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特表2024-523603エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの精製における使用のためのクロマトグラフィー媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの精製における使用のためのクロマトグラフィー媒体
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/18 20060101AFI20240621BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240621BHJP
【FI】
C07K1/18
C12N7/00
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579841
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022067633
(87)【国際公開番号】W WO2023274989
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】2109610.2
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】サイティバ・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-リュク・マロイセル
(72)【発明者】
【氏名】オーサ・ハーグナー・マクワーター
(72)【発明者】
【氏名】オラ・リンド
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ルルー
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AC20
4B065BD14
4B065CA60
4H045AA30
4H045BA50
4H045CA01
4H045CA40
4H045EA60
4H045GA23
(57)【要約】
10~500μmol/mLのイオン容量に対する少なくとも1つの弱アニオン交換基を生成するジアミン官能基を含むリガンドを用いて官能化されている支持体材料を含む、フィードからのエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの精製における使用のための、アニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10~500μmol/mLのイオン容量に対する少なくとも1つの弱アニオン交換基を生成するジアミン官能基を含むリガンドを用いて官能化されている支持体材料を含む、フィードからのエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの精製における使用のための、アニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)。
【請求項2】
弱アニオン交換基が、6~10のpHで正に荷電するか又は部分的に正に荷電する、請求項1に記載のアニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)。
【請求項3】
リガンド又はリガンドの一部分が、式:
【化1】
[式中、
Xは、H、OH又はC1~3基から選択され、且つ
R1、R2、R3及びR4は、独立して、H、及びC1~3基から選択され、
式中、C3基は、直鎖又は分枝鎖であり、
式中、C1~3基は、OH、O-C1~2、S-C1~2、NH、NHR、NR2から独立して選択される基を含み、
式中、Rは、H及びC1~3基から選択される]
により記載される、請求項1又は2に記載のアニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)。
【請求項4】
リガンドが、N,N,N'-トリエチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N,N'-ジメチルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン、2-メチル-1,3-プロパンジアミン及びN,N-ジエチルエチレンジアミンから選択される、請求項3に記載のアニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)。
【請求項5】
リガンドがN,N-ジエチルエチレンジアミンである、請求項1から4のいずれか一項に記載のアニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)。
【請求項6】
支持体材料が、モノリス、メンブレン、多孔質ビーズ、非多孔質ビーズ、磁性ビーズ、又は膨張床媒体から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のアニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)。
【請求項7】
支持体材料が、0.1~2.0μmの有効細孔径を有する不織繊維性材料である、請求項1から6のいずれか一項に記載のアニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)。
【請求項8】
リガンドが、多糖構造及びポリマー構造から選択される延長基を介して、支持体材料に連結される、請求項1から7のいずれか一項に記載のアニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のアニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)を含む、アニオン交換クロマトグラフィー(2)。
【請求項10】
エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソーム(3)及び1つ又は複数の不純物を含む溶液を取得する工程(200)、
6~10のpHで請求項1から8のいずれか一項に記載のアニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)へと前記溶液を添加する工程(201)、
アニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)を最大で0.65Mの塩濃度を有する溶出バッファーと接触させることにより、アニオン交換クロマトグラフィー媒体(1)から封入型ウイルス粒子又はエキソソーム(3)を溶出させる工程(202)、
