(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】(パー)フルオロポリエーテル鎖を含むコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 65/22 20060101AFI20240621BHJP
C10M 107/38 20060101ALI20240621BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20240621BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240621BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20240621BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C08G65/22
C10M107/38
C08L71/00 Z
C10N30:06
C10N40:02
C10N40:04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580384
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022067109
(87)【国際公開番号】W WO2023274821
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デ パット, ウーゴ
(72)【発明者】
【氏名】ロティエルゾ, アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】グアルダ, ピエール アントニオ
【テーマコード(参考)】
4H104
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4H104EB05
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB20
4H104LA03
4H104PA01
4H104PA02
4J002AE003
4J002CH001
4J002CH002
4J002GM00
4J005AA09
(57)【要約】
本特許出願は、潤滑油として有用な及び粘度の増加で特徴付けられる(パー)フルオロポリエーテル鎖を含むブロックコポリマーに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの鎖末端(ここで、両前記鎖末端は、過フッ素化アルキル基を含む)を有し、それぞれが2つの鎖末端を有する第1及び第2の(パー)フルオロポリエーテル鎖[PFPE鎖](ここで、前記第1及び第2のPFPE鎖の第1の鎖末端は、過フッ素化アルキル基を含み、前記第1及び第2のPFPE鎖の第2の鎖末端は、式(I):
(I) -[A-B]-
のブロックを介して互いに結合している)を含み、
式中、
(A)は、PFPE鎖であり、
(B)は、以下の式(II):
【化1】
に従う部分であり、
ここで、
nは、1~3の整数であり;
R
1~R
4は、それぞれ独立して、フッ素原子、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐過フッ素化アルキル基、式(III):
(III) -(R
10)
t[C(R
11)(R
12)-C(R
13)(R
14)(R
15)]
zの基を含む、好ましくはそれらからなる群の中で選択され、
ここで、
R
10は、酸素原子、又は1~24個の炭素原子を含む、任意選択的に少なくとも1個の酸素原子で割り込まれた及び/又はそれを含む二価/三価/四価の過フッ素化アルキル鎖であり、
tは、ゼロ又は1であり、
zは、1~3の整数であり、
R
11~R
15は、それぞれ独立して、フッ素原子、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐過フッ素化アルキル基及び式(IV):
-[(A
∧)
a-(B
∧)
v]-(C
∧)-T (IV)
の基を含む、好ましくはそれらからなる群の中で選択され、
ここで、
A
∧は、PFPE鎖であり、
aは、ゼロ又は1であり、
vは、ゼロ又は1~3の整数であり、
B
∧は、式-[C(R
1∧)(R
2∧)-C(R
3∧)(R
4∧)]-の基であり、
ここで、R
1∧~R
4∧は、それぞれ独立して、R
1~R
4に関して上で定義された意味を有し、
C
∧は、PFPE鎖であり、
Tは、過フッ素化アルキル基である、ブロックコポリマー[コポリマー(P)]であって、
式中、
‥ 式(I)における前記A及びB並びに式(IV)における前記A
∧及びB
∧は、統計的に分布しており、
‥ R
1~R
4の少なくとも1つは、式(III)の基であり、
‥ R
11又はR
12の1つ及びR
13~R
15の1つは、式(IV)の基であり、ここで、aは1であり、
‥ (B+B
∧)の合計は、1~15である
ブロックコポリマー[コポリマー(P)]。
【請求項2】
- 請求項1に定義されたような前記第1及び第2のPFPE鎖、前記A、A
∧、C
∧は、互いに同じ若しくは異なるものであり;並びに/又は
- 互いに同じ若しくは異なるものである、前記過フッ素化アルキル基のそれぞれは、1~3個の炭素原子を含む線状パーフルオロアルキル基であり;並びに/又は
- 前記第1のPFPE鎖は、シグマ結合若しくは-CF
2-、-CF
2CF
2-若しくは-O-から選択される基を介して式(I)の前記少なくとも1つのブロックに結合しており;並びに/又は
- 前記第2のPFPE鎖は、シグマ結合若しくは-CF
2-、-CF
2CF
2-若しくは-O-から選択される基を介して式(I)の前記少なくとも1つのブロックに結合しており;
- 式(I)における前記A及びBは、シグマ結合又は-CF
2-若しくは-CF
2CF
2-から選択される基を介して連結している、
請求項1に記載のコポリマー(P)。
【請求項3】
前記第1及び第2のPFPE鎖、式(I)におけるA並びに式(IV)における前記A
∧及びC
∧のそれぞれは、独立して、
(Rf-i) -CFXO-(式中、Xは、F又はCF
3である);
(Rf-ii) -CFXCFXO-(式中、出現ごとに等しいか若しくは異なる、Xは、F又はCF
3である、但し、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とする);
