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特表2024-523618生分解性組成物およびそれから成形される物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】生分解性組成物およびそれから成形される物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/14 20060101AFI20240621BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240621BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08L1/14 ZBP
C08L67/00
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580444
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2022035222
(87)【国際公開番号】W WO2023278378
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/202,854
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】アトキンソン,ポール・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ドネルソン,マイケル・ユージン
(72)【発明者】
【氏名】フー,シャオボー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AB02W
4J002CF03X
4J002CF19X
4J002GC00
4J002GG01
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GK00
4J002GK03
4J200AA04
4J200BA07
4J200BA17
4J200DA03
4J200DA19
4J200DA20
4J200EA10
4J200EA21
(57)【要約】
生分解性組成物を開示する。前記生分解性組成物は、(i)生分解性重合体および(ii)セルロースエステルを含む。さらに、前記生分解性組成物を含む、あるいはそれから形成されるフィルム、ならびに基材とその表面上に前記生分解性組成物の層を含む物品について説明する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性組成物であって、前記組成物は、
(a)酢酸プロピオン酸セルロース(「CAP」)であるセルロースエステル;および
(b)ポリエステルである生分解性重合体を含み、
前記ポリエステルは、ポリブチレンスクシネート(「PBS」)、ポリブチレンスクシネートアジペート(「PBSA」)、ポリカプロラクトン(「PCL」)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(「PBAT」)、ポリ乳酸(「PLA」)、またはそれらの組合せから選択され、
前記CAPは、ヒドロキシル置換基の平均置換度が0.3~1.2であり、アセチル置換基の平均置換度(「DSAc」)が0~0.5であり、プロピオニル置換基の平均置換度(「DSPr」)が1.3~2.5であり、かつASTM D-1343に従って測定される落球式粘度が0.1~30秒であり、
前記CAPは、前記組成物の総重量に基づいて1重量%~34重量%で存在し、
前記組成物は、ガラス転移温度(「T」)が-60~-10℃であり、融解温度(「T」)が60~130℃であり、結晶化温度(「T」)が20~85℃であり、かつ前記ポリエステルに対比して180~230℃で測定される粘度が少なくとも20℃低下する、生分解性組成物。
【請求項2】
前記CAPは、ASTM D-1343に従って測定される落球式粘度が0.1~0.4秒である、請求項1に記載の生分解性組成物。
【請求項3】
前記生分解性組成物は均質である、請求項1または2に記載の生分解性組成物。
【請求項4】
前記CAPは、前記CAPおよび前記生分解性重合体の総重量に基づいて1重量%~18重量%で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の生分解性組成物。
【請求項5】
前記CAPは、前記CAPおよび前記生分解性重合体の総重量に基づいて18重量%~34重量%で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の生分解性組成物。
【請求項6】
前記ポリエステルはPBSである、請求項1~5のいずれか一項に記載の生分解性組成物。
【請求項7】
前記ポリエステルはPBSAである、請求項1~5のいずれか一項に記載の生分解性組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルはPCLである、請求項1~5のいずれか一項に記載の生分解性組成物。
【請求項9】
前記ポリエステルはPBATである、請求項1~5のいずれか一項に記載の生分解性組成物。
【請求項10】
前記ポリエステルはPLAである、請求項1~5のいずれか一項に記載の生分解性組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含むフィルム。
【請求項12】
前記フィルムの厚さは12~1524μmである、請求項11に記載の組成物を含むフィルム。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含む飲用ストロー。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含む繊維。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含む成型物。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含む被膜を含む紙または板紙。
【請求項17】
前記被膜の厚さは10~75μmである、請求項16に記載の紙または板紙。
【請求項18】
請求項16または17に記載の紙または板紙を含む紙コップ。
【請求項19】
表面を含む基材と、前記表面上に請求項4または5に記載の組成物を含む層とを含む被覆物品。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本出願は、生分解性組成物、および前記組成物から成形されるフィルム、被膜、被膜層、および被覆物品、ならびにキャスト品、成型品、押出品、形成品、および積層品などの物を開示する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック配合物および重合体配合物は、広範囲の市場用途にわたって有用な無数の製品の製造に重要な役割を担っている。このような配合物の汎用性は、それらの「調節可能性」による部分が大きく、多様な範囲の構成要素や成分を様々な比率で組み合わせてかつ/あるいは混合して、意図する個々の最終用途の性能基準を満たし、さらに配合者から製造者さらに消費者に至る価値連鎖に沿って各当事者が望む製造、出荷、梱包、コスト、およびその他の特性を満たす最終組成物を形成できる。
【0003】
当業者での重合体配合物の1つの課題は、これらの様々な性能基準および特性を注意深く管理してかつバランスを取ることである。一例として、例えば厚さに応じて剛性を改善および高くするために、重合体に種々の充填剤を混合することが当技術分野で知られている。しかしながら多くの充填剤は、許容できない副作用として配合物の視覚的な透明性を低下させる可能性があり、また重合体を脆化させて結晶化を促進する傾向がある。
【0004】
重合体のブレンドは、場合によっては競合する特性、性質、および最終用途の性能基準を構築しかつバランスを取るために配合者が利用可能な1つの手法である。一部の用途では、剛性が必要とされ、その剛性は重合体のブレンドにより弾性率を向上させることで実現できる。結晶化挙動やガラス転移を変更するなど、重合体のブレンドを通して熱挙動を調節する能力により、材料の非晶質性をさらに高めて、その結果、靱性を向上(最終製品での破壊を低下)でき、あるいは他の基材への接着力を改変できる。さらに延伸挙動の改変は、紡糸品、発泡体、配向フィルムなどの一部の用途にとって望まれる目標となる。ブレンドでの結晶化度により、材料の特定温度での延伸能力に影響を及ぼすことができ、またその結晶化度を調節して所望の特性を満たすことができる。
【0005】
配合物の流動性を変更して、配合物の加工法を改変できる。一部のブレンドでは低温での流動挙動を向上するように設計される場合があるが、他のブレンドでは溶融強度を向上するように設計してもよい。溶融強度の向上は、膨張フィルム、押出ブロー成形、押出被覆処理、または異形押出などの工程に有益な可能性があり、比較的高い流動性は、射出成形や繊維紡糸などの工程に有益な可能性がある。
【0006】
当業者であれば、これらの配合物の個々の成分に関連する複数の因子ならびにブレンド中でのそれらの相互作用が、性能基準の実現だけでなくブレンドの全体的な有用性にも影響を及ぼすことが分かっている。例えばブレンド中の各成分の分子量は、どの成分が優勢でどの成分が他の成分を修飾するかに一般的に相関する成分の量によって、ブレンド粘度に影響を及ぼす可能性がある。さらに、重合体ブレンド中の重合体成分の混和性および相溶性は、多くの場合に性能に対して重要であり、実用性には必須であると思われる。
【0007】