エンベロープ型ウイルス粒子(3)又はエキソソームを含有するそのように形成された溶出液を回収する工程(204)
を含む、フィードからエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソーム(3)を精製する方法。
【請求項11】
溶出工程(202)後に、マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂へと前記溶出液を添加する工程(203)を更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィードからのエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの精製における使用のためのアニオン交換クロマトグラフィー媒体に関する。このアニオン交換クロマトグラフィー媒体を用いるフィードからのエンベロープ型ウイルス粒子の精製方法を提供することもまた目的である。
【背景技術】
【0002】
レンチウイルス(LV)は、レトロウイルスとして分類され、逆転写酵素と共に一本鎖RNAゲノムを有する。レンチウイルスは、外側細胞膜表面中の宿主細胞受容体に対する親和性を有するリガンドとして作用するグリコシル化タンパク質を含むウイルスエンベロープからなる。ウイルスは、細胞への侵入時にウイルス遺伝材料の転写を行う。ウイルスゲノムは、宿主細胞ゲノムへのウイルス配列の組み込みを促進する特異的タンパク質をコードするRNA配列からなる。
【0003】
ウイルスは、宿主細胞表面CD4糖タンパク質へのドッキングにより宿主細胞に感染する。続いて、ウイルスは、宿主細胞の細胞質へと材料を注入し、ここで(were)逆転写酵素がウイルスRNAの逆転写を生じ、それによりウイルスDNAゲノムが生成され、これが宿主細胞の核へと送られ、ここで(were)宿主細胞ゲノム中に組み込まれる。宿主細胞は、ウイルスRNAの転写及びウイルスタンパク質の発現を開始し、ウイルスタンパク質がカプシドを形成する。続いて、LV RNA及びウイルスタンパク質がアセンブルし、新規に形成されたビリオンが、十分に生成された時点で宿主細胞から離れる。
【0004】
遺伝子療法においては、ウイルスは、細胞へと有益な遺伝子を挿入するためのベクターとして作用するように改変される。LVをウイルスベクターとして用いる利点は、有糸分裂中である細胞にのみ侵入する他のレトロウイルスとは異なり、LVが分裂細胞及び非分裂細胞中の核エンベロープに侵入できることである。成人においては多数の細胞タイプは分裂せず、細胞へと遺伝材料を移入するためにはLVが唯一の選択肢でありうる。細胞及び遺伝子療法において用いられる遺伝子改変型LVは、糖尿病、前立腺癌、慢性肉芽腫性疾患及び血管疾患等の疾患を治癒させるための有望な候補であると証明されてきた。したがって、それ自体は複製することができないので、細胞ゲノム中に永続的に組み込まれるようにウイルスゲノムを改変することが重要である。遺伝子改変型レンチウイルスによるヒト細胞の形質導入は、大多数はヒトT細胞のトランスフェクションによりエクスビボで為される。
【0005】
レンチウイルスを生成するために、数種類のプラスミドがいわゆるパッケージング細胞株へとトランスフェクションされる。一般的にはパッケージングプラスミドと称される1つ又は複数のプラスミドは、カプシド及び逆転写酵素等のビリオンタンパク質をコードする。別のプラスミドは、ベクターにより送達される遺伝材料を含む。これが転写されて一本鎖RNAウイルスゲノムを生成し、ψ(プサイ)配列の存在によりマークされる。この配列は、ゲノムをビリオンへとパッケージングするために用いられる。遺伝子療法においてレンチウイルスを用いるために、宿主細胞タンパク質及びDNA等の細胞不純物並びにトランスフェクション後の過剰なプラスミドからビリオンを精製することが必要である。通常は、レンチウイルスを生成する回収された宿主細胞がヌクレアーゼ処理され、承認されるレベルまで不純物のレベルを低減させるために、ノーマルフロー微小ろ過、限外ろ過及び透析ろ過等の数種類のろ過技術を用いて、レンチウイルスが精製される。
【0006】
レンチウイルスは不安定且つせん断力、塩等のバッファー成分に対して感受性であり、室温で迅速に分解するので、今日のレンチウイルスの下流精製方法は、多くの場合に感染性ウイルスの低い回収率と同義であり、時間がかかる複数ステップ方法は有益でない。LVはまた、加工溶液の7.0~7.4の非常に狭いpH範囲(Kinetic Analyses of Stability of Simple and Complex Retroviral Vectors、F. Higashikawaら、Virology 280、124~131頁(2001))、及び導電率ウインドウ(<0.2M NaCl) (Process development of lentiviral vector expression, purification and formulation for gene therapy applications、博士論文、Sara Nilsson、UCL、2016)でのみ安定であり、このことは、最終的な製剤中の感染性LVの高収率を得るための下流精製の方法を困難にする。
【0007】
それ故、フィードからレンチウイルス粒子及びまた他の封入型ウイルス粒子を精製する改善されたか又は少なくとも代替的な方法に対する必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kinetic Analyses of Stability of Simple and Complex Retroviral Vectors、F. Higashikawaら、Virology 280、124~131頁(2001)
【非特許文献2】Process development of lentiviral vector expression, purification and formulation for gene therapy applications、博士論文、Sara Nilsson、UCL、2016
【発明の概要】
【0009】
本開示の目的は、エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの精製における使用のためのアニオン交換クロマトグラフィー媒体を提供することである。このアニオン交換クロマトグラフィー媒体を用いてフィードからエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームを精製する方法を提供することもまた目的である。
【0010】
