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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】カソード組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240621BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240621BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240621BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240621BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023580788
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 IB2022056091
(87)【国際公開番号】W WO2023275810
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】2021901988
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521464640
【氏名又は名称】タルガ テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALGA TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】キャピグリア、クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】シヴァレディ、サイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、フェンミン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ブルース スン
(72)【発明者】
【氏名】モッタ、アンナ モイサラ
(72)【発明者】
【氏名】アネジャ、カランビアー シン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA24
5H050GA02
5H050GA05
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA17
(57)【要約】
【解決手段】
カソード組成物であって、カソードは、黒鉛質材料添加剤を含み、黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および約15μm未満のD50を有する黒鉛質粒子を含む。カソード組成物に使用するための黒鉛質材料添加剤を製造する方法もまた、開示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード組成物であって、前記カソードは、黒鉛質材料添加剤を含み、前記黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および約15μm未満のD50を有する黒鉛質粒子を含む、カソード組成物。
【請求項2】
前記黒鉛質粒子は、約10μm未満のD50を有する、請求項1に記載のカソード組成物。
【請求項3】
前記黒鉛質粒子の前記非球状形態は、扁平球状体またはフレーク形態のいずれかに近似する形態を包含する、請求項1または2に記載のカソード組成物。
【請求項4】
前記黒鉛質粒子は、
(i)99.9%wt/wt超、または
(ii)99.92%wt/wt超
の炭素含有量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項5】
前記黒鉛質粒子は、凝集微粒子生成物または高表面積(HSA)生成物のいずれかを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項6】
前記凝集微粒子生成物は、扁平球状体に近似する形態を主に有する二次グラファイト粒子を含む、請求項5に記載のカソード組成物。
【請求項7】
前記二次グラファイト粒子は、
(i)約5μm未満、または
(ii)約2μm未満
のD50を有する、請求項6に記載のカソード組成物。
【請求項8】
前記二次グラファイト粒子は、
(i)約2~60m/g、または
(ii)約2~6m/g
の表面積を有する、請求項6または7に記載のカソード組成物。
【請求項9】
75kf/cmにおける前記二次グラファイト粒子の圧縮密度は、約1.0~1.5g/ccの範囲である、請求項6~8のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項10】
前記二次グラファイト粒子の導電率は、
(i)約25~37S/cmの範囲、または
(ii)約31S/cm
である、請求項6~9のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項11】
前記二次グラファイト粒子は、粉砕一次グラファイト粒子を含む、請求項6~10のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項12】
前記HSA生成物は、機械的剥離を受けた黒鉛質粒子を含む、請求項5に記載のカソード組成物。
【請求項13】
前記機械的剥離は、ミリング、衝撃、圧力、および/または剪断力によって行われる、請求項12に記載のカソード組成物。
【請求項14】
前記機械的剥離は、
(i)200kWh/t超、
(ii)200~500kWh/tの範囲、
(iii)400kWh/t超、
(iv)400~500kWh/tの範囲、
(v)700kWh/t超、
(vi)700~1200kWh/tの範囲、または
(vii)1000~1200kWh/tの範囲
で実行される、請求項12または13に記載のカソード組成物。
【請求項15】
前記HSA生成物の前記黒鉛質粒子は、
(i)20m/g超、
(ii)20~40m/gの範囲、
(iii)25~35m/gの範囲、
(iv)40m/g超、
(v)40~80m/gの範囲、または
(vi)40~50m/gの範囲
の表面積を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項16】
前記HSA生成物は、フレーク形態を有する、請求項5および12~15のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項17】
前記HSA生成物はまた、機械的剥離の後に、
(i)そのフレーク形態の維持を支援する乾燥方法、または
(ii)極低温乾燥方法
にも供される、請求項16に記載のカソード組成物。
【請求項18】
前記粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)炭素系材料、または
(ii)ピッチ、ポリエチレンオキシド、およびポリビニルオキシドのうちの1つまたは複数
をさらに含む、請求項11~17のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項19】
前記二次グラファイト粒子中の炭素系材料の量は、グラファイトに対して2~10重量%の範囲である、請求項18に記載のカソード組成物。
【請求項20】
前記粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)15μm未満、
