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特表2024-523636細胞の生理活性を調節するキメラポリペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】細胞の生理活性を調節するキメラポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240621BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240621BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240621BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20240621BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20240621BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20240621BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240621BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240621BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240621BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 5/0787 20100101ALI20240621BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240621BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240621BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240621BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240621BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240621BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20240621BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
C07K16/30
C07K14/47
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/0781
C12N5/0786
C12N5/0784
C12N5/0783
C12N5/10
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/071
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/0787
C12N15/26
C12N15/24
C12N15/19
A61K48/00
A61K38/16
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/12
A61K35/17
A61K35/15
A61K35/30
A61K35/28
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580614
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 CN2022102395
(87)【国際公開番号】W WO2023274303
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110730083.X
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210111505.X
(32)【優先日】2022-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111056553.5
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515309715
【氏名又は名称】科済生物医薬(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】CARSGEN THERAPEUTICS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王益
(72)【発明者】
【氏名】李宗海
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA27
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZB27
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA30
4H045DA50
4H045DA76
4H045DA83
4H045DA89
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
標的分子に特異的に結合可能な結合ペプチドと、1つ以上の切断部位を含む受容体調節ドメインと、細胞内ドメインとを含むキメラポリペプチドであって、前記受容体調節ドメインが、細胞外領域及び膜貫通領域を含み、前記細胞外領域及び膜貫通領域は同時にNotchタンパク質に由来するものではなく、前記結合ペプチドと前記標的分子との結合は、前記受容体調節ドメインの切断を誘導することができ、それによって前記細胞内ドメインが放出される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)標的分子に特異的に結合可能な結合ドメインと、
b)1つ以上の切断部位を含む受容体調節ドメインと、
c)細胞内ドメインと
を含むキメラポリペプチドであって、
前記受容体調節ドメインが、細胞外領域及び膜貫通領域を含み、前記細胞外領域及び前記膜貫通領域が同時にNotchタンパク質に由来するものではなく、
前記結合ドメインと前記標的分子との結合が、前記受容体調節ドメインの切断を誘導することができ、それによって前記細胞内ドメインが放出される、キメラポリペプチド。
【請求項2】
前記細胞外領域は、Jagged2、EphrinB2、APLP1、APLP2、APP、CD44、CSF1R、CXCL16、CX3CL1、Delta1、E-cadherin、EphB2、EphrinB1、成長ホルモン受容体、HLA-A2、IFNaR2、IL1R2、L1、LRP、LRP2、LRP6、N-cadherin、ネクチン1α、NRADD、p75-NTR、Pcdh α4、Pcdh γ-C3、PTPκ、PTP-LAR、SorCS1b、SorLA、ソルチリン、ApoER2、PKHD1、ErbB4、IFNaR2、VEGF-R1、またはVLDLRに由来する細胞外領域もしくはそれらの組み合わせ、または上記タンパク質のいずれかの細胞外領域の断片もしくはそれらの組み合わせ、または上記タンパク質のいずれかの細胞外領域の変異体もしくはそれらの組み合わせ、または上記タンパク質のいずれかの細胞外領域のトランケート構造もしくはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項3】
前記膜貫通領域がストップトランスファー配列(STS)をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
前記結合ドメインが、標的細胞表面上の標的分子に結合可能な抗原結合ドメインを含むか、または前記結合ドメインが、受容体に結合可能なリガンド部分を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
前記標的細胞が病原体であることを特徴とする、請求項4に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
前記標的細胞がヒト細胞であることを特徴とする、請求項4に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
前記ヒト細胞が腫瘍細胞であることを特徴とする、請求項6に記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
前記標的分子が、分化マーカークラスター、細胞表面受容体、接着タンパク質、インテグリン、ムチン、レクチン、及び腫瘍抗原からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
前記標的分子が腫瘍抗原であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
前記抗原結合ドメインが、抗体、受容体、細胞接着分子、非抗体分子足場、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項11】
前記抗体が、単一ドメイン抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、ミニ抗体、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント、scFv、単一ドメイン抗体(sdAb)及びその機能性フラグメントまたはそれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項10に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
前記抗原結合ドメインは、メソテリン、FAP、Claudin18.2、CLL1、CD19、GPC3、WT1、EGFR、BCMA、CD7、NKG2D-リガンド、CD19、B7H3、ALPPL2、CD123、CD171、CD179a、CD20、CD213A2、CD22、CD24、CD246、CD272、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD46、CD71、CD97、CEA、CLDN6、CLECL1、CS-1、EGFR、EGFRvIII、ELF2M、EpCAM、EphA2、FLT3、GD2、GD3、GM3、GPRC5D、HER2(ERBB2)、IGLL1、IL 11Ra、IL13Ra2、CD 117、MUC1、NCAM、PAP、PDGFR-b、PRSS21、PSCA、PSMA、ROR1、SIRPa、SSEA-4、TAG72、TEM1/CD248、TEM7R、TSHR、VEGFR2、ALPI、cMet、及びAxlからなる選択される腫瘍抗原に特異的に結合することを特徴とする、請求項4~11のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項13】
前記受容体調節ドメインの膜貫通領域がγ-セクレターゼ切断部位を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項14】
前記細胞内ドメインが、転写因子、部位特異的ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、抑制性免疫受容体、活性化免疫受容体、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項15】
前記転写因子が、Gal4-VP16、Gal4-VP64、tetR-VP64、ZFHD1-VP64、Gal4-KRAB、HAP1-VP16、またはそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項14に記載のキメラポリペプチド。
【請求項16】
追加のタンパク質加水分解性切断部位、シグナル配列、検出可能なラベル、腫瘍特異的切断部位、疾患特異的切断部位、及びそれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項17】
前記受容体調節ドメインの細胞外領域が、配列番号1、3、5、7、9、及び11のいずれか1つと少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項18】
前記STSが、配列番号22、23、24、25、及び26のいずれか1つと少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項19】
前記受容体調節ドメインの膜貫通領域が、配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、102、 103、及び104のいずれか1つと少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項20】
前記受容体調節ドメインが、配列番号28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41または85のいずれか1つと少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項21】
前記キメラポリペプチドが、配列番号50、51、52、53、54、55、56、57、61、73、87、105、106、108または110のいずれか1つと少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、核酸分子。
【請求項23】
前記核酸分子が発現カセットまたは発現ベクター内に構築されることを特徴とする、請求項22に記載の核酸分子。
【請求項24】
前記発現ベクターがウイルスベクターまたはトランスポゾンベクターを含むことを特徴とする、請求項23に記載の核酸分子。
【請求項25】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターであることを特徴とする、請求項24に記載の核酸分子。
【請求項26】
請求項1~21のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド及び/または請求項22~25のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、操作された細胞。
【請求項27】
前記操作された細胞が、免疫細胞、ニューロン、上皮細胞、内皮細胞または幹細胞であることを特徴とする、請求項26に記載の操作された細胞。
【請求項28】
前記免疫細胞が、B細胞、単球、ナチュラルキラー細胞、好塩基球、好酸球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、制御性T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、その他のT細胞、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項27に記載の操作された細胞。
【請求項29】
前記キメラポリペプチドの細胞内ドメインに作動可能に連結された外来遺伝子をコードする発現カセットをさらに含み、前記キメラポリペプチドの細胞内ドメインが前記外来遺伝子の発現を調節することを特徴とする、請求項26~28のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項30】
前記外来遺伝子が、GAL-4、tetR、ZFHD1、HNF1A、またはHAP1によって調節されるプロモーターの調節下で発現されることを特徴とする、請求項29に記載の操作された細胞。
【請求項31】
前記外因性遺伝子発現産物が、非コードRNA、サイトカイン、サイトトキシン、ケモカイン、免疫調節因子、アポトーシス促進因子、抗アポトーシス因子、ホルモン、分化因子、脱分化因子、修飾TCR、CAR、レポーター遺伝子、またはそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項29または30に記載の操作された細胞。
【請求項32】
前記キメラポリペプチドの結合ドメインが第1の標的分子に特異的に結合し、前記外因性遺伝子発現産物がCARであり、前記CARが前記第1の標的分子とは異なる第2の標的分子に特異的に結合し、前記第1の標的分子及び前記第2の標的分子がそれぞれ、メソテリン、FAP、Claudin18.2、CLL1、CD19、GPC3、WT1、EGFR、BCMA、CD7、NKG2D-リガンド、MOG、CD19、B7H3、ALPPL2、CD123、CD171、CD179a、CD20、CD213A2、CD22、CD24、CD246、CD272、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD46、CD71、CD97、CEA、CLDN6、CLECL1、CS-1、EGFR、EGFRvIII、ELF2M、EpCAM、EphA2、Ephrin B2、FAP、FLT3、GD2、GD3、GM3、GPRC5D、HER2(ERBB2)、IGLL1、IL 11Ra、IL13Ra2、CD 117、MUC1、NCAM、PAP、PDGFR-b、PRSS21、PSCA、PSMA、ROR1、SIRPa、SSEA-4、TAG72、TEM1/CD248、TEM7R、TSHR、VEGFR2、ALPI、cMet、及びAxlからなる群から選択されることを特徴とする、請求項31に記載の操作された細胞。
【請求項33】
前記第1の標的分子及び前記第2の標的分子がそれぞれ、ASGR1とGPC3、EGFRvIIIとIL13Ra2、EGFRvIIIとB7H3、メソテリとClaudin18.2、Claudin18.2とメソテリ、FAPとClaudin18.2、CLL1とNKG2D、CD123とNKG2Dの組み合わせのいずれかから選択されることを特徴とする、請求項32に記載の操作された細胞。
【請求項34】
前記キメラポリペプチド及びCARがそれぞれ、配列番号61及び62に示される配列、または配列番号61及び64に示される配列、または配列番号61及び65に示される配列、または配列番号61及び66に示される配列、または配列番号105及び67に示される配列、または配列番号106及び67に示される配列、または配列番号108及び107に示される配列、または配列番号73及び109に示される配列、または配列番号50及び109に示される配列を含むことを特徴とする、請求項32に記載の操作された細胞。
【請求項35】
前記サイトカインが、IL-2、IL-7、IL-9、IL-12、IL-15、IL-18、CCL21、または上記のサイトカインの組み合わせであることを特徴とする、請求項31に記載の操作された細胞。
【請求項36】
前記操作された細胞が、配列番号59、63、68、69、70、71、72、74、88のいずれか1つと少なくとも80%の配列相同性を有する核酸配列またはその翻訳されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項31に記載の操作された細胞。
【請求項37】
薬学的に許容される担体を含み、請求項22~25のいずれか一項に記載の核酸分子及び/または請求項26~36のいずれか一項に記載の操作された細胞をさらに含む、医薬組成物。
【請求項38】
a)請求項26~36のいずれか一項に記載の操作された細胞を提供することと、
b)前記操作された細胞を標的分子と接触させることとを含む、前記操作された細胞の活性を調節する方法であって、
前記標的分子と前記操作された細胞上のキメラポリペプチドの結合ドメインとの結合が、前記キメラポリペプチドのタンパク質加水分解切断部位の切断を誘導し、前記キメラポリペプチドの細胞内ドメイン内の転写因子を放出し、前記操作された細胞の活性を調節することを特徴とする、前記方法。
【請求項39】
前記操作された細胞活性が、細胞増殖、細胞アポトーシス、細胞の非アポトーシス死、細胞分化、細胞脱分化、細胞遊走、細胞接着及び/または細胞溶解活性のいずれかから選択されることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記転写因子が外因性遺伝子の発現を調節し、前記外因性遺伝子が、ケモカイン、ケモカイン受容体、キメラ抗原受容体、サイトカイン、サイトカイン受容体、分化因子、増殖因子、増殖因子受容体、ホルモン、代謝酵素、病原体由来タンパク質、増殖誘導物質、受容体、RNA誘導性ヌクレアーゼ、部位特異的ヌクレアーゼ、T細胞受容体、毒素、毒素由来タンパク質、転写調節因子、転写活性化因子、転写抑制因子、翻訳調節因子、翻訳活性化因子、翻訳阻害因子、活性化免疫受容体、抗体、アポトーシス阻害因子、アポトーシス誘導因子、修飾T細胞受容体、免疫活性化因子、免疫抑制剤、及び抑制性免疫受容体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
放出された前記転写因子が、前記操作された細胞の分化を調節し、前記操作された細胞が、免疫細胞、幹細胞、始原細胞または前駆細胞であることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
腫瘍を治療する方法であることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
請求項26~36のいずれか一項に記載の操作された細胞を標的分子と接触させることを含む、前記操作された細胞を活性化する方法であって、
前記キメラポリペプチドを含む結合ドメインが、第1の標的分子に特異的に結合する抗体を含み、前記接触により前記キメラポリペプチドが前記キメラポリペプチドの細胞内ドメイン内の転写因子を放出してタンパク質を活性化し、前記操作された細胞におけるCAR及び/または修飾TCRの発現を調節し、前記CAR及び/または修飾TCRが、第1の標的分子とは異なる第2の標的分子に特異的に結合した後に前記操作された細胞を活性化することを特徴とする、前記方法。
【請求項44】
前記第1の標的分子及び前記第2の標的分子が異なる腫瘍抗原であるか、または前記第1の標的分子が組織特異的分子であり、前記第2の標的分子が腫瘍抗原であることを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
治療有効量の請求項26~36のいずれか一項に記載の操作された細胞を受験者に投与することを含む、前記受験者における標的細胞の活性を阻害する方法であって、前記操作された細胞が、前記受験者における標的細胞の活性を阻害することを特徴とする、前記方法。
【請求項46】
前記標的細胞が腫瘍細胞であることを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記標的細胞が、急性骨髄腫白血病細胞、未分化リンパ腫細胞、星状細胞腫細胞、B細胞がん細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞、上衣腫細胞、食道癌細胞、神経膠芽腫細胞、神経膠腫細胞、平滑筋肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、肝癌細胞、肺癌細胞、マントル細胞リンパ腫細胞、黒色腫細胞、神経芽腫細胞、非小細胞肺癌細胞、希突起膠腫細胞、卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、末梢T細胞リンパ腫細胞、腎臓癌細胞、肉腫細胞、胃癌細胞、肝臓癌細胞、中皮腫細胞または肉腫細胞であることを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記標的細胞が低レベルの標的分子を発現し、前記キメラポリペプチドの結合ドメインが前記標的分子に特異的に結合することを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記操作された細胞は、前記キメラポリペプチドが標的分子に結合することによって転写を開始させて活性化されるCAR、修飾TCR、外因性サイトカイン、及び/または治療用モノクローナル抗体をさらに含むことを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記標的分子が第1の標的分子及び第2の標的分子を含み、前記キメラポリペプチドが前記第1の標的分子に特異的に結合し、前記CAR及び/または修飾TCRが前記第2の標的分子に特異的に結合し、前記標的細胞内の第1の標的分子及び第2の標的分子が不均一性腫瘍抗原を発現するか、または前記第1の標的分子が組織特異的分子であり、前記第2の標的分子が腫瘍抗原であることを特徴とする、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記標的細胞における前記第1の標的分子の陽性率が、前記標的細胞における前記第2の標的分子の陽性率よりも低いことを特徴とする、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記操作された細胞の抗腫瘍特異性をさらに高めることができることを特徴とする、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
a)請求項1~21のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド;
b)請求項22~25のいずれか一項に記載の核酸分子;
c)請求項26~36のいずれか一項に記載の細胞;及び