今日の経済環境では、プラスチック配合物および重合体配合物の商業的な成功は、たとえそれらの構成要素およびそれらの構成要素の影響が断定されていなくとも、環境問題から影響を受ける可能性がある。理想的には、プラスチックおよびプラスチック配合物は、再生可能な生物由来資源から製造でき、ならびにそれらの寿命の終点では再生可能または生分解可能であることが必要である。材料の環境への影響の評価は、多くの産業界ならびに政府の基準および規制の課題となっており、その評価法は「放射性炭素分析を用いる固体、液体、および気体試料の生物由来含有量を測定する標準試験法」を提供するASTM D6866-21に例示される。
【0008】
市場動向の観点から、消費者は生分解性材料から製造された製品に惹き付けられている。産業界および政府当局は、試験手法、規格、および関連認証を発展させて、海洋や土壌などの特定の環境および/または家庭や産業などの特定の環境での一般的な材料の分解能力に関する最低限の目標値を確立してきた。生分解性は、それぞれの個々の成分の性質と特性ならびにそれらの相互関係が最終的な判断において役割を担う可能性があるので、重合体ブレンドの配合者にとって特別な課題となっている。
【0009】
生分解性の期待および基準を満足させながら、消費者と製造業者の広範な性能基準を満たすことが可能な重合体配合物および組成物に対する継続的な必要性が存在している。
【発明の概要】
【0010】
本出願は、生分解性組成物を開示し、前記組成物は、
(a)酢酸プロピオン酸セルロース(「CAP」)であるセルロースエステル、および
(b)ポリエステルである生分解性重合体を含み、
前記ポリエステルは、ポリブチレンスクシネート(「PBS」)、ポリブチレンスクシネートアジペート(「PBSA」)、ポリカプロラクトン(「PCL」)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(「PBAT」)、ポリ乳酸(「PLA」)、またはそれらの組合せから選択され、
前記CAPは、ヒドロキシル置換基の平均置換度が0.3~1.2であり、アセチル置換基の平均置換度(「DSAc」)が0~0.5であり、プロピオニル置換基の平均置換度(「DSPr」)が1.3~2.5であり、かつASTM D-1343に従って測定されるボール落下粘度が0.1~30秒であり、
前記CAPは、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて1重量%~34重量%で存在し、
前記組成物は、ガラス転移温度(「T」)が-60~-10℃であり、融解温度(「T」)が60~130℃であり、結晶化温度(「T」)が20~85℃であり、かつ前記生分解性重合体に対比して180~230℃で測定される粘度が少なくとも20℃低下する。
【0011】
本出願は、本明細書に開示される生分解性組成物で製造されるフィルム、繊維、成形品、紙、板紙を開示する。
本出願の実施態様は、図面を参照して本明細書で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、(A)95/5のイソヘキサン/アセトン、(B)98/2のイソヘキサン/エタノール、および(C)95/5のイソヘキサン/ギ酸エチルを含む発泡剤ブレンドへの、セルロースエステルおよびセルロースエステルブレンドの吸収曲線を示す。
図2図2は、発泡剤として95/5のイソヘキサン/エタノールを用いるCAP1の脱着曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の詳細な説明]
本出願は、(i)生分解性重合体および(ii)セルロースエステルを含む生分解性組成物を対象とする。本明細書で使用される用語「生分解性」とは、経時的に細菌、真菌、または他の微生物によって分解可能な材料(例えば、重合体、組成物、ならびにそれらから生成される物および物品など)を示すことを意図する。用語「生分解性」には、これらに限定はされないが、ASTM D5338などの1種以上の標準化試験方法に従って生分解性として分類される材料が含まれてもよい。用語「生分解性」はさらに、これらに限定はされないが、例えば土壌分解性、水分解性、海洋分解性、家庭堆肥化性、産業堆肥化性などの材料の環境への影響を評価するために当該技術分野で用いられる1種以上の特定の記述子または基準に合致する材料を示してもよい。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、本出願の生分解性組成物、物、および被覆物品は、それぞれISO 17556、ISO 14851、ASTM D6691、NF T-51-800、NF T-51-800、およびASTM D6400のうちの1つ以上に準拠して試験した場合に、土壌分解性、水分解性、海洋分解性、家庭堆肥化性、および産業堆肥化性のうちの1つ以上として分類または認定されてもよい。このような分類または認証のための試験の手順、規格、および基準は、一般的に、分類の種類、管轄範囲などによって変更されてもよい。
【0014】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、本出願はさらに生分解性組成物を開示し、この組成物は、(a)酢酸プロピオン酸セルロース(「CAP」)であるセルロースエステル;および(b)ポリエステルである生分解性重合体を含み、このポリエステルは、ポリブチレンスクシネート(「PBS」)、ポリブチレンスクシネートアジペート(「PBSA」)、ポリカプロラクトン(「PCL」)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(「PBAT」)、ポリ乳酸(「PLA」)、またはそれらの組合せから選択され、このCAPは、ヒドロキシル置換基の平均置換度が0.3~1.2であり、アセチル置換基の平均置換度(「DSAc」)が0~0.5であり、プロピオニル置換基の平均置換度(「DSPr」)が1.3~2.5であり、かつASTM D-1343に従って測定される落球式粘度が0.1~30秒であり、このCAPは、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて1重量%~34重量%で存在し、この組成物は、ガラス転移温度(「T」)が-60~-10℃であり、融解温度(「T」)が60~130℃であり、結晶化温度(「T」)が20~85℃であり、かつこの生分解性重合体に対比して180~230℃で測定される粘度が少なくとも20℃低下する。
【0015】
当業者には分かっているように、PBS、PBSA、PCL、PBAT、またはPLAと称される前記ポリエステルにはそれぞれ、表示される単量体が本質的に含まれるが、例えば、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の量の微量のその他の単量体の存在を排除しない。
【0016】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、(a)酢酸プロピオン酸セルロース(「CAP」)であるセルロースエステル;(b)ポリエステルである生分解性重合体;および(c)発泡剤を含む発泡性組成物であって、このポリエステルは、ポリブチレンスクシネート(「PBS」)、ポリブチレンスクシネートアジペート(「PBSA」)、ポリカプロラクトン(「PCL」)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(「PBAT」)、またはそれらの組合せから選択され、このポリエステルは、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて1重量%~30重量%で存在し、このCAPは、ヒドロキシル置換基の平均置換度が0.3~1.2であり、アセチル置換基の平均置換度(「DSAc」)が0~0.5であり、プロピオニル置換基の平均置換度(「DSPr」)が1.3~2.5であり、かつASTM D-1343に従って測定される落球式粘度が0.1~30秒であり、この組成物は、生分解性重合体を含まない組成物に対比して、発泡剤の拡散の低下が少なくとも10%である。
【0017】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、このCAPは、ASTM D-1343に従って測定される落球式粘度が、0.1~0.4秒、または0.1~1秒、または0.1~5秒、または0.1~10秒、または0.1~20秒である。
【0018】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、このCAPは、セルロースエステルと生分解性重合体の総重量に基づいて、1重量%~18重量%、または1重量%~20重量%、または1重量%~25重量%、または1重量%~30重量%、または1重量%~15重量%、または1重量%~10重量%、または18重量%~34重量%、または15重量%~35重量%、または20重量%~345重量%、または25重量%~34重量%、16重量%~30重量%、または70重量%~85重量%、または65重量%~85重量%、または70重量%~85重量%、または75重量%~85重量%、または80重量%~85重量%、または70重量%~99重量%、または80重量%~99重量%、または85重量%~99重量%、または90重量%~99重量%で存在する。
【0019】
本出願の生分解性組成物には、場合によっては当該技術分野で生体高分子と呼ばれる生分解性重合体が含まれる。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、生分解性重合体はポリエステルである。本明細書で使用される用語「ポリエステル」は、典型的には、二官能性カルボン酸またはそのエステル、多くの場合にはジカルボン酸あるいはそのような酸またはエステルの混合物と、二官能性ヒドロキシル化合物、多くの場合にはジオールまたはグリコールあるいはそのようなジオールまたはグリコールの混合物とを反応させて調製される重合体を含むことを意図している。あるいは、二官能性カルボン酸はヒドロキシカルボン酸であってもよく、二官能性ヒドロキシル化合物は、例えばヒドロキノンなどの2つのヒドロキシル置換基を有する芳香核であってもよい。本明細書で使用される用語「ポリエステル」は、単一重合体、二元共重合体、三元共重合体など、ならびにそれらのブレンドまたは組合せを含むことを意味する。
