらの様々な組成物には、環境に有害で非生物分解性である、またはその分解副生成物が環境に有害で非生物分解性である、非生物系の化学的に誘導された化合物(詳細には、環境に高度に有害な影響を与える合成法を使用する石油化学物質または炭素化学物質)、例えば、Neodol(登録商標)、酸化マグネシウム、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)またはカリウムポリクリラート(potassium polycrylate)などが挙げられる。
【0010】
しかし、これらの様々な組成物には、環境に有害で非生物分解性である、またはその分解副生成物が環境に有害で非生物分解性である、非生物系の化学的に誘導された化合物(詳細には、環境に高度に有害な影響を与える合成法を使用する石油化学物質または炭素化学物質)、例えば、Neodol(登録商標)、酸化マグネシウム、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、またはカリウムポリクリラート(potassium polycrylate)などが挙げられる。
【0011】
加えて、重炭酸カリウムの水溶液は、賦形剤を使用しない場合には、処置される植物、特につる植物類の足への(詳細にはつる植物の葉への)付着性および展着性に乏しい。加えて、これらの溶液は、処置される圃場を通る際に悪天候(特に雨水)によって容易に溶脱する。
【0012】
したがって、植物病原性真菌を効果的に防止および/または処置し、処置されることになる農作物、詳細にはつる植物、ウリ、およびナス科の葉上で、最適化された抗真菌活性、付着性、展着性、ウォッシュアウト(溶脱)に対する耐性の改善、および葉寿命の増加を伴うと同時に、有機栽培(詳細には有機ブドウ栽培)における使用に好適で、処理されることになる農作物に非常に許容性のある新たな組成物に対する現実の必要性が、依然として存在する。
【0013】
本発明は、この必要性を満たすものである。本発明者らは、重炭酸カリウムと、本質的に生物系、および/もしくは本質的に生物分解性、および/もしくは本質的に天然起源とすることができる、ならびに/または低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させたものとすることができる、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含んでなる、生物系(生物起源)、および生物分解性とすることができる新たな組成物を開発した。本発明者らは、予想外なことに、この新たな組成物が固体形態で特に安定であることを示した。本発明者らはさらに、予想外なことに、この組成物により、植物病原性真菌、詳細にはつる植物類および/またはウリ類および/またはナス科におけるうどんこ病、べと病、および枯病に対して、農作物を高い効力で保護および/または処置することができることを実証した。詳細には、本発明者らは、こうした組成物が顕著な抗真菌効果を有し、つる植物類および/またはウリ類および/またはナス科のべと病の原因菌の成長を強力に阻害することが可能であることを示した。この新たな組成物は、つる植物類、ウリ類、およびナス科上での付着性、展着性、耐溶脱性(耐雨性)、および葉寿命の特性に顕著な改善を示す。
【0014】
この製剤はいっそう興味深く、それは、活性成分である重炭酸カリウムを100%生物系とすることができる、詳細にはアルコール発酵の副生成物である二酸化炭素から誘導することができることによって、アルコール発酵中に発生するガスを最大限に利用し、オゾン層に有害な温室効果ガスである二酸化炭素の放出を制限できるという点である。
【0015】
これは、タウラート・ファミリーに属する少なくとも一つのアニオン性界面活性剤であって、生物系および/または生物分解性および/または天然であり得る、および/または低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させたものであり得る化合物と、重炭酸カリウムとの新規の組み合わせであり、これによって、農作物への活性成分の展着および固定が改善されるだけでなく、使用に先立つ長期の貯蔵のために、固体形態の組成物の安定性も改善される。この新規の組み合わせは、水の蒸発を遅延させることで、雨水による溶脱を遅延させ、葉上での製造物の分散性と、様々な共配合剤によって葉上に形成される接触膜の質とを改善する。この製剤はまた、組成物の耐寒性を改善する。データはまた、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および粘土類から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤の存在によって、組成物の抗真菌効力をさらに促進することを示している。本発明者らはまた、長く持続する溶脱(耐雨性)保護効果も実証している。その結果として、処置への適用の頻度を最小限に保つことができ、コストと環境への影響を限定することができる。加えて、データは、こうした組成物が農作物にとっていかなる植物毒性も示さないことも示している。
【0016】
この製剤は、これらの異なる特性を維持しつつ、粉末、錠剤、顆粒などの固体形態とすることができる。実際、タウラート・ファミリーに属する少なくとも一つのアニオン性界面活性剤の存在は、使用に先立つ長期の貯蔵のために、固体形態の組成物の安定性を顕著に増大させる。顆粒は特に有利な形態であり、粉末よりも揮発性が低く、液体組成物よりも保存しやすく耐久性である。しかし、ブドウ酒生産および農業分野の専門家に現状販売されているいかなる製造物で、顆粒形態のものはない。
【発明の概要】
【0017】
本発明の文脈において、本発明者らは、非常に驚くべきことに、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤と、任意に、界面活性剤(詳細には、アニオン性ポリ電解質ポリマー類から選択される界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤)から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と、任意に、粘土類から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤とを含む組成物によって、農作物、特につる植物類、ウリ類、およびナス科を、高い効力および長く持続する溶脱保護効果でもって保護および/または処置することができることを実証した。このようにして、処置での適用の頻度を最低限にまで低減させて、コストおよび環境への影響を限定することができる。詳細には、本発明者らは、このような組成物が顕著な抗真菌効果を有することを示した。このような組み合わせが、抗真菌効果、または農作物の保護もしくは処置の効果を有することはなおさら知られていなかったので、これらの結果は驚きである。このデータはまた、このような組成物が農作物にとってほとんどまたはまったく植物毒性を有さないことを示している。
【0018】
したがって、本発明は、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤である、および/または好ましくは、本質的に生物系の賦形剤である、および/または好ましくは、本質的に生物分解性の賦形剤である、および/または好ましくは、本質的に天然に存在する賦形剤である賦形剤とを含んでなる新たな組成物に関する。代替的に、またはこれに加えて、賦形剤は、低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させる。
【0019】
データはさらに、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および粘土類から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤の存在によって、組成物の抗真菌効力がさらに促進されることを示している。したがって、本発明は、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含んでなる組成物に関するものであり、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および粘土類から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤が、組成物の抗真菌効力をさらに高めることを可能にし;前述の賦形剤は、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、および/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、および/または好ましくは本質的に生物分解性の賦形剤、および/または好ましくは本質的に天然起源の賦形剤である。代替的に、またはこれに加えて、賦形剤は、低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させる。
【0020】
本発明者らはまた、組成物が固体形態であり得て、この形態で特に安定であり、中期から長期の貯蔵に好適であることを示した。したがって、本発明は、固体形態、好ましくは粉末、錠剤、顆粒、またはそれらのいずれかの組み合わせの形態の、上に定義されたとおりの組成物に関する。
【0021】
本発明はまた、農作物の処置および/または保護、ならびに/または農作物上の病原性真菌類および/または真菌症の抑制のための、そのような組成物の使用、ならびにそのような組成物の使用を含んでなる方法に関するものであり、農作物は、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科、またはそれらのいずれかの組み合わせであり、最も好ましくはつる植物類である。
【0022】
本発明はさらに、農作物を保護および/または処置するための方法のみならず、農作物上の病原性真菌類および/または真菌症を抑制するための方法であって、保護および/または処置されることになる農作物に前記組成物を適用することを含んでなる方法に関するものであり、農作物は、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科、またはそれらのいずれかの組み合わせであり、好ましくはつる植物類である。
【発明の具体的な説明】
【0023】
定義
「植物」によって、植物界に属する生物が企図される。植物界は、従来の科学的分類によれば、植物のように生長する、すなわち、植物のように呼吸し、摂食し、成長する系統を含む。植物界は、セルロース壁を有する光合成生物の多系統集合体である。植物という用語は、陸上植物(または緑色植物)と緑藻類の両方を指し、クロロビオント(Chlorobiont)分類群のみならず、紅藻類、褐藻類を構成する。よって、植物群は、藻類と、蘚苔類(蘚類および苔類)、シダ類(シダ植物)、裸子植物および被子植物を含む植物(特に陸上植物)の第2の系統とを含んでなる。有利には、野菜は植物である。
【0024】
「植物検疫」によって、植物および高等真菌類(または巨視的な真菌類)、詳細には植物(または植物生物)および人によって栽培された真菌類の手入れ/処置に関する(人によって栽培されていない植物/真菌類、いわゆる野生および/または風土病も、例えば環境/保存上の理由から、植物検疫上の手入れ/処置に関係する場合がある)ものを意味する。有利には、手入れ/処置される植物(または植物生物)および/または真菌類は、動物によって消費されることが意図された、または動物による消費のために処理されることが意図された少なくとも一部を含んでなる。動物には、家畜(肉牛、ウマ、ラバ、ロバ、肉牛、ヒツジ、ヤギ、ブタなど)、養殖家禽、水産養殖(魚介類)、養殖昆虫、ペット(ネコ、イヌ、爬虫類、鳥類など)およびヒトなどが挙げられる。植物検疫的な手入れ/処置は詳細には、成長および/または発達および/または収穫量を制御および/または増加させることを目的とする手入れ/処置だけでなく、例えば前述の成長、前述の発達および前述の収穫量に影響を及ぼす可能性のある病害を防止および/または処置することを目的とする手入れ/処置を含み得る。
【0025】
「植物検疫的組成物」によって、少なくとも一つの植物検疫的効果を有する組成物、および/または植物検疫的使用に好適な組成物が企図される。
【0026】
植物検疫的効果は、成長および/または発達および/または収穫量を制御および/または増加させることを含んでなる、またはそれらからなる効果であり得る。植物検疫的効果は、好ましくは、植物生物の病害を防止および/または処置および/または抑制することからなる処置効果であり得る。したがって、植物検疫的組成物の処置効果は、処置されることになる植物生物/農作物に対して病原性である/有毒である/害になる/有害である有害生物、例えば植物、動物、昆虫、寄生虫、ウイルス、および真菌類の防止、処置、または抑制を含んでなり得る、本質的にそれらからなり得る、またはそれらからなり得る。したがって、植物検疫的組成物の処置効果は、処置されることになる植物生物/農作物に対して病原性である/有毒である/害になる/有害である生物の防止、処置、または抑制を含むものとすることができる。この場合には、効果は殺虫性である。前記病原性である/有毒である/害になる/有害である生物には、植物生物/農作物/農作物植物と競合する、またはそれらの成長もしくは繁殖に害を与える、植物、動物、昆虫、寄生虫、ウイルス、菌類(蘚類、真菌類、細菌類、競合する植物、昆虫、げっ歯類、ダニ類、軟体動物、ミミズ、線虫、ウイルスなど)などが挙げられる。したがって、植物検疫的効果は、これらの生物を退けるおよび/または遠ざけること(忌避効果)からなり得る。また、植物検疫的効果には、殺真菌/抗真菌/静真菌効果(真菌類の発達および/もしくは蔓延の阻害および/もしくは防止ならびに/または真菌類に対する致死効果)、殺菌/抗菌/静菌効果(細菌の発達および/もしくは蔓延の阻害および/もしくは防止ならびに/または細菌に対する致死効果)、殺ダニ剤(ダニ類の発達および/もしくは蔓延の阻害および/もしくは防止ならびに/またはダニ類に対する致死効果)、殺虫剤/防虫剤(昆虫の発達および/もしくは蔓延の阻害および/もしくは防止ならびに/または昆虫に対する致死効果)、殺軟体動物剤(軟体動物(ナメクジ、カタツムリなど)の発達および/もしくは蔓延の阻害および/もしくは防止ならびに/または軟体動物(ナメクジ、カタツムリなど)に対する致死効果)、殺線虫剤(線虫の発達および/もしくは蔓延の阻害および/もしくは防止ならびに/または線虫に対する致死効果)、殺寄生虫剤/抗寄生虫剤(寄生虫の発達および/もしくは蔓延の阻害および/もしくは防止ならびに/または寄生虫に対する致死効果)、殺ウイルス剤/抗ウイルス剤(ウイルスの発達および/もしくは蔓延の阻害および/もしくは防止ならびに/またはウイルスに対する致死効果)、殺アブラムシ剤(アブラムシの発達および/もしくは蔓延の阻害および/もしくは防止ならびに/またはアブラムシ類に対する致死効果)、除草剤(または除雑草剤、枯葉剤、植物枯死剤、低木防除剤:望ましくない植物(雑草としても知られる)の発達および/もしくは蔓延の阻害および/もしくは防止ならびに/または望ましくない植物のアブラムシ類に対する致死効果)などが挙げられ得る。植物検疫的組成物はまた、競合、捕食、擬態、自然防御の刺激、またはこれらの機構のいずれかの組み合わせの機構にしたがって作用し得る。代替的に、または処置/殺虫効果と組み合わせて、植物検疫的組成物の植物検疫的効果は、処置されることになる植物生物/農作物に対する有益な効果、例えば、成長促進効果、開花刺激効果、果実成長刺激効果、抵抗性増強効果(寒さ、暑さ、天候、病原体などに対するもの)、自然防御刺激効果、またはこれらの効果のいずれかの組合せを含んでなり得る。
【0027】
好ましくは、植物検疫的効果は、忌避、競合、捕食、擬態、自然防御の刺激、殺菌/抗菌/静菌の効果、殺真菌/抗真菌/静真菌の効果、殺寄生虫/抗寄生虫の効果、またはこれらの効果のいずれかの組み合わせを含んでなる。それにもまして好ましくは、植物検疫的効果は、少なくとも一つの殺真菌効果を含んでなる。それにもまして好ましくは、植物検疫的効果は、少なくとも一つの抗真菌効果から本質的になる。それにもまして好ましくは、植物検疫的効果は、少なくとも一つの抗真菌効果からなる。それにもまして好ましくは、植物検疫的効果は、抗真菌効果からなる。
【0028】
したがって組成物は、好ましくは、殺真菌/抗真菌性の植物検疫的組成物である、すなわちこれは、殺真菌/抗真菌効果(すなわち、真菌類の発達および/または蔓延の阻害および/または防止効果および/または真菌類に対する致死効果)を有する。植物検疫的組成物は、好ましくは農業分野での使用に適した抗真菌組成物(すなわち、農業植物検疫的組成物)であり、それにもまして好ましくは、ブドウ栽培分野での使用に好適な抗真菌組成物(すなわち、ブドウ栽培用の植物検疫的組成物)である。
【0029】
「植物検疫的使用」によって、少なくとも一つの植物検疫的効果、つまり、好ましくは上記で定義されたとおりである植物検疫的効果を生じる使用が企図される。好ましくは、植物検疫的使用は、植物検疫的組成物の使用からなる、これから本質的になる、またはこれらからなる。
【0030】
その使用は、好ましくは殺真菌/抗真菌的使用である、すなわちこれは、殺真菌/抗真菌効果(すなわち、真菌類の発達および蔓延の阻害および/もしくは防止の効果ならびに/または真菌類に対する致死効果)をもたらす。この使用は、好ましくは農業分野における抗真菌的使用(すなわち、農業植物検疫的使用)であり、それにもまして好ましくはブドウ栽培分野における抗真菌的使用(すなわち、ブドウ栽培植物検疫的使用)である。
【0031】
「農業の」または「農業分野」によって、農業および園芸(すなわち、その土地での作業、ならびに動物および植物の生産)に関連するすべてのものが企図される。よって、農業の領域/分野/専門性/活動は、農業に編入される領域/分野/専門性/活動(すなわち、農作物を育て、動物および植物を生産することに充てられる、またはそれに関連する領域)を含んでなる、それらから本質的になる、それらからなる、またはそれらそのものである。したがって、本発明の農業植物検疫的組成物は、農作物を育てる、および動物や植物を生産するのに好適な組成物、ならびに/または農作物を育てる、および動物や植物を生産するための組成物を含んでなる、それから本質的になる、それからなる、またはそれ自体である。したがって、農業植物検疫的使用は、土工、および動物や植物の生産に好適な使用を含んでなる、それから本質的になる、それからなる、またはそれ自体である。
【0032】
「ブドウ園」または「ブドウ園分野」によって、つる植物およびブドウ酒製造に関連するすべてのものが企図される。よって、ブドウ栽培領域/分野/専門性/活動は、つる植物栽培とブドウ酒製造に関連する領域/分野/専門性/活動を含んでなる、これらから本質的になる、これらからなる、またはこれら自体である。ブドウ酒生産での植物検疫的組成物は、つる植物栽培やブドウ酒製造に好適な組成物、および/またはつる植物栽培やブドウ酒製造のための組成物を含んでなる、それから本質的になる、それからなる、またはそれ自体である。したがって、ブドウ酒生産での植物検疫的使用は、つる植物栽培およびブドウ酒製造に好適な、および/またはそれらにおける用途を含んでなる、それから本質的になる、それからなる、またはそれ自体である。
【0033】
「農作物」によって、土地の利用から得られる植物または真菌の生産が企図される。したがって、「栽培」という用語は、収穫の前または後に栽培される植物または真菌(例えば、栽培植物)、収穫の前または後に栽培される植物または真菌を含むプランテーション/圃場、および土地を処理し消費者製造物(栽培植物または真菌類など)を得るために使用されるすべての作業および技術の両方を指すことができる。
【0034】
「つる植物(vine)」は、つる植物群落およびつる植物のプランテーション(すなわち、つる植物の集合またはつる植物のブドウ品種)の両方を意味する。「つる植物」、「つる性植物(vine plant)」、「つる植物群落」によって、房状の果実(ブドウの実)をつける、サルメント質のつる性低木が企図される。つる植物類は、ブドウおよび/またはブドウ酒の製造用に栽培することができる。有利には、つる植物は、ブドウ属(Vitis)、ツタ属(Parthenocissus)、およびノブドウ属(Ampelopsis)(ノブドウ種(Ampelopsis brevipedunculata)を含む)を含むブドウ科(Vitaceae)に属する。つる植物は、好ましくはブドウ属に属し、それにもまして好ましくはヴィティス・ヴィニフェラ種(Vitis vinifera)に属する。
【0035】
「ウリ」によって、ウリ植物およびウリのプランテーション(すなわち、ウリ植物/足の集合)の両方が企図される。「ウリ」または「ウリ植物」または「ウリの足」または「ウリのプランテーション」によって、ウリ科(Cucurbitaceae)に属する植物が企図される。ウリ科は、ウリ目(Cucurbitales)における双子葉植物の科であり、たいてい熱帯および亜熱帯地域に自生し、およそ130属800種を含んでなる。
【0036】
これらは概して、草本性、一年性、または多年性であって、茎に巻きひげを有するほふく性または登攀性の植物であり、時には低木である。花は単性花であり、同一植物がつける場合(雌雄同株)もあれば、異なる植物がつける場合(雌雄異株)もある。果実は通常、ペポニド(peponid)と呼ばれる変質した液果であり、さらに稀には乾燥果実(莢果、翼果)である。多くのウリ種は、それらの食用果実(特にカボチャ、ズッキーニ、キュウリ類、ガーキン類、メロン類、スイカ類、ハヤトウリ類など)を得ることを目的として、またそれらの種子(アブラカボチャ、アフリカンピスタチオなど)を得ることを目的として育てられている。
ウリ科は、以下の属:
・ ブリオニア属(Bryonia)(例えば、雌雄異株のブリオニア属を含む)、
・ テッポウウリ属(Ecballium)(例えば、テッポウウリを含む)、
・ スイカ属(Citrullus)(例えば、スイカ(Citrullus vulgaris)および真のコロシント(colocynth)(Citrullus colocynthis)を含む)、
・ キュウリ属(Cucumis)(例えば、キュウリ類(Cucumis sativus)およびメロン(Cucumis melo)を含む、
・ カボチャ属(Cucurbita)(カボチャおよびズッキーニのさまざまな種を含む)、
・ ユウガオ属(Lagenaria)(例えば、ひょうたん類を含む)、
・ ヘチマ属(Luffa)、
・ その他
を含む。
【0037】
よって、ウリは、有利にはブリオニア属(好ましくは雌雄異株のブリオニア)、テッポウウリ属(好ましくはテッポウウリ)、スイカ属(好ましくはスイカ(Citrullus vulgaris)または真のコロシント(Citrullus colocynthis))、キュウリ属(好ましくはキュウリ(Cucumis sativus)またはメロン(Cucumis melo))、カボチャ属(好ましくはカボチャまたはズッキーニ)、ユウガオ属(好ましくはひょうたん類)、ヘチマ属、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0038】
ナス科(Solanaceae)によって、ナス科植物およびナス科プランテーション(すなわち、ナス科植物/足の集合)の両方が企図される。「ナス科の」または「ナス科の植物」または「ナス科の足」または「ナス科のプランテーション」によって、ナス科に属する植物が企図される。ナス目(Solanales)に属する双子葉植物の科(双子葉植物綱(Magnoliopsida))。これらは概して、托葉のない互生の単純な葉を有する、草本植物、低木、樹木、つる植物である。この科は、およそ100属2,700種を含んでなり、広範囲の生息地、形態、生態系にわたる。この科は、馬鈴しょ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena)、およびトウガラシ(Capsicum)などの食用農作物を含む。多くの観賞用植物もまた、ペチュニア(Petunia)、シザンサス(Schizanthus)、サルピグロシス(Salpiglossis)、およびダチュラ(Datura)を含むナス科に属する。いくつかのナス科の種はアルカロイドを豊富に含み、それらの医療での使用、向精神的効果、または毒性に関して知られており:ベラドンナ、ナイトシェード(nightshade)、ブルグマンシア、ダチュラ、マンドレイク、タバコなどがそうである。
【0039】
ナス科は、コエロネウルム属(Coeloneurum)、エスパダエア属(Espadaea)、ゴエゼア属(Goetzea)、ヘノオニア属(Henoonia)、ナス属(Solanum)などを含む。よってナス科は、有利にはこれらの属およびこれらの属のいずれかの組み合わせから選択される。
【0040】