(ii)10μm未満、または
(iii)約0.5~6μmの範囲
のD50を有する、請求項11~19のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項21】
前記粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)約2~60m/g、または
(ii)約7~9m/g
の表面積を有する、請求項11~20のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項22】
前記粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)3.35Å超のd002、1000Å超のLc、および1000Å超のLaのうちの1つまたは複数のXRD特性を有する、または
(ii)3.35Å超のd002、1000Å超のLc、および1000Å超のLaの各々のXRD特性、ならびに99.9%超の純度を有する
請求項11~21のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項23】
前記黒鉛質材料添加剤の前記二次グラファイト粒子は、一次グラファイト粒子の凝集体を含み、前記凝集体は、ほぼ扁平球状体の形態を提供し、
(i)約5ミクロン未満、または
(ii)約2ミクロン未満
のD50を有する、請求項6~22のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項24】
前記黒鉛質材料添加剤は、天然グラファイト前駆体に由来する、請求項1~23のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項25】
カソード活性材料と、黒鉛質材料添加剤と、バインダとを含むカソード組成物であって、前記黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および
(i)約15μm未満、または
(ii)約10μm未満
のD50を有する黒鉛質粒子を含む、カソード組成物。
【請求項26】
前記黒鉛質粒子の前記非球状形態は、扁平球状体またはフレーク形態のいずれかに近似する形態を包含する、請求項25に記載のカソード組成物。
【請求項27】
前記カソード活性材料は、コバルト酸リチウム(LCO)またはニッケルマンガンコバルト(NMC)の形態で提供される、請求項25または26に記載のカソード組成物。
【請求項28】
前記バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)の形態で提供される、請求項25~27のいずれか一項に記載のカソード組成物。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載のカソード組成物を含む、リチウムイオン電池。
【請求項30】
請求項1~28のいずれか一項に記載のカソード組成物を製造するための方法。
【請求項31】
カソード組成物に使用するための黒鉛質材料添加剤を製造する方法であって、前記黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および約15μm未満のD50を有し、
(i)グラファイト鉱石を濃縮および精製し、99.9%wt/wt超の炭素含有量を有する一次黒鉛質粒子を提供するステップと、
(ii)ステップ(i)の前記濃縮および精製された黒鉛質粒子を分類し、グラファイト微粒子を製造するステップと、
(iii)ステップ(ii)の前記グラファイト微粒子を、
i.凝集微粒子生成物である、コーティングされた一次グラファイト粒子を製造するためのコーティング/混合ステップとそれに続く成形ステップ、または
ii.前記グラファイト微粒子の表面積を増加させ、高表面積(HSA)生成物を製造し、そこから前記グラファイト微粒子が乾燥ステップに渡される機械的剥離ステップであって、前記乾燥ステップは、フレーク形態で前記HSA生成物を維持するものである機械的剥離ステップ
のいずれかに通過させるステップと
を含む、方法。
【請求項32】
前記黒鉛質粒子は、約10μm未満のD50を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記機械的剥離ステップは、ミリング、衝撃、圧力、および/または剪断力によって行われる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記機械的剥離ステップは、
(i)200kWh/t超、
(ii)200~500kWh/tの範囲、
(iii)400kWh/t超、
(iv)400~500kWh/tの範囲、
(v)700kWh/t超、
(vi)700~1200kWh/tの範囲、または
(vii)1000~1200kWh/tの範囲
で実行される、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記HSA生成物の前記黒鉛質粒子は、
(i)20m/g超、
(ii)20~40m/gの範囲、
(iii)25~35m/gの範囲、
(iv)40m/g超、
(v)40~80m/gの範囲、または
(vi)40~50m/gの範囲
の表面積を有する、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記HSA生成物の前記黒鉛質粒子は、400~500kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、25~35m/gの表面積を有する、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記HSA生成物の前記黒鉛質粒子は、1000~1200kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、40~50m/gの表面積を有する、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記HSA生成物が供される前記乾燥ステップは、極低温乾燥方法である、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)炭素系材料、または
(ii)ピッチ、ポリエチレンオキシド、およびポリビニルオキシドのうちの1つまたは複数
をさらに含む、請求項31~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
二次グラファイト粒子中の炭素系材料の量は、グラファイトに対して2~10重量%の範囲である、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソード組成物およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明のカソード組成物は、その高い容量および高い維持率を提供することを意図している。
【0002】
特に、本発明のカソード組成物は、リチウムイオン電池での使用を意図している。
【背景技術】
【0003】
現在、導電性炭素材料は、そのアノードとカソードの両方における電気化学的活性材料の電気導電率を改善するためにリチウムイオン電池に使用されている。カーボンブラック(CB)は、最も一般的に使用される導電性添加剤であるが、市販のグラファイト(例えばImerys Graphite&Carbon製のTIMREX(登録商標)KS6)も利用されており、カーボンナノチューブ(CNT)および気相成長炭素繊維(VGCF)も同様である。
