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特表2024-523622シャフトを有するトランスミッション装置
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  • 特表-シャフトを有するトランスミッション装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】シャフトを有するトランスミッション装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/08 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
F16H63/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580478
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2022061787
(87)【国際公開番号】W WO2023274602
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021003333.7
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ヘアター,トビアス
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AC05
3J067EA04
3J067FB90
3J067GA01
(57)【要約】
本発明はシャフト(13)を有するトランスミッション装置(10)に関し、シャフト(13)の回転軸(R)に関して同軸に、かつシャフト(13)の上で軸方向(a)に互いに隣接して配置された2つのアイドルギヤ(8,14)、すなわち第1のギヤ噛合部(9)を有する第1のアイドルギヤ(8)及び少なくとも1つの第2のギヤ噛合部(15)を有する第2のアイドルギヤ(14)と、第1のアイドルギヤ(8)に対して相対回転不能かつ軸方向(a)へスライド可能に配置されたシフト部材(1)とを備え、シフト部材(1)はシャフト(13)の回転軸(R)に関して軸方向で両方のギヤ噛合部(9,15)の間の領域から第2のアイドルギヤ(14)と反対を向くほうの第1のアイドルギヤ(8)の側まで延び、第1のアイドルギヤ(8)は少なくとも1つの挿通部(11)を有し、該挿通部を通ってシフト部材(1)が軸方向(a)に貫通し、シフト部材(1)は、軸方向(a)でアイドルギヤ(8,14)の間に配置された第1のシフト噛合部(6)と、第2のアイドルギヤ(14)と反対を向くほうの第1のアイドルギヤ(8)の側に配置された第2のシフト噛合部(3)とを有する。本発明は、第1のシフト噛合部(6)が第2のシフト噛合部(3)と相対回転不能に結合されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(13)を有するトランスミッション装置(10)であって、前記シャフト(13)の回転軸(R)に関して同軸に、かつ前記シャフト(13)の上で軸方向(a)に互いに隣接して配置された2つのアイドルギヤ(8,14)、すなわち第1のギヤ噛合部(9)を有する第1のアイドルギヤ(8)及び少なくとも1つの第2のギヤ噛合部(15)を有する第2のアイドルギヤ(14)と、前記第1のアイドルギヤ(8)に対して相対回転不能かつ軸方向(a)へスライド可能に配置されたシフト部材(1)とを備え、前記シフト部材(1)は前記シャフト(13)の回転軸(R)に関して軸方向で両方の前記ギヤ噛合部(9,15)の間の領域から前記第2のアイドルギヤ(14)と反対を向くほうの前記第1のアイドルギヤ(8)の側まで延び、前記第1のアイドルギヤ(8)は少なくとも1つの挿通部(11)を有し、前記挿通部を通って前記シフト部材(1)が軸方向(a)に貫通し、前記シフト部材(1)は、軸方向(a)で前記アイドルギヤ(8,14)の間に配置された第1のシフト噛合部(6)と、前記第2のアイドルギヤ(14)と反対を向くほうの前記第1のアイドルギヤ(8)の側に配置された第2のシフト噛合部(3)とを有する、トランスミッション装置において、
前記第1のシフト噛合部(6)が前記第2のシフト噛合部(3)と相対回転不能に結合されることを特徴とする、トランスミッション装置。
【請求項2】
少なくとも1つの前記挿通部(11)は、前記第1のギヤ噛合部(9)の径方向内部に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項3】
前記シフト部材(1)はシフト部材にスプラインシャフト噛合部(7)を有し、前記スプラインシャフト噛合部によって前記シフト部材(1)が恒常的に相対回転不能かつ軸方向へスライド可能なように前記第1のアイドルギヤ(8)と連結され、前記シフト部材側のスプラインシャフト噛合部(7)は前記第2のシフト部材側のシフト噛合部(3)とは別個に形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項4】
