(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】核酸分析のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240621BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240621BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALI20240621BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6827 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580755
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022035468
(87)【国際公開番号】W WO2023278537
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523436964
【氏名又は名称】フルーエント バイオサイエンシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゴッドフリー, トニー
(72)【発明者】
【氏名】クーグラー, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】メルツァー, ロバート
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA17
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
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4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、配列決定することなく、無細胞核酸(cfDNA)から患者特異的変異を検出するための超高感度方法および組成物を提供する。本発明の方法は、cfDNAの多重増幅のための流体仕切りを利用し、それによって、均一に増幅されたアンプリコンのライブラリーを作製する。上記均一に増幅されたアンプリコンは、cfDNAに存在する変異の一重検出のために任意の数の異なる検出反応へと(検出感度を維持しながら)分割され得る。これらの方法は、実質的に改善されたシグナル対ノイズ比および存在量が低い変異のより容易な識別を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異を検出するための方法であって、前記方法は、
標的核酸およびPCRプライマーを含む水性溶液を調製する工程;
混合物を作製するために、前記水性溶液と油とを合わせる、工程;
複数の仕切りを形成するために、前記混合物を剪断する工程であって、ここで前記仕切りのうちの少なくとも一部は、単一の標的核酸、およびPCRプライマーを含む工程;
アンプリコンのライブラリーを生成するために、前記標的核酸を前記仕切りの内部で、前記PCRプライマーで増幅する工程;
アンプリコンの前記ライブラリーを複数の異なる反応容器へと分割する工程;ならびに
前記反応容器のうちの1つの中のアンプリコンから、PCRによって変異を検出する工程、
を包含する方法。
【請求項2】
前記変異を検出する工程は、qPCRで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増幅の間に、行われるPCRサイクルの回数は、前記仕切りのうちの一部の内部で消費されるPCRプライマーの対の数より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
仕切りのうちの前記一部の内部の非使用PCRプライマーの数は、最終PCRサイクルが開始される前にゼロに達する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
仕切りのうちの前記一部の内部で前記標的核酸を増幅する工程は、増幅事象ゼロを含む少なくとも1つのPCRサイクルを伴う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記標的核酸は、増幅の間に均一に増幅される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記標的核酸は、デジタルPCRによって増幅される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物を剪断する工程は、テンプレート粒子を使用して、実質的に均一な数のPCRプライマーを含む均一なサイズにした仕切りの形成をテンプレート化することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記標的核酸は、無細胞核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記無細胞核酸は、反復的に保護されたゲノム領域として予め特定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記無細胞核酸は、尿サンプル、血液サンプル、または喀痰サンプルから単離される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記標的核酸は、およそ60~90塩基対の長さである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
増幅が完了する前に実質的な数のPCRプライマーが消費され尽されるように、前記水性溶液に添加されるべきPCRプライマーの濃度を計算する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
qPCRは、改変されたプライマーで行われ、前記改変されたプライマーは、ロック核酸プライマー、2-テール付加プライマー、または発光プライマーのうちの1またはこれより多くのものを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記PCRプライマーのうちの少なくとも1つは、発蛍光性である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記PCRプライマーのうちの異なるものは、標的核酸のうちの異なる分子に相補的な配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の異なる反応容器は、1またはこれより多くのがん変異を検出するための試薬を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の異なる反応容器のうちの1つは、第1のがん変異を検出するための第1の試薬を含み、前記複数の異なる反応容器のうちの第2の1つは、第2のがん変異を検出するための第2の反応を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記試薬は、qPCRのプライマーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
がん変異の存在下では、前記プライマーはアンプリコンとハイブリダイズできず、それによって、変異の存在を示す、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、無細胞DNAを分析するための方法および組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
無細胞DNA(cfDNA)は、ネクローシスの結果としてがん細胞によって放出される。cfDNAは体液(例えば、血液または尿)中に存在し、疾患状態を知らせ得ることから、cfDNAを分析する方法は、臨床上非常に重要である。cfDNAから有用な洞察を得るために、上記cfDNAの特異的領域が、正常な野生型細胞に存在しない変異を特定するために検出および分析されなければならない。上記変異は一般に、DNA配列決定技術を使用して検出される。不運なことに、DNA配列決定における急激な進歩にもかかわらず、cfDNAにおいてがん変異を特定するには、いくつかの難題が残っている。
【0003】