d)請求項37に記載の医薬組成物
の1つ以上を含むことを特徴とする、細胞活性を調節し、標的細胞を阻害し、もしくは必要とする受験者の健康状態を治療するためのシステムまたは薬箱またはキット。
【請求項54】
腫瘍の治療における、
a)請求項1~21のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド;
b)請求項22~25のいずれか一項に記載の核酸分子;
c)請求項26~36のいずれか一項に記載の細胞;及び
d)請求項37に記載の組成物
の1つ以上の使用。
【請求項55】
前記腫瘍が、固形腫瘍、血液腫瘍、軟組織腫瘍、または転移性病変であることを特徴とする、請求項54に記載の使用。
【請求項56】
健康状態を治療するための医薬品の製造における、請求項1~21のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド;請求項22~25のいずれか一項に記載の核酸分子;請求項26~36のいずれか一項に記載の細胞;請求項37に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【優先権情報】
【0001】
本出願は、2021年6月29日に提出された中国特許出願CN202110730083.X、2021年9月9日に提出された中国特許出願CN202111056553.5、2022年1月29日に提出された中国特許出願CN202210111505.Xの優先権を要求し、それらの全内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【配列表の同時提出】
【0002】
以下のASCIIテキストフォーマットのコンピューター可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:FF00617PCT-sequence listing-20220629-yzg.txt、日付:2022年06月29日、サイズ:232KB)は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0003】
本出願は、細胞の生理活性を調節することができるキメラポリペプチド、及びキメラポリペプチドを発現する細胞に関する。
【背景技術】
【0004】
インビトロで細胞の遺伝子発現や細胞分化などの生理活性を制御する方法は数多くあるが、インビボで細胞の空間特異的な制御をどのように達成するかは依然として技術的に困難である。例えば、一部の免疫細胞は、抗腫瘍分子(CAR、サイトカインなど)を外因的に発現すると、細胞を活性化し、強力な抗腫瘍効果を発揮することができる一方、オフターゲット毒性の潜在的なリスクや細胞の長期活性化による機能障害ももたらされる。
【0005】
現在、Notch受容体の第一世代合成誘導体であるsynNotchが存在しており、これはリガンド結合ドメイン、Notchコア調節領域、及び細胞内シグナル伝達領域で構成されている。その原理は、天然型Notch分子が標的分子(リガンド)に結合した後に細胞外及び細胞内で剪断が発生する特徴を利用して、天然型Notch分子の細胞内領域を人工シグナル伝達分子(特異的転写因子など)で置き換えることであり、これによって、リガンド依存的な遺伝子発現制御は基本的に実現される。
【0006】
しかし、この技術には依然として多くの問題があり、synNotchにはバックグラウンド漏洩があり、つまりリガンド活性化がない状態でも弱い遺伝子発現が存在すること;synNotch誘導遺伝子発現レベルが低いこと;synNotchの配列が長く、分子が大きいため、細胞工学による改変が困難である。
【発明の開示】
【0007】
本出願は、以下の態様に係る。
【0008】
a)標的分子に特異的に結合可能な結合ペプチドと、
b)1つ以上の切断部位を含む受容体調節ドメインと、
c)細胞内ドメインと
を含むキメラポリペプチドであって、
前記受容体調節ドメインが、細胞外領域及び膜貫通領域を含み、前記細胞外領域及び前記膜貫通領域が同時にNotchタンパク質に由来するものではなく、
前記結合ペプチドと前記標的分子との結合が、前記受容体調節ドメインの切断を誘導することができ、それによって前記細胞内ドメインが放出される、キメラポリペプチド。
【0009】
一実施形態では、前記キメラポリペプチドは、前記切断部位が酵素加水分解部位、好ましくはプロテアーゼ加水分解部位であることを特徴とする。
【0010】
一実施形態では、前記キメラポリペプチドは、前記受容体調節ドメインの膜貫通領域に切断部位が含まれており、前記結合ペプチドが前記標的分子に結合すると、細胞内ドメインの切断及び放出が引き起こされることを特徴とする。
【0011】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、前記膜貫通領域がI-CLiP(膜内切断プロテアーゼ(intramembranously cleaving proteases))酵素切断部位を含むことを特徴とし、好ましくは、前記I-CLiPがγ-セクレターゼ切断部位を含み、より好ましくは、前記γ-セクレターゼ切断部位が、Gly-Valジペプチド配列のγ-セクレターゼ切断部位を含む。
【0012】
一実施形態では、キメラポリペプチドの受容体調節ドメインの細胞外領域は切断部位を含み、標的分子に特異的に結合する前記ペプチドが前記標的分子に結合すると、前記細胞外領域の切断が引き起こされ、さらに細胞内ドメインの切断及び放出が引き起こされる。
【0013】
一実施形態では、キメラポリペプチドの細胞外領域の切断部位は、シェダーゼ(sheddase)プロテアーゼ切断部位であり、好ましくは、前記シェダーゼプロテアーゼは、BACE1、ADAM8、ADAM9、ADAM10、ADAM12、ADAM17、MT1-MMPから選択される。
【0014】
一実施形態では、キメラポリペプチドの細胞外領域は、Jagged2、EphrinB2、APLP1、APLP2、APP、CD44、CSF1R、CXCL16、CX3CL1、Delta1、E-cadherin、EphB2、EphrinB1、成長ホルモン受容体、HLA-A2、IFNaR2、IL1R2、L1、LRP、LRP2、LRP6、N-cadherin、ネクチン1α、NRADD、p75-NTR、Pcdh α4、Pcdh γ-C3、PTPκ、PTP-LAR、SorCS1b、SorLA、ソルチリン、ApoER2、PKHD1、ErbB4、IFNaR2、VEGF-R1、またはVLDLRの細胞外ドメイン、または上記タンパク質のいずれかの細胞外領域の断片、または上記タンパク質のいずれかの細胞外領域の変異体に由来する。
【0015】
一実施形態では、キメラポリペプチドの細胞外領域は、Jagged2の細胞外領域もしくはEphrinB2の細胞外領域を含むか、またはJagged2の細胞外領域の断片もしくはEphrinB2の細胞外領域の断片を含む。
【0016】
一実施形態では、キメラポリペプチドの細胞外領域は、配列番号1、3、5、7、9、及び11のいずれか1つと少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0017】
一実施形態では、キメラポリペプチドの細胞内ドメインは、以下のタンパク質:
転写活性化タンパク質;転写抑制タンパク質;転写補助活性化タンパク質;転写補助抑制タンパク質;DNA結合ポリペプチド;RNA結合ポリペプチド;翻訳調節ポリペプチド;ホルモン;サイトカイン;毒素;抗体;クロマチン調節因子;自殺タンパク質(suicide protein);オルガネラ特異的ポリペプチド(例えば、核孔調節因子、ミトコンドリア調節因子、小胞体調節因子など);アポトーシス促進ポリペプチド;抗アポトーシスポリペプチド;他のメカニズムを通じて細胞死を促進するその他のポリペプチド;増殖促進ポリペプチド;抗増殖ポリペプチド;免疫共刺激ポリペプチド;部位特異的ヌクレアーゼ;リコンビナーゼ;抑制性免疫受容体;活性化免疫受容体;Cas9及びRNA標的ヌクレアーゼの変異体;DNA認識ポリペプチド;シグナル伝達ポリペプチド;受容体チロシンキナーゼ;非受容体チロシンキナーゼ;分化を促進するポリペプチド
のいずれかから選択されるタンパク質断片を含み、
好ましくは、前記細胞内ドメインは、転写活性化タンパク質、転写抑制タンパク質、部位特異的ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、抑制性免疫受容体、及び活性化免疫受容体からなるタンパク質のいずれかから選択されるタンパク質断片を含む。
【0018】
一実施形態では、転写活性化タンパク質は、GLA4-VP64またはその断片であり、好ましくは、前記転写活性化タンパク質は、配列番号27に示される配列を含む。
【0019】
一実施形態では、前記キメラポリペプチドの細胞内ドメインは部位特異的ヌクレアーゼであり、好ましくは、前記部位特異的ヌクレアーゼはCas9ポリペプチドである。
【0020】
一実施形態では、前記キメラタンパク質の受容体調節ドメインは、配列番号28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41または85のいずれか1つと少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0021】
一実施形態では、前記結合ペプチドは、抗体、抗原、リガンド、受容体、細胞接着分子、または非抗体分子足場である。
【0022】
一実施形態では、前記結合ペプチドは抗体であり、前記抗体は、単一ドメイン抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、ミニ抗体である。
【0023】
一実施形態では、前記非抗体分子足場は、アビマー、DARPin、アドネクチン、アビマー、親和体、アンチカリン、またはアフィリンである。
【0024】
一実施形態では、前記標的分子は、ヒト病理学的組織及び/またはヒト正常組織におけるリガンドに存在する。
【0025】
一実施形態では、前記病理学的組織は、腫瘍組織、感染症組織、または遺伝子変異組織である。
【0026】
一実施形態では、前記腫瘍組織は、腫瘍細胞、腫瘍細胞を含む器官、及び腫瘍微小環境を含む。
【0027】
一実施形態では、前記標的分子は、特定のヒト病理学的組織及び/またはヒト正常組織において特異的に発現されるか、または高度に発現される。
【0028】
一実施形態では、前記膜貫通領域は、notchからの膜貫通領域であり、好ましくは、前記膜貫通領域は、配列13、14、15、16、17、18、19、20、21、102、103、104に示されるか、または、配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、102、103、104のいずれか1つと少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0029】
一実施形態では、前記受容体調節ドメインは50~300個のアミノ酸を有する。
【0030】
一実施形態では、前記受容体調節ドメインと前記認識ドメインとの間に接続ペプチドが含まれる。
【0031】
一実施形態では、前記キメラポリペプチドは、N末端からC末端まで、結合ペプチド、受容体調節ドメイン、及び細胞内ドメインを含む。
【0032】
本出願はまた、上記のキメラポリペプチドを発現する細胞にも関する。
【0033】
一実施形態では、前記細胞は免疫エフェクター細胞である。
【0034】
一実施形態では、前記細胞は、T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、CIK細胞、及び幹細胞由来の免疫エフェクター細胞である。
【0035】
一実施形態では、前記細胞は、別のキメラポリペプチドまたはT細胞受容体を発現する核酸も含む。
【0036】
一実施形態では、前記別のキメラポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラT細胞受容体、またはT細胞抗原カプラー(TAC)である。
【0037】
一実施形態では、前記キメラポリペプチドの細胞内ドメインが放出された後、別のキメラポリペプチドまたはT細胞受容体の発現を活性化することができる。
【0038】
本出願は、本出願の細胞を調製するために使用される核酸、発現ベクター、及びウイルスに関する。
【0039】
一実施形態では、前記核酸は発現ベクター内に構築される。
【0040】
本出願は、細胞を活性化する方法に関し、この方法は、
上述の本出願の細胞を固定化抗原と接触させることを含み、前記キメラポリペプチドを含む前記結合ペプチドが、第1の抗原に特異的な抗体を含み、前記接触により前記キメラポリペプチドに含まれる前記転写活性化タンパク質が放出され、前記細胞における前記CAR及び/またはTCRの発現を調節し、前記CAR及び/またはTCRが、第2の抗原に結合した後に前記細胞の活性化をもたらす。
【0041】
一実施形態では、前記第1の抗原及び/または第2の抗原には抗原発現の不均一性が存在する。
【0042】
一実施形態では、前記第1の抗原及び/または第2の抗原は腫瘍抗原である。
【0043】
一実施形態では、前記方法は、第1の抗原の不均一な発現を伴う腫瘍を治療するために使用される。
【0044】
本出願は、細胞を活性化する方法に関し、この方法は、
上述の本出願の細胞を前記標的分子と接触させることを含み、前記キメラポリペプチドを含む前記結合ペプチドが、第1の標的分子に特異的な抗体を含み、前記接触により前記キメラポリペプチドに含まれる前記転写活性化タンパク質が放出され、前記細胞における前記CAR及び/またはTCRの発現を調節し、前記CAR及び/またはTCRが、第2の標的分子に結合した後に前記細胞の活性化をもたらす。
【0045】
一実施形態では、前記第1の標的分子及び/または前記第2の標的分子には発現の不均一性が存在する。
【0046】
一実施形態では、前記第1の標的分子及び/または第2の標的分子は腫瘍抗原である。
【0047】
一実施形態では、前記方法は、前記第1の標的分子の不均一な発現を伴う腫瘍を治療するために使用される。
【0048】
一実施形態では、前記標的分子は不溶性分子である。
【0049】
一実施形態では、前記第1の標的分子は、細胞膜表面抗原を含む。
【0050】
一実施形態では、前記細胞は、T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、CIK細胞、幹細胞由来の免疫エフェクター細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0051】
本出願は、サイトカインIL-12の分泌を調節する方法に関し、この方法は、
一実施形態では、本出願の細胞を固定化抗原と接触させることを含み、前記キメラポリペプチドを含む前記結合ペプチドが、抗原に特異的な抗体を含み、前記接触により前記キメラポリペプチドに含まれる前記転写活性化タンパク質が放出され、前記細胞における前記IL-12の発現を調節する。
【0052】
一実施形態では、前記細胞はT細胞である。
【0053】
一実施形態では、前記抗原は腫瘍抗原を含む。
【0054】
本出願は、サイトカインIL-12、IL-7、CCL21またはそれらの組み合わせの分泌を調節する方法に関し、この方法は、
本出願の細胞を前記標的分子と接触させることを含み、前記キメラポリペプチドを含む前記結合ペプチドが、前記標的分子に特異的な抗体を含み、前記接触により前記キメラポリペプチドに含まれる前記転写活性化タンパク質が放出され、前記細胞における前記IL-12、IL-7、CCL21またはそれらの組み合わせの発現を調節する。
【0055】
一実施形態では、前記細胞は、T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、CIK細胞、幹細胞由来の免疫エフェクター細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0056】
一実施形態では、前記標的分子は腫瘍抗原を含む。
【0057】
一実施形態では、前記標的分子は不溶性分子である。
【0058】
一実施形態では、前記標的分子は、細胞膜表面抗原を含む。
【0059】
本出願の範囲内で、本出願の上述の技術的特徴及び以下(実施例など)に具体的に説明される技術的特徴を互いに組み合わせて、新しいまたは好ましい技術案を形成することができることを理解されたい。紙面の都合上、ここでは一々説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1A及び1Bは、それぞれGPC3発現肝癌細胞と共インキュベートした後、GPC3を標的とするsynJagged2EC、synEphrinB2EC、及びsynEphrinB2EC-APLP2(TM)が、synNotchと同等またはsynNotchより有意に高いBFP発現レベルを誘導することを示す図である。
図2】synNotch、synEphrinB2ECを発現するキメラポリペプチドが、コーティングされた抗原と共インキュベートした後に転写活性を引き起こし得ることを示す図である。
図3】全長EphrinB2細胞外領域またはその切断体を含む、GPC3を標的とするキメラポリペプチドが遺伝子発現を調節することを示す図である。
図4】抗原濃度が低い場合(0.78125μg/mL以下)、キメラポリペプチドを含む細胞は静止したままであり、高濃度の抗原によって刺激されると(0.3125μg/mL以上)、キメラポリペプチドを含む細胞は活性化されることを示す図である。
図5】GPC3発現肝臓癌細胞と共インキュベートした後、synJagged2EC及びsynEphrinB2ECが、synNotchと比較して同等または増加したIL12の発現を誘導することを示す図である。
図6】異なる肝癌細胞のGPC3発現レベルを示す図である。
図7】単一ベクター系がsynEphrinB2EC及びsynEphrinB2EC-APLP2(TM)をsynNotchよりも高いレベルで発現することを示す図である。
図8】synEphrinB2ECまたはsynEphrinB2EC-APLP2(TM)が、GPC3低発現細胞とのインキュベーション後にsynNotchよりも高い転写を誘導することを示す図である。
図9】GPC3低発現細胞とのインキュベーション後、synEphrinB2EC-del3の誘導発現レベルが低い一方、GPC3高発現細胞とのインキュベーション後、その誘導発現レベルがsynNotchに相当することを示す図である。
図10】IL12発現を調節するsynEphrinB2ECが、GPC3-CAR-T細胞と相乗的な抗腫瘍効果を発揮することを示す図である。
図11】それぞれEGFRvIII発現神経膠腫細胞U87MG-EGFRvIII及びU251-EGFRvIIIと共インキュベートした後、腫瘍抗原EGFRvIIIを標的とするsynEphrinB2ECを発現する細胞が、synNotchキメラポリペプチドを発現する細胞と同様のレベルでBFP発現を誘導するが、synNotchキメラポリペプチドを発現する細胞には、抗原非依存性の活性化があることを示す図である。
図12】ヒト初代T細胞を、腫瘍抗原EGFRvIIIを標的とするsynEphrinB2EC-CAR及びsynNotch-CAR T発現細胞に調製した後、synEphrinB2ECの陽性率及び発現レベルがsynNotchよりも高いことを示す図である。
図13】抗原刺激の非存在下では、synEphrinB2EC-CAR-T細胞がCARを発現せず、自発的CARシグナルを有さないことを示す図である。
図14】抗原刺激の非存在下では、synEphrinB2EC-CAR-T細胞が低活性化及び低分化状態にあることを示す図である。
図15】抗原刺激の非存在下では、synEphrinB2EC-CAR-T細胞が低枯渇状態にあることを示す図である。
図16】腫瘍抗原EGFRvIIIを標的とするsynEphrinB2EC-CAR-T発現細胞は、EGFRvIIIによって活性化され、IL13Ra2陽性神経膠腫細胞を死滅させることができ、synNotch-CAR T細胞と比較して、synEphrinB2EC-CAR-T細胞は、抗原発現の不均一性が強い腫瘍を死滅させるときにより効果的であることを示す図である。
図17】EGFRvIII-synEphrinB2ECを発現するIL13Ra2-CAR-Tのインビボ抗腫瘍効果を示す図である。
図18】ヒトB7H3のみを認識する376.96-28Z-T細胞は有意な抗腫瘍効果を有するが、ヒト及びマウスB7H3を認識するB7H3-28Z-T及びB7H3-BBZ-Tの有効性が低いことを示す図である。特異性の低いB7H3-28ZをEGFRvIII-synEphrinB2ECの制御下に置くことで、その特異的な殺傷効果を向上させることができる。
図19】メソテリン-synEphrinB2ECを発現する第二世代及び第四世代のClaudin18.2-CAR-T細胞の両方が、抗原によって特異的に活性化され、腫瘍細胞を殺傷することができることを示す図である。
図20】メソテリン-synEphrinB2ECを発現する第二世代及び第四世代のClaudin18.2-CAR-T細胞の両方が、抗原によって特異的に活性化され、腫瘍細胞を殺傷することができることを示す図である。
図21】FAP-synEphrinB2ECを発現するClaudin18.2-CAR-T細胞が抗腫瘍性であり、マウスの体重が有意に減少しないことを示す図である。
図22図22A及び図22Bは、Claudin18.2-synEphrinB2ECを含むメソテリン-CAR-T細胞が抗原によって特異的に活性化され、腫瘍細胞を殺傷することができることを示す図である。
図23図23Aは、AML細胞のCLL1及びNKG2Dの発現レベルを示す図であり、図23Bは、CLL1を標的とするキメラポリペプチドの結合によって誘発される転写活性を示す図である。
図24】NKG2D-CAR-T細胞が、NKG2Dリガンドを発現するTHP1及びHL-60細胞を殺傷し、CLL1-synEphrinB2ECによって誘導されたCD3Z-NKG2D-CAR-T細胞が、CLL1発現が低いTHP-1細胞に対する殺傷効果が弱く、CLL1とNKG2Dリガンドの両方の発現が高いHL-60細胞のみを殺傷することができることを示す図である。
図25】CLL1-synEphrinB2ECによって調節されたNKG2D-CARを含むT細胞がよく増殖したことを示す図である。
図26】CLL1-synEphrinB2ECによって調節されたNKG2D-CARを含むT細胞の死亡率がUTDの死亡率と基本的に同じである一方、NKG2D-CAR-T細胞の死亡率が有意に増加しており、CLL1-synEphrinB2ECによって調節されたNKG2D-CARを含むT細胞が、培養系におけるT細胞の増殖と活性を効果的に確保できることを示す図である。
【発明の詳細】
【0061】
本出願は、新しいタイプのキメラポリペプチドが、標的分子(リガンド、標的抗原としても知られる)への特異的結合によって引き起こされる転写調節活性を有することを発見した。前記キメラポリペプチドの受容体調節ドメインの細胞外領域及び膜貫通領域は同時にNotchに由来するものではなく、膜貫通領域には1つ以上の切断部位が含まれる。本出願のキメラポリペプチドが有する、標的分子(リガンド、標的抗原としても知られる)への特異的結合によって引き起こされる転写調節活性は、synNotchが有する標的分子(リガンド、標的抗原としても知られる)への特異的結合によって引き起こされる転写調節活性と同等するか、またはsynNotch活性より高い。本出願は、結合誘発型転写スイッチを有するキメラポリペプチド、キメラポリペプチドをコードする核酸、及び核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞を提供する。本出願は、結合誘発型転写調節活性を有するキメラポリペプチドをコードする核酸を含むトランスジェニック生物を提供する。また、結合誘発型転写調節活性を有する1つ以上のキメラポリペプチドを使用して細胞の活性を局所的に調節する方法、及び結合誘発型転写調節活性を有する1つ以上のキメラポリペプチドを使用する局在化細胞活性化システムも提供する。
【0062】
本出願によって提供されるキメラポリペプチドは、N末端からC末端まで:(a)標的分子に特異的に結合できる結合ドメイン、(b)1つ以上の切断部位を含む受容体調節ドメイン、及びc)細胞内ドメインを含み、前記受容体調節ドメインの細胞外領域及び膜貫通領域がNotch受容体ポリペプチドとは異なり、前記結合ドメインと前記標的分子との結合が、前記受容体調節ドメインの切断を誘導することができ、それによって前記細胞内ドメインが放出される。
【0063】
例示的には、本出願は、キメラポリペプチドsynJagged2EC、synEphrinB2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM)、及び本出願のキメラポリペプチドをコードする核酸、ならびに核酸で遺伝子修飾された宿主細胞を提供する。本出願は、キメラポリペプチドsynJagged2EC、synEphrinB2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM)をコードする核酸を含むトランスジェニック生物を提供する。
【0064】
