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特表2024-523630ラジアキシャル軸受および電動モータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ラジアキシャル軸受および電動モータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 13/08 20060101AFI20240621BHJP
   F16C 19/50 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
F16H13/08
F16C19/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580557
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022066518
(87)【国際公開番号】W WO2023274747
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21182463.6
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523487748
【氏名又は名称】ビアテック モーション エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ミロスラヴ ヴォラック
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ バルナ
【テーマコード(参考)】
3J051
3J701
【Fターム(参考)】
3J051AA01
3J051BA02
3J051BB04
3J051BD02
3J051FA01
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA53
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA55
3J701FA53
3J701GA11
(57)【要約】
中心軸を中心とする円筒状の構成を有するラジアキシャル軸受であって、少なくとも1つのハーモニック波型減速段を有し、3つ以上のリングと、それぞれが中心軸を中心とする転動体の第1のリング状の配置とを備え、3つ以上のリングが、転動体のリング状の配置を、a)最内のリングが、半径方向内側から転動体に接触する軌道を有し、最外のリングが、半径方向外側から転動体に接触する軌道を有し、第3のリング、場合によっては第4のリングが、軸方向両側から転動体に接触する軌道を有するか、b)3つ以上のリングが、転動体に接触する4つの軌道を矩形の箱型に有し、その箱型が、中心軸に対して0°と360°との間の斜め方向に向いているように取り囲み、2つの対向する軌道が、転動体に構造化された軌道の間でハーモニック波型の振動を強制し、軸受けの作動中に、低い空間周波数を有する構造化された軌道を有するリングの高速回転を、高い空間周波数を有する軌道を有するリングの低速回転に変換するように設計された、異なる空間周波数を有する構造を有し、構造化された軌道に直交する方向に向けられたの軌道を有するリングまたはその内の1つが、隣接する転動体を互いに分離するセパレータを有し、電動モータに取り付けられる。本発明によれば、構造化された軌道の少なくとも1つが、転動体の方向に対して垂直な方向に振動し、転動体が部分的に、種々の量だけ障害物を越えて突出するように、中心から外れて転動体に接触する少なくとも1つの曲線を有する障害物を形成するように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸(12)を中心とする円筒状の構成を有するラジアキシャル軸受(B1~B4)であって、
少なくとも1つのハーモニック波型減速段を有し、
3つ以上のリング(R1~R4)と、それぞれが前記中心軸(12)を中心とする転動体(5)の第1のリング状の配置とを備え、
前記3つ以上のリング(R1~R4)が、前記転動体(5)のリング状の配置を、
a)最内の前記リング(R1~R4)が、半径方向内側から前記転動体(5)に接触する軌道(1~4)を有し、最外の前記リング(R1~R4)が、半径方向外側から前記転動体(5)に接触する軌道(1~4)を有し、第3のリング(R1~R4)、場合によっては第4のリング(R1~R4)が、軸方向両側から前記転動体(5)に接触する軌道(1~4)を有するか、または、
b)前記3つ以上のリング(R1~R4)が、前記転動体(5)に接触する4つの軌道(1~4)を矩形の箱型に有し、その箱型が、前記中心軸(12)に対して0°と360°との間の斜め方向に向いている、
ように取り囲み、
2つの、特に半径方向または軸方向に対向する軌道(3,4)が、前記転動体(5)に構造化された軌道(3,4)の間でハーモニック波型の振動を強制し、前記軸受(B1~B4)の作動中に、低い空間周波数を有する構造化された軌道(3)を有するリング(R3)の高速回転を、高い空間周波数を有する軌道を有するリング(R4)の低速回転に変換するように設計された、異なる空間周波数を有する構造を有し、
前記構造化された軌道(3,4)に直交する方向に向けられた前記軌道(1,2)を有する前記リング(R1,R2)またはその内の1つが、隣接する転動体(5)を互いに分離するセパレータ(6)を有し、
前記構造化された軌道(3,4)の少なくとも1つが、前記転動体(5)の方向に対して垂直な方向に振動し、前記転動体(5)が部分的に種々の量だけ障害物を越えて突出するように、中心から外れて転動体(5)に接触する少なくとも1つの曲線(8)を有する障害物を形成するように構成されている、
ラジアキシャル軸受(B1~B4)。
【請求項2】
1つの減速段に2列以上の転動体(5)を有する多列軸受(B2)、または各々1列以上の転動体(5)を有する2つ以上の減速段を有する多段軸受(B3)である、
請求項1に記載のラジアキシャル軸受(B2,B3)。
【請求項3】
2列以上の転動体(5)を有する少なくとも1つの減速段を有し、
