(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ノイズシェーピング逐次比較レジスタ(SAR)アナログデジタル変換器
(51)【国際特許分類】
H03M 1/46 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
H03M1/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579792
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 US2022036919
(87)【国際公開番号】W WO2023009313
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507364838
【氏名又は名称】クアルコム,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ベザド・シェイコレスラミ
(72)【発明者】
【氏名】マルセリーヌ・ケリー・チャンバケ・ヤプティ
(72)【発明者】
【氏名】プラティーク・トリパティ
(72)【発明者】
【氏名】ホンイン・ワン
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB04
5J022BA02
5J022CA00
5J022CF01
5J022CF02
5J022CF07
(57)【要約】
特定の態様では、アナログデジタル変換器(ADC)は、第1の入力部と、第2の入力部と、出力部とを有する比較器を含む。ADCはまた、比較器の第1の入力部に結合されたデジタルアナログ変換器(DAC)と、スイッチング回路と、比較器の第1の入力部とスイッチング回路との間に結合された第1のキャパシタと、比較器の第1の入力部とスイッチング回路との間に結合された第2のキャパシタと、入力部および出力部を有する増幅回路であって、増幅回路の入力部はスイッチング回路に結合されている、増幅回路と、を含む。ADCは、増幅回路の出力部とDACとの間に結合された第1のスイッチと、入力部および出力部を有する逐次比較レジスタ(SAR)であって、SARの入力部は比較器の出力部に結合されており、SARの出力部はDACに結合されている、逐次比較レジスタ(SAR)と、を更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有する比較器と、
前記比較器の前記第1の入力部に結合されたデジタルアナログ変換器(DAC)と、
スイッチング回路と、
前記比較器の前記第1の入力部と前記スイッチング回路との間に結合された第1のキャパシタと、
前記比較器の前記第1の入力部と前記スイッチング回路との間に結合された第2のキャパシタと、
入力部および出力部を有する増幅回路であって、前記増幅回路の前記入力部は前記スイッチング回路に結合されている、増幅回路と、
前記増幅回路の前記出力部と前記DACとの間に結合された第1のスイッチと、
入力部および出力部を有する逐次比較レジスタ(SAR)であって、前記SARの前記入力部は前記比較器の前記出力部に結合されており、前記SARの前記出力部は前記DACに結合されている、逐次比較レジスタ(SAR)と、を備えるアナログデジタル変換器(ADC)。
【請求項2】
前記比較器の前記第2の入力部はコモンモード電圧または接地に結合されている、請求項1に記載のADC。
【請求項3】
前記DACは容量性DACを備える、請求項1に記載のADC。
【請求項4】
前記増幅回路は、
第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有する増幅器であって、前記増幅器の前記第1の入力部が前記増幅回路の前記入力部に結合されており、前記増幅器の前記出力部が前記増幅回路の前記出力部に結合されている、増幅器を備える、請求項1に記載のADC。
【請求項5】
前記増幅器の前記第2の入力部は接地に結合されている、請求項4に記載のADC。
【請求項6】
サンプリングフェーズ中に、前記第1のスイッチをオンにし、
変換フェーズ中に、前記第1のスイッチをオフにする、ように構成されたコントローラを更に備える、請求項4に記載のADC。
【請求項7】
前記変換フェーズ中に、前記SARは、
前記DACにデジタル信号を出力し、
前記比較器の前記出力部からの比較信号に基づいて前記デジタル信号のNビットを分解するように構成されている、請求項6に記載のADC。
【請求項8】
前記増幅回路は、前記増幅器の前記出力部と前記増幅器の前記第1の入力部との間に結合された第2のスイッチを更に備える、請求項4に記載のADC。
【請求項9】
前記増幅回路は、前記増幅器の前記第1の入力部と接地との間に結合された第3のスイッチを更に備える、請求項8に記載のADC。
【請求項10】
サンプリングフェーズ中に、前記第1のスイッチをオンにし、前記第2のスイッチをオフにし、前記第3のスイッチをオフにし、
変換フェーズ中に、前記第1のスイッチをオフにし、前記第2のスイッチをオンにし、前記第3のスイッチをオンにするように構成されたコントローラを更に備える、請求項9に記載のADC。
【請求項11】
前記変換フェーズ中に、前記SARは、
前記DACにデジタル信号を出力し、
前記比較器の前記出力部からの比較信号に基づいて前記デジタル信号のNビットを分解するように構成されている、請求項10に記載のADC。
【請求項12】
前記増幅回路は、前記増幅器の前記出力部とコモンモード電圧との間に結合された第4のスイッチを更に備える、請求項9に記載のADC。
【請求項13】
前記スイッチング回路は、
前記第1のキャパシタの端子と前記ADCの入力部との間に結合された第2のスイッチと、
前記第2のキャパシタの端子と前記ADCの前記入力部との間に結合された第3のスイッチと、
前記第1のキャパシタの前記端子と前記増幅回路の前記入力部との間に結合された第4のスイッチと、
前記第2のキャパシタの前記端子と前記増幅回路の前記入力部との間に結合された第5のスイッチと、を備える、請求項1に記載のADC。
【請求項14】
第1のサンプリングフェーズ中に、前記第2のスイッチをオンにし、前記第3のスイッチをオフにし、前記第4のスイッチをオフにし、前記第5のスイッチをオンにし、
第2のサンプリングフェーズ中に、前記第1のスイッチをオフにし、前記第3のスイッチをオンにし、前記第4のスイッチをオンにし、前記第5のスイッチをオフにする、ように構成されたコントローラを更に備える、請求項13に記載のADC。
【請求項15】
前記スイッチング回路は、
前記第1のキャパシタの前記端子と接地との間に結合された第6のスイッチと、
前記第2のキャパシタの前記端子と前記接地との間に結合された第7のスイッチとを更に備える、請求項13に記載のADC。
【請求項16】
第1のサンプリングフェーズ中に、前記第2のスイッチをオンにし、前記第3のスイッチをオフにし、前記第4のスイッチをオフにし、前記第5のスイッチをオンにし、前記第6のスイッチをオフにし、前記第7のスイッチをオフにし、
第1の変換フェーズ中に、前記第2のスイッチをオフにし、前記第3のスイッチをオフにし、前記第4のスイッチをオフにし、前記第5のスイッチをオフにし、前記第6のスイッチをオンにし、前記第7のスイッチをオフにし、
第2のサンプリングフェーズ中に、前記第2のスイッチをオフにし、前記第3のスイッチをオンにし、前記第4のスイッチをオンにし、前記第5のスイッチをオフにし、前記第6のスイッチをオフにし、前記第7のスイッチをオフにし、
第2の変換フェーズ中に、前記第2のスイッチをオフにし、前記第3のスイッチをオフにし、前記第4のスイッチをオフにし、前記第5のスイッチをオフにし、前記第6のスイッチをオフにし、前記第7のスイッチをオンにする、ように構成されたコントローラを更に備える、請求項15に記載のADC。
【請求項17】
前記第1の変換フェーズおよび前記第2の変換フェーズの各々の最中に、前記SARは、
前記DACにデジタル信号を出力し、
前記比較器の前記出力部からの比較信号に基づいて前記デジタル信号のNビットを分解するように構成されている、請求項16に記載のADC。
【請求項18】
前記第1のサンプリングフェーズおよび前記第2のサンプリングフェーズの各々の最中に、前記コントローラは前記第1のスイッチをオンにするように構成されている、請求項16に記載のADC。
【請求項19】
前記第1の変換フェーズおよび前記第2の変換フェーズの各々の最中に、前記コントローラは、前記第1のスイッチをオフにするように構成されている、請求項18に記載のADC。
【請求項20】
前記スイッチング回路は、
第1のサンプリングフェーズ中に、前記第1のキャパシタの端子を前記ADCの入力部に結合させ、前記第2のキャパシタの端子を前記増幅回路の前記入力部に結合させ、
第2のサンプリングフェーズ中に、前記第2のキャパシタの前記端子を前記ADCの前記入力部に結合させ、前記第1のキャパシタの前記端子を前記増幅回路の前記入力部に結合させるように構成されている、請求項1に記載のADC。
【請求項21】
前記スイッチング回路は、
第1の変換フェーズ中に、前記第1のキャパシタの前記端子を接地に結合させ、
第2の変換フェーズ中に、前記第2のキャパシタの前記端子を前記接地に結合させるように更に構成されている、請求項20に記載のADC。
【請求項22】
前記スイッチング回路は、
前記第1の変換フェーズ中に、前記第2のキャパシタの前記端子をフローティングさせ、
前記第2の変換フェーズ中に、前記第1のキャパシタの前記端子をフローティングさせるように更に構成されている、請求項21に記載のADC。
【請求項23】
前記第1の変換フェーズおよび前記第2の変換フェーズの各々の最中に、前記SARは、
前記DACにデジタル信号を出力し、
前記比較器の前記出力部からの比較信号に基づいて前記デジタル信号のNビットを分解するように構成されている、請求項21に記載のADC。
【請求項24】
アナログデジタル変換器(ADC)であって、
第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有する比較器と、
前記ADCの入力部および前記比較器の前記第1の入力部に結合されたデジタルアナログ変換器(DAC)と、
前記ADCの前記入力部に結合されたスイッチング回路と、
前記比較器の前記第1の入力部と前記スイッチング回路との間に結合された第1のキャパシタと、
前記比較器の前記第1の入力部と前記スイッチング回路との間に結合された第2のキャパシタと、
入力部および出力部を有する増幅回路であって、前記増幅回路の前記入力部は前記スイッチング回路に結合されている、増幅回路と、
前記増幅回路の前記出力部と前記DACとの間に結合された第1のスイッチと、
入力部、第1の出力部、および第2の出力部を有する逐次比較レジスタ(SAR)であって、前記SARの前記入力部は前記比較器の前記出力部に結合され、前記SARの前記第1の出力部は前記DACに結合され、前記第2の出力部は前記ADCの出力部に結合されている、逐次比較レジスタ(SAR)と、を備えるアナログデジタル変換器(ADC)と、
前記ADCの前記入力部に結合された受信機と、
前記ADCの前記出力部に結合されたプロセッサと、を備えるシステム。
【請求項25】
アナログデジタル変換器(ADC)におけるノイズシェーピングの方法であって、前記ADCは、出力部を有するデジタルアナログ変換器(DAC)と、前記DACの前記出力部に結合された第1の入力部およびコモンモード電圧または接地に結合された第2の入力部を有する比較器と、第1のキャパシタと、増幅回路とを含み、前記方法は、
第1のサンプリングフェーズ中に、
前記DACの前記出力部と前記ADCの入力部との間に前記第1のキャパシタを結合させることと、
第1の変換フェーズ中に、
前記DACの前記出力部と接地との間に前記第1のキャパシタを結合させることと、
