(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】タンブル乾燥用の繊維物品
(51)【国際特許分類】
D06M 13/00 20060101AFI20240621BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20240621BHJP
D06M 13/148 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
D06M13/00
C11B9/00 J
C11B9/00 L
C11B9/00 N
D06M13/148
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579723
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2022067747
(87)【国際公開番号】W WO2023275056
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル コーツ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ナブ
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB04
4L033AC15
4L033BA12
(57)【要約】
本発明は、タンブル乾燥に使用できる香料前駆体化合物を含む繊維物品に関する。本発明は、さらに、繊維物品を作製するための方法、ならびにタンブル乾燥中の衣服の香気印象および/または香気強度を改善、増強、付与、および/または改質するための繊維物品の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料前駆体化合物を含む繊維物品であって、
前記香料前駆体化合物が、式
【化1】
[式中、
a)wは1~10000の整数を表し、
b)nは1または0を表し、
c)mは1~6の整数を表し、
d)Pは、水素原子、または発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒド、もしくはカルボン酸エステルを生成しやすいラジカルを表し、式
【化2】
によって表され、
式中、波線は前記PとXとの間の結合の位置を示し、
R
1は、水素原子、C
1~C
6アルコキシルラジカル、または1~4個のC
1~C
4アルキル基によって任意選択で置換されるC
1~C
15の直鎖、環状、もしくは分岐状アルキル、アルケニル、もしくはアルカジエニルラジカルを表し、
R
2、R
3、およびR
4は、互いに独立して、水素原子、芳香環、もしくは場合によりC
1~C
4アルキル基によって置換されるC
1~C
15の直鎖、環状、もしくは分岐状アルキル、アルケニル、もしくはアルカジエニルラジカルを表すか、または基R
1~R
4の2つもしくは3つが共に結合して、5~20個の炭素原子を有し、含まれる前記炭素原子に前記R
1、R
2、R
3、もしくはR
4基が結合している飽和もしくは不飽和の環を形成し、この環が、場合によりC
1~C
8の直鎖、分岐状、もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基によって置換され、ただし、P基の少なくとも1つが、先に定義された式(II)のものであり、
e)Xは、互いに独立して、式i)~xiv):
【化3】
からなる群から選択される官能基を表し、
式中、波線は先に定義したとおりであり、太線は前記XとGとの間の結合の位置を示し、R
5は、水素原子、C
1~C
22の飽和または不飽和アルキル基またはアリール基を表し、場合によりC
1~C
6のアルキル基もしくはアルコキシル基またはハロゲン原子によって置換されるが、ただし、Pが水素原子を表す場合には、Xは存在しなくてもよく、
f)Gは、1~22個の炭素原子を有する環状、直鎖、脂環式、または分岐状のアルキル、環状、直鎖、脂環式、または分岐状のアルケニル、フェニル、アルキルフェニル、またはアルケニルフェニル炭化水素ラジカルから誘導される多価ラジカル(m+1価を有する)を表し、前記炭化水素ラジカルは場合により置換され、ハロゲン、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、チオール、チオエーテル、アミン、第四級アミン、およびアミドからなる群から選択される1~10個の官能基を含有し、
g)Qは、水素原子を表すか(この場合、w=1およびn=1)、あるいはポリ(アルキルイミン)からなる群から選択されるポリマーもしくはコポリマー、ペプチド(例えばリシン)、またはセルロース、シクロデキストリン、およびデンプンからなる群から選択される多糖、またはカチオン性四級化シリコンポリマー、またはさらに、式A-1)、A-2)、A-3)、B-1)、B-2)、C-1)、C-2)、およびC-3):
【化4】
からなる群から選択されるモノマー単位から誘導されるポリマーもしくはランダムコポリマーを表し、
式中、破線は、前記モノマー単位とGとの間の結合の位置を示し、
Yは、酸素もしくは硫黄原子、またはNR
7基を表し、
o、p、q、r、s、t、u、およびvは全て、互いに独立して、0と1との間の分数を表し、o+p+q=1、r+s=1、かつt+u+v=1であるが、ただし、oまたはpのいずれか、ならびにrおよびtは、0に等しくなく、
R
6は、水素原子、またはグリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、メチオニン、グルタミン、アスパラギン、トレオニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、もしくはトリプトファンなどの天然もしくは非天然アミノ酸に由来する側鎖を表し、
R
7は、同時にまたは独立して、水素原子またはC
1~C
16炭化水素基を表し、
R
8は、同時にまたは互いに独立して、
- 水素もしくはハロゲン化物原子;
- 酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を任意選択で含むC
1~C
6炭化水素基;
- R
*が水素原子、任意選択で1~30個の酸素原子を含むC
1~C
60のアルキル基もしくはアルケニル基を表す、式COOR
*のカルボン酸基;
- OR
7基もしくはCOR
7基;または
- 窒素原子で連結されたピロリドン単位
を表し、
Mは水素原子、アルカリ、またはアルカリ土類金属イオンを表す]
の化合物である、繊維物品。
【請求項2】
式(I)の前記香料前駆体化合物が、
- w=1;n=1;m=1;
- Pが、発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒドを生成しやすいラジカルを表し、式
【化5】
[式中、R
1は、請求項1で定義されるものと同じ意味を有し、R
2、R
3、およびR
4は、互いに独立して、水素原子、C
6~C
10芳香環、もしくは場合によりC
1~C
4アルキル基によって置換されるC
1~C
15の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキル、アルケニル、もしくはアルカジエニルラジカルを表すか、または基R
1~R
4の2つもしくは3つが共に結合して、5~20個の炭素原子を有し、含まれる前記炭素原子に前記R
1、R
2、R
3、もしくはR
4基が結合している飽和もしくは不飽和の環を形成し、この環が、場合によりC
1~C
8の直鎖、分岐状、もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基によって置換される]
によって表され、
- Xは、式ii)を表し、
- Gは、2~8個の炭素原子を有し、任意選択で1~2個の酸素原子、硫黄原子、および/または窒素原子を含む環状、直鎖、または分岐状のアルキル、アルケニル、フェニル、アルキルフェニル、またはアルケニルフェニル炭化水素ラジカルから誘導される二価のラジカルを表し、
- Qは、式B-1)[式中、R
7は、C
1~C
16炭化水素基を表す]から誘導されるポリマーまたはランダムコポリマーを表す
ことを特徴とする、請求項1記載の繊維物品。
【請求項3】
前記香料前駆体化合物が、式a)~d):
【化6】
[式中、Rは、C
1~C
20のアルキル基またはアルケニル基を表す]
からなる群から選択されるか、
または前記香料前駆体化合物が、式
【化7】
[式中、二重破線は別の繰返し単位への結合を示す]
の少なくとも1つの繰返し単位を含む直鎖ポリシロキサンコポリマーである、
請求項1または2記載の繊維物品。
【請求項4】
前記香料前駆体化合物が、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン、2-(ドデシルチオ)-4-オクタノン、2-(ドデシルスルホニル)オクタン-4-オン、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-1-オン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オン、および4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン、4-(ドデシルチオ)-4-メチルペンタン-2-オン、N,S-ビス(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)-L-システイン酸メチルもしくはエチル、S-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)-L-システイン酸メチルもしくはエチル、4-オキソオクタン-2-イルドデカノエート、またはそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の繊維物品。
【請求項5】
前記香料前駆体化合物がカプセル化されない、請求項1から4までのいずれか1項記載の繊維物品。
【請求項6】
前記繊維物品が、繊維支持体層および非繊維コーティング層を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の繊維物品。
【請求項7】
前記香料前駆体化合物が、前記繊維支持体層および/または前記非繊維コーティング層、好ましくは前記非繊維コーティング層に存在する、請求項6記載の繊維物品。
【請求項8】
前記物品が、前記物品の総重量を基準として、0.000086~1.875重量%、好ましくは0.001~0.375重量%、より好ましくは0.0172~0.1875重量%の量で前記香料前駆体化合物を含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の繊維物品。
【請求項9】
前記繊維物品が、
i)香料担体および香料基剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分;ならびに
ii)任意選択で少なくとも1種の香料補助剤
を含む賦香組成物をさらに含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の繊維物品。
【請求項10】
前記賦香組成物が、非繊維コーティング層に存在する、請求項9記載の繊維物品。
【請求項11】
前記繊維物品がタンブル乾燥機用シート、乾燥機用ボール、乾燥機用サシェ、またはワイプ、好ましくはタンブル乾燥機用シートである、請求項1から10までのいずれか1項記載の繊維物品。
【請求項12】
前記繊維物品が、帯電防止剤、移染防止剤、増白剤、酵素、防汚剤、しわ軽減剤、および柔軟仕上剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の繊維物品。