前記2列以上の転動体(5)の障害物が、空間周波数は同じであるが位相が異なる振動曲線(8)を有する、
請求項2に記載のラジアキシャル軸受(B2,B3)。
【請求項4】
2つの対向する前記構造化された軌道(3,4)が、半径方向内側および半径方向外側の接触軌道(3,4)であり、
前記ハーモニック波型の振動が、半径方向における前記転動体(5)の振動である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のラジアキシャル軸受(B1~B4)。
【請求項5】
2つの対向する前記構造化された軌道(3,4)が、軸方向に対向する接触軌道(3,4)であり、
前記ハーモニック波型の振動が、軸方向における前記転動体(5)の振動である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のラジアキシャル軸受(B1~B4)。
【請求項6】
前記ハーモニック波型の振動が、前記中心軸(12)に対して選択肢b)の斜めの角度を有する方向における前記転動体(5)の振動である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のラジアキシャル軸受(B1~B4)。
【請求項7】
前記転動体(5)の中心から外れて接触する振動形状の障害物の1つ以上のリムが、各前記リング(R1~R4)の2つの部分間の隙間の対向するエッジ、各前記リング(R1~R4)のエッジ、および、振動的に曲げられたワイヤ(10)の1つとして構成されている、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のラジアキシャル軸受(B1~B4)。
【請求項8】
前記リング(R1~R4)の2つの部分および/または前記振動的に曲げられたワイヤ(10)が、前記リング(R1~R4)の凹部によって一緒に保持されている、
請求項7に記載のラジアキシャル軸受。
【請求項9】
前記構造化された軌道(3,4)に対して直交する方向に向けられた前記軌道(1,2)を有するリング(R1,R2)またはその1つが、隣接する前記転動体(5)を互いに分離するセパレータ(6)を有する、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のラジアキシャル軸受(B1~B4)。
【請求項10】
前記構造化された軌道(3,4)に対して直交する方向に向けられた前記軌道(1,2)を有する1つ以上の前記リング(R1,R2)が、円筒状の開口部を有し、該開口部が、前記転動体(5)を前記開口部の軸に沿って移動できるように収容し、前記開口部の壁が、セパレータ(6)と、前記構造化された軌道(3,4)に対して直交する方向に向けられた前記軌道(1,2)とを構成する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のラジアキシャル軸受(B1~B4)。
【請求項11】
前記転動体(5)が半径方向に振動する場合に、半径方向内側の前記構造化された軌道および半径方向外側の前記構造化された軌道の内の1つが、1つまたは2つの山を有する半径方向に偏心した外形を有する1対のリングまたはワイヤ(10)から構成され、それぞれが前記転動体(5)に中心から外れて接触する、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のラジアキシャル軸受(B1~B4)。
【請求項12】
前記転動体(5)が軸方向に振動する場合に、半径方向に振動する曲線(8)を有する前記リング(R4)が、前記構造化された軌道(3,4)に対して直交する前記軌道(1,2)を有する1以上の前記リング(R1,R2)の周方向の開口部内に、軸方向変位に対して固定されるように組み付けられる2つ以上の部品から構成されている、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のラジアキシャル軸受(B1~B4)。
【請求項13】
前記転動体(5)が軸方向に振動する場合に、半径方向に振動する曲線(8)を有する他の構造化された軌道(4)に対向する構造化された軌道(3)が、表面として構成され、該表面が、前記中心軸(12)に垂直な平面に対して傾斜を有する平坦面、または前記中心軸(12)回りの前記表面の回転中に前記転動体(5)の軸方向変位をもたらす2つまたは3つの山を有する波構造を有する、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のラジアキシャル軸受(B1~B4)。
【請求項14】
電動モータ(30)であって、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の少なくともラジアキシャル軸受(B1~B4)が前記電動モータ(30)と一体化されているか、または、前記電動モータ(30)に組み込まれており、前記電動モータ(30)のケーシングが、前記ラジアキシャル軸受(B1~B4)の支持構造を形成し、前記電動モータ(30)のロータ(34)が、前記ラジアキシャル軸受(B1~B4)の入力(16)に駆動するように連結されているか、または一体化されている、電動モータ(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心軸を中心とした円筒状を有するラジアキシャル(radiaxial)軸受であって、少なくとも1つのハーモニック波型減速段を有し、3つ以上のリングと、それぞれが中心軸を中心とした第1のリング状の配置の転動体とを備える軸受、および電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
転動体の同心リングを介在させた、同心リングを有するラジアル軸受は、軸受の共通の中心軸回りの回転部品の回転運動を可能にしながら、ラジアル荷重を受け止めるために使用される。また、ギヤボックスの入力における回転部材の回転速度をギヤボックスの出力において、より遅い回転に減速するギヤボックスも知られている。本願においては、これを減速動作と呼ぶ。
【0003】