第2のサンプリングフェーズ中に、
前記DACの前記出力部と前記増幅回路の入力部との間に前記第1のキャパシタを結合させることと、
前記増幅回路の出力部を前記DACの前記出力部に結合させることと、を含む方法。
【請求項26】
前記ADCは第2のキャパシタも含み、前記方法は、
前記第1のサンプリングフェーズ中に、
前記DACの前記出力部と前記増幅回路の前記入力部との間に前記第2のキャパシタを結合させることと、
前記増幅回路の前記出力部を前記DACの前記出力部に結合させることと、
前記第2のサンプリングフェーズ中に、
前記DACの前記出力部と前記ADCの前記入力部との間に前記第2のキャパシタを結合させることと、
第2の変換フェーズ中に、
前記DACの前記出部力と前記接地との間に前記第2のキャパシタを結合させることと、を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の変換フェーズおよび前記第2の変換フェーズの各々の最中に、
前記DACにデジタル信号を出力することと、
前記比較器の出力部からの比較信号に基づいて前記デジタル信号のNビットを分解することと、を更に含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月26日に米国特許庁に出願された非仮出願第17/385,709号の優先権および利益を主張し、その内容全体が、以下に全文が完全に記載されるかのように、およびすべての適用可能な目的のために、本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
分野
本開示の態様は、全般的にはアナログデジタル変換器(ADC)に関し、より具体的には逐次比較ADCに関する。
【0003】
背景
アナログ信号をデジタル信号に変換するために、アナログデジタル変換器(ADC)が使用される。ADCの1つのタイプが逐次比較ADCであり、これは、逐次デジタル比較を用いてアナログ信号をデジタル信号に変換する。ADCは、先進技術において低電力ADCを実装するために普及している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下は、そのような実施形態の基本的理解をもたらすために、1つ以上の実施形態の簡略化された概要を提示する。この概要は、すべての企図された実施形態の網羅的な概観ではなく、すべての実施形態の主要なまたは重要な要素を特定することも、いずれかのまたはすべての実施形態の範囲を描写することも意図されていない。その唯一の目的は、後で提示される、より詳細な説明の前置きとして、1つ以上の実施形態のいくつかの概念を簡略化された形で提示することである。
【0005】
第1の態様は、アナログデジタル変換器(ADC)に関する。ADCは、第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有する比較器を含む。ADCはまた、比較器の第1の入力部に結合されたデジタルアナログ変換器(DAC)と、スイッチング回路と、比較器の第1の入力部とスイッチング回路との間に結合された第1のキャパシタと、比較器の第1の入力部とスイッチング回路との間に結合された第2のキャパシタと、入力部および出力部を有する増幅回路であって、増幅回路の入力部はスイッチング回路に結合されている、増幅回路と、を含む。ADCは、増幅回路の出力部とDACとの間に結合された第1のスイッチと、入力部および出力部を有する逐次比較レジスタ(SAR)であって、SARの入力部は比較器の出力部に結合されており、SARの出力部はDACに結合されている、逐次比較レジスタ(SAR)と、を更に含む。
【0006】
第2の態様は、システムに関する。システムは、アナログデジタル変換器(ADC)を含む。ADCは、第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有する比較器と、ADCの入力部および比較器の第1の入力部に結合されたデジタルアナログ変換器(DAC)と、ADCの入力部に結合されたスイッチング回路と、比較器の第1の入力部とスイッチング回路との間に結合された第1のキャパシタと、比較器の第1の入力部とスイッチング回路との間に結合された第2のキャパシタと、入力部および出力部を有する増幅回路であって、増幅回路の入力部はスイッチング回路に結合されている、増幅回路と、増幅回路の出力部とDACとの間に結合された第1のスイッチと、入力部、第1の出力部、および第2の出力部を有する逐次比較レジスタ(SAR)であって、SARの入力部が比較器の出力部に結合されており、SARの第1の出力部がDACに結合されており、第2の出力部がADCの出力部に結合されている、逐次比較レジスタ(SAR)と、を含む。システムはまた、ADCの入力部に結合された受信機およびADCの出力部に結合されたプロセッサを含む。
【0007】
第3の態様は、アナログデジタル変換器(ADC)におけるノイズシェーピングの方法に関する。ADCは、出力部を有するデジタルアナログ変換器(DAC)と、DACの出力部に結合された第1の入力部およびコモンモード電圧または接地に結合された第2の入力部を有する比較器と、第1のキャパシタと、増幅回路とを含む。本方法は、第1のサンプリングフェーズ中に、DACの出力部とADCの入力部との間に第1のキャパシタを結合させることと、第1の変換フェーズ中に、DACの出力部と接地との間に第1のキャパシタを結合させることと、第2のサンプリングフェーズ中に、DACの出力部と増幅回路の入力部との間に第1のキャパシタを結合させることと、増幅回路の出力部をDACの出力部に結合させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の特定の態様による、ADCを含むシステムの一例を示す図である。
【
図2】本開示の特定の態様による、ADCを含むシステムの別の例を示す図である。
【
図3】本開示の特定の態様による、逐次比較ADCの一例を示す図である。
【
図4】本開示の特定の態様による、容量性デジタルアナログ変換器(DAC)を含むADCの一例を示す図である。
【
図5】本開示の特定の態様による、容量性DACの例示的な実施形態を示す図である。
【
図6】本開示の特定の態様による、電荷共有を使用するノイズシェーピングを用いるADCの一例を示す図である。
【
図7】本開示の特定の態様による、電荷共有に起因するノイズシェーピングの劣化の一例を示すプロットである。
【
図8】本開示の特定の態様による、ノイズシェーピングを用いる、第1のキャパシタおよび第2のキャパシタを含むADCの一例を示す図である。
【
図9A】本開示の特定の態様による、k番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中の、
図8のADCの等価回路の一例を示す図である。
【
図9B】本開示の特定の態様による、k番目のADCサイクルの変換フェーズ中の、
図8のADCの等価回路の一例を示す図である。
【
図9C】本開示の特定の態様による、(k+1)番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中の、
図8のADCの等価回路の一例を示す図である。
【
図9D】本開示の特定の態様による、(k+1)番目のADCサイクルの変換フェーズ中の、
図8のADCの等価回路の一例を示す図である。
【
図10】本開示の特定の態様による、増幅回路の例示的な実施形態を示す図である。
【
図11A】本開示の特定の態様による、k番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中の、
図10のADCの等価回路の一例を示す図である。
【
図11B】本開示の特定の態様による、k番目のADCサイクルの変換フェーズ中の、
図10のADCの等価回路の一例を示す図である。
【
図11C】本開示の特定の態様による、(k+1)番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中の、
図10のADCの等価回路の一例を示す図である。
【
図11D】本開示の特定の態様による、(k+1)番目のADCサイクルの変換フェーズ中の、
図10のADCの等価回路の一例を示す図である。
【
図12】本開示の特定の態様による、スイッチング回路の例示的な実施形態を示す図である。
【
図13】本開示の特定の態様による、自動ゼロ化回路を含む増幅回路の例示的な実施形態を示す図である。
【
図14A】本開示の特定の態様による、自動ゼロ化フェーズ中の増幅回路の等価回路の一例を示す図である。
【
図14B】本開示の特定の態様による、サンプリングフェーズ中の増幅回路の等価回路の一例を示す図である。
【
図15】本開示の特定の態様による、ノイズシェーピングの方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に記載される詳細な説明は、添付の図面に関連して、様々な構成の説明として意図され、本明細書で説明される概念が実践され得る唯一の構成を表すことを意図したものではない。詳細な説明は、様々な概念の完全な理解をもたらす目的で、具体的な詳細を含む。しかしながら、これらの概念がこれらの具体的な詳細なしに実践され得ることが業者には明らかとなろう。いくつかの事例では、よく知られている構造および構成要素は、そのような概念を曖昧にするのを避けるために、ブロック図の形式で示されている。
【0010】
アナログ信号をデジタル信号に変換するシステムにおいてADCが使用される場合がある。この関連で、
図1は、特定の態様による、入力部142および出力部144を有するADC140を含むシステム110の一例を示す。ADC140は、ADC140の入力部142におけるアナログ信号を、ADC140の出力部144におけるデジタル信号に変換するように構成される。システム110はまた、受信機130およびプロセッサ150を含み得る。受信機130は、入力部132と、ADC140の入力部142に結合された出力部134とを有する。プロセッサ150は、ADC140の出力部144に結合されている。
【0011】
一例では、システム110は、ワイヤレス通信デバイス(例えば、ハンドセット)の一部であり得る。この例では、受信機130の入力部132は、1つ以上のアンテナ120に結合されていてもよく、受信機130は、1つ以上のアンテナ120を介して入力部132において無線周波数(RF)信号を受信するように構成されている。RF信号は、基地局、アクセスポイント、または別のワイヤレス通信デバイスから送信され得る。受信機130は、受信したRF信号をアナログベースバンド信号に処理し、アナログベースバンド信号をデジタル変換のためにADC140に出力するように構成されていてもよい。受信機130によって実施される処理は、周波数ダウンコンバージョン、フィルタリング、増幅などを含んでもよい。ADC140は、アナログベースバンド信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号をプロセッサ150に出力する。プロセッサ150は、デジタル信号を処理してデジタル信号からデータを復元してもよい。プロセッサ150によって実施される処理は、復調、復号などを含み得る。プロセッサ150は、プロセッサコア、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、若しくは別のプログラマブルロジックデバイス、またはそれらの任意の組合せを含み得る。
【0012】
図2は、特定の態様による、入力部242および出力部244を有するADC240を含むシステム210の別の例を示す。ADC240は、ADC240の入力部242におけるアナログ信号を、ADC240の出力部244におけるデジタル信号に変換するように構成されている。システム210はまた、受信機230およびプロセッサ250を含む。受信機230は、入力部232と、ADC240の入力部242に結合された出力部234とを有する。プロセッサ250は、ADC240の出力部244に結合されている。