本発明は、添付の独立特許請求項により規定される。非限定的な実施形態が、従属特許請求項、添付の図面及び以下の説明から現れる。
【0011】
第1の態様に従えば、10~500μmol/mLのイオン容量に対する少なくとも1つの弱アニオン交換基を生成するジアミン官能基を含むリガンドを用いて官能化されている支持体材料を含む、フィードからのエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの精製における使用のためのアニオン交換クロマトグラフィー媒体が提供される。
【0012】
アニオン交換クロマトグラフィー媒体は、エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの精製のために用いられうる。エンベロープ型ウイルスは、宿主細胞から出芽し、ウイルス糖タンパク質を含む細胞膜に由来する外層脂質二重層を有する。エンベロープ型粒子内部には、ウイルス遺伝材料を含むタンパク質カプシドがある。エンベロープは、宿主細胞の感染に対して極めて重要である(宿主細胞膜に結合及び融合する)が、例えば、せん断力、塩、pH及び界面活性剤に対して非常に感受性である。生産及び精製中の条件は、ウイルスの感染性を維持し、且つ機能的感染性ウイルスの回収率を最大化するために重要である。そのようなエンベロープ型ウイルスの例は、ヘルペスウイルス、オックスウイルス(oxvirus)、ヘパドナウイルス及びアスファウイルス科等のDNAウイルス;フラビウイルス、アルファウイルス、トガウイルス、コロナウイルス、D型肝炎、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、ブニヤウイルス及びフィロウイルス等のRNAウイルス;並びにレンチウイルス等のレトロウイルスである。
【0013】
支持体材料は、10~500μmol/mL、又は50~300μmol/mL若しくは100~300μmol/mLの範囲のイオン容量(媒体1mL当たりの荷電官能基の数(μmol/mL))へとリガンドを用いて官能化される。これらの種類のエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームに関して、公知の親和性リガンドは存在しない。ウイルスに害を及ぼす可能性がある過酷な溶出条件の一般的な必要条件に起因して、エンベロープ型ウイルスに対する親和性リガンドの開発は困難である。イオン交換捕捉溶液は、比較的穏やかな溶出条件を可能にし、且つ比較的高い回収率を伴う改善された方法を生じるであろう。
【0014】
少なくとも1つの弱アニオン交換基は、マルチモーダルな弱アニオン交換基を含むことがあり、すなわち、アニオン交換基は、結合対象である化合物(すなわち、エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソーム)と相互作用する少なくとも2箇所の、異なるが協調的な部位を提供する。例えば、これらの部位のうちの1つは、リガンドと目的の基質との間での誘因性タイプの電荷間相互作用を与えうる。他の部位が、第2の局所的電荷を導入することにより、又は結合容量に影響を及ぼす溶媒和水の局所的な量を増加させることにより、結合性に寄与しうる。
【0015】
弱アニオン交換基は、6~10のpHで正に荷電するか又は部分的に正に荷電することができる。
【0016】
そのような正に荷電したか又は部分的に正に荷電した弱アニオン交換基は、レンチウイルス粒子等の中性pHで負に荷電するエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームを引き付けることができる。
【0017】
弱アニオン交換基は、6~10又は、6~9.5、6~9又は6~8のpHで正に荷電するか又は部分的に正に荷電されうる。
【0018】
弱アニオン交換基とは、PIでは中性電荷(同量の+及び-)を有する、完全に荷電している状態から荷電していない状態までのpHに応じた勾配があることを意味する。第4級アミンに基づく強アニオン交換基は、対照的に、常に荷電している。第4級アミンに基づかない略全ての他のアニオン交換基は、弱性であり、すなわち、用いられるpHの合理的な範囲(例えば、pH2~11等)内で電荷が異なる(且つゼロでありうる)。
【0019】
リガンド又はリガンドの一部分は、以下の式により記載することができる:
【0020】
【化1】
【0021】
式中、Xは、H、OH又はC1~3基から選択され、且つ
R1、R2、R3及びR4は、独立して、H、及びC1~3基から選択され、
式中、C3基は、直鎖又は分枝鎖であり、
式中、C1~3基は、独立して、OH、O-C1~2、S-C1~2、NH、NHR、NR2から選択される基を含み、
式中、Rは、H及びC1~3基から選択される。
【0022】
リガンド又はリガンドの一部分は、上記の式により記載されうる。このことは、ジアミンリガンドが、ポリマー等のより大きな構造の一部分を構成しうることを意味する。
【0023】
リガンド又はリガンドの一部分は、例えば、2-クロロ-N,N-ジエチルエチルアミン(DEAE)、2-クロロ-N,N-ジエチルエチルアミン、2-クロロエチルアミン、3-クロロプロピルアミン、2-クロロ-N,N-ジメチルエチルアミン、3-クロロ-N-メチルプロパン-1-アミン等の脱離基を含むより低分子量のアミン化学薬品との固体支持体の反応により生成される、より大きな構造の一部分でありうる。
【0024】
上記の式により記載される少なくとも1つの弱アニオン交換基を生成するジアミン官能基を含むリガンド又はリガンドの一部分において、2個のアミンは2~4個の炭素原子により隔てられてよく、各アミン基は2個のR基により置換されていることができ、2個のR基は、H及びアルキル基C1~4から選択されえ、且つ分岐鎖であり且つ/又はヒドロキシル、アミン、エーテル及びチオエーテル等であり、これらの後者の基は3~8原子に制限される他の基により置換されていることもできる。
【0025】
上記の式により記載されるリガンドは、N,N,N'-トリエチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N,N'-ジメチルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン、2-メチル-1,3-プロパンジアミン及びN,N-ジエチルエチレンジアミンから選択されうる。
【0026】
支持体材料は、モノリス、メンブレン、多孔質ビーズ、非多孔質ビーズ、磁性ビーズ、又は膨張床媒体から選択されうる。
【0027】
1~120μm、又は10~120μmの直径を有するビーズ等の、様々なビーズサイズのビーズを用いることができる。例えば、ビーズは、アガロース製でありうる。
【0028】