有利には、ナス科は、亜科であるブロワリオイデアエ(Browallioideae)、ダッケオデンドロン(Duckeodendron)、コエゼオイデアエ(Goetzeoideae)、ニコチアノイデアエ(Nicotianoideae)、ペツニオイデアエ(Petunioideae)、スキザントイデアエ(Schizanthoideae)、スクウェンキオイデアエ(Schwenckioideae)、ソラノイデアエ(Solanoideae)、ケストロイデアエ(Cestroideae)、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。ナス科は、好ましくは馬鈴しょ類(Solanum tuberosum)、トマト類(Solanum lycopersicum)、ナス類(Solanum melongena)、トウガラシ類(Capsicum)、ペチュニア、シザンサス、サルピグロシス、およびダチュラ、ベラドンナ、ナイトシェード、ブルグマンシア、ダチュラ、マンドレイク、タバコ、およびそのいずれかの亜種、およびそれらのいずれかの組み合わせ(好ましくは馬鈴しょ類(Solanum tuberosum)、トマト類(Solanum lycopersicum)、ナス類(Solanum melongena)、トウガラシ類(Capsicum)、およびそれらのいずれかの亜種、およびそれらのいずれかの組み合わせ;好ましくは馬鈴しょ類(Solanum tuberosum)、特にそれらの亜種、例えばSolanum tuberosum L. subsp . Tuberosum、およびSolanum tuberosum L. subsp. andigenum (Juz . & Bukasov) Hawkes)から選択される。
【0041】
「活性成分」または「活性物質」によって、植物検疫的組成物、化粧品用組成物中、または医薬製造物中で、それぞれ少なくとも一つの植物検疫的効果、化粧品としての効果、または処置上の効果を有する化学物質が企図される。植物検疫的組成物の場合には、植物検疫的効果は、好ましくは上に定義されたとおりである。活性成分は、好ましくは本質的に生物系である。
【0042】
「重炭酸カリウム」または「炭酸水素カリウム」によって、化学式KHCO3を有する無色無臭の塩基性塩が企図される。重炭酸カリウムはまた、炭酸水素カリウムとしても公知である。その単斜晶結晶は、比重2.17であり、100℃と200℃の間で分解する。これは、炭酸カリウム、水、および二酸化炭素を、以下の化学反応:
K2CO3 + H2O + CO2 -> 2KHCO3
にしたがって反応させることにより作ることができる。
【0043】
これはまた、炭酸カリウムと水から合成することができる。重炭酸カリウムは、好ましくは本質的に生物系である。
【0044】
「賦形剤」または「添加剤」によって、活性成分以外の、組成物中のいずれかの物質が企図される。組成物への賦形剤の添加は、これに所与の安定性、一貫性、形状、溶解性、目標特性、保存性、半減期、生体適合性、味覚、色、審美性、および/または質感、または他の特定の物理的、化学的、生物学的、もしくは味覚的特徴を与えることを意図している。
【0045】
したがって賦形剤は、特定の化学組成物によってではなくその使用によってさらに定義され、前述の使用は、詳細には賦形剤としてのその役割を満たすのに好適となるようにするその物理化学的特性から導かれる。
【0046】
賦形剤は、詳細には、安定化剤、保存剤、抗酸化剤、食感改良剤、結合剤、乳化剤、着色剤、顔料、腐食防止剤、重合禁止剤、固結防止剤、界面活性剤(発泡剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤とも呼ばれ得る)、消泡剤、溶脱防止剤、増粘剤、可溶化剤、保湿剤、乾燥剤、抗オゾン剤、抗UV剤(光保護剤;例:「クエンチャー」、UV吸収剤)、熱安定剤、凍結防止剤(例:エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、メタノール、イソプロパノール)、難燃剤(例:臭素化化合物、リン化合物、ハロゲン供与体を伴う三酸化アンチモン)、加工剤(例:潤滑剤、可塑剤、ケロシン)、接着促進剤、溶媒、希釈剤、帯電防止剤、緩衝添加剤、嗅覚トレーサー(エタンチオールなど)、これらの特徴を組み合わせた薬剤であり得る。
【0047】
賦形剤は、好ましくは、活性成分と負の相互作用、特に化学的なものを有さず、これはすなわち、賦形剤は、処置/保護されることになる生物への適用/投与の前または後のいずれにおいても、活性成分の所望の活性/作用/効果の低減を誘導しないということである。賦形剤はまた、活性成分に対して中性であり得るが、これはすなわち、活性成分の活性/作用/効果に何ら影響を与えないということである。賦形剤は、好ましくは非毒性(詳細には、処置されることになる植物生物、特につる植物類、ウリ類、ナス科などの農作物;および動物、特に哺乳類そしてより詳細にはヒトに対して)である。賦形剤は、好ましくは本質的に天然起源のものである。賦形剤は、好ましくは本質的に生物分解性である。それにもまして好ましくは、賦形剤は、本質的に生物系である。特に好ましくは、賦形剤は、本質的に生物系および本質的に生物分解性である。代替的に、またはこれに加えて、賦形剤は、低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させる。
【0048】
「植物検疫的に許容される賦形剤」によって、植物検疫的使用に好適な賦形剤が企図される。詳細には、これは、植物検疫的組成物中に組み込むのに好適な賦形剤を意味する。有利には、植物検疫的に許容される賦形剤は、活性成分および/または組成物の所望の植物検疫的活性/作用/効果を低減させることはない。植物検疫的に許容される賦形剤は、好ましくは非毒性(詳細には、処置されることになる植物生物、詳細には農作物、例えばつる植物類、ウリ類、ナス科;および動物、詳細には哺乳類そしてより詳細にはヒトに対して)である。賦形剤は、好ましくは天然起源のものである。賦形剤は、好ましくは本質的に生物分解性である。賦形剤は、好ましくはさらに本質的に生物系である。賦形剤は、好ましくは生物分解性および/または生物系である。代替的に、またはこれに加えて、賦形剤は、低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させる。有利には、植物検疫的に許容される賦形剤は、関係地域の監督官庁により植物検疫的使用のために登録されている、または登録手続き途上にある。
【0049】
本発明においては、用語「生物系」は、本発明の態様/実施形態のいずれかの文脈において使用される場合には、以下の条件、つまり生物系、生物分解性、天然であること、低懸念性の植物検疫的な許容されるプレコーショナリ・ステートメントを付属させること、のいずれか一つを、単独でまたは前述の条件の少なくとも他の一つとの組み合わせで修飾するとみなされ得る。この定義に基づいて、本明細書全体をとおして用語「生物系」に与えられることになる解釈は、文脈にしたがって当業者には容易に理解できよう。
【0050】
本発明の目的については、「アドバイス・ステートメント(advice statement)」または「プレコーショナリ・ステートメント(precautionary statements)」または「プレコーショナリ・アドバイス・ステートメント(precautionary advice statement)」または「Pステートメント(P statement)」は、化合物/製造物の使用についてラベルおよび/または包装および/または使用説明書上に存在する表示であり、これらの化合物/製造物について使用者に情報を与える。この情報は、前述の化合物/製造物を取り扱うまたは使用する場合に、とるべきおよび/または実現されるべき注意、および/または発生するリスクを使用者に表示する。「CLP」として知られる規則(EC)No. 1272/2008によれば、プレコーショナリ・ステートメント、または「P-ステートメント」は、
「有害な物質または混合物の使用または廃棄の結果として、それへのばく露から生じる悪影響を最小化または防止するためにとるべき推奨措置を記載した文」である。
【0051】
本発明の目的の場合には、表現「低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを有する製造物/化合物/成分/賦形剤X」は、製造物/化合物/成分/賦形剤Xが、そのラベルおよび/または包装および/または使用説明書上で:
- 使用前のおよび/または関連リスクについての警告がほとんどまたはまったくないこと;または
- 懸念がほとんどまたはまったくない、および/または関連リスクがほとんどまたはまったくない警告/注意であること;
- 使用時のおよび/または関連リスクについての注意喚起がほとんどまたはまったくないこと;
を表示していることを意味しており、
この場合、「~でないまたはほとんど~ない」(または「ほとんどまたはまったく~ない」)は、その警告メッセージがもし存在するとすれば、注意原則の一環として与えられることを意味するが、しかし製造物Xの使用が使用者または環境のいずれにもリスク(または顕著なリスク)を課すものではないことは理解される。好ましくは、警告/注意は、製造物/化合物/成分/賦形剤の取り扱いおよび/または使用が、使用者、および/または製造物/化合物/成分/賦形剤を用いて処置される環境および/または領域/場所にとって、非常に有害なリスクおよび/または結果をほとんどまたはまったく伴わないことを、使用者に表示する。それにもまして好ましくは、警告/注意は本質的に、一般的な性質のものであり、および/または製造物/化合物/成分/賦形剤の使用に向けた奨励に対応するものであり、これらの奨励に準拠した使用が、使用者、および/または製造物/化合物/成分/賦形剤を用いて処置される環境および/または領域/場所にとってリスクを全く伴わない(または顕著なリスクを伴わない)ことは理解される。
【0052】
「界面活性剤」によって、二つの表面の間の表面張力を改良する化合物が企図される。界面活性剤は、両親媒性分子であり、すなわち異なる極性の二つの部分を有しており:一方の親油性(脂肪保持)の部分は無極性、もう一方の親水性(水混和性)部分は極性である。よって、これらの剤は、二つの非混和相を、疎水性部分を介して非極性相((すなわち親油性、したがって疎水性)と;そして親水性部分を介して、極性であるもう一方の相と相互作用することにより、可溶化させることができる。
【0053】
概して、界面活性剤は、少量で使用される場合でさえ、液体、特に水の表面張力を改良することが可能な化合物である。鉱物塩または塩基(アンモニアを除く)を除き、大部分の界面活性剤は、水の表面張力を低下させる。しかし、これらがおもに親水性か疎水性かどうかを判断するために、これらのHLB(親水性-親油性バランス(Hydrophilic-Lipophilic Balance))を計算することができ、これは、親油性の構成成分と親水性の構成成分の間のバランスの数値見積もりを与えるものである。
【0054】
界面活性剤は、機能および/またはタイプにしたがって分類することができる。機能面から言えば、界面活性剤には:
- 洗剤(洗浄および/または清浄化能力を有するもの。洗剤は概して、13から15の範囲のHLBを有する);
- 安定化剤(通常は、使用される溶媒に不溶性である安定化物質に対して。非常に低い濃度では、界面活性剤は、水相で真の溶液を形成することができる。それらの濃度が、特定の値(臨界ミセル濃度)を超えると、安定化界面活性剤の分子はともに集合して、ミセルと呼ばれる強集合体になる。これは、それらの親水性極が、水分子と接触するただ一つのものとなるようにして生じる。このようにして、不溶性物質がミセルによって取り込まれ、その中に組み込まれる。安定化剤は概して、18から20のHLBを有する);
- 発泡剤(気泡形成、すなわち、小体積の液体中への大体積のガスの分散を促進する)。発泡剤は、水-空気界面に吸着する。これらは概して、3から8のHLBを有する);
- 湿潤剤(湿潤剤は、固体-液体表面張力を低下させることにより、固体上で液体がより均等に展着することを可能にし、よってその液体による固体の濡れ性を促進する。この濡れ能力は、液体中で不溶性である、その液体中の固体粒子を、粒子に接着して液相中での分散を阻害する空気層を追い出すことによって懸濁させるのに役立つ。湿潤剤は概して、13から15のHLBを有する);
- 分散剤(親水性溶液、例えば水に含有される疎水性粒子を結合させ、よって分散液、すなわち、懸濁した粒子を含有する水溶液を生成するためのもの。これらの分散剤は、粒子の凝集、すなわち、それらの粒子が集合してさらに大きな部分になり、これがついで溶液の底に沈降し易くなることを防止する。分散剤は概して、6から8のHLBを有する);
- 乳化剤(二つの非混和性液体間でエマルジョンの形成を促進するもの;概して、O/Wエマルジョン(水中油(Oil in Water))については6未満の、またはW/Oエマルジョン(油中水(Water in Oil))については10より高いHLBを有する);
- 防腐性界面活性剤(静菌性または殺菌性を有するもの)、および
- それらのいずれかの組み合わせ、
などが挙げられる。
【0055】
類型論的には、界面活性剤には、アニオン性界面活性剤(親水性部分が負に帯電している)、カチオン性界面活性剤(親水性部分が正に帯電している)、双性イオン性または両性イオン性界面活性剤(親水性部分が正負の電荷を有し、全体としての電荷はゼロ)、非イオン性界面活性剤(分子が正味の電荷を有さない)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、などが挙げられる。
【0056】
「アニオン性界面活性剤」によって、親水性部分が負に帯電した界面活性剤が企図される。アニオン性界面活性剤は、水溶液中で負の電荷(アニオン)を放出する。これらは、さらに顕著な親水性の傾向を有するので、比較的高い親水性/親油性バランス(HLB)(8から18)を有する。このタイプの界面活性剤の例には、石鹸、硫酸化誘導体(ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミンなど)、スルホン化誘導体(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなど)、リポアミノ酸類、タウラート類、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤などが挙げられる。
【0057】
石鹸は、一般式RCOOM(R=長鎖の炭化水素、M=金属、アルカリ、または有機塩基)を有する脂肪酸塩である。M基の性質に応じて、アルカリ石鹸(Na+、K+、NH4
+)、金属石鹸(特にカルシウム石鹸)、および有機石鹸(特にトリエタノールアミン石鹸、例えばトリエタノールアミンステアラートなど)の間で区別がなされる。
【0058】
アニオン性界面活性剤は、生物系および/もしくは生物分解性および/もしくは天然のものであり得る、ならびに/または低懸念性のおよび/もしくは植物検疫的な許容されるプレコーショナリ・ステートメントを付属させたものであり得る。アニオン性界面活性剤は、好ましくは本質的に生物系である。アニオン性界面活性剤は、好ましくはタウラート類、アニオン性ポリ電解質ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0059】
「タウラート」または「タウリド」または「タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤」によって、N-メチルタウリン(2-メチルアミノエタンスルホン酸)からなる親水性の頭部を含んでなるアニオン性界面活性剤が企図される。タウラート類は概して、N-メチルタウリン(2-メチルアミノエタンスルホン酸)からなる親水性頭部の基と、長鎖カルボン酸(脂肪酸)からなる親油性残基とから構成され、両方の基がアミド結合によって結合している。使用される脂肪酸は、例えば、ラウリン酸類(C12)、ミリスチン酸類(C14)、パルミチン酸類(C16)、ステアリン酸類(C18)、オレイン酸類(C18:1)、ココナッツ脂肪酸類(C8-C18)など、およびそれらのいずれかの組み合わせ(オレイン酸類(C18:1)とココナッツ脂肪酸類(C8-C18)の混合物など)から選択され得る。カウンターイオンは、例えば、ナトリウム、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属など、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され得る。
【0060】
室温では、タウラート類は概して、糊状の塊であり、水によく溶け、中性からわずかにアルカリ性(pH7~8)で反応する。これらの毒性は非常に低い。これらは、生物分解されやすく生物蓄積されない。
【0061】
タウラート類は、これらのアミド結合に起因して、広いpH範囲(近似的に2~10)にわたって安定である。これらは、脂肪および油の存在下であってさえ、良好な発泡能力と高い泡安定性を有する非常に穏和な界面活性剤である。タウラート類は、硬水または海水中であってさえ、それらの良好な洗浄性を保持する。タウラート類はまた、非イオン性およびアニオン性界面活性剤との良好な相溶性を有し、共界面活性剤としておよそ2%の濃度で好適である。
【0062】
タウラート類は、生物系および/もしくは生物分解性および/もしくは天然のものとすることができる、ならびに/または低懸念性のおよび/もしくは植物検疫的な許容されるプレコーショナリ・ステートメントを付属させたものとすることができる。タウラート・ファミリーに属する界面活性剤は、好ましくは本質的に生物系である。
【0063】
タウラートは、好ましくはN-メチルタウラート類およびそれらのいずれかの組み合わせから;好ましくはナトリウムN-メチルタウラート類、アンモニウムN-メチルタウラート類、カルシウムN-メチルタウラート類、アルカリ金属N-メチルタウラート類、アルカリ土類金属N-メチルタウラート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから;より好ましくはさらにナトリウムN-メチルタウラート類から選択される。有利には、タウラートは、ナトリウムN-メチルタウラートを含んでなる、これから本質的になる、またはこれからなる。有利には、タウラートは、商標名を、Adinol(商標)、好ましくはAdinol(商標) OT-72(クロダ社(Croda Inc.)、英国)およびそれらのいずれかの組み合わせとする化合物から選択される。
【0064】
「アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤」または「アニオン性ポリ電解質ポリマー」によって、負に帯電したイオン性またはイオン化可能な基(ポリアニオン)を担持するポリマーが企図される。アニオン性ポリ電解質ポリマー類の例には、ペクチン類、アルギナート類、ポリ(アクリル酸)、リグノスルホナート類などが挙げられる。
【0065】
アニオン性ポリ電解質ポリマー類は、生物系および/もしくは生物分解性および/もしくは天然、ならびに/または低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させる、ならびに/または植物の健康の観点から許容されるものであり得る。アニオン性ポリ電解質ポリマーは、好ましくは本質的に生物系である。
【0066】
アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤は、好ましくはリグノスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。有利には、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤は、リグノスルホナートを含んでなる、これから本質的になる、またはこれからなる。
【0067】
「リグノスルホナート」または「リグニンスルホナート」によって、少なくとも一つのスルホナート基を有するアニオン性ポリ電解質ポリマー(化学式R-SO3H)が企図される。リグノスルホナート類は、保存性および/または分散性の特性を有する。リグノスルホナート類は、環境への影響が低い。ライフサイクルアセスメント(life cycle assessment(LCA))は、これらが石油化学系製造物に対する優れた代替となることを示した。
【0068】
リグノスルホナート類は、生物系および/もしくは生物分解性および/もしくは天然のものとすることができる、ならびに/または低懸念性の、および/もしくは植物検疫的に許容されるプレコーショナリ・ステートメントを付属させたものとすることができる。詳細には、これらは、木材パルプ(例えば、セルロースまたはパルプの製造の副生成物)から得ることができる。リグノスルホナートは、好ましくは本質的に生物系である。
【0069】
リグノスルホナートは、好ましくは水溶性である。
【0070】
リグノスルホナートは、好ましくはリグノスルホン酸ナトリウム、アンモニウムリグノスルホナート類、カルシウムリグノスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから;それにもまして好ましくはリグノスルホン酸ナトリウム類から選択される。有利には、リグノスルホナートは、リグノスルホン酸ナトリウムを含んでなる、それからなる、またはそれから本質的になる。リグノスルホナートが、リグノスルホン酸ナトリウムから選択される場合には、それは、好ましくは化学式C20H24Na2O10S2を有する。
【0071】
有利には、リグノスルホナートは、商標名をUfoxane 3A(商標)(ボレガード社(Borregaard AS)、ノルウェー)とする化合物類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0072】
「非イオン性界面活性剤」によって、正味の電荷を担持しない(水中でイオン化しない)分子を含む界面活性剤が企図される。非イオン性界面活性剤は、分子の親水性部分と疎水性部分の間の結合の性質にしたがって分類することができる。
非イオン性界面活性剤には:
- エステル結合した界面活性剤(R-CO-O-R’)。エステル結合した界面活性剤には、グリコールエステル類(例えば、エチレングリコールステアラート)、グリセロールエステル類(例えば、グリセロールステアラート、乳化剤として使用)、ポリオキシエチレングリコールエステル類(脂肪酸または脂肪酸の混合物上でエチレンオキシドの作用により得られる)、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類(さらに一般的にはポリソルバート類として公知);
- エーテル結合した界面活性剤(R-O-R’)、例えば脂肪族アルコールエステル類およびポリオキシエチレングリコールエステル類(乳化剤として使用されることが多い);
- アミド結合した界面活性剤(R-CO-NH-R’);
- 非イオン性エトキシル化アルコール類(その分子式は:R(OC2H4)nOHであり得る)、
などが挙げられる。
【0073】
非イオン性界面活性剤は、生物系および/もしくは生物分解性および/もしくは天然のものとすることができる、ならびに/または低懸念性の、および/もしくは植物検疫的な許容されるプレコーショナリ・ステートメントを付属させたものとすることができる。非イオン性界面活性剤は、好ましくは本質的に生物系である。非イオン性界面活性剤は、好ましくはエトキシル化アルコール類から選択される。有利には、非イオン性界面活性剤は、エトキシル化アルコールを含んでなる、それからなる、またはそれから本質的になる。
【0074】
「エトキシル化アルコール」によって、エトキシル化反応により、すなわちエチレンオキシドをアルコールおよび/またはフェノールと反応させる過程により得られる化合物が企図される。エチレンオキシドは、1,2-エポキシエタンまたはオキシランとしても公知であり、経験的化学式C2H4Oを有する化合物である。エトキシル化アルコール類は、以下の化学反応:
アルコール(R-OH) + nエチレンオキシド単位(nC2H4O) -> R(OC2H4)nOH
にしたがって合成することができる。
【0075】
エトキシル化アルコール類の例は:グリコールモノアルキルエーテル、メルカプトエタノール、アミノエタノール、ジエチレングリコール、エタンジオール、エチレンクロロヒドリン、シアノエタノール、ポリエチレングリコール(PEG)、ラウリルアルコールエトキシラート、フェノールエトキシラート、ノニ-フェノールエトキシラートである。
【0076】
エトキシル化アルコール類は、生物系および/もしくは生物分解性および/もしくは天然のものであり得る、ならびに/または低懸念性の、および/もしくは許容される植物検疫的なプレコーショナリ・ステートメントを付属させ得る。エトキシル化アルコールは、好ましくは本質的に生物系である。
【0077】
