(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】キャニスターの温度制御方法及び原料供給装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/448 20060101AFI20240621BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20240621BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C23C16/448
C23C16/52
H01L21/31 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579620
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 KR2022009246
(87)【国際公開番号】W WO2023277539
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0085936
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504210651
【氏名又は名称】ジュスン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン ビュン カン
(72)【発明者】
【氏名】クォン サン キョ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ホン イン
(72)【発明者】
【氏名】パク イル ハン
(72)【発明者】
【氏名】パク チャン キュン
(72)【発明者】
【氏名】バク イン ウゥ
(72)【発明者】
【氏名】オォ ウォン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リ ドン ファン
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジュン ソク
(72)【発明者】
【氏名】チョ セウン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ヘオ ジョン
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA01
4K030JA10
4K030KA25
4K030KA39
4K030KA41
5F045AA03
5F045BB08
5F045EE02
5F045EE07
5F045GB05
(57)【要約】
【課題】気化された原料物質を安定的に供給することのできるキャニスターの温度制御方法及び原料供給装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、キャニスター内の原料物質気化させるステップと、気化された原料物質を排出するステップと、キャニスターの内部温度を測定するステップと、内部温度を用いて計算温度を算出するステップと、キャニスターに配備された加熱部を計算温度に加熱して内部温度の変化を補償するステップと、を含む原料供給方法と、同方法に適用される原料処理装置であって、気化された原料物質を処理空間に安定的に供給することのできる原料供給方法及び装置が開示される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と接続された測定部を設け、前記制御部と接続された加熱部を設け、内部に原料物質を収容する構造のキャニスターの温度制御方法であって、
前記キャニスターの内部温度を測定するステップと、
測定されたキャニスターの内部温度を前記制御部の計算式に適用して計算温度を算出するステップと、
前記加熱部の温度を前記計算温度に変更するステップと、
を含む、キャニスターの温度制御方法。
【請求項2】
前記計算温度を算出するステップは、
前記原料物質の気化量に対する前記キャニスターの内部温度と前記加熱部の温度の重み付け値に基づいて、キャニスターの内部温度についての前記計算式を導き出すステップを含み、
前記原料物質の気化量に対する、キャニスターの内部温度の重み付け値と、加熱部の温度の重み付け値とが互いに異なる、請求項1に記載のキャニスターの温度制御方法。
【請求項3】
キャニスター内の原料物質を気化させ、気化された原料物質を排出するステップをさらに含み、
前記気化された原料物質を排出するステップを行う間に、
前記内部温度を測定するステップと、前記計算温度を算出するステップと、前記加熱部の温度を前記計算温度に変更するステップと、をこの順に繰り返し行う、請求項1に記載のキャニスターの温度制御方法。
【請求項4】
前記キャニスターの内部温度を測定するステップは、
前記キャニスターの内部の原料物質の温度を前記キャニスターの内部温度として測定するステップを含む、請求項1に記載のキャニスターの温度制御方法。
【請求項5】
前記計算温度を算出するステップは、
前記原料物質の温度に利用比率を適用して前記計算温度を生成するステップを含む、請求項4に記載のキャニスターの温度制御方法。
【請求項6】
前記計算温度を算出するステップは、
前記計算温度を生成するステップの前に、気化された原料物質の排出量に応じて、前記利用比率を定めるステップを含む、請求項5に記載のキャニスターの温度制御方法。
【請求項7】
前記計算温度は、下記の計算式1から生成する、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のキャニスターの温度制御方法。
[計算式1]
T
C=(T
SET-(T
ML×R
ML))/1-R
ML)…1
(ここで、T
Cは計算温度であり、T
SETは設定温度であり、T
