(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】植え込み可能なマーカー
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580358
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022068034
(87)【国際公開番号】W WO2023275227
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021116873.2
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523486062
【氏名又は名称】ヘスケ, トーマス
【氏名又は名称原語表記】HESKE, Thomas
【住所又は居所原語表記】Kirchstr. 43 82284 Grafrath, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘスケ, トーマス
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE09
4C601GA20
4C601GA27
(57)【要約】
本発明は、動物またはヒトの体内組織領域をマーキングするための植え込み可能なマーカーに関し、前記マーカーは、生体適合性材料で作られ、成形プロセス中に加圧成型される三次元形状を有する少なくとも1つのストランドを備え、外部の機械的力によって三次元形状が前記ストランドに強制的に付与された後、機械的力がなくなると、前記ストランドが当該三次元形状となり、前記ストランドに加圧成型された三次元形状が、少なくとも2つの固定ストランドアイを備え、第1および第2のストランドアイはそれぞれ前記ストランドの少なくとも1つの巻線によって形成され、前記機械的な外力がなくなると、互いに対する相対的な空間位置が異なる。本発明は、巻線平面が少なくとも2つのストランドアイに関連付けることができ、前記少なくとも2つのストランドアイの前記巻線平面が、0°に等しくない角度αを形成していることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物またはヒトの体内組織領域をマーキングするための植え込み可能なマーカーであって、前記マーカーは、生体適合性材料で作られ、成形プロセス中に加圧成型される三次元形状を有する少なくとも1つのストランドを備え、外部の機械的力によって三次元形状が前記ストランドに強制的に付与された後、機械的力がなくなると、前記ストランドが当該三次元形状となり、前記ストランドに加圧成型された前記三次元形状が、少なくとも2つの固定ストランドアイを備え、第1および第2のストランドアイはそれぞれ前記ストランドの少なくとも1つの巻線によって形成され、各ストランドアイは、巻線平面と関連付けることができ、
前記少なくとも2つのストランドアイが、8の字形状に予め決められた形状のアイと同等の様態で形成され、前記少なくとも2つのストランドアイの巻線平面が角度αだけ互いに傾斜して配向される共通の接点を介して互いに接続され、
前記少なくとも2つのストランドアイの巻線平面が、0°に等しくない角度αを形成していることを特徴とする植え込み可能なマーカー。
【請求項2】
前記ストランドが、1つのストランド長さ及び2つのストランド端部を有し、
前記2つのストランド端部のうちの一方が、前記第1のストランドアイの巻線平面に配置され、ストランド長さの半分と共に前記第1のストランドアイを形成し、
前記2つのストランド端部の他方は、前記第2のストランドアイの巻線平面内に配置され、ストランド長さの他の半分と共に前記第2のストランドアイを形成することを特徴とする請求項1に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項3】
両ストランド端部は、それぞれ、前記ストランドの長さの中間の領域において、前記ストランドに横方向に隣接して対向するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項4】
前記少なくとも2つのストランドアイは、前記2つのストランドアイのうちの一方のストランドアイに直交して突出した状態で、他方のストランドアイが前記第1のストランドアイと重ならないように配置されるように設計および配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項5】
