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特表2024-523639ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法、およびそれから製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物
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  • 特表-ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法、およびそれから製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法、およびそれから製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 513/22 20060101AFI20240621BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20240621BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240621BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20240621BHJP
   A61P 31/06 20060101ALN20240621BHJP
   A61K 31/439 20060101ALN20240621BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20240621BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20240621BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C07D513/22 CSP
C12P1/04 Z
C07B61/00 300
A61P31/04
A61P31/06
A61K31/439
C12N1/21 ZNA
C12N15/31
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580628
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 KR2022009133
(87)【国際公開番号】W WO2023277485
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0085881
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0077357
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523184939
【氏名又は名称】エーアンドジェイ サイエンス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヒ-チョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ヨン-チン
(72)【発明者】
【氏名】キム,タヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リ,チュソク
(72)【発明者】
【氏名】クロービス,シャカ
(72)【発明者】
【氏名】チュフォリニ,マルコ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C086
4H039
【Fターム(参考)】
4B064CA02
4B064CA19
4B064CB06
4B064DA02
4B065AA19X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA05
4B065CA44
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB29
4C086NA14
4C086ZB35
4H039CA65
4H039CA71
4H039CE20
(57)【要約】
本発明は、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法、および製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を提供するものであって、本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法は、ミクロコクシン化合物にカルボン酸基が導入されることで、多様な官能基の導入が容易である。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式2で表されるミクロコクシン化合物を金属水酸化物と反応させ、下記化学式1で表されるミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造する方法。
[化学式1]
[化学式2]
(前記化学式1および2中、
~Rは、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、またはC3-C10ヘテロアリールであり、
前記R~Rのアルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、ヒドロキシ、チオ、C1-C10アルキルチオ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、ヒドロキシC1-C10アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、およびC3-C10ヘテロアリールからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよく、
は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、またはC1-C10アルコキシC1-C10アルキルであり、
は、水素またはC1-C10アルキルである。)
【請求項2】
前記R~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、前記R~Rのアルキルは、ヒドロキシ、チオ、C1-C10アルキルチオ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、ヒドロキシC1-C10アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、およびC3-C10ヘテロアリールからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよい、請求項1に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項3】
前記Rは水素またはC1-C10アルキルであり、前記RはC1-C10アルキルである、請求項1に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項4】
前記R~Rは、互いに独立して、水素または
であり、前記LはC1-C3アルキレンであり、前記Rは、水素、ヒドロキシ、チオ、C1-C4アルキルチオ、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、またはC3-C10ヘテロアリールである、請求項2に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項5】
前記R~Rは、互いに独立して、水素であるか、下記構造から選択されるものである、請求項4に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項6】
前記化学式2のミクロコクシン化合物は、下記化学式2-1-A、下記化学式2-1-B、または下記化学式2-1-Cで表されるものである、請求項1に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
[化学式2-1-A]
[化学式2-1-B]
[化学式2-1-C]
【請求項7】
前記金属水酸化物の金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、請求項1に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項8】
前記金属水酸化物は、前記化学式2のミクロコクシン化合物1モルに対して3~12モルで用いられる、請求項1に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項9】
前記化学式2のミクロコクシン化合物は、天然物から分離されたもの、または合成により製造されたものである、請求項1に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項10】
前記化学式2-1-Aのミクロコクシン化合物は、
1)BcTclE、BcTclI、BcTclJ、BcTclK、BcTclL、BcTclM、BcTclN、BcTclP遺伝子を含む発現ベクターを作製するステップと、
2)前記ステップ1)の前記発現ベクターでバシラスサチリス(Bacillus subtilis)を形質転換するステップと、により製造される、請求項6に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項11】
前記化学式2-1-Bのミクロコクシン化合物は、
1)BcTclE、BcTclO、BcTclI、BcTclJ、BcTclK、BcTclL、BcTclM、BcTclN、BcTclP遺伝子を含む発現ベクターを作製するステップと、
2)前記ステップ1)の前記発現ベクターでバシラスサチリス(Bacillus subtilis)を形質転換するステップと、により製造される、請求項6に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項12】
前記化学式2-1-Cのミクロコクシン化合物は、
1)BcTclE、BcTclD、BcTclC、BcTclI、BcTclJ、BcTclK、BcTclL、BcTclM、BcTclN、BcTclP遺伝子を含む発現ベクターを作製するステップと、
2)前記ステップ1)の前記発現ベクターでバシラスサチリス(Bacillus subtilis)を形質転換するステップと、により製造される、請求項6に記載のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法。
【請求項13】
1)BcTclE、BcTclI、BcTclJ、BcTclK、BcTclL、BcTclM、BcTclN、およびBcTclP遺伝子を含む発現ベクターを作製するステップと、
2)前記ステップ1)の前記発現ベクターでバシラスサチリス(Bacillus subtilis)を形質転換するステップと、を含む、下記化学式2-2のミクロコクシン化合物の製造方法。
[化学式2-2]
(前記化学式2-2中、
5Aは水素またはヒドロキシであり、R5Bはヒドロキシまたはメトキシである。)
【請求項14】
前記発現ベクターは、BcTclO、BcTclD、およびBcTclC遺伝子のうち一つ以上をさらに含む、請求項13に記載のミクロコクシン化合物の製造方法。
【請求項15】
下記化学式1で表される、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物。
[化学式1]
(前記化学式1中、
~Rは、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、またはC3-C10ヘテロアリールであり、
前記R~Rのアルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、ヒドロキシ、チオ、C1-C10アルキルチオ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、ヒドロキシC1-C10アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、およびC3-C10ヘテロアリールからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよい。)
【請求項16】
下記化学式2のミクロコクシン化合物を金属水酸化物と反応させ、下記化学式1のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造するステップと、
前記化学式1のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物から下記化学式3のミクロコクシン誘導体を製造するステップと、を含む、ミクロコクシン誘導体の製造方法。
[化学式3]
[化学式1]
[化学式2]
(前記化学式1~3中、
~Rは、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、またはC3-C10ヘテロアリールであり、
前記R~Rのアルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、ヒドロキシ、チオ、C1-C10アルキルチオ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、ヒドロキシC1-C10アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、およびC3-C10ヘテロアリールからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよく、
は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、またはC1-C10アルコキシC1-C10アルキルであり、
は、水素またはC1-C10アルキルであり、
およびZは、互いに独立して、単結合、-CONR11-、-NR12CO-、-COO-、-OCO-、-CR1314-、-NR15COO-、-NR16-、-S-、-O-、-SO-、または-OCONR17-であり、前記R11~R17は、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、カルボキシルC1-C10アルキル、またはC1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキルであり、
は、
または
であり、前記R’は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、またはC1-C10アルコキシC1-C10アルキルであり、前記pは、0~4の整数であり、
は、単結合、C1-C10アルキレン、C3-C10シクロアルキレン、C3-C10ヘテロシクロアルキレン、C6-C20アリーレン、またはC6-C20ヘテロアリーレンであり、
Rは、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、-B(OH)、置換もしくは非置換のハロC1-C10アルキル、置換もしくは非置換のC1-C10アルキル、置換もしくは非置換のC2-C10アルケニル、置換もしくは非置換のC3-C10シクロアルキル、置換もしくは非置換のC3-C10ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のC6-C20アリール、または置換もしくは非置換のC3-C20ヘテロアリールである。)