一般に知られているギヤボックスは、それ自体がラジアル荷重に耐えることができないか、あるいは不向きであるため、通常は、外部または追加のラジアル軸受と組み合わせて使用される。多くの技術的な用途は、減速動作を必要とするが、軸受と組み合わせた一般的に知られているギヤボックスは、法外に大きいという問題に直面している。そのような技術分野の一つにロボット工学があり、特に小型化および堅牢かつ正確な回転減速が強く求められている。本発明を使用できるもう一つの技術分野は、自動車、特に電気自動車および電動ホイールである。
【0004】
欧州特許出願公開第3135954号は、減速動作をラジアル軸受に統合した減速軸受を開示している。この減速軸受は、転動体の2つの同心リングのための軸受軌道として構成された少なくとも3つの同心リングを有し、3つの同心リングがラジアル荷重を受けながら互いに自由に回転できるようになっている。これは、少なくとも3つの同心リングの延長部に、公知のハーモニック波型減速原理に基づいたハーモニック波型減速段を組み込んだものである。外リングおよび内リングの特別な構造の内周面と外周面との間において、転動体が半径方向に変位することにより、ハーモニック波型の動作が可能になる。
【0005】
さらに最近では、欧州特許出願公開第3366937号が、回転対称の中心軸を中心にした、内リング、中心リング、外リング、転動体の第1のリングおよび転動体の第2のリングを備えたリング状の減速軸受を開示している。転動体の第1のリングおよび第2のリングは、互いに軸方向に整列し、内リングと外リングとの間に位置している。内リングおよび外リングは、転動体の2つのリングの両方に対して、半径方向に軸受軌道を有するように構成されており、減速軸受は、転動体の2つのリングの少なくとも一方の転動体の軸方向の変位を介して、中心リングと内リングまたは外リングのいずれかとの間において波型の減速動作を伝達するように構成されている。欧州特許出願公開第3366937号に開示された軸受の中には、ラジアキシャル軸受特性を有するものがあり、これは、ラジアル軸受として作用すると同時にアキシャル軸受としても作用することを意味する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、これらの既知の軸受を改良し、それにより、減速機能およびラジアキシャル軸受特性を備える、より小型の軸受を提供することである。
【0007】
本発明の第1の態様において、この目的は、中心軸を中心とする円筒状の構成を有するラジアキシャル軸受であって、少なくとも1つのハーモニック波型減速段を有し、3つ以上のリングと、それぞれが中心軸を中心とする転動体の第1のリング状の配置とを備え、3つ以上のリングが、転動体のリング状の配置を、
a)最内のリングが、半径方向内側から転動体に接触する軌道を有し、最外のリングが、半径方向外側から転動体に接触する軌道を有し、第3のリング、場合によっては第4のリングが、軸方向両側から転動体に接触する軌道を有するか、または、
b)3つ以上のリングが、転動体に接触する4つの軌道を矩形の箱型に有し、その箱型が、中心軸に対して0°と360°との間の斜め方向に向いているように取り囲み、
半径方向または軸方向に対向する2つの軌道が、転動体に構造化された軌道の間でハーモニック波型の振動を強制し、軸受けの作動中に、低い空間周波数を有する構造化された軌道を有するリングの高速回転を、高い空間周波数を有する軌道を有するリングの低速回転に変換するように設計された、異なる空間周波数を有する構造を有し、構造化された軌道に直交する方向に向けられた軌道を有するリングまたはその内の1つが、隣接する転動体を互いに分離するセパレータを有し、構造化された軌道の少なくとも1つが、転動体の方向に対して垂直な方向に振動し、転動体が部分的に、種々の量だけ障害物を超えて突出するように、中心から外れて転動体に接触する少なくとも1つの曲線を有する障害物を形成するように構成されているラジアキシャル軸受によって達成される。
【0008】
固体構造の軌道の一方または両方を、転動体と中心を外れて接触する障害物を形成するように構造化された軌道で置き換えるという解決策により、転動体が障害物を越えて構造化された軌道を有するリング内に飛び出しまたは突出し、したがってリングと空間の一部を共有することになるため、構造化された軌道をより少ないスペースで構成することができる。転動体、特にボールの振動方向への移動が禁止されるのであれば、軌道は、片側だけに振動曲線を有していてもよい。また、軌道は、振動が互いに鏡面である、すなわち互いに180°の相対的な位相のずれを有する2つの振動曲線を有し、障害物を越えて突出する転動体の表面の中央部分の反対側において転動体に接触することもできる。ボール形状の転動体の代わりに、特に丸みを帯びた端面を持つ、ほぼ円筒形状の転動体を使用してもよい。
【0009】
障害物の曲線の振動する性質は、障害物の狭い部分では転動体を押し出し、障害物の広い部分では転動体が障害物を通ってさらに突出することを可能にする効果がある。転動体が障害物に沿って移動すると、転動体は交互に障害物内に受け入れられ、また障害物から押し出され、それによって振動曲線によって広がる平面に垂直な振動動作を示す。転動体のこのような振動動作は、障害物が半径方向内側または外側から転動体に接触する軌道の一部である場合には、半径方向の振動となり、障害物を有する軌道が転動体に向かって軸方向に配置されている場合には、転動体は軸受の軸方向に振動する。
【0010】
転動体のリングが半径方向内外および軸方向両側から接触するという事実は、半径方向(ラジアル方向)および軸方向(アキシャル方向)の力に耐えることができるラジアキシャル軸受としての軸受の機能をもたらす。
【0011】
