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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】インプラント摘出器
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/92 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
A61B17/92
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581071
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 US2022036149
(87)【国際公開番号】W WO2023278898
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/217,938
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524004766
【氏名又は名称】シュクラ メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHUKLA MEDICAL INC.
【住所又は居所原語表記】8300 Sheen Drive St. Petersburg, FL 33709 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】キーチ ニコラス クリストファー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL28
4C160LL70
(57)【要約】
インプラント摘出器は、細長ハウジングを備え、細長ハウジングは、器具に接続されるように構成された近位端と、インプラントに操作可能に係止するための開口部を有する遠位端と、開口部まで延びる細長凹部を有する。ジョーはスロット内にスライド可能に収容され、開口部まで延びる。連結アセンブリは、細長凹部内に取り付けられ収容されており、ジョーに回動可能に取り付けられて、連結具が動くことで、スロット内においてジョーが開口部に向かって、又は開口部から離れるようにスライドする。インプラントを把持する際に、摘出器具をロック位置に固定するロック機構が備えられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術用インプラントを操作可能に把持するためのインプラント摘出器(100)であって、前記インプラント摘出器(100)はハウジング(200)とジョー(118)とを備え、前記ハウジングは、摘出器具に接続するように構成された近位端(202)と、前記インプラントに操作可能に係合する遠位端(204)と、前記ハウジング内に延在する連続凹部(206)とを有し、前記ジョーは、スライド可能に前記ハウジングに収容され、前記細長ハウジングの前記遠位端(204)まで延び、
前記ハウジング内の細長凹部(206)と、
前記ハウジング(200)の前記細長凹部(206)内の連結アセンブリ(280)であって、前記連結アセンブリ(280)は、回動可能にジョーに取り付けられ、前記連結アセンブリ(280)の動きによって、前記ジョーが前記遠位端(204)に向かって、又は前記遠位端から離れるようにスライドする連結具(110,114,116,120)を備える、インプラント摘出器(100)。
【請求項2】
前記細長ハウジング(200)は、前記遠位端に、前記インプラントを受けるように構成された開口部(220)を有する、請求項1に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項3】
前記細長凹部(206)は、前記開口部(220)と流体連結されている、請求項1に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項4】
前記ハウジング(200)に回動可能に接続され、前記連結アセンブリ(280)に操作可能に係合するハンドル(106)を更に備える、請求項1に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項5】
前記ジョー(118)は、前記細長ハウジング(200)に取り外し可能に取り付けられている、請求項1に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項6】