【0004】
電気導電率の改善に加えて、カーボンブラックはまた、電池セル内の発熱を最小限に抑えると理解される。
【0005】
CNTは、独特の一次元構造を有し、優れた機械的、電気的、および電気化学的性質であることが知られているものを提供する。VGCFは同様に、活性材料コーティング内に効果的な導電性ネットワークを提供し、これは低温性能の改善、より長いサイクル寿命、より高い速度能力、およびセル内のより低い体積膨張に寄与する。CNTとVGCFは両方とも、重要な導電性添加剤と考えられ、カーボンブラックと比較した場合、高い導電率を提供するために非常に少ない添加量(<1%)しか必要としない。残念なことに、CNTとVGCFは両方とも比較的高価であり(数十ドル/kg)、それらの適用に関連する重大な安全上の懸念を有する(CNTは特に肺でアスベスト様反応を引き起こす)。
【0006】
リチウムイオン電池カソード用の改善された添加剤、特に天然グラファイト前駆体に由来する添加剤を提供することには、大きな利点および利益がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明のカソード組成物および方法は、その1つの目的として、従来技術のプロセスに関連する上記の問題の1つまたは複数を実質的に克服すること、または少なくともそれに対する有用な代替物を提供することを有する。
【0008】
背景技術の前述の説明は、本発明の理解を容易にすることのみを意図している。この説明は、言及された資料のいずれかが、出願の優先日における共通の一般知識であるか、またはその一部であったことの認容または承認ではない。
【0009】
本明細書および特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、「備える(comprise)」という語または「備える(comprises)」もしくは「備えている(comprising)」などの変形は、記載された整数または整数群を含むが、任意の他の整数または整数群を除外しないことを意味すると理解される。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、「扁平球状体(oblate spheroid)」という用語またはその変形は、その短軸を中心に楕円を回転させることによって得られる回転面を指す。簡単に言えば、扁平球状体は、それが高いというよりも広い平坦な球であると理解される。同じ形状/形態を実質的に示すと理解される他の用語は、「楕円形」および「ジャガイモ形状」である。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、「フレーク」という用語またはその変形は、言及された材料がフレークまたはフレーク状モルホロジーもしくは形態を有することを示すと理解されるべきである。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、「ミリング」への言及は、「研削」への言及を含むと理解されるべきであり、「研削」への言及は、「ミリング」への言及を含むと理解されるべきである。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、D50は、粒径分布の中央値を指すと理解されるべきである。言い換えると、累積分布における50%での粒子直径の値である。例えば、サンプルのD50が値Xである場合、そのサンプル内の粒子の50%は値Xよりも小さく、そのサンプル内の粒子の50%は値Xよりも大きい。
【0014】
本発明の特徴に関して使用される「相対的な」または「相対的に」という用語は、文脈が明らかにそうでないことを指示または要求しない限り、従来技術のその特徴および従来技術のその特徴の典型的な特性の比較を示すことを意図している。
【0015】
本明細書で提供される範囲は、記載された範囲、および記載された範囲内の任意の値または部分範囲を含むことを理解されるべきである。例えば、約1マイクロメートル(μm)~約2μm、または約1μm~2μmの範囲は、約1μm~約2μmの明示的に列挙された限界だけでなく、約1.2μm、約1.5μm、約1.8μmなどの個々の値、および約1.1μm~約1.9μm、約1.25μm~約1.75μmなどの部分範囲も含むと解釈されるべきである。さらに、「約」および/または「実質的に」が値を記述するために利用される場合、それらは記載された値からのわずかな変動(+/-10%まで)を包含することを意味する。
【0016】
発明の開示
本発明によれば、カソード組成物であって、カソードは、黒鉛質材料添加剤(graphitic material additive)を含み、黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態(non-spheroidal form)および約15μm未満のD50を有する黒鉛質粒子を含む、カソード組成物が提供される。
【0017】
好ましくは、黒鉛質粒子(graphitic particles)は、約10μm未満のD50を有する。
【0018】
黒鉛質粒子の非球状形態は、好ましくは、扁平球状体またはフレーク形態のいずれかに近似する形態を包含する。
【0019】
さらに好ましくは、黒鉛質粒子は、
(i)99.9%wt/wt超、または
(ii)99.92%wt/wt超
の炭素含有量を有する。
【0020】
黒鉛質粒子は、好ましくは、凝集微粒子生成物または高表面積(HSA)生成物のいずれかを含む。
【0021】
好ましくは、凝集微粒子生成物は、扁平球状体に近似する形態を主に有する二次グラファイト粒子(secondary graphite particles)を含む。
【0022】
本発明の一形態では、二次グラファイト粒子は、
(i)約5μm未満、または
(ii)約2μm未満
のD50を有する。
【0023】
好ましくは、二次グラファイト粒子は、
(i)約2~60m/g、または
(ii)約2~6m/g
の表面積を有する。
【0024】
75kf/cmにおける二次グラファイト粒子の圧縮密度は、好ましくは、約1.0~1.5g/ccの範囲である。
【0025】
二次グラファイト粒子の導電率は、好ましくは、約25~37S/cmの範囲、例えば約31S/cmである。
【0026】
好ましくは、二次グラファイト粒子は、粉砕一次グラファイト粒子(ground primary graphite particle)を含む。
【0027】
好ましくは、HSA生成物は、機械的剥離を受けた黒鉛質粒子を含む。機械的剥離は、好ましくは、ミリング、衝撃、圧力、および/または剪断力によって行われる。
【0028】
さらに好ましくは、機械的剥離は、
(i)200kWh/t超、
(ii)200~500kWh/tの範囲、
(iii)400kWh/t超、
(iv)400~500kWh/tの範囲、
(v)700kWh/t超、
(vi)700~1200kWh/tの範囲、または
(vii)1000~1200kWh/tの範囲
で実行される。
【0029】
HSA生成物の黒鉛質粒子は、好ましくは、
(i)20m/g超、
(ii)20~40m/gの範囲、
(iii)25~35m/gの範囲、
(iv)40m/g超、
(v)40~80m/gの範囲、または
(vi)40~50m/gの範囲
の表面積を有する。
【0030】
本発明の一形態では、HSA生成物の黒鉛質粒子は、200kWh/t超、例えば400~500kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、20m/g超、例えば25~35m/gの表面積を有する。
【0031】
