(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ガラス溶融容器の壁を冷却する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/44 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
C03B5/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580747
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 US2022034644
(87)【国際公開番号】W WO2023278232
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ラロンゼ ピエール ルネ ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】リーゲル ケヴィン スコット
(57)【要約】
ガラス製造装置が溶融容器を含み、溶融容器が、その1又は2以上の壁に接して配置された1又は2以上の冷却パネルを備える。各冷却パネルは、冷却流体が流れる通路を内部に含み、冷却流体は、溶融容器壁から熱を抽出して溶融容器の温度を低下させることにより、溶融容器壁の劣化を抑えて溶融容器の寿命を延ばす。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製造装置であって、
耐火性ガラス接触壁を含む溶融容器と、
入口ポートを通じて冷却流体を受け取り、出口ポートを通じて前記冷却流体を排出するように構成された冷却パネルと、
を備え、前記冷却パネルは、該冷却パネルに接触する圧力ボルトによって、前記耐火性ガラス接触壁に接触して該耐火性ガラス接触壁に対して付勢される、
ことを特徴とするガラス製造装置。
【請求項2】
前記入口ポートは前記冷却パネルの下半分に配置され、前記出口ポートは前記冷却パネルの上半分に配置される、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項3】
前記耐火性ガラス接触壁は、前記溶融容器の側壁を含む、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項4】
前記冷却パネルは、該冷却パネル内で前記入口ポートと前記出口ポートとの間に延びる蛇行通路を含む、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項5】
前記冷却パネルはベース部分及びカバー部分を含み、前記蛇行通路は前記ベース部分内に機械加工され、前記カバー部分は前記ベース部分に取り付けられる、
請求項4に記載のガラス製造装置。
【請求項6】
前記ベース部分は、前記耐火性ガラス接触壁に接触する、
請求項5に記載のガラス製造装置。
【請求項7】
前記ベース部分は、該ベース部分内に形成された凹部を含む裏面を含み、前記冷却パネルと前記耐火性ガラス接触壁との間の前記凹部内に、適合する熱伝導材料が配置される、
請求項6に記載のガラス製造装置。
【請求項8】
前記冷却パネルは、少なくとも1つの熱電対を含む、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項9】
前記溶融容器は、前記耐火性ガラス接触壁に接触して該耐火性ガラス接触壁に対して付勢された複数の冷却パネルを含み、該複数の冷却パネルには、単一の冷却流体ヘッダを通じて前記冷却流体が供給される、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項10】
各冷却パネルには、前記冷却流体ヘッダから冷却液ラインを通じて供給が行われ、各冷却パネルの前記冷却液ラインは遮断弁を含む、
請求項9に記載のガラス製造装置。
【請求項11】
前記冷却パネルに取っ手が設けられている、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項12】
前記圧力ボルトは、前記筋かい部材と前記冷却パネルとの間に配置され、前記圧力ボルトは前記筋かい部材に結合される、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項13】
前記耐火性ガラス接触壁に接触して該接触壁に対して付勢された金属格子パネルをさらに備える、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項14】
前記金属格子パネルは、前記冷却パネルの下方に配置される、
請求項13に記載のガラス製造装置。
【請求項15】
前記金属格子パネルは、前記金属格子の下方に配置された耐火ブロックによって少なくとも部分的に支持される、
請求項14に記載のガラス製造装置。
【請求項16】
前記溶融容器は、前記耐火性ガラス接触壁に接触して前記耐火性ガラス接触壁に対して付勢された第2の金属格子パネルを含み、該第2の金属格子パネルは、前記冷却パネルの上方に配置される、
請求項15に記載のガラス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年7月1日に出願された米国仮特許出願シリアル番号第63/217,519号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものであり、この文献の内容は信頼に足るものであってその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、一般にガラス製造装置及び方法に関し、具体的には、ガラス溶融容器の寿命を延ばすために溶融容器の壁を冷却するガラス製造装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
溶融容器を高い溶融ガラス流量で長時間にわたって稼動させ続ける必要性は、溶融容器の構造に使用される耐火材料に負担をかけている。典型的な溶融容器は、耐火材料(例えば、耐火レンガ及び/又はブロック)の層によって形成される。溶融容器に収容された溶融ガラスは、例えば流動浸食(flow erosion)、並びに溶融ガラスの高温及び腐食性によって、時間の経過と共に耐火材料を侵食することがある。最終的には耐火材料が摩耗し、溶融容器が損なわれ、新たな溶融容器を構築しなければならなくなる。構造を再構築すると長時間にわたって生産が損なわれ、コストがかかることもある。従って、溶融容器の劣化を遅くすることによって稼動停止及び再構築をできるだけ遅らせたいとの要望がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下、詳細な説明で説明するいくつかの実施形態の基本的な理解をもたらすために本開示の概要を示す。添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば、これらの及びその他の特徴、態様及び利点がより良く理解される。
