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特表2024-523681高層ラック倉庫内で昆虫を飼育する装置および方法
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  • 特表-高層ラック倉庫内で昆虫を飼育する装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】高層ラック倉庫内で昆虫を飼育する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580989
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 DE2022100435
(87)【国際公開番号】W WO2023274447
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021117134.2
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524002304
【氏名又は名称】アルファ-プロテイン ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Alpha-Protein GmbH
【住所又は居所原語表記】Werner-von-Siemens-Strasse 2-6, Gebaeude 5137c, 76646 Bruchsal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロヒ シャラティ
(57)【要約】
本発明の課題は、高層ラック倉庫内での自動化された省資源型の効率的な昆虫飼育を可能にすることにある。ここで発表する発明はこの課題を、少なくとも1つの高層ラック(3)に給餌ゲート(5)が配置されており、給餌ゲート(5)へ、倉庫ロジスティックス装置が、少なくとも1つの高層ラック(3)内に積み重ね可能に保管されたケースを搬送することができるようになっており、倉庫ロジスティックス装置により給餌ゲート(5)へ搬送されたケースの内部のケース内容物の状態を、給餌ゲート(5)により特定することができ、給餌ゲート(5)により、昆虫に給餌することができかつ/または収穫用に成熟している場合には搬出することができるようになっていることにより、解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高層ラック倉庫内で昆虫を飼育する装置(1)であって、少なくとも1つの高層ラック(3)と倉庫ロジスティックス装置とを備えた倉庫領域(2)を含み、前記少なくとも1つの高層ラック(3)内に複数のケースを積み重ね可能に保管することができるようになっており、前記ケースは、前記倉庫ロジスティックス装置により前記倉庫領域(2)内で搬送可能かつ/または搬出可能であり、前記ケース内には昆虫が存在している、装置において、
前記少なくとも1つの高層ラック(3)に給餌ゲート(5)が配置されており、前記倉庫ロジスティックス装置により、前記高層ラック(3)内に積み重ね可能に保管可能な前記ケースを、前記少なくとも1つの高層ラック(3)から前記給餌ゲート(5)へ搬送することができるようになっており、前記ケース内のケース内容物の状態を、前記給餌ゲート(5)により特定することができるようになっており、前記給餌ゲート(5)により、前記ケース内の前記昆虫に給餌することができかつ/または前記ケースを搬出することができるようになっていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
1つのケースには、昆虫、昆虫の皮膚、昆虫の卵、糞、基材および/または飼料の形態のケース内容物が含まれている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記倉庫ロジスティックス装置は、ラック操作装置(4)、シャトルまたは通走ラックである、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記給餌ゲート(5)は、少なくとも1つのバッファ領域を有しており、該バッファ領域内に、前記倉庫ロジスティックス装置により前記給餌ゲート(5)に搬送された前記ケースを中間貯蔵することができる、請求項1から3までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項5】
前記給餌ゲート(5)は、少なくとも1つの検出装置を有しており、該検出装置により、昆虫飼育に必要なパラメータ、特に、ケース内の湿気および温度を検出することができる、請求項1から4までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項6】
前記検出装置は、少なくとも1つのセンサおよび/または記録しかつ/またはデータ伝送する装置、特にカメラを有している、請求項5記載の装置。
【請求項7】
検出装置により検出された、前記ケースのうちの1つの内容物の状態を反映したパラメータを、参照データベースと比較することができ、これにより、特に前記ケース内容物のその時々の状態および/またはケース内の昆虫の成熟度を確認することができる、請求項5または6記載の装置。
【請求項8】
検出された前記パラメータと、前記参照データベースとの比較により得られたデータを、前記検出装置の機械学習に用いることができる、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記得られたデータは、製造パラメータの自動化された最適化、特に飼料の配合および調量に利用することができる、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記給餌ゲート(5)は、少なくとも1つの給餌モジュールを有しており、該給餌モジュールにより、ケース内の昆虫に給餌材料、特に飼料および基材を供給することができる、請求項1から9までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項11】
前記給餌ゲート(5)は、少なくとも1つの清掃モジュールを有しており、該清掃モジュールにより、前記ケース内容物の一部、特に昆虫の皮膚、糞および飼料残留物をケースから除去することができる、請求項1から10までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項12】