本発明のさらなる形態では、HSA生成物の黒鉛質粒子は、700kWh/t超、例えば1000~1200kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、40m/g超、例えば40~50m/gの表面積を有する。
【0032】
好ましくは、HSA生成物は、フレーク形態を有する。
【0033】
HSA生成物はまた、好ましくは、機械的剥離の後に、そのフレーク形態の維持を支援する乾燥方法、例えば極低温乾燥方法にも供される。
【0034】
さらに好ましくは、粉砕一次グラファイト粒子は、炭素系材料をさらに含む。炭素系材料は、好ましくは、ピッチ、ポリエチレンオキシド、およびポリビニルオキシドのうちの1つまたは複数である。
【0035】
好ましくは、二次グラファイト粒子中の炭素系材料の量は、グラファイトに対して2~10重量%の範囲である。
【0036】
粉砕一次グラファイト粒子は、好ましくは、
(i)15μm未満、
(ii)10μm未満、または
(iii)約0.5~6μmの範囲
のD50を有する。
【0037】
好ましくは、粉砕一次グラファイト粒子は、約2~60m/g、例えば7~9m/gの表面積を有する。
【0038】
好ましくは、粉砕一次グラファイト粒子は、3.35Å超のd002、1000Å超のLc、および1000Å超のLaのうちの1つまたは複数のXRD特性を有する。好ましい形態では、粉砕一次グラファイト粒子は、3.35Å超のd002、1000Å超のLc、および1000Å超のLaの各々のXRD特性、ならびに99.9%超の純度を有する。
【0039】
一形態では、黒鉛質材料添加剤の二次グラファイト粒子は、一次グラファイト粒子の凝集体を含み、凝集体は、ほぼ扁平球状体の形態を提供し、約5ミクロン未満のD50を有する。
【0040】
二次グラファイト粒子は、本発明の一形態では、約2ミクロン未満のD50を有してもよい。
【0041】
一形態では、黒鉛質材料添加剤は、天然グラファイト前駆体に由来する。
【0042】
本発明によれば、カソード活性材料と、黒鉛質材料添加剤と、バインダとを含むカソード組成物であって、黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および約15μm未満のD50を有する黒鉛質粒子を含む、カソード組成物が提供される。
【0043】
好ましくは、黒鉛質粒子は、約10μm未満のD50を有する。
【0044】
黒鉛質粒子の非球状形態は、好ましくは、扁平球状体またはフレーク形態のいずれかに近似する形態を包含する。
【0045】
本発明の一形態では、カソード活性材料は、コバルト酸リチウム(LCO)の形態で提供されてもよい。さらなる形態では、カソード活性材料は、ニッケルマンガンコバルト(NMC)の形態で提供されてもよい。
【0046】
別の形態では、バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)の形態で提供されてもよい。
【0047】
本発明によれば、上記のカソード組成物を含む、リチウムイオン電池がさらに提供される。
【0048】
本発明によれば、上記のカソード組成物を製造するための方法がまたさらに提供される。
【0049】
本発明によれば、カソード組成物に使用するための黒鉛質材料添加剤を製造する方法であって、黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および約15μm未満のD50を有し、
(i)グラファイト鉱石を濃縮および精製し、99.9%wt/wt超の炭素含有量を有する一次黒鉛質粒子を提供するステップと、
(ii)ステップ(i)の濃縮および精製された黒鉛質粒子を分類し、グラファイト微粒子を製造するステップと、
(iii)ステップ(ii)のグラファイト微粒子を、
i.凝集微粒子生成物である、コーティングされた一次グラファイト粒子を製造するためのコーティング/混合ステップとそれに続く成形ステップ、または
ii.グラファイト微粒子の表面積を増加させ、高表面積(HSA)生成物を製造し、そこからグラファイト微粒子が乾燥ステップに渡される機械的剥離ステップであって、乾燥ステップは、フレーク形態でHSA生成物を維持するものである機械的剥離ステップ
のいずれかに通過させるステップと
を含む、方法がまたさらに提供される。
【0050】
好ましくは、黒鉛質粒子は、約10μm未満のD50を有する。
【0051】
機械的剥離ステップは、好ましくは、ミリング、衝撃、圧力、および/または剪断力によって行われる。
【0052】
さらに好ましくは、機械的剥離ステップは、
(i)200kWh/t超、
(ii)200~500kWh/tの範囲、
(iii)400kWh/t超、
(iv)400~500kWh/tの範囲、
(v)700kWh/t超、
(vi)700~1200kWh/tの範囲、または
(vii)1000~1200kWh/tの範囲
で実行される。
【0053】
HSA生成物の黒鉛質粒子は、好ましくは、
(i)20m/g超、
(ii)20~40m/gの範囲、
(iii)25~35m/gの範囲、
(iv)40m/g超、
(v)40~80m/gの範囲、または
(vi)40~50m/gの範囲
の表面積を有する。
【0054】
本発明の一形態では、HSA生成物の黒鉛質粒子は、200kWh/t超、例えば400~500kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、20m/g超、例えば25~35m/gの表面積を有する。
【0055】
本発明のさらなる形態では、HSA生成物の黒鉛質粒子は、700kWh/t超、例えば1000~1200kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、40m/g超、例えば40~50m/gの表面積を有する。
【0056】
HSA生成物が供される乾燥ステップは、好ましくは、極低温乾燥方法である。
【0057】
さらに好ましくは、粉砕一次グラファイト粒子は、炭素系材料をさらに含む。炭素系材料は、好ましくは、ピッチ、ポリエチレンオキシド、およびポリビニルオキシドのうちの1つまたは複数である。
【0058】
好ましくは、二次グラファイト粒子中の炭素系材料の量は、グラファイトに対して2~10重量%の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
ここで、本発明を、その一実施形態および添付の図面を参照して、単なる例として説明する。
図1】本発明の方法で使用するための/本発明の方法で使用される粉砕一次グラファイト粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、示されるようにx2,000での倍率を示す。
図2】本発明のカソード組成物のための黒鉛質材料添加剤の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、黒鉛質材料添加剤は、凝集微粒子生成物を含み、扁平球状体に近似する形態を主に有する二次グラファイト粒子であり、示されるようにx2,000の倍率を示す。
図3】本発明のカソード組成物のための黒鉛質材料添加剤の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、黒鉛質材料添加剤は、高表面積(HSA)生成物を含み、HSA生成物(HSA1)は、表面積を増加させるために機械的剥離を受けており、表面積は、約25~35m/gの範囲であり、示されるようにx2,000の倍率を示す。