本出願で設計されたキメラポリペプチド(例えば、synJagged2EC、synEphrinB2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM)など)を発現する操作された細胞は、腫瘍抗原(例えば、GPC3、EGFRvIII、メソテリン、FAP、Claudin18.2、CLL1、CD123など)を発現する腫瘍細胞に結合すると、転写調節活性を引き起こすことができる。一例では、転写はBFP発現、サイトカインIL12またはCARの発現を調節する。一例では、synEphrinB2EC、synJagged2EC、またはsynEphrinB2EC-APLP2(TM)を発現する細胞は、synNotchキメラポリペプチドを発現する細胞の発現レベルに近い、またはそれよりも有意に高いレベルでBFP、IL12、及びCARの発現を誘導する。
【0065】
IL12などの炎症促進性サイトカインは、T細胞腫瘍免疫を促進する強力な機能を持つことが証明されているが、有毒な副作用が発生する可能性があるため、臨床応用のリスクが高くなる。本出願で提供されるキメラポリペプチドを使用して腫瘍部位における炎症促進性サイトカインの特異的な発現を調節することにより、副作用の問題を効果的に解決することができる。特定の実施形態では、synEphrinB2EC、synJagged2EC、またはsynEphrinB2EC-APLP2(TM)を発現する細胞は、synNotchキメラポリペプチドを発現する細胞のレベルに近い、またはそれよりも有意に高いレベルでIL12発現を誘導する。特定の実施形態では、synEphrinB2ECは、低レベルで発現される標的分子(リガンド、標的抗原としても知られる)に対してより感受性が高く、遺伝子発現を誘導する能力がより強い。例示的には、低レベルで発現する腫瘍抗原に特異的に結合した後、synEphrinB2ECのIL12発現を誘導する能力は、synNotchよりも有意に高く、約4~6倍にも達する。例示的には、腫瘍抗原EGFRvIIIにより活性化されるsynEphrinB2ECによって誘導されるBFPのレベルはsynNotchのレベルに相当するが、synNotchは腫瘍抗原EGFRvIIIのないU87またはU251細胞との共インキュベーション後にも非特異的に活性化される。これは、キメラポリペプチドsynEphrinB2ECは、強力な遺伝子誘導能を有するだけでなく、抗原特異性が高く、安全性も高いことを示唆している。
【0066】
本出願で提供されるキメラポリペプチドは、可溶性抗原によって活性化されない。例示的には、可溶性抗原は、synEphrinB2EC、synJagged2EC、またはsynEphrinB2EC-APLP2(TM)キメラポリペプチドを発現する細胞を活性化することができない。特定の実施形態では、可溶性抗原とは、細胞外環境に溶解して遊離している抗原を指す。
【0067】
本出願で提供されるキメラポリペプチド(例えば、synEphrinB2EC、synJagged2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM)など)の受容体調節ドメインは、synNotchの対応するドメインより短い。発現が調節される遺伝子と同じレンチウイルスベクターに組み込まれた場合、synEphrinB2ECによって調節される遺伝子は、配列長の点でより大きな容量を持つことができる。特定の実施形態では、標的分子(リガンド、標的抗原としても知られる)に特異的に結合する結合ドメイン及び細胞内ドメインを含むキメラポリペプチドsynEphrinB2ECによって最終的に調製されたT細胞の感染陽性率は、synNotchより高く、その約1.5倍であり、工業的な生産と調製の困難さを低下させる。
【0068】
本出願で提供されるキメラポリペプチド(例えば、synEphrinB2EC、synJagged2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM))は、結合によってCAR発現を誘発して調節することにより、抗原発現に不均一または強い抗原不均一性を有する腫瘍に対するCAR-T細胞の抗腫瘍効果を向上させる。例示的には、本出願のキメラポリペプチド(例えば、synEphrinB2EC、synJagged2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM))を発現する細胞は、第1の標的分子(例示的には、腫瘍抗原EGFRvIII)を発現する標的細胞と接触した後、第2の標的分子(例示的には、IL13Ra2)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)の転写調節を誘発することができる。これによって、第1の標的分子が腫瘍微小環境に存在する場合に限り、第2の標的分子を発現する腫瘍細胞の標的殺傷を達成し、CAR-T細胞の腫瘍特異性を高める。それだけでなく、第1の標的分子と第2の標的分子を同時に発現する単一の標的細胞は、標的殺傷を開始するための必要な条件ではないため、本出願は、第2の標的分子を発現する標的細胞が第1の標的分子の発現を失うかまたは低下させることによって、標的細胞がエフェクター細胞の殺傷から逃れる現象を軽減することができる。特定の実施形態では、第1の標的分子の陽性率が低い場合、第1の標的分子を標的とするsynNotchは、CAR-T細胞を活性化して腫瘍細胞を効果的に殺傷することができないが、本出願で提供される第1の標的分子を標的とするsynEphrinB2EC、synJagged2EC、及びsynEphrinB2EC-APLP2(TM)は依然としてCAR-T細胞を活性化して腫瘍細胞を殺傷することができる。
【0069】
本出願により提供される、結合によってCAR発現を誘発して調節するキメラポリペプチド(synEphrinB2EC、synJagged2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM)など)は、標的分子の刺激がない場合にはCARを発現せず、CARリン酸化も生じない。活性化されていない状態では、低レベルのCD25及びCD69発現が維持され、低枯渇状態では、PD1、LAG3、TIM3、及びCD39は低レベルの発現を維持し、分化が不十分な状態では、ほとんどの細胞がTscm細胞である。
【0070】
本出願によって提供される、結合によってCAR発現を誘発して調節するキメラポリペプチドは、CAR-T細胞による標的細胞の殺傷の空間特異的調節を達成し、オフターゲット毒性を低減し、細胞の長期活性化によって引き起こされる機能不全を低減し、非特異的標的分子の活性化を低減し、高効率のウイルスパッケージングにより、工業的調製の困難さを軽減することができる。
【0071】
本出願はまた、そのような受容体、それらをコードする核酸、これらの核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞を産生するための組成物及び方法、ならびに細胞活性を調節するための及び/または様々な健康状態(例えば疾患(例えば腫瘍))を治療するための方法も提供する。
【0072】
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、細胞生物学、細胞培養、遺伝子治療、生化学、微生物学、組換えDNA、免疫学、遺伝学及び分子生物学の分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。これらの技術は文献で詳しく説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology(FrederickM.AUSUBEL,2000,Wileyand sonInc,Library of Congress,USA);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,(Sambrooketal,2001,Cold Spring Harbor,NewYork:Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gaited.,1984);Mullis et al.U.S.Pat.No.4,683,195;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Harries & S.J.Higginseds.1984);Transcription And Translation(B.D.Hames & S.J.Higginseds.1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the series,Methods In ENZYMOLOGY(J.Abelson & M.Simon,eds.-in-chief,Academic Press,Inc.,New York)、特にVols.154、155(Wuetal.eds.)及びVol.185,“Gene Expression Technology”(D.Goeddel,ed.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller & M.P.Caloseds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer & Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Hand book Of Experimental Immunology,Vols.I-IV(D.M.Weir & C.C.Blackwell,eds.,1986)及びManipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)を参照されたい。本明細書に記載のものと類似または同等のすべての方法及び材料は、本出願の実施または試験に使用することができ、適切な方法及び材料が本明細書に記載されている。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含む本明細書に準ずる。さらに、特に明記しない限り、本出願の材料、方法、及び実施例は例示のみを目的とするものであり、限定することを意図したものではない。本出願の内容から、当業者は、本出願の精神及び範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態において多くの変更または改変を行うことができ、依然として同じまたは類似の結果を得ることができることを理解するであろう。本出願の範囲は、本明細書に記載される特定の実施形態(これらは単に本出願の態様の例示として意図されている)に限定されず、機能的に同等の方法及びコンポーネントは本出願の範囲内にある。本出願は、本出願の主題を、さまざまな用途及び条件に応じて加える変形及び修正をカバーする。
【0073】
1.定義:
本明細書で使用される場合、「約」は、具体的な状況に応じて当業者に公知または認識可能であるか、または所定値の最大約±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%、±10%、±11%、±12%、±13%、±14%、±15%、±16%、±17%、±18%、±19%、±20%、±25%、±30%の範囲内の変化を表すことができる。すなわち、「約」で表される範囲は、所定値±1%、所定値±2%、所定値±3%、所定値±4%、所定値±5%、所定値±6%、所定値±7%、所定値±8%、所定値±9%、所定値±10%、所定値±11%、所定値±12%、所定値±13%、所定値±14%、所定値±15%、所定値±16%、所定値±17%、所定値±18%、所定値±19%、所定値±20%、所定値±25%、所定値±30%をカバーする。あるいは、特に生物学的システムまたは方法に関して、この用語は、値の約5倍以内または約2倍以内など、値の一桁内にあることを指してもよい。
【0074】
範囲:範囲形式での説明は、単に便宜及び簡潔にするためのものであり、本出願の範囲に対する不変の制限として解釈されるべきではない。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の値を具体的に開示したように考慮されるべきである。例えば、1から6までの範囲の説明は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などの部分範囲、及び、これらの範囲内の、例えば1、2、3、4、5、6などの特定の数値点を具体的に開示したとみなされるべきである。上記の原則は、記載された値の幅に関係なく同様に適用される。範囲の説明が使用される場合、当該範囲には範囲の端点が含まれる。
【0075】
「受容体」という用語は、細胞膜または細胞内に存在し、標的分子に結合して細胞内の一連の生化学反応を活性化し、細胞が外部の刺激に対して対応する効果を生み出すことができる特殊なタンパク質またはポリペプチドの一種を指す。受容体に結合する標的分子(生理活性物質とも呼ばれる)を総称してリガンド、または標的抗原と呼ぶ。
【0076】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、T細胞を含むがこれに限定されない免疫細胞によって発現され得る操作された分子を指す。CARはT細胞で発現され、キメラ受容体によって決定される特異性でT細胞をリダイレクトして標的細胞の死滅を誘導できる。CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナルドメインを含む。細胞内シグナルドメインは、一次シグナルドメイン及び/または共刺激シグナルドメインを含む。CARの細胞外結合ドメインは、マウスモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、または完全ヒトモノクローナル抗体に由来し得る。CARという用語は、CAR分子に特に限定されるものではなく、CAR変異体も含む。CAR変異体は、CARの細胞外部分(例えば、リガンド結合部分)及び細胞内部分(例えば、細胞内シグナル伝達部分)が2つの別個の分子上に存在する分割CARを含む。CAR変異体はまた、例えば、分割CARの2つの部分の条件的なヘテロ二量体化を薬物によって制御する分割CARなど、条件的に活性化され得るCARであるONスイッチCAR(ON-switch CAR)も含む。CAR変異体は、一次CARの活性を増幅または阻害できる二次CAR結合ドメインを含む二重特異性CARも含む。CAR変異体は、例えば二重特異性CARシステムの成分として使用できる阻害性キメラ抗原受容体(iCAR)も含み、ここで、二次CAR結合ドメインの結合により一次CAR活性化が阻害される。
【0077】
「操作される」という用語は、細胞生物学及び分子生物学の原理と方法を応用して、何らかの工学的手段を通じて細胞全体レベルまたは細胞小器官レベルで細胞内の遺伝物質を変更したり、細胞産物を取得したりすることを指す。操作された細胞は、追加、欠失、及び/または変更された遺伝子を含む細胞を指す場合もある。
【0078】
「細胞」または「操作された細胞」という用語は、ヒトまたは非ヒト動物由来の細胞を指してもよい。
【0079】
「個体」及び「受験者」という用語は置き換えて使用することができ、ヒト、またはヒト、マウス、ラット、ハムスター及びモルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、類人猿、サルを含むがこれらに限定されない他の種の動物を含む。
【0080】
「トランスフェクション」という用語は、真核細胞への外因性核酸の導入を指す。トランスフェクションは、リン酸カルシウム-DNA共沈殿、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染及びバイオリスティックを含む、当技術分野で知られている様々な手段によって達成することができる。
【0081】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」という用語は、一本鎖または二本鎖形態のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)及びそれらのポリマーを指し、目的のポリペプチドまたはその断片をコードする任意の核酸分子を含む。前記核酸分子は、内因性核酸配列との実質的な同一性を維持する必要があるだけであり、内因性核酸配列と100%相同または同一である必要はない。内因性配列との「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、一般に、二本鎖核酸分子の少なくとも1つの鎖にハイブリダイズすることができる。「ハイブリダイゼーション」とは、様々なストリンジェントな条件下で、相補的ポリヌクレオチド配列またはその一部の間で二本鎖分子の対が形成されることを指す。「相同性」または「同一性」という用語は、2つのポリマー分子間の、例えば2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子などの2つの核酸分子間の、または2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の同一性を指す。「実質的な同一性」または「実質的な相同性」という用語は、参照アミノ酸配列または核酸配列と少なくとも約50%の相同性または同一性を示すポリペプチドまたは核酸分子を指す。一例において、そのような配列は、比較としてのアミノ酸配列または核酸配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%の相同性または同一性を有する。配列同一性は、配列解析ソフトウェア(例えば、BLAST、BESTFIT、GAP、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を使用することによって測定することができる。このようなソフトウェアは、さまざまな置換、欠失、及び/またはその他の修飾に相同性の程度を割り当てることによって、同一または類似の配列を照合する。保存的置換には一般に、グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン、リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシンのグループ内の置換が含まれる。同一性の程度を決定する例示的な方法では、BLASTプログラムを使用することができ、ここで、e-3とe-100の間の確率スコアは密接に関連した配列を示す。
【0082】
「単離された」という用語は、天然の状態から変化または除去されたことを意味する。例えば、生きている動物に自然に存在する核酸またはペプチドは「単離された」ものではないが、それと共に自然に存在する物質から部分的または完全に分離されている同じ核酸またはペプチドは「単離された」ものである。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することも、宿主細胞などの非天然環境に存在することもある。
【0083】
「作動可能に連結された」という用語は、所望の様式で作動できるようにする2つ以上の配列(例えば、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列)間の物理的または機能的連結を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結される。通常、作動可能に連結されたDNA配列は連続しており、必要に応じて、同じリーディングフレーム内で2つのタンパク質コード領域を結合する。
【0084】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は置き換えて使用でき、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基からなる化合物を指す。
【0085】
「免疫細胞の活性化」という用語は、免疫応答の開始につながる、シグナル伝達経路によって引き起こされる細胞内タンパク質発現の変化を指す。一例では、CARが抗原に結合した後に形成される免疫シナプスには、結合受容体(例えば、CD4またはCD8、CD3γ/CDδ/CDε/CDζなど)近くの多くの分子の凝集が含まれる。この膜結合シグナル分子の凝集は、CD3分子に含まれるITAMモチーフをリン酸化する。このリン酸化により、T細胞活性化経路が開始され、最終的にNF-κBやAP-1などの転写因子が活性化される。これらの転写因子は、IL-2産生のアップレギュレーション、T細胞増殖の促進など、T細胞の全体的な遺伝子発現を誘導し、それによってT細胞媒介性免疫応答を開始する。「T細胞活性化」または「T細胞が活性化される」ことは、検出可能な細胞増殖、サイトカイン産生、及び/または検出可能なエフェクター機能を誘導するために刺激されたT細胞の状態を指す。一例では、前記免疫細胞は、特定の抗原を含む細胞と共インキュベートした後に活性化されるか、または前記免疫細胞はウイルスに感染した後に活性化される。
【0086】
「抗原」という用語は、腫瘍抗原及び病原体抗原を含むがこれらに限定されない、免疫応答を誘発する分子を指す。任意の腫瘍抗原が、本出願に記載される腫瘍関連実施形態において使用され得る(「実施例」及び「実施形態」は、本明細書において互換的に使用できる)。本出願における腫瘍抗原は、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);CD171;CS-1;C型レクチン様分子-1;ガングリオシドGD3;Tn抗原;CD19;CD20;CD22;CD30;CD70;CD123;CD138;CD33;CD44;CD44v7/8;CD38;CD44v6;B7H3(CD276)、B7H6;KIT(CD117);インターロイキン13受容体サブユニットアルファ(IL-13Rα);インターロイキン11受容体アルファ(IL-11Rα);前立腺幹細胞抗原(PSCA);前立腺特異的膜抗原(PSMA);がん胎児性抗原(CEA);NY-ESO-1;HIV-1 Gag;MART-1;gp100;チロシナーゼ;メソテリン;EpCAM;プロテアーゼセリン21(PRSS21);血管内皮増殖因子受容体、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2);ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体β(PDGFR-β);段階特異的胚性抗原-4(SSEA-4);細胞表面関連ムチン1(MUC1)、MUC6;上皮成長因子受容体ファミリー及びその変異体(EGFR、EGFR2、ERBB3、ERBB4、EGFRvIII);神経細胞接着分子(NCAM);炭酸脱水酵素IX(CAIX);LMP2;EphrinA型受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2-3)bDGalp(1-4)bDGlcp(1-1)Cer;TGS5;高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);o-アセチルGD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体;腫瘍血管内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍血管内皮マーカー7関連(TEM7R);Claudin6、Claudin18.2、Claudin18.1;ASGPR1;CDH16;5T4;8H9;αvβ6インテグリン;B細胞成熟抗原(BCMA);CA9;カッパ軽鎖;CSPG4;EGP2、EGP40;FAP;FAR;FBP;胎児性AchR;HLA-A1、HLA-A2;MAGEA1、MAGE3;KDR;MCSP;NKG2Dリガンド;PSC1;ROR1;Sp17;SURVIVIN;TAG72;TEM1;フィブロネクチン;テネイシン;腫瘍壊死帯のがん胎児性変異体;Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoHグリコセラミドのヘキソース部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY-BR-1);ウロプラキン2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン作動性受容体ベータ3(ADRB3);パネキシン3(PANX3);Gタンパク質共役受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合体遺伝子座K9(LY6K);嗅覚受容体51E2(OR51E2);TCRγ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1);ETS転座変異遺伝子6(ETV6-AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリーメンバー1A(XAGE1);アンジオポエチン結合細胞表面受容体2(Tie2);黒色腫癌精巣抗原-1(MAD-CT-1);黒色腫精巣癌抗原2(MAD-CT-2);Fos関連抗原1;p53変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座ブレークポイント;アポトーシスの黒色腫阻害剤(ML-IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼセリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(NA17);ペアボックスタンパク質Pax-3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;V-myc鳥骨髄細胞腫ウイルスがん遺伝子神経芽腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);シトクロムP450 1B1(CYP1B1);CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORIS);T細胞によって認識される扁平上皮がん抗原3(SART3);ペアボックスタンパク質Pax-5(PAX5);プロアクロシン結合タンパク質sp32(OYTES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4);滑膜肉腫Xブレークポイント2(SSX2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgA受容体のFcフラグメント(FCAR);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);Cタイプレクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(IGLL1)を含むが、これらに限定されない。病原体抗原は、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、または寄生虫の抗原を含むが、これらに限定されない。ウイルス抗原は、サイトメガロウイルス(CMV)抗原、エプスタイン・バーウイルス(EBV)抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、またはインフルエンザウイルス抗原を含むが、これらに限定されない。