例えば、がん細胞に由来する変異cfDNAは、正常なDNAのバックグラウンドと比較して極めて希である。よって、超高感度検出モダリティー(例えば、0.1%未満)が必要とされる。不運なことに、標準的な配列決定技術は、0.5~1.0% 塩基呼び出しエラーによって制限されており、よって、洗練されたライブラリー調製法およびバイオインフォマティクス分析が、変異検出のために必要とされる。これは、cfDNA配列決定ライブラリーの調製を複雑で、時間を浪費し、かつ高価なものにする。さらに、cfDNAは体液から抽出されなければならないことから、上記cfDNAは、代表的には、非常に短いフラグメント長へと分解されており、これはしばしば、DNA配列決定のために必要とされる検出限界を下回っている。
【0004】
よって、早期がん検出および/またはモニタリングにおけるcfDNA適用の潜在的可能性が広範にわたって認識されているにもかかわらず、臨床上関連する情報をcfDNAから得る成功裡のストラテジーは、欠いたままである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明は、無細胞DNA(cfDNA)から変異を検出するための超高感度方法および組成物を提供する。本発明は、診断標的ががん変異に関して評価される前に、それら標的の多重予備増幅のための予めテンプレート化した即席の仕切りを利用する。上記予めテンプレート化した即席の仕切りは標的cfDNAの非常に均一な多重増幅を提供することから、本発明の方法は、診断標的の総数および変異検出のために使用される技術的複製物を実質的に増大させるために有用である。よって、上記増幅された標的は、特定のがん変異の検出のための検出反応の任意の数にわたって分けられ得る。これは、患者特異的がん変異が、それらの多重化能力において概して制限される超高感度のPCRベースのモダリティーによって検出されることを可能にする。よって、本発明は、高価な配列決定なしに、迅速なサンプル-回答形式(sample-to-answer format)において患者特異的がん変異を検出するための頑健かつ安価なワークフローを提供する。
【0006】
具体的には、本発明の方法および組成物は、予めテンプレート化した即席の仕切りを利用して、均一なサイズにした反応チャンバ(そこからcfDNAの標的が増幅される)を生成する。好ましくは、1またはこれより多くの異なるcfDNA分子にわたる複数の標的が増幅され、それによって、がん検出のための多重増幅によって別個の標的の総数を増大させる。cfDNAの多重化された標的は、増幅バイアスなしに仕切りの内部で均一に富化される。上記富化された標的アンプリコンは、変異検出のために任意の数の異なる反応容器へと分割され得る。これは、サンプル分割に起因する検出感度低減(これは、現行の技術の一般的問題である)のいかなる懸念もなしに、標準的実験装置、例えば、dPCR機器類で、多数の高感度の一重検出反応が並行して行われることを可能にする。
【0007】
よって、本発明は、疾患を検出する、再発をモニタリングする、または疾患治療の有効性を評価するために、個別化医療を一変させる潜在的可能性とともに、単純化された費用効果的ワークフローを提供する。
【0008】
本発明は、予めテンプレート化した即席の仕切りでcfDNAの標的の多重増幅を伴う方法および組成物を提供する。上記標的は、体液サンプル(例えば、血液、尿または喀痰)内に極めて低頻度(0.01%未満)において存在する単一塩基変異であり得る。上記標的は、疾患再発を示す患者特異的変異であり得る。標的増幅の後に、本発明の方法は、迅速で、信頼性があり、かつ費用効果的であるPCR(例えば、qPCR)に基づく超高感度検出ストラテジーを含む。よって、本発明の組成物および方法は、疾患を追跡するおよび/またはがん再発をモニタリングするために特に十分に適している。
【0009】
例えば、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、疾患の長期的モニタリングを伴う。
【0010】
長期的モニタリングは、概して、経時的ながん変異の反復された患者内評価を伴う。反復測定は、患者の疾患が安定であるか否かを決定するために、患者が処置にどの程度応答しているかを示すために、または処置の効果を明らかにするために、使用され得る。cfDNAは、例えば、尿または血液から、非侵襲的に得られ得、本発明の方法が希な腫瘍変異を迅速に検出するために有用であることから、本発明は、経時的に反復測定を行うために十分に適している。よって、本開示の組成物および方法は、疾患を検出するためのみならず、治療を受けている患者の長期的な患者モニタリングのためのツールをも提供する。特に、本発明は、疾患の迅速かつ安価な定性化および被験体の治療への応答の迅速な決定を可能にする。
【0011】
1つの局面において、本発明は、核酸(例えば、cfDNA)から変異を検出するための方法を提供する。上記方法は、反応容器(例えば、1.5ミリリットルチューブの内部で標的核酸およびPCRプライマーの水性溶液を調製する工程を伴う。上記PCRプライマーは、上記標的核酸の1またはこれより多くの領域に相補的な配列を含むべきである。例えば、上記PCRプライマーは、cfDNAの異なるフラグメントの1またはこれより多くの領域に相補的な配列を有し得る。油を上記容器に添加して、混合物を作製する。上記方法は、上記混合物を剪断して、複数の油中水型仕切りを形成し、その結果、上記仕切りのうちの少なくとも一部が、単一の標的核酸および上記PCRプライマーを含む工程をさらに包含する。上記方法は、上記標的核酸を上記仕切りの内部で、上記PCRプライマーで増幅して、アンプリコンのライブラリーを生成する工程をさらに包含する。上記アンプリコンは、複数の異なる反応容器へと分割される。好ましくは、上記反応容器のうちの1またはこれより多くのものは、PCRによって変異の存在を検出するために有用な試薬(例えば、プライマー)を含む。例えば、上記容器は、がん変異に感受性の配列を有するプライマーを含み得る。上記方法は、PCRによって上記アンプリコンを検出および/または定量して、疾患を評価する工程を伴う。好ましい実施形態において、がん変異の高価で時間を浪費する検出を回避するために、アンプリコンの検出は、定量的PCR(qPCR)によって行われる。好ましくは、検出は、がん変異に感受性のプライマーで行われる。
【0012】
定量的分析を促進するために、本発明は、cfDNA標的の均一な予備増幅を確実にする実験条件を含む。本発明の方法は、反応内の(上記プライマーに相補的な核酸を含む液滴の内部の)増幅可能な種に関する実質的に全てのプライマーがPCR増幅サイクルの特定の回数内で消費されることを保証するために予め計算された濃度でPCRプライマー対を添加する工程を包含する。これは、いくつかの標的の増幅効率が等しくないにもかかわらず、cfDNA標的の均一な増幅を保護するために有用である。例えば、多重化PCR反応では、cfDNAのいくつかの標的は、効率的に増幅し得るのに対して、cfDNAのいくつかの標的は、非効率的に増幅し得る。バルク増幅において、cfDNAの効率的標的は、上記非効率的種を凌駕し得、効率的種と非効率的種との間の増幅均一性において広い変動をもたらし、正確な定量を妨げる。
【0013】
本発明の方法は、少なくとも2つの独立した機序によって、cfDNAの均一な増幅を確実にし得る。第1に、cfDNAのサンプルが仕切られる場合、平均して、1またはゼロの増幅可能なフラグメントが、各仕切りに存在する。このことは、増幅される生成物(アンプリコン)の間での競合の機会の低減を提供する。次に、好ましい実施形態において、標的特異的PCRプライマーは、濃度において制限され、その結果、実質的に全ての上記PCRプライマーは、上記プライマーに相補的なcfDNAを有するそれら仕切りの内部で、PCRの間に消費される。PCR増幅プロトコールは、全てのプライマーが非効率的標的に関してすら消費されるように特定される。予めテンプレート化した即席の仕切りは、均一な仕切り容積の仕切りを生成することから、各仕切りの中のアンプリコンの得られる濃度は、従って、正規化され得る。従って、いくつかの実施形態において、効率的かつ均一な増幅を確実にするための条件が確立される。1つの局面において、サンプルは、平均して1未満の増幅可能な標的が各仕切りに存在するように仕切られ、従って、上記仕切りの中で増幅された生成物の間での競合を低減する。さらに、1つの局面において、本発明は、プライマーが反復されるPCRサイクルを終えて実質的に消費されるように、標的特異的プライマーの濃度の制限を提供する。均一な仕切り容積の場合、アンプリコンの得られる濃度は、正規化される。これは、いくつかの多重PCR反応において、ある標的が効率的に、あるものは比較的非効率的に増幅されるという懸念を軽減する。効率的増幅は、非効率的増幅をおそらく凌駕し、アンプリコンの不均一な集団をもたらす。