【請求項13】
有効量の式(I)による香料前駆体化合物を繊維物品に添加するステップを含む、請求項1から12までのいずれか1項に定義される繊維物品を作製するための方法。
【請求項14】
タンブル乾燥中の衣服の香気印象および/または香気強度を改善、増強、付与、および/または改質するための、請求項1から12までのいずれか1項に定義される繊維物品の使用。
【請求項15】
タンブル乾燥中に請求項1から12までのいずれか1項に定義される繊維物品を衣服に添加するステップを含む、衣服の香気印象および/または香気強度を改善、増強、付与、および/または改質するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンブル乾燥に使用できる香料前駆体化合物を含む繊維物品に関する。本発明は、さらに、繊維物品を作製するための方法、ならびにタンブル乾燥中の衣服の香気印象および/または香気強度を改善、増強、付与、および/または改質するための繊維物品の使用に関する。
【0002】
発明の背景
ランドリーケア業界で周知の商品が乾燥機用シートである。消費者は、使用の際、通常、洗濯工程のうちの乾燥サイクルで少なくとも1枚のシートを使用する。乾燥機用シートは一般に繊維を基材とし、その繊維材料は、タンブル乾燥工程中に衣類にとって望ましい有益性を与えるような1種以上の成分を保持している。こうした成分は、例えば、香料、帯電防止剤、移染防止剤、増白剤、酵素、防汚剤、しわ軽減剤、柔軟仕上剤などであり得る。
【0003】
乾燥機用シートがタンブル乾燥工程中に可能な限り持続する高強度の心地よい香気印象を衣類に与えること、すなわち、心地よい香気印象がタンブル乾燥工程後にも可能な限り長時間持続すべきものであることは、顧客満足度にとって重要な要素のひとつである。
【0004】
この目標が難題である理由は、タンブル乾燥工程中には高温になると同時に機械的撹拌が生じ、多くの香料化合物の安定性および存続時間に顕著な影響を及ぼすためである。それゆえ、タンブル乾燥工程直後には、洗濯物の心地よい香気印象を知覚できるが、上記の効果は十分に強くないか、長続きしない、またはその両方の可能性がある。
【0005】
上述の目的に対処する方法のひとつが、香料化合物を担体材料内にカプセル化した後、香料化合物を乾燥機用シートに組み込むことである。カプセル化形態では、香料化合物がタンブル乾燥中に加えられるかなり過酷な条件に耐えることができ、タンブル乾燥中に衣類に付着したカプセル化香料がすぐには放出されず、むしろ連続して放出され得ることで、香気の知覚が延長され、数日後、さらには数か月後も引き続き香気を知覚できる場合が多い。しかしながら、賦香成分のカプセル化には労力と費用がかかる場合がある。
【0006】
そのため、タンブル乾燥工程中に衣類に与えられる香気印象を改善し、延長させるための他の解決策が所望されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】無香料の乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルと、香料入り乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルの総合的な香気強度を示す図である。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、香料前駆体化合物を含む繊維物品であって、
香料前駆体化合物は、式
【化1】
[式中、
a)wは1~10000の整数を表し、
b)nは1または0を表し、
c)mは1~6の整数を表し、
d)Pは、水素原子、または発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒド、もしくはカルボン酸エステルを生成しやすいラジカルを表し、式
【化2】
によって表され、
式中、波線は上記PとXとの間の結合の位置を示し、
R
1は、水素原子、C
1~C
6アルコキシルラジカル、または1~4個のC
1~C
4アルキル基によって任意選択で置換されるC
1~C
15の直鎖、環状、もしくは分岐状アルキル、アルケニル、もしくはアルカジエニルラジカルを表し、
R
2、R
3、およびR
4は、互いに独立して、水素原子、芳香環、もしくは場合によりC
1~C
4アルキル基によって置換されるC
1~C
15の直鎖、環状、もしくは分岐状アルキル、アルケニル、もしくはアルカジエニルラジカルを表すか、または基R
1~R
4の2つもしくは3つが共に結合して、5~20個の炭素原子を有し、含まれる炭素原子に上記R
1、R
2、R
3、もしくはR
4基が結合している飽和もしくは不飽和の環を形成し、この環が、場合によりC
1~C
8の直鎖、分岐状、もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基によって置換され、ただし、P基の少なくとも1つが、先に定義された式(II)のものであり、
e)Xは、互いに独立して、式i)~xiv):
【化3】
からなる群から選択される官能基を表し、
式中、波線は先に定義したとおりであり、太線は上記XとGとの間の結合の位置を示し、R
5は、水素原子、C
1~C
22の飽和または不飽和アルキル基またはアリール基を表し、場合によりC
1~C
6のアルキル基もしくはアルコキシル基またはハロゲン原子によって置換されるが、ただし、Pが水素原子を表す場合には、Xは存在しなくてもよく、
f)Gは、1~22個の炭素原子を有する環状、直鎖、脂環式、または分岐状のアルキル、環状、直鎖、脂環式、または分岐状のアルケニル、フェニル、アルキルフェニル、またはアルケニルフェニル炭化水素ラジカルから誘導される多価ラジカル(m+1価を有する)を表し、上記炭化水素ラジカルは場合により置換され、ハロゲン、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、チオール、チオエーテル、アミン、第四級アミン、およびアミドからなる群から選択される1~10個の官能基を含有し、
g)Qは、水素原子を表すか(この場合、w=1およびn=1)、あるいはポリ(アルキルイミン)からなる群から選択されるポリマーもしくはコポリマー、ペプチド(例えばリシン)、またはセルロース、シクロデキストリン、およびデンプンからなる群から選択される多糖、またはカチオン性四級化シリコンポリマー、またはさらに、式A-1)、A-2)、A-3)、B-1)、B-2)、C-1)、C-2)、およびC-3):
【化4】
からなる群から選択されるモノマー単位から誘導されるポリマーもしくはランダムコポリマーを表し、
式中、破線は、上記モノマー単位とGとの間の結合の位置を示し、
Yは、酸素もしくは硫黄原子、またはNR
7基を表し、
o、p、q、r、s、t、u、およびvは全て、互いに独立して、0と1との間の分数を表し、o+p+q=1、r+s=1、かつt+u+v=1であるが、ただし、oまたはpのいずれか、ならびにrおよびtは、0に等しくなく、
R
6は、水素原子、またはグリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、メチオニン、グルタミン、アスパラギン、トレオニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、もしくはトリプトファンなどの天然もしくは非天然アミノ酸に由来する側鎖を表し、
R
7は、同時にまたは独立して、水素原子またはC
1~C
16炭化水素基を表し、
R
8は、同時にまたは互いに独立して、
- 水素もしくはハロゲン化物原子;
- 酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を任意選択で含むC
1~C
6炭化水素基;
- R
*が水素原子、任意選択で1~30個の酸素原子を含むC
1~C
60のアルキル基もしくはアルケニル基を表す、式COOR
*のカルボン酸基;
- OR
7基もしくはCOR
7基;または
- 窒素原子で連結されたピロリドン単位
を表し、
Mは水素原子、アルカリ、またはアルカリ土類金属イオンを表す]
の化合物である、繊維物品に関する。
【0009】
本発明は、式(I)による香料前駆体化合物を含む繊維物品に関する。
【0010】
特定の実施形態では、繊維物品はタンブル乾燥に好適である。
【0011】
特定の実施形態では、繊維物品はタンブル乾燥機用シート、乾燥機用ボール、乾燥機用サシェ、またはワイプである。好ましくは、繊維物品は、タンブル乾燥機用シートである。
【0012】
特定の実施形態では、繊維物品は、繊維支持体層および非繊維コーティング層を含む。
【0013】
繊維支持体層は、繊維物品の基本構造を表し、織布および/または不織布を含み、好ましくはそれらからなる。
【0014】
好ましくは、繊維支持体層は不織布を含み、好ましくは不織布からなる。不織布は、ウェブ繊維構造またはカーディング繊維構造(繊維強度がカーディングに適している場合)を有する接着した繊維状製品またはフィラメント状製品を含むことも、あるいは、繊維またはフィラメントが無作為にまたはランダムな配列で分布している(すなわち、繊維の部分的な配向が頻繁に存在するカーディングウェブ内の繊維の配列、および完全に無作為の分布配向)か、または実質的に整列している繊維状マットを含むこともある。繊維またはフィラメントは、天然のもの(例えば、羊毛、絹、ジュート、ヘンプ、綿、リネン、サイザル、またはラミー)であっても、合成されたもの(例えば、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体、ポリオレフィン、ポリアミド、またはポリエステル)であってもよい。不織布繊維支持体層は、当業者によって容易に選択される任意の方法によって製造することができる。例としては、米国特許第5,246,603号明細書に開示される方法が挙げられる。
【0015】
繊維支持体層は、例えば、吸収性、引張強度、厚さなどのような、望ましい物理的特性が得られるように構成することができる。例えば、望ましい吸収性は、繊維支持体層の厚さを増やすこと、すなわち必要な吸収特性を得るのに十分な厚さになるまで複数のカーディングウェブまたはマットを積層することによって、または十分な厚さの繊維をスクリーン上に堆積させることによって達成することができる。
【0016】
非繊維コーティング層は、繊維支持体層の表面の少なくとも一部を覆う、好ましくは繊維支持体層の表面全体を覆うコーティングを表す。非繊維コーティング層は繊維を基材としない、すなわち、織布および/または不織布を含まない。
【0017】
好ましくは、コーティング層の重量は、繊維物品の総重量に対して43~75重量%に相当する。
【0018】
特定の実施形態では、非繊維コーティング層は柔軟剤を含む。好ましくは、柔軟剤は、メチルビス[エチル(タローエート)]-2-ヒドロキシエチルアンモニウムメチルスルファートである。
【0019】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、繊維支持体層および/または非繊維コーティング層に存在する。
【0020】
好ましくは、式(I)による香料前駆体化合物は、少なくとも非繊維コーティング層に存在し、より好ましくは式(I)による香料前駆体化合物はコーティング層にのみ存在する。それにより、式(I)による香料前駆体化合物は、非繊維コーティング層の表面および/または当該コーティング層内に存在してもよく、すなわち、香料前駆体化合物はコーティング層内に組み込まれていてもよい。
【0021】
この点に関して、香料前駆体化合物をコーティング層の上に噴霧すると、香料前駆体化合物がコーティング層の表面に存在する状態を達成することができる。
【0022】