前記清掃モジュールは、少なくとも1つの吸込み装置を有しており、該吸込み装置による吸込みまたは風力分級により、除去すべき前記ケース内容物の一部をケースから除去することができる、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記清掃モジュールは、少なくとも1つの電気装置を有しており、該電気装置による静電気により、除去すべき前記ケース内容物の一部をケースから除去することができる、請求項11または12記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、少なくとも1つの孵化領域(7)を有している、請求項1から13までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項15】
前記孵化領域(7)は、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎを孵すためのインキュベータを有している、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記装置は、少なくとも1つのさなぎ処理領域(9)を有している、請求項1から15までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、少なくとも1つの仕分け装置(10)を有しており、該仕分け装置(10)により、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎ、または前記孵化領域(7)および/または前記さなぎ処理領域(9)において、かつ/または前記高層ラック内で孵化した幼虫および/または昆虫を、その他のケース内容物から仕分けることができる、請求項14から16までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項18】
前記装置は、給餌装置(8)を有しており、該給餌装置(8)により、前記昆虫の卵、前記昆虫のさなぎ、前記孵化した幼虫および/または前記昆虫に給餌材料を供給することができる、請求項14から17までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項19】
少なくとも1つの取出し領域(11)が設けられており、該取出し領域(11)において、前記ケースをばらすことができ、該ケースから前記ケース内容物を除去することができる、請求項1から18までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項20】
前記取出し領域(11)は、取出し装置(12)を有しており、該取出し装置(12)により、前記ケースのばらしおよび前記ケースからの前記ケース内容物の除去を実施することができる、請求項19記載の装置。
【請求項21】
前記取出し領域(11)は、少なくとも1つの清掃装置(13)を有しており、該清掃装置(13)により、ばらされて空けられた前記ケースを清掃することができる、請求項19または20記載の装置。
【請求項22】
少なくとも1つの仕分け領域(14)が設けられており、該仕分け領域(14)内で、前記ケースから取り出された前記ケース内容物を、製品、中間製品およびその他のケース内容物に仕分けることができる、請求項19から21までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項23】
前記ケースから取り出された前記ケース内容物は、ばら荷の形態で前記仕分け領域(14)に搬送可能である、請求項22記載の装置。
【請求項24】
少なくとも1つのバッファ領域(15)が設けられており、該バッファ領域(15)内には、空のかつ/または清掃されたケースを貯蔵することができる、請求項19から22までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項25】
前記装置は、少なくとも1つの充填領域(16)を有しており、該充填領域(16)において、前記ケースに飼料、昆虫、昆虫の卵またはこれらの組合せを充填することができる、請求項1から24までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項26】
前記充填領域(16)は、前記ケースに充填するために前置された少なくとも1つの給餌ゲート(17)を有している、請求項25記載の装置。
【請求項27】
前記昆虫の少なくとも1つの段階用に、前置された各1つの給餌ゲート(17)が設けられている、請求項26記載の装置。
【請求項28】
前記充填領域は、前記ケースへの充填が行われる少なくとも1つの充填レーンを有している、請求項25記載の装置。
【請求項29】
前記装置は、少なくとも1つの搬送システム(18)を有しており、該搬送システム(18)により、特に前記ケースまたは積み重ねられたもしくはパレタイズされたケーススタックを、前記倉庫領域(2)の内外へ搬送することができる、請求項1から28までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項30】
前記搬送システム(18)は、全体的または部分的に無人搬送システムである、請求項29記載の装置。
【請求項31】
前記装置は、少なくとも1つの納入領域(20)を有しており、該納入領域(20)に、材料、特に昆虫飼育用の飼料を納入することができる、請求項1から30までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項32】
前記納入領域(20)に、少なくとも1つの餌原料サイロ(22)が配置されている、請求項26記載の装置。
【請求項33】
前記装置は、少なくとも1つの製品サイロ(23)を有しており、該製品サイロ(23)内に、昆虫飼育から得られた製品を保管することができる、請求項1から32までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項34】
前記倉庫領域(2)は、少なくとも1つの空調装置を有しており、該空調装置により、前記倉庫領域(2)内の空気特性を調整することができる、請求項1から33までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項35】
前記倉庫領域(2)は、前記高層ラック(3)に配置された前記少なくとも1つの給餌ゲート(5)に、該給餌ゲート(5)のメンテナンスのため、手動介入のため、かつ手動装填のための少なくとも1つのプラットフォームを有している、請求項1から34までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項36】
前記倉庫領域(2)は、サイロ構造形式で形成されており、これにより、前記少なくとも1つの高層ラック(3)は、少なくとも1つの外部ファサード用の支持部材として用いられる、請求項1から35までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項37】