(Rf-iii) -CF
2CF
2CW
2O-(式中、互いに等しいか若しくは異なる、Wのそれぞれは、F、Cl、Hである);
(Rf-iv) -CF
2CF
2CF
2CF
2O-;
(Rf-v) -(CF
2)
j-CFZ-O-(式中、jは、0~3の整数であり、Zは、一般式-O-R
(f-a)-Tの基であり、ここで、R
(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:Xのそれぞれが独立してF又はCF
3である、-CFXO-、-CF
2CFXO-、-CF
2CF
2CF
2O-、-CF
2CF
2CF
2CF
2O-の中で選択され、Tは、C
1~C
3パーフルオロアルキル基である)
からなる群から独立して選択される繰り返し単位を含む、好ましくはそれらからなる部分若しくは完全フッ素化鎖[鎖(R
f)]である、請求項1若しくは2のいずれか一項に記載のコポリマー(P)。
【請求項4】
式(II)において:
- nは、1若しくは2に等しい整数であり;及び/又は
- 置換基R1~R4の少なくとも1つは、請求項1に定義されたような式(III)の基であり、他の置換基は、フッ素原子又は1~3個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル鎖、より好ましくはフッ素原子又は1個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル鎖からそれぞれ独立して選択される、
請求項1~3のいずれか一項に記載のコポリマー(P)。
【請求項5】
式(III)において:
- tは0であるか;又は
- tは1であり、R
10は、以下の式:
(R
10-i) -(CF
2)
d(O)
e(CF
2O)
fR
CF(O)
e*(CF
2)
d*(CF2O)
f*
(式中、
d、d*、e、e*、f及びf*のそれぞれは、独立して、ゼロ又は1であり、
R
CFは、任意選択的に1個以上の酸素原子で割り込まれた、1~12個、好ましくは1~8個の炭素原子を含むパーフルオロアルキル鎖である);
(R
10-ii) -O-(C
3F
6O)
h-(CF
2)
i-(C
3F
6O)
j-O-
(式中、h=jであり、h+jは、2~6であり、iは、2~6である)
の1つに従う、
請求項1~4のいずれか一項に記載のコポリマー(P)。
【請求項6】
式(III)において:
- zは、1に等しく、R
10は、酸素原子又は任意選択的に少なくとも1個の酸素原子で割り込まれた及び/又はそれを含む、1~24個の炭素原子を含む二価の過フッ素化アルキル鎖である;及び/又は
- 置換基R
11及びR
12の1つは、請求項1に定義されたような式(IV)の基であり、他の置換基は、フッ素原子又は1~3個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル鎖から選択される;及び/又は
- 置換基R
13~R
15の1つは、式(IV)の基であり、他の2つの置換基は、フッ素原子又は1~3個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル鎖から独立して選択される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のコポリマー(P)。
【請求項7】
式(IV)において:
- aは1であり、vは1であり、B
∧は、式-[C(R
1∧)(R
2∧)-C(R
3∧)(R
4∧)]-(式中、R
1∧~R
4∧は、それぞれ独立して、フッ素原子、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐過フッ素化アルキル基を含む、好ましくはそれらからかる基の中で選択される)の基、又は請求項1に定義されたような式(III)の基である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のコポリマー(P)。
【請求項8】
前記コポリマー(P)は、10Pa*s~2000Pa*sの、ISO 6721 part 10に従って0.1rad/sで及び25℃で測定される、複素粘度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のコポリマー(P)。
【請求項9】
前記コポリマー(P)は、化学反応を受けることができる部分を含むペンダント基を含まない、請求項1に記載のコポリマー(P)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に定義されたような2種以上のコポリマー(P)を含む混合物[混合物(P)]。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に定義されたようなコポリマー(P)の又は請求項10に定義されたような混合物(P)の製造方法[方法(P)]であって、前記方法は、
a)2つの鎖末端を有する(パー)フルオロポリエーテル鎖を含み、前記鎖末端のそれぞれが、1~3個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル鎖を有し、任意選択的に1個以上の塩素原子又はアシルフルオリド、フルオロホルメート及びケトンから選択される官能性末端基を含有し、前記鎖末端は、前記(パー)フルオロポリエーテル鎖の反対側に結合しており、前記(パー)フルオロポリエーテル鎖は、請求項3に定義されたような式(Rf-i)~(Rf-v)からなる群から独立して選択される繰り返し単位を含み、好ましくはそれらからなり、及び100gのPFPEパーオキシ中の活性酸素(Mw=16)のグラムとして定義される、0.1~4のパーオキシド含有量(PO)を有する、少なくとも1種のパーオキシド(パー)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEパーオキシ]を、
式(III-p):
【化2】
(式中、
R
21~R
23及びR
31~R
33のそれぞれは、独立して、フッ素原子、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐過フッ素化アルキル基であり、
R
10は、酸素原子、1~24個の炭素原子を含み、任意選択的に少なくとも1個の酸素原子で割り込まれた及び/又はそれを含む線状若しくは分岐過フッ素化アルキル基であり、
tは、ゼロ又は1、好ましくは1であり;