【0087】
「抗原結合ドメイン」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫分子の免疫学的に活性な部分を含む、抗原決定基に特異的に結合する分子を指し、すなわち、抗原に特異的に結合する(「免疫反応」)抗原結合部位を含む分子を指す。「抗体」という用語は、完全な抗体分子だけでなく、抗原結合能を保持している抗体分子の断片も含む。「抗体」という用語は、本出願では「免疫グロブリン」及び「抗原ドメイン」という用語と置き換えて使用できる。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、天然抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、直鎖状抗体、一本鎖抗体(scFvなど)、単一ドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。一例では、抗体は、ジスルフィド結合によって連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)で構成される。CHは、CH1、CH2、CH3の3つのドメインで構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)で構成される。CLはひとつの構造ドメインから構成される。VH及びVLは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分できる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシル末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDRと4つのFRで構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の様々な細胞(例えば、免疫細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または因子への結合を媒介する。抗原ドメインは、他の参照抗原(ポリペプチドまたは他の物質を含む)に結合するよりも高い親和性(親和力とも呼ばれる)で抗原に結合する場合、その抗原ドメインは、抗原に「特異的に結合する」、または抗原に対して「免疫反応性がある」。
【0088】
「治療有効量」、「治療有効」、「有効量」、または「有効量で」という用語は、本明細書では互換的に使用可能であり、本明細書に記載の特定の生物学的結果を達成するのに有効な化合物、製剤、物質または組成物、医薬組成物の量、例えば、限定されないが、T細胞応答を促進するのに十分な量または用量を指す。免疫細胞の有効量とは、抗腫瘍活性を増加、強化、または延長できる免疫細胞の数;抗腫瘍免疫細胞の数または活性化免疫細胞の数の増加;IFN-γ分泌、腫瘍退縮、腫瘍縮小、及び腫瘍壊死を促進する免疫細胞の数を指すが、これらに限定されない。
【0089】
本明細書で使用する「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するために必要な細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列として定義される。
【0090】
「内因性」という用語は、核酸分子またはポリペプチドなどが生物自体に由来することを指す。
【0091】
「外因性」という用語は、核酸分子またはポリペプチドが細胞内に内因的に存在しない、または発現レベルが過剰発現された場合の機能を達成するには不十分であることを指し、細胞内で発現される任意の組換え核酸分子またはポリペプチドをカバーし、例えば、外因性、異種性及び過剰発現された核酸分子及びペプチドをカバーする。
【0092】
「認識」という用語は、標的抗原への選択的結合を指す。本出願における外因性受容体を発現する免疫細胞は、前記外因性受容体が特異的に結合する抗原を発現する細胞を認識することができる。
【0093】
「特異的に結合する」という用語は、サンプル中に存在する結合パートナー(例えば、腫瘍抗原)タンパク質を認識して結合するが、サンプル中の他の分子を実質的に認識または結合しない抗体またはリガンドを指す。
【0094】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる組成物である。線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に関するポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むが、これらに限定されない多くのベクターが当技術分野で知られている。したがって、「ベクター」という用語は、自発的に複製するプラスミドまたはウイルスを含み、トランスポゾンベクター、ポリリジン化合物、リポソームなど、細胞への核酸の導入を促進する非プラスミド及び非ウイルス化合物も含む。ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどを含むが、これらに限定されない。
【0095】
「疾患」という用語は、腫瘍(がん)や病原体感染など、細胞、組織、または器官の正常な機能を損傷したり妨害したりするあらゆる状態を指す。難治性がんは、放射線療法に非感受性のがん、放射線療法後の再発のがん、化学療法に非感受性のがん、化学療法後の再発のがん、CAR-T療法に非感受性のがんまたは治療後の再発のがんを含むが、これらに限定されない。
【0096】
「腫瘍」という用語は、細胞または組織の病理学的増殖、及びその後の他の組織または器官へのそれらの転移または浸潤を特徴とする疾患を指す。腫瘍細胞の増殖は通常制御されておらず進行性であり、遊走と接触阻害の喪失を特徴とする。腫瘍は、がんとその前がん病変を含む。腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、またはそれらの転移性病変を含む。
【0097】
「抗原発現の不均一性または抗原の不均一性」という用語は、細胞集団内の細胞が異なる抗原を発現すること、または同じ抗原が細胞集団の一部の細胞でのみ発現されることを意味する。
【0098】
2.キメラポリペプチド
本願のキメラポリペプチドは、標的分子(リガンド、標的抗原としても知られる)依存的に転写活性を調節する受容体である。本出願のキメラポリペプチドは、結合ドメイン、受容体調節ドメイン及び細胞内ドメインを含む、組換え型の非天然受容体である。
【0099】
一例では、キメラポリペプチドが標的分子に結合した後、前記キメラポリペプチドの加水分解が引き起こされて、細胞内ドメインが放出される。一例において、キメラポリペプチドが標的細胞の表面に提示された標的分子(例えば腫瘍抗原)に結合した後、前記キメラポリペプチドの加水分解が引き起こされて細胞内ドメインが放出される。例示的には、キメラポリペプチドが腫瘍細胞の表面上の腫瘍抗原に結合した後、細胞内のカスタム転写プログラムを調整する転写因子を調節する。
【0100】
本出願のキメラポリペプチドは、N末端からC末端まで:(a)標的分子に特異的に結合できる結合ドメイン、(b)1つ以上の切断部位を含む受容体調節ドメイン、及びc)細胞内ドメインを含み、前記受容体調節ドメインの細胞外領域及び膜貫通領域が同時にNotchに由来するものではなく、前記結合ドメインと前記標的分子との結合が、前記受容体調節ドメインの切断を誘導し、前記細胞内ドメインを放出することができる。標的分子に特異的に結合することができる結合ドメイン及び細胞内ドメインは、Notch受容体ポリペプチドに対して異種である。
【0101】
本願のキメラポリペプチドは、既存のSynNotch受容体よりも優れた転写調節活性を有し、操作化のためによりモジュール化されたプラットフォームを提供する。既存のSynNotch受容体は、リガンド結合ドメイン(一本鎖抗体やナノボディなど)を使って操作できるが、SynNotch受容体上の受容体/リガンドの天然の細胞外ドメインを使用することは困難である。本出願のキメラポリペプチドは、他のタイプのリガンド結合ドメインと一緒に使用することに適しており、それによって疾患及び組織を標的とする可能性が広がる。
【0102】
2.1 受容体調節ドメイン
キメラポリペプチドの受容体調節ドメインは、細胞外領域及び膜貫通領域(膜貫通ドメインとしても知られる)を含む。受容体調節ドメインは、I-CLiP(膜内切断プロテアーゼ)酵素切断部位またはシェダーゼプロテアーゼ切断部位から選択される1つ以上のリガンド誘導性タンパク質加水分解切断部位を含む。I-CLiPsは、膜貫通タンパク質の膜貫通領域上の特定の部位の加水分解を触媒できる膜貫通切断プロテアーゼである。一例では、前記I-CLiPはγ-セクレターゼ切断部位を含む。一例では、前記γ-セクレターゼ切断部位は、Gly-Valジペプチド配列のγ-セクレターゼ切断部位を含む。一例では、前記シェダーゼプロテアーゼは、BACE1、ADAM8、ADAM9、ADAM10、ADAM12、ADAM17、MT1-MMP、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0103】
一例において、受容体調節ドメインは、膜貫通領域に位置する1つ以上のリガンド誘導性タンパク質加水分解切断部位を含み、前記切断部位は、I-CLiP酵素切断部位から選択される。一例において、細胞外領域は、1つ以上のリガンド誘導性シェダーゼタンパク質加水分解切断部位を含み、膜貫通領域は、I-CLiPs酵素切断部位を含む。一例では、細胞外領域の切断部位はシェダーゼプロテアーゼ切断部位である。一例では、膜貫通領域はI-CLiPs酵素切断部位を含む。
【0104】
一例において、細胞外領域は1つ以上の切断部位を含む。一例では、膜貫通領域は1つ以上の切断部位を含む。一例において、細胞外領域は1つ以上の切断部位を含み、膜貫通領域は1つ以上の切断部位を含む。一例では、細胞外領域は切断部位を含まない。一例では、膜貫通領域は1つ以上の切断部位を含む。一例では、細胞外領域は切断部位を含まず、膜貫通領域は1つ以上の切断部位を含む。
【0105】
2.1.1 膜貫通領域
一例において、膜貫通領域は、少なくとも1つのγ-セクレターゼ切断部位を含む単回膜貫通受容体膜貫通領域である。一例では、膜貫通領域は、CLSTN1、CLSTN2、APLP1、APLP2、LRP8、APP、BTC、TGBR3、SPN、CD44、CSF1R、CXCL16、CX3CL1、DCC、DLL1、DSG2、DAG1、CDH1、EPCAM、EPHA4、EPHB2、EFNB1、EFNB2、ErbB4、GHR、HLA-A及びIFNAR2の膜貫通領域を含むが、これらに限定されず、ここで、膜貫通領域は少なくとも1つのγ-セクレターゼ切断部位を含む。一例では、膜貫通領域は、IL1R1、IL1R2、IL6R、INSR、ERN1、ERN2、JAG2、KCNE1、KCNE2、KCNE3、KCNE4、KL、CHL1、PTPRF、SCN1B、SCN3B、NPR3、NGFR、PLXDC2、PAM、AGR、ROBO1、SORCS3、SORCS1、SORL1、SDC1、SDC2、SPN、TYR、TYRP1、DCT、VASN、FLT1、CDH5、PKHD1、NECTIN1、PCDHGC3、NRG1、LRP1B、CDH2、NRG2、PTPRK、SCN2B、Nradd、及びPTPRM膜貫通領域を含むが、これらに限定されない。
【0106】
一例では、膜貫通領域は、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、マウス、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、アフリカツメガエル、またはガルス)からのNotch1膜貫通領域、Notch2膜貫通領域、Notch3膜貫通領域、またはNotch4膜貫通領域を含む。一例では、膜貫通領域は、配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、102、103または104に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性または同一性の断片、及び/または任意選択で、異なるアミノ酸残基で置換される最大1、2、3、4、5またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。一例では、配列番号13、14、15、17、18、19、102、103または104における「GV」以外のアミノ酸残基が、異なるアミノ酸残基に置換される。
【0107】
一例では、膜貫通領域は、ヒトまたは非ヒト動物に由来するAPLP1膜貫通領域またはAPLP2膜貫通領域を含む。一例において、膜貫通領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性または同一性の断片、及び/または任意選択で、異なるアミノ酸残基で置換される最大1、2、3、4、5またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0108】
一例において、膜貫通領域のカルボキシル末端は、移送停止配列(ストップトランスファー配列、stop transfer sequence、STS)を含む。STSはキメラポリペプチドの細胞内ドメインを連結し、小胞体の内腔への侵入を防ぐ。一例において、STSは、約4~10個の残基、例えば、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸残基を含む。一例では、STSは、Notch1、Notch2、Notch3、Notch4、CLSTN1、CLSTN2、CSF1R、CXCL16、DAG1、GHR、PTPRF、AGR、KL、NRG1、LRP1B、Jag2、EPCAM、KCNE3、CDH2、NRG2、PTPRK、BTC、EPHA3、IL1R2、またはPTPRMのSTS配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する配列を含む。一例では、STSは、最初の4残基におけるLys(K)またはArg(R)のみを含む配列を含む。一例では、STSは、配列番号22、23、24、25または26に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性または同一性の断片、及び/または任意選択で、異なるアミノ酸残基で置換される最大1、2、3、4、5またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0109】
2.1.2 細胞外ドメイン
一例では、細胞外領域は、Jagged2、EphrinB2、APLP1、APLP2、APP、CD44、CSF1R、CXCL16、CX3CL1、Delta1、E-cadherin、EphB2、EphrinB1、成長ホルモン受容体、HLA-A2、IFNaR2、IL1R2、L1、LRP、LRP2、LRP6、N-cadherin、ネクチン1α、NRADD、p75-NTR、Pcdh α4、Pcdh γ-C3、PTPκ、PTP-LAR、SorCS1b、SorLA、ソルチリン、ApoER2、PKHD1、ErbB4、IFNaR2、VEGF-R1、またはVLDLRの細胞外の完全長、または上記タンパク質のいずれかの細胞外領域の断片もしくはその切断型もしくは切断された構造、または上記タンパク質のいずれかの細胞外領域の変異体を含む。一例において、上記タンパク質の細胞外領域は全長である。一例において、キメラポリペプチドの受容体調節ドメインの細胞外領域は、それぞれ、上述のEphrinB2ECまたはJagged2細胞外領域の全長を含み、前記キメラポリペプチドは、標的分子に特異的に結合した後にキメラポリペプチドの切断を誘発し、細胞内ドメインを放出することができる。
【0110】
本出願に係るタンパク質細胞外領域の断片とは、完全な細胞外領域を含まれず、タンパク質細胞外領域の一部のみを含むものである。一例において、EphrinB2の細胞外領域断片を含むキメラポリペプチドは、標的分子に特異的に結合した後、前記キメラポリペプチドの切断を引き起こし、前記キメラポリペプチドの細胞内ドメインを放出する。一例において、EphrinB2の細胞外領域フラグメントは、EphrinB2EC-del23及びEphrinB2EC-del3など、EphrinB2細胞外領域内の潜在的なADAM10切断部位を除去した後のフラグメントを含む。一例において、EphrinB2の細胞外領域フラグメントは、EphrinB2EC-del1などのEphrinB2の細胞外領域のN末端付近を除去したフラグメントを含む。一例において、EphrinB2の細胞外領域フラグメントは、EphrinB2EC-del3などのEphrinB2の細胞外領域のC末端付近を除去したフラグメントを含む。一例において、EphrinB2の細胞外領域フラグメントは、EphrinB2EC-del2などのEphrinB2の細胞外領域の中間配列を除去したフラグメントを含む。一例において、上記のEphrinB2EC-del1、EphrinB2EC-del2、EphrinB2EC-del3、またはEphrinB2EC-del23からなる受容体調節ドメインの細胞外領域をそれぞれ含むキメラポリペプチドはいずれも、標的分子に特異的に結合した後、前記キメラポリペプチドの切断を引き起こし、細胞内ドメインを放出することができる。
【0111】
本出願に係るタンパク質の細胞外領域の変異体とは、タンパク質の細胞外領域の全アミノ酸のアミノ酸配列の一部に変異、欠失又は付加が含まれるものを意味する。一例において、EphrinB2の細胞外領域の変異体から構成される受容体調節ドメインの細胞外領域を含むキメラポリペプチドは、標的分子に特異的に結合した後、前記キメラポリペプチドの切断を引き起こし、細胞内ドメインを放出する。一例において、Jagged2の細胞外領域の変異体から構成される受容体調節ドメインの細胞外領域を含むキメラポリペプチドは、標的分子に特異的に結合した後、前記キメラポリペプチドの切断を引き起こし、細胞内ドメインを放出する。
【0112】
本出願に係るタンパク質の細胞外領域のトランケート構造または切断型とは、タンパク質の細胞外領域のすべてのアミノ酸断片から一部のアミノ酸断片を切断したものをいう。一例では、切断型EphrinB2EC-del1、EphrinB2EC-del2、EphrinB2EC-del3、またはEphrinB2EC-del23から構成される受容体調節ドメインの細胞外領域をそれぞれ含むキメラポリペプチドはいずれも、標的分子に特異的に結合した後、前記ポリペプチドの切断を引き起こし、細胞内ドメインを放出することができる。
【0113】
本出願では、タンパク質細胞外領域の断片、変異体、またはトランケート構造(切断型または切断体としても知られる)は、互換的に使用される場合があり、タンパク質細胞外領域の断片、変異体、またはトランケート構造(切断型または切断体とも呼ばれる)は、タンパク質細胞外領域の配列と比較して、少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する。一例において、前記トランケート構造のアミノ酸配列は、配列番号5、7、9、及び11に示される。
【0114】
本出願の特定の実施形態では、タンパク質の細胞外領域の断片、変異体またはトランケート構造(切断型にも呼ばれる)は、EphrinB2の細胞外領域が除去または変異された、ADAM10により切断した潜在的な部位である。
【0115】
一例では、細胞外領域は、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、シロホオテナガザル、ボノボ、スマトラオランウータン、チンパンジー、ゴリラ、ウサギ、ペルーナイトザル、マーモセット、カンムリキツネザル、小耳グレーターガラゴ、マウス、ラット、ウシ、アフリカツメガエル)のEphrinB2の細胞外領域の全長またはその切断型を含む。一例では、細胞外領域は、Jagged2の細胞外領域の全長またはその切断型を含む。一例では、細胞外領域は、切断部位を含むEphrinB2の細胞外領域を含む。一例では、細胞外領域は、切断部位を含まないEphrinB2の細胞外領域を含む。一例において、細胞外領域は、配列番号1、3、5、7、9または11に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の相同性もしくは同一性の断片、及び/または任意選択で、異なるアミノ酸残基で置換される最大1、2、3、4、5またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0116】
一例では、受容体調節ドメインは、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch1膜貫通ドメイン(Notch1STS)、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch1膜貫通ドメイン(Notch2STS)、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch1膜貫通ドメイン(Notch3STS)、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch1膜貫通ドメイン(Notch4STS)、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch2膜貫通ドメイン(Notch1STS)、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch2膜貫通ドメイン(Notch2STS)、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch2膜貫通ドメイン(Notch3STS)、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch2膜貫通ドメイン(Notch4STS)、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch3膜貫通ドメイン(Notch1STS)、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch3膜貫通ドメイン(Notch2STS)、EphrinB2細胞外ドメイン/Notch3膜貫通ドメイン(Notch3STS)、EphrinB2細胞外領域/Notch3膜貫通領域(Notch4STS)、EphrinB2細胞外領域/Notch4膜貫通領域(Notch1STS)、EphrinB2細胞外領域/Notch4膜貫通領域(Notch2STS)、EphrinB2細胞外領域/Notch4膜貫通領域膜領域(Notch3STS)、EphrinB2細胞外領域/Notch4膜貫通領域(Notch4STS)、EphrinB2細胞外領域/APLP2膜貫通領域(APLP2STS)、EphrinB2細胞外領域/APLP2膜貫通領域(Notch1STS)、EphrinB2細胞外領域/APLP2膜貫通領域(Notch2STS)、Jagged2細胞外領域/Notch1膜貫通領域(Notch1STS)、Jagged2細胞外領域/Notch1膜貫通領域(Notch2STS)、Jagged2細胞外領域/APLP2膜貫通領域(APLP2STS)、Jagged2細胞外領域/APLP2膜貫通領域(Notch1STS)、Jagged2細胞外領域/APLP2膜貫通領域(Notch2STS)を含む。本明細書では、膜貫通領域がNotch1膜貫通領域(Notch1STS)であることは、この膜貫通領域にはNotch1膜貫通領域とNotch1のSTS部分が含まれることを意味し、膜貫通領域がNotch1膜貫通領域(Notch2STS)であることは、この膜貫通領域にはNotch1膜貫通領域が含まれているが、STS部分はNotch2STSを使用していることを意味し、膜貫通領域がNotch4膜貫通領域(Notch1STS)であることは、膜貫通領域にはNotch4膜貫通領域とNotch1STSが含まれることを意味し、残りの説明は類推される。