【0005】
耐火性ガラス接触壁を含む溶融容器と、入口ポートを通じて冷却流体を受け取り、出口ポートを通じて冷却流体を排出するように構成された冷却パネルとを備え、冷却パネルが、冷却パネルに接触する圧力ボルトによって、耐火性ガラス接触壁に接触して耐火性ガラス接触壁に対して付勢される、ガラス製造装置を開示する。
【0006】
入口ポートは冷却パネルの下半分に配置することができ、出口ポートは冷却パネルの上半分に配置することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、耐火性ガラス接触壁が溶融容器の側壁を含む。
【0008】
様々な実施形態では、冷却パネルが、冷却パネル内で入口ポートと出口ポートとの間に延びる蛇行通路を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、冷却パネルがベース部分及びカバー部分を含み、蛇行通路がベース部分内に機械加工され、カバー部分が、例えば1又は2以上の締結具を使用してベース部分に取り付けられるが、さらなる実施形態では、カバー部分を溶接などによってベース部分に恒久的に取り付けることができる。ベース部分は、耐火性ガラス接触壁に接触して配置することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、ベース部分が、その内部に形成された凹部を含む裏面を含む。冷却パネルと耐火性ガラス接触壁との間の凹部内には、適合する熱伝導材料を配置することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、冷却パネルが少なくとも1つの熱電対を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、溶融容器が、耐火性ガラス接触壁に接触して耐火性ガラス接触壁に対して付勢された複数の冷却パネルを含む。複数の冷却パネルには、単一の冷却流体ヘッダを通じて冷却流体を供給することができる。各冷却パネルには、冷却流体ヘッダから冷却液ラインを通じて供給を行うことができ、各冷却パネルの冷却液ラインは遮断弁を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、冷却パネルに、冷却パネルの設置に役立つ少なくとも1つのハンドルを設けることができる。
【0014】
圧力ボルトは、筋かい部材と冷却パネルとの間に配置することができ、圧力ボルトは筋かい部材に結合される。いくつかの実施形態では、複数の圧力ボルトを使用して冷却パネルを溶融容器に固定することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、ガラス製造装置が、耐火性ガラス接触壁に接触して耐火性ガラス接触壁に対して付勢された金属格子パネルをさらに備えることができる。例えば、金属格子パネルは、冷却パネルの下方に配置することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、金属格子パネルを、金属格子パネルの下方に配置された1又は2以上の耐火ブロックによって少なくとも部分的に支持することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、溶融容器が、耐火性ガラス接触壁に接触して耐火性ガラス接触壁に対して付勢された第2の金属格子パネルを含むことができ、第2の金属格子パネルは冷却パネルの上方に配置される。
【0018】
以下の詳細な説明には、本明細書に開示する実施形態のさらなる特徴を示しており、当業者には、特許請求の範囲及び添付図面を含むこの説明からこれらの特徴が部分的に明らかになるであろう。上述した概要及び以下の詳細な説明には、いずれも実施形態の性質及び特性を理解するための概説又は枠組みを示すように意図された実施形態を示す。添付図面は、さらなる理解をもたらすように含められ、本明細書に組み込まれてその一部を構成する。これらの図面は、本開示の様々な実施形態を示し、明細書と共に様々な実施形態の原理及び動作を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】剛性外骨格(rigid exoskeleton)内に配置された例示的な溶融容器の斜視図である。
【
図5】
図2の溶融容器の例示的な下側耐火側壁の断面図である。
【
図6】本明細書に開示する実施形態による、
図6の線5-5に沿って見た例示的な冷却パネルの分解断面図である。
【
図7】バッフルなどの複数の壁によって形成された蛇行通路が内部に延びる様子を示す、
図5の冷却パネルのベース部分の上面図である。
【
図8】
図5の冷却パネルのカバー部分の上面図である。
【
図9】
図4に示す、溶融容器の下側耐火側壁に接して配置される冷却パネルの側面図である。
【
図10】本明細書において図示し説明する1又は2以上の実施形態による、溶融容器又はそのコンポーネントを剛性外骨格に結合する圧力ボルトの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に例を示す本開示の実施形態を詳細に参照する。図面全体を通じ、可能な場合には常に同じ参照番号を使用して同一又は同様の部品を示す。しかしながら、本開示は多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に示す実施形態に限定されるものとして解釈すべきではない。
【0021】
本明細書で使用する「約(about)」という用語は、数量、サイズ、組成、パラメータ、並びにその他の量及び特性が厳密なものではなく又は厳密である必要がなく、必要に応じて公差、換算係数、四捨五入及び測定誤差など、並びに当業者に周知の他の因子を反映した近似的なもの及び/又は大きめ又は小さめのものであることを意味する。
【0022】
本明細書では、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして範囲を表していることがある。このような範囲を表す場合、別の実施形態は一方の特定の値から他方の特定の値までを含む。同様に、「約」という先行詞を使用して値を近似値として表している場合、この値は別の実施形態を形成するものであると理解されるであろう。さらに、各範囲の端点は、他方の端点に関連して意味を成すことも、他方の端点とは無関係に意味を成すこともあると理解されるであろう。
【0023】
本明細書で使用する、上、下、右、左、前、後、上部、底部などの方向を示す用語は図を参照して使用するものにすぎず、絶対的な向きを意味するものではない。
【0024】