z*及びz**のそれぞれは、独立して、1若しくは2である)
の少なくとも1種の過フッ素化化合物と接触させるステップであって、
ここで、
式(III-p)の前記化合物の量は、前記PFPEパーオキシの量の5重量%未満であるステップ;
b)前記PFPEパーオキシと式(III)の前記化合物とをUV放射又は加熱の存在下で反応させるステップ;
c)フッ素化し、前記コポリマー(P)を得るステップ
を含む方法。
【請求項12】
tは1であり、2、3又は4つの不飽和部分は、R
10に属する同じ炭素原子に又は異なる炭素原子に結合している、請求項11に記載の方法(P)。
【請求項13】
式(III-p)の前記少なくとも1種の化合物は、以下の式:
CF
2=CF(R
10)
tCF=CF
2に従い、
ここで、
tは、ゼロ又は1であり、
R
10は、以下の式:
(R
10-i) -(CF
2)
d(O)
e(CF
2O)
fR
CF(O)
e*(CF
2)
d*(CF2O)
f*
(式中、
d、d*、e、e*、f及びf*のそれぞれは、独立して、ゼロ又は1であり、
R
CFは、任意選択的に1個以上の酸素原子で割り込まれた、1~12個、好ましくは1~8個の炭素原子を含むパーフルオロアルキル鎖である);
(R
10-ii) -O-(C
3F
6O)
h-(CF
2)
i-(C
3F
6O)
j-O-
(式中、h=jであり、h+jは、2~6であり、iは、2~6である)
の1つに従う、
請求個12に記載の方法(P)。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の方法(P)であって、前記方法(P)は、
- ステップ(a)の前に、好ましくは化学還元若しくはUV処理若しくは熱処理による、前記PFPEパーオキシ中の前記パーオキシド結合の部分還元のステップ;並びに/又は
- ステップ(c)の後に、前記溶媒の除去のステップ(d)及び/若しくは分別のステップ(e)
を含む方法(P)。
【請求項15】
請求項1~9に定義されたようなコポリマー(P)若しくは請求項10に定義されたような混合物(P)と、部分フッ素化、完全フッ素化及び水素化基油を含む群の中で選択される少なくとも1種の基油(但し、前記基油は、コポリマー(P)と溶液を形成できることを条件とする)と、任意選択的に、増粘剤、防錆剤、酸化防止剤、熱安定剤、流動点降下剤、高圧用のものなどの、摩耗防止剤、分散剤、トレーサー、染料、タルク及び無機充填材から選択される少なくとも1種の添加剤とを含む組成物[組成物(CL)]。
【請求項16】
少なくとも1種の物品の少なくとも1つの表面を潤滑する方法であって、前記方法は、請求項1~9に定義されたような前記コポリマー(P)又は請求項10に定義されたような前記混合物(P)若しくは請求項14に定義されたような前記組成物(CL)を、前記少なくとも1つの表面と接触させることを含む方法。
【請求項17】
前記物品は、電動水中ポンプ等などの、石油ガス用途に使用するためのポンプ、蒸気タービン及びガスタービンなどの、回転機械;電気コネクタ;ファンクラッチ若しくは冷却ファンのベアリング;又は重量級トラック自動クラッチ、より特に前記クラッチのベアリングから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
デバイスにおける振動及び/又は衝撃の相殺方法であって、前記方法は、減衰デバイスを含む装置を提供することを含み、前記減衰デバイスが、請求項1~9に定義されたような少なくとも1種のコポリマー(P)、又は請求項10に定義されたような前記混合物(P)若しくは請求項14に定義されるような前記組成物(CL)を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2021年7月1日出願の欧州特許出願第21183081.5号の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本特許出願は、粘度の増加で特徴付けられる、(パー)フルオロポリエーテル鎖を含むコポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
潤滑は、機械類を適切な運転条件に維持する重要な側面である。ベアリング、ピン、シャフト、ギア及びジョイントなどの機械要素は、摩擦を減らす、汚染を防ぐ、摩耗を低減する及び熱を分散するためにそれらの可動面間に適切な潤滑を必要とする。不適切な潤滑は、早すぎる部品摩耗及び部品又はシステム故障につながる可能性が高い。
【0004】
(パー)フルオロポリエーテル(以下では「PFPEポリマー」と言われる)は、いくつかの潤滑用途での基油として又は添加物として長い間知られている。
【0005】
PFPEポリマーの幾つかの合成が、当技術分野において開示されている。不特定の過フッ素化ポリエーテル混合物の最初の合成は、油状生成物がヘキサフルオロプロペンの光オリゴマー化の過程で得られた、1953年に報告された。それ以来、多数の異なる過フッ素化ポリエーテルが合成され、文献に記載されてきた。
【0006】
米国特許第4,500,739号明細書(Montedisonの名義での)は、パーオキシドPFPEと-とりわけ-パーフルオロブタジエン(グループIIのフルオロオレフィン)との反応を開示している。実施例4は、反応がヘキサメチレンジアミンの存在下で更に進行できるように高分子鎖に沿ってペンダント不飽和基をもたらす、パーフルオロブタジエンとの、大過剰の過フッ素化ビス-オレフィンとの反応を開示している。
【0007】
米国特許第8,258,090 B2号明細書(Solvay Solexis S.p.A.の名義での)は、式:
(I) T-O-[A-B]z-[A’-B’]z’-A-T
[式中、
T及びT’は、C1~3パーフルオロアルキル又はC1~6アルキルであり、
A及びAは、パーフルオロポリエーテル鎖であり、
Bは、2つの異なるオレフィンに由来し、そのうちの少なくとも1つは、式:
(Ia) -[(CR1R2-CR3R4)j-(CR5R6-CR7R8)j’]-
(ここで、
jは、1~5であり、j’は、0~4であり、j+j’の合計は、2~5であり、
R1~R8は、ハロゲン、H、C1~6(パー)ハロアルキル、C1~6アルキル、C1~6オキシ(パー)フルオロアルキルであり、
zは2以上であり、z’は整数であり、z及びz’の合計は、式(I)のポリマーの数平均分子量が500~500000の範囲にあるようなものである)
の、ラジカルルートによってホモ重合可能なものであり;