アルコールは、一級(この場合には、ヒドロキシル基(-OH)が、一級炭素原子に担持される、すなわち、他のただ一つの炭素原子と結合する)、二級(この場合には、ヒドロキシル基は、二級炭素に担持される、すなわち、他の二つの炭素に結合する)、三級(この場合には、ヒドロキシル基は、三級炭素原子に担持される、すなわち、三つの炭素原子に結合する)、または環状/フェノール性(この場合には、ヒドロキシル基は、環に存在する炭素に担持される)とすることができる。したがって、エトキシル化アルコール類は、それぞれ、一級エトキシル化アルコール類、二級エトキシル化アルコール類、三級エトキシル化アルコール類、およびフェノール/環状エトキシル化アルコール類として分類することができる。エトキシル化アルコールは、好ましくは非イオン性エトキシル化二級アルコール類(すなわち、二級アルコールから得られるもの、または二級アルコールを含んでなるもの))、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。有利には、エトキシル化アルコールは、非イオン性エトキシル化二級アルコールを含んでなる、それからなる、またはそれから本質的になる。エトキシル化アルコールは、好ましくは非イオン性C8-C18エトキシル化二級アルコール類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。有利には、エトキシル化アルコールは、非イオン性C8-C18エトキシル化二級アルコールを含んでなる、それからなる、またはそれから本質的になる。好ましくは、エトキシル化アルコールは、やはり非イオン性C8-C18エトキシル化二級アルコールである。有利には、エトキシル化アルコールは、経験式C12-14H25-29O[CH2CH2O]xHを有する。有利には、エトキシル化アルコールは、商標名をTergitol(登録商標)、好ましくはTergitol(登録商標) 15-S-12(シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich)、米国、またはダウ・ケミカル社(Dow Chemical)、米国)とする化合物類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0078】
「カチオン性界面活性剤」によって、正に帯電している親水性部分を含む界面活性剤が企図される。カチオン性界面活性剤は、水溶液中で正電荷(カチオン)を放出する。これらは、静菌特性および乳化特性を有する。これらは概して、窒素系製造物(正に帯電した原子を有する)である。例には、四級アンモニウム塩類(例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩類(例えば、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド)、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩類(例えば、ベンザルコニウムクロリド)、有機鉱物ポリマー類、プロトン化アミン類など)などが挙げられる。
【0079】
カチオン性界面活性剤は、生物系および/もしくは生物分解性および/もしくは天然のものであり得る、ならびに/または低懸念性の、および/もしくは許容される植物検疫的なプレコーショナリ・ステートメントを付属させ得る。カチオン性界面活性剤は、好ましくは本質的に生物系である。
【0080】
カチオン性界面活性剤は、好ましくは有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。有利には、カチオン性界面活性剤は、有機鉱物ポリマーを含んでなる、それからなる、またはそれから本質的になる。
【0081】
「有機鉱物ポリマー」または「ハイブリッドポリマー」によって、有機成分と無機成分を含んでなるポリマーが企図される。有機鉱物ポリマー類には、例えば、シラン類、シロキサン類などが挙げられる。有機鉱物ポリマー類は、生物系および/もしくは生物分解性および/もしくは天然のものであり得る、ならびに/または低懸念性の、および/もしくは植物検疫的な許容されるプレコーショナリ・ステートメントを付属させ得る。有機鉱物ポリマーは、好ましくは本質的に生物系である。有機鉱物ポリマーは、好ましくはシロキサン類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0082】
「シロキサン」によって、ケイ素および酸素を基本とする繰り返し単位(化学式:-[O-Si(CH3)2]n-)を有するケイ素化合物(有機シリコーン類)の類が企図される。シロキサン類についての経験式は、R2SiOであり、式中、Rは、有機であり得るラジカル基である。これらの化合物は、有機および無機のハイブリッドとすることができる。有機鎖は、化合物に疎水性を付与する一方、-Si-O-Si-O-主鎖は、純粋に無機である。シロキサン類の例には、アルキルシロキサン類、例えばジメチルシロキサン類(式[SiO(CH3)2]nのもの)、ジフェニルシロキサン類(式[SiO(C6H5)2]nのもの)、ポリシロキサン類(重合したシロキサン類、例えばシリコーン類)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などが挙げられる。シロキサンは、好ましくは水溶性である。
【0083】
シロキサン類は、生物系および/もしくは生物分解性および/もしくは天然のものであり得る、ならびに/または低懸念性の、および/もしくは植物検疫的に許容されるプレコーショナリ・ステートメントを付属させ得る。シロキサンは、好ましくは本質的に生物系である。
【0084】
シロキサンは、好ましくはアルキルシロキサン類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;それにもまして好ましくはポリジメチルシロキサン類(PDMS)およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。有利には、シロキサンは、ポリジメチルシロキサン、好ましくは吸収されたものを含んでなる、それからなる、またはそれから本質的になる。有利には、シロキサンは、経験式(C2H6Osi)nを有する。有利には、シロキサンは、商標名をRhodorsil(登録商標)、好ましくはRhodorsil(登録商標) EP 6703(ソルベイ社(Solvay)、ベルギー)とする化合物類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0085】
「水溶性ポリマー」によって、水中で溶液を形成することのできるポリマーが企図される。水溶性ポリマー類は、それらのポリマーを、とりわけ水溶性にする親水性基を含有する。これらの親水性基は:
- 主鎖での:水素結合を形成することのできる、酸素および窒素;
- 側鎖での:ヒドロキシル(-OH)、アミン(-NH3)、有機酸類の塩(-COO-)など、およびそれらのいずれかの組み合わせ
とすることができる。
【0086】
水溶性ポリマー類は:
- 天然のポリマー類(例えば、デキストリン、カゼイン、デキストラン、プルラン);
- 人工ポリマー類(例えば、セルロースエーテル類);
- 合成ポリマー類;
- ポリエーテル類:ポリエチレングリコール(PEG);
- ビニル類:ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)など、
とすることができる。
【0087】
水溶性ポリマー類はまた、生物系および/もしくは生物分解性および/もしくは天然のものであり得る、ならびに/または低懸念性の、および/もしくは植物検疫的に許容されるプレコーショナリ・ステートメントを付属させ得る。
【0088】
水溶性ポリマー類の例には、アニオン性ポリ電解質ポリマー類(リグノスルホナート類など)、有機鉱物ポリマー類(シロキサン類など)などが挙げられる。
【0089】
「粘土」または「粘土鉱物」によって、三次元構造を有するシリカート類の変性から概して誘導される、ラメラ構造を有する水和シリカート類またはアルミノシリカート類(または水和アルミニウムシリカート)を基本とする天然の岩石鉱物、例えば長石類が企図される。粘土類は、浄化作用、収れん作用、および防腐作用を有する。
【0090】
粘土類は、本質的に天然のものであり、植物検疫的観点から許容することができる。
【0091】
粘土は、好ましくはシリカート類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。有利には、粘土は、シリカートを含んでなる、それからなる、またはそれから本質的になる。
【0092】
「シリカート」によって、二酸化ケイ素SiO2を他の金属酸化物と結びつける塩が企図される。シリカート類には、シリカート組成物、シリカ多形、フィロシリカート類などとの鉱物などが挙げられる。「フィロシリカート類」は、四面体層(「T」)を積層することにより構築されたシリカート基の鉱物であり、この場合、四面体は、四つの頂点のうち三つ(「基部」酸素)を共有し、第4の頂点(「頂部」酸素)は、異なるカチオン(Al、Mg、Fe、Ti、Liなど)によって占有される八面体層(「O」)に結合している。フィロシリカート類には、カオリナイト群に属する化合物などが挙げられる。「カオリナイト」によって、水和アルミニウムシリカートから構成される鉱物種が企図される。カオリナイト群は、以下の同形構造の鉱物:
- ディッカイト Al2Si2O5(OH)4、
- エンデライト Al2Si2O5(OH)4・2H2O;
- ハロイサイト Al2Si2O5(OH)4であって、微量の:Ti、Ca、Na、K、Fe、Cr、Mg、Ni、および/またはCuを含むもの;
- カオリナイト Al2Si2O5(OH)4;
- ナクライト Al2Si2O5(OH)4;
- オージナイト (Fe、Mg、Al、Fe、Ti、Mn)2.5(Si,Al)2O5(OH)4
を含む。
【0093】
シリカートは、好ましくはフィロシリカート類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;それにもまして好ましくはカオリナイト類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。有利には、シリカートは、フィロシリカート、好ましくはカオリナイトを含んでなる、それからなる、またはそれから本質的になる。有利には、シリカートは、好ましくは経験式Al2Si2O5(OH)4を有する、シャラント盆地(Charentes basin)から得られる堆積カオリナイトである。有利には、シロキサンは、商標名をArgirec(商標)、好ましくはArgirec(商標) B22(LEHVOSSグループ(LEHVOSS Group)、ドイツ)とする化合物類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0094】
「グリセロール」または「グリセリン」(これらの二つの用語は同義とみなされ、本明細書では交換可能である)または「1,2,3-プロパントリオール」によって、式HOH2C-CHOH-CH2OHを有する化学化合物が企図される。室温または周囲温度(10℃~40℃)では、この化合物は、無色で粘性のある無臭の液体であって、濃縮された形態において毒性は非常に低く、甘味がある。グリセロールは、比較的低温(10℃未満)で液体の状態を維持することができる。その分子は、三つのアルコール官能基に対応する三つのヒドロキシルを有し、これらが、水へのグリセロールの溶解性およびその吸湿性の原因である。
【0095】
「含有量」によって、混合物(組成物など)中に含有される対象(例えば物質、化合物、成分、影響、活性など)の量が、百分率として企図される。含有量は例えば、混合物または組成物の全重量に対する重量によって表され得る。
【0096】
「化合物/成分を本質的に含まない」または「化合物/成分を本質的に含まない組成物」または「化合物/成分を本質的に含まない組成物」によって、混合物または組成物の全重量に対して15重量%未満の前記化合物または成分の含有量、混合物または組成物の全重量を基準にして、好ましくは混合物または組成物の全重量に対して10重量%未満、より好ましくはさらに7.5重量%未満、好ましくはさらに5重量%未満、より好ましくは2.5重量%未満、それにもまして好ましくは1重量%未満、それにもまして好ましくは0.5重量%未満、それにもまして好ましくは0.4重量%未満、それにもまして好ましくは0.3重量%未満、それにもまして好ましくは0,2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好ましくは0.09重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、好ましくは0.005重量%未満、好ましくは0.001重量%未満の化合物/成分含有量を含有する混合物または組成物が企図される。
【0097】
「発酵」によって、生きた微生物、詳細には細菌によって行われる代謝過程が企図され、この過程は、通常は酸化還元によって生じる、一つまたは複数の基質から少なくとも一つの代謝生成物または発酵生成物への部分的または全体的な変換(または分解)が関与する。発酵は、好気性雰囲気(酸素、O2の存在下)または嫌気性雰囲気(酸素の非存在下)中で行うことができる。
【0098】
いくつかのタイプ発酵は、この代謝過程によって得られる発酵生成物(代謝生成物とも呼ばれる)に応じて識別することができる。例えば、アルコール発酵は、得られる発酵生成物が、少なくとも一つのアルコール、例えばエタノールと、ガス(二酸化炭素であることが最も多く、二酸化炭素または二酸化炭素としても公知であり、化学式CO2を有する)との混合物からなる場合に生じる。混合発酵は、発酵生成物のさらに複雑な混合物が得られる場合に生じる。この混合物は、例えば、一つまたは複数のアルコール類、例えばエタノール、ブタノール;一つまたは複数のカルボン酸類またはそれらの塩類、例えば酢酸またはアセタート、ギ酸またはホルマート、酪酸;乳酸またはラクタート;一つまたは複数のガス、例えば二水素(H2)、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)または二酸素(O2)を含んでなる。発酵は、好ましくはアルコール性である。アルコール発酵は、好ましくは植物発酵である。アルコール発酵は、好ましくはブドウ酒発酵である。ブドウ酒発酵は、つる植物(好ましくはつる植物の果実、すなわちブドウ)の少なくとも一部の、ブドウ酒または他のアルコールへの変換を含んでなる、それからなる、それから本質的になる、またはそれ自体である。好ましくは、発酵は、二酸化炭素(化学式CO2)の少なくとも形成を含んでなる。
【0099】
「固体組成物」または「固体形態の」または「固体状態の」によって、液体状態でも気体状態でもない組成物または混合物が企図される。固体組成物は、粉末、顆粒、錠剤の形態をとる、またはさらに大きな集合体(例えば強集合体、塊、弱集合体など)の形態さえとることができる。固体組成物は、好ましくは本質的に液体を含まない、より好ましくは液体を含まない。固体組成物は、好ましくは本質的に水を含まない、好ましくは水を含まない。
【0100】
「ナノ粒子」によって、ナノメートルスケールである三次元寸法を有する対象、すなわち約100nm未満(例えば、ISO規格TS/27687で定義される)の公称径を有する粒子が企図される。
【0101】
「粉末」によって、概ね10分の1ミリメートル(100μm)より小さいサイズの小片の形態で存在する固体が企図される。
【0102】
「粒状体」または「顆粒」または「粒状化」によって、概ね10分の1ミリメートル(100μm)以上であるが10分の1センチメートル(10cm)より小さいサイズを有する小片または粒の形態で存在する固体が企図される。
【0103】
「錠剤」によって、圧縮により大量の粒子(粉末または顆粒)を凝集させることによって得られる固体形態が企図される。錠剤は、コーティングされた、フィルムコーティングされた、発泡性の、分散性の、またはそれらのいずれかの組み合わせのものであり得る。
【0104】
「水溶液」によって、少なくとも一つの物質(または化学種または成分または化合物)を、それが固体、液体、または気体であるかどうかによらず、水中に溶解させるによって得られる均質な混合物が企図される。したがって水溶液は、いくつかの化学種、例えば圧倒的大部分を占める種である水(H2O、溶媒)、および少なくとも一つの圧倒的少量の種である溶質(すなわち、溶解した物質、化学種、成分、または化合物)を含有する液相である。有利には、水溶液は、水中で希釈された製造物の液体、懸濁液、エマルジョン、または真の溶液である。
【0105】
「噴霧可能な水溶液」によって、微小液滴として、または粉末形態で噴霧できる水溶液が企図される。有利には、噴霧可能な水溶液は、ガス性媒質、好ましくは不活性ガス中の懸濁液、エマルジョン、または溶液である。有利には、噴霧可能な水溶液は、粉砕装置、気化装置、エアロゾル、または噴霧の形態で存在する。
【0106】
「噴霧」によって、微小液滴の形態で、エアロゾル形態で、蒸気形態で、または粉末形態で、対象、好ましくは農作物、好ましくはつる植物の上に水溶液を投射することが企図される。
【0107】
「天然起源の成分」または「天然起源の賦形剤」によって、天然に由来する、すなわち、天然の構成要素(例えば、植物、真菌、鉱物、昆虫、動物)から得られた成分または化合物または賦形剤が企図される。
【0108】
「生物系の成分」または「生物系の賦形剤」によって、生きた生物から誘導される、すなわち、生きた生物(例えば、微生物、細菌、植物、藻類、真菌、酵母、昆虫、動物)から得られる、および/または生きた生物により生成/分泌される、および/または生きた生物から誘導される成分または化合物または賦形剤が企図される。したがって、生物系の成分/構成成分/賦形剤は、バイオマスから得ることができる。詳細には、生物系の成分/化合物/賦形剤は、微生物、真菌、動物、または植物起源のバイオマスから誘導することができる。生物系の成分/構成成分/賦形剤は詳細には、生きた生物から誘導される、および/または生きた生物により生成/分泌される、および/または生きた生物から得られる酵素を使用して得ることができる。よって、生物系の成分/構成成分/賦形剤は、本質的に生化学的過程により、好ましくは生化学的過程により得られる。
【0109】
「生物分解性成分」または「生物分解性賦形剤」によって、生物分解を受けることの可能な成分または物質または化合物または賦形剤が企図される。生物分解は、生きた生物、例えば細菌、真菌類、または藻類などの微生物による、有機物質の分解である。成分または物質または化合物または賦形剤は、これが、生きた生物、例えば細菌、真菌類、または藻類のような微生物の作用の下で、自然環境に有害な効果を有さない材料および/または構成要素に分解可能である場合に、生物分解性である。自然環境を傷つける効果を有さない材料および/または構成要素は、二酸化炭素、メタン、水、およびバイオマスを含む、これらから本質的になる、またはこれらからなる。
【0110】
「本質的に生物分解性の化合物/成分」または「本質的に生物分解性の賦形剤」によって、化合物または成分の全重量に対してその少なくとも80重量%が生物分解性である、化合物または成分の全重量に対して好ましくはその少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、またさらに好ましくは少なくとも92.5重量%、またさらに好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも97.5重量%、またさらに好ましくは少なくとも99重量%が生物分解性である、化合物または成分または賦形剤が企図される。換言すれば、本質的に生物分解性の化合物/成分/賦形剤は、生物分解の後に残留するその非分解量が、生物分解の前の化合物/成分/賦形剤の全重量に対して20重量%未満、生物分解の前の化合物/成分/賦形剤の全重量を基準にして好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満、それにもまして好ましくは7.5重量%未満、それにもまして好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2.5重量%未満、それにもまして好ましくは1重量%未満、それにもまして好ましくは0.5重量%未満、それにもまして好ましくは0.4重量%未満、それにもまして好ましくは0.3重量%未満、それにもまして好ましくは0.2重量%未満、それにもまして好ましくは0.1重量%未満、さらには0.09重量%未満、さらには0.05重量%未満、さらには0.01重量%未満、さらには0.005重量%未満、さらには0.001重量%未満であるものである。
【0111】
「本質的に生物系の化合物/成分/賦形剤」によって、化合物または成分または賦形剤の全重量を基準にしてその少なくとも80重量%が生物系である、化合物または成分または賦形剤の全重量に対して好ましくはその少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、またさらに好ましくは少なくとも92.5重量%、またさらに好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも97.5重量%、またさらに好ましくは少なくとも99重量%、それにもまして好ましくは少なくとも99.1重量%、それにもまして好ましくは少なくとも99.2重量%、それにもまして好ましくは少なくとも99.3重量%、それにもまして好ましくは少なくとも99.4重量%、それにもまして好ましくは少なくとも99.5重量%、それにもまして好ましくは少なくとも99.6重量%、それにもまして好ましくは少なくとも99,7重量%、さらにはその少なくとも99.8重量%、さらにはその少なくとも99.9重量%、さらにはその少なくとも99.95重量%、さらにはその少なくとも99.99重量%が生物系である、化合物または成分または賦形剤が企図される。
【0112】
「防止」または「病害の防止」または「病害の発症の防止」によって、病害の発症、発達、もしくは増幅のリスク、病害の原因、病害の症状、病害の効果(もしくは結果、好ましくは悪影響を与える、有害な効果/結果)、もしくはそれらのいずれかの組み合わせを低減させること;および/または病害の発症、発達、もしくは増幅、病害の原因、病害の症状、病害の効果(もしくは結果、好ましくは悪影響を与える、有害な効果/結果)、もしくはそれらのいずれかの組み合わせを遅延させることが企図される。
【0113】
「処置」または「病害の処置」または「病原体の抑制」または「病害の抑制」によって、病害、病害の原因、病害の症状、病害の効果(もしくは結果、好ましくは悪影響を与える、有害な効果/結果)、またはそれらのいずれかの組み合わせを低減、阻害、安定化、および/または消失させることが企図される。
【0114】
「真菌類」または「真菌」によって、本明細書では、菌界(ミコタ(Mycota)またはミケテス(Mycetes)またはフンギ(fungi)としても知られる)、卵菌門(Oomycota)(シュードシャンピ(pseudochampi)としても知られ、詳細には卵菌綱(Oomycetes)を含む)、またはネコブカビ綱(Plasmodiophoromycetes)に属する真核生物が企図される。真菌類は、微視的な単細胞生物(酵母)および多細胞生物(かび)から、「高等真菌類(巨視的な真菌類)であってその大部分が足および帽子状構造を有するものまで、非常に多岐にわたる群である。真菌類は、周辺の細胞壁と、細胞質における膨張した液胞との同時存在と、それらの未分化の植物体およびペプチド-ポリオシド壁と、葉緑体、クロロフィル、およびデンプンの不在とを特徴とする。それらは、炭素従属栄養生物である。
【0115】
「病原性真菌」によって、生きた生物における病害の原因となる寄生真菌類の種に属する、真菌またはその他の糸状生物が企図される。病害は、隠花植物の病害(真菌症としても公知)またはマイコシス(mycosis)であり得る。隠花植物の病害または真菌症は、寄生真菌またはその他の糸状生物(卵菌綱の場合)によって植物に生じる病害である。これに動物が感染する場合には、用語「マイコシス」が使用される。
【0116】
病原性真菌は、好ましくは植物病原性真菌である。
【0117】
「植物病原性真菌類」によって、植物における隠花植物の病害(真菌症としても公知)を生じる寄生真菌類の種が企図される。これらの真菌類は、真菌類または「真菌界」のさまざまな群:子嚢菌綱(ascomycetes)、担子菌綱(basidiomycetes)、ツボカビ綱(chytridiomycetes)、接合菌綱(zygomycetes)および不完全菌綱(deuteromycetes)(不完全真菌類)に属する。隠花植物の病害の原因となる病原体はまた、原生生物、例えばネコブカビ綱(plasmodiophoromycetes)(その最も重要な属がネコブカビ属(Plasmodiophora)とスポンゴスポラ属(Spongospora))、および卵菌綱(これは、ペロノスポラ科(べと病の主体)を含む)を含む。病原性(または植物病原性)真菌は、好ましくは:
- ブドウ畑での主要な病害、例えばつる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ(Plasmopara viticola))、つる植物のうどんこ病(ウンキヌラ・ネカトル(Uncinula necator)および/またはエリシフェ・ネカトル(Erysiphe necator))およびつる植物の枯病(ボトリティス・キネレア(Botrytis cinerea))を生じる種、