別途明示していない限り、本明細書に示すいずれかの方法については、決してそのステップを特定の順序で実行する必要があるものと解釈すべきではなく、いずれかの装置についても、決して特定の向きが必要であると解釈すべきではない。従って、方法の請求項においてそのステップが従うべき順序を実際に記載していない場合、又はいずれかの装置の請求項において個々のコンポーネントに対する順序又は向きを実際に記載していない場合、或いは特許請求の範囲又は本明細書においてステップを特定の順序に限定すべき旨を別途具体的に示していない場合、或いは装置のコンポーネントに対する特定の順序又は向きを記載していない場合は、いかなる点においても順序又は向きが暗示されるものではない。このことは、ステップの配列、動作フロー、コンポーネントの順序又はコンポーネントの向きに関する論理事項、文法構成又は句読点から導出される一般的意味、及び本明細書で説明する実施形態の数又はタイプを含む、解釈のためのあらゆる可能な非明示基準(non-express basis)に当てはまる。
【0025】
本明細書で使用する単数形の英文不定冠詞(「a」、「an」)及び英文定冠詞(「the」)は、文脈によって別途明確に決定付けられない限り複数形の照応を含む。従って、例えば「あるコンポーネント(a component)」という表現は、文脈によって別途明確に決定付けられない限り2又は3以上のこのようなコンポーネントを有する態様を含む。
【0026】
本明細書で使用する「例示的な」、「例」又はその様々な形態は、一例、事例又は例示の役割を果たすことを意味する。本明細書で「例示的な」又は「例」として説明する態様又は設計は、いずれも他の態様又は設計よりも好ましい又は有益なものとして解釈すべきではない。さらに、例は明確性及び理解を目的として示すものにすぎず、開示する主題又は本開示の関連部分をいずれかの形で限定又は制約することを意味するものではない。様々な範囲の無数の追加例又は代替例を提示することもできたが、簡潔にするために省略した。
【0027】
本明細書で使用する「備える、含む(comprising、including)」という用語、及びその変化形は、別途示していない限り同義的かつ包括的なものとして解釈されたい。「備える」、「含む」という移行句の後の要素のリストは非排他的リストであり、従ってリスト内に具体的に記載しているもの以外の要素が存在することもできる。
【0028】
本明細書で使用する「実質的な(substantial)」、「実質的に(substantially)」という用語、及びその変化形は、説明する特徴がある値又は記載に等しいこと又はほぼ等しいことを表すものである。例えば、「実質的に平面的な」表面は、平面的又はほぼ平面的な表面を表すように意図される。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいこと又はほぼ等しいことを表すように意図される。いくつかの実施形態では、「実質的に」が、互いの約5%以内又は互いの約2%以内などの、互いの約10%以内の値を表すことができる。
【0029】
本明細書で使用する「耐火物(refractory)」は、538℃を上回る環境に曝される構造、又はシステムのコンポーネントへの適用を可能にする化学的及び物理的特性を有する非金属材料を意味する。
【0030】
図1に、例示的なガラス製造装置10を示す。いくつかの実施形態では、ガラス製造装置10が、溶融容器14を含むガラス溶融炉12を含むことができる。ガラス溶融炉12は、溶融容器14に加えて、原料を加熱して原料を溶融ガラスに変換するように構成された発熱体(例えば、燃焼バーナー及び/又は電極)などの1又は2以上のさらなるコンポーネントを任意に含むことができる。例えば、溶融容器14は、燃焼バーナーと、原料に電流を流すことによって原料のジュール加熱を介して電流がエネルギーを加える直接加熱との両方によって原料にエネルギーが加えられる電気ブースト型溶融容器(electrically-boosted melting vessel)であることができる。
【0031】
さらなる実施形態では、ガラス溶融炉12が、溶融容器からの熱損失を抑える他の熱管理装置(例えば、隔離コンポーネント)を含むことができる。さらなる実施形態では、ガラス溶融炉12が、原料のガラス融液への溶融を容易にする電子及び/又は電気機械装置を含むことができる。ガラス溶融炉12は、支持構造(例えば、支持シャーシ、支持部材など)又はその他のコンポーネントを含むこともできる。
【0032】
溶融容器14は、例えばアルミナ又はジルコニアを含む耐火性セラミック材料などの耐火性材料から形成することができるが、耐火性セラミック材料は、代わりに又はいずれかの組み合わせで使用される、イットリウム(例えば、イットリア、イットリア安定化ジルコニア、リン酸イットリウム)、ジルコン(ZrSiO4)又はアルミナ-ジルコニア-シリカ、或いは酸化クロムなどの他の耐火性材料を含むこともできる。いくつかの実施例では、溶融容器14を耐火セラミックレンガから構築することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、ガラス溶融炉12を、例えばガラスリボンなどのガラス物品を製造するように構成されたガラス製造装置のコンポーネントとして組み込むことができるが、さらなる実施形態では、ガラス製造装置を、他の多くのガラス物品も想定されるが、ガラスロッド、ガラス管、ガラスエンベロープ(例えば、電球などの照明装置用のガラスエンベロープ)及びガラスレンズなどの他のガラス物品を制限なく形成するように構成することもできる。いくつかの例では、スロットドロー装置、フロートバス装置、ダウンドロー装置(例えば、フュージョンダウンドロー装置)、アップドロー装置、押圧(pressing)装置、圧延(rolling)装置、管引抜(tube drawing)装置、又は本開示の恩恵を受ける他のいずれかのガラス製造装置を含むガラス製造装置に溶融炉を含めることができる。一例として、
図1には、ガラスリボンをその後に個々のガラスシートに加工するために又はガラスリボンをスプール上に巻くためにガラスリボンをフュージョンドロー(fusion drawing)するフュージョンダウンドロー式ガラス製造装置10のコンポーネントとしてのガラス溶融炉12を概略的に示す。本明細書で使用するフュージョンドロー法は、溶融ガラスを成形体の収束面(converging surface)上に流し、結果として得られる溶融材料の2つの流れが収束線に沿って成形体の底部で交わり又は「融合」するようにすることを含む。
【0034】
任意に、ガラス製造装置10は、溶融容器14の上流に配置された上流ガラス製造装置16を含むことができる。いくつかの例では、上流ガラス製造装置16の一部又は全体をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。
【0035】