【0020】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、ポリエステルは脂肪族反復単位を含む。語句「脂肪族反復単位」は、炭素原子が(アルカンの場合のような)鎖状構造または芳香環ではない環状構造を形成する反復単位を示すことを意図している。脂肪族反復単位の非限定的な例としては、アジピン酸ブチレンおよびコハク酸ブチレンに基づく反復単位が挙げられる。本出願のポリエステルは、脂肪族反復単位から本質的に構成され、あるいは脂肪族反復単位から構成され、実施態様によっては脂肪族ポリエステルまたは脂肪族コポリエステルと呼ばれてもよい。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、ポリエステルは、ポリブチレンアジペートおよびポリブチレンスクシネート重合体および共重合体、ならびにそれらのブレンドまたは組合せからなる群から選択される。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、ポリエステルは、ポリブチレンスクシネートの単独重合体または共重合体である。
【0021】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、ポリエステルはさらに、芳香族反復単位を含んでもよい。語句「芳香族反復単位」は、それらの周囲全体に非局在化したπ電子を有する1個以上の環を含む反復単位を示すことを意図している。非限定的な例としては、テレフタル酸ブチレンおよびイソテレフタル酸ブチレンに基づく反復単位が挙げられる。実施態様によっては、ポリエステルは、40~50モル%の芳香族反復単位を含んでもよい。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、ポリエステルは、ポリブチレンアジペートテレフタレート共重合体およびポリブチレンスクシネートテレフタレート共重合体、ならびにそれらのブレンドまたは組合せからなる群から選択される。
【0022】
適切なポリエステルは、例えば、米国特許第6,201,034号および第8,604,156号に開示されており、その内容および開示内容は参照により本明細書に組み込まれ、また例えばBio-PBSおよびEcoflexなどの商品名でEcoworld社、PTTMCC社、またはBASF社から市販されている。
【0023】
一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、生分解性重合体は、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて、1重量%~99重量%、または1重量%~90重量%、または1重量%~80重量%、または1重量%~70重量%、または1重量%~60重量%、または1重量%~50重量%、または1重量%~40重量%、または1重量%~30重量%、または1重量%~25重量%、または1重量%~20重量%、または1重量%~15重量%、または1重量%~10重量%、または1重量%~5重量%、5重量%~30重量%、または10重量%~30重量%、または16重量%~30重量%の量で生分解性組成物中に存在する。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、生分解性重合体は、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて、少なくとも50重量%の量で存在する。当業者であれば、組成物中の生分解性重合体の量を、限定はされないが、結晶化、靱性、伸び、接着性、溶融弾性率などの所望の組成物の目標特性を含む種々の因子に基づいて変更してもよいことが分かっている。
【0024】
本出願の生分解性組成物はセルロースエステルを含む。セルロースエステルは、一般的に、1つ以上のカルボン酸のセルロースエステルを含むと定義され、例えば、本出願の譲受人に譲渡された米国特許第5,929,229号に記載されており、その内容および開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。セルロースエステルの非限定的な例としては、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースと酢酸セルロースなどのいわゆる混合酸エステル、ならびにそれらの組合せが挙げられる。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、セルロースエステルは、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースまたは酢酸酪酸セルロース、およびそれらの組合せからなる群から選択される。実施態様によっては、セルロースエステルは、酢酸プロピオン酸セルロースを含む、それから本質的に構成される、あるいはそれから構成される。一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、セルロースエステルは、0.3~1.2、または0.4~1.2、または0.4~1.0のDS OH(ヒドロキシル置換度);0~0.5または0~0.4のDS Ac(酢酸置換度);1.3~2.5、または1.6~2.5、または2.1~2.5のDS Pr(プロピオン酸置換度);および0.05~30秒、または0.1~20秒、0.2~20秒、または0.1~10秒のASTM D-1343に従って測定される落球式粘度を有する酢酸プロピオン酸セルロースを含む、それから本質的に構成される、あるいはそれから構成される。一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、セルロースエステルは、0.8のDS OH、0.1のDS Ac、2.1のDS Pr、および0.2秒のASTM D-1343に従って測定される落球式粘度を有する酢酸プロピオン酸セルロースを含む、それから本質的に構成される、あるいはそれから構成される。
【0025】
一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、セルロースエステルは、酢酸セルロースを含む、酢酸セルロースから本質的に構成される、あるいは酢酸セルロースから構成される。一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、セルロースエステルは、0.1~30、0.5~30、または2~30のASTM D-1343に従って測定される落球式粘度;1.8~2.6、または2.1~2.6のDS Ac;および0.4~1.2、または0.4~0.9のDS OHを有する酢酸セルロースを含む、それから本質的に構成される、あるいはそれから構成される。一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、酢酸セルロースは、2.45のDS Acおよび0.55のDS OHを有してもよい。
【0026】
セルロースエステルは、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて、1重量%~99重量%の量で生分解性組成物中に存在してもよい。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、セルロースエステルは、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて、少なくとも50重量%の量で存在する。当業者であれば、生分解性組成物中のセルロースエステルの量は、限定はされないが、結晶化、靱性、伸び、接着性、溶融弾性率などの所望の組成物の目標特性などの種々の因子に基づいて変更してもよいことが分かっている。一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、セルロースエステルは、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて、少なくとも50重量%の量で存在する。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、セルロースエステルは、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて、最大70重量%の量で存在する。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、セルロースエステルは、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて、最大60重量%の量で存在する。一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、セルロースエステルは、セルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて最大30重量%で、あるいはセルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて最大20重量%で、あるいはセルロースエステルおよび生分解性重合体の総重量に基づいて最大10重量%で生分解性組成物中に存在する。
【0027】
本出願の生分解性組成物は、主成分としてポリエステル(すなわち生分解性重合体)および改質剤としてセルロースエステル、あるいは主成分としてセルロースエステルおよび改質剤としてポリエステルのいずれかに基づいていてもよい。
【0028】