【0013】
この例では、受信機230の入力部232は、有線チャネル220に結合されており、有線チャネル220を介してアナログ信号を受信するように構成され得る。有線チャネル220(有線リンクとも呼ばれる)は、1つ以上の金属トレース、1つ以上の金属ワイヤ、ケーブル、またはそれらの任意の組合せを含み得る。この例では、有線チャネル220は、デバイス225と受信機230の入力部232との間に結合されており、デバイス225内の送信ドライバ(図示せず)が、有線チャネル220を介して受信機230にアナログ信号を送信する。デバイス225は、周辺デバイス、オーディオデバイス、センサデバイス(例えば、温度センサ、医療センサなど)、または別のタイプのデバイスを含み得る。
【0014】
この例では、受信機230は、有線チャネル220からのアナログ信号を処理して処理済みアナログ信号にし、処理済みアナログ信号をデジタル変換のためにADC240に出力してもよい。受信機230によって実施される処理は、増幅、等化などを含み得る。ADC240は、処理済みアナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号を処理のためにプロセッサ250に出力する。プロセッサ250は、プロセッサコア、オーディオコーデック、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、若しくは別のプログラマブルロジックデバイス、またはそれらの任意の組合せを含んでもよい。
【0015】
図1のADC140および
図2のADC240はそれぞれ、逐次比較ADC(逐次比較レジスタ(SAR)ADCとも呼ばれる)を用いて実装されてもよい。逐次比較ADCは、比較器、デジタルアナログ変換器(DAC)、および逐次比較レジスタ(SAR)を含んでもよい。SARは、(デジタルコードとも呼ばれる)デジタル信号をDACに出力し、DACは、デジタル信号を出力電圧に変換する。比較器は、DACの出力電圧をアナログ入力電圧と比較し、SARとの比較に基づいて比較信号を出力する。SARは、比較信号に基づいてデジタル信号のビットを逐次的に分解し、デジタル信号の分解されたビットは、アナログ入力電圧のデジタル表現であるデジタル値を提供する。SARの(例えば、フリップフロップおよび/または組合せ論理を用いる)様々な実施形態が、当該技術分野においてよく知られている。SARは、SAR論理と呼ばれることもある。
【0016】
図3は、逐次比較ADC310の一例の簡略化したブロック図を示す。ADC310は、アナログ入力312において(「V
in」とラベル付けされる)アナログ入力電圧を受信して、アナログ入力電圧V
inをデジタル値に変換し、デジタル出力315においてデジタル値を出力するように構成されている。デジタル値は、アナログ入力電圧V
inのデジタル表現を提供する。
【0017】
ADC310は、サンプルアンドホールド回路320、比較器330、SAR340、およびDAC350を含む。サンプルアンドホールド回路320は、ADC310のアナログ入力312に結合された入力部322と、出力部324とを有する。比較器330は、サンプルアンドホールド回路320の出力部324に結合された第1の入力部332と、第2の入力部334と、出力部336とを有する。SAR340は、比較器330の出力部336に結合された入力部342と、第1の出力部344と、ADC310のデジタル出力315に結合された第2の出力部346とを有する。DAC350は、SAR340の第1の出力部344に結合された入力部352と、比較器330の第2の入力部334に結合された出力部354とを有する。
【0018】
サンプルアンドホールド回路320は、入力部322においてアナログ入力電圧Vinを受信して、アナログ入力電圧Vinをサンプリングし、サンプリングされたアナログ入力電圧Vinを出力部324においてホールドするように構成されている。DAC350は、入力部352においてSAR340からNビットのデジタル信号を受信し、デジタル信号をDAC電圧(「VDAC」とラベル付けされる)に変換し、出力部354においてDAC電圧VDACを出力するように構成されている。
【0019】
比較器330は、サンプリングされたアナログ入力電圧Vinを第1の入力部332において受信し、DAC電圧VDACを第2の入力部334において受信し、サンプリングされたアナログ入力電圧VinをDAC電圧VDACと比較し、比較に基づいて出力部336において比較信号を出力するように構成されている。特定の態様では、比較信号の論理値(すなわち、論理状態)は、サンプリングされたアナログ入力電圧VinがDAC電圧VDACより大きいか小さいかを示す。SAR340は、以下で更に論じるように、比較器330からの比較信号およびDAC350を使用して、サンプリングされたアナログ入力電圧Vinをデジタル出力315におけるデジタル値に変換するように構成されている。
【0020】
ADC310は、サンプリングフェーズおよび(SARフェーズとも呼ばれる)変換フェーズを含むアナログデジタル変換動作において、アナログ入力電圧Vinをデジタル出力315におけるデジタル値に変換する。サンプリングフェーズ中に、サンプルアンドホールド回路320は、アナログ入力電圧Vinをサンプリングするように構成されている。変換フェーズ中に、サンプルアンドホールド回路320は、サンプリングされたアナログ入力電圧Vinを比較器330の第1の入力部332に出力するように構成されている。
【0021】
変換フェーズ中に、SAR340は、比較器330からの比較信号およびDAC350を使用して、サンプリングされたアナログ入力電圧Vinをデジタル値に変換する。これを行うために、SAR340は、第1の出力部344を介してNビットのデジタル信号をDAC350に出力し、バイナリサーチまたは別のサーチアルゴリズムを使用して比較器330からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを逐次的に分解する。SAR340は、(デジタルコードとも呼ばれる)デジタル信号の最上位ビット(MSB)を用いてバイナリサーチを開始する。MSBを分解するために、SAR340は、MSBを1に設定し、デジタル信号の残りのビットを0に設定してもよい。次いで、SAR340は、比較器330からの比較信号に基づいてMSBを分解することができる。例えば、比較信号が、DAC電圧VDACがサンプリングされたアナログ入力電圧Vinより小さいことを示す場合、SAR340はMSBを1のビット値に分解してもよく、比較信号が、DAC電圧VDACがサンプリングされたアナログ入力電圧Vinより大きいことを示す場合、SAR340はMSBを0のビット値に分解してもよい。
【0022】
MSBを分解した後、SAR340は、デジタル信号の残りのビットの各々について上記プロセスを繰り返して、デジタル信号の残りのビットを分解する。デジタル信号のNビットすべてが分解された後、SAR340は、分解されたビットを第2の出力部346を介してADC310のデジタル出力315にて出力する。デジタル信号の分解されたビットは、サンプリングされたアナログ入力電圧Vinのデジタル表現であるデジタル値を提供する。
【0023】
特定の態様では、DAC350は容量性DACを用いて実装され得る。これらの態様では、サンプルアンドホールド機能を容量性DAC内に組み込んで、別個のサンプルアンドホールド回路(例えば、サンプルアンドホールド回路320)の必要性をなくしてもよい。この関連で、
図4は、容量性DAC420を含む逐次比較ADC410の一例を示す。容量性DAC420は、当該技術分野において既知の様々な容量性DACのいずれか1つを用いて実装されてもよい。容量性DAC420の例示的な実施形態について、
図5を参照しながら以下で更に説明する。以下で更に論じるように、容量性DAC420は、デジタル信号(デジタルコードとも呼ばれる)のビット値に基づいて、SAR340からのデジタル信号を有限個の電圧のうちの1つに変換するように構成されている。
【0024】
ADC410はまた、上で論じた比較器330およびSAR340を含む。ADC410は、アナログ入力412において(「Vin」とラベル付けされる)アナログ入力電圧を受信して、アナログ入力電圧Vinをデジタル値に変換し、デジタル出力415においてデジタル値を出力するように構成されている。
【0025】
この例では、容量性DAC420は、第1の入力部422、第2の入力部424、および出力部426を有する。第1の入力部422は、ADC410のアナログ入力412に結合されており、第2の入力部424は、SARの第1の出力部344に結合されている。容量性DAC420の出力部426は、比較器330の第1の入力部332に結合されている。比較器330の第2の入力部334は、コモンモード電圧VCMに結合されている。
【0026】
ADC410は、サンプリングフェーズおよび変換フェーズを含むアナログデジタル変換動作において、アナログ入力電圧Vinをデジタル出力415におけるデジタル値に変換するように構成される。サンプリングフェーズ中に、容量性DAC420は、アナログ入力電圧Vinをサンプリングするように構成されている。変換フェーズ中に、容量性DAC420は、SAR340からのデジタル信号をDAC電圧VDACに変換するように構成されている。
【0027】
容量性DAC420は、出力部426において(「Vout」とラベル付けされる)出力電圧を出力する。一例では、出力電圧Voutは、サンプリングされたアナログ入力電圧VinとDAC電圧VDACとの間の差に等しい電圧を含む。出力電圧Voutはまた、以下で更に論じるように、コモンモード電圧VCMを含み得る。この例では、比較器330は、容量性DAC420の出力電圧Voutをコモンモード電圧VCMと比較し、その比較に基づいて比較信号をSAR340に出力する。
【0028】
変換フェーズ中に、SAR340は、バイナリサーチまたは別のサーチアルゴリズムを使用して、MSBから始まる比較器330からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを逐次的に分解する。デジタル信号のNビットすべてが分解された後、SAR340は、分解されたビットを第2の出力部346を介してADC410のデジタル出力415にて出力する。デジタル信号の分解されたビットは、サンプリングされたアナログ入力電圧Vinのデジタル表現であるデジタル値を提供する。
【0029】
図5は、特定の態様による、容量性DAC420の例示的な実施形態を示す。この例では、容量性DAC420は、キャパシタアレイ555、スイッチング回路570、およびスイッチ540を含む。キャパシタアレイ555は、一組のキャパシタ560-1~560-Nを含み、キャパシタ560-1~560-Nの各々が、SAR340からのデジタル信号のビットのうちのそれぞれの1つに対応する。より具体的には、キャパシタ560-NはMSBに対応し、キャパシタ560-1はデジタル信号の最下位ビット(LSB)に対応する。キャパシタ560-1~560-Nの各々が、容量性DAC420の出力部426に結合されたそれぞれの第1の端子564-1~564-Nを有する。
【0030】
特定の態様では、キャパシタ560-1~560-Nはバイナリ重み付けされた静電容量を有し、MSBに対応するキャパシタ560-Nは最大の静電容量を有し、LSBに対応するキャパシタ560-1は最小の静電容量を有する。この例では、LSBに対応するキャパシタ560-1の静電容量は、単位静電容量に等しくてもよい。他のキャパシタ560-2~560-Nの静電容量は次式で与えることができる:
C
k=C
u・2
k (1)