前記シフト部材(1)は、軸方向で前記アイドルギヤ(8,14)の間に配置された溝(16)を有し、前記溝は、該溝の中へシフトフォーク(17)が前記シフト部材(1)を軸方向(a)にスライドさせるために係合できるように設けられることを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項5】
前記第1のアイドルギヤ(8)は、円周にわたって配分されて配置された複数の挿通部(11)を前記シフト部材(1)のために有することを特徴とする、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項6】
前記第1のシフト噛合部(6)と前記第2のシフト噛合部(3)は、シフト部材側で前記シャフト(13)の回転軸(R)に関して径方向内側に配されていることを特徴とする、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項7】
前記シフト部材側のスプラインシャフト噛合部(7)は、前記シャフト(13)の回転軸(R)に関して径方向内側に配されていることを特徴とする、請求項3に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項8】
前記第1のシフト噛合部(6)は、前記シフト部材(1)の第1の軸方向位置で前記第1のアイドルギヤ(8)を前記第2のアイドルギヤ(14)と相対回転不能に連結するために構成されることを特徴とする、請求項1から7のうちのいずれか1項に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項9】
前記第2のシフト噛合部(3)は、前記シフト部材(1)の第2の軸方向位置で前記第1のアイドルギヤ(8)を前記シャフト(13)と相対回転不能に連結するために構成されることを特徴とする、請求項1から8のうちのいずれか1項に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項10】
前記シフト部材(1)は、前記シャフト(13)に対する第3の軸方向位置で、前記第2のアイドルギヤ(14)を前記シフト部材(1)と連結することなく、自由に前記第1のアイドルギヤ(8)と共に回転するために構成されることを特徴とする、請求項1から9のうちのいずれか1項に記載のトランスミッション装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に詳しく定義されている種類のトランスミッション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャフトと、いわゆる特殊シフト部材とを有するトランスミッション装置はその限りにおいて従来技術から公知であり、たとえば特許文献1及び特許文献2から公知である。たとえば特に当分野に属する、出願人の特許文献3は、そこでは2部分で製作される、このような特別なシフト装置を記載している。各部分がシャフトの軸方向で互いに結合されており、これらの部分のうち一方は、シンクロナイザボディを介してシャフトと相対回転不能に結合される。それに伴ってこの特許明細書のシフト装置では、現行の主請求項の前提部から全ての構成要件が明らかとなる。
【0003】
実際にはよくあることであるが、全てのトランスミッションで、全てのギヤ段が設計的に組み付けられるわけではない。ギヤ段のうちの1つだけが、たとえばトップギヤとしてのもっとも高速の変速比のものだけが、省略されることによって、トランスミッションが改変されると、それまで使用されていたシフト部材を引き続き利用することはできるものの、比較的広い設置スペースが必要になるという問題がしばしば発生し得る。これらのシフト部材が、機能性の一部しか果たさなくてよくなるからである。たとえば、両方とも軸方向にのみ動く2つのシフトフォークを有する2つのシフト部材が存在することになり得る。このことは、必要な構成部品、消費スペース、及び重量の観点からして不都合である。更に、それよりも決定的な欠点は、このような種類の構造では所望のギヤシフトを具体化するために、本来必要であるよりも多くのアクチュエータが必要になることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】西独国特許出願公開第2157153(A)号明細書
【特許文献2】欧州特許第2302245(B1)号明細書
【特許文献3】独国特許発明第102004049274(B4)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の理由により本発明の課題は、利用可能な設置スペースの良好な活用のもとで高いフレキシビリティを保証する、請求項1の前提部に記載されたこのような種類の特殊シフト部材を有する、改良されたトランスミッション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載のシャフトを有するトランスミッション装置によって解決される。これに従属している従属請求項から、有利な実施形態及び発展形態が明らかになる。