本発明の第2の態様において、本発明の目的は、中心軸を中心とする円筒状の構成を有するラジアキシャル軸受によっても達成され、この軸受は、少なくとも1つのハーモニック波型減速段を有し、3つ以上のリングと、それぞれが中心軸を中心とする、転動体の第1のリング状の配置とを備え、3つ以上のリングが、最内のリングが半径方向内側から転動体に接触する軌道を有し、最外のリングが、半径方向外側から転動体に接触する軌道を有し、第3のリングおよび場合によっては第4のリングが、軸方向両側から転動体に接触する軌道を有するように、転動体のリング状の配置を取り囲み、半径方向または軸方向に対向する2つの軌道が、転動体に構造化された軌道の間で半径方向のハーモニック波型の振動を強制するように設計され、軸受けの作動中に、低い空間周波数を有する構造の軌道を持つリングの高速回転を、高い空間周波数を有する軌道を持つリングの低速回転に変換する、異なる空間周波数を有する構造を有し、構造化された軌道に直交する方向に向けられた軌道を有するリングまたはその内の1つが、隣接する転動体を互いに分離するセパレータを有し、特に構造化された軌道の少なくとも1つが、転動体の方向に対して垂直な方向に振動し、転動体が部分的に種々の量だけ障害物を越えて突出するように、中心から外れて転動体に接触する少なくとも1つの曲線を有する障害物を形成するように構成され、ラジアキシャル軸受は、1つの減速段に2列以上の転動体を有する多列軸受、または各々1列以上の転動体を有する2つ以上の減速段を有する多段軸受であるようにさらに発展する。
【0012】
1つの減速段に2列以上の転動体を設けることにより、軸受の軸受能力が強化され、特に2列の転動体が同じ減速係数を有する構造化された軌道を備えている場合には、大きな力の下での滑らかな減速動作が可能になる。
【0013】
2列以上の転動体を有する少なくとも1つの減速段を有するラジアキシャル軸受の一実施形態において、2列以上の転動体の障害物は、空間周波数は同じであるが位相が異なる振動曲線を有する。それぞれの振動の位相シフトによるこのオフセットは、軸受および減速段に作用する荷重をよりよく分散させるのに役立つ。
【0014】
同様に、それぞれ1列以上の転動体を有する2つ以上の減速段を設けることにより、軸受強度の面でも達成可能な減速比の面でも、このようなラジアキシャル軸受の汎用性を高めることができる。このような多列または多段軸受は、本発明の第1の態様による振動曲線制限障害物を備えていてもよい。
【0015】
実施形態において、2つの対向する構造化された軌道は、半径方向内側および半径方向外側の接触軌道であり、ハーモニック波型の振動は、半径方向における転動体の振動である。他の実施形態において、2つの対向する構造化された軌道は、軸方向に対向する接触軌道であり、ハーモニック波型の振動は、軸方向における転動体の振動である。いずれの構成も、ラジアキシャル軸受の構成a)に従ったものであり、良好な安定性と減速作用を提供することができる。転動体を半径方向に振動させる第1の選択肢は、軸方向にコンパクトな設計が要求される場合に好ましいが、転動体を軸方向に振動させる第2の選択肢は、直径を小さく設計することができる。さらに、どちらのリングを入力として使用するか、出力として使用するか、あるいは他の構造物またはモータに取り付けられる固定リングとして使用するかは、個々の設計次第である。また、構造化された軌道を持つ2つのリングのうち、どちらが振動数の多い構造を持つかは設計に依存する。回転速度を低下させる場合には、入力側は山または振動の数が少ないリングとなり、出力側は振動の数が多いリングか、転動体用のセパレータを備えたリングとなり、それぞれ他のリングは固定リングとなる。
【0016】
半径方向または軸方向(すなわち、0°,90°,180°,270°,360°)の振動の代わりに、他の実施形態は、ハーモニック波型の振動は、中心軸に対して選択肢b)の斜めの角度を有する方向における転動体の振動であり、この場合、選択肢a)の純粋に半径方向または軸方向は除外される。このラジアキシャル軸受の選択肢b)による構成は、製造がより困難である可能性があるが、軸受軌道および振動を斜めの角度で提供することにより、アキシャル軸受とラジアル軸受の機能を組み合わせ、軸受によって吸収されることが期待されるラジアル力とアキシャル力の大きさに応じた、設計の必要性に応じてアキシャル軸受とラジアル軸受の能力をバランスさせるのに適している。
【0017】
ラジアキシャル軸受の実施形態において、転動体の中心から外れて接触する振動形状の障害物のリムは、以下のいずれかとして構成される。
- 各リングの2つの部分の間の隙間の対向するエッジ、
- 各リングのエッジ、および
- 振動的に曲げられたワイヤ。
【0018】
好ましくは、リングの2つの部分および/または振動的に曲げられたワイヤは、リングの凹部によって一緒に保持される。
【0019】
隙間は、1つのリングの2つの部分の間に存在してもよく、互いに直接接続されてもよく、または、2つの部分を一緒に保持する別のリングを介して接続されてもよい。隙間は、周方向に同じ振動数を持つが位相が逆である2つの振動曲線によって規定され、隙間は両側で同時に開いて再びきつく閉じる。
【0020】
それぞれのリングの1つのエッジの他の例は、転動体の動きを制限する振動エッジが1つしかないことを意味し、転動体は、それ以外の場合には、中心軸回りの転動体の進行に伴って変化する可能性のある振動方向に対して、横方向の任意の位置に保持される。
【0021】
他のリングを用いて定位置に保持された、振動するように曲げられたワイヤの他の例は、振動幅を有する障害物の概念を容易にする振動曲線を製造するための簡単で費用効果の高い解決策を提供する。
【0022】
実施形態において、構造化された軌道に対して直交する方向に向けられた軌道を有するリングまたはその1つは、隣接する転動体を互いに分離するセパレータを有する。
【0023】
実施形態において、構造化された軌道に対して直交する方向に向けられた軌道を有する1つ以上のリングは、円筒状の開口部を有し、開口部が、転動体を開口部の軸に沿って移動できるように収容し、開口部の壁はセパレータ、および構造化された軌道に対して直交する方向に向けられた軌道を構成する。円筒状の開口部は、最も単純な構成ではボールとして構成される転動体の強固な保持を保証し、転動体を円筒状の開口部の向きの方向に移動させることができるが、全ての横方向には遊びがないか、無視できる程度である。この場合、振動曲線から離れる転動体の横方向の動作は、円筒状の開口部の壁によって阻止されるため、構造化された軌道の片側にのみ振動曲線を設ければ十分である。このため、転動体の揺動の振幅は、転動体が円筒状の開口部からはみ出さないように保持される。