B’は、(Ia)であるが、R1~R8の少なくとも1つは、Bにおけるものとは異なる意味を有する]
のフッ素化潤滑油を開示している。
この特許は、線状主鎖、言い換えれば無分岐で特徴付けられるブロックコポリマーが、式Bの群から得られることを開示している。
【0008】
PFPEポリマー単位を使用して得られたポリマーは、当技術分野において開示されてきた。架橋フルオロエラストマーがそれらの中にある。この関連で、S.P.Krukovsky et al.-J of Fluorine Chemistry 96(1999)31-33-は、エラストマーと言われる、架橋ポリマーを提供するためのUV放射及び加熱下での鎖中にパーオキシド基を含有するパーフルオロアルキレンオキシドとパーフルオロジビニルエーテルとの共重合を開示した。この公文書は、反応体に関するいかなる量も開示していないし、潤滑油のための使用に好適なポリマーの製造方法に取り組んでいない。
【発明の概要】
【0009】
近年の研究開発は、一官能性及び/又は二官能性(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマーに焦点を合わせていたが、本出願人は、潤滑油として使用することができる中性PFPEポリマーを提供する必要性が依然として存在することに気付いた。
【0010】
本出願人は、低いガラス転移温度(Tg)及び更に室温で液体状態にありながら、(0.1rad/sで25℃での複素粘度によって測定されるような)粘度の増加で特徴付けられる新規中性PFPEポリマーを提供する問題に直面した。
【0011】
本出願人は、意外にも、粘度の増加で特徴付けられる中性分岐(パー)フルオロポリエーテルポリマーが、数平均分子量の増加のために、工業規模で実施するのが容易な方法によって提供できることを見いだした。
【0012】
有利には、本方法は、そのようなポリマーが、例えば、広範囲の運転温度又は高い発熱を要する用途などの、厳しい環境における潤滑油として特に有用であるように、低いガラス転移温度を維持し、且つ粘度指数(ASTM D2270)を増加させながら、高い熱安定性を有する中性(パー)フルオロポリエーテルポリマーを製造することを可能にする。
【0013】
第1の態様では、本発明は、2つの鎖末端(ここで、両前記鎖末端は、過フッ素化アルキル基を含む)を有し、それぞれが2つの鎖末端を有する第1及び第2の(パー)フルオロポリエーテル鎖[PFPE鎖](ここで、前記第1及び第2のPFPE鎖の第1の鎖末端は、過フッ素化アルキル基を含み、前記第1及び第2のPFPE鎖の第2の鎖末端は、式(I):
(I) -[A-B]-
のブロックを介して互いに結合している)を含み、
ここで、
(A)は、PFPE鎖であり、
(B)は、以下の式(II):
【化1】
に従う部分であり、
ここで、
nは、1~3の整数であり;
R
1~R
4は、それぞれ独立して、フッ素原子、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐過フッ素化アルキル基、式(III):
(III) -(R
10)
t[C(R
11)(R
12)-C(R
13)(R
14)(R
15)]
zの基を含む、好ましくはそれらからなる群の中で選択され、
ここで、
R
10は、酸素原子、又は1~24個の炭素原子を含む、任意選択的に少なくとも1個の酸素原子で割り込まれた及び/又はそれを含む二価/三価/四価の過フッ素化アルキル鎖であり、
tは、ゼロ又は1であり、
zは、1~3の整数であり、
R
11~R
15は、それぞれ独立して、フッ素原子、1~6個の炭素原子を有する過線状若しくは分岐過フッ素化アルキル基及び式(IV):
-[(A
∧)
a-(B
∧)
v]-(C
∧)-T (IV)の基を含む、好ましくはそれらからなる群の中で選択され、
ここで、
A
∧は、PFPE鎖であり、
aは、ゼロ又は1であり、
vは、ゼロ又は1~3の整数であり、
B
∧は、式-[C(R
1∧)(R
2∧)-C(R
3∧)(R
4∧)]-
の基であり、
ここで、R
1∧~R
4∧は、それぞれ独立して、R
1~R
4に関して上で定義された意味を有し、
C
∧は、PFPE鎖であり、
Tは、過フッ素化アルキル基である、
ブロックコポリマー[コポリマー(P)]であって;
(式中、
‥ 式(I)における前記A及びB並びに式(IV)における前記A
∧及びB
∧は、統計的に分布しており、
‥ R
1~R
4の少なくとも1つは、式(III)の基であり、
‥ R
11又はR
12の1つ及びR
13~R
15の1つは、式(IV)の基であり、ここで、aは1であり、
‥ (B+B
∧)の合計は、1~15である
コポリマー(P)に関する。
【0014】
第2の態様では、本発明は、上で定義されたようなコポリマー(P)の製造方法[方法(P)]であって、前記方法は、以下のステップ:
a)少なくとも1種のパーオキシド(パー)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEパーオキシ]を、式(III-p):
【化2】
(式中、
R
21~R
23及びR
31~R
33のそれぞれは、独立して、フッ素原子、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐過フッ素化アルキル基であり、
R
10は、酸素原子、1~24個の炭素原子を含み、任意選択的に少なくとも1個の酸素原子で割り込まれた及び/又はそれを含む線状若しくは分岐過フッ素化アルキル基であり、
tは、ゼロ又は1、好ましくは1であり;
z*及びz**のそれぞれは、独立して、1若しくは2である)
の少なくとも1種の過フッ素化化合物と接触させるステップ;
ここで、
式(III-p)の化合物の量は、PFPEパーオキシの量の5重量%未満であるステップ;
b)PFPEパーオキシと式(III)の化合物とをUV放射又は加熱の存在下で反応させるステップ;
c)フッ素化し、こうして前記コポリマー(P)を得るステップ
を含む方法に関する。
【0015】
本発明による方法において、ペンダント基(「官能基」とも言われる)として不飽和部分を含まない分岐ブロックコポリマー(P)が得られるように、式(III-p)の不飽和部分の当量数がPFPEパーオキシにおけるパーオキシド単位のモルよりも低いように適切に選択されることが重要である。
【0016】
コポリマー(P)は、有利には、更なる化学反応を受けることができるあらゆる部分を含むペンダント基を含まない。特に、コポリマー(P)は、ペンダント基として不飽和部分を含まない。