図4】本発明のカソード組成物のための黒鉛質材料添加剤の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、黒鉛質材料添加剤は、高表面積(HSA)生成物を含み、HSA生成物(HSA2)は、表面積を増加させるために機械的剥離を受けており、表面積は、約40~50m/gの範囲であり、示されるようにx2,000の倍率を示す。
図5】種々のカソード組成物の1サイクル目の効率(FCE/FCL)を決定するための実験の結果のグラフ表示であり、炭素成分が棒グラフの各バーに示されている。
図6】コーティング厚さを使用して測定された、1サイクル目、10サイクル目、および15サイクル目における種々のカソード組成物の容量維持率を決定するための実験の結果のグラフ表示である。
図7】コーティング密度を使用して測定された、1サイクル目、10サイクル目、および15サイクル目における種々のカソード組成物の容量維持率を決定するための実験の結果のグラフ表示である。
図8】既知の方式で構成され、本発明のカソード組成物を利用してそれによるカソードを提供する単層ラミネートセルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、カソード組成物であって、カソードは、黒鉛質材料添加剤を含み、黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および約15μm未満、例えば約10μm未満のD50を有する黒鉛質粒子を含む、カソード組成物を提供する。
【0061】
黒鉛質粒子の非球状形態は、扁平球状体またはフレーク形態のいずれかに近似する形態を包含すると理解される。
【0062】
黒鉛質粒子は、99.9%wt/wt超、例えば99.92%wt/wt超の炭素含有量を有する。
【0063】
黒鉛質粒子は、凝集微粒子生成物または高表面積(HSA)生成物のいずれかを含む。
【0064】
凝集微粒子生成物は、扁平球状体に近似する形態を主に有する二次グラファイト粒子を含む。本発明の一形態では、二次グラファイト粒子は、約5μm未満、例えば約2μm未満のD50を有する。
【0065】
二次グラファイト粒子は、約2~60m/g、例えば約2~6m/gの表面積を有する。
【0066】
75kf/cmにおける二次グラファイト粒子の圧縮密度は、約1.0~1.5g/ccの範囲である。二次グラファイト粒子の導電率は、約25~37S/cmの範囲、例えば約31S/cmである。
【0067】
二次グラファイト粒子は、粉砕一次グラファイト粒子を含む。HSA生成物は、機械的剥離を受けた黒鉛質粒子を含む。この機械的剥離は、ミリング、衝撃、圧力、および/または剪断力によって行われる。
【0068】
機械的剥離は、
(i)200kWh/t超、
(ii)200~500kWh/tの範囲、
(iii)400kWh/t超、
(iv)400~500kWh/tの範囲、
(v)700kWh/t超、
(vi)700~1200kWh/tの範囲、または
(vii)1000~1200kWh/tの範囲
で実行される。
【0069】
HSA生成物の黒鉛質粒子は、
(i)20m/g超、
(ii)20~40m/gの範囲、
(iii)25~35m/gの範囲、
(iv)40m/g超、
(v)40~80m/gの範囲、または
(vi)40~50m/gの範囲
の表面積を有する。
【0070】
HSA生成物は、フレーク形態を有する。
【0071】
HSA生成物はまた、機械的剥離の後に、そのフレーク形態の維持を支援する乾燥方法、例えば極低温乾燥方法にも供される。
【0072】
本発明の一形態では、HSA生成物の黒鉛質粒子は、200kWh/t超、例えば400~500kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、20m/g超、例えば25~35m/gの表面積を有する。これは、本明細書でHSA生成物1、またはHSA1と呼ばれるものを提供する。
【0073】
本発明のさらなる形態では、HSA生成物の黒鉛質粒子は、700kWh/t超、例えば1000~1200kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、40m/g超、例えば40~50m/gの表面積を有する。これは、本明細書でHSA生成物2、またはHSA2と呼ばれるものを提供する。
【0074】
粉砕一次グラファイト粒子は、炭素系材料をさらに含む。炭素系材料は、例えば、ピッチ、ポリエチレンオキシド、およびポリビニルオキシドのうちの1つまたは複数である。
【0075】
二次グラファイト粒子中の炭素系材料の量は、グラファイトに対して2~10重量%の範囲である。粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)15μm未満、
(ii)10μm未満、または
(iii)約0.5~6μmの範囲
のD50を有する。
【0076】
粉砕一次グラファイト粒子は、約2~60m/g、例えば7~9m/gの表面積を有する。
【0077】
粉砕一次グラファイト粒子は、3.35Å超のd002、1000Å超のLc、および1000Å超のLaのうちの1つまたは複数のXRD特性を有する。例えば、一形態では、粉砕一次グラファイト粒子は、3.35Å超のd002、1000Å超のLc、および1000Å超のLaの各々のXRD特性、ならびに99.9%超の純度を有する。
【0078】
一形態では、黒鉛質材料添加剤の二次グラファイト粒子は、一次グラファイト粒子の凝集体を含み、凝集体は、ほぼ扁平球状体の形態を提供し、約5ミクロン未満のD50を有する。二次グラファイト粒子は、本発明の一形態では、約2ミクロン未満のD50を有してもよい。
【0079】
一形態では、黒鉛質材料添加剤は、天然グラファイト前駆体に由来する。
【0080】
本発明は、カソード活性材料と、黒鉛質材料添加剤と、バインダとを含むカソード組成物であって、黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および約15μm未満、例えば約10μm未満のD50を有する黒鉛質粒子を含む、カソード組成物をさらに提供する。
【0081】
黒鉛質粒子の非球状形態は、扁平球状体またはフレーク形態のいずれかに近似する形態を包含する。
【0082】
本発明の一形態では、カソード活性材料は、コバルト酸リチウム(LCO)の形態で提供されてもよい。さらなる形態では、カソード活性材料は、ニッケルマンガンコバルト(NMC)の形態で提供されてもよい。
【0083】
別の形態では、バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)の形態で提供されてもよい。
【0084】
本発明は、上記のカソード組成物を含む、リチウムイオン電池をさらに提供する。またさらに、本発明は、上記のカソード組成物を製造するための方法を提供する。
【0085】
本発明は、カソード組成物に使用するための黒鉛質材料添加剤を製造する方法であって、黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および約15μm未満、例えば10μm未満のD50を有し、
(i)グラファイト鉱石を濃縮および精製し、99.9%wt/wt超の炭素含有量を有する一次黒鉛質粒子を提供するステップと、
(ii)ステップ(i)の濃縮および精製された黒鉛質粒子を分類し、グラファイト微粒子を製造するステップと、
(iii)ステップ(ii)のグラファイト微粒子を、
i.凝集微粒子生成物である、コーティングされた一次グラファイト粒子を製造するためのコーティング/混合ステップとそれに続く成形ステップ、または