式中、C
uは単位静電容量であり、kはk=0からk=N-1までの値を有する静電容量インデックスである。式(1)において、k=0はキャパシタ560-1の静電容量に対応し、k=N-1はキャパシタ560-Nの静電容量に対応する。したがって、静電容量C
0は、LSBに対応するキャパシタ560-1の静電容量であり、静電容量C
N-1は、MSBに対応するキャパシタ560-Nの静電容量である。この例では、
図5に示すキャパシタ560-N~560-2の各々は、すぐ右にあるキャパシタの静電容量の2倍にほぼ等しい静電容量を有する。例えば、キャパシタ560-Nは、キャパシタ560-(N-1)の2倍の静電容量を有し、キャパシタ560-(N-1)は、キャパシタ560-(N-2)の2倍の静電容量を有し、以下同様である。
【0031】
キャパシタアレイ555とコモンモード電圧V
CMとの間にスイッチ540が結合されている。
図5の例では、スイッチ540は、キャパシタ560-1~560-Nの第1の端子564-1~564-Nとコモンモード電圧V
CMとの間に結合されている。この例では、キャパシタ560-1~560-Nの第1の端子564-1~564-Nが容量性DAC420の出力部426に結合されているので、スイッチ540は、出力部426とコモンモード電圧V
CMとの間に結合されている。
【0032】
スイッチング回路570は、スイッチ572-1~572-Nを含み、スイッチ572-1~572-Nの各々が、キャパシタアレイ555におけるキャパシタ560-1~560-Nのそれぞれの1つに結合されている。スイッチ572-1~572-Nの各々は、以下で更に論じるように、それぞれのキャパシタ560-1~560-Nの第2の端子566-1~566-Nを入力ライン584、基準ライン586、または接地ライン588に選択的に結合させるように構成されている。入力ライン584は、容量性DAC420の第1の入力部422に結合されてアナログ入力電圧Vinを受信する。基準ライン586は基準電圧Vrefに結合されており、接地ライン588は接地に結合されている。
【0033】
スイッチング回路570はまた、SAR340からデジタル信号を受信し、変換フェーズ中にデジタル信号のビット値に基づいてスイッチ572-1~572-Nを制御するように構成されたスイッチ制御ロジック575を含む。図示を容易にするために、
図5では、スイッチ572-1~572-Nとスイッチ制御ロジック575との間の個々の接続は示されていない。一例では、デジタル信号のビットが1である場合、スイッチ制御ロジック575は、それぞれのスイッチ572-1~572-Nに、それぞれのキャパシタ560-1~560-Nの第2の端子566-1~566-Nを基準ライン586に結合させる。デジタル信号のビットがゼロである場合、スイッチ制御ロジック575は、それぞれのスイッチ572-1~572-Nに、それぞれのキャパシタ560-1~560-Nの第2の端子566-1~566-Nを接地ライン588に結合させる。
【0034】
この例では、サンプリングフェーズ中に、スイッチ540はオンにされて(すなわち、閉じられて)、キャパシタ560-1~560-Nの第1の端子564-1~564-Nはコモンモード電圧V
CMに結合される。アナログ入力電圧V
inをサンプリングするために、スイッチ制御ロジック575は、スイッチ572-1~572-Nの各々に、それぞれのキャパシタ560-1~560-Nの第2の端子566-1~566-Nを、アナログ入力電圧V
inを受信する入力ライン584に結合させる。
図5は、サンプリングフェーズ中のスイッチ572-1~572-Nの位置を示すことに留意されたい。
【0035】
変換フェーズ中に、スイッチ540はオフにされて(すなわち、開かれて)、キャパシタ560-1~560-Nの第1の端子564-1~564-Nはコモンモード電圧VCMから切り離される。また、変換フェーズ中に、容量性DAC420は、SAR340からのデジタル信号に基づいて出力部426において出力電圧を出力する。出力電圧は次式で与えることができる:
【0036】
【0037】
式中、Voutは容量性DAC420の出力電圧であり、Vinはサンプリングされたアナログ入力電圧Vinであり、VCMはコモンモード電圧であり、Vrefは基準電圧であり、Bkはデジタル信号のビットであり、kはビットのインデックスである。この例では、BN-1はデジタル信号のMSBであり、B0はデジタル信号のLSBである。
【0038】
変換フェーズ中に、SAR340は、デジタル信号を容量性DAC420に出力し、比較器330からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを逐次的に分解する。特定の態様では、SAR340は、SAR340がデジタル信号のMSBから開始するバイナリサーチを使用して、デジタル信号のNビットを逐次的に分解する。
【0039】
デジタル信号のMSBを分解するために、SAR440は、MSB(すなわち、BN-1)を1に設定し、デジタル信号の残りのビットの各々(すなわち、BN-2~B0)を0に設定する。次いで、SAR340は、比較器330からの比較信号に基づいてMSBを分解する。比較信号が、VoutがVCMより大きいことを示す場合(すなわち、Vout-VCMが0より大きい場合)、SAR340は、MSBを0のビット値に分解する。比較信号が、VoutがVCM未満であることを示す場合(すなわち、Vout-VCMが0未満である場合)、SAR340は、MSBを1のビット値に分解する。
【0040】
MSB(すなわち、BN-1)を分解した後、SAR340は、最上位ビットから2番目のビット(すなわち、BN-2)を分解する。これを行うために、SAR340は、MSBをその分解されたビット値に設定し、最上位ビットから2番目のビット(すなわち、BN-2)を1に設定し、残りのビット(すなわち、BN-3からB0)を0に設定する。次いで、SAR340は、比較器330からの比較信号に基づいて最上位ビットから2番目のビットを分解する。比較信号が、VoutがVCMより大きいことを示す場合(すなわち、Vout-VCMが0より大きい場合)、SAR340は、最上位ビットから2番目のビットを0のビット値に分解する。比較信号が、VoutがVCMより小さいことを示す場合(すなわち、Vout-VCMが0未満である場合)、SAR340は、最上位ビットから2番目のビットを1のビット値に分解する。
【0041】
SAR340は、デジタル信号の残りのビット(すなわち、BN-3~B0)の各々について上記プロセスを繰り返して、デジタル信号の残りのビットを分解する。デジタル信号のNビット(すなわち、BN-1からB0)すべてが分解された後、SAR340は、ADC410のデジタル出力415において分解されたビットを出力し、デジタル信号の分解されたビットは、サンプリングされたアナログ入力電圧Vinのデジタル表現であるデジタル値を提供する。
【0042】
容量性DAC420は、
図5に示す例示的な実施形態に限定されないことを理解されたい。一般に、容量性DAC420は、スイッチング回路およびバイナリ重み付けキャパシタを含むことができ、バイナリ重み付けキャパシタの各々は、それぞれの第1の端子およびそれぞれの第2の端子を有する。キャパシタの第1の端子は、容量性DAC420の出力部426に結合されてもよい。変換フェーズ中に、スイッチング回路は、SAR340からのデジタル信号に基づいて2つ以上の電圧間で、バイナリ重み付けキャパシタの第2の端子のスイッチングを制御する。一例では、2つ以上の電圧は、基準電圧および接地を含む。別の例では、2つ以上の電圧は、正の基準電圧および負の基準電圧を含む。いくつかの実施形態では、キャパシタアレイ550は、スリップキャパシタアレイ、または別のタイプのキャパシタアレイを用いて実装されてもよい。キャパシタアレイ550はまた、いくつかの実施形態では非バイナリで重み付けされてもよい。したがって、容量性DAC420は、特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0043】
いくつかの実施形態では、コモンモード電圧VCMはほぼ0であってもよい。これらの実施形態では、比較器330の第2の入力部334は接地に結合されていてもよく、容量性DAC420内のスイッチ540は、キャパシタ560-1~560-Nの第1の端子564-1~564-Nと接地との間に結合されていてもよい。
【0044】
ADC410は、入力アナログ電圧Vinの変化を追跡するために、上で論じたアナログデジタル変換動作を周期的に実施してもよい。例えば、ADC410は、複数のADCサイクルにわたって複数のアナログデジタル変換動作を順次実施してもよく、アナログデジタル変換動作のうちの1つがADCサイクルの各々において実施される。
【0045】
ADC410は、デジタル出力415において量子化ノイズを被る。これは、ADC410が、アナログ入力電圧Vinを有限個の値のうちの1つを有するデジタル値に量子化するからである。各ADCサイクルの終わりに、量子化は、容量性DAC420の出力部426において残留電圧Vresをもたらす。残留電圧Vresは、サンプリングされたアナログ入力電圧Vinと変換フェーズの終わりにおけるデジタル信号の分解されたビットに対応する電圧との間の差に等しい。
【0046】
ADCは、量子化ノイズを低減させるためにノイズシェーピングを用いることができる。例えば、ノイズシェーピングは、前のADCサイクルからの残留電圧を現在のADCサイクルにおいてサンプリングされた入力アナログ電圧Vinに加算することによって実現できる。これにより、z領域において与えられたノイズシェーピングが次式で得られる:
Y=X+(1-z-1)Q (3)
式中、YはADCの出力に対応し、XはADCの入力に対応し、Qは量子化ノイズに対応する。
【0047】
図6は、式(3)に基づくノイズシェーピングのための一手法を用いるADC605の一例を示す。この例では、ADC605は、上で論じた容量性DAC420、比較器330、およびSAR340を含む。ノイズシェーピングのために、ADC605はまた、増幅器610、保持キャパシタ630、第1のスイッチ620、および第2のスイッチ625を含む。増幅器610は、容量性DAC420の出力部426に結合された第1の入力部612と、コモンモード電圧V
CMに結合された第2の入力部614と、出力部616とを有する。第1のスイッチ620は、容量性DACの出力部426と保持キャパシタ630の第1の端子632との間に結合されており、第2のスイッチ625は、保持キャパシタ630の第1の端子632と増幅器610の出力部616との間に結合されている。保持キャパシタ630の第2の端子634は接地に結合されている。
【0048】
ADCサイクルの変換フェーズ中に、第2のスイッチ625はオンにされ(すなわち、閉じられ)ており、第1のスイッチ620はオフにされている(すなわち、開かれている)。その結果、保持キャパシタ630は、増幅器610の出力部616に結合されている。変換フェーズの終わりに、増幅器610は、第1の入力部612における残留電圧V
resを感知し、感知した残留電圧V
resに基づいて保持キャパシタ630を充電することによって、残留電圧V
resを(容量性DAC420の出力部426に結合された)増幅器610の第1の入力部612から保持キャパシタ630に伝達する。特定の態様では、増幅器610の出力部616は、コモンモード電圧V
CMを含む場合もあり、したがって、保持キャパシタ630を、残留電圧V
resとコモンモード電圧V
CMとを含む電圧まで充電する場合がある。これらの態様では、保持キャパシタ630はコモンモード電圧V
CMを供給するので、
図5に示すスイッチ540は、サンプリングフェーズ中に開いているかまたはこれらの態様では省略される。
【0049】