αが、90°≦α<120°であることを特徴とする請求項5に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項6】
前記少なくとも2つのストランドアイは、前記2つのストランドアイのうちの一方のストランドアイに直交して突出した状態で、他方のストランドアイが前記一方のストランドアイの中間に配置されるように設計および配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項7】
動物またはヒトの体内組織領域をマーキングするための植え込み可能なマーカーであって、前記マーカーは、生体適合性材料で作られ、成形プロセス中に加圧成型される三次元形状を有する少なくとも1つのストランドを備え、外部の機械的力によって三次元形状が前記ストランドに強制的に付与された後、機械的力がなくなると、前記ストランドが当該三次元形状となり、前記ストランドに加圧成型された三次元形状が、少なくとも2つの固定されたストランドアイを備え、第1および第2のストランドアイはそれぞれ前記ストランドの少なくとも1つの巻線によって形成され、各ストランドアイは、巻線平面と関連付けることができ、
前記少なくとも2つのストランドアイが、前記少なくとも2つのストランドアイの巻線面のそれぞれと角度を形成し、円弧平面と関連付けられた湾曲したストランド部分を介して接続され、前記角度が0°と等しくなく、
前記少なくとも2つのストランドアイの巻線面が、0°に等しくない角度αを形成していることを特徴とする植え込み可能なマーカー。
【請求項8】
前記湾曲したストランド部分が半円形であることを特徴とする請求項7に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項9】
前記2つのストランドアイの少なくとも一方の巻線面が、前記円弧平面に対して50°≦β≦70°の角度β、好ましくはβ=60°の角度βを形成することを特徴とする請求項7または8に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項10】
前記ストランドが、1つのストランド長さ、2つのストランド端部および2つのストランドアイを有し、
前記ストランドの長さが、前記湾曲したストランド部分と前記2つのストランドアイとの合計に対応し、
前記2つのストランド端部のうちの一方が、前記第1のストランドアイの前記巻線面に配置され、
前記2つのストランド端部の他方が前記第2のストランドアイの前記巻線平面に配置されていることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項11】
前記ストランドの生体適合性材料が、超音波を反射する材料からなることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項12】
前記ストランドは、少なくとも一部の領域において超音波を反射する表面構造化が施されたストランド表面を有することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項13】
前記ストランドは、センターワイヤと、前記センターワイヤの周囲に巻かれた少なくとも1つの単線とからなり、前記少なくとも1つの単線は、金属製の形状記憶材料からなることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項14】
生体適合性材料からなる前記ストランドが、NiTi(「ニチノール」)、NiTiCu、CuZn、CuZnAlまたはCuAlNiのグループの金属形状記憶材料からなる少なくとも1つのワイヤであることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項15】
前記ストランドは、ストランドアイのない、前記外部の機械的力によって強制的に付与された三次元形状で、前記ストランドに前記外部の機械的力を付与する中空カニューレ内に配置可能であり、
前記中空カニューレからの前記ストランドの排出とそれに関連付けられた前記外部の機械外力の除去の直後に、前記少なくとも2つのストランドアイが独立して形成されることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の植え込み可能なマーカー。