前記少なくとも1つの外部ファサード用の支持部材として用いられる前記少なくとも1つの高層ラック(3)は、蒸気遮断部を備えた断熱材を有しており、これにより、前記倉庫領域(2)は外部に対して遮蔽されている、請求項36記載の装置。
【請求項38】
請求項1から37までの少なくとも1項記載の装置を用いて高層ラック倉庫内で昆虫を飼育する方法において、
少なくとも1つの高層ラック(3)からケースのスタックを取り出して給餌ゲート(5)に搬送し、このとき該給餌ゲート(5)に搬送された全ての前記ケースについて、各前記ケースのケース内容物の状態を、前記給餌ゲート(5)により特定し、特定した状態に応じて前記ケースを搬出するかまたは前記ケースに給餌し、給餌後に、各前記ケースを前記少なくとも1つの高層ラック(3)に戻すことを特徴とする、方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの高層ラック(3)の内外に搬送される前記ケースを、カオス原理または別の最適化された保管形態に基づき、前記少なくとも1つの高層ラック(3)内で保管する、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記給餌ゲート(5)に搬送された前記ケースを、該給餌ゲート(5)から他の給餌ゲートに搬送する、請求項38または39記載の方法。
【請求項41】
収穫用に成熟したケースの場合には、基材および/または飼料を除去し、これにより、昆虫がその腸を空にするようにする、請求項38から40までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項42】
前記基材および/または飼料の除去を、前記収穫用に成熟したケースの搬出の1~5日前に行う、請求項41記載の方法。
【請求項43】
搬出された、収穫用に成熟したケースをばらして空にする、請求項38から42までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項44】
前記ばらして空にしたケースを清掃する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記ケースを保管し、引き続く使用のために貯蔵する、請求項43または44記載の方法。
【請求項46】
取り出された前記ケース内容物を、製品、中間製品およびその他のケース内容物に仕分ける、請求項43から45までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項47】
前記中間製品を、引き続く飼育のためにケースに充填する、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記製品を、生きている製品として取得するか、または非活性化して細断する、請求項46または47記載の方法。
【請求項49】
前記細断した製品を脱脂して油を生成する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記脱脂した製品を乾燥させて粉砕し、これにより粉末を生成する、請求項49記載の方法。
【請求項51】
請求項49記載の方法に基づき製造された油。
【請求項52】
請求項50記載の方法に基づき製造された粉末。
【請求項53】
動物飼育用の飼料としての、かつ食品用の、特にプロテイン含有粉末としての、請求項52記載の粉末の使用。
【請求項54】
食品および飼料ならびに美容製品用の、請求項51記載の油の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層ラック倉庫内で昆虫を飼育する装置であって、少なくとも1つの高層ラックと倉庫ロジスティックス装置とを備えた倉庫領域を含み、少なくとも1つの高層ラック内に複数のケースを積み重ね可能に保管することができるようになっており、ケースは、倉庫ロジスティックス装置により倉庫領域内で搬送可能であり、ケース内には昆虫が存在している、装置に関する。本発明は、本発明による装置を用いて高層ラック倉庫内で昆虫を飼育する方法にも関する。
【0002】
昆虫を飼育する装置は、例えば独国特許発明第102019121102号明細書から従来公知である。この装置は、自動化された昆虫飼育を可能にし、この飼育ではゲートを介して、ケースのスタックがパーテルノステル原理に従い循環させられ、ケース内に存在する昆虫は、給餌モジュールにより給餌される。
【0003】
さらに国際公開第2016/153340号から、昆虫を飼育する装置および方法が開示されている。この場合、この装置は、
-母虫を含む成虫および昆虫の餌を収容するようにまたは収容済みであるように適合させられた多数の産卵容器が設けられており、多数の産卵容器は積み重ねられて1つまたは複数の産卵容器スタックを形成している、産卵領域と、
-多数の産卵構造体であって、少なくとも1つの産卵構造体は、産卵領域内の各産卵容器に提供されるようにまたは提供されているように適合させられており、母虫は、これらの産卵構造体内でその卵を産卵することになり、その結果、産卵構造体または産卵構造体の一部が卵を保持するようになっており、産卵構造体または産卵構造体の一部を、産卵容器から除去することができるようになっており、このとき成虫は産卵容器内に留まる、産卵構造体と、
-卵が孵化することになる孵化領域であって、孵化領域は、卵を保持する産卵構造体または産卵構造体の一部を収容しかつ産卵容器から除去され得るように適合させられており、このことが、幼虫の収穫を可能にする、孵化領域と、
-産卵容器に餌を供給する給餌システムと、
-卵を保持する産卵構造体または産卵構造体の一部を産卵容器から除去しかつ産卵構造体または産卵構造体の一部を孵化領域に搬送しかつ空の産卵構造体または産卵構造体の一部を各産卵容器に提供するように適合させられた、産卵構造体を操作するシステムを含む、産卵構造体を操作する領域であって、産卵構造体を操作する領域は、好適には、産卵構造体または産卵構造体の一部を清掃するためにも適合させられている、産卵構造体を操作する領域と、
-産卵領域と産卵構造体操作領域との間で産卵容器を搬送するための容器操作システムとを含む。
【0004】
さらに、国際公開第2016/166471号から、昆虫を飼育する工場が従来公知であり、この発明は、昆虫を飼育する設備に関し、この設備は、飼育しようとする昆虫が成長中は容器内に保管される第1の領域と、容器内のまたは容器における昆虫に対する役目を果たすように構成された少なくとも1つのステーションを有する第2の領域とを含む。容器は第1のゾーンにおいて、ベースユニットと呼ばれる複数組のパレタイズされた容器にグループ分けされている。この場合、第1のゾーンは、ベースユニットが配置されたパレット軌道を含む。第1のゾーンにはさらに、ベースユニットを第1のゾーンと、第2のゾーンとのインタフェースとの間で移動させるように構成された自動装置が装備されている。