MLは原料物質の温度であり、R
MLは原料物質の温度の利用比率であって、0と1との間の定数である。)
【請求項8】
前記計算温度を算出するステップは、
気化された原料物質の排出を行い始めて予め定められた基準時間が過ぎた時点からは、前記計算温度を下記の計算式1から生成し、
気化された原料物質の排出を行い始めた時点から、前記基準時間となる時点までは、前記計算温度を下記の計算式2から生成する、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のキャニスターの温度制御方法。
[計算式1]
T
C=(T
SET-(T
ML×R
ML))/1-R
ML)…1
[計算式2]
T
C=((T
SET+T
offset)-(T
ML×R
ML))/1-R
ML)…2
(ここで、T
Cは計算温度であり、T
SETは設定温度であり、T
offsetはオフセット温度であり、T
MLは原料物質の温度であり、R
MLは原料物質の温度の利用比率であって、0と1との間の定数である。)
【請求項9】
制御部と接続された測定部を設け、前記制御部と接続された加熱部を設け、内部に原料物質を収容する構造のキャニスターの温度制御方法であって、
前記キャニスターの内部温度を測定するステップと、
測定されたキャニスターの内部温度と前記制御部に入力されたキャニスター設定温度とを比較及び判断するステップと、
前記測定されたキャニスターの内部温度を前記制御部の計算式に適用して計算温度を算出するステップと、
を含む、キャニスターの温度制御方法。
【請求項10】
原料物質が収容されるキャニスターと、
前記キャニスターの内部の原料物質を加熱するように前記キャニスターに配備される加熱部と、
前記キャニスターの内部温度を測定する測定部と、
前記内部温度を用いて計算温度を算出し、前記計算温度に前記キャニスターの内部温度を変更する制御部と、
を備える、原料供給装置。
【請求項11】
前記内部温度を測定する測定部は、前記キャニスターの内部において気化された原料物質の排出が行われ始めると、前記キャニスターの内部の原料物質の温度を前記内部温度として測定し、
前記制御部は、前記原料物質の温度に利用比率を適用して前記計算温度を生成する、請求項10に記載の原料供給装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記キャニスターの内部温度の測定時点に応じて、下記の計算式1及び計算式2のうちのどちらか一方の計算式を用いて前記計算温度を生成する、請求項11に記載の原料供給装置。
[計算式1]
T
C=(T
SET-(T
ML×R
ML))/1-R
ML)…1
[計算式2]
T
C=((T
SET+T
offset)-(T
ML×R
ML))/1-R
ML)…2
(ここで、T
Cは計算温度であり、T
SETは設定温度であり、T
offsetはオフセット温度であり、T
MLは原料物質の温度であり、R
MLは原料物質の温度の利用比率であって、0と1との間の定数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャニスターの温度制御方法及び原料供給装置に関し、さらに詳しくは、気化された原料物質を安定的に供給することのできるキャニスターの温度制御方法及び原料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体素子及びディスプレイ装置は、基板の上に所定の物質を薄膜として蒸着し、パターンエッチングすることを繰り返し行って所望の素子を製造する。基板の上に薄膜を蒸着する方式として、物理気相蒸着(PVD;Physical Vapor Deposition)方式と、化学気相蒸着(CVD;Chemical Vapor Deposition)方式と、が挙げられる。
【0003】
中でも、化学気相蒸着方式は、原料物質を気化させて基板の上に噴射して薄膜を蒸着する方式であって、薄膜の膜厚を調節し易く、優れたステップカバレッジ(Step Coverage)を有するという長所があることから、広く利用されている。
【0004】
一般に、化学気相蒸着方式を用いて薄膜を形成するとき、キャニスター内に原料物質を収容し、キャニスターを加熱して原料物質を気化させた後、気化された原料物質をチャンバーに供給して、基板の上に噴射する。このとき、基板の上に蒸着される薄膜を高品質に保持するためには、気化された原料物質を定められた一定の供給量でチャンバーに供給しなければならない。
【0005】
このとき、原料物質の蒸気圧が低いが故に、流量制御器を用いて供給量を調節し難い場合に、気化された原料物質の供給量の調節は、キャニスターの温度を制御することで行われる。例えば、キャニスターの温度を原料物質の気化温度よりも高い温度に保持して、キャニスター内の原料物質の気化量を一定にすることにより、キャニスターからチャンバーへと一定の流量の気化された原料物質を供給することができる。
【0006】
しかしながら、キャニスターからチャンバーへと気化された原料物質を供給する初期に、気化された原料物質がキャニスターから瞬時に排出されながらキャニスターの内部の圧力が瞬時に低くなり、これにより、原料物質の表面において大量の気化が起こってしまう。
【0007】
このとき、気化熱により原料物質の温度が普段よりも速やかに低くなり、キャニスターの温度により原料物質の温度が修復されるまで原料物質の気化量が低くなることにより、キャニスターからチャンバーへと一定の流量の気化された原料物質を供給し難いという問題がある。
【0008】