【0024】
一実施形態において、転動体が半径方向に振動する場合には、半径方向内側の構造化された軌道および半径方向外側の構造化された軌道の内の1つが、1つまたは2つの山を有する半径方向に偏心した外形を有する、1対のリングまたはワイヤによって構成され、それぞれが転動体に中心を外れて接触する。
【0025】
他の実施形態において、転動体が軸方向に振動する場合には、半径方向に振動する曲線を有するリングが、構造化された軌道に対して直交する軌道を有する1つ以上のリングの周方向の開口部内に、軸方向変位に対して固定されるように組み付けられる2つ以上の部材から構成されている。
【0026】
他の実施形態において、転動体が軸方向に振動する場合には、半径方向に振動する曲線を有する他の構造化された軌道に対向する構造化された軌道が、表面として構成され、表面が、中心軸に垂直な平面に対して傾斜を有する平坦面、または中心軸回りの表面の回転中に転動体の軸方向変位をもたらす2つまたは3つの山を有する波構造を有する表面として構成される。中心軸に対して傾いた平面は、軸方向に1つの山を持つ。この場合には、波構造は複数の山を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の他の特徴は、特許請求の範囲および添付された図面を用いた、本発明による実施形態の説明から明らかになるであろう。本発明による実施形態は、個々の特徴またはいくつかの特徴の組合せを満たすことができる。
【0028】
本発明は、本発明の一般的な内容を制限することなく、例示的な実施形態に基づいて以下に説明され、本文中でより詳細に説明されていない本発明による全ての詳細の開示に関しては、図面を明示的に参照する。
【0029】
図1】公知のハーモニック波型減速段の概略的な斜視図である。
図2.1】転動体の半径方向の振動を伴うラジアキシャル軸受のリングの主要な配置を示す概略的な縦断面図である。
図2.2】転動体の軸方向の振動を伴うラジアキシャル軸受のリングの主要な配置を示す概略図である。
図3】ラジアキシャル軸受の減速段の第1の実施形態を示す概略的な斜視図である。
図4】第2の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
図5】ラジアキシャル軸受の減速段の第3の実施形態を示す概略的な斜視図である。
図6】第3の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
図7】ラジアキシャル軸受の減速段の第4の実施形態を示す概略的な分解斜視図である。
図8】第4の実施形態を示す概略的な分解縦断面図である。
図9】組み立てられた状態の第4の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
図10】ラジアキシャル軸受の減速段階の第5の実施形態を示す概略的な斜視図である。
図11】第5の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
図12】第6の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
図13】第7の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
図14】第8の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
図15】第9の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
図16】ラジアキシャル軸受の第10の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面において、同一または類似のタイプの部材またはそれぞれ対応する部品には、項目の重複した紹介を避けるために同じ参照番号を付している。
【0031】
図1は、ラジアル軸受B1の公知の3リング式ハーモニック波型減速段を示す概略的な斜視図であり、ここには、主にハーモニック波型減速動作のメカニズムを説明する目的で示されている。
【0032】
減速段は、同心状に配置された3つのリングR1,R3,R4を備える。中間リングR1は、それぞれ1個の、この場合にはボール形状の転動体5を収容する19個の円筒状の開口部を有する。内リングR3の半径方向外向きの表面は、2つの山7を持つ楕円形状の軌道3を構成している。外リングR4の半径方向内向きの表面は、より多数(この場合はそれぞれ20個)の山9と谷を有する曲線8を持つ軌道4を構成する。構造化された軌道3,4の正確な曲率は、転動体5が常に両方の軌道に接触するように計算および設計されている。
【0033】
内リングR3が回転駆動されると、その楕円軌道3が転動体5を半径方向に変位させ、軌道3の山7を通過するごとに、転動体5を対向する軌道4の谷部に押し込み、それによって、転動体5の周方向への移動も誘導する。転動体5の数は、軌道4の谷の数とは等しくないので、転動体5は、内側軌道3の山7を通過するごとに、軌道4の次の連続する谷に入らされ、それによって、半径方向の振動と周方向の緩慢な移動とが組み合わされて実行される。これにより、転動体5の全体がハーモニック波状に移動する。内リングR3および外リングR4の山7,9および谷の数にそれぞれ大きな差があり、転動体5の数がリングR4の山9および谷の数とわずかに異なるだけであることは、ハーモニック波型減速軌道の典型である。減速段の減速比は、最内リングR3と最外リングR4との山7,9の数の比に等しい。図1に示す場合には、この減速比は10:1である。2つの山7の代わりに、軌道3は、1つの山のみを有する偏心した形状を有するか、または少数の山を有することができるが、この数は、対向する軌道4の山9および谷の数よりもかなり少なく、特にその数の2分の1または3分の1以下である。対向する構造化された軌道の山の比率に対する実用的な限界は、転動体5および軌道4の製造可能なサイズの小ささによって与えられる。