- ナス科の主要な病害、例えばナス科べと病(フィトフソラ・パラジティカ(Phytophthora parasitica)および/またはフィトフソラ・インフェスタンス(Phytophtora infestans)を生じる種、および
- ウリ類の主要な病害、例えばウリのべと病(シュードペロノスポラ・キュベンシス(Pseudoperonospora cubensis))を生じる種、
から選択され
前記真菌病原体は、好ましくはブドウべと病(プラズモパラ・ビティコラ)である。
【0118】
それにもまして好ましくは、病原性真菌(または植物病原体)は、ペロノスポラ科(べと病の主体)に属する種から選択され、詳細にはつる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)である。
【0119】
「つる植物のべと病」によって、ペロノスポラ科および卵菌綱のプラズモパラ・ビティコラ種に属する真菌(または偽菌)が企図される。つる植物のべと病は、寄生先のつる植物組織の内部でのみ成長できる、遊離芽胞または菌糸体の形態で存在する。プラズモパラ・ビティコラは、主につる植物類の緑色組織、特に葉の柔組織で成長する偏性内部寄生体である。これは、寄生先の組織を犠牲にして生存し、組織は最終的に破壊される。P.ビティコラは、その発達サイクルの間、本質的に二倍体の形態である。P.ビティコラはまた、その菌糸体のフィラメントが仕切りを有さない、細胞壁がセルロース質である(キチンを含有する真菌類とは異なる)、そして遊走子が二鞭毛であるということを特徴とする。
【0120】
「つる植物のうどんこ病」によって、エリシフェ・ネカトル種に属する真菌が企図される。エリシフェ・ネカトルは、子嚢菌門の微視的な糸状の真菌、ブドウ科(Vitaceae)、主にブドウ属(Vitis genus)の偏性寄生体である。これは、つる植物のうどんこ病(カナダではうどんこ病としても公知)の原因である。これはまた、ウンキヌラ・ネカトルとしても公知である。うどんこ病は、つる植物のすべての成長途上にある草本器官の表面に、特に若い草本の新芽、葉、(ブドウ類の)房、および新梢に発生する外部寄生体である。
【0121】
「つる植物の枯病」または「灰色カビ病」によって、子嚢菌門のスクレロティニアケアエ(Sclerotiniaceae)科のボトリティス・キネレア種に属するハプロイド真菌が企図される。この植物病原性真菌は、農業経済学的対象である主要な複数の農作物、例えばつる植物類、ヒマワリ、トマト、およびイチゴを感染させる灰色カビ病、つまり真菌症の原因である。感染は、花がらなどの損傷を受けた器官上、時には葉上に見いだされる水および栄養分の存在下で分生子の発芽から始まる。ついで混入が液果/果実に広がる。ヴェレゾン(veraison)前には、液果感染は、潜伏状態のままであって見かけの症状は伴わず、ついでヴェレゾンが進行してから、すでに存在している菌糸体が成長し始める。
【0122】
「ナス科のべと病」によって、ペロノスポラ科またはピチア科(Pythiaceae)および卵菌綱(Oomycetes class)の、フィトフソラ・パラジティカ種および/またはフィトフソラ・インフェスタンス種に属する真菌(または偽菌)が企図される。ナス科のべと病は、葉上で発達する芽胞の形態をとって、平均的な温度(10℃超)で農作物全体を通じて広がる。
【0123】
「ウリのべと病」によって、ペロノスポラ科および卵菌綱におけるシュードペロノスポラ・キュベンシス種に属する真菌(または偽菌)が企図される。ウリの枯病は、従属栄養寄生体であり、成長および生存にはその宿主植物に絶対的に依存している。これは、宿主の外部では卵胞子の形態でのみ生存できる。
【0124】
本発明の文脈では、用語「Xがまったくまたはほとんどない」または「Xがほとんどまたはまったくない」は:- Xの非存在;
- またはXの検出不可能なおよび/もしくは有意でない存在
のどちらかと理解されるのが望ましい。
【0125】
組成物
本発明の文脈において、本発明者らは、重炭酸カリウムに基づく新たな組成物を開発した。よって本発明者らはまったく驚くべきことに、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含んでなる組成物が、農作物、詳細にはつる植物類、ウリ類、またはナス科植物、またはそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはつる植物を効果的に保護および/または処置できることを実証した。データは予想外にも、この組成物の適用によって、高い効力で、農作物(つる植物類、ウリ類、ナス科、またはそれらのいずれかの組み合わせなど、好ましくはつる植物)を、つる植物類および/またはウリ類および/またはナス科上の植物病原性真菌、詳細にはうどんこ病、べと病、および枯病から保護および/または処置することが可能になることを示している。詳細には、本発明者らは、このような組成物が顕著な抗真菌効果を有することで、つる植物のべと病の原因となる真菌の成長を強力に阻害することが可能になることを示した。驚くべきことに、この新たな製剤は、つる植物類、ウリ類、またはナス科植物、またはそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはつる植物類の葉上での接着性、展着性、溶脱への耐性、および寿命という特性において顕著な改善を示している。本発明者らはまた、長く持続する溶脱保護効果を実証した。結果として、処置に適用する頻度を可能な限り削減することができ、コストおよび環境への影響を限定することができる。データはまた、このような組成物が農作物への植物毒性を有さないことを示している。
【0126】
したがって本発明は:
- 重炭酸カリウムと、
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または本質的に生物分解性の賦形剤、ならびに/または本質的に天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と、
を含んでなる新たな組成物に関する。
【0127】
本発明はまた:
- 重炭酸カリウムと、
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または本質的に生物分解性の賦形剤、ならびに/または本質的に天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と、
から本質的に構成される、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる組成物に関する。
【0128】
有利には、重炭酸カリウムおよび/または賦形剤は、本質的に天然起源である。好ましい実施形態によれば、重炭酸カリウムおよび/または賦形剤は、本質的に生物系である。好ましい実施形態によれば、重炭酸カリウムおよび/または賦形剤は生物系である。本明細書に提示される実施形態のいずれかと組み合わせ可能な好ましい実施形態によれば、賦形剤は、本質的に生物分解性であり、好ましくは賦形剤は、生物分解性である。好ましい実施形態によれば、重炭酸カリウムおよび/または賦形剤は、本質的に生物分解性である。本明細書に提示される実施形態のいずれかと組み合わせ可能な好ましい実施形態によれば、賦形剤は、本質的に天然起源であり、好ましくは賦形剤は、天然起源である。好ましい実施形態によれば、重炭酸カリウムおよび/または賦形剤は、本質的に天然起源である。本明細書に提示される実施形態のいずれかと組み合わせ可能な好ましい実施形態によれば、賦形剤は、低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させる。好ましい実施形態によれば、重炭酸カリウムおよび/または賦形剤は、低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させる。
【0129】
本発明者らによって得られたデータはまた、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびカチオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤の存在によって、組成物の抗真菌効力、保護持続性、および溶脱への耐性がさらに増強されることを示している。したがってまた有利には、本発明による組成物は、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤を含んでなる。
【0130】
したがってまた本発明は:
- 重炭酸カリウムと、
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または本質的に生物分解性の賦形剤、ならびに/または本質的に天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と;
- アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;
を含んでなる、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる新規の組成物であって、
アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤が、好ましくはスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;非イオン性界面活性剤が、好ましくはエトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;カチオン性界面活性剤が、好ましくは有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;
前記追加の賦形剤が、好ましくは水溶性であり;前記追加の賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または本質的に生物分解性の賦形剤、ならびに/または本質的に天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤である、組成物に関する。
【0131】
データは、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤がスルホナートを含んでなる、非イオン性界面活性剤がエトキシル化アルコールを含んでなる、および/またはカチオン性界面活性剤が有機鉱物ポリマーを含んでなる場合に、組成物の抗真菌効力、保護持続性、および溶脱への耐性が特に高いことを示している。
【0132】
それゆえ、有利には、本発明による組成物は、スルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;エトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される非イオン性界面活性剤と;有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択されるカチオン性界面活性剤と;それらのいずれかの組み合わせと、をさらに含んでなる。
【0133】
よって、特に好ましい実施形態では、組成物は:
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または本質的に生物分解性の賦形剤、ならびに/または本質的に天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と;
- アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;
を含んでなり、またはそれらから本質的になり、またはそれらからなり、
アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤が、スルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;非イオン性界面活性剤が、エトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;カチオン性界面活性剤が、有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;
前記追加の賦形剤が、好ましくは水溶性であり;前記追加の賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または本質的に生物分解性の賦形剤、ならびに/または本質的に天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤である。
【0134】
組成物は、液体または固体の形態(粉末、顆粒、錠剤など)とすることができる。好ましくは、組成物は固体形態である。実際、本発明者らは、液体または固体のいずれかの形態で、組成物を有効に使用して農作物を保護および/または処置することができることを示している。組成物は、液体形態、または固体形態(特に粉末形態)で農作物に適用することができる。組成物が液体形態で適用される場合には、組成物は、直接使用できるようにしてある、または希釈することができる(濃縮された形態)液体形態で、存在することができる。組成物が液体形態で適用される場合には、組成物はまた、固体形態で存在することができ、この場合には組成物は、使用に先だって(例えば、事前準備なしに、または使用に先立って短期、中期、または長期の貯蔵のために)、好適な溶媒中で希釈/溶解/可溶化させることができる。組成物は、その形態の如何によらず、抗真菌効力を有する。
【0135】
詳細には本発明者らは、組成物がこの形態で特に安定であり、中期から長期の貯蔵に好適であることを示した。好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、固体形態であり、好ましくは粉末、錠剤、顆粒、またはそれらのいずれかの組み合わせの形態である。それにもまして好ましくは、組成物は、粉末、または顆粒、またはそれらのいずれかの組み合わせの形態である。
【0136】
組成物(固体または液体の形態、詳細には固体形態での組成物)の有利な実施形態によれば:
- 重炭酸カリウムの含有量は、組成物の全重量に対して5重量%から90重量%、組成物の全重量に対して好ましくは10重量%から90重量%、より好ましくは15重量%から85重量%、より好ましくは20重量%から80重量%、より好ましくは40重量%から70重量%、最も好ましくは50から65重量%の範囲である;および/または
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤の含有量は、組成物の全重量に対して0.1重量%から30重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.5重量%から20重量%、好ましくは1重量%から15重量%、より好ましくは2重量%から10重量%、より好ましくは3重量%から6重量%である。
【0137】
組成物(固体または液体の形態、好ましくは組成物は、固体組成物、有利には粉末、顆粒、錠剤、またはそれらのいずれかの組み合わせである)の有利な実施形態によれば:
- 重炭酸カリウムの含有量は、組成物の全重量に対して5重量%から90重量%、組成物の全重量に対して好ましくは10重量%から90重量%、好ましくは15重量%から85重量%、好ましくは20重量%から80重量%、好ましくは25重量%から75重量%、好ましくは30重量%から70重量%、好ましくは35重量%から70重量%、好ましくは40重量%から65重量%、好ましくは45重量%から65重量%、好ましくは50重量%から60重量%の範囲である;それにもまして好ましくは、重炭酸カリウムの含有量は、組成物の全重量に対しておよそ55重量%である;および/または
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤の含有量は、組成物の全重量に対して0.1重量%から30重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.5重量%から25重量%、より好ましくは1重量%から20重量%、より好ましくは1.5重量%から15重量%、より好ましくは2重量%から10重量%、より好ましくは2.5重量%から8%、より好ましくは2.5重量%から6.5重量%、より好ましくは3重量%から6重量%の範囲である。
【0138】
一実施形態によれば、組成物は、好ましくは水溶液の形態での、好ましくは噴霧可能な水溶液の形態での、それにもまして好ましくはエアロゾルの形態での、液体組成物である。詳細には液体組成物は、濃縮された形態(例えば使用前に希釈可能な、例えば20倍濃縮、または15倍、10倍、8倍、5倍、4倍、3倍、または2倍濃縮されたもの)、またはすぐに使用可能な形態であり得る。
【0139】
一実施形態によれば、組成物は、好適な希釈因子に好ましくはしたがって(好ましくは以下に詳述される重炭酸カリウムの含有量が得られるように)、好適な溶媒中で固体形態の組成物を希釈(および/または溶解および/または溶解および/または可溶化)させることによって得られる液体組成物である。
【0140】
濃縮された液体組成物および/または固体組成物を希釈/溶解/可溶化させるのに好適な溶媒は、水性溶媒、例えば水、アルコール類(詳細にはアルコール類、例えばエタノールの水溶液)、酸類(詳細にはカルボン酸類、例えば酢酸)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくは水から選択され得る。
【0141】
液体組成物(詳細には、すぐに使用できる液体組成物として、場合によっては、濃縮された液体組成物の希釈の後または固体組成物の溶解の後)の好ましい実施形態によれば、重炭酸カリウムの含有量は、5から60グラム毎リットルの組成物(g/L)、好ましくは8から55g/L、好ましくは10から50g/L、好ましくは15から45g/L、好ましくは20から40g/L、好ましくは25から35g/L、好ましくは28から33g/L、より好ましくは30から35g/Lの組成物の範囲である。実際、データは、農作物保護および/または処置効力、特に抗真菌活性は、重炭酸カリウム濃度が、農作物に適用される液体組成物中で5から60g/Lの範囲である場合に、特に高いことを示している。当業者には、濃縮された液体組成物または固体組成物からこのような重炭酸カリウムの含有量を有する液体組成物を得るための適切な希釈因子をいかに決定するかということは、公知である。
【0142】
液体形態での(好ましくは水性組成物の形態での)組成物の一実施形態によれば、重炭酸カリウムの含有量は、組成物の全重量に対して0.1重量%から35重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.5重量%から25重量%、より好ましくは1重量%から20重量%、より好ましくは5重量%から15重量%の範囲であり;さらに好ましくは、重炭酸カリウムの含有量は、組成物の全重量に対して約10重量%である。
【0143】
重炭酸カリウムは、いずれかの供給源または起源に由来するものとすることができる、および/または当業者に公知のいずれかの好適な過程によって得ることができる。組成物はまた、重炭酸カリウムがアルコール発酵、例えばブドウ酒発酵から得られる場合にも、有効である。実際、本発明者らは、重炭酸カリウムが、アルコール発酵、例えばブドウ酒発酵から、詳細にはアルコール発酵によって放出される二酸化炭素から、効率的に得られることを示している。本発明者らによって開発されたこの重炭酸カリウム製造工程は、その効率に加えて、生態学の観点から特に興味深い。実際、経済上および産業上で大いに注目される材料である重炭酸カリウムの製造によって、アルコール発酵の最中に生成されたガスを回収すると同時に、オゾン層に有害な温室効果ガスである二酸化炭素の放出を制限することが可能になる。
【0144】
一実施形態によれば、組成物の重炭酸カリウムは、アルコール発酵、好ましくは野菜の発酵、好ましくはブドウ酒発酵から得られ、この重炭酸カリウムは、好ましくは以下の:
a) アルコール発酵によって放出される二酸化炭素を捕捉するステップと;
b) 炭酸カリウム溶液における、ステップa)で捕捉された二酸化炭素のバブリングにより、重炭酸カリウム結晶を、好ましくは溶液の飽和条件下で得るステップと;
c) 任意に、ステップb)で得られた重炭酸カリウム結晶を抽出するステップと、
を含んでなる(またはこれらのステップから本質的になる、またはこれらのステップからなる)工程によって得られる。
【0145】
組成物の好ましい実施形態によれば、タウラート・ファミリーに属する少なくとも一つのアニオン性界面活性剤は、N-メチルタウラート類から;好ましくはナトリウムN-メチルタウラート類、アンモニウムN-メチルタウラート類、カルシウムn-メチルタウラート類、アルカリ金属N-メチルタウラート類、アルカリ土類金属N-メチルタウラート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから;それにもまして好ましくはナトリウムN-メチルタウラート類から選択される。
【0146】
有利には、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤は、水溶性である。
【0147】
本発明者らによって得られたデータはまた、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および粘土から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤の存在によって、組成物の抗真菌効力、保護持続性、および溶脱への耐性がさらに増強されることを示している。したがって有利には、本発明による組成物は、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、粘土類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤をさらに含んでなる。
【0148】
データは、粘土類から選択される追加の賦形剤をも組成物が含んでなる場合に、保護および溶脱への耐性の持続性が特に高いことを示している。したがって本発明は、粘土類から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤をさらに含んでなる、上に定義された組成物に関する。
【0149】
したがって本発明は:
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤と;
- アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および粘土類から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;
を含んでなる、またはこれらから本質的になる、またはこれらからなる、上に定義された組成物であって、
前記賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または本質的に生物分解性の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤である、組成物に関する。
【0150】
前記追加の賦形剤は、好ましくは水溶性である。
【0151】
有利には、組成物は、好ましくはスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つのアニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤を含んでなり;スルホナートは、好ましくはリグノスルホナート類から選択され;好ましくはリグノスルホン酸ナトリウム、アンモニウムリグノスルホナート類、カルシウムリグノスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから;より好ましくはさらにリグノスルホン酸ナトリウム、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。実際、組成物の抗真菌効力は、その組成物がこのようなアニオン性界面活性剤を含んでなる場合に、特に高い。
【0152】
少なくとも一つのアニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤を含んでなる組成物の一実施形態によれば、後者は、好ましくはスルホナート類(リグノスルホナート類など)およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。よって、組成物が少なくとも一つのアニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤を含んでなるこの実施形態によれば、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤は、有利にはスルホナート類(リグノスルホナート類など)およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0153】