【請求項16】
前記中空カニューレが、14G~18Gのカニューレサイズを有する中空カニューレから選択されることを特徴とする請求項15に記載の植え込み可能なマーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物またはヒトの体内組織領域をマーキングするための植え込み可能なマーカーに関し、このマーカーは、生体適合性材料で作られ、成形プロセス中に加圧成型される三次元形状を有する少なくとも1つのストランドを備え、外部の機械的力によって三次元形状が前記ストランドに強制的に付与された後、機械的力がなくなると、前記ストランドが当該三次元形状となり、前記ストランドに加圧成型された前記三次元形状が、少なくとも2つの固定ストランドアイを備え、第1および第2のストランドアイはそれぞれ前記ストランドの少なくとも1つの巻線によって形成され、前記機械的力がなくなると、互いに対する相対的な空間位置が異なる。
【背景技術】
【0002】
一般的な植え込み可能なマーカーは、ヒトや動物の軟組織中の腫瘍を識別するために使用される。例えば、乳房生検の後、多くの場合、マーカーはカニューレを使用して組織除去部位に挿入され、目的の位置に到達するとスタイレットを使用して前記カニューレの遠位側から排出される。体内に配置されたマーカーは静止したままであり、医師に、好ましくは超音波画像を使用した画像処理の助けを借りて、治療および/または診断される組織領域の位置を特定し、それを長期間観察する機会を提供する。
【0003】
人体組織用の組織マーカーは、米国特許第6053925に記載されており、形状記憶金属製の2本の撚りワイヤーを有し、その遠位端領域は、組織内の固定構造としてリングまたはコイルの形状をとる。マーカーの体内位置特定後、撚りワイヤは身体領域から近位に突き出で、マーキングされた組織部位への直接の軌道を画定する。
【0004】
米国特許公開第2005/0059888A1には、体内に配置された生体吸収体の位置をマークするマーカーが記載されている。このマーカーは、マンモグラフィー、X線検査、および超音波検査によって検出可能な材料からなり、例えば吸収体に取り付けられたワイヤからなる。
【0005】
米国特許公開第2001/0023322A1は、体内に挿入可能なマーカー用のカニューレ状の位置決めユニットを含む。このマーカーは、形状記憶金属ワイヤからなり、体内に位置決め後、マーキングされる組織領域に固定位置を提供する目的で、少なくともワイヤの先端がリング状またはコイル状に変形する。
【0006】
最後に、欧州特許第1871266B1には、ヒトまたは動物組織用の汎用マーカーが記載されている。このマーカーは、事前にプログラム可能な材料、好ましくはニッケル-チタン合金で作られ、強制的な長手方向の伸長が停止すると、事前にプログラムされたリング形状に戻る。
【0007】
すべての既知の一般的なマーカー、特に上記のリング マーカーは、その材料特性により超音波を反射することができるため、超音波反射体の代表であるが、既知のマーカーは、超音波がマーカーと相互作用する超音波処理の方向に応じて、生成可能な超音波画像でさまざまな程度に視覚的に認識される。例えば、ほぼ二次元的に扇形に伝播する超音波場の超音波が、伝播する超音波の扇状の平面に対してリング状の平面が直交する方向を向いているリングマーカに衝突すると、扇状の平面とリングマーカとの交点に対応する最大で2つの点状の超音波反射画像信号が現れる。扇形の超音波場がリングマーカ上を上記のコンステレーションで動的に掃引されると、理想的には、最初に点状の超音波反射画像信号が現れ、その後、相互距離が最初に増加する2つの別々の超音波反射像信号に分裂し、その後、再び点状の超音波反射画像信号のみが見られるようになるまで、再び減少する。一方、扇形の超音波場が理想的にリング状の平面に平行に配向され、リングマーカーと相互作用する場合、完全なリング形状が超音波画像に現れ、診断医にはっきりと見える。
【0008】
超音波検査中、特に高密度の組織物質の割合が高い領域では、強い超音波反射が頻繁に発生し、超音波画像において顕著に知覚可能な反射事象として視認され、植え込まれたマーカーから発生する超音波反射画像信号と視覚的に競合する。リング状の平面に平行なリングでマークされた組織領域を超音波処理する前述の理想的な場合にのみ、ユークリッドの三次元形状により自然の組織構造と明確に区別できるリング形状が、マーカーの位置と姿勢を明確に視覚的に識別することを可能にする。