【0034】
図1に示す設定に基づき、2つの可能な構成がある。いずれの構成においても、最内リングR3は、外部駆動源、例えば電動モータの駆動シャフトによって回転駆動される。第1の構成において、外リングR4は固定され、中間リングR1が減速出力を構成する。第2の構成において、中間リングR3が固定され、外リングR4が出力として使用される。この2つの構成においては、出力リングの回転方向が逆になる。
【0035】
複数の同心状のリングを有するハーモニック波型減速段は、ほとんどの場合、図2.1および図2.2に簡略化した縦断面図によって概略的に示される2つの基本設計オプションのうちの1つを有する。どちらの設計オプションにも共通しているのは、各転動体5が、軌道1,2,3,4およびセパレータ6の間に、減速段の半径方向、軸方向および周方向に、保持器内で遊びを生じることなく完全に閉じ込められていることである。セパレータ6は、隣合う転動体5を周方向に互いに分離する。セパレータ6は、リングR1,R2、または、リングR1,R2が共通ユニットの場合には、その両方の一部である。リングR1,R2の他の軌道1,2は、構造を持たない平坦なものである。軌道1,2およびセパレータ6は,図1に示すように,リングR1の円筒状の開口部として実現されてもよい。
【0036】
リングR3,R4の他の2つの軌道は、構造化された軌道3,4であり、互いに相対的に回転する際に、転動体5にハーモニック波型の振動を与える。図2.1および図2.2に示す2つの構成は異なっており、図2.1においては、リングR3,R4の構造化された軌道3,4が転動体の半径方向内側と外側に配置され、ハーモニック波型の振動が中心軸12に対して半径方向に向いている。これは、図1の軸受B1に示す向きと同じである。これに対して、図2.2に示す構成においては、リングR3,R4の構造化された軌道3,4が転動体5に対して軸方向に配置され、これにより、半径方向成分を持たない軸方向の振動が転動体5に付与される。半径方向に突き当たる軌道1,2は構造化されていない。
【0037】
図3は、ラジアキシャル軸受B1の減速段の第1の実施形態を示す概略的な斜視図である。その基本的な構成において、図2.1に示すような径方向振動型減速段であり、図1に示す公知の減速段に強く類似している。最内リングR3は、再度、2つの山7を持つ楕円軌道3を有し、中間リングR1は、転動体5用の円筒状の開口部を有する構成となっている。しかし、最外リングR4は、基本的に平坦なリングであり、2つの部分に分割されており、2つの部分の間には隙間がある。リングR4の周方向において、隙間は、隙間の対向する側面またはリムの曲線8によって規定される振動する幅を有し、この曲線8は、隙間幅を狭める規則的に間隔を開けた山9を有し、山9の間において隙間幅が開く。最大隙間幅は、ボール形状の転動体5がそれぞれの保持器内に保持されるように、ボール形状の転動体5の全直径よりも小さい。
【0038】
リングR4の軌道4は、対称に、かつ中心からずれた位置において転動体5に接触する隙間のリムから形成されている。転動体5は、それぞれの転動体5の位置における隙間幅に応じて隙間に突出する。転動体5が周方向に移動する間に、転動体5は変化する隙間幅に遭遇し、それによって転動体5は減速段の半径方向に振動する。リングR4の部分リングの振動する構造は、図1のリングR4の内側にある山および谷よりも製造が容易である。
【0039】
図4は、ラジアキシャル軸受B1の減速段の第2の実施形態を示す概略的な縦断面図であり、図3に示した第1の実施形態の変形例である。図4の第2の実施形態において、中間リングがリングR1,R2を構成し、セパレータ6が2つの側面の間のブリッジとなっている。転動体5は、半径方向の接触点に従って半径方向の移動が可能なように、セパレータ6と軌道1,2との間に保持されている。最内リングR3と最外リングR4は、それぞれ保持リングによって保持された2つの部分に分割されており、2つの部分の間にはそれぞれ異なる幅の隙間がある。リング部品のリムの接触点は曲線8を定め、転動体5が常に中心から外れた4点で接触し、それぞれの間隙に突出するように設計されている。一側において間隙を開き、他側において間隙を狭めることによって、転動体は半径方向に移動する。図4および以下のほとんどの図は、転動体5の軸方向および垂直方向の中心線を細い破線で表示している。構造化された軌道の接触点は、関連する軸方向および/または垂直方向の中心線に対して常に中心から外れている。
【0040】
図5は、半径方向のハーモニック波型の振動を伴うラジアキシャル軸受の減速段の第3の実施形態の概略的な斜視図であり、最内リングR3および最外リングR4の接触曲線8を定義する特徴において、これまでの実施形態と異なっている。第2の実施形態のように隙間を変化させた分割リングの代わりに、外側リングは、曲線8の形状に曲げられた2本のワイヤ10を有する。最内リングは、2つの同じリングが軸方向にずれて互いの間に隙間を囲む形の他のバリエーションを有している。間隙の幅は一定であるが、ワイヤ10またはトラックの厚さはそれぞれ周方向に変化し、互いに反対側に2つの山7を示す。
【0041】
図5は、案内するワイヤ10の表示を妨げることになるため、最内リングおよび最外リングを完全には示していない。図6は、図5の第3の実施形態の概略的な縦断面図であり、より完全な設定を示している。図6からわかるように、最内リングR3のワイヤ10および最外リングR4のワイヤ10は、固体のリングR3,R4によって所定の位置に保持されている。ワイヤ10を固体のリングR3,R4に接続するための適切な手段としては、はんだ付け、溶接、またはクランプが挙げられる。ワイヤ10の曲げ加工と、ワイヤ10を固体のリングにはんだ付けまたは溶接することは、図1の既知の減速段の山と谷を作るよりもはるかに少ない処理である。
【0042】
図7は、ラジアキシャル軸受の減速段の第4の実施形態の概略的な分解斜視図であり、この場合には、減速段は、転動体5を軸方向に振動させている。図8および図9は、図7の第4の実施形態を示す概略的な分解断面図および組立状態の縦断面図である。図8に示す矢印は、組立時における減速段の各種構成部材の移動方向を示している。