【0117】
例示的には、キメラポリペプチドsynJagged2ECは、Jagged2細胞外領域フラグメント(配列番号1)及びNotch1膜貫通領域(配列番号13)から構成される受容体調節ドメインを含む。一例では、キメラポリペプチドsynJagged2ECの受容体調節ドメインは、配列番号28に示される配列を含む。
【0118】
例示的に、キメラポリペプチドsynEphrinB2ECは、EphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びNotch1膜貫通領域(配列番号13)から構成される受容体調節ドメイン、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号3、4)及びNotch1膜貫通ドメイン(Notch2STS)(配列番号102)、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びNotch1膜貫通ドメイン(Notch3STS)(配列番号103)、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びNotch1膜貫通ドメイン(Notch4STS)(配列番号104)、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びNotch2膜貫通ドメイン(配列番号14)、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びNotch3膜貫通ドメイン(配列番号15)、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びNotch4膜貫通ドメイン(配列番号16)、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びヒトNotch1膜貫通ドメイン(配列番号17)、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びヒトNotch2膜貫通ドメイン(配列番号18)、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びヒトNotch3膜貫通ドメイン(配列番号19)、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びヒトNotch4膜貫通ドメイン(配列番号20)、またはEphrinB2細胞外領域(配列番号1、3、5、7、9または11)及びヒトAPLP2膜貫通ドメイン(配列番号21)構成される受容体調節ドメインを含む。一例では、キメラポリペプチドsynEphrinB2ECの受容体調節ドメインは、配列番号29、30、31、32、33、34、35、37、38、39、40、41または85に示される配列を含む。
【0119】
キメラポリペプチドsynEphrinB2EC-APLP2(TM)は、EphrinB2細胞外領域フラグメント(配列番号3)及びAPLP2膜貫通領域(配列番号21)から構成される受容体調節ドメインを含む。一例において、キメラポリペプチドsynEphrinB2EC-APLP2(TM)の受容体調節ドメインは、配列番号36に示される配列を含む。
【0120】
一例では、キメラポリペプチドに含まれる受容体調節ドメインは、配列番号28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41または85に示される配列のいずれか1つと少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性または相同性を有するアミノ酸配列を有する。
【0121】
キメラポリペプチドの受容体調節ドメインは短いため、ウイルスのパッケージングと発現に有益であり、工業的な生産と調製の困難さが軽減される。キメラポリペプチドsynEphrinB2EC、synEphrinB2EC-del、synJagged2EC、またはsynEphrinB2EC-APLP2(TM)のコード配列の全長は、synNotchコード配列の全長より短く、完全なキメラポリペプチドを含む最終的に調製されたベクターは、細胞への形質導入効率が高く、工業的生産及び調製の困難さを軽減する。
【0122】
一例において、キメラポリペプチドsynEphrinB2EC、synEphrinB2EC-del、synJagged2EC、またはsynEphrinB2EC-APLP2(TM)は、それらが結合して調節を引き起こす遺伝子とは同じベクターに配置されず、すなわちデュアルベクターシステムとなる。一例では、キメラポリペプチドsynEphrinB2EC、synEphrinB2EC-del、synJagged2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM)及びそれらが結合して調節を引き起こす遺伝子は、同じベクターに配置され、すなわち単一ベクターシステムとなる。一例において、synEphrinB2EC、synEphrinB2EC-del、synJagged2EC、及びsynEphrinB2EC-APLP2(TM)単一ベクターシステムの感染効率は、synNotchの感染効率よりも高く、工業的生産及び調製の困難さを軽減する。一例では、synEphrinB2EC単一ベクターシステムの感染効率はsynNotchの感染効率よりも約1.5倍高く、これにより工業的な生産及び調製の困難さが軽減される。
【0123】
synNotchと比較して、キメラポリペプチドsynEphrinB2EC-delに誘導された転写調節の漏洩発現のレベルが有意に低くなる。キメラポリペプチドsynEphinB2EC-Del3は、synNotchと比較して、誘導発現のストリンジェンシーと強い誘導能力を併せ持つ。キメラポリペプチドsynEphinB2EC-Del3は、同じ標的分子の異なる発現レベルをよりよく区別でき、正常組織では発現が低いが腫瘍組織では発現が高い標的分子を同定するのに適しており、正常組織でのオフターゲットを引き起こしにくい。キメラポリペプチドsynEphinB2EC-Del3は、synNotchと比較して遺伝子発現をより厳密に調節し、低発現の標的分子に対する感受性が低く、腫瘍で高発現し、正常組織で低発現の標的分子を標的とする場合、synEphinB2EC-Del3は腫瘍組織に対する選択性がより高く、より安全である。
【0124】
2.2 細胞内ドメイン
本出願のキメラポリペプチドは、キメラポリペプチドが標的分子に結合した後に加水分解によって放出される細胞内ドメインを含む。
【0125】
本願のキメラポリペプチドの細胞内ドメインは、以下のタンパク質:
転写因子(転写活性化タンパク質及び転写抑制タンパク質を含む)、転写補助活性化タンパク質、転写補助抑制タンパク質、DNA結合ポリペプチド、RNA結合ポリペプチド、翻訳調節ポリペプチド、ホルモン、サイトカイン、毒素、抗体、クロマチン調節因子、自殺タンパク質(suicide protein)、オルガネラ特異的ポリペプチド(例えば、核孔調節因子、ミトコンドリア調節因子、小胞体調節因子など)、アポトーシス促進ポリペプチド、抗アポトーシスポリペプチド、他のメカニズムを通じて細胞死を促進するその他のポリペプチド、増殖促進ポリペプチド、抗増殖ポリペプチド、免疫共刺激ポリペプチド、部位特異的ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、抑制性免疫受容体、活性化免疫受容体、Cas9及びRNA標的ヌクレアーゼの変異体、DNA認識ポリペプチド、シグナル伝達ポリペプチド、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、分化を促進するポリペプチドのいずれかから選択されるタンパク質断片またはそれらの組み合わせを含む。
【0126】
本出願のキメラポリペプチドの細胞内ドメインは、プロモーター駆動型DNA配列の転写を促進または阻害する転写活性化タンパク質を含む。一例では、転写因子は細胞分化を直接調節する。一例では、転写因子は、第2の転写因子の発現を調節することによって細胞分化を間接的に調節する。転写因子は転写活性化タンパク質または転写抑制タンパク質である。一例では、転写因子は転写抑制タンパク質である。一例では、転写因子は転写活性化タンパク質である。一例では、転写因子は核局在化シグナルも含む。一例では、転写因子は、Gal4-VP16、Gal4-VP64、tetR-VP64、ZFHD1-VP64、Gal4-KRAB、及びHAP1-VP16から選択される。一例では、転写因子はGal4である。一例では、転写因子はGal4-VP64である。
【0127】
場合によっては、本出願のキメラポリペプチドの細胞内ドメインによって誘導される抗体は、疾患(免疫疾患、腫瘍を含む)を治療するために使用される治療用抗体である。
【0128】
一例では、前記細胞内ドメインは、以下のタンパク質:転写活性化タンパク質、転写抑制タンパク質、部位特異的ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、抑制性免疫受容体、活性化免疫受容体のいずれかから選択されるタンパク質断片またはそれらの組み合わせを含む。一例では、前記転写活性化タンパク質は、GLA4、GLA4-VP64、またはそれらの断片を含む。一例では、前記転写活性化タンパク質は、配列番号27に示されるものと少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性または相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0129】
一例では、部位特異的ヌクレアーゼはCas9ポリペプチドである。一例では、細胞内ドメインはリコンビナーゼである。一例では、細胞内ドメインは抑制性免疫受容体である。一例では、細胞内ドメインは活性化免疫受容体である。
【0130】
一例では、キメラポリペプチドは、配列番号28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41または85がそれぞれ配列番号27と順に連結したアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性または相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0131】
2.3 結合ドメイン(結合ペプチドとも呼ばれる)
キメラポリペプチドは、標的分子に特異的に結合する結合ドメインを含む。一例において、本明細書に開示されるキメラ受容体の結合ドメインは、1つ以上の標的分子に特異的に結合する。一例において、キメラポリペプチドは、結合ドメインと受容体構造調節ドメインとの間に介在するリンカーを含む。前記結合ドメインは、抗体、抗原、リガンド、受容体、標的(例えば、タグFLAG)、Fc受容体、細胞外マトリックス成分、細胞接着分子、非抗体分子足場、またはそれらの組み合わせを含む。
【0132】
一例では、キメラポリペプチドの結合ドメインは抗原結合ドメインを含む。一例において、抗原結合ドメインは、抗体、受容体、細胞接着分子、非抗体分子足場、またはそれらの組み合わせから選択される。一例では、抗原結合ドメインは、抗体に基づく認識足場を含む。一例では、抗原結合ドメインは抗体を含む。一例において、抗原結合ドメインに含まれる抗体は、腫瘍抗原、疾患関連抗原、または細胞外マトリックス成分に特異的に結合する。一例において、抗原結合ドメインに含まれる抗体は、細胞表面抗原、可溶性抗原、または不溶性基質上に固定化された抗原に特異的に結合する。一例では、抗原結合ドメインは単鎖抗体Fv(scFv)を含む。一例において、抗原結合ドメインに含まれる抗体は、複数の抗原に特異的に結合できる。一例において、抗原結合ドメインは、ナノボディ、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、トリアボディ、ミニ抗体、またはそれらの組み合わせを含む。一例において、抗原結合ドメインは、アビマー、DARPin、アドネクチン、アビマー、親和体、アンチカリン、またはアフィリンなどの非抗体ベースの認識足場である。一例では、抗体は、単一ドメイン抗体、単鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、ミニ抗体、F(ab’)2フラグメント、F(ab)vフラグメント、scFv、単一ドメイン抗体(sdAb)、及びその機能的フラグメントまたはそれらの組み合わせである。
【0133】
一例において、結合ドメインは、内因性抗原及び外因性抗原などの抗原を含む。一例では、結合ドメインは受容体のリガンドを含む。一例では、結合ドメインは受容体を含む。一例では、結合ドメインは細胞接着分子(例えば、細胞接着分子の細胞外ドメインの全部または一部)を含む。一例では、結合ドメインは重合ドメインの一部を含む。
【0134】
一例において、結合ドメインは、1.定義の用語「抗原」に記載される腫瘍抗原及び/または病原体抗原に特異的に結合する。一例において、結合ドメインは、1.定義の用語「抗原」に記載される腫瘍抗原及び/または病原体抗原に特異的に結合する抗体を含む。一例では、結合ドメインに含まれる抗体は、メソテリン、FAP、Claudin18.2、CLL1、CD19、GPC3、WT1、HER2、EGFR、EGFRvIII、BCMA、CD123、またはそれらの組み合わせに特異的に結合する。一例では、結合ドメインは、メソテリン、FAP、Claudin18.2、CLL1、CD19、GPC3、WT1、HER2、EGFR、EGFRvIII、BCMA、CD123、またはそれらの組み合わせに特異的に結合する抗体VHもしくはVLまたはscFVを含む。一例では、前記結合ドメインは、配列番号42、43、44、45、46、47、86、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、または101に示されるものと少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性または相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0135】
一例では、キメラポリペプチドは、配列番号50、51、52、53、54、55、56、57、61、73、87、105、106、108または110に示されるアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性または相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0136】
2.4 標的分子
本出願のキメラポリペプチドに結合する標的分子は、リガンドまたは標的抗原とも呼ばれる。
【0137】
標的分子は膜結合していてもよい。標的分子は細胞表面に存在することができる。標的分子は、不溶性基材(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ニトロセルロースなど)上に固定化することができる。標的分子は可溶性であってもよい。標的分子は、細胞外環境(例えば、細胞外マトリックス)に存在し得る。標的分子は人工マトリックス中に存在し得る。標的分子は非細胞環境に存在し得る。標的分子は、例えばプレート、組織培養用ディッシュ、カラムなどのさまざまな形で不溶性支持体上に存在することができる。標的分子は、細胞外マトリックス(ECM)中に存在し得る(例えば、抗原はECM成分である)。標的分子は人工マトリックス中に存在し得る。標的分子は非細胞環境に存在し得る。標的分子は、ポリペプチド、核酸、糖タンパク質、小分子、炭水化物、脂質、糖脂質、リポタンパク質、及びリポ多糖を含む。一例では、標的分子は、分化マーカークラスター、細胞表面受容体、接着タンパク質、インテグリン、ムチン、レクチン、及び腫瘍抗原から選択される。
【0138】
一例では、標的分子は分化(CD)マーカークラスターである。いくつかの実施形態では、CDマーカーは、CD1、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3d、CD3e、CD3g、CD4、CD5、CD7、CD8a、CD8b、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD27、CD28、CD33、CD34、CD40、CD45、CD48、CD52、CD59、CD66、CD70、CD71、CD72、CD73、CD79A、CD79B、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD94、CD95、CD134、CD140(PDGFR4)、CD152、CD154、CD158、CD178、CD181(CXCR1)、CD182(CXCR2)、CD183(CXCR3)、CD210、CD246、CD252、CD253、CD261、CD262、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD276(B7H3)、CD279、CD295、CD339(JAG1)、CD340(HER2)、EGFR、FGFR2、CEA、AFP、CA125、MUC-1、MAGE、アルカリホスファターゼ、胎盤様2(ALPPL2)、B細胞成熟抗原(BCMA)、青色蛍光タンパク質(BFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)、シグナル調節タンパク質α(SIRPα)からなる群から選択される。
【0139】
一例では、標的分子は抗原である。一例では、標的分子は、腫瘍抗原及び/または病原体抗原を含む。一例では、腫瘍抗原は、メソテリン、FAP、Claudin18.2、CLL1、CD19、GPC3、WT1、EGFR、BCMA、CD7、NKG2D-リガンド、CD19、B7H3、ALPPL2、CD123、CD171、CD179a、CD20、CD213A2、CD22、CD24、CD246、CD272、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD46、CD71、CD97、CEA、CLDN6、CLECL1、CS-1、EGFR、EGFRvIII、ELF2M、EpCAM、EphA2、FLT3、GD2、GD3、GM3、GPRC5D、HER2(ERBB2)、IGLL1、IL 11Ra、IL13Ra2、CD 117、MUC1、NCAM、PAP、PDGFR-b、PRSS21、PSCA、PSMA、ROR1、SIRPa、SSEA-4、TAG72、TEM1/CD248、TEM7R、TSHR、VEGFR2、ALPI、cMet、及びAxlから選択される。
【0140】
一例では、キメラポリペプチドとその転写によって発現を調節するCARは、それぞれ異なる腫瘍抗原を認識する。
【0141】
抗原不均一性を伴う腫瘍の治療では、第1の標的分子(例えば、EGFRvIII)の陽性細胞の割合(つまり、陽性率)が低く、第2の標的分子(例えば、IL13Ra2)の陽性率が高い。そのような腫瘍細胞は、第1の標的分子を標的とする治療を回避し、それによって治療有効性が低下する。第2の標的分子の広範な発現により、第2の標的分子を標的とする治療はオフターゲット毒性を引き起こす可能性がある。一例において、本出願は、第1の標的分子に結合して転写調節を引き起こし、第2の標的分子の外因性受容体の発現を認識するキメラポリペプチドを構築し、第2の標的分子を発現し、第1の標的分子を部分的に発現する腫瘍細胞の特異的かつ広範な殺傷を実現する。一例では、第2の標的分子を標的とするCARの殺傷効果は、第1の標的分子に結合するキメラポリペプチドの転写調節活性の誘発に依存する。すなわち、殺傷効果には、環境中に第1の標的分子と第2の標的分子の存在が必要である。第1の標的分子に結合するキメラポリペプチド(synEphrinB2EC、synJagged2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM))を使用して第2の標的分子を標的とする外因性受容体(CARなど)の発現を誘発及び調節することは、synNotchと比較して、前記キメラポリペプチドによって転写・調節されるCAR-T細胞の、第1の標的分子の不均一な発現を伴う腫瘍に対する抗腫瘍効果を有意に改善することができる。
【0142】
標的分子の不均一性を伴う腫瘍の治療では、第1の標的分子(例えば、メソテリン)が高度に発現するが、正常組織でも発現し、第2の標的分子(例えば、Claudin18.2)が高度に発現するが、他の正常組織でも発現するため、第1の標的分子または第2の標的分子を単独で標的にすると、オフターゲット毒性が生じる。一例では、第1の標的分子に特異的に結合するキメラポリペプチド(synEphrinB2EC、synJagged2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM))を使用して第2の標的分子を標的とする外因性受容体の発現の転写調節を誘発することは、synNotchと比較して、前記キメラポリペプチドの結合によって転写・調節されるCAR-T細胞の、第1及び第2の標的分子の不均一な発現を伴う腫瘍に対する抗腫瘍効果を有意に改善することができる。一例では、第2の標的分子に特異的に結合するキメラポリペプチド(synEphrinB2EC、synJagged2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM))を使用して第1の標的分子を標的とする外因性受容体の発現を誘発して調節することは、synNotchと比較して、前記キメラポリペプチドの結合によって誘発調節されるCAR-T細胞の、第1及び第2の標的分子の不均一な発現を伴う腫瘍に対する抗腫瘍効果を有意に改善することができる。
【0143】
一例では、治療に使用される細胞は、CARによって標的化される第2の標的分子を発現し、その後、第2の標的分子を標的とする治療により、培養プロセス中に細胞が互いに殺し合い、前記細胞の活性及び生産に影響を与える。一例では、第1の標的分子に特異的に結合するキメラポリペプチドは、第2の標的分子を標的とするCARの発現の転写調節を引き起こすために使用され、前記細胞は腫瘍細胞上の第1の標的分子に特異的に結合した後、前記細胞内の第2の標的分子を標的とする外因性受容体の発現の転写調節を誘発し、第2の標的分子を発現する腫瘍細胞を殺傷し、及び/または第2の標的分子を発現する宿主免疫細胞を攻撃して、前記細胞の生存と増殖を増加させ、抗腫瘍活性をさらに向上させる。一例では、前記第2の標的分子は、NKG2A、NKG2D、NKG2CなどのNKG2受容体ファミリー;KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR2DL4、KIR2DL5、KIR3DL1、15 KIR3DL2、KIR2DS1、KIR2DS2/S3、KIR2DS4、KIR2DS5、KIR3DS1などのキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)ファミリー;NKP30、NKP44、NKP46、NKp80などの天然細胞毒性受容体(NCR);及び、CD159a、CD159c、CD94、CD158、CD56、LIR/ILT2、CD244、CD226、CD2、CD16、CD161、TIGIT、CS1などのその他のNK細胞特異的発現抗原から選択されるNK細胞マーカーを含む。一例では、白血病細胞(例えば、CLL1、CD123)の第1の標的分子に特異的に結合するキメラポリペプチドを使用して、NKG2Dを標的とする外因性受容体の発現の転写調節を誘発し、それによって腫瘍細胞を殺傷する。
【0144】
一例において、標的分子は、炎症性疾患関連分子であり、これには、AOC3(VAP-1)、CAM-3001、CCL11(エオタキシン-1)、CD125、CD147(ベイシジン)、CD154(CD40L)、CD2、CD20、CD23(IgE受容体)、CD25(IL-2受容体のα鎖)、CD3、CD4、CD5、IFN-α、IFN-γ、IgE、IgE Fc領域、IL-1、IL-12、IL-23、IL-13、IL-17、IL-17A、IL-22、IL-4、IL-5、IL-5、IL-6、IL-6受容体、インテグリンα4、インテグリンα4β7、LFA-1(CD11a)、ミオスタチン、OX-40、スクレロスシン、SOST、TGFβ1、TNF-α、及びVEGF-Aが含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
2.5. キメラポリペプチド結合によって誘発調節される遺伝子
キメラポリペプチド結合によって誘発調節される遺伝子は、キメラポリペプチドの細胞内ドメインによって活性化または阻害される転写制御エレメントに作動可能に連結される。一例において、調節される遺伝子は、GAL-4、tetR、ZFHD1、HNF1A、またはHAP1によって調節されるプロモーターの制御下で発現される。一例では、調節される遺伝子発現産物は、非コードRNA、サイトカイン、サイトトキシン、ケモカイン、免疫調節因子、アポトーシス促進因子、抗アポトーシス因子、ホルモン、分化因子、脱分化因子、修飾TCR、CAR、レポーター遺伝子またはそれらの組み合わせから選択される。
【0146】