図1に示す実施形態に示すように、上流ガラス製造装置16は、原料貯蔵ビン18と、原料送出装置20と、原料送出装置20に接続されたモータ22とを含むことができる。原料貯蔵ビン18は、矢印26で示すように1又は2以上の供給ポートを通じてガラス溶融炉12の溶融容器14に供給できる量の原料24を貯蔵するように構成することができる。通常、原料24は、1又は2種類以上のガラス形成金属酸化物及び1又は2種類以上の変性剤を含む。いくつかの例では、原料送出装置20を、原料貯蔵ビン18から溶融容器14に所定量の原料24を送出するようにモータ22によって駆動することができる。さらなる例では、モータ22が、溶融ガラスの流れ方向に対して溶融容器14から下流で検知された溶融ガラスのレベルに基づいて原料24を制御された速度で導入するように原料送出装置20を駆動することができる。その後、溶融容器14内の原料24を加熱して溶融ガラス28を形成することができる。通常、最初の溶融ステップでは、原料が、例えば様々な「砂」などの粒子状物質として溶融容器に加えられる。原料24は、以前の溶融及び/又は成形作業からのくずガラス(すなわち、カレット)を含むこともできる。通常は、燃焼バーナーを使用して溶融プロセスを開始する。電気ブースト式溶融プロセスでは、原料の電気抵抗が十分に低下すると、原料に接触して配置された電極間に電位を発生させることによって電気ブーストを開始することができ、この結果、通常は溶融状態に入る又は溶融状態にある原料を通じて電流が確立される。本明細書では、結果として得られる溶融材料を溶融ガラスと呼ぶ。
【0036】
任意に、ガラス製造装置10は、溶融ガラス28の流れ方向に対してガラス溶融炉12の下流に配置された下流ガラス製造装置30を含むこともできる。いくつかの例では、下流ガラス製造装置30の一部をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。しかしながら、いくつかの事例では、後述する第1の接続導管32、又は下流ガラス製造装置30の他の部分をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。
【0037】
下流ガラス製造装置30は、溶融容器14の下流に配置され、上述した第1の接続導管32によって溶融容器14に結合された、清澄容器(fining vessel)34などの第1の調整(conditioning)(すなわち、処理)チャンバを含むことができる。いくつかの例では、第1の接続導管32を介して溶融容器14から清澄容器34に溶融ガラス28を重力供給(gravity fed)することができる。例えば、重力により、第1の接続導管32の内部経路を通じて溶融容器14から清澄容器34に溶融ガラス28を駆動することができる。従って、第1の接続導管32は、溶融容器14から清澄容器34への溶融ガラス28の流路を提供する。しかしながら、溶融容器14の下流の、例えば溶融容器14と清澄容器34との間などに、他の調整チャンバを配置することもできると理解されたい。いくつかの実施形態では、溶融容器と清澄チャンバとの間に調整チャンバを採用することができる。例えば、一次溶融容器からの溶融ガラスを二次溶融(調整)容器内でさらに加熱し、或いは清澄チャンバに入る前に二次溶融容器内で一次溶融容器内の溶融ガラスの温度よりも低い温度に冷却することができる。
【0038】
上述したように、溶融ガラス28からは、様々な技術によって気泡を除去することができる。例えば、原料24は、加熱時に化学的還元反応を受けて酸素を放出する酸化スズなどの多価化合物(multivalent compounds)(すなわち、清澄剤)を含むことができる。他の好適な清澄剤としては、限定するわけではないが、ヒ素、アンチモン、鉄及び/又はセリウムを挙げることができるが、ヒ素及びアンチモンには毒性があるため、用途によっては環境的理由で使用が推奨されない場合もある。清澄容器34は、例えば溶融容器の内部温度よりも高い温度に加熱され、これによって清澄剤が加熱される。溶融ガラスに含まれる1又は2種類以上の清澄剤の温度誘発型の化学的還元によって生じた酸素が清澄容器内の溶融ガラスを通じて増加し、溶融プロセス中に生じた気泡内に融合又は拡散することができる。この結果、拡大して浮力が高まった気泡が清澄容器内の溶融ガラスの自由表面に上昇し、その後にこれらを清澄容器から排出することができる。
【0039】
下流ガラス製造装置30は、清澄容器34から下流に流れる溶融ガラスを混ぜ合わせるための混合装置36などの別の調整チャンバ、例えば攪拌容器をさらに含むことができる。混合装置36は、均質なガラス溶融組成物を提供することにより、清澄チャンバから出た溶融ガラス内に存在し得るはずの化学的又は熱的不均一性を抑えるために使用することができる。図示のように、清澄容器34は、第2の接続導管38を介して混合装置36に結合することができる。いくつかの実施形態では、清澄容器34から混合装置36に溶融ガラス28を重力供給することができる。例えば、重力により、第2の接続導管38の内部経路を通じて清澄容器34から混合装置36に溶融ガラス28を駆動することができる。通常、混合装置36内の溶融ガラスは自由表面を含み、自由表面と混合装置の頂部との間には自由(例えば、気体)体積が拡がる。混合装置36は、溶融ガラスの流れ方向に対して清澄容器34の下流に示しているが、他の実施形態では、混合装置36を清澄容器34の上流に配置することもできる。いくつかの実施形態では、下流ガラス製造装置30が、例えば清澄容器34から上流の混合装置及び清澄容器34から下流の混合装置などの複数の混合装置を含むことができる。複数の混合装置を使用する場合、これらは同じ設計であることも、或いは互いに異なる設計であることもできる。いくつかの実施形態では、容器及び/又は導管のうちの1つ又は2つ以上が、溶融材料の混合及びその後の均質化を促すように内部に配置された静的混合羽根(static mixing vanes)を含むことができる。
【0040】
下流ガラス製造装置30は、混合装置36の下流に配置された送出容器40などの別の調整チャンバをさらに含むことができる。送出容器40は、下流の成形装置内に供給される溶融ガラス28を調整することができる。例えば、送出容器40は、出口導管44を介して成形体42への溶融ガラス28の一貫した流れを調整及び/又は提供するためのアキュムレータ及び/又はフローコントローラとして機能することができる。いくつかの実施形態では、送出容器40内の溶融ガラスが自由表面を含むことができ、自由表面からは、送出容器の頂部へと上向きに自由体積が拡がる。図示のように、混合装置36は、第3の接続導管46を介して送出容器40に結合することができる。いくつかの例では、混合装置36から送出容器40に溶融ガラス28を重力供給することができる。例えば、重力により、第3の接続導管46の内部経路を通じて混合装置36から送出容器40に溶融ガラス28を駆動することができる。
【0041】