次のADCサイクルのサンプリングフェーズ中に、第2のスイッチ625はオフにされ(すなわち、開かれ)、第1のスイッチ620はオンにされる(すなわち、閉じられる)。その結果、保持キャパシタ630は、容量性DAC420の出力部426に結合される。これにより、保持キャパシタ630は、容量性DAC420内のキャパシタ560-1~560-Nの第1の端子564-1~564-Nに結合され、それにより、残留電圧Vresの一部分が、電荷共有を介して、次のADCサイクルにおけるサンプリングされた入力アナログ電圧Vinに加算される。サンプリングされた入力アナログ電圧Vinに加算される残留電圧Vresの大きさは次式で与えられる:
【0050】
【0051】
式中、V
CSは、電荷共有を介して、サンプリングされた入力アナログ電圧V
inに加算される残留電圧V
resの大きさであり、C
1は、保持キャパシタ630の静電容量であり、C
2は、容量性DAC420におけるキャパシタ560-1~560-Nの総静電容量である。容量性DAC420に伝達される残留電圧V
resの大きさは次式で与えることができる:
V
rt=α・V
res (5)
式中、V
rtは、容量性DAC420に伝達される残留電圧V
resの大きさであり、αは(例えば、電荷共有に起因して)1未満である。理想的には、式(3)に基づいてノイズシェーピングを完全に実装するためには、αは1に等しい。
図6の例では、αはC
1/(C
1+C
2)にほぼ等しい。したがって、電荷共有は、残留電圧V
resをキャパシタ比C
1/(C
1+C
2)に基づいて低減させる。
【0052】
ノイズシェーピングはαが小さくなるにつれて劣化し、その一例を
図7に示す。
図7は、αが1に等しい理想的なケースの量子化ノイズスペクトルの一例715と、αが1未満であるケースの量子化ノイズスペクトルの一例720を示す。
図7に示すように、αが1未満の場合、量子化ノイズの大きさは、理想的なケースと比較して、より低い周波数においてより高い。したがって、ノイズシェーピング劣化を低減させるために、αを1に近く維持することが望ましい。
図6では、αはキャパシタ比C
1/(C
1+C
2)に等しいので、1に近いキャパシタ比C
1/(C
1+C
2)を実現するためには、保持キャパシタ630を容量性DAC420内のキャパシタより遥かに大きく(例えば、10倍大きく)することが必要である。保持キャパシタ630の大きなサイズは、ADC605の面積を著しく増加させる。
【0053】
図8は、本開示の特定の態様による、ノイズシェーピングを用いる逐次比較ADC805の一例を示す。ADC805は、入力808において(「V
in」とラベル付けされる)アナログ入力電圧を受信して、アナログ入力電圧V
inをデジタル値に変換し、出力815においてデジタル値を出力するように構成されている。ADC805は、
図1のADC140を実装するために使用されてもよく、その場合、ADC805の入力808が受信機130の出力部134に結合され、ADC805の出力815がプロセッサ150に結合される。ADC805はまた、
図2のADC240を実装するために使用されてもよく、その場合、ADC805の入力808が受信機230の出力部234に結合され、ADC805の出力815がプロセッサ250に結合される。
【0054】
ADC805は、上で論じた容量性DAC420、比較器330、およびSAR340を含む。ノイズシェーピングのため、ADC805は、第1のキャパシタ840、第2のキャパシタ850、スイッチング回路810、増幅回路830、およびスイッチ860を更に含む。
【0055】
スイッチング回路810は、第1の端子812、第2の端子814、第3の端子816、第4の端子818、および第5の端子820を含む。第1のキャパシタ840は、容量性DAC420の出力部426とスイッチング回路810との間に結合されている。
図8の例では、第1のキャパシタ840は、容量性DAC420の出力部426に結合された第1の端子842と、スイッチング回路810の第1の端子812に結合された第2の端子844とを有する。第2のキャパシタ850は、容量性DAC420の出力部426とスイッチング回路810との間に結合されている。
図8の例では、第2のキャパシタ850は、容量性DAC420の出力部426に結合された第1の端子852と、スイッチング回路810の第2の端子814に結合された第2の端子854とを有する。スイッチング回路810の第3の端子816は、ADC805の入力808に結合されて入力アナログ電圧V
inを受信し、スイッチング回路810の第4の端子818は接地に結合されている。
【0056】
増幅回路830は、入力部832および出力部834を有する。増幅回路830の入力部832は、スイッチング回路810の第5の端子820に結合されている。スイッチ860は、増幅回路830の出力部834と容量性DAC420の出力部426との間に結合されている。増幅回路830は、以下で更に論じるように、1つ以上の増幅器を用いて実装され得る。
【0057】
スイッチング回路810は、第1のキャパシタ840の第2の端子844を、ADC805の入力808、接地、および増幅回路830の入力部832のうちの1つに選択的に結合させるように構成されている。スイッチング回路810はまた、第2のキャパシタ850の第2の端子854を、ADC805の入力808、接地、および増幅回路830の入力部832のうちの1つに選択的に結合させるように構成されている。スイッチング回路810は、以下で更に論じるように、複数のスイッチを用いて実装され得る。
【0058】
特定の態様では、スイッチング回路810のスイッチングおよびスイッチ860のスイッチングは、以下で更に論じるように、コントローラ870によって制御される。図示を容易にするために、
図8では、コントローラ870とスイッチング回路810との間の個々の接続、およびコントローラ870とスイッチ860との間の個々の接続は示されていない。
【0059】
ここで、特定の態様による
図9A~
図9Dを参照して、ADC805の例示的な動作について論じる。
図9Aおよび
図9Bは、それぞれ、k番目のADCサイクルのサンプリングフェーズおよび変換フェーズ中のADC805の等価回路の例を示す。
図9Cおよび
図9Dは、それぞれ、次のADCサイクル(すなわち、(k+1)番目のADCサイクル)のサンプリングフェーズおよび変換フェーズ中のADC805の等価回路の例を示す。以下で更に論じるように、
図5に示すスイッチ540は、ノイズシェーピングのために常に開いていてもよく、または省略されてもよい。
【0060】
図9Aに示すk番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中に、コントローラ870は、(
図8に示す)スイッチング回路810に、第1のキャパシタ840の第2の端子844をADC805の入力808に結合させる。これにより、第1のキャパシタ840は、容量性DAC420内のキャパシタ(例えば、キャパシタ560-1~560-N)を用いて入力アナログ電圧V
inをサンプリングすることが可能になる。コントローラ870はまた、スイッチング回路810に、第2のキャパシタ850の第2の端子854を増幅回路830の入力部832に結合させる。以下で更に論じるように、第2のキャパシタ850は、前のADCサイクル(すなわち、(k-1)番目のADCサイクル)からの残留電圧を保持する。
【0061】
また、k番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中に、コントローラ870は、(
図8に示す)スイッチ860をオンにして、増幅回路830の出力部834を容量性DAC420の出力部426に結合させる。その結果、増幅回路830の入力部832は第2のキャパシタ850の第2の端子854に結合され、増幅回路830の出力部834は容量性DAC420の出力部426に結合される。これにより、増幅回路830が、第2のキャパシタ850に保持された前のADCサイクル(すなわち、(k-1)番目のADCサイクル)からの残留電圧を容量性DAC420の出力部426に伝達することが可能になる。その結果、前のADCサイクル(すなわち、(k-1)番目のADCサイクル)からの残留電圧が、サンプリングされた入力アナログ電圧V
inに加算され、それにより、式(3)に基づいてノイズシェーピングが提供される。
【0062】
図9Bに示すk番目のADCサイクルの変換フェーズ中に、コントローラ870はスイッチング回路810に、第1のキャパシタ840の第2の端子844を接地に結合させる。コントローラ870はまた、スイッチング回路810に、第2のキャパシタ850の第2の端子854を増幅回路830の入力部832から切り離させる。
図9Bの例で示すように、第2のキャパシタ850の第2の端子854はフローティングであってもよい。コントローラ870はまた、スイッチ860をオフにして、増幅回路830の出力部834を容量性DAC420の出力部426から切り離す。
【0063】
k番目のADCサイクルの変換フェーズ中に、SAR340は、上で論じたように、(デジタルコードとも呼ばれる)デジタル信号を容量性DAC420の第2の入力部424に出力し、比較器330からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを逐次的に分解する。変換フェーズの終わりに、容量性DAC420の出力部426における残留電圧が、第1のキャパシタ840の両端に現れる。これは、第1のキャパシタ840が、容量性DAC420の出力部426と接地との間に結合されるからである。したがって、第1のキャパシタ840は、残留電圧を、k番目のADCサイクルの変換フェーズの終わりに取得する。以下で更に論じるように、k番目のADCサイクルに存在する取得された電圧は、次のADCサイクル(すなわち、(k+1)番目のADCサイクル)のサンプリングされた入力アナログ電圧Vinに加算されて、ノイズシェーピングが提供される。
【0064】
図9Cに示す(k+1)番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中に、コントローラ870は、(
図8に示す)スイッチング回路810に、第2のキャパシタ850の第2の端子854をADC805の入力808に結合させる。これにより、第2のキャパシタ850は、容量性DAC420内のキャパシタ(例えば、キャパシタ560-1~560-N)を用いて入力アナログ電圧V
inをサンプリングすることが可能になる。コントローラ870はまた、スイッチング回路810に、第1のキャパシタ840の第2の端子844を増幅回路830の入力部832に結合させる。上で論じたように、第1のキャパシタ840は、(k+1)番目のADCサイクルに対する前のADCサイクルであるk番目のADCサイクルからの残留電圧を保持する。
【0065】
また、(k+1)番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中に、コントローラ870は、(
図8に示す)スイッチ860をオンにして、増幅回路830の出力部834を容量性DAC420の出力部426に結合させる。その結果、増幅回路830の入力部832は第1のキャパシタ840の第2の端子844に結合され、増幅回路830の出力部834は容量性DAC420の出力部426に結合される。これにより、増幅回路830が、第1のキャパシタ840に保持された前のADCサイクル(すなわち、k番目のADCサイクル)からの残留電圧を容量性DAC420の出力部426に伝達することが可能になる。その結果、前のADCサイクル(すなわち、k番目のADCサイクル)からの残留電圧が、サンプリングされた入力アナログ電圧V
inに加算され、それにより、式(3)に基づいてノイズシェーピングが提供される。
【0066】