【0005】
さらに、国際公開第2014/171829号から従来公知の、多数の個別ケースを使用して昆虫を飼育する方法およびシステムでは、各ケースの少なくとも一部が、飼料および未成熟状態の昆虫を含む基材で満たされている。さらに、ケースが収納されておりかつ換気システムを有する空調室が設けられている。システムには、ケースを空調室から引き取りかつそこに戻すために、搬送システムが含まれている。搬送システムに沿って、データおよび測定値を含む観察結果を得るための観察システムが配置されており、観察システムの下流側には、原料用の供給ステーションが配置されている。
【0006】
国際公開第2017/223096号からも、自律型飼料供給プラットフォームが従来公知であり、この自律型飼料供給プラットフォームは、設備を通り抜け、設備内に存在する複数の昆虫生息箇所に昆虫の餌を供給するように構成されている。いくつかのケースでは、飼料供給プラットフォームは、複数の昆虫生息箇所に餌を実質的に同時に供給するように構成されていてもよい。
【0007】
この従来技術から出発して、本発明の課題は、高層ラック倉庫内での自動化された省資源型の効率的な昆虫飼育を提供することにある。この課題は、独立請求項1に記載の装置により解決される。さらにこの課題は、並列請求項38に記載の方法により解決される。これに基づき同様に、製品請求項51記載の特徴に基づく油、製品請求項52記載の特徴に基づく粉末、ならびに使用請求項53および54記載の特徴に基づく粉末および油の使用も得られる。本発明の好適な構成は、従属請求項から看取され得る。
【0008】
本発明は、1つの態様では、高層ラック倉庫内で昆虫を飼育する装置であって、少なくとも1つの高層ラックと倉庫ロジスティックス装置とを備えた倉庫領域を含み、少なくとも1つの高層ラック内に複数のケースを積み重ね可能に保管することができるようになっており、ケースは、倉庫ロジスティックス装置により倉庫領域内で搬送可能であり、ケース内には昆虫が存在している、装置に関する。搬送すべきケースが、とりわけ可能な限り短い距離しか進まずに済むようにするために、本発明による装置は、少なくとも1つの高層ラックに給餌ゲートが配置されており、給餌ゲートへ、倉庫ロジスティックス装置が、少なくとも1つの高層ラック内に積み重ね可能に保管されたケースを搬送することができるようになっており、倉庫ロジスティックス装置により給餌ゲートへ搬送されたケースの内部のケース内容物の状態を、給餌ゲートにより特定することができ、給餌ゲートによりケースに給餌することができかつ/または昆虫が収穫用に成熟している場合には、ケースを搬出することができるようになっている、ということを想定している。この場合、ケース内容物の状態の特定は、例えば各ケースの識別表示により行われてもよく、この場合、識別表示は、給餌ゲートにより読み出され、これに関連するデータ、例えば高層ラック倉庫内での保管期間の長さに基づき、給餌ゲートは、昆虫で満たされたケースにどのような形式で給餌しかつ/または搬出するか否かを決定することができる。倉庫ロジスティックス装置により進められるべきケースの短い距離に基づき、成長中の昆虫への給餌の増量が可能になる。これにより、最終的にケース内に存在する昆虫の最適化された飼育が保証され得る。
【0009】
この場合、倉庫ロジスティックス装置は、少なくとも1つの高層ラックから給餌ゲートへケースを搬送するラック操作装置、シャトルまたは通走ラックであってもよい。
【0010】
また、ケース内には、飼育すべき昆虫だけでなく、むしろ昆虫の皮膚、昆虫の卵、糞、飼料、基材およびその他のケース内容物も存在していていることがあり、これらは最終的に、昆虫飼育の成功や効率にも影響を及ぼす。さらにケースは、異なる種類の昆虫と、異なる段階の昆虫とで満たされていてもよい。この場合、昆虫の種類に応じて、特にバッタの場合には、高層ラック内で積み重ねられる保管は行われない。それというのも、使用すべきケースの種類が積み重ねに適さないからである。
【0011】
第1の有利な構成では、給餌ゲートは、少なくとも1つのバッファ領域を有しており、バッファ領域内に、倉庫ロジスティックス装置により給餌ゲートに搬送されたケースを中間貯蔵することができる。その結果、これによりさらに効率を高めることができる。
【0012】
ケース内を、特に飼育のために最適な気候もしくは最適な条件が支配しているか否かを検出することができるようにするために、本装置は、1つの別の有利な構成において、給餌ゲートが、少なくとも1つの検出装置を有しており、検出装置により、昆虫飼育に必要なパラメータ、特にケース内の湿気および温度を検出することができる、ということを想定している。これにより結果として、より効率的な昆虫飼育を保証することができる。それというのも、ケース内容物の質的、生理学的かつ病理学的な状態を特定することができるからである。1つのさらに有利な構成では、検出装置は、少なくとも1つのセンサおよび/または記録しかつ/またはデータ伝送する装置、特にカメラを有しており、これにより、ケース内のケース内容物、特に昆虫の相応するパラメータもしくは状態を確認することができる。特にカメラを使用することにより、ケース内の昆虫および残りのケース内容物の状態の全体像を確認することができるという可能性が生じる。
【0013】
この場合、本装置の1つの有利な構成では、検出装置により検出された、最終的にケースのうちの1つのケース内容物、特に昆虫の状態を反映したパラメータを、参照データベースと比較することができ、これにより、ケース内容物のその時々の状態および/または昆虫の成熟度を確認することができる。このようにして検出装置により得られたデータは、さらに参照データベースを構築するために用いることができ、かつ参照データベースに格納されたデータとそれぞれ目下特定されたパラメータデータとを比較することにより、検出装置の機械学習に用いることができる。最後に、このようにして得られたデータは、好適には製造パラメータの自動化された最適化、特に飼料の配合および調量の改良に用いることができる。これにより結果として、昆虫飼育のさらなる最適化を達成することができる。
【0014】
さらに、給餌ゲートは、本装置の1つの有利な構成では、少なくとも1つの給餌モジュールを有しており、ラック操作装置により給餌ゲートに搬送されたケース内の昆虫に、給餌モジュールにより給餌材料を供給することができる。特に給餌モジュールは、ケース内に存在する昆虫の成長を促進するために、ケースに飼料および基材を追加する。