本発明の背景となる技術は、下記の特許文献に掲げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2006-0118239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、気化された原料物質を安定的に供給することのできるキャニスターの温度制御方法及び原料供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態に係る温度制御方法は、制御部と接続された測定部を設け、前記制御部と接続された加熱部を設け、内部に原料物質を収容する構造のキャニスターの温度制御方法であって、前記キャニスターの内部温度を測定するステップと、測定されたキャニスターの内部温度を前記制御部の計算式に適用して計算温度を算出するステップと、前記加熱部の温度を前記計算温度に変更するステップと、を含む。
【0012】
前記計算温度を算出するステップは、前記原料物質の気化量に対する前記キャニスターの内部温度と前記加熱部の温度の重み付け値に基づいて、キャニスターの内部温度についての前記計算式を導き出すステップを含み、前記原料物質の気化量に対する、キャニスターの内部温度の重み付け値と、加熱部の温度の重み付け値とが互いに異なっていてもよい。
【0013】
前記原料供給方法は、キャニスター内の原料物質を気化させ、気化された原料物質を排出するステップをさらに含み、前記気化された原料物質を排出するステップを行う間に、前記内部温度を測定するステップと、前記計算温度を算出するステップと、前記加熱部の温度を前記計算温度に変更するステップと、をこの順に繰り返し行ってもよい。
【0014】
前記キャニスターの内部温度を測定するステップは、前記キャニスターの内部の原料物質の温度を前記キャニスターの内部温度として測定するステップを含んでいてもよい。
【0015】
前記計算温度を算出するステップは、前記原料物質の温度に利用比率を適用して前記計算温度を生成するステップを含んでいてもよい。
【0016】
前記計算温度を算出するステップは、前記計算温度を生成するステップの前に、気化された原料物質の排出量に応じて、前記利用比率を定めるステップを含んでいてもよい。
【0017】
前記計算温度は、下記の計算式1から生成してもよい。
【0018】
[計算式1]
TC=(TSET-(TML×RML))/1-RML)…1
【0019】
(ここで、TCは計算温度であり、TSETは設定温度であり、TMLは原料物質の温度であり、RMLは原料物質の温度の利用比率であって、0と1との間の定数である。)
【0020】
前記計算温度を算出するステップは、気化された原料物質の排出を行い始めて予め定められた基準時間が過ぎた時点からは、前記計算温度を下記の計算式1から生成し、気化された原料物質の排出を行い始めた時点から、前記基準時間となる時点までは、前記計算温度を下記の計算式2から生成してもよい。
【0021】
[計算式1]
TC=(TSET-(TML×RML))/1-RML)…1
【0022】
[計算式2]
TC=((TSET+Toffset)-(TML×RML))/1-RML)…2
【0023】
(ここで、TCは計算温度であり、TSETは設定温度であり、Toffsetはオフセット温度であり、TMLは原料物質の温度であり、RMLは原料物質の温度の利用比率であって、0と1との間の定数である。)
【0024】
本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法は、制御部と接続された測定部を設け、前記制御部と接続された加熱部を設け、内部に原料物質を収容する構造のキャニスターの温度制御方法であって、前記キャニスターの内部温度を測定するステップと、測定されたキャニスターの内部温度と前記制御部に入力されたキャニスター設定温度とを比較及び判断するステップと、前記測定されたキャニスターの内部温度を前記制御部の計算式に適用して計算温度を算出するステップと、を含む。
【0025】
本発明の実施形態に係る原料供給装置は、原料物質が収容されるキャニスターと、前記キャニスターの内部の原料物質を加熱するように前記キャニスターに配備される加熱部と、前記キャニスターの内部温度を測定する測定部と、前記内部温度を用いて計算温度を算出し、前記計算温度に前記キャニスターの内部温度を変更する制御部と、を備える。
【0026】
前記内部温度を測定する測定部は、前記キャニスターの内部において気化された原料物質の排出が行われ始めると、前記キャニスターの内部の原料物質の温度を前記内部温度として測定し、前記制御部は、前記原料物質の温度に利用比率を適用して前記計算温度を生成してもよい。
【0027】
前記制御部は、前記キャニスターの内部温度の測定時点に応じて、下記の計算式1及び計算式2のうちのどちらか一方の計算式を用いて前記計算温度を生成してもよい。
【0028】
[計算式1]
TC=(TSET-(TML×RML))/1-RML)…1
【0029】
[計算式2]
TC=((TSET+Toffset)-(TML×RML))/1-RML)…2
【0030】
(ここで、TCは計算温度であり、TSETは設定温度であり、Toffsetはオフセット温度であり、TMLは原料物質の温度であり、RMLは原料物質の温度の利用比率であって、0と1との間の定数である。)
【発明の効果】
【0031】
本発明の実施形態によれば、キャニスターの内部において原料物質を気化させて排出する間に、キャニスターの内部温度を測定し、これから計算温度を算出することができ、算出された計算温度にキャニスターに配備された加熱部を加熱して、気化された原料物質の排出時に起こるキャニスターの内部温度の急激な変化を有効に補償することができる。
【0032】
すなわち、温度の変化に敏感なキャニスターの内部温度をそのまま用いることなく、計算温度を算出して加熱部の加熱に活用することにより、キャニスターの内部温度のオーバーシュートを防ぎながら、キャニスターの内部温度を速やかに修復させることができる。
【0033】