【0014】
よって、本発明のいくつかの実施形態において、相補的cfDNAを含む個々の仕切りのかなりの数の内部で消費されるPCRプライマーの数は、増幅の間に行われるPCRサイクルの回数より小さい。代わりに、または加えて、それらの個々の仕切りの内部の非使用PCRプライマーの数は、最終PCRサイクルが開始される前にゼロに達する。よって、予めテンプレート化した即席の仕切りを含むcfDNA標的の増幅は、実質的に増幅事象ゼロを有する少なくとも1回のPCRサイクルを伴い得る。よって、本発明の好ましい方法において、上記標的核酸は、増幅工程の間に均一に増幅される。
【0015】
本発明の方法は、cfDNA標的の正確な増幅のために、予めテンプレート化した即席の仕切りを使用する。上記予めテンプレート化した即席の仕切りは一般に、容器の内部での仕切りの形成をテンプレート化するテンプレート粒子を使用して形成され、それによって、規定された流体容積、および従って、規定された試薬濃度の内部でcfDNAを被包する仕切りを作製する。よって、いくつかの実施形態において、混合物を剪断する前に、上記方法は、テンプレート粒子を上記水性溶液に添加する工程をさらに包含する。上記テンプレート粒子は、実質的に均一な濃度でPCRプライマーを含む実質的に均一な仕切りの形成をテンプレート化する。
【0016】
がん由来のcfDNAは、尿から特定され得る。不運なことに、上記cfDNAは、概して高度にフラグメント化され、これは、従来の分析方法(例えば、配列決定)によるゲノム変化の標的化分析を制限する。しかし、驚くべきことに、cfDNAのフラグメントサイズには一貫した分布が存在し、形式上のサイズは80~81塩基対である。これは、非ランダムフラグメント化を示唆する。この非ランダムフラグメント化パターンは、クロマチンアクセシビリティーおよび/または寄与しているがん細胞からの遺伝子発現の結果であり得る。
【0017】
よって、本発明のいくつかの実施形態において、上記標的核酸は、およそ60~90塩基対の長さであり、例えば、およそ80または81塩基対の長さである。上記PCRプライマーは、反復的に保護されたゲノム領域と相関するcfDNAの領域を増幅するように設計され得る。上記反復的に保護されたゲノム領域は、がん細胞において高度に発現されるDNAの配列または高いクロマチンアクセシビリティーと関連する領域を伴い得る。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、がんを有する被験体の全ゲノムDNA(例えば、cfDNA)配列決定によって得られるがん配列情報と、がんのない被験体の全ゲノムDNA配列決定によって得られる相当する野生型配列とを比較して、ある特定のがんと関連する反復的に保護されたゲノム領域を特定する工程を包含し得る。よって、反復的に保護されたゲノム領域(例えば、反復的に保護されたゲノム領域の上位5%または1%)に相補的であるPCRプライマーが設計され得る。
【0018】
本発明の方法は、配列決定することなしに、患者特異的変異の検出を可能にする。よって、本発明の方法は、疾患をモニタリングするための費用効果的なワークフローを提供する。例えば、好ましい実施形態は、qPCRによって標的アンプリコンを検出することを伴う。検出は、変異に感受性のプライマーで行われ得る。例えば、場合によっては、qPCRプライマーは、変異した配列を有する標的アンプリコンへのハイブリダイゼーションを防止する配列を含む。よって、変異した配列を含む標的アンプリコンは、増幅に失敗する場合がある。qPCRの間の1またはこれより多くの標的アンプリコンの増幅の失敗は、本発明の実施形態に従って検出され得、患者の健康状態を評価するために定量され得る。他の場合には、qPCRプライマーは、ある特定の変異(例えば、単一の塩基対置換)を含む標的核酸に対して高度に特異的である配列で設計される。
【0019】
いくつかの実施形態において、qPCRは、改変されたプライマーで行われる。上記改変されたプライマーは、1またはこれより多くの腫瘍変異に対するプライマー特異性を増強する改変を含み得る。例えば、上記改変されたプライマーは、ロック核酸プライマー、2-テールプライマー、または発蛍光性プライマーのうちの1つを含み得る。場合によっては、上記プライマーは、テンプレート粒子、およびqPCRの前に予めテンプレート化した即席の仕切りの内部で多重増幅を行うための試薬を含むキットの一部として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図2は、希な核酸を検出するための方法を図式化する。
【
図3】
図3は、仕切りの内部でdPCR増幅されたcfDNAの蛍光画像を示す。
【
図4】
図4は、予備増幅アッセイからのデータを示す。
【
図5】
図5は、予備増幅した標的 対 非増幅標的の増幅効率を比較するqPCRデータを示す。
【
図6】
図6は、本発明の方法が変異核酸と野生型核酸との間を識別する能力を明らかに示すqPCRデータを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本発明は、配列決定することなしに、ハイスループットで無細胞DNA(cfDNA)から超稀少変異を検出するために有用な方法を提供する。よって、本発明は、疾患を検出する、疾患再発をモニタリングする、または治療の有効性を評価するために有用な、単純、安価、かつ迅速なサンプル-結果ワークフロー(sample-to-result workflow)を提供する。
【0022】
本発明は、体液からのcfDNA調製時に概して予測される、正常DNAのバックグラウンドからの希な変異の患者特異的検出のために予めテンプレート化した即席の仕切りを使用するための方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、予めテンプレート化した即席の仕切りの内部でのcfDNAの均一な、高信頼性多重化標的予備増幅(すなわち、検出前の標的の多重増幅)とqPCRベースの一重検出とを組み合わせる。上記予めテンプレート化した即席の仕切りは、例えば、数千から数百万もの仕切りの形成を、同時に、単一のチューブ中でテンプレート化し、かつqPCR分析の前に増幅のためにそれら仕切りの内部でcfDNAのフラグメントを分離するヒドロゲルテンプレート粒子を利用する。
【0023】
上記予めテンプレート化した即席の仕切りは、正確な流体制御で標的cfDNAの均一な予備増幅を可能にし、よって、患者特異的変異を検出する安価なアプローチに関する現行のPCRの限界を克服する。上記予めテンプレート化した仕切りは、一貫した形状およびサイズのテンプレート化した粒子の周りに形成され得ることから、cfDNAの1または0個のフラグメントを含むその得られる仕切りはまた、十分に規定されたサンプル容積を含む。仕切りの数は、反応容器サイズおよび試薬の量、例えば、テンプレート粒子によってのみ規定される。よって、本発明の方法はまた、大規模に大きさを変更できる。
【0024】
仕切りの内部で個々の増幅可能なcfDNAフラグメントを単離することによって、本発明は、増幅バイアスを排除または実質的に低減し得、それによって、標的核酸の微量の増幅(例えば、0.01%未満)を可能にし得る。例えば、並行した個々の仕切りの内部でのcfDNAの増幅は、不要なアンプリコンとアンプリコンとの相互作用を排除し得、従って、多重化された標的にわたる均一な増幅を可能にし得る。
【0025】
均一な標的cfDNA増幅は、富化されたアンプリコンの得られた混合物が、任意の数の検出用の反応容器(例えば、PIPs)、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、1000個、またはより多くの異なる反応容器へと分割されることを可能にする。上記反応容器は、マルチウェルディッシュの個々のウェルを含み得る。
【0026】
好ましくは、上記ウェルの実質的な数が、少なくとも1つのがん変異を検出するための試薬を含み得る。例えば、1またはこれより多くのウェルは、第1のがん変異を検出するための試薬(例えば、プライマー)を含み得る一方で、上記ウェルのうちの異なるものが、異なるがん変異を検出するための異なる試薬を含み得る。これは、多数の一重検出反応が標準的な実験装置(例えば、qPCR機器類)で並行して行われることを可能にし、競合技術に共通するサンプル分割に起因する検出感度低減という懸念を排除する。