有利には、組成物は、エトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから好ましくは選択される少なくとも一つの非イオン性界面活性剤を含んでなり;エトキシル化アルコールは、好ましくは二級エトキシル化アルコール類から選択され;より好ましくはさらに二級エトキシル化C8-C18アルコール類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。実際、組成物の抗真菌効力は、その組成物がこのような非イオン性界面活性剤を含んでなる場合に、特に高い。
【0154】
少なくとも一つの非イオン性界面活性剤を含んでなる組成物の一実施形態によれば、後者は、好ましくはエトキシル化アルコール類(二級エトキシル化アルコール類など)およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。よって、組成物が少なくとも一つの非イオン性界面活性剤を含んでなるこの実施形態によれば、非イオン性界面活性剤は、有利にはエトキシル化アルコール類(二級エトキシル化アルコール類など)およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0155】
有利には、組成物は、好ましくは有機鉱物ポリマー類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つのカチオン性界面活性剤を含んでなり;有機鉱物ポリマーは、好ましくはシロキサン類から選択され;好ましくはアルキルシロキサン類から選択され;好ましくはさらにポリジメチルシロキサン類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。実際、組成物の抗真菌効力は、その組成物がこのようなカチオン性界面活性剤を含んでなる場合に、特に高い。
【0156】
少なくとも一つのカチオン性界面活性剤を含んでなる組成物の一実施形態によれば、後者は、好ましくは有機鉱物ポリマー類(シロキサン類など)およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。よって、組成物が少なくとも一つのカチオン性界面活性剤を含んでなるこの実施形態によれば、カチオン性界面活性剤は、有利には有機鉱物ポリマー類(シロキサン類など)およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0157】
有利には、組成物は、好ましくはシリカート類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの粘土を含んでなり;粘土は、好ましくはフィロシリカート類から選択され、より好ましくはさらにカオリナイト類およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。実際、組成物の抗真菌効力は、組成物がこのような粘土を含んで成る場合に、特に高い。
【0158】
少なくとも一つの粘土を含んでなる組成物の一実施形態によれば、後者は、好ましくはシリカート類(フィロシリカート類など)およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。よって、組成物が少なくとも一つの粘土を含んでなるこの実施形態によれば、粘土は、有利にはシリカート類(フィロシリカート類など)およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0159】
好ましい実施形態によれば、組成物の追加の賦形剤は、少なくとも一つのアニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、少なくとも一つの非イオン性界面活性剤、少なくとも一つのカチオン性界面活性剤、および少なくとも一つの粘土を含んでなり;アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および粘土は、上に定義されたとおりである。実際、組成物の抗真菌効力は、その組成物が追加の賦形剤のこのような混合物を含んでなる場合に、特に高い。
【0160】
一実施形態によれば、組成物は:
- 溶媒、好ましくは(本質的に)生物系の溶媒。溶媒は、好ましくは水性溶媒から選択され、さらに好ましくは水、アルコール類(例えばエタノール)の水溶液、カルボン酸類(例えば酢酸)、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される;
- 保存剤(例えば、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択されるもの)、好ましくは(本質的に)生物系の保存剤;
- 抗酸化剤(例えば、キトサン、トコフェロール(ビタミンE)、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択されるもの)、好ましくは(本質的に)生物系の抗酸化剤;
- 着色剤、好ましくは(本質的に)生物系の着色剤;および
- それらのいずれかの組み合わせ、
からなる群から選択される少なくとも一つの成分をさらに含んでなる。
【0161】
有利には、溶媒、保存剤、抗酸化剤、着色剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される成分は、本質的に生物分解性であり、好ましくは前記成分は、生物分解性である。有利には、溶媒、保存剤、抗酸化剤、着色剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される成分は、本質的に天然起源のものであり、好ましくは前記成分は、天然起源のものである。
【0162】
一実施形態によれば、組成物は、液体形態(濃縮されたまたはそうでないもの)、または固体形態(濃縮されたものまたはそうでないもの)、好ましくは固体形態をとることのできる組成物であり、その組成物中で追加の賦形剤は、少なくとも一つのアニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤を含んでなり、またはそれから本質的になり、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤の含有量は、組成物の全重量を基準にして0.1重量%から40重量%、組成物の全重量を基準にして好ましくは0.5重量%から35重量%、好ましくは1重量%から30重量%、好ましくは2重量%から25重量%、好ましくは2.5重量%から20重量%、好ましくは5重量%から15重量%、好ましくは7重量%から13重量%、好ましくは9重量%から11重量%の範囲であり、最も好ましくは約10重量%である。組成物は、有利には固体形態である。
【0163】
代替的に、またはこれと組み合わせて、組成物は、液体形態(濃縮されたまたはそうでないもの)、または固体形態(濃縮されたまたはそうでないもの)、好ましくは固体形態をとることのできるものであり、その組成物中で追加の賦形剤は、少なくとも一つの非イオン性界面活性剤を含んでなり、またはこれから本質的になり、非イオン性界面活性剤の含有量は、組成物の全重量に対して0.01重量%から40重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.05重量%から30重量%、好ましくは0.1重量%から20重量%、好ましくは0.5重量%から15重量%、好ましくは1重量%から10重量%、好ましくは1重量%から9重量%、好ましくは2重量%から8重量%、好ましくは2.5重量%から7.5重量%の範囲である。組成物は、有利には固体形態である。
【0164】
代替的に、またはこれと組み合わせて、組成物は、液体形態(濃縮されたまたはそうでないもの)、または固体形態(濃縮されたまたはそうでないもの)、好ましくは固体形態をとることのできるものであり、その組成物中で追加の賦形剤は、少なくとも一つのカチオン性界面活性剤を含んでなり、またはこれから本質的になり、またはこれからなり、カチオン性界面活性剤の含有量は、組成物の全重量に対して0,001重量%から30重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.01重量%から20重量%、好ましくは0.05重量%から10重量%、好ましくは0.1重量%から5重量%、好ましくは0.2重量%から4重量%、好ましくは0.3重量%から3重量%、好ましくは0.4重量%から2重量%、好ましくは0.5重量%から1.5重量%の範囲であり、好ましくは約1重量%である。組成物は、有利には固体形態である。
【0165】
代替的に、またはこれと組み合わせて、組成物は、液体形態(濃縮されたまたはそうでないもの)、または固体形態(濃縮されたまたはそうでないもの)、好ましくは固体形態をとることのできる組成物であり、その中で追加の賦形剤は、少なくとも一つの粘土を含んでなり、またはこれから本質的になり、またはこれからなり、この中で粘土の含有量は、組成物の全重量に対して0.5重量%から60重量%、組成物の全重量に対して好ましくは5重量%から50重量%、より好ましくは10重量%から40重量%、より好ましくは15重量%から35重量%、より好ましくは20重量%から30重量%、より好ましくは21重量%から29重量%、より好ましくは22重量%から28重量%の範囲である。組成物は、有利には固体形態である。
【0166】
よって、一実施形態によれば、組成物(固体または液体、好ましくは固体)は:
i. アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤の含有量が、組成物の全重量に対して0.1重量%から40重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.5重量%から30重量%、より好ましくは1重量%から20重量%、より好ましくは2重量%から18重量%、最も好ましくは5重量%から15重量%の範囲であること;または
ii. 非イオン性界面活性剤の含有量が、組成物の全重量を基準にして0.01重量%から40重量%、組成物の全重量を基準にして好ましくは0.05重量%から30重量%、好ましくは0.1重量%から20%、好ましくは0.5重量%から15重量%、好ましくは1重量%から10重量%の範囲であること;または
iii. カチオン性界面活性剤の含有量が、組成物の全重量に対して0.001重量%から30重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.01重量%から20重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%、好ましくは0.3重量%から5重量%、好ましくは0.5重量%から2.5重量%の範囲であること;または
iv. 粘土の含有量が、組成物の全重量に対して0.5重量%から60重量%、組成物の全重量に対して好ましくは5重量%から50重量%、より好ましくは10重量%から40重量%、より好ましくは15重量%から35重量%、より好ましくは20重量%から30重量%の範囲であること;または
v. 追加の賦形剤の含有量が、iからivから選択される少なくとも二つの特徴のいずれかの組み合わせであること、
を特徴とする。
【0167】
発明者らは驚くべきことに、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤と、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、粘土類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤とを含んでなる組成物が、植物病原性真菌の成長、詳細にはつる植物類および/またはウリ類および/またはまたはナス科植物のうどんこ病、べと病、および枯病を、高い効力で強力に阻害することを可能にすることを示している。よって、好ましい実施形態によれば、組成物(詳細には固体組成物)は:
- 組成物の全重量に対して好ましくは5重量%から90重量%、組成物の全重量に対して好ましくは10重量%から90重量%、好ましくは15重量%から85重量%、好ましくは20重量%から80重量%、好ましくは25重量%から75重量%、好ましくは30重量%から70重量%、好ましくは35重量%から70重量%、好ましくは40重量%から65重量%、好ましくは45重量%から65重量%、好ましくは50重量%から60重量%の範囲の含有量の重炭酸カリウムと;それにもまして好ましくは、重炭酸カリウムの含有量は、組成物の全重量を基準にして約55重量%である;
- 組成物の全重量に対して好ましくは0.1重量%から30重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.5重量%から25重量%、好ましくは1重量%から20重量%、好ましくは1.5重量%から15重量%、好ましくは2重量%から10重量%、好ましくは2.5重量%から8重量%、好ましくは2.5重量%から6.5重量%、より好ましくは3重量%から6重量%の範囲の含有量の、タウラート・ファミリーに属する少なくとも一つのアニオン性界面活性剤と;
- 任意に、組成物の全重量に対して好ましくは0.1重量%から40重量%、好ましくは0.5重量%から35%、好ましくは1重量%から30重量%、好ましくは2重量%から25重量%、好ましくは2.5重量%から20%、好ましくは5重量%から15重量%、好ましくは7重量%から13重量%、好ましくは9重量%から11重量%の範囲、組成物の全重量に対して好ましくは約10重量%の量の、少なくとも一つのアニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤と;
- 任意に、組成物の全重量に対して好ましくは0.01重量%から40重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.05重量%から30重量%、好ましくは0.1重量%から20重量%、好ましくは0.5重量%から15重量%、好ましくは1重量%から10重量%、好ましくは1重量%から9重量%、好ましくは2重量%から8重量%、好ましくは2.5重量%から7.5重量%の範囲の量の少なくとも一つの非イオン性界面活性剤と;
- 任意に、組成物の全重量に対して好ましくは0.001重量%から30重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.01重量%から20重量%、好ましくは0.05重量%から10重量%、好ましくは0.1重量%から5重量%、好ましくは0.2重量%から4重量%、好ましくは0.3重量%から3重量%、好ましくは0.4重量%から2重量%、好ましくは0.5重量%から1.5重量%の範囲、好ましくは約1重量%の量の少なくとも一つのカチオン性界面活性剤と;
- 任意に、組成物の全重量に対して好ましくは0.5重量%から60重量%、組成物の全重量に対して好ましくは5重量%から50重量%、好ましくは10重量%から40重量%、好ましくは15重量%から35重量%、好ましくは20重量%から30重量%、好ましくは21重量%から29重量%、好ましくは22重量%から28重量%の範囲の量の少なくとも一つの粘土と;
- 任意に、少なくとも一つの溶媒(好ましくは本質的に生物系のもの)、好ましくは水と、
を含んでなる、またはこれらから本質的になる、またはこれらからなる。
【0168】
特に好ましい実施形態によれば、組成物(詳細には固体組成物)は:
- 組成物の全重量に対して好ましくは5重量%から90重量%、組成物の全重量に対して好ましくは10重量%から90重量%、好ましくは15重量%から85重量%、好ましくは20重量%から80重量%、好ましくは25重量%から75重量%、好ましくは30重量%から70重量%、好ましくは35重量%から70重量%、好ましくは40重量%から65重量%、好ましくは 45重量%から65重量%、好ましくは50重量%から60重量%の範囲の含有量の重炭酸カリウム;それにもまして好ましくは、重炭酸カリウムの含有量は、組成物の全重量を基準にしておよそ55重量%である;
- 組成物の全重量に対して好ましくは0.1重量%から30重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.5重量%から25重量%、好ましくは1重量%から20重量%、好ましくは1.5重量%から15重量%、好ましくは2重量%から10重量%、好ましくは2.5重量%から8重量%、好ましくは2.5重量%から6.5重量%、より好ましくは3重量%から6重量%の範囲の含有量の、タウラート・ファミリーに属する少なくとも一つのアニオン性界面活性剤と;
- 組成物の全重量を基準にして好ましくは0.1重量%から40重量%、組成物の全重量を基準にして好ましくは0.5重量%から35重量%、好ましくは1重量%から30重量%、好ましくは2重量%から25重量%、好ましくは2.5重量%から20重量%、好ましくは5重量%から15重量%、好ましくは7重量%から13重量%、好ましくは9重量%から11重量%の範囲、最も好ましくはおよそ10重量%の量の少なくとも一つのアニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤と;
- 組成物の全重量に対して好ましくは0.01重量%から40重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.05重量%から30重量%、好ましくは0.1重量%から20%、好ましくは0.5重量%から15重量%、好ましくは1重量%から10重量%、好ましくは1重量%から9重量%、好ましくは2重量%から8重量%、好ましくは2.5重量%から7.5重量%の範囲の量の少なくとも一つの非イオン性界面活性剤と;
- 組成物の全重量に対して好ましくは0.001重量%から30重量%、組成物の全重量に対して好ましくは0.01重量%から20重量%、好ましくは0.05重量%から10重量%、好ましくは0.1重量%から5重量%、好ましくは0.2重量%から4重量%、好ましくは0.3重量%から3重量%、好ましくは0.4重量%から2重量%、好ましくは0.5重量%から1.5重量%の範囲、好ましくは約1重量%の量の少なくとも一つのカチオン性界面活性剤と;
- 組成物の全重量を基準にして好ましくは0.5重量%から60重量%、組成物の全重量を基準にして好ましくは5重量%から50重量%、好ましくは10重量%から40重量%、好ましくは15重量%から35重量%、好ましくは20重量%から30重量%、好ましくは21重量%から29重量%、好ましくは22重量%から28重量%の範囲の量の少なくとも一つの粘土と;
- 任意に、少なくとも一つの溶媒(好ましくは本質的に生物系のもの)、好ましくは水、
とを含んでなる、またはこれらから本質的になる、またはこれらからなる。
【0169】
特に有利な実施形態によれば、上に列挙された様々な成分(重炭酸カリウム、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、粘土、溶媒)は、本質的に生物分解性、好ましくは生物分解性である。有利には、上に列挙された様々な成分(重炭酸カリウム、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、粘土、溶媒)は、本質的に天然起源のもの、好ましくはそれらは、天然起源のものである。
【0170】
本発明による組成物(固体または液体の形態のもの)は、追加の賦形剤をさらに含んでなり得る。追加の賦形剤は、例えばグリセロールであり得る。本発明による組成物は、好ましくは本質的にグリセロールを含まない、より好ましくはグリセロールを含まない、より好ましくはグリセロールを含まない。事実、データは、グリセロールを含まない組成物の抗真菌効果が、グリセロールを含んでなる組成物のものよりも優れていることを示している。
【0171】
有利には、組成物は、この組成物が植物検疫的使用に、好ましくは抗真菌的使用に、好ましくは農業分野における抗真菌的使用に、それにもまして好ましくはブドウ栽培分野における抗真菌的使用に好適であることを特徴としている。有利には、組成物は、この組成物が植物検疫的効果/活性、好ましくは抗真菌効果/活性、好ましくは農業分野における抗真菌効果/活性、それにもまして好ましくはブドウ栽培分野における抗真菌効果/活性を有することを特徴としている。
【0172】
一実施形態によれば、組成物は、この組成物が植物検疫的組成物、好ましくは抗真菌組成物であることを特徴としている。
【0173】
有利には、組成物は、この組成物が、25%未満の非天然起源の成分、好ましくは20%未満、好ましくは15%未満、好ましくは10%未満、好ましくは9%未満、好ましくは8%未満、好ましくは7%未満、好ましくは6%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.1%未満の非天然起源の成分を含んでなること;それにもまして好ましくは、組成物が、非天然起源の成分を本質的に含まないこと;それにもまして好ましくは、組成物が、天然起源の成分から本質的に構成され、前記天然起源の成分が、好ましくは生物分解性である、および/または低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させている、および/または生物系であることを特徴としている。
【0174】
有利には、組成物は、この組成物が、少なくとも80%の生物系の成分、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、好ましくは少なくとも92%、好ましくは少なくとも93%、好ましくは少なくとも94%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも99.5%、好ましくは少なくとも99.9%の生物系の成分を含んでなること;それにもまして好ましくは、組成物が、本質的に生物系の成分から構成され、前記生物系成分が、好ましくは天然起源のものであること;それにもまして好ましくは、組成物が、本質的に非生物系の成分であることを特徴としている。
【0175】
有利には、組成物は、この組成物が、少なくとも80%の生物分解性の成分、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、好ましくは少なくとも92%、好ましくは少なくとも93%、好ましくは少なくとも94%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも99.5%、好ましくは少なくとも99.9%の生物分解性の成分を含んでなること;それにもまして好ましくは、組成物が、本質的に生物分解性の成分から構成され、前記生物分解性の成分が、好ましくは天然起源のものであること;それにもまして好ましくは、組成物が、本質的に非生物分解性の成分をふくまない、および/または組成物が、本質的に非生物系の成分を含まないことを特徴としている。
【0176】
好ましい実施形態によれば、組成物は、この組成物が、本質的に生物分解性の、および/または天然の、および/または低懸念性の、および/または生物系の成分から構成され、前記成分が、好ましくは天然起源のものであることを特徴としている。
【0177】
有利には、組成物は、様々な成分を混合することを含んでなる工程によって得られる。
【0178】
本発明はまた:
- 第1のコンテナ中に重炭酸カリウムと、
- 第2のコンテナ中に、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤と;
- 任意に、第3のコンテナ中に、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と、
を含んでなるキットであって、
重炭酸カリウム、賦形剤、および追加の賦形剤が、上に定義されているとおりであるキットに関する。
【0179】
本発明はまた:
- 第1のコンテナ中に重炭酸カリウムと、
- 第2のコンテナ中に、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤と;
- 任意に、第3のコンテナ中に、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、粘土類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と、
を含んでなるキットであって、
重炭酸カリウム、賦形剤、および追加の賦形剤が、組成物に関連して上に定義されたとおりであるキットに関する。
【0180】
本発明はまた:
- 第1のコンテナ中に重炭酸カリウムと、
- 第2のコンテナ中に、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤と;
- 第3のコンテナ中に、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と、
- 任意に、第4のコンテナ中に、粘土類から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と、
を含んでなるキットであって、
重炭酸カリウム、賦形剤、追加の賦形剤、およびさらなる賦形剤が、組成物に関連して上に定義されたとおりであるキットに関する。