【請求項17】
前記化学式3中、Zは、単結合、-CONR11-、-NR12CO-、または-COO-であり、Zは、単結合、-CONR11-、-NR12CO-、-NR15COO-、-NR16-、-S-、または-OCONR17-であり、前記R11、前記R12、および前記R15~R17は、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキル、またはカルボキシルC1-C10アルキルである、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記化学式3中、A
または
であり、前記R’はC1-C10アルキルであり、前記pは0~2の整数であり、
は、単結合またはC1-C10アルキレンであり、
Rは、水素、アミノ、または-B(OH)であるか、下記構造から選択される何れか一つであり、
Xは、OまたはSであり、
は、NR31、O、S、またはSOであり、
~Xは、それぞれ独立して、NR32、O、またはSであり、
20~R22、前記R31、および前記R32は、互いに独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、C1-C10アルキルカルボニル、C1-C10アルコキシカルボニル、C1-C10アルキル、C1-C10アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヒドロキシC1-C10アルキル、ジヒドロキシC1-C10アルキル、シアノC1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキル、またはカルボキシルC1-C10アルキルである、請求項16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロコクシン化合物に基づいて製造されるミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法、およびそれから製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を提供する。
【0002】
また、本発明は、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造するための出発物質であるミクロコクシン化合物の生合成方法を提供する。
【0003】
また、本発明は、上記製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物から、抗生剤として有用なミクロコクシン誘導体を製造する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
多様な感染症に対して、人類は抗生剤を開発して対処してきた。
【0005】
しかし、近年、大部分の抗生物質に抵抗性を持つメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin resistance Staphylococcus aureus、MRSA)の出現頻度が増加している。
【0006】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、病院や医療機関などに入院している患者に院内感染を引き起こし、身体接触により人と人との間で感染されるが、手術の後に外傷から感染されたり、肺炎を引き起こしたりすると、生命に危険になるほど危ない。
【0007】
また、マイコバクテリウムツベルクローシス(M.tuberculosis)、マイコバクテリウムボビス(M.bovis)、マイコバクテリウムミクロティ(M.microti)、マイコバクテリウムアフリカヌム(M.africanum)を始めとする結核菌群により誘発される慢性感染性疾患である結核菌も、未だに克服できていない疾病の一つである。
【0008】
結核は、感染された患者の免疫状態に応じて長期間の潜伏感染状態に維持され得るが、世界人口の約30%である20億人が、潜伏感染状態にあると推定されている。結核に感染されると、相当な期間には無症状であり得るが、その後の共通の症状として、肺の急性炎症が現れることがあり、その結果、発熱および乾性咳嗽(nonproductive cough)を誘発させる。これを治療しないと、一般に深刻な合併症および死亡を招く。
【0009】
抗結核薬として、1940年代にストレプトマイシンを始め、より効果的な抗結核薬が開発されており、これにより、結核の発生および死亡が急激に減少した。
【0010】
しかし、1980年代に、従来の抗生剤ではコントロールできない耐性菌株である「多剤耐性結核(Multidrug resistance(MDR)-TB)」の発生により、多剤耐性結核の患者数が減少しておらず、深刻な保健問題となっている。
【0011】
一方、ミクロコクシンはチオペプチド天然物であって、26個の原子から構成された巨大環を有する構造的特徴を有しており、化合物の構造によって、ミクロコクシンP1(micrococcin P1(MP1))とミクロコクシンP2(micrococcin P2(MP2))に分けられる。ミクロコクシンP1は、種々のグラム陽性菌に対して効能を有すると知られているが、L11タンパク質と23S rRNAとの間に形成された複合体に結合し、タンパク質の合成を抑える作用機序で抗菌作用を現わす。
【0012】
そこで、向上した抗生効果を有するミクロコクシン誘導体を開発するための研究が行われている。
【0013】
しかしながら、ミクロコクシンは多数のチアゾール環を含有し、微生物により生成される複雑な構造を有するため、多様な官能基を導入することが容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の発明者らは、ミクロコクシンに多様な官能基を導入するために研究する中、特定のミクロコクシン化合物を金属水酸化物と反応させることで特定の官能基を切り出すことにより、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
したがって、本発明は、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造するための出発物質であるミクロコクシン化合物の生合成方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、上記製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物から、抗生剤として有用なミクロコクシン誘導体を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、優れた抗生効果を有することができるミクロコクシン誘導体を製造するための中間体として有用に使用可能な、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法を提供する。
【0019】
本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法は、下記化学式2で表されるミクロコクシン化合物を金属水酸化物と反応させ、下記化学式1で表されるミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造するステップを含む。
【0020】
[化学式1]
【0021】
[化学式2]
【0022】
上記化学式1および2中、
~Rは、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、またはC3-C10ヘテロアリールであり、
上記R~Rのアルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、ヒドロキシ、チオ、C1-C10アルキルチオ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、ヒドロキシC1-C10アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、およびC3-C10ヘテロアリールからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよく、
は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、またはC1-C10アルコキシC1-C10アルキルであり、
は、水素またはC1-C10アルキルである。
【0023】
また、本発明は、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造するための出発物質であるミクロコクシン化合物の生合成方法を提供する。
【0024】
本発明のミクロコクシン化合物の生合成方法は、下記化学式2-2のミクロコクシン化合物の製造方法であって、
1)BcTclE、BcTclI、BcTclJ、BcTclK、BcTclL、BcTclM、BcTclN、およびBcTclP遺伝子を含む発現ベクターを製作するステップと、
2)前記ステップ1)の発現ベクターでバシラスサチリス(Bacillus subtilis)を形質転換するステップと、を含む。
【0025】
[化学式2-2]
【0026】
前記化学式2-2中、R5Aは、水素またはヒドロキシであり、R5Bは、ヒドロキシまたはメトキシである。
【0027】
また、本発明は、優れた抗生効果を有することができるミクロコクシン誘導体を製造するための中間体として有用に使用可能な、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を提供し、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物は、前記化学式1で表される。
【0028】
また、本発明は、前記製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を中間体とし、抗生剤として有用なミクロコクシン誘導体を製造する方法を提供する。
【0029】
本発明のミクロコクシン誘導体の製造方法は、
前記化学式2のミクロコクシン化合物を金属水酸化物と反応させ、前記化学式1のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造するステップと、
前記化学式1のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物から下記化学式3のミクロコクシン誘導体を製造するステップと、を含む。
【0030】
[化学式3]
【0031】
前記化学式3中、
~Rは、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、またはC3-C10ヘテロアリールであり、
前記R~Rのアルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、ヒドロキシ、チオ、C1-C10アルキルチオ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、ヒドロキシC1-C10アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、およびC3-C10ヘテロアリールからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよく、
およびZは、互いに独立して、単結合、-CONR11-、-NR12CO-、-COO-、-OCO-、-CR1314-、-NR15COO-、-NR16-、-S-、-O-、-SO-、または-OCONR17-であり、R11~R17は、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、カルボキシルC1-C10アルキル、またはC1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキルであり、
は、
または
であり、R’は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、またはC1-C10アルコキシC1-C10アルキルであり、pは、0~4の整数であり、
は、単結合、C1-C10アルキレン、C3-C10シクロアルキレン、C3-C10ヘテロシクロアルキレン、C6-C20アリーレン、またはC6-C20ヘテロアリーレンであり、
Rは、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、-B(OH)、置換もしくは非置換のハロC1-C10アルキル、置換もしくは非置換のC1-C10アルキル、置換もしくは非置換のC2-C10アルケニル、置換もしくは非置換のC3-C10シクロアルキル、置換もしくは非置換のC3-C10ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のC6-C20アリール、または置換もしくは非置換のC3-C20ヘテロアリールである。
【発明の効果】
【0032】
本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法は、単純な工程および穏やかな条件下で、ミクロコクシン化合物からミクロコクシンに基づくカルボン酸基が導入された化合物を容易に製造することができる。
【0033】
本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法は、穏やかな条件で、高い純度および収率でミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物が製造可能である。
【0034】
また、本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法により製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物は、導入されたカルボン酸基に多様な官能基を容易に導入することで、多様なミクロコクシン誘導体を容易に製造することができる。つまり、本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物は、多様な官能基が導入されたミクロコクシン誘導体を製造するための中間体として非常に有用である。
【0035】
したがって、本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法は、優れた抗生効果を有するミクロコクシンに基づく誘導体の製造に非常に有用に用いられることができる。
【0036】
また、本発明によると、特定の遺伝子を含むベクターで形質転換されたバシラスサチリス(Bacillus subtilis)細胞内で、目的の物質であるミクロコクシン化合物を効率的に生合成することができ、有用遺伝子のさらなる導入により、巨大環に多様な置換基を導入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施例2のpUC19に導入された遺伝子組換えプラスミド1の模式図である。
図2】本発明の実施例2のpUC19に導入された遺伝子組換えプラスミド2の模式図である。
図3】本発明の実施例2のpUC19に導入された遺伝子組換えプラスミド3の模式図である。