図9Dに示す(k+1)番目のADCサイクルの変換フェーズ中に、コントローラ870はスイッチング回路810に、第2のキャパシタ850の第2の端子854を接地に結合させる。コントローラ870はまた、スイッチング回路810に、第1のキャパシタ840の第2の端子844を増幅回路830の入力部832から切り離させる。
図9Dの例で示すように、第1のキャパシタ840の第2の端子844はフローティングであってもよい。コントローラ870はまた、スイッチ860をオフにして、増幅回路830の出力部834を容量性DAC420の出力部426から切り離す。
【0067】
(k+1)番目のADCサイクルの変換フェーズ中に、SAR340は、上で論じたように、デジタル信号を容量性DAC420の第2の入力部424に出力し、比較器330からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを逐次的に分解する。変換フェーズの終わりに、容量性DAC420の出力部426における残留電圧が、第2のキャパシタ850の両端に現れる。これは、第2のキャパシタ850が、容量性DAC420の出力部426と接地との間に結合されるからである。したがって、第2のキャパシタ850は、残留電圧を、(k+1)番目のADCサイクルの変換フェーズの終わりに取得する。(k+1)番目のADCサイクルに存在する取得された電圧は、次のADCサイクル((k+2)番目のADCサイクル)のサンプリングされた入力アナログ電圧V
inに加算されて、ノイズシェーピングが提供される。この関連で、
図9Aおよび
図9Bに示す例示的な動作が(k+2)番目のADCサイクルに対して繰り返され、
図9Cおよび
図9Dに示す例示的な動作が(k+3)番目のADCサイクルに対して繰り返され、以下同様である。
【0068】
上で論じたように、k番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中に、第2のキャパシタ850は、前のADCサイクル(すなわち、(k-1)番目のADCサイクル)からの残留電圧を保持する。これは、
図9Cおよび
図9Dに示す例示的な動作を、前のADCサイクル(すなわち、(k-1)番目のADCサイクル)において実施することにより実現できる。
【0069】
したがって、
図8に示す例示的なノイズシェーピング手法は、代わりに、第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850を使用して、前のADCサイクルからの残留電圧を、サンプリングされた入力アナログ電圧V
inに加算し、かつ代わりに、第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850を使用して、変換フェーズの終わりに残留電圧を取得する。
図9A~
図9Dに示す例では、k番目のADCサイクル中に、第2のキャパシタ850を使用して、前のADCサイクル(すなわち、(k-1)番目のADCサイクル)からの残留電圧を、サンプリングされた入力アナログ電圧V
inに加算し、かつ第1のキャパシタ840を使用して、変換フェーズの終わりに残留電圧を取得する。次のADCサイクル(すなわち、(k+1)番目のADCサイクル)中に、第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850の役割が切り替えられ、第1のキャパシタ840を使用して、前のADCサイクル(すなわち、k番目のADCサイクル)からの残留電圧を、サンプリングされた入力アナログ電圧V
inに加算し、かつ第2のキャパシタ850を使用して、変換フェーズの終わりに残留電圧を取得する。
【0070】
図6のノイズシェーピング手法とは異なり、
図8に示す本開示の態様による例示的なノイズシェーピング手法は、前のADCサイクルからの残留電圧を容量性DAC420の出力部426に伝達するために、保持キャパシタと容量性DAC420内のキャパシタ(例えば、キャパシタ560-1~560-N)との間の電荷共有を使用しない。代わりに、本開示の態様による例示的なノイズシェーピング手法は、前のADCサイクルからの残留電圧を第1のキャパシタ840または第2のキャパシタ850上で保持し、増幅回路830を使用して、保持された残留電圧を容量性DAC420の出力部426に伝達する。本開示の態様による例示的なノイズシェーピング手法は、残留電圧を伝達するのに電荷共有を使用しないので、例示的なノイズシェーピング手法は、非常に大きな保持キャパシタを必要とすることなく、改善されたノイズシェーピング(例えば、低周波数)のための1に近いαを実現することができる。これにより、第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850を
図6の保持キャパシタ630より大幅に小さくすることが可能になり、それによりADC805の面積を
図6のADC605と比較して大幅に低減することが可能になる。
【0071】
第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850を使用して、容量性DAC420の基準電圧Vrefをスケーリングすることもできる。一例では、第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850は、容量性DAC420の基準電圧Vrefを1/mによりスケーリングすることができ、ここで、mはスケーリング係数である。この例では、第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850の各々の静電容量とスケーリング係数との関係は次式で与えることができる:
Cf=((m-1)・2N+1)・Cu (5)
式中、Cfは、第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850の各々の静電容量であり、Cuは、上で論じた単位静電容量である。この例では、容量性DAC420の出力電圧は次式で与えることができる:
【0072】
【0073】
ここで、基準電圧V
refは1/mによりスケーリングされている。この例では、第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850の各々が単位静電容量C
uに等しい静電容量を有する場合、スケーリング係数mは1に等しい。したがって、基準電圧V
refがスケーリングされない使用事例では、第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850の各々は、容量性DAC420の総静電容量より遥かに小さい単位静電容量C
uに等しい静電容量を有し、したがって、容量性DAC420の総静電容量の少なくとも10倍大きい静電容量を典型的に有する保持キャパシタ630を含む
図6のADC605と比較して、ADC805の面積は著しく低減される。
【0074】
図10は、特定の態様による、増幅回路830の例示的な実施形態を示す。この例では、増幅回路830は、第1の入力部1012、第2の入力部1014、および出力部1016を有する増幅器1010を含む。
図10の例に示すように、第1の入力部1012は反転入力部であってもよく、第2の入力部1014は非反転入力部であってもよい。この例では、増幅器1010の第1の入力部1012は増幅回路830の入力部832に結合されており、増幅器1010の第2の入力部1014は接地に結合されており、増幅器1010の出力部1016は増幅回路830の出力部834に結合されている。
【0075】
図11A~
図11Dは、それぞれ、増幅回路830が増幅器1010を含む例についての、k番目のADCサイクルのサンプリングフェーズおよび変換フェーズ中のADC805の等価回路の例を示す。
図11C~
図11Dは、それぞれ、増幅回路830が増幅器1010を含む例についての、次のADCサイクル(すなわち、(k+1)番目のADCサイクル)のサンプリングフェーズおよび変換フェーズ中のADC805の等価回路の例を示す。
【0076】
図11Aに示すk番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中に、第2のキャパシタ850の第2の端子854は、増幅器1010の第1の入力部1012に結合されており、増幅器1010の出力部1016は、容量性DAC420の出力部426に結合されている。これにより、上で論じたように、増幅器1010は、ノイズシェーピングのために、第2のキャパシタ850に保持された前のADCサイクル(すなわち、(k-1)番目のADCサイクル)からの残留電圧を容量性DAC420の出力部426に伝達することが可能になる。
【0077】
図11Bに示すk番目のADCサイクルの変換フェーズ中に、増幅器1010の第1の入力部1012は、第2のキャパシタ850の第2の端子854から切り離されており、増幅器1010の出力部1016は、容量性DAC420の出力部426から切り離されている。
【0078】
図11Cに示す(k+1)番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中に、第1のキャパシタ840の第2の端子844は、増幅器1010の第1の入力部1012に結合されており、増幅器1010の出力部1016は、容量性DAC420の出力部426に結合されている。これにより、上で論じたように、増幅器1010は、ノイズシェーピングのために、第1のキャパシタ840に保持された前のADCサイクル(すなわち、k番目のADCサイクル)からの残留電圧を容量性DAC420の出力部426に伝達することが可能になる。
【0079】
図11Dに示す(k+1)番目のADCサイクルの変換フェーズ中に、増幅器1010の第1の入力部1012は、第1のキャパシタ840の第2の端子844から切り離されており、増幅器1010の出力部1016は、容量性DAC420の出力部426から切り離されている。
【0080】
したがって、この例では、ノイズシェーピングを行うために、増幅器1010を使用して、第1のキャパシタ840または第2のキャパシタ850に保持された前のADCサイクルからの残留電圧が、容量性DAC420の出力部426に伝達される。残留電圧は、サンプリングされたアナログ入力電圧Vinと変換フェーズの終わりにおけるデジタル信号の分解されたビットに対応する電圧との間の差であるため、残留電圧は比較的小さい電圧振幅を有する。残留電圧は小さい電圧振幅を有するため、増幅器1010は、大きい電圧振幅にわたって高い線形性を有する高性能増幅器を用いて実装される必要はない。これにより、増幅器1010の性能要件が緩和され、増幅器1010を、電力消費の低減のために低電源電圧で動作する先進技術における低性能増幅器を用いて実装することが可能になる。
【0081】
図12は、特定の態様による、スイッチング回路810の例示的な実施形態を示す。この例では、スイッチング回路810は、第1のスイッチ1210、第2のスイッチ1220、第3のスイッチ1230、第4のスイッチ1240、第5のスイッチ1250、および第6のスイッチ1260を含む。第1のスイッチ1210、第2のスイッチ1220、第3のスイッチ1230、第4のスイッチ1240、第5のスイッチ1250、および第6のスイッチ1260の各々は、1つ以上のトランジスタ、トランスミッションゲート、または別のタイプのスイッチを用いて実装されてもよい。
【0082】
第1のスイッチ1210は第1の端子812と第3の端子816との間に結合されており、第2のスイッチ1220は第1の端子812と第4の端子818との間に結合されており、第3のスイッチ1230は第1の端子812と第5の端子820との間に結合されている。第4のスイッチ1240は、第2の端子814と第3の端子816との間に結合されており、第5のスイッチ1250は、第2の端子814と第4の端子818との間に結合されており、第6のスイッチ1260は、第2の端子814と第5の端子820との間に結合されている。(