【0007】
本発明によるトランスミッション装置は、シャフトの軸方向にスライド可能なシフト部材を、当該技術分野に属する従来技術と同様に、シフト部材が第1のアイドルギヤの挿通部を貫通し、これが貫通するアイドルギヤの両方の側にシフト噛合部を有するような方式で利用する。本発明によるトランスミッション装置は、アイドルギヤのうちの1つを貫通するシフト部材を、これが2つの相対回転不能なシフト噛合部を有し、これらが必要時に両方のアイドルギヤを互いに、又はアイドルギヤのうちの1つをシャフトと、相対回転不能に連結することができるような方式で利用する。
【0008】
ここで本発明の意味におけるシフト噛合部とは、アイドルギヤの噛合部として、シフト部材の対応するシフト噛合部と係合させることができる噛合部であると理解される。このときシフト部材そのものは、軸方向へスライド可能に配置されていてよい。シフト部材側のシフト噛合部と歯車側のシフト噛合部は、互いに同軸に配置される。
【0009】
ここで相対回転不能の結合とは、回転可能に支承されて互いに同軸に配置された2つの部材の結合であって、これらの部材が互いに結合され、ないしは互いに相対回転不能に配置されて、それぞれの結合に基づいて同じ角速度で円運動ないし回転をするようになっている結合であると理解される。
【0010】
このとき、軸方向と径方向はいずれも常にトランスミッション装置の回転軸を基準としており、すなわち、本件では特にシャフトの回転軸を基準としている。このとき軸方向で互いに隣接して配置される部材とは、これら両方の間に別の同種類の部材が配置されないことを意味する。すなわち、軸方向で互いに隣接して配置される両方のアイドルギヤは、これらの間に別の歯車を有さず、特に別のアイドルギヤを有さない。
【0011】
本発明によるトランスミッション装置の非常に好ましい発展形態では、第1のアイドルギヤを通る少なくとも1つの挿通部は径方向で第1のギヤ噛合部の内部に配置されるようになっている。このことは、シフト部材が第1のアイドルギヤのギヤ噛合部の径方向内部でこれを貫通できることを可能にする、コンパクトな構成を保証する。このとき径方向内部とは、本発明の意味においては常に、径方向内部の基準となる基準点が、回転軸に関して、径方向内部に位置する部材よりも大きい半径を有する領域に配置されることであると理解される。すなわちこれは半径が小さいほうの領域に位置し、つまり、ギヤ噛合部を担持する部材に対して内周側に位置する。
【0012】
ここでギヤ噛合部とは、アイドルギヤの噛合部であって、ギヤ噛合部を有する、ここではアイドルギヤである歯車に対して回転軸が平行かつ軸オフセットされて配置される、たとえば固定ギヤなどの他の歯車の噛合部とトランスミッションギヤの形成のために係合しているもの、又は係合させることが可能であるものとして理解される。
【0013】
本発明によるトランスミッション装置のきわめて好都合な別の実施形態は、シフト部材がシフト部材側のスプラインシャフト噛合部を有していて、これによってシフト部材が恒常的に相対回転不能に、ただし軸方向へはスライド可能に、第1のアイドルギヤと連結されることを意図しており、シフト部材側のスプラインシャフト噛合部は、シフト部材側の第2のシフト噛合部とは別個に形成される。すなわちスプラインシャフト噛合部は、第1のアイドルギヤに対するシフト部材の相対回転不能の配置を保証する。シフト部材側のスプラインシャフト噛合部は、シフト部材側の第1のシフト噛合部を共同で形成することができるのが好ましい。あるいはシフト部材側のスプラインシャフト噛合部は、シフト部材側の第1のシフト噛合部とは別個に形成されていてもよい。その場合、本発明によるトランスミッション装置のこの実施形態では、第1のアイドルギヤはシンクロナイザボディである。
【0014】
更に、本発明によるトランスミッション装置の非常に好都合な別の実施形態は、シフト部材が、軸方向で各アイドルギヤの間に配置された溝を有し、その中にシフトフォークが係合することができることを意図する。シフトフォークと係合するためにセットアップされるこの溝は、シフトフォークを介して原理的に周知の方式でシフト部材を軸方向に動かし、そのようにしてこのシフト部材をさまざまに異なる軸方向位置へ動かすことを可能にし、これらの軸方向位置でさまざまに異なる部材が係合し、そのようにして、さまざまに異なるシフト状態を具体化することができる。
【0015】
本発明による1つの好ましい実施形態におけるトランスミッション装置は、第1のアイドルギヤが、円周にわたって均等に配分されて配置された複数の挿通部をシフト部材のために有することを意図する。円周にわたって均等に配分されて配置されるこのような複数の挿通部を通じて、シフト部材に関しても第1のアイドルギヤに関しても、円周にわたって力の均等な配分がもたらされ、このことは負荷及び均等な壁厚という観点から好ましく、それに加えて、コンポーネントの回転運動時に普通であれば懸念されるアンバランスが防止され、ないしは、バランスをとることを相応に容易にする。
【0016】