【0009】
したがって、それ自体は既知であり、その寸法が数ミリメートルの範囲にあるこのようなマーカーを、生物学的組織環境内で物理的かつ空間的に分解された様態で明確に認識するには、多大な経験が必要である。
【0010】
独国特許公開第102019210963A1には、生体適合性材料からなるストランドに沿って、少なくとも2つの固定ストランドアイが提供され、これらの固定ストランドアイは、それぞれストランド部分を介して互いに一体的に接続されている植え込み可能なマーカーが記載されている。
【発明の概要】
【0011】
本発明が取り組む課題は、動物またはヒトの体内組織領域をマーキングするための植え込み可能なマーカーを進化させることであり、このマーカーは、生体適合性材料で作られ、成形プロセス中に加圧成型される三次元形状を有する少なくとも1つのストランドを備え、外部の機械的力によって三次元形状が前記ストランドに強制的に付与された後、機械的力がなくなると、前記ストランドが当該三次元形状となり、超音波検査中の医師のために植え込まれたマーカーの視認性および識別性が大幅に改善されるような進化となる。
【0012】
本発明が取り組む課題の解決策は、請求項1および7に記載されている。有利なことに、本発明のさらなる進化の特徴は、従属請求項および図面と併せて例示的な実施形態を参照した説明に見出すことができる。
【0013】
本解決策によれば、動物またはヒトの体内組織領域をマーキングするための植え込み可能なマーカーであって、このマーカーは、生体適合性材料で作られ、成形プロセス中に加圧成型される三次元形状を有する少なくとも1つのストランドを備え、外部の機械的力によって三次元形状が前記ストランドに強制的に付与された後、機械的力がなくなると、前記ストランドが当該三次元形状となり、前記ストランドに加圧成型された前記三次元形状が、少なくとも2つの固定ストランドアイを備え、第1および第2のストランドアイはそれぞれ前記ストランドの少なくとも1つの巻線によって形成され、1つの巻線平面と関連付けできるそれぞれのストランドアイは、前記少なくとも2つのストランドアイが、8の字形状に予め決められた形状のアイと同等の様態で形成され、これらのアイは、少なくとも2つのストランドアイの巻線平面が角度αだけ互いに傾斜して配向される共通の接点を介して互いに接続され、少なくとも2つのストランドアイの巻線平面が0°に等しくない角度αを形成することを特徴とする。
【0014】
「固定ストランドアイ」という用語は結び目学から借用したもので、ストランドに沿う環状部が形成されることを特徴とする単純な幾何学的形状を表す。この目的のために、ストランドは少なくとも一回らせん状に巻かれ、巻線が重なる領域で好ましくはストランドが自身に接触するようならせんピッチを持つ。閉じたリング形状とは対照的に、固定アイは、側面から超音波に曝されたときに一定の線の太さを持つ直線に見えるのではなく、くさび形状または二重くさび形状に見え、最大くさび幅は、単一のらせん巻線の場合のストランドの幅の2倍に相当する。したがって、複数のらせん巻線からなる固定ストランドアイに側方から超音波を照射すると、超音波信号がより明瞭に形成される。
【0015】
あるいは、「固定ストランドアイ」という用語は、巻線平面に形成された環状部を意味し、ストランドの端部が当該環状部の巻線平面内に位置すると理解されるべきである。
【0016】
「巻線平面」という用語は、固定アイに関連付けることができ、前記固定アイに垂直に突出した状態で、後者にまたがる領域を含む、本発明の意味での空間平面を意味すると理解される。
【0017】
本解決策による植え込み可能なマーカーは、前記ストランドのらせん巻線によってストランドに沿ってそれぞれ形成される少なくとも2つの固定ストランドアイを有する。必ずしも必要ではないが、有利には、少なくとも2つの固定ストランドアイは同じ形状および寸法を有する。もちろん、楕円形や楕円形の固定アイなど、円形から逸脱したアイの形状も考えられる。また、前記ストランドに沿って配置されたストランドアイの形状や寸法も互いに異なることがある。さらに、固定ストランドアイの空間的な位置と関連性、および巻線方向の向きは、一様に選択することも、個別に選択することもできる。