下流ガラス製造装置30は、入口導管50を含む上述した成形体42を含む成形装置48をさらに含むことができる。出口導管44は、送出容器40から成形装置48の入口導管50に溶融ガラス28を送出するように配置することができる。フュージョンダウンドロー式ガラス製造装置における成形体42は、成形体の上面内に配置されたトラフ52と、成形体の下端部(根底部(root))58に沿って引き抜き方向(draw direction)56に収束する、対向する収束成形面(converging forming surfaces)54とを含むことができる。送出容器40、出口導管44及び入口導管50を介して成形体トラフ52に送出された溶融ガラスは、トラフ52の壁から溢れ、溶融ガラスの別々の流れとして収束成形面54に沿って降下する。溶融ガラスの別々の流れは、根底部58の下方で根底部58に沿って合流して溶融ガラスの単一のリボン60を生成し、このリボン60が重力及び/又は逆方向に回転する対向する引き抜きロール(
図2を参照)などによってガラスリボンに下向きの張力を加えることによって根底部58から引き抜き方向56に引き抜かれ、溶融材料が冷えて材料の粘度が増すにつれてガラスリボンの寸法が制御される。従って、ガラスリボン60は、粘弾性遷移を経て弾性状態になり、ガラスリボン60に安定した寸法特性を与える機械的特性を獲得する。
【0042】
成形プロセス中にガラス成形環境が安定に保たれるように、成形体42及び成形体の下方のガラスリボンの移動経路の少なくとも一部は、底部が開放された筐体64内に収容することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、ガラス分離装置68によってガラスリボン60を個々のガラスシート66に分離することができる。いくつかの実施形態では、ガラスリボンをスプール上に巻いてさらなる加工のために保管することができる。
【0044】
接続導管32、38、46、清澄容器34、混合装置36、送出容器40、出口導管44又は入口導管50のうちのいずれか1つ又は2つ以上を含む下流ガラス製造装置30のコンポーネントは、貴金属から形成することができる。好適な貴金属としては、白金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム及びパラジウムから成る群から選択される白金族金属、又はこれらの合金が挙げられる。例えば、ガラス製造装置の下流コンポーネントは、約70重量%~約90重量%の白金と約10重量%~約30重量%のロジウムとを含む白金-ロジウム合金から形成することができる。一方で、ガラス製造装置の下流コンポーネントを形成するための他の好適な金属として、モリブデン、レニウム、タンタル、チタン、タングステン及びこれらの合金を挙げることもできる。
【0045】
ガラス製造装置10のコンポーネントについては、フュージョンダウンドロー式ガラス製造コンポーネントとして図示し説明しているが、本開示の原理は様々なガラス製造プロセスに適用することができる。例えば、本開示の実施形態による溶融容器は、フュージョンプロセス、スロットドロー(slot draw)プロセス、圧延プロセス、押圧プロセス、フロート(float)プロセス、管引抜プロセスなどの多様なガラス製造プロセスで使用することができる。
【0046】
生産需要を満たすために、各メーカーはガラス溶融作業の作業容量及び全体的寿命を延ばすことに取り組んできた。例えば、溶融容器内のスズ電極をモリブデン電極に置き換えることで電極交換の間隔が長くなり、これによって溶融容器自体の寿命にさらなる負担がかかるようになった。すなわち、従来の設備では、通常は溶融容器の方が電極よりも長持ちしていた。電極が十分に消費されると溶融キャンペーン(melting campaign)は終了し、溶融容器が再構築されて電極が一新される。電極の寿命が延びると、溶融容器の寿命によって溶融キャンペーンの期間が決まる。従って、溶融キャンペーンを長引かせるには、溶融容器の寿命を延ばす方法がキャンペーン期間の決定要因である。
【0047】
図2及び
図3は、それぞれ例示的な溶融容器14の斜視図及び上面図である。上述したように、溶融容器14は、例えば複数段の正確に切断されたセラミックレンガ又はさらに大型のブロックなどの耐火壁を含む。耐火レンガ又はブロックは、アルミナ、ジルコニア、又は別の好適なセラミック耐火材料などの耐火材料から形成される。耐火モルタルの使用は任意であり、いくつかの実施形態ではモルタルを使用せずに溶融容器を形成することができる。通常、溶融容器の壁は、第1の側壁100と、第2の側壁102と、後壁104と、前壁106と、床又は底壁108(
図3を参照)と、例えば壁上に載ったアーチ状の屋根構造などの屋根構造とを含むことができ、屋根構造は、壁、底壁及び屋根構造によって形成される溶融容器の内部容積を覆う。具体的には、溶融容器は、溶融時に溶融ガラス28を形成する原料を保持するためのエンクロージャ又はプール110を形成する下側壁部を含むことができる。これらの壁は溶融ガラスに直接接触し、従ってガラス接触壁と呼ぶことができる。また、溶融容器の様々な耐火壁は、下側壁部上に上部構造を形成する上側壁部を含むことができる。
【0048】
様々な実施形態では、上側壁部及び屋根構造の重量に耐えるように構成された1又は2以上の鋼部材112によって、上側壁部を下側壁部から分離することができる。限定ではなく説明を目的として、以下では下側壁部を、第1の下側側壁100a、第2の下側側壁102a、下側後壁104a及び下側前壁106aを含むものとして参照する。下側壁部は、底壁108上に配置される。以下では、上部構造の壁を、第1の下側側壁100a上の第1の上側側壁100b、第2の下側側壁102a上の第2の上側側壁102b、下側後壁104a上の上側後壁104b、及び下側前壁106a上の上側前壁106bとして参照する。上側側壁100b、102b、並びに上側後壁及び上側前壁104b、106b上には、以下ではクラウン114と呼ぶ屋根又は天井がそれぞれ配置され、これらの壁によって支持される。クラウン114も、耐火レンガ又はブロックから構築することができる。クラウン114の耐火レンガ又はブロックは、アーチ及び/又は丸天井を形成するための伝統的な石工技術(masonry techniques)を使用してアーチ型に形成することができる。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、
図2に示すように、第1及び第2の下側側壁100a、102aが開口部116を備え、開口部116を貫通して溶融ガラス28内に延びる複数の電極118を収容することができる。電極118には、溶融ガラス内を流れて溶融ガラスを加熱する電流が供給される。しかしながら、他の様々な実施形態では、代わりに
図3に示すように、耐火性ガラス接触壁によって囲まれた溶融ガラス内に、底壁108の開口部を通じて電極118が延びることができる。様々な実施形態では、電極118が、スズ(例えば、酸化スズ)又はモリブデンを含むことができる。
【0050】