更に、本発明によるトランスミッション装置の非常に好ましい別の実施形態は、第1のシフト噛合部と第2のシフト噛合部が、それぞれシフト部材側で、シャフトの回転軸に関して径方向内側に配されることを意図する。すなわちこのことは、シフト部材側のシフト噛合部の歯先が、歯底よりも短い半径上に位置することを意味する。このことは、径方向外側でシフト部材の対応する部分を非常に容易に重ね合わせることができる、非常にコンパクトな構造を可能にし、それにより、径方向内側に配されたシフト噛合部を有するこの好ましい実施形態によって、非常にコンパクトな構造を具体化することができる。
【0017】
本発明によるトランスミッション装置の非常に好都合な別の実施形態では、シフト部材側のスプラインシャフト噛合部はシャフトの回転軸に関して径方向内側に配されている。すなわち、このようなスプラインシャフト噛合部は内側に配されていてよく、それにより、本発明によるトランスミッション装置の前述の2つの実施形態のこのような特別に好都合な設計のもとで、シフト部材全体が外側に配されいかなる噛合部も有さず、その両方のシフト噛合部だけでなくスプラインシャフト噛合部も、特別に好都合な実施形態においては内方に配される。このことは、シフト部材の径方向外部での他の部材の配置を非常に容易にし、それにより、シフトフォークの係合のためにアライメントされる溝にアクセスする手段を例外として、そのような部材を径方向外側で理想的に重ね合わせることができる。
【0018】
すでに示唆したとおり第1のシフト噛合部は、シフト部材が第1の軸方向位置にあるとき、第1のシフト部材と相対回転不能に連結された第1のアイドルギヤを、第2のアイドルギヤと相対回転不能に連結するために構成されていてよい。すなわちその場合、第1のシフト噛合部は、第2のアイドルギヤのアイドルギヤ側のシフト噛合部に係合し、そのようにして、シフト部材そのものと第2のアイドルギヤとを相対回転不能に連結する。すなわち、上に説明した好ましい発展形態に基づくスプラインシャフト噛合部を介して、もともと第1のアイドルギヤと相対回転不能に連結されているシフト部材により、両方のアイドルギヤが互いに相対回転不能に結合される。それに対して、シフト部材が別の軸方向位置にあるとき、第2のシフト噛合部は、シフト部材及びこれと相対回転不能に結合された第1のアイドルギヤを、シャフトと相対回転不能に連結するために構成されることが意図されていてもよい。すなわち第1の軸方向位置では、第1のアイドルギヤを第2のアイドルギヤと相対回転不能に連結することができ、第2の軸方向位置では、第1のアイドルギヤとシャフトとの連結を実現することができる。これに加えて、各アイドルギヤが自由に回転することができるニュートラル位置が意図されていてよく、それは、シフト部材がこの第3の軸方向位置にあるとき、もともと相対回転不能に連結されている第1のアイドルギヤと共にシャフトに関して自由に回転し、第2のアイドルギヤをシフト部材と連結せず、すなわちこれも自由に回転することができるようにセットアップされることによる。
【0019】
本発明に基づくトランスミッション装置の更なる有利な実施形態は、以下に図を用いて詳しく示されている実施例からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明によるトランスミッション装置の考えられるシフト部材を示す概略立体図である。
図2】本発明によるトランスミッション装置の考えられる実施形態における第1のアイドルギヤを示す、極めて概略的な側面図である。
図3】トランスミッション装置の考えられる実施形態を非常に極めて概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1の図面では、図3の図面に見ることができる本発明のトランスミッション装置10について考えられる実施形態で、符号1で表されたシフト部材が示されている。ここではシフト部材1は回転対称に構成されており、図1の図面で右側に、径方向内側に配された第2のシフト噛合部3を有する、符号2で表された部分部材を含んでいる。複数のスポーク4と、スポーク4と交互に配置された開口部5とを有する回転対称体が、その後に続いている。軸方向aで部分部材2と向かい合うシフト部材1の側に、シフト部材1の、符号6で表された第1のシフト噛合部が一点鎖線によって示唆されている。これも内側に向いている。更に、スポーク4の領域にスプラインシャフト噛合部7が配置されており、図1の図面では上側に示す開口部5に一点鎖線で示唆されている。
【0022】