ii.グラファイト微粒子の表面積を増加させ、高表面積(HSA)生成物を製造し、そこからグラファイト微粒子が乾燥ステップに渡される機械的剥離ステップであって、乾燥ステップは、フレーク形態でHSA生成物を維持するものである機械的剥離ステップ
のいずれかに通過させるステップと
を含む、方法をまたさらに提供する。
【0086】
機械的剥離ステップは、一形態では、ミリング、衝撃、圧力、および/または剪断力によって行われる。機械的剥離ステップは、
(i)200kWh/t超、
(ii)200~500kWh/tの範囲、
(iii)400kWh/t超、
(iv)400~500kWh/tの範囲、
(v)700kWh/t超、
(vi)700~1200kWh/tの範囲、または
(vii)1000~1200kWh/tの範囲
で実行される。
【0087】
HSA生成物の黒鉛質粒子は、
(i)20m/g超、
(ii)20~40m/gの範囲、
(iii)25~35m/gの範囲、
(iv)40m/g超、
(v)40~80m/gの範囲、または
(vi)40~50m/gの範囲
の表面積を有する。
【0088】
本発明の一形態では、HSA生成物の黒鉛質粒子は、200kWh/t超、例えば400~500kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、20m/g超、例えば25~35m/gの表面積を有する。
【0089】
本発明のさらなる形態では、HSA生成物の黒鉛質粒子は、700kWh/t超、例えば1000~1200kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、40m/g超、例えば40~50m/gの表面積を有する。
【0090】
HSA生成物が供される乾燥ステップは、極低温乾燥方法である。
【0091】
一形態では、粉砕一次グラファイト粒子は、炭素系材料をさらに含む。炭素系材料は、例えば、ピッチ、ポリエチレンオキシド、およびポリビニルオキシドのうちの1つまたは複数である。二次グラファイト粒子中の炭素系材料の量は、グラファイトに対して2~10重量%の範囲である。
【0092】
本発明のプロセスは、以下の非限定的な例を参照してよりよく理解され得る。
【0093】
粉砕一次グラファイト粒子
以下の表Aは、本発明の方法で使用するための/本発明の方法で使用される適切な粉砕一次グラファイト粒子、精製グラファイト微粒子前駆体の1つの非限定的な例を提供し、表Bは、その元素分析を提供する。
表A
【表1】
表B
【表2】
【0094】
好ましい形態では、精製グラファイトは、99.9%超、好ましくは99.92%超の炭素含有量を有する。さらに、精製グラファイトは、20μm未満、例えば15μm未満、ひいては10μm未満のD50を有する粒径分布のフレークモルホロジーを有する。グラファイト微粒子は、供給グラファイト材料を分類することによって得られる。
【0095】
凝集微粒子生成物
本発明の一形態による凝集微粒子生成物の製造において、粉砕一次グラファイト粒子は球状化され、炭素系材料でコーティングされ、その後、それらは熱分解され、それによって扁平球状体に近似する二次粒子が製造される。炭素系材料は、ピッチ、ポリエチレンオキシド、およびポリビニルアルコールのうちの1つまたは複数である。粉砕一次グラファイト粒子をコーティングする際に使用される炭素系材料の量は、グラファイトに対して2~10重量%の範囲である。熱分解の温度は、約880℃~1100℃である。熱分解の時間は、加熱期間と冷却期間の両方を含めて、約12~40時間の範囲である。
【0096】
本出願人らは、本発明の二次グラファイト粒子に加えて、粉砕一次グラファイト粒子およびそれらの製造を国際特許出願PCT/IB2020/058910号明細書に記載しており、その全内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例1】
【0097】
本調査に使用した天然グラファイト前駆体は、スウェーデン北部ノルボッテン郡のVittangiグラファイト鉱山から抽出した。この天然グラファイト源は、微結晶フレークを有する非常に狭い分布を有する硬質粒子を特徴とする。次いで、グラファイトをルードルシュタットの本出願人のパイロットプラントで化学的に精製した。
【0098】
図1のSEM画像は、約5μm未満のD50を有する相対的に小さい粒子、およびフレーク形状を有するより小さい粒子(約1μm)から構成される二次グラファイト材料を示し、それらは約10μmのサイズを有する凝集体を少なくとも部分的に形成するように見える。
【0099】
異なる黒鉛質材料添加剤を利用する種々のカソード組成物の性能を調査するために、本出願人らによってまたは本出願人らに代わって一連の実験が行われた。
【0100】
導電性添加剤試験で用いられるカソード活性材料/バインダ/黒鉛質材料のカソード組成物は、以下の通りである:
LCO/PVdF/Cmix=95.8:1.2:3コインセル
【0101】
LCOは、コバルト酸リチウムを指し、PVdFは、ポリフッ化ビニリデンを指し、Cmixは、用いられる特定の黒鉛質材料添加剤を表す。
【0102】
表1は、実行された実験の範囲および用いられる特定の黒鉛質材料添加剤を示す。
表1
【表3】
【0103】
表2は、様々な黒鉛質材料添加剤の各々の詳細を提供する。本出願人からの様々な黒鉛質材料が記載されており、T-20は、以下に記載されるように、カーボンブラックと2:1の比で混合されている。
表2
【表4】
【0104】
用いられたサイクリング試験ステップは、以下の通りであった。
【0105】
第1サイクル:
(i)リチウム化 C/100までC/10~3V
(ii)脱リチウム化 C/10~4.2V
【0106】
第2~第10サイクル:
(i)リチウム化 C/20までC/5~3V
(ii)脱リチウム化 C/5~4.2V
【0107】
第11~第15サイクル:
(i)リチウム化 30分の総リチウム化時間まで2C~3V
(ii)脱リチウム化 2C~42V
【0108】
実験1および2の結果が、以下の表3に提供される。全体を通して「添付参照」への言及は、IRが参照される後の表を参照されたい。
表3
【表5】
【0109】
実験3および4の結果が、以下の表4に提供される。
表4
【表6】
【0110】
実験5および6の結果が、以下の表5に提供される。
表5
【表7】
【0111】
実験7の結果が、以下の表6に提供される。
表6
【表8】
【0112】
実験1~7の平均データが以下の表7に提供され、FCE/FCLが図5にグラフで表され、容量維持率の比較(コーティング厚さ)が図6に示される。
[ページの残りの部分は意図的に空白のまま]
表7
【表9】
【0113】
実験1~7の平均データが再び以下の表8に提供され、容量維持率の比較(コーティング密度)が図7に示される。
表8
【表10】
【0114】
本出願人らがこの一連の実験から導き出した結論には、以下が含まれる:
(i)第1サイクル効率(FCE/FCL)の順序は、実験4(HSA2)>実験3(HSA1)である、
(ii)C/5での10サイクル後の容量維持率は、HSA1またはUHS2のみを添加剤として使用した場合に悪化する、
(iii)HSA1/UHS2およびCBの混合物は、FCLおよび容量維持率を改善することができる、ならびに
(iv)より高い導電率を含む最良の性能は、実験7に示すように、カーボンブラックと2:1の比で混合された凝集微粒子で実現される。
【0115】
加圧後の同様の密度と同様の圧力の両方において、粉体抵抗を調査するために試験を行った。
【0116】
加圧後の同様の密度下での粉体抵抗試験の結果が、以下の表9に示される。