さらに、例えば、溶融状態で香料前駆体化合物をコーティング層に添加した後、繊維支持体層にコーティング層を塗布することで、香料前駆体化合物をコーティング層内に組み込むことができる。
【0023】
本発明によれば、繊維物品は、式(I)による香料前駆体化合物を含む。
【0024】
香料前駆体またはプロフレグランスとは、外部の影響を受けると、PRM(香料原料)とも称される1つ、2つ、またはそれ以上の香料化合物を、PRMの賦香効果を持続させる方法で放出できる化合物である。1つ以上の香料化合物の放出は、香料前駆体化合物の化学結合の切断に依拠する。
【0025】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、1つ、2つ、または3つの香料化合物を放出する。好ましくは、式(I)の香料前駆体化合物は、1つの香料化合物を放出する。
【0026】
「香料化合物」または「香料原料」とは、快楽効果を付与するために賦香調製物または賦香組成物に有効成分として使用される、すなわち、心地よい芳香を付与または調整することを主目的に使用される化合物である。換言すれば、賦香成分であるとみなされる化合物は、単に芳香を有するだけではなく、組成物の芳香を肯定的なまたは心地よい形で付与または改質できるものとして香料技術分野の当業者によって認識されているものでなければならない。
【0027】
式(I)による香料前駆体化合物からの香料化合物の放出を誘発する外部の影響は、光、空気(周囲空気)/酸素、熱、湿気、または酵素への曝露であり得る。
【0028】
「光」とは、あらゆる形態の電磁放射線を意味し、いずれかの特定の波長に限定されるものではない。香料前駆体化合物からのPRMの放出は、通常、波長が短い(エネルギー入力が大きい)ほど効果が高い。
【0029】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、光に曝露すると香料化合物を放出する。
【0030】
明確にするために、「周囲空気」または同様の表現は、当業者によって理解されている通常の意味を意味し、すなわち、酸化は室温で空気中かつ大気圧下で生じる。換言すると、化合物が酸化される環境は、空気である。したがって、香料前駆体は、周囲空気中で酸化されるものと理解される。特に、香料前駆体は、酸化させるために、必ずしも純粋酸素環境、熱、または触媒を必要としないものと理解される。
【0031】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、空気(周囲空気)/酸素への曝露によって香料化合物を放出する。
【0032】
「熱」とは、温度の上昇によって引き起こされるあらゆるエネルギー入力を意味する。加えられる温度は、特定の温度範囲に限定されず、むしろ個々の香料前駆体によって決まる。適切な温度を決定することは、当業者の知識の範囲内である。
【0033】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、熱への曝露によって香料化合物を放出する。
【0034】
香料前駆体化合物からのPRMの放出を誘発する外部の影響はまた、湿気への曝露に依拠する場合もある。これには、香料前駆体化合物が、水で誘発される切断を受けやすい化学結合を示す必要がある。水で誘発される切断を受けやすい化学結合を有する香料前駆体化合物を特定することは、当業者の知識の範囲内である。
【0035】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、湿気への曝露によって香料化合物を放出する。
【0036】
香料前駆体化合物からのPRMの放出を誘発する外部の影響はまた、1種以上の酵素への曝露に依拠する場合もある。これには、香料前駆体化合物が、酵素の存在で効率的に切断できる化学結合を示す必要がある。特定の種類の酵素によってどの化学結合を効果的に切断できるかを決定することは、当業者の知識の範囲内である。
【0037】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、1種以上の酵素への曝露によって香料化合物を放出する。
【0038】
特定の実施形態では、香料前駆体化合物は、上述の外部の影響うちの1種類だけに依拠せず、上述の外部の影響のうちの2つ以上に、同時にまたは互いに独立して依拠し、香料原料の放出を促す。ただし、どの香料前駆体化合物にも、通常、理論的に想定され得る別の種類と比較して、特に効率的であるかまたは優れている1種類または2種類の放出メカニズムが存在する。既存の香料前駆体についての主たる種類の放出メカニズムを決定することは、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0039】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物を含む繊維物品は、空気(周囲空気)/酸素および湿気への曝露によって香料化合物を放出する。
【0040】
特定の実施形態では、繊維物品は、式(I)による香料前駆体化合物以外に、少なくとも1種の更なる香料前駆体化合物を含む。したがって、繊維物品は、式(I)による香料前駆体化合物以外に、1種、2種、3種、4種、5種、またはそれ以上の更なる香料前駆体化合物を含んでもよい。1種以上の更なる香料前駆体化合物は、式(I)に該当する香料前駆体化合物でもあり得る。更なる香料前駆体化合物は、式(I)による香料前駆体化合物と同じ放出メカニズムによって、または別の放出メカニズムによってPRMを放出することができる。放出メカニズム下では、外部の影響が、上記に示す香料前駆体化合物からのPRMの放出を誘発するものと理解される。好ましくは、少なくとも1種の更なる香料前駆体化合物は、2-フェニルエチルオキソ(フェニル)アセテート、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イルオキソ(フェニル)アセテート、(Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルオキソ(フェニル)アセテート、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-イルヘキサデカノエート、ビス(3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イル)スクシネート、(2E,6Z)-2,6-ノナジエニルヘキサデカノエート、(2E,6Z)-2,6-ノナジエン-1-イルテトラデカノエート、(2E,6Z)-2,6-ノナジエン-1-イルドデカノエート、(2-((2-メチルウンデカ-1-エン-1-イル)オキシ)エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(3-メチル-4-フェネトキシブタ-3-エン-1-イル)ベンゼン、(3-メチル-4-フェネトキシブタ-3-エン-1-イル)ベンゼン、1-(((Z)-ヘキサ-3-エン-1-イル)オキシ)-2-メチルウンデカ-1-エン、(2-((2-メチルウンデカ-1-エン-1-イル)オキシ)エトキシ)ベンゼン、2-メチル-1-(オクタン-3-イルオキシ)ウンデカ-1-エン、1-メトキシ-4-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、1-メチル-4-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、2-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ナフタレン、(2-フェネトキシビニル)ベンゼン、2-(1-((3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イル)オキシ)プロパ-1-エン-2-イル)ナフタレン、(2-((2-ペンチルシクロペンチリデン)メトキシ)エチル)ベンゼン、4-アリル-2-メトキシ-1-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)ベンゼン、(2-((2-ヘプチルシクロペンチリデン)メトキシ)エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(1-フェネトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、(2-((2-メチル-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタ-1-エン-1-イル)オキシ)エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(2-メチル-3-フェネトキシアリル)ベンゼン、(2-((2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシリデン)メトキシ)エチル)ベンゼン、1-イソプロピル-4-メチル-2-((2-ペンチルシクロペンチリデン)メトキシ)ベンゼン、2-メトキシ-1-((2-ペンチルシクロペンチリデン)メトキシ)-4-プロピルベンゼン、2-エトキシ-1-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)-4-メチルベンゼン、3-メトキシ-4-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)ベンズアルデヒド、1-イソプロピル-2-((2-メトキシ-2-フェニルビニル)オキシ)-4-メチルベンゼン、4-((2-(ヘキシルオキシ)-2-フェニルビニル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
特定の実施形態では、Xは、式ii)、iii)、viii)、ix)、およびxiv)からなる群から選択される官能基を表す。特定の実施形態では、Xは、式ii)の官能基を表す。
【0042】
Pの定義に使用される表現である「発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒド、もしくはカルボン酸エステル」に関して、この表現は、賦香成分として香料に使用されると当業者に認識されているα,β-不飽和ケトン、アルデヒド、またはカルボン酸エステルであると理解される。一般に、上記の発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒド、またはカルボン酸エステルは、8~20個の炭素原子、またはさらにより好ましくは10~15個の炭素原子を有する化合物である。
【0043】
同様に、先に定義される式(I)の香料前駆体化合物の合成に使用し、その後、放出することができる現在公知である発香性化合物の網羅的な一覧を示すことは不可能である。しかしながら、好ましい例として:アルファ-ダマスコン、ベータ-ダマスコン、ガンマ-ダマスコン、デルタ-ダマスコン、アルファ-イオノン、ベータ-イオノン、ガンマ-イオノン、デルタ-イオノン、ベータ-ダマセノン、2-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン、1-[6-エチル-2,6-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル]-2-ブテン-1-オン、3-メチル-5-プロピル-2-シクロヘキセン-1-オン、2-メチル-5-(1-プロペン-2-イル)-2-シクロヘキセン-1-オン、2,5-ジメチル-5-フェニル-1-ヘキセン-3-オン、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール、8-メチル-アルファ-イオノンまたは10-メチル-アルファ-イオノン、2-オクテナール、1-(2,2,3,6-テトラメチルシクロヘキシル)ブタ-2-エン-1-オン、4-(2,2,3,6-テトラメチルシクロヘキシル)ブタ-3-エン-2-オン、2-シクロペンタデセン-1-オン、4,4a-ジメチル-6-(1-プロペン-2-イル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-2(3H)-ナフタレノン、(E)-3-フェニルプロパ-2-エナール(ケイ皮アルデヒド)、2,6,6-トリメチルスピロ[ビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3,1’-シクロヘキサン]-2’-エン-4’-オン、2,4-デカ-ジエン酸エチル、2-オクテン酸エチル、2-ノネン酸メチル、2,4-ウンデカジエン酸エチル、4-メチルペンタ-3-エン-2-オン、オクタ-2-エン-4-オン、および5,9-ジメチル-2,4,8-デカトリエン酸メチルを挙げることができる。