前記遠位端(204)において前記細長ハウジング(200)に取り外し可能に取り付けられた取り外し可能なインサート(124)を更に備え、前記取り外し可能なインサート(124)は、前記インプラントと係合するための面と、前記ジョーを受けるための開口部(125)を有する、請求項1に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項7】
前記連結アセンブリを固定位置に固定するように構成されたカムロック(320)を更に備える、請求項1に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項8】
前記連結アセンブリにロック力を付加し、前記連結アセンブリを固定位置に固定するように構成されたカムロック(320)を更に備える、請求項1に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項9】
前記連結アセンブリ(280)は、
ロッドアセンブリ(110)と、
前記ロッドアセンブリ(110)に操作可能に接続された近位リンク(112)と、
前記近位リンク(112)の遠位端に回動可能に接続されたロッドアセンブリ(110)の近位端と、
前記ロッドアセンブリ(110)に操作可能に接続された中間リンク(114)と、
前記中間リンク(114)と前記ジョー(118)に操作可能に接続されたベルリンク(116)と、を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項10】
前記ハウジング(200)に回動可能に接続され、前記ロッドアセンブリ(110)に操作可能に係合するハンドル(106)を更に備える、請求項9に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項11】
前記ハンドル(106)を第1位置にすると、前記ジョー(118)が非係合状態となるように動き、第2位置にすると、前記ジョー(118)が係合状態となるように動く、請求項10に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項12】
前記ロッドアセンブリ(110)は、伸縮式ロッドアセンブリである、請求項9に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項13】
前記ロッドアセンブリ(110)は、
前記近位リンク(112)に操作可能に接続された近位リンクコネクタ(111)と、
前記中間リンク(114)に操作可能に接続された中間リンクコネクタ(113)と、
前記近位リンクコネクタ(111)の周りを回転し、前記中間リンクコネクタ(113)と操作可能に係合する回転シャフト(115)と、を備える、請求項9に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項14】
前記中央の回転シャフト(115)に操作可能に接続されたダイヤル(132)を更に備え、前記ダイヤル(132)を第1方向に回すと、前記中間リンクコネクタ(113)が前記中央の回転シャフト(115)に対し緩む方向に回転し、前記ダイヤル(132)を前記第1方向と反対の第2方向に回すと、前記中間リンクコネクタ(113)が前記中央の回転シャフト(115)対し締まる方向に回転する、請求項13に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項15】
前記ベルリンク(116)を前記ジョー(118)に連結させるジョーリンクを更に備える、請求項9に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項16】
前記近位リンク(112)に操作可能に接続され、ロック解除位置とロック位置との間で可動なロックキー(140)を更に備える、請求項9に記載のインプラント摘出器(100)。
【請求項17】
前記ロックキー(140)は、前記近位リンク(112)の位置を固定位置に固定する、請求項16に記載のインプラント摘出器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、股関節ステムや人工器官などのインプラントの摘出に使用するための外科手術用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