モノリスは、10~4000nmの範囲の直径を有するチャンネルの高度に相互連結されたネットワークにより特徴付けられる、単一片の多孔質材料である。
【0029】
メンブレン材料は、無機-有機(例えば、ガラス繊維上にコーティングされたアルコキシシラン)、アルミナメンブレン及び有機材料(すなわち、セルロース及びその誘導体、再生セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリビニリデン等)でありうる。
【0030】
支持体材料は、織物材料でありうる。
【0031】
支持体材料は、0.1~2.0μmの有効細孔径を有する不織繊維性材料でありうる。
【0032】
支持体材料は、例えば、0.1~2.0の有効細孔径を有する、セルロース等に由来する繊維を含む不織材料でありうる。クロマトグラフィー支持体材料は、灌流に基づくクロマトグラフィーマトリックスを含むことができるであろう。当該灌流に基づくクロマトグラフィーマトリックスは、繊維性基材でありうる。当該繊維性基材は、エレクトロスピニングポリマー性繊維又はセルロース繊維、任意により不織繊維に基づくことができる。つまり、繊維性基材は、繊維性不織ポリマーマトリックスでありうる。当該繊維性基材に含まれる繊維は、200~800nm、200~400nm又は300~400nm等の10~1000nmの断面直径を有する。そのような繊維性基材は、Cytiva社からのHiTrap Fibro単位中に見出されうる。
【0033】
リガンドは、多糖構造及びポリマー構造から選択される延長基を介して、支持体材料に連結されうる。
【0034】
延長基は、例えば、デキストラン(dextrane)、アクリルアミド又はポリグリシドールでありうる。デキストランが延長剤として用いられる場合、5000~2Mダルトンの分子量範囲でありうる。用いられる延長基は、支持体材料及び支持体材料へとどのリガンドが固相化/連結するかによって決まる。
【0035】
第2の態様に従えば、上記のアニオン交換クロマトグラフィー媒体を含むアニオン交換クロマトグラフィーが提供される。
【0036】
第3の態様に従えば、エンベロープ型ウイルス粒子及び1つ又は複数の不純物を含む溶液を取得するために、6~8のpHで上記のアニオン交換クロマトグラフィー媒体へと溶液を添加する工程、アニオン交換クロマトグラフィー媒体を最大0.65Mの塩濃度を有する溶出バッファーと接触させる工程、及びその後に、エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームを含有するそのように形成された溶出液を回収する工程により、アニオン交換クロマトグラフィー媒体から封入型ウイルス粒子又はエキソソームを溶出する工程を含む、フィードからエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームを精製する方法が提供される。
【0037】
エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームを含むフィードは、例えば、HEK 293細胞(ヒト胎児腎臓)等の細胞株により生成されうる。フィードは、前処理され、清澄化され、その後、アニオン交換クロマトグラフィー媒体へと適用されていることができる。そのような清澄化回収物中では、固体の量が低減されており、1つ又は複数の不純物は、宿主細胞タンパク質及びDNA等の可溶性不純物でありうる。
【0038】
溶出バッファーは、最大0.65Mの塩濃度を有しうる。エンベロープ型ウイルス及びエキソソームは、比較的高い導電率では、特に0.65M超の濃度では低減された安定性を有するので、この比較的低い塩濃度が用いられる。一実施形態では、塩濃度は、最大0.45Mである。
【0039】
溶出工程において、スクロースを含有するバッファー中での導電率を低下させるための直接的な希釈は、ウイルスを安定化し、それにより回収率を改善することができるであろう。
【0040】
スクロース等の安定化剤を、エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの安定性を改善するために添加することができる。安定化剤は、全ての移動相及び製剤化溶液中に添加されうる。
【0041】
典型的には、繊維性不織ポリマーマトリックス等の灌流に基づく繊維性基材である支持体材料を有するアニオン交換クロマトグラフィー媒体からのエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの溶出は、最低で数秒間の滞留時間、すなわち、60MV/分、及び必要な場合に最高で数分間の滞留時間(最大6分間)、0.2MV/分の流速で行うことができる。そのような繊維性支持体材料に対する最適な滞留時間は、5~20MV/分である。樹脂に関して、典型的な滞留時間は1~8分間であり、十分な滞留時間は、多くの場合に、4分間後に取得される。
【0042】
上記の方法は、溶出工程後に、マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂へと溶出液を添加する工程を更に含むことができる。
【0043】
アニオン交換体から標的ウイルス粒子を溶出する場合、溶出液中に残留不純物がまだあるであろう。アニオン交換体後に直列でマルチモーダルクロマトグラフカラムを適用することにより、残留不純物が吸着される場合がある。一例では、700kDa未満の不純物を吸着させるために、Capto Core 700を用いることができる。他のマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂を、400kDa又は1000kDa等の他のカットオフと共に用いることができる。不純物が樹脂細孔へと拡散することを可能にするために、この工程において流速を低下させるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】封入型ウイルス粒子又はエキソソーム精製に関するアニオン交換クロマトグラフを示す図である。
図2】フィードからエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームを精製する方法を模式的に示す図である。方法は、図1に示されるアニオン交換クロマトグラフィー媒体へとエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソーム及び1つ又は複数の不純物を含む溶液を添加することを含む。
図3a】4種類の異なる様式で官能化された、アニオン交換クロマトグラフィー媒体に対する支持体材料であるセルロースの繊維性不織ポリマー材料Fibroを示す図である。
図3b】4種類の異なる様式で官能化された、アニオン交換クロマトグラフィー媒体に対する支持体材料であるセルロースの繊維性不織ポリマー材料Fibroを示す図である。