本発明者らは、セルロースエステルで改質されたポリエステルがガラス転移温度(Tg)を上昇させ、かつ溶融温度(Tm)および結晶化温度(Tc)などの熱転移温度を低下させることができることを予想外に見出した。より低いTcにより、基材に装備される被膜の接着性を改善できることが判明した。さらに本発明者らはまた、そのように装備されたブレンドは、ポリエステル自体に対比して粘度が低くなることを見出した。粘度の低下は、押出成形プロセスのライン速度を速くでき、かつ基材に装備された被膜の接着性を改善できるので望ましい。
【0029】
本発明者らはまた、ポリエステルで改質されたセルロースエステルがセルロースエステルの発泡性を向上できることを予想外に見出した。酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)などのセルロースエステルには、使用時の熱撓み温度を高くでき、かつ生分解性であるなどの利点が見られる。但しこれらセルロースエステルは、ガラス転移温度(Tg)が高く、設備が許容する最高のプロセス温度よりもTgが高いために、従来からのポリスチレン発泡設備を用いて発泡させるのは困難であり、場合によっては不可能である。本発明により、CAPのTgを低下させるブレンド組成物を開示する。
【0030】
発泡CAPに関する別の問題は、ペンタン、ヘキサン、およびイソペンタンなどの従来の発泡剤との相溶性が低いことにある。発泡剤(BA)の吸収性の検討では、CAPは従来のBAを~1%しか吸収せず、これは膨張発泡に適する6重量%のBA添加水準よりも遥かに低い。さらにCAPそれ自体はBAを十分に保持できずに、従来のBAとの相溶性が劣るために被膜からのBAの拡散が多過ぎることになる。予備発泡中に重合体ビーズからのBAの拡散が速すぎてかつ発泡ビーズ内に残存するBAが不十分な場合には、内部圧力が低くなるために発泡ビーズは収縮しかつ崩壊する傾向がある。発泡ビーズにはさらに、ビーズ間の融着、およびそれに続く部品形成工程での部品の収縮、反り、および崩壊の問題が発生する可能性がある。本発明者らは、CAP混合物と選択されたBA混合物との組合せを使用すると、BAの拡散を最大65%まで低減できることを見出した。
【0031】
膨張発泡プロセスには、熱源として加圧蒸気を使用するが、これは、重合体が発泡中に湿気に曝されることを意味する。水分はセルロースエステルの可塑化に影響を及ぼし、それによりそのガラス転移温度および溶融粘度を顕著に抑制するので、発泡プロセス中の水分の吸収は問題である。溶融強度が低い発泡体は、収縮かつ崩壊し易くなる。本発明者らは、セルロースエステルに生体高分子を添加するとさらに吸湿性が低下することを見出した。
【0032】
一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、本出願の生分解性組成物は、ポリブチレンスクシネートの単独重合体および共重合体ならびにそれらのブレンドまたは組合せからなる群から選択される生分解性重合体を、0.8のDS OH、0.1のDS Ac、2.1のDS Pr、および0.2秒のASTM D-1343に従って測定される落球式粘度を有する酢酸プロピオン酸セルロースの組成物の総重量に基づいて、最大20重量%、または最大10重量%まで含む。
【0033】
一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、本出願の生分解性組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート共重合体およびポリブチレンスクシネートテレフタレート共重合体ならびにそれらのブレンドまたは組合せからなる群から選択される生分解性重合体を、0.1~30、または0.5~30、または2~30のASTM D-1343に従って測定される落球式粘度、1.8~2.6、または2.1~2.6のDS Ac、および1.2~0.4、または0.9~0.4のDS OHを有する酢酸セルロースの組成物の総重量に基づいて、最大20重量%、または最大10重量%まで含む。
【0034】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、本出願の生分解性組成物は均質な組成物である。本明細書で使用される用語「均質」は、生分解性重合体とセルロースエステルが、通常は単一の連続相を有する混和性ブレンドを形成できるように組合せ可能である組成物を示すことを意図する。単一の連続重合体相では、例えば原子間力顕微鏡で例えば最大10,000倍を含む倍率で観察するなど視覚的に検査した場合に、例えば分散した重合体ドメインが存在しないことが試料中に示される場合がある。均質性はさらに、ブレンド中の任意の成分のガラス転移温度(Tg)の混合時の変化によって示される場合もある。均質性の他の指標は当業者なら分かっていると思われる。本出願の均質な組成物は、少なくとも1つの均質性の指標によって均質であると示される。
【0035】
部分的には本出願の組成物の最終用途に合わせて、その組成物は、本明細書では一般に添加剤と呼ばれる1種以上の追加成分をさらに含んでもよい。添加剤の非限定的な例としては、ロール剥離剤、粘着防止剤、核形成剤、加工助剤、潤滑剤、ワックス、耐衝撃性改良剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、難燃剤、潤滑剤、光安定剤、紫外線安定剤または吸収剤、分散助剤、殺生物剤、帯電防止剤、撥水性添加剤、殺鼠剤、炭酸カルシウムおよびガラスビーズおよびガラス繊維などの充填剤、顔料、染料、着色剤などが挙げられる。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、本出願の組成物は、被膜または被膜層を形成するのに有用な追加成分を含んでもよい。非限定的な例としては、溶媒、可塑剤、耐衝撃性改良剤、ワックス、離型剤、鎖伸長剤などが挙げられる。
【0036】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、本出願の生分解性組成物は生物由来の組成物である。本明細書で定義される用語「生物由来」は、再生可能な生物資源、生きている(またはかつて生きていた)生物または材料などに由来する物質から意図的に作製された材料を含むことを意図する。このような生物資源の非限定的な例としては、サトウキビ草木などの植物、デンプンなどが挙げられる。固体、液体、および気体試料の生物由来含量は、たとえばASTM D6866-21に従って測定できる。
【0037】
一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、生分解性組成物は、示差走査熱量測定法(DSC)に従って測定される113℃の融解温度を有するポリエステルを含み、この生分解性組成物は、DSCに従って測定される90℃~113℃の融解温度を有する。
【0038】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、生分解性組成物は、DSCに従って20℃/分の冷却速度で測定される約84℃の結晶化温度を有するポリエステルを含み、この生分解性組成物は、DSCに従って20℃/分の冷却速度で測定される約40℃の結晶化温度を有する。
【0039】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、組成物はさらに発泡剤を含む。一実施態様では、または任意の他の実施態様との組合せでは、発泡剤は、イソヘキサン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ペンタン、アセトン、エタノール、イソプロパノール、酢酸メチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、またはそれらの組合せを含む。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、発泡剤は、組成物の総重量に基づいて、0.5重量%~5重量%、または0.1重量%~5重量%、または1重量%~5重量%、または2重量%~5重量%で存在する。
【0040】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、組成物はさらに核形成剤を含む。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、核形成剤は、組成物の総重量に基づいて、0.3重量%~1.5重量%、または0.5重量%~1.5重量%、または1.0重量%~1.5重量%、または0.3重量%~1重量%、または0.3重量%~5重量%、または0.3重量%~4重量%、または0.3重量%~3重量%、または0.3重量%~2重量%で存在する。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、核形成剤は、2μm未満、または1.5μm未満、または1μm未満の粒径中央値を有する粒子状組成物である。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、核形成剤は、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、黒鉛、またはそれらの組合せを含む。
【0041】