【0044】
特定の実施形態では、Pは、式(P-1)~(P-14):
【化5】
[式中、波線は、上記に示す意味を有し、点線は、単結合または二重結合を表し、R
aは、水素原子またはメチル基であり、R
bは、水素原子、ヒドロキシルもしくはメトキシ基、またはC
1~C
4の直鎖もしくは分岐状アルキル基を表し、R
cは、水素原子、またはC
1~C
4の直鎖もしくは分岐状アルキル基を表す]
からなる群から選択される、その異性体のいずれか1つの形態であるラジカルを表す。
【0045】
特定の実施形態では、Pは、式:
【化6】
[式中、波線は、上記に示す意味を有し、点線は、単結合または二重結合を表し、R
aは、水素原子またはメチル基である]
からなる群から選択されるラジカルを表す。
【0046】
特定の実施形態では、Pは、上記に定義される式(P-1)、(P-2)、(P-1)’、(P-2)’、(P-3)、(P-7)、(P-13)、(P-14)、または(P-14)’からなる群から選択されるラジカルを表す。好ましくは、Pは、上記に定義される式(P-1)、(P-1)’、(P-2)、(P-2)’、(P-3)、または(P-14)’からなる群から選択されるラジカルを表す。
【0047】
特定の実施形態では、Gは、1~22個の炭素原子を有する二価の環状、直鎖、脂環式、または分岐状のアルキル、アルケニル、アルカンジエニル、またはアルキルベンゼン炭化水素ラジカルを表してもよく、上記炭化水素ラジカルは場合により置換され、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、チオール、チオエーテル、アミン、第四級アミン、およびアミドからなる群から選択される1~10個の官能基を含有する。
【0048】
特定の実施形態では、Gは、1~22個の炭素原子を有する二価の直鎖または分岐状のアルキルまたはアルケニル炭化水素ラジカルを表し、上記炭化水素ラジカルは場合により置換され、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、チオール、チオエーテル、アミン、第四級アミン、およびアミドからなる群から選択される1~5個の官能基を含有する。
【0049】
特定の実施形態では、Gは、2~15個の炭素原子を有する二価の直鎖または分岐状のアルキルまたはアルケニル炭化水素ラジカルを表し、上記炭化水素ラジカルは場合により置換され、エーテルおよびエステルからなる群から選択される1~2個の官能基を含有する。
【0050】
特定の実施形態では、Gは、3~15個の炭素原子を有する二価の直鎖アルキルまたはアルケニル炭化水素ラジカルを表し、上記炭化水素ラジカルは場合により置換され、1個のエステル官能基を含有する。
【0051】
特定の実施形態では、Gは、3~14個の炭素原子を有する二価の直鎖アルキル炭化水素ラジカルを表す。
【0052】
特定の実施形態では、Qは、水素原子、または上記に定義される式B-1の少なくとも1つの繰返し単位を含むコポリマーを表す。
【0053】
特定の実施形態では、Qは、水素原子、または少なくとも1つの式B-1の繰返し単位と少なくとも1つの式B-2の繰返し単位とを含むコポリマーを表す。
【0054】
特定の実施形態では、R7は、同時にまたは独立して、水素原子またはC1-3アルキル基を表す。好ましくは、R7は、同時にまたは独立して、水素原子またはメチル基もしくはエチル基を表す。より好ましくは、R7は、同時にまたは独立して、水素原子またはメチル基を表す。
【0055】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、
- w=1;n=1;m=1;
- Pが、発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒドを生成しやすいラジカルを表し、式
【化7】
[式中、R
2、R
3、およびR
4は、互いに独立して、水素原子、C
6~C
10芳香環、もしくは場合によりC
1~C
4アルキル基によって置換されるC
1~C
15の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキル、アルケニル、もしくはアルカジエニルラジカルを表すか、または基R
1~R
4の2つもしくは3つが共に結合して、5~20個の炭素原子を有し、含まれる炭素原子に上記R
1、R
2、R
3、もしくはR
4基が結合している飽和もしくは不飽和の環を形成し、この環が、場合によりC
1~C
8の直鎖、分岐状、もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基によって置換される]
によって表され;
- Xは、式ii)を表し、
- Gは、2~8個の炭素原子を有し、任意選択で1~2個の酸素原子、硫黄原子、および/または窒素原子を含む環状、直鎖、または分岐状のアルキル、アルケニル、フェニル、アルキルフェニル、またはアルケニルフェニル炭化水素ラジカルから誘導される二価のラジカルを表し、
- Qは、式B-1)[式中、R
7は、C
1~C
16炭化水素基を表す]から誘導されるポリマーまたはランダムコポリマーを表す
ことを特徴とする。
【0056】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、式
【化8】
[式中、二重破線は別の繰返し単位への結合を示す]
の少なくとも1つの繰返し単位を含む直鎖ポリシロキサンコポリマーである。
【0057】
式(III)の香料前駆体は、カルボンとしても公知である2-メチル-5-(プロパ-1-エン-2-イル)シクロヘキサ-2-エン-1-オンを香料化合物として放出する。カルボンは2つのエナンチオマー、すなわち(R)-(-)-2-メチル-5-(1-プロペン-2-イル)-2-シクロヘキセン-1-オン(L-カルボンまたは左旋性カルボン)および(S)-(+)-2-メチル-5-(1-プロペン-2-イル)-2-シクロヘキセン-1-オン(D-カルボンまたは右旋性カルボン)の形態で存在する。この2つのエナンチオマーは、わずかに異なるミント香調を有することが報告されている。それにもかかわらず、本発明によれば、いずれのエナンチオマーでも、コポリマーの調製および放出効率の観点で類似した効果を有することが期待される。本発明によれば、カルボンは、ラセミ体として、または2つのエナンチオマーの一方が富む混合物として使用することができる。好ましくは、左旋性カルボンが富む混合物を使用する。
【0058】
特定の実施形態では、香料前駆体化合物は、式(IV)
【化9】
[式中、
Pは、上記で定義されるものと同じ意味を有し、
Gは、場合により-OR
9基、-NR
9
2基、-COOR
9基、およびR
9基(ここで、R
9は、水素原子またはC
1~C
6のアルキル基もしくはアルケニル基を表す)からなる群から選択される1つ以上の基で置換される、2~15個の炭素原子を有する直鎖または分岐状のアルキルまたはアルケニルラジカルから誘導される二価のラジカルを表し、
Qは、水素原子を表す]
のものである。
【0059】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、式a)~d):
【化10】
[式中、Rは、C
1~C
20のアルキル基またはアルケニル基、好ましくはC
6~C
16のアルキル基またはアルケニル基、より好ましくはC
12アルキル基を表す]
からなる群から選択される。
【0060】
式a)の香料前駆体は、香料化合物としてデルタ-ダマスコンを放出する。上記の香料前駆体は、好ましくは、(±)-trans-3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-ブタノンであり得る。デルタ-ダマスコンは、1-[(1RS,2SR)-2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル]-2-ブテン-1-オンとしても公知である。
【0061】
式b)またはc)の香料前駆体は、香料化合物としてイオノンを放出する。上記の香料前駆体は、式b)および式c)の異性体混合物として存在し得る。異性体混合物は、式b)と式c)との重量比が40:60~60:40であり得る。特に、異性体混合物は、式b)と式c)との重量比が約55:45であり得る。特に、上記の香料前駆体は、香料化合物としてイオノンの2種の異性体を放出する。
【0062】
特に、式b)の香料前駆体は、香料化合物としてアルファ-イオノンを放出する。式b)の上記の香料前駆体は、好ましくは、(±)-4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノンであり得る。アルファ-イオノンは、(±)-(3E)-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オンとしても公知である。
【0063】
特に、式c)の香料前駆体は、香料化合物としてベータ-イオノンを放出する。式c)の上記の香料前駆体は、好ましくは、(±)-4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノンであり得る。ベータ-イオノンは、(3E)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オンとしても公知である。
【0064】
式d)の香料前駆体は、香料化合物としてオクタ-2-エン-4-オンを放出する。上記の香料前駆体は、好ましくは、(±)-2-(ドデシルチオ)オクタン-4-オンであり得る。オクタ-2-エン-4-オンは、その(E)-異性体または(Z)-異性体として、またはそれらの混合物として放出され得るが、(E)-異性体が好ましい。