【0027】
予めテンプレート化した即席の仕切り形成とPCRベースの検出モダリティーとを組み合わせることによって、本発明は、臨床上重要なcfDNAの選択された領域を均一に富化し、いかなる感度の喪失もなしに超高感度変異検出のためのサンプル分割を可能にするために有用である。さらに、いくつかの実施形態は、デジタル予備増幅を伴う。デジタル予備増幅は、絶対標的コピー数を(サンプル分割後ですら)増大させ得、そうでなければ、低存在量(<10コピー)改変体のいくつかのPCRベースの検出ストラテジーと関連するある種の感度問題を克服し得る。最終的には、予備増幅(仕切りの内部で起こる増幅事象)での目的の標的の富化は、非標的ゲノムバックグラウンドを抑制し、特異性の改善を生じる。
【0028】
図1は、変異を検出する方法101を示す。方法101は、標的核酸およびPCRプライマーを含む水性溶液を調製する工程103を伴う。上記PCRプライマーは、上記標的核酸に相補的な配列を含む。上記方法101は、上記水性溶液と油とを合わせて105、混合物を作製する工程をさらに含む。次に、上記混合物は、複数の油中水型仕切りへと剪断され107、ここで上記油中水型仕切りのうちの少なくとも一部は、単一の標的核酸およびPCRプライマーを含む。剪断107の後、上記方法は、上記PCRプライマーを有する仕切りの内部で標的核酸を増幅して109、アンプリコンのライブラリーを生成する工程を伴う。上記方法は、複数の異なる反応容器へとアンプリコンのうちの一部を置くことによって、アンプリコンのライブラリーを分割する工程111をさらに包含する。次に、上記方法は、上記複数の反応容器からのアンプリコンを検出113および/または定量して、それによって、上記核酸を分析する工程を伴う。
【0029】
より詳細には、上記方法101の第1の工程は、水性溶液を調製する工程103を伴う。上記水性溶液を調製する103ために、任意の適切な順序が使用され得るが、テンプレート粒子を含むチューブを先ず提供することは、有用であり得る。上記テンプレート粒子は、水性媒体(例えば、塩類溶液、栄養ブロス、水)中で提供され得るか、または乾燥されて、使用時に再水和され得る。上記標的核酸(例えば、cfDNA)を含むサンプルは、上記チューブへと、例えば、被験体からのサンプル収集の際、またはエタノール精製のようなある種の最小限のサンプル調製工程後に、直接添加され得る。好ましくは、上記サンプルは、体液サンプル、例えば、血液サンプルまたは尿サンプルである。よって、上記サンプルは、非侵襲的方法(例えば、採血または採尿)によって被験体から収集され得る。
【0030】
上記標的核酸は、好ましくは、cfDNAである。cfDNAは、一般に、血漿へと放出される分解されたDNAフラグメント(50~200bp)である。cfDNAは、血流の中を自由に循環するDNAの種々の形態を含み、循環腫瘍DNA(ctDNA),無細胞ミトコンドリアDNA(cf mtDNA)、および無細胞胎児DNA(cffDNA)が挙げられる。
【0031】
cfDNAのレベルの上昇は、がんにおいて、特に、その進行した状態において観察される。cfDNAは、発病年齢とともに循環中にますます頻繁に存在するようになるという証拠がある。cfDNAは、がんおよび胎児医療以外に、多くの病気に関する有用な生体マーカーであることが示されている。これには、外傷、敗血症、無菌性炎症(aseptic inflammation)、心筋梗塞、脳卒中、移植、糖尿病、鎌状赤血球症が挙げられるが、これらに限定されない。よって、本発明の方法は、がんのみならず、外傷、敗血症、無菌性炎症、心筋梗塞、脳卒中、移植、糖尿病、鎌状赤血球症の検出のためにも有用である。cfDNAは、大部分は、小さなフラグメント(50~200bp)およびより大きなフラグメント(21kb)からなるDNAの2本鎖細胞外分子であり、前立腺がんおよび乳がんの診断のための正確なマーカーとして認識されている。
【0032】
血流へのcfDNAの放出は、原発性腫瘍、末梢血中を循環する腫瘍細胞、遠隔部位に存在する転移性の沈着物、ならびに造血細胞および間質細胞のような正常細胞タイプを含む異なる機序によって現れる。腫瘍細胞およびcfDNAは、がんを有する患者の血流の中を循環する。腫瘍発生の間の血液中のその急速に増大した蓄積は、アポトーシス細胞および壊死細胞による過度のDNA放出によって引き起こされ得る。cfDNAは、主にヌクレオソーム(これは、ヒストンおよびDNAの核複合体である)として循環し得る。それらは、がんにおいて頻繁に非特異的に上昇するが、細胞毒性がん治療(cytotoxic cancer therapy)をモニタリングするために,主に、治療有効性の早期予測のためにより特異的であり得る。
【0033】
水性溶液を調製する工程103は、DNA増幅試薬(例えば、DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)、反応緩衝液、マグネシウム、およびPCRプライマー)を添加することを包含する。上記PCRプライマーは一般に、化学合成されたオリゴヌクレオチド、通常はDNAの合成プライマーであり、これらは、テンプレートDNA上の特異的部位にアニールするように特注され得る。PCRプライマーのうちの1またはこれより多くのものは、発蛍光性であり得る。溶液中では、上記プライマーは、DNAポリメラーゼによる伸長の前に、ワトソン-クリック塩基対合を介して上記テンプレートと自発的にハイブリダイズする。上記PCRプライマーは、代表的には、18~24塩基の間の長さであり、増幅されている標的核酸配列の特定の上流および下流の部位をコードする。上記プライマーは、第三者から(例えば、社名Thermo Fisher Scientificの下で経営されている会社から)設計および発注され得る。プライマーを設計するための方法は、以下で考察される。
【0034】
定量的分析を促進するために、上記PCRプライマーは、PCRプライマーの実質的な数がPCR増幅サイクルの特定の回数内で消費されることを確実にするために、予め計算された規定の濃度で溶液へと添加される。特に、PCRプライマーの各種の濃度は、仕切りの内部での相補的な標的核酸の増幅の間に上記PCRプライマーが消費されるように計算されたある特定の濃度で上記水性溶液に添加される。これは、いくつかの標的の増幅効率が等しくないにもかかわらず、cfDNA標的の均一な増幅を確実にするために有用である。
【0035】
例えば、多重化PCR反応において、いくつかの標的は、効率的に増幅し得るのに対して、いくつかの標的は、非効率的に増幅し得る。バルク増幅では、上記効率的標的は、上記非効率的標的を凌駕し得、効率的種と非効率的種との間の増幅均一性において広い変動をもたらし、正確な定量を妨げ得る。よって、標的特異的PCRプライマーは、濃度において制限され、その結果、実質的に全ての上記PCRプライマーは、標的核酸を有するそれら仕切りの内部で、PCRの間に消費される。PCR増幅プロトコールは、全てのプライマーが非効率的標的に関してすら消費されるように特定される。予めテンプレート化した即席の仕切りは、均一な仕切り容積の仕切りを生成することから、各仕切りの中のアンプリコンの得られる濃度は、従って、正規化され得る。上記水性溶液に添加するべきPCRプライマーの濃度の計算は、予めテンプレート化した即席の仕切りあたりの利用可能なプライマー分子の適切な数を計算するために単純な算数を使用して達成され得る。予めテンプレート化した即席の仕切りあたりの利用可能なプライマー分子の数は、反応容積、テンプレート粒子のサイズ、サンプル投入量、多重性のスケール、およびバルクプライマー濃度の関数として計算され得る。
【0036】
よって、本発明のいくつかの実施形態において、個々の仕切りのかなりの数の内部で消費されるPCRプライマーの数(例えば、相補的な標的核酸を含むもの)は、増幅の間に行われるPCRサイクルの回数より少ない。代わりに、またはさらに、それらの個々の仕切りの内部の非使用PCRプライマーの数は、最終PCRサイクルが行われる前にゼロに達する。よって、予めテンプレート化した即席の仕切りを含む標的核酸を増幅する工程は、実質的に増幅事象ゼロを有する少なくとも1回のPCRサイクルを伴い得る。よって、本発明の好ましい方法において、上記標的核酸は、増幅工程の間に均一に増幅される。
【0037】