【0015】
昆虫の望ましくない副産物、特に昆虫の皮膚、糞、ならびに食べられずに腐りひいては昆虫が発病する潜在的なリスクになり得る餌残留物を除去することができるようにするために、本装置は1つの別の有利な構成において、給餌ゲートは、少なくとも1つの清掃モジュールを有している、ということを想定している。この清掃モジュールにより、給餌ゲートはその他のケース内容物、特に昆虫の皮膚、糞および飼料残留物をケースから除去することができ、これによりやはり、昆虫の成長速度の上昇にも寄与することができる。1つのさらに有利な構成では、清掃モジュールは、少なくとも1つの吸込み装置を有しており、吸込み装置による吸込みまたは風力分級により、その他のケース内容物をケースから除去することができる。また、その他のケース内容物、特に昆虫の皮膚および昆虫の糞の除去は、清掃モジュールに設けられた少なくとも1つの電気装置により行うこともでき、電気装置を用いて静電気により、相応するその他のケース内容物をケースから除去することができる。
【0016】
さらに、本装置は1つの有利な構成において、高層ラック倉庫内での自動化された昆虫飼育を最適化するために、本発明による装置は、少なくとも1つの孵化領域を有している、ということを想定している。この孵化領域では、孵化プロセスが行われ、特に繁殖中の昆虫が産んだ昆虫の卵および/または昆虫のさなぎを、この領域で孵化させることができる。しかしまた、別の方法で調達された昆虫の卵または昆虫のさなぎが孵化領域内で孵されてもよい。この場合、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎは、ケース、平らなケースおよび/または平らなトレー内に配置されていてもよい。特に幼虫および/または昆虫が昆虫の卵および/または昆虫のさなぎから孵化すると直ちに、本装置の1つの別の有利な構成では、これらをさなぎ処理領域においてさらに処理することができる。つまり、飼育を想定した昆虫を自動的に繁殖させ、次いで例えば適切な搬送システムと、倉庫領域内に設けられたロジスティックス装置とにより、給餌ゲートが配置された少なくとも1つの高層ラック内に引き続く飼育のために移送することができる。
【0017】
昆虫の卵および/または昆虫のさなぎを孵すために最適な条件を達成しひいては最終的に孵化する幼虫および/または昆虫の数の増加を達成するために、本装置は、1つの別の有利な構成では、孵化領域が、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎを孵卵するためのインキュベータを有している、ということを想定している。これにより、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎから幼虫および/または昆虫を孵化させるための最適な条件が支配的であることが保証され得、これにより、結果的に昆虫飼育の効率を大幅に高めることができる。
【0018】
さらに本発明は、本装置に関して1つの有利な構成において、本装置は、少なくとも1つの仕分け装置を有しており、仕分け装置により、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎ、または孵化領域において、特にインキュベータ内で孵化した幼虫および/または昆虫、ならびにさなぎ処理領域において処理された昆虫のさなぎ、幼虫または昆虫を、残りのケース内容物から仕分けることができる、ということを想定している。これにより、場合によりまだ孵化していない卵および/またはさなぎを、既に昆虫の卵および/または昆虫のさなぎから孵化した幼虫および/または昆虫から仕分け、このようにして、孵化した幼虫および/または昆虫を、孵化領域もしくはさなぎ処理領域から、引き続き飼育するために、倉庫領域内の少なくとも1つの高層ラックに移送し、かつ場合によりまだ孵化していない卵またはさなぎを、引き続き処理するために孵化領域またはさなぎ処理領域に戻すことが可能である。また、既に孵化領域またはさなぎ処理領域内に生じた、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎから孵化した幼虫および/または昆虫の残滓ならびに残された卵殻またはさなぎを、仕分け装置により除去することもできる。
【0019】
昆虫の卵を充填するための容器を準備するため、もしくはインキュベータ内で昆虫の卵および/または昆虫のさなぎから孵化した幼虫および/または昆虫に給餌することができるようにするため、かつこの場合に例えば搬送手段または搬送システムに可能な限り短い距離を進ませるために、本装置は、1つの別の有利な構成では、本装置が少なくとも1つの給餌装置を有しており、給餌装置により、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎで満たされた容器に、相応する給餌材料を充填することができる、ということを想定している。このことは、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎの孵化を起点として、孵化した幼虫および/または昆虫への(最初の)給餌、ならびにこれらを引き続き飼育するためにケース内へもたらすまでの、完全な繁殖に必要とされる全てのステップが、1つの領域内で実施可能である、という利点を有している。
【0020】
ケース内に存在するする昆虫が、収穫用に成熟している場合、もしくは引き続き処理するために必要とされる成熟度に達した場合には、少なくとも1つの高層ラック内に積み重ね可能に保管されたこれらのケースをばらし、ケースからケース内容物を除去し、かつケースを清掃する必要がある。この役目を果たすために、本装置は、1つの有利な構成では、本装置が、上述したステップを実施することができる少なくとも1つの取出し領域を有している、ということを想定している。
【0021】
この場合、取出し領域は、1つの別の有利な構成では、少なくとも1つの取出し装置を有しており、取出し装置により、ケースのばらしおよびケースからのケース内容物の除去を実施することができる。これにより、昆虫で満たされた積み重ね可能なケースを、迅速かつ丁寧に空にすることが達成され得る。
【0022】
取出し領域内でばらされて空にされたケースを再び使用することができるようにするために、本装置は、1つのさらに有利な構成では、取出し領域が、少なくとも1つの清掃装置を有しており、清掃装置により、空にされてばらされたケースを清掃することができる、ということを想定している。
【0023】
