(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】窒化ガリウム双方向高電子移動度トランジスタ基板電圧管理回路
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20240621BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240621BHJP
H01L 21/8232 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H02M1/00 J
H01L27/06 102A
H01L27/06 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579805
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 US2022034208
(87)【国際公開番号】W WO2023278194
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515186323
【氏名又は名称】エンフェーズ エナジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Enphase Energy, Inc.
【住所又は居所原語表記】1420 North McDowell Boulevard, Petaluma, California 94954, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・ハリソン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアーン・ヨハネス・ファン・アントウェルペン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ライル・チャップマン
【テーマコード(参考)】
5F048
5H740
【Fターム(参考)】
5F048AC10
5F048BA15
5H740BA11
5H740BB01
(57)【要約】
基板電圧管理を行うための装置が本明細書で提供されており、第1のソースおよび第2のソースを備える双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタの基板に結合されるように構成される能動基板電圧管理回路を備える。能動基板電圧管理回路は、第1のソースに接続される第1の回路および第2のソースに接続される第2の回路を、双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタが動作中であるときに、基板に印加されるバイアス電圧を制御するために第1の回路または第2の回路のうちの一方が、それぞれ、基板に第1のソースをまたは基板に第2のソースをのうちの一方を接続するように、備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のソースおよび第2のソースを備える双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタの基板に結合されるように構成される能動基板電圧管理回路を備え、
前記能動基板電圧管理回路が、前記第1のソースに接続される第1の回路および前記第2のソースに接続される第2の回路を、前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタが動作中であるときに、前記基板に印加されるバイアス電圧を制御するために、前記第1の回路または前記第2の回路のうちの一方が、それぞれ、前記基板に前記第1のソースをまたは前記基板に前記第2のソースを、のうちの一方を接続するように、備える、
基板電圧管理を行うための装置。
【請求項2】
前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタがオフにされると、前記第1のソース上の電圧が前記第2のソース上の電圧より大きいとき、前記第2の回路のトランジスタがオンにされて、前記基板を前記第2のソースに接続し、その逆もまた同様であるように、前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタが遮断する電圧極性が、前記第1の回路または前記第2の回路の対応するトランジスタのどの1つがオンにされるかを決定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタがオンにされると、前記基板が前記第1のソースにも前記第2のソースにも接続されるように、前記第1の回路および前記第2の回路の対応するトランジスタがオンにされる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタがオンからオフにまたはオフからオンに状態を動的に変化させているとき、前記第1のソースおよび前記第2のソースにわたる変化する電圧(dv/dt)が、前記第1の回路および前記第2の回路の対応するトランジスタに対するより高いゲート電流が発生されることを可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の回路および前記第2の回路が同一である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の回路および前記第2の回路が各々、