図8に示す)コントローラ870は、第1のスイッチ1210、第2のスイッチ1220、第3のスイッチ1230、第4のスイッチ1240、第5のスイッチ1250、および第6のスイッチ1260のスイッチングを制御する。図示を容易にするために、コントローラ870と、第1のスイッチ1210、第2のスイッチ1220、第3のスイッチ1230、第4のスイッチ1240、第5のスイッチ1250、および第6のスイッチ1260の各々との間の個々の接続は、
図12には示されていない。
【0083】
ここで、特定の態様による例示的なスイッチング動作について論じる。上で論じたk番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中に、コントローラ870は、第1のスイッチ1210をオンにし(すなわち、閉じて)、第1のキャパシタ840の第2の端子844をADC805の入力808に結合させ、第6のスイッチ1260をオンにし(すなわち、閉じて)、第2のキャパシタ850の第2の端子854を増幅回路830の入力部832に結合させる。コントローラ870は、第2のスイッチ1220、第3のスイッチ1230、第4のスイッチ1240、および第5のスイッチ1250をオフにする。
【0084】
上で論じたk番目のADCサイクルの変換フェーズ中に、コントローラ870は、第2のスイッチ1220をオンにして(すなわち、閉じて)、第1のキャパシタ840の第2の端子844を接地に結合させる。コントローラ870は、第1のスイッチ1210、第3のスイッチ1230、第4のスイッチ1240、第5のスイッチ1250、および第6のスイッチ1260をオフにする。
【0085】
上で論じた(k+1)番目のADCサイクルのサンプリングフェーズ中に、コントローラ870は、第3のスイッチ1230をオンにして(すなわち、閉じて)、第1のキャパシタ840の第2の端子844を増幅回路830の入力部832に結合させ、第4のスイッチ1240をオンにして(すなわち、閉じて)、第2のキャパシタ850の第2の端子854をADC805の入力808に結合させる。コントローラ870は、第1のスイッチ1210、第2のスイッチ1220、第5のスイッチ1250、および第6のスイッチ1260をオフにする。
【0086】
上で論じた(k+1)番目のADCサイクルの変換フェーズ中に、コントローラ870は、第5のスイッチ1250をオンにして(すなわち、閉じて)、第2のキャパシタ850の第2の端子854を接地に結合させる。コントローラ870は、第1のスイッチ1210、第3のスイッチ1230、第3のスイッチ1230、第4のスイッチ1240、および第6のスイッチ1260をオフにする。
【0087】
上記の例では、k番目のADCサイクルのサンプリングフェーズは、第1のサンプリングフェーズと呼ばれることもあり、(k+1)番目のADCサイクルのサンプリングフェーズは、第2のサンプリングフェーズと呼ばれることもある。同様に、k番目のADCサイクルの変換フェーズは、第1の変換フェーズと呼ばれることもあり、(k+1)番目のADCサイクルの変換フェーズは、第2の変換フェーズと呼ばれることもある。
【0088】
図13は、特定の態様による、増幅回路830の別の例示的な実施形態を示す。この例では、増幅回路830は、上で論じた増幅器1010を含む。増幅回路830は、オフセットおよび低周波数誤差を低減させるための自動ゼロ化回路も含む。自動ゼロ化回路は、第1のスイッチ1310、第2のスイッチ1320、第3のスイッチ1330、第1のキャパシタ1340(「C
off」とラベル付けされる)、および第2のキャパシタ1350(「C
R」とラベル付けされる)を含む。
【0089】
第1のスイッチ1310は、増幅回路830の入力部832と接地との間に結合されている。第1のキャパシタ1340は、増幅器1010の第1の入力部1012と増幅回路830の入力部832との間に結合されている。より具体的には、第1のキャパシタ1340の第1の端子1342は増幅回路830の入力部832に結合されており、第1のキャパシタ1340の第2の端子1344は増幅器1010の第1の入力部1012に結合されている。第2のスイッチ1320は、第2のキャパシタ1350の第1の端子1352とコモンモード電圧VCMとの間に結合されている。第2のキャパシタ1350の第2の端子1354は、増幅器1010の出力部1016に結合されている。第3のスイッチ1330は、第2のキャパシタ1350の第1の端子1352と増幅器1010の第1の入力部1012との間に結合されている。第1のスイッチ1310、第2のスイッチ1320、および第3のスイッチ1330のスイッチングは、以下で更に論じるように、コントローラ870によって制御されてもよい。
【0090】
ここで、例示的な自動ゼロ化動作について、本開示の態様に従って以下で論じる。
【0091】
自動ゼロ化(AZ)フェーズ中に、コントローラ870は、第1のスイッチ1310および第3のスイッチ1330をオンにし(すなわち、閉じ)、第2のスイッチ1320をオフにする。この関連で、
図14Aは、AZフェーズにおける増幅回路830の等価回路の一例を示す。AZフェーズは、増幅回路830の入力部832が第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850から切り離され、増幅回路830の出力部834が容量性DAC420の出力部426から切り離される変換フェーズにおいて生じる。
【0092】
図14Aに示すように、AZフェーズ中に、増幅器1010の出力部1016は、第2のキャパシタ1350を介して増幅器1010の第1の入力部1012に結合されており、これにより増幅器1010は単位利得構成に設定される。第2のキャパシタ1350は、オフセットおよび低周波数誤差を格納する。AZフェーズ中の増幅器1010の単位利得構成に起因して、オフセットおよび低周波数誤差の負の値が増幅器1010の第1の入力部1012と増幅回路830の入力部832との間に結合された第1のキャパシタ1340に現れる。
【0093】
AZフェーズに続くサンプリングフェーズ中に、コントローラ870は、第1のスイッチ1310および第3のスイッチ1330をオフにし、第2のスイッチ1320をオンにする。この関連で、
図14Bは、サンプリングフェーズ中の増幅回路830の等価回路の一例を示す。増幅回路830の入力部832は、第1のキャパシタ840および第2のキャパシタ850のうちの1つに結合され、増幅回路830の出力部834は、容量性DAC420の出力部426に結合される。
【0094】
第1のキャパシタ1340は、上で論じたように、オフセットおよび低周波数誤差の負の値を格納するので、オフセットおよび低周波数誤差は、第1のキャパシタ840または第2のキャパシタ850に格納された電荷から減算される。その結果、第1のキャパシタ840または第2のキャパシタ850からの残留電圧は、増幅器1010におけるオフセットおよび低周波数誤差による影響を受けない。
【0095】
図14Bに示すように、この例では、サンプリングフェーズ中に、コモンモード電圧V
CMは第2のキャパシタ1350を介して増幅器1010の出力部1016に結合されている。その結果、増幅回路830の出力は、コモンモード電圧V
CMおよび前のADCサイクルからの残留電圧を容量性DAC420の出力部426に提供する。この例では、
図5の例に示すスイッチ540は省略されていてもよい。なぜなら、この例では、サンプリングフェーズ中に、コモンモード電圧V
CMが増幅回路830によって供給されるため、またはノイズシェーピングのためにスイッチ540は常に開いていてもよいからである。
【0096】
図14Aに示す例示的な自動ゼロ化動作は、ADC805の各ADCサイクルの変換フェーズ中に実施されてもよい。
【0097】
図15は、特定の態様による、アナログデジタル変換器(ADC)におけるノイズシェーピングの方法1500を示す。ADC(例えば、ADC805)は、出力部(例えば、出力部426)を有するデジタルアナログ変換器(DAC)(例えば、容量性DAC420)と、DACの出力部に結合された第1の入力部(例えば、第1の入力部332)およびコモンモード電圧または接地に結合された第2の入力部(例えば、第2の入力部334)を有する比較器(例えば、比較器330)と、第1のキャパシタ(例えば、第1のキャパシタ840)と増幅回路(例えば、増幅回路830)とを含む。
【0098】
ブロック1510において、第1のサンプリングフェーズ中に、第1のキャパシタは、DACの出力部とADCの入力部との間に結合されている。例えば、第1のキャパシタは、スイッチング回路810によって、DACの出力部とADCの入力(例えば、入力808)との間に結合されていてもよい。特定の態様では、第1のサンプリングフェーズは、k番目のADCサイクルのサンプリングフェーズに対応し得る。
【0099】
ブロック1520において、第1の変換フェーズ中に、第1のキャパシタは、DACの出力部と接地との間に結合されている。例えば、第1のキャパシタは、スイッチング回路810によってDACの出力部と接地との間に結合されていてもよい。これは、例えば、第1の変換フェーズの終わりに、DACの出力部において残留電圧を取得するために行われ得る。特定の態様では、第1の変換フェーズは、k番目のADCサイクルの変換フェーズに対応し得る。
【0100】
ブロック1530において、第2のサンプリングフェーズ中に、第1のキャパシタは、DACの出力部と増幅回路の入力部との間に結合され、増幅回路の出力部は、DACの出力部に結合されている。例えば、第1のキャパシタは、スイッチング回路810によって、DACの出力部と増幅回路の入力部(例えば、入力部832)との間に結合される場合があり、増幅回路の出力部(例えば、出力部834)は、スイッチ860によって、DACの出力部に結合される場合がある。特定の態様では、第2のフェーズは、(k+1)番目のADCサイクルのサンプリングフェーズに対応し得る。
【0101】
特定の態様では、ADCはまた、第2のキャパシタ(例えば、第2のキャパシタ850)を含む。これらの態様では、方法1500はまた、第1のサンプリングフェーズ中に、DACの出力部と増幅回路の入力部との間に第2のキャパシタを結合させることと、増幅回路の出力部をDACの出力部に結合させることとを含んでもよい。方法1500はまた、第2のサンプリングフェーズ中に、DACの出力部とADCの入力部との間に第2のキャパシタを結合させることと、第2の変換フェーズ中に、DACの出力部と接地との間に第2のキャパシタを結合させることとを含んでもよい。第2の変換フェーズは、(k+1)番目のADCサイクルの変換フェーズに対応してもよい。結合は、スイッチング回路810および/またはスイッチ860によって実施されてもよい。
【0102】
方法1500はまた、第1の変換フェーズおよび第2の変換フェーズの各々の最中に、デジタル信号をDACに出力することと、比較器の出力部からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを分解することとを含んでもよい。例えば、デジタル信号は、SAR340によって出力されてもよく、デジタル信号のNビットは、比較器の出力部(例えば、出力部336)からの比較信号に基づいてSAR340によって分解されてもよい。
【0103】
SAR340およびコントローラ870は、それぞれ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、若しくは他のプログラマブルロジックデバイス、フリップフロップ、ディスクリートハードウェア構成要素(例えば、論理ゲート)、状態マシン、またはそれらの任意の組合せを用いて実装されてもよい。
【0104】
以下の番号付きの条項において、実装例について説明する。
1.