シフト部材1は、図2の図面に軸方向aの側面図として見ることができる第1のアイドルギヤ8と協働する。アイドルギヤ8は外周に、第1のギヤ噛合部9を有している。この第1のギヤ噛合部9の径方向内側に、個々の挿通部11を見ることができる。これらの挿通部11を通して、後に組み立てられた状態のとき、組立時に図2に示す視線方向から第1のアイドルギヤ8に組み付けられるシフト部材1のスポーク4が突出し、それは、シフト部材1の構造がまだ部分部材2なしに外嵌されることによってであり、それにより、スポーク4が第1のアイドルギヤ8の挿通部11を通り抜け、第1のシフト噛合部6を備えている部分が観察者の側に位置することになる。そして、観察者の視線で見て第1のアイドルギヤ8の裏面に部分部材2が配置されて、スポーク4と結合され、たとえば溶接される。このときシフト部材1のスプラインシャフト噛合部7は、ここでは円周の周りに3部分で構成された、第1のアイドルギヤ8のアイドルギヤ側のスプラインシャフト噛合部12と接触する。このようにシフト部材1は軸方向aで、図2に関連づけて言うと観察者に近づくように、又はこれから離れるように、第1のアイドルギヤ8に対してスライドさせることができるが、シフト部材側のスプラインシャフト噛合部7及び第1のアイドルギヤ8の側の対応するスプラインシャフト噛合部12によって、この第1のアイドルギヤ8と相対回転不能に結合される。軸方向の変位経路は、開口部5のサイズと、それぞれの挿通部11の間の領域でのアイドルギヤ8の厚みとによって制限される。
【0023】
図3の図面では、上で言及したように、トランスミッション装置10を概略的な断面図で見ることができる。ここでは切断面は図2のIII-III線に沿って延びている。すなわち、ここでは第1のギヤ噛合部9を有する第1のアイドルギヤ8は、スプラインシャフト噛合部7,12を介してシフト部材1と相対回転不能に結合されるシンクロナイザボディとしての役目を果たし、第1のアイドルギヤ8は、回転軸Rを中心として回転するシャフト13の上で回転する。第1のアイドルギヤ8は、このシャフト13の上で同軸に配置されている。ここでは更に第1のアイドルギヤ8に隣接して、シャフト13の上で同軸に第2のアイドルギヤ14が配置されている。この第2のアイドルギヤ14もギヤ噛合部15すなわち第2のギヤ噛合部を有している。アイドルギヤ8,14のシャフト13への取り付けは図示していない。
【0024】
シフト部材1は、図1の図面にも見ることができる溝16を有している。両方のアイドルギヤ8及び14の間に位置するこの溝16の中に、図3の図面に示唆するシフトフォーク17が周知の方式で係合することができる。このシフトフォーク17を介してシフト部材1は、いわばニュートラル位置である、以下において第3の軸方向位置と呼ぶここに示した位置から、右方に向かって第2の軸方向位置へ、又は左方に向かって第1の軸方向位置へ、スライドすることができる。このとき第1の軸方向位置へのスライドは、シフト部材1の側の第1のシフト噛合部6が、第2のアイドルギヤ14の領域の第1のシフト噛合部18と係合することを惹起することになる。このことは、両方のシフト噛合部6,18が互いに係合することによって、シフト部材1が第2のアイドルギヤ14と相対回転不能に連結されることにつながる。更に、シフト部材1はスプラインシャフト噛合部7,12を介して、シンクロナイザボディとしての役目を果たす第1のアイドルギヤ8と相対回転不能に結合されており、それにより、シフト部材1のこの第1の軸方向位置では、すなわち図3の図面に対して左方に向かってスライドしたシフト部材1の軸方向位置では、両方のアイドルギヤ8,14が互いに相対回転不能に連結されて、シャフト13に対して一緒に回転することができる。
【0025】
第2の軸方向位置を具体化するために、シフト部材1が、図3に示す第3の軸方向位置から、図3に示される軸方向aの右方に向かってスライドする。スプラインシャフト噛合部7,12が引き続き係合している場合、したがって、第1のアイドルギヤ8がシフト部材1とが相対回転不能に接続されている場合、シフト部材1の部分部材2にある第2のシフト噛合部3が、ここでは中間ギヤ20を介してシャフト13と相対回転不能に結合されたシャフト側のシフト噛合部19に係合する。
【0026】
すなわちシフト部材1は、その第2のシフト噛合部3とシャフト側のシフト噛合部19とのこのような係合によってシャフト13と相対回転不能に連結され、それに応じてシャフト13と共に回転する。引き続き係合しているスプラインシャフト噛合部7,12により、シフト部材1は依然として第1のアイドルギヤ8と相対回転不能に連結されており、それにより、これもシャフト13と共に回転する。このとき軸方向aで、両方のアイドルギヤ8,14の間の領域から、第2のアイドルギヤ14と反対を向くほうの第1のアイドルギヤ8の領域へと延びるシフト部材1そのものはきわめてコンパクトかつ効率的であり、シフトフォーク17のためのアクセスが必要でない領域で、すなわち特に図3の図面で溝16の右側の領域で、相応に追加組付けをすることができ、このことは、ここでは第1のアイドルギヤ8によって具体化されており、このことは、第1のアイドルギヤに対して右側で隣接する領域でも、更に別の部材によって問題なく可能なはずである。