これにより、キャニスターの内部温度を速やかに安定化させて、原料物質の気化量を迅速に修復させながら修復された気化量を安定的に保持することができ、キャニスターと連絡された処理空間に気化された原料を安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態に係る原料供給装置の概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法の手順図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法の手順図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法によりキャニスターの温度を制御しながら原料を供給し、原料の温度を測定した結果を比較例と対比して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化される筈である。単に、これらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、当該分野において通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものである。本発明の実施形態を説明するために図面は誇張されてもよく、説明とは無関係な部分は図面から省略されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0036】
本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法及び原料供給装置は、各種の原料物質を気化させて基板の上に供給する方法及び装置であって、多種多様に適用可能である。例えば、本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法及び原料供給装置は、金属有機物化学気相蒸着(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)工程設備のキャニスターの温度制御方法及び原料供給装置として適用可能である。
【0037】
以下では、薄膜の形成のための液状の原料物質を気化させて基板の上に供給する工程設備を基準として本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0038】
まず、本発明の実施形態に係る原料供給装置について詳しく説明する。
【0039】
図1は、本発明の実施形態に係る原料供給装置の概略図である。
【0040】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る原料供給装置は、原料物質(図示せず)が収容されるキャニスター100と、キャニスター100の内部の原料物質を加熱するようにキャニスター100に配備される加熱部400と、キャニスター100の内部温度を測定する測定部500と、内部温度を用いて計算温度を算出し、計算温度にキャニスター100の内部温度を変更する制御部600と、を備える。
【0041】
また、本発明の実施形態に係る原料供給装置は、基板(図示せず)を処理するように設けられた処理室(図示せず)にキャニスター100をつなぐ排出部200と、キャニスター100に原料物質を供給する供給部300と、を備えていてもよい。
【0042】
基板は、ウェーハを備えていてもよい。いうまでもなく、基板は、ガラス基板、プラスチック基板及び金属基板など多種多様であってもよい。
【0043】
処理室は、チャンバーを備えていてもよい。チャンバーは、所定の筒状のものであってもよい。チャンバーは、内部に支持台が配備されてもよい。支持台の上に基板が載置されてもよい。支持台と対向するようにチャンバーの内部に噴射部が配置されてもよい。
【0044】
噴射部は、本発明の実施形態に係る原料供給装置と連結されてもよい。噴射部を介して基板に気化された原料物質が供給可能である。このため、基板の上に原料物質の膜が形成されてもよい。
【0045】
原料物質は、薄膜蒸着用のソースを含んでいてもよい。原料物質は液状として設けられてキャニスター100内に収容されてもよい。いうまでもなく、原料物質は、固相として設けられてもよい。
【0046】
キャニスター100は、内部に液状の原料物質を貯留することができ、内部において気化された原料物質を処理室に供給することができる。キャニスター100は、内部が空いている筒状に作製されてもよい。このとき、キャニスター100の形状は、様々であり、四角い筒状及び円筒状を含む。
【0047】
キャニスター100は、一つまたは複数で配備されてもよい。このとき、キャニスター100の数は、様々であってもよい。キャニスター100が複数配備される場合、キャニスター100は、処理室と並列に連絡されてもよい。このとき、複数のキャニスター100は、所定の順番に処理室10に気化された原料物質を供給してもよい。なお、複数のキャニスター100が同時に処理室10に気化された原料物質を供給してもよい。
【0048】
排出部200は、キャニスター100の上部の一方の側に連結される。また、排出部200は処理室に延び、処理室の噴射部と連結されてもよい。排出部200の連結構造は、様々であってもよい。
【0049】
供給部300は、キャニスター100の上部の他方の側に連結される。また、供給部300は、原料供給源(図示せず)と連結される。供給部300は、原料供給源から原料物質の供給を受けることができ、供給を受けた原料物質をキャニスター100の内部に供給することができる。供給部300の連結構造は、様々であってもよい。
【0050】