本出願は、物に関する。物は、本出願の生分解性組成物を含む、あるいはそれから形成される。物の例としては、限定はされないが、延伸フィルムおよび押出フィルムを含むフィルム、押出物、シート、板、繊維、成型またはキャストまたは押出物、飲用ストローなどの成形押出物品、多層積層体、膨張または押出発泡体およびその関連発泡物、および熱成形物品などが挙げられる。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、物はシートまたは板であってもよい。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、物はシートであってもよい。本出願のシートは、本出願の組成物を含む、あるいはそれから形成される。言い換えると、本出願のシートは、(i)生分解性重合体および(ii)セルロースエステルを含む生分解性組成物を含む、あるいはそれから形成される。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、本出願のシートの平均厚さは、1.5mm~6.0mmである。実施態様によっては、本出願の物はフィルムである。本出願のフィルムは、本出願の組成物を含む、あるいはそれから形成される。言い換えると、本出願のフィルムは、(i)生分解性重合体および(ii)セルロースエステルを含む生分解性組成物を含む、あるいはそれから形成される。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、本出願のフィルムの平均厚さは、0.075mm~1.5mm、または12μm~1524μmである。本出願のフィルムは、当技術分野で既知の従来からの方法、装置およびシステムを用いて製造されてもよく、例えば溶媒キャストフィルム、溶融押出キャストフィルム、溶融押出発泡フィルム、溶融押出被膜/積層品、溶融押出シート、および幅出しまたはビアックスによる延伸フィルムなどであってもよい。フィルムは、独立した構造物として使用されてもよく、あるいは積層物品、多層物品などを形成するために他の構造物に積層または付着させてもよい。
【0042】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、本出願は、本明細書に開示される組成物から調製される発泡体を開示する。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、発泡体は、0.05g/cm~0.7g/cmの密度、および0.05mm~0.8mmの平均発泡セルサイズを有する。
【0043】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、発泡体はシートの形態である。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、発泡体はビーズの形態である。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、発泡体は生分解性である。
【0044】
本出願はまた、被覆物品を対象とする。この側面では、本出願の組成物は、被膜組成物として示される場合がある。本出願の物品は、表面を有する基材およびその表面上に本出願の組成物を含む層を含む。言い換えると、本出願の物品は、表面を有する基材およびその表面上の層を含んでもよく、この層は、(i)生分解性重合体および(ii)セルロースエステルを含む生分解性組成物を含む。一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、この層は、Davis Standard社からの販売品などの既知の市販の被膜装置およびシステムを用いて基板上に被膜を塗布して形成してもよい。
【0045】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、被覆物品の層の平均厚さは、10μm~75μm、または10μm~30μmである。
【0046】
本出願の物品の被膜を形成する適切な方法およびシステムは、米国特許第3,340,123号に例示されており、その内容および開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。従って実施態様によっては、本出願の物品は、被覆物品であってもよく、かつ表面を有する基材およびその表面上の被膜層を含んでもよい。被覆物品は、一例では飲用ストローであってもよい。実施態様によっては、この層は、予め形成されたフィルムを当技術分野で既知の従来からの積層方法を用いる基板上への付着または塗布により形成されてもよい。本出願の物品を形成する適切な積層方法およびシステムは、本出願の譲受人に譲渡された米国特許第9,150,006号および第10,0654,404号に例示されており、その内容および開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。従って実施態様によっては、本出願の物品は積層物品であってもよく、表面を有する基材およびその表面上のフィルム層を含んでもよい。
【0047】
一実施態様では、または他の任意の実施態様との組合せでは、本出願の物品の基材はセルロース系材料である。このようなセルロース系材料の例としては、限定はされないが、紙、ボール紙、綿、麻、パルプ、糸くず、木材、デンプンなどが挙げられる。他の適切な基材としては、布地、ガラス、および重合体が挙げられる。本出願の被覆物品は、紙カップ、紙食品容器などの積層製品を形成する際の構成部品として有用な場合がある。
【0048】
本出願はまた、ホットメルト接着剤を開示する。混合比によって溶融温度、結晶化挙動、および弾性を調節できる能力により、生分解性である調節可能なホットメルト接着剤組成物が得られる。この種のホットメルト接着剤から恩恵を受ける可能性のある用途としては、限定はされないが、梱包産業での段ボール箱や板紙箱の垂れ蓋の閉止;製本業界での背部への糊付け;ならびに木工業界での外面包装、製品組立、および積層用途が挙げられ;使い捨ておむつは、ホットメルト接着剤を用いて不織布材料を背面シートおよび弾性体の両方に接着して組み立てられ;かつ多くの電子機器製造業者はまた、部品や配線を固定し、または機器の構成要素を固定、絶縁、保護するためにその接着剤を使用できる。結晶化および弾性を調節できる能力により、生分解性であって調節可能なホットメルト接着剤となる。
【0049】
[特定の実施態様]
実施態様1:生分解性組成物であって、前記組成物は(a)酢酸プロピオン酸セルロース(「CAP」)であるセルロースエステル;および(b)ポリエステルである生分解性重合体を含み、前記ポリエステルは、ポリブチレンスクシネート(「PBS」)、ポリブチレンスクシネートアジペート(「PBSA」)、ポリカプロラクトン(「PCL」)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(「PBAT」)、ポリ乳酸(「PLA」)、またはそれらの組合せから選択され、前記CAPは、ヒドロキシル置換基の平均置換度が0.3~1.2であり、アセチル置換基の平均置換度(「DSAc」)が0~0.5であり、プロピオニル置換基の平均置換度(「DSPr」)が1.3~2.5であり、かつASTM D-1343に従って測定される落球式粘度が0.1~30秒であり、前記CAPは、前記セルロースエステルおよび前記生分解性重合体の総重量に基づいて1重量%~34重量%で存在し、前記組成物は、ガラス転移温度(「T」)が-60~-10℃であり、融解温度(「T」)が60~130℃であり、結晶化温度(「T」)が20~85℃であり、かつ生分解性重合体に対比して180~230℃で測定される粘度が少なくとも20℃低下する、生分解性組成物。
実施態様2:前記CAPは、ASTM D-1343に従って測定される落球式粘度が0.1~0.4秒である、実施態様1の生分解性組成物。
実施態様3:前記生分解性組成物は均質である、実施態様1または2のいずれか1項の生分解性組成物。
実施態様4:前記CAPは、前記セルロースエステルおよび前記生分解性重合体の総重量に基づいて1重量%~18重量%で存在する、実施態様1~3のいずれか1項の生分解性組成物。
実施態様5:前記CAPは、前記セルロースエステルおよび前記生分解性重合体の総重量に基づいて18重量%~34重量%で存在する、実施態様1~3のいずれか1項の生分解性組成物。
実施態様6:前記ポリエステルはPBSである、実施態様1~5のいずれか1項の生分解性組成物。
実施態様7:前記ポリエステルはPBSAである、実施態様1~5のいずれか1項の生分解性組成物。
実施態様8:前記ポリエステルはPCLである、実施態様1~5のいずれか1項の生分解性組成物。
実施態様9:前記ポリエステルはPBATである、実施態様1~5のいずれか1項の生分解性組成物。
実施態様10:前記ポリエステルはPLAである、実施態様1~5のいずれか1項の生分解性組成物。
実施態様11:実施態様1~10のいずれか1項の組成物を含むフィルム。
実施態様12.前記フィルムの厚さは12~1524μmである、実施態様11の組成物を含むフィルム。
実施態様13:実施態様1~10のいずれか1項の組成物を含む飲用ストロー。
実施態様14:実施態様1~10のいずれか1項の組成物を含む繊維。
実施態様15:実施態様1~10のいずれか1項の組成物を含む成型物。
実施態様16:実施態様1~10のいずれか1項の組成物を含む被膜を含む紙または板紙。
実施態様17:前記被膜の厚さは10~75μmである、実施態様16の紙または板紙。
実施態様18:実施態様16~17のいずれか1項の紙または板紙を含む紙コップ。
実施態様19:表面を含む基材と、前記表面上に実施態様4または5のいずれか1項の組成物を含む層とを含む被覆物品。
【実施例
【0050】
以下の実施例は、本出願の多くの側面および利点を具体的かつ詳細に説明するために提供されるが、決してその範囲を限定すると解釈されるべきではない。本出願の趣旨から逸脱する変更、修正、および適合は、当業者であれば容易に分かる。
【0051】
略語
AFMは原子間力顕微鏡測定である;BAは発泡剤である;DSCは示差走査熱量測定である;EFはギ酸エチルである;EVは伸長粘度である;Exは例である;PBATはポリブチレンアジペートテレフタレートである;CA-398-30は、酢酸セルロースCA-398-30である;CA-398-3は、酢酸セルロースCA-398-3である;CAP-504-0.2は、酢酸プロピオン酸セルロースCAP-504-0.2である;CAP-482-20は、酢酸プロピオン酸セルロースCAP-482-20である;CAP-482-0.5は、酢酸プロピオン酸セルロースCAP-482-0.5である;IHはイソヘキサンである;PBSはポリブチレンスクシネートである;PBSTはポリブチレンスクシネートテレフタレートである;RHは相対湿度である;rpmは1分当たりの回転数である;SEMは走査型電子顕微鏡測定である;minは分である;℃は摂氏温度である;Tgはガラス転移温度である;Tmは融解温度または融点である;Tcは結晶化温度である;secは秒である;hは時間である。