一例において、キメラポリペプチド結合によって誘発調節される遺伝子は、ケモカイン、ケモカイン受容体、サイトカイン、サイトカイン受容体、分化因子、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、代謝酵素、増殖誘導物質、受容体、小分子セカンドメッセンジャー合成酵素、T細胞受容体、転写活性化タンパク質、転写抑制タンパク質、転写活性化タンパク質、転写抑制タンパク質、翻訳調節因子、翻訳活性化タンパク質、翻訳抑制タンパク質、活性化免疫受容体、アポトーシス阻害剤、アポトーシス誘導因子、免疫活性化因子、免疫抑制剤及び抑制性免疫受容体を含むが、これらに限定されない。
【0147】
一例では、キメラポリペプチド結合によって誘発調節される遺伝子は、転写活性化タンパク質、転写抑制タンパク質、CAR、第2のキメラポリペプチド、翻訳調節因子、サイトカイン、ホルモン、ケモカイン、または抗体分子を含むがこれらに限定されない。一例において、前記転写活性化タンパク質、転写抑制タンパク質、外因性受容体、第2のキメラポリペプチド、翻訳調節因子、サイトカイン、ホルモン、ケモカイン、抗体分子をコードする核酸配列またはそれらの組み合わせは、転写制御エレメントに作動可能に連結されており、この転写制御エレメントは、キメラポリペプチドの細胞内ドメインによって活性化または阻害される。一例では、前記転写制御エレメントはUAS(上流活性化配列、upstream activating sequence)を含み、その配列は配列番号48に示される。一例では、キメラポリペプチドの細胞内ドメインはGAL4-VP64を含み、その配列は配列番号27に示され、キメラポリペプチド結合によって誘発調節される遺伝子の核酸配列はUASに作動可能に連結され、その配列は配列番号48に示される。一例において、キメラポリペプチドの細胞内ドメインはGAL4-VP64を含み、その配列は配列番号27に示され、キメラポリペプチド結合によって誘発調節される遺伝子の核酸配列はUAS-CMVプロモーターに作動可能に連結され、その配列は配列番号49に示される。
【0148】
一例において、キメラポリペプチド結合によって誘発調節される遺伝子は、外因性サイトカインまたはCARを含む。一例において、前記外因性サイトカイン核酸配列は、前記キメラポリペプチドの細胞内ドメインによって活性化または阻害される転写制御エレメントに作動可能に連結される。一例では、細胞内のキメラポリペプチドが標的分子に結合した後に受容体の加水分解を引き起こし、受容体が切断されて細胞内ドメインが放出され、細胞が、インターフェロン(α-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン)、インターロイキン(IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12;IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-17A、IL-18、IL-19、IL-20、IL-24)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、トランスフォーミング成長因子-β、TRAIL、MIP-1、MIP-1β、MCP-1、RANTES、IP10、CCL2、CCL3、CCL5、CCL17、CCL19、CCL21、CCR7、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL16、MCSFが含まれるサイトカインまたはケモカインの発現を誘導させる。一例では、前記サイトカインには、IL-2、IL-7、IL-9、IL-12、IL-15、IL-18、CCL21、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0149】
一例において、サイトカインIL12核酸配列は、キメラポリペプチドの細胞内ドメインによって活性化される転写制御エレメントに作動可能に連結される。IL12サブユニットP35のGENE ID:3592、サブユニットP40のGENE ID:3593である。一例において、IL12は、配列番号58に示される配列を含む。
【0150】
一例では、細胞内の前記キメラポリペプチドは、標的分子に結合した後に受容体の加水分解を引き起こし、受容体が切断され、細胞内ドメインを放出させ、細胞によるCARまたは修飾TCRの発現を誘導する。前記CARまたは修飾TCRの核酸配列は、キメラポリペプチドの細胞内ドメインによって活性化または阻害される転写制御エレメントに作動可能に連結される。一例では、CARまたは修飾TCRは、腫瘍抗原、がん細胞関連抗原、血液悪性腫瘍抗原、固形腫瘍抗原、細胞表面抗原、細胞内抗原などを特異的に認識する。
【0151】
一例では、第1の標的分子と第2の標的分子は異なり、それぞれ:1)血液腫瘍抗原:CD19(B細胞で発現)、CD20(B細胞で発現)、CD22(B細胞で発現)、CD30(B細胞で発現)、CD33(骨髄細胞で発現)、CD70(B細胞/T細胞で発現)、CD123(骨髄細胞で発現)、κ(B細胞で発現)、Lewis Y(骨髄細胞で発現)、NKG2Dリガンド(骨髄細胞で発現)、ROR1(B細胞で発現)、SLAMF7/CS1(骨髄腫細胞、ナチュラルキラー細胞、T細胞及びほとんどのB細胞で発現)、CD138(多発性骨髄腫の悪性形質細胞で発現)、CD56(骨髄腫細胞、神経細胞、ナチュラルキラー細胞、T細胞、及び小柱骨芽細胞で発現)、CD38(B細胞/T細胞で発現)、及びCD160(NK細胞/T細胞で発現)など;2)固形腫瘍抗原:B7H3(悪性腫瘍及び神経膠腫で発現)、CAIX(腎臓で発現)、CD44v6/v7(子宮頸部で発現)、CD171(神経芽腫で発現)、CEA(結腸で発現)、EGFRvIII(神経膠腫で発現)、EGP2(がんで発現)、EGP40(結腸で発現)、EphA2(神経膠腫、肺で発現)、ErbB2(HER2)(乳房、肺、前立腺、神経膠腫で発現)、ErbB受容体ファミリー(乳房、肺、前立腺、神経膠腫で発現)、ErbB3/4(乳房、卵巣で発現)、HLA-A1/MAGE1(黒色腫で発現)、HLA-A2/NY-ESO-1(悪性腫瘍、黒色腫で発現)、FR-a(卵巣で発現)、FAR(横紋筋肉腫で発現)、GD2(神経芽腫、悪性腫瘍、黒色腫で発現)、GD3(黒色腫、肺癌で発現)、HMW-MAA(黒色腫で発現)、IL11Ra(骨肉腫で発現)、IL13Ra2(神経膠腫で発現)、Lewis Y(乳房/卵巣/膵臓で発現)、メソテリン(中皮腫、乳房、膵臓で発現)、Muc1(卵巣、乳房、前立腺で発現)、NCAM(神経芽腫、直腸結腸で発現)、NKG2Dリガンド(卵巣、悪性腫瘍で発現)、PSCA(前立腺、膵臓で発現)、PSMA(前立腺で発現)、TAG72(結腸で発現)、VEGFR-2(腫瘍血管系で発現)、Axl(肺癌で発現)、Met(肺癌で発現)、α5β3(腫瘍血管系で発現)、α5β1(腫瘍血管系で発現)、TRAIL-R1/TRAIL-R2(固形腫瘍(結腸、肺、膵臓)及び血液悪性腫瘍で発現)、RANKL(前立腺癌及び骨転移で発現)、テネイシン(神経膠腫、上皮腫瘍(乳房、前立腺)で発現)、EpCAM(上皮腫瘍(乳房、結腸、肺)で発現)、CEA(上皮腫瘍(乳房、結腸、肺)で発現)、gpA33(結腸直腸癌で発現)、ムチン(上皮腫瘍(乳房、結腸、肺、卵巣)で発現))、TAG-72(上皮腫瘍(乳房、結腸、肺)で発現)、EphA3(肺、腎臓、黒色腫、神経膠腫、血液悪性腫瘍で発現)、及びIGF1R(肺、乳房、頭頸部、前立腺、甲状腺、神経膠腫で発現)から選択される。表面抗原及び細胞内抗原の例としては、例えば、Her2(ERBB2)、MAGE-A1(MAGEA1)、MART-1(MLANA)、NY-ESO(CTAG1)、WT1、MUC17、及びMUC13が挙げられる。一例では、第1及び第2の標的分子はそれぞれ、BCMA、B7H6、CAIX、CD123、CD138、CD171、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD44、CEA、CS1、EGFRvIII、EGP2、EGP40、Erbファミリーメンバー(ERBB1、ERBB2、ERBB3、ERBB4)、FAP、胎児性アセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体α(FOLR1)、葉酸受容体β(FOLR2)、GD2、GD3、GPC3、IL-13Ra2(IL13RA2)、κ軽鎖(IGK)、Lewis-Y、メソセリン(MSLN)、ムチン-1(MUC1)、ムチン-16(MUC16)、NKG2Dリガンド、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、及び未分化リンパ腫受容体チロシンキナーゼ(ALK)から選択される。
【0152】
一例では、キメラポリペプチドの結合ドメインは第1の標的分子に特異的に結合し、前記CARは第1の標的分子とは異なる第2の標的分子に特異的に結合し、それぞれメソテリン、FAP、Claudin18.2、CLL1、CD19、GPC3、WT1、EGFR、EGFRvIII、BCMA、CD7、NKG2D-リガンド、MOG、CD19、B7H3(CD276)、BCMA(CD269)、ALPPL2、CD123、CD171、CD179a、CD20、CD213A2、CD22、CD24、CD246、CD272、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD46、CD71、CD97、CEA、CLDN6、CLECL1、CS-1、EGFR、EGFRvIII、ELF2M、EpCAM、EphA2、Ephrin B2、FAP、FLT3、GD2、GD3、GM3、GPRC5D、HER2(ERBB2/neu)、IGLL1、IL 11Ra、IL13Ra2、CD117、MUC1、NCAM、PAP、PDGFR-b、PRSS21、PSCA、PSMA、ROR1、SIRPa、SSEA-4、TAG72、TEM1/CD248、TEM7R、TSHR、VEGFR2、ALPI、シトルリンビメンチン、cMet、及びAxlから選択される。
【0153】
一実施形態では、第1の標的分子に応答してキメラポリペプチドによって誘発される転写因子は、第2の標的分子に応答してCARの発現を駆動するため、CARは、第1及び第2の標的分子の存在下でのみ活性を有し、T細胞を活性化する。一例において、第1の標的分子及び第2の標的分子は、それぞれ、ASGR1及びGPC3、EGFRvIII及びIL13Ra2、EGFRvIII及びB7H3、メソテリン及びClaudin18.2、Claudin18.2及びメソテリン、FAP及びClaudin18.2、CLL1及びNKG2D、CD123及びNKG2Dである。一例では、前記キメラポリペプチド及びCARはそれぞれ、配列番号61及び62に示される配列、または配列番号61及び64に示される配列、または配列番号61及び65に示される配列、または配列番号61及び66に示される配列、または配列番号105及び67に示される配列、または配列番号106及び67に示される配列、または配列番号108及び107に示される配列、または配列番号73及び109に示される配列、または配列番号50及び109に示される配列を含む。
【0154】
U87及びU251細胞は内因性IL13Ra2を発現するが、EGFRvIIIを発現しない。CAR発現を調節するキメラポリペプチドを含むT細胞による、異なる陽性率で少なくとも2つ以上の標的分子を発現する細胞の死滅を検出する。一例では、自然条件下でIL13Ra2陽性で部分的にのみEGFRvIII陽性の神経膠腫をシミュレートするために、EGFRvIII陽性細胞とEGFRvIII陰性細胞を異なる割合で混合する。胃癌細胞HGC-27は内因性メソテリンを発現するが、Claudin18.2を発現しない。HGC-27-A2は、ヒトClaudin18.2を過剰発現するHGC-27細胞である。
【0155】
一例では、CARをコードする核酸配列は、キメラポリペプチドの細胞内ドメインによって調節される転写制御エレメントに作動可能に連結される。一例では、CARをコードする核酸配列はUAS-CMVプロモーターに作動可能に連結されており、前記キメラポリペプチドの細胞内ドメインにはGLA4-VP64が含まれる。一例では、CARの細胞外抗原結合領域には、メソテリン、FAP、Claudin18.2、CLL1、CD19、GPC3、WT1、HER2、EGFR、EGFRvIII、BCMA、CD7、CD123、NKG2D-リガンド、またはそれらの組み合わせを認識する抗体が含まれる。一例では、CARの細胞外抗原結合領域には、メソテリン、FAP、Claudin18.2、CLL1、CD19、GPC3、WT1、HER2、EGFR、EGFRvIII、BCMA、CD7、CD123、NKG2D-リガンド、またはそれらの組み合わせを認識する抗体scFVが含まれる。一例では、CARの細胞外抗原結合領域は、配列番号42、43、44、45、46、47、86、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、または101に示されるものと少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性または相同性を有するアミノ酸配列を含む。一例において、キメラポリペプチドによって発現が調節されるIL13Ra2-CAR、B7H3-CAR、Claudin18.2-CAR、メソテリン-CAR、またはNKG2D-CARは、転写制御エレメントに作動可能に連結されており、前記転写制御エレメントは、前記キメラポリペプチドの細胞内ドメインによって調節される。一例では、キメラポリペプチドによって発現が調節されるIL13Ra2-CAR、B7H3-CAR、Claudin18.2-CAR、メソテリン-CAR、またはNKG2D-CARは、UAS-CMVプロモーターの下流に挿入され、前記キメラポリペプチドの細胞内領域はGal4-VP64を含む。本出願の実施例に記載される「X-キメラポリペプチドYを発現するZ-CAR-T」または「X-キメラポリペプチドY-Z-CAR-T」は、抗原Zを認識するCARの発現を調節する抗原Xを標的とするキメラポリペプチドYを含むT細胞を説明するために使用され、前記Z-CARはUAS-CMVプロモーターの下流に挿入され、前記キメラポリペプチドYの細胞内領域はGal4-VP64を含む。上文において、記号XとZは異なる腫瘍抗原を表す。つまり、キメラポリペプチドYは抗原Xを標的にすることができ、示されるCARは抗原Zを認識することができ、キメラポリペプチドYとCARを組み合わせてT細胞に使用すると、前記CARの発現はキ前記メラポリペプチドYの細胞内ドメインによって調節される。
【0156】
胃癌はメソテリンとClaudin18.2の両方を高度に発現しており、Claudin18.2-CAR-T細胞がClaudin18.2を発現する正常組織を殺傷するのを防ぐため、Claudin18.2-CAR-T細胞の殺傷効果は腫瘍領域に限定されている。一例では、メソテリン-synEphrinB2ECのClaudin18.2-CAR-T細胞を発現する。
【0157】
一例では、CAR細胞外抗原結合領域は膜貫通領域に直接連結されるか、またはヒンジを介して連結される。一例において、前記ヒンジは、CD8ヒンジ、例えば、配列番号75と95~100%同一性を有する配列を含む。一例では、CARをコードする核酸分子の上流に、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。一実施形態では、シグナルペプチドは、CD8シグナルペプチド、例えば、配列番号81と95~100%同一性を有する配列を含む。
【0158】
本出願のCAR分子の膜貫通ドメインは、CD28またはCD8膜貫通ドメインを含む。一例では、CARは、CD8膜貫通ドメイン、例えば、配列番号76と95~100%同一性を有する配列を含む。一例では、CARは、CD28膜貫通ドメイン、例えば、配列番号77と95~100%同一性を有する配列を含む。
【0159】
一例では、CARは、細胞内シグナルドメイン、すなわち一次シグナルドメイン及び/または共刺激シグナルドメインを含む。一例では、一次シグナルドメインは、CD3ζ細胞内ドメイン、例えば、配列番号80と95~100%同一性を有する配列を含む。一例では、共刺激シグナルドメインは、CD28または4-1BB細胞内ドメインを含む。
【0160】
一例において、CARは、4-1BB細胞内ドメイン、例えば、配列番号79と95~100%同一性を有する配列を含む。一例では、CARは、CD28細胞内ドメイン、例えば、配列番号78と95~100%同一性を有する配列を含む。
【0161】
一例では、CARの細胞内シグナルドメインは、ヒトCD3ζ細胞内ドメインを含む。一例において、CARの細胞内シグナルドメインは、ヒトCD3ζ細胞内ドメイン及びCD28細胞内ドメインを含む。一例では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ζ細胞内ドメイン及び4-1BB細胞内ドメインを含む。一例では、CARの細胞内シグナルドメインは、CD3ζ細胞内ドメイン、CD28細胞内ドメイン、及び4-1BB細胞内ドメインを含む。一例では、前記細胞はCAR及びサイトカインを発現する。
【0162】
例示的に、本出願のキメラポリペプチドによって発現を転写調節するCARは、配列番号42、43、44、45、46、47、86、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100または101に示される配列がそれぞれ配列番号82、83または84に順次に連結された配列、を含む。
【0163】
一例において、キメラポリペプチド結合によって誘発調節される遺伝子は、トラスツズマブ(Trastuzumab、ハーセプチン(Herceptin)、中外製薬株式会社から入手可能);ベバシズマブ(bevacizumab、アバスチン(Avastin、Genentech,Inc.から入手可能);インフリキシマブ(infliximab、レミケード(Remicade));リツキシマブ(rituximab、リツキサン(Rituxan)、Biogen Idec Inc.から入手可能);アダリムマブ(adalimumab、ヒュミラ(Humira))を含むが、これらに限定されない。一例では、上記の治療用抗体は、Gal4-VP64によって調節されるUAS-CMVプロモーターの後ろに挿入される。
【0164】
2.6 その他の配列
一例では、本出願のキメラポリペプチドは、シグナルペプチド、エピトープタグ、親和性ドメイン、核局在化シグナル(NLS)、及び検出可能なシグナルを生成するポリペプチドを含む、1つ以上の他の構造ドメインも含む。
【0165】
3. 核酸とベクター
本出願は、本出願のキメラポリペプチドをコードする及び/またはキメラポリペプチドの結合によって転写調節を誘発する遺伝子を含む核酸ならびに発現ベクターを提供する。
【0166】
一例において、本出願のキメラポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)に作動可能に連結される。一例では、転写制御エレメントは誘導性である。一例では、転写制御エレメントは構成的である。一例では、プロモーターは真核細胞内で機能する。一例では、プロモーターは細胞型特異的プロモーターである。一例では、プロモーターは組織特異的プロモーターである。
【0167】
一例では、発現ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどのウイルスベクターである。一例では、レトロウイルスベクター(γ―レトロウイルスまたはレンチウイルス)を使用して、核酸分子を細胞に導入する。非ウイルスベクターも使用することができる。形質導入には、任意の適切なウイルスベクターまたは非ウイルス送達システムを使用できる。本出願の特定の実施形態では、キメラポリペプチドを発現するようにpRRLSINベクターが構築される。キメラポリペプチドまたはCARは、単一のポリシストロン性発現カセット、単一ベクター内の複数の発現カセット、または複数のベクター内のアクセサリー分子(例えば、サイトカイン)を用いて構築することができる。ポリシストロン性発現カセットを生成するエレメントの例には、様々なウイルス及び非ウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES、例えば、FGF-1 IRES、FGF-2 IRES、VEGF IRES、IGF-II IRES、NF-κB IRES、RUNX1 IRES、p53IRES、A型肝炎IRES、C型肝炎IRES、ペスチウイルスIRES、非バキュロウイルスIRES、ピコルナウイルスIRES、ポリオウイルスIRES、及び脳心筋炎ウイルスIRES)及び切断可能なリンカー(例えば、P2A、T2A、E2A、及びF2Aペプチドなどの2Aペプチド))が含まれるが、これらに限定されない。
【0168】
使用され得る他のウイルスベクターとしては、例えば、アデノウイルス、レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、またはエプスタイン・バーウイルスなどのヘルペスウイルスが挙げられる。
【0169】
非ウイルス法は、免疫細胞の遺伝子修飾にも使用できる。例えば、核酸分子は、リポフェクション、アシアロムコイド-ポリリシン結合、または外科的条件下でのマイクロインジェクションによって免疫細胞に導入することができる。他の非ウイルス遺伝子導入法には、トランスポゾン、リポソーム、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、及びプロトプラスト融合を使用したインビトロトランスフェクションが含まれる。核酸分子は、最初にインビトロで培養できる細胞型(例えば、自体または同種初代細胞またはそれらの子孫)に導入し、その後、前記核酸分子によって修飾された細胞(またはその子孫)を受験者の標的組織または全身に注射してもよい。
【0170】
4. 操作された細胞
本出願は、本出願の核酸で遺伝子修飾された操作された細胞、本出願のキメラポリペプチドをコードする核酸で遺伝子修飾された操作された細胞、または本出願のキメラポリペプチド、キメラポリペプチド結合によって転写調節を誘発される遺伝子及び核酸で遺伝子修飾された操作された細胞を提供する。本出願は、本出願のキメラポリペプチドを発現する細胞の活性を調節する方法を提供する。この方法は一般に、操作された細胞を標的分子と接触させてキメラポリペプチドの切断を誘導し、それによって細胞内ドメインを放出し、細胞内ドメインの放出により細胞の活性を調節することを含む。
【0171】
一例において、操作された細胞は、本出願のキメラポリペプチドを発現するように遺伝子修飾され、CARを発現するようにさらに遺伝子修飾される。例えば、操作された細胞は、CARをコードするヌクレオチド配列を含む核酸で遺伝子修飾され、キメラポリペプチドの細胞内ドメインは転写活性化タンパク質であり、CARをコードするヌクレオチド配列は、キメラポリペプチドの細胞内ドメインによって活性化される転写制御エレメントに作動可能に連結される。多くのCARポリペプチドが当技術分野で記載されており、それらのいずれも本明細書での使用に適している。
【0172】
一例では、操作された細胞は、免疫細胞、ニューロン、上皮細胞、内皮細胞、または幹細胞である。幹細胞には、ヒト多能性幹細胞(ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)及びヒト胚性幹細胞を含む)が含まれる。一例では、前記細胞は免疫細胞を含む。一例では、前記細胞は初代細胞である。一例では、免疫細胞は、B細胞、単球、ナチュラルキラー細胞、好塩基球、好酸球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、制御性T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、他のT細胞、またはそれらの組み合わせである。一例では、操作された細胞は、配列番号59、63、68、69、70、71、72、74、88のいずれか1つと少なくとも80%の配列相同性を有する核酸配列、またはその翻訳されたアミノ酸配列を含む。
【0173】
本出願の免疫細胞は、リンパ系細胞であってもよい。B、T、及びナチュラルキラー(NK)細胞を含むリンパ系は、抗体産生、細胞免疫系の制御、血液中の外因性試薬の検出、宿主外因性細胞の検出などを提供する。リンパ系の免疫細胞の非限定的な例としては、胚性幹細胞及び多能性幹細胞(例えば、リンパ様細胞に分化する幹細胞または多能性幹細胞)を含めて、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞及びそれらの前駆体が挙げられる。T細胞は、胸腺内で成熟し、主に細胞性免疫を担うリンパ球であってもよい。T細胞は適応免疫システムに参加する。T細胞は、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞(セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞(または幹様メモリーT細胞)及び2つのエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞及びTEMRA細胞など)を含む)、制御性T細胞(サプレッサーT細胞とも呼ばれる)、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連不変T細胞、γδT細胞、またはαβT細胞を含むが、これらに限定されない。細胞傷害性T細胞(CTLまたはキラーT細胞)は、感染した体細胞または腫瘍細胞の死を誘導できるTリンパ球である。受験者自身のT細胞は、本出願のキメラポリペプチドを発現し、転写活性を引き起こすCARに結合するように操作することができる。一例において、本出願の細胞は、T細胞、NK細胞、細胞傷害性T細胞、NKT細胞、マクロファージ、CIK細胞、及び幹細胞由来免疫細胞、またはそれらの組み合わせから選択される。一例では、免疫細胞はT細胞である。一例において、T細胞は、CD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞であり得る。一例では、免疫細胞はCD3+T細胞である。一例において、本出願の組成物中の細胞は、CD3磁気ビーズによる刺激後にPBMC細胞から収集された細胞集団を含む。