【0017】
第3の態様では、本発明は、上で記載された方法(P)によって得られるコポリマー(P)に関する。
【0018】
精製ステップは、ステップ(c)の後に行うことができるが、本発明によるコポリマー(P)が、混合物として方法(P)のステップ(c)の終わりに得られることは、当業者に明らかであろう。
【0019】
したがって、さらなる態様では、本発明は、上で定義されたような2種以上のコポリマー(P)を含む混合物[混合物(P)]に関する。
【0020】
混合物(P)が、上で記載されたような方法(P)によって得られることは、当業者に明らかであろう。
【0021】
有利には、前記混合物(P)は、1つ以上の精製ステップ(「分別」ステップとも言われる)に供し、こうして異なる粘度で特徴付けられる別個のコポリマー(P)を得ることができる。
【0022】
更なる態様では、本発明は、少なくとも1種の物品の少なくとも1つの表面を潤滑する方法であって、前記方法は、前記コポリマー(P)又は前記混合物(P)を前記少なくとも1つの表面と接触させることを含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本説明の及び以下の特許請求の範囲の目的のためには:
- 例えば「ポリマー(P)」等のような表現における、式を特定する記号又は数字の周りの括弧の使用は、本文の残りから記号又は数字をより良く区別するという単なる目的を有し、これ故に、前記括弧は、省略することもでき;
- 頭字語「PFPE」は、「(パー)フルオロポリエーテル」を表し、名詞として用いられる場合、文脈に応じて、単数形又は複数形のいずれかを意味することを意図し;
- 用語「(パー)フルオロポリエーテル」は、完全若しくは部分フッ素化ポリエーテルポリマーを示すことを意図する。
【0024】
好ましくは、コポリマー(P)において、第1のPFPE鎖、第2のPFPE鎖、A、A∧、C∧は、互いに同じ若しくは異なるものである。
【0025】
好ましくは、前記過フッ素化アルキル基は、互いに同じ若しくは異なるものである。
【0026】
好ましくは、前記過フッ素化アルキル基は、1~3個の炭素原子を含む線状パーフルオロアルキル基である。
【0027】
好ましくは、コポリマー(P)において、前記少なくとも1つの第1のPFPE鎖は、シグマ結合又は-CF2-、-CF2CF2-若しくは-O-から選択される基を介して式(I)の前記少なくとも1つのブロックに結合している。
【0028】
好ましくは、コポリマー(P)において、前記第2のPFPE鎖は、シグマ結合又は-CF2-、-CF2CF2-若しくは-O-から選択される基を介して式(I)の少なくとも1つのブロックに結合している。
【0029】
好ましくは、コポリマー(P)において、式(I)における(A)及び(B)は、シグマ結合又は-O-、-CF2-若しくは-CF2CF2-から選択される基を介して連結している。
【0030】
好ましくは、コポリマー(P)において、前記第1のPFPE鎖、第2のPFPE鎖、式(I)におけるA並びに式(IV)における前記A∧及びC∧のそれぞれは、
(Rf-i) -CFXO-(式中、Xは、F又はCF3である);
(Rf-ii) -CFXCFXO-(式中、出現ごとに等しいか若しくは異なる、Xは、F又はCF3である、但し、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とする);
(Rf-iii) -CF2CF2CW2O-(式中、互いに等しいか若しくは異なる、Wのそれぞれは、F、Cl、Hである);
(Rf-iv) -CF2CF2CF2CF2O-;
(Rf-v) -(CF2)j-CFZ-O-(式中、jは、0~3の整数であり、Zは、一般式-O-R(f-a)-Tの基であり、ここで、R(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:Xのそれぞれが独立してF又はCF3である、-CFXO-、-CF2CFXO-、-CF2CF2CF2O-、-CF2CF2CF2CF2O-の中で選択され、Tは、C1~C3パーフルオロアルキル基である)
からなる群から独立して選択される繰り返し単位を含む、好ましくはそれらからなる部分若しくは完全フッ素化鎖[鎖(Rf)]である。
【0031】
好ましくは、前記鎖(Rf)は、以下の式:
(Rf-I)
-[(CFX1O)g1(CFX2CFX3O)g2(CF2CF2CF2O)g3(CF2CF2CF2CF2O)g4]-
(式中、
- X1は、-F及び-CF3から独立して選択され、
- 互いに及び出現ごとに等しいか若しくは異なる、X2、X3は、独立して、-F、-CF3であり、但し、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とし;
- 互いに等しいか若しくは異なる、g1、g2、g3、及びg4は、独立して、g1+g2+g3+g4が2~1000の範囲にあるような、0以上の整数であり;g1、g2、g3及びg4の少なくとも2つがゼロとは異なる場合、異なる繰り返し単位は、鎖に沿って概して統計的に分布している)
に従う。
【0032】
より好ましくは、鎖(Rf)は、式:
(Rf-IIA) -[(CF2CF2O)a1(CF2O)a2]-
(式中:
- a1及びa2は、独立して、数平均分子量が1,000~100,000であるような0以上の整数であり;a1及びa2は両方とも、好ましくはゼロとは異なり、比a1/a2は、好ましくは0.1~10に含まれる);
(Rf-IIB) -[(CF2CF2O)b1(CF2O)b2(CF(CF3)O)b3(CF2CF(CF3)O)b4]-
(式中:
b1、b2、b3、b4は、独立して、数平均分子量が1,000~100,000であるような0以上の整数であり;好ましくは、b1は0であり、b2、b3、b4は、0より大きく、比b4/(b2+b3)は、1以上である);
(Rf-IIC) -[(CF2CF2O)c1(CF2O)c2(CF2(CF2)cwCF2O)c3]-
(式中:
cw=1若しくは2であり;
c1、c2、及びc3は、数平均分子量が、1,000~100,000であるように選択される、0以上の整数であり;好ましくはc1、c2及びc3は、全て0超であり、比c3/(c1+c2)は概して、0.2より小さい)
の鎖から選択される。
【0033】
更により好ましくは、鎖(Rf)は、本明細書で以下の式(Rf-III):
(Rf-III) -[(CF2CF2O)a1(CF2O)a2]-
(式中:
- a1、及びa2は、数平均分子量が1,000~100,000であるような0超の整数であり、比a1/a2は、概して0.1~10、より好ましくは0.2~5である)
に従う。
【0034】
好ましくは、式(II)において、nは、1若しくは2、より好ましくは1に等しい整数である。
【0035】
好ましくは、式(II)において、置換基R1~R4の少なくとも1つは、式(III)の基であり、他の置換基は、フッ素原子又は1~3個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル鎖、より好ましくはフッ素原子又は1個の炭素原子を有する過フッ素化アルキルからそれぞれ独立して選択される。
【0036】
一実施形態によれば、式(III)において、tは0である。
【0037】
別の実施形態によれば、式(III)において、tは1であり、
R10は、以下の式:
(R10-i) -(CF2)d(O)e(CF2O)fRCF(O)e*(CF2)d*(CF2O)f*
(式中、
d、d*、e、e*、f及びf*のそれぞれは、独立して、ゼロ又は1であり、
RCFは、任意選択的に1個以上の酸素原子で割り込まれた、1~12個、好ましくは1~8個の炭素原子を含むパーフルオロアルキル鎖である);
(R10-ii) -O-(C3F6O)h-(CF2)i-(C3F6O)j-O-
(式中、h=jであり、h+jは、2~6であり、iは、2~6である)
の1つに従う。
【0038】
この実施形態によれば、好ましくはR10は、式:
(R10-i) -(CF2)d(O)e(CF2O)fRCF(O)e*(CF2)d*(CF2O)f*
(式中、
d、f、d*及びf*はゼロであり、
e及びe*は1であり、
RCFは、1~10個、好ましくは1~8個の炭素原子を含む線状パーフルオロアルキル鎖である)
に従う。
【0039】
好ましくは、式(III)において、zは1に等しく、R10は、酸素原子又は任意選択的に少なくとも1個の酸素原子で割り込まれた及び/又はそれを含む、1~24個の炭素原子を含む二価の過フッ素化アルキル鎖である。
【0040】
好ましくは、式(III)において、置換基R11及びR12の1つは、式(IV)の基であり、他の置換基は、フッ素原子又は1~3個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル鎖、より好ましくはフッ素原子又は1個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル鎖から選択される。
【0041】
好ましくは、式(III)において、置換基R13~R15の1つは、式(IV)の基であり、他の2つの置換基は、フッ素原子又は1~3個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル鎖、より好ましくはフッ素原子又は1個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル鎖から独立して選択される。より好ましくは、前記2つの置換基は、同じものであり、フッ素原子である。
【0042】
好ましくは、式(IV)において、aは1であり、vは1であり、B∧は、式
-[C(R1∧)(R2∧)-C(R3∧)(R4∧)](式中、R1∧~R4∧は、それぞれ独立して、それぞれ、R1~R4のそれぞれと同じものである)の基である。
【0043】
好ましくは、コポリマー(P)は、10Pa*s~5000Pa*sの、0.1rad/sで及び25℃で測定される、複素粘度で特徴付けられる。
【0044】
本発明によれば、前記コポリマー(P)は、上で記載されたような方法(P)によって得られる。
【0045】
ステップ(a)の前に、PFPEパーオキシは、例えば化学的還元又はUV処理又は熱処理による、過酸化物結合の部分還元に供することができる。
【0046】
好ましくは、前記PFPEパーオキシは、2つの鎖末端を有する(パー)フルオロポリエーテル鎖を含み、前記鎖末端のそれぞれは、1~3個の炭素原子を有し、任意選択的に1個以上の塩素原子又はアシルフルオリド、フルオロホルメート及びケトンから選択される官能性末端基を含有する(過)フッ素化アルキル鎖を含み、前記鎖末端は、前記(パー)フルオロポリエーテル鎖の反対側に結合しており、前記(パー)フルオロポリエーテル鎖は、上で定義されたような式(Rf-i)~(Rf-v)からなる群から独立して選択される繰り返し単位を含み、好ましくはそれらからなり、及び100gのPFPEパーオキシ中の活性酸素(Mw=16)のグラムとして定義される、0.1~4、好ましくは0.1~3.5の、パーオキシド含有量(PO)を有する、パーオキシド(パー)フルオロポリエーテルポリマーである。
【0047】
好ましくは、式(III-p)の前記化合物において、tが1である場合、2、3又は4つの不飽和部分は、R10に属する、同じ若しくは異なる原子、好ましくは炭素原子に結合している。
【0048】
好ましくは、式(III-p)の前記少なくとも1種の化合物は、以下の式:
CF2=CF(R10)tCF=CF2
に従い、
ここで、
tは、ゼロ又は1であり、
R10は、以下の式;
(R10-i) -(CF2)d(O)e(CF2O)fRCF(O)e*(CF2)d*(CF2O)f*
(式中、
d、d*、e、e*、f及びf*のそれぞれは、独立して、ゼロ又は1であり、
RCFは、任意選択的に1個以上の酸素原子で割り込まれた、1~12個、好ましくは1~8個の炭素原子を含むパーフルオロアルキル鎖である)
(R10-ii) -O-(C3F6O)h-(CF2)i-(C3F6O)j-O-
(式中、h=jであり、h+jは、2~6であり、iは、2~6である)
の1つに従う。
【0049】
好ましくは、式(III-p)の前記化合物は、
CF2=CFCF=CF2
CF2=CFOCF=CF2
CF2=CFCF2OCF2CF=CF2
CF2=CFO-(CF2)3CF=CF2
CF2=CFCF2O(CF2)3OCF2-CF=CF2
CF2=CFCF2CF=CF2
CF2=CF(CF2)2CF=CF2
CF2=CF(CF2)3CF=CF2
CF2=CF(CF2)4CF=CF2
CF2=CFOCF2OCF=CF2
CF2=CFO(CF2)2OCF=CF2
CF2=CFO(CF2)3OCF=CF2
CF2=CFO(CF2)4OCF=CF2
CF2=CF(CF2)2OCF=CF2
CF2=CF(CF2)3OCF=CF2
CF2=CF(CF2)4OCF=CF2