ケースから取り出されたケース内容物を取出し領域において仕分けすることができるようにするために、本装置は、1つの有利な構成において、少なくとも1つの仕分け領域が設けられており、仕分け領域内で、ケースから取り出されたケース内容物を、製品、中間製品およびその他のケース内容物に仕分けることができる、ということを想定している。この場合、製品は特に所望の大きさの収穫用に成熟した昆虫であってもよく、中間製品はまだ完全には成熟していない昆虫であってもよく、その他のケース内容物は例えば飼料残留物、糞および昆虫の皮膚であってもよい。1つのさらに有利な構成では、ケースから取り出されたケース内容物は、ばら荷の形態で仕分け領域に搬送され得る。
【0024】
1つのさらに有利な実施形態では、本装置は、取出し領域内で清掃装置により清掃されかつ空にされたケースを、少なくとも1つのバッファ領域内で保管し、引き続き使用するために貯蔵することができる、ということを想定している。
【0025】
さらに本装置は、1つの有利な構成では、本装置が、ケースに飼料、昆虫、昆虫の卵、基材またはこれらの組合せを充填することができる少なくとも1つの充填領域を有している、ということを想定している。充填領域は主として、飼育に重要な材料、特に基材、昆虫の卵、幼虫および飼料をケースに初装填もしくは初充填または再充填するために用いられる。また充填領域を介して、ケースに飼育を想定した昆虫、昆虫の幼虫または孵化したばかりの昆虫を最初に充填し、引き続く飼育のための相応する材料を供給することもできる。好適には、充填領域は、飼育を想定したケースに初装填もしくは再充填するための少なくとも1つの給餌ゲートを有している。特に好適には、充填領域は、昆虫の少なくとも1つの既存の段階用に、特にさなぎ、孵化したばかりの幼虫または甲虫用に、各1つの給餌ゲートを有している。
【0026】
さらに本装置は、1つの有利な構成では、充填領域が、ケースへの充填が行われる少なくとも1つの充填レーンを有している、ということを想定している。この場合、充填レーンは、充填されるべきケースに所要の材料を装填する様々なステーションもしくはモジュールを有していてもよい。
【0027】
倉庫領域において少なくとも1つの高層ラック内に積み重ね可能に保管され、倉庫ロジスティックス装置により搬送可能なケースを、保管領域内外へ搬送することができるようにするために、本装置は1つの有利な構成において、本装置が少なくとも1つの搬送システムを有しており、搬送システムにより、ケースを倉庫領域の内外に搬送することができる、ということを想定している。1つのさらに有利な構成では、本装置は、搬送システムが全体的または部分的に無人搬送システムである、ということを想定している。無人搬送車両とは、自動制御されかつ非接触式に誘導される、専用の走行駆動装置を備えた床置き型の搬送手段である。これらの無人搬送車両は、一般に材料搬送のために用いられ、しかも能動的または受動的な荷物支持手段により搬送物を牽引するかまたは運ぶために用いられるが、人員搬送には用いられない。このような搬送システムは実質的に、1つまたは複数の無人搬送車両、案内制御装置、現在地測定・位置検出装置、データ伝送装置、ならびにインフラストラクチャおよび周辺装置から成る。
【0028】
さらに本装置は、1つのさらに有利な構成では、本装置が少なくとも1つの納入領域を有しており、納入領域に、材料、特に飼料、飼料用原料、基材、または場合により生じる、昆虫の飼育に必要な別の材料を納入することができる、ということを想定している。
【0029】
好適には、納入領域に少なくとも1つの餌原料サイロが配置されていてもよく、餌原料サイロ内には、とりわけ飼料製造用の原料を保管して、引き続き使用するために貯蔵することができる。
【0030】
また本装置は、1つの別の有利な構成において、少なくとも1つの製品サイロを有していてもよく、製品サイロ内には、飼育から得られた製品、例えば動物用の飼料として使用するための生きている昆虫を保管することができる。
【0031】
少なくとも1つの高層ラック内に積み重ね可能に保管されたケース内の昆虫にとって成長に最適な条件を保証するために、本装置は、1つの別の有利な構成では、倉庫領域が、少なくとも1つの空調装置を有しており、空調装置により、倉庫領域内の空気の質が調整される、ということを想定している。この場合、空気の質とは、とりわけ空気中の温度、空気湿度ならびに粒子濃度を意味する。つまり空調装置により、昆虫の効率的な成長に最適な条件が調整され得る。
【0032】
また、倉庫領域内に、高層ラックに配置された少なくとも1つの給餌ゲートへのアクセス部が設けられている場合も有利であり、したがって本装置は、1つの有利な構成では、倉庫領域内で、少なくとも1つの高層ラックに配置された給餌ゲートに、給餌ゲートのメンテナンスのため、手動介入のため、かつ手動装填のための少なくとも1つのプラットフォームが設けられている、ということを想定している。
【0033】
さらに本装置は、1つのさらに有利な構成では、倉庫領域が、サイロ構造形式で形成されており、これにより、少なくとも1つの高層ラックは、少なくとも1つの外部ファサード用の支持部材として用いられる、ということを想定している。これにより、結果的に材料の節約が達成され得、これにより、最終的にはやはり省資源型の効率的な昆虫飼育が保証され得る。1つの別の有利な構成では、本装置は、支持部材および外部ファサードとして用いられる少なくとも1つの高層ラックが、蒸気遮断部を備えた断熱材を有しており、これにより、倉庫領域は外部に対して遮蔽されている、ということを想定している。これにより特に、外側領域における気候条件の変化が、倉庫領域内を支配する条件にほとんどまたは全く影響を及ぼさない、ということが保証され得る。
【0034】
第2の態様では、本発明は、本発明による装置を用いて昆虫を飼育する方法であり、本方法では、少なくとも1つの高層ラックからケースのスタックを取り出して給餌ゲートに搬送し、このとき給餌ゲートに搬送された全てのケースについて、各ケースのケース内容物の状態を、給餌ゲートにより特定し、特定したケース内容物の状態に応じてケースを搬出するかまたはケースに給餌し、給餌後に、各ケースを少なくとも1つの高層ラックに戻す。この場合、給餌は、ケース内容物の状態、特に昆虫の年齢、総数、成長段階、装填量およびその他の要素に応じて行われてもよい。これにより、高層ラック倉庫内での自動化された効率的な昆虫飼育が達成され得る。
【0035】
高層ラック倉庫内で昆虫を飼育する方法の効率をさらに高めるために、本方法は、1つの有利な構成において、少なくとも1つの高層ラック内での積み重ね可能なケースの保管を、固定スペースシステムに基づき保管するのではなく、カオス原理または別の最適化された保管形態に基づき保管することを想定しており、この場合、カオス原理は、いわゆる動的な倉庫保管のことであり、動的な倉庫保管の場合、入庫されるべき部分が、倉庫領域内に固定的な保管スペースを有しているわけではなく、入庫の時点でふさがっていない任意のスペースに入庫されるようになっている。その結果、これによりとりわけ給餌ゲート、倉庫ロジスティックス装置の機械利用度の平均化と、倉庫面積の利用改善とを達成することができ、新規の積み重ね可能なケースが入庫・交換し易くなる。