図3c】4種類の異なる様式で官能化された、アニオン交換クロマトグラフィー媒体に対する支持体材料であるセルロースの繊維性不織ポリマー材料Fibroを示す図である。
図3d】4種類の異なる様式で官能化された、アニオン交換クロマトグラフィー媒体に対する支持体材料であるセルロースの繊維性不織ポリマー材料Fibroを示す図である。
図4a】ヒドロキシル反応性基を有する架橋された繊維を含む不織ポリマーマトリックスを2-クロロ-n,n-ジエチルアミン塩酸塩と反応させて、ジエチルアミノエチル基を有する官能化マトリックスを形成させる、第4級アミン基を含むアニオン交換クロマトグラフィー媒体を調製する反応スキームを示す図である。
図4b】ビニルスルホン反応性基を有する繊維を含む不織ポリマーマトリックスをN,N-ジエチルエチレンジアミンと反応させて、N,N-ジエチルエチレンジアミン基を有する官能化マトリックスを形成させる、第4級アミン基を含むアニオン交換クロマトグラフィー媒体を調製する反応スキームを示す図である。
図4c】マグネタイトアガロース粒子を最初にデキストランを用いて官能化し、その後、デキストラン上のヒドロキシル反応性基を2-クロロ-n,n-ジエチルアミン塩酸塩と反応させて、ジエチルアミノエチル基を有する官能化粒子を形成させる、第4級アミン基を含むアニオン交換クロマトグラフィー媒体を調製する反応スキームを示す図である。
図5a】漸増塩濃度を用いる段階溶出を用いる、アニオン交換クロマトグラフィー(chromatograpy)媒体としてFibro DEAE IC193を用いるレンチウイルスの捕捉を示す図である(縞模様パターンは感染回収率を示し、中実黒色バーは総ウイルス粒子(p24 ELISA)を示す)。
図5b】漸増塩濃度を用いる段階溶出を用いる、アニオン交換クロマトグラフィー(chromatograpy)媒体としてFibro DEAE IC207を用いるレンチウイルスの捕捉を示す図である(縞模様パターンは感染回収率を示し、中実黒色バーは総ウイルス粒子(p24 ELISA)を示す)。
図5c】それぞれ、図5a及び図5bのアニオン交換クロマトグラフィー材料を用いるレンチウイルス捕捉の再現性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、フィードからの封入型ウイルス粒子又はエキソソーム3の精製のためのアニオン交換クロマトグラフィー2を示す。アニオン交換クロマトグラフィー媒体1は、10~500μmol/mL、又は50~300μmol/mL若しくは100~300μmol/mLの範囲のイオン容量に対する少なくとも1つの弱アニオン交換基を生成するジアミン官能基を含むリガンドを用いて官能化されている支持体材料を含む。弱アニオン交換基は、6~10のpHで正に荷電しているか又は部分的に正に荷電していることができる。
本発明は、DEAE、DAX及びQリガンド等であるがいずれかのAIEXリガンドに対して一般的に適用可能であるべきであるAIEXリガンドを用いて官能化されたFibroメンブレンの小さな動的結合容量を決定するための方法を用いる。25mm直径メンブレンディスクをメンブレンのクロマトグラフィーを可能にするために好適なメンブレンホルダーデバイスに連結し、サンプルポンプを装着したAKTA Explorer 10システムにかけた。
方法は、本質的には、添加されたHClが脱プロトン化された弱AIEXリガンドをプロトン化するか又は強AIEXリガンドに結合したOH-を中和及び置換する、導電率滴定である。タンパク質DBC法とは対照的に、ろ過通過物のUVシグナルではなく導電率シグナルが、AKTAシステムでモニタリングされる。方法は、以下の工程からなる:
1.AKTAシステム及びメンブレン(PEEKデバイスに装着された)のリンス工程
2.過剰NaOHを用いるメンブレンのロード工程
3.MQ水を用いるメンブレンのリンス工程
4.バイパスでのHCl溶液のリンス工程
5.メンブレンにHClをロードする工程及び導電率急上昇のモニタリングする工程
6.メンブレンに過剰NaOHを再ロードする工程(任意的、質量による標準化のための準備)
7.MQ水を用いるメンブレンのリンス工程。
各メンブレンバッチが、三重反復ディスクを用いて分析される。標準化が、ディスク体積により、及び任意によりディスク乾燥質量を介して行われる。
【0046】
支持体材料は、モノリス、メンブレン、多孔質ビーズ、非多孔質ビーズ、磁性ビーズ、又は膨張床媒体から選択されうる。
【0047】
図2においては、フィードからエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームを精製する方法が模式的に示される。本方法は、エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソーム及び1つ又は複数の不純物を含む溶液、すなわちフィードを取得すること(200)を含む。溶液は、6~10のpHのアニオン交換クロマトグラフィー媒体1に添加され(201)、その後、アニオン交換クロマトグラフィー媒体1を最大で0.65Mの塩濃度を有する溶出バッファーと接触させる工程、及びエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームを含有するそのようにして形成された溶出液を回収する工程(204)により、封入型ウイルス粒子又はエキソソームが、アニオン交換クロマトグラフィー媒体1から溶出される(202)。溶出工程202後、いずれかの残留不純物を除去するために、溶出液をマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂に添加(203)することができる。
【0048】
以下の実験セクションにおいて、レンチウイルス粒子を精製する場合の方法及び官能化支持体材料の具体例が、示され且つ議論される。
【0049】
実験
レンチウイルスフィード材料
清澄化LVV GFP(緑色蛍光タンパク質をコードするレンチウイルスベクター)(40mLアリコートで-80℃冷凍庫において保存)を、3L Biofloバイオリアクターにおいて生成し、LVVをHEK 293細胞において生成し、ベンゾナーゼ処理し、ノーマルフローろ過し、0.2μmの最小カットオフを有する連続フィルターにより清澄化した。
【0050】
支持体材料
用いた支持体材料は、10層のエレクトロスピニング繊維層をシートへと積層することにより作製したセルロースの繊維性不織ポリマー材料(本明細書中、以下ではFibroと称される)であった。マグネタイトアガロース(セファロース)ビーズもまた、支持体材料として用いた。
【0051】
Fibro
グリシドールビニルスルホンセルロースメンブレン(Fibro-VS)の作製