加熱部400は、例えば、ジャケットの形状にキャニスター100を包み込むヒーター部材と、ヒーター部材に内蔵されてヒーター部材を加熱する加熱部材と、を備える。いうまでもなく、加熱部400の構成は、様々であってもよい。加熱部400は、所定の電流の供給を受けて、発熱される方式により熱を生成することができる。加熱部400は、キャニスター100の側壁を包み込むように装着されてもよく、発熱される熱をキャニスター100に供給してキャニスター100の内面の温度を上昇させることができる。このため、キャニスター100内の原料物質が、例えば、原料物質の気化温度よりも高い温度に加熱されることが可能であり、キャニスター100の内部において気化が行われて、気化された原料物質が生成されることが可能になる。いうまでもなく、加熱部400の熱生成方式と配設位置は、様々であってもよい。
【0051】
測定部500は、キャニスター100の内部に配置される。測定部500は、原料物質中に所定の高さに配置されてもよい。測定部500を原料物質中に配置する方式は、様々であってもよい。例えば、所定の支持部材を用いて測定部500を支持してもよいし、あるいは、測定部500に浮力部材を取り付けて原料物質中に浮遊させてもよい。測定部500は、キャニスター100の内部温度を測定することができる。測定部500は、測定された原料物質の温度を制御部600に送信することができる。
【0052】
このとき、測定部500が測定する原料物質の温度は、原料物質の中心部の近傍の温度であってもよい。すなわち、測定部500は、加熱部400から熱が最も遅く伝達される位置の原料物質の温度をキャニスター100の内部温度として測定してもよい。
【0053】
また、測定部500が測定する原料物質の温度は、気化された原料物質の排出の際に温度の変化が最も激しい所定の位置の原料物質の温度であってもよい。
【0054】
いうまでもなく、測定部500がキャニスター100の内部温度を測定する原料物質の位置は、様々であってもよい。
【0055】
測定部500は、温度センサーを備えていてもよい。温度センサーは、キャニスター100の内部に配置されてもよいし、あるいは、原料物質に浸漬されて温度を測定できるように形成されてもよい。このような温度センサーの形状及び配設構造と、測温方式は、様々であってもよい。
【0056】
測定部500は、原料物質の温度を連続して測定して出力してもよいし、あるいは、所定の時間おきに周期的に測定して出力してもよい。
【0057】
制御部600は、キャニスター100の内部温度、すなわち、原料物質の温度を用いて計算温度を算出し、計算温度にキャニスター100の内部温度を変更する。具体的には、制御部600は、加熱部400の温度を変更してキャニスター100の内部温度を変更する。
【0058】
制御部600は、測定部500において測定される原料物質の温度に利用比率(RML)を適用して計算温度(TC)を生成してもよい。ここで、利用比率(RML)を、例えば、原料物質の温度重み付け要素と称してもよいし、原料物質の温度重み付け値と称してもよい。
【0059】
さらに詳しくは、制御部700は、原料物質の温度の測定時点に応じて、下記の計算式1及び計算式2のうちのどちらか一方の計算式を用いて計算温度を生成することができる。例えば、気化された原料物質の排出の初期には、計算式2を用いて計算温度を生成してもよく、気化された原料物質の排出の初期を過ぎてから、計算式1を用いて計算温度を生成してもよい。気化された原料物質の排出の初期は、時間で区別してもよいし、あるいは、処理室10において処理される基板の枚数で区別してもよい。
【0060】
[計算式1]
TC=(TSET-(TML×RML))/1-RML)…1
【0061】
[計算式2]
TC=((TSET+Toffset)-(TML×RML))/1-RML)…2
【0062】
ここで、TCは計算温度を示し、TSETは設定温度を示し、Toffsetはオフセット温度を示し、TMLは原料物質の温度を示してもよい。そして、RMLは、原料物質の温度の利用比率であって、0と1との間の定数であってもよい。
【0063】
設定温度(TSET)は、キャニスター100内の原料物質の気化量が基板に供給すべき気化された原料物質の供給量を追随するように設定された加熱部の基準温度であって、基板を処理する工程の工程条件と原料物質の物性に応じて所定の温度に定められてもよい。このとき、設定温度(TSET)は、キャニスター100に収容された状態における原料物質の気化温度よりも高い所定の温度であってもよい。
【0064】
オフセット温度(Toffset)は、気化された原料物質の最初の排出に際して、気化量の急増につれて原料物質の温度が落ち込むことに対応して、原料物質の温度が落ち込む分に見合う分だけ設定温度(TSET)に予め加算する温度であってもよい。
【0065】
例えば、原料物質を気化させて基板の上に供給する工程を行うとき、気化された原料物質の最初の排出時から所定の時間の間に原料物質の温度を測定して、原料物質の温度のうち最も低い温度を選択し、設定温度(TSET)と選択された温度との差分値を求めてオフセット温度(Toffset)に設定してもよい。
【0066】
原料物質の温度の利用比率(RML)は、キャニスター100から処理室10への気化された原料物質の供給量が大きければ大きいほど1に近い可能性があり、その供給量が小さければ小さいほど0に近い可能性がある。
【0067】
別の言い方をすれば、同一の所定の温度における原料物質の気化量が大きければ大きいほど、原料物質の温度の利用比率(RML)の値が1に近い可能性があり、その気化量が小さければ小さいほど0に近い可能性がある。
【0068】
いうまでもなく、原料物質の温度の利用比率(RML)は、他の方式を用いて定めてもよい。例えば、気化された原料物質の蒸気圧が温度に敏感な度合いに応じて、温度への敏感度が高くなれば高くなるほど、原料物質の温度の利用比率(RML)が1に近く、温度への敏感度が低くなれば低くなるほど、原料物質の温度の利用比率(RML)の値が0に近くてもよい。このとき、「温度に敏感」とは、温度の変化に応じた蒸気圧の変化の度合いが相対的に大きいことを意味する。