CF2=CFCF2O(CF2)2OCF2O-CF=CF2
CF2=CFCF2O(CF2)3OCF2O-CF=CF2
CF2=CFCF2O(CF2)4OCF2OCF=CF2
CF2=CFCF2O(CF2)6OCF2CF=CF2
CF2=CFO-CF2O-(CF2)2O-CF2O-CF=CF2
CF2=CFO-CF2O-(CF2)3O-CF2O-CF=CF2
CF2=CFO-CF2O-(CF2)4O-CF2O-CF=CF2
CF2=CFO-(CF2O)6-CF=CF2
CF2=CFO-(CF2CF2O)2-CF=CF2
CF2=CFO-(CF2CF2O)2-CF2OCF=CF2
CF2=CFO(C3F6O)h-(CF2)i-(C3F6O)j-OCF=CF2
(式中、h及びjは、同じものであり、それらの合計は、2~6であり、iは、2~6である)
を含む、より好ましくはそれらからなる群から選択される。
【0050】
特に好ましい実施形態によれば、式(III-p)の前記少なくとも1種の化合物は、以下の式:
CF2=CF(R10)tCF=CF2
(式中、tは1である)
に従い、
R10は、式:
(R10-i) -(CF2)d(O)e(CF2O)fRCF(O)e*(CF2)d*(CF2O)f*
(式中、
d、f、d*及びf*はゼロであり、
e及びe*は1であり、
RCFは、1~10個、好ましくは1~8個の炭素原子を含む線状パーフルオロアルキル鎖である)
に従う。
【0051】
好ましくは、ステップ(a)において、式(III-p)の化合物の量は、3重量%未満、更により好ましくは1重量%未満の、PFPEパーオキシの量である。
【0052】
反応が進行し、コポリマー(P)が得られるときに、式(III-p)の化合物における不飽和部分がコポリマー(P)における飽和部分になり、その結果式(III-p)における置換基R21~R23が、コポリマー(P)の式(III)における置換基R1~R3になり、置換基R31が式(III)における置換基R11又はR12のどちらかになり、置換基R32及びR33がコポリマー(P)の式(III)における置換基R13~R15になることは、当業者によって容易に理解されるであろう。
【0053】
ステップ(a)及びステップ(b)は、フッ素化溶媒の存在下で行うことができる。好ましくは、前記フッ素化溶媒は、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロポリエーテルを含む群から選択される。
【0054】
好ましくは、ステップ(b)は、2~60時間の時間UV放射の存在下で行われる。
【0055】
好ましくは、ステップ(b)は、-60℃~+60℃、より好ましくは-20℃~+40℃、更により好ましくは0℃~30℃の温度でUV放射の存在下で行われる。
【0056】
代替策として、ステップ(b)は、好ましくは100℃~250℃の温度で加熱することによって、熱処理下に行うことができる。
【0057】
ステップ(b)の終わりに得られたポリマーが0.05よりも低い、好ましくは0.001よりも低いパーオキシド含有量(PO)を有することは、当業者に明らかであろう。
【0058】
好ましくは、前記ステップ(c)は、無水窒素流の存在下にフッ素で処理することによって行われる。
【0059】
好ましくは、前記方法(P)は、ステップ(c)の後に、溶媒の除去のステップ(d)及び/又は分別のステップ(e)を含む。
【0060】
溶媒の除去の前記ステップ(d)は、蒸発によって、例えば真空下の蒸留によって実施することができる。
【0061】
分別の前記ステップ(e)は、分別ステップが沈澱分別によって行われる場合、超臨界CO2、ヘキサフルオロキシレン又はハイドロフルオロカーボン、及びそれらの混合物を溶媒として使用する、溶媒抽出によって行うことができる。超臨界CO2が好ましい。
【0062】
上で説明されたように、精製ステップは、ステップ(c)又はステップ(d)の後に行うことができ、異なる粘度及び/又は分子量及び/又は置換基で特徴付けられるコポリマー(P)が存在する、混合物(P)として方法(P)のステップ(c)の又はステップ(d)の終わりに本発明によるコポリマー(P)が得られることは、当業者の明らかであろう。
【0063】
コポリマー(P)は、有利には、例えば広範囲の運転温度に供される、厳しい環境での用途向けにとりわけ、潤滑油として使用される。
【0064】
コポリマー(P)又は混合物(P)は、そのようなものとして、又は潤滑の技術分野の当業者に公知の添加剤と混合して使用することができ、その結果組成物[組成物(CL)]が得られる。
【0065】
例えば、組成物(CL)は、他の好適な潤滑油を基油として含むことができ、そのような基油は、部分フッ素化、完全フッ素化及び水素化基油を含む群の中で選択される、但し、前記基油は、コポリマー(P)と溶液を形成できることを条件とする。
【0066】
完全フッ素化潤滑油基油の非限定的な例は、欧州特許出願公開第2100909 A号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.p.A.)において化合物(1)~(8)として特定されたものである。
【0067】
例えば、好適な添加剤は、増粘剤、防錆剤、酸化防止剤、熱安定剤、流動点降下剤、高圧用のものなどの、摩耗防止剤、分散剤、トレーサー、染料、タルク及び無機充填材から選択される。
【0068】
増粘剤の例は、タルク、シリカ、窒化ホウ素、ポリ尿素、アルカリ若しくはアルカリ土類金属テレフタレート、カルシウム及びリチウム石鹸並びにそれらの複合体、並びにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)であり;それらの中で、PTFEが好ましい。
【0069】
分散剤の例は、例えば、界面活性剤、好ましくは非イオン界面活性剤、より好ましくは(パー)フルオロポリエーテル界面活性剤及び(パー)フルオロアルキル界面活性剤である。
【0070】
用途によって必要とされる場合、溶媒も使用することができる。
【0071】
溶媒の例は、フッ素化若しくは部分フッ素化溶媒、例えばGalden(登録商標)PFPE、Novec(登録商標)HFEなど、並びにフルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フルオロアルキルアミン、フルオロアルコール、メチルエチルケトンなどのケトン、イソプロピルアルコールなどのアルコール、酢酸ブチルなどのエステル、ハイドロフルオロカーボン等のような他の有機溶媒である。