外科医は、股関節ステムや人工器官などの外科用インプラントを体内から摘出する際に、支援器具としてインプラント摘出器を使用する。トラニオンなど、インプラントの一部をこのような器具で把持し、器具に力を加えてインプラントを摘出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のインプラント摘出器があるにもかかわらず、繰り返し使用すると摩耗する可能性のあるインプラント固定具を容易に摘出及び交換することのできる、インプラント摘出器に対する要望が依然としてある。更に、重力以外の外力が作用していないときであっても、インプラントに係合する可動ジョーを指定位置に保持することのできる、インプラント摘出器に対する要望が依然としてある。更に、器具の機能は保ちつつ、現行のインプラント摘出器よりも短いインプラント摘出器に対する要望も依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
例示的な一実施形態では、摘出器具に接続するように構成された近位端と、インプラントと操作可能に係合するための開口部を有する遠位端と、細長凹部と、を有する細長ハウジングであって、細長凹部は、細長凹部から開口部まで延びるスロットを有するインプラント摘出器が開示されている。ジョーは、スロット内にスライド可能に収容され、操作可能な状態で開口部まで延びる。連結具は、ハウジングの細長凹部内に取り付けられ収容されている。連結具は、回動可能にジョーに取り付けられ、連結具の動きによって、スロット内で開口部に向かって、又は開口部から離れるようにジョーがスライドする。
【0005】
他の開示された実施形態は、摘出器具に操作可能に取り付けられたインプラントと係合するための歯を有するインサートを備えていてもよい。インサート及びジョーは、インプラント摘出器具に取り外し可能に取り付けられていてもよく、必要に応じて容易に取り外したり、交換したりすることができる。ジョーは、細長ハウジング内に取り外し可能に取り付けられている。また、インプラントを把持する際に、摘出器具をロック位置に保持するロック機構を設けてもよい。
【0006】
インプラント摘出器は、細長ハウジングと、ジョーと、連結アセンブリと、を備える。細長ハウジングは、摘出器具に接続するように構成された近位端と、インプラントと操作可能に係合する遠位端と、ハウジング内に延在する細長凹部と、を有する。ジョーは、細長凹部内にスライド可能に収容されて、細長ハウジングの遠位端まで延びる。連結アセンブリは、ハウジングの細長凹部内に配され、連結アセンブリの動きによりジョーが遠位端に向かって、又は遠位端から遠ざかるようにスライドするように、ジョーに回動可能に取り付けられた連結具を備える。
【0007】
細長ハウジングは、遠位端に、インプラントを受けるように構成された開口部を有する。細長凹部は、開口部と流体連結されている。
【0008】
連結アセンブリは、ロッドアセンブリと、近位リンクと、中間リンクと、ベルリンクと、を備え、近位リンクは、ロッドアセンブリに操作可能に接続され、ロッドアセンブリの近位端は、近位リンクの遠位端に回動可能に接続され、ベルリンクは、中間リンク及びジョーに操作可能に接続されている。ハンドルを第1位置にすると、ジョーの股関節ステムインプラントのトラニオンとの係合が解除され、ハンドルを第2位置にすると、ジョーが股関節ステムインプラントのトラニオンと係合する。
【0009】
インプラント摘出器は、ハウジングに回動可能に接続され、近位リンクと操作可能に係合するハンドルを更に備える。インプラント摘出器は、ハウジングに回動可能に接続され、連結アセンブリと操作可能に係合するハンドルを更に備える。ハンドルを第1位置にすると、ジョーは非係合状態となるように動き、ハンドルを第2位置にすると、ジョーは係合状態となるように動く。
【0010】
ロッドアセンブリは、伸縮式ロッドアセンブリとなっている。ロッドアセンブリは、近位リンクコネクタと、中間リンクコネクタと、回転シャフトと、を備える。近位リンクコネクタは、近位リンクに操作可能に接続されている。中間リンクコネクタは、中間リンクに操作可能に接続されている。回転シャフトは、近位リンクコネクタの周りを回転可能となっており、中間リンクコネクタと操作可能に係合する。
【0011】
インプラント摘出器は、中央の回転シャフトに操作可能に接続されたダイヤルを更に備える。ダイヤルを第1方向に回すと、中間リンクコネクタが中央の回転シャフトに対し緩む方向に回転し、ダイヤルを第1方向とは反対の第2方向に回すと、中間リンクコネクタが中央の回転シャフトに対し締まる方向に回転する。
【0012】
インプラント摘出器は、ベルリンクをジョーに結合するジョーリンクを更に備える。インプラント摘出器は、近位リンクに操作可能に接続され、ロック解除位置とロック位置との間で可動なロックキーを更に備える。ロックキーは、ハンドルを固定位置に固定する。ロックキーは、近位リンクを固定位置に固定する。
【0013】
ジョーは、細長ハウジング内に取り外し可能に取り付けられている。インプラント摘出器は、遠位端でハウジング内に取り外し可能に取り付けられた取り外し可能なインサートを更に備え、取り外し可能なインサートは、インプラントと係合するための面と、ジョーを受けるための開口部と、を有する。