32mm直径の50枚のレーザー切断セルロースアセテートディスクを、900mm×95mmの寸法の2枚の細目ポリプロピレンガーゼの間に置いた。ガーゼの上にエタノールを噴霧し、ディスクを完全に湿らせた。60mm直径の中空円筒形芯の周囲にガーゼをゆっくりと巻き付け、所定の位置で固定した。芯全体をビーカーに入れ、ディスクを蒸留水で洗浄した(4×600mL)。洗浄溶液を除去し、350mL 0.5M KOH溶液で置き換えた。KOH溶液を用いて撹拌しながらディスクを10分間処理し、その後、100mLグリシドールを添加した。反応媒体を、ディスク上で激しく2時間撹拌した。この時間後に、上清液を除去し、ガーゼ間で保持したディスクを、蒸留水を用いて洗浄し(4×600mL)、非汚染中間体を得て、これを次の工程のために更なる変更を加えずに用いた。
【0052】
その後、25枚のディスクをグリシドール(glydicol)工程から取り出し、上記と同様に設置した。新たな芯を、37.5g Na2CO3及び150mL MeCNを含有する500mL H2Oに入れた。100mLジビニルスルホンを60分間にわたって滴下添加しながら、混合物を激しく撹拌した。続いて、反応混合物を16時間にわたって激しく撹拌した。この時間後、上清液をデカントし、ガーゼ間で保持したディスクを、600mLアセトン:H2O(1:1)を用いて3回洗浄し、続いて、蒸留H2O(1×600mL)を用いて洗浄した。非汚染中間体を、次の工程のために更なる変更を加えずに用いた。
【0053】
FibroのDEAE(ジエチルアミノエチル)官能化(図3a)
以下のプロトコールを、DEAE官能化のために用いた:
【0054】
DEAEカップリング及びその後のビニルスルホン不活性化(図4aを参照されたい)
上記からの20ディスクのFibro-VSを、ポリプロピレン(PP)容器中で150mL DV20を用いて4回洗浄した。これに続いて、2g KOHを25mL脱イオン水に溶解させ、Fibro-VSディスクに30分間添加した。その後、1.9mL 2-(ジエチルアミノ)エチルクロリド塩酸塩(65%)を23mLのDV20と共に添加した。PP容器をパラフィルムによって密封し、軌道振盪器(約60rpm)上に置いた。反応を室温で16時間継続した。その後、150mL DV20を用いて6×20分間、ディスクを洗浄した。滴定は、14μmol/mLのイオン容量を与えた。
【0055】
不活性化溶液を調製した:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA*Na2*2H2O、61mg)及びリン酸水素二ナトリウム十二水和物(Na2HPO4*12H2O、5.7g)を脱イオン水(150mL)に添加した。5分間の撹拌後、チオグリセロール(12mL)を添加し、pHを8.3に調整した。
【0056】
12ディスクのFibro-VSを上記の不活性化溶液中に懸濁し、室温で16時間穏やかに撹拌した。その後、ディスクを、DV20を用いて3回洗浄し、1M NaClを用いて1回洗浄し、DV20を用いて3回洗浄した。各洗浄は、20分間の接触時間を伴い、150mLの溶液を用いて行った。
【0057】
ビニルスルホン不活性化及びそれに続くDEAEカップリング
不活性化を、上記の手順に従って行った。その後、12枚のディスクを、30℃で600mLビーカーに150mL DV20及び32g NaSO4と共に添加し、続いて13g KOHを添加した。温度を30℃まで上げ、異なる原型に対してそれぞれ6、12、15及び19mLの2-(ジエチルアミノ)エチルクロリド塩酸塩(65%溶液)を添加した。反応を19時間進行させた。その後、1M HCl溶液を用いて、反応物をpH約7まで中和した。続いて、ビーカー条件下で300mL DV20を用いて8回(20~30分間)、原型を洗浄した。滴定は、それぞれ、122、193、207及び244μmol/mLのイオン容量を与えた。
【0058】
FibroのN,N-ジエチルエチレンジアミン官能化(DAX(ジアミノ交換)Fibro)(図3b)
Fibro材料を、図4bに図示される通りに官能化した。ビニルスルホン反応性基を有する繊維をN,N-ジエチルエチレンジアミンと反応させ、N,N-ジエチルエチレンジアミン基を含む官能化マトリックスを形成させ、これがFibro DAX(ジミノ交換)材料を形成した。以下のプロトコールを、官能化のために用いた:
1) 水中1.5%
2) 水中3%
のN,N-ジエチルエチレンジアミンカップリング溶液を形成させた。
20ディスクのFibro-VSを、25mLのそれぞれのカップリング溶液と共に、容器に入れた。16時間、反応を行わせた。この時間後、原型を、150mL DI水を用いて洗浄し、軌道振盪器上に約20分間戻した。水洗浄プロセスを5回繰り返した。滴定は、それぞれ、169及び223μmol/mLのイオン容量を与えた。
Fibro DEAEに関する上記の手順に従って、不活性化を行った。
【0059】
FibroのN,N-ジメチルエチレンジアミン(DMEN)官能化(図3d)
20ディスクの洗浄済みFibro-VSシートを容器に入れた。milli-Q水中の3v/v% N,N-ジメチルエチレンジアミン(DMENリガンド)の溶液(24.26mL DV20中740μL DMENリガンド)を容器に添加し、軌道振盪器上に置いた。室温で19時間、反応を行わせた。その後、上清を廃棄し、150mL DI水を用いて置き換え、軌道振盪器上に20分間戻した。水洗浄プロセス方法を5回繰り返した。最後に、上記の手順に従って不活性化を行った。
滴定は、230μmol/mLのイオン容量を与えた。
【0060】
N,N-ジメチルエチルアミン(DMAE又はDMEA)を用いるFibroの官能化(図3c)
以下のプロトコールを、官能化のために用いた:
20ディスクの洗浄済みFibro-VSシートを、上記の手順に従って不活性化した。2-クロロ-N,N-ジメチルエチルアミン塩酸塩(DMEA)(16.252g)の65%溶液を、Na2SO4(31.96g、水性1.5M)と共にDV20(8.750g)中に溶解させることにより調製した。続いて、150mL DV20及びKOH(12.69g、1.5M、約pH13.3)が入ったビーカーに加えた。続いて、試薬溶液を、室温で軌道振盪器上に置かれる容器中の20枚の不活性化ディスクへと添加した。反応を、振盪しながら19時間継続した。続いて、1:1 HCl:DV20溶液を用いて、溶液をpH7へと中和した。続いて、原型を、DV20を用いて3回洗浄し、1M NaClを用いて3回洗浄し、最後にDV20を用いて2回洗浄した。各洗浄は、約20分間であった。滴定は、52μmol/mLのイオン容量を与えた。
【0061】