図4】各プラスミドにより形質転換されたバシラス抽出物のUPLC-MS分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法について詳細に説明する。この時、用いられる技術用語および科学用語は、特に定義されない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有するものであり、下記の説明において本発明の要旨を不明瞭にする可能性のある公知機能および構成についての説明は省略する。
【0039】
本明細書で用いられた下記の用語は次のとおり定義されるが、これは例示的なものに過ぎず、本発明、出願、または用途を限定しようとするものではない。
【0040】
本明細書で用いられた用語である「本発明のミクロコクシン化合物」は、当業者が認識できるミクロコクシン化合物であれば何れも可能であり、一例として、ミクロコクシンP2の化合物である化学式11~12のそれぞれの化合物だけでなく、これらのクラスレート(clathrates)、水和物、溶媒和物、プロドラッグ、または多形体を含む意味である。
【0041】
[化学式11]
【0042】
[化学式12]
【0043】
また、本明細書において、用語「ミクロコクシン化合物」、「ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物」、「ミクロコクシン誘導体」は、その薬学的に許容可能な塩が言及されない場合、本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩も含む意味である。一実施形態において、本発明のミクロコクシン化合物は、立体異性体的に純粋な化合物(例えば、他の立体異性体が実質的にない(例えば、85%ee以上、90%ee以上、95%ee以上、97%ee以上、または99%ee以上))として存在し得る。すなわち、本発明に係る「ミクロコクシン化合物」、「ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物」、「ミクロコクシン誘導体」、またはその塩が互変異性の(tautomeric)異性体および/または立体異性体(例えば、幾何異性体(geometrical isomer)および配座異性体(conformational isomers))である場合、それらの分離された異性体および混合物のそれぞれも、本発明の化合物の範疇に含まれる。本発明の化合物またはその塩が構造内に不斉炭素(asymmetric carbon)を有している場合、それらの光学活性化合物およびラセミ混合物も、本発明の化合物の範囲に含まれる。例えば、本発明の化合物がスルホキシド(sulfoxide)(SOR)構造を有する場合、これらがキラリティー(chirality)を有することができる。本発明の化合物には、かかる異性体のRおよびS formが含まれ、RおよびS formの混合物も、本発明の化合物の範疇に含まれる。また、本発明の化合物は、Keto formまたはEnol formの何れか一つの形態で存在し得て、これらの何れの形態も本発明の化合物の範疇に含まれる。
【0044】
本明細書において、用語「置換基(substituent)」、「ラジカル(radical)」、「基(group)」、「モイエティ(moiety)」、および「断片(fragment)」は、互いに置き換えて用いることができる。
【0045】
本明細書において、「C-C」は、「炭素数がA以上B以下」であることを意味する。すなわち、「C1-C10」のように記載されている場合、これは、炭素数が1~10個であることを意味する。例えば、C1-C10アルキルは、炭素数が1~10であるアルキルを意味する。
【0046】
本明細書において用いられた用語「アルキル」は、(炭素数が特に限定されない場合)炭素数1~20、好ましくは炭素数1~15、より好ましくは炭素数1~10、望ましくは炭素数1~6を有する、飽和された直鎖状または分岐状の非環(cyclic)炭化水素を意味する。「低級アルキル」は、炭素数が1~4、または炭素数が1~6である直鎖状または分岐状のアルキルを意味する。代表的な飽和直鎖状アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシルを含み、一方、飽和分岐状アルキルは、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、および3,3-ジエチルヘキシルを含む。
【0047】
本明細書において用いられた用語「アルケニル」は、2~20個、好ましくは2~15、好ましくは2~10、より好ましくは2~6の炭素原子、および少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を含む、飽和された直鎖状または分岐状の非環炭化水素を意味する。代表的な直鎖状および分岐状の(C2-C10)アルケニルは、ビニル、アリル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブチレニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、1-へキセニル(hexenyl)、2-へキセニル、3-へキセニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3オクテニル、1-ノネニル(nonenyl)、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、および3-デセニルを含む。このようなアルケニル基は選択的に置換されてよい。
【0048】
本明細書において用いられた用語「ハロゲン」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0049】
本明細書において用いられた用語「ハロアルキル」、「ハロアルコキシ」、または「ハロアルケニル」は、それぞれ一つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル、アルコキシ、またはアルケニル基を意味する。例えば、ハロアルキルは、-CF、-CHF-、-CHF、-CBr、-CHBr、-CHBr、-CCl、-CHCl、-CHCI、-CI、-CHI、-CHI、-CH-CF、-CH-CHF、-CH-CHF、-CH-CBR、-CH-CHBr、-CH-CHBr、-CH-CCl、-CH-CHCl、-CH-CHCI、-CH-CI、-CH-CHI、-CH-CHI、およびこれらと類似のものを含む。ここで、アルキルおよびハロゲンは、上記で定義されたとおりである。
【0050】
本明細書において用いられた用語「アルコキシ」は、-OCH、-OCHCH、-O(CHCH、-O(CHCH、-O(CHCH、-O(CHCH、およびこれらと類似のものを含む-O-(アルキル)を意味し、ここで、アルキルは上記で定義されたとおりである。
【0051】
本明細書において用いられた用語「低級アルコキシ」は、-O-(低級アルキル)を意味し、ここで、低級アルキルは上記で定義されたとおりである。
【0052】
本明細書において用いられた用語「アリール」は、5~10の環原子を含有する炭素環芳香族基を意味する。代表的な例として、フェニル、トリル(tolyl)、キシリル(xylyl)、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル(anthracenyl)、フルオレニル(fluorenyl)、インデニル(indenyl)、アズレニル(azulenyl)などを含むが、これらに限定されるものではない。炭素環芳香族基は選択的に置換されてよい。
【0053】
本明細書において用いられた用語「シクロアルキル(cycloalkyl)」は、炭素および水素原子を有し、炭素-炭素多重結合を有しない単環または多環式の飽和環(ring)を意味する。シクロアルキル基の例としては、(C3-C10)シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチル)を含むが、これらに限定されるものではない。シクロアルキル基は選択的に置換されてよい。一実施形態において、シクロアルキル基は、単環または二環式の環である。
【0054】
本明細書において用いられた用語「ヘテロシクロアルキル」は、2~20個、好ましくは2~15個、好ましくは2~10個、好ましくは2~6個の炭素原子、並びに窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子、例えば、1~5個のヘテロ原子、1~4個のヘテロ原子、1~3個のヘテロ原子、または1~2個のヘテロ原子からなる、安定な3~18員の飽和または一部不飽和のラジカルを指す。例示的なヘテロシクロアルキルは、非制限的に、安定な3-15員の飽和または一部不飽和のラジカル、安定な3-12員の飽和または一部不飽和のラジカル、安定な3-9員の飽和または一部不飽和のラジカル、安定な8員の飽和または一部不飽和のラジカル、安定な7員の飽和または一部不飽和のラジカル、安定な6員の飽和または一部不飽和のラジカル、または安定な5員の飽和または一部不飽和のラジカルを含む。ヘテロシクロアルキルは、飽和または不飽和の単環、多環、またはスピロ環の形態を何れも含み、ヘテロ原子または炭素原子を介して結合されてよい。このようなヘテロシクロアルキルラジカルの例としては、オキセタン、アジリジン、ピロリジン、アゼチジン、ピペリジン、テトラヒドロピリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール、イミダゾリジン-2,4-ジオン、チアゾリジン-2,4-ジオン、ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、オクタヒドロピロロ[3,4-c]ピロール、2,7-ジアザスピロ[4.4]ノナン、2-アザスピロ[4.4]ノナンなどの非芳香族ヘテロ環の1価のラジカルを含んでよい。
【0055】
本明細書において用いられた用語「モノ-アルキルアミノ」は、-NHCH、-NHCHCH、-NH(CHCH、-NH(CHCH、-NH(CHCH、-NH(CHCH、およびこれらと類似のものを含む-NH(アルキル)を意味し、ここで、アルキルは上記で定義されたとおりである。
【0056】
本明細書において用いられた用語「ジ-アルキルアミノ」は、-N(CH、-N(CHCH、-N((CHCH、-N(CH)(CHCH)、およびこれらと類似のものを含む-N(アルキル)(アルキル)を意味し、ここで、各アルキルは、互いに独立して上記で定義されたアルキルである。
【0057】
本明細書において用いられた用語「アルキルアミノ」は、上記で定義されたモノ-アルキルアミノ、ジ-アルキルアミノ、およびトリ-アルキルアミノを含む概念である。
【0058】
本明細書において用いられた用語「カルボン酸」、「カルボキシル」、および「カルボキシ」は-COOHを意味する。
【0059】
本明細書において用いられた用語「カルボキシルアルキル」は、-CHCOOH、-CHCHCOOH、-(CHCHCOOH、-(CHCHCOOH、-(CHCHCOOH、-(CHCHCOOH、-CH(COOH)-CH、-CHCH(COOH)CH、およびこれらと類似のものを含む、一つ以上の水素原子がヒドロキシで置換されたアルキルを意味し、ここで、アルキルは上記で定義されたとおりである。
【0060】
本明細書において用いられた用語「アミノアルキル」は、-CH-NH、-(CH-NH、-(CH-NH、-(CH-NH、-(CH-NH、およびこれらと類似のものを含む-(アルキル)-NHを意味し、ここで、アルキルは上記で定義されたとおりである。
【0061】
本明細書において用いられた用語「モノ-アルキルアミノアルキル」は、-CH-NH-CH、-CH-NHCHCH、-CH-NH(CHCH、-CH-NH(CHCH、-CH-NH(CHCH、-CH-NH(CHCH、-(CH-NH-CH、およびこれらと類似のものを含む-(アルキル)-NH(アルキル)を意味し、ここで、各アルキルは、互いに独立して上記で定義されたアルキルである。
【0062】
本明細書において用いられた「ヘテロサイクル(ヘテロ環)」は、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4のヘテロ原子を含有する、飽和または不飽和の5~7員の単環、または7~10員の二環、複素環式の環を意味し、ここで、窒素および硫黄ヘテロ原子は選択的に酸化されてよく、窒素ヘテロ原子は選択的に四級化(quaternized)されてよく、前記ヘテロ環の一部がベンゼン環に融合した二環式の環を含む。ヘテロ環は、ヘテロ原子または炭素原子により付着されてよい。ヘテロ環としては、上記で定義されたヘテロアリールを含む。代表的なヘテロ環としては、モルホリニル(morpholinyl)、ピロリジノニル(pyrrolidinonyl)、ピロリジニル(pyrrolidinyl)、ピペリジニル、ヒダントイニル(hydantoinyl)、バレロラクタミル(valerolactamyl)、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル(tetrahydropyranyl)、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、およびテトラヒドロチオピラニルを含む。「フェニルに融合されたヘテロ環」は、フェニル環の二つの隣接した炭素原子に付着されたヘテロ環を意味し、ここで、ヘテロ環は上記で定義されたとおりである。
【0063】
本明細書において用いられた「ヘテロアリール」は、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を有し、単環および二環式環系を含む少なくとも一つの炭素原子を含む5~10員の芳香族ヘテロ環式(heterocycle)環である。代表的なヘテロアリールとしては、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリジル、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、ピロリル(pyrrolyl)、インドリル、オキサゾリル、ベンゾキサゾリル(benzoxazolyl)、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル(thiazolyl)、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル(pyrazolyl)、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル(cinnolinyl)、フタラジニル、キナゾリニル、ピリミジル、オキセタニル、アゼピニル、ピペラジニル、モルホリニル(morpholinyl)、ジオキサニルおよびチエタニルである。ヘテロアリール基は、単環または二環であってよい。ヘテロアリールは、ヘテロアリール環、ヘテロアリール基、またはヘテロ芳香族の用語と併用して用いられることができ、これらの用語は何れも任意に置換された環を含んでよい。
【0064】
本明細書において用いられた用語「ヒドロキシアルキル」は、-CHOH、-CHCHOH、-(CHCHOH、-(CHCHOH、-(CHCHOH、-(CHCHOH、-CH(OH)-CH、-CHCH(OH)CH、およびこれらと類似のものを含む、一つ以上の水素原子がヒドロキシで置換されたアルキルを意味し、ここで、アルキルは上記で定義されたとおりである。
【0065】
本明細書において用いられた用語「ヒドロキシアリール」は、一つ以上の水素原子がヒドロキシで置換されたアリールを意味し、ここで、アリールは上記で定義されたとおりである。
【0066】
本明細書において用いられた用語「アルキルチオ」は、-S-CH、-S-CHCH、-S-(CHCH、-S-(CHCH、-S-(CHCH、-S-(CHCH、およびこれらと類似のものを含み、ここで、アルキルは上記で定義されたとおりである。