【0181】
有利には、重炭酸カリウム、およびタウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤は、同一のコンテナ(第1のコンテナ=第2のコンテナ)中に存在する。代替的に、重炭酸カリウム、および少なくとも一つの追加の賦形剤は、同一のコンテナ(第1のコンテナ=第3のコンテナ)中に存在する。代替的に、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤、および少なくとも一つの追加の賦形剤は、同一のコンテナ(第2のコンテナ=第3のコンテナ)中に存在する。
【0182】
有利には、キットは、使用のための使用説明書(または案内書)を含む。
【0183】
本発明はまた:
- 第1のコンテナ中に、上に定義されたとおりの組成物(例えば液体または固体の形態のもの)と;
- 第2のコンテナ中に:
・ 溶媒、好ましくは(実質的に)生物系溶媒。溶媒は、好ましくは水性溶媒から選択され、さらに好ましくは水、アルコール類の水溶液(例えばエタノール)、カルボン酸類(例えば酢酸)、およびそれらのいずれかの組み合わせである;
・ 保存剤(例えばベンジルアルコール、デヒドロ酢酸、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択されるもの)、好ましくは(本質的に)生物系の保存剤;
・ 抗酸化剤(例えばキトサン類、トコフェノール(ビタミンE)、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択されるもの)、好ましくは(本質的に)生物系の保存剤;
・ 着色剤、好ましくは(本質的に)生物系の着色剤;および
・ それらのいずれかの組み合わせ、
からなる群から選択される、少なくとも一つの追加の成分と、
を含んでなるキットに関する。
【0184】
有利には、溶媒、保存剤、抗酸化剤、着色剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される成分は、本質的に生物分解性であり、好ましくは前記成分は、生物分解性である。有利には、溶媒、保存剤、抗酸化剤、着色剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される成分は、本質的に天然起源のものであり、好ましくは前記成分は、天然起源のものである。
【0185】
有利には、追加の成分は溶媒である。詳細には、この構成によって、濃縮された液体形態または固体形態の、例えば第1のコンテナ中の組成物を希釈することによって、すぐに使用可能な液体組成物を準備することが可能になる。
【0186】
使用
発明者らは、重炭酸カリウムと、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤(前記賦形剤は、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系起源の賦形剤、ならびに/または好ましくは天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤である)とを含んでなる組成物によって、農作物、詳細にはつる植物類、ウリ類、およびまたはナス科植物を効果的に保護および/または処置することが可能になることを示した。驚くべきことに、発明者らは、このような組成物が顕著な抗真菌効果を有することで、植物病原性真菌の成長を強力に阻害することが可能になることを実証した。よって、以下の実施例におけるデータは、予想外なことに、この組成物の適用によって、植物病原性真菌類、詳細にはうどんこ病、べと病、ならびにウリ植物類および/またはウリ類および/またはまたはナス科植物の枯病に対して農作物(つる植物類、ウリ類、およびまたはナス科植物など)を高い効力で保護および/または処置することが可能になることを示している。発明者らはまた、驚くべきことに、この新たな製剤は、つる植物、ウリ、およびナス科の葉上で付着性、展着性、溶脱への耐性、および寿命という特性の顕著な改善がみられることを示した。発明者らは、長く持続する溶脱保護効果を実証した。結果として、処置への適用の頻度を最低限に維持して、コストおよび環境への影響を限定的にすることができる。データはまた、このような組成物が農作物への植物毒性を有さないことを示している。
【0187】
本発明はしたがって:
農作物、好ましくはつる植物類、ウリ類、またはナス科植物(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、やはり好ましくはつる植物類を処置および/または保護するための
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、および/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤と;
を含んでなる、またはそれらから本質的になる、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる組成物の使用に関する。
【0188】
本発明はさらに:
農作物、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、より好ましくはつる植物類を処置するおよび/または保護するための
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と;
アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;
を含んでなる、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる組成物の使用であって、
前記アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤が、好ましくはスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;前記非イオン性界面活性剤が、好ましくはエトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;前記カチオン性界面活性剤が、好ましくは有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;
前記追加の賦形剤が、好ましくは水溶性であり;前記追加の賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤である、
使用に関する。
【0189】
本発明はまた:
農作物、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、より好ましくはつる植物類を処置するおよび/または保護するための
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と;
- アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;
を含んでなる、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる組成物の使用であって、
前記アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤が、スルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;前記非イオン性界面活性剤が、エトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;前記カチオン性界面活性剤が、有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;
前記追加の賦形剤が、好ましくは水溶性であり;前記追加の賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤である、
使用に関する。
【0190】
本発明はさらに:
農作物、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、より好ましくはつる植物類を処置するおよび/または保護するための
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と;
- アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、粘土類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;
を含んでなる、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる組成物の使用であって、
前記アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤が、好ましくはスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;前記非イオン性界面活性剤が、好ましくはエトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;前記カチオン性界面活性剤が、好ましくは有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され、前記粘土類が、好ましくはシリカート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;
前記追加の賦形剤が、好ましくは水溶性であり;前記追加の賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤である、
使用に関する。
【0191】
本発明は、詳細には、上に(特に上の「定義」および「組成物」の節に)定義された組成物を使用して、農作物、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、やはり好ましくはつる植物類を処置および/または保護することに関する。
【0192】
組成物は、液体または固体の形態(粉末、顆粒、錠剤、またはそれらのいずれかの組み合わせ)で使用することができる。実際、本発明者らは、組成物を液体または固体のいずれかの形態で効果的に使用して、農作物を保護および/または処置できることを示した。組成物は、液体形態、または固体形態(特に粉末形態)で農作物に適用することができる。組成物が液体形態で適用される場合には、その組成物は、すぐに使用できるように、または(濃縮された形態の組成物については)希釈されるように、液体形態で存在することができる。その組成物はまた、固体形態で存在することができ、この場合にはこの組成物は、使用前に(例えば、事前準備なしに、または使用前に短期、中期、または長期の貯蔵のために)好適な溶媒中で希釈することができる。詳細には液体組成物は、濃縮された形態(これは例えば、使用前に、例えば20倍濃縮、または15倍、10倍、8倍、5倍、4倍、3倍、または2倍濃縮まで希釈することができる)、またはすぐに使用できる形態で存在することができる。組成物は、その形態の如何によらず、抗真菌効力を有する。
【0193】
組成物が、液体形態(詳細には、すぐに使用できる液体組成物、場合によっては濃縮された液体組成物の希釈の後、または固体組成物の溶解の後のものとして)で使用される場合には、重炭酸カリウムの含有量は、5から60グラム毎リットル(g/L)の組成物、好ましくは8から55g/L、好ましくは10から50g/L、好ましくは15から45g/L、好ましくは20から40g/L、好ましくは25から35g/L、好ましくは28から33g/L、好ましくは30から35g/Lの適用される組成物の範囲である。実際、データは、農作物に適用される液体組成物中で重炭酸カリウム濃度が5から60g/Lの範囲である場合に、農作物保護および/または処置効力、特に抗真菌活性が特に高いことを示している。
【0194】
一実施形態によれば、組成物は、水溶液の形態で、好ましくは噴霧可能な水溶液の形態、それにもまして好ましくはエアロゾルの形態で使用される。有利には、組成物は、噴霧および/または蒸発および/または投射することによって農作物に適用される。よって、組成物は、農作物上に噴霧および/または蒸発および/または投射することができる。
【0195】
一実施形態によれば、使用は、好ましくは噴霧および/または蒸発および/または投射することによって、農作物を収穫する前または後に前記農作物に組成物を適用することを特徴としている。よって、組成物の使用は、農作物を収穫する前または後に前記農作物への組成物の適用を含んでなる、またはこれからなる、またはこれから本質的になる。
【0196】
一実施形態によれば、組成物は、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、粘土類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤をさらに含んでなり;前記追加の賦形剤は、好ましくは水溶性である(前記追加の賦形剤は、好ましくは上に(特に上の「定義」および「組成」の節に)定義されたとおりである)。
【0197】
有利には、使用は、植物検疫的使用である。
【0198】
一実施形態によれば、組成物の使用は、病原性真菌類および/または真菌症から農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、やはり好ましくはつる植物類)を保護することを含んでなる、またはこれからなる、またはこれから本質的になる。
【0199】
一実施形態によれば、組成物の使用は、病原性真菌類および/または真菌症から農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、ナス科植物類(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、やはり好ましくはつる植物類)を処置することを含んでなる、またはこれからなる、またはこれから本質的になる。
【0200】
一実施形態によれば、組成物の使用は、病原性真菌類および/または真菌症から農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、ナス科植物類(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、やはり好ましくはつる植物類)を保護および/または処置することを含んでなる、またはこれからなる、またはこれから本質的になる。
【0201】
代替的に、またはこれと組み合わせて、組成物の使用は、農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、より好ましくはつる植物類)上で、病原性真菌類および/または真菌症を抑制することを含んでなる、またはこれからなる、またはこれから本質的になる。
【0202】
一実施形態によれば、使用は、農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、やはり好ましくはつる植物類)を処置する、および/または保護する、および/または農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、やはり好ましくはつる植物類)上で、真菌病原体および/または真菌症の成長を抑制するためのものである。
【0203】
実施形態によれば、病原性真菌は、植物病原性真菌類から、詳細にはつる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)、つる植物のうどんこ病(ウンキヌラ・ネカトルおよび/またはエリシフェ・ネカトル)、つる植物の枯病(ボトリティス・キネレア)、ナス科のべと病(フィトフソラ・パラジティカおよび/またはフィトフソラ・インフェスタンス)、ウリのべと病(シュードペロノスポラ・キュベンシス)およびそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはつる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)から選択される。
【0204】
本発明はまた、上に定義されたとおりのキットを使用して、農作物、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類を処置および/または保護することに関する。本発明はまた、上で定義された通りのキットによって得られる(または得ることの可能な、またはすぐに得られる)組成物を使用して、農作物、好ましくはつる植物類、ウリ類、またはナス科植物類(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;やはり好ましくはつる植物類を処置および/または保護することに関する。有利には、キット、およびそのキットによって得られる(または得ることの可能な、またはすぐに得られる)組成物の使用は、組成物に関連して上に定義されたとおりのものである。
【0205】
方法
本発明は、上に定義された組成物、または上に定義されたキットから準備される組成物(詳細にはキットによって得られる、または得ることの可能な、またはすぐに得られる組成物)を、保護および/または処置されることになる農作物に適用することを含んでなる、農作物を保護および/または処置する方法であって、農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類である方法に関する。
【0206】
本発明はしたがって:
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と;
を含んでなる、またはそれらから本質的になる、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる組成物を、(処置されることになる農作物に、または前記農作物の近傍に)適用することを含んでなる、農作物を保護および/または処置する方法であって、
農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、またはナス科植物類(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;また、好ましくはつる植物類を含む、方法に関する。
【0207】
本発明はさらに:
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と;
- アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;
を含んでなる、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる組成物を、(処置されることになる農作物に、または前記農作物の近傍に)適用することを含んでなる、農作物を保護および/または処置する方法であって、
アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤が、好ましくはスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;非イオン性界面活性剤が、好ましくはエトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;カチオン性界面活性剤が、好ましくは有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;
前記追加の賦形剤が、好ましくは水溶性であり;前記追加の賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤であり;
農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、またはナス科植物類(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;また、好ましくはつる植物類を含む、方法に関する。
【0208】
本発明はまた:
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と;
- アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;
を含んでなる、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる組成物を、(処置されることになる農作物に、または前記農作物の近傍に)適用することを含んでなる、農作物を保護および/または処置する方法であって、
アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤が、スルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;非イオン性界面活性剤が、エトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;カチオン性界面活性剤が、有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;
前記追加の賦形剤が、好ましくは水溶性であり;前記追加の賦形剤が、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤であり;
農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、またはナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類を含む、方法に関する。
【0209】
本発明はさらに:
- 重炭酸カリウムと;
- タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一つの賦形剤であって、好ましくは植物検疫的に許容される賦形剤、ならびに/または好ましくは本質的に生物系の賦形剤、ならびに/または天然起源である、および/もしくは好ましくは低懸念性のプレコーショナリ・ステートメントを付属させた賦形剤と;
- アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、粘土類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の賦形剤と;
を含んでなる、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる組成物を、(処置されることになる農作物に、または前記農作物の近傍に)適用することを含んでなる、農作物を保護および/または処置する方法であって、
アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤が、好ましくはスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;非イオン性界面活性剤が、好ましくはエトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;カチオン性界面活性剤が、好ましくは有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され、粘土類が、好ましくはシリカート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;
アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤が、好ましくはスルホナート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;非イオン性界面活性剤が、好ましくはエトキシル化アルコール類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され;カチオン性界面活性剤が、好ましくは有機鉱物ポリマー類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され、粘土類が、好ましくはシリカート類、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される;
方法に関する。本発明は詳細には、上に(詳細には上の「定義」および「組成」の節に)定義された組成物を適用することを含んでなる、農作物、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類を処置および/または保護する方法に関する。
【0210】