上側側壁100b、102bは、燃料-酸素(fuel-oxy)バーナー122を収容する開口部120を含むことができる。燃料-酸素バーナーは、溶融キャンペーンの開始中にバッチ材料の初期溶融を実行し、通常の溶融作業中に溶融ガラス28の上方の上部構造によって囲まれた気体体積内の所定の温度又は温度範囲を維持するために使用することができる。
【0051】
上側後壁104bは、原料送出装置20からバッチ材料を受け取るように構成された1又は2以上の開口部124を含み、原料は1又は2以上の開口部124を通じてプール110内に入る。一方で、下側前壁106aは、溶融容器14内の溶融ガラスが下流ガラス製造装置30などの下流のプロセス設備に移動する際に通過できる接続導管32を含む。
【0052】
溶融容器14は、溶融容器の重量を支えて耐火構造に剛性をもたらすのに役立つ外骨格125などの構造部材のケージで囲むことができる。第1及び第2の下側側壁、下側前壁及び/又は下側後壁には、建物構造部材又は外骨格の構造部材(
図5を参照)に結合された調整可能な圧力ボルトによって鋼格子パネルなどの金属格子パネルを押し付けることができ、圧力ボルトは、格子パネルと圧力ボルトとの間のパッドを介して金属格子パネルに係合することができる。金属格子パネルは、下側側壁、下側前壁及び下側後壁に対し、溶融ガラスによって壁の内側に対して及ぼされる外向きの圧力に対抗するように設計された対抗力を与える。
【0053】
本開示の実施形態によれば、溶融容器14は冷却パネルをさらに含むことができ、冷却パネルの通路内を冷却流体が流れて下側溶融容器壁のうちの1つ又は2つ以上を冷却することができる。また、冷却パネルは、耐火ガラス接触面などの溶融容器壁を冷却することに加えて、鋼格子パネルと同様に、溶融容器を構築するために使用される耐火材料を補強することによって構造的機能を果たすこともできる。
【0054】
図5に、第1の下側側壁100aの一部を示す。第1の下側側壁100aは、第1の下側側壁に接して配置されるとともに圧力ボルト130と筋かい部材132(
図5参照)との組み合わせを使用して適所に保持された1又は2以上の金属格子パネル128を含む。筋かい部材132は、ボルト又はその他の好適な締結具などによって上側横材134及び/又は下側横材136の一方又は両方に取り付けられる。いくつかの実施形態では、筋かい部材132を横材に溶接することができる。筋かい部材132、上側横材134及び/又は下側横材136は、建物構造用鋼などの建物構造の一部であることができ、又はこのような建物構造に取り付けることができ、或いは溶融容器外骨格の一部であることができ、又はこのような外骨格に取り付けることができる。
【0055】
圧力ボルト130は、筋かい部材132に結合されて金属格子パネル128に押し付けられることにより、金属格子パネルを溶融容器壁に押し付ける。例えば、様々な実施形態では、圧力ボルト130が雄ねじを含み、ナットなどのねじ付き締結具を介して筋かい部材に結合される。この結合は、例えば溶接などによって筋かい部材132に取り付けられた、筋かい部材から外向きに延びるフランジ138を設けることによって達成することができる。フランジは、ねじ付き圧力ボルト130が通過するアパーチャを含むことができる。フランジ138の両側の圧力ボルトにねじ込まれる一対のナット140、142(
図8を参照)が、圧力ボルトをフランジ及び筋かい部材に固定する。金属格子パネル128に対する圧力は、圧力ボルト130上のナット140、142を調整することによって圧力ボルトを第1の下側側壁100aに向けて前進させ、又は圧力ボルトを第1の下側側壁100aから離れて後退させ、従って冷却パネル及び第1の下側側壁に対して圧力を加え又は緩めることによって変化させることができる。各圧力ボルトは、ボルト自体と金属格子パネルとの間に配置されて圧力ボルトが金属格子パネルに作用する表面積を拡大する係合足部(engagement foot)144を備えることができる。係合足部は、係合足部が金属格子パネルに対して自己配向(self-orient)(自己水平化(self-level))することを可能にするとともに金属格子パネル又は溶融容器壁の表面上のあらゆる不規則性を考慮できる玉継ぎ手などによって圧力ボルトに結合することができる。すなわち、係合足部は、例えば溶融容器を構成する耐火ブロックのわずかな位置ずれによって圧力ボルトの長手方向軸が金属格子パネルに直角でない場合などに角度オフセットに対応することができる。溶融容器14の耐火材料は導電性であり、内部に収容された溶融材料の加熱には電気エネルギーが使用されるので、通電して人員に安全上の問題を引き起こす恐れがあるはずの外骨格及び/又は建物鋼材などの周囲の金属支持部材から溶融容器及び金属格子パネルを電気的に絶縁するために、各圧力ボルト係合足部144と金属格子パネル128との間には電気絶縁材料145を配置ことができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、上側横材134及び/又は下側横材136が、金属格子パネルを第1の下側壁100aに接触させて維持するためのフランジ及び圧力ボルトを含むことができる。
【0057】
本明細書に開示する実施形態によれば、
図5に示すように、溶融容器が1又は2以上の冷却パネル200をさらに含む。各冷却パネル200は、筋かい部材132などの周囲の金属支持部材から溶融容器及び冷却パネルを電気的に絶縁するように、金属格子パネル128と同様に、圧力ボルト130、係合足部144及び電気絶縁材料145を使用して、
図5に示す第1の下側側壁100aなどの溶融容器の壁に接して配置することができる。すなわち、冷却パネル200は、第1の下側側壁100aなどの溶融容器壁と1又は2以上の圧力ボルト130との間に配置される。圧力ボルトは筋かい部材132に結合され、圧力ボルト130を筋かい部材に対して前進又は後退させることにより、冷却パネルを溶融容器壁に接触させて維持するのに十分な、及び/又は壁の反対側の溶融ガラスの力に対抗するのに十分な圧力を冷却パネルに加えるように調整することができる。
【0058】
図6~
図8に例示的な冷却パネル200を示す。冷却パネル200は、ベース部分202及びカバー部分204を含む。いくつかの実施形態では、ベース部分202及びカバー部分204を溶接などによって恒久的に取り付けることができる。しかしながら、さらなる実施形態では、カバー部分204を、好適な締結具205(例えば、ボルト、ねじ)を使用してベース部分202に取り外し可能に固定されるように構成することもできる。ベース部分202とカバー部分204との間には、漏れを防ぐためにガスケット208を配置することができる。ベース部分202及び/又はカバー部分204は、ステンレス鋼などの高温耐食性材料から形成することができる。
【0059】
図7は、カバー部分204上に配置された入口ポート212と出口ポート214(