【0067】
本明細書において用いられた用語「スルホン酸」および「スルホ」は、-S0Hを意味する。
【0068】
本明細書において用いられた用語「スルホニルアルキル」は、-SO-CH、-SO-CHCH、-SO-(CHCH、-SO-(CHCH、-SO-(CHCH、および-SO-(CHCHを含む-SO-(アルキル)を意味し、ここで、アルキルは上記で定義されたとおりである。
【0069】
本明細書において用いられた用語「スルフィニルアルキル(sulfinylalkyl)」は、-SO-CH、-SO-CHCH、-SO-(CHCH、-SO-(CHCH、-SO-(CHCH、-SO-(CHCH、およびこれらと類似のものを含む-SO-(アルキル)を意味し、ここで、アルキルは上記で定義されたとおりである。
【0070】
本明細書において用いられた用語「チオアルキル」は、-S-CH、-S-CHCH、-S-(CHCH、-S-(CHCH、-S-(CHCH、-S-(CHCH、およびこれらと類似のものを含み、ここで、アルキルは上記で定義されたとおりである。
【0071】
本明細書の用語「置換」は、化合物の炭素原子に結合された水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子が置換される位置、すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一でも異なってもよい。
【0072】
本明細書において用いられた用語「置換された」(substituted)は、置換される部分(例えば、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクルまたはシクロアルキル)の水素原子が他の原子または他の官能基(すなわち、置換基)で置き換わることを意味する。ケト置換基の場合、二つの水素原子は、二重結合によって炭素に付着される酸素で置換される。置換体に関連して別の記載がない限り、本発明の任意に置換された置換体としては、ハロゲン、ヒドロキシル、(低級)アルキル、ハロアルキル、モノ-またはジ-アルキルアミノ、アリール、ヘテロサイクル、-NO、-NRa1b1、-NRa1C(=O)Rb1、-NRa1C(=O)NRa1b1、-NRa1C(=O)ORb1、-NRa1SOb1、-ORa1、-CN、-C(=O)Ra1、-C(=O)ORa1、-C(=O)NRa1b1、-OC(=O)Ra1、-OC(=O)ORa1、-OC(=O)NRa1b1、-NRa1SOb1、-POa1、-PO(ORa1)(ORb1)、-SOa1、-S(O)Ra1、-SO(=NRa1)Rb1(例えば、sulfoximine)、-S(=NRa1)Rb1(例えば、sulfilimine)、および-SRa1が用いられてよく、ここで、Ra1とRb1は同一でも異なってもよく、互いに独立して、水素、ハロゲン、アミノ、アルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキル、アリール、またはヘテロサイクルであり、または、付着された窒素原子のようにRa1とRb1はヘテロサイクルの形態になってよい。ここで、Ra1とRb1は、結合された原子によって複数個であってよく、前記アルキルはC1-C20アルキルであり、アリールはC6-C20であり、ヘテロサイクルはC3-C20であってよい。
【0073】
本発明は、驚くべきの抗生効果を有するミクロコクシン誘導体を製造することができるミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法を提供し、
本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法は、
下記化学式2で表されるミクロコクシン化合物を金属水酸化物と反応させ、下記化学式1で表されるミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造するステップを含む。
【0074】
[化学式1]
【0075】
[化学式2]
【0076】
前記化学式1および2中、
~Rは、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、またはC3-C10ヘテロアリールであり、
前記R~Rのアルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、ヒドロキシ、チオ、C1-C10アルキルチオ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、ヒドロキシC1-C10アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、およびC3-C10ヘテロアリールからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよく、
は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、またはC1-C10アルコキシC1-C10アルキルであり、
は、水素またはC1-C10アルキルである。
【0077】
本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法において、特定のミクロコクシン化合物を金属水酸化物と反応させ、特定の官能基(
)を切断することで、ヒドロキシ基が導入されることにより製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物は、優れた活性を有する種々の官能基が容易に導入される。
【0078】
具体的に、化学式2のミクロコクシン化合物は、末端にカルボニル基を含んでおり、末端に存在するカルボニル基は、金属水酸化物の処理により、チアゾールに結合されたアミド官能基(-C(=O)-NH-)内の酸素と分子内水素結合を形成することができる。形成された水素結合は、チアゾール環に結合されたカルボニルを活性化させ、水酸化イオンの求核性添加を誘導することができる。これにより、チアゾールに結合されたアミド官能基(-C(=O)-NH-)内の窒素原子は、塩基度が著しく低くなり、非常に優れた脱離基として作用することができる。
【0079】
本発明の一実施形態において、前記R~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、前記R~Rのアルキルは、ヒドロキシ、チオ、C1-C10アルキルチオ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、ヒドロキシC1-C10アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、およびC3-C10ヘテロアリールからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよく、
より好ましくは、R~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C5アルキルであり、前記R~Rのアルキルは、ヒドロキシ、チオ、C1-C5アルキルチオ、C1-C5アルキル、C1-C5アルコキシ、ヒドロキシC1-C5アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、およびC3-C8ヘテロアリールからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよい。
【0080】
好ましくは、本発明の一実施形態において、前記Rは、水素またはC1-C10アルキルであり、Rは、C1-C10アルキルであってよい。
【0081】
好ましくは、本発明の一実施形態において、前記R~Rは、互いに独立して、水素または
であり、LはC1-C3アルキレンであり、Rは、水素、ヒドロキシ、チオ、C1-C4アルキルチオ、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、またはC3-C10ヘテロアリールであってよい。
【0082】
より好ましくは、本発明の一実施形態において、前記R~Rは、互いに独立して、水素であるか、下記構造から選択される何れか一つであってよい:
【0083】
より好ましくは、本発明の一実施形態に係る化学式2は、下記化学式2-1で表されることができる。
【0084】
[化学式2-1]
【0085】
前記化学式2-1中、
は、水素またはC1-C10アルキルであり、
は、C1-C10アルキルであり、
1a~L1cは、互いに独立して、C1-C3アルキレンであり、
4a~R4cは、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、チオ、C1-C10アルキルチオ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、ヒドロキシC1-C10アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、またはC3-C10ヘテロアリールである。
【0086】
好ましくは、前記化学式2A中、RはC1-C5アルキルであり、RはC1-C5アルキルであり、L1a~L1cは互いに独立してC1-C3アルキレンであり、R4a~R4cは、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、チオ、C1-C5アルキルチオ、C1-C5アルキル、C1-C5アルコキシ、ヒドロキシC1-C5アルキル、フェニル、ナフチル、ヒドロキシフェニル、イミダゾリル、またはインドリルであってよく、より好ましくは、前記化学式2A中、RはC1-C3アルキルであり、RはC1-C3アルキルであり、L1a~L1cは、互いに独立して、メチレン、1,1-エチレン、1,2-エチレン、1,1-プロピレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン、または2,2-プロピレンであり、R4a~R4cは、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、チオ、C1-C3アルキルチオ、C1-C3アルキル、ヒドロキシC1-C3アルキル、フェニル、ナフチル、ヒドロキシフェニル、イミダゾリル、またはインドリルであってよい。
【0087】
一具体例において、前記

、および
は、互いに独立して、下記構造から選択される何れか一つであってよい:
【0088】
本発明の一実施形態に係るミクロコクシン化合物は、下記化学式2-1-A、化学式2-1-B、または化学式2-1-Cから選択されるものであってよいが、これに限定されるものではない。
【0089】
[化学式2-1-A]
【0090】
[化学式2-1-B]
【0091】
[化学式2-1-C]
【0092】
本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法は、金属水酸化物を用いて、穏やかな条件および単純な工程によりミクロコクシン骨格にカルボン酸基を導入することで、ミクロコクシンに基づく化合物に多様な官能基を簡単に導入することができることから、優れた抗生効果を示すことができる多様なミクロコクシン誘導体を合成するにおいて非常に有用である。
【0093】
好ましくは、一実施形態に係る金属水酸化物の金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であってよいが、これに限定されるものではなく、より好ましくは、アルカリ金属であってよく、具体的にLiまたはNaであってよい。
【0094】
一実施形態に係る金属水酸化物は、ミクロコクシン化合物1モルに対して3~12モル、好ましくは5~10モルで用いられてよく、前記反応は、30~80℃で8~24時間、好ましくは40~60℃で12~24時間行われることができる。前記金属水酸化物を上述の範囲内で用いる場合、目的とするカルボン酸化合物が高い純度および収率で製造可能である。
【0095】
一実施形態に係る前記化学式2のミクロコクシン化合物は、天然物から分離されたものであっても、全合成により製造されたものであってもよく、これに限定されるものではない。
【0096】
一具体例において、前記化学式2のミクロコクシン化合物は、有機合成分野で利用可能な方法により合成されたものであってよい。本発明の化学式2のミクロコクシン化合物が合成されたものである場合、前記化学式2のミクロコクシン化合物は、当業者が認識できる方法であれば何れも利用可能である。
【0097】
一例として、山本カップリング、鈴木カップリング、スティルカップリング、薗頭カップリング、ヘックカップリング、またはバックワルドカップリングなどのアリール-アリールカップリング反応により製造されることができる。
【0098】
好ましくは、アリール-アリールカップリングは、遷移金属触媒下で行われ、鈴木カップリング反応では、Pd(0)複合体またはPd(II)塩が用いられてよく、好ましいPd(0)複合体は、Pd(PhP)のような一つ以上のホスフィンリガンドを含有してよい。他の好ましいホスフィンリガンドは、トリス(オルト-トリル)ホスフィン(Pd(o-Tol))であってよい。
【0099】
好ましいPd(II)塩は、パラジウムアセテート、すなわち、Pd(OAc)であってよい。鈴木カップリングは、塩基、例えば、炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、または、有機塩基、例えば、テトラエチルアンモニウムカーボネートの存在下で行われてよく、山本重合は、Ni(0)複合体、例えば、ビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケル(0)が用いられてよい。
【0100】
一実施形態に係る化学式2のミクロコクシン化合物の製造方法における反応時間は、反応物質、溶媒の種類と量などによって変わり、一例として、TLCなどにより出発物質が完全に消えたことを確認した後に反応を完結させる。反応が完結すると、減圧下で溶媒を蒸留させた後、カラムクロマトグラフィーなどの通常の方法により目的物を分離精製することができる。
【0101】
一具体例において、前記化学式2のミクロコクシン化合物は天然物から分離されたものであってよい。
【0102】
一具体例において、前記化学式2-1-Aのミクロコクシン化合物は、
1)BcTclE、BcTclI、BcTclJ、BcTclK、BcTclL、BcTclM、BcTclN、BcTclP遺伝子を含む発現ベクターを作製するステップと、
2)前記ステップ1)の発現ベクターでバシラスサチリス(Bacillus subtilis)を形質転換するステップと、により製造されることができる。
【0103】
一具体例において、前記化学式2-1-Bのミクロコクシン化合物は、
1)BcTclE、BcTclO、BcTclI、BcTclJ、BcTclK、BcTclL、BcTclM、BcTclN、BcTclP遺伝子を含む発現ベクターを作製するステップと、
2)前記ステップ1)の発現ベクターでバシラスサチリス(Bacillus subtilis)を形質転換するステップと、により製造されることができる。
【0104】
一具体例において、前記化学式2-1-Cのミクロコクシン化合物は、
1)BcTclE、BcTclD、BcTclC、BcTclI、BcTclJ、BcTclK、BcTclL、BcTclM、BcTclN、BcTclP遺伝子を含む発現ベクターを作製するステップと、
2)前記ステップ1)の発現ベクターでバシラスサチリス(Bacillus subtilis)を形質転換するステップと、により製造されることができる。