上記PCRプライマーは、標的核酸に相補的な配列を含む。好ましくは、上記標的核酸は、尿から単離されたcfDNAである。尿からのcfDNAは、非侵襲的診断のための有望な分析物である。しかし、尿cfDNAは、高度にフラグメント化されている。これらのフラグメントの特徴が根底にあるゲノム構造を反映するか否かは、未知である。全ゲノム配列決定によるcfDNAフラグメントの特徴付けは、40~120塩基対(bp)の間で、81bpの形式上のサイズおよび鋭い10bpの周期性を有する多数の強いピークを明らかにした。これは、Markus, 2021, Analysis of recurrently protected genomic regions in cell-free DNA found in urine, Science Translational Medicine, 13(581)(参考として援用される)で考察されるように、完全な分解からの一過性の保護を示唆する。よって、いくつかの実施形態において、上記標的は、DNAの反復的に保護されたゲノム領域として予め特定される。上記反復的に保護されたゲノム領域は、がんに罹患した患者から採取したcfDNA配列のゲノム全域にわたる差異を比較し、正常で健常な患者(すなわち、がんを有しない)のcfDNA配列を有するそれらの配列を比較することによって、予め特定され得る。よって、上記方法101のいくつかの実施形態において、上記標的核酸は、およそ60~90塩基対の長さ、例えば、およそ75~85塩基対の長さ、および好ましくは、約80~81塩基対の長さである。
【0038】
次に、上記方法101は、油を上記水性溶液に添加する工程105を伴う。上記油は、チューブに添加される(代表的には、最初に上記水性混合物の上を覆う)。いくつかの実施形態において、1またはこれより多くの界面活性剤(以下に記載される)がまた、仕切りを安定化するために上記混合物に添加され得る。
【0039】
次いで、上記方法101は、上記混合物を剪断して107、仕切り形成を引き起こす上記流体を剪断する工程を包含する。ボルテックスする間に:上記混合物は、約5~約50秒以内に、例えば、約30秒以内に、水性液滴へと仕切り形成することが見出され得る。上記混合物を剪断する工程107は、好ましくは、ボルテックスすることによって行われる。ボルテックスする工程は、均一なサイズ分布の仕切りを信頼性高く生成するその能力のために好ましい。仕切りの均一性は、各「反応チャンバ」が実質的に等しい容積および従って、実質的に等しい試薬とともに提供されることを確実にするために役立つ。ボルテックスする工程はまた、容易に制御され(例えば、時間およびボルテックスする速度を制御することによって)、従って、より容易に再現性のあるデータを生成する。ボルテックスする工程は、共有に係る米国特許出願第17/146,768号(これは参考として援用される)に記載されるように、標準的なベンチトップ型ボルテックス装置またはボルテックスデバイスで行われ得る。
【0040】
次に、上記方法は、上記仕切りの内部で上記標的核酸を増幅して109、標的アンプリコンのライブラリーを生成する工程を伴う。標的増幅は、PCRによって行われ、これは、サーモサイクラーを使用して行われ得る。
【0041】
好ましくは、PCRサイクルの回数は、 - 標的核酸を有するそれら仕切りの内部で - 上記PCRプライマーがDNA増幅の最終サイクルの前に消費し尽くされるように選択される。例えば、Fenrich and Flynn, Preamplification and How it Can Be Used to Maximize qPCR Data Generation from Limited Samples, 2018, BioRad(これは参考として援用される)において考察されるとおり。これは、上記標的核酸の均一な増幅を達成するために有用である。増幅する工程109は、デジタルPCRを伴い得る。よって、増幅する工程109は、発蛍光団の存在下で行われ得る。発蛍光団は、光による励起の際に再発光し得る蛍光化学物質である。蛍光色素は、プローブ(例えば、加水分解プローブ)の一部であり得る。ある特定の局面において、上記発蛍光団は、アンプリコンへと(例えば、挿入色素として)組み込まれ、それは、上記プライマーに結合した標的核酸をDNAポリメラーゼでコピーすることによって作製される。上記発蛍光団の存在は、上記アンプリコンが検出されることを可能にする。上記PCRプライマーは、上記発蛍光団を含み得る(例えば、上記発蛍光団と連結され得る)。
【0042】
次いで、標的アンプリコンのライブラリーは、PCRベースのストラテジーでのがん変異の検出113のために、異なる反応容器へと分けられる(split)111(分割される(divided))。例えば、アンプリコンのライブラリーは、溶液中で希釈され得(例えば、100×)、上記アンプリコンを含む溶液をマルチウェルプレートのウェル(例えば、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル)へとピペットで移すことによって、分割される111。好ましくは、上記ウェルは、少なくとも1つのがん変異を検出するための試薬を含み得る。上記ウェルは、変異を特定するために標識され得る(相当する試薬が検出されることが意図される)。例えば、1つのウェルは、第1のがん変異を検出するための試薬を含み得る一方で、マルチウェルプレートの第2のウェルは、第2のがん変異を検出するための異なる試薬を含み得る。上記試薬は、好ましくは、配列変異に感受性のプライマーである。これは、多数の一重検出反応が標準的な実験装置(例えば、qPCR機器類)で並行して行われることを可能にし、競合技術に共通するサンプル分割に起因する検出感度低減の懸念を排除する。引き続いて、上記アンプリコンは、PCR(例えば、qPCR)によって定量される113。
【0043】
検出113は、検出されたがん変異の定量をさらに伴い得る。例えば、上記がん変異は、検出された変異のうちの各1つの総数を計数することによって定量され得る。各変異の総数は、異なる変異のうちの1またはこれより多くのものの頻度を計算するために使用され得る。すなわち、一方の変異が上記検出された変異のうちのもう一方の変異に対して出現する相対的頻度を決定するために、各変異の合計が1またはこれより多くの異なる変異の総数(例えば、検出された変異の総数)で除算され得る。ある特定の変異が出現する頻度は、がん進行を追跡するために有用な情報を提供し得る。例えば、変異が出現する頻度は、腫瘍クローン進化を追跡するために有用であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、検出113は、定量的PCR(qPCR)ベースのストラテジーを使用して行われる。qPCRは、従来のPCRのように、その最後ではなく、PCRの間に(すなわち、リアルタイムで)標的DNA分子の増幅をモニターする。qPCRは、定量的および半定量的に使用され得る。qPCRによるPCR生成物の検出のための2つの一般的方法は、(1)任意の2本鎖DNAに挿入する非特異的蛍光色素、および(2)蛍光レポーターで標識されたオリゴヌクレオチドからなる配列特異的DNAプローブ(これは、上記プローブがその相補的な配列とハイブリダイズした後にのみ検出可能になる)である。
【0045】
好ましくは、qPCRは、核酸における変異に高度に感受性のプライマーを使用して行われる。例えば、上記プライマーは、単一の塩基対置換に感受性の改変されたプライマーであり得る。よって、いくつかの好ましい実施形態において、異なる反応容器は、異なる変異に感受性の異なるプライマーを含む。例えば、場合によっては、プライマーは、上記核酸が変異(例えば、単一の塩基対置換)を含む場合、上記反応容器の内部の核酸にハイブリダイズしない配列を用いて設計される。他の場合には、上記プライマーは、アンプリコンが特異的がん変異(例えば、単一の塩基対変異)を含む場合、プライマーが上記反応容器の内部で核酸にハイブリダイズするのみであるように設計される。
【0046】