図8を参照)との間にベース部分202内で延びる内部冷却通路210を示す、カバー部分204を取り外したベース部分202の上面図である。すなわち、冷却通路210は、カバー部分204をベース部分202に取り付けた時に入口ポート212に向かい合うベース部分202内の位置から、出口ポート214に向かい合うベース部分202内の終端位置までジグザグ状に延びる。冷却通路210は、例えば入口ポート212及び出口ポート214に結合するステンレス鋼チューブなどの、冷却パネル内に配置された独立冷却部材であることができる。しかしながら、さらなる実施形態では、内部冷却通路210が冷却パネル200(例えば、ベース部分202)と一体であるように、内部通路をベース部分202又はカバー部分204の一方に機械加工することもできる。図示の実施形態では、冷却通路210が、ベース部分の対向する内側側壁から交互に延びる複数の壁216(例えば、バッフル)を残してベース部分202内にフライス加工されている。壁216は、ベース部分又はカバー部分の中心軸線218を越えて延びるように配置され、従ってこのようにして形成される内部冷却通路210は、冷却流体220が流れる冷却通路の長さを延ばすことによって冷却パネル200の冷却能力を高めるように蛇行(例えば、ジグザグ)形状である。腐食を抑えるために、冷却パネルのベース部分及びカバー部分は、ステンレス鋼又はその他の高温耐食性材料から形成することができる。
【0060】
様々な実施形態では、冷却パネル200が、冷却流体のパラメータをモニタするための1又は2以上のモニタリングポート222を備えることができる。例えば、冷却パネル200には、モニタリングポート222を通じてモニタリング装置224(例えば、熱電対、
図9を参照)を挿入することができる。いくつかの実施形態では、冷却通路210内を流れる冷却流体220に接触させてモニタリング装置224を挿入できるように、モニタリングポート222がカバー部分204又はベース部分202の厚み全体を貫通することができる。或いは、モニタリングポートをベース部分202の側面に配置することもできる。1又は2以上のモニタリング装置224は、冷却パネルを通る冷却流体の温度及び/又は流量を調整するように構成されたプロセスコントローラ又はその他の好適な制御装置(図示せず)と電気的に通信することができる。
【0061】
様々な実施形態では、冷却流体220が水であることができるが、他の実施形態では、冷却流体220が空気などの気体であることができる。いくつかの実施形態では、冷却パネルが、例えば自治体の水道などの自治体の供給源から冷却流体220が供給され、冷却通路210に沿って冷却パネル内を流れた後に廃棄物として廃棄される、開回路冷却システムを含むことができる。しかしながら、他の実施形態では、冷却パネルが、冷えた冷却流体を供給する外部熱交換器間で水などの冷却流体が循環する閉回路冷却システムを含むこともできる。冷えた冷却流体220は、1又は2以上の冷却流体ポンプなどによって冷却パネル内を流れる。その後、その時点で加熱されている冷却流体が冷却パネルから熱交換器に循環して再び冷却され、冷却パネル又は別のプロセス設備に戻される。
【0062】
いくつかの実施形態では、好適な入口ヘッダ及び出口ヘッダを通じて複数の冷却パネルとの間で同時に冷却流体220を行き来させることができる。各冷却パネルとの間の冷却液ラインは、例えば漏れが発生した場合、又は冷却パネルを除去又は交換しなければならない場合に特定の冷却パネルを隔離できるように、手動式又は遠隔操作式の弁を備えることができる。例えば、
図5にはペアで配置された(2つのペアを示す)冷却パネルを示しており、冷却パネルのペアの各冷却パネル200には、両冷却パネルに冷却流体を供給する冷却液供給ヘッダ226から、供給ヘッダ226とそれぞれの冷却パネルの入口ポート212との間に延びる個々の供給ライン228を通じて冷却流体が供給される。各供給ライン228には、それぞれの冷却パネルへの冷却流体の流れを遮断するように配置された遮断弁230を設けることができる。供給ヘッダ226には、主供給ライン231を通じて冷却流体220が供給される。
【0063】
また、冷却パネルのぺアの各冷却パネル200は、各冷却パネルのそれぞれの出口ポート214と戻りヘッダ(return header)234との間に延びる個々の戻りライン232を備える。戻りヘッダ234は、主戻りライン236を通じて下流の収集装置(図示せず)と流体連通する状態で配置することができ、収集装置は、例えば冷却パネルへの再供給のために冷却流体を処理することができる。例えば、収集装置は、冷却液を濾過し、冷却流体を冷却し、或いはいずれか1つ又は2つ以上の調整添加剤(例えば、防食材料)を添加することによって冷却流体を処理することができる。いくつかの実施形態では、例えば熱交換器において、冷却パネルを離れた後の加熱された冷却流体から熱を抽出し、抽出された熱をさらなるプロセスで使用することができる。冷却流体供給の場合と同様に、各戻りライン232は、それぞれの冷却パネルから戻る冷却液の流れを遮断するように構成された遮断弁230を備えることができる。従って、例えば冷却パネルの1つに漏れが生じた場合などの必要な場合には、同じ供給ヘッダ及び戻りヘッダに接続された別の冷却パネルの流れを止める必要なく、供給ライン及び戻りラインの関連する遮断弁を閉じて問題のある冷却パネルを取り外すことにより、漏れのある冷却パネルを隔離することができる。隔離弁は、手動隔離弁又は遠隔操作隔離弁であることができる。
【0064】
1又は2以上の冷却パネル200は、下側側壁、下側前壁又は下側後壁を含む溶融容器14の下側壁のうちのいずれか1つ又は2つ以上に設けることができる。個々の金属格子パネル128及び冷却パネル200のモジュール設計は、ガラス製造装置の動作中、すなわち溶融容器が動作中であって溶融ガラスが活発に形成されている間に、選択された格子を別の格子と、又は必要に応じて冷却パネルと交換することを可能にする。冷却パネルの設置に役立つように、冷却パネル、例えばカバー部分204は、1又は2以上の取っ手238を含むことができる。
【0065】
図9に示すように、冷却パネル200は、第1又は第2の下側側壁100a又は102a、下側後壁204a、或いは下側前壁206aのうちの少なくとも1つに直接接触して配置することができる。金属格子パネル128は、冷却パネル200とそれぞれの耐火壁側との間にも、冷却パネル上にも配置されない。従って、冷却パネル200は、冷却装置としても、それぞれの耐火壁を補強する補強部材としても機能する。様々な実施形態では、1又は2以上の金属格子パネル128及び1又は2以上の冷却パネル200を使用して溶融容器14の下側壁部を支持することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、