【0105】
前記ステップ2)の形質転換されたバシラスサチリスを発酵培養させ、それぞれのミクロコクシン化合物を生産および分泌させるステップをさらに含んでよいが、これに制限されない。
【0106】
本発明のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物の製造方法は、ミクロコクシンに基づく化合物にカルボン酸基が導入されることで、多様な官能基の導入が非常に容易であって、多様なミクロコクシン誘導体を可能とする。
【0107】
また、本発明は、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造するための出発物質であるミクロコクシン化合物の生合成方法を提供する。
【0108】
本発明に係るミクロコクシン化合物の生合成方法は、下記化学式2-2のミクロコクシン化合物を製造するものであって、
1)BcTclE、BcTclI、BcTclJ、BcTclK、BcTclL、BcTclM、BcTclN、およびBcTclP遺伝子を含む発現ベクターを作製するステップと、
2)前記ステップ1)の発現ベクターでバシラスサチリス(Bacillus subtilis)を形質転換するステップと、を含む。
【0109】
[化学式2-2]
【0110】
前記化学式2-2中、
5Aは、水素またはヒドロキシであり、R5Bは、ヒドロキシまたはメトキシである。
【0111】
一実施形態において、前記発現ベクターは、BcTclO、BcTclD、およびBcTclC遺伝子のうち一つ以上をさらに含んでよい。
【0112】
一具体例において、前記発現ベクターは、BcTclO遺伝子をさらに含んでよい。
【0113】
一具体例において、前記発現ベクターは、BcTclDおよびBcTclC遺伝子をさらに含んでよい。
【0114】
本発明の遺伝子が導入されたベクターで形質転換された形質転換体でミクロコクシン化合物の生合成が可能であり、特定の遺伝子を含むベクターで形質転換されたバシラスサチリス(Bacillus subtilis)細胞内で目的物質であるミクロコクシン化合物を効率的に生合成することができ、有用遺伝子の追加的な導入により、巨大環に多様な置換基を導入させることができる。
【0115】
また、本発明は、優れた抗生効果を有することができるミクロコクシン誘導体を製造するための中間体として有用に使用可能な、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を提供し、ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物は前記化学式1で表される。
【0116】
また、本発明は、前記製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を中間体とし、抗生剤として有用なミクロコクシン誘導体を製造する方法を提供する。
【0117】
本発明のミクロコクシン誘導体の製造方法は、
下記化学式2のミクロコクシン化合物を金属水酸化物と反応させ、下記化学式1のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物を製造するステップと、
下記化学式1のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物から下記化学式3のミクロコクシン誘導体を製造するステップと、を含む。
【0118】
[化学式3]
【0119】
[化学式1]
【0120】
[化学式2]
【0121】
前記化学式1~3中、
~Rは、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリール、またはC3-C10ヘテロアリールであり、
前記R~Rのアルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、ヒドロキシ、チオ、C1-C10アルキルチオ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、ヒドロキシC1-C10アルキル、C6-C12アリール、ヒドロキシC6-C12アリール、およびC3-C10ヘテロアリールからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよく、
は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、またはC1-C10アルコキシC1-C10アルキルであり、
は、水素またはC1-C10アルキルであり、
およびZは、互いに独立して、単結合、-CONR11-、-NR12CO-、-COO-、-OCO-、-CR1314-、-NR15COO-、-NR16-、-S-、-O-、-SO-、または-OCONR17-であり、R11~R17は、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、カルボキシルC1-C10アルキル、またはC1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキルであり、
は、
または
であり、R’は、水素、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、またはC1-C10アルコキシC1-C10アルキルであり、pは、0~4の整数であり、
は、単結合、C1-C10アルキレン、C3-C10シクロアルキレン、C3-C10ヘテロシクロアルキレン、C6-C20アリーレン、またはC6-C20ヘテロアリーレンであり、
Rは、水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、-B(OH)、置換もしくは非置換のハロC1-C10アルキル、置換もしくは非置換のC1-C10アルキル、置換もしくは非置換のC2-C10アルケニル、置換もしくは非置換のC3-C10シクロアルキル、置換もしくは非置換のC3-C10ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のC6-C20アリール、または置換もしくは非置換のC3-C20ヘテロアリールである。
【0122】
一実施形態において、前記化学式1のミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物は、下記化学式4のアミン化合物との反応により前記化学式3のミクロコクシン誘導体を製造することができる。
【0123】
[化学式4]
【0124】
前記化学式4中、A、A、Z、Z、およびRは、前記化学式3での定義と同様である。
【0125】
一実施形態に係る化学式3のミクロコクシン誘導体は、多様な細菌の死滅および抑制に効果的であり、抗生剤として非常に優れた効果を有する。
【0126】
一実施形態に係る化学式3中、前記Zは、単結合、-CONR11-、-NR12CO-、または-COO-であり、Zは、単結合、-CONR11-、-NR12CO-、-NR15COO-、-NR16-、-S-、または-OCONR17-であり、R11、R12、およびR15~R17は、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキル、またはカルボキシルC1-C10アルキルであってよい。
【0127】
一実施形態に係る化学式3中、前記Rは、水素、アミノ、-B(OH)、C3-C10ヘテロシクロアルキル、またはC3-C20ヘテロアリールであり、前記Rのヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールは、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボン酸基、-B(OH)、C1-C10アルキルカルボニル、C1-C10アルコキシカルボニル、C2-C10アルケニル、C1-C10アルキル、ハロC1-C10アルキル、C3-C10ヘテロシクロカルボニル、アリルアミノ、C1-C10アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アミノC1-C10アルキル、ヒドロキシC1-C10アルキル、ジヒドロキシC1-C10アルキル、シアノC1-C10アルキル、C1-C10アルキルアミノ、ジC1-C10アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、ジC6-C20アリールアミノ、C3-C20ヘテロアリール、ハロC6-C20アリール、ハロC1-C10アルキルC6-C20アリール、C6-C20アリール、C3-C10シクロアルキル、C3-C10シクロアルキルカルボニル、C1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキル、およびカルボン酸C1-C10アルキルからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてよい。
【0128】
好ましくは、一実施形態に係る化学式3中、前記ZおよびZは、互いに独立して、単結合、-CONR11-、-COO-、または-NR16-であり、R11およびR16は、互いに独立して、水素であってよい。
【0129】
より好ましくは、一実施形態に係る化学式3中、前記Zは、単結合、-CONR11-、または-COO-であり、Zは、単結合、-CONR11、-または-NR16-であり、R11およびR16は互いに独立して水素であってよい。
【0130】
好ましくは、一実施形態に係る化学式3中、前記A
または
であり、R’はC1-C10アルキルであり、pは0~2の整数であり、Aは単結合またはC1-C10アルキレンであり、Rは、水素、アミノ、または-B(OH)であるか、下記構造から選択される何れか一つであってよい。
(前記構造式中、
Xは、OまたはSであり、
は、NR31、O、S、またはSOであり、
~Xは、それぞれ独立して、NR32、O、またはSであり、
20~R22、R31、およびR32は、互いに独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、C1-C10アルキルカルボニル、C1-C10アルコキシカルボニル、C1-C10アルキル、C1-C10アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヒドロキシC1-C10アルキル、ジヒドロキシC1-C10アルキル、シアノC1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキル、またはカルボキシルC1-C10アルキルである。)
【0131】
より好ましくは、一実施形態において、前記Rは、水素、アミノ、または-B(OH)であるか、下記構造から選択される何れか一つであってよい:
(前記構造式中、
21およびR22は、互いに独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、C1-C10アルキルカルボニル、C1-C10アルコキシカルボニル、C1-C10アルキル、C1-C10アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヒドロキシC1-C10アルキル、ジヒドロキシC1-C10アルキル、シアノC1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキル、またはカルボン酸C1-C10アルキルであり、
31およびR32は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキルカルボニル、C1-C10アルコキシカルボニル、C1-C10アルキル、C1-C10アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヒドロキシC1-C10アルキル、ジヒドロキシC1-C10アルキル、シアノC1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキル、またはカルボン酸C1-C10アルキルである。)
【0132】
より好ましくは、前記R21およびR22は、互いに独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、C1-C10アルキル、またはC3-C10シクロアルキルであり、R31およびR32は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C1-C10アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヒドロキシC1-C10アルキル、ジヒドロキシC1-C10アルキル、シアノC1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C1-C10アルコキシカルボニルC1-C10アルキル、またはカルボン酸C1-C10アルキルであってよい。
【0133】
一実施形態に係る化学式3のミクロコクシン誘導体は、下記構造から選択されるものであってよいが、これに限定されるものではない。

【0134】
一実施形態に係る化学式3のミクロコクシン誘導体の抗生剤としての効果は、KR10-2022-0068934Aに詳細に記載されている。
【0135】
以下、本発明のミクロコクシン化合物の製造方法について具体的な一例を挙げて説明するが、このような具体的な実施例に本発明が限定されるものではない。
【0136】
[製造例1]化合物A1の製造
1ステップ:化合物a-1の製造
N-Boc-L-スレオニン(2g、9.2mmol)と(R)-2-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)プロパン-1-アミン(3.46g、11mmol、1.2eq)をジクロロメタン(40mL)に溶かした後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI、2.1g、11mmol、1.2eq)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、1.48g、11mmol、1.2eq)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、3.2ml、18.4mmol、2eq)を滴下してから常温で2時間撹拌した。ジクロロメタンで薄めた後、水で洗浄した。有機層を抽出して無水硫酸ナトリウムで脱水させた後、20%~40%のエチルアセテート/ヘキサン溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色の固体化合物a-1(2.80g、60%)を得た。
H NMR (600 MHz, CDCl): δ 7.69 (m, 4H), 7.49 - 7.44 (m, 2H), 7.43 - 7.39 (m, 4H), 6.89 (brs, 1H), 5.47 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 4.34 (qd, J = 6.4, 2.0 Hz, 1H), 4.05 - 3.97 (m, 2H), 3.34 - 3.30 (m, 1H), 3.24 (dt, J = 13.5, 4.5 Hz, 1H), 2.87 (brs, 1H), 1.48 (s, 9H), 1.18 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.10 (s, 9H), 1.06 (d, J = 6.2 Hz, 3H)、 LCMS : C2843Siに対して515.2 (M+H).