qPCRは、少なくとも1つの特定された波長の光線で各サンプルを照射し、アンプリコンを反射する励起された発蛍光団によって発せられる蛍光を検出する能力を有するサーマルサイクラーで行われる。上記サーマルサイクラーはまた、サンプルを迅速に加熱および冷却することができ、それによって、核酸およびDNAポリメラーゼの物理化学的特性を利用する。qPCRプロセスは概して、反復される(例えば、15~25回)一連の温度変化からなる。これらのサイクルは通常、3つの段階からなる:第1は、およそ95℃で、増幅される標的核酸の2本鎖の分離を可能にする;第2は、およそ50~60℃の温度で、上記プライマーと上記DNAテンプレートとの結合を可能にする;第3は、68~72℃の間で、DNAポリメラーゼによって行われる重合を促進する。フラグメントのサイズが小さいことに起因して、最後の工程は、DNAポリメラーゼ酵素が、アラインメント段階~変性段階の間での変化中に、上記アンプリコンを複製することができる場合もあることから省略され得る。さらに、4工程PCRでは、蛍光は、非特異的色素が使用される場合にプライマーダイマーの存在によって引き起こされるシグナルを低減するために、各サイクルで数秒間のみ、例えば、80℃の温度で持続する短い温度相の間に測定される。各サイクルに関して使用される温度およびタイミングは、以下のような広く種々のパラメーターに依存する。例えば:DNAを合成するために使用される酵素、反応における二価イオンおよびデオキシリボヌクレオチド(dNTPs)の濃度、ならびにプライマーの結合温度。
【0047】
qPCRを実行するいくつかの実施形態において、DNA結合色素は、PCR反応において全ての2本鎖(ds)DNAに結合し、上記色素の蛍光量子収率を増大させる。従って、PCRの間のDNA生成物の増大は、各サイクルにおいて測定される蛍光強度の増大をもたらす。標的核酸の定量を可能にする。
【0048】
dsDNA色素を用いるリアルタイムPCRでは、反応は、通常どおり、蛍光dsDNA色素を添加した状態で準備される。次いで、その反応は、リアルタイムPCR機器で実行され、各サイクル後に、蛍光の強度は、検出器で測定される;上記色素は、dsDNA(すなわち、PCR生成物)に結合した場合にのみ蛍光を発する。この方法は、増幅を行うために1対のプライマーを必要とするに過ぎないという利点を有し、これは、コストを下げる;多数の標的配列が、異なるタイプの色素を使用することによってチューブ中でモニターされ得る。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態は、デジタルPCR(dPCR)増幅、続いて、qPCRを伴う。dPCRは、希釈サンプルが多くの別個の反応へと分割される増幅反応である。例えば、Brownら(米国特許第6,143,496号および同第6,391,559号)、Vogelsteinら(米国特許第6,440,706号、同第6,753,147号、および同第7,824,889号)、ならびにLarsonら(米国特許出願第13/026,120号)、Linkら(米国特許出願第11/803,101号、同第11/803,104号、および同第12/087,713号)、およびAndersonら(米国特許第7,041,481号(これは、RE41,780として再発行)を参照のこと(これらの各々の内容は、その全体において本明細書に参考として援用される)。dPCRは、非常に高い感度を有するが、概してその多重化能力に制限がある。サンプルは、多数のdPCR反応へと分割され得るが、それは、従来どおり、臨床cfDNAサンプルにおけるように、確率的に制限された標的を有するサンプルにおけるアッセイ感度の低減を余儀なくさせる。有利なことには、本発明の方法は、予めテンプレート化した即席の仕切りの内部で標的核酸の予備増幅によってこの制限に対処する。
【0050】
図2は、希な核酸を検出するための方法201を図式化する。上記方法201は、標的核酸(cfDNA)のデジタル予備増幅、続いて、qPCRを伴う。cfDNAのデジタル予備増幅は、標的の比例(すなわち、1つの遺伝子における野生型および変異型の現れ)を維持しながら、利用可能な標的分子の拡大を可能にする。これは、サンプルが、設計および最適化が比較的単純な多数の一重qPCRアッセイへと分割されることを可能にする。
【0051】
好ましくは、上記方法201は、cfDNAの少量(約9個の変異した「MUT」フラグメントを含む30ナノグラムのDNA総量)を、dPCR増幅のための個々の液滴または仕切りへと分離するためにエマルジョンを使用する。cfDNAの個々の増幅可能なフラグメントは、予めテンプレート化した即席の仕切りの中でPCR増幅プライマーの所定の混合物とともに単離される。上記仕切りは、PCR増幅均一性を増強しながら、dPCRによる標的cfDNAの多重増幅を可能にする。例えば、上記仕切りは、多数の増幅された生成物の競合を低減する。
【0052】
上記cfDNA標的は、例えば、15サイクルのdPCRによって増幅される。その結果は、標的にわたって正規化された増幅収量(変異したフラグメントの約300,000コピー)である。これは、標的化配列決定適用において本発明者らによって明らかに示されている。dPCR増幅は、振盪されるエマルジョンの中で行われ得る。しかし、好ましくは、増幅は、テンプレート化したエマルジョン、すなわち、テンプレート粒子を使用して形成されたエマルジョンの中で行われる。予めテンプレート化したエマルジョンにおける増幅均一性は好ましい。なぜなら上記テンプレート粒子は、個々の反応容積のために一貫した容積を確立するからである。
【0053】
上記標的cfDNAのデジタル予備増幅は、アンプリコンといわれる増幅生成物のライブラリーを生成する。デジタル予備増幅の後に、上記方法201は、qPCRによってアンプリコンを検出および/または増幅する工程を伴う。これは、各MUTのおよそ175コピーが溶液1マイクロリットルあたりで存在するように、アンプリコンのライブラリーを100×希釈する工程を伴い得る。その希釈した溶液は、一重検出のためにマルチウェルプレート215の別個の反応容器へとアリコートに分けられ得る。上記反応容器は、特異的がん変異の検出のための試薬とともに予め調製され得る。よって、1つのウェルは、第1の変異の検出に有用な試薬(例えば、プライマー)を含み得る一方で、上記マルチウェルプレートの第2のウェルは、第2の変異を検出するための異なる試薬とともに調製されるなど。上記ウェルは、検出される変異を特定するために標識されるべきである。qPCRは、定量的または半定量的であり得る。
【0054】
qPCRは、改変されたプライマーで行われ得る。上記プライマーは、好ましくは、変異に感受性である。すなわち、上記プライマーは、好ましくは、標的アンプリコンが変異している(野生型の正常DNA配列に見出されないヌクレオチドの配列を含む)場合に、上記プライマーが上記標的アンプリコンにハイブリダイズせず、よって、増幅が起こらないように設計される。増幅事象の欠如は、変異の存在を示し得る。
【0055】
例えば、上記qPCRプライマーのうちの1またはこれより多くのものは、ロック核酸(LNA)プライマーであり得る。LNAプライマーは、2’-O,4’-Cメチレン架橋を含む新規な核酸アナログを含む。この架橋 -3’-エンドコンホメーションのロック- は、リボフラノース環の可撓性を制限し、その構造を剛性の二環式の形成へとロックする。これは、高められたqPCRアッセイ性能を付与する。例えば、LNAプライマーは、増大した熱安定性およびハイブリダイゼーション特異性、より正確な遺伝子定量およびアレル識別、ならびに問題のある標的配列のためのより容易かつより融通の利く設計を提供し得る。例えば、Ballantyne, 2008, Locked nucleic acids in PCR primers increase sensitivity and performance, Genomics, 91(3):301-5(これは参考として援用される)に記載されるとおり。いくつかの実施形態において、上記方法は、2-テールプライマーを使用して、非常に短い変異検出プローブ(6~8塩基)で非常に高い特性を達成し得る。その親和性は、上記標的配列のうちのさらなる一部に結合する、共有結合しているが、遠位のプライマー部分を含めることによって増強される。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記プライマーのうちの1またはこれより多くのものは、単一ヌクレオチド置換の検出のために最適化される。例えば、上記プライマーのうちの1またはこれより多くのものは、上記標的にハイブリダイズする5’アンカー部分、続いて、標的アレルに相当する非相補的「ブリッジ」および「フット」部分からなる超選択的プライマーを含み得る。上記フット配列は、末端の3’ヌクレオチドにおける単一のミスマッチがプライマー結合を不安定化し、伸長を防止し、異なるアレルの識別を可能にするように、短くてもよい。例えば、Touroutine and Tanis, 2020, A rapid, SuperSelective method for detection of single nucleotide variants in Caenorhabditis elegans, Genetics, 216(2): 343-352において、およびVargas, 2016, Multiplex Real- Time PCR Assays that Measure the Abundance of Extremely Rare Mutations Associated with Cancer, PLoS One, 11(5)(これらは、参考として援用される)においても記載されるとおり。いくつかの実施形態において、上記プライマーのうちの1またはこれより多くのものは、発蛍光性プライマー(例えば、Thermo Fisherによって商品名LUXの下で販売される発光プライマーのような)であり得る。