【0014】
インプラント摘出器は、連結アセンブリを固定位置に固定するように構成されたカムロックを更に備える。インプラント摘出器は、ロック力を付加して連結アセンブリを固定位置に固定するように構成されたカムロックを更に備える。
【0015】
本開示の他の特徴及び利点は、一例として本開示の原理を示す添付の図面と併せて、以下の例示的な実施形態のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
上記の概要及び本開示の例示的実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付図面と併せて読むとより良く理解されるであろう。本発明を説明するために、例示的な実施形態が図面に示されている。しかしながら、例示的な実施形態は、示された正確な構成及び手段に限定されないことを理解されたい。
【0017】
図面は以下の通りである。
図1】本開示の例示的な実施形態に係る股関節ステムインプラント摘出器の遠位斜視図。
図2図1の股関節ステムインプラント摘出器の左側面図。
図3図1の股関節ステムインプラント摘出器の右側面図。
図4図1の股関節ステムインプラント摘出器の背面図。
図5図1の股関節ステムインプラント摘出器の正面図。
図6図1の股関節ステムインプラント摘出器の上面図。
図7図1の股関節ステムインプラント摘出器の底面図。
図8図1の股関節ステムインプラント摘出器の分解斜視図。
図9図1の股関節ステムインプラント摘出器の縦断面斜視図。
図10図1の股関節ステムインプラント摘出器の縦断面図。
図11図1の股関節ステムインプラント摘出器の分解図。
図12】本開示の例示的な実施形態に係る図1の股関節ステムインプラント摘出器の連結アセンブリの遠位斜視図。
図13図1の股関節ステムインプラント摘出器の遠位端の拡大部分斜視図。
図14図1の股関節ステムインプラント摘出器のジョーの拡大斜視図。
図15】インプラント摘出器の内部部品を示す目的で外部ハウジングを透明にした図1の股関節ステムインプラント摘出器の中央部の部分拡大等角図。
図16図1の股関節ステムインプラント摘出器の中央部分の左断面図。
図17】ハンドルがロック解除位置にある図1の股関節ステムインプラント摘出器の部分左斜視図。
図18】ハンドルがロック位置にある図1の股関節ステムインプラント摘出器の部分左斜視図。
図19】ロック解除位置にある図17の股関節ステムインプラント摘出器の中央部分の拡大断面図。
図20】ロック位置にある図18の股関節ステムインプラント摘出器の中央部分の拡大断面図。
図21図1の股関節ステムインプラント摘出器のカムロックを示す図。
図22】本開示に係るインプラント摘出器の構造の様々な図。
図23】本開示に係るインプラント摘出器の構造の様々な図。
図24】本開示に係るインプラント摘出器の構造の様々な図。
図25】本開示に係るインプラント摘出器の構造の様々な図。
図26】本開示に係るインプラント摘出器の構造の様々な図。
図27】本開示に係るインプラント摘出器の構造の様々な図。
図28】本開示に係るインプラント摘出器の構造の様々な図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面に示された本開示の様々な例示的な実施形態について詳細に説明する。同一又は類似の特徴については、可能な限り、図面全体を通して同一又は類似の参照符号を使用する。図面は、簡略化された形式であり、正確な縮尺で描かれていないことに留意されたい。以下の説明では、特定の用語が便宜上使用されているが、限定するために使用されているわけではない。上、下、左、右、上側、下側、斜めなどの方向を示す用語は、添付の図面に関して使用される。「遠位」とは、体の中心から離れていることを意味するものとする。「近位」は、体の中心に近い、及び/又は、「遠位」端から離れていることを意味するものとする。「内向き」及び「外向き」は、それぞれ、特定の部材及びその指定された部分の幾何学的中心に向かう方向及びそこから遠ざかる方向を示す。以下の図面の説明と併せて使用されるそのような方向を示す用語は、明示的に記載されていない場合であっても、本出願の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。更に、本願明細書で使用される用語は「少なくとも1つ」を意味する。これらの用語には、上述した単語やその派生語、同様の意味を持つ単語が含まれる。
【0019】
本願明細書において、量、継続時間などの測定可能な値と共に「約」が記載されている場合、記載された数値から±20%、±10%、±5%、±1%、±0.1%など、適切な範囲内での変動が許容されていることを意味する。