【0137】
2ステップ:化合物a-2の製造
化合物a-1(4.50g、8.8mmol、1.1eq)をジクロロメタン(40mL)/トリフルオロ酢酸(40mL)に溶かした後、常温で1時間撹拌してから減圧濃縮させた。得られた化合物をジクロロメタン(20mL)に溶かした後、2-ブロモチアゾール-4-カルボン酸(1.66g、8mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1.68g、8.8mmol、1.1eq)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.19g、8.8mmol、1.1eq)、ジイソプロピルエチルアミン(4.2mL、24mmol、3eq)を滴下してから常温で12時間撹拌した。ジクロロメタンで薄めた後、水で洗浄した。有機層を抽出して無水硫酸ナトリウムで脱水させた後、20%~50%のエチルアセテート/ヘキサン溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、黄色の固体化合物a-2(3.00g、63%)を得た。
H NMR (600 MHz, CDCl) δ 8.08 (s, 1H), 8.01 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.69 - 7.65 (m, 4H), 7.48 - 7.44 (m, 2H), 7.42 - 7.37 (m, 4H), 6.92 - 6.90 (m, 1H), 4.44 (qd, J = 6.5, 1.9 Hz, 1H), 4.39 (dd, J = 8.4, 1.9 Hz, 1H), 4.02 - 3.97 (m, 1H), 3.55 (brs, 1H), 3.29 (app.t, J = 5.3 Hz, 2H), 1.22 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.05 (s, 9H), 1.03 (d, J = 6.5 Hz, 3H)、 LCMS : C2735BrNSSiに対して604.1 (M+H).
【0138】
3ステップ:化合物a-3の製造
化合物a-2(3g、5mmol)をジクロロメタン(40mL)に溶かした後、メタンスルホニルクロリド(MsCl、1.15mL、14.9mmol、3eq)、トリエチルアミン(2.1mL、14.9mmol、3eq)を滴下してから常温で1時間撹拌した。その後、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU、11.2ml、74.8mmol、15eq)を添加して常温で2時間撹拌した。反応の終結を確認した後、ジクロロメタンで薄めた後、過飽和された塩化アンモニウムを入れて洗浄した。有機層を抽出して無水硫酸ナトリウムで脱水させた後、30%~50%のエチルアセテート/ヘキサン溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色の固体化合物a-3(2.2g、75%)を得た。
H NMR (600 MHz, CDCl): δ 8.32 (s, 1H), 8.12 (s, 1H), 7.66 - 7.64 (m, 4H), 7.48 - 7.41 (m, 2H), 7.40 - 7.37 (m, 4H), 6.53 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 6.39 (app.t, J = 5.3 Hz, 1H), 4.05 - 4.01 (m, 1H), 3.41 (ddd, J = 13.6, 5.4, 3.6 Hz, 1H), 3.33 (dt, J = 13.6, 5.9 Hz, 1H), 1.79 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 1.10 (d, J = 6.2 Hz, 3H), 0.99 (s, 9H)、 LCMS : C2733BrNSSiに対して586.1 (M+H).
【0139】
4ステップ:化合物a-4の製造
化合物a-3(2.2g、3.74mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)に溶かした後、1Mのテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(TBAF、6.74mL、6.74mmol、1.8eq)を滴下してから常温で30分間撹拌した。エチルアセテートで薄めた後、過飽和された塩化アンモニウムを入れて洗浄した。有機層を抽出して無水硫酸ナトリウムで脱水させた後、(2%~5%メタノール:98%~95%ジクロロメタン)溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、無色の液体化合物a-4(800mg、61%)を得た。
H NMR (600 MHz, CDOD): δ 8.30 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 6.71 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 3.94 - 3.85 (m, 1H), 3.30 (dd, J = 13.5, 4.7 Hz, 1H), 3.20 (dd, J = 13.4, 7.1 Hz, 1H), 1.79 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 1.16 (d, J = 6.3 Hz, 3H)、 LCMS : C1115BrNSに対して348.0 (M+H).
【0140】
5ステップ:化合物A1の製造
化合物a-4(386mg、1.12mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶かした後、デス-マーチンペルヨージナン(706mg、1.66mmol、1.5eq)を滴下した。常温で2時間撹拌した後、ジクロロメタンで薄め、過飽和された炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層を抽出して無水硫酸ナトリウムで脱水させた後、(2%~5%メタノール:98%~95%ジクロロメタン)溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色の固体化合物A1(356mg、89%)を得た。
H NMR (600 MHz, CDOD): δ 8.30 (s, 1H), 6.77 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 4.07 (s, 2H), 2.18 (s, 3H), 1.81 (d, J = 7.1 Hz, 3H)、 LCMS : C1113BrNSに対して345.9 (M+H).
【0141】
[実施例1]化合物13(ミクロコクシンP2)の製造

1ステップ:化合物3の製造
4-ブロモ-2-ホルミルチアゾール(768mg、4mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶かした後、エチニルマグネシウムブロミド溶液(0.5M in THF、16mL、8mmol)を0℃でゆっくりと滴下した。常温で30分間撹拌した後、過飽和されたアンモニウムクロリド溶液を添加して反応を中止させた。エチルアセテートで抽出した後、無水硫酸ナトリウムで脱水させて減圧濃縮した。得られた残余物を30%エチルアセテート/70%ヘキサン溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色の固体化合物を得た。得られた化合物(632mg、2.9mmol)をジクロロメタン(30mL)に溶かした後、二酸化マンガン(2.52g、29mmol)を添加してから常温で2時間撹拌した。セライトを用いてマンガン残余物を濾過した後、ジクロロメタンで抽出して無水硫酸ナトリウムで脱水させた後、減圧濃縮して褐色の固体化合物3(527mg、61%)を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 7.69 (s, 1H), 3.67 (s, 1H)、 LCMS : CBrNOSに対して215.9 (M+H).
【0142】
2ステップ:化合物5の製造
化合物4は、参考文献[Org.Lett,2020,22,6,2365-2370]に開示された方法により合成された。
【0143】
アセトニトリル(6.52mL、125mmol、2eq)をテトラヒドロフラン(120mL)に溶かした後、n-ブチルリチウム溶液(2.5M in hexanes、54.8mL、137mmol、2.2eq)を-78℃でゆっくりと滴下した。-78℃で20分間撹拌した後、テトラヒドロフラン(120mL)に溶解されている化合物4(22.3g、62.6mmol)を同温度でゆっくりと滴下させた。常温にゆっくりと温度を上げ、1時間反応させた後、1Mの濃度の塩酸を入れて反応を中止させた。エチルアセテートで薄めた後、さらに塩酸を入れてpH3に酸性化させた。有機層を抽出して無水硫酸ナトリウムで脱水させた後、減圧濃縮して褐色の固体化合物5(22.2g、97%)を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 8.29 (s, 1H), 4.71 (d, J = 17.7 Hz, 1H), 4.32 - 4.09 (m, 3H), 1.70 (broad peak, 6H), 1.54 - 1.38 (m, 7H), 1.31 - 1.06 (m, 5H)、 LCMS : C1724Sに対して366.1 (M+H).
【0144】
3ステップ:化合物6の製造
化合物5(22.3g、61.0mmol)をトルエン(300mL)と酢酸(60mL)の混合物に溶かした後、酢酸アンモニウム(47g、610mmol、10eq)を滴下した。120℃で1時間撹拌した後、常温にゆっくりと冷やした。エチルアセテートで薄めた後、過飽和された炭酸水素ナトリウム溶液と水で洗浄した。有機層を抽出して無水硫酸ナトリウムで脱水させた後、減圧濃縮して黄色のオイル化合物6(21.0g、94%)を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 7.60 (s, 1H), 5.59 - 5.51 (m, 2H), 4.81 - 4.50 (m, 2H), 4.21 - 4.10 (m, 1H), 1.67 (s, 6H), 1.48 - 1.36 (m, 6H), 1.27 - 0.96 (m, 6H)、 LCMS : C1725Sに対して365.1 (M+H).
【0145】
4ステップ:化合物7の製造
化合物6(21.0g、57.5mmol)をエタノール(300ml)に溶かした後、化合物3(22.9g、106.3mmol、1.85eq)を滴下した後、60℃で90分間撹拌した。TLCとLC Massで出発物質が消えたことを確認した後、酢酸(30% volume、90ml)を添加してから90℃で16時間反応させた。減圧濃縮してエタノールと酢酸を除去した後、ジクロロメタンで薄めた後、過飽和された炭酸水素ナトリウム溶液で反応を中止させた。有機層を抽出して無水硫酸ナトリウムで脱水させた後、減圧濃縮させた。5%~15%のエチルアセテート/ヘキサン溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、黄色の固体化合物7(16.5g、51%)を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 8.27 (s, 1H), 8.19 (s, 2H), 7.48 (s, 1H), 4.85 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 4.58 - 4.23 (broad peak, 1H), 1.83 - 1.67 (broad peak, 6H), 1.57 - 1.45 (m, 6H), 1.33 - 1.20 (m, 6H)、 LCMS : C2325BrNに対して562.0 (M+H).