4つの抵抗器と、
コンデンサと、
ツェナーダイオードと、
トランジスタとを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記トランジスタがNチャネルMOSFETまたはNチャネルJFETの少なくとも1つである、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも2つの抵抗器の合計が前記第1のソースまたは前記第2のソースのうちの1つに接続するインピーダンスを決定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ツェナーダイオードが前記トランジスタのソースに接続されて、前記トランジスタのゲートおよび前記ソースにわたって印加される最大ゲート電圧を制限し、かつ
前記ツェナーダイオードが、ゲート閾値電圧より大きくかつ前記最大ゲート電圧より小さい調整電圧を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記能動基板電圧管理回路が、ディスクリート部品を使用して形成される、または前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタのシリコン層もしくは窒化ガリウム層の少なくとも1つへ集積される、の一方である、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
第1のソースおよび第2のソースを備える双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタを動作させるステップと、
前記第1のソースに接続される第1の回路および前記第2のソースに接続される第2の回路を備える能動基板電圧管理回路を、前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタが動作中であるときに、基板に印加されるバイアス電圧を制御するために、前記第1の回路または前記第2の回路のうちの一方が、それぞれ、前記基板に前記第1のソースをまたは前記基板に前記第2のソースを、のうちの一方を接続するように、動作させるステップと
を含む、基板電圧管理を行う方法。
【請求項12】
前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタがオフにされると、前記第1のソース上の電圧が前記第2のソース上の電圧より大きいとき、前記第2の回路のトランジスタをオンにして、前記基板を前記第2のソースに接続するステップを更に含み、その逆もまた同様であるように、前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタが遮断する電圧極性が、前記第1の回路または前記第2の回路の対応するトランジスタのどの1つがオンにされるかを決定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタがオンにされると、前記基板が前記第1のソースにも前記第2のソースにも接続されるように、前記第1の回路および前記第2の回路の対応するトランジスタをオンにするステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタがオンからオフにまたはオフからオンに状態を動的に変化させているとき、前記第1のソースおよび前記第2のソースにわたる変化する電圧(dv/dt)が、前記第1の回路および前記第2の回路の対応するトランジスタに対するより高いゲート電流が発生されることを可能にする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の回路および前記第2の回路が同一である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の回路および前記第2の回路が各々、
4つの抵抗器と、
コンデンサと、
ツェナーダイオードと、
トランジスタとを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
NチャネルMOSFETまたはNチャネルJFETの少なくとも1つを使用するステップを更に含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも2つの抵抗器の合計を使用して、前記第1のソースまたは前記第2のソースのうちの1つに接続するインピーダンスを決定するステップを更に含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記トランジスタのソースに接続される、前記ツェナーダイオードを使用して、前記トランジスタのゲートおよび前記ソースにわたって印加される最大ゲート電圧を制限するステップを更に含み、