【0052】
例1~27
この一連の実施例では、本発明の組成物を、均質性(原子間力顕微鏡測定を用いる目視検査によって決定)およびフィルムまたは被膜としての関連する有用性について評価した。対照試料(例1~3)および本発明の生分解性組成物の試料(例4~27)を調製した。等級名称:FZ91PMのPBS単独重合体を、PTT MCC Biochem社から調達した。等級名称:FD92PMのポリブチレンスクシネート共重合体であるポリブチレンスクシネートアジペートを、PTT MCC Biochem社から調達した。酢酸プロピオン酸セルロースおよび酢酸セルロースを、Eastman Chemical社から調達した。以下の表1に列記される例1~27の組成物を調製した。例1はCAP-504-0.2が100%の対照試料であり、例2~3は生分解性重合体が100%の対照試料であり、残りの例は列記される本発明の組成物であった。生分解性重合体は、単独重合体であるPBS(PBS FZ91)あるいは共重合体であるPBS(PBS FD92)のいずれかから選択される脂肪族ポリエステルであり、セルロースエステルは、例4~17ではCAP-504-0.2であり、例24~27ではCA-398-30であった。多官能性エポキシド安定剤であるJoncryl 4468(BASF社製)を、示すような例を選択して加えた。配合物の詳細を以下に示すが、百分率は組成物の総重量に基づく重量%である。
以下の例1~27に概略が記載される手順を用いて、全ての試料を26mmの二軸押出機で混合した。押出混合の温度は180~220℃の範囲であった。溶融物をストランド状に形成し、冷却し、ペレットにした。試料2および3を除く全ての試料を、さらなる評価のために、フィルム用ダイを備えた単軸スクリュー押出機を用いてフィルムに押出成形した。
【0053】
【表1】
【0054】
以下に説明する装置および技術を用いる示差走査熱量測定(DSC)により、選択例を分析して対照の例2および例3と比較した。次いで、DSC(Q2000、TA Instruments社製、ニューキャッスル、デラウェア州、米国)を用いて組成物の熱転移を測定した。組成物のTg値、Tm値、および融解熱(Hm1)を測定した。分析のために4~8mgの各試料を、アルミニウム製のDSCパン内に密封し「加熱-冷却-加熱」法を用いて評価した。1回目の加熱では、試料を-80℃から250℃まで20℃/分の走査速度により評価して、転移値をTg1、Tm1、およびHm1として記録した。次いで試料を、250℃から-80℃まで20℃/分の走査速度により冷却して、その転移を「冷却」として記録した。最後に試料を、-80℃から250℃まで20℃/分の走査速度により2回目として再加熱して、転移値を記録した。これら結果を以下の表2および表3に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
例4~12は、対照2に対比して、より低い融解温度およびより高いガラス転移温度を示す。例13~23は、対照3に対比して、より低い融解温度およびより高いガラス転移温度を示す。
【0058】
重合体の混和性(従って均質性)は、この上記の熱データから評価できる。例えば、混和性を評価する1つの方法は、成分比と融解熱の関数としてTgの変化を監視することである。混和性および相溶性のあるブレンドの場合には、混和性および部分的混和性により2種の重合体間でTgが変化する場合がある。同様に、成分比の関数としての融解熱(Hm)の変化が、各成分の相対量の組成物の結晶化速度への影響を示す可能性がある。上記の表3および表4で示唆されるように、CAP-504-0.2は、CA-398-3よりもTgの低下に対して遥かに大きな影響を及ぼす。さらにCAP-504-0.2は、CA-398-3よりもHmの変化に対して遥かに大きな影響を及ぼす。
【0059】
冷却すると屈折率の不一致または結晶化のいずれかによりストランドが不透明になる可能性があるので、重合体の混和性の良好な初期定性指標として役立つようにダイを出る際の押出物の透明性について観察した。重合体がダイから出る際に、ブレンドの混和性や屈折率の一致を評価する手段として、透明性および不透明性を判断してもよい。溶融物の透明性により、混和性と均質性を定性的に示すことができる。2種の材料の屈折率の変化により、あるいはブレンドの結晶化により、材料の透明性は温度の関数として変化する可能性がある。ダイから出てくる混濁した材料は、典型的には混和していない成分から構成されている。これらの観察結果を以下の表4に詳述するが、例24~27の観察結果は非混和性ブレンドを示している。
【0060】
【表4】
【0061】
次いで最大10,000倍の倍率での原子間力顕微鏡観察を使用する目視検査により、試料の均質性を評価した。列記された非対照例のうち、PBSの単独重合体あるいは共重合体のいずれかにCAP-504-0.2を含む試料は、押出成形時に均質な材料を生じた。酢酸セルロース(CA-398-30)などの他のセルロースエステルを使用すると、二相系が生じることが観察されていた。
【0062】
実施例の結晶化度に及ぼすセルロースエステルの影響をさらに、表5のデータに基づいて評価した。この評価では、融解熱(HM1またはHM2)を測定し、これを公表されている生分解性重合体の融解熱定数値で割り算することによって、結晶化度を計算した。ここでは、融解熱定数値として、結晶性PBS(1~3)について公開文献(例えば、Van Krevelen, D. W. Properties of Polymers, 3rd ed.; Elesvier:1990; pp 109-127)に報告されている26.4cal/g(110.3J/g)を用いた。結晶化度の計算データを以下の表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
例5~17では、1回目と2回目の加熱の両方で結晶化度の顕著な低下が観察され、セルロースエステルが生分解性重合体の結晶化改質剤として十分に機能することが示された。(酢酸セルロースを用いる)例24~27では、重合体の結晶化度に及ぼすセルロースエステルの影響は、酢酸プロピオン酸セルロースの影響よりも小さい。
最後に、組成物の測定粘度をその組成物の対照としての生分解性重合体の測定粘度と比較して、実施例の粘度に及ぼすセルロースエステルの影響を評価したが、この比較は、以下の式に従って対照に対する粘度の変化を計算することで実施した。
粘度変化%=(粘度試料-粘度対照)/粘度対照×100
【0065】
式中、粘度対照は組成物の生分解性重合体の測定粘度であり、粘度試料は試料組成物の測定粘度である。これら粘度は、TA Instruments社のARES-G2を用いて測定した。粘度の測定に先立ち、試料を真空槽内で60℃、2日間乾燥させた。温度による掃引カーブを、10rad/秒で180℃から220℃までの粘度を測定して決定した。傾斜率は5℃/分であり、10%の歪み速度を用いて採取間隔を10秒とした。粘度評価のデータを以下の表6に示す。表6の例番号は同一ではあるが、生分解性重合体の選択順に基づいて配置している。
【0066】
【表6】
【0067】
対照として生分解性単独重合体(例2)を含む群では、例11および例12は温度の関数としての粘度の低下が例7よりも少なく、安定剤が粘度の保持にプラスの影響を及ぼすことを示していた。例24および例25に存在するセルロースエステルは、ブレンドでの粘度の上昇を達成したが、その水準は他の例では達成されなかった。このことの一部はセルロースエステルの分子量に起因し、一部はブレンドの不混和性に起因する可能性がある。混和性および部分的な混和性のブレンドの場合には、混合比、分子量、および添加剤の使用の変更により粘度を調節できることは望ましい特性である。
【0068】
対照として生分解性共重合体(例3)を含む群では、例15および例16は温度の関数としての粘度の低下が例14よりも少なく、使用した安定剤が粘度の保持にプラスの影響を及ぼすことを示していた。同様に、例26および例27に使用したセルロースエステル添加剤では、他の実施例では示されないブレンドの粘度の上昇を示した。このことの一部は添加剤の分子量に起因し、一部は形成された非混和性ブレンドに起因する。混和性および部分的な混和性のブレンドの場合には、混合比、分子量、および添加剤の使用の変更により粘度を調節できることは望ましい特性である。
【0069】
例28~38
この一連の実施例では、対照試料(例28~29)および本発明の生分解性組成物の試料(例31~38)を調製した。等級名称:FZ91PM、FZ71PM、およびFZ79ACのポリブチレンスクシネート(PBS)は、PTT MCC社から調達した。酢酸プロピオン酸セルロースおよび酢酸セルロースは、Eastman Chemical社から調達した。配合の詳細を表7に示すが、百分率は組成物の総重量に基づく重量%である。
【0070】
全ての試料を、本明細書内に概略的に説明する手順を用いて、26mmの二軸押出機で混合した。押出混合の温度は180~220℃の範囲であった。溶融物をストランド状に形成し、冷却し、かつペレット化した。
【0071】
本発明の選択組成物を分析し、DSCにより対照例(例28~29)と比較した。DSC(Q2000、TA Instruments社、ニューキャッスル、デラウェア州、米国)を用いて、これら組成物の熱転移を測定した。組成物のTg、Tm、およびTcを測定した。分析のために4~8mgの各試料を、アルミニウム製のDSCパン内に密封して、「加熱-冷却-加熱」法を用いて評価した。試料をまず、20℃/分の走査速度で-80℃から220℃まで加熱した。次いで試料を、20℃/分の走査速度で220℃から-80℃まで冷却し、その転移を「冷却」として記録した。最終的に試料を、20℃/分の走査速度で-80℃から220℃まで2回目として再加熱し、その転移を記録した(2回目の加熱)。この熱評価の結果を表7に示した。