【0146】
5ステップ:化合物9の製造
化合物7(1.42g、2.53mmol)をエタノール(27mL)とリン酸ナトリウムバッファー溶液(pH7、9mL)、水(4.5mL)の混合溶液に溶かした後、L-システイン(3.06g、25.3mmol、10eq)を滴下した。100℃で24時間撹拌した後、減圧濃縮してエタノールを除去し、エチルアセテートで薄めた。過剰量のシステインを除去するために1Mの濃度の塩酸で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで脱水させた。抽出して得られた溶液を減圧濃縮し、褐色オイルのチアゾリンが得られた。
【0147】
褐色オイルのチアゾリン(1.68g、2.53mmol)をジクロロメタン(30mL)に溶かした後、ブロモトリクロロメタン(1.0mL、10.12mmol、4eq)を入れた後、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(1.88mL、12.65mmol、5eq)をゆっくりと滴下させた。60℃で4時間撹拌した後、1Mの濃度の塩酸を入れて反応を中止させた。ジクロロメタンで抽出した後、水と塩水で洗浄した。抽出した有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水させた後、減圧濃縮し、5%~15%のメタノール/ジクロロメタン溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、褐色の固体化合物9(1.05g、62%)を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 8.35 - 8.05 (m, 3H), 7.89 (bs, 1H), 7.33 (s, 1H), 4.49 - 4.40 (m, 1H), 4.09 - 3.97 (m, 1H), 1.71 - 1.29 (m, 10H), 1.26 - 1.08 (m, 8H)、 LCMS : C2627BrNに対して664.0 (M+H).
【0148】
6ステップ:化合物10の製造
化合物B1は、参考文献[Org.Lett,2020,22,6,2365-2370]により製造された。化合物9(1.05g、1.57mmol)をアセトニトリル(8mL)に溶かした後、化合物B1(932mg、1.88mmol)、1-メチルイミダゾール(0.376mL、4.71mmol、3eq)、TCFH(Chloro-N,N,N,N-tetramethylformamidinium hexafluorophosphate、0.528g、1.88mmol、1.2eq)を入れて常温で30分間撹拌した。この溶液をエチルアセテートで薄めた後、水で洗浄して有機層を無水硫酸ナトリウムを用いて脱水させて減圧濃縮した。この濃縮液を(40%~90%エチルアセテート:60%~10%ヘキサン)溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色の固体化合物10(1.05g、60%)を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 8.69 (s, 1H), 8.44 (d, J = 9.5 Hz, 1H), 8.35 - 8.24 (m, 4H), 8.24 - 8.17 (m, 1H), 8.06 (s, 1H), 7.96 (s, 1H), 7.94 - 7.87 (m, 1H), 6.47 (q, 7.1 Hz, 1H), 5.41 - 5.31 (m, 1H), 4.88 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 4.78 (bs, 1H), 4.68 - 4.58 (m, 1H), 4.58 - 4.46 (m, 1H), 4.16 - 3.98 (m, 1H), 3.86 (s, 3H), 2.49 - 2.45 (m, 1H), 1.87 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 1.69 - 1.48 (m, 6H), 1.45 - 1.32 (m,3H), 1.31 - 1.08 (m, 12H), 1.03 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.95 (d, J = 6.7 Hz, 3H)、 LCMS : C4652BrN10に対して1127.1 (M+H).
【0149】
7ステップ:化合物11の製造
化合物10(200mg、0.177mmol)をテトラヒドロフラン(1mL)/水(1mL)の混合溶媒に入れて水酸化リチウム一水和物(22mg、0.531mmol、3eq)を添加した後、常温で2時間撹拌した。この溶液をジクロロメタンで薄め、1Mの塩酸溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを用いて脱水させて減圧濃縮し、カルボン酸を得た。この濃縮液をジクロロメタン(1mL)/トリフルオロ酢酸(1mL)の混合溶媒に入れ、常温で30分間撹拌した後、減圧濃縮してトリフルオロ酢酸塩を得た。この濃縮液をDMF(1mL)で薄めた後、ジフェニルホスホリルアジド(0.038mL、0.177mmol、1eq)、炭酸水素ナトリウム(0.045mL、0.531mmol、3eq)を入れ、常温で12時間撹拌した。この溶液をジクロロメタンで薄め、有機層を水で3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで脱水させて減圧濃縮した後、(2%~5%メタノール:98%~95%ジクロロメタン)溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、黄色の固体化合物11(96mg、56%)を合成した。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 8.77 (s, 1H), 8.39 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 8.22 - 8.18 (m, 2H), 8.16 - 8.09 (m, 3H), 8.01 - 7.92 (m, 3H), 7.40 (s, 1H), 6.39 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 5.27 - 5.18 (m, 2H), 4.92 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 4.67 (s, 1H), 4.47 - 4.33 (m, 1H), 2.95 (bs, 1H), 2.48 (dq, J = 13.4, 6.6 Hz, 1H), 2.22 (bs, 1H), 1.81 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.57 (d, J = 5.2 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.14 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.95 (d, J = 6.6 Hz, 3H)、 LCMS : C3736BrN10に対して955.0 (M+H).
【0150】
8ステップ:化合物12の製造
化合物11(41mg、0.043mmol)を1,4-ジオキサン(0.6mL)に溶かした後、ビス(ピナコラート)ジボロン(BPin、14.2mg、0.056mmol、1.3eq)、酢酸カリウム(KOAc、6.7mg、0.065mmol、1.5eq)、エックスホス(Xphos、3.1mg、15mol%)を添加した。添加した後、1分間窒素を入れ、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba)、4mg、10mol%)を滴下した。90℃で3時間撹拌した後、ジクロロメタンで薄めてから有機層を抽出した。抽出した有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水させてから減圧濃縮させ、固体化合物12(18mg、47%)を得た。
H NMR (400 MHz, MeOD) δ 8.40 - 8.21 (m, 4H), 8.13 (s, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 6.61 (q, J = 6.9 Hz, 1H), 5.29 - 5.19 (m, 2H), 4.75 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 4.62 - 4.50 (m, 1H), 4.30 (dd, J = 6.3, 2.9 Hz, 1H), 2.64 (dq, J = 13.4, 6.7 Hz, 1H), 1.85 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.53 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 1.13 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.99 (d, J = 6.7 Hz, 3H)、 LCMS : C3738BN10に対して921.1 (M+H).
【0151】
9ステップ:化合物13の製造
化合物12(276mg、0.3mmol)をテトラヒドロフラン(6mL)と水(1.5mL)の混合溶媒に溶かした。化合物A1(155mg、0.45mmol、1.5eq)を滴下した後、3分間窒素を供給した。その後、炭酸カリウム(124mg、0.9mmol、3eq)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh、10mol%、35mg)を入れ、さらに窒素を1分間入れた。38℃で3時間撹拌した後、減圧濃縮させた。得られた残余物を0~5%のメタノール/ジクロロメタン溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色の固体化合物13(179mg、55%)を得た。
H NMR (600 MHz, MeOD) δ 8.40 - 8.31 (m, 4H), 8.27 (s, 1H), 8.22 (s, 1H), 8.13 (s, 1H), 7.96 (s, 1H), 6.82 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 6.60 (q, J = 6.8 Hz, 1H), 5.24 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 5.22 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.78 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 4.62 - 4.55 (m, 1H), 4.30 (qd, J = 6.3, 2.8 Hz, 1H), 4.10 (d, J = 13.0 Hz, 1H), 2.63 (dq, J = 13.4, 6.7 Hz, 1H), 2.19 (s, 3H), 2.20 - 2.14 (m, 1H), 1.92 (s, 1H) 1.86 (app. d, J = 7.0 Hz, 6H), 1.55 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.18 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 1.13 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.99 (d, J = 6.7 Hz, 3H)、 LCMS : C484813に対して1142.2 (M+H).