第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有する比較器と、
比較器の第1の入力部に結合されたデジタルアナログ変換器(DAC)と、
スイッチング回路と、
比較器の第1の入力部とスイッチング回路との間に結合された第1のキャパシタと、
比較器の第1の入力部とスイッチング回路との間に結合された第2のキャパシタと、
入力部および出力部を有する増幅回路であって、増幅回路の入力部はスイッチング回路に結合されている、増幅回路と、
増幅回路の出力部とDACとの間に結合された第1のスイッチと、
入力部および出力部を有する逐次比較レジスタ(SAR)であって、SARの入力部は比較器の出力部に結合されており、SARの出力部はDACに結合されている、逐次比較レジスタ(SAR)と、を備えるアナログデジタル変換器(ADC)。
2.比較器の第2の入力部はコモンモード電圧または接地に結合されている、条項1に記載のADC。
3.DACは容量性DACを備える、条項1または2に記載のADC。
4.増幅回路は、
第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有する増幅器であって、増幅器の第1の入力部が増幅回路の入力部に結合されており、増幅器の出力部が増幅回路の出力部に結合されている、増幅器を備える、条項1~3のいずれか一項に記載のADC。
5.増幅器の第2の入力部は接地に結合されている、条項項4に記載のADC。
6.サンプリングフェーズ中に、第1のスイッチをオンにし、
変換フェーズ中に、第1のスイッチをオフにする、ように構成されたコントローラを更に備える、条項4または5に記載のADC。
7.変換フェーズ中に、SARは、
DACにデジタル信号を出力し、
比較器の出力部からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを分解するように構成されている、条項6に記載のADC。
8.増幅回路は、増幅器の出力部と増幅器の第1の入力部との間に結合された第2のスイッチを更に備える、条項4~7のいずれか一項に記載のADC。
9.増幅回路は、増幅器の第1の入力部と接地との間に結合された第3のスイッチを更に備える、条項項8に記載のADC。
10.サンプリングフェーズ中に、第1のスイッチをオンにし、第2のスイッチをオフにし、第3のスイッチをオフにし、
変換フェーズ中に、第1のスイッチをオフにし、第2のスイッチをオンにし、第3のスイッチをオンにするように構成されたコントローラを更に備える、条項9に記載のADC。
11.変換フェーズ中に、SARは、
DACにデジタル信号を出力し、
比較器の出力部からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを分解するように構成されている、条項10に記載のADC。
12.増幅回路は、増幅器の出力部とコモンモード電圧との間に結合された第4のスイッチを更に備える、条項9~11のいずれか一項に記載のADC。
13.スイッチング回路は、
第1のキャパシタの端子とADCの入力部との間に結合された第2のスイッチと、
第2のキャパシタの端子とADCの入力部との間に結合された第3のスイッチと、
第1のキャパシタの端子と増幅回路の入力部との間に結合された第4のスイッチと、
第2のキャパシタの端子と増幅回路の入力部との間に結合された第5のスイッチと、を備える、条項1~12のいずれか一項に記載のADC。
14.第1のサンプリングフェーズ中に、第2のスイッチをオンにし、第3のスイッチをオフにし、第4のスイッチをオフにし、第5のスイッチをオンにし、
第2のサンプリングフェーズ中に、第1のスイッチをオフにし、第3のスイッチをオンにし、第4のスイッチをオンにし、第5のスイッチをオフにする、ように構成されたコントローラを更に備える、条項13に記載のADC。
15.スイッチング回路は、
第1のキャパシタの端子と接地との間に結合された第6のスイッチと、
第2のキャパシタの端子と接地との間に結合された第7のスイッチとを更に備える、条項13または14に記載のADC。
16.第1のサンプリングフェーズ中に、第2のスイッチをオンにし、第3のスイッチをオフにし、第4のスイッチをオフにし、第5のスイッチをオンにし、第6のスイッチをオフにし、第7のスイッチをオフにし、
第1の変換フェーズ中に、第2のスイッチをオフにし、第3のスイッチをオフにし、第4のスイッチをオフにし、第5のスイッチをオフにし、第6のスイッチをオンにし、第7のスイッチをオフにし、
第2のサンプリングフェーズ中に、第2のスイッチをオフにし、第3のスイッチをオンにし、第4のスイッチをオンにし、第5のスイッチをオフにし、第6のスイッチをオフにし、第7のスイッチをオフにし、
第2の変換フェーズ中に、第2のスイッチをオフにし、第3のスイッチをオフにし、第4のスイッチをオフにし、第5のスイッチをオフにし、第6のスイッチをオフにし、第7のスイッチをオンにする、ように構成されたコントローラを更に備える、条項15に記載のADC。
17.第1の変換フェーズおよび第2の変換フェーズの各々の最中に、SARは、
DACにデジタル信号を出力し、
比較器の出力部からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを分解するように構成されている、条項16に記載のADC。
18.第1のサンプリングフェーズおよび第2のサンプリングフェーズの各々の最中に、コントローラは記第1のスイッチをオンにするように構成されている、条項16または17に記載のADC。
19.第1の変換フェーズおよび第2の変換フェーズの各々の最中に、コントローラは、第1のスイッチをオフにするように構成されている、条項18に記載のADC。
20.スイッチング回路は、
第1のサンプリングフェーズ中に、第1のキャパシタの端子をADCの入力部に結合させ、第2のキャパシタの端子を増幅回路の入力部に結合させ、
第2のサンプリングフェーズ中に、第2のキャパシタの端子をADCの入力部に結合させ、第1のキャパシタの端子を増幅回路の入力部に結合させるように構成されている、条項1~12のいずれか一項に記載のADC。
21.スイッチング回路は、
第1の変換フェーズ中に第1のキャパシタの端子を接地に結合させ、
第2の変換フェーズ中に第2のキャパシタの端子を接地に結合させるように更に構成されている、条項20に記載のADC。
22.スイッチング回路は、
第1の変換フェーズ中に、第2のキャパシタの端子をフローティングさせ、
第2の変換フェーズ中に、第1のキャパシタの端子をフローティングさせるように更に構成されている、条項21に記載のADC。
23.第1の変換フェーズおよび第2の変換フェーズの各々の最中に、SARは、
DACにデジタル信号を出力し、
比較器の出力部からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを分解するように構成されている、条項21または22に記載のADC。
24.アナログデジタル変換器(ADC)であって、
第1の入力部、第2の入力部、および出力部を有する比較器と、
ADCの入力部および比較器の第1の入力部に結合されたデジタルアナログ変換器(DAC)と、
ADCの入力部に結合されたスイッチング回路と、
比較器の第1の入力部とスイッチング回路との間に結合された第1のキャパシタと、
比較器の第1の入力部とスイッチング回路との間に結合された第2のキャパシタと、
入力部および出力部を有する増幅回路であって、増幅回路の入力部はスイッチング回路に結合されている、増幅回路と、
増幅回路の出力部とDACとの間に結合された第1のスイッチと、
入力部、第1の出力部、および第2の出力部を有する逐次比較レジスタ(SAR)であって、SARの入力部は比較器の出力部に結合されており、SARの第1の出力部はDACに結合されおり、第2の出力部はADCの出力部に結合されている、逐次比較レジスタ(SAR)と、を備えるアナログデジタル変換器(ADC)と、
ADCの入力部に結合された受信機と、
ADCの出力部に結合されたプロセッサと、を備えるシステム。
25.アナログデジタル変換器(ADC)におけるノイズシェーピングの方法であって、ADCは、出力部を有するデジタルアナログ変換器(DAC)と、DACの出力部に結合された第1の入力部およびコモンモード電圧または接地に結合された第2の入力部を有する比較器と、第1のキャパシタと、増幅回路とを含み、方法は、
第1のサンプリングフェーズ中に、
DACの出力部とADCの入力部との間に第1のキャパシタを結合させることと、
第1の変換フェーズ中に、
DACの出力部と接地との間に第1のキャパシタを結合させることと、
第2のサンプリングフェーズ中に、
DACの出力部と増幅回路の入力部との間に第1のキャパシタを結合させることと、
増幅回路の出力部をDACの出力部に結合させることと、を含む方法。
26.ADCは第2のキャパシタも含み、方法は、
第1のサンプリングフェーズ中に、
DACの出力部と増幅回路の入力部との間に第2のキャパシタを結合させることと、
増幅回路の出力部をDACの出力部に結合させることと、
第2のサンプリングフェーズ中に、
DACの出力部とADCの入力部との間に第2のキャパシタを結合させることと、
第2の変換フェーズ中に、
DACの出力部と接地との間に第2のキャパシタを結合させることと、を更に含む、条項25に記載の方法。
27.第1の変換フェーズおよび第2の変換フェーズの各々の最中に、
DACにデジタル信号を出力することと、
比較器の出力部からの比較信号に基づいてデジタル信号のNビットを分解することと、を更に含む、条項26に記載の方法。
【0105】
本開示は、本開示の態様を説明するために上で使用された例示的な用語に限定されないことを理解されたい。例えば、サンプリングフェーズは、取得フェーズまたは別の用語で呼ばれることもある。別の例では、デジタル信号は、デジタルコードまたは別の用語で呼ばれることもある。別の例では、SARは、SAR論理、SAR回路、または別の用語で呼ばれることもある。
【0106】
本明細書において「第1の」、「第2の」などの呼称を使用した要素へのいかなる言及も、一般にそれらの要素の数量または順序を限定しない。むしろ、これらの呼称は、2つ以上の要素、または要素の例を区別する便利な方法として本明細書で使用されている。したがって、第1および第2の要素への言及は、2つの要素のみが採用され得ること、または第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。特許請求の範囲における数値表記は、明細書における数値表記と必ずしも整合しないことも理解されたい。
【0107】
本開示で、「例示的」という言葉は、「例、事例、または例示としての役割を果たすこと」を意味するために使用される。「例示的」として本明細書で説明された任意の実施形態または態様は、必ずしも本開示の他の態様より好ましい、または有利であると解釈されるべきではない。同様に、「態様」という用語は、本開示のすべての態様が、説明した特徴、利点、または動作モードを含むことを必要とするとは限らない。述べられた値または性質に関して本明細書で使用される「ほぼ」という用語は、述べられた値または性質の10%以内であることを示すことが意図されている。
【0108】
本開示の上記の説明は、あらゆる当業者が本開示を作成または使用することが可能となるように提供される。本開示の様々な変更が当業者に容易に明らかになり、本明細書で定義される一般原理は、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく他の変形に適用され得る。したがって、本開示は本明細書で説明される例に限定されることを意図するものではなく、本明細書で開示される原理および新規の特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
【国際調査報告】