以下でAIEX(アニオン交換)Fibro材料と称される、形成された官能化支持体材料を、メンブレン支持体へ連結した。メンブレン直径は23mmであり、メンブレン体積は約0.35mLであった。
【0062】
マグネタイトアガロースに基づくビーズ
DEAEを用いて官能化されたマグネタイトアガロースに基づくビーズ(Mag)(Mag DEAE)
10gのMagSepharose 4FF(1×10GVのDV20)を、10倍体積のDV20を用いて洗浄し、排水ろ過し、3mL DV20及び1.8g(12.7mmol)硫酸ナトリウムと共にFalconチューブに添加した。チューブを振盪台に45分間入れた。その後、2.2mL NaOH 50%を添加し、チューブを更に10分間にわたって振盪した。続いて、1mLの2-クロロ-N,N-ジエチルエチルアミンを添加し、600rpmの回転を伴う振盪デバイス上で17時間、30℃で反応を行わせた。その後、樹脂を、6×1GV DV20、3×1GV 2M NaCl及び3×1GV DV20を用いて洗浄した。ゲルをCl濃度に関して滴定し、34μmol/mL樹脂のイオン容量を得た。上記と同じであるが、代わりに5mLの2-クロロ-N,N-ジエチルエチルアミンを用いる手順に従って、93μmol/mL樹脂のイオン容量を有する樹脂を得た。
【0063】
DEAEデキストランT40を用いて官能化されたマグネタイトアガロースに基づくビーズ(Mag)(Mag DEAEデキストラン)(図4c)
50gのMagSepharose 4FFを、10×1GVのDV20を用いて洗浄し、排水し、17mL DV20と共に250mL三首丸底瓶へと移し、約300rpmのオーバーヘッド撹拌機を伴う27℃水浴中に入れた。2分間後、5.5g(0.138モル)NaOHペレットをスラリーに添加した。15分間後、21.3mL(0.23モル)のエピクロロヒドリンを添加し、反応を2時間行わせた。続いて、洗浄液が中性pHに達するまで、DV20を用いて樹脂を洗浄した。
【0064】
45gのエポキシ活性化MagSepharoseを、デキストランT40溶液(20.5g、13mL脱イオン水)が入った250mL三首丸底瓶へと移した。反応物を、約120rpmのオーバーヘッド撹拌機と共に、40℃に置いた。1.5mLの脱イオン水を添加し、20分間の撹拌後、窒素気泡を溶液中で用いて、酸素気泡を追い出した。その後、2.5mLの50%NaOH及び100mg水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を系に添加し、18時間、反応を行わせた。
【0065】
DEAE MagSepharoseに関して記載されたものと同じ様式で、原型を合成した。ゲルをCl濃度に関して滴定し、143μmol/mL樹脂のイオン容量を得た。
【0066】
アニオン交換クロマトグラフィー
Fibro支持体材料
レンチウイルス粒子を精製する場合、上記の官能化支持体材料を、以下のアニオン交換クロマトグラフィー実験においてアニオン交換クロマトグラフィー媒体として用いた。table 1(表1)に、実験において用いた全てのAIEX Fibro支持体材料を列記する。
【0067】
【表1】
【0068】
溶出バッファー
table 1(表1)の全てのAIEX Fibro原型を、最初に、10mL/分の流れで溶出バッファー中の漸増塩濃度を用いて、段階勾配において試験した。10mL LVフィードを、全ての場合においてカラムに適用した。段階勾配は、以下のtable 2(表2)に記載される。Aバッファー(ランニングバッファー)は20mM TRIS pH7.4であり、Bバッファー(溶出バッファー)は5種類の溶出段階における漸増NaCl濃度を伴う20mM TRIS pH7.4であった。レンチウイルス粒子の主な部分は、0.65M以下の塩濃度を用いて溶出されることが示された。
【0069】
【表2】
【0070】
CaptoCore700カラム:1mL Cytiva Capto(商標)Core 700マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂を、1mL Tricorn 5カラムへと充填した。CaptoCoreカラムを、考えられる残留不純物を吸収させるために、アニオン交換体の後に直列で適用した。
【0071】
異なるリガンド密度/イオン結合容量(IC)を有するDEAE原型から、244μmol/mLのICを有するFibro DEAEは、最良の全体的レンチウイルス収率を示し、以下のtable 4(表4)及びtable 5(表5)を参照されたい。244μmol/mLよりも低いICを有する原型は、より低いレンチウイルス収率(VP%)を示した。しかしながら、レンチウイルスは比較的低い塩濃度で溶出するので、Fibro DEAE IC 193μmol/mLを最良の全体的性能を有するものとして選択した。Fibro DEAE IC 193μmol/mLに関して、最高量のレンチウイルスは、Fibro DEAE IC 244μmol/mLに対する通りの0.65M NaClではなく、0.45M NaClで溶出する。Fibro DEAE IC 193μmol/mLに関して、CTQ(重要品質特性)は、それにより比較的生存率の高いウイルス粒子の回収を可能にする、500mM未満の塩濃度での溶出である。更に、Fibro DEAE IC 193μmol/mLの溶出液は、比較的少ない不純物、特に宿主DNA(table 4(表4)及びtable 5(表5)における総DNA(%))を含有する。table 4(表4)及びtable 5(表5)において、hcp(宿主細胞タンパク質)レベルもまた示される。表中のND(未検出)は、例えば、hcpのレベルが検出限界未満であったことを示す。
【0072】
図5a図5cにおいて、漸増塩濃度による段階溶出を用いる、アニオン交換クロマトグラフィー媒体としてそれぞれFibro DEAE IC193及びFibro DEAE IC207を用いるレンチウイルス捕捉の比較が示される(縞模様パターンは感染回収率を示し、中実黒色バーは総ウイルス粒子(p24 ELISA)を示す)。図5cは、それぞれ、図5a及び図5bのアニオン交換クロマトグラフィー材料を用いるレンチウイルス捕捉の再現性を示す。これらの結果は、Fibro DEAE IC207を用いて、アニオン交換クロマトグラフィー媒体としてFibro DEAE IC193を用いる場合よりも低い塩濃度で、より高い総回収率及びより高い溶出を得ることができたことを示す。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
2種類のDAX原型のうち、Fibro DAX IC 223μmol/mLは、試験した全ての原型のうちで最高のレンチウイルス溶出収率を示した(以下のtable 6(表6)を参照されたい)。しかしながら、レンチウイルス生存率は、更に調べられるであろうDAX IC 223μmol/mLに関して0であった。