【0065】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、2-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イルアミノ)-3-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2イルチオ)プロパン酸メチルまたはエチル、2-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-イルアミノ)-3-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-イルチオ)プロパン酸メチルまたはエチル、2-(2-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-4-イルアミノ)-3-(2-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-4-イルチオ)プロパン酸メチルまたはエチル、2-(2-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-4-イルアミノ)-3-(2-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-4-イルチオ)プロパン酸メチルまたはエチル、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1-ブタノン、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-1-ブタノン、3-(ドデシルスルホニル)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-ブタノン、2-ドデシルスルファニル-5-メチル-ヘプタン-4-オン、2-シクロヘキシル-1-ドデシルスルファニル-ヘプタ-6-エン-3-オン、3-(ドデシルチオ)-5-イソプロペニル-2-メチルシクロヘキサノン、2-(ドデシルチオ)-4-オクタノン、2-(ドデシルスルホニル)オクタン-4-オン、4-(ドデシルチオ)-4-メチルペンタン-2-オン、N,S-ビス(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)-L-システイン酸メチルまたはエチル、S-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)-L-システイン酸メチルまたはエチル、4-オキソオクタン-2-イルドデカノエート、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0066】
好ましくは、式(I)の香料前駆体化合物は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(Haloscent(登録商標)D)、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-1-オン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オン(Haloscent(登録商標)I)および4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン(Haloscent(登録商標)I)、2-(ドデシルチオ)-4-オクタノン、2-(ドデシルスルホニル)オクタン-4-オン、4-(ドデシルチオ)-4-メチルペンタン-2-オン、N,S-ビス(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)-L-システイン酸メチルもしくはエチル、S-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)-L-システイン酸メチルもしくはエチル、4-オキソオクタン-2-イルドデカノエート、またはそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0067】
より好ましくは、式(I)の香料前駆体化合物は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(Haloscent(登録商標)D)、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オン(Haloscent(登録商標)I)、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン(Haloscent(登録商標)I)、またはそれらの混合物である。
【0068】
さらにより好ましくは、式(I)の香料前駆体化合物は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(Haloscent(登録商標)D)、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン(Haloscent(登録商標)I)、および4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オン(Haloscent(登録商標)I)の混合物である。
【0069】
最も好ましくは、式(I)の香料前駆体化合物は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(Haloscent(登録商標)D)および4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン(Haloscent(登録商標)I)の混合物である。
【0070】
特定の実施形態では、洗浄工程中の香料前駆体化合物の付着に依拠して、繊維物品中に香料前駆体化合物が含まれることはない。
【0071】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、カプセル化されない。カプセル化されないとは、式(I)による香料前駆体化合物が、本発明による繊維物品に添加される前にポリマー担体材料内にカプセル化されていないことを意味する。
【0072】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、繊維物品に添加される前に溶剤に溶解される。好適な溶剤の例は、ブチレンもしくはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノ、クエン酸トリエチル、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンもしくはその他のテルペン類、Isopar(登録商標)(供給元:Exxon Chemical)という商標で公知であるものなどのイソパラフィン類、Dowanol(登録商標)(供給元:Dow Chemical Company)という商標で公知であるものなどのグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、Cremophor(登録商標)RH 40(供給元:BASF)という商標で公知であるものなどの水添ヒマシ油、またはそれらの混合物である。したがって、上記実施形態では、繊維物品はそのような溶剤も含む。
【0073】
特定の実施形態では、繊維物品は、繊維物品の総重量を基準として、0.000086~1.875重量%、好ましくは0.000086~1.5重量%、より好ましくは0.000086~1重量%、さらにより好ましくは0.000086~0.75重量%、なおもさらにより好ましくは0.001~0.375重量%、最も好ましくは0.0172~0.1875重量%の量で香料前駆体化合物を含む。
【0074】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、非繊維コーティング層に存在し、その場合、香料前駆体化合物は、コーティング層の総重量を基準として、0.0002~2.5重量%の量、好ましくは0.0002~1重量%の量、より好ましくは0.04~0.25重量%の量でコーティング層に存在する。
【0075】
特定の実施形態では、繊維物品は、さらに、
i)香料担体および香料基剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分;ならびに
ii)任意選択で少なくとも1種の香料補助剤
を含む賦香組成物を含む。
【0076】
「香料担体」とは、本明細書では、香料の観点からは実質的に中性である、すなわち賦香成分の官能特性を著しく変化させない材料を意味する。上記担体は液体であっても固体であってもよい。
【0077】
液体担体としては、非限定的な例として、乳化系、すなわち溶剤と界面活性剤との系、または香料で一般的に使用される溶剤を挙げることができる。香料に一般的に使用される溶剤の性質および種類の詳細な説明を網羅的にすることはできない。しかしながら、非限定的な例として、ブチレンもしくはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(ロジン樹脂、Eastmanから入手可能)、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノ、クエン酸トリエチル、またはそれらの混合物といった最も一般的に使用される溶剤、またはグリセロールもしくは種々の植物油、例えばパーム油、ヒマワリ油、もしくは亜麻仁油のような天然由来の溶剤を挙げることができる。香料担体と香料基剤の両方を含む組成物の場合、先に指定したもの以外の他の好適な香料担体は、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンもしくはその他のテルペン類、Isopar(登録商標)(供給元:Exxon Chemical)という商標で公知であるものなどのイソパラフィン類、またはDowanol(登録商標)(供給元:Dow Chemical Company)という商標で公知であるものなどのグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、またはCremophor(登録商標)RH 40(供給元:BASF)という商標で公知であるものなどの水添ヒマシ油であってもよい。
【0078】
固体担体は、賦香組成物または賦香組成物のうちの一部の要素が化学的または物理的に結合できる材料を称することを意図する。一般的に、そのような固体担体は、組成物を安定化させるためか、または組成物もしくは一部の成分の蒸発速度を制御するために使用される。固体担体の使用は、当技術分野において現行用途のものであり、当業者は望ましい効果に到達させる方法を理解している。しかしながら、固体担体の非限定的な例として、吸着性ゴムまたはポリマーまたは無機材料、例えば多孔質ポリマー、シクロデキストリン、デキストリン、マルトデキストリン、木質材料、有機もしくは無機ゲル、粘土、石膏タルク、またはゼオライトを挙げることができる。
【0079】
固体担体の他の非限定的な例として、カプセル化材料を挙げることができる。当該材料の例には、壁形成材料および可塑材料を含むことができ、例えば、グルコースシロップ、天然もしくは変性デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質もしくはペクチン、アカシアゴム(Gum Arabic)などの植物性ゴム、尿素、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ゼオライト、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、粘土、タルク、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、石膏、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、炭水化物、糖類、例えばスクロース、単糖類、二糖類、三糖類および多糖類ならびに誘導体、例えばキトサン、デンプン、セルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロースなど、ポリオール/糖アルコール、例えばソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、およびイソマルトなど、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリジン(PVP)、ポリビニルアルコール、アクリルアミド、アクリレート、ポリアクリル酸および関連物、無水マレイン酸コポリマー、アミン官能性ポリマー、ビニルエーテル、スチレン、ポリスチレンスルホン酸塩、ビニル酸、エチレングリコール-プロピレングリコールブロックコポリマー、植物性ゴム、アカシアゴム、ペクチン、キサンタン、アルギン酸塩、カラギーナン、クエン酸もしくは任意の水溶性固体酸、脂肪族アルコールもしくは脂肪酸、およびそれらの混合物であるか、またはさらにH. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996などの参照文献で引用されている材料である。カプセル化は、当業者には周知の方法であり、例えば、噴霧乾燥、凝集、またはさらに押出などの技術を使用することによって実施することができる。または、コアセルベーション技術および複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル化からなる。