前記ツェナーダイオードが、ゲート閾値電圧より大きくかつ前記最大ゲート電圧より小さい調整電圧を有する、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記能動基板電圧管理回路が、ディスクリート部品を使用して形成される、または前記双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタのシリコン層もしくは窒化ガリウム層の少なくとも1つへ集積される、の一方である、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、窒化ガリウム(GaN)双方向高移動度トランジスタ(HEMT)に関し、特に、双方向GaN HEMTのための基板電圧管理に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)高移動度電子トランジスタ(HEMT)スイッチは、4象限スイッチ(4QS)としても知られている、ネイティブ双方向スイッチ(BDS)として構築でき、そのためGaN HEMT 4QSデバイスは、
図1に図示されるような同等の「バックツーバック」対の従来の単方向GaN HEMTデバイスより低コストで高性能を有する。
【0003】
従来の単方向GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、ドレインおよびソース接続間のドリフト領域がGaNダイの上面に平行である横型デバイスとして作製される。既存のドレイン構造の代わりに第2のゲート-ソース構造を使用でき、ネイティブ双方向スイッチ(4QS)を容易にする。このGaN HEMTネイティブ4QSは、共通ドリフト領域がいずれの方向(S1→S2またはS2→S1)にも使用されるのを許容して、それによって2つの従来のGaN HEMTデバイスを共に接続することによって作製される従来の4QSデバイスと比較してGaN面積削減を提供する。
図2は、単方向および双方向の両GaN HEMTのための簡略構造を図示する。統合ドレインGaN HEMTネイティブ4QSは、共に接続されて4QSデバイスを作る一対の従来の単方向GaN HEMTと比較して4:1のダイ面積優位性を提供する。
【0004】
GaN HEMTネイティブ4QSに対するゲート駆動損失率対伝導損失率(すなわちQG/RSS-ON)は、2:1のスイッチ当たりのダイ面積差のため2つの従来の単方向GaN HEMTデバイスから構築されるGaN 4QSに対してより2分の1である(いつでも1つのゲートだけが切り替えられる)。
【0005】
いずれのGaN HEMTデバイスでも、HEMTデバイスが構築されるシリコン基板が適切な電圧基準に接続されて保たれることを保証することが重要である。従来の単方向GaN HEMTデバイスに対して、基板がバイアスされるのに適切な電圧は、ソース端子電圧に近い電圧である。これは、単方向GaN HEMTデバイスの場合、単に基板をソース接続に接続することによって容易に達成される。GaN HEMT双方向スイッチ(BDSまたは4QS)では、基板の基準となるのに適切な電圧は、最低電位を持つソース端子であり、-これは、GaN HEMT 4QSデバイスにおける基板が電圧を正しいソース電位にバイアスするために何らかの形態の回路網を必要とすることを意味する。
【0006】
GaN HEMT 4QS基板を正しい電圧に正しくバイアスしないことの影響は、デバイスの動作に有害であり、非最適スイッチング特性に至り、例えば、基板バイアスは、過渡スイッチング特性にもオン状態特性にも影響する。以前の基板バイアス制御解決策は、受動回路の使用を含む。一例では、ダイオードおよび抵抗器の配置を備える受動回路がGaNトランジスタ対にわたって結合される。同回路は、基板バイアス電圧が、ダイオードによって確立される閾値レベルを超えて上昇できないことを保証するが、しかしながら、そのような回路は、基板バイアスが低レベルに降下するまたは負電圧にさえなるのを防止しない。基板バイアスのそのような可変性は、双方向GaN HEMTスイッチの適正な動作に有害である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第17/842,459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、当該技術において4象限双方向スイッチのための改善された基板バイアス管理回路の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の少なくとも一部の実施形態に従って、基板電圧管理を行うための装置が、第1のソースおよび第2のソースを備える双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタの基板に結合されるように構成される能動基板電圧管理回路を備えており、能動基板電圧管理回路は、第1のソースに接続される第1の回路および第2のソースに接続される第2の回路を、双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタが動作中であるときに、基板に印加されるバイアス電圧を制御するために第1の回路または第2の回路のうちの一方が、それぞれ、基板に第1のソースをまたは基板に第2のソースをのうちの一方を接続するように、備える。
【0010】
本開示の少なくとも一部の実施形態に従って、基板電圧管理を行う方法が、第1のソースおよび第2のソースを備える双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタを動作させるステップと、第1のソースに接続される第1の回路および第2のソースに接続される第2の回路を備える能動基板電圧管理回路を、双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタが動作中であるときに、基板に印加されるバイアス電圧を制御するために第1の回路または第2の回路のうちの一方が、それぞれ、基板に第1のソースをまたは基板に第2のソースをのうちの一方を接続するように、動作させるステップとを含む。