【0072】
【表7】
【0073】
例30~38は、対照の例28~29に対比して、より高いガラス転移温度を示す。例30~38は、対照の例28~29に対比して、より低い融解温度および著しく低い結晶化温度を示す。
次いで表8に示すように、選択試料での均質性をAFMまたはSEMによって評価した。
【0074】
【表8】
【0075】
例2、28、および29は対照であり、かつ均質である。例25は2つの相を有する。例30~38は均質である。均質な形態とは、重合体がブレンド中で混和性であることを意味する。二相構造とは、重合体がブレンド中で非混和性であることを意味する。
【0076】
各例の粘度に及ぼすセルロースエステルの影響は、組成物の測定粘度と対照としてのその組成物中の生分解性重合体の測定粘度とを比較して評価され、この比較は、以下の式に従って対照に対する粘度変化を計算して実施された。
粘度変化%=(粘度試料-粘度対照)/粘度対照×100
【0077】
式中、粘度対照は組成物中の生分解性重合体の測定粘度であり、粘度試料は試料組成物の測定粘度である。粘度は、TA Instruments社製のARES-G2を用いて測定した。粘度の測定に先立ち、試料を真空槽内で60℃で2日間乾燥させた。温度による掃引カーブを、10rad/秒で190℃から230℃までの粘度を測定して決定した。昇温速度は5℃/分であり、0.1%の歪み速度を用いて採取間隔を10秒とした。粘度評価のデータを以下の表9に示す。
【0078】
【表9】
【0079】
例32~36に存在するセルロースエステルは、例29に対比して粘度を低下させる。
各例のEV(伸長粘度)を、ヘンキー歪み:3での測定EVとヘンキー歪み:0.1での測定EVとを比較して評価し、この比較は、以下の式のように低いヘンキー歪みでのEVに対する高いヘンキー歪みでのEVの変化を計算して実施された。
EV変化=(EV-EV0.1)/EV0.1
【0080】
式中、EVはヘンキー歪み:3での試料の測定EVであり、EV0.1は、ヘンキー歪み:0.1での試料の測定EVである。EVは、伸張粘度測定器を備えたTA Instruments社製のARES-G2を用いて測定した。フィルムを、200℃で圧縮成形して、20milの厚さにした。粘度測定に先立ち、試料を真空槽内で60℃で2日間乾燥させた。EVを、150℃で10/秒の歪み速度で粘度を測定して決定した。EV評価のデータを以下の表10に示す。
【0081】
【表10】
【0082】
例2、29、4~7、および32~36には歪み硬化が存在するが、例25では歪み軟化が起こっている。
次いで選択試料を押出による紙被覆に用いた。用いた押出機スクリューは、L/Dが34:1の2.5インチのスクリューを備えていた。用いた押出機スクリューは、供給深さ(hf)が12.7mm、計量深さ(hm)が3.6であり、圧縮比(hf/hm)は3.60であった。用いた冷却ローラーは、ソフトマット70-78Raであった。押出機の温度を、表11に従って設定した。
【0083】
【表11】
【0084】
対照の例29を実行する際の最大被覆速度は750フィート/分であるが、例30および例31の最大ライン速度は1000フィート/分に達する可能性がある。例30および例31は、紙に対する非常に良好な紙接着性を有するが、対照の例29は、21μmの被膜厚さではいずれの紙接着性も有さない。
【0085】
例39~44
この一連の例では、対照試料(例39~41)および本発明の生分解性組成物試料(例42~44)を調製した。PBS KHB22をYingkou Kanghui社から調達し、TH803S305およびTH803S405をXinjiang Blueridge Tunhe Chemical Industry社から調達した。配合の詳細を表12に示し、百分率は組成物の総重量に基づく重量%である。
【0086】
【表12】
【0087】
例42~44は、対照の例39~41に対比してより低い融解温度および著しく低い結晶化温度を示す。
次いで表13に纏めるように、試料の均質性をAFMによって評価した。
【0088】
【表13】
【0089】
例42~44は均質である。均質な形態とは、重合体がブレンド中で混和性であることを意味する。
各例の粘度に及ぼすセルロースエステルの影響を、上述と同一の方法で評価した。粘度評価のデータを以下の表14に示す。
【0090】
【表14】
【0091】
例42~44に存在するセルロースエステルは、例39~41に対比して粘度を低下させる。
【0092】
例45~47
この一連の例では、対照試料(例45)および本発明の生分解性組成物試料(例46~47)を調製した。配合の詳細を表15に示す。本発明の試料を、上述の装置および技術を用いるDSCにより分析し、対照(例45)と対比した。
【0093】
【表15】
【0094】
例46~47は、対照の例45に対比してより低い融解温度および著しく低い結晶化温度を示す。
各例の粘度に対するセルロースエステルの影響を、上述と同一の方法で評価した。粘度評価のデータを以下の表16に含む。
【0095】
【表16】
【0096】
例46~47に存在するセルロースエステルは、例45に対比して粘度を低下させる。
【0097】
例48~53
この一連の例では、本発明の組成物を、視覚的な品質、視覚的な欠陥、および粘着性などのフィルム形成性品質について評価した。本発明の生分解性組成物試料(例48~53)を調製した。PBATをEcoworld社から調達した。PBSTをEcoworld社から調達した。等級名称:CAP-504-0.2の酢酸プロピオン酸セルロースを、Eastman Chemical社から調達した。等級名称:CA-398-30の酢酸セルロースを、Eastman Chemical社から調達した。配合の詳細を以下に示し、百分率は組成物の総重量に基づく重量%である。
例48:5%のCAP-504-0.2を含むPBAT
例49:20%のCAP-504-0.2を含むPBAT
例50:5%のCAP-504-0.2を含むPBST
例51:20%のCAP-504-0.2を含むPBST
例52:15%のCA-398-30を含むPBAT
例53:30%のCA-398-30を含むPBAT
【0098】
二軸スクリュー押出混合を用いて各例を製造した。押出混合の温度は200~230℃の範囲とした。溶融物をストランド状に形成し、冷却し、ペレット化した。フィルムのダイを備えた単軸スクリュー押出機を用いて、設定温度を約230℃、目標フィルム厚さを5milとして各試料を押し出してフィルムを調製した。ダイを出た後に、材料を冷却ロールと接触させ、回収の前に2本の後続ロールの間で引張を加えた。
【0099】
フィルムを定性的に、粘着性、すなわち自己粘着性と冷却ロールへの粘着性の両方について評価した(ロールへの粘着性は通常「ブロッキング」と呼ばれることが多い)。またフィルムを、光学顕微鏡を用いて10,000倍の倍率で目視検査して、一般的なフィルム品質の指標としての平滑性を評価した。
【0100】
例48~49および50~51は、それ自体同士および冷却ロールに粘着していることが観察されたが、良好な外観品質を有し精査すると平滑な表面を示していた。例50は粘着力は低かったが、表面が不均質で目視の品質は悪かった。例52および53は、粘着力が低く目視の品質が良好であることが観察され、表面には非常に僅かな不均一性しか示さなかった。
【0101】
例54~58
この一連の例では、本発明の生分解性組成物試料(例54~58)を調製した。PBAT TH801Kは、ポリブチレンアジペートテレフタレートであり、Xinjiang Blueridge Tunhe Chemical Industry社から調達された。配合の詳細を以下の表17に示し、百分率は組成物の総重量に基づく重量%である。
二軸スクリュー押出混合を用いて各例を製造した。押出混合の温度は200~230℃の範囲とした。溶融物をストランド状に形成し、冷却し、ペレット化した。
【0102】
【表17】
【0103】
例54~57は、対照の例54に対比して著しく低い結晶化温度を示すが、例58は対照の例54に類似の熱特性を示す。
次いで選択試料を、AFMによって均質性について評価して、表18に纏めた。
【0104】
【表18】
【0105】
例55は例58よりも混和し易い。
【0106】
例59~86
最適なプロセス温度に合わせてTgを調節
表19は、DSCにより測定された各試料のガラス転移温度を示す。生体高分子は、Tgを低下させるのに効果的であり、ブレンドのTgをポリスチレン膨張発泡装置で許される最適な加工範囲内にできる。相溶性ブレンドとは、ポリエステルの導入により主要なCE相で相当のTgの低下が観察されるブレンドを指し、一方で非相溶性ブレンドとは、ポリエステルが導入された際に主要なCE相でのTgの低下が軽微であるブレンドを指す。相溶性ブレンドは、部分的に相溶性かつ非混和性のブレンドに比較して、均質な発泡性を実現できるという利点がある。
【0107】
【表19】
【0108】
CAP2およびCAP3の合成
活性化セルロース混合物[セルロース(82g)およびPrOH(63.6g)]を容器内で頭上式撹拌しながら15℃に冷却した。その後に、15℃に冷却した硫酸(2.8g)、AcO(45g)、およびPrO(261.2g)の溶液(アシル化溶液)を、冷却した活性化セルロース混合物に撹拌しながら添加した。得られた反応混合物を23℃に温めて、23℃で60分間撹拌した。次いで反応混合物を45分間掛けて63℃まで加熱し、この時点で、PrOH(144.9g)とHO(51.1g)の溶液を加えた。この混合物を71℃で900分間撹拌した。混合物をMg(OAc)・4HOのAcOH(84g)とHO(64.1g)の溶液(5.29g)で処理し、混合物を30分間撹拌し、室温まで冷却した。この混合物を濾過した。水を用いて濾液からセルロースエステルを沈殿させて、市販の混合器内で撹拌し、セルロースエステルを濾過して採取して、その固体を流水で洗浄し、60℃に設定した真空槽内で乾燥させて所望の生成物を得た。