【0080】
固体担体の非限定的な例として、特に、任意選択でポリマー系安定剤またはカチオン性コポリマーの存在下で、重合、界面重合、コアセルベーション、または全部(上記技術は全て従来技術で記載済みである)によって誘発される相分離法のような技術を使用する、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素、もしくはポリウレタン型の樹脂またはそれらの混合物(上記樹脂は全て当業者に周知されている)を用いたコア-シェル型カプセルを挙げることができる。
【0081】
樹脂は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸またはグリコールアルデヒド、およびそれらの混合物)と、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、グアナゾールなどのアミン、ならびにそれらの混合物との重縮合によって製造することができる。あるいは、Urac(登録商標)(供給元:Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(供給元:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)またはLuracoll(登録商標)(供給元:BASF)という商標で市販されているものなどの予備成形された樹脂であるアルキロール化ポリアミンを使用することができる。
【0082】
その他の樹脂のひとつは、グリセロールのようなポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートもしくはキシレンジイソシアネートの三量体、またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、またはキシリレンジイソシアネートの三量体のトリメチロールプロパン付加物(Takenate(登録商標)という商標で公知である;供給元:Mitsui Chemicals)、なかでも、キシリレンジイソシアネートの三量体のトリメチロールプロパン付加物、およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットのようなポリイソシアネートとの重縮合によって製造されるものである。
【0083】
アミノ樹脂、すなわちメラミン系樹脂とアルデヒドとの重縮合による香料のカプセル化に関する幾つかの有望な文献の代表例としては、K. Dietrich et al. Acta Polymerica, 1989, vol. 40、ページ243、325および683、ならびに同1990, vol. 41、ページ91に発表された論文が挙げられる。当該論文には、従来技術の方法に従った当該コア-シェル型マイクロカプセルの作製に影響を及ぼす種々のパラメーターがすでに記載されており、こうしたパラメーターは特許文献においてもさらに詳述され、かつ例示されている。Wiggins Teape Group Limitedによる米国特許第4,396,670号明細書は、こうした特許文献の関連先行例である。それ以降、他の多くの著者によって本分野の文献が拡充されており、発表された全ての開発を本明細書において網羅することは不可能であると考えられるが、カプセル化技術の一般的な知識は非常に重要である。当該マイクロカプセルの好適な用途を開示する最近の関連する刊行物の代表例として、H. Y. Lee et al. Journal of Microencapsulation, 2002, vol. 19, ページ559~569、国際公開第01/41915号、またはさらにはS. Bone et al. Chimia, 2011, vol. 65, ページ177~181の論文が挙げられる。
【0084】
「香料基剤」という用語は、少なくとも1種の香料化合物を含む組成物であると理解される。香料化合物は、上記に定義したものと同じ意味を有する。香料前駆体化合物は、香料化合物とはみなされない。
【0085】
基剤中に存在する香料化合物の性質および種類については、本明細書においてこれ以上の詳述を保証するものではなく、いかなる場合も網羅的ではなく、当業者は、自身の一般知識に基づいて、また意図する用途または応用例、および目的とする感覚刺激効果に応じて、それらを選択することができる。一般論として、これらの賦香補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫黄複素環式化合物、および精油といった様々な化学種に属し、また上記の賦香補助成分は、天然由来のものであっても合成由来のものであってもよい。
【0086】
香料配合物に一般に使用される香料化合物の例は、
アルデヒド系成分:デカナール、ドデカナール、2-メチル-ウンデカナール、10-ウンデセナール、オクタナール、ノナナール、および/またはノネナール;
芳香ハーブ系成分:ユーカリ油、樟脳、ユーカリプトール、5-メチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン-4-オン、1-メトキシ-3-ヘキサンチオール、2-エチル-4,4-ジメチル-1,3-オキサチアン、2,2,7/8,9/10-テトラメチルスピロ[5.5]ウンデカ-8-エン-1-オン、メントール、および/またはアルファ-ピネン;
バルサム系成分:クマリン、エチルバニリン、および/またはバニリン;
シトラス成分:ジヒドロミルセノール、シトラール、オレンジ油、酢酸リナリル、シトロネリルニトリル、オレンジテルペン、リモネン、1-p-メンテン-8-イルアセテート、および/または1,4(8)-p-メンタジエン;
フローラル成分:ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、シトロネロール、フェニルエタノール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、ヘキシルケイ皮アルデヒド、酢酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、ベータ-イオノン、2-(メチルアミノ)安息香酸メチル、(E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、(1E)-1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-1-ペンテン-3-オン、1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-[2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル]-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、2,5-ジメチル-2-インダンメタノール、2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシレート、3-(4,4-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナール、サリチル酸ヘキシル、3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、酢酸ベルジル、ゲラニオール、p-メンタ-1-エン-8-オール、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、サリチル酸アミル、高シスジヒドロジャスモン酸メチル、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、プロピオン酸ベルジル、酢酸ゲラニル、テトラヒドロリナロール、シス-7-p-メンタノール、(S)-2-(1,1-ジメチルプロポキシ)プロパン酸プロピル、2-メトキシナフタレン、2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセテート、4/3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、アミルケイ皮アルデヒド、8-デセン-5-オリド、4-フェニル-2-ブタノン、酢酸イソノニル、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、イソ酪酸ベルジル、および/またはメチルイオノン異性体の混合物;
フルーツ系成分:ガンマ-ウンデカラクトン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2-メチル-4-プロピル-1,3-オキサチアン、4-デカノリド、2-メチルペンタン酸エチル、酢酸ヘキシル、2-メチルブタン酸エチル、ガンマ-ノナラクトン、ヘプタン酸アリル、イソ酪酸2-フェノキエチル、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル、3-(3,3/1,1-ジメチル-5-インダニル)プロパナール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、3-メチル-2-ヘキセン-1-イルアセテート、1-[3,3-ジメチルシクロヘキシル]エチル[3-エチル-2-オキシラニル]アセテート、および/または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル;
グリーン成分:2-メチル-3-ヘキサノン(E)-オキシム、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルアセテート、酢酸スチラリル、(2-メチルブトキシ)酢酸アリル、4-メチル-3-デセン-5-オール、ジフェニルエーテル、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、および/または1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;
ムスク成分:1,4-ジオキサ-5,17-シクロヘプタデカンジオン、(Z)-4-シクロペンタデセン-1-オン、3-メチルシクロペンタデカノン、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン、1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(9Z)-9-シクロヘプタデセン-1-オン、2-{1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-オキソエチルプロピオネート、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-シクロペンタ-g-2-ベンゾピラン、(1S,1’R)-2-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、オキサシクロヘキサデカン-2-オン、および/または(1S,1’R)-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート;