【0018】
本解決策に従って設計されたマーカーは、一方の固定ストランドアイの巻線平面に対して直交して前記マーカーを超音波に曝す場合、他方の固定ストランドアイは、超音波検出手段による超音波画像に少なくとも部分的に、好ましくは完全なリングまたは環状の輪郭として現れるように、好ましくはその巻線平面に沿って交互に超音波に曝されるような方法で、少なくとも2つの固定アイが互いに傾斜するか位置合わせされるような方法で、普通の超音波診断技術によって検出可能性と識別可能性を向上させるという考えに基づいている。
【0019】
超音波によるマーカの検出可能性を向上させるために特に重要なことは、できるだけコンパクトな三次元形状であること、すなわち、診断医のためにモニタに視覚化されるマーカから発信する超音波反射信号が、小さな空間領域から発信するべきであること、すなわち、反射構造が連続して隣り合って配置された細長いマーカ形状は、検出がむしろ困難であることが判明していることである。
【0020】
8の字形の固定アイが交わる交点と同等の接点を介して互いに一体的に接続される2つの固定アイの好ましくは直接的な接続と、前記接点で互いに一体的に接続されるストランドアイの両方の巻線平面の好ましくは直交する方向とにより、扇形超音波フィールドによる超音波検出中に、観察モニタ上で動的に変化する反射画像またはパターンをもたらし、 前記反射画像またはパターンは、超音波場に対するマーカーの空間的な向きに応じて、動的に変化するリング構造によって特徴付けられ、その技術的形状は、体内の生体組織構造に基づく反射信号画像とは対照的に、マーカーの位置を明確に示すものとして解釈することができる。少なくとも2つのストランドアイのコンパクトな空間配置により、超音波場のパンニングから生じる動的な視認性により、超音波検査を行う人物にとって、マーカーの検出可能性は特に明白である。
【0021】
少なくとも2つのストランドアイは、ストランドが1つのストランド長さと2つのストランド端部とを有する場合、2つのストランド端部の一方が第1のストランドアイの巻線平面に配置され、ストランド長さの半分と共に第1のストランドアイを形成し、2つのストランド端部の他方が第2のストランドアイの巻線平面に配置され、ストランド長さの他の半分と共に第2のストランドアイを形成するように、ストランドに沿ってできるだけコンパクトに配置される。好ましくは、この場合、両ストランド端部はそれぞれ、ストランド長さの中間の領域においてストランドに横方向に隣接して反対側に配置される。特に好ましい実施形態では、両方のストランドアイの巻線平面は、互いに直交するように配向される。このコンステレーションは、両ストランドアイを、接点における共通平面から互いに90°の方向に向けることによって実現することができる。このコンステレーションでは、両ストランドアイは重なることなく配置される。もちろん、臨界角を除いて、90°から外れた0°から180°の間の適切な角度も考えられるが、少なくとも2つの角度の平面が互いに直交しているか、またはこれから±30°の角度だけ外れていることが、本解決策による植え込み可能なマーカーの形成に特に適した三次元形状を代表する。
【0022】
特に、両方のストランドアイが60°≦α<120°の角度αを有する場合、マーカーに良好な検出特性を記録できる。60°≦α<90°の場合、両ストランドアイはそれぞれの巻線平面に直交して突出した状態に重なる。
【0023】
さらなる実施形態では、少なくとも2つのストランドアイは、2つのストランドアイの一方に直交して突出した状態で、他方のストランドアイが第1のストランドアイの中間に配置されるように設計および配置される。このコンステレーションは、α=90°で上述したコンステレーションに基づき、両方のストランドアイをストランドの長手方向軸の接点でさらに90°回転させれば、すなわちストランドを90°ねじり回転させれば実現可能である。
【0024】
本解決策による植え込み可能なマーカーの代替的な実施形態は、少なくとも2つのストランドアイが、少なくとも2つのストランドアイの巻線平面のそれぞれと角度βを形成し、この角度が0°と等しくなく、少なくとも2つのストランドアイの巻線平面が0°と等しくない角度αを形成する円弧平面が関連付けられた湾曲ストランド部分を介して互いに接続される少なくとも2つのストランドアイを備える。湾曲したストランド部分は、好ましくは半円形である。好ましくは、少なくとも2つのストランドアイは同じ形状および同じ寸法を有する。この場合、湾曲したストランド部分は、ストランドアイの一方の半分と同一の形状および寸法を有する。