表9
【表11】
【0117】
同様の圧力下での粉体抵抗試験の結果が、以下の表10に示される。
表10
【表12】
【0118】
本出願人らは、粉体抵抗に関して以下の結論を引き出した:
(i)同様の密度において、抵抗率は、HSA1>HSA2>凝集微粒子である、および
(ii)同様の圧力において、順序は、HSA2>HSA1>凝集微粒子である。
【0119】
凝集微粒子および高表面積(HSA)生成物
凝集微粒子生成物の製造は、上記で説明されている。高表面積(HSA)生成物の製造は、ミリング、衝撃、圧力、および/または剪断力のうちの1つを使用して有利に実施することができる機械的剥離ステップを含む。
【0120】
200~500kWh/t、例えば400~500kWht/tのエネルギーで機械的に剥離された一次グラファイト材料は、HSA1を生成する。HSA1生成物は、20~40m/g、例えば25~35m/gの表面積を有する。
【0121】
700~1200kWh/t、例えば1000~1200kWht/tのエネルギーで機械的に剥離された一次グラファイト材料は、HSA2を生成する。HSA2生成物は、40~80m/g、例えば40~50m/gの表面積を有する。
【0122】
好ましい形態では、機械的剥離ステップからの剥離スラリーは、フレークモルホロジーを維持するために特別な乾燥方法を使用して乾燥される。特別な乾燥方法としては、極低温乾燥方法を挙げることができる。そのような極低温方法は、スラリーを凍結させ、氷を蒸気に昇華させる。適切なプロセス条件の一例には、スラリーを固体ブロックに凍結させた後、ブロックを以下に供することが含まれる:
(i)<6mbarの真空、>0℃の乾燥温度、および<60~70℃の凝縮器温度、または
(ii)<1mbarの真空、>30~40℃の乾燥温度、および60~70℃の凝縮器温度。
【0123】
本出願人らは、熱風オーブンなどの典型的な乾燥方法を使用すると、フレークが凝集し、それによって相対的に小さい表面積を有する劣った一次グラファイト材料が得られることを理解している。
【0124】
HSA1およびHSA2の粒径は、15μm未満のD50、例えば10μm未満のD50である。
【0125】
本出願人は、NMC111カソード中の本発明による本出願人の黒鉛質材料添加剤組成物を評価するためにさらなる一連の試験を行い、NMCは、ニッケルマンガンコバルトを参照している。
【実施例2】
【0126】
これらの試験で利用される本発明の組成物の凝集微粒子(AF)および高表面積(HSA1およびHSA2)黒鉛質粒子の詳細が、以下の表11に記載される。
表11
【表13】
【0127】
カソードの成分は、活性材料(93重量%)、バインダ/PVDF(3%)、および導電性添加剤(4%)を含む。1つの試験系では、本出願人の黒鉛質材料添加剤を唯一の添加剤として使用した。別の試験系では、本出願人の黒鉛質材料添加剤をカーボンブラック(CB)(基準)と1:1の比(各々2%)で組み合わせた。CB単独(4%)を基準として使用した。以下の表12は、この試験系の構成要素を要約している。
表12
【表14】
【0128】
図8には、本発明によるカソード組成物およびカソードを組み込んだフルセル10が示されている。フルセル10は、アルミニウムラミネート膜または外側パッケージ12と、負極またはアノード14と、本発明による正極またはカソード16と、セパレータ18とを備え、各々が実質的に既知の方式で配置される。アノード14は、銅集電体20をさらに備え、カソード16は、アルミニウム集電体22をさらに備える。
【0129】
以下の表13は、導電率、コーティング重量、および強度に関する試験結果の要約を提供する。
表13
【表15】
【0130】
CBと1:1の比のHSA1およびHSA2を有する電極の導電率値(電極導電率S/cm)は、基準単独よりも高かった(3X)。この結果は、必要な導電率を達成するために相対的に少量の導電剤(この場合、例えば4重量%未満)を添加することができ、かつより多量の活性カソード材料を添加することができ、それにより電池容量が増加することを示し得ると考えられる。
【0131】
本出願人の黒鉛質材料添加剤を含む電極のカレンダ密度は、基準と比較して高かった。カレンダ加工は、空隙率を低減し、粒子接触を改善し、エネルギー密度を高めるための乾燥電極材料の圧縮として定義することができる。同じ印加カレンダ圧力において、本出願人の黒鉛質材料添加剤含有電極はより高い密度を達成した。この結果は、本発明のカソード組成物を用いて調製された電極がより圧縮され/より小さい体積を占めることができ、したがって体積エネルギー密度が従来技術と比較して増加することを示し得ると考えられる。マクロスケールでは、これは、同じ駆動長さに対して相対的に小さい/より軽い電池を示すと理解される。以下の表14は、それぞれの黒鉛質材料添加剤のカレンダ加工性および電気化学的サイクルを要約している。
表14
【表16】
【0132】
すべての電気化学的性能性質は、基準系と一致していた(実験変動内)。これは、本出願人の黒鉛質材料添加剤が、活性カソード材料性能に対して悪影響を及ぼさないことを示している。すべての値は、基準(CB単独)の%である。
【0133】
当業者に明らかであるような修正および変形は、本発明の範囲内にあると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード組成物であって、前記カソードは、黒鉛質材料添加剤を含み、前記黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および約15μm未満のD50を有する黒鉛質粒子を含む、カソード組成物。
【請求項2】
前記黒鉛質粒子は、約10μm未満のD50を有する、請求項1に記載のカソード組成物。
【請求項3】
前記黒鉛質粒子の前記非球状形態は、扁平球状体またはフレーク形態のいずれかに近似する形態を包含する、請求項1または2に記載のカソード組成物。
【請求項4】
前記黒鉛質粒子は、
(i)99.9%wt/wt超、または
(ii)99.92%wt/wt超
の炭素含有量を有する、請求項1または2に記載のカソード組成物。
【請求項5】
前記黒鉛質粒子は、凝集微粒子生成物または高表面積(HSA)生成物のいずれかを含む、請求項1または2に記載のカソード組成物。
【請求項6】
前記凝集微粒子生成物は、扁平球状体に近似する形態を主に有する二次グラファイト粒子を含む、請求項5に記載のカソード組成物。
【請求項7】
前記二次グラファイト粒子は、
(i)約5μm未満、または
(ii)約2μm未満
のD50を有する、請求項6に記載のカソード組成物。
【請求項8】
前記二次グラファイト粒子は、
(i)約2~60m/g、または
(ii)約2~6m/g
の表面積を有する、請求項6に記載のカソード組成物。
【請求項9】
75kf/cmにおける前記二次グラファイト粒子の圧縮密度は、約1.0~1.5g/ccの範囲である、請求項6に記載のカソード組成物。
【請求項10】
前記二次グラファイト粒子の導電率は、
(i)約25~37S/cmの範囲、または
(ii)約31S/cm
である、請求項6に記載のカソード組成物。
【請求項11】
前記二次グラファイト粒子は、粉砕一次グラファイト粒子を含む、請求項6に記載のカソード組成物。
【請求項12】
前記HSA生成物は、機械的剥離を受けた黒鉛質粒子を含む、請求項5に記載のカソード組成物。
【請求項13】
前記機械的剥離は、ミリング、衝撃、圧力、および/または剪断力によって行われる、請求項12に記載のカソード組成物。
【請求項14】
前記機械的剥離は、
(i)200kWh/t超、