ウッデイ成分:1-[(1RS,6SR)-2,2,6-トリメチルシクロヘキシル]-3-ヘキサノール、3,3-ジメチル-5-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-4-ペンテン-2-オール、3,4’-ジメチルスピロ[オキシラン-2,9’-トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ[4]エン、(1-エトキシエトキシ)シクロドデカン、2,2,9,11-テトラメチルスピロ[5.5]ウンデカ-8-エン-1-イルアセテート、1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、パチュリ油、パチュリ油のテルペン画分、clearwood(登録商標)(供給元:Firmenich SA)、(1’R,E)-2-エチル-4-(2’,2’,3’-トリメチル-3’-シクロペンテン-1’-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、メチルセドリルケトン、5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オン、および/または酢酸イソボルニル;
その他の成分(例えば、アンバー、パウダリースパイシー、またはウォータリー):ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチル-ナフト[2,1-b]フランおよびその任意の立体異性体、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、オイゲノール、ケイ皮アルデヒド、チョウジ油、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、2,5,5-トリメチル-1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2-ナフタレノール、酢酸1-フェニルビニル、6-メチル-7-オキサ-1-チア-4-アザスピロ[4.4]ノナン、および/または3-(3-イソプロピル-1-フェニル)ブタナール
である。
【0087】
特定の実施形態では、少なくとも1種の香料化合物は、ミリスチン酸イソプロピル、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン、1-オキサ-12/13-シクロヘキサデセン-2-オン、2-(2-メチル-2-プロパニル)シクロヘキシルアセテート、(3Z)-3-ヘキセン-1-イルサリチレート、(2E)-2-ベンジリデンオクタナール、1-(1,2,8,8-テトラメチル-1,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2-イル)エタノン、2-((1RS,2RS)-3-オキソ-2-ペンチルシクロペンチル)酢酸メチル、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルブタノエート、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、ヘプタン酸アリル、(-)-(2E)-2-エチル-4-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-2-ブテン-1-オール、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-メトキシベンズアルデヒド、(+-)-4-デカノリド、(+-)-3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール、(+-)-5-ヘプチルジヒドロ-2(3H)-フラノン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカ-3/4-エン-8-イルプロパノエート、(+-)-1,5-ジメチル-1-ビニル-4-ヘキセニルアセテート、(10E)-オキサシクロヘプタデカ-10-エン-2-オン、ジプロピレングリコール、3-ペンチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアセテート、(+-)-(3E)-4-(2,6,6-トリメチル-1/2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、2-エチル-3-ヒドロキシ-4(4h)-ピラノン、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル、3-シクロヘキシルプロパン酸アリル、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート、2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチル安息香酸メチル、ベータ-ピネン、(3E)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、(+-)-(2E)-1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、またはそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0088】
本発明による少なくとも1種の香料化合物は、上述の香料化合物に限定されることはなく、いずれにせよ他の多くのこうした補助成分は、S. Arctanderによる書籍、Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版などの参照文献、または同様の性質の他の著作に加え、香料分野における豊富な特許文献に列挙されている。
【0089】
「香料補助剤」という用語は、追加の付加的な有益性、例えば、色、特定の耐光性、化学的安定性などを付与できる成分であると理解される。賦香基剤に一般的に使用される補助剤の性質および種類に関する詳細な説明を網羅的にすることはできないが、こうした成分が当業者に周知であるという点に言及しておかねばならない。ただし、具体的な非限定例として、以下:粘性剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤および/またはレオロジー改質剤)、安定剤(例えば、防腐剤、酸化防止剤、熱/光およびまたは緩衝剤またはキレート剤、例えばBHT)、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、防腐剤(例えば、抗菌剤または抗微生物剤または抗真菌剤または抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷却剤、固定剤、昆虫忌避剤、軟膏、ビタミン類、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0090】
特定の実施形態では、少なくとも1種の香料化合物がカプセル化される。少なくとも1種の香料化合物は、例えば、コアシェル型マイクロカプセルにカプセル化することができる。単一の香料化合物だけでなく、香料化合物の混合物も1つのマイクロカプセル内にカプセル化できるものと理解される。
【0091】
香料化合物のカプセル化に適した材料は、従来技術に広く記載されている。非限定的な例として、マイクロカプセルシェルは、アミノプラスト系、ポリ尿素系、またはポリウレタン系であり得る。
【0092】
特定の実施形態では、賦香組成物は、繊維支持体層および/または非繊維コーティング層に存在する。好ましくは、賦香組成物は、非繊維コーティング層に存在する。好ましくは、賦香組成物は、非繊維コーティング層内に組み込まれる。
【0093】
特定の実施形態では、繊維物品は、さらに、帯電防止剤、移染防止剤、増白剤、酵素、防汚剤、しわ軽減剤、および柔軟仕上剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤を含む。
【0094】
柔軟仕上剤は、第四級アンモニウム化合物などのカチオン性窒素含有化合物を含み得る。一般的に、柔軟仕上剤は、好適なカチオン性、アニオン性、非イオン性、および双性イオン性の化合物を含み得る。好適な柔軟仕上剤は、当業者に周知である。
【0095】
帯電防止剤は、電荷の蓄積を最小限に抑えるか、または消失させる。帯電防止剤の例は、第四級アンモニウム塩、脂肪族アミン、リン酸エステル、およびエチレングリコールである。
【0096】
移染防止剤は、ある繊維から別の繊維へ染料が移ることを防止する薬剤である。移染防止剤は主にポリマーであり、様々な種類の物質に含まれることがあり、例えば、ポリビニルピロリドンまたはポリイミダゾールを使用することができる。
【0097】
さらに、当業者は、繊維物品中にさらに存在し得る好適な増白剤、酵素、防汚剤、しわ軽減剤も認識している。
【0098】
特定の実施形態では、繊維物品は、さらに、非繊維コーティング層の上に保護オーバープリント層を含む。保護オーバープリント層は、PEG(ポリエチレングリコール)溶液を含んでもよく、その場合、PEG溶液は、水中濃度が60%であり得る。
【0099】
本発明の別の態様は、有効量の式(I)による香料前駆体化合物を繊維物品に添加するステップを含む、本発明による繊維物品を作製するための方法に関する。
【0100】
特定の実施形態では、有効量の香料前駆体化合物とは、繊維物品の総重量を基準として、0.000086~1.875重量%、好ましくは0.000086~1.5重量%、より好ましくは0.000086~1重量%、さらにより好ましくは0.000086~0.75重量%、なおもさらにより好ましくは0.001~0.375重量%、最も好ましくは0.0172~0.1875重量%の量の香料前駆体化合物を指す。
【0101】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、繊維物品の繊維支持体層に組み込まれる。
【0102】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体化合物は、非繊維コーティング層に組み込まれる、かつ/またはコーティング層の表面に塗布される。
【0103】
好ましくは、式(I)による香料前駆体化合物は、非繊維コーティング層に組み込まれる。
【0104】
香料前駆体化合物を非繊維コーティング層に組み込む場合、香料前駆体化合物をコーティング層に添加した後、香料前駆体化合物を含むコーティング層を繊維支持体層の表面に塗布することが好ましい。例えばこれは、コーティング層を溶融し、その溶融物に香料前駆体化合物を添加することによって行うことができる。
【0105】
香料前駆体化合物を非繊維コーティング層の表面に塗布する場合、香料前駆体化合物をコーティング層の表面に噴霧することが好ましい。
【0106】
特定の実施形態では、この方法は、さらに、非繊維コーティング層の上に保護オーバープリント層を塗布するステップを含む。好ましくは、保護オーバープリント層は、PEG(ポリエチレングリコール)溶液を含む。
【0107】
特定の実施形態では、方法は、さらに、帯電防止剤、移染防止剤、増白剤、酵素、防汚剤、しわ軽減剤、および柔軟仕上剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤を添加するステップを含む。薬剤は、繊維支持体層に組み込まれても、非繊維コーティング層に組み込まれても、かつ/またはコーティング層の表面に塗布されてもよい。
【0108】
特定の実施形態では、香料前駆体化合物は、洗浄工程によって繊維物品に添加されない。換言すると、洗浄工程中に香料前駆体化合物が繊維物品に付着することによって、香料前駆体が繊維物品に添加されるわけではない。