【0020】
本願明細書において、「概ね」とは、かなりの程度、記載されたものに完全に一致する訳ではないが大部分、又は、当該技術分野において許容される程度の差異を意味する。本願明細書において、「例示的」とは、例として示すことを意味する。
【0021】
本開示の全体に亘って、その様々な態様を範囲形式で示すことができる。範囲形式での説明は、単に便宜上及び簡潔にするためのものであって、本願開示の主題の範囲に対する変更不可な限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、可能性のある部分的な範囲やその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6といった範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、部分範囲を、また、1、2、2.7、3、4、5、5.3、6などのその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0022】
更に、本開示の例示的な実施形態に記載された特徴、効果、特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。関連技術における当業者であれば、本願明細書の説明に照らし合わせて、本開示の例示的な実施形態の特定の特徴又は効果の1つ以上がなくても実施可能であることが分かるであろう。また、本開示のすべての例示的な実施形態には無い特定の実施形態に追加の特徴及び効果が確認される場合もある。
【0023】
本開示は、整形外科手術で使用するインプラント摘出医療機器を提供する。股関節ステムインプラント摘出器100は、例示的な実施形態に係るインプラント摘出器である。図1~28には、本開示に従って構築された例示的な股関節ステムインプラント摘出器100の構成が示されている。
【0024】
股関節ステムインプラント摘出器100は、細長ハウジング200内に操作可能に取り付けられた連結アセンブリ280(図12)を備える。連結アセンブリ280は、回動可能ハンドル106を備えるカムロック320により、第1位置と第2位置との間で可動なジョー118に連結されている。詳しくは後述するが、ジョーは、例えばトラニオン(図示せず)を把持するように構成されている。
【0025】
細長ハウジング200は、近位端202と、反対側の遠位端204と、を有する。細長ハウジングは、遠位本体108に連結された近位本体102を備える。連続凹部又は細長連続凹部206が近位本体及び遠位本体に延在し、その中に連結アセンブリ280が操作可能に収容されている。
【0026】
近位本体102は、TハンドルやCフレームなどの摘出器具を接続するための器具コネクタ104を備える。本例示的な実施形態では、器具コネクタは、ねじ付き器具コネクタとなっている。
【0027】
遠位本体108の構成は、図1に最も良く示されている。遠位本体108は、本体部と屈曲アーム部とを有する。屈曲アーム部は、本体部の長手方向の軸に対し約40°~50°で本体部から延出している。約40°~50°には、35°、45°、55°も含まれる。屈曲アーム部は、股関節ステムインプラントのトラニオンなどのインプラントを受けるための貫通孔又は開口部220を有する。連続凹部206は、開口部220まで延びている。開口部には、インサート124が取り外し可能に取り付けられていてもよい。インサート124は、その内面にグリップ力を向上させるための構造、例えば、歯122や隆起が設けられていてもよい。また、インサート124の周壁には、ジョー118の遠位端を受けるための開口部125(図8)が設けられている。インサートが開口部220に取り付けられると、開口部125が連続凹部206に対し位置合わせされ、連続凹部206と流体連結される。インサート124は、遠位端204においてハウジング200に取り外し可能に取り付けることのできるインサートであり、インプラントと係合する面と、ジョー118を受けるための開口部125と、を有している。
【0028】
図10及び12に最も良く示されているように、連結アセンブリ280は、カムレース216を有する近位リンク112を備える。近位リンク112は、細長ハンドル106とカム124とを備えるカムロック320に回動可能に取り付けられている。カム214は、カムレース216と操作可能に係合する。図10に最も良く示されているように、細長ハンドル106は、その近位端において、近位リンク112に操作可能に接続されている。近位リンク112の反対側の遠位端は、近位リンクコネクタ111に回転可能に取り付けられている。近位リンクコネクタの反対側の端は、中間リンクコネクタ113に螺合する回転シャフト115に係合している。