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(13)を有するトランスミッション装置(10)であって、前記シャフト(13)の回転軸(R)に関して同軸に、かつ前記シャフト(13)の上で軸方向(a)に互いに隣接して配置された2つのアイドルギヤ(8,14)、すなわち第1のギヤ噛合部(9)を有する第1のアイドルギヤ(8)及び少なくとも1つの第2のギヤ噛合部(15)を有する第2のアイドルギヤ(14)と、前記第1のアイドルギヤ(8)に対して相対回転不能かつ軸方向(a)へスライド可能に配置されたシフト部材(1)とを備え、前記シフト部材(1)は前記シャフト(13)の回転軸(R)に関して軸方向で両方の前記ギヤ噛合部(9,15)の間の領域から前記第2のアイドルギヤ(14)と反対を向くほうの前記第1のアイドルギヤ(8)の側まで延び、前記第1のアイドルギヤ(8)は少なくとも1つの挿通部(11)を有し、前記挿通部を通って前記シフト部材(1)が軸方向(a)に貫通し、前記シフト部材(1)は、軸方向(a)で前記アイドルギヤ(8,14)の間に配置された第1のシフト噛合部(6)と、前記第2のアイドルギヤ(14)と反対を向くほうの前記第1のアイドルギヤ(8)の側に配置された第2のシフト噛合部(3)とを有する、トランスミッション装置において、
前記第1のシフト噛合部(6)が前記第2のシフト噛合部(3)と相対回転不能に結合されることを特徴とする、トランスミッション装置。
【請求項2】
少なくとも1つの前記挿通部(11)は、前記第1のギヤ噛合部(9)の径方向内部に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項3】
前記シフト部材(1)はシフト部材にスプラインシャフト噛合部(7)を有し、前記スプラインシャフト噛合部によって前記シフト部材(1)が恒常的に相対回転不能かつ軸方向へスライド可能なように前記第1のアイドルギヤ(8)と連結され、前記シフト部材側のスプラインシャフト噛合部(7)は前記第2のシフト部材側のシフト噛合部(3)とは別個に形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項4】
前記シフト部材(1)は、軸方向で前記アイドルギヤ(8,14)の間に配置された溝(16)を有し、前記溝は、該溝の中へシフトフォーク(17)が前記シフト部材(1)を軸方向(a)にスライドさせるために係合できるように設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項5】
前記第1のアイドルギヤ(8)は、円周にわたって配分されて配置された複数の挿通部(11)を前記シフト部材(1)のために有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項6】
前記第1のシフト噛合部(6)と前記第2のシフト噛合部(3)は、シフト部材側で前記シャフト(13)の回転軸(R)に関して径方向内側に配されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項7】
前記シフト部材側のスプラインシャフト噛合部(7)は、前記シャフト(13)の回転軸(R)に関して径方向内側に配されていることを特徴とする、請求項3に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項8】
前記第1のシフト噛合部(6)は、前記シフト部材(1)の第1の軸方向位置で前記第1のアイドルギヤ(8)を前記第2のアイドルギヤ(14)と相対回転不能に連結するために構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項9】
前記第2のシフト噛合部(3)は、前記シフト部材(1)の第2の軸方向位置で前記第1のアイドルギヤ(8)を前記シャフト(13)と相対回転不能に連結するために構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項10】
前記シフト部材(1)は、前記シャフト(13)に対する第3の軸方向位置で、前記第2のアイドルギヤ(14)を前記シフト部材(1)と連結することなく、自由に前記第1のアイドルギヤ(8)と共に回転するために構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトランスミッション装置(10)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
シャフトと、いわゆる特殊シフト部材とを有するトランスミッション装置はその限りにおいて従来技術から公知であり、たとえば特許文献1、特許文献4及び特許文献2から公知である。たとえば特に当分野に属する、出願人の特許文献3は、そこでは2部分で製作される、このような特別なシフト装置を記載している。各部分がシャフトの軸方向で互いに結合されており、これらの部分のうち一方は、シンクロナイザボディを介してシャフトと相対回転不能に結合される。それに伴ってこの特許明細書のシフト装置では、現行の主請求項の前提部から全ての構成要件が明らかとなる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
【特許文献1】西独国特許出願公開第2157153(A)号明細書
【特許文献2】欧州特許第2302245(B1)号明細書
【特許文献3】独国特許発明第102004049274(B4)号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第2830300(A1)号明細書
【国際調査報告】