【0057】
図3は、予めテンプレート化した仕切りの内部でdPCR増幅されたcfDNAの蛍光画像を示す。濃い方の(異なる陰影/元のものでは照射されている)液滴305は、蛍光レポーターに由来するシグナルを発するもの(すなわち、引き続く分析のためのcfDNAのアンプリコンを含むもの)である。
【0058】
いくつかの実施形態において、上記液滴は、引き続く分析(例えば、qPCR)の前に、フローサイトメトリー分析(FACS)によってソートされ得る。FACSは、標識された分析物(仕切り)のサンプル混合物が、2またはこれより多くの容器へとそれらの光散乱および蛍光特徴に従ってソートされるプロセスである。FACSを使用することによって、本発明の方法は、非標的物質の処理と関連する費用を低減するために、標的アンプリコンを含む仕切りを富化し得る。
【0059】
本明細書に記載されるある特定の方法の特徴は、サンプル中のある特定のオリゴヌクレオチドおよび/または目的の遺伝子の存在を検出するための、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのアッセイの使用である。例示的な標的核酸としては、被験体における遺伝的変異または疾患と関連するものが挙げられる。他の標的核酸としては、例えば、ウイルスまたは細菌感染と関連するものが挙げられる。
【0060】
本発明のシステムおよび方法は、標的核酸フラグメントの予備増幅のために予めテンプレート化した即席の仕切りを使用すること、および引き続いて、がん変異に関してPCRによってそれらの増幅された標的を評価することを含む。がん変異の検出は、任意の数の種々のPCRベースのアプローチ(例えば、定量的PCR(qPCR),定量的蛍光PCR(QF-PCR)、多重蛍光PCR(MF-PCR)、デジタルPCR(dPCR)、PCR-RFLP/リアルタイムPCR-RFLP、ホットスタートPCR、ネスト化PCR、インサイチュポロニーPCR、インサイチュローリングサークル増幅(RCA)、ブリッジPCR、ピコタイターPCR)によって行われ得る。
【0061】
このようなアッセイにおいて、1またはこれより多くのプライマーは、がん変異に感受性であり得る。例えば、上記プライマーは、変異していない標的核酸が存在する場合に、これらプライマーがハイブリダイズし、PCRを開始するのみであるように、特定の変異していない標的に特異的な配列を含み得る。目的の標的が存在し、上記プライマーがマッチするものである場合、PCR増幅を使用して上記標的の多くのコピーが作製され得る。標的コピーの存在は、標的核酸が変異を有しないことを示し得る。特定の標的アンプリコンが変異検出のための反応容器に存在するか否かを決定するために、予備増幅された標的アンプリコンは、アッセイを通じて検出され得る。例えば、場合によっては、標的アンプリコンは、蛍光に関して上記仕切りの液体をプローブすることによって検出され得る。例えば、標的核酸の予備増幅は、標的アンプリコンが特定の波長による励起の際に蛍光を発生させる1またはこれより多くの発蛍光団の存在下でドロップレットPCRによって起こり得る。よって、変異検出のための反応容器の内部の標的アンプリコンの存在は、蛍光シグナルの存在によって確認され得る。
【0062】
PCRベースのおよびリアルタイムPCRベースの検出方法論は、スループットおよび定量性の両方の観点から、核酸の分析を大きく改善した。旧来のPCRベースの検出アッセイは一般に、アガロースゲル電気泳動を介して、増幅されたDNA標的のエンドポイントのおよびときおり半定量的な分析に依拠する;リアルタイムPCR(またはqPCR)法は、反応が進むにつれて指数関数的増幅を定量するために最も頻繁に使用される。定量的PCR反応は、種々の高度に配列特異的な蛍光プローブ技術を使用するか、または非特異的DNA挿入発蛍光性色素を使用するかのいずれかによってモニターされる。
【0063】
本発明のいくつかの好ましいシステムおよび方法は、dPCRを含む。デジタルPCR(dPCR)は、希釈サンプルからの標的核酸がPIP被包化を使用して個々に単離された液滴である代替の定量法である。その単離された標的核酸は、各液滴の中で別個の反応で増幅される。反応間の標的DNA分子のバックグラウンドからの分布は、標的DNAの最終希釈および/または限界希釈においてポワソン統計に従う。概して、最終希釈において、液滴のほとんどの部分は、1個またはゼロ個いずれかの標的DNA分子を含む。理想的には、最終希釈において、PCR陽性反応(PCR(+))の数は、もともと存在するテンプレート分子の数に等しい。限界希釈では、仕切りは、ポワソン分布に従って、ゼロ、1個、およびしばしば1個より多くの標的核酸を含む。限界希釈では、ポワソン統計は、サンプル中に元々存在した標的DNAの根本的な量を明らかにするために使用される。
【0064】
本発明の方法およびシステムは、種々の供給源から得られた標的核酸を検出および定量するために使用され得る。例えば、標的核酸は、固体組織サンプルまたは流体サンプル(例えば、血液または血漿)から得られ得る。好ましくは、上記サンプルは、流体サンプルである。適切なサンプルとしては、全血または血液の一部、血漿、脳脊髄液、唾液、喀痰、組織吸引物、微生物培養物、培養されていない微生物、スワブ、または任意の他の適切サンプルが挙げられ得る。例えば、いくつかの実施形態において、血液サンプルは、臨床状況において(例えば、瀉血によって)得られる。全血が使用されてもよいし、血液は、標的核酸を単離するために遠心分離されてもよい。
【0065】
好ましくは、上記サンプルは、血液サンプルである。上記サンプルを得る工程は、採血を行って血液を得るか、または血液を臨床施設から受容する工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、サンプルを得る工程は、瀉血手順を伴い、血液を血液収集チューブ(例えば、BD(Franklin Lakes, NJ)によって商標VACUTAINERの下で販売される血液収集チューブ)または無細胞DNA血液収集チューブ(例えば、Streck, Inc.(La Vista, NE)によって商標CELL-FREE DNA BCTの下で販売されるもの)へと収集する。任意の適切な収集技術または容積が、使用され得る。病原性微生物に感染した患者に由来する血液の10ml サンプルが、わずか約1ngの微生物核酸を含み得る。
【0066】
標的核酸は、RNA、DNA、またはその混合物であり得る。ある特定の局面において、本発明の方法は、逆転写酵素反応を行って、標的RNAのcDNAを生成する工程を包含する。逆転写酵素反応は、単分散液滴中で行われ得る。得られるcDNAは、本明細書で記載されるように増幅および検出され得る。好ましい局面において、上記標的核酸は、無細胞核酸であり、これは、非侵襲的手順を介して血液または血漿から採取され得ることから好ましい。
【0067】
ある特定の局面において、本発明の方法は、がん変異の検出前に、dPCRを使用してcfDNAのサンプル中の1またはこれより多くの標的核酸の存在を特定する工程を包含する。dPCR反応は、サンプルが上記標的核酸に関して陽性であるか否かを決定するために使用され得る。標的核酸に関して陰性のサンプルは、処理される必要がない。よって、本発明の方法は、さらなる分析のために標的核酸を有するサンプルを迅速に特定するために有用である。これは、処理が行われるサンプルの量を低減し、それによって本質的費用を低減する。
【0068】