【0025】
原理的には、βは50°≦β≦70°の角度が適当である。湾曲したストランド部分が両ストランドアイの巻線平面とβ=60°の角度を形成し、上述のように、湾曲したストランド部分が2つのストランドアイの半分と同等な形状と寸法を有する場合、両ストランドアイは湾曲したストランド部分と共に正三角形の形状を画定する。このように設計されたマーカーは、扇状の超音波場を動的にパンすることによって検出されると、視聴装置で視覚的に認識できる反射信号が、紛れもなく簡潔な、動的に現れる三次元リング構造として現れる。
【0026】
このマーカーは、好ましくはストランドの全長にわたって生体適合性のある金属製の形状記憶材料からなり、形状記憶材料に加圧成型された三次元形状からほぼ直線状のストランドの形状にマーカーを変形させる機械的力を付与することによって、植え込みのために中空カニューレに挿入される。植え込み処置のためのカニューレは、通常、ストランドの直径よりわずかに大きいカニューレ直径を有し、実質的に直線状のストランドを、スタイレットを使用して中空カニューレの遠位端で中空カニューレの長さに沿って中空カニューレから除去することができる。ストランドが中空カニューレから出るとき、ストランドは予め加圧成型された三次元形状に変形し、互いに一体的に接続された少なくとも2つの固定ストランドアイを形成する。
【0027】
マーキングされる組織の損傷のリスクを最小限にし、同時に超音波検出によるマーカーの検出特性および識別特性を最適化するために、マーカーは、可能な限りコンパクトな三次元形状を有する。すなわち、両側でストランドの範囲を定める2つのストランド端部は、それぞれ、ストランドアイと関連付けることができる巻線平面に配置され、2つの固定ストランドアイの場合には、それぞれの場合において、ストランドの長さの半分とともに固定ストランドアイを形成する。
【0028】
ストランドに沿って3つ以上のストランドアイが形成されている場合、ストランドの端部は、ストランドの各端部に形成された固定ストランドアイの巻線平面内に配置される。本解決策による植え込み可能なマーカーを設計するための特に好ましい実施形態では、ストランドに沿った少なくとも2つの固定ストランドアイは、互いに直接接続されているか、または互いに直接結合しており、すなわち、力が作用していない状態では、植え込み可能なマーカーは、固定ストランドアイを形成する専ら湾曲したストランド部分を有する。あるいは、2つのストランドアイは、湾曲したストランド部分を介して互いに一体的に接続され、湾曲したストランド部分は、両方のストランドアイのほぼ同じ寸法および形状の半分を有する。
【0029】
生体適合性材料からなるストランドの超音波反射率を高めるために、ストランドの表面は、少なくとも一部の領域において、例えば材料を粗面化することにより、超音波を反射する表面に構造化されるように改質または処理される。
【0030】
代替的に、または超音波反射率を増加させるための上記手段と組み合わせて、ストランドを、センターワイヤと、センターワイヤの周りにらせん状に巻かれる少なくとも1つの追加の単線とから製造することが可能であり、それにより、外側に現れるストランド表面は、少なくとも1つの単線のらせん状の巻線構造により提供される。少なくともセンターワイヤーまたは少なくとも1つの単線は、ここでは金属形状記憶材料、好ましくはNiTi(ニチノール)、NiTiCu、CuZn、CuZnAlまたはCuAlNiで作られている。
【0031】
好ましくは、ストランドの断面は0.1~0.8mmである。センターワイヤーの周りに少なくとも1つの単線を巻く場合は、0.1mmから0.5mmの範囲のワイヤー断面が適している。
【0032】
好ましくはリング状のストランドアイは、通常、リング内径が2~3mm、リング外径が3~5mmである。
【0033】
14Gと18Gの間のカニューレサイズのカニューレが、本解決策に係るマーカーを埋め込むのに特に適している。
【0034】