【0029】
ハンドル106は、ハウジング200に回動可能に接続され、連結アセンブリ280に操作可能に係合されている。ハンドル106は、ハウジングに回動可能に接続され、ロッドアセンブリ110に操作可能に係合されている。ハンドル106を第1位置にすると、ジョー118が非係合状態となるように動き、第2位置にすると、ジョー118が係合状態となるように動く。
【0030】
カムロック320は、連結アセンブリを固定位置に固定するように構成されている。カムロック320は、ロック力を加えて連結アセンブリ280をロック位置に固定するように構成されている。
【0031】
図15及び16に最も良く示されているように、連結アセンブリ280は、ロッドアセンブリ110を備えており、ロッドアセンブリ110の一部は近位本体102内に、一部は遠位本体108内に配されている。ロッドアセンブリは、伸縮式ロッドアセンブリとされる。伸縮式ロッドアセンブリ110の近位端は、近位リンク112の遠位端に回動可能に接続される近位リンクコネクタ111を備えている。伸縮式ロッドアセンブリ110の遠位端は、中間リンク114の近位端に回動可能に接続される中間リンクコネクタ113を備えている。中間リンクコネクタ113は、伸縮式ロッドアセンブリ110と螺合する近位方向に延びるねじ付きシャフトを備えている。伸縮式ロッドアセンブリ110は、近位リンクコネクタ111の周りを回転し、中間リンクコネクタ113と螺合するように構成された中央の回転シャフト115を備えている。
【0032】
連結アセンブリ280は、ロッドアセンブリ110と、近位リンク112と、中間リンク114と、ベルリンク116と、を備える。近位リンク112は、ロッドアセンブリ110に操作可能に接続されている。ロッドアセンブリ110の近位端は近位リンク112の遠位端に回動可能に接続されている。中間リンク114は、ロッドアセンブリ110に操作可能に接続されている。ベルリンク116は、中間リンク114及びジョー118に操作可能に接続されている。ロッドアセンブリ110は、近位リンクコネクタ111と、中間リンクコネクタ113と、回転シャフト115と、を備える。近位リンクコネクタ111は、近位リンク112に操作可能に接続されている。中間リンクコネクタ113は、中間リンク114に操作可能に接続されている。回転シャフト115は近位リンクコネクタ111の周りを回転し、中間リンクコネクタ113に操作可能に係合されている。
【0033】
手動駆動方式のダイヤル132は、回転シャフト115に操作可能に係合しており、中間リンクコネクタ113の位置を調節し、矢印A(図16)で示される方向に螺合経路に沿って、中間リンクコネクタ113を無段階で位置決め可能となっている。図8に示すように、回転シャフト115は、複数の平坦側面を有し、ダイヤル132の内面の周りの対応する平坦側面に操作可能に係合する。例えば、回転シャフトの周りの複数の平坦部は、六角形とすることができ、ダイヤルの対応する平坦側面もそれに合わせて六角形とすることができる。
【0034】
リンクコネクタ113の反対側の端は、細長中間リンク114の一端に回動可能に取り付けられている。中間リンク114の反対側の端又は遠位端は、ベルリンク116に回動可能に取り付けられている。ジョー118は、回動軸300(図9、10及び12)でジョーリンク120と共にベルリンク116の反対側又は遠位端に回動可能に取り付けられ、インサート124を通って操作可能な状態で延びている。ベルリンク116は、例えば図11に示すように構成され、3つの回動軸を有する三角形状を有する。3つの回動軸は、近位回動軸、遠位回動軸、及び側方回動軸である。近位回動軸は、中間リンクと回動可能に係合し、遠位回動軸は、ジョーと回動可能に係合し、側方回動軸は、遠位本体と回動可能に係合している。インプラント、例えば股関節ステムインプラントのトラニオンと操作可能に係合するために、ジョー118には(インサート124と同様に)、グリップ力を高めるための歯126や隆起などが設けられていてもよい。
【0035】
図1及び10に最も良く示されているように、図12の連結アセンブリ280は、ハンドルが回動軸210で近位本体102に操作可能に取り付けられ、ベルリンク116が回動軸212で遠位本体に操作可能に取り付けられた状態で、ハウジング200の連続凹部206内で操作可能に取り付けられている。ジョー118は、連続凹部206内に延在し、連続凹部206内で遠位端204に向かってスライド可能となっている。近位本体102の開口部からダイヤル132にアクセス可能となっており、ユーザは、ダイヤル132を回転シャフトの周りにいずれかの方向に回転させることによって、開口部220内のジョー118の位置を設定することができ、カムロックを介してジョーに加える力を微調整することができる。つまり、ダイヤル132を回転させることで、中間リンクコネクタ113が連続凹部206に沿っていずれかの方向、言い換えれば、ハウジングに沿って近位又は遠位方向に移動し、それにより中間リンク114が移動して、回動軸212を軸にベルリンク116が回動し、ジョー118が配置された遠位本体のスロット260(図8)に沿ってジョー118が移動する。