【0011】
本開示のこれらおよび他の特徴および利点は、同様の参照数字が全体を通じて同様の部分を指す添付の図に加えて、本開示の以下の詳細な説明の検討から認められ得る。
【0012】
本開示の以上の列挙された特徴を詳細に理解できるように、上に簡潔に要約された本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られ得るが、その一部が添付の図面に例示される。しかしながら、添付の図面が単に本開示の典型的な実施形態を例示するだけであり、したがって、その範囲を限定しているとみなされるべきではなく、本開示に他の等しく有効な実施形態の余地があり得ることが留意されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】共通ソース構成のおよび4QS統合ドレイン構成のGaN HEMTの概要図である。
【
図2】共通ソース構成のおよび4QS統合ドレイン構成のGaN HEMTの横断面および上面図である。
【
図3】本開示の1つまたは複数の実施形態に従う基板電圧管理回路の概要図である。
【
図4】本開示の1つまたは複数の代替の実施形態に従う基板電圧管理回路の概要図である。
【
図5】本開示の1つまたは複数の代替の実施形態に従う基板電圧管理を行う方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態は、概して双方向GaN HEMTスイッチのための基板電圧管理回路に関する。例えば、基板電圧管理を行うための装置が、第1のソースおよび第2のソースを備える双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタの基板に結合されるように構成される能動基板電圧管理回路を備えることができる。例えば、少なくとも一部の実施形態において、能動基板電圧管理回路は、第1のソースに接続される第1の回路および第2のソースに接続される第2の回路を備える。少なくとも一部の実施形態において、双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタがオンからオフまたはオフからオンのうちの一方に状態を変えているときに、基板に印加されるバイアス電圧を制御するために第1の回路または第2の回路のうちの一方が、それぞれ、基板に第1のソースをまたは基板に第2のソースをのうちの一方を接続する。本明細書に記載される装置および方法は、GaN HEMT双方向スイッチの改善されたスイッチング性能および信頼性を提供する。追加的に、本明細書に記載されるGaN HEMT双方向スイッチは、従来の単方向GaN HEMTデバイスと比較されると4倍のダイ面積優位性を有しており、これにより、次いで、製造業者に4倍のコスト優位性を提供できる。
【0015】
図3は、本開示の1つまたは複数の実施形態に従う基板電圧管理回路300の概要図である。GaN HEMT 4QS(例えば、Q30デバイス)は、5つの物理的接続を有する:ゲート1(G1)、ソース1(S1)、基板(Sub)、ゲート2(G2)およびソース2(S2)。2つのゲート駆動バッファ(U10およびU20)は、Q30デバイスのための必要ゲートターンオン電圧(例えば、約5V)を印加するために構成される外部ゲート駆動バッファである。
【0016】
基板電圧管理回路300は、1つまたは複数の抵抗器、1つまたは複数のコンデンサ、1つまたは複数のツェナーダイオードおよび1つまたは複数のトランジスタを備える。例えば、少なくとも一部の実施形態において、基板電圧管理回路300は、8つの抵抗器(R10~R13およびR20~R23)、2つのコンデンサ(C10およびC20)、2つのツェナーダイオード(Z10およびZ20)および2つのトランジスタ(Q10およびQ20)を備える。基板電圧管理回路300は、2つの同一の回路を備える。例えば、少なくとも一部の実施形態において、基板電圧管理回路300は、第1の回路302および第2の回路304を備える。第1の回路302は、抵抗器R10~R13、トランジスタQ10、コンデンサC10およびツェナーダイオードZ10を備え、その全てがQ30デバイスのG1/S1側と接続される/関連付けられる。同じく、第2の回路304は、抵抗器R20~R23、トランジスタQ20、コンデンサC20およびツェナーダイオードZ20を備え、その全てがQ30デバイスのG2/S2側と接続される/関連付けられる。
【0017】
能動基板電圧管理回路300のトランジスタQ10およびトランジスタQ20は、2つの能動スイッチとして構成され、例えば、NチャネルMOSFET、NチャネルJFETまたはGaN HEMTデバイスであることができる。少なくとも一部の実施形態において、トランジスタQ10およびトランジスタQ20は、NチャネルMOSFETであることができる。
【0018】