【0069】
本発明の実施形態によれば、金属有機物化学気相蒸着工程の場合、薄膜の蒸着に用いられる原料物質は、その温度の利用比率が0.5超え、かつ、1未満の範囲であってもよく、好ましくは、0.6~0.7の範囲であってもよい。
【0070】
このような原料物質の温度の利用比率(RML)は、実験により求めてもよい。例えば、0超え、かつ、1未満の範囲内においていずれか一つの定数を実験値として選択する。そして、原料物質を用いて蒸着工程を繰り返し行いながら原料物質の温度を測定する。また、原料物質の温度の利用比率の代わりに実験値を計算式に用いて計算温度を算出し、計算温度に加熱部400を加熱する。このような一連の実験を繰り返し行いながら、原料物質の温度の経時変化を観察し、原料物質の温度が設定温度(TSET)に近づく時間を観察する。そして、実験値を変えながら、上述した実験を繰り返し行って原料物質の温度が設定温度(TSET)に近づく時間が最も早い実験値を当該原料物質に対する温度の利用比率(RML)として定める。この後、原料物質の種類ごとに上述した実験を繰り返し行って、原料物質の種類別に温度の利用比率(RML)を求めてもよい。
【0071】
上述した計算式によれば、気化された原料物質がキャニスター100から排出される前に、設定温度(TSET)に等しいか、あるいは、設定温度(TSET)よりも高い温度に原料物質の温度(TML)が保持されていて、気化された原料物質の排出により原料物質の温度(TML)が設定温度(TSET)よりも低くなり、このとき、計算式により計算される計算温度(TC)が設定温度(TSET)よりも高くなる。したがって、制御部は、設定温度(TSET)よりも高い計算温度(TC)に加熱部400を加熱することができる。
【0072】
すなわち、制御部600は、気化された原料物質の排出の際に低くなった原料物質の温度が設定温度に修復されるまで、計算温度を算出して加熱部400の加熱温度を高めることができ、このため、原料物質の温度を速やかに修復させることができる。
【0073】
図2は、本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法の手順図である。
【0074】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法について詳しく説明する。
【0075】
本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法は、制御部600と接続された測定部500を設け、制御部600と接続された加熱部400を設け、内部に原料物質が収容されるキャニスター100の構造において、キャニスター100の内部温度を測定するステップ(S110)と、測定されたキャニスター100の内部温度を制御部600の計算式に適用して計算温度を算出するステップ(S120)と、加熱部400の温度を計算温度に変更するステップ(S130)と、を含む。
【0076】
このとき、本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法は、キャニスター100内の原料物質を気化させ、気化された原料物質を排出するステップをさらに含んでいてもよい。また、本発明の実施形態に係るキャニスターの温度制御方法は、気化された原料物質を排出するステップを行う間に、キャニスター100の内部温度を測定するステップと、内部温度を制御部600の計算式に適用して計算温度を算出するステップと、加熱部400の温度を計算温度に変更するステップと、をこの順に繰り返し行ってもよい。
【0077】
キャニスター100内の原料物質を気化させるステップを行う。
【0078】
まず、供給部300がキャニスター100の内部に液状の原料物質を所定量だけ供給する。この後、加熱部400を設定温度(TSET)に加熱して原料物質を気化させる。このとき、原料物質の気化によりキャニスター100の内部圧力が増加し得、内部圧力の増加につれて原料物質の温度が設定温度(TSET)よりも高い温度になり得る。
【0079】
気化された原料物質を排出するステップを行う。
【0080】
排出部200を開放して、キャニスター100から処理室内の処理空間へと、キャニスター100の内部において気化された原料物質を排出する。
【0081】
このとき、気化された原料物質の排出の初期に、気化された原料物質が急激に排出され得、キャニスター100の内部圧力が急激に低下し得る。このため、キャニスター100の内部において原料物質の気化が急激に行われながら、原料物質の温度が急激に低くなることになる。
【0082】
このような温度の変化は、原料物質の中心部もしくは原料物質の湯面の中心において最も速く、加熱部400に近づけば近づくほど温度の変化が遅く、加熱部400に最も近いキャニスター100の内壁の近傍において温度の変化が最も遅くてもよい。
【0083】
上述した気化された原料物質を排出するステップを行う間に、内部温度を測定するステップと、計算温度を算出するステップと、加熱部400の温度を計算温度に変更するステップと、をこの順に繰り返し行ってもよい。
【0084】
まず、キャニスター100の内部温度を測定するステップ(S110)を行う。
【0085】
測定部500を用いてキャニスター100の内部の原料物質の温度をキャニスター100の内部温度として測定してもよい。このとき、キャニスター100の内部の中心部の近傍において原料物質の温度をキャニスター100の内部温度として測定してもよい。測定された原料物質の温度は、制御部600に出力されてもよい。
【0086】
この後、測定された内部温度を制御部600の計算式に適用して計算温度を算出するステップ(S120)を行い、加熱部400の温度を計算温度に変更するステップ(S130)を行う。