【0072】
本発明によるコポリマー(P)、混合物(P)又は組成物(CL)の潤滑剤特性から恩恵を受けることができる物品は、特に限定されない。
【0073】
前記物品は、好ましくは、少なくとも1つの金属表面を含む。
【0074】
前記物品の例は、電動水中ポンプ等などの、石油ガス用途に使用するためのポンプ、蒸気タービン及びガスタービンなどの、回転機械;電気コネクタ;ファンクラッチ若しくは冷却ファンのベアリング;又は重量級トラック自動クラッチ、より特に前記クラッチのベアリングである。
【0075】
本発明によるコポリマー(P)、混合物(P)又は組成物(CL)は、有利には、減衰デバイスにおけるダンパー流体として使用することができる。
【0076】
このように、更なる態様では、本発明は、デバイスにおける振動及び/又は衝撃の相殺方法であって、前記方法は、減衰デバイスを含む装置を提供することを含み、前記減衰デバイスは、上で定義されたような少なくとも1種のコポリマー(P)、混合物(P)又は組成物(CL)を含む方法に関する。
【0077】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、ある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0078】
本発明はこれから以下の実施例に関連して説明され、その目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0079】
実験の部
原材料
式
T-O-(CF2CF2O)m(CF2O)n(O)h-T’
数平均分子量(Mn)=48600g/mol、
m/n=1.0及びPO=1.65%
T、T’=-CF3(83%)、-C(=O)F(6%)、-CF2C(=O)F(11%)
を有するパーオキシドパーフルオロポリエーテルオイルは、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A.によって入手した。
【0080】
Galden(登録商標)HT200は、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A.によって入手した。
【0081】
パーフルオロ(ビス ビニルエーテル)(PBVE)は、Anles Ltd.によって入手した。
【0082】
ヘキサフルオロベンゼンは、Sigma Aldrichによって入手した。
【0083】
方法
19F-NMR分光法:
フッ素原子核に作用するVarian Mercury 200MHz分光計を用いて、以下の実施例で報告されるPFPEオイルの構造、数平均分子量及び組成を得た。19F-NMRスペクトルは、内部標準としてCFCl3を使用して純粋な試料に関して得た。ヘキサフルオロベンゼンをまた溶媒として使用した。
【0084】
パーオキシド含有量(PO)の測定:
パーオキシド含有量(PO)は、100gのポリマー当たりのパーオキシド酸素のグラムとして表す。パーオキシド含有量の分析は、白金電極を備えたMettler DL40デバイスを用いるヨードメトリー滴定によって実施した。PO測定の感度限界は、0.0002%であった。
【0085】
複素粘度の測定:
複素粘度は、ISO 6721 part 10に従って平行板形状のMCR502 Anton-Paarレオメーター(25mm直径)を用いる周波数掃引試験で測定した。
【0086】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):
分析は、HFE7100を溶離液として使用するWaters 410屈折計検出器付き混合CCDカラムで行った。
【0087】
実施例1-コポリマー(P-1)の合成
反応は、石英円筒に収納された高圧水銀ランプ(HANAU TQ150)、磁気攪拌機、熱電対及び凝縮器を備えた1000mL円筒形光化学ガラス反応器を用いて行った。
【0088】
200.3gの出発パーオキシドパーフルオロポリエーテルオイルを、1501gのGalden(登録商標)HT200及び1.30gのPBVEと一緒に光化学反応器に装入し、十分に撹拌して均一な混合物を得た。次いで、反応混合物を氷/水浴で約10℃まで冷却し、窒素を1.0Nl/hの速度でシステム中へパージした。UVランプのスイッチを入れた。
【0089】
55時間の照射後に、ランプのスイッチを切り、反応混合物を第2のガラス反応器へ移し、UV放射の存在下で合計24時間1.0Nl/hのフッ素ガスで40℃においてフッ素化した。19F-NMR分析は、生成物の完全なフッ素化並びに鎖末端での-CF2COF及び-COF末端の不在を裏付けた。
【0090】
得られた溶液を、溶媒を除去するために磁気攪拌機を備えた丸底フラスコにおいて240℃で4h蒸留した。
【0091】
蒸留は、溶媒の完全な除去まで先ず大気圧で、次いで減圧(0.1mbar)下で行った。
【0092】
163.6gの透明な粘性のある形態でのコポリマー(P-1)を残留物として得、それをヨードメトリー滴定によって分析してパーオキシド単位の完全な除去を確認した。
【0093】
19F-NMR分析は、残存パーオキシドの不在を裏付けた。ポリマー(P-1)は、m/n=1.0及びT、T’=-CF3を有した。
【0094】
実施例2-PBVEなしの比較ポリマー(C-1∧)の合成
実施例1と同じ光化学装置及びパーオキシドパーフルオロポリエーテル前駆体をこの比較例のために採用した。
【0095】
199.9gの出発パーオキシドパーフルオロポリエーテルオイルを、1502gのGalden(登録商標)HT200と一緒に光化学反応器に装入し、十分に撹拌して均一な混合物を得た。
【0096】
次いで合成は、実施例1に記載されたように進行した。19F-NMR分析は、生成物の完全なフッ素化並びに鎖末端での-CF2COF及び-COF末端の不在を裏付けた。
【0097】
蒸留をまた、実施例1に記載されたように行った。
【0098】
172.4gの比較ポリマー(C-1∧)を透明な粘性のあるオイルの形態で得、残留物として得、それをヨードメトリー滴定によって分析してパーオキシド単位の完全な除去を確認した。
【0099】
19F-NMR分析は、残存パーオキシドの不在を裏付けた。比較コポリマー(C-1∧)は、m/n=1.0及びT、T’=-CF3を有した。
【0100】
【0101】
本発明によるコポリマー(P-1)の分子量分布及び複素粘度の増加は、比較ポリマー(C-1∧)に対して鎖延長を裏付けた。
【国際調査報告】