Q30デバイスの基板(Sub)は、Q10のゲート(G)(またはQ20のゲートG)をオンにすることによってS1に(およびS2に)接続されてよい。Q10(Q20)は、2つの抵抗器R10(R20)およびR11(R21)を介してQ30デバイスの基板(Sub)をS1(S2)に接続する。2つの抵抗器の総インピーダンスR10+R11(R20+R21)が、基板(Sub)をS1(S2)に接続するインピーダンスを決定する。抵抗器R11(R21)は、Q10(Q20)を流れるピーク電流が設定されるのを許容できる電流制限機能を容易にしており、これにより、トランジスタQ10(Q20)をシュートスルー条件(例えば、Q30デバイスが実際には導通していないときにQ10およびQ20が両方共にオンである場合)に起因し得る過電流状況から保護するように機能できる。電流制限機能を追加することで、Q30デバイスのための動的状態変化条件(例えば、オンからオフ、またはオフからオン)の間に短時間のシュートスルー条件を引き起こし得るノイズに対して基板電圧管理回路300をロバストかつ免疫にする。
【0019】
R11(R21)の抵抗で割られたQ10(Q20)のためのゲート閾値電圧が、Q10(Q20)を通る電流制限値を決定する。基板(Sub)からS1(S2)への経路にR11(R21)の値を超える付加インピーダンスが必要とされる場合、R10(R20)のための抵抗値をそれに応じて選ぶことができる。
【0020】
ツェナーダイオードZ10(Z20)は、Q10のためのゲート-ソース(Q20のためのゲート-ソース)にわたって印加される最大ゲート電圧を制限するために使用される。少なくとも一部の実施形態において、ツェナーダイオードは、Q10(Q20)ゲート閾値電圧より大きくかつ最大許容ゲート電圧より小さい調整電圧を有する。少なくとも一部の実施形態において、例えば、Q10(Q20)がJFETデバイスである場合、ツェナーダイオードは省略できる。
【0021】
Q10(Q20)ゲートは、Q30デバイスの逆のゲートG2(G1)から2つの抵抗器R12およびR13(R22およびR23)およびコンデンサC10(C20)を備えるゲート駆動ネットワークによって駆動される。抵抗器R12(R22)の値は、Q10(Q20)に対する静的ゲート駆動電流を決定するために選ばれる一方、抵抗器R13(R23)の値およびコンデンサC10(C20)の値は、Q10(Q20)に対する動的ゲート駆動電流を決定するために選ばれる。
【0022】
Q30デバイスがオフにされると、Q30デバイスが遮断する電圧極性が、トランジスタQ10またはQ20のどちらがオンにされるかを決定する。例えば、S1(S2)上の電圧がS2(S1)上の電圧より大きいとき(ければ)、トランジスタQ20(Q10)がオンにされることになり、基板(Sub)をS2(S1)に接続する。Q30デバイスがオフである間、Q10(Q20)に対するゲート駆動電流は、静的ゲート抵抗器R12(R22)によって提供され、そしてQ30デバイスによって遮断されている電圧が数百ボルトもの高さであり得るので、静的ゲート駆動抵抗器R12(R22)の値は、ゲート駆動電力散逸を低減させるために高インピーダンス(例えば、数十万オーム)であることができる。
【0023】
同様に、Q30デバイスがオンにされると、トランジスタQ10およびQ20の両方ともオンにされる。そのため、基板電圧管理回路300は、基板(Sub)をS1にもS2にも接続し、例えば、Q30デバイスがS1をS2に接続するので、S1およびS2における電圧は等しい。追加的に、Q30デバイスがオンである間、Q10(Q20)に対するゲート駆動電流は、静的ゲート抵抗器R12(R22)によって提供される。静的ゲート駆動抵抗器R12(R22)の抵抗が高インピーダンス(例えば、数十万オーム)であり、かつゲート駆動電圧が典型的に約5Vであるので、Q10およびQ20に提供されるゲート電流は非常に低いであろう。
【0024】
同じく、Q30デバイスが状態を動的に、例えばオンからオフにまたはオフからオンに変化させているとき、Q30デバイスのS1~S2にわたる変化する電圧(dv/dt)は、Q10(Q20)に対するより高いゲート電流が発生されることを可能にする。より高いゲート電流は、Q30デバイスにわたる電圧の変化率(S1~S2 dv/dt)ならびに動的ゲート駆動抵抗器R13(R23)および動的ゲート駆動コンデンサC10(C20)の値によって決定できる。
【0025】
動作において、基板(Sub)電圧は、動的スイッチング条件の間に、例えば、Q30デバイスがオンになるかオフになるかのときに基板(Sub)からS1(S2)に流れる容量性変位電流によって駆動される。そのため、動的ゲート駆動回路R13およびC10(R23およびC20)は、Q10(Q20)に対するより多くの(例えば、最多量の)実際に機能するゲート駆動電流を効果的に提供する。静的ゲート駆動抵抗器R12(R22)は、Q10(Q20)に対するより少量の(例えば、最少量の)実際に機能するゲート駆動電流を提供する。
【0026】
少なくとも一部の実施形態において、基板電圧管理回路300は、ディスクリート部品を使用して実装(形成)できる、または基板電圧管理回路300は、半導体チップに(例えば、シリコン層かGaN層かに)集積できる。基板電圧管理回路300がGaN層に集積される場合、基板電圧管理回路300全体をQ30デバイスと同じダイへモノリシックに集積できる。
【0027】