【0087】
計算温度を算出するステップは、原料物質の気化量に対するキャニスターの内部温度と加熱部の温度の重み付け値に基づいて、キャニスターの内部温度についての計算式を導き出すステップを含んでいてもよい。
【0088】
ここで、原料物質の気化量に対するキャニスターの内部温度の重み付け値と、加熱部の温度の重み付け値は、キャニスターの内部温度が変わる度合いと加熱部の温度が変わる度合いとがそれぞれ原料物質の気化量の変化に影響を及ぼす度合いを数値化させたものを意味する。例えば、原料物質の気化量は、キャニスターの内部温度と加熱部の温度に影響を受ける。このとき、キャニスターの内部温度と加熱部の温度とが同一である状態で、キャニスターの内部の温度を変化させたときと加熱部の温度を変化させたときの原料物質の気化量の変化量を対比して、それぞれの重み付け値を求めてもよい。キャニスターの内部の温度を変化させる方式は、様々であってもよい。例えば、キャニスターの内部の圧力を調節したり、温度が調節された原料物質を注入したりするなどの方式を利用してもよい。
【0089】
このとき、原料物質の気化量に対する、キャニスターの内部温度の重み付け値と、加熱部の温度の重み付け値とが互いに異なっていてもよい。具体的には、キャニスターの内部温度の重み付け値の方がさらに高くてもよい。それぞれの重み付け値を求めると、これを活用して利用比率を定めてもよく、利用比率を用いて計算式を導き出し、計算式に測定されたキャニスターの内部温度を代入して計算温度(TC)を算出してもよい。
【0090】
一方、利用比率を定める方式は、様々であってもよい。
【0091】
すなわち、気化された原料物質の排出量に応じて、利用比率(RML)を定めてもよいし、あるいは、原料物質の温度に利用比率(RML)を適用して計算温度(TC)を算出してもよい。
【0092】
気化された原料物質の排出量に応じて、利用比率(RML)を定めることは、例えば、気化された原料物質の排出量が大きければ大きいほど、利用比率(RML)を1に近い値に定め、気化された原料物質の排出量が小さければ小さいほど、利用比率(RML)を0に近い値に定めることにより行われてもよい。ここで、気化された原料物質の排出量は、キャニスター100から処理室への気化された原料物質の定められた供給量を意味することがある。例えば、温度の変化に敏感に反応して気化量の変化が大きな原料物質は、そうではない原料物質に比べて同一の温度において気化された原料物質の排出量の方がさらに大きくてもよい。したがって、チャンバーに供給すべき気化物質の温度が定められると、当該温度において気化量がさらに大きな原料物質を1に近い値に定め、気化量の小さな原料物質を0に近い値に相対的に定めることができる。このような利用比率(RML)は、条件が同じであるキャニスター内に様々な原料物質を用意して様々な温度において気化させながら気化量の測定を繰り返し行う所定の実験を用いて求めてもよい。
【0093】
利用比率を用いて下記の計算式1を導出でき、計算温度は、下記の計算式1から生成してもよい。
【0094】
[計算式1]
TC=(TSET-(TML×RML))/1-RML)…1
【0095】
ここで、TCは計算温度であり、TSETは設定温度であり、TMLは原料物質の温度であり、RMLは、原料物質の温度の利用比率であって、0と1との間の定数である。
【0096】
また、気化された原料物質の排出を行い始めて予め定められた基準時間を過ぎた時点からは、計算温度を前記の計算式1から生成し、気化された原料物質の排出を行い始めた時点から基準時間となる時点までは、前記計算温度を下記の計算式2から生成してもよい。
【0097】
[計算式2]
TC=((TSET+Toffset)-(TML×RML))/1-RML)…2
【0098】
ここで、TCは計算温度であり、TSETは設定温度であり、Toffsetはオフセット温度であり、TMLは原料物質の温度であり、RMLは原料物質の温度の利用比率であって、0と1との間の定数である。
【0099】
例えば、設定温度(TSET)を59℃とし、原料物質の温度の利用比率(RML)を0.6とし、オフセット温度(Toffset)を1℃としたとき、気化された原料物質の排出を行い始めた時点と基準時間となる時点との間の所定の時点(第1の時点)において原料物質の温度(TML)が57℃として測定されれば、上述した計算式2によって計算温度(TC)が64.3℃として計算され得る。このため、制御部600は、加熱部400の温度を59℃から64.3℃へと昇温させ、このため、原料物質の温度(TML)の落ち込みが速やかに補償されることが可能になる。
【0100】
これと同様に、気化された原料物質の排出を行い始めた時点と基準時間となる時点との間でありながら、第1の時点の後の第2の時点において、原料物質の温度(TML)が57.5℃として測定されれば、上述した計算式2によって、計算温度(TC)が63.75℃として計算され得る。このため、制御部600は、加熱部400の温度を64.3℃から63.75℃に調節し、このため、原料物質の温度(TML)がオーバーシュートすることを防ぎながら、原料物質の温度(TML)の落ち込みを速やかに補償することができる。
【0101】
上述したように、原料物質の温度(T
ML)を連続してもしくは周期的に測定しながら、計算式2または計算式1を用いて計算温度(T
C)を計算し、計算温度に加熱部400を加熱して、原料物質の温度を設定温度(T
SET)に速やかに収束することができる。これにより、キャニスター100内の原料物質の温度を設定温度に安定的に保持することができ、気化された原料物質を用いた膜蒸着工程において、膜厚を一定に形成することができる。
図3は、本発明の実施形態の変形例によるキャニスターの温度制御方法を示す手順図である。
【0102】
図1及び