【0152】
[実施例2]ミクロコクシン化合物の製造
1)バシラスセレウスゲノムDNAの分離
バシラスセレウス(Bacillus cereus)ATCC14579菌株の培養のために、ルリア-ベルターニ培地(Luria-Bertani、LB、Becton、Dickinso and Company、New Jersey、USA)を用いて、ルリア-ベルターニ寒天培地に形成された単一コロニーをLB broth 5mlに接種し、30℃で3日間培養した。これにより分離された菌株からゲノムDNAミニキット(genomic DNA extraction kit、promega、WI、USA)を用いてゲノムDNAを分離した。
【0153】
2)ベクターの作製
Thiocillinを生合成する遺伝子クラスターは、24個の生合成関連遺伝子が22kbにわたって構成されている。このうち8個の遺伝子を用いてミクロコクシンP2を合成できるベクターを作製し、これをバシラスサチリス(Bacillus subtilis)168で発現して物質を確保しようとした。
【0154】
ベクターの作製に用いられた生合成遺伝子は、BcTclE、BcTclI、BcTclJ、BcTclK、BcTclL、BcTclM、BcTclN、BcTclPである。BcTclIJKLMNPの場合、キシロースにより誘導可能なプロモーター(Xylose inducible promoter)に遺伝子クローニングをし、BcTclEも同様のキシロース誘導プロモーターに4個のBcTclE遺伝子を連結して組換えプラスミドを確保した。
【0155】
バシラス形質転換用のベクターは、pUC19ベクターを変形して準備した。pUC19は、バシラス形質転換に用いるためにpDG1661ベクターから導入したamyE、Cat、ThrC、塩基配列を用いて作製した。1番ベクターは、形質転換バシラスサチリスがamyE locusにインテグレーション(integration)され、クロラムフェニコールに抵抗性を有するようにデザインしたベクターを用いて生合成遺伝子を挿入した。すなわち、1番ベクターは、ミクロコクシンP2生合成遺伝子(BcTclE、J、K、L、M、N、P)がクローニングされており、2番ベクターは1番ベクターにBcTclO遺伝子を追加挿入したものである。3番ベクターは、BcTclD、BcTclC遺伝子を挿入したベクターである。
【0156】
各遺伝子は、DNAから通常の重合酵素連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)方法により増幅し、Gibson assembly(NEB、England)またはリガーゼを用いて遺伝子クローニングをした。これに使用したベクターは、pUC19をバシラスサチリス形質転換できるように変形したベクターであり、クローニングおよびベクターの変形に用いられたプライマーは、下記表1から表3に記載したとおりである。
【0157】
【表1】

【0158】
【表2】

【0159】
【表3】

【0160】
遺伝子クローニングのための宿主細胞として大腸菌(Escherichia coli)DH5α(Enzynomics、Korea)を選択した。また、遺伝子は、シーケンシングにより突然変異がないことを確認した後、次の分子クローニングを進行した。これにより、バシラスからチオペプチドを生合成できるベクターを作製した。pUC19に新たに導入された遺伝子組換えプラスミドの模式図を図1図2、および図3に示し、その塩基配列は配列表に記載した。
【0161】
3)形質転換バシラスにおける物質の合成および分析
図1図2、および図3に示された3個のプラスミドは、Bacillus subtilis 168宿主に通常知られたプロトコルを用いて形質転換した。形質転換されたバシラスサチリスを、ルリア-ベルターニ(LB)培地で、クロラムフェニコール(Chloramphenicol、Sigma、USA)10ug/ml、生合成遺伝子の発現を誘導するためにキシロース(Xylose、TCI、Tokyo)を1%となるように添加し、72時間および37℃で、200rpmを維持しながら培養した。生合成遺伝子により生産される代謝産物を確認するために、各プラスミドにより形質転換されたバシラスサチリス菌株をメタノールを用いて抽出し、UPLC-MS(Ultra Performance Liquid Chromatography Mass Spectrometry)により確認した。その結果を図4に示しており、検出された物質の質量を確認したところ、1番物質は1142.6、2番物質は1156.5、3番物質は1158.3の数値を示した。
【0162】
4)発現された代謝産物の分離精製
プラスミド1と2により形質転換されたバシラスから合成された物質をそれぞれ分離精製した。キシロースによる生合成遺伝子の発現後、細胞培養液2Lを4,000xgで20分間遠心分離して細胞を得て、上澄み液を捨て、メタノール100mLを用いて再懸濁した後、20分間常温で放置した。その後、12,000xgで15分間遠心分離して抽出液を確保した。
【0163】
確保したメタノール抽出液は、無水硫酸ナトリウムで脱水させて減圧濃縮させた。これを再びメタノール/ジクロロメタン(1/9(v/v))で溶かし、有機層を濾過した後、分取カラムクロマトグラフィー(Prep-HPLC)(5%~70%アセトニトリル(0.1%TFA):95%~30%水(0.1%TFA))を用いて化合物を得た。得られた2種の物質の構造を立証するために、600MHz核磁気共鳴装置を用いてH NMRスペクトルを次のように得た。
【0164】
図4に示された1番物質は白色の固体化合物として得られ、そのH NMRは天然物のミクロコクシンP2と同一であることを確認した。
【0165】
<1番物質> H NMR (600 MHz, MeOD) δ 8.40 - 8.31 (m, 4H), 8.26 (s, 1H), 8.21 (s, 1H), 8.14 (s, 1H), 7.95 (s, 1H), 6.83 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 6.60 (q, J = 6.8 Hz, 1H), 5.25 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 5.21 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 4.77 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 4.63 - 4.56 (m, 1H), 4.30 (qd, J = 6.3, 2.8 Hz, 1H), 4.10 (d, J = 13.0 Hz, 1H), 2.63 (dq, J = 13.4, 6.7 Hz, 1H), 2.19 (s, 3H), 2.20 - 2.14 (m, 1H), 1.93 (s, 1H) 1.85 (app. d, J = 7.0 Hz, 6H), 1.55 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.18 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.13 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.99 (d, J = 6.9 Hz, 3H)、 LCMS : C484813に対して1142.2 (M+H).
【0166】
図4に示された2番物質は黄色の固体化合物として得られ、そのH NMRは天然物のThiocillin IVと同一であることを確認した。
【0167】
<2番物質> H NMR (600 MHz, CDCl) δ 8.71 (s, 1H), 8.57(s, 1H), 8.30 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.26 (s, 1H), 8.20 (s, 1H), 8.17 - 8.14 (m, 2H), 8.08 - 7.99 (m, 3H), 7.92 (s, 1H), 7.79 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 7.74 (s, 1H), 6.89 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 6.49 (q, J = 6.9 Hz, 1H), 5.40 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 5.25 (t, J = 9.7 Hz, 1H), 4.96 (dd, J = 6.8, 3.5 Hz, 1H), 4.49 (s, 1H), 4.46 (s, 1H), 4.15(m, 1H), 2.85(s, 3H), 2.53 (ddd, J = 16.3, 13.4, 6.7 Hz, 1H), 2.28 (s, 3H), 1.86 (d, J = 7.0 Hz, 6H), 1.69 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 1.20 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.16 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 1.00 (d, J = 6.6 Hz, 3H)、 LCMS : C494913に対して1156.6.
【0168】
一方、図4に示された3番物質はUPLC-MSにより検出された質量が1158.3の数値を示し、YM-266183と質量が一致することを確認した。
【0169】
各プラスミドにより生合成された物質の構造を下記表4に記載した。
【0170】
【表4】
【0171】
前記表4の各化合物は、順にプラスミド1、2、および3により合成されたミクロコクシンP2、Thiocillin IV、およびYM-266183の構造を示す。
【0172】
プラスミド1には生合成遺伝子BcTclE、I、J、K、L、M、N、Pが挿入されており、それから天然物のミクロコクシンP2が合成された。プラスミド1はミクロコクシンP2の生合成が可能な遺伝子クラスターであり、プラスミド1を構成している生合成遺伝子により天然物のミクロコクシンP2骨格が合成可能であることが分かる。
【0173】
プラスミド2は、プラスミド1にBcTclO遺伝子が追加挿入されており、それからThiocillin IVが得られた。すなわち、ミクロコクシンP2生合成遺伝子とBcTclO遺伝子をともに挿入する場合、選択的にO-MethylationされたThiocillin IVを合成できることが分かる。
【0174】
プラスミド3は、プラスミド1にBcTclD、BcTclC遺伝子が追加挿入されており、これにより、Valine hydroxylationされた物質、YM-266183が得られた。すなわち、ミクロコクシンP2遺伝子とBcTclD、C遺伝子をともに発現するバシラスを培養、分離精製することで、YM-266183化合物を得ることができることが分かる。
【0175】
各プラスミドの例示から確認できるように、生合成遺伝子は、TclO、あるいはTclD、Cと天然物のミクロコクシンP2との組み合わせにより、巨大環の内部の生合成酵素による変形を調節することができる。
【0176】
[実施例3]ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物C-1の製造
ミクロコクシンP2(14mg、0.012mmol)をテトラヒドロフラン(150μL)/水(150μL)の混合溶媒に入れ、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)(4.0mg、0.096mmol)を添加した後、50℃で17時間撹拌した。撹拌完了後、前記反応混合物をジクロロメタンで薄め、1Mの塩酸溶液で洗浄した後、超溶媒(クロロホルム:プロパノール=4:1(v:v))で抽出した。その後、無水硫酸ナトリウムを用いて脱水させた後、分取カラムクロマトグラフィー(Prep-HPLC)(5%~70%アセトニトリル(0.1%TFA):95%~30%水(0.1%TFA))により分離し、薄い黄色の固体化合物C-1(7.4mg、61%)を得た。
H NMR (400 MHz, DMSO, ppm) δ 9.55 (s, 1H), 8.59 - 8.51 (m, 2H), 8.50 - 8.35 (m, 3H), 8.35 - 8.27 (m, 2H), 8.28 - 8.17 (m, 2H), 8.13 (s, 1H), 7.88 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.47 (q, J = 6.5 Hz, 1H), 5.20 - 4.96 (m, 2H), 4.73 - 4.63 (m, 1H), 4.42 - 4.33 (m, 1H), 4.04 - 3.96 (m, 1H), 1.76 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 1.38 (d, J = 6.0 Hz, 3H), 1.00 (dd, J = 25.3, 6.1 Hz, 6H), 0.86 (d, J = 6.4 Hz, 3H)、 LCMS : C413711に対して1004.2 (M+H).
【0177】
[実施例4]ミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物C-2の製造
前記実施例3のミクロコクシンP2の代わりにThiocillin IVを使用したことを除き、実施例3と同様に反応させてカルボン酸化合物C-2を製造し、これをLCMSにより確認した。LCMS: C424011 1018.2 (M+H
【0178】
[実施例5]ミクロコクシン誘導体9の製造
前記実施例3で製造されたミクロコクシンに基づくカルボン酸化合物C-1(30mg、0.03mmol)をジメチルホルムアミド(0.3mL)に溶かした後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジアミド(7.5mg、0.039mmol、1.3eq)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(5.3mg、0.039mmol、1.3eq)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(21μL、0.12mmol、4eq)、アミン化合物z-1(8.6mg、0.036mmol、1.2eq)を入れ、常温で12時間撹拌した。撹拌完了後、この溶液をジクロロメタンで薄め、有機層を水で3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで脱水させて減圧濃縮した。得られた残余物を(3~5%メタノール:97~95%ジクロロメタン)溶液でカラムクロマトグラフィーにより分離し、白色の固体のミクロコクシン誘導体9(15.1mg、41%)を得た。
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 8.58 (s, 1H), 8.39 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 8.29 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.26 - 8.15 (m, 4H), 8.14 - 8.09 (m, 2H), 8.01 - 7.94 (m, 4H), 7.40 (t, J = 6.2 Hz, 1H), 6.42 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 5.88 (s, 1H), 5.29 - 5.18 (m, 2H), 4.87 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 4.64 (s, 1H), 4.50 (s, 1H), 4.40 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 3.93 (s, 2H), 3.63 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 3.32 - 3.22 (m, 2H), 2.96 (s, 1H), 2.54 - 2.42 (m, 1H), 1.92 - 1.69 (m, 7H), 1.57 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 1.23 - 1.16 (m, 5H), 1.15 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.97 (d, J = 6.6 Hz, 3H) 、 LCMS : C51511510に対して1226.23 (M+H).
【配列表フリーテキスト】
【0179】
配列表は別途ファイルで添付している。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2024523639000001.app
【国際調査報告】