【0043】
4つのリングR1~R4が再び中心軸12上に整列している。左から右に、リングR3は、軸方向内側を向く軌道3を構成する表面を有する。軌道3は1つ以上の山7を有する。第4の実施形態において、軌道3は、軸受の中心軸12に直交する平面に対して斜めに傾斜した平坦面であるため、1つの山7を有する。したがって、リングR3が回転するたびに、軌道3の接触点の軸方向位置は、軌道3の直径および傾斜角度によって定義される振幅で振動するように変化する。
【0044】
外リングR1は、構造化されていない軌道1を構成する円筒状の内周面を有する。図9に示すように、軌道1の内径はリングR3の外径よりも大きく、組立状態においてはリングR1の内側にリングR3が収容される。リングR3の軸方向に対向するリングR2は、転動体5のリングが軌道3に対向するような向きでリングR1内に導入される。各転動体5は、リングR2内の円筒状の開口部内に収容され、リングR2の円筒状の開口部を隔てる部分がセパレータ6を構成している。円筒状の開口部は、転動体5が円筒状の開口部内を軸方向に移動できるように、軸方向に向けられている。転動体5のリングの構成は、外周の直径がリングR1の軌道1の内周の直径と等しくなるようになっており、これによって組立体の半径方向の回転が安定する。リングR3の軌道3に接触するとき、転動体5は、軌道3の1つ以上の山7によって提供されるのと同じ軸方向移動の振幅で、リングR2内のそれぞれの円筒状の開口部内において軸方向に移動させられる。
【0045】
図7図9に示す第4の実施形態において、リングR2は、リングR3の軌道3から軸方向にさらに離れた第2の部材を有している。この第2の部材は、半径方向に延びる中央の接続部材によって、転動体5用の円筒状の開口部を備えたリングR2の部分と接続され、それによってリングR2の2つの部材の間に軸方向の隙間が設けられている。この軸方向の隙間は、リングR4を受け入れるために使用され、リングR4は、より多くの山9および谷(この場合、それぞれ9つの山および谷)を有する曲線8を構成する半径方向に振動する形状を有する。この場合も、転動体5の数は、山9および谷の数よりもわずかに少なく、すなわち8個である。軌道3の山が1つであることを考えると、図7に示す減速段の減速比は9:1である。
【0046】
リングR4の内側リムは、減速段の軌道4を構成する。この実施形態において、転動体に中心から外れて接触する曲線8は1つだけである。しかし、軸方向に対する横方向の動きは、転動体5を収容するリングR2の円筒状の開口部によって禁止されている。この場合には、幅が変化するような隙間は存在しないが、この構成は、ハーモニック波型減速段の公知の方法において、転動体5の軸方向移動を制限するという同じ目的を果たす。軌道4の曲線8の振動の半径方向の向きは、転動体5の振動の軸方向の向きに対して横向きである。これは、軌道4の各曲線8の振動の軸方向が転動体5の振動の半径方向に対して横方向である、前の実施形態における方向とは逆の方向である。
【0047】
第4の実施形態において、リングR4は、リングR2の2つの部材の間の隙間に収容され、その隙間の内部で軸方向の所定位置に保持されるので、リングR4は、2つの部材をリングR2の軸方向の隙間に挿入した後に組み合わされる2つの半体または周方向の2つの部材を備えていてもよい。図7に示した減速段の組み立てを、図8に第4の実施形態の概略的な分解縦断面図において示す。組立てを固定するために使用される追加部材は、リングR4およびリングR1の内側面の両方に突き当たる固定リング14である。
【0048】
図9には、第4の実施形態の組立状態の概略的な縦断面図によって減速段が示されている。図8および図9の両方に見られるように、外リングR1は、開口の内径の段差によって分離された2つの連続する部分を有する。直径が小さい方のリングR1内部の開口は、リングR3に面し、転動体5を収容する部分であり、転動体5を軌道1に接触させる。リングR1の内径が大きい方の部分には、リングR4が収容されており、このリングR4は、一方の側でリングR1の2つの部分の間の段差に突き当たって軸方向に固定され、反対側では固定リング14によってクランプされる。リングR2はその軸方向の隙間内に、軸方向に遊びなくリングR4を収容するので、リングR4は、リングR1の段差と固定リング14との間で軸方向に固定されているため、リングR2も軸方向に固定される。リングR2およびリングR4の周方向の相対的な移動は保証されている。
【0049】
図10および図11は、ラジアキシャル軸受の減速段の第5の実施形態の概略的な斜視図および概略的な縦断面図を示す。この第5の実施形態は、図7図9に示した第4の実施形態に基づいている。第4の実施形態とは対照的に、第5の実施形態は、2つの基本的に同一の単列減速段が直列に接続された2段減速軸受の例である。入力はリングR3.1によって与えられ、このリングR3.1は外部モータ(図示せず)によって駆動され、中心軸12回りに回転する。リングR3.1の軌道3.1は、中心軸12に直交する平面に対して斜めに傾いた平坦面である。これにより、リングR3.1の軌道3.1は、軸方向に1つの山を有する。
【0050】
リングR1は外部構造物(図示せず)に固定されているので、第1段および第2段のリングR4.1,R4.2も固定されている。第1段のリングR2.1は、リングR3.1の回転によって促される転動体5の軸方向移動によって、リングR4.1およびR3.1それぞれの山の比によって与えられる減速された回転速度で駆動される。本実施形態において、この減速比は9:1であり、リングR3.1が9回転するとリングR2.1が1回転することを意味する。
【0051】
第2段の入力はリングR3.2であり、リングR3.2は第1段の出力であるリングR2.1に接続され、回転駆動される。図10は、リングR4.1とリングR4.2が同じ空間的な向きを持つことを示している。第2段の減速比も9:1で、その出力はリングR2.2である。つまり、リングR3.1が81回転すると、リングR2.2が1回転することになる。リングR3.1の軌道3.1およびR3.2の軌道3.2は、同じ斜めの角度で傾いた平坦面であり、構造上の対称性がある。しかし、軌道3.1,3.2の傾斜角度は、曲線8.1,8.2の山の数と同様に、異なっていてもよく、いずれの場合も、任意の位相関係を有していてもよい。