図3を参照すると、本発明の変形例によるキャニスターの温度制御方法は、制御部600と接続された測定部500を設け、制御部600と接続された加熱部400を設け、内部に原料物質を収容するキャニスター100の構造において、キャニスターの内部温度を測定するステップ(S210)と、測定されたキャニスターの内部温度と制御部に入力されたキャニスター設定温度とを比較及び判断するステップ(S220)と、測定されたキャニスターの内部温度を制御部の計算式に適用して計算温度を算出するステップ(S230)と、を含む。すなわち、本発明の変形例によるキャニスターの温度制御方法は、キャニスターの内部温度を測定するステップと計算温度を算出するステップとの間に、測定されたキャニスターの内部温度と制御部に入力されたキャニスター設定温度とを比較及び判断するステップ(S220)をさらに含んでいてもよい。
【0103】
キャニスターの内部温度を測定するステップ(S210)と、計算温度を算出するステップ(S230)は、本発明の実施形態に係る内部温度を測定するステップ(S110)と、計算温度を算出するステップ(S120)と同様であるため、以下ではその説明を省略する。
【0104】
測定されたキャニスターの内部温度と制御部に入力されたキャニスター設定温度とを比較及び判断するステップ(S220)を行う。
【0105】
すなわち、測定部500において測定されたキャニスター100の内部温度と制御部に入力されたキャニスターの設定温度とを比較する。ここで、キャニスターの設定温度は、キャニスター100内の原料物質の気化量が基板に供給すべき気化された原料物質の供給量を追随するように設定された加熱部の基準温度と同一の温度であってもよい。すなわち、キャニスターの設定温度は、本発明の実施形態において説明する設定温度(TSET)に対応するものであってもよい。
【0106】
比較の結果、両温度が同一であれば、計算温度を算出するステップ(S230)を行わずに、キャニスターの内部温度を測定するステップ(S210)に戻ってもよい。比較の結果、両温度が互いに異なると、計算温度を算出するステップ(S230)を行い、次いで、加熱部の温度を前記計算温度に変更するステップを行ってもよい。
【0107】
一方、キャニスターの内部温度を測定するステップ(S210)において測定されたキャニスターの内部温度と制御部に入力されたキャニスターの設定温度とを比較及び判断するステップ(S220)を行う間に、キャニスターの内部において気化された原料物質をチャンバーに供給してもよいし、あるいは、そうしなくてもよい。
【0108】
図4は、本発明の実施形態に係る原料供給方法を用いて原料を供給し、原料の温度を測定した結果を比較例と対比して示すグラフである。
【0109】
本発明の実施形態に係る原料供給装置を用いて膜蒸着工程を行いながら原料物質を供給し、このときのキャニスター内の原料物質の温度の変化をグラフにて示す。
【0110】
同様に、本発明の比較例による原料供給装置を適用して膜蒸着工程を行いながら原料物質を供給し、このときのキャニスター内の原料物質の温度の変化をグラフにて示す。
【0111】
ここで、比較例による原料供給装置の測定部は、キャニスターの内部温度の代わりにキャニスターの側壁の温度を測定し、制御部は、測定部において測定されたキャニスターの側壁の温度と予め設定された設定温度との差分値に見合う分だけ加熱部の温度を昇温もしくは冷却させる方式により加熱部の温度を制御している。
【0112】
ここで、
図3のグラフのX軸は、気化された原料物質の排出時間を示す軸であり、単位は秒である。
図3のグラフのY軸は、原料物質の温度を示す軸であり、単位は摂氏温度(℃)である。ここで、実施例と比較例の設定温度は、それぞれ59℃を例示する。
【0113】
図4のAは、比較例による膜蒸着工程におけるキャニスター内の原料物質の温度の経時変化を示している。
図4のB及びCは、実施例による膜蒸着工程におけるキャニスター内の原料物質の温度の経時変化を示している。このとき、
図4のCは、気化された原料物質の排出時間を排出の初期とそれ以降の区間とに区分けして排出の初期の計算式にオフセット温度を適用した場合である。
【0114】
比較例(A)は、実施例(B、C)に比べて、原料物質の温度が設定温度に修復されるのにかかる時間が長びくことと、原料物質の温度が設定温度以上にオーバーシュートすることを確認することができる。
【0115】
これに対し、実施例を参照すると、比較例よりも原料物質の温度が設定温度まで速やかに修復されることと、オーバーシュートが抑えられ、設定温度に安定的に保持されることを確認することができる。
【0116】
このことから、本発明の実施形態によれば、温度の変化に敏感なキャニスターの内部温度をそのまま用いることなく、計算温度を算出して加熱部の加熱に活用することにより、キャニスターの内部温度のオーバーシュートを防ぎながら、キャニスターの内部温度を設定温度に速やかに修復させることができるということを確認することができる。
【0117】
本発明の上記の実施形態は本発明の説明のためのものであり、本発明の制限のためのものではない。本発明の上記の実施形態に開示されている構成と方式は、互いに結合したり交差したりして種々の形態に変形される筈であり、これによる変形例もまた、本発明の範ちゅうに収まるものとみなせるということに留意すべきである。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及びこれと均等な技術的思想の範囲内において互いに異なる種々の形態に具体化される筈であり、本発明が該当する技術分野における業者は、本発明の技術的思想の範囲内において種々の実施例が可能であるということが理解できる筈である。
【符号の説明】
【0118】
100:キャニスター
200:排出部
300:供給部
400:加熱部
500:測定部
600:制御部
【国際調査報告】