【0109】
本発明の別の態様は、タンブル乾燥中の衣服の香気印象および/または香気強度を改善、増強、付与、および/または改質するための本発明による繊維物品の使用に関する。
【0110】
タンブル乾燥機で乾燥できる全ての布地または洗濯物が衣服と理解される。
【0111】
特定の実施形態では、タンブル乾燥は、45~70℃の温度で実施される。
【0112】
特定の実施形態では、式(I)による香料前駆体は、タンブル乾燥中に繊維物品から衣服に移る。その結果、式(I)による香料前駆体が、タンブル乾燥された衣服に付着する。
【0113】
本発明の別の態様は、タンブル乾燥中に本発明による繊維物品を衣服に添加するステップを含む、衣服の香気印象および/または香気強度を改善、増強、付与、および/または改質するための方法に関する。
【0114】
実施例
実施例1
香料前駆体を含む賦香組成物の調製:
以下の表1に従って成分を混合することによって賦香組成物を調製した。
【0115】
【0116】
【0117】
香料前駆体化合物としての賦香組成物は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、および4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オンを含む。
【0118】
香料入りタンブル乾燥機用シートの作製:
メチルビス[エチル(タローエート)]-2-ヒドロキシエチルアンモニウムメチルスルファート(柔軟剤)を65℃で溶融し、表1による賦香組成物を5重量%で撹拌しながら溶融物と混和した。次に、ホットプレート上に保持した事前カット済み不織布シート(シート重量は0.65gであった)の表面に、溶融混合物を均一に塗布した。総量1.3gの溶融物で不織布をコーティングした。したがって、最終的な香料入りタンブル乾燥機用シートの総重量は1.95gであった。
【0119】
洗浄と乾燥のサイクル:
綿タオル(25枚、それぞれのサイズが約33cm×33cm、それぞれの重量が約50g)を、General Electricの2段式洗濯機/乾燥機にて軽い汚れの白物/中の設定で無香料洗剤(50g)を用いて洗浄した。
【0120】
次に、無香料乾燥機用シートまたは香料入り乾燥機用シートのいずれかと共にタオルを乾燥させた。香料入り乾燥機用シートは、表1による賦香組成物を含む上述の乾燥機用シートである。乾燥後、タオルを収納容器に保管した。乾燥させたタオルサンプルをランダム化し、盲検した。次に、選抜された経験豊富なパネリストに指示し、各サンプル(タオル)の総合的な香気強度を、0=知覚可能な芳香なしから10=極めて強い芳香までの非標識な連続的な線形尺度で評価した。
【0121】
官能評価は3つの時点(14日後、30日後、および100日後)に実施した。結果を
図1に示す。各時点で、香料入り乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルの方が、無香料乾燥機用シートと比較して、顕著に高い香気強度が知覚された(
図1を参照)。各時点で、
図1の左の棒は、無香料乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルの香気強度を表し、右の棒は、香料入り乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルの香気強度を表す。
【0122】
乾燥させ保管してから100日後でも、香料入り乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルの方が、無香料乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルと比較して顕著に高い強度を知覚することができた。この長期間の後、香料入り乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルで観察された高い香気強度は、単に香料化合物の存在に依拠するのではなく、むしろ香料前駆体化合物3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オンおよび4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1/2-エン-1-イル)ブタン-2-オン(表1に示す)の存在に依拠すると想定するのが妥当である。なぜなら、通常の揮発性香料化合物は、このような長期的な保管期間後にはもはや総合的な香気強度に顕著な影響を及ぼさないことが予測できるためである。対照的に香料前駆体化合物は、香料化合物を連続して放出するため、香料入り乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルに長期的な香気印象をもたらす。
【0123】
実施例2
タンブル乾燥機用シートを実施例1に記載のとおりに作製した。そのため、上記の香料入りタンブル乾燥機用シートには、非繊維コーティング層に賦香組成物が含まれている。このサンプルをコーティングサンプル(Cサンプル)と称する。
【0124】
加えて、実施例1の表1に記載の賦香組成物を事前カット済み不織布シート(シート重量は0.65gであった)の上に直接塗布することにより、香料入りタンブル乾燥機用シートを作製した。生地に添加された賦香組成物の量は0.065gであった。これは、Cサンプルのコーティング層に存在する賦香組成物の量に等しい。このようにして作製したサンプルは、繊維支持体層に賦香組成物を含んでおり、これを繊維サンプル(Tサンプル)と称する。
【0125】
綿タオル(25枚、それぞれのサイズが約33cm×33cm、それぞれの重量が約50g)を実施例1に記載のとおりに洗浄した。
【0126】
次に、CサンプルまたはTサンプルのいずれかと共に、実施例1に記載のとおりにタオルを乾燥させた。
【0127】
乾燥後、タオルを収納容器内で7日間保管した。乾燥させたタオルサンプルをランダム化し、盲検した。次に、選抜された経験豊富なパネリスト(n=24)に指示し、乾燥させたタオルサンプルのどちらの方が香気強度が強かったかを評価した。すなわち、パネリストは、香気強度が強いと感じたのは、Cサンプルと共に乾燥させたタオルか、Tサンプルと共に乾燥させたタオルかを判定する必要があった。パネリスト24名のうち17名が、香気強度の強いものとしてCサンプルと共に乾燥させたタオルサンプルを選択し、香気強度の強いものとしてTサンプルと共に乾燥させたタオルサンプルを選択したパネリストはわずか7名であった。したがって、非繊維コーティング層に香料前駆体化合物を含んだ香料入りタンブル乾燥機用シート(Cサンプル)は、繊維支持体層に香料前駆体化合物を含んだ香料入りタンブル乾燥機用シート(Tサンプル)と比較して、顕著に高い香気強度(有意水準95%)をもたらすことが判明した。
【0128】
このことから、香料前駆体化合物が非繊維コーティング層に存在する場合、香気送達性能にとって特に有益であることが判明した。
【0129】
実施例3
本発明による香料入りタンブル乾燥機用シートを実施例1に記載のとおりに作製した。ただし、表1による賦香組成物を使用する代わりに、表2による賦香組成物を以下に示すように使用した。
【0130】
【0131】
【0132】
さらに、対照のタンブル乾燥機用シートを、本発明によるタンブル乾燥機用シートについて記載したものと同じ方法で作製した。ただし、対照のタンブル乾燥機用シートの作製では、表2による賦香組成物を変更し、香料前駆体化合物3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オンをジプロピレングリコールに置き換えた。すなわち、対照のタンブル乾燥機用シートに使用される賦香組成物では、前述の香料前駆体化合物およびそれらの対応する量(合計5.5重量%)をジプロピレングリコールに置き換えた。
【0133】
次に、本発明によるタンブル乾燥機用シートおよび対照のタンブル乾燥機用シートを綿タオルの乾燥中に2回続けて使用し、本発明によるタンブル乾燥機用シートの再利用性を評価した。
【0134】
初回洗浄と乾燥のサイクル:
初回の綿タオル一式(25枚、それぞれのサイズが約33cm×33cm、それぞれの重量が約50g)を実施例1に記載のとおりに洗浄した。
【0135】
次に、本発明によるタンブル乾燥機用シートまたは対照のタンブル乾燥機用シートのいずれかと共に、実施例1に記載のとおりにタオルを乾燥させた。
【0136】
乾燥後、タオルを収納容器内で7日間保管した。乾燥させたタオルサンプルをランダム化し、盲検した。次に、選抜された経験豊富なパネリスト(n=26)に指示し、乾燥させたタオルサンプルのどちらの方が香気強度が強かったかを評価した。すなわち、パネリストは、香気強度が強いと感じたのは、本発明によるタンブル乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルか、対照のタンブル乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルかを判定する必要があった。パネリスト26名のうち18名が、香気強度の強いものとして本発明によるタンブル乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルサンプルを選択し、香気強度の強いものとして対照のタンブル乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルサンプルを選択したパネリストはわずか8名であった。したがって、香料前駆体化合物を含んだ本発明によるタンブル乾燥機用シートは、香料前駆体化合物を含まなかった対照のタンブル乾燥機用シートと比較して、顕著に高い香気強度(有意水準95%)をもたらすことが判明した。
【0137】
2回目の洗浄と乾燥のサイクル:
2回目の綿タオル一式(25枚、それぞれのサイズが約33cm×33cm、それぞれの重量が約50g)を実施例1に記載のとおりに洗浄した。
【0138】
本発明によるタンブル乾燥機用シートと対照のタンブル乾燥機用シートの両方を再度、2回目の綿タオル一式の乾燥中に使用した。実施例1に記載のとおりに乾燥を実施した。
【0139】
乾燥後、タオルを収納容器内で7日間保管した。乾燥させたタオルサンプルをランダム化し、盲検した。次に、選抜された経験豊富なパネリスト(n=26)に指示し、乾燥させたタオルサンプルのどちらの方が香気強度が強かったかを評価した。すなわち、パネリストは、香気強度が強いと感じたのは、再利用した本発明によるタンブル乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルか、再利用した対照のタンブル乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルかを判定する必要があった。パネリスト26名のうち24名が、香気強度の強いものとして本発明によるタンブル乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルサンプルを選択し、香気強度の強いものとして対照のタンブル乾燥機用シートと共に乾燥させたタオルサンプルを選択したパネリストはわずか2名であった。したがって、香料前駆体化合物を含んだ本発明によるタンブル乾燥機用シートは、香料前駆体化合物を含まなかった対照のタンブル乾燥機用シートと比較して、タンブル乾燥機用シートの繰返し使用時に顕著に高い香気強度(有意水準99%)をもたらすことが判明した。
【0140】
このことから、本発明によるタンブル乾燥機用シートは、繰返し使用に好適であると同時に、引き続き十分な香気強度をもたらすことが判明した。
【国際調査報告】