【0036】
ダイヤル132は、中央の回転シャフト115に操作可能に接続されている。ダイヤル132を第1方向への回すことで、中間リンクコネクタ113が中央の回転シャフト115に対し緩む方向に回転し、ダイヤル132を第1方向とは反対の第2方向へ回すことで、中間リンクコネクタ113が中央の回転シャフト115に対し締まる方向に回転する。
【0037】
ハンドルを開位置170(図17及び19)から閉位置172(図18及び20)に動かすことで、追加のクランプ力(ダイヤルを介して加えられる力に対して追加の力)をジョー118、更には開口部内のインプラント(例えば、トラニオン)に加えることができる。これにより、ハンドル106が回動軸210を中心に回動し、カム214を近位リンク112のカムレース216に操作可能に係合させ、回転シャフト115を遠位端204に向かって移動させ、連結アセンブリ280がジョー118を開口部220に向かって移動させることができる。
【0038】
より具体的には、ハンドル106がロック解除位置又は全開位置170(図17及び19)にあるとき、ハンドル106の近位端の第1面128が近位本体102の遠位面130に当接し、ハンドルの近位端のカム214が近位リンク112の遠位側を向くカムレース216に当接する。ハンドルが解除されていれば、把持するインプラントを開口部で受けるため、予圧を増減するため、又はハウジング内又は把持するインプラント上のジョー118の初期位置(つまり、指定位置)を増減させるために、ユーザは、連結アセンブリ280の長さを適当な長さに調節することができる。そのためには、ユーザは、中央の回転シャフト115の円周形状に対応する開口部134を有するダイヤル132を回転させ、中央の回転シャフトをダイヤルと同じ方向に回転させる。中央の回転シャフトを第1方向に回転させることで、中間リンクコネクタ113が中央の回転シャフトの雌ねじ付き遠位端に対し緩む方向に回転する。同時に、中央の回転シャフトの近位円筒状ソケット端が、近位リンクコネクタ111の遠位端の周りを自由に回転する。同様に、中央の回転シャフトを第2方向に回転させることで、中間リンクコネクタ113が中央の回転シャフト115に対し締まる方向に回転する。
【0039】
中央の回転シャフトの第1方向への回転により、中間リンク114、ベルリンク116、ジョーリンク120、及びジョー118が遠位方向に移動し、開口部220内の対象のインプラントに付加する予圧を上げることができる。又は、ハウジングの連続凹部206内のジョーの位置を調整することができる。反対に、第1方向とは反対の第2方向への中央の回転シャフトの回転により、中間リンクコネクタ113が中央の回転シャフトの雌ねじ付き遠位端に対し締まる方向に回転する。同時に、中央の回転シャフトの近位円筒形ソケット端は、近位リンクコネクタ111の遠位端の周りを自由に回転する。ジョーリンク120は、ジョーをベルリンクに接続又は連結する。言い換えれば、中央の回転シャフトの第2方向への回転により、中間リンク114、ベルリンク116、ジョーリンク120、及びジョー118が近位方向に移動し、開口部220内の対象のインプラントに付加する予圧を低下、又は連続凹部206内のジョーの位置を調節する。
【0040】
連結アセンブリ280が摘出する対象のインプラントを受けるために適切に調節され、対象のインプラントに付加される予圧が調節されると、ハンドル106が、ロック解除位置170(図17及び19)からロック位置172(図18及び20)に動く。これにより、ハンドル106は、近位リンク112を伸縮式ロッドアセンブリ110の方向に動かし、中間リンク114、ベルリンク116、ジョーリンク120、及びジョーを遠位方向に動かして、開口部220内において、前述の係合隆起や歯122,126を使って対象のインプラントを把持する。
【0041】
同時に、図20に最も良く示されているように、ハンドル106の近位端の第2面141は、近位本体102の遠位面130と当接する。これにより、近位リンク112が若干過剰に傾き(図20)、ハンドルがロック位置に固定され、下流側のリンクがロック位置に保持され、ジョー118がトラニオンの周囲を把持する位置に保持される。中央の回転シャフト115の近位円筒形ソケット端は、圧縮性ブッシュ142(図16)を備えていることが好ましい。圧縮性ブッシュ142は、ポリエーテルイミドなどの弾性ポリマーや合成圧縮部材として使用されることを目的とする、全体的には剛性を有する他の弾性ポリマーから製造することができる。