本解決策による植え込み可能なマーカーを、様々な例示的実施形態に基づいて、以下の図面を参照しながら以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下、本発明の全体的な思想を限定することなく、図面を参照しながら例示的な実施形態に基づいて本発明を説明する。図面が示すのは:
【
図1】本解決策に従って形成された超音波マーカの超音波検出可能性を説明する概略図、
【
図2】(a)は第1の例示的実施形態の側面図、(b)は第1の例示的実施形態の斜視図、
【
図3】(a)は第2の例示的実施形態の平面図、(b)は第2の例示的実施形態の斜視図、
【
図4】第3の実施形態を90°回転させた2つの側面図、
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、組織領域1内に植え込まれたマーカー2を模式的に示しており、マーカーは、外部の機械的力がなくなるとその加圧成型された三次元形状となり、少なくとも2つのストランドアイ21、22を有し、各ストランドアイ21、22は、共に角度α≠0、好ましくは90°を共に囲む巻線平面3、4と関連付けられるものとする。
【0037】
超音波検出の場合、リング状の反射パターンが、
図1に模式的に示すマーカ2の超音波画像に表示され、それぞれの場合において、超音波5、6と相互作用し、その伝播方向は、2つの巻線平面3、4の一方に対して直交する方向に向けられている。超音波5の場合、その伝搬方向は巻線平面4に対して直交する方向であるため、ストランドアイ21をその長手方向に通過し、ストランドアイ21は対応する超音波画像にリング状に表示される。一方、超音波6の場合、ストランドアイ22は対応する超音波画像でリング状に表示される。いずれの場合も、自然組織領域には存在しないユークリッド幾何学的形状が超音波画像に現れ、検査を行う人物の注意を、体内に配置されたマーカー2の存在に引きつける。
【0038】
植え込まれた状態、すなわち、マーカー2が材料に固有に加圧成型された三次元形状をとる状態では、単一のストランド状材料からなるマーカー2は、ほぼ内蔵型の三次元形状を形成し、すなわち、マーカー2を形成するストランドのストランド端部は、好ましくは、それぞれ巻線平面3、4に沿って位置する。植え込み可能なマーカー2を形成するための本解決策による具体的な三次元形状は、さらなる図面に見ることができる。.
図2(a)、(b)は、2つの異なる視点からマーカー2を示し、前記マーカーは、ストランド7から作られ、2つのストランドアイ21、22を含む。ストランド7の2つのストランド端部8、9は、ストランド中間10の領域に、それぞれの場合もストランド7の反対側に配置され、ストランド端部8は、
図2(a)に示すように、ストランドアイ21と関連付けることができ、図面平面に対応する巻線平面3内に配置され、ストランド端部9は、ストランドアイ22と関連付けることができ、
図2(a)による図面平面に直交する向きの巻線平面4内に配置される。ストランドアイ21、22の巻線平面3、4は、
図2(b)に示すように、90°の角度α を形成する。
【0039】
マーカー2のストランド7は、好ましくは、1つのワイヤーがらせん状に巻かれたセンターワイヤーを有する。もちろん、2本以上のワイヤーをセンターワイヤーの周りに巻くこともできる。
【0040】
図3(a)、(b)はそれぞれ、異なる方向から、本解決策に従って形成され、ストランド7から作られたマーカー2を示しており、ストランド7は2つの固定のストランドアイ21、22を形成している。
図3(a)は、第1のストランドアイ21と関連付けることができる巻線平面3が、シート平面または図面平面に対応することを示している。一方、第2のストランドアイ22の巻線平面4は、巻線平面3に対して直交して延びており、第2のストランドアイ22は、第1のストランドアイ21の中間に、後者に突出して配置されている。
【0041】
この場合も、2つのストランドアイ21、22のうちの一方の巻線平面に平行なマーカー2と相互作用する超音波により、超音波画像に、伝送方向に向けられたストランドアイの完全なアイ形状を表示することが可能になる。好ましくは、ストランドアイ21、22はそれぞれリング状または環状である。
【0042】
図4(a)、(b)はそれぞれ、マーカー2を互いに90°回転させた側面図である。
【0043】
ストランド7は、図面平面に対して直交する向きの巻線平面3を有する第1の固定ストランドアイ21を有する。
図4(b)に示すストランド端部8は、巻線平面3内に配置されている。