【0036】
また本方法は、1つの別の有利な構成において、給餌ゲートに搬送されたケースを、この給餌ゲートから他の給餌ゲートに搬送する、ということを想定している。このことは、例えば倉庫ロジスティックス装置自体により、またはこのために適した搬送手段により行われてもよい。このことは、ケースが搬送された給餌ゲートの容量がいっぱいであるか、または相応する給餌ゲートが故障しているかまたは保守整備されねばならない場合に有利である。したがって、むだ時間を回避するために、これらのケースは、容量が完全にはいっぱいになっていない既存の別の供給ゲートに搬送され、これにより、ケースはそこで相応に検査され、場合により搬出されかつ/または給餌される。その結果、これによりケースのより迅速な処理が保証され、むだ時間が回避される。
【0037】
さらに本方法は、収穫用に成熟したケースの場合には、基材および/または飼料を除去し、これにより、昆虫がその腸を空にすることができるようにする、ということを想定している。このことは特に、これにより、昆虫から得られる原料の洗浄が回避され得るため、有利である。それというのも、これにより原料から、場合により依然として昆虫内に存在する糞が既にほぼ完全に除去されるからである。好適には、この分離は、本来の収穫の1~8日前、特に好適には1~5日前に、つまり、ケースを例えば給餌ゲートまたは倉庫ロジスティックス装置により引き続く処理のために倉庫領域から搬出する前に、行われる。これはつまり、これにより、製品、つまり昆虫内の栄養素の量を増やし、その他の成分、例えば水および糞を減らすことができるからである。
【0038】
さらに本方法は、1つのさらに有利な構成において、給餌ゲートまたは倉庫ロジスティックス装置により搬出された、収穫用に成熟したケースをばらして空にする、ということを想定している。また、空けられたケースは、本方法の1つの有利な構成では、清掃されてもよい。さらに、清掃されたケースを保管し、引き続き使用するために、特に中間製品を収容するため、または新たに充填するために貯蔵することができる。
【0039】
また本方法は、空けられたケースから出るケース内容物を、製品、中間製品およびその他のケース内容物に仕分けることを想定している。この場合、製品は、相応する重量または大きさの昆虫であってもよく、この場合、比較的小さい昆虫または比較的軽量の昆虫は、中間製品と見なされてもよく、中間製品は、本方法の1つの別の有利な構成では、引き続き飼育するために、再びケース内に戻されて充填され得る。例えば死んだ昆虫、昆虫の皮膚、基材残留物および/または飼料残留物、糞およびその他の成分から成っていてもよいその他のケース内容物は、その他のケース内容物として別個に、引き続き破棄もしくは処理するために導出され得る。
【0040】
今や製品と見なされた昆虫を引き続き処理することができるようにするために、本方法は、1つのさらに有利な構成において、製品を、生きている製品として取得するか、または非活性化して細断することを想定している。この場合、非活性化は、特に激しい温度変化により実現することができ、この加熱または冷却は、特にブランチングまたは凍結乾燥により行うことができる。非活性化後に製品を細断し、このようにして得られた細断済みの製品を、引き続く処理ステップに供給することができる。
【0041】
1つの別の有利な構成において本方法は、細断された製品を脱脂し、製品から油を生成することを想定している。このようにして得られた、脱脂された製品は、次いで本方法の1つの別の有利な構成において乾燥かつ粉砕され得、これにより、最終的に粉末を獲得することができる。
【0042】
1つの別の態様では、本発明は、昆虫飼育および動物飼育用の飼料ならびに特にプロテイン粉末の形態の食品のための、本方法に基づき得られた粉末の使用を想定している。
【0043】
さらに本発明は、1つの別の態様では、食品製品および美容製品ならびに飼料のための、脱脂に基づき得られた油の使用を想定している。例えば油は、サラダ用のドレッシングの調合のための純粋な油として使用されても、食品製造においてパーム油の代替品として使用されてもよい。さらに美容製品における、特にパーム油の代替品としての使用も考えられる。最終的に油は、油自体を用いることができるか、または飼料の製造に用いることができる。
【0044】
以下に、本発明を1つの実施例に基づき、より詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】昆虫を飼育する装置を概略的に示す斜視図である。
【0046】
図1には、昆虫を飼育する装置を概略的に示す斜視図が示されている。倉庫領域2内に、複数の高層ラック3が2列ずつ配置されており、2列の間に形成される自由空間に沿って、ラック操作装置4が倉庫ロジスティックス装置として移動可能であり、ラック操作装置4は、各高層ラック3から各高層ラック3へ、ケースを搬送することができる。さらにラック操作装置4は、高層ラック3から、高層ラック3に一つおきに配置された給餌ゲート5に移動することができ、ひいてはケースを高層ラック3から、1列おきに配置された給餌ゲート5内に搬送することができる。
【0047】
高層ラック3からラック操作装置4により、2列のところに配置された給餌ゲート5内に搬送されたケースは、給餌ゲート5内で検査され得、この場合、ケース内容物の状態により、給餌ゲート5は、ケースに給餌材料、特に餌および基材を供給することができるか、または収穫用に成熟したケースの場合には、倉庫領域2からケースを搬出することができる。さらに、収穫用に成熟したケースは、ラック操作装置4により直接、倉庫領域2から搬出されてもよい。このことは、例えば経験上のデータに基づく時間間隔の経過に基づき行うことができる。つまり、給餌ゲート5によるケース内容物の状態検査なしでも、ラック操作装置4によりケースを倉庫領域2から搬出することが可能である。
【0048】
給餌ゲート5により、ケースに可能な給餌を行った後で、ケースを再びラック操作装置4により給餌ゲート5から取り出して高層ラック3内に戻し、引き続き飼育することができ、この場合、給餌ゲート5により給餌されたケースの保管もしくは収納は、例えばカオス原理または別の最適化された倉庫保管形式に従って行われてもよい。また、給餌されたケースは、ラック操作装置4がこれらのケースを高層ラック3内に戻すまで、まず給餌ゲート5に設けられたバッファ領域内に中間貯蔵されてもよい。
【0049】