【0042】
一態様によれば、図1、18及び21に最も良く示されているように、股関節ステムインプラント摘出器100は、締結具146によって近位リンク112に接続され、ロック解除位置170(図17)とロック解除位置に対し約90°のロック位置172(図18)との間で、締結具146の周りを矢印B(図21)の方向に回転可能であるロックキー140を更に備える。図19及び20に示すように、近位リンク112は、2つのソケット150を備えていてもよい。2つのソケット150内には、スプリング148が配されており、その上端はボールベアリング152を付勢支持している。ばね式ボールベアリングは二対の戻り止め151と篏合して、摘出中の衝撃でロックキーが回転しないようになっている。篏合するボールベアリング及び戻り止めにより、ロックキー140が確実にロック位置又はロック解除位置にあることが感覚的にもわかるようになっている。ロックキーがロック解除位置にある場合、ロック解除位置とロック位置との間でハンドル106を自由に動かすことが可能となっている。ロックキーがロック位置にある場合、ハンドル106は、自身のロック位置に固定され、ジョー118がグリップ係合位置、例えば、股関節ステムインプラントのトラニオンと係合された状態で固定され、近位本体102のねじ付きコネクタ104に取り付けられた摘出器具に衝撃などの摘出力が付加されることもある。
【0043】
ロックキー140は、近位リンク112に操作可能に接続され、ロック解除位置とロック位置との間で可動となっている。ロックキー140は近位リンク112を固定位置に固定する。
【0044】
股関節ステムインプラント摘出器100の様々な部材の向きやアセンブリについて説明したが、その特徴について説明する。例えば、連結アセンブリ280を構成する様々なリンクは、ハウジング100の長手方向の全長を最小限に抑えつつ、ジョーにより最適な把持力を提供することができる。それにより、例えば、従来の股関節ステムインプラント摘出器と比べて短い股関節ステムインプラント摘出器のように、股関節ステムインプラント摘出器100を短くすることができる。
【0045】
更に、重力を超える力がジョーに作用していない場合でも、連結アセンブリにより、ジョーを回動可能に保持することで、ジョーは指定位置に保持される。一方、従来のスライドトラニオン係合構造に作用する重力は、装置の指令による力が取り除かれた場合や装置が非ロック状態にある場合に、係合構造を想定外の位置にスライドさせてしまう可能性がある。また、スライディングジョー及び連結アセンブリのインサートは、ハウジングに対し、取り外し可能に取り付けられているため、これらが摩耗した場合には、高価な周辺部品を交換することなく、必要に応じて簡単に取り外して交換することができる。
【0046】
つまり、股関節ステムインプラント摘出器100は、連結アセンブリにより第1係合力又は微細な係合力を生じさせて、ジョーを指定位置に位置決めする。また、股関節ステム摘出器は、カムロックにより第2係合力又はロック力を生じさせて、摘出するインプラントにジョーを確実に係合させる。
【0047】
本開示の別の態様のインプラント抽出器の構造を図22~28に示す。比較的軽い破線で描かれた表面の陰影は、表面の装飾ではなく、輪郭を示している。図面全体を通して、表面の陰影を示す線は、手術器具の輪郭を示している。インプラント摘出器の構造の部位のうち破線で示された部位は、構造の一部を構成しないものとする。
【0048】
本開示について、例示的な実施形態を参照して説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことは可能であり、その要素は均等物で置き換え可能であることは、当業者であれば理解されるであろう。更に、本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料に変更を加えて、例示的な実施形態の教示に適合させるようにしてもよい。例示的な実施形態は、開示された特定の態様に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される主題の開示の精神及び範囲内の変更を網羅することを意図していることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16
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【国際調査報告】