【0044】
第2のストランドアイ22は、第1のストランドアイ21の上方で立体的に、わずかにらせん状に巻かれて延び、
図4(b)に図示した側面図で見たときに第2のストランドアイ22を形成する。第2のストランドアイ22と関連付けることができる巻線平面4は、
図4(a)のシートまたは図面平面に対して直交する向きであるか、または
図4(b)のシートまたは図面平面に対応する向きである。
【0045】
図5は、本解決策に従って形成されたマーカー2の実施形態を示しており、3つのストランドアイ21、22、23を形成し、それぞれの場合に関連する巻線平面3、4、11は120°の角度α を形成する。この場合、ストランド端部8は第1巻線平面3内に位置し、ストランド端部9は巻線平面11内に位置する。
【0046】
上述した例示的な実施形態とは対照的に、
図5に例示されるマーカー2は、音波が各巻線平面3、4、11に伝播されるとき、超音波画像にリング状または環状の画像が提供されることを可能にし、したがって、各々が2つのストランドアイを有する上述したマーカーと比較して、マーカー2の空間的な検出可能性を向上させ、また識別可能性も向上させる。
【0047】
図6(a)、(b)は、2つの異なる視点方向から見たマーカー2のさらなる実施形態を示している。マーカー2のストランド7は、3つのストランドアイ21、22、23を含み、巻線平面3、4、11のそれぞれに1つずつ関連付けられている。第1および第2のストランドアイ21、22に関連付けられた巻線平面3、4は、角度α、図示の例示的な実施形態では120°である。この角度から逸脱した三次元形状も考えられ、例えば、α = 90°である。第3のストランドアイ23に関連付けられた巻線平面11は、第2の巻線平面4に対して直交するように傾斜されているか、または配向されている。
【0048】
この場合も、本解決策に従って設計されたマーカー2は、超音波画像にリング状または環状の超音波反射画像を生成することができ、いずれの場合も3つの巻線平面3、4、11に音波が伝播する。
【0049】
図7(a)および(b)はそれぞれ、
図4(a)および(b)に例示された例示的な実施形態と同様に、互いに90°回転した側面図でマーカー2を示す。
【0050】
第1の固定ストランドアイ21は、図面平面に対して直交する向きの巻線平面3を有する。
図7(b)に示す第1のストランドアイ21のストランド端部8は、巻線平面3内に配置され、曲げ点12に直接隣接しており、この曲げ点12において、第1のストランドアイ21は、半円形のリング状であり、円弧平面14にまたがる湾曲したストランド部分13に一体的に結合する。円弧平面14は、第1のストランドアイ21の巻線平面3と角度βを形成し、前記角度は好ましくは60°である。図示の湾曲したストランド部分13の上端部は、曲げ点15において第2のストランドアイ22に一体的に接続され、その関連付けられた巻線平面4は、湾曲平面14と角度β’を形成し、前記角度は、好ましくは角度βに対応する。第2のストランドアイ22のストランド端部16は、巻線平面4内に位置し、第2の曲げ点15に直接隣接している。
【0051】
第1および第2のストランドアイ21、22は、好ましくは、同じ形状であり、ほぼ同じ大きさである。この場合、湾曲部分13は、2つのストランドアイ21、22の一方の形状の半分に対応する。このように、マーカー2は、正三角形によって特徴付けることができ、超音波エコー画像に非常に簡潔な反射パターンを生成することができる三次元物体からなり、扇形の超音波フィールドがマーカー上にパンされると、前記パターンの動的視認性がモニターに立体的に現れる。
【0052】
第1および第2のストランドアイ21、22は、必ずしも同じ寸法を有する必要はなく、むしろ、湾曲部分13は、内蔵型の三次元三角形構造を形成するために、
図7(a)、(b)に示す第2のストランドアイ22に対して、形状および大きさを適切に適応されるべきである。
【符号の説明】
【0053】
1 組織領域
2 マーカー
3 巻線平面
4 巻線平面
5 超音波
6 超音波
7 ストランド
8 ストランド端部
9 ストランド端部
10 ストランド長さの中間
11 巻線平面
12 曲げ点
13 湾曲部分
14 円弧平面
15 曲げ点
16 ストランド端部
21 ストランドアイ
22 ストランドアイ
23 ストランドアイ
α 角度
β、β’ 角度
【国際調査報告】