[0120]表20~22には、CAP2およびCAP3の調製に用いられる試薬および条件の概要を示す。表23には、CAP2およびCAP3の特性を示す。
【0109】
【表20】
【0110】
【表21】
【0111】
【表22】
【0112】
【表23】
【0113】
例59、67、70、74、および78
発泡剤の吸収
BA(発泡剤)吸収の検討では、厚さ5milのセルロースエステル/生体高分子の混合フィルムを圧縮成形によって調製した。フィルムを、指定のBA混合物に種々の時間に亘って浸漬した。例えば、95/5のイソヘキサン/アセトンは、95重量%のイソヘキサンと5重量%のアセトンとのBA混合物を示す。フィルムの重量を、BA混合物に浸漬する前後で測定した。重量%でのBAの取込み量を、乾燥フィルムの重量を基準にして計算した。
【0114】
図1は、セルロースエステル/生体高分子フィルムが吸収したBA混合物の量を時間の関数として示す。95/5のイソヘキサン/アセトン(IH/A)、98/2のイソヘキサン/エタノール(IH/EtOH)、および95/5のイソヘキサン/ギ酸エチル(IH/EF)の各混合物では、CAP1/生体高分子フィルムは、CAP1それ自体より速いBA混合物の取込みを示し、このことは、生体高分子の添加により、高分子とBA混合物の間の相溶性が向上したことを示唆していた。CAP1は、CAP-482-20とCAP-482-0.5の1:1の混合物である。向上した相溶性は、発泡プロセス中の重合体中のBAの保持に有益であり、このことはまた、BAの脱着検討によっても裏付けられている。
【0115】
同様に、生体高分子の添加によるBAの取込み速度の上昇は、CAP2でも観察された。この検討に用いられたCAP2と生体高分子は、生分解性重合体である。CAP2/生体高分子の混合配合物は、発泡物品での生分解性の選択肢として提案される。
【0116】
例87~108
発泡剤の脱着
BAの脱着検討では、厚さ5milのCE/生体高分子フィルムを圧縮成形によって調製した。フィルムが約6重量%のBAを吸収するまで、フィルムを指定のBA混合液中に浸漬した。このBAの負荷濃度により、高品質の膨張発泡体が確実に生成できることが分かっている。次いでフィルムの重量を、室温で一定期間に亘って測定した。BAの脱着曲線は、脱着時間の関数としてフィルムが吸収するBAの重量%を自然対数にしてプロットされている。脱着曲線の一例を図2に示す。
【0117】
脱着曲線を、2段階の脱着特性を最もうまく示せるように2つの勾配に適合させた。脱着曲線(時間の経過とともにフィルムから放出されるBAの重量%)の傾きは、重合体または重合体混合フィルムからのBAの拡散速度の測定値となる。傾き値が低いほど、拡散速度は遅くなり、かつ重合体または重合体ブレンドによるBAの保持性がより向上する。
【0118】
それぞれの重合体ブレンドとBA混合物の組合せについて、傾き1の値を表24に纏めた。傾き1の低下率(%)を、CEのニート重合体を基準にしてCE/生体高分子ブレンドについて計算する。BA脱着の結果によると、CE自体に比較してCE/生体高分子のブレンドの傾き1の値が低いことから明らかなように、生体高分子の添加により重合体中のBAの保持性が大幅に向上することが示されていた。CE/生体高分子のブレンドは、BAの拡散速度が最大65%まで低下することを示し、これは発泡プロセスにとって有益なことである。
【0119】
なおフィルムが吸収したBA混合組成物は、浸漬時の液状BAの容器内のBA混合組成物とは一致しなかった。ガスクロマトグラフ法を用いて、フィルムが吸収したBA混合組成物を測定した。結果を表24に示す。
【0120】
【表24】
【0121】
例109~118
水分管理
吸湿量を、水蒸気吸着分析装置(TA Q5000SA)を用いる熱重量分析によって測定した。試料をまず、0%の相対湿度(RH)、60℃で2時間平衡させ、次いで80%のRH、60℃で2時間保持した。RHを高くするのは、蒸気を熱源として用いる発泡プロセスを模倣するためである。試料が吸収した水分を記録した。結果を以下の表25に示す。その結果として、CEと生体高分子との混合が重合体による水の取込みを12~24%低減させ、前述のような水による可塑化の問題の軽減に役立つことが分かった。
【0122】
【表25】
【0123】
例119~122:膨張発泡用のCAP/生体高分子組成物の配合
試料を、セルロースエステル、高分子可塑剤としての生分解性重合体、安定剤、および核形成剤を含むようにEastman社で配合した。セルロースエステルは、それぞれ高分子量および低分子量を有する酢酸プロピオン酸セルロースである、CAP-482-20およびCAP-482-0.5である。安定剤は、Vikoflex 7170とした。核形成剤は、Mistron ZSCタルクとした。これらの例での生分解性重合体は、PTT MCC社から購入したポリブチレンスクシネートであるBioPBS FZ91、あるいはIngevity社から購入したポリカプロラクトンであるCAPA 6500のいずれかであった。これら材料を、中程度の剪断スクリュー構造を用いる180~200℃および400~500rpmで50:1のL/Dを有するLeistritz社の18mm二軸スクリュー押出機で混合した。それらの配合を表26に示す。
【0124】
表27は、CAP/生体高分子のブレンドの熱特性および流動学的特性を示す。重合体の熱転移はDSCで測定した。試料を窒素中で、20℃/分で30℃から220℃まで加熱し、30℃まで戻し、再び220℃まで加熱した。中間点のTgを2回目の加熱曲線で測定して表に纏めた。重合体ブレンドのメルトフローレート(MFR)を、200℃、5kgの荷重にて測定した。重合体ブレンドの複素粘度を、200℃、1Hz~400Hzで測定した。1Hz、10Hz、100Hz、および400Hzでの数値を示す。
【0125】
なお生体高分子の添加が無い場合の対照の例119で示されるCAP単独では、加圧蒸気を主の加熱源として使用する従来からの膨張発泡装置では加工が不可能である。予備膨張かつ成形温度は、典型的には約95~105℃である。対照の例119でTgが142℃にあるのは適切ではない。また溶融粘度が高いので、発泡が困難となる。従ってMFRの上昇および複素粘度の低下によって示されるように、Tgを低下させかつ溶融粘度を低下させる生体高分子の添加は、CAP加工性を改善するために重要なことである。
【0126】
【表26】
【0127】
【表27】
【0128】
例123~125:発泡剤を含むビーズの作製
配合材料を、ドイツのガーラで、Extrex36-5ギアポンプおよびMAP5ペレタイザーを備えたZSK26押出機で再処理した。JASCO PU-2087Plus計量ポンプを用いて、発泡剤をバレルの約2/3の位置まで押出機内に計量した。全ての試料で、重合体配合物中に6%の発泡剤の添加を目標とした。発泡剤種1は、イソヘキサンなどの非極性発泡剤であり、発泡剤種2は、発泡剤と樹脂との相溶性を助長するギ酸エチルやエタノールなどの極性発泡剤である。
発泡剤の品種およびその含量などのビーズ配合の詳細を、以下の表28に示す。加工比率、加工温度、加工速度に関するビーズの加工条件を表29に示す。
【0129】
【表28】
【0130】
【表29】
【0131】
例126~138:発泡性CAP/生体高分子ビーズの予備発泡
材料を、EMbead ED2-HP予備膨張機およびEHVC-E870/670成形機を使用して、エルレンバッハで予備発泡および成形した。予備膨張密度および加工条件を表27に列記する。1Lの容積を満たす材料を計量して、密度を測定した。
110g/Lから39g/L程度までの範囲の密度を有する予備発泡ビーズを、蒸気の温度(蒸気圧力によって制御する)および蒸気の時間を変更して製造できる。低い蒸気圧では、ビーズは最大の膨張に達するのに十分な時間と熱を有さず、対照の例126、131、および135などのようにビーズ密度は高いままであった。蒸気圧を上昇すると、ビーズ密度は低下する。蒸気圧が高すぎる場合には、対照の例130および134に示すように、ビーズは達成可能な最大膨張を超えてビーズの収縮が観察される。
【0132】
【表30】
【0133】
例139~144:CAP/生体高分子板材の成形
成形条件を表31に列記する。これら部品を交差蒸気を用いて厚さ方向に蒸気で加熱し、かつ表面をオートクレーブ蒸気で加熱して、真空に引いて部品を型に対して保持しながら表面に水を噴霧して部品を冷却する。PおよびTは圧力と時間を表わす。
得られた板材の寸法、密度、および収縮率を表32に示す。選択した成形条件により、各例に示すように最小の収縮および反りを備えるCAP/生体高分子の板材が得られたが、中には顕著な収縮が発生するものもあった。収縮と反りを最小限に抑えた、密度が50~70g/Lの範囲の板材を達成できた。例140、142、143、および144では、識別可能な収縮や反りの無い板材が得られた。
【0134】
【表31】
【0135】
【表32】
【0136】
本発明の種々の実施態様の前述の記載は、例示および説明を目的として提示されたものである。これは、全てを網羅すること、あるいは開示された通りの厳密な実施態様に本発明を限定することを意図するものではない。上述の教示に照らして、多くの修正または変更が可能である。説明された実施態様は、本発明の原理およびその実際の応用を最もうまく説明するように選択かつ記載されたものであり、それによって当業者が想定する特定の用途に適するように様々な実施態様でかつ様々な修正を加えて本発明を利用できるようにするものである。このような全ての修正および変更は、公正に、法的に、かつ公平に権利を付与する範囲に従って解釈される場合に、添付の特許請求の範囲によって決められる本発明の適用範囲内に含まれる。
図1
図2
【国際調査報告】