図4は、本開示の1つまたは複数の実施形態に従う基板電圧管理回路400の代替の実施形態を描く。基板電圧管理回路400は、基板電圧管理回路300と実質的に同一である。したがって、基板電圧管理回路400に特有である特徴だけが本明細書に記載される。基板電圧管理回路400は、6つの抵抗器(R10~R12およびR20~R22)、2つのコンデンサ(C10およびC20)、2つのツェナーダイオード(Z10およびZ20)、2つのダイオード(D10およびD20)および2つのトランジスタ(Q10およびQ20)を備えることができる。基板電圧管理回路は、第1の回路402および第2の回路404(例えば、2つの同一の回路)を備える。
【0028】
Q30デバイスの基板(Sub)は、Q10(Q20)のゲート(G)をオンにすることによってS1(S2)に接続できる。Q10(Q20)は、2つの抵抗器R10(R20)およびR11(R21)を介してQ30の基板(Sub)をS1(S2)に接続する。これらの2つの抵抗器の総インピーダンスR10+R11(R20+R21)は、基板(Sub)をS1(S2)に接続するインピーダンスを決定する。抵抗器R11(R21)は、Q10(Q20)を流れるピーク電流が設定されるのを許容できる電流制限機能を容易にしており、これは、トランジスタQ10(Q20)をシュートスルー条件(Q30デバイスが実際には導通していないときにQ10およびQ20が両方共にオンである場合)に起因し得る過電流状況から保護するために使用できる。電流制限機能を追加することで、Q30デバイスのための動的状態変化条件(例えば、オンからオフ、またはオフからオン)の間に短時間のシュートスルー条件を引き起こし得るノイズに対して基板電圧管理回路400をロバストかつ免疫にする。
【0029】
R11(R21)の抵抗で割られたQ10(Q20)のためのゲート閾値電圧が、Q10(Q20)を通る電流制限値を決定する。基板(Sub)からS1(S2)への経路にR11(R21)の値を超える付加インピーダンスが必要とされる場合、R10(R20)のための抵抗値をそれに応じて選ぶことができる。
【0030】
ツェナーダイオードZ10(Z20)は、Q10のためのゲート-ソース(Q20のためのゲート-ソース)にわたって印加される最大ゲート電圧を制限するために使用される。少なくとも一部の実施形態において、ツェナーダイオードは、Q10(Q20)ゲート閾値電圧より大きくかつ最大許容ゲート電圧より小さい調整電圧を有する。少なくとも一部の実施形態において、例えば、Q10(Q20)がJFETデバイスである場合、ツェナーダイオードは省略できる。
【0031】
Q10(Q20)ゲートは、Q30デバイスの逆のS2(S1)から抵抗器R12(R22)、ダイオードD10(D20)およびコンデンサC10(C20)から成るゲート駆動ネットワークによって駆動される。抵抗器R12(R22)の値は、Q10(Q20)に対する静的ゲート駆動電流を決定するために選ばれる一方、コンデンサC10(C20)の値は、一旦Q30デバイスがオンにされるとQ10(Q20)がオンにされたままであろう時間を決定するために選ばれる。
【0032】
GaN HEMT Q30デバイスがオフにされると、Q30が遮断する電圧極性が、トランジスタQ10またはQ20のどちらがオンにされるかを決定する。S1(S2)上の電圧がS2(S1)上の電圧より大きいとき(ければ)、トランジスタQ20(Q10)がオンにされることになり、基板(Sub)をS2(S1)に接続するであろう。Q30デバイスがオフである間、Q10(Q20)に対するゲート駆動電流は、静的ゲート抵抗器R12(R22)によって提供され、そしてQ30デバイスによって遮断されている電圧が数百ボルトもの高さであり得るので、静的ゲート駆動抵抗器R12(R22)の値は、ゲート駆動電力散逸を低減させるために高インピーダンス(例えば、数十万オーム)であることができる。
【0033】
同様に、Q30デバイスがオンになり始めるとき、前にオンにされた(例えば、Q30オフ状態中)トランジスタQ10(またはQ20)は、コンデンサC10(またはC20)上の電荷のためオンにされたままであり、これにより、基板電圧管理回路400が基板(Sub)を正しいソース接続S1(またはS2)に接続することを保証する。Q30デバイスが完全にオンになると、コンデンサC10(C20)上の電荷は、ダイオードD10(D20)を通して放電されることになり、-そのような時にQ10もQ20もオンにされることはなく、基板(Sub)はS1にもS2にも能動的に固定されることはないが、しかしながら、基板(Sub)の電圧は、Q30デバイスが最終的にオンになる前に正しいソース電圧にバイアスされることになる。
【0034】
Q30デバイスがオンにされたままである残りの期間中、基板(Sub)を負値にバイアスしようとする或る容量結合変位電流がある場合、トランジスタQ10およびQ20にゲート-ソース電圧が確立され、次いで、トランジスタQ10およびQ20をオンにして基板(Sub)をソースS1およびS2に接続する。したがって、基板(Sub)電圧は、トランジスタQ10およびQ20のためのゲート閾値電圧(例えば、約4V)より小さいいかなる電位にもバイアスすることはできない。
【0035】
図5は、本開示の1つまたは複数の代替の実施形態に従う基板電圧管理を行う方法500のフローチャートである。方法500は、基板電圧管理回路300か基板電圧管理回路400かを使用して実装できる。例示目的で、方法500は、基板電圧管理回路300を使用して本明細書に記載される。
【0036】