【0174】
本願の細胞(例えば、T細胞)は、自己、非自己(例えば、同種異系)、または操作された前駆細胞もしくは幹細胞からインビトロで誘導されたものであり得る。これは、末梢血単核球(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、腫瘍などの多くの供給源から入手できる。
【0175】
本出願の特定の態様では、T細胞は、Ficoll(商標)単離技術などの当業者に知られている任意の数の技術を使用して、受験者から採取された血液サンプルから得ることができる。好ましい態様では、個体の循環血液からの細胞はアフェレーシスによって得られる。アフェレーシス製品には通常、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球、赤血球、血小板などのリンパ球が含まれている。一態様では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して血漿部分を除去し、細胞をその後の処理ステップのために適切な緩衝液または培地に入れることができる。本出願のコンテキストでは、複数ラウンドの選択も使用できる。いくつかの態様では、選択手順を実行し、活性化及び拡張中に「選択されていない」細胞を使用することが必要な場合がある。「選択されていない」細胞は、他のラウンドの選択を受けることもできる。
【0176】
本出願の細胞は、腫瘍微小環境を調節することができる。
【0177】
未精製CTLの供給源は、骨髄、胎児、新生児もしくは成人、または胎児肝臓、末梢血もしくは臍帯血などの他の造血細胞供給源などの当技術分野で公知の任意の供給源であり得る。細胞を単離するには、さまざまな技術を使用できる。例えば、ネガティブ選択では、最初に非CTLを削除できる。mAbは、特定の細胞系統及び/またはポジティブ選択とネガティブ選択の分化段階に関連するマーカーを同定するのに特に役立つ。
【0178】
最終分化細胞のほとんどは、最初は比較的大まかな単離によって除去できる。例えば、磁気ビーズ分離を最初に使用して、多数の無関係な細胞を除去できる。特定の実施形態では、全造血細胞の少なくとも約80%、典型的には少なくとも約70%が、細胞を単離する前に除去される。
【0179】
単離手順は、密度勾配遠心分離;再沈殿(resetting);細胞密度を変化させる粒子へのカップリング;抗体でコーティングされた磁気ビーズによる磁気分離;アフィニティークロマトグラフィー;補体及び細胞毒素を含むがこれらに限定されない、mAbと組み合わされる、またはmAbと組み合わせて使用される細胞傷害性薬剤;また、固体マトリックス(例えば、プレート、チップ、水簸)に付着した抗体パニングまたは他の任意の便利な技術を含むが、これらに限定されない。
【0180】
分離及び分析の技術は、フローサイトメトリーを含むが、これらに限定されず、複数のカラーチャネル、低角及び鈍角光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネルなど、さまざまの複雑さを持つことができる。
【0181】
ヨウ化プロピジウム(PI)などの死細胞に関連する色素を使用して、死細胞に対して細胞を選択できる。特定の実施形態では、細胞は、2%ウシ胎児血清(FCS)もしくは0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む培地、または他の適切な滅菌等張培地中などに収集される。
【0182】
5. 遺伝子組み換え生物
本出願は、本出願のキメラポリペプチドをコードする核酸を含む非ヒトトランスジェニック生物を提供する。本出願のトランスジェニック非ヒト生物は、本出願のキメラポリペプチドをコードする核酸を含むように遺伝子修飾されたゲノムを含む。
【0183】
6.方法
本出願は、本出願のキメラポリペプチドを発現する操作された細胞の活性を調節する方法を提供し、この方法は、本出願のキメラポリペプチドを含む操作された細胞を標的分子と接触させることを含み、前記標的分子とキメラポリペプチドのドメインが結合した後、前記キメラポリペプチドの受容体調節ドメインのプロテアーゼ切断部位の切断を誘導して細胞内ドメインを放出し、細胞内ドメインの放出が操作された細胞の活性を調節する。一例において、前記接触は、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで行われる。一例において、標的分子は、標的細胞の表面上に存在するか、不溶性基材上に固定化されているか、細胞外マトリックス中に存在するか、人工マトリックス中に存在するか、または可溶性である。一例では、細胞内ドメインの放出は、操作された細胞の増殖を調節する。一例では、細胞内ドメインの放出は、操作された細胞におけるアポトーシスを調節する。一例では、細胞内ドメインの放出は、アポトーシス以外の機構によって細胞死を誘導する。一例では、細胞内ドメインの放出は、転写調節、クロマチン調節、翻訳、輸送、または翻訳後プロセシングを通じて、操作された細胞における遺伝子発現を調節する。一例では、細胞内ドメインの放出は、操作された細胞の分化を調節する。一例では、細胞内ドメインの放出は、操作された細胞の遊走を調節する。一例において、細胞内ドメインの放出は、操作された細胞からの分子の発現及び分泌を調節する。一例では、細胞内ドメインの放出は、標的細胞または細胞外マトリックスへの操作された細胞の接着を調節する。一例では、細胞内ドメインの放出は、操作された細胞における遺伝子産物の再発現を誘導する。細胞内ドメインの放出は、操作された細胞における遺伝子産物の再発現を誘導する。一例では、遺伝子産物は、転写活性化タンパク質、転写抑制タンパク質、キメラ抗原受容体、翻訳調節因子、サイトカイン、ホルモン、ケモカイン、または抗体である。一例では、放出された転写因子は、免疫細胞、幹細胞、始原細胞または前駆細胞である操作された細胞の分化を調節する。一例では、この方法は腫瘍を治療するために使用される。
【0184】
本出願は、T細胞を活性化する方法を提供し、この方法は、本明細書に記載のT細胞(ここで、T細胞は、i)本出願に係るキメラポリペプチド;及びii)CARをコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸で遺伝子修飾されている)を固定化抗原と接触させることを含み、ここで、キメラポリペプチドのドメインが第1の標的分子に特異的な抗体を含み、前記接触によりキメラポリペプチドの細胞内ドメイン(例えば、転写活性化タンパク質)の放出及びT細胞におけるCARポリペプチドの発現が引き起こされ、CARポリペプチドは、第2の標的分子の結合後にT細胞の活性化をもたらす。一例では、前記第1の標的分子と第2の標的分子は異なる腫瘍抗原であるか、または第1の標的分子は組織特異的分子であり、第2の標的分子は腫瘍抗原である。
【0185】
本開示は、操作された細胞の活性を調節する方法を提供し、この方法は、操作された細胞を表面に固定化された抗原と接触させることを含み、操作された細胞による本開示のキメラポリペプチドの発現により、細胞内ドメインの放出及び操作された細胞活性をもたらすことができる。場合によっては、細胞内ドメインは細胞分化を調節する転写因子である。
【0186】
本開示は、操作された細胞の活性を局所的に調節する方法を提供し、この方法は、本出願を含むキメラポリペプチドを細胞内で発現させること;操作された細胞が標的分子と接触した後、細胞内ドメインを放出して操作された細胞の活性(細胞の遺伝子産物の発現、細胞の増殖、細胞のアポトーシス、細胞の非アポトーシス死、細胞の分化、細胞の脱分化、細胞の遊走、細胞からの分子の分泌、及び細胞の細胞接着)を調節することを含む。
【0187】
一例において、本出願は、腫瘍に罹患している受験者における腫瘍を治療する方法を提供し、この方法は、i)本出願のキメラポリペプチド、またはキメラポリペプチド及びその結合によって転写活性が誘発されるCARをコードするものを含むベクターを使用して、個体から得られたTリンパ球またはNKT細胞を遺伝子修飾すること(ここで、キメラポリペプチドが受験者の腫瘍細胞上の抗原に特異的である);ii)遺伝子修飾されたTリンパ球またはNKT細胞を受験者に導入することを含み、遺伝子修飾されたTリンパ球またはNKTは腫瘍細胞を認識して殺し、それによって腫瘍を治療する。
【0188】
一例において、本出願は、受験者における標的細胞の活性を阻害する方法を提供し、この方法は、本出願のキメラポリペプチドを発現する治療有効量の操作された細胞を受験者に投与することを含み、操作された細胞は、受験者における標的細胞の活性を阻害する。一例では、前記標的細胞は腫瘍細胞である。一例では、前記標的細胞は、急性骨髄腫白血病細胞、未分化リンパ腫細胞、星状細胞腫細胞、B細胞がん細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞、上衣腫細胞、食道癌細胞、神経膠芽腫細胞、神経膠腫細胞、平滑筋肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、肝癌細胞、肺癌細胞、マントル細胞リンパ腫細胞、黒色腫細胞、神経芽腫細胞、非小細胞肺癌細胞、希突起膠腫細胞、卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、末梢性T細胞リンパ腫細胞、腎臓癌細胞、肉腫細胞、胃癌細胞、肝臓癌細胞、中皮腫細胞または肉腫細胞である。一例では、前記標的細胞は低レベルの標的分子を発現する。一例において、前記操作された細胞は、前記キメラポリペプチドが標的分子に結合することによって転写を開始させて活性化されるCAR、修飾TCR、外因性サイトカイン、及び/または治療用モノクローナル抗体をさらに含む。一例では、前記キメラポリペプチドは第1の標的分子に特異的に結合し、前記CAR及び/または修飾TCRは第2の標的分子に特異的に結合し、前記標的細胞内の第1の標的分子及び第2の標的分子が不均一性腫瘍抗原を発現するか、または第1の標的分子は組織特異的分子であり、且つ第2の標的分子は腫瘍抗原である。一例では、第1の標的分子は腫瘍抗原ではないが組織特異的発現を有し、第2の標的分子は腫瘍抗原である。一例では、第1の標的分子の陽性率は、第2の標的分子の陽性率よりも低い。一例では、この方法は、操作された細胞の抗腫瘍特異性を改善することができる。
【0189】
7. 投薬
本出願のキメラポリペプチドを含む組成物は、抗原に対する免疫応答を誘導及び/または増強するため、及び/または腫瘍、病原性感染症もしくは感染症を治療及び/または予防するために、全身的または直接的に受験者に提供することができる。一例において、本出願の組成物を、対象となる器官(例えば、腫瘍の影響を受けた器官)に直接注射する。あるいは、本出願の組成物を、循環系(例えば、静脈、腫瘍血管系)への投与などによって、対象となる器官に間接的に提供してもよい。増殖及び分化剤は、インビトロまたはインビボでT細胞、NKT細胞、またはCTL細胞の産生を増加させるために、組成物の投与前、投与と同時、または投与後に提供され得る。
【0190】
本出願の組成物中の免疫細胞は、精製された細胞集団を含み得る。当業者は、蛍光活性化細胞選別(FACS)などの様々な周知の方法を使用して、集団における本出願の免疫細胞のパーセンテージを容易に決定することができる。本出願の免疫細胞を含む集団において、純度の適切な範囲は、約50%~約55%、約5%~約60%、及び約65%~約70%である。特定の実施形態では、純度は約70%~約75%、約75%~約80%、または約80%~約85%である。特定の実施形態では、純度は約85%~約90%、約90%~約95%、及び約95%~約100%である。投与量は、当業者によって容易に調整することができる(例えば、純度が低下すると、投与量を増加する必要があるかもしれない)。細胞は注射やカテーテルなどによって導入できる。
【0191】
本出願の組成物は、本出願の免疫細胞または前駆細胞及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であり得る。投与は自己由来であっても同種異系であってもよい。例えば、免疫細胞または前駆細胞は、ある受験者から得られ、同じ受験者または異なる適合する受験者に投与できる。末梢血由来免疫細胞またはその子孫(例えば、インビボ、エクスビボ、またはインビトロ源由来)は、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を含む局所注射によって投与することができる。本出願の組成物を投与する場合、それらは単位用量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、乳濁液など)で製剤化され得る。
【0192】
8. 剤形
本願のキメラポリペプチドを含む組成物は、選択されたpHに緩衝され得る、等張水溶液、懸濁液、乳剤、分散液または粘性組成物などの滅菌液体製剤の形態で都合よく提供され得る。液体製剤は一般に、ゲル、他の粘性組成物、及び固体組成物よりも調製が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射による投与がある程度より便利である。一方、粘性組成物は、特定の組織との接触時間をより長くするために、適切な粘度範囲内で配合することができる。液体または粘性組成物は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、及び適切な混合物を含む溶媒または分散媒であってもよい担体を含んでもよい。
【0193】
無菌注射用溶液は、本出願の組成物の免疫細胞を所望の量の適切な溶媒に組み込み、必要に応じて様々な量の他の成分を組み込むことによって調製することができる。このような組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤または賦形剤と混合することができる。組成物は凍結乾燥することもできる。前記組成物は、湿潤剤、分散剤または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化剤または増粘剤、保存剤、矯味剤、顔料などの補助物質を含んでもよく、これは、投与経路及び必要な製剤によって決められる。
【0194】
組成物の安定性及び無菌性を高めるために、抗菌保存剤、酸化防止剤、キレート剤及び緩衝剤を含む様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用からの保護は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などのさまざまな抗菌剤及び抗真菌剤によって確保できる。注射可能な薬剤形態の持続的な吸収は、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤の使用によってもたらすことができる。ただし、使用するいずれのビヒクル、希釈剤、または添加剤は、遺伝子修飾された免疫細胞またはその前駆細胞と適合する必要がある。
【0195】
組成物は等張性であってもよく、すなわち、それらは血液及び/または涙と同じ浸透圧を有していてもよい。組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム、またはグルコース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコールもしくは他の無機もしくは有機溶質などの他の薬学的に許容される薬剤を使用して達成することができる。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含む緩衝液に特に適している。
【0196】
必要に応じて、薬学的に許容される増粘剤を使用して、組成物の粘度を選択されたレベルに維持することができる。例えば、メチルセルロースは容易かつ経済的に入手でき、使いやすいである。他の適切な増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。増粘剤の濃度は、選択した試薬によるものである。選択した粘度を達成する量を使用することが重要である。明らかに、適切な担体及び他の添加剤の選択は、正確な投与経路及び特定の剤形の性質、例えば液体剤形(例えば、組成物を溶液、懸濁液、ゲル、または時限放出形態もしくは液体充填形態などの他の液体として配合するかどうか)に依存する。
【0197】
投与される組成物中の細胞の数は、治療される受験者に応じて変化するであろう。より効果的な細胞をより少ない数で投与できる。有効量の正確な決定は、対象の体格、年齢、性別、体重、及び対象の状態を含む各受験者の個別の要因に基づいて決定することができる。用量は、当業者であれば、本出願及び当技術分野の知識から容易に決定することができる。
【0198】
当業者は、組成物中の、及び方法で投与される細胞及び任意の添加剤、ビヒクル及び/または担体の量を容易に決定することができる。通常、任意の添加剤(1つ以上の活性細胞及び/または1つ以上の試薬以外)は、リン酸緩衝生理食塩水中に溶液の0.001重量%~50重量%の量で存在し、有効成分はマイクログラムからミリグラムで存在し、例えば、約0.0001重量%~約5重量%、約0.0001重量%~約1重量%、約0.0001重量%~約0.05重量%または約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%または約0.05重量%~約5重量%の順序で存在する。動物またはヒトに投与される任意の組成物について、以下の結果を決定することができる:例えば、マウスなどのげっ歯類などの適切な動物モデルにおける致死量(LD)及びLD50を決定することによる毒性;組成物の用量、ここで、成分の濃度及び組成物の投与時間は、適切な反応を引き起こす。
【0199】
9. 治療方法
本出願は、本出願の組成物を必要とする受験者において免疫応答を誘導及び/または増加させる方法を提供する。本出願のキメラポリペプチドを含む組成物は、受験者象における腫瘍を治療及び/または予防するために使用することができる。本出願の組成物は、腫瘍に罹患している受験者の生存を延長するために使用することができる。本出願の組成物は、免疫不全のヒト受験者などにおける病原性感染症または他の感染症を治療及び/または予防するために使用することもできる。このような方法は、既存の状態の緩和または再発の予防のいずれであっても、所望の効果を達成するために有効量の本出願の組成物を投与することを含む。治療の場合、投与される量は、所望の効果を生み出すのに有効な量である。有効量は、1回以上の投与で提供され得る。有効量は、ボーラス投与または持続注入によって提供され得る。
【0200】
一例では、本出願の組成物は、疾患の再発などにより表面抗原発現レベルが低い腫瘍細胞を有する受験者を治療するために使用することができ、ここで、受験者は腫瘍細胞が残ることをもたらす治療を受けたことがある。特定の実施形態では、腫瘍細胞は、腫瘍細胞表面上に低密度の標的分子を有する。
【0201】
一例において、本出願の組成物は、CAR単独の投与を含む免疫細胞(例えば、T細胞)を投与された、疾患再発を患う受験者を治療するために使用することができる。一例では、腫瘍細胞は、腫瘍細胞表面上に低密度の腫瘍特異的抗原を有する。このような方法は、所望の効果を達成し、既存の状態を緩和するか、または再発を予防するために有効量の本出願の組成物を投与することを含む。
【0202】
「有効量」(または「治療有効量」)は、治療後に有益なまたは所望の臨床結果を生み出すのに十分な量である。有効量は、1回以上の用量で受験者に投与され得る。治療目的の場合、有効量とは、疾患の進行を緩和、改善、安定化、逆転、もしくは遅らせる、または疾患の病理学的結果をその他の方法で軽減するのに十分な量である。有効量は一般に、医師によってケースバイケースで決定され、当業者の能力の範囲内である。有効量を達成するための適切な投与量を決定する場合、通常、いくつかの要因が考慮される。これらの要因には、受験者の年齢、性別及び体重、治療される疾患、疾患の重症度、投与される本出願の組成物の形態及び有効濃度が含まれる。
【0203】
抗原特異的T細胞を使用する養子免疫療法では、通常、約10~1010の範囲の細胞量が注入される。本出願の免疫細胞を宿主に投与し、続いて分化した後、特定の抗原に特異的なT細胞を誘導する。本出願の組成物は、静脈内、皮下、節内、腫瘍内、くも膜下腔内、胸腔内、腹腔内、及び胸腺への直接投与を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている任意の方法によって投与することができる。
【0204】
本出願は、対象における腫瘍を治療及び/または予防する方法を提供する。この方法は、有効量の本出願の組成物を腫瘍に罹患している受験者に投与することを含み得る。
【0205】
腫瘍の非限定的な例としては、血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫)、卵巣癌、乳癌、膀胱癌、脳癌、結腸癌、腸癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、膠芽腫、喉頭癌、黒色腫、神経芽腫、腺癌、神経膠腫、軟部肉腫、及びさまざまながん(前立腺癌及び小細胞肺癌を含む)が挙げられる。腫瘍の非限定的な例には、星状細胞腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、希突起膠腫、上衣腫、髄芽腫、原始神経外胚葉腫瘍(PNET)、軟骨肉腫、骨肉腫、膵管腺癌、小細胞肺腺癌及び大細胞肺腺癌、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、扁平上皮癌、気管支肺胞癌、上皮腺癌及びその肝臓転移巣、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、肝癌、胆管癌、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、横紋筋肉腫、結腸癌、基底細胞癌、汗腺癌、乳頭癌、脂腺癌、腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、精巣腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫瘍、血管芽腫、聴神経腫、希突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、白血病、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症及び重度連鎖疾患、乳管及び小葉腺癌などの乳房腫瘍、子宮頸部の扁平上皮癌及び腺癌、子宮及び卵巣の上皮癌、前立腺の腺癌、膀胱の移行性扁平上皮癌、B細胞及びT細胞リンパ腫(結節性及びびまん性)形質細胞腫、急性及び慢性白血病、悪性黒色腫、軟部組織肉腫及び平滑筋肉腫が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、腫瘍は、血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫)、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、脳癌、結腸癌、腸癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、神経膠芽腫、及び喉頭癌から選択される。一例において、本願の組成物は、肝臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、腎臓癌、甲状腺癌、胃癌、結腸直腸癌などの従来の治療手段に適さないまたは再発して難治性の固形腫瘍を治療及び/または予防するために使用することができる。一例では、腫瘍は血液腫瘍である。
【0206】
本出願の組成物の治療目標は、疾患進行の緩和もしくは逆転及び/または副作用の緩和を含み得、あるいは治療目標は再発のリスクの低減もしくは遅延を含み得る。
【0207】
本出願は、例えば免疫不全受験者における病原性感染症(例えばウイルス感染、細菌感染、真菌感染、寄生虫感染、または原虫感染)を治療及び/または予防する方法を提供する。この方法は、病原性感染症に罹患している受験者に有効量の本出願の組成物を投与することを含んでもよい。治療しやすいウイルス感染症の例には、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、及びインフルエンザウイルス感染症が含まれるが、これらに限定されない。
【0208】
「増強」という用語は、受験者または腫瘍細胞が本明細書に開示される治療に応答する能力を改善できることを指す。例えば、応答の増強は、応答性の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%以上の増加を含むことができる。本明細書で使用される場合、「増強」とは、免疫細胞療法などの治療に応答する受験者の数を増加させることを指す場合もある。例えば、応答の増強は、治療に応答する受験者の合計パーセンテージを指す場合があり、ここで、パーセンテージは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%以上である。