(ii)200~500kWh/tの範囲、
(iii)400kWh/t超、
(iv)400~500kWh/tの範囲、
(v)700kWh/t超、
(vi)700~1200kWh/tの範囲、または
(vii)1000~1200kWh/tの範囲
で実行される、請求項12に記載のカソード組成物。
【請求項15】
前記HSA生成物の前記黒鉛質粒子は、
(i)20m/g超、
(ii)20~40m/gの範囲、
(iii)25~35m/gの範囲、
(iv)40m/g超、
(v)40~80m/gの範囲、または
(vi)40~50m/gの範囲
の表面積を有する、請求項12に記載のカソード組成物。
【請求項16】
前記HSA生成物は、フレーク形態を有する、請求項5に記載のカソード組成物。
【請求項17】
前記HSA生成物はまた、機械的剥離の後に、
(i)そのフレーク形態の維持を支援する乾燥方法、または
(ii)極低温乾燥方法
にも供される、請求項16に記載のカソード組成物。
【請求項18】
前記粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)炭素系材料、または
(ii)ピッチ、ポリエチレンオキシド、およびポリビニルオキシドのうちの1つまたは複数
をさらに含む、請求項11に記載のカソード組成物。
【請求項19】
前記二次グラファイト粒子中の炭素系材料の量は、グラファイトに対して2~10重量%の範囲である、請求項18に記載のカソード組成物。
【請求項20】
前記粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)15μm未満、
(ii)10μm未満、または
(iii)約0.5~6μmの範囲
のD50を有する、請求項11に記載のカソード組成物。
【請求項21】
前記粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)約2~60m/g、または
(ii)約7~9m/g
の表面積を有する、請求項11に記載のカソード組成物。
【請求項22】
前記粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)3.35Å超のd002、1000Å超のLc、および1000Å超のLaのうちの1つまたは複数のXRD特性を有する、または
(ii)3.35Å超のd002、1000Å超のLc、および1000Å超のLaの各々のXRD特性、ならびに99.9%超の純度を有する
請求項11に記載のカソード組成物。
【請求項23】
前記黒鉛質材料添加剤の前記二次グラファイト粒子は、一次グラファイト粒子の凝集体を含み、前記凝集体は、ほぼ扁平球状体の形態を提供し、
(i)約5ミクロン未満、または
(ii)約2ミクロン未満
のD50を有する、請求項6に記載のカソード組成物。
【請求項24】
前記黒鉛質材料添加剤は、天然グラファイト前駆体に由来する、請求項1または2に記載のカソード組成物。
【請求項25】
カソード活性材料と、黒鉛質材料添加剤と、バインダとを含むカソード組成物であって、前記黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および
(i)約15μm未満、または
(ii)約10μm未満
のD50を有する黒鉛質粒子を含む、カソード組成物。
【請求項26】
前記黒鉛質粒子の前記非球状形態は、扁平球状体またはフレーク形態のいずれかに近似する形態を包含する、請求項25に記載のカソード組成物。
【請求項27】
前記カソード活性材料は、コバルト酸リチウム(LCO)またはニッケルマンガンコバルト(NMC)の形態で提供される、請求項25または26に記載のカソード組成物。
【請求項28】
前記バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)の形態で提供される、請求項25または26に記載のカソード組成物。
【請求項29】
請求項1または2に記載のカソード組成物を含む、リチウムイオン電池。
【請求項30】
請求項1または2に記載のカソード組成物を製造するための方法。
【請求項31】
カソード組成物に使用するための黒鉛質材料添加剤を製造する方法であって、前記黒鉛質材料添加剤は、概して非球状形態および約15μm未満のD50を有し、
(i)グラファイト鉱石を濃縮および精製し、99.9%wt/wt超の炭素含有量を有する一次黒鉛質粒子を提供するステップと、
(ii)ステップ(i)の前記濃縮および精製された黒鉛質粒子を分類し、グラファイト微粒子を製造するステップと、
(iii)ステップ(ii)の前記グラファイト微粒子を、
i.凝集微粒子生成物である、コーティングされた一次グラファイト粒子を製造するためのコーティング/混合ステップとそれに続く成形ステップ、または
ii.前記グラファイト微粒子の表面積を増加させ、高表面積(HSA)生成物を製造し、そこから前記グラファイト微粒子が乾燥ステップに渡される機械的剥離ステップであって、前記乾燥ステップは、フレーク形態で前記HSA生成物を維持するものである機械的剥離ステップ
のいずれかに通過させるステップと
を含む、方法。
【請求項32】
前記黒鉛質粒子は、約10μm未満のD50を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記機械的剥離ステップは、ミリング、衝撃、圧力、および/または剪断力によって行われる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記機械的剥離ステップは、
(i)200kWh/t超、
(ii)200~500kWh/tの範囲、
(iii)400kWh/t超、
(iv)400~500kWh/tの範囲、
(v)700kWh/t超、
(vi)700~1200kWh/tの範囲、または
(vii)1000~1200kWh/tの範囲
で実行される、請求項31または32に記載の方法。
【請求項35】
前記HSA生成物の前記黒鉛質粒子は、
(i)20m/g超、
(ii)20~40m/gの範囲、
(iii)25~35m/gの範囲、
(iv)40m/g超、
(v)40~80m/gの範囲、または
(vi)40~50m/gの範囲
の表面積を有する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項36】
前記HSA生成物の前記黒鉛質粒子は、400~500kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、25~35m/gの表面積を有する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項37】
前記HSA生成物の前記黒鉛質粒子は、1000~1200kWh/tの範囲の機械的剥離を受けており、40~50m/gの表面積を有する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項38】
前記HSA生成物が供される前記乾燥ステップは、極低温乾燥方法である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項39】
前記粉砕一次グラファイト粒子は、
(i)炭素系材料、または
(ii)ピッチ、ポリエチレンオキシド、およびポリビニルオキシドのうちの1つまたは複数
をさらに含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項40】
二次グラファイト粒子中の炭素系材料の量は、グラファイトに対して2~10重量%の範囲である、請求項39に記載の方法。
【国際調査報告】