例えば、502で、方法500は、第1のソースおよび第2のソースを備える双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタを動作させるステップを含む。例えば、少なくとも一部の実施形態において、S1およびS2を備えるQ30デバイスは、スイッチモード電力変換器のDC側に結合される、PVモジュールまたはバッテリなどの、DC部品、および電力変換システムの動作を制御するコントローラを備える電力変換システムと併せて使用されているときに動作することができる。1つのそのような電力変換システムが、2022年6月16日出願の、所有者共通の米国特許出願第17/842,459号に開示されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
次に、504で、方法500は、第1のソースに接続される第1の回路および第2のソースに接続される第2の回路を備える能動基板電圧管理回路を、双方向窒化ガリウム高電子移動度トランジスタが動作中であるときに、基板に印加されるバイアス電圧を制御するために第1の回路または第2の回路のうちの一方が、それぞれ、基板に第1のソースをまたは基板に第2のソースをのうちの一方を接続するように、動作させるステップを含む。
【0038】
例えば、少なくとも一部の実施形態において、上記したように、Q30デバイスがオフにされると、Q30デバイスが遮断する電圧極性が、トランジスタQ10またはQ20のどちらがオンにされるかを決定する。例えば、S1(S2)上の電圧がS2(S1)上の電圧より大きいとき(ければ)、トランジスタQ20(Q10)がオンにされることになり、基板(Sub)をS2(S1)に接続する。Q30デバイスがオフである間、Q10(Q20)に対するゲート駆動電流は、静的ゲート抵抗器R12(R22)によって提供され、そしてQ30デバイスによって遮断されている電圧が数百ボルトもの高さであり得るので、静的ゲート駆動抵抗器R12(R22)の値は、ゲート駆動電力散逸を低減させるために高インピーダンス(例えば、数十万オーム)であることができる。
【0039】
同様に、Q30デバイスがオンにされると、トランジスタQ10およびQ20の両方ともオンにされる。そのため、基板電圧管理回路300は、基板(Sub)をS1にもS2にも接続し、例えば、Q30デバイスがS1をS2に接続するので、S1およびS2における電圧は等しい。追加的に、Q30デバイスがオンである間、Q10(Q20)に対するゲート駆動電流は、静的ゲート抵抗器R12(R22)によって提供される。静的ゲート駆動抵抗器R12(R22)の抵抗が高インピーダンス(例えば、数十万オーム)であり、かつゲート駆動電圧が典型的に約5Vであるので、Q10およびQ20に提供されるゲート電流は非常に低いであろう。
【0040】
同じく、Q30デバイスが状態を動的に、例えばオンからオフにまたはオフからオンに変化させているとき、Q30デバイスのS1~S2にわたる変化する電圧(dv/dt)は、Q10(Q20)に対するより高いゲート電流が発生されることを可能にする。より高いゲート電流は、Q30デバイスにわたる電圧の変化率(S1~S2 dv/dt)ならびに動的ゲート駆動抵抗器R13(R23)および動的ゲート駆動コンデンサC10(C20)の値によって決定できる。更に上記したように、基板(Sub)電圧は、動的スイッチング条件の間に、例えば、Q30デバイスがオンになるかオフになるかのときに基板(Sub)からS1(S2)に流れる容量性変位電流によって駆動される。そのため、動的ゲート駆動回路R13およびC10(R23およびC20)は、Q10(Q20)に対するより多くの(例えば、最多量の)実際に機能するゲート駆動電流を効果的に提供する。静的ゲート駆動抵抗器R12(R22)は、Q10(Q20)に対するより少量の(例えば、最少量の)実際に機能するゲート駆動電流を提供する。
【0041】
追加的に、504で、基板電圧管理回路400が使用されるとき、Q30デバイスが完全にオンになると、コンデンサC10(C20)上の電荷は、ダイオードD10(D20)を通して放電されることになり、-そのような時にQ10もQ20もオンにされることはなく、基板(Sub)はS1にもS2にも能動的に固定されることはないが、しかしながら、基板(Sub)の電圧は、Q30デバイスが最終的にオンになる前に正しいソース電圧にバイアスされることになる。
【0042】
本開示の実施形態の上記の説明は、記載されるような様々な機能を行う幾つかの素子、デバイス、回路および/またはアセンブリを含む。これらの素子、デバイス、回路および/またはアセンブリは、それらのそれぞれ記載される機能を行うための手段の例証的な実装例である。
【0043】
上記が本開示の実施形態に向けられる一方、本開示の他のおよび更なる実施形態が、その基本的な範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は、以下に続く請求項によって定められる。
【符号の説明】
【0044】
300 基板電圧管理回路
302 第1の回路
304 第2の回路
400 基板電圧管理回路
402 第1の回路
404 第2の回路
C10、C20 コンデンサ
D10、D20 ダイオード
Q10、Q20 トランジスタ
R10~R13、R20~R23 抵抗器
Z10、Z20 ツェナーダイオード
【国際調査報告】