【0209】
10.キット
本出願は、受験者における免疫応答を誘導及び/または増強し、及び/または腫瘍もしくは病原体感染を治療及び/または予防するためのキットを提供する。一例において、キットは、有効量の本出願のキメラポリペプチドの組成物及び医薬組成物を含む。一例では、キットは滅菌容器を含み、そのような容器は、箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、小袋、ブリスターパック、または当技術分野で公知の他の適切な容器の形態であってもよい。このような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、または薬物を入れるのに適した他の材料で作ることができる。一例において、キットは、発現可能な形態で目的の抗原を認識する本出願のCARをコードする核酸分子を含み、1つ以上のベクターに含められていてもよい。
【0210】
一例において、本願の組成物及び/または核酸分子は、腫瘍、病原体、もしくは免疫疾患に罹患している、または腫瘍、病原体、もしくは免疫疾患を発症するリスクのある受験者に組成物または核酸分子を投与するための説明書(プロトコール)とともに提供される。説明書は通常、腫瘍または病原性感染症を治療及び/または予防するための組成物の使用に関する情報を含む。一例では、説明書は、治療薬の説明;腫瘍、病原性感染症、もしくは免疫疾患、またはそれらの症状の治療または予防のための投与スケジュール及び投与;注意事項;警告;適応症;不適応症;医薬品情報;副作用;動物薬理学;臨床研究;及び/または参考文献のうちの少なくとも1つを含む。これらの説明書は、容器に直接印刷することも、容器に貼り付けるラベルとして印刷することも、容器内または容器とともに別個のシート、小冊子、カード、またはフォルダーとして提供することもできる。
【0211】
11.治療用途または薬剤調製用途
本出願において、本出願に記載される方法は、治療用途として解釈することもできる。すなわち、本出願に記載される方法は、本出願の組成物、核酸分子または操作された細胞の治療用途、または治療用途に対応する薬剤調製用途とみなすことができる。一例において、本出願は、操作された細胞の活性を調節するための上記操作された細胞もしくは核酸分子の使用、または操作された細胞の活性を調節するための薬剤を調製するための上記操作された細胞の使用に関する。本出願は、操作された細胞を活性化するための上記操作された細胞もしくは核酸分子の使用、または操作された細胞を活性化するための薬剤を調製するための上記操作された細胞の使用に関する。本出願は、受験者における標的細胞の活性を阻害するための、または受験者における標的細胞の活性を阻害する薬剤を調製するための、上記操作された細胞もしくは核酸分子の使用に関する。本出願は、必要とする受験者の健康状態を改善もしくは治療するための、または必要とする受験者の健康状態を改善もしくは治療するための薬剤を調製するための、上記操作された細胞もしくは核酸分子の使用に関する。本出願で上述したものはすべて、治療用途または薬剤調製用途にも適用され得る。
【0212】
本出願は、例えば、中国特許出願公開番号CN107058354A、CN107460201A、CN105194661A、CN105315375A、CN105713881A、CN106146666A、CN106519037A、CN106554414A、CN105331585A、CN106397593A、CN106467573A、CN104140974A、CN108884459A、CN107893052A、CN108866003A、CN108853144A、CN109385403A、CN109385400A、CN109468279A、CN109503715A、CN109908176A、CN109880803A、CN110055275A、CN110123837A、CN110438082A、CN110468105A、及び例えば、国際特許出願公開番号WO2017186121A1、WO2018006882A1、WO2015172339A8、WO2018/018958A1、WO2014180306A1、WO2015197016A1、WO2016008405A1、WO2016086813A1、WO2016150400A1、WO2017032293A1、WO2017080377A1、WO2017186121A1、WO2018045811A1、WO2018108106A1、WO2018/219299、WO2018/210279、WO2019/024933、WO2019/114751、WO2019/114762、WO2019/141270、WO2019/149279、WO2019/170147A1、WO2019/210863、WO2019/219029に開示されているCAR-T細胞及びそれらの調製方法、抗体を含む。
【実施例
【0213】
実施例1:キメラポリペプチドsynJagged2EC、synEphrinB2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM)の構築
本実施例は、本出願で使用されるキメラポリペプチドの様々な例示的なキメラポリペプチドの組成を構築した(表1)。
【0214】
例えば、上記表1の断片配列は以下の通りである:antiGPC3-scFv(配列番号42)、antiEGFRvIII-scFv(配列番号43)、antiMesothelin-scFv(配列番号44)、antiFAP-scFv(配列番号45)、antiClaudin18.2-scFv(配列番号46)、antiCLL1-scFv(配列番号47)、Jagged2細胞外領域(配列番号1、2)、EphrinB2細胞外領域(配列番号号3、4)、EphrinB2-del1細胞外領域(配列番号5、6)、EphrinB2-del2細胞外領域(配列番号7、8)、EphrinB2-del3細胞外領域(配列番号9、10)、EphrinB2-del23細胞外領域(配列番号11、12)、マウスNotch1(Notch1STS)膜貫通領域(配列番号13)、マウスNotch2膜貫通領域(Notch2STS)(配列番号14)、マウスNotch3膜貫通領域(Notch3STS)(配列番号15)、マウスNotch4膜貫通領域(Notch4STS)(配列番号16)、ヒトNotch1膜貫通領域(Notch1STS)(配列番号17)、ヒトNotch2膜貫通領域(Notch2STS)(配列番号18)、ヒトNotch3膜貫通領域(Notch3STS)(配列番号19)、ヒトNotch4膜貫通領域(Notch4STS)(配列番号20)、APLP2膜貫通領域(APLP2STS)(配列番号21)、Notch1STS(配列番号22)、Notch2STS(配列番号23)、Notch3STS(配列番号24)、Notch4STS(配列番号25)、APLP2のSTS(配列番号26)、GAL4-VP64(配列番号27)、ここで、マウスNotchは英語記号Notchで表され、ヒトNotchは英語記号huNotchで表される。
【0215】
上記キメラポリペプチドをそれぞれJurkat細胞(中国科学院細胞バンクから購入)に導入した後、ビオチン標識抗原ポリペプチド+PE標識ストレプトアビジンを用いてフローサイトメトリーにより発現を検出した。その結果、上記のポリペプチドはいずれも細胞膜上で安定して発現されていることが示された。
【0216】
本実施例では、表1のGal4-VP64制御UAS-CMVプロモーター(配列番号49)にBFP(genebank ID:QJR97815.1)を挿入してキメラポリペプチドにより活性化されるレポーター遺伝子とした。本実施例では、pGKプロモーター(Addgene#79120,7721-8220 bp)によって調節される緑色蛍光タンパク質(GFP)を、陽性伝達マーカーとしてBFPの下流に挿入した。GFPタンパク質配列は、genebank ID:UDY80669.1に示す。本実施例では、UAS-CMV、BFP、pGK、GFPの核酸配列がこの順に連続してなるUAS-BFP-PGK-GFP断片をJurkat細胞に導入し、Jurkat応答性細胞を構築した。
【0217】
実施例2:synJagged2EC、synEphrinB2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM)は遺伝子発現を調節する
GPC3を標的とするキメラペプチドをそれぞれ導入したJurkat応答細胞を肝癌細胞と1:1の比率で混合し(SK-Hep1はGPC3陰性、SK-Hep1-GPC3は外因的に過剰発現されたGPC3タンパク質、HuH7及びPLC/PRF/5はGPC3陽性である)、24時間共インキュベートし、BFPをフローサイトメトリーで検出した。図1A及び1B(数値はBFP陽性細胞の割合を表す)は、標的細胞との共インキュベーション後、synNotch(プラスミドAddgene#79125から改変され、抗CD19 scFv配列を抗GPC3-scFv配列に置き換えたもの)と比較して、synJagged2EC(配列番号51)、synEphrinB2EC(配列番号52)、synEphrinB2EC-APLP2(TM)(配列番号53)は、同等または有意に増加したBFP発現レベルを誘導することを示す。
【0218】
実施例3:抗原共インキュベーション実験
コーティング群:GPC3抗原(5μg/mL、4℃で一晩)を96ウェルプレートにプレコーティングし、GPC3を標的とするキメラポリペプチドを発現するJurkat応答細胞を各ウェルに50,000個プレーティングした。溶解群:GPC3を標的とするキメラペプチドを発現するJurkat応答細胞を各ウェルに50,000個プレーティングし、GPC3抗原(5μg/mL)を培地に直接添加した。BFPを、抗原と細胞を共インキュベートしてから0、4、8、24、及び32時間後にフローサイトメトリーによって検出した。図2は、コーティングされた抗原と共インキュベートした後、各群の細胞におけるBFPの発現が同等であったことを示している。BFPは、溶解抗原とともにインキュベートされた細胞ではほとんど検出されなかった。
【0219】
実施例4.EphrinB2細胞外領域の切断(トランケート)型を含むSynEphrinB2EC-delは遺伝子発現を調節する
実施例1及び2を参照して、GPC3-synEphrinB2EC-del1(配列番号54)、GPC3-synEphrinB2EC-del2(配列番号55)、GPC3-synEphrinB2EC-del3(配列番号56)、GPC3-synEphrinB2EC-del23(配列番号57)を発現するJurkat応答細胞を構築し、GPC3刺激後のBFP発現を検出した。図3は、全長EphrinB2細胞外領域またはその切断型を含む、GPC3を標的とするキメラポリペプチドが何れも遺伝子発現を調節することを示している。発現がsynEphrinB2EC-del3またはsynEphrinB2EC-del23によって誘導された場合、漏出は有意に減少した。
【0220】
実施例5.異なる濃度での抗原刺激に対するsynEphrinB2EC及びsynEphrinB2EC-APLP2(TM)の応答
ビオチン標識GPC3抗原ポリペプチドをPBS緩衝液(10μg/mL)に溶解し、0.019531μg/mLの濃度になるようにPBSで2倍に希釈し、各濃度で50μLをストレプトアビジンでコーティングした96ウェルプレート(Thermo 15500)に添加し、GPC3抗原コーティングのために室温で2時間インキュベートした。
【0221】
GPC3を標的とするキメラペプチドを発現するJurkat応答細胞40,000個を、さまざまな濃度のGPC3抗原でコーティングしたウェルにそれぞれ添加し、37℃で24時間培養し、フローサイトメトリーでBFPを検出した(図4)。
【0222】
実施例6:synJagged2EC、synEphrinB2ECはIL12発現を調節する
UAS-CMVプロモーターの下流にIL12を挿入し、IL12の下流にpGKプロモーターによって制御されるGFPを連結し、得られたフラグメントUAS-IL12-PGK-GFPを、GPC3を標的とするキメラポリペプチドと同時にまたは連続してT細胞に導入し、次いで、肝臓癌細胞と1:1の比率で別々に混合し、24時間共インキュベートし、培養上清中のIL12をELISAによって検出した。図5は、標的細胞と共インキュベートした後、synJagged2EC及びsynEphrinB2ECがsynNotchと比較して同等または増加したIL12発現を誘導したことを示している。図6と組み合わせると、GPC3低発現細胞とインキュベートした後、synEphrinB2ECにより誘導された転写が向上したことがわかる。
【0223】
実施例7.IL12発現を調節するsynEphrinB2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM)の単一ベクター系
実施例6では、キメラポリペプチド及び調節される発現遺伝子を2つの異なるベクターに配置し、キメラポリペプチドによる標的遺伝子の調節を実現するには二重ウイルス感染が必要である。操作を簡略化し、形質導入効率を向上させるために、IL12をUAS-CMVプロモーターの下流に挿入し、キメラポリペプチド発現ベクターに組み込んでT細胞に形質導入した。図7は、単一ベクター系がsynEphrinB2EC及びsynEphrinB2EC-APLP2(TM)をsynNotchよりも高いレベルで発現することを示している。図8図6と組み合わせると、GPC3低発現細胞とインキュベートした後、synEphrinB2ECまたはsynEphrinB2EC-APLP2(TM)がsynNotchよりも高い転写を誘導したことが示される。図9は、GPC3低発現細胞とのインキュベーション後、synEphrinB2EC-del3の誘導発現レベルが低い一方、GPC3高発現細胞とのインキュベーション後、その誘導発現レベルがsynNotchに相当することを示しており、これは、synEphrinB2EC-del3が抗原の低発現と高発現をより効果的に区別できることを示している。
【0224】
実施例8.IL12発現を調節するGPC3-synEphrinB2ECはCAR-T細胞と相乗して腫瘍を治療する
実施例7で調製したIL12発現を調節するGPC3-synEphrinB2ECのT細胞及びGPC3-CAR(配列番号60)を発現するT細胞を用いたインビボ抗腫瘍実験である。
【0225】
NPGマウスの皮下にPLC/PRF/5肝癌細胞を接種し、腫瘍形成後、図に従って群に分け、対応する数の細胞を投与し、腫瘍体積と体重を測定した。図10は、IL12発現を調節するsynEphrinB2ECが、GPC3-CAR-T細胞と相乗的な抗腫瘍効果を発揮することを示す。
【0226】
実施例9:EGFRvIII-synEphrinB2ECは遺伝子発現を調節する
EGFRvIIIを標的とするキメラポリペプチド(配列番号61)を含むJurkat応答細胞を、神経膠腫細胞と1:1の比率で24時間共インキュベートし、フローサイトメトリーによってBFPを検出した(図11)。
【0227】
実施例10.CAR発現を調節するsynEphrinB2ECを含むCAR-T細胞
IL13Ra2-CAR(配列番号62)をUAS-CMVプロモーターの下流に挿入し、キメラポリペプチド発現ベクターに組み込んでT細胞に形質導入し、EGFRvIIIを標的とするキメラポリペプチドでIL13Ra-CARの発現を調節するT細胞を作製し(図12)、インビトロで14日間培養した。CAR発現及びリン酸化レベルをウェスタンブロットによって検出した(図13);細胞をそれぞれCD25、CD69、PD1、LAG3、TIM3及びCD39、CD45RA、CD62L抗体で標識し、フローサイトメトリーにより検出した(図14、15)。
【0228】
実施例11.IL13Ra2-CAR発現を調節するEGFRvIII-synEphrinB2ECを含むT細胞のインビボ及びインビトロ殺傷
標的細胞:U87、U87-10%EGFRvIII(90%U87+10%U87-EGFRvIII)、U87-50%EGFRvIII(50%U87+50%U87-EGFRvIII)、U251、U251-10%EGFRvIII(90%U251+10%U251-EGFRvIII)、U251-50%EGFRvIII(50%U251+50%U251-EGFRvIII)。
【0229】
エフェクター対標的比3:1、1:1、1:3で共培養し、上清LDHまたはxCELLigence RTCAを検出して標的細胞の死滅をリアルタイムでモニタリングした。図16は、EGFRvIII-synEphrinB2ECを発現するIL13Ra2-CAR-T細胞が、EGFRvIII抗原の不均一性を有する腫瘍を死滅させることができ、また、EGFRvIII陽性率が低い腫瘍細胞集団に対しても死滅効果を有することを示す。
【0230】
U251-EGFRvIII細胞をNPGマウスの皮下に接種し、腫瘍形成後、図に従って群に分け、対応する数のCAR-T細胞を投与し、腫瘍体積と体重を測定した。図17は、EGFRvIII-synEphrinB2ECを発現するIL13Ra2-CAR-Tのインビボ抗腫瘍効果を示す。
【0231】
実施例12.EGFRvIII-synEphrinB2ECキメラポリペプチドを発現するB7H3-CAR-T細胞のインビボ死滅
B7H3-28Z(配列番号64)、B7H3-BBZ(配列番号65)、及び376.96-28Z(配列番号66)を発現するT細胞をそれぞれ構築した。B7H3-28Zを調節するEGFRvIII-synEphrinB2ECを含むT細胞を、実施例10を参照して構築した。
【0232】
U251-EGFRvIII細胞をNPGマウスの皮下に接種し、腫瘍形成後、図に従って群に分け、対応する数の細胞を投与し、腫瘍体積と体重を測定した。図18は、ヒトB7H3のみを認識する376.96-28Z-T細胞が有意な抗腫瘍効果を有するが、ヒト及びマウスB7H3を認識するB7H3-28Z CAR-T及びB7H3-BBZ CAR-Tの治療有効性が低いことを示す。特異性の低いB7H3-28ZをEGFRvIII-synEphrinB2ECの制御下に置くことで、その特異的な殺傷効果を向上させることができる。
【0233】
実施例13.メソテリン-synEphrinB2ECを発現するClaudin18.2-CAR-T細胞のインビトロ死滅
Claudin18.2-CAR(配列番号67)の発現を調節するためにメソテリンを標的とするキメラポリペプチド(配列番号105)を発現するT細胞、またはClaudin18.2-CARとIL7及びCCL21との共発現を調節するT細胞を、実施例1及び10を参照して調製した。ここで、Claudin18.2-CAR(配列番号68)、Claudin18.2-CARとIL7(配列番号69)、Claudin18.2-CARとIL7及びCCL21(配列番号70)の発現を調節するメソテリン-synEphrinB2ECの陽性率はそれぞれ40.1%、31.1%、33.8%であった。異なるエフェクター対標的比に従って共培養し、上清中のLDHを検出した。図19及び20は、メソテリン-synEphrinB2ECを発現する第二世代及び第四世代のClaudin18.2-CAR-T細胞の両方が、抗原によって特異的に活性化され、腫瘍細胞を殺傷することができることを示す。
【0234】
実施例14.FAP-synEphrinB2ECを発現するClaudin18.2-CAR-T細胞のインビボ殺傷
Claudin18.2-CAR(配列番号67)を調節するFAP-synEphrinB2EC(配列番号106)を含むT細胞を、実施例1及び10を参照して構築した。膵臓癌PDXモデルは、腫瘍形成後、図に従って群分けし、対応する数のCAR-T細胞を投与し、腫瘍体積と体重を測定した。図21は、FAP-synEphrinB2ECを発現するClaudin18.2-CAR-T細胞が抗腫瘍性であり、マウスの体重が有意に減少しないことを示す。
【0235】
実施例15.Claudin18.2-synEphrinB2ECを発現するメソテリン-CAR-T細胞のインビトロ殺傷
メソテリン-CAR(配列番号107)を調節するためのClaudin18.2-synEphrinB2EC(配列番号108)を含むT細胞を、実施例1及び10を参照して構築した。エフェクター対標的比3:1、1:1、1:3でそれぞれ共培養し、上清のLDHを検出した。図22A及び図22Bは、Claudin18.2-synEphrinB2ECを含むメソテリン-CAR-T細胞が抗原によって特異的に活性化され、腫瘍細胞を殺傷することができることを示す。
【0236】
実施例16.CLL1-synEphrinB2ECは遺伝子発現を調節する
実施例1及び2を参照して、CLL1を標的とするキメラポリペプチド(配列番号73、110)を含むJurkat応答細胞を構築し、それぞれ1:1でAML細胞株(図23A)と24時間共インキュベートし、フローサイトメトリーによってBFPを検出した(図23B)。
【0237】
実施例17.CLL1-synEphrinB2ECを発現するNKG2D-CAR-T細胞のインビトロ殺傷
実施例10を参照して、NKG2D-CAR(配列番号109)を調節するCLL1-synEphrinB2EC(配列番号73)を含むT細胞を構築した。異なるエフェクター対標的比に従って共培養し、上清中のLDHを検出した。その結果、NKG2D-CAR-T細胞はNKG2Dリガンドを発現するTHP1及びHL-60細胞を殺傷し、CLL1-synEphrinB2ECによって誘導されたCD3Z-NKG2D-CAR-T細胞は、CLL1発現が低いTHP-1細胞に対する殺傷効果が弱く、CLL1とNKG2Dリガンドの両方の発現が高いHL-60細胞のみを殺傷することができることが示されている(図23A及び24)。この結果は、BFP誘導性発現の実験と一致しており、CLL1-synEphrinB2ECがAML細胞を標的とするNKG2D-CAR-T細胞の特異性をさらに高めることを示している。
【0238】
実施例18.インビトロで培養したNKG2D-CAR-T細胞の増殖及び活性
インビトロで培養したCAR-T細胞を細胞計数と生存率測定のために収集した。図25は、CLL1-synEphrinB2ECによって調節されたNKG2D-CARを含むT細胞がよく増殖したことを示す。
【0239】
インビトロで培養したCAR-T細胞を収集し、抗体で標識し、7-AADで染色し、フローサイトメトリーで検出した。図26は、CLL1-synEphrinB2ECによって調節されたNKG2D-CARを含むT細胞の死亡率がUTDの死亡率と基本的に同じである一方、NKG2D-CAR-T細胞の死亡率が有意に増加しており、CLL1-synEphrinB2ECによって調節されたNKG2D-CARを含むT細胞が、培養系におけるT細胞の増殖と活性を効果的に確保できることを示す。
【0240】
実施例19.他のAML治療標的を標的とするキメラポリペプチドはNKG2D-CAR発現を誘導する
実施例16~18を参照して、CD123を例として、CD123-synEphrinB2ECキメラポリペプチド(配列番号50)によってNKG2D-CAR(配列番号109)が調節されたT細胞を構築した。これは、AML細胞を標的とするNKG2D-CAR-T細胞の特異性を強化し、培養系におけるT細胞の増殖と活性を効果的に確保することができる。
【0241】
実施例20.キメラポリペプチドは治療用モノクローナル抗体の発現を誘導する
本出願のキメラポリペプチドGPC3-synJagged2EC、GPC3-synEphrinB2EC、及びGPC3-synEphrinB2EC-APLP2(TM)によって発現が調節される遺伝子は、トラスツズマブ、ベバシズマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、及びアダリムマブのコード配列で置き換えられ、GPC3陽性腫瘍細胞と共インキュベートした場合、synJagged2EC、synEphrinB2EC、synEphrinB2EC-APLP2(TM)は、synNotchと比較して誘導されたトラスツズマブ、ベバシズマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、及びアダリムマブの発現レベルが同等または有意に増加した。
【0242】
本明細書に記載される実施形態は、この実施形態を任意の単一の実施形態として、または任意の他の実施形態もしくはその一部と組み合わせて含む。さらに、本出願の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本出願にさまざまな変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も本出願の添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内に含まれることを理解されたい。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
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図11
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図15
図16
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図19
図20
図21
図22A
図22B
図23A
図23B
図24
図25
図26
【配列表】
2024523636000001.app
【国際調査報告】