発明者らは、液体または固体のいずれかの形態で組成物を効果的に使用して、農作物を保護および/または処置することができることを示した。したがって組成物は、液体形態または固体形態で(特に粉末形態で)農作物に適用することができる。組成物が液体形態で適用される場合には、この組成物は、すぐに容易に使用できる、または希釈されることになる(濃縮された形態の)液体形態で存在することができる。組成物はまた、固体形態でも存在することができ、この場合には、適用前に(例えば、事前準備なしに、または使用前に短期、中期、または長期の貯蔵のために)好適な溶媒中で希釈することができる。詳細には、液体組成物は、濃縮された形態(これは例えば、使用前に希釈して、例えば、20倍濃縮、または15倍、10倍、8倍、5倍、4倍、3倍、または2倍濃縮にすることができる)またはすぐに使用できる形態で存在することができる。組成物は、その形態の如何によらず、抗真菌効力を有する。
【0211】
組成物が、液体形態(詳細には、すぐに使用できる液体組成物、場合によっては濃縮された液体組成物の希釈の後、または固体組成物の溶解の後のものとして)で使用される場合には、重炭酸カリウムの含有量は、5から60グラム毎リットル(g/L)の組成物、好ましくは8から55g/L、好ましくは10から50g/L、好ましくは15から45g/L、好ましくは20から40g/L、好ましくは25から35g/L、好ましくは28から33g/L、好ましくは30から35g/Lの、適用された組成物の範囲である。実際、データは、農作物に適用される液体組成物中で重炭酸カリウム濃度が5から60g/Lの範囲である場合に、農作物保護および/または処置効力、特に抗真菌活性が特に高いことを示している。
【0212】
一実施形態によれば、組成物は、水溶液の形態で、好ましくは噴霧可能な水溶液の形態で、それにもまして好ましくはエアロゾルの形態で適用される。有利には、組成物は、噴霧および/または蒸発および/または投射によって、農作物に適用される。よって、組成物は、農作物上に噴霧および/または蒸発および/または投射することができる。この場合には、方法は、農作物上に組成物を噴霧および/または蒸発および/または投射するステップを含んでなる。
【0213】
一実施形態によれば、方法は、好ましくは噴霧および/または蒸発および/または投射によって、農作物を収穫する前または後に前記農作物に組成物が適用されることを特徴とする。よって、方法は、農作物を収穫する前または後に前記農作物に組成物を適用するステップを含んでなる、またはそれからなる、またはそれから本質的になる。
【0214】
有利には、方法は植物検疫的方法である。したがって方法は、植物検疫的処置および/または保護および/または抑制方法とすることができる。
【0215】
一実施形態によれば、方法は、病原性真菌類および/または真菌症から、農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、またはナス科植物類(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類)を保護することを含んでなる、またはそれからなる、またはそれから本質的になる。
【0216】
一実施形態によれば、方法は、病原性真菌類および/または真菌症に対して、農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、またはナス科植物類(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類)を処置することを含んでなる、またはそれからなる、またはそれから本質的になる。
【0217】
一実施形態によれば、方法は、真菌病原体および/または真菌症から、農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、またはナス科植物類(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類)を保護および/または処置することを含んでなる、またはそれからなる、またはそれから本質的になる。
【0218】
代替的に、またはこれと組み合わせて、方法は、農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、またはナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類)上の病原性真菌類および/または真菌症を抑制することを含んでなる、またはそれからなる、またはそれから本質的になる。
【0219】
一実施形態によれば、方法は、農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、またはナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類)を保護および/または処置する、および/または農作物(詳細にはつる植物類、ウリ類、またはナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;やはり好ましくはつる植物類)上の真菌病原体および/または真菌症の成長を抑制するためのものである。
【0220】
実施形態によれば、病原性真菌は、植物病原性真菌類から、詳細にはつる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)、つる植物のうどんこ病(ウンキヌラ・ネカトルおよび/またはエリシフェ・ネカトル)、つる植物の枯病(ボトリティス・キネレア)、ナス科のべと病(フィトフソラ・パラジティカおよび/またはフィトフソラ・インフェスタンス)、ウリのべと病(シュードペロノスポラ・キュベンシス)およびそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはつる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)から選択される。
【0221】
一実施形態によれば、病原性真菌は、植物病原性真菌類から、詳細にはつる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)、つる植物のうどんこ病(ウンキヌラ・ネカトルおよび/またはエリシフェ・ネカトル)、つる植物の枯病(ボトリティス・キネレア)、ナス科のべと病(フィトフソラ・パラジティカおよび/またはフィトフソラ・インフェスタンス)、ウリのべと病(シュードペロノスポラ・キュベンシス)およびそれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはつる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)から選択される。
【0222】
本発明は、詳細には、病原性真菌類および/または真菌症から農作物を保護する、病原性真菌類および/または真菌症から農作物を処置する、農作物上で病原性真菌類および/または真菌症を抑制する、およびそれらのいずれかの組み合わせを行う、上に定義された組成物の適用を含んでなる方法であって;農作物が、好ましくはつる植物類、ウリ類、ナス科(好ましくは馬鈴しょ)、およびそれらのいずれかの組み合わせ;より好ましくはつる植物類である、方法に関する。
本発明はまた、以下の:
a) 例えば、上に定義された好適な溶媒を用いて濃縮された組成物または固体組成物を希釈すること、および/または上に定義されたキットを使用することを含んでなる、上に定義された組成物を準備するステップと;
b) ステップa)による組成物を、処置されることになる培地に適用するステップと、
を含んでなる、農作物を保護および/または処置する方法に関する。
【0223】
有利には、ステップb)では、ステップa)の組成物は、事前準備なしに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【
図1】P.ビティコラ株A:PV221;B:PV1538-1;C:PV413-1についての、試験された5種の組成物(実施例2の製造物1~5(Prod 1-5))それぞれの、異なる濃度の関数としての成長阻害曲線。
【
図2】P.ビティコラ株PV221;PV1538-1;PV413-1についての、組成物1から5(それぞれパネルAからEに示された、実施例2の製造物1~5(Prod 1-5))それぞれの、異なる濃度の関数としての成長阻害曲線。
【
図3】それぞれの組成物(実施例2からの製造物1~5(Prod 1-5))およびそれぞれのべと病株(P.ビティコラ)について得られたIC50およびMICの値。
【
図4】それぞれの組成物(実施例2からの製造物1~5(Prod 1-5))について得られた平均のIC50およびMICの値。
【
図5】P.ビティコラ株PV221;PV1538-1;PV413-1についての、試験された6種の組成物(実施例3の製造物1~6(Prod 1-6))それぞれの、異なる濃度の関数としての成長阻害曲線。
【
図6】P.ビティコラ株PV221;PV1538-1;PV413-1についての、組成物1から6(実施例3の製造物1~6(Product 1-6))それぞれの、異なる濃度の関数としての成長阻害曲線。
【
図7】それぞれの組成物(実施例3からの製造物1~6(Prod 1-6))およびそれぞれのべと病株(P.ビティコラ)について得られたIC50およびMICの値。
【
図8】それぞれの組成物(実施例3からの製造物1~6(Prod 1-6))について得られた平均のIC50およびMICの値。
【
図9】4種の製造物(実施例4における製造物1~4(Product 1-4))の3通りの用量(D1、D2、およびD3)を用いて経時的に処置されたつる性植物上で観察されたべと病成長阻害曲線:第1の処置の直後(D0-T1)、第1の処置の7日後(D7-T1)、第2の処置の直後(D0-T2)、および第2の処置の7日後(D7-T2)。
【
図10】実験の過程で4種の製造物の平均濃度(D2)を用いて処置されたつる性植物上で観察されたべと病成長阻害曲線。
【
図11】試行中に得られたべと病成長阻害進行曲線下面積(Area under the downy mildew growth inhibition progression curve (AUDPC))。
図10における成長阻害曲線データを単一の値に変換した。値は、得られたAUDPCの平均±SDである。
【
図12】溶脱の後に、対照条件(滅菌水を用いて噴霧されたもの)と比較された、製造物1~4(Product 1-4)による真菌成長の平均百分率阻害を示すグラフ。A)こまかな溶脱(降雨:4時間で25mm)。B)重度の溶脱(雷雨:20分で20mm)。
【実施例】
【0225】
実施例1:製剤の微調整
シャトー・モンローズ(Chateau Montrose)は、その全体的な環境面の取り組みの一環として、有機栽培の原則に基づいて環境に優しいブドウ栽培に取り組んでいる。べと病は、ボルドー地方で最も問題となる病害の一つであり、それは、この地方が海洋前線(湿潤気候)に位置しているからである。有機栽培的にこの病害と戦うには、銅のみが実際に有効である。さらに、有機栽培では、銅のみが、べと病(プラズモパラ・ビティコラ)に対して使用することが認められている。それでも銅は、年々、処置に次ぐ処置で、ますますブドウ畑土壌に混入しこれを汚染している。加えて、銅は、2018年まで最高6kg/ha/年、そして2019からは4kg/ha/年まで使用することができた。銅およびその使用の状況は、欧州レベルで5年ごとに見直されるので、シャトー・モンローズにとって、この金属によらないブドウ栽培を先取りして行うことが戦略的であるように見えた。
【0226】
シャトー・モンローズは、ヴァンサン・デク(Vincent Decup)に率いられたその研究開発活動の一環として、全般的にまたは部分的に銅を最終的に置き換える可能性のある解決策を模索した。シャトー・モンローズは、そのアルコール発酵の副生成物である重炭酸カリウムに基づく代替処方を開発することを望んだ。重炭酸カリウムは、ブドウ栽培におけるうどんこ病(エリシフェ・ネカトルまたはウンキヌラ・ネカトル)、べと病(プラズモパラ・ビティコラ)および灰色カビ病(ボトリティス・キネレア)の発達を制限することがすでに知られている。しかし、重炭酸カリウム水溶液は、賦形剤を使用しない場合には、処置されるつる植物類上(特につる植物の葉上)でのその接着および展着の特性が貧弱である。さらには、これらの溶液は、処置される圃場に適用される場合には天候(特に雨水)によって容易に溶脱する。したがって、つる植物類、ウリ類、およびナス科植物の葉上で最適化された抗真菌活性、より良好な接着性、より良好な展着性、溶脱への耐性、および増加した寿命を有すると同時に、有機栽培、特に有機ブドウ栽培における使用に好適な、新たな重炭酸塩組成物があれば有利である可能性がある。
【0227】
したがってシャトー・モンローズは、べと病、うどんこ病、およびつる植物の枯病へのこの分子の効果を初めて試験して、その効力を確かめるとともにその安全性を実証した。これらの植物病原体への重炭酸カリウムの効果は顕著であり、また植物毒性に関して植物に許容される濃度でそうであった。シャトー・モンローズはついで、この製造物の効力を改善/最適化するために重炭酸カリウムというこの活性成分を製剤化しようと決断した。この作業の間ずっと、目標は、葉上へのこの製造物の展着性、その接着性を改善すること、そして圃場に適用される場合に雨水によりこの製造物が溶脱するのを防止することを可能にするような、重炭酸カリウムに添加されるべき賦形剤/アジュバントを見出すことであった。植物検疫的観点から許容される100%生物系の(生きた生物から誘導された)化合物だけを、製剤工程において試験した。
【0228】
試験した組成物(固体または液体の形態でのもの)の一般組成を表1に示す。
【表1】
【0229】
1.1. 活性成分:重炭酸カリウム
シャトー・モンローズは、重炭酸カリウムを製造する特に生態学的に興味深い、しかも高効率の工程を開発した。シャトー・モンローズは、アルコール発酵、例えばブドウ酒発酵から高純度の重炭酸カリウムが得られることを示した。アルコール発酵、例えばブドウ類からブドウ酒への変換の間じゅう、二酸化炭素が放出される。我々が開発したこの工程では、この二酸化炭素は、配管系により捕捉され、次いでブドウ酒醸造所の外のカラムに搬送されるが、そのカラム内には炭酸カリウム溶液が存在している。二酸化炭素がこの溶液中を通って発泡すると、この二酸化炭素が炭酸塩と結合して重炭酸塩を形成し、媒質が飽和するとこの重炭酸塩が結晶化する。このようにして形成された粉末は、カラムで抽出され500kgから1Tの袋に入れられる。
【0230】
この工程のおかげで、シャトー・モンローズは、2018年に2トンを超える重炭酸カリウムを製造することができた。
【0231】
本発明による組成物において使用される重炭酸カリウムは、いずれかの好適な工程によって得る/製造することができる。しかし、生物系の重炭酸カリウム、詳細にはアルコール発酵(上記のもの)によって得られるものが好ましい。
【0232】
よって、この工程には、ブドウ酒発酵を通して製造される気体を回収する、工業的にそして経済的に重要な化合物を製造する、そしてオゾン層に有害な温室効果ガスである二酸化炭素の放出を限定するという、三重の利点がある。
【0233】
1.2 固体形態の組成物の開発
1.2.1. 活性成分(重炭酸カリウム)の濃度
試験を行って、固体組成物(例えば粉末)における重炭酸カリウムの最適濃度を決定した。これらの試験から、重炭酸カリウムの最適濃度が50%から62%(近似的)の範囲であることが明らかになった。
【0234】
1.2.2. 賦形剤の選択
データは、タウラート・ファミリー(とりわけN-メチルタウラート類)に属するアニオン性界面活性剤、アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤(とりわけスルホナート類)、非イオン性界面活性剤(とりわけエトキシル化アルコール類)、カチオン性界面活性剤(とりわけ有機鉱物ポリマー類)、および粘土類(とりわけシリカート類)が、特に好適であることを示している。実際、重炭酸カリウムとこれらの賦形剤の混和性は最適である(データは示さず)。
【0235】
1.2.3. 組成物の最適化
最も好ましい結果は、以下の表2に記載された最適化された組成物を用いて観察される。
【表2】
【0236】
実施例2:本発明による組成物の優れた抗菌活性
試験された組成物:
製造物1:20A20SL01
製造物2:20B14GR01
製造物3:20B17GR01
製造物4:20B18GR01
製造物5:20B14GR01+アジュバント(10%重炭酸カリウムに対して5%グリセリン溶液)。
【0237】
製造物2および5は、本発明による組成物であり、その固体組成物は、上の表2に与えられており、また以下の表3に再掲されている(製造物5の組成物は、アジュバントがさらに存在することを除いて製造物2のものと同一である)。
【0238】
製造物1、3、および4は、比較製造物である。それらの組成物を以下の表3に示す。
【表3】
【0239】
2.1. 目的
この試行の目的は、植物病原体、詳細にはべと病に対して5種の重炭酸カリウム系製剤(製造物1~5)の効力を評価すること、および最低阻害濃度を定義することであった。
【0240】
2.2. 材料および方法
2.2.1. 植物材料
製造は、温室内で行い、温室栽培用培養土の鉢に入った新芽から採取した葉の切断片を用い、光周期は16時間とした。4から5枚の良く発達した葉を有する植物を得るのに必要な最短時間は、およそ4週間であった。
【0241】
2月齢の植物の頂部から3番目および4番目の葉を、様々な試験に使用した。実験室実験を、18mm径のリーフディスク(leaf disc)上で実行した。
【0242】
2.2.2. 真菌材料
べと病は、厳密な偏性病原体であり、これはすなわち、その宿主植物が存在しないと増殖できないということである。
【0243】
実験室は、-20℃で保存された、圃場コレクションから得られた単胞子株のコレクションを有している。これらの試験で使用した株は、識別子PV221、PV413-1、およびPV1538-1として参照されるものである。試験は、ペトリ皿に入れた18mm径のリーフディスク上で、上面をワットマン(Whatman)紙と接触させて行った。
【0244】
2.2.3. 方法:インビトロ効力試験
病原体接種の直前に(事前準備なしに)エアブラシを使用して、異なる濃度の製造物をリーフディスクに適用する。次いで、ディスクを1時間、風乾する。
【0245】
対照は、同一量の滅菌蒸留水をリーフディスクに適用することによって実行する。
【0246】
接種は、5,000胞子嚢/mlから10,000胞子嚢/mlの間で準備した胞子嚢懸濁液を、リーフディスク1枚あたり15μlを3滴という割合で使用して行う。
【0247】
処置効力を、22℃で7日後の病原体発達を目視評価することによって決定する。結果は、滅菌水を噴霧された対照モダリティと比較した真菌成長の平均百分率阻害として表現し、これは以下の計算により得られる:
%阻害=100×1-(%成長「処置済み」/%成長「対照」)
【0248】
真菌成長の50%を阻害する用量(IC50)および最低阻害濃度(MIC)に対応する値を、製造物濃度の関数として百分率阻害のグラフ表示を使用して決定し、これよって圃場適用可能な用量を設定することが可能になる。
【0249】
二つの独立した実験を、各試験について行う。
【0250】
2.3. 結果
試験は、株PV221、PV413-1、およびPV1538-1上で、モダリティごとに8枚の処置されるリーフディスク1箱分、および試験される各製剤について6通りの異なる濃度(0g/L、0.35g/L、0.65g/L、1.25g/L、2.5g/L、5g/L、および10g/L)を使用して行った。
【0251】
2.3.1. 抗真菌活性
結果を
図1および2に示す。データは、試験された5種のすべての製造物が、試験された異なるべと病株の成長を阻害可能であることを示している。データは、試験された株だけでなく試験された組成物に依存して、製造物効力が変動する可能性があることを示している。
【0252】
試験された条件下で、製造物2および5が、製造物1および4よりもPV221およびPV 1538-1株上で有効であり、製造物3が中程度の効力を示した。製造物4は、PV413-1株上で他よりも有効であるように見える(
図1)。
【0253】
図2は、各製造物の効力を示している。重要なことに、製造物2および5は、試験された条件下で特に高活性であり、全株にわたって一貫した効力を示している。
【0254】
さらに、得られた結果は、株に対する顕著な効果を示している。実際、5種の製剤の効力は、株PV-221およびPV1538-1ではより同質に見えるものの、これは、株PV413-1ではそれほどでもない。
【0255】
製造物2および5は、試験された株の如何によらず、同様なそして特に高い効率を示している一方で、試験された条件下で、製造物1は、株PV-221に対して有効性が下がるように見え、製造物3は、株PV1538-1に対して有効性が下がるように見える。
【0256】
2.3.2. IC50およびMCの計算
得られた曲線(
図1および2)の式に基づくと、IC50値(yにおいて50または100の値を与えるxの値)を決定することが可能になる。得られたIC50およびMICの値を、
図3および以下の表4に示す。
【表4】
【0257】
異なる組成物について計算されたIC50値は、0.06g/L(製造物4、PV413-1)と2.24g/L(製造物1、PV221)の間で揺らいでいる、すなわち37倍だけ揺らいでいる一方、MICは、0.68g/L(製造物1、PV1538-1)と4.55g/L(製造物1、PV221)の間で変動、すなわちほぼ7倍だけ変動している(
図3および表4)。
【0258】
5種の組成物について得られた平均のIC50およびMICの値(g/Lの単位)を、
図4および以下の表5に示す。
【表5】
【0259】
2.3.3. 重炭酸カリウム水溶液との比較
平均のIC50およびMICの値を、上の段落2.2.3および2.3.1に記載された方法にしたがって、いかなる賦形剤も伴わない水性重炭酸カリウム製剤(水+KHCO3の製剤)について計算する。いかなる他の賦形剤も伴わない水性の重炭酸ナトリウム製剤(水+NaHCO3の製剤)もまた、対照として使用する。
【0260】
【0261】
データは、製造物2および5(本発明による組成物)を用いて得られたIC50(真菌成長を50%阻害する用量)およびMIC(最低阻害濃度)の値が、重炭酸カリウム水溶液または重炭酸ナトリウム水溶液を用いて得られたものよりも顕著に低いことを示している。このことは、製剤化されていない活性成分(重炭酸カリウム水溶液または重炭酸ナトリウム水溶液)と比較して、べと病に対する本発明による組成物の優れた効力を浮き彫りにしている。
【0262】
比較製造物1、3、および4を用いて得られたIC50値は、試験された条件下で、重炭酸カリウム水溶液について得られたものからの顕著な差を示してはいない。他方で、これらの製造物は、重炭酸ナトリウム水溶液よりも顕著に低いMIC値を有している。
【0263】
よって、製剤化されていない活性成分(重炭酸カリウムまたは重炭酸ナトリウムの水溶液)と比較された、試験された製造物(1~5)それぞれのMIC値からは、試験された製造物それぞれの抗真菌効力に顕著な改善(5.6g/Lと比較してそれぞれ1.23g/Lから2.96g/L)が明らかになっている。
【0264】
全体として、これらのデータは、試験された様々な製造物が、つる植物類上でべと病の原因となる真菌の成長を阻害する抗真菌効果を有することを示している。データは、製造物1から5が、顕著なそして満足できる抗真菌効果を有することを示している。詳細には最良の結果は、試験された条件下で製造物2および5を用いて得られた。したがって製造物2および5の組成物は、重炭酸カリウムの効力を顕著に改善する。製造物5の製剤にアジュバントを添加しても、試験された条件下で製造物2の効力は顕著には変らなかった。
【0265】
1~5の製造物それぞれの接着性、展着性、溶脱への耐性、および寿命という特性をつる植物の葉上で試験し、重炭酸カリウム水溶液の特性と比較する。
【0266】
製造物1~5、そして詳細には製造物2および5は、重炭酸カリウム水溶液と比較して、つる植物の葉上で、改善された接着性、展着性、溶脱への耐性、および寿命を示している。
【0267】
実施例3:本発明による組成物の優れた抗菌活性
試験された組成物:
製造物1:20F16GR01
製造物2:20F17GR01
製造物3:20F26WG01
製造物4:20F29WG01
製造物5:20G08WG01
製造物6:20G09WG01
【0268】
製造物1から6は、本発明による組成物であり、その固体組成物を上の表2に与えてある。
【0269】
3.1. 目的
この試行の目的は、植物病原体、詳細にはべと病に対する、本発明による6種の追加の重炭酸カリウム系組成物(製造物1~6)の効力を評価すること、そして最低阻害濃度を定義することであった。
【0270】
3.2. 材料および方法
3.2.1. 植物材料
植物材料は、実施例2(つる植物類)のとおりのものであり、実施例2(上の段落2.2.1)のとおりに準備する。
【0271】
3.2.2. 真菌材料
真菌材料は、実施例2(べと病)のとおりであり、実施例2(上の段落2.2.2)のとおりに準備する。
【0272】
3.2.3 ― 方法:インビボ効力試験
異なる濃度の製造物を、病原体接種の直前に(事前準備なしに)エアブラシを使用してリーフディスクに適用する。次いで、ディスクを1時間、風乾する。
【0273】
対照は、同一量の滅菌蒸留水を植物の葉に適用することによって行う。