【0052】
図12は、単段2列の減速段を構成するラジアキシャル減速軸受B2の第6の実施形態を示す概略的な縦断面図である。2列の各列は、図6のワイヤ10ベースの単段減速軸受B1と同様に構築されている。軸受の円滑な動作を保証するために、2列間の位相シフトが再び実現されている。図12に示す縦断面において、2つの転動体5は、リングR3,R4の軌道の位相の違いによって提供される2つの段間の位相シフトにより、異なる半径方向位置にあることがわかる。この位相シフトにより、荷重の適切な分配と、軸受B2の減速段の円滑な作用が保証される。
【0053】
ラジアキシャル軸受B2は、補強軸受B5,B6,B7を有し、半径方向および軸方向の両方向の安定性と負荷能力とを高めており、中心軸12の周りの半径方向の動きをリングR3に入力するモータシャフト15によって駆動される。転動体5は、組み合わせられたリングR1,R2である中間リング内のそれぞれの開口またはケージに保持される。リングR1,R2が外部構造物に固定されている場合には、出力はリングR4であってもよく、またはその逆でもよい。
【0054】
図13は、ステータ32とロータ34とを有する電動モータ30の周りに構成された単段2列の減速段を表す第7の実施形態の概略的な縦断面図である。ハーモニック波型の振動の設計原理は、転動体5の軸方向振動を伴う図7図11の実施形態において示したものと同じである。この実施形態において、電動モータ30は中央に配置され、最内リングR2がステータ32に取り付けられ、2つのリングR3.1,R3.2がロータ34の片側にそれぞれ取り付けられている。これにより、リングR2はモータ30のステータ32とともに固定される。リングR3.1,R3.2は、互いに180°オフセットした、1回転につき1つの山を有する傾斜した軌道を有する。2つのリングR4.1,R4.2は、それぞれリングR3.1,R3.2の軸方向に対向する位置にあり、固定リング14によってリングR2に対して固定されている。リングR3.1,R3.2は、例えば、図7に示すような構造であってもよい。しかし、図13の実施形態において、転動体5のハーモニック波型の振動作用のための軌道として使用されるのは、内側リムの代わりに、転動体5に面するリングR4.1,R4.2の外側リムである。
【0055】
最外リングR1は、周方向で隣接する転動体5の間のセパレータ6を備え、それによって減速段の出力である。この場合も、2つの列の間に180°の位相シフトがあることにより、減速段の負荷バランスおよびスムーズな動作が保証される。
【0056】
図14には、第8の実施形態が概略的な縦断面図によって示されている。第8の実施形態は、2段ラジアル振動型減速段のラジアキシャル軸受B3に、さらなる安定性および耐荷重性を提供する補強軸受B5,B6,B7を組み合わせたものである。この実施形態のリングR3,R4の構造化された軌道は、図5図6および図12に示す方法で、ワイヤ10によって構成されている。モータシャフト15は、第1減速段のリングR3.1である入力16を駆動する。リングR4は、両方の製造段に共通であり、外部構造、例えば、モータシャフト15を駆動する電動モータ(図示せず)のハウジングに固定されている。第1段リングR1.1,R2.1は、転動体5間のセパレータ6を介して接続され、第1段の出力として機能し、第2減速段の入力リングR3.2に接続される。リングR1.2は、第2減速段の出力であり、軸受B3のハーモニック波型減速部である。
【0057】
図15は、第9の実施形態を示す概略的な縦断面図である。第9の実施形態は、図10および図11の第5の実施形態に示すように、2段ラジアル振動型減速段のラジアキシャル軸受B3である。第9の実施形態において、リングR3.1が入力16として機能し、ステータ32がリングR1に固定された電動モータ30のロータ34に取り付けられ、リングR1は2つの減速段に共通に固定されている。回転部品は、電動モータ30のロータ32、ロータに取り付けられたリングR3.1、リングR3.1を第1段の出力および第2段の入力とするリングR2.1および第2段の出力18としてのリングR2.2である。
【0058】
図16は、ラジアキシャル軸受B4の第10の実施形態を示す概略的な縦断面図であり、その本質は、図6に示す第3の実施形態の軸受B1の減速段であり、さらなる安定性および軸受負荷容量を提供する追加の補強軸受B5,B6,B7を備え、最内リングR3が、電動モータ(図示せず)のモータシャフト15によって駆動される入力16として機能する。リングR4は固定部品20であり、セパレータ6を有するリングR1は出力18として機能し、中心軸12を中心とする半径方向のハーモニック波型の振動における転動体5の周方向運動によって駆動される。
【0059】
図面のみから取られたものも含め、全ての挙げられた特性、および他の特性と組み合わせて開示された個々の特性は、単独で、および組み合わせて、本発明にとって重要であると考えられる。本発明による実施形態は、個々の特性または複数の特性の組み合わせによって実現することができる。「特に」または「特別に」という表現と組み合わされた特徴は、好ましい実施形態として扱われる。
【符号の説明】
【0060】
1 軌道
2 軌道
3,3.1,3.2 軸受軌道
4 軸受軌道
5 転動体
6 セパレータ
7 山
8,8.1,8.2 曲線
9 山
10 ワイヤ
12 中心軸
14 固定リング
15 モータシャフト
16 入力
18 出力
20 固定部品
30 モータ
32 ステータ
34 ロータ
B1 軸受
B2 多列軸受
B3 多段軸受
B4 補強軸受
B5~B7 補強軸受
R1,R1.1,R1.2 リング
R2,R2.1,R2.2 リング
R3,R3.1,R3.2 リング
R4,R4.1,R4.2 リング
図1
図2.1】
図2.2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】