ケースがスタックまたはダブルスタックの形態で保管される場合について考えられるのは、ケースの相応する検査および給餌を実施するために、給餌ゲート5が、これらのケーススタックを相応にばらすのに必要な装置を有していることである。
【0050】
給餌ゲート5による、ケースの自動化された給餌に際して場合により手動で介入することができるようにするために、高層ラック3に配置された給餌ゲート5に沿ってプラットフォーム19が設けられており、これにより、例えば作業員が手動でケースからまたは給餌材料からサンプルを取り出すことができるか、または観察を実施することができるようになっている。
【0051】
ケースに昆虫と、飼育に必要な相応の材料とを最初にまたは新規に装填するかもしくは再充填するために、装置1は、ここでは給餌ゲート17が前置された充填領域16を有している。この場合、充填領域は搬送システム18により、納入領域20と、納入領域20に隣接していて、引き続き処理または使用するために納入される餌原料が貯蔵される餌原料サイロ22と、倉庫領域22と、仕分け領域14とに接続されている。場合により生じ得る材料、特に餌原料を納入するために、納入領域20は、ここではトラックランプ21を有しており、これにより、相応の材料を満載したトラックからの簡単な荷降ろしが保証される。さらに納入領域内には、場合により、納入される餌が引き続く処理もしくは使用のために餌原料サイロ22内に貯蔵される前に、餌原料を調製もしくは処理することができる装置が存在していてもよい。
【0052】
給餌ゲート5内のケースが収穫用に成熟したと識別されると、給餌ゲート5はこれらのケースを搬出することができるか、またはこれらのケースは、今や収穫用に成熟したという経験上の想定に基づき、ラック操作装置4により倉庫領域2から直接搬出される。つまり、給餌ゲート5とラック操作装置4とは両方共、それぞれ収穫用に成熟したケースを倉庫領域2から搬出することができ、同様に取出し領域11にも接続された搬送システム18を介して、引き続き処理するための取出し領域11に搬送することができる。取出し領域11に到着すると、そこで収穫用に成熟したと識別されたケースは取出し12によりばらされて空にされてもよく、空にされたケースは、取出し装置12に配置された清掃装置13により清掃される。ただし清掃は、必ずしも行われなくてもよい。空にされたケースを、事前の清掃なしで直接再利用することも考えられる。清掃装置13により清掃されたケースは、次いでバッファ領域15内に、引き続き使用するために、特に昆虫の卵もしくは昆虫のさなぎを補充または充填するために、貯蔵され得る。
【0053】
取出し装置12により空けられたケース内容物は、次いで搬送システム18により取出し領域11から仕分け領域14へ搬送され得る。そこに到達すると、空けられたケース内容物は、製品、中間製品およびその他のケース内容物に仕分けられてもよく、この場合、中間製品、つまり例えば完全には成熟していない昆虫は、再装填するために、搬送システム18により搬送されて充填領域16に戻されてもよい。次いで、製品として分離された昆虫、つまり例えば完全に成熟した昆虫または所定の成熟度を有する昆虫は、生きている製品として製品サイロ23内に保管され得るか、または引き続き処理するために保持され得る。また、生きている製品は、特に油や粉末を得るために、引き続き処理されてもよい。製品から得られたこのような最終製品もやはり、製品サイロ23内に保管され得、その後、これらの最終製品は、例えばトラックまたは貨物列車により別の場所に搬送され、引き続き処理または使用される。中間製品および製品から分離されたその他のケース内容物、特に昆虫の皮膚および昆虫の糞は、例えば肥料として使用するために、または肥料を製造するために役立てることができる。
【0054】
さらに図1に示す装置1は、飼育予定の昆虫を最適化する処理ステップを自動的にかつ自動化して実施することができる、給餌装置8および仕分け装置10を備えた孵化領域7およびさなぎ処理領域9を有している。孵化領域7内で、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎで満たされた容器、特にケースを保管することができ、孵化領域7またはさなぎ処理領域9内の最適な条件下で、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎを孵化させることができる。このために好適には、孵化領域7は、インキュベータを有している。またこの場合、昆虫の卵および/または昆虫のさなぎで満たされた容器を高層ラック3内に保管することも考えられる。孵化領域7および/またはさなぎ処理領域内または高層ラック3内で卵および/またはさなぎから孵化した幼虫および/または昆虫に給餌することができるようにするために、装置1は給餌装置8を有しており、給餌装置8において、孵化した卵および/またはさなぎに、特に最適な成長のための餌および基材を供給することができる。
【0055】
孵化領域7内の卵から孵化した幼虫を搬送しかつ給餌することができるようにするために、装置1はさらに、孵化したての幼虫および/または昆虫に最適な成長のために必要な材料、特に適切な餌を供給することができる搬送装置、給餌装置、調量装置および操作装置を有していてもよい。倉庫領域2において引き続き飼育するための所定量の餌、基材または幼虫の装填は、給餌装置8により直接行われてもよいか、または充填領域16内で行われてもよい。
【0056】
孵化した幼虫および/または昆虫が、引き続く飼育のための相応する段階に達すると、これらの幼虫および/または昆虫を、場合により孵化しない卵もしくはさなぎ、死んだ昆虫、および場合により生じる別のケース内容物から、仕分け装置10により仕分けることができる。このようにして、場合により生じるその他のケース内容物から仕分けられた若い幼虫もしくは若い昆虫は、次いでさなぎ処理領域9において、まず引き続く飼育のために処理されるか、または搬送システム18により搬送されることにより、充填領域16内で前置された給餌ゲート17を介して、引き続く飼育のための材料と共にケース内に充填され、引き続き飼育するために倉庫領域2内へ搬送され得る。
【0057】
これにより、上で開示した、高層ラック倉庫内で昆虫を飼育する装置は、自動化された省資源型の効率的な昆虫飼育を可能にする。
【符号の説明】
【0058】
1 装置
2 倉庫領域
3 高層ラック
4 ラック操作装置
5 給餌ゲート
7 孵化領域
8 給餌装置
9 さなぎ処理領域
10 仕分け装置
11 取出し領域
12 取出し装置
13 清掃装置
14 仕分け領域
15 バッファ領域
16 充填領域
17 前置された給餌ゲート
18 搬送システム
19 プラットフォーム
20 納入領域
21 トラックランプ
22 餌原料サイロ
23 製品サイロ
図1
【国際調査報告】