方法は、下流の分析(例えば、配列決定)を準備するために、アンプリコンにアダプターを結合する工程および/または標的フラグメントにバーコード付加する工程を包含し得る。任意の適切な方法が、標的フラグメントにバーコード付加するために使用され得る。上記フラグメントは、液滴の内部でバーコード付加され得る。標的フラグメントにバーコードを結合する適切なアプローチとしては、以下が挙げられる:(i)フラグメント化およびアダプターライゲーション(ここでアダプターがバーコードを含む);(ii)タグメンテーション(Illumina, Inc.によって商標NEXTERAの下で販売されるそれらタグメンテーション試薬キットのような、キット中で販売されるものを含むトランスポザーゼ酵素またはトランスポソソームを使用する);ならびに(iii)ゲノム中の目的の既知のまたは疑われる標的に相補的なハイブリダイゼーション部分およびPCR反応によってアンプリコンへとコピーされる少なくとも1つのバーコード部分を有するプライマーを使用する、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅。これらのアプローチのうちのいずれかに関して、上記バーコード(例えば、増幅プライマーまたはライゲーション可能なアダプター内の)は、本明細書で記載されるように、溶液中で遊離してまたはテンプレート粒子に結合させて、提供され得る。いくつかの実施形態において、上記バーコードは、セット(例えば、数千コピーものバーコードを含む)として提供され、ここで各バーコードは、テンプレート粒子に共有結合されている。
【0069】
本明細書で使用される場合、バーコードとは、一般に、セットに特有な1つのバーコードのコピーを有するそのセットとしてバーコード付加された標的核酸に由来する配列リードを特定するために使用され得る識別子配列を含むオリゴヌクレオチドに言及する。バーコードは一般に、約2~約数十個またはこれより多くの識別子配列において既知の数のヌクレオチドを含む。上記バーコードを含むオリゴヌクレオチドは、プライマーセグメント(例えば、遺伝物質中の目的の標的にハイブリダイズするように設計される)、ユニバーサルプライマー結合部位、制限部位、配列決定アダプター、配列決定機器インデックス配列など、またはこれらの組み合わせを含む有用な多くの配列の任意の他のものを含み得る。上記バーコードは、特有の分子識別子を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、本開示のバーコードは、次世代シーケンシング(NGS)機器(例えば、Illumina, Inc.によって商標HISEQの下で販売されるNGS機器)での使用のために設計されたアダプターのセット内のように、配列決定アダプター内に提供される。NGSアダプター内には、上記バーコードは、バーコード配列がインデックスリードまたは配列リード中に見出されるように、上記インデックス部分または上記標的配列に隣接していてもよい。
【0070】
方法は、標的核酸の増幅のためにPCRプライマーを設計する工程を伴い得る。数個の基準が、一対のPCRプライマーを設計する場合に考えられ得る。プライマー対は、類似の融解温度を有するべきである。なぜならPCRの間のアニーリングは、両鎖について同時に起こり、この共有された融解温度は、好ましくは、反応のアニーリング温度より大き過ぎもしなければ小さ過ぎもしないからである。反応のアニーリング温度より高すぎるTm(融解温度)を有するプライマーは、DNA配列に沿って不正確な位置で、誤ってハイブリダイズし、伸長することがある。次いで、上記アニーリング温度より顕著に低いTmは、全くアニールおよび伸長させないことがある。
【0071】
さらに、プライマー配列は、DNAの領域(例えば、既知のがん変異を含む領域)を特有に選択し、近くにある類似の配列へのハイブリダイゼーションの可能性を回避するために選択される必要があり得る。プライマー部位を選択するために一般に使用される方法は、BLAST検索である。これによって、プライマーが結合し得る全ての考えられる領域が、見られ得る。ヌクレオチド配列およびプライマー自体はともに、BLAST検索され得る。無料のNCBIツールであるPrimer-BLASTは、ePrimeおよびBeacon Designerのような市販のソフトウェア製品で行われるように、プライマー設計およびBLAST検索を1つのアプリケーションに統合している。理論的PCR結果(Electronic PCR)のコンピューターシミュレーションは、融解温度およびアニーリング温度などを与えることによって、プライマー設計を補助するために行われ得る。
【0072】
プライマー結合のためにDNAの特異的な領域を選択することは、いくつかのさらなる考慮事項を要する。モノヌクレオチドおよびジヌクレオチド反復が多い領域は、回避されるべきである。なぜならループ形成が起こる可能性があり、誤ったハイブリダイゼーションに寄与する可能性があるからである。プライマーは、好ましくは、混合物中の他のプライマーと容易にアニールしない;この現象は、最終溶液を汚染する「プライマーダイマー」生成物の生成をもたらし得る。プライマーはまた、それら自体に強くアニールするべきではない。なぜなら内部ヘアピンおよびループは、テンプレートDNAとのアニールを妨げ得るからである。
【実施例】
【0073】
実施例1 - 予めテンプレート化した即席の仕切りを用いた制御されたプライマー濃度による均一なPCR増幅
十重予備増幅アッセイを、バルクにおいて(405)および予めテンプレート化した即席の仕切り「PIPs」407において行った。増幅を、全ての標的に関するプライマー濃度の範囲(0nM、1.5nM、3.1nM、6.3nM、12.5nM、25nM、50nM)で行った。得られた予備増幅生成物を、水で1:1000希釈し、各標的に関する一重検出アッセイを、qPCRによって行った。
【0074】
図4は、予備増幅アッセイからのデータを示す。上記データは、十重予備増幅アッセイからのものであり、全ての標的にわたって平均の正規化Ct値としてプロットされる。エラーバーは、全ての標的にわたる標準偏差である。
【0075】
PIPs仕切り形成は、全てのプライマー濃度において全ての標的にわたって顕著に改善された増幅均一性を生じる。12.5nM未満のプライマー濃度では、バルク増幅は、添加されたプライマーがない予備増幅陰性コントロール(下側の四角)から区別できない。PIPs仕切りでは、低プライマー濃度を有するサンプルは、プライマーなしの予備増幅コントロールから十分に分離されている。PIPs予備増幅では、本発明者らは、PCR生成物を利用可能なプライマー濃度に制限することによって、使用されるプライマー希釈系列における増幅された生成物の2倍の工程が生じると予測される。この推測は、デジタル予備増幅407において確認されるが、バルク増幅405の結果では確認されない。
【0076】
実施例2 デジタル予備増幅およびqPCR検出
図5は、予備増幅した標的505および予備増幅されない(「コントロール」_ 標的507の増幅効率を比較するqPCRデータを示す。データを、5’ VAF’s (1%、0.5%、0.25%、0.13%、および0.06%)および野生型において標的の二十三重、15サイクル予備増幅によって生成した。予備増幅した生成物を、アレル特異的qPCRによる検出の前に200×希釈した。
【0077】
予備増幅した標的のアレル特異的qPCRは、qPCRによる標的の効率的検出のために150ngのDNAを必要とするのみであった。これは、多量の標的核酸を生成するための予備増幅の顕著な能力を明らかに示す。逆に、予備増幅がない場合、1.35マイクログラムの全DNAが、アレル特異的qPCRによる標的核酸の検出可能なレベルを提供するために各反応に必要とされた。
【0078】
図6は、本発明の方法が変異核酸と野生型核酸との間を識別する能力を明らかに示すqPCRデータを提供する。変異DNAを、dPCRによって上記のように予備増幅した。1% 変異投入量を含む30ナノグラムの核酸を、qPCRアッセイにおいて使用した。qPCRを、SSPプライマーで行った。
【0079】
援用の表示
他の文書(例えば、特許、特許出願、特許公報、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツ)への参照および引用を、本開示全体を通じて行った。全てのこのような文書は、全ての目的のためにそれらの全体において本明細書に参考として援用される。
【0080】
均等物
本発明の種々の改変およびその多くのさらなる実施形態は、本明細書で示されかつ記載されるものに加えて、本明細書で引用される科学文献および特許文献への言及を含め、本文書の全内容から当業者に明らかになる。本明細書中の主題は、その種々の実施形態およびその均等物において本発明の実施に適合されうる重要な情報、例示およびガイダンスを含む。
【国際調査報告】