図6で最も良く分かるように、ベース部分202が、裏面242(溶融容器の壁に接触する面)上に配置された凹部240を含むことができる。例えば、凹部240内には、例えば拡大金属メッシュ(expanded metal mesh)などの圧縮性金属メッシュ材料などの適合する熱伝導材料244を配置して、冷却パネルと溶融容器壁との間に挟み込むことができる。適合する熱伝導材料244は、溶融容器壁に適合するのに十分な柔軟性をもたらすことにより、冷却パネルと溶融容器壁との間の熱伝導を高めることができる。適合する熱伝導材料244は、凹部240の深さよりも大きな初期厚みを有することができ、従って冷却パネル200が溶融容器壁に接して配置されて、1又は2以上の圧力ボルトの圧力によって溶融容器壁に押し付けられた時に、適合する熱伝導材料244が圧縮されて溶融容器壁の形状に適合するようになる。
【0067】
各冷却パネル200は、冷却パネルを通る冷却流体220の流れが重力方向とは逆の上向き方向であることにより、(高温の耐火壁との熱交換による)加熱時に上向きに移動する冷却流体の自然な傾向を補完するとともに、冷却通路210における滞留気泡(stagnant bubble)の形成を防ぐように配置することができる。しかしながら、さらなる実施形態では、冷却流体の流れが下向きであることもできる。例えば、いくつかの実施形態では、冷却パネルの上半分に入力ポート212を配置して、冷却パネルの下半分に出口ポート214を配置することができる。さらに別の実施形態では、冷却流体の流れが冷却パネルの第1の側から第2の側へ横方向に向かうように、入口ポート212を冷却パネルの第1の側縁部に配置し又は隣接させ、出口ポート214を冷却パネルの第1の側縁部とは逆の第2の側縁部に配置し又は隣接させることができる。
【0068】
上述したように、各冷却パネル200は、それぞれが筋かい部材132と冷却パネルに接触する係合足部144との間に延びる、冷却パネル200及び筋かい部材132に係合する1又は2以上の圧力ボルト130によって下側耐火壁に接して適所に保持することができる。係合足部144及び冷却パネル200には、第1の外側のナット140を緩め(第1のナット140を筋かい部材132及び冷却パネルから離れるように回転させ)、次に第2の内側のナット142を冷却パネル200に対する所望の圧力が達成されるまで筋かい部材132に対して動くように回転させ、その後に第1のナットが筋かい部材132にきつく接するまで第1のナット140を回転させることによって圧力を加えることができる。これに加えて又は代えて、圧力ボルトは、冷却パネルと筋かい部材との間の結合に柔軟性をもたらすばね要素を含むこともできる。例えば、いくつかの実施形態では、圧力ボルト300を使用することができる。
図10に、例示的な圧力ボルト300を概略的に示す。圧力ボルト300は、一般に本体304を貫通するねじ付きロッド302を含む。本体304は、ねじ付きロッド302を矢印308で示す方向に付勢するベルビルワッシャなどの複数の皿ばね306を含む。ねじ付きロッド302の第1の端部はテンションナット(tensioning nut)310を含み、ねじ付きロッド302の第2の端部は係合足部312を含む。圧力ボルト300は、皿ばね306の圧縮を防ぐように本体304に接して前進できる、ねじ付きロッド302上に配置されたジャムナット314を含むこともできる。圧力ボルト300は、圧力ボルト130と同様の方法で筋かい部材132に結合することができる。
【0069】
当業者には、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の実施形態に様々な修正及び変形を行えることが明らかであろう。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内に入ることを条件に、このような修正及び変形も対象とするように意図される。
【符号の説明】
【0070】
14 溶融容器
32 第1の接続導管
100a 第1の下側側壁
128 金属格子パネル
130 圧力ボルト
132 筋かい部材
134 上側横材
136 下側横材
138 フランジ
144 係合足部
200 冷却パネル
212 入口ポート
214 出口ポート
220 冷却流体
226 供給ヘッダ
228 供給ライン
230 遮断弁
231 主供給ライン
232 戻りライン
234 戻りヘッダ
236 主戻りライン
【手続補正書】
【提出日】2024-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製造装置であって、
耐火性ガラス接触壁を含む溶融容器と、
入口ポートを通じて冷却流体を受け取り、出口ポートを通じて前記冷却流体を排出するように構成された冷却パネルと、
を備え、前記冷却パネルは、該冷却パネルに接触する圧力ボルトによって、前記耐火性ガラス接触壁に接触して該耐火性ガラス接触壁に対して付勢される、
ことを特徴とするガラス製造装置。
【請求項2】
前記入口ポートは前記冷却パネルの下半分に配置され、前記出口ポートは前記冷却パネルの上半分に配置される、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項3】
前記耐火性ガラス接触壁は、前記溶融容器の側壁を含む、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項4】
前記冷却パネルは、該冷却パネル内で前記入口ポートと前記出口ポートとの間に延びる蛇行通路を含む、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項5】
前記冷却パネルはベース部分及びカバー部分を含み、前記蛇行通路は前記ベース部分内に機械加工され、前記カバー部分は前記ベース部分に取り付けられる、
請求項4に記載のガラス製造装置。
【請求項6】
前記ベース部分は、前記耐火性ガラス接触壁に接触する、
請求項5に記載のガラス製造装置。
【請求項7】
前記ベース部分は、該ベース部分内に形成された凹部を含む裏面を含み、前記冷却パネルと前記耐火性ガラス接触壁との間の前記凹部内に、適合する熱伝導材料が配置される、
請求項6に記載のガラス製造装置。
【請求項8】
前記圧力ボルトは、前記筋かい部材と前記冷却パネルとの間に配置され、前記圧力ボルトは前記筋かい部材に結合される、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項9】
前記耐火性ガラス接触壁に接触して該接触壁に対して付勢された金属格子パネルをさらに備える、
請求項1に記載のガラス製造装置。
【請求項10】
前記金属格子パネルは、前記冷却パネルの下方に配置される、
請求項9に記載のガラス製造装置。
【請求項11】
前記金属格子パネルは、前記金属格子の下方に配置された耐火ブロックによって少なくとも部分的に支持される、
請求項10に記載のガラス製造装置。
【請求項12】
前記溶融容器は、前記耐火性ガラス接触壁に接触して前記耐火性ガラス接触壁に対して付勢された第2の金属格子パネルを含み、該第2の金属格子パネルは、前記冷却パネルの上方に配置される、
請求項11に記載のガラス製造装置。
【国際調査報告】