【0274】
接種は、40,000胞子嚢/mlから50,000胞子嚢/mlの間で準備した胞子嚢懸濁液を、リーフディスク1枚あたり15μlを3滴という割合で使用して行う。
【0275】
処置効力を、22℃で7日後の病原体発達を目視評価することによって決定する。結果は、滅菌水を噴霧された対照モダリティと比較した真菌成長の平均百分率阻害として表現し、これは以下の計算により得られる:
%阻害=100×1-(%成長「処置済み」/%成長「対照」)
【0276】
真菌成長の50%を阻害する用量(IC50)および最低阻害濃度(MIC)に対応する値を、実施例2(上の段落2.2.3)のとおりに決定する。
【0277】
二つの独立した実験を、各試験について行う。
【0278】
3.3. 結果
試験は、株PV221、PV413-1、およびPV1538-1上で、モダリティごとに8枚の処置されるリーフディスク1箱分、および試験される各製剤について6通りの異なる濃度(0g/L、0.35g/L、0.65g/L、1.25g/L、2.5g/L、5g/L、および10g/L)を使用して実行した。
【0279】
3.3.1. 抗真菌活性
結果を
図5および6に示す。データは、試験された6種のすべての製造物が、試験された様々なべと病株の成長を阻害可能であることを示している。PV413-1およびPV221の場合には、データは、製造物効力が、試験された株だけでなく試験された組成物に依存して変動する可能性があることを示している(
図5)。
【0280】
他方では、これらの異なる組成物は、株PV1538-1についてほとんど同様な効力の結果を示している。
【0281】
株PV413-1については、製造物1および3は、試験された条件下で他の製造物よりも有効であった。
【0282】
株PV1538-1については、製造物1および3は、他の製造物よりも有効であった。
【0283】
株PV221については、製造物1および2は、他の製造物よりも有効であった。
【0284】
製造物1、3、および4は、株PV413-1に対してよりも株PV221およびPV1538-1に対して有効性が下がるように見える(
図6)。製造物2は、PV221に対して最も有効であるように見え、製造物5は、PV1538-1に対してそうであるように見える。製造物6は、試験された条件下で、株PV413-1およびPV1538-1に有効であるように見える。
【0285】
さらに、得られた結果は、株に対する顕著な効果を示している。
【0286】
データからは、試験されたすべての組成物が、耐性ブドウ品種から分離されたPV413-1株に対して有効であることが明らかになっている。このことは特に興味深いが、それは、このタイプの病原体の抑制が非常に困難であるからである。
【0287】
3.3.2. IC50およびMICの計算
IC50(yにおいて50または100の値を与えるxの値)およびMICの値を、得られた曲線の式から決定する(
図5および6)。得られたIC50およびMICの値を、
図7ならびに以下の表7および8に示す。
【表7】
【表8】
【0288】
試験された条件下で、異なる製剤についてのIC50値は、0.15g/L(製造物3、PV413-1)と1.35g/L(製造物6、PV221)の間で揺らいでいる一方、MICは、1.61g/L(製造物1、PV1538-1)から5.86g/L(製造物6、PV221)まで変動、すなわちおよそ3倍だけ(
図7、表7および8)変動している。
【0289】
6種の組成物について得られた平均のIC50およびMICの値(g/Lの単位)を、
図8および以下の表9に示す。
【表9】
【0290】
3.3.3. 重炭酸カリウム水溶液との比較
本発明による組成物について計算された平均のIC50およびMICの値を、いかなる賦形剤も伴わない水性重炭酸カリウム製剤(水+KHCO3の製剤)、およびいかなる他の賦形剤も伴わない水性の重炭酸ナトリウム製剤(水+NaHCO3の製剤)であって、上の表6(段落2.3.3)にあるものについて計算されたものと比較する。
【0291】
比較結果は、製造物1から3(本発明による組成物)を用いて得られたIC50値(真菌成長を50%阻害する用量)およびMIC値(最低阻害濃度)が、重炭酸カリウム水溶液または重炭酸ナトリウム水溶液を用いて得られたものよりも顕著に低いことを示している。
【0292】
試験された条件下で、製造物4から6を用いて得られたIC50値は、重炭酸カリウム水溶液を用いて得られたものと同程度である。他方で、これらの製造物は、重炭酸ナトリウム水溶液よりも顕著に低いMIC値を有する。
【0293】
これらの結果は、製剤化されていない活性成分(重炭酸カリウム水溶液または炭酸水素ナトリウム水溶液)と比較して、べと病に対する本発明による組成物の優れた効力を浮き彫りにしている。
【0294】
よって、製剤化されていない活性成分(重炭酸カリウム水溶液または重炭酸ナトリウム水溶液)と比較された、試験された製造物(1~6)それぞれのMIC値からは、試験された製造物それぞれの抗真菌効力における顕著な改善(5.6g/Lと比較してそれぞれ2.31g/Lから4.44g/L)が明らかになっている。
【0295】
製造物1から3は、試験された条件下で最も有効であった(1g/Lに対してそれぞれ0.7g/Lおよび0.8g/LのIC50)。
【0296】
全体として、これらのデータは、試験された様々な製造物が、つる植物のべと病の原因となる真菌成長を阻害する抗真菌効果を有することを示している。データは、製造物1から6が、顕著なそして満足できる抗真菌効果を有することを示している。詳細には最良の結果は、試験された条件下で製造物1から3を用いて得られた。本発明による組成物は、重炭酸カリウムの効力を顕著に改善する。
【0297】
接着性、展着性、溶脱への耐性、および寿命という特性を、1~6の製造物それぞれについてつる植物の葉上で試験し、重炭酸カリウム水溶液の特性と比較する。
【0298】
1~6の製造物は、重炭酸カリウム水溶液と比較して、つる植物の葉上で、改善された接着性、展着性、溶脱への耐性、および寿命を示している。
【0299】
実施例4:半制御された温室条件下、つる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)の作因上の、本発明による組成物の優れた抗菌活性。
試験された組成物:
製造物1:20F17GR01
製造物2:20F26WG01
製造物3:20F29WG01
製造物4:20B14GR01
【0300】
製造物1から4は、本発明による組成物であり、その固体組成物を上の表2に与えてある。
【0301】
4.1. 目的
この試験の目的は、植物病原体、詳細にはつる植物のべと病に対する、本発明による4種の追加の重炭酸カリウム系組成物(
図9~12の製造物1~6)の効力を評価することであった。より詳細には、目的は、ブドウ畑において適用されることになる最適用量のみならず、製造物の特徴(植物毒性、持続性、溶脱に対する耐性)に基づく適用戦略を定義することであった。
【0302】
4.2. 材料および方法
4.2.1. 植物材料
植物材料を実施例2(つる植物類)に示す。これらは、少なくとも4枚の広がった葉を有するカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet-Sauvignon)のブドウ品種(1から2月齢の植物)の葉の切断片である。
【0303】
植物材料を、実施例2(上の段落2.2.1)のとおりに準備する。
【0304】
4.2.2. 真菌材料
真菌材料は、実施例2(つる植物のべと病、プラズモパラ・ビティコラ)のとおりであり、実施例2(上の段落2.2.2)のとおりに準備する。
【0305】
4.2.3 ― 方法:インビボ効力試験
方法は、実施例2(上の段落2.2.3)のとおりである。
【0306】
4.3. 結果
4.3.1. つる性植物への用量効果
この試行では、試験条件あたり5種の植物を使用して、実験室で行うことになるインビトロ殺菌剤効力試験に必要な4枚の葉の試料を確保する。
【0307】
二度の順次の適用を、すべての切断片上で10日空けて行う(第1の処置:T1;第2の処置:T2)。
【0308】
各製剤について3通りの用量:製剤に応じて、1から1.2×実験室で得られたMIC、2.5から3×MIC、および5から6×MICを試験する。
【0309】
異なる試験される製造物の殺真菌効力を評価するために、5枚の葉(頂部から3番目または4番目の葉)を各植物から、T1およびT2の直後、次いで各処置の7日後に植物ごとに1枚、採取した。実験室では、直径20mmの葉の6枚のディスクを入れた3枚のペトリ皿を、各最適な処置モダリティ用に準備した。接種は、5,000胞子嚢/mlから10,000胞子嚢/mlの間で準備した胞子嚢懸濁液を、リーフディスク1枚あたり15μlを3滴という割合で使用して行う。
【0310】
病原体成長を、22℃で7日間の定温放置の後に評価する。結果は、滅菌水を噴霧された対照モダリティと比較した真菌成長の平均百分率阻害として表現し、これは以下の計算により得られる:
%阻害=100×1-(%成長「処置済み」/%成長「対照」)
【0311】
【0312】
図9は、第1の処置のすぐ後(D0-T1)に、およそ60%の保護で、製造物3の中程度の用量(D2)および製造物2の高い用量(D3)を用いて最良の結果が得られることを示している。中程度の結果が、製造物4(30%)の中程度の用量(D2)を用いて得られた。
【0313】
処置1の7日後では、製造物1の中程度の用量(D2)が、優れた保護(55%)を与える。他の用量および製造物もまた、顕著な保護(17%と44%の間)を与える。
【0314】
処置2の直後では、製造物2の3通りの用量(D1、D2、およびD3)は、優れた保護結果(89%と97%の間)を与え、そして他の製造物の他の用量を用いて得られた保護のレベルでは、32%と70%の間の顕著な保護が実現された。
【0315】
第2の処置の7日後では、4種の製造物のすべての用量が、顕著な保護(50%と95%の間)を与えた。製造物1の第1の用量により与えられる保護は、下がる(28%)が、依然として顕著である。
【0316】
4.3.2. 植物毒性
植物毒性
植物毒性試験を行った。これらの試行では、条件あたり5種の植物を使用した。
【0317】
二度の順次の適用を、すべての切断片に10日空けて行った。
【0318】
各製剤について3通りの用量:2×実験室で得られたMIC、5×MIC、および10×MICを使用した。
【0319】
植物毒性を、基準としての役割を果たす第1の処置(T1)の直前、次いで第2の処置(T2)の直前、および二度の処置(T1およびT2)の7日後に、頂部からの植物の各葉のレベルで採点する。
【0320】
【0321】
表12におけるデータは、製造物1が中程度の植物毒性を誘起し、この毒性が用量とともに増加することを示している。
【0322】
製造物2を用いて観察される植物毒性は、顕著に低い。製造物3および4の低いおよび中程度の用量については、植物毒性反応は観察されなかった。
【0323】
4.3.3. 製造物持続性(溶脱の非存在下)
この試行の目的は、製剤化された製造物の効力の持続性を処置の後に植物上で評価することであった。この設定では、条件あたり10種の植物を使用した。
【0324】
単回用量を、製造物4の6g/lと12g/lの間で選択した:この最適用量は上記の試行(段落4.3.1および4.3.2)の後に決定したが、これは、ブドウ畑における使用に向けて選択できる可能性があるものである。
【0325】
この試行を、半制御された温室条件下で行った。試行1については、各モダリティの5枚の葉(頂部から3番目または4番目の葉)を、処置の直後(事前準備なしに)、次いで処置の3、7、および10日後に採取し、実験室に持ち帰って、べと病に対する保護の有効性を評価する。従来のインビトロ効力試験と同様に、6枚から8枚の20mm径のリーフディスク3箱分を、各処置モダリティ用に準備する。リーフディスクを、ディスクあたり15μlの胞子嚢懸濁液3滴を用いて接種する。
【0326】
病原体成長を、22℃で7日間の定温放置の後に評価する。結果は、滅菌水を噴霧された対照モダリティと比較した真菌成長の平均百分率阻害として表現し、これは以下の計算により得られる:
%阻害=100×1-(%成長「処置済み」/%成長「対照」)
【0327】
結果:
図10および11は、使用された平均用量で最良の持続性結果を製造物1および3が与えることを示している。製造物2および4もまた、良好な持続性を与える。
【0328】
4.3.4. 溶脱への耐性
この試行の目的は、製剤化された製造物の、溶脱への耐性を評価することであった。この試行では、試験される条件あたり10種の植物を使用した。
【0329】
使用される用量は、製造物4の6g/lと12g/lの間の最適用量であり、これは上記試行(段落4.3.1および4.3.2)の後に決定され、ブドウ畑における使用に向けて選択することができる。
【0330】
処置される植物を、振動する灌漑システムを備えた試験プラットホーム上に置く。25mmの累積降雨または20mmの雷雨をシミュレートする。これらの条件は、処置用製造物を洗い去るのに充分なものであり、よって処置の効果は、この処置を数時間前に行ったとしても無効になる。
【0331】
これまでの試行のとおり、乾燥の後に、各植物から5枚の葉(頂部から3番目または4番目の葉)を除去し実験室へ持ち帰って、べと病に対する保護の有効性を評価する。直径20mmの葉の6枚から8枚のディスク3箱分を、各処置条件用に準備した。リーフディスクを、ディスクあたり15μlの胞子嚢懸濁液3滴を用いて接種する。
【0332】
病原体成長を、22℃で7日間の定温放置の後に評価する。結果は、滅菌水を噴霧された対照モダリティと比較した真菌成長の平均百分率阻害として表現し、これは以下の計算により得られる:
%阻害=100×1-(%成長「処置済み」/%成長「対照」)
【0333】
結果:
得られたデータを
図12に示す。これらのデータは、製造物1、3、および4が、溶脱にかかわらず全体として最良の結果(90%と95%の間の保護)を与えることを示している。これらの製造物の抗真菌活性は、重度の溶脱の後でさえ非常に高いままである(85%と90%の間の保護)。製造物2の効力は、非常に良好なままである(わずかな溶脱の後で75%保護、しかし重度の溶脱の後にほぼ90%保護)。
【0334】
実施例4の評価:
結果からは、この実施例において試験された、本発明による4種の組成物がすべて、つる性植物上でのべと病の防止および処置に有効であることが確認される。これらの製造物により提供された保護は、安定で長く持続する。加えて、これらの製造物すべてが、溶脱への優れた耐性を与え、さらに保護の持続時間を延長する。最終的に、データは、試験された4種の製造物が、許容される植物毒性を有することを示している。総合すると、データは、効力、植物毒性、および保護の持続時間に関して製造物3が最も興味深いことを示している。
【0335】
実施例5:半制御された温室条件下、ナス科のべと病(フィトフソラ・インフェスタンス)の作因上の、本発明による組成物の抗真菌活性の優位性
試験された組成物:本発明による実施例4からの製造物3(20F29WG01)は、その固体組成物が上の表2に与えてあり、この製造物を、異なる濃度(0kg/100L、0.3kg/100L、0.6kg/100L、0.9kg/100L、および1.2kg/100L)でこれらの試験に使用した。
【0336】
5.1. 目的
この試行の目的は、植物病原体、詳細にはナス科植物のべと病(フィトフソラ・インフェスタンス)に対する、本発明による重炭酸カリウム系製造物3の効力を評価することであった。より詳細には、目的は、毒性を低減させた製造物の良好な効力が得られるよう、植物に適用される最適用量を定義することであった。
【0337】
5.2. 材料および方法
5.2.1. 植物材料
製造は、温室で行い、若いナス科ナス(馬鈴しょ)植物を使用する。3Lのポットあたり塊茎1個を温室内で育てる。この植物を、3か月から4か月間、育てる。試験は、6番目、7番目、または8番目の葉を発現させた植物上で行う。植物のすべての葉に病原体を蔓延させて、製造物3の効果を調べる。
【0338】
5.2.2. 真菌材料
べと病は、厳密な偏性病原体であり、これはすなわち、その宿主植物が存在しないと増殖できないということである。
【0339】
これらの試験に使用した株は、フィトフソラ・インフェスタンスである。試験は、各試験植物のすべての葉に接種することによって行う。これは人為的接種として公知である。
【0340】
5.2.3. 方法:インビボ効力試験
異なる濃度の製造物を、噴霧ノズル(圧力3バール)を有するランセットを使用して、病原体を接種する(事前準備なしに)直前に植物の葉に適用する。
【0341】
対照は、同一量の滅菌蒸留水を植物の葉に適用することによって行う。
【0342】
接種は、接種されることになる株に適切な標準条件下で行う。
【0343】
処置効力を、18℃で7日後の病原体発達を目視評価することによって決定する。
【0344】
結果は、非接種植物と比較した真菌蔓延の平均百分率として表わす。
【0345】
5.3. 結果
5.3.1. 馬鈴しょ植物への用量効果
この試行では、試験条件あたり5種の植物を使用する。
【0346】
二度の順次の適用を、すべての葉上で7日空けて行った(植物の受けた第3の処置:T3に対応する第1の処置;植物の受けた第4の処置:T4に対応する第2の処置)。
【0347】
製造物3について4通りの用量:製剤に応じて、2.5×実験室で得られたMICに対応する用量0.3kg/100L、5×MICに対応する用量0.6kg/100L、7.5×MICに対応する用量0.9kg/100L、および10×MICに対応する用量1.2kg/100Lを試験した。
【0348】
接種を、接種される株に適切な標準条件下で行って、試験される異なる濃度の殺菌効力を評価する。
【0349】
接種は、本発明による製剤の適用の、または対照条件については蒸留水の適用の1日後に行う。
【0350】
病原体成長を、18℃で7日間の定温放置の後に評価する。
【0351】
結果を、接種された植物と未接種の植物の間で真菌の蔓延を比較することによって、寄生真菌の蔓延の平均百分率強度として表す。真菌の蔓延は、目視により観察する。
【0352】
【0353】
結果は、処置(T4)、接種、そして病原体成長に好ましい条件化下での植物栽培の後に、寄生蔓延の強度が、接種の5日後では18.1%、次いで12日後では21.3%に増加したことを示している(対照)。
【0354】
接種の5日後では、0.9kg/100Lおよび1.2kg/100Lの用量を用いた2種の製造物3モダリティでは、蔓延は対照よりも比較的低かった。
【0355】
接種の12日後では、蔓延の低減は顕著であった。1.2kg/100Lの用量は、11.9%の寄生体蔓延強度を有していた:0.9kg/100Lの用量は、13.8%の寄生体蔓延強度を有していた。これと比較して、対照は、21.3%の寄生体蔓延強度を有していた。
【0356】
5.3.2. 植物毒性
この設定では、4通りの試験される用量(0.3kg/100L、0.6kg/100L、0.9kg/100L、1.2kg/100L)について、7日空けて二度の順次の適用(第1の処置:T1、第2の処置:T2)を行うとともに、対照に対応する蒸留水の適用を行った。植物毒性の結果を、葉の観察によって得る。
【0357】
植物毒性の観察は、製造物の適用と病原体接種の後に行う。これらの適用(段落5.3.1におけるT3およびT4に対応する製造物+病原体)は、二度の適用(T1およびT2)の7日および14日後に行う。
【0358】
観察は特に、葉の縁部の周りの壊死および/または枯死の何らかの兆候が見られるか否かを確認することを目標としている。
【0359】
結果:
最初から二度の適用(T1およびT2)の後では、農作物は、植物毒性のいかなる症状も示さなかった。
【0360】
第3の適用(T3)の後では、わずかな症状が現れた:葉の縁部の周りに壊死および農作物の枯死である。
【0361】
第3の適用(T4)の後では、製造物は、農作物にさらに顕著な効果を誘起するが、植物毒性は、依然として許容できる。温室で育てた植物は、圃場で育てたものよりも顕著に高感受性であることに留意されたい。
【0362】
評価実施例5:
試験された異なる用量については、製造物3は、7日空けて4度の適用の場合に、馬鈴しょ植物上でほとんどまたはまったく植物毒性を誘起しなかった。
【0363】
最後に、これらの結果から、製造物3が、馬鈴しょ植物上での晩枯病の防止および処置に高度に有効であることが確認される。全体として、0.9kg/100Lおよび1.2kg/100Lの用量で、効力の観点からさらに良好な保護が得られ、毒性は低い。
【0364】
考察データは、上の実施例2からの製造物2および5、実施例3からの製造物1から6、実施例4からの製造物1から4、および上の実施例5からの製造物3が抗真菌効果を有し、葉に適用される場合には、つる植物類、ウリ類、およびナス科植物類上でべと病の原因となる真菌成長を防止、処置、および抑制できることを示している。
【0365】
これらの製造物は、特に有利であり、その理由は、これらの製造物が、生物系で植物検疫的に許容される材料/成分だけを含有しているからである。さらに、これらの成分は生物分解性である。加えて、これらは真菌に対して特に有効である。
【0366】
したがって、これら12種の組成物を、つる植物のうどんこ病(エリシフェ・ネカトルまたはウンキヌラ・ネカトル)、つる植物のべと病(プラズモパラ・ビティコラ)、つる植物の灰色カビ病(ボトリティス・キネレア)、ナス科のべと病(フィトフソラ・パラジティカおよび/またはフィトフソラ・インフェスタンス)、およびウリのべと病(シュードペロノスポラ・キュベンシス)の処置/抑制における特に顕著なその効力を理由に選択した。これらの組成物は、つる植物類、ウリ類、およびナス科植物上でのべと病の防止および処置に特に有効である。実施例2の製造物2および5(アジュバントを有するまたは有さない20B14GR01)、ならびに実施例4および5の製造物3の組成物が、詳細には、べと病の様々な株の接種に直面した場合に最良の性能と最高の一貫性を示したものである。
【0367】
本発明によれば、組成物は革新性があり、その理由は以下のとおりである:
- この組成物は、つる植物類、ウリ類、およびナス科植物のべと病に対して重炭酸カリウムを使用するものであり、年々処置に次ぐ処置で、ブドウ畑および農地土壌に徐々に混入しこれらを汚染する銅の使用に対する別法となり得る。
- この組成物は、生物分解性活性成分である重炭酸カリウムを使用し、これは100%生物系、詳細には、アルコール発酵、二酸化炭素の副生成物から誘導することができるものである(炭酸カリウム+CO2=重炭酸カリウム)。これにより、アルコール発酵の最中に生成されたガスを回収すること、およびオゾン層に有害な温室効果ガスである二酸化炭素の放出を制限することが可能になる。
- 重炭酸カリウムと、本質的に生物系および/または生物分解性(詳細には、タウラート・ファミリーに属する生物系および/または生物分解性のアニオン性界面活性剤)であり得る少なくとも一つの賦形剤と、本質的に生物系および/または生物分解性(詳細には、タウラート・ファミリーに属する生物系および/または生物分解性アニオン性界面活性剤)であり得る少なくとも一つの追加の界面活性剤と;アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも一つの追加の界面活性剤と;任意に、粘土類から選択される少なくとも一つの追加の賦形剤)の新規の組み合わせ。
- 使用される賦形剤、詳細には、タウラート・ファミリーに属するアニオン性界面活性剤は、葉および/または植物上への活性成分の展着および固定を改善する。これらは、水の蒸発を遅延させることによって、他の共配合剤により葉上に形成される接触膜の質を改善する。最後に、これらは、製剤の耐寒性を改善する。
- アニオン性ポリ電解質ポリマー界面活性剤(特にリグノスルホナート類)は、保存性を有する分散剤である。したがって、この賦形剤は、葉上での活性成分の展着性を改善し、組成物の品質保持期間を延長させる。
- 非イオン性界面活性剤(詳細にはエトキシル化アルコール類、例えばTergitol(登録商標))は、適用の後に葉上に活性成分を固定および保護する膜を生成するのに役立つ。詳細には、エトキシル化アルコール類(例えばTergitol(登録商標))は、湿潤性界面活性剤(これらは、表面張力を低下させて、適用の最中に、水中での粉末または顆粒の、およびシート上での液体の濡れ性を促進する)。
- 加えて、カチオン性界面活性剤(例えばシロキサン類)は、発泡防止特性を持つ保湿剤である:これらは、水を保持しその蒸発を遅延させて、乾燥の最中にシート上に形成された接触膜の質を改善する。
- 粘土(特にシリカート類)は、純化特性、収れん特性、防腐特性を有する。よって、これは、重炭酸カリウムの抗真菌活性を補完および強化すると同時に、製造物の品質保持期間を延長する。
- 製剤は、100%天然の生物系であり、環境へのその影響は低い。
- 最終製造物は、液体、粉末、顆粒状、および/または錠剤の形態、好ましくは固体形態とすることができる。しかし、ブドウ酒生産者や農家向けに現在市場に流通している製造物で、顆粒状または錠剤形態のものは存在しない。
【国際調査報告】