【0076】
【表5】
【0077】
Fibro DMENは、低いレンチウイルス収率並びに多量のDNA不純物を示した。Fibro DMENは、0.2M NaClで溶出する最大量のレンチウイルスを有したが(table 7(表7)を参照されたい)、しかしながら、全体的収率はDAX IC 223μmol/mLに関するよりも低かった。
【0078】
【表6】
【0079】
Mag支持体材料
支持体材料Mag DEAE IC 34μmol/mL、Mag DEAE IC 93μmol/mL及びMag DEAEデキストランIC 143μmol/mLを、レンチウイルスを結合及び溶出させようとする試みにおいて評価した。
【0080】
異なるMag支持体材料の10%スラリーを作製した。約1.1mLのMag支持体材料を1.0mL「Cube」へと注ぎ入れ、真空吸引を行った。1mLゲルプラグを、約10mL結合バッファーが入った50mL falconチューブへとmilli-Q水と共に移した。3×10mL結合バッファーを用いて樹脂を洗浄し、洗浄工程同士の間には、ビーズを磁石上に捕捉した。最後の洗浄工程において、ビーズを磁石上に捕捉し、全ての過剰な液体を、ピペットを用いて除去した。最後に、9.0mL結合バッファーを樹脂へとピペッティングによって入れ、10%樹脂スラリーを得た。
【0081】
3種類の異なるMag支持体材料の結合容量及び溶出収率を調べた。10、25、35及び50μLの各支持体材料を、2つの深型ウェルプレートへとピペッティングによって入れた。ビーズを0.5mLレンチウイルスサンプルと共にインキュベートし、結合バッファーを用いて洗浄し、溶出させた。1時間のインキュベーション後のサンプル及びプール溶出液中のレンチウイルスの力価を、p24 ELISAを用いて決定した。総タンパク質及びDNAを、出発サンプル及び溶出液に関しても決定した。1.3M NaClを用いて、溶出液中の不純物レベルを調べた。総タンパク質が1~2対数程度低減されたが、DNA低減は困難である。
【0082】
レンチウイルスが溶出する導電率を推定するために、3種類の支持体材料を、異なる塩含有量を有する溶出バッファーを用いて評価した。原型に結合したレンチウイルスを、20mM Tris pH7.4中の0.4、0.65及び1.3M NaClで溶出した。本研究において、50μL樹脂及び500μLレンチウイルスサンプルを用いた。
【0083】
500μLレンチウイルスサンプルと共にインキュベートされた異なる支持体材料に関する結合容量を調べた。全ての材料がLVに対する結合性を示した。樹脂に連結されたデキストラン及びDEAEを含む原型は、2種類の他の支持体材料よりも高い容量を示した。
【0084】
溶出収率を見ると、全ての材料が、溶出バッファー中の1.3M NaClを用いて、30%超のLVの溶出収率を示した。Mag DEAEデキストラン材料はまた、70%超の有望なLV溶出収率も示した。
【0085】
全ての支持体材料がレンチウイルスに結合し、Mag DEAEデキストランIC 143μmol/mLが、約4e10カプシド/mL樹脂の最高結合容量を示した。溶出バッファー中の0.4M NaClを用いて全ての支持体材料からレンチウイルスを溶出させることが可能であったが、異なる溶出収率を伴った。全体的には、最高溶出収率は0.65M NaClを用いて得られ、低リガンド密度を有するDEAE材料が最高溶出収率(0.4M NaClで65%超)を示したが、結合容量は、0.4M NaClで23%の溶出収率を示したMag DEAEデキストラン材料に関するよりも10倍低かった。
【0086】
考察
上記の官能化Fibro材料及び官能化マグネタイトアガロースビーズ以外の支持体材料を、支持体材料として用いることができる。そのような支持体材料の例は、官能化メンブレン、モノリス、多孔質ビーズ、非多孔質ビーズ、及び膨張床媒体である。
【0087】
そのような官能化支持体材料はまた、支持体材料がエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームがリガンドと接触することを可能にする限り、エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの精製においてアニオン交換クロマトグラフィー媒体としても機能するであろう。しかしながら、支持体の種類(多孔性、合成ビーズ等)は、性能に対して強い影響を有するであろう。
【0088】
静電相互作用であるので、エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームの幾分かの結合性は、10~500μmol/mLの特定のイオン容量範囲内で起こるであろう。最適なイオン容量値は、結合性を確実にするために十分なリガンドを有する必要性と関連付けられるが、結合性が強力過ぎて回収率の減少を引き起こす程に高過ぎるイオン容量ではない。最適なイオン容量は、用いられる支持体材料(リガンド密度/接触面積)に強く依存する(dependant)ことが考えられる可能性がある。fibroに関して、最適なICは、約100~250μmol/mLであるようである。
【0089】
上記の結果は、エンベロープ型ウイルスであるレンチウイルスに関して示される。同様の結果は、DNAウイルス及びRNAウイルス等の他のエンベロープ型ウイルスタイプ並びにエキソソームを用いても取得可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 アニオン交換クロマトグラフィー媒体
2 アニオン交換クロマトグラフィー
3 エンベロープ型ウイルス又はエキソソーム
200 エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソーム及び1つ又は複数の不純物を含む溶液を取得する工程
201 6~10のpHでアニオン交換クロマトグラフィー媒体へと前記溶液を添加する工程
202 アニオン交換クロマトグラフィー媒体を最大で0.65Mの塩濃度を有する溶出バッファーと接触させることにより、アニオン交換クロマトグラフィー媒体からエンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームを溶出させる工程
203 マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂へと前記溶出液を添加する工程
204 エンベロープ型ウイルス粒子又はエキソソームを含有する溶出液を回収する工程
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
【国際調査報告】